[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
【場】『 大通り ―星見街道― 』 その3
1
:
名無しは星を見ていたい
:2022/10/03(月) 20:25:40
星見駅を南北に貫く大街道。
北部街道沿いにはデパートやショッピングセンターが立ち並び、
横道に伸びる『商店街』には昔ながらの温かみを感じられる。
---------------------------------------------------------------------------
ミ三ミz、
┌──┐ ミ三ミz、 【鵺鳴川】
│ │ ┌─┐ ミ三ミz、 ││
│ │ ┌──┘┌┘ ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
└┐┌┘┌─┘ ┌┘ 《 ││
┌───┘└┐│ ┌┘ 》 ☆ ││
└──┐ └┘ ┌─┘┌┐ 十 《 ││
│ ┌┘┌─┘│ 》 ┌┘│
┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘ 【H城】 .///《//// │┌┘
└─┐ │┌┘│ △ 【商店街】 |│
━━━━┓└┐ └┘┌┘ ////《///.┏━━┿┿━━┓
┗┓└┐┌──┘ ┏━━━━━━━【星見駅】┛ ││ ┗
┗━┿┿━━━━━┛ .: : : :.》.: : :. ┌┘│
[_ _] 【歓楽街】 │┌┘
───────┘└─────┐ .: : : :.》.: :.: ││
└───┐◇ .《. ││
【遠州灘】 └───┐ .》 ││ ┌
└────┐││┌──┘
└┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------
前スレ:
【場】『 大通り ―星見街道― 』
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647631/
【場】『 大通り ―星見街道― 』 その2
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1586906856/
761
:
ニア『セレクター』
:2025/02/02(日) 21:58:02
>>760
「『正しい』と判断してその喋り方を『選んだ』んじゃないの。
僕は、あんたが『選択』をした人間だと思ったから、
わざわざ理解できないスピーチを真面目に聞いてたんだけど」
少女は指差す対象を地面から稲崎に変えた。
『ヴィジョン』は完全に姿を現し、少女の背後に立っていたが、
稲崎が尻餅をつくのを見ると、ゆっくりと前に進み出……
スッ
稲崎に右手を差し伸べた。
「そっちこそ、『セレクター』が見えてるの?」
白いボディに、『指差す手』を戯画化したようにも、
『鳥の羽』にも見えるマークを持つ、人型の『ヴィジョン』。
……手を取ってもいいし、警戒するなら、自力で起き上がってもいい。
「『スタンド使い』」
「それもあんたが作った言葉?」
少女は『スタンド』という言葉を知らないようだ。
『スタンド使い』と遭遇するのも、これが初めてなのだろう。
762
:
稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』
:2025/02/03(月) 17:47:05
>>761
「ムッ」
「【這い寄る黒を知識で叩く如く】(※1)状況故、思わず【狼憑き】(※2)の【真名】(※3)である、
『スタンド使い』という単語を口にしてしまったか…【悲観城の猿王】(※4)だなコレは。ハッハッハ」
何がおかしいのか尻餅をついたまま、ふふっと笑う女。
「【人狼】(※5)は正しくは『スタンド』。
そしてそれを使役する者を『スタンド使い』と呼称するらしい。
これは我が【造呪詛】(※6)ではないが、その【ルーツ】は【魂の終着点と宇宙の果ての解】(※7)だ。
ーーっと言っても、【我】も他の【狼憑き】と【邂逅】した経験は然程多くもないし、
他人に語れる程【人狼上級者】ではないがな……」
スカッ
差し出された『セレクター』の手を取ろうとするが、
非スタンドの肉体では能動的にスタンドに干渉できない。
結果、伸ばした手は『セレクター』の手を掴めずに、
まるで『ホログラム映像』のように空振る。
「むむっ」
「【忍び刻印】(※8)させて、【老人の腰】(※9)なのだが……、
我が手を【汝】の『セレクター』で掴んで起こしてくれないか?」
(※1……咄嗟の事で、※2……『スタンド使い』、※3……本来の名称、※4……反省、
※5……スタンド、※6……造語、※7……知らない、※8……手間をかける、※9……申し訳ない
763
:
ニア『セレクター』
:2025/02/03(月) 21:48:01
>>762
「ほんとに見えてる」
空を切る稲崎の手を見て、少女は目をぱちくりさせる。
……他の人間には見えないものと思い込んでいた。
『セレクター』は稲崎を助け起こすと後ろに下がっていき、
少女の身体と重なると、溶け込むように姿を消した。
「そんなにいるんだ。その、『スタンド使い』が」
尻餅をついた人間を助け起こすのは『正しい』。
また『正しい選択』をしてしまった──と、
いつもならそう言うところであったが。
黙って両手をポケットに突っ込み、稲崎の説明を聞く。
内心の動揺を悟られないためのポーズだ。
「さっきの『ナイフ』があんたの『スタンド』?」
「名前はなんていうの」
矢継ぎ早に質問を重ねる。聞きたいことが色々とあった。
この『選択肢』を持つ人間が、他にも存在するのであれば。
「あんたは──それを、『使った』ことはあるの」
764
:
稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』
:2025/02/04(火) 18:31:42
>>703
「【多謝】」
「コホン」
『セレクター』に引っ張られて起き上がり、自身の両手を合わせ感謝のポーズを示し、
白衣に着いた砂を軽く払い落とし、咳払いを一つ。
『キィン』『キィン』
その両の手にそれぞれ刀身50cm程のニ刀一対の『ナイフ』のスタンドを発現。
(右手のナイフは柄から切先に至る迄真っ白で、左手のナイフは逆に漆黒に染まっている)
「紹介しよう。我が相棒【光臨丸】、そして【漆黒丸】だ…。
我が【混沌ノ世界ノ光と闇】の【異能】は、【相棒達】をこの世に発露する【狼】……」
「【石を投げれば狼憑きに当たる】など決してそんな事ないぞ!!
【狼憑き】同士が偶然【邂逅】するなど【罰の刻印の太鼓師が記念帳を開く頻度】(※1)に等しい筈だ。
現に我も、他の【狼憑き】に遭遇した事などほぼない」
「そうだなぁ」
「【夏の供物】(※2)で我に【献上】されてくる【鳳梨】や【西の瓜】を【惨殺】するにこれ以上に相応しい【得物】はない!
何せ【光輪丸】達は【imagine sword】(※3)故、【現実の刃】(※4)と違い【浄化】(※5)の必要がないからな!
それに【孤独の野営擬き】(※6)の時にも非常に捗って仕方がないッ!
【獣の死肉】(※7)を捌くのには勿論、夜には剣の先に【雲魔物】(※8)を貫きて魔女狩りの如く【火炙り】にして、
【雲魔物】が焼き爛れ、膨らむ様を眺めるのは至極愉悦だっ!ハッハッハ」
「他にも」
不意に苦虫を噛み潰したような顔をする。
「【嗚呼】、一つだけあったな……
ダンサー・イン・ザ・ダーク
【漆黒の世界の踊り手】(※9)な【狼憑き】に出会って【武器】として使わざるを得なかった事が」
(※1……滅多にない、出ない ※2……お中元 ※3……スタンドの刀 ※4……包丁
※5……洗い物 ※6……ソロキャンプ ※7……お肉
※8……マシュマロ ※9……胸糞悪い)
765
:
ニア『セレクター』
:2025/02/04(火) 22:17:07
>>764
「…………」 ジロ ジロ
現れた1対の『ナイフ』に目を細める。
その形状からは、やはり物騒な使い道が連想される……が。
「……調理器具代わりにしか使ってないのね。
まあ、あんたが嘘を吐いてないって証拠もないけど。
今は信じることを『選ぶ』」
この『言葉遣い』と『演技』を両立できるなら大したものだ。
やたら楽しそうに料理とソロキャンプを語る姿には、
拍子抜けの溜め息が出そうになるが……
続く稲崎の言葉を聞いて、深々とニット帽を被り直す。
目元には影が落ちるが、口元は憎悪に歪んでいるのが分かる。
「やっぱり、そんな『スタンド使い』がいるんだ」
「『僕たち』には、普通より多い『選択肢』があるから。
他の人間に危害を与える『選択』は絶対にあっちゃいけない。
あんたは『正しい選択』をしたんだろうね」
邪悪な『スタンド使い』と出会い、
『ナイフ』を武器にしたということは、そういうことだろう。
ちらりと、上目遣いに稲崎の表情を見やる。
語彙を除けば、ずいぶん常識的な人間だと感じ始めていた。
766
:
稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』
:2025/02/05(水) 22:16:14
>>765
「ふむ、『サキュバス』とか言う【糞】を使役している連中だったな……
連中の事はもう【The Great Yokai War】(※1)、端的に述べれば【糞の塔】(※2)だ。
無関係の人間を【贄に捧げ】、本人達は【将軍気取り】。
嗚呼ッ!今【記憶の海】を呼び起こしても【マグマが噴き出る】(※3)ッ!!」
薄い作りの顔をくしゃりと歪め苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
その眼差しには明確な『怒り』が込められているように見えたかもしれない.
「失礼ッ」
「兎にも角にも、【狼憑き】には他者を食い物にする【千より百七】(※4)みたいな連中や、
たまたま【狼】を持ち合わせただけで自分を【レインボー・パピルス】(※5)と妄想している
ダブリューティーエスビー
【弩級】の【WTSB】(※6)も居るから
万が一【遭遇】したら【Running Rabbit】(※7)する方が良いかもしれんな」
「まぁ…」
「次連中に遭遇した、絶対【殲滅】する『選択』をするかもしれないが…」
(※1……思い出したくもない ※2……聳え立つ糞 ※3……はらわたが煮えくり返る
※4……ヤクザ ※5……特別な人間 ※6……勘違い野郎 ※7……逃げ出す)
767
:
ニア『セレクター』
:2025/02/06(木) 00:53:46
>>766
「『逃げ出す』? まさか。
二度とそんなことできないようにしてやるのが『正しい』」
「あんたがそうするかどうかは、あんたが『選ぶ』ことだけど」
稲崎が口にした『選択肢』に、深く頷いて見せる。
少女の瞳には、稲崎と同じ『怒り』が宿っているはずだ。
『セレクター』……自分には『選択肢』がある。
しかるべき時には、しかるべき『選択』をしなければならない。
ブン ブン
思考を払い除けるように頭を振る。
考えるだけで腹が立つが、今は考えていても仕方ない。
「ずいぶん多くのことを教えてもらった。ありがとう。
意味不明なスピーチも聞いてみるもんだ」
「あんた、名前は?」
少女は唐突にそう切り出した。
『自分から先に名乗る』ほどの礼儀はないらしい。
768
:
稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』
:2025/02/06(木) 18:42:52
>>767
「フフッ」
【漆黒丸】【光臨丸】と名付けた一対のナイフを解除し、
掛けているメガネのブリッジを指の腹で押し上げキリッとした表情を作る。
イナザキ ミツキ
「【我が名】は『稲崎充希』ッ。
『ざっきー』でも『ミッキー』でも【モダンorクラシック】(※お好きにどうぞ)
逆に、【汝】の【真名】を是非教えてくれないか?」
769
:
ニア『セレクター』
:2025/02/06(木) 21:10:31
>>768
「藪雨仁愛(やぶさめ にあ)。名字は覚えなくていい」
「じゃあね、『稲崎さん』」
踵を返すと、まっすぐな足取りで公園を立ち去る。
今度会ったときは、あの『言葉遣い』を『選んだ』理由でも聞いてみようか。
770
:
稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』
:2025/02/06(木) 21:41:52
>>769
「うむ、また【同じ世界線】で【邂逅】できた際は、
【黒き魔女の血液】でも飲みながら語らいようぞ…」
「【浜辺の園】(さて、と)…」
「えー、【ユリ】と【我】は【女の園】の出身であり、
【混濁した意識】の【破滅の女神】の【啓示】が………」
ニアを見送った後に、小一時間ほど結婚式のスピーチの練習をしてから帰路へと着いた
771
:
空井イエリ『ソラリス』
:2025/02/11(火) 23:23:16
(……さて。防災と言ってもな)
ロップイヤーのように垂らしたおさげと、眠たげな目。
いささかメルヘンなデザインのコートを着込み、
冬毛の小動物を思わせる小柄なシルエットは、
一見すると『食われる側』の無害な存在でしかない。
・・・とはいえ。
(小石川さんも自分で書いちゃいたが、
おれだって『ソラリス』にそれほど頼っちゃねーし)
この町はおおむね平和であり、
『隠した牙』をおもむろに取り出す機会など、
そもそも意識せずとも、これまであまりなかった。
『スタンドを使わない生活は、普段の生活とあまり変わりない』。
(そうそう都合よく『災難』は降ってこねー。
いや、都合は悪い。
そんなもんは、もちろん、ない方がいいからな)
だから結果的には、ほとんど『ただ買い物してるだけ』。
何か特別なことが起きるのだとすれば、
それはイエリが『行く』のではなく、『来る』形になるのだろう。
772
:
空井イエリ『ソラリス』
:2025/02/15(土) 23:45:26
>>771
その日は、この後も平穏に過ごした。
773
:
ペネロープ・K・ウィザースプーン『ハックスラッシュG4』
:2025/02/22(土) 16:08:31
終電もとうに終了した深夜の商店街の一角に存在する『カラオケバー』。
そのカラオケバーの外装は中々に『年季』が入っており、『CLOSE』のプレートが掛かった『玄関扉』は特に劣化が酷く、
扉の塗装は所々剥がれ、得体の知れない無数の傷も付いており、
それを隠す為か至る所にグラフィティ調のステッカーが貼られている。
「おーいッ!!」ドンドンッ!
「マスタあぁ〜〜ッ」 ドンドンドン
「開けてくれェ〜〜ん!」ドンッ!
そんな玄関扉に胸から上をもたれ、一心不乱に扉を叩く女が1人。
街歩く人々は女に奇異、訝しげ、不快な眼差しを向けているが、
女は周囲の目線などお構いなしに扉をノックし続けている…
「ごめんなさ〜〜〜いー!!!!
もう客ん残した残飯食べたりせんけんさぁ〜〜!!
心入れ替えてちゃんと働くけ〜〜ん!!
もうサボったりせんけんさ〜〜〜〜!!
後生やけん酒飲ませてくれ〜〜〜〜!!!!
工業用アルコールかて思うほど質ん悪か焼酎や、
サーバーばろくに掃除しとらんけん雑巾ん風味んビールでもさぁ〜〜!!
ばってんお酒が飲もごたるたい!!
酒〜〜〜〜〜!!!!飲ませてくれ〜〜〜〜!!!!」
ドンドン ドンドン!! ドンドン!!
774
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/24(月) 16:42:14
>>773
歓楽街から程近い『地下アーケード』には、『デッドストック』を専門に扱う店がある。
どのようなルートで仕入れているか不明だが、とにかく『品揃え』は豊富だ。
もっとも、その分だけ『値段』も張るが。
「何が『お得意様は特別価格でご提供』だ。
露骨に足元見た値段つけてるとロクな死に方しないよ」
フゥゥゥゥ──────………………
「ま、ソイツがくたばると困るのが悲しいところだねえ」
茶色い紙袋を手にして『カラオケバー』の手前で立ち止まる。
愛好する銘柄――『ジタン』を燻らせつつ、
しばらく遠巻きに眺めていたが、どうやら治まりそうにない。
このまま放置する訳にもいかず、人目も憚らずに騒ぎ続ける女に歩み寄っていく。
「そこのお嬢さん、人様に迷惑かけちゃあいけないよ。
酒ならアタシが呑ませてやるから、とりあえず落ち着きな」
そこに立っているのは、白いパンツスーツを纏った長身の女だ。
外見から窺える年齢は中年くらいか。
『白百合を象ったイヤリング』を身に着けていた。
775
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/02/24(月) 18:09:17
>>774
「開けてね!」ドンドン!
シィーーーーーン
「……」
「ああ、そうと!
それじゃマスターが客が手ばつけんだったお通しば
こっそり別ん客に提供したりしとることや、
焼酎に水ば入れて傘増ししとることば勿論ッ!!
雀卓シート用意して『賭け麻雀』ん賭場開いとる事も!
洗いざらい警察に垂れ込んどるけんなァーーー!!!」
シィーーーーーーーーーン
扉に向かって悪態を吐いたが開く様子はないので、
諦め『寝床』へ戻ろうと踵を返そうとした所に、
紫煙を燻らせながらこちらに向かってくる百目鬼の姿が視界に入った。
ちなみにこちらの容貌は『ラテン系』の20歳そこそこの外国人女性だ。
「お?」 首を傾げ
「おぁ?」 考え込み
「おォーーっ!?」 笑顔になり、
「歩き煙草ん『オバチャン』!!あんたが神か!!
それたいぎゃ言いよる!?ウチにお酒飲ませてくるるッ!?
いやあぁ〜〜〜〜ッ!へへっ、ありがたすねぇ〜〜っ!
捨つるマスターおりゃ拾うオバチャンありってねぇ。
あっ!お手が塞がりなっせうばってん、
もし宜しかればお荷物持とうかぁ〜?」
顔に薄ら笑いを浮かべ、両肩を上げ、揉み手、
わかりやすく媚び諂う動作で『百目鬼』に歩み寄る。
776
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/24(月) 19:26:33
>>775
なるほど、この店の内部事情には通じていそうだ。
事後処理は『警察』に任せるとして、彼らの手間を省いてやることにしよう。
内心で算段を練りながら、鷹揚に笑い返す。
「いや、コイツはアタシが持ってるよ。
アンタを疑ってる訳じゃあないが、
これを手に入れるために結構な額を支払ってるんでね」
互いの距離が縮まった時、紙袋の中身が見えた。
そこに詰まっているのは幾つかの『紙箱』だ。
『カートン買い』した『ジタン』の箱が複数ある。
既に『製造終了』した銘柄であり、一般的な店舗では手に入らない。
なかなかの貴重品と言えるだろう。
「まぁ、ついてきな。
アタシの『行きつけ』があるから、そこに向かおうか」
『ラテン系の女』に一声掛けて歩き出す。
やがて辿り着いたのは、『飲み屋』ではなく『蕎麦屋』だった。
『蕎麦処天狼』という暖簾が出ている。
結構な老舗らしく、風情ある店構えだ。
現代的なビル群が多く建ち並ぶ景観の中で、
そこだけ時間が止まったように古風な雰囲気が漂う。
「――――――『ここ』さ。
この店は蕎麦も美味いが、『いい酒』を仕入れてるんだ」
ガララッ
扉を開けると、出迎える店主に片手を上げて挨拶し、手近な席に腰を下ろす。
「さてと、アタシは『日本酒』が呑みたい気分なんだ。
アンタも付き合いなよ。
つまみは…………『山菜の天麩羅』にしようかねえ」
「あぁ、『二挺木』――――しばらくだね」
注文して間もなく、『熱燗』と『天麩羅』が運ばれてきた。
それを運んできた人間は、三十代半ばの『蕎麦職人』だ。
百目鬼とは顔なじみのようで、軽い会釈をして立ち去っていく。
777
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/02/24(月) 20:56:55
>>776
「へへへ……、ウチのような『ル』で始まって『ン』で終わるごたる女には、
こぎゃん良かお店のこぎゃん良さそうな日本酒は勿体無かばいっ!
味なんてろくに分かりやせんとやけん!
ばってん折角んただ酒やけん少しだけ頂くばい」
古風な、いわゆる『隠れ家』的な雰囲気の店内。
物珍しげに内装を眺める女の纏っている衣服は古く薄汚れており、
趣のある蕎麦屋には似つかわしくない客層ではある事は明らかだ。
店員らしき人間が来たタイミングで大きく手を挙げ、
メニューを確かめもせずに注文をする。
「すんまっせぇ〜〜〜ん!」
「『白ホッピーセット』一つ!
それに『カットレモン』!付けてくれん!
フードは『板わさ』っ!『冷奴』!後、『チョリソー』くださーい!!!」
「へへへへへ。失礼するばい」
百目鬼がお猪口を持った瞬間にすかさず熱燗を注ぎ、
自分のお猪口には自分で酒を入れ、『乾杯』をした後に、
酒を並々と注いだお猪口を口元に近づけ、一気に流し込む。
「かあぁぁぁぁーーーーっ!!!
た、た、堪らんばい!!!!!!
こん間、河川敷で拾うた飲かけの発泡酒も美味かったけどっ!
こん日本酒も熱うてお酒ん味がしてうまかねぇ!!!!
カラオケバーんバイト首になって追い出された時はやばかて思うたけど、
オバチャンに拾うてもろうて酒と飯にありつけてラッキーやわっ!」
「んで、何でオバチャンはウチば拾うてくれた?
言うとくけどウチは文無しの『名無し』草よ?」
778
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/24(月) 22:15:22
>>777
最初に見た時から思っていたが、目の前の若い女には『既視感』に近いものを覚える。
「アンタの姿を見てると『知り合い』を思い出すよ。
寒空の下で逞しく生きてる『根無し草』さ。
案外どこかでバッタリ出くわすかもしれないねえ」
ここ最近、どうも『こういった人種』に縁があるのかもしれない。
そんなことを考えながら、向かいに座る女を観察していた。
相手が『酒を呑んだこと』を確認した後で、自らも酒器を口元に運ぶ。
「ところで、アタシは『タダで呑ませる』なんて言ってないよ」
適温に温められた酒が、外気で冷えた身体に染み渡り、一息つく。
「『勘定』はアタシが持つ。
その代わり、さっきの店について知ってることを話してもらう。
さっきアンタが道端でブチまけてた『悪行』を詳しく説明してくれりゃあいい」
ここに連れてきたのは『情報を聞き出すため』だ。
そして、既に『酒を呑んだ』。
その『見返り』を要求する。
「まぁ、ちょっとした『酒の肴』だと思えばいいさ。
アンタが『食うもの』に困ってるなら、『知り合いの店』を紹介してもいい。
『食料品』を『付け値』で買える店さ」
スッ
親指と人差し指で塩を摘み、天麩羅に振り掛けながら、さらに言葉を続ける。
「そこでは『1円』から売ってくれる。
『品質』は『値段』に比例するから、その場合の味は最低だろうけど、
『工業用アルコール』やら『雑巾臭いビール』が平気ならイケるんじゃないかい?」
サクッ
「『安全性』だけは保障されてるから、不味くても死にゃあしないよ」
今が旬の『ふきのとうの天麩羅』を齧ると、歯触りの良い衣が軽い音を立てた。
779
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/02/25(火) 20:00:52
>>778
「いやぁ、地元いる時にはホッピーなんて知らんだったばってん、
『芋』以外は焼酎じゃなかなんて思うとったけれど
この『甲類焼酎』ってのも慣れれば中々乙なもんで、
こぎゃん安うきしょく良うえいくらえる飲み方があるなんて、
酒飲みとしては嬉しか限りばい。
ソト1でナカ3飲んでやるわ。
こうやってレモンば絞って回しちゃって、と……」
半分程甲類焼酎が入ったグラスに、白ホッピーをとくとくと注いでから
一緒に提供されたカットレモンを一欠片摘んで果汁を搾り、
マドラーで入念にカラカラと回してからーー
ごくっ ごくっ
「美味かぁ〜〜〜〜っ!
続いてこの『チョリソー』さんを……」
自らの油でこれでもかと照りの入った真っ赤なチョリソーを箸で掴み、
大きく空けた口で迎え入れ、前歯で齧り
ぱりっ
「かあぁ〜〜〜〜〜〜〜っ!!
たいぎゃ美味かぁ〜〜〜〜〜〜っ!!
辛かばってん美味か、それとも美味かばってん辛かっ!!!
こりゃあ答えん出らん人類永遠のテーマや!!
またまたお酒が進んでしまうばい!!!!!」
チョリソーに配合されているスパイスで熱くなった口内を落ち着かせる為に、
キンキンに冷えたホッピーを流し込む。
「オバチャン、オバチャン」
「『嘘』はいかんばい」
「オバチャンがウチに『お酒飲ませてくれる』言うたのは、
ウチがあん店ん扉に齧り付いとった時っ!
腹いせに店んある事なか事おめいたとは、オバチャンに声かけれた後ばいっ!!
ウチは頭は悪か、ばってんそん分目と耳と鼻は良〜う利くけんっ!!
そぎゃんとってつけた『後出し』は『交換条件』としては成立しとらんばい!」
「それに」
持ち上げたグラスをテーブルの上に置き、
そのブルーブラウンの瞳で『百目鬼』を見据える。
「例えあん話が『フカシ』じゃなかったとしても、
自分ん『餌場』ば他人に明け渡すようじゃあ、
ーーーー『野良犬』としては生きていけん」
「後」
「オバチャンを観察した限り、
オバチャンがウチば『無銭飲食』で警察に引き渡すような人間じゃなかってんも、言い切れる。
ーーーあ、此処って『モク』吸える?」
780
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/25(火) 21:49:16
>>779
「おや、意外に『律儀』じゃないか。
アンタみたいなのばかりなら、世の中うまくいくんだけどねえ」
「いや、大したもんだ。アタシはね、『感心』してるんだ」
「なんでアンタが重宝されてないのか不思議だよ。
アンタをクビにした人間は、どうやら見る目がなかったようだね」
「――――いや、全く『惜しい』よ」
淀みない調子で、その『度胸』を称賛する。
トトト…………
手元では、空いた酒器に酒を満たす。
「この店には『チョリソー』なんてハイカラなものは置いてないから、
代わりに『創作料理』を注文しといたよ」
百目鬼の言葉通り、よく味わえば『チョリソーではない』ことは明らかだった。
「『馬肉のソーセージ風』ってところかねえ。
この店は『馬刺し』が美味いのさ。
アタシが無理言って出してもらったから、今日しか食えないよ」
出てきたのは『裏メニュー』だったらしい。
多少の無理を通せる辺り、やはり常連なのだろう。
一方、『板わさ』と『冷奴』は『お品書き』に載っている。
そして、百目鬼は煙草の火を消していない。
すなわち『聞くまでもない』ということだ。
「だけど、世の中には分からないことが多い。
この前も『おかしなこと』が起きたんだよ」
「コンビニに入った時、『ATM』の前で張り付いてた男がいた。
やたらと挙動不審なんで、アタシが店員に『通報』させようとした途端、
ソイツは急に騒ぎ出したんだ。その次に何があったと思う?」
グイッ
「『カードの取り出し口』が『ブカブカ』になっちまってたのさ。
その男自身が見せてきたからね。
でも、アタシが警察を呼んだ後、
警官が来るまでの間に『元通り』になってたんだ。
結局は『誤報』ってことで片付けられた」
――――――トン
一息で空にした酒器を机上に置く。
「アタシは『納得していない』」
781
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/02/25(火) 23:55:42
>>780
「ありゃあ」
もにゃあ
「『熊本県民』としてはそんまま馬刺しで頂こごたったばってん……、
まっ!!美味かけん別にいっか!美味か、美味か。
口ん中の脂をキンミヤで流し込んで無限ループや!!」
もぐっ もぐっ
「かあぁーーッ」
卓上に広がった酒と肴に舌鼓を打ち、
「ただ酒にありつくるけんあん店で働いとったばってん、
そもそもうちゃ何よりも働くとが好かんっ!!
真っ当に働いて得る金より、
自販機で拾うた10円やパチンコや競馬でゲットした泡銭ん方が何倍も嬉しかし!!
あん店にはほとぼり冷めた頃に顔出すけん、
ウチんガセネタ真に受けて通報でんされたら、
次顔出した時にマスターにぶっ殺さるるけん勘弁してくれ」
ゴクッ ゴクッ
雑談しながら飲み食いを進め、
注文した食べ物をあらかた胃の中に収め、煙草に火を付けた。
「ふうぅ〜〜〜〜ッ」
しゅぱあぁ〜〜〜
「そりゃあ奇妙な事も起こるもんやなあ。
何がどうなってそぎゃん摩訶不思議現象が起きたかはわからんがァ、
そん『ATM』が元に戻って、『お巡りさん』に誤報や虚偽通報扱いされたってことは
そん男がオバチャンよりずっと『上手』やったって話じゃなか?」
「『納得』できんって気持ちにも『納得』でくるけど」
782
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/26(水) 01:49:05
>>781
「まさしくアンタの言うように『上手』だったってことさ」
フゥゥゥゥ──────………………
酒器を傾ける手を休め、中空にジタンの煙を吐き出す。
「どんな方法を使ったんだか知らないけどねえ。
まるで『奇術』を披露された観客の気分だよ」
もちろん『そんなことはない』。
『爪』を持った『人型スタンド』だ。
それを使って細工したのは明白だった。
「だけど、実際は簡単な仕掛けなのかもしれないね。
手品ってのは説明されるまでは不思議に見えても、
いざ種明かしされると『そんな単純なことか』と思うものも多い」
スッ
そう言うと同時に、おもむろに『右手』を持ち上げる。
「例えば、『分かりやすい手品師の姿を思い浮かべろ』と言われたら、
大勢の人間が『ステッキを持った手品師』を想像する。
でも、その小道具は飾りなんかじゃあないよ」
グッ
そして、目の高さに持ち上げた手を『握り締める』。
「『ステッキを持った手』は、こんな風に『握り拳』の形になるからさ。
ステッキを握れば『手の中』にタネを隠せるし、
ステッキを置く時には『テーブル』にタネを仕込める。
それに気付かせないのは『演技力』の賜物なんだ」
こうした雑学は、『四課』に所属していた『警察時代』に学んだことの1つだった。
「だから、こっちの意識を誘導するような振る舞いは、
別の何かを隠すための『芝居』じゃないかと睨んでるんだ。
もっとも、まだ確証はないけどねえ」
そう――――『演技力』だ。
あの男は、確かに『演技力に長けていた』。
現場となったコンビニは『劇場』で、百目鬼は『観客』だった。
「これでも『粘り強さ』には自信があるんでね。
いったん目を付けた相手には、どれだけ煙に巻かれようが食い下がるよ」
783
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/02/28(金) 09:22:25
>>782
「ほぉ〜ん」 グビッ カラッ
グラスの中の焼酎を飲み切ると、
再び大きく手をあげ追加注文をする、
「すんませぇーんっ。
『ナカ』おかわりくださぁーい」
「うん」 「うんうん」 「ほォーッ」
火のついた煙草を指に挟んだまま百目鬼が披露した雑学に耳を傾け、
感心したかのような相槌を打つ。
「ナ・ル・ホ・ド、なぁ〜〜〜っ。
オバチャンは博識やなぁ。
マジシャンって色々考えとるんねぇぇ」
「あーッ」
「ばってん、オバチャンを見てると、
オバチャンがそん男に出し抜かれた『理由』ば、なんとなぁく分かるばい。
本当に『なんとなく』って話やし、
ウチん考えがあってるかなんてわからんけれどぉーッ」
784
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/28(金) 20:59:03
>>783
追加の『焼酎』を運んできたのは先程の蕎麦職人だ。
その役目を果たすと、すぐに引き下がっていく。
立ち去り際、一瞬だけ百目鬼に視線を向けたが、
それを受けた本人は気付いていないように見えた。
「ははぁ、そりゃなんだい。アンタの『なんとなく』を拝聴したいね」
「いや――曲がりなりにも、こうして差し向かいで酒を呑んだんだ。
いつまでも『アンタ』のままじゃあ、どうにも居心地が良くない」
視界の中を立ち昇る煙越しに、目の前の女の顔を見つめる。
「まずは『名前』を聞かせちゃあくれないかい?
アンタが名乗らなくてもアタシは勝手に名乗らせてもらうから、
次からは『そっち』で呼んでいいよ」
「――――『小百合』って者さ」
『名字を名乗らない』のは初めてのことではなかった。
『情報提供者』である『黒羽灯世』にも、『下の名前』しか教えていない。
個人的な事情であり、大した理由がある訳でもないが。
785
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/03/01(土) 22:54:50
>>764
「んとぉ〜〜ッ」
カラカラ
グラスに新たに注がれた甲類焼酎にホッピーを混ぜ、
グラスに目を向けながら話を続ける。
「小百合ちゃんはどういう考えで、そん男を通報したん?
そいつは結果的になんか『イタズラ』しとったばってん、
ただATMん前でキョドっとっただけやろ?」
レモンを一欠片搾り、
もう一度マドラーを挿し入念に混ぜる。
「そんにウチの知り合いの『カラオケバー』も通報しようとしとった。
ウチの『ホラ話』を鵜呑みにしたとしても、
普通の人ば行った事もないあんな流行っとらん飲み屋なんて放っておくばい。
なんせ一切『実害』をうけとらんけんねぇ。
『被害』被ってないのに『通報』するってのは、
否が応でもパクりたい『保健所』の人間か野次馬根性丸出しの『ネット民』くらいね。
悪さしとう人間だってパクられとうのうて頭使うとる筈やし、
『手段』じゃなくて『目的』になっとる通報なんてそりゃあ掻い潜るばい」
出来上がったホッピー焼酎をぐびっと飲む。
「うまかぁーーッ!!」
「それに『冤罪』でパクられとったら、そいつん人生確実に狂うとったばい。
そいつがどんな人間かって『興味』を持って『想像』した方がよかて思った」
「現に」
「目の前に、方言丸出しのガイジンの女がおるのに
小百合チャンいっちょん弄うてくれんしっ!!!
ウチ、寂しいばい〜〜〜〜っ」
786
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/03/02(日) 18:52:06
>>785
「ははぁ――――」
眼前の女の話を聞き終わり、小百合は押し黙った。
一本の煙草を一握りの灰に変える間、そこには沈黙だけが流れていく。
ようやく思い出したように、店内の時計を見上げる。
「…………おっと、もうじき『看板』みたいだね。
話を切っちまって申し訳ないんだけど、ちょっと一人で考えたいことができたんだ。
アタシは会計を済ませてから帰るから、先に引き上げてくれて構わないよ」
「ははは、正直に言うと『気の利いた返し』が思いつかなくてねえ。
今日のところは、この辺で勘弁してくれるかい?」
「でも、最初に思った通りだ。
クビになったのは気の毒だけど、その度量なら何処でもやっていけるんじゃないかい」
「アタシには、とても真似できないよ」
そして、小百合は店内に顔を向ける。
「さっき『追加の注文』がないか聞こうとしてたろ?
こちらさんの話が面白いもんで、集中してたからつい無視しちまった。
いや、悪かったよ」
ガタッ
椅子から立ち上がり、財布を取り出して会計に向かい、その途中で女を振り返る。
「物騒な輩もいるみたいだから気を付けて帰りなよ」
787
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/03/03(月) 19:26:04
>>786
「お世辞でも、度量を褒めらるんな嬉しか、
ばってんウチはほんなこつ働こごたなか訳でっ!!
度量よか自販機の隙間に落ちとる小銭の方が嬉しかーッ!!」
トトトト
焼酎に追加でホッピーを注ぎ、ナカとソトを同時に飲み切るように調整し、
目の前の料理を肴に瞬く間に酒を飲み干しーー
「暴漢ん類なんて気にしとったら、こぎゃん生活送れんばいッ!!
小百合チャン、ごっそさん!!!
よか感じに酔えてきたし!こりゃあ今夜ん『ペネしゃん』な爆睡や!!」
「路上で寝て凍死してしもうたりして!」
椅子から立ち上がり、会計を持ってくれた百目鬼に礼をし、
今夜の『寝床』を確保する為店を後にした。
788
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/21(月) 18:41:10
「……………………」
カリカリカリカリ
カリカリカリカリ
商店街のベンチに腰掛け、手帳に何事かを書き連ねる女がひとり。
ときどき顔を上げてじっと前を見る所作は、写生でもしているようにも見える。
しかし、見る人間が見れば──
その視線の先に、『妖精』のような何かが浮いているのが分かるはずだ。
女は手帳に視線を落とすと、再びペンを走らせ始めた。
「……………………」
789
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/24(木) 06:58:55
>>788
ペン先が紙面を滑る音に混じって、どこからか『鼻歌』が聞こえてくる。
「フン♪♪フフンフン♪♪フンフンフン♪♪」
向こうから『アリス風ファッション』の少女が歩いてきた。
白いフリルブラウスに青いジャンパースカートを合わせ、
ダブルストラップのメリージェーンを履いている。
両脚を覆うタイツにはトランプのスートが描かれており、
頭に巻いているのはリボンではなくスカーフだ。
「フンフフ〜〜ン♪♪」
アリスブルーの『サングラス』やカラフルな『ネイル』、
飾りボタンのように並ぶ『缶バッジ』などは特に目立つ。
「フフフ〜〜〜〜ン♪♪」
そして、そのまま通り過ぎていく――――。
「――――フフンフン??」
かと思いきや、後ろ歩きで戻ってきた。
視線の先にいるのは『妖精』のヴィジョン。
ピタリと足を止め、その姿をまじまじと観察する。
790
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/24(木) 16:59:19
>>789
よほど集中しているのか、女は鼻歌に反応しない……
「……………………」
よく見ると、『妖精』は明らかに『スタンド』だった。
手のひら大の人型スタンドが、背中の翅を羽ばたかせている。
ヴィジョンは無数の黒い線が集まって構成されており、
立体的な『線画』か『ボールペンアート』といった感じだ。
また、女の左肩にもう1体の『妖精』が座っているのも見える。
「!」
少女が戻ってきて、ようやく女はその存在に気が付いた。
びくりと肩を震わせ、目前の少女の顔を上目遣いで見上げる。
「……あ、あのォ……何か…………」
自分が見られているものと勘違いしているらしい。
そして、手帳から目を離してもなお、ペンを動かす手は止まらない。
それどころか、書くスピードが上がったようですらある。
791
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/24(木) 21:04:11
>>790
『妖精』を見つめる少女は瞳を輝かせていた。
『アリスはウサギを追う』。
そして、視界に飛び込んできたのは紛れもなく『ウサギ』だ。
すなわち『好奇心の対象』。
『アリス』を名乗る者が、それを追いかけるのは当然の帰結である。
コレは『しょとうアリスがく』のキホンだぞ。
こんなのみつけちゃったら、ほっといてかえれないじゃないか!!
「フンフフンフンフフフンフン♪♪」
────ストン
軽快な足取りでベンチに歩み寄ると、おもむろに『女の隣』に腰を下ろす。
「あっ!!イマのは『きにしなくてイイよ』ってイミ!!」
ジィィィィィィ──────………………
「わたしはきになるけどさぁ〜〜〜〜??イェイ!!」
膝の上に両手で頬杖をついて、今度は『手帳』に視線を移す。
ここらヘンとかに、なんかありそうなカンジがする。
クウキをふるわすフシギなエネルギーがアリスのセンサーにビシビシきてるぜ。
とりあえず『150』くらいかな??
しょうてんがいにアシをふみいれたワレワレが、
ついにモクゲキしたショウゲキのコウケイとは!?!?
792
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/24(木) 22:43:51
>>791
目を白黒させながらも、女のペンは止まらない。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
「えっ、あっ、気にすると言いますか……あっ…………」
隣に座る少女に対して警戒と困惑の表情を向けるとともに、
2体の『妖精』が立ち塞がるかのように少女との間に飛び入った。
まるで武器のように、両手に『羽ペン』を握りしめている。
どうやら、『妖精』はこの女の『スタンド』であるようだ。
「と、隣に座るのは……構いませんが」
そして、女が持っている手帳を覗き込むと……
米粒に写経をするかのような細かな文字がびっしりと並んでいる。
一瞥でそのすべてを読むのは到底不可能であったが、
書き込まれたばかりに近い部分はこのような文章だった。
『女の子に見られていた。鼻歌を歌っている。身長は160
センチくらい。10代半ば。金髪。青いサングラスをかけ
ている。スカーフを頭に巻いている。フリル付きの白いブ
ラウス。青いスカート。缶バッジ。カラフルなネイル。ト
ランプ柄のタイツ。ストラップシューズ。近付いてきた。
「あっ、今のは気にしなくていいよって意 』
バッ!
見られていることに気付いたらしく、女は手帳を胸に抱え込む。
それでも右手は手帳と胸の間に挟まり、書き続けているのが分かる。
もちろん、女からもページは見えていないはずだ。
「……この手帳が…………何か?」
793
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/24(木) 23:58:57
>>792
この少女――『夢見ヶ崎明日美』は、個人的な事情で『漢字』が苦手だ。
およそ『小学校低学年』と同等であり、『ルビ』が振ってない場合は苦労している。
だから、内容によっては全く理解できない可能性もあった。
「――――――おん??」
しかし、今回は『ひらがな』と『カタカナ』が多かったので、
なんとなく把握することができた。
「ほうほう」
「ふむふむ」
「なるほどなるほど」
────スクッ
大きく頷きながらベンチから立ち上がり、ゆっくりと距離を離していく。
☆.。.:.+*:゚ ☆*。゚:*+.:.。.☆.゚✲*☆。*゚✲☆*⋆.•*¨*¨*•.⋆*。✩
立ち去ろうとするかに見えた瞬間、『人型』のヴィジョンが姿を現す。
半透明かつ色とりどりの『リボン』が全身を彩り、
それらと似通った色合いの『ネイル』が両手に見える。
頭部から流れ落ちるのは、光り輝くような『金髪』。
また、『青いリボン』が目元を覆う。
本体と『瓜二つ』のイメージを持つ『スタンド』は、
これといって何をするでもなく佇んでいた。
「ソレがきになるっつーか、どっちかっていうと、
アリスてきには『フタゴ』のほうがきになるかなぁ〜〜〜〜」
『何もしていないように見える』が、『超人的嗅覚』に意識を集中させていた。
ストレスを感じている人間の皮膚からは、
特有の『硫黄化合物系の匂い成分』が放出される。
平たく言うと『硫黄のような匂いがする』のだ。
これを『STチオジメタン』と呼ぶ。
ストレスのレベルによって発生量は増加し、
匂いも強くなる傾向があるのだが、これは常人でも嗅ぎ取れる。
超人的な感覚を持つ『ドクター・アリス』なら、
より精密に感知することができるという訳だ。
本気で緊張しているなら『匂いで分かる』。
794
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/25(金) 00:39:52
>>793
「…………?」
離れていく少女を不思議そうに見つめていたが……
「! …………」
「そういう……ことですか」
現れた『ヴィジョン』に、目を見開く。
同時に、ペンの動きが加速したのが見て取れるだろう。
「他の方からは見えないものと、高を括っていましたが……
こうも早く出会ってしまうものなのですね」
「……驚かせてしまいましたか? 申し訳ありません」
ふう、と溜め息を吐いて、軽く頭を下げる。
『妖精』は警戒の構えを解くと、空中に溶け消える──解除された。
『ドクター・アリス』の嗅覚には、予想通りの匂い……
人間の『ストレス』の匂いが感じ取れた。
795
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/25(金) 19:07:06
>>794
至近距離でスタンドを出すとショックが大きいかと思い、
念のために離れておいた。
驚かせてしまったと言うが、むしろ逆ではないだろうか。
『匂い』は嘘をつかない。
表面的なリアクションだけではなく、本気で動揺しているのが分かった。
きょうもアリスのハナはゼッコウチョウだぜ!!
おうさまのミミはロバのミミ、アリスのハナはブタのハナ。
キノコがりで『ポルチーニ』をハッケンしたコトもあるのだ!!
「ゼンゼン??アリスはいつだって『ウサギ』をさがしてるからさぁ。
バッタリであえてうれしいよ!!ラッキーじゃん!!」
タン タン タン
ステップを踏むような足運びで、再びベンチに近付いていく。
さっきからのペンの動きを見ると、多分『自動筆記』のような能力だろう。
口には出さないものの、そう予想した。
「――――で、コッチは『アリスのアリス』!!」
────キラッ☆
華美な姿の『人型スタンド』――『ドクター・アリス』が、
目元に添えた『横ピースサイン』を女に向ける。
796
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/25(金) 21:59:47
>>795
「は……はァ。恐縮です」
『横ピースサイン』には当惑混じりの『会釈』が返ってきた。
「『アリス』さん……と、仰るのですね。その……『そちらの方』もですか?」
立ち上がり、左手で『ドクター・アリス』を指し示す。
先程の手帳は持っていない……かといって、ベンチに置いている訳でもない。
見ると────女の傍の空中に『浮かんでいる』。
「私は……『うさぎ』のように見栄えのする人間では、ありませんが。
……乙街 澄(おとまち すむ)と申します。
「そして、こちらは──」
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
筆記するかのように、空中に無数の黒い線が走り……再び『妖精』が現れる。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
「──『プロリフィック』と、名付けていただきました」
黒一色のそのヴィジョンは、『ドクター・アリス』とはある種正反対だ。
1体は裏から手帳を支え、1体は『羽ペン』で手帳に何かを書きつけている。
「忙しなくペンを動かすのも、お見苦しいかと存じますので……
ここからは、『代筆』にて失礼いたします」
そう言うと、右手のペンを胸ポケットにしまい込んだ。
797
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/26(土) 00:56:07
>>796
「イィエェェ〜〜〜〜〜〜ス!!」
グッ!
『ドクター・アリス』が腕を降ろすと、今度は本体が親指を立てる。
「『そっちのアリス』は『イロイロあってアリスになった』ってカンジかなぁ??」
まず『スタンド』を指差し、次に『自分』を指し示す。
「『こっちのアリス』は、ず〜〜〜〜っとアリスだけどさぁ」
────スッ
『ドクター・アリス』を従えて、改めてベンチに座り直した。
「いいねいいねぇ〜〜〜〜!!
スタンドもってるトモダチがふえるとワクワクするな!!
よろしくよろしく!!」
『プロリフィック』の個性的な発現を目の当たりにして、
満面の笑顔を見せる本体の横で、スタンドの『アリス』は金髪を靡かせている。
しかし、それは正確には髪ではなかった。
全身を飾り立てるリボンと共通した質感を持つ『金色のリボン』だ。
「ココで、めいたんていアリスは『ピン』ときた!!
もしかしてオトちゃんって、
『スタンドつかい』のトモダチはじめてとか??
アリスもソコソコくわしいほうだから、
なんとなくビビッ!!ってきちゃうんだよね〜〜〜〜」
根拠は複数ある。
まず堂々と『スタンド』を使っていた。
そして、目撃されることを想定していなかったであろう発言。
さらに『匂い』から感じた緊張感。
それらから受ける印象は『スタンドを得て間もない人間』だ。
「――――どう??あってる??」
798
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/26(土) 06:13:08
>>797
「……?」 「そう、なのですね」
『色々あって』という部分には小首を傾げたが、特に追求はなかった。
アリスが座るのに合わせ、自分もベンチに腰を下ろす。
「とっ、友達!? …………ですか?
え、ええと……はいィ……よろしくお願いいたします……」
『友達』のワードにはなぜか過剰な反応があった。
声を裏返しつつペコペコ頭を下げていたが、
問いかけを受けると、取り繕うように咳払いをする。
「ゴホン。……ご明察です。
つい先ほど、『音泉』さん……と仰る方に、この力を見出していただきました。
本当は、帰宅してからゆっくり観察しようと思っていたのですが……」
観察とは、さっきやっていた写生のような行為のことだろう。
「どうしても我慢できず……どうせ誰にも見えないのだから、と。
……『音泉』さんも仰っていました。『スタンド』は、その人間の才能。
『似たもの同士』になるのは……必然なのかもしれませんね」
一瞬だけ、2人の『アリス』を交互に見比べた後、
傍らで『代筆』を続ける『妖精』に視線を向け、目を細めた。
諦めたようなその眼差しには、自嘲の色が宿っている。
799
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/26(土) 22:00:09
>>798
夢見ヶ崎明日美の価値観では、『自己紹介したら友達』である。
『スタンド使い』という共通点があれば尚更だ。
話の分かる相手ばかりではないことも知っているので、
最低限の注意はしているのだが、『乙街には必要ない』と判断した。
「おぉ〜〜〜〜!!『しおんちゃん』!!
サイキンあってないけどゲンキかなぁ??」
「そっかそっか、しおんちゃんかぁ。
だったらアリスと『おそろい』だね!!
なかよくしようぜ!!」
ス ッ
より一層の笑顔で、乙街に片手を差し出す。
『握手』のつもりらしい。
そして、もう片方の手は人差し指を立て、考え事をするように頬に添えている。
「ん〜〜〜〜〜〜??」
自らの半身を一瞥し、乙街につられて『プロリフィック』を眺める。
それから、また乙街に目線を戻した。
何事か思案する表情で唸っていたが、改めて口を開く。
「うんうん!!だいたいそんなカンジ!!
でも、ゼンブってワケじゃないけど。
だって、『ゼンゼンにてないの』とか、みたコトあるし」
どうやら実際に目撃した経験があるらしく、妙に自信ありげだった。
800
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/26(土) 23:58:43
>>799
「な、仲良く……ですか。……はい。友達……ですものね」
薄い笑みを浮かべて握手に応じる。
やや引きつった笑顔ではあるが、無理やり笑っている風ではなく、
むしろ好意がぎこちなく発露しているだけという感じだ。
「……お若いのに、経験豊富でいらっしゃるのですね。
素晴らしいことだと思います」
「あ……え、偉そうなことを言うようですが。……すみません」
そう言って、またペコリと頭を下げた。
頭を上げると、遠慮がちにアリスの目をまっすぐに見つめる。
「個人的な意見を申し上げるなら……
『アリス』さんと『アリス』さんは、よく似ていらっしゃいます」
「なんと言いますか……色鮮やかな感じが、でしょうか。
外見ではなく、もっと内面的な……
お会いしたばかりで、失礼かもしれませんが」
真っ黒の『プロリフィック』と、カラフルな『ドクター・アリス』。
その対比は、2人の精神性の対比でもあるのかもしれない。
「少し…………羨ましく思います」
801
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/27(日) 00:51:03
>>800
「そうそう、トモダチトモダチ!!」
ガ シ ッ
しっかりと乙街の手を握り、確かな握手を交わす。
「いや〜〜〜〜ほめられちゃったよ〜〜〜〜。
ジブンでもきにいってるんだ!!ヘヘヘ」
「でも――――」
ピッ
本体の発言に合わせて、今度は『ドクター・アリス』が人差し指を立てた。
「さいしょから『こう』だったワケじゃなくって。
なんつーか『セイチョウした』っていうの??
それで『こうなった』んだよね。
『スタンド』は『サイノウ』だけど、かわるコトもあるんだってさ」
『羨ましい』という言葉を聞き、先程の諦観と自嘲を秘めた眼差しを思い返す。
「『まえのヤツ』は…………イマとゼンゼンちがってたなぁ。
フンイキてきには『おいしゃさん』みたいだったっけ。
『ジムテキ』っていうか『ムキシツ』っていうか、
なんとなく『ドライ』なムードだったな!!」
かつての半身――『ドクター・ブラインド』の姿を振り返る。
視力を得る前の本体を反映した『盲目の医者』は、
ある意味で『プロリフィック』と似ていたのかもしれない。
それは色のない世界で生まれた存在だった。
「アリスのスタンドは『かわりにくい』っていわれてたんだ。
でも、ガンバったら『かわっちゃった』!!イェイ!!」
802
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/27(日) 01:35:56
>>801
「えへへ……」
アリスにつられたのか、照れ気味な笑いを漏らす。
「……そう……なのですか。
先ほど仰った、『色々あって』……というのは、そのことだったのですね」
『ドクター・アリス』の立てた指をぼんやりと見つめる。
『スタンド』は『精神の形』……その姿が変わってしまうほどの経験。
「想像も……つきませんね」
このハイテンションな少女には、底知れないものがある──しかし。
「…………ありがとう、ございます」
今度は謝るためではなく、感謝を示すために、頭を下げた。
『励ましてくれている』──というのは、乙街の思い込みかもしれないが。
「でも」
「私は、変わらないと思います。
成長することはあっても、変わることは……おそらく。
生まれたときから、この子たちは私の中にいたのでしょう。
そういう生き方を……してきましたから」
『諦める』ということは、『受け入れる』ということ。
その意味するところが、ポジティブなのかネガティブなのかに関わらず。
ふと横を見ると、『妖精』たちはまだ『代筆』を続けている。
「お聞きしても、よろしいでしょうか」
「アリスさんからは、この子たちは……
『プロリフィック』は、どういう風に見えますか?」
803
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/27(日) 06:58:31
>>802
「いいや!!『ガンバった』っていうのは、なんかちがうな??
『イロんなトコいってイロイロみてきた』のほうがピッタリくるぜ!!」
「アリスとは『1%のガンバリ』と『99%のセンス・オブ・ワンダー』である」
「そういうカクゲンもしられてるコトだし。
なかった??じゃあイマつくった!!」
バタフライ型のフレームに収まったアリスブルーのレンズ。
その向こう側で、溢れんばかりの『好奇心』を湛えた瞳が光り輝いている。
まさしく『不思議の国』に迷い込んだアリスのように。
「イイんじゃない??
かわるかもしれないし、かわらないかもしれないけど、
ベツにどっちがどうとかってワケじゃないしさぁ」
ゴソゴソ
ポケットからチョコレートの小袋を取り出し、その内の一粒を口の中に放り込む。
「『M&M's』のチョコレートみたいに、かわらないモノだってあるさ!!
コレ、『イロ』がついてるでしょ。だからスキなんだなぁ〜〜〜〜」
「おん??」
暢気にチョコを食べ始めたが、投げ掛けられた問いに手を止めた。
「『本体を補うための力』――――」
真剣な面持ちで『プロリフィック』を見つめ、ぽつりと静かな声色で呟く。
「――――って、しおんちゃんにいわれたんだよね。
『オトちゃんの』も、オトちゃんのかわりにやってくれてるみたいじゃん??
だから、『わたしの』とにてるっぽいきがする!!
きっと『ひつよう』なんだろうなぁっておもうよ」
かつての『ドクター・ブラインド』は、
『見えない目』を補うための能力だった。
しかし、実際に目覚めたのは『視力を得た後』であり、
そこが『プロリフィック』とは異なる。
この世に誕生した時点で『本来の役割』を喪失していたのだ。
「あとは…………『カワイイ』!!グッドグッド!!」
804
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/27(日) 18:44:38
>>803
「……ええ。
あなたのように、変化するもののほうが……珍しいのでしょうし」
色とりどりのチョコレートを見て頷く。
ちなみに、乙街は『M&M's』のようにカラフルなお菓子は得意ではない。
食べる度にその色を記録しなければならず、疲れるからだ。
「本体を、補うための……ですか」
「……確かに……私は、記録することに疲れているのでしょうね。
『代わり』を望む心が、どこかにあったのかもしれません」
『プロリフィック』の真の能力……『代筆』の『強制』。
アリスは知る由もなく、乙街自身も実際に発動したことはまだないが、
『代わりにやってくれる』という表現は、実に適切と言える。
『必要』という言葉に、どこか複雑そうな表情を浮かべた……が。
「かっ……『可愛い』?」
その単語は予想していなかったらしく、素っ頓狂な声が出た。
なぜか少し顔を赤くして、ついと目を逸らす。
「そ、それは、なんと言いますか……気付きませんでした。
…………ふふ。書き足しておきます」
「他の方の意見を記録するのは……久しぶりですね」
そう、少し嬉しそうに呟いた。
805
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/27(日) 20:47:46
>>804
乙街のリアクションに笑顔を返し、ポケットからスマホを取り出す。
「そんじゃ、わたしも『キロク』しよっかな。
レンラクサキこうかんしようぜ!!」
ススッ
「あ!!アリスもコレクションしてるぞ!!みる??」
おもむろにスマホを操作し、スライドショーをスタートさせる。
1枚目には何の変哲もない『空』が写っていた。
2枚目も『空』、3枚目も『空』、4枚目も『空』だ。
その次も、その次も、その次も…………。
『時間帯』や『天気』が違っていたり、
『季節』が異なるらしい写真も含まれているが、
一見すると『全く同じ』に見えるようなものも少なくない。
とにかく、ひたすら『空の写真』が続く。
乙街ほどではないにせよ、かなり大量に保存されているらしかった。
「『ソラ』ってゼータクだとおもうんだよね。
いつみても『ちがうイロ』があるし、
いっかいみたソラは『にどとこない』の!!
ほら、『イマ』だって――――」
スイッ
ふと『今の空』を見上げ、しばしの間だけ眺める。
「――――『セカイ』ってさぁ、すっごくキレイだよねぇ〜〜〜〜」
────ポン
思い出したようにスライドショーを停止し、QRコードを表示させる。
「これ、アリスのレンラクサキ!!『キロク』しといてね!!」
明るい笑顔を絶やさないまま、スマホの画面を乙街に向けた。
806
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/27(日) 23:27:51
>>805
「連絡先を……ですか? は、はい、ただいま……」
決して社交的ではない乙街にとってはレアイベントだ。
慌てて傍らのビジネスバッグを探るが、
スマホを差し出されると、控えめにその画面を覗き込んだ。
「……そう、ですね。
私も、空模様については……毎日、書き留めています。
二度と同じ空はない……ということにも、共感できます」
「でも────」
興味深そうに頷きながらスライドショーを見つめていたが、
アリスが空を仰ぐと、それに倣って顔を上げた。
空を見るというよりは、ただぼんやりしているだけのような遠い目で。
「私は、ただ……記録するために、記録しているだけなので。
あなた自身の心の綺麗さが……世界をも、綺麗に見せているのでしょう。
やっぱり…………少し、羨ましいです」
「……………………」
「……あっ、はっ、はいィ、QRコードですね……ええっと……」
わたわたしつつ、あからさまに不慣れな手つきでスマホを操作する。
「はい……できた、と思います。ありがとうございます。
……ずいぶん長く話し込んでしまいましたが、
もしかして、ご用事があったりはしませんか……?」
807
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/28(月) 01:46:41
>>806
初めて『空』を――『この世界』を目にした時、
激しく心を揺さぶられたことを覚えている。
いつの間にか涙を流していた。
その瞬間から、『夢見ヶ崎明日美』は『不思議の国』に足を踏み入れ、
『ウサギ』を追いかける『アリス』になったのだ。
「アリスのココロがキレイかどうかわかんないけど、
イロイロみてるのはたのしいよ??
『セカイのゼンブ』をみるのが、わたしの『ユメ』だから!!」
ピッ
乙街の画面を読み取って、連絡先の交換を済ませた。
「チキョウをアッチコッチとびまわってさぁ、
『アリスがみたモノをミンナにもみてもらう』っていうのもアリかな〜〜〜〜。
でも、このマチだけでもケッコーしらないコトあるし、
もっともっとケンブン??をひろめていこう!!」
ひとしきり喋り終え、乙街から予定を尋ねられた時、
不意に『曲がり角のある方向』に視線を移す。
「ヨウジはなかったけど…………イマできた!!
これから『クレープのキッチンカー』にいくぜ!!
きょうもイッパイあるいたから『エネルギーほきゅう』しないとな!!」
────ビシィッ
人差し指を立てた右手を高々と掲げ、
それを勢いよく振り下ろすという大袈裟な動きで、遠方の『曲がり角』を指し示す。
その向こう側では、確かにキッチンカーが営業を始めていた。
しかし、こちら側からは『全く見えない』。
「コレは…………ヨーグルトクリームにブルーベリーソースをかけて、
ココアクッキーをトッピングしたヤツだ!!」
仕組みは簡単なもので、『超人的聴覚』が『車の音』を、
『超人的嗅覚』が『クレープの匂い』を捉えたというだけのことだった。
「オトちゃんはヨウジあるの??イッショにクレープたべない??」
タ ン ッ
乙街に誘いの言葉を掛けながら、元気にベンチから立ち上がる。
808
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/28(月) 17:44:26
>>807
「世界の、全部を……ふふ。素敵な夢だと思います。
叶えなさった暁には……私にも、見せていただければ幸いです」
果てしのない夢だ。
だが、乙街の表情に呆れや嘲りの色はない。
『この女の子になら、できるのかもしれない──』
そう思ったのかどうかは、定かでないが。
「クレープ……ですか?」
「…………?」 「あるのですか? ……そこに」
当然、乙街からはキッチンカーは見えない。
不思議そうに小首を傾げるが、特に何も尋ねることはなかった。
続く言葉の衝撃に思考を吹き飛ばされたからだ。
「!!」
「クレープを……一緒に……!?」
それは灰色の青春を送った人間には無縁の世界。
決して社交的ではない(2回目)乙街に関しては、言うに及ばず。
ゴクリ・・・・・・
「で、では……お言葉に甘えて……ご一緒させていただきます。
……お話してくださったお礼に、ご馳走いたしますよ。
こう見えても、社会人ですので……」
なんとか平静を装い、アリスに続いて立ち上がった。
同時に、『妖精』から手帳を受け取り、胸ポケットのペンを取り出す。
809
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/28(月) 23:43:23
>>808
本体とスタンド――――『2人のアリス』が並び立つ。
その光景は、二体一組である『プロリフィック』にも似ていた。
まるで鏡写しのようで、『鏡の国のアリス』を彷彿とさせる。
「おお〜〜〜〜!!オトちゃん、カッコいい〜〜〜〜!!
『しはらいはカードで』とか、やっちゃう??
アリスも『ババぬき』だったらジシンあるぞ!!」
タンッ タンッ タンッ
タンッ タンッ タンッ
大きく両手を振ってスキップしながら、目的地に向かって歩いていく。
「――――ほら、『アレ』」
まもなく曲がり角の向こうから出てきた通行人と遭遇する。
その人物はクレープを手にしているようだ。
『ヨーグルトクリーム』と『ブルーベリーソース』に、
『ココアクッキー』がトッピングされていた。
「アリスはホイップとカスタードがドッチもはいってるヤツがイイなぁ〜〜〜〜。
ストロベリーソースにピスタチオアイスをトッピングしたヤツ!!」
やがて角を曲がると、営業中の『キッチンカー』が視界に飛び込んでくる。
ちょうどクレープを受け取ろうとしている客が1人いた。
『ホイップクリーム』と『カスタードクリーム』に、
『ストロベリーソース』と『ピスタチオアイス』だ。
「そんじゃ、ふたりの『であいのきねん』ってコトで、
きょうはおごってもらっちゃおっかな!!
オトちゃんセンパイ、チュウモンおねがいしま〜〜〜〜す!!」
ありがたく申し出を受け入れ、乙街にくっついて店員の前に立つのだった。
810
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/29(火) 02:51:42
>>809
本体に手帳を渡すと、役目を終えた『妖精』たちは解除された。
鉛筆の文字を消すかのように、虚空に掠れて消えていく。
それを待たずに、乙街は再びペンを走らせ始めた。
「……私は、『神経衰弱』のほうが得意ですかね……エヘヘ……」
チラッ
「エヘヘ…………」 チラッ
『じゃあノらなきゃいいのに』レベルで恐る恐るアリスをチラ見しつつ、
スキップに遅れをとらないように、少し早足で歩き出す。
「……本当ですね。キッチンカーが……。
それに、あれは……ヨーグルトとブルーベリー……ですか?」
驚愕した様子で、『ドクター・アリス』を凝視する。
目覚めて間もないとはいえど、さすがに何かを察したらしかった。
「……話題は、まだまだありそうですが……。
まずは、クレープですね。いちごとピスタチオ、でよろしいですか?
私は……ううん。……少し、悩む時間を下さいますか」
キッチンカーの前に立つと、一通りメニューを眺め回す。
「すみません……注文、よろしいでしょうか。
この、『ストロベリーアンドピスタチオ』をひとつと……」
しばし、逡巡したあと。
「…………いえ……やっぱり、『ふたつ』。お願いいたします」
その後、2人は一緒にクレープを食べたり、歓談したりしたのだろう。
どんな話をしたのか。いつまで続いたのか。別れの言葉はなんだったのか。
しかし、語られない時間というものは、あってもいいと思うのだ。
811
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2025/06/21(土) 23:12:38
星見駅構内の待合室に、『黒い女』が座っている。
近くで見れば、その装いが『喪服姿』であることに気付けるだろう。
知人なら、それが誰かも分かるはずだ。
「――……」
傍らには『旅行鞄』が置かれており、遠出するらしいことが窺えた。
812
:
<削除>
:<削除>
<削除>
813
:
朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2025/06/24(火) 00:19:45
>>811
「どうもすみません。」
ふと、隣から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「お隣、良いですか?」
微笑みかけてくるその顔は、彼女にとっては馴染のあるモノであろう。
814
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【3/7】
:2025/06/24(火) 14:06:31
>>813
人々が行き交うプラットフォームを眺め、乗車する予定の列車を待っていた。
「……ええ、どうぞ座ってください」
スッ
見知った相手に会釈し、隣の椅子を勧める。
「――笑美さん、お出かけですか?」
大きな信頼を置く人物と、出発前に出会えたことは『幸運』だっただろう。
815
:
朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2025/06/24(火) 17:15:27
>>814
「どうもありがとうございます。」
そう言って軽く頭を下げると、小石川の隣に笑美は座った。
「ええ、ちょっと遠くにお出かけです。
今日は軽い休日って感じですから。」
彼女の方は軽そうなカバンを抱えている。
そこまでの遠出ではなさそうだ。
「小石川さんは…
それは旅行カバンですね。
どこかに旅行に行くんですか?」
ちらりと小石川の持っていた旅行カバンをみる。
816
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【3/7】
:2025/06/24(火) 20:14:42
>>815
小石川の鞄は、落ち着いたデザインの上品なボストンバッグだった。
「私は『N県』に――そちらに生家があるものですから……」
『N県』といえば、ここ『S県』に隣接し、全国4位の面積を持つ内陸の県だ。
「個人的に『大事な用』があって、しばらく家を空ける予定です。
私が不在の間は、『常原ヤマト』さんに『ハウスキーピング』を依頼し、
『サロン』の活動に支障を来たさないように取り計らっておきます」
…………ソッ
ふと思い立って、荷物から『鍵』を取り出す。
「これは私の家の『合鍵』です。
お貸ししますので、自由に出入りしていただいて構いません。
もちろん、涙音さんに渡してくださっても結構です」
笑美を信頼し、自宅の合鍵を差し出した。
817
:
朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2025/06/24(火) 22:37:20
>>816
「へぇ、あちらの方の出身なのですね。
…お隣の県ですから、そこまで遠くというわけでもなさそうですね。」
少し微笑みながら答える。
そこまで遠くというわけではないようだと思う。
「ええ、サロンの方は…
私も顔を出させていただきます。
それに、たまには涙音も来ると思います。」
そう言って合鍵を手に取った。
「サロンに協力する人も何人か増えたみたいですし、
心配いらないですよ。お留守の間は。」
「…どのくらいの旅行になりますか?
一応聞いておきたいです。留守居を預かることになりますから。」
818
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【3/7】
:2025/06/24(火) 23:17:49
>>817
合鍵を受け取った手に、小さな重みが伝わる。
先程も言われた通り、これで自由に出入り可能だ。
『主宰者』の代理として、『会員』を含めた『来客』を出迎えることもできるだろう。
「……この旅行の目的は、『特別な衣類』を仕立てることなのです」
「あちらには1週間ほど滞在する予定ですが……
『生地』の都合によっては少し延びるかもしれません。
遅くとも、2周間以内には戻ってこられるでしょう」
出発前の段階から、生地には目星をつけていた。
ただ、貴重な素材なので、納得できる形になるまで時間が掛かるかもしれない。
それは覚悟の上だ。
「――『撫子』は家に残してきました。
基本的な世話は常原さんにお任せしておきますが、
時々は様子を見ていただけますか?」
今もキャペリンハットを被っているが、
これは『普通の帽子』であり、『帽子猫』は家の中で眠っている。
819
:
朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2025/06/25(水) 00:12:51
>>818
(信頼されている…ということよね)
小さな鍵に感じる『責任』という重み。
どこかその信頼に答えてあげたいという思いを抱いていた。
「へぇ、新しい衣服を用意するんですね。
しかも生地選びから…ということはオーダーメイド…
あるいは、小石川さんが作るのですか?」
普段は黒い服をずっとみているだけに
違う服を着ている姿を見るのは興味がある。
「楽しみにしていますね。
その新しい、衣類というものを。」
その表情は、本当に楽しみにしている様子であった。
「あの帽子猫ちゃんは…
今は頭に乗ってないですね。
…わかりました。できる限りお世話させていただきます。」
そう言って頭を下げた。
「たまーに、頭に乗せたりすると思いますけど…
良いですよね?」
笑美の表情はどこか楽しみそうだ。
猫好きなことがうかがえる。
820
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【3/7】
:2025/06/25(水) 15:39:34
>>819
笑美の言葉を受けて、自らの右肩に左手を添える。
「新しく『ストール』を仕立てるつもりです……。
『サロン』を立ち上げた今、装いに変化を加えることで、
心を引き締めたいと考えました。
実際の作業は専門家にお任せしますが、
こちらの希望を正確に伝えるために、私も現地に赴く必要があるのです」
この喪服は『誓いの証』であり、これからも変える気はない。
新たに作ろうとしているストールも、『喪服に合った仕上がり』になるだろう。
それは『新たな決意の証』だ。
「……撫子をよろしくお願いします。
おそらく『ハウスキーパー』の常原さんが済ませてくださると思いますが、
念のために笑美さんも知っておいてください」
「基本的に、食事は『朝』と『夜』の『2回』です。
『白身魚』を使ったキャットフードと、
『チキン』を使ったキャットフードがありますから、
それらを交互にあげてください。
また、『長毛種』なので、毎日『ブラッシング』が必要になります」
柔らかな微笑みを浮かべ、小さく首肯する。
「笑美さんや涙音さんが遊んでくれると、きっと撫子も喜ぶと思います」
電光掲示板を見上げると、乗車予定の『新幹線』が表示された。
もう少しで到着するようだ。
鞄に手を伸ばし、出発の用意をする。
821
:
朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2025/06/25(水) 20:03:13
>>820
「ストールですか。
たしかに新しい色合いがあると心も引き締まるでしょうね。
どんなものになるか、今から楽しみにしています。」
小石川の喪服の姿を見ながら答える。
彼女の姿に似合うストール…どのような色合いになるのか
どのような柄になるのか、興味深いものだ。
「あっ、すいません。今からスマホにメモさせていただきますね。」
撫子の世話に必要なことがある。
それを聞き、笑美は慌ててスマホを取り出す。
「ふむふむ…食事は朝と夜…
それから白身魚のキャットフードとチキンの…
結構グルメなのかしら?
それからブラッシングですね…
この時期は暑いですからね。撫子ちゃんも大変でしょうね。」
そうつぶやきながら、スマホに入力していく。
「はい、このことは涙音にも伝えておきますね。
それと、由楽も連れてきていいでしょうか?
…喜ぶと思います。」
そう言って微笑みかけた。
やがて、新幹線が近づいていることが知らされる。
「どうやらもうすぐお時間みたいですね。
…楽しみにしています。新しい装いの小石川さんを。」
その表情は、小石川への期待がうかがえるものだった。
822
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【3/7】
:2025/06/25(水) 21:05:07
>>821
自分の『未来』を見据えるかのように、線路の先を見つめ、静かに思いを馳せる。
「『フードローテーション』と言って、
体質に合うフードを複数ストックしておくためです。
もし片方を食べなくなった場合、もう片方で対応できますから……」
「長毛種の猫は毛量が多く、抜け毛も増えてしまうので、
毎日のブラッシングが欠かせないのです。
専用のブラシを用意してありますので、それを使ってください。
1回3分ほどで十分でしょう」
「大体の世話は常原さんが済ませてくださると思いますが……
笑美さんが気付いた時にはお願いします」
やがて新幹線がホームに近付いてきた。
鞄を手にして椅子から立ち上がり、笑美に向き直る。
『出発』の時間だ。
「……ええ、由楽さんが個人的に来てくださるのであれば歓迎します」
『サロン』は『スタンド使いの組織』であり、そこに由楽が関わることはできないが、
『小石川文子の友人』として遊びに来る分には、何ら問題は生じない。
「――私が不在中に何かあった際は、遠慮なく連絡してください」
スゥッ
深く頭を下げ、ゆっくりと待合室を出ていく。
823
:
朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2025/06/25(水) 23:23:19
>>822
「そうなんですね…
ペットを飼ったことがないですから
そのへんは詳しくなくて…ありがとうございます。」
「抜け毛の処理もちゃんとさせていただきますね。
小石川さんほどうまくブラッシングは出来ないかもしれませんが…
なるべく優しくやります。」
彼女からの説明を次々とスマホのメモ帳に記録していく。
「はい、常原さんと鉢合わせたときには
お世話を一緒にさせていただきます。」
そういうと、立ち上がった小石川を目で追う。
いよいよ出発の時間が来たようだ。
「きっと、由楽も気に入ってくれるでしょうね。
あんなに可愛いですから」
そう言って微笑みかける。
由楽もまた、小石川の大事な友人なのだ。
「了解です。でも…
なるべくトラブルは起きないように気をつけますね。
せっかくの大事なときなので、中断させるようなことがあったら悪いですから。」
「小石川さん…」
やがて待合室を去る小石川に声を掛ける。
「帰ってきたときには、旅の思い出を聞かせてくださいねー。」
そう言って手を振り、見送っていった。
824
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【3/7】
:2025/06/26(木) 04:25:07
>>823
乗車する直前、再び笑美の方を振り返り、穏やかな微笑を向ける。
「――……お見送り、ありがとうございます」
ニコ…………
旅立ちの当日に、こうして笑美と会うことができたのは、
『幸先の良い始まり』と呼んで差し支えない。
「お土産を持って帰りますから、楽しみに待っていてください」
新幹線に乗り込むと、まもなく扉が閉まった。
ガラス越しに片手を振り、笑美に応える。
徐々に車体が動き出し、見慣れた景色が音もなく遠ざかっていく――――――。
……………… ……………… ……………… ……………… ………………
こうして『小石川文子』は、しばしの間『星見町』を離れることになった。
次に帰ってきた時には、『新たな装い』を身に纏っているだろう。
そして、それは1人の人間としての『新たな始まり』でもあるのだ。
825
:
<削除>
:<削除>
<削除>
826
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【4/7】
:2025/08/08(金) 20:16:36
黒いキャペリンハットと洋装の喪服を身に纏い、夕方が近付く『鵺鳴川』を歩いている。
ここは繁華街から離れていて人通りが少なく、比較的静かな場所だった。
緩やかな風が吹く度に、喪服の上に羽織ったストールが揺れ動く。
ストールの色は『二人静(ふたりしずか)』――暗い紫色だ。
誰かを捜しているかのように、帽子の下で視線を巡らせながら歩き続けていた。
「――……」
ふと立ち止まると、川沿いの散歩道で佇み、水面に浮かぶ葉を見つめる。
827
:
小野塚 遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2025/08/10(日) 22:38:09
>>826
コロ
コロ……
……小石川の足元にビールの空き缶が転がってきた。
「……すぅー…………」
見ると、道沿いのベンチに女が寝転がっている。
上半身にはジャケットが被さっており、顔は見えないが、
酒に酔って眠りこけていることは容易に想像できるだろう。
空き缶はその手から落ちて転がっていったらしい。
「ぷぅー…………ぷぅー…………」
……女が起きる様子はない。
828
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【4/7】
:2025/08/11(月) 04:58:32
>>827
『スタンド使いとしての自分』を見つめ直すため、
『スタンドを封印する』という『枷』を自らに課したことで、
普段は気にしなかったような些細な出来事も無視しづらくなった。
コロ…………
コロ…………
転がってくる空き缶を見つめ、その動きを注意深く観察する。
スッ
『ただの空き缶』であることを確認できたら、
それを片手で拾い上げ、ベンチの女性に歩み寄っていく。
────ソッ
ハンドバッグを開けると、そこから『小さな布袋』を取り出す。
フ ワ ァ ッ
『香り袋』から漂う『ラベンダーの香り』は、
そよ風に乗ってベンチの上まで届くだろう。
ジャケットで覆われている部分は匂いが留まりやすくなるはずだ。
寝息が漏れ聞こえる隙間から芳香を送ることによって、
アルコール臭を上書きし、優しく起こそうと試みる。
829
:
小野塚 遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2025/08/11(月) 12:21:05
>>828
「……………………ぐっ」
香りが届いたのか、女はもぞもぞ身じろぎし始めた。
身体をよじった拍子にジャケットが滑り落ち、
パサ
その下から紅潮した顔が現れた。
濃い隈も手伝って、どこか倦み疲れたような顔貌である。
「う……うぐぐ…………うーん…………」
女は眉間に皺を寄せ、悩ましげな声を上げている。
あと一押しで目を覚ましそうだ。
830
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【4/7】
:2025/08/11(月) 15:45:43
>>829
女性の隣に腰を下ろし、彼女の表情を確かめた。
一見したところ、あまり体調が良さそうには見えない。
こんな場所で眠っていると、それ以外の問題も起こり得る。
〜〜〜〜〜〜♫
顔が露わになったのなら、スマートフォンを取り出し、
女性の耳元で『オルゴールの音色』を鳴らそう。
上半身を覆っていた遮蔽物がなくなった今、
音量は小さくても十分に通じるはずだ。
決して乱暴に起こすことなく、自然に近い形で目覚めてもらいたい。
831
:
小野塚 遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2025/08/11(月) 18:12:16
>>830
スマートフォンから穏やかなオルゴールの音色が流れ出す……
しばらくすると、薄っすらと女の瞼が開いた。
「…………うー……」
呻き声を上げつつ、おもむろに上半身を起こす。
気怠そうに頭を振り、辺りを見渡し……小石川と目が合った。
「……………………」
「えー…………っと」 「…………どなた?」
覚醒した直後のため、状況が把握できていないようだ。
口の端からよだれを垂らしたまま、ぼんやりと小石川を見つめている。
832
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【4/7】
:2025/08/11(月) 19:00:36
>>831
小野塚が目を開けた時、隣にいたのは『同年代』と思われる細身の女だった。
首から肩にかけて暗紫色の『ストール』を羽織り、
つばの広い帽子と合わせた黒い服を身に纏っている。
しかし、目覚めたばかりの状態では、
それが『喪服』だと理解するには時間が掛かるかもしれない。
「……お休みのところ、申し訳ありません。
私は『通りすがりの者』です。
もうじき日が沈む時間になりますので、
失礼して起こさせていただきました」
スマートフォンから流していた音を止め、目を覚ました女性に会釈する。
コト…………
ビールの空き缶をベンチに置き、両手を地面に伸ばす。
「――どうぞ……」
ジャケットを拾い上げ、軽く土埃を払ってから、持ち主に差し出した。
833
:
小野塚 遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2025/08/11(月) 22:16:32
>>832
「……あ、そうですか……はい……ありがとうございます……」
まだ目は半分閉じているが、小石川の説明は理解できたようだ。
もごもごお礼を言いつつ、ジャケットを受け取った。
「あー……私、ベンチで寝てたのか……そうか……」
「……なんかお花畑の夢見た……死んだのかと思った……」
(十中八九ラベンダーの香りの影響で)楽しそうな夢を見ていたらしい。
女が頭を掻くたびに、腰まで伸びた白い髪が揺れる。
よれよれのシャツや曲がったネクタイは『疲れた社会人』といった風体だ。
一方で、メイクもせずボサボサの髪を整えもしない様子は、『世捨て人』のようでもある。
平日の昼間からベンチで寝ているあたり、当然といえば当然かもしれないが。
極めつけに、その瞳は泥のように濁っていた。
「…………ビール……」 「もしかして、拾ってくれたの?」
ジャケットをもたもた着直しながら、女は空き缶に視線を落とした。
徐々に意識が覚醒してきたようである。
834
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【4/7】
:2025/08/11(月) 23:35:44
>>833
その『喪服の女』は、小野塚遥と対照的な雰囲気を持っていた。
優美な身体を包む装いは整っており、
帽子の下から覗く黒髪も綺麗に纏められている。
そして、ジャケットを差し出す両手の薬指で、
『銀の指輪』が慎み深い輝きを放つ。
「ええ――私の方に転がってきましたので……」
奥底に憂いを帯びた瞳が、『世捨て人風の女性』を静かに見返す。
おそらく何か理由があるのだろう。
しかし、そこに踏み込むことが必ずしも望まれているとは限らない以上、
迂闊に深入りはできない。
「……ここで人を捜していたのです。
かなり目立つ特徴のある方だと思うのですが、
お尋ねしても構いませんか?」
相手の事情を気遣い、さりげなく別の話題を切り出した。
実際、この場所を訪れた目的は『人捜し』だ。
比較的『人目につきにくい水場』を選んだのも偶然ではない。
835
:
小野塚 遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2025/08/12(火) 01:26:50
>>834
「そっか、すみま……ごめんね、ポイ捨て犯になるとこだった」
強くぶんぶんと頭を振ると、女は空き缶を握り潰した。
そして、ここで初めて小石川が喪服姿であることに気付いたらしい。
「人探し……って。別にいいけれど」
『その格好で?』を飲み込んだことに小石川は気付くだろうか。
ちらりと小石川の服装を見やり、すぐに目を逸らしたのがヒントである。
一応、詮索しないでおこうという気遣いはしたようだが。
「ちょっと待って、その前に」
口元を拭い、潰れた空き缶をポケットにねじ込む。
次に、ベンチの傍に置いてあったビニール袋をガサゴソ漁ると、
缶ビールを取り出し、躊躇いなくプルタブを開けた。
『迎え酒』か何かのつもりなのだろう、そのまま勢いよく呷る……
ゴクッ ゴクッ ゴクッ ゴクッ
「ふゥゥー…………遥ちゃん完全復活…………」
「で、誰を探してるって?」
836
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【4/7】
:2025/08/12(火) 19:35:03
>>835
小野塚が新たなビールを開缶している間、
喪服の女は手元のバッグを開けて中身を確認する。
そこには『小さな布袋』が入っており、
『夢の中で嗅いだ匂い』と同じものが感じられることから、
『これが原因だった』と分かるだろう。
不快な目覚めにならないように、手間を掛けて起こしたらしい。
「……よろしいでしょうか?」
ビールを飲み干す女性を見守り、
念のためにワンクッションを挟んでから再び口を開く。
「その方は――『ノエ』という男性です。
全身に『包帯』を巻いていることが特徴なのですが、
もし見かけていたら教えていただけませんか?」
『尋ね人』を告げた後、さっき開いた『缶ビール』を一瞥した。
おそらく『ノエ』は『水』に関係する能力を持ち、
人目を避けて行動している。
この川辺のような『人目につかない水場』なら、
出会える可能性があるのではないだろうか。
837
:
小野塚 遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2025/08/12(火) 22:36:16
>>836
「ノエ?」
ノエの名前を聞いた途端、女の眉がピクリと動いた。
「……………………」
ほんの一瞬、思案するような表情を浮かべたのち。
「いや」 「見たことないなァ」
何が面白いのか、あるいは演技か、ニヤニヤ顔を浮かべて否定の言葉を口にした。
小石川は、女の嘘に気付いても気付かなくてもいいし──
それを追及しても、しなくてもいい。
「まァ、何か事情があるんだろーなってことぐらい分かるから、
ただの好奇心で聞くんだけれどさ」
「なんでその人を探してるの?
警察か、探偵にでも頼めば済む話じゃないのかい?」
ただ、まずは女の質問に答える必要があるだろう。
女は缶ビールに口を付けながら、小石川の返答を待っている。
838
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【4/7】
:2025/08/12(火) 23:39:03
>>837
小石川の考えは次のようなものだった。
以前ナイから聞いた話によると、ノエは『追われている身』らしい。
そうであるなら、『ノエを知らないか』と尋ねる自分こそが、
『ノエを追う者』だと思われても不思議はないだろう。
「――……」
喪服の女は思案した後、小野塚を見つめる。
その気遣うような眼差しは、さっき話題を変えた時と同じ表情を秘めていた。
相手を尊重しながらも、踏み込み過ぎない奥ゆかしさだ。
「……人は誰でも『デリケート』な部分を持っています。
私が彼を捜す理由には、そういった種類の問題が絡んでいるのです」
詳しくは語らないものの、『公にできない理由がある』ということは伝わるだろう。
「私の口からは、それだけしか言えません」
そして、『好奇心』で聞けるのは『ここまで』だということも。
「ご存知でなければ……もし彼を見かけた時に、
『伝言』をお願いできませんか?」
小石川は『小野塚が黙っている可能性』に気付いていたが、
そのことを敢えて追及しなかった。
839
:
小野塚 遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2025/08/13(水) 03:32:07
>>838
「アハ。はぐらかすじゃないか」
慎み深い表情を崩さない小石川に対し、女の態度は軽薄だ。
しかし、その視線には一抹の警戒が混じっているようにも感じられる。
「正直に言うと君、だいぶ怪しいからさァ。
方法を考えないと、見つかるものも見つかんないかもよ?」
「もしくは、そっちが事情を教えてくれれば、あたしも正直に──」
おっと、と言って女は口に手を当てた。極めてわざとらしく。
「まァ、誰にだって話したくないことはあるからね。
ましてや、初対面だし。しょうがないさ」 「お互いにね」
ケラケラと笑いながら、女はビールを一息に飲み干した。
「伝言? いーよいーよ。あたしでよければ」
840
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【4/7】
:2025/08/13(水) 19:43:48
>>839
次第に沈みつつある夕日が星見町を照らし、茜色に染め上げていく。
小野塚から疑惑を向けられた喪服の女は、悲しげな面持ちで目を伏せる。
帽子の下には濃い影が差しており、町並みの風景と対比を成していた。
「……詳しい事情を明かせない以上、
私が『彼の敵』ではないことを証明できません。
疑われる可能性は承知しています」
だから、この場で無理に疑いを晴らそうとはしない。
「それは――いえ……考えておきましょう」
その口調からは『方法がなくて困っている』というより、
『方法はあるが使うことを躊躇している』といった雰囲気が窺えた。
「――では、こう伝えてください。
『夕暮れに初めて出会った場所で』と……。
きっと彼は覚えていてくれるはずです」
小野塚に託された言葉には、『秘密』に関わる意味が隠されている。
これに気付いた上で、彼が応じてくれるかどうか。
それだけが気掛かりだった。
841
:
小野塚 遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2025/08/13(水) 21:51:45
>>840
「そんな顔をしないでくれよ。こっちまで悲しくなっちゃう」
言葉に反して、女の顔には相変わらず薄ら笑いが張り付いている。
「伝言なら、ちゃんと伝えておくからさ」
それは『もし会ったら』というよりは、
ノエと会う手段を知っているかのような含みのある口調だった。
だとしても、やはり女にそれを教えるつもりはないらしい。
「それにしても、そんなに言いたくない事情ねェ。
あたしみたいに薄っぺらで空っぽな人間には想像つかないな」
「でも」
「その『敵』とやらについては教えてくれてもいいんじゃないかい?
ノエって人にとってだけの『敵』とも限らないしさ」
例えば──と、一息置いて。
「君の『敵』でもあったりするのかな?」
弧を描いた目の奥から、まっすぐな視線が小石川の瞳に注がれる。
842
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【4/7】
:2025/08/13(水) 23:18:40
>>841
喪服の女は思慮深さを湛えた表情で、小野塚を正面から見つめ返す。
「……私自身、ノエさんのことを全て知っているわけではありませんが、
『知人』から彼が追われているらしいと聞きました。
それに関して個人的な考えは持っていますが、あくまでも推測の範疇です」
慎重に言葉を選びながら、さらに話の先を続ける。
「私が『間違い』を犯した時、止めてくれる方々はいらっしゃいます。
ですが、その人達は『味方』です。
ノエさんに『敵』がいるとして、同じような存在だとは思いません……」
小野塚の問い掛けに答える姿は、過ぎ去った日を振り返るような色合いを帯びていた。
「申し訳ありませんが……これ以上は『責任』を持てなくなってしまいます。
もしお知りになりたいのであれば、
『本人』から直接お聞きになってはいただけないでしょうか?」
目の前の相手からは、華奢で控えめな印象を受けるものの、
内面的には芯の強さがあるらしく、核心に近付く部分は決して明かそうとしない。
843
:
小野塚 遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2025/08/14(木) 07:58:25
>>842
「ふゥーン……なんだかよく分からないけれど。
君もそのノエさんも、只者じゃないってことはさすがに察するよ」
「世の中、普通に生きてたら見えないものがあるなァ」
不意に目を逸らすと、女は実に楽しそうな笑い声を上げた。
「ま、部外者に事情を教える筋合いもないしね。
君の言う通り、本人に聞くとするよ」 「会えたらね。ふふふふ」
ふうと息を吐き、女はビニール袋を拾って立ち上がった。
立ってみると小石川を上回る長身だが、猫背なので縮こまった印象である。
ゆっくり振り返ると、小石川を見下ろしてにやりと笑いかける。
「じゃあ、こうしよう」
「この話はここでおしまい。起こしてくれたお礼をさせてよ」
その笑顔はだらしなく、好奇と享楽の色が多分に混じっている。
しかし、少なくとも悪意の類はないように見えた。
小石川が酔っ払いに対して嫌悪感を抱かないかどうかは別の問題であるが。
「カフェにでも行かない? お茶ぐらいご馳走するとも。
それに君、面白そうだし。只者じゃないのを抜きにしてもね」
もちろん、女の誘いに乗るか、人探しを続行するかは小石川次第だ。
844
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【4/7】
:2025/08/14(木) 14:01:24
>>843
小野塚を見る小石川には、ふと思い当たる人物がいた。
知人にも『酒を手放せない者』がいる。
だから何かが分かるわけではないにせよ、飲酒に頼りたい場合があることは理解している。
最近は回数が大きく減り、以前ほど常用しなくなったものの、
小石川自身も時折『鎮静剤』を使用しているのだから。
頭では分かっていても、いったん身に付いてしまった悪癖を完全に取り去るのは難しい。
「そういうことでしたら……まずは『自己紹介』させてください」
スゥッ
ストールを靡かせながら立ち上がり、改めて小野塚と向き合う。
「――私の名前は『小石川文子』です。
普段は『ラベンダーティー』を愛飲しています」
ニコ……
「……よろしければ、ご一緒しましょう」
喪服の女は穏やかな微笑を返し、小野塚に同行する意思を伝えた。
そこから先は、また別の話になるだろう。
だが、ここで『一つの繋がり』が生まれたことは確かだ。
845
:
小野塚 遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2025/08/15(金) 00:46:45
>>844
「よしよし。美人さんとお茶する約束できちゃった」
微笑にはからかうような上機嫌な笑い声が返ってきた。
女が酒に溺れている理由は伺い知れないが、
倦み疲れた風貌といい、どこまでが本気か分からない言動といい──
「あたしは小野塚遥。改めて、色々とありがとう」
「ちなみにあたしも紅茶派。
コーヒーは昔吐くまで飲んでから苦手になっちゃってさァ。ゲラゲラ」
ただならぬ経験をあっけらかんと言い放つことといい、
何か計り知れない事情を抱えているのではないかと感じさせる。
ある意味では、小石川の同類と言えるかもしれない。
今後、お互いについてどの程度知ることになるかは当人ら次第だが。
「それじゃあ行こっか、小石川さん。
で、この前聞いたんだけれど、珍しい猫がいるカフェが──」
そして、2人は日暮れゆく川沿いの散歩道を下っていった。
カフェでどんなことを話したのかは、2人しか知らないことである。
846
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/09/01(月) 05:19:01
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1614349479/718-719)から
現在時刻は『23時』――――コッソリ家を抜け出し、
薄暗い通りを歩く『アリス風の少女』。
白ウサギの『ぬいぐるみリュック』を背負い、
100円ショップで購入した『LEDコンサートライト』を携えていた。
ボタン操作で15色に切り替え可能であり、
今は『ライトブルー』の光が闇夜を照らしている。
☆.。.:.+*:゚ ☆*。゚:*+.:.。.☆.゚✲*☆。*゚✲☆*⋆.•*¨*¨*•.⋆*。✩
少女の傍らには『カラフルなリボン』で全身を飾る『金髪の人型スタンド』。
「やっぱりヒトがすくないときは『よくきこえる』」
深夜は人の活動が減り、その分だけ『音』を拾いやすい。
『ドクター・アリス』の『超人的聴覚』を最大限に発揮できるのだ。
新しい発見があることを期待して、
先程キャッチした『手掛かり』を頼りに進んできたのだが、
何か変わったものは見つけられるだろうか。
847
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/09/05(金) 23:26:39
>>846
夢見ヶ崎明日美にとって、『闇』は身近なものだった。
しかし、『光』を得てからは、『闇に目を向ける機会』は大幅に減っている。
だからこそ、こうして『深夜の冒険』を始めたのだ。
『光を得た状態で見る闇』は新鮮であり、それは一つの『新しい世界』。
そして、その扉を開く鍵は、『ドクター・アリス』に他ならない。
848
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2025/09/06(土) 04:46:54
星見街道の商店街で、あるイベントが開催されていた。
大勢で『打ち水』を行うことによって、気温の上昇を抑止しようという試みだ。
元々は社会実験だったものが、今では納涼の一環として定着している。
──────バシャッ
浴衣姿の群衆に、カーキ色の作業服を着た男が混ざっており、
革手袋に覆われた手で柄杓の水を撒いている。
この付近は気温が2℃ほど低く、他の場所よりも涼しく感じられるだろう。
一時的に足を止める者も少なくない。
849
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2025/09/10(水) 07:40:04
>>848
仕事柄、『水』と関わる機会は事欠かない。
蛇口を捻れば当たり前のように水が出てくる。
だが、こうした大規模な打ち水において、
上水道から供給される水を使わないことが慣例になっている。
節水の意味だけではなく、水の重要性を改めて知ろうとする意図も含んでいる。
今回の打ち水に使われている水も、下水に高度処理を施した『再生水』であり、
H市の水道局から委託されて現地に運んできた。
──────バシャッ
軽く柄杓を振って、乾いた地面に水を撒く。
飲用には適さないものの、『汚れた水』にも使い道がある。
どのような代物にも、それなりの活かし方は残されているものだ。
そのように考えながら、通り過ぎる人々を眺めていた時、『ある事実』に思い至った。
「――――――『水』だ」
歩き去る通行人は、誰もが地面を踏む。
少しばかり路面が濡れていたとしても、強いて注意を向ける者は少ない。
言い換えれば、彼らは『地面と同時に水を踏んでいる』。
もし、それらが『俺の水』だったとしたら、どのような結果に繋がり得るか。
あらかじめ広範囲に水を撒いておけば、容易に『ノコギリザメ』の発動が可能になる。
たとえ追尾が終了しても、相手が濡れた地面を踏んだ瞬間、
再び発動条件を満たすことになり、大幅に動きを制限できるだろう。
元来、『鮫』は水の中で生きる生物だ。
水と好相性であることに対しては、自然の摂理に近い印象を覚えた。
『試す機会』が巡ってくるかどうかは不透明だが、事前に確かめるべきかもしれない。
──────バシャッ
『穢れた血』にも、それなりの使い道は残されている。
850
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【5/7】
:2025/09/11(木) 11:58:48
全身に黒を纏う『喪服の女』が、鵺鳴川に沿って伸びる散歩道を歩く。
以前、この場所で小野塚遥と出会い、一つの伝言を託した。
その時と同じ時間帯に立ち寄っているのは、偶然ではなく意図的なものだ。
コツ コツ コツ…………
ミドルヒールパンプスの靴音を響かせ、
『玉小石のストール』を靡かせながら、散策を続ける。
851
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【5/7】
:2025/09/13(土) 18:58:11
>>850
ふと立ち止まり、頭上に広がる空を眺めた。
今頃どこかでノエも同じ夕日を見ているのかもしれない。
いつか同じ場所で同じ景色を見られる日は訪れるのだろうか。
目線を正面に戻すと、帽子によって生じた影が顔に落ちる。
おそらく今は待つしかないのだろう。
カツ カツ カツ…………
死者を悼む装束を纏い、黒い女は静かに歩き続ける――――。
852
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/10/27(月) 17:25:39
スウ―――――
フウ―――――
口から煙を吐き出しながら、それを持ち去っていく風の冷たさに思わす呟く。
「じきに冬か。」
野生の生き物には厳しい、試練の季節がやってくる。
あるいは、人間にとってもほかの意味で『そう』かもしれないが。
853
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2025/10/31(金) 20:50:40
>>852
「うんうん〜、いつの間にか寒くなってきてるよお。
これじゃすぐすぐ雪やコンコン!ってねえ」
『独り言』を声かけと勘違いしたのか、
もしくは暇だったのかもしれない。
『狐耳ヘッドホン』を付けた、金髪の少女が、
笑んでほとんど閉じた目を向け、話しかけてきた。
「今年もまた冬服を着られるのは、
良いことかもしれないけどっ」
言葉通り……分厚くダボっとした白に黄色のラインのジャージ姿だが、
運動部というよりは『そういうファッション』を思わせる。
854
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/11/02(日) 21:54:59
>>853
「『期末』」
「『通信簿』」
「『進路』」
フウ――――ッ
「耳障りのよくねえ単語も目白押しだ。よかったな?」
もう一筋煙を吐き出し、わざとらしく笑いながら煙草を片手に女のほうを見る。
このあたりの学生であれば、『受験』という単語がチラつかないだけマシかもしれない。
もっとも、高等部からの編入である村田にしてみればあまり関係のないハナシだ。
「ま、おれにはどれもこれもあまりカンケーのねえ単語だが。」
855
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2025/11/02(日) 22:11:11
>>854
「わおわおわお、コンを詰めて勉強しないとだあ。
…………って、言っても〜、
あたしも、自分には関係ないけどっ」
スッ
少し離れた位置にいたから、
話しやすいよう2歩ほど距離を詰めた。
「コヤコヤは学生さんたちを応援のシーズンだねえ。
あ、あたしは『コヤシキコヤネ』。
気軽にコヤコヤって呼んでくれていいよお」
学生の年にしか見えないが、
世の中には正道からは外れた人間もいる。
……というのは、どちらも同じことだろう。
「それ、美味し〜い?」
だからくゆらせる煙にも何も言わない気でいたけれど、
なんとなく……そう口走ってしまっていた。
856
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/11/04(火) 00:40:37
>>855
「『これ』か?」
煙草をつまむように持つ目の前の男は、学ランを纏っていて明らかに学生の風体だ。
だが『カンケーない』といって捨てるあたり、『正道からは外れた人間』なのだろう。
「いいや、まったく。
『こんなもの』を美味いだのなんだのと言ってるやつの気は知れたもんじゃねえな。」
スウ―――――
フウ――――
顔を反らして、流れた煙がコヤネにかからないように吐き出す。
「だが、おれには必要なものだ。
案外、こいつを吸ってる他の連中も『そう』なのかもしれねえな。
心の底から煙が美味いだなんて思ってるやつはいないのかもしれん。」
857
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2025/11/04(火) 11:45:12
>>856
「わかりやすい『好きな理由』がなくっても、
手放せないものって誰にでもあるよねえ」
吐き出される煙を束の間目で追い、
「あたしは『それ』吸わないけど〜、
人が吸ってるのを見るのは嫌いじゃないんだあ。
なんでなのかはわかんないけどっ」
それから『学ランの男』に向き直る。
「冬、嫌い? あんまり無いかな? 好きとか嫌いとか。
コヤコヤは好きだこ〜ん」
「コンビニにチョコのアイスが増えるからねっ」
最初に拾った呟きのトーンから、そう思った。
別にどっちだってよくはあるが、雑談とはそういうものだ。
858
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/11/05(水) 02:12:10
>>857
フ―――― ・ ・ ・
「ふとした拍子に、いろいろと考えが頭を過っちまうことがあるだろ。
だいたいは自分にも誰にも『どうにもならねえ』ことで、考えるだけ無駄なことがな。」
こぼすような口調で、煙のたなびく先を見ながらつぶやく。
「そういうときに、これを吸うんだ。
頭と肺を煙で満たして、そういう無駄な考えを文字通り煙に巻こうとしてんのさ。」
煙草を持っていないほうの腕で、懐から小さな箱を取り出す。
薄いフィルムに包まれた紙箱には、青い弓矢のパッケージが描かれている。
宙に流れて消えていく紫煙からはほんのりと、焦げた蜂蜜のような香りがした。
「『冬』にいい思い出はないが、『夏』よりはマシってとこだ。
寒いのは着りゃいいが、暑いのは脱いだってどうにもならねえからな。
別にどっちも嫌いってわけじゃあない。」
「ただ、ダチが息災かどうかが気になったってだけだ。」
859
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2025/11/06(木) 23:24:06
>>858
「わおわお〜っ、詩人だねっ。
…………でも、わかるなあ。
ぜんぶ煙に混ぜて吐き出しちゃえるなら、
どんなにマズくっても、コン輪際手放せないよね」
「むしろ吐くためにマズイのかも?
楽しむのにマズイなんてこんこんちきだもんね」
『煙草』を吸う人間は一人知っていた。
一人だけがどうしても頭にこびりついている。
そのひとも、そうして吸っていたのだろうか?
……鼻先をくすぐった甘く焦げた匂いに、
目の前の人間から離れた考えを呼び戻す。
「遠くに住んでるお友だちなのかな?
寒くなると病気とかしがちだし、心配だよねっ」
それ以上の何かがあるのかもしれないけれど、
『話したいところ』までで良いと思っている。
人の悩みを多く聞いてきたから……概ね、そのようにしていた。
860
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/11/08(土) 02:28:25
>>859
「その考えはなかったな。
いわれてみりゃあそうかもしれん。」
手にした短い煙草はゆっくりと燃える。村田はそれが気に入っていた。
ニコチンでぼんやりする頭と合わせて、時間がゆったり流れるような気がするからだ。
「おれはあんまり愛想のいいほうじゃあねえからな。会わねえようにしてんだ。
うっかり鉢合わせしちまったら、お互いに口より先に手が出かねない。」
「おれの見てねえとこで元気してくれてりゃ、それで十分なんだ。」
自嘲気味に笑い、煙を吐き出す。
『自己満足』。そんな言葉が浮かんでくるが、煙に混ぜて吐き出してしまうことにした。
「正直仲は良くねえ。考えも真逆だ。誉め言葉よりも悪態のほうがよく思いつく。
さんざんヒトのことひっかきまわした挙句、ケツまくるのまで他人に任せやがる。とんでもねえヤツだ。」
「だが」
「『ダチ』には違いねえんだ。」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板