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仮投下スレ

810【紡ぐ者】 ◆WqZH3L6gH6:2017/01/28(土) 17:28:53 ID:SJmPatgU0
オスロは繭に気を使って接していた。だがそれは長く共にいた事と同様ではない。
テロリストという立場に加え、異世界に関わってからは強大な敵が増え、構ってやる事ができなくなっていたのだ。
加えて繭自身はオスロの嗜好から程遠い人物で便利な道具としてしか見れなかった。
本来あるべき道を歩んだヒース・オスロ同様に参加者ではない方の風見雄二に傾倒していたのも大きい。
故に融和より、警戒の方へ舵切るのは仕方のない面があった。
かと言って繭を必要以上に軽く扱う事はできない。不用意に危害を加える事は自分の利益にも反し、他の協力者の反発も必至だから。


「あの人ねぇ」
「人手がいればすぐに対策はできるのだが」
「あの2人じゃいけないのね」


オスロは2人は正確では無いなと胸中で呟く。
主催には名目上は管理者である繭を除けば、いくつもの立場の者で分けられている。
オスロや『あの人』など身内で凌ぎを削って、願いを叶える手段を勝ち得た権利者。
運営に欠かせない人材でありながら拘束と警戒をせざるを得ない能力と反抗心を持つ要人。
願いの権利を巡る権力闘争に参加できなかった、又はしなかったが故に、権利を持たないことさえ知らぬ者さえいる遠坂時臣を含めた所謂外様。
一旦参加者として運営によって選ばれ拉致されてきたものの、ゲームには参加させられず半ば弄び気味に幽閉されている捕虜。
運営者の意思持ちアイテム。
そして運営には必要とされているがゲームの性質上、最低限の役割と能力しか与えられていない制約の厳しい駒がいる。
いずれの立場の者は各数名しかいないがこれが運営の陣容である。


あの2人とはいわば駒。
これまでは地下通路の更に隠された通路と繭のサポートで、橋の修復や地下通路の新たな出入り口の開通の作業をこなしていたが。
既に埋葬された腕輪の発掘回収やタマヨリヒメ回収になってくると無理があった。
駒は参加者への攻撃はおろか直の接触さえもゲームによって禁止されている。
純粋な参加者であるならそこそこ以上の力を持っているだけにあの2人を使えないのをオスロは惜しんだ。
挑発するかのように繭は甘い声で囁く。


「別の方法はなかったの?」
「……」


無い。身内が繭を発見できなければ願いを叶える力なんて間違いなく発見できなかった。
白窓の部屋を別にすれば、代替になるものは十を超える異世界においても聖杯しかない。
最低でも白窓の部屋に連なる力と聖杯システム両方がなければゲーム開催など不可能。


「!」
「……あらあら、また始まったわよ」


戦況の変化にいち早く気づいたはテュポーン。
少し遅れてほぼ同時にオスロと繭。
3人の上方の窓に映るは鬼龍院皐月と宮内れんげ、そして針目縫。
運営の3者は会話をまたも中断し、観戦する。


「……っ」


針目縫脱落というの結末に、表情こそ変えなかったがテュポーンの声が漏れる。
繭は薄ら笑いをしつつ身をかがめてオスロを覗き込んだ。


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