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渡来船2

1カサブタ:2012/03/06(火) 22:56:29
※注 この小話は、過去に愛璃さんが某サイトにて投稿したシリーズを私が脚色したものです。
オリジナルの渡来船2とは一部設定が異なります。

2カサブタ:2012/03/06(火) 22:57:27
とある夏の夜、ここはハンガリーの片田舎ホロウ・クイ。ある夜、この人里離れた寒村の中心にある古城で盛大なパーティが開催されました。

宮殿の豪華な広間では紳士淑女たちが軽やかにステップを踏んで、
華やかに仮面舞踏会が繰り広げられていた。
その中でも一際めだったカップルが広間の中央で踊っていた。

一人はこの城の城主であり、仮面舞踏会の主催でもあるキルシュ伯爵である。由緒正しい貴族の血を引く伯爵であり、有数の大富豪でもある彼は、この古城でまさに中世の貴族さながらの悠々自適な生活を送っていた。彼は道楽好きで知られ、今では村の数少ない行事であるこの仮面舞踏会も元々は彼の思いつきで始められたものだった。

身長が180センチくらいある大柄な体格の持ち主であり、豊かな黒い髪は腰のあたりまで長く伸び、顔立ちも端正ですごく凛々しかった。きめ細かな白い肌に厚みのある口唇は、真っ赤で力強さが感じられた。

もともと病弱だった彼は、数年前まで病気療養中で暫くこの舞踏会にも姿を現さないでいたものの。今ではそれが嘘であったかと思うくらいに回復して周囲を驚かせたものでした。

黒い燕尾服の上に黒いマントを羽織り、そして黄金仮面の奥の瞳は優しく淑女を見つめていた。
そんな瞳に見つめられるとどんな女性でも彼に魅了されることだろう
事実、この仮面舞踏会に出席している大半の女性は彼のファンだった

今宵、伯爵の相手となった淑女の方は、危なっかしいステップで彼についていこうと必死で踊っていた。彼女にとって今日は、記念すべき舞踏会デビューの日でもあった。
今年数え年で17歳になり、名前はマリアといいます。町にある宿屋を死んだ両親に代わって姉とともに切盛りするしっかり者の少女であり、チャーミングで器量よしの看板娘だ。 もちろん、普段はこんな舞踏会とは無縁で、仕事以外では、読書することと絵を描くことくらいが楽しみのごく普通の町娘でした。実は今回の舞踏会も、招待状は姉に届いたのですが、優しい姉は彼女にチャンスを譲ってくれたのだった。

彼女にとってキルシュ伯爵とダンスをするなんて夢のような状況でした。
彼女の今まで知っている伯爵というのは、まわりの女性達が黄色い声をあげては噂しあっている、そんな姿だけでした。
男性を知らない彼女にとっては、初めて憧れた男(ひと)でもあったのです。

3カサブタ:2012/03/06(火) 22:59:24
「よりによって舞踏会デビューの日に、伯爵様のお相手だなんて・・・」

嬉しくて飛び上がって喜びたい反面、回りの女性達からの厳しい視線を仮面越しからでも感じられます。
そんなプレッシャーの中、彼女のかわいいフリルのついた純白のドレスは、室内の熱気と冷や汗でぐっしょりと濡れてしまいました。

「きゃあ!」

伯爵とリズムをあわせようと必死だった彼女だったのですが、微妙にタイミングが狂ったのです。
足を床に下ろした瞬間、自分のドレスのスカートを踏んで、バランスをくずしてしまったのです。

「おっと、大丈夫ですか?お嬢さん」

「あッ、大丈夫です!」

広間の床に倒れそうになった彼女を伯爵が支えて優しく抱きしめたのでした。

「踊り疲れたみたいですね!私も疲れたから、すこし中庭でやすもう」
「・・・はい、伯爵さま」
まわりの女性達から冷ややかなそして妬ましい視線を感じる中、両肩を優しく抱く伯爵さまの手からは、
白い絹の手袋ごしでも温もりを感じることができたのです。

「今夜の月はいつにもまして輝いている。
お譲さんのその美しさが、月の女神アルテミスを嫉妬させるのだろう・・・」

「そんな嫉妬だなんて・・・」

「だって、そうだろう。私達が広間から出るとき、あそこにいたすべての女達の想いがわからなかったのかい?」

「・・・・・」

伯爵はワイングラスに赤ワインを注ぐと、私に手渡したのでした。
その時の私の気持ちは複雑にゆれ動いていた・・・。

「美しくなるには、どうしたらいいと思う?」

私は伯爵さまに質問されたが、なんて答えていいのかわからず、グラスに注がれたワインを見つめていた。

「美しい」ってどういうことだろう?・・・今までそんな事すら考えもしなかった。
伯爵は答えに窮してる私をみていたのだが、おもむろに庭先に行くとたくさんある赤い薔薇を1本摘んできた。

「答えは、目の前にあるよ」

そう言うと私に薔薇を渡してくれました。
私はおもむろにそれを受け取ったのです。

4カサブタ:2012/03/06(火) 23:00:37
「痛ッ!」

無用心に受け取ったので、なんと薔薇のトゲで右手の人差し指を刺してしまったのです。
人差し指から血がにじみはじめてきたのです。
それをみた伯爵さまは私の前に跪くと、傷ついた右手をつかんできました。
その時です!
私の血を見た伯爵さまは不気味に笑い出したのでした!!

「ふふふッ、ふはははッ!」

そして、私の顔を見上げたのです!
あーなんてことでしょう・・・神様・・・!
あの優しかった仮面の奥の瞳は真っ赤に充血し、厚みのある口唇からは2本の長く大きな牙が伸びていたのでした!!

「きゃあ!」

私はびっくりして伯爵さまのつかんでいる右手をふりほどこうとしましたが、できませんでした。
人間の力ではない信じがたいような力を感じたからです。
すると伯爵さまはつかんでいる私の右手を、おもむろに自分の口唇に押し付け、血を吸い始めたのです。
伯爵さまに吸血されるたびに、私は今までに味わった事のない感覚が全身を襲ってきました。

「ああん・・・」

「おかしくなりそう・・・」

イッてもイッってもその感覚がさざなみのようにやってくるのです。

「・・・はッ、はく・・しゃく・・・さ・・・ま・・・」

黒く揺れ動く伯爵さまの長い髪をみつづけながら、
私の視界は真っ白になって、気を失いました・・・。

5カサブタ:2012/03/06(火) 23:01:53
2

「う、ううっ・・・」

少女が意識を取り戻したのは、あたりの闇がまた一段と濃くなった頃でした。
呻き声を発しながら上半身を起こした少女は、キョロキョロとあたりを見回しました。

「・・・ん」

マリアが見たものは窓が一つもない石造りの部屋でした。
部屋の中は冷たく張り詰めた空気が漂っていました。
部屋の四方には松明の明かりが煌々と照らしだされていて、
樹脂が焦げるかすかな音だけが聞こえてきました。
マリアは静寂に息苦しさを感じ、ごくりと唾を飲み込んだのでした。

「ここはどこ?」

なんとマリアが寝かせられていた場所は、大きな石の上だったのです。

(なぜ私、こんな所で寝ていたんだろう?
そうだわ!私は憧れていた伯爵様とダンスして踊ったんだっけ!そして・・・)

マリアは優しかった伯爵様が欲望を剥き出しにして変身していく姿を思い出して身震いするのでした。
そして、さらに自分の身体が震えているのは恐怖の為だけではないことに気づきました。
(え・・・? な・・・なにこれ)

シーツが掛けられていたために分かりませんでしたが、起き上がって冷たい空気に触れたことで自分が裸である事にようやく気づくのでした。
(わ・・・わたし、何をされるんだろう・・・。 怖い・・・。なぜわたしがこんな酷い目にあわないといけないの・・・)

その時でした!
2つの黒い影が部屋に入ってきたのです。
それは床に引きずるほどの長く黒いマントにすっぽり身を包んでいました。
1人はキルシュ伯爵本人で、もう1人は深くフードをかぶっているため顔までは見えませんでしたが、
姿から見て女性であることは想像がつきました。

「ふふふッ。 お目覚めかなお嬢さん。我が城へようこそ。」

伯爵の声をきいたマリアは背筋が凍る思いでしたが、勇気を出して言い返しました。

「私をどうするつもり・・・? どうしてこんなことをするの?!」

「おやおや・・・、これは驚いた。 大抵の娘達は恐怖のあまり声すらも上げられないというのに。
これは有望かもしれないな、ローズよ。」

伯爵に寄り添う、ローズと呼ばれた女性はクスリと笑いました。

この女も伯爵とグルなのか・・・。彼と同じ黒いマントを着ている所をみると彼女も吸血鬼?
一体、彼らはどうして私を連れてきたのだろう? まさか、私の血を吸うために?

「ふふふッ、この状況にあっても思考することをやめないか。実に素晴らしい娘だ。
どうして私がダンスの相手にあなたを選んだかお答えしましょうか?」

・・・!!
(なぜ私が考えている事が、伯爵様に伝わったのだろう・・・
伯爵様が本当にヴァンパイアだから・・・?)
そんな疑問をよそに、伯爵は真相を打ち明けたのでした。

「あなたのご察知のとおり、私はヴァンパイアなのだよ。とはいえ、元々は人間だがね…。

知ってのとおり、ヴァンパイアは人間とは違う。
人間以上に完全に近い存在だ。人間では持ち得ない強大な力を持ち、他の生き物のように死ぬことも無い。素晴らしいとは思わないかね?
私もかつてはおとぎ話だと思っていた。しかし、私はこのローズと出会ったことがきっかけでヴァンパイアが実在することを知り、その魅力に心を奪われてしまったのだ。
しかし、残念なことに今世界にいる多くのヴァンパイアは到底、知的とは言い難い、醜く、荒々しい化物だ。 

ここにいるローズも私もそんな現状を憂慮している。本来、ヴァンパイア達は彼女のように美しく、神に等しい崇高な存在であるべきなのだ。」

伯爵は、揚々と演説を続ける。ローズは黙っていたが、その目はまるで品定めをするようにマリアに注がれている。

6カサブタ:2012/03/06(火) 23:03:47
「私は、恥知らずなヴァンパイアが増えている原因の一つは、彼らを統率する存在がいない為だと考えている。 そこで私は彼女に提案したのだ。本当にヴァンパイアに変える価値のある者だけを選定し、その者達でいわゆる支配層を作ろうとな。

では、その価値ある者たちの基準とは何かと考えた時、私とローズは一つの結論に達した。
人の生血の中でも最高の質を持つ者たち・・・。すなわち若い娘こそが相応しいと考えたのだ。
そう、例えば君のような・・・。」

マリアは衝撃を受けた。 私の血を吸うことが目的ではなく、私を仲間にするのが目的だったなんて。

「古今東西の吸血鬼に関する物語では、処女が犠牲になることが多いのは知っているね? それにはちゃんとした理由があるのだよ。
純潔な娘は生命の根源に近い存在。
我々、ヴァンパイアの生命の力は質のいい純潔な娘の生き血をいただくことによって、より長く生き長らえることができるのだ。 そして同様に、女性がヴァンパイアに変わると、総じて強い魔力を持つことが私の研究により分かっている。 美しく汚れのない体こそ、強い生命力が溢れ、ヴァンパイアの素体として絶好なのだよ。

今夜のパーティは町の娘たちの中でも一際美しく芳醇な血を持った者を選定するために開いた。
そして、君は並居る美しい少女達の中から見事に選ばれたのだ。
光栄に思っていいぞ・・・ふふふッ

しかし、本当は君の美しい姉を招待した筈なのだが、どういう因果か君が来てみたら姉以上に優れた資質を持っているとはな。 どうやら君は運命に導かれたようだ。」

それを聞いたマリアは毅然とした態度でいいかえした。

「だったら何なのよ! わたしにこんな思いさせるなんて、許せない!!
何が運命よ!! 早くお家に返して!!」

「ここまで聞いてもなお物怖じせんか。 なんて聡明なお譲さんだ。
君はきっと素晴らしいヴァンパイアになるだろうよ。・・・ふははは!」

「バカにしないで!! 私は貴方と違って貧しい家の出だけど誇りはあるわ。
吸血鬼になんか絶対になるつもりは無いわ。」

「そうか・・・、ならばよかろう・・・。 まずは君にヴァンパイアになることの素晴らしさを教えてあげるとしよう。 ローズよ、任せてもいいかな?」

「はい、わかりました伯爵さま」

キルシュ伯爵の隣にいたローズという黒マントの女は、フードをあげるとマリアを見たのだった。

「・・・・・」

フードをあげたと同時に、ローズの長い髪の毛がサラサラとなびいた。
腰まであるそのしなやかな黒髪は、美白の肌とあいまってとても美しかった。
そして美白肌の顔は化粧をしているのだろう・・・目蓋を紫色に染め、口唇はまっ赤に塗っていた。
年の程はマリアの姉と大差無いように見えるが、その化粧のために妖しい美しさが漂っている。
憂いを含んだ暗い表情は、その神秘性をいっそう際立たせていた。
闇の誘惑に魅せられた者の美しさだ。

「マリア・・・。あなたはここで儀式を受けるのよ・・・。そして私達の仲間になるの・・・。」

女はマリアの瞳を見つめはじめたのでした。

「いけない・・・」

マリアは身の危険を感じたのですが、時既に遅し・・・体が金縛りにあって動けなくなったのでした。

「うふッ、恐がらなくていいのよ、マリア」

ローズの瞳はまっ赤に充血して口唇からは大きな2本の牙が伸びてきたのです。
そして妖しく微笑みながら、マントの裾を掴んで両手を広げてみせました。
なんと黒マントの下は全裸だったのです!

7カサブタ:2012/03/06(火) 23:05:26
病的なまでに白い彼女の肌は、月明かりを帯びて青白く不気味に輝いていました。

「うふッ、かわいらしい子。あなたがあんまりカワイイから
もうこんなに濡れてきちゃったわ…。」

ローズは股間に手を宛てがうと、マリアの目の前で陰部を拡げて見せた。
そこは彼女の白い身体の中にあって彼女の唇に負けず劣らず赤く輝いており、溢れ出た汁でしっとりと濡れていました。

「な・・・何をする気なの?」

マリアはまだ強がって見せますが。自分に迫ってくる不気味な女に恐怖を隠せないでいました。

「ふふふッ、流石に自分と同じ女に犯されることには戸惑いを隠せまい。
安心しろ。彼女は並の男とは比べ物にならないくらい女の悦ばせ方を知っている。
ローズよ。この娘をおまえの虜にしてやるがよい!」

「うふふふ・・、言われずとも・・・、 こんな可愛らしい子を目の前にしては、私の疼きも抑えようがありませんわ。」

ローズはマントを大きく広げると、そのまま覆い被さるようにマリアの身体を包み込み、抱き竦めました。

「きゃああっ!!」

黒いマントがマリアの身体を隙間無く巻き込み動きを封じます。ローズの肌がマリアに密着し、またその温もりと匂いはマントを通して、マリアの全身を包み込んできたのです。

「まぁ・・・、なんて滑らかなのかしら・・・。 それに温かいわぁ。 
とても若々しさに満ちて、いつまでも抱きしめていたくなるわ・・・。」

「あッ・・あ」

シュルル・・・サワ、 シュル・・・シュルル・・・

ローズが身体を上下に揺するたびに彼女の肌やマントが擦れあい、マリアの身体はぴくッ、ぴくッっと反応してしまいます。同じ女に、しかも吸血鬼に抱かれる、おぞましい状況だというのに最初に感じていた嫌悪感はだんだんなりを潜め、代わりになんともいえぬ気持ちよさを感じ始めました。

(なに・・・・・・、この感じ・・・・・・っ!! そんな・・・どうして私、こんな気持ちになるの・・・。)

マリアの身に今まで感じたことのない疼きが生じました。あそこから熱い汁が溢れてきてローズの身体にも飛び散ります。皮膚の上を伝って落ちる温かい液体に、ローズはマリアの心が傾き始めていることを感じとりました。

「い・・いや・・・・・・、 あぁ・・・。」

「うふふ・・・、すぐに慣れろとはいわないわ・・・。 ゆっくりと私の温もりに沈めてあげる・・・。」

ローズはまるで我が子を労るように優しくマリアを抱きしめ続けました。彼女の顔を引き寄せて自分の乳房の中に埋めると、マリアの震えはだんだんと小さくなって行きます。

マリアは精一杯の抵抗をこころみても体はもうローズの虜、豊満な美肉の誘惑にかないませんでした。我慢できなくなったマリアはとうとうローズの大きな乳房に頬を擦り付け乳首をくわえ込むと、
頭を左右に振りながら乳首を力強く吸っては舌で舐めあげたのです。

「あんッ・・いい・・気持ちいいわ・・マリア・・」

「んぁ・・・、ああ・・・っ わたしも気持ちいい・・・、もっと抱きしめてください・・・・・・。」

見た目は若い身体だというのに、ローズの赤い乳首の先からは濃い母乳がとっぷりと流れ出てきました。マリアはそれをごくごくと飲み込んでいきます。ですが乳房を口いっぱい頬張っても、そこから溢れ出るミルクを飲み込んでも、今のマリアには全然ものたりず、もっともっとローズの胸が、身体が欲しかったのです。

とうとうマリアはヴァンパイアの手に落ちたのでした・・・。

8カサブタ:2012/03/06(火) 23:09:40
3

それから2年後、日本にて

「ヴァンパイアとは孤独であり、永遠の愛のさすらい人・・・ヴァンパイア・キス」

わたしはいかにもありがちな映画広告から目をそむけると、
ミントの香るタバコの煙を胸いっぱいに吸い込んだ。
ふぅーッ!

「そうよね、ヴァンパイアほど魅力的で美しい存在はないものね! しかし・・・」

ここは東京は下北沢の一角にあるBAR渡来船。
わたしはこのBARの女船長で穂積みゆき。
もちろん船長っていっても、本物の船を操縦するわけではありません。
ちなみにこのお店は、かつて私の両親が経営していましたが、今は私が総支配人です。
店内は15、16世紀の渡来船をイメージしたつくりになっています。
女の子船員達(クルー)の制服は海軍のセーラー服風にできていて可愛く、
お客さまに大人気なのです。
常連客の中には、この制服姿の女の子を見たいがために通っている方もおられるらしいのですが・・・。

「ねー、カズ君!」

わたしの表の顔は女船長ですが、じつは裏の顔も持っているのです。

「ヴァンパイア・ハンター!!」

わたしの住む世界には「ヴァンパイア」はあたりまえのように存在し実在しているのです!
あたりまえのように存在すると言っても、裏の世界を知っている特殊な存在きりこの事実は知らないのです。
表世界の住人達にしてみれば「ヴァンパイア」という知識はあるのですが、
存在しているという事実はもちろん知りません。

わたしの職業である「ヴァンパイア・ハンター」はお祖母さん、母親、そしてわたしへと受け継がれてきました。
代々直属の女系に受け継がれてきているのです。

なぜ、女ばかりかって…? そりゃぁ、吸血鬼達は乙女の生血が大好物だからです。 自らの若々しい身体と生血をエサに吸血鬼達を誘き寄せて、油断したところを一気に突くのが我が家秘伝の猟法なのです。

とはいえ、別にヴァンパイア・ハンターだけがヴァンパイアを狩っているわけではありません。
世界中の宗教団体、特にキリスト、ユダヤ、イスラムといった教会には、公にはされていないものの大抵「化け物狩り」専門の戦闘集団を有しています。
その規模と戦闘能力たるや恐るべきもので、一国の軍隊にも匹敵すると言われています。

一方、ヴァンパイア・ハンターはと言うと、教会のような大きな組織に依存するわけでもなく、信仰する神がいるわけでもありません。
単純に日銭を稼いで生計を立てるため、もしくはヴァンパイアに対する私怨のために魔物狩りを営んでいる者達が多いのです。

前者が軍隊ならば、後者はいわば傭兵。 
依頼があればすぐに駆けつけて魔物をやっつけます! 

しかし、同業者だからといって仲がいいわけではなく、金のために魔物狩りをする私達を、教会は快く思ってはいないようです。
かくいう私もある事情から教会とは犬猿の仲なのですが・・・。

あと私達の仕事は、ヴァンパイアをこの世から抹殺(=存在をなくす)することを目的としてはいません。
教会のように大きな組織の中にはそれを目標としている所もありますが、我々はちょっと違います。
ハンターの仕事は悪さをするヴァンパイアをその都度討伐するという形になることが主で、表世界に生きる住人をいかにヴァンパイアの魔の手から守るかが問題なのです。

9カサブタ:2012/03/06(火) 23:13:30
ヴァンパイアは「永遠の若さ」を求めて、獲物の生き血や精気を吸うことにより、
この世に存在しつづけられるのです。その為には、あらゆる手を使って人間から「永遠の若さの源」を奪うのです。
それが「ヴァンパイアの意思」でもあるがゆえ、ヴァンパイア本体は人の形をしているとは限らないのです。

前回の事件がそうでした・・・。
ヴァンパイアの本体は黒いサテンのマント。
そのマントのなかに「ヴァンパイアの意思」が秘められていたのです。
事件の主犯だった黒百合は、まったくその事実を知りませんでした。
知りようがなかったからです・・・。

黒百合・・・、本名、黒川由里子は政界や経済界の重鎮も御用達の高級コールガールでした。
彼女は元々は普通の人間でしたが、このマントを羽織ったがために「ヴァンパイアの意思」に体が強く支配されて、女吸血鬼と化してしまったのです。
黒百合にとってみれば天から災が降り注いだようなものです。
女吸血鬼となった黒百合は、表の人間を無作為に襲っては「永遠の若さの源」を奪っていったのでした・・・。
どうしてヴァンパイアの本体が黒いサテンのマントに乗り移ったのか、また黒百合がどこでそれを手に入れたのかはわかりません。それは目下調査中なのです!

ただ心強いことに、こちらにはヴァンパイアの存在をいち早く察知できる切り札があります。
それはずばり「ヴァンパイアの意思」を感じ取ることができる仲間の存在です。
今ここにはいませんが、そろそろひょっこり顔を出す頃では無いでしょうか。

そして頼れるかは分からないけど中々役に立つ仲間がもう一人、もっともこいつは有事の時意外はまったくのダメ人間なのですが・・・。
前回の事件で彼を囮に使ったことが、わたしにとって間違いでないと考えたいですけどね。

「ね〜、みゆきさ〜ん。なに考え事してんの〜? 話に加わってよー。」

前回の事件ではかなり頑張ってもらったけど・・・、
わたしって男をみる目がないのかしら・・・(泣)。

わたしの目の前のカウンター席に座って、楽しそうにビールを飲んでる男ッ!

「美樹ちゅわ〜ん、お酌して〜〜。」

そー、こいつ。 カウンターを挟んで目の前に座ってるから嫌でも目に飛び込んでくるこいつ! 
こいつは飲めもしないのにお酒好きで、可愛い女の子さえいればどこにでもほいほい遊びに行く奴なのです。
最近、会社からリストラされたらしく暇なものだから、毎日うちの店に入り浸りだし・・・。
さっきから女の子船員(クルー)にあおられながら飲めもしないお酒を懲りずに飲んでるし・・・、みてるだけで頭痛が・・・。

「なぁーに美樹ちゃーん、さっきクルーのコに聞いて驚いたんだけどぉー。
最近、彼氏と結婚したんだってー!?」

「あー誰だー、カズ君にわたしが結婚したこと教えたのぉー!」

「ありゃ!?マジに結婚したんだぁー!おめでとーッ!!
えーとそれじゃあー、美樹ちゃんを祝してどーんっと俺がクルーみんなの分のビールおごちゃう!!」

「きゃーごちそーさま!ありがとうカズ君」

「えーとそれじゃあー、美樹ちゃんと彼氏・・・じゃなかった旦那さまの幸せにッ!乾杯ッ!!!」

「かんぱーい!!」

「ごくッ、ごくッ、ぷはーッ!最高にうまいっす!」

そんなお調子者のカズ君を見ていた みゆきが我慢できなくなったのだろう、嗜めた。

「ほらカズ君ったら、あんたそんなに飲めないんだから、ほどほどにしときなさい!(怒)」

「美樹ちゃーんの幸せのために、オレのんでるっす!だから大丈夫っす!オレも幸せっす!」

「はいはい!」

今までカズ君のことを心配してたあたしがバカだったか・・・はぁー!
まー酔っ払い相手にマジになってもしゃーないし。

「ところでカズ君、この映画広告はどうしたの?」

さっきカズ君がヴァンパイア映画を見に行こう!とわたしを誘ってくれたものでした。

「もちろん みゆきさんと映画みたいから映画館からもらってきたんですよぉー!
その広告には割引券もついているからぁー、お得なんですよぉー!
それにぃー」

意味ありげな視線を 私に投げかけるカズ君・・・。 も〜言葉なんて必要ないくらい下心丸出し。

はぁー!(ため息)

軽い眩暈を覚える みゆきだった。

10カサブタ:2012/03/06(火) 23:19:41
「こんばんはー」

おっと、あの声は・・・

「あら、いらしゃいアイ。今帰り?」

「そーでーす、みゆきさん。
あたし朝から何も食べてないの・・・だから、もーふらふらなのー。
みゆきさんの手作り料理で、体があたたまる美味しいもの食べたいなぁー」
ばたむ!

「ありゃ!?アイ、手作り料理ならお金を出してくれれば何でも食べさせてあげるわよ。
ただお店の入り口でへこまれても困るわよー!カズ君、アイんとこ手伝ってあげてやって!」

(私も少女時代は自分のボディーラインが気になってよく食事減らしたりしてたっけ。
母さんからは、食わないと力が出ないぞとか説教くらってたわね。)
みゆきは藍ちゃんの様子を伺いながらも、純情だった頃の自分を重ね合わせては苦笑いするのでした。

「アイちゃん、だいじょーぶー?」

よっぱらった赤い顔のカズ君が心配そうに藍ちゃんに声をかけました。

「あッ、カズ君」

「ほら、そんな所にいると他の人が通れないよ」

カズ君は優しく藍ちゃんを助け起こしました。

我らが「渡来船」のヒロインでありマドンナでもある吸血娘、水無月 藍ちゃん。
彼女は有名私立女子高、蓮見台女子高校に通う2年生のお嬢様。
学校では17歳で通っているのですが、ハーフ・ヴァンパイアなもので詳しい生年月日は彼女自身も把握していないのです。

実は彼女と私はかなり長い付き合いで、一時期一緒に暮らしてもいたのですが、彼女の希望によって現在は明大前あたりに一人暮らししています。
毎週火曜と木曜は学校帰りに駅前の劇場内の書店でアルバイトをしており、仕事上がりにちょくちょく顔を出してくれるのです。

そして、さっき言っていた我らが切り札こそほかならぬ彼女であります。彼女はヴァンパイアであることを生かして、私には到底出来ないことを色々やってくれます。
例えば、前回の事件の原因となったマントは彼女の魔力により封印され、厳重に保管されています。
もし、人間である私が触ってしまったら今度は私がマントに心を支配されかねませんが彼女なら平気なのです。
藍ちゃんの魔力は並のヴァンパイアとは比較にならない程強く、他のヴァンパイアの意思に支配されることはまずありません。

また、彼女はヴァンパイアの意志を感じることができます。これはハンターである私にとって非常に助けになる能力です。
なにしろ、人の中に紛れたヴァンパイアを見つけることは困難であり、大抵のハンターは犠牲者が出てから存在に気づくことが多いのです。
しかし、私は彼女のおかげで事件を事前に防ぐことができます。 まさに、ハーフ・ヴァンパイアさまさまですね。

11カサブタ:2012/03/06(火) 23:23:58
ここで「下級ヴァンパイア」について紹介しておきましょう。
下級ヴァンパイアにはハーフ・ヴァンパイアとレッサーヴァンパイアが存在します。
ハーフ・ヴァンパイア、もしくはダンピールとはヴァンパイアと純粋な人間の間に生まれた子のことです。
人間とヴァンパイアの血(悪?)を半分ずつ受け継いでおり、日中でも普通の人間と変わらず活動できる上に、ヴァンパイア特有の強い魔力も備えています。
 また、人間の子供であるためか、その多くは人間と友好関係にあるのです。
まさに藍ちゃんはヴァンパイアの血を受け継いでこの世に生まれてきました!

そしてもう1つは、ヴァンパイアに生き血や精気をすべて吸い尽くされた哀れな人間、
その残骸が生ける屍として生まれ変わったレッサーヴァンパイアがいます。
レッサーヴァンパイアになると知能が低く、欲望に歯止めがきかなくなり動物的な行動をとります。

下級ヴァンパイアは「永遠の生命」とはほとんど無関係で、
肉体が滅べばその人の意思も自然消滅します。
しかし下級ヴァンパイアはヴァンパイアの近くにいると(ヴァンパイアの存在を確認しなくとも)、
普通の人間以上の鋭い感覚で、その存在に気づきます。
レッサーヴァンパイアの場合は低知能ですので、すぐ近くにいるヴァンパイアの下僕となってしまいます。
ハーフ・ヴァンパイアの場合も、人間の血を受け継いでいるためか純粋なヴァンパイアに血を吸われた場合、意志をある程度支配されてしまうようです。

ちなみに、カズ君は前回の事件でハーフ・ヴァンパイアの藍ちゃんに初吸血されているため、レッサー化はしていないものの実質彼女の下僕なのです!


「アイちゃん、そのマントを脱ぐと少しは楽になるんじゃない?
オレがコート掛けにかけといとくよ」

「ありがとうカズ君、じゃあお願いね!」

そういうと藍ちゃんは胸元のリボン結びにしてあった紐を素早くほどくと、
「バサッ!」っとカッコよくマントを脱ぎ放ったのです!
「・・・・・」
(うぉー、かっちょえー!しびれるー!どよどよどよ)
その時、カズ君の心の中では歓声とどよめきがおこったのです(笑)。

カズ君は手渡された藍ちゃんの黒マントを何か思い出したかのように見つめたのでした。

「そういえば、最近は漫画とか映画でも吸血鬼が出てくるのが多くなったけど、
こういう黒マントを翻しているのって滅多にみないよなぁ…。」

そして何を思ったのか、いきなりマントの裾をつかむとおもむろに顔に押し当てくんくんと匂いを嗅いだのでした!

「はぅー、この匂いがたまらん!」

そういうとマントに頬づりするのでした。

「こりゃー、カズ君のへ・ン・タ・イ!!」

12カサブタ:2012/03/06(火) 23:31:46
藍ちゃんはマントの匂いを嗅いで喜んでいるカズ君を見て眉を潜めていたのですが・・・
そのうち何かをひらめいたのか、無邪気ないたずら娘の顔つきになると、カズ君を呼びました。

(うふッ、あたしのマントの匂いを嗅いで喜んでる人には、おしをきが必要だわね!
あたしは高貴なヴァンパイアの血を受け継いでるハーフ・ヴァンパイアよ。
一度血を吸った人なら、あたしの思い通りに操ることができるのよ!きゃは!
さあー覚悟なさい、へんたいさん)

「ほーらカズ君、あたしを見てごらん!きゃは!」

マントから顔を離したカズ君は、うっとりとほうけていたのですが。

「そうよ・・・、あたしの瞳をみつめるのよ・・・。私は君の”ご主人様”なんだからね」

するとどうでしょう・・・藍ちゃんの瞳が充血したように赤くなっていったのです!
そして藍ちゃんはカズ君を手招きしながら誘うのでした。
カズ君は夢遊病者のようにふらふらと吸い寄せられていきました。
その足取りは頼りなげでもありました。

「うぁ・・・っ!! アイちゃん・・・」

カズ君のズボンの中のモノはパンパンに膨れ上がって、
少し触れただけでもすぐに爆発してもおかしくない状態になっていました。

「おいでー、おいでー! あは!かわいいわね、カズくん」

たとえレッサー化しなかったとしてもヴァンパイアに血を吸われた者は眷属あるいは奴隷と呼ばれ、血を吸ったご主人様に心も身体も依存するようになります。
ご主人様に命令される、触られる、あるいはただ見つめられるだけでも、大きな快楽を感じ、ご主人様のいいなりにされるのです。 

しかも、これはご主人様と奴隷の性別が違うと更に顕著になるようです。 
いまのカズ君は藍ちゃんの暗示によってとってもエッチな気分にさせられ、いいように操られているのです。

「きゃは!やっときたわね! ささ・・・、他のみんなには刺激が強すぎるからこっちへいらっしゃい。」

藍ちゃんはカズ君の手を引くと、店の中から影になっている物置の方へ引っ張っていきました。
そして、暗がりに入ったところで藍ちゃんはいきなりカズ君のズボンのふくらみをわし掴みしたのでした。

「あうッ、アイちゃん・・・」

その瞬間、体に電気が走ったかのように一瞬びくッとしたカズ君でしたが、手は操られるように藍ちゃんの腰にまわり、制服の上からやさしく抱きしめたのです。

「そうよ・・・、そうやって私を抱きしめて。 やさしくだよ・・・?」

藍ちゃんもカズ君の首のほうに手を回すと顔を近づけて、
そーっと耳元で囁くのでした。

「あたしのお腹にあたっている、カズ君の熱くなったモノなぁーに?
あたしのマントの匂い嗅いで発情するなんて・・・信じられない!
この変態やろう・・・」

藍ちゃんはそういうと、カズ君の手からマントを奪い返しました。
そして、それを再び羽織ると、自分にすがりついているカズ君の身体をふわりと包み込んだのです。

「あ・・・っ、」

カズ君の身体を足元まで藍ちゃんの大きなマントが覆い込みました。そして同時に彼の鼻腔を甘い香りが満たしました。
マントから匂い立つ薔薇のような香りと、藍ちゃんが醸し出す初々しい女の子の匂いが混ざった香りです。 
密着した藍ちゃんの身体とマントから伝わる温もりと匂い。それに包まれたカズ君の興奮はどんどん高まっていきます。

「うふッ、でもあたしの匂いで感じてくれるなんて嬉しいわ! 
マントをクンクンするよりもこうやって直に嗅いだ方がずっといいでしょう?」

そういうとカズ君の首筋にキスをするのでした・・・。

13カサブタ:2012/03/06(火) 23:34:11
「あうぅ・・・っ!! あいちゃん・・・!!」

カズ君の身体に震えが走りました。藍ちゃんの唇はいじわるにも、この前血を吸われた時の痕をチュチュッ、と吸い上げたのです。
体中をジンと痺れさせる刺激にカズ君はへなへなと足元から崩れ落ちてしまいます。

「ふふふ・・・、この前は残念だったね? あんなに気持ちよくなってたのに寸止めされちゃって。
でも、あの時はああするしかなかったのよ。じゃないとカズ君は快楽と引換に心を失っていたもの・・・。」

カズ君はハッとします。あの時のおぞましくも気持ちいい感覚が蘇ってきたのです。

そうなのだ!オレはとんでもない経験をしていたのだ!!
実は恥ずかしい話、オレの童貞を奪った女こそ、女吸血鬼黒百合だったのだ!あはは(T_T)ぐすん。
偽りの愛でも肉体、精神ともに感じてしまったオレは、いつの間にかそれが快感になっていた。
女吸血鬼に犯され最後までイキたかったが、みゆきさんやアイちゃんのおかげで寸止めをくらったのです。
もしオレが最後までイッたとしたら、生ける屍と化して徘徊してさまよっていたはずだ。
それを考えると痛いものがあるが、だからといって寸止めも辛かった・・・相対する悩み・・・。
今ではその事がオレの癖になり、トラウマの1つでもある。

「まだうなされるんでしょう? なら私が慰めてあげようか?」

藍ちゃんの腕の力が強まり、マントがよりきつく巻きつきます。 
この状況・・・、あの時にそっくり・・・。カズ君の胸が高鳴ってきます。 
しかも、今マントで自分を拘束しているのは黒百合よりもずっと若い、ピチピチの女の子である藍ちゃん。正直今のドキドキだけでもあの時を凌駕しています。

「お・・・おれ・・・藍ちゃんになら・・・、何されてもいい。」

「嬉しい・・・、私はカズ君の命を取ったりなんかしないから、安心して溺れていいよ・・・。」

そして、とうとう藍ちゃんの指がカズ君のチャックにかかります。

14カサブタ:2012/03/06(火) 23:36:42
キュピーンッ!
「ハッ!! 不純で邪な密約の匂いがする!!」

「船長、急に何言ってるんですか?」

「美樹ちゃんっ!! ちょっとこの料理頼むね。」

みゆきはカウンターを飛び越えると、射るような目できょろきょろと店内を見渡した。

(ここにはいない!! となると・・・、)

みゆきは電光石火の早さで店の影にある物置に向かいました。そして、扉を開けると、思ったとおり二人の姿がそこにありました。

「み・・・みゆきさん・・・。」

「あ・・・姉御・・・、どうかご勘弁を。」

そこには二人してマントにくるまってなにやら乳繰りあっている男女の姿がありました。
床を見ると、脱ぎ捨てられたジーパンと汚いトランクスが・・・。
もうかなりヤバいところまでいきかけたのか、二人共額に汗が浮かび、息が荒くなっています。
みゆきはすぅ〜っと息を吸い込んでから、店全体が揺れるような大声で叫びました。

「こらァー!そこォー!ふざけてるんじゃねーぞ、てめーらッ!!」

カズ君と藍ちゃんは濡れ水をかぶったように、飛び上がりました!

「アイにバカ男!ここでそれ以上やったら、二度とこの店の敷居またがせないわよ!
ここはお酒を楽しんで飲むところであって、そっち系のいかがわしい店じゃないのよ!!」

ありゃまー、みゆきにしこたま怒られてしまったおバカな二人でした・・・。


再び 渡来船内

「ごめんなさーい、みゆきさん」

二人はみゆきの正面のカウンター席に座らされて反省していました。

悪い事をしたと思い、素直に謝った藍ではあったのだが・・・。

(ダイエットの最中だから普段より食欲旺盛なのはわかっていたのよ!
んッ、だけど・・・あたしって食欲を満たす方法って、アッチでもできちゃうじゃん!
そしたらお食事はアッチがメインでしちゃえば、ダイエットなんか気にしなくてもいいかも!
・・・てへッ!我ながらいい名案じゃーん)
真顔であった藍の顔がじょじょに緩みはじめ、しまいには口からヨダレがたらーっと。

「てへッ、えへへ!」

「ちょ、ちょっとアイちゃん。それヤバくない?」

カズ君に肩を叩かれ、ようやく正気を取り戻した藍は右手で口を拭った。

「ヤバー・・・(冷汗)」

気まずくなりながらも、みゆきを上目づかいでうかがう藍であった。

みゆきは温かい牛肉と野菜のトマトソース煮を皿に盛る最中だったのですが、藍の様子にあきれ返っていました。

「お前ら…、トマト塗れになりたくなければ暫くそこを動くな…。」

「「は……はい…」」

みゆきには藍が考えていたことが、どんな事なのがすぐにわかったようでした!
彼女は二人をじろりと見据えながら、近くに居た美樹を呼んだ。

「美樹ちゃん度々ごめん!私、ちょっとこいつらと地下室でお話ししてくるから!」

「は・・・はい!」

「あとの店番はよろしく頼む!」

「わ、わかりました船長!」

カズ君におごってもらった生ビールでほろ酔い状態だった美樹でしたが、
みゆきのただならぬ態度に、あっというまに酔いが覚めていくのでした・・・。

「痛ッ!うぎゃー」

「やめてー、みゆきさーん!!」

「うるさいわねー、ちょっとこっちおいで!」

みゆきは藍の右耳とカズの左耳をむんずとつかむと、ずりずりと引きずるように店内から連れ出したのでした。
美樹はふるえながらも、みゆきの後ろ姿に敬礼するのでした。
(ご愁傷さまです・・・アイちゃんそしてカズ君)

15名無しさん:2012/03/08(木) 03:46:21
4

昔、人間は夜が嫌いであった。
夜になると、暗い闇があらわれたからである。
暗い闇は、人間を恐怖へと陥れる。
その恐怖こそ、人間は死と同じ意味合いを持っていたからだ。
しかしある日、人間は火を手に入れた。
火は人間にとって大きな希望につながった。
火は夜の暗い闇を明るく照らし出してくれたからである。
それは人間が生きるうえで重要だった。

ここはキルシュ伯爵のお屋敷・・・。
まわりには、火の光も通さない漆黒の闇があたりいちめん包み込んでいた。
そんななか、闇に魅入られし1人の女が伯爵の寝室にあらわれた。

「おめざめなさい、伯爵さま・・・」

黒いフード付マントに身を包んだ女は、大きな木製の棺の前に跪いていた。
しばらくするとギギィーと鈍い音とともに、棺の蓋が静かに開いたのでした。
そこから充血したような赤い目をしたキルシュ伯爵が、上半身を起こして表れたのでした。

「うぅ・・・血がほしい・・・」

伯爵の厚みのある口唇からは大きな鋭い牙が2本伸びていたのです。

「ローズ・・・君の血が・・・ほしい・・・」

おさえきれない欲望の瞳で、女を見つめる伯爵。
女はそれを黙ったまま見つめると、立ち上がってフードをめくった。
それと同時に長い黒髪がさらさらとながれ、ほのかな甘い香りが伯爵の鼻腔をくすぐるのでした。
そして女は軽く頭を振ると、黒髪を1つに束ねて右肩から前に流したのです。

「ふふ・・・、いいわ。 ほら、お飲みなさい。」

ローズは静かに頭を右側に傾けると、左側の肩を伯爵へ向けるのでした。
伯爵はローズのうなじに顔を近づけると、大きな口を開いた!
真っ赤な口から伸びるするどい牙がローズの首筋にゆっくりと沈み、消えていったのだ。

「あぁ・・・、もう、そんなに欲張らないの・・・」

噛まれたときは痛そうにしていたローズだったが、
伯爵が血を吸うたびに恍惚な表情へとかわっていった。

「いい・・・気持ちいいわ・・・もっとよ・・・」

ローズは我慢できなくなったのだろう、じっとしてはおれず伯爵の股間をまさぐりはじめた。
伯爵のパンパンにはちきれんばかりの肉棒は、ズボンの上からでもその形が手にとるようにわかりました。
ローズはズボンのチャックから手を滑り込ませると、膨れ上がった肉棒を優しく撫ではじめたのです。
端正だった顔立ちの伯爵も次第に快楽の波に引きずりこまれ、
色白だった肌にもほのかに赤みがさしてきたのでした。

「あッ、あん。アナタも感じているのね!」

快楽に我慢できなくなった伯爵は吸血を一時中断して、
ローズをマントの上から強く抱きしめたのでした。

「わたしも伯爵さまに吸血されて、すごく感じているのよ。
ほら、わたしのアソコも伯爵さまに負けないくらいベトベトなんだから・・・うふッ」

そういうとマントを左右にひらいて、目の前にいる伯爵に自らの秘部をみせつけたのです。

「どうかしらわたしのア・ソ・コ。・・・ほら!」

ローズのそれは真っ赤に膨れ上がり、蜂蜜のようにトロトロした汁に濡れていました。

「君は実に淫乱な女だな…、淫乱で…、とても美しい……。」

伯爵はローズのヴァギナに手を伸ばし、ゆっくりとした指使いで弄びました。
陰唇に沿って上下に指先で撫で上げたかと思えば、クリトリスをつまんでみたり・・・
思いのよらぬ動きが、刺激となって彼女の女陰に快楽をあたえ続けたのです。

16名無しさん:2012/03/08(木) 03:48:11
「うッ・・うん!上手よ・・・」

そして濡れたビラビラの奥からは膣液が止め処なくどくどくと流れ出し、あちらこちら汚したのでした。

「こうやって軽く触っているだけで指が溶けてしまうのがわかる…。
これは少し皮膚に付いただけで人間を死に至らしめる猛毒の蜜なのだ…。
私は君がこの蜜で何人もの人間を蝋燭のように溶かしてしまうのを見てきたというのに、こうやって味わうのをやめることができん。
これも吸血鬼の魔性というやつか…?」

「うふッ、ひょっとしたら伯爵さまが変態なだけかもしれませんわ…。貴方も私に溶かされてしまいたいと思っているのではなくて?
ほら、貴方のアソコがもういやらしいお汁でいっぱいだわ!ズボンに染み出した我慢汁が、濡れてテカテカに光っているわよ!」

そういうとズボンの大きな染みを指ですくったのです。

「ほら、こんなに糸がひいてるわよ!」

親指と人差し指で我慢汁をもてあそぶローズであった。
伯爵の顔は紅潮して赤くなった。
もちろん吸血して赤くなっていたのだろうけど、それだけではなかった。

「久しぶりに伯爵さまのアソコをみせていただきますわね!」

ローズはズボンの中から伯爵の肉棒を取り出したのでした。

「こんなに大きくなっちゃって、ほらッ、ピクピクって引きつってるんじゃない、うふふ・・・!
もう、そんなにココに入れるのが待ちきれないのかしら?」

そういうとローズは自分の陰唇を、伯爵の亀頭に向かい合わせたのです。
濡れたクリトリスが鈴口にちゅくっ、と触れた途端に彼のペニスはますますビクビクと震え、溢れてきた汁で濡れるのでした。

「ううッ・・・」

まるで自分の意志とは無関係にペニスが疼いているようでした。体中がローズの魔力に侵されて彼女の中に還りたがっているのがわかります。

「どう伯爵さま?こんなことされてガマンできるかしらね!うふふッ!」

ローズは自分のマントの裾をつかむと、彼の肉棒に絡めていった。
そして滑らかな布地越しに肉棒を優しく撫でては、亀頭に刺激をあたえたのです。

「う…ぁぁ、ッローズ!! 素晴らしい……、
君の責めは…、何度味わってもたまらない……!!」

「ふふふ……、そういえば私が初めて貴方にお目に掛かった時からこのマントの虜でしたわね。」

「あぁ……、忘れるものか…、あの暗い地下墓地で、棺の中で眠る君を初めて見たときから私は変わった。以来、私は君を長い眠りから目覚めさせることだけを考えて日々を過ごしたのだ…。

度重なる実験の失敗で疲労し、眠りに落ちたあの冬の晩のことだ・・・
私の寝室に月明かりに光る黒いマントを纏った美しい女が現れた・・・・・・。

その女は私の召使い達を忽ち死に追いやり、私までも誘惑するような視線で舐めるように見つめてきた。私は恐怖した・・・!! 私も君に殺されると覚悟したのだ・・・。

だが、君は私を殺すどころか、死ぬ運命にあった私を救ってくれた・・・。私の血を吸い、眷属にしてくれたのだ・・・。その瞬間、私は恐怖以上に大きな感情が湧き上がってくるのを感じたのだ。
狂おしい情欲!! 羨望・・・!! 愛情・・・!!
私はこの美女の物になってももいいと思ってしまったのだ!!
これまでどんな女も自由に手に入れ、好きなように弄んでは捨ててきたこの私がだ・・・!!

人間の女では決して持ち得ない美しさを持ち…、いつまでも若くありつづける…。 まさしく“完全”っ! 運命の出会いとはまさにあのことだったのだ。」

17名無しさん:2012/03/08(木) 03:55:10
そこまで話したところで、ローズは彼の唇を自らのそれで塞いだ。

「ふふふ・・・、いつにも増して口が多いですわよ、キルシュ坊や? 貴方を吸血鬼に変えてあげたのはこの私。 本当なら死せる運命だった貴方を生かしてあげたのはこの私なのよ。
人間相手には尊大な貴方も私にとってはただの従者。 よもやお忘れになどなってないでしょうね?」

「ううぅ・・・。 ローズよっ!!  一体いつになったら君は私を同等とみなしてくれるのだ?
私は君の心が欲しい! 君を本当に愛しているのだっ!! 私は君の物になりたい!! 永遠に君を妻としたいのだ・・・!!」

「ええ、存じていますわ・・・。私自身、長い眠りから醒ましてくださった貴方のことを特別だと思っていますもの。
でも、貴方の願いを叶えてあげるのは私の悲願が叶ったその時ですわ。お忘れになっていませんわよね?」

「無論だ・・・。私は君の願いを叶えるためにこれまで手を尽くしてきた。
そのために、君の“城”を作り、良い血を持つ処女を選りすぐり、儀式の為の生贄として君に提供してきたのだ。」

「感謝していますわ伯爵さま・・・。貴方のおかげで今までの黒ミサは成功続きですわ。
それに、あの忌々しいハンターに邪魔されていた最後の儀式もまもなく準備が整います。おそらく次の満月の夜くらいには・・・。」

「なにっ!? もうそんな段階まで来ているのか? 次の満月には私も完全な存在に変われるのだな?!」 

ローズは肉棒をしごく手を早めました。

「うぅっ!!」

「ふふふ・・・、ついつい話し込んでしまいましたわ。
私たちは今、夜伽の途中でしたわね・・・。詳しいことはあとでゆっくりと話しましょう。
今は楽しんでくださいな・・・。」

バサァァァッ!!

ローズはマントを大きく広げると、そそり立つ伯爵の肉棒の上に腰を持ってきました。
そして、猛毒の蜜が滴る肉の華の中へ伯爵のペニスを呑み込んでいったのです。

ヌププ・・・、ヌプン・・・ヌブブ・・・・・・

「うッ・・・!!
ううッ・・・あぁ、 体が・・・熱い!! い、イキそうだ・・・!! 」

「いいわよ、イッっちゃっても!わたしの中ににいっぱい貴方の熱い命を注ぐのよ!!
一滴残らず絞り上げてあげるわ!! うふふッ、死んだとしてもまた生き返らせてあげるから
怖がらずに溶けておしまいなさい。」

ローズは彼に跨ったまま身体をマントで包み込むと、腰をゆっくりと揺らしながら肉棒を搾り上げていった。

「うぁ・・・っ!! おぁぁ・・・!!」

びゅるる〜〜 ぶびゅるるるっ!!

亀頭がぐりぐり膣の内壁と擦れあううちに伯爵のペニスは射精をむかえ、大量の白濁液がローズの子宮へと流れ込んでいく。
普通ならとっくに精液が途切れる時間が過ぎてもその勢いは衰えることは無く、彼の精は止め処なくどぷどぷと流れ出て行った。

18名無しさん:2012/03/08(木) 03:59:31
「ん・・・、はぁ・・・。 おいしいぃ・・・!!」

精液を飲み込む度に、ローズは自らの乳房を揉みしだきながら身体を捩らせて感じていた。
新鮮な命のエキスを搾り取るのは彼女の最大の愉悦だ。若い男たちの精を枯らす度に彼女の身体はますます瑞々しさを増し、美しく妖しく輝くのだ。 

「貴方の精はやはり格別ですわ・・・。お礼に私もぶっかけてあげる・・・。」 

ローズが一際強く胸を寄せ上げると、そこから大量の乳が迸った。

どびゅるるるる〜〜〜!! ジュバジュバジュバァァ〜〜〜

伯爵が漏らした精液などまるで比較にならないくらい、ローズの乳は生白く濃厚でまるで練乳のような粘度を持っていた。
おまけに量も桁外れで、激流のような勢いで伯爵の寝る棺桶の中を満たしていった。

「うぅ…!! ああぁぁ…っ!!!」

ローズの乳から吹き出たミルクが伯爵の身体をどんどん白く汚していく。
大量の濃いミルクは彼の顔や胸にまで当たって弾け、まるでパイでもぶつけられたように頭をドロドロの粘液で覆い隠してしまった。

そして、白い乳液はたちまち伯爵の服を溶かし、ついには彼の体までもドロドロに溶解しはじめた。
皮膚が溶け、 内蔵が溶け・・・、 溶けた体は下腹部に溜まり、精液のように股間から吹き出し続ける。 伯爵は溶けていきながら延々と続く射精の快楽に狂い続けていた。

「うああぁ・・・・・・ ああぁぁ・・・・・・と・・・ける・・・ とけ・・・・・・。」

じゅぶぶ 、べちょ・・・ どくどくどく・・・・・・

「うふふふ・・・、今のその身体もそろそろ綻びが出てくる頃よ。
とろとろに溶けなさい・・・。そして私のお腹の中でまた新たに生まれ変わりなさい・・・。」

「うぶ・・・・・・、おぁ・・・・・・ うくぅ・・・・・・・・・」

びちゃびちゃびちゃ・・・・・・ どろどろどろ・・・・・・・
ヌプププ・・・・・・、ジュルジュルジュルルゥ〜〜〜〜

ローズの乳と粘液に溶かされ、伯爵の身体はどんどん形を失い小さくなっていった。
最後には身体は萎んだ風船のようにペラペラになり、それすらも溶けて彼女の膣の中へと没してしまった。

クチュ・・・、クチュ・・・、 クチュ・・・・・・ 

「ん・・・はぁ・・・ん、 よしよし・・・・・・ボウヤ・・・、そんなに暴れないの・・・。
すぐにまた産み落としてあげるからおとなしくするのよ・・・・・・、ああぁ・・・ああん・・・っ!!」

バサァ、 ブワサァァ・・・

自分の身体に濡れたマントを巻きつけ、少し大きくなったお腹を抑えながら、闇の美女はくねくねと身体をうねらせ、悩ましい声を漏らす。

「ああ・・・、おおぉ・・・、ん・・・、はぁっ!! あああぁぁっ!!!」

バサァァァッ!!

そして、大きく身体をくねらせたかと思うとマントをめいっぱいに広げ、腰を突き出した。すると、吸い残しの精液と粘液で濡れた彼女の膣から、ズルリと何かが産み落とされ、ドロドロのミルクで満たされた棺桶の中に落ちた。

「はぁ・・・はぁん・・・・・・、んふ・・・っ うふふふふ・・・・・・!!」

息を落ち着かせた彼女は棺桶の中の物をいとおしそうに見つめた。
そのミルクの海の中には、大きさが卵くらいの胎児のような物が蠢いていたのだ。 
いや、胎児と呼ぶにはあまりにおぞましいそれはまるで母体の中から無理やり取り出されたように不完全で、手足の無い水蛭子のようだった。 
そしてその顔は歪な形に歪んでいるもののキルシュ伯爵そのものであり、言葉にならないうめき声を上げつづけていた。

「ふふふ・・・、これで何回目の誕生かしら・・・? 覚えているかい? キルシュ坊や?」

ローズはその胎児を両手で掬い上げると、自分のマントでその身体を包んで胸に抱いてやり、その小さな口を自分の乳房へと持っていったのだ。
小さな伯爵は母の乳を吸うように濃厚なミルクをのみはじめた。

19名無しさん:2012/03/08(木) 04:05:16
するとどうだろう。 卵のように小さかったその身体は、つい一刻前に身体を溶かしてしまった筈の乳を飲む度に大きくなり、だんだんと元の伯爵の姿に戻っていったのだ。

普通なら、ローズに溶かされた人間は彼女の血肉と化し、二度と元の姿に戻ることはない。
だが、ローズにとって有益な人間であるキルシュ伯爵に限っては、一度殺された後、例外的に新しい身体で再生させてくれたのだ。 
ローズの母胎の中で作られた身体は、吸い取った人間の精から作られたホムンクルスである。

通常のレッサーヴァンパイアと違い、理性を失わず、生きている人間と見た目にも遜色が無い上に、純粋なヴァンパイアと同等の魔力を行使できる。
しかし、その代償にその身体は非常に不安定であり、長い間形を保つことはできないのである。
伯爵は身体にガタがくる度にローズに溶かしてもらい、また生み出してもらうということを繰り返しているのだ。

「ふふふ、お目覚めかしら伯爵様? 今度の身体の調子はいかが?」

ローズはまだ足元もおぼつかない伯爵の身体を抱いたままやさしく微笑んだ。
フード付きの大きなマントで裸の男の身体を包込み胸に抱く姿はさながらマリア様のようではあるが、彼女のその姿は聖母に例えるにはあまりにもおぞましかった。



それから数時間・・・。
伯爵はすっかり元に戻り、秘め事を終えた2人は別室でくつろいでいた。
伯爵が着ていた服はローズのミルクによってもう原型をとどめておらず、彼は別の服に着替えていた

「時にローズよ、マリアの調子はどうだ? 日本に留学させてから随分たつが。」

「伯爵さま。マリアは中々頭が回る切れ者ですわ。狙った獲物はほとんど逃がしません。
さすが伯爵さまが目をつけた小娘だけのことはありますわ!」

伯爵は氷の入ったグラスにブランディーを注ぐと、軽くグラスに入った液体をまわした。

「そうか、マリアは使えるか! くくく・・・、本当はあれではなく美しく聡明な姉の方が候補だったのだがな。マリアは思わぬ収穫だったようだ。」

「ふふ、姉のエレナの方もなかなか手際がいいですわ。毎晩1、2名の人間がエレナの犠牲になっております。
ただ彼女は手加減をまだ知らないので、欲望が満たされるまでは暴走するのですが・・・。
わたくし共々、その点は困っているのです・・・」

「まーよいではないか!エレナに群がる奴らが悪いのよ! ところで、成果があったということは例の娘が見つかったということだろう? 
ということはつまりこの村もそろそろ用済みということだ。いっそエレナにやってしまっても構わんだろう。」

「そうですわね・・・うふッ。 これからもっと広い狩場が必要になりますわね。
伯爵様の贈り物がいよいよ役に立つ時がきたのですわ。」

ブランディーを口に含みながら、妖しい笑みをうかべる伯爵。ローズは彼が座るソファに腰掛け彼の身体にしなだれかかった。
伯爵は彼女の肩を引き寄せると、軽くキスを交わしあった。

「で、だ。 娘は一体どこにいるのだ」

「ふふふ・・・、日本ですわ伯爵さま。 前に貴方が会見の為に訪日した際、黒百合という娼婦を私に味わわせてくださったでしょう? 
先日彼女が襲ったある男の中に“あの子”の血を感じましたの。
私は早速、黒百合にその男を襲わせてあの子をおびき出そうとしたのだけど、残念ながら例のハンターの手で黒百合は滅んでしまいましたわ。 
でも倒される瞬間、確かにあの子の姿を見ましたの。驚いたことにハンターといっしょになって黒百合と戦っていましたわ」

「ほう・・・、君を苦しめるあのハンターと娘が仲間か。 おもしろい・・・。 で、居場所は?」

「黒百合が倒されたのは東京の世田谷区内。でも、そこに住んでいるとは限りませんわ。たまたま黒百合を追ってきただけなのかも。」

それを聞いて、伯爵はほくそ笑みます。

「ローズよ、確かそこはマリアを向かわせた学校からも遠くないな? さては彼女を留学させたのは娘を捕まえる為か?」

「最終目的はそうですが、少し違いますわね。マリアは稀に見る逸材ですけど、さすがにアイの力には敵いませんわ。
あの子に近すぎると気配を察知されてしまいますもの。マリアには別の仕事を頼んでいますの。それこそこの計画の為に重要な仕事を。」

すると、ローズはマリアの動向と計画の骨子について伯爵に話始めた。

「くくく、なるほど・・・。 君はいつも手が早いな。 
私もうかうかしてはいられない。すぐに訪日の準備をはじめなければ。」 

「よろしくお願いしますわ! 私たち二人が君臨するユートピアの実現のために!! ほほほほッ!!」

暗い闇夜に大きく真っ赤に輝いている月の光は、2人の影を妖しくうつしだしていたのです・・・。

20名無しさん:2012/03/08(木) 04:11:23
5

「渡来船」の地下室は、お店の従業員でも滅多に出入りしない場所であった。
いや出入りしない場所ではなく、したくても出入りできない力が働いていると考えたほうが、
わかりやすいのではないだろうか。
それは裏の世界を知っている特殊な存在きり出入りできない空間だったからです。
その為か、お店の従業員でも「渡来船」の地下室があることを知っているのは、
穂積みゆきと北原美樹だけなのです。

地下室は中世ヨーロッパのお城の一室のような部屋でした。
部屋の大きさは、地下室にしてみれば結構広い空間でした。
そして部屋の中央には、ドラキュラが愛用してるような木製の棺がおいてあり、そのためか部屋は狭く感じられ、異様な雰囲気が漂っていたのです。

カズこと、早瀬和也 は みゆきに案内されてこの地下室を訪れるのは2度目となった。
初めて訪れた時もそうだったが、この部屋に入ると緊張して変な胸騒ぎがするのでした。
(それにしても、左耳が痛てー!)
みゆきに左耳をつかまれ引きずられながらこの部屋についてきたので、
まっかっかに腫上がってしまったのでした・・・。
カズは耳をさすりながら部屋見渡すと、同様に藍も泣きべそをかきながら右耳をさすっています。

「みゆきさん!確かにお店でアイちゃんといちゃついた事については謝るよ!だけれどもこの仕打ちは・・・」

「カズ!おだまり!!」

間一髪、みゆきから返事がかえってきた。
みゆきはセーラー服のポケットからバージニアスリムを取り出すと、1本口にくわえた。
そのタバコをジッポで火をつけると、煙を胸にいっぱい吸い込んだのでした。
ふぅーッ!
その時、みゆきは何かを考えていたのだろう・・・タバコの煙を吐き出したとき、その考えが決意にかわったのです。
そして話しました。

「2人ともこれからわたしが話すことをよくきいてちょうだい!
イチャつくのは構わない。 だけど、節度をわきまえなさい!!
アイには欲望に左右されない、誇り高い愛のあるヴァンパイアになってほしいの!
もしアイが欲望のうずまく黒い闇に心を奪われたなら、わたしはヴァンパイア・ハンターの名にかけてあなたを手に掛けなければならないわ・・・」

「ちょ、ちょっと待った!!
ってことはアイちゃんが黒い闇の世界に支配されちゃったら、あの年増女の黒百合みたくエッチになちゃうわけ?」

「”エッチになっちゃう”? ほほぅ・・・、
男を暗がりに連れ込んで、子種を絞り取ろうとするような状態でもまだエッチじゃないと?」

「いや・・・、それは」

「今ならまだその程度で済むかもしれない。 でもアイがヴァンパイアであることを忘れちゃいけないわ。
アイだけでなく多くのハーフヴァンパイアは個人差はあれど性に対して奔放だと聞くわ。これは吸血鬼の本能に起因する部分が多いの。 

ヴァンパイアにとって性交渉は獲物を狩ること、つまり吸血行為の延長線上にある。 
ああいうふしだらな事をなりふり構わず行っていると、そのうち欲望に歯止めが効かなくなるわ。

吸血鬼としての動物的本能が目覚めて、永遠の若さを求めて手当たり次第に獲物を追い求めては生き血をすすり、そして偽りの愛で精気を貪り尽くすの。
そしてボロボロになって死んだ人間は、生ける屍、レッサーヴァンパイアとして生まれ変わり他の獲物を襲うのよ!
カズは1度経験してるからわかるでしょう!」

「う・・・それは・・・」

「・・・・・」

藍は無口のままうつむいて、二人の会話をきいていた。

21名無しさん:2012/03/08(木) 04:15:11
「わたしとアイは昔、あるきっかで強い絆で結ばれたの・・・今は時間がないから詳しいことは話さないけど。
しかしこの事を口にしたのは、カズがはじめてなのよ・・・」

(ずっしり!なんかオレすごい重荷を背負わされちゃったみたい・・・。みゆきさん、オレの気持ちは・・・)
どんよりとした湿気のある空気が室内にただよった。
そんな空気を打ち消したのは、今まで無口でうつむいていた藍であった。

「偽りの愛なんかじゃないもん・・・・・・。」

藍は下を向いたままボソッとつぶやいた。その言葉にみゆきも和也も彼女の方を向く。すると今度は藍は二人の方をまっすぐに向いて話し始めた

「みゆきさんの言う通り、さっきのは確かに軽率だったわ・・・。 
でも私、あの時カズくんのことを単に性欲の対象として見てたわけじゃない。 
私、誰彼かまわずあんなことしないわ。相手がカズくんだったから、ちょっと変な気持ちになっちゃっただけだもん・・・。 

だってカズ君のこと好きだもん!! 好きなひととならついエッチなことしてもいいって思っちゃうのは当然でしょ? 
カズ君といっしょに気持ちよくなりたいと思ったから・・・。」

「ストップっ!! よくわかったからそこまでにしなさい!!」

「みゆきさん!! 私これでも真剣に話してるのよ?」

「わかってるわよ・・・、問題はそこじゃなくて・・・。」

みゆきは横に目配せする・・・、藍もそっちを見ると、思わずあっ!! と叫んだ。

「あ・・・あい・・・ひゃん・・・。ぼくのこと・・・・・・そんなに・・・」

ぼ〜っと藍を見つめて立ち尽くす和也の鼻からボタボタと鼻血が滴っていたのだ。
既に足元には大きな血溜まりができつつある。

「カズ君!! ちょっと、大丈夫?」

「貴女の気持ちは純粋なんだろうけど、こいつの頭の中では全部いやらしく変換されちゃうの。店の床が汚れるからこいつのスケベ心を刺激しないでちょうだい。」

カズ君はそのまま、貧血で倒れそうになったところを二人に介抱されました。

・・・・

「みゆきさん。あたしあなたの希望に添えるようなヴァンパイアになれるかわからないけど、努力してみる。 
カズ君が私の手でレッサーになるのなんて嫌だもの。」

なんとか落ち着いたカズの頭を撫でながら藍は言います。

「そうね、その考え方は賢明だわ。貴方が気をつけていてもカズがこの調子じゃね。
勝手に鼻血出して失血死して、ヴァンパイアになっちゃったらやりきれないし。」

「そこまでいわなくても・・・。」
 
「しゃべるな、寝てろバカ男!! 
ま、それはそうと貴女自身もまだヴァンパイアとして未熟だし、ヴァンパイア・ハンターとしての腕前もまだまだだし、修行が必要だけどね。」

「ぶーッ!!そこまでいうことないぢゃん!!」

「だって本当のことでしょう?それに初めて吸血した相手ってカズだったんでしょう!?
ちょっと男の趣味も問題ありすぎて心配だわ。」

意味ありげな視線で、藍をみつめる みゆきであった。

「えッー、オレがアイちゃんのファーストキス・・・じゃなかったファースト吸血の相手なのー?」

藍の顔が一瞬にして真っ赤になってしまった。
そんな藍の初心な姿に心温まるみゆきであった。 でも、だからこそ厳しくしなければならないとみゆきは改めて思うのだった。
この純粋な笑顔を守る為に私がまだまだ教えてあげなきゃならないことは多いのだ。

22名無しさん:2012/03/08(木) 04:19:11
「それでは2人に試練をあたえるわよ、まずはカズ。
さっきあなたはわたしにヴァンパイアの映画を見に行こうって誘ってくれたよね。
その気持ちは嬉しいわ、素直に受け取ってあげる。
だけどカズは前回の体験(ヴァンパイアに肉体を弄ばれた)での興味本位からのお誘いなんでしょう?」

(ずさーッ!みゆきの姉御はそこまで気づいていたのか・・・お、男のロマンが崩されていくー・・・む、無念!)
そういうと みゆきはカズの瞳を見つめながら話したのでした。

「くすッ・・カズ、あなたはそんな安っぽい男になってはダメ。
もっと自分に自信を持って生きてほしいの!その為には強い理性と優しさが必要よ!
そしてアイが暗黒の闇に堕落しないようにサポートしてあげてほしいの!!」

オレは吠えた!

「うぉーッ!オレはカズ、男の中の男だぁーッ!やってやるぅーッ!!」

「くすッ、やっぱりカズって単細胞な男ね!」

みゆきの姉御には弱いカズであった。

「そしてアイ、あなたは自分自身のことをしっかりと受け止めるの。
自分を知る事が一番大事なことよ!自分というモノサシをしっかり持つの!
そうすると自分の行くべき道は、おのずと開かれてくるはずだわ!」

そういうと みゆきはタバコの煙を吸い込むと、短くなったタバコをもみ消した。

「わたしがあなたたちにアドバイスできるのはここまでよ。
これからは自分達が自分の意思でしっかり進みなさい!」

(ヴァンパイアハンターのわたしが、ハーフ・ヴァンパイアのアイに教育するなんてね・・・
表世界の住人を守る為には、致し方ないことだものね(苦笑))

「ま、そんなわけで…、藍、急な話だけどちょっと一週間ばかり店に入ってくれない? 寝泊まりは私の事務所を使っていいから。」

「「へ?」」

みゆきは大きなカバンを取り出すと呆然と立ち尽くす2人を尻目に、地下室にある一見ガラクタにしか見えないものを自分の鞄に詰めていた。

「あの…、みゆきさん? そのカバンは一体。」

「ああ、この中に私の着替えと非常食とパスポートが入っているわ。
その他もろもろ、必要なもの。」

「いや…、そうじゃなくて…。旅行にいくなんて聞いてませんけど……。」

みゆきは手を止めて、真剣な表情で言った。

「旅行じゃないわ。 事件(ヤマ)よ。 それもとびきりビッグな…。」

みゆきの言葉を聞いて2人は思わずゴクリと唾を飲んだ。

「ちょっと前に知合いの情報屋から連絡があったのよ。 ヨーロッパの田舎でね、人を襲う魔物が出ているらしいの。 しかも、そいつはかなりの大物で力もハンパじゃないらしいの…。」

みゆきは一旦言葉を切ると、アイの方を向いて言った。

「事件の発生場所はハンガリー北西の寒村、ホロウ・クイよ。 私と貴女が出会った場所もかなり近いわね。」

それを聞いて藍もハッとしたようだ。カズにはその意味を伺い知ることはできなかったが、二人にとって何か深い因縁のある場所なのだということは予感できた。

「みゆきさん・・・っ!! 私も行きます!」

「だめよ!! 今回は貴女は連れていけない。 カズといっしょに留守番してて。」

「私はハンターでみゆきさんのパートナーなんですよ! 
それに・・・、このことは私の手で決着をつけたいんです。お願いですから連れていってくださいっ!!」

「藍・・・、気持ちはわかるわ。貴方には戦う理由がある・・・。でも、わかって。
敵がもしあいつだとしたら貴女を近づかせるわけにはいかない。もし貴女があいつの手に落ちたら大変な事になるわ。 わかるでしょう?」

「でも・・・・・・。」

23名無しさん:2012/03/08(木) 04:21:59
みゆきは藍の側に寄ると、そっと抱き締めた。

「もう貴女は一人じゃない。わたしだけじゃなく、お店のみんなや、学校のみんなや、それにカズだって・・・、貴女を思う人たちは沢山いる。
貴方にもしものことがあったら皆を悲しませることになるわ。
ハンターとして皆を守りたい気持ちはわかるけど、でも抑えて・・・。 相手は貴女にとって危険過ぎるのよ。」

「・・・・・・・・・。」

藍はもう何もいいませんでした。

「藍、貴女にこれをあげる、お守りよ。」

そういうと、みゆきは藍の首にペンダントのようなものをかけた。金属製で少し錆びており六芒星を象ったものだった。

「みゆきさん・・・、それなに?」

「今からこの店に我が家秘伝の防御陣を施すわ。これでヴァンパイアはこの店に一歩も踏み込めなくなる。
もちろん、このままじゃ藍にも悪影響があるけど、そのペンダントをつけていれば貴女にはまじないが作用しなくなるわ。」

そして、みゆきはカズと藍の両方を見て言った。

「いい? カズも良く聞いて。 私は行くけど、その間にこちらで何か起きないとも限らない。
前の事件でわかったろうけど、吸血鬼は気付かないうちに紛れ込んでいるものよ。

さっき私が言ったことを良く噛み締めて!! 何があっても絶対に闇の世界に堕ちてはならないわ。
いざというときはこの店に来なさい。ここにさえいれば奴等の手を逃れられるわ。」

「わ…わかったよ、みゆきさん……なんかよくわからないけど頑張ってみるよ。」

カズの表情に強い決心を感じたみゆきは、安心したように微笑むと大声で二人に言った。

「よーし! そんじゃ、ちょっと言ってくるわ! 二人とも店番よろしく!!」

みゆきは、地下室から出ると美樹や他のクルーたちに声をかけて、しばらく休養を取ることを伝えた。
そして、さっき集めたガラクタのうちいくつかを店のあちこちに置き、小さく十字を切っていた。
どうやらこれが、ヴァンパイア用の防御陣のようだ。

そして、その仕事を終えたあと、軽く挨拶をして一人店を出て行った。
後にはカズと藍だけが残されて、しばらくの間その場から動くことができなかった。

「アイちゃん・・・。」

「みゆきさんのバカ・・・、 みゆきさんがいなくなっても悲しむ人は大勢いるのに・・・。」

24カサブタ:2012/03/08(木) 23:56:20
私がまだハンター見習いだった頃・・・。
私は束縛されることが嫌で世間に反抗し、親に反抗し、そして自分自身にも反抗した。
若さゆえの無知無謀が自分自身をそう駆り立てたのかもしれない。
その時の私は自分に力さえあれば束縛されることから逃げ出し、自分の宿命であるヴァンパイア・ハンターの道を替えることができると信じて疑わなかった。

「ちッ、逃げられたか!」

《生命(いのち)の宝珠(たま)》を天高く掲げた梨香(りか)は、ひるんで膝をついていたみゆきに声をかけたのだった。

「みゆき、しゃっきっとしなさい!!その扉からヴァンパイアが逃げたわ!!急いで後を追うのよ!!」

ヴァンパイアの下僕となって襲ってきたレッサーヴァンパイア達は、《生命の宝珠》から溢れ出した聖なる光を体全身に浴びて声にもならない断末魔を漏らした。
そして次々と灰になって静かに崩れ去った。

「はい、母さん」

ヴァンパイアは《生命の宝珠》から光が溢れ出ると同時に、蝙蝠へと姿をかえたのでした。
そして光を避けながら下僕としていたレッサーヴァンパイアの陰に隠れるように部屋から逃げ出したのだった。
キワドイ戦闘服の上に黒のロングコートに身を包んだ梨香は、娘のことなど気にもせずに扉から出て行ったヴァンパイアの後を追いかけていった。

「はぁ、はぁ・・・」
みゆきは額から流れ出る汗を濃紺のセーラー服の袖で拭うと、母の後を追うように走った。
自分のプライドと体制への反逆の印であるロングスカートがこの時ほど恨めしく思ったことはない。
すると突然、女がみゆきを呼び止めたのだ。

「ヴァンパイア・ハンターのお姉さん。どうかわたしの魂を、この呪われた身体から解放してください・・・」

ヴァンパイアの吸血の呪力が今ひとつ足りなかったせいなのだろうか、
下僕のなかにはレッサーヴァンパイアになり果てない不完全な吸血鬼として存在した奴がいたのである。
理性を保ってはいるが肉体は既に痴れ狂っていた・・・。

25カサブタ:2012/03/08(木) 23:59:05
先程までここではヴァンパイアによる漆黒の宴(黒ミサ)が執り行われていたのである。
男女の性別は関係なく互いの精気を心ゆくまで貪り尽くしては、また自分の側にいる別の相手を犯し、そして犯される。
その凄まじい狂態は地の底の深淵から轟々と湧き上がる瘴気そのものであった。

女の口元には血が付着し、身体は体液で濡れている。おそらくは彼女も、自分の中からどす黒く湧き上がる欲望を抑えきれず、周囲の犠牲者達を襲ってしまったのだろう。

「私はもう人を襲う衝動を理性で抑えることができません・・・。親や子供、そして友人を吸血し殺してまで、生きたいとは思いません・・・。
どうかわたしが生気を保っているうちに、また誰かをを襲わないうちに殺してください・・・」

まだ見習いヴァンパイア・ハンターの みゆきでさえも、彼女は人間として生きていくことのできない体であることがわかった。
そして他人の生き血や精気を吸い取り続けなければ、生きていくことはできない体であることもすぐにわかった。
自分にはどうすることもできない儚く虚しい感情が みゆきの体を覆い尽くすのだった。

「しかし、わたしには・・・」

「まだ生気であるうちに・・・、お願いします・・・。そしてこの子を・・・ううッ・・・」

女吸血鬼のマントの陰に隠れるように、1人の少女が みゆきを見つめていた。
まだ小学生くらいのその子は、おかっぱ頭の少女だった。

(っ!! この子・・・!!)

みゆきは彼女の顔を見て、驚愕した。彼女はどころなく今逃がしたヴァンパイアに似ていたのだ。
その娘はまだあどけない顔をしているが、その姿や纏う雰囲気には、ヴァンパイア特有の人を惹きつけるような妖しさが片鱗を見せている。
そして彼女の口の中も既に小さい牙が生え始めていた。

この子もヴァンパイアであることは間違いないが、おそらく他のレッサー達とは違う。
あのヴァンパイアが執り行おうとした黒ミサにおいて何かの重要な役割を担っていたのでは?

(どうしよう・・・、 悪い可能性は小さなうちに潰しておくべきかしら・・・。)

みゆきは少女を怖がらせないようにゆっくり歩み寄るが、片手は聖水の瓶に手をかけていた。
この少女があいつに何の関係あるのかは知らない、だが、憂いを残さない為には今ここで殺しておくに越したことはないはず・・・。

「おねがいします・・・・・・、この子をどうか・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

しかし、みゆきにはどうしてもできなかった。
この瘴気がうずまく絶望のなかにあって、みゆきを見つめる少女の瞳には生きる希望を秘めた強い意志が感じられる。ヴァンパイアとは死の影を背負う者の筈なのに、彼女からはなぜか眩しいばかりの生命の光を感じるのだ。

この子をここで殺すべきではない・・・。みゆきの心はそう伝えていた。

26カサブタ:2012/03/09(金) 00:00:27
「名前は?」

「アイ」

「アイ、わたしについておいで!」

みゆきの淡い想いが通じたのだろうか?藍がこくりと頷いた。

「わかった・・・。この子はわたしが預かるわ。
あなたはこの世に未練を、そして心残すことなくすべて忘れなさい」

みゆきはロングスカートのポケットから聖水の入った小さな小瓶を取り出すと、
不完全な吸血鬼にむけて聖水を降りかけたのでした。
そして女吸血鬼は至福な表情を浮かべポロポロと涙を流しながら、とろけるように静かに消えていったのだ。

(天にまします我らの父よ 願わくば御名を尊とまれんことを、
御国の来たらんことを 御旨の天に行なわるるごとく
地にも行なわれんことを、 我らの日常のかてを今日我らに与えたまえ
我らが人に許すごとく、我らの罪を許し給え
我らを試みに引き給わざれ、我らを悪より救い給え アーメン)

みゆきは心の中で主の祈りを唱えると、十字をきった。
これで みゆきは女吸血鬼に対して正しく弔ったどうかは、自分自身でもよくわからなかった。
しかし少女の瞳から語られた意思から、みゆきに新しい何かの力を受け取ったことは確かであった。

「ふーッ!何やってたのさーみゆき。
あんたがボケボケしていたおかげで、ヴァンパイアを逃しちゃったじゃないの!」

くわえタバコをしながら みゆきの前に姿をあらわした梨香であった。

「しかし奴の寝床の棺は浄化しながら燃やしたから、当分の間は悪さをしないでおとなしくしているはずよ!」

梨香は自慢げに娘をみた。

「はいはい!」

すこし憂鬱になった みゆきだった。

みゆきの母、梨香の容貌は、みゆきより背が少し小さかった。
体格はやや小柄で細身だが決して華奢(きゃしゃ)ではなかった。
むしろ昔から体を動かす事が大好きで、鍛え上げられたしなやかさは並みの人間では考えられないほどである。野性の中の美獣といっても過言ではない。
ショートにした黒髪がとても似合い、特に左腕に彫った蝶のタトゥーがまた印象的でもあった。


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