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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

512 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/23(水) 15:26:06
タケがやられているのを横目に、カナナンはフラフラの身体でフクの方へと向かおうとする。
仲間を見捨てているわけでは無い。
対アヤチョ王の必勝法を伝授することが何よりも大事だと判断しての行動なのだ。
しかし、そんなカナナンの目論見をアヤチョが見逃すはずかなかった。

「逃がさないよカナナン!!!!」

ギロリとカナナンを睨みつけ、さっきまでタケを折檻していた足で床を踏み向ける。
お遍路参りを何回も繰り返すことで鍛えたその脚力であれば、あっという間にカナナンに追いつくだろう。
ところが、ここで新手の邪魔が入る。
まるで透明の大型犬にしがみつかれたかのように、アヤチョの右脚がズシリと重くなっていく。
この大型犬の正体を、アヤチョ王は知ってた。

「リィィィィィィナプゥゥゥゥゥ!!!!」

アヤチョは力いっぱいに右脚を持ち上げると、近くにあった壁に勢いよく叩きつける。
タケを懲らしめた時と同様に、何度も何度も何度も叩きつける。
やがて血が滲み、透明だったリナプーの姿が露わになっても攻撃は止まらない。
いくらやりすぎようともアヤチョ王の怒りは止むことが無いのだ。

「なんてひどいことを……許せ無い……!」

少し離れたところで見ていたフクは這ったままの姿勢で鉄球を拾い上げた。
この鉄球は先ほどタケがハルナンに放った豪速球だったもの。
これをアヤチョにぶつけてやろうと、振り被る。

「待ってください!フクさん!」
「!?」

フクの投球を制止したのは、カナナンだった。
まだ距離が遠いため、声を張り上げながら訴えている。

「投げる場所を、よく考えてください!」
「投げる……場所?……」
「貴方なら分かるはずです!この戦いに終止符を打つ、唯一の場所が!!」


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