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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

143ミリアリア・あの子許せない 80:2004/03/22(月) 02:40
第2部 6. 私はキラの特別…… 4/7
[ハイ! キラ……]

艦を降りるのか残るのか。ディアッカの言葉に従うまま、どうすべきかをキラとフリーダムの
コクピットで話した私は、キラの打ち明けた話から、残酷な戦士となったキラの真実を知った。
キラは、操縦桿から手を離し、私を覗きこむようにして話を続ける。

「それでも進まなきゃいけない。戦争を、このまま悲劇に向かわせないために。
 僕は、もう昔の僕には戻れない。ミリィがいくら望んでも……
 ミリィ、君は艦を降りるんだ。こんなことを君に背負わせることはできない」
「でも、私、そんなこと知ったら余計に、ここから降ろしてもらえない」

「降りるんだミリィ。そして、忘れるんだ僕のこと。忘れてしまえばいい。
 誰も、君が知っているなんて気づいていない。君さえ忘れてしまえばいいんだ。
 降りて避難するんだ。オーブ政府の指示に従えば、少なくとも戦争には巻き込まれない」
「そんな、そんな」

「こんな僕のこと忘れてしまえばいい。ヘリオポリスの思い出だけを残して。僕は、いなかったと思うんだ」
「そんな、私、キラのこと忘れられる訳ない」

「忘れるんだミリィ!!」
キラは私の肩を激しく掴んで体を揺さぶり、大きな声を上げた。キラの顔が私のすぐ前にあった。
それは、私の望む優しいキラでは無く、冷たい目をした戦士のキラだった。

「ハイは? ミリィ」
「ハイ……」

「艦を降りるんだな?」
「ハイ……」

「ミリィ、それでいいんだ」
「ハイ!」

もう、見る影も無い『私のキラ』。私はキラ自身の手でリタイヤさせられたことを知った。

私の中のキラが完全に破壊されたことを知りながら、一方で、私の心は開放されていた。
だれも、私にこうしろと言わなかった。サイも、私の自由意志にまかせて、決めてはくれなかった。
でも、キラは決めてくれた。私に命令した。今、私はキラの命令に従うことが快い。
キラの言いつけに従うことが、私の無上の喜びだった。私は、ずっとそれを待っていたことを知った。

私は、引きつった笑顔を浮かべていた。涙が一しずく、頬を伝った。『私のキラ』との決別の涙だった。
今までのキラとのことが走馬灯のように私の中に蘇った。優しいキラ。トールと三人の楽しい日々。
そして、それを壊していった、あの子。私の過ちで失われた三人。帰ってきたキラ。信じられないキラ。
残酷なキラ。

「キラ、あの子だったら、フレイだったら、キラのこと話した?」
「フレイなら言わなかったろう。血塗られた僕のこと。Nジャマーキャンセラーのこと。
 僕の背負った宿命を。何でも言うとフレイには約束した。だから、秘密にすると怒るだろうけど、
 僕はフレイを辛い目には合わせたくないから。ずるいけど、フレイを手放したくないから」

「私、フレイとは違うのね」
「ああ、君は特別なんだ」

「特別?」
「そう、特別だ。ずっと前から……」

私の表情は、さらに歪んだ。熱い涙が、また、頬を流れ落ちた。
「キラ、酷いよ…… こんな特別なんて……」

私は、成り行きでNジャマーキャンセラーの秘密を聞いてしまった自分を呪った。
キラにとって悪い意味の特別な自分を呪った。そして、そうじゃない、あの子が許せなかった。

「コクピットを出るよ、ミリィ。もう退艦の期限はギリギリだ。艦長に一人で話せるね」
「ハイ!」

「ミリィ、トールのこと頼むよ。弔ってやってくれ」
「ハイ! キラ……」

再び、キラの命令を受けて、私は口元を緩ませ、歪んだ笑みを浮かべた。
そして、自分と、あの子への呪詛の心さえ押し込めて、私は命令される快感に溺れていった。
時の止まったような感覚の中で、私は思考さえ曖昧になっていった。

* * *

カガリさんが、またフリーダムの前に来ていた。乗降ワイヤーでキラと二人で降りる私を、
信じられないような目で見ていた。

私は、カガリさんを無視して、歩き去った。
後ろでカガリさんとキラの話している声が聞こえた。

「キラ、なんでフリーダムに乗せたんだよ。私にだって、触らせてもくれないのに」
「いいんだよ、ミリィは特別なんだ」

私は、キラの言う特別の意味を噛み締めた。


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