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FFDQかっこいい男コンテスト 〜なんでもあり部門〜
1
:
名無しの勇者
:2006/07/12(水) 21:32:41
FFDQなんでもあり部門の小説専用スレです。
シリーズ、作品の枠を超えた作品を投稿する時はこちらで。
書き手も読み手もマターリと楽しくいきましょう。
*煽り荒らしは完全放置。レスするあなたも厨房です*
ネタスレについては
>>2
以降(テンプレ考案中)
663
:
マナーと教養 5→4 1/5
:2009/06/06(土) 03:02:49
「「行きたい行きたいっ〜」」
「わ、分かった分かった」
かわいらしい子供のおねだりは、最近構えなかった父親としてはかなえないといけない。
5主は二人をつれ、宿舎への道のりを歩いた。
やがて見えてきた家の外に、真っ白なシーツを手際よく取り込む姿。
「5主?に5勇に5娘?めずらしいな」
シーツの束から鮮やかな新緑の髪が覗く。
「ねだられてしまってね」
「「こんにちわーーー!」」
柔らかな物腰の声と元気な声に、いつもの鋭い眼差しがかすかに緩む。
笑みとはとてもいえないが、それでも彼が歓迎してくれているのが分かる。
彼は己を見ても泣き出さない5主の二人の子供を気に入っているらしい。
鮮やかな手際でシーツをたたみながら、共に宿舎へ向かう。玄関に回りながら、彼の問いかけは子供たちに向けられた。
「冒険つれてってもらっているか?」
「「全然ーーーっ!」」
元気良く即答。思わず頭を抱えると、冷ややかな眼差しが向けられた。
「オイ」
「……反省してます。だからつれて来たんだよ」
そう言い訳すると、しょうがないとばかりにため息をついた。
「二人とも、甘いものは好きか?」
突然の言葉に息子は首をかしげ、娘は元気に「大好きっ」と答える。
「じゃあちょうど良かった。もうすぐスコーンが焼ける。食べるか?」
「「うんっ」」
二人そろっての合唱に、彼の目元が柔らかく笑む。
「バルコニー行っててくれ。すぐ持ってく。紅茶でいいか?」
「ああ、楽しみだね。君のお茶は美味しいから」
さらりと告げられた賞美の言葉には、背を向けるといういささかぶしつけな返答を返されてしまい、5主は苦笑した。
二人を連れてバルコニーに行き、備え付けられた椅子に座って待っていると、二つお盆を持った4主が来た。
「すまない。取りに行けばよかった」
「気にするな」
あわてて立ち上がるのを言葉で制され、手際よく紅茶と、バスケット入ったスコーンが並べられる。
馥郁とした香りがあたりに広がり、微笑む。子供たちの視線は、香りよりバスケットに山盛りのスコーンと横に並べたクロッテッドクリームとピンク色のジャムに注がれていた。
その姿に4主が目を再び緩め、二人の前においた皿に、トングでスコーンをひとつづつおいてやる。
「さあ、どうぞ。簡単な茶菓子で悪いが」
「「いただきます」」
子供たちは早速少し大きめのスコーンの攻略に取り掛かった。
664
:
マナーと教養 5→4 2/5
:2009/06/06(土) 03:04:23
5主は笑いながら、自分の皿にも置いてくれたスコーンを取り合げ、4主に礼を言う。
彼は気にするなとばかりに目を細めた。
「美味しいっ!!」
「うん、美味しいっ」
今度ははもらなかったな、と子供たちを見ながら、自分もジャムを塗ったスコーンを齧る。
口に広がるのは甘い白桃の香り。よく見ると、ジャムというよりは、形が少し多めに残っている。
「本当に美味しいな……これは、君が?」
問いかけると、一度瞬きして、手で割ったスコーンを皿に置いてこちらを向く。
「ああ、よく分かったな。売り物にならないのが余ってたから、ちょっと作ってみた」
ジャムというのは、一つ作るのに数時間かかる代物だ。少なくとも片手間に作れるほど簡単ではないはず。
「君は本当に器用だな」
もう一口分スコーンに塗り、齧る。桃の持つ甘みが口の中に広がる。優しい味がサンチョのお菓子を思い出す。
ほめ言葉の連続に、少し照れたように笑む4主は、子供たちにも褒められている。
視線がこっちを向いていないのを良いことに、5主はじっくり4主を眺めた。
先ほど手で割ったスコーンを取り上げ、ジャムを塗って一口食べる。崩れやすいお菓子なのに、彼の皿の周りは綺麗だ。
2主ではないが、綺麗な人だと思う。
いつもの喧嘩や口調で見落としがちだが、彼のテーブルマナーは、にわか王の自分がお手本にしたいほど完璧だ。
生まれつき王族として過ごしている息子や娘、それどころか、今まであったどの王族と並んでも見劣りしない洗練された仕草にため息が出る。
「なんだ?」
視線を向けられて自分が凝視していたことに彼もやっと気づいた。
幸い、子供たちはジャムとスコーンに夢中でこちらには気づいていない。
「いや、マナーがきちんとしてるなあと思ってね」
「王族ほどじゃないだろ?」
カップを取り上げ、紅茶を口に含む其の姿は、典雅とさせ言えよう。改装を重ねてくたびれた宿舎のバルコニーの背景が、王宮の応接間に摩り替わるような気がしてくる。
正直、彼ほど完璧な人間を5主は知らない。剣も魔法も宿舎でも見劣らず、指揮をさせたら超一流。数学や国語どころか帝王学までこなすなど文武両道。無愛想なのが玉に瑕だが、どこの上流階級の集まりでも通用する高い教養をもつ。
そのせいか、仲間内で正式な場へは彼を連れて行くことが多い。下手をすると、生まれつき王族であるはずの2主、6主よりも多いくらいだ。まあ、巻き込まれ体質であることも要因の一つであろうが。
5主自身、彼をこっそり自分の世界に連れて行ったときは、王宮であっても完璧な立ち振る舞いに酷く驚いたものだ。
根っからの王族ならともかく、彼の出身は小さな村。どうしたって王宮でも通じるような礼儀作法や教養など学ぶべきではない環境のはずだ。
疑問が顔に出たのか、4主が苦笑する。彼は、言葉にしない表情を読むので、こういうときは心を読まれているような気がしてしまう。
「まあ、叩き込まれたからな?」
「叩き込まれた?」
「ああ。剣や魔法や学問と一緒に。いつか偉い人に会うこともあるだろうってな」
彼の言葉に、なるほどと頷く。彼の出身は確かに小さな村だが、其の村は、彼を、「勇者」を育てるためだけに作られたと聞く。
勇者なればこそ、王族と会う機会もまた多いと想定したのだろう。
そういえば、ニートでおちゃらけまくっている3主も、勇者として教育されてきただけあって、あれでTPOによってはなんでもさらっとこなす。
学問や剣や魔法など言わずもがな。それどころか、簡単な医学すら時々こなす彼の、現在の宿舎での立場は『お母さん』。
なんだか酷くもったいない気がする。
665
:
マナーと教養 5→4 3/5
:2009/06/06(土) 03:06:13
苦笑すると、彼は怪訝そうにこちらを見るがすぐに視線を娘に移した。
手に取ったハンカチが、娘の頬についたジャムを拭う。驚いたように見上げた娘には、新たなスコーンをとってやり、紅茶を注ぎ、ホットウォータージャグで薄めてちょうどいい濃度にする。
ここは宿舎じゃなかったか?
そんな考えが浮かんでしまうほどスマートなホスト振りだ。というか、紅茶が濃くなるのを薄めるためのお湯を用意することすら、知らなかったんだが……。
娘の礼に、彼は頭を撫でてやることで答える。
自分の笑みが子供を怖がらせると知っているからの行動だが、娘の顔が赤面した理由は多分分かってないだろう。
「気に入ったか?」
彼の言葉に娘が大きく頷く。息子も横で同じ動きをしている。
「本当にすごく美味しいです。これ、どこで売っているんですか?」
「うん、僕もこれもっと食べたい。父さん、買ってっていいよね」
二人の言葉に彼が大きく瞬き、そして小さく微笑んだ。そのインパクトたるや、娘だけでなく、息子すら赤面させてしまった。
『頼むから、娘だけじゃなくて息子まで魅了しないで欲しいのだけどね』
端正な顔立ちは、女性どころか、男性まで魅了する。宿舎のメンバーにも何人か犠牲者がいるのだ。これ以上争奪戦を繰り広げてほしくないし、何より息子の人生を踏み外させないでほしい。
頬が真っ赤に染まった息子を眺めながら考えてしまう。
「これは俺が作ったんだが、もし良かったら、少し持って帰るか?」
彼の言葉に、子供二人は頷くばかり。苦笑して、言葉を補足してやる。
「ぜひお願いするよ。妻たちも君の料理のファンだから」
其の言葉に彼はきょとんとした顔で瞬く。彼は、5主の妻たちとも仲が良い。
先祖と子孫だからというより、料理のレシピの交換や4主の農業の成果を時々届けるからか。
おかげで、ここでの悪事は4主を通して、妻たちにはかなり筒抜けなのが痛いところだが。
「ファンは言い過ぎだろう?」
「いいや。だって君とレシピ交換した後は必ず作るし。で、どうしても同じ味にならないとか悩んでるしねぇ」
サンチョやその妻まで巻き込んで一緒にレシピ片手に作るのだが、どうも違うらしいと首を傾げている。
「今度、城に来て一緒に作ってあげてくれないか?そろそろコックも巻き込んでいるんだ」
4主は目を伏せる。
元々、彼は他の世界に行くことをあまり好んでいないらしい。特に、直接影響がありそうな5主の世界には殆ど来てくれない。
妻たちがこちらに来るか、または息子や娘の願いでくるのがせいぜいといったところか。
666
:
マナーと教養 5→4 4/5
:2009/06/06(土) 03:07:21
『そんなこと気にしなくて良いのに』
5主はこっそりと笑う。
もっと妻たちと、子供たちと仲良くなって欲しい。そして、己より世界を救いあげた勇者を愛さない世界など捨てて、グランバニアに住んでしまえばいいのだ。
天空人の子供さえ残せば、妻たちの存在は失われない。ならば、別に彼である必要はない。残された天空城の主がせいぜい辻褄を合わせるだろう。
彼が幸せになるのなら祝福しよう。だけど、彼の仲間たちでは、彼を引き止められなかった。なら、自分が貰い受ける。
包み込んで、溺れるほどに愛を注いであげよう。
三人の妻も、子供たちも誰もが彼を大切にしているのだから。
寂しいのなら、もう一人の純正勇者も連れてくればいい。
裏切り者の大臣や僕より、彼らのほうが国を率いるに相応しい知識も能力もある。
勿論、本人たちが嫌がるなら無理強いはしないが。
落ちた天空城の主などに文句を言わせるつもりもない。
『言う資格ないし。悔しかったら村人全員復活させてみろって言いたいよねぇ』
「5主」
カップをゆっくり下ろすと、彼がこちらを見ていた。
言葉を促すように微笑んでみせると、彼が苦笑した。
「こんど新作レシピもって伺うよ。だけどな……」
「うん?」
「足固めはやめれ。つうか人に仕事押し付けようとするな」 「……ばれたか」
「ばればれだから。王様ならもう少し腹芸磨け。顔に書いてあるぞ」
「そこまで正確に当てられるの君だけだから。グランバニアこない〜?今なら宰相の座が開いてるよ〜♪」
冗談めかしていう僕は子供たちに目配せする。
子供たち二人は小さく頷き、早速きらきらと目を輝かして天空の勇者を見あげた
「5主……子供使うな」
案の定子供に弱い4主はたじろいでいる。
「「4主さん……だめ?」」
ハモリは高等技術だな〜とか暢気に眺めていると、4主がこちらを向いた。
困ったようにこちらを見る彼に、思わず噴出してしまう。
「笑うなっ!!///」
「い、いやだってっ。わかったわかった。今回は諦める。ほら、二人とも」
「「むーーー」」
じたばたと暴れる二人の頭に、4主の手が置かれる。
丁寧に撫で、彼は笑みを浮かべた。
「遊びに行くからって、うわっ」
子供たちはうれしそうに頷き、抱きつきをかます。
中々可愛らしい光景に僕は笑った。
667
:
マナーと教養 5→4 5/5
:2009/06/06(土) 03:08:57
今はこの約束だけで良いと思う。
『諦めるつもりもないけど♪元祖腹黒をなめちゃあいけない』
5主は宿屋の二階から注がれる視線に顔を向けた。
『<もっと頑張らないと連れて行くよ?>』
声を出さずに口だけ動かしたけど、果たして彼には伝わったかな?
くすくす
「なに含み笑いしてるんだ?スケベ親父」
「酷いな」
5主は紅茶を楽しみながら小さく笑った。
もう少しだけ待とう。だけど、このままなら連れて行く。
まだ、協力者にも話していないことだが、彼も巻き込んでいけばなんとなるだろう。
5主は心をその穏やかな瞳と笑みで考えを心に封じ込めた。
『あと、少しだけね……』
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