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ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです

39名無しさん:2020/10/14(水) 19:11:10 ID:YvZFQxxU0


 ピロピロピロピロゴーウィwwwゴーウィwwwヒカ

ξ゚⊿゚)ξ !

 しかし、そんな不安も束の間のこと。
 両手に握っていたスマホがゲーミングPCめいた光を放ち、着信を報せる鳴動を轟かせた。

ξ゚⊿゚)ξ(あ、忘れてた)

 電話の相手はハインさん。
 そういやドクオ達には連絡したけどハインさんには連絡しなかったな。家主なのに。
 とにかく私は電話に出た。

ξ゚⊿゚)ξ「もしもし、ツンちゃんです」

 『――おおツンちゃん! 今どこに居る!? 無事か!?』

 電話口から慌てた声が響いてくる。
 私はちょっとスマホを遠ざけてから、恐る恐るハインさんの問いかけに答えた。

ξ;゚⊿゚)ξ「ぶ、無事だけど、どうかしたのかしら」

 『ああ、無事ならまぁいい! アホっぽい感じも普段通りで安心した!』

 『そんで今どこだ! あとで向かうから教えてくれ!』

ξ゚⊿゚)ξ「え? えっと、ハインさんの家でくつろいでるけど……」

 『……え、オレの家? マジで?』

ξ゚⊿゚)ξ「マジどす」

 『どーりで見つかんねえわけだよ!! なるほど了解!!』

 向こうから膝を打つ音が聞こえてくる。
 なんか大変そうだな。そう思った。


.

40名無しさん:2020/10/14(水) 19:12:10 ID:YvZFQxxU0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


从;゚∀从「――いいかツンちゃん、そこから動くなよ」

从;゚∀从「今は俺の屋敷だけが安全だ。そこなら敵も気付けない」

 電話をしながら、ハインは『敵』への視線を決して逸らさなかった。

 夜の都会。
 ビル屋上にて敵を迎える彼の手には、血に濡れた刀剣が力強く握られていた。

从;゚∀从「説明は今度する。ちょっと状況がマズくてな、色々とバレちまった」

从;゚∀从「……誰にって、そりゃ魔王の娘を狙ってる敵にバレたんだよ。
      こっちも色々手を打とうとしてたんだが、その隙をつかれて最悪になった。もう最悪だ」

从;゚∀从「とにかく動くな、警戒してくれ。
      ミセリもそろそろ戻るはずだ。もうちょい時間稼げばギリギリ間に合ッ」

 ――言葉の際、敵の攻撃がハインの手元を掠めていく。
 目にも留まらぬ光弾ひとつ。その一撃で通話は途切れ、スマホ自体も上半分が消えていた。

从 ゚∀从

从 ゚∀从「……途中だろ。急かすんじゃねえよ」

爪'ー`)y-~「悪いね」

 スマホの残骸を捨てて呟き、刀の切っ先を持ち上げるハイン。
 笑みを浮かべて煙草をくゆらせ、彼の敵意を煽る敵――フォックス。

 両者はしばし見合った後、再び夜に戦火を奔らせた。

.

41名無しさん:2020/10/14(水) 19:14:09 ID:YvZFQxxU0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ξ;゚⊿゚)ξ

 ……敵、という言葉を久し振りに聞いてしまった。


 魔界で何度も経験してきた奇襲闇討ちの類。
 それと同じことが起こったのは、ハインさんの感じからすぐに理解できた。

 動くな、というハインさんの指示はもっともだ。
 味方が誰も居ない今、私が安全で居られる場所はどこにもない。
 この屋敷だっていつ敵に見つかるか分からない。これは完全にヤバい状況だった。

ξ;゚⊿゚)ξ(みんな、こうなるのが分かってたのかな……)

 ミセリさんも、ハインさんも、そして今日転校してきた内藤くんも。
 私がまんがタイムきららをしている一方で、みんな敵襲に備えていたのかもしれない。

 しかしそれでも間に合わなかった。
 そして恐らく、事態を早めた原因は私にある。

 ……私が勝手に動いたせいだ。
 だから私はここに居て、みんなは外で戦っている。

ξ;゚⊿゚)ξ

 屋敷の静けさがとても息苦しい。
 時計の音すら耳障りだった。自責が加速してしまう。

.

42名無しさん:2020/10/14(水) 19:15:17 ID:YvZFQxxU0


ξ;゚⊿゚)ξ「……と、とにかく今は安全なんだし、必要なことをするのだわ」

 私は独り言をほざいて孤独を紛らわした。
 居間でくつろいでても仕方ない。今ここでやれる事は済ませておこう。

ξ;゚⊿゚)ξ「魔力は多めに生成するとして、……魔力成形よね」

 ともあれ、敵が来るならまず武器だ。
 私は魔力成形のイロハを思い出し、試しに魔力を練り上げてみた。

ξ;゚⊿゚)ξ「うおおお!! なんか良い感じの武器になれ!!」 (魔力をこねる音)
 つ魔と

 私の頑張りに応じて形を得ていく魔力の像。
 そして次の瞬間――!


.   _ ∩
  レヘヽ| | テテーン
    (・x・)
   c( uu}


ξ;´⊿`)ξ「ウサちゃんになった……」

 どうして……

.

43名無しさん:2020/10/14(水) 19:16:45 ID:YvZFQxxU0

ξ;゚⊿゚)ξ「どうしたもんか……」

ξ゚⊿゚)ξ「……あっ」

 腕組みしながら悩んでいると、ふと私の脳裏にミセリさんの言葉が浮かび上がった。
 次はもっと簡単なイメージでとか、確かそんな事を言ってた気がする。

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ(なんだっけ、布だっけ。
       よく分からないけど簡単なのかしら……)

 半信半疑もやむなきところ。
 私はもう一度頑張って魔力を用意し、魔力成形に挑戦した。

ξ;゚⊿゚)ξ「ぬぉぉぉぉ魔力成形!! なんか布になれ!!」
 つ魔と

 そして次の瞬間――!

ξ゚⊿゚)ξ「意外とできたのだわ」
 つ布と

 私の手には、モコモコとした赤いマフラーが実体化していた。

.

44名無しさん:2020/10/14(水) 19:18:33 ID:YvZFQxxU0

 ――しかもそれは単なる赤マフラーではない。
 純度100%、私の魔力だけで作られた特別製だ。
 なにぶん初めてなので性能は分からないが、多分それなりに頑丈&パワフルなはずである。

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「……ついに、芽吹いてしまったか」

 やれやれ来てしまったな『覚醒』の時が。
 私は早速赤マフラーを首に巻き、スマホのカメラを起動した。

ξ*゚⊿゚)ξ「……え、すごい似合ってる気がする……」パシャッ

 そりゃ初めて成功したのだから嬉しい。緊急時でも自撮りくらいさせてほしい。
 しかしまぁ金髪に赤マフラーが映えまくりだった。素材がいいもんな。
 我ながら最高の一品を作り上げてしまったな……。

ξ゚⊿゚)ξ+ キラーン


ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ(あとでみんなに自慢するのだわ)

.

45名無しさん:2020/10/14(水) 19:19:18 ID:YvZFQxxU0


 ピーーーーーーーン

         ポーーーーーーーン!


ξ゚⊿゚)ξ !

 そのとき、やたらデカい呼び鈴の音が響き渡った。

ξ゚⊿゚)ξ

 私はビックリして死んだ。
 不意打ち大音量による動悸で心臓が爆発…死んだのだ。

 死(SEKIRO)


.

46名無しさん:2020/10/14(水) 19:23:04 ID:YvZFQxxU0


ξ;゚⊿゚)ξ(――……って、一息入れてる暇は無さそうね)

 こんな時に現れるのは大抵ろくでもない相手である。
 敵の思惑は明らかにこちらを上回っているし、この来訪を警戒するのは当然だった。

ξ;゚⊿゚)ξ(急いで裏口から逃げるのだわ)

 靴は玄関にあるが仕方ない。
 私は着の身着のまま立ち上がり、赤マフラーだけを持って裏口に向かった。

    |┃三 
    |┃ ≡         
____.|ミ\____ξ゚⊿゚)ξ
    |┃=___     \  
    |┃ ≡   )   人 \ ガラッ

(´・_ゝ・`)「こんばんは」

ξ゚⊿゚)ξ「は?」

 ――そして、不審者に出会ってしまった。
 そいつは何食わぬ顔で裏庭に待ち構えていて、私を見るなり普通に挨拶をかましてきた。

ξ;゚⊿゚)ξ「……だっ、誰!? 敵なら容赦しないのだわ!」

(´・_ゝ・`)「いや盛岡デミタスだけど」

ξ゚⊿゚)ξ「そっか」

 黒いスーツ姿の、言ってしまえば普通な感じの成人男性。
 彼との間合いは3メートルほど。
 威圧感などは微塵も感じないが、なぜか、彼の姿には見覚えがある気がした。

(´・_ゝ・`)「……しかしまぁ、弱いな」

(´・_ゝ・`)「■■■■■■は未所持、代わりはあっても性能はガタ落ち」

(´・_ゝ・`)「とても万全とはいえないが……」


ξ;゚⊿゚)ξ「――いいからちゃんと答えなさい!
       怪しい事したら即攻撃するわよ!」

 私は身構え、臨戦態勢になって威嚇を試みた。
 しかし男は微動だにしない。私の顔を見つめたまま、意味不明なことを呟き続けている。

.

47名無しさん:2020/10/14(水) 19:23:53 ID:YvZFQxxU0

(´・_ゝ・`)

(´・_ゝ・`)「まあいっか、負けたしな」

 途端、男は居直って背筋を正す。
 そうしてすぐ、彼は露骨な作り笑いで私に話しかけてきた。

(´・_ゝ・`)「『忘れたのか? 俺は魔王軍の者だよ』」

ξ;゚⊿゚)ξ「……えっ?」

(´・_ゝ・`)「『だからお前の味方だよ。覚えてるだろ?』」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「あ〜〜」

 あー確かに盛岡デミタスは関係者だった。そうだったな。
 彼は私の特訓のため魔界から派遣されてきた特別講師だ。
 ミセリさんから重々聞かされていたのにすっかり存在を忘れていた。

(´・_ゝ・`)「忘れるなんてひどいなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうだなぁ」

 そうだなぁと思った。

.

48名無しさん:2020/10/14(水) 19:24:44 ID:YvZFQxxU0

ξ;゚⊿゚)ξ「……にしてもよかった、すぐに味方と合流できて。
       ひとまず状況を教えてくれない? あんまり分かってなくて……」

(´・_ゝ・`)「ああ。勇者軍――ひいては王座の九人が動き出したんだ。
      敵の狙いは魔王城ツン。しかもこっちの情報は筒抜けときた」

ξ;゚⊿゚)ξ「筒抜け!? そんな事って……」

(´・_ゝ・`)「誰かが裏で糸を引いたんだろうな。
      いやほんと最悪だよ裏切りなんて。
      味方を売るとか最悪過ぎる。俺には無理だ」

ξ゚⊿゚)ξ

(´・_ゝ・`)「無理だって言ってんだろ」

(´・_ゝ・`)「とにかく移動だ。ここじゃ埒が明かない」

(´・_ゝ・`)「ひとまず俺が先行して安全を確認してくる。お前が動くのはその後だ」

ξ゚⊿゚)ξ「うん」

 会話が乱暴だなと思った。

.

49名無しさん:2020/10/14(水) 19:26:31 ID:YvZFQxxU0

(´・_ゝ・`)「さて、それじゃあ今は何時かなっと」

 露骨に言いながら袖を捲くり、盛岡は腕時計を確認した。
 ひぃふぅみぃと数を数え、よく分からんタイミングを計っている。

(´・_ゝ・`)「……えっと、7分と40秒後だな。そこで屋敷を出てくれ。
      ちゃんとマフラー巻いて靴も履いとけよ。初期装備はキッチリな」

ξ゚⊿゚)ξ「ほーん」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「ん?」

 いや待て、ほーんではない。盛岡の指示はかなり滅茶苦茶だぞ。
 あの口振りでは結局私が1人で動く感じである。
 それっておかしくねえ? だって、いま単独行動するの絶対に危ないじゃん……。

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、あの、それ要するに私だけで行動するって事よね?
       あなたが1人で先行したあと、私も1人で外に出るのよね?」

(´・_ゝ・`)「そうだが?」

ξ;゚⊿゚)ξ「……あの、だったらもう一緒に動いた方が安全なんじゃない?」

(´・_ゝ・`)

(´・_ゝ・`)「一生のお願い」

ξ゚⊿゚)ξ「それはずるい」

 一生のお願いなら仕方ない。
 私は盛岡の指示を聞くことにした。

(´・_ゝ・`)「残り7分くらいだ。まぁとにかくそんな感じで頼む」

ξ゚⊿゚)ξ「任せておいて」

(´・_ゝ・`)「あとは流れでお願いします。じゃあまた後ほど」

ξ゚⊿゚)ξ「うむ」

 かくして私は放置され、盛岡はどっか行った。


.

50名無しさん:2020/10/14(水) 19:26:52 ID:YvZFQxxU0


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51名無しさん:2020/10/14(水) 19:29:42 ID:YvZFQxxU0







          #'01 整合世界、決定論、Cosmos new version






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52名無しさん:2020/10/14(水) 19:32:15 ID:YvZFQxxU0

≪?≫


 言われたとおりの時間が来るまで、私は1人で暗闇に立っていた。
 残り8分と20秒。屋敷の中で待とうかとも思ったが、万が一に備えて外に居ることにした。
 次の来客がまた味方だとは限らないし、今更気を抜いたって仕方がない。

ξ;-⊿-)ξ(……寒いのだわ)

 夏を済ませた季節柄、夜の空気はやけに肌寒い。
 不安とか緊張で汗ばんだ肌にはなおさら夜風が染み込んできて、つらい。

 今は戦力的にも体温的にも赤マフラーだけが頼りだ。
 私は赤マフラーをしっかりと首に巻き、体を冷やさないよう準備運動を始めてみた。
 特訓前にいつもやってる準備運動。
 慣れ親しんだルーチンは体を温めるだけでなく、気休めとしての効果も十分に発揮してくれた。

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ(……私、もう地上に居られないのかしら)

 ――現魔王ロマネスクの明確な弱点である私は、ただ魔界に居るだけで迷惑になってしまう。
 だから魔界よりは安全に過ごせる地上に送られたのだが、その安全も遂に瓦解した。
 敵は勇者軍。魔王の宿敵に見つかってしまった以上、父はまた対応を考えるはずだ。

 ありそうなのは魔界に送還、からの軟禁。
 特訓すらないニート生活を強いられ、私は毎日フリフリの服を着せられるのだ。
 即ちそれは完全なる箱入り娘。籠の鳥としての生活である。

 ロリ時代ならそれでも大丈夫だったが、今の私には絶対に無理。
 今の私――弱いままの私では、魔界はただ不自由なだけの居場所なのだ。
 だから私も示さなくてはならない。
 魔界の自由は荷が重くとも、ここでの自由くらいは自力で守れるのだと。

ξ゚⊿゚)ξ(いい機会なのだわ。ここで華麗に敵を倒して、私への認識を改めさせるのだわ)

 残り1分――制御限界いっぱいに魔力を生成し、身体機能を底上げする。
 最大限の準備は済んだ。あとはこの好機を逃さないよう立ち回るだけ――残り20秒。

ξ;゚⊿゚)ξ …

 やがて時間が来る。
 私は屋敷の門をくぐり、闇夜の路上に足を踏み入れた。



.

53名無しさん:2020/10/14(水) 19:33:31 ID:YvZFQxxU0



 ――そうして最初に感じたものは、あまりにも異様な静寂だった。



ξ;゚⊿゚)ξ「……」

 夜とはいえ住宅地のど真ん中。
 多少なり人の気配があって当然なのに、路上には一切の音が無い。
 生活音、車の音、風の音すら何もなく、不気味な耳鳴りだけが妙に際立って聞こえてくる。

 明らかな異常。
 世界そのものが途絶したような感覚。
 なんらかの領域に入ってしまったという直感。

ξ;゚⊿゚)ξ(これ、マズいんじゃ……)ジリッ

 屋敷を一歩出ただけで理解できてしまった。
 敵はただ待っていたのだ。
 私が勝手に屋敷から出てきて、この罠に引っかかるのを。

ξ;-⊿-)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ(……だとしても、敵が来るのは狙い通り。
       気を引き締めるのだわ……)

 ごくり、と音を立てて固唾を飲む。
 悪戯めいた小さな笑い声が聞こえてきたのは、その次の瞬間――。

.

54名無しさん:2020/10/14(水) 19:36:19 ID:YvZFQxxU0


 「――くすくす」


ξ;゚⊿゚)ξ !

 咄嗟に振り向き、人影を捉える。
 いくつか先の街路灯の下。そこに、私の敵は立っていた。

ζ(゚ー゚*ζ

 オーバーサイズのコートを羽織り、その片手には抜身の長ドス。
 はっきり私を見据える双眸は微動だにせず、敵は、ふらりと前に躍り出る。

ζ(゚ー゚*ζ「……情報通り、本当に出てきた」

ζ(゚ー゚*ζ「一石二鳥にもう一羽だなんて、今日はつくづく運がいい」

 余裕を誇示するように語る女。
 そのハツラツとした声は容易に静寂を破り、私の警戒心を強く逆撫でた。

ξ;゚⊿゚)ξ「勇者軍の残党、でいいのよね」

 尋ねてから、ゆっくりと敵対の姿勢を取って見せる。
 これで少しは足を止めるかと思ったが、しかし女は気にも留めない。
 ドスを持ったまま、一直線に距離を詰めてくる。

ζ(゚ー゚*ζ「あら、分かってるのね」スッ

 言いながら、女はラムネでも入ってそうなケースをポケットから取り出した。
 それを口元に寄せて、軽く一振り。
 中から出てきた白い錠剤を飲み下すと、女は満足気に一息ついて足取りを軽くした。

ξ゚⊿゚)ξ(今の、何かの薬……?)

 なんて、不意の疑問に気を取られてしまった瞬間。
 女の姿が視界から消え、


ξ゚⊿゚)ξ

ζ(゚ー゚*ζ「――これで死ぬかしら」


 あってはならない囁きが、既に私の背後にあった。


.

55名無しさん:2020/10/14(水) 19:39:13 ID:YvZFQxxU0

ξ;゚⊿゚)ξ(――――ッ!)

 死ぬ。
 そういう明確な直感が安全装置を吹き飛ばし、一瞬にして思考を置き去りにする。
 私の体は無意識のままに翻り、女の動きに辛うじて追従していた。

ξ;゚⊿゚)ξ(避け――)

 回避。と同時に目の前を過ぎていくドスの刃。
 私はすかさずその刃を追い、女の手を打ち長ドスを弾き飛ばした。

 背後からの奇襲はこれで終着。
 しかし女は揺らぎもせず、早くも次の攻撃を始めていた。
 追撃は腹部への膝蹴り。
 ギリギリ目視は間に合ったが、防御の手だけが僅かに届かない。

ξ; ⊿゚)ξ(避けッ――きれな――)

 臓物を守るべく反射的に収縮する腹部筋肉群。
 直後、私のお腹に凄絶な衝撃が――

.

56名無しさん:2020/10/14(水) 19:41:31 ID:YvZFQxxU0


ζ(゚-゚*ζ「……ちッ」

 ――直後、何も起こらない。

ξ;゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「……え?」

 衝撃なんて少しもなく、咄嗟の緊張も的を外れ、敵の攻撃が消えたかのような錯覚を覚える。
 当の女は不服そうに眉をひそめて足を引き、追撃を止めて大きく飛び退いていった。

 この隙に自分のお腹を見直してみて、そこでようやく合点がいく。
 私のお腹を守ったもの――それは、首に巻いた赤マフラーの両端であった。

ξ;゚⊿゚)ξ「お、おお……!」

 バツ印のように端を交差させ、ふわりと浮かぶお手製の赤マフラー。
 膝蹴りを受けたっぽい箇所は煙を上げて凹んでいたが、反面それ以上の損耗も見当たらなかった。

ξ;゚⊿゚)ξ(……自動防御? 守ってくれたのかしら……)

 直撃を肩代わりし、更に衝撃までも吸収しきった防御性能には感嘆を禁じえない。
 恐らくは今の私――魔力で強化した私の肉体よりも頑丈で靭やかだ。すごい。
 本体こっちかもしれんな。

 しかし、そう思案している内に赤マフラーは脱力し、ただの布地に戻ってしまった。
 私の魔力から作ったこのアイテムは、今の挙動で魔力切れを起こしていたのだ。

ξ゚⊿゚)ξ(嘘じゃろ)

 ここで上手いこと魔力を再装填できれば問題は解決するのだが、正直やり方が分からない。
 ましてや今は交戦中。戦いながら魔力を生成し、再装填を試みるなんて私には無理だ。
 予習くらいしとけばよかったな、と強めの後悔を噛み締めてしまう。

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57名無しさん:2020/10/14(水) 19:43:46 ID:YvZFQxxU0

ξ;゚⊿゚)ξ(ちくしょう、使う前に性能を把握しとくべきだったわね……)

 口惜しいが、赤マフラーの再起は諦めるしかない。

 次に憂慮すべきは目の前の事実。
 ただの普通の人間が、こちらの魔力的防御を一撃で機能不全にした事実だ。

 ――どれだけ強い人間であろうと、人と魔物では根本的なステージが違う。
 魔物は素の状態でも人間より強いし、魔力を使えばその差は更に大きくなる。

 なので、そもそもありえないのだ。
 私の視界から消えるように動くとか、単なる膝蹴りが魔力的防御に匹敵するとか。
 それらの事実は絶対に、人間の力では不可能なのだ。

ξ;゚⊿゚)ξ(魔物の敵は勇者か超能力者――だけどどっちも絶滅危惧種!
       よしんば居ても全盛期ほどじゃない、っていうのが通説、だけど……!)

ζ(゚ー゚*ζ

 目の前に居るものが、その通説を否定する。
 明らかに人間の性能を超えている敵。
 そして、最低でも互角以上の敵。

ξ;゚⊿゚)ξ

 事ここに至って確信せざるをえない。
 私は、ハインさんの言いつけを守るべきだった。

.

58名無しさん:2020/10/14(水) 19:49:51 ID:YvZFQxxU0

ζ(゚ー゚*ζ「……初心で世間知らず。これも情報通り」

ξ;゚⊿゚)ξ

ζ(゚ー゚*ζ「さっきは驚かされたけど、2度目はなさそうね」

 悠々と語ると、女は新しい武器として折り畳みのナイフを取り出した。

 弱音は終わりだ。もうやるしかない。
 私は再び魔力を練り上げ、肉体機能の補強に努めた。

ξ; ⊿゚)ξ(制御限界まで、出し切る……!)

 ――魔力に呼応し、僅かに赤熱する肉体。
 真紅の魔力が像を成し、オーラのように体表をゆらめく。
 反射神経との同調は十全。本来なら人間相手に使うわけがない全力を、私はここで全開にした。

ζ(゚ー゚*ζ

 しかし、それでも敵は余裕の笑みを浮かべたまま。
 続く言葉をもってして、私の全力を虚仮にした。

.

59名無しさん:2020/10/14(水) 19:54:39 ID:YvZFQxxU0


ζ(゚ー゚*ζ「……まさか、そんなので戦うつもり?」


ξ#゚⊿゚)ξ「――ッ!」

 その嘲笑と同時に地面を蹴る。
 間合い3メートルを2度の跳躍で詰め切り、必殺の拳を握り固める。

 対人間における魔物の攻撃は全てが必殺だ。
 防御も回避も焼け石に水。掠るだけでも血肉をこそぎ、直撃すれば絶命は必至。

 しかしこの女は例外だ。
 躊躇なく、殺すつもりで掛からなければ話にならない。
 どういうわけか知らないが、こいつは私の知る『人間の性能』をしていないのだから。

ζ(゚ー゚*ζ

 女の視線が私の拳を追っている。間に合わせては駄目だ。
 私はその視線を振り切るように懐に飛び込み、敵の命を奪わんと全力で拳を打ち出した。


ξ゚⊿゚)ξ


 で、私は不意に思ってしまった。
 咄嗟の思考に気を取られ、言葉足らずにも、『本当に?』と思ってしまった。

 ――本当に?

 たったそれだけの、最低限の意味すら示さない小さな言葉。
 それが、私の心に急ブレーキを掛けてしまった。

 そして体は心に従い、そこに、致命的な隙が生まれてしまった。

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60名無しさん:2020/10/14(水) 19:59:02 ID:YvZFQxxU0


ξ゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「……え、?」

 やがて、心と体の認識が一致した頃。
 私の胸の温もりには、なにか、冷たいものが突き立てられていた。
 アイスを急いで食べた時みたいな感覚が、私の胸を締め付けている。


ζ(゚ー゚*ζ「ほら、やっぱり話にならない」


ξ;゚⊿゚)ξ「…………?」

 心臓の熱を否定する冷気。鼓動を邪魔する鉄の刃。
 私は胸元を抑えて身じろぎ、その感覚の正体に目を奪われた。

 ――敵のナイフが私の胸に、心臓に突き刺さっている。

 上手く言葉を選べない。
 私の思考は崩壊していて、悲鳴を上げることすらできなかった。

ζ(゚ー゚*ζ「ごめんなさいね。なんにも知らない子供相手に」

 そして、女の声がまた背後に回っている。
 さっき放った私の拳は、中空に浮いたまま何も捉えていなかった。

.

61名無しさん:2020/10/14(水) 20:02:26 ID:YvZFQxxU0


ζ(゚ー゚*ζ「……ああ、本当にかわいそう」

ζ(゚ー゚*ζ「私が使った『激化薬』の事も、どうせ秘密にされてたんでしょう?」

 くすくすと笑う声。それすらも耳朶に響く。
 反射的に怒りを覚えようにも、その感情さえ上手く組み立てられなかった。

ξ; ⊿ )ξ「あ、ぐ……」

 腑抜けた体が夜風に煽られ、辛うじて女の方を振り向く。
 女の手にあるケースの中身。
 あれが『激化薬』なのだとすれば――そんなもの、私は、知らない。

ζ(゚ー゚*ζ

ζ(゚-゚*ζ「……出来損ない。これなら生け捕りで……」

 どこか遠くに聞こえる声には嘲笑の意図すらなく。
 女の瞳はただ冷淡に、今の私をモノとして見つめていた。

ξ; ⊿ )ξ(わたし、まさか……)

 意識が遠のく。死の実感が五体の感覚を薄めていく。
 視界がボヤけて暗闇が滲む。
 いつしか、私の体は地面に横たわっていた。

 そして、私は――……




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62名無しさん:2020/10/14(水) 20:02:55 ID:YvZFQxxU0


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63名無しさん:2020/10/14(水) 20:03:55 ID:YvZFQxxU0


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  ━━√━━━━━━━━━━━━━━━━━#━━━━━━#━━
   ̄ ̄
            ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです

                【Aルート 王座の九人編】

                  Meaning:Apostrophe
                                    ______
  ━━━#━━━━━#━━━━━━━━━━#━━━√━━━━━
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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64名無しさん:2020/10/14(水) 20:04:40 ID:YvZFQxxU0







          #01 矛盾世界、素朴実在論、Day After Day






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65名無しさん:2020/10/14(水) 20:05:45 ID:YvZFQxxU0


ξ; ⊿ )ξ

ζ(゚ー゚*ζ


从;゚∀从「――……間に合った、とは言いづれぇな」

ミセ*゚-゚)リ「いえ、辛うじて」


 私は、薄れゆく意識の中に、聞き慣れた声を聞いていた。

.

66 ◆gFPbblEHlQ:2020/10/14(水) 20:09:09 ID:YvZFQxxU0

#1 >>2-65


このスレは4年前にエタったものの続きです
続きですが、いわゆる周回ループものなので実質最初からです
古いインターネットです。よろしくお願いします

前スレ
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1444420985/887

67名無しさん:2020/10/14(水) 20:39:24 ID:5NEU5mF60
otsu

68名無しさん:2020/10/14(水) 21:53:01 ID:uPx9U7IY0
おつ!
ツンちゃん弱くなってらぁ

69名無しさん:2020/10/15(木) 02:02:00 ID:mfVsfma60
まってたぞ

70名無しさん:2020/10/16(金) 08:03:04 ID:ymcgu2zU0
ずっと待ってた うれしい 乙

71名無しさん:2020/10/16(金) 19:01:19 ID:qYVQEQXY0
すげーおもしろい!

72名無しさん:2020/10/18(日) 18:29:32 ID:TtG1cBRU0
おもろ

73名無しさん:2020/10/19(月) 21:11:04 ID:tlGWvQHU0
クールライターです。まとめさせていただきました。
http://coollighter.blog.fc2.com/blog-entry-439.html

何が伏線になるか未知の作品だと思ったので、事務連絡っぽいもの以外はできるだけ拾って、
例えばハトサブレのAAとかも含めてまとめさせてもらってます。
もし気に入らないようでしたらツイッターDMで申し立ててもらえればご対応いたします。

(感想)ツンちゃんかわいい!応援してます!

74 ◆gFPbblEHlQ:2020/10/23(金) 22:55:57 ID:6PRhN.nU0

≪1≫




从;゚∀从「――……間に合った、か?」


ミセ*゚-゚)リ「ギリギリ間に合いましたよ」





(´・_ゝ・`)「……だってさ、キマってる登場だよ」

ξ; ⊿ )ξ

 なんか聞き慣れない余計な声がある。

(´・_ゝ・`)「悪い悪い、これもお前の為なんだ」

(´・_ゝ・`)「まぁ死んでないし勘弁な。心臓ブチ抜かれてるけどさ」

ξ; ⊿ )ξ「――ぁ、……」

(´・_ゝ・`)「いいから寝とけって。今回は説明ばっかだから」

 その適当極まりない言葉を最後に聞いて、私の意識はプツンと切れてしまった。


.

75名無しさん:2020/10/23(金) 22:56:24 ID:6PRhN.nU0



          #02 ノン・パーフェクトな魔王城(前編)


.

76名無しさん:2020/10/23(金) 22:58:14 ID:6PRhN.nU0



ξ-⊿-)ξ


ξ゚⊿゚)ξ パチッ(目が覚める音)


 ――……私が目を覚ました時、私の周囲には何も無かった。
 それは比喩でも嘘でもなく、私の目には、ただそう言わざるをえない景色が広がっていた。

(::::::⊿)

 完全なる真っ暗闇。

 地面はあるけどもちろん見えないし、上下左右に手を伸ばしても虚を撫でるだけ。
 立ち上がって周囲を一望。それでも状況は変わりなく、私の周りは闇に満たされている。


ξ;゚⊿゚)ξ …ハッ!

 そういえば、と私は胸元に手を当てる。
 敵にナイフを突き立てられた傷は――無くなっている。
 ただでさえ未発達な胸部脂肪部位も完治だ。揉み応えもバッチリ据え置きである。

ξ゚⊿゚)ξ(私の夢が叶ってない……ここ現実か?)

 乳の揉み応えで状況確認するのめちゃくちゃ苦痛だな。
 とりあえず死後の世界ではないようだし、服もちゃんと着てるし、生きてるっぽいし。
 私は万全の五体を軽く動かしつつ、暗闇に向かって大声で呼び掛けてみた。

.

77名無しさん:2020/10/23(金) 22:59:45 ID:6PRhN.nU0


ξ゚⊿゚)ξ「すいませーーん! 生きてるんですけどーー!」

ξ゚⊿゚)ξ「ぬるぽ」

ξ゚⊿゚)ξ「あのーーーー! ねぇーーーーーー!」

 暗闇にこだまする声。
 そうして程なく、暗闇のどこかで慌ただしい物音が鳴り響いた。
 どんがらがっしゃんドテドテごろんごろん。ドジっ子用の擬音がこれでもかとブチ上がる。

 「――お嬢様! いま、いま電気点けますから!!」

ξ;゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「ゆっくりでいーよー!」

 聞こえてきたのはミセリさんの大声。
 切羽詰まったような、マジで今飛び起きてきたという感じの声色だ。

ξ゚⊿゚)ξ(……あ、思ったよりキてる)

 そして彼女の声を聞いた途端、安心感がめちゃくちゃ大爆発してしまった。

 心臓の鼓動が強く高鳴っている。生きているのを強く実感する。
 死の感覚を覚えていて、フラッシュバックが鮮明すぎて泣けてくる。

ξ゚⊿゚)ξ

 ちくしょう、死ぬのめちゃくちゃ怖かったな。


.

78名無しさん:2020/10/23(金) 23:03:40 ID:6PRhN.nU0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ミセ;*´ー`)リ「かくかくしかじか……」

ξ゚⊿゚)ξ「なるほど」

 完全に理解した。



 ミセリさんが言うに、前回ほぼ死んだ私は最速で自宅に担ぎ込まれ、そこで応急処置を受けたらしい。

『 (´・_ゝ・`)←担ぎ込んだ人 』

『 川д川←応急処置をした人 』

 しかしそれでも激ヤバだったので本格的なマジ治療が開始。
 私は特訓用の異空間に担ぎ込まれ、そこで大規模な再生魔術を施されていたらしい。

 その期間、なんと異空間内で丸1週間。
 私が起きた時には現実時間でもざっくり1日が経過していた。

『 川д川←再生魔術を丸1週間やり続けた人 』

『 ミセ*゚ー゚)リ←魔力供給タンクと化していた人 』


 昨夜は色々と複雑な状況だったらしく、とりあえずみんな私が起きるの待ちだったらしい。
 なので各方には私の起床を連絡済み。もうすぐみんなウチに来るとのこと。

※ミセリと貞子を人と呼んでいますが便宜上の表現です。

.

79名無しさん:2020/10/23(金) 23:04:37 ID:6PRhN.nU0


ξ゚⊿゚)ξモグモグモグモグ

 かくしてしかじかである。
 バッチリ目覚めた私はミセリさんに連行され、自宅リビングで次の展開に突入していた。


ミセ;*゚ー゚)リ「――とにかく食べて! 食べまくってください!
      死ぬほど食べて元気になれ! 元気になぁれっ!」(料理を作る音)

ξ゚⊿゚)ξ(死ぬほど胃に入るな……)パクパクモグモグ

 リビングの食卓には山盛り料理が勢揃い。
 目覚めた私の最初の使命は、ここにある料理をとにかく食べ進めていくことだった。
 物理的だなぁと思った。

ミセ;*゚ー゚)リ「もうちょっとしたらみんな揃うので!
      それまでに少しでも元気になっておきましょう! 絶対しょんぼりするので!」

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり怒られる?」

ミセ;*゚ー゚)リ「……ちょっと話を整理してからですね、その辺は!」

.

80名無しさん:2020/10/23(金) 23:06:25 ID:6PRhN.nU0

 作って食べてをすごい速さで繰り返す私達。
 そしてそのまま2時間くらいが経過、流石に私も限界を迎える。

ミセ;*゚ー゚)リ「もっと食べてください!」

ξ゚⊿゚)ξ「しぬ」

 しかしミセリさんはマジで私を殺す気なのか、私のギブアップを無視してメシを作り続けた。
 本当に人の話を聞かないんだなと思った。


 かくして累計3時間が経過。
 そこで呼び鈴が鳴ってようやくミセリさんの手が止まり、私も過食で死なずに済んだ。
 程なく玄関の方から慌ただしい足音が近付いてくる。胃に響いてつらい。

(;'A`)「――ツン!」 ガチャッ

 その大声と共にリビングに飛び込んできたのはドクオであった。
 彼は私を見るなり柄にもない笑みを浮かべ、過食嘔吐寸前の私に勢いよく飛びついてきた。

(;'∀`)「ツン、お前マジで心配したんだぞ!?」ガシッ(熱い抱擁)

ξ゚⊿゚)ξ「あちょっと今マジ揺らさないで吐くから」

(;'∀`)「お前の独断行動は流石に見逃せねぇけ(ここで限界になって吐いた)ど、
    昨日はそれで正解だったからまぁとにかく帳消しだ! とにかく生きててよかった!」

ξ゚⊿゚)ξ「人のセリフ中にめちゃくちゃに吐いてしまった」

ミセ;*゚Д゚)リ「オオァーーーーー!! 食べ直してください!!」

.

81名無しさん:2020/10/23(金) 23:08:46 ID:6PRhN.nU0



(;´-_ゝ・`)「――やれやれ、騒がしい。入る家を間違えたかな」 フゥ


 我が嘔吐に続いて現れたのは盛岡デミタス。
 盛岡は作為全開の気障な素振りで取り繕っていて、正直キツかった。
 きな臭いスーツ姿も相まって、胡散臭さが限界だった。

ξ゚⊿゚)ξ「いやでも嘔吐は不可っ(ここで嗚咽)不可抗力なのだわ」

(´・_ゝ・`)「話が進まねえって言ってんだよ。
      そりゃ作為全開で割り込むわ。むしろ助け舟だぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「好きで吐いてるわけじゃ……それより何か用?」

ミセ;*゚ー゚)リ←吐瀉物の清掃中

('A`)←吐瀉物を浴びて冷静になった

 盛岡は器用に吐瀉物を避けてリビングを進み、食卓の椅子に腰を下ろした。
 しかもわざわざ私の隣に座りおった。来客なら対面に座るもんじゃないのか。友達かよ。

(´・_ゝ・`)「もちろん大いに話がある。昨日の夜はマジで色々あったからな。
      俺や貞子が地上に来た理由とか、勇者軍とかなんとか」

(´・_ゝ・`)「今日は長話に次ぐ長話をしに来たんだよ。お前も気になってるだろ?」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「そう、だけど……」

 それを一度に聞き入れる余裕も、今は無い。

 あの夜に味わった胸の感覚を思い出すとそれだけで気が滅入る。
 正直言って自信も失くしている。
 少しは戦えると思っていたのに、結局私は……。

.

82名無しさん:2020/10/23(金) 23:09:28 ID:6PRhN.nU0

(´・_ゝ・`)

(´・_ゝ・`)「なるほど自信が無いのか」

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ」

 ふと、私の心中を見事に言い当ててきた盛岡。
 察してくる感じがなんか気持ち悪い。
 私も思春期なので馴れ馴れしいオッサンには厳しいものがあった。

(´・_ゝ・`)「でもまぁ『だからこそ』って話もある。
      だったらまずは例の件から始めるか」

 そう言うと、盛岡は身を捩ってミセリさんを一瞥した。
 なにかを意図した目配せ。
 吐瀉物掃除の手を止めて、ミセリさんは小さく頷いて見せる。

(´・_ゝ・`)「俺の自己紹介は貞子が来てからするとして」

(´・_ゝ・`)「俺達が来た理由、その目的だけ最初にズバリ言っておく」

ξ;゚⊿゚)ξ ゴクリ・・・

(´・_ゝ・`)「俺達の目的は――」



(´・_ゝ・`)「――魔王城ツンを強くして、魔界への送還を阻止することだ」


.

83名無しさん:2020/10/23(金) 23:10:30 ID:6PRhN.nU0


ξ゚⊿゚)ξ

 魔界への送還。
 それは、いずれあるだろうと思っていた展開のひとつだった。

ξ゚⊿゚)ξ「……やっぱり、そういう話が出てくるわよね」

 要するに時間切れ。
 無意味な特訓をやめてウチに帰りなさい、という普通の対応だ。

 そして更には昨夜の襲撃、私の惨敗。
 私なりには色々頑張っていたつもりだが、こう結果が伴わなくては黙るしかない。

(´・_ゝ・`)「ああ、この強制送還は当然の判断だ。
      地上で暮らす一番の理由、『安全性』が損なわれたんだからな」

(´・_ゝ・`)「そしてこれも秘密にしてた事だが、お前は元から勇者軍に狙われてたんだ。
      もちろん俺達も情報操作とかでお前を匿ってたんだが」

ξ゚⊿゚)ξ「……バレて、さっそく襲われた」

(´・_ゝ・`)「そう、敵に居場所がバレちまった。困ったもんだよ」

 盛岡は白々しく言い、さてと話を進めていった。

.

84名無しさん:2020/10/23(金) 23:12:09 ID:6PRhN.nU0


(´・_ゝ・`)「とはいえ敵の襲撃自体はそんなに関係なくてな。
      魔王ロマネスクは、どのみち今月一杯でお前を連れ戻すつもりだったらしい」

ξ;゚⊿゚)ξ「――今月!? そんな急に!?」

(´・_ゝ・`)「だからゴネまくったんだよ。俺と貞子、特にミセリが反対してな。
      わざわざ魔界に戻って直談判までしてよ」

(´・_ゝ・`)「それが昨日の……襲撃前の話だな。
      時系列を整理すると以下の通りだ」

ξ゚⊿゚)ξ「親切設計」


〜ツンちゃん襲撃のあらすじ〜

1 ミセリ、ツンに連休を言い渡す
2 ミセリ、その間に魔界へ出張。魔王に直談判
3 ツン、勝手に1人で行動。ハインの屋敷へ
4 ミセリ、なんとか話をまとめて地上に戻る
5 ハイン、ドクオ&ブーン、敵の襲撃を受ける
6 ツン、敵の襲撃を受ける
7 ミセリ&ハイン、危機に間に合う


ξ゚⊿゚)ξ「……」
  _,
ξ;゚⊿゚)ξ「……あれ、でもなんか抜けてない?
       私、襲撃される前に誰かと会ったような……」

(´・_ゝ・`)「気のせいだよ。ショックで記憶が混濁してるんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうだなぁ」

 そうだなぁと思った。

.

85名無しさん:2020/10/23(金) 23:14:13 ID:6PRhN.nU0

ミセ;*゚ー゚)リ「すみません、敵がここまで機敏に動くとは……」

(;'A`)「……俺も、お前から目を離すべきじゃなかった」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「あ、べつに……私も勝手に動いちゃったし……」

 怒られるだろうと高を括っていた手前、こう揃って謝られると居心地が悪い。
 私を諌める言葉が全然出てこないのが逆にもどかしくて、不平等な感じがした。

ξ;-⊿-)ξ

 ……つまりは子供扱いだ。

 けれど、やっぱり言い返す言葉がない。
 昨日の私の行動はどれをとっても軽率だった。
 なのにこうして言動を見逃されているのは――つまり、私が未熟だからだ。

(´・_ゝ・`)「まぁまぁ襲撃は終わったんだからいいだろ。
      ツンも生きてることだし、『試験』を思えば悪くない経験のはずだ」

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ……試験?」

(´・_ゝ・`)「それも話すが、でもちょっと待て。
      あと20秒したら貞子が来るから話を区切るぞ」

 〜20秒後〜

(´・_ゝ・`)「来た。時間ピッタリだ」

 そう言いながら窓の向こうを見る盛岡。
 ウチの庭には誰も居ないが――と視線を泳がせる私は魔王城ツンである。

('A`)「透過と気配遮断の魔術だ。ツンにはまだ見破れねえよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなん分からん」

 ほどなく窓がひとりでに開き、閉じ。
 恐らく貞子さんのものであろう足跡が、カーペットに確かな証拠を残しながら私に近付いてきた。

.

86名無しさん:2020/10/23(金) 23:16:35 ID:6PRhN.nU0


 「……お嬢様、どれくらい見えてないですか?」


ξ゚⊿゚)ξ …?

 突然、声だけが聞こえてくる。
 足跡を見るに対面の席辺りに貞子さんが居るはずだが、正直そこには何も見えなかった。

ミセ;゚ー゚)リ「貞子、まだそこまで教えてないから」

ξ;´⊿`)ξ「ごめんなさい、なんにも見えてないです……」

 情けなく答える私。その後、僅かに聞こえる溜息の音。

 やがて空中に魔力の粒子が湧き上がり、ふわりと風を起こして渦を巻いた。
 その中に少しずつ実像を現していったのは、もちろん件の貞子さんだ。

川д川「……もう確信した。ミセリの教育が間違ってる」

ミセ*゚ー゚)リ「そんな事ないです」

川д川「お嬢様、お久し振りです。
     治療中に会ってはいますが、生きて再会できて嬉しいです」

ξ゚⊿゚)ξ(なんて真っ当な対応なんだ)

 ちなみに私と貞子さんには面識があった。
 貞子さんは私がまだ小さかった頃の遊び相手で、近所の優しいお姉さんという感じのアレだった。
 そして私は貞子さんの胸を見て育ち、確固たるデカパイ願望を抱くようになったのだ。

川д川「致命傷の再生には膨大な時間と魔力が必要なものですが、流石はお嬢様。
     たった1週間で完治されたのは凄いことですよ。よく頑張りましたね」

ξ゚⊿゚)ξ

 しかも普通に常識人なので尊敬に値してしまう。
 こんな丁寧な褒め言葉めちゃくちゃ久し振りに聞いたな……

.

87名無しさん:2020/10/23(金) 23:17:31 ID:6PRhN.nU0


(´・_ゝ・`)「――貞子、ハイン達の準備は済んだのか?」

川д川「もちろん。いつでも来ていいって」

(´・_ゝ・`)「分かった。ならドクオ、お前は先にハインの家に行っといてくれ」

('A`)「ん。ツンもまた後でな」

ξ゚⊿゚)ξ ?

 そう軽く言い残すと、ドクオは足早に家を出ていった。

ξ゚⊿゚)ξ

 まーーた私を置いて話を進めてやがる。急にサクサク進めるな。
 もうほんといい加減にしてほしい。疎外感で病みそうだった。

(´・_ゝ・`)「分かってる分かってる、置いてかれて寂しいんだよな。
      順を追って説明するから落ち着いてくれ」

ξ;゚⊿゚)ξ「……べつに寂しくはないけど、説明はしてほしいのだわ」

 こほん、ゴッゲホッ、ン゙ン゙ッ!ヌァ と咳払いをしてから、盛岡は話を戻した。

.

88名無しさん:2020/10/23(金) 23:18:15 ID:6PRhN.nU0


(´・_ゝ・`)「まずミセリの直談判の結果だが、
      魔王城ツンの強制送還は、ひとまず延期になった」

ξ゚⊿゚)ξ !

(´・_ゝ・`)「ただし、代わりに『試験』を受けてもらう。
      最低限の自衛が出来るかどうか、その実力を問われるってワケだ」

ξ;゚⊿゚)ξ「……その試験っていつ?」

 質問しながら、私は昨夜の戦いを鮮明に思い返した。


『 ζ(゚ー゚*ζ 』

 人間でありながら魔物の領域に立ち入る敵、勇者軍。
 もしも試験があのレベルを想定したものであれば、今の私ではほぼ勝ち目が無い。
 せめて対策を練る時間くらいは欲しいところだが……。


(´・_ゝ・`)「ああ、試験は1年後」

ξ;゚ー゚)ξ(1年! だったらまだ――!)

(´・_ゝ・`)「から半月後に変更になった」

ξ゚⊿゚)ξ

 上げて落としやがった。

(´・_ゝ・`)「いやぁ、お前が死んでる間に話が変わってな。
      勇者軍には襲撃され、そしてお前は敵に殺され。
      そんな有様で猶予あると思うか? 無理だろ」

ξ;゚⊿゚)ξ「……そうね、まぁ、そうだけど……」

 だったら、試験そのものが消えて当然のはず。

 きっとまたミセリさん達が話をしてくれて、私に最後のチャンスを残してくれたのだろう。
 半月後。まとまった時間があるだけマシだが、それでも余りに性急すぎる。

(´・_ゝ・`)「とにかく『試験』は半月後、実戦を想定して行われる。
      そこで受かればヨシ、負ければ終わり。話は簡単だろ?」

ξ;´⊿`)ξ「そりゃ話だけならね……」

.

89名無しさん:2020/10/23(金) 23:20:32 ID:6PRhN.nU0


(´・_ゝ・`)「――で、ここまで話してようやく俺達に出番が来る」

(´・_ゝ・`)「『もう話は通ってると思うが』、形式的に自己紹介させてくれ」

 盛岡がミセリさんに視線を送る。
 ミセリさんは私の傍に来て、盛岡と貞子さんの2人を私に紹介した。


ミセ*゚ー゚)リ「先日ちょっと話していた、特別講師の盛岡デミタスさんです。
      試験対策とか諸々込みで、助っ人として魔界から来てもらいました」

 盛岡は席から立ってスーツを整え、改まって私に会釈をして見せる。
 形式的という言葉の通り、彼は丁寧に名刺まで持ち出してきて、それからゆっくりと名乗り始めた。


(´・_ゝ・`)「――魔王軍、政治戦略議会所属の盛岡です。
      主な仕事は魔界統治に向けた各種計画の立案、実行など」

(´・_ゝ・`)「今回は議会の総意を代表して馳せ参じました。
      我々全会一致の上、お嬢様の試験突破を最大限サポートさせて頂きます」
  _,
ξ;゚⊿゚)ξ

(´・_ゝ・`)「……政治戦略議会。知らない? まぁ初出だもんな」
  _,
ξ;゚⊿゚)ξ「知ってるけど、アレの総意っていうのがなんとも……」


 ――そもそも、私が地上で暮らすようになった理由は『厄介払い』である。

 弱い私が魔界に居ると、ただそれだけで政治的な謀反が起こりやすくなってしまう。
 私だって何度も誘拐未遂を経験しているし、その辺の事情は身に染みて理解している。

 だからこそ私は地上への移住を自分の意思で決めたのだが、
 その顛末において終始私を援護してくれたのが、他ならぬ『政治戦略議会』なのだ。

 議会の仕事は魔界の厄介事を減らすこと。
 そんな彼らからすれば私の存在は邪魔も邪魔、ただ居るだけで問題を起こす火種でしかない。

 しかし、それが自ら魔界を出て行ってくれるというのだから議会は大喜び。
 かくして私は議会後援のもと地上に引っ越し、議会は全くの無傷で厄介払いを達成したのである。

.

90名無しさん:2020/10/23(金) 23:22:56 ID:6PRhN.nU0


 ――これが私と議会の関係性。
 利害の一致で手を取り合った、敵というほどでもない、なんか生々しいヤツだ。

 とにかくアレは扱いが難しく、毒気が強い。
 味方になってくれたからといって、素直に喜べる相手ではないのだった。

(´・_ゝ・`)「そう言うなって、総意だけにな」

ξ゚⊿゚)ξ

(´・_ゝ・`)「えっ?」

 恐らく議会は今回の試験内容にも口出ししてくるだろう。
 今の私でも合格できるよう、試験を簡単なものに変えてしまうかもしれない。
 ある意味それは好都合でもあるが――こと今回に限っては余計なお世話だ。

 私はただ地上に居たいのではない。認められた上で自立したいのだ。
 今のままでは周りに迷惑を掛けるだけ。昨夜のように殺されるだけ。
 それでは少しも意味がないし、あんな無様をまた晒すくらいなら、私は素直に言うことを聞く。

 議会もそこら辺を弁えているといいのだが、向こうも一枚岩ではないので流石に杞憂が……。


(´・_ゝ・`)「……一応言っておくと、今回の試験はかなり異例だ。
      試験の詳細はウチにも回っってきてないし、介入は難しいな」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、ほんと?」

(´・_ゝ・`)「そんなんだから手をこまねいて、俺みたいなのが派遣された」

 気の抜けた声で言い、盛岡は他人事のように鼻で笑った。

(´・_ゝ・`)「ともあれ今回、魔王は本気でお前を連れ戻すつもりなんだよ。
      それを察したから俺達も動いた。この試験、割りとガチンコだぞ」


(´・_ゝ・`)「……と、そういう認識で合ってるよな?」

 その問いかけは貞子さんに向けられたもの。
 貞子さんは小さく頷き、盛岡の話を引き継いだ。

.

91名無しさん:2020/10/23(金) 23:24:27 ID:6PRhN.nU0

川д川「ええ、この試験は相当厳しいものになると思います。
     私も最大限の助力を約束します。一緒に頑張りましょう」

ミセ*゚ー゚)リ「……というわけで、貞子についてはよくご存知ですね。
      ちっちゃい頃のお世話係。こっちは魔術関連の助っ人です」

 貞子さんは美人なので見た目を描写をします。
 目元にかかった長い黒髪(シャンプーのCMかってくらい艶が出ている)。
 装備は上から【黙示録のイヤリング】【UNIQLOダウン】【しまむらジーンズ】。
 身長は180cmくらいあって体重は67kg(隠し武装含む)。
 アニメ化したら声は明坂聡美にやってもらおうと思っている。以上です。

川д川「もう一度改めまして、魔導宮廷から来た貞子です。
     先に言っておきますが、私の教えはミセリより厳しいですよ」

ξ゚⊿゚)ξ「デカパイ見てるので大丈夫です(お手柔らかにお願いします)」

川д川「合格できたら触ってもいいですよ」

ξ;゚⊿゚)ξ !

 重大な布石が打たれてしまったようだな。

.

92名無しさん:2020/10/23(金) 23:27:57 ID:6PRhN.nU0


ミセ*゚ー゚)リ「――で、私を含めた以上3名!
      お嬢様の試験突破に向けて、全身全霊頑張ります!」

 パチパチパチと拍手で盛り上げるミセリさん。
 なるほどこれで大体分かった。疎外感もちょっと解消された。

 つまり私が弱いので試験が実施される事となり、
 その話で揉めてる間に昨夜の襲撃が起こった、という感じだろう。

ξ;゚⊿゚)ξ ウーン…
( ∞(

 確かにこれは話が込み入っている。
 私の試験と勇者軍の襲撃、別々の話が不自然に絡まっている感じだ。
 まるで狙って話を拗らせたような――そんな作為すら感じてしまう。

(´・_ゝ・`)

(´・_ゝ・`)「残る問題は勇者軍だが、こっちはもう完全に手遅れだな」

(´・_ゝ・`)「ツンの居場所がバレた以上、次はもっと大きな戦いになると思う。
      向こうも本腰を入れてくる。対策はしたが、まぁ今後どうなるかは分からない」

ξ゚⊿゚)ξ「……でももう魔王軍が動いてるんじゃないの?
      私が言うのもアレだけど、この状況ってかなりピンチだし……」

.

93名無しさん:2020/10/23(金) 23:33:30 ID:6PRhN.nU0


ミセ;*´ー`)リ「あー……それなんですけど、今回魔王軍はあまり動いていないんです。
        貞子達にはその辺の働きも任せるんですけどね……」

ξ゚⊿゚)ξ「いや魔王軍が魔王の娘を守らないの組織として終わってるだろ」

(´・_ゝ・`)「魔王城ツンは地上でもやっていけます! って話の時に、
      でも不安なので守って下さい! なんて言えるか? 矛盾すんだろ」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「Oh……確かに……」

ミセ;´ー`)リ「ごめんなさい、こういう駆け引きは上手くなくて……」

ξ;゚⊿゚)ξ「いいのよ。私じゃ相手にもされなかっただろうし」

 思わずマジレスしてしまったが、盛岡の言い分はかなり的を射ている。
 パパンの目的は私を魔界に連れ戻すこと。
 そんな相手に『私を守って』とは確かに頼めない。こっちの立場が更に弱くなってしまう。

 ……いやもう、展開の噛み合わせが最悪過ぎる。
 試験は試験、勇者軍は勇者軍で対応できればまだマシだったのに……。


(´・_ゝ・`)「――だから魔王軍ではなく魔導宮廷に声を掛けた。
      あそこの動向には魔王も口出ししにくいしな。ツテがあってよかったよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、そこは本当に助かったのだわ。
      貞子さんが居たら大体解決するもの。すげぇよ貞子さんは」

川д川「恐れ多くもその通りでございます。
     必要な仕事はすべてこなしていますので、ご安心を」

.

94名無しさん:2020/10/23(金) 23:36:12 ID:6PRhN.nU0

  _,
ξ゚⊿゚)ξ「……あれ? なら結局、私の特訓ってどうなるの?」
  _,
ξ゚⊿゚)ξ「貞子さん達は勇者軍対策とかもするのよね?
      そこに私の面倒まで入ったら忙しくないかしら……」

(´・_ゝ・`)「ご安心、そこも考えてある」

 盛岡が私の問いに即答する。

(´・_ゝ・`)「今回の試験は対人間がベースになるはずだ。
      となれば、先生役の適任はもっと別に居る」

ξ゚⊿゚)ξ …?

(´・_ゝ・`)「ハインリッヒ高岡だよ。
      お前の特訓は、基本あいつに任せる事にした」

ξ゚⊿゚)ξ !

(´・_ゝ・`)「勇者軍の詳しい話が知りたければ向こうから聞いてくれ。
      なにはともあれ、俺達の分担をまとめると以下の通りだ」

ξ゚⊿゚)ξ「ゆとりある表現」


  〜よくわかる組分け〜


・特訓組→ξ゚⊿゚)ξ 从 ゚∀从
└試験突破に向けて特訓! そして伝説へ……

・見回り組→ミセ*゚ー゚)リ 川д川 (´・_ゝ・`)
└勇者軍を見つけるぞ! そして殺す

・雑用→('A`) (^ω^)

.

95名無しさん:2020/10/23(金) 23:37:34 ID:6PRhN.nU0


(´・_ゝ・`)「はいはい、とりあえずこんなトコだな。
      みんなで一緒にがんばろう。俺達の戦いはこれからだ」

ξ゚⊿゚)ξ「無性に元気が湧いてきた」

 私は全てを理解して頷いた。
 つまりは魔王城ツン特訓編。そういうことなのだ。

(´・_ゝ・`)「そんじゃ俺は見回りに行ってくる。
      これでも仕事が多いんでな、失礼する」ガタッ

 淡白に言い切って席を立つ盛岡。
 彼はそのまま、誰を一瞥することもなく外に出てった。

ξ゚⊿゚)ξ(言うだけ言って消えたな……)

川д川「……では、私も一旦休憩させてもらいます。
     ミセリ、あまりお嬢様を困らせないようにね」

 次に動いた貞子さんも言葉少なにリビングを後にする。
 彼女の足取りはどこか軽く、既に疲れも限界のようだった。

ミセ*゚ー゚)リ「うん、色々ありがとうね。ゆっくり休んで」

ξ;゚⊿゚)ξ「おやすみなさい」

 話を聞いた限り、今回貞子さんの仕事はかなり多いはずだ。
 私が死んでた間にも死ぬほど作業をこなしていただろう。
 客間へと去っていく貞子さんを見送りながら、私は心中でお礼を言いまくった。

.

96名無しさん:2020/10/23(金) 23:41:44 ID:6PRhN.nU0


ミセ*´ー`)リ「……さて、それじゃあ私も働きますかね」ヨッコラセ

ξ゚⊿゚)ξ「……次は何?」

ミセ*゚ー゚)リ「とりあえず……家事? お皿洗ったりとか。
       お嬢様の世話してた分、色々溜まってますしね」


ξ゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「ああ、……それもそうよね」

 まだネタが出てくるんじゃないかと探ってしまったが、これも杞憂だったらしい。
 しかし、杞憂なら杞憂でまた、急に手放しにされたような心細さもある。
 どこまでいっても心が落ち着かない。……落ち着かないのだ。

ミセ*゚ー゚)リ「暇ならお嬢様も手伝って下さい。
       しばらく大変になるんですし、貴重な日常ですよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……分かっているのだわ」

 とはいえ、寝起き以降ずっと慌ただしかった流れもこれで一区切りだ。
 ミセリさんは食器の片付け、私はテーブルや床の掃除に取り掛かる。
 気になる事はまだあるが、日常的なそれらの作業はかなり気分を誤魔化してくれた。

ミセ*゚ー゚)リ「あ、これが済んだらハインさんとこ行きますからね。
      その前にお風呂入ったりします?」

ξ゚⊿゚)ξ「寝起きだし吐いた後だし絶対入るのだわ」

 一応断っておくと今の私はべつに不潔ではない。
 死んでる間もミセリさん達が世話をしてくれたのだろう。私の体は清潔そのものである。
 しかし事実として1週間は風呂に入っていないわけで、気持ち的にもこの入浴は即決だった。
 入浴シーンは無い。

.

97名無しさん:2020/10/23(金) 23:43:25 ID:6PRhN.nU0

ミセ*゚ー゚)リ「だったら急ぎますか!
      向こうはもう準備できてるみたいですし、善は急げです!」

ξ;゚⊿゚)ξ「……そうよね、半月しかないものね。休みも無さそうだし」

 即死級の傷を負った手前、1日くらいはゆっくりしたい気持ちが強かった。
 胸元には今でも違和感が残っている。これが消えるのもしばらく先になりそうだ。

 ……そしてやっぱり、私はまだ状況に追いつけていなかった。

 みんなが私の為に動いていたのは分かる。ただその1点だけは深く理解している。
 だから試験の話も簡単に聞き入れたのだが、その分、私自身の実感は乏しいまま。
 そういえば学校は? なんて考えが浮かぶくらいには気合い不十分。
 我ながら不安まみれだ。弱音をほざく暇もなかったら、もう転がり回るしかない。

ミセ*゚ー゚)リ「えーと、今日は体力テスト? みたいな事をするとか言ってました。
      本格的な特訓も早く始まるといいんですが……」

ξ;´⊿`)ξ「……上手くやれるかしら……」

ミセ*゚ー゚)リ「まー私との特訓よりは楽ですよ多分。
      対魔物ではなく対人間の訓練ですから、その分は」

 とはいっても、私はその人間相手にボロ負けしている。

 楽観している場合ではない。今まで以上に本気でやらねばマジでマズい。
 これは奇跡的に生まれたラストチャンスだ。ここを逃せば本当に後がない。
 取り計らってくれたミセリさん達の為にも、私は私にできる全てをやり切るしかないのだ。

ξ;-⊿-)ξ「……ハァ」

ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさん、色々ありがとうなのだわ。
      大人の駆け引きはよく分からないけど、大変だったでしょう」

ミセ*゚ー゚)リ「――ええ、それはもちろん大変でしたよ。
      お嬢様の動きは色々影響ありますし、それなりに」

 ミセリさんはお皿を洗いながら軽く応える。
 その作られた軽薄さこそ私達の距離感。重たいものを持たせまいというミセリさんの心遣いだ。
 簡単に言えば大人と子供のそれ。今の私では、とても覆せない。

.

98名無しさん:2020/10/23(金) 23:44:47 ID:6PRhN.nU0

ミセ*゚ー゚)リ「でもまぁそれが従者の仕事なんですから。
      そうやって労ってくれるだけで十分ですよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ありがとう。その苦労、無駄にはしないのだわ」

ξ;゚⊿゚)ξ「……あんまり自信は無いけど」

ミセ*゚ー゚)リ「それでいいんですよ。お嬢様はいつか、私よりもっと強くなるんですから」

ξ゚⊿゚)ξ

Σξ;゚⊿゚)ξ「もっと!? いやそれは流石に……」

 私がミセリさんより強くなるのは現状かなり不可能だ。ていうか無理だ。
 魔力を筋力に例えるとミセリさんはドウェイン・ジョンソンくらいキマっている。
 励ましの言葉としては嬉しいけれど、今の私では冗談半分にしか受け取れなかった。

ξ;゚⊿゚)ξ

ξ;-⊿-)ξ「……それは流石に無理なのだわ。
        実力くらい分かるもの。あんまり無意味に期待されても……」

ミセ*゚ー゚)リ「いえいえ無理じゃないですって!
       お嬢様の自己評価が低いだけです! 私なんて中の上ですよ」

ξ;゚⊿゚)ξ「それ結構強い……」

ミセ*゚ー゚)リ「これもお嬢様の素養を考えての期待なんです。
       無理も無意味も些細なこと! 強くなれます、絶対に!」

ミセ*゚ー゚)リ「なにより! それが私の望みでもあるんですから!」

ξ;´⊿`)ξ「育てのプレッシャーもすごい……」

.

99名無しさん:2020/10/23(金) 23:48:50 ID:6PRhN.nU0


ミセ*゚ー゚)リ「――でなきゃ特訓なんてしませんよ。無駄なんて少しもありません」

ミセ*゚ー゚)リ「ですから、いつか私を守れるくらい強くなってください。
       安直ですけど、やっぱりそういうのが一番嬉しいんです」


ξ゚⊿゚)ξ「……でも、もし強くなれなかったら?」

ミセ*゚ー゚)リ「普通にブチギレますね」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「えっ?」

ミセ*゚ー゚)リ「いや今までの苦労を台無しにされたら怒りますよ、当然」

ξ゚⊿゚)ξ

 情緒がブッ壊れて恐怖がブチ上がる。
 そこはなんかこう……生ぬるいセリフが出てくる所ではなかろうか。
 ブチギレ宣告、ほぼパワハラではなかろうか。


ミセ*´ー`)リ「……なんて、冗談です。
       お嬢様は望むがまま、自由にもたもたして下さい」

ξ゚⊿゚)ξ「もたもた願望は無い」

ミセ*゚ー゚)リ「まぁぶっちゃけ死ななきゃ何でもいいですよ。
       前進であれ自滅であれ、お嬢様が自由であるなら私は――」


ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「強くなれなくても?」

ミセ*゚ー゚)リ「いやそれは別件なのでキレます」

ξ゚⊿゚)ξ

 がんばろうとおもった。

.

100名無しさん:2020/10/23(金) 23:50:33 ID:6PRhN.nU0

≪2≫


 ――掃除やら入浴やらを済ませた夕方頃。
 私とミセリさんはテクテクとハインさんの屋敷に赴き、その客間で軽い歓迎を受けていた。
 座布団にちゃぶ台にお茶と銘菓。メトロン星人みたいなおもてなしだった。


从 ゚∀从「やーーーっと起きたなツンちゃん! 元気そうで嬉しいぜ」ワシャワシャ

ξ゚⊿゚)ξ「よせやい」

从 ゚∀从「傷の具合はどうよ。アレほぼ死んでたんだろ?」

ξ゚⊿゚)ξ「もう大丈夫。貞子さんが直してくれたから」

ミセ;*゚ー゚)リ「私も魔力を分けましたからね! そこお忘れなきよう!」

从;゚∀从「そりゃよかった、けど色々悪かったな。
      俺達……というか俺のせいでさ」

ξ゚⊿゚)ξ ?

从 ゚∀从「ああ、まだ聞いてないか? 勇者軍は俺を追って現れたんだよ。
      どっかから情報が漏れてたらしい。これも調べちゃいるんだが、どうにも……」

 言葉に詰まったハインさんは喉を鳴らしてお茶を飲んだ。
 私もお茶&銘菓を食らった。おいしい。

从 ゚∀从「ともかく、俺がツンちゃんを手伝うのはその辺の謝罪も含むってこった。
      魔物の試験はよく分からねぇが、稽古の相手にゃ困らせねえよ」

ξ;゚⊿゚)ξ「謝罪なんていらないのだわ。私の方が助けてもらってるんだし……」

从 ゚∀从「まぁまぁ俺も立場が危ういんだ。媚びくらい売らせてくれって」

 そう言いながらヘラヘラ笑うハインさん。
 彼の子供扱いはミセリさん達の比ではないものの、相手がイケオジなので悪い気はしない。
 これで見た目が若かったら確実にホの字だった。運命の妙である。

.

101名無しさん:2020/10/23(金) 23:52:23 ID:6PRhN.nU0

ミセ*゚ー゚)リ「そんなことより特訓の準備は済んでるの?
      先にドクオが来てたはずだけど……」

从 ゚∀从「もちろん準備万端だ。ウチで暴れる分にはまったく問題ねえ。
      さっきテストで暴れてみたんだが、魔術ってのはやっぱすげえな!」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「……あの、今日は体力テストなのよね?」

 私としては暴れる予定が無かったので、ハインさんの口振りに若干の不安を覚えてしまう。
 これでミセリさんみたいな脳筋特訓が始まったら泣いて転がろうと思う。

从 ゚∀从「安心しなって、俺が面倒見るのは対人間のあれこれだけだ。
      今回はあくまで人間が目安。今のツンちゃんには軽い相手だと思うぜ」

ξ*゚⊿゚)ξ「……え、ほんと!?」

 なんだかやる気が湧いてきちゃったな。
 そうだぞ私は魔王城ツンだぞ。実力さえ発揮できれば私は強いのだ。
 やっぱり良い指導者からは良い影響を受けられるのだ。私はしみじみ思った。

从 ゚∀从「ミセリみたいな脳筋特訓は今回ナシだ。
      ツンちゃん自体のスペックは足りてるし、戦い方さえ覚えれば今は十分だろうよ」

ミセ*゚ー゚)リ「脳筋ではなく効率的な特訓です」

从 ゚∀从「てことで今日はツンちゃんの戦い方をチェックする。
      組手とかスパーリングとか、なんかそんな感じの体力テストってわけ」

ξ゚⊿゚)ξ「なるなる」

从 ゚∀从「そんな感じだから貞子に頼んで結界とか色々やってもらったのよ。
      今なら庭で大爆発しても近所迷惑にならないぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「ハピなる」

 すごいなぁ。

.

102名無しさん:2020/10/23(金) 23:53:40 ID:6PRhN.nU0


 〜ハインの屋敷 デカい庭〜


从 ゚∀从「よーし準備できたな」

ξ゚⊿゚)ξ「できてしまったようね」

 ジャージに着替えて云々した私=魔王城ツン。
 庭に敷き詰められた玉砂利をジャリジャリしつつ、私はハインさんの指示を待っていた。

从 ゚∀从 〜♪

 とはいえ、当のハインさんは縁側に腰を下ろしたまま動こうともしない。
 てっきり彼が相手をするのだと思っていたが、どうやら相手は他に居るらしかった。

ミセ*゚ー゚)リ「お気をつけてー」

ξ゚⊿゚)ξ「うーっす」

 とりあえずミセリさんが相手じゃなければ何でもいい。
 ハインさんと同じく、彼女もまた縁側で観戦モードだった。まずは一安心である。


从 ゚∀从「……おー来た来た! おっせーよブーン!」

ξ゚⊿゚)ξ !

 そんなこんなしてたらスパーリング相手が現れたっぽい。
 ハインさんが手を振るその方向に目をやると、そこには、覚えのある人影があった。


(; ^ω^)「……人使いの荒いジジイめ……」

 屋敷の裏手から現れたるニコヤカ仏頂面。
 それはまさしく昨日の転校生・内藤ホライゾンであり、私はビックリした。


(;'A`)「……ハァ……」

 しかも更に驚くことに、内藤くんの後ろにはドクオの姿まであった。
 更に更に驚くことに2人は揃って満身創痍。ボロボロの姿でこちらに近付いてきていた。

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103名無しさん:2020/10/23(金) 23:55:41 ID:6PRhN.nU0

ξ;゚⊿゚)ξ「え、なんで2人が?」キョロキョロ

 ハインさんとドクオ達をそれぞれ一瞥する私。
 内藤くんが居て、なぜかドクオと一緒で、しかもボロボロになっている。
 そんなよく分からん状況に戸惑っていると、事を察したハインさんが内藤くんの紹介をしてくれた。

从 ゚∀从「そいつは内藤ホライゾン。あだ名はブーンだ。
      ツンちゃんの良い刺激になると思ってな、ちょっと前に呼んでたんだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「ちなみに私の根回しの結果です。十分に労うように」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな周到な」

 ミセリさんは一体いつから話を動かしていたのか。
 人知れず気を配ってくれるのはいいけど若干怖い。ちゃんと言ってほしい。


( ^ω^)「――と、聞いての通りだ」

 途端、冷たく端的な一言が私を射抜く。
 私は今一度彼らの方を向いて、やたら傷付いているその姿を訝しんだ。

ξ;゚⊿゚)ξ「……関係者っていうのは本当だったのね。
       にしても、なんでそんなボロ雑巾みたいになってるの?」

(;'A`)「うるせえ、ハインリッヒにやられたんだよ。
    結界の防音性能をテストするとかでさ……」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「――それで負けたの!? 2人とも!?」

(;'A`)「言っとくけど全然本気出してないからな。
    下見で先に来てたら巻き込まれたんだよ……」

 ぶつぶつ言いながら恨めしそうにハインさんを見遣るドクオ。
 この様子だと単純に腕試しをされたようだが、結果はまぁ微妙だったらしい。ワロタ。

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104名無しさん:2020/10/23(金) 23:57:10 ID:6PRhN.nU0

(;'A`)「だからお前も気をつけろよ。
    あいつらの激化薬、バカにできねぇぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「……激化薬、って」

 ――激化薬。
 あの女が使っていた正体不明の薬物。
 あれが人間にどういう効果をもたらすかは、正直言って想像に難くない。

 つまりは人間が魔物に勝つためのドーピング。
 その効力も、私は身をもって理解している。


从 ゚∀从「さて、そんじゃあ軽く授業開始だ」

从 ゚∀从「ツンちゃんは勇者軍のことを何も知らないんだよな?
      特に『激化薬』を知らないのはマジでマズい。正直どうかしてるぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「え、アレそんな重要アイテムなの?」チラッ

ミセ;*゚ー゚)リ「……情報規制などありまして。
       でも私だって実物見たのは初めてですよ」

ξ;´⊿`)ξ「……今日は秘密ばっかりなのだわ……」

 現魔戦争の終結後は基本的には平和主義。
 戦いの火種になりそうな情報は議会やらなんやらが握り潰してきたのだろう。つまりそういう事だ。
 まったく大人というのは秘密ばかりである。振り回される身にもなって欲しい。

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105名無しさん:2020/10/23(金) 23:59:23 ID:6PRhN.nU0

从 ゚∀从「知ってのとおり、勇者軍ってのは勇者と超能力者の集まりだった。
      だが戦争終結後に勇者は失踪、能力者達も異能を失っていった」

ξ゚⊿゚)ξ(あ、宿題でやったとこなのだわ!)

 出てしまったようだな勉学の成果が。

从 ゚∀从「そんで勇者軍は自然消滅。初期の面子は完全に居なくなった。
      俺もあっちを抜けて魔王軍に取り入ったし、まぁ世代交代ってヤツだな」

ξ゚⊿゚)ξ「……でも、それじゃあ世代が交代しても中身が無いのだわ。
      勇者も能力者も居ないんでしょ? 目的だって無いだろうし……」

 本来、勇者軍とは義勇兵の集まりである。
 彼らの目的は魔王軍の撃退&魔王討伐であり、一応その目的は果たされていた筈。
 ならば世代交代をする意味が無い。まして、戦うための力も無いなら尚更だ。

 けれどハインさんの話にはまだ続きがあるようで、彼は私の言い分に頷いてから話を再開した。

从 ゚∀从「ツンちゃん、中身が無いってのは言いえて妙だぜ。
      中身を失った勇者軍には、確かによくない輩が集まっちまったからな」


从 ゚∀从「次世代の勇者軍――あいつらの目的は単純だ。
      『超常時代』の産物を解明して利用する。
      勇者も魔物も能力者も、みんな研究材料にしてな」

ξ;゚⊿゚)ξ「利用……?」

从 ゚∀从「そう、軍事利用だ。そして金にする。あれは利口なハイエナなんだよ」

ξ;゚⊿゚)ξ「……それ完全に悪者なのだわ。勇者軍の肩書きとは……」

从 ゚∀从「残りの話はまぁ省くが、『激化薬』ってのはそういう経緯で生まれた商品の1つだ。
      単純に説明すると、こいつを飲むと超能力が使える。正式名は『激化能力』」

(´・_ゝ・`)「時系列に並べると以下の通りだ」

ξ゚⊿゚)ξ「なんて親切な」


〜よくわかる経緯〜

1 戦争終結! そして世代交代
2 次世代の勇者軍、超能力とかの研究開発を開始
3 その結果、超能力とかを生み出す『激化薬』が爆誕
4 勇者軍、色々とヤバい集団になっていく

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106名無しさん:2020/10/24(土) 00:01:24 ID:zhu3Oamw0


ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「なるほど」

 完全に理解した私、魔王城ツン。

 つまり私は激化薬――激化能力とやらに勝たなくてはならないのだ。
 ハインさんのおかげで敵のスタンスも分かったし、『相手はただの人間だ』という油断も薄れてきた。
 これでようやく、私も話のスタートラインに立てた気がする。

从 ゚∀从「で、今の勇者軍はこの『激化薬』のブラッシュアップにご執心でな。
      そこで欲しいもんと言えば新しい研究材料なんだが――」

ξ;゚⊿゚)ξ「……そこで私、でごわすか」

从 ゚∀从「その通り。だからよ、ツンちゃんはもう強くなるしかないんだよ」

ξ;゚⊿゚)ξ ゴクリ(お茶を飲む音)

从 ゚∀从「地上で生活する限り、敵はいつまでもツンちゃんを狙う。
      今のままでも逃げ隠れはできるだろうが、居を構えて安定してってのは無理だろうな」

ξ;゚⊿゚)ξ「……なんちゅう最悪な……」

 分かってはいたが、この試験に合格しても勇者軍という不安要素が消える訳ではないのだ。
 大変なのはむしろ合格後。勇者軍からの攻撃を前提とした日々の方だ。
 次第によっては今ある生活を手放す必要もあるだろうし、学校にだって通えなくなると思う。

 だから、私はいつか選ばなくてはならないのだ。
 勇者軍から逃げるか、戦うか。
 今はまだ杞憂でも、その選択は必ずやってくる。

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107名無しさん:2020/10/24(土) 00:03:29 ID:zhu3Oamw0


从 ゚∀从「――さておき、まずは試験突破だ。
      今の話で戦う理由、敵の目的は理解できたよな?」

ξ゚⊿゚)ξ「当然なのだわ。すこぶる理解してしまったのよ」

从 ゚∀从「オッケーならもう授業は終わりだ。
      あとはブーンに任せるぜ。まぁ適当に戦ってみてくれよ、見てるから」

 ハインさんは足を胡座に組み直すと、それ以上なにも語ろうとはしなかった。
 あとはブーンにということは、私の相手は内藤くんがやるのだろうか……

( ^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ

 ……でもなんも言わんぞ。
 こっち見たまま微動だにしないぞ。


('A`)「……んじゃ、俺も見物に回るんで」テクテク

 そして気怠げに去っていくドクオ。
 まぁ知らないところでドクオも頑張っていたのだろう。
 ツンちゃん襲撃のあらすじでは一切触れなかったが、ドクオだって敵の襲撃を受けているのだ。
 この状況も色々複雑だし、近い内にまた話をしておこう。

ξ;゚⊿゚)ξ「うん、おつかれ……」

( 'A`)「ったく、疲れまくりだよ……」

 ドクオを見送りながら声を掛ける。
 やがて私が視線を戻すと、そこでようやく、内藤くんが口を開いてくれた。

.

108名無しさん:2020/10/24(土) 00:08:01 ID:zhu3Oamw0



( ^ω^)「僕が敵なら、今のタイミングで攻撃してたお」


ξ゚⊿゚)ξ「……物騒なのね。自己紹介も省くのかしら」

( ^ω^)「それなら学校で済ませたお」

ξ;゚⊿゚)ξ「……まぁ、そうだけど」

 かなり最悪な初対面だったが、あれでいいなら強いることもない。
 きっと内藤くんはクールキャラになりたいのだ。察してあげるのも優しさである。

( ^ω^)「なら早く準備しろ。僕も疲れてるんだお」

ξ;゚⊿゚)ξ「しかもせっかちだし……」

( ^ω^)「……難しいな」

ξ゚⊿゚)ξ ?


(´・_ゝ・`)「戦闘準備だ! いくぞツンちゃん!」

ξ゚⊿゚)ξ「了解! 魔力生成!」 ブォォォォン
 つ魔と

 私は頑張って魔力を作った。
 赤いオーラがあれしてすごい。

.

109名無しさん:2020/10/24(土) 00:09:33 ID:zhu3Oamw0


从 ゚∀从「ミセリ、ツンちゃんの魔力はどんなもんなんだ?」

ミセ*゚ー゚)リ「……とにかくコントロールが壊滅的ですね。
      量があって質もいいだけに、ピーキー過ぎて今のお嬢様には……」

从 ゚∀从「あー、そんなんだから出力を制限して安定させた感じか。
      それでも人間相手なら十分そうだけどな」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。なので勇者軍の尖兵ごときに遅れを取ったのは折檻対象というか」

ミセ*゚ー゚)リ ブチッ

ミセ*゚ー゚)リ「ありえないんですよね」

从;゚∀从「……キレるなよ。その折檻も試験後にしてくれ。
      今は人間基準でやってるんだから……」

ミセ*゚ー゚)リ「…………」


ξ゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「よぉーし頑張るのだわ!!!!!」

 ヤバいミセリさんがブチギレている。
 そらもう十分過ぎるくらい心配してくれたもんな、そろそろ別の感情が湧いても仕方が怖い。
 せめて折檻が甘くなるよう戦闘シーンを頑張ろうと思った。頑張っていくぞ!

.

110名無しさん:2020/10/24(土) 00:11:12 ID:zhu3Oamw0




ξ ⊿゚)ξ「――――ッ」


 私は、練り上げた魔力に赤マフラーのイメージを重ねた。
 昨日は運良く成功してくれた魔力成形。
 その感覚をなぞるように、私は魔力の出力を上げていく。


(;'A`)「あの魔力量、いつもの上限を超えてねーか!?」

从 ゚∀从「流石は魔王の娘ってワケかよ。冗談じゃねえ……」


ξ; ⊿゚)ξ(露骨に持ち上げるな、シリアスが崩れる――!)

 赤熱した魔力が周囲に火花を散らす。
 やがて私の首元には赤マフラーが実体化、魔力成形の工程が完了する。
 かなり真面目にやってはみたが、とりあえず無事に完成してくれてよかった。

 伝承いわく、魔力成形の最終地点は生命の誕生。
 それを思えば赤マフラーなど些細な代物だが、私にとっては大事な処女作。
 なにより自動防御っぽい機能もあるし伸び代はある……と個人的には思いたい。


.

111名無しさん:2020/10/24(土) 00:14:55 ID:zhu3Oamw0


ξ ⊿゚)ξ「……私はこれで準備完了だけど。そっちは?」


( ^ω^)「これでいい。始めるお」

ξ;゚⊿゚)ξ「……えっ、いいの?
       激化薬は? 使う、のよね……?」

( ^ω^)

 発する言葉は必要最小。
 身構えもせず立ち尽くす内藤くんは、その姿のまま本当に私の攻撃を待っていた。

 しかも、事もあろうに生身のまま。
 激化薬すらない、普通の人間のまま。


ξ;゚⊿゚)ξ(……始めろ、って……)スッ

 とりあえず私も拳を作って見せるが、それを振るう気はまったく湧いてこない。
 人と魔物の基本スペックの差は歴然。私とて普通の人間に負けない程度のパワーはある。

ξ;゚⊿゚)ξ

 戦えば、私は彼に大怪我を負わせてしまう。

 想像に難くない必然の結末。
 その結末に立っている自分を想像すると、私は――……


.

112名無しさん:2020/10/24(土) 00:23:31 ID:zhu3Oamw0



( ^ω^)「激化薬を飲まれる前に、倒す」 ゴソゴソ


ξ;゚⊿゚)ξ「……あっ」

 気がつけば、内藤くんはポケットから円筒状のケースを取り出していた。
 トーマスのラムネのやつだった。

 彼はそのケースを振って錠剤――激化薬を取り出し、間髪入れずに飲み下した。
 まったく、結局飲むなら最初から飲んでよかろうなのだ。

ξ;゚ー゚)ξ ホッ

从 ゚∀从「……」


( ^ω^)「……それができなければ、能力発動までの猶予で先手を取る」


ξ;-⊿゚)ξ「ならもう待つわよ。普通に戦った方がテストにな――」

 るんだし、と言葉を続けていく最中。

⊂( ^ω^)「なら遠慮なく」ガシッ

 内藤くんは中空に手を差し出し、そこにある『何か』の幻影を掴み取った。
 実体なき実物――それを手にして大きく振り上げ、彼はその手で静かに空を薙いだ。

 その瞬間、堰を切ったように旋風が吹き荒れた。

ξ;゚⊿゚)ξ「――――ッ!?」

 屋敷の草木が音を立ててざわめき、地面の玉砂利が波を打つ。
 一挙動にあるまじきその衝撃は戦慄に余りある。
 私はただ、風に吹かれて言葉を失うばかりだった。


( ^ω^)「……テストだから言っとくけど、僕の激化能力は『復元』だお」

 風が止んだ時、『何か』を持っていた彼の手には一振りの剣が実体化していた。
 無から湧き出た無骨な剣。
 内藤くんはそれを両手に持ち直し、改めて私に相対した。

.

113名無しさん:2020/10/24(土) 00:24:54 ID:zhu3Oamw0


ξ;゚⊿゚)ξ(激化能力、復元――)


 あの能力、『無形から有形を作り出す』という点で魔力成形に酷似している。
 即ち、たった1粒の薬が、人間を魔物の領域に踏み入らせたということ。

 ――敵が激化薬に頼るのも当然だ。
 これさえあれば、人と魔物の戦いは成立するのだから。


( ^ω^)

ξ;゚⊿゚)ξ(激化薬、確かにヤバいアイテムなのだわ)ジリジリ


( ^ω^)

ξ;゚⊿゚)ξ(昨日の女にも何か能力があったのかしら?
       今思うと、あの戦い方はかなり不用心だったのね……)ザッ



( ^ω^)

( ^ω^)「おい」



ξ;゚⊿゚)ξ「……?」ピタリ

 おずおずと間合いを見ていた私に内藤くんが声を掛けてくる。
 彼は構えた剣を下ろして脱力すると、しばし言葉を選んでから、溜息交じりに言葉を繋げた。

.

114名無しさん:2020/10/24(土) 00:26:33 ID:zhu3Oamw0


( ^ω^)「お前、いつまで考え込んでるつもりなんだお」


ξ;゚⊿゚)ξ「……えっ?」


( ^ω^)「もう始めていいって何度も言ってるお」


ξ;゚⊿゚)ξ「……いや、様子を見てるのよ」


( ^ω^)「さっきから隙だらけにしてやってるだろう。
      お前、これ以上なにを見せれば動いてくれるんだお?」


ξ゚⊿゚)ξ

ξ#゚⊿゚)ξ「なッ――!」


 ……いや、これは煽りだ。

 私が冷静な判断をせず突っ込んでくるよう、誘導しているのだ。

 ここは様子見が正解だ。

 事実、昨日の私はそれを怠って致命傷を――


( ^ω^) チッ


ξ;゚⊿゚)ξ


.

115名無しさん:2020/10/24(土) 00:33:13 ID:zhu3Oamw0


 ――冷めた空気に小さな舌打ち。
 その途端、内藤くんは激化能力で作った剣を手放してしまった。
 剣はすぐさま形を失い、光になって空に散る。


( ^ω^)「環境に甘やかされ続けた結果がそのザマか。
      1人になったら何もできず、そもそも初めから『戦いたくない』と思っている」

ξ;゚⊿゚)ξ「……え、それはちが――」

( ^ω^)「敵の方から攻撃してくれないと何もできない。
      誰かが助けてくれなきゃ話にもついていけない」

ξ;゚⊿゚)ξ

( ^ω^)「戦わなくていい口実があればそれに縋る。
      こうして他愛なく話しているのが良い証拠だ。だから隙を晒す」

ξ;゚⊿゚)ξ「それは、……ただ、正々堂々と……」
  _,
( ^ω^)「正々堂々? この状況のどこに卑怯が残ってるんだお」

ξ;゚⊿゚)ξ「う、……」

 圧が凄い。
 これもうパワハラなのでは?

( ^ω^)「……後出しの正論で身を守り、都合のいい立場から戦場を愚弄する。
      野蛮な闘争を忌避しながらも、しかし正義や勝ち組といったものには属していたい――」

( ^ω^)「いやまったく現代的な姿勢だよ。
      意図してやってるなら傑物と言わざるをえない。堪えきれなかった僕の負けだ」

ξ;゚⊿゚)ξ「違う、私は……!」

( ^ω^)「だったらもう早くしてくれ。
      これはテストだ、お前が攻撃しなければ始まらない」

ξ;゚⊿゚)ξ「……でも……」

( ^ω^)「始まらないんだよ」

ξ;゚⊿゚)ξ


.

116名無しさん:2020/10/24(土) 00:39:59 ID:zhu3Oamw0


( ^ω^)「……これは、テスト以前の問題だお。
      そういうものを戦場に持ち込みたいなら、結論はひとつしかない」


 そう言い、内藤くんは踵を返した。
 私に背中を向けて歩き出す。


ξ;゚⊿゚)ξ「……待っ」


( ^ω^)「待てば戦うのか?」ザッ


 私の声と同時、足を止めて振り返る内藤くん。
 彼の視線が私を捉える。
 彼はただ沈黙し、私の答えを待ってくれた。

 だからこそ、だから、私はすぐに答えを考えた。


ξ;゚⊿゚)ξ


( ^ω^)


 考えて、答えを……


.

117名無しさん:2020/10/24(土) 00:41:10 ID:zhu3Oamw0



〜30秒後〜



ξ゚⊿゚)ξ ポツン


从;゚∀从「……相手を逃がして終了。
      まさか戦闘にもならねぇとは……」

ミセ*゚ー゚)リ

('A`)


ξ゚⊿゚)ξ(視線が痛いのだわ)

 試験まで残り半月。
 どうやら私の問題は、強いとか弱いとか、そういう話ではないようだった。


ξ゚⊿゚)ξ


从;゚∀从「お前どういう教育を……」ヒソヒソ

ミセ;*゚ー゚)リ「いやスイッチが入れば……」ヒソヒソ


ξ゚⊿゚)ξ

 特訓初日の成果は特になし。
 体力テストもままならず、私は、貴重な1日を失っていた。


.

118名無しさん:2020/10/24(土) 00:45:56 ID:zhu3Oamw0

#1 >>2-65  #2 >>74-117

後編の投下は来週末です
4話目で一区切りなので、そこまでは年内に投下します
よろしくお願いします


>>73
ニュアンスを伝えるのが難しいのですが、
前スレに投下した分は+αの概念として隔離してもらって、
興味ある人はどうぞ〜くらいの扱いにしてもらえたら嬉しいです

119名無しさん:2020/10/24(土) 15:59:27 ID:myHqyUGs0
otsu

120名無しさん:2020/10/25(日) 22:24:42 ID:6gV6UI/A0
おもろ

121名無しさん:2020/10/28(水) 22:08:16 ID:MdsDbKKk0
待ってた!!そして待ってる!!

122 ◆gFPbblEHlQ:2020/10/30(金) 06:09:51 ID:F.8o84Nk0



          #03 ノン・パーフェクトな魔王城(後編)


.

123名無しさん:2020/10/30(金) 06:11:53 ID:F.8o84Nk0

≪1≫


 ――お話にすらならなかった体力テストの翌日。
 私こと魔王城ツンは普通に学校へ行き、普段通りの生活を送っていた。

 今日は柄にもなく早い登校をして、普通に宿題をやって、普通に授業を受けた。
 なんてことない日常風景。当たり障りのない時間が過ぎて、今は昼休みの真っ只中である。


ξ゚⊿゚)ξ

 私は昼飯を食べ終えてボーッとしていた。
 それ以上でも以下でもなかった。

(;'A`)「……おいツン、お前どうしちまったんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ ポケー

 どうしたも何も、私はただ模範的な学校生活に準じているだけだ。
 決して昨日の体力テストが残念過ぎて落ち込んでるとかそういう事は無いのだ。

(;'A`)「……やっぱ昨日言われたこと気にしてんのか?
    気にすんなって、あれはハインさんの人選ミスだよ」

 言いながら余所を一瞥するドクオ。
 彼の視線は後ろの席――直截に言うと内藤くんの席に向けられていた。


('A`)「……ありゃどー考えてもあいつが悪い。特訓ってもんを理解してねぇんだ」

( ^ω^)” モグモグ

('A`)

(#'A`)「野郎、こっちガン見しながら弁当食ってやがる……!」

ξ゚⊿゚)ξ「あらあらうふふ」

.

124名無しさん:2020/10/30(金) 06:14:08 ID:F.8o84Nk0


ξ゚⊿゚)ξ


 『――環境に甘やかされ続けた結果がそのザマだ』

 『1人になったら何もできず、そもそも初めから――』


ξ゚⊿゚)ξ(戦いたくないと、思っている……)

 ……昨日のあれは効いた。
 めちゃくちゃ効いて今も引きずっている。

 甘やかされてる自覚は多少あったが、ああも直球で指摘されたのは初めての事だった。
 しかも私はまったく反論できなかった。十分な猶予を与えられても、何も……。


 結果的に、私は今まで続けてきたミセリさんとの特訓を無駄にしてしまったのだ。
 毎日あれだけ続けてきた努力の結果は0点。
 戦うべき時に戦えなかった――その事実を、私はしかと受け止めている。

ξ゚⊿゚)ξ

 受け止めすぎて灰になりそうだった。
 なっちゃっていいかな、灰に。


('A`)「……なぁツン。昨日のアレ、お前はそんなに間違ってねえよ」

ξ゚⊿゚)ξ

('A`)「様子見しすぎて状況が悪くなることはある。
    でもそれは実戦での話だ。あれはテスト、自分のペースでやって当然だ」

ξ゚⊿゚)ξ「……私だって、そう思うけど……」

 そう、べつに私も昨日の戦い方を間違いだとは思わない。
 自分のペースで戦うのは当然だし、戦闘放棄はむしろ内藤くんの方。それも理解している。

 それでも、間違っていたのは私なのだ。
 私には『覚悟』が欠けていた。戦いに臨もうという決意も甘かった。
 呆れられても仕方がない。ここばっかりは、私は認めざるを得ないのだ。

.

125名無しさん:2020/10/30(金) 06:15:38 ID:F.8o84Nk0


ξ゚⊿゚)ξ「……私、こないだ勇者軍に襲われた時、迷ってしまったの」

ξ゚⊿゚)ξ「迷っちゃいけない、躊躇しちゃいけない。
      そう思わなきゃ戦えない時点で、私は場違いだったのかもね」

('A`)

ξ-⊿-)ξ「それで心臓に一撃。呆気ないものよ」

('A`)「……そりゃ迷うだろ。誰もそこまでの覚悟は求めてねぇよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……必要なのよ。私が、そう思ってる」

 言い切って、私は机に項垂れた。

ξ-⊿-)ξ「ちょっと人間に慣れ過ぎたのかもね。
       殺し殺され、それが社会のルールなのに……」

('A`)「……あんまり急いで考えるな。
    お前は変に思い切りがいいんだから、まずはゆっくり休んどけ」

ξ゚ー゚)ξ「……そうね」


 ――と、儚げなヒロインスマイルを浮かべた瞬間。


( ^ω^)「そうはいかん」バサッ
  つミ□

ξ;゚⊿゚)ξ !

 突然内藤くんが傍に来て、机に謎の紙束を放り投げてきた。
 イジメか!? と反射的に思ったが違うっぽい。
 私は紙束の表紙に目を向け、そこに書かれていた表題を読み上げた。

.

126名無しさん:2020/10/30(金) 06:17:22 ID:F.8o84Nk0


ξ゚⊿゚)ξ「アリクイの赤ちゃんでもわかる……戦いの基本……?」
 つ□と


( ^ω^)「今のお前に必要そうな情報をまとめておいた。
      主に心構えや自己啓発の話になっているが、最低限のセオリーも書いてあるお」

ξ゚⊿゚)ξ(こいつ、まさか私をアリクイの赤ちゃんと同レベルに……?)


(;'A`)「……うわっ、意外と執拗に理詰めしててキモい……」 ペラッ

( ^ω^)「感情はブレーキにもアクセルにもなる不安定なものだお。
      理詰めだろうがなんだろうが、制御できて困るものではない」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「え、ええー……」

 なんだこのツンデレ。いやツンデレは私だが。
 昨日あれだけ言っておいて翌日これは反応に困るぞ。
 ここから更に「勘違いするなよ」とか言い出したら私のアイデンティティが

( ^ω^)「勘違いするなよ、これはハインに言われてやった事だ」

ξ゚⊿゚)ξ 〜サカナクション:アイデンティティ〜

( ^ω^)「お前を戦えるようにするのが僕達の仕事。
      すぐに読破しておけ。お前にはそれが必要だ」

ξ;゚⊿゚)ξ「ぐぬぬ、分かったのだわ……」

 悔しいが言うことを聞くしかない。
 アイデンティティ的には

『 ξ#゚⊿゚)ξ「ふざけないで頂戴! あんたの力なんて借りないんだからねっ!」 』

 と言いたいところだが、私はこれでも魔王城ツン。
 身から出た錆くらい自力でそそがねばならぬのだ。
 ええい止めるな。これが魔王城のプライドなのである。

ξ゚⊿゚)ξ「うぉぉがんばるのだわ」

(^ω^)「ツンちゃんがんばるお!」

ξ゚⊿゚)ξ !?

.

127名無しさん:2020/10/30(金) 06:19:20 ID:F.8o84Nk0

≪2≫


 〜ハインの屋敷 客間 夕方〜


(´・_ゝ・`)「――ああ、こっちは順調な滑り出しだ。
      分かってるよ。負けたんだ、俺はもう知らん」

(´・_ゝ・`)「大渋滞は承知の上だろ。……はいはい、そんじゃ」


 ピッ、と通話の切れる音。
 盛岡デミタスはスマホをしまって振り返り、こちらに視線を注ぐ各人を一望した。

(´・_ゝ・`)「……定期連絡だよ。気にしないでくれ」

从 ゚∀从「ほんとかァ? そーいう口調には聞こえなかったけどな」ニヤニヤ

(´・_ゝ・`)「ははは、じゃあ彼女ってことにしていいよ」

ミセ*゚ー゚)リ「それはそれでキレそう」

(´・_ゝ・`)「身持ちが固い奴は大変だよな、っと……」

 縁側から客間に戻り、盛岡もちゃぶ台の面々に加わっていく。
 今日の議題は現状確認。参加者は盛岡、ハイン、ミセリの3人だった。
 貞子は見回りに出ているので居ない。

.

128名無しさん:2020/10/30(金) 06:23:56 ID:F.8o84Nk0

从 ゚∀从「さて、とりあえず情報共有といこうぜ。
      どうにも今回はキナ臭い部分が多いからな」

ミセ*´ー`)リ「とは言っても、この短期間じゃ成果も高が知れて」

(´・_ゝ・`)「あるぜ」 パサッ
  つミ□

 ミセリの言葉を遮ると、盛岡は20枚近い写真をちゃぶ台に放り投げた。

ミセ;*゚ー゚)リ「――あるの!?」

(´・_ゝ・`)「俺は働き者だからな」

ミセ;*゚ー゚)リ「度が過ぎるのでは……」

从 ゚∀从「おう、どれどれ……」

 駅のホーム、路地裏の壁面、ミスドの客席など。
 卓上に提示された数々の写真には、一見どれにも変哲が見当たらない。

从 ゚∀从「……こりゃあ、上手く撮ったもんだな」

ミセ*゚-゚)リ

 しかし、彼らの目には明らかな違和が写り込んでいた。
 たとえば路地裏の壁面には暗号の痕跡。駅のホーム、ミスドの客席には怪しげな人影。
 更にその人影は他の写真にも姿があり、ある1枚には決定的な場面も収められていた。


――――――――――――

  (´・ω・`) ζ(゚ー゚*ζ
      つ” οと
____________


 決定的な場面、それは激化薬らしきものの取引現場だった。
 片方は先日の女、もう片方は太眉の男。
 取引場所は丸亀製麺。彼らは完全に昼食中で、そのついでに取引をしているようだった。

.

129名無しさん:2020/10/30(金) 06:25:35 ID:F.8o84Nk0


从 ゚∀从

从;゚∀从「いやこれ、もう完全に街に居着いてやがるぞ。
      動いてたとかってレベルじゃねえよ。ただの住民だよ」

ミセ*゚-゚)リ「……これ、写真撮って終わりですか? 敵のアジトは?」

(´・_ゝ・`)「それは危険が危なくて追えなかったよ。俺もバレないよう必死で」

ミセ*゚-゚)リ「……だったら次は連絡して下さい。私がやりますから」

 冷たい殺気を放ちながら盛岡に釘を刺すミセリ。
 ツンの前では少しも零さないが、彼女が敵に向けている怒りは誰よりも強かった。

 お嬢様を殺そうとした。だから殺す。
 そんな短絡的かつ強靭な意思は無言であろうと伝わってくる。
 それが普通に怖かったので、ハインと盛岡は彼女の殺気が収まるまで沈黙を貫いた。

.

130名無しさん:2020/10/30(金) 06:27:52 ID:F.8o84Nk0


(´・_ゝ・`)「……とりあえず、こっち女が街から出てくのは確認した」トンッ

 盛岡が取引現場の写真に指を立てる。
 そこに便乗し、続いてハインが質問を投げかけた。

从 ゚∀从「男の方はどうだ? 街に潜伏してそうだが」

(´・_ゝ・`)「十中八九、街のどっかに居るだろうな」

从 ゚∀从「……勇者軍は一度無くなった組織だ。頭数はそう多くねえ。
      敵は少数、手掛かりも少ない。追えるんだったら追いたいが……」

(´・_ゝ・`)「ああ、それは多分無理」

 淡い期待をばっさり切り捨てる盛岡。
 ハインは頭を振って応え、小さく息を吐いた。

ミセ*゚ー゚)リ「この街は既に探知結界で覆われてます。
      異常があればすぐ分かるんですけど、それでも?」

(´・_ゝ・`)「それでも難しいと言わざるをえない。
      男の仕事は恐らく情報収集、大して強くもないはずだ」

(´・_ゝ・`)「つまり危険は回避する、異常は起こさない。
      見つけ出すには地道にやるしかない、はずだ。知らねぇよ俺も」

ミセ;*゚ー゚)リ「ぐ、ぬぬ……」

从 ゚∀从「まぁそれでも探知結界の存在はデカいぜ。
      女だけでも街から追い出せてる辺り、敵も簡単には攻めて来ねぇよ」

ミセ;*´ー`)リ「……それ、だったら次は本気で来るって事ですよ」

从;゚∀从「……まぁな」

(´・_ゝ・`)「特徴的な太眉、まゆ、一体何者なんだ……」

.

131名無しさん:2020/10/30(金) 06:30:46 ID:F.8o84Nk0


从 ゚∀从「いかんともしがたく、やむなく膠着状態か……」

 そう言いながら姿勢を崩すハイン。
 彼は懐から煙草を取り出し、余裕ぶってそれに火を点けた。
 ふわりと白煙が立ち上り、正気を疑うレベルの甘い香りが客間に広がる。

从 ゚∀从y=~ 「……まぁツンちゃんを鍛えてる時間はありそうで安心したぜ。
         敵がすぐに動かねぇだけ、俺としては十分だ」

ミセ;*゚ー゚)リ「そんな悠長な! 男の方はまだ街に居るんですよ!?」

从 ゚∀从y=~ 「そうか? 情報なんて元々向こうに筒抜けだったんだ。
         今更そんな身構えたってしょうがねえよ」

从 ゚∀从y=~ 「大体、太眉の男だって強いかどうか怪しいんだろ?
         こないだの奇襲にもそいつは居なかったし、戦力じゃねえんだよ」

ミセ;*゚ー゚)リ「そんなの推測だけじゃないですか……」

(´・_ゝ・`)「まぁまぁ、それよりもっと大事な話があるだろ」

从 ゚∀从y=~ 「……大事な話?」

(´・_ゝ・`)「そうそう。情報が筒抜けって辺りにも関係するんだが」

 盛岡は卓上で手を組み、ハインの目をじっと見ながら言った。

(´・_ゝ・`)「――裏切り者の件だよ」

从 ゚∀从y=~

 一瞬の間。
 ハインは手近にあった灰皿で煙草を潰し、盛岡の目を見返した。

从 ゚∀从「なる、ほど」

从 ゚∀从「それは確かに大事だ」

ミセ*゚ー゚)リ「……誰かがこっちの情報を流してた、って話ですよね?」

(´・_ゝ・`)「その通り。この問題を解決しなきゃ不安で朝も起きらんねえ」

ミセ*゚ー゚)リ「低血圧は別問題ですよ」

.

132名無しさん:2020/10/30(金) 06:34:21 ID:F.8o84Nk0

(´・_ゝ・`)「……ミセリが居ないタイミングで正確に動き出し、
      ハインやドクオを確実に足止めし、1人になったツンを襲撃する」

(´・_ゝ・`)「これは何者かの手引きがあったとしか思えない。
      複数の展開を無理矢理まとめたような性急っぷり、明らかに異常だ」

(´・_ゝ・`)「俺はこの犯人を許さねえ。絶対にだ。
      見つけ出してボコボコにしてやるからな」

从 ゚∀从

ミセ*゚ー゚)リ

 雑だなぁ、と2人は思った。


(´・_ゝ・`)「ついては俺にも考えがある。
      せいぜい尻尾を出さないよう、裏切り者には忠告を言いたいくらいだ」

ミセ*゚ー゚)リ「……まあ、頼もしい限りですけど」

从;゚∀从「さっきの写真の男が情報を流してたって線もあるだろ。
      あんまり派手な事して刺激すんなよ」

(´・_ゝ・`)「ボロが出るから?」

从 ゚∀从「……そうだ。こっちは情報量でも負けてんだ、下手なマネはするな」


ミセ;*´ー`)リ「それよりお嬢様の特訓ですよ!
        どうするんですかもう! やっぱり私が!」

(´・_ゝ・`)「それは絶対に無い」

从 ゚∀从「無いな」

ミセ;*゚Д゚)リ「そんなに!?」

 満場一致である。

ミセ;*゚ー゚)リ「いや皆さんお嬢様を低く見すぎですって! 私の特訓は適切ですよ!」

ミセ;*゚ー゚)リ「そりゃ少しやりすぎなのは分かってますけど……でも私だって心を鬼にですね!」

 声を張り上げて抗議するも2人の耳には届かない。
 限界になったミセリは「あぁお嬢様! これは不当人事でございます……」と天に祈りを捧げ始めた。
 物理で解決できない事柄に対するストレスは、確実に彼女を幼児退行させていた。

.

133名無しさん:2020/10/30(金) 06:35:23 ID:F.8o84Nk0


从 ゚∀从「――まぁ今は俺に任せとけって。
      俺だってツンちゃんには強くなってほしいんだ」

(´・_ゝ・`)「なんで?」

从 ゚∀从

从 ゚∀从「はは、そりゃお前――」

 と、ハインが軽口を始めた途端、屋敷のどこかから着信音が鳴り響いてきた。
 その音にいち早く反応したのはハイン。
 彼は跳ねるように驚いてみせると、すぐさま重い腰を上げて着信音の方に駆けていった。

从;゚∀从「いけねー、俺も電話があるんだったわ……」ドテドテドテドテ

ミセ;*゚ー゚)リ「お早く済ませてくださいね! 大事な報告会なんですから!」

(´・_ゝ・`)

.

134名無しさん:2020/10/30(金) 06:36:14 ID:F.8o84Nk0

≪3≫



ξ゚⊿゚)ξ


 魔王城ツンです。


 放課後です。


.

135名無しさん:2020/10/30(金) 06:37:35 ID:F.8o84Nk0




ξ゚⊿゚)ξ「――……それでね、ドクオが大爆発して死ぬの」

 「そうなんだ、すごいね!」

ξ゚⊿゚)ξ「跡形も残らないのだわ」

 然るべき学校生活とそれに付随する日常的会話シーンを終えた私は魔王城ツン。
 現在、私はいわゆるBパートに相当する放課後の夕暮れを満喫していた。
 もちろんそこにはクラスメイトのまゆちゃん(モブ)の姿もあり諸般平和的である。
 極めて申し分ない穏やかな時間。もはやEMOTIONALすら禁じ得ない所存だった。

ξ゚⊿゚)ξ「教室でホコリが散ってキラキラしてて髪なびいてるだけで良い感じになるわよね」

 「謎の白い光が所構わず差し込んでたら更に良い感じのやつ!」

ξ゚⊿゚)ξ「魚眼+俯瞰でちょい不思議系の雰囲気出てたら10点確定なのだわ」

 「……それ長門有希の話してる?」

ξ゚⊿゚)ξ !

.

136名無しさん:2020/10/30(金) 06:40:17 ID:F.8o84Nk0

 これは本筋に微塵も関与しない情報だがまゆちゃんは絵を描くオタクだった。
 なので時折絵のモデルを頼まれたり頼まれなかったりする。今日は頼まれたりする日だった。
 窓際でなんかエモい感じのポーズを取っているだけの簡単なお仕事。報酬は飴玉である。

ξ゚⊿゚)ξ「まゆちゃん絵が上手」

 「そりゃあモデルがいいからね!」

ξ゚⊿゚)ξ「フフッヒ」

 やれやれ私は美少女だからな。
 しかも魔王城だしな、困ったものだ。

 「よし、描けた描けた〜!」

ξ゚⊿゚)ξ「見せておくれ」

 「サイン描くから待っておくれ」

 絵の片隅に『(´・ω・`)』みたいなサインを残し、ノートの1ページを切り離してくれるまゆちゃん。
 そのページにはエモい感じの美少女こと魔王城ツン=私の姿がバッチリ描かれている。
 胸部が若干盛られているのは私の注文だった。寛大なキュビズムである。

ξ゚⊿゚)ξ「オイオイオイ参っちまうなオイ」

 「猛るな猛るな」

 いつか魔王になったら肖像画はまゆちゃんに頼みたい。
 しかし画像ファイルを出力する魔術とかあるのだろうか。なければ作ってもらおう貞子さんに。


    |┃三             _________
    |┃              /
    |┃ ≡        < あれ、まだ帰ってないモナー?
____.|ミ\___(´∀` )_ \
    |┃=___    \    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |┃ ≡   )   人 \ ガラッ


ξ゚⊿゚)ξ !

 そんな時、突然現れたのは我らが担任モナー先生だった。
 時計を見ると確かにヤバい時間、夕陽も沈んで夜が近い。
 久々のまんがタイムきららタイムとはいえ、また随分と無為を楽しんでしまったようだ。

.

137名無しさん:2020/10/30(金) 06:42:23 ID:F.8o84Nk0

( ´∀`)「ほらもう帰宅部、2人とも下校の準備するモナ」

ξ;゚⊿゚)ξ「そ、そんぬぁ」

 先生にモナモナと下校を促される私達。
 しかし私はまだ帰れない。どうしても帰れないのである。
 その理由については以下の回想を参照してほしい。


 〜回想〜

('A`)「学校に探知結界のすごい版を仕込んでくるNE」

('A`)「俺が戻るまで動かないでね」

ξ゚⊿゚)ξ「うむ」

('A`)「おい内藤、ツンの護衛を」

(^ω^ )「嫌だお」テクテクテク

('A`)

('A`)「まゆちゃん頼む、ツンを見ててくれ」

 「いいよー!」

ξ゚⊿゚)ξ「なるほどお留守番というわけね」

 〜回想おわり〜


 かくしてそういう事なのである。
 先日のこともあるし、私の単独行動はかなりご法度なのである。
 流石にもうワガママは言えない。ドクオの言いつけは守りたいが、さて……

【分岐1→まゆちゃんと帰る】
【分岐2→1人で教室に残る】

  (´・_ゝ・`)
 ⊃分岐1⊂

  (´・_ゝ・`)
 ≡⊃⊂≡
      グシャア

ξ゚⊿゚)ξ(うむ、断固として教室に残るのだわ)

.

138名無しさん:2020/10/30(金) 06:44:17 ID:F.8o84Nk0


ξ;゚⊿゚)ξ「いーじゃん先生! もうちょっとだけお願いなのだわ!」

( ´∀`)「えーどうしよ。態度次第かも」

ξ゚⊿゚)ξ「反応が俗物すぎる」

 「そうです先生! 私達はドクオ君を待ってるだけなんです!」

ξ゚⊿゚)ξ「そうなのだわそうなのだわ」

 正直まゆちゃんのが優良生徒なので私は援護射撃に回った。
 それから数分間ひたすらゴネ続けるまゆちゃん、そうなのだわロボと化す私。


(; ´∀`)「……はいはい分かった、もう分かったモナ」

 やがてがっくりと肩を落とし、モナモナと頭を振る先生。
 女子高生2人に寄ってたかって大声出されるのは流石にキツかったらしい。たぶん私でもキツい。

(; ´∀`)「じゃあもう少しだけ、ツンさんだけなら学校に居ていいモナ……」

ξ゚⊿゚)ξ !

 かくしてゴネ得を成し遂げる。
 残念ながらまゆちゃんはダメっぽいが、まぁ私が許されているならまぁいいだろう。
 時には必要な犠牲もある。今回、それはまゆちゃんだったのだ。

.


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