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仮投下スレ

800ヤツの時間がきた ◆WqZH3L6gH6:2016/10/03(月) 08:47:00 ID:kY30gObg0


「…………」


彼は熟考の末、傍らの部下の方を振り向く。
ヴァニラ・アイスは顔を少し上げ、主の命令を待った。


「執務室に行こうか。ああそれと、君の身にこれまで起こった出来事も詳しく話してくれないか?」


そう言うDIOの声は少しばかり掠れていた。

-------------------------------------------------------------------------------------------------


D:『すまないが故あって例の場所に行けなくなった。
   契約は続行するので、可能ならまたこちらから連絡する』


先ほど自分が書き込んだのも含めたチャットの文章を確認しながら、DIOは部下から提供された情報……事実を噛みしめる。


――坂田銀時


己に多大な屈辱を与えた3人の内1人。
名は地下施設『万事屋の軌跡』を確認したヴァニラ・アイスによって知らされた。
先程の放送で死が判明した、銀髪の寝ぼけ眼の口減らずな侍。


「……」


あの実力から脱落はしないと思っていたが、それでも命を落とした。
予想外であった。予想できなかった自分に対しても得体の知れない悪感情が湧いてくるのをDIOは悟った。
彼に報復する事はもうできない。その事実からもDIOの唇が怒りに歪んだ。


「戻りました」
「セイバーはこちらに来ていないようだな」


素面に戻ったDIOの問いに、ホテルの外を確認してきたヴァニラが頷く。
DIOが席を外すと、ヴァニラ・アイスはパソコンに向かい文章を打ち込む。


I:『一番目のMと、五番目のD。地下闘技場で話がある』


それはヴァニラ・アイスの策。主の許可は取ってある。
これから自分らが向かう方角に参加者を集める為のと、チャットでの頭文字を確認の為の。
DIOはその文章を見て満足そうに口元を歪ませた。

801ヤツの時間がきた ◆WqZH3L6gH6:2016/10/03(月) 08:47:44 ID:kY30gObg0

「行こうか」
「はっ」


放送前はチャットを確認してからDIOの館に向かい、そこで待っているだろうセイバーを殺害するつもりだった。
しかし放送をきっかけに、冷静さと用心深さを強くしたDIOはその選択を少々の逡巡の後切り捨てた。
セイバーにも制限が掛けられている可能性にも気づいたし、
神威のようなセイバーと同等の危険性を持ち得る未知の参加者がいる可能性にも思い至ったからだ。
地下施設『モンスター博物館』でヴァニラ・アイスが人外の情報を得たのも大きい。




2人は地下を降りていく。
行き先は地下通路 地下闘技場方面。
4箇所あると思われる地下施設の、唯一未確認の施設を確認する為に。
優勝を目指すにしても情報を得る事は有益に違いない。そのまま主催の思惑の多くをそのまま乗るのも癪だった。


ヴァニラ・アイスとの緻密な情報交換の結果、得られたものは非常に大きい。
更なる地下施設の存在やヴァニラ・アイスのスタンドの制限なども。
そして主催に対する警戒心も。
2人は程なくして地下通路出入り口に着く。扉にはこう書かれていた。


『一日目 午後9時にここは通行禁止になります
 新しい出入口は本能字学園 本校舎内になります』


最初に見た時なかった文章に2人は書き込んだ第三者の存在を警戒したが。
痕跡は見当たらない。元から遠くから書けるような細工がしてあったのだろうか。
どこまでもコケにしやがって。
2人は眉間に皺を寄せながら扉をくぐった。
時間は放送から一時間は過ぎていた。

――しばらくして出入り口に白と黒の蝶がどこからともなく現れた。

802ヤツの時間がきた ◆WqZH3L6gH6:2016/10/03(月) 08:47:58 ID:kY30gObg0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



【B-6/地下通路/一日目・夜】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康、桂、コロナと主催への屈辱と怒り(大)
[服装]:いつもの帝王の格好
[装備]:サバイバルナイフ@Fate/Zero
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
[思考・行動]
基本方針:とりあえず他参加者を10人以下になるまで始末する。それと同時に主催殺害への準備を進める。
0:地下通路で地下闘技場方面に向かい、その近辺にあると思われる施設を確認し、それから今後の進路を決定する。
1:長髪の侍(桂)、格闘家の娘コロナ、三つ編みの男(神威)は絶対に殺す。優先順位はコロナ=桂>神威。
2:セイバーの聖剣に強い警戒。もし遭遇すればヴァニラ・アイスと共に彼女を殺す。 捜索はしない。
3:情報収集をする。
4:言峰綺礼への興味。
5:承太郎を殺して血を吸いたい。
6:一条蛍なる女に警戒。
[備考]
※参戦時期は、少なくとも花京院の肉の芽が取り除かれた後のようです。
※時止めはいつもより疲労が増加しています。一呼吸だけではなく、数呼吸間隔を開けなければ時止め出来ません。
※車の運転を覚えました。
※時間停止中に肉の芽は使えません。無理に使おうとすれば時間停止が解けます。
※セイバーとの同盟は生存者が残り十名を切るまで続けるつもりです。
※ホル・ホース(ラヴァレイ)の様子がおかしかったことには気付いていますが、偽物という確信はありません。
※ラヴァレイから嘘の情報を教えられました。内容を要約すると以下の通りです。
 ・『ホル・ホース』は犬吠埼樹、志村新八の二名を殺害した
 ・その後、対主催の集団に潜伏しているところを一条蛍に襲撃され、集団は散開。
 ・蛍から逃れる最中で地下通路を発見した。
※麻雀のルールを覚えました。
※パソコンの使い方を覚えました。
※チャットルームの書き込みを見ました。
※ホル・ホースの様子がおかしかった理由について、自分に嘘を吐いている可能性を考慮に入れました。


【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康、怒り
[服装]:普段通り
[装備]:範馬勇次郎の右腕(腕輪付き)、ブローニングM2キャリバー(68/650)@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:双眼鏡@現実、不明支給品0〜1(確認済、武器ではない)、悪魔化の薬(勇次郎の支給品)、ブローニングM2キャリバー予備弾倉(650/650)
[思考・行動]
基本方針:DIO様の命令に従う。
1:DIO様に土を付けた参加者は絶対に殺す
2:腕輪を解除する方法を探す。
3:セイバーの聖剣に強い警戒。可能な限り優先して排除する
4:日差しを避ける方法も出来れば探りたいが、日中に無理に外は出歩かない。
5:自分の能力を知っている可能性のある者を優先的に排除。
6:承太郎は見つけ次第排除。
7:白い服の餓鬼(纏流子)はいずれ必ず殺す
[備考]
※死亡後からの参戦です
※腕輪を暗黒空間に飲み込めないことに気付きました
※スタンドに制限がかけられていることに気付きました
※第一回放送を聞き流しました
 どの程度情報を得れたかは、後続の書き手さんにお任せします
※クリームは5分少々使い続けると強制的に解除されます。
 強制的に解除された後、続けて使うには数瞬のインターバルが必要です。

803 ◆WqZH3L6gH6:2016/10/03(月) 08:48:53 ID:kY30gObg0
仮投下終了です。
指摘等がありましたらよろしくお願いします。

804 ◆WqZH3L6gH6:2016/10/04(火) 08:22:08 ID:JCwwpR/Y0
異論がなければ今深夜に本投下します。
その際に悪魔化の薬についての本編での言及や、状態表にチャット関連の追記をします。

805 ◆WqZH3L6gH6:2016/10/05(水) 02:45:59 ID:27Xxo2pg0
本投下の際、加筆修正しました。
悪魔薬、状態表におけるチャット関連の追記はカットしました。

806 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/28(土) 17:21:16 ID:SJmPatgU0
急用ができたので調整できた分だけ仮投下します。

807【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/28(土) 17:22:44 ID:SJmPatgU0

――第四次聖杯戦争と繭のセレクターバトル
  どちらも各々の願いの為に行われた大規模かつ、それでいて世間からほぼ秘匿された闘争劇
  いずれも願いを叶える資格があるは参加者のみ
  その二つの要素を含めたゲームに置いてもそれは――

-------------------------------------------------------------------------------------------------


何年も前のある日。その日は晴れ。
ある広い古びた館に何人もの大人が慌ただしく作業をしていた。
そこは廃屋。大人達――白衣を着用し顔を隠した何人もの男女とは対象的に、
喧騒の中心にいる点滴を打っている灰色髪のパジャマ姿の少女は
落ち着いた様子で金髪の男と作業をしていない白衣の1人と対面している。
金髪の男が作業中の白衣の男を一瞥した。それに気づいた男は他の白衣達に声をかける。
短いやり取りの後、少しして彼を含めた男女は俊敏かつ丁寧に作業を中断し居た部屋を去っていった。

残されたのは灰色の少女と金髪の男と性別の解らぬ白衣ひとり。
退屈げな表情をしていた少女は辺りをきょときょとと見回し、眉をひそめる。
そして苦笑しつつも何かを肯定するような感想を漏らした。

金髪の男は満足気にそれに返答し、懐から冊子を取り出す。
少女は落ち着いた様子で冊子を受けとり読んだ。
金髪の男は期待混じりの声で少女に問いかける。
冊子に書かれていた事は実現できるか?と。


少女は灰色の髪を揺らしつつ顔を上げ思い巡らせる。
目の前の2人は自分の恩人の様なものだから、ここで恩返ししても良いかも知れないと。
沈黙が訪れた。他2人も黙ったまま解答を待つ。その最中、電話が鳴った。
白衣の顔が金髪の男へ向く。金髪の男は自らの電話を取り、向こうの相手と会話しながら苦笑浮かべた。
彼は多少の未練を残しながら少女に挨拶をしその場を去った。


そして、金髪の男が去ってしばらくして少女の思考は纏まり、残ったひとりに告げる。
それを聞き白衣は初めて口を開く。喜びとそれが入り交じった問いが少女へと飛んだ。

少女は釣られたような病からの咳をしながらも、脇に置かれた遊具を手に取る。
白衣はそれに見覚えがあった。少女の異能の発生源でもあるカードゲーム ウィクロスのカードデッキ。
少女はそのデッキを手渡そうと寄って来た。
速やかな返答を期待していた白衣はその反応に当惑し、少女に疑問を投げかける。
少女は心外といった表情をし立ち止まり、挑発の混じった笑みを浮かべ言った。


「説明するより、手に取って考えた方が簡単よ」


白衣は口を噤み、多少迷いを見せつつも少女の手からカードデッキを受け取る。
ふと見ると少女の肩から小さな人の顔が見えた様な気がした。


――灰色の少女にとってもその無人だった館は薄気味悪い事この上なかった。
後で調べてみるとそこは有名な怪奇スポットやらだったという。
あの大人達の何人かは後日病にかかったらしい。初めここに長く居たくはなかった。
でも白窓の部屋を彷彿とさせる神秘的な所でもあったので暫くここに居るのも悪くないと思った。

808【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/28(土) 17:24:11 ID:SJmPatgU0
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大きな窓と百近い小さな窓が果てしない高所、人の手で容易に届く位置にある小窓が五十以上ある大部屋。中心には針時計が備えられてる柱が一つ。
大窓から今しがた死んだ騎士王と呼ばれた英雄の魂が大部屋に入り込んだ。
その魂はこれまで小窓に封じられた他の魂の中でも大きい。
けれどこれまでのと同様に区別なく吸い寄せられるように小窓に引き寄せられる。
閉じた窓の向こうから女の苦痛の呻きが漏れた。
それとほぼ同時に生来の歪みを抱えた神父の魂が大部屋へと入り込む。
大きさは騎士王と比べ一回り小さい。だがその輝きは多少の歪さを感じさせるものだったが騎士王のそれと比べ鮮やかだった。
そして彼の魂も小窓に封じられる。声はなかった。
今閉じた小窓は2つ。柱から微かに鈴の様な音が鳴る。
部屋の主たる繭は今其処にはいなかった。


-------------------------------------------------------------------------------------------------

セイバーの胴がスタンド 星の白金の拳に貫かれる。
少しして空条承太郎は今倒したサーヴァントへ何かを言い捨て、この場を去った。
セイバーは後悔の念を顔に表しながら息を引き取る。
その直前、腕輪から青白い光が発せられ彼女の魂を絡め取りカードに封印した。

「……」

ヒース・オスロは相変わらず貼り付けた様な笑顔を崩さなかったが、両眉は困ったかの様に一瞬歪んだ。
繭はそれに気づいた様子だったがそれについてはあえて何も言わなかった。

放送直前に行われたエリアH-5の大戦。
それは風見雄二と纏流子の追走劇と、空条承太郎と言峰綺礼対セイバーの2つの戦に分かれた。
それらを観察するは繭とヒース・オスロとその従者 テュポーン。
三者の居る場はヒース・オスロの部屋。
遠坂時臣が一先ず去った後、繭はオスロからゲームの感想を求められ返答した直後にある懸念に気づき、
会話を延長して今度はそれについての対策を求めようとしていた。
だが、遠見の窓に承太郎らとセイバーの戦闘が白熱しつつあったのを認め、それの観戦に徹する事に決めて中断していた。


「……南ことりと満艦飾マコの白カードの事なのだけれど」


繭は他の生存者が映し出された窓を一通り見渡すと、オスロが言い出す前に新たな問題を伝えようとする。



「アザゼル達の様子からして彼女達の白カードには異変は無かったようだが?」


参加者の魂が封じられたカードについてはオスロも注意を払っている。


「白カードが剥がれた後と誤認したのでしょ、解りにくいものね。
 本当は腕輪にくっついたままなのに」


その声にはさっきまでの会話で自分の要望がほぼ却下された不満の色が明らかに含まれていた。
オスロは顎を手に当てると低い声で呟く。

809【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/28(土) 17:26:21 ID:SJmPatgU0
「しかし腕輪の破壊方法に気づき得る参加者は現時点では……」
「窓はすべてを把握できる訳じゃないわ。基地の一部や、変な仕掛けをしている四つの施設の一部。
 地下道に至っては音声をほとんど拾えない上に映像も不鮮明な事が多いのよ。注意を払えって言っていたのは貴方じゃない?」

不機嫌からかテュポーンの眉間に皺が寄る、オスロは苦笑しつつ片手で従者を宥めると真剣な面持ちになった。

「埋葬されているが、気づかれると拙いか……」
「私でも参加者と繋がっていない白カードはコントロールできないわ。
 それに腕輪の破壊は生存者のより簡単よ。早く何とかした方が良いと思うけど」
「……」
「禁止エリア侵入以外の理由でで私が参加者を殺す訳にはいかないんでしょう?」


オスロの目つきが一瞬鋭くなるが、すぐ平素に戻った。
繭は気づいてるのか気づいてないのか曖昧な様子で喋り続ける。

「私ルール違反以外でお仕置きはしたくないのよ。何とかして」


すうっとオスロが深く息を吸った。


「次放送でE-1の禁止エリア化を向こうに伝えて置こう」
「あら?それだけで間に合うかしら」
「……」
「起こる筈の無い事は、ここでも何度か起こっているのに」
「……?」
「そう例えば、宮永咲っていうセレクターによく似た感じの麻雀使いだったかしら。
 参加させるあの娘の知り合いって本当は違う子が選出される手筈だったんでしょ」
「……何故そう思うのかね?早期の全滅はともかく選出はだいぶ前に行われたと……」
「だって他のコミュニティと比べてあまりにも関係が希薄だもの。ミスしたとしか思えないわ。
 私だってゲーム開始前に幾つかの世界は見てきてるのよ」
「?!」


オスロはそれに対し僅かにだが驚愕し、そして苦笑した。
繭には聖杯戦争関連を含め自分達に不都合な情報は伝えない様にしている。
理由の一つとして繭の不安定さに危惧を抱いていたというのがある。
オスロはゲーム開始前までは関係悪化をしないよう振る舞って来たが、安全に確証を持てる程の材料が無かった為、
主にここにはいない協力者と共同で防護策を練っていたのだ。警戒はしていたが、最近の浅薄な様子から見くびりすぎたか。


「……伝えてくれないとは人が悪い」
「伝える必要がある程の事かしら。白窓の部屋の性質の事、あの人から訊いてなかったの?」
「聞いてはいたが、実感がね……」


あの人か……なるべく関わりたく無いお方の、それも更なる超常に慣れていなかった時期での情報だったからか頭に入り切らなかったようだ。
既に数年前にオスロは『あの方』から白窓の部屋は稀に時空を超えた映像や音声が発生すると伝えられている。
だからこそ有力な協力者と同じく、時間こそ掛かったが白窓の部屋と似た機能を持ち、より強大な超常を持った『ここ』を含めた別の部屋を利用できていたのだ。


「さっき言った事、まともに聞いていないみたいだし。そんなので貴方達の目的が達成できるの?」
「悪い、解ったよ繭。今すぐには無理だが君もよく知るあの人と相談した上で放送前に対策を取ろう」
「……」

810【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/28(土) 17:28:53 ID:SJmPatgU0
オスロは繭に気を使って接していた。だがそれは長く共にいた事と同様ではない。
テロリストという立場に加え、異世界に関わってからは強大な敵が増え、構ってやる事ができなくなっていたのだ。
加えて繭自身はオスロの嗜好から程遠い人物で便利な道具としてしか見れなかった。
本来あるべき道を歩んだヒース・オスロ同様に参加者ではない方の風見雄二に傾倒していたのも大きい。
故に融和より、警戒の方へ舵切るのは仕方のない面があった。
かと言って繭を必要以上に軽く扱う事はできない。不用意に危害を加える事は自分の利益にも反し、他の協力者の反発も必至だから。


「あの人ねぇ」
「人手がいればすぐに対策はできるのだが」
「あの2人じゃいけないのね」


オスロは2人は正確では無いなと胸中で呟く。
主催には名目上は管理者である繭を除けば、いくつもの立場の者で分けられている。
オスロや『あの人』など身内で凌ぎを削って、願いを叶える手段を勝ち得た権利者。
運営に欠かせない人材でありながら拘束と警戒をせざるを得ない能力と反抗心を持つ要人。
願いの権利を巡る権力闘争に参加できなかった、又はしなかったが故に、権利を持たないことさえ知らぬ者さえいる遠坂時臣を含めた所謂外様。
一旦参加者として運営によって選ばれ拉致されてきたものの、ゲームには参加させられず半ば弄び気味に幽閉されている捕虜。
運営者の意思持ちアイテム。
そして運営には必要とされているがゲームの性質上、最低限の役割と能力しか与えられていない制約の厳しい駒がいる。
いずれの立場の者は各数名しかいないがこれが運営の陣容である。


あの2人とはいわば駒。
これまでは地下通路の更に隠された通路と繭のサポートで、橋の修復や地下通路の新たな出入り口の開通の作業をこなしていたが。
既に埋葬された腕輪の発掘回収やタマヨリヒメ回収になってくると無理があった。
駒は参加者への攻撃はおろか直の接触さえもゲームによって禁止されている。
純粋な参加者であるならそこそこ以上の力を持っているだけにあの2人を使えないのをオスロは惜しんだ。
挑発するかのように繭は甘い声で囁く。


「別の方法はなかったの?」
「……」


無い。身内が繭を発見できなければ願いを叶える力なんて間違いなく発見できなかった。
白窓の部屋を別にすれば、代替になるものは十を超える異世界においても聖杯しかない。
最低でも白窓の部屋に連なる力と聖杯システム両方がなければゲーム開催など不可能。


「!」
「……あらあら、また始まったわよ」


戦況の変化にいち早く気づいたはテュポーン。
少し遅れてほぼ同時にオスロと繭。
3人の上方の窓に映るは鬼龍院皐月と宮内れんげ、そして針目縫。
運営の3者は会話をまたも中断し、観戦する。


「……っ」


針目縫脱落というの結末に、表情こそ変えなかったがテュポーンの声が漏れる。
繭は薄ら笑いをしつつ身をかがめてオスロを覗き込んだ。

811 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/28(土) 17:31:26 ID:SJmPatgU0
とりあえず以上です。
残りは今深夜か朝に投下する予定です。
重ね重ねすみません。

812 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:03:04 ID:u./WxJ8Y0
続きを投下します。

813【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:03:47 ID:u./WxJ8Y0


「タマを支給品にしなければ良かったのにね」
「……」
「……」


繭の嫌味にオスロと従者は表情を変えずただ沈黙を続ける。
その様子に繭は不満げに口を尖らせた。
この主従、表面こそ平静を保っているが心中は穏やかではない。
テュポーンは主を侮辱する繭に対し少々ではあるが怒りを抱いていたし、
オスロは危機感を否応なしに自覚させられていた。
繭の怒りと不信は未だ治まっておらず、現状ままだとこちらへの協力が望めないという事実に。

彼が知る限り、ゲームに乗り気である参加者は現時点で多く見積もって残り5名程度。
内DIO、ヴァニラ・アイス、ラヴァレイは窓からの様子からしてスタンスを変えた可能性が感じ取れた。
オスロして見ればラヴァレイと平常時のDIOは彼等の経歴を知っている事もあり最も油断ならない部類の参加者。
前者は立ち回りが非常に上手く、後者は行動が読みにくい。ヴァニラ・アイスは主に従うだろう。
よってその3名はそれぞれの敵対者以外の参加者減らしに期待できる人材と見れなくなった。
残る現・浦添伊緒奈ことウリスは参加者の中では非力で不用心な傾向が強くもっと当てにできない。
となると有望な参加者は纏流子のみとなるが、こちらは少なからず消耗しいつ脱落しても不思議でない状態。
このまま行けばゲーム進行が停滞する可能性が高く、まともに繭の協力が得られなくなるのは拙かった。
白カードの問題もある。


「……」


繭は無表情で呆れたような視線を2人に向けた。不遜な態度。
もしこの場にオスロの部下が多数いればこれ以上大人しくしようとは思わなかっただろう。
それだけにゲームの制限により部下の殆どを連れて来られない現状はむしろ幸いしたと言える。
精神を乱される事無くオスロは現状の最適解を考え、顔を僅かに伏せ表情は少しばかり悲痛に歪ませ口を開いた。



「タマヨリヒメを保護すれば、私を許してくれるか」
「!?」
「…………ええ、そうよ話が早いじゃない」


オスロの明らかに遜った態度にテュポーンは身を震わせ、繭は戸惑いつつも喜色を浮かべる。


「私はどうすればいい……」
「……」


繭は態度を変えたオスロを気味悪そうに見つめつつ問いた。


「何でタマを支給品の中に混ぜたの?」
「……」

814【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:04:55 ID:u./WxJ8Y0

その質問が来るのは予想していた。先程は適当に言葉を濁したが、次そんな態度を取ればもう必要最低限以上の協力は望めない。
セイバー、針目縫といった優秀な殺戮者が脱落した今、繭にも言っていない願いを叶える方法のノルマが達成できない可能性が高くなっていた。
繭いわく協力者であるあの人がまだここにいない以上、ゲームの盤面に介入できうる切り札はまだ切れない。
厳しいこの状況を打開できうる手段が繭にあるなら、何としてもそれを使わせる。
よってあの人……いや『奴』との協力関係はこの際破棄する事をオスロは決めた。


「君も知るあの人から頼まれたのだよ」
「……っ」
「理由はタマヨリヒメを詳しく知らない私には大凡しか見当がつかないがね」


オスロがタマヨリヒメについて詳しく知らないのは事実である。
白窓は全てを見れるものではない。見れる情景には個人差と運が絡む。
オスロはセレクターやルリグの過去は見れず、逆に『奴』は多くを知れた。
それが大きな違い

「何で断らなかったの?」
「断ったら、タマヨリヒメに直に危害を加える可能性があると思ったからだ
 君もあの人の経歴……危険性は知っているだろう?」
「……」


嘘である。オスロがホワイトホープを支給品の山に加えたのは、仮に繭がこちらに刃を向けた場合、
有力な参加者にタマヨリヒメの力を抑止力して発揮させてもらう狙いがあったからだ。
その点に置いては『奴』とオスロの思惑は一致している。
繭は収まらぬ怒りを含めた眼差しを彼へ向け冷たく言い放った。


「貴方怖いから、あの人に従ったんでしょ」
「……」
「……!」


真っ向からの侮辱に部屋に痛い程の沈黙が訪れる。
部屋にいる3人は能面のような表情で立ち尽くした。


「…………まぁ良いわ、あの人が悪かった事にしてあげる」
「……助かるよ」


繭は後ろを向き部屋から立ち去ろうとする。
テュポーンはその動作に微かに殺気を発するが、これもオスロが宥めた。
繭は振り向かない。


「タマは保護するわよ」
「さっきも言ったが、参加者の所持品を運営が没収するのはバランス的に良くないのではないか?」
「もしタマと接触できそうだったら別のルリグカードと交換するよう説得させるわ」
「……」

815【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:05:41 ID:u./WxJ8Y0

オスロは落胆した。繭への抑止力の一つを失ってしまう事に。
彼はゲームでの元の所持者であったアザゼルの顔を思い浮かべる。
繭とタマヨリヒメと小湊るう子の関係を自らの推理で言い当てた高位の悪魔。
彼と遭った対主催傾向の参加者はその高い頭脳と実力に彼に期待をしたが、オスロはそれに値する人物ではないと思った。
アザゼルの残忍な行動はるう子とタマヨリヒメを萎縮させ、三好夏凛に多大な負担を強いたからである。
肝心要のタマヨリヒメ――全ルリグもそうだが力を発揮させるためには精神的な成長が必要であると『奴』から聞いている。
進化がどうこう言ってた割に目立つ行動は自衛以外は基本他者への嫌がらせ。あれでは何も成せないなとオスロは心中で悪魔を嘲った。


「アーミラのカードは?」
「しばらく様子を見るわ。吸血鬼コンビが拾いそうだし」
「……」


マイナス2か。オスロは沈痛さを表に出さずまたも落胆する。
バハムートへの抑止力が高い確率で此方に強い敵意を抱いているだろう凶暴な吸血鬼に渡るのだ。
気落ちしないほうが無理がある。
ファバロ・レオーネがアーミラの白カードを回収していたのは繭より先に知っていた。
オスロが知る限り、アーミラから神の鍵を分断させたとかいう話は聞かない。
よってあえてこれまでアーミラのカードを放置したのは白のルリグデッキと同様の理由だった。


「じゃ行くわね」
「何処へだい?」
「中核に」
「……解った」


ゲームのシステムについて独自に調査するつもりなのだろう。
繭が暴走した場合取れる手段が更に限られるという意味ではこちらにとって不都合な流れ。
だがゲームが破綻するよりはと自らを納得させそのまま見送った。
繭の姿が見えなくなると同時にオスロは従者に命令を下した。
他の運営者の様子を見てきなさいと。
テュポーンは頷くと、そのまま主の元を離れる。
従者の姿が見えなくなるや、オスロは青カードを取り出しそれをワインへと変化させた。
彼はソファへ深く座り込み深く息を着いた。疲労が一気に押し寄せて来て思わず顔をしかめた。

816【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:06:08 ID:u./WxJ8Y0
-------------------------------------------------------------------------------------------------


「……」


遠坂時臣は運営基地の外にいた。
場所は地図のすぐ外の海辺。時臣が基地に出向いた時は船に乗り乗船員もいたはずだった。
待機を命じたにも関わらず、船と乗員は姿を消していたのだ。
時臣自身、目的を果たすまでは帰還するつもりはなく、一旦外出したのも船を帰す為であったが。
かといって無断でやられると面白くない。
渋面で慣れない手つきで通信機を操作し雇った乗員と連絡を取ろうとする。

連絡はすぐ取れた。勝手に出航した乗員へ叱責をする。
向こうは要領を得ない様子で気がついたら出航していたと言った。
まるで意思操作の魔術に掛かったかのようだ。
人払いは済ませてあるというのに、これは。
時臣は再度こちらに来るよう伝えようと考えたが、今度は行方不明になる可能性に気づき一旦帰還するよう向こうに伝えた。

時臣は船着き場に足を運び、魔術が使われた痕跡がないか調べる。
基地全体および島から妙な力が働いているのは確認できたが、魔力の残渣のようなものはなかった。
少なくともあの乗員は自分が知る魔の力によって惑わされたのでは無いという事か。


「……成る程、結界の破壊を危惧しなかったのはこれが理由か」


この島には結界とは別に、固有結界……あるいは空想具現化に似た力が働いている可能性があると時臣は推測する。
己の心象をそのまま異界として発現操作するという、どちらも人の範疇を大きく超えた高位の吸血鬼や英霊のような存在しか扱えないような力。
これだけの事ができるなら自動で人の認識を術者の望む方向で惑わさせる現象を作り出すのは容易だろうと時臣は納得し口を歪めた。
とは言え、人工衛星など超長距離からの監視には対応できるかは疑問である。
こちらに結界を張るのを依頼したのはカバーできない部分を補う為だと時臣は断定した。

関わった事態の大きさから、重圧から来る冷や汗が全身から滲み出るのを感じつつ、時臣は運営基地の門を見据える。


「……」


数時間前、白窓から観察したあの吸血鬼達が見たあの聖杯戦争の映像からして冬木の聖杯は使い物にならない。
つまり遠坂家の悲願である根源への到達はこのままでは実質不可能という事だ。
あの映像が虚偽の可能性も浮かんだが、ゲーム内の間桐雁夜の様子からして恐らく真実だろう。
なら目的を成すには今行われているゲームに賭けるしかない。

「……」

時臣は眼を瞑り、拳を強く握りしめた。
瞼に浮かぶは親交ある神父の息子で、本来なら聖杯戦争の共闘者になっていた筈の若き屈強なる神父の姿。
未来の自分を裏切り殺めた言峰綺礼。先程死んだ彼との親交はここの時臣にはない。
よって何もと言う程でもないが彼個人への感傷や憎悪の念はない。未来の己への不甲斐なさはあったが。
ただ別個体とは言え、息子を喪い生来からの苦しみを理解してやれなかった父である言峰璃正の心境を思うと気の毒になってくる。
今はそれが気がかりだった。

時臣は門へ向かった。
悲願を達成する第一歩として、言峰璃正と最近知り合ったここに来ているだろう運営の一人と会い、今後の為の作戦を練る為に。

817【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:09:01 ID:u./WxJ8Y0
-------------------------------------------------------------------------------------------------

大窓からついさっき死んだセレクターの魂が大部屋に入り込んだ。
その魂はジャケットを着たポニーテールの少女の形をしていた。
空いた窓の一つから発せられるは強力な引力。
魂はそれに抵抗を試みる。他の魂よりは粘れたが、すぐ疲労した。
もう逆らえそうもない。
封印を悟った魂は覚悟を決め自嘲の笑みを浮かべ顔を下げた。


「!?」


その時、視界に入ったのは勘違いではあるが少女の魂を驚かせるもので。

-------------------------------------------------------------------------------------------------

紅林遊月の脱落と封魂を確認した繭は大部屋をウロウロ歩きながら不思議に思った。
封印される直前何に驚いていたのだろうと、こちらを見た訳ではないのに。
繭は手にしたカードの絵を見た。疑問は程なくして解けた。
多分マフラーを巻いたあの娘にそっくりだったから勘違いしたのだろうと。
得心した繭はカードから目を離すと、高所にある無数の窓を見上げる。


犬吠埼姉妹、南ことり、満艦飾マコ、キャスターの魂を封じた筈の窓。
今からこれらをじっくり調べ上げなければならない。
繭はカードを遠くに投げつけ、そちらに向かって何やら指示を出すと、
今度は竜の絵が描かれたカードを取り出す。
巨大な竜の身体が一瞬で現出し、繭の身体を天井近くまで押し上げた。


-------------------------------------------------------------------------------------------------

――彼の人生は最初から定められていた。
『あの方』の理想を粗方だが実現させるだけの能力と身分が生まれた時から彼に与えられていた。
その生き方に疑問を持っていたかどうかまではもう覚えていない。
彼はその理想に一定の共感を覚えながらも、『あの方』の理想の範疇を逸脱しない程度に好き勝手に悪どく生きている。
彼の名はヒース・オスロ。
一説によればそれは彼の所属する組織、ひいては彼を生み出した『あの方』の名前でもあったという――

-------------------------------------------------------------------------------------------------

オスロはスマホで地下通路にいる2人の駒に指示を出すと、壁に立てかけてあった武器を手に取った
剃刀のような剣の手入れをしながら、彼はワインボトルを眺める。
青カードか変じたもの。赤カード同様に一種の聖杯によって生み出された奇跡の産物。


彼はスマホが振動しているのに気づき画面を見る。紅林遊月の脱落の情報が載っていた。


(思うように行かないものだ)


スマホアプリウィクロスは、原初のルリグたるユキを参加者に協力させる足がかりにさせるつもりで導入したツールだった。

818【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:09:51 ID:u./WxJ8Y0
紅林遊月がゲームに気づく前に退場してはクリアできないでは無いかと肩を落とす。
ユキ(名前は植村一衣に仮に付けてもらったらしいが)には繭の異能に抗する力がある。
このゲームにおいてもそれは健在で、黒カードの呪縛程度なら解呪できるくらいの力を持っていた

(新しい策をまた考えないといけないのか)


「……」


(『あの方』の命で自分を繭と認識しているあの娘を救出をしてもう何年にもなる。
  あの館のある町で発生した怪奇現象発生源でもあった彼女は救助されしばらくしてからお礼がしたいと言ってきた。
  それは白窓の部屋にあった未知なる力。彼女はそれを用いて礼をしたいと言ってきたのだ。
  セレクターバトルの実在を確認していたからか『あの方』を含め、その力には期待を持った者は多かった。
  我々はまず意識を別のものに移すシステムを望んだ。その願いはすぐさま叶えられ、我等は大いに喜んだ。
  欲に駆られた一部の連中は更なる願いを求めて彼女に頼み込んだ、だがそれは叶えられかった)


オスロはグラスにワインを注ぎ香りを嗅いだ。


(力を使い果たしたからだ。我々はその力に頼るのを止め。彼女の力と当初の研究に注力した)


グラスの柄を強く握った。まるで苛立ちを表すように。


(……我々は正確ではないな。私はあの日を境に彼女とは疎遠になっていったのだから)


ドンッとグラスの柄が強く机を叩く。


(思えばあの時からだった『奴』のような規格外といえる連中がどこからともなく集まってきたのは。
 セレクターバトルが拡大するにつれ彼女を取り巻く超常現象も頻度を増していった。
 同時に白窓の部屋の未知の力が蓄え始められ、それに比例するかのようになぜか彼女の容態は悪化していった)

オスロはワインを一口口に含んだ。美味いはずのワインは苦く感じた。

(我々と『奴』は彼女の延命を試みると同時に、蓄えられた未知の力を有効活用する術を考えた)

ワインを更に二口飲む。

(結果的に『あの方』のお陰もあってか彼女は死なずに済んだ。
 二度目の願いを無理に叶えたのが原因で、その叶える力は使えなくなってしまったが……)


オスロは空になったグラスを宙にかざす。


(我々は願いを叶える力を扱える代わりの技術を発見し、彼女にそれを実現させるように頼みこんだ)

819【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:10:41 ID:u./WxJ8Y0
グラスを指で弾いた綺麗な音がした。


(聖杯の再現)


グラスにまた液体が注がれる。今度は水だった。
オスロは苦々しい顔で過去を思い出す。


(聖杯は出現したものの我々の思っていたのと異なりまともに起動させる事はできなかった。
 なのにそれを今は滅びたあの連中がそれを強く欲し、それがきっかけで内紛が始まった)



オスロは左足で右足を踏み、苛々するかのようにその動作を繰り返した。


(……あの勢力を相手によく生き残れたものだ。回復後の繭がバハムートのカードを得ていたのが幸いだった。
 ……まぁ『奴』が味方にいたのも大きかったがね)


今度は右足で左足を踏む。


(『奴』主導で異世界における白窓の部屋の増築と拡大が行われ。
  私は敵対勢力への繭の隠匿。本性を隠しての異世界の有力組織との交渉を担当した)


オスロは2つの窓を見る。
地下道を行くDIOとヴァニラ・アイス、ラヴァレイと小湊るう子とウリスの姿が映し出された。

(結果。今は神樹の一部や『あの方』が命を捨てて聖杯――『システム』の一部になってくれたお陰で
 私はこうして生きている)


右足を左足から離す。
オスロの顔には歪んだ笑みが浮かんでいた。


(連中や『奴』を含めた力と勢力が制限されたお陰でな)


オスロは水を飲み干した。
彼の笑みは余裕のあるものに既に変わっている。


(とはいえ、このままでは私の組織も機能せずに朽ちてしまう。
 何としてもこのゲームで決着を付けなければ)

820【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:11:35 ID:u./WxJ8Y0

オスロは2グループの様子を眺めた。
主従は急いだ様子もなく神妙な面持ちで何やら会話をし、もう一方もラヴァレイとるう子が真剣に会話をしている。
放送前とは明らかに様子が違う。





従来の聖杯は魔術師を呼び水に英霊を呼び込むものだ。
だが情念と因縁渦巻く白窓の部屋の力を無理やり聖杯の形にした『システム』は求めるものが違う。


『システム』が求める参加者という生贄を選出する方法は三種類ある。
一つ目は『システム』が身近にいるコミュニティを指定して選ぶ、オスロや『奴』のようなケース。
二つ目は繋がった世界の中から参加者となりうる人物を『システム』がそれに関わる者に知らせるケース。
三つ目は一つ目と二つ目での選出者がある程度増えた場合、可能となる方法で既存の参加者と縁のある者を繋がった世界から無理やり召喚するケースである。


(三番目のシステムには実に奇妙だった。ない知識や力を持った者がいたし、一部参加者の選出も異常だった。
 どの時期に呼ばれたのか『システム』でも把握できない奴もいたくらいだ)


本来ならオスロを含めた権利者はゲームに参加しなければ願いを叶えることができない。
しかしオスロら権利者はその資格を持っている。
その理由は内戦を生き残った彼らを『システム』が勝者と見なしたからだ。
『システム』は願望機として作動することはなかった。
理由は広範囲に渡り戦闘を繰り広げたため力を集めることができなかったから。


内戦が終わっても制限と権利を失わなかった彼らは今度は範囲を狭めたゲームを開催すると決めたのだった。
四次聖杯戦争も参考の役に立った。

「……」


オスロはスマホを取り出し操作した。映った画面にオスロは安堵と苦悩の入り混じった妙な表情を形作る。

(蓄えられた力は予想より随分多い。しかし現状だと願望機能発動させる最低限の力が収集できるか不透明だ)

 
願望機を起動させる方法は2つ、願望機に力を充分蓄えさせた上で参加者が残り1人になる事。
その方法でゲームが終わった場合、権利者全員が願いを叶えることができる。
本当の勝者の数は1+α人である
それは権利者にとってベストケース。

もう1つは願望機を起動させるのに最低限の力を蓄えさせた上で、システムが設定した管理者を倒す事。
それだと叶えられる願いは2つになってしまう。
これはオスロが許容できるベターパターン。


「……」

そろそろテュポーンは戻ってくるだろう。
腕輪の製作者である酒の神の元から。
仮に介入が実現できたとしても展開次第では戦力的に不安が残る。
外様の中には戦闘に秀で状況次第では神威や皐月を倒しうる実力者がいる。
そして直接の戦闘では及ばずとも異能で強者相手に賢しく立ち回れる者もいる。

821【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:12:55 ID:u./WxJ8Y0
オスロは顔を上げた。視線の先に映るは天々座理世の姿。
あるいはあえて非戦闘者を投入するのも効果的かもしれない。
非力さと無知さを抱えた一般人は下手な敵よりも危険だ。



その時、オスロのスマホが振動すた。


「……」


オスロは応対すべくスマホを取った。
-------------------------------------------------------------------------------------------------


「……」

一通り小窓の点検を終えた繭の表情は険しかった。
南ことりと満艦飾マコの小窓に魂は入っていない。
犬吠埼風の魂は封印済。
キャスターの窓は何かが封印されているのは確認できたが正体不明。
窓から聞こえる声はなく、キャスターとしての自我は残っていないと推定できる。
そして犬吠埼樹の窓は壊されていた。

破壊された窓に手を触れるが亀裂の中に手を突っ込む事はできない。
これ以上調べるには白カードを調べる必要があった。」


(魂のエネルギーは少しだけど感じ取れる。そうなると魂はカードの外側に居る?)


繭自身、結城友奈と犬吠埼風の戦闘後に犬吠埼樹の白カードは窓を通じて存在を確認していた。
生前の樹同様の姿が再現された一枚絵。
つまり樹の魂はカードから脱出できるにも関わらず留まっている事になる。



「……やってくれるわね」


繭は呻くが、どうすることもできない状況と悟りあえて放置する事にした。


「一番の問題は2枚の白カードよね」


白カードは参加者と腕輪が揃って初めてその強制力を発揮できる。
白カードのみが参加者の手に渡るのは拙い。
白カードは白窓への大部屋へと通じる通路そのものでもある。
無論そのままでは入り込む事などできはしない。
だが白カードの原理とセキュリティは腕輪や黒カードと比べて単純で。
仮に魔術の知識を持つ者に渡れば短時間で解析されてしまう。
桂小太郎やDIOといった柔軟な思考の持ち主に渡るのも危険だ。


「そういえばオスロって腕輪を欲しがっていたわよね
 埋められたあの二着を渡したら喜ぶかもしれないわよね」



淡々と繭はとぼけたような口調で呟きながら柱に右掌を当てた。
そして言峰綺礼の最期の戦いを思い浮かべる。
繭の右手が柱に吸い込まれていく。
腕に小さな痛みを幾つか感じるや、ゆっくりと繭は腕を引き抜いた。
腕には切り傷のような入れ墨が6つ刻まれていた。それは令呪だった。

繭は不敵な笑みを浮かべると、駒が待機する場所をイメージ。
彼女の身体から白と黒の幻想的な蝶が何羽も現れる。
そして一枚のカードを翳すと赤光で縁取られた次元の穴が開いた。
無数の白と黒の蝶の中にいつしか真紅の蝶が現れ始める。
繭は高熱による大気の歪みを纏いながら次元の穴へと消えた。

822【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:13:43 ID:u./WxJ8Y0

-------------------------------------------------------------------------------------------------


通話は終わった。
ヒース・オスロの側には腕輪を数着包んだ袋を持ったテュポーンがいる。
通話相手は『奴』の息がかかった運営者。
オスロはソファに腰掛け手を組んだまま考え込んでいた。
あくまで介入の許可を取るに留める積もりにだった。
繭への嫌がらせをネタに交渉を有利に進めようとした矢先、
『奴』ははっきりと伝えた。


――第四回放送前に運営全員で話し合おうと


(覚悟はしていた。だがいざ『奴』がここに来るとなると平静を保つことすら難しい)


オスロの自尊心は一度完膚無きまでに潰されている。天導衆と鬼龍院財閥との抗争によって。
『システム』によって能力に制限が掛けられていたにも関わらず。

「……」


オスロの手を組む力が自然と強くなる。彼は繭以外にも用心を重ね対策を取っている。
テュポーンに願いの権利を持たせているのもその一環だったし、邪魔者に繭をぶつける作戦をも構想してある。

現ヒース・オスロはテロリストだ。ある程度の品位こそ持ち合わせているが、指揮官としての矜持も、
時として死をも恐れぬ勇猛さも持たない悪趣味な重犯罪者。
強さを示し続けられなければただの屑に過ぎないと抗争のさなかに彼は思い知った。
今は亡き開祖の理想を自分なりに実現し続け、ヒース・オスロであり続けるが為に策を巡らせる。


(『奴』はこのゲームで殺す)

ヒトの形をした心身ともにバケモノの『奴』の姿がオスロの脳裏に浮かぶ。
『奴』への恐怖心は既に消えていた。

823 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/29(日) 13:15:43 ID:u./WxJ8Y0
仮投下終了です。
この度は長期に渡ってパートを拘束し多大な迷惑をお掛けしてしまいました。
誠に申し訳ありませんでした。

824 ◆3LWjgcR03U:2017/01/29(日) 21:37:10 ID:OopqJsko0
投下乙です。
主催の内幕の詳細がかなり明らかになってきましたね。色んな人物が関わっているようですが、捕虜もいたりするようで一筋縄ではいかなそう。
参加者の選出方法や時臣の時間軸といった細かい点も出てきて興味深いです。そして過去の鬼龍院財閥VS天導衆が気になる。
本投下に問題ないと思います。ただ、封印された参加者の魂にどの程度意思や行動力があるのかについては今後議論の余地があると思うので、留意しておいた方がいいかもしれません。(現時点での加筆等の判断はお任せします)
改めて、投下お疲れ様でした!

825 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/30(月) 00:27:11 ID:V08/R.po0
感想ありがとうございます。
参加者の魂について了解しました。
明日の晩に本投下させていただきます。

826 ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:41:55 ID:PrdeHxpA0
時間を超過してすみません!
出来上がったので一先ず仮投下致します。

827New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:43:10 ID:PrdeHxpA0

大型二輪のバイク V-MAXが放送局を目指して疾走る。しかし速度はやや遅めだった。
運転手のセルティはついさっき気がかりがふたつでき、速度を落とさざるを得なかった。
その理由の一つは後部座席に同乗する少女の事が心配だったから。


――良くないな。


セルティは同乗者―絢瀬絵里と、しがみついている小さなうさぎ―クリスを意識せざるを得なかった。
先の放送前、何人もの同行者の死と友人の誤殺という悲劇に見舞われた少女。
絵里は自らの悲哀を押し殺し、前に進もうと放送局への出立を意思表示した。
だがセルティには、それは強がりにしか思えない。息遣いが荒く、短い悲鳴のような声が時折漏れている。
ヘルメットも着用していない。それに既に遠方に見えてくるはずの放送局がまだ見えてこない。
一旦休ませる必要があると判断し、セルティは更に速度を落としつつ墓場の塀の近くにバイクを留めた。

「……セルティさん?」

ややよろけながらも絵里はバイクから降り、セルティに近づく。
セルティは既にPDAに打ち込んだ文を絵里に見せた。

『放送局が見えない』

絵里はきょとんとした表情で、状況をなんとか理解しようと務める。

「……放送局に何かあったって事ですか」

仲間を案じているだろう少女のどきりとした声に、セルティはすかさず次の文章を見せる。

『多分。だから今からこちらから連絡を入れてみる』

セルティはV-MAXの座席に手を触れ黒カードに仕舞うと、次に落ち着ける場所を探そうとあたまをきょときょとと動かす。
それはどこかもたついた動作。絵里はその様子に困惑し、塀の方を向き数秒考えるや提案した。

――これは。


セルティは地面に落ちていたカードを見つけ拾う。
絵里はそれに気づきカードを見る。
巫女服を着用したおっとりとした少女の絵があった。
絵里は迷うこと無く受け取り、絵を見て表情を曇らせる。

セルティにはその理由がわかった。
絵里が誤って殺した友人の事を思い出したからだろう。
少々だが似ている、間が悪いとセルティは思った。
気を取り直した絵里は視認に注力し、その甲斐あってか目当てに近い場所を発見する。


「あの、そちらに良さそうな場所がありますよ」
『そうかありがとう』

セルティはその案に乗り、絵里もそれに続いた。
直接休憩を提案しても不安を与えてしまうと判断したセルティの演技。

「?!」

828New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:44:27 ID:PrdeHxpA0
乗ってしまった絵里はここがどこか知り思わず顔をひきつらせる。
セルティはここが墓場だと言うのに気づき、掌をヘルメットの目元に当て面目無く思った。


『駄目なら別の場所に移動するけど?』
「……い、いえ私が決めた事だし、そのまま」
『そう、じゃあ私の後ろに付いて来てくれ。それと良いと言うまで横は見ない方がいい』
「?」
『多分墓荒らされているから』


セルティは放送局内での遺体の埋葬作業の事を思い出す。
腕輪を着用した5人もの無残な遺体と腕輪の無い3体もの半ば腐乱した遺体があった事を。
あの惨状がどういう経緯でそれに至ったか、協力者の1人アザゼルの推理からおおよそ見当がついている。
参加者の遺体を、あるいは墓場から遺体を掘り起こし支給品か死霊術を用いてゾンビとして使役していたのだろうと。
墓場も荒らされ、死体があちこちに転がっていてもおかしくないとセルティを推測した。
損壊が激しく解りにくかったが絵里と同じ制服を着た遺体もあったような気がする。
あとで伝えたほうが良いだろう。
絵里は「ちょっと待っててください」と言い黒カードを2枚取り出す。
眉間に皺を寄せながら考え込む仕草を数秒した後、1枚を元の形に戻した。


「?!」


セルティはあっと思った。
イエローカラーで猫耳のような一対の突起が付いたヘルメットを被る絵里を見て。

『それ私の……』
「え……」

謝ろうとする絵里を、『いや、いい。私も支給品の中に混ざっていたとは思わなかったから』とセルティはあわてて制止する。
ふよふよ浮いているうさぎ クリスは見守るように2人を見下ろしていた。


「っ……」


いくつも転がる死体からの臭気にもう1枚の支給品 エリザベス変身セットをハンカチ代わりに使い絵里は耐えつつ進む。
セルティは墓場の居心地の悪さといま絵里の羽織っている物体への突っ込みの衝動に耐えつつ、なるべく遠くから遺体を認めつつ落ち着ける場所を探す。
斬撃によって損壊した死体が何体か確認できた。剣の破片も見つかったことからここで戦闘が行われたと判断する。
――絵里ちゃんに死体を見せないために先を急いだのに……と葛藤しながら。

「仕方ないですよ。開けた場所で休憩するわけにも行かないから」

罪悪感に悩まされるセルティの心理を察したのか絵里の気遣いがかかる。
セルティは更に申し訳ない気持ちになりつつも奮起しようと静かに気合を入れようとした。

――あれは

セルティの前方の木々の間に石碑と思しき建造物が見える。

829New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:45:54 ID:PrdeHxpA0
絵里はまだ前方のそれに気づかず、猫耳ヘルメットを着用し、某有名仮想オバケとアヒルをミックスさせたような物体をコート代わりに羽織って、腕輪の明かりをちらせかせつつ付いていっている。
寒気に耐えているような素振りを見せながら。

――寒くは無い筈だが……

セルティの体感的に人間が凍えるような気候ではない。
なのに絵里の様子は……とセルティは少女の心身を案じ、自らの疑問を伝えようとする。
絵里はいち早く気づき、苦笑いを見せた。


「……変ですか?」
「……」

セルティは明らかに変な支給品にはあえて突っ込まず、頭部?を動かして、先の光景を知らせた。
一行は既に数メートル先に進んでいる。

「あれは、家?」

石碑より更に先にあるのは一階建ての現代風の小屋であった。明かりは付いていない。
更に周辺には遺体も転がっていなかった。

『あそこで休憩しよう』

セルティは素早く文字を打ち込むと疲れたように肩をすくめた。
絵里は一瞬躊躇したが、肩を上げ下げする彼女を見て仕方ないかあという感じで口元に笑みを浮かべてセルティの前を行こうとする。
セルティは用心させるように絵里の身体を軽く掴んだ。
絵里はどきりとし歩みを止め、苦笑しつつ軽く頭を下げ、ゆっくりと先に進む。

「……」

掴んだ布はとても頑丈そうで、布越しからは明らかに震えがあった。

石碑は小屋より高く立っている。セルティはつい数時間前に墓場の側を通過していた。
通過した際に気づいてもおかしくない程。セルティは石碑に書かれた文字をちらりと確認する。

「?」
『後で話す』

今は絵里を休ませ、アザゼルに連絡を取るのが先決とセルティは決断する。
遠方で暗闇にも関わらず石碑の文字を確認できた彼女に対しての絵里の驚嘆の眼差しを感じつつ、セルティはドアに手を伸ばす。
そして絵里に見えないよう影をドアの隙間に侵入させ罠が仕掛けられてないか確認し終えると、ドアを開け中に入った。

照明のスイッチを入れると絵里にも部屋の全容が見えた。
食糧を除けば標準の生活が何日もできるだけの設備と物資があった。


セルティはシーツを探し出すと、先に腰掛けた絵里に手渡。
そして何気なしに訪ねてみる。

『絵里さんは参加者のカードを拾ったが、それで何かするつもりはあるのか?』
「え?私はただ……」

絵里が白カードに気を止めるようになったのはついさっきのこと。
カードを同行する発想など湧くはずもない。セルティだってそうだった。
――そうだろうなと納得し、落ち込む前に明るい材料を提示した。

830New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:47:06 ID:PrdeHxpA0


『囚われた魂、解放してやりたくはないか?』
「え……」

絵里は慌てたような声を出す。

『私の仲間に1人それを望む子がいる
 もし良かったら協力してやってくれないか?』
「……ええ、はい」

その子は既に仲間を1人喪っている。友好的とまでは行かないもの支えになってくれればとセルティは思った。
彼女は自らの携帯電話を取り出す。

絵里は前かがみで顔を伏せ何度も瞬きしていた。
額には汗が浮かび、苦々しい表情を浮かべている。
ガタリとセルティは絵里に駆け寄る、『私、何か言ってはいけないことを言ったか?』

絵里ははっと顔をあげるとどうにか笑みを浮かべた。

「私がその、勝手に思い出して」
『そうか』


セルティは自分を落ち着けつつ片手で器用に文字を打ち込みながら、絵里が顔を上げたと同時にPDAを見せた。

『アザゼルという男を知っているか?』
「……!」

何事かと戸惑った絵里の目が見開かれ、少々だが警戒の色を見せる。
一応その名に覚えがあったと判断したセルティはすかさず入力を続けた。

『その様子だと良くない意味で知っていたか』

それは絵里のかつての同行者である結城友奈へジャンヌ・ダルクから伝えられた殺し合いに乗った可能性が高い悪魔の名。

『実はな、あいつは殺し合いに乗っていないんだ』
「……?」

訝しげな絵里を安心させるべく、言葉を選んで入力してゆく。

『この殺し合いを打破できる方法を探し、実行するために私達は彼に協力している』

思わぬ情報に絵里の表情が僅かに明るくなる。

『成功すれば繭の能力を無力化でき、カードから魂だけでなく、私達参加者を腕輪から解放させる事もできるはずだ』

「ハラショー」

絵里は感動した。
彼女を含む、本能字の乱戦の生き残りの何人かもは催打倒のためにそれなりに明確な目標を立てている。
主催の居場所の特定と、枷である腕輪の解除、殺し合いに乗った参加者の無力化および懐柔を。
にも関わらずここまで進展がなく、焦りをひしひしと感じつつあったところでこの情報。嬉しくない訳がない。
セルティは微塵の気楽さが感じられない様子で警告文を入力する。

831New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:49:04 ID:PrdeHxpA0
『アザゼル、ただあいつは性格に難がある』
「……」
『連絡を入れるつもりだが、その前に私の話を見てそれで彼に会うかどうか決めてほしい』
「……」

セルティの切羽詰まった様子に絵里は思わず押し黙る。
考え込む絵里を他所にクリスはセルティの肩をぽんぽんと叩く仕草をした。
十回くらい叩かれた後、クリスの意図を察したセルティは黒カードを1枚取り出し、絵里に告げた。

『さっき言ったように私達は殺し合いの打破において有効な手段を見つけ出した筈なんだが、実のところ迷っている部分もあるんだ』
「……どうしてでしょうか?」
『その手段というのは主催者が最初から対策を取っていて、実行に移しても失敗に終わりそうに思えるんだ。
 だからこそ頼れる人達に会い、関わってきたあなたからも意見を聞きたい』
「…………はい!」

絵里の神妙な面持ちにセルティは軽く頷いて返した。

「あのセルティさん……」
「?」
「食われた魂を何とか助ける方法に心当たりないでしょうか?」

なるほどとセルティは悟った。絵里は第一回放送時に魂を喰われた2人の内の1人と関係がある参加者であることに。

『悪い』
「そうですか、ごめんなさい」
「……」

『話の前にだけど絵里さん、薬を持っていないか?』
「え?」
『私が服用したい訳じゃないんだが、仲間に1人必要になる子がいるかも知れないんだ』
「……」

絵里は10枚を超える黒カードを点検すると、1枚を引き原型に戻す。

「!?」

絵里の目前に幾つもの薬品と本が入ったビニール袋が3袋出現し、重い音を立てて床に落ちる。
高度が低く、中身が破損する事は無かった。
カードの裏に書かれていたのは『ジャック・ハンマー御用達薬品セット』。
セルティが断りを入れて袋を開け、中の本を読む。それには薬物の効用と調合のレシピが丁寧に書かれている。
幸い目当ての薬も少量だがあるようだった。
セルティは絵里に僅かでも休息を取らせようと説得を試みる。
少々渋ったが、絵里本人も精神衰弱から来る不調を実感していたため、了承。
必要な薬品のみをテーブルに並べた後、セルティは1枚の黒カードを解放した。
グリーンワナ―緑子のルリグデッキを。


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三好夏凜が目覚め、アザゼルの悪意を一蹴した後。

「という訳で、車を見つけた時に眼帯をした人間離れした女と、学ランと学帽をした大男に襲われたのよ」
「……眼帯女は俺の方にも仕掛けてきた。お前と同行したラヴァレイに預けたヘルゲイザーを持ってな」

832New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:49:49 ID:PrdeHxpA0

夏凜は眼帯女のいう単語に犬吠埼風を思い出し、眉をひそめるが気にしないと決め話を続ける。
2人は放送局跡の南方へ歩く。身体中に支給品である包帯などが巻かれた痛々しい姿で。

「あの人はいつの間にかいなくなっていた……。私がアイツに攻撃を仕掛けていた最中に」
「命惜しさに眼帯女に協力したか、あるいは端からゲームに乗っていたか……」
「学ランの大男は……」
「ホル・ホースの言だと乗るまい」

アザゼルは手当の最中に回収したホル・ホースの白カードを取り出し断定口調で言う。
夏凜は不意を突かれたかのように身じろぎし反論しようとする。

「……それは」
「楽観論とでも言いたいのか?くだらん。
 貴様を襲撃した際のやり口からして、ほぼ眼帯女の意思が反映されていたと見て間違いなかろう」

アザゼルは皮肉げに呟くと夏凜から顔を背けた。
先ほどとは違う冷たさも感じる彼の挙動に夏凜は何が何だか解らぬ様子で少々戸惑う。

「支給品を回収し終えたらセルティと合流し小湊達を捜索する」

アザゼルの方針表明は強い意志はあったものの、どこか独り言に近い響きが混じっていた。
夏凜はその発言で放送局で何が起こったか悟り、奥歯を噛み締める。
あの眼帯女を取り逃がさなければ、今となっては唯一安心できる仲間のるう子がいなくなったりはしなかったのに……。

「っ」

けれど、煮えたぎるような激情は何故か湧かなかった。
夏凜はそれがおかしいと思った。

「……」

アザゼルはやや不機嫌な表情で参加者を捜索し、夏凜はきつい眼差しで時折「るう子」と呟きながらかつての同行者を探しつつ
自らが重傷を負わせたホル・ホースの乗車していた車を探していた。。
彼女の右目に光はあれどそれは弱く、疲労からか視界が狭くなったからか頼りない足取り進んでいる。

「これか」

アザゼルは当面の目標の対象を発見し呟く。
窓ガラスが破損した車―メルセデス・ベンツ。今は亡きアインハルトの支給品。
夏凜は強く息を吐くとすぐさまドアに手を掛けようとするが、アザゼルに遮られ尻餅をつきそうになる。
彼女は抗議をしようとしたが、声を発する事も動く事もできない。

「?」

833New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:50:36 ID:PrdeHxpA0
動けぬ自分に困惑する夏凜を無視し、アザゼルは車内を漁ろうとする。
すぐにアインハルトの遺体を見つけた彼は軽く舌打ちをし、車内の布を引っぺはがす。
アザゼルの身体の隙間から仲間の身体の一部が見えた。
夏凜は駆け寄ろうとするが、アザゼルが邪魔だと言わんばかりに手で軽く振り払われた。
遺体に布を掛け終えたアザゼルは回収した黒と白のカードを仕舞うと、視線をそらしたまま夏凜に質問する。

「そう言えばアインハルトは池田とかいう奴の魂カードを回収すると言ってたはずだが何か知らないか?」
「……放送聞いてそれどころじゃなかったんでしょ」
「……桐間紗路か」

アザゼルはその返答に納得はしたのか、遺体をシーツにくるんだまま草むらに安置し、ベンツを黒カードに収納する。
そして折れた樹に近づくと触手で切り株の面を平坦にしそこに座った。ノートパソコンを取り出す。
夏凜はその行動を、自分でも何でこうなのか解らないまま半ば呆然と見ていた。

「どうした?アインハルトをそのままにしておくのか」
「!」

アザゼルの思わぬ問いに夏凜は包まれた遺体へ駆け寄る。頼りない足取りで。
悪魔の吐き捨てるかのような嘲りの吐息を聞き、少女は自分を情けなく思った。

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「あの人はヴァローナって名乗ってたんだよ」
『解った。ありがとう』

髪の毛を逆立てたスレンダーなルリグ―緑子はこれまでの経緯を説明した。
最初の所持者であるセルティとも交戦経験のあった、白いライダースーツの女 ヴァローナのこと。
そして絵里も数瞬しか邂逅しなかったファバロ・レオーネや神楽。そしてDIOと敵対していたスタンド使い 花京院典明のことも知った。

「……」

支給品から精神安定剤を選別し服用した絵里は、額にタオルを当てながら横になっている。
彼女も顔を緑子の方を向けていた。その表情は感謝と気遣いの色が含まれていた。

照れたような仕草をする緑子を見てセルティは安心する。
元の形に戻した時、緑子はファバロを死なせた重責で落ち込んでいたから。
けれどセルティからゲーム打破の手がかりと、絵里から桂や皐月といった有力な対主催の情報を伝えられると
何とか奮起できるだけの元気を取り戻し協力してくれる事になった。
彼女もタマヨリヒメ同様、るう子と縁のあるルリグだったから。

絵里もこれまで出会った参加者の事を伝え、セルティもだいたい伝えていた。
反ゲームの協力者がまだまだいることに安心し、空気が和やかになる。
だがセルティは遠慮がちに現実を彼女らに伝える。

『アザゼルからメールが来た』

セルティはPDAの文章を絵里、緑子、クリスの3者に見せる。軽い緊張が走った。

『アザゼルと夏凜ちゃんは一応無事。だけどるう子ちゃんは行方知れず。
 多分同じく行方知れずのラヴァレイ、浦添伊緒奈。あるいは第三者の危険人物に拐われたと見て間違い無さそうだ』

セルティはPDAを持たぬ手を強く握りしめる。ラヴァレイを警戒していれば!と後悔する。
絵里からは「そんな……」と嘆きが漏れる。
緑子はぽかんとした顔でPDAを見続け、そして声を荒げた。

834New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:51:49 ID:PrdeHxpA0

「なんで、保護されていたんじゃなかったの?」

セルティは緑子から顔を背けず、断りを入れる仕草をしながら携帯電話のメールに返答し、返事を待つ。
彼女らの発言がされる前に着信音が鳴り響いた。
一同はメールに注目し集まる。今度はみんなにメールの方を見せた。

『一刻を争う。早く此方に来い』

セルティは危険人物アザゼルの要請に更なる緊張に包まれた一同を見回し、絵里と緑子に尋ねる。

『命を狙われる事はないだろうが、嫌がらせはしてくるかも知れない』
「「……」」

2人は強く瞬きをしながら黙る。

『でも、あなた達の協力も必要なんだ』

セルティも命は惜しい。何でも犠牲にできるという訳でもないが執着があり愛情もある
そしてその場においてアザゼルを強く支持はできないが頼れる存在であってほしいという願望もあった。
だからセルティは2人に懇願し、頭を下げた。

「……セルティさん、私行きます」

絵里はセルティの手を強く握りしめて、ヘルメットの方を見つめながら決断を伝えた。

『いいのか』
「この状況でこうしてくれるだけでもとても嬉しいです」
「そう、だよね」
「……」
「っ」

絵里の身体の中で暴れる吹雪のような罪悪感は薬のおかげもあってかさっきほどではないが、なおも絵里を痛めつける。
東條希のも含め罪を背負っていくという決意はしたが、それで痛みがなくなるはずもない。
銀さんやセルティと遭わなければ、ここまで自分がこうして生き残れたとは思えない。
だからこそ乗り越える必要があるものに対して恐れず前に進みたかった。止まると押しつぶされそうだったから。

「……」

緑子は疑いの混ざった眼差しを向けていたものの、纏う空気は拒絶する類のとは別のもの。
「よろしく」と小さく呟いて絵里と今後の相談を始めた。
クリスは聞くまでもないという感じでぷかぷか浮いている。

『もし、あいつがあなた達に害を及ぼそうとするなら私が止めるから』

セルティは3者に強い感謝の意を伝えつつ、アザゼルへメールを送った。
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三好夏凜は体育座りで蹲っていた。
アザゼルは彼女を無視し、セルティらの到着を待つ。
一人でるう子を探そうとしたが止められ、それっきり。

「……」

835New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:52:45 ID:PrdeHxpA0
世界がどこかガラスで遮られたような感じがする。
夏凜はそう自覚し、途方に暮れる。
原因は解っていた。
仲間であるホル・ホースに重傷を負わせたにも関わらず、覚醒した直後彼に対して何の痛痺も感じなかったこと。
樹を侮辱され激昂するあまり、倒せるかもしれない大敵に良いように弄ばれたこと。
そしてどこか気の合う、こういう状況においてかけがえのない存在である筈の仲間のアインハルトと
るう子に対してあるべき対応ができなかったこと。

夏凜は溜息を付いた。泣きたかったけど泣けない。
そんな状態にも関わらず勇者としての闘争心みたいなものは自分の足を動かそうとする。
辛いことを忘れきれれば元気に走り回れそうだと錯覚してしまうほどに。

「……」

罪悪感で狂い悶える事を回避できた代わりに、自分の心のどこかが壊れてしまったのだろう。
夏凜は一枚のカードを元に戻す。東郷美森の勇者スマホ。アインハルトに渡すはずだったもの。
夏凜は東郷のスマホを眺めつつ、仲間のことを考える。
るう子はアザゼルと共にいて何をし、何を掴んでいたのだろうか?現実味がない。
4人いた時、ゲーム打破のための議論や支給品のチェックをしていたことが今となっては夢の様だ。

「!」

近くからエンジン音が聞こえる。
アザゼルが動き、夏凜もそれに続く。
ここに来たのはセルティと金髪の少女 絵里。
そしてルリグ―緑子とうさぎ―クリスの4者だった。緑子の事は既にメールで通達済みだ。
アザゼルが皮肉げな笑みを浮かべセルティに近づく。だがセルティは手を上げ押しとどめた。

「?」

セルティの背後では絵里と緑子が何か話し合っている。どこか慌ただしい様子。
セルティは夏凜の方を見た。驚いたように身体が震えた。

アザゼルは「やはりな」と自嘲に似た笑みを浮かべてそして嗤った。
セルティは強く足を踏みしめつつ、アザゼルへと詰め寄る。

『何をした?』
「俺は何もしていない、あいつが……」

アザゼルの反論は夏凜には全部聞こえないでいた、全て訊いたセルティの右腕が何かを叩きつけるかのように空振る。
絵里と緑子はアザゼルの方を向いて非難が混じった眼差しを向ける。
アザゼルはこれまでとは違い勘弁してくれと言う仕草で渋面をした。

夏凜は彼女らの様子を見て自分がどう見られているか強く自覚する。
絶望というものがどこか新鮮に思えた。

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『結構やられたな』
「フン、貴様も蒼井晶の死体の回収が出来なかったではないか」
『お互い様とでも言いたいの?』
「いや、此方の方が無様だ」
アザゼルの身体を診察したセルティは互いに悪態を交えつつ情報交換を進める。

「……」

836New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:53:39 ID:PrdeHxpA0

彼より前に診察を受けた夏凜は仰向けに寝転がっていた。
額には小屋で回収したタオルが当てられている。抵抗はなかった。
看病するかのように絵里が側に付いている。彼女の顔も辛そうに変化していた。

クリスは緑子のカードを持ってアザゼルとセルティの近くで浮いている。
セルティは絵里に合図を送った。少女の手には綺麗な鞘がある。
アザゼルはそれに目を奪われる。セルティは前進し動きを遮る。
彼の顔が不満に彩られる前にセルティは切り出した。

『お前にどうこう危害を加える訳じゃない』
「ほぅ」

脅しに近い発言に、彼の声に怒気が篭もるが怯まず彼女は続ける。

『ただ殺し合い打破の為、今ここで真剣に話をしたい』
「……はっ、セレクターもタマヨリヒメもいない状況でか?」

セルティは黙ってもう1枚の黒カードを出す。そして言う。

『もし絵里ちゃんや緑子に危害を加えないと約束できるなら、ここでその怪我を治させる』
「……力づくという手段では俺に損が多いか」

セルティの影が周囲に広がり立体化し宙を漂う。
影の脚の一つには黒カードが挟まっているのが確認できた。
夏凜が悪魔を横目で見ている、その姿は既に勇者へと変じている。
気狂いも同然に見られながらも目に篭もる闘気は以前衰えていない。
相手の手の内と狙いが見えない以上、仮にここで鏖殺できたとして得るものは少ないと悪魔は考える。
強硬に近い態度に出たのは尋問よりも安全と計画の確認を意識してのものだろうと彼は判断した。

「いいだろう」

アザゼルの了解に、絵里は鞘をセルティに渡す。

『後で返せよ』

念を押しつつ鞘をアザゼルに渡す。
鞘を傷に当てると徐々に確実にアザゼルの傷が癒え始める。

「……!」

宝具の力に感嘆しながらアザゼルはセルティ達の言葉を待つ。
その時、割り込むように絵里はアザゼルに訪ねた。

「アザゼルさん。第一回放送の内容覚えていませんか?」
「覚えているが」
「……食われた魂を助けることはできるんでしょうか?」
「……わからんな」
「!?」
「魂喰いとでもいうのか、俺が知る限りあの手の能力には個人差があって可能性もそれぞれだ」
「じゃあ……」
「だが今は無理だな

837New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:54:00 ID:PrdeHxpA0

アザゼルが腕輪をこつこつと叩きながら冷徹に告げる。

「カードから魂を解放する術を得ない限り、ああいったケースの場合喰った奴の魂を解放してそれからの話だ」

セルティは絵里を気遣いながらアザゼルに質問をぶつける。

『腕輪を解析するのは可能なのか?』
「無理だ。何の力も感じ取れんし、こちらの力も通らない」
「つまり」
「生者も死者も区別なく腕輪の防御機能は同等としか取れん」
『だからセレクターバトルに注目したのか……』

フンっとアザゼルが鼻で笑った。
絵里は心非ずといった感で何かに気づきうわ言のように呟く。

「という事はアザゼルさんはまだ魂が入っていない、死者の腕輪を手にしていない……」
「絵里さん!」

その言を意味することに気づいた緑子が思わず叫んだ。

「ほぅ」

アザゼルが喜色の混ざった歓声を上げる。

「成る程な、確かに俺はそういった腕輪を手にしていない」

セルティはゆっくりとした動作で絵里の方へ向いた。

『私達は埋葬手伝ったけど、腕輪に変化は無かったように思えた。徒労に終わるかもしれない』
「……」
『でも、それでも腕輪を調べたいなら、友達の腕を』
「……お願いします」

しばしの沈黙。

『悔しいんだな絵里さん』

絵里ははっきりと頷く。
熱気を帯びた瞳はちょっと綺麗で泣いたように歪んで見えた。
セルティにはその瞳の中に執念のようなものを感じ取った。

「ふっ、そう言えば南の温泉街に同じ制服を着た参加者の死体があったな」
「!」
『アザゼル!』

「カードを回収していないし、余裕があったら行ってみたらどうだ?」
「……」

838New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:54:25 ID:PrdeHxpA0

絵里は愉しげなアザゼルを淡々と横目で見ていたが、頭を小さく下げ、夏凛の側に戻った。

セルティは肩を竦めながら疲労を感じつつもアザゼルに本題を切り出す。

『何でセレクターを集めるって言い出したんだ?』

アザゼルは鼻で笑い切り返す。

「腕の立つセレクターのみが繭の元へ行けると言う話ではないのか?」

それはセルティにも聞かされたこと。だが緑子は静かに反論する。

「正確には3回勝って、尚且つセレクターそれぞれの条件を達成して初めて夢幻少女になれるんだよ」
「?!」
『それと何でセレクターを……』
「待て、俺の推測が多くが外れているとでも言いたいのか……」

事態を察したアザゼルが声を荒げる。
緑子は悲しげに首を縦に振り肯定する。

「っ……」
「タマが特別なルリグかどうかは僕には解らなかったけど、ただセレクターが所持するだけでは駄目なんだよ
 上手く進化させられないと繭には到底届かないと思う」
「セレクターを2人以上集めるのは……」
「セレクター1人と素人1人の組み合わせでも、バトル自体は突入できるんだ。
 るう子はそうだったと聞いたしね」

アザゼルは先程自らを出し抜いた浦添伊緒奈―ウリスの顔を思い浮かべて顔をひきつらせる。
ウリスはただ脱出しようと動いただけ。

「タマヨリヒメはそんな事を言わなかったぞ」
「? 僕の知ってるタマは好戦的でニャアとしか喋れなかった前ならいざしらず、今なら率先して教えてくれそうだけど」

アザゼルは思い出した。ファバロとのやり取りで知った主催の罠―時間軸の違いを。
タマヨリヒメは自分を騙していたのか?とアザゼルは混乱から呻いた。

――そう言えば

セルティはるう子とタマの再会時の時を思い出す。
嬉しがるタマに戸惑ったように何とか笑顔を浮かべるるう子。
それは2人が別々の時間から来たからこその混乱ではなかっただろうか。

「……るう子が言っていたわ、もし繭の元に行けるなら見つけたい友達がいるって」

839New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:54:52 ID:PrdeHxpA0

夏凜は絞り出すように言った。アザゼルは更に大きくうめき仰け反った。
緑子は成り行きを見て別の事にも気づいたのか深く考え込む。

「……あのアザゼルさん?」
「……」

座った目で絵里をアザゼルは見る。
殺気よりも疲労が色濃い。恐怖を押さえ込み少女は中断せず続ける。

「ええと、ルリグとセレクターの捜索ってセルティさんに依頼したんですよね」
「……」

アザゼルは無言で肯定する。絵里には今のアザゼルが十年以上年取ったように見える。

「るう子ちゃん、それ知ってました?」
「知らずとも関係ないだろう」

暴言に夏凜が突っ込む。

「おい」
「ルリグって他のルリグの存在を察知できるんだけど……」

緑子が声をこわばらせて言った。
ルリグの特性である察知能力を知らないセレクターとルリグはまずいない。

「……」
『もしかして、るう子ちゃんには人と物を探すと伝えたのか』
「ああ」

そう力なく呟くとアザゼルは近くの岩に腰掛けた。

『ところで、るう子ちゃんとはどう接したんだ』
「……」

どこか観念したかのようにアザゼルは大きく息を吐いて語り始めた。
それを聞き夏凜は激高した。
幸い変身せずに暴れようとしたためセルティが抑える事に成功した。
更なる火種―カードキーを意識しながら。
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「……」

840New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:55:40 ID:PrdeHxpA0

アザゼルはぼんやりとした様子でかつてヴァローナが所持していたカードキーを眺めている。
時は既に第三回放送後、解禁された効果欄にはこう書いてあった。

『研究室のシロという名称のモニターに、このカードとルリグカード1枚をかざすべし。
 その際使用したルリグカードは運営に回収されるので注意されたし。
 条件を達成すればこの場における夢幻少女と同様の特典が得られる。ただし行った先での戦闘行為は禁止。ゲームのみ。
 一度このシロを利用した場合6時間は使用不可となる。新たなカードキーは会場のどこかに再発行される
 このシステムの存在は一度使用した後に腕輪等を通じて全参加者に通知される』


セルティは全てが徒労かと空を仰ぎ見るが、実の所希望が残り収穫もあった。
タマヨリヒメの特異性が消えたわけではないから。
アザゼルはタマからるう子も知らない真実を一つ教えられている。
それはるう子が夢幻少女になるのに失敗したセレクターバトルで、繭が直にタマと精神的接触を行った事。
通常の夢幻少女は繭の元に行った所でルリグへ変えられるだけ。
だがその時の繭は夢幻少女の誕生を阻止しようと動いていた。
つまりタマヨリヒメが繭に対するワイルドカードに近い存在であるのは間違いないと言う事ではないかと。
カードキーを使うにしても、セレクターバトルを実行するにしてもタマがいなければ意味が無いのは一同の共通認識だった。

「セルティ」

アザゼルは何とか立ち直ったのかセルティに宝具を返し、これからの予定を告げる。

「俺は小湊とタマヨリヒメを探す」

向いた先は北方。


『1人でか?危険すぎる』

一同はチャットでのDIO達の書き込みを確認している。
闘技場方面に行けば挑発に応じたDIOがいる可能性が高いと推測できた。

「誰が馬鹿正直に戦うと言った」

そう吐き捨てながら、アザゼルが取り出したのは古びた弓矢。

『それは』
「どうやら奴にとって大切なものらしい」

セルティはアザゼルの狙いを察知した。交渉するつもりか。
DIOとの和平は園原杏里達被害者の事を思うとセルティには受け入れられない。

「付いてくるな」

振り向かずにアザゼルは別れを告げようとする。
彼―悪魔達に人の気持ちは解らない。
だが恥という概念はあり、無能者を嫌う傾向も強い。
だからこそ所持品の幾つかをセルティらに譲渡したのだ。
失敗を重ねた自分自身をそのままにしておけなかったから。

841New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:57:10 ID:PrdeHxpA0


アザゼルの態度にけじめのようなものを感じたセルティは黒カードを1枚投げた。
彼はそれをキャッチし、解放する。現れたのは不気味な魔導書だった。
それは螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)。キャスターの宝具。
少し動かしただけで効果が分かったのか、口を歪ませながらカードに戻した。
その時、アザゼルに向かって機器が飛んだ、アザゼルは鬱陶しげにそれもキャッチする。
それは東郷美森の勇者スマホだった。

「三好」
「……」

顔を涙で濡らし、それを拭った少女。顔から狂気は薄れている。

「私達もるう子達を探すから、連絡にはそれを使いなさいよ」

一同は墓場に地下道の入口があるのをセルティから聞いていた。
アザゼルは自らが殺めた勇者の所持品を嘲るように見る。

「まだ狂っているのか?俺は……」
「それセルティの携帯の番号を記録したから」
『夏凜ちゃん』
「私にも責任はあるから……」

夏凜は目を伏せた。
アザゼルとの対決の結果、アザゼルがるう子に危害を加えず、死者を冒涜しなくなったのは事実である。
だが、かと言ってるう子を丁重に扱ったかというとそうではない。
言わなかったからと手の怪我を知りつつ放置し、ゲームに乗ったウリスの近くに配置し、
命の恩人である宮永咲の支給品を返却させず、ろくすっぽコミュニケーションを取らず、居心地の悪い場所で飼い殺しも同然にしたのも事実。
出発前夏凜に余裕がなかったのは確かだが、るう子も余裕なんて無かったはずだ。
気の迷いでゲームに乗ったに過ぎないと判断するくらい夏凜に勇者部部員の事を熱く語られたから。
そんな対象から命を狙われ、目の前で殺されるなんて負担にならないはずがないと夏凜は思う。
東郷に責任を取ってもらいたいという気持ちもあった。

『地下と地上、両方で緑子の力を借りて探索だな』
「……フン、勝手にしろ」
「アザゼル!」
「……」

アザゼルは応えず、低空飛行でこの場を去った。
セルティは夏凜の肩に手を置くと、絵里達の方へ促す。
責任を感じているのはセルティも同じだ。
よくアザゼルを観察していればこんな事にとセルティは悔いた。

「……」

ちょっと遠くでは絵里達が携帯電話を手に他参加者の連絡を取ろうとしながらこちらを待っている。
セルティは夏凜とともに協力者達の元へ急いだ。
早く腕輪を回収し、るう子たちを救助しなきゃと決意しながら。

842New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:57:45 ID:PrdeHxpA0

【D-1/橋/一日目・夜中】

【アザゼル@神撃のバハムート GENESIS】
[状態]:ダメージ(小)、脇腹にダメージ(小)、疲労(小)、胸部に切り傷(小) 、虚無感(中)、低空飛行中
[服装]:包帯ぐるぐる巻
[装備]:市販のカードデッキの片割れ@selector infected WIXOSS、ノートパソコン(セットアップ完了、バッテリー残量少し)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(16/20)、青カード(15/20)
    黒カード:東郷美森のスマートフォン@結城友奈は勇者である 不明支給品0〜1枚(確認済)、片太刀バサミ@キルラキル)
         市販のカードデッキ@selector infected WIXOSS、ナイフ(現地調達)、スタングローブ@デュラララ!!、
         不明支給品0〜2、デリンジャー(1/2)@現実
         螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)@Fate/Zero、弓と矢@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース
[思考・行動]
基本方針:繭及びその背後にいるかもしれない者たちに借りを返す。
0: 墓場に行き地下道か、地上で北方を主にるう子とタマヨリヒメを捜索する。
   優先順位はタマヨリヒメ>るう子>他ルリグ>他セレクター
1:時間が経てばセルティ達に連絡をする
2:借りを返すための準備をする。手段は選ばない。DIOと遭遇すれば交渉を試みる?
3:繭らへ借りを返すために、邪魔となる殺し合いに乗った参加者(ラヴァレイを含む)を殺す。
4:繭の脅威を認識。
5:デュラハン(セルティ)への興味。
[備考]
※10話終了後。そのため、制限されているかは不明だが、元からの怪我や魔力の消費で現状本来よりは弱っている。
※繭の裏にベルゼビュート@神撃のバハムート GENESISがいると睨んでいますが、そうでない可能性も視野に入れました。
※繭とセレクターについて、タマとるう子から話を聞きましたが、上手くコミュニケーションが取れていなかったため間違いがある可能性があります。
 何処まで聞いたかは後の話に準拠しますが、少なくとも夢限少女の真実については知っています。
※繭を倒す上で、タマヨリヒメが重要なのではないか、と思いました。
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという情報(大嘘)を知りました。
※チャットの新たな書き込み(発言者:DとI)に気づきました。
※アヴァロンで大体回復しました。



【D-1/放送局跡付近/一日目・夜中】
【三好夏凜@結城友奈は勇者である】
[状態]: 精神的疲労(大、精神安定剤使用)疲労(中)、顔にダメージ(中)、左顔面が腫れている、胴体にダメージ(小)、罪悪感(大)
    満開ゲージ:0、左目の視力を『散華』、「勇者」であろうとする意志(半ば現実逃避)、肉体的ダメージはアヴァロンで回復中
    多少落ち着いた、顔に泣きはらした跡
[服装]:普段通り
[装備]:にぼし(ひと袋)、夏凜のスマートフォン@結城友奈は勇者である、アヴァロン@Fate/Zero 、スクーター@現実、
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(16/20)、青カード(15/20)
    黒カード:不明支給品0〜1(確認済み)、東郷美森の白カード
[思考・行動]
基本方針:繭を倒して、元の世界に帰る。
0:るう子を救助する。
1:『勇者として』行動する?
2:セルティらのサポートをする。
[備考]
※参戦時期は9話終了時からです。
※夢限少女になれる条件を満たしたセレクターには、何らかの適性があるのではないかとの考えてを強めています。
※夏凛の勇者スマホは他の勇者スマホとの通信機能が全て使えなくなっています。
 ただし他の電話やパソコンなどの通信機器に関しては制限されていません。
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという情報(大嘘)を知りました。
※小湊るう子と繭、セレクターバトルについて、緑子とアザゼルを通じて結構な情報を得ました。
※セルティ・ストゥルルソン、ホル・ホース、アザゼル、絢瀬絵里、緑子と情報交換しました。
※チャットの新たな書き込み(発言者:DとI)に気づきました。

843New Game ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 06:58:05 ID:PrdeHxpA0



【絢瀬絵里@ラブライブ!】
[状態]:精神的疲労(大、精神安定剤使用)、髪下し状態、ショックからの寒気(小)
[服装]:音ノ木坂学院の制服
[装備]:無毀なる湖光@Fate/Zero、 グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS
    セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはVivid    
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(24/30)、青カード(21/30)、最高級うどん玉
    黒カード:エリザベス変身セット@銀魂、ベレッタM92&ベレッタ92予備弾倉@現実、 タブレットPC@現実
         盗聴器@現実、ヴィマーナ@Fate/Zero(使用可能)、、セルティのヘルメット@デュラララ、不明支給品(武器)          
         その他不明(坂田銀時、本部以蔵、ファバロ・リオーネの持っていた赤カード、青カード黒カードの内神威に渡したもの以外全て)
    白カード:坂田銀時、本部以蔵、ファバロ・リオーネ、東條希、宇治松千夜、神代小蒔
    その他不明
[思考・行動]
基本方針:皆で脱出。
0:ことりの墓を見舞った後でセルティらのサポートに務める。
1:皐月、桂、神威と連絡を取る
 [備考]
※参戦時期は2期1話の第二回ラブライブ開催を知る前。
※【キルラキル】【銀魂】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※アザゼル、三好夏凜、緑子と情報交換しました。
※多元世界についてなんとなくですが、理解しました。
※全て遠き理想郷(アヴァロン)の効果に気付きました。
※左肩の怪我は骨は既に治癒しており、今は若干痛い程度になっています。行動に支障はありません。
※セルティがデュラハンであることに気づいていませんが、変なのは気づきました。


【セルティ・ストゥルルソン@デュラララ!!】
[状態]:健康、精神的疲労(小)、罪悪感(中)
[服装]:普段通り
[装備]:V‐MAX@Fate/Zero、ヘルメット@現地調達 、カードキー@
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:PDA@デュラララ!! 、宮内ひかげの携帯電話@のんのんびより、イングラムM10(32/32)@現実
    ジャック・ハンマー御用達薬品セット(精神安定剤抜き)、精神安定剤2回分     
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を狙う
0: 南ことりの腕輪を回収後、アザゼルと連絡を取りつつ北方でるう子達を捜索する。
1: 絵里、夏凜をサポートする。
2:静雄との合流。
4:縫い目(針目縫)はいずれどうにかする。
5:杏里ちゃんを殺したのはDIO……
6:静雄、一体何をやっているんだ……?

[備考]
※制限により、スーツの耐久力が微量ではありますが低下しています。
 少なくとも、弾丸程度では大きなダメージにはなりません。
※小湊るう子と繭、セレクターバトルについて、緑子とアザゼルを通じて結構な情報を得ました。
※三好夏凜、アインハルト・ストラトス、アザゼル、絢瀬絵里と情報交換しました。
※チャットの新たな書き込み(発言者:D、I)に気づきました。


・支給品説明

【螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)@Fate/Zero】
蒼井晶に支給。
人間の皮で装帳された魔道書の宝具。
この本自体が魔力炉となっており、所有者の魔力と技量に関係なしに深海の水魔の類を召喚し使役できる。
ただ召喚数は制限されており、それほど巨大な海魔は通常では召喚できない。細かいところは書き手様任せ。
以上の能力に加え海魔を召喚、使役していなければ少々の治癒能力を発揮できる。
効力は言峰綺礼の治癒術と同程度で回復速度は遅め。

【弓と矢@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
ホル・ホースに支給。
DIOの宝物。アニメでは42話に登場。鏃そのもの成分が遅行性の毒(ウイルス)であると記されている。
ジョジョキャラ以外に使用しても基本的にスタンド能力は発現、変化しない。ぶっちゃけ変な古びた毒矢。


【ジャックのドーピング薬セット@グラップラー刃牙】
カイザル・リドファルドに支給。
ジャックのドーピング薬セット。大きな袋3袋分。
薬品についての取扱が記された本も付属している。
強めだが様々な種類の薬品がある。

【セルティのヘルメット@デュラララ】
神楽に支給。
セルティが愛用しているイエローカラーのヘルメット。
ネコ耳付き。

844 ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 07:01:13 ID:PrdeHxpA0
仮投下終了です。
問題がなければ今日の深夜に本投下させていただきます。
あと今更ながら【紡ぐ者】の本投下時に多少の加筆があったことをお伝えします。

845名無しさん:2017/02/20(月) 18:16:12 ID:9oUnrtUY0
仮投下乙です、特に問題はないと思います

846 ◆7fqukHNUPM:2017/02/20(月) 21:29:06 ID:EzKsSxgQ0
仮投下乙です

カードキーの解禁やDIOとの交渉の予感など、新要素にたいへんワクワクさせていただきました

個人的に気になった点としては、細かいところもありますが以下の事があります

>「楽観論とでも言いたいのか?くだらん。
>貴様を襲撃した際のやり口からして、ほぼ眼帯女の意思が反映されていたと見て間違いなかろう」

この言い方では、結局アザゼルが偽承太郎のことをどう認識しているのか分かりにくいように感じました
(承太郎は針目に操られている、という意味でしょうか。それとも針目が幻術のような能力で作り出した存在だと思っているのでしょうか)
できれば他の言葉に置き替えていただいた方が分かりやすいかと思います

>『ただ殺し合い打破の為、今ここで真剣に話をしたい』
>「……はっ、セレクターもタマヨリヒメもいない状況でか?」

アザゼルの方から『一刻を争う。早く此方に来い』と呼んだ割には、投げやりな言い回しのような…。

>『もしかして、るう子ちゃんには人と物を探すと伝えたのか』
>「ああ」

アザゼルは『飼い犬に手を噛まれる』の中で、るう子を含めた一同の前で
『この俺と小湊、そして浦添はここに残り、3人は残るセレクターの紅林遊月。
他にも、特に腕輪の解除に役に立ちそうな者や情報を捜索してもらおう。』と公言する描写があります

ですので、『るう子(とタマ)がルリグやセレクターを探す上で役に立てること、を黙っていた理由』に関する提案ですが、
アザゼルの傲慢な態度や酷薄な性格、定晴を殺そうとした対応、またこれまでアザゼルが一方的にチームの方針を決定してきた経緯などから、
(氏の描写を拝借するならば『ろくすっぽコミュニケーションを取らず、居心地の悪い場所で飼い殺しも同然にした』せいで)
『るう子はアザゼルのことを信用していないどころか警戒していた為に、積極的に協力するような発言ができなかった』という事にするのはいかがでしょう?

これならば、氏の書かれたアザゼルが自らの行動を失敗だったと自覚する描写とも合致するのではないかと思いました


あと、さらに細かいことで申し訳ありませんが、セルティは杏里のこともちゃん付けでしたし、未成年女子に対する呼び方はちゃん付けでもいいのではないかと思います

847 ◆WqZH3L6gH6:2017/02/20(月) 22:22:21 ID:PrdeHxpA0
>>845-846
感想、ご指摘等まことにありがとうございます。
問題の部分を修正した上で本投下させていただきます。

848 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:39:18 ID:c9XBxMJM0
遅れてしまいましたが今から仮投下いたします。

849有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:41:57 ID:c9XBxMJM0
「持っていかないんですか?」
「あ?」

平和島静雄は支給品であり同行者であるエルドラから問いかけられる。
静雄は先程、落命した紅林遊月に手早く土砂を被せその場を立ち去ろうと考えていた。
彼が問いの意味を理解整理するのに時間がかかった。
もう一人の同行者一条蛍が先に理解し発言する。
エルドラのカードをかざし現場を見せているのは彼女。

「……お姉さんのカードを」
「……ああ」

静雄が後悔に曇らされた頭で問いの意味を咀嚼するのに少々時間がかかるのは仕方のない事。
彼は遊月が所持していた支給品を手早く回収していく。死体漁りに嫌悪を感じながら。
アドバイスをしたエルドラに少々ながら嫌気を持ち、思わず顔をちらりと見る。

「……」

彼女は渋面で遺体を中心に周囲を観察している。僅かに顔を伏せながら。
静雄はその様子をみて、恥を感じながら作業を続行する。
エルドラは半ば放心している蛍に聞こえるように呟いた。

「紅林遊月……」
「……はい」

蛍はここで自らを庇って死んだ少女の名を思い出す。最初にその名を聞いたのは今は亡き香風智乃の口から。
自身を庇い命を落とした人はこれで2人目。

「……あ、静雄さん。そのつけ爪も支給品かと。」

静雄は遺体の指に着けられている、指輪のようなものに手を触れる。

「カードに戻して」

静雄は車をカードに収納したのと同じように念じた。
指輪はどこかに落ちていた黒カードに収納され静雄の手に渡る。
静雄は全ての支給品を回収したのを確認し、地面を音を立てないように掘り上げようする。

「エルドラさん?」

その行為を止めたのは蛍の疑問の声だった。

「……」
「……白カードか」

エルドラは頷く。静雄は遊月の腕輪から剥がれ落ちたカードを拾う。
血液が付着していたが他のカード同様に染みていない。
軽く振るうと血液は飛び散り、血糊は剥がれ落ちた。
カードを見ると生前の遊月の顔がある。その絵をエルドラにも見せた。
エルドラは顔をうつむかせ、落胆したかのように目を瞑った。

静雄は無言で遺体の近くの地面を蹴り上げ、地面の土を遺体へと被せていく。
極力音を出さないように。本当は手厚く埋葬したかったが時間がない。

850有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:42:53 ID:c9XBxMJM0
付近に殺人者いる可能性があり、先程の発砲音を聞きつけてここに来るかも知れなかったから。
僅かな時間で遺体は土に隠れた。
3人はその場を去ろうとする、静雄の顔は西を向いている。
蛍は――リゼさんは?と口に出そうとする。
智乃の大事な仲間の1人で静雄に対し殺意を向け、やがて蛍にも敵意を向けた天々座理世。
過失とはいえ遊月を殺し東方面へ立ち去った少女。蛍はリゼが味方だった事もありいまだに気がかりである。

「……」

考えを察したのだろうエルドラは非難めいた眼差しこそしなかったが、肯定しているとは言えない表情を蛍に向けた。
蛍はリゼの静雄への誤解を解きたかった。だが全身全霊をかけたと言ってもいい説得は通じず、より敵意を膨らませたに過ぎなかった。
説得を切り上げその場を立ち去れば少なくとも遊月さんは死ななかったのだろうか?
蛍は湧き起こる後悔と無力感を抱えながら静雄に声をかけた。

「……。平和島さんどこに?」
「城に行こうと思っただけどよ……エルドラ、向こう魔力とやらが弾けて危険なんだよな」
「今は収まっていると思いますけど。休む場所としてはどうかという気もしますね。
 森に入ったら迷いそうな気がしますし」
「温泉方面に行こうと思う。途中に家の幾つかはあるだろ」
「どうしてですか?」
「服の替えが必要だろ」

静雄は蛍の今の姿を見て断言した。
蛍はそれに納得し、静雄の顔を見て思わず息を飲んだ。
静雄の眉間には皺が刻まれていたから。さっきの発言はリゼへの追跡はもうしないと言ってるのも同義。
蛍は未練を持ちつつもその考えを否定できないでいた。
今のリゼは不可思議な力を持つ銃を所持している、あれで撃たれたら誰も無事でいられる保証はないと蛍が判断してしまう代物。
蛍は彼には聞こえないようにそっと溜息をついた。

「わかりました」

諦めざるを得なかった。
静雄と蛍は立ち去るべく、その前に遊月の遺体がある場所に謝罪の言葉を掛けようとする。
それを遮るようにエルドラは遊月の白カードに向かって一言呟いた。

「ごめん」

真摯さが込められたその言葉を耳にし、2人は黙って遺体から背を向ける。紅林遊月はここにいないから。
2人は真に報いるべき行動を優先する為に足早に西に向かい林に入った。

「……」
「……」
「道路照明灯はあるんですかね?」

殺人者との接触を避け為に林中を歩く2人に掛けられたのは、陰鬱な空気を振り払うようなエルドラの気楽そうな声だった。
静雄は蟇郡苛と出会う前後の記憶を思い起こす。
エリアFからEにかけての照明はいくつか怒りにまかせて破壊してしまったが、HからGにかけての照明には手を付けていない。
さっきコシュタ・バワーを運転していた時は急いでいた事も道路でなく草原を走っていたが、
もし照明灯がある道路なら、ライトがない車でもさっきよりは速度を出せるだろう。
静雄は蛍に顔を向ける、彼女は虚ろな目をしていた。

「……」
「蛍ちゃん、大丈夫か?」
「……えっ、ハイ」

851有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:43:43 ID:c9XBxMJM0
「……」

さっきの遊月の件が辛くない訳がない。
現に静雄とエルドラさえショックを受けているのに、まだ小学生の蛍の負担が小さい筈がないのだ。
静雄は足の向きを南へ変え、方針を2人に伝える。少女達はそれに同意し彼に続いた。

林を抜け草原を抜けた先には少々ながらも照明に照らされた道路が見える。
他参加者の姿は見えない。東には相変わらず煙が立ち上っているが延焼が拡大しているようには見えない。
今がチャンスとばかり静雄は急いで漆黒の車 コシュタ・バワーを現出させる。
蛍は静雄に続く前に尻に手を当てるが返り血が掛かっていない事を確認するやそのまま乗車する。
温泉街に向う3人の行動を止めるものはなかった。

----------------------------------------------------------------------------------------------------

半日前、H-5の海岸にて。

衛宮切嗣に関する情報をどうしようかと考えていた折原臨也。

「折原さん」

そんな彼に一条蛍はジュースを手に立ち上がり声をかけた。

「ジュースありがとうございました」
「ああ良いんだよ」

臨也は笑みを浮かべつつ、ぺこりと頭を下げる蛍を愉しげ見るや、切嗣についての情報の提供を保留とする事にした。
わざわざ情報屋としての禁忌を侵さなくても、同様の効果が期待できる面白い反応が見られる方法を思いついたから。

「蛍ちゃん、ちょっと悪いことを訊くけど、君はもし殺し合いに乗った危険なヤツにあったらどうする?」
「え、それは?」
「無理に答えなくてもいいよ、これから俺がするのはそういった危険を乗り越える為の作戦さ」

蛍の表情が引き締められたものに変わった。
彼女は臨也の今後の計画――主に危険人物と遭遇した場合の対策について、相槌や短い返事を交えながら懸命に記憶していく。
臨也は暗に静雄への悪評が混じった作戦を聞く蛍の様子に胸中でほくそ笑む。
いくつかの対応手段を伝え終わった臨也は最後に緊急時の連絡方法について蛍に伝えた。

「×××-××××-××××ですか?」
「そう。紙に書き写すのは危険だからちょっとキツいけど我慢して覚えて」


教えられた番号は臨也のスマートフォンの電話番号。
もし何らかのトラブルで2人が離れ離れになった場合における連携手段。

「わかりました」

蛍は臨也の細やかな気遣いに感謝した。

「いいんだよ。さ、行こうか」

臨也にとっては片手間的な手段の一つに過ぎない事を知らないまま。
彼の残酷さをその時は知らないまま。

852有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:44:20 ID:c9XBxMJM0

----------------------------------------------------------------------------------------------------

「ハンドルを大きく右に切って〜」

車は危なげなくカーブし先に温泉がある道へ移行する。
ラビットハウスを目指していた頃より上手く運転できるようにはなっていると静雄は思った。
とりあえず危機を脱した事もあり少々なりともリラックスできたのも大きいようだ。

「……詳しいな」
「適当です、テヘ」
「おい」

静雄は冗談と受け取る事にした。

「……」

蛍は乗車して数分後に眠っており、運転のサポートはエルドラが行っている。
ルリグカードは前窓の内側に立てかけていた。

「手紙、れんげちゃんの手に渡ってるといいですね」
「ああ」

静雄とエルドラは分校から出発する前、蛍からある相談を持ちかけられていた。
電話番号の情報を残して良いのでしょうか?と。
悪意ある参加者から情報を利用されるのを恐れたのだろう。
静雄は悪用されるのを想定して考えればいいと受託し、エルドラも少し考えた後に「いいんじゃないですかね」と答えた。

「建物が見えて来たっすよ」
「……」

車は林に挟まれた車道に入る。身近な建物の近くに駐車すべく減速してゆく。
温泉へは目と鼻の先だが、まず蛍の衣服の替えを入手しなければならない。
車は停車する。急ではないが多少揺れて。

「う……ん」

その衝撃で蛍は目覚めた。静雄はバツが悪そうに目を細めた。

車を降りてから3人は今後どうするかぽつぽつと相談を始める。
蛍はまずルリグカードを極力出した状態にできるようカードホルダーを作りたいと提案した。
エルドラと会話しやすいように。正直、静雄と2人だけでは相談相手が少ないと思ったからだ。
それに対してエルドラは「頼みますよ」と答える。
家の玄関が見えた。静雄はこいつの分はどうするんだとばかりに胸ポケットに入れたルリグカードを出して見せた。
カードには仰向けに寝た少女が映し出されている。
パーマがかった水色髪をした少女――青のルリグ ピルルク。

放心してルリグに気づけなかった蛍は目を丸くしてカードを見、エルドラは観察するようにピルルクを凝視した。
そして納得したように手を打って、訴えかけるような顔を静雄へ向ける。

「知り合いなのか?」
「だいぶ前にこの子とバトルをした事がありましてね」
「……セレクターバトルの方だよな?」

殺し合いの方を想像し険のある声で問いてしまう。
エルドラは気にせず続けた。

「ええ。そん時は私が勝ちましたが。まさかここで出遭うとは」
「どういう人だったんですか?」
「ルリグにしては愛想のない子でしたねえ」

人物像については解らないという事か。
静雄はそう解釈しピルルクをポケットに戻した。

「その人の、セレクターさんはここにはいないんですか?」
「……さあ?」

実はエルドラは確信が持てる程ではないが、ピルルクの元セレクターについて予想を付けていた。
蒼井晶。現ルリグ ミルルン以前に使役していた青ルリグがいただろう事を。
赤のルリグ ユヅキ達の交流を通じて。はぐらかしたのはわざわざ蛍に負担をかけたくないとの判断だった。

「ルリグなんて何十人もいますからね、そんなにレアじゃないっスよ」
「一体、何を考えてんだあのアマ」

静雄は明言こそされなかったものの、ルリグが元人間なのを薄々は感づいている。
エルドラの説明と会話からそれは推測できた。そもそもエルドラに隠す気がほとんどないのも原因だったが。
静雄は繭の更なる非道から来る怒りに不快げに歯ぎしりし、何とか衝動を堪らえながら戸に手をかける。
戸は開き3人は中に入り、程なくしてタンスがある和室へと入った。

853有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:45:51 ID:c9XBxMJM0


照明は豆電球のみに留め、蛍は白カードの照明を頼りに遠慮がちにタンスの中を物色している。
静雄はスマートフォンを机に置いた。スイッチが入っている。
エルドラとのちょっとした質疑応答を交えながら、静雄はチャットの画面を見続ける。

I:『一番目のMと、五番目のD。今夜、地下闘技場で話がある』

「D……」

静雄の脳裏に連想される頭文字Dの人物はただ1人。
臨也との最期の会話で存在が示唆された、肉の芽という洗脳能力を使う危険人物 DIO。
チャット機能による頭文字の方則を知らない静雄でもその一文には意識をせざるを得なかった。
発言者Mについては正体に想像が付かなかったが、少なくともDIOは北西の方に行くだろうという想像はできた。
突如、透き通ったような声が聞こえた。

「DIOですか……」

それは探索が終わった蛍の声。彼女の手には手帳や衣服や下着が抱えられている。

「知っているのか?」
「承太郎さんから聞きましたから」

蛍ははっきりそう答えると、今度は居心地が悪そうに視線を落とした。

「?」
「その……着替えをしたいので」

彼女の服に付着した血は既に固まっているが、とてもじゃないが他者に見せられる姿ではない。
静雄は失念していた自分を恥じつつエルドラを手に立ち上がり、彼女を隣室へと促した。

「……」


数分後、蛍が着替えをしている部屋の前に静雄が立っている。
待機する静雄に対しエルドラは小さな声で言う。

「静雄さん、繭に対してこれからする事伝えるんですか?」
「!」

ピルルクとの会話を聞いていたのかと静雄はバツが悪そうに顔を歪ませる。
エルドラは神妙な顔で続ける。

「繭を倒すって言うなら、今のうちに蛍ちゃんに伝えた方がいい」
「……」

静雄がここに来て蛍に自らの主張を告げなかったのにはいくつか理由がある。
自分たちを安全な場所に避難させる必要があって言い出せなかったのが一番大きい。
だがそれとそう変わらないくらい大きな原因もあった。

それは蛍の信念を挫けば、これからの行動に支障をきたすくらい衰弱する可能性が見えたから。
通用こそしなかったが、リゼを説得する際に蛍からは強い信念が感じられた。
ただの小学生を超える説得を発言できるほどに。その強さを否定するような事は静雄には気が進まなかった。
両者はしばし黙り、沈黙が訪れる。また口火を切ったのはエルドラであった。

854有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:47:12 ID:c9XBxMJM0

「こんな状況だし……いつ敵が襲撃して話し合いができなくなるかも知れない」

そう冷然と現実を告げる。

「……!」

静雄は蟇郡の事を思い出し葛藤する。もう果たせない約束を意識して。
白服の怪物に圧倒された事実からくる無力感も意識して。
また訪れるは沈黙の時間。静雄は思考の海に落ち発言できない。
ルリグは訴えかけるようにゆっくりと呟いた。

「……私はやるべき時に必要な事を伝えられなかった」
「!」


静雄はトーンを落としたルリグの声を聞き、目を見開く。
これ以上発言させるわけには行かないと静雄は思った。
それは自己保身や現実逃避の防止からくる不快の念からではない。
エルドラがが深い後悔を抱えているからこそ、それ以上に年長者として彼女に負担を強いる訳には行かなかった。
ここに来て伝わった。未熟な大人でも静雄は今すべきことが解る。
力なんて関係ない、越谷小鞠の死を最も悲しみ怒った外部の"人間"として彼は決断する。

「そうする」

エルドラが次の句を告げる前に、静雄は力強く頷いた。

「……」

気づいたエルドラは独白を止め、両手を頭の後ろに回し気恥ずかしそうに音のしない口笛を吹いた。
静雄は呆れたような表情を浮かべると聞かなかったように腕を組んで蛍を待った。
少しして部屋の戸が開き、蛍が姿を見せた。
その姿は細部は異なるがさっきまで着用してた服とそう変わらなかった。

「あー静雄さん、腕輪を見たいのでお願い」

3人はさっきの部屋に戻り。相談を再開している。
静雄は腕輪を操作しながらエルドラに情報を見せている。

「蛍ちゃんは最初どこにいたんだ?」
「え?私は映画館で……承太郎さん達と一緒に」
「俺はゲームセンタ-にいたんだ」
「え」

静雄は湧き出す感情を抑えながら、柔らかい笑みを浮かべ照れくさそうに言う。

「俺さ、繭がやった事に腹が立って暴れてたんだ」
「……」
「その時、小鞠ちゃんに遭ったんだ」
「!?」
「最初、訳が解らなかったけどよ……」
「?」
「話して見て解ったんだ」

855有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:49:12 ID:c9XBxMJM0

「……。小鞠ちゃん、乱暴者の俺を受け入れてくれたんだ」
「!」
「間違いなくいい子だったよ。上級生として君達の事を守ろうと頑張ろうとして」

蛍の左目から涙が流れた。
静雄は表情を変えずに続けようとする。それがぎこちないものと自覚していても。

「……もっと話を小鞠ちゃんの話を聞きたいか?」
「お願いしますっ」

掠れた声で蛍は言う。鼻水を吸った音がした。静雄は話を続ける。
会話にはやがて蛍による小鞠の思い出話が入り始めた。それでも2人の会話が中断する事はない。
襲撃者も来客もない心からの対話。エルドラは黙って2人のやり取りを聞いている。
その対話は静雄が蛍に対しての隠している感情に気づいても尚続いた。

----------------------------------------------------------------------------------------------------

I:『犬吠埼樹さんのスマホから書き込んでいます。鮮血とアスクレピオスは目的地に到着しました。
途中針目縫と交戦し倒しました』

それはスマホのチャット画面に新たに加わった文章。
3人はそれを意識しながら支給品の再点検を行っていた。
これからの方針についての相談は粗方終えている。
写真立てにはエルドラが立たされていた。
蛍は上目つかいで静雄を見て「主催者は……」と言った。

静雄は黙ったまま真剣な眼差しを蛍を見つめている。
それは繭に対する非道による怒りから来るもの。繭殺害は今の蛍の主義には反する。
だがその根源から来る怒りを蛍は否定しない。だから彼女なりの熟考からきた主張を口出すタイミングを待った。

「俺はあの女のやった事はどうしても許せねえ」

拳を握る音が聞こえた。

「だからアイツに……報いを与えたい」

さっきと同じように殺すとは言わない、それは嘘を付きたいから言葉を変えたのとは違う。
さっきの対話の途中で殺す殺す……発言を蛍に咎められたのが原因だから。
"繭に怒りをぶつける"それだけは誰が相手でも譲れなかった。

「分かりました」
「……」

蛍が強いショックを受けた様子はない。
無理を通した罪悪をちょっと感じながら静雄は安堵する。

「ただ……」
「!」
「もし……主催者に限りませんけど、機会があったら私、話してみたいんです」
「……」
「……」
「解った、できるだけ善処する。だから無理だけはしないでくれ」

856有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:50:23 ID:c9XBxMJM0
「はいっ」

蛍はようやく元気を含んだ笑顔を浮かべエルドラの方へ向いた。

「へ?私はおふたりがする事に反対はしませんよ。何せ支給品ですからねー」

静雄は呆れたようにエルドラに質問をぶつける。冗談めかした感じで。

「何でそのただの支給品がそこまですんだよ?何か魂胆でもあるのか?」
「……いやぁ、私だって生き残りたいですからねー。御二人には仲良くしてもらわんと」
「ふっ」
「なんですかねぇ、その冷笑は」

その時、スマホから発信音がした。
3人は即座にチャット画面に注目する。


I:『犬吠埼樹さんのスマホから書き込んでいます。鮮血とアスクレピオスは目的地に到着しました。
途中針目縫と交戦し倒しました』


「これは……」

名称の選択は3番めと6番目の文章と似たような感じだったが、
そこから人物を特定できるようなものは静雄にはないと思えた。
困惑する彼を他所にエルドラはどこともなく呟く。

「義輝と覇王へ。フルール・ド・ラパンとタマはティッピーの小屋へ。
 タマは小湊るう子……」
「!」
「それって小湊さんのルリグの名前ですか?」
「ええ聞いた所によると以前の。今はイオナって名前のルリグと組んでますが」
「イオナ……浦添伊緒奈とは違うんだよな?」
「……どうですかね?時系列の違いもありますし」
「ティッピーの小屋はラビットハウスの事です」
「4番目の発言のタイミングからすると、あの子があの女達に攫われる前の文章か。クソ!」

ここに来て携帯電話を握りつぶしたのを静雄は後悔する。チャット機能があったかも知れないのにと。
どこぞの吸血鬼以上に。

「針目縫……」

蛍は蟇郡から智乃を通じて伝えられ知った最上級の危険人物の事を思い出し、呟く。
針目が倒された事は僥倖だが、倒した人達の手がかりが少ない。
智乃は蟇郡から神衣鮮血の事までは教えられていなかったから。

「……これだけじゃ判断の材料に乏しい気もしますね」
「……」

蛍は意見を求めるべく静雄の方を向く。
静雄はスマホに登録された電話番号を見て考える。
登録されているのはラビットハウス、ゲームセンター、映画館、万事屋銀ちゃんの4箇所。
万事屋を除いて、生前の臨也が登録した番号。

857有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:51:33 ID:c9XBxMJM0
より多くの協力者が必要だとここに至って静雄は思った。
生前の臨也による情報工作の悪影響の懸念はある。
だがエルドラが気づかせたようにいつどうなるか解らない状況が故に恐れを隠して電話を掛けようとする。

「待って下さい」

蛍が静雄を止め、自らの提案を口にする。

「チャットかメールでリゼさんのこと伝えられないでしょうか?」
「……そうだな」

書き込む文章をエルドラも交えた3人で考える。
相談の傍ら、蛍の手帳と糸と布を使った作業は進行している。
10分以上をかけてもいい文章が浮かばなかった。
それだけリゼの扱いは難儀なのだ。

蛍は出来上がったカードホルダーにエルドラの同意を得た上で彼女を収納する。
次に彼女はまだ眠り続けるピルルク用のカードホルダーの制作に着手する。
その時、スマートフォンが振動した。

3人は相談を中断し、誰が受け持つかを考える。静雄は慎重にスマホを手に取ると蛍へと手渡す。

「……」

映し出された番号は先のどの施設のものでもない。
もしかしたら、と期待半分不安半分に蛍は意を決してボタンを押した。


「もしもし……」
『……』

電話の向こうから微かな喧騒が聞こえたような気がする。
蛍は気を落ち着かせ、誰が話し掛けても対応できるよう気を引き締める。

『ほたるん……』
「れんちゃん」

最後に会ってから感覚的に2日も経っていないのに、長い時が流れたような気がした。
的外れとも取れるその思考の後、蛍は表情を緩めた。

「無事なの、元気なの?」

それは嗚咽混じりとも取れる問いかけ。
だがその感情は悲しみとは相反するもの。

『ウチ、無事なん!さっつん達のおかげで元気なん!』
「っ」

蛍が深呼吸をした。
そして何かが決壊したように安堵から来る言葉が、要領の得ないものも含めて次々と飛び出す。
電話の向こうの少女 れんげも同じように喋りまくった。

「……」

858有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:53:21 ID:c9XBxMJM0
静雄はそんな2人のやり取りを見守っていた。

----------------------------------------------------------------------------------------------------

同じ村に住む2人のやりとりが一段落した後。
静雄は現在のれんげの保護者である鬼龍院皐月と通話していた。

『そうか、蟇郡と纏流子は……』
「す……」

詳細までは聞いていないが静雄は蟇郡の主君である皐月について
静雄は詫びの言葉を口にしようとした。

『謝らなくてもいい。あいつ自身それを望むような者ではない』

凛としたその声に静雄は口を噤んだ。

『しかし、極制服を着用していたとは……』

微かな困惑が入り交じった皐月の声に、エルドラは助け舟を出すべく静雄に声をかける。

「それってまた時系列の……ってやつじゃないですかね」

同意を求められた蛍は黙って頷く。
蛍自身、その行き違いから生命を落としかけたのだ。忘れるはずがない。

『どういう事だ?』
「……話したいんだけど、代わっていいですかね?」

静雄は黙ってスマホを蛍に渡す。

「はい。こちらルリグのエルドラー」
『ルリグ?何の事だ』

知らないようですねって感じで静雄達に目配せしたエルドラは、蛍にサポートを頼みつつ慎重に皐月との通話を続けた。

----------------------------------------------------------------------------------------------------

「……」

蛍は鉛筆は手に皐月から教えられた電話番号を記録していく。
そしてその番号をスマホに登録していく。
生前、臨也は記録は残さず、自分で記憶した方がいいと言っていたのを蛍は思い出し、
恥を感じながらもやるべきことを続けた。

『では、こちらは手紙を処分するがいいのか?』

皐月とれんげは既に記憶したという。
その言葉に力強さを感じた静雄は「ああ」と同意する。

『それで静雄さんが探している相手は……』
「小湊るう子。紅顔の中肉中背の中学生くらいの女の子だ。後、俺の事は呼び捨てで良い。蟇郡もそう呼んでいたから」

859有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:54:51 ID:c9XBxMJM0
『小湊……るう子か』
「はい」

それは蛍の声。

『解った。我々は今分校にいるが、あなた達はどうする?』
「俺達は……今からそっちに向かおうと思う」
『そうか。では我々もそちらに行こう』

そうした方が早く合流できるかと3人は合意する。

「そうだな。頼むぜ」
『そちらこそ』

静雄は蛍にスマホを渡すと、彼女は電話の向こうに声をかける。

「じゃ、またねれんちゃん!」
『うん、またなん!』

通話が終了した。
静雄と蛍はさっきと比べ晴れやかな表情で立ち上がる。

「ちょっと、待って」

とエルドラは2人にストップをかけた。
机の上には1枚の黒カードがある。
静雄はそのカードを捲ると裏面には支給品 蝙蝠の使い魔の詳細が書かれていた。

「私をその蝙蝠に触れさせて来れませんかね?」
「何でだ?」
「ちょいと思い当たる節がありまして」

静雄は黒カードから蝙蝠を出し、蛍はホルダーからルリグカードを出す。
欠伸をした蝙蝠にエルドラは触れた。
すると蝙蝠は青白く発光し目をぱちくりさせた。

「これは……?」
「うーむ。静雄さん、ちょっと戸を開けてもらえませんかね?」

静雄は戸を開けると、蝙蝠は飛び立ち暗闇へと身を躍らせる。

「おい」
「……おー、見える見える」
「あのエルドラさん、もしかして」

ある事を記憶している蛍はエルドラに問いかける。

「どうやらこの子、シグニと同じように扱えるみたいっすね」
「シグニ?」
「ルリグの使い魔……って言って良いのかな?みたいなものです」

ルリグは稀にだが触れた物体を自らの眷属 シグニへと進化させる事ができる力を持つ。
ゲームとしてだけではなく創作小説としてのウィクロスにも詳しいエルドラだからこそ思い至った発想だった。

860有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:57:46 ID:c9XBxMJM0

「あまりスピードは出せないけど、これで車の運転も楽にできるっしょ」
「じゃあ私にも」
「色々試してみるのも良いかもですね」

和気あいあいとした2人の感情に釣られたように嬉しそうな鳴き声を上げて蝙蝠が戻ってくる。
蛍はスマホを手に思案し、首に掛けられたエルドラも画面を見つめる。
静雄はそんな彼女等を見て、強くなりたい気持ちを一層強めた。

----------------------------------------------------------------------------------------------------

一方、その頃の旭丘分校では

通話を終えた皐月とれんげは校舎から出ると、蛍らと合流すべく足早に南下しようとする。
さっきまでの通話の情報交換は必要最低限のものに過ぎない。
彼女等と合流してからが本番。桂さんや絢瀬と平穏に会話するための暗号等も伝えた。
連絡は……今はあの3人に頼るしかない。
れんげの精霊が哨戒するかのように宙を舞う。
走った2人は校門を出た。

2人は道路の脇の林に入って進む。辺りは静寂に包まれいる。

今後の進路は、これからのあの3人の成果次第だが、おおよそに決めている。
島の中央の道路を西進し放送局に向うか、あるいは天々座理世を含めた苦境に立たされた反ゲーム派の参加者の救援の為に、
分校の転送装置を使って、駅までの道をショートカットして電車を利用するか。

「……」

城周辺にいるかも知れない妹 纏流子と再会して止めたい気持ちはある。
だが皐月は今はあえてれんげの希望を叶えたかった。貫き通すために。
2人も行く、約束を果たす為に。

861有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:58:37 ID:c9XBxMJM0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【G-3/温泉付近の民家/夜中】

【平和島静雄@デュラララ!!】
[状態]:こんな状況を招いた自分への怒り(中)、全身にダメージ(中)
[服装]:バーテン服、グラサン
[装備]:ブルーアプリ(ピルルクのカードデッキ)@selector infected WIXOSS
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(18/18)、青カード(13/18)
    黒カード:縛斬・餓虎@キルラキル、 コルト・ガバメント@現実、軍用手榴弾×2@現実、
         コシュタ・バワー@デュラララ!!、不明支給品0〜1(本人確認済み)
    白カード :紅林遊月、衛宮切嗣、ランサー
    自分と蛍の換えの服(上下1〜2着分)@現地調達

[思考・行動]
基本方針:あの女(繭)に報いを与えたい。殺す発言は極力しないように心がける。
  0:道路照明と使い魔を駆使し車で分校方面へ向う。
  1:蛍を守りたい。強くなりたい。
  2:蛍とれんげを再会させ守る為にスマホを通じて情報収集する。
  3:小湊るう子を保護する。
  5:2と3を解決できたら蟇郡を弔う。
  6:リゼが気がかり。
  7:余裕があれば衛宮切嗣とランサーの遺体、東條希の事を協力者に伝える。

[備考]
※一条蛍、越谷小鞠と情報交換しました。
※エルドラから小湊るう子、紅林遊月、蒼井晶、浦添伊緒奈、繭、セレクターバトルについての情報を得ました。
  先程、簡単にですが皐月、れんげとも情報交換を行いました。
※東條希の事を一条蛍にはまだ話していません。
※D-4沿岸で蒼井晶の遺体を簡単にですが埋葬しました。
※D-4の研究室内で折原臨也の死体との近くに彼の不明支給品0〜1枚が放置されています。
※校庭に土方十四郎の遺体を埋葬しました。
※H-4での火災に気付いています。 遊月を埋葬した時点では拡大も鎮火もしていないようです。
※G-4とH-5の境界付近で紅林遊月を簡単にですが埋葬しました。
※ピルルクの「ピーピング・アナライズ」は(何らかの魔力供給を受けない限り)チャージするのにあと1〜2時間かかります。


【一条蛍@のんのんびより】
[状態]:全身にダメージ(小)、精神的疲労(中)
[服装]:普段通りに近い服@現地調達
[装備]:ブルーリクエスト(エルドラのデッキ)@selector infected WIXOSS、蝙蝠の使い魔@Fate/Zero(シグニ化?)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(17/20)、青カード(18/20)
    黒カード:フルール・ド・ラパンの制服@ご注文はうさぎですか?、カッターナイフ@グリザイアの果実シリーズ、
    ジャスタウェイ@銀魂、越谷小鞠の白カード 折原臨也のスマートフォン(考察メモ付き)
    ボゼの仮面咲-Saki- 全国編、赤マルジャンプ@銀魂、ジャスタウェイ×1@銀魂、     
    超硬化生命繊維の付け爪@キルラキル 、およびM84スタングレネード@現実
    越谷小鞠の不明支給品(刀剣や銃の類ではない)、筆記具と紙数枚+裁縫道具@現地調達品

[思考・行動]
基本方針:できる範囲で自分も含めて誰も死なないように行動していきたい。
   1:れんちゃんと再会すべく分校方面へ向う。
   2:平和島さんに付いて行く。
   3:どうにかスマホを活用してリゼさんを始めとした仲間達を助けたい。   
   4:主催者と遭えたら話をしてみたい。
   5:折原さんがどんなに悪い人だったとしても、折原さんがしてくれたことは忘れない
   6:何があっても、誰も殺したくない。

862有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:59:18 ID:c9XBxMJM0
[備考]
※セレクターバトルに関する情報を得ました。ゲームのルールを覚えている最中です。
※空条承太郎、香風智乃、折原臨也、風見雄二、天々座理世、衛宮切嗣、平和島静雄、エルドラと情報交換しました。
 先程、簡単にですが皐月、れんげとも情報交換を行いました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。現状他の参加者に伝える気はありません。
※衛宮切嗣が犯人である可能性に思い至りました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※エルドラのルリグカードは自作の透明のカードホルダーに収納されています。
 現在2つ目を制作している最中です。
※折原臨也のスマートフォンにメモがいくつか残されていることに気付きました。 現状、『天国で、また会おう』というメモしか確認していません。
 他のメモについては『「犯人」に罪状が追加されました』『キルラララララ!!』をご参照ください。また、臨也の手に入れた情報の範囲で、他にも考察が書かれている可能性があります。

※エルドラの参加時期は二期でちよりと別れる少し前です。平和島静雄、一条蛍と情報交換しました。
 ルリグの気配以外にも、魔力や微弱ながらも魂入りの白カードを察知できるようです。
 黒カード状態のルリグを察知できるかどうかは不明です。
※現在、蝙蝠の使い魔はエルドラと感覚を共有しています。



※【蝙蝠の使い魔 補足】
 セレクター役がいるルリグと接触させると、ルリグが魔術師と同様に感覚を共有でき使役できるようになります。
 命までは共有しません。なおどちらかを黒カードに収納するか意識を失うとそれらの効果は失われます。
 制限や、ルリグを扱うセレクターが同様に扱えるかどうかは後の書き手にお任せします。
 支給品による強化で魔術の力を得た場合も扱えるかもしれません。

【追記】
臨也のスマホにラビットハウス、ゲームセンター、映画館、万事屋銀ちゃんの電話番号が登録されています。
今回の話で新たに各勇者スマホの番号が登録されました。

863有為転変 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 14:59:50 ID:c9XBxMJM0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【F-4/旭丘分校付近/夜中】
【鬼龍院皐月@キルラキル】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージ(中)、袈裟懸けに斬撃(回復中)
[服装]:神衣鮮血@キルラキル(ダメージ小)
[装備]:体内に罪歌、バタフライナイフ@デュラララ!!
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(5/10)、青カード(8/10)
    黒カード:片太刀バサミ@キルラキル
    白カード:針目縫
    針目縫の腕輪(糸が括り付けられている)、鉛筆2本
[思考・行動]
基本方針:纏流子を取り戻し殺し合いを破壊し、鬼龍院羅暁の元へ戻り殺す。
0:まず平和島静雄と合流する。それから放送局に向うか分校の転送装置を利用して電車を利用するか判断する。
1:絢瀬絵里が心配。 何とか連絡を取りたい。
2:鮮血たちと共に殺し合いを破壊する仲間を集める。
3:纏流子を取り戻し、純潔から解放させる。その為に、強くなる。
4:ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を調べてみたい。
5:襲ってくる相手や殺し合いを加速させる人物は倒す。
6:神威、DIOには最大限に警戒。また、金髪の女(セイバー)へ警戒
[備考]
※纏流子裸の太陽丸襲撃直後から参加。
※【銀魂】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました。
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※罪歌を支配しました。支配した場合の変形は身体から実際の刀身以上までの範囲内でなら自由です。
※一条蛍(I)の書き込みまでチャットを確認しました。
※IDカードから転送装置の存在と詳細を知りました。
※静雄との会話で蟇郡が流子に殺された事を知りました。

【宮内れんげ@のんのんびより】
[状態]:魔力消費(中)、勇者に変身中
[服装]:普段通り、絵里のリボン
[装備]:アスクレピオス@魔法少女リリカルなのはVivid 、犬吠埼樹のスマートフォン@結城友奈は勇者である
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(9/10)
    黒カード:満艦飾家のコロッケ(残り三個)@キルラキル
    飴の入った袋(残り8割)
[思考・行動]
基本方針:ほたるんと再開するために南下する。
1:うちも、みんなを助けるのん。強くなるのん。
2:銀さん、えりりん心配のん。
3:あんりん……ゆうなん……。
4:きんぱつさん、危ないのん?
[備考]
※杏里と情報交換しましたが、セルティという人物がいるとしか知らされていません。
 また、セルティが首なしだとは知らされていません。
※魔導師としての適性は高いようです。 魔術師的な感覚も備わり始めました。
※【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【銀魂】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※一条蛍(I)の書き込みまでチャットを確認しました。
※放送を聞いていません。
※IDカードから転送装置の存在と詳細を知りました。

【追記】
※静雄達との通話による情報交換は必要最低限に留まっています。
 少なくとも第二放送前の流子と蟇郡の事、小湊るう子の事、天々座理世を始めとする混乱については伝えられています。
※樹の勇者スマホに臨也のスマホとラビットハウス、ゲームセンター、映画館、万事屋銀ちゃんの電話番号が登録されました。
※蛍の手紙は処分されました。
※衛宮切嗣の遺体とランサーの生首は埋葬されました。  影響はありませんが両者の遺体からは差異はあれど魔力が残留しています。
※旭丘分校からの転移先は本能字学園の校庭です。装置に関する説明文の有無や細かい場所は後の書き手さんにお任せします。
※IDカードは針目縫との空中戦の折紛失しました。現在D-4かD-5の海上に落ちている可能性が高いです。

864 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/21(火) 15:02:37 ID:c9XBxMJM0
仮投下終了です。
ご指摘等がありましたらよろしくお願いいたします。
今回は前作も含めて大きな迷惑を掛けてしまい申し訳ありませんでした。

865名無しさん:2017/03/21(火) 21:53:21 ID:cJa1vYI.0
仮投下乙です
シグニの設定を利用して使い魔と感覚共有するというのが面白い…
エルドラが二人の良い潤滑油になっていますね

気になったのですが、蛍の行動方針が前話までの『誰かを死なせるぐらいなら自分が庇って死ぬ』という考えから一転して
『できる範囲で自分も含めて誰も死なないように行動していきたい』になっていることです
きっかけとして静雄との対話やれんげと話ができたことなどの明るい要素はあったのですが
1話の間で(時間経過はあるとはいえ)急に立ち直ったかのようにも見えてしまいましたので、その考えに至る描写が抜けているように感じました

もう一点、
>蛍はここで自らを庇って死んだ少女の名を思い出す。最初にその名を聞いたのは今は亡き香風智乃の口から。
修正スレでも指摘されていますが、『スマイルメーカー』で蛍は遊月と直接に対面しています

866 ◆WqZH3L6gH6:2017/03/22(水) 12:04:46 ID:GgHybcvo0
>>865
感想と指摘ありがとうございます。
蛍と遊月が対面してたのは知っていたんですが、自己紹介をしていた可能性を失念していました。
蛍の行動方針も含め描写の追加と訂正を修正スレに投下させていただきます。

867 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:04:18 ID:.k6mjIJg0
大変遅れてしまいましたが仮投下します。
問題がいくつもありそうなので。

868題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:05:10 ID:.k6mjIJg0

・??

それは数日前のあるゲームの運営者達の一幕。
もし支給品が何らかの原因で許容以上の効果を発揮したらどうするの?と誰かが訪ねた。
当時その場にいた責任者はこう返した。
その時点、その場にいる責任者次第だと。
質問者は恐る恐る質問を続けた。
それは拙くないかと。
その場の責任者は苦笑しながら言った。責めてどうなるんだい?と。



・神威1



ホテルから本能字学園へ、そして駅までの道のりを走破した神威は、息を整えると身近の掲示板を見る。
時刻は既に夜10時を過ぎている。だが、これくらいの時間なら間に合うと神威は思った。
若干強い風が吹いた。冷たい風だ。
手に持った袋から声が聞こえた。
彼は袋から小さく大雑把に切り取られたクリアファイルを出し、青のルリグ ミルルンに声を掛けた。

「今度は何だい?」

透明色のファイルに挟まれたルリグカードは訝しげな面持ちで口を尖らせながら返答した。

「さっきの校庭の死体あったるん?」

神威は小さく頷く。

「それで……ここにも死体があるるん」

数時間前、初めて黒カードからミルルンが開放された場所でもある。
神威は瞬きをしながら意外そうに訪ねる。

「また何か感じたのかい」

ここにあったルリグが感知できる白カードは既に回収済みだ。
少々とはいえ何があるか、海賊として興味があった
ミルルンは頬杖を突きながら、真顔で言う。

「学校のと、ここでの死体、雰囲気が違うるん。さっきまでは不自然に思わなかったけど変るん」

「へぇ……」と神威は好奇からの声を上げ、掲示板に隠されてる遺体へと近づいた。
学校での遺体は間桐雁夜と園原杏里とジャンヌ・ダルクのもの。
彼が危険視していた妖刀が何者かに回収されている以外は変化がない。
ミルルンが気づけた現象も雁夜の遺体から弱い何かが感じるようなくらいのもので、両者の興味を強く引くものはなかった。
2人が本能字学園の校庭でやった事は白カードを回収し、遺体を荷車に乗せちょっと移動させたくらいだ。

ここでは発見がありそうな予感に浸りながら、彼は遺体を見る前にミルルンに質問をした。

「これまで感じた力の中では、ここのは何が近いのかな?」

ミルルンは目を瞬きしながら言った。

869題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:06:56 ID:.k6mjIJg0

「ホテルの……遊技場にあった、あの人形に近い力を感じるるん」

神威は一瞬宙を仰ぎ、手に持った袋を動かしながら2つの遺体を検分する。
彼の瞳が不思議そうに揺れた。


「……どっちがだい」
「神威が今見てる方にきまってるるんっ」

神威は苦笑いに近い笑みを浮かべ、少々途方に暮れたように呟く。


「俺、呪いには詳しく無いんだけどな」
「ミルルンもるん」
「……後回しにしようか?」
「……賛成るん」

彼は力とやらを感じる遺体をもう一度凝視するや、迷わず方向転換し駅へ向かった。
入巣蒔菜だった遺体を、変化があったにも関らず再度放置しつつ。


・桂1



『犬吠埼風さんのスマホから書き込んでいます。
 放送までにこちらから連絡出来なければ、先に行くようお願いします。
                   狂乱の貴公子とブランゼルより』




映画館の中を再度探索するは桂小太郎とコロナ・ティミル。
あちこちに点在する大きな穴を確認しながら、桂は思索を続けている。
本来ならスマホで皐月に連絡をした後、旭丘分校に行く予定だったが、それは出来ないでいた。

「電話線はすべて切られているか」

彼は羽織を小さく揺らせながら、穴から覗く電話線を見つつ表情を厳しくさせる。
結城友奈ら勇者達のスマホは同じ勇者スマホで通話出来ないようにされているのを知ったのは、ついさっきの事。
なら施設の電話ならと劇場の電話の使用を試みたが、既に荒らされ電話のみならず大半の映画館の機能が利用できなくなっていたのだ。
そうなると身近な施設で電話がありそうなのは駅となってくる。
同じく勇者スマホを所持する皐月達も同じ状況と見たコロナの提案で、もう少し映画館を調べて見ようと決めたのはその直後だった。
絢瀬絵里達の電話を通じ、こちらへの連絡を待つ為に。
2人は階段を降り、やがて地下への出入り口を発見した。


「……ちょっと失礼しますね」

コロナは自重に耐えきれず崩れた壁の前に立つと、ブランゼルを掲げ魔法を行使する。
破損した壁が固まり、石人形が形成される。
DIOとの戦闘で用いたゴライアスと比べれば小さくデザインが違うゴーレム。
そしてコロナは額に浮かんだ汗を拭い、勇者スマホを操作し変身を解除した。

870題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:07:46 ID:.k6mjIJg0

「何を?」

コロナの行動の意図を桂は尋ねる。
出現した魔法陣も前とどこか違っている。何か無理したのではないか。


「大丈夫です。確認したい事がありまして」

コロナは桂に説明すると、彼はそれに納得する。
桂にはコロナの持つような魔力はないが、一応はそれに習い変身を継続する事にした。

2人は扉を開き、入った。
階段を降りてゆく。
目の前に広がる光景は2人が予想だにしないものだった。
桂の視界にある物体が入り込む。
彼は大きく口を開いた。



――コロナは桂の顔を見る。彼は首を振り、顔を上げる。
彼女は僅かに顔を俯かせると、地下通路を見渡す。
外壁は白く、あのゲーム開始時のあの部屋のようだった。
ゴーレムの両手は崩れている。
コロナは外壁に興味を持ち、強度を確かめるべく壁の破壊を試みたのだ。
繭の居場所を突き止めれば、そこは要塞で多少なりとも破壊活動が必要になると思ったからだ。
しかし、壁には傷一つつかず、ゴーレムの両腕が自壊したのみだった。

コロナは壁の破壊を一旦諦め、せめて材質を把握すべく手に触れた。
壁は依然固く、より大きな力を加えても壊れないかもしれない。そう思わせる不気味さがあった。
先が思いやられる。コロナは意気消沈しそうになるが、それでも自分を奮い立たせた。

「……地下通路があったのは盲点でしたね」

気を取り直したようにそう言うと、コロナは埃の付いた学生服を払った。

「コロナ殿、魔力の調子はどうだ?」

コロナは右掌を握りしめ考え込む。

「回復していってます。桂さんの方は?」

桂はつま先で壁を軽く蹴りながら変わらぬ調子で返答する。

「分からん。だが不調は感じられない」

変身中は魔力の回復がしない。その事を知ったコロナは心配そうに言う。


「れんげちゃんにその事伝えた方がいいですね」

桂は頷く。

871題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:08:23 ID:.k6mjIJg0
「調べた甲斐はあったな」

桂はあえては明るい調子で強く言った。

「ですね」

コロナも笑顔で応え……目に着いた物体を見て思わず目を反らした。

『吸血鬼』


――ここは地下通路施設モンスター博物館の出口付近。
桂が威嚇の叫びを挙げたそれは模型と解るような材質で作られていた。
でなければ桂は一目見て破壊に踏み切っていただろう。


「できればもっと沢山の人と見て回りたかったですね」


コロナは嘆息し、桂は首をコキコキ回し出口の方を向いた。
今は駅に向うが先決。全て見て回るには時間が惜しい。
そう未練を残しながら、コロナは桂に続こうとする。

「あれ?」

階段を登る途中、彼女は丸っこい毛玉のような物体を発見する。
地下通路発見の衝撃から気づけなかったのか。
コロナは足早に階段を登り切ると、汚れた物体をそっと拾い上げた。


・皐月1

れんげから借りたスマホの通話を切り、現在の持ち主へ返却する。
皐月は白カードの僅かな明かりを頼りにれんげと共に南下を再開した。
脇にはアスファルトで舗装された道路が見える。照明灯は見当たらない。
僅かに乱れたれんげの息遣いを感じながら、皐月はさっきのチャット内容と絵里からの連絡を思い出す。
絵里の無事が確認できた。その上、友奈の仲間であった三好夏凛や、杏里と親しかったセルティと同行していたのは更なる幸いだった。
桂とコロナの無事も伝えられた。
後は平和島静雄達と合流できれば本格的に前進できる。
それだけにより一層の連携の為にも坂田銀時の死は早めにれんげに伝える必要がある。
どのタイミングで言おうか。
桂さんとコロナの使用しているスマホはこちらへの通話は無理だ。

そうなって来ると現状頼れるのは平和島静雄が所持していると思われる端末だが、
北上しているはずの彼らの車が一向に見つけられない。何かあったのか?
少々の焦りを感じつつ、皐月はれんげの方を向く。
れんげはこちらを振り向き、返答を待とうとする。
皐月は「いや、まだいい」と小さく言うと正面に顔を向けた。
彼女が纏う神衣鮮血も安心したかのように小さく動いた。

通話から時間は経っていない。
先程聞かされた、未だに凶行を働いているであろう纏流子を意識しているからだ。

872題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:09:34 ID:.k6mjIJg0
用心に越したことはないが、焦るのは良くない。
何てていたらく。彼女は笑うように息を吐いた。

「おっ」

突如、れんげが声を上げた。
皐月も彼女が見つけた何かを発見する。

「ほたるん!!」

黒い車らしき物体の側で途方に暮れたように座り会話をする2人の男女がいた。
2人もこちらに気づき、女性の方――一条蛍が嬉しそうに立ち上がった。

「れんちゃん……!」

両手を上げて駆け寄るれんげと、とてとてと疲労が残る足取りで近づく蛍。
男――平和島静雄はカードホルダーを手に、一応警戒してるのだろう――周囲を見回しながら早足で皐月の方へ向かった。

皐月はそれを見て、ちょっと怒ったように両手を組んだ。
静雄はバツが悪そうに頭を掻いた。

「鬼龍院皐月……さんか。あー車……がよ」

手にしたカードから女性の声がした。

「生き物とは思わなかったっすねー」
「ああ……」


皐月はその声を一瞬不思議に思った。だがそれは話に聞いたルリグ エルドラと気づき理解。
彼女は両手を腰に当て口元に微かに笑みを浮かべて言った。

「何をやってるんだ、あなた達は」

静雄は両手を繋いで手を振る蛍とれんげを横目で見つつ「すまねぇ」と返答した。

皐月が二の句を継ごうとした時、背筋に寒気が走った。

「な……」

彼女が身を動かす前に、それは聞こえた。


平和島、愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛
静雄、愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛
見つけた、愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛
愛しましょう愛しましょう愛しましょう愛しましょう愛しましょう愛しましょう愛しましょう愛しましょう……
愛しましょう愛しましょう愛しましょう愛しましょう愛しましょう愛しましょう愛しましょう愛しましょう……


「ひっ……」

怖気を感じたエルドラが短く悲鳴あげた。

873題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:10:31 ID:.k6mjIJg0
・コロナ1

冷たく気持ちいい。そう夜風を感じながらコロナは前向きに足取りを軽くしようとする。
映画館の探索を終えた桂とコロナは駅に向かっていた。
彼女の手には風呂敷があり、中には数時間前にヴァニラ・アイスが手荒に扱ったティッピーの模型が収納されている。
破損とまでは行かなかったが汚れたそれを何となく不憫に思い、余裕があればコロナが洗おうと回収したのだ。

目の前に駅が見える。

「……コロナ殿」

緊張を孕んだ桂の声。
小さく何かが擦れる音がした。
警戒し身体を固くするコロナ。
しかし桂の息遣いが徐々に緊張が薄らいだものに変化していく。

「……お前は」

理由はコロナにも解かった。駅付近にいた男から殺気のようなものは感じられない。
だが同時に桂の声色に険しさらしきものが混じってるのに疑問に思う。
彼女は目を凝らし、男の姿をよく確認しようとする。

「あ、あなたは!」

声が震える。
それは彼女達を散々痛めつけた吸血鬼を力においては圧倒した男だったから。
今の彼の事は絵里を通じて三好夏凛から聞いている。
吸血鬼DIOの居場所が解らぬ以上、ここに居ても不思議でないが……。

カードの様な物を拾い上げた男は2人の前に顔を向け言った。
少年と言ってもいい若い男の声だった。

「……参ったなぁ、あんたと出遭うかぁ」
「戦意は無い、か。……絵里殿の言った通りだな」

感情の抑えた声で桂は呟く。
少年はそれを受け笑うように口元を歪める。

「話があるんだけど……良かったらそちらの子に話して置くけど?」

桂は視線を逸らさず、真剣な面持ちで言った。

「……否、いい」

神威は「へぇ?」と意外そうに返事する。

ぐ……と歯を食いしばる音がした。
神威の目を見据えながら、桂はやや掠れた声言った。

「絵里殿とあいつの選択を無駄にしたくない」
「ふぅん……」

桂は神威の持つカードを見る。

「それに今のお前はDIO以外に全力は出せまい」

874題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:11:27 ID:.k6mjIJg0

神威は虚ろな笑顔を止め、目を閉じ溜息をつくように返した。

「……解っていたか」

コロナは少し緊張を解き、桂の裾を引っ張り何かを伝えるべく神威の持つ袋の方に注目するように目配せする。
神威は笑顔になると袋からルリグカードを出した。

「……!」
「それは?!」
「あれれ、知り合い?」


神威はミルルンに対し無言で頷くと駅の方に踵を返す。

「あ……」

2人が呼び止める前に神威はすかさず提案した。


「発車時刻まではまだ時間がある。それまでホームで話をしようか」



・静雄1

「天々座理世……桐間紗路の友人」

皐月の呟きに静雄は深く頷くと、蛍の方に顔を向けた。
蛍は訴えかけるように皐月の目を見た。

『俺が動ければ力になれたんだが』
「未知の力を持つ銃か……」

電話越しで会話した時より濃密な情報交換は終えた。
残りの参加者の危険性もヴァニラ・アイスとセイバー以外はほぼ把握できた。
静雄とエルドラは少し離れた位置を見て憂鬱そうに顔を曇らせる。
地面に一本の刀が突き刺さっているのが確認できる。
れんげが遠目からその刀――罪歌を観察していた。

「我々だと見つからないよう取り押さえるしか無いな」
「そんな……」
『すまんな』

鮮血が蛍に謝意を伝える。
本来なら鮮血はある程度の自律行動を行えるはずだった。
だが制限の為にそれは出来ない。ただの服と見せかけてリゼを取り押さえるのは無理なのだ。

「で、コイツはどういう訳か変わらねえのかよ」

鬱陶しそうに静雄は罪歌を見やる。
静雄の姿に反応した罪歌は皐月をこれまでにない支配力を持って操ろうとした。
だがそれでも支配するに遠く及ばず、皐月自身が静雄から離れ地面に突き刺し事なきを得ている。
その際、黒カードに収納しようとしたがその機能は何故かなかった。

875題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:12:22 ID:.k6mjIJg0
「私はこれに乗っ取られはしない自信はあるが、戦闘で自在に操るとなると難しいな」
「なるべく俺は離れた方がいいって事か」
『解せん』

鮮血は不満そうに罪歌を睨む。
念の為に鮮血の状態をチェックしたのも先程。
その際、鮮血は他の支給品同様黒カードに収納できた。
ちなみに今は皐月は鮮血を着用している。

「……黒カードの仕組みの解明もいずれ必要になるんだ。手がかりを得られたのは悪い事ではない」
「私も解放されたいっすね」

皐月は考える。
纏流子の神衣純潔も黒カードに支配されているのかを。
もし支配がされていたなら無理に引き剥がさなくても解放するのは不可能では無いと。
しかし。

「あの皐月さん」
「ん?」
「流子さんの事」
「向こうから攻めてきたなら、こちらも対応するしか無い」
「だけど……」
「蛍ちゃん」

皐月に詰め寄ろうとする蛍を静雄が止める。

「あいつは止めたって意味ねぇよ」
「なぜ!?」
「……蛍ちゃんが庇ったところで足止めにもならないんだよ」

そのやり取りを聞き、れんげが心配そうに蛍に顔を向けた。
蛍は悲しみと困惑が入り交じった表情で立つ尽くす。
皐月はしばし考えた後、何かに気づいた様子で蛍に言った。

「何か勘違いしているようだが……」
「え?」
「平和島は薄情とか決めつけで君に言ってるのではないぞ」
「それって……」
「平和島、ちょっと模擬戦がしたいんだが、いいか?」
「……構わねえが、大丈夫か」

皐月の身体の他に、蛍への影響も危惧しての発言。

「私は蟇郡の主だぞ、舐めるな」


不敵に皐月は笑う。蛍の精神状態も折り込み済み。
静雄は少し考えた後、エルドラに周囲の警戒をするよう伝え、皐月に向き合った。
皐月が強い事は聞いている。ほぼ基礎能力のみ静雄でも皐月が只者で無いのは伝わる。
シグニ化した蝙蝠がエルドラの命で再び舞う。
よく分からないままわたわたと2人を止めようとする蛍を、これまたよく分からないまま直感のままにれんげは押しとどめる。
皐月が地面を蹴る音がする。静雄が反応したのは少し遅れてからだった。

876題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:13:59 ID:.k6mjIJg0

・桂2

桂とコロナと神威はベンチに座ったまま情報交換と交渉を続けている。
神威が数枚の白カードを桂に手渡した。
その中にはラビットハウス内で死んでいた銀髪の男 ポルナレフの顔もあった。

「全員は調べきれそうに無いから、渡した分はあんた達が調べてくれよ
 俺はDIO相手に集中したいからさ」
「お前……繭を倒すつもりなのか」

驚いたように桂は言う。神威は心外とばかりに言い返す。

「俺は戦いも楽しむけど、同時に繭ちゃんも倒すつもりだったんだ
 その為に情報収集や腕輪の解析も進めなきゃね」
「そうだったんですか……」

コロナが声をわななかせながら、劣等感が混ざった眼差しで神威を見つめる。
ミルルンがそんな彼女達を見て、呆れたようにジト目で見続けている。

「じゃあ、神威……さんは何か手がかりを……」
「まぁ、決め手に欠けるけど幾つかはね。あと呼び捨てでいいよ」
「……信じられん」

桂の声が震える。コロナが泣きそうな声色で言う。

「桂さん……わたし達無力ですね……」
「ねー、帰っていいるん?」
「まぁ冗談はさておき、どういうつもりだ?」
「持て余した情報をお裾分けって感じかな?」

桂は棒状の物体――乖離剣エアを手に持ちながら会話を続ける。

「DIOの動向は伝えたが、その見返りとしては大きすぎる感じだが」
「ああ、地下闘技場にいるかもだっけ?これ俺には扱いにくくてさ、そこの君なら使えるんじゃないかな?」

コロナはハッっとした様子で宝具を見た。
今の自分には扱えそうにないが、魔法の心得がある自分なら神威や桂よりは有用に使えるかも知れない。

「DIOを過小評価し過ぎてないか、それに敵は奴だけでは……」
「それは心配する事ではないだろ」
「……お前」

怒りを滲ませず淡々と会話を続けていた桂の表情に初めて怒りの色が浮かぶ。

「小湊るう子ちゃんだっけ?彼女の悪いようにはする積もりはないさ」
「…………俺達と同行はできないのか?」
「それはできないね。理由はあんたには言うまでも無いだろ?」
「そうだな。しかし詰まらない事でお前は命を落とす気か」
「……あいつを倒せるなら詰まらなくはないさ」

神威の声に少しだが怒りの色が孕む。

「準備くらいは充分に整えたらどうだ?」
「? 俺は充分に整えた積もりだけど」

877題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:14:50 ID:.k6mjIJg0
「いいや、整えていない。DIOや繭以外の敵に倒されるという詰まらない結末の恐れがまだまだ残っている」
「うるさいなぁ。そんなにあいつの命を無駄にしたくないのかい」
「そうだ。あいつの命を終わらせた貴様の終わりはここではない」
「……あいつと一緒にケリを着けたいと言う事かな?」

そのあいつは銀時ではなく、神威とも関係があるもう1人の幼馴染というのが神威に解った。

「……単純な命のやり取りで終わらせる積もりはない。
 もっと訳の分からないドロドロとした状況で話を着けてみせる」
「その状況っていうのは解らないけど、もし、そうなったらアンタに勝ち目なんか無いよ」

王の財宝を片手に自らの肩をトントンと神威は叩く。挑発するように。

「いーや俺が勝つさ」
「あの……」
「むかつくなぁ。邪魔する気?」
「フッ……」

風を切る音がし、金属が擦り合う音がした。
空気が爆ぜた重圧をコロナは感じた。

「……」
「詰まらない終わりには腹が立つのだろう、お前も」
「誰の事を言ってるんだかね……」

かろうじて攻撃を受け流した桂を見ながら、神威は笑みを浮かべながら該当する人物を当てはめようとする。
妹……は納得できないから除外するとして、他は眠りながら殺された少女と助けられたのにすぐ死んだ宇治松千夜の姿が浮かぶ。
どちらかは決められそうもない。となると。
神威は疲れた口調で手をひらひらとさせて、宝具を収める。

「いいさ、準備をもっと整える事にするよ」

神威はそう言いつつベンチに座った。
その時、桂のスマホが振動した。



・皐月2

蛍が呆けたように岩に座り込んでる。
れんげが声を掛け続けてる。
程なくして、蛍は我に返り、ぎこちない笑顔でれんげに応じた。
周辺の幾つかの岩や木が切断、あるいは粉砕されている。
静雄と皐月の所謂超人バトルを目撃したのは蛍にとってそれは初めての事。
多少なりとも刺激が強い。例え、それが静雄の暴力を皐月がいなし続ける内容だったとしても。
身を挺したくらいで流子の殺人行為は止められないどころか、なんにもならないのは明白。
そんな彼女を他所に皐月と連絡先の桂の会話は続く。

「車を入手できたのか?」
「ああ、うん」
「? どうした歯切れが悪いな」

電話の向こうの桂の説明がされる。
皐月は渋い顔になった。

878題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:15:59 ID:.k6mjIJg0

「…………これは考えものだな」
『皐月殿、そちらはどうだ?』
「あるにはあるんだが。生き物だったらしくてこれまでのダメージが蓄積されて休ませないといけないんだ。
 それに乗用車として利用するにしてはライトがなくて不便でな」

セルティの愛馬であるコシュタ・バワーの事である。
本来ならこれまでの静雄の暴力によるダメージでも大したものでは無かったのだが。
制限で相応にダメージを受けていたのが発覚し、これ以上の使用に躊躇せざるを得ないの状況だ。
それは蛍とエルドラの提案でコシュタ・バワーをシグニ化できないかで試行した際に明らかになった。


『仕方がない。俺達は……』
「……ああ、無理はするなよ。もし、纏流子や天々座理世を発見したら……」
『了解だ、皐月殿』
「……あ、待ってください」

慌てて蛍が皐月の元に駆け寄る。そして桂達に皐月が伝えたのとほぼ同じ要望を伝える。

「空条承太郎さんと……風見雄二さんもお願いします」
「解りました一条さん」

桂の代わりにコロナが返答した。そして電話が切れた。

「……さて、平和島少し遠くに離れてくれないか?」
「ああ」

罪歌を刺激させないべく静雄は移動を開始する。
皐月の手には蛍に渡された裁縫セットが有る。
罪歌が活性化したところで精神を皐月の精神が乗っ取られる事はないが、その代わりコントロールが困難になってくる。
針目縫戦のように鮮やかに形状変化させての使用など望めない。
だから静雄遠ざける。
皐月は視線を下の落とした。
皐月のそばにいるれんげが治療魔法の準備をしている。

れんげが勇者の変身を解けば、皐月の切り傷を縫っている緑の糸が消える。
その前にれんげは再び治癒魔法を掛けて皐月の切り傷を更に癒やす。
その際、もし完全に癒えなかった場合に備えて、再出血しないよう再度罪歌を針に変化させて実体のある糸で縫おうというのだ。

変身を解かせるのはれんげの魔力の回復の為。
そのままだと治癒魔法は後1、2度の行使が限度。今後の事を思うと拙いし、れんげ自身の身体も心配になってくる。

「平和島さん、大丈夫ですか?」
「俺は問題ねえ」

2人の会話を耳にし、皐月はふと再考する。
よく見れば静雄の流子から受けた傷も浅くはない。
救助活動はまだしも戦闘において、静雄の力は有用だ。
先に治癒魔法で癒やすのは静雄を優先すべきではないか。
こちらは実体のある糸で縫えば当面は問題ないくらいの状態に改善している。
そう思案をし皐月は自分の結論を心の中で出した。

879題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:16:42 ID:.k6mjIJg0

・桂3

螺旋状のサイドポニーをした人形の頭部を手に抱え、コロナはそれを見つめている。
数時間前、DIO発見の為ホテルを捜索した神威の戦利品。
麻雀卓に座らされていた、3体の人形の内1体。
ミルルン曰く、結構な力を感じたから取ってきたとの事。
また同様の魔力を放つ物体――遺体が北の駅付近にもあり、その遺体には異様な変化を遂げていたとの情報も神威によってもたらされた。

桂は一枚の白カードを見つめる。
短めのツインテールの少女――入巣蒔菜のカード。
神威がかねてから興味を持ったという件の遺体の少女。
これらの怪情報が繭打倒の手がかりになるのか?桂は甚だ疑問だ。

「桂さんどうしました?」
「いや、何でも無い。コロナ殿本当に良かったのか?」
「……やだなぁ、背に腹は変えられませんよ」
「う、うむ。油断はしないようにな……」

彼らが乗っているのは高性能ジープ。譲渡された神威の支給品の一つ。
コンピューター制御で悪路も難なく走行できる代物だが、使用するのに条件がある。
それは。

「使用には参加者の命を一生共有とはな……」
「大丈夫ですって……殺し合いの破壊が出来れば解決ですし」

表情は明るく、冷や汗をダラダラ流しながらコロナは言う。
神威がこの支給品をこれまで使わなかったのは自分じゃすぐ壊すからと判断しての事。
廃棄せず取っておいたのは、闘技場との戦いの前は頭脳明晰な対主催を利用する為の材料に使えると思ったから。
桂は内心ビクビクしながら車を発進させた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【G-4/北側/夜中】

【鬼龍院皐月@キルラキル】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージ(中)、袈裟懸けに斬撃(回復中)
[服装]:神衣鮮血@キルラキル(ダメージ小)
[装備]:バタフライナイフ@デュラララ!!、罪歌@デュラララ!!(離れた場所に罪歌)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(5/10)、青カード(8/10)
    黒カード:片太刀バサミ@キルラキル
    白カード:針目縫
    針目縫の腕輪(糸が括り付けられている)、鉛筆2本
[思考・行動]
基本方針:纏流子を取り戻し殺し合いを破壊し、鬼龍院羅暁の元へ戻り殺す。
0:転移装置使用の為、分校に向う。途中妨害や探し人(承太郎やリゼ)に遭えばそっちを優先する。
  可能な限り、別行動の仲間と連絡をする。
1:れんげの治癒魔法を自分か静雄誰をどちらを優先させる(?)。
2:鮮血たちと共に殺し合いを破壊する仲間を集める。
3:纏流子を取り戻し、純潔から解放させる。その為に、強くなる。
4:ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を調べてみたい。
5:襲ってくる相手や殺し合いを加速させる人物は倒す。
6:DIOには最大限に警戒。また、金髪の女(セイバー)へ警戒

880題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:17:20 ID:.k6mjIJg0

[備考]
※纏流子裸の太陽丸襲撃直後から参加。
※【銀魂】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました。
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。 浦添伊緒奈とラヴァレイを危険視しています。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※罪歌を支配しました。支配した場合の変形は身体から実際の刀身以上までの範囲内でなら自由です。
 ただし静雄が付近にいればコントロールが困難になります。その場合支配はされません。
※桂小太郎ら(I)の書き込みまでチャットを確認しました。
※IDカードから転送装置の存在と詳細を知りました。
※静雄との会話で蟇郡が流子に殺されたらしい事を知りました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※ヴァニラ・アイスとセイバー以外の参加者の大まかな人物像を把握しました。


【宮内れんげ@のんのんびより】
[状態]:魔力消費(中)、勇者に変身中
[服装]:普段通り、絵里のリボン
[装備]:アスクレピオス@魔法少女リリカルなのはVivid 、犬吠埼樹のスマートフォン@結城友奈は勇者である
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(9/10)
    黒カード:満艦飾家のコロッケ(残り三個)@キルラキル
    飴の入った袋(残り8割)
[思考・行動]
基本方針:うちも、みんなを助けるのん。強くなるのん。
1:銀さん、えりりん心配のん。
2:ほたるんにあえてうれしいけど、しんぱい。
3:あんりん……ゆうなん……。
4:きんぱつさん、危ないのん?
[備考]
※杏里と情報交換しましたが、セルティという人物がいるとしか知らされていません。
 また、セルティが首なしだとは知らされていません。
※魔導師としての適性は高いようです。 魔術師的な感覚も備わり始めました。
※【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【銀魂】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※一条蛍(I)の書き込みまでチャットを確認しました。
※放送を聞いていません。
※IDカードから転送装置の存在と詳細を知りました。
※変身を解除しない限り魔力は回復しません。回復魔法の使用は現状あと1、2回が限度です。

【平和島静雄@デュラララ!!】
[状態]:こんな状況を招いた自分への怒り(中)、全身にダメージ(中)
[服装]:バーテン服、グラサン
[装備]:ブルーアプリ(ピルルクのカードデッキ)@selector infected WIXOSS
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(18/18)、青カード(13/18)
    黒カード:縛斬・餓虎@キルラキル、 コルト・ガバメント@現実、軍用手榴弾×2@現実、
         コシュタ・バワー@デュラララ!!、不明支給品0〜1(本人確認済み)
    白カード :紅林遊月、衛宮切嗣、ランサー
    自分と蛍の換えの服(上下1〜2着分)@現地調達

[思考・行動]
基本方針:あの女(繭)に報いを与えたい。殺す発言は極力しないように心がける。
  0:分校に向う。
  1:蛍を守りたい。強くなりたい。
  2:小湊るう子を保護する。
  3:2を解決できたら蟇郡を弔う。
  4:リゼが気がかり。
  5:余裕があれば衛宮切嗣とランサーの遺体、東條希の事を協力者に伝える。

[備考]
※一条蛍、越谷小鞠と情報交換しました。
※エルドラから小湊るう子、紅林遊月、蒼井晶、浦添伊緒奈、繭、セレクターバトルについての情報を得ました。
 簡単にですが皐月、れんげとも情報交換を行いました。
※東條希の事を一条蛍にはまだ話していません。
※D-4沿岸で蒼井晶の遺体を簡単にですが埋葬しました。
※D-4の研究室内で折原臨也の死体と桐間紗路の近くに臨也の不明支給品0〜1枚が放置されています。
※校庭に土方十四郎の遺体を埋葬しました。
※H-4での火災に気付いています。 遊月を埋葬した時点では拡大も鎮火もしていないようです。
※G-4とH-5の境界付近で紅林遊月を簡単にですが埋葬しました。
※ピルルクの「ピーピング・アナライズ」は(何らかの魔力供給を受けない限り)チャージするのにあと1時間かかります。

881題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:18:47 ID:.k6mjIJg0

【一条蛍@のんのんびより】
[状態]:全身にダメージ(小)、精神的疲労(中)
[服装]:普段通りに近い服@現地調達
[装備]:ブルーリクエスト(エルドラのデッキ)@selector infected WIXOSS、蝙蝠の使い魔@Fate/Zero(シグニ化?)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(17/20)、青カード(18/20)
    黒カード:フルール・ド・ラパンの制服@ご注文はうさぎですか?、カッターナイフ@グリザイアの果実シリーズ、
    ジャスタウェイ@銀魂、折原臨也のスマートフォン(考察メモ付き)
    ボゼの仮面咲-Saki- 全国編、赤マルジャンプ@銀魂、ジャスタウェイ×1@銀魂、     
    超硬化生命繊維の付け爪@キルラキル 、およびM84スタングレネード@現実
    越谷小鞠の不明支給品(刀剣や銃の類ではない)、
    白カード:越谷小鞠
    筆記具と紙数枚+裁縫道具@現地調達品

[思考・行動]
基本方針:誰かを死なせて悲しむ人を増やしたくない。自分の命についてはまだ分からない。
   1:れんちゃんと再会すべく分校方面へ向う。
   2:平和島さんと皐月さんに付いて行く。
   3:どうにかスマホを活用してリゼさんを含めた仲間達を助けたい。   
   4:主催者と遭えたら話をしてみたい。
   5:折原さんがどんなに悪い人だったとしても、折原さんがしてくれたことは忘れない
   6:何があっても、誰も殺したくない。

[備考]
※セレクターバトルに関する情報を得ました。ゲームのルールを覚えている最中です。
※空条承太郎、香風智乃、折原臨也、風見雄二、天々座理世、衛宮切嗣、平和島静雄、エルドラと情報交換しました。
 簡単にですが皐月、れんげとも情報交換を行いました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。現状他の参加者に伝える気はありません。
※衛宮切嗣が犯人である可能性に思い至りました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※エルドラのルリグカードは自作の透明のカードホルダーに収納されています。
 現在2つ目を制作している最中です。
※折原臨也のスマートフォンにメモがいくつか残されていることに気付きました。 現状、『天国で、また会おう』というメモしか確認していません。
 他のメモについては『「犯人」に罪状が追加されました』『キルラララララ!!』をご参照ください。また、臨也の手に入れた情報の範囲で、他にも考察が書かれている可能性があります。

※エルドラの参加時期は二期でちよりと別れる少し前です。平和島静雄、一条蛍と情報交換しました。
 ルリグの気配以外にも、魔力や微弱ながらも魂入りの白カードを察知できるようです。
 黒カード状態のルリグを察知できるかどうかは不明です。
※現在、蝙蝠の使い魔はエルドラと感覚を共有しています。
※静雄と皐月の模擬戦を観戦しました。





【追記】
※静雄達との通話による情報交換は必要最低限に留まっています。
 少なくとも第二回放送前の流子と蟇郡の件、小湊るう子の誘拐の件、天々座理世ついての混乱については伝えられています。
※樹の勇者スマホに臨也のスマホとラビットハウス、ゲームセンター、映画館、万事屋銀ちゃんの電話番号が登録されました。
※蛍の手紙は処分されました。
※衛宮切嗣の遺体とランサーの生首は埋葬されました。影響はありませんが両者の遺体からは差異はあれど魔力が残留しています。
※旭丘分校からの転移先は本能字学園の校庭です。装置に関する説明文の有無や細かい場所は後の書き手さんにお任せします。
※IDカードは針目縫との空中戦の折紛失しました。現在D-4かD-5の海上に落ちている可能性が高いです。

882題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:19:16 ID:.k6mjIJg0
【G-6/道路/夜中】

【桂小太郎@銀魂】
[状態]:胴体にダメージ(小) 、勇者に変身中
[服装]:いつも通りの袴姿 、高性能ジープ@現実?
[装備]:風のスマートフォン@結城友奈は勇者である
    晴嵐@魔法少女リリカルなのはVivid
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(17/20)、青カード(17/20)
    黒カード:鎖分銅@ラブライブ!、鎮痛剤(錠剤。残り10分の9)、抗生物質(軟膏。残り10分の9)
    白カード:長谷川、ポルナレフ、蒔菜、心愛、雁夜、杏里、ジャンヌ
[思考・行動]
基本方針:繭を倒し、殺し合いを終結させる
1:皐月達を先に分校に向かわせ、自分達は他の参加者との合流、または危険人物を無力化させるべく動く。
  放送が過ぎるか、あるいは皐月達が分校にいけなくなった場合は何らかの方法で北西を目指す。
2:コロナと行動。
3:殺し合いに乗った参加者や危険人物へはその都度適切な対処をしていく。
  殺し合いの進行がなされないと判断できれば交渉も視野に入れる。用心はする。
4:スマホアプリWIXOSSのゲームをクリアできる人材、及びWIXOSSについての(主にクロ)情報を入手したい。
5:金髪の女(セイバー)に警戒
[備考]
※【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※勇者に変身した場合は風か樹の勇者服を模した羽織を着用します。他に外見に変化はありません。
 変身の際の花弁は不定形です。強化の度合いはコロナと比べ低めです。
※入巣蒔菜の遺体の異常を神威から伝えられました。多少の魔力の他に明らかな変化があります(詳細は後続の書き手さんにお任せ)


【コロナ・ティミル@魔法少女リリカルなのはVivid】
[状態]:胴体にダメージ(小) 、ちょっとドキドキ、高性能ジープと命を共有
[服装]:制服
[装備]:友奈のスマートフォン@結城友奈は勇者である
    ブランゼル@魔法少女リリカルなのはVivid 、
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(16/20)、青カード(17/20)
     黒カード:トランシーバー(B)@現実、勇者部五箇条ポスター@結城友奈は勇者である
     ティッピーのぬいぐるみ?、小走やえ人形の頭部
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを終わらせたい。
1:桂さんと行動。
2:桂さんのフォローをする
3:金髪の女の人(セイバー)へ警戒
4:高性能ジープと命を共有したことにちょっと後悔
[備考]
※参戦時期は少なくともアインハルト戦終了以後です。
※【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※勇者に変身した場合は友奈の勇者服が紺色に変化したものを着用します。
 髪の色と変身の際の桜の花弁が薄緑に変化します。魔力と魔法技術は強化されません。
※高性能ジープと命を共有しました。修理不可まで破壊された場合彼女は死にます。
※入巣蒔菜の遺体の異常を神威から伝えられました。多少の魔力の他に明らかな変化があります(詳細は後続の書き手さんにお任せ)
※小走やえ人形の頭部を神威から譲渡されました。多少の魔力が込められています。

883題名未定 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:19:54 ID:.k6mjIJg0

【?/?/夜中】※G-6の駅のホームか、G-6/道路で桂と同行。
【神威@銀魂】
[状態]:全身にダメージ(小)、頭部にダメージ(小) 、宇治松千夜の死に対する苛立ち(小)
    よく分からない感情(小)、桂小太郎への苛立ち(小)
[服装]:普段通り
[装備]:王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)、ブルーデマンド(ミルルンのカードデッキ、半分以上泥で汚れている)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(24/30)、青カード(24/30)、電子辞書@現実
    黒カード:必滅の黄薔薇@Fate/Zero、不明支給品0〜2枚(初期支給)、不明支給品1枚(回収品、雁夜)
    黒カード(絵里から渡されたもの) :麻雀牌セット(二セット分)、麻雀牌セット(ルールブック付き)、不明支給品(銀時に支給、武器)
                      ウィクロスカード大全5冊セット、アスティオン、シャベル、携帯ラジオ、乖離剣エア
    白カード:友奈、風、樹(切れ込みあり)
[思考・行動]
基本方針:俺の名前は――
0:DIO討伐の為、ホテルへ向かう。
1:見どころのある対主催に情報や一部支給品を渡したい。
2:眠り姫(入巣蒔菜)について素性を知りたい。ただしあまり執着はない。
[備考]
※DIOおよび各スタンド使いに関する最低限の情報を入手しました。
※「DIOとセイバーは日が暮れてからDIOの館で待ち合わせている」ことを知りました。
※DIOの館は完全に倒壊させました。
※ホテルにDIOは潜伏していると思っています。
※大まかですがウィクロスのルールを覚えました。
※ルリグは人間の成れの果てだと推測しました。入れ替わりやセレクターバトルの事はまだ知りません。
※樹の白カードに切れ込みがあるのを疑問に思っています。
※入巣蒔菜の遺体の異常を確認しました。多少の魔力の他に明らかな変化があります(詳細は後続の書き手さんにお任せ)
※ホテルの遊技場に強大な力(魔力)があるのを発見しました。


※白カードは通常は損壊、破壊する事は不可能です。すぐ復元されます。
 (ジョジョ6部の各種DISCみたいな感じ)
※友奈、風、樹のカードは他参加の白カードより強い力を発しているようです。



【高性能ジープ@現実?】
神威に支給。現代世界で考えうる限り最高級の性能を持つ車体。
危険回避にそこそこ以上のコンピューターが使われている。多少の悪路は平気。
ただしカーナビなどロワ進行に不都合な機能は停止させられている。
使用には生きてる参加者の白カードで認証する必要があり。一度登録すると一生車と命を共有しなければいけない。
車が修理不能にまで大破すると認証した参加者は死ぬ。一層解除できない。
認証した参加者が先に死亡すれば、使用不可となる。再起動には新しく認証が必要。

884 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 12:21:13 ID:.k6mjIJg0
仮投下終了です。
問題がない、あるいは問題がなくなれば翌日に本投下させていただきます。

885 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/28(水) 15:24:30 ID:.k6mjIJg0
状態表は明日に修正スレで訂正します。

886 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/29(木) 12:22:15 ID:33fQlLnE0
すみません。
諸事情により本投下明日になってしまいそうです。

887名無しさん:2017/06/29(木) 22:25:07 ID:QFfbpbKQ0
仮投下乙です
車入手の下りが唐突に見えたので説明が欲しかったです

888名無しさん:2017/06/30(金) 22:09:31 ID:idiBZask0


889 ◆WqZH3L6gH6:2017/06/30(金) 22:15:14 ID:idiBZask0
途中送信失礼しました。
書き込みさえ難しい状況です。
明日の昼12時までに投下が可能だと思いますが、できなかった場合は破棄宣言させていただきます。

890 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 07:25:11 ID:AQlBGyAw0
遅れましたが仮投下いたします。

891題名不明 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 07:26:04 ID:AQlBGyAw0


・承太郎1

離れて四半刻は過ぎただろうか。本人の望みとは程遠い緩やかな足取りで前を進む。
紅林遊月と分かれた後、空条承太郎は南東へ向かっている。
全身が痛む。殺戮者に負わせられた多数の小傷と、小と言えぬ3つの裂傷。
その肉体的ダメージは仲間である風見雄二を探し求める承太郎にとって行動を阻害するものであった。

「……」

何度目になるか解らぬ深い息を彼はつく。
吐息を漏らす度に彼の脳内に少女の糾弾のような高音が響く錯覚に囚われる。
その声ではない声は紅林遊月が捜索しているだろう、天々座理世のに似ていた。
突き放すような事を言ったのが行けなかったのは解っている。
先の乱戦の初めに親しかった香風智乃を殺され、激昂の最中気絶させられ、目覚めた時にはここまでの戦況も
ろくに把握出来てない状況。これで落ち着けと言うのが無理な話だろう。
自分の欠点からの負い目が承太郎の傷の痛みを更に強くする。彼の体力だけでなく気力も削るように。

「!」

負荷に耐えきれなくなったのか、ついに承太郎の右膝がかくんと折れた。
彼は態勢をすぐ整えるものの、顔を少し下げてしまい、観念したかのように両膝を負った。
背と後頭部が草と軟土にとすんと着いた。焦りを覚える間もなく承太郎は意識を失い、仰向けに倒れた。




・1日目 11:??〜12:?? ラビットハウス1階(1)

「これのことは、あとで話すよ」

遊月はピルルクのルリグカードを仕舞うと雄二に問いかけ、
雄二は針目縫の変装を見破った理由を話し、仲間達を感心させた。
そして承太郎は情報交換に臨もうと言峰と雄二の方へ向かう、女性3人はぎこちない空気を漂わせつつ、
情報交換の場にいるのを申し訳なさげに拒否するや一塊になって二階に行こうとした。

その時遊月の身体に軽く当たった。遊月は返答に詰まるが承太郎は気にしないという素振りを見える。
遊月は察したのか軽く微笑む、承太郎はルリグカードを仕舞った箇所を見る。
それにも遊月は気づいた風だったが、今度は構わず無視して理世と智乃と一緒に上に上がった。
その後の三好夏凛の放送局からの放送の際も、承太郎は遊月に説明を求める様に見つめる事で暗に促したが、

「……」

それでも尚、遊月がルリグカードについて話す気配はなかった。

892題名不明 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 07:26:58 ID:AQlBGyAw0

・承太郎2

きな臭い煙の匂いがする。
承太郎の瞼が震え、僅かな光が目に入る。
吸い込まれるような眠気が彼の意識を刈り取ろうとするのを感じる。

「っ……」

承太郎は気合を入れ、目を見開く。
空の何割かを遮る木の葉の隙間からごく微弱なオレンジ色の光が見える。
慌てて上体を起こす。すぐ近くに火の熱と煙はない。
彼はすぐ立ち上がろうとしたが身体はまだ満足に動かせそうになかった。

仕方なく引き摺るような感じで後ずさりをし、木の幹にもたれ掛かる。
少々和らいだが疲労と痛み、焦りが彼の心身を巡る中、承太郎は亡き戦友の忠言を思い出した。

――待つのは君だ、承太郎!

理世を追いかけようとした時も、逸り傷が開いたのを思い出す。

――その怪我で行けば殺されるだけだ

今の状態で風見雄二に加勢しようとした所で何になる。
承太郎は現状を憂いた。だが彼は弱さに屈せず不調の身体の代わりに頭を働かせる。

ここで、ある事に気づいた。セイバーから奪い、言峰に託された黒カード。
特にセイバーの黒カードはチェックさえしてない。

「やれやれだぜ……」


承太郎はため息を付きつつ小声でぼやきながら、再度も含め黒カードを確認し始める。

「………………」

全ての黒カードの裏面確認が終わった。
その中で彼が強く意識するカードは2つ。
ただのと思っていたが、実際は何らかの回復の効用があるとの説明書があった酒。
そして、もう1つは遊月が所持していたのと同種のレッドアンビジョンなるルリグデッキだった。

言峰が生前、正体を知りたがっていたルリグ ピルルク。
彼がそれを知る事が不可能となった今、それは……。
沈んだ表情のまま、承太郎は思案しつつ木と木の影に身体を移動させながら、瓶の蓋を回そうとする。

「……!」

ある経験から不可能ではない可能性に彼は気づく。
ゲーム開始時の繭の説明と、カードから出てきた龍の腕。そして魂を形にするスタンド。
魂の解放方法も、死者の魂との交信方法も彼にはない。
だがルリグやあるいはスタンドの使い方によっては、白カードからの魂の解放は不可能ではないのではないかと。
主催の打倒には直接結びつかない、仮に試みようとした所で制限もある。
いずれも0に等しい行動かも知れない。だが探る価値はあると思った。

893題名不明 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 07:27:43 ID:AQlBGyAw0
承太郎は死者を蘇らせられるとは思っていないし、仮に死者との会話が可能になっても向こうから望まない限りは考えようとさえしない。
けれど孤独を強いられた魂をドライに見捨てられる男でもない。
承太郎は瓶の蓋を強く持つ。繭に囚われた魂の解放、それを目標の一つと定めつつ。
彼は両目を見開き、気を強く持ちながら瓶の中身を飲んだ。


・?日前 ??:?? 主催??

数々の武具、道具、果ては玩具が白い地面に散らばっている。
何人かの男女がそれを拾っては確認し口を出し、それを聴いた別の者がメモを取りつつ歩き回っていた。
ある1人の男が怪訝そうな表情で、その場を監督している者に近づく。
その男は2つの銃と2つの瓶を手に取っている。
それは所謂重複した支給品。男は■日後始まるゲームにおいてこれは良いのかと尋ねた。
監督役は懐から電子機器を取り出し、向こうに聞いた。
通話はすぐ終わり、監督役は男を一瞥すると「別に構わない」と返答した。
ゲームは予定通り行われ、同種の2丁の銃は1人は天々座理世、もう1丁は宇治松千夜に支給された。
そして2つの瓶――ある薬品は1つは園原杏里に、もう1つは――


・理世1

息はとうに切れている。
視界に映るは黒と深緑と霞がかった白。
胸中に渦巻く感情は混乱と罪悪感。
天々座理世は走っていた。ゲームの舞台H-4地点に向かって。
森の外に近づくに連れ熱気と煙が濃くなるのを感じる。
徐々に、今の彼女が知る由もない風見雄二と纏流子による戦火が広がっていたから。
だが火災があろうと、危険があろうと理世は避けながらもある場所に向かう。
香風智乃の遺体がある路上に。
ラビットハウスという拠り所の代わりとして。無意味と理解していても。

「…………」

森を抜け、やや離れた火災の煙に顔をしかめつつも彼女は進む。
真っ直ぐではなくふらふらと。
遺体に近づくに連れ、理世は生前の智乃に持っていた感情が変化していくのを感じる。
それは親愛だけでない。

目に映った遺体は紛れもなく智乃だった。
しかし今の理世には死んだ以上に認められない雰囲気が漂っていた。

「智乃だ、よな……」

智乃の遺体の状態は悪くない。絶望に固まった表情と致命傷である腹の傷を別にすれば。
戻ってきた理由はただ一つ、智乃を弔うこと。
理世は近づいた。

意外と悲しみも絶望も感じなかった。
理世は遺体を触れ森の方へ運ぼうとする。
遺体は固く、冷たく、そして重かった。

「う、うぅ……」

これは人でなくだった物だと、遺体の重みからそれを痛感した。

894題名不明 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 07:29:03 ID:AQlBGyAw0

「ん、んぐ……うぁ」

疲労が蓄積した中、彼女がこれから弔おうとする行為、埋葬を実現する体力がない事をすぐ自覚する事はできなかった。
それに気づいたは一息着いたその時。
露出した地面がある森の側までまだ遠い。そして彼女はもう一つ気づく。
なぜ背負うとしなかったのか。それは冷たさと生理的嫌悪をこれ以上味わいたくなかったから。
彼女は脱力し、遺体から手を話した。かくんと仰向けに仰け反った。空には雨雲が見える。

「はは……」

理世は呆けた表情のまま口から乾いた笑いを出す。
そして大粒の涙が右目からこぼれた。
理世は両手を地面に着き、うずくまり掠れた声で泣いた。
霞んだ視界には智乃の遺体と一枚のカードがぼんやりと見えている。



・??日前 ??:?? 主催??

あの支給品に懸念がなかった訳ではない。
そう思考するとある者は1人の少女に尋ねた。
あの施設やあの施設であれが起動するとどうなるのかを。
少女はしばし考えてから、返答する。
ある者は肝を冷やした。それは懸念通りの解答だったから。
慌ててその者はそうならないように少女に陳情した。
少女は薄い笑みを浮かべつつ、「わたしが管理する訳じゃないもの」と言った。
その態度はその者の懸念が消えるものではなかったが、一応納得できるものだった。
その者の直接の主にの気を害する事は、あの管理役がする訳がないと確信していたから。



・流子

白い神衣を着た化物はトラックから降りる。
遠ざかっていく爆弾を見送りながら纏流子は南に向かい疾駆する。
そして先の木陰に見を躍らせると、制止した。

「……」

彼女は周囲を見渡す。
追跡者がいないかとフェイントを掛けたが、人影は確認できない。
流子は舌打ちをし、南に向けて走った。
数時間前、刺殺した少女がいた場所に。
そして走りながら彼女は考える。見つけた獲物を逃さない方法を。
あの自動車爆弾が目標である、気持ち悪いオブジェ ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲に接触する時間を考慮に入れつつ。


・雄二

白装束の女から離れた後、風見雄二は高所からある物体を見下ろしている。
無人で動くトラックらしき物体。よく確認したい気はあるが、あの女が近くにいる可能性が高いのでそれはできなかった。
雄二は踵を返すと南へ向かった。女剣士や白装束と戦うなら戦闘痕も相応に目立つだろうと予測しながら。
彼は人外相手に勝機を拾うべく考える。空条承太郎や言峰綺礼の戦力も算段に入れつつ。
雄二の双眸は静かで熱い光を放っている。

895題名不明 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 07:38:05 ID:AQlBGyAw0

・理世2

腹や胸を押さえつつ理世は当てもなく森を進む。
手には一枚のカードがある。
彼女は服で泣き跡のある顔を拭うと、そのカードを見た。
カードに写った香風智乃は綺麗なカメラで綺麗に撮られているように見えた。
理世はバツが悪そうに視線を反らし、仲間の捜索を再開した。

「……」


結論から言うと天々座理世は香風智乃を弔う事はできなかった。
地面を掘り起こす体力も、遺体を森へ移動させる体力も無かったから。
代わりに出来たのは智乃の魂が封じられたカードを回収した事と遺体の手を組ませる事のみだった。
理世は自己嫌悪から思わず呻き、動きを止めた。

周囲を見ると同じような光景だった森林がどこか開けたように見える。
今、理世は仲間を探している。風見雄二だけでなく空条承太郎も。
ついさっき自らの非力と醜さを自覚した彼女は、雄二からの救いだけでなく承太郎に対するけじめを果たすベく
捜索を続けていた。再開した際、どうなるかは深く考えられない。ただ謝りたかった。
平和島静雄と一条蛍に見つかるならそれでも構わないとさえ思っている。
白装束の女や針目縫に殺されるのだけは嫌だけど。

自暴自棄と薄々気づいていても彼女は進んだ。



・承太郎2

疲労感に身を捩らせつつ、承太郎は目を覚ます。
手から微かなアルコール臭がした。
また眠ってしまったようだ。敵に遭遇しなかったのは幸運という他ない。
承太郎は自嘲からの苦笑をすると目的地に向かう。
しばらく歩くと風が吹いた。
上空の枝葉が揺れ、隙間が広がる。

「……!」

隙間に何かが舞っているように見えた。
承太郎は星の白金を現出させると、視界をスタンドへと切り替える。
小さい何かが過ぎったように見えた。あれは……。
承太郎は声を上げようとする。

「いつまで黙ってるんだい」

突如、手に持ったカードデッキから少女の不機嫌な声が聞こえた。
風が止み、上空の隙間が埋まり、向こうは見えなくなった。
声の主の顔を見ようと承太郎はカードの上面を顔に近づける。
妖精に似た長髪の少女の姿をしたルリグ。
花代と言ったか。彼女からも情報を聞こうと解放したまま捜索を続けていたが。
どちらもどうにもいかない。承太郎は悩んだ。さっきの二の舞いは御免だと思いつつ、どうにか上手く接しられないかと。
一時期、母に対して猫被っていた事を思い出し、自己嫌悪を覚えつつあの頃を上っ面を再現しようかと思った矢先、
ふと顔を挙げた先にその光景が目に入った。

896題名不明 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 07:39:58 ID:AQlBGyAw0

「これは……」

前方には木々がいくつもなぎ倒され、地面さえも人外の力で抉られたと推測できる箇所が幾つもあった。
承太郎は唾を飲み込む。
そこは纏流子が平和島静雄と蟇郡苛が戦い、蟇郡が命を落とした場所のすぐ近く。
強い風が吹き、何者かの気配を感じ承太郎は身構えた。

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【G-4/南部(蟇郡の遺体がある場所のすぐ近く)/真夜中】

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、精神的疲労(小)、胸に刀傷(中、処置済)、全身に小さな切り傷、
    左腕・左肩に裂傷(処置済み)、貧血(大)、強い決意、焦り(小) 、神代の酒による酔い(小?)と何らかの回復効果
[服装]:普段通り
[装備]:レッドアンビジョン(花代のカードデッキ)@selector WIXOSS(解放中)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(37/38)、青カード(35/37)
黒カード:約束された勝利の剣@Fate/Zero、不明支給品0〜1(言峰の分)、スパウザー@銀魂、
         キュプリオトの剣@Fate/zero 、不明支給品2枚(ことりの分、確認済み)、神代の酒@Fate/zero (3分の1消費)
    現地調達品:雄二のメモ、噛み煙草、各種雑貨(ショッピングモールで調達)
[思考・行動]
基本方針:脱出狙い。DIOも倒す。
   0:目の前の相手に対応する。
   1:雄二と理世を探す。
   2:白カードに閉じ込められた魂の解放方法を探し出す。
   3:花代から情報を聞き出す。
[備考]
※少なくともホル・ホースの名前を知った後から参戦。
※折原臨也、一条蛍、香風智乃、衛宮切嗣、天々座理世、風見雄二、言峰綺礼と情報交換しました(蟇郡苛とはまだ詳しい情報交換をしていません)
※龍(バハムート)を繭のスタンドかもしれないと考えています。
※風見雄二から、歴史上の「ジル・ド・レェ」についての知識を得ました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※越谷小鞠を殺害した人物と、ゲームセンター付近を破壊した人物は別人であるという仮説を立てました。また、少なくともDIOは真犯人でないと確信しました。
※第三放送を聞いていませんが、脱落者と禁止エリアは確認しています。
※神代の酒3分の1を摂取しました。その効果からか出血は止まり、何かしらの回復をしています。
 詳細は後の書き手にお任せ。
※承太郎の前に何者かが現れました。誰かは後の書き手にお任せします。




【G-4(詳細不明)/真夜中】

【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ】
[状態]:ダメージ(中、処置済み)疲労(小)右肩に切り傷(処置済み)、全身に切り傷 (処置済み)
[服装]:美浜学園の制服
[装備]: トンプソン・コンテンダーと弾丸各種(残りの弾丸の種類と数は後続の書き手に任せます)@Fate/zero 、ベレッタM92@現実(残弾0)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(7/10)、青カード(7/10)
   黒カード:マグロマンのぬいぐるみ@グリザイアの果実シリーズ、腕輪発見機@現実
   歩狩汗@銀魂×2、旧式の携帯電話(ゲームセンターで入手、通話機能のみ)
   小さな木杭3本、小さな鉄杭3本、タオル2枚、包帯代わりの布2枚、包丁一本(低品質)
[思考・行動]
基本方針:ゲームからの脱出
   0:承太郎と理世と言峰と合流する。
   1:纏流子を始めとする危険人物への対策を考える。

897題名不明 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 07:41:08 ID:AQlBGyAw0

[備考]
※アニメ版グリザイアの果実終了後からの参戦。
※折原臨也、衛宮切嗣、蟇郡苛、空条承太郎、紅林遊月、言峰綺礼と情報交換しました。
※キャスターの声がヒース・オスロに、繭の声が天々座理世に似ていると感じました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。必要に応じて他の参加者にも伝える可能性があります。
※言峰から魔術についてのおおまかな概要を聞きました
※纏流子の純潔の胸元に隙間があるなどの異変に気づいています。

[雄二の考察まとめ]
※繭には、分の殺し合いを隠蔽する技術を提供した、協力者がいる。
※殺し合いを隠蔽する装置が、この島のどこかにある。それを破壊すれば外部と連絡が取れる。
※第三放送を聞いていません。
※城近くの山小屋から武器になりそうなものを入手しました(鉛筆サイズの即席の木杭3本、即席の鉄杭3本、包丁一本(低品質))
※自動車爆弾が北西へ向かうのを目撃しました。爆弾とは気づいていません。
※承太郎のすぐ近くにいる可能性があります。



【G-4(詳細不明)/真夜中】

【天々座理世@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(極大) 、無力感(大)、自暴自棄
[服装]:メイド服・暴徒鎮圧用「アサルト」@グリザイアの果実シリーズ
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
    黒カード:キャリコM950(残弾半分以下)@Fate/Zero
    白カード:香風智乃
[思考・行動]
基本方針:風見雄二、又は承太郎に再会し自分の処遇を委ねる。
   1:白い服の女には殺されたくないし、許したくもない。

[備考]
※参戦時期は10羽以前。
※折原臨也、衛宮切嗣、蟇郡苛、空条承太郎、一条蛍、香風智乃、紅林遊月、言峰綺礼と情報交換しました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。必要に応じて他の参加者にも伝える可能性があります。
※第三放送を聞いていません。ラビットハウス周辺が禁止エリアになったことは知りました
※承太郎のすぐ近くにいる可能性があります。



【G-4(詳細不明)/真夜中】

【纏流子@キルラキル】
[状態]:全身にダメージ(中)、左肩・左太ももに銃創(糸束で処置済み)、疲労(中)、精神的疲労(極大)、
    数本骨折、説明しきれない感情(恐怖心?)
[服装]:神衣純潔@キルラキル(僅かな綻びあり)
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(19/20)、青カード(17/20)
    黒カード:縛斬・蛟竜@キルラキル、自動車爆弾@現実?、番傘@銀魂、生命繊維の糸束(一割消費)@キルラキル、遠見の水晶球@Fate/Zero、
         花京院典明の不明支給品0〜1枚(確認済み) 、ジャンヌの不明支給品1枚(確認済み、武器とは取れない)

898題名不明 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 07:41:41 ID:AQlBGyAw0

[備考]
※少なくとも、鮮血を着用した皐月と決闘する前からの参戦です。
※DIOおよび各スタンド使いに関する最低限の情報を入手しました。
※満艦飾マコと自分に関する記憶が完全に戻りました。
※針目縫に対する嫌悪感と敵対心が戻りました。羅暁への忠誠心はまだ残っています。
※第三放送を聞いていません。
※肉体のダメージは前の話よりは良くなっています。
※雄二が比較的近くにいるのに気づいていません。
※現在自動車爆弾は屋根に乗った流子と共に健在のランドマークか各エリアの中央のいずれかにへ向けて移動しています。
 妨害がなければ一定時間後に標的の施設は爆破されます。

※承太郎のすぐ近くにいる可能性があります。


・支給品説明

【神代の酒@Fate/Zero】
ギルガメッシュの宝具の一つ。酒。
媒体によっては体力回復のような効用を持つ。
3分の1の量を飲むと何らかの回復効果が得られ、少々だが止血作用も生じる?
回復するのは体力か、魔力か、ダメージかは不明(後の書き手さんにお任せ)。

899 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 07:43:07 ID:AQlBGyAw0
仮投下終了です。
問題がなければ明日の早朝に本投下させていただきます。
この度、投下が大変遅れてしまった事を深くお詫びします。

900名無しさん:2017/08/17(木) 12:15:18 ID:nAPyRO1E0
仮投下乙です
リゼ少しは落ち着いたのか
承太郎とあわせて参り具合が辛かったです
指摘ですが、神代の酒に体力回復以外の効果はどの媒体にもなかったと思うので付けない方がいいと思います

901 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/17(木) 21:55:27 ID:AQlBGyAw0
>>900
感想と指摘ありがとうございます。
本投下の際、効果を体力回復のみ訂正します。

902 ◆WqZH3L6gH6:2017/08/18(金) 08:18:55 ID:NPLytGnY0
本投下終了しました。
投下にあたり神代の酒を中心に一部加筆訂正をしました。

903 ◆NiwQmtZOLQ:2017/09/28(木) 23:08:46 ID:6C.hKJws0
ギリギリになってしまいましたが、こちらに仮投下します。

904Girls Murder License ◆NiwQmtZOLQ:2017/09/28(木) 23:12:38 ID:6C.hKJws0
 
足取りは、思っていたより重くなかった。
人間、もうどうにでもなれと一度思ってしまえば、とことん楽になれるらしい。
重荷も責任も、全て投げ捨てて歩んでいるのだから、当然といえば当然か。
そんな無意味な自嘲が頭に浮かび、そしてその度に理世は乾いた溜息で己の中の澱を吐き出していた。
一つ一つ、身体の内側にあったものを廃棄していくように。

「……はは」

その内、理世の顔には段々と笑いが込み上げてくる。
嗄れた笑い声が、森の騒めきに掻き消されて隠されていく様は、彼女にとっては何処か痛快にすら感じられていた。
まるでそれは、自分が消えていくようだったから。
最早どうしようもない人間となってしまった自分など、消えてしまってもいいのかもしれない。
それでもそうしないのは、やはりただ申し訳が立たないからだった。
彼女を守ってくれた空条承太郎、そして銃の撃ち方、心構え、ここまで生きてくるためにしがみついていた縁をくれた風見雄二。
せめて彼等に謝って、そして、その後は──どうしようかな、と、楽観的にすら思える予想を始める。
ああ、こんなことを考えてしまう自分は、なんて酷いヤツなんだろう。
そんな退廃的な自虐の笑みを浮かべながら、理世はただ歩き続けていた。


退廃的な行軍は、彼女が広場を見つけたことで停止した。
精神の摩耗とは別に、肉体も着実な疲労を溜め込んでいたことを、そこでようやく彼女は思い出した。
このままあてのない歩みを続け、その結果倒れるというのは、格好がつかない──というより、無様に過ぎる。
とりあえず一度、腰を下ろして水分でも摂ろうと、茂みを掻き分け広場に出た。

「誰だ」

──と。
そこで、唐突に声が聞こえた。
ビクリ、と肩を震わせるが、声そのものに対する聞き覚えがあった為にすぐに恐怖は無くなった。

「承太郎、さん」
「……天々座」

空条承太郎──探し人の一人が、そこにいた。

「無事、だったみたいだが──何も無かった、って訳でも無えみてぇだな」

何やら支給品らしきものを制服のポケットにしまいつつ、此方にゆっくりと歩み寄ってくる承太郎。
そんな彼に対し、安心感とともに何かを言おうとして。

「……えっと、あの」

そこでようやく、彼女は自分が何を言うか、その具体的な内容を何一つ決めていなかったことに気が付いた。
どうしようか、と思考が硬直しかけるも、頭の冷静な部分が、彼に会ったら言わなければならないと思っていたことをすぐにサルベージする。

「……まずは、ごめんなさい」

──まず、最初に。
天々座理世は、空条承太郎に謝罪をせねばならないのだ、と。
頭を垂れ、心の底にあった罪悪感という最後の澱を、そうやって吐き出した。

「勝手に、私のワガママで逸れて……」
「……別に、テメーがやったことだ」

ぶっきらぼうに吐き出した承太郎に、思わず理世は萎縮する。
彼にしては珍しく、僅かに仏頂面を和らげてはいたのだが、それが伝わる程に理世は彼と長く過ごしていなかった。
それでも、一つ目の謝罪の意図は伝わったということを確認はでき──そこで、彼女は一度深呼吸した後にもう一度口を開いた。

「それと、……もう一つ」

それは、何があろうと言わなければならないことだった。
自分達をずっと守ってくれていた、彼に対しては。

「……遊月ちゃんは、死にました。……私が、……殺しました」

その言葉は、他の言葉よりも遅く、それでも彼女が思ったよりも遥かに早いスピードで流れ出た。
場の空気が一瞬にして冷えていくのが、彼女にも分かった。
頭を下げている故に顔こそ見えないが、それだけの威圧感、気配が、目の前の男から発せられている。

「……お前が、紅林を?」

ポケットに手を突っ込んだままそう問いかけた承太郎の声音に、思わず背筋が凍る。
同年代とは思えぬ程の重圧、そして決して小さくない警戒の音を耳に入れながら、それでも理世はただ静かに耐えていた。

905Girls Murder License ◆D9ykZl2/rg:2017/09/28(木) 23:14:11 ID:6C.hKJws0
 
「……何があった」

やがて、僅かな静寂の後、承太郎はそんな簡潔な言葉を投げてきた。
どこから話すか迷ったものの、結局は気付いたら別れてからここに至るまでの過程を全て打ち明けていた。
追いかけてきた遊月との対峙。平和島静雄と一条蛍。肉の芽で操られている可能性のある二人。向けた銃口。飛び出してきた彼女──。

「──なるほど」

すべて語り終えた時には、少なくとも先よりは幾分か重圧は和らいでいた。
尤も、それでも此処に来る前までの理世なら恐怖で動けなくなっていただろうが。
ともあれ、幾分かは和らいだ雰囲気に、理世も下げていた頭を漸く上げる。
見上げてみれば、承太郎は、神妙な顔をして佇んでいた。

「一条や平和島についても気になることはあるが──」

そう言いながら、承太郎は背後を振り替える。
彼の視線の先へと理世も目を向けようとして、それが遮られる。
そこに突如として現れたのは、何度か見てきた彼のスタンド、スタープラチナ。
なぜ突然それを出現させたのか、理世が問おうとした次の瞬間──


「オラァ!」

──めきり、と音を立てて、『承太郎と理世の方向へ飛来した樹』が、拳に弾かれ飛んでいった。
空を舞い、その後轟音と共にそれが着地して、理世は始めてその現実を正しく認識する。
あれだけの質量がもし直撃していたら、即死とはいかないまでも甚大なダメージを受けることは疑いようもない。まして、これを投げてきた、悪意があるとしか思えない相手を、その状態で相手取るなど不可能に等しい。
そして、そもそもこんな芸当ができるような人間で、こちらに殺意を向けている存在といえば──

「──オイオイオイ、気付いてんじゃねーか。それで無視してるたぁ随分とデカい態度でいるもんだなぁ?」

──無論、それは生命繊維を纏った白亜の獣。
からからと笑い声を上げながら、纏流子が現れる。
その存在だけで、理世の背筋に氷柱を挿されたかのような感覚が走る。
時間だけ見れば彼女達の邂逅は僅かだが、その間に理世に刻まれた恐怖は並大抵のものではない。
先程までの思考は一割も残らず吹き飛んで、彼女には立ち竦むことしか出来なかった。

「誰かさんが分かりやすいくらいの殺気を出してくれていたお陰だぜ…礼は言わねえがな」

対して、その横にいる承太郎は、あくまで己のペースを崩さぬままに言葉を返す。
ぴったりと寄り添うように構えるスタープラチナと共に立つその姿に、しかし纏流子は不敵に笑う。

「生意気な口を叩く余裕は残ってるみてえだなぁオイ。ちったあ遠慮して優しめにブッ殺してやろうかと思ったが、余計な心配だったようで何よりだよ」

そんな流子の言葉に、承太郎は眉一つ動かさない。
だが、事実、その指摘自体は的を得ていた。
セイバーとの戦いによって蓄積された疲労、そして負傷は、彼の行動を縛る重石となって積み上げられている。
空条承太郎程の男であっても、つい先程まで癒しの酒と休息に随分と助けられていた──それほどの痛手であったのだ。

「全く、あの騎士王サマも優しいこったなあ。わざわざテメーの獲物を残しといて、しかも殺しやすくしてくれるたあな」

それを煽るように流子が野次を飛ばすが、承太郎は尚も動きはない。
だが、流子の笑いを遮るように一陣の風が吹き──それと同時に、空条承太郎が纏う空気が変わる。
それまでのどの空気よりも張り詰めた、しかしそれに護られている者には何処か安心感を与える空気。
空条承太郎の持つその覇気は、それこそ星の輝きと形容するのが道理であろう。

「テメーに勝手に心配される筋合いはねえ──それに、獲物、とか言ったが、ソイツは違うぜ」

学帽のツバを掴み、それまでより僅かに深く被る。
鋭い眼光を更に尖らせ、曇りなき瞳で流子を睨む。
ざり、という砂利の音と共に、力強くその脚が一歩を踏み出し。
唸りを上げた幻影が、拳を高く振り上げて。

「テメーはこれから、俺が倒すんだからよ」

空条承太郎のスタープラチナが、纏流子へと真正面に殴りかかった。

対し、化物は笑う。
口の端を吊り上げ、歯を剥き出しにしたその顔は、正しく肉食獣が如し。
同時にドンと大地が鳴り、彼女の足元が僅かに沈む。
蓄えられた力に弾みをつけ、次の瞬間──

「──随分と言ってくれるじゃねえか、老け顔野郎がよォ!」

流星にも見紛う白の弾丸となり、その拳を正面から殴り返した。

906 ◆D9ykZl2/rg:2017/09/28(木) 23:16:19 ID:6C.hKJws0
 
大砲にも似た轟音が響く。
拳と拳の衝突が生み出した衝撃が、木々を、大地を、理世の臓腑を震わせる。
数分にすら感じられる一瞬がすぎ、ギチリ、と、肉の擦れる音が続いて──その直後、承太郎が僅かに後退する。
セイバーとの戦いで流した血の多さは、流子程の実力を持つ相手ではやはり誤魔化しきれない。寧ろ、そこまでの傷を負っていながら応戦できる程のスタープラチナと承太郎の精神力の強さが窺い知れる。
だが、この場に於いて試されるのは一時の強さであることには変わりはない。

「ハッ、想像以上に酷えみてえだな!大丈夫かよオイ!」

押すべきタイミングを見逃す流子ではなく、即座に取り出した縛斬の刃で畳み掛けんとする。
辛うじて踏みとどまり、斬撃を受け流すスタープラチナ。しかし、純潔の圧倒的な膂力が齎す熾烈な連撃を受ければ受ける分だけ、スタンドも承太郎自身も余裕は無くなっていく。
弾き、弾き、受け流し──その直後に飛来した大鎌のような左足の一撃で、流石に後退を余儀なくされる。
その勢いを逆に利用し、幾らか距離を置こうとするも、それすら純潔は認めない。
獣が喰らい付くかのような踏み込みの後に、承太郎のウィークポイント、左半身へと一気に攻勢を仕掛ける。
必然、そのカバーに回らざるを得ない承太郎だが、それは同時により大きな隙を作るという意味だ。
より鋭く、より強かに、より荒々しく。加速度的に激しさを増す猛攻に、如何に承太郎といえども反撃の隙を見出す事が出来ずにいた。
その間にも、流子の手が休まる事はなく──遂に、承太郎のガードが甘くなったその瞬間を流子が射止めた。
辛うじて受身を取り着地した承太郎だが、その隙はあまりにも大きく。
再び瞬時に間合いを詰めた流子が、止めとばかりに縛斬を閃かせる。
だが、承太郎の次の行動を見て、流子も流石にその動きを止めた。
スタープラチナが持ち上げ、構えたそれは──先程流子が投げつけ、承太郎が殴り飛ばした一本の樹。
真下から抉るように放たれたフルスイングが、辛うじてガードを間に合わせた流子の体を強かに打ち据える。
角度がついた放物線を描いて吹き飛ぶも、流子も為されるがままとはいく筈もない。
冷静に純潔を飛行形態に変え、追撃に留意して距離をとりつつ着地した。

「認めたくはねえが、どうやらそうみてーだな」

それに対し、承太郎は深追いすることもなく、戦闘中に流子が吐き捨てた台詞に律儀にも言葉を返す。
その内容は、現状を的確に認識した上での判断だった。
──空条承太郎はクレバーな男だ。
周りが見れなくなる程に怒る事は少なく、戦闘中においても冷静に立ち回る事ができる人間。
スタープラチナを一目置くべき存在たらしめている要因のひとつは、間違いなくその主人である彼の冷静さと知性なのだ。
そして、その承太郎が下した判断は。

「こいつは、ジョースター家に伝わる伝統的な戦術を使うしかねーようだな…」

その一言に、ピクリ、と流子が反応する。
伝統的な戦術──聞き慣れない言葉だが、しかし相対している彼女としてはむしろ上等。それをどう打ち破るかの算段すらも始める。

「へえ、面白えじゃねーか。一体全体なんなんだよその戦術ってやらは?」

何が来ようと正面から叩き潰す、そんな殺意を漏らす流子に対し、あくまで承太郎は表情を変えない。
広場をゆっくりと、間合いはそのままに円を描くように歩きながら、流子を睨み続けていた。

「ああ、それはだな………」

スタープラチナが力を溜めるように腕を引き、それに呼応して流子もまた全身に力を漲らせていく。
やがて、承太郎がある場所で立ち止まり、ゆっくりと流子の方へ向き直る。
張り詰めた空気が、今にもパンクしそうになった──その、瞬間。

スタープラチナと承太郎が、思い切り振り返り。
スタープラチナの腕が、いつの間にか近付いていた理世へと伸び、その身体を抱き締めて。
スタープラチナの両足が、承太郎と重なるように地に着いて。

「──『逃げる』、だぜ」

スタンドパワーで思い切り地面を蹴り上げ、二人分の体重を物ともせずに射出した。
残されたのは──力の行き場を無くした、白い化物ひとり。

907 ◆D9ykZl2/rg:2017/09/28(木) 23:22:02 ID:6C.hKJws0
  



「──じょ、承太郎さん!」
「なんだ、天々座」

森の中、木々を蹴って飛び続ける承太郎に対し、いきなり連れ去られたに等しい理世は只管に混乱していた。
そのまま吹き飛んでいく景色に気を取られそうになるが、辛うじて理性を取り戻した彼女は承太郎に呼びかける。

「逃げる、って、アイツはまだ──!」

そう、承太郎は流子を完全に、何ら制約をすることもダメージを与えることもなく放置したまま離脱したのだ。
これまで見てきた彼のスタンスとはあまりにかけ離れた行動。流子をそのまま放置すれば、被害が出続ける事は予想出来る。
それに、彼女は智乃の仇でもある。願わくば相応の報いを受けさせたい、という気持ちも全くなくなった訳ではない。

「安心しな」

しかし、そんな理世の言葉を奪うように、承太郎が呟く。
その言葉に込められたのは、確かな力強さ。
聞くものすらも立ち上がらせるような勇気を底に秘めた、ジョースター家の男の言葉。

「ヤツを放っておく気はさらさら無え。キッチリと、俺とスタープラチナでブチのめさせてもらうぜ」

──ジョセフ・ジョースターに曰く、戦闘から逃げたことはあっても、戦闘そのものを放棄したことは一度も無い。
それと同じく、承太郎もまた、纏流子との戦いそのものを放棄してなどいない。
彼の胸に宿った正義の光は、彼女を見逃すなどということを許すつもりはさらさらないのだ。

「じゃあ、何で……」

しかし、それでは今の行動はどういう事なのか。
事実として、今二人はこうして流子に背を向け、森を駆けているのだ。
どういうつもりなのか──そんな視線を察し、承太郎は一言、簡潔に答える。

「お前を巻き込む訳にはいかねえ」

その言葉で、理世はう、と言葉に詰まった。
あくまで一般人の範疇を出ない彼女が、先の戦闘に於いても承太郎にとって足枷となっていたのは、庇われる側だった理世自身が良く理解していた。

「どうせヤツは俺を追ってくる。だが、ヤツの狙いは思い切り虚仮にしてやった俺に移っているはずだ」

承太郎の判断からするに、流子はやはり感情に任せることが少なくないタイプだと踏んだ。
理性的な部分も決してないというわけではなかろうが、少なくとも、あのような巫山戯た真似をした相手をわざわざ見逃すほどに寛大な心を持っているようには見えなかった。
だからこそ、理世の近くに寄るまでの時間をあそこまで掛けたのだ。彼女が「ハメられた」という事に気付いた時、よりその精神を刺激できるように。
そうでなくとも、今逃げているのと同じ方法を用いれば、承太郎はあの近辺まですぐに舞い戻れるのだが。
そして、それをする理由は明らか。

「それなら、お前を逃した上で、俺も周囲を気にせずヤツをブン殴れる」

理世に対する不意打ちや、戦闘の余波を考慮して戦う──そこまでのことを手負いの身でやるには、あの纏流子が持つ個人戦力は規格外に過ぎる。
針目縫との戦闘において、衛宮切嗣に気を払いつつ戦ったのとは訳が違う。バッドコンディションに加えて森の中という立ち回りづらいフィールド、何より不穏な行動にさえ気を配れば良い「見張る」と全ての条件を考慮して立ち回る必要がある「守る」には天地の差があるのだから。

「……承太郎、さん」

そんな承太郎の真意を知り、理世は言葉に詰まる。
自分なんてどうだっていいのにという思い、足手まといになっているという罪悪感、そして承太郎のことを少しでも疑った自分への嫌悪。
それらを一先ずは飲み込むと同時に、承太郎から言葉が飛んできた。

「──もう少しで下ろす。一旦城に戻れ。ヤツを倒したら俺もあそこに戻る」

908 ◆D9ykZl2/rg:2017/09/28(木) 23:25:42 ID:6C.hKJws0
 



──と、そこで。

「──ところが、そういうワケにもいかないんだよなあ?」

響く筈のない声が、『前方から』聞こえた。
な、と両者が呆気に取られると同時に、正面から伸びるのは二本の白い槍。
神衣純潔の肩部が変形したそれを前に、一瞬二人の思考は完全に停止した。

「──オラァ!」

それでも、承太郎は無理矢理意識を引き戻してスタンドの拳を振るう。
迫ってきた二本のそれを理世を抱えていない方の手で弾くと、そのまま進行方向の障害となる木や枝を殴り飛ばす。
地に足を着けてブレーキをかけ、立ち止まろうとして──そこで、初めて承太郎は気付く。

「──よお、死ね」

その場所、ちょうど両脇にゲートのように生えた木の間に立っている、先程まで戦っていた化物に。
何故彼女が先回り出来たか──それは、彼女が持つ遠見の水晶玉によるもの。
細かい作業が苦手故に一度は使用を諦めたが、反対に単純な操作なら十分に利用できるということ。
流子自身が飛び上がって目立つ位置に陣取り、山頂の城と見比べて方角を確認。その後ズームアウトし、二人が動いている方向を察知する──程度の使用なら、どうにか彼女にも使用出来た。
彼女が振り上げている刃が、無慈悲にも止まることの出来ない彼等へと降り注ぎ──

「──スタープラチナッ!!」

それでも、空条承太郎は最適解を導き出した。
止まることなく、反対に地を蹴って加速。懐に潜り込むことで刃を回避し、拳を以て流子が阻む道を押し通る。
その行動は、確かに彼がその場で採れる選択肢の中では最適解であっただろう。
事実、流子の刃が届くことはなく、反対に承太郎の拳は流子に突き刺さらんとしていた。

「──残念だったなぁ」

しかし。
その拳が収まる先は、纏流子の掌の中。
軌道がわかりきっている攻撃に対する正確な防御──しかもそれを行うのが生命繊維の化物ともなれば、如何にスタープラチナの速度を以てしても貫くことは出来ず。

「死ね」

今度こそ、翻った刃が二人まとめて刺し貫かんと閃いた。
それを間一髪で逸らし、乱暴ながらも逃す為にと理世を放り投げ。
次の瞬間、承太郎の眼前には左ストレートが迫っており──それを最後に、彼の意識は途切れた。











「──口程にも無かったなぁ、オイ」

左手をぷらぷらと振りながら、流子はつまらなさそうにそう吐き棄てた。
視界の先には、吹き飛んでピクリとも動かない承太郎の姿。
純潔を纏った流子の膂力で殴られたのだから、人間の顔面などとうに挽肉になっているのが普通なのだが──彼の頭部は依然として残っており、脳漿を撒き散らしてもいないようだった。
その理由は、何より殴った流子がよく知っていた。
こちらが顔面を殴り飛ばそうとした直前に、スタープラチナを頭部に纏わせ反対に頭突きをお見舞いしてきたのだ。
スタンドの力に後押しされた頭部は、その頭蓋に致命的な損傷を与えることなく拳の衝撃をも和らげた、という訳だ。
──尤も、殺しきれなかった余波が引き起こした脳震盪かそれに近い症状は彼の意識は吹き飛ばすに足るものだったようで。
先程まで彼女と渡り合っていた男は、無防備な姿を晒して気絶していた。
こうなってしまえば、最早殺すことなど造作もない。
溜息を一つ吐いて、再び縛斬を握り直し──

909Girls Murder License ◆NiwQmtZOLQ:2017/09/28(木) 23:28:15 ID:6C.hKJws0
 
「……やめ、ろ」

と、そこで。
余りにも頼りなく、か細い声が、流子の耳に届いた。
それと同時に、立ち塞がるように現れたのは──紫の髪の、少女だった。
先程承太郎に守られていた、如何にも何も出来ない一般人ですと書いてあるかのような外見の少女。

「あァ?何だテメェ、テメェから先に殺されてえのか?」

鐵の切っ先を突きつけながら、嘲るように言葉を放つ。
下らない義憤とやらでここまでやるというのは大したタマだが、しかしこうして目の前に死を提示してやってもそれが保つものか。
惨めに引き下がって後で殺すか、さもなくば両断してやろうか──そう思いながら、ゆっくりと歩み寄っていく。

「……そうだ。殺すなら、先に私を殺せ」

それでも尚、理世が退くことはなかった。
ほぼ無駄な行為だろうと理解しているだろうに、無様な立ち姿を続けていた。
その哀れにすら見える様に、

「その胆力だけは認めてやるよ。わざわざゴミが出しゃばりやがって、何で死に急ぐかねえ」

──それは、問いかけですら無かった。
答えなど求めていない、ただ独りごちることと何ら変わらない言葉。
けれど、それに確かに、天々座理世は反応して。

「──私は、人を殺したから」

ぽつり。
唐突に零れ出たそんな言葉に、流子は不意に立ち止まる。
歩みを止めた彼女とは反対に、堰を切ったように、理世の口からは言葉が漏れ出す。

「私は、人を殺したんだ。謝らなきゃいけなかった人を」

先の承太郎とのやり取りの時のように、ゆっくりながらも詰まるところ無しに。
ただ滔々と、目の前の化け物に向けて、理世は言葉を吐き出してゆく。
兎にも角にも、言わずにはいられない、とばかりに。
承太郎に話した時と何も変わらないかのように、止まることなく。

「だったら、罰を受けなきゃいけない。こうやって殺されることで、それで罪が償えるなら……それなら、安いものだから」

──だから、そうして語ることに夢中の理世は気付かない。
纏流子が纏う気配の変化も、その感情の変化も。
何もかもに気付かぬまま、延々と、理世は己の罪を告白し。

「──償わなきゃ、いけないんだ。遊月を殺した私は、裁かれなきゃ──」

そう、言いかけたところで、理世の言葉は止まる。
否、止まらざるを得なくなった。
彼女の首根っこを、流子がつかんで持ち上げたから。

「──何を、ほざいてやがる」

締め上げられ、文字通り息が詰まる感覚。
辛うじて呼吸こそ出来るが、ただ掴んでいるだけの流子の右手から伝わるありのままの力が、逃げられないと彼女に告げていて。
そして、何より、理世はその瞬間、真正面からその時の流子の表情を直視してしまって。

「テメェの勝手で殺したからなんだってんだ。それが私やアイツに関係あんのか、えぇ?」

そして、その瞬間、理世は──初めて、明確に恐怖した。
纏流子の、その表情に。
嘲りでも、怒りでもない、彼女が未だ見たことも無いその表情に。
──『■■』の、表情に。
その表情が真に意味するところを、理世は理解できていなかった。
ただ、分かることは──きっと、自分が、彼女の何よりの地雷の、その一端を踏んでしまったこと。
そして、このままいけば取り返しのつかないことになるような、そんな予感。

けれど、彼女に為す術などなくて。
纏流子がその言葉を発するのを止めることなど、出来なかった。

910Girls Murder License ◆NiwQmtZOLQ:2017/09/28(木) 23:31:17 ID:6C.hKJws0
 


「テメーはただ、許してほしいだけだろうがよ」



──時間が、止まった気がした。
ざわめく木々の葉の音も、ただ頬を撫でる風も、何一つ彼女の脳に届くことはなかった。

「……ちが、う」

ほぼ、何も考えずに出てきた言葉だった。
気付けば、自然とそんな否定が口から零れ落ちていた。
──無論、それは致し方ないことでもあっただろう。
だって彼女は、所詮ただの一般人、高校生の少女に過ぎないというのに。
人を殺して、その罪を背負う、なんてことが、そう簡単にできるわけがないのだから。
それも、自分の寄る辺を全て失っているような状態でなら、尚更。
天々座理世が、誰かに許してもらう、あるいは殺されることで、「楽になりたい」と思うのは、やはり仕方ないというべきことでもあったのだろう。
そして──例えば、「遊月の知り合いの誰か」の存在、とりわけ彼の弟──いわば彼女にとっての智乃に対しての想像を避けるのも、またしかり。
だが、そんな深層心理、卑怯とも言える本性を理性的に認められるかは、別の話で。

「違う、違う違う違う!!私は、そんな事を思ってなんか──」

いない、と言おうとしたところで、首を持つ位置が乱暴に持ち上がる。
ぐ、という呻き声を漏らした彼女のその位置からは、いつの間にか俯いていた流子の表情は見えない。
だが、その陰に隠れた表情に、恐らくは先程から変わっていない表情に、先程以上にどうしようもなく恐怖を感じる。
──いや、恐怖ではない。
それは、きっと。
どうしようもなく人間らしい、悔やむかのような表情を。
まるで自分が、遊月を殺した時のような表情を。
そこに見出すのが、嫌だったから。

「……あぁ、そうだろうなあ」

尚も俯いたまま、静かに流子が呟く。
それが既に理世に向けられたものではないと、彼女は気付かない。
けれど、それでもその言葉は理世を抉る。

「認められねえよなあ──認めたくねえよなあ」

纏流子の発言が、これまでただの人殺しで、歩み寄る必要もない、許せないと思っていた人間の言葉が。
自分と同じようなことを思っている、などとは、思いたくはなかった。
どれだけ堕ちたとしても、それでも尚、好んで人を殺すような彼女たちに会って死ぬことなど嫌だと思っていたのに。
それと自分が、同じ穴の狢だったなんて、信じたくはなかった。

「──良いよなあ、そうやってテメェは、優しい優しい誰かさんに助けてもらえてよォ」

──その言葉だけは、明確に理世に向けられたもので。
彼女が、そんなことを叫ぶのかと言えば。
それは、そう思えたらどんなに楽かと、そんな羨望を叫んでいるようなものだったのかもしれなくて。
そう思えて、そして実際にそうやって彼女を迎えてくれる──どんなことがあってもきっと迎えてくれるだろう人間が。
彼女にとっての讃美歌を歌ってくれるような人間が理世にはまだいることに、どうしようもなく嫉妬していたのかもしれない。
しかしそんな、何処か透けて見える嫉妬の情こそが、理世の心を突き刺す槍となってもいた。
その感情こそが、まさに今、自分が憐れまれるべきではない「ただの人殺し」としての証明を突きつけているものだったから。
だから、そのまま背後の樹木に叩きつけられ、首元を締め付ける力がどんどん強くなっても、最早抵抗するだけの力は残っていなくて。
段々朦朧となっていく世界の中で、理世はただ譫言のように繰り返していた、

──違う。

──私は、そんな人間じゃ、ないんだ。

──だから、誰か──私を、間違って、ないって──

911Girls Murder License ◆NiwQmtZOLQ:2017/09/28(木) 23:33:26 ID:6C.hKJws0
 



「──随分とお喋りなのは、治ってはいないようだな」



──銃声が、澱んだ空気を切り裂いて走る。
顔面を狙ったそれを、流子は空いていた左手で弾き飛ばす。
尚も断続的に放たれる弾丸に対し、流子は理世を盾にしようとするが──その一瞬を突いて、飛び出してきた男が思いきり地面を蹴る。
一気に肉薄し、すれ違い様に理世を持つ右腕に弾丸を撃ち込む。
咄嗟に理世を手放し腕を引く流子、放り出された理世を拾うのは、乱入者──風見雄二の右腕。

「…よぉ。わざわざ来やがったか」
「あれだけ喚いていれば、近くに来れば来ないやつはいないさ」

縛斬を再び抜刀して雄二へと向き直る流子に対し、雄二は姿勢を立て直しつつ油断なく周囲に気を配る。
少し離れたが、流子よりは近い位置に承太郎がいるのを確認すると、再び立ち上がって銃を突きつけ直す。

「随分と癇癪を起こしていたようだが、何か気に入らないことでもあったか?」
「うっるせぇんだよ…テメエには関係ねえ」

その声に籠る怒気は、先程とは比べ物にならない程のもの。
理世に向けていた感情を薪にして、猛々しく燃え上がるがごとき怒りの炎を滾らせた獣が、雄二へと狙いを定めていた。

「理世」

そんな彼女を冷静に観察しながら、雄二は理世に対して言葉を飛ばす。
へたりこんでいたままの彼女が、それでものろのろと顔をあげて反応したのを見て、僅かに安心したかのような表情を浮かべる。
だが、その焦燥しきった表情は、やはり安心できるようなものではなく。

「承太郎を連れて、ここから逃げろ」

故に、彼女にはそう命ずる。
それは、二人の安全のためにも、そして理世の精神を僅かに安定させるために必要なこと。
何事か必要なことをして、僅かでも気を紛らせるという処方──状況も加味すれば、今できることは、これしかない。
理世が何をして、どう思ったのか聞いている猶予など、今は無いのだから。

「……待って、風見、さん」

──それでも。
そんな憔悴しきった声をした少女を、そのまま放り出すことは出来ず。
何を言うべきか、一瞬迷い──そこで、ふと思い出した事があった。
奇しくも状況の似たこんな山の中で、自分の姉が周防天音を助けた時の言葉。
天音を身を挺して逃した時に言ったという、その言葉。
あの天才の「姉」の言葉を借りて、言葉を伝えることにした。

「──大丈夫だ。お前はまだ、生きるために人を殺すしかない鬼なんかじゃない。お前はまだ、人として生きることができる。
だから逃げろ、そして──生き延びろ」

微笑みながらそう言い残して、後はただ「行け!」と叫ぶ。
その声で弾かれたように顔を上げた理世が、承太郎を担いだまま歩き出す。
承太郎の重みに苦戦しながら、それでも何とか逃げるだけの速度を確保していることわ確認し──そこで、空気を割く刃の音。

「させっかよ──テメーら全員、ここで殺──」

流子がその全てを言い終わる前に、もう一度銃声が鳴響く。
反対に突撃し、クロスカウンターの要領で放った銃弾が、流子の頭部左二センチの場所を飛んでいく。
そのまますぐさま流子の背後へと取り付き、頭部に向けて弾丸を発射しながら身体を捻る。
先と同じような体術で、ある程度は凌ぐ──その基本戦法は、場所が変わろうと同じだった。
しかし、仕掛ける直後に唸りを上げて飛んできた裏拳を避け、更に回転を活かしてそのまま殴りかかってくるという連撃を間一髪で避けた時、雄二も悟る。
先と同じではない──より感情を剥き出しにして、「とにかく殺す」という殺意のままに暴れている獣と化している。
動きを読みやすいのが救いだが、速度と荒々しさは数割増しているような気さえする。

「さっきも言ったが、やたらとお喋りだな。おかげで二人を逃がせた」

煽るような言葉を投げるが、流子の様子が変わる事はない。
言動や態度から滲み出る殺意から察するに、既に彼女の感情は相当に振り切れているのだろう。
彼女に近しいものでもなければ、これ以上の刺激を与える事は難しいだろう──それほどまでに、彼女は今暴走している。
そこまでの地雷を、理世が踏んだ、ということか。
ともあれ、ここからが正念場。
改めて剣の矛先を此方に向ける流子に対し、雄二も右手の銃の状態と残弾を確認する。

「変わんねえよ、とっととテメーをブッ殺して彼奴らも殺すだけだ」
「やってみろ」

その言葉を最後に──真夜中の戦場を、二者が駈け出した。

912Girls Murder License ◆NiwQmtZOLQ:2017/09/28(木) 23:36:34 ID:6C.hKJws0
【Gー4(中心部)/真夜中】

【纏流子@キルラキル】
[状態]:全身にダメージ(中)、左肩・左太ももに銃創(糸束で処置済み)、疲労(中)、精神的疲労(極大)、
    数本骨折、大激怒、説明しきれない感情(恐怖心?)、理世に対する嫉妬
[服装]:神衣純潔@キルラキル(僅かな綻びあり)
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(19/20)、青カード(17/20)
    黒カード:縛斬・蛟竜@キルラキル、自動車爆弾@現実?、番傘@銀魂、生命繊維の糸束(一割消費)@キルラキル、遠見の水晶球@Fate/Zero、
         花京院典明の不明支給品0〜1枚(確認済み) 、ジャンヌの不明支給品1枚(確認済み、武器とは取れない)
[思考・行動]
基本方針:全員殺して優勝する。最後には繭も殺す
   0:雄二を殺す。承太郎と理世も追って殺す。
   1:次に出会った時、雄二と皐月と鮮血は必ず殺す。
   2:神威を一時的な協力者として利用する……が、今は会いたくない。
   3:消える奴(ヴァニラ)は手の出しようがないので一旦放置。だが、次に会ったら絶対殺す。
   4:針目縫は殺す。    
   5:純潔の綻びを修繕したい。
   6:マコの事を忘れたい。

[備考]
※少なくとも、鮮血を着用した皐月と決闘する前からの参戦です。
※DIOおよび各スタンド使いに関する最低限の情報を入手しました。
※満艦飾マコと自分に関する記憶が完全に戻りました。
※針目縫に対する嫌悪感と敵対心が戻りました。羅暁への忠誠心はまだ残っています。
※第三放送を聞いていません。
※肉体のダメージは前の話よりは良くなっています。
※現在自動車爆弾はネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲にへ向かって移動しています。
 そのまま行けば一定時間後に標的の砲台は爆破されます。誘爆し爆発範囲が広がる可能性があります。


【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ】
[状態]:ダメージ(中、処置済み)疲労(小)右肩に切り傷(処置済み)、全身に切り傷 (処置済み)
[服装]:美浜学園の制服
[装備]: トンプソン・コンテンダーと弾丸各種(残りの弾丸の種類と数は後続の書き手に任せます)@Fate/zero 、ベレッタM92@現実(残弾0)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(7/10)、青カード(7/10)
   黒カード:マグロマンのぬいぐるみ@グリザイアの果実シリーズ、腕輪発見機@現実
   歩狩汗@銀魂×2、旧式の携帯電話(ゲームセンターで入手、通話機能のみ)
   小さな木杭3本、小さな鉄杭3本、タオル2枚、包帯代わりの布2枚、包丁一本(低品質)
[思考・行動]
基本方針:ゲームからの脱出
   0:理世と承太郎が逃げる時間を稼ぐ。
   1:纏流子を始めとする危険人物への対策を考える。

[備考]
※アニメ版グリザイアの果実終了後からの参戦。
※折原臨也、衛宮切嗣、蟇郡苛、空条承太郎、紅林遊月、言峰綺礼と情報交換しました。
※キャスターの声がヒース・オスロに、繭の声が天々座理世に似ていると感じました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。必要に応じて他の参加者にも伝える可能性があります。
※言峰から魔術についてのおおまかな概要を聞きました
※纏流子の純潔の胸元に隙間があるなどの異変に気づいています。

[雄二の考察まとめ]
※繭には、分の殺し合いを隠蔽する技術を提供した、協力者がいる。
※殺し合いを隠蔽する装置が、この島のどこかにある。それを破壊すれば外部と連絡が取れる。
※第三放送を聞いていません。
※城近くの山小屋から武器になりそうなものを入手しました(鉛筆サイズの即席の木杭3本、即席の鉄杭3本、包丁一本(低品質))
※自動車爆弾が北西へ向かうのを目撃しました。爆弾とは気づいていません。

913Girls Murder License ◆NiwQmtZOLQ:2017/09/28(木) 23:38:08 ID:6C.hKJws0
 




表情を動かす余裕すらも、もう残っていなかった。
自分がどれだけ醜いか、少し考えただけでも本当に嫌になるのに、それでも歩みを止めるわけにはいかないという呪いだけが自分を縛っている。
千夜に会えばきっと蔑まれ、他の人間にも人殺しと呼ばれるだろうという悲観的な未来以外に、この先の見通しなんてもう一つも見えなくて。
今はただ、背負っている承太郎命が、歩みを止めるなと彼女を詰る。
すぐに死に至るような傷こそ追っていないが、気絶から目覚めるまではまだ時間がかかる。それまでに襲われるようなことがあれば、二人ともどうしようもない。
雄二に逃がしてもらっておいて、このまま倒れるということは嫌だ──そんな気持ちが、今は唯一の原動力だった。
一歩一歩、己の体が前に進んでいる感覚だけを頼りにして。
吐き出した息は、じっとりと身体に纏わり付いて離れない。
今の自分の酷すぎるであろう表情も、誰にも見られたくなかった。

「……わた、しは」

もう、吐き出すものは何一つなくて。
最早余計なものとなった思考をそれでも巡らす度に、どうあっても取り除けない己の愚かさに辟易するしかなく。
自分の中に残された醜さと約束が、何よりもずっしりと体を重くする重りとなって。
今はもう、苦痛でしかない行軍をただ進んでいくしかなくて。
足取りは、ただ只管に重かった。

──理世は、未だに知る事は無い。
紅林遊月の死に対し、衝撃を受けるであろう存在の内の一人はは、すぐそこにいるという事に。
承太郎が理世と出会ったとき、咄嗟にカードに戻しておいたルリグ『花代』。
未だ真実を知らぬ彼女との相対の時が、何を生むのか、それもまた──




【G-4/南部(蟇郡の遺体がある場所のすぐ近く)/真夜中】

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:気絶、ダメージ(大)、疲労(大?、ある程度回復した可能性あり)、精神的疲労(小)、胸に刀傷(中、処置済)、全身に小さな切り傷、
    左腕・左肩に裂傷(処置済み)、貧血(大)、強い決意、焦り(小) 、神代の酒による酔い(小)。
[服装]:普段通り
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(37/38)、青カード(35/37)
黒カード:約束された勝利の剣@Fate/Zero、不明支給品0〜1(言峰の分、確認済み)、スパウザー@銀魂、
         キュプリオトの剣@Fate/zero 、不明支給品1枚(ことりの分、確認済み)、神代の酒@Fate/zero (3分の1消費)、レッドアンビジョン(花代のカードデッキ)@selector WIXOSS
    現地調達品:雄二のメモ、噛み煙草、各種雑貨(ショッピングモールで調達)
[思考・行動]
基本方針:脱出狙い。DIOも倒す。
   0:……………
   1:理世に対し何らかの処置をとりたい。
   2:白カードに閉じ込められた魂の解放方法を探る。
   3:花代から情報を聞き出す。
[備考]
※少なくともホル・ホースの名前を知った後から参戦。
※折原臨也、一条蛍、香風智乃、衛宮切嗣、天々座理世、風見雄二、言峰綺礼と情報交換しました(蟇郡苛とはまだ詳しい情報交換をしていません)
※龍(バハムート)を繭のスタンドかもしれないと考えています。
※風見雄二から、歴史上の「ジル・ド・レェ」についての知識を得ました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※越谷小鞠を殺害した人物と、ゲームセンター付近を破壊した人物は別人であるという仮説を立てました。また、少なくともDIOは真犯人でないと確信しました。
※第三放送を聞いていませんが、脱落者と禁止エリアは確認しています。
※神代の酒3分の1を摂取しました。その効果から体力が回復をしている可能性があります。詳細は後の書き手にお任せします。


【天々座理世@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(極大)、無力感(大)、自分自身に対する疑心と絶望
[服装]:メイド服・暴徒鎮圧用「アサルト」@グリザイアの果実シリーズ
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
    黒カード:キャリコM950(残弾半分以下)@Fate/Zero
    白カード:香風智乃
[思考・行動]
基本方針:?
   1:今は、ただ、逃げる。
[備考]
※参戦時期は10羽以前。
※折原臨也、衛宮切嗣、蟇郡苛、空条承太郎、一条蛍、香風智乃、紅林遊月、言峰綺礼と情報交換しました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。必要に応じて他の参加者にも伝える可能性があります。
※第三放送を聞いていません。ラビットハウス周辺が禁止エリアになったことは知りました

914名無しさん:2017/09/28(木) 23:39:01 ID:6C.hKJws0
仮投下を終了します。指摘がありましたらお願いします

915名無しさん:2017/09/28(木) 23:47:51 ID:gQe5o6kY0
仮投下乙
理世の心の動きと流子の台詞が上手いなぁ

916名無しさん:2017/09/29(金) 19:13:02 ID:aGOf7JbA0
仮投下乙です
あちこちに地雷が転がってる……
>>913の承太郎命などの些細な脱字がある他は本投下に問題はないと思います


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