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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

167ザフト・赤毛の虜囚 34:2004/03/26(金) 21:55
7.幼子(おさなご) 1/8
[こんな自分をキラに見られなくて良かった]

パナマでの戦争が終わって、また、私は潜水艦の士官用個室に幽閉されている。

私は戦争の後、放心したままだった。いくら、キラを継ぐ思いを受け入れたとしても、
今の私に出来ることは何も無い。ただ、先の分からない不安に支配されるだけだった。

すでに、自分を守るための銃も失っている。今、私にクルーゼが迫ってきたら、私は
抵抗しきれなかっただろう。でも、クルーゼは逆に、潜水艦に戻って大人しくなった
私に迫ることは無かった。一日、二度、私に食事を運び、机で書類整理の仕事をして、
ときどき、疲れたようにソファーで眠る。そして、夜の時間帯だというのに、部屋を出たまま
帰って来ない。私は、そんな様子をベッドに横たわりながら虚ろに見つめていた。

私に無関心なクルーゼに、以前なら逆に女のプライドを傷つけられたかもしれない。
だけど、今の私には、それが当たり前なのだと思った。今までと打って変わったように、
男を拒む気持ち。もしかしたら、キラに対しても手酷く拒んでいたかもしれない。

それ以外にも、私は、今の自分に女の魅力など、ひとかけらも感じなかった。
私は、アラスカで捕虜になってから、一度もシャワーも着替えもしていない。クルーゼは
士官用個室にあるシャワーを自由に使っていいと言うけど、いつ、クルーゼが入って来るかも
分からない中、おいそれとシャワーを使えるものでは無かった。髪はボサボサになり、
今、私の体からは、酷い匂いがしている。元々、それがいやで、アークエンジェルにキラといる時は、
こまめにシャワーを浴び、香水も付けてキラと寝ていたくらいだから、捕虜になって一週間、
着替えもせずにいたらどうなるか分かるだろう。また、特にショーツの汚れが酷かった。
私は、その嫌悪感に堪えられなくなる一歩手前まで来ていた。パパに恥ずかしかった。
私はかえって、キラがいないことに安堵していた。こんな自分をキラに見られなくて良かった。

元々、クルーゼの部屋であるここには、女物の替えの下着など見つからない。また、クルーゼに
それを頼むのも、クルーゼの寝た子を起こしそうで躊躇われた。仕方ない、せめて、今のを洗わないと。

クルーゼが、朝、私に食事を運んで出て行った後、だいたい昼過ぎまで帰って来ない。私は、
思い切って服を脱ぐとシャワーを浴びた。石鹸は安物で、私がキラの部屋に無理を言って揃えさせた
高級石鹸では無い。私の体臭を、すべて洗い流すものでは無かったけど、久しぶりの熱い湯を全身に浴びて、
心も少し落ち着いたような気がした。私は自分の体を鏡に写してみる。手であちこち触ってもみる。
そこに、以前との変化を感じることはできない。だけど、私はパナマで感じたことはきっと真実
なのだと確信していた。

私は体を奇麗にすると、今度はショーツに石鹸をつけて洗いだした。とりあえず、今はこれで
我慢するしか無い。アークエンジェルの雑用係りのころなら、新しい下着を準備するのは
訳なかったのに、あの時はいやらしい意味でしか仕事の立場を使っていなかった。今は、真面目な
意味で必要だというのに。

洗ったショーツと髪を交互にドライヤーで乾かしながら。私はショーツを穿かずに服を着た。
クルーゼが、いきなり入ってきてもなんとかごまかせるように。私はベッドの毛布で下半身を隠し、
ドライヤーでショーツを乾かしている。スカートの下に違和感を感じる。私は、なんと破廉恥な真似を
しているのだろう。

だけど、私は、この感覚が不快では無い。というか、既にこういうシチュエーションは経験済みなのだ。
キラの前で……

あれは、私が腰痛で動けなかった時のこと。今は私から失われてしまった、キラを狂おしいほどに
求めていた記憶を。


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