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( ^ω^)剣と魔法と大五郎のようです

1 ◆x5CUS.ihMk:2016/07/09(土) 22:06:48 ID:Q7uZ6AsA0
 過去話を忘れた人のためにヒロインを中心に振り返るここまでのお話。


 一話:街の暴漢に襲われあわや貞操の危機。
 二話:大五郎の兵士に追い詰められピンチ。
 三話:大五郎に雇われるも早速サロン(田舎)へ飛ばされることが確定。
 四話:サロンへの移動。死にかける。
 五話:キメラ(蛇と狼)と戦う。死にかける。
 六話:キメラの毒牙(直喩)で死にかける。
 七話:ニョロを拾った直後目の前で職場が木端微塵。            ※1
 八話:夜道で襲われ失神。
 九話:拘束され軟禁。しかし颯爽と脱出(ブーンは死にかけ)
 十話:大活躍で勝利。(ブーンは死にかけ)
 十一話:久々の安寧。
 十二話:ロンリードッグ先生と学ぶ楽しい魔法学。
 十三話:キメラ(大犬と鯨)との戦闘にロケット首突っ込み。
 十四話:キメラ相手にマジギレ。
 十五話:決着。死にかける。
 十六話:ヨコホリに襲われる。あぶない。ィシと出会う。
 十七話:安寧の日々(ブーンはアンデッドに襲われる)
 十八話:禁恨党に拉致される。
 十九話:ニダー一派との戦闘。死にかける。息が臭くなる。
 二十話:スカートを履く!!! ヨコホリに弄ばれる。
 二十一話:ロミスと共に檻に閉じ込められる。ロミスを殴り続ける。
 二十二話:ィシたちの戦闘に合流。格上達に喧嘩を売る。
 二十三話:ドクオのショータイム開始のお知らせ。
 二十四話:ドクオのショータイム終了のお知らせ。
 二十五話:死にかける。死ぬ。                            ※2
 二十六話:死にかけたまま。
 二十七話:流石兄弟のターン。
 二十八話:「なー―――〜〜んてね☆」
 二十九話:復活しごはんをたべる。
 三十話:師匠襲来。死んだ(暫定)。


……※1 ここらへんからあらすじをまとめるのに飽きる。
……※2 もう完全に飽きてテラバトルをやり始める。

32名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:36:47 ID:Q7uZ6AsA0

     「久しいなァ、ディレートリィィィ……」


 顔が見えずとも、声を聞いただけで、それが何者が分かるだけで、頭に血が上ってゆく。
 血管が膨れ、破裂しそうだ。
 歯を食いしばる。首の力で押し返そうとするが、更なる力で封じ込まれた。


     「グッグッ、もう少し大人しくしねえと」


 指がずれ、視界が開ける。
 そこに見えたのは、


(//‰ ゚) 「俺も加減できなくなるぜェ?」


 ヨコホリ・エレキブランの笑み。
 鉄に覆われた無表情の半面に対し、人の側は歯茎まで剥き出しにして笑っていた。


ξ# ⊿゚)ξ 「てッめェぇ……!」

(//‰ ゚) 「オオこええ、小娘の凄み方じゃねェぞ」


 「もうちょっとしおらしけりゃ、嬲りがいもあるンだがなァ」という呟きは、多分に笑みを含んでいた。
 ツンの脳内を、血と、怒りと、殺意が満たしていく。

33名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:38:04 ID:Q7uZ6AsA0

(//‰ ゚) 「マア落ち着け。今日は話をしに来たンだよ。平和的に、ナ」


 獣のようにもがき暴れるツンを、ヨコホリは器用に乗りこなした。
 無理に抑えず、上手く力を逃し、決して上を譲らない。
 体格も、腕力も、技術も劣るツンではこの状態を看破することは不可能だった。


(//‰ ゚) 「……クールじゃねえなァ、そンなにあのババアを殺されたのが気に喰わねえのか?」

ξ# ⊿゚)ξ 「……ッ殺す!」

(//‰ ゚) 「いいじゃねえかあンなババア。魔女の呪具なンぞに頼った時点でいずれ死ンださ」

ξ# ⊿゚)ξ 「殺す!」

(//‰ ゚) 「ヤレヤレ、今からそンなンじゃ、頭の血管切れちまうぜ?」

ξ# ⊿゚)ξ 「殺す!」

(//‰ ゚) 「なンてったって、――――テメエの親を殺した仇も、俺なんだからヨォ!」

ξ# ⊿゚)ξ 「―――殺す!」


 ツンはブーツの魔法を発動。
 ヨコホリではなく、既に半壊したベッドに踵を叩き付ける。
 衝撃と共にベッドはさらに大破。

 木端と端切れが散る。
 この一瞬の隙にツンはヨコホリの拘束から逃れた。

34名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:38:56 ID:Q7uZ6AsA0

 瞬時に飛び退き距離を取る。
 勢い余って転がり壁に背中を打った。
 ブーツの魔法の制御すらもが上手くいっていない。

 せき込みを噛み殺し、ヨコホリを睨む。
 ベッドに叩きつけられたダメージも抜けないまま頭を締め付けられたせいで、足腰に上手く力が篭らない。
 抜け出したものの、反撃の手が何一つ浮かばない。

 今飛び掛かってもまたあしらわれておしまいだ。
 だのに頭ばかりが逸る。
 怒りと、憎しみと、殺意に食い荒らされた理性が、辛うじてツンを抑えている。


(//‰ ゚) 「……なァーんか、期待してた反応とちげェなァ。もしかしてもう知ってやがったか?」

ξ# ⊿゚)ξ 「殺す!」

(//‰ ゚) 「あのババァの仲間が教えやがったか? マアいいや」

ξ# ⊿゚)ξ 「殺す!」

(//‰ ゚) 「てめえの両親が、どンな風に、どンだけ無様に死ンだかまでは、聞いてねえだロ?」


 残っていた一片の理性が音を立てて切れた。

 動かなかったはずの足が床を蹴る。
 抑え込まれ痺れていた手がナイフを握る。

 ブーツに込めていた魔法の残り全てを解放。
 余波のみで家屋が軋みベッドが浮き上がる。
 音に並んだツンの体は、全ての魔力をナイフに集中した。

35名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:39:57 ID:Q7uZ6AsA0



(//‰ ゚) 「……言っただろディレートリ。俺は話をしに来たンだぜ」


 なにが、何があったのか。
 ツンの持つナイフは、間違いなくヨコホリに突き立てられたはずだ。
 鋼鉄の腕に防がれることはあっても、回避できる速さでは無かったはずだ。


(//‰ ゚) 「俺が侵入してることに気が付かンでのほほンとお掃除してた今のテメエとじゃれ合うつもりはねェよ」


 気が付いた時、ツンは再びヨコホリの下にいた。
 両手を、突き出したナイフごと踏みつけられ、床に這いつくばっている。
 潰された。懐に踏み込んだところで、上から圧倒的な力で床に抑え込まれたのだ。


(//‰ ゚) 「治ってやがるのはビビったが、あれだけの怪我だ。まだまだ本調子じゃあねえンだろ?」


 「大人しく聞きな」と言いながら、ヨコホリの左手から数本の鉄線が伸びる。
 抵抗を嘲笑うように手足に巻き付き、ツンは簡単に拘束されてしまった。


(//‰ ゚) 「さあて、じゃあ何から話すか。つってもつい最近まで忘れてたからよ、ディテールは粗いンだが」

ξ ⊿ )ξ 「黙れ!」

(//‰ ゚) 「そうだなァ、お前のパパの頭を飛ばしたあたりからなら、結構覚えてるぜ?」

ξ# ⊿ )ξ 「―――黙れ!!」

36名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:40:53 ID:Q7uZ6AsA0

 ツンが吠える。
 ヨコホリは声を上げず静かに、しかし大きく口を開けて嗤った。


 が、その貌がふっと真剣なものに戻る。
 何かを探すように、視線を右往左往させ始めた。


(//‰ ゚) 「……なんだ?」


 喚くツンの頭を踏みつけて黙らせ、ヨコホリは再び室内を見渡す。
 部屋には異常を匂わせるような変化はない。
 
 
(//‰ ゚) 「ほかにゃ誰もいなかった……じゃあ、なンだ、この魔力は」


 ヨコホリが呟いた瞬間に、部屋中の壁が痛烈に発光を始めた。
 壁のみでは無い。床も天井も、白く眩しい光を放っている。
 床に顔をつけたツンには、僅かな振動音も聞こえた。

 だから分かった。
 一番この姿を見られたくない人が、すぐにでも現れてしまうことが。

37名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:41:54 ID:Q7uZ6AsA0

(//‰ ゚) 「……オイオイ、こンなレベルの魔法を隠してたってのか?」


 発光は規則性を持ちはじめ、部屋の六方を用いて魔法陣と化す。
 部屋の中央で集約された白い光は、球の形を取り、そこにもまた、幾何の紋様が浮かび上がる。

 魔法と呼ばれる超常の術の中でも、さらにごく一部の人間のみが扱える秘術。
 知る者たちは皆、この魔法を『空間転移』と呼んでいる。


(//‰ ゚) 「―――ッ!」


 紋様の球が大きく膨らみ、爆発ににた激しさで閃光を放った。
 ツンも、ヨコホリも咄嗟に顔をそむける。
 部屋の中が光に満たされるその中に、今までには無かった人影が浮かび上がった。


|゚ノ:::::::::::) 「……嫌な反応があったと思って飛んで来てみれば」

(//‰ ゚) 「……随分と、笑えねえのが来ちまったな」

|゚ノ ^∀^) 「私の弟子になにか御用でしょうか? そこな鉄屑の人」


 光の中から現れたレモネードは、全てを察した顔でヨコホリを見据える。
 相変わらずの柔和な微笑みではあったが、その目に宿っていたのは、大よそ人間が灯しうる光では無い。

38名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:43:02 ID:Q7uZ6AsA0

(//‰ ゚) 「チィッ」


 レモネードを目の前にしたヨコホリの判断は、酷く正確であった。
 飛びのきながら距離を取り、同時に鉄線を手繰り寄せツンを人質にしようとしたのだ。
 しかし、その判断の速さも、レモネードには通用しない。

 レモネードが手を振るうと同時、指先に集約した魔力が刃となり、ヨコホリから伸びる鉄線を切断した。
 引き寄せられかけていたツンは床に転がり顔を強かに打つ。


(//‰ ゚) 「シィッ!」

|゚ノ ^∀^) 「“―――プロテクションズ”」


 ヨコホリが放つ、空気の榴弾。
 乱射し連射し、その数は無数と化したが、レモネードが多重に張った障壁魔法が防ぎきる。
 この一瞬の間にレモナはツンの首根っこを掴み、部屋の隅にあったベッドに投げ捨てた。

 遠距離攻撃が通用しないと判断したヨコホリは、ツンを投げ若干体勢を崩したレモネードに走り寄る。
 先の魔法同士の衝突で生まれた蒸気がその体に白くたなびいた。

39名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:44:19 ID:Q7uZ6AsA0


(//‰ ゚) 「“―――四風絶界”」

|゚ノ ^∀^) 「“―――フルインパクト”」


 互いに詠唱無しの高速発動。
 ヨコホリはかつて半不死魔物と化したィシ=ロックスを瀕死に追い込んだ風の超上級魔法。
 対するレモネードは、比較的簡単な衝撃魔法に魔力を無理やりつぎ込んで増強し応じる。

 威力はほぼ同等。
 相殺によって生まれた衝撃波が部屋を粉砕。
 白い蒸気と共に木端や布切れが舞い吹き飛ぶ。

 折角再建された壁もほぼ爆散し、残った柱は歪み大きな罅が入っている。
 最早建物としての機能は失われている。家屋は軋み、倒壊の予兆を告げる。

 そんな中をヨコホリは肉薄。
 初めから魔法が通用すると思っていなかった動きである。
 右手を小さく振りかぶり、手刀をレモネードの首へ突き出した。

 レモネードは仰け反り後転して回避。
 腕の力で大きく跳ね距離を稼ぐと、鉄線によるヨコホリの追撃を、手で払った。
 魔力を纏った掌は鉄線を弾くが、先ほどのように切断は出来ず、続けて振るわれる攻撃にレモナは防戦を強いられる。

40名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:45:11 ID:Q7uZ6AsA0

(//‰ ゚) 「ラァ!」


 ヨコホリが鉄線を叩き付けるように振るった一撃を見切り、レモナは攻勢に出る。
 回避と同時に横に流れ、すぐさま前へ。
 鉄線の追撃は許さない絶妙なタイミングである。


|゚ノ ^∀^) 「“―――天叢雲”」

(//‰ ゚) 「!」


 レモナの体から灰色の魔力が生み出され、掌に集約。
 手刀を延長する形で刃と化す。
 走り寄った勢いを乗せ、レモナはこの手刀をヨコホリへ突き出した。

 ヨコホリはこれを右手で受ける。
 痛烈な金属音。魔力と鉄片が火花となって弾ける。
 続けて逆の手で放たれたレモナの追撃も、ヨコホリは鉄線を纏わせた左手で受けた。

 そのまま両者、近々の間合いで手刀を打ちつけ合う。
 瞬時に互いの攻撃を見切り、受け、反撃を出し、受けられれば即座に引き、また反撃を見切って受ける。
 多重にまき散らされる音と衝撃。金属の粉が舞い、魔力の火花が爆ぜ、血飛沫が床を濡らす。

 破壊力では“天叢雲”を纏うレモネードが優勢。
 しかし、単純な格闘の膂力、技術ではヨコホリが僅かに勝り、さらに彼には鉄線を纏う防御策もある。

 徐々に押され始めたレモナ。
 しかしその瞬間、ついに柱がへし折れ、天井が二人の頭上に落下する。


|゚ノ ^∀^) 「“インパクト=プロテクション”」

(//‰ ゚) 「シィィッ!」


 敵対乍ら同時の呼吸。
 互いに自身の頭上へ魔法を発動し、迫る家屋を悉く破壊。
 貫く形で屋根の上へと逃れる。

41名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:46:00 ID:Q7uZ6AsA0

(//‰ ゚) (……俺の、この腕に傷をつけやがった。左手は……ひでえなこりゃ)


 倒壊の衝撃で揺れる足場。すぐに体勢を立て直しながら、ヨコホリは自身の状態を確認する。
 金属の装甲で出来た右腕ですら打ち合いで傷だらけ。
 鉄線を纏わせただけの左手については、指が辛うじてつながっている状態だ。

 斧を叩きつけられても傷つかないのが自慢であったにも関わらず、やすやすと切り裂いてきた。
 地面に落ちた鉄線の切れ端をみて、ヨコホリはつい舌打ちを漏らす。


|゚ノ ^∀^) (速く、強い。体技だけならあちらに軍配。それに、簡易発動とはいえ天叢雲が防がれるとは)


 レモネードも魔法を一旦解き、手を払う。
 白い肌には無数の傷。ヨコホリとのやり取りで出来たものだ。
 天叢雲の脅威性を理解した彼は、途中から天叢雲の内側にある手を狙って攻撃を仕掛けてきていた。

 破壊力では無類を誇る天叢雲も、防御の面では脆さがある。
 それをこの短時間で見抜いた。
 レモネードの背を走り胸に満ちるのは、実に久しい畏怖の念である。

42名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:47:17 ID:Q7uZ6AsA0

 互いに相手の力量、自身の損傷を確認し、同時にツンをみやる。
 彼女はいま鉄線で絡んだベッドと共に、家屋からいくらか離れた距離にあった。
 一応は無事。動きはしないが、レモナもヨコホリも、魔力の感知によって彼女の生存を確認していた。

 レモナは愛弟子である彼女がいる限り、周囲を巻き込む大規模な魔法の展開は出来ない。
 格闘では分が悪いにも関わらず、近接戦を強いられる。

 ヨコホリもそれを察し、最も魅力的な逃走の選択肢を頭の隅に追いやる。
 相手がツンを庇うつもりならば逃げることは出来るだろう。
 しかし、小高い丘になり見晴らしのよいこの場所から逃げおおせる間に、背中を撃たれてはたまったものではない。

 目の前に突如現れた魔法使いは、空間転移を扱い、自身の鋼鉄の体を容易く抉る実力者。
 もっと強力な魔法を放たれればひとたまりもない。
 相手が周囲への被害に遠慮して魔法を制限しているここが、最も危険な安全圏なのだ。


(//‰ ゚) (ディレートリを人質にしてえところだが)


 レモネードは隙の無い足運びでヨコホリとツンを結ぶ直線状に割って入っている。
 ツンに手出しさせるつもりも、ヨコホリを逃がすつもりもない、ということだろう。
 もっと踏み込んで言えば、この場で命を取ろうという頑なな殺意がある。

 ヨコホリは、再びにたりと笑みを浮かべた。
 笑わずにはいられないというやつだ。
 彼がレモネードに抱いたのは、魔女に対するものと同系列の畏れ。

 魔女には及ばなくとも、総合的な“格”ではヨコホリの上にある。

43名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:48:21 ID:Q7uZ6AsA0

 明らかに異質な存在がいることは察していた。
 だからツンが一人になるのを待って侵入したのである。

 それがまさか転移魔法で戻ってくるとは思わなかった。
 帰って来るには時間があると踏んで遊び過ぎたのも反省である。
 死にかけたばかりだというのに、どうも油断する癖がついたと自嘲気味に笑う。


(//‰ ゚) (こンなことなら、“持ってきて”おきゃ良かったぜ)


 全身を鉄線で覆う。
 多重に巻きたいところだが、斬られたせいで量が心もとない。
 希少な金属だ。ここで死ぬ気は無いし、なるべく浪費は避けたい。


(//‰ ゚) 「ちょっとした挨拶しにきただけなンでなァ、そろそろ帰らせてもらっていいか?」

|゚ノ ^∀^) 「あら、そうですの? なら、お土産はいかが?」


 上空が俄かに曇天の模様を取る。
 明らかに魔法の効力。それも、天変地異クラスの。


(//‰ ゚) 「お前ェの周りはキ千ガイしかいねえなァ!ディレートリィィ!!」

|゚ノ ^∀^) 「“天叢雲、邪の型――――”」

44名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:49:03 ID:Q7uZ6AsA0

 天空から滝の如く黒雲が降り注ぐ。
 その数八。
 地面に衝突した雲の群れは、うねりくねり意志を持つ大蛇の如くレモネードの元に集う。

 先ほどの剣と同じ魔法。しかし今度はしっかりとした魔法式の展開を行う、完全版。
 規模も、効果も、圧力も桁が違う。


(//‰ ゚) 「ッ!」


 危険を察したヨコホリは、あえてレモネードへ接近した。
 鉄腕に、鉄線に、瞬間に出しうる最大の魔力を循環させる。

 現状では逃走は難しい。
 逃げるにしろ倒すにしろ、まずは相手を崩さなければ結果的に死ぬ。
 格闘に持ち込むのが最も生存に近い方法と判断したのだ。

 ―――その考えもがまた、悪手であるとは理解しながらも。

45名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:50:26 ID:Q7uZ6AsA0


                  ヤマタノオロチ
|゚ノ ^∀^) 「“――――――八俣遠呂知”」

(//‰ ) 「―――――ッ?!」


 集合した八本の雲は家屋の残骸をさらに蹂躙し、流動的な形のままヨコホリに喰らいついた。
 魔力を帯び、密度を増した雲との接触。
 ヨコホリの身体はおびただしい数の木端と共にいともたやすく宙に浮き、突き飛ばされる。

 一本、二本、三本、四本、と次々にヨコホリを襲う雲の帯。
 さながら巨大な蛇の如くである。
 螺旋を描き、常に死角を突くように、鋼鉄の体に突き刺さる。

 五、六、七と続き、ヨコホリの身体を覆っていた鉄線はほぼ剥がれ、
 八本目はその鳩尾に深々と突き刺さる。

 然し、これで終わりでは無い。
 傍目には既に死に体のヨコホリを、レモナはこれまでよりも頑ななな殺意で睨みつけている。

 逃す気の無い相手を、自ら引き離した。
 しかも、周囲に障害の無い空中である。
 となればレモネードが考えていることは一つ。


|゚ノ ^∀^) 「“天叢雲聖の型―――”」


 ―――次で止めを刺す。

46名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:50:52 ID:Y2xkRCZ20
レモナさんが予想以上にめっちゃ強い
ドクオ……

47名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:51:06 ID:Q7uZ6AsA0

 ヨコホリを追い詰めた雲は、獣が舌を引き戻すようにするりと一瞬でレモネードの手に集約。
 生み出された黒雲の剣は、過々剰な密度により稲光を迸らせる。
 剣のみならず、レモネードの周囲すらもが、苦痛に身もだえするように歪んで見えた。

 屋根を蹴り、レモネードはヨコホリなるべくヨコホリへ接近。
 距離を詰め天叢雲を大きく振りかぶった。


(//‰ ゚) 「………ッ!!」

              クサナギノタチ
|゚ノ ^∀^) 「“――――草那芸太刀”」


 鈍色の斬撃が天へと突き抜ける。

 一拍置いて、空が悲鳴を上げた。
 ガラスを割ったような。金属を叩き切ったような。
 しかしそれらよりも遥かに痛烈な響き。

 空の青に亀裂が走り、吹き出すのは怪しげな虹色の光。
 世界の外殻が裂けた証。空の流す鮮血の色。
 すぐにぼやけて消えてしまうが、空は歪み、薄霞の傷痕が残る。

 続いて大気が乱れ狂う風の轟音が鳴り響いた。
 上昇気流が巻き起こり、あらゆるものを宙に舞い上げる。

 凄まじい、の一言である。
 異邦の神器の名を借りた天叢雲の真価。
 ツンが扱う同じ魔法が、玩具にすら見えるほどの威力だった。

48名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:51:55 ID:Q7uZ6AsA0


|゚ノ ^∀^) 「まさか」


 屋根に降り立つレモネード。
 空は未だに天変地異の様相を示している。

 レモネードの手に油断や誤りはなかった。
 ツンを巻き込まぬよう距離を取り、続けて止めを刺す。
 それを同時に行える魔法を選択し、滞りなく実行出来た。


(//‰ ) 「ぐ、グググ……とンでも、ねえ」


 にも関わらずヨコホリは生きている。
 ほとんど身動きの取れない空中で、レモナの一太刀を避けたのだ。

 風の魔法を使っていた時点で、多少の抵抗は予想していた。
 天叢雲を選んだのはそれを含めても叩き切れると踏んだからである。
 事実、斬撃の体を成していると言っても、その範囲は細い線では無く、人間の体など軽く飲み込むほどに広い。

 万一紙一重で躱しても、巻き起こした衝撃波が四肢を引き裂いて微塵となるはず。
 いくらあの頑丈な体であっても、例外ではない。
 それが、五体満足で空中をクルクルと舞っているではないか。

49名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:53:24 ID:Q7uZ6AsA0


|゚ノ ^∀^) 「……なんという」


 木の葉のように舞い、落ちるヨコホリ。
 しかし、地面に衝突する寸前、途端に落下の速度が弱まり、彼は無事に着地した。
 そしてレモナを軽く一瞥すると、すぐさま逃走を選択した。

 軽く手を振る余裕すらある。
 すさまじい生命力だ。ゴキブリでももう少し節度のある魂を持っている。

 レモネードは魔法を放とうとして諦めた。
 この戦いの中、彼女は空間転移の魔法と同時に、独自の結界魔法を用いていた。
 著しく狂っている方向感覚を補い、周囲を把握するためものである。

 ヨコホリは既にこの範囲内から逃れた。
 こうなると、もうすでに目で追うことすら困難である。

 宙に浮かせたまではまだ問題ない距離だったが、天叢雲の余波で吹き飛ばしてしまったのが失策だ。


|゚ノ ^∀^) (あの能力……今ここで確実に屠れなかったのは失態ですわ)


 並の魔法では傷すらつかぬ頑強な体を持ち、その上で格闘の技術も一等。
 魔法能力の差からあまり使用してはしてこなかったが、榴弾魔法の発動速度は脅威だ。

 実際に手合わせをして確信した。
 ツンではあの男には勝てない。
 絶対に戦わせてはいけない、と。

50名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:54:20 ID:wEsfXEv.0
おお
久しぶりやん

51名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:54:22 ID:Q7uZ6AsA0

 屋根を降りレモネードはツンの元へ駈け寄った。
 激しい余波には晒されていたが、共に飛ばされたベッドが盾となり、大事は無い。


ξ ⊿ )ξ 「師匠」


 「大丈夫ですか?」と声をかけようとしたレモナをツンの言葉が遮った。
 ツンは拘束に縛られたまま、地面にうつ伏せている。
 その表情をレモナから見ることはできなかったが、心中だけは声の震えが物語っている。


ξ ⊿ )ξ 「私、アイツを倒さなきゃいけない」


 レモナは答えず、ツンの手足を縛る鉄線に触れた。
 指先に魔力を集中し、一本一本丁寧に斬り外す。
 鉄線の爆ぜる硬い音が、一定の間隔で響いた。


|゚ノ ^∀^) 「……あなたでは、あれには勝てませんよ」

ξ ⊿ )ξ 「知ってる。だから」

|゚ノ ^∀^) 「私に弟子を無駄死にさせろというんですか?」


 バチン、バチン、と鉄線が外れて行く。
 手首が解放されると、次は足へ。
 同じく、丁寧に一本ずつ弾き切る。

52名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:55:02 ID:Q7uZ6AsA0

 作業を続けるレモネードの袖をツンの手が掴む。
 鉄線に拘束され赤くはれた手首には、白く筋が浮いてる。
 力は強くも、弱々しい。縋りつくような姿に、レモネードはつい手を止める。
 

ξ ⊿ )ξ 「師匠とあいつが戦ってるのを、見て」

|゚ノ ^∀^) 「ええ」

ξ ⊿ )ξ 「師匠に殺されちゃえばいいのにって、思った」

|゚ノ ^∀^) 「……私も、そのつもりでしたわ」

ξ ⊿ )ξ 「一人でやるって、自分でやるって、自分で決めたのに」

|゚ノ ^∀^) 「……」

ξ ⊿ )ξ 「……自分が」

|゚ノ ^∀^) 「ええ」

ξ ⊿ )ξ 「弱くて、弱くて」

|゚ノ ^∀^) 「……そうね」

ξ ⊿ )ξ 「気が、狂いそう」

|゚ノ ^∀^) 「……」


 レモネードの手が再び動き出した。
 ツンヘの言葉は無く、ツンもそれ以上の発言はしない。

 バチン、バチンと、鉄線が外れて行く。
 鉄の糸からようやっと解き放たれてもなお、その手はレモネードの腕を硬く握りしめていた。

53名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 22:58:40 ID:ie9zzhO60
支援

54名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 23:01:50 ID:Q7uZ6AsA0

 以上っす。
 まただいぶ間が空いてしまいましたが、そろそろ本気が出る予定です。

 訂正です。>>47に誤字があります。
 ヨコホリが一つ多いです。ヨコホリに塗れすぎだろ。主人公出てきてすらいないんだぞ。


 じゃあまた次もなるべく早く来る気概だけは忘れずに。



 
 余談ですがブン動会に参加して、
 ( ^ω^)人魚を拾って帰ったようです
 二眼惚れ
 の二つを投下しました
 普段とはちょっと違う雰囲気のものを書いたんであんまりおすすめはしないんですが気が向いたらよろしくね

55名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 23:02:59 ID:ie9zzhO60
乙乙

56名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 23:14:40 ID:cDJ9NoJQ0
おつおつ、相変わらず面白い
師匠が想像以上に規格外でヤバいな、ツンちゃんがどう成長していくかも楽しみだ

57名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 23:28:36 ID:zplkX3H.0
乙!
先週くらいにこのスレのこと知って、ちょうど10分くらい前に最新話まで追いついて
「あー半年以上更新ないのか〜寂しいけど仕方ないな〜」って思って
「とりあえず最新スレだけお気に入りに入れておくか」って思ってスレ検索したら投下来てた!!!
割とマジで興奮してる!!

58名も無きAAのようです:2016/07/09(土) 23:32:41 ID:AlmdS2/s0
おつー

59名も無きAAのようです:2016/07/10(日) 00:34:34 ID:IH0g8CUI0
ブン動会のアレお前かよ
すげえ面白かったよ両方とも

60名も無きAAのようです:2016/07/10(日) 01:25:48 ID:XuuY6pxY0
乙!!久しぶりの大五郎ツンちゃんに興奮!
師匠メッサ強くて格好いい・・・!!

61名も無きAAのようです:2016/07/10(日) 13:59:32 ID:eXI5ZTiY0
キテター!
乙です

レモナのせいでドクオがさらに噛ませに見えてきた…

62名も無きAAのようです:2016/07/11(月) 02:13:58 ID:1vxQQARM0
来てたのか。
戦闘描写が読みやすいし、分かり易い。
ツンちゃんの流派の魔法カタカナだけど天叢雲だけ漢字だけどなんか意味あったりするのかな。

63名も無きAAのようです:2016/07/11(月) 14:31:51 ID:oiiJOJu20
かっこいいからやで

64名も無きAAのようです:2016/07/11(月) 14:53:31 ID:96wpYOjQ0
カタカナが汎用、漢字がオリジナルと思ってる。

65名も無きAAのようです:2016/07/11(月) 20:21:06 ID:eLYt.FyQ0
カタカナ系は全部どこぞに転がってる魔法だろ。
誰でも扱えるやつ

66名も無きAAのようです:2016/07/11(月) 21:08:21 ID:gYVtj/x60
切り札の四風なんちゃらをサクッと使ってるよな
パワーアップしたってことだろうか

というか万全のブーンとドクオでも師匠には勝てないだろこれ……

67名も無きAAのようです:2016/07/12(火) 00:01:41 ID:1DpE/r1o0
ドックンだって融合とければこれくらいやってのける

68名も無きAAのようです:2016/07/12(火) 16:17:36 ID:cJH0Bjcs0
ドクオは本来なら師匠に一歩及ばない程度だといいなぁ。
でも先生に負けない要素が一つでもあれば嬉しい

69名も無きAAのようです:2016/07/12(火) 21:09:21 ID:rJHTgdUE0
むしろドクオの師匠とレモナが同じくらいで繋がりあるんだよな?レモナの口振り的に

70名も無きAAのようです:2016/07/12(火) 21:26:55 ID:4hdwdrg.0
ドクオのハードルがあがっていく

71名も無きAAのようです:2016/07/12(火) 22:22:03 ID:qxAeMNac0
じゃあオルトロスさんのハードルもあげよう

72名も無きAAのようです:2016/07/13(水) 00:24:51 ID:ac8DaVv.0
オルトロスさんには脱兎走があるから……

73名も無きAAのようです:2016/07/25(月) 19:16:06 ID:VAUhFan.0
オルトロスさんの話題になった途端止まるのやめろよ!
十分強さ見せつけてるのになんでだろうなぁ……

74名も無きAAのようです:2016/07/27(水) 15:02:48 ID:kCQrTLgA0
普通にブーンもドクオも強キャラのイメージだけどなあ
2人ともめっちゃ強いけど敵はスーパーめっちゃ強いって感じ

75名も無きAAのようです:2016/07/27(水) 15:11:02 ID:IyLIAjiQ0
大事なとこで勝てないイメージが強くって……

76名も無きAAのようです:2016/07/27(水) 18:34:58 ID:adTPmXBY0
大五郎さえ無ければ…

77名も無きAAのようです:2016/07/27(水) 18:47:03 ID:UuCTJLnU0
オルトロスさんには期待してる

78名も無きAAのようです:2016/07/28(木) 10:09:11 ID:yeU78IuI0
魔法がド派手すぎて物理がショボく見えるのかもしれん

79名も無きAAのようです:2016/07/28(木) 12:30:01 ID:o4VVs.y.0
そのド派手に対して物理で対等に渡り合うだけでとんでもない化け物だと思うのです

80名も無きAAのようです:2016/07/28(木) 18:34:39 ID:c4kYdlLM0
魔法は精霊化とかしちゃうしな…

81名も無きAAのようです:2016/07/28(木) 22:17:36 ID:JSMuJwzo0
オルトロスさんの戦闘描写は一番好きだわ。早く続きが読みたい。

82名も無きAAのようです:2016/07/28(木) 22:50:40 ID:o4VVs.y.0
と言うかオルちゃんの真価は高いポテンシャルを維持できる耐久力にあると思うの
どれだけ瀕死になっても動ける限りは最大火力をたたき込めるんすよ

足が折れても腕でカバーして走り回る
骨が覗くほど抉れてても止血程度の沈痛でサスガに勝つ
武器を無くしてもクジラ犬の歯を殴って砕く

まさに化け物

83名も無きAAのようです:2016/07/29(金) 03:44:11 ID:Y3N.mdT.0
最近やたらとネット小説が書籍化してるけど、これ本当に余裕で書籍化できるよね…。

84名も無きAAのようです:2016/07/29(金) 19:30:55 ID:KnUN6Inw0
ブーン系なのが難点

85名も無きAAのようです:2016/07/29(金) 21:51:42 ID:gBOW9bZc0
キャラ像がある程度決まってて作者も読者も楽だからしゃーない

86名も無きAAのようです:2016/07/30(土) 01:03:35 ID:BIG58WTc0
地の文しっかりしてるしAAだけ手直しすれば

87名も無きAAのようです:2016/07/30(土) 07:42:13 ID:t3Y.BNB.0
AA手直ししたらそれはもうこの作品じゃないだろ
金銭絡んでないのにただ好きなだけでこんだけ書くっていうクレイジー野郎が多いのがこの界隈の魅力だよ

88名も無きAAのようです:2016/07/31(日) 15:40:44 ID:SPV.uW6U0
これだけ騒ぎ立てればオルトロスさんもなんか凄いことになるだろう
巨大化とか……

89名も無きAAのようです:2016/07/31(日) 20:24:00 ID:G7YQ.Zcw0
全盛期のオルトロスさん見てみたいな〜。
今のオルトロス()さんとどれくらい差があるのか

90名も無きAAのようです:2016/07/31(日) 20:34:29 ID:Ksc7O0Js0
元のオルトロスさんは合体時のバーサクモードですら通常時に及ばないらしいっすよ

91名も無きAAのようです:2016/07/31(日) 20:44:03 ID:MCiB3RLk0
このオルトロス下げはなんだ
満身創痍でも決して諦めないのに

92名も無きAAのようです:2016/07/31(日) 22:13:45 ID:qYeB9ffA0
基本決められないからでは?

93名も無きAAのようです:2016/07/31(日) 23:15:03 ID:ih.iMJNU0
師匠が既にやられてるのが弱そうに見える原因だと思ってる

94名も無きAAのようです:2016/08/07(日) 22:19:36 ID:Ra5ctJGE0
師匠越えしてるなんて珍しくもないんだよなぁ。

95名も無きAAのようです:2016/08/09(火) 11:31:33 ID:66lz/9SE0
おまいらこの作品好きだな。
かく言う私もそうなんだが。
ドクオとブーンは合体してない状態だとどれくらい強いんだろうな、そろそろ分離するんじゃないだろうか?

96名も無きAAのようです:2016/08/09(火) 18:24:42 ID:jnsq2tUM0
分離したらタイトルの意味がなぁ
合体したまま精霊化しよう

97名も無きAAのようです:2016/08/09(火) 18:59:31 ID:v70TmMbA0
精霊化した大五郎

98名も無きAAのようです:2016/08/10(水) 18:51:00 ID:UsbkJbLc0
分離したら大五郎さんが一番強いに決まってんだろ

99名も無きAAのようです:2016/08/10(水) 19:31:06 ID:jZwdc9FA0
シブサワ歓喜

100名も無きAAのようです:2016/08/10(水) 20:08:40 ID:dXA/wXE60
分離するのはやっぱり最後かその直前の戦いとかが良さそうだ

101名も無きAAのようです:2016/08/10(水) 21:48:41 ID:rPiOaUno0
今読み返してるが、ィシ戦のオルトロスさんがかっこ良すぎて濡れる

102名も無きAAのようです:2016/08/10(水) 22:12:50 ID:2DbVNo9.0
最後まで決まればかっこよさやばかったろうな

103名も無きAAのようです:2016/08/11(木) 14:48:34 ID:mUTIZ7J.0
最後決まったらオルトロスさんじゃない

104名も無きAAのようです:2016/08/24(水) 12:36:42 ID:SyoPb6lU0
次の更新はいつごろかなぁ

105名も無きAAのようです:2016/08/25(木) 17:37:03 ID:BwRyIfQs0
半年以内には来ると信じてる

106名も無きAAのようです:2016/09/04(日) 02:18:04 ID:LpHQqYy20
アルファみたいに何年かかってもいいから完結してほしい

107名も無きAAのようです:2016/10/04(火) 23:09:29 ID:x/TTgmxM0
これの更新待ってたら内定出ちまったよ
続き読みたいわ

108名も無きAAのようです:2016/10/05(水) 04:29:08 ID:q7Ct.O4QO
でっかい男はビッグマン
今日も元気にビッグマン
俺達ゃおとこビッグマン

109名も無きAAのようです:2016/10/05(水) 05:55:14 ID:noqiMV5Y0
豚の男はピッグマン

110名も無きAAのようです:2016/10/08(土) 10:14:42 ID:Be0F.tuc0
そろそろかな

111名も無きAAのようです:2016/10/19(水) 00:48:28 ID:E1mQDrDQ0
久々にきたら更新来てたのかよあーん好き!ありがとう!おつ!
ツンちゃんがつらいです

112名も無きAAのようです:2016/10/26(水) 09:55:49 ID:.kuTai4c0
杉浦双刀流をもっとみたい
しかし剣が揃わない

113 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 21:52:07 ID:RSFxJfvw0


  予告した通り週末に投下をするんだけれども
  現在前スレの梅に使うつもりで書いていたおまけ的なものがファイルに残っており
  このスレ埋める時に使おうかな〜と考えていたものの
  その頃にはちょと賞味期限が切れてしまう可能性があるので
  今夜投下してしまおうとスレッドにやってきたわけである


        ●●●         ●● ●
        ∩∩∩         ∩∩∩
        | ||| |            | | | |
        \\\\ /⌒ ヽ ////    
          \二二( ФωФ)ニ_/ < シュパピプーン
            \_|     /_/       
              (  ヽノ
                 ノ>ノ   
          三    レミレ


  杉浦双刀流の成り立ち的なお話なんだけれども
  かなりざっくり片手間にまとめたものなので内容はそれなり
  おまけと言うだけあってこれを飛ばしても何の問題もないよ

  一種のネタだと思って気楽によんでみてね


            /二⊃      /ニ⊃              =●      =●
           / 二 ⊃ ⌒ ヽ/二ニニ⊃             =●      =●
         〈ニ二⊃ΦωФ)_二ニ二⊃  < シュパピプーン  =●      =●
           \_|     /_/       
             (  ヽノ
                ノ>ノ   
         三    レミレ

114 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 21:53:55 ID:RSFxJfvw0

  むかしむかしあるところに血気盛んな少年が居た。


   (一ФωФ) 「吾輩世界一の剣豪になるである!」


  彼の名は杉浦ロマネスク。
  何を隠そう後に「初代」と称される杉浦双刀流の開祖である。


  しかし、幼少期の彼はあまり強くは無かった
  むしろ剣術の「け」も知らないようなカッスカスのゴミ剣士で、糞ザコ以外に称するならボウフラかシメジがお似合いだった。
  才能がないわけじゃなかったんだけどね。環境がよろしくなかったのだ。

  
  孤児だった彼は子供ながら傭兵団―――と言う名目で町を荒らす盗賊団に属し、盗みや強奪を生業にしていた。
  誇り高き剣豪とは無縁の、いわば三下ってやつである。
  いかにもかませ悪党なデカくて毛深い親分にこき使われ毎日ひいこらと働いていた。


  それでも、冒頭にあったように彼は世界一の剣豪を目指していた。
  こんな盗賊団に入ったのもすべてはそのため。出来るだけ戦場に近い場所に行ったかったからだ。
  彼自身はとても純粋に剣士を目指していたのである。


  ただ、とんでもなく頭が悪かった。
  ハエが小首をかしげるレベルだった。
  盗賊団の仲間たちには体の良い奴隷として使われていたが剣の修行の為と言われるとすぐ信じてなんでもやっていた。

115 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 21:55:22 ID:RSFxJfvw0

  そんな感じで畜生と同列の人生を歩んでいたロマネスクに転機が訪れた。


   (゚)(゚)ミ 「盗賊おったやんけ! 殺したろ!」


  突然異邦の出で立ちをした剣士が盗賊団のアジトに現れ、あっという間に彼らを切り捨ててしまったのである。
  彼は周囲の村が総出で報酬を出し盗賊征伐に雇った、旅の剣客であった。
  当然いかにもかませ悪党な親分も瞬殺された。すごいしっくりくる光景だった。


  たまたまアジトから離れた川に水汲みに行っていたロマネスク。
  微妙なタイミングで戻ってきてしまった彼は、仲間が惨殺される現場を目撃してしまう。
  そしてこの時彼が取った行動はと言うと。


   (一ФωФ) 「吾輩を弟子にしてほしいである!!」

   (゚)(゚)ミ 「えっ誰??」


  なんと仮にも仲間を殺したこの剣士に弟子入りを志願してしまうのである。

  剣士――ナンカスは最初こそ面倒くさがって嫌がっていたのだが、
  ロマネスクがあまりに彼を褒めたたえ懇願するので


   (^)(^)ミ 「そこまで言うんやったらええで〜〜」


  と弟子入りを認めてしまったのである。
  これがナンカスの命運を大きく変えることになるのだが、
  こいつもこいつで剣の腕以外はしょーもない奴だったのでまあ自業自得ってやつだ。

116 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 21:56:10 ID:RSFxJfvw0


  ロマネスクを弟子入りさせたナンカスはまあ彼を舐め腐っていた。


   (゚)(゚)ミ (報酬巻き上げつつ、それっぽこと言って雑用にしたろ!)

   (^)(^)ミ (めんどくさいこと言い出したら斬ればええやん! 完璧スギィッ!)


  こんな感じでまじめに剣を教える気は皆無だったのである。
  しかし、それがもう誤算中の誤算だった。大誤算ってやつである。


  雑用を与えられたロマネスクはテカテカとした顔で働いた。
  それはもう、その道で働いた方が良いんじゃないかってくらい甲斐甲斐しく完璧にナンカスの世話をしてしまったのだ。


  伊達に長いこと盗賊団の粗野な男所帯を世話していたわけではない。
  ちょっとした炊事洗濯はお手の物。
  野山の知識にも秀でており、彼を弟子にしてからのナンカスの旅路は異様なまでに快適なものとなった。


   (一ФωФ) 「仕事終わったである!師匠!剣を教えてほしいである!」

   (゚)(゚)ミ (うわ〜〜、めんどくさいけどコイツ追い出したら前の生活に逆戻りやんけ……)

   (一ФωФ) 「師匠?」

   (゚)(゚)ミ (ま〜〜ええか、世話賃がわりに相手したろ)


  こんな感じでロマネスクの剣士としての人生がやっと始まったのである。
  あらすじレベルのテキストで三レス目である。年数で言うと、彼が盗賊団に入ってから3年。
  年齢としては17になった年のこと。寄せ集めの兵隊ならともかく、剣客としてはいくらか遅いスタートだった。

117 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 21:57:05 ID:RSFxJfvw0


  ナンカスの誤算は続く。
  それは杉浦ロマネスクの剣の腕前についてである。


  確かにロマネスクは弱かった。
  構えは変。握りも変。実際に模造剣を振らせてみるとどこぞの古代民族の舞のように無駄が多い。
  しかしそれはあくまでロマネスクが正しい剣を知らなかったが故である。


  ナンカスが稽古を始めると、ロマネスクはめきめきと頭角を現し始めた。
  特別ではないがそれなりの才能は認められる。
  何より愚直なまでにまじめな性格は、正しい指導を得て爆発的に技術を向上させた。


  ロマネスクはその後もめきめきと腕を上げた。
  異邦の流派であるナンカスの剣を真似、吸収し、五年も経つころには並び立つほどの腕になっていた。


  これが面白くないのは、師であるナンカスである。
  師である前にまだまだ現役の剣客であった彼にとって、一見して天才のロマネスクは十分に嫉妬の対象足りえた。


  伸び悩む自分に反して、ロマネスクはめきめき腕を上げて行く。
  自身に才があると信じていたナンカスだからこそ焦った。
  無邪気にナンカスを師と仰ぐロマネスクの態度がむしろ、ナンカスの劣等感を煽る。

118 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 21:58:11 ID:RSFxJfvw0
 
  品行方正で真面目な人間であれば、ここで諦めて剣を置くなり、ロマネスクを見直して共に切磋琢磨することも出来ただろう。
  美しい師弟愛と言うやつである。出来た人間の流石な考え方と言うやつだ。


  ところがどっこい残念ながら、初期の発言からも分かる様に、ナンカスは全然そんなキャラじゃなかった。
  邪魔者与太者気に喰わなければ斬って殺すが当たり前と言うクソ野郎だった。


  自身の不調の原因までもロマネスクに押し付け、妄執に駆られたナンカス。
  とある山中での野営の際に、小便を垂れていたロマネスクに背中から襲い掛かった。



   (一;ФωФ) 「ッ師匠?! なにをするのであるか」

   (`)(´)ミ 「うっさいダボハゼェ! 弟子にしてやったんにメキメキ強く成りよって!」

   (一;ФωФ) 「言ってる意味が分からんである!」

   (`)(´)ミ 「ええから死にや!! 痛いのは最初だけやで!!」


  運よく気が付きナンカスの斬撃を逃れたロマネスクだが、お師匠様は変わらずご乱心である。
  言葉による意思疎通が可能でないと判断するとすぐさま野営場所に駆け戻り、自分の剣を手に取った


  こうして師弟の斬り合いが始まったのである。
  流石のロマネスクも死にたかないので懸命に剣を振るった。
  並び立つだの才があっただの言っても、純粋な実力はまだナンカスのほうが上だったのだから必死である。

119 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 21:59:30 ID:RSFxJfvw0

  結果から言うと、まあお察しの通り。


                 ┏━━━━━┓
                 ┃   / \  ┃
                 ┃ /     \┃    デーン
                 ┃ (゚) (゚)ミ  ┃
                 ┃ 丿     ミ ┃
                 ┃ つ   (  ┃
                 ┃   )  (   ┃
                 ┗━━━━━┛


  ロマネスクが勢い余ってナンカスを殺してしまうという終りを迎えたのである
  彼としてはなるべく殺したくはなかったのだが、実力伯仲の間柄。手心加えろってのが無理だった。
  下手なことをすれば死んでたのは自分なのである。まあやむを得ない判断だろう。


  とはいえ、ロマネスクはこの時点でもまだナンカスを師として慕い、尊敬していた。
  実際彼が居なければ今のロマネスクは無いわけで、まあ人格にいくらかあった問題は帳消しにしても良かったのだ。


  ロマネスクが、剣を二本持って戦うようになったのはこの直ぐ後、ナンカスの愛用剣を拝借してからである。
  「二本なら二倍強い」という頭蓋にメロンパンでも入ってんのかってレベルの理由だったが、
  正直なトコ師匠を自分の手で殺した経験が彼の心境になんらかの影響を及ぼしたのだろう。


  とまあ、ろくでもない師匠でもあったが一応まともな剣士として成長したロマネスクは、
  やっとこさ時代の表舞台にちょこちょこ顔を出すようになるのである。

120 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:01:05 ID:RSFxJfvw0


  ナンカスの使っていた剣はいわゆる曲刀に類するものであった。
  彼の祖国で伝統的に作られている「打ち刀」というものだ。
  見た目が美しく、切れ味も良い。適度な反りは人を斬り抜くのに適している。


  丁度、チャンネルにはこの「打ち刀」のささやかなブームが来ていた。
  腰にこの異国の剣を差すことが、一種のステータスになっていたのである。
  実際かなり値が張ったため、それなりの財力がある人間しか持てないものではあった。


  ロマネスクはこの剣を気に入っていた。
  師の流派で用いるものだったため良く馴染むし、これに勝る剣は無いと信じていた。
  だからこそ、ただの飾りのように腰に差されているのが不憫でならなかった。


  ぶっちゃけ細身の割に重いし、直剣に慣れた人間からすると重心の関係で扱いにくいし。
  高価だから折れたり曲がったりしちゃうともったいないし、いざ刃を合わせても切れすぎて骨に引っかかったりするし。
  国内ではあんまり実用性がある武器としては見られていなかったのである。


   (一ФωФ) 「そうである!吾輩が名を上げれば「刀」の強さも知れ渡るである!」


  そんな感じでロマネスクは決起した。
  まあこれだけならよかったんだが、コイツも悪党共の中で育ってきたので、倫理観が昭和のラーメン並に縮れまくっていた。
  

   (一ФωФ) 「ついでに使われてない刀を吾輩がもらって真価を発揮させてやるのである!」


  要は言いかた変えた泥棒である。
  もっとひどい略奪もあった時代なのでそこまで問題行為ではないのだが、彼の行動力がちとやばかった。
  その後マジで刀泥棒を働きまくり、小太刀短刀、完全な美術品まで含めて通算100振り近い刀を盗んだのだ。


  すると突然現れた刀泥棒は戦場で話題になり、非戦地にもゴシップ染みた噂になって広まってしまった。
  なんせ事実なので、この話は国の公式な記録に小さくだが残っている。
  非常に残念なことに、一番最初に歴史に刻まれた杉浦ロマネスクの所業は百人切りとかじゃなく「刀泥棒」だったのである。

121 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:03:27 ID:RSFxJfvw0

  とまあ剣士としてスタートしたと思ったら盗賊にすぐ転身しちゃったりと人生をエンジョイしていたロマネスク。
  しばらくすると流石に飽きたのか、目立ちすぎて一回お縄になったのが効いたのか、真面目に戦うようになる。
  そうなると、彼の実力はすぐに知られるようになった。


  そもそも一応実力は発揮してたのだが、刀泥棒の話題が先行してあんまり目を向けられなかったのである。
  大事なミソがスキャンダルに塗りつぶされるのは何時の時代も同じことだ。
  まあコイツの場合誇張も無くガチだったので自業自得なんだが。


  名誉回復には少し時間がかかったが、剣豪杉浦ロマネスクの名は結構有名になって行った。
  連戦の日々はロマネスクにさらなる成長をもたらし、成長はさらなる戦場を招き込んだ。


  この頃になって初めて、ロマネスクは他人から彼の流派を問われることになった。
  彼は悩んだ。ロマネスクの剣はナンカスが源流ではあるが、我流を多分に含む別物になっている。
  ついでに言うと、彼はナンカスに「破門を喰らった」と考えていたので同じ流派を名乗る気がなかったのだ。


  そんなわけで、苦し紛れに思い付きで生まれたのが「杉浦双刀流」という名前だった。
  名の雰囲気がナンカスの流派に似ていたのだが、それは彼がまだまだナンカスを尊敬していたからなのだろう。


  流派、という枠が出来るとロマネスクの技は途端に体系を持ち始めた。
  それまでは自由気儘に振るっていた剣に「理念」が伴うようになったともいえよう。

122 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:04:58 ID:RSFxJfvw0

  そんな感じで多少頭も使うようになって修練をつづけたロマネスク。
  彼が最終的に目的としたのは、戦場で戦い続けられるということだった。


  二刀を持って戦うが、二刀で無ければ戦えないというわけにはいかない。
  一刀であっても、無刀であっても腕が落とされても戦い続けられなければ意味がない。


  ここで後に伝わる、二刀、一刀、無刀の型分けの原型が生まれたのだ。
  名を与えた技は少ないが、それぞれの型における基本は彼の時代に全て完成されている。


  こうして生涯を剣に奉げたロマネスクが、晩年に差し掛かってぶつかった問題があった。
  諸行無常、盛者必衰、人気連載逃亡、無双の剣豪杉浦ロマネスクも老いていずれ死ぬ。
  要は、後継者の問題である。


  戦場で名を上げると、どこの馬の骨とも知れない彼にも寄ってくる女はあったが、彼は生涯妻をめとることは無かった。
  彼は剣を持たない人間とのコミュニケーションの取り方が分からなかったのである。
  そういう訳で実子はいない。弟子を募集するしかなかった。


  この時代までに、彼に弟子入りを志願した者がいなかったわけではない。
  名うての剣士となれば教えを請いたいというやつはわらわら湧いてくる。
  それをロマネスクは全部断わって来た。


  建前としては自分の修行はまだ終わっていないから。
  本音としては、自身が師匠と上手く行かず、望まぬ死に別れをした、その後悔に由来する不安からである。


  自身の集大成を後世に残したいが、得体の知れない他人を弟子を取るのは気が引ける。
  今更女を娶って子を産ませても、子が剣を握れるようになるまで健在でいられるかは分からない。


  そうしてさんざん悩んだ結果、彼は孤児を二人ほど誘拐した。

123 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:06:40 ID:RSFxJfvw0

  子供相手であれば何とかうまくできるんじゃないかな〜って浅はかな考えだったんだが、まあやっちまったもんは仕方がない。
  老ロマネスクが誘拐もとい引き取った二人の孤児は


       {´┴`}           (^ν^)


  左がニューソ、右がニュックと言う名前だった。
  何とも珍妙な名だが、彼らが管理されていた院の方針らしく、彼らを扱ううえで便利な記号に成っていたらしい。


  二人は意外にも素直にロマネスクに従った。
  他にも孤児が山ほどいる養護院よりも、ロマネスクと共に暮らした方がマシだったってのはあったんだろう。
  そんな感じでロマネスクは二人の弟子を得ることができたのである。


  弟子の二人は、元々同じ環境で育ったにも関わらず、対照的な性格をしていた。
  ニューソは物腰穏やかで、剣の才能はあまりなかったが、堅実な性格でコツコツ稽古に取り組んだ。
  対するニュックは剣の才能は溢れるほどあった。ちょっと指導するだけで瞬く間に成長し、その分あまり稽古に熱心では無かった。


   (^ν^) 「あ? 俺の方が強いんだから俺が二代目になるに決まってんだろクソザコ」

   {´┴`} 「お前みたいな不真面目池沼に師匠の後釜が務まるわけ無いでしょ……」

   (^ν^) 「あ?」

   {´┴`} 「野蛮人はこれだから……」


  こんな感じで両方ともそこそこクズだったので、喧嘩は良くしたが意外と仲良くやっていたらしい。
  結果的に多少の差はあれ、ロマネスクが老いさらばえる頃には、二人とも(腕だけは)立派な杉浦の剣士になっていた。

124 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:08:08 ID:RSFxJfvw0

  こうなるとやっぱり問題なのは後継者をどうするかって話である。
  まだ一代目の流派だったし、別に一子相伝てわけでもないのでそれぞれに継がせてもよかったのだが……


   (^ν^) 「俺に二代目継がせなかったら殺すぞジジイ」

   {´┴`} 「どう考えても俺でしょ……。アイツ選ぶ時点で師匠に正常な判断能力無いとみなせるから……」


  肝心の弟子たちが思いのほか「杉浦ロマネスク」の名前に固執してしまって収まりがつかない。
  ただ流派を残すだけなら二人それぞれに免許皆伝でいいが、同時に二人の「杉浦ロマネスク」を出すってなると話は別だ。


   (一ФωФ) 「ぐぬぬ……」


  杉浦ロマネスク、大いに悩んだ。
  その内どっちか逃げ出すか死ぬだろうと思って二人攫ってきたのに、両方残ったせいで悩むなんて思いもしなかった。
  「お前がロマでお前がネスクじゃダメ?」と聞いてみたが「「殺すぞ」」と言われた。厳しい弟子たちである。


  元々剣以外のことを考えるのが苦手だった杉浦ロマネスク。
  杉浦双刀流の特性を考えて、二刀、一刀、無刀による三本試合を行い、その勝者に二代目を継がせることにした。
  これならまあ弟子たちも文句はあるまいというわけである。

125 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:10:02 ID:RSFxJfvw0

  試合の結果はあっさりと出た。
  勝ったのは、


   (^ν^) 「……」

   {´┴`} 「あらあら、勝てちゃったよ……」


  意外にも、カタログスペックで劣るニューソの方であった。
  後世、ニューソの生き様に敬意を払ってニュックがわざと負けたなんて説や、
  ニューソが毒を盛ったとか、本当はニューソに継がせたかった初代が手心を加えた何て説が出るのだが、真相は不明。


  ぶっちゃけ弱い奴が強い奴にたまたま勝てちゃうなんてのはそんな珍しい話でもないし、
  二人の場合差はそれほど無かったんで、肝心な場面での勝負強さについてはニューソが上手だったってことだろう。


  こうして大分歳だった初代ロマネスクは事実上の引退。
  山に篭って仙人染みた隠居生活を始めて、表舞台からは姿を消す。


  ニュックは最初こそ師についていって改めて修行を続けてたんだが、山の生活に飽きてすぐに降りてきた。
  そのあとはまあ、流れの傭兵崩れとして色んな戦場を闊歩。
  師から継いだ理念を一応尊重しつつ、流派に独自を発展をもたらしたんだが、これはまたちょっと後に語る。


  んで、本筋としてあとを継いだ二代目ロマネスクは、相変わらずちょいクズだったけど怠けずに研鑽をつづけた。
  コイツの偉かったところは剣の道以外での師匠の失敗をちゃーんと活かしたところである。
  いい年になると妻を娶って子作りを始めたのだ。

  初代よりかは倫理観が整っていたので、誘拐とかは考えなかった。
  そこそこ有名な拳法家の三女(当時14歳)と誘拐同然に駆け落ちしたのだが、本人が一応了承してたのでセーフセーフ。

126 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:12:12 ID:RSFxJfvw0

  んでまあ、毎晩せっせこ励んだ二代目だったが、中々子宝には恵まれなかった。
  いや冷静に考えてその年の娘にゃ無理だろって話なんだが、実際は二代目の方に体質的な原因があったらしい。
  結局二代目夫妻にやっとこさ子が出来たのはもう晩年に差し掛かるころだった。


  妻は若かったので出産は比較的低いリスクで出産に成功し、見事に第一子が誕生した。
  のだが。


   川*` ゥ´) オピャ〜ッ オピャ〜ッ

   (二ФωФ) 「おちんちんどこ???」


  生まれた子供は女児だったのである。
  子が出来たのは喜ばしいことだったが、二代目ロマネスクは落ち込んだ。


  一人目が出来るのにも10年を超える歳月がかかったのだ。
  既に老い始まった自分に、次の子をこさえる時間はあるのだろうかと不安になるのは仕方がない。
  んで、結果から言うと二子は出来なかった。いっぱい頑張ったんだけどね、授かりものだからね。


  しかし、落胆から二代目を救ったのは、その原因であった長女ピャーコであった。
  彼女は乳離れをするや否やつかまり立ちをし、その数日後には自立して歩くことが出来るようになった。
  さらに半年も経つと、細い木の枝を振り回し羽虫をたたき落して遊ぶようになった。


  控え目に言って神童とか麒麟児とかいうやつだ。
  彼女が出来るまでにかかった時間や努力がそのまま才能に変換されたような奇跡の子だったのである。

127 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:14:22 ID:RSFxJfvw0


  二代目は男児をこさえるのを諦めて、実際にはピャーコの才能に魅せられて彼女に後を継がせることを決めた。
  この当時、女性が武芸を習うのは結構珍しいことだったが、そんな常識を覆すだけの力が彼女にはあったのである。


  ピャーコが初めて刀を持ったのが3歳の時。
  もちろん刃渡りの極端に短い短刀であったが、ピャーコは見事にこれを扱いこなした。
  重さを上手く流し力に変え振り回すさまは、神童と呼ぶにふさわしい姿であった。


  こうしてピャーコは二代目ロマネスクによる万全の指導のもとメキメキと腕を上げた。
  世代も性別も関係なく並ぶものが居ない程である。
 

  が。


   川*` ゥ´) 「ピャーッピャッピャッピャッ!!」


  才ある者の悲しき性と言うかなんというか。
  挫折知らずのピャーコはご多聞に漏れず滅茶苦茶のけちょんけちょんに調子こいていたのである。
  年が16になるころにはピャーコの鼻は伸びに伸び、天にも突き刺さらん勢いだった。


  となると、バベルの塔しかりイカロスの羽しかり。
  天に至ろうと驕った存在と言うのは焼き払われるのが世の常だったので、ピャーコもまあそれなりに酷い目にあうことになる。


  それはピャーコ17の歳。
  調子に乗って突出しすぎた彼女は敵の罠にかかり、人生初かつ最大の危機に陥ったのだ。


  流石天才児のピャーコちゃんは何とかこの危機を脱することに成功はする。
  問題は、助けに入った二代目の命と引き換えだったってことだろう。

128 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:15:57 ID:RSFxJfvw0

  多少老いていたとはいえ二代目もまだまだ現役。
  無双の剣士であることに変わりは無かったのだが、それでも娘を庇って戦うとなると勝手が違ったらしい。
  複数の兵士を同時に相手取った彼は、初めてのピンチに動転する娘を逃がすための肉の壁とだったのだ。


  数え切れぬほどの傷を負いながらも、二代目は敵を殲滅。
  どうやら足に深い傷を負って逃げられなかったらしいのだが、だからってその場の相手を全員斬り伏せるってのが杉浦らしさだろうか。


  だが、残念なことに敵を斃したからって怪我は治ったりしない。
  二代目はそのまま失血で意識を失い、間もなく死亡した。
  享年55才。才ある娘を庇い、なおかつ戦場で死ねたっていうんだから、まあ、幸せな最後であったんだろう。


  残されたピャーコは、父を死に追いやった自責の念からこれまでとは一転して塞ぎこんでしまった。
  人生初の挫折である。その上それが最愛の父を失う経験と重なってるんってんだから、まあ仕方なかろう。


  と、そんな感じで剣を振るうことを辞めてしまったピャーコ。
  もうこの時点で再び剣士として生きる気力は彼女には無かったのだ。


  そこに現れたのがこの男。


   (^ν^) 「湿気た面してんじゃねえぞ死ね」


  そう、二代目の兄弟弟子。
  のちに三代目代理としてピャーコの師になる、杉浦ニュックであった。

129 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:17:06 ID:RSFxJfvw0

  二代目の襲名以降袂を分っていたニュックが何をしていたかと言うと、大よそ初代と似たような感じである。
  実力では勝るはずのニューソに敗北したことで彼なりに色々感じたらしく、
  師と同じことをして自身に足りないものを探していたのだ。


  師の理念にのっとり忠実に教えを体現した二代目に対し、ニュックはガンガン新しいことを取り入れていった。
  戦場で戦い続けるというのはつまり、その変化に順応することである、と言うのが彼なりの解釈だった。


   (^ν^) 「刀投げれば遠くの相手も殺せんじゃん。天才かよ」


  こんな感じで刀を投げつけて殺す技を編み出し。


   (^ν^) 「刀投げたら二刀技使えねーじゃん死ね」


  こんな感じで一刀流の技を数々編み出した。
  のちに変則一刀流と呼ばれる技のほとんどは彼が編み出したもので、性格の悪さがにじみ出た癖の強い体系となっている。
  彼は鳥を眺めるのが好きだったので、技の名前に鳥の名がつけられているのも特徴だ。


  そんな感じで我道を爆走していた彼だったが、ある日二代目ロマネスクが討ち死にしたという噂を耳にする。
  袂を分かってからも、二代目の噂は気に掛けていた彼なので妻があることも娘があることも知っていた。

  どうやら二代目討ち死にの噂が真実らしいと分かると、ニュックはすぐさま二代目の妻の元へと向かった。
  墓前に鼻くそでも供えてやろうと、それくらいの気持ちであった。

130 ◆x5CUS.ihMk:2016/10/26(水) 22:19:16 ID:RSFxJfvw0

  ま〜〜〜〜何となく察してくれるとありがたいのだが、おセンチガールのピャーコと口悪のニュックは非常に相性が悪かった。
  初対面でいきなり口喧嘩となり、そのまま刀を抜いての刃傷沙汰にまで発展してしまったのだ。
  ニュックがピャーコに発破かけて再び剣を取らせようとした、みたいに美談っぽくも出来るんだが単に性格が悪かっただけってことは明言しておこう。


  この時の子供の喧嘩染みた立ち合いで、二人は互いの実力を知る。
  特に衝撃を受けたのはニュックの方であった。彼もまた、ピャーコの才能にやられちゃったのである。


  弟子を取る気なんてさらさらなく、必要になったら師を真似てどっかから攫ってこようと考えていたニュックだが、
  溢れる才能を持つピャーコに自分の杉浦双刀流を仕込みたくてしかたなくなってしまった。
  そうなると、性格が悪い上に歳を重ねたニュックの老獪さに、ピャーコが勝てるわけが無かった。


   (^ν^) バーカバーカ

   川#`皿´) ムキィ〜〜ィ!!


  ニュックは言葉巧みにピャーコを挑発し、煽り倒し、上手いこと彼女を自分の弟子にしてしまうのである。
  まあこれはニュックがすごいって言うよりはピャーコがあまりにチョロかったのだが、可哀想なので言わんでおこう。


  ともあれまんまと言いくるめられ、渋々剣の修行を再開したピャーコであったが、すぐに様子は変化した。
  ニュックの教える杉浦双刀流は、かつて父が教えた保守的なものとは異なり、革新に満ちていた。
  親父である二代目には不憫なことだが、超感覚派天才肌のピャーコには、常に進化を求めるニュックの剣の方があっていたのである。

131名も無きAAのようです:2016/10/26(水) 22:20:38 ID:x7RHvSio0
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