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タブンネ刑務所14

1名無しさん:2017/05/06(土) 00:36:57 ID:v4JFFnrY0
ここはタブンネさんをいじめたり殺したりするスレです
ルールを守って楽しくタブンネをいじめましょう。

30名無しさん:2017/06/01(木) 08:43:45 ID:1ahk9OTY0
素敵な短編でした!
子供を食べさせるのは斬新で良いですねww

31名無しさん:2017/06/01(木) 23:34:15 ID:x/jUfwbk0
67スレ目の「タブンネ製品カタログ(おもちゃ編)」を読んで思い付いたネタです

タブンネスクイーズ1個324円(税込)
最新技術で生み出した、生きているタブンネのスクイーズだ。
握ったり引っ張ったりしてストレス解消しよう。
皮膚や内臓に特殊な止血剤を埋め込んであるので、ちぎっても出血せず部屋を汚さない。超強力な止瀉薬を投与しているので排泄することもなく安心だ。
※タブンネの体の一部がちぎれてしまっても数時間〜数日で再生します。ちぎれた部位に傷薬を塗りますと更に再生が早くなります。
※タブンネが排泄しないよう、強力な止瀉薬を投与して胃洗浄した上で出荷しておりますが、お客様がご購入後に食べ物をお与えになりました場合、腹部を強く握りますと宿便が飛び出す可能性がございます。予めご了承下さい。
※声帯除去手術を施した、音の出ないタブンネスクイーズもご用意しております。
─使った人の声─
・手は小さいので強く引っ張るともげやすいのですが、もげると泣き出して可愛いです。
・餌を与えないのは可哀想なので毎日3食与えていたら、数日後に酷い便秘で苦しみ始めました。その状態でお尻にパチンコ玉を入れてお腹を思い切り握ったら大量の便と共にパチンコ玉が勢い良く飛び出て面白かったです。

32名無しさん:2017/06/01(木) 23:54:31 ID:dXEasQys0
泣き声が聞きたいので、声帯除去してないやつを10匹ほどくださいw

33名無しさん:2017/06/02(金) 09:23:52 ID:oq3sj3/cC
餌をやらないと短期間で死ぬから使い捨て前提なんだね
だからあんなに安いのかw

34名無しさん:2017/06/02(金) 21:05:20 ID:ICI.dwk20
止血剤や止瀉薬使って、この値段…
儲けとか度外視してタブ虐を目指してますねw

35名無しさん:2017/06/02(金) 22:25:05 ID:d7w6wuXs0
便秘ンネかわいい

36ブヒヒンネ:2017/06/04(日) 23:54:59 ID:oQkB8pfI0
虐待愛好会はついにタブンネ愛護会員に対して
最終作戦を開始した

集められたのは大量のベビンネと子タブンネだ

イッシュのあちこちの群れを潰して連れてきたのだ
まずは子タブンネの足首と手首を切る

ミィギャァァァという鳴き声が4かける200回ほど
して作業が終わると切断面をシャンデラに弱火で
あぶって止血してもらうと
腎臓に毒をうち機能不全にして
手首足首切除ンネ通称費用ンネの完成だ
腎臓が働かないと書いた紙を入れ
緩衝材にベビンネを入れて
一箱に5匹詰めて愛好会に贈る
素晴らしい流れ作業だ

37ブヒヒンネ:2017/06/04(日) 23:58:49 ID:oQkB8pfI0
これで愛好会はこの子タブンネや運よく生き残ったベビンネどもの世話で忙殺されるだろう
子タブンネは一回2万の治療が週に二回必要だ
また足と手が使えないので排泄も食事も大変だ

38ブヒヒンネ:2017/06/05(月) 00:02:25 ID:xqutJBbY0
3日後愛好会のやつらはポケモン病院に駆け込んだようだ
ポケモンセンターとは違い有料だから大変だろう
院長から封筒の入った菓子折を受け取り帰宅する

39ブヒヒンネ:2017/06/05(月) 00:09:46 ID:xqutJBbY0
子タブンネやベビンネの鳴き声は愛好会の周辺の住民をタブンネ嫌いにするのに十分だった
ついにタブンネは第一種騒音公害に認定され
防音でない部屋では飼えなくなった

愛好会員は足と手のないタブンネにイラつき
精神的にも肉体的にも経済的にも限界をむかえた
やり場のない会員の怒りはタブンネに向き
タブンネ愛好会はタブンネ虐待愛好会へと進化した

40名無しさん:2017/06/06(火) 00:02:29 ID:0UZeSuWM0
愛情なんて簡単に憎しみに変わるものよ、相手がタブンネなら猶更w

41ショーケースの裏側で:2017/06/06(火) 02:50:44 ID:9mShWw2U0
その後会場の片付けも終わり、退社の時間もとっくに過ぎているというのに女子社員はまだ準備室にいた
今朝の事もあって自ら泊まりの夜勤を志願したのだ。そして今、チビママンネのご飯を準備中である

一応気が利く社員が事前にチビママンネの餌を用意しといてくれたのだが
蓋を開けて見ると生のブロッコリーの芯3本と萎びかけたさつま芋2本が無造作に入っているだけだった
一日中あんなになるまで頑張ってくれたのにこれは可哀想と女子社員は思い
自腹でオボンの実を買ってきてメニューに足したのだった
そしてその足で休憩室に行き、チビママンネ用の夕食の調理を始めた
ブロッコリーの芯は柔らかくなるまで茹でて野菜スティックのように細長く切り分け
萎びたさつま芋は電子レンジでふかして皮がついたまま潰したあとで丸めてきんとんに
オボンの実はくし切りに切り分けるだけなのだが皮が硬くて女子社員の腕力では切るのに難儀した
そうして出来上がった三品をそれぞれタッパーに詰め、チビママンネが待つ準備室へと持っていく

「ミッミ〜」「ミィミィ!」
「チチィ」「チィチ〜」「チッチチッチ!」「チチピィ!」

準備室の中では、チビママンネが自分の周りで自由にベビたちを遊ばせていた
ハイハイで追いかけっこをしたり、空になった哺乳瓶を転がしたり、タオルをくしゃくしゃと弄んだりと
面白いものは何もなさそうなベビーサークルの中でも楽しそうに遊んでいる

「ミッミッミッ!」
「チッチッチ!」「チーチ!チーチ!」

勇者ンネもチビママンネを助けてベビたちの遊び相手になってあげていた
遊びの内容は男の子らしく戦いごっこ
勇者ンネがフシデのように這い回ってベビ達に迫り、ベビたちはその頭を叩いて迎え撃つという内容だ
正気に戻った今、ベビのように甘えていたのが恥ずかしくなって自分から世話に励んでるという訳である
小ベビンネはチビママンネの太ももに抱きつきながらも、勇者ンネたちの遊びを興味ありげにじっと見ていた
そんな笑い声が絶えない部屋のドアが開き、女子社員が部屋へと入ってきた
もちろんチビママンネの食事を持ってきたからである

「タブンネさん、ご飯をもってきました」
「ミミッ?」「ミーミ?」「チー?」

女子社員はチビママンネの目の前にタッパーを並べていく
たが野生育ちのチビママンネはそれを食べ物だと認識する事が出来ず、自らの夕食を目の前にしてキョトンとしているだけだった
むしろベビンネ達の方がタッパーに興味を示し、次々とその周りに集まるのだった

「チチッチ、チィ〜」「チッチンチ〜」「チチチッチ!」
「悪戯しちゃだめですよぉ、これはお母さんのご飯です!」

タッパーの蓋を太鼓のようにぺしぺしと叩いたり縁に手をかけてひっくり返したり上に座ってみたりと
ベビンネたちの悪戯三昧でとても食事どころではない
女子社員が困ってるのを察して、チビママンネはもちろん勇者ンネも止めに入るが多勢に無勢でベビ達は止められない
そうしてゴタゴタしてうちにタッパーの蓋に手をかけるベビンネが出てきてしまう

「チチィ?!」「チッチ?」
「ミッ?」「ミィー!」

タッパーの蓋が空くと、温められた野菜の甘い匂いがふわっと漂う
その匂いに惹かれたのか、ベビンネたちは一斉に蓋の開いたタッパーに注目する
ついでにチビママンネと勇者ンネもそれに釘づけになっていた

「おっと、危ないです」
「チチー!!」

ベビンネの動きが止まった隙をつき、女子社員はささっと3つのタッパーを回収する
少しかき混ぜられてはいたものの中身は無事で女子社員は安堵した
ベビンネ達はおもちゃを取り上げられたかのようにチィチィと悲しそうに騒ぎ立てたが
女子社員は機転を効かせ、机の上にポケモン用の餌皿を用意して中道を全部出したあと、
空のタッパーをベビ達に渡して事を納めた
いろいろあったが、やっとチビママンネの夕食の時間だ

42ショーケースの裏側で:2017/06/06(火) 02:53:37 ID:9mShWw2U0
「チッチッチッチ!」「チィィ〜♪」「ンチッチ」「フチィ〜」
「よしよしです。さあ、たくさん食べてくださいね」
「ミミーッ!!」

ベビ達がご機嫌を直してタッパーで遊びだしたのを見て女子社員は安心し
餌が山盛りになった皿をチビママンネの前に差し出す
見た目は乱雑になってしまったが、そんなことはチビママンネは気にならなかった

「ミッミ!ミッミ!」
「ミッミ!」
「あれ、おちびちゃんも食べたいんですか?」

朝から何も食べられずにお腹が空いてるはずで、出されたらすぐに食いつくかと思いきや
チビママンネは食べる前に勇者ンネを呼び寄せた。一緒に食べようと言っているのだ
勇者ンネはずっと逃げ隠れしていた為にお客さんから餌を貰えず、今日一日何も食べていないのだ
それどころか、あの男達に捕まって以来ショックから丸一日以上何も口に入れていなかった
正気に戻った今、勇者ンネが感じている空腹は想像に余りある
チビママンネは泣きつかれた際にそんな勇者ンネの体調を感じとり、食事に誘ってあげたというわけだ

「ミッミ!ミッミ!」

目の前のごちそうの山に目を輝かせ、耳をぱたつかせて興奮を隠せない勇者ンネ
誇り高い戦士でも心を壊されかけた負け犬でもない、純心な子タブンネの姿がそこにはあった
二匹はどれから先に食べるか少し目移りした後
チビママンネはブロッコリーの芯から、勇者ンネはきんとんから先に食べ始めた
ブロッコリーの芯は十分に加熱してなお硬い繊維質の食感を残していたが、元は野生ぐらしのチビママンネには気にもならない
それよりも加熱したことにより引き立てられた甘みにとても美味しく感じられた
萎びたさつま芋の金団も少し筋っぽかったが、人里離れた山間の草むらに生まれ育った勇者ンネには未体験の美味しさだった
タブンネの最高のご馳走、オボンの実の美味しさは言わずもがなである

「チィ、チィ、チィチ、チィチ」
「ミミッ」「ミーミ?」

2匹が夢中で食べていると、大きなベビンネがよちよち歩きで近寄ってきた
このベビは勇者ンネと同じ群れ出身のベビンネで
乳歯が生え揃う途中の離乳するかしないかの時期なのだ
それは親や仲間が食べているものに興味を示しだす時期でもある

「ミーミー」「チッチ!」「ミィミィ」

勇者ンネはそんな同郷ベビを快く迎え、自分の隣に座らせた
そして「好きなのを食べていいよ」と促すようにごちゃ混ぜに盛られたを餌を指差す
チビママンネも食べる手を止め、その様子をにこやかに笑いながら見ている

「チーチィ、チ、チーチィ…」

食べていいとは言われたものの三種類のうちどれを食べるべきか分からず
嬉しそうな顔をしながらも少し迷っていた同郷ベビだったが
意を決して皿の中で一番興味が惹かれた食べ物をキュッと掴む
それはよりにもよってブロッコリーの芯だった

「あっ、それは…」「ミミミ!」

その瞬間、女子社員はぎょっとした
茹でてあるとはいえブロッコリーの芯は筋張っていて独特の臭いとえぐみもあり、
とても赤ちゃんに食べさせられるような代物ではない
チビママンネもまた女子社員と同じ考えで、両者とも慌てて口に入れるのを止めようとした
だが、同郷ベビは一目惚れしたそれをためらいも無く口に入れてしまう

「チィチィチィチ…」

まずくてすぐに吐き出すかと思いきや、口に含んだまま顎を動かしだしてモムモムと咀嚼し始める
だが、食べ物を歯で噛むというよりかはチュパチュパとしゃぶっているだけの様だ
歯がまだ完全に生えそろっておらずうまく噛めないのである
それでも、シャクッ、シャクッと歯で噛み切る音も時々ではあるがは聞こえてきた

「まずかったら、吐き出してもいいんですよ…」
「チププ…」

女子社員の心配とは裏腹に、同郷ベビはブロッコリーの味を嫌がる様子はなく
それどころか歯で噛む回数もだんだんと増えていき、ついにはゴクンと飲み込んでしまった
この一口を食べている間に同郷ベビはカミカミが格段に上手になっていた
茹でたブロッコリーの芯の程よい硬さが物を噛む練習にちょうど良かったのだ

「ミッミミミ〜!」「ミィーミ!」「チィチィ!チィチィw」
「ええっ、食べれたんですか?」

ブロッコリーの芯を食べられたことにチビママンネと勇者ンネは驚き喜び、
二匹でミィミィと嬉しそうな声で笑いながら同郷ンネを褒め、その頭を撫でた
当の同郷ベビはそれに喜びつつも気持ちは餌の方に向いていたが

43ショーケースの裏側で:2017/06/06(火) 02:54:34 ID:9mShWw2U0
(そうか… タブンネたちは赤ちゃんが硬いもの食べられるようになった事を、
 成長した事を喜んでいるんだ)

そう解釈した女子社員は優しく声をかけながら二匹の後から加わるようにそっと頭を撫でた
こうやって大人の真似をしながらも時には冒険し、子供たちは成長していくのだと
この大都会のデパートの片隅で、タブンネの親子の野生での生き方を垣間見た気がした

「チ、チィ」
「え、おちびちゃん?」

喜びの余韻が残る中、チビママンネの後ろから小ベビンネが出てきて餌皿へと這い寄っていく
何をするかと思えば餌皿に乗りかかり、その中からブロッコリーの芯のスティックを手に取った
チビママンネたちに褒められてる同郷ベビが羨ましくなり、自分も同じものを食べて褒めてもらおうという魂胆なのだ

「キュェッ!!」
「あっ、やっぱり!」

何も考えずに芯を口に入れた小ベビンネは、二、三回チュパチュパとしゃぶったかと思うと
すぐさま嗚咽とともにそれを大量のよだれと一緒に餌の上に吐き出してしまう
ミルクの味しか知らない未熟すぎる舌に独特の癖のあるにおいと味は耐えられなかったのだ
その後当然小ベビンネは号泣し、チビママンネが大慌てで抱っこして揺さぶりあやし始める

「ど、どうしようこれ…」

皿に残っていた餌は小ベビンネの唾液がたっぷりと掛かりあんかけ状態となってしまっていた
こうなっては勿体ないが捨てるしかないと女子社員はゴミ袋を用意しに行って戻ると
勇者ンネと同郷ベビは気にせずパクパクと食べていた
野生暮らしだとベビンネの唾液程度では汚物扱いしないのである
その様子に女子社員は少し引いてしまったが、まあポケモンだからしょうがないと自分を納得させた

その後小ベビンネが泣き止んでチビママンネも食事に戻り、3匹一緒に餌を食べ始めた
同郷ベビはミルクも飲んでいたので数口で満腹になって食べる手を止め
勇者ンネとチビママンネは夢中で食べ続けているように見えたが
残り1/4程残して食べるのを止めてしまった

「あれ、もう食べないんですか?」
「ミッ、ミィ」

2匹で食べるには少し足りないくらいの量だったので満腹になるのは妙だと女子社員は思ったが
チビママンネが皿を持って笑顔で差し出してきた事でその意図を理解した
これはあなたの分だから食べてと言ってきてるのだ

「い、いいですよぅ」
「ミィ、ミィ?」

女子社員は夕食がまだでおなかが減っているのは確かだ
チビママンネはタブンネ特有の優れた聴覚によりそれを察したのだろう
しかし、食べてと渡されたものはベビンネのよだれにまみれたポケモンの餌だ
さすがにこれは食べられないと突き返しかけたその時

「チィィ?」「チー?」

同郷ベビと小ベビンネが自分を不思議そうにじっと見ていることに気づいた
同時に、先ほどのタブンネの子供は大人の真似をして育っていくという事が頭に浮かぶ

(あの赤ちゃんだって不味い野菜を頑張って食べたんです
 この子たちに大人の私が好き嫌いをする所を見せるわけにはいかないです…!)

変なところで発揮されてしまった持前の責任感により、
人生最悪の野菜あんかけを無理やり笑顔を作りながら涙目で完食するハメとなった女子社員であった

44名無しさん:2017/06/06(火) 04:33:36 ID:NAFoZwkQ0

タブ虐タイムはよう

45名無しさん:2017/06/06(火) 10:10:26 ID:DHn.UH3M0
タブンネの生育の様子が丁寧で面白いです!
小ベビンネは早く死んでくれ。

46名無しさん:2017/06/06(火) 10:47:45 ID:8sU26//o0
乙!
タブ達を擁護する訳では無いけど、スキを見て洗って食べれば良かったのでは…と思ってしまう
タブは苛つくが社員のちかちゃんは名前が同じ主役のあの子と合わさっておバカ可愛く見える
ケモ〇レネタといい、がめついざんす男(シェーのアイツを思い出す)といい、パロディ満載で面白いです
社員達が早く報われてほしい

47名無しさん:2017/06/06(火) 20:57:12 ID:5ABke8ic0
チカちゃんは本当にいい子だな
早くこいつらを皆殺しにして俺と結婚してくれ!

48名無しさん:2017/06/12(月) 00:28:59 ID:cGfbRp9o0
今頃兄貴たちはまた子タブやベビ達を捕獲していて
女社長は今回の儲けでエステとかに通ってそう

タブンネ虐アフターのラスト来てほしい・・・

49名無しさん:2017/06/12(月) 03:05:50 ID:K4CLl.Os0
子ベビや勇者ベビは考えうる限り惨たらしく死んでほしいなあ
ママンネや女子社員という一時の安らぎを得たからこそ

50ショーケースの裏側で:2017/06/14(水) 03:11:44 ID:ddkwLB.g0
タブンネたちの食事の後、遊び疲れたベビンネたちはうつらうつらと眠そうにしていた
するとチビママンネはベビを一匹ずつ優しく抱っこして次々と寝床へ運んでいく
寝床は女子社員がたまたま準備室にあった毛布を折りたたんで作った即席の物だが
初めて体験する毛布の柔らかさと心地よい肌触りにベビ達も気持ち良くに眠りに落ちていった

「ミィ… ミィ… ミ…」
「あぁ、お母さんタブンネもお疲れさんですね…」

寝床にベビたちを集め終えたチビママンネは自分も寝床の上に寝そべり
自分に密着させるように抱き寄せてるうちにいつの間にか眠ってしまっていた
親子がくっついて眠るのは母親の体温で温める事によってか弱いベビたちを夜の寒さから守るという
誰に教えられた訳でもないタブンネの自然の知恵、つまりは習性だ
女子社員はそんな事を知る由もないが、目の前の暖かな親子のふれあいにほっこりとした気持ちになっていた
しかしチビママンネが寝ると毛布の上は満員で、
勇者ンネは女子社員が新たに持ってきた座布団の上で体を丸めて男一匹寂しく眠るのであった

現在は閉店時間の午後10時。タブンネ達の声が消えると騒々しかった部屋も一転して静かになり
することが無くなった女子社員は思い出したように遅い夕食をとった
メニューは買っておいたコーヒーとカツサンド
冷めきってはいるが、ソースの濃い味が未だ口内に不快感を残す小ベビンネのよだれの口直しにはちょうどいい
食べてる音でタブンネ達が起きるといけないので準備室の外で立ったままこっそりと食べる
この時、会場に置かれたままの子タブンネ達が入れられたケージが不意に目に入る
数時間前まではミィミィミィミィと群れたムックルの如く喧しかったが、
店の照明が消えて暗くなった今では火が消えたように静まり返っていた

「おちびちゃん達は大丈夫かな?」

女子社員はケージを見ているうちに気になってきてしまい、その様子を見に行く
ちなみに大勢の檻に閉じ込められている子タブンネ達は夕食抜きである
昼に客たちから餌をしこたま貰っているから大丈夫だろうというざんす男の判断だ
女子社員は内心、本当に大丈夫なのかなと心配していたのだが
いざ様子を見てみると大多数が気持ち良さそうに寝息を立ててるので、この判断は間違ってはいなかった様である
ここで「大多数」と表現したのは、そうでない子タブンネもいるからだ

「ミ… ミ…」「ヒィック… ヒィック…」「ズッ… グズッ…」

檻の傍に居ると子タブンネの寝息やいびきに混ざって、かすかにすすり泣く声が聞こえてくる
女子社員はどうしたのかと不安に思い、聞き耳を立てて泣き声の出てる檻のひとつを探し当て、
起こさないよう気をつけながら懐中電灯光量を弱くして照らし、出入り口の格子の隙間から中をのぞいてみる
そこには数匹ずつ固まってすやすやと眠っているタブンネ達の姿が見えた
泣いているのはその中のうつ伏せで壁に顔をくっつけながら寝ている2匹の子タブンネだった
他の子タブンネと見比べると小さく幼い子タブンネで、薄暗い中だとベビンネのようにも見えてくる
懐中電灯の光をそっと当てて目を凝らしてみると、確かにその頬にはキラリと反射する真新しい涙の跡が
だがキラリと反射したのは頬だけではなく、子タブンネの顔の付近のケージの壁もテカテカと濡れていた
最初は涙が壁に付いたのかと思った女子社員だったが
よくよく見てみると涙にしては量が多く、顔の位置から考えて舌で舐めた跡だなと何となく推理した

「…ごめんなさい」

懐中電灯を消し、小声でそう呟いてからケージから離れていく女子社員
本当はあの子タブンネたちをケージから出して慰めてやりたかった
しかし、あのケージの金属製の扉は開け閉めするとガチャンと大きくて耳障りな音が鳴る
唯でさえ耳が敏感なタブンネたちだ
せっかくぐっすり眠ってくれてるというのにそんな音を鳴らしてしまったらどうなるか…
他の子タブンネの事も考えると、あの子たちは泣くままにしておくしか仕方がない
泣いてる子タブンネは他にもいるが、睡眠が心を癒してくれる事を願うほかなかった

51ショーケースの裏側で:2017/06/14(水) 03:12:51 ID:ddkwLB.g0
欝々とした気分になった女子社員は、その足で従業員用の出入り口からデパートを出る
向かう先は近くにある24時間営業のスーパー銭湯
明日もイベント場内で接客の仕事。お客様に不潔な姿を見せるわけにはいかない
湯船につかりながら、何であの子タブンネたちは壁を舐めていたのか気になっていたが
その確たる理由は思いつかぬまま風呂から上がり、ジャージに着替えてデパートへ戻る

「チーチ、チー」「チチィ…」「チィー、チィー」「ミィ、ミィ…」
「…? 赤ちゃんたちが起きてる…?」

準備室に戻った女子社員は、暗い中で寝ているはずのべビンネとチビママンネの声を聞いた
べビンネの声は何かを必死に求めるような切ない声で、チビママンネのは悲しい声だ
どうしたのかと思い電気を点けてみると、
寝床の上、寝そべるチビママンネのお腹の前で3匹のベビンネがもぞもぞと動いている
その中の一匹はあの小ベビンネだ
チビママンネは起きてはいるが眠っている時と同じ横に寝そべる体制のままで、眼にはじんわりと涙を浮かべていた

「チーチー…」「チーチ」「チチッチ」

起きているベビたちの様子をよく見てみると、
チビママンネのお腹の毛皮に顔をうずめながらヂューヂューと口を鳴らしたりクイクイと押したりしている
チビママンネは歯を食いしばって切なそうな表情をしているが、べビンネ達のするがままにさせていた
そうさせておくしか仕方がないといった様子だ

「あ、おっぱい!」

女子社員が正解であるそれに思い至るのは容易なことだった
そして行動は早く、即座に3本の哺乳瓶に粉ミルクを作って暖め始める

「ミィ、ミ…」

その様子を見てチビママンネは安堵した。目に涙は消えぬままではあるが
ミルクが温まるまでの間、女子社員は心に残るモヤモヤが何か気になってい仕方がなかった
なぜあのチビママンネはお乳が出ないのかという疑問もそうだが、
もう一つ嫌な何かがチクリと引っかかっている
そうして物思いに耽ってるうちにミルクが適温に温まった

「赤ちゃんたちお待たせです、ミルクが出来ましたよ」
「チッチィ!」「チチ〜!」

女子社員がミルクを持って近づくと2匹のベビがチビママンネのお腹から離れてくるりと方向転換し
眠る他のベビを乗り越えながらも女子社員へ向かってハイハイしていく
踏まれて痛かったたのではないかと女子社員は焦りかけたが
寝てるベビ達はむず痒がるような仕草はしたもののまるで平気そうで起きる気配すらない
野生の薄暗い巣の中ではこの程度の事は日常茶飯事なのだ

「チッチ!チッチ!」「チチィチィ!」
「…あれ、今回は手伝ってくれないんですか?」
「ミーミ、ミィ」

ミルクを与える時必ず手伝ってくれていたチビママンネだが、今回は寝そべったまま動かない
それは眠いからとか疲れているからではなく、小ベビンネが乳首を銜えて離さないからである
他のベビは乳首を見つけられなかったので哺乳瓶が来たらすぐに諦めたが
小ベビンネだけは諦めきれず、乳の出ないいびつな形の乳首を小さな口で懸命に吸い続けている
その切ない様に無駄だからとやめさせる事もできず、チビママンネはただ諦めてくれるのを待つしかなかった
そして2匹のベビに授乳しながらもこちらを気にかける女子社員に、もう少しだけ待ってあげてと哀しい瞳で訴えるのであった

52ショーケースの裏側で:2017/06/14(水) 03:14:25 ID:ddkwLB.g0
「ミピッ!?」「ヂボェッ!!」
「えっ!?どうしたんですか?」

チビママンネが突然悲鳴を上げたかと思うと、同時に小ベビンネが嗚咽とともに乳首から口を離す
何が起きたか全く分からずただ驚くばかりの女子社員だったが、
2匹のベビが悲鳴に驚いてミルクから口を離したので、授乳を一区切りして何があったのか慌てて見に行った

「え… お乳…?」

チビママンネのお腹の正面から見て右下の所、小ベビンネが吸いついていた乳首
そこからドロリとした白っぽい液体が流れ出ていた
一瞬は母乳が出てきたのかと勘違いした女子社員だったが、すぐにそれは違うと気づいた
気味の悪い黄色がかった色をしていて、鼻を近づけると嗅いだ事のある嫌な匂いがしたからだ
その臭いから、これは母乳などではなく膿だとすぐに判断できた
そしてあろうことかそれを小ベビンネが口に入れてしまったという事も

「おちびちゃん、ちょっとだけ我慢してください!」
「ヂェ、ヂィェッ!ァェッ!!ビグェッ!」

エッ、エッっと嗚咽混じりの咳をしている小ベビンネを女子社員は仰向けに返し、
軽く押さえつけながらティッシュを巻いた人差し指をその口に突っ込んだ
小ベビンネは突然の事にパニックになって反射的に噛みついてしまったが、
まだ歯が一本も生えていなかったので女子社員は驚きはしたものの大して痛くはない
噛まれたまま無理に指で口内の膿を拭き取ろうとしても、
小ベビンネは腕の中でじたばたと暴れ、イヤイヤと首を振ったり顔を反らしたりして順調にはいかなかった

「ミィ!ミィ!」
「ヂヂーッ!ヂィーッ!!」

女子社員が苦戦している所にチビママンネが立ち上がり、助けに入った
両手で頭を押さえて動かないようにしながら、ミィミィと優しく声をかけて荒ぶる小ベビンネをなだめる
それでも小ベビンネは抵抗し続け簡単には拭かせてはくれなかったが
騒ぎ疲れて動きが鈍った隙に女子社員はなんとか口の中の膿をほぼ全部拭き取る事が出来た
小ベビンネの口から、不気味な薄黄色の液体にまみれたティッシュが指とともに引き抜かれる

「お水です、おちびちゃんのお口を奇麗にしてあげてください」
「チチ・・・ チィ…」
「ミィ、ミ」

女子社員が空の哺乳瓶に水を入れて渡し、チビママンネがそれを小ベビンネに飲ませた
少し元気を無くしていたが、喉を小さくコクコクと動かしているので飲んでいるのが分かる
一目盛ほど飲むと落ち着いたのかフゥフゥと大きく息をしながらも安らいだ顔になった
チビママンネはその胸に耳の触覚を当て、ホッと息を吐き安堵の表情に
耳の触覚で体調が大丈夫かどうか調べたのだ
これをやったタブンネが安心しているということは、もう大丈夫ということである
無事で良かったと安堵した女子社員だが、やることはまだ色々と残っている
次に手をつけるのは、未だ黄色い膿に汚れたままであるチビママンネの乳首だ

「ちょっと痛いけど、我慢してて下さい」
「ミィィ…!」

女子社員乳首にティッシュをあてがいながら、膿を絞り出そうとする
チビママンネは治療してくれると分かっていたので従順に乳首を触らせていたが、
その顔には痛みに対する恐れが隠せていない

「ミキィーッ!!」「キャッ?!」

ギュッと乳首をつままれた瞬間、チビママンネは反射的に両手で女子社員を突き飛ばしてしまった
あのタブンネ卸業者の女社長に乳首をむしり取られたトラウマが痛みでフラッシュバックしたのだ
不安定な前かがみで膿を絞ろうとしていた女子社員はバランスを崩してドタンと尻もちをついてしまう

「ミィッ!?、ミィッ!!」
「うう、大丈夫です… ごめんなさい、痛かったんですね…」

ハッと我に返ったチビママンネは慌てて女子社員に駆け寄り、助け起こそうと小さな手でその腕を懸命に引っ張った
後悔と罪悪感に満ちた今にも泣きだしそうな無様な顔で、その心は膿吹く乳首に負けぬほど痛めていた
同時に、あの憎たらしい社長と青いポケモンの事が頭に浮かぶ
あいつに乳首を取られてさえいなければ、こんな事にはならなかったのに…
一方、トラウマの事など知る由もない女子社員は痛かったんだろうなとしか思っておらず、
チビママンネに軽く詫びてから素直に助け起こされるのであった

「今度は我慢しててくださいね」
「ミ、ミィ…!」

今度は膿絞りの痛みに耐える覚悟を決めたチビママンネ
女子社員もそれに応え今度は躊躇わずに一気に絞り出す方針だ
いざ絞り始めると神経が集中してる箇所なのでかなり痛く、
歯を食いしばりながら女子社員の髪と服をギュッと握りしめて必死に耐える
膿はプリュプリュと音を立てながら大量に出てきた
絞り続けると固体のような塊の膿が出てきて、やがて血が混じりに変わり
最後に透明の体液だけが出てくるようになった、こうなると完全に膿が出きった証拠だ

53ショーケースの裏側で:2017/06/14(水) 03:15:56 ID:ddkwLB.g0
「ミ〜、ミ」
「あっ、掻いちゃ駄目ですよ、消毒しますから待っててください」

痛みが消えスッキリした乳首を嬉しそうにさわさわと撫でるチビママンネ
女子社員はそれを制止し、乳首に消毒薬を塗る
傷に沁みる感覚に身震いするチビママンネだったが、その痛みにはすぐに慣れ
最後に消毒薬をしみ込ませたガーゼを絆創膏で貼り付けて処置は終わった

昨日のデパートに来たばかりのチビママンネなら人間にこんな事はさせなかっただろうし
目の前でベビの口に無理やり指を突っ込んだりしたら激怒していただろう
自覚は薄いだろうが、今日という一日だけで女子社員はチビママンネの確実な信頼と友情を得ていた

乳首を見ているうちに、女子社員は何故このタブンネはお乳が出ないのかが再び気になって
くすぐったがるチビママンネの毛皮をかき分けて他の乳首を見てみることにした

「うそ… 何これ…」
「ミ?」

そこに見たものは、乳首があるはずの部分に残っていた傷痕だった
既に皮が貼り治ってはいるものの、ここからお乳が出てくるとは到底思えない、完全に破壊された乳首の痕だ
何よりショックなのは、ほかの部分には一切傷がなく乳首だけがピンポイントで破壊されてるということ
不慮の事故でこんな傷がつくはずはないし、野生のポケモンがこんな襲い方をするはずがない
こんな痛めつけ方をするのは、悪意を持った人間しかいないだろう

「なんで・・・ こんな… ひどい…」
「ミィ・・・」

女子社員は義憤と悲しみに震えた
一体何を思えば、赤ちゃんを育てている母タブンネの乳首をむしり取るという残酷極まる事ができるのか
なぜこんな行為に及んだのか、全く想像も出来ず、ただ名も顔も知らぬ悪人に怒りを燃やす
実際は言う事聞かなかった上に叩かれたのでブチギレという割と単純な理由なのだが、それは置いといて
そして人間がポケモンにこんな事をしてしまったという事実が、あまりにも申し訳なくてたまらなかった

「ミーミ、ミーミ、ミィ…」
「はっ、タブンネさん…」

チビママンネは心配して優しい声で鳴きかけながら女子社員の頭にそっと手を乗せた
「許す」とか「あなたのせいじゃない」とかそういう難しい事を伝えたい訳ではなく
ただこの優しい人間に心を痛めてほしくない、ただそれだけの思いだった
だが、女子社員はこの温かい手によって少しだけ心が軽くなった

「チィチィ…」「チーチ…」「チィ、チィ…」
「あっ…赤ちゃんたちが…」「フミィ…」

安心したのも束の間、今度は眠っていたベビたちがこの騒ぎで目を覚ましてしまい
くしゃくしゃになった毛布の上で鈍くもぞもぞと動き出した
不安そうにビクビクと脅えており、今にも泣きだしそうで爆発寸前といった所だ
これには流石のチビママンネも弱った様子で
今日一日の疲れが一気に襲って来たような限界に近い精神状態だった

「…タブンネさん、頑張りましょう」「ミ、ミィ!」

女子社員とチビママンネはこれが最後と限界な体にムチを入れ
泣きそうなベビたちを自分たちも泣きそうになりながらも懸命にあやし
中断していたミルクを温めなおす所から始めて睡魔と闘いながら再び与え、
どうにかこうにかベビを再び眠りに付かせることが出来た
時計は既に12時を回っており、限界を超えた眠気と疲れで両者ともふらふらと憔悴しきってい

54ショーケースの裏側で:2017/06/14(水) 03:16:37 ID:ddkwLB.g0
「あれ?まだ寝ないんですか?」「ミーミィ…」

すぐにでもベビの傍で寝たいはずであろうが、チビママンネはすぐに横にはならなかった
解決すべき問題があと一つ残っていると思い込んでるからだ
ベビーサークルの柵のごしにキョロキョロと何かを探すように周りを見回しているが
女子社員はその意図がさっぱり分からなかった

「ミィミ、ミ」「えっえっ?これを私に?」
「ミィーミミ〜」

目を覚ましていた勇者ンネが自分が寝ていた座布団を女子社員の下へずるずると引きずってきた
そしてチビママンネと一緒にミィミィと何かを訴えかける
なぜ自分の寝床を渡そうとするのか最初は女子社員は分らなかったが、
ふかふかの座布団とチビママンネの心配そうな顔を見比べるとその心を察する事ができた
チビママンネと勇者ンネは女子社員の寝床が無いことを心配していたのだ
タブンネたちの無垢だけどちょっとズレてしまった優しさに、女子社員はフフッと噴き出しててしまう

「ふふ、心配ありませんよ」
「ミィ?」「ミー?」

女子社員はベビーサークルのすぐ傍に部屋にあった座布団を三枚並べて即席の布団を作り
その上に掛け布団代わりのバスタオルを無造作に置いた
この11月、本当はもっとちゃんとした掛け布団が欲しかったが、これ以外に掛けられそうなものはない
実はベビンネたちが寝てる毛布は気が利く社員が女子社員のために用意したものなのだが、
その事を伝えてなかったので残念ながらその意図は伝わらずに終わってしまった

「ミーミィ〜」「ミィ〜ミ〜」「みんな、おやすみなさいです」

寝床が出来たことでチビママンネは安心して寝床に戻ってベビたちの傍で横になり、
勇者ンネも座布団をチビママンネの隣へずるずると運んでそこで丸くなる
やはり一人で寝るのは寂しかったのだ
女子社員も部屋の電気を薄明かりに変え、座布団の上で横になった

眠りに落ちるまでのまどろみの間、チビママンネは奇妙だが、どこか覚えのある安らぎを感じていた
それはまるで、かつて夫と一緒に眠っていた時のような不思議な安心感だった
自分の傍で眠るあの優しい人間
怖い人間の暴力から守ってくれて、でもその後にベビンネみたく泣いちゃって
夫ンネみたいな強さとベビンネみたいな弱さを一緒に持っている不思議な人間
彼女の事を考えると、今までわからなかった人間と一緒に暮らしたがるポケモンの気持ちがよく分かる気がした

チュパ・・・ チュパ…

(…ん? またお乳?)

真夜中、微かに聞こえる濡れた音によって女子社員は不意に目が覚めた
まだ夢うつつのまま枕元に置いておいた懐中電灯で音がする方をそっと照らしてみると
小ベビンネがまたチビママンネのお腹にむしゃぶりついていた
また膿を吸ってしまわないか心配になったが、どうやら寝ぼけて闇雲にお腹を吸っているだけのようだ
その様子が可笑しくて様子を見ているうちに、ある事に気づく
うつ伏せで母親のお腹を吸うその姿勢が、昨晩見たケージの壁を舐めていた2匹の子タブンネと全く同じなのだ
そう、あの子タブンネたちは引き離された母親の夢を見て泣いていたのだ
小ベビンネが舐めているのは温かい母親のお腹だが、あの子タブンネたちが舐めていたのは冷たい金属の壁だ
そこに救いは何もない

その事に気づいた瞬間、罪悪感がおぞ気となってぞわぞわと全身を走った
そして少しでも逃れようとしたのだろう、体を丸めバスタオルを口元までたくし上げ
両目を力いっぱいギュッと瞑って必死に眠りに逃げようとする
もしかして、自分も仕事だからと言い訳して無自覚にタブンネたちを傷つけていて
あのチビママンネとベビンネ達からお乳を奪った悪人とそう変わらないのではなかろうか?
どんなに体を震わしても、女子社員の体の中から冷たいものが消えなかった

「ごめんなさい・・・ ごめんなさい・・・」

どんなに女子社員とチビママンネが仲良くなったとしても、明日はきっと辛い一日になるのだろう
女子社員は子タブンネをお金に変える店員で、チビママンネは子タブンネたちを守る母親なのだから

55名無しさん:2017/06/14(水) 03:22:54 ID:LJIplb5w0
更新待ってました!

56名無しさん:2017/06/15(木) 22:28:36 ID:5ng6xatQ0
頑張れチカちゃん!
小タブンネは残留した口内の膿から全身腐敗のフラグかな

57名無しさん:2017/06/18(日) 16:54:07 ID:eja1zTXY0
レンタル扱いのチビママンネはイベント後どうなるんだろ?

用済みとして処分されるのもいいけど、
女社長達の元で乳母として奴隷の日々を送るとかでも面白そうw

58名無しさん:2017/06/18(日) 19:21:26 ID:YDmqCR3c0
>>57
>乳母として奴隷の日々

もちろん実の我が子達(小ベビも漏れなく)を全て失った絶望を抱えながらだろうな

なんか肉屋の日常ってSSの乳母ンネ以上に悲惨な思いをさせられそうだけど果たして…
今後に期待しております

59ショーケースの裏側で:2017/06/19(月) 05:03:56 ID:j7k4MZwk0
チュウ・・・ チュウ…
(・・・また舐めてる?)

早朝、女子社員は目覚ましのアラームが鳴る前に小さいが聞き覚えがある音によって目を覚ました
準備室には窓がないので電気を点けないと部屋は暗く、寝起きでぼやけた視界では何も見えない
睡眠不足の重い身体をよいしょと起こして電気を点けると、毛布の上に座りながら小ベビンネを抱くチビママンネの姿が
小ベビンネはその小さな手でチビママンネの毛をしっかりと掴みながらお腹に顔を押し付けている
その押しつけてる箇所は、あろうことか昨日膿が噴出して処置しておいた所と同じだ
よく見ると、チビママンネのすぐ傍に昨日張り付けたガーゼが剥がれ落ちていた

「え…? 膿は…? 」
「ミィミィ♪」

困惑する女子社員にチビママンネが優しく微笑みかける
その顔に苦痛や切なさは一切なく、喜びと安らぎに満ちた心温かい笑顔だ

「まさか…」
「ミィ♪」

チビママンネの横に回り込んでその足の上に乗せられながら抱かれている小ベビンネを覗き込んでみると、
乳首に吸いついてこくこくと喉を鳴らしている。母乳を飲んでいたのだ
乳首のうちの一つだけ完全に千切り取られてはなかった悪運、
女子社員の治療で膿を出し切った事、そしてタブンネ特有の強靭な再生力
その三つが功を奏しチビママンネの乳腺は一夜のうちに再生を果たしてしていた

「すごい!すごい!おっぱいが出るようになったんですね!」
「ミィ、ミィ♪」

母タブンネの温もりに抱かれながらベビンネが乳を吸うその光景
哺乳瓶で行うような無機質な栄養補給ではない、美しささえ感じる暖かな母と子の繋がりの姿がそこにはあった
小ベビンネも哺乳瓶で飲む時よりもずっと心穏やかな様子だ
もう出ないと思ったお乳が再び出た事に、女子社員は眠いのも忘れてまるでわが事のように喜び、
チビママンネもまた人間の友だちと喜びを分かち合おうとしていた
が、喜んだのもつかの間、女子社員はある事が頭を過ぎり、その喜びは風に吹かれた蝋燭の火のように消え失せる
この子を母親から引き剥がして商品として売らなければいけない事を

「…よかったです、おっぱいが治って」


そう呟いて女子社員は再びと座布団に横になる
辛くて顔を見る事が出来ず、チビママンネに背を向けて
まだ全然寝足りないはずなのに、目を閉じていても眠ることができない
「仕事だから」
そう言い訳してしてタブンネたちの苦しみを知らぬふりしている私に、なぜこんな美しい光景を見せるのか
この小さな親子の暖かい繋がりを、自分の立場と生活の為に永久に引き裂こうとしているというのに

60ショーケースの裏側で:2017/06/19(月) 05:06:47 ID:j7k4MZwk0
「ミ、ミィ?」

チビママンネは様子がおかしい女子社員を心配していた
一瞬ぱっと花が咲いたように喜んだかと思ったら、途端に悲しそうな顔をして寝転んでしまう
なぜ心が苦しんでいるのか? チビママンネに人間の複雑な心理はよく分からないが
この人間の助けになってあげたい、苦しみを和らげてあげたい、ただ純粋にそう思っていた
自分もベビも明日をも知れぬ囚われの身でという状況で、女子社員の心配をしてしまう性格
お隣ベビや見ず知らずのベビをただ放っとけないからという理由で受け入れた時もそうなのだが
ある意味自己犠牲的とも、若さゆえの愚直さとも取れる優しさだ
それは人間の感性では美徳にも感じられるが、野生で暮らす生き物としては弱点に他ならない
本当はチビママンネのようなタブンネこそ、人間と共に暮らして幸せになれるタブンネなのだろう

「チィチィ…」「ミィ…」

だがそれが叶う事は無いだろうし、チビママンネも望んではいない
今は理解不能な人間たちからベビたちを守り抜き、生きて巣まで帰る事だけが目標だ
お乳を満足に飲んで腕の中で眠る小ベビンネをしっかりと抱きしめる

小べビンネが完全に眠ったのを確認すると、そっと寝床に置いてからすり足で女子社員の所へ
その後ろに寄り添うように横になり、背中に触覚を触れる

「ミィ…?」

女子社員の心音から伝わって来たのは、罪の意識
キリキリと茨の弦で心臓を締め付けられるような、痛々しくて耳を塞ぎたくなるような心の音だ
この優しい人間がどうして罪の意識に苦しまなければならないのか?
昼間にベビ達を遠くへ連れ去られてしまった時の事を悔やんでるのだろうか?
理由はとにかく、チビママンネは女子社員が苦しんでいるのが辛くてしょうがなかった

その後30分ほど、チビママンネは女子社員の背中に添い寝したままだった
未だ止まぬ女子社員の罪悪の音を聞き続けながら
あなたは悪くないよ、苦しまなくていいよと伝えたかった
しかしタブンネは人間の言葉が喋れないし、人間には心が伝わるタブンネの触覚は無い

「チィチ…」「チィー…?」「チー、チ…?」

母親が傍にいない事に気づき、3匹のべビが不安そうな声でか細く鳴きながら目を覚ました
その声を聞いた瞬間、チビママンネは慌てて寝床へ戻り再びベビたちに寄り添った
触覚がチビママンネのお腹に触れるとベビ達は落ち着きを取り戻し、不安な声は消えた
ひとまずホッとしたチビママンネだが、頭に浮かぶのは女子社員の事だ
乳首のズキズキする痛みを取り去って再びお乳が出るようにしてくれたのに、
自分はこの人の心のズキズキを取ってあげられないなんて
安らいでに眠るベビたちが眼前にあっても、チビママンネの心は痛んでいた

その後、一人と一匹の痛みが癒えるのを待たずにいつもと同じくに太陽が顔を出し、
チビママンネと女子社員、そしてベビたちの別れの日の始まりを告げるのであった

61名無しさん:2017/06/19(月) 09:38:32 ID:K9xHRs/Q0
お別れの時が楽しみですなあ

62名無しさん:2017/06/19(月) 09:39:48 ID:9LCQkfzI0
乳首再生しちゃったんだ...
授乳ショー失敗フラグかな?

63名無しさん:2017/06/19(月) 13:35:45 ID:PPNdKoq60
>>62
おっぱい独占とはまた…
今まで泣いても小ベビ優先で放置されてきたベビ達の

溜まりに溜まった小ベビへの鬱憤が晴らされる時でもあるのかな

64名無しさん:2017/06/20(火) 23:30:52 ID:LxJhqu5E0
DQMンネ ※他作品ネタ&グロ有りなので苦手な方は閲覧注意
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288641.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288647.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288650.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288654.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288656.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288658.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288661.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288663.png.html
www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1288667.png.html

パスは3131

65名無しさん:2017/06/20(火) 23:42:13 ID:H2nIQlSA0
ようやくお別れか、小ベビンネは捨て値なら売れるかな?

乳首が再生・・・生えなくなるまで何度でも切除してやりたいw

66ショーケースの裏側で:2017/06/21(水) 01:50:14 ID:rZcSsmAg0
その後始業時間となり、
起床して身支度を終えた女子社員は準備室の前で出社してきたざんす男達を出迎えた
顔色の悪さを隠すためだろうか、化粧がいつもより濃い目だ
女子社員は何時ものように振舞おうとしたが様子がおかしいのがすぐにばれ
心配した男性社員たちは昨日何があったのか問いただすのであった
色々考えた後、女子社員は叱られようが言うべき正しいことを主張する覚悟を決めた

「このイベントは、今すぐ止めるべきだと思います…
 タブンネの子供たちをお母さんから引き離して売り物にするなんて、残酷すぎです…
 あの子たちはすぐにでもお母さんの所に…」

女子社員は男性社員たちの目をしっかりと見つめながら、
喉の奥から無理に絞り出したようなかすれた声で心からの本音を吐き出す
こんな声になってしまっているのは社会人として間違った事
すなわち、会社に損をさせる事を言っているという自覚のためだ
どうして何百万円もかけて仕入れたタブンネたちを何の利益も出さずに手放す事が出来ようか?
そんな事を提案したら自分の立場が悪くなるのは必至だ
だがそれでも、必死に自分の正義を通すべく頑張る
優しいが気が弱く、小動物のように臆病な女子社員だが、この時ばかりは守るべき者のために戦い抜く気だ
しかし、言いたい事を言い終わらないうちに気が利く社員が話の隙に割って入った

「そのお母さんというのは何所に居るか分かるのかな?」

その一言に女子社員は言葉に詰まってしまう
確かに、あの子タブンネたちがどこから来たのか、自分たちは何も知らない

「もし、このままタブンネたちを売るのを止めて、野生に返したらどうなると思う?
 餌の採り方も知らないまま飢え死にするか、もしくはもっと酷い最後になるか
 あのタブンネたちはもう人に飼われるしか生きる道はないんだよ」

女子社員は顔を赤くして震え、下の瞼には涙が溜まる
言い返す言葉が思いつかないのと、子タブンネたちの残酷な末路を想像してしまったためだ
気が利く社員は酷い事を言ってるようだが理がある。これじゃあ、無責任に考えていたのは自分の方ではないか
だが、それでも最後の一線だけは譲る気はない
涙を堪えながら震える唇をゆっくりと開く

「だったら、せめてあのお母さんタブンネとベビちゃんたちだけは…」
「お乳が出ないタブンネが、自然の中でどうやって赤ん坊を育てるんだい?」
「出ますよっ!!!」

女子社員は感情が爆発したかのように大声で叫んだ
叫ぶ所を見たのは初めてで、3人とも驚いてポカンと固まっていた

「昨日出るようになったんです、あのお母さん… 悪い人間に人間におっぱいを取られて
 膿を出したら治って、今朝飲んでたんです、あの赤ちゃん、ちっちゃい赤ちゃん…」

静寂の中、女子社員は心に浮かぶ言葉を整理する余裕もなく次々に並べたてる
最早我慢する気もなくなった涙を止めどなく流し、時折グスグスと鼻をすすりながら、
その様子に男性社員たちは気まずい雰囲気になり、気が利く社員の額からは冷や汗が流れる

67ショーケースの裏側で:2017/06/21(水) 01:51:13 ID:rZcSsmAg0

『ヂィーッ! ヂィーッ! ビーッ!ビッ!ビーッ! ヂャァァァァァ!!』
「ん?ちょっと、何かベビィちゃんたちが騒がしいざんす」
「…えぇ?ちょっと様子を見にいきます」

困惑の中、準備室の中からベビたちが騒ぐ声が聞こえてきた
何かに怒ってるような声と、泣き叫んでるような声と、つまりは喧嘩をしてるような騒ぎ方だ
それを聞いた女子社員はぴたりと泣きやんで正気に戻り、急いで準備室へと入る
この時ばかりはタブンネ達に感謝した気が利く社員だった
三人は何があったのか気になって女子社員を追って準備室へと入って行く

「ヂャーッ!!」「ビィィ!!ビィィ!!」「ウヂーッ!チギュビーッ!!」「ギッ!ギーッ!」
「ミィィ!ミィィ! ミィィ〜ン」

「え、え?どうして?寝る時はあんなに仲良かったのに?」

先陣を切った女子社員の目に飛び込んできたのは、寝そべるチビママンネのお腹に群がって争うベビンネ達だった
皆ヂーヂーと怒りや苦痛に満ちた悲鳴にも似た叫び声を上げ
小さな手で他のベビを押しのけ、ベビとベビの隙間に頭を突っ込んで割って入ろうとし
やっと乳に吸いついたベビを頭で押しのけて乳首を奪い、また奪われの繰り返し…
お乳を取り合って喧嘩になってしまったという事は、見ればすぐに分かることだった
チビママンネもミィ!ミィ!と厳しめに鳴いてベビたちの間に片手を入れて争いを止めようとしてるが効果はなく
小べビンネは押しのけられて争いの中にすら入ることができず、
差し出されたチビママンネの片手に縋りついてただ泣きじゃくるだけであった

「ふぇ〜、ベビィちゃんなのにこれまた壮絶ざんす。チカちゃん、ミルクの準備を頼むざんす、
 ヤマジくんとミナツくんは私と一緒に喧嘩を止めさせるざんすよ」

指示のもとに社員たちが一斉に動き出す
女子社員はタブンネたちを気にしつつも急いで粉ミルクを急いで溶いて暖め
体格がいい社員とざんす男はベビを抱き上げてチビママンネから引き離し喧嘩を止めようとしたが
傷つけないように気を使いながらなので思ったように捗らない
ベビに触られて威嚇の声を上げたチビママンネだったが
社員たちは気にする余裕もなく、傍にいる小ベビンネを意味もなく怖がらせただけだった

「ちょっと試してみます」
「ミィッ?!」

そんな時、気が利く社員が練乳を染み込ませたガーゼを持ってベビーサークルへ飛び入り、
ベビたちにへ近づいていく
その顔を見たチビママンネはビクッと恐怖し威嚇すらできず硬直した
昨日暴行された事がトラウマになってるのだ
だが気が利く社員はチビママンネには構いもせず、喧嘩し続けるベビンネたちにガーゼを近づける

「さあ、こっちのお乳は甘いよ〜」
「ヂィィィィィ!! …チ?」「チーチィ!」

すぐに数匹のベビンネが匂いに食いつき、喧嘩をやめてガーゼの方に寄って行く
なおもガーゼを振って甘い匂いを振りまくと、
なんと小ベビンネ以外の全てのベビがガーゼに引き寄せられたのだ
そのまま少しずつ後ろに下がっていくとベビたちもガーゼを追って早めのハイハイで付いていく

「ミィ、ミィーッ!」

チビママンネは大声で鳴いてベビたちが怖い人間に止めようとしたが
数匹のベビがちょっと気になった程度で振り向いただけで、戻ってくるベビはいなかった
ベビたちにも母親に甘えたい気持ちは大いにあるのだが、今は食欲と練乳の魅力の方が勝っていた
自分よりもタブンネに平気で暴行する悪い人間をベビたちが選んだという事実に、チビママンネは恐怖した

68ショーケースの裏側で:2017/06/21(水) 01:52:21 ID:rZcSsmAg0
「ん、お前たちはどうしたんだ?」
「ミィ…」「チィーチ…」「チィチ…」

一方、ちょっと手持ち無沙汰になった体格のいい社員
ベビーサークルの片隅にいる勇者ンネとその横でちょこんと座る大きいベビンネ2匹に目が向いていた
勇者ンネは大きいベビが争いに加わらないよう引き止めていたのだ
あの争いに力が強いベビが混ざる事によって他の小さなベビが怪我をしてしまうのを心配しての事で
本当は他のベビの争いも止めたかった勇者ンネだったが、力不足でそれは不可能だった
大きいべビは空腹でチュパチュパと指をしゃぶりながらもお乳を我慢している
普通べビは我慢などできないのだが、勇者ンネのカリスマ性の成せる技だろう

「ミルク温まりました!」
「オーケー、みんな、ベビィちゃんたちにミルクをあげるざんす!

社員たちは次々にミルクを手にとって授乳に向かう
ベビたちは待ってましたと言わんばかりにそれに吸いつき、美味しそうにゴクゴクと飲んでいる
ざんす男と気が利く社員と女子社員の三人は両手に哺乳瓶を持って同時に2匹のベビに授乳しているが、
大きなベビを受け持った体格のいい社員は一匹のベビにもうまくミルクを与えることが出来ないでいる
吸い口を口に無理やり押し付けるような形で授乳しようとしていた為、ベビがそっぽを向いてしまったからだ

「ミィッ!ミィッ!ミイッ!」
「ん、お前も飲みたいのか?」

勇者ンネはベビを苛めるなと威嚇をしたが、迫力不足のため鈍感な体格のいい社員にその怒りは伝わらず
勘違いされて哺乳瓶をそのまま渡されてしまう
この時勇者ンネも意図を勘違いし、哺乳瓶をよいしょと両手で持ち上げて傍にいた同郷ベビに授乳を始めた
満タンになった哺乳瓶は子タブンネにとって結構重く、時折大きくぐらりとふらつくが
それでも同郷ベビはゴクゴクと美味しそうに飲んでいる

「おっ、上手いじゃねぇか。俺もちゃんとやんねぇとな」

隣で美味しそうに飲むベビを見て自分も飲みたくなり、
体格がいい社員が授乳しようとしていたベビもミルクを吸いだした
これで全てのベビがお腹を満たせるかと社員たちは思ったがそれは違う。
あの手のかかる小ベビンネがミルクを飲んでいないからだ

69ショーケースの裏側で:2017/06/21(水) 01:54:17 ID:rZcSsmAg0
一方、切ないのはチビママンネである
せっかくお乳が出るようになったのに、人間が作る粉ミルクの方がいいだなんて…
確かに一つの乳首を10匹で分けると量が足りなくなるのは当たり前で
しかも争いをしながらではとても腹を満たすどころではない
ついでに言うと味も粉ミルクの方が美味しい
つい昨日までは心安らぐ光景だった哺乳瓶でお腹を満たしていくベビたち
だが今ではそれに激しく心乱され、嫉妬や悲しみ、やり場のない怒りすら覚える
チビママンネは歯噛みしてそれをじっと見ているしかなかった

「チィチィ… チィチィ…」「ミィ…」

だが、小ベビンネにとっては何があろうとチビママンネの母乳が一番だった
争うベビ達に次々と乱暴に吸われ、乳首はヒリヒリと赤く充血し
母乳はもはや枯渇寸前で唇を濡らす程度にしか出なくなっている
しかし小ベビンネは必死に吸い続け、チビママンネは授乳の体勢を崩さずその痛みを必死に堪える
大勢のベビのお腹を満たせる人間と哺乳瓶、そして一匹のベビのお腹をも満たせない自分
チビママンネは情けなさと自分への怒りで母乳よりも量が多い悔し涙を流すのだった

「ん?ひょっとしておっぱいが出尽くしちゃったざんすか?
 じゃあマーマさんに代わって私がミルクをあげるざんすよ」
「チィィ!」「ミィィ! ミィィ!」

一足早く授乳が終わり、小さな親子の事が気になったざんす男
母乳の出が悪い事を察し、小ベビンネに哺乳瓶の吸い口を向けるも逆に怖がられてしまう
チビママンネは声を張り上げてやめてと懇願すると、ざんす男は突然の大声に驚いて一歩退いてしまう

「そのちっちゃい子は甘えっ子でお母さんタブンネの手からしかミルクを飲まないんですよ」
「あー、ナルホドナルホド。それじゃあマーマさんにお任せするざんす」
「ミィー…」

女子社員の助言に納得したざんす男はチビママンネに哺乳瓶を手渡す
渡されたその後、チビママンネは胸に哺乳瓶を抱きしめてブルブルと震えだした
せっかく母乳が出るようになったのに、こんな物に頼らなくてはならないなんてという悔しさのためだ
ざんす男が心配そうに見つめる前で一分近く震えた後、
チビママンネは片手で小ベビンネを遮って吸うのを止めさせ、すっくと立ち上がった
プライドより小ベビンネの空腹を満たすのが先決だと覚悟を決めたからだ

「ミィ!」
「チィチィ… チィチィ…」

チビママンネは哺乳瓶の吸い口を小ベビンネの口元に向けるが
小べビンネはそれに見向きもせず、母親の足にすがりついた
チィチィ、チィチィとお乳を求める鳴き方で鳴きながら

「んー… やっぱりマーマさんのおっぱいが一番なんざんすかねぇ」
「ミィィ… ミィィ…」

チビママンネは哺乳瓶をゴトリと落とし、立ち尽くしたままさめざめと泣いた
人間も、子タブンネですらやっていた哺乳瓶でミルクを与えることすらも自分は出来ないのかと
チビママンネの母親としてのプライドは、皮肉にも母乳が出たことによってズタズタになろうとしている

「まぁー、そう泣かないでチョーダイ。美味しいものを食べればおっぱいも出るようになるざんすよ
 ミナツ君、マーマさんに滋養のある物を持ってきてあげるざんすよ」
「はい」

チビママンネと小ベビンネの問題は残ったが騒ぎは収まり、社員たちは準備室を後にする
その時、食品売り場に行こうとする気が利く社員を女子社員が呼び止めた

「ミナツさん… ごめんなさい。ミナツさんの方が正しかったです
 私はただタブンネ達がが可哀そうだと、家族と一緒にいる方が幸せだとそれだけしか考えてなくて」

チビママンネが単独でベビンネたちを育てる力が無いことを目の当たりにし
女子社員の考えはすっかり変わっていた
あのベビンネたちは優しい人間に飼われるしか幸せになる道はなく
自分はその橋渡しの勤めを全力で果たすしかないと
ただ、心配なのはあの小さなベビンネだ
チビママンネの傍らでしか生きられないあの子は、一体これからどうすればいいのか…

「…チカさんが言った事は何も間違ってないと思います
 ただ、言うならもっと早く、できれば企画の段階で意見すべき事であったというだけで…」

女子社員はこの企画を言い渡された時、
かわいいポケモンがいっぱい見れると少し楽しみにしていた自分を思い出し、そして恥じた

70名無しさん:2017/06/21(水) 03:20:59 ID:kTqPBn6o0
更新乙です!

71名無しさん:2017/06/21(水) 21:43:17 ID:.kEcs6zc0
醜い子豚どもめ、俺が全部買い取って精肉売り場送りにしてやりたい

72名無しさん:2017/06/21(水) 22:54:34 ID:jyCzUGpQ0
どれだけの数のベビンネが優しい人間に出会えるか興味あるな・・・

チビママンネと憎たらしい小ベビンネさえ陰惨な末路を迎えてくれれば
他は別に幸せでもいい、対比とかになって面白そうだしw

73名無しさん:2017/06/22(木) 07:59:49 ID:.BhnDHJo0
チビママンネにシカトされて
「チィのことがキライチィ…」なんて悲嘆にくれていたベビもなかなかに香ばしいよな
嗜虐心煽られそうなので自分はこの子を買いに行きたい

74ショーケースの裏側で:2017/06/27(火) 23:52:30 ID:XiTm8Bg.0
その後、昨日と同じように会場の準備を終え、子タブンネたちもチェックして汚れを取ってから場内へ放された
何をされるか知られていたため抵抗されて昨日よりかは苦戦したが、兎に角イベントの準備は整った

「あの小さいのも午前中から売り場に出しときますか?」
「それがいいざんすね、様子を見に行ってオッパイを飲み終わってたら売り場に出すざんすよ」

指示を受けた気が利く社員は再び準備室に戻ると、チビママンネとベビたちは毛布の上で眠ってしまっていた
社員たちが前準備をしている間に与えられた餌(ゆで大豆とオレンの実)を平らげ
栄養補給により再び湧き出した母乳を小ベビンネに与え、その後眠くなってまた寝てしまっていた
一度は離れていったベビたちもチビママンネのお腹の前でひしめき合って眠っている
乳は出なくとも、血が繋がってなくとも母は母、その愛とぬくもりは何物にも代えがたい

「…あれだな、ちょっと面倒そうだ」

ベビンネが9匹もかたまっているのでその中から小ベビンネを見つけるのはちょいと難儀
…と思いきや気が利く社員は一目であっさり見つける事ができた
小ベビンネはチビママンネの胸の中、両腕でしっかりと抱かれながら眠っているからだ
では、何故気が利く社員が困っているのかというと、
連れて行く際にチビママンネを起こしてしまうのは避けられないからだ
その時に必死の抵抗にあうのは想像に余りある

「ミッ!?」

足音を殺してそろりそろりと近づこううとした気が利く社員だが、
三歩目でチビママンネがハッと目を覚ましてむくりと起き上がり、
恐怖と警戒が混じった表情で気が利く社員に目を向けている

「…耳がいいんだったっけ、まあいいや予定より早いけどこいつを使おう」

気が利く社員は懐からモンスターボールを取り出し、チビママンネの足もとに投げる
そこから閃光とともに現れたのは少女のようにも見えるポケモン
白い顔に赤い瞳、緑色の髪の毛に見える葉っぱに赤い花、ドレディアと呼ばれるポケモンだ
気が利く社員が少年時代に育てていたポケモンで、実家に預けていた所を急遽送ってもらったのだ

75ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:05:06 ID:tYPZp40w0
「ミィ、ミィィ…」

唐突に現れたドレディアにチビママンネはビクッと驚き、そして戦慄した
一見穏やかな外見の優しそうなポケモンではあるが、この個体はただならぬ雰囲気を放っている
かわいらしい丸い顔つきに似合わぬ攻撃的な赤い眼光、体内を脈々と流れる雄大な植物の生命エネルギー
このドレディアは野生でも鑑賞用でもなく、幾多のバトルで鍛え上げられた百戦錬磨の戦鬼である
その戦闘力は若い野生のタブンネなど比べ物にならない
チビママンネはこのドレディアが只者でないことは雰囲気と身体からの音で理解していたのだが
判った所で胸にベビ、足元にベビの今の状況では戦うことも子供たちを連れて逃げることもままならない

「ミィィィィィィィィィィィ!!」
「ミィッ?!」

その強さと恐ろしさが分からなかったのだろう。
勇者ンネがドレディアに向かって突進してスカートの部分にポテンとぶつかった
チビママンネへの恩義を心に込めたの渾身の一撃だったが
その突進はドレディアに何のダメージも与えることもなく、逆にチビママンネが驚いて隙を作る結果になってしまった

「ドレディア、鼻っ面に眠り粉だ。赤ん坊にはかけるなよ」

指示を受けた瞬間、ドレディアはチビママンネの眼前へと一足飛びに降り立ち、顔面に頭の赤い花を突きつける
視界が赤い花に覆われた次の瞬間、チビママンネは驚く間もなく意識が暗闇に落ち、ガクンと膝を落とした
花弁からの眠り粉を直に吸わされたのだ
強制的に眠りに落ちてもなお抱いていた小ベビンネを放すことは無かったが、
倒れる直前にドレディアが腕の中からたやすくスポッと引き抜いてしまった

「よし、一応そこのチビにもかけといて。量を少なめにな」

勇者ンネは反動の痛みにもめげず未だに臨戦態勢だったが
眠り粉が振りかけられると風船から空気が抜けるように力が抜け、眠りに落ちてばたりと倒れた

「そいつらを外に連れてって誰かほかの人に渡すんだ。僕はまだやる事があるから後で行く」

ドレディアはこくりと頷き、両脇に小ベビンネと勇者ンネを抱えて準備室の外へ出て行く
その際、植物のひんやりとした肌触りを不快に感じ、小ベビンネが「ヂィィ…」と辛そうなうめき声を上げた
それに反応し、倒れたチビママンネの耳がピクッ、ピクッ、と小さく動く
意識が確かなら何が何でも取り返しに行く所だろうが、寝不足の体に眠り粉は効きすぎた

「あれ?何ざんすかこのドレディアちゃん?」
「キュー、キュルルン」
「あらまおちびちゃんたち、私にくれるざんすか?、ありがとざんす〜
 チカちゃん、おちびちゃんのケージを持ってくるざんすよ」

こうして小ベビンネとチビママンネは再び離れ離れになり、
タブンネとあそぼうMIMIパラダイス・二日目が幕を開けた

76ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:05:48 ID:tYPZp40w0
二日目は初日にも増して客足が多く、開始20分前には会場前に長蛇の列が出来る程だ
社員たちの苦労もそれに伴って増える… かと思いきやそうでもない
他の部門から助っ人が手助けに入ってくれてよりむしろ昨日より余裕がある感じだ

「かーわいいー!」「餌だよ〜」「こっちおいで〜」
「ミィミィ!」「ミーッミ!」「ミィミ、ミィミ!」

場内の子タブンネ達も跳んだり跳ねたり、鳴いたり擦りついたりと餌をくれアピールに励み
大喜びで貰った餌を頬張る姿は客たちを大いに喜ばせた
人懐っこい子タブンネは客に抱っこされながら餌を食べたりもしていた
一緒に遊んだ子タブンネとの別れを惜しみ、連れて帰るとダダをこねる子供
可愛らしい小さな家族を迎え入れ、微笑みを隠せない老夫婦
カップルが子タブンネを可愛がる姿は、まるで本当の家族のようだ
滑稽な腰ふりダンスを披露し、餌のおひねりを大量に貰い大喜びの子タブンネ姉妹
新しいお母さんを見つけた甘えん坊の子タブンネ
せっかく貰った餌を横取りされて客の女の子に慰められる気の弱い子タブンネ
餌が欲しいのに怖くて自分から人間に近づけず、片隅でミィミィと泣き続ける小さな子タブンネの兄弟
会場のがやがやとした雑音の中には悲喜こもごもの人とタブンネの声が混ざり合っていた

「チィチィ… チィチィ…」

さて、会場に移された小ベビンネはどうしてるかというと、自分が置かれている状況に怯え戸惑っていた
チビママンネの暖かい腕の中で眠っていたハズなのに、目を覚ましたら昨日と同じような人ごみの中…
母親と再開し、一緒に過ごしていた時間が夢だったかのように思えるほどの急激な環境の変化だ


「ミィーミ!」「ミーミ!」「ミッミッ!」
「チィィ…」

しかし、その状況は昨日よりか幾分かはマシである
ケージは買い物籠から展示用の水槽に変わり、注意書きのポップは取れないよう結束バンドで頑強に固定された
これで昨日のようにゴミ箱と間違えられることも無いだろう
それに加え、勇者ンネが仲間に声をかけて護衛隊のような物を作り、ケージの周りを守っている
メスの子タブンネは周りを警戒しながらも時折ガラス越しに小ベビンネを慰め、
オスの子タブンネは人間が近寄ると気を引いて水槽に近づけないようにしていた
人出が増えて余裕ができた女子社員もマメに様子を見に来る事が出来
皆の助けによって小ベビンネはチビママンネが傍に居なくてもでもいくらか安寧を保っている
あくまでも昨日に比べたらの話で、常に泣きそうになってる状態ではあるが

77ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:06:51 ID:tYPZp40w0
『ご来店のお客様に連絡いたします
 本日、午後1時より、タブンネの赤ちゃんの授乳体験を開催いたします
 まるで天使のように愛らしい赤ちゃんタブンネたちを、この機会にぜひともご覧ください』

大したトラブルもなく社員たちが接客に追われているうちに、授乳体験ショーの開始を告げる放送が流れた
すなわち、チビママンネの手からベビンネが奪われる時がやってきたのだ

「…私が行きます」
「え?、大丈夫ざんすか」

女子社員は自らベビンネを連れてくると申し出た
気が利く社員は面倒な客の質問責めにあっていて動けない状況だったのだ
ざんす男は心配したが、女子社員は覚悟を決めていた
あのチビママンネに憎まれようが嫌われようが、
優しいお客さんの下で育ててもらう以外にベビ達が生き延びられる道は無いからである

「フーッ、フゥ…」

準備室の中のチビママンネは気が利く社員によって猿轡を噛まされ、足を手拭いで縛られていた
昨日の反省から、両手は自由にしてベビの世話ができるようにしている
あの最後に残った乳首は赤く腫れ、母乳はベビたちに吸い尽くされていた
しかし8匹のベビたちの空腹を満たす事はできていない

「フ、フゥ、フゥ!」

女子社員の顔を見たチビママンネは嬉しそうな顔をして塞がれた口でフゥフゥと鳴いた
この拘束から解放してくれると思っているからである
だが、女子社員は何も言わず目も合わせず、
部屋の片隅に置いてあるあのショッピングカートの乳母車を持ち出しベビーサークルの柵に横付けした

「フゥ…?」
チビママンネは覚えていた。怖い人間がベビを連れ去るときにあの道具を使う事を
そして困惑している。なぜ優しい人間があれを使おうとしているのかと

「ベビちゃんたち、おいで ミルクの時間だよ」
「チィ♪」「チチー♪」「チッチ!チッチ♪」
「フッ?!」

女子社員は柵の前でしゃがみながら淡々とした口調でベビを呼び寄せた
「ミルク」という単語を覚えていたのだろう、ベビ達は嬉しそうに女子社員の下に集まって行く
そして一番早く近づいてきたベビンネを抱き上げて籠に入れた

「フッ、フッ、フゥゥーー!!」

最初のベビンネが乳母車に入れられた瞬間、チビママンネはハイハイで女子社員へと向かっていった
溢れる涙を抑えることもせず、涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにして
その様は身体が大きくはあるがベビ同士の競り合いに負けて母親に甘えんとする小ベビンネそのものだ
やはり血のつながった親子である

そんな哀れなチビママンネも、抱き上げたベビンネが時折振り向いて母親を気にするのも
女子社員はなるべく見ないように、気にしないようにして心を押し殺しながら4匹のベビを載せていく

78ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:09:52 ID:tYPZp40w0
「フフィーーーーーーッ!!」

ベビーサークルの金策にしがみ付き、遠ざかる女子社員の背中に向かって叫ぶチビママンネ
それは怒りの雄叫びではなく、悲哀に満ちた懇願の叫びだった
まだ怒りをぶつけられた方が女子社員は気持ちが楽だっただろう
動揺から一度はぴたりと足を止めたものの、チビママンネを振り返ることもせず再び歩き出し
ベビが乗ったカートを押しながら部屋を出て行ってしまった

「チィチィ!」「チーチ…」

カートの上のベビたちはミルクへの期待もありながら、不安の色を見せ始めていた
もちろんみんなチビママンネが泣いてるのを気にしていたのだが
ベビのうちの一匹だけは女子社員の泣きそうになっている顔を、憐れむようにじっと見上げていた

「フーッ、フゥゥゥゥ!!フゥゥゥーッ!!! フィユゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

部屋に残されたチビママンネは4匹のベビたちを抱きしめながら激しく慟哭した
ベビを奪われた事だけではなく、女子社員に裏切られた事への悲しさに
信じきっていた優しい人間にベビを奪い去られるだなんて思ってもみなかった
今朝罪の意識に苦しんでいたのは何だったのか?昨日暴力から庇ってくれたのは何だったのか?
もう人間の事は何もわからず、何も信じられず、ただ嘆き苦しみ泣き叫ぶばかりであった

「ヂィィ…」「フィィ…」

選ばれなかったベビの方もチビママンネの感情が伝わってきて自分も悲しくなり、泣く寸前であった
空腹なのにミルクが貰えなかった悲しみもあったが
ちなみに最後に残ったベビの内約はチビママンネの実子が2匹、お隣さんのベビが1匹、第二飼育室の大ベビが1匹である

「あっ、チカちゃんごめん。機材の準備は終わったから早速始めてよ」
「…はい」

女子社員は胸が張り裂けそうな罪悪感を堪え、笑顔を取りつくろって司会を始める
授乳体験ショーは秘めた悲しみを知る由もなく盛り上がり、拍手と笑い声の中で順調に終わり
出演したベビたちは30分もしないうちに4匹とも売れていった
これは女子社員が慣れない営業トークで頑張ったからでもある

「フゥゥ〜ン!フゥゥ〜ン!!」

4匹のベビが全て売れていった後、準備室にはチビママンネの息が詰まった泣き声が響いていた
ベビーサークルの金柵を血が出る程に握りしめ、ガクガクと体を震わせている
連れ去られたベビの声が遠ざかっていくというのに、
止めることも追いすがることも、お別れの挨拶すらもできなかった
残ったベビたちは空腹でチィチィとお乳をねだり始めたが、今飲ませても一吸いで終わってしまうのは自分がよくわかっている
ベビたちに何もしてあげられない無力さに、自分もベビと同じように泣きじゃくるしかないのだ

79名無しさん:2017/06/28(水) 02:08:56 ID:z853ZngA0
更新乙ンネ
チビママンネざまああああwwwwww

80名無しさん:2017/06/28(水) 21:35:37 ID:2/Wt6G/Y0
ナイス!
小ベビンネは当分売れそうにないが、
その分苦しみも長く続くんだな

81名無しさん:2017/06/28(水) 23:58:57 ID:CncU5Viw0
勇者ンネの護衛隊も長くもちそうにない、護衛自体が売られて最後に小ベビンネが残りそう

82ショーケースの裏側で:2017/06/29(木) 03:21:46 ID:lwVIkV220
午後二時、会場に異様な客がやってきた
フリルがついた黒紫色の長いスカートのワンピースに、それと似たような色の無造作なウェーブがかかった長い髪
常に見開いたような目をした背が高い薄気味悪い女だ
その女は子タブンネに餌をあげる事もなく、ただきょろきょろと何かを探しながら会場をうろついている
異様な様に子タブンネたちは女を避けていき、場内の社員達は何かしでかすのではないかと警戒していた
女は闇雲に会場を歩きまわった後、ある場所でぴたりと歩みを止めた
小ベビンネのケージの前だ

「ミ、ミィ」「ミ、ミィ〜ン ミィ〜ン…」「ミッミッ!ミッミッ!」

気を引こうとしたり威嚇したりと、子ベビンネ警備隊は怖い女を小ベビンネに近づけまいと頑張っているが
女は気にする様子もなくしゃがみこんで注意書きと小ベビンネを交互に見比べている
自分を見下ろす紫の瞳に小ベビンネは恐怖し、声も出せずにケージの隅で丸まって震えていた

「店員さん、ちょっといいかしら…」
「はい、どういたしましたか?」

怖い女は近くでさりげなく見張っていた気が利く社員に声をかけた
不意を突かれたようで少し動揺した気が利く社員だったが、何とか普通に対応できた

「このタブンネ、怖がりってかいてあるけどどのくらい怖がりなのかしら?」
「そうですね、知らない人に触られたら暴れて泣き叫ぶくらいの人見知りで怖がりですね
 正直あまりお勧めできる子ではないです」
「いーえ… ちょうどそういう子を探していたのよ…。触ってもいいかしら?」
「嫌がって騒ぐと思いますが、まあ軽く触れる程度でしたら大丈夫ですよ」

嫌がると言ったにも関わらず怖い女は嬉々として小ベビンネに手を伸ばした
その手は獲物ににじり寄るアーボのようにゆっくりとした嫌らしい動きで小ベビンネに迫る

「フィッ?!フィッ!フィィィッ!!ゥヂーーー!!!」
「ふふふ、いい哭き声だわ…」

小ベビンネは迫りくる手に恐怖して狭いケージの中を必死のハイハイで逃げまどい
追いつかれて指先で触られた瞬間悲鳴をあげた
本来はタブンネが嫌がる行為はルール違反なのだが
止める役の気が利く社員は買ってくれるかもしれないという期待から黙認していた
周りの客たちも変人と関わり合いになりたくないという心理から助けてくれる様子はない
おまけに女子社員は休憩中である。つまり小ベビンネをこの女から救って人間はいないということだ

「キヂーッ!ギヂーッ!ギヂーッ!!」


首の後ろの皮を掴まれ、持ち上げられてしまう小ベビンネ
痛みと恐怖から大声で泣きわめき、股間からはポタポタと尿の滴が落ちる
弱弱しく短い手足を振り回して抵抗らしきこともするが、何の効果も意味も無いのは明らかだ

「このタブンネ買わせていただくわ」
「ありがとうございます。これがそのタブンネの値札になりますので、こちらを場外のレジに…」

小ベビンネの苦しみとは裏腹に、気が利く社員は嬉々として小ベビンネの値段とバーコードが書かれたカードを取り出す
やっと心配事がひとつ片付いたと安堵しているのだ

「ヂィヂィーッ!ヂィヂィーッ!」

この鳴き方、ベビンネが母親に救いを求める時の泣き方である
準備室のチビママンネもこれを聞いて歯噛みして激しく苦悶してることだろう
怖い女も気が利く社員もそんな事知る由もなく、値札を受け取ろうとしたその時

83ショーケースの裏側で:2017/06/29(木) 03:23:43 ID:lwVIkV220
「ミッミッミィーーー!!」
「な、何?」

怖い女が痛みと声に驚いて振り返ると、1匹の子タブンネがペチペチとお尻を叩いていた
勇者ンネである。小ベビンネの危機に居ても立っても居られず攻撃に転じたのだ

「ああっ、すいません。すぐにやめさせますんで」

すぐさま勇者ンネは気が利く社員に両腕を掴まれて持ち上げられたが、その攻撃の意志は折れない
怖い女をキッと睨みつけて、短い脚をバタバタと動かし眼前の敵に向かって当たらぬ蹴りを繰り出し続ける

「何?わたしと遊びたいのぉ?」
「ピィィッ!?」

怖い女は小ベビンネをケージに戻し、勇者ンネの眼前にヌッと顔を近づける。鼻と鼻がくっ付きそうな近さだ
眼前に広がる悪意に満ちた不気味な笑顔、見開いた紫の瞳、裂けたようなニヤついた大きな口
人間でも恐ろしいと思われるそれに、子タブンネである勇者ンネは耐えられなかった

「ヒッ!ヒュイッ!ピィッ!ヂュアーーーー!!!」

勇者はンネは一層激しく足をバタつかせた
だがそれは攻撃の意思などではなく、目の前の恐怖から必死に逃れようと足掻く哀れな様だ
両目をぎゅっと瞑り、悲鳴を上げながらもがく様にはもはや勇者の姿はない
その様子に怖い女は口角を上げて嬉しそうにエヘエヘと小さく不気味に笑い
攻撃に参加しようと身構えていた護衛隊の子タブンネたちは唖然として戦意を喪失していた

「やっぱりこっちの子にするわ。渡して頂戴」
「かなり荒れているようですのでお気を付けください」

怖い女は暴れる勇者ンネを蹴りが胸に当たるのも気にせず強引に抱き寄せた
気が利く社員は女の腕の中で暴れて怪我をするのではないかと心配したが
抱かれた瞬間勇者ンネはピタリと大人しくなった
もちろん安心しているのではなく、更なる恐怖で動けなくなっているのだ
その抱き方は赤ちゃんを抱っこするような優しい抱き方だったが、
腕の中の勇者ンネはガチガチと歯を鳴らしながら激しく震えている

「ではこちらの値札でお願いします」
「ありがとう、いい買い物したわ…」

怖い女は値札を受け取った後M勇者ンネを抱いたまま出入り口に向かって歩いて行く
その際、勇者ンネは震えながらも時折ミィミィと通り道のタブンネ達に何かを訴えかけていた
「さよなら、元気でね」「こいつに構わないで」「ぼくは大丈夫だよ」
鳴き声の意味は様々だが、その中に誰かに助けを求める言葉は何一つ無かった
仲間やチビママンネをこの恐怖に巻き込まないようにする勇者ンネの最後の強がり、いや勇気である
場内のタブンネ達は餌を食べることも、客に媚びる事も忘れ
これが今生の別れになるであろう勇者の姿をずっと見つめていた

「こんなに怖がって震えちゃって… 私の心が分かるのねぇ?」
「ミィィ…」

これからの勇者ンネの暮らしはそれはそれは恐ろしいものになるのだろう
だが心配はない。仲間を心配する必要も、守る為に戦う必要も、群れのリーダーの息子として振舞う必要もなく
思う存分恐怖と苦痛に泣き叫べるのだから

84名無しさん:2017/06/29(木) 04:32:44 ID:8zAw2Z9I0
盛り上がってまいりましたw

小ベビ命拾いしたみたいだけど
まだまだ恐怖が足りないよね

85名無しさん:2017/06/29(木) 21:53:29 ID:KLeRMVqE0
いいねぇw できれば勇者ンネの悲惨な生活と末路も書いてほしいものです

86名無しさん:2017/06/29(木) 23:07:15 ID:WBUiYk.c0
勇者・チビママ・小ベビンネの末路は気になるよねw
楽には死なせずゆっくり苦しめてくれると嬉しい!

そして小ベビンネには、紫女を上回る恐怖が待っていてほしい。

87ショーケースの裏側で:2017/07/01(土) 01:08:49 ID:AxR/HFe.0
その後、特に面白いこともなくあっという間に午後3時、最後の授乳体験ショーの時間だ

「ムフゥゥゥ!!ムフゥゥゥ!!」

今度は気が利く社員がベビを連れていくべく準備室にいるのだが、室内は荒れていた
ベビーサークルが尽く引き倒されて無造作に転がり
敷かれていたペットシートはズタズタに裂かれてて部屋中に散乱していた
チビママンネが怒り狂って暴れたからという事は想像に難くない
たぶんさっきのアレだろうなと気が利く社員はうんざりしながらも自分で納得していた
チビママンネは怒りの表情でフーフーと荒く息を吐いて威嚇を繰り返すが、ベビの姿は見えない
姿が見えないというだけで、気が利く社員は居る所はちゃんと分かっていた
寝床の毛布が不自然に盛り上がりモゴモゴと蠢いているのだから

「それじゃあドレディア、頼むぞ」
「ピチュチュ」
「ムフーーッ!」

目の前にあのドレディアを出されてもチビママンネは怯むことは無かった
自分の後ろのベビの事を想うと、心の底から力が湧いてくる
それが全身に満ち渡り、熱い闘志が漲る。これが愛の力というものだ、
そして愛するベビを守る為、小さなタブンネは大敵に立ち向かっていく。ハイハイで
だがその切なる愛の力も、顔面への眠り粉の直撃で一瞬で闇に沈んでいった

「フィ… フゥ…」

まさか戦うことすら出来ずにベビを奪われるとは…、チビママンネの無念は計り知れない
気が利く社員は悠々と毛布を剥がし、中にいた4匹のベビを回収し
練乳で機嫌を直してからカートの乳母車に載せてドレディアと共に準備室を去っていく
遠ざかる最後のベビたちの楽しそうな声に、チビママンネの閉じた瞳から一筋の涙が流れた

「なにあれ?」「きれーい」「あっ、赤ちゃんだ」「かわいーっ」
「チィ!チィ!」「チィ〜チ♪」「チッチィ〜♪」

ざんす男の案で会場までドレディアに乳母車を押させた所、客の受けは上々だ
ベビンネを世話する優しい森の保母さんか、
森からベビたちを連れて遊びにきたお姫さまにも見えるシチュエーションだ
実際は実母を昏睡させて掠め取ってきた鬼畜なのだが、その可憐な見た目からは何もわかるまい
見物客のの歓声にベビ達も楽しい気持ちになり、呑気にチィチィと可愛さを振りまく
普段は無表情な気が利く社員のドレディアも心なしかうれしそうだ

「兄貴、あのドレディアかなり強そうですぜ…」
「ああ…、どう見てもバトル用のドレディアだな、それもかなり鍛えてる」

客の中にもちらほらとドレディアの強さを見抜くものがいた
このセリフの男二人もそうだ、この男たちはこのイベントで使う子タブンネたちを調達した
あのペットポケモン業者の兄貴分と弟分である
二人とも朝から社長と共にイベントの様子を見に来ていたのだ
…のだが大金が入った直後に巨大デパートに来たもんだから社長がはっちゃけてしまい、
4時間も荷物持ちさせられながら買い物に連れまわされて今に至るというわけだ
そのため二人とも憔悴しきっていてかなりテンションが低い

88ショーケースの裏側で:2017/07/01(土) 01:12:30 ID:AxR/HFe.0
「ふたりとも!そんなところで見てないで中に入って近くで見ようよ〜」

一方、社長は夏休み中の小学生の如く元気いっぱいである。どこからそんな体力が出てくるのかは乙女の謎だ
三人揃って入場受付を済ませて中に入ると、ざんす男が早足で駆け寄ってきた

「社長さんも社員の皆さんもようこそお越し頂いてありがとうざんすよ
 お陰様でご覧の通りの大盛況ざんす!」
「いえいえ、こちらこそ大量に購入頂いてありがとうございます
 …ところで、授乳体験の方は大丈夫でしたか? 何かトラブルとかございませんでした?」

内心、社長は授乳体験ショーが上手くいくか不安だったのだ
ベビンネも子供も不確定要素の塊、どうしても順調にいくとは思えない

「あー、初回はトラブル続きだったざんすが、2回目3回目は順調そのものだったざんす
 ベビィちゃんたちが思いのほか素直ないい子で助かったざんすよ」

どちらかというよりは素直というよりは単純か楽天的と言ったほうが正しい
感情に敏感な性質が仇となって、ベビンネは好意の感情を向けてくる者に簡単になびいてしまうのだ
もちろん個体差はあり、簡単には心を開かない小ベビンネのような子もいるが

「ミッミ!」「ミーミィ♪」「ミーミ、ミー♪」
「あら、タブンネちゃんたち…」

どんなトラブルかを詳しく聞こうとした所で、社長の周りに5匹ほどの子タブンネが集まってきた
第一飼育室で社長が管理していた子タブンネたちだ
この子タブンネたちにとって社長は地獄のような生活の中、甘いオボンと微笑みと優しい言葉をくれた唯一の人である
そのため、たくさん餌をもらえるようになった今でも顔を覚えていて、そして慕っているのだ
最も、社長はタブンネの個体ごとの顔など覚えてはいないが

「ほらほら、ごはんだよ〜 あわわ、順番順番だよ」
「ミミ〜♪」「ミッミ、ミッミ」「フミィ〜♪」「ミリミィ?」

社長の周りの子タブンネはぞろぞろと増え、20匹近くにに囲まれてる状況となった
子タブンネたちは餌をねだったり足に擦りついて甘えたりと皆社長が大好きな様子だ
そんなタブンネ達に社長は少々窮屈そうにしながらもしゃがんで一匹ずつ手渡しで餌を与えていく

「ふへぇ〜、モテモテざんすね」
「どういう理屈かはよく分からんですけど、社長は子供のタブンネに好かれるタチなんすよ」
「やっぱりちょっとタブンネに似てるからかな?」

弟分がタブンネに似てる発言をした瞬間、社長の餌をやる手がぴたりと止まった
周りの子タブンネたちは恐怖し、ゾゾゾッと一斉に後ずさりして社長から距離を取った

「リマくん、女の子にそんなこと言っちゃあダメだよ…」
「ひっ?!!すいませモガガ…」

社長はおもむろに立ち上がり、謝ろうとする弟分の口に残りの餌を全て突っ込んだ
弟分は冷や汗を流しながらモガモガと苦しんでいる
タブンネは可愛いがぽっちゃりしたイメージがあるので、
女性にタブンネみたいに可愛いなどと迂闊に言うと嫌な思いをされる事があるから注意が必要だ
社長のような最近体重が増加傾向で気にしている女性には特に

「あのバカ思いきり地雷踏み抜きやがって…」
「わ、私も言葉には気をつけるざんすよ」

社長がなんとなくタブンネに似てるという事はざんす男も兄貴分も常々思っていた事で
ざんす男は言わなくて良かったと安堵して、兄貴分は呆れるばかりであった

「ボフフェエ!!」
「フミィ〜ン!」

耐えられなくなった弟分の口から餌の塊が鉄砲水のように噴き出した
その吐き出されて地に落ちたグチャグチャの餌に一匹の子タブンネが駆け寄り、四つん這いになって食べ始める
それは偶然にも、あのざんす男が会社を訪れた際に餌をあげた浅ましいタブンネだった

89ショーケースの裏側で:2017/07/01(土) 01:17:57 ID:AxR/HFe.0
混沌極まる状況だが、ショーが始まると皆そっちに意識が集中し
授乳体験ショーで子供たちが喜んでいるのを見ているうちに社長の機嫌はすっかり治った、
そして終わった後の余韻も消えたときに社長はある事を思い出す
最初のショーで起きたトラブルの詳細をざんす男に聞こうとしていたのだ

「小さいベビィちゃんが触られるのを嫌がっちゃって、ショーに出た子供が泣いちゃったんざんすよ
 何とか代わりのベビィを用意して事なきを得たざんすけどね
 あとは授乳の時哺乳瓶の蓋を外して飲ませた子供がいて…」
「あらら、それは… ところで、その子供を泣かせたという赤ちゃんタブンネは何所に?」
「まだ売れ残ってる筈ざんすよ。あー、あの水槽の中で隔離して販売してるざんすよ
 触っただけで大騒ぎするざんすから正直売れる気がしないざんす」

ざんす男とともに小ベビンネの水槽へ様子を見に行く社長たち
表情や言葉には出してないが、社長は不良品を選別できずに売ってしまったことを後悔し
そして八つ当たり気味に小ベビンネに憤慨しているのだ

「うぇ〜… これは売れないわけだよ〜」
「こりゃ完全に怯えきっちまってますぜ」

社長一行が水槽を覗き込んだ時、小ベビンネはチィとも鳴かずにケージの隅っこで丸くなって震えていた
怖い女のショックは大きく、これでも周りの人間たちから必死に身を隠しているつもりなのだ
護衛隊は既に全滅していた。人間に積極的に構っていったのが災いし売れるのが早かったのである

「この子だったら返品して頂いても大丈夫ですよ」
「ホントざんすか! いや〜良かったざんす。悪いざんすね契約書に返品不可ってあったざんすのに」
「いえいえ、悪いのは私どもの方です。ここまでペットに向かない子が混ざるのはこちらとしても想定外でした
 本来なら選別で弾くべき個体でしたのに気づかずに売ってしまって…」

社長たちが返品について色々と話し合っている所を気になって、女子社員はわりと近くからその様子を見ていた
それに気づいたのは兄貴分である

「おっ、司会をやってたお嬢さんですな、どうかしましたかい?」
「えっ… いえ、あのおちびちゃんを買ってくれるのかなと思って」
「いや、俺たちはここのタブンネたちを納入した会社でね、あのチビを返品する方向で話が進んでるんだ」
「返品!?」

驚いて叫んでしまった女子社員にざんす男と社長が振り向いた
女子社員は失礼なことをしてしまったと焦ったが、
社長がにこやかに笑って軽く挨拶をしたので安心し、思い切って気になることを聞いてみることにした
女子社員が社長に会った第一印象はとても柔和で優しそうで可愛らしく、
子タブンネたちに好かれそうなお姉ちゃんといった感じで
チビママンネの乳首をむしり取った犯人だとは想像にも至らなかった

「あの、あの、返品された後そのおちびちゃんはどうなるのでしょうか…?」
「うーん、うちの飼育室で少しずつ人に慣らしながら育てて、人に懐くようになったら出荷 …かな」

これは社長の体裁を保つ為の嘘
子供を泣かせるようなベビンネなど、くびり殺した後ドブ川にでも捨ててやるつもりでいるのだ

「じゃあ、じゃあ、この子のお母さんタブンネは…!」
「あーそうですな、元いた場所に帰しましょうか」「うん、それでいいよ」

これに答えたのは弟分、本当の事を言っている
野生に返せばまた来年にベビンネを産んでくれるという期待を込めてのことで
乳首をむしり取られてるという事を知らないからの提案であるが

「あの、あの、お母さんタブンネとおちびちゃんを一緒にはしてあげられないんですか?
 このおちびちゃんはお母さんがすごく大好きで、離れたら怖がって泣いちゃって
 粉ミルクよりもお母さんのおっぱいの方が大好きで、…とにかく一緒じゃなきゃ生きていけないんです」
「いやしかしそう言われてもこっちも商売だから、せっかくの商材をみすみす無駄にすることは出来ませんぜ
 でもまぁアンタもずい分入れ込むねぇ」
「この子はベビィちゃんたちのお世話の担当もしてたざんすから、情が移っちゃったみたいなんざんすよ。いやはや」

たとえ恨まれようとタブンネの子供たちを飼い主の下へ送ると決心していた女子社員だが
小ベビンネだけは実の母親がいないと生きていけないだろうと思い続けていた
水槽の中で怯え震える小ベビンネを見ると、その考えに疑う余地はないと確信できる
他のベビンネたちなら優しい飼い主の下で幸せに生活できるだろうが、この子だけは…

「そんな… おちびちゃん…」

女子社員は黙りこくって少し考えた後、注目する4人の前で意を決して口を開く
この状況から小ベビンネを救える方法は、もはや一つしかない

「このおちびちゃん、わたしが買います」

90名無しさん:2017/07/01(土) 02:24:56 ID:p1QSbCu20
乙ンネ

91名無しさん:2017/07/01(土) 04:53:56 ID:4oOWLKvA0
乙乙
小ベビンネはくびり殺された後ドブ川に捨てられる運命は回避したが
チカちゃんの手にかかるコースに変更か

92名無しさん:2017/07/01(土) 07:21:48 ID:QnuqWmzc0
主婦とかならともかく、仕事が有るのに
こんなクソめんどくさい奴飼えるのか?

93ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:50:06 ID:ESC9g.5c0
「ふぇっ!?チカちゃんが買うざんすか!でも大丈夫ざんすかね?このおちびちゃん飼うの難しそうざんすよ?」
「あのお母さんタブンネも一緒に買うつもりです」
「それはいかんざんすよ、あのマーマさんは借り物ざんすのに」
「あ、そういう事なら返さなくて大丈夫ですよ。オマケとしてつけてあげてください」
「なら大丈夫ざんすね、それじゃあ私もオマケして特別に仕入れ値で売ってあげるざんすよ」
「ありがとうございます!」

トントン拍子で買うことが決まり、女子社員は水槽をよいしょと持ち上げて控室に持っていこうとした
買うことが決まった以上ここに置いとけないという理由だが

「あー、買うんだったらこれに入れちまったほうがいいですぜ
 一番安いやつだけどこんなチビなら一個で大丈夫でしょう」
「あ、ありがとうございます」

そう言って弟分から手渡されたのはモンスターボール
女子社員が小ベビンネにそっと押し当ててみると、小ベビンネは光とともにボールの中に吸い込まれ、
手の中で2、3度揺れたかと思うと、しゅんとその動きを止めた

「私、ちょっと控室に行ってきます!」

お礼もそこそこに女子社員は控え室に急ぐ、早くチビママンネに会わせてあげたいという気持ちからだ
一人暮らしを始めたばかりでポケモンを2匹も飼うのには不安はあったが、今は楽しみの方が勝っている

「これからずっと一緒かぁ… ふふふ」

準備室に向かう途中で、女子社員は色々と妄想していた
フカフカの寝床を作ってあげて、でも寂しがったら皆で一緒のベッドで寝て
オボンの実とポケモン用のおやつ、どっちが好きかな?
おちびちゃんが大きくなったら、一緒に公園にでも行ってポケモンのお友達も作ってあげよう
大きくなったらきっと怖がりも直ってて…
さみしい一人暮らしで、帰りが待つポケモンが居ることはどんなに素敵な事だろう!
女子社員の中で、タブンネたちと一緒の生活への期待がどんどん膨らんでいった

「フゥゥ…フゥゥ…」

一方、控室ではチビママンネが目を覚まし、そして絶望していた

目覚めたときには居て然るべきはずのベビの姿はなく、愛しい声もすでに遠く聞こえない
ショーの後購入希望者が殺到し4匹とも一瞬で売れてしまったのだ
さらに外からの小ベビンネの声も聞こえなくなっている
ベビたちがいなくなった部屋はシンと静かだ
自分がここで大勢のベビの世話に奮闘していたことが夢だったかと思えるほどに

「フフゥ… フゥ… フフ…」

ひとしきり絶望しきった後、チビママンネはもそもそと奇妙な事を始めた
糞や尿やヨダレのシミがついたペットシートの切れ端を拾い集め、寝床の毛布の上に乗せていく
掃除をしているかと思われるかもしれないがそうではない、ベビたちの痕跡を集めているのだ
知らない人から見れば汚く臭い紙屑だが、チビママンネにとっては大切なベビがここにいたという証、
すなわち形見。ベビのうちの誰も死んではいないが
こんなことをしてもベビが帰ってくる訳ではない、何の意味もないのはチビママンネも分かっている
だがそれでもやらずにはいられない、心が壊れてしまいそうなのだ

94ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:51:17 ID:ESC9g.5c0
「タブンネさん!」
「フィフィィ?」

そんな淀んだ空気の準備室に女子社員が飛び込んできた、チビママンネとは対照的にとても嬉しそうな顔だ
そして突然帰ってきた女子社員に目を丸くして驚くチビママンネ

「ダブンネさん!私と一緒に家へ帰りましょう!友だちに… いや、家族になるんですよ!」
「フゥ?フゥ?フゥゥ??」

チビママンネは女子社員が言ってることがまるで理解できなかった
そして拘束を外してあげようと迫る女子社員に怯えながら後ずさりで遠ざかる

「どうして逃げるんですか?、それを外してあげるんですよ」
「フゥッ!フゥッ!フゥッ!」

女子社員がさらに近づくとハイハイで逃げ出して
寝床の上に置かれた紙片に覆いかぶさり、そして抱きしめた
それは自分の体を盾にして子供たちを守ってるかのような姿だった

「タブンネさんどうしたんですか、なんでそれを…」
「フゥッ!フゥッ!フゥーッ!」

それでもなお猿轡を外そうと差しのべられた手を、チビママンネはペチンと叩き払った
そしてフウフウと悲壮に女子社員へ訴える、「いじめないで、これ以上私から何も奪わないで」と

「フゥーッ!フゥーッ!フゥーッ!」
「タブンネさん…」

酸欠で顔が赤くなっても、チビママンネは涙を流しながら塞がれた口から強く息を吐き続ける
威嚇してるようにも許しを乞うようにも見えるその様は、まるで天敵にでも追い詰められてるかの如くだ

「…そうですよね、私はタブンネさんの大切な赤ちゃんを取っちゃったんです
 一緒になんか、居たくないですよね・・・」

95ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:52:05 ID:ESC9g.5c0
女子社員は悟った、自分は絶対に許されることはなく、チビママンネとは二度と仲良くなれない事を
小べビンネを救ったと思いこんで舞い上がって、チビママンネの気持も何も考えないで…
楽しい暮らしを呑気に妄想していた自分を殴りたくなる
今の自分がチビママンネにしてあげられる事は、ただ一つしかない

「アレを捕まえるにゃやっぱりポケモンで少々痛めつけなきゃ厳しいんじゃ」
「いや、チカちゃんの目の前でそれをやるのは可哀そうですよ
 僕のドレディアが眠り粉を覚えてるからそれで頑張りましょう」
「それならなんとかなりそうですな、そうしましょうや
 それでダメならこっそり兄貴のルカリオの真空波を…」
「この際奮発して高いボール使っちゃおうよ」

一方、準備室の扉の前では会社の会社の3人と気が利く社員が何やら話し合っていた
連れ帰るにはチビママンネも捕まえさせなきゃいけないという事に後で気づいたからだ
作戦の方針を決めた後、4人は扉を開けた

「あ、皆さん…」
「チカちゃん、それは…」

3人の目に飛び込んできたのは、嬉しそうに小ベビンネを優しく抱きしめるチビママンネと
その姿を見て涙を流しながら微笑む女子社員だった
彼女の足元には、蝶番の所を踏み折られたモンスターボールが

「あ… ごめんなさい。せっかく貰ったものなのに…」
「いや、気にしねぇでいいですぜ。いや、でもそいつらを買うのをやめちまうんで?」
「いいえ、買う事には変わりありません。でも…」

女子社員は社長の顔を見つめてこう切り出した

「あのタブンネさんの親子を、元いた場所に帰してあげてください」
「えぇ! 1万5千円も払って野生に帰しちゃうの!?」
「いいんです、それがあの子たちにとって一番幸せですから
 それで、もう捕まえずにそっとしておいて欲しいです」

女子社員の選択に皆が困惑していると、チビママンネが部屋に危険な人間が集結してる事に気づき
小ベビンネに覆いかぶさって自分の身を縦にして守ろうとした

「チィチィ♪」「フォッ?!」

母親が傍にいると小ベビンネは暢気なもので、乳首に吸いついて母乳を飲みだした
社長はそれを見て「あれ、1個ミスってたかな?」と口から零してしまったが
運よく女子社員に聞かれる事はなかった

96ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:52:49 ID:ESC9g.5c0
「私、あのお母さんタブンネにすごく嫌われちゃったんです。だから、もう一緒には居られないんです
 …でも、最後にもう一回だけ」

そう言いつつも女子社員はチビママンネに歩み寄る
チビママンネ息を荒くして警戒したが
女子社員はそれも気にせず床に膝をつき、チビママンネを抱きしめた

「…ファ?」

チビママンネが感じた女子社員の心の音は温かく優しく、そして切ない
それは昨日、怖い人間から守ってくれた時に抱きしめられた時と何も変わらぬままだった
だったら、なぜあの時自分からベビたちを奪ったりしたのだろうか…?
いくら考えようが、チビママンネの頭では納得する答えは出てこない

「それじゃ、眠らせますよ」
「まったく羨ましいぜ、俺も早く眠りたいよ」

その後チビママンネは眠らせてから箱に入れて持ち出す事が決まり
ドレディアによって再び粉がかけられた
さすがに日に3回もかけられると効きが遅くなってくるようで
眠っているというよりかは微睡んでいるといった様子だ

「チィ… チィ…」

朦朧したまま箱に寝かされる際、
小ベビンネが女子社員に向かってその小さな手を伸ばしているのが見えた
それはまるで、別れを惜しんでるかのように
この人見知りな子が好きになるって事は、やっぱりあの人はいい人間なのかな…
そんな事を最後に思い浮かべ、チビママンネの意識は闇に落ちた


「・・・ミィ!?」

チビママンネが目を覚ました時、そこは車に揺られる暗い箱の中だった
またベビを奪われたのかと一瞬焦ったが、
自分の隣からは聞きなれた小さな可愛らしい寝息が聞こえてくる
ホッと一安心したが油断は出来ない、外からはあの恐ろしい男二人と社長の声も聞こえてくるのだから

「あんないい子に飼われたらあのタブンネも幸せだと思うんだがなぁ」
「そうですぜ、代わりに俺が飼われたいぐらいでさ」
「うぇー、リマくんの変態!」
「まー、一人暮らしだっつうし、それで2匹飼うのは辛ぇもんがあるなー」
「大人になると1メートル超えちまいますからね、そうなると餌もかなり食うし」

97ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:53:42 ID:ESC9g.5c0
そうこうしてるうちに3時間近く経ち、チビママンネの故郷の林に辿り着いた

「それじゃタブンネちゃんたち、出てきて〜」
「ンミミ…」「チィ・・・」

3人は林の近くに車を停め、そこでチビママンネ親子を解放した
2匹ともマーカーをつけておき、間違えて捕まえないように配慮も万全だ
11月の午後6時はもう夜だが、星と月が林を薄明るく照らしている
社長はビデオカメラを回していた。後で証拠として女子社員に送るつもりなのだ

「ここがタブンネちゃんたちの故郷だよ〜」
「ミィ… ミィ…!」「チィ!」

チビママンネは小ベビンネを抱きながらキョロキョロと辺りを見回し、聞き耳を立てた後
トテトテと走りだして脇目も振らずに林の藪の中に入って行った
一刻も早く社長たちから逃げたかったのだ

「…行っちゃったね」
「…はい」
「…私たちも帰ろうか」

社長一行も車を出して帰っていく。3人とも往復6時間の長旅でとても疲れていたのだ

「ミィ!ミィ!ミィ!」

わが子を落とさないように気をつけながらも、林の中を全速力で走るチビママンネ
帰ってこれた事が嬉しくて気持ちは逸るばかりだ
思えば地獄のような三日間だったが、思い出すのはあの女子社員の事だ
一緒にベビの世話を頑張って、おいしい食べ物をくれて、怖い人間から守ってくれて
痛かったお乳を治してくれて、おっぱいも出るようにしてくれて…
悪い人間たちからこの子を取り返してくれたのもあの優しい人間かもしれない
ひょっとしたら、優しい人間は悪い人間にに脅されるか騙されるかして
無理やり酷い事をさせられていたのかもしれない
もしそうだとしたら、悪い人間から助け出して、ここに連れてきてあげたかったな…

「ミィ!」
「ミッミ!」

チビママンネの妄想は不意に浴びせられタブンネの声によってストップさせられた
その声の主はあのお隣さんタブンネである

「ミ、ミィィ…」

本来ならば再会を喜ぶべき場面だが、チビママンネは後ろめたさを感じていた
ベビたちを全員連れ戻してくると言って飛び出したのに、助けられたのは僅かに自分のベビ一匹
お隣さんのベビは一匹残らず人間に連れ去られてしまったのだ

「ミッミミィ! ミィ!」
「ミミィ…!」

それにも関らず、お隣ンネは再会できたことに素直な大喜びだ
お隣ンネは自分のベビの事を人間にさらわれた時点で死んだと思って諦めていた
もちろんベビたちが可愛くない訳はないし、大事じゃない訳でもない
以前に思い知った人間の強さと恐ろしさと兄貴分に蹴り飛ばされた子タブンネの看病
この二つの要因での断腸の思いでの決断である
チビママンネも2日帰って来なかった時点で死んだものと思っていたのである
しかし、この自分よりずっと若い小さなタブンネは諦めずに人間の棲家へと押し入り、
遂には一匹だけであるがわが子を取り戻してしまったではないか
その勇気と奇跡にはただただ賞賛し喜ぶばかりだ

98ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:57:09 ID:ESC9g.5c0
「ミィミ!ミィ」
「ミィーミ!!」

お隣ンネの喜ぶ顔で心も軽くなったチビママンネは一緒に巣のある場所に戻った
そこにあるのは懐かしい我が家
しかも、ドリュウズに破壊された屋根が奇麗に修復されている
留守の間にお隣ンネが直してくれていたのだ

「ミィ… ミィ…」「チィ!チィ!」

巣の入り口の前、生きてここまで帰ってこれた事に、チビママンネは嬉し涙を流す
腕に抱かれた小ベビンネもぱぁっと嬉しそうな笑顔で
巣に向かって小さな両手を伸ばし「早く入ろう」とせがんだ

幸せの絶頂のような様相だが、チビママンネとお隣ンネはある事に気が付いていなかった
いや、気が付いていたけど気にしなかったというべきか
いやいや、「気にしないようにされていた」というのが一番正しい表現だろう
自分のすぐ後ろを、四足歩行のポケモンが付いてきた事に

「あのタブンネ親子、あの後どうなるのかな?」
「んー、結構大丈夫じゃないですかね。あの辺にゃでかい肉食ポケモンもいないし
 食い物だって根っこが食えそうな草やドングリもありましたし、山の芋のむかごだって見かけましたぜ
 まぁー赤ん坊が沢山いたら持たねぇでしょうが、母一匹子一匹なら何とかなるでしょう」
「へぇー、じゃあ、なにも心配いらないねー」
「タブンネの心配するなんてらしくないですなぁ」

車の中で呑気な一行だが、社長もまたある事に気がついていなかった
タブンネたちとは違って撮影に夢中で素で気が付いていなかった…
自分のカバンの中に入れていたモンスターボールがパックリと口を開けている事に

「フィッフィーー!」
「ミィ?」「チィィ?」「ミ?」

巣に入ろうとするチビママンネと小べビンネは、不意に聞こえてきた澄んだ高い声に振り返る
そこで月光に照らされて小さな親子を見つめるのは長い耳とリボンの触角を風に揺らすピンク色のポケモン
「シルフィ」と名付けられた社長のペットのニンフィアだった

99名無しさん:2017/07/02(日) 06:16:45 ID:pGRz5IdI0
あーあwww

100名無しさん:2017/07/02(日) 07:23:06 ID:Xj4zVvbI0
小ベビにとって一番の恐怖と絶望とは何か…
あとはわかりますね

101名無しさん:2017/07/02(日) 11:51:54 ID:uz9vm7IU0
助かるはずだったのに自ら破滅して様は面白いな、しかもお隣さんまで巻き込んでww
何はともあれ、これ以上女子社員の手を煩わせなくて良かった。

102名無しさん:2017/07/02(日) 23:23:59 ID:TGS7MXro0
チカちゃんは早くいい男を見つけて幸せになってほしいね
タブンネに心を動かされてはいかん

103タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:16:23 ID:Gixssyhs0
イッシュ地方カラクサタウンの一角にタブンネショップ ミィミィが開店した

文房具や小物、学用品などから子タブンネやタブンネの餌などペットショップの

ようなこともやっていた

店員は店長とタブンネ三匹だけだがタブンネ好きにはたまらない店だった

だがそれはタブンネ好きでない人にとってはどうでもいい店ということでもあった

人口の少ないカラクサタウンではだんだん経営が悪化し店は人手に渡る事になった

104タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:25:35 ID:Gixssyhs0
俺はAタブンネショップミィミィとかいう妙な趣味した店を買い取ったものだ よろしく

早速だが友達のBとCとともに店を改装だ

ちなみに一応俺が店長でこいつらが店員 ジャンケンで勝ったからな

まず奥の部屋からだ部屋の隅にはポケモン用のトイレを設置

壁の何ヶ所かに給水機と餌箱

入り口付近に卵を温めやすい毛布とカゴを置いた

俺たちは元は部屋のリフォームが仕事だったからこの手のものには慣れている

105タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:36:29 ID:Gixssyhs0
店と一緒に買い取ったメスタブ三匹はBのルカリオが連れ出して町の外れにいる

部屋を一旦Bらに任せ町の外れを目指す

タブンネどもを見つけると気づかれないようにトゲキッスを出し

作戦を実行する

まずトゲキッスはルカリオに神速を放ち受けたルカリオは大げさに倒れる

メスンネどもは何が起きたかわからずミーミー騒ぎ出す

すかさずキッスが一匹の耳にエアスラッシュを放つ

片耳が綺麗に切り裂かれ「ミギャァアアア」と耳を抑えて泣き叫ぶ

うるさいと思っているともう一発今度はもう片耳も取れ

バシン バシン キッスの波動弾が触角を撃ち抜くと気絶した

他の二匹は声も出ず足もとを黄色く濡らしている 汚ねえ

106タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:51:04 ID:Gixssyhs0
ビュッ バシン ビュッ バシン 他ニ匹もマランネになって気絶すると

ルカリオが起き上がり小型の波動弾をメスンネの口に入れ声帯を潰した

相変わらず器用なやつだ

俺が出て行きトゲキッスをボールに戻すとルカリオはタブンネどもに

癒しの波動を打つ

メスンネどもは目を覚ますと目の前にいる俺に何か言いたげに口をパクパクさせるが

声が出ない まあ出たところでミィミィしか言わんしいいだろ

店に帰ると奥の部屋が出来ていたのでメスンネたちを入れついでにトゲキッスも放つ

タブンネたちの顔が恐怖に染まる

お前らは一生子作りだ

ひとしきり行為が終わり合わせて20ほどのタマゴができるとトゲキッスを戻し

餌箱に産地直送の新鮮な生ゴミを入れる

タブンネは母性が強いからどんな相手とのタマゴでも育ててしまう

奴らも早速悲しそうな顔で卵をカゴに入れ毛布をかけている

ただ悲しそうだがマランネなので笑える

今日はここまでにして部屋に鍵をかけ帰宅する

107名無しさん:2017/07/05(水) 16:16:34 ID:Gixssyhs0
今日も朝からいい天気だ

店に入るとチィチィチィチィすごい声だ

やはり防音設備は必要だなタブンネ農場から世話用メスンネを調達に行っているCに

メールし防音材を買ってきてもらおう

今日は店舗の表の改装だ

5分ほどしてきたBとルカリオと大型の段ボールを運び入れる

108タブンネショップ:2017/07/05(水) 18:10:59 ID:Gixssyhs0
ダンボールから水槽やゲージを出し組み立て式の台に乗せていく

前のオーナーが残していった「タブンネ」「用」「エサ」っていう文字が

可愛らしく書かれたプラスチックの薄い板を

エサ用タブンネに並び替えて貼り付ける

そうしているうちに午前中が終わった

品質チェック兼食事を兼ねてトゲキッスとガブリアス、ヒヒダルマを出して

タブンネの子育て部屋へ

ドアを開けた途端タブンネたちは部屋の奥に逃げて子供を抱えてこっちを睨んできた

109名無しさん:2017/07/05(水) 19:07:25 ID:bT6jz0Mo0
エサ用タブンネ・・・ベビンネを肉食に食わせるとか?ww

睨んでくるのは腹立つな、
子供を大人しく差し出すくらい従順にしつけないと

110タブンネショップ:2017/07/05(水) 20:22:50 ID:Gixssyhs0
すると突然ガブリアスがグルルルルと音を立てた

途端にママンネたちは子供を前に立てて尻を見せて丸くなった

さすがガブと撫でようとすると恥ずかしそうにしている

どうやら腹の音だったようだ

何はともあれベビンネを三匹回収してBがどこからともなく持ってきた七輪をセットした

水槽に入れているベビンネはヒヒダルマとルカリオに覗き込まれて声も出ない

111名無しさん:2017/07/05(水) 20:51:13 ID:Gixssyhs0
水槽に入れた三匹のうち一匹を掴み持ち上げるとぢーぢー

とものすごい声で鳴いて涙とよだれを垂れ流した

ベビの首にロープを巻き上から吊るし七輪の金網にギリギリ足がつくようにして

七輪に火を入れる

もう二匹はポケモン達にやったらキッスが見事に両方真っ二つにしたので

仲良く食べている

キッスからしたら自分の子供なはずだがタブンネだから気にしないのだろう

112タブンネショップ:2017/07/05(水) 23:05:48 ID:Gixssyhs0
七輪が熱くなってくるとチィチィと騒ぎながらステップを踏んで踊り出した

肉球が焼ける匂いが漂い始めるころ太った首からロープが取れて腹から熱くなった

金網に倒れこんだ すかさずトングで押さえつける

チィギャァァという鳴き声を聞いていると鳴き声が小さくなるほどいい匂いがしてきた

最後にチィという声がすればホカホカ炭焼きベビんねの出来上がりだ

113名無しさん:2017/07/05(水) 23:10:40 ID:CA40zzBw0
いいねぇ、やはりベブンネは焼くのが一番

114ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:19:12 ID:wkpBM6l60
「ミィィ?」「ミィ?」

捕食者、いやそれ以上にタチの悪いケダモノを前にしているのというのに、チビママンネとお隣ンネはポカンと呆けていた
なにせニンフィアはイッシュには生息していないポケモンで、タブンネ達はその存在すら知らない
容姿から判断しようにも自分たちと同じ桃色の毛並みに青い瞳の容姿はタブンネたちに親近感を覚えさせる
その鳴き声は敵意や威圧感を全く感じさせない澄んだ優しげな声、
そして躊躇なく自分たちの前に姿を現す無邪気さ
これらによってタブンネたちが捕食者と見抜けないのも無理はなかった
つまる所勇者ンネと全く同じ勘違いである

「ミィミ?」

お隣ンネの巣の入り口から子タブンネが出てきた。あの一昨日兄貴分に蹴り飛ばされた子タブンネである
幸い大した怪我ではなく、お隣ンネの献身的な介抱の甲斐あって2日のうちにすっかり完治していた
お隣さんの声と知らないきれいな声がしたので気になって様子を見たくなったのだ

「フフィー♪」

蹴られンネが出てきたのを見るとシルフィはにっこりと笑い、スタスタと歩み寄った
それは獲物に飛びかかる獣と言うよりか、オモチャに駆け寄る子供とも言うべきなんとも無邪気な歩き方だった

「ンミ?」
「フィッフィ!」

体高が自分の身長の2倍程もある知らないポケモンが眼前にまで迫っているというのに、
不思議なことに蹴られンネは全く恐怖を感じていなかった
触覚からの波動のせいもあるが、そのあまりにも天真爛漫な仕草に警戒心を持てなかったのである
ポカンと呆けている蹴られンネを目の前にしてシルフィはとても嬉しそうに一鳴きし
まるで皿に盛られた餌でも食べるかのようにその耳にカプリと食いついた

「ヂギュピーーーーー!!!」
「ンミッ?」「ミミッ??」「チチッ!?」

あまりにも突然な激痛に蹴られンネは泣き叫び、成獣二匹は何が起きたかわからずただ驚くばかりだった
シルフィは加えたまま引っ張り上げ、ブルブルと首を振って蹴られンネを振り回す
手始めに耳を噛みちぎろうとしているのだ
兄貴分の蹴りにも勝る耳が千切れる激痛に蹴られンネの悲鳴はさらに大きくなる

「ミィッ、ミィーーーーッ!!」


わが子の危機に気づいたお隣ンネが全速力でニンフィアに向かっていく
片手間で出した波動では思う心からくる闘志を抑えきることは出来なかったのだ

「フィッ?」

その叫びにシルフィは軽く驚いてピタリと振り回すのを止め、うっかり口の力が緩んで蹴られンネを地に落としてしまう
そしてあろうことかその隙にお隣ンネに子供を奪還されてしまった

115ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:19:47 ID:wkpBM6l60
「フィッフューー!」

シルフィはムッとして高い声で吠えて威嚇したが、声が怖くないのでお隣ンネは意に関さず
子供を抱きかかえたまま巣の中へ飛び込むように潜り込む
逃げ場のない巣に逃げ込むのは愚策かと思われるかもしれないが、このお隣ンネに限ってはそうではない
お隣ンネはなかなか聡明なタブンネで、逃げ切れる作戦があった

夜の巣の中は月の光さえ届かぬ真の闇で、敵はこちらを捕捉することに難儀するだろう
巣の中はタブンネ臭で充満しているので、鼻が利く敵も自分たちを察知するのは困難だ
一方、自分たちは耳のレーダーを使えばある程度は暗闇の中でも自由に動き回れる
敵が巣の中で右往左往している隙にもう一つある出入り口からこっそり逃げ出し、仕上げに入口を塞いでしまう
こうすれば安全な場所まで逃げるのに十分な時間が稼げるだろう
この作戦は父タブンネから受け継いだ生き抜く知恵であった

「ミッグ… ヒグゥ…」「ミーミィ…」

グズグズと泣く蹴られンネを抱きしめて慰めながら、
お隣ンネは巣の中心部で聞き耳を立てあの捕食者が入るのを待ち構えていた
暗さゆえに分からないが、蹴られンネの右耳は幾つもの裂け目が入りズタズタだ
治ったとしても元の形には戻らないだろう

「ミ…?」

その予想に反し、謎の捕食者は何時まで経っても巣に入って来ない
諦めてくれたのならそれが一番だが、気配は未だ入口の前に居座ったままだ
こうなると外に出ることも出来ずただじっと待つしかない
親子で息を殺して耐えていると突然巣の中に甘い匂いがする風がヒュウと吹き込んできた
外は風もない筈なのに変だなと思ったお隣ンネだったが、
思慮する合間もなく体の風が当たっている部分に猛烈な痛みが走った

「ギギギギィッギ、ギィィ!!」「ギヂヂヂヂヂヂ!ヂヂィ!!」

その痛みはお隣ンネ親子にとって全く未体験の痛みだった
例えるなら、グラスファイバーの粉塵を肌の柔らかい所に擦り込まれるような
金属ブラシで全身をメッタ刺しされるような、そんな感じのチクチクした嫌さがある激痛だ

これはニンフィアが使う「妖精の風」という技で、
フェアリータイプのエネルギーを帯びた桃色の風を相手に吹き付けるという技である
しかし屋外や広い場所では相手に当たるまでにエネルギーが飛び散ってしまい
相手に当たる時には大した威力では無くなっている為に弱い技とされているが
このタブンネの巣のようなかなり狭い密室では話は別だ
風に乗ったフェアリーエネルギーが飛び散ることなく濃密なまま容赦なく襲いかかるのだ

116ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:20:23 ID:wkpBM6l60
「フューッ、フィー、フィ〜」
「ググググッ!グググッ!ギギ…!」「フ… フィ…」

悲鳴から効果を確信したシルフィは、加減することなく妖精の風を巣の中に送り続ける
狭い巣の中では風が逃げ場なく全体に吹きわたり、さながら妖精の食器乾燥機といった様相だ
その地獄と化した我が家で、お隣ンネはわが子に覆いかぶさって風から守っていた

妖精の風が当たる箇所、すなわち背中全体は激痛と共に毛が抜け落ち、じわりと血が滲む
敏感な耳はそれにも遙かに勝る想像を絶する激痛に覆われ、お隣ンネの精神を幾度となく気絶寸前に追い込んだ
瞼にも風が当たって血が滲み、目を開けようものなら失明は免れないだろう
呼吸も満足にできない。一息吸っただけで肺に激痛が走ったからだ

だがそんな拷問にもお隣ンネは子供を守るために歯を食いしばって必死に耐え続ける
激痛に震えながらも庇う姿勢は崩さず、床に敷かれた枯草の床から僅かな土臭い空気を吸って息を繋ぐ
蹴られンネもそんな母の強さを触覚から感じ取り、息苦しさと痛い隙間風を懸命に耐えた


「…ミ、ミ?」
「フィッフィ…」

反応が芳しくないのが気に食わず、シルフィは妖精の風を煽るのを止めた
巣の中では突然風が止んだことに親子でひとまずはホッとしたが、
お隣ンネは油断をせずにすぐに次の行動に移った
入口を完全に塞いで風を送れないようにしようと、床の藁をひと固まり手に取った瞬間である
その時、タブンネの親子は暗闇の巣の中で月を見た

一方、巣の外のチビママンネであるが、怯えるわが子を抱いたままでは攻撃する事もできず、
かと言ってピンチの仲間を見捨てて逃げることも出来ず
つまり何をしていいか分からずただうろたえながら見ているだけだった
その見てる前でシルフィの体が光り、何か光の塊のようなものを巣の内部に吐き出していく
そしてキーン、キーンと高い音がしたかと思うと、お隣ンネの巣の屋根がまるで電灯のようにパッと光った

「ミ、ミィ?!」

異常な事態に困惑し、恐れるばかりのチビママンネの目の前で屋根は6回も光った
この頃になると一応お隣ンネが攻撃されているということだけは分かっていた
光るたびに巣の中からお隣ンネの悶え苦しむ音が聞こえてきたから
もはや小ベビンネは関係なく、ただ恐怖で足が竦んで動けなかった

「フィフィー!」
「ミッ?!ミッミ!」

巣の反対側からガサガサと草を踏む音が鳴り、シルフィはタタタと小走りでそこに駆け寄り
チビママンネも距離を取りながらも焦ってその後を追った

「ミヒィ・・・!」「フフッフフィ〜♪」
「グジィー グジィー…」


巣の中から這い出てきたそれが目に入った瞬間、チビママンネは戦慄し、シルフィはフィッフィと嬉しそうに笑った
居た、血と粘液に塗れた赤い肉の塊。お隣ンネのなれの果て、全身の皮を失った姿である
もちろん顔の皮も全て無くなっており、眼球もなく、折れた歯と歯茎を剥き出しにしたそれは何ともおぞましい
肘から先が無くなって白い骨が突き出た腕、ひん曲がって動かなくなった足で地面を這い、
地面に血の跡を残しながらゆっくりとではあるが逃げるように巣から遠ざかっていく

ここで説明しておくとシルフィの放った光の玉はムーンフォースと呼ばれる技だ
現在確認されているフェアリータイプの技の中では最も強力とされている技で
月から由来するエネルギーを炸裂する光弾として打ち出すという何とも美しい技だ
しかしシルフィのそれは見た目とは裏腹に余りにも残酷無比である

何の加減もなく闇雲に巣の中へ打ち出した光弾はお隣ンネ直撃はしなかったものの、
狭い巣の中での破裂は妖精の風のダメージを残していた半身の皮膚を容赦なく吹き飛ばした
その後のムーンフォースも直撃だけはしなかったものの、手足目耳、ついでに残ってた皮まで奪い去り
今の肉ダルマ状態になるに至ったというわけだ

「グジッ、グジッ、グジィィィィ」

お隣ンネ余りの負傷に恐慌して巣から逃げ出したかと思うだろうが、そうではない
この逃走は自分が食われているうちにわが子を逃がすという最後の作戦、哀しき最後の母の愛なのだ
だが誤算だったのはシルフィは食うために蹴られンネを襲ったのではない
タブンネで遊ぶために襲ったのだ

117ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:22:25 ID:wkpBM6l60
「フィフィフィッフィィ〜」

お肉丸だしのお隣ンネを前にしてシルフィがやった事は捕食ではなく、妖精の風だった
コレにムーンフォースやったらすぐ死んで面白くないという悪魔的な判断からの技選択だ

「ガゥゴギュルブゲヂギギュビグバァァアアアアア!!!!」

全身急所となったお隣ンネの全身に妖精の風は万遍無く染み入り、
その激痛の上塗りにもはやタブンネの声では無くなった奇声を上げながら
グネグネと激しく体を捩らせたり転がったりしながら悶え苦しんだ
粘液まみれに体じゅうに枯草の切れ端が付着し、それはそれは悲惨なサマだ
暴れているうちに腹が裂けて腸が露出し、それにも妖精の風が当たって苦痛はさらに倍増した
血のあぶくを吐き散らし、はらわたを振り乱しながらのたうち回る様はこの世のものではない
夜の林の片隅に、一匹のポケモンによって地獄が体現していた

「フィフィフィフィフィフィーーーwwww」

シルフィはその命を尽くしたリアクションに興奮して大笑いし、
チビママンネはうずくまってその地獄から必死に目を逸らしていた、
大泣きする小ベビンネを抱きしめ、逃げるために震える足を必死に動かそうと心の中で頑張っているのだ

「ミィッ・・・ ミィッ… ウッミィィィィィィィ!!!」
「フィィ!フフフィ〜♪」

リアクションも鈍り、終わりも近付いて来てるだろうという時に、
突然藪の中から蹴られンネが現れ、シルフィに突進していく
お隣ンネからも草むらに逃げ込んで動かないでと言いつけられていて、その通りこっそり抜け出して隠れていたのだが
母の悲痛な声を聞き、最後の家族を守るために戻ってきてしまったのだ

だが、庇われていたとはいえその体は無事ではなく
方耳は完全に千切れ、片手も手首から先を失い、体の所々で皮が剥がれ赤い肉が見えていて、
普通の子タブンネなら動けなくなる程の辛い怪我だろう
しかし、この蹴られンネはどんなに怖くとも痛くとも、最愛の母を見捨てるなんて出来やしないのだ
その悲痛な勇気と愛に、シルフィは小笑いしながらのムーンフォースで応えた

「ミミーーーーッ!!」
「……!!!」

チビママンネは叫んで蹴られンネを止めようとしたが既に遅く
光弾は胴体の真ん中に直撃し、驚く間も悲鳴をあげる間もなく
蹴られンネは閃光とともに赤い霧となって消えた
骨や肉の破片がポタポタと降り注ぎ、枯れかけた草むらをおぞましい赤い斑点で飾った

「グジィーグジー、グジュグギュルルァゴギィギュググググググググ…」

その時、糸が切れたようにお隣ンネはその命を終えた
耳も目も既に無いというのに、どういう訳かわが子の死がわかったのだろう
その死に顔には安らぎなど一切なく、妖精の風責めの苦悶にも勝る歪みきった絶望の表情だった

「フィッフィ♪ フィッフィ♪」

対照的にシルフィは笑顔で小躍りするように跳ねて大喜びだ
ママ(社長)から禁止されてる妖精の風やムーンフォースもこっそりたくさん使っちゃった♪
でもまだまだまだ遊びたい、こんどはちっちゃい子と遊びたいなぁ
たとえばあのちっちゃい子!

そうしてシルフィは、泣き崩れたチビママンネの腕の中の小ベビンネに熱い視線を向けるのだった

118名無しさん:2017/07/06(木) 19:23:59 ID:Ol0WuxzU0
タブンネは草むらのハッピーセット。
これを教えたのが、同族の勇者ンネwwww

蹴られンネは無謀だったけど、片耳片手損失した子タブが
野生を生きれる訳無いから楽に死ねる最善の選択に感じた。

119名無しさん:2017/07/07(金) 01:40:31 ID:snJqtsJY0
乙乙!盛り上がってまいりました!

120名無しさん:2017/07/07(金) 03:20:28 ID:mFo2WtWo0
ついに小ベビンネ処刑の時ですね!

戦わず逃げもしないチビママンネ、
想像以上のポンコツぶりw

121名無しさん:2017/07/09(日) 23:25:30 ID:ijU4HYBc0
おおーwニンフィアやりおるw
ここまで来たらタブンネだけに絶望を与えるために生きているようなものだなw

ニンフィア「僕と契約して、タブンネ虐待愛好家になってよ!」

122名無しさん:2017/07/10(月) 01:27:10 ID:0AoNiqfM0
チギュピーっていう泣き声に萌える

123名無しさん:2017/07/13(木) 19:17:15 ID:6uRddFuk0
今話題になってるヒアリをタブンネに襲わせたい

124名無しさん:2017/07/15(土) 03:59:48 ID:3XRDVj260
更新が待ち遠しい

125名無しさん:2017/07/28(金) 21:49:10 ID:7CMONjYQ0
ラストの展開に迷っておられるのだろうか?

126名無しさん:2017/08/02(水) 23:44:05 ID:6uZfIeqM0
のんびり待つのが正解よ

127名無しさん:2017/08/03(木) 00:51:28 ID:dVDxYrFQ0
過去の作品を読み返してたら
「チギュピー!」って叫び声が結構有って面白かったw

128名無しさん:2017/08/03(木) 07:32:57 ID:XgiV6czs0
自分は「チイチ♪」って喜び声がムラッと言うかイラッとしてきて嗜虐心が煽られます

129ショーケースの裏側で:2017/08/05(土) 02:08:18 ID:9tntAZXM0
「ミィィィ…」

シルフィと目が合ったその時、チビママンネはガクガクと震えだした

悪い人間たちの元からからやっとの思いで我が家に帰ってこれて、
最後に残ったベビちゃんと、仲良しのお隣さんと平和に暮らせると思ってたのに…
あっというまに仲良しのお隣さんは赤ダルマに、可愛かったその子供は赤い飛沫となって消えた
冒険の終わりに待っていたのは平穏などではなく、血に飢えた捕食者
いや、捕食者ですらない、あまりにも残虐極まる桃色の皮を着た悪魔である
そして今、その凶悪な眼差しはこの腕の中で震え泣く幼いわが子に向けられているのだ

「ウッ、ウミィ… ウミィィィィィィィィ!!!!!!」

チビママンネは恐慌して泣きながら走り出し、ただガムシャラに木々の隙間を逃げ続けた
足がが震えてもつれ、何度も転びそうになったがその足は止まらない
母親の恐怖の感情を感じ取って小ベビンネは大泣きし、
シルフィはそれを頼りに足に余力を残しながら悠々と追ってくる
それはまるで幼児と大人の鬼ごっこの如き圧倒的な差だ
命を掛けた追いかけっこの間、シルフィの頭に浮かんでいたのは
母親の前で赤ん坊をいたぶり、その反応を見て楽しむという邪悪極まりない遊戯である

「フミミン!フミミン!ンミーーーッ!!!」
「フィッフィッフィ〜〜♪」

どんなに頑張ろうとも両者の距離は詰まっていき、それが1メートル半にまで縮まった次の瞬間…

「ンミミッ?!」

「バチッ」と破裂したような音とともにチビママンネの両腕が突然軽くなり、
そこにあって然るべきはずの小ベビンネの姿が忽然と消えた
掌と腕にヒリヒリと痺れるような痛みだけを残して
チビママンネには知る由もないが、電光石火という技をシルフィが仕掛けたのだ

「ヂィィィィー!!! ヂィィィィー!!!」
「ン、ンミィィィィィィィィィーーーーッ!!」

悲鳴にハッと振り返ったチビママンネの目に映ったのは、
見ただけで気絶してしまいそうな有りうべからざる光景だった
一番の甘えっ子で、いつもチィチィとママに甘えてきたあの子が
どんなに情けない姿を見せても、最後までママだけを頼ってくれたあの子が
自分のベビも、友達のベビも、知らないべビもみんな奪われて、
優しい人間のお陰で最後にたった一匹だけ守りぬけたはずのあの子が
悪魔に足を銜えられ、ヂーヂーと泣き叫びながら逆さ吊りのままじたばたともがいているのだ
しかも噛まれた所からタラタラと血が流れ、お尻と尻尾の一部を赤く染めている

「ミミーッ!!ビィィーッ!!」

チビママンネは大慌てで取り返そうと両腕を掴んで引っ張るが、シルフィも口を離すことなく引っ張り返す
もちろんその引っ張り合いの負荷は小ベビンネの体に掛かることになり
足首の噛み傷はさらに広がり、両肘はコキリと脱臼してしまう

「ウゴバァァァァァァーーーーー!!!」
「ミッヒ?!」

小ベビンネはさらに増した激痛に泣き叫び、それにチビママンネはハッと気づいて手を放した
ここが南町奉行所のお白洲ならばチビママンネは子供を取り返せていた所だが
残念なことにこの小さな林に大岡越前はいない




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