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陰陽師 〜前世と現世〜
1
:
ピーチ
:2012/03/10(土) 23:58:03 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
異能者系の小説書こうと思いま〜す♪
コメントとかは受け付けるけど、悪口等はスルーでーす
初めてなのでよろしくお願いしま〜す♪
19
:
ピーチ
:2012/03/18(日) 19:50:16 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
【・・・久しぶりだな】
「お久しぶりです」
【何用だ?】
「・・・お尋ねしたいことがあります」
誠人は、頭上から降ってくる言葉に言葉を返し、話をしている。
【尋ねたいこと?】
「はい、俺の前世のことについて・・・です」
「お・・・おい、誠人?」
「お願いします、神であるあなたなら・・・どのような判断をすれば良いのか
は、すぐに分かるはずです」
【・・・前世のことで、私が口出しする必要はないだろう?】
話を聞いてくれそうに無かったので、誠人はとりあえず今の自分の名前、双子
の弟が自分の生まれ変わりだと勘違いされていること、そして雑鬼達に打ち明
かした方がいいと言われたこと。全てを話した。
【・・・それは、私が決めることじゃない・・・】
「・・・・・・・・・!」
【だが・・・】
「え?」
【お前の行動・・・誤っているのなら、必ず正しい方向へ向かう道標ができる
だろう】
「・・・分かりました、ありがとうございます」
誠人は礼を言うとすっと踵を返し、来た道を戻っていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きま〜す
20
:
ピーチ
:2012/03/26(月) 23:55:33 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
「なぁ・・・」
「ん?」
「さっき、何独り言言ってたの?」
「あぁ・・・」
誠人は、神様と話してた。と笑いながら答えた。
「神様?」
「うん」
「へぇ・・・頼りになるんだな」
「まぁ・・・いろいろ助けて貰ったしね」
二人で話をしながら帰り、誠人が時間を確認したのを見て、裕也が言った。
「7時過ぎになったら呼んでやるよ、それまで休んでろ」
「え?」
「でもさ・・・俺もついていっていい?」
誠人は少し迷ったが、裕也に霊感が無いことを確認し、ついて来る事をOKした。
「今が3時半。裕也こそ少し寝てたら?起きなかったら起こすからさ」
「え?いや、でも・・・」
「大丈夫。ついてくるって言っても眠かったら結局意味ないしさ」
「あ・・・あぁ・・・」
そう言って、誠人は7時を過ぎるまでずっと雑鬼達に状況を伺っていた。
「・・・裕也?行かないの!?」
「ん・・・?あっ!!」
裕也は、起きると同時にベッドから飛び起きた。
「わ、わりぃ!」
「いいよ、そんなに慌てなくても」
誠人が苦笑しながら言った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きま〜す
21
:
ピーチ
:2012/03/31(土) 13:35:01 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
「じゃあ、行こうか」
「あ、あぁ」
いつも。と言うより最近来るようになった所に行くと、いつものように雑鬼達が待ち構えていた。
「お〜!来たぞ〜!」
「誠秋〜!」
「今日は遅かったじゃん!」
誠秋、と言う言葉に過敏に反応して、誠人はすぐにそれを制した。
「だーかーら!今は誠人!」
「いーじゃんどっちでも」
「そーだそーだ!」
「俺らからすればどっちでも変わんねぇし!」
「そーゆー問題じゃ・・・」
雑鬼達はところで、と声を揃えて誠人に尋ねた。
「そいつ誰?」
「え?あ、あぁ、上江 裕也。俺が唯一陰陽師だって教えた友達」
「へぇ〜」
「よろしくな!」
「な!」
上から一鬼、刃鬼、諜鬼の順だ。
「あのな、俺いつもと同じで・・・」
「何も無かったぞ!」
一鬼が、誠人の言葉を遮った。
「そうか、ありがとな」
「おーよ!」
「お安い御用だぜ!」
「分かった分かった、じゃな」
誠人は、片手を挙げながら後ろを向いて、他を回っていった。
「・・・視えなかったけど、いい奴らなんだな・・・」
「え?」
「雰囲気見れば、大体分かった」
「・・・・・・」
「・・・?誠人?」
「来るな!!」
「はい!?」
誠人の怒号に、裕也は思わず勢い良く返事をしてしまった。
「・・・・・・・・・・・・」
誠人が、静かに胸の前で両手を合わせた。裕也は、それを見て疑問を抱いた。誠人が見据えているのは、誰がどう見てもただの闇だ。
「あ・・・!?」
突然、裕也の視界に一人の女の姿が映った。明らかに不自然な。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きま〜す
22
:
月波煌夜
:2012/04/07(土) 10:20:08 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp
>>ピーチ
月波だよー(^-^)v
ここまで読ませてもらいました☆
双子良いよね!設定凝ってるな〜(〃▽〃)
あと雑鬼いい子たちだ……。何故か可愛いイメージ←
駄文失礼しました(^-^)/
23
:
ピーチ
:2012/04/07(土) 10:39:03 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>
おっ!おぉっ!?読んでくれた!?
ありがとー*^0^*
よしっ!続きの更新も頑張るね!
24
:
風穏
:2012/04/08(日) 00:37:23 HOST:10.5.112.219.ap.yournet.ne.jp
風穏ですー^^
いつも応援していただいているのでのぞかせていただきました。
これからも頑張ってください。
25
:
神野計画
:2012/04/08(日) 05:07:01 HOST:ntfkok190145.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
いいえ、カス小説なんて誰も応援しないお。
26
:
月波煌夜
:2012/04/08(日) 10:16:36 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp
>>ピーチ
読んだよー!
楽しみにしてるから、更新頑張ってね(o^_^o)
27
:
ピーチ
:2012/04/08(日) 12:00:19 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
風穏さん>>お〜!読者が増えてくれた!!
ラジャー!頑張りまーす!風穏さんも更新頑張ってねー!
つっきー>>応援ありがとー!!頑張るぞー
うん!つっきーも続き頑張ってね!
28
:
ピーチ
:2012/04/08(日) 13:06:55 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
「禁!!」
・・・我ガ呼ビカケニ応エヨ・・・
いきなり、裕也の頭に直接声が響いた。
「・・・!?」
「ゆ・・・裕也・・・!?」
応エヨ・・・!オ前ノ望ミヲ聞キ入レテヤロウ・・・
「・・・おい、裕也に何した!?」
≪・・・何ヲシタ?≫
誠人には、この妖の本性が分からなかった。
≪・・・応エタナ・・・!≫
「・・・え?」
その直後、妖が口の中で何かを唱え出した。あまりに小さすぎて、その声を聞き取ることができなかった。だが、誠人はすぐにはっとなり、一歩後ろに下がった。瞬間。裕也に向かって、真っ黒な大蛇が飛び掛った。その途端、裕也が崩れ落ちるようにして倒れた。
「!?」
咄嗟に誠人が裕也の前に出て、裕也を庇ったが一瞬遅く、裕也と誠人の腕に、黒々とした文様が広がっていく。
「ゆ・・・」
≪・・・今日ハコレクライデイイダロウ・・・≫
「な・・・!?」
≪一週間ダ≫
「・・・え?」
≪一週間以内ニ・・・新シイ獲物ヲ探シ出ス、オ前ニ阻止スルコトガデキルカナ・・・?≫
そう言い残して、妖は闇に姿を消した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きまーす
29
:
燐
:2012/04/08(日) 13:59:06 HOST:zaq7a66fc0a.zaq.ne.jp
ピーチ>>はろはろ!
おおお!!!ピーチの小説が輝いて見えるのは気のせいだろうか。
陰陽師の話って…あんま知らんなぁ…。
中国と関係あるねんやろ?あれってw
ま、頑張ってくださいねノシ
30
:
ピーチ
:2012/04/08(日) 17:05:40 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐さん>>
おぉ!!久しぶり!!「キツネのお面」見てるよ〜!
うーん・・・良く知らないww←大バカ以上ww
ぜーんぜん!あたしの小説が輝いてたら燐さんの小説は神秘的作品だよ!!←真剣!
まぁ、アドバイスよろしくでーすww
31
:
燐
:2012/04/08(日) 18:44:26 HOST:zaq7a66fc0a.zaq.ne.jp
ピーチ>>おお!!
ありがとう!!←少しグロいけどなw
つーか、何でさんずけ?
32
:
ピーチ
:2012/04/08(日) 22:55:34 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐さん>>
あれ、グロい内に入るの??
・・・さんずけ以外で何と呼べば宜しい??
33
:
ピーチ
:2012/04/08(日) 23:25:24 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
「あれは・・・」
呪詛だ。そう言いかけて、誠人は裕也に目を向けた。
「い・・・っ!」
少し動いただけで、自分の腕に激痛が走る。
「裕也・・・」
誠人に比べると、負っている呪詛は少ない。が、裕也はあくまで一般の人間だ。放っておくと、その内死に至るだろう。
「・・・くそ・・・!」
自分が無力なばかりに、裕也を傷つけた。
「あれー?」
「どうしたんだ?」
「あ、誠人じゃん!」
突然、ついさっき聞いたばかりの声が聞こえた。
「あ・・・!」
雑鬼達だった。
「お、おい、お前ら!」
「へ?」
「・・・頼みがある・・・!」
数分後。目を覚ました時には、裕也は自分の部屋にいた。なぜかは分からないが、右腕を動かすたびに激痛が走る。
「ゆう・・・や?」
「・・・え?」
「ゴメン、俺の不注意のせいで・・・!」
「・・・?」
裕也は、何が何だか分からない様子だった。そんな裕也に対し、誠人はこう説明した。
「・・・あの妖の呪詛を受けたんだ・・・」
「・・・呪詛?」
誠人は、その先を説明しなかった。
「だから・・・お前が受けた呪詛を、俺の方に移す」
「え・・・はぁ!?」
「動かないこと。これが絶対条件」
誠人の言葉に押されて、裕也は思わず黙った。
「・・・上江 裕也の体内を蝕む闇の大蛇よ・・・この身体を形代とし、わが身に移れ・・・!」
誠人が呪文を唱え終わった瞬間、裕也の身体は楽になり、逆に誠人は、一気に痛みと苦しみが襲ってきた。
「い・・・つっ・・・!」
「ま、誠人!?」
「ゴメン」
「え?」
「俺のせいでこんな目に遭わせて・・・ほんとにゴメン」
その言葉を聞いて、裕也は慌てて否定した。
「い、いや、元々俺が勝手についていったのが悪いんだし・・・そんなに自分を責めるようなこと言うなよ、な?」
「・・・うん、あのさ」
「・・・?」
「俺・・・明日にでも家に帰るよ」
「―――え?」
「俺のせいだから」
そう言って、誠人は裕也にこう言った。
「あのさ・・・このこと、誰にも言わないでくれない?」
「はぁ!?」
「いや、自分でちゃんと話すからさ・・・頼む・・・!」
「で、でも・・・」
何を言っても一歩も譲らない誠人に、裕也が折れて、しぶしぶ了承した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きまーす
34
:
燐
:2012/04/09(月) 18:56:43 HOST:zaqdb739ebd.zaq.ne.jp
ピーチ>>何でもエエけどなw
…入らないのか…(-_-;)←ショーボン
てか、物語で式神とか出て来た?
そう言えばやけど…。
35
:
ピーチ
:2012/04/09(月) 19:04:51 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐さん>>
わぁぁぁぁぁ!!ごめーん!!
え?式神?出てきたような違うような・・・曖昧だなww←こーゆー者を大バカと申しますww
式紙なら出してるけど・・・今の段階で出てきたかな?
36
:
燐
:2012/04/09(月) 19:19:57 HOST:zaqdb739ebd.zaq.ne.jp
ピーチ>>ぬら孫で思い出したからさw
後、呪符もあったなw
37
:
ピーチ
:2012/04/09(月) 19:38:27 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐さん>>
ぬら孫ってぬらりひょんの孫?
呪符ってゆーか呪詛の類は扱ってるよー^0^
あたしは少年陰陽師が好きだぞー!←その影響で陰陽師書き出したww
38
:
燐
:2012/04/09(月) 20:00:45 HOST:zaqdb739ebd.zaq.ne.jp
ピーチ>>なぁ…ホンマさんずけ止めてw
そうだにょん♪
何や…呪粗って…。
つか、呪い系あんま知らんw
39
:
RINA
:2012/04/09(月) 21:09:05 HOST:KD121108061147.ppp-bb.dion.ne.jp
私も陰陽師好きですよ♪
40
:
ピーチ
:2012/04/09(月) 21:17:03 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐ちゃん>>
じゃー燐ちゃん?
呪詛ってねー・・・何か呪いの一種((汗←説明適当すぎ!
まぁ、あんまり深く考えらんないから・・・
RINAさん>>
わぁーい♪陰陽師好きがいたー!←アホww
RINAさんも何か小説書いてるの??
41
:
ピーチ
:2012/04/10(火) 18:53:59 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
「痛みや文様は、数日で消えるはずだから・・・」
「あ?あぁ、ありがとな」
「・・・うん・・・」
結局裕也は、そのまま夜が明けるまで結界で裕也の周りを囲んでいた。
「・・・起きてたんだ」
「あぁ、お前は寝てねぇだろ?」
「うん、ちょっとね」
その後少ししてから、誠人は自分の家に帰った。
「・・・ただいま・・・」
誠人の声を聞いた途端に、ばたばたと走る音が聞こえてきた。そして、明人が顔を出した。
「あれ?誠人、確か友達の家に泊まるって・・・?」
「・・・うん、ちょっと用事あったらしくてさ・・・」
「・・・どうしたんだ?何か顔色悪いぞ?」
その言葉を聞いた途端、誠人は何でもない、と言って自分の部屋へ向かい、そのまま鍵を掛けた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きま〜す
42
:
ピーチ
:2012/04/11(水) 21:59:13 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「お、おい?誠人?」
「・・・・・・・・・・・・・・・!」
誠人の左腕から、全身に言葉にならない激痛が走る。明人も誠人の異変に気付き、ドアを叩きながら大声で叫んだ。
「おい、どうしたんだよ?誠人!?」
「・・・・・・何でもない・・・ゴメン明人、少し一人にしてくれない?」
滅多に自分の意見を言わない誠人が今回に限って意見を言った。これはもうおかしい。
「・・・分かった、落ち着いたら出てこいよ?」
「・・・・・・・・・・・・うん・・・」
ドアの向こう側から、荒い呼吸を繰り返すような音が聞こえる。明人はしばらく自分の部屋にいたが、誠人は一向に部屋から出てこなかった。
「・・・なぁ、尭悸」
「?どうした?」
尭悸。その名を呼ぶことを許されるのは、尭悸の相棒であるとされている明人だけだった。
「・・・誠人の様子がおかしいんだ」
「誠人の?」
「あぁ・・・帰ってくるなり自分の部屋に閉じこもったり、部屋の中から変に荒い呼吸が聞こえてきたり・・・」
「・・・しばらくしたら良くなるんじゃないか?」
「・・・だな・・・」
尭悸の言うことも尤もなので、とりあえず夜まで待つことにした。
その頃誠人は、自分の中で暴れていた大蛇が一層激しく暴れだし、最初以上の苦痛が襲っていた。
「・・・・・・やめ・・・・・・!」
いくら陰陽師とはいえ、まだ十四歳。自分が受けた呪詛だけでも辛いはずなのに、裕也の受けた呪詛まで自分に移し、予想以上の痛苦が誠人に圧し掛かる。大蛇が暴れているのが分かるからこそ、恐ろしくもあった。
「・・・くっそ・・・・・・・・・・・・!」
リビングで、父親の守人が明人を呼んでいる声がする。しばらくしてから、明人の金切り声が聞こえてくる。
「・・・・・・・・・・・・五時か・・・」
あと二時間。誠人は、七時過ぎには自分の部屋の窓からでも外に出て、またいつものように雑鬼達に異常がないかを確認して、家族の誰にも気取られぬよう自分の部屋に戻る。
「誠人?大丈夫か?」
ドア越しに、明人の心配したような声が聞こえてくる。
「・・・・・・・・・・・・あぁ・・・大丈夫・・・」
「誠人!?」
明人は、ドア越しからでも誠人の異変に気付いた。明らかに、呼吸が荒くなっている。
「・・・・・・ほんとに大丈夫なんだ・・・」
頑として口を開こうとしない誠人に対し、明人は
「・・・分かった。でもさ、隠してることはいずれは明るみに出てくるぞ?」
とだけ言った。
「・・・じゃあ・・・明るみに出た時に全部話すよ・・・・・・」
「・・・あぁ・・・」
七時まで、あと一時間四十分。誠人は、痛みを感じないようにするため、軽く横になった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きまーす
43
:
ピーチ
:2012/04/12(木) 23:29:03 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「・・・と?誠人!?」
「・・・え?」
「大丈夫か?何回呼んだと思ってんだ!?」
時刻は七時を回っていた。あれから、無意識の内に眠っていたらしい。
「うん・・・ゴメン、寝てて気付かなかった」
「・・・あぁ」
「じゃあもう少し横になっとくから・・・」
「あのさ」
いきなり、明人が誠人の言葉を遮った。
「・・・?何?」
「・・・父さんから伝言」
「・・・え?」
「部屋に閉じこもってないで、たまには出て来いってさ」
そうだ。誠人は夏休みになると同時に裕也の家に転がり込み、帰ってからは、今のようにドア越しでしか話をしていない。
「・・・うん、体調戻ったらでるよ・・・」
「・・・じゃな」
「うん」
そう答えた直後、また大蛇が暴れだしたように肺が圧迫され、息をするのが困難になった。
「・・・・・・っ・・・!」
絶対に、ドアの向こうにいる明人に悟られることだけは避けなければならない。
「・・・行くか・・・・・・」
そう呟いて、誠人は部屋の窓から外に出て行った。
しばらく歩くと、いつものように、いつもの雑鬼達が顔を出した。
「おー!誠秋〜!」
「どうした?顔色悪いぞ?」
「も・・・もしかして呪詛のせい?」
上から一鬼、刃鬼、諜鬼の順だ。
「・・・あぁ、まぁそんな所かな・・・?」
「そ、そんな所ってお前・・・」
「そんな状態で無理したら・・・」
「最悪の場合・・・自分自身死んじまうぞ!?」
雑鬼達がわめいているが、誠人はその声頭が割れそうになった。
「・・・・・・!頼むから大声出さないでくれ・・・」
「あ・・・悪い」
「・・・・・・」
誠人は、雑鬼達には答えず、静かに両手を胸の前で組み合わせた。
「お・・・おい・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
誠人は何も答えず、その手を解いた。それを見て、雑鬼達はとりあえず安堵した。
「なぁ」
誠人が、いきなり何者かに話しかける。
「・・・そうか、分かった・・・」
そう言って誠人は、身体を右に左に動かしながら歩いていく。
「お、おい?誠秋?」
「今は誠人」
誠人が、間髪入れずに言い放った。
「・・・・・・今日はこの辺で終わり・・・・・・」
途端に、誠人の顔色が急変する。まるで、体内に酸素を取り入れることができないかのように肺の辺りを押さえて、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返している。
「・・・・・・お前ら」
「え?」
「・・・・・・絶対に誰にも言うなよ?このことは・・・」
「は・・・い・・・」
それだけ言って、誠人はふらふらになりながら来た道を戻って行った。
自分の部屋の窓を開けて、誰にも気付かれないよう、ベッドに入った。
「・・・・・・い・・・っ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きまーす
44
:
ピーチ
:2012/04/13(金) 23:32:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
次の日、誠人は久しぶりに部屋の外に出た。
誠人の顔色を見た途端、明人が声にならない声をあげた。
「ま・・・!?」
「・・・おはよう・・・」
一目で、誠人が無理に笑っていることが分かった。
「お前どうしたんだよ!?部屋にいる間、何してた!?」
明人の大声が、誠人の頭に強く響いた。
「あ・・・あんまり大声出さないでよ・・・!」
「あ・・・わりぃ・・・」
そこに、尭悸が姿を見せた。
「明人、何大声出して・・・・・・誠人!?」
やはり尭悸も、明人と全く同じ反応を示した。
その直後、また誠人の中で頭が割れそうな痛みと、言葉にならない苦しみが一気に襲ってきた。
「・・・う・・・・・・!」
小さな呻き声を上げ、倒れかける誠人を見て、明人と尭悸が慌てて誠人を支えた。
「・・・お前、ほんとにどうしたんだよ・・・」
「・・・・・・・・・大丈夫・・・だから・・・」
「バカ言ってんじゃねぇよ!こんな状態で大丈夫なわけねぇだろ!?」
それでも誠人は必死で誤魔化す。
「ま・・・だ・・・本調子じゃ・・・ないのかも・・・」
途切れ途切れに言う誠人を黙らせて、部屋へ運び、大人しく寝てるように言った。
誠人自身、きつそうなので動くことはないだろう。
「でも・・・なぜだ?」
「え?」
「誠人のあの苦しみようは普通じゃない。何か・・・あるのかも知れない」
「な・・・何かって誠人の部屋に?」
「ありえなくはないだろ?」
尭悸は、誠人の部屋に行くと言った。しかし、明人がそれを制した。
「あいつのことだ。多分また、鍵掛けてるよ」
「・・・じゃあ行ってみるか」
「へ?」
そう言って、尭悸は誠人の部屋の前まで行った。
「おい、誠人!大丈夫か?」
「・・・・・・神?」
誠人は、尭悸のことを神(しん)と呼んでいる。今は明人が“誠秋”の生まれ変わりの為、本名で呼ぶことをなるべく避けているのだ。
「あぁ。少しでいいから、開けてくれないか?」
しばらくの沈黙が過ぎた後、誠人が鍵を開けた。
「・・・ありがとな」
「・・・・・・何するの?」
先程のように、激しく呼吸が乱れているわけではないが、まだ顔色がかなり悪い。
「誠人?大丈夫か?」
「・・・・・・・・・うん・・・ゴメン、心配かけて・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「お、おい!尭悸!」
尭悸は、誠人の部屋を横目で見回している。
「・・・ない・・・」
尭悸がポツリと口にした言葉に、誠人は過敏に反応した。
「も、もう大丈夫だよ・・・」
「へ?」
「さっきみたいなのは、ほんとにたまにだからさ、大丈夫・・・」
「・・・お前、顔色まで誤魔化せるなんて思ってねぇよな・・・?」
「・・・!」
まぁいいか、と言った後、明人が誠人にこう言った。
「あのさ、お前社会得意だよな?」
「は?社会?」
「あぁ・・・分っかんなくてさ・・・」
明人が、決まりの悪そうな表情をしながら言った。
「・・・じゃあ、明日一緒にする?」
「教えろよ・・・」
「分かってる分かってる」
そこまで話していたら、尭悸が明人に声をかけた。
「おい、そろそろ出ないと、誠人も休めないぞ・・・誠人も、早く治せよ」
「うん・・・ありがと・・・」
パタン・・・と音がして、ドアが閉まった。その途端、誠人は崩れ落ちるようにして、ベッドに横になった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きまーす
45
:
ピーチ
:2012/04/14(土) 10:38:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
全身が引き裂かれそうな痛みが走る。
「・・・・・・と・・・」
横になっていても、めまいがするようになってきた。
「・・・今日は早めに行くか・・・」
そう言って、誠人は部屋の鍵を掛けて窓を開けた。そして、誰にも気付かれないよう音もなく降り立ち、いつものように雑鬼達のいる所まで歩いていった。
「あれ〜?誠秋、今日は早いじゃん?」
「どーしたんだ?」
「あぁ・・・ちょっとね・・・」
誠人は適当に誤魔化し、その後雑鬼達に問うた。
「それより・・・今日は異常なかったか・・・?」
「あぁ、たま〜に俺らと同じような妖見かけたくらいだぞ」
「・・・そうか・・・分かった・・・」
「お前、段々悪化してるんじゃないか?」
それを聞いても、誠人は表情も変えずにうん、と言っただけだった。
「・・・誠人、お前明日来んな」
「え?」
「そんな状態で下手に妖に殺されて見ろ、どうすんだよ?俺達」
雑鬼達が、自分の体調を気にしていることが一目で分かる。
「・・・うん、ありがとう・・・」
今日はもう帰る、と言ってから、誠人はこう付け加えた。
「もし変なの見つけたら、家に来てもいいから。家になら、神だっているからな?」
「は、はいっ!」
「・・・じゃあな・・・」
誠人が家に着いたのは、九時半を回った頃だった。
「・・・・・・まずいな・・・」
そう呟いた直後、誠人はすぐ傍の壁にもたれかかった。本格的に体力まで取られてきたようだ。
「まぁ・・・今日はとりあえず大丈夫だったからいいか・・・」
“早く治せよ”
誠人は、尭悸が言った言葉を思い出し、静かに謝った。
「・・・ゴメン、これ多分・・・この大蛇が消えない限り消えないよ・・・」
次の日、明人が誠人の部屋に押しかけてきた。
「・・・何でここでするの?」
「お前の体調がまだ完全じゃないから」
「大丈夫だよ・・・?」
「一応」
「・・・ゴメン・・・」
「いいって、別に」
早速、と意気込んで始めたものの、数分後には分からないなどとわめいている。
「・・・誠人の説明ってほんと分かりやすいよな・・・」
「・・・そう、だといいけど」
「あぁ、バカでも分かる」
と、明人は自分を指差して笑っている。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・おい、大丈夫か?」
「続き・・・終わらせようか・・・」
「・・・」
明人でも気付くほど、誠人の様子がおかしい。そう思いながらも、誠人の部屋に不審なものがないか、目だけで徹底的に調べた。しかし、これと言って怪しいものはなかった。
「・・・で、こうなる。分かった?」
「え?あ、あぁ・・・」
「じゃあとりあえず終わりだね・・・」
「ありがとな」
「うん・・・・・・じゃあ、俺少し寝てるね」
「あ?あぁ・・・早く治せよ?」
いたずらっぽく明人が言った。
「・・・うん・・・分かってる・・・」
誠人は、そろそろ限界に近づいていた。明人が部屋を出た瞬間、誠人はベッドに倒れ込んだ。少しでも痛みを和らげようと試みているが、痛みは治まるどころか、次第に増してく。
「・・・大丈夫だ・・・!」
自分自身に言い聞かせながら、痛みを堪えて立ち上がる。昨夜、雑鬼達には出てくるなと言われたが、そういうわけにも行かない。以前の妖が、予告をしたばかりなのだ。“一週間以内に次の獲物を探し出す”と。
誠人には、理解ができなかった。なぜ、わざわざ“獲物”なんかが必要なんだろう?そんなことを考えている内に、急に眠くなって、そのまま無意識の内に眠ってしまった。
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続きまーす
46
:
燐
:2012/04/14(土) 10:58:28 HOST:zaq7a66c598.zaq.ne.jp
ピーチ>>私、ピーチを誤解してたわ。
ずっと半年間ぐらい誤解してたわ。
ホンマ、ごめんm(__)m
いきなりこんな話してごめん。
実はさ…ずっとピーチが完璧主義者だって思っててん。
でも、ホンマはそんな事ないんやって分かったわ。
ピーチは自分の欠点とかも素直に認めてるし、応援するわ!!!
後、アドバイスあったら何でも言うてな!!!
47
:
ピーチ
:2012/04/14(土) 16:43:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐ちゃん>>
ご、誤解!?あ、あたしは完璧主義者なんかじゃないよ〜!←むしろテキトー主義者ww
応援してくれる?ありがとー!←話変えるな!
燐ちゃんも更新頑張って!あたしも頑張るからさー!
にしても・・・半年間も・・・
・・・あたし、何か勘違いされることしたっけな?
48
:
ピーチ
:2012/04/14(土) 17:31:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
誠人が起きた時、時計を見ると、七時半を回っていた。
「・・・どうするかな・・・今日は・・・」
家の中からなので、多少の誤差はあるだろうが、基本的には妖気も感じないので、今日は止めておくことにした。
「おーい、誠人ー!」
「え?」
「父さんが呼んでる」
「・・・?分かった、すぐ行く」
部屋を出て、父の守人がいる部屋へ行くと、守人が真剣な表情で誠人を呼んだ。
「・・・どうしたの?」
「お前最近、変に体調崩してるみたいだな?」
誠人は一瞬、耳を疑った。なぜ、そのことを?
「明人から聞いた」
「・・・いや、あれはたまに起こる発作みたいなものだから・・・」
「・・・お前は相変わらずだな・・・」
「え?何か言った?」
「いや、何でもない・・・大丈夫なんだな?」
「・・・うん」
そう答えると、戻っていいと言われた。
「・・・何だったんだ・・・?」
「誠人?」
「え?あ、はいっ!?」
いつ来たのか、後ろに明人がいた。
「あ、明人!?」
「・・・何か失礼だぞ、お前・・・」
「あ、ゴメン!いきなり声がしたから・・・」
必死で言い訳をしている誠人を見て、明人は一人で大笑いしている。
「おもしれー、誠人!」
「・・・明人も明人で失礼じゃない・・・?」
誠人のその言葉を聞いても、明人はまだ笑っている。
「わりーわりー・・・腹いてぇ・・・」
「・・・笑いすぎで?」
さすがに、誠人の視線が冷たくなっている。
「・・・悪い」
今度は、明人も真面目に謝った。
「まぁ、別にいいんだけどさ」
口先でそう言っても、誠人はまだ機嫌が悪そうだ。
「でもさ」
唐突に明人が言った言葉に、誠人は何?と聞いた。
「いや、お前にも笑われたくないこととかあるんだ、と思って」
「・・・はぁ?」
「あのさ、誠人って自分の感情とか気持ちとか、表に出すこと少ないだろ?」
「・・・そう?」
「だから以外だなって思って」
明人の言葉に、誠人はそうかなぁ・・・と思案している。
「ま、それは置いといて」
明人が、急に話題を変える。
「・・・?どうかした?」
「・・・俺が言ったわけじゃねーし、父さん達に勝手に決められてさ」
「何が?」
「・・・今夜から夜に見回り行けって言われた・・・」
誠人は一瞬、頭の中が真っ白になった。
「・・・・・・え?」
「・・・どうした?」
「あ・・・いや、何でもない」
敢えて平静を装っているものの、自分一人だったら、まず雑鬼達に報告に行くだろう。
「まぁ、今までの妖は他の誰かが倒してくれてたみたいだけど・・・」
最近妖が多いから、と明人と尭悸を送ることにしたのだ。
「で、その事なんだけどよ、一緒行かねぇ?」
「は?」
「頼むよ・・・俺一人だと、尭悸に何かと文句言われそうだからさ・・・」
誠人は、そういう問題か?と思いながらもとりあえずいいよ、と返事した。
「あ〜、助かったぁ・・・サンキューな!」
顔の前で両手を合わせる明人を見て、何時ごろ行くの?と聞いたら、案外あっさり答えが返ってきた。
「十一時頃に行けってさ」
「じゃあ、あと約二時間か・・・明人、寝てる?」
「え?あぁ、俺起きれないからいいや」
「でも・・・眠くなったら終わりだよ?妖相手にするわけだし」
時間になったら起こすから、と言って、明人に仮眠を取らせた。
しばらくしてから、誠人が明人を起こし始めた。
「明人?尭悸に文句言われても知らないよ?おーい・・・明人!!」
「うわっ!?」
耳元で大声を出された明人は、耳を塞ぎながら時間を確認した。
「・・・ぴったり・・・」
「俺はもっと早くから起こしてたから」
「分かってるって」
苦笑しながら、動きやすい服装に着替えた明人達は、尭悸を呼んで家の外に出た。
「全く・・・何で誠人まで連れてくる・・・体調崩してるの知ってるくせに・・・」
と、尭悸が恨みの眼差しを明人に向けている。明人は明人で、知らん顔をしている。
「まぁまぁ、俺がいいよって言ったんだからさ・・・」
必死に尭悸を宥めようとする誠人を見て、尭悸は誠人に問いかけた。
「ところで誠人、お前もう大丈夫なのか?」
「え?」
「体調だよ」
「あぁ・・・うん、なんとか」
薄く笑みを作り、尭悸を安心させようとしているのが手に取るように分かる。
「そうか・・・あまり無理するんじゃないぞ?」
「うん・・・分かってる・・・」
そう答えた後で、誠人の頭の中に一つの疑問がわいてきた。
最近、と言うより、ついさっき辺りから。全く痛くなくなったのだ。不思議なくらいに。
「用心しなきゃ・・・な・・・」
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続きまーす
49
:
燐
:2012/04/14(土) 21:47:51 HOST:zaq7a66c598.zaq.ne.jp
ピーチ>>了解(^^ゞ
てかさ、ピーチって私の現れるスレに全部書き込んでない?
まさかストーカー?←何自意識過剰になってんだw←違うと思うケド…。
それに不審を感じたんだよね…。
てか、ピーチは私に憧れを抱いてたりする?
50
:
ピーチ
:2012/04/14(土) 22:29:36 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
家を出てしばらくすると、急に尭悸が辺りを警戒し始めた。それとほぼ同時に、誠人も異様な空気を感じ取った。
「・・・・・・」
「・・・?神・・・?」
「尭悸?」
「来るな!!」
「え?」
声をあげると同時に、空中から何かが飛んできた。
「うわっ!?」
「!?」
尭悸の周りを包む空気が変わった。今までは、多少の余裕はあった。しかし、そろそろ何かが出てきてもおかしくはないのだ。
≪何者ダ・・・!?≫
「それはこっちの台詞だ。何者だ!?」
≪ソノ者・・・ヨコセ・・・≫
そう言った直後。誠人に向かって、空間を切り裂いた何か、異様なものが飛んでいった。
「・・・っと・・・」
≪ソノ者・・・我ラガ主ニ捧ゲル贄ニ相応シイ・・・≫
「・・・主?」
誠人の言葉に敏感に反応した妖が、数体の妖を送りつけてきた。誠人はそれを見て、条件反射で逃げ出した。まさか明人達の見ている前で堂々と祓う事なんか、できるわけがない。
「あ、おい・・・誠人!?」
ほんの少しだけ、明人の声が聞こえた。しかし、誠人の耳にはそれ以上、何の声も届いてはいなかった。
「・・・明人、先に俺がこっちを片付ける。それが終わってから誠人を追うぞ!」
「あ、あぁ!」
一方その頃、誠人は全くと言っていいほど人気のない所に、妖達をおびき寄せた。
「・・・ここで十分だ」
そう言うと、誠人の口元が微かに動いた。
「『臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前』!!」
咄嗟のことで呆然とする妖達を見て、静かに呟いた。
「・・・俺だって、無能なわけじゃないだろ?」
言葉もなく消えていく妖達を眺めながら、はっと我に返り、急いで来た道を戻って行った。
誠人が妖達を倒した頃、尭悸は未だに苦戦していた。
≪アノ者ヲヨコセ・・・ソウスレバ、オ前ラノ事ハ見逃シテヤロウ≫
「ふざけるな!!」
尭悸が怒鳴り返した直後。何か、小さい声が聞こえてきた。
「・・・!?」
振り返ると、全身黒い服に身を包んだ子供の姿を捕らえた。
「・・・『臨・兵・者・皆・陣・烈・在・前』!」
≪ナ・・・!?≫
あまりに突然のことに驚いた妖は、小さく捨て台詞を吐きながら、地面に消えていった。
「あ・・・っ!」
「明人ー!!」
妖が消えた直後、誠人が戻ってきた。
「あ・・・れ?」
「・・・?どうしたの?」
明人と尭悸が振り返った時には、子供の姿は跡形もなく消えていた。
「・・・何でもない、帰るぞ」
「・・・二人ともさ、怪我とかしてないよね?」
「んなことお前が心配する立場か!?」
「・・・・・・違います」
誠人は、分かってる。などと言ったら後々どうなるか分かっていたので、敢えて素直に答えた。
「とにかく帰るぞ・・・誠人」
「え?」
「お前・・・帰ったら守人に結界かけてもらえ」
「・・・えぇぇぇ!?」
冗談じゃない。そんなことをしたら、腕の文様のことがばれるのは時間の問題。それだけは阻止しなければならない。
「・・・・・・分かった・・・」
そう答えて、帰ってから誠人は守人の所へ行った。正確には行かせた。自分に似せた式紙に。
「・・・厄介なことになったな・・・・・・」
そう呟いた直後。突然、また呪詛の痛みが暴れだした。
「・・・冗談・・・だろ・・・!?」
決して冗談なんかじゃないことくらい、自分自身が一番良く分かっていた。それでも明人や尭悸、最近は守人にも、絶対に悟られてはいけない。そう思ったからこそ、今まで体調を崩したふりまでして誤魔化し続けてきたのだ。自分自身をも。
「誠人ー?いるかー?」
ドアの外から、いつもの明人の声が聞こえてきた。誠人は、呼吸を整えて返事をした。
「うん、何?」
「ちっと入っていい?」
「・・・うん、別にいいけど・・・?」
かちゃ、と音がして、誠人が部屋の鍵を開けた。
「父さん、何て言ってた?」
「さぁ?父さんに聞いてみれば?」
「・・・お前、底意地悪いな・・・」
「・・・そう?」
誠人は、あくまでもこれが普通なのだ。それをいきなり底意地悪い、などと言われてもそれが疑問として残るだけである。
「ま、いーや・・・あのさ、尭悸にもう誠人は連れてくるなって言われた」
「あ・・・そーなんだ・・・」
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続きまーす
51
:
ピーチ
:2012/04/14(土) 22:41:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐ちゃん>>
あぁ・・・確かに殆ど行ってるかも!←今さら!
でもねー、あたしの場合は、結構好きなジャンルかもなーって思った所に向かってるだけだよーww←どこに向かう!
案外かぶってるのかもねー好きなジャンルとかが・・・
憧れ・・・いろんな人にあるよ!燐ちゃんとかつっきーとか傷羽さんとかねこことかも尊敬してる人だしーww
あたしが行ってる所は基本的に好きなジャンルとか面白そうな題名の所行ってるだけーww
52
:
燐
:2012/04/14(土) 22:47:43 HOST:zaq7a66c598.zaq.ne.jp
ピーチ>>そかそか。
それならエエねん。
てかさ、今更こんな話ピーチにするけど、
完璧主義者ってどう思う?
53
:
ピーチ
:2012/04/14(土) 23:02:55 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐ちゃん>>
完璧主義者か・・・
うーん・・・何か固すぎる印象もらいそうだよねー・・・←ちなみにあたしはアホ♪
54
:
ピーチ
:2012/04/14(土) 23:03:50 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐ちゃん>>
完璧主義者か・・・
うーん・・・何か固すぎる印象もらいそうだよねー・・・←ちなみにあたしはアホ♪
55
:
ピーチ
:2012/04/14(土) 23:13:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「まぁ、いいんじゃない?」
「何で!?誠人付いてきたくないの!?」
「そういうわけじゃなくてさ・・・」
まぁまぁと宥める誠人を横目で見ながら、明人は愚痴をこぼし出した。
「大体さ、俺昨日あの場所にいただけでそれ以外何もしてないんだぞ!?何で俺まで巻き込まれるわけ!?」
「・・・えーっと・・・」
言葉を探している誠人を見て、明人がお腹を抱えて笑っている。
「冗談冗談!誠人ってほんとおもしれーよなー」
「ま・・・た・・・!?」
「あんまり誠人をからかうなよ・・・」
「え?」
二人が同時に振り向くと、なぜか裕也が部屋の前に立っていた。
「ゆ、裕也?」
「あ・・・じゃあ俺、戻るな」
「あ・・・うん、ゴメン」
「いいよ、話ならいつでもできるし」
そう言って、明人は部屋から出て行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きまーす
56
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 00:03:49 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「ゴメンな、いきなり来て」
「え?いや、別に構わないんだけど・・・」
「それより」
突然、裕也の顔が、真剣な表情に変わった。
「お前さ・・・大丈夫なのか?」
「え・・・?あ、あぁ・・・うん、大丈夫」
誠人は、いつもの如く。薄く笑みを作りながら答えた。
「裕也こそ大丈夫なの?」
「あぁ、俺は次の日には痛みも文様みたいなのも消えてたよ」
「・・・良かった」
「え?」
突然、誠人の口から出てきた言葉に、思わず裕也が聞き返す。
「・・・・・・俺のせいであんなことになったからさ・・・」
「気にすんなよ?」
「え?」
「あれは、俺が勝手についていった結果だからさ」
「・・・うん」
「・・・あのさ、今度またうちに泊まってかね?」
「は?」
誠人は、いきなりの質問に、は?としか答えられなかった。あまりに唐突過ぎたからだ。
「できれば・・・今から」
「・・・今から・・・?」
「頼むよー・・・」
「・・・うん、いいよ」
「マジ!?良かったぁ・・・」
「ゴメン。ちょっと待ってて」
そう言って、誠人は一度、部屋を出て行った。
「・・・?」
少ししてから、明人の金切り声が聞こえてきた。それを聞いて、裕也はピンときた。
「ゴメン・・・って言うかさ、本気で今から・・・?」
「・・・あぁ・・・」
「分かった。じゃあ行こう」
誠人の家を出て、三十分ほどしてから、裕也の家に着いた。
「・・・お邪魔しまーす・・・」
「いーよ、誰もいねーし」
「・・・まだ帰ってないの?」
「あぁ、長くて一年、帰ってこねぇよ」
「・・・一年・・・」
今の誠人からすれば好都合かもしれない。この状態だから。
「・・・夜にな」
「うん」
「何か変な影が浮き出て来るんだ。“あの者をよこせ”とかなんとか言いながら」
「・・・・・・・・・!?」
「・・・?誠人?」
「あ・・・いや・・・」
裕也には、夜になったら様子を見てくる、とだけ言った。
「もちろん、裕也の周りには結界張っておくから」
「・・・何か悪いよな、俺・・・」
「大丈夫だよ、確認だけだからさ?」
「・・・あぁ」
その後しばらく話をしていたが、七時を回ると、誠人は準備を終わらせてさっさと行ってしまった。
音も無くいつものように歩いていると、いつものように雑鬼達が押し寄せてきた。
「誠秋ー!!!」
「今は誠人!」
しかし雑鬼達は、怒鳴り返す誠人を見てもそれどころじゃない、と言うような慌てた口調だった。
「お、お前の弟ってあれか!?」
「あの化け物つれてたから、すぐに分かったぞ!!」
「何であいつがお前だって間違われるんだよ!?」
上から一鬼、刃鬼、諜鬼の順だ。
「何でって・・・明人の方が霊力が強かったから・・・だよ?」
「絶対おかしい!」
「そーだそーだ!」
「ちょっと待て・・・間違っても変なこと言うなよ?絶対に俺の名前出すな?」
「誠秋はいいんだな?」
「いい訳ないだろ!?」
そこまで言った後、誠人はつい雑鬼達のペースに乗せられていることに気付いた。
「・・・なぁ?」
「え?」
「お前ら最近・・・」
言いかけた時。反対側から異様な空気と、凄まじい神気のような澄んだ空気が辺りを支配した。
「・・・これ・・・!?」
その後は言葉が続く前に、全力で駆け出していた。
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続きまーす
57
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 00:25:32 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「・・・やっぱり・・・!」
≪アノ者・・・ヨコセ・・・≫
「やなこった」
尭悸が言った言葉に対して、妖はこんなことを言い出した。
≪ナラバ・・・オ前デモイイ・・・≫
「!?」
「・・・え?」
瞬時に、明人に向かって空間を切り裂いたものが飛んでいった。それを見た尭悸が、咄嗟に炎で明人の周りを囲む。
誠人は誠人で、屋根に上って明人達の様子を伺っていた。
「・・・・・・」
少しの音も無く静かに降り立ち、すぐに裕也のもとへと駆け出した。
「あ・・・・・・どうした?誠人?」
「・・・あのさ、明日から当分、絶対に家から一歩も出るな」
「へ?」
「下手したらお前が殺られる・・・」
「・・・」
裕也は、誠人が自分のことを心配していることに気付き、静かな口調で分かった、と答えた。
「ここら辺にいるのは・・・基本的に害はないから、視えてもあんまり気にすんな」
「あぁ、分かってるよ」
その言葉に答えず、誠人が外に出て行った。そして、一分ほどしてから戻ってきた。
裕也の目には、さっきよりも顔色が悪くなったように見えた。
「ま・・・さと?」
「今、この家全体に結界張ったから。その結界が壊されるまでは、絶対・・・雑魚一匹入れない」
「・・・結界?」
「うん、でもいつまで持つか分かんないから・・・こまめに修復はするつもりだけどね」
「あんまり・・・無茶すんなよ?」
裕也の言葉に、誠人が小さく目を見開いた。しかしすぐに、
「分かった・・・」
と答えた。
そう答えた途端、急に全身が痛くなった。
「―――っ!」
「え・・・!?おい、誠人!?」
「だ・・・いじょうぶ・・・」
激しく肩を上下させながら呼吸をしている誠人を見て、厳しい口調で言った。
「嘘つくなよ?そんなに息切らせて、大丈夫なわけねぇだろ?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きまーす
58
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 07:39:32 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「・・・何とかなるって、大丈夫だよ・・・」
「・・・お前さ、ほんと嘘吐くの下手だよな・・・」
裕也が、苦笑しながら言った。
「まだあの・・・呪詛?が抜けてねーんだろ?」
「え?あ、いや・・・」
「今さら誤魔化して何になる?」
裕也が笑いながら、でも、と言った。
「悪いな・・・わざわざ結界張る力まで使わせちまって」
「大丈夫だよ・・・気にしなくても」
「嘘吐くなよ?」
「分かった分かった・・・」
小さい声で答える誠人を見て、裕也が
「何か・・・明人の気持ちが分かる気がする・・・」
と言った。
「え?」
「いや、誠人ってさ、からかい甲斐あるじゃん?」
「・・・・・・」
その言葉を聞いて、誠人が蒼い顔をさらに蒼くした。
「じゃあ・・・裕也も明人と同じように俺で遊ぼうと?」
「・・・何もそこまで言ってねぇし・・・」
「・・・ゴメン、この家ってさ・・・一人になれる場所とかある?」
「え?」
突然、何を言い出すかのと思ったが、それを聞く前に誠人が倉庫を使っていいかと聞いてきたので、裕也は条件反射で答えた。
「べ、別にいいけど・・・」
「・・・ありがとう」
「あ、あぁ・・・?」
誠人はその言葉を聞き、倉庫に向かった。
「・・・・・・これでいいかな・・・」
そう呟くと、自分に似せた式紙を作り、裕也の所へ行くように指示を出した。そして、自分はそのまま家の外に出て行った。
「おーい!誠秋ー!」
「助けてくれー!」
「殺されるー!」
「え?」
突如聞こえてきた、聞き慣れた声の方向を振り向くと、やはりあの三匹が全力で誠人の方向かってきた。
「え・・・お前ら何したの!?」
「知るかー!」
「気付いたら追っかけ回されてたんだよ!」
「頼む!誠秋の生まれ変わり、誠人!」
なんとも丁寧なことだろうか。雑鬼達は“生まれ変わり”だけを綺麗に大合唱したのである。
「今の俺は・・・誠人だよ・・・前後に変な言葉付けるな」
そう言いながら誠人は、雑鬼達を追ってきた妖の顔を見た。姿かたちは普通の鳥のそれだが、鳴き方が全く別の生き物を示していた。が、その生き物までは、誠人には分からなかった。
「・・・面倒だな・・・」
誠人がそう言った直後、何かが勢い良く燃えた。鳥妖の羽に命中したからだ。
「な・・・なぁ誠人?」
「ん?」
「今の・・・燃えたやつ何?」
「・・・神札」
「え?」
「『臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前』!!」
誠人が、真言密教の魔除の九字を唱えながら、手刀で格子を切った。そして、その力を格子状にして鳥妖に思い切りぶつけた。途端に鳥妖が暴れだす。しかし格子に囚われ、為す術もないまま消えていった。
直後。誠人が地面に崩れ落ちる。
「お、おい!大丈夫か?」
「あんまり無理すんなよ?」
「・・・大丈夫だよ、ちょっと力使いすぎただけ・・・」
「と、とりあえず!今日はもう帰れ!」
「そ、そーだ!俺らは何とかして逃げ延びるからよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
誠人は、何も言わずにその場を離れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きまーす
59
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 08:03:44 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
次の日、誠人は裕也に言った。
「今日、どうしても行かなきゃいけない所あるから・・・」
「あぁ、分かった」
「え?」
「仕方ねーだろ?まぁ、視えないから何とかなるって」
「・・・俺の式紙置いていくから・・・」
誠人の言葉を聞いた裕也は、慌てて
「い、いや!いくら何でもそこまでは・・・」
と言った。だが誠人は
「大丈夫。そんなに怖くないから」
と言い返した。
「・・・そーゆー問題じゃなくて・・・」
「俺は」
突然、誠人が裕也の言葉を遮った。
「え?」
「誰も傷付けたくない・・・傷付けたらいけないんだ」
「・・・・・・!?」
突然の誠人の言葉に、裕也は言葉を失った。
「じゃあ・・・ゴメン」
「あ?あぁ・・・」
誠人が家に帰る途中、何体かの妖を見かけたが、全員、昨日ほどの妖気は放っていなかった。
「ただいま」
それだけ言って、誠人は自分の部屋に向かった。それを、タイミング悪く尭悸に見られていた。しかし、誠人はそんなこと、全く気付かなかった。
「・・・・・・」
誠人は自分の部屋に行き、記憶と本とを頼りに、鳥妖のことを調べていた。その際、調べる基準として、昨日倒した鳥妖から入手した羽と本とを見比べながら、小さく声をあげた。
「・・・!あった・・・」
名前は愕。姿かたちは鳥のようだが、鳴き声はこの世に存在しないもの、と記されていた。
「あれ・・・?何だこれ・・・!?」
誠人は、愕の説明が書いてある下の所に目を付けた。
「・・・何体もの妖を襲い、霊力を高めた・・・!?」
それを見た時、誠人の脳裏に雑鬼達が浮かんできた。咄嗟に、蝶の形をした式紙を作り、窓から飛ばした。異常がなければ、数分後には戻ってくる。
「・・・妖を襲う、か・・・」
そんなことを考えていたら、式紙が戻ってきた。どうやら、異常はなかったようだ。
そう思うと、今まで無意識に緊張して、張っていた肩の力が、一気に抜けた。
「誠人?いるか?」
突然、尭悸の声が聞こえてきた。
「え?あ、うん」
「入るぞ」
そう言ったかと思ったら、勝手にドアを開け、勝手に部屋に入ってきた。
「・・・?どうしかした?」
誠人は、平静を装いながら尭悸に尋ねた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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60
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 10:00:03 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「この間、明人と二人で話したんだ」
「・・・何を?」
「・・・・・・お前が・・・」
尭悸はそこまで言って、
「いや、何でもない」
と言い換えた。
「・・・?分かった・・・」
誠人は、何か納得のいかない素振りを見せながらも、尭悸が部屋から出て行くのを、静かに見送った。
「まさか・・・な・・・」
誠人は、しばらくしてからもう一度、式紙を飛ばした。
「異常なし・・・」
それから後は、また昨日のように本を読みながら今まで見た妖の名前や説明を見ていた。
そして、いつものように七時を回ってから家を出た。誠人はその時、式紙を置いていなかった。すれ違いで、尭悸と明人が誠人の部屋に行ったのだ。
「・・・あれ?誠人?」
「やっぱりな・・・」
「やっぱり・・・って・・・」
「あぁ・・・追うぞ!」
「わ、分かってるよ!」
その頃誠人は、いつもの如く雑鬼達に様子を聞いていた。
「あ・・・あいつが・・・」
「・・・あいつってまさか・・・」
「昨日の奴だよ!あいつの仲間が俺達の仲間を・・・!」
「・・・愕・・・!」
≪我ラノ名ヲ知ッテイタカ・・・≫
「!?」
誠人達が声のした方を向くと、昨日の鳥妖、愕が姿を現した。
「・・・!」
≪ソンナ妖ドモナンカヨリ、オ前ノ方ガヨホド力ガアルヨウニ見エル・・・≫
愕がそう言った瞬間、誠人が地面に崩れ落ちた。
「誠人!?」
「どうした!?」
≪・・・未ダ呪詛ヲソノ身ニ宿シテイタカ≫
不気味な笑みを作りながら、その羽に黒く、大きな玉を作り出した。
≪オ前ニコレガ当タルトドウナルト思ウカ?オ前ノ身ニ宿ル呪詛ガ力ヲ増シテイキ、最終的ニオ前ハ死ヌ≫
「・・・冗談じゃないね、俺をそう簡単に倒せるわけねぇだろ?」
≪威勢ノ良サダケハ認メテヤロウ・・・ダガナ、コチラモ仲間ノ仇を討タネバ気ガスマヌ・・・≫
「『臨・兵・闘・者・皆・前・烈・在・前』!!」
真言密教を唱えながら、九字を切る。そして、手で格子を切った。しかし、昨日ほど上手くはいかず、惜しい所で逃げられた。
≪オ前ノ術ハ昨日全テ見テイル・・・避ケルコトナド造作モナイ・・・≫
そう言葉を洩らしながら、愕が黒い玉を投げつけてきた。誠人は、条件反射でそれを避ける。
「くそ・・・!」
誠人は咄嗟に、神札を放った。その神札が、愕の両羽を捕らえ、瞬時に焼き払う。
≪!?≫
突然のことに、さすがの愕も一瞬反応が遅れ、愕の両羽が灰と化していく。
≪オノレェ・・・≫
「『臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前』!!」
その一瞬の隙を突いて九字を切り、手で格子を切った。今度は、愕も逃げる暇がなく、しっかりと誠人の術中にはまった。
≪・・・我ガ消エタ所デ、マタ別ノ妖魔ガ姿ヲ現スゾ・・・≫
「・・・・・・消え失せろ・・・この地に害を為すものよ・・・」
その言葉を最後に、誠人は愕を消し飛ばした。しかしその直後、また別の妖魔達が現れた。
「な・・・っ!?」
≪今、愕が言ッタダロウ?他ノ妖魔ガ現レルトナ・・・≫
「・・・・・・お前らの目的は何だ?」
その言葉に、妖魔達はこう答えた。
≪オ前ノ力≫
「・・・え?」
≪オ前ハスバラシク高イ霊力ヲ持ツ者・・・オ前ヲ主ニ献上スル・・・≫
「・・・お前らの言ってる主って誰だ?献上ってその主とやらに・・・俺をか?」
≪オ前ニハ知ル必要ノナイコトダ・・・≫
妖魔達が、一斉に誠人に迫ってきた。誠人は、無意識に後退ろうとしたが、なぜか足が動かなかった。
「・・・」
もう一度、神札でその場を凌ごうとしたが、一瞬遅く。妖魔達に囲まれた。
その直後、後方にいた妖魔達が悲鳴に似た声をあげた。
「え?」
≪!?≫
続きまーす
61
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 10:42:54 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
後方の妖魔達が消えて初めて、視界に火の鳥が姿を見せた。
≪ナ・・・何ダ!?ドウシタ!?≫
「あれ・・・は・・・!?」
誠人はあの鳥に見覚えがあった。そう尭悸が放つ、あの鳥だ。
「・・・焼き払え、あの邪魔な妖魔達を」
後方の妖魔の更に後ろから、声が聞こえてきた。
≪ナ・・・!?≫
とうとう、前方の妖魔の所まで火の手が回ってきたが、その火が円形となり、誠人を包み込んだ。
「・・・やっぱり・・・」
妖魔を焼き払ったのも、誠人を火の盾で守ったのも、全て尭悸だったのだ。
「・・・神・・・」
「この間、明人と話したって言ったろ?」
「え?あ・・・うん・・・」
明人が、尭悸話を続けるかのように付け足した。
「その話の内容が、俺とお前を尭悸達が間違えたんじゃないかってことだったんだ」
「おーい!」
「誠秋ー!」
タイミング悪く、その時駆け寄ってきた雑鬼達が誠人のことを“誠秋”と呼んだ。
「あ・・・!」
「・・・やっぱりな・・・」
「あ、いや・・・」
言い訳をしようとしている誠人を見ながら、明人が心配そうに尋ねた。
「怪我してねーか?」
「あ・・・うん・・・」
「誠秋・・・?」
「大丈夫か?」
「今は誠人だって!」
条件反射で言い返した誠人を見て、雑鬼達が小さくなった。
「だってさぁ・・・」
「術の使い方とか、誠秋そのものだったもんなー・・・」
「それでも今は誠人!」
誠人と雑鬼達のやり取りを聞いて、尭悸の頭の中に一つの疑問が浮かんだ。
「お前ら・・・誠人のこと気付いてたのか?」
「え?」
雑鬼達だけでなく、誠人まで聞き返していた。
「あ、あぁ!」
「一番最初は逃げ回ってたけどな!」
「独特の気配や力ですぐ分かったよ!」
上から一鬼、刃鬼、諜鬼の順だ。
「・・・そうか」
「ところで誠人、呪詛大丈夫なのか?」
「あ・・・!?」
「・・・呪詛だと?」
「あ、いや・・・別に・・・」
「もーいいじゃん、どーせばれるのだって時間の問題だし」
「左腕の所」
左腕、と言うのを聞いて、尭悸が誠人の左腕を掴みあげた。
続きまーす
62
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 11:42:05 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「痛い痛い!」
「・・・え?」
尭悸は、いや、雑鬼達も一瞬目を丸くした。確かに尭悸は、誠人の“左腕”を確認したのに、何もなかったからだ。
「な、何で?」
「い・・・たいって・・・」
「本当に左なんだよな?」
尭悸が、雑鬼達に尋ねる。
「あ、あぁ・・・」
「確かに左だったよ・・・」
それを見た誠人の口元が、微かに動いた。
「あのな、お前ら・・・呪詛を受けたのは俺自身じゃなくて、俺が放った式紙!まぁ、形代だったし、消したから良かったけど・・・」
「え?」
「式紙!?」
「あぁ・・・だから大丈夫だよ・・・」
誠人が苦笑しながら言った。
「・・・じゃあ帰るぞ」
大丈夫なら、と言う口調で、尭悸は誠人に帰るよう促した。
「あ、先帰ってて。少しこいつらに話あるから・・・」
「じゃあ俺も・・・」
「だめだ」
「え?」
「今、明人が一人になったら確実につぶされる・・・」
「・・・分かった」
「すぐ追いつくからさ」
「あぁ、行くぞ。明人」
「あ?あぁ!」
明人達が帰った後、誠人の左腕に黒々とした文様が浮かび上がってきた。
「お、お前それ・・・!?」
「あぁ、このことで頼みがあるんだ」
「え?」
「あのさ、もう少しだけこのこと黙っててほしいんだけど・・・」
「はぁ!?」
「せめて今月末まで、な?」
「・・・分かったよ・・・」
何を言われても、頑として譲らない誠人に根負けして、最終的に誤魔化すと約束した。
「じゃあ、また明日な」
「あぁ」
誠人が明人達に追いついたのは、その数分後だった。
「あ、いた」
「あ、誠人」
二人が全く同じタイミングで呟いた。
「誠人、大丈夫か?」
「うん」
「なぁ、誠人?」
「・・・はい?」
尭悸が、明らかに不機嫌な声色で誠人に問いかけた。
「後で話があるんだ・・・部屋、勝手に入らせてもらうぞ?」
その言葉を聞き、一瞬で誠人の顔色が変わった。
続きまーす
63
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 12:23:09 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「・・・分かった・・・」
誠人の返事を聞き、尭悸は不機嫌そうに目を吊り上げながら誠人と明人の後をついてきている。
「・・・明人、神怖い・・・」
「まぁ・・・俺知らねーっと・・・」
「え・・・」
そして、しばらく話をしていた。が、誠人からすれば、今は地獄の家に到着した。
「・・・ねぇ明人?」
「何?」
「・・・俺今日、裕也の家泊まってきていい?」
「多分ダメだろーな」
「誠人」
いきなり尭悸に名を呼ばれ、途端に心臓の動きが早くなる。
「は、はい?」
「先に部屋行ってるからな・・・」
「・・・・・・はい・・・」
「あーあ・・・尭悸怒らすとこえーぞ・・・」
「説教は早い方がいいかもね・・・」
「はは・・・頑張れ」
「・・・」
自分の部屋へ行くと、尭悸がとんでもない形相をしながら待っていた。
「・・・誠人」
「・・・はい・・・」
「お前は何で黙ってた!?下手するとあの時死んでたんだぞ!?」
尭悸が凄い剣幕で怒鳴りつける。
「まーまー、無事だったんだからいいじゃねぇかよ?」
「え?」
誠人と尭悸の声が、重なった。
「あ、明人?」
「ああは言ったけど、やっぱ心配でさ・・・」
明人が、苦笑しながら言った。
「・・・お前な・・・」
尭悸が、小さくため息を吐いた。
「・・・ったく、今回は明人に免じて強くは言わないけど・・・」
「・・・ゴメンね・・・」
「良かったな・・・ってか、何で黙ってたの?」
誠人はしばらく黙っていたが、静かに口を開いた。
「なんか・・・不安だったんだよね」
「不安?」
「うん、今までみたいに“誠人”として見るんじゃなくて、“誠秋”として見られそうだったからさ、それに・・・」
誠人は静かな口調で続ける。
「神が、明人に今まで通り接せなくなるんじゃないかって思ってさ」
「え?俺らのこと心配してたの?」
「・・・も、あるのかな・・・」
「・・・あのな」
尭悸が、呆れた口調で言った。
「いくら俺でも、それはないぞ・・・?」
「・・・ゴメン・・・」
誠人が、小さくなりながら小声で謝った。
「そ、そー言えばさ誠人、さっき雑鬼達が言ってた呪詛とかって何なの?」
明人の言葉を聞き、尭悸が慌てて尋ねた。
「そうだ!お前本当に大丈夫なのか!?」
「・・・だ、大丈夫だよ・・・」
「・・・大丈夫ならいいけど・・・」
明人は、尭悸に誠人の説教を止めるように促した。
「とにかく・・・明日から俺もついていく、絶対な」
「あ、いや・・・別に大丈夫だよ・・・」
しかし、尭悸は絶対にダメだと言うように、首を横に振った。
「冗談じゃない。さっきのお前の様子見て、大丈夫なわけがない」
「・・・」
誠人は、苦笑しながら分かった、と答えた。誠人の答えを聞いて、尭悸は部屋を出て行った。
続きまーす
64
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 12:40:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「・・・あんな剣幕で怒鳴る尭悸、初めて見た・・・」
「・・・明人でも初めて見た・・・?」
「あぁ」
誠人は小さく息を吐き、
「今回は反省したよ・・・」
と小さく声をあげた。それを聞いた明人が、
「へぇ?」
と面白そうに言った。
「優等生のお前が反省することがあるんだぁ?」
「優等生?誰が?」
「・・・お前だよ・・・」
ようやく、誠人が薄い笑みを作った。
「・・・尭悸も言ってたけどさ、誠人って感情読みにくいよな・・・」
「え?」
尭悸が?と聞こうとしたが、止めておいた。
「あぁ・・・まぁ、今度教えてやるよ」
「・・・うん、その今度を楽しみにしてるよ・・・」
誠人の顔が、微妙に引き攣っていた。
「じゃーな」
「うん、お休み」
明人が誠人の部屋を出た時、尭悸が誠人の部屋の前で待機していた。
「おわっ!?」
「余計なこと言ったな・・・」
「あー・・・」
尭悸が、独り言のように呟いた。
「・・・あの頃から全く変わってねぇな・・・」
「え?それって誠人のこと?」
続きまーす
65
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 18:16:32 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「え?あ、いや、気にするな」
そう言って、尭悸は一度誠人の部屋に行き、何かを言って外に出た。
「・・・誠人、尭悸何て言ってた?」
「えーっと・・・“ただでさえ力使いすぎたんだから、ちゃんと休んで回復させろ”ってさ・・・」
「・・・あいつらしいな・・・」
「・・・まぁ、俺が悪いんだけどね・・・」
続きまーす
66
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 20:31:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
誠人が、苦笑しながら言った。
「・・・なぁ、大丈夫か?」
「・・・え?」
思わず聞き返した誠人に、明人はこう言った。
「誠人ってさ、変な所で上手く誤魔化しきくだろ?」
「そ・・・そうかな・・・?」
誠人は、言い返しながら自分の顔が引き攣っているのがはっきり分かった。
「まぁな・・・」
「あ・・・俺、もう寝るね」
「え?あ、あぁ・・・」
そう言って明人を部屋から追い出し、鍵を掛けた。そしてまた妖のことを調べるため、本を開いた。
次の日、とうとう夏休みが終わり誠人にとっては雑鬼達との約束期限が、今日で切れたことになる。
「・・・行ってきます・・・」
「大丈夫かー?何か顔色悪いぞ?」
「・・・明人が原因だろ・・・」
「え?俺が原因?」
「・・・何でもない・・・」
「はは・・・わりぃ・・・」
明人は、全く覚えがないが、一応謝った。
「あれ?誠人、どうしたの?」
誠人と明人の背後から、いきなり声が聞こえた。
「え?明菜!?」
「あ、おはよう」
まるで言い忘れていた、と言うかのように、後から付け足した。
「お、おはよう・・・」
「・・・オース・・・」
その直後、尭悸が誠人に声をかけた。
「おい誠人、俺は今日は明人の方行くからな。後で見回り行くぞ」
「あ・・・ゴメン、俺今日・・・ちょっと用事が・・・」
誠人が、目だけで明人にSOSを出す。明人はそれに気付き、誠人のSOSに答える。
「まぁまぁ・・・今日くらい、いいんじゃねぇの?」
「・・・夜からな・・・」
「・・・うん・・・」
しばらく四人で、周りから見れば三人で話しながら、教室の前で誠人と、明人、明菜に分かれた。
「あ!誠人!」
「え?」
後ろを向くと、裕也が手招きをしていた。それを見て、裕也の所に行った。
「あのさ・・・昨日何か、家の周りが歪んだ感じがしたんだけど・・・」
「・・・歪んだ・・・!?」
誠人がゆうやの家の周りに張った結界は、破られた時、裕也達でも気付くように簡単な加工をしていた。
「あ・・・あぁ・・・」
「今日、帰る前裕也の家寄ってもいい?」
「え?あ・・・別にいいけど・・・」
「・・・・・・・・・」
その後始業式が行われたが、誠人は、裕也の言葉が頭に張り付いていて、殆ど何の話も聞こえていなかった。
そして、始業式が終わり、裕也の家に向かった。
続きまーす
67
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 21:51:46 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「・・・まずい・・・!」
「・・・どうなってんだ?」
「・・・結界が破られた・・・」
「え!?」
誠人は大丈夫、と言った後、胸の前で両手を組んだ。しばらくの沈黙が続き、ようやく誠人が、組んでいた両手を元に戻した。
「・・・この前より強度上げたから、多分大丈夫・・・」
恐らく、前の結界が破られた以上、油断はできないのだろう。
「なるべく早く、親に帰ってきてもらうようにしてね。一人でいるよりずっといいから」
「あ、あぁ・・・」
「じゃあ・・・ついでだからここら辺見回って行こうかな・・・」
そう言って、誠人は裕也の家を後にした。しばらく見回して、何もいないのを確認してから帰ろうとした時、反射的に何もない地面を避けた。
「いってえぇぇぇ!」
突然、雑鬼達の悲鳴が上がる。
「・・・自業自得だ・・・」
と、誠人が小さく言った。
「ま、まさあ・・・誠人!」
「え?」
「お前この間・・・あの変な化け物倒したよな!?」
「あ・・・?あぁ、あれは・・・」
そう言いかけた時、誠人は全身を刺すような妖気を感じ、真正面を見た。
≪我ラガ仲間ノ・・・仇ダ・・・≫
「!?」
突然、誠人目掛けて鋭い棘のようなものが飛んできた。
「お・・・っと・・・」
≪オ前・・・ソノ身ニ呪詛ヲ宿シテイルナ・・・≫
「・・・・・・―――っ!!」
いきなり誠人の身体の中で、またあの大蛇が暴れだした。
≪・・・アイツラモ、ハジメカラコウシテレバ良カッタモノヲ・・・≫
はぁはぁと苦しそうな呼吸を繰り返す誠人を一瞥して、妖はこう言った。
≪苦シイダロウ?死ンデシマエバ楽ニナレルゾ?≫
そう言って妖は、誠人の腕を見やった。
≪痛々シイ傷ダ・・・コンナ傷、贄デアル者ニツケテテ良イ訳ガナイ・・・≫
妖が、誠人の腕に手を置こうとした時、誠人は反射的に避け、屋根の上に逃げていた。
≪何故逃ゲル?我ラガ主ノ贄トナレルコト、光栄ニ思エヨ・・・!≫
この妖が言葉を発するたびに、大蛇が一層激しく暴れ、それが、誠人の動きの殆どを封じていた。
≪・・・別ニ、オ前デナクトモ天野ノ人間ナラ誰デモ良イ・・・≫
「な・・・に言って・・・!?」
≪天野 明人、守人、水希・・・誰デモ構ワナイ・・・無論オ前デモナ・・・≫
「・・・!」
「ふざけるな、たかが地獄の使いが」
誠人が答える前に、すぐ近くで誠人や妖以外の声がした。
「え?」
≪・・・何者ダ・・・≫
「・・・お前なんかと話す必要はない、消えろ」
≪フ・・・フザケルナアァァァァ!!≫
「!?」
「う・・・わ!?」
不意に、誠人は自分の身体が宙に浮いたことを理解した。
≪フザケルナフザケルナフザケルナ・・・コノ者は主ノ贄ダァァ!!≫
「・・・その者は俺の主だ・・・」
そう言った直後、尭悸を包んでいた闘気が一瞬にして変わった。
「あの妖を・・・妖だけを焼き払え」
尭気が呟いた途端。火の鳥が姿を現し、誠人に、いや、妖に向かって飛び掛っていった。普段の何百倍もの熱さが頭上から降ってきた。慌てて、妖が誠人から手を離す。
「・・・同情の余地はねぇな・・・」
≪マ、待テ!何ダオ前ハ・・・!?≫
「『臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前』!!」
そう唱えながら九字を切り、手で格子を切った。元々、尭気が放った鳥の効果で身動きは取れないので、真言密教だけでも良かったのだが、一匹一匹倒さないとずっとこうなるかも知れないと言う思いが、わざわざ九字切りまで持っていったのだ。
「・・・戻れ」
尭悸が、小さくその鳥に言った。
ギャァァァと言う不気味な悲鳴を上げながら、妖が消えた。と同時に、誠人が倒れ、そのまま意識を失った。
続きまーす
68
:
ピーチ
:2012/04/15(日) 22:38:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「お、おい!誠人!?」
「な、なぁ・・・」
不意に、雑鬼達が尭悸に声をかけた。
「・・・何だ・・・」
「誠秋・・・じゃなくて誠人の左腕・・・」
「!?」
尭悸が誠人の左腕を見ると、黒々とした文様が浮かび上がっていた。それも、普通の大きさではない。
「な・・・・・・!?」
言葉を失っている尭悸は、とりあえず雑鬼達に礼を言って、誠人を連れ帰った。
しばらくして誠人が目を覚ました時、目の前に明人と尭悸、それになぜか守人までいた。
「あ・・・え!?ここって・・・」
「家だ」
不機嫌丸出しの状態で、尭悸がそう答えた。
「・・・俺確か・・・」
「あぁそうだ、妖に襲われた」
「・・・・・・!」
「守人、明人・・・悪い。少し二人にさせてくれ・・・」
「・・・分かった」
二人ともそう答えて、部屋を出て行った。
「・・・誠人」
「・・・分かってる、さっきの妖だろ?あれは―――」
「そうじゃない」
「・・・え?」
誠人は、尭悸が何を考えているのか分からなかった。恐らく、尭悸も同じだろう。
「・・・何で呪詛のことを黙っていた?」
呪詛。その言葉を聞いて、誠人はぐっと押し黙った。
「あのまま誰も気付かなかったら・・・お前今頃死んでたかも知れないんだぞ!?」
「・・・分かってる・・・」
「じゃあ何で・・・」
尚も言い募ろうとする尭悸を、口元に手を当て黙らせた。
≪・・・ドウスル?ヤハリ天野 誠人ヲ使ウカ・・・?≫
≪イヤ、アノ者ニハ妖ガツイテイル・・・天野 明人ノ方ガ・・・≫
≪シカシ、一番霊力ノ高イ者ヲ連レテクルト言ッタデハナイカ・・・≫
「・・・」
誠人が胸の前で両手を合わせ、小さく何かを囁いた。その直後、今まで軽く天野の敷地にいた妖達が外に吹き飛ばされる。それを確認し、誠人は組んだ両手を離した。
「・・・無茶ばかりするな」
尭悸が、重々しく口を開いた。誠人は、ただでさえ力を使いすぎているのだ。これ以上無理に力を使って制限が効かなくなったら、それこそ誠人の身体に余計な負担がかかる。
「・・・うん、分かってる」
「・・・いつからだったんだ?」
「え?」
「いつ、呪詛を受けた?」
誠人はしばらく黙っていたが、尭悸の気迫に負けて、小声で言った。
「・・・夏休みが始まってすぐ・・・」
裕也の家に泊まると言って、数日後に戻ってきた。その時には既に、誠人の身体は呪詛に蝕まれていたことになる。
「・・・文様も大きくなって当然だな・・・」
「・・・!?」
誠人は、反射的に自分の左腕を見た。すると、一番最初の頃よりもずっと大きく、黒々とした文様になっていた。
「いつも間にこんなに・・・!?」
「・・・とにかく、守人を呼んでくる」
「・・・え?」
「自己流で陰陽修行してたら、いつの間にか使えるようになったんだと」
「え・・・」
尭悸は、絶対にこの部屋からでるな、と念を押して、守人を呼びに行った。
「・・・何で気付かれたかな・・・」
そんなことを考えながら、しばらくすると、尭悸が守人を連れて部屋に入ってきた。守人は、誠人の腕を見ながら小さく呟いた。
「・・・何をどうしたらここまで大きくなる?」
「・・・さぁな、本人に聞いてみれば?」
「・・・とりあえず誠人、式紙の準備」
「あ・・・うん」
守人に言われて慌てて式紙を取り出し、自分の形にして隣に置く。
「・・・・・・天野 誠人の体内を蝕む闇の大蛇よ・・・この式紙を形代とし、それを通して暴れよ・・・!」
「・・・・・・・・・あ・・・!」
誠人の、今まで鉛のように重かった体が、急に軽くなった。
「その文様も、ニ、三日で消えると思う」
「あ・・・ありがとう・・・」
「誠人」
急に、尭悸に呼び止められた。守人は仕事があるからと言って、部屋から出て行った。
「・・・何?」
「・・・あまり無茶ばかりするな、分かったか?」
尭悸は、まるで苦虫を噛み潰したかのような表情で言った。
「あ・・・はい・・・」
「今日は家で大人しくしてろ・・・夜になってもだ、いいな?」
「・・・はい・・・」
それだけ言うと、尭悸は身を翻して誠人の部屋を出て行った。
陰陽師 〜前世と現世〜 終わり
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