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ツンデレじゃない長編投下・評価スレ
1
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 00:21:49 ID:39XN4txs
既存のキャラで長編を書いたは良いがツンデレ小説とはかけ離れたデキになってしまったことはありませんか?
(ツンがない、アクション、純愛、ギャグ一辺倒)
明らかにスレ違いと揶揄されそうな長編はここに投下しましょう。
またはこのスレの人達に評価してもらい本スレに投下するか決めましょう。
判断基準・ツ ン デ レ はあるか?
うん、ごめん建てたけど需要ないかも。
2
:
1
:2005/08/25(木) 00:32:41 ID:39XN4txs
需要があるかも分からんのにageておく。
3
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 00:44:08 ID:ggKXaOy6
長編がツンデレかどうか、ってのを評価してもらうスレだよな。
ちょっと厳しい意見でゴメ。
ツンデレじゃない長編も投下おkってスレなら、
本格的なSSスレでやったほうがよくないか?
ここがあることでツンデレじゃない長編おk、って空気が出来ちゃうのは怖いw
あー、ウゼーコイツと思ったらスルーしてくだされ。
4
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 00:50:34 ID:39XN4txs
>>3
うはwそこまで考えてなかったorz
まずそこからっすね
5
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 00:54:36 ID:bJpDc5Hs
長編に関する質問もここでいいのかな?
と言いながら、質問。
・長編で、ツンデレ主体じゃなくて、ツンデレなキャラが出てくるってだけなのはダメポ?
6
:
5
:2005/08/25(木) 00:55:32 ID:bJpDc5Hs
あ、もちろん脇役じゃなくて、ちゃんとメインキャラで出すけど
7
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 01:02:28 ID:ggKXaOy6
>>6
判断基準・ツ ン デ レ はあるか?
ツンデレなキャラがでてくるSS。
さあツンデレはあるか?
8
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 01:02:48 ID:39XN4txs
ようはツンデレ萌えがあればいいんじゃない?
ごめんもっと人集まってくれないと検討は難しいけど。
9
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 01:12:48 ID:bJpDc5Hs
>>7
一応あると思い込んでる
10
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 06:46:44 ID:msiNWKA2
俺はツンデレじゃないのは別スレで投下してる。
そのスレはちょっとコテの馴れ合いが多くてちょっとウザイが、適当なスレもないんでww。
11
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 07:32:30 ID:0Kkx74/.
最近は10レス以内の中編までしか投下してない俺が一言。
最初に脳内で考えてる時は、十分ツンデレなんだけど、
書いているうちに長くなってツンデレの無い回が増える俺。
一応、設定やストーリよりも、常にツンデレ重視で組んでたんだけどなあ。
12
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 15:38:48 ID:ggKXaOy6
>>11
そこはツン期→デレ期の境目の中性期ってことでひとつ
13
:
ロストマン 1/3
:2005/08/27(土) 02:16:29 ID:IEuNLHTo
まるで、出来の悪い喜劇。
…もしも神様がこの世にいるのなら、子供みたいに、無邪気で、残酷なんだろう。
見ていてくれたら、嬉しい、って…!
……でも、死んじゃったら、見届ける事なんて、できないじゃないか!
「うぅ…くっ……!」
努力して、努力して、努力して…!
他の人の、何倍も何倍も努力して!
周囲からの罵詈雑言も、堪えて、
こらえるたびに、努力して、努力して、努力して!!
「なんで…!なんでなんだよ……!?」
……それで報われないなんて、そんなの、おかしいよ!
そんなことは、絶対に、間違ってる。間違ってるんだ…!
「―――だって、だってそんなの、」
努力した人が、惨め過ぎるじゃないか…!
そんなの、虚しすぎる。そんなの、哀しすぎる……!!
――――――たくさん努力をしたなら、努力した分、報われるべきなんだ。
ぼくは、まだたったの十数年しか生きていない。
…だから。はたから見たら、こんなの唯のキレイゴトでしかないんだろう。
だけど、それでも。
……この想いだけは、間違いなんかじゃない。
――――――――決して、間違いなんかじゃ、ないんだ……!
14
:
ロストマン 2/3
:2005/08/27(土) 02:17:39 ID:IEuNLHTo
少し、眠ってしまったみたいだ。
父さんの遺した手紙が、なみだとか、はなみずとかで、くしゃくしゃになっている。
…外に出る気が、しなかった。
でも、かなみに休むって伝えないと。
「…ごめん、かなみ。
今日は、学校休むよ。ちょっと、熱があるみたい」
「アンタ、風邪じゃないでしょ。
…理由を教えなさい。それなら適当に取り繕ってあげるわ」
どうして、ばれちゃったんだろう。
嘘つくことには、慣れていたのに。
でも、かなみに教えるわけには、いかない。
同情も、哀れみも、ぼくは欲しくないんだ。
「……ただの風邪だよ。それ以上の理由は、ない」
「嘘つくの、ヘタね。
さっさと教えなさい、命令よ」
――――――もう、教えるしかない。
「……父さんが、いなくなったんだ」
そう、いなくなって。
―――――もう、二度と、帰ってこない。
「よかったじゃない、どうせすぐに―――――」
「ふざけんな!よくないに決まってるだろッ!!
どうせ!?どうせって何だよ、お前に俺の父親の何が分かるんだよ!?」
「いや、だってその………」
「今までずっと努力してきたアイツの、何がわかるって言うんだよッ!?
…分かるなら言ってみろよ。ほら、さっさと言えよ椎水かなみッ!!」
電話口から、かなみの声は聞こえない。
それで、ようやく、自分の過ちに気がついた。
…ぼくは、ばかだ。
誰も傷つけたくなんか、ないのに。
こんな言葉を、吐いてしまった……!
ぼくは、ばかだ…………!!
15
:
ロストマン 3/3
:2005/08/27(土) 02:18:46 ID:IEuNLHTo
「……ごめん、言い過ぎた。でも、ぼくは学校には行けない。
ちょっとの間、ほっといてくれ。かなみに、迷惑かけちゃうから」
ぼくは、いつも誰かに迷惑をかけて。
…やっぱり、ぼくはいらない人間なんだ。
「アンタ、やっぱりバカよ。
生きてく上で、誰かに迷惑かけるなんて当然のことでしょ?」
「…たしかに、そうかもしれない。
でも、ぼくは、かなみみたいに割り切れないんだ」
そういう生き方は、ぼくみたいな弱い人間には、できないんだ。
「学校、しばらく休むよ。風邪をこじらせたって伝えてほしい。
……ぼくのことなんて、誰も分かっちゃくれないだろうから」
「ウジウジウジウジ、いい加減あったまきたわ!
大体、アンタのことなんて、他人がわかるはずないでしょ!?」
…言われなくても、わかってる。
ただ、わかってほしいだけなんだ。
「ちょっと穿き違えてるみたいだから、一言だけ言っとくわ。
……アンタの周りにいる人たちは、人形なんかじゃない」
「そんなこと、言われなくてもわかってるよ…!」
電話を切る。
…回線を、抜いておいた。
――――――これ以上話すと、ぼくがぼくじゃなくなる気がしたから。
16
:
名無しさん
:2005/08/27(土) 13:48:02 ID:ta7UtgeM
>>15
GJ!!!
17
:
保守代わり長編の人
:2005/08/27(土) 14:45:16 ID:8dR622LE
ここは、一気に30レス投下してもおk?
18
:
名無しさん
:2005/08/27(土) 14:54:31 ID:ta7UtgeM
>>17
人いないし、いいんじゃまいか?
19
:
保守代わり長編23〜end (1/30)
:2005/08/27(土) 17:10:34 ID:8dR622LE
一人のエルフが森を駆け抜ける。
全力で、森中の気配を探る。無数に感じ取れる森の生き物の気配。そんな中、かすかに
漂ってくる邪の気配。それを目指して、ただひたすらにアスタは走っていた。
早くしなければ、魔王が降臨し世界が滅びる。それは絶対に起こってはいけないこと。
彼、アスタにとって世界の平穏こそが彼の信じる正義。彼はそれだけを信じてただひた
すらに生きていた。
そして今、魔王討伐という、まさに彼の正義の最終地点のような使命を与えられた。こ
ういうと不謹慎かもしれないが、彼は喜んでいた。
自分が、英雄になれるチャンス。(ちなみに彼は人でありながら、エルフに英雄と呼ばれ
たエドを心の師と勝手にしている)
気配は、着実に近づいている、あと少しだ。
だが、いついかなる時も、邪魔というものは入るものだ。
走る先、一人の男がたたずんでいた。二日前、小屋の外で話を盗み聞きしていた男だ。
気配で分かる。
闘志に満ちた気配。
アスタは剣の柄を握る。そして、そのままのスピードで男――リオンに攻撃を仕掛けた。
リオンも左手一本で剣を握り、対応する。
ガギンッ!!
馬鹿でかい金属音が森の空気を振動させた。
高速で走りながら振り下ろした一撃を、片手で止められた。そのことに多少の驚きを感
じつつも、アスタはすぐに後方へ跳び剣を構える。
対するリオンは独特の構えでアスタを迎える。
リ「悪いが、ここら先は絶対に行かせない」
ア「!? 何を考えているんだ!? お、お前はあの娘を守ろうとしてるのか!?」
リ「あぁ、そうだが? そんなに驚くことか?」
ア「あ、あの娘はもうじき魔王になるんだぞ! 何故守る?!」
リ「ニーナを守る。そう俺が決めたからだよ」
二人の男が、己の正義を胸に、戦いを始めた。
20
:
保守代わり長編23〜end (2/30)
:2005/08/27(土) 17:11:29 ID:8dR622LE
2500年前、魔王と神々との戦いに区切りが打たれ、世界が安定し始めた。それまで
逃げ隠れ細々と生きていた人間は、ようやく文明を発達させ始めた。
そして、その頃エルフ族の使う魔術に、人間は興味を持った。しかし、人間は魔術が使
えない。
そこで、当時の人間はエルフと血を混ぜることで、魔術行使可能な人間を作り出そうと
考えた。しかし、エルフは我々人間の欲深いところを危険に思い、決して人間とエルフが
交わらないようにと、エルフ達の間で法律を作った。
そこでエルフに一人の男が送り込まれた。男はエルフの女との間に一人の子を持つこと
に成功した。だが、すぐにハーフエルフの誕生はエルフ達に知られた。送り込んだ男はな
んとかしてハーフエルフだけは逃がすことに成功したが、ハーフエルフを生んだエルフの
女と、人間が送り込んだ男は処刑された。
しばらくして人間達は男の送った情報から、ハーフエルフを発見、保護した。
その後、研究所にてあらゆる実験が行なわれた。そして血液を採取した後、エルフがこ
のハーフエルフを始末しに来て、そのとばっちりを、人間が受けないように、先にハーフ
エルフを処分することを決定した。
だが、それを本能的に察知したのか? ハーフエルフは次の日の早朝、牢獄から逃げ出
した。
その後は、研究所では採取したハーフエルフの血液を使い、ホムンクルスの製造を試み
た。肉体そのものは、意外と早くにできた。けれど、魂ができなかった。
魂のないただの抜け殻。それでは全く意味がない。
擬似魂の製造。それは当時の人間の持つ知識では不可能な領域だった。
そのため、ホムンクルスの製造は暗礁に乗り上げた。
そして、ある時突然降臨した魔王の欠片。折角築き上げていた文明は、一気に壊され研
究所も崩壊した。だが、何とか研究員の一人が血液サンプルだけは回収に成功した。
その後、2500年の間。現れた魔王の欠片が竜族とエルフ達によって滅ぼされて、再
び文明を復活させようとしても、また途中で新たな欠片が復活し、ホムンクルスの研究も
全く出来ない状況にあった。
21
:
保守代わり長編23〜end (3/30)
:2005/08/27(土) 17:12:11 ID:8dR622LE
しかし、今から300年前の欠片の降臨を最後に文明の崩壊は起こっていない。
それによって、人間もそれなりに文明を戻し、再びハーフエルフのホムンクルス製造の
計画が持ち上がった。
だが、やはり擬似魂の製造が困難を極めた。
魂など、非物質に関する情報、知識を人間は全くと言っていいほど持っていない。
もう、ハーフエルフのホムンクルス製造は不可能なのか?
そう思われ始めた。
だが、意外なところから助け舟が出てきた。
現れたのは、一人のエルフだった。
彼は人間達に多くの知識を供給した。人間の全く知らなかった、細かな情報を与えた。
人間は彼に問うた。
―何故、我々にこんな知識を与えるのだ?―
エルフは言った。
―ハーフエルフと、人間に興味を持ったからだよ。でなければ、こんなことはしない―
よくわからないが、人間はこれによって一気に研究を進めた。
そして、今からおよそ20年前。ついに擬似魂の製造に成功。
ハーフエルフの完全なホムンクルスを作り出すことに成功した。
これは、強力な魔術兵器を手に入れたのと同義だ。
人間は感謝の意を込めて、エルフにホムンクルス一号の命名を頼んだ。
彼は自分の名前からいくつか文字を取り、それをラスティンと名付けた。
22
:
保守代わり長編23〜end (4/30)
:2005/08/27(土) 17:12:49 ID:8dR622LE
ドランドは興味あることしかしない。興味のないことは全くしようとしない。
ドランドは、ハーフエルフに興味を持った。理由は何なのだろう? 同じ異端者だから
だろうか? わからないが、彼はハーフエルフ――ミントに興味を持った。
次に興味を持ったのは人間だった。
人間はミントの血液からホムンクルスを作ろうとしていた。
全く以って馬鹿らしい。当時のエルフ達はそう思った。そのため人間のことはもはや眼
中に入らなくなった。何故なら、そんなこと不可能に違いないとエルフは思ったからだ。
ホムンクルスを作るということは、魂を創り出さなければならない。それは『奇跡』の
領域。魔王や神族くらしかできない『奇跡』だ。そんなことを、人間ができるはずがない。
そういう理由があって、人間は監視する必要なしと結論付けられた。
しかし、そんな人間にドランドは興味を持った。
本当に無理なのだろうか? 彼等の考え、アイディアは時に思いもしない物を作り出す。
もしかしたら、できるのではないか?
人間の持つ巨大な『可能性』。それにドランドは興味を持った。そして、知識を与えた。
するとどうだろうか。人間は擬似魂の製造に成功したのだ。もちろんこのことは他のエル
フには知らせていない。
作り上げられたホムンクルスは順調に成長し、今年21歳となった。
見た目は驚くほど美しく育った。だが、彼女に自我はない。もともとそうなるように魂
を創ったのだ。彼女は与えられた命令に必ず従う。まさに兵器だ。
そして、つい先日。ドランドはこの兵器を借りていった。
ドランドの目的――興味のあることは、コピー対オリジナル。どちらが勝つのか?
まるで子供のような考えだ。だが、彼はそれに興味を持ってしまった。
興味のないことは、徹底的に拒絶する。だが、興味のあることは、徹底的に試してみた
くなる。
それが、彼の性質なのだ。
だから、今ミントと、コピー――ラスティンは対峙していた。
ド「私は、あなたがこれに勝てるのかどうか、それを見てみたいんですよ」
ミントが苦渋の表情を浮かべた。
23
:
保守代わり長編23〜end (5/30)
:2005/08/27(土) 17:13:25 ID:8dR622LE
目の前のエルフが何を言っているのか。わかってるんだけど、理解できない。
混乱していると、ドランドはコピーに命令を下した。
ド「このハーフエルフを殺せ」
ミントを指差して言う。
その言葉で、コピーは動いた――いや、跳んだ。瞬時にミントの目の前に跳び込む。ミ
ントは突然のことで動けない。
コピー――ラスティンはミントの襟首を掴むと、そのまま思い切り壁目掛けてぶん投げ
る。
壁が砕ける。ミントの体が小屋の外に飛ばされた。小屋の壁に開けられた大きな穴。
その縁にラスティンが立ち、地面に倒れるミントを見た。無表情のまま跳び、大地に着
地する。
ミントは地面にうずくまりながら勝手に肺からこぼれ出る息を、何とか押しとどめよう
としていた。目を開き、こちらに向かってくる自分を見る。奇妙な光景だ。自分に殺され
る。馬鹿らしい。そんなこと、させてたまるか。
ミントが、ゆっくりと力を込めて立ち上がった。ふらふらとする体を、何とか支えなが
ら、目前の自分を見る。それは無表情。何の感情も読み取れない。まるで人形だ。
それが再び跳んだ。さっきと同じように懐に跳び込んで来る。しかし、今度は反応でき
た。全く同じでは、ミントでも分かる。地面を蹴り、体を後ろに飛ばす。
ラスティンの手は空を切った。だが、すぐにもう一歩跳び、逃げたミントに詰め寄る。
今度はミントの反撃。一瞬で魔術の構造を創りだす。描き出したのは炎。紅蓮の炎。
躊躇わず言葉を発する。
ミ「燃えろっ!」
詰め寄ろうとするラスティンとミントとの間の空間に炎の球が現れ、ラスティンを襲う。
ラスティンは体を右に飛ばした。大地を転げ周り、衣服についた火を消す。
そしてすぐに立ち上がる。両手足の布はほぼ完全に焼け落ちている。そこから見える皮
膚もひどい火傷を負っている。しかし、ラスティンは全く痛がるそぶりを見せない。
今度はラスティンが魔術の構造を編み出した。
世界の『法則』が覆され、ラスティンの想像した「法則」が具現化する。
魔術対魔術。
二人のミントの戦いが始まった。
24
:
保守代わり長編23〜end (6/30)
:2005/08/27(土) 17:14:00 ID:8dR622LE
ぶつかり合う剣と剣が火花を散らす。
リオンとアスタの攻防。
リオンが器用に敵の僅かな隙に攻撃をしようとすると、アスタが即座に反応して止める。
アスタが左右に剣を振れば、リオンが片手でその全てを受け止める。
リオンが縦に一息に剣を振る。しかし、それは空を切り地面に刺さる。すぐに抜き取り
アスタの攻撃をかわす。
アスタが一歩踏み込み、剣を横に薙ぐ。だが、それはリオンの着る服の先端を浅く切る
だけに終わった。
どちらも一歩も譲らない。
放たれる全ての攻撃をかわし、受け流し、受け止め、そしてカウンターを放つ。
だが、放たれたカウンターを、相手は全てかわし、受け流し、受け止め、そしてカウン
ターを放つ。
同じことの繰り返し。一歩も進まない戦い。
互角。
これを見たものなら、必ずそう思う。だが、実際にはそうではなかった。
アスタは全力ではなかった。
アスタはどうしてもわからないことがあった。
それは、何故目の前の男が戦うのか? それが分からない。それの理由を知りたい。だ
から、アスタはどうしても全力を出せずにいた。
もともとエルフとは対魔族用に神の創った生物兵器。素質の時点で人間とエルフは天と
地ほどの差がある。そして、彼、アスタはすでに200年を生きている。その内の150
近く、彼は剣術の鍛錬をしてきた。経験の差も歴然。
そもそも人間がエルフに勝てるはずがないのだ。
だが、アスタは全力を出せれない状況にあった。
何故、目の前の男は戦うんだ?
あの娘は魔王になる危険性を孕んでいるんだぞ!
覆しようのない悪のはずだ。
なのに、何故目の前の男はあの『悪』を守ろうとしているんだ?
分からない。
理解できない。
25
:
保守代わり長編23〜end (7/30)
:2005/08/27(土) 17:14:36 ID:8dR622LE
アスタは生きとし生けるもの全てが、共通に持つ『絶対的な正義』があると信じていた。
別に誰かに教えられてそう信じているわけではない。本人が、自ら思ったことだ。
絶対的な正義。それがあるのだから、相対的に絶対的な悪があるはずだ。
それは魔王。そうである。そうに違いないとアスタは信じていた。思い込んでいた。
けれど・・・・
けれど、目の前にいる男はどうだろう?
彼は絶対的な悪であるはずの魔王を、事実上庇おうとしている。
もちろん本気で魔王を守ろうとしているのではないだろう。彼が守っているのはあのニ
ーナとかいう少女だ。
だが、今守ったところでどうなる?
ここで、自分を殺し、ニーナが死ななくなっても、じき魔王が降臨する。そうすれば世
界は終わりだ。そのことを分かっていたら、絶対悪である魔王を滅ぼすことを最優先にす
べきではないのか? それが正義ではないのか?
自分と、目の前の男――リオンと、一体何が違うのか?
それは・・・・
それは、きっと・・・
優先順位。
そうだ、リオンとアスタの絶対的な違い。それは優先順位だ。
リオンはニーナを最上段に置いている。
それに対してアスタは、世界の平穏を最上段に置いている。
この違いが、二人の正義にズレを生じさせている。だが、やっぱり理解できない。魔王
は絶対悪。これは間違いないはずだ。だから、それを滅ぼすことを最優先させる。それは
当然のことじゃないか。
ア「何故だっ!? 何故、彼女を庇う!? 魔王が降臨すれば世界は終わるんだぞっ! 分
かってるのかっ?!」
アスタが剣を振る。それを受け止め、リオンが叫ぶ。
リ「分かってるよ! んなことっ!」
剣を弾き返す。アスタが、すぐにもう一撃放つ。
ア「だったら何故っ?! 何故!!?」
26
:
保守代わり長編23〜end (8/30)
:2005/08/27(土) 17:14:59 ID:8dR622LE
リ「ニーナを守る! それが理由って、最初に言っただろうがっ!!」
リオンがアスタの剣を再び弾き、反撃を放つ。それを受け止め、アスタが叫ぶ。
ア「守っても、すぐに魔王が降臨するんだぞっ!」
リ「ニーナを守り通したら、今度はしっかり世界も守ってやるよっ!」
ア「出来るわけないだろっ!」
横薙ぎの一撃。それをリオンが受け止め、一歩後ろに跳ぶ。そして、怒号と共に全力で
剣を振る。
もう嫌なんだ。
もう、大切な人がいなくなるのは嫌なんだ。
アミィの顔が浮かび、ニーナと重なる。
それだけは、それだけは絶対に嫌なんだ。
だから、だから!
リ「守るって言ってるだろうが! このクソエルフっ!!!!」
強力な一撃。初めてアスタの体勢が揺らいだ。体が僅かに傾く。
その隙を見逃すわけがない。
光の如く、閃光のような攻撃。その全てがアスタの体勢を崩していく。
勝てるっ!
そう思ったとき、視界の隅で何かがよぎった。そう思った時には、既にリオンの体は宙
を舞っていた。
地面に落ちる。二転三転。止まったところですぐに立ち上がり、アスタを見た。
アスタがゆっくりと右足を下ろしていた。
蹴り?!
頬がズキンズキン痛む。そっと触れてみると、その場所が痛んだ。
なるほど・・・・
攻撃は別に剣だけじゃないか・・・・
忘れてたな。
すぐに自分を戒める。
そして、再び剣を構えた。
27
:
保守代わり長編23〜end (9/30)
:2005/08/27(土) 17:15:30 ID:8dR622LE
もはや、彼には何を言っても通じない。決してその決意を曲げることはない。
そう悟った。
そして、思い出した。
前長老の言葉。
アスタが『絶対的な正義』を口にすると、前の長老は必ずこう言った。
『絶対的な正義など存在せんよ。正義は国によって、種族によって、個人によって変わる。
だから・・・・必ずいつか、全く相容れない正義を持つ者と戦うことがあるじゃろう。そ
の時は全力で戦うんじゃ。相手もそのつもりで戦ってくるはず。よいな? お前もその時
は全力を出せ。でなければ、己の正義を守れんぞ』
己の正義を守る・・・・・・
そうか・・・・これは、これは己の正義を守る戦い。自分の信じた道を、守る戦い。
故に全力を出さなければならない。自分の選んだ道を守り通すために。
全力を出さなければ、それは自分の正義を裏切ったことになる。それは出来ない。自分
の信じた正義を、裏切るわけにはいかない。
目の前の男もきっとそうだ。自分の正義を信じ、それを守る。道を歩み続けるために、
全力を出して戦っている。
なら、自分も全力を出さなければならない。
アスタの気配が変わる。
それをリオンも察知した。
さっきも言ったが、エルフと人間の力量は天と地ほどの差だ。
勝てるはずがないのだ。
アスタが動いた。
否。それは動いたというには余りにも速すぎた。
人間の目がそれを捉えられるはずがない。
気付いた時には勝敗はついていた。
リオンの腹に突き刺さったアスタの剣。
倒れて数秒後、リオンは自分の身に何が起こったのかをやっと理解して、死んだ。
その直後、森全体を強力な邪のオーラが包んだ。
ア「なっ!!? まさかっ!!?!」
28
:
保守代わり長編23〜end (10/30)
:2005/08/27(土) 17:16:03 ID:8dR622LE
リオンが死ぬ数十分前。
森を幾つもの魔術が破壊していた。
ミ「砕けろっ!」
声と共にラスティンの足元の大地が爆ぜた。
轟音と共に土砂が舞い上がる。しかし、立ち昇る砂煙の中からラスティンは何事もなか
ったかのように飛び出てきた。
ラスティンの口が僅かに動く。
すると、ミントの周りの空気の温度が急激に上昇し始めた。
ミ「熱っ!?」
すぐ、その場を離れる。すると、その動きを読んでいたのか、ラスティンが飛び込んで
きた。そして、回し蹴りを放つ。
ごうっ、と空気を切り裂く音。直撃すれば、頭蓋骨くらい軽く砕けるだろう。
格闘の技術が明らかに段違いだ。おそらくラスティンは幼少の頃より、格闘術を習わさ
れてきたのだろう。対するミントは、一応はエルフの血も入っている。才能は十分保障さ
れている。僅かな戦闘の間に、ミントはラスティンの動きを既にいくつか盗んでいる。
だが、やはり経験が少ないようだ。どう見ても、ラスティンの方が優勢だ。
ミ「くっ」
ミントが手を差し出す。
ミ「吹き飛べっ!」
暴風がラスティンを襲った。空中をラスティンの体が舞う。その体はそのまま後方の大
木にぶつかろうとした。が、その一歩手前でラスティンの体が急に方向転換して、それを
回避した。おそらく何か魔術を発動させたのだろう。地面に難なく着地して、そして口が
僅かに動く。
するとミントを囲むようにして氷の刃が現れ、それが一気にミントに降り注いだ。
ミ「壁よっ!」
ドーム上の半透明の壁がミントを守る。次々と壁に突撃して砕け散る氷の刃。
その全てを防御して、壁を消す。すると、そのタイミングを予想してか、巨大な炎の壁
がミントを襲った。
ミ「!?」
29
:
保守代わり長編23〜end (11/30)
:2005/08/27(土) 17:16:25 ID:8dR622LE
森中に響き渡るような爆音。
木々が吹き飛び大地がえぐれる。
灼熱の炎の風が吹く中、ミントは寸でのところで発動させた障壁で、なんとか生き延び
ていた。
ド「ふむ・・・・ハーフエルフといっても、魔力は十分に強いんだな」
ドランドは彼女達の戦いを、遠くの森を見渡せる崖――エドが酒を飲む時に行くあの崖
でその戦いを見ていた。
何故、今ミントとラスティンを戦わせたのか。
最大の理由は、彼女達が全力で戦えば、間違いなく巨大な破壊がもたらされるのがわか
っていたからだ。
できれば、オリジナル対コピーの戦いはすぐにでも見たかった。しかし、そうするとこ
ういった、『破壊』がどうしても発生してしまう。そうなるとエルフも遅かれ早かれコピー
の存在に気づく。そうなれば、間違いなく無断で知識を与えた自分のこともエルフ達に知
られ、間違いなく処刑される。
だから、彼女達が戦っても、ばれない。もしくは言い訳の言える状況が欲しかったのだ。
それがまさに今だ。
今なら、どんな『破壊』も、魔王のせいだと言い訳ができる。
故に今なのだ。
ニ、三度言ったが、彼は魔王の降臨などには興味がないのだ。
ド「うむ、面白い」
眼下で広がる攻防。
また、轟音と共に木々が吹き飛んだ。
30
:
保守代わり長編23〜end (12/30)
:2005/08/27(土) 17:17:00 ID:8dR622LE
自然が生み出した洞穴。
その中で、ニーナは一人膝を抱えて座り込んでいた。
遠くから聞こえてくる爆音。
何が起こっているのかはわからないけど、恐かった。
死が恐かった。
独りが恐かった。
空気の冷たさが恐かった。
そして何よりも、自分が恐かった。
魔王が降臨しようとしている。
リオンの言われた、信じがたい事実。
自分の両親――エドとミントに何があったのか、ニーナはある程度本人達から聞いてい
た。
だからこそ、リオンの馬鹿げたような話も信じることができた。
恐い。
死にたくないと思っている自分がいる。
だが、自分が生き続ければ、魔王が降臨して世界が、世界中のみんなが死ぬことになる。
だったら、自分が死ななければ・・・・魔王が降臨する前に死ななければ・・・
そう思ったけれど、死にたくない。
死にたくないと思っている自分がいる。
潔い人なら・・・・・自決するのかな?
だとしたら、自分はなんて女々しいのだろう。自分が 死ななければ、世界中の人々が
死ぬ。けれど、死にたくない。世界中の命より、自分を優先させている自分が恐い。
『何よそれっ! 恐いの!? 自分が大事なのっ!? アンタって最低っ!』
『何よ、そのこと? 嘘言わないでよ。俺は自分が一番大事だって、顔に書いてるわよ。
ばかっ』
いつの日か、リオンに言った言葉。
自分が情けない。何よりも自分が大事だと思っているのは・・・・自分じゃないか・・・
31
:
保守代わり長編23〜end (13/30)
:2005/08/27(土) 17:17:24 ID:8dR622LE
ニ「・・・グスッ・・・・リオン・・・・グスッ・・・・」
愛する人の名を呼ぶ。
その声が洞穴の中に響き渡る。
早く彼に会いたい。
彼の顔を見たい。
こんな時になって、改めて自分の中でのリオンの存在の大きさをニーナは知った。
会って、言いたい。
この気持ちを言いたい。
だから・・・・だから、早くこんな悪夢は終わってほしい。
だが現実は厳しい。再び遠くから爆音が聞こえた。洞穴の入り口を見る。すると焼けた
木々の欠片が火の粉となって空から降り落ちていた。
どうやら戦いは結構近くで行なわれているようだ。
そう思うと、より一層死の恐怖がニーナの心を侵食した。
ニ「うぅ・・・・リオン・・・・・リオン〜・・・・」
返事などない。
心が寂しさで一杯になる。
・・・・・・
?
・・・・・・・・・・・・・・どくんっ
!?
ニ「え?・・・・・」
どくんっ!
ニ「嘘っ!?!」
体の内側から生まれる、強大な『力』を、ニーナは感じ取った。
今? 今、この瞬間!?
ニ「うそっ! うそうそうそうそうそうそうそうそっ!!」
絶叫するニーナが、だが内側からせり上げてくる『力』を押さえることはできない。
ニ「■■■あ゛■■ぎ■■■■゛■■び■■ゃ■■■■■っ!!?!」
激痛で、ニーナの意識が飛んだ。
それとほぼ同時にその洞穴が外からの攻撃で吹き飛んだ。
32
:
保守代わり長編23〜end (14/30)
:2005/08/27(土) 17:17:47 ID:8dR622LE
舞い上がる砂煙。視界が全くない。
気配を探る。だが、見当たらない。
ミントは息を荒らげながら構え、次の攻撃に備えていた。
しかし、それは途中で中断される。
どこからともなく、有り得ないくらいに大きな邪のオーラがミントを襲った。
ミ「?!!?」
その気配に覚えがある。20年前、自分にとりついた魔王の気配。
それはすなわち・・・・
ミ「ニーナっ!!」
叫んだ。
もちろん返事などない。
未だに消えない砂煙。茶色の視界。ラスティンからの攻撃も、何故かない。機会をうか
がっているのか? だが、今はそれどころじゃない。
恐れていたことが起こった。
魔王再臨。
それが意味すること。
ミ「エドっ!!」
名を呼び、小屋のある方を見た。その時、背後から強烈な殺気がミントを襲った。すぐ
に振り向き障壁を生み出す。が、想像が不十分だった。生み出された障壁は完全にそれ――迫り来る真空の刃を防ぎきることはできなかった。ミントの右腕と左足の太ももを刃が
切り裂く。血が噴き出る。
ミ「うっ」
ようやく落ち着き始めた砂煙の中からラスティンが現れた。高速でミントを回り込み、
背後に立つ。そして回し蹴りを放つ。
死んだ。ミントはそう思った。頭蓋骨を粉砕する一撃。今の体勢では防御など不可能。
魔術を発動させたくても、構造を編み出すための時間が足りない。
目を瞑り、全てを諦める。
バシッ!!
目を開けた。生きてる?
33
:
保守代わり長編23〜end (15/30)
:2005/08/27(土) 17:18:09 ID:8dR622LE
生きていた。
ミントは死んではいなかった。
放たれたラスティンの回し蹴りは、ミントに届く少し手前でニーナの手によって止めら
れていた。
目の前の光景が判断できない。
何で?
ニーナが助けてくれた? 違う。今のニーナからは、魔王の気配しか感じ取れない。
だったら、魔王が私を守った?
まさか?
ニーナがゆっくりと、ラスティンを見た。
そして、『力』がニーナからラスティンに移った。
ドランドは立ち上がり、事態の把握をしようと必死になっていた。
何が起こった!?
魔王が降臨した。
そして・・・・・そしてどうした?
何が起こった!?
魔王の気配は今もまだある。
あるのだけれども、それが・・・・・・ニーナからではなく、ラスティンから感じ取れ
る。
ド「どういうことだっ!?」
・・・・・・必死に考える。
現状を見て、知識を総動員して、可能性の全てを検討する。
そして、一つの答えに行き着いた。
ド「まさか・・・・ラスティンに乗り換えたのか?」
・・・・・・・なるほど、考えれば、それはおかしくない現象だ。
ラスティンは人形だ。たとえ擬似魂を使っているといっても、所詮は空っぽの人形にす
ぎない。それに対してニーナは、ニーナの魂がある。
既に一人が座っている一人用のイスに横入りするより、初めから空いているイスに座っ
た方が、明らかに楽だ。
34
:
保守代わり長編23〜end (16/30)
:2005/08/27(土) 17:18:29 ID:8dR622LE
魔王は、それをしたのだろう。
魔王は人間に乗り移っても、大抵はその肉体の本来の持ち主である人の魂が邪魔をする。
そのため魔王は本来の力を発揮することはできない。20年前、人間のエドが魔王を滅ぼ
すことができたのも、ミントによる邪魔があったおかげだ。
しかし、これは違う。完全に空っぽの人形に入り込んだのだ。
邪魔などない。
完全な自由。
それは、最悪の事態。
突然、爆発的な魔力の渦が森を包み込んだ。
ド「ぐっ!」
吐き気がする。邪のオーラ。普通の人間ならそれだけで死んでしまいそうな、強烈な邪
のオーラ。
が・・・・・・何なんだろうか?
この違和感は。確かに邪のオーラは桁外れの大きさ。なのだが、何だか弱い。
言葉で表現するのが難しい・・・・・これは・・・・・・そう、邪は邪なのだけれども、
そこにそれ以上のものが何もない。ただ、気持ち悪い。ただそれだけの、何とも弱々しい
感じのオーラ。
ドランドは魔王を見た。そして把握した。
魔王の・・・・そこに魔王の意思はなかった。
それはただの力だ。魔王という力しかそこにはなかった。意思など20年前に完全に消
えてなくなっていたんだ。今のあれは、ただ本能に従って破壊をもたらすだけの存在。
拍子抜けだ。
邪の大きさに驚いていたが、よく見てみると、魔王の魔力の大きさはそれほどでもない。
むしろしょぼい。
どうやら、魔王はまだ以前の力を戻していないのだろう。実際、眼下の魔王は再び大気
中から魔力を吸収し始めている。
考えなんて何もない。ただ、本能に従って降臨し、待遇の良いところに流れ込んで、そ
して回復している。
ラスティンに魔王が移った時、僅かに生まれた興味も、すぐに失せた。
失望だ。
35
:
保守代わり長編23〜end (17/30)
:2005/08/27(土) 17:19:11 ID:8dR622LE
興味を持たされて、結局失望させられる。これはドランドが最も嫌う展開。
ド「私を失望させた罪は重いよ」
ドランドが弓矢を持つように構えた。もちろん弓矢は持っていない。
ド「それは光」
つぶやきと共に、光り輝く弓矢が出現した。
ド「それは音よりも速く、光よりも速く。放たれたそれは空を切り裂き、大地を震わす。
それは唯一つ、目標にだけ突き進む。それが大地に突き刺されば、それは終焉の合図。全
ては塵と化し、決して存在を残さない」
言葉を紡ぎ出せば、その分だけ光の輝きは増してゆく。呪文。自己の想像力を高めるも
っとも単純で効果的で、非効率な手法。戦闘中に長ったらしい呪文の詠唱などできない。
しかし、実際にすれば想像力は高められ、放たれる魔術の威力は格段に上昇する。
今の魔王は正直って弱い。まだ、完全には回復しておらず、大気中からところかまわず
エネルギーを吸収している。
だが、弱いといっても普通のエルフでは束になっても敵わない。こんなことを思えるの
は、彼ドランドがそれくらいに強いからだ。
ド「消えうせろ」
光の矢を放つ。
超高速で眼下の魔王目掛けて突き進む光の矢。
一瞬。
桁外れの爆発が森を包み込んだ。光のドームが生まれる。木々も大地も一瞬にして蒸発。
圧倒的な破壊力。キノコ雲が空高くまで立ち昇りその威力の凄まじさを見せ付ける。
数十分が経ち、煙が消えた。そこに、それは立っていた。
ド「!?」
右手を掲げたまま立つラスティン。いや、魔王。
本能的に危険を察知して防御したのか?
・・・・・・
しばらく思案する。そして大体の見当をつけた。
ド「何だこれは・・・・・ただのグッドエンドじゃないか・・・・つまらん・・・・」
心底つまらなそうに、ドランドはその場をあとにした。
36
:
保守代わり長編23〜end (18/30)
:2005/08/27(土) 17:19:31 ID:8dR622LE
アスタがリオンを殺し、森を走っていると。
目指しているのは突然現れた邪のオーラ。それは間違いなく魔王の降臨。
正直言って、自分が行ったところで魔王に敵うはずがない。けれど、行かなければなら
ない。
走る、走る。そして、それは見えた。
地面に倒れるミント。その横に立つ二人の女性。一人はニーナだ。もう一人・・・
ア「?!」
もう一人もミントだ。ミントが二人? 意味が分からない。何があった?
分からないが、ニーナの体から発せられる邪のオーラが、魔王のそれであることに違い
はない。早く倒さなければ、世界が滅びる。
走ろうとした時、異変は起きた。魔王の気配が動いた。
ニーナから、足を掴まれている『ミント』に。
ア「!?」
その途端、『ミント』が大気中から一気にエネルギーの吸収を始めた。
訳が分からない。
一体何が起こってるんだ?
考えが追いつかない。そして、それは唐突に襲ってきた。
何かが空を走り、そして爆発。
ア「断っ!」
脳が反射的に活動し、瞬時に障壁を張る。アスタの周りの空間が外界と断絶される。
障壁の外で繰り広げられる破壊。全てのものが吹き飛び、消し飛んでいく。
爆発が終わったあとも、もうもうと立ち昇る煙で全く何も見えない。
およそ数十分。ようやく煙は消えた。
それまで森のあったそこは、完全に焦土と化していた。そして、そこに立つ『ミント』。
『ミント』の周りにはミントとニーナも倒れている。
考えろ! 考えろ! 何が起こっているのか!?
常識を捨てろ! ありのままを受け入れろ!
想定、推理、考察、そして理解。
アスタの中で決断は下された。原因は分からない。だが、ニーナに降臨したはずの魔王
が、今『ミント』に乗り移った。
37
:
保守代わり長編23〜end (18/30)
:2005/08/27(土) 17:20:07 ID:8dR622LE
『ミント』から発せられる魔力は自分のそれを圧倒的に凌駕している。
普通に戦っても絶対に勝てない。ならば、それ以外の方法で勝たなければならない。
すぐに思い至ったのは、そばで寝ているニーナだ。その肩が僅かに上下している。
魔王の移動――すなわち魂の移動があったのに、まだ生きているということは、ニーナ
と『ミント』はまだ繋がっている。ならば、ニーナを殺せば同時に魔王も滅ぼせるはず。
アスタの下した決断はそれだった。
駆ける。
速い。リオンを殺したときの数倍の速さ。これが彼の全速力だ。
ただ単純に速さだけなら、アスタはエルフの中でも1位、2位を争う速さを持っている。
大きく『ミント』をまわりこみ、倒れているニーナに一気に走りこむ。剣を振り上る。
そして、ニーナの体を切ろうとしたとき、その肩を何者かに掴まれた。
急に、もの凄い力で肩を掴んだ何か。
アスタが振り向くと、そこには『ミント』がいた。それまで『ミント』のいたところを
見ると、そこには誰もいない。圧倒的に『ミント』のほうが速い。
?「ニーナは殺させないぜ。絶対に守るって言っただろう。クソエルフ」
ア「!!?!?」
『ミント』から発せられた言葉に驚愕する。その声は女の、ミント本人の声と同じだ。
だが、それは間違いなく、数十分前に殺した男だった。
『ミント』がアスタの顔をぶん殴る。
アスタの体が、まるで木の葉のように吹き飛び、大地を二転三転した。
38
:
保守代わり長編23〜end (20/30)
:2005/08/27(土) 17:22:01 ID:8dR622LE
リオンも、自分に何が起こったのか理解することはできなかった。
エルフと戦ってて、突然相手の気配が変わり、気付いたら血まみれで大地に倒れてて・・・
そして気付いたらこの体に入っていた。
とりあえず反射的に自分と、そばにいたニーナとミントを守ったわけだが・・・
リ「何なんだ? 一体」
自分の体を見回す。いや、それは本来の自分の体ではない。それはミントの体だ。
けれど、ミントはそばに横になって気絶している。
全く現状が理解できない。けれど、とりあえずエルフがニーナを殺そうとしていたから、
止めて、ぶん殴っといたわけだが・・・・
目の前のエルフが立ち上がり、こちらを睨んだ。
しばらく無言のままこちらを見て、何かに思い立ったふうな顔をして、言ってきた。
ア「そうか・・・・魔王が森中からエネルギーを吸収した時に、霊体となっていたお前も
また、魔王に取り込まれたのか・・・・・」
・・・・・・・?
アスタの言葉の意味はあんまり理解できない。
ただ、何となく・・・・分かる気がする。
まぁ、どうでもいい。まだニーナを守れそうだ。
39
:
保守代わり長編23〜end (21/30)
:2005/08/27(土) 17:22:22 ID:8dR622LE
全く・・・・どれだけ運がいいんだ。
アスタは心の中で毒づいた。
魔王は『ミント』の体に乗り移った後、そこら中からエネルギーを吸収した。その時、
死んで魂だけの存在となって森を彷徨っていたリオンを、魔王はエネルギーとして吸収し
たのだ。
普通なら、吸収されればそれはエネルギーとなって意思は残らない。
だが、あの魔王は普通ではない。『ミント』に乗り移った時に感じたが、あれはただの力
の集まりだ。あれ自体に意思などない。そこに新たに『リオン』という意思が流れ込んで
きて、最初にあの体のコントローラーを手に入れたのが、リオンだったのだろう。
・・・・・・・・
とりあえず、アスタは剣をしまった。両手を挙げ、戦う意志のないことをリオンに知ら
せる。リオンは不思議そうな顔をしたが、こちらが降参していることに気付き、殺気を消
した。
ア「終わりだ。もう戦う必要はない」
リ「さっぱり状況が掴めんのだが・・・・」
ア「アンタの執念が勝ったんだよ。俺にも魔王にも」
リオンはますます不思議な顔をしてアスタを見た。
とりあえず説明に時間がかかりそうだ。
40
:
保守代わり長編23〜end (22/30)
:2005/08/27(土) 17:22:47 ID:8dR622LE
ドランドが森を歩いていた。
表情から、機嫌が悪いことが手に取るようにわかる。
ド「全く・・・・つまらない。実につまらない。オリジナル対コピーの戦いは駄目になる
わ、結局誰も不幸にならん。つまらな――」
すとん!
愚痴を言って歩くドランドの足元に、突然矢が突き刺さった。歩くのを止めて辺りを見
回す。
数人? いや、もっとだ。凄い数のエルフが、彼を囲んでいる。その全員が弓を構えて
いる。
・・・・・・・
何だ、一応不幸になる奴もいるんじゃないか・・・・
エルフ達の中から、一人のエルフが姿を出した。
賢人会議で議長をやっているディラン=ラインドヴィッチ=パブリコ。初老の男性の姿
をした彼が、ドランドに言う。
デ「・・・・私達が何をしに来たかはわかっているな?」
ド「えぇ、まぁ・・・・さすがにばれますか? こんなに暴れたら」
デ「当たり前だ。我々をなめるな。人間に対する必要以上の技術供与。これは許されざる
行為。極刑に値するぞ」
ド「・・・刑の執行は・・・・今すぐですか?」
デ「無論」
そして、ディランが右手をあげた。それに合わせて、ドランドを囲む全てのエルフが弓
を引き絞る。
ド「・・・・・ふぅ〜」
ディランが手を下ろした。
放たれる無数の矢。
その全てがドランドを突き刺し、ドランドは絶命した。
彼は自分の死に対しても、興味を抱くことができなかった。
41
:
保守代わり長編23〜end (23/30)
:2005/08/27(土) 17:23:16 ID:8dR622LE
小屋に戻り、リオンに何が起こったのかをアスタが説明する。ちなみにその場にはドラ
ンドの処刑をし終えたディランと数人のエルフもいる。
リオンが事情を把握するのにはおよそ3時間を要した。
何とか理解してもらえたら、次は後始末だ。
まずはニーナ。ニーナとリオン――『ミント』はまだ繋がっている。
その繋がりを利用して、ニーナを回復させた。
意識を取り戻したニーナに何が起こったのかを教えるのにも、およそ3時間近くかかっ
た。
そして次はエド。エドはまだ生きていた。生きていたといってもほとんど瀕死。虫の息
だ。
あと少しで死にそうになっていたエドを、魔王がかき集めた魔力を使い、リオンは蘇生
させた。エドは物分りがよく、30分もせずうちに状況を理解した。
そして、最大の問題はリオン本人だった。
リオンの体はあの爆発で完全に消滅してしまっている。
リ「ちょ・・・・どうすればいいんだよ・・・・」
困るリオンをニーナが冷たく言う。
ニ「アンタが負けたのが悪いんでしょ? そのまま一生いたら?」
リ「そりゃないよ。つーか俺が死んで魔王に取り込まれなかったら、今頃みんな死んでた
んだぞ。いいか? 俺はあくまでわざと負けたんだよ。わざと」
ニ「馬鹿言ってるんじゃないわよ」
パン、とリオンの頭をはたく。リオンの頭といっても見た目はミントだが。
リ「あたっ・・・・でもさ、どうすればいいんだ? 何か方法はないの?」
アスタに訊く。だが、彼もいい案は浮かんでこないようだ。
が、そこでディランが提案してきた。
デ「なくはないな。要は新しい体があればいいんだ。まだ使われていない体があれば」
まぁ、確かにそうだが、
ア「そんなのあるわけないですよ」
42
:
保守代わり長編23〜end (23/30)
:2005/08/27(土) 17:23:54 ID:8dR622LE
デ「あるではないか、そのいい例もここに」
言ってリオンを指差す。
リオンが不思議な表情でディランを見る。
ア「あぁ〜・・・・なるほど」
デ「人間達には、作れば罪は帳消しにしてやると言えばいいだろ」
ア「そうですね」
リ「? どういうこと?」
ニ「要は、人間にアンタのホムンクルス――コピーを作ってもらおうってことでしょ? コ
ピーの体なら、空っぽだから、アンタも簡単に入れるはずだし」
リ「あ、なるほど。お前頭良いな」
ニ「アンタが馬鹿なだけでしょうが。流れで大体わかるでしょ?」
リ「いや、わからん」
ニ「本当馬鹿ね。呆れるわね、その馬鹿さ加減には」
リ「おいおい、さっきから馬鹿馬鹿多くねぇか? これでも一応命の恩人だぞ?」
ニ「関係ないわよ、ばーか」
リ「くぬっ! そんなことを言うのはこの口かっ!」
リオンがニーナの口を掴み両方に引っ張る。
ニ「ふぬーーーっ! はひふんほほーーーっ!!(なにすんのよーーっ!!)」
リ「うらうらっ! どうだっ! 参ったかっ!?」
ニ「はへは、はひっははんはへひふはーっ!(誰が、参ったなんか言うかーっ!)」
ニーナが両手でリオンのお腹をポカポカと叩く。が、あんまり力はこもってない。
しばらくして、ニーナも疲れてきたのか、ようやく参ったと言った。
ニ「はぁー、はぁー・・・アンタ、本当に最低ね。アンタなんかそのまま死んじゃえばよ
かったのよっ!」
リ「そうしたら、お前悲しんだだろ?」
ニ「なっ!?(////)誰が悲しむかっ!? せいせいするわよっ!」
リ「はいはい、お前はもっと素直になれ」
ニーナの頭をくしゃくしゃと撫でる。
ニ「うわっ!? や、やめてっ!」
43
:
保守代わり長編23〜end (25/30)
:2005/08/27(土) 17:24:27 ID:8dR622LE
ニーナがリオンの手を離そうと腕を掴みにかかるが、それをリオンはさっとかわす。
そしてまたすぐに頭を撫でる。
ニーナがどけようとする。
リオンがかわす。
ニーナが――
リ「ほーれ、ほーれ」
ニ「ふわ・・・・はううぅぅぅ・・・・(////)」
ニーナはその場にへたり込んでしまった。
そんなニーナは無視しといて、リオンはディランに訊いた。
リ「いつ頃その新しい体はできるんだ?」
デ「君は確か23歳だろ? だったらそれと同じ分の時間がかかる」
リ「げっ!? マジかよ・・・・」
デ「だが、我々の技術も合わせれば、おそらく半年ほどでできるはずだ」
リ「おっ!? マジでっ!? サンキュー、おっちゃん!」
デ「お、おっちゃん・・・」
ディランは賢人会議の議長。要はもの凄く偉いのだ。そんなディランをおっちゃん呼ば
わりするリオンを見て、アスタがビクビクとしている。
だが、ディランは怒ることはなかった。どんな偶然とはいえ、リオンもまた英雄である
ことに違いはない。
デ「今から人間達に会って交渉してくる。とりあえず、半年。ここで待っていてくれ」
リ「わかった・・・・あれ? けどさ、ホムンクルス作るのって、本人の体の一部がいる
んじゃないのか?」
ア「それなら、大丈夫だ。この剣にお前の血液がついてる」
アスタが剣を抜いた。根元の部分に僅かに赤い血液がついている。
リ「こんなんで本当に大丈夫か?」
ア「安心しろ」
デ「では、失礼する」
リ「あぁ、頼んだぞ、おっちゃん」
ディランと、その他のエルフ達が小屋から出て行った。
44
:
保守代わり長編23〜end (26/30)
:2005/08/27(土) 17:25:17 ID:8dR622LE
リ「さて・・・・」
いまだに床にへたり込んでいるニーナを見る。
・・・・・・ま、いっか。
しばらくすると、奥からミントが出てきた。リオンの顔を見て、嫌な顔をする。
ミ「やっぱ違和感あるわね・・・・自分と同じ顔の人がいると・・・・」
リ「あ、すんません」
ミ「い、いいのよ。リオン君のせいじゃないから」
リ「はぁ〜・・・あの、ところでエドさんは?」
ミ「エド? エドならいつものところじゃない?」
いつものところ・・・・あの崖だろう。
リ「ちょっと行ってきますね」
小屋から出ようとするリオンを見て、ニーナが慌てて立ち上がる。
ニ「あ、待って。私も行く」
リ「早くしろ」
ニ「偉そうに命令するなっ!」
パコーン!
ニーナがリオンの頭を叩いた。
二人は森の中に消えていった。
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