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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

553 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/30(水) 13:01:05
アヤチョは自身が見たビジョンの話をみなにすることにした。
具体的にはフクの周りに未来の帝国剣士が集結していたことと、
自分の周りには誰もいなくてとても辛かったことの二点だ。
またも空気がズシリと重くなったので、カナナンもタケもかける言葉が見つからないようだが
唯一マロ・テスクだけは躊躇なく突っ込んでいっていた。

「馬鹿ね、アヤチョ。」
「なに!」
「アヤチョの周りに誰もいなくて当然でしょ。だって私たち番長は常に前進してるんだもん。」
「えっ……」

アヤチョがキョトンとするのも構わず、マロは講釈を続ける

「フクちゃんの周りに帝国剣士が大勢いるってのは、王を敵から守るためなんじゃない?
 その分、私ら番長は楽よ。だって王を護る必要が無いんだもん。ねぇカナナン?」
「は、はい、刺客の一人や二人、いや100人くらいはアヤチョさんだけで倒せちゃいます。」
「そ。だから番長はどんどん前に行ける。攻めの姿勢を最後まで貫ける。
 アヤチョに構ってる暇なんかないの。分かった?」
「そっかぁ……」

正直言ってマロの言うことは勢い任せのデタラメではあるが
不思議とアヤチョの心は穏やかになりつつあった。
ずっとずっと不安に思っていたことが解消されて、嬉しかったのだ。
そしてお次はマロが嬉しい思いをする番となる。

「うわ!なんだこれ!」
「身体が重い……!!」

バン!と部屋の扉が開くなり、アヤチョを含む番長全員の身体はズシリと重くなる。
これは空気やムードが重いとかの話ではない。本当に重量が増加するくらいのプレッシャーを一気に感じているのだ。
こんなプレッシャーを放つような人間は、この城内には一人しかいない。

「カノン!私のために戦ってくれたんだって!?ごめんよ〜!」
「あなたは……あなたは……!」

扉をくぐって現れたのは、マロ・テスクが最も憧れている存在だった。
先ほどはアヤチョをガチ恋どうのこうのと、からかっていたが
何を隠そう(隠す意味はないが)マロの方が誰よりもガチ恋していたのだ。

「この身体の重さ……とっても懐かしいですぅ……」

マロはジュースを飲み干した時の自分を愚かだと思った。
あの時自分は、身体が重さを感じないことに対して喜んでいたが
そんな身体でどうして憧れの存在の重圧を感じることが出来ようか。
効果の持続がなくて、本当に良かったと思っている。

「あ!ごめん!つい焦って殺気を出しっ放しにしてた!!」
「いいんですよ。クマイチャン様の重圧、大好きですから。」


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