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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

205流離う翼たち・445:2004/03/31(水) 23:17
「・・・・・・しかし、釣れませんね」
「そうだなあ、釣り糸を垂れて1時間、アタリはあるんだが中々のってくれない。餌だけ取られていく」

 些か寂しそうに答えるキース。ナタルは何となく好奇心が湧いてしまい、キースに頼んでみた。

「あの、大尉。私にも釣らせて貰えませんか?」
「良いけど、釣った事あるの?」
「いえ、無いので一度やってみたいんです」
「なるほど、そういう事か」

 キースはなるほどと頷くと、釣竿をナタルに渡した。

「まあ、そう簡単には釣れないだろうけどな」
「そうでしょうね」

 どこか憮然と負け惜しみのような事を口走るキースに、ナタルはクスクスと噛み殺した笑いを漏らした。それを見てキースがますます憮然としてしまうのだが、形勢が不利なので何も言い返せない。
 その時、いきなりナタルの持っている竿の竿先が下へと強く引っ張られた。

「あ、これがアタリ、というものでしょうか?」

 少し驚きながら竿を上に上げると、いきなりガツンと一気に下に引っ張られた。いきなりの事に驚いたナタルは慌てて竿を立て、キースは口に含んでいたウィスキーを噴出して驚愕している。

「馬鹿な、ビギナーズラックだと!?」
「た、大尉、驚いてないで!」
「しかも何だよこの引きの強さは。大物じゃねえか!」

 これまでの俺は何だったんだあ、とばかりに頭を抱えて苦悩するキース。ナタルは強烈な引きに何時もの冷静さを失い、半ばパニックを起こしかけていた。

「キ、キース、助けてくださいい!!」
「あ、そ、そうだった。その竿高いんだから手を放すなよ!」
「そんな事言われても――――!!」

 必死に竿を立てるナタルの腰を掴んでグイっと堤防に引き寄せるキース。だが、相手は一体なんなのか、キースをして驚くほどの力強さで2人を海に引き摺り込もうとしている。

「た、大尉、これが噂の鯛なのでしょうか!?」
「いや、たとえ磯の石鯛でもこんなにパワフルじゃない!」
「では、マグロでしょうか!?」
「可能性は否定しないぞ!」

 なにやら戦闘中以上の必死さで魚と格闘する2人。遠くから2人をニヤニヤ見ている視線にも気付かず、頑張って魚を釣り上げようとしていた。


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