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陰陽師 〜前世と現世〜

68ピーチ:2012/04/15(日) 22:38:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
「お、おい!誠人!?」
「な、なぁ・・・」
不意に、雑鬼達が尭悸に声をかけた。
「・・・何だ・・・」
「誠秋・・・じゃなくて誠人の左腕・・・」
「!?」
尭悸が誠人の左腕を見ると、黒々とした文様が浮かび上がっていた。それも、普通の大きさではない。
「な・・・・・・!?」
言葉を失っている尭悸は、とりあえず雑鬼達に礼を言って、誠人を連れ帰った。
しばらくして誠人が目を覚ました時、目の前に明人と尭悸、それになぜか守人までいた。
「あ・・・え!?ここって・・・」
「家だ」
不機嫌丸出しの状態で、尭悸がそう答えた。
「・・・俺確か・・・」
「あぁそうだ、妖に襲われた」
「・・・・・・!」
「守人、明人・・・悪い。少し二人にさせてくれ・・・」
「・・・分かった」
二人ともそう答えて、部屋を出て行った。
「・・・誠人」
「・・・分かってる、さっきの妖だろ?あれは―――」
「そうじゃない」
「・・・え?」
誠人は、尭悸が何を考えているのか分からなかった。恐らく、尭悸も同じだろう。
「・・・何で呪詛のことを黙っていた?」
呪詛。その言葉を聞いて、誠人はぐっと押し黙った。
「あのまま誰も気付かなかったら・・・お前今頃死んでたかも知れないんだぞ!?」
「・・・分かってる・・・」
「じゃあ何で・・・」
尚も言い募ろうとする尭悸を、口元に手を当て黙らせた。
≪・・・ドウスル?ヤハリ天野 誠人ヲ使ウカ・・・?≫
≪イヤ、アノ者ニハ妖ガツイテイル・・・天野 明人ノ方ガ・・・≫
≪シカシ、一番霊力ノ高イ者ヲ連レテクルト言ッタデハナイカ・・・≫
「・・・」
誠人が胸の前で両手を合わせ、小さく何かを囁いた。その直後、今まで軽く天野の敷地にいた妖達が外に吹き飛ばされる。それを確認し、誠人は組んだ両手を離した。
「・・・無茶ばかりするな」
尭悸が、重々しく口を開いた。誠人は、ただでさえ力を使いすぎているのだ。これ以上無理に力を使って制限が効かなくなったら、それこそ誠人の身体に余計な負担がかかる。
「・・・うん、分かってる」
「・・・いつからだったんだ?」
「え?」
「いつ、呪詛を受けた?」
誠人はしばらく黙っていたが、尭悸の気迫に負けて、小声で言った。
「・・・夏休みが始まってすぐ・・・」
裕也の家に泊まると言って、数日後に戻ってきた。その時には既に、誠人の身体は呪詛に蝕まれていたことになる。
「・・・文様も大きくなって当然だな・・・」
「・・・!?」
誠人は、反射的に自分の左腕を見た。すると、一番最初の頃よりもずっと大きく、黒々とした文様になっていた。
「いつも間にこんなに・・・!?」
「・・・とにかく、守人を呼んでくる」
「・・・え?」
「自己流で陰陽修行してたら、いつの間にか使えるようになったんだと」
「え・・・」
尭悸は、絶対にこの部屋からでるな、と念を押して、守人を呼びに行った。
「・・・何で気付かれたかな・・・」
そんなことを考えながら、しばらくすると、尭悸が守人を連れて部屋に入ってきた。守人は、誠人の腕を見ながら小さく呟いた。
「・・・何をどうしたらここまで大きくなる?」
「・・・さぁな、本人に聞いてみれば?」
「・・・とりあえず誠人、式紙の準備」
「あ・・・うん」
守人に言われて慌てて式紙を取り出し、自分の形にして隣に置く。
「・・・・・・天野 誠人の体内を蝕む闇の大蛇よ・・・この式紙を形代とし、それを通して暴れよ・・・!」
「・・・・・・・・・あ・・・!」
誠人の、今まで鉛のように重かった体が、急に軽くなった。
「その文様も、ニ、三日で消えると思う」
「あ・・・ありがとう・・・」
「誠人」
急に、尭悸に呼び止められた。守人は仕事があるからと言って、部屋から出て行った。
「・・・何?」
「・・・あまり無茶ばかりするな、分かったか?」
尭悸は、まるで苦虫を噛み潰したかのような表情で言った。
「あ・・・はい・・・」
「今日は家で大人しくしてろ・・・夜になってもだ、いいな?」
「・・・はい・・・」
それだけ言うと、尭悸は身を翻して誠人の部屋を出て行った。

陰陽師 〜前世と現世〜       終わり


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