1主「………………………………。」
3主「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
1主「…おめでとう、ご先祖。これで今死んでも
『一度もキスすらしたことない勇者』の汚名を被らなくてすむぞ」
3主「めでたくNeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!
…うああああ……俺のキスが…俺のファーストキスが……グスッ…」
1主「ちょっ、泣くなよ。ほんの冗談なんだから…」
3主「……はじめてのチュウ……君とチュウ……I will give you all my love…
涙が出ちゃう……男のくせに………うううっ………(;A;) 」
1主「わ、悪かった!俺が悪かったって!だから泣きやめよー」
3主「だって…グスッ……はじめてだったのに……ヒック……うえぇぇぇぇぇ……。・゚・(ノД`)・゚・。」
1主「ご先祖ってば〜…」
3主「……ひっく…ひっく…」
1主「………」
3主「……ぐすっ…」
<4主>
「アルスーーーー!!!!!!!」
叫びながら猛然と突進してきた青髪を、俺はバックステップでヒョイっと避けた。
二人の時はその名で呼んでたのか。ほほう、さてはこいつらデキてたな?
6主は俺のことなどアウトオブ眼中で、動かない7主にすがりついた。
「アルス! アルス! っく……In spirits of the dead Rubiss's name, Return
your soul. The earth makes body, The water makes blood, The flame makes
temperature, The wind makes pulse, and The light falls on eyes.....」
ほとんど聞き取れないほどの早口で、一切の乱れもなく回復系の最高等位呪文を
練り上げていく。とてもそこらの神父じゃマネできない正確無比の詠唱。
普段のバカチン王子とはほど遠い真剣な表情に、この俺でさえちょっと見とれて
しまいそうだ。
「――My shadow changes into the wing, flies about the nether world, and
leads you to me.――Revival cantrip Zaoriku!!」
最後の実行キーが唱えられ、呪文が発動する。
しかし、彼の渾身のザオリクは奇跡を見せず。
「……何を……した」
ゆらりと立ち上がった6主は、ここでようやく俺を見た。
「見ての通りおいしくいただきましたが、何か?」
「本当に……喰ったのか!?」
見りゃわかるでしょうに。俺は自分の手の甲についてた7主の血をペロッと舐めて、
肯定してみせた。
「だからナナちゃんは生き返らない。5主の授業は覚えてるだろ?」
ザオリクが効く死に方と、そうでない死に方の違い。
後者に当てはまる死因の一つに、食うための殺害が含まれる。考えてみれば当然の
話、殺して食べた家畜にザオリクが効くようじゃ、農業が成り立たないもんねえ。
「この……化け物がぁ!」
ラミアスの剣を振りかぶり、6主は素晴らしい動きで斬りかかってきた。
おお、なんか初めて面と向かって化け物呼ばわりされたな。自分では散々言ってる
けど、いざ仲間に言われると結構グッと来るなぁ。
「死ね! 化け物! よくも、よくもアルスを!」
「生き返らせる方法、無くはないよ?」
ザン! 俺の首のあたりをかすめるようにして、ラミアスの剣が木の幹に突き刺さる。
ほんの少し横にスライドさせるだけで俺の頭は胴体から離れるわけだが、剣を持つ手を、
もう一方の手が必死に押しとどめていた。