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【場】『 大通り ―星見街道― 』 その3
1
:
名無しは星を見ていたい
:2022/10/03(月) 20:25:40
星見駅を南北に貫く大街道。
北部街道沿いにはデパートやショッピングセンターが立ち並び、
横道に伸びる『商店街』には昔ながらの温かみを感じられる。
---------------------------------------------------------------------------
ミ三ミz、
┌──┐ ミ三ミz、 【鵺鳴川】
│ │ ┌─┐ ミ三ミz、 ││
│ │ ┌──┘┌┘ ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
└┐┌┘┌─┘ ┌┘ 《 ││
┌───┘└┐│ ┌┘ 》 ☆ ││
└──┐ └┘ ┌─┘┌┐ 十 《 ││
│ ┌┘┌─┘│ 》 ┌┘│
┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘ 【H城】 .///《//// │┌┘
└─┐ │┌┘│ △ 【商店街】 |│
━━━━┓└┐ └┘┌┘ ////《///.┏━━┿┿━━┓
┗┓└┐┌──┘ ┏━━━━━━━【星見駅】┛ ││ ┗
┗━┿┿━━━━━┛ .: : : :.》.: : :. ┌┘│
[_ _] 【歓楽街】 │┌┘
───────┘└─────┐ .: : : :.》.: :.: ││
└───┐◇ .《. ││
【遠州灘】 └───┐ .》 ││ ┌
└────┐││┌──┘
└┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------
前スレ:
【場】『 大通り ―星見街道― 』
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647631/
【場】『 大通り ―星見街道― 』 その2
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1586906856/
771
:
空井イエリ『ソラリス』
:2025/02/11(火) 23:23:16
(……さて。防災と言ってもな)
ロップイヤーのように垂らしたおさげと、眠たげな目。
いささかメルヘンなデザインのコートを着込み、
冬毛の小動物を思わせる小柄なシルエットは、
一見すると『食われる側』の無害な存在でしかない。
・・・とはいえ。
(小石川さんも自分で書いちゃいたが、
おれだって『ソラリス』にそれほど頼っちゃねーし)
この町はおおむね平和であり、
『隠した牙』をおもむろに取り出す機会など、
そもそも意識せずとも、これまであまりなかった。
『スタンドを使わない生活は、普段の生活とあまり変わりない』。
(そうそう都合よく『災難』は降ってこねー。
いや、都合は悪い。
そんなもんは、もちろん、ない方がいいからな)
だから結果的には、ほとんど『ただ買い物してるだけ』。
何か特別なことが起きるのだとすれば、
それはイエリが『行く』のではなく、『来る』形になるのだろう。
772
:
空井イエリ『ソラリス』
:2025/02/15(土) 23:45:26
>>771
その日は、この後も平穏に過ごした。
773
:
ペネロープ・K・ウィザースプーン『ハックスラッシュG4』
:2025/02/22(土) 16:08:31
終電もとうに終了した深夜の商店街の一角に存在する『カラオケバー』。
そのカラオケバーの外装は中々に『年季』が入っており、『CLOSE』のプレートが掛かった『玄関扉』は特に劣化が酷く、
扉の塗装は所々剥がれ、得体の知れない無数の傷も付いており、
それを隠す為か至る所にグラフィティ調のステッカーが貼られている。
「おーいッ!!」ドンドンッ!
「マスタあぁ〜〜ッ」 ドンドンドン
「開けてくれェ〜〜ん!」ドンッ!
そんな玄関扉に胸から上をもたれ、一心不乱に扉を叩く女が1人。
街歩く人々は女に奇異、訝しげ、不快な眼差しを向けているが、
女は周囲の目線などお構いなしに扉をノックし続けている…
「ごめんなさ〜〜〜いー!!!!
もう客ん残した残飯食べたりせんけんさぁ〜〜!!
心入れ替えてちゃんと働くけ〜〜ん!!
もうサボったりせんけんさ〜〜〜〜!!
後生やけん酒飲ませてくれ〜〜〜〜!!!!
工業用アルコールかて思うほど質ん悪か焼酎や、
サーバーばろくに掃除しとらんけん雑巾ん風味んビールでもさぁ〜〜!!
ばってんお酒が飲もごたるたい!!
酒〜〜〜〜〜!!!!飲ませてくれ〜〜〜〜!!!!」
ドンドン ドンドン!! ドンドン!!
774
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/24(月) 16:42:14
>>773
歓楽街から程近い『地下アーケード』には、『デッドストック』を専門に扱う店がある。
どのようなルートで仕入れているか不明だが、とにかく『品揃え』は豊富だ。
もっとも、その分だけ『値段』も張るが。
「何が『お得意様は特別価格でご提供』だ。
露骨に足元見た値段つけてるとロクな死に方しないよ」
フゥゥゥゥ──────………………
「ま、ソイツがくたばると困るのが悲しいところだねえ」
茶色い紙袋を手にして『カラオケバー』の手前で立ち止まる。
愛好する銘柄――『ジタン』を燻らせつつ、
しばらく遠巻きに眺めていたが、どうやら治まりそうにない。
このまま放置する訳にもいかず、人目も憚らずに騒ぎ続ける女に歩み寄っていく。
「そこのお嬢さん、人様に迷惑かけちゃあいけないよ。
酒ならアタシが呑ませてやるから、とりあえず落ち着きな」
そこに立っているのは、白いパンツスーツを纏った長身の女だ。
外見から窺える年齢は中年くらいか。
『白百合を象ったイヤリング』を身に着けていた。
775
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/02/24(月) 18:09:17
>>774
「開けてね!」ドンドン!
シィーーーーーン
「……」
「ああ、そうと!
それじゃマスターが客が手ばつけんだったお通しば
こっそり別ん客に提供したりしとることや、
焼酎に水ば入れて傘増ししとることば勿論ッ!!
雀卓シート用意して『賭け麻雀』ん賭場開いとる事も!
洗いざらい警察に垂れ込んどるけんなァーーー!!!」
シィーーーーーーーーーン
扉に向かって悪態を吐いたが開く様子はないので、
諦め『寝床』へ戻ろうと踵を返そうとした所に、
紫煙を燻らせながらこちらに向かってくる百目鬼の姿が視界に入った。
ちなみにこちらの容貌は『ラテン系』の20歳そこそこの外国人女性だ。
「お?」 首を傾げ
「おぁ?」 考え込み
「おォーーっ!?」 笑顔になり、
「歩き煙草ん『オバチャン』!!あんたが神か!!
それたいぎゃ言いよる!?ウチにお酒飲ませてくるるッ!?
いやあぁ〜〜〜〜ッ!へへっ、ありがたすねぇ〜〜っ!
捨つるマスターおりゃ拾うオバチャンありってねぇ。
あっ!お手が塞がりなっせうばってん、
もし宜しかればお荷物持とうかぁ〜?」
顔に薄ら笑いを浮かべ、両肩を上げ、揉み手、
わかりやすく媚び諂う動作で『百目鬼』に歩み寄る。
776
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/24(月) 19:26:33
>>775
なるほど、この店の内部事情には通じていそうだ。
事後処理は『警察』に任せるとして、彼らの手間を省いてやることにしよう。
内心で算段を練りながら、鷹揚に笑い返す。
「いや、コイツはアタシが持ってるよ。
アンタを疑ってる訳じゃあないが、
これを手に入れるために結構な額を支払ってるんでね」
互いの距離が縮まった時、紙袋の中身が見えた。
そこに詰まっているのは幾つかの『紙箱』だ。
『カートン買い』した『ジタン』の箱が複数ある。
既に『製造終了』した銘柄であり、一般的な店舗では手に入らない。
なかなかの貴重品と言えるだろう。
「まぁ、ついてきな。
アタシの『行きつけ』があるから、そこに向かおうか」
『ラテン系の女』に一声掛けて歩き出す。
やがて辿り着いたのは、『飲み屋』ではなく『蕎麦屋』だった。
『蕎麦処天狼』という暖簾が出ている。
結構な老舗らしく、風情ある店構えだ。
現代的なビル群が多く建ち並ぶ景観の中で、
そこだけ時間が止まったように古風な雰囲気が漂う。
「――――――『ここ』さ。
この店は蕎麦も美味いが、『いい酒』を仕入れてるんだ」
ガララッ
扉を開けると、出迎える店主に片手を上げて挨拶し、手近な席に腰を下ろす。
「さてと、アタシは『日本酒』が呑みたい気分なんだ。
アンタも付き合いなよ。
つまみは…………『山菜の天麩羅』にしようかねえ」
「あぁ、『二挺木』――――しばらくだね」
注文して間もなく、『熱燗』と『天麩羅』が運ばれてきた。
それを運んできた人間は、三十代半ばの『蕎麦職人』だ。
百目鬼とは顔なじみのようで、軽い会釈をして立ち去っていく。
777
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/02/24(月) 20:56:55
>>776
「へへへ……、ウチのような『ル』で始まって『ン』で終わるごたる女には、
こぎゃん良かお店のこぎゃん良さそうな日本酒は勿体無かばいっ!
味なんてろくに分かりやせんとやけん!
ばってん折角んただ酒やけん少しだけ頂くばい」
古風な、いわゆる『隠れ家』的な雰囲気の店内。
物珍しげに内装を眺める女の纏っている衣服は古く薄汚れており、
趣のある蕎麦屋には似つかわしくない客層ではある事は明らかだ。
店員らしき人間が来たタイミングで大きく手を挙げ、
メニューを確かめもせずに注文をする。
「すんまっせぇ〜〜〜ん!」
「『白ホッピーセット』一つ!
それに『カットレモン』!付けてくれん!
フードは『板わさ』っ!『冷奴』!後、『チョリソー』くださーい!!!」
「へへへへへ。失礼するばい」
百目鬼がお猪口を持った瞬間にすかさず熱燗を注ぎ、
自分のお猪口には自分で酒を入れ、『乾杯』をした後に、
酒を並々と注いだお猪口を口元に近づけ、一気に流し込む。
「かあぁぁぁぁーーーーっ!!!
た、た、堪らんばい!!!!!!
こん間、河川敷で拾うた飲かけの発泡酒も美味かったけどっ!
こん日本酒も熱うてお酒ん味がしてうまかねぇ!!!!
カラオケバーんバイト首になって追い出された時はやばかて思うたけど、
オバチャンに拾うてもろうて酒と飯にありつけてラッキーやわっ!」
「んで、何でオバチャンはウチば拾うてくれた?
言うとくけどウチは文無しの『名無し』草よ?」
778
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/24(月) 22:15:22
>>777
最初に見た時から思っていたが、目の前の若い女には『既視感』に近いものを覚える。
「アンタの姿を見てると『知り合い』を思い出すよ。
寒空の下で逞しく生きてる『根無し草』さ。
案外どこかでバッタリ出くわすかもしれないねえ」
ここ最近、どうも『こういった人種』に縁があるのかもしれない。
そんなことを考えながら、向かいに座る女を観察していた。
相手が『酒を呑んだこと』を確認した後で、自らも酒器を口元に運ぶ。
「ところで、アタシは『タダで呑ませる』なんて言ってないよ」
適温に温められた酒が、外気で冷えた身体に染み渡り、一息つく。
「『勘定』はアタシが持つ。
その代わり、さっきの店について知ってることを話してもらう。
さっきアンタが道端でブチまけてた『悪行』を詳しく説明してくれりゃあいい」
ここに連れてきたのは『情報を聞き出すため』だ。
そして、既に『酒を呑んだ』。
その『見返り』を要求する。
「まぁ、ちょっとした『酒の肴』だと思えばいいさ。
アンタが『食うもの』に困ってるなら、『知り合いの店』を紹介してもいい。
『食料品』を『付け値』で買える店さ」
スッ
親指と人差し指で塩を摘み、天麩羅に振り掛けながら、さらに言葉を続ける。
「そこでは『1円』から売ってくれる。
『品質』は『値段』に比例するから、その場合の味は最低だろうけど、
『工業用アルコール』やら『雑巾臭いビール』が平気ならイケるんじゃないかい?」
サクッ
「『安全性』だけは保障されてるから、不味くても死にゃあしないよ」
今が旬の『ふきのとうの天麩羅』を齧ると、歯触りの良い衣が軽い音を立てた。
779
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/02/25(火) 20:00:52
>>778
「いやぁ、地元いる時にはホッピーなんて知らんだったばってん、
『芋』以外は焼酎じゃなかなんて思うとったけれど
この『甲類焼酎』ってのも慣れれば中々乙なもんで、
こぎゃん安うきしょく良うえいくらえる飲み方があるなんて、
酒飲みとしては嬉しか限りばい。
ソト1でナカ3飲んでやるわ。
こうやってレモンば絞って回しちゃって、と……」
半分程甲類焼酎が入ったグラスに、白ホッピーをとくとくと注いでから
一緒に提供されたカットレモンを一欠片摘んで果汁を搾り、
マドラーで入念にカラカラと回してからーー
ごくっ ごくっ
「美味かぁ〜〜〜〜っ!
続いてこの『チョリソー』さんを……」
自らの油でこれでもかと照りの入った真っ赤なチョリソーを箸で掴み、
大きく空けた口で迎え入れ、前歯で齧り
ぱりっ
「かあぁ〜〜〜〜〜〜〜っ!!
たいぎゃ美味かぁ〜〜〜〜〜〜っ!!
辛かばってん美味か、それとも美味かばってん辛かっ!!!
こりゃあ答えん出らん人類永遠のテーマや!!
またまたお酒が進んでしまうばい!!!!!」
チョリソーに配合されているスパイスで熱くなった口内を落ち着かせる為に、
キンキンに冷えたホッピーを流し込む。
「オバチャン、オバチャン」
「『嘘』はいかんばい」
「オバチャンがウチに『お酒飲ませてくれる』言うたのは、
ウチがあん店ん扉に齧り付いとった時っ!
腹いせに店んある事なか事おめいたとは、オバチャンに声かけれた後ばいっ!!
ウチは頭は悪か、ばってんそん分目と耳と鼻は良〜う利くけんっ!!
そぎゃんとってつけた『後出し』は『交換条件』としては成立しとらんばい!」
「それに」
持ち上げたグラスをテーブルの上に置き、
そのブルーブラウンの瞳で『百目鬼』を見据える。
「例えあん話が『フカシ』じゃなかったとしても、
自分ん『餌場』ば他人に明け渡すようじゃあ、
ーーーー『野良犬』としては生きていけん」
「後」
「オバチャンを観察した限り、
オバチャンがウチば『無銭飲食』で警察に引き渡すような人間じゃなかってんも、言い切れる。
ーーーあ、此処って『モク』吸える?」
780
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/25(火) 21:49:16
>>779
「おや、意外に『律儀』じゃないか。
アンタみたいなのばかりなら、世の中うまくいくんだけどねえ」
「いや、大したもんだ。アタシはね、『感心』してるんだ」
「なんでアンタが重宝されてないのか不思議だよ。
アンタをクビにした人間は、どうやら見る目がなかったようだね」
「――――いや、全く『惜しい』よ」
淀みない調子で、その『度胸』を称賛する。
トトト…………
手元では、空いた酒器に酒を満たす。
「この店には『チョリソー』なんてハイカラなものは置いてないから、
代わりに『創作料理』を注文しといたよ」
百目鬼の言葉通り、よく味わえば『チョリソーではない』ことは明らかだった。
「『馬肉のソーセージ風』ってところかねえ。
この店は『馬刺し』が美味いのさ。
アタシが無理言って出してもらったから、今日しか食えないよ」
出てきたのは『裏メニュー』だったらしい。
多少の無理を通せる辺り、やはり常連なのだろう。
一方、『板わさ』と『冷奴』は『お品書き』に載っている。
そして、百目鬼は煙草の火を消していない。
すなわち『聞くまでもない』ということだ。
「だけど、世の中には分からないことが多い。
この前も『おかしなこと』が起きたんだよ」
「コンビニに入った時、『ATM』の前で張り付いてた男がいた。
やたらと挙動不審なんで、アタシが店員に『通報』させようとした途端、
ソイツは急に騒ぎ出したんだ。その次に何があったと思う?」
グイッ
「『カードの取り出し口』が『ブカブカ』になっちまってたのさ。
その男自身が見せてきたからね。
でも、アタシが警察を呼んだ後、
警官が来るまでの間に『元通り』になってたんだ。
結局は『誤報』ってことで片付けられた」
――――――トン
一息で空にした酒器を机上に置く。
「アタシは『納得していない』」
781
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/02/25(火) 23:55:42
>>780
「ありゃあ」
もにゃあ
「『熊本県民』としてはそんまま馬刺しで頂こごたったばってん……、
まっ!!美味かけん別にいっか!美味か、美味か。
口ん中の脂をキンミヤで流し込んで無限ループや!!」
もぐっ もぐっ
「かあぁーーッ」
卓上に広がった酒と肴に舌鼓を打ち、
「ただ酒にありつくるけんあん店で働いとったばってん、
そもそもうちゃ何よりも働くとが好かんっ!!
真っ当に働いて得る金より、
自販機で拾うた10円やパチンコや競馬でゲットした泡銭ん方が何倍も嬉しかし!!
あん店にはほとぼり冷めた頃に顔出すけん、
ウチんガセネタ真に受けて通報でんされたら、
次顔出した時にマスターにぶっ殺さるるけん勘弁してくれ」
ゴクッ ゴクッ
雑談しながら飲み食いを進め、
注文した食べ物をあらかた胃の中に収め、煙草に火を付けた。
「ふうぅ〜〜〜〜ッ」
しゅぱあぁ〜〜〜
「そりゃあ奇妙な事も起こるもんやなあ。
何がどうなってそぎゃん摩訶不思議現象が起きたかはわからんがァ、
そん『ATM』が元に戻って、『お巡りさん』に誤報や虚偽通報扱いされたってことは
そん男がオバチャンよりずっと『上手』やったって話じゃなか?」
「『納得』できんって気持ちにも『納得』でくるけど」
782
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/26(水) 01:49:05
>>781
「まさしくアンタの言うように『上手』だったってことさ」
フゥゥゥゥ──────………………
酒器を傾ける手を休め、中空にジタンの煙を吐き出す。
「どんな方法を使ったんだか知らないけどねえ。
まるで『奇術』を披露された観客の気分だよ」
もちろん『そんなことはない』。
『爪』を持った『人型スタンド』だ。
それを使って細工したのは明白だった。
「だけど、実際は簡単な仕掛けなのかもしれないね。
手品ってのは説明されるまでは不思議に見えても、
いざ種明かしされると『そんな単純なことか』と思うものも多い」
スッ
そう言うと同時に、おもむろに『右手』を持ち上げる。
「例えば、『分かりやすい手品師の姿を思い浮かべろ』と言われたら、
大勢の人間が『ステッキを持った手品師』を想像する。
でも、その小道具は飾りなんかじゃあないよ」
グッ
そして、目の高さに持ち上げた手を『握り締める』。
「『ステッキを持った手』は、こんな風に『握り拳』の形になるからさ。
ステッキを握れば『手の中』にタネを隠せるし、
ステッキを置く時には『テーブル』にタネを仕込める。
それに気付かせないのは『演技力』の賜物なんだ」
こうした雑学は、『四課』に所属していた『警察時代』に学んだことの1つだった。
「だから、こっちの意識を誘導するような振る舞いは、
別の何かを隠すための『芝居』じゃないかと睨んでるんだ。
もっとも、まだ確証はないけどねえ」
そう――――『演技力』だ。
あの男は、確かに『演技力に長けていた』。
現場となったコンビニは『劇場』で、百目鬼は『観客』だった。
「これでも『粘り強さ』には自信があるんでね。
いったん目を付けた相手には、どれだけ煙に巻かれようが食い下がるよ」
783
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/02/28(金) 09:22:25
>>782
「ほぉ〜ん」 グビッ カラッ
グラスの中の焼酎を飲み切ると、
再び大きく手をあげ追加注文をする、
「すんませぇーんっ。
『ナカ』おかわりくださぁーい」
「うん」 「うんうん」 「ほォーッ」
火のついた煙草を指に挟んだまま百目鬼が披露した雑学に耳を傾け、
感心したかのような相槌を打つ。
「ナ・ル・ホ・ド、なぁ〜〜〜っ。
オバチャンは博識やなぁ。
マジシャンって色々考えとるんねぇぇ」
「あーッ」
「ばってん、オバチャンを見てると、
オバチャンがそん男に出し抜かれた『理由』ば、なんとなぁく分かるばい。
本当に『なんとなく』って話やし、
ウチん考えがあってるかなんてわからんけれどぉーッ」
784
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/02/28(金) 20:59:03
>>783
追加の『焼酎』を運んできたのは先程の蕎麦職人だ。
その役目を果たすと、すぐに引き下がっていく。
立ち去り際、一瞬だけ百目鬼に視線を向けたが、
それを受けた本人は気付いていないように見えた。
「ははぁ、そりゃなんだい。アンタの『なんとなく』を拝聴したいね」
「いや――曲がりなりにも、こうして差し向かいで酒を呑んだんだ。
いつまでも『アンタ』のままじゃあ、どうにも居心地が良くない」
視界の中を立ち昇る煙越しに、目の前の女の顔を見つめる。
「まずは『名前』を聞かせちゃあくれないかい?
アンタが名乗らなくてもアタシは勝手に名乗らせてもらうから、
次からは『そっち』で呼んでいいよ」
「――――『小百合』って者さ」
『名字を名乗らない』のは初めてのことではなかった。
『情報提供者』である『黒羽灯世』にも、『下の名前』しか教えていない。
個人的な事情であり、大した理由がある訳でもないが。
785
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/03/01(土) 22:54:50
>>764
「んとぉ〜〜ッ」
カラカラ
グラスに新たに注がれた甲類焼酎にホッピーを混ぜ、
グラスに目を向けながら話を続ける。
「小百合ちゃんはどういう考えで、そん男を通報したん?
そいつは結果的になんか『イタズラ』しとったばってん、
ただATMん前でキョドっとっただけやろ?」
レモンを一欠片搾り、
もう一度マドラーを挿し入念に混ぜる。
「そんにウチの知り合いの『カラオケバー』も通報しようとしとった。
ウチの『ホラ話』を鵜呑みにしたとしても、
普通の人ば行った事もないあんな流行っとらん飲み屋なんて放っておくばい。
なんせ一切『実害』をうけとらんけんねぇ。
『被害』被ってないのに『通報』するってのは、
否が応でもパクりたい『保健所』の人間か野次馬根性丸出しの『ネット民』くらいね。
悪さしとう人間だってパクられとうのうて頭使うとる筈やし、
『手段』じゃなくて『目的』になっとる通報なんてそりゃあ掻い潜るばい」
出来上がったホッピー焼酎をぐびっと飲む。
「うまかぁーーッ!!」
「それに『冤罪』でパクられとったら、そいつん人生確実に狂うとったばい。
そいつがどんな人間かって『興味』を持って『想像』した方がよかて思った」
「現に」
「目の前に、方言丸出しのガイジンの女がおるのに
小百合チャンいっちょん弄うてくれんしっ!!!
ウチ、寂しいばい〜〜〜〜っ」
786
:
百目鬼小百合『ライトパス』
:2025/03/02(日) 18:52:06
>>785
「ははぁ――――」
眼前の女の話を聞き終わり、小百合は押し黙った。
一本の煙草を一握りの灰に変える間、そこには沈黙だけが流れていく。
ようやく思い出したように、店内の時計を見上げる。
「…………おっと、もうじき『看板』みたいだね。
話を切っちまって申し訳ないんだけど、ちょっと一人で考えたいことができたんだ。
アタシは会計を済ませてから帰るから、先に引き上げてくれて構わないよ」
「ははは、正直に言うと『気の利いた返し』が思いつかなくてねえ。
今日のところは、この辺で勘弁してくれるかい?」
「でも、最初に思った通りだ。
クビになったのは気の毒だけど、その度量なら何処でもやっていけるんじゃないかい」
「アタシには、とても真似できないよ」
そして、小百合は店内に顔を向ける。
「さっき『追加の注文』がないか聞こうとしてたろ?
こちらさんの話が面白いもんで、集中してたからつい無視しちまった。
いや、悪かったよ」
ガタッ
椅子から立ち上がり、財布を取り出して会計に向かい、その途中で女を振り返る。
「物騒な輩もいるみたいだから気を付けて帰りなよ」
787
:
ペネロープ・K・ウィザード『ハックスラッシュG4』
:2025/03/03(月) 19:26:04
>>786
「お世辞でも、度量を褒めらるんな嬉しか、
ばってんウチはほんなこつ働こごたなか訳でっ!!
度量よか自販機の隙間に落ちとる小銭の方が嬉しかーッ!!」
トトトト
焼酎に追加でホッピーを注ぎ、ナカとソトを同時に飲み切るように調整し、
目の前の料理を肴に瞬く間に酒を飲み干しーー
「暴漢ん類なんて気にしとったら、こぎゃん生活送れんばいッ!!
小百合チャン、ごっそさん!!!
よか感じに酔えてきたし!こりゃあ今夜ん『ペネしゃん』な爆睡や!!」
「路上で寝て凍死してしもうたりして!」
椅子から立ち上がり、会計を持ってくれた百目鬼に礼をし、
今夜の『寝床』を確保する為店を後にした。
788
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/21(月) 18:41:10
「……………………」
カリカリカリカリ
カリカリカリカリ
商店街のベンチに腰掛け、手帳に何事かを書き連ねる女がひとり。
ときどき顔を上げてじっと前を見る所作は、写生でもしているようにも見える。
しかし、見る人間が見れば──
その視線の先に、『妖精』のような何かが浮いているのが分かるはずだ。
女は手帳に視線を落とすと、再びペンを走らせ始めた。
「……………………」
789
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/24(木) 06:58:55
>>788
ペン先が紙面を滑る音に混じって、どこからか『鼻歌』が聞こえてくる。
「フン♪♪フフンフン♪♪フンフンフン♪♪」
向こうから『アリス風ファッション』の少女が歩いてきた。
白いフリルブラウスに青いジャンパースカートを合わせ、
ダブルストラップのメリージェーンを履いている。
両脚を覆うタイツにはトランプのスートが描かれており、
頭に巻いているのはリボンではなくスカーフだ。
「フンフフ〜〜ン♪♪」
アリスブルーの『サングラス』やカラフルな『ネイル』、
飾りボタンのように並ぶ『缶バッジ』などは特に目立つ。
「フフフ〜〜〜〜ン♪♪」
そして、そのまま通り過ぎていく――――。
「――――フフンフン??」
かと思いきや、後ろ歩きで戻ってきた。
視線の先にいるのは『妖精』のヴィジョン。
ピタリと足を止め、その姿をまじまじと観察する。
790
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/24(木) 16:59:19
>>789
よほど集中しているのか、女は鼻歌に反応しない……
「……………………」
よく見ると、『妖精』は明らかに『スタンド』だった。
手のひら大の人型スタンドが、背中の翅を羽ばたかせている。
ヴィジョンは無数の黒い線が集まって構成されており、
立体的な『線画』か『ボールペンアート』といった感じだ。
また、女の左肩にもう1体の『妖精』が座っているのも見える。
「!」
少女が戻ってきて、ようやく女はその存在に気が付いた。
びくりと肩を震わせ、目前の少女の顔を上目遣いで見上げる。
「……あ、あのォ……何か…………」
自分が見られているものと勘違いしているらしい。
そして、手帳から目を離してもなお、ペンを動かす手は止まらない。
それどころか、書くスピードが上がったようですらある。
791
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/24(木) 21:04:11
>>790
『妖精』を見つめる少女は瞳を輝かせていた。
『アリスはウサギを追う』。
そして、視界に飛び込んできたのは紛れもなく『ウサギ』だ。
すなわち『好奇心の対象』。
『アリス』を名乗る者が、それを追いかけるのは当然の帰結である。
コレは『しょとうアリスがく』のキホンだぞ。
こんなのみつけちゃったら、ほっといてかえれないじゃないか!!
「フンフフンフンフフフンフン♪♪」
────ストン
軽快な足取りでベンチに歩み寄ると、おもむろに『女の隣』に腰を下ろす。
「あっ!!イマのは『きにしなくてイイよ』ってイミ!!」
ジィィィィィィ──────………………
「わたしはきになるけどさぁ〜〜〜〜??イェイ!!」
膝の上に両手で頬杖をついて、今度は『手帳』に視線を移す。
ここらヘンとかに、なんかありそうなカンジがする。
クウキをふるわすフシギなエネルギーがアリスのセンサーにビシビシきてるぜ。
とりあえず『150』くらいかな??
しょうてんがいにアシをふみいれたワレワレが、
ついにモクゲキしたショウゲキのコウケイとは!?!?
792
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/24(木) 22:43:51
>>791
目を白黒させながらも、女のペンは止まらない。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
「えっ、あっ、気にすると言いますか……あっ…………」
隣に座る少女に対して警戒と困惑の表情を向けるとともに、
2体の『妖精』が立ち塞がるかのように少女との間に飛び入った。
まるで武器のように、両手に『羽ペン』を握りしめている。
どうやら、『妖精』はこの女の『スタンド』であるようだ。
「と、隣に座るのは……構いませんが」
そして、女が持っている手帳を覗き込むと……
米粒に写経をするかのような細かな文字がびっしりと並んでいる。
一瞥でそのすべてを読むのは到底不可能であったが、
書き込まれたばかりに近い部分はこのような文章だった。
『女の子に見られていた。鼻歌を歌っている。身長は160
センチくらい。10代半ば。金髪。青いサングラスをかけ
ている。スカーフを頭に巻いている。フリル付きの白いブ
ラウス。青いスカート。缶バッジ。カラフルなネイル。ト
ランプ柄のタイツ。ストラップシューズ。近付いてきた。
「あっ、今のは気にしなくていいよって意 』
バッ!
見られていることに気付いたらしく、女は手帳を胸に抱え込む。
それでも右手は手帳と胸の間に挟まり、書き続けているのが分かる。
もちろん、女からもページは見えていないはずだ。
「……この手帳が…………何か?」
793
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/24(木) 23:58:57
>>792
この少女――『夢見ヶ崎明日美』は、個人的な事情で『漢字』が苦手だ。
およそ『小学校低学年』と同等であり、『ルビ』が振ってない場合は苦労している。
だから、内容によっては全く理解できない可能性もあった。
「――――――おん??」
しかし、今回は『ひらがな』と『カタカナ』が多かったので、
なんとなく把握することができた。
「ほうほう」
「ふむふむ」
「なるほどなるほど」
────スクッ
大きく頷きながらベンチから立ち上がり、ゆっくりと距離を離していく。
☆.。.:.+*:゚ ☆*。゚:*+.:.。.☆.゚✲*☆。*゚✲☆*⋆.•*¨*¨*•.⋆*。✩
立ち去ろうとするかに見えた瞬間、『人型』のヴィジョンが姿を現す。
半透明かつ色とりどりの『リボン』が全身を彩り、
それらと似通った色合いの『ネイル』が両手に見える。
頭部から流れ落ちるのは、光り輝くような『金髪』。
また、『青いリボン』が目元を覆う。
本体と『瓜二つ』のイメージを持つ『スタンド』は、
これといって何をするでもなく佇んでいた。
「ソレがきになるっつーか、どっちかっていうと、
アリスてきには『フタゴ』のほうがきになるかなぁ〜〜〜〜」
『何もしていないように見える』が、『超人的嗅覚』に意識を集中させていた。
ストレスを感じている人間の皮膚からは、
特有の『硫黄化合物系の匂い成分』が放出される。
平たく言うと『硫黄のような匂いがする』のだ。
これを『STチオジメタン』と呼ぶ。
ストレスのレベルによって発生量は増加し、
匂いも強くなる傾向があるのだが、これは常人でも嗅ぎ取れる。
超人的な感覚を持つ『ドクター・アリス』なら、
より精密に感知することができるという訳だ。
本気で緊張しているなら『匂いで分かる』。
794
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/25(金) 00:39:52
>>793
「…………?」
離れていく少女を不思議そうに見つめていたが……
「! …………」
「そういう……ことですか」
現れた『ヴィジョン』に、目を見開く。
同時に、ペンの動きが加速したのが見て取れるだろう。
「他の方からは見えないものと、高を括っていましたが……
こうも早く出会ってしまうものなのですね」
「……驚かせてしまいましたか? 申し訳ありません」
ふう、と溜め息を吐いて、軽く頭を下げる。
『妖精』は警戒の構えを解くと、空中に溶け消える──解除された。
『ドクター・アリス』の嗅覚には、予想通りの匂い……
人間の『ストレス』の匂いが感じ取れた。
795
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/25(金) 19:07:06
>>794
至近距離でスタンドを出すとショックが大きいかと思い、
念のために離れておいた。
驚かせてしまったと言うが、むしろ逆ではないだろうか。
『匂い』は嘘をつかない。
表面的なリアクションだけではなく、本気で動揺しているのが分かった。
きょうもアリスのハナはゼッコウチョウだぜ!!
おうさまのミミはロバのミミ、アリスのハナはブタのハナ。
キノコがりで『ポルチーニ』をハッケンしたコトもあるのだ!!
「ゼンゼン??アリスはいつだって『ウサギ』をさがしてるからさぁ。
バッタリであえてうれしいよ!!ラッキーじゃん!!」
タン タン タン
ステップを踏むような足運びで、再びベンチに近付いていく。
さっきからのペンの動きを見ると、多分『自動筆記』のような能力だろう。
口には出さないものの、そう予想した。
「――――で、コッチは『アリスのアリス』!!」
────キラッ☆
華美な姿の『人型スタンド』――『ドクター・アリス』が、
目元に添えた『横ピースサイン』を女に向ける。
796
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/25(金) 21:59:47
>>795
「は……はァ。恐縮です」
『横ピースサイン』には当惑混じりの『会釈』が返ってきた。
「『アリス』さん……と、仰るのですね。その……『そちらの方』もですか?」
立ち上がり、左手で『ドクター・アリス』を指し示す。
先程の手帳は持っていない……かといって、ベンチに置いている訳でもない。
見ると────女の傍の空中に『浮かんでいる』。
「私は……『うさぎ』のように見栄えのする人間では、ありませんが。
……乙街 澄(おとまち すむ)と申します。
「そして、こちらは──」
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
筆記するかのように、空中に無数の黒い線が走り……再び『妖精』が現れる。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
「──『プロリフィック』と、名付けていただきました」
黒一色のそのヴィジョンは、『ドクター・アリス』とはある種正反対だ。
1体は裏から手帳を支え、1体は『羽ペン』で手帳に何かを書きつけている。
「忙しなくペンを動かすのも、お見苦しいかと存じますので……
ここからは、『代筆』にて失礼いたします」
そう言うと、右手のペンを胸ポケットにしまい込んだ。
797
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/26(土) 00:56:07
>>796
「イィエェェ〜〜〜〜〜〜ス!!」
グッ!
『ドクター・アリス』が腕を降ろすと、今度は本体が親指を立てる。
「『そっちのアリス』は『イロイロあってアリスになった』ってカンジかなぁ??」
まず『スタンド』を指差し、次に『自分』を指し示す。
「『こっちのアリス』は、ず〜〜〜〜っとアリスだけどさぁ」
────スッ
『ドクター・アリス』を従えて、改めてベンチに座り直した。
「いいねいいねぇ〜〜〜〜!!
スタンドもってるトモダチがふえるとワクワクするな!!
よろしくよろしく!!」
『プロリフィック』の個性的な発現を目の当たりにして、
満面の笑顔を見せる本体の横で、スタンドの『アリス』は金髪を靡かせている。
しかし、それは正確には髪ではなかった。
全身を飾り立てるリボンと共通した質感を持つ『金色のリボン』だ。
「ココで、めいたんていアリスは『ピン』ときた!!
もしかしてオトちゃんって、
『スタンドつかい』のトモダチはじめてとか??
アリスもソコソコくわしいほうだから、
なんとなくビビッ!!ってきちゃうんだよね〜〜〜〜」
根拠は複数ある。
まず堂々と『スタンド』を使っていた。
そして、目撃されることを想定していなかったであろう発言。
さらに『匂い』から感じた緊張感。
それらから受ける印象は『スタンドを得て間もない人間』だ。
「――――どう??あってる??」
798
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/26(土) 06:13:08
>>797
「……?」 「そう、なのですね」
『色々あって』という部分には小首を傾げたが、特に追求はなかった。
アリスが座るのに合わせ、自分もベンチに腰を下ろす。
「とっ、友達!? …………ですか?
え、ええと……はいィ……よろしくお願いいたします……」
『友達』のワードにはなぜか過剰な反応があった。
声を裏返しつつペコペコ頭を下げていたが、
問いかけを受けると、取り繕うように咳払いをする。
「ゴホン。……ご明察です。
つい先ほど、『音泉』さん……と仰る方に、この力を見出していただきました。
本当は、帰宅してからゆっくり観察しようと思っていたのですが……」
観察とは、さっきやっていた写生のような行為のことだろう。
「どうしても我慢できず……どうせ誰にも見えないのだから、と。
……『音泉』さんも仰っていました。『スタンド』は、その人間の才能。
『似たもの同士』になるのは……必然なのかもしれませんね」
一瞬だけ、2人の『アリス』を交互に見比べた後、
傍らで『代筆』を続ける『妖精』に視線を向け、目を細めた。
諦めたようなその眼差しには、自嘲の色が宿っている。
799
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/26(土) 22:00:09
>>798
夢見ヶ崎明日美の価値観では、『自己紹介したら友達』である。
『スタンド使い』という共通点があれば尚更だ。
話の分かる相手ばかりではないことも知っているので、
最低限の注意はしているのだが、『乙街には必要ない』と判断した。
「おぉ〜〜〜〜!!『しおんちゃん』!!
サイキンあってないけどゲンキかなぁ??」
「そっかそっか、しおんちゃんかぁ。
だったらアリスと『おそろい』だね!!
なかよくしようぜ!!」
ス ッ
より一層の笑顔で、乙街に片手を差し出す。
『握手』のつもりらしい。
そして、もう片方の手は人差し指を立て、考え事をするように頬に添えている。
「ん〜〜〜〜〜〜??」
自らの半身を一瞥し、乙街につられて『プロリフィック』を眺める。
それから、また乙街に目線を戻した。
何事か思案する表情で唸っていたが、改めて口を開く。
「うんうん!!だいたいそんなカンジ!!
でも、ゼンブってワケじゃないけど。
だって、『ゼンゼンにてないの』とか、みたコトあるし」
どうやら実際に目撃した経験があるらしく、妙に自信ありげだった。
800
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/26(土) 23:58:43
>>799
「な、仲良く……ですか。……はい。友達……ですものね」
薄い笑みを浮かべて握手に応じる。
やや引きつった笑顔ではあるが、無理やり笑っている風ではなく、
むしろ好意がぎこちなく発露しているだけという感じだ。
「……お若いのに、経験豊富でいらっしゃるのですね。
素晴らしいことだと思います」
「あ……え、偉そうなことを言うようですが。……すみません」
そう言って、またペコリと頭を下げた。
頭を上げると、遠慮がちにアリスの目をまっすぐに見つめる。
「個人的な意見を申し上げるなら……
『アリス』さんと『アリス』さんは、よく似ていらっしゃいます」
「なんと言いますか……色鮮やかな感じが、でしょうか。
外見ではなく、もっと内面的な……
お会いしたばかりで、失礼かもしれませんが」
真っ黒の『プロリフィック』と、カラフルな『ドクター・アリス』。
その対比は、2人の精神性の対比でもあるのかもしれない。
「少し…………羨ましく思います」
801
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/27(日) 00:51:03
>>800
「そうそう、トモダチトモダチ!!」
ガ シ ッ
しっかりと乙街の手を握り、確かな握手を交わす。
「いや〜〜〜〜ほめられちゃったよ〜〜〜〜。
ジブンでもきにいってるんだ!!ヘヘヘ」
「でも――――」
ピッ
本体の発言に合わせて、今度は『ドクター・アリス』が人差し指を立てた。
「さいしょから『こう』だったワケじゃなくって。
なんつーか『セイチョウした』っていうの??
それで『こうなった』んだよね。
『スタンド』は『サイノウ』だけど、かわるコトもあるんだってさ」
『羨ましい』という言葉を聞き、先程の諦観と自嘲を秘めた眼差しを思い返す。
「『まえのヤツ』は…………イマとゼンゼンちがってたなぁ。
フンイキてきには『おいしゃさん』みたいだったっけ。
『ジムテキ』っていうか『ムキシツ』っていうか、
なんとなく『ドライ』なムードだったな!!」
かつての半身――『ドクター・ブラインド』の姿を振り返る。
視力を得る前の本体を反映した『盲目の医者』は、
ある意味で『プロリフィック』と似ていたのかもしれない。
それは色のない世界で生まれた存在だった。
「アリスのスタンドは『かわりにくい』っていわれてたんだ。
でも、ガンバったら『かわっちゃった』!!イェイ!!」
802
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/27(日) 01:35:56
>>801
「えへへ……」
アリスにつられたのか、照れ気味な笑いを漏らす。
「……そう……なのですか。
先ほど仰った、『色々あって』……というのは、そのことだったのですね」
『ドクター・アリス』の立てた指をぼんやりと見つめる。
『スタンド』は『精神の形』……その姿が変わってしまうほどの経験。
「想像も……つきませんね」
このハイテンションな少女には、底知れないものがある──しかし。
「…………ありがとう、ございます」
今度は謝るためではなく、感謝を示すために、頭を下げた。
『励ましてくれている』──というのは、乙街の思い込みかもしれないが。
「でも」
「私は、変わらないと思います。
成長することはあっても、変わることは……おそらく。
生まれたときから、この子たちは私の中にいたのでしょう。
そういう生き方を……してきましたから」
『諦める』ということは、『受け入れる』ということ。
その意味するところが、ポジティブなのかネガティブなのかに関わらず。
ふと横を見ると、『妖精』たちはまだ『代筆』を続けている。
「お聞きしても、よろしいでしょうか」
「アリスさんからは、この子たちは……
『プロリフィック』は、どういう風に見えますか?」
803
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/27(日) 06:58:31
>>802
「いいや!!『ガンバった』っていうのは、なんかちがうな??
『イロんなトコいってイロイロみてきた』のほうがピッタリくるぜ!!」
「アリスとは『1%のガンバリ』と『99%のセンス・オブ・ワンダー』である」
「そういうカクゲンもしられてるコトだし。
なかった??じゃあイマつくった!!」
バタフライ型のフレームに収まったアリスブルーのレンズ。
その向こう側で、溢れんばかりの『好奇心』を湛えた瞳が光り輝いている。
まさしく『不思議の国』に迷い込んだアリスのように。
「イイんじゃない??
かわるかもしれないし、かわらないかもしれないけど、
ベツにどっちがどうとかってワケじゃないしさぁ」
ゴソゴソ
ポケットからチョコレートの小袋を取り出し、その内の一粒を口の中に放り込む。
「『M&M's』のチョコレートみたいに、かわらないモノだってあるさ!!
コレ、『イロ』がついてるでしょ。だからスキなんだなぁ〜〜〜〜」
「おん??」
暢気にチョコを食べ始めたが、投げ掛けられた問いに手を止めた。
「『本体を補うための力』――――」
真剣な面持ちで『プロリフィック』を見つめ、ぽつりと静かな声色で呟く。
「――――って、しおんちゃんにいわれたんだよね。
『オトちゃんの』も、オトちゃんのかわりにやってくれてるみたいじゃん??
だから、『わたしの』とにてるっぽいきがする!!
きっと『ひつよう』なんだろうなぁっておもうよ」
かつての『ドクター・ブラインド』は、
『見えない目』を補うための能力だった。
しかし、実際に目覚めたのは『視力を得た後』であり、
そこが『プロリフィック』とは異なる。
この世に誕生した時点で『本来の役割』を喪失していたのだ。
「あとは…………『カワイイ』!!グッドグッド!!」
804
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/27(日) 18:44:38
>>803
「……ええ。
あなたのように、変化するもののほうが……珍しいのでしょうし」
色とりどりのチョコレートを見て頷く。
ちなみに、乙街は『M&M's』のようにカラフルなお菓子は得意ではない。
食べる度にその色を記録しなければならず、疲れるからだ。
「本体を、補うための……ですか」
「……確かに……私は、記録することに疲れているのでしょうね。
『代わり』を望む心が、どこかにあったのかもしれません」
『プロリフィック』の真の能力……『代筆』の『強制』。
アリスは知る由もなく、乙街自身も実際に発動したことはまだないが、
『代わりにやってくれる』という表現は、実に適切と言える。
『必要』という言葉に、どこか複雑そうな表情を浮かべた……が。
「かっ……『可愛い』?」
その単語は予想していなかったらしく、素っ頓狂な声が出た。
なぜか少し顔を赤くして、ついと目を逸らす。
「そ、それは、なんと言いますか……気付きませんでした。
…………ふふ。書き足しておきます」
「他の方の意見を記録するのは……久しぶりですね」
そう、少し嬉しそうに呟いた。
805
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/27(日) 20:47:46
>>804
乙街のリアクションに笑顔を返し、ポケットからスマホを取り出す。
「そんじゃ、わたしも『キロク』しよっかな。
レンラクサキこうかんしようぜ!!」
ススッ
「あ!!アリスもコレクションしてるぞ!!みる??」
おもむろにスマホを操作し、スライドショーをスタートさせる。
1枚目には何の変哲もない『空』が写っていた。
2枚目も『空』、3枚目も『空』、4枚目も『空』だ。
その次も、その次も、その次も…………。
『時間帯』や『天気』が違っていたり、
『季節』が異なるらしい写真も含まれているが、
一見すると『全く同じ』に見えるようなものも少なくない。
とにかく、ひたすら『空の写真』が続く。
乙街ほどではないにせよ、かなり大量に保存されているらしかった。
「『ソラ』ってゼータクだとおもうんだよね。
いつみても『ちがうイロ』があるし、
いっかいみたソラは『にどとこない』の!!
ほら、『イマ』だって――――」
スイッ
ふと『今の空』を見上げ、しばしの間だけ眺める。
「――――『セカイ』ってさぁ、すっごくキレイだよねぇ〜〜〜〜」
────ポン
思い出したようにスライドショーを停止し、QRコードを表示させる。
「これ、アリスのレンラクサキ!!『キロク』しといてね!!」
明るい笑顔を絶やさないまま、スマホの画面を乙街に向けた。
806
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/27(日) 23:27:51
>>805
「連絡先を……ですか? は、はい、ただいま……」
決して社交的ではない乙街にとってはレアイベントだ。
慌てて傍らのビジネスバッグを探るが、
スマホを差し出されると、控えめにその画面を覗き込んだ。
「……そう、ですね。
私も、空模様については……毎日、書き留めています。
二度と同じ空はない……ということにも、共感できます」
「でも────」
興味深そうに頷きながらスライドショーを見つめていたが、
アリスが空を仰ぐと、それに倣って顔を上げた。
空を見るというよりは、ただぼんやりしているだけのような遠い目で。
「私は、ただ……記録するために、記録しているだけなので。
あなた自身の心の綺麗さが……世界をも、綺麗に見せているのでしょう。
やっぱり…………少し、羨ましいです」
「……………………」
「……あっ、はっ、はいィ、QRコードですね……ええっと……」
わたわたしつつ、あからさまに不慣れな手つきでスマホを操作する。
「はい……できた、と思います。ありがとうございます。
……ずいぶん長く話し込んでしまいましたが、
もしかして、ご用事があったりはしませんか……?」
807
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/28(月) 01:46:41
>>806
初めて『空』を――『この世界』を目にした時、
激しく心を揺さぶられたことを覚えている。
いつの間にか涙を流していた。
その瞬間から、『夢見ヶ崎明日美』は『不思議の国』に足を踏み入れ、
『ウサギ』を追いかける『アリス』になったのだ。
「アリスのココロがキレイかどうかわかんないけど、
イロイロみてるのはたのしいよ??
『セカイのゼンブ』をみるのが、わたしの『ユメ』だから!!」
ピッ
乙街の画面を読み取って、連絡先の交換を済ませた。
「チキョウをアッチコッチとびまわってさぁ、
『アリスがみたモノをミンナにもみてもらう』っていうのもアリかな〜〜〜〜。
でも、このマチだけでもケッコーしらないコトあるし、
もっともっとケンブン??をひろめていこう!!」
ひとしきり喋り終え、乙街から予定を尋ねられた時、
不意に『曲がり角のある方向』に視線を移す。
「ヨウジはなかったけど…………イマできた!!
これから『クレープのキッチンカー』にいくぜ!!
きょうもイッパイあるいたから『エネルギーほきゅう』しないとな!!」
────ビシィッ
人差し指を立てた右手を高々と掲げ、
それを勢いよく振り下ろすという大袈裟な動きで、遠方の『曲がり角』を指し示す。
その向こう側では、確かにキッチンカーが営業を始めていた。
しかし、こちら側からは『全く見えない』。
「コレは…………ヨーグルトクリームにブルーベリーソースをかけて、
ココアクッキーをトッピングしたヤツだ!!」
仕組みは簡単なもので、『超人的聴覚』が『車の音』を、
『超人的嗅覚』が『クレープの匂い』を捉えたというだけのことだった。
「オトちゃんはヨウジあるの??イッショにクレープたべない??」
タ ン ッ
乙街に誘いの言葉を掛けながら、元気にベンチから立ち上がる。
808
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/28(月) 17:44:26
>>807
「世界の、全部を……ふふ。素敵な夢だと思います。
叶えなさった暁には……私にも、見せていただければ幸いです」
果てしのない夢だ。
だが、乙街の表情に呆れや嘲りの色はない。
『この女の子になら、できるのかもしれない──』
そう思ったのかどうかは、定かでないが。
「クレープ……ですか?」
「…………?」 「あるのですか? ……そこに」
当然、乙街からはキッチンカーは見えない。
不思議そうに小首を傾げるが、特に何も尋ねることはなかった。
続く言葉の衝撃に思考を吹き飛ばされたからだ。
「!!」
「クレープを……一緒に……!?」
それは灰色の青春を送った人間には無縁の世界。
決して社交的ではない(2回目)乙街に関しては、言うに及ばず。
ゴクリ・・・・・・
「で、では……お言葉に甘えて……ご一緒させていただきます。
……お話してくださったお礼に、ご馳走いたしますよ。
こう見えても、社会人ですので……」
なんとか平静を装い、アリスに続いて立ち上がった。
同時に、『妖精』から手帳を受け取り、胸ポケットのペンを取り出す。
809
:
夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』
:2025/04/28(月) 23:43:23
>>808
本体とスタンド――――『2人のアリス』が並び立つ。
その光景は、二体一組である『プロリフィック』にも似ていた。
まるで鏡写しのようで、『鏡の国のアリス』を彷彿とさせる。
「おお〜〜〜〜!!オトちゃん、カッコいい〜〜〜〜!!
『しはらいはカードで』とか、やっちゃう??
アリスも『ババぬき』だったらジシンあるぞ!!」
タンッ タンッ タンッ
タンッ タンッ タンッ
大きく両手を振ってスキップしながら、目的地に向かって歩いていく。
「――――ほら、『アレ』」
まもなく曲がり角の向こうから出てきた通行人と遭遇する。
その人物はクレープを手にしているようだ。
『ヨーグルトクリーム』と『ブルーベリーソース』に、
『ココアクッキー』がトッピングされていた。
「アリスはホイップとカスタードがドッチもはいってるヤツがイイなぁ〜〜〜〜。
ストロベリーソースにピスタチオアイスをトッピングしたヤツ!!」
やがて角を曲がると、営業中の『キッチンカー』が視界に飛び込んでくる。
ちょうどクレープを受け取ろうとしている客が1人いた。
『ホイップクリーム』と『カスタードクリーム』に、
『ストロベリーソース』と『ピスタチオアイス』だ。
「そんじゃ、ふたりの『であいのきねん』ってコトで、
きょうはおごってもらっちゃおっかな!!
オトちゃんセンパイ、チュウモンおねがいしま〜〜〜〜す!!」
ありがたく申し出を受け入れ、乙街にくっついて店員の前に立つのだった。
810
:
乙街 澄『プロリフィック』
:2025/04/29(火) 02:51:42
>>809
本体に手帳を渡すと、役目を終えた『妖精』たちは解除された。
鉛筆の文字を消すかのように、虚空に掠れて消えていく。
それを待たずに、乙街は再びペンを走らせ始めた。
「……私は、『神経衰弱』のほうが得意ですかね……エヘヘ……」
チラッ
「エヘヘ…………」 チラッ
『じゃあノらなきゃいいのに』レベルで恐る恐るアリスをチラ見しつつ、
スキップに遅れをとらないように、少し早足で歩き出す。
「……本当ですね。キッチンカーが……。
それに、あれは……ヨーグルトとブルーベリー……ですか?」
驚愕した様子で、『ドクター・アリス』を凝視する。
目覚めて間もないとはいえど、さすがに何かを察したらしかった。
「……話題は、まだまだありそうですが……。
まずは、クレープですね。いちごとピスタチオ、でよろしいですか?
私は……ううん。……少し、悩む時間を下さいますか」
キッチンカーの前に立つと、一通りメニューを眺め回す。
「すみません……注文、よろしいでしょうか。
この、『ストロベリーアンドピスタチオ』をひとつと……」
しばし、逡巡したあと。
「…………いえ……やっぱり、『ふたつ』。お願いいたします」
その後、2人は一緒にクレープを食べたり、歓談したりしたのだろう。
どんな話をしたのか。いつまで続いたのか。別れの言葉はなんだったのか。
しかし、語られない時間というものは、あってもいいと思うのだ。
811
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2025/06/21(土) 23:12:38
星見駅構内の待合室に、『黒い女』が座っている。
近くで見れば、その装いが『喪服姿』であることに気付けるだろう。
知人なら、それが誰かも分かるはずだ。
「――……」
傍らには『旅行鞄』が置かれており、遠出するらしいことが窺えた。
812
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813
:
朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2025/06/24(火) 00:19:45
>>811
「どうもすみません。」
ふと、隣から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「お隣、良いですか?」
微笑みかけてくるその顔は、彼女にとっては馴染のあるモノであろう。
814
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【3/7】
:2025/06/24(火) 14:06:31
>>813
人々が行き交うプラットフォームを眺め、乗車する予定の列車を待っていた。
「……ええ、どうぞ座ってください」
スッ
見知った相手に会釈し、隣の椅子を勧める。
「――笑美さん、お出かけですか?」
大きな信頼を置く人物と、出発前に出会えたことは『幸運』だっただろう。
815
:
朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2025/06/24(火) 17:15:27
>>814
「どうもありがとうございます。」
そう言って軽く頭を下げると、小石川の隣に笑美は座った。
「ええ、ちょっと遠くにお出かけです。
今日は軽い休日って感じですから。」
彼女の方は軽そうなカバンを抱えている。
そこまでの遠出ではなさそうだ。
「小石川さんは…
それは旅行カバンですね。
どこかに旅行に行くんですか?」
ちらりと小石川の持っていた旅行カバンをみる。
816
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【3/7】
:2025/06/24(火) 20:14:42
>>815
小石川の鞄は、落ち着いたデザインの上品なボストンバッグだった。
「私は『N県』に――そちらに生家があるものですから……」
『N県』といえば、ここ『S県』に隣接し、全国4位の面積を持つ内陸の県だ。
「個人的に『大事な用』があって、しばらく家を空ける予定です。
私が不在の間は、『常原ヤマト』さんに『ハウスキーピング』を依頼し、
『サロン』の活動に支障を来たさないように取り計らっておきます」
…………ソッ
ふと思い立って、荷物から『鍵』を取り出す。
「これは私の家の『合鍵』です。
お貸ししますので、自由に出入りしていただいて構いません。
もちろん、涙音さんに渡してくださっても結構です」
笑美を信頼し、自宅の合鍵を差し出した。
817
:
朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2025/06/24(火) 22:37:20
>>816
「へぇ、あちらの方の出身なのですね。
…お隣の県ですから、そこまで遠くというわけでもなさそうですね。」
少し微笑みながら答える。
そこまで遠くというわけではないようだと思う。
「ええ、サロンの方は…
私も顔を出させていただきます。
それに、たまには涙音も来ると思います。」
そう言って合鍵を手に取った。
「サロンに協力する人も何人か増えたみたいですし、
心配いらないですよ。お留守の間は。」
「…どのくらいの旅行になりますか?
一応聞いておきたいです。留守居を預かることになりますから。」
818
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【3/7】
:2025/06/24(火) 23:17:49
>>817
合鍵を受け取った手に、小さな重みが伝わる。
先程も言われた通り、これで自由に出入り可能だ。
『主宰者』の代理として、『会員』を含めた『来客』を出迎えることもできるだろう。
「……この旅行の目的は、『特別な衣類』を仕立てることなのです」
「あちらには1週間ほど滞在する予定ですが……
『生地』の都合によっては少し延びるかもしれません。
遅くとも、2周間以内には戻ってこられるでしょう」
出発前の段階から、生地には目星をつけていた。
ただ、貴重な素材なので、納得できる形になるまで時間が掛かるかもしれない。
それは覚悟の上だ。
「――『撫子』は家に残してきました。
基本的な世話は常原さんにお任せしておきますが、
時々は様子を見ていただけますか?」
今もキャペリンハットを被っているが、
これは『普通の帽子』であり、『帽子猫』は家の中で眠っている。
819
:
朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2025/06/25(水) 00:12:51
>>818
(信頼されている…ということよね)
小さな鍵に感じる『責任』という重み。
どこかその信頼に答えてあげたいという思いを抱いていた。
「へぇ、新しい衣服を用意するんですね。
しかも生地選びから…ということはオーダーメイド…
あるいは、小石川さんが作るのですか?」
普段は黒い服をずっとみているだけに
違う服を着ている姿を見るのは興味がある。
「楽しみにしていますね。
その新しい、衣類というものを。」
その表情は、本当に楽しみにしている様子であった。
「あの帽子猫ちゃんは…
今は頭に乗ってないですね。
…わかりました。できる限りお世話させていただきます。」
そう言って頭を下げた。
「たまーに、頭に乗せたりすると思いますけど…
良いですよね?」
笑美の表情はどこか楽しみそうだ。
猫好きなことがうかがえる。
820
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』【3/7】
:2025/06/25(水) 15:39:34
>>819
笑美の言葉を受けて、自らの右肩に左手を添える。
「新しく『ストール』を仕立てるつもりです……。
『サロン』を立ち上げた今、装いに変化を加えることで、
心を引き締めたいと考えました。
実際の作業は専門家にお任せしますが、
こちらの希望を正確に伝えるために、私も現地に赴く必要があるのです」
この喪服は『誓いの証』であり、これからも変える気はない。
新たに作ろうとしているストールも、『喪服に合った仕上がり』になるだろう。
それは『新たな決意の証』だ。
「……撫子をよろしくお願いします。
おそらく『ハウスキーパー』の常原さんが済ませてくださると思いますが、
念のために笑美さんも知っておいてください」
「基本的に、食事は『朝』と『夜』の『2回』です。
『白身魚』を使ったキャットフードと、
『チキン』を使ったキャットフードがありますから、
それらを交互にあげてください。
また、『長毛種』なので、毎日『ブラッシング』が必要になります」
柔らかな微笑みを浮かべ、小さく首肯する。
「笑美さんや涙音さんが遊んでくれると、きっと撫子も喜ぶと思います」
電光掲示板を見上げると、乗車予定の『新幹線』が表示された。
もう少しで到着するようだ。
鞄に手を伸ばし、出発の用意をする。
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