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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

576 ◆V9ncA8v9YI:2015/10/08(木) 08:22:51
「何言ってるんだよオダァ!」

いつものように怒鳴りつけるアユミンだったが、内心ではオダの意図するところを分かっていた。
オダの言う約束とは、以前、作戦室で教えてくれたものに違いない。
もしもそれが実行されるとなれば大変なことになる。

「ハルナンさん、約束してくれましたよね?
 "ハルナンさんが選挙に勝ったらすぐにでも帝王を斬らせてくれる"って……」
「うん……」
「このままだと選挙をやらなくなるじゃないですか。私との約束、どうなるんですか?」

そんな約束をしたとは思いもしていなかったQ期たちは、揃いも揃って背筋を凍らせた。
オダが味方を斬りたいと考えていたことがそもそも驚きだし、
「選挙に勝ったら」という条件付きとは言え、帝王になった自分を危険に晒す約束をしたハルナンも恐ろしい。
それだけ今回の戦いに賭けていたということなのだろうか。

「オダちゃんダメ!!そんなのマーが許さないから!!」

ここでマーチャン・エコーチームが声を荒げたのも意外だった。
ハルナンのことを尊敬しているようには見えなかったが、やはり天気組団の一員といったところだろうか。
そんなマーチャンの成長に感涙しつつ、フクが話に割って入る。

「オダちゃん、そんな約束は私からも認められないよ。」
「!!!……フクさんは関係ないじゃないですか。」
「ううん、関係ある。 これ以上血が流れるのを黙って見逃すことはできない。」
「私は帝王を斬ることを目標にして、ハルナンさんに協力してきたんですよ!
 それなのに、全て終わったら約束を反故にするって……あんまりじゃないですか!
 斬らせてください!帝王が私の上に立つに値する人間なのか、確かめないと気が済みません!」

このように激昂する様はいつもの冷静なオダらしくなかった。
しかしここはなんとかして宥めないといけない。
実力から言って、ハルナンがオダに斬られたとしたら痛いでは済みそうもないからだ。

「だからそこをなんとか抑えて!きっとハルナンも他の褒賞を用意してくれるはずだから!」
「そんなの無価値ですよ!私が最も願うのは……」
「なんだっていうの!?」
「サユ帝王を斬る、それだけです。」
「…………ん?」

この場にいる殆どが頭の処理が追いつかず、ぽかんとしてしまった。
サユ王も「私?」と言った表情をしている。
その中でもオダの世界観についていけているのは、
頭を抱えているハルナンと、相変わらず食ってかかるマーチャンの2人のみだった。

「だーかーらー!ミチョシゲさんは斬らせないって!」
「マーチャンさんには口を挟む権利はありませんよ。
 とにかく、私はサユ王の実力を測らないといけないんです。
 私は私より強い人にしか従う気はありませんので。」
「オダちゃんひょっとして馬鹿?ミチョシゲそんの方が百万倍強いってみんな思ってるよ。」
「やってみなきゃ分からないじゃないですか!!」

オダの言う帝王とは、ハルナンではなくサユを示した言葉だった。
確かに選挙が終わった時点では、ハルナンはまだ王ではない。
その後の正式な手続きをすべて踏み終えるまではサユが王なのだ。
ひとまずハルナンが斬られる訳ではないと知った一同は安心したが
それでもまだ一件落着とは言い難い。

「身の程を知れよオダァ!王がお前なんか相手する訳ないだろ!」
「アユミンさんひどい!……私だってそれくらいわかってますよ……
 でも、ハルナンさんが約束してくれたんですもん……
 それを聞いて嬉しかったのに……ウッ……ウッ……」
「おいオダ……泣いてるのか?」


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