レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。
( ^ω^)ヴィップワースのようです
-
タイトル変更しました(過去ログ元:( ^ω^)達は冒険者のようです)
http://jbbs.livedoor.jp/sports/37256/storage/1297974150.html
無駄に壮大っぽくてよく分からない内に消えていきそうな作品だよ!
最新話の投下の目処は立ったけど、0話(2)〜(5)手直しがまだまだ。
すいこー的ななにがしかが終わり次第順次投下しやす
-
('A`)「………」
川;゚ -゚)「………くっ!」
そうしてゆらりと立ち上がると、金縛られたようにしてその場で立ち竦んでいたクーへと、振り返った。
どこまでも暗いその瞳を見返しながら、どうにか己を奮い立たせると、小剣を男の前に構える。
('A`)「あぁ……冒険者か、お前さん」
川;゚ -゚)「───それが、どうした……ッ!」
カラカラに乾いていた口から掠れるようにしながらも、どうにか声を捻り出す事が出来た。
それに「ふーん」とさほど興味もなさそうな態度のまま、男はちらちらとクーの身体のあちこちを
一通り眺めると、突然そっぽを向いて、手のひらを振り払った。
('A`)「行けよ」
川;゚ -゚)「?」
('A`)「ここから消えなって、言ってんだ」
川;゚ -゚)「………」
-
面と向かって相対するだけでも、底知れぬ闇の淵へと引き込まれそうになる。
そんな光のない男の瞳は「お前に興味は無い」とでも言いたげに、クーではなく、ただ虚空を眺めていた。
('A`)「女を殺す趣味はないんでね」
川;゚ -゚)「……お前は、一体……」
('A`)「……早くしねぇと、俺の気が変わるかも知んねぇ」
一歩後ずさると、剣を盾にしながら決して男に隙を見せないように、ゆっくりとその周囲から距離を取る。
まるで彼の眼中に無いクーは、その場から駆け出す間際、一度だけ男の方へと振り返ってみた。
最後に目にしたのは、夜空の星々を眺めるようにしながら天を仰ぐ、男の姿だ。
川 ゚ -゚)「………」
そこらに転がる無残な亡骸を極力視界に留めないように気を使いながら、離れ離れになった
ギコの後を追うために、彼が消えていった方角へと、クーは夜道を走り去っていった。
───────────────
──────────
─────
-
ドクオは、一人呟く。
('A`)「ま……これからが大変だわな」
当然の話だ、組織から足抜けしようとするだけでも刺客に命を狙われる、厳しい暗殺者ギルドの掟───
その禁を破るどころか、その組織全体を敵に回してまで、自分は過去を清算しようとしているのだから。
('A`)「………」
自分が今まで犯してきた事は、決して拭いきれるような罪では無い。
子供を攫い、祖夫婦の亡骸だけが残された家には、隠滅の為に火を放った。
一人街を出歩いては、孤児達に施しをして回っていた身分の高い僧服の男は、政治的戦略の為に殺した。
せめて今自分の中に宿っている命が生まれるまでは、と涙を浮かべて我が子の命を案じる若い母親も、殺した。
そうして気づけば、表情にも、声にも。感情を表に出す事は、ほとんどなくなっていた。
幼かった泣き虫が、組織随一の腕とまで囁かれるようになるまでには、人間らしい感情は失うべきだったのだ。
そうでなければ、たとえ10回分の自分の人生を懸けてもあがない切れない程に膨大な、
その罪の意識に耐え切れずに─────きっと壊れてしまっていたから。
('A`)(それでも、殺す事にゃ変わりないが)
-
ある時、自分と同じようにどぶの沼に浸かった事のあるような、そんな目つきの男が居た。
だがそいつは自分などとは違い、その瞳に、確かに強烈な輝きをたたえていたのだ。
最低最悪の思いをさせられ、手を血で染めてきた過去に対して踏ん切りをつける事など、出来ない。
過去を省みることすらが罪なのだと────そう思っていた自分に、そいつは簡単に言ってのける。
「ツイてなかった、そう思うしかない」
そんな言葉で割り切れる程、安いものではない。
しかし、それはもしかしたら───自らが犯した”罪”という過去から目を背け続けて来た自分が、
これからも過去から逃げ続ける為の、単なる言い訳に過ぎないのだと、ようやく気付いた。
諦めていたのだ。
自分や、周囲を取り巻く環境全てに。
考える事すら放棄していた。
何かしらの想いを抱いて、自分が傷つく事を恐れて。
当然、地獄に落ちる人間なのだという事は解っている───けれども、たった一つ。
多くの人の命を奪ってきたその自分にも、たった一つだけ償いたい過去があった。
──────その為にやるべき事が、見つかったのだ。
-
夜空に輝く星の一つに向かって、ドクオが一人呟く。
そこにいない筈の、誰かの姿を投影するようにして。
('A`)「そっちに行くのも───そう遠くないかもな」
それを償うべきにやる事は、自分をこれまで優秀な人殺しへと育て上げた、暗殺者ギルド。
かの現・頭目”エクスト=プラズマン”を殺す事によってのみ、果たされる。
数多の罪の中の一つ、その贖罪だけが―――──今後の自分の全てを賭した、望みだった。
('A`)「なぁ………”でぃ”よ?」
星空は、ドクオの問いかけに応えない。
ただ、羨むように見上げる彼の頭上で、星たちが確かな輝きを放つだけだった。
冷たく閉ざされた氷壁のような彼の胸の内に、とくん、と鼓動が高鳴る。
氷を溶かすほどの”熱”が───今、生まれつつあった。
-
( ^ω^)ヴィップワースのようです
第3話
「日陰者の下克上」
─了─
-
クソッ! 元ネタ知らないのにこのwktk感はなんだ
続きに期待
-
ドクオカッケーーーーー
-
乙
ドクオカッコいい
-
乙
-
乙
-
今まで読んでなかったのが悔やまれる
こんな面白い作品があったとは
乙
-
乙ー
ギコ大丈夫かしら
-
最近のRPG系ファンタジーの中でもトップを競うね
wktkが止まらない作品というのは、本当に生きる活力を与えてくれるよ
-
>>525-532
お褒めのレスの数々にイッた。
続きを早いとこ書きたいですが、おしごとのしりょうづくりをしなくちゃで…
次回はなるべく冒険話にしますわ。
-
続きが気になっちまうぜ
-
あげ
-
乙
登場人物全員が魅力的だな
-
おもしろい作品はいっぱいある
でもこれは数少ない「好き」になった作品
-
嬉しい事言ってくれるぜ!久々暇な休みに入ったので、今日は書き溜めるぜー。
投下できるかはさて置き……書きたい話が溜まってるのに時間が足りない。
-
創作版引っ越しの話があるけど、作者はどうするのかな
個人的には移動して欲しいけど
-
あげ
-
あげ
-
あ
-
>>539
もうちょい様子見しますわ。
その間書き溜めして、状況見てお引越しなり残留なり決めます。
-
あげ
-
───【交易都市ヴィップ 騎士団兵舎】───
ショボンへの尋問が始まってから、およそ三日の月日が流れ、今は早朝だ。
これまでの間一貫して、御堂聖騎士団の使者より報告された事実を否定し続けるショボン。
その彼の話の一つ一つを受け答えながら、直々に尋問に当たっているフィレンクトは、
少しの疲れも見せず、彼の一挙手一投足を見張る眼光も揺らぐ事はなかった。
そして───尋問開始の三日目にして、三度顔を会わせた相手に対し、ショボンは開口一番にして言った。
(´・ω・`)「もう、私にはこれ以上お話すべき事がありません」
(‘_L’)「………」
それきり口をつぐみ押し黙ったショボン、どう切り出したものかと、フィレンクトは顎を撫でる。
(‘_L’)「それは………”自分は死霊術に手を染めた事実など無い”そういう意味でですね?」
(´・ω・`)「勿論です」
御堂聖騎士団からの使者によれば、彼は聖ラウンジの信仰を真っ向から否定する対極のような存在。
人の生死を弄ぶ術を用いる、悪党だという事を知らされたのだ。
-
罪状にあったのは、人の命や身体を媒介とする禁術”死霊術”研究についての嫌疑。
だが、ショボン=ストレートバーボンという男の罪状は、果たして真実なのか。
フィレンクトは自分でそれを確かめる為に、この三日間をずっとショボンへの尋問に注いだ。
どこまでも真っ直ぐで力強いフィレンクトの瞳は、嘘を吐く者をたちどころにたじろがせる。
だがその彼をして、三日目の尋問にしても一見すると力の篭らないその瞳が、不安や怯えに揺らぐ事はなかったのだ。
(‘_L’)「もし、貴方の言う事が、真実であるとするならば」
(´・ω・`)「えぇ、私を計略に貶めた張本人こそ────」
信憑性はある。
あのアルト=デ=レイン司教の息女ツンが助けられたという事実からして、
フィレンクト自身も、彼が嘘を吐くような人間とは思えなかったのだ。
とはいえ───これは彼ら円卓騎士団の一存だけでは決めかねる問題だ。
御堂聖騎士団や、魔術師ギルドの上層部。ひいては、多大な発言力を持つと言われる
魔術師ギルドの最高権威者であるアークメイジ・アラマキ=スカルティノフの手前もある。
たとえフィレンクトがショボンの言葉を信じるとしても、これから彼には異端審問を
協議する場へと、連れ立ってもらわなければならないのだ。
-
顎を触りながら、これまで幾度も聞いてきたショボンの次の言葉を待っていた時だった。
突然、騒々しく駆け出してきた一人の騎士により、二人が座る部屋の扉が開け放たれる。
(‘_L’)「何です、尋問中に騒々しい」
「いえ……申し訳ありません───ですが、火急なのです」
(‘_L’)「ならば、今この場で聞きましょう」
言って、席を立ち歩み寄ったフィレンクトが、伝令の騎士へと耳打ちを促した。
「つい先ほど、アークメイジ直筆による書簡が届けられ………そこに書かれていたのは───」
(‘_L’)「………ふむ」
───────────────
──────────
─────
-
( ^ω^)ヴィップワースのようです
第4話
「正しき怒りと、切なる慈悲と」
(前編)
-
───【交易都市ヴィップ 騎士団兵舎地下】───
時折騎士の一人が牢の前まで来ては、そのだらけた二人の様子に鼻を鳴らして去ってゆく。
格子に覆われた冷たい石の床の上で、二人は思い思いの過ごし方をしているようだ。
爪'ー`)「煙草……吸いてぇな」
( ´ω`)「……こっちまで煙いのは御免だお」
爪'ー`)「ったく。言いだしっぺのお前のせいで、俺までこんな目に遭ってるってのに」
( ´ω`)「意気揚々とばればれのへぼい作戦を提案したのは誰だったかお……」
腹減りで体力を出来るだけ消耗せぬようにと寝転がっているブーンの背中に向けて、
目じりをきっと吊り上げて、フォックスが食って掛かった。
爪#'ー`)「あん!?言ったな、言いやがったな?そもそもお前が面倒な事に首突っ込まなきゃ、
遅かれ早かれこいつら騎士団がなんとかしてくれてたのに、お前ときたら───」
(; °ω°)「おぅふッ……びっくりしたお!自分だって面倒な事になると解っててブーンの話に
乗っかってきたのに、まさか後から愚痴られるとは思わなかったお!こんなことなら───」
-
と、そこへ騒ぎを聞きつけた見張りがすぐに駆け寄ってくると、格子の向こうの二人を一喝する。
「静かにせんか貴様ら!もうすぐ出られるというのに、懲罰を増やされたいか!」
爪;'ー`)「………」
(; °ω°)「………」
「いや………(ですお)」
ショボンと時を同じくして、この三日間を牢に入られていた二人の冒険者。
異端者狩りに定評のある旧ラウンジ聖教が誇る【御堂聖騎士団】は、魔術師ギルドの人間から要請されて
本拠を置く西部地方"エルシャダイ"の街から、このヴィップへと訪れて任を全うするはずだった。
─────が、その彼らを妨害したとして、ブーン=フリオニール、グレイ=フォックス両名は
間に割り込んだ円卓騎士団の尋問の結果、これまでを兵舎の地下牢にて拘束される事となったのだ。
三日の刑期をあてがわれ、二人はこの騎士団兵舎にある地下牢にて、力なく寝そべっていた。
見回りの一人が怒声を浴びせて去っていったのと入れ替わりに、靴音がこちらへと近づいてくる。
その音は、やがて自分達の前で止まった。
不毛な言い争いにくたびれた二人は、緩慢な動作で声の方へ顔を持ち上げる。
-
(‘_L’)「その様子だと、自らの行いを十分反省できたようですね」
身を起こして見上げた先には、良く見知った二人の顔。
ξ゚ー゚)ξ「久しぶりね」
ブーンらを巻き込む騒動の火種となった一人─────ツンの姿もそこにはあった。
( ^ω^)「フィレンクトさん……ツンも!」
爪'ー`)「おっ……もしかして俺達、やっと釈放されるのか?」
(‘_L’)「そういう事に、なりますか」
柔和な一面を持ち合わせている筈の彼だが、厳格な表情を崩す事なく言った。
腰元に束ねた鍵の一つを取り出し、手馴れた動作でブーン達が囚われた牢を開錠する。
ξ゚ー゚)ξ「良かったよかっ───」
(;^ω^)「やっと出られるおね!この三日間、飢えに飢えて大変だったお……」
ξ゚⊿゚)ξ「あの、この間は───」
爪'ー`)「ま、出所祝いを兼ねて、親父ん所でまずはメシだな。さ、早く行こうぜ!」
ξ#゚⊿゚)ξ「………」
-
すぐにでも娑婆の空気を吸いたいのだろう。
二人がツンの言葉を遮りながら、自由の身になった喜びを分かち合い始める中、
膨れ面をしていたツンの様子を気遣って、フィレンクトが一言物申した。
(‘_L’)「貴方達が今回釈放されるのは、ツン様に免じての事です。
私自身、まだ貴方達二人を許したつもりはありませんよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうよ、私だって責任を感じて、フィレンクト様を通して上の人に結構口添えしたんだから」
再会については何も触れられなかった事に多少気分を害したツンが、
フィレンクトとの言葉に同調するように「そうだそうだ」、と言わんばかりの表情で頷く。
( ^ω^)「……はぁ」
爪'ー`)「あー、もうちょいさ、俺らへの感謝ってのもな……」
ξ゚⊿゚)ξ「別にこっちは、助けてなんて頼んだ覚えはなくてよ?」
爪#'ー`)「なっ……この────」
(‘_L’)「………」
きつい様子のツンに食って掛かろうとしたフォックスだが、すぐ隣にいたフィレンクトが同時に
歩み出たのを確認すると、くるりと踵を返した。視線を適当な場所に散らし、口笛を吹いて誤魔化す。
-
フィレンクトの背後からべろを出して挑発するツンに対し、フォックスは拳を打ち振るわすしかなかった。
ξ>⊿<)ξ(イーッ、だ!)
爪#'ー`)(堪えろ、オレ……さもなくば、この脳筋野郎に張っ倒される……!)
(‘_L’)「ツン様も、人事ではないのですから」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、あっ……はい」
振り返り、子供じみた表情を形作っていたツンにも一言注意がなされた。
冷ややかなそのフィレンクトの声に、ツンは慌てて平静を取り戻す。
(‘_L’)「今朝方から、妙に街の外と中とで騒がしい事になって来ているのです」
( ^ω^)「おっ、何か事件でもあったのかお?」
(‘_L’)「ええ。人手が足りなく、とても困窮している現状ですよ───貴方達のような
無駄飯喰らい二人を、兵舎の牢に匿ってやれる余裕も無い程にね」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
( ^ω^)「ほほう……それは大変ですおね」
爪'ー`)(………嫌味言われてるんだよ、バカ)
-
ξ゚⊿゚)ξ「あの……」
(‘_L’)「どうされました?」
ブーン達を送り出して、速やかにこの場を去りたいという雰囲気を醸し出していたフィレンクトに、
ツンがおずおずと歩み寄り、言葉を選んでいる様子だった。
ξ゚⊿゚)ξ「ショボン……さんは、どうなったんでしょう?」
(‘_L’)「………彼への処遇は、ツン様。たとえ貴女と言えど、今は知るべき所ではありません」
ξ゚⊿゚)ξ「私は………どうしたら───」
「自分はこれからどうすればいいのか」
旅の途中で深く関わってしまったショボンの、今を取り巻く境遇。
それを考えるとすぐにまた旅立つ訳にもいかず、彼女なりに色々な事を考えては、
それががんじがらめの楔となって、考えも纏まらないままヴィップでの足止めを余儀なくされている。
”せめて自分を助けてくれたショボンの今後を見届けるまでは”
そう考えては、悶々とあれからの三日間を過ごしてきた彼女の心境としては、
誰かに道しるべとなってもらいたい、という意識からの一言だったのだろうか。
だが、旅というものは過酷で、ましてや自分の進むべき道の答えなど、自分自身で選択するものだ。
他人に答えを委ねる事など、今後の自分にとって何の足しにもならないのだ。
-
(‘_L’)「先日も申し上げましたが……貴女が居なくなった事で、ラウンジでは大騒ぎだそうです」
ξ;゚⊿゚)ξ「あの、それは」
(‘_L’)「街の外の人々にまで目を向けられて、誰かを救いたいと願って旅をされるのは、御立派です」
(‘_L’)「ですが……貴女はいずれ司教として、聖ラウンジの象徴となって行くべきお方────
ツン様に万が一の事があっては、我々全体としても貴女の父君に顔向けする事が出来ません」
ξ;゚⊿゚)ξ「私は……」
それきり俯いて、何も言えなくなってしまった。
家出同然に飛び出してきた聖教都市では、やはりツンが居なくなった事で大変な騒ぎになっていたようだ。
誰かの心配など考えず、ただ自分の我侭を振りかざしながらやがてたどり着いたこのヴィップで、
己の浅はかさを、容赦なしに事実として目の前に突きつけられる。
司教であった父が居ない今、これからツンには沢山の人の上に立って、指導者として
聖ラウンジを正しい方向へと導いていくべき責務が課せられているのだ。
ただ、それは自分さえいなければ、いずれ誰かしらの代わりが立つだろうと考えていた。
( ^ω^)「あの、ツ────」
爪'ー`)(………ブーン、行くぞ)
-
少しばかり込み入った話になりつつある空気は、互いの身の上話などしてられる雰囲気ではなさそうだった。
話しかけようとしたブーンの機先を制して、退出を促すフォックスの手がブーンの肩に置かれる。
ξ゚⊿゚)ξ「あ────」
( ^ω^)「ブーン達の事………掛け合ってくれて、ありがとだお」
───去り際にブーンがいい残すと、二人の冒険者は地下牢の一室を後にした。
───────────────
──────────
─────
取り残されたツンの胸中を、途端に惨めな気持ちが影のように覆い隠してしまう。
助け舟を出してくれそうな人間は、もういなくなってしまった。
フィレンクトが、自分の想像通りの言葉を突きつけて来るだろうという事に恐れた。
さらにその先のことを考えると、気持ちも陰鬱になってしまう。
-
(‘_L’)「ツン様……このヴィップのみならず、俗世間の多くが常日頃、諸問題を孕んでいます。
それこそ我々の預かり知らぬ所で、略奪や、人殺しなど、数知れない程に」
ξ゚⊿゚)ξ「………はい」
(‘_L’)「一人で旅をなさるなど、か弱い貴女にとっていかに無謀な行為か、理解して下さい」
ξ ⊿ )ξ「………は………い」
(‘_L’)「────明後日」
来た、と思った。
フィレンクトの立場からしても、またツンの立場からしても当然の正論ではあるが。
(‘_L’)「明後日、それまで待っていただければ、我々が聖教都市までツン様を護衛します」
(‘_L’)「………その馬車に乗り、ツン様。貴女は───ラウンジにお帰りになるのです」
ξ ⊿ )ξ「………」
その言葉に、「はい」とは返さなかった。
とても厳しく、それでいて慈愛に満ちたフィレンクトの瞳が、ただツンを見つめる。
返事をする事が出来ないツンと、その彼女の口から紡ぎ出される返答を言葉を待ち続けるフィレンクト。
この場において二人を取り巻いていたものは、ただただ沈黙ばかりだった。
-
───【同じく交易都市ヴィップ 某所】───
(´・ω・`)(暗い……な)
後ろ手に両方の手を錠で繋ぎ止められ、自由は完全に奪われている。
この状況にあっては逃げ出そうと考える気も起こらないが、大した念の入れようだ、と感心する。
議会の会場そのものが、真っ暗な一室となっている。
広さはそれなりにありそうだが、気配からしても、聴衆は誰一人としていないだろう。
自分の付近には両脇に明かりが灯され、辛うじて闇の中に顔が浮かび上がる程度の光量。
異端の評定を下す議員らの素性や面が割れぬようにとの配慮が、この現状なのだろうと悟る。
「前に出ろ」
そう言って、ショボンの背中を押して灯火の下へと突き出した案内役は、数歩下がった。
言われるがままにその場で立ち尽くしていると、様々な方向から話し声が飛び交ってきていた。
(彼か……確証はあるんだね?)
「名乗りなさい」
(´・ω・`)「………”ショボン=アーリータイムズ”。以後、お見知りおきを」
(随分と不遜な態度だな?)
(名を偽っているのか……?)
(いや、それは違う。彼が名乗ったのは魔術名の方じゃろう)
-
ひそひそと囁きあうような、評議員同士の話し声が飛び交う。
物見櫓の高みから、見下したように意見されたりするのは好きではない。ましてや、顔も見せない相手は。
こうして臆病な連中が、偏見的でない評定を下せるなどとは到底思えない為、あえて傲岸不遜を気取る。
どこに真実があろうとも、一人歩きする”罪”しか見ていない連中に媚びへつらうのだけは、我慢がならないのだ。
「今この場では……ショボン=ストレートバーボン。それで、でよいか?」
もう捨てた名を、どこかに座る評議員の一人が言った。
(´・ω・`)「はい」
「おぬしの罪状はな………”禁術使役”、さらに細かく言えば”死霊術使役”だ」
「死霊術において主として扱う媒介は、人の肉体や、血肉に至るまで様々な物があるらしいな」
「───私は余罪は重いと見ている。真実が明るみになれば、ボロボロと剥がれ落ちてくるさ」
聞こえる話し声に混じって、幾人もの口から自分に対しての糾弾の声も聞こえてくる。
やはり、この評議員達も御堂聖騎士団の連中のやり口と、何も変わりはしないのだ。
真実を叫ぶ声など力で捻じ伏せ、ありもしない事柄を認めさせてしまう───
かつて異端弾圧に血眼になっていた派閥、すなわち今の”旧ラウンジ聖教”とは離反した彼らだが、
根本的な部分での体質は何も変わっていないのかと、内心ため息をついた。
-
自分達を助けた後、真剣な面持ちで尋問に臨んだ騎士、フィレンクトのような人間ばかりではない。
基幹をなす根っこが腐っているならば、やがてはその腐敗は末端の小枝や、葉にまで伝染してしまう。
それならば、悪しき前例を作ってしまわない為にも、尚の事自分は真実を声高に叫ばねばならない。
「ま……余罪が出てくれば、死罪は免れまいな」
「名家ストレートバーボンの跡取りがこれではな、随分と名を墜としたものだ……」
(´・ω・`)「───違う!!」
かつて飛び出した生家の名を出され、かっとなった勢いに任せた。
ショボンが大声で叫んだのをきっかけに、会場の中は一瞬で沈黙に支配される。
一瞬の間を置いて、ショボンは再び言葉を紡ぎ始めた。
(´・ω・`)「………違うのです」
「……どう、違うのじゃ?」
しゃがれた老人の声に返す言葉に、強く力を込めた。
(´・ω・`)「私は……あの男の計略に、貶められた」
「して、その男とは?」
気の抜けたようなその評議員の声色にも構わず、力を込めて言い放った。
-
(´・ω・`)「モララー=マクベイン」
その瞬間、ざわざわと自分の言葉に耳を傾けていた評議員達の間に衝撃が走る。
どうやらモララーという男は、この場に居る気位だけは高い者達の間でも有名な名だったようだ。
(´・ω・`)「この私に死霊術士としての烙印を押し……その実、彼こそがかの賢者の塔で
研究に身を置く事を隠れ蓑に、裏ではあの外道の法に手を染めていた」
「証拠はあるのかね……」
やれやれ、といった様子で自分に言葉を投げかける一人の声など、無視した。
(´・ω・`)「事実を知った私は、彼に口封じの為に抹殺されかけた……その後気を失っていた間に、
彼の部屋にあった死霊術の一端を綴った”死をくぐる門”という書物は、私の私室に置かれた」
「誇大妄想も甚だしいな、口を慎みたまえ!」
(´・ω・`)「ですから……それこそが真実だと、申しているのです」
一度口を開けば、その倍以上もの非難が押し寄せる中、募っていく苛立ち。
暗闇から自分を嘲る視線を送っているのだろうという事はわかる。
だから、できるだけ瞳に力を込め、その方向を睨みつけていた。
またも訪れていた沈黙を破ったのは──────今までに幾度か質問をぶつけて来ていた老人の声だ。
-
「興味深い話じゃ。詳しく聞かせては、もらえんかね?」
「……正気ですか?」
「まさか、こんな男の作り話を信じるおつもりか?」
(´・ω・`)「……訴え続けます。私の知りえる、真実を」
「ならば、二人きりで話をしたいのじゃが……議会の邪魔をする連中は、退出させても構わんかの?」
ショボンが心もとない明かりの下、その老人にも見えるように大きく頷くと、
さらに暗闇の奥から現れた人影が、何やらもぞもぞと動き始めた。
(´・ω・`)「………?」
「な、何をする!」
「離せッ、まだ、議会の途中でッ」
「何を考えているのです、アラ────」
今まで自分に非難を集中させていた評議員の気配が、誰かに連れられる様に続々と会場から消えていく。
老人の一声は、よほどの発言力を持ち合わせていたのだろう。
気が付けば、しんとした中を、軽い靴音が自分の元へ向かっているのがはっきりと聞き取れる。
やがて自分のすぐ近くに置かれた灯は、その老人の顔を薄っすらと照らし上げた。
-
(´・ω・`)「───ッ!?」
その顔には─────確かな見覚えがある。
ついぞ畏まり、その場に肩膝をついてしまいそうになったが、後ろ手の錠が邪魔だ。
「どうやら、これでゆっくりと話が出来そうじゃの?」
(;´・ω・`)「あなたは………」
そこに立っていたのは、紛れも無く自分の知る人物だった。
/ ,' 3 「直接話した事は、なかったかの」
賢者の塔の最高権威者にして、曰く、大魔術師。
アークメイジ────”アラマキ=スカルティノフ”、その人だった。
───────────────
──────────
─────
-
───【交易都市ヴィップ 失われた楽園亭】───
もはや馴染みとなりつつある宿の前で、二人は足を止めた。
その入り口に、”準備中”と書かれた札が掛けられていたためだ。
木扉で隔てられた宿内の様子を伺うと、驚くほどしんとしているようだった。
( ^ω^)「一体……どうしたのかおねぇ」
爪'ー`)y-「閉まってるのか」
普段ならば多数の客でごった返しているはずの宿に、人の気配が感じられない。
少し躊躇するブーンをよそに、フォックスがそっと扉を押し開けると───いとも簡単に開いた。
爪'ー`)y-「かまうこたねぇ、入ってみようぜ」
どかどかと突き進むフォックスの背について、ブーンもまた宿の中へと足を踏み入れた。
卓上には椅子が並べられ、いつも酒が交わされている盛り場には、一人の客の姿もない。
( ^ω^)「おっ!」
ふと奥のカウンターに目をやると、マスターが、布を手に壁面のそこかしこを掃除している場面に出くわした。
勝手に入り込んだ事に対して憤慨するかと思ったが、意外にも自分達の存在に気づくと手を止め、
カウンターに両手をついて招き入れてくれる様子だった。
-
(’e’)「お前らなぁ……よくもまぁ、顔出せたもんだ」
(;^ω^)「……おっ?」
何気なくマスター対面の席につこうと椅子を引いた所で、その言葉に動作が止められた。
気づけば、フォックスはいつの間にか席について腕を組みながら、カウンターに身をもたれかけている。
爪'ー`)y-「俺達がとっ捕まってからなんかあったのか?親父さんよ」
(’e’)「ふてぶてしい野郎だ。営業停止食らっちまったんだよ!お前さんがたのお陰でな」
(;^ω^)「おぅふ」
(’e’)「ま……俺があのショボンって坊ちゃんの顔を知ってて黙ってた……ってのもあるがな」
爪'ー`)y-「まぁまぁ、そう気を落としなさんな。で、いつまでだよ?」
(’e’)「ちったぁ反省しやがれこの野郎――――明日から、やっと商い再開だよ」
(;^ω^)「それは何というか……すいませんでしたお」
酒や料理を注文しようと思っていた二人だったが、どうやらそんな事を頼める状況ではなさそうだった。
少しだけばつの悪そうに頭をかく二人の顔を見つめて、マスターは鼻を鳴らした。
(’e’)「……でもまぁ、久しぶりに爽快な馬鹿を見させてもらったよ」
-
( ^ω^)「?」
(’e’)「こないだの一件さ。見ず知らずの奴を理由も無く助けようとするなんざ、正気の沙汰じゃねぇ」
爪;'ー`)y-「褒められてんのか……それ?」
(’e’)「何にでも首突っ込みたがる気持ちはわからんでもないがな……あれから、どうなった?」
( ^ω^)「……あのツンって娘は何事もなく済んだみたいだけど、ショボンはまだ尋問中らしいお」
(’e’)「円卓騎士団があの御堂の連中を追っ払ってくれなけりゃ、今頃お前さんがたは
あいつらにひーひー言わされてたぞ。感謝しとくんだな」
爪'ー`)y-「まぁね。随分と偉そうだったけど、あの団長もそう悪い奴じゃなかったよ」
─────「誰の話をしているのです?」
爪;'ー`)y-「……げっ」
背後から聞こえたその声に驚き、二人は振り向いた。
入り口には、いつの間にか一人の男の姿があった。
噂をすれば影────そこに居たのは依然として厳格さを漂わせる、フィレンクトの姿。
(‘_L’)「これほど早々に、また貴方達の顔を見るとは思いませんでしたよ」
-
(;^ω^)「……僕たち、また何か悪いことしましたかお?」
途端に不安げな表情を隠せない二人とは対照的に、マスターはその彼に手だけで軽く敬礼を送った。
(’e’)「よう、お疲れさん」
(‘_L’)「……どうも。今回は、ご迷惑をお掛けしましたね」
(’e’)「なに、こちらこそ世話になっちまったな。たまの大掃除もいいもんだ」
(‘_L’)「マスターへ事情を伺う、という話ものぼっていたのですが、私の元で留めておきました」
(’e’)「すまんな」
(‘_L’)「いえ。明日から平常通り店を開けて頂いて結構です」
爪'ー`)y-「ほへ?」
( ^ω^)「はて……」
騎士団長であるフィレンクトに対し、友人のように振舞うマスターの態度に、首を傾げる二人。
互いの間で交わされる言葉も、何のてらいも無い物だった。
(’e’)「あぁ、フィレンクト団長殿はな、お前らぐらいの頃から良くウチに来てくれてたんだよ」
-
(‘_L’)「最近では仕事の依頼以外であまり顔を出せませんが、マスターの料理の味が恋しいですよ」
爪;'ー`)y-「マジかよ……随分と太い横のつながりだな」
( ^ω^)「おっおっ、流石ブーンの目が選んだ宿のマスターだお」
(‘_L’)「今日訪れたのは、依頼の発注なのですが……」
(’e’)「もちろん、構わんさ」
二人に一瞥して、フィレンクトはカウンターごしに一枚の羊皮紙を差し出した。
それを受け取り軽く目を通すと、うんと頷く。
(’e’)「随分と色をつけたな?」
(‘_L’)「急ぎの依頼なのです……ですが、手を離せない仕事がいくつもありましてね」
( ^ω^)「騎士団直々の依頼かお?」
爪'ー`)y-「どれどれ……」
マスターの手からフォックスがその依頼状を掠め取り、その文面を目で追った。
でかでかと書かれていたのは、フィレンクトの言う通り大至急の解決を求めるという内容だ。
爪'ー`)y-「”不死者討伐の依頼”……ねぇ」
-
( ^ω^)「報酬、600spもあるのかお!?」
(‘_L’)「多少剣に覚えがある、などという程度でそこらの冒険者に務まるような
甘い依頼ではありませんよ───良く目を通してごらんなさい」
アンデッド
”不死者”─────その大半は、この世に未練を残して死んでいった者達の成れの果て。
過去に争いなどで多数の命が失われた、強い憎しみの思念が渦巻くような地場においては、
死者たちの怨嗟が渦巻き、それが憎しみのままに生者を傷つけ、死に至らしめる。
それが肉を得た実体として現れるのが、歩く死体である”ゾンビ”などだ。
実体を持たないものでは、多数の死者の怨念の集合体である”レイス”や、それ以上の上位となると
魔道死霊である”リッチ”など、死神と同一視までされる非常に強力な悪霊の存在も見られている。
爪'ー`)y-「報酬は破格だけど……なるほどな」
文面を読み終えたフォックスが、ゆっくりと首を左右に振った。
続き、ブーンがその内容に目を通し始める。
( ^ω^)「依頼の内容は”不死者の討伐”と……その背後に見られる”魔術師”の始末……?」
(‘_L’)「その依頼の背景には、死霊術士の影が見受けられるのですよ」
ブーンとフォックスが理解した依頼の内容はこうだ。
-
小さな教会を中心とした村、”アルバ”において、夜な夜な彷徨い歩く不死者の存在が発覚した。
夜毎墓場からかつて”村人だった者”が這い出て、徘徊するというのだ。
それが時に村人に被害を及ぼすと同時に、アルバの村が孕んだ問題はそれだけではなかった。
一人、また一人と村人が”消える”事件がここ最近になって浮き彫りになっているという。
そうなる少し以前からアルバへと移り住んできた魔術師風の男の姿も、この所見えないというのだ。
( ^ω^)「”死霊術士”……もしかして」
(‘_L’)「えぇ、貴方達も面識のある、ショボン=ストレートバーボンにかけられた疑いと同じ。
死者の肉体や魂を使役する、悪しき魔術師達ですよ」
爪'ー`)y-「なら、どうしてあんたらが討伐にいかねぇ?これを見る限り、村は深刻な事態だぜ?」
(‘_L’)「……我々が動ける範囲も、そう広くはありません。日々ヴィップにおける治安を
維持する為、まずはこの街を中心として起こる問題に、動かなければならない」
(‘_L’)「それと並行して、ある魔術師を今は追っているのです」
爪'ー`)y-「また”死霊術士”かよ……?」
(‘_L’)「そこまでは、解りかねますが」
話し込んでばかりもいられないといった様子で、ブーンが読んでいたその依頼状を引ったくると、
フィレンクトはそれを宿の壁面へと張り出した。
-
(‘_L’)「それでは、こちらの依頼はお願い致します」
(’e’)「あぁ……ジョルジュ辺り、腕利きが居ればいいんだけどな。今はどこほっつき歩いてるんだか」
(‘_L’)「………では、私はこれで失礼致します」
軽く手を振るマスターに、フィレンクトは会釈すると足早に宿を後にする。
ショボンの事を尋ねようかとも思ったが、よほど忙しい身なのだろう。
こちらに対して振り返るともしないフィレンクトの事を、わざわざ呼び止めはしなかった。
「さてと……」と、フィレンクトが去ってから明日の開店準備を始めたマスターをよそに、
ブーンはしばしある事をじっくりと考えていた。
( ^ω^)「フォックス」
爪'ー`)y-「んあ?」
( ^ω^)「フィレンクトさんが持ってきた依頼、どう思うお?」
爪'ー`)y-「……あぁ、なるほど。お前さん、受けたいのか?」
( ^ω^)「アルバの村といえば、半日かからずに行ける距離だお。
今、この依頼を知ってるのはまだ僕ら二人しかいないお?」
爪'ー`)y-「正直、リスクのがでかいな……俺は正直戦いにゃ向かねぇ、勿論補佐的な役割は出来るがな。
お前さんはその剣でゾンビどもとやりあえるだろうが、もし敵に魔術師が居るとすりゃ、厄介だ」
-
( ^ω^)「ブーン達二人のパーティーの華々しい初陣を、騎士団からの依頼で飾るつもりは?」
爪'ー`)y-「良いとは思うぜ……だが、力不足過ぎる。せめて、あと一人か二人いなきゃ厳しい」
依頼に対し勇むブーンとは対照的に、フォックスはリスクブレイカーとしての意見を冷静に述べる。
不死者とはいえ、確かにゾンビ程度であれば斬り付けるだけでも倒す事は出来る。
肉体が完全に朽ちてしまえば、彷徨える魂も寄り代を離れてゆくからだ。
だが、それらを操る術者がもし居るとするならば、やはりその存在の方が厄介なのだ。
何の目的で村そのものを危機に貶めているのか、その相手の魔術師としての実力や、
目的とする思想によっては、時として生者を傷つける不死者よりも恐ろしい存在となり得る。
結局の所、生きている人間の方が────ー一番怖いのだ。
( ^ω^)「やっぱり、難しいかおね?」
爪'ー`)y-「ま、現状じゃな。ただ───魔術に対しての知識がある奴がいれば、
今後選べる依頼の選択肢は、ぐっと増える事になってくるぜ?」
(;^ω^)「うーん、ブーンの頭じゃちょっと難しいお」
爪'ー`)y-「俺も……さ」
-
(’e’)「やめとけやめとけ、フィレンクトの持ってくる依頼は、どれも新参が手を焼くようなもんばかりさ」
うーんと考え込むブーンを尻目に、そう促すマスターの視線は、入り口へと向いた。
準備中のはずのこの宿は、どうやらそうであっても不意なる来訪者が後を絶たないようだ。
木扉を押し開けて、またも見覚えのある男がそこから現れた。
(’e’)「おいおい……ここに来る奴らは文字も読めねぇのが多いな」
(´・ω・`)「………ここに来れば、いるかなとは予想してたけど」
”禁術”を用いた異端者として、尋問にかけられているはずのショボンの姿が、そこにはあった。
出会った時となんら変わらぬ様子で、準備中の掛け札の事を気にしてか、申し訳程度半歩だけを
宿の中へ足を踏み入れて入り口に立っていた。
( ^ω^)「───ショボン!」
(´・ω・`)「やぁ、奇遇だね」
爪'ー`)y-「おつとめご苦労さん。随分とお早いお帰りだな?」
( ^ω^)「ショボンの潔白が証明されたのかお?」
(´・ω・`)「何、ちょっとばかり猶予をもらってね」
「失礼」と一声をかけ、ショボンもブーンらの隣の席に座り込んだ。
明日の開店に向けて準備に余念の無いマスターは、それに構うことはしないようだ。
-
(´・ω・`)「説明すると、少し長くなるんだけど───」
そう前置きし、ショボンはこほんと咳払いをしてからブーン達やマスターに、話し始めた。
───────────────
──────────
─────
/ ,' 3 「こうして話すのは初めてじゃな? ……ショボン君」
(´・ω・`)「……このような姿を晒す事となってしまい、我ながら実に恥ずべき思いです」
/ ,' 3 「……おぬしは自身の言葉を聞き入れられんと悟り、あの日、あの場から逃げたのじゃな?」
(´・ω・`)「えぇ。あのまま捕まったのでは、弁明の機は訪れないと思っておりましたので」
評議員の一人にアークメイジが居た事に驚きを隠せなかったが、はた、とショボンは
ある疑問を表情に浮かべて、アラマキもそれにすぐに気づいたようだ。
-
(´・ω・`)「つかぬ事をお伺い致しますが、いつヴィップへと参られたのですか?」
/ ,' 3 「なに……おぬしがこの街で見つかり、審問にかけられると聞いてな。
転移方陣を用いて辿り着いたのが先ほどよ。今ここにいるワシは、仮の姿の一つじゃて」
(´・ω・`)(4日も距離のあるこの遠方まで転移方陣を張れるのは、驚きだな………)
/ ,' 3 「して、人払いをしたのは他でもない。ワシの独断で、おぬしを泳がせようと思っての」
(´・ω・`)「………」
やはり、ショボンを簡単に信じたというわけではないのだ。
だが、”泳がせる”という言葉の節からは、完全な罪人と見定めているのでも無いらしい。
/ ,' 3 「驚きの新情報じゃ。おぬしが先ほど名を挙げた男が、失踪した」
(´・ω・`)「!」
/ ,' 3 「そう、モララー=マクベインじゃよ……おぬしの件に関して、あやつと一対一で対話したんじゃ」
/ ,' 3 「その時にワシは、あの男の心根の奥深い所に潜む、酷く歪なものを感じ取った」
(´・ω・`)「………」
/ ,' 3 「嫌な瞳をしておったよ……”不穏分子になり得る”と思った」
/ ,' 3 「そこで、有能な者を三人も監視につけたんじゃが─────殺されたよ、全員な」
-
(´・ω・`)「気取られた、という訳ですか」
/ ,' 3 「そうであろうな……あの男はもはやワシらの力だけでは持て余す程に、
禁術問わず数々の魔術を身につけ、力を手にしていると見て良いのかも知れん」
(´・ω・`)「”暗部”を放ったのですね?」
/ ,' 3 「いかにも。魔術においては、決しておぬしにも引けを取らぬ程の者を、三人もな」
アークメイジの勅命でのみ動くという、賢者の塔に身を置く魔術師達の中でも、
さらに群を抜いて飛びぬけた知識を持ち、強力な魔術を使役する執行者───暗部構成員。
噂程度には聞いた事があったが、何かしらの問題に直面した時、陰ながら
その解決に当たり大きな功績をもたらして来たと言われている。
自分と同程度の魔術を扱えるその彼らが、三人も殺されたというのだ。
アラマキが一目見て危険だと判断する程の不穏分子、モララーは、
やはりと言うべきか、その彼らの予想を上回る力と狂気を秘めていたようだ。
(´・ω・`)「それで、モララーは?」
/ ,' 3 「その後は行方知れずよ……もしかすると、案外近くに潜んでいるやも知れぬがな」
(´・ω・`)「………」
どうやら、モララーもまた追われる身となったようだ。
だがアラマキから聞く話に、ショボンにはどうにも疑問ばかりが残る。
-
(´・ω・`)「彼の私室に、何か痕跡はありましたか?」
/ ,' 3 「……人の毛髪や、血液を媒介にした魔術の痕跡はあった。だが、今の時点では定かではない」
(´・ω・`)「”黒魂石”などの決定的な証拠は………」
/ ,' 3 「なかったのう。もしそんな物を持ち出しているとすれば、これから一体何をするつもりか……
正直な所、ワシにも皆目見当がつかんよ」
”何をしようとしているのか”、その事は先ほどからショボンにも引っ掛かっていた。
賢者の塔内で向けられた監視に気づき、それらを殺害してまで行いたい目的とは、何なのか。
いずれにしても、それは死霊術に関連する事柄ではあろうが。
(´・ω・`)「………」
ショボンは押し黙り、自由の無い自らの立場に苛立ちを募らせる。
同じような立場にたった今こそ、モララーを追って、その口から真実を語らせたいと────
/ ,' 3 「おぬしは、これまでの話を聞いてどう思う?」
今すぐにでも走り出したい衝動に駆られていたショボンの意識を、アラマキの声が今この場へと引き戻す。
漠然とした問いだが───自分の心中には、モララーを追いたいという気持ちしかないのだ。
-
(´・ω・`)「私は………躊躇いも無く同胞を手にかけるあの男を、決して許せません」
/ ,' 3 「さりとて、おぬしにも死霊術者としての疑いがかかっておるぞい?」
(´・ω・`)「モララーが……彼が捕まりさえすれば、その真実も明らかになる事でしょう」
/ ,' 3 「ふむ………」
指をこめかみへと押し当て、アラマキはショボンに掛けるべき言葉に迷っている様子だ。
瞳の奥に強い光を宿したまま、ショボンはその口から発せられる次なる言葉を、待った。
そしてやがて紡がれたその言葉は、彼を困惑させてしまうほど、思いもよらぬものだった。
/ ,' 3 「ならば───おぬしへの今回の処分、このワシが預かる事としよう」
(´・ω・`)「………?」
そう言ってショボンに背を向けたアラマキ。
/ ,' 3 「よいか、おぬしには半年の猶予を与えおく……その意味するところが、解るか?」
(´・ω・`) 「!!」
籠の中の鳥のように酷く惨めな思いをしている今の自分に、再び旅へ発つ機会が与えられる?
─────それならば、可能だ。
-
それが半年という仮初の自由といえど、構わない。
モララーを追い──────奴を捕まえさえすれば、この手で汚辱を注げるのだ。
答えは一つだった。
アラマキの問いに対して、力強くショボンは答える。
(´・ω・`)「私にかけられた疑いを晴らす程の証拠を、見つける事ですね?」
/ ,' 3 「………」
ゆっくりと頷き振り返ったアラマキに向けて、ショボンは深く頭を垂れて、呟く。
/ ,' 3 「ただし、半年を過ぎればおぬしはまた囚われの身じゃ……逃げる事などかなわんぞ?」
(´・ω・`)「逃げるなどとあり得ません。彼を、モララーに自らの行いの懺悔をさせる事───」
そこですぅっと息を吸い込み、少しばかり興奮していた自分をなだめた。
(´・ω・`)「その為ならば私は………必ずやこの場へと彼を引き連れ、戻ってきましょう」
/ ,' 3 「ほっほ………」
背後に潜んでいた衛兵にショボンの身を託すと、手を後ろに組んで静かに笑みを浮かべる。
徐々に暗闇に溶け込んでゆく彼の背中が、まるでショボンにこう言っているようだった。
”出来るかの……おぬしに?”
-
アークメイジの胸中がいかなるものなのか、ショボンには読み取れない。
しかし、一度は途絶えかけた道が、この小さな背中の老人によって、再び浮かび上がった。
その機を、逃せるはずもない。
人の生死を自らの実験の為に弄び、あまつさえ同胞すらをも手にかける、狂気の魔術師。
かつてのモララーに対しショボンが抱いていた感情、それは憧れにも近いものだった。
しかし、それも今では完全に風化し、記憶の残骸のそのまた彼方に。
今はただ、”許してはならない存在”として、強い敵意だけが新たに胸に刻み込まれる。
執念を以ってして、必ずやモララー=マクベインの非道の限りを、白日の下に晒けだす。
(´・ω・`) (必ずだ)
両の足にうんと力を篭めて、新たな決意を秘めた一歩を、外へと踏み出した。
───────────────
──────────
─────
-
(´・ω・`)「………とまぁ、そういう訳なんだ」
淡々と語ったショボンの話に、二人は相槌を打ちながら聞き入っていた。
彼もまた、様々な波乱を呼び込む星の元に生まれついたのかも知れない。
(’e’)「何せこの広い大陸だ。その犯人探しって奴ぁ骨が折れるかもしらんが、頑張んな」
(´・ω・`)「ありがとうございます」
( ^ω^)「………おっ?」
爪'ー`)y-「ん?」
ショボンの話を聞いている内、そこでブーンはある事に気づいた。
”賢者の塔”という単語から、ショボンが単に気の合う男というだけでなく、有能な魔術師であろうという事に。
( ^ω^)「さっきの話、もしショボンが仲間だとしたら……フォックスはどう見るお?」
爪'ー`)y-「………ん〜〜〜」
(´・ω・`)「?」
当の本人には話しが見えていないまま、二人は先ほどの仕事の話の続きを始めた。
-
爪'ー`)y-「”賢者の塔”に出入りする程の奴ともなりゃあ、いつどこで宮廷魔術師を張ってもおかしくねぇだろ」
( ^ω^)「そうなのかお?」
(´・ω・`)「まぁ……僕は身分や名誉には拘らないからそんなものに興味はないけどね」
爪'ー`)y-「自分自身にこそ価値があるって訳だ?……いいね、気に入ったぜ」
(´・ω・`)「まさか。単に研究が好きなだけさ」
賢者の塔に招かれた事のある者は数多くいるが、思うように成果を出せずに去ってゆく者も多い。
その中でも取り分け熱心に研究に明け暮れ、その才覚も実に非凡なものであるショボンの実力を、
ブーン達二人はまだ知らないのだ。
ショボンもそう言った事を口に出してひけらかす性質の男では無いため、あくまで謙遜する。
爪'ー`)y-「ま……リスクブレイカーの俺に、一人でゴブリン10匹同時に相手出来る、ブーン」
(;^ω^)(こないだマスターと話した時、いささか武勇伝を盛りすぎたおね……)
10匹も同時も、嘘だ。
爪'ー`)y-「そこに大魔術士のショボンさまとくりゃ───十分な戦力じゃねぇか?」
(´・ω・`)「………なるほどね」
-
その時のショボンには、なんとなく二人の言わんとしている事が解っていた。
それは、彼が再びこの失われた楽園亭へと訪れた理由とも、見事に重なっていたからだ。
( ^ω^)「─────ショボン」
(´・ω・`)「─────二人とも」
言葉が重なり、一瞬次の言葉を出すのが躊躇われた。
が、目と目が合った時、互いの言わんとしている事が、理解できていたようだ。
「改めて……パーティー(を)、組まないか(お)」
───────────────
──────────
─────
-
───【交易都市ヴィップ 南西の林道】───
小さな村へと続く道を、とぼとぼと歩く一人の少女の姿。
時折歩みを止めて後ろを振り返ってみては、来た道を戻るべきかと思案に暮れる。
そうしてため息を吐いては、また歩き出す。
それを繰り返す内、ヴィップの街が少しずつ遠くなってゆく。
ξ゚⊿゚)ξ「………はぁ」
頑固なフィレンクトの事だ、一度出した言葉は、自分が何を言おうとてこでも引っ込めないだろう。
それに─────自分自身、まだ迷いが拭えない。
捨て子であったはずの自分でも、やはり一度救いと信仰の道へ身を置いた自分には自由などないのか。
そう考える度に、聖教都市を発った時の覇気に満ちていた自分の初心が、薄れてゆくのを感じる。
何も告げずにヴィップを発つ事は簡単だった。
だが、それではきっとこの先ずっとショボンやフィレンクトに対し、罪悪感だけが残るだろう。
-
中途半端な気持ちで旅を続けても、良い事など無い─────
そう思う自分の脳裏に、あの時出会った二人の冒険者の顔も、なぜか過ぎていた。
ξ゚⊿゚)ξ(あの人なら……今の私を導いてくれるかな……?)
不意にかつて訪れた場所で、いつも優しく微笑んでくれていた人物の事を思い出した。
ヴィップからもそう遠くない場所────鬱屈した気持ちが、この場所へと彼女を歩かせたのだ。
ξ ⊿ )ξ「─────あっ」
やがて辿り着いたその場所で、不意にツンは空を見上げる。
すると、黒い雨雲が一面を覆っているそこから、ぽつりと雨粒の一つが頬を叩いた。
「………少しだけ顔を出して、フィレンクト達が心配しない内に帰ろう」
この天候のせいだろうか、はたまた、整理しきれない今の自分の気持ちのせいだろうか。
村を見渡したところ、広場の中央に佇む教会に、何故だか胸が締め付けられるような息苦しさを覚える。
”アルバの村”の景観は─────ツンの瞳に、かつて目にした時よりとても寂しく、儚げなものに映った。
-
( ^ω^)ヴィップワースのようです
第4話
「正しき怒りと、切なる慈悲と」
(前編)
―続―
-
ギコとモララーの話をどのタイミングで投下してよいものか……
4話終了後の5話以降は、初めてまともな冒険話になりそう。
その後幕間として使いきれてない感が拭えないサブキャラ達の話を投下予定だお
-
何という時間に…
投下を我慢出来なかったのですねその気持ち乙です
モララー強敵そう、(´・ω・`)ショボンがんばって
相変わらずさくさく読めるし中身も秀逸
この続き早く読みたい負担のない範囲で続き早く書いてください
-
乙
いいぜ
理由があっての行動というのは好きだわ
-
死霊術師をなぎ倒して黒魂石集めてた思い出が蘇った
乙乙!
-
乙!
こういう信頼関係って憧れるわ
-
乙
-
少しずつ結束していくのがたまらなくwkwkする
こういうの大好き
-
506 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/12(金) 02:00:07.94 ID:Ld/W3nFG0
一つのジャンルに対しての需要ってなぁ
こんなジャンルどう?じゃなくて、こんな作風どう?なら話は解るけど
正直おもしろいかどうかも解らんものに需要も何もねえよ
どんなジャンルだって、書き方一つで風穴が空くと思うけどね
>>484
ヴィップワースいいよね
芸にまとめてもらいたいけど、作者本人が拒否ってた
まだ時期尚早とかいって
でも一度断ったらまとまる事はないと思う
517 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/12(金) 02:09:56.14 ID:ZLTjEVfGO
>>506
ヴィップワースな
確かに一度断っちゃったらまとまらないかもね
そうなると作者がまとめてって申告しない限りまとめないだろうけど
かといって作者がまとめてくださいなんて非常に言いにくいだろうし
さあ、何話分書き溜まったらまとめて欲しいか今の内に宣言しておくんだ
-
>>594
今目の前で腐りつつある冷やし中華を食べるか否かと、同じぐらい悩みますね。
んー、6話目ぐらいだろうか。もし一ヶ月とか投下の間隔が空いちゃったらと思うと怖いけど…
暇だから、頑張って明日ぐらいまでに5話まで投下目指しま
-
あ、そうそう。総合で見かけたレスの……
>あんな書き方じゃプレッシャーに押し潰されたみたいだわなーw
大正解wwwwww
-
続き楽しみすぎる
-
予告したけど、途中で盛り込んだババアの話しが予想外に膨らみすぎて、明け方までかかるおぉ……
sage信仰でキリの良い所まで投下してから、出来上がり次第投下していきやす
-
───【アルバの村 教会】―――
父がまだ生きていて、自分もまだ幼い頃だったか。
友人である神父に会う為、1度か2度この村を父と共に訪れた事があった。
決まってだだをこねる自分に、いつも彼は困ったような笑顔を浮かべていたが、
適当にあしらう事もせず、やさしくツンへと微笑み掛けてくれていた。
ξ゚⊿゚)ξ(まだ、お元気なのかな……)
村の広場の中心で寂しく佇む教会の扉を、二度程叩いてから押し開ける。
中には誰もいないのだろうと思っていたツンだったが、祭壇の前には5、6人の男女が集まっていた。
皆が一様に入り口に背を向け、入ってきた自分の様子にも気づかず、黙祷を捧げているような─────
とても厳かな雰囲気は、今朝何気なく思い立ってここまでやってきたツンを、場違いに思わせた。
「うん?………あなたは?」
ξ゚⊿゚)ξ「あの、私は───」
気がついた一人の男性が振り返り、尋ねた。
-
ヴィップを離れて一人この場所に来ている事が万一フィレンクト達に伝わったら、また騒ぎ立てる。
この場では身分を伏せたがよいかと一瞬だけ思案にくれたが、少し遅れて、自分の名を呼ぶ声があった。
「もしや………ツンちゃんですか?」
顔には昔より深く皺が刻まれているが、憧憬の中に浮かぶ彼の面影が確かに重なった。
子供っぽい口調での喋り方も、昔からなんら変わらぬ様子だった。
( ><)「やっぱり、ツンちゃんなんですね……!」
ξ*゚⊿゚)ξ「お久しぶりです……ビロード神父っ!」
愛想の良い人柄の彼に、昔から村人達はより親しみを込めて神父と呼ぶ。
ツンもそれに習い、子供の頃からそう呼んでいた。
小さな農村であるアルバには、信心深い人間なんてほとんどいない。
で、あるにも関わらず────彼は何十年もこの教会で、毎日祈りを捧げているのだ。
ツンの近くに立つと、ビロード神父はその顔をよく眺めた。
( ><)「随分と、お綺麗になられたんです」
ξ*゚⊿゚)ξ「って……そんな事……」
( ><)「…………父君の葬儀には顔を出す事が出来ず、本当に申し訳なかったんです」
ξ゚⊿゚)ξ(あ……そういえば)
-
流行病で呆気なくこの世を去った父。
その亡骸が棺に納められる時、確かにビロードは葬儀の場には居なかった。
立場や身分こそ違えど、父とは気の置けない長年の友人であったはずなのに。
( ><)「あの時は、丁度村の子供の一人がたちの悪い熱病にかかってしまっていたんです……
どうしてもつきっきりで容態を見て上げなくては、命に関わる所だったんです」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
やはり、こういう人なのだ───と、思う。
自らが知るビロード神父の人柄に昔と何ら変わりがない事に、安心した。
自分の事よりも、いつも周りで困っている人達の助けになろうとする。
その彼の事を、父はよく笑いながら話してくれていた。
困っている人々を見過ごすことが出来ず、自分に出来る事ならばなんでも助けになろうとする。
真心からくるその行いは、決して己の主観で訳隔てる事なく、誰に対しても行われるのだ。
聖職者として彼のようにありたい、と思わされる。
( ><)「だから……ツンちゃんやアルト司教には、本当にすまないと思っているんです」
ξ゚ー゚)ξ「いいえ、ご立派ですよ」
( ><)「えっ?」
-
ξ゚ー゚)ξ「だって、父がこの世を去った時と同じ日、一人の子供は神父に命を助けられたんですよ?」
ξ゚ー゚)ξ「その場にいたら……父もきっと、それを望んでいたと思うから」
(;><)「……ご、ご立派だなんて、そんな事ないんですっ!」
ビロード神父が謙遜する様子は、少しばかり照れ屋の純朴な少年のようだ。
もっと賞賛の言葉を投げかけたらどうなるんだろう、とツンの心根の小悪魔のような部分が少し反応した。
ひとしきり慌てふためいた後、照れ隠しのつもりか「こほん」と白々しい咳払いをする。
( ><)「でも、その言葉に救われた思いなんです……近いうち、僕も聖教都市に顔を出すんです」
ξ゚ー゚)ξ「ええ、父も喜ぶと思います」
久しぶりの再会に随分と積もる話もあるのだが、ツンには教会に集まっている人たちの事が気にかかった。
後ろに立って覗き込むと、その彼らが周囲を取り囲み沈痛な面持ちをしている理由に気づく。
そこには─────亡骸が納められた棺が、横並びに3つ。
ξ゚⊿゚)ξ(これは……)
何か不慮の事故にでも遭ってしまったのか。
-
そう思うや否や、ツンの身は聖職者の務めを果たさんがため、自然と前へと歩み出ていた。
亡骸達へ祈りを捧げるべく傍らにしゃがみこむと、瞳を閉じて胸元で両手を組んだ。
そっと、心の中で声を呟く。
ξ-⊿-)ξ(主よ……その御許に、どうか導き賜わん事を……)
ツンが死者達へ祈りを捧げるその後ろに、ビロードが立った。
やがてその祈りが終えらるまでの間、神々しいまでの横顔を眺め、ずっとその場に立ち尽くしていた。
( ><)(きっと、今夜も来るんです………彼らは)
──────────────────
────────────
──────
-
( ^ω^)ヴィップワースのようです
第4話
「正しき怒りと、切なる慈悲と」
(後編)
-
─────【交易都市ヴィップ 失われた楽園亭】─────
(´・ω・`)「なるほど……なんだか僕にとっては随分と皮肉めいた依頼だけれど」
モララー=マクベインを、自らに与えられた半年の猶予の間にこの手で捕まえると決めた。
だが、どこに潜伏しているかもわからないモララーを探しながら、ショボンだけで旅歩くのは困難だ。
だから、ショボンもまた共に連れ立てる仲間を求めていたのだ。
魔術師ギルドの外にはさほど知り合いも居ないショボンに、冒険者の友人などいない。
だが、波乱の中に一抹の友情を分かち合えた、ブーンとフォックスという心当たりはあった。
ツンや自分が捕らえられた時に無茶を買って出た、後先考えないあの二人ならば、面白い。
そう思って彼らを探している折、なんと向こうの方からパーティーへの招待がやってきたのだ。
だから、パーティーを組む事に際して、決断するのはほぼ即答であった。
( ^ω^)「おっおっ、もしかすると……この黒幕がショボンの探してるモララーって奴かも知れないお?」
(´・ω・`)「……いや」
爪'ー`)y-「それはねぇだろ」
( ^ω^)「お?」
言いかけたショボンの言葉を、フォックスが遮る。
-
アルバの村で不死者騒ぎが目立ち始めたのは、およそ一週間前。
そして、賢者の塔で三人の暗部が惨殺されてからモララーが失踪したのは、三日ほど以前に起こっている出来事。
(´・ω・`)「そう。時系列的に合わないんだ」
爪'ー`)y-「ま、こんな依頼が舞い込んだ直後にショボンが俺らの仲間に加わるってのも、
なんだか神様の悪戯って感じがしないでもないがね」
( ^ω^)「そうかお………なら、ショボンはこの依頼、乗り気じゃないかお?」
張り出されていた壁面の依頼状は、ブーンの手の中にあった。
内容は既にショボンへは説明しているが、それを彼の前に差し出した。
(´・ω・`)「いや、そんな事もないさ」
受け取ったその文面に、自分で実際に目を通しながらそう応えた。
一つの村を、夜毎不死者が彷徨い歩いているというのだ。
戦乱などで過去に多くの血が流され、怨嗟のはびこる土地においての話ならば、まだ分かる。
この世に未練を残した者達の魂が、自然発生的に朽ちた肉体を寄り代にする事も無くはない。
だが、何の変哲もない村にこのような変異が突発するというのには、人為的なものを感じざるを得ない。
(´・ω・`)「どんな理由であろうと、禁術とは人としての領分を弁えない所業だ」
( ^ω^)「禁術?」
-
爪'ー`)y-「どこの地域でも領主やギルドによって定められた、禁則事項の魔法さ」
(´・ω・`)「そう。例にして挙げれば、この死者を意のままに操る死霊術や、中には古からの
悪魔を召喚し、供物を捧げるのと引き換えにその力を借りる……なんてものもある」
( ^ω^)「なんだか凄そうだおね……それは、強いのかお?」
(´・ω・`)「あぁ。だけどその分、術者に求められる代償はとても大きいだろうね。
人としての倫理観や道徳なんて完全無視だ。人には過ぎた術さ」
( ^ω^)「お〜。魔術にも、色々お住み分けがあるんだおねぇ」
(´・ω・`)「まぁ……自然界における理を根底から覆す、自分達魔術師が言うのも何だけどね」
そう一言付け加えてから、脱線していた話を戻す。
(´・ω・`)「で、出立はいつ?僕は今からでも構わないんだけど……」
爪;'ー`)y-「お前も乗り気かよ!」
(´・ω・`)「勿論そうさ。死者を蘇らせて、その上に立つ支配者気取りにでもなったつもりなんだろうが、
そんな浅はかな真似は、死ぬほど後悔させてやらなきゃならない」
-
パーティーを組んでから、ブーンとフォックスはまだ一つの依頼もこなせていない。
ツン達を巡る騒動に巻き込まれてしまったという理由はあるが、ブーンは今か今かとその時を待ち望んでいたようだ。
今回の依頼に限ってかも知れないが、そんなブーンのみならずショボンも非常に乗り気だったようだ。
本人が語るように、死霊術士という存在を看過出来ないという執念がそうさせているのだろう。
爪'ー`)y-「まぁ……村じゃ死人も出てるみたいだな。もし行くなら、早いに越したこたねぇが」
( ^ω^)「じゃあ、決まり……だおね!ブーンは早速二階で準備してくるお」
そう言って、ブーンは脇目も振らず宿の二階へと駆け上がっていった。
準備をしてくるという事は、すぐに出立するつもりなのだろう。
残された一人、フォックスはカウンターに突っ伏して愚痴る。
爪'ー`)y-「面倒くせぇなぁ、今日ぐらいは出所祝いでゆっくり飲んでたかったぜ……」
(´・ω・`)「ん……誰か?」
誰かが店に入ってくる気配を察して、カウンターの隅で掃除をしていたマスターが、ひょっこりと顔を出した。
(’e’)「おぉ、おかえり。デレ」
その名を耳にした瞬間、口から雑言をこぼしていたフォックスの身が、途端にしゃっきりと直る。
弛み切った表情も、先ほどから比べて三割ほど引き締まったものになっていた。
-
ζ(゚ー゚*ζ「ただいま、買出し行って来たよ。お父さん」
爪' -`)y-「よぉ、お邪魔してるよ。デレちゃん」
ζ(゚ー゚*ζ「あっ……フォックスさんに……」
(´・ω・`)「どうも。この間は、お店をお騒がせしてしまって申し訳ないね」
(’e’)「あぁ、お前も知ってるだろ。道楽貴族の……」
ζ(゚ー゚*ζ「あ……覚えてます、ショボンさんですね!」
マスターからの紹介に苦笑いを浮かべるショボンだが、あながち間違ってもいない。
今は絶縁されているだろうストレートバーボンの家柄だが、
その援助なくして魔術の研究に打ち込む事は、今にして考えてみればままならなかったはずだ。
(’e’)「なんでも、フィレンクトが持ってきた依頼に、こいつらが行くんだとさ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんですか? もう騎士団から直々の依頼だなんて……っ」
-
(´・ω・`)「いや、僕もつい今しがた話を聞いたばかりでね……そう大層な話でもなさそうだ」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、フィレンクト団長が持ってくる依頼と言えば、きっと危険なものですよね」
(´・ω・`)「だろうね。だけど、とある村が窮地に陥ってるそうなんだ……見過ごしてはおけないさ」
ζ(゚ー゚*ζ「その考え方、なんだか尊敬しちゃいます」
爪#'ー`)y-「………」
きらきらとした瞳をショボンにばかり向けているデレの姿に、フォックスが嫉妬の炎を揺らめかせていた。
突然乱暴に席を立つと、ショボンを指差して大声で叫ぶ。
爪#'ー`)y-「行くぜ!とっとと支度しな、ショボン!」
(´・ω・`)「……おやおや」
ζ(゚ー゚*ζ「フォックスさんも?」
爪' -`)y-「……当たり前さ。俺の中の義賊の血が騒ぐんだ、”困っている人を救え”……ってな」
ζ(^ー゚*ζ「あははっ。フォックスさんって………面白い人ですよね」
-
爪' -`)y-「俺は大真面目さ、デレちゃん……だから、俺がこの依頼から生きて帰って来れたら……俺と」
(´・ω・`)「さっきまであんなに面倒くさそうにしてたじゃないか」
爪#'ー`)y-「黙ってろ、今いいとこなんだよッ!」
(#’e’)「やかましいッ!」
マスターからの怒声が飛ぶ中、駆け足で階段を下りてきたブーンが、支度を終えて現れた。
革鎧に、手甲。腰に吊るした麻袋に薬草などを持って、準備は万端だ。
背にしまわれた剣の柄の感触を確かめてから、一言でその場をまとめ上げる。
( ^ω^)「さ、行こうお────二人とも!」
───────────────
──────────
─────
-
───【アルバの村 教会内】───
祈りを終えたツンは、ビロード神父と様々な話をするつもりだった。
自分がラウンジへ返されようとしている事、また、ヴィップまで来た経緯や、旅の最中あった人物の事など。
何より、これから自分は旅を続けるべきかどうかを、彼によって導いて欲しかったのだ。
だが、ビロード神父から投げかけられた言葉は、その期待を裏切るものだった。
( ><)「ツンちゃん……積もる話もあるんです。だけど、まだ明るい内にすぐにヴィップへ戻るんです」
ξ゚⊿゚)ξ「……ッ」
( ><)「村の人に途中まででも見送ってもらうんです、だから───」
ξ゚⊿゚)ξ「ビロード神父まで………私がここにいちゃいけない、って………?」
(;><)「あ、いや!そうではないんです、そうではないんですよツンちゃん!」
自分の一言に、途端に泣き出しそうな顔になってしまったツン。
投げかけてしまった自分の言葉を補うべく、ビロードは順序だてて言葉を紡いでゆく。
-
ひょーーーう支援
-
( ><)「よく聞いて欲しいんです……」
ξ ⊿ )ξ「……はい」
俯きがちに小声で応えるツンは、すねているようにも感じられた。
だが、ゆっくりと。彼女に聞き入れてもらえるように、穏やかな口調で諭す。
( ><)「今、このアルバの村では怪異が蔓延しています」
ξ゚⊿゚)ξ「かい……い?」
( ><)「命を落としたはずの村人が、彷徨い歩くんです……毎夜、毎夜の事なんです」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、あの、それって」
( ><)「今ここに棺へ収められているのは、その死んだはずの彼らに襲われた人たちなんです」
ξ゚⊿゚)ξ「不死者───」
その存在を撃退する術に長けた聖教都市では、決して目にする事もなかった存在。
超常の話ではあるが、強い恨みを残して死んでいった者達は、再び現世を彷徨い歩く。
そうならない為に、自分達のように祈りを捧げる人間がいるのだ。
迷える魂が少しでも救われるようにと、願いを込めて。
だから、ビロード神父が居るこの村でそんな事が起きるのは、不可解そのものだった。
-
( ><)「”彼ら”は、決まって陽が沈むと墓から這い出して来るんです……そうして、
再び陽が上るまでには、自らの墓へと戻ってゆく」
ξ;゚⊿゚)ξ「どうしてそんな事に……? 皆幸せそうに暮らしてたはずのこの村で、なんで……!」
( ><)「一月ほど前になるでしょうか……」
遠い目で、天井を見上げるビロード。
瞳の奥には、とてもやりきれないような悲哀が映し出されている。
( ><)「村の離れのあばら家を貸してくれと、村長の元に一人の魔術師が訪れたんです……
そこには誰も住んでいなかった。だから、渋々村長も承諾したんです」
( ><)「だけど……それがきっかけなんです。7日程前から、この死者が蘇る事件が起きた。
最初は一人だけだったそれが、日を追うごとに……その数は増えているんです」
ξ゚⊿゚)ξ「その、魔術師を捕まえたりはしないんですか?」
( ><)「2、3日が経ったある日、彼の家を村人数人が訪れたんです………
ですが、彼の姿は影も形もなかった。見つからないんです、どこにも────」
ξ;゚⊿゚)ξ「………」
ビロードの話を聞く内、先ほどまでの身の上話を聞いてもらいたいという気持ちは、消えうせていた。
それよりも、深刻な事態が起きているこの村に対して、何か力にならなければ───と。
-
ξ゚⊿゚)ξ「怪異が起きている間、村の人たちはどうしてるんですか?」
( ><)「この教会に………始めの内は、皆家に閉じこもり鍵を掛けているだけだったんです。
ですが、不死者の数が増えるにつれ、それも意味を成さなくなってきたんです」
ξ゚⊿゚)ξ「これで、村の人たちは全員………?」
見渡しても、全部で6人の男女しかいない。
若者は、子供を合わせてたった二人───ビロード神父を含めて、年老いた者ばかりだ。
( ><)「いえ……大半の若者は、村は離れていきました」
「ここで生まれ育ったっていうのに、薄情な連中なんだよ! ……あいつらは」
ツン達の話を聞いていた青年の一人が、割り込んだ。
「こんな小さな子供を村に残してよ……情けねぇ。けど、俺たちはビロード神父と同じ気持ちだぜ」
そう憤慨しながら、青年は子供の頭を撫でた。
大人たちが話す事の大半は、理解できていないぐらいの年頃だ。
ノノ'_')「………」
それでも、深刻な雰囲気だけは彼の身に伝わっているのだろうか。
どこか不安げな瞳の彼を、周りの大人たちは案じているようだ。
-
ξ゚⊿゚)ξ「あなたは、この子の親類?」
「いや……違う。ロイの奴は、この子の親は……二日前に魔術師を捜しに行くと出たきり……」
ξ゚⊿゚)ξ「────そう………」
全員が青年の言葉に俯く様子から、もう戻らないのだと悟った。
ノノ'_')「……お父さん、どこにいるの?」
「………ッ畜生」
父の所在を求める息子の無垢な表情が、この場に居る全員の心を締め付ける。
( ><)「耐え凌ぐんです……皆さん。ヴィップからの騎士団が、この苦境を救ってくれるまで」
「でもよぉ、ビロード神父……依頼を出してから、もう三日も人っ子一人村を訪れやしねぇ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「………」
三日といえば、自分達が御堂聖騎士団とひと悶着あった頃だ。
もし彼らへの尋問と重なり、アルバの村への対応が手をこまねく状況になってしまったとしたら、
そう考えると─────責任の一端を感じざるを得ない。
フィレンクトほどの善人が、この村の事情を知って数日も放っておくとは思えないからだ。
-
「一昨日はドノバンが……今朝はフレッド達が食い殺されて見つかった……
なら次は、俺たちの番なんじゃねぇのか?俺たち、もう村を捨てた方が良いんじゃねぇのか!?」
( ><)「落ち着くんです……希望を捨てては、いけないんです」
「これが落ち着いてなんて───ッ!」
精神的にも相当参ってしまっているのだろう、半ば八つ当たりのように、ビロードへと噛み付く青年。
毅然とした態度で彼をなだめるビロードと、その心中を察しようともしない青年に業を煮やし、ツンが叫んだ。
ξ#゚⊿゚)ξ「うるさいのよッ!」
「ッ!?」
( ><)「!」
身を引き裂かれんばかりの悲哀が、教会内の全員に伝染しそうになった時、その叫びが正常へと引き戻す。
ξ゚⊿゚)ξ「こんな小さな子供がいるってのに、貴方達がしゃきっとしてなきゃダメじゃない!
怖いのはあんただけじゃない……落ち着いて、力を合わせて今を乗り切るの!」
( ><)(ツンちゃん……)
|
|
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板