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トンデモネタに対する突っ込み用情報ソース備忘録

75ミケ:2006/12/27(水) 00:01:55 ID:zcGeqzE6
久々に。
「感情的にならないで」スレで中間型生物について盛り上がっているので。

さて、「中間型生物なんてほとんどない」というイチャモンがしばしば進化論否定派から出されますが、
実際はそんなことはなく、多くの中間型生物の化石が見つかっていますし、現生生物にも中間タイプの生物は多数います。
と、ここまでは既出なんですが、今回はより具体的に多数の例を挙げていこうと思います。
というのも、『あるとしても数えるほどしかない』という逃げ道を潰すためです。

というわけで、以下、
英語版Wikipediaから情報がたどれる中間型生物を羅列していきます。
ttp://en.wikipedia.org/wiki/Main_Page

・単弓類(Synapsida)に属する動物
 昔で言うところの哺乳類型爬虫類。
 名前からしてそのまんまですが、原始爬虫類(現生のものとは違う)と哺乳類の中間的特徴を持つグループ
 例:Dimetrodon属(帆を持ったアレ。犬歯あり。)
   Cynognathus属(キノドン類最大の種。哺乳類と同じく三種類の歯がある。)
   Thrinaxodon属(キノドン類。毛が生えていたと思われる爬虫類。)

・爬形類(Reptiliomorpha)に属する動物
 爬虫類(有羊膜類)的特徴を持つ両生類。
 例:Seymouria属(セイムリア。爬虫類的な両生類グループの代表格。)
   Diadectes属(昔は爬虫類とされていたが、現在は両生類とされる。中間的だから。)

・迷歯類(Labyrinthodontia)に属する動物
 いわゆる原始的な両生類。肉鰭類と歯の構造がよく似ていて、鰓の痕跡など魚類的特徴も持つ。
 例:Ichthyostega属(イクチオステガ。魚類的な両生類の代表格。)
   Acanthostega属(アカントステガ。イクチオステガよりも祖先の肉鰭類に近い骨格。)

・肉鰭類(Sarcopterygii)に属する動物
 肉質の、骨のあるヒレを持つグループ。
 歩けるくらいに強力な鰭は、歩くためではなく水草を掻き分けるためのもの。
 四肢は歩くために発達したのではなく場当たり的な転用品だった。前適応の好例。
 Eusthenopteron属(ユーステノプテロン。両生類的な魚類の代表格。)
 Panderichthys属(ユーステノプテロンよりもきわめて両生類に近い魚。)
 Neoceratodus属(現生のハイギョ。魚だけど肺呼吸。)

・マニラプトラ(Maniraptora)に属する動物
 鳥と無数の羽毛恐竜を含むグループ。
 Dilong属(原始的で小型なティラノサウルスの仲間。羽毛を持っていた。)
 Ingenia属(オヴィラプトル科の恐竜、飛ぶためでない翼を持っていた。鳥に特徴的な叉骨を持つ。)
 Archaeopteryx属(始祖鳥。コンプソグナトゥスにそっくりでありながら飛行可能な翼を持っていた。)
 Confuciusornis属(孔子鳥。尾が短くなるなど現生の鳥に近い姿。しかし翼には爪。)
 Ichthyornis属(白亜紀の鳥。嘴には歯がある。)

・カエルの祖先
 Triadobatrachus属(原始的な両生類と現生のカエルの中間。微妙に胴長、カエルにはない肋骨がある)
 Notobatrachus属(現生のカエルに近い姿。現生のカエルとTriadobatrachusの中間)

・ヘビの祖先
  Pachyrhachis属(最古の蛇。短いながらもまだ後ろ足がある。)

・ウマの祖先
あまりにも有名すぎるけど、指の数、蹄の発達、体の大きさについて、非常に細かい過程の中間型が見つかっている。
 Hyracotherium属、Orohippus属、Epihippus属、Mesohippus属、Miohippus属、Parahippus属、Merychippus属という具合。

・ヒトの祖先
これもあまりに有名。直系のもの、傍系のものなど様々な中間型が見つかっている。
ちなみに創造科学者の知識は数十年も前のものから更新されてないのでアテになりません。
ピテカントロプスとか言ってたらアウトかな。
 Australopithecus属(アウストラロピテクス。直立歩行する猿。ルーシーとか有名。多数の種が出現した。)
 Ardipithecus属(チンパンジーと分岐した直後のヒト系統、ラミダス猿人が属する。祖先的な類人猿とアウストラロピテクスの中間)
 数々のHomo属の化石種(Homo ergaster、H. habilis、H. erectus、H. heidelbergensis、H. neanderthalensis、etc.)

すみません、もう力尽きました。
他にもクジラの祖先にゾウの祖先に現生の単孔類や古細菌にと、数え上げればきりがないほど。
これまで挙げたのは、読んでの通り【動物グループ】なので、
種レベルで取り上げればそれこそ無数に挙げることができます。

76ミケ:2007/02/08(木) 19:11:52 ID:zcGeqzE6
第一掲示板に書いてから大分遅れてしまいましたが、、、、

「一つの種が別の種になる(または二つの種に分かれる)というのが、
 実際に観察された例など皆無である。」
これは進化論を否定する人がしばしば口にする主張です。
肯定論者でさえ、そう思っている人も多いのではないでしょうか。

一応、上記主張に対する反論セオリーとしては、
種分化のタイムスケールの長さに触れ、
さらに「種の定義」が曖昧であることを指摘しておけば十分といえます。

しかし、生物学的種概念における種分化の観察事例は、ホントは実際にあったりします。
ただ、これを説明する際には、あらかじめ種の定義を相手とすり合わせておいた方が良いでしょう。
あとになって、そんなの種分化じゃない、と言わせないように。
確実なのは(笑)、まず相手の種の定義を挙げさせ、逐一その不備を指摘していき、
「結局は生殖隔離だよ」という結論にもっていっておく、という方法。

前置きが長くなりました。
では、具体例。
NatureやScienceに載った有名なやつを。

例1
Wolbachia-induced incompatibility precedes other hybrid incompatibilities in Nasonia
Nature 409: 707-710
Nasonia属の種分化。
もともと一種だった(生殖隔離のなかった)あるハチ、Nasonia sp.は、
あるときWolobachiaと呼ばれる細胞内寄生細菌に感染しました。
こいつに感染したオスは、非感染のメスと交尾しても子供を作れなくなってしまいます。
(感染者同士なら子供が作れる)
さらに、Wolbahiaには何種類かあって、
別系統のWolbachiaに感染したもの同士も子供が作れなくなってしまいます。
このような仕組みで
Nasonia sp.は、Nasonia giraultiとNasonia longicornisに分かれました。
(ちなみにこのWolbachiaを取り除くと雑種ができるようになります。)
というわけでまず、
Nasonia sp. → Nasonia giraulti
Nasonia sp. → Nasonia longicornis

例2
Single-gene speciation by leftright reversal
Nature 425, 679-679
カタツムリの右巻き左巻き。
カタツムリは、交尾器の向きの都合上、貝の巻きが同じ方向の個体としか交尾できない。
右巻きカタツムリと左巻きは、交配不能なんで生物学的種概念においては別種。
この論文で言ってるのは
・Euhadra quaesita → Euhadra quaesita+Euhadra aomoriensis

例3
Speciation by Distance in a Ring Species
Science 307: 414-416
ヤナギムシクイの輪状種。
輪状種とは、いくつかの集団を含んでいて、
隣り合った集団同士は交配できるけども、端っこのヤツ同士は生殖的に隔離されている、
という集団構造のこと。
すなわち、端っこのヤツ同士は生物学的種概念では別種。
ただし、間にある中間的な集団によって遺伝子流動が媒介されているので、
これは、いわゆる別種と同種の中間段階ってヤツの例です。

直接観察されていない、というツッコミは、
・ショウジョウバエの実験で同じ結果になること(あとで書くかも)
・年輪が刻まれるところも直接観察されていませんが何か?
という上記二点を懇切丁寧に解説すれば払うことができます。

さて、補足です。
第一掲示板にて2月 8日(木)16時04分43秒に、
人知が関与してなくて(ヒトの手が加わってないって意味だよね?)、かつ哺乳類で出せ
という、とんでもなく贅沢で無知な注文が出ました。

本来ならば、世代サイクルの遅さ、個体数・種数の少なさ、野外観察の困難さ、
どれをとっても、哺乳類は野外の種分化観察には向かないということを
せつせつと述べていきたいところですが、
具体例を挙げると先に言ってしまっていた手前、
第一掲示板では文句言わずに答えてあげる予定。

今回はその予告。
まあまだよく調べていませんが、哺乳類の輪状種の例を三つほど見つけました
・シロアシネズミ(Peromyscus maniculatus)
・ハツカネズミ(Musculus musculus)
・ポケットマウス(Perognathus amplusとP. longimembris)

ソースとか写真とか一通り探してウラをとってから第一掲示板に書く予定。
輪状種以外の例も探しとこうかな。

77wadja:2007/02/10(土) 01:20:36 ID:vhAcJKts
輪状種に関しては、セグロカモメしか知らなかったんで、貴重な情報ありがとうございます。でも、表の掲示板の方だと、「ハチはハチでしょ?」「カタツムリはカタツムリじゃん」「ネズミはネズミ」とか言いそうで怖いんですけどw

78ミケ:2007/02/16(金) 12:24:49 ID:zcGeqzE6
ちょっと面白い記事を見つけたので紹介します。

「コノハムシの化石は、それが擬態する広葉樹の出現より前の時代から発見されている。」
というのが、日本のネット上(?)でウワサになり、
進化論(自然選択説)否定者によって取り上げられたことがありました。
参考
ttp://caramel.2ch.net/wild/kako/1016/10163/1016364949.html
ttp://members.jcom.home.ne.jp/natrom/board060124.html

どうやらこれはガセだったようです。
コノハムシの属するナナフシ目は、かなり昔から存在するようですが、
おそらくはそれをコノハムシと勘違いしたことに端を発するのでしょう。
根拠は、英語の創造論系サイトにそれに類する話がまったく出てこないこと。
ぜったい、和訳したときに間違えたんだってば。

まあ都市伝説が発生した経緯については完全に憶測ですが、
ガセであることの決定的な根拠は今日見つけました。
ttp://www.physorg.com/news90157844.html

>Scientists discover first fossil of a leaf insect
訳:科学者は、コノハムシの最初の化石を見つけた。
#化石の写真も出てます。
 これまでコノハムシの古い化石は見つかっていなかったけど、それが見つかった、という記事。
 日付に注目。

>One of the most striking parts of the discovery is that
>the sediment deposit where the scientists found the fossil
>was radiometrically dated at 47 million years old
>(the Eocene epic in the Cenozoic era spans 56-44 mya).
※引用者が適宜改行
訳:注目すべき点は、科学者がその化石を発見した場所の堆積物は
  放射線年代推定から4700万年前のものだとされたことだ
  (新生代 第三紀 始新世が5600万年前〜4400万年前)
#ちなみに恐竜の絶滅は6500万年前前後

>Because leafy angiosperm plants mimicked by phasmids arose
>in the middle of the Cretaceous
>(125-90 mya, not too long before the final days of the dinosaurs),
>this date range places a maximum age limit on leaf insects.
>But scientists still aren’t sure whether leaf insects appeared earlier,
>in the Cretaceous, and took a while to evolve
>their unique camouflage morphology and behavior,
>or whether they appeared later, in the Eocene, and evolved rapidly.
※引用者が適宜改行

訳:Phasmid(*)が擬態する広葉の被子植物は白亜紀中期
  (1億2500万年前−9000万年前、恐竜絶滅の少し前)なので、
  コノハムシの“年齢”は最大でこのあたりとなるだろう。
  しかし、
  コノハムシが比較的早く、すなわち白亜紀に現れて
  そのユニークな形態と行動を進化させるのに時間を食ったのか
  あるいはもっと遅くに、すなわち始新世に現れて急速に進化したのか
  科学者たちはまだ確信をもっていない。
(*)Phasmid自体はたぶんもっと昔からいるみたいなので
   ここではコノハムシの先祖となるphasmidのことだと思われる

元ネタの論文も載ってました。
論文タイトル:The first fossil leaf insect: 47 million years of specialized cryptic morphology and behavior.
雑誌:Proceedings of the National Academy of Sciences. January 9, 2007. Vol. 104. no. 2. 565-569.

81名無しさん:2008/09/20(土) 09:26:47 ID:ie9ggIeM
ttp://creationontheweb.com/images/lote/japanese/5805stones_and_bones.pdf
これ既出でしょうが誰か解説お願いします

82ミケ:2008/10/16(木) 22:06:37 ID:EqcAdGUE
おお、新しいレスが入っている。
というわけでおひさしぶりです。

>>81
ちょっと長いですね。
ざっと読んだところ、

・化石は短い期間でもできる。
・中間型は存在しないし見つかっていない。
・突然変異では情報は増えない。(有利な突然変異など存在しない。)
・痕跡器官など存在せず、何か役割を持っているのだ。
・放射性年代測定は誤りだ。

こんなところでしょうか。
ほとんどが使い古されたネタですが、分野が多岐にわたっているので
全部参考サイト付きでつっこもうと思ったら大変ですね。


まず、中間型については>>75-76で既に扱っています。
なお、この件について著者の方は
大英博物館のコリン・パターソン氏の言葉を引用して
「進化論者さえこう言っている」みたいなことを言っていますが
どうやらお得意の、不完全な引用のようです。
ttp://www.talkorigins.org/faqs/patterson.html
訳は、そのうち暇を見て……。

有利な突然変異など、、、というところは頻出モノなので
とりあえずはその辺から手をつけていきますかね。
のんびりいきます。抜け駆けOKですよ〜>ALL

83名無しさん:2010/01/18(月) 20:58:45 ID:/t5KEVyM
age

84名無しさん:2010/01/18(月) 21:01:16 ID:/t5KEVyM
age

85jbbs.livedoor.jp:2011/04/19(火) 14:56:54 ID:???
1138967290.. WTF? :)

86jbbs.livedoor.jp:2011/04/22(金) 17:46:27 ID:???
1138967290.. Huh, really? :)

87jbbs.livedoor.jp:2011/06/03(金) 11:43:31 ID:???
1138967290.. Peachy :)

88jbbs.livedoor.jp:2011/06/05(日) 12:03:39 ID:???
1138967290.. Super :)

89jbbs.livedoor.jp:2011/06/19(日) 22:09:30 ID:???
1138967290.. May I repost it? :)

90名無しさん:2012/02/25(土) 16:11:38 ID:5KngPRw6
うむ

91名無しさん:2012/02/28(火) 20:59:15 ID:Jl8EYJQU
先輩、ココのサイト…まじヤバイっス(^O^)
年明けから自分書けないぐらい美味しい思いしたっス
登録無料みたいなんで試してGet!しっちゃてくださいよ☆
ttp://bit.ly/AqpRi6

92ミケ:2013/05/08(水) 01:51:05 ID:N/ivHP72
第一掲示板に書くとちょっと流れが速くなりすぎるかなということでメモ。

といってもこのあたりの話はあまり詳しく勉強していないのでちょっと自信のない部分もあります。
鵜呑み禁止!訂正歓迎!

遺伝率とは?
・その形質の分散に遺伝的要素がどの程度寄与しているのかを示す数値。

大きさなどの量的形質(cm、kgなど数値で測れる性質)は、
いくつもの要因の影響を受けており、
多くの遺伝子と、さらに遺伝子だけでなくその他ランダムな要因でも前後するものとして知られています。

ということは、
その形質(たとえば嘴の大きさ)に個体間のばらつき具合について、
仮に遺伝的要素がほとんど寄与していなかった場合……、

もしもある環境で有利なもの(嘴の大きなもの)が生き残ったとしても、
その形質の差を生み出していたのは遺伝によるものでないわけですから、
次世代の子供における嘴の大きさの平均値や分布は、
親世代が子供の頃のものと変わらないことになります。

要するに遺伝率がゼロだったら
いくら自然選択をかけても
その形質は有利な方向には進化しないと考えられるわけです。

そこで自然選択によって形質が変化したかどうかを調べるには
(量的形質のような遺伝と環境両方の影響を受けそうな形質では)
遺伝率を測ることが必要となるわけですね。
遺伝の影響がどの程度なのかを知らなければならない。

今回の第一掲示板での獲物さんは、
「ある環境の中で生き残った親から生まれた子が、推定遺伝率に遠からぬ形質を持って生まれきた」
(それだけのことで当たり前なので小進化ではない)
と言っていますが、
ある環境の中で生き残った親から生まれた子が、
推定遺伝率0.74に遠からぬ値の形質を持って生まれてきたとしたら
要するに環境による選択の効果が次世代に引き継がれたということですから
まさしく自然選択によって形質が変化した実例であり、
しかも遺伝率がゼロでないことは遺伝子頻度も変化していることを示しますので
すなわち遺伝子頻度の変化=進化であるわけですが、
おそらく彼はそんなことを理解してしゃべってはいないでしょう。

っていうか多分その数値が何を意味しているかも理解してなさそう。

ソース提示はまたあとで……。
時間のあるときに遺伝学系の教科書を探してみます。
どこかに埋まってそう。
そのときに訂正などあればするかも。

93ミケ:2013/06/30(日) 14:06:46 ID:N/ivHP72
これを言ったらこのスレはほぼいらなくなるかな〜と思いますがご紹介。
このスレと同じようなテンプレ集が、海外サイトにあったのでした。

生物学系から地学系、科学哲学に至るまで、
ほとんどの具体的なテンプレ質問は以下のサイトに網羅されております。

Talk origins
Index to Creationist Claims
ttp://www.talkorigins.org/indexcc/list.html

また忘却からの帰還で和訳もされています。
ttp://www24.atwiki.jp/kumicit/pages/19.html

「Response」がそれへのテンプレ回答、
その回答のもととなる文献が「References」に載っています。

今後は、ここに載っていないものや一般論などを載せるような感じでいこうかな。
まあ既に4年くらい書いてなかったですけど。

94TFSDHAek:2014/01/21(火) 11:38:29 ID:kzQMLDyw
-

95ミケ:2015/02/11(水) 20:04:23 ID:rTHg7Ih2
第一掲示板が荒れていますね。
ものすごい勢いで私のHNを使って荒らしているようですが
どこか痛いところをついてしまったかな?

96ミケ:2015/02/11(水) 20:13:28 ID:rTHg7Ih2
せっかく書きためたのでKSさんへの回答をBOLDで書いてみました。
その後の反応から見るに、BOLDにはできなそうですね。
そしてさらに刺激してしまったと。

遊んでしまってすみません、しばらくは自重します。

97名無しさん:2015/02/11(水) 20:47:53 ID:???
ナメプしてるんじゃない?www

98ミケ:2015/02/11(水) 20:48:34 ID:???
私はホモなんですよ

99ミケ:2015/02/11(水) 20:54:06 ID:rTHg7Ih2
あー、ここも見つかってしまいましたか。

ここは向こうと違って人目でIDが違うってわかりますよ。
(まあ向こうも分かるんですが)
投稿時間の右側ね、あなたのは???となっているところです。
私のIDは:rTHg7Ih2ですね。違ったら成りすましということが一発で分かっちゃうんです。

そろそろ管理人のNATROMさんにメールしないといけませんね。

100ミケ:2015/05/24(日) 10:37:17 ID:P0ev.7kw
久しぶりに数年越しの宿題でも。
>>81で紹介された創造論系の進化論否定に出てきたコリン・パターソン博士の言葉について解説です。

先日、第一掲示板で、某困ったちゃんが何度目かのもう来ない宣言をしましたが
彼が二年ほど前に引用の引用で同じようなものを取り上げていたのを思い出しました。
で、GW頃にようやくまともに読み始めたんですが、
気になることが出てきて調べているうちにいろいろ横道に逸れて今頃になってしまいました。

それについてはまたレスを分けるとして、
問題の記述
ttp://creationontheweb.com/images/lote/japanese/5805stones_and_bones.pdf
のp. 22-23について
大方の予測どおり、これは創造論系進化論否定トンデモさんおなじみの手口「不完全な引用」です。

※参考:エホバの証人の本に見られる「不完全な引用」
ttp://members.jcom.home.ne.jp/natrom/cite.html

先に結論を書いてしまうと、
コリン・パターソン博士が「存在しないよ」と言ったのは、中間型ではありません。
化石記録では、“直接的な祖先かどうか”を証明できないので
“反論の余地も無くAの子孫でCの祖先であるB”なんて言える化石は存在しないよ、と言ったのです。

その詳しい内容については、>>82で紹介したページにあります。
Talk Origins Archive
「Patterson Misquoted - A Tale of Two 'Cites'」
ttp://www.talkorigins.org/faqs/patterson.html

上記HPには、ライオネル・タニッセン(Lionel Theunissen)という人が
創造論者によるコリン・パターソン博士(Colin Patterson)の引用を知って
興味を抱いて本を読んだり各方面に手紙を送った経緯とその結果が記してあります。

ちなみにコリン・パターソン博士(1933-1998)は
大英自然史博物館(現在のロンドン自然史博物館)に勤めていた古生物学者で、
化石魚類とSystematics(うまく和訳された日本語はないが日本語版Wikipediaでは体系学)を専門としていました。

文中では筆者ライオネル・タニッセンがこの問題に興味を持った経緯とか、
彼が受け取った手紙とか、
それらについての創造論者カール・ウィーランド(ヴィーラント?)(Carl Wieland)のコメントや、
それについての彼の感想も出てきますが
そのへん興味のある方はセルフサービスでお願いします。

次のレスで創造論者によく使われる引用部分と、
その“続き”を見てみましょう。

101ミケ:2015/05/24(日) 10:44:29 ID:P0ev.7kw
>>100の続きです。
文が長くなりすぎますので、このレスでは
創造論者による「不完全な」引用だけを記します。

中間型がないというコリン・パターソンの引用

その引用は、
パターソン博士から創造論者 ルーサー・D・サンダーランド(Luther D. Sunderland)へ
1979年4月10日付けで宛てられた個人的な手紙からのものであり、
パターソン博士の著書"Evolution" (1978, Routledge & Kegan Paul Ltd.)に言及したものです。

まずは創造論者に使われる引用部分、原文で
**********(以下引用1)**********
I fully agree with your comments on the lack of direct illustration of evolutionary transitions in my book. If I knew of any, fossil or living, I would certainly have included them. You suggest that an artist should be used to visualize such transformations, but where would he get the information from? I could not, honestly, provide it, and if I were to leave it to artistic license, would that not mislead the reader? I wrote the text of my book four years ago. If I were to write it now, I think the book would be rather different. Gradualism is a concept I believe in, not just because of Darwin's authority, but because my understanding of genetics seems to demand it. Yet Gould and the American Museum people are hard to contradict when they say there are no transitional fossils. As a paleontologist myself, I am much occupied with the philosophical problems of identifying ancestral forms in the fossil record. You say that I should at least "show a photo of the fossil from which each type of organism was derived." I will lay it on the line, There is not one such fossil for which one might make a watertight argument.
**********(以下引用1)**********

**********(以下和訳1)**********
私の本の中には進化的移行[※evolutionary transitions]の直接的なイラストが欠如しているというあなたのコメントに、私は完全に同意する。もし私が、化石であれ現存であれ、それを知っていたら、私は間違いなくそれらを含めていただろう。あなたは、そのような移行型を視覚化するためにアーティストを用いることを私に示唆しているが、しかし、彼はどこからその情報を得ることが出来るのか?正直言って私はそのような情報を提供できないし、もし私が画家の自由にゆだねて描いてもらうなら、読者に誤解を与えることになりはしないか? 私は4年前に本を書いた。もし、今、その本を書くなら、かなり違ったものになるだろう。私は、Gradualism[※生物は徐々に変化してきたこと]を信じているが、それは単にダーウィンをよりどころにしてるという理由だけでなく、私の遺伝に対する理解から、それ[※“徐々に”]が必要だと考えられるからだ。しかし、グールド[※Gould]とアメリカ博物館の人たちは、中間型の化石など無いではないかと言われたとき、なかなか反駁できない。私自身も、古生物学者として、化石記録から祖先の形態を識別するという哲学的問題に常に悩まされている。あなたは私に、少なくとも“それぞれのタイプの生物の由来となった化石の写真を見せる”べきだと言う。率直に言おう、完璧な主張を可能とするような、そんな化石は存在しない。
**********(以下引用1)**********

日本語のPDFには、いくつか誤訳と思われる箇所もあります。
また、ライオネル・タニッセンが紹介する引用では中央部分(You suggest〜organism was derived)が省略されています。
誤訳や省略版については見比べてもらうとして、大筋は大体一緒です。
さて、ここで終わると不完全な引用であり、中間型がないかのようにも受け取れますね。
しかし続きがあることで、それが違う意味を持ってきます。
では次のレスで実際に続きを見てみましょう。

102ミケ:2015/05/24(日) 10:49:05 ID:P0ev.7kw
>>100-101の続きです。
中間型が存在しない、という意味で創造論系進化論否定者によく用いられる、
コリン・パターソン博士の「不完全な」引用の続きを見てみましょう

**********(以下引用2)**********
... a watertight argument. The reason is that statements about ancestry and descent are not applicable in the fossil record. Is Archaeopteryx the ancestor of all birds? Perhaps yes, perhaps no: there is no way of answering the question. It is easy enough to make up stories of how one form gave rise to another, and to find reasons why the stages should be favoured by natural selection. But such stories are not part of science, for there is no way to put them to the test.
**********(以上引用2)**********

**********(以下和訳2)**********
. . .完璧な主張を可能とするような、そんな化石は存在しない。その理由は、祖先と子孫についての言明は、化石記録には適用できないからである。始祖鳥は全ての鳥類の祖先か?答えはおそらくYESでありおそらくNOである:その問いに答える方法は存在しない。一つの形態が別のもう一つの形態から生じたストーリーを作り上げるのも、またその段階が自然選択で選択された理由を見つけるのも十分に容易だ。しかし、そのようなストーリーは科学の一部ではない。というのも、それらを検証に乗せる方法がないからだ。
**********(以上和訳2)**********

ということで、先に書いた結論の繰り返しになりますが
化石記録では、“直接的な祖先かどうか”を証明できないので
“それぞれのタイプの生物の由来となった化石”なんてものは真の意味では分からない。
そういう意味で“反論の余地も無くAの子孫でCの祖先であるB”なんて言える化石は
そもそも原理上存在しないよ、というのがパターソン博士の言葉の意味するところであり、
中間型そのものが存在しないという意味ではなく、実際は普通にたくさんあるわけです。

というか、その本にも始祖鳥やイクチオステガやヒラコテリウムなどの代表的な中間型が載っています。
(と、読んだタニッセン氏が本から引用してます)
それらの“復元イラスト”が載っているかどうかは分かりませんが。

さて、ライオネル・タニッセン氏が上記の“続き”を手に入れたのは、
直接パターソン博士に手紙を送って返信をもらったからです。
その中でパターソン博士は、その“続き”に関してこう書いています。

**********(以下引用3)**********
I think the continuation of the passage shows clearly that your interpretation (at the end of your letter) is correct, and the creationists' is false.
**********(以上引用3)**********

**********(以下和訳3)**********
その一節の続きは、あなたの解釈(あなたの手紙の最後にあるもの)が正しく、創造論者のものが間違いであることを明確に示していると私は考えます。
**********(以上和訳3)**********

ということでした。

余談ですが、もう一つ気付いた点を。
「4年前に本を書いた。もし、今、その本を書くなら、かなり違ったものになるだろう。」
この部分、
進化論否定論者的には「今は4年前と違って中間型などないと考えを変えた」かのように受け取りたくなると思います。
というか、たぶん件のPDFではそう受け取ってるっぽい。
だから4年前の本に関して、著者が括弧で
『パターソンは、その本の中で、いくつかの移行型があることを信じていると述べている』と注釈を入れているのでしょう。

でもそういう意味だとしたらちょっとつながりがおかしいように思いませんか?
「誤解を与えうる」から繋がっていることを踏まえれば、
古生物学での生物の復元や系統関係の推測は変わりうるので
進化の中間タイプとしてその復元イラストを想像に任せて描くのは
読者に誤解と先入観を与えるので危険だよ、
という意味だと思われます。

103ミケ:2015/06/13(土) 12:06:48 ID:P0ev.7kw
さて、前の投稿(>>100)で少し触れた「横道」の話です。
創造論者によるコリン・パターソン博士の引用は「中間型など存在しない」の他にもあるようです。
>>100-102>>82で紹介したライオネル・タニッセンの文章のタイトルには“Two Cites”と出てきますね。
Talk Origins Archive
「Patterson Misquoted - A Tale of Two 'Cites'」
ttp://www.talkorigins.org/faqs/patterson.html

コリン・パターソンからライオネル・タニッセンへの手紙の中で、
もう一つの“引用”について触れられています。
それが、1981年にニューヨークのアメリカ自然博物館で行われたという“keynote address”です。
この“keynote address”は、1981年、ニューヨークのアメリカ自然史博物館において
博物館関係者の勉強会のようなものでしょう、“Systematics Discussion Group”へ向けられたコリン・パターソン博士のトークでした。
そのタイトルは“Evolutionism and Creationism”ですが、
実際のところ、これは進化論と創造論をテーマにしたトークではなく、
分類学・体系学に関するトークだったようです。

とりあえず、ライオネル・タニッセンへの手紙の中の文章を読んでみましょう。
**********(以下引用1)**********
That brush with Sunderland (I had never heard of him before) was my first experience of creationists. The famous "keynote address" at the American Museum of Natural History in 1981 was nothing of the sort. It was a talk to the "Systematics Discussion Group" in the Museum, an (extremely) informal group. I had been asked to talk to them on "Evolutionism and creationism"; fired up by a paper by Ernst Mayr published in Science just the week before. I gave a fairly rumbustious talk, arguing that the theory of evolution had done more harm than good to biological systematics (classification). Unknown to me, there was a creationist in the audience with a hidden tape recorder. So much the worse for me. But my talk was addressed to professional systematists, and concerned systematics, nothing else.
I hope that by now I have learned to be more circumspect in dealing with creationists, cryptic or overt. But I still maintain that scepticism is the scientist's duty, however much the stance may expose us to ridicule.
**********(以上引用1)**********

**********(以下和訳1)**********
サンダーランド(私はそれ以前に彼のことを一度も聞いたことがないが)との小競り合いは、私にとって初めての創造論者との体験だった。[※訳者注:ここで「一方で」と入れるのが正しい?]1981年にAmerican Museum of Natural Historyで催された有名な“keynote adress”は、決してそのようなものではなかった。それは博物館の、(極めて)非公式なグループである“Systematics Discussion Group”へ向けたトークだった。私は彼らに向けて、“進化論と創造論 ”に関して話をするよう頼まれていた;ちょうどその前の週のサイエンス誌に掲載されたエルンスト・マイヤーによる論文によって憤激[※白熱?]していた。私はかなりざっくばらんなトークを行い、その中で、進化論は生物学的体系学(分類)に対して、利益よりも害をもたらしたことを指摘した。私は知らなかったが、その聴衆にはテープレコーダーを隠し持った創造論者がいた。私にとってはますます悪いことだ。しかし私のトークは他の何者にでもなく、プロの体系学者や関連する体系学に向けられたものだったのだ。
私も今では隠れたあるいは公然の創造論者を相手にする場合はもっと慎重であるべきだと学べた、と思いたい。しかし、私は今でも、いかに多くの嘲笑に晒されようとも、懐疑論は科学者の義務であるという立場を維持してる。
**********(以上和訳1)**********

読んだ直後の印象として、
どうやら受け取り手が正しい意味で引用しなかったのは間違いないようだなと。
しかし、「懐疑論的な考え方をヒートアップして喋って拡大解釈されたっぽいな」
というところまではな何となく想像できたものの、今ひとつピンとこなかったので、
色々とネット上を漁ってみました。参考になったHPの紹介は次のレスで。

104ミケ:2015/06/13(土) 12:22:48 ID:P0ev.7kw
>>103の続きです。
創造論者に引用される、コリン・パターソン博士の“keynote address”について。
ライオネル・タニッセンへの手紙ではいまいちピンとこないので
それについての詳細を探るべくネットを漁りました。

非公式のトークじゃ原文探すのは無理だろうと早々に諦めて概要だけつまんでるようなのを探していました。
……まあ隠れて録られたというテープを売ってるらしきページはありましたけどね。
そしてさしあたって、内容を推測する参考になったのは以下のHP

Colin Patterson quote misuse (ftqz's quoting)
by Brett J. Vickers
ttp://www.skepticfiles.org/evolut/missquot.htm

Colin Patterson Revisits His Famous Question about Evolution
by Paul A. Nelson(ID論者)
ttp://www.arn.org/docs/odesign/od171/colpat171.htm

So You Want to be an Anti-Darwinian
by John Wilkins
ttp://www.talkorigins.org/faqs/anti-darwin.html

Transformed cladistcs(Pattern cladistics)
@英語版Wikipedia
ttp://en.wikipedia.org/wiki/Transformed_cladistics

オマケ
・Keynote addressの前の週にサイエンスに掲載された分類と進化に関するマイヤーの論文
Mayr E. 1981. Biological Classification: Toward a Synthesis of Opposing Methodologies. Science 30 Vol. 214 no. 4520 pp. 510-516


その結果、何となくですが流れが読めたのですが、
その過程でそのトーク全体の原稿が公開されていることに気付きました。
もっと早く探せばよかったorz

リンネ学会(Linnean Society)のHPから
Home>Our Publications>The Linnean>Vol.18, No.2 Aprilで見られるPDF

その15ページから33ページまでがそれです。
その直前に「Systematics and creationism」というタイトルで
それが公開されるに至った経緯等が書かれています。
長いので挫折しましたがSystematics and CreationismとEvolutionism and Creationism
それぞれ本文の最初と最後のほうを機械翻訳に頼りつつ流して読んでみました。
おおよそ推測どおり。またどのように切り取られたのかも分かって面白かったです。
それから科学史的な観点からも結構面白いです。

これまた結論から書きたいところですが、
その結論を理解するにはどうやらそれなりの前提知識を必要とするようです。

それなりの前提を必要とする主張であることを考えると、
このケースは不完全な引用でもありますが、もしかしたら無知からくる誤解もいくらか含まれるかなと感じました。
(一応はっきりと「このトークは進化論・創造論の論争についてのものではない」と本文中で述べられてはいますが)
それもあってネットに残っているパターソンの釈明は
“それは体系学のみに関するものであってプロに向けたものだ”くらいに留まっているのかもしれません。
本当に釈明しようと思ったら、次のレスにあるような内容を、
(場合によっては生物に興味も知識もない創造論者にも)一から説明しなければならないわけですから。

ということで、次のレスでは、まずその前提知識から解説していきます。
前提知識を読みたい方は>>104、要約・結論を読みたい方は>>105くらいの予定です。
もしかしたら、後でさらに突っ込んだ話を追記する可能性があります。

105ミケ:2015/06/13(土) 13:32:00 ID:P0ev.7kw
>>103-104の続きでコリン・パターソン博士の“keynote address”についての解説です。
>>104の最後の文ではアンカー間違えましたね。要約・結論は>>106の予定です、
と書こうと思っていましたが、前提知識が1レスで終わりません(汗。>>107かなあ?

創造論者にしばしば引用されるコリン・パターソン博士の“keynote address”が、
実際にはコリン・パターソンが進化否定論者であることを示すものでない
と理解するにはそれなりの前提知識が必要になります。
ということで、ここではそれについて説明していきましょう。

まず、体系学とは何でしょうか?
「体系学」[Systematics]は、生物の類縁関係を研究する学問であり、分類学と系統学の両方にまたがっています。
ダーウィンの時代から既にあった用語(種の起源にも出てくる;和訳では分類学)であることを考えると、
文脈によってはやや分類学よりになると言えるでしょう。

そして生物の分類については、その目的や方法論や考え方の違いからいくつか学派があります。
第一掲示板過去ログでのたまごちゃん (^-^)ノの
2008年3月4日あたりからの一連の投稿が分かりやすいかと思います。
ttp://members.jcom.home.ne.jp/natrom/board080323.html
一応さらに、自分の学んだことを解説します。(一部解釈の違いがあるかもしれません。)

多様な生物をまとめて整理するのが「分類学」[Taxonomy]。
分類学者たちは、今はどうか分かりませんが、少なくとも昔は、
唯一の(真の、そして客観的な)分類体系(=自然分類)があると信じ、それを目指していました。

近代に入る頃になると、
従来の分類における“まとめ方”などが客観的でないことに批判が集まってきます。
なんとなくそれらしい感じになってるけど、よく見るとそのまとめ方が分類群や研究者によってまちまちで、
科学として重要な(と思われる)、客観的な基準がなかったことに問題意識が集まってきたんですね。
それを受けて1950年代に現れたのが「分岐学」[Cladistics]と「表形学」[Pheneticis]というわけです。

さて、ここでちょっと時代は戻りますが、
“分け方”に統一的な基準こそ無かったものの、とにかくみんなで生物を分類整理していくと、
入れ子構造になるとか、おぼろげな法則っぽいものが見えてきていました。
そして、ダーウィンに代表される、共通祖先からの変化と分岐(進化)という考え方が現れ、
どうやらその入れ子構造のほとんどは進化の歴史に由来することが分かってきたと。

客観的なまとめ方が提案できなかった中で現れた、
「現在の類似度の構造は進化の歴史を反映したものである」という考え方は魅力的でした。
(逆に言えば、たまごちゃん(^-^)ノの投稿にもあるように、
「分類」それ自体は必ずしも進化という考え方を必要としない・しなかったわけです。)

進化の考え方を元に、分岐の順番を使って分類してみよう、として現れたのが
「分岐学」[Cladistics]・「分岐分類」[Cladistic classification]と呼ばれる分類法
これで自然で客観的な真の分類・整理が可能になった!
……と思いきや、話はそう簡単ではありませんでした。
分岐学的基準を用いると、爬虫類や魚類といったまとまりが分類群として成立しなくなってしまうのです。
これでは人間の感覚と乖離する。目指していたのは誰がどう見ても正しい分類ではなかったか?と。
参考として私の投稿
ttp://6609.teacup.com/natrom/bbs/13721

ともかく分岐分類とは、そういった人間の感覚的な分類を割り切った手法と言えるでしょう。
ちなみに、現在でこそ手法が発達して(現生の生物であれば)DNAを直接比較して分岐学を適用できますが、
初めの頃は特定の形質を選んで比較する方法でした。
これは選ぶ形質が適切でないと変な結果になってしまうので注意を要します。

106ミケ:2015/06/13(土) 13:39:32 ID:P0ev.7kw
>>103-105の続きで、
コリン・パターソン博士の“keynote address”について理解するために必要な前提知識(>>105-106)の続きです。

さて、分岐分類で>>105で述へたような問題が起こることを予見していたのかいないのか
……は、調べてないので分かりませんが、
分岐分類が生まれたのと大体同じくらいの時期に、
分岐分類とはまったく真逆の方向に割り切った分類法が生まれています(まあ真逆というのは個人の感想です)。
それが「表形学」[Phenetics]・「表形分類」[Phenetic classification]。
これは、進化の歴史を完全に無視し、比べる形質も選ばずに使えるだけ使ってしまって、
とにかく前提なしに(見た目で)分類わけしてみよう、というやり方です。

多くの形質を使ったら良い感じに客観的(自然分類)っぽくなるんじゃね?という考えでしたが、
厳密にこれを適用しようとすると、収斂の結果の形質なども全て含まれしまうので、
やはり人間の認識と乖離してあまりうまくいきませんでした。
が、そこで生まれた手法は例えばDNA系統樹の作成法に応用されるなど、今も受け継がれています。
(膨大な情報を使って樹形図を作る方法が、DNAやアミノ酸の膨大な配列情報を使って樹形図を作る方法として応用された)

そして、分類学の3つ目の学派「進化分類学」[Evolutionary classification]。
代表するのはエルンスト・マイア[Ernst Mayr]。
たまごちゃん (^-^)ノも書いてますが、
これは伝統的な分類と分岐分類の手法と表形分類の手法を良いとこ取りしようぜ、という方法です。
コリン・パターソン博士の“keynote adress”の一週間前にサイエンスに掲載されたという論文も
要旨を読むと「良いとこ取りしようぜ」と書いてありますね。
もうちょっと書くと、分岐学のように、進化の分岐の順番は考慮しよう、
でも進化の歴史では、自然選択によって急激に形質が変化した場合あるのでそれも考慮しようというもの。
しかし、それは、分岐分類や表形分類が割り切った“問答無用の統一基準”を捨てることでもあります。
急激に形質が変化するという状況も要因も変化の程度も“場合による”あるいは“見方による”わけですからね。

まあ、種の定義に“完璧”なものがないのと同様、分類も全部完璧にはできないということです。

さて、コリン・パターソン博士はどの学派だったかというと、体系学を専門としていましたが、
その中でも、分岐学、とりわけ1980年代に現れた
変形分岐学[Transformed CladisticsまたはPattern Cladistics]と呼ばれる学派の先導者でした。

これがなかなかウェブ上で日本語の説明がなかったのですが
英語版のWikipediaの記述を訳しておきます。
『変形分岐分類学者は、
共通祖先の共有や(プロセスとしての)進化論などの想定・前提から自由であるべきであり、
実証的(empiricalな)データのみに基づくべきだ、という立場を維持している。』
プロセスとして代表的なのはダーウィンの「自然選択」ですね。
そう、進化分類学者(マイヤー)が考慮しようと主張していた「自然選択」です。
これを意識的に除外して分岐図の作成を進めるので
「アンチ・ダーウィニスト」や「非進化論」を自称していたらしいです。
ただ、それは、研究手法として進化を前提にしないというだけであり、
進化がなかったと主張しているのではないわけですね。

107ミケ:2015/06/13(土) 14:20:04 ID:P0ev.7kw
>>103-106の続きにしてまとめです。
創造論者がしばしば引用するColin Patterson博士の“keynote address”

まずもう一度簡単に前提とすべき知識をまとめます。
「分類学」:生物を分類し、場合によっては同じグループにまとめたりして整理する学問。
「系統学」:生物の歴史・系統関係を研究する学問。
「体系学」[Systematics]:生物の類縁関係や分岐を研究する学問。分類学と系統学にまたがる。
「分岐分類」[Cladistic classification]:生物の分岐順序だけを基準に分類する方法。
「表形分類」[Phenetic classification]:生物の形質だけを根拠に分類する方法。
「進化分類」[Evolutionary classification]:分岐順序に加えて進化の度合いや形質の状態等も考慮した折衷案。
「変形分岐学」[Transformed Cladistcs、Pattern Cladistics]:進化のプロセスを前提とせずに分岐学をやってみようという方法。研究手法上前提としないだけであって進化そのものは否定しない。
「エルンスト・マイヤー」[Ernst Mayr]:進化分類の立場をとる学者で、1981年に論文を書いた。
「コリン・パターソン」[Colin Patterson]:体系学者にして変形分岐学の立場をとる学者で、1981年に体系学者に向けてトークをした。

「コリン・パターソン博士の“keynote address”」:
1981年、ニューヨークのアメリカ自然史博物館において
“Systematics Discussion Group”へ向けられたコリン・パターソン博士のトーク。
タイトルは“Evolutionism and Creationism”だが、
進化論と創造論がテーマというわけではなく、分類学・体系学に関するトークだった。
このトークでパターソンは、
1981年のサイエンス誌に発表された分類学に関するマイヤーの論文(と進化分類学)を意識し、
過激で極端ななトークを展開した。
そのトークを聴衆に紛れた創造論者が隠し録音し、創造論者の出版物として出回ったもの。

さあ、ここまで整理できたところで、“keynote address”の実際の内容をまとめてみました。
そのトーク全体の原稿は、リンネ学会のHPで公開されています(>>104で紹介)

Evolutionism and Creationism(進化論と創造論)
ざっくりまとめ

1981年にマイヤーが「体系学」に関する論文をサイエンスに発表した。
その論文は「分岐学」「表形学」「進化分類学」のそれぞれの特徴を述べ、
マイヤー自身のオススメも述べたものであるが、
「(変形)分岐学者」であるコリン・パターソンにとっては特に進化分類のあたりが承服しがたいものだった。

コリン・パターソンの考えるところに拠れば、
進化分類学では、分岐だけでなく分岐してからの各枝での変化の内容も考慮する。
つまり、共通祖先からの進化と分岐、そして分岐後の進化の内容を前提に考察しなければ実行できない。
一方、(変形)分岐学では、基本的に変化の質は考慮せず、
マトリックス(表)をつくって計算して機械的に分岐図を作成するので
進化を前提にせずとも分岐図を作成し、分類することが出来る。

進化分類学の前提は、先入観をもたらすのではないか?
あるいは、そうしてできた分類は、データによって修正(反証)できる方法論なのか?
進化の理論を前提にすると、本来は何もないかもしれないところに
“その理論にしたがって階層構造を作ってしまう”かもしれないのではないか?
[※DNAデータなどは4つの変数、ATGCしかないので、ただ眺めているだけでは階層構造を認識できないかもしれない]
そういう分類って科学的に有意義な方法論と言えるのか?
(あくまで分類学と体系学に関して)
パターソンはそう考えたようですね。

そして、このEvolutionism and Creationismというトークの中で、
そうした進化分類学の立場を、(変形)分岐学の立場から、
あくまで体系学(生物の関係性を議論・研究するという学問)における影響という観点で、
ガレスピー(ダーウィン以前の創造論の特徴を記述した)や
オーエン(進化を否定した昔の博物学者)を引用しつつ、
ダーウィン以前の創造論になぞらえて批判した。

というわけです。

その中で、
・自然選択等のプロセスを考慮しないという意味で
・Discussion Groupなので議論を進めるためにより極端な立場で話すという意味で

あえて、反進化論という言葉を使って自らを表現していますが、
しかし、進化がなかったとは言ってないわけです。

以上まとめでした。

当時はまだDNA配列そのものを分析する手法も未発達で、分子データはわずかしかありませんでした。
現在の知識を持ってPDF全文を読んでいくのも面白いです。
今後さらに面白いと思ったところを書くかもしれませんが書かないかもしれません。

108ミケ:2018/06/22(金) 14:08:05 ID:hmI6xcyU
「科学と疑似科学とを判別する」スレッドのレスNo.77において
「ダーウィニズム(自然選択説)は反証不能ではないか」という発言がありました。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/5329/1524257541/77

これについてはよく言われる間違いであり、
当スレッド>>12においてNATROMさんが既に
自然選択説が反証可能であることを述べておられます。
>>12では、反証の方法(反証可能であること)が述べられたリンクが紹介されておりますが、
その内容については

>>93で紹介した創造論者イチャモンへの回答テンプレ集
Talk origins
Index to Creationist Claims
ttp://www.talkorigins.org/indexcc/list.html
において
CA211. Evolution can not be falsified.
ttp://www.talkorigins.org/indexcc/CA/CA211.html
CA211.1. Karl Popper said Darwinism is not testable.
ttp://www.talkorigins.org/indexcc/CA/CA211_1.html
の中にまとめられています。

和訳は
ttp://seesaawiki.jp/transact/d/CA211%20%bf%ca%b2%bd%cf%c0%a4%cf%c8%bf%be%da%c9%d4%b2%c4%c7%bd
ttp://seesaawiki.jp/transact/d/CA211%5f1%20Karl%20Popper%a4%cf%bf%ca%b2%bd%cf%c0%a4%cf%b8%a1%be%da%c9%d4%b2%c4%c7%bd%a4%c0%a4%c8%b8%c0%a4%c3%a4%bf

実際はこれらの多くは進化論全体(生物が進化してきたことを含めて)の反証を視野に入れたものですが
進化論全体の中の自然選択説(メカニズム)の反証としては
CA211のResponse1の
「iii.突然変異の累積を阻止するメカニズム」
がギリギリ該当するかと思います。

ちなみに
ポパーが「自然選択説は反証不能」→「やっぱり反証可能」と意見を変えたことは出て来ますが
実際にどうやって反証するのか、これらのまとめの中には出てきません
(「Natural Selection and the Emergence of Mind」を検索すれば読めますが)。

個人的には
「メカニズムとしての自然選択説の反証可能性」
「自然選択による進化の個別事例の反証可能性」
としてはこれではやや不十分に思います。
もっとがっちり述べることができますので、この機会に書いておきます。
(おそらく字数制限に引っかかるので数レスに亘っての説明となります)

109ミケ:2018/06/22(金) 14:13:42 ID:hmI6xcyU
>>108参照
「メカニズムとしての自然選択説の反証可能性」
「自然選択による進化の個別事例の反証可能性」についてのお話。

自然選択説の反証の方法の説明が一番手っ取り早いのは
前述のCA211の例「突然変異の累積を阻止するメカニズム」のように
「それが起こりえないこと」を示すこと、すなわち、
自然選択説に必須の構成要素・前提を否定することです。

まず自然選択による進化の構成要素を整理してみましょう。
自然選択による進化は
・生物の個体間である性質に差があり
・それら異なる性質がそれぞれ遺伝するものであり
・かつその性質の差が繁殖成功度に差をもたらし
・それによってより繁殖成功度の高い遺伝的性質が集団に広まりその生物集団全体の性質(の平均値)が移動することによって起こります。
・さらに突然変異によって新たな性質が供給され上記の過程を繰り返すことで、もっと大きな変化も生じることになるわけです。

これらを満たしたときに、自然選択による大規模な性質の変化が起こるわけで
逆に言えばこれらが否定されれば自然選択説は反証されるということです。
どれを否定するのでも構いません。
生物の個体間に差がないことを示せれば、そもそも自然選択による進化は起こらないと言えます。
これを証明できれば自然選択説は反証できます。
生物の個体間に差があっても、その差が遺伝に起因するものでなければ、自然選択による進化は起こらないと言えます。
これを証明できれば自然選択説は反証できます。
「突然変異の累積を阻止するメカニズムを発見できれば反証になる」というのはこの最後の部分の否定ですね。

「科学と疑似科学とを判別する」スレッドのレスNo.77において
「自然選択説が反証不能ではないか」と疑問を呈したKenさんご本人が
体色の変化が自然選択であることを反証する困難さの例として
【紫外線量に影響される人間の肌】を挙げておられますが
上記観点から考えると
この例は逆に自然選択説が反証可能であることを示す好事例なんですね。

(実際のヒトの肌の色は遺伝の影響も受けますが)
もし環境でしか変化しない性質であれば、
自然選択に必要な前提条件
・それら異なる性質が遺伝するものである
が満たされていないことになり、この性質について自然選択は起こりません。
その性質が自然選択によって変化したという言説は反証されるわけです。

※実際には、人間の肌の色は遺伝と環境の両方の影響を受けるので自然選択で変化しえますが、
環境の影響しか受けない性質の場合は自然選択にかかりません。>>92も参照。

110ミケ:2018/06/22(金) 14:15:10 ID:hmI6xcyU
>>108参照
「メカニズムとしての自然選択説の反証可能性」
「自然選択による進化の個別事例の反証可能性」についてのお話。

>>109の続きで
このような、自然選択の構成要素の否定による反証は工業暗化の例で実際に試みられています。

たとえば、(捕食者への保護色として有利であったという説明に対して)
「蛾の止まる場所から考えて、黒だろうが白だろうが効果がない」という反論がありました。
それを確かめるため、蛾の止まる位置や数種の鳥が黒と白のどちらを食べているか等詳細な実験を組まれ
結果として鳥の捕食圧が暗化個体の頻度変化の主要因であると結論付けられました。
この実験の結果如何では、工業暗化が鳥の捕食圧による自然選択の結果だという仮説は反証されていました。
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A5%E6%A5%AD%E6%9A%97%E5%8C%96#%E6%8D%95%E9%A3%9F%E5%AE%9F%E9%A8%93

「工業暗化は、保護色による自然選択の結果である」は、上記のように反証可能であり、
間違いであれば反証できるデザインで実験が組まれ、結果として反証できずに、支持される結果となりました。

工業暗化についてもう少し語りましょう。
黒いことが保護色以外の別の点で有利なのかもしれません。
たとえば黒い色は温度を吸収するのに有利です。
あるいは、別の点で有利だったものが遺伝子の多面発現としてたまたま黒い色を発色する場合も考えられます。
このような場合、自然選択によって黒くはなりますが、上記のデザインでは反証できません。

では、「自然選択によって黒くなった」自体を反証することはできないのでしょうか?
いいえ、やはり同じように自然選択の前提の成立条件を疑った実験があります。
たとえば、蛾の黒化は、煤煙に含まれる化学物質によるものではないか、という反論がありました。
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A5%E6%A5%AD%E6%9A%97%E5%8C%96#%E5%8C%96%E5%AD%A6%E7%9A%84%E8%AA%98%E7%99%BA%E8%AA%AC
もし繁殖成功度の違いよりも
煤煙に含まれる化学物質によって引き起こされた程度のほうが重要であったとしたら
自然選択によって黒化したとは言えません。

もっと極端にいえば、
上で述べた日焼けの例のように
黒くなるか白くなるかが遺伝的ではなく後天的に決まることを示すことができたなれば
「どのような利点かはともかく、自然選択によって黒くなった」ということ自体も反証できるわけです。

以上が、方法の説明が手っ取り早い「自然選択説に必須な構成要素を崩す」ことによる反証です。

111ミケ:2018/06/22(金) 14:22:07 ID:hmI6xcyU
>>108参照
「メカニズムとしての自然選択説の反証可能性」
「自然選択による進化の個別事例の反証可能性」についてのお話。

次は、方法はややこしいですが
自然選択説が反証可能であることが一目で分かる事例を挙げましょう。

「分子進化の中立説」
勉強していて、勘の良い人であれば、この一言だけで十分でしょう。
この中立説そのものと、その周辺の研究成果が、
自然選択説が反証可能であり実際部分的に反証されてしまっていることを示しています。

しかしこれだけではこのスレッドの趣旨に添いませんので解説します。
Wikipediaより「中立進化説」
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E7%AB%8B%E9%80%B2%E5%8C%96%E8%AA%AC

分子進化の中立説は
「分子レベルの進化は自然選択に対し有利でも不利でもない中立なもので、それが集団中に広まるのは偶然によって決まる。」
というもの。
分子レベルの変異は、偶然によって集団に広まる:遺伝的浮動による進化であるというもの。
Wikipediaより「遺伝的浮動」
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E7%9A%84%E6%B5%AE%E5%8B%95

中立説は、発表当時ダーウィンの自然選択説を否定するもののように受け取られて論争を引き起こし、
結果として
「分子レベルの進化は遺伝的浮動が主因(中立説)である一方、表現型レベルの進化は自然選択説があてはあまる」
「自然選択による進化が起こることを否定するものではない」
というところに落ち着きますが、
これはとどのつまり、
「分子レベルの進化も自然選択によるものである」という仮説が反証され敗れ去ったことを意味します。

自然選択説そのものが反証不能な理論であれば、
中立説がいかに分子データを集めてきたところで
「分子進化も自然選択によるものである」と強弁できるはずです。
反証不能であるとはそういうことです。だからこそ反証不能な理論は科学的には価値がないのです。
ところが実際には、
分子レベルの進化のメカニズムにおいては中立説(遺伝的浮動)に譲ることになったわけですから
この点だけでも自然選択説が反証可能な論理構造であることが分かります。

さて、といっても具体的にどのように反証されたのか?
その方法論はやや複雑です。
ちょうど今、
第一掲示板でハーディ・ワインベルグの法則がどうのこうのという話が出ていますが、
メンデルの法則の再発見ののち、
その遺伝法則に基づいて集団の中の遺伝子が世代を経てどのようにふるまうか、
この記述に数学が大きな役割を果たしまして(H・W法則はその先駆けと言ってよいでしょう)、
木村資生の頃には自然選択とメンデル遺伝を織り込んだかなり高度な数学モデルが登場していました。
そして木村の時代には分子(アミノ酸)配列のデータもそろい始めたところであり、
大体の分岐年代の分かっている生物同士の配列の違いを比較することで、
配列の変化速度が推定できるようになってきたところでした。
そうして集めた変化速度のデータを前述のモデルに当てはめると
自然選択がかかって「いない」と仮定しないとデータに合わなかったわけですね。

そうしたデータを積み重ねて、
最終的には中立説、
形態はともかく分子レベルの進化のほとんどにおいては自然選択ではなく遺伝的浮動が大きな役割を担っている
という主張が認められるに至り、
分子進化までも自然選択による変化であるという仮説は反証されたことになるわけです

112ミケ:2018/06/22(金) 14:32:21 ID:hmI6xcyU
>>108参照
「メカニズムとしての自然選択説の反証可能性」
「自然選択による進化の個別事例の反証可能性」についてのお話。

>>111の続きです。
中立説が成立するまでの過程で発展した数学的モデルと、
現在では当時よりもさらに進んだ分子生物学的知見をあわせて
さらに自然選択説を反証したり検証したりする手法も出てきています。

たとえば同義置換(アミノ酸の変化を起こさない=中立だと確定している塩基置換)や
偽遺伝子(何らかの要因で今では遺伝子として発現しなくなった=どう変化しても中立な遺伝子)がある
ということが明らかになっていますので、いわば比較対照として用いることができるようになり
それと前述の数学的モデルを合わせ
実際に自然選択による進化だと示された事例や、
逆に自然選択であることが否定された事例もあります。
以前第一掲示板で似たようなことが話題になりました。
ttps://6609.teacup.com/natrom/bbs/17681

字数が余ったので…、ついでなのですが
「科学と疑似科学とを判別する」スレッドのレスNo.77において
「ダーウィニズム(自然選択説)は反証不能ではないか」と発言したKenさんは
数年前に自然選択説に対抗するID論を述べておられました。
同スレッドNo.28参照
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/5329/1524257541/28

当時、自然選択であり得ないような変化速度であれば
つまり自然選択の反証ができれば、(品種改良のような)IDの証拠になるのではないか
とか何とか述べておられましたが、
上記で述べたさまざまな数学モデルや
さまざまな自然選択の反証・検証法に照らせば、IDの証拠にはなりません。

まずそもそもとして、
「自然選択を否定するだけではIDの肯定にならない」という当たり前の指摘は当時もありまして
それに対して当のKenさんは何やら反論を述べていたような気がしますが、
上記のように自然選択を部分的に否定してさらに数式モデルを示して自説の正しさを示した中立説の前では
その言い訳もむなしく響くのみでありましょう。
自然選択を否定するだけでは、IDを選ぶ理由になりません。
自己組織化かもしれないし、遺伝的浮動かもしれないし、未知の宇宙線の作用かもしれません。

また、数学モデルに関連して…
たしかshinok30さんが既に指摘しておられたかと思いますが
正の自然選択がかかったときの自然選択での変化ってものすごく早いんですね。
ものすごく速い進化があったところで、
強い自然選択圧がかかったのだなという解釈こそすれども、自然選択であり得ないということにはなりません。

またブタを例として「生き残り得ないものが見つかったとしたら〜」
という話題も出しておられましたが、
生きているのが不思議なくらいの変な生物なんてものはいくらでもあり
またそんな変な生物の生存を許すような特異な環境も数えきれないほどあるため
一つの生き物をもってきて「〜はあり得ない」などとは到底言えるものではありません。
解説はしませんが示唆的な例を検索ワードとして置いておきます。【マルハナバチ レイノルズ数】で検索してください。

またそもそもの話として…、当時指摘していた方はいなかったかもしれませんが、
品種改良は、人為選択などと呼ばれますが、
原則として良い個性を持つ掛け合わせ、良い性質を受け継いだら次世代に残す、
これ要するに自然選択と同じ工程なんですね。
つまり、きわめて強い自然選択がかかったときと結果は同じなんですよね。
(ベーエの述べた還元不能な複雑さが、もし自然選択でない証拠となるのなら、人為選択もまたそれを達成できない)
そうすると還元不能な複雑さをデザインするには、遺伝子操作するようなラボが必要となるでしょう。
そのようなものがあれば痕跡があるはずですよね。

いずれにせよ
人為的な品種改良を行ったという結論を導きたいのならば、
どのような品種改良を行ったのか
掛け合わせなのか、放射線で突然変異を誘発したのか、遺伝子組み換えをしたのか等をきっちり想定し、
自然選択の構成要素を反証するように
人為選択IDが成立するための構成要素を明らかにせねばなりません。
それができないのが「反証不能」というやつです。

自然選択がその構成要件を否定することで反証できるように、
ID論も、構成要素や成立条件を否定すればID論が成り立たなくなるような、反証可能性
いうなれば、詳しい具体的な説明があるでしょうか。

113ミケ:2018/06/26(火) 02:03:01 ID:hmI6xcyU
一応の補足として……、
>>111-112で述べた中立説が肯定された例は
ID論の場合と異なり
自然選択を否定することで遺伝的浮動が正しいとしているわけではないことを付け加えておきます。

>>111で述べているように

メンデルの法則の再発見ののち、
その遺伝法則に基づいて集団の中の遺伝子が世代を経てどのようにふるまうか、
この記述に数学が大きな役割を果たしまして(H・W法則はその先駆けと言ってよいでしょう)、
木村資生の頃には自然選択とメンデル遺伝を織り込んだかなり高度な数学モデルが登場していると述べましたが
(集団遺伝学の発展のことです)
このモデルの中には、遺伝的浮動と自然選択の両方が織り込まれています。

そのうえでデータと比較して
遺伝的浮動のみのもののモデルのほうが実際のデータに合いそうだ
と、こうなるわけであって
単に自然選択を否定することで遺伝的浮動が正しいとなっているわけではありません。
遺伝的浮動が正しい場合の数学モデルが先にあるのです。

114diamonds8888x:2018/06/27(水) 05:21:54 ID:XYloaAbM
>>113
 淘汰係数というパラメータを使いますから、これが0だとわかれば(着目するひとつの具体的進化過程が)自然選択によるという仮説が反証される。でも進化は起きているので、自然選択以外の原因がある。それが何かは、淘汰係数=0という観察事実だけからはわからない。でも他の状況証拠から、遺伝的浮動が有力な仮説である。

 こんな感じでしょうか? 反証といっても完全否定というよりは連続的数値がゼロに近いということで、自然淘汰の要因は極めて少ない、ということになるのでしょうが。

115diamonds8888x:2018/06/28(木) 05:57:54 ID:XYloaAbM
>>114
>完全否定というよりは連続的数値がゼロに近いということで

 そういえば、「ほぼ中立説」というのがありました。

  太田朋子『分子進化のほぼ中立説―偶然と淘汰の進化モデル(ブルーバックス)』(2009/05/21)

116ミケ:2018/06/30(土) 09:49:29 ID:hmI6xcyU
>>114
返事遅れてすみません。

×
自然選択のモデルに照らして
自然選択の要素をゼロとしないと合わないので
しかし変化しているから自然選択以外の何らかの力が働いている


自然選択+遺伝的浮動のモデルに照らして
自然選択の要素をゼロとしないと合わないので
その変化は遺伝的浮動によるものである

ということです。


>反証といっても完全否定というよりは〜

これは実のところ、他の科学理論の“反証”も同様かと思います。
地動説にしてもプレートテクトニクスにしても
理論丸ごと完全否定できる科学理論のほうが少ないように思います。
このあたりはより高度な科学哲学の範疇で、
私の守備範囲でないのでちょっと自信ありませんが。

117diamonds8888x:2018/07/07(土) 09:32:09 ID:P3QJtzNA
>>116
>理論丸ごと完全否定できる科学理論のほうが少ないように思います。

 そもそも理論に一致する膨大な観測事実が積み上がっているはずなので、それを説明できる新たな理論が確立できないことには従来の理論を簡単に放棄することはできませんよね。新理論というものは旧理論が説明できていた膨大な観測事実をも説明できなければならないのです。地動説や相対性理論が良い例ですね。

118たこ焼き帝国:2018/11/01(木) 11:43:54 ID:W5O20kzQ
ノーベル賞を授かった本庶氏は「ネーチャー」「サイエンス」に載っている論文の9割は嘘で、10年後に残っているのは1割程度だと仰っていました。

119ミケ:2018/12/08(土) 13:38:08 ID:KK8Tfcvg
>>118
それは本庶氏の【研究者としての心構え】です。
それを素人さんが事実であるかのようにそのまま信じ込むのはマズいと思いますよ。

本庶氏はインタビューで研究に対するモットーを問われ、
「マスコミの人はネイチャーに載ったからどうこうなどと言うが、自分は自分の目で確信が出るまでやる」
という文脈の中でそう言ってるわけです。

それを一部分だけ取り出して
「本庶氏が言ってるからネイチャーに載ってるのは9割嘘なんだ」などと信じ込むのは
本庶氏の批判しているマスコミの人たち、、、
「ネイチャーに載ってるから正しいんだ」と信じ込む人たちと同じ間違いを犯しています。

本庶氏の主張の核は、

科学研究に携わる者は
【科学的には、どんな理論もひっくり返り得るのだから
権威ある論文に書いてあるからと言って信じ込んではいけない。
場合によっては自分で確かめなければ。】
それを実践するにあたっての心構えとして
ネイチャーに載っているのは9割嘘だと考えておくということです。

もちろん本庶氏自身、実際そう(9割嘘)だと信じているかもしれませんが、
それは本人が実際に確かめる気概を持っているからこそバランスが取れる見方なのです。

自分で研究も実験もせず、ましてや論文の中身を読みさえしない人が、
単に本庶氏(ノーベル賞受賞者等)が9割間違ってると言ってるからという理由だけで
論文に書かれた内容を嘘だなどと断じたところでそれこそ9割がた間違っていることでしょう。

さて、ところで
たとえば10年前、2008年12月のネイチャーにArticleとして載ったものとして
以下のものがありますが、これらは本当に1割しか残っていないでしょうか?9割は嘘だと判明したでしょうか?

たこ焼き帝国さんに限らず、
このレスを読んでいるあなたはそれを自分の目ならずとも、
文献を追ってどれがいまだ正しくてどれが間違いになったか
それともほとんどが正しいとされているままなのか
確かめる気概があるでしょうか?
ぶっちゃけ私はありませんw

腫瘍:単一のヒトメラノーマ細胞による効率のよい腫瘍形成
Efficient tumour formation by single human melanoma cells

細胞:加齢に伴う中心体の方向性のずれが幹細胞分裂を抑制する
Centrosome misorientation reduces stem cell division during ageing

細胞:mitofusin 2が小胞体をミトコンドリアに結びつける
Mitofusin 2 tethers endoplasmic reticulum to mitochondria

細胞:Ktu/PF13は細胞質での軸糸ダイニン前駆体形成に必須なタンパク質である
Ktu/PF13 is required for cytoplasmic pre-assembly of axonemal dyneins


神経:脳の代謝がアストロサイトによる細動脈調節の方向性を指示する
Brain metabolism dictates the polarity of astrocyte control over arterioles

免疫:ランブル鞭毛虫の抗原変異はRNA干渉によって制御されている
Antigenic variation in Giardia lamblia is regulated by RNA interference

細胞:酵母のシグナル伝達系における情報伝達を改善する負のフィードバック
Negative feedback that improves information transmission in yeast signalling

遺伝:レプリソームはRNAポリメラーゼと衝突後、mRNAをプライマーとして用いる
The replisome uses mRNA as a primer after colliding with RNA polymerase

物性:座屈したコロイド単層における幾何学的フラストレーション
Geometric frustration in buckled colloidal monolayers p.898

神経:神経のパルミトイル化されたタンパク質のプロテオミクス解析から明らかになったシナプスの動的なパルミトイル化
Neural palmitoyl-proteomics reveals dynamic synaptic palmitoylation p.904

遺伝:スプライソソームの切断によってテロメラーゼRNAの3′末端が形成される
Spliceosomal cleavage generates the 3′ end of telomerase RNA p.910

細胞:SUMO化はRad18の仲介する鋳型切り替えを調節する
SUMOylation regulates Rad18-mediated template switch


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