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機動戦士ガンダム0.5

1きんけ:2008/10/27(月) 01:05:17
武力平和の続く世界

地球連邦政府は軍部に掌握されつつあった

大衆の意見が届かず、あらぬ方向に動こうとする未来

そんな世界に警鐘を鳴らす者がいた

反連邦軍組織プレイオス

「弾圧と圧政からの解放」を目標に彼らは勝利なき戦いに身を捧げる…


機動戦士ガンダム0.5


人間らしく

2きんけ:2008/11/01(土) 07:11:41
「勘弁してください!今日だけでも三回目ですよ!?」
耳にインカムを装着した官制員がマイクに向かって叫んでいる。
《こちらにも都合というものがあるんだ、そちらの言い分を聞いている暇はない》
「それは協定違反です!ここ『ククルス』は中立都市なんですよ!」
《緊急事態なんだよ!いいからさっさとハッチを開けろ!こんなちっぽけな月面都市なんてな連邦軍にかかれば、制圧なんて容易いんだぞ!》
脅しとも取れる言葉に官制員は頭を抱えた。
他の官制員も、みな諦めや悩んだ顔をしている。
月面都市ククルスの官制室の空気はどんよりと重くなっていた。

人々は生活圏を宇宙にまで広げると、さらなる人類の躍進を目指すために地球連邦を組織した。
加盟国190ヶ国以上から成る、この連邦組織は政治・軍隊の統一化により各国の危機に対して一丸となって取り組めるようになった。
しかし、蓋を開けてみると、そこには異なる現実が待っていた。
治安維持、平和維持の大義名分の下に弾圧や虐殺を繰り返し、非加盟国に対してはMS(モビルスーツ)の侵攻や大規模な爆撃を行っていた。
そして、ここ−−−月面都市ククルスでも、地球連邦の傲慢な態度に頭を悩ませていた。
中立を宣言しているククルスであるが、地理的に連邦の月面基地間の中間に位置しており、休憩や整備のために停泊を強行している連邦艦が後を断たない。
一応、連邦との間に「停泊は1日1回のみ」と協定を結んではいるのだが、彼らが守ろうとしているとは思えない。

ククルスの官制室とは一方的に、どこか締まらない空気の連邦艦トーマスの艦橋。
「これ以上、頑固な態度をとったらMSでハッチを開けると向こうの官制員に伝えろ」
艦長がオペレーターに指示を送る。
「まったく、サイド4の反連邦気運が高まっているというのに、こんなところで時間をとるわけにはいかんのだ」
苛立ちながら、艦長が愚痴をこぼした。
もともと、この航行は予定に入っていなかった。サイド4で始まった反連邦のデモの処理のために出発を指示されたのだ。
それゆえ連邦艦の態度はいつにも増して大きい。
官制員と通信を行っていない別のオペレーターが不意にレーダーに映る、何かに反応した。
「艦長、我が艦に接近してくるモノがあります」
「何ぃ?宇宙船か?」
「いえ…この速度は…」
言葉が途絶えたことに苛立つ艦長が叫んだ。
「何だ!はっきりと報告しろ!」
「この速度は…モビルスーツです!」

月面の地表を滑るように飛行していく、一つの機影。
「連邦艦を確認した。これより目標を叩く」
バイザーの先に覗かせた、力強い瞳が連邦艦を見据える。
「行くぞ、エヴンス」


機動戦士ガンダム0.5
1話 世界が動く日

3きんけ:2008/11/02(日) 16:22:13
≪接近してくる所属不明のMSは1機のみですが、データーに該当しない機体です≫
オペレーターの状況説明もほどほどに聞きながら、アンドレは慣れた手つきで機体に火を入れる。
≪何を仕掛けてくるか分かりません。お気をつけて≫
説明を終えるとオペレーターが映っていたサブモニターは暗転し、頭部カメラによって映し出された映像がコクピットの正面に広がった。
メインモニターにはMSの視点からの格納庫が映っており、まさに自分がMSそのものになったような錯覚に陥る。
一歩。また一歩と何かを確かめるようにゆっくりと前進していく。
―俺はモビルスーツだ……―
格納庫の先。カタパルトハッチに到着すると、射出機を足に装着し出撃に備えて身構える。
―俺が……―
カタパルトハッチに備えられたランプが赤から緑に変わると、射出機がぐうんと音をたてながら撃ちだされた。
「俺がマキスだっ!」
宇宙空間に躍り出たMSが華麗にポーズを決めた。
宇宙方面軍の主力MSであるマキスとなりきったアンドレの後に2機のマキスが続いた。

4きんけ:2008/11/05(水) 08:01:33
ビームライフルを構える三機のマキス。
その銃口の先にはアンノウンが、スピードを緩めることなく連邦艦トーマスに迫る。
「射撃勧告など…必要ない!」
三条の光が宙を灼いた

5きんけ:2008/11/12(水) 07:50:02
射撃と同時に敵機は跳躍。
光条がアンノウンを碧く照らし出すも、その装甲に直撃することはなく、やはり連邦艦トーマスを目指す。
再度、アンドレらがビールを放つも、アンノウンはテールノズルの尾を引きながらその場を後にする。
「俺達には興味が無いということか…!」
トリガーを引く手に思わず力がこもっていく。
しかし、どんなに撃とうが敵機を捉えることができない。
業を煮やしたひとりのパイロットが
《少尉!接近戦を仕掛けてみます!》
言うや否や、ビームサーベルを握りしめると先駆。
「待て!!敵の武装すら分かってないんだぞ!」
遅れてアンドレが彼の後を追う。
マキスはアンドレの静止も聞かず、さらにテールブースターの出力を上げた。
《やります!やってやります!》


敵MS(モビルスーツ)が単独で飛び出した。
距離をとってのビーム射撃は、有効ではないと判断したのか、それとも…
ロイスは自機であるエヴンスの速度を緩めると、迫ってくるマキスとの距離を詰めていく。
まさに目と鼻の先。マキスがサーベルを振り上げたのか碧い粒子が迸るのが確認できた。
マキスの斬撃を喰らう直前、エヴンスの各所ブースターが忙しく噴出し、機体が反転。左腕に装備した攻防兼用防盾の刃がスライドすると、光刃を受け止めた。
「エヴンスならさ!」
余った右腕にも同様の攻防兼用防盾が装備されており、これまた同様の刃が顔を覗かせるとマキスに向けて、すぐさま一振り。
切り結んでいたマキスの右腕は易々と切断され、自由になったエヴンスの左腕の刃がマキスを襲った。
刃はマキスの頭部を仕留めたが、それでは足りずに腹部を一刺し。
「マキスの装甲ぐらい!」
さらにロイスは、刃を突き刺した部分へと胸部バルカンを撃ち込んだ。弾丸を起爆剤に腹部は小規模な誘爆が発生。
その爆発はコクピットをも襲い、マキスは黒煙に包まれながら、月面へと落下していった。
「ただ我慢弱いだけのパイロットだったか」
がっかりしたように呟くロイス。
連邦艦の相手は後回し。今はMSの対処が優先だ。
残りの敵機はニ機。
「行くぞ」

6きんけ:2008/11/14(金) 08:02:22

「あの機動性は脅威だ固まるのは得策ではない、散開して対処するぞ。敵は接近戦に特化している!レンジを詰めるのは最終手段だと思え!」
《了解》の声のもと、部隊員のマキスが散開する。
自機と距離を空けていくマキスがサブモニターに映る。それを見ながら不意にアンドレが顔をしかめた。
侮ってはいなかった。警戒して距離をとっていた。マキスの能力を過大評価してはいなかった。部隊員の無謀にも静止をかけた。
だが、予想を越えていた。
アンノウンは、奴は強い!

少尉殿の機体が敵機と接触する。
俺の目から見てもアンノウンの戦闘能力は大したものだ。
その戦闘能力は機体性能から来るものなのか、それとも搭乗している者によって引き出されるのか…しかし、それを判断できる眼はない。
だが、アンドレ少尉殿の操縦センスは確かだ。それは俺にだって分かる。
だからさあ、負けるわけがないんだよ。
断定した直後、彼の目に映ったのは、アンノウンに一蹴されるアンドレのマキスだった。

正面モニターから敵機が消えた瞬後。
激しい振動が機体を襲い、僅かな間だけ意識が飛んだ。
「…!!」
気が付いたときにはモニターに敵機の姿はなく、もう一機のマキスへと肉迫していた。

7きんけ:2008/11/16(日) 13:49:58
東芝からの大事なお知らせ。
>>5における「ビールを放つ」という表現は不適切だったことを訂正してお詫びします。
ここは戦場で、ビールかけをしている場合ではありません。
OLT

8きんけ:2008/11/16(日) 20:53:34

アンドレ少尉のマキスを踏み台に、こちらにアンノウン。
臆するかよ、確実に当ててやるッ!
「狙いは定まった!」
放たれる光。しかしアンノウンはひらりと避けると、加速。
あっという間に眼前へと移動する敵機。
振り下ろされた刃がマキスのビームライフルを真っ二つに切断する。
「っ!」
回避行動をとる暇さえなかった。
こいつの速さは本物だ。ならば、このまま接近戦で!
≪マキスのサーベル収納部は背部のバックパック・・・≫
ノイズ混じりに聞こえた声。
MSとMSが触れているのか接触回線からアンノウンのパイロットの声が聞こえる。
≪核融合エンジンからのバックパックを介しての強力なエネルギー供給ができるが≫
こいつは何を言っているんだ!?
サーベルの柄へと伸びる右腕。不意に脇を閉めて構えたアンノウン。
≪抜刀までの時間が長いっ!!≫

電光石火。
力を一挙に解放すると両腕の刃が、これまで以上に鋭く激しくマキスを切り刻む。
サーベルを求めていた右腕は吹き飛び、胸部のダクトは叩きつけられ機能を失った。
接触回線から聞こえてくるであろう悲痛な叫び声に動じず、コクピット部へと突き刺した刃を静かに抜き取るとエヴンスは、その場から離脱する。
直後、切り刻まれたマキスの内部から核融合エンジンが爆発し装甲が周囲に飛んだ。
核融合の爆発は強力だ。コロニー内の低高度で爆発させようものなら内壁は穿ち、最悪の場合は百数メートルもの厚さを誇る壁をぶち破って穴を空けることもある。
「最後の一機だ、すぐにやる!」
ロイスは機体を転針。
こちらを見つめている最後のマキスへと刃を向け、接近。
敵機はビームサーベルを両手で持ち、身構えていた。
しかし、関係ない。マキスのビームサーベルの出力などに負けはしない!
激突する光刃と刃だが、切り結ぶこともせず強引に刃を首元へと突き立てた。
マキスの頭部そのものには影響ないが、回路を損傷し映像が一瞬でもカットされれば、こちらの勝ちだ。
ロイスの思惑通り、マキスの動きが僅かの間だけだが停止。すかさず、刃がマキスの右腕、左腕、右脚、左脚と切断していく。
「一方的な暴力とは、まさにこの事だ」
剣舞を止めるエヴンス。
胸部などに内蔵武器を持たないマキスにとって、四肢を失うことは戦闘能力を失うことと等しい。
それでなくとも、MSにとって四肢は無くてはならない存在であるが。
刃をスライドさせ攻防兼用防盾に収納すると、おもむろにマキスを蹴った。
四肢のない今のマキスでは、宙間での姿勢制御に難があり、くるくると回転しながら月面へと落下していった。

俺はマキスだ。
マキスは大破して月面へと落下している。
つまり、俺は負けたのだ。
どこの誰とも知らない機体とパイロットに、俺は完膚なきまでに負けた。
この屈辱は忘れない・・・絶対に!
「畜生ぉ!」
叫びと共にアンドレはモニターに映るアンノウンを殴った。

「MS隊が全滅した!?いったい何なんだ、あの機体は・・・」
驚愕のあまり、口をぽかりと開けてその場に佇む連邦艦トーマスの艦長。
艦橋にいる他のクルーに似たように驚きの表情を浮かべていた。
所属不明の一機のMSに正規軍である三機のマキスが易とも容易く全滅するなど、誰も予想できなかった。
静まり返った艦橋。不意にオペレーターが遠慮そうに声を発した。
「アンノウンより通信来ました・・・」
バッと振り向いた艦長。
オペレーターがすぐさま内容を読み上げた。
「『中立都市であるククルスへの横暴をこれ以上繰り返すのであれば、戦艦への攻撃を開始する。』」
最終勧告といったところか、それを聞いた艦長の表情が焦りに変わった。
これまでの戦闘を見れば、その戦闘能力の高さは一目瞭然である。たとえ、数多くの対空砲や迎撃ミサイルを構える本艦であろうと撃沈される可能性は否めない。
考える時間は不要だった。
「艦の進路をガガーリ月面基地へと変更し。アンドレ少尉の回収後、本宙域から離脱する・・・」

新たに一機のMSが連邦艦より発進した。
しかし武装はしていない。パイロットの回収斑だろう。
戦艦からの砲門も静かで、あちらに戦闘の意思はないようだ。
ならば、俺の任務は終わりだ。
「戦闘は終了。エヴンスはこれより帰還する」
推進力を爆発させ、一気に加速。
鬼神の如く、その力を見せつけた機体は流星となって姿を消した。

9きんけ:2008/11/17(月) 20:31:26
ククルス宙域の所属不明機による連邦艦襲撃事件は連邦のみならず、全世界に衝撃を与えた。
連邦政府は「所属不明機はククルスが秘密裏に開発したモビルスーツだ」として、情報開示を求めた。
ククルス側は所属不明機との関与を当然ながら否定。この対応に不満をもった連邦政府は宇宙軍艦隊によるククルス侵攻を決定する。

「いいか?全ては連邦政府の計画通りだったんだよ!」
ある昼休みの学校の屋上。少年Aが突如、力強く言い放った。
昼食をともにしていた少年Bと少年Cは何のことだが分からずに疑問を抱いた。
どうやら、ここ―――月面都市ククルスの宙域で先日発生した騒ぎのことらしい。
彼の見解はこうだ。
ククルスは連邦の月面基地と基地の間に位置し、中継ポイントとして地理的にちょうどよい。
連邦の管理下、自治区としたいのだが中立のククルスにそんなことすれば、いろんなコロニーからの反感を買ってしまう。
だから、連邦が演技してククルスのせいにすれば侵攻の理由もあるし反感だって、それほど買わなくてすむ。
「だからって、あそこまでマキスをボロボロにする必要はないと思うけど・・・」
「あの所属不明機は連邦の新型MSなんだよ、『俺たちは、こんなスゴイ機体を造ってますよー』って反連邦組織への牽制の意味も含まれているんだ」
「うーん・・・」
納得がいかない少年Bに代わって少年Cが口を開く。
「マキスは新型MSの性能を披露するための踏み台?」
「そういうことだよ!」
「でもさ、ニュース映像とかでは三機目のマキスが落とされた後に非武装のMSが三機目のマキスを回収したよね」
「うん」
静かに風がそよいでいる。
「爆発した二機目のマキスはともかくさ、一機目のマキスも回収する必要があるんじゃない?一機目と三機目の違いって何だと思う?」
「そ、それは・・・」
「コクピットをやられたか、そうでないか。一機目はコクピット部が爆発したよね、でも三機目は手足を斬られたとはいえコクピット部への損傷はなかった」
思わずたじろぐ少年A。
正直な話、彼は回収する場面の映像を見ておらず、反論などできるわけがなかった。
「三機目だけを回収したのはパイロットが乗っていたからだよ。それ以外に理由なんてないよ」
少年Cは連邦やらせ説をきっぱりと否定した。
「あれは連邦軍の新型なんかじゃない。あれは所属不明機なんだ!」

機動戦士ガンダム0.5
2話 反旗

コロニー郡サイド4に程近い暗礁宙域「エイデン」
かつての戦争で生まれた数多くの残骸が集まって出来たデブリ宙域。
MSの墓場とも呼ばれており、誰も寄り付かない場所となっていた。
そんな暗闇と破片が支配する世界に奔る一条の光。

10きんけ:2008/11/23(日) 09:29:06
光は二つ、三つと増えていき、最終的に十数もの数に及ぶと、月へと向かっていった。

「本艦隊はトーマス級二隻とクラーク級三隻で編成され、のべ22機のモビルスーツを搭載している」
ミーティングが進んでいる。
全艦ほぼ同時に開始された、それは月面都市ククルス侵攻作戦のものだった。
艦長および各部署の隊長が作戦説明を行っている。説明もほどほどにミーティングルームの隅の座席でオノディーラが人知れず闘志を燃やしていた。
実戦は今日で二度目だ。初実戦ではトリガーを引くことも出来なかったが、今回は違う!
今日の俺には覚悟がある。
誰かを殺して、その誰かの分まで強く生きるという覚悟を!
「モビルスーツの出撃は1400時。それが作戦開始の合図だ」
ミーティングの最後。艦長はそう言って締めくくった。

11きんけ:2008/11/24(月) 22:31:06

月面都市はコロニーと同様に天気があらかじめ決められており、週の初めにその一週間の天気予報が様々な形で発表される。
天候や気温すらも管理できる環境。
それゆえに地球の暑さ、寒さ、空気に慣れない宇宙生まれ宇宙育ちの人々の地球適応能力は減少傾向にある。
そんな中の一人である月面都市ククルス生まれククルス育ちである少年Dは昼過ぎの河原にいた。
沿道からはガードレールが設置され、自分のいる場所は死角になるだろうと踏んだ。
だから、ここを選んだ。ここでなら、誰にも見つからないと思って。
自己発電―――自己処理と言ったほうが適切なのだろうか、河原に寝そべり、少年Dは独りの世界に入っている。
散歩で立ち寄ったコンビニの本棚に陳列されている数々が目についたのが原因だった。そこからは、もう勢いである。
のどかな休日の午後。雨が降り始めるまでには、まだ時間がある。少年Dの自己処理は続く…

まさに絶頂を迎えようとしている少年Dとは対照的にククルスの管制室は地獄の底に突き落とされていた。
「本宙域に接近する艦隊を捕捉・・・来ました、連邦宇宙軍の艦隊です!」
不安な顔を浮かべたり、険しくしたりと管制員の反応はそれぞれだ。
ここで焦ってはいけない。司令官としての技量を発揮しなければ!
その心構えのもと、あくまで落ち着いて状況を確認してみせる司令官。
「都市の民間人の避難状況はどうか?」
「現在、確認できている範囲では8割の住民の避難が完了しています」
「上出来だ、日ごろのシミュレーションが生きたな!」
「う、宇宙軍艦隊からモビルスーツの発進を確認!」
うわずった声で叫ぶ管制員。
「勧告なしに攻撃するつもりなのかよ!」
「なんてやつらだ!俺達を殺す気じゃないだろうな!?」
「畜生っ!連邦の糞野郎ども!!」
これまでの連邦に対する不満が爆発したかのように弱音や怒涛が飛び交う。
無理もない、軍属ではない彼らにとって戦闘の恐怖など未体験だ。
「落ち着け、まだ攻撃されているわけではない!モーラスⅡを出撃させろ!」
モーラスⅡは無人機のモビルスーツである。
前世紀の戦争では無人の戦闘機や戦車が実戦投入されていたが、宇宙という新たな戦場とモビルスーツという新兵器の登場により
それまでの思考ルーチンやCPUでは対応できなくなり、無人機は戦場から姿を消した。
「周辺の月面都市やコロニーの反応は分かるか?」
「ヴェテロイレン、レーニンズなどの月面都市は中立を宣言。サイド4は沈黙を保っています」
「分かっていたとはいえ…援軍はなしか」
こんなチンケな月面都市相手にして連邦との関係を悪化させることは出来ないというわけか…

≪ククルスよりモーラスⅡの発進を確認。A小隊が撃破のために先行します≫
≪トーマス級一番艦、モビルスーツ全機発進を完了。続いて二番艦よりモビルスーツを順次発進≫
≪位置につきました。次の指示まで待機します≫
無線が行き交っている。この忙しなく混線する無線が戦場の臨場感をさらに引き出してくれる。
前の機体がカタパルトから撃ち出されていく、次は俺の番だ。
この戦場の主役の出番である。エンディア大尉に次ぐ宇宙軍のエースパイロットとして名を知らしめるであろうオノディーラが、この戦場を駆け抜けてやる!
カタパルトが加速し、急激なGが体にかかる。
さあ、見るがよい!このオノディーラが美しく踊り出る姿を!
ぐわりと射出機から離れ、その姿が戦場に踊り出ると思われた刹那。
彼の視界は黒から緑の閃光に支配され、意識はそこで途絶えた。
何が起こったか理解する前に彼は蒸発した。オノディーラのマキスは緑の光条に貫かれ、爆散したのだ。


(一話分なげぇ・・・)

12きんけ:2008/11/27(木) 22:06:57


  え?
何かが光った。何かがとてつもない音を立てながら艦が揺れた。
不意に爆散したマキスに皆、虚を突かれたような表情をした。
ククルス側からの大きな軍事展開がなかったために油断していたため判断が遅れたのだ。
「何が起きた!?観測班!」
≪マキスが爆発したんだ!≫
「爆発!?攻撃か、襲撃なのか?」
≪―――分からん。レーダーには何も映らなかった≫
くそっと艦長が心の中で罵った。
観測班がこれではどうにもならないじゃないか!
「艦長、カタパルトデッキがビームがマキスを貫いたのを見たと言っています!」
「我が艦を狙った長距離射撃だとでもいうのか…」
この宙域にビーム砲が配備されているという情報は聞いたことがない…もし、この攻撃がククルス側の兵器だとしたら平和主義を謳う中立都市の名が泣くぞ。
「レーダーから目を離すなよ、警戒態勢を厳にするんだ!」
「了解。全艦に伝えます」
「ノーマルスーツを着けていない者には着用を指示しろ!」
マキスの破片が流れているのが見える。
あみだ被りの帽子をきゅっとかぶり直すと一息。
まったく…先日のアンノウンといい、この宙域には怪物でも潜んでいるのか?
「怪物はエイデンの墓場にでも引きこもっていればいい」
艦長の呟きが聞こえた。
カタパルトハッチでは出撃と併用したマキスの破片の撤去作業が行われていた。
混乱と不安が入り混じりながら光の尾が宙へと伸びていく。

連邦の艦隊よりも高い高度。
戦艦の形をわずかに認識できるほどの宙域に彼はいた。
ただの鉄くずになり下がった、かつてのモビルスーツの装甲を陰に暗緑色の人型が一機。
両腕で握りしめ、月光を浴びて鈍く反射している、それはスコープを装着した狙撃仕様のライフルだった。
オノディーラを射たのも、この狙撃銃である。
「センターに入った!」
そして、一射。
不気味なまでも正確な光の矢が放たれた。

「少尉のマキスが撃たれた!!上からビームがっ!!」
爆風から逃げるように後退しながら軍曹のマキスが力の限りに叫んだ。
戦場で恋人の話などするものじゃなかった。
あれは噂でも前世紀の年季の入った都市伝説でもない。
少尉が三度目のデートに行った時のことを俺に話してたら、彼の機体にビームが直撃して爆発した。
あれは…死亡フラグは本物だ!
ならば!!かつての彼女とよりを戻そうとしていると少尉に相談した俺は―――

「三機目もやられた!観測班、上だぞ。上からビームが来ている!」
≪怒鳴らないで、今度こそ見つけました。艦隊の頭上にいます!≫
観測班が伏兵の姿を見つけると艦橋のメインモニターに映し出される。
破片から身を晒し出すと銃口をこちらに向けているモビルスーツの姿がそこにあった。
「モビルスーツだったのか…!?」
銃口から閃光が放たれたと思った瞬後。その光は自分たちを灼いていた。
艦橋が吹き飛ぶ。しかし、それでは足りずにさらに三射の光条が艦に直撃。
悲鳴にも聞こえる轟音と黒煙を吐きながらトーマス級二番艦は、その役目を終えた。

沈黙に包まれた一番艦の艦橋。
混乱状態にあるクラーク級一番艦の艦橋。
神に祈りをささげているクラーク級二番艦の艦橋。
己の生きる意味を再確認しているクラーク級三番艦の艦橋。
様々な状況にある艦橋に水を差してきた、多数の熱源反応。

艦隊の周辺に散乱していた無数の破片から跳び出してきたモビルスーツ群。
「こちらシラナミ。プレイオスとしては初めての作戦だ。心してかかろう」
多数≪了解≫の声と共にモビルスーツが散開していく。

それこそが世界が変えるための第一歩。
変革を求める者達の最初の反撃の狼煙である。

13きんけ:2008/11/29(土) 11:44:07


「モーラスⅡの能力など前世紀の無人戦闘機にも及ばない。高い工業能力を持っているククルスでも無人モビルスーツの開発は完璧じゃないんだよ」
先行していたA小隊がモーラスⅡを捉える。
マキスがビームを放つよりも先にモーラスⅡの無反動バズーカが彼らに襲いかかる。
しかし実弾、ましてやバズーカを避けることなど容易いこと。三機のマキスがひょいと回避運動を実行する。
「砲台代わりにはなるだろうが、この数じゃあ…」
ライフルを構えると、次々と撃ち抜いていく。
同様に小隊員のマキスも的当てのようにモーラスⅡを落としていった。
会戦から数十秒。連邦軍の勝利は決定的なものとなった。

我々の敗北は決定的だ。
「予測できたとはいえ、強烈だな…」
これ以上、モーラスⅡを投入しても結果は同じだ。所詮は無人モビルスーツだったというわけか…
中立都市ククルスが消える日。
こうやって地球連邦政府は勢力図を増やしていくつもりだろう。
都市への被害を出すわけにはいかない。
「連邦艦へ通信を繋いでくれ。停戦を―――」
「待ってください。何か…何かが高速で…」
「どうした?」
「レーダーがかすかに反応したんです。高速で迫る何かを…」

ククルス側からモラースⅡの追加投入の気配が見られない。
まさか、もう降伏準備でもしているんじゃないだろうな?
「まあ、いい。後退するぞ」
機体を転針。
硝煙が漂い、モーラスⅡの残骸が漂う戦場跡を尻目に三機のマキスが母艦へと帰っていく。
―――違う。テールブースターを吹かす直前、僚機が何かの直撃を受けて爆散した。
「!?っ」
振り向いた小隊長の目に映ったのはモーラスⅡとは違うモビルスーツの姿だった。
両腕に装備された巨大な刃は暗闇の中でも異質なほどの存在感を放っていた。


機動戦士ガンダム0.5
3話 解放への戦火


モビルスーツ「セーメイ」は残骸に紛れて連邦艦隊を取り囲むように出現した。
対応に遅れたマキスはセーメイの連携攻撃に圧倒され、次々と落ちていく。
「僚機との連携はしっかり決めるんだぞ。相手のほうが戦力は上なんだから!」
腰部の収納部より抜き放った光刃がマキスのコクピット部へと突き刺さった。

14きんけ:2008/11/30(日) 15:49:40


機能停止した敵機の背後より、さらにもう一機のマキス。
すでに放たれていたビームを辛うじてシールドで受け止めると、大破したそれを放棄。
頭部に装備されたバルカンで牽制をかけるも、射線をかいくぐり側面へと回り込もうとする。
テールブースターを吹かし一気に距離を詰めようとするマキス、それに対して正面から受け止めるべくサーベルを構えたセーメイ。
サーベルのレンジに入る直前。マキスが突如介入してきた光の矢に貫かれ四散した。
「援護するのはいいが、味方への誤射だってあるんだから気をつけろ!これはゲームじゃないんだぞドラウロ!」
上を見上げて、パイロットは味方のスナイパーを叱咤した。
≪シラナミ隊長≫
「ん?何かあったか」
≪敵艦の応戦が思ってたよりも厚くて、破壊に時間をとられています≫
「ならば、上のドラウロにでも援護射撃してもらえ」
≪了解≫と短く返答された後に回線が切断された。
「対艦兵器を最低限装備しての対艦戦闘か…」
隠密性を高めるためにはやむ得ない事とはいえ、あまりにも強引すぎる。
味方艦からの援護は一切なしに、遠距離のたった一機のモビルスーツの狙撃援護ありきな作戦だ。
「コロニー独立のためには、その身を滅ぼす勢いで戦うしかないのか!」
そう叫ばずにはいられないシラナミ。
彼を先頭に騎兵隊がトーマス級へと迫っていった。

何だ?
連邦軍のモビルスーツが我々のモビルスーツを撃破したと思ったら、謎のモビルスーツが連邦軍のモビルスーツを撃破した。
「思考がまったく追いつかない…」
何だよ謎のモビルスーツって、訳が分からない。
これは夢であって欲しい。もう私は疲れた。
わずかな目まいを覚えて、椅子に座りこむ司令。
「司令…強制的に割り込んでくる映像回線があります」
「ああ、もう何が来ても驚くものか」
今度は、どこの連中が来たんだ?ククルスには怪しい奴らが集まるほど重要な場所なのか?
しかし、その映像はククルスだけでなく全世界のありとあらゆる施設へと発信されていた。

15きんけ:2008/12/03(水) 19:18:14
「地球に宇宙に住む人々よ、こんにちはこんばんは初めまして。先日、そして今現在ククルス宙域で地球連邦軍と交戦しているのは
 我々、反地球連邦軍組織プレイオスのモビルスーツ部隊です。連邦軍は以前より中立を宣言していたククルスを、まるで我が物顔
 で利用してはククルス市民、関係者を不安にさせていました。これは、その裁きの鉄槌と言ってもいいでしょう。そして我々、プ
 レイオスはこれを皮切りに独裁と圧政からの地球、宇宙の解放のために地球連邦軍に対して宣戦を布告します。人が人らしく生き
 ていける世界を実現させるためにも、我々は―――

会議中のモニター。昼下がりの点けっぱなしのテレビの液晶。ネットゲーム中のパソコンのディスプレイ。あらゆるモニターというモニターに生え際が後退してきている初老のナイスガイが突如として映し出された。
画面越しのファーストコンタクトは様々だ。ある者は訝しげに彼を睨みつけ、ある者は彼の顔を見た直後から笑いが止まらず、ある者は彼に怒りの限りをぶちまけてキーボードを机上に激しく叩きつけていた。
ククルス宙域でも疑問符が連邦軍兵士を支配していた。
「誰だが知らないけど、なんかやべえこと言ってる!」交戦中のマキスパイロットが、力の限りで叫んでいる。
よし、敵は混乱している。
戦闘中に宣戦布告の演説なんて聞いても混乱するだけだ、演説の詳しい内容は戦闘後に確認しやがれ!
ましてやアングラでしか知名度のないプレイオスの指導者だ。世間的には抜け毛に悩んでいそうなオジサンが電波なこと言ってるようにしか聞こえない。
「よし。撤退するぞ!対艦砲は全弾ぶち込んでやれ!」
シラナミの指示に呼応するかのように味方のセーメイが敵艦の側面へと回り込もうと弧を描くように宙を走っていく。
敵の残存艦は二隻。マキスだってドラウロの狙撃で着実に数が減っている、勝ちは見えてきた。

スナイパーライフルの接眼用モニターを覗きこみ、遠方でちょこまかと動き回るマキスを目で追いかけていた。
逃げるんじゃないぞぉ…外すとシラナミ隊長殿がうるさいからな。
一瞬の隙。マキスが動きを止めると、すぐさまポインタを敵機に重ね合わせると一射。
光はマキスの頭部を吹き飛ばすも撃墜には至らず、マキスはその場からの緊急離脱を図った。
「ヘッドショットだぞ、堕ちろよ!」
何とも滑稽である。
悔しがるドラウロのもとに撤退の旨を伝える通信が入った。
「はいはいはい。やっとかよ…」
歯噛みしながらも、どこか安堵の表情を見せる。
スナイパーライフルを肩のジョイント部に装着すると、そそくさと帰路へとつこうとしていた。
ヘルメットを放ると、シートにもたれかかり目蓋を閉じた。
「まったく…」
オールバックには似つかない不精髭が生えた顔には疲労の色が見えた。

連邦艦隊を全滅させたプレイオスのモビルスーツ隊はククルス宙域から離脱していた。
「ドラウロのアルガとロイスのエヴンスはいるんだろうな?」
≪ええ。エヴンスは後方にアルガは…かなり先行していますね≫
その報告にシラナミがムッとした。
「まったく、本来はドラウロがしんがりに着くべきなんだがな…」
あのゲームジャンキーの考えることは分からない。
シラナミがメガネのフレームを指で持ち上げようとしたが、ヘルメットをしていることを忘れて中指がバイザーに拒まれた。
思わず苦笑するシラナミ。
戦闘からの緊張に開放され、やけに気持ちが緩んでしまっているな…
操縦桿から離した手が震えていた。これは怖さで震えているのではない握り疲れただけだと自分に言い聞かせた。

16きんけ:2008/12/03(水) 20:24:28

機動戦士ドーナツ0.5
4話 ドーナツ

ドーナツが支配する世界。
そこはドーナツが人々を従えて社会が成り立っていた。
くるくるとドーナツが人類の頭上を飛び交い、通称「天の声」が、どこからともなく声が聞こえる―――

「エンディア大尉ですよね?」
イチノセ少尉がなぜだか不安そうに私に声をかけている。
肩を揺らされ、垂れていた頭がふと起き上がり、眠気が吹き飛んだ。
「あぁ…私だ。ミーティング中に寝てしまい、すまない」
「無理もない。ここ数日は激務が続いていた」
イチノセ少尉が声を発するよりも先、艦長が言った。
周りを見渡してみると、ミーティングに参加している者の視線が全て私に向けられている。
「…本当にすまない」
ややうつむきながら、エンディアが再度謝罪した。


機動戦士ガンダム0.5
4話 天秤


プレイオスによる宣戦布告から数日後。
世界の反応は早い。
地球連邦政府はククルス宙域における横暴を認めると、以後ククルスへの停泊をしないことを発表。
それと同時にプレイオスの奇襲に怒りを示すと彼らに徹底抗戦の意思を示す。
サイド4ではククルス宣戦布告に合わせてクーデターが勃発。
もともと反連邦意識の根強かったサイド4からは連邦軍は追い出され、反連邦組織の拠点として使われることとなる。

月にほど近いサイド4を一日の内に失った連邦は、スペースラインの防衛強化やサイド4の監視部隊の設立など、とにかく忙しかった。
特にサイド4に次いで月との距離が近いサイド6では新たなスペースラインの敷き直しに手を焼いていた。

17きんけ:2008/12/05(金) 01:44:29
月基地とサイド6、その他のコロニーサイドの軍関係者との協議を重ねるが正式なスペースラインが敷かれるには至らなかった。
「サイド4の恩恵にあやかりすぎたな」
そうなのだ。
これまで連邦軍は月とコロニーの兵站をサイド4に任せきりだった。
協議を重ねること十数回目。
ようやく仮にではあるが新たなスペースラインが敷かれることになった。
そのスペースライン上の安全確認や偵察をサイド6所属の第一宇宙軍艦隊が担当することとなったのだ。

「エンディア大尉にはイチノセ少尉を連れてモビルスーツでのライン上の偵察を頼む」
「了解です」
チラリとイチノセを見る。
「お、お願いします…」
視線に気づき、イチノセは遠慮がちに頭を下げた。
「うむ」 と一瞥。


暗礁宙域エイデン。
そこにプレイオスの旗艦であるリンドヴルムはいた。
ククルスへの進攻艦隊を全滅させた彼らであるが、その後は大きなアクションを起こしておらず、次の出撃機会まで羽を休めていた。

呼び出しを受けて、艦橋に上がったロイスにシラナミから新たな任務を言い渡された。
「エヴンスの機動テスト?」
「ああ。バルカン以外に射撃武器を持っていないエヴンスは機動力が命だ。今後の戦いに備えてジェットユニットの使用データが欲しい」
「テストを行う場所は?」
「さすがに、この墓場内じゃあ出来ないからな。エイデンを抜けた先でやる予定だ」
端末機の画面に情報を入力すると、それをロイスに見せた。


パイロットスーツに着替えたエンディアがパイロット待機室に入った。
そこには彼より先にイチノセがイスに座って出撃を待っていた。
「あ…」
ぎこちなさそうにイチノセが笑みを作る。
薄紅色のパイロットスーツを着込んだ彼女の姿はどこか扇情的な気持ちを抱いてしまう。
いかん、いかん。
「緊張しているのか?」
私は雑念を振り払おうと口を開いた。
「え…いえ、あの…」
「大丈夫か?」
彼女は普段からハッキリしない性格だが、今日は異常だ。まるで何かに怯えているかのような雰囲気である。
「変な事、聞きますけど…笑わないでくださいね?」
「ん…ああ、大丈夫だよ」
恐る恐る口を開いた。うつむいているのは私と視線を合わせないようにしているのだろうか?
「墓場には…エイデンの近くには…幽霊なんて出ませんよね!?」
紅潮した頬。
どうやら緊張していたわけではなかったらしい。
「で、出ないと思うぞ…」
たじろぎながらも返答するエンディア。
それを聞いて、安心したのかイチノセの表情が少しであるが柔らかくなった。
ああ…イチノセ・ユウナ。あなたは乙女だ…

18きんけ:2008/12/05(金) 20:37:28

ドリンクパックを求める旅に出たドラウロは無重力で自由な体を遊びながら、休憩室へと向かっていた。
見れば、前方からパイロットスーツを着込んだシラナミが来るではないか。
「出撃か?」
「ああ。エヴンスのジェットユニットの機動テストだ」
「あんたは隊長なんだろ?ロイスの付き添いなんて他の隊員にでも…」
「時間がない。失礼する」
ドラウロの言葉を遮ると、そそくさと格納庫へと向かう。
大あくびをするドラウロを尻目に、能天気な彼の態度に苛立っていた。
「何故、彼にアルダなどを…」
それからほどなく、エヴンスとセーメイがプレイオスを発った。

暗礁宙域をぬけたロイスとシラナミ。
エヴンスの背部には、これまで装備されていなかったジェットユニットが確認できた。
その二門のジェットユニットより、これまで以上の大きな光芒がこぼれた。
白と青の機体は太陽光をはね返して、輝きを放っている。その輝きはテールノズルの尾をひきながら、まさに流星となって闇を駆け抜けていった。
その機動力に、思わずシラナミも驚嘆の声を漏らす。
≪機体も思ってたより安定してる。これならすぐにでも自分の手足のように!≫
やけにロイスの気合が入っているな、それにしても回線を開いて叫ぶことないだろうに…
しかし、シラナミはロイスのそういうところに好感をもっていた。
まあ、どこぞのゲームジャンキーとは言わないが、本気かどうかも分からない奴とは一緒に戦いたくはない。
連邦軍との戦いは非常に厳しいものになることが予想される。これからはロイスのような熱意ある者が必要なんだ。
「よし、ジェットユニットの様子は良好のようだな。次はダミーを…」
言うや否や、レーダーが接近してくる機影を捉え、電子音がコクピット内に響いた。

このレーダーの機影は…機体認識番号が表示されない。
しばらくの思考の後、エンディアは心を躍らせた。
「ははっ!こんな場所で出会うなんて私は運がないな」
突然、笑い出したエンディア。
「イチノセ少尉」
≪は、はい≫
「このレーダーの機体がプレイオスのモビルスーツだとしたら、君はどうする?」
≪…逃げます≫
素直な感想だ…
「私もそうしたいが、この近距離。下手に後退すればトーマス級の位置を晒しかねない」
≪それは、つまり≫
「戦いしかあるまい」
不敵な笑みを浮かべるエンディア。
その余裕をもった表情には、最初から撤退という考えなどなかったかのように思えた。

≪一機のマキスが先行している!≫
それは俺だって同じだ。
「エヴンスで相手する」
≪しかし、ジェットユニットをつけての戦闘経験はないんだろ!?≫
「戦ってみたいんだ。この力を生本番でどこまで使えるか」
敵だって、こっちのことをレーダーで捕捉している。それでもなお戦おうとしている敵は馬鹿か腕の立つ奴に違いない!
おもむろに両腕の刃をスライドさせ、戦闘態勢に入る。

19きんけ:2008/12/05(金) 22:55:54

メインカメラが敵機を捉えた。
間違いなく、プレイオスのモビルスーツだ。
ククルス宙域での襲撃事件で三機のマキスを軽く片づけた映像は私も見た。
「あの刃は脅威だ。現行のモビルスーツが装備している近接武器の中でもずば抜けての斬り味があると判断できる」
それにしても予想以上の速度で接近してきている。
不意に襲われたら、とてもじゃないが対処できないな。
「インファイトにもつれ込む前に終わらせる!」
断言した後、マキスのジェットユニットに装備されていたミサイルがエヴンスへと放たれた。
ミサイルの接近にも動じることなくブースターを吹かしているエヴンス。あわや直撃かというところでエヴンスの胸部バルカンが唸った。
「避けないつもりなのか!?」
無数の弾丸が宙を滑り、ミサイルの接近を拒んでいる。
三発のミサイルがすべて爆発すると、その黒煙の先から刃を煌めかせて二つ目のモビルスーツが接近してくる。
すぐさまビームライフルを連射。狙いなど定まらなくてもいい。
しかし敵機はわずかな横滑りをする程度で大きな回避行動をする素振りを見せない。
「そこまでして勢いを殺したくないのかっ!」
あまりの無鉄砲な戦い方に意表を突かれたエンディア。
クラスターを吹かして距離をとろうとするが、もう遅い。
バウッとさらに加速したエヴンスは、そのままの勢いで右腕の刃を降り下ろした。得物はビームライフルの銃先を捉えると切断。
一回転し、その力を利用しながら左腕の刃も凪ぐも、間一髪で抜刀したビームサーベルに防がれる。
「この機体に乗っているのは、機体性能に依存している大馬鹿者だ!」
叫ぶや否や、マキスの蹴りが炸裂。
敵機には損傷を与えることはできないが、斬り結び状態から逃げるには十分な隙は作れる。
エヴンスは再度、距離を詰めようと加速。
しかし、相手は宇宙軍一のモビルスーツパイロットと呼び声高い男である。そう単純にはいかない。
「機動力の高さが武器だが、機動力だけではな!」
横滑りで瞬時にエヴンスの横に回り込むと、くるりと機体を側転させながらミサイルを斉射。
この位置からの攻撃では胸部のバルカンは使えず、シールドを使いながら回避行動を余儀なくされる。刃はシールドと兼用であり、防御時には斬撃に移れない。それをこの武器の欠点だと信じて、エンディアは攻勢に出た。
ミサイルがエヴンスに直撃する前に突撃をかけるマキス。両手に抜きはなった光刃が揺らめいている。

20きんけ:2008/12/06(土) 23:33:00
ミサイル接近の警告音。
シールドで防ぎたいところだが、意地でも避ける!
各所のクラスターがこれでもかと噴出。瞬時のうちにマキスと向き合う形になる。
すぐさまバルカンのトリガーを引いたが、満足に弾幕も張れないうちに砲塔が空回り。
一発を撃ち落とすも以前、二発のミサイルがさらにその後ろからはマキスが迫る。
「装甲を殺してまで、機動力を上げたんだ!」
エヴンスの二門のジェットユニットから光芒が広がると爆発。
頭部の前で両腕を交差させると、その状態のままマキスへと突撃していく。
苦肉の策だった。
エヴンスの装甲はマキス以上に脆い。ミサイルの直撃など喰らえば、簡単に吹き飛ぶ。
シールドにミサイルが当たることを願うしかない、もはや賭けである。
激しい震動をコクピットを襲い、煙で視界が奪われた。
機体に異常はない、シールドが見事に防いでくれたのだ。
「いけええええ!」
煙が晴れた瞬間、そこには眼前にまで迫っていたマキスがいた。

速い!
振り上げたビームサーベルであったが、敵機に懐へと飛び込まれて光刃は空を斬った。
手首を回転させてビームを腰部へと突き刺そうとするも、力任せに突き放される。
予測できない敵機の動きに歯噛みしながらも、それに対応しようとするエンディア。
「ジェット!」
直後、敵機から投げ付けられた光の輪がマキスの右腕を吹き飛ばした。
なにっ!?射撃ではない飛び道具を?
肩先から抜き放った何かを、返す力でこちらへと投げてくる。
すぐさま反応してみせると光の輪を辛うじて回避。
「そこまで射撃武器を嫌うか、面白いぞプレイオス!」
ここまで型にはまらない戦い方をするパイロットは、これまで見たことない。是非とも顔を拝んでみたいな!
劣勢なはずのエンディアだが、彼は眼を輝かせていた。
敵機が棒立ちのまま、動かない。
誘っているのか?―――ならば!
まさにジェットを吹かそうとペダルを踏み込む直前、イチノセからの通信が入った。
≪エンディア大尉、後退してください!≫
少尉が悲痛そうな叫び声が聞こえた。
そうだ。今の私に使用できる武器はビームサーベル一本のみ。
敵との戦闘に夢中になって、冷静さを失っていたような気がする。
「本心ではないが、後退するしかないな」
≪援護します!≫
敵を見つめたまま、上昇すると距離をとっていく。
追撃を仕掛ける様子もない。相手も疲労がたまったのだろうか?
レーダーが後方からのミサイルを捉えた。イチノセ少尉が放ったミサイルだろう。
自機を反転させて加速。ミサイルとすれ違いながら、その場から離れていった。
「再会を望むぞ。プレイオスの無鉄砲」
またいつか、この広い戦場で巡り合わせる時を待って…
イチノセ少尉のマキスを視認。
≪エ、エンディア大尉…≫
エンディア機の無事をその目で確認したのか、イチノセの様子はいつも通りになっていた。
≪い、命は大事にしてください≫
「まさか君から、説教されるとは思わなかったな」
≪説教なんて、そんなつもりじゃ…≫
オドオドし始めたイチノセ。やはり彼女はこうでなくては、私も見ていても面白い。
エンディアが笑った。それは不敵でもなんでもない晴れ渡った笑顔だった。

敵を見送ったロイス。
自分の負けだった…
機体性能に頼った強引な戦い方と手詰まりな戦法。
この機体でなければ負けていた。
「しかし…」
悔しさが生まれない、この清々しさはいったい?
殺陣を楽しんでいたんだ。あんなに見事な格闘戦は初めてだ。
「俺は、あの人のように…」
なれるのだろうか?
決意。疑念。不安。さまざまな想いをその胸に秘めて、機体を反転させた。

21きんけ:2008/12/07(日) 19:10:55
サイド6コロニー「クエサー」
コロニーの中心部の大通りに人が数キロにも及ぶ列を成していた。
人々はプラカード、旗、メガホンなどそれぞれ思い思いの物を手にして行進している。
彼らが目指すのは、ただ一つ。連邦政府の議会堂である。
ロイスはその光景を、少し離れた丘の上から眺めていた。
息は呼吸をするたびに白く上がり、風は肌を突き刺すように寒く、空からは人工雪が降っていた。
ここまで寒いコロニーも初めてだな…
かじかんだ指にハァと息を吐きかけながらロイスは思った。
気候を管理できるコロニーでは比較的、過ごしやすい気温や天候に設定することが多く。地上の寒帯や熱帯のような気候には滅多にならない。
「それにしても、この中から探せというのか?」
アナログ式の双眼鏡を視界から外し、デモに参加している行列の全容を掴もうとした。
おそらく数万人規模が参加しているはずだ、その中からたった一人を…
途方もない作業にロイスは一瞬、めまいを覚えた。

事の発端は数日前のミーティングだった。
「『PGP』の新型を載せた偽装船が連邦軍に押さえつけられた」
その日のミーティングはシラナミのその言葉から始まった。
彼によるとサイド6のクエサーに数日の停泊の後にサイド4で新型の譲渡を行うはずだったのだが、これまでの俺達プレイオスの活動によって比較的穏やかだったクエイサーの反連邦気運が激化。
大規模なデモの開催も予定され、連邦は一時的に港を封鎖してしまったのだ。
おまけに情報規制もかかってしまい、盗聴や傍受を考慮して合流予定だった新型のパイロットとも連絡が取れないという最悪な状況だった。
「俺達の行動も考えものだな」とドラウロはマイペースに笑っていたが、笑いごとではない。
解決策も酷い物だった。
アルダに相乗りしてクエサーまで接近後、ロイスが単独でコロニー内に侵入。
コロニー市民に紛れながら、パイロットを探し出して合流。合流後はアルダに合図を送って、隙を作ってもらい、その間に新型を起動させて脱出。
人を人して見てないような内容の作戦だ。
一番簡単なのはモビルスーツでの強襲なのだが、世論からの反感を買いたくないのだろう。
宣戦布告から二ヶ月が経った。ようやく賛同を公言する者も現れ始めたのだ、こんなところで己の足場を崩したくはない。
本心ではないが、遂行するしかない。
そうやって割り切りながら、ロイスはクエサーへと侵入した。

機動戦士ガンダム0.5
5話 邂逅

クエサーの宇宙港外。一隻のトーマス級がクエサーを背に滞空していた。
トーマス級のカタパルトより放たれる一条の光。
「こちらイーサン・ウェバー。クエサー外部の哨戒任務に就く」
後続に続くマキスが二機。
このような反政府ムードが高まっているときは気をつけたほうがよい。プレイオス宣戦布告時のサイド4が良い例だ。
あのときはあまりにも政府の対応が緩すぎたために、あれほどのクーデターを許したんだ。
「まったく、嫌な時期に姿を現したよプレイオスは」
反射鏡の下を潜り抜けた三機。無機質な外壁から突如、視界が開ける。
ガラスの先からも、わずかだが黒点が大通りを占拠しているのが見えた。
しかし、これが人々の意思か…
目に見える現実にイーサンは奥歯をかみしめて顔をしかめた。

「クエサーから連邦の撤退を!」
「連邦至上主義は消えろ!」
さまざまな怒号が空へと向けて発せられる。
雪は止むことを知らず、徐々に地面に降り積もっていった。
それでもデモ行進は依然、連邦議会堂へと歩を進めていく。
その光景を窓越し、暖炉の前でくつろぎながら見守る一人の青年。
「ハーワン、君はデモに参加しなくていいの?」
柔和な表情で青年はカウンターのもう一人の青年ハーワンに声をかけた。
「反連邦組織だからって参加する義理はないさ。それに…」
真っ白いカップに真っ黒のドリップを注ぐと、暖炉の前の青年に渡す。
「ガキ共の面倒も見なくちゃいけないしな」
「相変わらず面倒見がいいんだね」
ドリップを口へと運ぶが、その苦みに思わず眉間にしわを寄せた。
「反連邦組織なのはお前も同じじゃないかプレイオス所属のジョシュア」
ふふっとほほ笑むが何も言わないジョシュア。再度、ドリップを口に運んだ。
「ハーワン」
「ん、どうした?」
「砂糖とミルクをくれないか?僕にブラックはまだ無理だったみたいだ」
思わず苦笑しながら、カップをハーワンへと差し出した。

22きんけ:2008/12/07(日) 21:54:56
僕とハーワンは所属している組織こそ違うけど、同じ反連邦思想でそれ以上にかけがえのない友人だ。
ハーワンの表向きな仕事は喫茶店を経営している、気の良いマスターだ。
彼の店には、いつも賑やかな声が絶えない。四人の子供が代わりばんこで店内を駆けずり回っている。
今も僕の足をねこじゃらしのようにして一人の男の子が遊んでいる。
この子たちはハーワンが引き取った子供たちだ。
「イナクト君…足を噛むのは痛いよ」
無邪気にはしゃぐイナクト少年。
ハーワンは砂糖とミルクをたっぷり入れたカップをジョシュアに渡すとイナクトをひょいと持ち上げてカウンターへと戻っていく。
みんな、戦争孤児だったんだ。それを率先して引き取りに名を上げた。
こんな甲斐性なしにすら、優しく接してくれるんだから彼には頭が上がらないよ、まったく。
それにしても、プレイオスからの連絡がない…
情報漏洩を防ぐために僕の情報を偽装船側に送っていない。偽装船側の詳細な情報も知らされていない。
連絡が来ない限りは合流なんて不可能だ。
もし宇宙港に船が停泊していたとして僕が足を運んでも、どれが偽装船なのか分からないし奇跡的に偽装船を見つけても向こう側が僕を信用しないだろう。
「だから僕は行かないよ。こんな寒い中、外を歩くなんて…」
ジュショアの独り言に「なにー?」と興味を示した女の子。
「いや…君は何も知らなくていいんだよ。マリーちゃん」
マリーの頭を撫でながら、ほほ笑む。それに感応するようにマリーも輝かしい笑顔を見せた。
ずっと、ここにいたい。
温かさを感じながら、ジョシュアは心から思った。

身体が寒い。心も寒い。
自動販売機でホットコーヒーを買ってみたが、手だけがジンジンと温まる。
仕方がないので古着店に入って、寒さをしのげるような真緑色の適当なマフラーを買った。
まだまだ寒いが、幾分かはマシになったといえる。
丘から下りて、市街へと入ったロイス。
デモに参加している人達の顔を肉眼でも確認できる距離まで来てみたがいいが、老若男女様々な顔から目的の男を見つけることはできなかった。
「たしか名前は…」
ポケットから情報端末を取り出すと、その情報を表示させた。
ジョシュア。ジョシュア・ラングリア…
顔写真を見る限りでは、とても優しそうな青年だ。
こんな人がモビルスーツを操縦するのか?
ジョシュアの純粋そうな瞳に、ロイスは情報を少し信じ難かった。
デモ行進の参加者から探すのは不可能だ、どうにかして反連邦組織に―――
考え込むロイスの思考を遮ったのは、彼を呼ぶ柔らかい声だった。
「ロイス?」
不意に呼ばれ、えっ?とすぐさま振り返った。
手前は女性、奥には男性がそこにいた。どちらも連邦軍の軍服を着ている。
まずい!ばれたか?
しかし、女性軍人はロイスの顔を見るや嬉しそうに声を上げた。
「やっぱり、ロイス・ナウサン!」
ロングの黒髪が嬉しそうに揺れた。
黒髪美人の軍人…そんな!
記憶の中から、ふと思い出したのかロイスはパッと顔をあげた。
「君はメリア・グリース!」
「そうよ、メリアよ!」
互いに顔を見つめて、再会に驚いていた。
「グリース少尉。そちらは?」
やや戸惑いながら、メリアの後ろにいた長身の男性が問う。
取り乱したメリアが、やや照れながらロイスと男性軍人の間で双方の紹介をする。
「こちらはユワン・シラディ大尉、私の今の部隊の隊長です。そして、こちらがロイス・ナウサン。私の元同僚です」
長身で銀色の髪をしたユワンがにっと笑うとロイスと握手を交わす。
「君は元連邦軍人だったのかい?」
「は、はい」
質問にやや俯きながら答える。
そんな彼の雰囲気を感じ取ったのか、ユワンは時計を確認すると回れ右。
「グリース少尉、十五分後に集合しよう」
「!―――了解っ」
メリアの返答を聞くと、ユワンは振り返らずにそのまま歩いて行く。
互いに話したいことはあるだろう。彼女だって軍人である以前に女性なのだから。
「私といるときは、あんな笑顔見せたことなかったのに…」
少し寂しく呟いたユワンだった。

23きんけ:2008/12/08(月) 00:22:01
橙色の光が暖炉の中で揺らめいている。
まぶたが徐々に下がっていき、意識が薄れていく。
「ジョシュア、俺の夢覚えてるか?」
眠気に負けないように、答えた
「ああ、もちろんだよ」
いつか地球のヨーロッパに家を建てて、そこで暮らす。
君がしきりに話してくるんだ、忘れるわけないじゃないか。
「お前や子供たち、それに組織のメンバーたちと朝から晩まで一緒に過ごすんだ。連邦の監視なんてない世界で」
「それは楽しそうだね」
「ああ、楽しいさ。楽しいに決まってる!」
きっと彼の頭の中には、もうすでに僕たちと共に平和に生活している風景が事細かに再現されているに違いない。
店内の壁に飾られた、一枚のログハウスの絵。それこそがハーワンが夢見ている家の完成図だった。
「叶うといいね」
「何を言ってるんだ、そのためにもお前には期待しているんだからな」
意外な言葉に目を丸くして
「え、僕に?」
「正直、俺みたいな力のないやつが頑張っても無意味に近い。だが、お前は違う力を持っている。お前にはモビルスーツを操れるという力で世界を動かせることだって出来る!」
「そんな僕には…」
「だから約束してくれないか。この暗く厳しい世の中を変えて、穏やかに生活できる世界を創って欲しい」
ハーワンは本気だった。
彼は本気でこの世界を変えたいと思っている。
正直、このモビルスーツの操縦技術を彼にあげたいくらいだ。しかし、そんなことは出来るわけがない。
「なあ、約束してくれ!」
僕はこれまでひたすらハーワンに頼ってきた。
モビルスーツの操縦は僕の数少ない特技だ。もし、それでこの世界を変えることができるなら…
「分かったよ。約束する」
僕はハーワンへのお返しをしたい。
世界を変えることが彼へのお返しになるなら、僕は戦おうと思う。
「ありがとう…」
ハーワンから感謝の言葉をもらった。
しかし感謝しなければいけないのは本当は僕なのかもしれない。
きっと、そうなのだろうと何故だかそんなふうに思った。

人影もまばらな公園のベンチに二人。
「ロイスが除隊してから四年が経ったのね…」
「ああ。時間の流れは早いな」
「軍を抜けた後は、何を?」
メリアがロイスの顔をのぞき込むようにして尋ねる。さらりと流れる黒髪が綺麗だ。
「こんなふうに戦場を転々としているんだ」
「ジャーナリストにでも参加しているの?」
「いや…ほんとに戦場を見て歩いているだけだよ。東欧、東アジア、中東、南米…」


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