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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

1 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 12:22:52
ずっと前にマーサー王や仮面ライダーイクタを書いてた者です。
マーサー王物語の数年後の世界が書きたくなったのでスレを立てました。

2007年ごろに書いた前作もリンク先に掲載しますが、
前作を知らなくても問題ないように書くつもりです。

SSログ置き場
http://jp.bloguru.com/masaoikuta/238553/top

506 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/22(火) 00:10:34
アンジュ2期の4人にはなるべく触れないように書いてましたからねw
カナナンとタケは死んだふりをしていましたが
メイは腹筋への負担が大きすぎて、今回の戦いではタチアガーれそうにもありません。

507名無し募集中。。。:2015/09/22(火) 06:43:14
カナナン某メジャーリーガー仕込みのフォークボールかw

まんまと騙されたわw

508 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/22(火) 18:27:30
ハルナンを自らの手で押し潰した時のアヤチョの意気消沈っぷりを見るに、
今回もハルナンとハルの二人を同時に倒せば、つまりは愛を注ぐ対象を一度に消すことが出来れば
また戦意喪失するのではないかとカナナンは考えていたのだ。
そして実際にその考えは正しかった。
アヤチョはすべての希望が潰えたような表情をして、膝をついている。
こうなればもう戦うことは出来ないだろう。
結果、今回の戦いはフク・アパトゥーマ陣営の大勝利。
これで次期モーニング帝国帝王が決まるはずだった。
……ハルの唸り声が聞こえるまでは。

「うぅ……うぅ〜……」

苦痛の中にはいるが、かろうじて意識を残している。
そしてその蚊のように小さなうなり声は、位置的に近いアヤチョの耳の中に、確実に入っていた。
それだけてアヤチョは息を吹き返す。
大切な存在にこんなひどいことをした、部下への怒りを添えて。

「タケェェェェェ!!カナナァァァァン!!」

アヤチョは鬼と化した。
全身ボロボロであるのもなんのその。
粛清対象である二人に罰を与えるため、あっという間に作戦室へと突入する。

「タケェ!よくもハルナンを!こうしてやる!こうしてやる!」

アヤチョは雷の如き迫力でタケの脛を蹴り上げた。
そして相手が転倒してからは、無防備なお腹を踏んづける。
踏んづける。踏んづける。何度も何度も踏んづける。
タケが口から血を吐いてもなお、粛清を続ける。

「ゲホッ!……うぅああ……」
「悪いヤツめ!悪いヤツめ!こうしてやる!」

509名無し募集中。。。:2015/09/22(火) 19:14:20
ひえぇぇぇ〜あやちょ怖い((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

510名無し募集中。。。:2015/09/22(火) 19:37:54
まるで菩薩が悪を懲らしてるため変化した明王のようだ…ガクガクブルブル

511名無し募集中。。。:2015/09/22(火) 21:39:28
もうこれ悪役やん…

512 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/23(水) 15:26:06
タケがやられているのを横目に、カナナンはフラフラの身体でフクの方へと向かおうとする。
仲間を見捨てているわけでは無い。
対アヤチョ王の必勝法を伝授することが何よりも大事だと判断しての行動なのだ。
しかし、そんなカナナンの目論見をアヤチョが見逃すはずかなかった。

「逃がさないよカナナン!!!!」

ギロリとカナナンを睨みつけ、さっきまでタケを折檻していた足で床を踏み向ける。
お遍路参りを何回も繰り返すことで鍛えたその脚力であれば、あっという間にカナナンに追いつくだろう。
ところが、ここで新手の邪魔が入る。
まるで透明の大型犬にしがみつかれたかのように、アヤチョの右脚がズシリと重くなっていく。
この大型犬の正体を、アヤチョ王は知ってた。

「リィィィィィィナプゥゥゥゥゥ!!!!」

アヤチョは力いっぱいに右脚を持ち上げると、近くにあった壁に勢いよく叩きつける。
タケを懲らしめた時と同様に、何度も何度も何度も叩きつける。
やがて血が滲み、透明だったリナプーの姿が露わになっても攻撃は止まらない。
いくらやりすぎようともアヤチョ王の怒りは止むことが無いのだ。

「なんてひどいことを……許せ無い……!」

少し離れたところで見ていたフクは這ったままの姿勢で鉄球を拾い上げた。
この鉄球は先ほどタケがハルナンに放った豪速球だったもの。
これをアヤチョにぶつけてやろうと、振り被る。

「待ってください!フクさん!」
「!?」

フクの投球を制止したのは、カナナンだった。
まだ距離が遠いため、声を張り上げながら訴えている。

「投げる場所を、よく考えてください!」
「投げる……場所?……」
「貴方なら分かるはずです!この戦いに終止符を打つ、唯一の場所が!!」

513名無し募集中。。。:2015/09/23(水) 16:09:16
いよいよ決着か!?

514名無し募集中。。。:2015/09/23(水) 22:25:50
ハルナンの壁にぶつけてさらにえぐれさせるんだなw

515 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/24(木) 12:57:14
カナナンにはフクがここで取るべき行動が分かっていた。
だがそれをストレートに伝えてしまえばアヤチョに気づかれ、防がれてしまう。
ゆえに湾曲的な言い回ししか出来なかったのだ。
もっとフクに接近して小声で伝えれば良いのかもしれないが、それもダメだった。
何故ならアヤチョはもうカナナンの背後に迫ってきていたのだから。

「カナナン、怒るよ。」

カナナンは頭を掴まれては、そのまま床へと叩きつけられる。
その様子を見たフクは思わずアヤチョに鉄球を投げつけようとするが、
カナナンが必死でヒントを与えてくれたのを思い出し、グッと堪える。

(私が投げるべき場所……それはどこなの!?)

フクは頭をフル回転させて、これまでの出来事を回想していく。



アヤチョの超反射神経、
アヤチョに防がれた攻撃、
ハルナンをかばう時だけ下がる回避力、
ハルナンを失う時の弱体化、
ハルが登場した時の回復力、
必殺技「聖戦歌劇」、
砕け散ったサイリウム、
飛んできた二つの鉄球、
動けないアヤチョ、
ハルをかばったアヤチョ
気を失うハルナン
小さな呻き声をあげるハル

……
………

「そうか……あそこに投げれば勝てるんだ……」

フクは理解した。
脚が壊れているため、もう立てはしないが
上半身の力だけで投球しようと上体を起こす。
だがここでノンビリはしていられない。
アヤチョもフクが投げるであろう場所に気づいてしまったのだ。

「!!!!!……やめて!それだけは、それだけはやめて!!」

516 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/24(木) 13:11:35
フクが投げるべき場所をクイズにします。
正解は二つのあって、
片方はひねりなしの答え、もう片方はひねった答えになってます、
特に賞品などはありませんが、当ててみてください。

517名無し募集中。。。:2015/09/24(木) 18:03:45
はるなん

518名無し募集中。。。:2015/09/24(木) 18:15:03
ここにきてクイズw某「〜の夜」スレのようにマルチエンディング期待しちゃうなww

普通に考えればハル一択なんだけどそのまま投げても傷付いたフクじゃアヤチョに防がれちゃう…

ここはハルに投げると見せかけてメイに鉄球をパス!事前に透明化したリナプーからもう一つの鉄球を預かっていたメイがハルナンとハルに両方に鉄球を投げる…タチアガーれなくても倒れてる二人なら転がして当てればダメージを与えられる筈

って流石にひねりすぎか?w

519名無し募集中。。。:2015/09/24(木) 21:34:23
天井に投げて崩してハルもハルナンも潰して終わりやん

520 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/25(金) 08:29:27
フクの視線の先にいるのは、ハル・チェ・ドゥーだった。
そう、ハルに球を投げることこそがアヤチョ打倒の唯一策だとカナナンは考えていたのである。
鉄球がヒットすれば、ハルナンとハルという"愛すべき相手"を失ったアヤチョは意気消沈するだろうし、
仮にアヤチョがハルをかばうことが出来たとしても、それで肉体にダメージを与えることが出来る。
どちらに転んでもコトは有利に運ぶし、そうしない手はないとフクも思っていた。
……球を投げる寸前までは。

(待って、もしここで投げたら、私は……)

フクはハッとした。
今から自分は、無抵抗の仲間を傷つけようとしていることに気づいたのだ。
それはまさにアヤチョがこれまでやってきたことと同じ。
正さなくてはならない存在と同じ過ちを犯そうとしている。
明確な意思を持ってこちらに攻撃してきた時のハルならともかく、
今のハルはか細い声で呻いているだけの無力な状態。
どうしてここで投げることが出来ようか。
ここで同志を傷付けて、どの口で立派な王になると言えるのか。
そう考えたフクは握っていた球を床へと落とす。
握るべきものは、他にあるのだから。

「え?え?……なに?なにがどうしたの?」

ここで困惑したのは、ハルを守ろうと飛び出したアヤチョだ。
絶対的な正解である投球を放棄することが彼女には理解不能だったのだ。
だからこそアヤチョはパニックを起こし、
フクが近くまで接近していることにも気付けなかった。

「アヤチョ王。」
「ぎゃあ!なに!?」
「握手を、しましょう。」
「え?え?え?」

混乱しているところにいきなり両手を掴まれたので、
アヤチョは何が何だか全くもって分からなくなってくる。
そしてフクはそんなアヤチョをなだめるように、言葉を続けていく。

「我がモーニング帝国では握手が最上級の愛情表現です。アンジュ王国もそうですよね?」
「そうだよ!国民はアヤと握手すると凄い喜ぶ!だからなに!?」
「良かった、分かっているじゃないですか。」
「はぁ!?」
「これからもハルナンやハルと同じくらい、国民に愛を与えてください。
 私もそうします。モーニング帝国帝王として。」
「!?」

ハルナンがこの戦いで果たしたいと考えていた使命を覚えているだろうか。
それはフクの得意とする3つの技を削ぎ落すこと。
フク・ダッシュは削れた。
フク・バックステップも削れた。
だが、この"フク・ロック"だけはあとちょっとのところで削りきることが出来なかった。
だからこそ、この局面で2人だけの個別握手会が開催されている。

521 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/25(金) 08:30:53
クイズにお付き合いくださりありがとうございました。
正解は「ハル」もしくは「投げない」になります。

アヤチョ戦は、次の話で最後になります。

522名無し募集中。。。:2015/09/25(金) 09:44:46
やられた…まさか「投げない」選択するとは

523名無し募集中。。。:2015/09/25(金) 16:22:10
いい解答だね

524名無し募集中。。。:2015/09/25(金) 21:37:11
個別握手会w

525名無し募集中。。。:2015/09/25(金) 21:39:56
ついにフクが自分の意志で王になる事を宣伝したね
もしかしたらハルナンはこうなるように仕向けたのかも?と思ったり…

526名無し募集中。。。:2015/09/26(土) 16:14:09
そろそろ始まって5ヶ月か
タイトルの「拳士たち」の登場はいつになるのやら…w

527 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/26(土) 17:30:49
"フク・ロック"は相手の手を掴むことで動きを制限する束縛術。
ここから逃れるにはフク以上のパワーで振りほどくしかないのだが
これまでの戦いによってアヤチョの腕の骨は折れに折れているため、どうすることも出来なかった。
ムチのようにしならせて叩こうにも、打点自体をホールドされているのでそれも叶わない。
この鬱陶しさにイラつくアヤチョだったが、まだ攻撃手段はいくらでも残されていた。

(手がダメでも足があるよ!頭突きもいいよね!
 気を失うくらい強烈なのをお見舞いしてあげる!!)

アヤチョは自身の額に、グググッと怨念を込めていく。
来たるべき未来、すなわちハルナンが帝王となる未来を実現するにはフクが邪魔なのだ。
そのフクをぶっ倒す意思をより強固にするために、アヤチョは幸せな未来を空想する。
ところが、その人並み外れた空想力がアダとなった。
先ほどのフクの言葉にあった「モーニング帝国帝王として」という言葉が心に引っかかった結果、
異なる未来を思い描いてしまったのだ。

(これは……なに!?)

アヤチョの瞳には少し未来のビジョンが映っていた。
目の前にいるフクの身なりは綺麗に着飾られていて、まるで王様になったかのように見える。
そしてそのフク王の後ろには12人の少女たちが集結している。
顔も知らない者も何人かいるが、これは未来の帝国剣士たちに違いない。
帝国剣士たちの誰もが例外なくフクを慕うように、剣を握っている。
ハルナンも、ハルも、アヤチョではなくフクを護るためにそこに立っているのだ。

(やだ!なんで!?二人ともアヤよりもそいつの方が大事なの!?
 どうしてそいつの周りにみんながいるの?どうして人が集まるの?
 じゃあ、アヤの周りには…………!!)

アヤチョは自分の後ろを見てしまった。
彼女の瞳に映る未来には、誰もいない。
フクの側についているハルナンとハルはもちろんのこと……

(カノンちゃんは!?カナナンは!?タケは!?リナプーは!?メイは!?
 ムロタンは!?マホちゃんは!?リカコは!?みんなどこにいったの!?
 アヤは、どうして、一人なの……)

自ら空想した未来があまりに絶望的だったためか、アヤチョは気を失ってしまう。
突然こんなことになったのでフクは面食らったが、握った手を放したりはしない。
もうアヤチョが倒すべき敵ではないことを心で理解したのだ。
アヤチョの身体はあの強さからは想像もできないほどに細くて、しかも衰弱しきっていた。
そんなアヤチョにこれ以上の衝撃を与えぬように、フクは腕をそっと引き寄せて、抱きしめる。

「もう無理しなくてもいいんですよ、ゆっくり休んでください。
 アンジュの戦士たちも、ハルナンも、ハルも、みんな休ませます。
 私も……すぐに休みます……」

528 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/26(土) 17:32:21
これでアヤチョ戦は終了です。
第一部完!!……は、実はまだ先になっちゃいそうですw

ハルナンの真意や、拳士の情報とかは近いうちに出せるんじゃないかな〜とは思ってます。

529 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/26(土) 17:45:50

おまけ

戦いも一区切りついたので、選挙戦での撃破数ランキングを書きます。
あいまいな決着も多くありましたが、完全に私の主観で勝ち負けを決めてます。
引き分けの場合は両者勝利・両者敗北って感じですね。

・1位 アヤチョ 4勝(マロ、カナナン、タケ、リナプー)

・2位 マイミ  2勝(アユミン、メイ)
    カノン  2勝(トモ、カリン)

・3位 モモコ  1勝(クマイチャン)
    フク   1勝(アヤチョ)
    エリポン 1勝(アーリー)
    マーチャン1勝(オダ)
    ハル   1勝(サヤシ)
    オダ   1勝(マーチャン)
    カナナン 1勝(ハル)
    タケ   1勝(ハルナン)
    リナプー 1勝(サユキ)
    カリン  1勝(カノン)
    アーリー 1勝(エリポン)

・そのほか0勝の登場人物
 サヤシ、ハルナン、アユミン、マロ、メイ、トモ、サユキ、クマイチャン

※サユ王やクールトーンは戦っていないため対象外

530 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/26(土) 17:50:53

おまけ

-数時間前

マロ「予言してあげる。お前を討つのは他でもない、フク次期モーニング帝国帝王よ。」
ハルナン「……」


-数時間後

> タケ   1勝(ハルナン)

タケ「マロさんサーセンwwwフクちゃんじゃなくて私がハルナン倒しちゃいましたwww」
マロ「てめぇ……」

531名無し募集中。。。:2015/09/26(土) 17:56:30
なんか色々とw

アヤチョ編お疲れ様でしたやっぱりハルナンの真意があるのか…

532名無し募集中。。。:2015/09/26(土) 22:45:04
・そのほか0勝の登場人物
 サヤシ、ハルナン、アユミン、マロ、メイ、トモ、サユキ、クマイチャン←←←←←


圧倒的なパワーを見せつけて登場したはずの前作主人公wwwwww

533名無し募集中。。。:2015/09/27(日) 05:50:27
アユミン結局朝までトレーニングしたのか….

534名無し募集中。。。:2015/09/27(日) 09:34:07
アヤチョ王の4勝が全部自国の者なのがひどいw

535 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/28(月) 03:40:18
すべてが終わったと確信していたフクだったが、ここで気の抜けない出来事が起こる。
なんと果実の国の王であるユカニャ・アザート・コマテンテが作戦室の中から出てきたのだ。
"ハルナン派"であるユカニャ王の登場に、フクはピリッとする。

「あなたはユカニャ王……私を倒すつもりですか」
「そ、そんなの無理です!戦う勇気なんてこれっぽっちも残ってませんよ!
 そもそも私は次期帝王はフクさんでも良いと思ってましたし……」
「え?」
「私の願いは果実の国の平和なんです。今回ハルナンさんについたのもそのためですね。
 モーニング帝国のような強い国に守ってもらえなければ、果実の国は簡単に攻め込まれちゃうんですよ。
 もしもフクさんが我が国を脅威から守ると約束してもらえるのであれば……ぜひ応援したいのですが……」

いかにもな困り顔で気弱そうに言うものだから、フクは少し面食らう。
同じ"ハルナン派"且つ"一国の王"であるアヤチョとは似ても似つかぬ性格であるため、少しおかしくもあった。
思い返してみればモーニング帝国の歴代帝王も、誰一人として似たような性格の者は存在しない。
直接仕えた面々だけでもタカーシャイ、ガキ、サユと三者三様だ。
王がそれぞれ違うからこそ、国の在り方も違ってくるのだということをフクは理解する。

「もちろんです。私が帝王になったら果実の国だけでなく、アンジュ王国もまとめて守りますよ。」
「本当ですかぁ!安心しました……では三国で力を合わせる時代が来るのですね。」

ユカニャ王の表情から敵対すべき存在でないことを悟ったフクは、心から安堵した。
そして緊張の糸が完全に切れたのか、急激にまぶたが重くなってくる。
今度こそ本当に戦わなくていいという安心感からか、安らかな顔で眠りについていく。
それを確認したユカニャ王は、フクを起こさない程度の小声でボソボソとつぶやきだす。

「本当に安心しましたよ。これで我々は"ファクトリー"の脅威に対抗できるんですね。
 この世の真なる悪。悪意なき悪。最も憎むべき悪。"ファクトリー"は三国の総力をあげて潰さなきゃなりませんからね。
 私は結果的に良かったと思いますが、ハルナンさんはどう思ってます?」

ユカニャ王は床に倒れるハルナンに対して声をかけるが、
当のハルナンは鉄球で打たれて気を失っているため、返事が返ることはない。

「ありゃ、死んだふりじゃなくて本当に寝ちゃってるんですね。じゃあ夢の中で聞いてください。
 私が見る限り、モーニング帝国次期帝王はフク・アパトゥーマさんですよ。
 でも、ハルナンさんはここで終わるような人じゃないですよね?……どう巻き返すのか、楽しみにしています。」

536 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/28(月) 03:45:42
>>531
ハルナンが帝王になりたい理由は名誉欲もありますが
それ以上にユカニャ王から聞いた"ファクトリー"に対抗したいという思いがあります。
自分が帝王になれば何かしら出来ると思ったんですね。

>>532
川#^∇^)ピキピキ

>>533
>>534
ハルナンの敵なら自国の者でも斬るアヤチョの異常性と、
ただトレーニングするだけで2人も倒すマイミの怖さが表現できたのではないでしょうかw

537名無し募集中。。。:2015/09/28(月) 07:06:04
ファクトリー!?まさかの急展開…

ハルナンの真意はファクトリーが何かによって明かされるって事か

538名無し募集中。。。:2015/09/28(月) 08:08:01
ユカニャ王が倒れたフクとハルナンの首を取って漁夫の利ENDかと思ってたのにw

しかし自国防衛のためにハルナンを焚きつけて他国を巻き込んだこんな内部分裂を起こさせるとか
実はユカニャ王こそが一番の策士黒幕なのでは…

539名無し募集中。。。:2015/09/28(月) 11:52:00
あざといからな

540名無し募集中。。。:2015/09/28(月) 12:12:24
果実の国の戦績はドーピングしても4人中半分が0
他国に頼りたくなるのも仕方ない

541名無し募集中。。。:2015/09/28(月) 12:51:56
ファクトリー悪役?
はまちゃん…

542 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/28(月) 13:00:37
今回の戦いによって、モーニング帝国剣士9名全員が負傷することとなってしまった。
誰もが例外なく歩くのも困難なほどの大怪我であり、
その日のみならず次の日までも医療室のベッドから起き上がることは出来なかった。

だが、覚えているだろうか。
今回の帝王を決める選挙のルールは「期日前投票禁止」かつ「代理投票禁止」だ。
つまりは自らの足で投票に向かわねば、権利を行使することが出来ない。

「クールトーンちゃん、締め切りまであと何分?」
「……3分です。」
「もうダメかもね。」

激戦の日の翌日、すなわち投票期日。
サユ王はクマイチャンのせいで瓦礫の山となった訓練場に座り込みながら、
投票権を持つ帝国剣士が来るのを待ち構えていた。

「あっ、あっ、時間が……」
「どうなった?」
「過ぎちゃいました……投票の受付は締め切りです。」
「はぁ……やりすぎなのよ、あの子たち。」

Q期組団も、天気組団も、誰も姿を現すことはなかった。
おそらく彼女たちには医療室から訓練場までの道のりがひどく長く感じるのだろう。
しかしこれでは次期帝王を決めようがない。

「あの、この場合は誰が王になるんですか?優勢だったフクさんですか?」
「それはダメ。ルールはルールよ。」
「そんな……じゃあ王位は……」
「私が続投でーす。」
「えええっ」
「……って訳にもいかないのよ。なんとかしなきゃね。
 とりあえずみんなのいる病室にいきましょ。」
「は、はい!」

543 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/28(月) 13:10:15
ファクトリーが何者なのか、正義か悪かは当分言えそうにないですね。

今の段階で言えるのは
第一部はサユが事件を起こす物語。
第二部はベリーズが事件を起こす物語。
第三部は拳士たちが事件を起こす物語。
というだけです。

544名無し募集中。。。:2015/09/28(月) 13:43:50
あと2年はかかるなw

545名無し募集中。。。:2015/09/28(月) 17:47:43
とりあえず第二部が楽しみだ

546名無し募集中。。。:2015/09/28(月) 19:03:16
なるほど
1 さゆ卒業
2 ベリーズ解散
3 こぶしデビュー
って感じですね

547名無し募集中。。。:2015/09/28(月) 19:38:27
サユが事件…1部はまだ続きそうだな

548 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/28(月) 23:21:50
あ、サユが起こした事件ってのは選挙のことですw
ですので第一部は収束に向かってますよ

>>546
さゆ卒業とベリーズ活動休止はその通りですね。
こぶし……デビュー?……ちょっと何のことか分かりません。
拳士の読み方とクールトーンの本名はよく分からないです。

549名無し募集中。。。:2015/09/29(火) 01:07:45
ほぼネタバレだしw3部になる頃には楓士?もできてると良いなぁ…

550 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/29(火) 08:47:29
昨日の戦いで大きく負傷したのは帝国剣士だけではない。
アンジュの番長や、果実の国のKASTたちだってあれだけ戦ったのだから安静が必要だ。
そのためモーニング帝国はその全員が身体を休めるのに十分なベッドと医療班を用意することにした。
また、昨日まで敵だった相手と極力顔を合わせぬよう、一国につき一つの部屋が充てられたのだが
アンジュ王国の面々に限ってはその配慮が嫌がらせのように感じられた。

「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」

地獄かよ、とタケは思った。
アヤチョ王とマロ・テスクの2人が終始無言で険悪なムードを作り上げているため
他の四番長らにとっては声を掛けづらかったのだ。
もっともリナプーは構わず睡眠をとっているので、
実際に気を病んでいるのはカナナンとタケとメイの3人ではあるが。

「あっそうだ、王に良い縁談があるんですよ。」

空気を変えようとやっとの思いで切り出したのはメイだった。
とは言っても昨日のことを忘れるなんて無理なため、アヤチョとマロの視線が痛くはあるが
筋肉痛で張ったお腹をさすりながら、なんとか声を振り絞っていく。

「なかなかのイケメンですし!男気もあるし!しかもスタイルも舞台映えしてて」
「やだ。」
「ですよね〜……」

即答だった。
やはりアヤチョに恋愛話は縁遠かったのかとメイは後悔したが、実際はそうではない。

「アヤはね、心に決めた人がいるの。結婚はその人とする!」

この好きな人がいる宣言に、タケとカナナンは嫌な予感しかしなかった。
心当たりがありすぎて、その人物の顔しか頭に浮かんでこない。

「あの、王の好きな人ってまさか……」
「えーー?アヤチョがガチ恋してるの?へぇ〜え。」

ここでマロがにやけた顔をしながら話に割り込んでくる。
今までの鬱憤を晴らすために、アヤチョをからかおうと思っているのだ。

「なにカノンちゃん。アヤが恋しちゃダメなの?」
「いや別にー?」
「じゃあなに!」
「いやね、おめでたい話なんだから号外新聞の一部や二部でも書きたいんどけどさ
 今の私はペンも握れないんだよね。ざーんねん。
 ううん、今だけじゃなくこのさきずっと執筆は無理かも。」

マロはわざとらしく、グニャグニャに折れ曲がった腕を見せつける。
このような嫌味は決して褒められたものではないが
彼女の中でもまだ、執筆能力を奪われたことに対する心の整理がついていないために
愚痴の一つや二つでもこぼさなくてはやってられないのだろう。

「……」
「どした?アヤチョ?なんか言葉はないの?」

マロはアヤチョが怒ったり、喚いたりすることを期待していた。
そうなれば普段の番長たちの空気感を取り戻せるし、
後腐れなくやっていけると思ったのだ。
ところが、アヤチョの反応はマロの思っていないものだった。

「カノンちゃんごめん……」
「は?」
「ごめん!みんなごめん!だから、だからアヤの前から消えたりしないで!!」
「ちょ、ちょっとアヤチョどうしたの!おかしくなった!?なんか変だよ!」

551名無し募集中。。。:2015/09/29(火) 09:43:27
よくよく考えたら前作では新聞記者、現実はハロ卒業したら作詞家…本当に執筆活動に携わるんだな・・・

作者は預言者かよw

552名無し募集中。。。:2015/09/29(火) 13:41:51
クマイチャンが休める場所はあるのか?
しかも同室?で一緒なのはモモチでしょ?
危険なかおりがする

553 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/30(水) 13:01:05
アヤチョは自身が見たビジョンの話をみなにすることにした。
具体的にはフクの周りに未来の帝国剣士が集結していたことと、
自分の周りには誰もいなくてとても辛かったことの二点だ。
またも空気がズシリと重くなったので、カナナンもタケもかける言葉が見つからないようだが
唯一マロ・テスクだけは躊躇なく突っ込んでいっていた。

「馬鹿ね、アヤチョ。」
「なに!」
「アヤチョの周りに誰もいなくて当然でしょ。だって私たち番長は常に前進してるんだもん。」
「えっ……」

アヤチョがキョトンとするのも構わず、マロは講釈を続ける

「フクちゃんの周りに帝国剣士が大勢いるってのは、王を敵から守るためなんじゃない?
 その分、私ら番長は楽よ。だって王を護る必要が無いんだもん。ねぇカナナン?」
「は、はい、刺客の一人や二人、いや100人くらいはアヤチョさんだけで倒せちゃいます。」
「そ。だから番長はどんどん前に行ける。攻めの姿勢を最後まで貫ける。
 アヤチョに構ってる暇なんかないの。分かった?」
「そっかぁ……」

正直言ってマロの言うことは勢い任せのデタラメではあるが
不思議とアヤチョの心は穏やかになりつつあった。
ずっとずっと不安に思っていたことが解消されて、嬉しかったのだ。
そしてお次はマロが嬉しい思いをする番となる。

「うわ!なんだこれ!」
「身体が重い……!!」

バン!と部屋の扉が開くなり、アヤチョを含む番長全員の身体はズシリと重くなる。
これは空気やムードが重いとかの話ではない。本当に重量が増加するくらいのプレッシャーを一気に感じているのだ。
こんなプレッシャーを放つような人間は、この城内には一人しかいない。

「カノン!私のために戦ってくれたんだって!?ごめんよ〜!」
「あなたは……あなたは……!」

扉をくぐって現れたのは、マロ・テスクが最も憧れている存在だった。
先ほどはアヤチョをガチ恋どうのこうのと、からかっていたが
何を隠そう(隠す意味はないが)マロの方が誰よりもガチ恋していたのだ。

「この身体の重さ……とっても懐かしいですぅ……」

マロはジュースを飲み干した時の自分を愚かだと思った。
あの時自分は、身体が重さを感じないことに対して喜んでいたが
そんな身体でどうして憧れの存在の重圧を感じることが出来ようか。
効果の持続がなくて、本当に良かったと思っている。

「あ!ごめん!つい焦って殺気を出しっ放しにしてた!!」
「いいんですよ。クマイチャン様の重圧、大好きですから。」

554 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/30(水) 13:16:45
花音のブログはエッグ時代から凄かったので、なんとなくは予想できましたねw

食卓の騎士の部屋については考えてませんでした。
たぶんマイミとクマイチャンはずっとモモコに叱られるんだろうなとは思います。

555 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/01(木) 12:58:39
所変わって、KASTらが療養する病室。
そこでは今回の戦いの反省会が行われていた。

「うーん、分かってはいたけど、みんな散々な戦績ね。」

ユカニャ王は紙をペラリとめくりながら戦士たちへと視線を送る。
当人たちも不甲斐ない結果に終わったことは承知しているようで、後ろめたいような表情をしていた。

「トモとカリンちゃんの二人掛かりでカノンさんと引き分け……さすがにこれにはガッカリだね。」
「うん……ユカニャの言う通り。返す言葉もない。」
「トモに同感です……」

カリンはともかく、普段は横柄なトモ・フェアリークォーツがしおらしくなるのはめずらしい。
帝国剣士の一人も倒しきれなかったという事実が相当堪えているのだろう。

「サユキは番長のリナプーに競り負けたかぁ……
 まぁ、連絡担当の仕事は頑張ってくれたからよしとするかな。」
「よしとしちゃダメ。昨日の私はなんにも出来てなかった。」
「そう?」
「うん、明日からマラソンの距離増やす。」

サユキも、よりによってリナプーに負けたというのがショックなようだった。
しかもあのハルも大活躍をしたと聞いている。
元73班の中で唯一結果を残せなかったのは、とても悔しい。

「お、アーリーは結構頑張ったのね。ハルさんとタッグを組んでエリポンさんとサヤシさんを止めてる。」
「えへへへ。」
「うん、アーリーには及第点の評価をあげます。」
「やったー!」

彼女らの中で最も活躍したのがアーリーだというのもトモとサユキのプライドを傷つけた。
お互いのどちらかがKAST最強であると考えていたのだ
実力がやや劣るアーリーに出しぬかれるとは夢にも思っていなかっのだ。

「いや、こういう考え方自体がもうダメなのかもね……」

トモの呟きに対して他の四人が集中する。
らしくないことを言い出したので、不思議に思ったのだ。

「ねぇユカニャ、いやユカニャ王……新しい戦闘スタイルについて提案があるんだけど。」
「……なに?」
「ジュースはもう捨てない? そして、このカリンを中心に据えた陣形を組むのが一番良い気がするんだ。」

556 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/02(金) 18:46:47
「えぇーーーーっ!?」

カリンのセンター起用発言に最も驚いたのは他でもないカリン自身だった。
KASTとしては足止めなどのサポート役に徹してたので、今回の推薦が信じられないのである。

「どうして?いつものように私が敵を止めて、みんなが攻撃するやり方が良いんじゃ……」
「それじゃあカノンの奴に勝てなかったでしょ。」
「それは……」
「相打ちに持ち込めたのも、カリンが肉弾戦にシフトしたからだ。」
「……」

トモの言葉に、カリンはうつむいてしまった。
自分が表立って戦うことを恐れているのかもしれない。

「カリン、お前の本当の戦闘スタイルはどういうのなの?どんな武器を使うの?本当のカリンは何者なの?」
「私は私だよぉ……なんでそんな怖いこと聞くの?」
「私たちKASTが帝国剣士と番長に食らいつくためだよ!強くならなきゃならないでしょ!」
「ひぅぅ……」

カリンが精神的に限界だと感じたのか、ユカニャ王が間に入っていく。
王も王で言いたいことがあったのだ。

「強くなりたいならジュースを捨てちゃだめだよ?
 効能に不満があるなら改良するから……」
「王、ジュースの効果は確かに凄いけどさ、それは私たちをダメにする薬だよ。」
「えーーー!?なんてことを……」

ユカニャはひどくショックを受けているようだが
サユキとアーリーにも思いたる節がうくつかあった。

「なんか分かる気がする。 ジュースを飲むとやることの幅が減るんだよね。」
「うん、ウチもオリになって敵を囲むことしかできひん。」

ジュースを飲むことで、彼女らは一芸に秀でることが出来るが
それは裏を返せば、一芸以外のことが出来なくなってしまうということ。

「サユキとアーリーの言う通り。 本当に強い奴は臨機応変に何だって出来るもんだよ。
 だから私たちはジュースなしで戦えるようにならないといけない。
 帝国剣士や番長に肩を並べるためにはね。」
「……」

常人と比べて勇気の不足しているユカニャ王は、反論を恐れるあまり言葉を返すことが出来なかった。
出来ることならば思いのたけをブチ撒けたいところではあるのだが……

(分かってない!みんな分かってないよ!ただの人間がファクトリーに勝てるわけないでしょ!!
 バイ菌を退治するのは天然100%ジュースしかないってのに、なんで分かってくれないの!?)

557名無し募集中。。。:2015/10/02(金) 19:30:26
ファクトリーが何者なのか気になる
早く見たい

558名無し募集中。。。:2015/10/02(金) 20:12:34
ユカニャ王がそこまで怯えるファクトリーとは一体…

559名無し募集中。。。:2015/10/02(金) 21:23:23
しかもバイキンって…ファクトリーの謎は深まるばかりw

560 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/03(土) 18:35:17
「フクちゃん、起きて」

誰かの声に起こされたフクは、寝ぼけまなこで辺りを見回す。
寝起き直後ゆえに状況判断能力が著しく鈍ってはいるが
周囲のベッドに帝国剣士らが腰かけていることから、病室だということはすぐに理解できた。
問題はフクを起こしたその人物にある。

「サ、サユ王様!?」
「はーい。」

フクの前に立っていたのはサユ王その人だった。
よく見れば周りの帝国剣士らの表情もピリッとしている。あのマーチャンさえもだ。
これから始まることの重大さをみなが理解しているのだろう。

「フクちゃん、今何時か分かってる?」
「あぁ!!!……投票時刻はもう……」
「うん、過ぎてる。」
「では結果は……」

勝手に最悪の事態を想定して泣きそうな顔になるフクを見て気の毒に思ったのか
サユ王は側にいたクールトーンに説明をさせることにした。

「えっと、票はフクさんとハルナンさんのどちらにも一票も入りませんでした。
 誰も投票場に来れる身体じゃなかったんです。
 なので、次期モーニング帝国帝王はまだ決まっていません。」

それを聞いたフクは安堵のあまり涙を流してしまった。
結局泣くフクを横目に、ハルナンが挙手をした。
他のみんなと同様に今後どうなるのかを気にしているのだろう。

「それでサユ王……この場合、次期帝王は誰になるんでしょうか?」

その場の誰もがゴクリと唾を飲んだ。
サユもそれが分かっていたのか、勿体ぶらずに方針を告げる。

「次期帝王を決めるやり方は、あなた達9人で決めなさい。」
「「「「えっ!?」」」」
「私もね、いろいろ考えるのが疲れちゃった。
 9人全員が納得できる決め方ならなんでもいいよ。任せる。
 その代わり、一人でも納得できないようならずっとずっとずっとずっとやり直しだからね。」

561名無し募集中。。。:2015/10/03(土) 19:49:09
うわぁ一番困難な方法を選んだんだな…

562名無し募集中。。。:2015/10/04(日) 12:42:24
ここで投票すりゃいいのにね
決まるのか?

563 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/05(月) 03:19:52
9人全員が納得する決め方。それを定めるのはかなりの難題だった。
どれだけ公正に見える手段であろうと、不満は必ず出るに決まっている。
例えば多数決。一般的には平等であると言われてはいるが
オダ・プロジドリが天気組団の一員だと判明した今、それを採用することは出来ない。
結果は絶対に5対4でハルナンの勝利となるに決まっているし、
そうなれば仮にフクが敗北を認めたとしても、エリポン、サヤシ、カノンが黙っていないからだ。
では多数決ではなく、団長同士の決闘で決めるのはどうか。
……残念ながらこの案も採用はされないだろう。
ハルナンはフクには勝てないと確信しているアユミン、マーチャン、ハルが食い気味に反対するはずだ。
どんな決め方だろうとフク側、ハルナン側のどちらかに有利性が存在する。
それが目立って見えている限りは決して意見は通らないのである。

(そうか……サユ王様の伝えたいことは……)

ハルナンはサユの言葉の本質に気づいた。
この状況で自分の意見を通すためには2つのことが重要であり、
その両方が帝王として人の上に立つのに欠かせないファクターであることが分かったのだ。
一つは「人をまとめあげること」
自分が有利な条件を提示すれば相手側が納得しないし、
かといって相手が有利になるよう仕向けたとしても、その時は味方からの反発を受けてしまう。
そのバランスを保って両者の理解を得られるような最適案を考え抜くのが王の務めなのだ。
もう一つは「不利な条件を受け入れること」
正直言って、今回のルールでは100%有利な条件が採用されることはあり得ない。
となれば大なり小なり自分にとって不利な条件で戦わなくてはならなくなる。
それを許容し、かつ成果を出すような者こそ王に相応しいのである。

(まとめること、そして受け入れることか……私の器じゃどっちも満たせそうにないな……
 だからフクさん!ここであなたに協力してもらう!
 あなたの持つ器の大きさを、ここで利用させてもらう!!)

ハルナンは痛みに耐えながら、その場に立ち上がった。
そしてフクに対してこう言い放ったのだ。

「フクさん、ここは決闘で決めましょう!
 私たちは戦士です……全員が納得できるような白黒の付け方なんて、それしかないでしょう?」

いきなり"決闘"を持ち出したハルナンに、その場の誰もが驚いた。
これにはもちろんアユミンら天気組団の反発が来ると思われたが、
次の言葉でハルナンはそれすらも阻止する。

「決闘とは言っても私とフクさんとのタイマンでは無いですよ……"チーム戦"です。
 フクさん、エリポンさん、サヤシさん、カノンさんのQ期団4名と
 私ハルナン、アユミン、マーチャン、ハルの天気組団オリジナルメンバー4名で戦いましょう。
 より強い組織を作り上げた者こそが帝王に相応しい……というのはどうでしょうか?」

一騎打ちではなくチーム戦。しかも戦うのはQ期団と天気組団。
そう聞いたアユミンたちは反論することが出来なくなってしまった。
ここで不利だと騒げば自分たち天気組団の方が劣ると認める形になってしまうし
そもそもガチンコ勝負でQ期団に勝てないとは微塵も思っていないのだ。
ならばハルナンに反対する理由など一つもない。
そしてそう考えるのはQ期団たちも同じだった。

「そっちがそのつもりならええっちゃけど。」
「今度こそ本当に容赦はせんけぇ……」

自分の意見が通りつつあることに対してハルナンはニヤリとする。
だがこれではまだ足りない。100%勝利できるという確証がない。
王になるには「不利な条件を受け入れること」が大事だとは分かってはいるが
その不利は可能な限り小さく抑えたい。
だからこそハルナンはフクに更なる提案を持ち掛ける。

「フクさん……私とフクさんの二人でチーム戦のルールを決めませんか?
 お互いが納得できるような、気持ちの良い勝負ができるルールを制定しましょう!」

564名無し募集中。。。:2015/10/05(月) 05:43:53
再戦すんのか

565名無し募集中。。。:2015/10/05(月) 06:50:54
フクはハルナンから決闘の申し出を
→受ける
 受けない

これで命運が決まりそうだw

566 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/06(火) 12:58:47
ハルナンの提案は勢い任せにもほどがあったし、
Q期の慎重派、カノン・トイ・レマーネもその案をひどく怪しんでいた。
ここで承諾しなかったとしても、決して逃げたことにはならないのだが……

「いいよ、ハルナンの言う通りにしよう。」

フクはあまりにも簡単に意見を聞き入れてしまった。
いや、というよりは「不利な条件を受け入れる」心構えが出来ていたと表現するのが正しいのかもしれない。
ハルナンは表情こそにこやかだが、フクに王の素質があることを痛感して、内心穏やかではなかった。

(ほんと落ち込むわ……こうも差を見せ付けられると、ね。
 でも、これをチャンスと思わないとやってけない。
 隠すのよ!こちらの有利な条件を、甘い言葉の中に!!)

ハルナンはフクにぺこりとお辞儀をし、ルールの提案を開始する。

「まず日程ですが、ちょうど1ヶ月後というのはいかがでしょうか?
 今すぐ……というのは負傷の度合いから言って難しいでしょうし、
 かといって全員の完治を待つとなると、次期帝王の決定を先延ばしにする形になってしまいます。」
「先延ばしは……良くないね。」
「では1ヶ月でも?」
「うん、いいよ。そうしよう。」
「分かりました。お次は決闘の場所を決めましょうか……私は訓練場こそ相応しいとは思いますが。」
「えっ!?あそこはクマイチャン様の被害で瓦礫だらけになってるんじゃ……」
「はい、だからこそ我々への"戒め"になるんです。」
「???」
「今回私たちは味方同士だというのに争ってしまいました。
 しかも食卓の騎士を筆頭に、他国の戦士まで巻き込んで……」

ハルは「全員ハルナンが呼んだんじゃないか」とツッコミたくなったが
ここは黙っておくことにした。

「そのような醜い争いを今後しないと誓うために、今回の決闘を最後の戦いにするために
 投票場でもあった訓練場で決着をつけるのが最適だと思ったのです。」
「すごいね……そこまで考えてたんだ。」
「多少戦いにくいかもしれませんが、瓦礫はそのままにしておきましょう。これも戒めです。」
「天井の穴も?あれもクマイチャン様が開けたんだけど……」
「はい!その方がお天道様にも決着を見ていただけますしね!」
「なるほど〜そうしよう!」

567名無し募集中。。。:2015/10/06(火) 13:55:16
ハルナン「地の利を得たぞ!」

568名無し募集中。。。:2015/10/06(火) 16:34:20
オダ自身の心境が気になる

569名無し募集中。。。:2015/10/06(火) 17:25:26
前作ようやく読み終わった

570 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/07(水) 08:38:40
制定はまだまだ続く。

「肝心の決着の付け方ですが……勝利条件をどう定めれば全員納得しますかね?
 ポイント制の導入とかは、辞めた方が良いですよね?」
「うん、ダメだね。どちらかが戦えなくなるまで戦い抜くべきだと思う。
 決闘って、そういうものだから。」
「フクさんがそう言うならそうしましょう!
 ただ、そこに一つだけルールを追加してもいいですか?」
「なに?」
「武器は訓練用の模擬刀にしましょう。極力、血は流したくないですし、それに……」
「それに?」
「ほら、フクさんの剣……折れてしまったじゃないですか。」
「あ……」

フクの愛用する装飾剣「サイリウム」。
昨晩アヤチョ王に破壊されたばかりであるし、
あの壊れ方からいって1ヶ月そこいらで修復できるとは到底思えない。

「フクさんだけが持ち慣れない仮の剣を使うなんてフェアじゃないですよね。
 ですので、ここは全員一律で模擬刀と訓練着を使うのが良いと思ったんです!」
「ありがとう……そうしてもらえると助かる。」

話の流れに対してサヤシは少し思うところがあったが
自分たちの大将が良いと言うのだから、意見を引っ込めた。

「他に決めるべきは……うん、立会い人ですね。」
「立会い人?」
「次期帝王を決める戦いなんです。見届けるに相応しい人物をお呼びするべきでしょう。」
「なるほど……でも、サユ王以外に誰かいたっけ? あ、オダちゃんにも見て欲しいけども。」
「マーサー王です。」
「え?」
「マーサー王をお呼びするんです。」

フクにはハルナンの提案が信じられなかった。
確かにマーサー王国はモーニング帝国の最重要同盟国ではあるが……

「そんな、そこまでする必要って……」
「必要あります。 今回の勝者は王になるんですよ。つまりはマーサー王と肩を並べることになりますよね。
 ならば、次期帝王をいち早くお伝えできる場に招待しなくては失礼にあたります。」
「そ、そうか……」

コトが大きくなってきたので、フクのみならず他の帝国剣士らも冷や汗をかきだした。
そして、さすがのサユもこの件に関しては口を挟まずにはいられなかったようだ。

「ちょっと待って、マーサー王を招待する手はずは誰が整えるの?
 私は嫌よ?面倒くさいし……」
「私が全責任を持ちます!ですので、許可をください。」
「それと分かってる?マーサー王は一人じゃ外出できないの。
 いつ何が起きても良いように、マノちゃんって子が付き添うことになってるんだけど……」
「承知しています。マノエリナさんという方にも見届けていただくつもりでした。」
「そう?じゃあ何も言うことはないわ。」
「それと……食卓の騎士のキュート戦士団長であるマイミ様にも立会い人になっていただきたいのですが……」
「マイミも!?……理由は?」
「今回、私はマイミ様とクマイチャン様を私欲のために騙してしまいました……
 その罪滅ぼしとして、心を改めた私の戦いを見て欲しいんです。」
「はぁ……勝手に交渉しなさい。二人にはちゃんと謝っておくのよ。」
「はい!」

フクはやや置いてけぼりではあったが、
これでサユ王、オダ、マーサー王、マノエリナ、マイミの5名に立会い人になってもらうことが決定した。
他にも細々とした決め事はあるが、基本的な流れはみなが理解したことになる。
これで全員が納得すればおしまいだ。
フクがQ期団に、ハルナンが天気組団に確認を取る。

「みんな、これでいいよね?」
「納得出来ない人はいないよね?」

引っかかることが無いと言えば嘘にはなるが
お互いのリーダーが納得し合っているので、特に不満などが出ることはなかった。
ただ、一人を除いては……

「私、納得できません!!」

病室中に響き渡る大声に、一同驚いた。
特にハルナンはしまったと言うような顔をしながら汗をかいている。
何故なら意義を申し立てたその人は、天気組団の一人、オダ・プロジドリだったからだ。

「オダちゃん……?」
「ハルナンさん、約束が違いますよ!」

571 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/07(水) 08:40:00
前作を読まれた方にはタイムリーな展開かもしれませんねw
ログ整備は暇を見つけて頑張ります……

572名無し募集中。。。:2015/10/07(水) 11:47:42
さすが一筋縄ではいかない女!

573名無し募集中。。。:2015/10/07(水) 16:06:05
マノちゃんきたか
オダはやっぱり一筋縄じゃいかないよねw

574名無し募集中。。。:2015/10/07(水) 21:52:23
マーサー王までくるのか…天のお告げで舞踏会でフクとダンスを踊る事になるんだなw

575名無し募集中。。。:2015/10/07(水) 22:11:57
>>574
トライアングルかよw

576 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/08(木) 08:22:51
「何言ってるんだよオダァ!」

いつものように怒鳴りつけるアユミンだったが、内心ではオダの意図するところを分かっていた。
オダの言う約束とは、以前、作戦室で教えてくれたものに違いない。
もしもそれが実行されるとなれば大変なことになる。

「ハルナンさん、約束してくれましたよね?
 "ハルナンさんが選挙に勝ったらすぐにでも帝王を斬らせてくれる"って……」
「うん……」
「このままだと選挙をやらなくなるじゃないですか。私との約束、どうなるんですか?」

そんな約束をしたとは思いもしていなかったQ期たちは、揃いも揃って背筋を凍らせた。
オダが味方を斬りたいと考えていたことがそもそも驚きだし、
「選挙に勝ったら」という条件付きとは言え、帝王になった自分を危険に晒す約束をしたハルナンも恐ろしい。
それだけ今回の戦いに賭けていたということなのだろうか。

「オダちゃんダメ!!そんなのマーが許さないから!!」

ここでマーチャン・エコーチームが声を荒げたのも意外だった。
ハルナンのことを尊敬しているようには見えなかったが、やはり天気組団の一員といったところだろうか。
そんなマーチャンの成長に感涙しつつ、フクが話に割って入る。

「オダちゃん、そんな約束は私からも認められないよ。」
「!!!……フクさんは関係ないじゃないですか。」
「ううん、関係ある。 これ以上血が流れるのを黙って見逃すことはできない。」
「私は帝王を斬ることを目標にして、ハルナンさんに協力してきたんですよ!
 それなのに、全て終わったら約束を反故にするって……あんまりじゃないですか!
 斬らせてください!帝王が私の上に立つに値する人間なのか、確かめないと気が済みません!」

このように激昂する様はいつもの冷静なオダらしくなかった。
しかしここはなんとかして宥めないといけない。
実力から言って、ハルナンがオダに斬られたとしたら痛いでは済みそうもないからだ。

「だからそこをなんとか抑えて!きっとハルナンも他の褒賞を用意してくれるはずだから!」
「そんなの無価値ですよ!私が最も願うのは……」
「なんだっていうの!?」
「サユ帝王を斬る、それだけです。」
「…………ん?」

この場にいる殆どが頭の処理が追いつかず、ぽかんとしてしまった。
サユ王も「私?」と言った表情をしている。
その中でもオダの世界観についていけているのは、
頭を抱えているハルナンと、相変わらず食ってかかるマーチャンの2人のみだった。

「だーかーらー!ミチョシゲさんは斬らせないって!」
「マーチャンさんには口を挟む権利はありませんよ。
 とにかく、私はサユ王の実力を測らないといけないんです。
 私は私より強い人にしか従う気はありませんので。」
「オダちゃんひょっとして馬鹿?ミチョシゲそんの方が百万倍強いってみんな思ってるよ。」
「やってみなきゃ分からないじゃないですか!!」

オダの言う帝王とは、ハルナンではなくサユを示した言葉だった。
確かに選挙が終わった時点では、ハルナンはまだ王ではない。
その後の正式な手続きをすべて踏み終えるまではサユが王なのだ。
ひとまずハルナンが斬られる訳ではないと知った一同は安心したが
それでもまだ一件落着とは言い難い。

「身の程を知れよオダァ!王がお前なんか相手する訳ないだろ!」
「アユミンさんひどい!……私だってそれくらいわかってますよ……
 でも、ハルナンさんが約束してくれたんですもん……
 それを聞いて嬉しかったのに……ウッ……ウッ……」
「おいオダ……泣いてるのか?」

577 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/08(木) 08:24:34
トライアングルは私もやっとDVDを見れました!
色々とネタに使えそうな要素が多かったですね。

578名無し募集中。。。:2015/10/08(木) 10:03:11
おいおい…自分が次期帝王に決まったら即前王をオダに斬り捨てさせるってどんだけ冷徹なんだよハルナン!w

579名無し募集中。。。:2015/10/08(木) 11:28:29
さすがオダァ
ハルナンもハルナンだけどw

トライアングルネタも楽しみです

580名無し募集中。。。:2015/10/08(木) 12:07:27
これからはトライアングルネタも増えるかな?

邪魔者は全て排除する・・・ハルナン怖いわw

581名無し募集中。。。:2015/10/08(木) 18:46:55
ハルナンなんて約束を

582 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/08(木) 22:28:13
ハルナンは仕方ないといった表情で、サユの方へと顔を向ける。
無礼であることは承知しながらも打診することに決めたのだ。

「サユ王様、おヒマな時にでもオダと手合わせを……」
「イヤよ、どうせ真剣でやれってんでしょ?痛いのはイヤ。」
「ですよね……」

サユにあっさりと断られてしまったため、話はいよいよまとまらなくなってしまった。
次期帝王の決め方を定めるには全員の納得が必要なのだが
サユとの決闘が約束されない限りはオダが反対し続ける。
しかも、サユは決闘する気はさらさらない。
これでは決め事は一生締結されない。
先ほど定めたチーム戦のルールが承認されないことは、ハルナンにとって非常に都合が悪かった。

(仕方ない、この手は使いたくなかったけど……)

ハルナンは身体の痛みに耐えつつ、サユの元へと接近していく。
そして、他の誰にも聞こえないような声でサユに耳打ちするのだった。

「覗き部屋のこと、研修生たちにバラしてもいいですか?」

それを聞いた途端、サユの四肢はビリビリと痺れだす。
急に頭がクラクラするし、吐き気も催したような気がしてくる。
なぜハルナンがそのことを知っているのかは定かではないが
それはさておき、サユは次の言葉しか喋ることが出来なかった。

「いいよ、オダと戦ってあげる。」

サユがそう言うなり一同は驚き、ハルナンは安堵の表情を浮かべ、オダの顔はパアッと明るくなる。
そしてその勢いのままオダは早口で質問をするのだった。

「本当ですか!?い、いつですか?今ですか?剣を取ってきますね。」
「ちょ、落ち着いて!」

最大の懸念事項が吹っ飛んで気分の良くなったハルナンは
この件までもチーム戦へと絡めていく。

「オダちゃん!どうせなら怪我を治した健康体で王に臨みたいでしょ?
 だからこうしましょう。サユ王様とオダちゃんの戦いはエキビションマッチとして、
 Q期組さん対天気組が始まる前にやってもらいましょう。
 サユ王様、オダちゃん、それでいいですね?」
「……はぁい」
「はい!」

583 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/08(木) 22:30:01
念のため補足をしておきますが
ハルナンはオダがサユ王に勝てるとは微塵も思っていませんw
約束だけして、王に適当にあしらわれるのを期待してたんですね。

584名無し募集中。。。:2015/10/08(木) 23:32:02
しかしオダァは敗北を知らない女・・・

585名無し募集中。。。:2015/10/09(金) 07:59:37
最初オダの約束聞いたとき策士だなと思ったけど…やはりオダは己の欲望に忠実な女で安心したギンギン

586名無し募集中。。。:2015/10/09(金) 10:12:06
ハルナンの悪な魅力たまらん

587 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/09(金) 12:57:47
承諾はしてくれたものの、依頼が急すぎたことを反省しているのか
ハルナンは小声でサユ王に謝りだした。

「本当にすみませんでした……当日はサクッと済ませてもらえば結構ですので……」
「そんな気軽なものじゃないのよ、どこまでマリコを抑えられるか……」
「マリコ?どちら様ですか?」
「あぁ、いや、こっちの話。」

サユの言葉は少し不思議だったが
それはさておき、ひとまずこれで全員の納得を得ることが出来た。
日程は一ヶ月後、場所は訓練場、ルールは模擬刀を用いたチーム戦。
立会い人はサユ王とマーサー王、そしてマイミ、マノエリナ、オダ。
チーム戦の前にはサユ王とオダのスペシャルマッチ有り。
この場にいる全員が全員、これらのルールを受け入れることが出来た。
ここまで決まれば、後は各チームに別れて作戦会議でもしたいところだが……

「フクさんの怪我が一番ひどいですよね。
 どうしましょう。私たち天気組が別室に移りましょうか?」
「ううん、ちょっと用事があって、今から席を外すから大丈夫。
 Q期のみんな。一緒に付き合ってくれる?」

そう言うとフク・アパトゥーマは歩行器を利用して、エリポン達を連れながら部屋を出てしまった。
オダ以外の天気組の面々も、一つのベッドに集まって決闘当日のことを話し始める。
全員が全員、次期帝王を決めるために一丸となって動く様子を目の当たりにして、
クールトーンはなんだかワクワクしてくる。

「どうしたのクールトーンちゃん。鼻息荒いようだけど、興奮してるの?」
「はい!帝国剣士さん達の決闘が見られるのが、今から楽しみで……」
「あ、クールトーンちゃんに見る権利はないけど分かってる?」
「!?」

サユの発言に、クールトーンはショックを受けた。
確かに立会い人の名前にクールトーンの名は無かったが
いつものようにサユ王にくっついていれば観戦出来ると思い込んでいたのだ。

「そもそもクールトーンちゃんはもう書記でもなんでもないしね。」
「えええええええ!く、クビですか!?」
「クビっていうか、うーん、ちょっと合宿に行ってもらいたいの。」
「合宿?」
「そう。テラっていう施設で行われるから、向かってもらえる?
 私も用事を済ませたらすぐ行くから、先に3人となんとかやっといて。」
「3人?」

588名無し募集中。。。:2015/10/09(金) 16:19:14
いよいよ新戦士たちが動き出すか

589名無し募集中。。。:2015/10/09(金) 17:04:40
マリコきたー!作者さん設定忘れて無かったのねw

恐怖のテラ合宿…そういやQ期はアイ・天期はガキだったのかな?

590名無し募集中。。。:2015/10/11(日) 13:27:18
つい最近になって12期の顔と名前が一致する様になった俺はクールトーンの正体がやっと分かったw

591 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/12(月) 07:04:12
目的の部屋へと向かう道中、フクはQ期団の面々と多くの会話を交わすことが出来た。
昨日の戦いや、選挙不成立と知ったときの感想についても話したが
最もホットなトピックはやはり1か月後にせまったQ期団vs天気組団のチーム戦のことだった。
その話題について、まずカノンから突っ込みが入る。

「ねぇフクちゃん……その脚、1か月後までに治るの?」

ハルナンに抉られたフクの脚は、歩行器が無ければ移動もままならないほどに重症だ。
いくら本番まで多少の猶予があろうと完治が難しいことはフク自身も理解していた。

「う〜ん、良くて歩ける程度だろうね……」
「しかも訓練場はクマイチャン様の被害でガレキの山になっちょる……
 フクちゃんの"ダッシュ"と"バックステップ"は完全に封じられたと思ってええじゃろ……」
「ははは、サヤシの言う通りだね」
「じゃあどうしてあんなルールを飲んだと!?」

深刻な事態だというのに呑気なことを言うフクに対して、エリポンは声を荒げた。
先ほどの場で反対意見を言わなかった自分がここでフクを責める資格は無いと知りつつも
ついカッとなってしまったのだ。
だがフクはそんなエリポンに対して怒ったりはしない。
軽くぺこりと頭を下げて、自分の思いを伝えていく。

「エリポン、みんな……不利な勝負につき合わせちゃってごめんね。
 でもね、モーニング帝国の王となって世界と向き合う人物になるためには
 少なくともハルナンは絶対納得せないといけないと思ったんだ。」
「それはどうして?……」
「だって言うじゃない?、"たった一人を納得させられないで世界中口説けるの"ってね。」

フクの発言に、一同はクスッとする。
その言葉はTheory of Super Ultra Nice Kingdom(訳:超超素敵な王国論)という名の著書から引用されたもの。
略称TSUNKに書かれているのはどれもがヘンテコな言葉ではあるが、謎の説得力をはらんでいる。
ゆえにモーニング帝国のみならず、マーサー王国やアンジュ王国、果実の国にまでも熱狂的なファンが存在するという。

「だったらフク、なおさらエリ達を不安にさせたらいかんよ。」
「"たった一人を不安にさせたままで世界中幸せに出来るの"ってことだね?ごめん注意する。」

592 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/12(月) 07:09:03
>>589
第一部を書く前に前作をおさらいしたので大丈夫なはずですw
テラ合宿の教官は新メンバー加入時のリーダーが担当しますので
その認識で正しいです。

>>590
クールトーンの正体?……12期?……
よくわかりませんが、「そのメンバーの名前」+「クルトン」でググると由来がわかるかもです。

593名無し募集中。。。:2015/10/12(月) 08:01:44
天期のテラ合宿…ガキさん大変だったろうな

TSUNKww

594 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/13(火) 08:40:17
フクらQ期団は途中で捕まえた案内人を頼りに、とある部屋まで辿り着いた。
目当ての主は確かにその中にいる。それが扉越しでも感じ取ることが出来る。

「凄く寒い……血が凍っちゃいそう。」
「確かに以前サヤシが言ってた通り。この冷気は凄いっちゃね。」

部屋の中から発せられる冷たいプレッシャーにも負けず、フクはドアを開いた。
そこはベッドも何もないただの空き部屋。
通常と異なる点は、食卓の騎士が中にいることのみ。

「あら、貴方は昨日の……」

突然の来客に応えたのは食卓の騎士のモモコだった。
側には土下座のポーズのまま額を床につけている長髪の女性がいる。
彼女はおそらくは食卓の騎士であり、キュート戦士団長であるマイミなのだろうが
なんだか触れてはいけない気がして、Q期団は黙っていた。
それよりもフクは用事を済ませることを優先する。

「あのっ、モモコ様、この度は本当に有難う御座いました!」

フクの目的はモモコに対してお礼の言葉を伝えることだった。
モモコが助けに来てくれなければクマイチャンの脅威から逃れることは出来なかったので
命の恩人とも言える存在と思っているのである。
しかし、当のモモコの反応は冷たかった。

「感謝されるような覚えはないよ。私はこの馬鹿とあの馬鹿を止めにきただけだし。」

この馬鹿とはマイミ、あの馬鹿はクマイチャンのことだろう。
クマイチャンはどういうことかこの場で折檻を受けてはいないようだが……

「いえ、感謝します。おかげで今の私がありますし、帝王になる道も途切れませんでした!」
「ふぅん……貴方、帝王になるの。」
「はい!まだ候補ですが……」
「全然足りてないね、サユと比べると一目瞭然。」
「!」

モモコの口から放たれる冷たい言葉に、フクは身を裂かれる思いをした。
サユとの差について自覚してはいたが、憧れの存在に言われるとなるとショックも倍増だ。
そんなことを言うモモコにエリポンらは憤ったが
不甲斐ないことに、脚が凍りついたかのように一歩も動くことが出来なかった。

「王ってさ、椅子に座って踏ん反りかえるだけじゃダメなの。
 時には自ら敵陣に乗り込んで、辛さに堪え忍ぶくらいの気概が欲しいわね。
 例えばサユなら自分の必殺技を使ってクマイチャンの脚を止めてたと思うよ。
 貴方にはある?必殺技。」

595名無し募集中。。。:2015/10/13(火) 20:24:47
この流れはもしや・・・キューティーサーキットか?ってマイミが立会人だからないかwそれにそんな事したらQ期が壊れちゃうww

596 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/14(水) 18:54:43
「それじゃ、私たちはもう帰るから」

長髪の首元を掴むと、桃子はそのままズルズルと引っ張って行ってしまった。
昨日の怪我も癒えていないのに……といった心配は不要だろう。
歴戦の戦士なだけあって、体力も回復力も若手とは段違いなのだ。

「モモコ様……行っちゃった……」

先ほどのモモコの発言が効いたのか、フクは俯きながらプルプルと震えている。
それを見たエリポンらQ期の面々は、お互いに顔を見合わせた。
彼女らは知っていたのだ。
この震えが馬鹿にされたことに対するショックによるものでは無く、
憧れの存在にアドバイスを貰えたことの喜びに起因していることを。

「フクちゃん、やることが決まったんだね。」
「うん、私たち、必殺技を覚えなきゃ!」

必殺技。かつての大戦や大事件に居合わせた戦士は誰もがそれを扱えていた。
クマイチャンのロングライトニングポール、モモコのツグナガ拳法、マロの爆弾ツブログなどがそれに該当する。
(アヤチョの聖戦歌劇など、当時の戦いを経験しなくても習得可能なケースも無くはない。)
必殺技は文字通り、相手を必ず殺すくらいに強大な技。
己の特色を最大限に生かした者のみが放つことのできる奥義なのだ。

「ハルナン達に対抗するには、エリたち全員が必殺技を使えるようにならなきゃ……ってこと?」
「理想は全員だけど、誰か一人でも使えたら大きなアドバンテージになると思う。」
「でも、そんな大技をどうやって覚えりゃええんじゃ?」

サヤシの質問はもっともだった。
自分たちはこれまで何回も訓練してきたが、必殺技を覚える兆しさえも掴んできていない。
となればよりハードな訓練が必要になってくるのだろうが
そんな体力も時間も彼女らには残されていなかった。
だが、フクは激しい訓練は不要だと説く。

「大事なのはどういう技なのかイメージすることだよ。」
「「「イメージ?」」」
「昔、食卓の騎士様たちのインタビュー記事を読んだことがあるんだけど、
 必殺技は日頃の訓練や実践の延長戦上にあるものらしいんだよ。
 己の実力が極まった時、且つ、必殺技が本当に必要になった時に使えるようになるんだって。
 だから私たちは考え続けなけりゃならない。
 どういう時に必殺技が必要になるのか。具体的に、ハッキリと!」

イメージをすることが大事。そう考えると気が楽になってくる。
これから数日はベッドの上で過ごすのだろうが
想像だけなら身体を動かさ無くても十分に可能だ。

「まずは怪我を癒しながらイメージすることだけに専念しよう。
 そして、決戦の日が近くなったら、そのイメージを身体を使って形にしてみようか!」

597 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/14(水) 18:55:51
キューティーサーキット……とまでは行きませんでしたが
フク達なりのやり方で必殺技を編み出そうとするつもりですね。
実際に実現できるかはさておき。

598名無し募集中。。。:2015/10/14(水) 20:03:50
彼女達なりのQ期ーサーキットな訳ね

さてどんな必殺技&技名になるのか楽しみw

599 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/17(土) 12:53:25
次の更新は早くて日曜夜になりそうです、、、

600 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/19(月) 12:59:19
フクがモモコに必殺技に関するアドバイスを受け取っていたころ、
天気組団のアユミン、マーチャン、ハルの3人は番長らのいる病室に訪ねていた。
こちらの目的も、同様に必殺技について教わることだった。

「君は!!!!!」

最愛の人であるハルの登場に舞い上がったアヤチョは、
大怪我であるのもお構いなしにベッドから立ち上がっていく。
そして、ハルの登場に驚いたのはアヤチョだけではなかった。

「あーーー!この人ですよ!メイがアヤチョ王とお見合いさせようとした人はこの人です!」
「え!そうなの!」
「そうです!二人が主演の舞台を想像したら素敵だと思って……」
「メイは良い子だね……脚本はお願いするね。」

勝手に盛り上がるアヤチョとメイを前に、アユミンは呆然としてしまった。
アヤチョ王もハルも女なのに結婚だなんて、この人たちは何を言っているんだと思っている。
そんなアユミンとは対照的にハルは理解と対応が早いらしく
この流れを逆手にとるように、アヤチョに対して壁ドンを決めだした。

「ボクも愛してるよアヤチョ、だから頼みを聞いてくれないか?」
「ひゃああーーーなになに!?」

目の前の光景をもう見てられないと思ったのか、カナナンとタケはうつむいてしまった。
メイはパチパチと拍手しているし、リナプーは必死で笑いを堪えている。
そんな周りの反応も気にせずハルは言葉を続けていく。

「ボク達に必殺技を教えてくれよ。1か月でね。
 フクさん達に勝ってハルナンを国王にするにはそれが必要なんだ。」

さっきまでは浮かれていたアヤチョだったが、頼みを聞いてからの表情は真剣そのものだった。
そして目の前のハル、アユミン、マーチャンの顔を見ては、思ったままのことを言い放つ。

「全員に教えるのは無理だね。見込みがあるのは君だけ……そういえば名前はなんて言うの?」
「ボク?……ハル・チェ・ドゥーだよ。」
「ドゥーって言うんだ。アヤが頑張って教えても、必殺技を覚えられるのはドゥーだけだよ。」

その言葉にアユミンはショックを受けた。
自分は今まで必死に頑張ってきたのに、バッサリと切り捨てられたのがとても悲しいのだ。
そんなアユミンにフォローを入れるわけではないが、黙っていたマロが口を開いた。

「またアヤチョ、好みで選んでるんじゃないの?」
「違うよ!ドゥーの戦いを一瞬だけ見たけどアヤの雷神の構えに似てるの。
 あのスピードだったら未完成の技を扱えるかなって思って……」
「ふーん、そういうことにしとくわ」
「カノンちゃん、さっき(クマイチャンがいたとき)と比べてテンション低すぎじゃない!?
 そんなこと言うんだったらカノンちゃんが他の子に必殺技を教えてあげたらいいでしょ!」
「その子たちハルナンの部下なんでしょ?モチベーション上がるわけないじゃない」

結局自分は必殺技を覚えられないのだと知ったアユミンは気が重くなってくる。
同じ状況であるマーチャンもそう感じたと思ったのか、声をかける。

「マーチャン残念だね。私たち選外だってさ。」
「いいよ別に。あのひとに教わる気なかったもん。」
「え、じゃあ誰に教わるの?」
「アユミンには教えない。」
「えー!?」

601名無し募集中。。。:2015/10/19(月) 16:16:49
マーチャンが頼る人っていったらあの人以外考えられないけど…さて?w

602 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/20(火) 08:25:55
天気組団の面々が番長らの病室にいる一方で、
団長であるハルナンは今まさに帰還せんとする食卓の騎士を訪ねていた。
身体の痛みを無理矢理にでも抑えながら、ハルナンは声を掛ける。

「皆様!どうか私の話を聞いてもらえませんか!」

そう言った瞬間から、ハルナンの身体に異常が起こる。
まるで天高くから伸びる巨大な手で押し付けられたかのように身体が重いし、
全身を流れる血液がすべて凍りついたと思うくらいに寒気がするし、
突如発生した暴風雨に叩きつけられたと錯覚する程に息が苦しくなってくる。
これらの現象は食卓の騎士の3人が発したプレッシャーによるもの。
自分たちを利用したハルナンに怒っているのだ。

(やっぱり相手にしてもらえないか……でも!)

ハルナンは超攻撃的な視線を受け入れながら、自らその場に倒れこむ。
そして額を地へと強く擦り付け、伝説の英雄たちに懇願するのだった。

「お願いします……私の罪を、償わせてください……」

すぐに土下座だなんて安いプライドの持ち主だな、とモモコは思った。
ところが他の二人はそうは思っていなかったようで
マイミはそこまでするハルナンに興味を持ち始めていた。

「償い、と言ったが具体的に何をするつもりだ?」

ハルナンはこれをチャンスだと思った。
これから起こりうることを想像すれば非常に苦痛だし、今から吐き気もしてくるが
やり遂げなくてはならないという強い意志を持って返答する。

「これから一ヶ月間、マイミ様のお側に置いてください。
 雑務でもなんでもお申し付けください。すべて対応致します。
 決して逃げたりはしません。一ヶ月間、誠心誠意を持ってマイミ様に尽くします。
 それが私の償いです。」

ハルナンの言葉に一同は驚いた。
仮にもフクと並んで帝国No.2ともあろう者が自ら奴隷同然の扱いを買って出るなんて尋常ではない。
そもそもそんなことが簡単に許されないことをモモコは理解していた。

「あなたねぇ、もう良い大人なんだから立場ってものを……」
「許可なら、得ています。」
「ん?」
「サユ王には皆様にちゃんと謝っておけと言われています。
 そして、これが私の精一杯の謝罪です。
 皆様さえ良ければ、私は全力でマイミ様に尽くすつもりです。」

全力という言葉にマイミは弱かった。
正直ハルナンが何を企んでいるのかは分からないが
謝りたい、という思いにはこちらも全力で応えたいと考えている。

「良いだろう。そこまで言うなら付いて来い。
 ただし殺気は緩めないぞ。一秒たりとも油断はしないつもりだ。」
「願ったり叶ったりです!その嵐なようなオーラを常に私に向けてください!!」

603名無し募集中。。。:2015/10/20(火) 12:53:42
どんな裏があるのか…ゾクゾクするねぇ

604名無し募集中。。。:2015/10/20(火) 13:24:51
ハルナンMだからむしろご褒美のような?w

605 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/20(火) 21:21:41
各々が自分に合った鍛錬法を見つけた日から数えて、ちょうど一ヶ月。
モーニング帝国城には3名の客人が招き入れられていた。
いや、客人と言うよりは来賓と呼ぶのがより適切かもしれない。
何しろ彼女らが廊下を歩くだけで、みなが勧んでこうべを垂れるのだから。

「マノエリナ、今日も付き合わせてしまって申し訳ないとゆいたい。
 私が外出する時はいつもいつも迷惑をかける。」
「別に。予定も何もない干物女なんで気にしないでくださーい。
 それにマーサー王、もしも何か有った時に止めるのが私の役目なんですからね。」
「あはははは。あの事件以降、何か有ったことなんて無かったじゃないか。」
「油断大敵って言うじゃないですか!マイミさんはまったく……」

その3人はマーサー王国の重鎮も重鎮。
食卓の騎士に2名存在する戦士団長の一人であるマイミ。
国王直属の親衛隊長であるマノエリナ。
そしてマーサー王国を束ねる若き女王、マーサー王その人であった。
彼女らがモーニング帝国まで訪ねてきた理由は、わざわざ説明するまでもないだろう。

「王、ここが決闘の場ですよ!」

マイミが訓練場の扉をバン!と開けると、
そこには辺り一面ガレキだらけの光景が広がっていた。

「ははは……ここがクマイチャンが暴れたという訓練場か……これはひどい。」
「弁償しなきゃですね。クマイチャンさんのお給料から出しておきましょう。」

マーサー王の言葉は誇張などではなく、訓練場は本当にひどい有様だった。
床はガタガタになっていて、腰の位置まで突き出る木材も珍しくはないし
本来は屋根があるはずの天井を見上げれば、お天道様が顔を出している。
要するに、この施設は訓練場としての体をなしていないし
ましてや決闘なんて出来るような場所には到底見えないのだ。

「そこをあえて決着の場に選んだということは……彼女らの覚悟、並ではないのだな。」

マーサー王は視線を前へと移した。
そこには深く頭を下げる9名の剣士と、
おじぎ15度くらいしか頭を下げていない美女が待ち構えている。

「マーサー王、ご機嫌麗しゅう〜」
「サユ王!こうして出会えたのは久しぶりだなとゆいたい。」


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