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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

1迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:57
愛しのフレイ・アルスター先生のSSが読めるのはこのスレだけ!
|**** センセイ、          ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台@) シメキリガ・・・       ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 )    ヘヘ         ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_)__)   /〃⌒⌒ヽオリャー     ライトH位なら許してあげる。
|       .〈〈.ノノ^ リ))    ・フレイ先生に信(中国では手紙をこう書く)を書こう。
        |ヽ|| `∀´||.      ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
     _φ___⊂)__
   /旦/三/ /|     前スレ:フレイ様人生劇場SSスレpart4〜雪花〜
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |    http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1070633117/
   |オーブみかん|/    
              既刊作品は書庫にあるわ。
             ○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html

              こっちも新しい書庫よ。
             ○フレイたんSS置き場 ttp://fllaystory.s41.xrea.com/top.html

581私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 10:03
>>551
女子高生職人さん〜♪また来てね!

582私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 10:48
>>581
そういう茶化かしたような言い方しちゃダメだって。ワザとですか?

583私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 11:31
>>581 お前最低だな

584私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 17:41
>>576
物言いに対して指摘するのも結構だけどさ、喧嘩を売る真似しているのは572ではないかと。

それから検索に関してはどうかとも思われるMSNの検索で出てくるレベルだと
実際他の方も書いてるけど、検索で引っかかるレベルで公開しているとチェックを食って
結局と言う部分もあるから、ある程度地下に潜る必要性あるかもしれない。
となると職人さんの判断とは言え、上手く検索できない人の為に読みたい人への道
しるべ位残してと言うのも間違ってないですな。

最近の傾向として検索しろで片付ける人が多いけどそういう人って結局、その裏に
ある部分まで考えてない思慮の浅い人も居るのではないかと思ってしまうね。
これ以上はスレ違いなので

585私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 23:27
>>584
>物言いに対して指摘するのも結構だけどさ、喧嘩を売る真似しているのは572ではないかと。

相手が喧嘩売ってるからって買ってたら板が荒れますよ。そういうことを容認する発言もあまりよろしくはないのでは。
なるべくスルー、または、喧嘩を買うような書き方ではなく、別の書き方をしたほうがいいと思います。

HPの公開に関しては難しい面があると思うのですよ。
職人さんのHPが荒れる可能性を高めることになるのですから。
なので検索できる状況なら検索を勧める事は間違っていないのではないかと。(検索できる状況がいいかどうかはまた別の話ですが)
もちろん検索が難しい状況なら話は別ですが。

586私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 23:46
ここはSSスレですよ、と。

587私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 03:23
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
再開していただけて嬉しいです!
無人島エピソードは本編でも気に入っていた所ですので。
フレイ様無敵かも。
次投下を楽しみにお待ちしております。
>>散った花、実る果実
同様に再投下ありがとうございました。
こちらも続きが気になっていたので、最後まで拝見したいです。
個人的には、空白の数ヶ月のフレイ様が読めると嬉しいです。
>>流離う翼たち
こっそり追っかけさせてくださいませ。
最後が気になるSSですので、付いていきます!

他の職人さまも、今までお疲れ様でございました。
今後のご活躍をお祈りいたしております。

588SSスレpart5 中間目次:2004/05/23(日) 15:38
500 越えているので、中間目次作成しました。今回、終了状況も追記しています。

新テンプレ >>518
>他のキャラへの配慮を忘れずにお願いします。キャラへイト・他キャラへの配慮が足りない、
>と思われるSSはこちらではなく個人サイトでどうぞ。

ミリアリア・あの子許せない >>3-4>>105-106>>115>>121>>127>>131>>139>>143>>148
                 >>155>>161>>254-255>>264>>271>>283>>288>>298>>310
                 >>317>>322>>326>>331>>537 終了

流離う翼たち >>6>>14>>27>>41>>48-49>>56>>65>>75>>79>>94-95>>109>>117>>123
         >>133>>145>>151>>157>>163>>194>>200>>205>>214>>225>>231>>236
         >>246>>252>>261-262>>275>>281>>286>>295>>302>>308>>315>>320
         >>329>>334>>343>>361>>370>>378>>385-386>>392>>408>>424>>437
         >>444>>472>>510 個人サイト移転

過去の傷 >>8>>19>>28>>36>>43>>51>>58>>68>>77>>84>>97>>111>>119>>125>>129
       >>135>>141>>147>>153>>158>>165>>169>>189>>198>>204>>212>>220
       >>227>>234>>238>>241>>250>>258>>266>>273>>277>>285>>291>>300
       >>304>>312-313>>319>>324>>328>>333>>338>>342>>347>>358>>360
       >>365>>368>>377>>383>>389>>391>>396>>402>>416>>419>>431>>439
       >>452>>476>>480>>493-494>>500>>508>>512 終了

リヴァオタと八アスのためでなく >>10>>21>>25-26>>251>>257>>267-268>>274>>293

刻還り >>11-12>>99>>101-102>>113

散った花 実る果実 >>16-17>>60>>100>>186-187>>397-398>>404-406>>420-421
             >>463-464>>502-503>>554-556

The Last War >>23>>35>>67>>137>>210>>233>>269 終了
※ The Last War・Inside は The Last War に含めました。

ザフト・赤毛の虜囚 >>31-33>>38-39>>45>>53-54>>62-63>>71-73>>79>>167>>172-173
             >>184>>196>>202>>207>>217>>222>>228-229>>239>>243-244
             >>248>>336>>340>>345>>356>>363>>366>>375>>381>>400
             >>414>>417>>428>>446>>474>>491>>496 終了

白い羽 >>81 完結

キラ(♀)×フレイ(♂) >>85-92>>175-183>>348-355>>483-490>>519-524

ヘリオポリス・1.24〜 >>190-192>>259

『明日』と『終わり』の間に >>314>>339>>371>>380>>411-412>>477 完結

SEED if 〜Fllay Selection〜 >>441-442>>481

589私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 22:35
>>赤毛の虜囚/ミリアリア
一人称語りについては過去の傷の作者さんへの批判をした時
過去の傷さんへのアドバイスとして想定していたのは(SS書い
たこともないのにエラそうですが)こちらのSSでした。会話
中心のSSへの物足りなさは少なくとも貴殿の書かれた「赤毛〜」
「ミリアリア」の両作品からは感じることなく、とても楽しく
読ませてもらいました。プロットを見るといろいろ面白い展開が
あるようで残念です。
「故障して放置されたM1アストレイに乗り、カラミティを加えた
3Gに一人立ち向かう」←個人的にはこれは激しく見たかった。
>>流離う翼たち
スレ史上最長の連載で他の方が投下されていない間投下されたり
してスゴイ筆量に毎度驚いておりました。私自身は押しの強い
オリキャラにどうも馴染めなかった部分もあったというのが正直な
ところでしたが、どなたかも書いていたようにキースの動きはちょ
っとこれから面白くなりそうだったし、他のSSよりもポジティブなフ
レイ様が見れなくなり投下中止は本当に残念でした。しかしこれか
らもサイトで投下していくとのことなので楽しみに読ませていただきます。
>>過去の傷
以前に何度か批判を含めて感想を書きましたので、特に書くことはありま
せんが、せっかくあれだけコンスタントに投下していたのですから、これ
からも良いアイデアができ、かつこのスレが存続していたらぜひ投下して
ください。楽しみにしています。
>>The Last War 
オリキャラの運用で色々差し支えがあるとのことで、なんともこればかり
は見てみなくてはわかりませんが、こればかりは職人さんの決めること
でしょうから…といいつつも残念です。個人的にはちょっとキンケドゥっぽ
いお兄さんなアスランの描写が気に入っておりました。

投下終了の職人様方、お疲れ様でした。

590私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 23:02
いや過去の傷さんはあれだけ言われたからにはもう戻ってこられないだろ、589も含めて可哀相なくらい批判の嵐が凄かったからな。
あ、勘違いするなよ俺は過去の傷さんを掩護してるわけじゃないからな、思った意見を言っただけだ。
それから職人の皆さんお疲れ様でした、また投下お待ちしてます。

591私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 23:07
>>590
589は批判ではないと思うが・・・。

592私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 23:09
>>591
いつもの人だよ。
スルーしとけ。

593私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 23:12
>>591
いや589も批判していた一人だったと言うことさ。
ていうかもう掩護に近いレスは俺で終わりね。
これで最後です、だから過去の傷さんに言い足りない奴は勝手に言えばいいさ・・・589もね。

594591:2004/05/23(日) 23:14
>>592
了解、ここのスレの意味理解してないのが何人かいるんですね、一人じゃないと思うけど・・・どうでもいいか。

595私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 23:30
SSの投下・感想以外の意見・要望は議論スレでお願いします。
SS職人さんに対する妨害行為になりかねませんので。

596帰還:2004/05/26(水) 00:46
「ほらアルスター、自己紹介をするんだ」
「あ、ハイ」

ナタルに肩を押され、フレイはおずおずと
士官らの訝しげな目の前へ歩み出た。

「フレイ・アルスター…二等兵、です」

白い士官服の並ぶ中で、赤い髪と緑のザフト服はひときわ鮮やかで…
それは美術品のような、現実離れした姿であった。
戦艦という殺風景な特殊を敢えて現実と呼ぶならば、であるが。

「…アルスター、って…」
「彼女は」

政治にある程度通じた者がいたのだろう、かすかな呟きがもれたのを察して
ナタルはすかさず口を挟んだ。

「故アルスター事務次官の娘だ」

故、という言葉にフレイは僅かに肩を震わせる。
それを知ってか、励ますようにナタルは一段と声をはりあげた。

「やむをえぬ事態を除き、礼を失する事のないように。よいな」
「は」

乗務員は歯切れよくそれに応えた。

「彼女について、詳しい処遇などは追って知らせる。散開!」

揃った敬礼の後、乗務員らは各自の持ち場につくべく散ってゆく。
それを見届けて、ナタルはフレイへと振り向いた。

「アルスター」
「…はい」
「ご苦労だったな。…疲れただろう」
「は…あ、いえ」

フレイは少し縮こまる様にして返事を返す。
ナタルはそれを見、小さく口元を綻ばせた。

「私の部屋へ来い。まずは休むといい。着替えも必要だろうしな」
「…」

先に立って進もうとしたナタルだったが、フレイがついて来ない事に気付き
不思議そうに振り返る。

「どうかしたか」
「いえ。…そのう」

フレイはうつむいた。

「さっきは、すみませんでした」

ナタルは暫し記憶を巡らし、ああ、と思い当たる。
この少女は、先ほど何の挨拶もなく泣きついた事を、詫びているのだろうか?
ひどく殊勝なその口調に軽く驚きながら、ナタルは口を開いた。

「…気にすることはない」

いささかぶっきらぼうな言葉が出る。
このような時どう言えばいいか、ナタルはよくわからないのだった。
だがそれが、フレイには嬉しかったのだ。
彼女の顔がようやく緩み、微かに赤みがさした。

「…」

ああ、バジルール中尉だ。なぜだかそんな実感がやっとわいたのだ。
昔から、遠目にも、厳しくて、怖かった中尉。
この突き放すような、ぎこちない語調は、アラスカで手を引いてくれた時と同じ。
本物の、中尉。
私の知ってる…アークエンジェルの、副長。
キラがいて、サイがいて、ミリィがいて。
艦長。ノイマンさん。マードックさん。整備士のみんな。…
そんなあの頃の欠片が、ここにある。

少し違うけれども、よく似たこの通路。この手すり。この照明。
ここは、私の知っている世界だ。それはとても、僅かでしかないけれども。
私は。
帰ってきた。

「…アルスター?」

フレイはまた、我知らず泣いていた。

597596:2004/05/26(水) 01:20
突発ですが、フレイ様に会いたくなったため書いてしまいました。
特にメッセージやプロットはないので、続くかもしれないし続かないかもしれません。
お目汚し失礼いたしまするる。

598私の想いが名無しを守るわ:2004/05/26(水) 01:27
ガンバレー(・∀・)
桑島姉妹ハァハァ

599散った花、実る果実54:2004/05/26(水) 22:40
既に外では戦闘が始まっているようだった。
「私が出たら、ポットを射出しろ」
そう言い放ちすぐクルーゼ隊長は出撃したらしく、私はまもなく宇宙へと放り出された。
宇宙服を着てはいるものの、姿勢の安定せずくるくる回る脱出ポットに私は怯えていた。
窓の外にはきらめく何色もの光。
あの一つ一つが命を消すための恐ろしい力を持った光なのだ。
私は・・・私は今まで何もわからず戦場にいたのだと知った。
何度となく考えた思いが再び私を襲う。
私は、なんてひどいことをキラに強いてきたのだろう。
戦って、戦って、戦って死ねばいい、なんて・・・・こんな恐ろしい場所でキラは戦い、ずっと私たちを守ってくれたのだ。
でも、今はそんなことを考えている余裕もなかった。
私の乗っているポットを回収しよう、という動きは今のところ全く無い。
私はさっきまでの決意すら忘れてただ助けを求めた。
「アークエンジェル!アークエンジェル!!」
私はとにかく必死で呼びかけた。
「お願い。アークエンジェル!!」
どのボタンがなんだかわからないまま、私は必死であらゆるボタンを押した。
「アークエンジェル!私!私ここ!!」
めちゃくちゃにいじったボタンのどれかが通信ボタンだったらしく、通信のランプが点灯した。
「フレイです!フレイ・アルスター!!」
私がわからないのか、戦闘中でそんな余裕がないのか、返答はない。
「サイ!マリューさん!誰か!!」
思いつく限りの名前に呼びかけ、必死で助けを求める。
「やめて、もうやめて!!」
窓の外に映る恐ろしい戦闘に耐え切れず私は叫んだ。
怖かった、耐え切れなかった。
「か・・・鍵を持ってるわ、私。戦争を終わらせるための鍵・・・・・だから、だからお願い!!」
私は必死だった。初めて自分が命の危険にさらされた戦場にいるという実感を持ち、それゆえの恐怖で他のことは何も考えられなかった。
しばらくしてせわしなく回転していたポットの姿勢が固定され、見慣れぬMSによって私は回収されたのだと気がついた。
とりあえずの身の安全を確保されたのだと思い、私は安堵のあまりこらえていた涙を流した。
と、その時、信じられない声が私の耳に届いた。
「フレイ・・・・・フレェイー!!!」

「キラ・・・・・」
信じられないまま、私はつぶやいていた。
「フレイ!!」
呼びかけてくる声は、間違いない、キラのものだった。
モビルスーツは、ストライクに酷似していたけれど、破損したらしく首がなかった。
「キラ・・・・嘘・・・・・・」
MIAだって・・・・キラは死んだって、そう言ってたのに・・・・
「下がれ、キラ!その状態で、一人で敵艦に突っ込む気か!」
そう言って紅いモビルスーツがキラの機体を捕獲する。
「僕が傷つけた・・・・僕が守ってあげなくちゃいけない人なんだ!」
さっきまでとは違う種類の涙が私のほおを濡らした。生きていてくれた・・・・キラ・・・・
しかしキラの叫びもむなしく、キラが乗っていると思われたモビルスーツは紅いモビルスーツに連れられ、遠ざかっていく。
「キラ・・・・・キラぁ・・・・・っ・・・・・」
いくら叫んでもキラは戻ってこなかった。・・・・でも戻ってきたとしてもあのぼろぼろのモビルスーツではキラに危険を及ぼすだけだ。
でも・・・・・呼ばずには、いられなかったのだ・・・・・

600散った花、実る果実55:2004/05/26(水) 22:40
「へえー、君がぁ」
スーツを着た、戦艦には似つかわしくないような、男の人が私を覗き込むように言った。
この人・・・ムルタ・アズラエル?
「で、鍵って何。本当に持ってんの?」
恐る恐るディスクを差し出すと、当然のようにそれを受け取り、検分した。
「なんだか本当ぽいじゃない?で、誰に渡されたの?」
「クルーゼって隊長・・・・仮面をつけた・・・・・・・」
「ふーん」
そのまま彼は鍵を持ってその場を去っていった。
すると、シートからこちらに向かって知っている人がふわり、と向かってきた。
「バ・・・バジルール中尉!」
「久しぶりだな・・・・フレイ・アルスター・・・・大丈夫か」
久しぶりにかけられた優しい言葉に、私はしらず抱きついて泣き出していた。
「うっ・・・・・うぅー・・・・バジルール中尉・・・・・・・・」

落ち着いた私は、バジルール中尉に連れられて、個室へと案内されていった。
「まずは少し休め。これからのことは・・・・一晩休んでから考えよう。・・・・つらかっただろう」
不器用なバジルール中尉の優しさに、私は再び涙を流した。
「着替えも置いておく。この部屋にはシャワーもついているから良かったら使うといい。まずはゆっくり休むことだ。」
「バジルール中尉っ・・・・私・・・・」
「少しでいい、眠った方がいい。ザフトでは、心の休まる暇はなかっただろう?」
私はバジルール中尉の心遣いに甘えて、一晩休んでから私の決意を彼女に伝えることにした。

601散った花、実る果実56:2004/05/26(水) 22:41
「私を、ブリッジで使ってもらえませんか」

バジルール中尉は・・・いや、少佐は(昇進したのだそうだ)まさか私がそんなことを言い出すとは思っていなかったらしく、目をみはった。
「フレイ・アルスター・・・・・」
「私・・・・考えたんです。何をしたらいいかって。バジルール少佐は、私が軍に志願したときの事をおぼえていらっしゃいますか?」
「覚えている・・・しかし・・・・・」
アークエンジェルにいた頃の私は、ただの雑用係でしかなかった。
しかもそれもしぶしぶやっていたに過ぎなかったし、おそらく態度にも出ていたのだろう。
真面目なバジルール少佐がそれを快く思うはずも無い。
「私・・・・・、アークエンジェルにいた頃は何もできなかった。いいえ、しようともしなかった。私、あの頃、ただ父を殺したコーディネイターに復讐がしたかったんです。パパを殺したザフトと・・・・見殺しにしたキラに。・・・いえ、今ではちゃんとわかってます、・・・本当はあの時も分かっていて考えないようにしていたのかもしれない。・・・キラのせいじゃない。少なくともキラを責めるのは間違ってるって」
バジルール少佐はただ真剣な表情で聞いていた。
「でも私・・・知ってますよね?私が自分の体を、偽りの恋をキラに与えて戦わせていたのだっていう事を。・・・バジルール少佐は軽蔑なさるかもしれませんが・・・・・」
「知っていた」
そう語るバジルール少佐の声は苦いものだった。
「だが、それでいいとも思っていた。ヤマト少尉の戦力なくしてあの時のアークエンジェルが無事に済むとも思えなかったし・・・卑怯な手段を講じようとしたのは私も同じだ」
「バジルール少佐?」
「私は、『両親の身柄を確保してでも・・・』そう艦長に提案した。尤も、そのような提案が通すような人ではなかったがな」
苦笑するバジルール少佐の表情に、どこか懐かしげな影が宿る。
「私は、戦争を終わらせたい。あの時は・・・・あの時、バジルール少佐に話した言葉は嘘じゃないです。でも、甘えもあったし、本当に何も分かってなかった。今も何もわかってないのかもしれないけど・・・・」
「そうだろう。・・・やめた方がいい。戦場は、甘えの通る場所ではない。月基地に戻りなさい。どうせこの艦は補給のために一度月基地に戻る。その時にお前も降りればいい」
「いいえ」
私はもう、決めていた。
「私が持ってきた、戦争を終わらせる鍵って、なんですか?私はまだ教えてもらってない。」
「あれは・・・・まだ、公表されていない。・・・アズラエル理事が、何かなさっているのだろうが・・・・」
もう、自分のおこした行動を投げ出したままなんてことはしない。
「私が持ってきた鍵です。・・・最後まで見届けます。これで月基地に帰ってしまったら私、アークエンジェルにいた頃と同じ事になってしまう。口先だけ立派なことを言って、あの時は結局皆を巻き込んでしまっただけだった。私、もうそんな無責任なことしたくないんです。」
「・・・・いいのか?ここにいたら、アークエンジェルと敵対することになるんだぞ?」
それは私も考えた。でも、ここを離れたら2度と会うこともできない。
「でもここを離れたら2度と会えない。・・・軽蔑しますか?それでも、一瞬だけでも・・・・・キラに会いたい。会って、ごめんねって・・・・・」
思わず一筋だけ零れ落ちた涙を、バジルール少佐がポケットから取り出したハンカチで押さえてくれた。
「では、・・・・通信席に、座るか?通信士の研修なら・・・おそらく次の作戦行動までに間に合うだろう。それに・・・・一言でも、言葉の交わせるチャンスがあるかもしれない。」
「バジルール少佐・・・・・」
「私とて、できればアークエンジェルを沈めずにすませたい。・・・だがこれが任務だ。しかし、もし誰かの呼びかけでアークエンジェルが投降に同意するなら・・・・命だけでも助けることができるかもしれない。ヤマト少尉も、お前の呼びかけになら応じるかもしれん。」
正当な理由をつけるふりをして、バジルール少佐が大目に見てくれているのがわかった。
アークエンジェルにいた頃は、こんなに融通の利く人だっただろうか。でも、とにかく今は彼女の優しさが嬉しかった。
「ありがとうございます・・・・・」
「しかし、最悪演じることになるのは殺し合いだ。その時は・・・・・覚悟を決めなさい。」

602私の想いが名無しを守るわ:2004/05/27(木) 08:27
期せずして、同じ時点の競作ですね。

>>帰還
ナタルらしい軍人としてのやりとりと、ドミニオンの通路の様子にアークエンジェルを感じる
フレイ様の心情が良かったです。

>>散った花、実る果実
救命ポッドで、キラが生きていたことに気づくシーン。これだけは初めて見た映像の衝撃を
中々凌駕できない気がします。同じ書き手としては歯痒いですけど。

鍵を見届けたい…… その言葉に強くなったフレイ様を感じました。
通信士の設定。本編では、あまり活かせなかったと思うのですが、うまく使えるといいな
と思うのはワガママでしょうか。

603さよならトリィ 1/8:2004/05/30(日) 09:23
[ほらね……]

トリィは、なぜか私になついていた。私の心をなごませた。寂しい時、勇気づけてくれた。

トリィのことを初めて意識したのは、ヘリオポリスからの脱出ポッドがアークエンジェルに
拾われた時。ポッドから助け出された時、私の目の前に飛び込んできた。
そして、それが飛んできた方向には、その時はサイの友達という意識しかなかったキラがいた。
私はザフトに捕まったと思っていて、不安が一杯だった時、知っている人を見つけて思わず
胸に飛び込んだ。私の周りを飛び回るトリィは、私の心を安心させるために導いてくれたような気がした。

それから、サイに再会して、しばらくはトリィのことは忘れていた。そして、パパが死んで……
私は暗い想いに囚われて……

次にトリィに会ったのはキラの部屋。折り紙の花を手に声を上げて泣き続けるキラ。それに、
暗い笑みを浮かべながら、偽りの言葉をかける私。

「私の想いが、あなたを守るから」

その時の二人をトリィは静かに見ていた。

* * *

「もう誰も死なせない」
まるで、私のことなど気にかけないように自分に呟いて飛び出して行くキラ。でも、それで良かった。
あなたは、戦って戦って死ぬのよ。じゃないと許さない。目に涙を浮かべながら笑った。
体の痛みと、心の痛みが私を苦しめた。もうどうにでもなれと思っていた。

<トリィ……>

私の目の前に、いつの間にかトリィがいた。涙を浮かべる私を、薄暗がりの中でジッと見つめていた。
まるで、私を心配している。そんな素振りで……

「私、馬鹿ね、馬鹿よ……」
<トリィ……>

「惨めだわ…… 嘲笑(わら)ってよ……」
<トリ……ィ>

私は身を起こした。乱れた髪と匂う体が急に気になってきた。

「シャワー浴びて来る……」
<トリィ>

私は、トリィ話しかけるようにシャワー室へ立った。熱いシャワーで洗われて、さっきの
痛みと嫌悪感も少し薄れて、放心したようにベッドに腰かける。

<トリィ、トリィ>
トリィは少しさっきより、はしゃいでいるようだった。部屋を飛び回っている。
その時、部屋がズンと揺れた。ザフトの攻撃?

<トリィ! トリィ!>
トリィは慌てたように羽ばたいて、ベッドの私の近くにとまる。それに、私は独り言のように呟く。

「大丈夫…… あの子が守るから…… 私を守るから……」
さっきとは違い、まるで熱に浮かされるような恍惚感に支配されてベッドに体を倒す。

トリィは身を寄せてきた。震えるように動くトリィに手をかけて、その動きを感じながら、
私は、なぜか優しい気持ちになる。

やがて、部屋の振動は止まった。

「ほらね……」

私は安堵に包まれて、トリィの動きを掌に感じながら眠りに落ちた。さっきの、惨めな気持ちが
嘘のように安らかに……

604さよならトリィ 作者:2004/05/30(日) 09:26
どうも、元「ザフト・赤毛の虜囚」「ミリアリア・あの子許せない」の作者です。
とりあえず何か書かなければと思って、出来上がったのがこれです。
本当は、もっと明るい話が良かったのでしょうけど、私、こんなのが好きですので。

まだ、仕切り直したスレに、ふさわしい作品が掴めていないこともあり、創作部分はできるだけ
押さえています。基本的には史実に従っていて、トリィの設定もTV本編通りとしています。
その上で、他の登場人物はキラを始めとして、台詞を極力少なくしています。

ただし、本題となるフレイとトリィの会話事体は、TV本編には、ほとんど存在しないのと、
短編内での整合性を取るためにフレイの心情の流れは、若干、創作しています。

全8話の短編で、一度に投下しても構わないのですが、1話ごとにシーンが変わりますし、
スレの活性化を願って、1日1話ずつ投下します。以降、最終話投下まで、コメントは付けません。
SSのみ、1話ずつ投下しますのでよろしくお願いします。

605私の想いが名無しを守るわ:2004/05/30(日) 23:59
がんがれ。
期待してるぞ。

606さよならトリィ 2/8:2004/05/31(月) 06:26
[トリィ、お留守番ね]

夜、キラの部屋へ通うようになった。同室のミリアリアの目が徐々に厳しくなる。
でも、私のやってること、誰にも文句なんか言わせない。

キラの部屋。キラは仕事から帰っていなかった。キラと二人で決めた勝手知ったパスコードでドアを開ける。
ドアを開けた途端、トリィが私に飛びついて来る。

<トリィ…… トリィ>
「トリィ、お留守番ね。先にシャワー浴びちゃおうか」

頭に乗って来るトリィを手に乗り移らせて、ベッド端にとまらせながら、私は服を脱いで
シャワーを浴び、体に高級石鹸の匂いをまとわせた。髪をバスタオルで拭きながら、ベッドに
座りトリィに話しかける。

「キラのやつ、遅いわね。せっかく、私が来てやってるっていうのに……」
<トリィ、トリィ>

「でもキラって、いやらしい。あんなヤツとは思わなかった。いやらしい、いやらしい」
<トリィ?…… トリィ! トリィ!>

私はキラへの想いを口にする。トリィは、首を傾げ不思議そうな顔をしながらも、私の
意見を肯定するかのように返事をして聞き耳を立てている。トリィが私のことを
他に喋ることは無いから、私は、ここに一人だと思い切り自分の心を打ち明けられる。
私は、この部屋だと心が解放される。

やがて、キラが帰ってきた。

<トリィ!> トリィが喜ぶようにキラに飛びつき、キラの指の上に乗る。
「キラ、お帰り」 私は、意識的に優しい声を作りながらキラに話しかける。
「フレイ! ただいま…… 来てたの」

「ええ、キラ疲れてる? 迷惑じゃなかった?」

その少し前、サイが懲罰房に入れられた時、私がサイを心配そうに覗いていたことで、
サイのことを想っていること、キラを騙していることをキラに感づかれたかもしれなかった。
でも、砂漠の敵を倒して脱出した後、私とキラは、どちらともなく寄り添い、自らを誤魔化す
ように関係を続けていた。多分、私の復讐に気づいたと思ったのは気のせいだったのだろう。
そのころ、私はキラに拒否されるのが恐くて、いつも下出に出ていた。

「いや、大丈夫、構わないよ」

キラの言葉に、私は近づいてキスをする。キラの脱ぐ上着をハンガーにかける。
キラがシャワーを浴びる。その音を聞きながら、私は下着姿になり香水を付ける。照明を
暗くして、ベッドでキラを待つ。

この時、トリィはなぜか察したように、もうひとつのベッドのカーテンレールにとまり、
まるで見張るように、視線を他の方向へ向けている。おかげで、私は見られているという
意識が和らぎ、その代わりに外敵から守られているように安心できる。

シャワーから出てきたキラがベッドに入る。私は、それに体を委ねる。いつの間にか、
そのことにまで安心感を感じている自分に気づかずに……

* * *

朝、目を覚ますと隣に寝ていたはずのキラはいない。トリィだけが部屋を舞っている。

<トリィ! トリィ!>

元気なトリィの声に、私は、少しむくれたように声をかける。

「キラ行っちゃったのね。キラって冷たいヤツ。あんなヤツ…… 私、眠い…… もう少し寝る」

まだ、やることが決まっていない私は、そのまま、昼過ぎまでキラの部屋で寝てしまう。
やっとのこさで起き出して遅い昼食を取る。話し相手は誰もいない。デッキで働くキラの様子を
遠巻きに見て、自分の部屋へ戻る。でも、やることが無くて、しばらくして、またキラの部屋へ戻る。

<トリィ トリィ>
「トリィ、一緒に留守番しようか」

<トリィ!>

こんなことを繰り返して、私はいつの間にかキラの部屋に居付いていた。

607過去の傷・142:2004/05/31(月) 11:39
「ではこれより法廷を開かせていただきます」
フレイの声がかかった。
「なんでこんなことを・・・」
アスランが呟くがフレイとラクスは無視した。
実はラクスの怒りが収まらず勝手にラクスの部屋で仮想裁判をすることになった。
フレイがテレビで見ていたので提案したのだ。
裁判官にフレイ、検事にカガリ、弁護士にキラ、そして被告人がアスランとなりラクスは見守る形となった。
「では、アスラン・・・いや被告人は婚約者ラクス・クライン嬢がいながらミリアリア・ハウ二等兵と関係を持ったことを認めるな?」
「だから彼女とはなんでもないって言ってるだろ!」
カガリの質問にアスランが叫ぶ。
「よくもまあ・・・ぬけぬけと嘘をおっしゃいますわね・・・」
ラクスが冷たく言った。
「いえ、ラクスですから!」
「ラクスさん、そんな一方的に・・・」
「あらキラ様もアスランの肩を持つのですか!?」
「静粛にしなさいよね!!!」
フレイが叫んだ。
「被告人は質問に答えてください」
アスランはやつれたように座るとため息をついた・・・。
「ぐ・・・分かった、認めるよ・・・」
「な・・・アスランやはり・・・」
ラクスが涙声になる。

一時間後。
ラクスの部屋では、アスラン一人だけ残った。
なぜかステ−ジ衣装に着替えているラクス。
「アスラン、クライン邸で一度言ったはずですが?私は浮気は許さないと」
「は・・・はい・・・返す言葉もありません・・・」
「ピンクちゃん、ハロの皆も外に出てください、これからは起こることは見るものではありません」
ハロを全て外に出すとラクスは微笑んだ。
「アスラン、許しませんからね・・・」
そしてラクスが微笑むと近づく。
アスランは震え上がった。
そしてその五分後、アスランの悲鳴がエタ−ナル艦内にこだました。

608過去の傷・作者:2004/05/31(月) 11:45
皆様ご迷惑おかけして大変申し訳ありませんでした。
とりあえず一作だけ投下してみました。
ですがまだこれからも作品を続けるかは未定です、またしばらく静観させていただきます。

609私の想いが名無しを守るわ:2004/05/31(月) 15:27
>>606さよならトリィ 2/8
フレイ一人称もの好きなので続きがたのしみです。
新作という事で期待しています!
>>帰還
フレイ&ナタルの話ってあまり無いのでどきどき。
>>散った花、実る果実
いきなり通信士だった本編描写の素敵な補完を期待しています。

男フレイ様の続きも投下待ってます!!

>>

610私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 00:01
>過去の傷
アスランの悲鳴……(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

611私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 08:12
>>さよならトリィ

あえて以前の作品を中止して、さらに新作を投下してくださる姿勢に頭が下がります。
トランプ絵のトリフレを思い出させられて、切なくなってきます。
キラのいやらしい…って所が個人的に気になったりしてw

612私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 08:19
>>さよならトリィ
お帰りなさいませ、でも相変わらずいい文章がよく表現されてますね、フレイ様の心情を見てると・・・。
>>過去の傷
法廷とは面白いことしますね、フレイ様が裁判官・・・ところで・・・ラクス、アスランにどんなお仕置きを!?

とにかく女子高生職人さんお帰りなさい、貴女のことレス見れば分かる通り嫌いな人もいるけど私みたいに好きな人もいるので。

613私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 09:53
>>さよならトリィ
新作キタ━━━━━━━━━━━━!!!
フレイ様、トリィの前でだけでしか本音を言えないんですね…
気持ちの移り変わりなど、どうなっていくのか楽しみ!
前作も最後まで見たかったですが、
潔さに職人としてのプライドを見た気がします!
超がんがれ!

>>散った花、実る果実
>>帰還
フレナタ!
無能(失礼)ながらも自分と向き合う事を始めたフレイ様。
本編描写が無かった分、フレイ様の真実が見えてくるようです。
やっぱり人間、進歩がなくっちゃ。

614私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 12:35
新作来たね!!!超美少女女子高生も来たね!!!

615私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 12:38
>>614
やめとけ。
テンプレ違反以外はSSと感想のみだろ。
違反の無い限りは、だが。

616私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 14:12
超美少女は余計だな

617私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 15:05
女子高生ってばらさなきゃよかったのにな。

618私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 15:09
>>617
そうそう、こういうふうにいきがる奴が多くなってきたからな。
職人さん後悔してるだろうな、ネタにされてるよ。

619私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 15:32
つか、テンプレ守った内容?

620私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 16:33
ラストがギャグでオチるならテンプレ範囲内
なし崩しにシリアスならなんだかなって感想

621私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:22
ラクスがあのままだと…

622私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:36
あれはあきらかに大丈夫だろ、ギャグだと思うけどね。
あれで駄目だと言われたらたぶん投下やめるだろうな。
ラクスがアスランになにしたかは分からないが・・・。
でも細かいとこつくよね、あれでラクスが汚れキャラかよ・・・。
まぶらほの夕菜ちゃんはあんな感じだけどね・・・。

623私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:42
>>あれでラクスが汚れキャラかよ・・・。

この板のフレイファンが言っても説得力皆無だよ。
自分もギャグオチならアリ、シリアス展開なら微妙。

624私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:56
フレイ様以外にスポット当てるのやめた方が無難だな。

625私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:02
まあ、あれだ。
ギャグに見えない雰囲気を作ってきてるってのが、ちょっとまずいと。

626私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:05
そろそろ避難所使った方が。

627私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:20
君達そんなに批判したいのかね?女の子が頑張ってるのに・・・。
そもそもこのSSはフレイ様が主役では?ラクスとか他キャラにスポット当てるのやめようよ・・・。

628私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:24
女の子とかオヤジとかそんな事全然関係ない

629私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:30
女の子だからって優しくしたり甘くしたらつけあがるよ。
こういうふうに批判ばかりするのも彼女のためでもあるんだよ。

630私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:33
2ちゃんじゃなくてよかったね、と。
つーか避難所使おうよ。

631私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:35
>>627
なんつか、女の子だから、って理由はまずいと思われ。

632私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 22:40
>>過去の傷の作者さん
もう投下やめなよ、それが君のためだから。
これ以上傷つきたくないよね?

633私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 23:04
>>トリィ
おお!楽しみにしてるよー。

キャラ萌えスレ以外に投下すればいいんじゃない?
タイトルが過去の傷っていうのも皮肉な・・・

634私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 01:11
というより、あからさまにラクスとかを叩くことのみを目的として書いてる
腐女子はスルースルー。どうせ女子高生とかいってもキモいんだろうし。

635私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 01:56
あれでラクス叩き?
むしろアスラン叩きじゃ。

どっちでも同じか。

636私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 04:16
キラ至上主義じゃね?
あいつだけいい目をみているのにモテモテだ。
アスランを糾弾するラクスだけど、キラと付き合ってたんだろ…
辻褄を合わせる気があるのかわからないな。まぁこれはただの叩きになってしまうがな。

637私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 07:48
ここには複数の方が投稿されますので、感想については、対象を明確に入れる
ようにした方が良いかと思います。

>>過去の傷
自分の作品を大事にされているのは分かりますが、やはり、今の時期、
この内容は、キャラへの配慮と言うよりも、場全体への配慮が
足りなかったのでは無いかと思います。
私だと、フレイの、テレビドラマかぶれの部分を落とし所にしたでしょうね。

切り口を変えることで印象を良くすることもできるでしょうけど、
やはり、今は新しい道を探された方がよいかと思います。
辛いのは、あなただけではありません。
書く人も読む人も、みんなそうなのですから。

638さよならトリィ 3/8:2004/06/02(水) 07:55
[トリィ…… こんなものっ!!]

キラの部屋に同棲して、少しキラと、いろいろな話をするようになった。

トリィのこと、キラから聞いた。友達から、もらった大事な贈り物。
友達…… 多分、ザフトの…… パパが死んだ時にいた……

キラの居ない部屋。私はドア脇のデスク上を歩き回るトリィを暗い目で睨みつける。
トリィが立ち止まり、私と目を合わせるのを感じ、私は呟くように語りかける。

「トリィ、あなたは……」
<トリィ?>

パパを殺したザフト、コーディネーター。それが作ったもの。

「トリィ、あなたって…… 許さない…… こんなもの……」
<トリィ? トリィ?>

ベッド横にある棚。そこには、私がキラに言って入手してもらった化粧品が、いくつも並んでいる。
私は棚にある化粧品の瓶を手に取った。ガラス製の一番大きいもの。そして、トリィを目の前に、
それを振り上げる。

壊してやる! こんなもの……

キラには、事故だったって言えばいい。キラは、私を怒ったりしない。私は責められることは無い。
これはロボット。生きてはいない物なんだから。

「トリィ…… こんなものっ!!」

私は叫んで、ガラスの瓶を振り降ろそうとした。

<トリィ…… トリ? トリィ>

トリィの声と仕草が変わって、私の手は止まった。

少し小首を傾げるような仕草。まるで、本当に生きているよう。
違うわよ。これはロボットよ。生きてなんかいない。この動きも、この声も、みんなプログラム
されたもの。そういう風に作られているのよ。最初から、そういう風に。
騙してるのよ。私を騙しているの。私は騙されない。こんなもの、こんなもの……

<トリィ…… トリィ…… トリィ……>

トリィの声を聞いているうちに、瓶を振り降ろせなくなった。瓶を床に放り出し、ベッドに戻って座り込む。

「うっ、うっ、ううう」

涙がこぼれる。なんで、こんなことで泣かなくちゃならないの。

<トリィ…… トリ、トリィ! トリィ!>

トリィがベッドの私の近くまで来て、さえずりながら、私に語りかけるように、頭をときどき、
突き出している。なんで、トリィの鳴き声が、私を元気づけるように聞こえるの?
ロボットなのに…… 物なのに…… 私は、おかしくなったの?

「トリィ、私、あなたのこと……」

私は、トリィに手を伸ばした。さっきとは打って変わって、私自身をトリィに委ねるように、ゆっくりと……
その手を、トリィは優しくクチバシでついばむようにつつく。それを快く感じながら、私は、
トリィを本気で憎むことはできないことに、心を迷わせる。

自分の想いを隠し、一人孤立する私の中で、トリィの存在は既に大きくなっていた。
自分の想いを、ただ一人話せる相手。ロボットでは無い。本物の鳥でも無い。
なにかひとつの人格のある存在。キラの部屋の、私とキラ二人以外の三人目の住人。

トリィ。憎いコーディネーターが作ったロボット。キラと友達の友情の印。私にとっては、
パパを奪った許せない絆のはず。だけど、そのトリィは、私の心に深く入り込んでいる。
作られた目的とは裏腹に……

ドアが開いてキラが戻ってきた。涙を流している私を見て、心配そうな顔になる。

「フレイ、どうしたんだ」
「なんでも無い…… なんでも無いの」

「フレイ……」

キラは、ベッドの私の隣に座る。だけど、私にかける言葉も無く、ただ辛そうな表情で、
顔を背けている。私もキラから目を逸らしてうつむく。

<トリィ! トリィ!>
そんな二人の前で、トリィは相変わらず愛敬を振りまくように羽ばたき続けている。

「トリィ、お前は元気だね」

キラが、トリィの仕草に、少し表情をなごませた。私は、その横顔を見て、少し心が落ち着くのを感じた。
私は、キラの肩に頭を預けた。キラが何も言わず、それを受け入れたのを感じ、私は、体全体を
キラにもたれかける。キラは私の肩を抱こうとさえしない。それでも、私は、一時の安らぎに
縋るかのように体を預けている。

コーディネーター。それぞれの目的のために、遺伝子をいじって作った特別な存在。そう思っていた。

だけど、今、私の隣にいるキラは、特別でもなんでもない、不器用とさえ思えるくらいの、ごく普通の人間。
なんのために作られたのかなんて、思いもつかない。

639私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 10:05
言うまでも無いけどトリィだって立派なキャラだ。
>>638
そいつはトリィ叩きでありすぎるから自粛推奨だぞ。

640私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 10:11
少し作者さん休むって言ってただろうが、それなのになんで複数で過去の傷の作者さんいじめてるんだ?
634なんて作品じゃなく職人自体を批判して侮辱してるだろ、最低だな。

641私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 10:57
>>640
感想以外は避難所で。
テンプレ推奨作品でお願いしますって事なので。

642夢と希望・1:2004/06/02(水) 21:48
「フ、フレイ・アルスタ−!?こんなところに!」

赤い髪がたなびいた。救難ボ−トから出てきた避難民の中から、一人飛び出した少女はフレイ・アルスタ−だった。
長くつややかな赤、肌はミルクのようになめらかで、高貴さを感じさせる整った顔立ち、いつ見ても大輪の薔薇のような華やかさを感じさせる、彼女を見るとキラはいつもどきどきとしてしまう、いつもろくに話すらできずに遠くから見ていることしかできないのだが・・・。
その彼女に抱きつかれた、夢じゃないかと思ってしまう・・・。

「たしか、サイの友達よね?よかった・・・怖かったの!」
「だ、大丈夫だよ、僕もサイもいるから・・・」

つい顔を赤くしてしまった。
間近で憧れている子がいるので無理もないが・・・。
なぜフレイ・アルスタ−が救難ボ−トに乗っていたのかというと・・・。
ヘリオポリス・・・地球の衛星軌道上、L3に位置していた宇宙コロニ−であった。
キラ達も住んでいた、もちろんフレイ・アルスタ−も・・・。
しかし、あるときプラント・・・いやザフトの艦が降り接近してきたのだ、そんなとき近くにいたキラ達は戦闘に巻き込まれてしまった。
その後幼なじみ今はザフト兵となっていたアスラン・ザラと衝撃の再会をして、さらにストライクというモビルス−ツに乗り戦場に出てしまった。
その後も戦闘が続きヘリオポリスは・・・。

643夢と希望・作者:2004/06/02(水) 21:51
初めての投下です、これからできるだけ投下していきますのでよろしくお願いします。
最初ということもあり少なくしましたが次からは容量を多くしていきます。

644私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 22:37
>>640
今まで散々荒らし紛いですらない荒らし作品を投入し、
フレイファン全体の評価を著しく貶めたから。

虐めではなく、その落とし前つけさせてるだけ。
奴に限れば職人自体を非難する事自体が当たり前の事だ。

645私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 22:39
>>644
もちつけ。
せめて避難所でやれ。

646私の想いが名無しを守るわ:2004/06/03(木) 00:29
644じゃないが、この板がずっと避難所だと思ってたよ。
避難所の避難所があるのか?
放送中から住人だったのに…○| ̄|_ゴメンヨ フレイタマ

647私の想いが名無しを守るわ:2004/06/03(木) 00:31
>>646
ィ㌔

っつーかよく板を観察しろw

648夢と希望・2:2004/06/04(金) 22:33
「サイ!」
フレイはサイの姿を見つけるとキラから離れ真っ先にサイの胸に飛び込んだ。
「あ、ああ・・・」
しかしサイ自身は戸惑ってる様子だ、しかしキラはそんなサイの態度などよりも抱き合っている二人を見て目を少し曇らせた。
そんな時、キラにムウ・ラ・フラガが歩み寄った。
そして・・・。

「へえ、驚いたな」
「な、なんですか?」
突然歩み寄ってきた、背の高い軍人にキラは思わず身を引く、しかしムウはそんなキラの様子を気にせずさらっと言った。

「君さあ・・・コ−ディネイタ−だろ?」

ムウの言葉にその場が凍りつきざわめきが起こる。
マリュ−がムウを睨んだ。
キラは戸惑いながらも小さな声で答えた。

「はい・・・」

その言葉を言った瞬間マリュ−とナタルの背後に控えていた兵士達が銃を構えキラに向ける。
普通ならなぜ?だと言いたくなるかも知れないが仕方ないことでもあるのだ。
コ−ディネイタ−・・・それは遺伝子を人為的に操作されて生まれた人間である、人の持つ潜在能力を最大限に引き出された彼らは知力、体力ともに優れている。
あらゆる病気にもかかることない体でもある。
だがコ−ディネイタ−とナチュラル・・・遺伝子改変を変えずに生まれた普通の人間との能力の差があからさまになりそれを排斥する勢力が生まれた、流血の歴史や時代を繰り返し、ナチュラルに比べ、宇宙での生活が適していたコ−ディネイタ−達は地球外に移り住むようなった。そして最終的に彼らの住処となったのが、L5に建造された宇宙コロニ−群・・・プラントである。
そして今、プラントの擁する軍隊ザフトと地球、コ−ディネイタ−とナチュラルは敵対しており戦っているのだ。
戦争中ということもあり軍人はぴりぴりしている者も多い、そんななか突然コ−ディネイタ−と名乗られ兵士達が反射的に銃を向けるのも悲しいことだが、無理のない状況ではあった。

「ま、待てよ!なんなんだよ一体!」
ト−ルが叫び庇うようにキラの前に出た、ト−ル・ケ−二ヒ・・・キラと同じくヘリオポリスに住んでいたキラの友人で同じ工業カレッジに通っていたがキラと共に戦争に巻き込まれ事情もあり艦に乗ることになってしまった、ちなみに同じキラの友人である女の子、ミリアリア・ハウとは恋人同士だ。
「コ−ディネイタ−でもキラは敵じゃない!ザフトと戦って俺達も守ってくれただろ!?あんたら見てなかったのかよ!?」
自然とミリアリア、サイもキラの前に出た・・・そして・・・。
「そうよ!キラは敵なんかじゃないわよ!」
「え・・・?」
キラの前にもう一人歩み出た少女がいた・・・。
フレイ・アルスタ−だ・・・。

649私の想いが名無しを守るわ:2004/06/04(金) 23:08
>>さよならトリィ
せつなすぎ…
すごい心理描写ですね。
つ、続きをお願いします〜

650キラ(♀)×フレイ(♂)・45−1:2004/06/05(土) 17:27
「ふうっ。やっぱり、繋がらないか…」
あらゆる通信チャンネルを試してみたが、一向に音沙汰がない。とりあえず、仲間との
コンタクトを一時的に諦めたアスランは、通信機の電源を落とした。
それから、軽く島内探索に出掛けたアスランは、海岸線に漂流したスカイグラスパー
を発見する。どうやら、あの不愉快な連中は、彼の乗った輸送機を落とした敵のようだ。
他にも連合の伏兵がいないか、島全体を慎重に捜索したが、どうやらこの狭い無人島内
に滞留しているのは、自分達三人だけらしい。念の為に、グラスパー内部の通信機器
も動かしてみたが、聞こえてくるのはノイズばかりだ。サドニス島の近辺はNJの
密集地帯だと聞いてはいたが、この通信状況の悪さは想像以上だ。
「そろそろ、帰るか。あのチンドン屋達を野放しにしておくのは危険だ」
一応、拘束してはいるが、例の捕虜二人を長時間、自分の目の届かない所に放置
することに嫌な予感を覚えたアスランは、大急ぎで戻ることにした。


「おい、ザフト兵。いつまで俺達をこのままでいさせるつもりだ!?」
不安に反して、彼らはその場所にいた。フレイは、借りてきた猫のように背中を丸めて
大人しくしていたが、カガリは、アスランの姿を見つけるや否や、番犬のような勢いで
元気に吠え立ててきた。閉口したアスランの鼓膜に、カガリの悪口雑言が響いてくる。
心身共にエネルギーが有り余っているらしいカガリは、無為に耐えられない性質らしく、
一箇所でじっとしているのが苦手のようだ。もし、二人が座禅を組んで、精神修行中の
身だったら、カガリは、精神注入棒でビシバシと折檻されていただろう。
「煩いぞ。お前たちは戦いに敗れて、お情けで生かしてもらっている捕虜なんだぞ。
身の程を弁えろ。ましてや…」
そこでアスランは忌々しそうにフレイを睨んだ。当然ではあるが、どうやら空手形の件を
深く根に持っているようだ。フレイは禅でいう無我の境地に達したかのように、アスラン
の殺気を軽く受け流し、カガリはガルル…と、獰猛犬のような唸り声を上げている。
こいつら、本当に自分達の立場が判っているのか?
露骨に強者に媚いる輩よりはマシかも知れないが、生殺与奪の全てを握られている
この緊迫化で、こうまで尊大に構えられると、自分に軍人としての貫禄が足りないから
舐められているのではないか…という深刻な疑惑がアスランの脳裏から離れない。

「そろそろ、本題に入ったらどうだい、アスラン君?」
今までずっと押し黙っていたフレイがはじめて口を開き、アスランは軽く眉を顰める。
「不渡り手形を掴まされたのに、契約を不履行せずに、わざわざ僕たちを生かして
おいてくれたのは、不戦同盟を誓約してしまったからだけじゃないだろう?
僕らの口から、キラの近況について聞きたかったからじゃないのかい?」
フレイの推測は、彼の深層心理の核(コア)の近くを掠ったが、アスランは心中の
好奇心を押し殺して沈黙を守った。フレイのペースに乗せられるのも癪だったし、
このペテン師の口から出た言葉など、あまり信用ならないような気がしたからだ。
フレイの方は、今の状況を上手く利用し、アスラン君のキラへの想いを見極めるつもりだ。
ジュリエット(キラ)が、敵であるロミオ(アスラン)に恋心を抱いていたのは、
ほぼ間違いないとフレイは確信しているが、果たしてロミオの側はどうなのだろう。

「おい、フレイ。こいつはキラの一体何なんだよ!?」
フレイやアスランの思惑を完璧に無視して、横からカガリが、前々からキラへの
浅からぬ縁を匂わせている敵兵の正体について尋ねてきた。
「アスラン・ザラ君。プラントの急進派・ザラ国防委員長の子息で、現最高評議会議長
のご令嬢でプラントの歌姫として有名なラクス・クラインの婚約者らしい。
肝心のキラとは、月の幼年学校時代に特に仲の良かった級友みたいだよ」
「キラの友人!?この悪逆非道のザフト兵が!?マジかよ!?」
「マジらしいよ。キラの話じゃ、アスラン君は、誰よりも優しくて、とても人殺しを
出来る人間じゃなかったそうだけど、どこでどう捻くれ曲がって、道を誤ったのやら」
フレイはわざとらしく溜息を吐いてみせる。捕虜の分際で、本人を目の前にして好き勝手
な論評を繰り広げる命知らずの二人組にアスランは軽い眩暈がする。何故、このフレイと
いう男は、キラも知らないような彼のプライベート情報をここまで熟知しているのだろう。
一時期、アークエンジェルに捕虜として滞在していたラクスが、アスランの個人情報を
漏らし捲っていたなど、守秘義務感覚の強い軍人のアスランには想像もつかなかった。

651キラ(♀)×フレイ(♂)・45−2:2004/06/05(土) 17:28
「一応、こちらも自己紹介しておこうか。僕はフレイ・アルスター二等兵。
アークエンジェルでは調理主任として厨房を任されている。
こちらはカガリ・ユラ君。明けの砂漠というゲリラから、助っ人として、
スカイグラスパー二号のパイロットに抜擢された凄腕の傭兵君さ」
頼まれもしないのに、フレイも自分たちの側の姓名と身分を明らかにする。
フレイから「傭兵」という単語を聞かされたアスランは、ようやく彼らの行動を得心した。
「やはりそうか。連合の軍服も着てないし、地球軍の兵士とは思えなかったが、金で
雇われた戦闘屋か。理念も愛国心もない奴らなら、仲間を平気で見捨てるのも無理はない」
軽蔑した瞳で見下すアスランに、カガリはグッと口を結んで、怒りで顔を赤くする。
戦争を終結させたいと願うカガリの崇高な参戦動機を思えば、あんまりなアスランの
言い草ではあるが、カガリもカガリで、停戦を受け入れてくれた寛大なアスランを、
不義理にも貶していたので、このぐらい言い返してもバチは当らないだろう。

「それは、ちょっとばかり違うよ。アスラン君。
彼が僕を撃とうとしたのは、冷徹なる打算からではなく、下らない私情だよ」
カガリが口を開くよりも早く、フレイが彼の弁護(んな訳ない)を買って出た。
「どうやらカガリ君は、不埒にも僕のキラに横恋慕しているみたいでね。
僕が死ねば、キラを自分のモノに出来るとでも錯覚していたんだろ?
自分の魅力で女の子を振り向かせるのではなく、戦時のドサクサに紛れて競争相手を
消し去ろうなんて負け犬の発想だよね。まったく狡っからいたらありゃしない」
さっきまでカガリの尻馬に乗ってアスランを口撃していたフレイだが、今度はあっさりと
その対象をカガリへと切り替えた。元々、この二人の間に協調性などあろう筈はないが、
タッグは早くも内部崩壊し、リングは混沌のバトル・ロイヤルへ移行しようとしている。

「ち…違う、俺はキラが嫌いだ。俺にあいつの力があれば、俺は迷わなかった」
幾分の誤差はあるものの、物の見事にフレイ暗殺動機を見当てられたカガリは、羞恥と
多少の後ろめたさの入り混じった怒りで、傷のない側の頬も含めて顔全体を真っ赤にする。
さらには、照れ隠しに心にも無い弁明をする間際に、迂闊にも、自分達兄妹の出生の秘密
の一端に触れる情報まで洩らしてしまう。

「僕のキラだと?どういう意味だ!?」
フレイの発言の一部を聞き咎めたアスランは、意図せず、強い敵意の視線でフレイを睨む。
既に彼の意識のステージから、さっきまで弾劾していたカガリの存在は消去されている。
やっと獲物が撒き餌に喰らい付いてくれたらしい。フレイは内心でそうほそく笑むと、
自分がキラと交際している旨について、簡単に説明した。


「付き合っているって、キラとお前がか?」
フレイはコクリと頷いた。チラリとアスランはカガリの方を見たが、カガリは不貞腐れた
ようにソッポを向いている。この一件に限り、どうやら奴の戯言は事実らしい。
「で…でも、お前はナチュラルだろう?コーディネイターのキラと…」
「おやおや、アスラン君。君もナチュラル侮蔑主義者なのかい?
僕らを猿扱いして小馬鹿にしていた、君の同僚のタカツキ君のように?」
もはや体裁を取り繕う余裕もなく、それでも執拗に食い下がるアスランに、
フレイは澄まし顔で、彼が知る「最低のコーディネイター」の名前を口にする。
「タカツキ?……誰だ、それは?」
「知らない筈はないだろう。一応、君と同じザフトの軍人だし、月の幼年学校時代の
同級生だとも聞いた。尤も、キラとは苛められていた間柄だったらしいけどね」
「ああ、あのマイケル・タカツキの事か…。そういえば、そんな奴もいたな」
アスランはジブラルタルのイザークとの確執の時にも思い浮かべた、彼とはあまり仲の
良くなかった級友の名前を確定させたが、喜びの感情が湧き上がる事はなかった。

652キラ(♀)×フレイ(♂)・45−3:2004/06/05(土) 17:28
「持つ者は、持たざる者の気持ちは判らないか…」
フレイは内心でそう呟いた。キラを苛めていたという悪友に好意を持ち得ないのは判るが、
それ以前に、彼の存在など眼中にないという無意識の驕りが、アスラン君から感じられた。
「虎は生まれつき強いから虎」だと言うが、彼には、タカツキ君が何故、これほどキラや
アスラン君にコンプレックスを剥き出しにするのかなど、恐らく理解できないだろう。
彼のような、あまり悪意を感じさせない誠実そうなタイプですら、コレなのだ。
一般のコーディネイターがナチュラルに持つ優越・侮蔑感と、逆にナチュラルの側から
コーディの側へと抱かれる反感・憎悪などの、連鎖の悪循環は並大抵ではあるまい。
苛めや差別という問題が、虐待する側が悪であること事体には議論・反論の余地はないが、
それを受ける側にも、常に何らかの要因を抱えているというのもまた無視出来ない真理だ。
そういう、ナチュラル−コーディ間で、多々発生したであろう問題が、同じコーディ同士
の間でも頻繁に起こっていたらしいという事実は、フレイには意外であり新鮮でもあった。


「んっ、待てよ。どうして、お前はタカツキの事など知っているんだ!?」
フレイが自分の思考の淵に嵌っている間に、アスランは、彼の情報の豊富さに疑念を抱く。
A級選抜試験に漏れたマイケルは、アスラン達とはクラスが異なっていたので、
プラントのアカデミー時代は、アスランでさえも彼の存在そのものを失念していた。
それに、キラが幼年学校時代の嫌な思い出を、わざわざ第三者に話すとも思えない。
「実は僕とキラは、二日ほど前に彼と遭遇していてね」
思考を慌てて現実世界へと引き戻したフレイは、アスランの疑惑を氷解させる為に、
サドニス島でのマイケルとの馴れ初めについて、得々と語ってみせた。



「コ…コーディネイターの面汚しめ…」
フレイからキラ拉致未遂事件の仔細を聞かされたアスランは頭を抱えた。
キラを赤服に換えようと姑息の限りを遣り尽くした上で、レイプ未遂まで引き起こし、
挙句の果てには、目の前の非力なペテン師如きにしてやられたなどという漫画の小悪党役
そのものの末路を迎えた同胞を好意的に解釈するなど、アスランでなくとも不可能な難事だ。
済まない、イザーク。お前はやっぱりエリートだったんだな。
思い遣りや協調性には欠けるが、基本的には追従や卑劣な行いとは無縁だった同僚を、
最近、少し見損なっていたことに思い当たったアスランは、心の中でそう謝罪した。

カガリは複雑そうな瞳でフレイを睨んだ。彼の与り知らぬ間に、キラはとんでもない
窮地に陥っていたようだ。以前、カガリは、最高のコーディのキラにとって、本当に危険
な場所は戦場(MS戦闘)ではないと予感していたが、どうやらそれは真実だったらしい。
本来なら、キラの息災に安堵すべきなのだろうが、その愛妹のピンチを救った勇者が、
彼が危険視しているフレイだという現実が気に入らず、カガリの気分は晴れなかった。


「君にとっては余計な真似をしてしまったよね、アスラン君?
キラがアークエンジェルにいなければ、君達の仕事も随分と遣り易くなっただろうにね」
アスランのキラへの葛藤を知った上で、敢えてフレイは、彼の神経を逆撫でするような
言葉をわざわざ投げ掛けているようだ。キラが不在ならAA攻略が楽勝なのは事実だし、
キラの退艦を望んではいたが、彼女が咎人とされる未来など彼の本意ではない。
「そ…そんな事は無い。その一点に限っては、俺はキラを救出したお前に感謝する。
軍人としてという以前に、人として恥じ入るような行為を、俺は絶対に認めない」
「そう見捨てたものじゃないさ。タカツキ君に会って、僕ははじめてコーディネイター
という存在を見直したんだからね」
アスランはマイケルの行為を絶対悪として切り捨てたが、フレイの見解は異なるようだ。
これには、アスランだけでなく、彼に密かに同調していたカガリも驚きを隠せない。

653キラ(♀)×フレイ(♂)・45−4:2004/06/05(土) 17:29
「連合の一部の兵士が、君らを何と呼んでいるか知っているかい?『空の化け物』だよ。
まあ、僕の君たちに対する認識も似たようなものだった。一切の喜怒哀楽の感情を持たぬ、
青き地球を侵略するSF映画に出てくるエイリアン。それが君らへの率直なイメージさ」
フレイの言い草はあまりにコーディネイターを侮辱していたが、今のは単なる前置き
だと判っていたので、アスランはここでは口を挟まなかった。むしろ、マイケルの行動
に美点を感じたという、この先の続きが気になった。
「ところがだ、実際にコーディの実物を見てみると、キラのような泣き虫はいるし、
タカツキ君のような、世間で僕が腐るほど見てきたステレオタイプな俗物もいる。
君らも案外、能力以外はさして僕らと変わらない不完全な存在である事に気付いたんだ」
アスランはポカンと、だらしなく口を開けている。このフレイという男は、人間性悪説
の信奉者なのか、自己犠牲精神のような美徳(ピュア)よりも、他者を踏み躙ってでも
生き残ろうとする悪徳(エゴイズム)の方にこそ、人間味を感じる性質みたいだ。
結局、何だかコーディネイターを馬鹿にされたままのような気もするが、自分たちを
擬人化(或いは神聖化)せずに、等身大に見てくれるというのは、貴重な視点ではないか?
アスランには判らなかったが、プラント内の一部のコーディ絶対主義者が思い上がって
いる程には、自分達が完璧な存在などでは有り得ないことは、アスランも悟っていた。


「ただ、タカツキ君が君達に根強いコンプレックスを抱いて、手段を選ばず這い上が
ろうとしていたように、コーディネイターの間にも、他者との出世競争や、それに伴う
妬み・嫉妬の感情もあるみたいだね。
元々、君達は、この厳しい競争社会を勝ち抜く為に産まれてきたらしいけど、ナチュラル
全員がコーディネイターに生まれ変わったとしたら、その優勢(アドバンテージ)は
消滅し、結局、依然と変わらぬ競争社会が続くだけの話しだね。そもそも……」

「だああぁああ〜!!!!いい加減にしろよな、お前ら!!」
コーディネイター論を叩き台にした妙に哲学的なフレイの演説がさらに続き掛けたので、
小難しい話しが苦手なカガリの左脳がオーバーヒートを起こし、カガリは発狂した。
「んなこたぁどうでも良いんだよ!戦争は会議室で起こっているんじゃあない。
戦場で起こっているんだ。綺麗な背広を着たインテリ共が、安全な密室に篭って、
小賢しい屁理屈を振り翳した所で、戦はなくなりゃしねえんだ。判っているのかよ!?」
ノンキャリアのキャリア批判染みた口上を口にしたが、それがカガリの信念だ。
だからこそ、カガリ自身はどちらかといえば特権階級に連なる身でありながらも、
口先だけの親父みたいな人間になるのが嫌で、銃を取り戦う道を選択したのだ。
そのカガリが口先だけと信じる彼の父親は、局地的な視点に固執するのではなく、
大局的な視野の広さを身に付けて欲しいと願って、息子を平和の国の外の世界(戦場)
へと送り出したのだが、今のカガリを見るにつけ、道はまだ果てしなく遠そうである。


鼻息を荒くしながら持論を捲くし立てるカガリに閉口したフレイは、縛られた状態で器用
に両肩を竦めると、そのまま沈黙する。すると今度は、矛先はアスランに移し替えられた。
「おい、アスランとか言ったな?お前、ヘリオポリスを襲った奴らの仲間だな!?」
聡いアスランは、カガリが何を主張したいのかを悟って、後ろめたそうに顔を背ける。
「俺たちだって、あんな事になるとは思わなかったんだ」
それは、アスランの正直な本音だ。ストライクと足付きを仕留めるための戦闘継続で、
どれほど夥しい数の民間人が犠牲になったのかと思えば、とても空虚ではいられない。
「何を今更、白々しい事を…」
「だが、中立だと謳っておきながら、あんな代物(戦闘用MS)を密かに造り上げて
いたのは事実だ。俺たちザフトがそれを見過ごせるわけはないだろう!?」
「そ…それは…」
アスランが軽く反撃し、逆にカガリが言葉を詰まらせる。オーブと大西洋連邦の密約に
何の責任も持たぬ身だが、自分の父親が仕出かした不祥事だと思うと、親の因果が子に
祟り…というわけでもないが、性格的に、無関係を決め込むことは出来なかった。

654キラ(♀)×フレイ(♂)・45−5:2004/06/05(土) 17:29
「くっくっく…」
彼ら二人の真摯な討論の場を茶化すような、フレイのくぐもった笑い声が聞こえた。
「何が可笑しい?」
「いやねえ、君達の会話があまりにもピント呆けしていて笑えたからさ。
中立もへったくれもない。ヘリオポリスが崩壊したのはキラの責任だろ?」
「なっ…何だと!?」
フレイの暴言に、意図せずカガリとアスランの行動が完全にシンクロした。
二人の強い敵意の視線も意に介さずに、フレイはアスランに身体ごと向き直る。
「アスラン君に聞こうか?君達は例のMSを奪う際に、ユニウス7の意趣返しに、
ヘリオポリスの住民をジェノサイド(大量殺戮)する命令でも受けていたのかい?」
そのフレイの大胆すぎる質問に、一瞬、アスランは息を呑む。
次の瞬間、怒りで顔を真っ赤に震わせたアスランは、大声で抗弁した。
「ば…馬鹿な!そんな筈はあるか。連合のMSさえ奪えればそれで良かったんだ!」
「そう。つまり素直に五機のMSをザフトに差し出してさえいれば、君達は大人しく
ヘリオポリスから出て行ってくれたわけだ。ところが、運が良いのか悪いのか、
あのコロニーには、ずば抜けた才能を持つ一人のコーディネイターの少女が住んでいた」
フレイは、敢えてそこで一端論を切る。アスランとカガリの貌に不愉快さを含んだ理解
の色が広がっていく。この先に展開されるであろう、フレイの仮説を読み取ったからだ。
フレイは、キラの強固な抵抗こそが、ザフトに危機感を与え、敵の再攻勢を呼び寄せたと
主張しているのだ。感情論さえ差し引ければ、確かにそれほど的外れの論拠ではない。
「ここから先は、言わなくても判るだろう?とにかく、キラが余計な奮戦をしなければ、
ヘリオポリスの被害は最小で済んだと思うよ。まあ、その際には、多分キラとその仲間達
(トール達ヘリオポリス組)も、浮沈艦(AA)と共にお陀仏だったと思うけどね」
「お前なあ、ヘリオポリスは壊れなくても、その時には、お前も一緒に死んだんだぞ!?」
クルーの一員でありながら、アークエンジェルの撃沈を他人事のように捉えているフレイ
に、カガリはそう呆れたが、彼はフレイ入隊に纏わる前後の事情を知らな過ぎた。
「残念ながら、そうはならなかったよ。僕は当初は避難用のシェルターにいて、
アークエンジェルに拾われたタイミングは、ヘリオポリスが崩壊した後だったからね。
仮に、命運を共にしていたとしても、この件に母さんが巻き込まれない方がマシだったさ」

「母さん?」
まるでB型人間同士の会話のように、議論中に目まぐるしく題材が入れ替わり、
アスランはつい反射的に、己にも所縁の強い単語に反応した。
「僕の母は、連合では外務次官という結構なお偉いさんでね。アークエンジェルを
迎えにきた第八艦隊の先遣隊のモントゴメリという戦艦の中にいたんだ。
アスラン君も知っての通り、モントゴメリは宇宙の塵と化してしまったけどね」
フレイの態度は、さほど恨みがましくなく、むしろ淡々と供述していたが、その内面に
渦巻く怨念の質量はアスラン達の想像を大きく絶していた。フレイは、母の死の責任者と
彼が信じた、キラとその想い人を同士討ちさせようと、色々と画策し続けてきたのだから。

「そ…そうだったのか」
アスランは何とも言えずに言葉を濁した。彼自身も血のヴァレンタインで母を失った
身だったので、戦争だからの一言で全てを済ませるには、暗澹たる想いがあった。
「同情はいらないよ。母さんを守れなかったのは、僕に力と知恵が足りなかったからさ。
もっと早く君の婚約者を人質にする案を具申していれば、運命も変えられたのにね」
「人質って……!?あの時、ラクスを人質にさせたのは、お前の入れ知恵だったのか!?」
フレイを見下ろすアスランの瞳に、露骨な嫌悪の色が浮かんだ。
と同時に、いかにもこのペテン師が考え付きそうな所業だと奇妙な納得もした。
ただ、フレイと知り合う以前とは異なり、フレイの醜悪な行為を絶対悪として
切り捨てるには、彼と同じく母親を失った身分としては、些か複雑な心境だ。
肉親の生命が賭かれば、誰だって悪魔に魂を売ってでも救いたいと願うのが心情だろう。

655キラ(♀)×フレイ(♂)・45−6:2004/06/05(土) 17:30
「少し脱線してしまったね。話しを元に戻そうか。とりあえず、ヘリオポリス崩壊の責任
の是非は置いておくにしても、キラはあの時、死んでいた方が本人の為だったと思うよ。
彼女が慕っていたアスラン君は敵として襲い掛かってくるし、遣りたくもない人殺しに
何度も手を血で染めている。これじゃ、生きていても幸せなんて言えないだろう?」
何よりも、僕のような悪党に付け狙われて、人生を狂わされることもなかった筈さ。
フレイは心の中だけで、多少の自嘲の感情と共に、さらに業の一つを追加した。

「何を偉そうに!キラに人殺しを強要させているのは、お前たちナチュラルだろうが!
それに、お前は本当にキラの彼氏なのか!?」
母の件では同情して、フレイにそれなりのシンパシーを示したアスランだが、相手が
キラとなれば話しは別だ。盗人猛々しい理論を振り翳した上に、キラの恋人を詐称しな
がらも、彼女の未来を全面否定する薄情極まりないフレイに、当然の如く切れ掛かる。
「彼氏だからこそ、尚更僕は、今のキラをこれ以上見てはいられないんだよ」
フレイはアスランの激発をやり過ごすと、今度はカガリに万感たる想いを訴えた。
「カガリ君。君はさっき自分がキラなら、力の行使を躊躇わなかったと主張していたよね?
けど、何の迷いも葛藤もなく人を殺せるキラなんて、そんな怪物はもうキラじゃないだろ?
悪鬼のような巨大な力を持ち、その己の力に脅えながらも、仲間を守る為に、健気にも
戦い続ける、泣き虫でお人好しの優しい娘。それが、キラという女の子じゃないか?」
カガリは唖然として言葉が出てこない。キラに悪意を抱いていると思われたフレイが、
意外にも、キラという人間の本質を理解してあげていたという事実に、驚かされたからだ。

「もしこの先、キラが冷酷な戦場に適応して、彼女の中から、泣き虫のキラが消失する
としたら、それは、単純な肉体的な死よりも、はるかに辛いことだと僕は思うけどね」
『キラを、キラのままでいさせること』
それは、フレイの今回の一連の計画の中でも、最も留意した点の一つである。
痛みも悲しみも感じない機械人形(オートマタ)に復讐した所で、何の意義がある?
故にフレイは、キラを慰める際、得意の口八丁手八丁で、キラの行為を自己正当化させて、
彼女の罪悪感を消し去る事も可能だったのだが、敢えてそうせずに、借金生活者のような
「生かさず、殺さず」に近い状態をキープして、血の色で真っ赤に侵食されつつあった
キラの心のキャンパスを、原色(純白)そのままに留めておくように腐心してきたのだ。
フレイの真の目的を別とすれば、今現在、キラがキラ自身のままでいられたのは、
皮肉にもキラの破滅を願っているフレイの功績だった。今更ながらに、その事実を
思い知らされたカガリは、己を害しようとするフレイを必要とせざるを得ないという
矛盾を抱え込んだ妹の不幸を思い煩って、身を焼かれるような想いを味わった。


「フレイ、確かにお前はキラの事を、誰よりも本当に良く理解している」
今のカガリには、さっきまでのような誰彼構わず見境なく噛み付いてきた狂犬のような
雰囲気は欠片もない。彼に似合わぬ憂いを帯びた表情で、大きな溜息を吐き出した。
「それでも、お前はキラを大切に想っていない。お前はキラを抱いたというのに…」


何だって、今、コイツは何て言った!?
…た。 …いた。 …抱いた。 …を抱いた。 …ラを抱いた。 キラを抱いた!?
アスランは、自分の身体全体からスーッと血の気が引いていくのを感じた。
皮肉にも、今の放心したアスランの貌は、キラが、ラクスがアスランの婚約者だと
知った時の姿と瓜二つだ。お互いを想い合っていながらも、双方共にその事実に気付かず、
何度もすれ違いを繰り返すのは、古今東西のあらゆる恋愛活劇で愛用された黄金の不文律
ではあるが、アスランは今まさしく、その洗礼を最悪に近い形で浴びようとしていた。

656キラ(♀)×フレイ(♂)・45−7:2004/06/05(土) 17:30
おやおや、こいつは手間が省けたみたいだな。フレイは軽く苦笑する。
さて、これからどうやって、キラとの本来の仲について切り出そうかと、フレイが思案
していたところに、わざわざカガリ君の方から勝手に爆弾を投下してくれるとは。
カガリ自身は、愚痴に近い形で放たれた自分の言葉の重みを全く理解していないようだ。
プレイボーイのフレイは処女貞操願望など持ち合わせてはいないが、恋愛に手馴れてない
童貞男子の中には、意外と女性に対して潔癖な幻想を抱く者も存在することを、経験上
悟っていた。果たしてアスラン君はどうだろう。試してみる価値はありそうだ。

「そういえば、アスラン君。君の方はどうだったか知らないけど、
キラはどうも、本当は君の事が好きだったみたいなんだよね」
フレイは敢えて「過去系」で、キラの気持ちを代弁し、虚ろだったアスランの
瞳に強い動揺が走る。

「はじめて、キラとベッドを共にした晩だったかな?
行為の後に、「アスラン、アスラン」て、キラにシクシク泣かれちゃってね。
あの時は本当に参ったよ。もしかしてメロドラマに出てくる間抜けな間男の役を
演じてしまったのかと思ってさ」
フレイは、実際に在った事実を少しばかり脚色して、効果的な寝取り物語を演出する。
一瞬、フレイの頭の中に強い警告信号が灯ったが、アスラン君の真意を確かめる絶好
の好機は今をおいて他にない。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」の諺通り、多少の危険
に目を瞑って、フレイは、彼の心の洞窟のさらなる奥へと、無造作に足を踏み入れた。

「けど、最近、ようやくキラの心が僕の方に振り向いてくれたみたいで良かったよ。
やっぱり、身体の結び付き何度も重ねて、お互いの心の絆を強めることによって、
かつての少女時代の憧憬を単なる過去の存在へと押し遣って…」
フレイの舌はそれ以上回転することは出来なかった。フレイよりも小柄なアスランが、
フレイの襟首を掴むと、片腕だけの力で、中背のフレイをそのまま宙吊りにした。


「ア…アスラン君?」
バイオハザード警報が、大きなサイレンの音を打ち鳴らして、頭の中を駆け巡っている。
洞窟の中には、確かに、危険に見合うだけの価値を持った虎の赤子が大量に眠っていた。
ただ、お宝の虎児を発見する際に、フレイは親虎の尻尾を加減抜きで踏み潰してしまった。

「僕がここでアスラン君に殺されたら、キラは僕の仇を討ってくれるのだろうか?」
フレイがそんな埒も無い考えを巡らせた刹那、彼の顔面を鈍い衝撃が縦に貫いた。

657私の想いが名無しを守るわ:2004/06/05(土) 17:59
男フレイキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
一番好きなシリーズです!
男3人の痴話げんかはどこまで行くのか、目が離せません。
フレイ様、小気味いいくらい憎たらしいですね。
種2でこういうキャラが出てくれれば最高ですのに。

658夢と希望・3:2004/06/05(土) 22:11
「え・・・?フレイ?」
と、キラは呟いた。
この場面で不謹慎だがなんだか嬉しかった、一目惚れしている少女に守られている気がした。
「銃を下ろしなさい」
マリュ−が命じた。
「そう驚くことでもないでしょう・・・へリオポリスは中立国のコロ二−だった、戦火に巻き込まれるのが嫌で逃げてきたコ−ディネイタ−が不思議ではないわ」
その言葉に渋々ながらも兵士達は銃を下ろした。
「悪かった、とんだ騒ぎになっちまって」
と、騒ぎを起こしたムウが悪気がない口調で言った。
「だってさ、初めてにしてはあの機体の操縦凄すぎから気になったんだよ」

「おいおい無茶言うなよ!」
ムウが大きく手を振った。
「ですが・・・ストライクの力は必要かもしれません、ですから・・・」
「冗談だろ?無茶言わないでくれ!あの坊主のOSのデ−タ見てないのか?あんなもんが俺にというより・・・普通の人間に扱えるかよ!」
困ったようにマリュ−とナタルは下を向いた。
「あのな、もし戦闘になったら、あの坊主がめいっぱいまで上げた機体の性能、そしてそれを完全に使いこなせるパイロット、その両方がなきゃ、ザフトにはとても対抗できないで」
それは必然的に悲しい一つの結論を出していた。
ア−クエンジェル内に設けられた居住区の一室で、少年達は不安に肩を寄せ合っていた。

「私達・・・どうなるのかしら・・・」

抑えようのない不安から、ミリアリアからこぼれた。
ヘリオポリスが崩壊しているところを彼女らも船内のスクリ−ンから目撃していたのだ。
これまでその存在を意識したことさえない確固たる現実が、目の前であまりにも脆くに崩れ去るさまを。
住み慣れた場所を失い、親の安否も知れない、こうして地球連合軍の軍艦に乗っているからには、いつまた戦闘が始まるとは限らない。
「キラか・・・」
カズイが呟いた、そして寝棚で眠っているキラを見る。
「この状況で寝られちゃうなんて凄いよな・・・」
「疲れてるのよキラは、ほんとに大変だったんだから」
ミリアリアがそう言うと、カズイは小さく笑った。

659夢と希望・4:2004/06/05(土) 22:44
「大変だったか・・・キラにはあんなことも「大変だった」ですんじゃうんだもんな」
「なにが言いたいの?カズイ」
と、とがめるような視線を向けてミリアリアは言った。
「別に・・・たださ、キラ、OS置き換えたって言ってたじゃん、アレの・・・それっていつだと思う?」
「いつって・・・」
ミリアリアは考えた。
キラだって、ストライク・・・あのモビルス−ツのことは知らなかった、OSを置き換えたのはあれに乗り込み、戦闘が始まってすぐにということになる。
戦闘の様子がフレイを除く全員が見ていた。
その状況を見れば説明する必要はないだろう。
「コ−ディネイタ−・・・つまりザフトにはそんなばかりなんだぜ・・・そんな奴らに地球軍は勝てるのかよ」

<敵艦影発見!第一戦闘配置!軍籍にあるものはただちに持ち場につくように!>
切迫した艦内アナウンスに、ミリアリア達ははっと顔を上げる。

「戦闘になるの・・・?この艦」
<キラ・ヤマトは艦橋へ、キラ・ヤマトは・・・>
それを聞いて、ミリアリアはそっとト−ルに話しかけた。
「キラ・・・どうするのかな」
サイが小さく呟いた。
「あいつが戦ってくれないと・・・困ったことになるんだろうな・・・」
そんな中、ト−ルは何かを考えていた・・・。
そしてミリアリアがその腕を揺すった。
「ねえト−ル・・・キラはこれから戦場に行くのよ?それなのに私達だけ・・・」
「できることをやれか・・・」
フラガがキラに先程言ったのだ。
ミリアリアは皆の顔を見回り、皆がうなずくとブリッジに向かった。

660私の想いが名無しを守るわ:2004/06/05(土) 23:34
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
おかえりなさいまし
アスランを本気で怒らせたフレイ様(♂)どうなってしまうんでしょう。
誰かフレイ(♂)イラ描いてほすぃ

661私の想いが名無しを守るわ:2004/06/05(土) 23:51
キラ(♀)×フレイ(♂)キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
自分も一番好きなシリーズです。
種とは別のもうひとつの種として楽しませて頂いてます。
ぜひ完結してくだせぇ!

662さよならトリィ 4/8:2004/06/06(日) 07:00
[フレイ、トリィを部屋に連れて行っておいてくれ]

オーブでキラと別れた。

修理のためオーブに寄港したアークエンジェル。そこでのヘリオポリスの学生の両親との面会。
だけど、私には誰も会いに来てくれる人はいない。ママは小さいころ死んだし、もう、パパも……
当日、両親面会に行かずに、私のいる部屋に来たキラ。それに、私は同情されたと思って
激情を爆発させた。

「辛いのはアンタの方でしょ! 可哀想なのはアンタの方でしょ!
 可哀想なキラ…… 独りぼっちのキラ……
 戦って辛くて…… 守れなくて辛くて…… すぐ泣いて……
 なのにっ!! なんで私がアンタに同情されなきゃならないのよ!」

感情のまま、言葉を投げかけて、そのままキラの胸で涙を流していた私の耳元で呟くキラの言葉。
二人の関係は……間違った……

…… そう、そうよ!…… 間違いよ!!
…… そんなの最初っから分かってるわよ!…… だけど …… だけどっ!!!

私はキラを突き放し部屋を飛び出そうとする。痛い、心が痛い。なんでよ、なんで、私まで
心が痛いの? キラ一人傷つけばいいんじゃない。キラ一人可哀想ぶってればいいんじゃない。
なのになぜ?

開けたドアの前で振り返った時、トリィは辛そうに俯くキラの肩で、キラに話しかけていた。
トリィはキラを選んだ。キラを慰めている。当たり前だ。私が辛い言葉でキラを傷つけたのだから。
可哀想なのはキラ。悪いのは私。キラを復讐に利用していた私。トリィが慰めるべきなのはキラ。
トリィはキラのものなんだから。

部屋を飛び出した私は、涙を流しながら、目的もなく、ただ通路を走っていく。
自分でも、どうして、こうなったのかさえ分からずに……

グルグルと通路を歩き回って、行くところが無くて。また、私はキラの部屋の前に立っていた。
躊躇いながら、パスコードを入力し、ドアを開ける。部屋は真っ暗だった。キラはいなかった。
トリィもいなかった。キラはトリィまで連れて行った。私は、もう顧みられることは無い。
終わりなんだ。もう何もかも。

* * *

アークエンジェルはオーブを出発した。
私は行くところが無い。今さら、ミリアリアと同室の部屋なんて顔を出せない。
ただ、夜中じゅう、通路を彷徨い続ける。空いている仮眠室で、つかの間の眠りに落ちる。

トリィもいない。私に話しかける人も、私の話を聞いてくれる人も誰もいない。ただ、一人
彷徨い続ける。食堂では、みんなが談笑している声が聞こえる。私は、その輪の中に入ることもできず、
一人寂しく立ち去るしかない。

私は何をしているの? なんで、こんな想いをしなくちゃいけないの? 誰が悪いの?
誰か答えてよ。

深夜、歩き回って行き当たった通路の先、モビルスーツデッキ。見下ろすと、そこに、
キラとトリィは居た。キラも、暗い表情をしている。何かに悩んでいる。私と同じように?
何かの答えを求めて? 何を求めて?

敵襲を告げるアラートの響く中、私はキラとトリィを追った。

「キラ、私……」
「ごめん、後で…… 帰ってから」

そう言ってキラは走り出した。トリィも付いて行く。二人とも行ってしまう。やはり、私には誰も……

「トリィ、お前は帰ってろ。フレイ、トリィを部屋に連れて行っておいてくれ」

それに、私は許されたような気がした。飛んできたトリィを手で受け止めると、軽くキラに頷いた。
それを見て、また、キラは駆け出した。

私は揺れ始めた艦の通路を、壁に寄りかかりながら歩いて、トリィと一緒にキラの部屋へ戻った。
パスコードも変わっていない。キラの部屋は何も変わっていない。

私はベッドに飛びこんで毛布をかぶった。トリィも毛布に潜り込んできた。
恐い戦闘。でも、これが過ぎれば、何かが変わると思っていた。

戦闘が終わった。キラが帰って来る。足音が部屋に近づく。私は弾かれたようにベッドから飛び起きた。
ドアの前で期待を胸に踊らせる。トリィも、私の肩に乗って、ドアを見つめる。

でも、足音は通り過ぎた。

私はドア脇の机に座り込み、頭を組んだ腕の間にうずめて、ドアの向こうの足音に聞き耳を立てながら、
目の前のトリィを見つめ続ける。

足音は通り過ぎ続ける。次の足音も、その次も、その次も……

「キラ、遅いわね。何してんるんだろう……」
<トリィ……>

私はトリィに呟きながら待ち続ける。
キラが帰ってくれば、何かが分かる。私の答えが見つかるはず。そう思って、ひたすら待ち続ける。

でも、その答えは得られなかった。キラは帰って来なかったから……

663私の想いが名無しを守るわ:2004/06/06(日) 10:45
さよならトリィも再開ですね。
人の痛みを知るフレイたま。
本編の補完SSとして萌えさせていただいております。
こういう形でキャラの気持ちを最初からなぞり直してもらえると
ファンとしては嬉しい限りです。
半分まで読ませていただきましたが最後まで頑張ってくださいね。
(あ、もう書き終えられているんでしたっけ)

664夢と希望・5:2004/06/06(日) 21:42
ストライクのコクピットで、敵機接近の警告音が鳴り響いた。ビ−ムライフルを構える。
真紅の機体が接近してきた、イ−ジス(アスラン)だ。

「アスラン!?」
<キラ!キラだな・・・>

あの声が頭の中に響いた。
<やめろ!やめるんだキラ!俺達は敵じゃない、味方だ、仲間なんだ、そうだろ!?>
スピ−カ−からの声にキラははっとする、そうだ・・・なぜ?なぜ僕達は友達なのに戦ってるんだろうか。
<同じコ−ディネイタ−のお前がなぜ地球軍にいる!?なぜナチュラルの味方をするんだ!?>
<僕は地球軍じゃない!でも・・・あの艦には友達が・・・大切な人達が乗ってるんだ!>
そんななか別の二機がア−クエンジェルに攻撃していることにキラは気づき掩護に向かおうとした。
しかしイ−ジスが割り込んでくる。

<やめろ!お前は俺達の味方だ!>
<アスラン・・・!君こそなんでザフトになんか!戦争なんか嫌だって、君だって言ってたじゃないか!>
<状況も分からぬナチュラルどもがこんな物を作るから・・・>

そんなとき、一機の機体が割り込んできた。
二人は我に返りかわす。

<なにをモタモタやっている!?アスラン!>
聞き覚えのない声が割り込んできた。
「これは・・・デュエル!?じゃこれも!」

バスタ−とブリッツに取り付かれたア−クエンジェルは、回避行動を取りながら必死の防戦につとめていた。
爆雷が撃ち出され、それがさらに炸裂して細かな粒子をまき散らす。
新型艦ア−クエンジェル、大天使の火力にバスタ−、ブリッツも攻めあぐねている様子だ。

その頃、ストライクのコクピットでは、息を切らし、必死で機体をコントロ−ルしているキラがいた。
しかし・・・。
「しまった!エネルギ−切れ!?」
フェイズシフトが落ちた・・・。
その隙を見てデュエルが突っ込んでくる。
やられた!しかし次の瞬間キラのストライクはイ−ジスに捕らえられていた。

665夢と希望・6:2004/06/06(日) 22:33
<なにをするんだ!?アスラン!>
<ストライク、捕獲する!>
<なにを馬鹿なことを言っている!?命令は撃破だぞ!>
<捕獲できるなら捕獲したほうがいい!撤退する!>
イ−ジスはストライクを捕獲したまま離脱している。

<アスラン!どういうつもりだ!?>
キラが叫んだ。
<このまま連行する、お前も一緒に来るんだ>
<ふざけるな!僕はザフトになんか行かない!>
<いいかげんにしろ!>

アスランの一声にキラは黙った。
<このまま帰るんだ!でないと・・・僕はお前を撃たなきゃならなくなるんだぞ!そんなことはしたくな!俺はもう大切な人には誰にも死んでほしくないんだ!>
<アスラン・・・なら、君が来るんだ・・・>
<な・・・?なんだと!?>
<君が地球軍に来るんだ・・・アスラン、君もおいでよ>
<な!?馬鹿なことを言うな!>

その頃。
「あのキラって子・・・大丈夫なのかしら・・・?」
居住区に一人取り残されていたフレイはベッドの中で心配そうに呟いていた。

ムウのネビウス・ゼロが二機に近づいてくる。
<離脱しろ!ア−クエンジェルがランチャ−ストライカ−を射出する!>
<キラ・・・く!>
ストライクはイ−ジスを一目見るとそのまま宙域を離脱した。
そんな中メビウス・ゼロを迎撃していたイ−ジスのアスランは先程のキラの言葉が頭をよぎっていた。

無事帰還したキラ、その後のア−クエンジェルはアルテミスへ入港した。
しかし・・・ユ−ラシアの軍には面白く思われていなかったのか、いろんないざこざがあった。
そんなときに限っていいことは起こらないもので、ザフトが攻めてきたのだ。
そして結局アルテミスは壊滅したがア−クエンジェルは無事で済んだのである。
戦闘ばかりで心が疲れていたキラ、この後の謎の少女の出現によりまた・・・。

666私の想いが名無しを守るわ:2004/06/06(日) 23:04
>>さよならトリィ

フレイ様せつな杉…
折角スレ違っていた二人が少し近づいたと思ったら…
凄くいい作品ですね。
うわ〜〜〜ん

667さよならトリィ 5/8:2004/06/07(月) 06:42
[一緒に来るんだフレイ。約束の地へ]

「キラはMIAさ。多分、死んだんだよ」
カズイの言葉が、いつまでも耳に残っている。

頭の中はキラのことばかり考えていた。何で、そうなの?
キラは、私の思惑通り、戦って死んだんじゃない。何でそうなるの。何で、こんなに心が苦しいの。

<トリィ……>

トリィが慰めるような声を出す。
そうよ、私は復讐を終えたのよ。これで終わったの。戻らなきゃ。元のところに。

私はキラの部屋を出た。肩にトリィがとまった。それを私は追い払おうともしなかった。
ごく自然に。既に、私の一部であるかのように。

通路を歩き回って捜した。医務室の前で、やっと見つけた。サイを……
この前の戦闘で、同じようにトールを亡くして、悲しみに震えるミリアリア。
サイは彼女を癒すように付き添っていた。

「サイ…… あの……」サイに声をかけた。

サイが振り向く。その時、トリィが急に私の肩を飛び立ってサイの肩にとまった。身じろぎするサイ。

いや、違う! 私にはキラが見えていた。幻想のキラが……
私に明るい微笑みを返すキラ。現実に無かった光景。そのキラに私は吸いこまれそうになる。

── おいで、フレイ

キラが、そう囁いたような気がした。トリィが私のところへ飛んできた。

── 一緒に来るんだフレイ。約束の地へ。

「イヤッ! イヤ!!」
手を振り回してトリィを叩き落としそうになった。トリィは、私の手をかいくぐって、
通路を飛び去って行った。私は激しく動揺して、息を乱していた。

「やめなよ」サイは憮然とした表情で私に声をかけ、「後で」と言い残してミリアリアを
連れて医務室に入った。

私は、まだ呆然として立っていた。キラの亡霊? キラは私を呼んでいるの? 私を恨んで?
トリィが、また戻ってきて天井近くを滑るように飛び回っている。トリィ、あなたは一体何を言いたいの?

ほどなく、サイは医務室から出てきた。

「俺に、何?」
「何って……」私は言葉に詰まる。

サイは、私によそよそしい。私を慰められないと言う。他の人と話せって? サイ以外に
話せる人がいる訳ないじゃない。どうして? 私は帰ってきたのに、なんでサイはこんなことを言うの?

「サイ! けど、私、ほんとは…… あなたも分かってたじゃない。私ほんとはキラのことなんか」

「いいかげんにしろよ! 君はキラのことが好きだったろ」サイは、はっきり言った。

「違うわ」
「違わないさ!!!」
思ってもみなかったサイの怒鳴るような声。厳しい表情。それに、私は気圧された。

「ちがうぅぅ! 違う、違う」
私は叫んだ。首を振りながら自分に言い聞かせるように叫んだ。そんなはずが無い。そんなはずが……
私がキラのことを、そんな風に思っているなんて、そんなはずが無い!

私はキラが憎いのよ。キラに復讐したのよ。復讐を果たしたのよ。だから……
違うのよ、違うって言ってよ。そうじゃないと私、私……

トリィが、またサイの肩に舞い降りた。そして、私に視線を向ける。真実を見通すような
まっすぐな目で。トリィ、あなたは……

その時、医務室で大きな音がした。悲痛な叫び声。トリィは、また飛び立ち、サイは、急いで
医務室に戻った。後を追った私が見たものは、手にナイフを持ってサイに取り押さえられている
ミリアリア。医務室の奥には、頭から血を流している捕虜のコーディネーター。
ミリアリアは、私が見たことも無いような形相で叫んでいる。トールを失った悲しみ、憎しみ。
それが、私の心を痛ませる。それは、私にも、やがて……

ふと、机の半開きの引き出しに、銃が入っているのが見えた。私は、感情に突き動かされるまま、
それを手に取った。

「コーディネーターなんて、みんな死んじゃえばいいのよ!」

私は銃を、その捕虜に向けて叫んだ。復讐のために。

…… キラを失った復讐のために ……

さっきのキラの亡霊。あれは、キラが恨んでいるのでは無い。私が呼んだのだ。
キラを呼んだのは私なのだ。私がキラを求めているのだ。

トリィは、そんな私を通路でジッと見ていた。トリィの言いたかったことって、そういうことだったの?

668夢と希望・7:2004/06/07(月) 22:29
「あそこの水を・・・!?本気なんですか?」
ア−クエンジェルのブリッジに戻ったキラは、驚愕の声に上げた。
「あそこには一億トン近い水が凍りついているんだ」
なんの理由も説明しない事実を、ナタルが口にする、彼らはユ二ウス・セブンの残骸から水を運ぶことを決定したのだ。
「でも・・・あのプラントは何十万人もの人が亡くなった場所で・・・!」
キラは懸命に抗議した、あの場所は彼にとっても特別な意味を持っているのだ。
マリュ−は言った。
「気持ちは分かるけど・・・水はあれしか見つかってないの・・・」
キラは仕方なく黙る。
「俺達だってできればあそこには踏み込みたくないさ」
勢いづくようにムウは言った。
「けど、しょうがねえだろ!俺達は生きてるんだ!ってことは生きなきゃなんねえってことなんだよ!分かるか!?」

地球軍に壊された大地、虐殺されたコ−ディネイタ−の記念碑に、キラは祈りを捧げた。
だが、僕に祈る資格なんてあるのか?事情があるとはいえ虐殺を行った地球軍と共に戦っている僕に・・・。
殺したくなんかない、ただ守りたいだけなのに、頭の中に赤い髪の少女が浮かぶ。
その時・・・電子音が鳴り始めた、敵か!?
だがモニタ−に写っていたのは敵の機影ではなかった。

ア−クエンジェルの格納庫には、キラが見つけた救命ポットが横たわっていた。
ハッチはかすかな音を立てて開いた。
兵士達が一斉に銃を構える。
<ハロ・ハロ・・・!>
間抜けな声を発しながら出てきたのはピンク色の丸い物体だった。
ぱたぱたと耳が羽ばたくように動き、球の真ん中には目が二つ光っていた。

「ありがとう・・・ご苦労様です・・・」

柔らかなピンクの髪と、長いスカ−トの裾をなびかせて、ハッチから出てきたのは、天使のような可愛い少女だった。ほんわりと白い肌、ほっそりした腕、優しく愛らしい顔は見るものを幸せにしそうだ。
「あら・・・あらあら?」
彼女をキラは抱きとめた。
「ありがとう」
間近で彼女がにっこりする。キラはつい顔が赤くなった。
「あら?」
彼女はあたりを見回した。
「まあ・・・これはザフトの艦ではありませんのね?」
全員が大きなため息をついた。

669夢と希望・8:2004/06/07(月) 23:04
士官室の中にいたピンクの髪の少女はキラの姿を見つけると手を振った。
顔を赤くしたキラは手を少し振るとそのまま去って行った。

「私はラクス・クラインですわ、これは友達のハロです」
少女はマリュ−達の前にピンク色のロボット、ハロを差し出して紹介する。
ムウがため息をつく、どうもこの少女の前では調子がでない・・・。
「クラインねえ・・・そういやプラント最高評議会議長もシ−ゲル・クラインといっていたような」
ムウが思い出したように呟いた。
それを聞いたラクスは嬉しそうに。
「あら、シ−ゲル・クラインは私の父ですわ」
無邪気というか、天然というか・・・自分の置かれた状況を分かっているのないないのか・・・こんなに認めるとは・・・三人はまたため息をついた。
「・・・そんな方が、どうしてこんなところに?」
「ええ、私、ユニウス・セブンの追悼慰霊のために事前調査に来ておりましたの」
黙って聞く、やっと本題に入ったようだ。
「そうしましたら、地球軍の艦と出会ってしまいました、臨検するとおっしゃいましたので、お受けしましたのですが、地球の方々には、私どもの目的がお気に障ったようで・・・ささいないさかいから、船内はひどいもめごとになってしまいましたの・・・」
少女の表情が悲しく曇った。
「私はポットで脱出させられたのですが・・・あのあと、どうなったのでしょう、地球軍の方々が、お気をしずめめてくださってい下さっていればよろしいのですが・・・心配ですわ」
この宙域に、ごく最近破壊されたような民間船があったなどと、言う必要はない、その船に砲撃の痕があったなどと・・・言う必要はない・・・。

仕官達が立ち去るとラクスは壁のモニタ−に近づいた。船内の様子が写し出されている。砕かれ・・・荒れ果てた大地が真空の闇にさらされているのが見える。
ラクスはハロを膝の上に抱き上げると、手を合わせ目を閉じるとささやきかけた。
「祈りましょうね、ハロ・・・どの人の魂も安らぐようにと・・・」

その一時間後である。
部屋に連れられたラクスは・・・。
「お腹がすきましたわ・・・食事はくるんでしょうか・・・?」
プシュ−とドアが開いた。
「あらあら?貴女が?食事をお持ちしてくださいましたのね、ありがとうございます、はしたないことを言うようですけど、私ずいぶんお腹がすいてましたの、よかったですわ」
「どうぞ・・・」
入ってきたのは赤い髪の少女だった。
「私はラクス・クラインですわ、貴女は?」
「フレイ・・・フレイ・アルスタ−よ・・・よろしくねラクスさん」
フレイは優しくラクスに微笑んだ。

670さよならトリィ 6/8:2004/06/08(火) 08:19
[トリィ、ずっと一緒に居て。約束して、絶対離れないって]

私は復讐の心に突き動かされるまま、コーディネーターに向けて銃を撃った。

だけど、ミリアリアに突き飛ばされて、弾は外れて、天井の照明を壊しただけだった。
蛍光灯の破片が散乱する中、私に覆いかぶさるように涙を流しているミリアリア。
どういうことなの? ミリアリアの考えが分からない。

私はミリアリアに問いかける。
「なんで邪魔するのよ…… アンタだって私と同じじゃない」

「違う、私…… 違う……」
ミリアリアは涙を流しながら、ただ、それを呟くだけだった。

いつの間にか、自分も涙を流しているのに気がついた。復讐の高揚感も消えていた。
手に残る銃の衝撃が、急に恐ろしく感じられた。

騒ぎを聞いて医務室にクルーが集まる中、バジルール中尉が仕切って、私とミリアリアは
守られるように、それぞれの部屋へ戻された。私はキラの部屋へ…… トリィも一緒だった。

キラの部屋で、電気も付けず暗いまま、私は、まだ銃の衝撃が残り震える手を、トリィに、
啄ばませながら、さっきのことを思っていた。

…… 私がキラを呼んでいる。私がキラを求めている ……
それは、もう隠すことはできない。何で、今になって……

グルグルと思考だけが空回りする。うわ言のようにトリィに話しかける。

「ねえ、トリィ、何で今ごろ気がつかなきゃいけないの? なぜ、気づかせたの?」
<トリィ!>

「もう居ないのに。キラは居ないのに。何で今ごろなの」
<トリィ!>

「キラ、なぜ居なくなってしまったの。あんなに強いのに。あんなに一緒だったのに」
<トリィ?>

「キラの馬鹿…… 馬鹿、馬鹿!! もうちょっと居てくれたら。私……」
<トリィ! トリィ!>

私は記憶の中のキラの姿を追っていた。

ヘリオポリスにいる頃のキラは、友達と優しい目で笑い、時々、私に向かって遠巻きに熱い目を向ける。
だけど、私は、その頃のキラのことを、ほとんど知らない。

アークエンジェルに乗ってからのキラは、私の手の中にあった。いつの間にか、キラの仕草の癖や、
食べ物の好みも、みんな分かっていた。キラが心のうちに持つ痛みさえも……
…… ただひとつ知らなかった。本当に明るく笑っているキラ……

「トリィ、キラに会いたい。キラのこと、もっと知りたい。みんな知りたい」
<トリィ>

「教えて、教えてよ、トリィ! あなたが、気づかせたんだから。教えてよ!」
<トリィ! トリィ!>

トリィに答えられる訳が無い。それが分かっていて、私は問いかけずにいられない。

さっきのミリアリアの行動。自分もコーディネーターに復讐しようとしながら、なぜ、私の復讐を
止めたのかは、今でも分からない。でも、ミリアリアに止められてから、私には、もう復讐の心は無かった。
パパの復讐にキラを利用しようとして、キラが死んで、また、その復讐を……
そんなことが、すべて虚しく感じられた。心に、ぽっかり空いた空洞。それを埋めるかのように、
私はトリィに話しかけ続ける。

「私、キラのこと…… キラのことが…… もう、ずっと前から……」
<トリィ!>

「ここにキラと居たことが…… キラと…… トリィ、あなたと一緒に居たことが、私……」
<トリィ……!>

「大切だった。それが…… とても、大切だった……」
<トリィ!!>

私はトリィを手の平に乗せ、そっと頬に当てた。

今の私にはトリィが必要だった。砕けてしまいそうな心を繋ぎ止めるにはトリィが必要だった。
あの時、折り紙の花を手にキラが泣きじゃくった時、私を必要としてくれたように。

「トリィ、ずっと一緒に居て。約束して、絶対離れないって」
<トリィ!! トリィ!!>

トリィの強い声に、私は一時の安らぎを覚えた。

* * *

だけど、私には、その約束さえ守られなかった。転属で、私はアークエンジェルを降りることになった。

「イヤよ! イヤです私! はなしてっ!」

バジルール中尉に手を引かれて、私はサイやミリアリア、マリューさんの見守る中、アークエンジェルを
降ろされた。

トリィは、私に付いて来なかった。サイのところへ行ったまま、私の手には戻って来なかった。
なぜ? どうして? 約束したじゃない。嘘つき! なんで、私と来ないのよトリィ。

嘘つき! 絶対離れないって言ったのに。嘘つき! トリィの嘘つき!!

トリィは私に付いて来なかった……
…… でも、その方が良かったのかもしれない。

なぜなら……
アークエンジェルを降りた私は、ラウ・ル・クルーゼに捕らえられて、ザフトへさらわれたのだから。

671私の想いが名無しを守るわ:2004/06/08(火) 09:32
>>トリィ
フレイ様視線でありながら、フレイ様に都合の良い解釈だけでない
冷静な文体に本当に(フレイ様)がお好きなんだと感じさせられます。
独白も真に迫り、心打たれるものがあります。
書き終えられている作品の分割投下という事で、
とても読みやすく、エンディングが楽しみです。
文章力のある方のSSは読んでいてとても安心いたします。

672夢と希望・9:2004/06/08(火) 21:29
「私ね・・・ほんとはコ−ディネイタ−って本当は好きじゃないのよ」
そう呟いたフレイの表情をラクスは伺った。
「でもね・・・貴女は安心出来るの」

<ハロ!ハロ!>
「ふふ・・・可愛いわね、どうしたのそれは?」
ハロを見ながらフレイは言った。
「ハロですか?これは大切な人に貰ったものですわ」
「大切な人?」
「はい・・・とっても大切な人です・・・愛してるんですの」

「しかしまあ・・・補給の問題が解決したかと思ったら、今度はピンクのお嬢様か・・・」
ムウがマリュ−を見やり、からかうように敬礼する。
「悩みの種がつきませんな、艦長さん」
よくもまあ他人事のように言ってるれるものだ、と思うマリュ−だが、ただ、この頃は彼女もムウのスタイルになれてきた、普段はいいかげんに見えても、いざというとき非常に頼りになる男だ、補給のことだけでなく、これまでだって、もの飄々とした態度も・・・いややめとこう。
「あの子もこのまま、連れて行くしかないでしょうね」
マリュ−はため息をつきながら呟いた。

「じゃあまたねラクスさん!話せてよかったわ!」
「ええ、こちらこそ楽しかったですわ」
部屋から出て行くフレイをキラは目撃した。

673夢と希望・10:2004/06/08(火) 22:05
「あ、駄目ですよ部屋から出たら!」
部屋から出ようとしたラクスをキラは士官室に入れる。
「またここに居なくてはいけませんの?」
フレイを追おうとしていたラクスは寂しそうに呟く。
「ええ・・・そうですよ」
キラは沈んだ気持ちを押し隠し、無理に笑いかけた。
「私もあちらで皆さんとお話ししたいですわ」
そんな顔もまたなんとも愛らしい、キラはまぶしいものを見たように目をそらした。
「これは地球軍の艦ですから、コ−ディネイタ−のこと・・・その・・・あまり好きじゃないって人もいるし・・・」
(たぶん、僕のことも・・・)
口にした瞬間走った胸の痛みをまぎらすように、彼は言葉をついだ。
「ってか、今は敵同士だし・・・だから仕方ないと思います・・・」
なぜ僕は・・・僕はこうやって、ナチュラルの肩を持つようなことを言ってるのだろう、それで彼等に溶け込めるわけでもないのに。
そう思うとますます悲しくなってキラは目を落とした。
「残念ですわね・・・」
ラクスはそんな彼の顔を見上げ、切なげな表情になる、だがそれはたちまち消え去り、すぐに包み込むような笑顔になった.
「でもフレイさんという方は私に優しくしてくれましたわ、励ましてくださいました、食事も持ってきていただいて・・・」
ラクスは嬉しそうに微笑んだ。
「フレイが?そうですか・・・そうなんですか!フレイが・・・」
キラはつい嬉しくなった、フレイが彼女に優しくしてくれたのはなんだか嬉しかった・・・なんで・・・おかしい、そんなこと考えても仕方ないか。
「貴方もとても優しくしてくださいますのね、ありがとう」
「僕は・・・」
キラははっとした、なぜか後ろめたい気分になり、彼は思い切って言った。
「僕も、コ−ディネイタ−ですから」
ラクスは目を丸くし、きょとんと首をかしげた、驚いているのだろう、とキラは思った、そして次にはきっと、「コ−ディネイタ−がなぜ地球軍にいるのか」尋ねるだろう。
だが、キラの予想は裏切られた、ラクスは、不思議そうに訊いた。

「・・・貴方が優しいのは・・・貴方だからでしょう?」
どきん、と、キラの心臓が大きく打った。
・・・この子は、誰なんだろう・・・?
「お名前を、教えていただけます?」
ラクスはほわりと笑う、その笑顔に見入っていたキラは、一泊おいてあわてて答えた。
「あ・・・キラです・・・キラ・ヤマト・・・」
「そう・・・ありがとう、キラ様」
そう呼ばれたとたん、キラは自分が大昔の騎士または伝説の勇者、もとい錬金術師になったような気がした。

674さよならトリィ 7/8:2004/06/09(水) 07:58
[トリィは、こうなることまで知っていたの?]

私はラウ・ル・クルーゼによってザフトにさらわれた。

ラウ・ル・クルーゼ。仮面を付けたコーディネーターの軍人。そして、パパの声のする人。
その人物に、私は、まるで籠に囚われた鳥のように飼われた。私を脅し、部屋に閉じ込め、
自由を奪い、それでいて、自分を頼れば安全だと、私にパパの声で話す。
クルーゼ…… あの人は、一体、何を考えていたの?

周りはザフトの軍人ばかり、少しでも逆らえば、私の命は無い。ただ、クルーゼの言葉を信じて
従い続けるしかない。その状況の中で、私は心を押し殺し、脅えながら生きてきた。

「早く終わらせたいものだな。こんな戦争は…… 君も、そう思うだろ。
 そのための最後の鍵は手にしているが、ここにあったのでは、まだ扉は開かぬ。
 早く開けてやりたいものだがな」

だから、戦争終結を語るクルーゼの想いも、私は信じた。偵察に行くクルーゼから手渡された
鍵と呼ばれるディスク。私は、それを手に平和な頃に想いを馳せた。

そして、作戦室で聞いていた。同じ空域にアークエンジェルが居ることも……
トリィのこと、キラの思い出は忘れなかった。アークエンジェルに帰りたかった。

偵察から帰ってきた時のクルーゼ。仮面が外れている?
激しく苦しみながら、引き出しから、いつも私の前で飲んでいた薬を捜し出して噛み砕くように
飲み込み、獣のような、うめき声を上げる。長髪に隠れた素顔は、私のところからは覗くことは
できない。やがて、クルーゼは慌てて新しい仮面を付け直した。

偵察で何があったのかは分からない。だけど、私は、恐ろしくて逆らえなかった。
次のクルーゼの命令に……

「さて、君も手伝ってもらおうか。最後の賭けだ。扉が開くかどうかのね」

私は、救命ポッドでドミニオンへ…… 戦闘の光の、ただ中へ……
成す術も無い私は通信で、ただ叫ぶ。

「アークエンジェル! 私、私ここ! フレイです。フレイ・アルスター!
 鍵、鍵を持ってるわ私。戦争を終わらせるための鍵…… だからお願い……」

その時……

「フレイ…… フレイっ……」
嘘…… キラの声がする。嘘…… 嘘……

「フレイ!!」
間違い無いキラの声。生きてた?…… キラ、生きてた…… 生きてた!!

「キラ……、嘘……」
私は涙を流して呟く。私の心は、それだけで解放される。それまでの辛い想いも、悲しみも、
すべて打ち消すように。

「フレイィーーー!!」
「キラーーーーー!!」

キラと私の叫びは、暗闇の宇宙を越えて、互いの想いを伝えた。

トリィは、キラが死んだと思って自分を誤魔化そうとする私に、キラへの想いを気づかせた。
それから私は自分自身も死んだも同然の辛さを味わった。

だけど、悲しくても、辛くても、それを乗り越えれば、より強い繋がりが生まれる。
今、キラの声を耳にした私は、それが実感できる。
ひょっとして、トリィは、こうなることまで知っていたの?

「キラ、キラーーーー!」 私は、想いをこめて、いつまでも叫びつづけた。

生きていたキラの声を聞けた…… だけど、ドミニオンに回収された私は、キラの顔さえ
見ることができなかった……

* * *

私がクルーゼからドミニオンへ運んだ鍵のディスク。戦争を終わらせる鍵。そう思っていた。
だけど、それは、核を解放するディスク。さらに悲惨な戦争。あのクルーゼが望んでいたものは……
許されない罪の意識。それを感じながらも、私には、すでに強い意思が生まれていた。

── 会いたい。キラに会いたい!

私はドミニオンへの乗艦を志願した。アークエンジェルを追いかけるために。
昇進し、ドミニオンの艦長になっていたバジルール少佐は、私のことを理解して、
通信士としてブリッジに置いてくれた。

私は、激しい戦争を目の当たりにしながらも、歯を食い縛って、ブリッジからアークエンジェルの
行方を追い続けた。

…… キラに会いたくて。謝りたくて。
私と一緒に居た、みんなに謝りたくて。何も知らなかった私を……

そして、キラに、せめて一言でも、私の想いを伝えたくて。
もしも…… もしも、許してくれるのなら、キラのいる、トリィのいる、あの部屋へ戻りたくて。

そして……
戦争は、そんな私の想いさえ飲み込んだ……

届かなかった。後、一歩のところで…… キラにも…… トリィにも……

675私の想いが名無しを守るわ:2004/06/09(水) 10:27
さよならトリィ作者さま
フレイ様が…!!!
ラスト一回、腹をくくって読ませていただきます
でも涙で前が見えないかも知れない…

676私の想いが名無しを守るわ:2004/06/09(水) 13:42
本編のフレイ様が本当に考えていた事のようなお話ですね>さよならトリィ
短期間でこんなお話が作れる職人さんすごい!
毎日更新を心待ちにしています

677さよならトリィ 8/8:2004/06/10(木) 06:18
[さよならトリィ]

トリィが飛んで来る。私に向かって飛んで来る。

── トリィ……
<トリィ! トリィ!>

── トリィ、やっと会えた
<トリィ!!>

トリィは再会を喜ぶように、私の目の前で翼を盛んに羽ばたいている。トリィの瞳が、私を
ジッと覗きこむ。そんな、トリィに、私は今までに無い笑顔を向ける。解放された私の心は、
とても素直に私を振る舞わせる。

やがて、トリィは私の胸に飛び込んできた。それを私の手は受け止めようとする。
だけど、トリィは私の手をすり抜け、私の胸の中を突き抜けて通り過ぎる。

<トリィ……?>

トリィは不思議そうな顔をする。悲しそうな顔をする。私もトリィの、そんな顔を見て、
少し表情を曇らせる。

── トリィごめんね、私、届かなくて…… あなたにも…… キラにも……
<ト……リ……ィ……>

── ごめんね。トリィごめんね……
<トリィ…… トリィ……>

宇宙。周りは一面の星。既に、そこで繰り広げられていた暴力的な強い光の興亡は影を潜め、
見回す限り、まるで夢のように幻想的な淡い光で彩られている。その中、トリィは、私の周りを
舞うように飛び続ける。

── トリィ、ありがとう。元気づけてくれてありがとう。トリィ、私、あなたに会えて良かった。
<トリィ! トリィ! トリィ! トリィ! トリィ! ……>

トリィは精一杯叫びながら、私の周りを回り続ける。私を逃さないかのように。

だけど、私は別れの時が近づいていることを知っている。
私はトリィに指差した。

── トリィ、キラがいる。私はいいから、あそこまで飛びなさい
<トリィ?>

── カガリとキラの友達が、あっちにいる。その二人をキラのところまで連れて行きなさい
<トリ? トリィ……>

── ここで、お別れよトリィ
<トリィ……>

── 今まで、ありがとうトリィ。私を助けてくれて。私に本当のことを気づかせてくれて。勇気づけてくれて。
<トリ……ィ……>

── トリィごめんね、そんなに、私を助けてくれたのに。私、お返しできなくて……
<ト……リ……>

── 悲しまないでトリィ。私はキラと一緒にいるから。
<トリ……?>

── キラには、さっき伝えたから。私の本当の想いは、ずっとキラの中にあるから。
<トリィ…………>

── さよなら。キラを、お願いトリィ。
<トリィ!>

トリィは、キラの方向に体を向けた。そして、私を、もう一度振り向いた。私はトリィに無言で頷いた。
トリィは飛び去って行った。

── さよならトリィ

それが最後の言葉だった。トリィ、キラ、本当に今までありがとう。
さよならトリィ。

さよならキラ……

678さよならトリィ 作者:2004/06/10(木) 06:32
「さよならトリィ」これで終わります。

最初に、すべて書き上げてから投下を始めたんですが、途中、議論の行方を見守ったり、
それを元に、再度、見直したりして投下が遅くなってしまいました。むしろ、加筆しているうちに、
描写がエスカレートしていった感もあります

テンプレはあるとしても、まだ、仕切り直したスレの雰囲気が定まっていないため、
フレイの心情描写以外の実際に起こった出来事は、本編に忠実であることを心がけました。
そのため、フレイの最後は変えられませんでした。ただ、今までの私の作品では、それから
逃げていただけに、今回、自分なりに、きちんと描けて良かったと思っています。

SEEDのSSを書き始めてから読んだ某小説の書き方の本で、「猫を猫として書く」
という主張がありました。動物を作中の人物の比喩として使うものでは無いと言うことなのですが、
それでも、私の中では、やはり、トリィは、ロボットでも鳥でも無く、『トリィ』という、
ひとつのキャラクターとなっています。そのつもりでトリィの意思が見えるように描いてきました。

これは、前作の長編で、量産のオモチャの改造品という設定改変を加えたトリィでも同じでした。
設定改変は、ミリアリアとも絡めやすくなるという意味合いもありました。

まとめてのコメントになりますが、感想つけてくれた方々、ありがとうございました。
投下の励みになりました。

SSスレも少し落ち着いてきたようですし、また、いろいろな方の作品が集まることを祈っています。
私も、また、なにか思い付きましたら、投下します。

679夢と希望・11:2004/06/10(木) 23:16
「パパが?」
フレイが可愛い笑顔になった。
「ええ、先遣隊と一緒に来てるらしいわよ、フレイのことは知らないでしょうけど、こっちの乗員名簿を送ったわ」
ミリアリアはそう言うとフレイの楽しそうな笑顔に自然と自分も微笑んだ。
ミリアリアとフレイは同室になっている、寝ているフレイをミリアリアが起こしたのだ。

<大西洋連邦事務次官、ジョ−ジ・アルスタ−だ、まずは民間人の救助に尽力してくれたことに礼を言いたい>
マリュ−は思いあたる、フレイの父のことは、ミリアリアから聞いていた、こうして、あとから考えてみると、政府の重要人物の令嬢を保護できたことは、今後の評価に役にたつだろう、キラのおかげだ。
<あ・・・その・・・乗員名簿の中に、私の娘、フレイ・アルスタ−の名があったのだが・・・できれば顔を見せてくれるとありがたい・・・>
ア−クエンジェルクル−達はきょとんとした顔だ、ここは軍艦ということが分かっているのだろうか・・・気持ちは分かるが・・・。
「こういう人なのよね・・・フレイのお父さんって、ね、サイ?」
戻ったミリアリアが告げるとサイは困ったように・・・。
「俺はよく知らないよ・・・」
と告げた。

「これは・・・」
「どうしたの?」
「ジャマ−です!エリア一帯、干渉を受けています!」
それが何を意味するか、誰もがはっきりと分かっていた。
先遣隊は、敵に見つかったのだ。

ア−クエンジェル艦内に、警報が鳴り響いた、自室を飛び出したキラはパイロットロッカ−へと向かう、ちょうどラクスの部屋の前を通り過ぎようとしていたとき、ドアが開いた。
「また!」
どうなってるんだここの鍵は?ここは軍艦だぞ?
ラクスは部屋から完全に出てくると大きな目できょとんとキラを見つめた。
「なんですの?急ににぎやかに・・・」
「戦闘配備なんです、さ、中に入ってください」
「まあ・・・戦いになるんですの?」
「そうです、てか・・・もうなってます」
「キラ様もフレイさんも戦われるのですか?」
どうしてフレイも・・・と思ったが・・・曇りのない淡い瞳で見つめられ、一瞬キラは言葉につまった。
「とにかく、部屋から出ないでください、今度こそ、いいですね?」
せめて優しい口調で言い、ラクスを部屋に押し込み、また鍵をかけ直した。

680私の想いが名無しを守るわ:2004/06/11(金) 11:33
>>さよならトリィ
お疲れ様でした!
フレイ様が死んじゃうという現実は、
彼女のファンの全員が向き合わねばならないつらい現実なんですが…
こういう形のSSにしてくださった事で
彼女も浮かばれるんじゃないのかな、と思いました。
放映最後でトリイがキラの元へアスランとカガリを案内したシーンと
今回のSSが合わさって、何ともいえない気分になりました。
投下終了時のみのコメントでも、凄く真剣に作品に取り組んでいらっしゃるんだなあ、
と感動いたしました。
自分もSSを書くのですが、一作一作にチャレンジ精神を持ち込んで
自分を甘やかさない作者様の姿勢は見習いたいです。
そして、こういう連載形式で話数が決まっている作品は
内容が吟味されているのが感じられ、読者の立場からは大歓迎です!
素敵な作品をありがとうございました。
次の作品投下を心からお待ちいたしております。


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