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本スレに書き込めない職人のための代理投稿依頼スレ

1魔法少女リリカル名無し:2009/01/08(木) 00:01:53 ID:Qx6d1OZc
「書き込めないの!?これ、書き込めないの!?ねぇ!本スレ!本スレ書き込めない!?」
「あぁ、書き込めないよ」
「本当!?OCN規制なの!?ODNじゃない!?」
「あぁ、OCNだから書き込めないよ」
「そうかぁ!僕OCNだから!OCNだからすぐ規制されるから!」
「そうだね。規制されるね」



捻りが無いとか言うな

2 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:02:37 ID:Qx6d1OZc
ドガン



無機質な金属へと変化した己の腕を確認して慌てて鉄塔内部へと腕を引き戻す。

「まんまと罠にはまったというわけか……」

あくまでも表情を崩さずにザフィーラはこの鉄塔から出る方法を思案することにした。
まず、最初に思いついたのは先程の三人達以外は出たら金属化するという可能性。
これは即座に否定された。
万が一無関係な人間が巻き込まれたらどうする気だったのか?
それに、その前提だった場合はわざわざトリモチで足止めする必要は無い。

「ならば……」

次に考えたのは、最後の一人は出れないという条件だった。
ザフィーラはこの仮説と、先程の三人の動きを照らし合わせてみる。
矛盾は無い。だが、確証も持てないので仲間を使って実験する気も起こらない。
仲間に余計な心配の種を増やして戦闘に集中できなくさせるのも悪いので念話で伝えたりもしない。
八方塞となり仕方がないのでザフィーラは考えるのを止め、魔力の回復に努めることにした。


===


結論から言おう。ザフィーラの推測通り、この鉄塔から外界に出るための条件は他に人が鉄塔内にいることだ。
仗助はトラサルディーから噴上とミキタカに電話をし、鉄塔へと行ってもらい本来の主、鋼田一豊大にコッソリと話をつけたわけだ。
ちなみに一人で十分のはずの鉄塔に、自身の体をカモフラージュできるミキタカの他に噴上裕也まで入れた理由は
ミキタカと共に本体の場所を隠して安全にハイウェイ・スターを操作させるためだった。
スタンド使いの存在を探知できるとはいっても、戦闘中にまでは把握できないだろう。
仗助の読みは見事に的中し、二人の存在は最後の最後まで把握されずに終わったのだった。


===



「で、仗助。この腕の持ち主も追跡するんだろ?」
「あぁ、おそらくこれが無くなると由花子みたいにスタンドを使えなくなるみてぇだからよ〜。
 早いこと何とかしてくれねぇとヤベェ。こういうときほどお前のスタンドが頼りになるときはねぇよ」
「仗助さん。わたしにも何かできることはありませんか?」
「ミキタカ。悪いがお前は康一と億泰のサポートに行ってくれ。
 ハイウェイ・スターが追跡に回って戦力が落ちるのは明らかだからな」

鉄塔から少し離れた場所に仗助は腰を下ろして、今後の役割分担を決める。
息が荒くなりながらも仗助の判断力は依然健在。
自分の腹から生えている腕の衣服の一部をクレイジー・Dの腕力で引きちぎり布の欠片を得る。
普通の衣服とは明らかに異なる丈夫さを持った素材に戸惑いつつも、それを噴上の手に渡した。
噴上は即座に、布切れを鼻に当てて対象者の“臭い”を覚える。
猟犬以上の嗅覚を持った彼にとって、これだけで相手の存在を捉えたも同然。
シグナム、ヴィータとの戦闘中だったハイウェイ・スターを自分の下へとワープさせて新しい対象を探し始める。
今、足跡の形をしたハンターと変身能力を持った宇宙人がそれぞれの目的地へと走り出した。



====

3 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:03:25 ID:Qx6d1OZc
「いたたたたた、痛いです、本当に痛いですって」

異次元に通じている魔法陣に腕を突っ込みながら、苦痛に顔を歪める女性。
私達は彼女に見覚えがある、いや、彼女の着ている草色の服に見覚えがある。
そう、この金髪で温厚そうな顔をした女性こそが現在仗助を苦しめている犯人、シャマルであった。
鉄塔から離れた橋げたの下、サポート専門の彼女は遠くから戦線にいる仲間を支援していたのだ。
だが、右腕が死ぬほど痛いこと以外になんら問題の無い彼女にもついに年貢の納め時が来た。

クンクンという何かが臭いを嗅いでいるような音。
振り返るシャマル。
無数に存在する黒い“足跡”。

目の前に広がるホラー映画化顔負けの映像に込み上げる悲鳴を抑えながら、残った左手で防壁を張る。
ほぼ同時に飛びついてきた足跡達がシャマルの魔法陣へと貼りついていく。
この場合、見えるのと見えないのではどちらのほうが恐ろしいのだろうか?
少なくとも、現在のシャマルの心の中では得体の知れないものへの恐怖が芽生え始めている。
何時回りこんでくるのか? あれに襲われたらどうするのか?
グッと来る恐怖を仲間への思いが抑える。
しかし、終焉は思ったよりも早く訪れた。
足跡の数枚が偶然障壁の端からシャマルの元へと辿り着くことに成功したのだ。
すると、他の足跡たちも同じルートを辿って障壁を回避するようになった。

「ひいっ!」

目に涙を浮かべながらも、シャマルは手で必死に振り払おうとする。
だが、その程度で引いてくれるほどハイウェイ・スターは生ぬるい能力ではない。
逆にシャマルの左腕にビッシリと食い込んでいき……

「ひぐっ、ああああああああああああああ」

明らかに体からエネルギーが吸収されたのが分かった。
抜けていく左手の力。
その間にも、足跡たちはシャマルの脚、腿、腹、胸、肩、顔を埋め尽くす勢いで付着していく。
一方的な蹂躙に怯えながらシャマルはついに仗助を苦しめていた魔法“旅の鏡”を解除して地面に倒れ伏す。
そうしている間にもじわじわと吸収されていく体力。
妙に気持ち悪い足跡に苦しめられながらも、シャマルはある魔法を使用した。
湿った地面に展開される緑色の魔法陣。
精一杯の力を込めて魔力を込めていくシャマル。
そして、魔法陣は激しく輝いた後に消えた。使用者であるシャマルと共に。

「はぁっ……ここまで来れば……」

無我夢中だったせいでどこに転送されたのかは分からない。
ただ、無事に逃げ切れたという安堵感のみが彼女の心中を暖かく満たしていた。
荒れた息を整えつつ、自身の張った結界に異常が無いか確認する。

「よかった……壊れてたりはしなかったんですね」

二度目の安堵。
そして、彼女は再び仲間の支援をするために“旅の鏡”を発動させようとして………

4 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:04:19 ID:Qx6d1OZc
「いたたたたた、痛いです、本当に痛いですって」

異次元に通じている魔法陣に腕を突っ込みながら、苦痛に顔を歪める女性。
私達は彼女に見覚えがある、いや、彼女の着ている草色の服に見覚えがある。
そう、この金髪で温厚そうな顔をした女性こそが現在仗助を苦しめている犯人、シャマルであった。
鉄塔から離れた橋げたの下、サポート専門の彼女は遠くから戦線にいる仲間を支援していたのだ。
だが、右腕が死ぬほど痛いこと以外になんら問題の無い彼女にもついに年貢の納め時が来た。

クンクンという何かが臭いを嗅いでいるような音。
振り返るシャマル。
無数に存在する黒い“足跡”。

目の前に広がるホラー映画化顔負けの映像に込み上げる悲鳴を抑えながら、残った左手で防壁を張る。
ほぼ同時に飛びついてきた足跡達がシャマルの魔法陣へと貼りついていく。
この場合、見えるのと見えないのではどちらのほうが恐ろしいのだろうか?
少なくとも、現在のシャマルの心の中では得体の知れないものへの恐怖が芽生え始めている。
何時回りこんでくるのか? あれに襲われたらどうするのか?
グッと来る恐怖を仲間への思いが抑える。
しかし、終焉は思ったよりも早く訪れた。
足跡の数枚が偶然障壁の端からシャマルの元へと辿り着くことに成功したのだ。
すると、他の足跡たちも同じルートを辿って障壁を回避するようになった。

「ひいっ!」

目に涙を浮かべながらも、シャマルは手で必死に振り払おうとする。
だが、その程度で引いてくれるほどハイウェイ・スターは生ぬるい能力ではない。
逆にシャマルの左腕にビッシリと食い込んでいき……

「ひぐっ、ああああああああああああああ」

明らかに体からエネルギーが吸収されたのが分かった。
抜けていく左手の力。
その間にも、足跡たちはシャマルの脚、腿、腹、胸、肩、顔を埋め尽くす勢いで付着していく。
一方的な蹂躙に怯えながらシャマルはついに仗助を苦しめていた魔法“旅の鏡”を解除して地面に倒れ伏す。
そうしている間にもじわじわと吸収されていく体力。
妙に気持ち悪い足跡に苦しめられながらも、シャマルはある魔法を使用した。
湿った地面に展開される緑色の魔法陣。
精一杯の力を込めて魔力を込めていくシャマル。
そして、魔法陣は激しく輝いた後に消えた。使用者であるシャマルと共に。

「はぁっ……ここまで来れば……」

無我夢中だったせいでどこに転送されたのかは分からない。
ただ、無事に逃げ切れたという安堵感のみが彼女の心中を暖かく満たしていた。
荒れた息を整えつつ、自身の張った結界に異常が無いか確認する。

「よかった……壊れてたりはしなかったんですね」

二度目の安堵。
そして、彼女は再び仲間の支援をするために“旅の鏡”を発動させようとして………

5 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:05:29 ID:Qx6d1OZc
ズキュン
     
    ズキュン

再びやってきた何かが体に食い込む感覚と、体内のエネルギーが吸い取られていく感触。
無作為にワープしたのに何故ここまで追跡できるのだろうか?
視覚? 聴覚? その二つでは絶対にない。
ならば魔力の追跡? しかし、バリアジャケットなどからは個人が特定できる魔力が出るはず無い。

「つまり……嗅覚ってわけですか」

そうと考えれば全て説明がつく。
が、原因が分かったところですぐに対応できるわけではない。
とは言ったものの分かった事が一つだけあった。
よくよく見れば、さっきまでいた橋は目の前にあるとまでは言わないが一応視界に入っている。
けれども足跡が彼女を見つけるまでには多少のタイムラグがあった。
つまり、鋭い嗅覚にも限界はありある程度離れれば探知できなくなるであるだろうということ。
自分たちの本拠地である東京に帰れば“これ”の追跡は止まる。
ヴォルケンリッターの参謀として考えれば、この状況下で取るべき行動は撤退。
自身だけならともかく、仲間の臭いまで特定されたらマズイ。

『皆さん聞こえますか……? マズイ相手が出てきました。
 詳細は後に伝えますが、各自いつもの場所に撤退してください』

念話でメンバーの三人へと撤退の意思を伝える。

『了解した、隙を作って引くとしよう』
『分かったぜシャマル』

シグナム、ヴィータからはすぐに肯定の返事が返ってきた。
しかし、ザフィーラの返事は意外な物であった。

『すまない……一旦こちらまできてくれないか?』
『……分かりました』

不吉な予感がする。
自分からゆっくりと養分が吸い取られていく中、二度目の転移魔法を行使した。
光に覆われていく自分。一瞬飛びかけた意識。
力を振り絞り完全に発動させてシャマルの姿は――――消えた。

6 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:06:32 ID:Qx6d1OZc
「すまん…」
「ええ、悪いんですが敵の追跡を受けているんで手早く終わらせてください」
「要点だけ言おう。バリアジャケットを解除して民間人の振りをしてくれ……後、悲鳴を上げてくれないか? ありったけの声で」
「分かりました」

シャマルの腕を掴んで、自身は鉄塔の外へと出て行くザフィーラ。
彼の予想通り、彼の肉体が鉄塔の一部と化すことなく、無事に脱出する事ができた。
そして彼女は大きく息を吸い込んで肺に息を溜め……。

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ」

辺りに響き渡る悲鳴。
急なことだったのにも関わらず彼女の演技は鬼気迫るものだった。
当然、少ししか離れていない仗助にもその声は聞こえていたわけで。

「さぁ、民間人に手を出されたくなくばこちらまで来い!」

ザフィーラの脅迫の信憑性を大きく上げることとなった。
実際は、張られた結界のせいでスタンド使いと魔法使い以外は外に締め出されたのだが彼がその事を知る由はない。
本当に一般の女性が人質にとられたのだと思ってふらつく体を引きずりながら歩いていく。
怒りの炎を瞳に宿しながら。

「よぉ。テメェがここまでゲス野郎だったら鉄塔の一部にしちまった方が世の中のためだったかもしれねぇな」
「……お前からの評価などどうでもいい。貴様がここへ来なくてはこの女が無機質な塊になるぞ?」

予想はしていた無関係の人が死ぬという最悪な事態はまのがれた。
それでも怒りが湧いてきてたまらない。
クレイジー・Dの五指が固められて、力の入れすぎにより震えだす。
しかし、この状況下ではどうやっても倒すことはできない。
無意識の内に下唇を噛み締めていた。
歯によって避けた皮膚から流れ出す血液。
そして仗助は鉄塔内へと歩みだし、見えない檻の中へと入り込んだ。
辛そうな表情にシャマルの心を罪悪感が覆うが仕方がない。

(ごめんなさい……はやてちゃんの為にここで立ち止まっててはいけないの)

心中で謝罪しつつ、シャマルは鉄塔から外に出る。
同時に現れたハイウェイ・スター。
しかし、既に転送魔法の準備はできていた。
足跡が飛び掛ってくるも、そのときは既に二人の存在はこの町から消えていた。
突如消え去った二人の姿に鉄塔内で一人呆然とする仗助。
しばらくして気が付いた。二人はグルであったのだと。
戦闘を終えた億泰と康一が傷だらけで駆け寄ってくる、噴上裕也も気が付けば鉄塔の傍に立っていた。

「俺達の……負けだな」

悔しそうに仗助は呟く。
小さいながらもその場全員に聞こえたであろう声は地面に染み込んでいった。


====

「一分一秒がおしいというのに、一ページ分すら収集できなかった……私達の完敗だ」

何処かのビルの上、苦々しげな表情でシグナムは敗北を口にした。
その声は雲ひとつ無い星空へと吸い込まれていく―――――。


====

7 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:07:19 ID:Qx6d1OZc
〜おまけ〜

本編ではシャマル追跡の際にどこかへ消えた噴上裕也。
一体彼は追跡中に何をやっていたのだろうか? 今から見せるのは彼の孤独な戦いである。


「はぁっ……はぁっ……」

規則的な呼吸をしながら人っ子一人いないアスファルト舗装の道を走る噴上裕也。
こういうとまるでランニングをしているように感じるだろう。
だが、彼の走りは明らかに全力疾走であった。
何故、皆が戦ってる最中に彼は一人走っているのだろうか?
それは彼の能力と大きく密接している。

彼の能力、ハイウェイ・スターには相手の養分を吸収するという強力無比な能力があるが、これには大きな欠陥がある。
以前は岸辺露伴の養分を一瞬にしてほぼ吸い尽くせたのだが、今回はやたらと時間がかかったこともこれに関係している。
ハイウェイ・スターの弱点。それは、自分が健康なときはエネルギーを吸収できないという事にある。
つまり、仗助たちと戦った頃は意識不明の重態だったので、非常に強力な吸引力を見せたが健康になった今では全く効果がない。
だがら噴上は自身の体からエネルギーを奪うために全力疾走を続けているのだ。

頑張れ噴上裕也! 勝利の為にあの星へと走れ!

8 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:11:58 ID:Qx6d1OZc
投下完了です、代理投下をしてくださり本当にありがとうございます

さて、康一と億泰のバトルシーンを完全に省きましたがこれは仕様です
入れるか悩んだんですが、色々とネタが浮かびすぎたりなんだりでこれだけやると今後やばいだろうとなって中止しました
二人の戦闘を楽しみにしていた方には申し訳ありません。
キングクリムゾンされた分もこの二人には頑張ってもらいます。

9 ◆FInR8quS0Y:2009/01/08(木) 00:14:46 ID:Qx6d1OZc
あっ、言い忘れてましたが
スレの容量に気がつかずに前スレとこのスレの二つをまたいで投下してしまい申し訳ありまセンでした

10リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:39:33 ID:A8vW5jpo

お猿さんを喰らいました 以下の内容をお願いします ORZ


「願望を叶える石か、まったくつまらないほどに優れている」

 かつて何度もフェイトはジュエルシードと対峙していた。
 だが、一度としてこれほど圧倒的な差があっただろうか?
 否、否である。
 感じたことがあるとしたら、彼女の母であるプレシア・テスタロッサが次元の壁を破砕し、開放しようとした時のみ。

「もっとも効率よく、そしてもっとも暴走しやすく使うには人の身が使うということだな」

 グンッとスカリエッティは手を上げて。

「――“離れよ”」

 フェイトは離れた。
 己の意思とは無関係に――吹き飛んだ。
 撥ね飛ばされたように吹き飛んで、次の瞬間スカリエッティが手を閃かせた。
 両手の指、合わせて十本。
 魔力のワイヤーがバインド状に彼女を縛り上げる。

「くぅっ!?」

 魔力を放出し、さらにバインドブレイクの術式を脳内で構築開始するが、身体に食い込んだバインドは全く弱まらない。
 彼女の乳房を締め上げて、腰を内臓を圧迫せんと強く拘束し、その太腿は螺旋を描くように入念にワイヤーが張っていた。
 淫らな妖艶さすらも感じれる光景。
 美しい女性を捕らえたその扇情的な光景に、スカリエッティは軽く目を向けながら、パチンと胸元で輝き続ける紅い宝玉を収めてブローチの蓋を閉じて。

「……やれやれ、まだ制御するには危険のようだな。危うく、凄いことになるところだった」

「!?」

 ボソリと呟いたスカリエッティの言葉に、ゾクリとフェイトの背筋に怖気が走った。

「さて、どうするかね。まだ足掻くかね?」

「っ、私は決して諦めない!!」

 フェイトは諦めなかった。
 バインドを振り払おうと努力しながらも、ある準備を開始する。
 最後の切り札を切る覚悟を決めた。
 しかし。

「ふむ、一つ言っておくが君の行なおうとする行為を薦めないぞ」

「?」

「調査は進んでいる。どうせライオット・フォームと言うフルドライブモードがあるんだろう」

「!?」

 看破された。
 フェイトは僅かに表情が揺らぐのを自覚し、汗が額に噴き出す。

11リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:40:15 ID:A8vW5jpo
 
「一つ言っておこう。私は一発で倒れる自信がある」

「……え?」

「そのライオットフォームとやらならば多分私は一発で失神するだろう。一本でも精一杯なのに、二本も繰り出されたらそれは防げないからな」

 スカリエッティは淡々と告げて。

「ただし――君が脱出したとき、大きな犠牲を払うと思いたまえ」

 そう告げて出されたのは何の変哲も無いボタンだった。

「そ、それは?」

「なに、ただのボタンさ」

 カチッと押されると同時にモニターにフェイトの顔と全身が映り出す。
 どうやらフロア内に仕込んでいたらしいカメラからの画像。
 何の意味があるのだ? とフェイトが首を捻った瞬間だった。

「ソニックフォームとやらを使ってみるがいい。ただし」

 スカリエッティは笑って。



「脱げるぞ?」



「……え?」

「バリアジャケットの再構成はこのAMF濃度だと不可能だろう。つまり、スッパだ、全裸だ、破廉恥フォームを通り越して、ヘブン状態だ!」

 断言した。
 スカリエッティは酷く楽しそうな笑みを浮かべて。

「さあ脱出してみるがいい! その場合、ネットを通じて君の全裸姿がミッドチルダ及び次元世界中にお披露目されるのだがね!!」

「えええー!!!?」

 フェイトが絶叫にも似た悲鳴を上げる。
 そんなまさかだった。

「う、嘘。え? でもハッタリだよね。幾らなんでもAMFでバリアジャケットの構築阻害なんて、いやでも、さっきのザンバーが……」

「さて、私は用事があるので失礼するよ?」

「え? ま、まってー!!」

 てってけってーとスカリエッティは白衣の埃を払うと、歩き出した。
 向かう先はモニターの奥に隠されていた転送ポット。
 このままだと逃げられる。
 だがしかし、フェイトは迷っていた。

12リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:40:59 ID:A8vW5jpo
 
「ぜ、全裸……恥女認定? いや、でも……」

 うーん、うーんと迷う。
 己の精神的生命の継続を選択するべきか、それとも背負った願いを叶えるべきか。
 迷い、迷いながらも。

「では、さらだ!」

 転送ポットに入ろうとするスカリエッティを見て。
 彼女は覚悟を決めた。
 覚悟完了。
 さようなら、私の人生と涙を流しながら。

「し、真・ソニックフォーム!!」

 フェイトは叫んだ。
 バリアジャケットの大半を衝撃波に変換し、バインドを振り払う。
 同時に新しいバリアジャケットを構築。
 電光を全身に纏いながら、フェイトは涙を流して音速を超えて疾走し――スカリエッティの背に迫った時だった。

「どりゃー!!!」

 壁をぶち抜いて、それが飛び出したのは。

「え?」

 それは蒼い髪をした女性だった。
 両手に彼女の親友の部下がつけているのと同じデバイス――リボルバーナックルを嵌めて、怒声を張り上げて壁を貫通してきた。
 如何なる威力か。
 如何なる実力か。

「母親を舐めるなー!!」

 そう叫ぶ女性が突き破った壁の勢いのままに飛び出して。

「あ」

「え?」

「おや」

 飛び出したフェイトに、勢いよく撥ねられた。
 前方不注意だった。
 パンを咥えて、てってってどしーん! という出会いから始まる漫画チックな状態とはまるで違って、二人共大きく撥ね飛ばされる。
 片方は音速を超える物体に激突されて、もう片方は速度を追求して防御力の欠けた状態だったから。

「……結果オーライ!」

 指を立てて、スカリエッティは転送ポットに逃げ込んだ。

「あ、いたたた。何よ一体」

 その数分後、むくりと起き上がったのは陸士ジャケットを羽織った女性だった。

「い、いたたた。なんなの?」

 フェイトも起き上がる。
 パチリと目が合った。

13リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:41:31 ID:A8vW5jpo
 
「あら? 管理局の魔導師かしら?」

「え? えっと、貴方は。あ、スカリエッティ!」

「もう逃げられたわよ」

 はぁっと女性がため息を吐いた。

「所属教えてくれる? 状況がさっぱりだから」

「あ、えっと、機動六課のフェイト・T・ハラオウン執務官です」

「機動六課? 名前は聞いたことは無いけど、ミッドチルダUCATのクイント・ナカジマです」

「あ、そうなんで……え?」

 フェイトは一瞬耳を疑った。
 ファミリーネームに聞き覚えがあったからだ。
 そして、よく見れば顔にも見覚えがある。正確にはそれと良く似た顔をみたことがあった。
 誰が知ろうか。
 それは八年前、ジェイル・スカリエッティにカーボンフリーズされていたクイント・ナカジマ。
 それがつい先ほどそれを打ち砕いて、脱出してということをフェイトは知らなかった。

「それにしても、ずいぶんと破廉恥なバリアジャケットね? 流行っているの?」

「え? あ、ああ!」

 全裸!
 まっぱ!
 ヘブン状態!
 その言葉を思い出して、フェイトが慌てて胸を両手で隠した。
 のだが、そこに衣服の感触があった。

「あれ?」

 肩のむき出しになったバリアジャケット、太腿を露出させ、涼しげでもある真・ソニックフォームのバリアジャケットが其処にあった。
 裸などではなかった。

14リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:42:31 ID:A8vW5jpo
 
「だ、騙された」

 ガクッとフェイトが肩を落とした。
 そんな彼女に、クイントは肩を叩いて。

「まあ気を落とさないで。機会はまたあるから」

「は、はい」

 スルリ。
 フェイトが頷いた瞬間、変な音がした。

「え?」

 フェイトが身体を見下ろす。
 ボロボロとバリアジャケットが剥がれ落ちて――肌色が目に飛び込んできた。涼しすぎるほどに。
 そして、モニターに沢山の肌色が踊って。


「いやぁあああああああああああああ!!!!」


 フェイトの絶叫が響き渡った。

 ちなみに、後日フェイトが泣きながらネットを確認したが、一切流れていなかった。

 どうやらブラフだったらしい。





「っ、フェイトの声?」

「急ぎましょう、ヴェロッサ!」

 ずたぼろになりながらも、散らばったガジェットの群れの中を二人の男女が歩いていた。
 スーツは残骸もなく、露出した肩から血を流したヴェロッサとヘソも丸出しに、乳房も切れ込みが入ったかのようにずたぼろのシャッハが支えている。

「ああ」

 息するのも辛いように歩き出しながら、不意にヴェロッサは気付いた。
 地面が揺れている。

「震動?」

「しかも、勢いが強まって……まずい崩落するぞ!?」

 二人が慌てて駆け出そうとした時だった。
 奥から一つの人影が飛び出した。
 正確には一人の女性を背負った女性が。

「っ! フェイトさん! と、誰?」

「いいから早く逃げるわよ!」

 二人にクイントが叫ぶ。
 背中で、「ぅう、お嫁にいけないよぉ、クロノもらってぇ」と呟くフェイトがバリアジャケットを再構築した姿で俯いていた。

15リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:43:02 ID:A8vW5jpo
 
「しかし、どこに!?」

「引き返すにしても道が――」

 その時だった。
 周囲の扉を蹴破り、現れた人影があった。

「こっちだ!」

「き、君たちは!?」

 それは陸士たちだった。
 しかも、途中で行方不明になっていた面子ばかり。

「裏口ルートでなんとかやってきたんだ! それよりも逃げるぞ!!」

『応!!』

 巨大なポットを抱えた陸士たちが頷く。
 四人はそれに続いて走り出した。

 震動は限界まで達しようとしていた。






「さあ始まるぞ」

 嗤う、嗤う、男が一人。

「始めましょう、歴史の改革を」

 語る、語る、女が一人。

「聖王の揺り篭を、起動する!」

 地響きを上げて。

 大地を震撼させて。

 今日この日、世界が震えた。

 白き大いなる翼の復活に。


 さあ、物語を始めよう。

 恐ろしい物語を。

 そのクライマックスを。




 スカリエッティ拿捕大作戦 続行

 聖王の揺り篭攻略戦に移行する   ……世界の命運を頼んだぞ

16リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM:2009/01/10(土) 21:44:40 ID:A8vW5jpo
投下完了です。
途中でサル規制にかかりました。本当にすみませんでした ORZ
次回から聖王の揺り篭戦になります。
ミッドチルダUCAT、クライマックス! どうぞお楽しみ下さい。
熱さも燃えも萌えもあります、頑張ります!
代理投下の方、ありがとうございましたー!


以上の代理投下をお願いします。

17魔法少女リリカル名無し:2009/01/10(土) 21:59:13 ID:XM2dG1U6
<<代理投下終了。災難だったな…。困ったらまたいつでも行ってくれ>>

18R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/01/12(月) 21:51:34 ID:x7pCFNjk
「リンディ、上!」

アルフの警告。
咄嗟に障壁を展開すると、再度頭上から襲い掛かった砲撃が褐色と緑の壁に弾かれる。
障壁越しに見上げれば、滞空するオートスフィアの群れが視界へと飛び込んだ。
それらは散発的にリニアレールの路線上へと配置され、車両の通過に合わせて砲撃を放つ。
どうやら先程の焔は、あのオートスフィア群の一部を狙ったものらしい。
次々と襲い来る砲撃に、リンディは焦燥を押し隠しつつ鋭く叫んだ。

「アルフ、暫く時間を稼いで!」
「了解!」

結界を解除、ディストーション・フィールドの発動準備に入る。
その作業すらも、膨大な処理能力を誇るユーノと本局データバンクからのバックアップにより、僅か5秒程で発動段階へと到った。
すぐさま、アルフへと声を飛ばす。

「アルフ!」
「はいよ!」

アルフの展開していた障壁が消失すると同時、入れ替わる様に車両上部へと空間歪曲が出現。
可視化した揺らぎが降り注ぐ砲撃を呑み込み、その全てを片端から掻き消してゆく。
高ランク魔導師であるリンディが、更に魔力供給を受けた上で展開したフィールドだ。
新型とはいえオートスフィア程度の砲撃では、万が一にもその防御を抜く事はできない。

その間に周囲では、後方より接近するJF704式に対する迎撃が開始されていた。
直射弾と集束砲撃が薄青色の機体へと襲い掛かり、高出力AMFによってその威力を減じられながらも機体表面を削りゆく。
だが、ヘリは怯まない。
回避行動を取るどころか、更に速度を上げてリニアへと接近してくる。
敵機は飽くまで輸送ヘリであり、AMF以外にこれといった武装を施されてはいない筈だが、しかし危険な事には変わりがない。

攻撃がより一層に激しさを増し、更にシグナムの炎と局員に対してのみ可視化されたヴェロッサの「無限の猟犬」がヘリへと襲い掛かる。
しかし、いずれにしてもAMFの効果範囲内へ侵入すると同時に減衰を始め、決定的な損傷を与えるには至らない。
幾ら高出力とはいえ、余りに異常に過ぎる魔力結合阻害効果。
どうやら汚染によって、安全回路が完全に破壊されているらしい。
今やあのJF704式は、次の瞬間には魔力暴走による爆発を起こすとも知れない、制御できない爆弾の様な存在なのだ。
局員の間に、焦燥を含んだ念話が奔る。

『駄目だ、魔力弾が減衰してしまう! 何か構造的弱点は無いのか!?』
『ヴァイス陸曹、何か知りませんか!?』
『テール・ブーム側面の排気口を破壊できれば、トルクを相殺できずに墜落する筈なんだが・・・誘導操作弾じゃAMF効果域を突破できないだろうしな・・・』
『不味いわ、フィールドが!』

念話が交わされる間にもリニアとヘリの距離は縮み、徐々にAMFの効果がリンディ達にも影響を及ぼし始めた。
そしてあろう事か、ディストーション・フィールドまでもが綻び始める。
空間歪曲の範囲が、明らかに狭まり始めたのだ。
このままでは未だ続くオートスフィア群からの砲撃を、直接的に受ける事となってしまう。
だがそんな中、クアットロからの通信が入った。

『ウーノ姉様、そちらで車両のコントロールを掌握できます?』
『・・・20秒程あれば』
『では、お願いしますね。それと皆さん、何かに掴まっていた方が宜しくてよ?』

その会話の内容に、リンディはスカリエッティ等が座していた方向を見やる。
彼女の視線の先では、ウーノが壁際のコンソール前へと佇んでいた。
信じ難い速さでキーウィンドウ上に踊る指を見つめていると、今度はスカリエッティからの警告が意識へと飛び込む。

『さて、急停車するぞ。そろそろ準備した方が良いのでは?』

19R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/01/12(月) 21:53:03 ID:x7pCFNjk
その瞬間、リンディはフェイトを庇う様にその上へと覆い被さった。
視線だけは頭上へと向けたまま、同じくフェイトへと寄り添ったアルフが再度、障壁を展開する様を視界へと捉える。
直後、鼓膜を劈く金属音と共に車両へと急制動が掛かり、同時に30を超えるデバイスが頭上の空間へと向けられた。

そして、車両が急減速した結果、ヘリは一瞬にしてその上方へと躍り出る。
AMFによる重圧が急激に増すと同時、ヘリの至近距離に展開していたディストーション・フィールドは霧散し、アルフの結界が綻び始めた。
防御手段を奪われれば、後は砲撃の餌食となる以外に道は無い。

だが次の瞬間、轟音と共に頭上のヘリが「潰れた」。
砕け散る緑光の壁、飛び散る魔力光の残滓。
メインローターの一部が捻じ曲がり、既に圧壊していたコックピットが更に小さく押し潰される。
歪んだ機体は其処彼処から大小の破片を零し、亀裂と火花、赤々とした炎が一瞬にして表層を覆い尽くす。
金属が圧壊する巨大な異音が容赦なく鼓膜を叩き、飛び散る無数の破片がAMFにより減衰した障壁へと殺到した。

「まだ・・・!」

だというのに、ヘリはまだ飛んでいた。
減衰していたとはいえ、リニア進路上の空中に展開されたユーノの障壁、強固さでは並ぶ物の無いそれへと高速で突入し、機体各所より炎を噴き上げつつも未だ飛行している。
フレームが歪み十分な安定性すら確保できない状態となっても、メインローターとノーター・システムはその役目を放棄してはいなかった。
しかし、機内のAMFシステムはそうではなかったらしい。
元々が繊細な魔法機器である上に、耐久性を考慮されていない試作品だったのか、フレームの歪みに耐え切れず損壊した様だ。
全身を圧迫していたAMFの重圧が消失し、同時に鋭い念話が局員の間へと奔る。

『撃て!』

連射される直射弾、簡易砲撃。
シグナムの炎が機体を貫き、ヴェロッサの猟犬がテール・ブームを喰い千切る。
メインローターのトルクにより回転を始める機体へと更に大量の直射弾が撃ち込まれ、爆音と共にハッチが弾け飛んだ。
業火を噴きつつ、機体の高度が下がる。
そして、ユーノの警告。

『伏せて!』

視界へと飛び込んだユーノの障壁は、これまでとは異なる形で展開していた。
地表に対して垂直ではなく、水平に展開されていたのだ。
ヘリは回避する事もできずに障壁へと突入、鋼を引き裂く異音と共に機体が上下に分断される。
切断された機体下部は車両を掠めて路線へと接触、高架橋を破壊して市街へと落下した。
残る機体上部は回転運動の激しさを増し、更に路線に沿って建ち並ぶビルの壁面へと接触して大量のガラス片を周囲へと撒き散らす。

『やった!』

誰かが、念話で叫んだ。
ヘリは制御を失い、更に大きく速度を落として車両から離れ始めている。
あの様子からして、数秒後にでも墜落するだろう。
リンディも、そう信じて疑わなかった。
数瞬後、機体切断面より現れたそれを見るまでは。

「な・・・」

反応する間も無かった。
切断面から出現した、巨大な1本の触手。
有機的柔軟さと骨格の強固さを併せ持った赤黒い外観のそれは、車両とヘリの間に存在する40m程の距離を一瞬にして詰め、先端が4つに分かれると其々が天井部を失った車両へと突き立ったのだ。
異様な光景と衝撃に目を見開くリンディ達の眼前で、床面を抉ったそれは徐々に有機的な組織を構造物へと侵食させ始める。
鋭い、悲鳴の様な声が上がった。

「前へ! 逃げて!」

20R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/01/12(月) 21:53:59 ID:x7pCFNjk
それがフェイトの声だと理解した時には、既にリンディはアルフと共に駆け出している。
周囲に展開していた局員やスカリエッティ達も、前部車両との連結部を目指し走っていた。
そして全員が4両目へと移ると共に、ベルカ式の武装局員が自身の槍型デバイスに魔力を纏わせ、連結部を切り裂く。

「これで・・・」

彼が言わんとした言葉を、最後まで聞く事はできなかった。
振動と共に5両目が離れ行く様を見つめる中、破壊された連結部から離れようとしたその武装局員は、天井部を貫いて侵入してきた触手により頭頂部から2つに分たれたのだ。
その惨状に凄まじい悲鳴が上がり、頭上では天井面へと血管状の組織が奔り始める。
だがユーノ達が、その状況を黙って見ている筈がない。
忽ちの内に障壁とバインド、各種結界と炎、無数の猟犬が侵食された天井部を吹き飛ばし、襲い来る異形の姿を露わにする。

「さっきのヘリ・・・あれが!?」
「節操の無い化け物だね、バイドってのは!」

メインローターは未だ回転していた。
機体上部もほぼ原形を保っている。
だが、それは最早ヘリではなかった。

機体下部からは6本もの触手が伸び、内4本が切り離された5両目に、残る2本がこの4両目へと打ち込まれている。
それらを用いて機体を固定する事によって、バイド化したJF704式はトルクに抗っていた。
素人目に見ただけでも触手の総質量は、明らかに機体のそれを超えていると解る。
しかし増殖は未だ止まらず、無数に枝分かれした極小の触手群が、最寄りの局員達へと一斉に襲い掛かった。

「うあ・・・げ、ひ!」
「ぎ、い・・・ぎッ・・・!」
「嫌、嫌・・・! ぎ、う・・・ぅ・・・ッ」
『退がれ、退がるんだ! 巻き込まれる!』

悲鳴に告ぐ悲鳴。
それらが絶叫へと変化する前に、触手の群れは哀れな犠牲者達を津波の如く呑み込んでいた。
縫い針ほどにまで細分化した数千、数万もの触手が銃弾さながらの速度で伸長し、それらの先端が局員の身体を貫いてゆく。
人体を貫通したそれらは更に伸長、先端が床面に達し構造物と同化すると同時に増殖を停止。
植物の根、或いは神経ネットワークの如く張り巡らされた触手の枝の中、全身を貫かれた局員達の影が網状となった赤黒い触手の中に蠢く様は、他の生存者達の正気を乱すには十分に過ぎた。
そして無数の悲鳴が上がる中、更なる狂気じみた事実が発覚する。

『バイタルが・・・バイタルが残ってる!』
『何の事だ!?』
『デバイスのバイタルサインが残っているんだ! 生きてる! 彼等はまだ生きてるぞ!』
『何を馬鹿な・・・!』
『見て!』

局員の1人が、触手の一部を指した。
反射的にその先へと視線を滑らせたリンディの視界に、褐色の制服が映り込む。
数十本もの極小の触手に貫かれた、局員の腕。
僅かずつ滲み出す血液に、褐色の制服が徐々に紅く染まりゆく。
その末端、同じく微細な触手に縫い止められた五本の指が、確かに動いた。
当然の帰結として、その腕の付け根へと視線を移動した結果。

「ッ・・・!?」
「見ちゃ駄目だ、フェイト!」

アルフの叫び。
もう少しそれが発せられる瞬間が遅ければ、叫んでいたのはリンディ自身だったろう。
尤もそれが、果たしてフェイトへの注意であったかは怪しいが。

「何て・・・事・・・」

21ロックマンゼロ ◆1gwURfmbQU:2009/01/13(火) 00:30:23 ID:mFIQefSw
第四話です。
色々と同人誌方面で立て込んでしまい、投下が遅れてしまいました。
支援してくださった方々は、ありがとうございました。
今週からまたペースを戻していきたいと思います。
3〜4話はロックマンゼロの世界観というよりは、ロックマンゼロという作品に
登場するキャラや、メインヒロインであるシエルについてでした。
考えてみれば、この話からコミケで冊子貰った人も知らない展開なんですね。

それでは、感想等、ありましたらよろしくお願いします!




このあとがきを、誰か代理で。

22キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k:2009/01/14(水) 21:52:15 ID:FuN4oaSA
「バリン」

終わりは呆気ないモノ。ガラスが割れるような音が一つ。そこには既にビショップと言う存在が居た証は何も無い。
ゆっくりとルーテシアは立ち上がり、呆気に取られて動けないエリオとキャロへと視線を向ける。

「っ!?」

二人の背筋を駆け抜ける寒気。先程のルーテシアを遥かに越えた違和感。
先程まででも完成していた芸術品を思わせる雰囲気だったが、ソレすらも飛び越えた。
コレは人間なんかじゃない。コレは化け物で、自分達はその獲物 食料に過ぎない。

「あなた達の……」

ルーテシアの口から零れるのは小さな呟き。それだけで世界が変わる。
小さな掌の上に浮かび上がるのはチェックメイトフォーのクイーンである証……と、ソレに寄り添うビショップの紋章。
本来ならばありえないチェックメイトフォーの二席を占める最強のファンガイアの誕生。
それを祝福するように沸き立つ闇が辺りを染め上げ、天空にはいつの間にか輝く真っ赤な満月。


「あなた達の夜が来る」


クイーンとして力と美貌、ビショップから受け継いだ知恵と策略を持つ彼女はキングすら凌ぐかも知れない。
数多ある次元世界で一斉に目覚めたファンガイアたちを纏め、管理局と数百年にわたる闘争を勝ち抜く事になる。
運命に最後まで準じた男が作り上げた存在が、その運命すら越える力を得たのは最大級の皮肉だろうか?

23キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k:2009/01/14(水) 21:56:06 ID:FuN4oaSA
「そんな……」

「どうか私が居なくとも……」

「うん、解ってる。私はなるよ? 貴方の為なんかじゃないんだから……私は私の為に」

ビショップは内心で喝采を上げる。『その言葉が聞きたかった!』と。
完璧なクイーンを作り上げるという目標の最終関門、それはビショップ自身へのルーテシアの依存や甘え。
口にも態度にも出さないが、彼の手一つで育てられてきたルーテシアがソレを持たない事は不可能に近いだろう。
しかしその甘えはいずれ足枷になる。冷徹なパニッシャー、キングを宿す揺り篭には相応しくない感情だ。

「そうです……それで良いのです」

何故ビショップはそこまでするのだろうか? 自分の死を持ってまで完璧なクイーンに拘るのだろうか?
彼はこれまで三人のクイーンを見送った。
最強のキングの伴侶を務めながら、人間との愛を選んだ者。彼女は力を奪われ、隠居を強いられ、最後は逆上した息子に殺された。
二人目は人間のルールに縛られ、偽りのキバとの愛情を優先した上でキングに剣を向けた者。ビショップ自ら鉄槌を下している。
三人目はもちろんメガーヌ。もしクイーンとして覚醒させていたら、あんなオモチャに遅れをとり、死ぬ事も無かった。

「これで……貴女は」


それこそがビショップの知恵と運命が告げる見解。
ビショップとはクイーンやキングを育て、失敗と見ればその首を挿げ替える事すら許される存在。
しかし誰よりも知識を持ち、知恵を巡らせるビショップは運命に反抗する事を知らない。どこまでも賢く、同時に愚かなのである。

だから彼はこう考えた。己の運命を受け入れなかった者、逆らった者、知らなかった者。
クイーンとして相応しく無い者には死が運命的に約束されている。もちろんこの先に生まれる全てのクイーンにもそのルールは適用されるだろう。
死したメガーヌの腹から自力で這い出し、生まれた時からビショップはわかっていた。
『この子こそ! メガーヌと二人で決めた名 ルーテシアを冠する我が娘こそが次のクイーンだ』と。

「完璧な……存在に……」

どうしても不幸な目になど遭わせたくは無かった。この愛らしい子が死ぬなんて認められない。
だからクイーンとして育てたのだ。唯のクイーンでは無い。
悠久のファンガイアの歴史においても、類を見ない完璧なクイーン。強く美しく賢く定めに忠実な存在。
その為には父などと言う肉親は不要だ。必要なのは守る騎士であり、育てる師。
その役目が終わったのならば、最後の依存を断ち切るために命を絶つ。最後にどんなザコが相手でも油断は禁物だと言う教訓を教え込んで。

「■□■□」

最後は言葉にならない。だがこれだけは間違いなく言える。
彼は娘であるルーテシアを溺愛していた。死すら娘の為に浪費する事を厭わないほどに。
その形が人間には理解できない形であり、ルーテシアにも一生伝わる事は無いとしても、これは間違いなくビショップの愛だった。

24キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k:2009/01/14(水) 22:01:22 ID:FuN4oaSA
以上です。現在編と過去編が交差しまくりで解り難かったかしら?
とりあえずルールーが出ているのが現在、ルー母が出ているのが過去だと思っていただければw
それにしてもこれはビショップなのか?という多大な疑問を生みましたね、コレ(他人事

25レザポ ◆94CKshfbLA:2009/01/18(日) 14:37:21 ID:.7UdPf8Q
以上です、ルーテシア徐々にメルティーナ化って話です。

今思うと、メルティーナが乙女っぽいかもしれないです。

本編まで後一話位だと考えています。


それではまたです。

26レザポ ◆94CKshfbLA:2009/01/18(日) 14:38:44 ID:.7UdPf8Q
そしてやってしまいました、どなたか御願い致します。

27レザポ ◆94CKshfbLA:2009/01/18(日) 14:54:18 ID:.7UdPf8Q
代理投下ありがとうございました。

28367:2009/01/25(日) 16:29:53 ID:f0XKjpmg
「俺は殺害に加担したんだ。
 そのことを受け入れるために俺は、俺がどんな有用性を持つのか明らかにしなければならない。
 俺もいつか死ぬ。その時が来るまでに俺は見つけ出さなければならない。俺自身の有用性を」
ウフコックの軌道――明確な出発点から目指すべき到達点へと弧を描く――誰にも止められない。
それはボイルドの新たなキャリアの始まりであり、選択でもあった。
どちらもジ・エンドに至るリスクを承知してクリストファーの描く“渦巻き”に飛び込もうという意思を示す。
チャールズの溜め息。
「死を見つめ楽園を去るか……」
《門出を祝ってやろうぜ》
トゥイードルディムが陽気に口を挟む。
チャ−ルズ――仕方ないと言うように微笑み、去っていく。

ウフコックはテーブルを飛び降り、イルカの鼻先と少年の膝に触れる。
「さようなら、トゥイーたち。俺は行くよ」
《さようなら、ウフコック」。また遊びに来てね》
《もし見つかったら会わせてくれよ。お前を必要とする相手ってやつをさ》
「約束するよ、トゥイーたち。お前たちは大切な友人だ」
ボイルドはウフコックを手に乗せ、立ち上がる。
男とネズミは楽園を去った。

      ◆◆◆

襲撃から二日目の朝。
食堂で軽食を受け取り、ロビーへ。
荷物は殆どない。ハザウェイのTシャツやジョーイのラジカセ、ラナのブーツといったものは何もなかった。
食事しながら待つ。誰がクリストファーの選択を選んだのか。
じきにジョーイとハザウェイ。続くようにラナがやって来た。
レイニーとワイズ。クルツと姿の現したオセロット。

介護棟からやって来る二人――イースター博士とウィリアム・ウィスパー。
「ウィスパーの識閾テストをしたんだ。彼もクリストファー教授のプランに賛成した、僕も」
聞かれもしないのに話し出す“お喋り”イースターの肥満体――ヘリウムガスが溜まったような腹。
イースターの押す車椅子の上で虚空を見つめるウィスパー。
脳に損傷を負ったかつてのオードリーの同僚。
脳に埋め込まれたハード/頭皮を覆う金属繊維/直感でコンピューターの操作する“電子世界のシャーマン”。
その結果として、ウィスパーは他者を理解しなくなった。データが精神――ささやきとなったイースターの“体の悪い弟”。

最後に管理棟のドアから姿を現すクリストファー。
「ふむふむ」
くるくると円を指先で描きながら、一人一人を指差す。
「ディムズデイル・ボイルド。
 ウフコック・ペンティーノ。
 ラナ・ヴィンセント。
 ジョーイ・クラム。
 ハザウェイ・レコード。
 レイニー・サンドマン。
 ワイズ・キナード。
 クルツ・エーヴィス。
 オセロット。
 ドクター・イースター。
 ウィリアム・ウィスパー。
 悪運と実力に満ちた九人と二匹のスペシャリストたちよ、よくぞ私のプランに賛同してくれた。心から感謝と歓迎の意を示そう。
 さあ、こちらへ来たまえ。いざ扉は開かれん」

茶番を好むクリストファー――その指にいつの間にか挟まれているカードキー/軽快な歩み/ロビーの扉脇を滑るように通過するカード。
ロックが次々に解除され、ゆっくりと扉が開いていく。
ロータリーには初めて目にする管理局を制服を着た幾人かの男たち。
「いざ“楽園”を出て荒野を渡ろう」
そして“楽園”を出た十人と二匹は新たな戦場へと向かった。

29367:2009/01/25(日) 16:30:41 ID:f0XKjpmg
投下終了です。
リリカルなキャラが全く出てませんが次回からでる予定です。
しかしクランチ文章難しい。

30367:2009/01/25(日) 17:01:39 ID:f0XKjpmg
>>28の方は投下できてました・・・

31魔法少女リリカル名無し:2009/01/25(日) 17:07:51 ID:1hMINRAQ
>>29
やっときました

32367:2009/01/25(日) 17:53:33 ID:f0XKjpmg
>>31
代理ありがとうございます

33リリカルセイバーズ ◆YSLPVXF4YI:2009/01/29(木) 19:42:43 ID:B2fxeMME
サルサン引っかかりましたのでどなたか代理投下お願いできますでしょうか?

スカルサタモンの攻撃に、スバルとティアナは防戦一方であった。
なんとか決定打は貰わずに済んでいるが、いつまでも防ぎきれるわけでは無い。

「チィ、しぶといんだよテメェ等は!」

スカルサタモンは何度攻撃しても倒れない二人にへの苛立ちが限度を超えていた。
完全体デジモンとしての自信と誇り。それが、たった二人の人間を倒せないという事で打ち砕かれた。
許せない、許してはおけない。自分達デジモンに遥かに劣る人間の分際で生意気なのだ。

「ティア……大丈夫?」
「少なくとも……あんたよりは大丈夫じゃないわよ……」

荒く息を吐きながら言葉を交わす二人に余裕はない。
魔力はほぼ空、応援を頼む暇も無い。体力もそろそろ限界と絶望的な状況だ。
どうやってこの状況を切り抜けるか思考を走らせるが思いつかない。

「いい加減にくたば……ん? なんだ!?」

スカルサタモンが杖を振り上げ、いい加減にトドメを刺そうと動こうとした時、それは現れた。
地響きと共にアスファルトを砕き、地中から出現したそれは全身を鋼で覆った竜。
背中に二つの大砲と緑色の液体に満たされたカプセルを背負った竜。全長は軽く15メートルを超えているだろう。
全身を黒みがかった銀色の装甲に覆われ、頭部のみが緑色に変色した竜は自分の足元にいるスカルサタモンへと顔を向ける。

「バ、バイオムゲンドラモン……なんでこんな処に!?」
「悪いね」

バイオムゲンドラモンと呼ばれた竜は、その外見の凶悪さに似合わぬ十代中頃の少女を連想させる声で呟く。

「ドクターからの命令なんだ」

右腕を振り上げ、豪速を持ってスカルサタモンへと叩きつける。
スカルサタモンはそれに反応もできず、鋼鉄の腕に押し潰され消滅。
バイオムゲンドラモンが腕を持ち上げた跡に出来たクレーターに、デジタマへと還元された姿で転がる。

「なっ……何、アイツ……」

突如出現し、スカルサタモンを一撃で倒したバイオムゲンドラモンにスバルとティアナは困惑する。
当の鋼の竜は軽く二人を一瞥すると、興味無さげに視線を外して自身が空けた地面の穴へと戻っていく。
二人は茫然としたまま、ヴィータとはやてが来るまでその場を動けなかった。

34リリカルセイバーズ ◆YSLPVXF4YI:2009/01/29(木) 19:44:10 ID:B2fxeMME
登場デジモン解説

シードラモン 成熟期 水棲型 データ種
長い蛇のような姿をした成熟期のデジモン。
高い攻撃力を持つが知性は低く、本能のままに行動する。
海は勿論、湖などにも潜んでおりその長い体を利用した締め付け攻撃は驚異の一言。
必殺技は口から吐き出す氷の矢「アイスアロー」


メガシードラモン 完全体 水棲型 データ種
シードラモンの進化形であり、一回り巨大化した水棲型デジモン。
頭部の外郭から伸びる稲妻形のブレードが武器であり、進化前のそれより硬度が増した兜としても用いられる。
知性や泳ぐスピードも発達し、執念深く相手を追いつめる。
必殺技は稲妻形ブレードから放つ雷撃「サンダージャベリン」


バイオムゲンドラモン 究極体 マシーン型 ウィルス種
100%フルメタルボディを持つ究極体。
一時期デジタルワールド最強の座に君臨していた程の戦闘力を持ち、他のデジモンを圧倒する頭脳とパワーを持つ。
その名の通り無限のパワーと持ち、体はさまざまなサイボーグ型、マシーン型デジモンの優れたパーツで構成される。
本作では人とデジモンの融合体であるバイオデジモンとして登場。
必殺技は背中の大砲から放つ超ド級の破壊エネルギー波「∞(ムゲン)キャノン」

35リリカルセイバーズ ◆YSLPVXF4YI:2009/01/29(木) 19:45:18 ID:B2fxeMME
長らくお待たせした上にこんな内容で申し訳ない orz
結局、兄貴と共闘したのライトニングだけだったり、はやてとかヴォルケンズ二人は出番丸ごとカットしたりとホント申し訳ない。
そしてようやく気がつきました……このSS一番のバランスクラッシャーは大だ。戦闘シーン執筆の際、強すぎて使いにくいのなんの。
バイオデジモンも登場……出すかどうか凄く悩んだんですけどね。正体が分かった人はご一報を、好きなデジモン一体差し上げます(何
さて、次回から本作のメインヒロイン(?)がよーやく出てきますといいつつこの辺で。

以上です。どなたかお願いします。

36魔法少女リリカル名無し:2009/01/29(木) 19:48:53 ID:3giaR4yo
代理投下終了しました。

37リリカルセイバーズ ◆YSLPVXF4YI:2009/01/29(木) 20:00:09 ID:B2fxeMME
>>36
確認しました。
ありがとうございます。

38LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:10:08 ID:hnehCqd6
 ――あの人を、助けてください……
 惨めな姿で、少女は確かにそう言った。
 プレシアのためではなく、少年のためにそういったのだ。
 プレシアの前で我侭を言うなど、今まで一度たりとも有りはしなかった。
「何故……」
 どうしてあの時、自分は手を止めたのだろう。
 ――次はもっと、がんばります。だから……
 私のことだけ考えていればいい。そう叱るべき筈なのに。
 この状況で、あなたは私にお願いできる立場だというの。そう諭すべき筈なのに。
 頭ではそれがわかっていたはずなのに、プレシアは確かに躊躇した。
「何故……」
 躊躇する理由など、どこにもない筈なのに。
 ――おねがい、します……
 なぜ、そこで完全に手を止めてしまったのだろうか。
 わからない。
「けど……考えても、あまり意味がないわね」
 直後にプレシアは首を横に振り、その疑問を切り捨てた。
 そうだ。こんなことを考えている場合ではない。
 あんなことは、どうせ一度きり。フェイトが自分に我侭を言うことなど、もう二度とないだろう。
 そもそも自分があの少年を保護した理由は、フェイトの頼みによるものではない。
 左手に握るものへと、プレシアは視線を移す。
 鈍い光沢を放つ、二振りの剣。あの少年が持っていたものだ。
 最初はあの少年を追い出すつもりではあった。だが、腰のベルトに差していた『これ』を一目見た瞬間、プレシアは気付いた。
 持ち主の少年からは一切魔力を感じなくとも、『これ』そのものに電子音声機能が搭載されていなくとも……
 それでも『これ』は、デバイスだと。
 フェイト達は気付いていなかったようだが、間違いない。
 少年をフェイトから紹介されたときにもらった少年のデータを見る限り、少年のもといた場所は、おそらく管理局も見つけていない別の次元世界。
「案外と、使えるかもしれない」
 プレシアの両頬が、不気味に吊り上がる。
 フェイトが課した保護条件に、少年は素直に従っている。
 未知の世界から現れた少年。正体不明のデバイス。
 うまく利用すれば、悲願達成の近道になるかもしれない。
 価値が無ければ捨てるもよし。戦力になるのなら、管理局が手を出してきた時はいい駒となるかもしれない。
 プレシアの両肩が自然と震えだし、次第に声が混ざっていく。
 やがて、誰もいない廊下に、誰にも聞こえることのない壊れた笑い声が響き渡った。

39LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:10:40 ID:hnehCqd6
 どこまでも、虚しく。どこまでも、狂気的に。

 今のプレシア・テスタロッサに、届く声は……ない。

40LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:14:35 ID:hnehCqd6
               *

「はぁ……」
 公園のベンチに座り、セラは大きく溜息を吐いた。
 時間は既に夕刻。殆ど一日中歩いてディーとジュエルシードを探し続けていたのだが、収穫はなし。
 歩き疲れていると察したのか、合流したなのはと一緒に、ユーノから少し休むよう言われた。
 当のユーノは、なのはの肩に乗って休むとのこと。小動物ならではの方法だと、セラは思った。
 とはいえ、家からは少し遠い。一番近い休憩場所で休み、再び合流してから帰宅することとなった。
 そんなわけで、セラはなのは達から指定されたここ、『海鳴海浜公園』にいる。
 ……やっぱり、言い過ぎたでしょうか?
 ふと、合流直後のなのはとのやり取りを思い出す。
 朝にユーノが聞いてきたことは、なのはの悩みについて。
 ジュエルシードや敵対している魔導師のことで悩み続け、とうとう友人関係にまで影響を与えてしまっている。
 それを聞いた時、少しだけ悩んだ。
 不思議の国のアリスのように、突如この世界に迷い込んでしまった自分。
 ただの部外者である自分が、余計な手を出してもいいのか、と。
 とはいえ、せっかく保護を受けているのだから、その位の相談は引き受けようと思った。
 ユーノには、私に任せてください、とだけ答え、なのはと合流してすぐにお説教を始めた。
 全部話せなくても、肝心な所を伏せたりとか、そういう工夫をしてください……とか。
 手伝って欲しくなくても、せめてアドバイスくらいはもらってください……とか。
 最初はかなり慌てていたなのはだったが、次の言葉を聞くと何故か息を呑んだ。
 ――わたしもユーノさんも、なのはさんの傍にいますから。だから、困った時はちゃんと言ってください。わたしたちは、なのはさんのお友達なんですから。
 思うところがあったのか、なのはは思案するように俯いたままだった。
 その後はなのはの反応を待たずに、自分から先行して捜索を再開したため、なのはからの返事は聞いていない。
 というより、返事が少しだけ怖かったからかもしれない。
 やはり自分は、本来この世界とは無関係なのだから。
「なのはさんとユーノさん、まだでしょうか……」
 さらに、溜息の理由はもう一つある。
 なのは達から場所を聞いてここへ来てみると、I-ブレインが情報制御を探知したのだ。
 微弱ながらも奇妙な『物理法則の乱れ』に、まさかと思って発生源を探してみると、案の定。

41LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:15:43 ID:hnehCqd6
 ……まさか、なのはさん達より先に見つけてしまうなんて……
 自分の座るベンチからは少し離れた、無造作に立っている一本の木へと視線を向ける。
 木の根元には、不気味に明滅を繰り返す、小さな青い宝石。おそらくあれが、話に聞いたジュエルシードなのだろう。
 早く対処するべきなのだろうが、封印方法を知らないし、知ったとしても多分できない。
 さらにいうなら、なのは達との連絡手段も持っていない。
 なのは達の正確な現在位置がわからない以上、迂闊に探すこともできない。
 ジュエルシードの暴走条件も大まかだが聞いており、自分が触れても発動する危険は十分に有り得る。
 せめて、周囲の物体から引き離せば発動が遅れるかもしれないと思い、重力制御で宙に浮かせようとしたのだが、
 ……さっきは、ホントにびっくりしました。
 朝からずっと展開しっぱなしだったD3を近づけただけで、ジュエルシードの頼りない発光が一気に強まったのだ。
 驚いてD3を離すと、それに合わせてジュエルシードの発光は元に戻っていった。
 試しにジュエルシードとD3の距離を調整してみると、それに合わせて発光現象の強弱が変化した。
 どうやら、魔法士の魔法にも反応するらしい。
 魔力や願いにジュエルシードが反応することは聞いていたものの、情報制御にも反応するとは思わなかった。
 とはいえ、情報制御も『願い』や『魔導師の魔法』と同様、脳内で『思考』することによって発現する。
 魔導師の魔力ではなく魔法そのものに反応していたとすれば、ありえないことではない。
 結局、ここでなのはの到着を待つことしか自分にはできない。
 完全に八方ふさがりだった。
「はぁ……」
 再び大きく溜息を吐き、空を見上げる。
 生まれてはじめて見る、茜色の空。
 シティの天井も合成映像で空を映せるのだが、本物の空にはやはり程遠いだろうとセラは思う。
 公園内を見渡せば、木々や草花などの自然が多くあることもわかる。
 シティ内外を問わず、このように緑溢れる場所は存在しない。
 自分の周りを取り囲むものすべてが、セラに一つの事実を告げている。

42LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:17:01 ID:hnehCqd6
 ――この世界に、マザーコアは存在しない。
 情報制御によって、シティに住む一千万人の命を支え続ける『マザーコア』。
 生きた魔法士を培養層に入れ、ロボトミーを行って心を奪い、情報制御でエネルギーを賄い、コアとなった魔法士が使い物にならなくなれば、新しい魔法士と取り替える。
 いわば、魔法士を生贄にして人類を生き長らえさせるシステム。
 生贄という表現をより悪く言うなら、電池が似合うかもしれない。
 誰かの命を犠牲にしなければ、多くの人々の命が一日ともたずに失われてしまう。
 そんなシステムが、この世界には存在しない。
 自分の世界の有りさまだったそれが、この世界には存在しない。
 魔法士の世界で起こっている争いの理由が、この世界には存在しない。
 羨望が無いと言えば嘘になる。
 けれど、自分の本来いるべき世界のようになって欲しいとは欠片も思わない。
 しかし、ふと思う。
 残っている二億人を、この世界に移すことができたら、どんなに楽だろう。
 そうすれば、マザーコアの是非という争いだって行う必要がなくなる。
 少なくともこの世界は、自分の世界の『かつての姿』に限りなく近い。
 生き残った人々で、再スタートを切ることは不可能でもないだろう。
 そこまで考えて、セラはぶんぶんと首を横に振った。
 いくらそんなことを考えようと、所詮は夢幻に過ぎない。
 この世界に自分が来れたのは、きっと偶然。
 行き来する方法が見つかっていない以上、いくら考えても無駄でしかない。
 ――では、今この世界にいる自分はどうなのか?
 不意に浮かんできた疑問に、セラは目を見開く。
 何の関係もない筈の人間。存在しない筈の人間。
 魔法士の世界を見つけるまでの間、この世界における自分は何だというのだろうか。

43LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:18:31 ID:hnehCqd6
「わたしは……」
 なんとなしに、そう呟いた時。
(高密度情報制御感知)
「え?」
 I-ブレインが、凄まじいまでの情報の歪みを感知。
 顔を上げ、ジュエルシードがついている木へと向けば、ちょうどその一帯が青白い光の柱を上げている。
 ……発動、したんですか?
 疑問もそこそこに立ち上がり、一旦この場から離れようと身を翻し、
「封時結界、展開!」
 振り向いた先には、異世界のフェレット。
 言葉とともに、フェレットを中心に空間が『変わって』いくのを、I-ブレインが余すことなく知覚する。
 本来なら自分も結界の外に追い出される筈なのだが、そこはユーノとなのはに必死で頼み込んでおいた。
「セラは、下がっててね!」
「は、はいです!」
 とはいえ、やはりできることは『遠くから見ること』だけ。
 ユーノの指示通り、この場から離れようとして、
「セラちゃん!」
「あ、なのはさん!」
 ユーノの後ろから、遅れてなのはが駆けつける。
 先程会った時とは全く違う出で立ちに内心で戸惑いつつ、セラもなのはのもとへと駆け寄る。
 左手に持っている杖がレイジングハートであり、現在着ている白服がバリアジャケットなのだろう。
「えと、大丈夫?」
 僅かに逡巡したなのはの問いに、怪我はないか、という意味がないことを正確に把握する。
「ちょっと驚きましたけど、平気です!」
 答えた直後に地面が揺れ、二人揃って直立のバランスを崩しかける。
 揺れが納まったかと思うと、今度は聞いたことのない咆哮が空気を震わせる。
 咆哮の主は、すぐに見つかった。
「あれが……」
「うん」
 呆然と『それ』を見るセラの呟きに、毅然とした表情でなのはが頷く。
 どこかの御伽噺の本にでも出てくるような、巨大化した木のお化け。
 そのお化けを中心に、I-ブレインがひっきりなしに異常な情報制御を感知し続けている。
 あれが、ジュエルシードの暴走体。
「ちゃんと隠れてますから、その……うまくは言えないですけど」
 何か言わなければと思い、なのはと向き合う。
「がんばってくださいね、なのはさん」
「……うん!」
 精一杯の笑顔で口に出てきたのは、月並みの励まし。
 それでも、お説教を受けていた時の沈みっぷりはどこへやら、なのはは微笑み、力強く頷いた。
 お説教が、功を奏したらしい。
「それじゃ、行ってくるね!」
 その言葉を最後に、なのはは暴走体へと向かっていく。

44LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:20:14 ID:hnehCqd6
 なのはに手を振ってから、セラは林の中へと走る。
 たどり着いてから振り向くと、なのはが暴走体と対峙している。
 セラは、遠くからそれを見ていることしかできない。
 ……わたしは……
 さっきベンチで一人きりになったのを見計らい、鞄の中に入れた十個のD3を鞄越しに見つめる。
 わかっている。全部わかっている。
 あの化け物を倒すことくらいなら自分だってできるが、ジュエルシードを封印しなければ意味がない。
 むしろ自分の力に反応して、暴走が更に拡大する危険だってある。
 今力を使えば、管理局に目をつけられて実験動物扱いされるかもしれない。
 そうでなくとも、立場的に不利になることは確実だ。
 ――自分が加勢する事に、何等意味は無い。
 そう、自分に言い聞かせて、
(情報制御感知。右方)
 直後、別方向から情報制御を感知する。
 情報制御の発生源へとセラが振り向いた直後、視界を金色の何かが高速で横切っていく。
 物体の正体は、先の尖った金の弾体。おそらく魔力弾。
 複数のそれらが暴走体へと殺到し、突如現れた半透明の半球に遮られる。
 暴走体は攻撃に反応し、魔力弾の射手へと向き直り、吼える。
 セラも振り向いてみると、二つの影。
 一つは、橙色の狼。使い魔だろう。
 そしてもう一つの影は、公園のオブジェの上に立つ、黒衣金髪の少女。
 なのはのバリアジャケットと相反するような、色も肌の露出度も違う服装。
 黒衣とコントラストを成す白い肌。遠目からでもわかる、意志の強そうな赤眼。
 あの少女が、敵対する魔導師――フェイト・テスタロッサ。
 凛としたその佇まいが、しかしセラにはあの『悪魔使い』の少女のように危なっかしく見えた。
 そこまで考えた時、I-ブレインが暴走体の質量の変化を感じ取る。
 暴走体へと向き直れば、木の根に当たる部分が地表に飛び出した瞬間だった。
「ユーノくん、逃げて!」
 なのはの指示通り、ユーノもこちらの方へと避難して来る。
 しかし当のなのはの方は、暴走体から背を向けようとしない。
『Frier Fin』
 レイジングハートの電子音声が聞こえたかと思うと、なのはの両足にピンク色の羽が出現する。
 直後になのはが跳躍し、たたき落とされる『根』をすんでのところで回避する。
「飛んで、レイジングハート! もっと高く!」
『All Right』

45LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:21:13 ID:hnehCqd6
 なのはの言葉にレイジングハートが答え、魔力で作られた羽が力強く羽ばたき、ぐんぐん高度を上げていく。
 と、今度はフェイトの方に情報制御を感知。
 振り向くと、少女のデバイスに著しい変化が起こっていた。
 それまで斧のような形状だったデバイスがいつの間にか鎌の形をとっている。
 形に合わせ、鎌の先端から金の刃が出力される。
「いくよ、レイジングハート!」
 なのはの声に顔を上げると、暴走体にデバイスの先端を向けるなのはの姿。
 レイジングハートも漆黒のデバイスと同様に、その形状を既に変化させている。
 その姿に見入る暇も無く、I-ブレインが新たな質量を探知する。
 振り向くと、フェイトのデバイスから伸びていた魔力製の刃が、くるくると回りながら暴走体へと向かっていくところだった。
 金の刃は、見た目通りの切れ味を持って『根』を次々と切り飛ばしていく。
 しかし、本体の方は先程の魔力弾と同様に障壁で防がれる。
 どうやら、暴走体の身を守る障壁を破らない限り、決定打は出せないようだ。
 目の前の戦況に、思わずセラは唇を噛む。
 一撃。
 自分がほんの一撃入れるだけで、あの障壁は簡単に破ることが出来る。
 それを、セラのI-ブレインが――質量知覚能力が告げている。
 いや、そもそも障壁さえ張らせずに倒すことが出来るかもしれない。
 その一撃すら、セラには許されない。
 今この状況で力を使ったら、真っ先になのは達に勘付かれてしまう。
 口止めするという手もあるが、それではなのは達の負担になるし、時空管理局に保護されれば二度と会えないかもしれない。
 管理局に余計な隠し事をするのは、自分一人だけで十分だ。
(情報制御感知。上方)
 I-ブレインのメッセージに顔を上げると、レイジングハートを四つの論理回路――否、魔法陣が取り巻いている。
「撃ち抜いて!」
 なのはの叫びに、レイジングハートの先端に魔力が集まっていくのを視認する。
 I-ブレインの質量知覚が、見た目よりも質量が小さいことを告げる。
 ユーノから聞いた、非殺傷設定を使っているのだろう。
「ディバイン!」
『Buster』
 掛け声と共に解き放った魔力が、暴走体へと直進していく。
 暴走体は先程と全く同じ障壁で防ぐが、今度は悲鳴をあげてのたうち始める。
 障壁越しにも影響を与えているのだろう。だが、あと一歩足りないようだ。

46LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:22:33 ID:hnehCqd6
 フェイトの方はどうしているかと振り向けば、足元と正面に魔法陣を展開している。
「貫け、豪雷!」
『Thunder Smasher』
 漆黒のデバイスを槍の如く突き出すと、こちらも指向性の高い金の魔力が放出された。
 二方向からの同時砲撃に、暴走体も二つ障壁を張って暫く持ち堪えたものの、最後は苦しげな叫び声をあげながら次第に発光していく。
 その光の中から、ジュエルシードが浮かび上がる。
 直後、
「ジュエルシード、シリアル7!」
「封印!」
 早い者勝ちと言わんばかりに、二人の魔導師は封印を仕掛け、その場が一瞬で光に包まれる。
 セラは思わず両腕を掲げ、目に入る光を遮る。
 閃光が収まると同時に腕を下ろし、I-ブレインの知覚に従ってなのはの方を見上げると、ちょうどフェイトがなのはと同じ高度まで浮かんでいる。
 この距離では流石に会話を聞き取れないものの、あまり良い雰囲気ではなさそうだ。
 おそらく、これから二人は戦闘を始める。
 セラは暗澹たる思いで、二人の対峙を見守り続ける。
 ……わたしは……
 自分が入る余地など、どこにもない。
 これから起こる戦いに、他者の入る余地はないのだ。
(情報制御感知)
「え?」
 意外な方向からの情報制御を探知し、視線を更に上向ける。
 二人の魔導師とほぼ同じ高さで静止したままの、ジュエルシード。
 それが、不可思議な振動を起こしている。
 生物の鼓動ようでいて、しかし本物とは違うと認識させるような、不気味な振動。
 さらに、その振動が大きくなるとともに、ジュエルシードからの情報制御もより大きくなっていく。
 ……もしかして、封印できてないんですか?
 嫌な考えが浮かび、血の気が引く。
 二者の同時封印が互いの効果を相殺したせいで、封印が完了していないのか。
 魔導師の魔法に反応するのであれば、再び発動する危険がある。
 二人の魔導師にいち早く伝えようとして視線を戻し、セラは目を見開く。
 既に二人は接近し、互いに得物を振り下ろさんとしている。
 声を上げても、もう間に合わない。
 それでも伝えなければと、思いっきり叫ぼうとして、

47LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:23:43 ID:hnehCqd6
(高密度情報制御・空間曲率の異常変化を感知)
 その二人の間に、水色に発光する球体が出現した。
「ストップだ――!」
 一瞬でその球体がなくなったところには、一人の人間。
 振り下ろされる二つのデバイスを、片や右手の杖で防ぎ、片や左手一本で掴む、黒衣の少年。
「え?」
 何が起こったのか、セラには一瞬分からなかった。
 光学迷彩も自己領域も無しに、突然人が現れたのだから。
 ……転移魔法、ですか?
 この世界で手に入れた知識が間違っていなければ、それしかない。
 朝の、フェイトによるものと思われる魔法行使もそうだが、あまりの情報制御にI-ブレインが一瞬悲鳴をあげている。
 これ以上大きく情報が歪んだら、I-ブレインそのものが煽りを受けて停止しかねない。
 まあ、もしも停止するのであれば、この世界に自分が転移した時点でI-ブレインが止まっていたのだろうが。
「ここでの戦闘行動は危険過ぎる!」
 驚愕に目を見開く二人の魔導師に、新たに出現した魔導師は交互に視線を向けつつ、名乗る。
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか!」
 その言葉に、セラは目を見開く。
「時空、管理局……」
「まさか、動いたのか?」
 セラに続き、いつの間にか近くの木の枝に登っていたユーノも呟く。
 管理局員が思っていたよりも若いことに、セラは目を瞬かせる。
 肌以外がほぼ全て黒でできた少年の姿が、どこか黒衣の騎士に近い雰囲気を感じさせる。
 セラは一瞬ジュエルシードに目を向けるが、相変わらず不気味な鼓動を続けたまま。
 今のところ、まだ暴走はしていない。
「まずは二人共、武器を引くんだ」
 三人の魔導師は一旦離れ、そのまま真下に降り、ゆっくりと着地する。
「このまま戦闘行動を続けるなら……」
 と、そこまで少年が言いかけたところで、
(情報制御感知)
 I-ブレインのシステムメッセージと同時に、セラは上空を見上げる。
 フェイトが放っていたものとは色違いの弾体が三つ、少年へと降り注いでくる。
 魔力に反応したのであろう、魔導師の少年はすぐさま左手を掲げ、魔法陣でできた円形の障壁を発生させて弾く。
「フェイト、撤退するよ! 離れて!」
 射手は、いつの間にか空に浮かんで再び魔力弾を放とうとしている使い魔の狼。
 呼ばれた少女は、躊躇するような顔で使い魔を見る。

48LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:25:01 ID:hnehCqd6
 だがその表情も一秒でなくなり、迷いを振り切ったかのように真上で浮かんだままの青い石へと飛んでいく。
 その直前から、使い魔は既に主の元いた場所へと魔力弾を放っている。
 取り残された二人の魔導師には当たらない、牽制攻撃。
 その魔力弾が地面に着弾すると同時に、爆発が巻き起こった。
「わっ!」
 爆発するとは思っていなかったセラは、目を白黒させる。
 自分とユーノが隠れている林まで、二人の魔導師が飛行魔法で後退するのを、セラのI-ブレインが淡々と知らせる。
 その間に、フェイトが宝石へと手を伸ばす。
 させじとばかりに、魔導師の少年が多数の魔力弾を放つ。
 なのは達の放ったものよりも、発動から射出までの時間が遥かに速い。
 ジュエルシードまであとほんの数十センチというところで魔力弾の弾幕に捕らわれ、一発がフェイトの左手を直撃する。
 小さく悲鳴を上げて、少女が落ちていく。
「フェイト――!」
「フェイトちゃん――!」
 使い魔となのはの悲鳴にあわせ、セラは一瞬息を呑む。
 このままでは、黒衣の少女が地面に叩きつけられるから……ではない。
 少女の落下地点に使い魔が滑り込み、そのまま背に乗せた時には、既に魔導師の少年が使い魔の手前にいる。
 使い魔が少年に気づいた時には遅く、少年は空中で右手の杖を使い魔に向けている。
 少年の杖先に青い魔力が凝り固まっていき……
「ダメ!」
 使い魔と少年の間になのはが割って入る。
 なのはの無茶ととれる行動に、セラは思わず声を上げそうになる。
 魔導師の少年もこれは予想外だったのか、驚いて動きを止める。
「止めて! 撃たないで――!」
 なのはの叫びにが耳に入ったのか、使い魔の背で気絶していた少女の瞼が僅かに開く。
「逃げるよ、フェイト! しっかり捕まって!」
 使い魔はそれを精神リンクで察知したのか、その場の全員が動きを止めている間に逃げ去っていく。
 直後になのはが振り向き、物憂げに顔を曇らせた。
 その間に、魔導師の少年は地面に着地する。
 表情に険がないところから、攻撃してくるわけではなさそうだ。
 ようやく戦闘が終わったらしい。
 セラは一つ息を吐き、木から下りてきたユーノと一緒に林を出る。
 魔法を使ったのか、ジュエルシードが少年の下へと降りてきている。
 幸い、暴走せずにすんだ様だ。

49LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:26:46 ID:hnehCqd6
「ユーノくん、セラちゃん」
 こちらに気付いたなのはは、先程の曇った表情を一変させ、笑顔を向けてくる。
 ユーノは定位置であるなのはの肩に乗り、セラはなのはの傍へ駆け寄る。
「怪我とかはしてないですか? なのはさん」
「うん、大丈夫」
 ちょうどジュエルシードを手にした少年は、怪訝な表情をセラに向ける。
「民間人?」
 表情はそのまま、少年はなのはに顔を向け、
「まさか、巻き込んだのか?」
「ええっと、それはまあ、いろいろと……」
 途端になのはがしどろもどろで答えた直後、
(情報制御感知)
 海側にミントグリーンの魔法陣が出現し、人の映像が映し出される。
『クロノ、お疲れ様』
 映像に映っている女性が、少年に労いの言葉をかける。
 少年の上司だろうか。
「すみません。片方は逃がしてしまいました」
 一歩前に出て、クロノと呼ばれた少年が報告する。
『ううん。ま、大丈夫よ』
 対してあっけらかんとした口調で、女性は答える。
『でね、ちょっとお話を聞きたいから、そっちの子達をアースラに案内してあげてくれるかしら?』
「了解です、すぐに戻ります」
 直後に魔法陣は縮小して消え、少年がこちらに振り向く。
 完全に取り残されたなのはとセラは、思わず顔を見合わせた。
 展開についていけないのは、恐らくなのはも同じだろう。
 セラだって、こんなに早く時空管理局と接触できるとは思わなかった。
「転移を行うから、そのままじっとして」
「「あ、はい」です!」
 少年の指示に、慌ててなのはと同時に返事をする。
 何を思ったのか、少年は一瞬きょとんとしていたが、すぐに元の無表情を取り戻す。
「じゃあ、始めるよ」
 少年が、何気なくそう言った直後、
(高密度情報制御・空間曲率の異常変化を感知)
「「わ――」」
 セラとなのは、二人の声が再び重なる。
 再び転移を受けることに、セラは反射的に身をすくませる。
 同時に、セラは覚悟を決めた。
 こんなところで、怯えている場合ではない。自分にとっては、これからが大変なのだ。

               *

 本来の役者達は、次々と出でる中。
 魔法士は、未だ表舞台には出でず。
 ――長い一日は、まだ終わらない。

50LB ◆ErlyzB/5oA:2009/02/09(月) 10:29:10 ID:hnehCqd6
投下終了。
ディーセラがそれぞれ微妙な立場にあることを理解し、
ユーノの立場に嫉妬し(ぇ
セラの葛藤に関してご感想をいただければそれで幸いです。
最新刊読んだ方々は突っ込みを入れるところがあるでしょうが、あれの技術は魔導師の方が遥かに上なので、まあ何とかなるかな……ということで一つ。
以上。



……はい、規制くらうのもそれを予想するのも余裕でした。
どなたか代理投下をお願い致しますorz

51黒の戦士:2009/03/05(木) 22:04:13 ID:Qhx2olcM
OCN規制食らったので代理投下願いますorz


投下予告します

タイトル:魔砲戦士ΖガンダムNANOHA
クロス元:テレビ版「機動戦士Ζガンダム」

注意事項
レジアスが原作以上に悪役やっています。レジアス好きはご注意を。
時折R-15レベルの描写が出ます。
余りにも長いので一話を前中後編の3パートに分けます。
今回は前編を投下します。

52魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:06:56 ID:Qhx2olcM
ニュータイプの力と魔法には、共通点がある。
両方とも、高まればその分科学との区別が曖昧になることだ。
―Q・V



テレビの向こうから来た男〜ヅダ黙示録〜

クラナガンでその事件は起きた。
昼下がりの市街地で、突如巨大な人型の機械が飛来。
街中に着地し、動きを止めた。
非番のため偶然現場に居合わせていたギンガ・ナカジマ(当時は陸士第108部隊所属。その後特進と同時に同隊を離れ、別の隊の隊長になっている)がその場で対応。
人型の機械はコックピットと思われる部位のハッチを開き、そこから乗員を取り出しそっと地面に降ろした。
驚くべきことに乗員は意識を失っており、この事実からこの機械が自力で動いていたことが後の調査で判明するも、原因自体は不明のまま調査は打ち切り。
保護された乗員はまだ少年であり、保護の際に居合わせた八神はやての証言から「カミーユ・ビダン」であることが判明するも、何故彼女が少年の名を知っているかに関しては未だ不明である。
なお、その時彼女は非常に動揺していたこともここに記しておく。
その後地上本部で行われた事情聴取の際に、カミーユ少年はあの機械の名前が「Ζ(ゼータ)ガンダム」であり、「モビルスーツ」と言う兵器の一種であることを教えてくれた。
また、事情聴取に当たったゲンヤ・ナカジマ三佐の人徳に触れたのか、終始協力的で素直だったとの証言が残っている。
ゲンヤ三佐の提案で行われた試験運転の際、Ζガンダムはその飛行性能と、並外れた機動性を発揮しており、武装を使わずともその力を誇示して見せる。
偶然とはいえ、あの「ガンダム」の名を関しているだけの事はあり、再開された事情聴取でそれを言われたカミーユ少年もどこか嬉しそうだった。
しかし、試験運転の際にΖガンダムの性能を目の当たりにし、意地でもこちら側に加えようとしたレジアス・ゲイズ中将の行動により、事態が一変。
恫喝まがいの方法で無理やりこちら側に加えようとする、中将の態度に反発したカミーユ少年は協力の是非の回答を保留。
その後は激しい罵り合いに発展し、結局カミーユ少年は本人の意思とこの一件を知った教会の干渉によりΖガンダムごと本局側に身柄を預けられることとなるが、それを聞いた本人は大変喜んでいたと言う。
だからあれほど物扱いは慎むようにと注意したのに……。
近年の中将の行動は血縁者である私の目にも余っており、早期の対策が必要と思われる。
ただ、ギンガ・ナカジマの証言に非常に気になる言葉があったので、この報告書の最後にそれを添えておく。
「ゲイズ中将のことに関して、『何か内側に仕舞い込んでいる様に感じた。それも凄く醜い何かを』と言っていました。中将の話にあそこまで拒絶反応を見せたのと、何か関係があるのかもしれません」
――――オーリス・ゲイズ

53魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:08:34 ID:Qhx2olcM
カミーユとレジアスの激しい罵倒合戦から約一ヶ月後、機動六課。
慣れない事務作業を終え、カミーユは一息ついていた。
立ち上げられたばかりの機動六課では、前線に出る者どころか、後方の事務員まで不足しており、前線メンバーが時折事務作業に狩り出されることもある。
特に軍組織に身を置いた経験があり、立場上いつも暇人なカミーユは、多忙なはやてたちの代わりにこなすことが多い。
もっとも、今回だけは自分から買って出たのだが。

「地上本部に持って行く分はこれで全部。後は……」

ミッドチルダに漂流してから約一ヶ月。
結局、「陸に回されるよりははるかにマシだから」と言う理由で臨時採用の特務局員、と言う形で本局側につき、起動六課設立と同時に配属されたカミーユは、これと言った事件に出くわすこともないまま暇な日々を過ごしていた。
無論、Ζガンダムごと。
この決定に反発する声は、驚くほど少なかった。
地上本部に懸念を抱いている者が海に多かったのと、何より「レジアス・ゲイズ相手に罵倒合戦をしてのけた」ことでカミーユ自身が一目置かれてしまったからである。

「あの戦い……、『グリプス戦役』がアニメになっている世界から来た、か……。なんだろう、ずっと前に一度なのはに会った気が……デジャブか?」

メタっぽい呟きを口から出しながらくつろぐカミーユ。
実はミッドチルダでは、何者かの経由で第97管理外世界から「機動戦士ガンダム」が伝わっていたのである。
無論、はやてがカミーユの名を知っていたのも、彼女が「機動戦士Ζガンダム」(こちらはミッドには伝わっていない)を見ていたから。
結局、気は乗らなかったが、渋々自分で持って行くことにした。



「タクシーが迎えに来るまで、後1分くらいか……」

時間を合わせ、隊舎の玄関で待つカミーユ。
同時に、タイミングよくライトニング分隊の訓練が終わったのか、エリオが戻ってきた。
そして、エリオが声をかける。

「カミーユさん、外出ですか?」
「エリオか。向こうの注文の品が出来たから、これから届けに行くところだよ」
「……同伴、しましょうか?」

エリオのその言葉の意味をすぐに理解するカミーユ。
苦笑するしかない。
歓迎会でレジアスとの罵倒合戦の一部始終を嬉々として説明した自分が地上本部へ行くといえば、心配の余りそう言いたくなると分かるから。

「神父憎ければ教会も憎い、と言うけど、レジアスとは違って俺はそこまで落ちぶれちゃいないさ」
「ゲイズ中将に出くわしても、ケンカはしないでくださいね。八神部隊長に迷惑がかかりますから」
「了解。……ちょうどタクシーが来たな。行って来ます」

54魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:10:43 ID:Qhx2olcM
地上本部。
カミーユは、もって来た書類を渡すべき人物を見つけ、その人目掛けて走り出す。
書類を渡すべき相手、それはオーリス・ゲイズであった。

「オーリスさん!」
「カミーユ君、一体どうしたの? 中将のこと、『見たくもない』って言っていたほど嫌っているのに」
「いえ、例のヤツを持って来たんです。それと、レジアスが嫌いな人は地上本部も嫌い、なんて公式は成り立ちませんよ、オーリス・ゲイズさん」

持ってきた封筒をオーリスに手渡すカミーユ。
その封筒に入っている書類、それは「あの時行われたΖガンダムの試験運転データ」である。

「いいの? わざわざ貴重なデータをこっちに渡すなんて」
「オーリスさんは、あの偏屈漢とは違って信頼できる人です。それに、あの時はフルパワーは出さなかったし、操縦も手を抜いていました。書類に書いてある数値もあの時測ったヤツより低くしてあります」
「なるほど……。道理でこちらの難癖に反発しなかったと思ったら。悪い子ね」

試験運転の際にカミーユは、わざと「低く評価されるため」に意図的に手を抜いたのである。
こちらの手の内を完全に明かすのは良くないと判断したからだ(それでも向こうが感心するほどのパワーを発揮してしまったが)。
実はちゃんとデータは採られたものの担当したラッドの独断で、データ自体はカミーユに譲渡され、六課の方に秘匿されたのである。
このデータがわざわざ地上本部へ提出されることになったのは、地上本部がデータの提出を108部隊に強要し、ラッドがバカ正直に「カミーユに渡した」と答えた結果。
1ヶ月も経ってから言い出したのは、ラッド曰く「こっちの偉いのが、中将の怪我でパニックになってたせいでど忘れしたせいかもしれない」とのこと。
直感でレジアスが黒幕と気付いたカミーユは、自らデータをまとめた書類を作成したのだ。
……改ざんしたデータと、レジアスへの嫌がらせの一言を書いた紙切れを向こうに送り付けたいがために。
罵倒合戦の結果、レジアスにかなり悪い印象を抱いてはいるが、彼とは対照的に冷静で空気を読めるオーリスには好意的なカミーユであった。

「それはどうも。後、お父さんへのプレゼントも同梱してありますから」
「……本当に悪い子ね。…………!!??」

呆れた直後、オーリスの視界に、緑のフィルターが付けられたかのような感覚が襲う。
だがそれは、オーリスだけでなく、周りにいた他の局員たち、更にカミーユにまで起きていた。
そして、彼らは見えてしまう。
カミーユのすぐ隣にいる、宙に浮いた不気味な女の姿に。

「貴方は……誰!?」
「私? 彼を、ベン・バーバリーを追ってここまで来ただけの女よ。でも、この子も意外と惹かれるものを持っているようね」

女は、隣にいるカミーユに興味を示したのか、彼の髪にそっと手を添える。

「! カミーユ君、その女……いいえ、その死神から離れるのよ!!」

オーリスの絶叫に我に帰ったカミーユは慌ててその場を飛び退く。
死神は少しだけ残念そうな顔をしながらも、言葉を紡ぐ。

「カミーユ……、素敵な名前ね。お前から感じるわ、死んだ人たちの思いを背負うことで強くなる力を。……その力、何処に行くのかしら?」

そう言い残し、死神が消えるのと同時に、その場にいた全員の視界が元に戻った。
呆然となる一同。
その場の空気を入れ替えるかのごとく、「グランガイツ・クルセイダーズ」と呼ばれる、ギンガ・ナカジマ率いる陸士新生64部隊が報告のためにやって来た。
それもわざわざ隊員総出で。
彼らを見て、瞬時にオーリスは思い出す、「ベン・バーバリー」と言う名前の男を知っていることを。
よりによって、ギンガの部隊の隊員であることを。

「バーバリー二尉、貴方に会いたがっていた人がついさっきまでここにいたわ」
「自分に? 一体誰ですか?」
「死神よ。とーっても綺麗な」

その言葉に、ベンは一気に青ざめる。
そして、腰を抜かして倒れた。
それを見ていたカミーユは、オーリスの耳元で囁く。

「あの死神と面識があったみたいですよ」
「リアクションを見る限り、そうみたいね……」

55魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:12:36 ID:Qhx2olcM
地上本部前。
書類を届け終え、帰りのタクシーを待つカミーユ。
とそこに、携帯電話が鳴る。
液晶を確認してから、カミーユは電話に出た。

「カミーユ・ビダン。どうした? エリオ。帰ってきたら部隊長室に? はやてがΖガンダムの事で話したいことがあるって? わかった」

電話を切り、タクシーを待ちながら考える。
タクシーが来たのはそれから数分後であった。


機動六課隊舎、部隊長室。
はやてとカミーユがいる。
疾風の口から告げられたことは、カミーユにとって驚くべきものであった。

「改造する!? Ζガンダムをデバイスに!?」
「そうや。Ζガンダムはこの世界で言えば質量兵器。今更やけど、このままやと、向こうがうるさいのよ」
「デバイスじゃなくても、エンジンや武器周りを魔力式に換装すれば済むと思うけどな」

もっともなことを言うカミーユ。
だが、はやては首を横に振る。

「カミーユ君にリンカーコアが無かったらそれでいこうと思ったんやけど……」
「……待ってくれよ、あの時の検査じゃ魔力資質は無いって、シャマルさんからお墨付きもらったぞ」
「あん時はな。でも私も妙に気になってたし、最近なのはちゃんが『魔力資質が無いんじゃなくて、目覚めていないだけかもしれない』って言い出したから、こっそりシャマルに調べてもらったんよ」

はやては、シャマルから提出された一枚の紙を、カミーユに手渡す。
その紙に書かれていたデータを見たカミーユは己の眼を疑った。
シャマルがこっそり行った検査は、数日に渡る物であり、日が経つにつれ検出された自分の魔力資質が高くなっていたのだ。

「1週間前はB−、今日に入ってからAAA+!? 異常だ! なのはでもランク一個上げるのにどれほど時間がかかったと……」

感情が高ぶるカミーユ。
しかし、はやてはあくまでも冷静に、落ち着いていた。

「その魔力、Ζガンダムの武器とエンジンを魔力式に変えただけじゃ活用できんし、それ以前にニュータイプの力だけで戦ったら、また押し潰されるかもしれんよ。サイズがサイズやから、改造はここやなくて本局の設備で行う。以上」
「発狂しないためにも魔法の力でもΖガンダムを動かせと言うのかよ。で、いつ行けばいいんだ?」
「……話はつけてあるから、明日になったらΖガンダムごと転送魔法で本局に送るよ」
「了解」

少し疲れを見せながら、了承するカミーユ。
軽く敬礼してから、彼は部隊長室を後にした。
それを見計らい、はやてはシャマルから提出された「もう一枚」に目を通す。
それは、何故か「高町なのは」についてのものであった。

「ひょっとしたらニュータイプ能力が、なのはちゃんの魔力と共鳴したせいかもな、カミーユ君のリンカーコアが覚醒したんは。なのはちゃんの方も……」

その呟きを聞いたのは、はやてのスカートの中に隠れて一部始終を聞いていたリインフォースIIだけであった。

56魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:14:44 ID:Qhx2olcM
夕方。
定時になり、カミーユは一足先に帰宅。
その身を預かっているのはあくまでも本局の方だが、何処に住まわせようか? で揉めてしまい、その場にいたはやての提案でナカジマ家に居候することになったのである。
ゲンヤとギンガは帰らない日が多く、スバルは六課の寮にいるため、必然的に家の守りを任される形になっていた。
そのため自炊する気になれず、食事はもっぱら外食や買ってきた物か、デリバリー任せ
今週は任務の都合上ゲンヤとギンガは帰らないため、一週間同じ店の違う種類のピザで済ませようかと思っていた矢先に携帯電話が鳴る。
液晶には、ゲンヤ・ナカジマの名が映し出されていた。

「もしもし」
「ゲンヤだ。カミーユ、今何処にいる?」
「家に着いたところですけど」

ゲンヤからの電話。
訝しく思うカミーユだが、それをおくびに出さずに応対する。

「ああ、ちょうどギンガと、アイツの部隊の連中と一緒に晩飯食いに行くことになってな。せっかくだからスバルとお前も誘うことにしたんだ。スバルにはもう連絡してある」
「いいんですか?」
「どうせ俺たちが帰ってこないと飯作らないんだろ? いつも出来合いばかりじゃ野菜不足になるぞ。家にタクシー呼ぶからそれに乗れ」

その一言を最後に、ゲンヤからの電話は切れる。
行動パターンがしっかり読まれていることに、少しげんなりするカミーユ。
それと同時に、今日になってようやく気付いた疑問を口にする。

「料理教室にでも行こうかな? そう言えば、試験運転の時、どうしてΖガンダムは前より楽に飛べた上に推進剤が殆ど減らなかったんだ? 本局に行った時にそれも調べてもらうか」

……君のニュータイプの力が、バイオセンサー経由で空気抵抗と燃費を抑えているからだよ、変形しなくても楽に飛べるのと推進剤が中々減らない点に関しては。


都内某所の居酒屋。
ナカジマ親子に新生64部隊、そしてカミーユで店は貸切同然の状態であった。
ギンガとバーバリー副長に、No.3のルイス以外は「バカ」だらけの新生64部隊はとにかくはしゃぐ。
みんないい気分で楽しんでいる時、突如として店の戸が激しく開けられる。
そこにいるのはどこか疲れた顔をした中年の男。

「赤い彗星……、赤い彗星! 俺は赤い彗星のシャアだ! ジオン復興のため、俺は立ち上がる! ジークジオン!! ジオン・ダイクン、ばんざーい!!」

中年はそう叫び、走り去っていく。
後に残された者の内、唖然としていたのはカミーユだけであり、他はみんなどこか達観していた。
ゲンヤはそっと口を開く。

「ガンダムシンドローム。数年前、こっちに『機動戦士ガンダム』が知られてから発見された新種の精神疾患だ。陸と海の確執を見て心が疲れた局員、特に陸所属で『ガンダム』に夢中になったヤツが陥りやすいとさ」
「……嫌な話ですね。今のを本物が見たらなんて言うか……」
「最近のレジアスを見てると、『むしろもっと増えてくれ』って思う俺がいる……。そのたびに自分が嫌になるんだ」

どこか寂しげな顔で酒を飲むゲンヤ。
ギンガやバーバリーたちもやるせない表情になる。
それを見て意を決したカミーユは、焼き鳥の串を手に持ち、ゲンヤの口に突っ込んだ。
驚いたギンガは慌ててカミーユを諌める。

「カミーユさん!」
「……忘れましょう。今の人の事は。今だけは全部忘れて、バカ騒ぎして」

それが合図であった。
お返しとばかりに、ゲンヤはカミーユにヘッドロックをかける。
それを見て騒ぎ出す新生64部隊の連中に、慌てて止めるナカジマ姉妹。
とりあえず、さっきの「ガンダムシンドロームの男」のことを忘れさせることに成功したカミーユではあった。

57魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:15:42 ID:Qhx2olcM
時空管理局本局。
六課で保管されていたΖガンダムごと転送させられたカミーユを、デバイスマイスターたちが総出で出迎えた。
しかも全員が異様に興奮しており、端から見ると不気味以外の言葉が当てられない。
カミーユは愚痴るように呟くが、それを聞いた局員の一人がそっと訳を説明する。

「大げさだな……」
「ガンダムを弄れますからね」
「けどこいつはみんなが知っているRX-78じゃ……」
「それでも、『ガンダム』が実在していたと言う証拠の一つです」

彼らは知らないが、「機動戦士ガンダム」には続編がある(カミーユはちゃんと知っている)。
こちらに来る前のカミーユの活躍を描いた「機動戦士Ζガンダム」、精神疾患が完治するまでに起きた第一次ネオ・ジオン抗争を描いた「機動戦士ガンダムΖΖ」、これから起きる未来の出来事と思われる「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」。
それ以降も第97管理外世界では「ガンダム」の名を冠した作品が多く創られた。
幾つもの歪みと確執、そして「御大」の情念を背負いながら。

「俺は『エンジンと武器を改造するだけでいいんじゃないか?』と言ったんだけど、聞き入れれてもらえなかった」
「ガンダムですからね。エンジンと武器換えた位じゃ向こうは黙りませんよ」
「デバイスに改造しても、レジアスの信者は言い続けると思う」

サラリと流し、カミーユは約一ヶ月前の出来事を思い出す。
忘れもしない、事情聴取が終わり、ゲンヤから「俺たちのところで働かないか?」と誘われた時のことを。

58魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:16:57 ID:Qhx2olcM
事情聴取に立ち会ってくれたギンガとはやても勧めてくれたので、「それもいいかも?」と思い始めていた。
どう答えようかと迷っている時に、いきなり部屋に入って来た威圧的な態度の男の姿が脳裏に鮮明に映し出される。
有無を言わさず、その男、レジアス・ゲイズはいきなり我々の側につけといってきたのだ。
その態度にムッと来たカミーユは、まだ「ゲンヤさんの下でなら働いてもいいかな?」と考えていたため、その時は「考えさせてください」と答えたのである。
が、直後にレジアスは声を荒げ、「質量兵器は禁止されているんだぞ!」と怒鳴ったため、短気なカミーユも一気に声を荒げた。

「うるさいな! それが次元漂流者に接する態度かよ! それでよくゲンヤさんの上司が出来るな!?」
「言わせて置けば……! 質量兵器に乗っていきなり市街地に着陸しておいて権利を主張するんじゃない!」
「こっちはその質量兵器に拉致されたせいで、ここに来てしまったんだぞ! それ以前に、文句をつけたきゃ、まずその性格を矯正しろよ!」

互いにヒートアップしており、もはや他の者の声が聞こえているかも怪しい。
掴み合いになりそうになった瞬間、ゲンヤが慌てて間に入る。

「落ち着いてください、中将! カミーユ、お前も熱くなるんじゃない!」
「上官に逆らう気か貴様!!」
「どいてください! この馬鹿の唾がかかりますよ!!」

流石に見かねたのか、ギンガとはやても二人を止めに入る。
カミーユの方は、ギンガにまで止められたせいか、ようやく大人しくなり始めた。
しかし、はやてが止めに入ったレジアスの方は……。

「犯罪者が正義であるワシに触るな!!」

そう言って、はやてを振り払い、はやては床に倒れた。
更に倒れたはやての顔を蹴ろうとした直後、レジアスは肩を掴まれ、引っ張られる。
肩を掴んだのはカミーユであった。

「お前、自分が何をしかけたのか分かっているのか!? それは『正義』がすることじゃないんだぞ!!」
「貴様、犯罪者を庇う気かー!」

59魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:19:22 ID:Qhx2olcM
レジアスはそう叫び、肩を掴むカミーユに手を振り解く。
そしてその勢いを利用してカミーユの顔を殴る。
それを見たゲンヤはついに怒号を上げた。

「自分が何をしたのか分かっているのですか、あなたは!!」
「犯罪者を庇う奴を殴って何が悪いと言う! あの犯罪者に師と仰がれる貴様は口出しするな!」

ゲンヤも遂にレジアスに意見する。
レジアスの答えは、怒号と鉄拳。
ゲンヤが殴られたのを見たカミーユは完全に、「キレ」た。
レジアスの股間に狙いを定め、一気に蹴り上げる。

「ぐご、が……!?」

悶絶するレジアスに容赦することなく、カミーユは叫ぶ。

「そっちが殴ったからだぞー!!」

渾身の力を込めて、レジアスの顔に強烈な回し蹴りを食らわせるカミーユ。
蹴られた勢いで、レジアスの顔面は見事に壁に叩きつけられる。
そのまま倒れこんだレジアスを、カミーユは踏みつけた。

「俺は『手』を上げてはいないからな!!」

更にもう一撃足で食らわせようとした直後、突然物凄い力で羽交い絞めにされる。
騎士甲冑をまとったはやてがカミーユを羽交い絞めにしているのだ。

「ええかげんにし! やり過ぎや! おちつくんや、ホラ、深呼吸」

はやてに言われ、深呼吸し始めるカミーユ。
気のせいか、少しづつ昂った感情が沈静化していく。
レジアスの方も、秘書であるオーリスに起こされる。
が、なおもカミーユの方を睨み、吠え立てた。

「貴様、よくもワシを蹴ったな!」
「俺だけじゃなくてゲンヤさんまで殴っておいてその言い草かよ! 正当防衛、って言葉を辞書で調べてから言え!!」

片や蹴られたダメージで動けず、片やはやてに羽交い絞めにされて動けない。
当然、また舌戦になる。
結局、この舌戦はレジアスがオーリスに引っ張られる形で退場させられるまで続いた。
この時の罵倒合戦(とケンカ)が原因で、レジアスとカミーユはお互いを徹底的に嫌い合うようになったのである。

60魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:20:32 ID:Qhx2olcM
「カミーユさん、どうしました!? 鬼みたいな顔で明後日の方を睨んで」
「……! ごめん、あのバカとの一件を思い出したら、勝手に怒りがこみ上げてきた……」

呼びかける局員の声で我に帰るカミーユ。
一方、局員の方はカミーユの言葉から、何を思い出したのかを瞬時に悟る。

「……アレですね。ゲイズ中将相手の罵倒合戦。それのせいで、向こうから移ってきた人たちの間じゃ、結構人気者ですよ、カミーユさんは」
「無理やりこっちに移された人たちの間で?」
「……向こうからこっちに移った人材全部が、強引に引き抜かれたわけじゃありませんよ。引き抜きを拒否するケースだって少なからずあります。中には引き抜かれて心底喜ぶ人までいますし」

局員の説明に、呆然となるカミーユ。
引き抜かれて喜ぶ?
目が点になった彼を見て、苦笑しながら職員は続ける。

「最初から引き抜かれるつもりで陸に入る人もいれば、志を持って陸に入ってゲイズ中将の偏屈さに失望して引き抜きに応じる人もいる、ってことですよ」
「後者に当てはまる人たちと一緒に食べるご飯は、とても美味しくなるだろうな」
「ハッキリと言いますね。と、私はこれで持ち場に戻りますね」

そう言って、局員はその場を去る。
カミーユも、Ζガンダムが運ばれていった、工房の方へと向かおうとしたが、直後に携帯電話が鳴る。
液晶を確認すると、「ミゼット・クローベル」と出ていた。

「カミーユ・ビダンです。どうしたんですか? ……そんな理由ですぐに来い? ミゼットさん、ちょっと待って……、切られた」


一時間後、ミゼットの執務室から解放されたカミーユは、ようやく工房にたどり着いた。
工房内では、マイスターたちが一心不乱かつ、異様なまでに手早くΖガンダムを分解し、部品を換えたり、組み込んだりしている。
幾らなんでも手際が良すぎる、と感じたカミーユの後に、いつの間にかミゼットが立っていた。
それに気付き、カミーユは思わず飛び退くが、ミゼットは笑う。

「手際が良すぎる、だろう? ここに流れ着いたガンダムは、Ζ嬢やが初めてだが、モビルスーツ自体はずっと前からこっちに来ていた。今Ζ嬢やをいじっている子達はそれに触れ、知る者達に教えを請うことで知識を得て、それを活かしている」

ミゼットの説明に驚愕するカミーユ。
更にミゼットは、何故今までそれが知られていなかったについても、話し始める。

「ミッドチルダで『機動戦士ガンダム』が知られる以前から、宇宙世紀世界からの漂流者は存在し、MSもまたその姿を現した。もし『MSがある世界』の実在が発覚すれば、MSを欲しがる連中は絶対に出てくる。レジー坊やと最高評議会はその筆頭かも知れない」

ミゼットは、レジアスだけでなく、最高評議会にもある種の不信を抱いているようだ。
カミーユは表情だけでそれを読み取る。

「MSとそれに関わる者達は、この世界における質量兵器禁止の理由も考慮し、『MSの兵器としての攻撃力と汎用性の高さ』という危険性を証明することでこちらの協力を得て、MS諸共自分たちの存在を隠した。後になって『機動戦士ガンダム』を見たときは驚いたよ」
「けれど、Ζガンダムが市街地に降り立った事で、モビルスーツが実在していることを、隠し通せなくなったと?」
「そう。ひょっとしたら、Ζ嬢やはそれが目的だったのかもしれない」
「Ζガンダムに意思がある。その意思がモビルスーツの実在を世論に教えた。怪談ですね。ところで、改造にはどれ位かかるんですか?」

カミーユの問いに、ミゼットは黙って指一本を立てる。
それを見て、カミーユは考える。
一日で終わるなら、「明日には終わる」と言うはずだから。
瞬時に気付く、「一日」では終わりそうに無いことに。

「1週間、ですか。何でそんなにかかるんですか?」
「……複雑すぎるのよ、Ζ嬢やの体は。複製自体は異常なまでに容易だが、変形の仕方と構造が複雑すぎる。更にコストパフォーマンスと整備性も最悪。加えて、あの子たちには他のデバイスの整備や製作の仕事もある。みんな本来の仕事の合間にΖ嬢やを改造しているのさ」

思わず納得するカミーユ。
構造と変形シークエンスが複雑すぎるのと、整備性の劣悪さは、そしてコストパフォーマンスの酷さは設計にかかわりメインパイロットも務めた彼が一番良く知っている。

「一週間という日数は、あの最悪極まるコストパフォーマンスと整備性の改善に必要な時間を入れた分。デバイスに改造するだけなら『2日』で済むわ。それと、その間こっちにいてもらうよ。あの子達は君の意見を欲しがっているからね」

61魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:22:22 ID:Qhx2olcM
ミゼットの説明を聞いていたカミーユは、ふとΖガンダムの方に目をやり、異変に気付く。
マイスターたちが作業を止めて一斉にコックピットに群がっていたのだ。
それを見たカミーユとミゼットは、何事かとΖガンダムに近づき、作業中のマイスターたちに話しかける。

「どうした?」
「幕僚長。いえ、さっきデバイス用データを入れたんですが、システム音声だけが書き換えられたんです」
「何だと!?」

驚いて顔を見合わせるカミーユとミゼット。
マイスターの一人が、何故かΖガンダムに入っていたシステム音声を再生する。
≪Set up≫ 二人にとって聞きなれた声が再生された。 

「なのはの声じゃないか……」
「……ひょっとしたら、これはあの子のじゃなくて、Ζ嬢やの声かもしれないよ」


それから時が過ぎ、Ζガンダムのデバイス化は順調に進んでいた。
時に、元々入っているデータやフレームの構造に関してカミーユからの助言を受けながらも、マイスターたちは作業を進める。
作業開始から三日目、デバイス化自体は終わり、コストパフォーマンスと整備性の改善作業に入った。
割り当てられた部屋で、『機動戦士ガンダム』関連の書籍を読んでいたカミーユは、何気なしにテレビのスイッチを入れる。
どうも臨時ニュースをやっているようだ。
カミーユは、映っていた物を見て愕然とする。
「MS-06 ZAKU II」、それがガジェットに攻撃している光景がテレビに映っていたのだ。
更にテロップを見て、目を見開く。

「『これは生中継です』だって!? ミゼットさんに知らせないと!」

慌てて携帯電話を操作し、カミーユはミゼットに電話する。
すぐにミゼットは出た。

「カミーユ・ビダンです! ミゼットさん! ニュースで他のモビルスーツがガジェットと戦っているのが中継されています!」
「さっき政府の方から聞いた!」
「何をやっているんだ! あいつらは!」
「Ζ嬢やのせいで『モビルスーツの実在』が証明され、隠れる理由が無くなった……。今までスカリエッティと水面下で火花を散らしていた彼らは、開き直ってここぞとばかりに大手を振ってきたようだね」

カミーユが電話でミゼットと話す最中も、ザクはガジェットを攻撃する。
電話に集中していたカミーユは気付かなかったが、ザク・マシンガンから飛び出る弾は鮮やかな色をしていた。
見る人によっては、実弾に「魔力素」がコーティングされた特殊弾であることに気付いたはずである。
元の数が少なかったせいか、ガジェットはすぐに全滅、何故かザクは喜び勇んで小躍りしだした。
中継が、ヘリから地上のスタッフに移る。
ザクの足元で危険を顧みず、陸士新生64部隊も一緒に小躍りしている光景が映し出された。
よく見ると、ザクの足元には、ガジェットの残骸が転がっており、総数は明らかにザクが破壊した数を上回っている。

『元ザクハンターとしてどうかと思うが、さすがに今回は感謝するぜ、そこのザク!』

新生64部隊のNo3、パパ・シドニー・ルイスがザクに礼を言う。
ザク(に乗っている奴)の方も嬉しいのか、口元を掻く様な動作をし、さらにマニュピレーターを頭部に置くなど、コミカルな動きを見せる。
『照れるなー』と言う意味のジェスチャーだろう。
更に、ギンガがザクに話しかけている。
やたら大人しく、そのまま新生64部隊に連れられ、ザクが去っていく。

「ザクがギンガの部隊に保護されました」
「こっちも確認した。あのザク坊やのせいで今から緊急会議だ。切るよ」

ミゼットの方から電話が切られる。
カミーユはザクが人間に連れられて歩く姿が中継されているのを見て、不覚にもテレビに映るザクの姿を可愛く感じていたが、同時に市街地の心配もする。

「アレが歩いても道路は大丈夫かな?」

……道路以外にも心配する点が色々あるでしょうが。

62魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編:2009/03/05(木) 22:23:11 ID:Qhx2olcM
作業開始から4日目の朝。
何故かクロノ・ハラオウン提督がいきなり現れた。
フェイトから借りたビデオで『機動戦士Ζガンダム』を見たことがあるクロノは、一目カミーユの姿を見ようとスケジュールの合間を「突いて」わざわざ来たのである。
ちなみに、カミーユはフェイトに見せてもらった写真でクロノを知ってはいた。
カミーユに当てられた部屋に、クロノは入り、とりあえず挨拶する。

「おはよう、カミーユ・ビダン君。よく眠れた……」
「も、もう朝なのか……? 出来ればノックはして欲しかったな」

クロノが目にしたのは、目が充血しながらも、プレイヤー内のDVDを交換しようとしていたカミーユであった。
手にしているDVDのパッケージイラスト見て、クロノは頭痛を覚える。

「一晩かけて『機動戦士ガンダム』を見たのか、君は?」
「いや、これから『めぐりあい・宇宙編』を見ようとしてたところさ」
「……身支度を整えて、朝食をとった後でもいいだろうに。DVDはリアルタイムと違って置いてきぼりにはしないぞ。今日の夜はちゃんと寝ろよ」

そう言い残し、クロノはそっと部屋を出る。
カミーユはプレイヤーとテレビのスイッチを切り、時間を確認。
後30分もすれば食堂は局員たちでごった返すだろう。
とりあえず、歯を磨きシャワーを浴び、着替える。
そこまでが終わったところで、さっき会いに来た男が、フェイトの義兄、クロノ・ハラオウンであることにやっと気付く。

「そういえば、フェイトに写真を見せてもらったな。アレがお兄さんか。……名乗りもしないでいなくなるなんて、少し失礼な人だな」

徹夜のせいで頭が回っていないらしく、普段のようにカッとなることが無かった。


作業終了当日。
工房についたカミーユは、そのまま安置されているΖガンダムに乗り込み、起動させる。
久しぶりにΖガンダムを動かすが、その動きは全く衰えていない。
気のせいだろうか、乗っている間は体が軽くなったような感じに包まれる。
そこに、ミゼットから通信が入った。

「クラナガン市内にガジェット群が出現。六課が迎撃に出た。あの子達以外でアレを圧倒できるのは君とΖ嬢やだけだ。頼めるかい?」
「了解。転送魔法の準備をお願いします!」

カミーユが了承すると同時に、転送魔法が作動。
そのままミッドチルダへと、カミーユを乗せたままΖガンダムは戻っていく。
転送される直前、カミーユは掛け声を出した。

「カミーユ・ビダン、Ζガンダム、行きます!」

63黒の戦士:2009/03/05(木) 22:24:14 ID:Qhx2olcM
前編はこれで投下終了。

中編は明日ごろに投下します。

64黒の戦士:2009/03/06(金) 19:54:49 ID:i/Shd8pM
投下します

今回は中編です

65黒の戦士:2009/03/06(金) 19:56:21 ID:i/Shd8pM
クラナガン上空。
転送されたΖガンダムはそのままウェイブライダーへ変形。
本局から送られたデータに記された、出現位置目掛けて一気に飛ぶ。
既に機動六課が迎撃している。
それを見たカミーユは、変形と同時に叫ぶ。

「Ζガンダム、セットアップ!」 ≪Set up≫

コックピット内のカミーユを光が包む。
カミーユのバリアジャケットは、心なしかクワトロ・バジーナのあの赤い服と、なのはのバリアジャケットの折衷のような衣装であった(さすがに腕の長袖付き&スカートなし)。
しかも二つの白いリボンが巻かれていた。
バリアジャケット装着が完了すると同時に、Ζガンダムが変形しながら輝き始める。
それはまるで、元の色のまま輝きだしたかの様に……。
変形と、稼動携帯への移行が終わったΖガンダムの姿は、まるで全身が元の色のままメッキを施されたかのようであった。
それを見ていたヴィータが呟く。

「本物がエクストラフィニッシュバージョンになった……」

そんなヴィータの呟きなど露知らず、Ζガンダムは魔力式ビームライフルをガジェットの一体に向け、引き金を引く。
カミーユの急速に肥大化する魔力により、更に強力になって放たれたビームは掠っただけでガジェットたちをなぎ払い、直撃した地点にいたガジェットを瞬時に蒸発させる。
直後に、まるでモビルスーツの核融合炉を破壊した時の如き大爆発が起き、巻き込む形で他のガジェットを破壊した。

「非殺傷設定でも、AMFをものともしない威力をもたらすのが俺の魔力か。これならバルカンで十分に対応できる!」

バルカンから、なのはのそれと全く同じ色の魔力弾が雨となって放たれる。
距離を置こうとしたガジェットが瞬く間に蜂の巣にされ、爆発。
それを見て判断した他のガジェットが、接近して足元からの攻撃を試みるが、瞬く間に全部踏み潰される。
別のガジェットは接近を諦め距離を置こうとして離れた瞬間に、バルカンで吹き飛ばされた。

「死角に回り込もうとせずに近づくから簡単に踏み潰される! オマケに人が動かしているわけではないから、退こうとしない。でもスカリエッティの機械なら引き際を判断出来てもいいだろうに! それが出来ないから追撃されるんだぞ!」

叫ぶカミーユ。
傍目にはΖガンダムは呆然と立っているように見える。
とそこに、エネルギー弾がΖガンダムの右足目掛けて飛んできた。
Ζガンダムはそれに気付き、紙一重で足を上げて回避。
直後に起きた激しい爆発でバランスを崩しそうになりながらも片足立ちを維持する。
その威力にカミーユは戦慄を覚え、直感でガジェットではない誰かが撃ったと悟った。

「Ζのビームライフルと同じ威力の砲撃!? ガジェット? 違う! 今のは人が撃った!!」

一方、エネルギー弾を撃った方はチャージしながら、「足を上げる」という方法で自分の一撃を回避したΖガンダムに驚愕する。

「アタシの一撃をあんな方法で避けるなんて……。RX-78の血が流れているから!?」
「今はファーストガンダムは関係ないだろう!」

Ζガンダム越しに、カミーユの声がディエチに放たれる。
それからすぐに、Ζガンダムが再びビームライフルの引き金を引く。
ディエチの方もタイミングよくチャージが完了しており、Ζガンダムより先に引き金を引いた。
イメーノスカノンとビームライフルの撃ち合い。
何の偶然か、カミーユは非殺傷設定でディエチ自身に、ディエチはビームライフルに照準を合わせていた。
二つの軌跡はそのまま衝突、激しいプラズマの四散という形で相殺される。

「相殺!?」
「ディエチ!」

驚くディエチの耳に、ウェンディの声が聞こえた直後、彼女の体はイノーメスカノンごと宙に浮く。
ディエチが視線を移すと、自分の手を掴み、必死でライディングボートを乗りこなすウェンディの姿が見えた。

66黒の戦士:2009/03/06(金) 19:57:46 ID:i/Shd8pM
「さ、さすがにイノーメスカノンは重いっス!」
「少しだけ我慢して。もう一発撃つから!」

ディエチは叫ぶと同時に、三発目を撃つ。
Ζガンダムはまた避けようとしたが、回避行動に出る前に、別の誰かが発動させた防御魔法にぶつかったエネルギー弾はそのまま霧散した。
Ζガンダムのコックピットの前に立ち塞がるように、なのはが宙に浮いている。
今の結界はなのはが発動させたものであった。

「今のはなのはが!?」
「にゃはは……余計だった?」
「まさか。おかげで向こうに隙ができた!」

カミーユは答えるのと同時にグレネードランチャーを発射。
ウェンディは発射されたグレネードの機動から、当てずっぽうで撃ったと思い込む。

「ガンダムでも戦闘機人を狙うには腕と集中力がいるっス! そんな撃ち方じゃ落せないっス!」
「生身の人間に当てるつもりはないさ!」

カミーユの狙いは、グレネードランチャーの直撃ではなく、爆風によってライディングボートのバランスを崩すこと。
一緒に乗っているならともかく、ウェンディが片手でイノーメスカノンごとディエチを吊り上げている状態では、近くで爆風がおきただけでも失速に繋がる。
ましてや、飛んできた破片でバランスを崩すこともあるのだ。
当然、廃ビルの壁スレスレで飛んでいたウェンディは、そのビルに命中、爆発したグレネードが起こした爆風と、飛んでくる破片をまともに受けてバランスを崩す。

「これが狙いだったか、あのガンダム!!」
「謀ったなー! っス!!」

物の見事にライディングボートは着地に失敗。
ディエチとウェンディは得物諸共転がりまわる。

「ぺっぺっ! よくも……」
「勝負はまだ……」

戦う意志を捨てていないディエチとウェンディは尚も得物をΖガンダムに向けるが……。
直後に、スバルが背後からディエチの首根っこを掴み、ティアナがクロスミラージュをウェンディのうなじに突きつけた。
それを見ていたカミーユは、Ζガンダム越しに二人に声をかける。
何故かΖガンダムはサムズアップした。

「ナイス不意打ちだ」

カミーユの言葉に、顔を向けることなく、スバルとティアナは空いている手をΖガンダムに向け、Vサインをした。
それからすぐに、ディエチとウェンディはバインドで拘束される。
こうして、ストレージ(?)デバイス、Ζガンダムの初陣は終わった。

67魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編:2009/03/06(金) 19:59:05 ID:i/Shd8pM
その頃、地上本部にあるレジアスの執務室。
画面にはΖガンダムの戦闘映像が移っていた。
それを見て、レジアスはあっと言う間に表情を強張らせる。

「この映像は何だ? 何故あの質量兵器がガジェットを攻撃している!?」
「先程までの、時空管理局本局古代遺物管理部、機動六課の戦闘映像です。MSの隣にいる女性は、空戦Sの所属魔導師です。MSに関しては、恐らく本局側によって既に動力と武装を魔力式に改造されているかと。搭乗者に関しては、本人が自発的に協力しているとのことです」

淡々と解説するオーリス。
更に一言付け加える。

「ちなみに、4日前に市内に突如迷い込んだザクの搭乗者、『ワイズマン』はある部隊との接触が目的でしたが、その部隊とは他ならぬ機動六課のことです。また、既に接触を果たしており、身柄は向こう側預かりとなっています」
「いつの間に……。それに、地上部隊にSランクの空戦魔導師なぞいたのか?」
「彼女は教導隊所属で、書類上は出向の身ですから。ちなみに名前は高町なのは。もっとも、それ以前に、中将に言えば話がこじれるだけであることを向こうは察知しているものかと」
「第97管理外世界出身の、ガジェットモドキの元半死人か。……機動六課の後見人と部隊長は?」

レジアスのこの一言に、オーリスは仏頂面で端末を操作。
三人の姿が映し出される。
レジアスは服装から、本局と教会の者であることを察した。

「リンディ・ハラオウン総務統括官とその御子息、クロノ・ハラオウン提督、そして聖王教会の教会騎士団所属騎士であるカリム・グラシア女史の計三名です」
「英雄気取りの青二才どもが。特にこの2匹、闇の書の暴走で逃げ遅れて、グレアムに自分の艦ごと消し飛ばされた大間抜けのクライド・ハラオウンの身内ではないか!」
「……何年か前にそのような暴言をクローベル幕僚長の前で言って、大将への昇格が見送られたことをお忘れですか? なお、部隊長は八神はやて二等陸佐。魔導師ランクは総合SS。同隊にはフェイト・T・ハラオウン執務官も所属しています」

オーリスは、若干棘のある言葉で戒めながら続ける
その一言に、レジアスは一気に声を荒げた。

「八神はやてだと!? グレアム共々『闇の書事件』の首謀者ではないか!! それにフェイト・テスタロッサはP・T事件の容疑者の一人だぞ!」
「……グレアム提督はその件で自主退役しており、彼女の方は既に執行猶予を満了しています。それ以前に事件自体、彼女まで首謀者と見なすのはどうか?、という意見も未だにあります。ハラオウン執務官の方は、当の昔に無罪が確定しておりますが」
「犯した罪は消えん! 二匹とも闇の書諸共消滅すればよかったものを! プレシア・テスタロッサの走狗だった出来損ないのクローンの時といい、今回といい、本局と『海』は正義を何だと思っているのだ! あのような犯罪者に隊を任せるとは……」

はやてだけでなく、フェイトのことも罵り始めるレジアス。
「正義」に相応しくない悪辣な口ぶりと表情に、オーリスは表情を変えないまま露骨に嫌悪感を抱いた。
流石に頭に来たのか、それと無く毒が込められた一言で、レジアスに釘を刺す。

「今の椅子と命が惜しかったら公共でそのような発言はしないようにお願いします。中将はここ数年、地上部隊用のAMF対策予算を全て棄却しています。危機意識があるのならまずそれを通してください。無策だから向こうが代わりに行動したと考えるべきです」
「ぬぐ……。オーリス、近く査察しろ。徹底的に粗を探せ。もし見つかったらあの二匹を査問だ」

釘を刺されても尚懲りないレジアス。
「手土産持ってはやてちゃん側に寝返りたくなりそう」と、考えながら、とりあえず従うオーリス。
無論、言葉の毒を残すことも忘れない。

「了解しました。その代わり、AMF対策の予算は通してください。いつまでも地上部隊でガジェットに強いのが『リジーナ』の魔力式改良型を使う陸士新生64部隊だけでは、余りにも格好がつきません」
「ぐぅ……。分かっておる……」

その光景を、死神が嫌悪の感情を露にしながら見ていた。

「醜い……。自分以外の英雄を認めようとしなかった為に、英雄になり損ねた無様な男。その腐った魂、私の方から願い下げ……。オーリスは……良かった、はやての側に乗り換えるかで迷っている。早く寝返ろ、お前の人として堅実な理性も、私の欲する魂♪」

さっきとはうって変わって満面の笑みでオーリスを見つめる死神。
一週間以上前に感じた視(死)線を背後にまた感じたオーリスは振り向くが、既に死神は姿を消していた。

(さっきまで、あの死神がいた……。お父さん……、だけじゃない、私のこと『も』値踏みしていたと言うの……?)

68魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編:2009/03/06(金) 20:01:46 ID:i/Shd8pM
一方、ジェイル・スカリエッティのラボ。
潜伏中のナンバー2の報告から、ガジェットを指揮していたディエチとウェンディが捕縛されたことを知り、ジェイル・スカリエッティは荒れていた。
それを、オールバックの女性と、リーゼントの男性が呆れた顔で見ている。

「大将、落ち着けよ。二人捕まっただけだろ」
「二人『も!!』だ! 私の娘が二人も! 捕まったんだぞ!」
「すぐに救出、は勘弁してくれよ。捕まえたのは機動六課だ、地上部隊とは違って傷物にはしないさ」

男の言葉に、女は無言でうなずく。
一方のスカリエッティは、途端に弱気になる。

「ちょっと待ってよ、アリシア君にジェリド君! 貴重な戦力なんだよ!? 君たちの仲間でもあるんだよ!?」
「だから落ち着け。いくらAMFがあっても、カミーユと、あんたが向こうに行った際に余計な手を加えたΖガンダム相手じゃ分が悪いぞ」
「むぅ……」

スカリエッティを黙らせるジェリド・メサ。
一方、それを見ていたアフランシ・アリシア・レビルはそっと口を開く。

「最高評議会とレジアスはあくまでも広告代理店兼スポンサー、それも最低最悪のな。当てにはできぬ。だがこちらは時間がいくらでもある。愛娘たちの口の堅さを信じ、ゆっくりと救出のための策を練るべきぞ」

何処となく偉そうな口ぶりで話すアリシア。
その姿は、かつて闇の書の闇に囚われた時のフェイトを激励したあの時とは完全に違っていた。
ティターンズという道具でアースノイドもスペースノイドも減らそうとした漢、ジャミトフ・ハイマンを髣髴とさせる。

「忘れるな、我々の最終目標は第97両管理外世界と宇宙世紀世界という二つの地球を、『モビルスーツが人間を支配する星』にすることだ。それが『ディム・ティターンズ』の理想であることも、な」

その言葉にそっと頷くスカリエッティ。
しかし内心では、どうやってディエチとウェンディを救出しようかとさり気なく考える。
そこに、外部からの通信が入った。
端末をチェックし、最高評議会からのものと確認する
ジェリドは顔をしかめながら通信に出た。

「スカリエッティ・ラボ」

画像が映し出されると同時に、ジェリドは一応ハキハキとした声を出す。
そこに映っているのは、容器に入れられた3つの脳髄。
ジェリドとアリシアは何度も見たが、決して慣れない、それ以前にその言動と思想に対する嫌悪が脳髄への視覚的嫌悪感を極限まで増幅していた。
そして開口(?)一番に、その脳髄たち、最高評議会は件の戦闘の一件を口にする。

「人形の内、2体が『機動六課』如きに鹵獲されたそうだな。単刀直入に言う。その2体を処理せよ。奴らの口から我々の繋がりが露見する恐れがある」
「何を言うんですか! あの子達はそんな事はしない! 父たる私を裏切るような真似をする可能性があるとでも?」
「裏切らない可能性も『ない』。呪うなら『紛い物』を人間らしくし過ぎた己の才を呪え。これは命令だ」

69魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編:2009/03/06(金) 20:02:29 ID:i/Shd8pM
最高評議会はそれだけを言って、一方的に通信を切る。
相変わらずの言い草に、スカリエッティだけでなく、ジェリドとアリシアも怒りを覚えた。
特にスカリエッティの方は、手を握る力が強すぎる余り、爪が掌に食い込み始める。
とそこに、今度はレジアスからの通信が来た。
相変わらず、やたら威圧的で尊大すぎる態度が前面に出ている。
怒りを何とか抑え、スカリエッティは応対した。

「今日はどのようなご用件でしょうか?」
「ふん……。決まっておろう。機動六課とやらに鹵獲された戦闘機人に関してだ。六課ごとでも構わん、2匹とも始末しろ」
「あの子達が、自白するとお思いなのですか?」

予測通り、レジアスもディエチとウェンディの処分を要求してきた。
怒りのボルテージが一気に跳ね上がる。
スカリエッティたちの怒りの上昇など露知らず、レジアスは当然のように続けた。

「違法研究の産物の分際で、妙に人間臭いからな。向こうに懐柔されて、いつ我々のことを洩らすかわからん」
「随分な言い草じゃないですか……。その違法研究の産物を戦力にしたがっている方のお言葉ではありませんね。そんなに疑わしいなら、査察の名目で御息女に様子を見てもらえばいいじゃないですか」
「いいアイディアだな。ちょうど査察させるつもりだったのだ。まあ、あの2匹の命運は、オーリス次第だな。では、そろそろ会議なのでな。これで失礼させてもらおう」

レジアスからの通信が切れる。
その直後、スカリエッティの顔が瞬時に憤怒の形相になったことを、ジェリドとアリシアは見逃さなかった。
すかさず、二人はスカリエッティの背中をそっと押す。

「大将、そろそろ潮時じゃないのか? 向こうの言いなりになるのも……。自分の子供と、わが子を物扱いするスポンサー、どっちをとる気だ?」
「元々奴等の手助け無しでも十分な資金と資材は確保できるだけの力を持っているだろう。今が奴らに思い知らせる時と思うぞ」

その言葉に、スカリエッティの何かが切れた。
ジェリドとアリシアの言うとおりだと気付いたのである。
憤怒の形相のまま、スカリエッティは吼える。

「そうだよ……。お金と物資は既に十分過ぎるほどあるんだ! そうと決まれば、行動あるのみだ! 思い知らせてやるぞ、最高評議会とレジアス・ゲイズ。誰のために指名手配されてあげたと思ってやがんだ!! 後は戦力の更なる充実化だけだ!」

その言葉に、ジェリドとアリシアは笑顔でハイタッチする。
「これで二つの地球は支配したも同然」とばかりの笑顔で。
と、ジェリドは何故か今まで押し込んでいた疑問を、口にしてしまう。

「ところで大将、ディム・ティターンズの『ディム』って何だ?」
「DIMENSIONの最初の三文字をとってDIM(でぃむ)」

70魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編:2009/03/06(金) 20:03:40 ID:i/Shd8pM
機動六課、取調室。
スバルとティアナが、ディエチとウェンディを取り調べていたが、二人とも一向に口を割る様子は無かった。
名前を聞いた際に、「ディエチ」、「ウェンディっス。一応ディエチの妹っス」と答えたくらい。
その口の堅さに、スバルとティアナが根を上げかけた頃、様子を見に来たカミーユが入ってきた。

「思っていた以上に、口が堅いようだな」

スバルは、カミーユの方を見ながらこう洩らす。

「茶髪の子がディエチ、赤毛の子の方がすぐ下の妹でウェンディ、という名前なのが分かったぐらいです。読心術か何かで心の中を読めたら楽勝なんですけど……。」
「……ニュータイプでも、そうホイホイと心の中は覗けないし、覗く気にもなれないよ」
「やっぱり……」

ガックリとうな垂れるスバル。
ティアナも頭を抱え始める。
カミーユの方は、少し申し訳無さそうな顔でスバルを見ていた。
この光景を見たディエチたちは、「隙だらけ」と判断する。
実際、3人とも隙だらけ。
ディエチがカミーユたち目掛けて机を蹴り飛ばす。

「二人とも避けろ!」

瞬時にそれを察知して飛び退いたカミーユが叫び、遅れてスバルとティアナが飛んでくる机を避ける
机は紙一重で外れ壁に激突、それを見計らいウェンディがカミーユに肉薄した。
肉弾戦でかなりの強さを見せたスバルとティアナとは違い、カミーユの身体能力はそれほどでもないと判断した結果。
カミーユを人質にして、ここから逃げ出して仲間の所へ戻るつもりなのだろう。
ウェンディ、残念だがカミーユはホモ・アビスと空手のおかげで、体力と腕っ節はかなり付いている方だぞ。
当然、羽交い絞めにしようとして避けられ、逆に右腕と首を掴まれ壁に叩きつけられる。

「今抵抗しても、無意味だってことぐらい、分かれよ! ここが機動六課じゃなかったら、連帯責任云々で姉まで痛い思いをしていたかも知れないんだぞ!」

悲痛な顔で叫ぶカミーユ。
その表情と気迫に、ウェンディはおろかディエチも戦慄する。
カミーユの方は、不意のあの時のことを思い出す。
あの子の声が頭の中に響く、「見つけた、お兄ちゃん!」――――――

「もうお兄ちゃんはお前を殺したくないんだ!」

いきなり訳の分からないことを口にし、錯乱状態になるカミーユ。
危険と判断したティアナが、慌ててカミーユを拘束する。

「わああああああああああああ!!」
「カミーユさん落ち着いて! お願いですから!」

カミーユの悲鳴を聞きつけ、慌てて入ってきたヴィータが、カミーユをそのまま外へと引きずり出す。
ディエチとウェンディは、驚きの余り、動くことが出来なかった。

71魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編:2009/03/06(金) 20:06:07 ID:i/Shd8pM
医務室。
ベッドに横たえられているカミーユは、アイマスクをつけられていた。
シャマルは、ヴィータにカミーユの状態を説明する。

「多分、『ロザミィ』ちゃんのことを思い出しちゃったのよ。彼女とウェンディちゃんが重なって、取り乱したようね」
「『妹』以外の共通点が無いのにか!?」
「……それだけ引き摺っているのよ、カミーユ君は。一度自分のニュータイプ能力に押し潰されて、それから立ち直った後も」

ため息をつくシャマルとヴィータ。
そんな二人をよそに、半強制的に鎮静化され、眠りについていたカミーユはうなされていた。
そこに、なのはが入ってくる。

「カミーユ君、大丈夫なの?」
「……取り乱しただけで、起きた時には元に戻っているわ。流石にアレくらいで押し潰されるカミーユ君じゃないわよ」

シャマルの一言に安心するなのは。
ヴィータも安心はしたが、不安は拭いきれなかった。
カミーユがいつ、また、可笑しくなるのかが気がかりで。

「最高のニュータイプ、ってのも、考え物だな……」
「キツイこと言うな。ニュータイプなのは今更否定はしないけど」

いつの間にか目が覚めていたのか、ヴィータの呟きにカミーユはアイマスクをつけたまま返す。
起き上がり、アイマスクを取ったカミーユは、軽く驚く3人の表情を見て思わず微笑む。
シャマルとなのはは呆然とするが、ヴィータは頬を膨らます。
なのはは、ここに来た理由を思い出し、カミーユに告げた。

「そうそう、はやて隊長からの伝言だよ。明日から2日間休むこと、だって」
「……なんで?」
「……今日のアレが原因だと思う。いきなりパニックを起こしたって聞いて、はやてちゃん心配してたよ」

そう言われ、黙り込むカミーユ。
確かに心配はするだろう。
だからって、いきなり休ませるものか? とカミーユは考える
それに感づいたのか、なのはが付け加えた。

「スバルたちも、ちょうど明日から二日間休みになるの。それに合わせたみたい」
「……俺は見張り役かよ」
「見張り役はスバルたちの方だと思うの……」
「ガキ扱いするのかよ」

カミーユのぼやきに苦笑するなのは。
シャマルとヴィータもつられて笑い出す。
カミーユだけが不貞腐れていた。
だからガキ扱いされるのさ。

72魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編:2009/03/06(金) 20:07:33 ID:i/Shd8pM
次の日、クラナガン中央公園。
かなりの面積を誇るその公園は、まばらではあるが人が多かった。
スバル、ティアナ、エリオ、キャロらと共にそこに来ていたカミーユは、芝生に座りくつろいでいる。
今ここだけは平和だな、と感じながら。

「俺たちがこうやって和んでいる時でも、どこかでスカリエッティはロクでも無いことを企んでいるんだよな……」
「きゅくるー」

しみじみと呟くカミーユ。
しかしスバルたちは春の陽気に誘われ眠りこけており、聞いていたのはフリードリヒだけであった。
それから10分後、彼女はようやく目覚める。
とりあえず、カミーユたちは集合時間と場所を決め、思い思いに公園を散策することにした。

エリオとキャロは、森の中を進んで行く中である音に、何かを引きずる音に気付く。
木々に遮られているために見えないが、近くから聞こえる。

「すぐ、近くだね……」
「うん……」

木々を掻き分け、音が聞こえる方に急ぐエリオとキャロ。
二人は見つけた。
何かが入ったケースをを手に持ち、それを引きずって歩いていた二人の少女を。
エリオは慌てて、携帯電話でカミーユに連絡する。

その頃、敷地内のかなり大きい池の近くで涼んでいたカミーユは、エリオからの着信に出る。
エリオからの連絡に、カミーユは血相を変えた。

「持っていたケースの中にレリックが入ってた!? 場所は……」

カミーユが場所を聞こうとした直後に、轟音が響く。
空を見上げると、ガジェットに混じってモビルスーツが飛来したところであった。
そのまま一気に着陸するモビルスーツ。
カミーユはその機体が、「ティターンズ」が使っていたものであることに気付く。

「バーザム? 誰が乗っているんだ!? エリオ、ガジェットと一緒に、モビルスーツが来た! キャロと一緒にその子たちを連れて避難するんだ!」

通話を切り、携帯電話をなおすカミーユ。
不意に、バーザムと目が合ったかのような感覚が襲う。
あのバーザムは俺を狙っている、そう確信できる。
バーザムがビームライフルを構える直前に、唐突に池の水面から何かが飛び出す。
その何かは、バーザムをその腕で突き飛ばした。
それも、ビルスーツ。

「ズゴック、セットアップ」
≪Set Up!≫

操縦者の声が出た直後にシステム音声が響き、モビルスーツ、「ズゴック」の目と額に当たる部分に「仮面と角飾り」が付く。
機体色と相まって、「赤い彗星」を髣髴とさせるオプション(?)に、カミーユは何故か感心した。

「凄いセンスだ」

モビルスーツが地面を踏む衝撃により、一帯が軽く揺れた。
だが、市民たちはモビルスーツ同士の対峙に興奮している。
一ヶ月以上も前に突如として飛来したΖガンダム、数日前にガジェット相手に大立ち回りを演じたザク。
そして今度はモビルスーツ同士の対峙である。
逃げるのを忘れてひたすら見入っていた。
無論、カミーユは冷静である。

「何で逃げないんだよ。流れ弾の衝撃だけでも人は死ねるんだぞ!」

73魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編:2009/03/06(金) 20:08:46 ID:i/Shd8pM
ビームライフルを使われる前に、赤いズゴックは一気にバーザムに肉薄する。
が、バーザムは人間じみた動きでズゴックを殴り飛ばした。
バーザムのパイロットは思わず舌打ちする。

「ビームライフルを使わせたくないようだな」
「戦闘機人は無益な殺戮が好みのようだな」
「ふん……、そこまで言うなら、貴様はビームライフル抜きで相手をしてやる!」

バーザムは手に持ったビームサーベルを起動、ズゴック目掛けて振り下ろすが、紙一重でズゴックはかわす。
ズゴックのパイロットは、不敵に笑いながら、挑発する。

「見せてもらおうか、ジェイル・スカリエッティの手でパワーアップした、ガンダムMk-IIの量産型の性能を!」
「見せてやろうじゃないか! 『赤い彗星のシャア』!!」

モビルスーツ同士の激しい格闘戦は、普通に歩く以上に激しい揺れを生む。
もはや局地的な地震である。
その激しさ故、同行してきたガジェットたちも揺れに耐えながら静観するしかない。
気のせいだろうか、それともズゴックの爪がヒートクローにでも改造されているのだろうか、ズゴックの爪とバーザムのビームサーベルが鍔迫り合いをしている。
埒が明かない、そうカミーユが考えた直後に、轟音と共に大きな影が飛来。
それは、ウェイブライダーであった。

「……あの時と同じだ。勝手に動いている!」

ウェイブライダーは変形してΖガンダムになり、直後にカミーユの眼前に着地。
コックピットハッチを開け、その手をカミーユに差し出した。
「乗って」という合図と悟り、カミーユは困惑しながらも乗り込む。

「まるで俺の危機に駆けつけたみたいに……。こうなったらなる様になれだ! Ζガンダム、セットアップ!」 ≪Set up≫

「デバイスとしての」稼働モードに入ったΖガンダムを見て、硬直していたガジェットたちは行動を再開。
Ζガンダム目掛けてレーザーを放つも、シールドから発生する防御魔法でことごとく無効化される。
「右」腕に装着したシールドを構えたまま、Ζガンダムは脚部の魔力式ハイブリットエンジンで飛翔、距離を詰めて着地も兼ねて、ガジェットの内の数体を踏み潰す。
そして、空中にいるガジェットに対して、「左」手に持ったビームライフルを構え、発射。
ガジェットたちは瞬く間に撃ち落された。

「こっちより遥かに高い位置にいれば、気兼ねなく撃てる!」

Ζガンダムの姿を確認したバーザムは、ズゴックと距離をとり、ガジェットを盾にしてかく乱。
標的をΖガンダムの方へ変え、急接近する。
ビームサーベルの斬撃を、シールドで防ぎきるΖガンダム。
不意に、バーザムのパイロットからの怒号がコックピットに聞こえてくる。

「さすがだな、ガンダム。妹たちを囚われた悔しみ、その命で晴らさせて貰うぞ!」

パイロットがそう言うのと同時に、バーザムはゼロ距離でビームライフルを発射。
衝撃で後退させはしたが、それでも防ぎ切られてしまう。
それと同時にΖガンダムはバルカンで牽制……するはずが、カミーユの膨れ上がる魔力のせいで強力化していたため、バーザムの装甲に十分な打撃を与えることに成功する。

74魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編:2009/03/06(金) 20:09:23 ID:i/Shd8pM
「馬鹿な? ガンダムMk-IIの直系のバーザムが!?」
「ガンダムMk-IIの量産機とは思えない見た目をしているから!」

止めとばかりに、Ζガンダムの鉄拳がバーザムの頭部を直撃する。
その衝撃で、バーザムはいとも簡単に倒れた。
一方、バーザムのコックピットにいる戦闘機人、トーレは舌打ちする。

「単なるメッキバージョン化ではないか……。しかし、貴様のような節操無しに捕まる気は毛頭無い。勝負は預けたぞ、カミーユ・ビダンと機動戦士Ζガンダム!」

トーレが呟いた直後、もう一人の戦闘機人が『潜り』込んできて、彼女に密着。
そのまま『潜行』して行った……。
その頃、やけに静かなのをカミーユが怪しんだ直後、ズゴックが接近し、バーザムのコックピットハッチをもぎ取った。
いるはずの戦闘機人は、いなかった。
ズゴックのモノアイ越しにそれを見た、クワトロ・バジーナは驚愕する。

「どうなっているんだ? 転送魔法でも使えるのか!?」
「クワトロ少佐、これは一体!?」
「……私にも分からん。ところでカミーユ、私は『大尉』だぞ」
「失礼しました。クワトロ・バジーナ『大尉』殿」

突如として消えたパイロットの謎に困惑しつつも、クワトロとカミーユは二人なりに異世界での再会を喜ぶ。
その後は、本当に大変であった。
駆けつけた六課による半壊状態のバーザムの移送に、今回の戦闘と、保護した少女と回収したレリックに関する報告書の作成(避難誘導に専念していたスバルとティアナは別)。
そして、クワトロことシャアに群がるガンオタたちへの応対。
結局、少女たちはそのまま入院、クワトロのズゴックはΖガンダムで運ぶこととなった。

75魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編:2009/03/06(金) 20:10:53 ID:i/Shd8pM
機動六課、格納庫。
はやてとクワトロ、そしてカミーユがいた。
Ζガンダム、ザク、ズゴックの3体が並ぶ光景の中で。
はやての方はズゴックとクワトロの方を何度も見ながら、口を開く。

「幕僚長からもう一人来る、と聞いてましたけど、まさか『シャア・アズナブル』大尉とは思いませんでした」
「はやて、私は『クワトロ・バジーナ』大尉だ。ミゼット幕僚長直々の指名で機動六課に協力することになった。よろしく頼む。ところで、エリオとキャロが保護したという少女たちは?」
「検査のために聖王教会系列の病院に入院させました。あの時来たバーザムとガジェット、多分、あの子達が持ってたレリック目当てやったと思います。けど、何でカミーユ君襲おうとしたんやろ?」

あのときのバーザム飛来の原因を推理するはやて。
レリック回収をそっちのけにしてカミーユを襲おうとした原因が分からず首を捻る。
それと無く、クワトロは一言付け加えた。

「あの時、バーザムに乗っていた戦闘機人は『妹たちを囚われた悔しみ』と言っていた。恐らくカミーユを見て、レリック回収より妹たちが捕まったことへの報復を優先したんだろう。以前遭遇したことがある、眼鏡っ娘とは大違いだ」
「クワトロ大尉が会った事があるメガネに、ディエチとウェンディ、そしてバーザムに乗っていた奴……。後何人いるんだろ? 戦闘機人って。それに女ばかりなのかな?」

カミーユのさり気ない呟きに、クワトロは瞬時に反応する。

「あくまでも勘に過ぎないが、恐らく全員女だろうな。そちらの方が目の泳がせがいもある」
「だといいですねー。はやてもその方が揉みがいがあるだろうし」
「そうやなー。一人くらいロリがいてもええかなー。B地区摘まみ易いのばっかやったら流石に手応えが無いし……」

凄い馬鹿な会話に興じる3人。
このおバカなやり取りは、戻ってくるのが遅いからと、心配して来てみたなのはに怒られるまで続いた。

76黒の戦士:2009/03/06(金) 20:13:17 ID:i/Shd8pM
以上で中編の投下は終了。

後編は明日か明後日ごろに投下します。

77ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2009/03/07(土) 00:41:26 ID:373iQlew
書けないので、代理お願いします。
****
おまけ……のようなもの

「エックス! どうして!?」
「ス、スバル!? いきなりどうしたんだ?!」

どう言う訳なのか、エックスは涙ぐんだスバルに問い詰められていた。一体何で責められているのか?
エックスはまだ理解できなかった。

「何であんな事したの!? あたし…信じられないよっ!!」
(そうだよな…俺がいきなり乱入して戦ったんだ…信じられないのも…)

エックスはスバルが突然と戦った自分に幻滅した物だと悟った。エックスに助けられる結果になったが、
いきなり破壊行為的な行動を取ったエックスに悲しんでいた―――と言うのがエックスの憶測であった。
今の自分に出来る事と言えば、とにかく彼女に謝る事だけであろう。

「ゴメン、スバル………あの時は―――」



「"スライディング"するのは本家シリーズだけなんだよ!! エックスはXシリーズなんだよ!?」



「―――へ? ……信じられない部分はそこなの?!」

ディスプレイ画面の皆様は、こんなツッコミするなよ!?絶対だぞ!?
と言うか何故スバルがそんな事を知っているのか?有る意味大いなる最大の謎であった……
(おまけのお話は本編と完全にリンクしている訳ではありません…たぶん)


****
以上です。やっぱり間が開いて申し訳ないですorz
今回のエックスの戦闘BGMはX2のOPステージをイメージしてますw

何か誤字、脱字等がありましたらご指摘くださいませー
…次はいつだろう…

78黒の戦士:2009/03/08(日) 01:33:23 ID:JjeSILpg
後編を投下します。

前編と中編より長いですorz

79魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:34:19 ID:JjeSILpg
次の日、機動六課のある一室。
フェイトがはやてとなにやら話し込んでいる。
どうやら査察絡みのようだ。

「地上本部からの臨時査察?」
「そや。うちは突っ込み所が多いからな。下手すると査問に進展するかも知れへん」
「……突っ込み所自体、ここ数日で一気に増えたし……。無事に終わりそうにないかも」

深刻そうな表情で話すフェイト。
と、そこに一人の青年が話しかける。

「フェイト執務官、八神部隊長、どうしました? 深刻そうな顔をして」
「あ、バーナード、実はね……」

フェイトから査察の一件を聞いたバーナードは、呆れるようにため息をつく。
何となくではあるが、地上側の意図に気付いた様だ。

「粗探しするヒマがあったら、対AMF予算を通せばいいのに。全く……」
「バーニィ、そんなこと言わんの。レジアス中将も色々考えとるんよ」
「……アレの何処が尊敬できるのさ」

バーナード……バーニィの呆れるような問いかけ。
フェイトも呆れた表情である。
しかし、はやては暖かな微笑を浮かべながらキッパリと答えた。

「ミッドチルダの平和を願う気持ちは本物やし、何より正義感と責任感も強いやん。あんな使命感が強い人、そうおらんよ。正に『地上の正義の守護者』や」
「あんなのが、尊敬してくれてるはやてを『犯罪者』呼ばわりして蹴ろうとしたのが、ねえ……」
「優しすぎるよ、はやて……」

はやてのことが急に不憫に思えてきたフェイトとバーニィであった……。
付き合いきれないとばかりに、バーニィは足を動かす。
それを見たフェイトはどこに行くのかを尋ねた。

「何処に行くの?」
「早朝に向こうからザク・マシンガンのマガジンとSマインの予備弾にザク・バズーカの部品、そして大佐用の新しい機体が届いたんでザクの点検も兼ねてチェックして来ます」

彼はバーナード・ワイズマン。
あの時ギンガたちに保護されたザクの「中身」である。

80魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:35:21 ID:JjeSILpg
その頃、カミーユたちはクワトロの運転する車で、あの二人が入院している病院へと向う。
クワトロの車は結構な大きさのワゴン車であったため、カミーユとなのはだけでなく、スバル、ティアナ、エリオ、キャロも同行した。
まだ休日なので、みんなでお見舞いに行こう、と言うスバルの提案の結果である。
ふと、ティアナはカミーユとなのはの方を見て、あの時のことを思い出す。
無茶な訓練を繰り返し、なのはの教導を無視した挙句、頭を冷やされそうになった瞬間のことを。

「頭冷やそうか……」、なのはが泣きそうな目でそう呟き、攻撃態勢に入った直後にすぐ近くで見学していたカミーユがいきなり割って入った。
庇うように立ちはだかり、なのはを止めた直後にカミーユはティアナの方を振り向き、悲痛な表情で呼びかける。

「みんなを心配させてまで強くなって、何の意味があるんだよ……。そんなやり方でティーダさんが喜ぶのかよ!?」
「……! 何でここで兄の名を出すんですか!」
「……歯を食い縛れ、お前の無茶がどれだけなのはとスバルを悲しませているか、教導してやる!!」

カミーユは叫んだ直後、ティアナの頬に全力で平手を炸裂させる。
その衝撃でティアナは倒れるが、胸倉を掴み、さらに平手打ちを繰り返す。
自分の頬がはたかれる音に混じって、何かが呻く様な音を聞き、更に顔に何か熱いものが落ちる感触が走る。
ティアナは、呻くような音はカミーユの嗚咽であり、顔についた熱いものはカミーユの涙であったことに気付く。

「どうして……? どうして泣いているんですか!?」
「泣くしかないじゃないか……。お兄さんを誇りに思っているティアナ・ランスターが、兄の魔法じゃなくて兄を侮辱したクズの世迷い言の方を信じていると知ったら、泣くしかないだろう!! アア……うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

結局、号泣しながら両襟をつかんでティアナをシェイクするカミーユの方が頭を冷やされ、ドタバタのままその時の訓練は中途半端に終わってしまう。
その一件と、その後でカミーユとシャマルに見せられた「アレ」のせいで、自分が思い詰め過ぎているだけと知り、反省できたのがせめてもの幸運だった気がする、とティアナは思った。

あの時の回想を中断し、ティアナはため息をつく。
心配そうにスバルが話しかけてきた。

「どうしたの?」
「……カミーユさんに泣かれた時のことを思い出したのよ」

ティアナは苦笑しながら答える。
短気で子供っぽいところがある割りに、何が正しいかを考えて物を言う彼。
自分を省みることができるようになる程、彼は激情家だった。

「……ティアって、いい意味で変わったね」
「……カミーユさんに泣かれた上にあんなの見せられたら、『いい意味で』変わった挙句にそれ自覚できるようになるしかないでしょ」

疲れたように呟くティアナを見て、スバルも苦笑してしまう。
二人の会話を聞いていたエリオとキャロもつられて苦笑い。
それを見ていたカミーユだけが首を捻り、なのはは微笑む。
一方のクワトロは、病院にいるシャッハから、とんでもない報告を聞かされていた。

「何だと? 検査の合間を突かれて、二人に逃げられた!?」
「申し訳ありません、ダイクン卿。こちらのミスです」
「そんなものは挽回すればいい。それよりも、私の名字は『バジーナ』だ。ピースにもそう伝えておくように」

この会話を聞き、なのはたちも驚く。
お見舞いのはずが、逃げた二人の捜索劇に出る羽目になり、なのはとクワトロ以外は少しげんなりする。

81魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:36:28 ID:JjeSILpg
クワトロたちが病院に着いた直後、シャッハが大急ぎで近づいてきた。
一帯の封鎖と避難が完了している旨を説明する。
そのことに、なのはとカミーユだけが眉をひそめているのに、クワトロ一人が気付く。
かくして、二人の捜索が始まった。
院内の一角、シャッハがあの二人の詳細を説明しながらクワトロと行動を共にしている。

「魔力はかなりのレベルでしたが、それ以外は普通の子供でした」
「なら、どうしてわざわざこのような厳戒態勢にする? 気付いたのは私だけだったが、カミーユとなのはは怒っていたぞ」

避難が完了しているせいか、院内は無人であり、かなり寂しく感じる。
この厳戒態勢を不審に思ったクワトロは、それと無く毒を放つ。
シャッハもこれには気付いた。

「……検査中だった上、更に人造生命体であることが判明しました。どのような危険性が秘められているか、分かりません」
「だから、見つけた後は検査を再開、危険性の有無に関わらず後は隔離か? 『強過ぎる力は災いしか呼ばない』と考え行動すれば、その強過ぎる力が招いた災いを真っ先に味あわされるぞ。真龍を怒らせた、『ルシエ』とかいうマヌケ部族のようにな」
「……たった一人の友人を復讐のためと称して罠にはめ、更にロリコンでもあるのに人の道を説くのですか!?」

クワトロの言葉にムッとしたのか、シャッハはこの一言で返す。
クワトロはただそれに苦笑するだけであった。
何気なしに窓の方に視線を移し、なのはとカミーユ、そして逃げ出したと思われる二人の少女が中庭にいるところを目撃する。
少し遅れてそれを見たシャッハは、何を考えたのかデバイスを起動させた。

「どうやら、カミーユ君となのは君の大金星のようだな。……シャッハ、何を!?」
「逆巻け、ヴィンデルシャフト!」

82魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:37:00 ID:JjeSILpg
院内の中庭を探していたなのはとカミーユは、運良く逃げ出した少女たちと遭遇する。
一人は金髪のオッドアイ、もう一人は紫色のウェーブのかかった髪であった。
その内、紫の髪の少女はカミーユを見て驚く。
今の姿になる前に、かつてティターンズに「兄」として刷り込まれた彼の姿に。

「お兄ちゃん、……お兄ちゃん!」

その言葉に困惑するカミーユ。
しかし、カミーユは同時にデジャブを感じる。
その仕草、言動、自分を見る目、年齢以外ほぼ同じなのだ、『ロザミア』に。
そしてカミーユはようやく、彼女が『妹』であることに気付く。

「そんな……。どうしてそんなに小さくなったんだ!? ロザミィ!!」
「ええ!?」

この叫びに困惑するなのは。
彼女が「機動戦士Ζガンダム」で見たロザミィは、明らかにカミーユより年上であった。
だが、今目の前にいる「ロザミィ」はカミーユより遥かに年下(5歳児ほどに見える)。
混乱している内に、いつの間にか戦闘態勢のシャッハがロザミィともう一人の少女の前に立ち塞がった。
それを見たなのはとカミーユは、シャッハの肩を掴み、二人から遠ざける。

「シスター・シャッハ、二人を怯えさせてどうするんですか!」
「それでも聖職者なのかよ!」

二人の気迫に押され、シャッハは後ずさる。
それを見たロザミィともう一人は、不思議と安心した。
そして、なのはとカミーユが優しく微笑みながら二人に近づく。

「ごめんね、驚かせた?」
「大丈夫か? ロザミィ」

落ち着いたところを見計らい、なのはは自分の名前を言い、直後にもう一人の少女に名前を尋ねた。

「私は高町なのは。あなたのお名前は?」
「……ヴィヴィオ」
「可愛いお名前だね。ねえ、どうしてヴィヴィオとロザミィは逃げ出したの?」

なのはは穏やかに、一緒に逃げ出した訳を尋ねる。
シャッハから庇ってくれたことで信頼してくれたのか、ヴィヴィオは口を開く。

「ロザミィのお兄ちゃんを、カミーユを一緒に探してたの」
「そうだったの……。もう大丈夫だよ、ロザミィのお兄ちゃん、見つかったから」

なのはにそう言われ、更にカミーユに抱きつくちびロザミィを見る。
そこに、クワトロが駆けつけてきた。
騎士甲冑姿のシャッハと、ヴィヴィオとロザミィをあやす、なのはとカミーユの姿を見て、クワトロはさり気なくシャッハの方に話しかける。

「どうやら、二人を怒らせてしまったようだな」
「放って置いてください……」

83魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:38:45 ID:JjeSILpg
屋内の方で、ヴィヴィオたちを探していた残りの四人は、無事ヴィヴィオとロザミィが保護された光景を窓越しに見て安堵していた。
しかし、同時に局員と思しき連中が大挙して敷地内に乗り込んでくる一部始終も見えてしまう。
しかもなのはたちは気付いていない。
これを見たティアナはスバルたちに耳打ちする。
かくして、フォワード四人の静かなる大立ち回りが始まった。


これで一安心と安堵するクワトロであったが、何重にも響く足音を聞きつけ、いつの間にか手にしていた本型のデバイスを開く。
それを見たシャッハも身構え、なのはもレイジング・ハートを手にする。
なのはとクワトロの声が、同時に響く。

「レイジング・ハート」 「『旧約』夜天の書よ」 『セットアップ!』

なのははおなじみの白いバリアジャケット、クワトロははやてのそれの影響を多分に受けたような意匠の赤い騎士甲冑を身にまとっていた。
なのはは、セットアップの際にクワトロが言った「夜天の書」という言葉に反応し、その赤い騎士甲冑の意匠に軽く驚く。
そして、局員と思しき者たちが包囲するように現れた。
その中の、隊長と思しき下劣そうな男が口を開く。

「クワトロ・バジーナとカミーユ・ビダンだな……。首都航空第13部隊の者だ。恐縮だが地上本部に任意同行願おうか」
「……何の理由があってそれを言うのかね?」
「昨日の、クラナガン中央公園内での質量兵器使用に関してだ。レジアス中将直々の命令でね、悪く思わないでくれたまえ」

呆れ果てた顔で隊長を見るクワトロたち。
Ζガンダムは本局の方で、ズゴックはかなり前に支局でデバイスに改造済みである。
ミゼットのことだから当の昔に伝えてあるはず。
質量兵器と言っていきなり押しかけてきた時点で言いがかりだと暴露しているようなものであり、クワトロも突っ込みを入れてしまう。

「……気に食わないから連行しに来た、と言った方がよっぽど説得力があるぞ」
「黙れ! 自分たちだけ活躍しやがって……」

隊長の口から出た本音に、心底呆れる一同。
しかし、彼に率いられた局員はその言葉に揃って頷いていた。
とうとうシャッハがキツイ一言を口にし、カミーユも相槌を打つ。

「……そちらが活躍できないのは、レジアス中将が頑なに対AMF対策を拒絶しているのも一因です。文句を言う相手を間違えるにも程があります!」
「そうだ、そうだ!」

だがその言葉も届かなかったらしく、隊長は声を荒げる。

「犯罪者がまとめる様な部隊に協力している分際で……。忘れてもらっては困るぞ、魔法を使う手段がないのが3人もいて、殺傷設定の我々を追い払えると思っているのか?」

嫌らしい笑顔を浮かべて言い切る隊長。
局員たちが、バリアジャケットをつけてすらいない、カミーユ、ロザミィ、ヴィヴィオにデバイスを向ける。
カミーユは微動だにしなかったが、ヴィヴィオとロザミィは地上部隊の悪意を敏感に感じ取り、怯えてしまう。

「これがミッドチルダの平和を守る、地上部隊のすることなのかよ」
「黙れ、我々は正義だ! レジアス中将と言う正義の、代行者である我々に異を唱えた奴は全部悪なんだよ!」

余りにもイかれた発言に呆れ果てる余り、クワトロたちは開いた口が塞がらなくなる。
なのはに至っては、あくびをする始末であった。

「ふわわ……。世迷い言はもう終わり?」

84魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:40:06 ID:JjeSILpg
なのはのこの一言に激昂した局員たちが一斉にカミーユたちにデバイスを向ける。
が、カミーユの背後にいた隊員が、デバイスを持っていた方の手を突如として撃たれ、デバイスを落としてしまう。
その隊員は振り向くが、そこには誰もおらず、他の隊員たちも混乱する。
その一瞬の隙を突き、カミーユは振り返るのと同時に構え、正拳突きをその隊員のみぞおちに直撃させた。

「…………!」
「正当防衛だぞ!」

うずくまった所を見計らい、後頭部に追い討ちでかかと落としを食らわせる。
後頭部に掛かった強い衝撃で、その隊員はそのまま失神。
それを見ていた別の二名が慌ててデバイスをカミーユに向けるが、彼らの目の前、否、周囲にティアナの姿をしたものが大量に出現。
隊長が真っ先に驚き、不思議な感覚に陥る。

「な、何だこれは!? しかもどこかで見たような?」

その隙に、なのはとクワトロが残りの二人に肉薄。
なのははレイジング・ハートを片方の顎に突きつけ、クワトロはもう片方の顎に狙いを定めて拳を構える。

「ショートバスター!」 「シュヴァルツェ・ヴィルクング!」

桜色の魔砲と、魔力を帯びた鉄拳が二人の顎に直撃。
その衝撃で彼らは宙に舞い、車田飛びよろしく顔面から地面に叩きつけられる。
それに思わず見とれるカミーユであったが、彼の耳には残りの局員たちが次々と撃破される音も聞こえていた。
カミーユが振り向くと、そこには顔を殴られた痕や、焼け焦げた痕、感電したような痕がついている状態で倒れている局員たちと、隊長を睨みつけているスバル、エリオ、キャロの姿が。
よく見ると、シャッハの足下に棒状のもので殴られた痕が残った状態で倒れている者もいる。
そして2秒ほどしてから、ティアナもその姿を現した。

「フェイク・シルエット、見違えるほど凄くなったな」
「エヘへ……、カミーユさんに泣かれましたから」
「……ティアナはそのネタを引っ張るのが好きみたいだな」

カミーユに褒められ、満更でもないのかティアナは、さり気なく憎まれ口を入れながらも喜ぶ。
カミーユの方も、ティアナの言葉に苦笑する。
一方、偶然にも最後まで無事だった隊長は、カミーユが発した「ティアナ」と言う名前に反応した。
ティアナ……、かつて部下だった男、ティーダ・ランスターの妹の名前。
それを思い出した瞬間、隊長の頭に血が上る。
彼はティーダほどではないが優秀だった。
しかし、殉職したティーダの葬儀の際にティアナがいる前で堂々と「無能」と断じてしまい、「人格に非常に問題あり」とされ内定していた違う隊の隊長就任が取り消されてしまう。
レジアスの狂信者であったため、レジアスの熱心な擁護により降格は免れたが、それでも出世が大幅に遅れたことは事実であった。
今の隊長の地位も、反省したフリをして必死にネコを被り続け、数ヶ月前にやっと手に入れたもの。
そして彼は、未だに「ティーダとその妹のせいで出世が遅れた」と、ランスター兄妹を逆恨みしているのだ。

「また、また俺のジャマをするのか! 貴様ら兄妹は!」

隊長は殺傷設定のまま迷わずティアナの顔面を狙って射撃魔法を放つ!
運良くそれに気付いたカミーユは、ティアナに回避するように言うよりも、こちら側に引っ張って強引に避けさせた方がいいと判断。
ティアナの手を掴み、一気に自分の方へと引っ張った。
いきなり手を掴まれ混乱するティアナであったが、引っ張られたサイに視界が移動し、隊長の構えた姿から「自分目掛けて攻撃魔法を放った」ことに気付く。
カミーユの判断は正解であったが、それでも、殺傷設定の魔法がティアナの首筋を掠め、そこの肉が裂け、血が出る。
しかし、それもお構い無しにティアナは的確かつ俊敏に隊長のデバイスを狙い撃ち、破壊した。

85魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:41:10 ID:JjeSILpg
「……今思い出しました。兄の葬儀の時にお会いしましたね……」

冷たく言い放つティアナ。
片手で首筋を押さえながら、もう片方に持ったクロスミラージュを突きつける。
殺傷設定のまま魔法を放ち、それ以前に兄を侮辱した男に対して慈悲をかける気はない。
そういわんばかりの表情のティアナに、隊長は居直って尚も喚く。

「俺は、俺は悪くないぞ! 人質なんかに配慮した結果殉職するような奴を無能呼ばわりして何がいけないってんだ!!」

風が吹く……。
死神が吹かす、破滅の風が……。
本のページをめくる音が聞こえ、そして……。

「闇に沈め……! ブルーティガードルヒ!!」

余りにも醜い戯言を聞いたクワトロは殺傷設定にしたかったのを堪えつつ、非殺傷設定でブラッディダガーを隊長に放つ。
発音の方はドイツ語の方で。
ブラッディダガーは着弾と同時に爆発。
隊長を物の見事にズタボロにした。

「……この本が蒐集した“魔法”の試し撃ちに付き合ってもらいたいが、他にも貴様を叩きのめしたがっているのが3名いる。口惜しいが私は彼らと交代だ」

クワトロがそう言い放ちその場を引いた直後、今度はスバルが拳を構えた。

「ナックルダスター!」

スバルの鉄拳が、隊長に直撃し、勢い余って壁に叩きつける。
ブラッディダガーとナックルダスターの直撃で満身創痍となった隊長はそのまま壁に寄りかかったまま崩れ落ちた。
しかし、なのはとカミーユは止めとばかりに近づき、仰向けに倒れた隊長を見下ろす。

「……頭冷やそうか。長期入院が必要な程度に」
「そこのチンピラ! ティアナを殺そうとした代償がどれほど大きいかを教導してやるよ!」
「ま、ま、ままま……。ぎゃひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜!!」

なのはの非殺傷設定の攻撃魔法と、カミーユの空手の技の情け無用なコラボレーションが始まった。
流石にヴィヴィオとロザミィが見ないように、二人の前にクワトロが立って視界を遮る。
なのはとカミーユ以外でこの制裁を直視できたのは、クワトロとスバル、ティアナだけ。
この制裁は、クワトロとシャッハが止めるまで続いた。
結局、首都航空隊第13部隊の面子は全員入院、六課側はティアナが首筋を負傷するもキャロの手ですぐに治癒と、なのはたちの圧勝。
クワトロたちは、連中が何をしたかったのか分からないまま、ヴィヴィオとロザミィを連れて六課へと戻っていった。

86魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:42:51 ID:JjeSILpg
帰路にある車内。
カミーユとなのはは連中が来た理由に関して話し合っていた。

「質量兵器使用で聞きたいことがあるとか言ってたけど、結局何がしたかったんだろう?」
「……さあ。レジアス直々の命令で来たらしいから、何となく察しはつくけど……」
「何がしたいのかな? レジアス中将は……」
「レジアス・ゲイズだもん。自分たち地上本部は戦力不足だから、戦力が豊富な本局と『海』は持っているモビルスーツを全部こっちに寄越せ、って考えているんだよ。質量兵器云々を建前にして、魔力で動くように改造してあっても」

レジアスが何をしたいのかがわからず戸惑うなのはと、レジアスのことをバカにし切っているカミーユ。
スバル、エリオ、キャロは複雑な表情であったが、少なくともティアナはレジアスを否定するカミーユの態度に好感を持ち始めていた。
これ以上レジアスのことを思い出すのが嫌なのか、カミーユは気分を切り替えるためにある疑問を思い出し、クワトロに尋ねる。

「クワトロ大尉、少し聞きたいことがあるのですが」
「どうした?」
「……昨日、どうして公園の池から出て来たんですか? ズゴックに乗って」

カミーユの至極もっともな疑問。
実は、クワトロははやてたちに昨日の内に同じことを聞かれ、その時に答えたが、あいにくカミーユはそれを聞かず、いつもの通りナカジマ邸に早々と帰宅。
なのはたちもヴィヴィオとロザミィのことが気がかりで聞くのを忘れていたのだ。
と言うわけで、質問したカミーユだけでなく、なのはたちも興味しんしんでクワトロを見る。
クワトロからの答えは、単純だった。

「六課の近くに転送してもらう直前に、幕僚長から中央公園にガジェットとモビルスーツが出たと聞いて急遽公園の方に変更してもらった。池から出て来たのは、水中に転送してもらい、そこから地上に飛び出したほうがカッコいいかな、と思ったからだ」

茶目っ気を見せ、微笑みながら答えるクワトロ。
カミーユとなのはは「成る程」と素直に納得したが、スバルたちは少し呆れる。
ヴィヴィオとロザミィは我ら関せずとばかりに助手席で熟睡しており、クワトロにはそんな二人が何となく恋人同士に見えた。
その後、車内での話し合いにより、今日はカミーユがロザミィを預かることになり、カミーユも快諾。
ナカジマ邸でカミーユとロザミィを降ろし、クワトロの車は機動六課へと戻って行った。



次の日、機動六課。
一人で留守番させる気になれなかったカミーユは、ロザミィを連れて出勤してきた。
「おはようございますー」と、ロザミィが元気よく挨拶する。
カミーユも挨拶するが、今一声が大きくなかったため、シグナムに笑われてしまう。

「カミーユ、兄ならもう少し大きい声で『おはようございます』と言った方が様になるぞ。それと……、これを今日中に提出するようにと、八神部隊長直々の命令だ」

シグナムは手に持っていた紙、始末書をカミーユに渡すのと同時に、はやてからの伝言を伝える。
カミーユは面食らうが、シグナムはかまわず続けた。

「昨日の、あの一件のやつ?」
「当たり前だ。クローベル幕僚長が手回ししてくれたから、これ一枚で済むのだぞ。ちなみに、スバルとクワトロ、そして高町教導官は昨日の内に提出したぞ」

渡された始末書を見ながら、カミーユはあることに気付く。
いつもなら真っ先に挨拶してくれるあの娘がいないのだ。
ヴィヴィオとロザミィより2歳ほど上程度の容姿をしたあの幼女の姿が見えない。

「あれ? ヴィータは?」
「……クローベル幕僚長の所だ。彼女はヴィータが大のお気に入りでな、大抵ガンプラで釣って逢引に持ち込むのだ。別に昨日の一件で手回ししてもらったから逢引に応じたわけではないぞ」
「……あの人の遊び相手ですか。アイツも大変ですね」

苦笑するカミーユ。
レジアス相手に派手な罵りあいをしてのけたカミーユをいたく気に入ったミゼットは、初めて会って以来何かにつけてカミーユに「小遣い」をあげている。
カミーユ自身、既に社会人のつもりであるせいか、何となく子供扱いされている感じがするので嫌がったが、結局押し切られ受け取ってしまう。
そんなにガキっぽいのかな? と首を捻りながらも苦笑するカミーユであったが、一方のシグナムはどこか哀しげな表情で、一言付け加える。

「……遊びは遊びでも、ベッドをぎしぎし揺らす方の遊びだ」

87魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:43:59 ID:JjeSILpg
クラナガン郊外にある、ミゼットの自宅内の寝室。
既に事を終えたミゼットが、バスローブを着た状態で2枚の書類を見比べている。
それは、地上本部から引き抜かれた局員の数の、去年までの総数を記した紙。
何故か最高評議会が『機密』扱いしているため、入手するのに結構な時間がかかった代物。
地上本部にいる協力者から貰った方に書かれている総数は、入手に時間がかかった方に書かれているものより遥かに多かった。
地上本部から入手した方を見ると、20年前から急激に引き抜きの数が増えていることがわかる。

「ここ最近戦力不足云々が激しいから調べたら、偽装か……。私としたことがこんな茶番を見抜けないとは、もうろくしたかね? にしても、これじゃまるでレジー坊やを暴走させるためとしか思えないね、引き抜き数の多さは。抉ってやろうか、あの3馬鹿とその走狗どもが!」

地の底から響くような呟きに反応したのか、ベッドで(一糸纏わずに)ぐったりしていたヴィータが、ミゼットの方を見る。

「ミゼットばーちゃん、どうした?」
「……ちょっとした調べ物だよ。さて、あいつ等をどうやって潰してやろうか? まあいい。今はお前ともっと愛し合うほうが重要だ」

ミゼットは二枚の紙を机に置き、バスローブを脱ぎ去って、ベッドに横たわるヴィータにまたのしかかる。
第2ラウンドの始まりだ?
衣服? 何それ? おいしいの?


その頃、六課の格納庫。
バーニィが昨日言っていた、クワトロ用の「新しい機体」がシャアズゴの隣に立っている。
その機体は、かの「シャアザク」とそっくりの配色の上、装甲の各所(指揮官機を表す角とか)に金メッキコーティングが施されていた。
カミーユはアングラ雑誌で、なのはは『MSイグルー』で見たことがあるその機体に驚く。
その名は「EMS-10 ZUDAH」!
カミーユが思わずため息を洩らし、クワトロが嬉しげに答える。

「EMS-10じゃないですか」
「奇跡的に残っていた一機が偶然こっちに流れ着いていたらしい」

かくして、赤と金に彩られた「シャア専用ヅダ」が誕生したのである!!
と、それは置いといて……。
『軌道上に幻影は疾る』で、ヅダが空中(?)分解するシーンをしっかりと見ていたなのは、さり気なく注意する。

「これ、フルパワー出すと自壊しますよ」
「それを防ぐための対策は用意してある」

その一言と共に、クワトロは『旧約』夜天の書を取り出す。
ページをめくり、クワトロが空いているほうの手を置くと、彼の隣に一人の少女が現れる。
なのはは彼女の姿を妙に冷静に見つめてしまった。
もしはやてがこの光景を見れば、狂喜乱舞していたであろう。

「リインフォース……!」
「そうだ。リインフォースI(アイン)。この娘はヅダとユニゾンしてもらう!」

かつて消滅したはずの彼女、初代リインフォース。
驚いたなのはが、彼女に何故ここにいるのかを聞いたが、彼女は「気が付いたら彼の側にいた」の一点張り。
クワトロも、「こちらに迷い込んだ時には既に持っていた。いつ手に入れたのかは覚えていない」と答える。
初代リインフォース自身は、自分が生きている事を隠したがっているが、クワトロの方はヴィータが戻り次第はやてたちに教えるつもりである模様。
目が点になっているなのはを尻目に、カミーユは珍しそうに初代リインフォースを見ていた。

88魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:45:10 ID:JjeSILpg
数分後、六課の一画では、はやてとフェイトがまた話し込んでいる。
どうやら、臨時査察の日取りが決まったようだ。
何故か、フェイトの手にはウサギのぬいぐるみが二つ。

「一週間後?」
「そう。急に決まってな。まあ、向こうもこっちに懸念を持ってるから、仕方ないけど」

少し困った表情で言うはやて。
一方のフェイトは、地上本部側の意図に気付いてしまう。
一刻も早く、こちらの粗を探したいことに。

(こちらのことが相当気に入らないみたいね、向こうは。多分、Ζガンダムやヅダの事で相当ねちっこく追及されるわね。ディエチとウェンディからも情報らしい情報は引き出せていないのに……)

唇に指を当て、考えるフェイトであったが、休憩室前の扉に差し掛かった際に、誰かの泣き声が耳に入り、思考が中断される。
何事かと思い入ってみると、そこには、なのはとカミーユに抱きついて泣いているヴィヴィオとロザミィがいた。
どうやら、二人と離れるのを嫌がっているようだ。

(エース・オブ・エースと最高のニュータイプにも勝てへん相手はおるんやね……)

そういえば、今日は機動六課設立の目的云々で、なのはとカミーユ、そしてクワトロと一緒に聖王教会本部に行くことになっていた事を思い出すはやて。
あれこれ考えている内に、両手にぬいぐるみを持ったフェイトがしゃがみ込み、ヴィヴィオとロザミィに挨拶していた。

「こんにちわ。私はフェイト、なのはさんとカミーユ君の大事なお友達。ヴィヴィオ、ロザミィ、どうしたの? なのはさんとカミーユ君の二人と一緒にいたいの?」
『うん』

涙目のまま、頷くヴィヴィオとロザミィ。
フェイトは優しく二人に諭す。

「でも、二人とも大事なご用でお出かけしないといけないのに、ヴィヴィオとロザミィがわがまま言うから、困っちゃってるよ。この子達も」

達人的なオーラを放ちながら、ヴィヴィオとロザミィを上手くあやすフェイト。
使い魔(アルフ)を育て上げ、甥と姪の面倒も見ており、エリオとキャロの小さい頃を知っているフェイトにとって、泣き止まない幼女二人をあやすのはわけないのかも知れない。
フェイトは、こうして見事にヴィヴィオとロザミィをなだめきった。

89魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:46:17 ID:JjeSILpg
数十分後、聖王教会本部。
はやてたちは、カリム・グラシアに案内され、その一室に入る。
そこには既にクロノ・ハラオウンがいた。

「やあ、昨日はちゃんと寝たかい?」
「そっちこそ、ドアをノックする癖はつきましたか?」

憎まれ口をたたきあうクロノとカミーユ。
これにははやてたち、特にフェイトが目を丸くした。

「お兄ちゃんと会ったことがあるの?」
「……Ζガンダムを改造してもらっていた頃かな。寝ずに『機動戦士ガンダム』を見てて、『めぐりあい・宇宙編』を見ようとしていたときにノックもせずにいきなり入ってきた挙句、名乗りもせずに説教垂れていなくなった」

刺々しい言葉で説明するカミーユ。
フェイトは呆れるような表情で、残りは苦笑しながらクロノを見る。
これにはクロノもバツが悪そうだった。
しかし咳払いをして、説明を始める。

「機動六課の設立目的は、迅速なロストギア対策及びガジェット迎撃を可能とすること。表向きはね」

クロノがモニターを操作し、彼とカリム、そしてリンディの写真が表示された。

「僕と騎士カリム、そしてリンディ統括官が六課の後見人。そして非公式だが、『伝説の三提督』と政府も支援を約束してくれた」

モニターに、今度はミゼットたち『伝説の三提督』の写真が表紙される。
なのはとフェイトは『三提督』が協力していることに驚き、クワトロとカミーユはミゼット以外の二人も協力している事を知り納得していた。
そして、カリムが席を立ち、同時に己のレアスキルを発動させる。

「これは、私のレアスキル、『プローフェティン・シュリフテン』。二つの月の魔力が上手く揃った時に初めて発動可能となるため、年に一度しかできませんが、最短で半年、最長で数年先の未来を詩文形式で書き記した預言書を作成することができます」

カリムの周りに、本のページと思しき物が彼女を囲むように集まる。
その内の一枚が、クワトロの元に近づく。
見たことも無い文字だったため、クワトロは読むことができない。
ページの方も元の位置に戻る。
それを見たクロノが説明した。

「……文章は解釈次第でいくらでも意味が変わるほど難解な上、使用文字は全て古代ベルカ語。更に内容もこれから起きる事態をランダムに書き出すだけ。的中率は『割と良く当たる占い』レベルだ」
「……この予言は、教会や本局に航行部隊のトップ、そして政府中枢も予想情報として目は通す。せやけど、地上本部の方は、レジアス中将が大のレアスキル嫌いやから目は通しとらん。まあ、信憑性はそれほど高いわけや無いから仕方ないけど」

少し困ったように説明するはやて。
それを見たクロノは、モニターにレジアスの写真を表示し、呟く。

「もっとも、レジアス中将の場合、自分に魔力資質が無いから、ひがみ半分逆恨み半分でレアスキルを嫌っているだけかもしれないがな」

表示された彼の顔を見て、カミーユとなのはは一気に眉をひそめる。
クロノも、汚いものを見るような目で評した。

「彼を尊敬しているはやての前で言うのもアレだが……。はっきり言って末期だな。真綿で自分の首を絞めているようなものだ」

冷たい表情で吐き捨てるクロノ。
はやての方は哀しげな表情でクロノを睨む。
しかし、クロノは更にダメ出しする。

「はやてが管理局入りした頃から、公の場での舌禍や部下の不祥事擁護などの問題行動を繰り返し、受けた批判と処分の数のワースト記録を更新中だ。魔法資質の無さを帳消しにできるほどのカリスマと超優秀な政治手腕のおかげで今の地位を維持できているに過ぎない」

90魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:48:16 ID:JjeSILpg
クロノの言葉に頷き、「そうだよね」と呟くフェイト。
なのはも「地上の正義の守護者も地に堕ちたねー」とぼやく。
カミーユの方も、ここぞとばかりにレジアスをなじる。

「自分に無い力全てを妬み嫉み毛嫌いする。魔力資質が無いのはゲンヤさんも同じだと言うのに。どうやったらああも人として大きな差が生じるんだ?」
「他人を信じられるか否かの差だ。 信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始める。 そうやって自分自身を間違わせる。自分だけが英雄になろうとすれば、尚更だ。アレを見る度に他人を信じることの難しさを再認識してしまう」

クワトロもそれに続く。
しかし、みんなはやての表情がどんどん険しくなっていることに気付き、話を予言の方に戻す事にした。
カリムは、ページを手に持ち、内容を静かに読み上げる

「無限の欲望、『次元と大地の子ら』を名乗り、青いヴェールをまとう花嫁となりし、黒い翼なびかせる白と青の巨人と冥王の如き、二つの美しき星を欲する。
守り手達統べる三つの影と、それの威を借る堕ちた『地上の正義の守護者』の罪暴かれ、かの者が牛耳る地上を守りし騎士たち惑わす。
やがて無限の欲望は彼らの罪を理由に、騎士たちが守りし中つ大地を征する事を宣す。
そして、滅びし王の宮殿が中つ大地の法の塔を砕き、次元行く船をも屠らん。
されど三つの影は、古き夜空の風と金の角そびえし幻影を従えた赤い彗星に滅ぼされん。
堕ちたる『地上の正義の守護者』は、写された思い出の源泉たる白い冥王を取り込んだ、黒い翼なびかせる白と青の巨人に討たれ、欠片も残らん。
『次元と大地の子ら』と滅びし王の宮殿に挑みし者達の先頭に立つは、彗星と冥王の牙城なり」

この予言を聞き、クロノとカリム本人以外は驚愕する。
そしてカリムは冷静に、冷静に口を開く。

「……最高評議会とレジアス・ゲイズ中将の醜聞の露見による混乱と、その隙を突かれた地上本部と次元航行部隊の壊滅に伴う管理局システムの崩壊。そして最高評議会とゲイズ中将の討伐……! 解読されたこの予言の内容です」

カリムのこの言葉に、はやては表情を暗くする。
クワトロはお構い無しに、カリムに尋ねた。

「地上本部及び次元航行部隊の壊滅と、管理局システムの崩壊阻止。それが六課設立の真の目的か」
「……場合によっては、最高評議会とゲイズ中将の粛清も視野に入れられています。はやてはゲイズ中将の醜聞に関してだけは極めて懐疑的でしたが」

真剣な表情で答えるカリム。
どこまでが当たりなのかは分からない。
だが、プローフェティン・シュリフテンが未来の事を言い当てているのは事実であった
予言の一説に、クワトロは考えを巡らせる。
自分の異名がバッチリ出てきたのだから致し方ないが。

(古き夜空の風と、金の角そびえし赤い幻影……。リインフォースIと私のヅダか。『割りと良く当たる占い』と言うより、『滅多な事では外れない占い』と言った方が適切だな)

91魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:49:32 ID:JjeSILpg
地上本部の最上階近くのフロア。
相変わらずレジアス・ゲイズがヒーロー物の悪役みたいな態度と目付きで、夕焼けに染まるクラナガン市街を見ている
その後には、オーリスが立っていた。

「よろしいのですか? 査察を行うのは一週間後で?」
「臨時だからな。その日のためにワシ自らメンバーを選抜した。ミラー一尉以下全員、指揮するお前を満足させるに値する優秀な者達だ。奴等の企みなど知らんが、この地上を守って来たのはワシという正義だ! それを理解できん『海』と教会の好きにさせてなるものか!」

己の言葉に醜く酔いしれながら、レジアスは続ける。
それに吐き気を覚えながらも、オーリスは上辺だけ肯定し、内心では「どこが正義なの?」と毒づいていた。

「何より、私には最高評議会という心強い味方がいる。この父が正義だからだ。そうだろ? オーリス」
「……はい」
「公開陳述会も近い。本局と教会を叩く材料になりそうな物を洗い出せ! 向こうはモビルスーツを抱えている上に、昨日ワシの命令で、あの小僧とシャア・アズナブルに任意同行を求めた首都航空隊第13部隊を襲撃している。楽な仕事になるさ」
「機動六課についてですが、事前調査の結果、かなり巧妙に出来ている事が分かりました」

オーリスはそう言って、モニターを表示させる。
そこに映し出される、はやてとなのはたちの写真。
オーリスが説明を始めた。

「若輩を部隊長にし、主力二名は本局からの貸し出し扱い。部隊長の身内であるヴォルケンリッターと、次元漂流者を除けば、後は新人ばかり。モビルスーツは何れも質量兵器と見なされないように魔力式に改造済み。Ζガンダムとズゴックに至ってはデバイス化されています」

モニターに映し出される新人たちと、カミーユたちの写真。
それだけでなく、Ζガンダム、ザク、シャアズゴの写真まで表示される。

「何より期間限定の部隊、言わば使い捨て扱いです。本局にトラブルが起きても、簡単に切り捨てる事ができる編成になっています」
「小娘は生贄か……。同類とそれを庇う異常者の二匹が主力。身内以外の戦闘メンバーも、人間モドキにあの役立たずのティーダ如きに魔法を学んだ凡人、デッドコピーと己の力を使いこなせぬ出来損ないか。犯罪者にはうってつけだな」

とことん吐き捨てるレジアス。
その態度に嫌気が差しながらも顔には出さずにオーリスは呟く。

「もっとも、これ自体彼女が自分で選んだ道なのでしょう」
「オーリス!?」
「首都航空隊第13部隊に関して、教会系列のある病院から「敷地内に押しかけ、『ゲイズ中将の命令だ』という理由で高町教導官一行を包囲していた」と苦情が来ています。今日の予定は消化済みなので、直接赴いて事情を説明された方がいいかと」
「……ああ」

何事も無かったかのように淡々と語るオーリス。
彼女の心は既に決まった。

92魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:53:28 ID:JjeSILpg
同時刻。
予定よりも早く帰りついたはやてたちは、休憩室で一息つく。
ヴィヴィオはなのはに、ロザミィはカミーユにくっ付いたまま離れようとしない。
ちょうどヴィータも事が終わったのか、戻っていた。
今がチャンスとばかりに、クワトロはヴォルケンリッターの残りを集合させてもらおうとはやてに話しかけようとする。
が、突如として警報が鳴り、モニターに外の様子が映し出された。
映し出されたものを見て、カミーユは声を荒げる

「……ガンダムMk-II! しかも何でティターンズカラーに戻っているんだ!?」

そこに映っているのは、ドダイに乗りこちらに近づくガンダムMk-IIと、それを追うガジェットの群れ、そしてガジェットの指揮機と思しきモビルスーツであった。
既にバーニィのザクと、シャアズゴが出撃してガジェット目掛けて発砲している。
出撃しようとするなのはたちを制し、クワトロは「君たちはヴィヴィオとロザミィをなだめていろ」と言って一人休憩室を出た。



格納庫。
クワトロはヅダに乗り、コックピットに隠してあった旧約夜天の書を取り出す。

「旧約夜天の書よ、セットアップ!」

バリアジャケットを装着し、ヅダを起動させて出撃する。
格納庫から出た直後、ガンダムMk-IIを乗せたドダイがすぐ近くに着地。
コックピットハッチが開くところが視界に入るが、クワトロはそれに構わずエンジンの出力を上げる。
ジール物産製の新型エンジン「新星」の大推力でヅダは飛翔し、クワトロもリインフォースIに命令した。

「ユニゾン・イン・ヅダ!」

この声と共に、ヅダの体が光に包まれる。
装甲の一部に布地のようなものが張り付き、ヅダの頭部に銀色の長い髪の毛が生え、更にピンク色のモノアイが何故か真紅のデュアルアイに変わった。
倍以上に跳ね上がった推力で、ヅダはガジェットの群れに肉薄する。

「魔法を無効化出来ても、衝撃に耐え切られないのなら無意味だぞ!」

ガジェットは構わずレーザーを発射するが、ヅダは大気圏内とは思えないレベルの機動で楽々とかわし、ガジェットたちにすれ違う。
数秒後、超音速で飛ぶヅダの発した衝撃波で吹き飛ばされ、ある機体は味方機のレーザーが当たり、またある機体は複数の味方機にぶつかり道連れにしながら、次々と破壊される。
既に、バーニィのザクとシャアズゴのおかげでかなり減っていたせいか、ガジェットの数は少なかった。
そこに、指揮機と思しき機体に乗っている者からの声が聞こえる。

「……我、現在地の確保に失敗。これにより、奪われたフラッグシップと搭乗者たちの奪還、それ以上に妹たちの救出は絶望的と判断。残存ガジェットは全機、地上の二機に特攻させ、本気はこれよりヅダに突貫する!」

93魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:54:26 ID:JjeSILpg
モビルスーツがいきなりコックピットハッチを開けたかと思うと、中からディエチたちと同じ意匠の服をまとった幼女が出てくる。
右手では入り口の縁を掴み、自分の機体より下の高度にいるヅダ目掛けて手に持った投げナイフを投げた。
ヅダは構わずモビルスーツ目掛けて加速、投げナイフを装甲で弾いた直後、突如として起きた爆発により視界を遮られてしまう。

「爆弾だと!? 何時の間に?」
「先ほどの者が投げた金属片が爆発したのです。恐らく、あのパイロットは何らかの方法で金属片を爆発物に変えたものと思われます」

驚愕するクワトロに、ヅダとユニゾンしたリインフォースIが説明する。
それに納得した直後、クワトロの脳裏に光の筋が走り、敵がこちらに突っ込んで来ていることに気付き、回避動作を取った。
直後、広範囲にわたる爆風を散らしながら円盤状の物体が突進。
すれ違いざまにヅダはその物体に蹴りを入れた。

「避けきっただと!? だが避けるだけでは、このチンクのアッシマーには勝てん!」

チンクが叫んだ直後、アッシマーは再び変形し、モビルスーツ形体に戻る。
アッシマーの緑のモノアイが光り、ヅダを睨む。
これを見たクワトロは、間髪いれずヅダをアッシマー目掛けて体当たりさせる。
左肩のシールドが顔面に直撃し、アッシマーのモノアイ保護用の風防が砕け散ったが、チンクは動揺しなかった。

「……超硬スチール合金程度ではな!」

アッシマーはヅダのコックピットハッチに蹴りを入れ、弾き飛ばす。
ビームライフルを構え、引き金を引く直前に、全く別の方向から飛んできたビームがビームライフルに命中。
驚いたチンクが振り向くと、そこにはビームライフルを構えたガンダムMk-IIの姿あった

「あの男、あの距離から……!?」

右手ごとビームライフルが爆発し、その隙を突きヅダはギリギリまで接近、ゼロ距離で90㎜マシンガンを発砲。

「認めたくはないだろう? 自分の若さゆえの過ちというものは」
「あ、アッシマーが!」

この言葉と共に、アッシマーの頭部が弾丸で砕け散ったかのように破壊された。
しかし、同時にアッシマーのコックピット内に、チンク以外の第三者の声が聞こえる。

「チンク姉!」
「セイン! 何時の間に忍び……」
「ドクターの命令! もしアッシマーがやられた場合に備えて忍び込んでおきなさいって!」

この会話に感づいたクワトロは、急いでコックピットハッチを抉り取り、中を覗く。
すると、セインと思しき少女が、チンクを後から抱きかかえた状態でコックピットから「抜け出す」最中であった。
そのまますぐに姿を消し、数秒後にアッシマーの脇腹から飛び出し、そのまま落下、地面へと「潜行」する。
乗り手を失ったアッシマーはそのまま失速、盛大な水柱をあげながら海に突っ込んだ。
それを見届け、着陸するヅダ。
その視界の先には、セインが潜行した地点を凝視し、顔を見合わせて不思議がっているザクとシャアズゴがいた。

「あの撃ち方と気配……君もこの世界に来たのか? アムロ」

94魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編:2009/03/08(日) 01:55:18 ID:JjeSILpg
その頃、ガンダムMk-IIが着地した地点。
ガンダムMk-II内のコックピット内には、操縦していた青年だけでなく、壮年の女性とその使い魔もいた。
青年が二人に話しかける。

「プレシアさん、リニス、大丈夫か?」
「私とリニスは大丈夫よ……」

プレシアの方は少し気分が悪そうだったが、何とか強がる。
青年が振り向くと、リニスが優しくプレシアの背中を摩っている所が見えた。

「ゼスト・グランガイツの言うとおり、この『機動六課』に本当にフェイト・テスタロッサがいるというのか? シャア、お前が身を寄せている機動六課に……?」
「アムロ・レイ、彼はウソをついているようには見えませんでした」

アムロの呟きに、そっとツッコミを入れるリニス。
アムロは振り返らずに、モニター越しに見えるヅダの姿をずっと見ていた。
夕焼けの中で吹く風が、モビルスーツたちと、アムロたちを保護するために出たフェイトを、撫で回す。




次回


魔砲戦士ΖガンダムNANOHA

ディム・ティターンズの影
〜ニューメロの鼓動〜

カミーユ・ビダンはリリカルなのはの夢を見るか?

95黒の戦士:2009/03/08(日) 01:56:05 ID:JjeSILpg
これで第一話は全部投下終了。

本当に長かった……。

96魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/08(日) 21:15:24 ID:QVxyJ8BM
規制をくらってしまいました。申し訳ありませんがこちらに投下しますので代理投下をお願いいたします。


 さて、とりあえずその件の犯罪者の危険性と、相手をしなければならない可能性の高さは頭に叩き込み理解したが、彼女たちの目的はそれだけではない。
 当たり前だ、現地の犯罪者の相手をしに自分たちは派遣されたわけではない。その本当の目的は別のところにある。
 それこそが―――

「―――それじゃあ本題の次元震の原因究明についての捜査だけど」

 その主目的を語り出したなのはに皆の視線が再び集中する。
 本題とも言えるそれは一体どのような手順で行うのか、それをまだ四人は聞かされてはいなかった。

「この手のケースなら順当に考えれば、原因となっているものは・・・・・・ティアナ、何だと思う?」

 急に話を振られても、しかしティアナは慌てる素振りも無くそれこそ学院の講義の際の質問に答えるようにセオリーとなる答えを述べた。

「―――ロストロギア、でしょうか?」

 尤も、それが正解とは限らないので確証も無い答だとは自分でも思っていた。
「うん、それが真っ先に上げられる最も可能性のある答だね」
 故に間違いではない、そうティアナの答を評価しながら頷く。
 そもそも次元そのものに波及的効果を与えられるモノ、などというものは管理局の常識から考えてみてもまず稀少だ。
 遺失世界の遺産、秘めたる力を有するそんなモノ以外で、次元震を起こすことなどそもそも不可能と言ってもいい。
 だからこそ、管理局はロストロギアという存在を決して侮らず、回収する必要性が高いと認知している。
 次元世界そのものに危機を与えるソレを自分たちの手で安全に保守管理しないことには落ち着くことなど出きるはずがないからだ。
 だからこそ、次元震という現象が発生した際には管理局は必ずと言っていいほどロストロギアの関連の有無を調べる。
 そしてこうしたケースならば八割方、ソレが関わってくることがこれまでの管理局の記録からでも判断できる。

「だからこそ、二十二年前と今回・・・・・・後、これはついさっき分かったことだけど、六年前にもこの市街で惨劇が起こっているの。これらの事件に同一のロストロギアが関わっている可能性は無いとは言い切れない。でも―――」

 先程、ジグマールの口よりなのはは六年前に市街地で大規模なアルターによる惨劇が起こったという話を聞いた。
 ロングアーチスタッフに直ぐ様に確認を取ってもらったが、それにも次元震発生の余地が確認されていることが先程連絡されて届いたばかりだった。
 アルターによる被害、ジグマールは確かにそう言っていた。アルター能力についてはまだ詳しい事を把握していないが、それがロストロギアの誤認という可能性も無いとは言い切れない。
 しかし、それには疑念も残る。
 その最大の理由は観測された事件と事件の間の期間の長さだ。二十二年前と六年前、そして六年前と今回。
 規模こそ違えど観測された次元震の特徴はまったく同じモノなのだという。ならばこそ、これらには同一の何らかの原因が共通してあるはずだという推測が成り立つ。
 だが管理局とてロストロギアとは一概には言っても、その性質はバラバラなものばかりで一纏めには出来ない。・・・・・・だがこういったケースを起こす特徴はロストロギアには存在しない。
 一度何らかの原因で発動したロストロギアは外部からの強制介入による沈静化なくしては治まらないケースが多い。代表的な例を挙げるならあのジュエルシードが良い例だ。
 だが今回観測されている次元震は全て、同質であると共に瞬間的に発生して直ぐに治まっているものばかりだ。
 恒常的とも呼べぬ発生期間といい、瞬間観測でしかないという実例。そして管理局がどうして放置を続けてきたか、その理由を推測すればそれは―――

「―――私はそうじゃない、とも考えてるんだ」

 ―――その推測をなのはへと抱かせていた。

97魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/08(日) 21:16:31 ID:QVxyJ8BM
 四人もロストロギアが関わっているとばかり思っていただけに、なのはの突然の言葉にはやはり驚きを隠せていなかった。
「え? ロストロギアじゃないんですか?」
 疑問を口にしたスバルに対し、なのはは頷きながら己の推論を述べる。

「―――以上のことから、私はロストロギアとは別の可能性も考えられると思うの。
 ・・・・・・ジグマール隊長は六年前のその事件がアルターによるものだと言っていた。二十二年前も今回のものも性質は同じモノらしいから次元震の発生の媒介となったものは同じモノである可能性が極めて高い。ならそれは―――」

 ―――ジグマールの言葉通りなら、アルターということになる。

「・・・・・・じゃあ、次元震の原因はこの世界にいる能力者の仕業ってことなんですか?」
 俄かには信じ難い、言外でそう告げていることが分かるティアナがそう疑問に思うのも無理はない。
 なのはのその推論が正しいと言うのならば、ソレは個人か組織かどちらかにしろ、次元震を発生させているのが人間だということになってしまう。
 規模がどれ程のものであれ次元世界そのものに干渉しうる力を人間が持っている・・・・・・魔法ですら不可能なことを信じろと言う方がおかしなものだ。
 それこそ、あの存在し得ない夢物語の世界たる『アルハザード』は実在している、などと言っているようなものである。
 そんなことを出来る人間がいるとするならば、それは人間とは呼ばれない。

 ―――『災害』である。

「・・・・・・私自身でも穴がありすぎる推論だとは思ってる、けれどやっぱり今回の事件に関わってくる謎の中枢にはアルター能力があるとみて間違いないとは思うの」

 彼女の推論でいくならば、次元震を起こした犯人(人ならば)同一人物ということになるが、アルター能力者が生まれるようになったのは二十二年前にロストグラウンドが誕生してからだ。今回と六年前に起こった事件の犯人が共通だとしても、そもそもロストグラウンド誕生の原因そのものとなった事件に関しては矛盾してしまうことにもなる。
 だからこそ確証は無い。故にロストロギアの可能性も捨てきれず平行して調査を続ける。
 それでも彼女は感じていた。

 ―――事件の真相究明への鍵はアルターにある。

 明示できる証拠は無く、自論と直感という説得性には欠けるものだが、それでも全ての事件にはアルター能力が何らかの形で関わっているはずだと思っていた。
 だからこそ、それに関する調査も無限書庫経由で頼んでいたし、自分たちの方からも現地の情報を通じて調べてみようと思っていた。

「取り合えず、ロストロギアとアルター。この両方の線から調査を進めていこうと思ってる。じゃあそれに関する具体的な方針だけど―――」

 そう言ってなのははこれからのこの世界での行動方針を、部下たちへと語り出した。
 恐らくは長丁場となる、そんな確信を抱きながら・・・・・・

98魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/08(日) 21:17:28 ID:QVxyJ8BM
 標高が高いということは、同時に空にも近いと言う事だ。
 だからこそ―――こんなにも星が近くに感じるのだろう。
 高町なのはは空を飛びながらそんなことを考えていた。
 部隊のブリーフィングを終え、これからの行動方針を決め後は明日に備えて一日を終了するだけなのだが・・・・・・。
 何故かこうして空を飛んでいるわけだが、特に目的は無い。理由も無く、空を飛ぶなどという行為はミッドチルダでは許されない。そんな事は管理外世界とて同じなのだが。
 それでも高町なのはは空からこの大地を見下ろしていた。
 本土から切り離され、その大地の中ですら塀の外と内で異なる世界。
 地球には地球の、ミッドチルダにはミッドチルダのルールがあったように、当然ながら、ロストグラウンドにもソレは存在する。
 尤も、此処のルールというものは場所によっては過激や理不尽などと言ったものであるのかもしれないが。
 それでも、となのはは思う。

 この大地で生きている人たちが願っていること、望んでいることとは何なのか。

 独立自治とは聞こえは良い、だが実情は支援なくしてこの大地の住人・・・・・・少なくとも都市に住んでいる者達は生きてはいけないだろうというのは部外者であるなのはの目から見ても明らかだ。
 そして壁の向こう側、未開発地区と称されるむしろロストグラウンドという名そのものの世界はどうであろう。
 実情こそ目にはしていない。けれどインナー(この大地で都市部以外の生活者のことを指すらしい)出身のホーリー隊員の話を聞いてみても、それは酷い有様らしい。
 奪い合い、壊し合い、そして争い合う。
 少なくとも、そこには秩序と呼ばれる人が互いに生きていくために必要とされるルールはない。

 ―――力こそが全て。

 それこそがルールだと言わんばかりが、この大地の実情だった。
 秩序や法という権力に守られている人間などほんの一部、それこそ都市部の人間だけだ。
 この大地に生きる多くの人間は、恐らくは今日を生き抜くことに必死なのだろう。
 ならば何故、彼らはそれからの脱却を望まない。少なくとも、市街に登録をすれば住民になれ職にもありつける。
 少なくとも真っ当な人間としては生きることが出来る。だが、この多くの人間は進んでそれを求めようとはしていないと言うのが実情だ。
 インナーは自らの意志でインナーであることを在り続ける。多くのインナーはそうらしく、市街に登録・・・・・・本土への帰属を望もうとはしていないらしい。
 それが何故か、インナーの実情や思いを未だ知らぬなのはにはそれが分からない。だがそれは彼らにとっては一種の誇りであると言うことだけは察することができる。
 荒れ果てた無法の大地の上で、何が彼らにそれを選ばしているのか。
 平穏と呼べる世界で生まれ、この職に就くまでは同じように平穏な中で生きてきた彼女からは想像もできないものであった。

 だからだろうか、彼女がそれを知りたいなどと考えたのは。

99魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/08(日) 21:18:19 ID:QVxyJ8BM
 ホーリーが・・・・・・否、本土が示す秩序に目を背けても彼らがそれを見出し、そして守ろうとしているのは何なのか。
 恐らくは『彼』もまたそれを守ろうとしているのではなかろうかと勝手ながらに思った。
 ほぼ単独と言っていいほどに何の後ろ盾も無く、個人レベルでの反抗を続けている一人の反逆者。
 アルターという人とは異なる能力を有し、ソレを用いて戦い続けているその人物。
 ホーリーにおいては犯罪者と認定され、自分たちもまたいずれ出会い、戦うことを予感させるその人物。

「・・・・・・NP3228。・・・・・・ううん、違うよね。君の名は―――」

 資料に書かれていた一度捕獲された時に付けられた番号ではなく、彼自身が名乗ったその名前を。
 名字も無く、本名かどうかも怪しい、けれど恐らくは彼が彼であることを表しているその名前を―――

「―――カズマ、君か・・・・・・」

 星空にその身を浮かばせながら、高町なのははその男の名を静かに呟いていた。



 不意に誰かに名を呼ばれた気がした。
 呼ばれたと思い振り返り見た夜空の方角が都市部の方である事に気づき、彼―――カズマは思わず顔を顰めていた。
 またホーリーのクソ野郎共がこっちを倒すためにいけ好かねえ作戦でも立ててやがるのかとも思い、

「―――へ、それともテメエか?・・・・・・劉鳳ッ!」

 打倒を誓い、名を刻んだ宿敵の姿を脳裏へと浮かべ拳を握っていた。
 まぁどちらだっていい、劉鳳だろうとホーリーだろうとちょっかいを出してくる相手には容赦しねえし、必ずぶっ飛ばす。
 単純とも思える思考だが、それがネイティブアルターであるカズマの当たり前のような考えだった。

「・・・・・・にしても、何だか気にいらねえな」

 何故かは分からない、理由は不明だ。
 だが直感的に、今見ている方角から酷く気に入らない視線のようなものを感じずにはいられなかった。
 まさか空の上から誰かがこっちの方を見ているわけでもあるまいし、気のせいに違いないのだが、何故か気になって仕方がない。
 このまま背を向けたら負けなのではなかろうか、などという馬鹿らしいことすら本気で思っていたほどだ。
 だからカズマも睨み返すようにその方角に視線を向けたまま動かない。傍から見れば遠方に眼ツケをしているだけという酷く奇妙な光景だが、当人であるカズマという男はそんなことを気にしない。
 やがてその気に入らない視線のようなものも暫くすれば感じなくなり、カズマも内心で勝ったなどと密かに鼻を鳴らしながら、視線を外して再び進んでいた方角へと背を向け直した。
 実に馬鹿らしいことに時間を浪費してしまった、ということを漸く自覚しながらカズマは目的地―――ねぐらにしている家(廃墟と化している歯科医院)へと急ぐ。

100魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/08(日) 21:20:42 ID:QVxyJ8BM
「・・・・・・かなみの奴は、もう寝てるだろうな」

 同居している少女の顔をふと脳裏に浮かべながら、恐らくはもう就寝しているだろうことは予想が出来ていた。
 よくあることだ。頻繁に家を空ける自分の帰りが遅い時はいつも先に眠っている。普段からよく寝る娘でもあるし、そもそもカズマ自身も出迎えを期待するような性格ですらない。
 だからそれは問題ない、普段通り当たり前であり考えるまでもないことだ。
 ・・・・・・ならば何故、そんなことをふと思ったのか。
 考えるという行為自体を苦手とする彼はそんな思考も五秒で放棄した。どうでもいいさ、それで良かった。
 帰る場所にはかなみが居る。そんな当たり前のことが分かってさえいればどうでもいいことだ。
 ・・・・・・そう、どうでもいい。そんな当たり前さえ守れるなら。

「・・・・・・まぁ、その代償と思えば安いもんさ」

 右手を持ち上げながら、あのアルターの森での一件以降に進んでしまったアルターによる侵食を見てそんな事を呟いていた。
 だがこのお蔭でシェルブリットはパワーアップした。この力なら、ホーリーの奴らにも何も奪わせないし、劉鳳の野郎だって倒せるはずだ。
 馬鹿で調子者の憎めない相棒や、しっかりものの癖に泣き虫なあの少女だってきっと守れる。

「・・・・・・らしくねえよな、俺としたことが」

 金さえ積めば何だってやる、それがアルター使い“シェルブリット”のカズマであったはずだ。
 そんな自分がどういうわけか、そんな丸くなった思考をしている。・・・・・・まったくもって可笑しい限りだ。
 だがそれも悪くはねえ、そう思っている自分もいた。
 “シェルブリット”のカズマとしての本質は何も変わってはいないという自負がある。
 金さえ貰えば何だってやるし、欲しいものは奪ってでも手に入れる。
 その生き方を変えようとは思わない。
 だから今の考えだって結局同じであり、行き着く先とて同様だとカズマは思ってもいた。
 そう、気に入らねえ奴はぶっ飛ばすし、奪われないように守る。
 そして満足する程の派手なケンカをする。
 カズマが望んでいることは、ただそれだけだった。
 だからこそだろうか、

「なんか、これから派手なケンカが起きそうだ」

 理由も確信も無く、そんなことを思い、期待しているのは。
 だがきっとそれは直ぐに実現する。その相手は劉鳳なのか、或いは別の誰かなのか。
 それはカズマ自身にだって分からない。だがそれでも一つだけハッキリしている事は。

 ―――ソイツが壁となって立ち塞がるなら、この自慢の拳で打ち砕く。

 ただそれだけだった。
 ただそれだけを思いながら、カズマは家路へと着く足を止めることも無く歩き続けた。


 こうして失われた大地に不屈の魔法使いたちは降り立った。
 自身の『正義』という名の信念を貫く男は、彼女たちと出会い戸惑いと予感を覚え。
 未だ出会わぬ反逆者は、その出会いを予感しながら拳を握る。
 その出会いが何を齎し、何を為すのか。
 誰にもそれは分からぬまま、しかしハッキリとしていることがただ一つ。

 物語は、既に始まりもはや止まる事は許されない。
 ただ、それだけのことである。


 次回予告

 第一話 機動六課

 それは何をもっての反逆か
 男は怒りに拳を振り上げ
 女は杖を交わしながら話し合いを望む
 双方、譲れぬ思いを抱きながら最初の邂逅は激闘へと変わる。
 魔法とアルター
 その未知なる力の激突が齎すものとは何なのか・・・・・・



 以上です。初投下で不慣れなので時間を取ってしまいすみません。それと支援してくださった方、ありがとうございました。

101魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 21:40:36 ID:ooJj/na2
また規制くらっちまいました。どなたか代理投下お願いします。


 だが両者とも、先の激突により一つの事実を直感的に悟った。
 それ即ち―――


 ……この女、やりやがる。
 確かに全力ではなかった、だが打ち抜く心算で放った一撃だったのは確か。
 そしてそう決めて打ち下ろした拳であった以上は、その結果はそうなっていなければおかしい。
 だが現実にはそうならなかった。相手のアルターの予想以上の堅さを打ち抜くことが出来なかった。
 言うなればそれは屈辱。……そう、あの日に劉鳳に味合わされた敗北の味の再現と同じ。
 無論、負けたなどとは思っていない。今度は必ず打ち砕く、意地でもそうする。
 けれど……

(……手加減できる相手でもねえか)

 本気でぶつかるに値する相手、それがカズマの眼前の女に対する偽らざる評価だった。


 ……この人、かなりの力だ。
 確かに全力ではなかった。だが制限下とはいえ自身の頑丈さには鉄壁に近い自負があった。
 重装型の砲撃魔導師として、長所として磨き上げた誇りとも呼べるものであったはずだ。
 それが危うく屈しかけた。後少しでも力を抜いていれば確実に打ち破られていただろう。
 言うなればそれは脅威。……久しく経験していなかった、自身を脅かすに値する危険性だった。
 だが屈したわけではない。まだ自分には余力もカートリッジという切り札もある。
 それでも……

(……油断は即敗北にも繋がりかねない)

 それだけの力量を有している、それが高町なのはの眼前の男に対する本心からの評価だった。


 ロストグラウンドの反逆者と時空管理局のエースオブエース。
 互いに不屈の信念を持つ両者の初会合による激突とその結果。
 そして抱いた互いへの評価。
 皮肉と言って良いほどに、それは酷く似通ったものだった。
 だがこうして、遂に―――

 ―――遂にこの大地の上で、二人は出会った。



「……NP3228………ううん、君が“シェルブリット”のカズマ君だね?」
「ハッ、だったらどうだってんだよ、本土のアルター使いさんよぉ!?」
 なのはの確認の為のその問いに、威勢よく啖呵を切るが如く返すカズマ。
 彼がこちらを本土から来たアルター使いという情報を早くも掴み認識していたことには驚きだが、まぁそれも今はどうでもいい。
「……漸く、会えたね」
「あん? 何言ってやがる?」
 これまで資料でのみその存在を確認し、是非会って話し合ってみたいと思っていた人物が眼前に現れてくれたのだ。
 それに興味や喜びを覚えないなのはではない。
 だが一方、そんな彼女の心情などはまったく知らず、しかも初対面の強敵だと認識した矢先にそのようなことをいきなり言われてカズマが分かるはずが無い。
 ……ただでさえ、この眼前の女は何故か自分をイラつかせる。その明確な理由を自分自身でも察せられないカズマにとって苛立ちは増すことはあろうと治まることはない。
 さっさとぶっ飛ばす、そう結論付けると共に彼は拳をなのはへと向けて身構える。
 その瞬間だった。

「なのはさん! 大丈夫ですか!?」

102魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 21:42:18 ID:ooJj/na2
 そう叫びながらゾロゾロと今度は車内から眼前の宙に浮いている女と似たような格好をした輩が四人も出てきた。
 こいつらがどうやら君島が言っていた本土から来たアルター使いたちで間違いないだろう。
 ……だが、

「……ガキばっかじゃねえか」

 それも女子供、内二人はかなみとすら大差が無い。
 アルター使いに年齢など関係ないことはカズマとて承知の上だ。向かってくる奴はたとえどんな相手だろうが容赦しない。
 それでも思わずそんなことを呟いてしまうほどに彼は意外な連中の正体に驚いてもいた。
「……君島ぁ、やっぱりこんな奴らなんかにビビッててどうするってんだよ」
 思わず苦々しくそんな呟きを漏らさずにはいられなかった。ガキだと油断することは愚の骨頂であることはカズマとて理解できていたが、それでも相手の正体には思わず拍子抜けせざるをえなかった。
 だがカズマのそんな呟きを聞き漏らさずにピクリと反応した者たちがいた。
 それは当然、そんな風に侮られた彼女たち自身だった。

「……ティア、あたしたち馬鹿にされてるよ」
「安い挑発……でも癪に障るのは事実よね」
 スバルの言葉にティアナも正直にそう返しながら彼女たちはなのはを見上げた。
 先程あの男は自分たちの隊長と全力ではないほんの一瞬とは言えど互角に渡り合った。
 その実力の片鱗は確かに凄まじく、決して侮れたものではない。
 だが自分たちにも機動六課の隊員として、高町なのはの教え子として、JS事件などを潜り抜けてきて成長してきた自負がある。
 毎日毎日、必死になって歯を食い縛り賢明に鍛錬へと身を投じてきた。
 自分たちだって成長してきている、確実に強くなってきている。もうヨチヨチ歩きのヒヨっ子のままではない。
 その誇りが彼女たちに無言ながらもなのはへと告げさせる。

 わたしたちにやらせてください、と……。

 そしてそれは視線からなのはもまた察することが出来た。
 本当に、自信を持った、そして強い良い眼をするように彼女たちはなった。
 確かに敵は強敵、油断のならない相手だ。
 教え子たちを案ずるなら、もしものことがないように戦うのは自分の役目だ。
 それが当たり前だとも思っている。

 けれど、人は成長する。

 それを誰よりも良く知っているのも高町なのはであり、それを否定することは彼女たちにも出来ない。
 そして此処は心配して守ってあげる場面ではない。
 彼女たちの成長を、強さを信頼して、任せる場面だ。
 最初から全てを取り上げるのは傲慢であり、それは彼女たちを信頼していないのと同じだ。
 自分はJS事件の時もちゃんと彼女たちを信頼してきたではないか。
 ならば、ここもまた同じはずだ。
 故に―――

「―――良いよ、貴方達の力を彼に見せてあげて」

 自信を持って、そして不敵に教え子たちへとそう告げた。
 それを聞いた彼女たちもまた、同様に頷いてそれを了承。
 眼前の、カズマを相手に四人は身構える。
 ならばやってやる、そう行為は無言ながらも悠然とそれを物語っていた。
 相手の方も、こちらのその態度から察したのだろう。同じように対峙して身構える。
 なのははそれに手出しを加えない為に後方へと離れて見守ることにした。
 万が一の事態には、早急にフォローに入れるように覚悟し身構えながら。
 それでも今の彼女の胸中は、純真に自らの教え子たちと眼前の強敵の戦いを見入ることに務めようとしていたが。


 そしてカズマも身構えた。

103魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 21:44:08 ID:ooJj/na2
 どうやら先にガキ共がこちらの相手をするような雰囲気だが……上等だ。
 良い目つきをしてやがる、喧嘩をするには申し分の無い意気込みは確かにある。
 女子供、四対一、それらはもはやこの後に及んでその一切が関係ない。
 こいつ等は敵、立ち塞がる壁。
 だったら―――

「じゃあ始めようぜ、喧嘩をよぉ!?」

 ―――この自慢の拳は纏めて全て打ち砕く、ただそれだけだ。


 右腕に装着した鎧のようなアルター。
 それがシェルブリットと呼ばれるカズマのアルター能力。
 背中に三枚の羽根状の突起物があり、それを推進剤のように用いて爆発的な突貫力を生み出す。
「……それがホーリーのデーターベースに残ってた相手の能力」
 典型的なクロスレンジタイプ、自分たちの部隊で言えばスバルと極めて似た能力。
 情報は全てこちらが掌握している、相手の手の内をこちらは完全に把握しているのだから。
 一方で、相手はこちらの魔法をアルター能力と勘違いしており、それですら未だ手の内は分かってなどいない。
 故にこちらは最初から圧倒的なアドバンテージを有しており、相手も慎重に来ざるを得ない。

 ……そう、思っていた時期がティアナ・ランスターにもありましたよ。

 まさか彼女のそんな思考すらも小賢しく思わせるほどに、いきなり迷いも無くあちら側から仕掛けてくるとは思ってもいなかった。
 事前に渡された大事な情報を一部、彼女は失念していた。
 そう、相手が単純とも評せるくらいに考えなしの突撃馬鹿なのだということを……。

 先手必勝。それは喧嘩において当たり前のことであり、細かいことなど気にしていてもそもそも喧嘩など出来もしない。
 故に躊躇い無く、これまで通りにカズマは地面を拳で叩くと共にその反動で高く跳躍。
 そのまま挨拶代わりのまず一撃。

「衝撃のぉぉぉおおおおおおおおおお―――」

 未だ固まったまま、バラけるにも今更遅い連中を相手に、カズマは容赦なくその一撃にて強襲する。

「―――ファーストブリットォォォオオオオオオオオオオオオオ!!」

 背にある三枚の羽根状の突起物、まずそれが一枚弾け飛ぶと共に、そこから圧縮されていたエネルギーが噴出され、勢い良く彼女たちへと叩き落すべく凄まじい速度にて強襲。
 威力も速度も、先程なのはが防いだ先の一撃の比ではない。

「さ、散開ッ!」

 見ただけでそれは充分過ぎるほどに理解できた。
 故に、ティアナがそう叫び切るよりも早く全員がその場を動いていた。
 何とか全員、その場を飛び離れるも無人となったそこにそのまま勢い良くカズマの拳は振り下ろされた。
 瞬間、轟音と衝撃が地面を抉り陥没させる。
 バリアジャケットを着ていても、防御もせずに喰らえばただでは済まぬ一撃であることは瞬時にこの場の全員が理解できた。
 ……尤も、理解できたはイコールで臆することではないのだが。

 朦々と上がる土煙の中、カズマは地面より拳を引き抜きながら瞬時に左側方へと振り返り拳を構える。
「はぁぁぁあああああああああああ!!」
 地面を削るような勢い良く滑走する車輪の音とその叫び声と共に、土煙を突っ切ってスバル・ナカジマが拳を振り上げて襲撃を仕掛けてきたからだ。
 予想通りの展開、故に迎え撃つ。それがカズマのやり方だ。
 ましてや拳のぶつけ合いをしてこようというのなら、それは望むところ。
「らぁぁぁあああああああああああ!!」
 相手が打ち込んでくる拳に合わせて、そこにピンポイントでカズマも返し、拳をぶつける。

104魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 21:45:46 ID:ooJj/na2
 俺とテメエ、どっちの拳が強えかまずは一勝負ッ!
 そんな思いと共にぶつかり合う、シェルブリットとリボルバーナックル。

 火花と轟音を響かせながら、打ち勝ったのは――――――カズマ。

「おらぁぁあああああああああああああ!!」
 雄叫びと共に、押し負かし土煙の向こう側へと再びスバルを吹き飛ばすカズマ。
 次の瞬間には、そのまま地面を拳で叩き再び宙へと跳躍。
 直後、今まで彼がいたその場を切り裂くように突っ切る閃光。
「―――え?」
 それをやった当人―――エリオ・モンディアルは必殺の瞬間を逃し槍が空を切った現実を信じられずに呆然とそんな呟きを漏らしていた。
 だがそこへ再び着地したカズマは逃すことなくエリオを掴むと同時に、勢い良く今度は向きを真後ろへと変えて放り投げる。
 その瞬間に、
「確かに速え……でも足りねえよ」
 相手にもハッキリと聞こえるように耳元でそう言ってやりながら。
 弾丸のように勢い良く、エリオは放り投げられその進行方向にいた少女に向かって飛んでいく。

「―――なっ!?」

 クロスミラージュを構えていたティアナ・ランスターは予想外の事態に回避もままならずに少年と激突し吹っ飛んで行った。
 それを確認しながら、カズマはそれを追撃するべく駆け出した。

 一連の土煙の中での攻防、カズマは野生の勘とも呼べそうな驚異的な察知と身体能力に物を言わせたごり押しで見事に押し勝った。
 スバルが仕掛けてくるのは音と喧嘩の場数で踏んだセオリーで容易に予想ができ、得意の力技で押し切った。
 直後のエリオの不意打ちは大部分が勘だった。だがクーガーや劉鳳の真なる絶影などの速度を身を持って体験しているカズマには反応できないものでもなかった。
 最後の背後のティアナについては、まぁこそこそと背後から狙ってくる奴というのは何処にでもいるものだ。予想通りに試しにやってみたら案の定いやがった。
 そして二人纏めて直撃し吹っ飛んでいった。後はトドメの追撃を仕掛けるだけ。
 そう思いながら、土煙を突っ切ってカズマは二人を追い―――

 ―――瞬間、目の前に降り注ぐ炎に驚き急ブレーキを掛けざるを得なかった。

「―――んなっ!?」
 と驚きながら真上から降り注いできたソレを見上げれば、なんと上空には最後の一人であるキャロ・ル・ルシエが相棒である巨大化したフリードリヒの背に乗りながらカズマの侵攻を防ごうとしてくる。
 正直、かなみと歳も変わりそうに無い少女というのはカズマにとって最も殴りづらい相手だったが、

「アルターの方になら問題ねえだろうッ!?」

 飛び上がり、フリード目掛けてカズマは拳を突き込んだ。
 それをおいそれと喰らってやる義理も無いフリードは迎撃のブラストフレアをカズマに向けて放つ。
 だが―――

「温ぃんだよぉぉぉおおおおおおおおおおお!!」

 物ともせずに炎を拳で切り裂きながら向かってくるカズマ。その勢いは衰えの陰りすらも見えはしない。
 あわやそのまま炎を突っ切り、カズマの拳が飛翔する竜へと届かんとしたその時だった。

「リボルバァァァァァァ―――」

 ウイングロードを展開しながら颯爽とその横合いから駆けつけたスバル。
 そしてカートリッジロードと共に形成された魔力は、

「シュゥゥゥゥトォォォオオオオオオオオオ!!」

105魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 21:47:29 ID:ooJj/na2
 思い切りカズマへと叩きつけられ、彼を吹き飛ばした。
「キャロ、大丈夫!?」
 慌ててそう尋ねてくるスバルに、キャロは間一髪の事態であったことなどもあり、やや呆然としながらも肯定の問いを恐る恐る返した。
「……そっか、よかった〜」
 安堵の吐息を盛大に吐き肩を落としたスバルに、キャロも改めて礼を返そうと口を開きかけ、

「撃滅のぉぉぉおおおおおおおおおおおおお―――」

 瞬間、聞こえてきた相手の言葉に瞬時に緊張しながらそちらへと振り返った。
 視線の先には吹き飛ばされていたカズマが立ち上がり、跳躍しながら再びあの先制攻撃の時と同じ一撃を放とうとしてきていた。
「キャロ、直ぐに離れて!」
 スバルが慌てたように叫びながら、迎撃する心算なのか身構えて彼へと振り向いていた。
 自分に何か出来ることは、そうキャロも思ったが今からでは何も間に合わず足手まといにしかならぬことを痛いほどに悟る。
「―――フリードッ!」
 だから邪魔だけはしないよう、足枷にはならぬように自身が使役する竜へとそう命じてこの場から全速力で離れる。

「―――相棒ッ!」
『―――All right』

 キャロという憂いが無くなった以上、スバルはもはや全力を出し切ることに厭わない。
 だからこその切り札を、相棒に命じて発動させる。

「―――フルドライブッ!」
『―――Ignition.』

 瞬間、盛大に展開されるカートリッジロード。
 それは即ち、己の切り札を出し切ることの、全力全開で立ち向かうことの表明。
 叫びと同時、展開される近代ベルカ式の魔法陣。
 そしてマッハキャリバーより発現する翼。
 ウイングロードを真っ直ぐに向かってくる相手へと定めながら―――

「ギア――――エクセリオンッ!」
『―――A.C.S. Standby.』

「セカンドブリットォォォオオオオオオオオオオオオ!!」

 互いに照準を合わせた弾丸の拳をぶつけ合うべく駆け出した。


 二度目の拳のぶつけ合い。
 今度は互いに掛け値なしの全力の一撃同士。
 その衝撃は先の激突の比ではなかった。
 震動・衝撃・轟音・明滅―――超常のエネルギーのぶつかり合い同士は周囲に激しくそれらを伝播させながら、拮抗を打ち破るべく互いに踏み込み合う。
 何ものをも打ち砕くための反逆の拳。
 何ものからも守るべき存在を守る為の不屈の拳。
 そのぶつかり合いの結果は―――

「―――何ッ!?」

 焼き直し……になることはなく、ほんの僅かながらもスバルの拳が押し返した。
 そのままウイングロードの足場に着地しながらも蹈鞴を踏むカズマに、続くスバルの急襲が降り注ぐ。
 交錯すると同時に次々に殴りかかられ、反応することも出来ずに殴り飛ばされ続ける。
 小娘の思いも寄らぬ猛攻に、カズマはぶち切れるよりも歯を食い縛りながら獰猛に笑う。
「上等だッ! どんどん来やがれッ!」
 そう思い次の瞬間にも殴られるも、カズマはその不敵さを収めない。

106魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 21:50:07 ID:ooJj/na2
 スバルの動きに翻弄され、まるで反応できていない。我武者羅に振り抜く拳は空を切るばかり。
 だがそれでも、

「倒れねえよ……んな温い拳で倒れられっかよ!?」

 まったくもって手緩い。小手先の連撃などただでさえタフなこの身に効くはずもない。
 来るなら、仕留めるなら、デカくてキツイ切り札を持って来い!
 そう叫びながら、カズマはウイングロードを叩き再び跳躍する。
 それを追いかけ真っ直ぐに伸びてくる水色の道。其処を駆け抜けながら覚悟を決めたのか正面から漸く相手も仕留めにかかりに来るようだ。
 そうだ、それでいい。それならこっちも正真正銘、最後の一撃だ。

「抹殺のぉぉぉおおおおおおおおおおお―――」

 そしてスバルも覚悟を決める。
 何度殴り飛ばそうと、何度倒れてくれるよう願ってもこの男は倒れない。
 バリアジャケットを纏っているわけでもない、正真正銘の生身でありながら自分以上のタフネスさを誇っている。
 だからこそ、小手先の連打などどれだけ打ち込もうと、この男は倒れない。
 倒れずして立つ男を倒すにはどうするか?……そんなものは決まっている。
 問答無用で倒れざるえない全力全開の一撃をぶつけてやる。
 それも真正面から、それ以外にこの男を倒す方法は自分には無い。
 だからこそ、ウイングロードの道先を男の正面に真っ直ぐ合わせてスバルは駆ける。
 応える様にカズマは背中の最後の羽根を使っての全力の一撃にかかってくる。
 だからこそ、最大最強の一撃でこちらもまた応えるだけだ。

「一撃ッ……必倒ォォ!」

 残るカートリッジの全てを引き絞り、拳の前面に形成させた魔力を疾走しながら相手へと向けて身構える。
 最後の羽根を推進剤に遂にカズマの拳がスバル目掛けて向かってくる。
 スバルもまた迎え撃つためその拳を同じくカズマ目掛けて突き込んで行きながら―――

「ラストブリットォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「ディバィィィン……バスタァァァアアアアアアアアアアア!!!」

 ―――最後の拳のぶつかり合いが発生した。


 一度目はカズマ。
 二度目はスバル。
 ならば互いに後が無い、決着をつけるべきのこの三度目は?

「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「はぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!」

 大気を揺るがすほどの雄叫びも、押し込むべき肝心の拳も。
 意地も不屈の信念も。
 全て両者はどちらも譲らなかった。
 故に―――

 此処から先は、限界を超えたもの勝ちだ。
 そしてスバルは全力の切り札、エクセリオンモードを出し切った。
 だがカズマには……まだ限界の先の力が残っていた。

「シェルブリットォォォオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 叫ぶと同時、カズマの右腕を覆うアルターは更なる進化を遂げる。
 より厚く、より鋭角に、より強く。
 背中からは三枚の羽根に変わり、一つの尾が出現しローターの回転のように回りだす。
 それに呼応するように、右手の甲が開き更なる輝きを増していく。
 強大な力がカズマに集まっていくのがその場の全員に理解できた。

107魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 21:53:46 ID:ooJj/na2
 だが当人―――カズマにしてみれば、これだけではまだ足りない。
 そう、もっとだ! もっと、もっと、もっと―――

「―――もっと輝けぇぇぇええええええええええええ!!」

 叫ぶと同時、黄金の輝きを放つカズマの進化した拳が、遂にスバルを振り切った。
 その敗北はスバルにとって驚愕であると同時に……無念でもあった。
 何かを最後に叫ぶよりも早く、輝く光と衝撃に吹き飛ばされスバルは意識を失った。


「……さて、最後はアンタ一人だぜ?」
 そう不敵に言うものの実際は肩で息をしているのがカズマの現状であり、それは相手からも察せられるほどに明らかなものだった。
 実際、シェルブリットの第二段階を前座と思っていた相手に使わざるを得ないとは予想だにしていなかった。
 全力全開、その先にあるものから引き出してくるあの力はその代償として容赦なくその身を蝕んでくれる。
 その疲労は馬鹿に出来たものでなく、洒落にもならないのが現状だった。
 事実、あの時は一瞬こそ出したものの、なのはを前に見上げるカズマはアルターを解除した状態だった。
 もう一度アルターを発現し戦闘……とてもではないが、相手のなのはの方がカズマにそんな余力は残っていないだろうと思っていたほどだ。
 無論、やられた教え子たちの無念は晴らしてやりたい……が、ボロボロの相手を前に私怨をむき出しに私刑紛いの事を行う倫理観をなのはは持ち合わせていない。
 幸いにも、四人には大した怪我は無い。スバルが気を失っているがそれは大事に至るものほどではないことは確認済みだ。
 それらを踏まえ、そして物資輸送の護衛の任務に必ずしも相手を殲滅する必要性がない以上、ここで彼が諦めて引き下がってくれさえすれば撃退したと言う名目は立つ。
 手打ちはソレで充分のはず、これ以上不毛な争いを続ける必要などないはずだ。
 むしろ逆だ、なのははカズマと戦いたいのではない。カズマと―――

「ねえ、争いはもう止めにして少しお話しないかな?」

 対話、それが彼女がカズマへと望んだことだった。
 だが―――

「ハッ、絶対にノゥだ! ホーリーのアルター使いなんぞと話すことなんざこちとら何もねえよ!」

 獰猛に、不敵な獣の笑みを見せての拒絶だった。
 だが一度や二度の激しい拒絶くらいで引き下がる高町なのはではない。
 どんなに拒絶されようと、お話を聞いてもらうために何度も食い下がる。意地でも退かない、それが高町なのはのやり方だ。
 当然、カズマがなのはを受け入れることなど欠片も無い。理由は分からないが、コイツと会話をするだけで何故か分からぬ苛立ちが沸々と湧いてくるのだ。

「どうして? 私は君と争う心算なんて―――」
「テメエがホーリーだって時点で俺にはあり過ぎるんだよ! ゴタクなんざ結構だ、語るってんなら拳でやってやるよ!」

 ―――だからやろうぜ、喧嘩をよぉ!?

 相も変わらず、カズマがなのはに突きつけてくる欲求はただそれだけであった。
 そこに譲る気持ちなどあろうはずもない。只管に眼前の相手は頑なで意地っ張りであった。
 だが繰り返すがなのはにはボロボロのカズマと戦う戦意などもはやない。
 ただどうしてそこまで頑なに彼がホーリーに逆らおうとするか、自分たちと戦おうとするのかを話し合って聞きたかっただけだ。
 それはカズマにとっては苛立たしく、火点きの悪い行為以外の何ものでもない。
 それこそもはやこの茶番すらも打ち切って、問答無用で殴りかかりたいのが本音だ。
 それを思いながらも実行しない理由は……生憎と、カズマ自身にもそれは分からない。
 無抵抗な女に殴りかかる、無意識にもそんなことに負い目を感じているのかもしれない。
 だからこそ、なのはがやる気になってくれないとカズマも相手へと殴りかかれない。
 このままでは埒が明かない、だからこそ仕方なく取った手段がこれだった。

108魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 21:56:05 ID:ooJj/na2
「そんなに俺と話がしてえなら、力づくで話を聞かせてみろよ」

 挑発の蔑笑と共に言ったカズマのその言葉に、ピクリとなのはは反応した。
 力こそがこの大地のルール。だからこそ、誰にも縛られない自分を縛りたいと言うのならそのルールに則ってかかって来い。
 そういう意図で告げたのだが、それはなのはにとって自身の心境を揺さぶられると言っていい提案だった。

 どうしてお話を聞いてくれないのか、それに悩んでいた相手のあからさまな拒絶に戸惑っていたなのはだが、相手のその言葉には思うところもあった。
 力づくで従わせる、などという方法は彼女にとって最も好まぬ方法だった。
 自らの意志で互いに歩み寄っての対話、それを望んでいた彼女にとっては乗る気にもなれない提案だ。
 それでも一方で、己の過去においても話を聞いてもらうために実力行使に出ざるを得なかった場面というのが何度かあったのは確か。
 フェイトの時もヴィータたちの時も、結果的には争わざるを得ない、良い悪いに関係なく、互いに退けぬ理由があったからこそぶつかり合うしかなかったこともあった。
 あの時のあれらの選択、あれらの戦いをなのはは後悔していない。あれは必要であったが故の、本音をぶつけ合うために必要であったからこその戦いだ。

 ……じゃあ、目の前の相手もそれを望んでいるのだろうか?

 喧嘩と言い切り、そちらの都合をぶつけて来る強引なやり方。お世辞にも褒められたものだとはいえない。
 だが彼女たちの時と同じように、この男もまたそういう引けに退けない理由がないとも限らない。ただ戦いだけを楽しんでいる、などということはないはずだ。
 きっと彼にも背負っているものがある、守らなければならないものがある。
 その為にも、話し合いには乗ることが出来ない。
 だからこそ、相手は戦いの中で本音を語り合う方法を望んでいるのかもしれない。
 ならば、不器用な自分がそれを聞き届けるには、それに応える以外にないのだろうか?
 ……本当に、悪魔らしいやり方でしかお話を聞いてもらうことは出来ないのであろうか?
 分からない、こちらが望んでいるのは対話。でもあちらが望んでいるのは闘争だ。
 致命的に違うのに、行き着き先には同じモノが待っている。
 その矛盾はジレンマとなりなのはの胸中を蝕む。
 それでも相手は早く決めろと決断を促がす、こちらと戦えと促がしてくる。
 それは自分がホーリーであり、彼がネイティブアルターである限り、変わらないことなのだろうか。

「迷ってんじゃねえ! そうと決めたことがあるんなら、迷わずそれを為せるように行動しろってんだ!」

 遂にカズマが苛立ちも顕に怒鳴ってくる言葉に、なのはは葛藤から引きずり出されハッとなる。
 迷うな、その強い言葉は確かに今の自分が欲しているものだったはず。
 精神面で弱くなり、戸惑っていた彼女が揺らがぬように欲していたはずの断固たる決意の言葉。
 それを言われて、彼女は漸くに覚悟を決めた。

「私は……君とお話がしたい」
「だったら力づくで実行しやがれ、ホーリー野郎!」

 その拒絶の言葉は次には気持ち良い位に清々しく響いた。
 いいだろう、好みじゃないがそれが必要だと言うのなら……もう迷わない。
 郷に入れば郷に従え、それが此処のルールであり、自分が彼の憎むホーリー隊員でしかないのだとすれば、

「……分かったよ、それでいい」

 今はそれを目一杯に演じきろう。悪魔らしいやり方で、話を聞いてもらう機会を勝ち取る。
 自分が失ってしまった強さにも、それは通じるはずだから。
 だから―――

「おいで、反逆者(トリーズナー)。―――遊んであげる」

 その目一杯の不敵な宣戦布告に、カズマはそれこそ呆気にとられ一瞬ポカンとしながらも、すぐに言葉の意味を悟ると共に。

「上等だぁ、テメエぇぇぇえええええ!!」

 獰猛な笑みと共に、シェルブリットを纏った拳で襲い掛かった。

109魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 21:57:57 ID:ooJj/na2

 なのはがその身を守るように周囲に無数に展開している桜色の光弾の数々。
 それが彼女のアルター能力、詳細は不明だがあの橘あすかの“エタニティエイト”と似た能力なのだろうか。
 なのはと初めて摸擬戦を行い対峙した瞬間、一見して劉鳳はそう思考した。
 そして皮肉にも、カズマもまたこの瞬間、彼女と対峙した時にそう考えた。
 宿敵同士、まったく関係ないところでも同様の考えへと至るその皮肉。

 ……ただし、その思考の次に選んだ行動はまったくの対極であったが。

 劉鳳はまずは相手の能力を把握すべくに、慎重に絶影に隙を見て襲撃を窺わせながらの待ちの姿勢を取り、

「衝撃のぉぉぉおおおおおおおおお―――」

 カズマは考えなしにとりあえず攻めるという姿勢を選んだ。
 近づいて殴る、それがカズマの攻撃方法であり何よりも譲れぬスタンスだ。
 どんな相手だろうが、それを変える心算は無い。
 だからこその先手必勝、先制攻撃を取ろうとしたのだが……

「……駄目だよ、それじゃあ隙だらけだよ」

 宙に跳び拳をこちらに構えてくる相手になのはは瞬時にその光弾を十発、相手に容赦なく叩き込む。
 確かにカズマの攻撃は強力だ。だが幾度の死線を潜り抜けてきた歴戦のエースオブエースである彼女からすればモーションの隙が大きすぎる。
 それではつるべ撃ちの格好の的でしかない。
 事実、桜色の光弾は次々と拳を振り上げようとしているカズマの全身に叩き込まれていく。
 それを回避も防御も出来ずに、カズマは為す術も無く直撃し続ける。
 ―――尤も、

「ファーストブリットォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 どれ程撃ち込まれようともまるで問題にもしないという勢いで、そのまま突撃してくるのが“シェルブリット”のカズマの所以だったのだが。

 だがそれはなのはにとっても承知の上、先程の戦いでスバルがあれだけ打ち込んでも倒れなかったほどの驚嘆的タフネスさを誇る相手に錬度・精度を高める為に威力を搾ったシューターを十数発撃ち込もうとも倒れるはずがない。

(やるならバスター……それも取って置きの一発でも直撃させない限り彼は倒れない)

 それは理解している、だが直射型の砲撃魔法にはどうしても溜めがいる。
 いくらなんでもそれを許してくれる相手でもない。
 だからこそまずは―――

「―――レイジングハート!」
『―――Load Cartridge.』

 突撃してくるカズマの拳、それを受け止めるべくなのははプロテクション・パワードを発動。
 カートリッジを用いて上乗せした障壁の強度は見事にカズマの拳を受け切る。
「……しゃらくせぇッ!」
 カズマはそれを打ち破らんと先程までと同様に更に拳を押し込もうとしてくる。
 しかし、それになのはは、

「綱引きだけが戦いじゃないよ」

 そう告げると共に、フラッシュムーブを発動し一瞬で側面に移動。
 当然、ぶつかっていた対象を失い、勢いを殺しきれずにそのまま拳が空を切るカズマ。その表情にはいきなりの事態に驚愕が走っていた。
 だがそれは当然、なのはにとってはがら空きの致命的な隙でしかない。

110魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:00:51 ID:ooJj/na2
 レイジングハートの照準をカズマに合わせ、瞬時に再び形成された数十の魔力弾が一斉に彼へと向かう。
『Accel Shooter.』
 デバイスから発せられたその音声の直後、全弾がカズマの身へと直撃する。
 流石に堪えたのか、呻き声を上げながら落下していくカズマだがこちらを振り向き睨むその眼は陰りを見せない苛烈なものだ。
 彼の憤慨が分からないわけでもない。こちらは平然と力比べに乗ると見せかけ一方的に放棄した。
 綺麗や汚い云々を戦いに持ち込むほど彼女はアマチュアではない。無論、自ら長所の比べあいを放棄した自身の選択を全面的に肯定するわけではないが。
 だが彼女はプロだ。プライドよりも重視すべきことがあり、勝ちを取りに行くための戦いに拘りなど持ち込みはしない。

「撃滅のぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお―――」

 蹈鞴を踏みながらの着地直後、再びカズマは二枚目の羽根を爆発させての拳の一撃をこちらへと向けてくる。
 その姿勢は愚直とも言えるだろう。なのはの個人的な心情としては好ましくも感じる。
 けれど、これとそれは別。

「セカンドブリットォォォオオオオオオオオオオオオオ!!」

 叫びと同時、再び弾丸と化し向かってくるカズマの拳。
 シェルブリット……正にその名称通りに彼の拳は銃口から発射される弾丸と同じだ。
 だがそれ故に、その軌道はなのはたちが魔法で扱うような例外を除けば決定されているも同じ。

「つまりは直線……それが分かっているなら」

 回避はそう難しいことではない。
 事実、その指摘通りに迫る拳をなのははかわしてみせた。
 そして放たれた弾丸はそこで止まる事もできずにそのまま飛んでいくしかない。
 当然、ここでもなのははすれ違い様に再び形成した魔力弾の群れをカズマへと叩き込む。
 全て的確に、無駄なく、効率的になのはの攻撃は続いていく。
 まるでそれは傍から見ている者からすれば詰め将棋、一方的なワンサイドゲームでしかなかった。


「………ちょこまかちょこまか飛び回りやがって……ッ!」
 挙句に針で刺すみたいな手緩い攻撃を何度もぶつけてくるだけ。
「………そんなんじゃなぁ・・・何度ぶつけられたって……」
 倒れやしねえぞ、と叫ぼうと口を開きかけるもカズマはそれが出来なかった。
 その理由は簡単だ。今の彼の姿を見れば明らかとも言える。
「随分と、お疲れみたいだね」
 その相手の忌々しい指摘の通り、カズマは肩で息をして立っているも辛いと明らかに思わせるほどにふらふらだった。
 実際、手緩い攻撃であり何発喰らおうとも倒れない、そう豪語したカズマの意見は正しいようで間違ってもいた。
 確かに一撃一撃のシューターには彼を昏倒させるだけの威力は無い。
 だがそれを何十発も間髪入れずに喰らわされれば?……それはまた違ってくることになる。
 塵も積もれば山となる、などとも言われるがボクシングでもボディに喰らい続ければ疲労とダメージは無視できぬほどに蓄積される。
 ましてや彼女が扱うのは正に人を倒す目的を持って扱われる魔法だ。常人の拳の比ではない。
 そしてそれには非殺傷設定という効果も一役買っていた。
 時空管理局の魔導師にとって非殺傷設定の魔法とは決して手加減の事を指さない。
 むしろ直接的に魔力ダメージを内部に浸透させるソレは、暴徒鎮圧などの役割において充分過ぎるほどに効果を発揮する。
 簡単に人を昏倒させることだけを目的とするならば、むしろ非殺傷設定の方が容易であるのも確かだった。
 何よりも全力を込めても相手を死に至らせる危険性は限りなく減少させている。ソレは高町なのはなどの非殺傷設定を絶対に対人において解除しないという信念を持つ者からすれば気兼ねの必要も無くなることを意味する。
 故に彼女は容赦なく、手加減抜きで彼を相手に魔力弾を叩き込み続けた。
 なまじ頑丈さに自負があり、手緩い攻撃と防御を怠ったカズマ自身の選択も合わさり、遂に先の新人たちとの戦闘も合わせて無視できぬだけのダメージが蓄積されてしまったのだ。
 傍から見てもこの現状、もはや勝敗は明らかだった。
 故に―――

111魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:02:13 ID:ooJj/na2

「そろそろ、お終いにしようか」

 ―――彼女もまた改めてそう告げてきた。


「……おいおい、圧倒的じゃねえか」
 その様子を君島邦彦は見ていられないと頭を抱えながらも、どうすることも出来ずに物陰に隠れて見ていることしかやはり出来なかった。
 カズマが派手に喧嘩をし始めたのは離れていても響いてくる振動や轟音から直ぐに察せられた。
 失望され、相棒の資格を失ったとはいえそれでもカズマを見捨てることなど君島には出来なかった。
 故に、恐る恐ると言った様子も露わに戦場へと足を運んだのだが……

 そこで見たのは、やはり絶望的な光景でしかなかった。

 空を飛ぶ白い服に杖を持った、自分たちよりも僅かばかり年上の女。
 充分に美人と評されて良いほどに見目麗しくも思えるが、君島にとって彼女は悪魔のようにしか映らなかった。
 それは恐らく戦っているカズマ当人の方が尚更にそう思えたことだろう。
 本土から来たアルター使い、十中八九それで間違いないその女はまるでカズマを子ども扱いでもするように圧倒していた。
 尽く果敢に繰り出すカズマの拳すら、彼女は嘲笑うかのように簡単に避けて自らの攻撃を次々と彼へと撃ち込んでいく。
 それも表情一つ変えることなく淡々としたように、だ。
 カズマを圧倒しているその光景とも相まり、それは君島からすれば正に悪魔の如き所業であり、強さだった。
 あんなものロストグラウンド中のアルター使いを集めてきたところで勝てるとは思えない。
 正直にそう思えるほど、君島はその白い悪魔に恐怖を覚えていた。

 ……それでも、それでもカズマなら。

 そう、一縷の望みを戦いを見守りながらも抱かずには、期待せざるをえなかったのだが、それすらも段々と絶望に変えられるだけだった。
 もう何十発、或いは百発近く撃ち込まれたのではなかろうか。それ程にボロボロなカズマの姿とは対照的に、女の姿は涼しいほどに無傷そのもの。
 それも当然か、君島が見る限りでもカズマの拳は一度たりともあの女には届いていなかったのだから。
 それでも、一撃でも拳が届きさえすればカズマならばそこから逆転してくれるはずだと、そんな希望をこの期に及んでも君島は持ち続けようとした。

 ―――無情にも、次の瞬間には冗談みたいなレーザー砲紛いの一撃にカズマが吹き飛ばされるまでは……

 そして、そこから再び立ち上がる様子を見せないカズマを見て、遂に君島の最後の希望は絶望へと変えられた。



 そろそろ頃合だ。
 仕留めにかかるには充分過ぎると見計らい、なのはは改めて降服勧告をカズマへと促がす。
 尤も返ってきたのは、

「………上等…だッ!……やれるもんなら、やって…みやがれッ!」

 不屈とも言って良いほどに変わらぬそんな反抗の姿勢だったが。
 反逆者、開戦前に相手を思わずそう呼んでいたが、この男は事実その言葉通りの男だった。
 決定的に倒されなければ……否、或いは倒されても、この男は絶対に折れない。
 それが交戦してみて改めてカズマに対して抱いた印象だった。
 それはある意味においても力強く、気高くさえも感じられる。
 ……正直、羨望を覚えないわけでもない。
 或いはそれは失くしてしまったものへの郷愁だったのかもしれない。
 かつては自分もこの眼前の男と同じような時期があった。ただ我武者羅に、自身の信念だけを迷わずに、真っ直ぐに貫こう。
 そうやって空を翔けようとした頃が確かにあった。

112魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:04:06 ID:ooJj/na2
 でもそれはもはや今の彼女には無い。まだ残っているのかもしれないが、本人が思っているほどにあるわけではなく、それならば失くしてしまったのと同じだ。
 何故、それが無くなった?……そんなのは決まっている。

 ―――大人になったからだ。

 少なくとも、社会で生き適応できる身の振り方を身に付けた。
 出来る事と出来ない事を明確に線引きし、限界を定めた。
 諦めという物の分別もまた覚えたのはこの頃だ。
 手にできるモノと手から取りこぼせないモノを定めて、それだけは守り抜こうと固く誓った。
 自身の掌の大きさを自覚した……恐らくは言ってしまえばそういうことだ。
 それに後悔は無い……否、抱けないし抱いてはならない。
 それで手に入れたものがあった、それで守り抜いたものがあった。
 それらを否定する行為だけは、絶対にしてはならない。
 少なくとも、現在に幸せを感じているのだ。そしてそれを守り抜きたいのだ。
 ならばこそ、自分はそれで良いと思う。

 ―――でも、この男は違う。

 言ってしまえばこの男は自分勝手であり、それは我が儘だとそのまま表現できる。
 我慢を知らず、規律を守れず、調和を乱す。
 マイナス面が顕著とも言えるほどに、一見すれば言い方は悪いが……クズだ。

 それでも、少なくとも彼は自分に嘘を吐いていない。

 正直だ、渇望して、執着や奪取に躊躇いを見せない。
 そして諦めと言う行為すら絶対に受け入れず、立ち向かう。
 自身を抑え付けない、限界を定めない、抗うことを決して止めない。
 純然たるアウトローの生き方、決して褒められるものでもない。

 ―――けれどそこには、確かな輝きが存在した。

 その輝きは力強くて眩しくて、自分では決して手に入れられないものだとはっきりと自覚させられる。
 だからこそ、きっとこんなにも惹かれてしまうのだろう。
 羨ましい、それを正直に認めてしまうことが出来る。
 でもそれでも―――

「―――それでも、私と君はやっぱり違うから」

 親近感を抱き、憧れるものを持っている。
 それでも自分たちは生き方も生きるべき場所も違う。
 譲れない、目指すべき場所が悲しいほどに異なる。
 だから―――今は倒す必要がある。
 その後に改めて、歩み寄れる限界ギリギリの部分まで見極めるために話し合おう。
 そのお話を聞いてもらうために、これしかないのなら。
 私は躊躇わずに、悪魔らしいやり方でも君を倒す。

 その決意と共に、なのははレイジングハートを眼下のカズマへと向けカートリッジロード。
 決定的な敗北を相手に与えるために、敢えて彼女は彼へと告げる。

「此処からは小細工なし……お互い、全力全開の比べあいだよ」

 言うなれば挑戦状、真っ直ぐ逃げずにかかって来いと相手のプライドを逆手に取った退路を断つためのそれは布石。
 そして今までのこの相手の言動を見る限り、その性格上必ず―――

「いいぜ! やってやろうじゃねえか!」

 ―――その誘いに乗った。
 カズマは了承の叫びを挙げると同時に拳を構える。

113魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:06:26 ID:ooJj/na2
 その拳を必ずに弾丸と化してこちらへと撃ち込む為に。
 だがそれは彼女もまた同じ。無敵を誇る、誇りとも呼べる砲撃を持ってそれを迎え撃つためにこれまでやってきたのだ。
 だからこその、此処から先は真っ向勝負ッ!

「抹殺のぉぉぉおおおおおおおおおお―――」
「ディバィィィィィィィィィィィン――――」

 最後の羽根が砕け、カズマの渾身の拳が爆発を伴いながら弾丸と化してなのはを強襲する。
 飛んでくるカズマ、自ら射線に突っ込んでくる相手に躊躇い無く彼女は最強の魔砲を解き放つ。

「ラストブリットォォォオオオオオオオオオオオオオ!!」
「バスタァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 弾丸と化したカズマを拳どころか丸ごと、桜色の奔流は包み込む。
 それを突っ切り、必死に届かせようと拳を相手に向かって突き上げ続けるカズマ。
 だが遂に―――

 ―――反逆の拳は不屈の魔砲に吹き飛ばされた。


 轟音と共にかなり距離の離れた岩まで吹き飛ばされ、叩きつけられたカズマを確認して漸く彼女は己の勝利を確信した。
 傍から見れば彼女はノーダメージ、一見すればこの結果は完勝だ。
 しかし本人からしてみれば、辛勝もいいところだった。
 実際、上手くいったから良い様なものの事実は綱渡りも良いところだった。
 正直に言って二人の間の力量はそれ程かけ離れたものではない。
 むしろ現状ならば、カズマはなのはを僅かばかりほど上回っていたはずだ。
 何故なら彼はエクセリオンモードを解放したスバルを相手に真正面から打ち負かしていたのだから。
 リミッターを課せられている高町なのはと、エクセリオンモードを解放したスバル・ナカジマ。
 この状態の両者ならば、力において上回るのは後者のスバルだ。
 なのは自身、それは正直に認めているところではあるし、スバルがなのはを打ち破れる可能性もまた高い。
 ならばそんな状態のスバルを倒して見せたカズマに、何故リミッターを付けたままのなのはがこうまで一方的な展開を見せ付けることができたか。
 そこは間違いなく、地力の差だった。
 本来ならば幼少時より弱肉強食のこの無法の大地で生き抜いてきたカズマの経験は常人の比ではない。
 だが十年もの歳月を過酷な様々な戦場、それも最前線で戦い抜いてきた高町なのはの経験は決してソレに劣るものでは無い。
 たかが小娘の十年、そう侮るなかれ。
 エースオブエース、無敵や不屈と称されるその経歴は決して伊達ではない。
 最前線の戦闘経験、そして自他共に含める最高峰の鍛錬、その双璧の壁の厚さは、持つ抽斗の多さはそう簡単に他の追随を許さない。
 だからこそ彼女は終始相手にペースを握らせない、土俵では戦わせない搦め手に徹した。
 プライドを押し殺し真正面からの戦闘を避け続け、ヒットアンドアウェイを繰り返す。
 そして蓄積され、無視できぬだけの疲労が溜まったのを確認してから、相手の退路を断ったチェックメイトを掛ける。
 多種多様な能力性を持ちながらも、個人のもの自体は単一性の能力であるアルターと、状況によって切り分けのきく多様性の魔法という相性の良さもあった。
 それら全てを踏まえての実践しきってみせた逃げ切り、この結果は正にそう言えた。
 だが例えどうだろうとも、

「……私の勝ちだよ、カズマ君」

 これで漸くにお話を聞いてもらえる。
 今の彼女が確信を持って考えていたのはそれだけだった。

 だが―――

114魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:07:55 ID:ooJj/na2

 まったくもってボコボコだ。
 一方的に嬲られて、一発もこっちは相手を殴れない。
 ストレスが溜まる以上に、訳がわかんねえ。
 コイツは何だ? 悪魔か何かか?
 ……屈辱? ああ、その通りだ。こりゃあどう考えてもかつてない屈辱だ。
 これと同じほどのモノを味わったのはいつだ?……んなの、決まってる!

 ―――劉鳳、あのクソムカつくホーリー野郎に初めて負けた時だ。

 負け知らずだったこっちを一方的にボコりまくって、こっちのチンケなプライドをズタズタにしてくれた。
 挙句の果てには、俺なんて眼中に無いともきやがった。
 ふざけんじゃねえぞ、この“シェルブリット”のカズマを舐めんじゃねえ!
 テメエが俺を眼中にも入れるつもりが無えってんなら、俺が無理矢理にでも入ってやるだけだ!
 無視できないように、その胸に名を刻ませてやるだけだ!
 プライドをズタズタにされて、ボコボコにされたままのやられっぱなしで誰が終わるかってんだ!

 ……それはなぁ、本土のアルター使いさんよぉ……テメエも同じだ!

 借りは返す、それも倍返しのオマケ付きで、だ!
 やりたい放題やりやがって、ずっとテメエのターンってか?
 ……ハッ、ざけんなよ! 今度はこっちの番だ!
 もう容赦しねえ、ぶち切れたぞ、躊躇わねえぞ。
 テメエだけは許さねえ、ボコる、徹底的にボコる。
 だからこそな、そうやっていつまでも上から―――

 ―――勝ち誇って見下してんじゃねえよ!


 瞬間、ゾクリと背を走る悪寒をなのはは確かに感じた。
 そしてそれを直感的に悟り、ありえないと思いながらもそれでも目の前の現実がそれを否定していた。
 吹き飛ばした、確かに立ち上がれないほどの決定打を決めた心算だ。
 いくらなんでも驚異的なタフネスを誇ろうとも、それを立ち上がるのならもはや人間ではない。

 だというのに、あの男は立ち上がってみせた。

 それこそフラフラ、意識が有るのかどうかも一瞥しただけでは判断できない。
 体中がボロボロで、右腕を覆うアルターも既に砕けている。
 満身創痍などと言う言葉すら生温い、彼はもはや死に体に等しい。
 戦闘など出来るはずも無く、ましてやこちらを打倒することなど不可能な所業のはずだ。
 それでも気圧された。歴戦のエースオブエースであるはずの彼女は確かに彼を見た瞬間に恐怖を覚えた。

「………どうした…よ……?………まだ…終わっちゃ…いねえ…ぜ……」

 やがて不敵に、目一杯不敵に笑いながらこちらを見上げてカズマはそう言ってきた。
 それは正しく、戦闘続行の意思表示。決して自分はまだ敗北していないのだと言う明確な反逆だ。
 なのはは戸惑う、相手がとても余力が残った状態とも思えなければ、それで自分に勝てるとも思わない。
 けれどもこちらもまた、あの男を倒せない。例えもう一度バスターを撃ち込んでも、きっと男は立ち上がる。
 非殺傷設定の魔法と言えど、これ以上の過剰ダメージは相手をショック死に陥れかねない危険性がある。
 人命を奪う心算の無い彼女には、これ以上の彼への攻撃は恐怖を覚えると共に、どうしても躊躇われたものだった。
 けれどそれも所詮は彼女の側の都合。
 相手は―――カズマはそんな事情など知ったことではない。

「手加減抜き……つったよな? だったら―――」

 ―――こっちも此処から先は全力全開だ!

115魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:09:34 ID:ooJj/na2
 そう叫ぶと同時、天を掴むが如く右腕を突き出すカズマ。
 再構成……否、これは更にその先の力。
 先程、エクセリオンモードのスバル・ナカジマを倒したあの黄金の輝き。

 なのはたちで言うならばリミッター解除に該当する行為。
 どう見ても体に限界以上の負担を強いているはずのアレを今の状態で解き放つなど自殺行為もいい所だ。
 黄金の輝きに目を眩ませられながら、それでもなのはは相手に制止を呼びかける。
 自身の保身の為ではなく、彼の体の為を思っての行為だった。
 だがそれを聞き入れるはずが、カズマにあるはずがないのも事実。
 輝きが集束していく。それと共に、更なる進化を果たして顕現する彼のシェルブリット。
 閉じていた右目を開け、両目で真っ直ぐにこちらを定めながら、遂に黄金の拳が解き放たれようとしていた。

「シェルブリットォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ―――」

 本能で身の危険、そして何よりも背後に護衛すべきトレーラーがある事を察したなのはは、自身に退路が無い事をハッとして悟った。
 だからこそ呆けている暇など無かった。取れる選択肢はもはや一つだけ、迎撃と言う道しか残っていない。
 だがリミッター解除も今更間に合わず、今の状態の砲撃で先程の比ではない事が明らかな一撃を破れるか?

 出来る出来ないではない、やるしかないのだ。

 瞬時にそう腹を括った彼女はレイジングハートに命じ、ありったけのカートリッジのロードを行う。
 現状分の魔力をカートリッジを大量に用いての無理矢理の底上げ。……正直、限界越えの蛮行に等しい過負荷超過もいい所だ。
 だが今はこれしかない、この方法でしか対抗できない。
 だから躊躇っている暇は無い。

「ディバィィィィィィィィィィィィィィィィィィン―――」

 来るなら来い、こちらも既に腹を決めた。
 何度でも立ち上がり、何度でも向かってくると言うのなら。
 そこまでこちらとの対話を拒絶しようと言うのなら―――

 ―――こちらも意地でも譲らない。必ずお話を聞かせてもらう。

 だからこそのこれは、互いに退けぬ意地の張り合い。
 高町なのはとカズマとの、一対一の戦いであり、思いのぶつけ合いだ。
 そしてそれならば―――絶対に負ける心算は無い。


 反逆の拳と不屈の魔砲。
 一度目は決着が付いたその勝負、だが今度こそ絶対にケリを付ける為の第二ラウンド。

 ……否、最終ラウンド!

「バァァァアアアアアアアアアアアアストォォォオオオオオオオオオオオオ!!」
「バスタァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 黄金の輝きの拳が一直線、しかし回避も防御も許さぬ勢いでなのはに向かう。
 だが生憎となのははそのどちらの選択も取らない、当然だ。自分は勝ちを拾いに行くのだ。逃げに徹してどうする。
 だからこその迎撃、だからこその返答。
 カズマの拳が相手を撃ち抜く弾丸だというのなら、それも良いだろう。
 こちらは更にその上を行く、正真正銘の無敵の砲撃で迎え撃つ、ただそれだけだ。
 自身の代名詞とも言える、十年間ずっと武器として鍛え上げてきた。

 彼が誇る拳と同様に、自分が唯一誇れるその長所。

 その全力全開の桜色の砲撃がカズマに直撃、彼を飲み込んでいく。
 だが黄金の輝きは今度こそその輝きを翳らすことなく、どんどんとこちらに向かって迫ってくる。

116魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:11:14 ID:ooJj/na2
 なのはは更に魔力を砲撃に注ぎ込み続ける。
 後など無い、考えない、今を勝ち取るために死力を尽くす。
 桜色の奔流はそれによって勢いを増し、飲み込むカズマは押し返そうと勢いを増す。
 カズマもそれには顔を顰め、苦しげに押し返され始める。
 だがまだだ、まだ終わっちゃいない。これくらいでは終われない。
 テメエのその砲撃が無敵だって言うんなら―――

 ―――俺はその無敵に反逆してやる!

 だからこそ、もっとだ! もっと、もっと、もっと、もっともっともっともっと―――

「―――もっと輝けぇぇぇえええええええええええええええええええええ!!」

 咆哮と同時、シェルブリットの回転する黄金の輝きは、その桜色の奔流すら凌駕し始める。
 限界などとうに超えている。だからこそ、ブレーキなど存在しない。
 ギアは常にフルスロット、焼き切れるまで回し続ける。
 あのクソムカつく女、アイツに意地でも一発叩き込むまで、誰が終わってたまるか!
 だからこそ、もっと輝け、そして突き進め。
 アイツを、あの女を、目の前の強大な壁を―――

 ―――突き破れッ!!

 黄金と桜色、二つの輝きの激突。
 両者共に退けぬ意地を、限界を超えてのぶつかり合い。
 切ったカードは正しく鬼札。手持ちで唯一無二の最強カード。
 そのどちらともに絶対の信を置いていただけに、負ける事は許されない。
 等しく拮抗を続け、押し破らんと侵攻する二つの力。
 拳と魔砲、対極にありながらそれでもどこか似たその両者の攻撃。
 反逆と無敵を代表するその両者の激突、それを制したのは―――

「―――ッ!?」
 驚愕に歪み、目を見開いたのは高町なのは。
 無敵を誇った最強の桜色の奔流、それを遂に突き破り黄金の輝きが目前へと迫ってきたからだ。

「なのはさんッ!?」

 それが誰の声だったか、部下たちの内の誰かなのだろうがこの瞬間には判別できない。
 そんな余裕が無かった、それ程に驚異的なその黄金の拳が目の前に迫っていたからだ。
 直撃すれば撃墜、それだけはまず間違いない。
 だからこそ、それだけは避ける必要がある。
 とはいえ、この軌道、このタイミング、この速度。
 全てが回避不能だと言うことをなのは本人にも確信させた。
 だがだからといって諦めない、諦めてなどたまるものか。

「俺の……勝ちだぁぁぁああああああああああああああッ!」

 迫る黄金の拳、勝ち鬨を同時に挙げる相手。
 だが―――

「まだだよ、まだ」

 ―――終わってなどいない。

 そのなのはの言葉と同時、カズマの拳が遂になのはの白いバリアジャケットの表面に触れ―――

「―――なっ!?」

 ―――瞬間、彼女を保護するバリアジャケットの上衣が爆発する。
 リアクティブパージ、バリアジャケットの表面を瞬間的に自ら爆破させることで防御を行う一度限りの切り札。
 だがそのカズマにとっての予想外の爆発、そして威力はカズマの拳の軌道を逸らすには充分なものだった。

117魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:13:21 ID:ooJj/na2
 そしてなのは自身も衝撃に吹き飛ばされはしたが、直撃の結末だけは回避する。
 だが―――

 誤算があったとしたら、それはそれでも彼の拳が止まらなかったこと。
 そして突っ込んでいく軌道の先にあるものだった。
 そう、カズマが突っ込む先に待ち構えているのは彼女たちにとっては護衛対象である物資を積んだトレーラーだった。
 流石に直撃を避けるために必死だったなのはは、その瞬間背後の存在を忘れてしまい、その配慮を怠った。
 結果、カズマの拳はそのままトレーラーへと突っ込み、車両側面に風穴を開けてしまった。
 それは完全にトレーラーを相手に半壊させてしまった結果でしかなかった。


 外した、必殺必倒のタイミングで放ったはずの、今までで文句なく最強と思われた一撃。
 喰らわせれば勝てる、その確信が有ったからこそあの桜色の奔流を突っ切った瞬間に勝ち鬨の叫びを上げたのだ。
 だが結果はどうだ、思いもしなかった予想外の相手の隠し玉で拳の軌道は逸らされて、ぶっ飛ばせたのはトレーラーが一台のみ。
 当初の目的ならそれは成功と言える結果ではあるが、なのはを倒すことしかもはや頭にないカズマには失敗以外の何ものでもない。
 だがだからとはいえ、そこで諦めるという選択を当然の如く選ばないのが反逆者だ。
 故にこそ、外したのならもう一発。今度こそ間違いなく避けえない一撃を相手に叩き込む。
 その意志とともに炎上するトレーラーから拳を引き抜き、再び相手へとその拳を構えようとしたその時だった。

「―――ぐぅっ!?……クソがぁっ……!」

 こんな時に、今までの限界越えの反動が一気に体へと降りかかってきて、もはやアルターを維持するどころか、立っていることすらままならなくなる。
「……畜生…ッ…もうちょっとだってのに……ッ!」
 あと少し、もう一発であの気に食わない相手を倒せるのだ。だというのにどうしてこの体は、右腕は言う事を聞かない。
 それどころか直ぐにでももはや意識を失い倒れてもおかしくない疲労まで襲い掛かってくる。間が悪いどころの騒ぎではない。
 これ程の屈辱、これ程の無念、或いはあの宿敵である劉鳳との戦いに無粋な横槍を入れられる以上に納得できない。
 なんとか体を叱咤させ、疲労に鞭打ち反逆の姿勢を崩しはしないが、それでももう限界だった。
 先程はあんなに限界を必死になって二度も超えたというのに今回ばかりは無理だなどとはあまりにも皮肉すぎるとも思えた。
 だがこればかりはもはやどうすることも出来ない。故にこそ、力を出し切った結果として遂にカズマの体が大地に倒れようとしたその時だった。

「カズマぁぁぁあああああああああああ!」

 聞きなれた、それこそ腐れ縁であり身近とも言える男の声が聞こえてきた。


 やりやがった。……アイツは、カズマは本当にやりやがった。
 もう無理だと思った。いくら何でももう立ち上がれない。
 相棒は、カズマは敗北した。
 先の魔砲に吹き飛ばされた結果を見て、君島はその絶望を遂に受け入れかけた。
 彼にとってもそれは屈辱、無念以外の何ものでもない。
 結局は相棒に荒事は任せ切りの他力本願。それを自覚しているからこそ、自分は小賢しかろうとも相棒の足りない部分を補える役回りを引き受けようと思っていた。
 例え自分にアルター能力がなかろうとも、相棒には強力なアルターがある。だから自分は相棒を勝たせられるお膳立てを作れれば、それは立派な戦いだ。
 君島は自身のその考えを疑っても恥じてもいない。何故なら自分たちはコンビであり、二人で戦い続けてきたのだから。
 だからこそカズマの勝利は君島の勝利であり、その逆もまた然りだった。
 ずっとそうやって自分たちはやってきた。
 だというのに、この様は何だ?

118魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:14:50 ID:ooJj/na2
 相棒だと一蓮托生だとコンビだと、都合の良い事を散々言ってきて、一度状況が悪くなりびびれば、もう自分は関係ないと途中下車。

 ……違うだろう、そうじゃねえだろ?

 確かに自分は臆病だ、腕っ節もからきしでアルターも持っていない。
 頭が回ろうと、口が上手かろうと、所詮は学も教養もないただのチンピラだ。
 それでも、そんな自分でも誇りを持っていたことが一つだけあったはずだ。
 それはあの馬鹿な考え無し、ついでに同居してる女の子を満足に養えない甲斐性無しのロクデナシ、そしてクズとも言える男。
 そんなどうしようもないにも関わらず、それでも折れず曲がらず退かない、不退転の意地を背負った本物の男であるアイツ……カズマと組んで戦っていることだ。
 それだけが君島にとって、誰にも恥じることなく誇れたことだったはずだ。
 アイツの足手まといではなく、肩を並べて歩ける相棒であるその資格こそが君島邦彦にとっての全てではなかったのか?

 それを捨てちまって、アイツ一人に全て任せて投げ出しちまってそれで何が残る?

「……残らねえ……何も……」
 残るものなどあるはずがない、それが当たり前だったはずだ。
 なのにそれなら、俺は此処で何をやっている。ビビッて震えて隠れて、解説役の傍観者になりきって勝手に期待して勝手に絶望して―――

 情けねえ、それでも男の子かってんだ!?

 まだやれることがあるだろう。自分に出来ることがあるはずだ。
 資格を失おうとも、弱い臆病者だろうとも、それでもやらなきゃならねえことがある。
 相棒を……ダチを助けられなくて、何が男だ。
 だからこそ命懸けでも、怖かろうとも殺されようとも直ぐにでも飛び出してカズマを助けに行く。
 それが君島邦彦がしなければならない戦いだ。
 そう決死行を覚悟したそれと同時、カズマは再び立ち上がった。
 そして今までに見たこともないほどの強大な力で、先の破れた魔砲すらも今度は打ち破ってみせた。
 君島はそのカズマの輝きに、功績に魅せられていた。
 だが直ぐにハッとなり、此処から見ていても分かるほどに、もはや力尽き倒れようとしているカズマを確認すると、車を飛ばして助けへと急行する。
 相棒のその名前を叫びながら。


 周囲への確認を怠っていたのは今更ながらに気づいた致命的なミスだった。
 結果、突如乱入してきたジープの運転手は倒れたカズマを車に乗せると瞬く間にこの場から離脱を図ろうとしていた。
 スバルは気絶中、他の三人は逃亡を阻止すべく動きかけるもトレーラーに乗っている運転手の救助と言う人命優先を覆すことは出来ない。
 そしてなのはもまた先の二度の全力の砲撃、過負荷超過のカートリッジロードの反動は魔法を扱うことすら無理なのが現状。
 故に乱入者と反逆者を乗せたジープは悠々とこちらの追撃を振り切り、結果的に逃亡を成功させた。
 護衛目的であるトレーラーは半壊、襲撃者も取り逃がす、この結果は正に・・・・・・

「……大失態、だね」

 部下たちはベストを尽くした、それは間違いない。
 ならばこの結果は自分にあるのだろう、もう見えなくなり始めたジープの姿を見送りながらなのははその結果を苦々しくも認めるしかなかった。
 結局、最後まで話し合う機会を勝ち取れなかった。その最大の無念も共に抱きながら……。



 結論から言えばマーティン・ジグマールからは咎めの一つすら無かった。
 それどころか彼はこの結果をむしろ予想以上に素晴らしいものだと褒め称えた。
 相手のその予想外の反応に一瞬こそなのはは驚けど、しかし直ぐにこの流れのからくりを察することが出来た。
 何てことはない、これは要するに―――

119魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:16:16 ID:ooJj/na2

「私たちを試したんですね?」

 なのはのその問いに、ジグマールもまた隠すことなくその通りだと肯定の頷きを示した。
 薄々予想できていたことだっただけに、それ程に彼女は腹立たしさを感じることは無かった。
 当然だろう、ほぼ予想されていたこちらの経路と相手の襲撃。
 トレーラーに積まれていた物資が最低限の物しか無かったという事実。
 任務に就いた人員の構成とその人数。
 何よりも自分たちの素性と相手の正体。
 それはつまり、

「最初からジグマール隊長は私たち六課と彼が衝突するように、この任務を用意していたんですね」

 全ての結果がその答を示しているではないか。


 ジグマールにとってカズマというアルター能力者は、彼が知る数少ない『向こう側の世界』とこちらを繋ぐ大変に興味深い存在だった。
 彼は自身の目的の為にそういった人材を欲していた、だがあの男は飼い慣らせる存在ではない。
 むしろ逆、反抗を止める事ない反逆者。明確な敵だ。
 だが彼の力は劉鳳と同レベルの潜在能力を秘めた可能性に満ちたもの、必ずいずれはどんな手を使ってでも手に入れる。
 だが劉鳳以上にまだカズマはジグマールの想定するレベルには至っていない。力は目覚めへと至っていない。
 だからこそ、彼の力を目覚めさせ、引き出す必要がある。
 それに最適だったのは自身の部隊のホーリー隊員たちと戦わせることであった。
 だがその求めるには至らぬレベルであろうとも、一般のホーリー隊員たちではもはや敵うレベルを超えた力をカズマは持っていた。
 これ以上にカズマの力を引き出すには、もはや劉鳳と戦わせる他に方法が無かった。
 だがそれはジグマールが危惧する、貴重な存在である両者共に潰し合うという恐れにもなりかねない。
 そんな時だったのだ、この機動六課という異世界の組織の能力者たちがこのロストグラウンドへと舞い降りたのは。
 魔法というアルターとは異なる未知の能力、そしてソレを扱う者の劉鳳にすら劣らぬ実力。
 ジグマールにとって彼女たちはうってつけの人材だったのだ。

 そうして彼が仕組んだ思惑通りに……否、それ以上の結果を彼女たちとカズマの戦いは示してくれた。
 イーリィヤンの“絶対知覚”による監視を通して、カズマが『向こう側』の力の一端を引き出す成果が確認されたのだから、ジグマールにとってそれは喜ぶべきことだった。
 本音を語れば、それを引き出してくれたなのはたちの健闘には感謝してもし足りぬほどだ。
 尤も、それが六課からすれば良い面の皮の扱いを受けたに等しいこともまた承知してのことであったが。
 その思惑の全てを把握できずとも、なのはにもまたそれを察することはできた。
 言ってみれば茶番、任務とはいえ部下を危険に晒され一方的に利用されただけに等しい扱いに怒りや不満を覚えないわけでは無い。
 だが食わせ者と当初から警戒していた以上、これぐらいの扱いは受ける可能性があること自体は承知の上だった。
 最初からそもそも管理局と本土の間には、そして六課とホーリーの間には利用し合う打算関係は織り込まれ済みだ。
 感情に任せた糾弾に身を任せるほどに彼女とてもはや向こう見ずとはいられない。
 こちらにも知り得たものが多かった結果がある以上、ギブアンドテイクの元にこの成果を互いに黙認しあうことこそが、大人が取るべき選択だ。
 充分になのはとてそれは分かっている。だからこそ此処では短絡的な感情に任せた態度だけは取らなかった。

(……でも君なら、きっと違うんだろうね)

 先程死闘を演じた相手……カズマの姿が脳裏へと浮かび、思わずそんな風に思ってしまった。
 もし彼が自分の立場なら、きっと怒りと言う感情に任せてジグマールへと殴りかかっているはずだ。
 まったくもって実に羨ましい、それだけはこの瞬間に正直に思った高町なのはのカズマという男への羨望だった。

120魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:17:48 ID:ooJj/na2
 そしてそんな彼女の思いなど知らぬ当人は、トレーラーへと襲撃をかける前以上に苛立っていた。
 当然だろう、上等な喧嘩だったのは確かだが、結局は相手を殴り損ねた。
 負けた心算など断じてないが、終わってみればこっちはボコボコにされたのにあの女は一発もこちらの拳を貰っていない。
 ダメージの総量から言えば勝ち逃げされたのに等しい。

「……あの女、次会ったら絶対に容赦しねえ」

 最低でも一発、あの不敵な面にぶち込まないことには収まりがつきそうに無い。
 フェミニズムなど欠片も持ち合わせぬこの男にとっては、もはやそれは躊躇いすらも抱かせない決定事項の如く決まっていた。
 間違いなく、この瞬間からあの名前も知らぬ女は劉鳳と並ぶ絶対に相容れぬ敵とカズマは認識していた。
 まぁ、それも今は置いておくとして……

「おい、君島」

 帰路に着く車の中、相棒に名を呼ばれ君島はビクリと反応した。
 直前であんな別れをした後に、余計とは思わないが結果的に彼を助けるために横槍を入れた。
 目に見えて不機嫌、苛立ちのボルテージがかつてないほど高まっているであろう今のカズマだ。こちらに余計な事をしやがってとでも八つ当たりじみた怒りをぶつけられかねない。
 ……まぁ、それもいいさ。今回は寸前で腑抜けちまったこちらも悪い。カズマを助けたことも後悔していないし、先の覚悟していた一発も結局殴られてはいない。
 だからこそ、今回くらいは甘んじて受けてやろう。それもまた相棒の務めと覚悟した時だった。

「んでどうなんだ、まだテメエのやってる事に後悔や迷いはあるのかよ?」

 それは予想外だったカズマからの問いだった。
 君島はそれに思わず驚きながら助手席の相棒へと視線を向けていた。
 カズマは疲れたのか、ぐったりと背をシートに預けながら目を瞑ったままだった。
 その横顔からは、彼が何を思っているかは君島にもはっきりとは分からない。
 ただ呆然と沈黙したまま、君島は相棒の横顔を見ていた後、やがて―――

「そんな余裕、もう無くしちまったよ」

 ―――視線を再び前へと戻しながら、君島は静かにそう答えた。

 後悔することも迷うことも人間なら誰だってすることだ。
 事実、君島だって自分の人生を振り返ってみてもその連続であったことは間違いない。
 正直、カズマがあの本土のアルター使いと戦っていた最中までだってそうだったのだ。
 けれど、先程の激闘の最後に相棒はとんでもない奇蹟を見せてくれた。
 或いは、あれは君島にとっては希望だったのかもしれない。
 だからこそ、助けに飛び出す頃には腹を括れた。
 この男に付いて行く、この男と戦っていくというのならそれで精一杯。
 うじうじと悩んだり悔いたり、ましてや迷うなどと言う余裕を抱く暇などない。
 要するに、覚悟を決めたということだ。
 そして覚悟を決めた以上は―――

「―――今はただ目の前の壁を乗り越える、それしかねえ。……だろ?」

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、君島はカズマに向かってそう言った。
 そしてソレを聞いたカズマが浮かべていた表情もまた、自分と同じものであった。
 腐れ縁から続く気づけば長い協力関係だが、これほど心底気が合って笑い合うことが出来たのは、或いはこの瞬間が初めてかもしれなかった。
 凱旋とはとても言えない帰路の途で、それでも二人は久しぶりに愉快に笑いあうことが出来ていた。



 由詑かなみがカズマの帰宅を知ったのは、表に君島の車が停まった音がしてカズマが車から降りながら君島へと別れを告げている声が聞こえたからだった。
 今日もカズマは一緒に働きに出かける約束を破り、また君島と一緒に何処かへと出かけていた。

121魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:19:04 ID:ooJj/na2
 かなみはカズマが外で何をしているのか、その詳しい事を知らない。訊いてもカズマ自身が話してはくれないという理由もあった。
 それでも君島と一緒に何か仕事をしているようではあるようで、少ないがお金を稼いで帰ってくることがある。
 尤も、それも米と野菜を買い溜めてしまえば幾ばくも残らない額だが。
 はっきり言ってしまえば自分たちの生活は火の車であり、決して余裕のあるものでもない。
 カズマの稼ぎだけでは暮らしていけないからこそ、かなみもまた牧場の手伝いをして働いているのだ。むしろ、カズマの不定期の稼ぎよりも余程彼女の方が貢献しているとさえ言える実情だ。
 甲斐性無しのロクデナシ、と偶に不満を揶揄するように彼に向かって言うが彼が反論せずにそれを受け入れるのはこの現実を認めているからでもあるようだ。
 そうならばちゃんと働いて欲しい、それがかなみがカズマに持つ要望だったが、カズマはこれを殆ど守ってくれない。
 仕事場に連れて行くことに成功しても目を離せば逃げられる、かなみが大人たちに申し訳なく何度も謝っていることを彼は知ってもいないことだろう。
 そうしてマトモに働いてくれないカズマは君島と一緒に何かをしている。その何かが分からず、危ない事をしているのではなかろうかと彼女はいつも心配していた。
 かなみからすればお金云々はハッキリ言ってしまえば二の次、彼女が何よりも望んでいるのはこの生活が安心して平和にいつまでも続けられることである。
 カズマが無事に傍に居てくれるなら、それで自分の願いは殆ど叶っている。彼女は別に裕福になることなど望んでいないのだし、今がずっと続いてくれるならそれで満足だ。
 だが此処は無法の大地であるロストグラウンド、ネイティブアルターやホールドの脅威にいつ曝されても可笑しくは無い、そんな場所だ。
 かなみにとってはだからこそ不安だった、いつかカズマがこれらの争いに巻き込まれて自分の元を去っていくのではなかろうか、と……。
 だからこそ―――

「おう、今帰ったぞ。かなみ」

 そう言って帰ってきたカズマへとそんな不安は杞憂だと思いながら、微笑みかけてこの言葉を言わなければならないのだ。

「うん、お帰りなさい。カズくん」



 一つだけ、どうしても分からずに引っかかっていた疑問が漸くに氷解した。
 帰りを待つ少女の元へと帰り、彼女のいつも通りの笑みと言葉を聞き、それで分かった。
「……かなみ」
 少女の名を呼ぶ、それに彼女は不思議そうに首を傾げながら、
「なに、どうかしたの……カズくん?」
 こちらの態度に不審か不安を感じたのだろう、表情と声に滲み出ていた。
「……いいや、何でもねえさ」
 だが少女にそんな顔をさせるわけにはいかず、カズマは何事もないようにそう答えながらかなみの頭に手を伸ばして頭を撫でた。
 慣れない行為に思っていた以上に手に力が込められてしまっていたのか、彼女の髪を結果的にクシャクシャにしてしまい、リボンも曲がってしまった。
「ああ、酷いよカズくん!」
 当然かなみからすれば不満そのものだったようで、逆に泣きそうな顔をされて怒られてしまった。
「……あ、いや…ワリい、すまねえ、許せ」
 そう言いながらいつものように必死に結局は謝った。踏んだり蹴ったりの出来事ばかりの今日だったが、最後のコレが一番堪えた気がしてならなかった。

(……にしても、何か引っかかると思ってみれば)

 何故あの女に自分は訳もなくあんなにも苛立ちを感じてしまっていたのか。
 言葉を交わす度に不機嫌となってしまったのか。
 ……何てことは無い、気づきさえすれば至極尤もなことだ。

(あの女の声、かなみにそっくりだったじゃねえか)

 ならば苛立つのもまた当然だ。

122魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:20:32 ID:ooJj/na2
 それはカズマにとってかなみの存在が憎いからでは無い。むしろその逆の存在であるからだ。
 由詑かなみという少女はカズマにとって貴重な守るべき存在なのだ。
 甲斐性無しのロクデナシ、ついでにクズも加えていい自分がそれでも生きている日常の象徴とも呼べる存在。
 決して、アルター使い“シェルブリット”のカズマの戦いの中にだけはいてはならない存在。
 そうであるはずの少女、まるでそんな彼女が戦場に居て、そして自分の敵である事を無意識に思わせてしまう声をあの女はしていたのだ。
 実にこちらの一方的な都合だが、それを容認できるカズマではない。

(……あの女とはやっぱ尚更、次でケリ付けなきゃならねえらしいな)

 “シェルブリット”のカズマの戦いの中には、由詑かなみを連想させるような存在は認めてはならない。
 だからこそ、あの女の声はもう戦いの中では聞きたくない。
 だからこその改めての固い決意だった。


「……カズくん?」
 やはり今日の彼の様子はどこか変だ。正直、少し怖いとすら思ったくらいだ。
 君島と一緒に出かけた先で何かあったのだろうか。危ないことに巻き込まれていなければいいのだがと不安にもなる。
 だからこそ心配気にもう一度その名を呼んだのだが、
「ん、心配すんな。何でもねえよ」
 そう言いながらいつものように診療台に座り、目を瞑ってしまう。
 そしてあっという間にカズマはもはや夢の住人となってしまっていた。
 その様子から疲れているのだろうと察したかなみは、部屋から毛布を持ってくると、それをカズマにかけてやり、部屋の電気を消した。
「おやすみなさい、カズくん」
 最後にそう就寝の言葉を告げると、かなみも今日はもう眠るために自室へと戻っていく。
 何か色々とゴタゴタが起こり、これから自分たちの生活が大きく変わってしまうかもしれない。
 その不安はかなみの中からはやはり消えることは無い。
 それでも今はそれを心配していても仕方がない。今はまだその時じゃない。傍にカズマがちゃんと居てくれる。
 そして彼は自分を置いていったりしない、そう信じることができる。
 だから今は、これでいい。
 そう吹っ切ってしまえば、後に心配することは殆どなく鬱な気分も無くなった。
 これならば今日もぐっすりと眠れそうだ。
 もしかしたらまた、あの“夢”が見られるかもしれない。
 それを正直、願いながらかなみは床に就き眠りにヘと落ちていった。


 ……夢を、夢を見ていました。
 夢の中のわたしは、何かに強く抗うそんな人になっていました。
 その人の前に現れたのは、白くて綺麗で、そして強い、そんな女の人でした。
 その人は女の人を相手に戦い、何度も倒されました。
 それでも何度も何度も、その人は立ち上がります。
 決して負けない、認めない、そして逃げない。まるでそんな事を告げるように。
 何度も倒され、何度も立ち上がり、何度もぶつかっていきます。
 その人も女の人も、どちらも決して諦めず、退こうとはしません。
 まるでお互いに、絶対に譲れないものを通し合うように。
 どちらが正しいか、どちらが間違っているか、わたしには分かりません。
 夢の中のあなたには、負けて欲しくない。確かにそう強く思いました。
 でも同時に、対峙する女の人にもまた屈して欲しくないとも思ってしまいました。
 それが何故か、わたしには分かりません。
 それでも、わたしは思ってしまったのです。
 夢の中のあなた、そして女の人。
 この二人が、争い合う以外の別の道で重なることは無いのだろうかと。
 わたしはただ、そう願い続けることしか出来そうにはありませんでした。
 ただ、そう願い続けることしか……

123魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:24:49 ID:ooJj/na2
次回予告

 第二話 高町なのは

 無法の大地で生きてきた男。
 数多の世界の空を飛んできた女。
 価値観・願望は対極を示し、
 反対に根幹の想いには共感を示す中、
 女の言葉は男の拳に何を届かすことが出来るのか。
 カズマとなのは、再びの出会いが双方に示す道とは……


以上、投下終了です。
投下速度が遅すぎたり、容量自体が無駄に長くなってしまい申し訳ございません。
次はもう少し短く纏められるよう努力してみます。

124魔法少女リリカル名無し:2009/03/11(水) 22:29:18 ID:gu3qlvFg
ageないと気付かれないよ?
あと、00分過ぎてるから規制が解除されてると思うから。

age

125魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/03/11(水) 22:31:53 ID:ooJj/na2
ご指摘ありがとうございます。その場合は自分で投下し直した方がよろしいんでしょうか?

126魔法少女リリカル名無し:2009/03/11(水) 23:42:12 ID:gu3qlvFg
自分で投下しなおしたほうがいい。(もう代理投下されてますが)
あとどうみても規制される量だから、91KBは。
せめて、二つか三つに割らないと駄目だったと思います。

127りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:10:12 ID:IWMWkURY
すいませんが、アクセス規制をくらってしまって、どなたか代理投下してはくれないでしょうか
ブリーチ第四弾です

128りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:13:52 ID:IWMWkURY

―――――――――――――戸魂界(ソウル・ソサエティ)。
生あるものが死後行き着くとされる、亡者が支配する世界。
その戸魂界の中心部に位置する『瀞霊挺』(せいれいてい)。
選ばれた貴族や死神が住むとされる、戸魂界の中でも特に住み良い場所である。

 瀞霊挺 一番隊舎

 霊界と現世の平和を守り、それを脅かす悪しき者共を駆逐する霊界の正義。

――――――名を『護挺十三隊』。

その陣頭指揮を務める一番隊舎に今、それぞれの隊をまとめる隊長達が集まり始めていた。

――ある者はゆったりと
――またある者は悠然と
――またある者は音もなく
――またある者は面倒そうに
 歩き方に差異はあれど、皆隊長の証である白い羽織と、それぞれに任せられた数字をその背に負い、隊舎に集っていた。
やがて集った隊長達は、それぞれの番号に向き合うように並び始め、総隊長の到着を待つ。その並びは、まさに圧巻の一言につきた。
――――とある事情により今は数人が欠けて久しいが、それでもその凄まじさは微塵も薄れない。

しばらくして――、一番隊舎の巨大な扉が、ゆっくりと開いた。
入ってくるのは、長い髭を蓄えた老人。その外見の傷跡には、元々長く生きている死神の中でも、さらに長い年月、戦いに身を置いてきた事を感じさせる。

「急な収集に、よく集まってくれたの諸君」

 やがて、その老人――、一番隊隊長にして、護挺十三隊総隊長 山本元柳斎重國が、
深い双眸を広げ、重い口を開いた。


「それではこれより、隊首会を執り行う」



         魔法死神リリカルBLEACH
         Episode 4 『Actors gather』



 海鳴市 戦闘終了後 午後二時五分

「あ〜〜くそっ」
 空を覆っていた結界も消え、再び人と活気が訪れた海鳴市。
その外れの方――いまだ死神姿のままの一護が、不機嫌を露わに歩いていた。

「結局何だったんだよ! 一体」
 そう言う彼は、今は一人だった。
道行く人々は、黒い着物に大刀という、あまりにも目立つ出で立ちの彼を、しかし誰も気づかず通って行く。――とりあえず、チャド達の許へと帰る途中だったのだ。

「黒崎く〜〜〜ん!!!」
 すると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
一護が顔をあげると、チャドと織姫、そして一護の代役を務めていたコンが、一護の許へとやって来ていた。

「不穏な気配を感じてきたんだけど…何かあったの?」
 開口一番に織姫が訊いた。
「あ〜〜あったさ…ったく」
 不機嫌を隠さずにそう返す一護。すると今度は織姫への態度が気にくわなかったのか、コンが一護を指差し、こう言う。
「やいやいやいテメエコラ一護!!! 井上さんに対してその態度は無いんじゃないのォ!!」
「うっせーな! どう返そうが俺の勝手だろ!!」
 ただでさえ深い眉間のしわを、さらに深くしながら一護はコンと睨みあう。
「なんだとぅ!? せっかくテメーが心配で見に来てやった俺にもそんな態度か!」
「テメエは俺じゃなくて井上に付いてきただけじゃねえのか?」
「……あったりまえよ!!!」
 隠すどころか悪びれもせず、コンは胸を張って宣言した。
「俺は誓ったんだ……巨にゅ…井上さんの為になら、俺はたとえ火の中水の中……」
「あーそういやルキアに会ったなあ」
 その言葉を聞くなり、コンは急に辺りを見わたし始めた
「――んマジィで!!? 姐さ〜〜〜」
「もういねえけどな」
 一護が冷淡にそう告げた後、無様に固まるコンを見て――鼻で笑った。

「『火の中水の中』ねぇ……フッ」
「……シャラァァッップ!!!!!!」
 空しい叫び声を上げた後、コンは捲し立てるように一護に食ってかかった。
「大体テメエはいままで何やってたんだよ!! アレか、虚退治なんて言っておいて実は姐さんと―――」
 そう言いかけたところで、コン――もとい一護の額に、代行証が投げられていた。
口からコンの元――義魂丸が飛び出し、それを一護がキャッチする。
再び一護の体は、ぐったりと倒れて動かなくなった。

「朽木さんに会ったの!? 黒崎くん」
 チャドに手伝ってもらいながらも、自分の体に入っていく一護に、織姫はそう訊いた。
「ああ、会ったさ」
 一護は、そう返した。
「何があったか、教えてくれるか?」
 今度はチャドが訊いてきた。とりあえず一護は、ガジェットの事、二人の少女に会った事、ルキアと恋次が現れたこと――
――そして『その後』の事を話し始めた。



 海鳴市 戦闘終了後 直ぐ

 ルキアと恋次に連れられ、スバル達の所から逃げだした後、結界から脱出し、―――その後の話。
一通り落ち着いた処で、一護はルキア達に訊いていた。

129りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:16:06 ID:IWMWkURY
「一体何なんだ!! 何で逃げたんだよ!?」
 一護がそう叫んだ。けっこう大きい声にも関わらず、周りの人々は聞こえないかのように彼の言葉を無視した。
しばらくして、ルキアが返す。

「急なことで済まなかったな、だが奴等が管理局だと知れた以上、こっちのことはなるべく悟られてはならぬのだ」
「それに目標物も手に入れたしな、あちらさんも同じように、これが目的ともわかったんだから、あそこに残る方がどうかしてるだろ」
 続けて恋次がそう続ける。その二人の真顔な返答に、一護は頭が混乱してきた。
「じゃあ何か? あいつ等は本当は悪い奴だったのか!?」
 一護がそう言った。
――しかしレリックのような危険物を処理する、と言ったスバルの眼を見たとき、あれは人を騙すような眼ではないと思ったのだが…
 またしばらく間をおいて、ルキアが返す。
「別に悪い奴らではあるまい、奴等もまた、己の正義の為に動いているのであろう」
「??? じゃあ何で? 何で逃げたんだ!?」
 一護は、頭がこんがらがってきた。
 相手は悪人ではないとわかって、しかし逃げ出した理由がわからない。
一護は問い詰めるように訊いていた。――今度は返答に時間がかかった。

「……済まぬな、一度に全てを話すとなると、時間がかかり過ぎてしまう」
 少し困ったように、ルキアはそう答えた。
「詳しいことは、浦原の家で話すことにしよう。私達も、コイツを調べてもらうついででな」
 そう言い、一護の持つレリックを指差す。
一護は納得いかなかったが、ルキアの言い分も一理あるのでしぶしぶ承諾した。
「…わーったよ、じゃあ浦原さん家で話してくれんだな?」
「ああ、井上や茶度、石田も来ているのだろう? あ奴等にも上手く伝えてくれ――それと」
 ルキアは次の瞬間、一護の持つレリックをひったくった。
「あっ、てめ…」
「言っただろう、コイツを調べてもらうと。色々聞いてはいたが、世界規模の破壊力を有しているみたいだしな」
 レリックを翳しながら見るルキアを後に、恋次は続ける。
「じゃ、俺達は一足先に行ってるぜ。早く来いよ」
 そう言い終えると、ルキアと恋次はその場から去って行った。
「あっコラ!! ちょっと待て…」
 一護が言った時には既に、彼等の姿は微塵も無かった。

「ったく 何なんだチクショー」



「―――ってなわけだ」
 啓吾達の所へ向かって歩いていく途中に、一護は話を一通り終えた。
「……そんなことがあったんだ」
 話を聞き終えたところで、織姫がそう漏らす。
「……で、これからどうするんだ? 一護」
 今度はチャドが訊く。だが、一護の腹は決まっていた。
「決まってんだろ? これから浦原さん家に行って、ナニがドーなってんのか訊きに行く!」
「あれ? でもそれって…」

「うお〜〜い!! 一護〜〜〜!!!」
 織姫が言いかけた時、遠くから一護を呼ぶ声が聞こえた。
啓吾と水色、そしてたつきだ。
「何やってんだよ!? これから楽しいイベントが始まるって時に!!」
「ケイゴ、まだ僕達それらしいイベントに突入してないよ?」
「うるせぃ!! これから始まるところなんでぃ!!」
 啓吾と水色の会話は置いといて、たつきが改めて訊いてきた。
「で? あんた等いままで何してたの? トイレにしちゃ長くない?」
「ああ…まあ色々あってな」
「いいじゃねえか! いいじゃねえか!!」
 啓吾が割って入ってきた。聞いてもいないのに彼は、勝手に喋りまくる。
「これから旅館に行って、ポロリありの露天風呂へ入った後、肝試しをしてワーキャーってなって、それからそれから―――」
「ああ、ワリィ。済まねえけど、俺もう帰るわ」
一護のその言葉に、一瞬啓吾が固まった。

「――――――――――――――――――」
 しばらくの沈黙の後、
「――ハァ!!!????」
啓吾が鬼のような形相で叫んだ。
「うおっ 時間差!?」
 やっぱりちょっとたじろきながらも、一護は答えを変えない。
「ちょっと外せねー用事ができちまってな。後は俺抜きでやってくれ」
「あっ!!! ちょっと一――――」
 しかし啓吾の声は届かず、既に一護は遠くの方へ走って行ってしまった。
「イチゴォォォォォォォォォォォォ!!!! カァムバァァァァッックゥゥゥ!!!!!!」

130りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:18:55 ID:IWMWkURY

 啓吾はちょっと涙目になりながらも、皆の方を振り向いた。
「もうこーなったら一護抜きで楽しんでやろうぜ!!! アイツが悔しくて地団駄踏むぐらいはじけてやろうぜ!!!!」
 笑顔をなんとか保ちながらそう言うが、織姫とチャドは、一護が行ってしまった方角をずっと見つめていた。
――――啓吾は嫌な予感がした。
「あのーー、井上さん? チャド?」
 恐る恐るそう聞く啓吾。次の瞬間、織姫とチャドも啓吾の方を振り向き言った。
「ゴメンね!! あたしも急に用事を思い出しちゃったかなあって」
「……ム、スマン。俺も…何か大事な用があった気がする」
「あ、あの!? ちょっとお二人とも―――」
 無論啓吾の制止が利くはずもなく、二人も一護と同じように走り始めていた。
「あ! ちょっと織姫ェ!!!」
 そう言いながら、たつきも一緒にその場を後にする。
結局、その場には啓吾と水色しか残らなくなってしまった。
「……ケイゴ、僕ももう帰っていい?」
 放心状態の啓吾に向って、水色はそう言うが、今の彼に、答えを返す力は残ってなかった。
「オーイ、ケイゴ?」
「……………」
 こうして、浅野啓吾のドキドキツアーは幕を閉じた。


 海鳴市 午後二時三分 とある建物内


「ええっ!!? 任務失敗!!?」

 モニター越しに、機動六課の部隊長、八神はやての驚いた声が響いた。
「うん…ごめんね」
「悪い、はやて」
 至極申し訳なさそうに返すのは、なのはとヴィータ。
――あの後、急に怪物達が引き返し始めたので、急いでスバル達の許へ向かった時には、レリックは取られ、犯人も見失った後だった。

「…せやけど、なのはちゃんとヴィータ、シャマルもおったんよな?…それでもどうにもならなかったん?」
責める風ではなく、疑問に思う風にはやてが言った。長い付き合いゆえに彼女達の実力も知っているからこそ、なおのこと不思議だったのだ。

「うーん…まあ、アンノウンがさ…現われてさ…」
「? ガジェットの新種か何かか?」
「いや、そうじゃなくて…何て言ったらいいんだろ…」
 ヴィータが説明しづらそうに、そう言が、はやての疑問符は増えるばかり。
それにガジェットの新種が現れたところで、そうそうなのは達を抑えられるものなのか?
―――それでも相当な数呼び寄せなくてはならないだろうし、レリック一つの為にそんな体それた数出てくるなら最初からそうしたはずだろうし――。

「まあ、一気に説明は出来ないから、そのアンノウンの画像をそっちに送ったところだし、詳しいことは帰ってから話すよ」
 なのはが、そう説明する。はやてもそれに頷いた。
「わかった。せやったら直ぐにでも帰――」
 一瞬そう言いかけ、急に済まなさそうに続けた。

「――ごめんな、せっかく帰ってこれたのに、またこんなこと言いだして」
「ううん、仕方ないよ。それに、はやてちゃんやフェイトちゃんを差し置いて私だけってのも何だかなって思ってたし」
「せやけど……」
「大丈夫!! 私は大丈夫だから」
 笑顔を繕い、そう言うなのは。はやては、本当に申し訳なさそうに謝った。
「――ごめんな、なのはちゃん」
「何ではやてちゃんが謝るの? 私はホントに大丈夫だから―――じゃあね」
 そう言い、通信を切るなのは。
しばらくして、今度はヴィータが訊いてきた。
「なあ、なのは…ホントにこれでいいのか?」
「――え?」
「だから、なのはの家族とか、アリサやすずかに挨拶してかなくていいのかってことだよ!!?」
 ヴィータが声を荒げた。――ただでさえ人員不足である時空管理局。そこで有名である分、中々休みも取ることはできない。
そのうえ元の世界に帰れることなど、滅多なことではありえないことだった。
―――今逃したらまた、いつ会えるかどうか。

 しかし、なのはは静かに首を振った。
「…しょうがないよ…すぐ帰らなきゃならなくなったし――それに…」
 少し間を置いて、続ける。
「それだったら、いっその事会わない方が、みんな忙しいだろうし…ね」
 ――正直、会いたくない。というと嘘になる。
けど、みんなはみんなの都合があるだろうし、もう帰ってしまう自分の為に、予定を割いて来てもらう程でもないはずだ。
――だったらいっそ会わない方が、妙な後腐れはなくてすむ。

 それでも、ヴィータは納得いかないようだった。
「けどよ…なのははそれで―――」
「ヴィータちゃん、私は大丈夫だから」
 しかし、なのはは皆まで言わせなかった。纏めた荷物を持って、部屋を出る。
「行こ、みんな待ってる」
 ヴィータも、渋々といった感じで部屋を出た。しかし、前を歩くなのはの後ろ姿には、やはりどこか寂しそうに見えた。

131りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:20:20 ID:IWMWkURY



 空座町 浦原商店前 午後四時三十二分

 空座町のとある一角、そこに昭和の感じを醸し出す駄菓子屋があった。
名前を『浦原商店』。
子供には大人気のお菓子から、大人には口では言えないような物も売っている何でも屋であるが、それは世間を欺くためのカモフラージュに過ぎない。
――今、その浦原商店の前で、二人の子供が掃除をしていた。

「四番バッター、花刈ジン太 豪快なフォームから…」
 しかしその内の一人は、掃除などそっちのけで箒をバット代わりにして遊んでいた。
「殺人シュート!!! 打った大きい!!!」
「ジン太くん……何やっているの?」
 もう一人の大人しそうな女の子が、不思議そうにジン太という少年に訊いた。
「何って、ドッチボールに決まってんだろ。雨(ウルル)!! 男は黙ってドッチボールだぜ!!」
「でもそのボール……サッカーボールじゃなかったっけ?」
 雨と呼ばれた少女は、ジン太の持っているボール――先ほどのスイングを空ぶったボールは、確かにどこからどう見てもサッカーボールだった。
――サッカーボールでドッチボール。しかも手に持っている箒は明らかにバットにしていた……。

「なんか……色々混ざってるよ、ジン太くん」
 やんわりとつっこむ雨を見て、ジン太は顔を真っ赤にして叫んだ。
「うっ…うるせえ!!! これは俺が考えた新しいゲームだ!! 文句あるか!!?」
 そう言って、雨をいじめ始めるジン太。しかしこれはいつもの光景だった。
「い…痛い! 痛いよ…ジン太くん!!」
「大体そう言うことは早く言えよ!! チクショーお前のせいだぞ!!」
「酷い! 酷いよ…ジン太くん!」
 しばらくの間、雨の頭をグリグリするジン太。
しかし次の瞬間、ジン太の体は何故か2メートル近くまで飛び上がった。

「何をしておいでかな? ジン太殿」
「うおわっ!! テッサイ!!……さん」
 テッサイと呼ばれた、チャドと同じ2メートルはある巨人につままれ、慌てふためくジン太。――これもいつもの光景だった。
そんなところに、近づいてくる足音が幾つか。
「……これはこれは、お待ちしてましたよ」
足音の主を確認するなり、テッサイがそう言った。

――そこには一護と織姫、そしてチャドがいた
「浦原さんいるか?」



「いらっしゃ〜〜〜い」

 テッサイに案内され、店の居間辺りまで来たとき、そんな声が聞こえた。
入ってみると、テーブルを囲んだ奥に男が座って待っていた。
「しばらくぶりですね、黒崎サン」
見慣れた服に見慣れた帽子。相変わらずといった飄々ぶりを見せながら、彼――浦原商店店長 浦原喜助が挨拶した。
と、隣にいたルキアと恋次が、今度は不平を洩らした
「遅いぞ、一護」
「モタモタすんなって言ったろうが」
「うるせーよ、そんなに早く来れるか!」
 鬱屈そうにそう返す一護。――すると別の声が聞こえた。
「いや、それにしても遅すぎだろ。一体何してたんだ?」
「…石田、来てたのか?」
「…来ていちゃ悪いのかい? 黒崎」
 血管を浮かべながらそう言うのは石田雨竜。一護のクラスメイトでもあり、200年以上前に絶滅した退魔の眷属。
『滅却師(クインシー)』の末裔でもあった。
(しかし今はとある事情により、その滅却師の力は無くしている。)

「まったく、いちいちカンに障る言い方しかできないのか?」
 溜息をつきながらそう続ける雨竜。今度は一護の顔に血管が浮き出たが、しばらく睨みあっただけで丸く治まった。
「こっちだって色々あるんだっての…」
そう呟きながらも、一護はその場に座った。織姫とチャドも後に続いて座る。

「うむ…皆揃ったようじゃな」
 今度はテーブルに座っている、小さな黒猫がそう告げた。
「夜一さん、『そっち』の姿になってんだな」
「まあ、気分じゃ」

「ハイハイでは皆さん、ちゅ〜〜も〜〜く」
 そう声掛けて、喜助は懐から何か取り出した。――レリックだ。
「危ないんで、色々な封印をかけときました。余程のことがない限り安全ですよん」
そう言って皆に見えるようにテーブルに置き、続ける。

「さて、まず黒崎サン達は何が知りたいんですか?」
 一護の目を覗き込むようにして、喜助が訊いた。一護はしばらく押し黙って、やがて言った。
「じゃあ、時空ナンたらについて…」
「ハイでは朽木サン、朽木サン達がここまでに至った経緯をどうぞ!」
 明らかに一護の質問を無視し、ルキアに振る喜助。――――だったら訊くんじゃねえよ。
そう言いたいが、自分もいい大人、彼のこの態度も知らないわけじゃないんだから、と必死に血圧を下げる一護。
そうする間に、ルキアの説明は始まっていた。

132りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:23:23 ID:IWMWkURY

「……ここ最近、虚の動きがどうもおかしくなっているようなのだ」
 どう説明するか考えながら、ルキアは話を続ける。
「一護、貴様も感づいているとは思うが、近頃の虚は、どうも集団行動が多くなってきている」
「え?……あ…ああ!! そうだな!…」
 慌ててそう繕う一護。―――――気づいてなかったな、そんな空気が流れた。
ルキアは一回咳払いをして続けた。
「…まあともかく、虚というのは元々、個々で強い魂魄を求めて途方もなく彷徨うものなのだ。それが最近、普通の虚同士ではしないような、連携的な動きを見せてきている
――その中心にいつもあったのが『コレ』だ」
 そう言って、ルキアはレリックを指差し、さらにこう続ける。

「どうやら虚共は、コレを必死になって探しているらしい。コレを見つけた虚達は、己の命を顧みずに守ろうとする
…中にはコレを手に入れた虚が逃げている間、他の虚が囮となって阻んだという報告も受けている
――相当に大事なものだと見るのが妥当だろう」

「ですが…問題はそこだけじゃない」
 今度は喜助が、ルキアの言葉をとって続けた。
「確かにコイツについて、まだまだ知らないことがたくさんありますが…それよりコイツを求めて動いている虚達もまた、よっぽどの統制が執れていることなんですよ。
――それこそ生半可なものではないくらいに」
「………つまり、どういうことだ?」
 一護が、疑問符を浮かべて訊く。話が遠回りすぎてよく分からなかったのだ。

「つまりですね……」
 喜助が、帽子の中にあった眼を覗かせながら、今度はかみ砕いて説明する。
「アタシ達は、コイツを探す虚達の裏に、大きな影が動いてるのでは無いかと疑っているわけですよ…ここまでくればもうお分かりでしょう?」
「裏?……影……――」
 しばらく考え込む一護だったが、やがて彼の脳裏に、ある光景がよぎった。



――――――血塗れのまま倒れている自分。
――――――それを遥か高みから見下ろす3つの人影。
――――――どうにもすることができず、ただ奴等を見上げることしかできなかった自分。

―――やがて彼等は、虚達に導かれ、霊界を去って行った。

忘れもしない、あの光景―――
「―――――あ!!」
 気づけば、一護はそう叫んでいた。他の皆も、同じわかった顔でお互いを見合わせる。
「そう…この裏には、あの男」
 喜助が、続けて言った。

「…藍染惣右介……彼が絡んでいるのではないかとね」

 ――――しばらくの間、沈黙が訪れた。





―――数週間前、霊界 戸魂界にて、ある事件が起こった。
―――霊界を守る護挺十三隊――その数人の隊長達が、反逆の狼煙を上げたのだ。


 ことの発端は、朽木ルキアの処刑からだった。
現世にて魂魄保護の命を受けたルキアは、途中で黒崎一護と出会い、そのまま虚に遭遇、最悪な展開に陥ってしまったため、やむを得ず死神の力を一護に渡してしまったのだ。
 戸魂界は、これを『勝手な死神の力の譲渡』という重度の違反と判断、処刑が決まってしまった。――ルキア自身もこれを受け入れてしまい、彼女は戸魂界にて裁きを待つ身になった。

 ただその処刑に納得がいかなかったのが一人いた―――。
――――黒崎一護だ。
 彼は浦原喜助、四楓院夜一らの先導のもと、そして茶度泰虎、井上織姫、石田雨竜らと共にルキア奪還を決心。戸魂界に乗り込んだ。
 協力者の力を借りてなんとか瀞霊挺に進出したものの、皆とは離れ離れに。そこからは先は、護挺十三隊を相手に、個々による激しい戦いが繰り広げられた。
 何度も傷つき、倒れながらも、抱いた意志を強く持ち、何度も立ち上がり、そしてまた戦う。
――そして遂に、まさに処刑寸前に、ルキアを助け出すことができた。――それで終わるはずだった。

―――――だが、これには別の真実があった。
―――――この処刑そのものが仕組まれたものだったと。

133りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:24:41 ID:IWMWkURY

五番隊隊長 藍染惣右介 

彼は、この戦いで死んだと見せかけて、処刑をめぐる戦いの裏で暗躍していたのだ。

 彼の狙いは、死神と虚の境界を取り払い、更なる存在を生み出すと言われる、戸魂界で最も危険な物質『崩玉』。
製作者である浦原喜助は、この崩玉の存在を危険に感じ、仕方なく魂魄の中に埋め込んで隠すという方法を取った。―――その白羽の矢が立ったのがルキアだった。
 それを知った藍染は、戸魂界の上層部である中央四十六室を殺害。あたかも処刑が上層部の決定であることを見せかけ、自身は死んだと偽って影で戦いを様子見、
――そして処刑を行うことで、ルキアの中にある崩玉を取り出す計画を立てていたのだ。

―――――そして、戸魂界がこの真実に気づいた時は、既に遅かった。

 ――結果、ルキアは死を免れたものの、黒幕は取り逃がし、崩玉も奪われてしまった。
そして戸魂界は深い傷跡を残し、藍染と数人の共犯者――二人の隊長達は、虚達の力を借りて虚園へと去って行った―――――。



「――――――あいつか………」
 ずっと続くかと思われた長い沈黙を、一護が破った。あの惨状は、ある程度時間が経った今でも鮮明に覚えている。
「―――確証は?」
 今度は雨竜が喜助に訊いた。
「まあ100%とは言いませんが、その可能性は大ですよ」
 そう言う喜助だが、彼は絶対と確信しているようだった。
今度はルキアが説明を続ける。
「当初戸魂界は、藍染が動くまでは静観する手はずだったのだが、これ以上好き放題させていたら、これから対処するにつれてますます不利になる
―――ということで今、戸魂界から二つの命が下ったのだ」
「二つの……命?」
「ああ」
 そう言ってルキアは指で二の文字を作り、一つの指を折り曲げて言った。
「一つは、レリックを確保するために私と恋次を現世に派遣すること――もう一つは」
 ルキアが二つ目の指を折り、続ける。

「数名の隊長格と共に、レリックが多く密集しているという世界に赴き、そこから藍染の跡を辿ることだ」

「……つまり?」
 まだ疑問符を浮かべる一護の問いに、ルキアが簡単に言いかえる。
「時空管理局…貴様が会ったあの女達の住む世界へ直に行き、あ奴等よりいち早くレリックを回収する―――そう言うことだ」
「何で崩玉を持つ藍染が、いまさらこんなモンなんか狙ってるか知らねえが、とりあえず奴が求めているモンを俺達も探していけば、奴の尻尾ぐらい掴めるかも知んねーだろ」
「……それってもう決まったことなのか?」
 今度はチャドがそう質問する。
「ああ、決まったなら早ぇ方がいいだろ? いまごろあっちじゃ、どの隊長を派遣するか決めているとこなんじゃねえのか?」
「……あれ?」
 ここで織姫が、不思議そうな顔をして言った。
「だったらその管理局…って人達にも協力してもらえばいいのに、その言い方じゃまるでどっちが早く取るか競争!!…するみたいだよ」
「……確かにそうだ」
 最初に訊きたかった質問に戻ったことで、また一護が詰め寄る。

「あいつ等何者なんだ? 時空管理局って何なんだ!?」
 この質問には、何故か返答が遅かった。やがて喜助が、どう言ったらいいか悩みながらも答えた。
「時空管理局…ねえ……」
 しばらくして、喜助の口から衝撃の言葉が出た。

「……アタシ達も、よく知らないんすよ」

「―――――ハァ!!?」
 あんまりの返答に呆然する一護達を、喜助が慌てて遮る。
「あ、いや!…全く知らないってわけじゃあ無いんですけど…信用できるかどうかとなると…って意味ですよ」
 そう前置きし、喜助は説明しだした。

134りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:26:25 ID:IWMWkURY

「まあ、平たく言えば…時空管理局ってのは、黒崎サン達のような霊力の強い人達が集まってできた警察のようなものって聞いてます
――――いわば滅却師の親戚みたいなものですね」
「…じゃあ死神と同じじゃん。何で信用してないんだ?」
 不思議そうにそう言う一護。わからぬ、とルキアは返した。
「死神になるとき、我らの存在は管理局には絶対に悟られてはならぬ、と教えられたが…その理由となると…」

「…二の舞を避けるためっスよ」
 しばらくの間を置いて、喜助が静かにそう言った。
「聞いた話なんですけどね…もし我々死神の存在が、管理局の連中に知られたらどうなるか、虚の事を知ったらどうなるか」
 ここで少し間を置いて、さらに続ける。
「もし虚の真実を知った管理局の一部…例えば黒崎サンのような正義感の強い人間達が、じゃあ自分達も虚を討つことにしようって事になったら、どうなると思います?
―――奴等は好んで人間を襲うと、死神と違って滅却することしかできない彼等が知ったらどうなると思います?」

「世界の崩壊を防ぐために、滅却師殲滅のようなものがまた起きる…ってことですか?」
 この答には、当事者の末裔である筈の雨竜が答えた。
喜助は、彼がきっぱり答えたことに意外そうながらも頷いた。
「……あんなことがあった以上それを恐れた戸魂界は、同じ轍を踏まないようにと距離を置くことにしたんでしょうね
―――真実を知らない限り、少なくとも彼等は虚のことは数ある魔法生物の一つぐらいにしか考えてないみたいですしね」
「―――けどよ…」
 一護は、まだ納得がいかない様子だった。

「それこそちゃんとお互いを知って話し合っていれば…今回のことだってこんな遠回りにならずに協力してもらえたはずだろ?」
 一護の言うことに、皆は頷く姿勢を見せるが……しかし喜助はただ静かに首を振るだけだった。

「…まあ、お偉いさんの考えることは、アタシ達にはよくわかなんないッスからねえ――怖くて信用できなかったんでしょう」
「それに…たとえ知っていたとしても、今となっては協力なぞ望めぬじゃろう」
 今度は夜一が、厳粛な声でそう告げた。

「…どういうことだよ?」
 夜一に向き直って尋ねる一護。しばらくの間を置いて、夜一は続けた。

「先にも言うた通り、今度の敵は藍染の可能性が高い――あ奴はずっと前から…それこそお主達の祖先がまだ赤ん坊だったそのずっと前からの永い永い間…我ら護挺十三隊を…戸魂界を謀ってきた男じゃ。
―――そんな奴が管理局の連中に何も手を加えていないと思うのか?」
 夜一のその言葉に、一護ははっとする。
「あ奴のことじゃ、管理局の一部を既に抱き込んでいるかもしれんし…いやもしかしたら、管理局全体が藍染の手下となりさがっとるかもしれん―――それぐらいのこと、平気であ奴はするじゃろう」
「………」
 しばらく押し黙っていた一護だったが、突然彼の脳裏に、スバルとティアナの姿が過ぎった。―――彼女達も自分を騙そうとしていたのだろうか?…いや、そんなはずは――
 しかし、夜一は反論を許さぬ口調で続ける。
「無論全員が、というわけでもないだろうが、それでもその位の考えがなければ…その位に疑ってかからねば…あ奴には届かないじゃろう」
 一護は、その言葉に何も返せないでいた。藍染の恐ろしさは…自分も心身共に身をもって知っていたからだ。
 今度は恋次が口を開いた。

「現世に来る時、総隊長が言っていたことがある……『味方と思うのは自分達だけ、周りは全て敵と思え』って……そうしないと勝ち目はねぇ…ってな」

「で、黒崎サン達はどうするんですか?」
 ここで喜助が一護に訊いてきた。
「え…どういうことだ?」
「言葉通りの意味ですよ。戸魂界は既に方針を決め、行動を開始している…派遣する人員が決まったら、直ぐにでも向こうに行くつもりでしょう―――黒崎サンも、当然行きますよね?」
 急な事に一瞬戸惑う一護だったが、確かに行くな、と言われても自分で行くことにするだろう。―――その時また、スバルの姿が浮かんだ。

135りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:27:35 ID:IWMWkURY

(―――あいつとまた会ったら、今度は戦わなきゃならねえのか……)

 いまだ、彼女達と敵対するのに、若干の抵抗が――そして、本当にこれでいいのかという、一抹の不安も覚える。
――だが、ここまで知っていまさら立ち止まるなんてできないし、藍染の策略ならなおさら阻止しなければ、今度はいままで以上の血と犠牲が出るかもしれない。
――それだけは有ってはならない。
 一護は、無意識に拳を握り締めていた。

「――行かせてもらうぜ」

 周りの皆も、その言葉に頷いた。





 暗い暗い闇―――そして唸る砂嵐。
常に夜が空を覆う完全な闇に、小さく光る三日月。
下界には、ただっ広い砂漠に葉も無い枯れた木が疎らにあるだけ、他には何も無い、それだけの世界。

――その砂漠に蠢くは、虚の影―――

 死神は、この世界を『虚園(ウェコムンド)』と呼んでいた。

 その虚園、とある場所に、大きな大きな宮殿が建っていた。
周りの木が米粒に見えるくらいの、圧倒的な存在感を持つそれ―――。
『虚夜宮(ラス・ノーチェス)』
 藍染惣右介を頂点に置く、虚からさらに進化した存在、『破面(アランカル)』が潜む、彼の根城だった。

 虚夜宮 とある廊下

 白と黒で彩られた大きな廊下は今、歩く音で響き渡っていた。
聞こえる足音は一つ。その足音の主は、響き返る自分の足音にも気にも留めず、黙々と目的地に向かって進んでいた。

 その男――彼は面妖な出で立ちをしていた。

 まず身に纏う服は、全てが真白。腰には刀を帯刀している。
全身の肌も同じように白がかっていたが、髪は黒く、その左上には、かつての虚であった頃の名残か、仮面の破片のようなものがついている。
その瞳には、喜怒哀楽どの感情にも浮かんではなく、感情そのものがあるのかさえ疑問に思う眼をしていた。
 やがて―――歩き続ける彼の前には、大きな扉へと辿り着いた。
そこで立ち止まり、彼はしばし聳える扉を見上げた。

「ウルキオラかい? 入っていいよ」
 暫くして、扉の奥から声が響いた。
彼はゆっくりと扉を開け、中へと入った。

「急な呼び出し、済まなかったね」
 ウルキオラと呼ばれた彼の目の前には、後ろを向いた質素な椅子、それだけしか無かった。やがて椅子が前へと向きなおり、座っている者の姿が見える様になる。

「藍染様、御要件は何ですか?」
 ウルキオラは軽く一礼し、単刀直入にそう訊いた。
しばらくして、藍染は不敵な笑みをしたまま答える。
「君に、ある物を届けて欲しいんだ」
「……ある物?」
「そう、ある物だ」
 そう言って愛染は指を鳴らした。

 次の瞬間、ウルキオラのすぐ下の地面から、小さな円柱が伸び出てきた。
円柱はある程度まで伸びた後、今度は上部から螺旋状に分かれ始めた。
――それもある程度まで分かれた時、ウルキオラの前には小さな玉が現れていた。

136りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:28:18 ID:IWMWkURY

 ――小さくも中で何かが激しく渦巻いているように見える『それ』
周囲には、危険だと判断された浦原喜助の手で封印された結界が張ってある『それ』
それでもなお、見る者にとてつもない何かを感じさせる『それ』
 浦原喜助が創り出した、死神と虚の境界線を取り払い、さらなる存在を生み出す『それ』
―――それの名を『崩玉』と言った。

「偽物では無い、正真正銘の本物だ」
 崩玉を手に取るウルキオラに、藍染は変わらぬ笑みを讃えて言った。
「これを、ある男に届けて――そしてしばらくの間は、その男の言う通りに動いて欲しいんだ」
 そしてしばらく間を置き、こう続ける。
「そして、その男の言う通りに動く裏で、君には極秘にあることをしてもらいたい。そのあることとは―――――」



「…わかりました」
 説明を聞き終えたウルキオラは、しばしの黙考の後、静かにそう答えた。
この任務について、疑問に思うことは数あれど、それを藍染に問おうとは思わなかった。
――自分にとって藍染は絶対、藍染がそうしろと言うならば、自分はその通りに動くだけだ。

「頼んだよ、ウルキオラ」
 藍染はそう言い終える頃には既に、ウルキオラは『黒腔(ガルガンタ)』を開いていた。
「では、直ぐにでも」
「ああ、」
 藍染は最後に、ウルキオラに目的地を伝えた。

「場所は、魔法の地ミッドチルダ。男の名はジェイル・スカリエッティだ」


 役者は集う―――彼の地ミッドチルダに―――。




―――――――――――――――――――――――――――――――To be continued

137りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/12(木) 17:29:02 ID:IWMWkURY
これにて終了です。どうもお疲れ様でした。
     補足 前回の質問について
 今回は『なのは』と『ブリーチ』の設定について、色々疑問が多いと思うので、
明かせる範囲だけで簡単な説明をしようと思います。

Q 管理局と戸魂界の関係について
今回の事が起こるまで、あまり交流はありませんでした。理由は、本編を見てくれたら多少なりと納得してくれるかと
 管理局側は、死神と虚の存在は確認できるけど、死神の場合あまり記録に残らないように改竄されているという設定です。そのため確認例がちらほらあるだけです。
 虚は、死神に比べると発見例が多いですが、霊=虚と結びつくまでには至っておらず、(外見から結びつけるのは不可能かと)それならまだ危険な魔法生物の一種と見なしているようです
(A`sのような怪物もいましたし)
 戸魂界側は、存在こそ知っていますが、今となっては信用することはできずに、勝手にさせている状態です。

Q なのは達の19年間について
 霊は見えていますが、虚は見てはいません。いつかはそれを描いた番外編でも創ろうかと。
 虚を見なかった理由については、現地の死神が優秀だったことにしてください。(一護も15年間は虚の存在を知らなかった)

Q じゃあミッドチルダに虚や死神は出ないのか
 ―――でません。それは何故か?
それは本編の続きということで。

 また質問があったらどうぞ、すぐには返せないかもしれませんが。

                        ――――――それではまた。
ここまで代理お願いします

138魔法少女リリカル名無し:2009/03/12(木) 20:06:38 ID:ppyTEUP.
>>137
自分も規制中なので無理ですが
代理投下のお願いは一番最後に別レスでやった方がいいと思います
その方が目に付きやすいので

あと何レス目〜何レス目までの範囲も書いて置いた方が

139りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/03/14(土) 14:45:05 ID:0zvgg.Go
確認しました
代理の方どうもありがとうございました

140レザポ ◆94CKshfbLA:2009/04/12(日) 16:42:01 ID:/jMypZuk
 「くっ!これは!!」
 「無駄ですよ、その赤いバインド、レデュースパワーは縛った対象の力を抑え、
 青いバインド、レデュースガードは縛った対象の防御を抑える……その意味はわかりますね?」
 
 そう言うとグングニルを振り上げるレザード、ザフィーラはバインドを外そうと力を込めるが思うように力が入らなかった。
 ザフィーラはなす統べなくレザードの攻撃を受け吹き飛んだ。
 すると今度はフェイトがトライデントスマッシャーをレザードに放つ。
 最初に撃ち出された直射砲を軸に上下に直射砲が伸び、三本の直射砲がレザードに向かって襲いかかる。
 だがレザードの左手に青白く炎のように揺らめく魔力を纏わせライトニングボルトを放つ。
 ライトニングボルトはトライデントスマッシャーを打ち破りフェイトに直撃した。
 すると今度はなのはがエクセリオンバスターを撃ち込む。
 
 「エクセリオン……バスター!!」
 「フッ……プリベントソーサリー」
 
 するとエクセリオンバスターから黄色い魔力の鎖が現れ、巻き付くとエクセリオンバスターは徐々に拡散し消滅した。
 なのはは驚く表情を見せるとレザードは得意気にバインドの説明を始めた。
 プリベントソーサリー、レザードがこの世界に合わせた魔法で、縛った対象の魔力を封じる効果を持つという。
 つまりそれは魔法を縛れば魔力の運動を止められ消滅し、
 肉体を縛ればリンカーコアの動きを封じられ魔法が使えなくなると語る。
 そしてレザードは眼鏡に手を当てると更に話しを続けた。
 
 「どうしました?さっきまでの威勢は何処へ行ったんでしょう?
  それとも…フフッ犠牲者がでなければ実力が発揮出来ないとか?」
 
 そう言うと左手を地上にかざすレザード、左手は先ほどと同様、魔力に覆われていた。
 なのはとフェイトはレザードがかざす手の方へ目を向ける、すると其処にはティアナやエリオ達の姿があった。
 まさか!といやな予感がしたなのはは、とっさにティアナ達に念話を送る。
 
 (ティアナ!みんな!急いでその場か―――)
 「…バーンストーム」
 
 そう言うとレザードは指を鳴らすと纏っていた魔力が消える。
 そしてスバルが居た場所を中心に直径数百メートルの部分が三度に分けて大爆発を起こし、その光景を目の当たりにするフェイト。
 するとレザードはバーンストームの説明を始める、バーンストームは爆炎を利用した魔法、
 そしてレザードの手によって非殺傷設定されている為、死ぬ事は無いと。
 だがレザードの炎は特別で対象が気絶するか、かき消すか、そして非殺傷設定が解除されてあれば燃え尽きるかしないと、炎は消える事が無いと話す。
 しかしバーンストームの跡地に残された炎は見る見ると消えて来ており、その状況に疑問を感じるレザード。
 
 「おや?思いの外、炎の消えが早い……そうか!相手が弱すぎて最初の爆炎だけで気を失ったのか!
  ならば…その後に訪れるハズであった身を焼かれる苦しみを味わなくて済んだようですね」
 
 そう言って高笑いを上げるレザード、フェイトは依然として跡地を見つめていた。
 あの場にはエリオ達の姿もあった…それが一瞬にして消されたのである。
 
 するとフェイトは怒りで目の瞳孔が開き、髪をふわりと逆立てると、ソニックムーブでレザードの後ろをとり、
 ブリッツアクションを用いて腕の振りを早めたジェットザンバーを放つ。
 だがレザードはとっさにシールドを展開させフェイトの攻撃を防ぐ。
 互いの攻防により火花が散る中、フェイトはレザードを睨み付け吐き捨てるように叫んだ。
 
 「アナタは!命をなんだと思っているんですか!!」
 「ほぅ……“人形”が生意気にも命を語るか……」
 
 その言葉に動揺を覚えるフェイト、その隙を付いてレザードはグングニルでフェイトの子宮辺りを突き刺す。
 グングニルにはアームドデバイスと同様、非殺傷設定されてあれば肉体を傷つけず、
 肉体を傷つけた際に生じるであろう痛みのみを与える効果を持っている。

141レザポ ◆94CKshfbLA:2009/04/12(日) 16:43:13 ID:/jMypZuk
 「かぁ!?……はぁぁぁ……ぁぁ…」
 「“人形”が…処女〈おとめ〉を失う時の様な喘ぎ声を上げるとは…な!」
 
 そう言ってレザードは更にグングニルを深く突き刺し更に突き上げた。
 グングニルによって深く突き上げられた痛みによって、フェイトは目を見開き涎を垂らしていた。
 
 「はぅ!……ぁ…ぁぁああ!!」
 「キツいですか?なぁに…すぐにこの感覚にも馴れます…よ!」
 
 更に深く突き上げ、グングニルは尾てい骨辺りを超えて貫き、腰から刃を覗かせていた。
 
 「カハァ!!」
 「とは言え所詮はただの“人形”……貴方が相手では木偶と情交するに等しいか…」
 「わた…しを…“人形”と……呼ぶな!!」
 
 涎を垂らし目には涙を溜めながらも必死に抵抗するフェイト。
 するとレザードはグングニルを引き抜きフェイトの顎を掴み、顔を近づけこう言い放った。
 
 「“人形”と呼ばれるのがそんなに不服か?…ならばこう呼んでやろう……プロジェクトFの残滓よ」
 「ッ!!!キッキサマ!!」
 
 フェイトの怒りは頂点に達しレザードの手を振り払うとバルディッシュをまっすぐ振り下ろした。
 だがレザードはフェイトの怒りの一撃をたやすく受け止めていた。
 
 「そんな!フィールド系?…いや支援魔法!?」
 「ご名答…正解した貴女にはコレを差し上げましょう…」
 
 そう応えるとレザードはフェイトに手を向ける、手には魔力が纏われており、魔力は手のひらを介して球体へと変化、それは徐々に加速していった。
 それを見つめるなのはは見たことがあった、いや確信していた、あれは自分の十八番とも言える魔法であると。
 
 「確か……名は」
 「フェイトちゃ――」
 「ディバインバスターでしたか」
 
 次の瞬間、レザードから青白いディバインバスターがフェイトに向け撃ち出された。
 フェイトはディバインバスターに飲み込まれ吹き飛ばされていく。
 だが後方でザフィーラがフェイトの救出に成功していた。
 
 「何で!アナタがディバインバスターを!」
 「ただの魔力を加速させて放出させるなど、私が出来ないとお思いで?」
 
 レザードは様々な魔力変換が可能な存在、魔力を加速させて撃ち出すことなど造作もないと不敵な笑みを浮かべ話す。
 その中レザードにルーテシアから念話が届く。
 
 内容は今し方ガリューは目的の品を回収し無事アグスタを脱出、現在ルーテシアの元へ向かっているという。
 
 (…わかりました、ではルーテシアはガリューが到着後すぐに転移して下さい、しんがりは私が務めましょう…)
 (わかった…やりすぎないでね)
 
 ルーテシアは一言残し念話を切る、それを確認したレザードは辺りを見渡すとなのはを中心にメンバーが募っていた。
 レザードは一通り見渡すと肩をすくめこう言い放った。

142レザポ ◆94CKshfbLA:2009/04/12(日) 16:46:54 ID:/jMypZuk
 「さて…貴方がたの実力も見えてきた頃ですし、そろそろ私は退散でもしますか」
 「なっ逃げるの!それに…私達がそれを許すと思うの!!」
 
 なのはのその言葉に大笑いするレザード、するとレザードは眼鏡に手を当てこう言い始める。
 
 「これは面白い事を言う、貴女は自分がどのような状況かまるで解っていないのですね」
 「それはどういう意味!」
 「こう言う事ですよ」
 
 そう言ってレザードは移送方陣で更に上空へと上がる。
 なのは達は必死に追いかけているとレザードの足元に、
 巨大な複数の環状で構成された多角形の魔法陣を展開、そして左手をなのは達に向け詠唱を始める。
 
 「…闇の深淵にて重苦に藻掻き蠢く雷よ…」
 
 するとレザードの目の前に黒い球体が姿を現す。
 球体の中は幾つか稲光が見えていた、そしてレザードは更に詠唱を続ける。
 
 「彼の者に驟雨の如く打ち付けよ!」
 
 すると球体は見る見る膨らんでいきレザードの姿すら見えないほどにまで巨大化していた。
 
 「あれは……まさか広域攻撃魔法か!?」
 「こんな場所で撃ち出そうと言うの!」
 
 なのは達は上空を見上げレザードの魔法を分析する。
 するとレザードの声だけが響いてきた。
 
 「安心なさい…非殺傷設定されてあります…ですので……」
 
 レザードの姿は魔法に隠れ見えないが、不敵な笑みを浮かべているだろう声でこう告げた。
 
 「存分に死の恐怖と苦痛を堪能して下さい…」
 
 そしてグラビティブレスと叫ぶと漆黒の球体はなのは達に向かっていった。
 なのは達は苦い顔をしながら迫ってくる球体を睨みつけると回避を否がす。
 だがヴィータがそれに反発する、何故ならなのは達の後ろにはアグスタが存在していた。
 アグスタの中にはまだ局員達が多数警備しており、今自分達が避けたらアグスタに直撃してしまうからだ。
 するとザフィーラが一歩前に出ると障壁を最大にして展開、グラビティブレスを受け止めようとする。
 その間になのは達はアグスタに残っている局員達に連絡を取ろうとした瞬間、
 ザフィーラの障壁が脆くも打ち崩され、ザフィーラを飲み込んでいった。
 更になのは達をも飲み込み、グラビティブレスは無情にもアグスタを包み込むように直撃した。
 
 …グラビティブレスの中は詠唱如く、無数の雷が蠢きあい、内にあるモノ全てを驟雨の如く打ち付けていた。
 暫くするとグラビティブレスは一つの稲光を残し消え、跡地にはアグスタが瓦礫の山となっており、一部は砂塵と化していた。
 その様子を上空で見届けたレザードは眼鏡に手を当てながら口を開く。
 
 「我ながら中々の威力ですね」
 
 そして高笑いをしながら移送方陣でその場を後にした。

143レザポ ◆94CKshfbLA:2009/04/12(日) 16:49:09 ID:/jMypZuk
 一方、一部始終見届けていたロングアーチは静寂に包まれていた。
 誰もが今まで見ていた光景が偽りであると考えるその中で、はやての檄が飛ぶ。

 「何を惚けとる!早よ現場に救護班を急行させ!いくら非殺傷設定の攻撃だとしても、あの量の瓦礫に埋められたら圧死か窒息死してまう!!」
 
 その言葉に端を発し一斉に動き出すロングアーチ、その中はやては右手を握ると思いっきり机を叩く。
 そして苦い表情を表しながらモニターを見つめ吐き捨てるかのように言葉を口にした。
 
 「私の……私の判断ミスや!!」
 
 
 
 
 一方ゆりかごに戻ったレザードは通路を歩いていると、ルーテシアがレザードの帰りを待っていた。
 ルーテシアはスカリエッティに頼まれた品物を渡しナンバーズにも品物を渡し、残りはレザードの品物だけだと話す。
 ルーテシアはレザードに一つのパピルスを渡す、パピルスには設計図のような物が描かれていた。
 そしてルーテシアはその品物が何なのか問いかけた。
 
 「博士…それ何なの?」
 「これですか?」
 
 ルーテシアの疑問に対し、パピルスに目を通しつつ笑みを浮かべこう答えた。
 
 
 
 「“ゴーレム”の設計図ですよ…」

144レザポ ◆94CKshfbLA:2009/04/12(日) 16:52:17 ID:/jMypZuk
以上です、レザード大暴れな回です。
アームド系の非殺傷設定はあんな感じにしてみました。



次は外伝を挟みながらの投下を予定しています。


それではまた。

145レザポ ◆94CKshfbLA:2009/04/12(日) 16:53:33 ID:/jMypZuk
そして久々に規制に引っかかりました。

どなたか代理投下をお願いします。

146魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/04/16(木) 21:24:31 ID:WCv/C/0M
やはり後一歩のところで規制食らった……すいません、どなたか代理投下お願いします。


 日も落ち夜の闇が支配する廃墟街の片隅で。不安を押し殺しながら、君島に言われた通りにずっとカズマの帰りを待ち続けていた。
 そんな時だ、瓦礫を踏む足音が聞こえてきて弾かれたように振り向いたその先に―――

 ―――待ち続けていた愛しい人がこちらに向かって歩いてきていた。

 かなみは漸くにカズマと会えたことに歓喜に打ち震えながら、彼の名を何度も呼びながら駆け寄り、彼へと抱きついた。

「すまねえな、かなみ。ちょっと野暮用でよ」

 この期に及んでまだいつものバレバレの言い訳をしようとするカズマが可笑しく、しょうがない人だと笑いかけ―――

 ―――カズマが背負っている君島に気づき、その笑みが止まる。

「き、君島さんが………あれ…………?」
「ん、君島がどうしたよ?」

 急に背負っている相棒のことで戸惑いだしたかなみを見て、それこそカズマは不思議そうに首を傾げていた。
 君島がどうかしたのだろうか……っていうかコイツはいつまで寝ている心算なのだろうか。

「おい、ちゃんと掴まってろよ君島。落っこっちまうだろ」

 そう言いながらついでに起きないものかと揺すってみたが、やはり反応なし。
 本当に熟睡してやがるのか、そんな呆れを抱いていたその時にカズマはこちらを……否、君島を見上げて泣いているかなみの姿に気づいた。
 なんでかなみが君島を見て泣いているんだ? その疑問の解が最初は分からなかったカズマであったが急に胸中に広がりだした嫌な予感である事に気づきはじめた。

「………君島?」

 本当に、君島は熟睡しているだけなのか?
 何故呼びかけに応えない?
 何故寝息一つ聞こえてこない?
 それに………何故、かなみが泣いているんだ?

「……お、おい……君島。……な、何だよ、チャラけてる場合じゃねえだろ?」

 段々と己の声が震えてくることにカズマは嫌でも気づいていた。
 今思えば、君島の様子はいつもとはどこか違い、変だった。
 よく考え、振り返ってみればそれはありありと分かることでもあり、そして今この状況こそがそれを証明しているのではないのか?

 傷だらけで、目を覚まそうとしない君島邦彦。
 そんな彼を見て泣いている由詑かなみ。

 ありえない、そんなことは絶対にありえない。
 脳裏に過ぎる最悪の予想を無理矢理に振り払いながら、カズマは君島を起こす為に何度も呼びかける。
 応えは、一度たりとも返ってこなかった。
 そのせいだろう、段々とカズマも焦ってきていた。

 おい、君島。そろそろ起きろよ。
 お前が誤解されるような寝方してるせいで、かなみが泣いちまってるじゃねえか。

 かなみも泣くな、泣く必要なんて無いだろう。
 お前が泣いちまってるもんだから……まるで……まるで………

 まるで、君島邦彦は本当に――――

147魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/04/16(木) 21:30:12 ID:WCv/C/0M

「………おい、起きろよ。………君島…………?」

 それでも、震える声でなんとかそれを認めたがらないように、否定するように、彼が応えてくれるように願って、カズマは君島へと呼びかける。
 だが―――



 ―――だが二度と、君島邦彦がカズマの呼びかけに応えることは無かった。



 次回予告

 第7話 ロストグラウンド

 誤解が不和を呼び、不和が戦いを呼び、戦いが悲しみを呼ぶ。
 その中で芽生えた友情も、愛も
 光の中に溶け込むしかないのか?
 往くは破壊、来るは破壊
 全て―――破壊。


というわけで君島退場です。
予定調和と言われればそこまでですが、サプライズ要素でも生かすことは自分の未熟な技量では出来そうにありませんでした。
その代わり自分なりにこれまでで一番力を注いだ部分だったのですがどうっだたでしょうか?
今回はちょっと詰め込みすぎた感もありますし、もう少しこれからは精進したいと思っています。
いつも長くてすいません。それでは、また。

148LYRICAL COMBAT ◆CF.MGbgQBo:2009/04/20(月) 17:17:37 ID:5mwSsDMs
さるさんに引っかかってしまいました…。投下の方は終了しましたので
どなたか次のレスの代理をお願いします…。

149LYRICAL COMBAT ◆CF.MGbgQBo:2009/04/20(月) 17:20:29 ID:5mwSsDMs
はい、第2話終了です。やっと六課との接触ができました。
支援してくれた方、ありがとうございます!
それでは、また。

150りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/04/26(日) 23:16:48 ID:anR3nOTw
新人隊員です。スレの容量が超えてしまって投下できません。
どなたか、続きを投下してはくれないでしょうか

151りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/04/26(日) 23:18:26 ID:anR3nOTw
新人隊員です。スレの容量が超えてしまって投下できません。
どなたか、続きを投下してはくれないでしょうか

152りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/04/26(日) 23:26:03 ID:anR3nOTw
 ――場所は変わり、研究施設。

「レリック反応を追跡していた、ドローンⅠ型6機、すべて破壊されています」
「ほう…」
 モニター越しに女性と会話をするのは、白衣の男――ジェイル・スカリエッティ。
別に映し出されたガジェットの残骸を見、至極興味深そうな表情をした。

「破壊したのは局の魔導師か…それとも、アタリを引いたか?」
「確定はできませんが、どうやら後者のようです」
「すばらしい、早速追跡をかけるとしよう」
底冷えするような冷笑を湛えてそう言うスカリエッティ。
と、そこにコツコツとこちらへと来る足音が一つ。

「ねえ、Dr。それなら、アタシも出たいんだけど」
「ノーヴェ、君か?」
「駄目よノーヴェ、貴女の武装は、まだ調整中なんだし」
「今回出てきたのがアタリなら、自分の目で見てみたい」
 どこかぞんざいな口調で頼む、ノーヴェと呼ばれた少女。
しかしスカリエッティは、ゆっくりと首を振った。

「別に焦らずとも、アレはいずれ必ず、ここにやってくる事になるわけだがね……まあ、落ち着いて待っていて欲しいね、いいかい?」
「……わかった」
 渋々納得したかのように、ノーヴェは引き下がった。
その間にも、彼等は事も無げに話を進める。

「ドローンの出撃は、状況を見てからにしましょう。妹達の中から、適任者を選んで出します」
「ああ、頼むよ」
そう言って頷くスカリエッティの視線は、もう片方のモニターに映し出された、何者かに破壊されたガジェットの詳細の方に移っていた。



「…俺の手が必要か?」
 不意に、スカリエッティの後ろから声が聞こえてきた。
ノーヴェとは違い、音も無く彼の背後を取る男。

 男は、面妖な出で立ちをしていた。
全てが白く染まった様な、死覇装にも似た服を着こなし、頭部には虚の欠片と思しき物が付いている。そして精密機械を思わせるような感情の起伏が見られない顔。
その冷徹な表情で、彼は睨むように訊ねていた。


「君の出番はここじゃあ無いよ」
しかし後ろを取られにも関わらず、スカリエッティの声は平坦そのもので返した。

「『破面』の力というのが、どれ程のものか、確かに見てみたいところだが、ここで使うにはいささか早計というもの……
当面君には別の場所で働いてもらうとしよう、頼むよ、ウルキオラ」
 その言葉に、男――ウルキオラは特に異議を唱えることはしなかったが、いま一つ、確認するように訊く。

「別に構わないが、藍染様との契約を、忘れてはいないだろうな?」
「わかっているさ、私と君の主とは、少なからない仲でもあるのだからねえ――約束はちゃんと守るよ」
 彼の謹直さに苦笑いを呈しながらも、スカリエッティは頷いた。

―――ならいい、とそれだけ確認するとウルキオラもその場を後に去って行く。

「……後は」
 そしてスカリエッティは再び視線をモニターに戻し、そこに映る高台――を感慨も無く見下ろす少女を見て呟いた。
「愛すべきもう一人の友人にも、頼んでおくとしよう」

153りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/04/26(日) 23:26:46 ID:anR3nOTw
「あ〜〜買った買った!」
 大手を振って歩く二人の女性がいた。
道行く人が十人いれば十人、振り返ること間違いなしの美女二人が、両手に買い物袋を抱えて歩いている。
「あの…いいんですか? こんなに買っちゃって」
 隣の巨乳美女、織姫が手荷物を見て恐る恐る訊くが、しかし乱菊はどうってことなさそうに返す。
「いいのよ! ちゃあんと経費から落としてきたし!」
「それ、いいんですか? 勝手に使っちゃったら日番谷君怒るんじゃ…」
「大丈夫、うちの隊長は懐が大きいから!」
 にっこり微笑んで言い切る乱菊。―――冬獅郎の苦労はまだまだ絶えない。
アハハ、と織姫が苦笑いを呈しながら、何気なく道を歩いていたその時。


「……?」
 ふと、何か気付いたように織姫が立ち止った。

「どうしたの織姫?」
「え、と…今何か聞こえませんでしたか?」
 周りを見渡して、聞き耳を立てる織姫。
乱菊もそれに倣うが、特に怪しい音は聞こえてこない。

「別に何も―――」



    カコン




 と、重く低い音が、乱菊の耳にも響いた。
聞き間違いじゃない、確かに何かが…こっちに来ている。

「こっちです!!」
 織姫が、角の路地裏に回った。
乱菊も織姫の後を追って角を曲がる。

 次の瞬間、二人は驚きに目を見張った。

「乱菊さん…これは……」
今、織姫たちの目の前には、重度の怪我を負った、少女が倒れていた。
だが、乱菊が目を向けたのはそこだけではなかった。

「……この子…」
 乱菊が彼女を介抱しながら、少女の腕に繋がれているケースを見た。
―――それは、レリックのケースに他ならなかった。


「とにかく、隊長に報告しなきゃ」
 彼女の瞳には、いつもの楽天的な表情が微塵にも消えていた。





 仮本拠地内 執務室にて

「…………終わった……」
 今しがた最後の生類整備を終え、やっとぐったりと机に項垂れる冬獅郎。
―――結局、乱菊の分までやってしまった。
先刻ほどに乱菊が出て行った時は、目も当てられないほどに雑多だった副隊長机も、今や自分の机と同じように綺麗に整っている。

154りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/04/26(日) 23:27:33 ID:anR3nOTw

 しかし、今広がる光景とは裏腹に、冬獅郎の心はストレスで曇りに曇っていた。

(やっぱり俺はお人好しか?)

 自己嫌悪で悶絶する冬獅郎。こんな調子では本当にこれからが思いやられる。
――もし、こんな時に何かありでもしたら。



「ん、何だ?」
 それを告げるかのように突然、懐にある伝令神機から、連絡が来た。
嫌な予感がすると分かりつつも、冬獅郎は渋々電話に出る。

「――十番隊 日番谷だが」
「隊長ですか? あたしです!」
「……何だよお前か」
 ただでさえ深い眉間をさらに寄せて、不機嫌を露わに訊く。

「一体今度は何があったんだ?」
「単刀直入に言います、路地裏で少女が大怪我で見つかったんです!!」
そらきた。
また新たに増えた厄介事に、冬獅郎は大きなため息を吐く。

「オイ…テメエまさか、それも俺の手が必要とか抜かすんじゃねえだろうな? それくらいの状況判断ぐらい自分でしやがれ―――」
「少女の持っていた物の中に、レリックと思しき物も見つかりました」


「!!!」
 瞬間、冬獅郎の目が驚きに開かれた。
まさかこんなにむ早く見つかるとは―――。
どうやら、状況というものは、いつもやってきてほしくない時にこそ、起こってしまうものらしい。
冬獅郎は再び大きなため息をつくと、改まった声で訊き直した。

「…場所は何処だ?」





「あ、ここです! 隊長」
 数分後、乱菊達の処に、えらくクールな、昭和風の少年服を着た冬獅郎が路地裏へと行き着いた。
「隊長…その服で来たんですか?」
 勇気があるなあ、という目と、それはないだろう、という珍妙な目で冬獅郎を見る乱菊。
―――どうやら自分がこれを着せたことは遥か遠い記憶の中に置いてきてしまったらしい。

「松本…テメエ後で覚えてろよ」
 そう吐き捨てから、改めて織姫の結界術で治療中の少女と―――隣の鎖に巻かれたケースを見やった。

「………封印は?」
「一応、しときました」
「――そうか」
 冬獅郎の視線は、レリックから再びケースへと移る。
正確には、ケースに繋がれている鎖に注目しているようだった。


「…これは……」
――切れている鎖の先端。
冬獅郎がそこから答えを導き出すのに、そう時間はかからなかった。


「レリックはもう一つある」
「――え?」
「直ぐに動くぞ、松本、準備をしろ」
 あまりの事についていけない乱菊を余所に、冬獅郎はすぐさま懐から丸い丸薬――もとい義魂丸を取り出し、口に入れた。

仮初の肉体から、彼の本来の姿が現れる。

155りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/04/26(日) 23:35:59 ID:anR3nOTw
黒い着物『死覇装』を身に纏い、さらにその上、護挺隊の頂点に立つ者のみ着用が許される『隊首羽織』そこに書かれている『十』の数字の白い羽織をなびかせ、
そこに長身の愛刀を担ぐ。
同時に、先程まで不機嫌で歪んでいた顔も、威厳のあるものへと変わっていた。

「はぁ…仕方ないか」
 渋々といった感じで、乱菊も冬獅郎の後に続き、義魂丸を口にする。
同じように身体から魂が引き剥がされ、冬獅郎と同じ死神装束の彼女が現れ出る。


その頃には、冬獅郎がレリックをケースから取り出し、先程までの自分の義骸に指示を出していた。
「とりあえず、お前達は拠点にまでこのレリックを届けてくれ」
冬獅郎の身体に入った義骸は、大仰な敬礼を取って答える。

「わかりました! 70%の確率で届けます!」
「100%の確率で届けろバカ!!」
 多少の不安は残しながらも、冬獅郎と乱菊の義骸達は素直に指示を受け取り、速やかにその場を去って行った。冬獅郎は素早く乱菊に向き直る。

「松本、お前はまず今のこの状況を黒埼達に伝えろ。それが終わり次第、残りのレリック探索を始めるぞ」
「え〜〜〜! 地下水の中を探し回るんですかあ?」
乱菊も開けられた地下道を見、不服そうな声を出す。
しかし、冬獅郎は有無を言わせない。


「松本、束の間の休息はもう堪能しただろ?」
 その口調は、先程までの不機嫌が醸し出したようなものでは無かった。怒鳴るでもなく諭すでもない、ただただ静かで、そして重みのある声。

「こっから先はマジで取り組め―――でねえと、死ぬぞ」
「…わかってますよ」
面倒そうに返しながらも、もう彼女の瞳からは、いままでのお茶らけた感じは消えていた。

「あの、日番谷君…あたしはどうしたら…」
「お前は、そのガキをある程度治療したら保護しろ―その後は命があるまで待機だ。わかったな」
「え、でも―――」
 
その眼には、「自分も戦いたい」という意味が容易に察せられた。
だが危害を加えられない彼女の性分では足手まといになることは分かり切っているし、第一状況が状況、個人の我儘に付き合うほど、今は暇でも無かった。

「言ったろ、待機する役も重要だってな――だから大人しく待っていろ」
「大丈夫よ、直ぐに終わらせてくるから」
「…わかりました」
 乱菊のその言葉に、織姫はただ頷くしかなかった。
そして、二人は再び地下水の入口の方に向き直る。

「準備はいいな、松本」
「何時でも」
 簡素な返答――だが、それだけでお互いの準備ができたことが、長年培ってきた信頼でわかっていた。
「日番谷君、乱菊さん」
織姫は、二人が消える最後の最後まで、冬獅郎達を見送っていた。

「―――気をつけて」
「ん、ああ」
「これが終わったら、またショッピングの続きでもしようね」
二人は、それぞれ織姫にそう返すと、暗い地下水の穴の中へと消えていった。





「―――それにしてもこの子、どっから来たんだろう?」
 目を覚ますまでの間、その場で治療することにした織姫は、改めて酷く傷ついた少女を見やった。着てる服や、痣だらけの身体を見ても、
ただ地下水を歩いてきたにしてはおかしい位ボロボロだった。
無論、レリックのケースを何故運んで来たのかも大きな疑問の一つ――なのだが……。

(…何だろう、この子…)

 それ以上に織姫の疑問を抱かせているのが、少女から感じる『霊圧』だった。
決して大きくは無い、むしろ小さい部類に入るくらいものではあるのだが、――どこか違う、織姫は理屈ではなく感覚でそう感じた。
 死神のものでも虚のものでも無く、だが自分達ともどこかかけ離れているような…この感覚は一体……。

156りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/04/26(日) 23:43:15 ID:anR3nOTw
「ウオオオオオオオオオオオオオァァァァァァ!!!!!!」


今度は路地裏の奥で、地獄から聞こえてくるような、重く、響くような唸り声が聞こえてきた。
織姫は、一旦手を休め、恐る恐る向こう角で蠢く影を見た。


 ――腕が、脚が。


人体の形相を留め得ないその姿態を見たとき、織姫の神経に戦慄が走った。

(虚だ……!! 何でここに?)

新たに湧き出る疑問。
虚は、自分に気づかず、その場から消えていく。
 ―――このまま野放しにはできない。

「ゴメンね、直ぐ帰ってくるから」
 織姫は少女に結界術を張ったまま、急いで虚の後を追いかけた。
角を曲がり、細道を通り、人気の無い路地裏を突き進み―――そして、見つけた。
長い時間を掛けてしまったが、漸く虚の影がその眼に視認することができた。

(せめて、これぐらいはみんなの役に立たなきゃ!!)
 そう意に決し、攻撃準備を整え、虚に向かって行こうとして―――不意に止めた。

「―――ガッ!!!?」
「……え?」
 突然虚は、頭を抱え込んで苦しみだした。
それと同時に、虚の身体がみるみるうちに溶けだし始める。
鱗のようなもので覆われた皮膚は、不気味な音を立てながらドロドロに落ちて、その上から蒸気が立ち込める。

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
そして次の瞬間、原形すら留めずに、虚は字義通り蒸発して、消えた―――。

「……どうなってるの……?」
 織姫は、わけがわからず、ただそこで立ち竦むだけだった。


そして、その同じ頃。


「―――あれ?」
「どうしたの、エリオ君?」
 同じく束の間の休暇を楽しんでいたエリオとキャロは、ある街路地で足を止めた。

「いや、何か叫び声のようなものが聞こえたような――」
 エリオは不審げに辺りを見回し、そしてすぐ角にある細道に目を向けると、そこに一目散へと駆け出した。

「あ、待ってよエリオ君!」
急いで追いかけるキャロを余所に、エリオは角を曲って、そして驚きに立ち止った。
後から来たキャロも、エリオが見ているものを見て、その理由を悟った。

 道端に、不思議な光に包まれている少女が倒れていた。

「お…女の子? 怪我してる!」
「それと…何だろ、この光…?」
 少女に駆け寄り、不思議に光るものにエリオが触れようとした時、それはふっと消えてしまった。

「な、何? 今の」
「と……とにかくスバルさん達に知らせないと!!」
 慌てふためきながらも、少女の介護を始めるエリオとキャロ。
そんな彼等のやり取りを、頭上から遠巻きに見る小さな影が二つ。

「た…大変だ……」
 さっきまで少女の、治療の担当をしていた織姫の分身体ともいえる小人――舜桜が、エリオ達と同じくらいに慌てて言った。

「とにかく、織姫さんに知らせないと…!」




 時は進む、ゆっくりと。
  世界は交わる、再びに。
   そしてそれぞれの思いを胸に、彼等は衝突する。






―――――――――――――――――――――――――――To be continued.

157りりかる新人隊員 ◆LtQa/zljtQ:2009/04/26(日) 23:45:55 ID:anR3nOTw
今日はここまで、全然目新しいものが無くてすいませんでした。
なので予告でもしておきましょう。

次回、いよいよ戦闘開始! まず最初は『子供対決』からです!!
 ―補足…というか反省―
冬獅郎の少年服の下り、完全に要らなかったですね。
衝動的にやってしまって、最後まで入れようか迷ったんですけど…。
でもやっぱり今は反省しています。
質問があったらどうぞよろしくお願いします。
                       ――――――ではまた。


ここまでお願いします。今回はさるさんにやられるわスレは越えるわで色々と迷惑をかけました本当に申し訳ないです。

代理の方、ありがとうございました。

158魔法少女リリカル名無し:2009/04/27(月) 00:01:09 ID:sCgDLBUE
age

159魔法少女リリカル名無し:2009/04/27(月) 00:01:48 ID:sCgDLBUE
age

160<削除>:<削除>
<削除>

161魔法少女リリカル名無し:2009/04/27(月) 22:08:50 ID:uw0hWcUg
容量オーバーとわかっていながら、スレ立てせずに代理投稿依頼とな。

162無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 20:10:11 ID:8AABVTo2
大変お久しぶりです。本当はGWに投下したかったんですが忙しかったりアクセス規制にあったり…ors
遅くなりましたがリリカル×ライダー第4話を20:30に投下したいと思います。

163無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 20:53:01 ID:8AABVTo2
遅くなりましたがどうぞ。


「アンタみたいな犯罪者を、あたしは許さない」
 ティアナが一枚のカードを握りしめながら俺を睨み付ける。
 俺はそこまで恨まれるようなことをしただろうか?……いや、恨んでいるとは違うか。しかし彼女がああなっている理由はなんだ?
 人を傷付けたのが許せないのか、言い訳にしか聞こえないことばかり言うのが許せないのか、それとも罪が課されなかったことが許せないのか。
「おい、俺は戦い方なんか知らないぞ?」
 そんなの知らないとばかりに構えを取るティアナ。こちらの台詞は無視する算段か。
 しかしどんな理由にしろ彼女とは分かり合う必要がある。勘違いされたままというのは気分が悪い。
「じゃあ、いくわよ」
 結局、いくら考えようと、この戦いを止めることは出来なさそうだ。



   リリカル×ライダー

   第四話『模擬戦』




「なのは、何故この模擬戦を許可した?」
 後ろから話しかけられたので振り向くと、そこにはシグナムさんが立っていた。
 彼女の特徴は燃えるような、しかし赤いとは違う桃色に似た髪だと思う。普段からその髪をポニーテールに纏めていて、キリッとしててカッコいい。厳しく真面目な性格で、はやてちゃんの守護騎士達の中でも特にリーダーとして慕われている。
「シグナムさんがここに来るなんて珍しいですね」
「何を言う。こんな興味深い模擬戦、見ないはずがなかろう」
 彼女の戦闘(決闘?) 好きは、今に始まったことではなかった。
「にゃはは……そ、そうですね」
 実はわたし、ちょっとだけシグナムさんが苦手。あんまりお話しないからというのもあるけど、何より性格的に合わない。嫌いってわけじゃないし、むしろ尊敬してる所もあるのだけれど。
 逆にフェイトちゃんとは仲が良いんだけどなぁ。
「で、何故許可した? なのはらしくないと思うが」
 自分は過去の失敗から、無茶はさせないように教育している。今回の模擬戦はそれに反するということだろう。そう、自分でもそれぐらいは分かっている。
「やらせてあげないとティアナも納得しないだろうな、と思ったので。それにカズマ君が何故暴走していたかも知りたいし、丁度いいかと思いまして」
「やはりらしくないな。お前がそんな打算的な行動を取るとは」
 クスリと笑ってそんなことを言うシグナムさん。わたしってそんなに良い人ぶってたかな?
 ただ、らしくないなとは自分でも思うけど。
「まぁ、私は楽しませてもらうだけだ。なのはの判断以上の答えを私が出せる訳ではないからな」
 それっきり、黙り込んでしまった。

164無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 20:53:46 ID:8AABVTo2



     ・・・



「クロスミラージュ、セットアップ!」
『Set up』
 ティアナが一枚のカードを掲げる。彼女の一声と共にそのカードと持ち主が橙色の光に包まれ、それが無くなった頃には先ほどとは全く違う、活動的な服装になっていた。おそらくあの服がバリアジャケットとやらだろう。
 そしてカードの代わりに握られた二丁の拳銃。アレが彼女のデバイスらしい。
「さぁ、アンタもバリアジャケットを纏いなさい」
 いや、纏えって言われてもやり方知らなんだがな。今から何をすればいいのか、さっぱりなんだから。

 ――戦え。

「……っ!」
 来た、アレだ。あの衝動が沸き上がってくる。俺に全てを破壊させようとする、あの衝動。なのはを傷付けたあの力。……俺をおかしくする、この力。

 ――戦え。

 また左手が動き出す。返却された例の機器を握った左手が。
「チェンジデバイス、セットアップ」
『Stand by ready set up.』
 例の機器、チェンジデバイスが動き出す。中央のクリスタルが一瞬光り、ベルトが射出されて腰に取り付けられ、待機音が鳴り出す。

――戦え。

 また、俺が俺でなくなっていく……。

165無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 20:56:13 ID:8AABVTo2



     ・・・



「あれが、お前の言っていた」
「ホントに“変わった”でしょう?」
 わたしが見る先、空間シミュレーターが設置された訓練場。そこでティアナと“彼”は戦っていた。
 鎧に似た青いバリアジャケットを纏い、ティアナに向かって歩くカズマ君。けれど、彼はカズマ君であってカズマ君ではない。
「確かに戦うことしか考えていない戦闘狂のようだな。闘争本能の具現とは、言い得て妙だ」
 今日の朝、カズマ君の部隊入り挨拶の後にシャマルさんが出した一つの結論がそうだった。少ないデータと推測で成り立った、まだ原因すら欠片も考えられていない危うい推論ではあるけれど、確かに納得出来る考えでもあった。
「わたしのときはあっちが先だったんですけどね」
「あれが先だと、やはり恐怖を抱くだろうな。今は不安と危険性を感じているが」
 カズマ君の拳に展開された小さな青い三角形の魔法陣がティアナの放つ橙色の弾丸を悉く粉砕する。それは荒々しく原始的で、しかし緻密で精巧な迎撃。あんなシールドの使い方、初めて見た。
 シグナムさんの言う通り、不安と危険性、そして何とかしてあげたいという思いをわたしは抱いていた。そのためにも、まずはこの戦いを見届けなければならない。
 何をすればいいか、見極めるために。



     ・・・



「……くっ!」
 またも放った弾丸が迎撃される。
 すでに数十発は撃ち込んでいるのに、全て叩き落とされていた。あのカズマって人が突然表情を歪ませて変身してからずっと、言い知れぬ恐怖があたしを包んでいるのが分かる。それを振り払うように攻撃を続けるが、ことごとく無力化されてしまった。
「いったい、何なのよっ!」
 なのはさんの教えを破るのを覚悟でビルに飛び込む。射撃型魔導師、特にセンターガードの自分がみだりに動くのは本来得策ではないのだが、今回は一対一ゆえに例外だ。
 アイツはゆっくりとこちらに歩み寄る。こちらを侮っているのではなく、こちらを見極めるために。
 念のために空間に残しておいた魔力スフィア三つを魔弾に変えて、飛ばしておく。ただの時間稼ぎだ。今は考える時間が欲しかった。
(アイツ、戦い慣れしてる……)
 いや、正確には戦いをどう進めるのが最も合理的かを理解している、と言うべきか。普段みんなに指示を出す司令塔または頭脳となるあたしだからこそ、それらを理解しているということが分かる。
「カートリッジは使ってないから十分にある。ただ通常の魔法弾はまともに使用しても意味はない。ならクロスファイアか“アレ”を――」
 ――いやダメだ。そんな正攻法では勝てない。だいたい“アレ”はまだ実用段階にある代物じゃないのだから、今はまだ使えない。
 そう考えている間に、アイツはやって来ていた。
「っ!」
 自分の隣の壁が吹き飛ぶ。丸く穿たれた穴の先に見える、青い影。
「このォ!」
 考えている暇すら与えてはもらえない。あたしはクロスミラージュを構えて魔法弾を撃ち出した。

166無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 20:57:35 ID:8AABVTo2



     ・・・



 ――戦え。

(……うるさい)

 ――戦え。

(うるさい)

 ――戦え。

(五月蝿い!)

 自らの内から響く声がうるさい。俺を惑わすこの声が五月蝿い。俺に望まないことをさせる声が本当にうるさい!
 俺は、人を守るためにしか、戦わない!
「……っ!」
 頭が疼く。今何かを思いだそうとしたはず――
「――あ、あれ?」
 目の前の光景に、思考がフリーズした。
「あ、アンタ、なんかに……」
 俺が、正確には装甲に包まれた俺の右腕が、ティアナの首を掴んでいた。その右手が、俺の意思に反して力を込めていく。
「や、やめ……」
止めろぉぉぉぉぉぉぉ!
 そう思った途端、手から彼女が消え失せた。
「き、消えた?」
 まるで陽炎のように橙色の輪郭を一瞬残して消えた彼女。あれは、一体?
 いや、そもそも俺は何をしていた?
「また、またなのか……」
 そう思い立った矢先に、事態は推移していた。
「ぐあっ!」
 背中に衝撃。装甲ごしではあるが、内臓を揺るがすような嫌な感じ。まさか、攻撃された?
 後ろを見れば、消えたはずのティアナがこちらに銃口を向けていた。
「あ、当たった……?」
 彼女も驚いたような顔をしている。
 そして状況を思い出す。今が模擬戦の真っ最中だったということを。
「や、ヤバい!」
 速攻で、全力で逃げることを決めた。
「あ、待ちなさい!」
 そして第2ラウンドが始まった。

167無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 20:58:12 ID:8AABVTo2



     ・・・



「あれは幻影だったのか」
 シグナムさんが驚いたという顔をして、そう呟いた。
「ティアナ、この頃は頑丈なフェイクシルエットも作れるようになったんですよ。しかも喋ることが出来る精巧なものを。……まだ軽く掴めるぐらいですし、維持と精製に相当魔力を持っていかれるんですけどね」
 ティアナ特有と呼べる、彼女の得意魔法、それがフェイクシルエット。幻影を精製する魔法だけど、彼女が使えば色んな応用が効く。今のような精巧な偽者も、最近は作れるようになった。
 今の奇襲も、彼女らしい機転の効いたものだった。
「しかしアイツ、元に戻ったみたいだな」
 アイツとはカズマ君のことだろうけど、確かにさっきとは違う普通のカズマ君に戻っていた。先程の怖いぐらい完璧な戦闘が嘘のように今はティアナから逃げている。
「今のカズマ君じゃ、ティアナには歯が立ちませんよね」
魔法弾がカズマ君に降り注ぐ。橙色の光雨はフェイクを混ぜたものだけれど、相手の戦意を喪失させ、回避を困難にさせる。カズマ君の装甲にいくつかがぶつかり、火花が飛び散っているのが痛々しい。
 そろそろ模擬戦も終了か、と思う。これ以上続けても意味はないと思うし。
「いや待て、なのは。あいつをよく見ろ。無意識か知らないがティアナの射撃を避けてるぞ」
「え?」
 ……確かに、彼は逃げ惑いながらも体を左右にずらして避けていた。ティアナが四方八方から放つ射撃と誘導弾を当初は全弾直撃していたのが、今は八割を避けている。
「なのは、まだ面白くなるかもしれんぞ?」
 シグナムさんの笑顔が、妙に楽しげに映った。

168無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 20:59:03 ID:8AABVTo2



     ・・・



「このっ、落ちなさい!」
「うわぁ!」
 アイツの右に着弾。いや、アイツが左に避けた結果、右に着弾と言うべきか。
 さっきから段々と回避が上手くなってる。無様に逃げているくせに、その背中に魔力弾が当たらない。その上、当たっても致命傷にならないほど頑丈なのだ。
 さっきとは違う意味で、焦りを感じていた。
「おい! もう降参するから撃つのを止めろ!」
「そうやって騙そうとしても無駄よ!」
 多分騙そうと言っているわけじゃないと思うけど。でもコイツをコテンパンに叩きのめさないと気がすまない。
 なんでここまでムキになっているか、自分でもよく分からなくなってるけど。
「このっ……!」
 フェイクシルエットを彼の前に出現させる。同時に誘導弾四発を二手に別れさせて左右同時攻撃。そして回避した所をあたしが――!
「うわっ!」
 彼が目の前に現れた偽のあたしを慌てて避ける。そこに誘導弾を仕向ける。
「いい加減にしろっ!」
 彼が体を捻って右の二発を避ける。流石に体制的に無理があるので左の二発は避けられなかったけど、手で強引に叩き落としている。それもシールドも無しに。
「でも、これで終わりよっ! クロスファイアァァァ、シューーート!」
 彼に向けた二つの銃口から八つの魔弾が炸裂する。魔力弾達は渦を描くような弾道を取りながら一つの砲撃のようにアイツに迫る。
「っ!」
 それに対しアイツは、剣を引き抜いて待ち構えていた。その構えは垂直に支えた剣の峰に左手を添え、腰を落とした独特のもの。
その左手が、ゆっくり剣の峰を撫でる。
「そんなんで……」
「でやぁぁぁ!」
 そんなあたしの疑問も刹那。一瞬の内に彼の元に届いた魔弾の軌道に合わせるように、彼は剣を動かす。その剣の腹を滑るようにして魔弾達はあらぬ方向へ流れていった。
 アイツは、その剣で、あたしの射撃を弾いた。いや、反らしたのだ。
 完璧に、受け流されたんだ。
「そ、んな」
「これで、もう終わりだ」
 疲れたような声で宣言するアイツ――カズマ。
 あたしは……まだ、負けてなんか――
「――二人とも、そこまで!」
 唐突に、なのはさんの声が訓練場を満たした。

169無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 20:59:41 ID:8AABVTo2



     ・・・



「主はやて。これがカズマについての報告書です」
 大きな机と大量の書類。隣には小人用としか思えない小さな机。
 特徴と呼べるものがそんなものしかないこの部屋が部隊長室、そう、八神はやての部屋だ。
 ペンと紙の匂いに混じる仄かな甘い香りだけが、ここが女性の部屋であることを証明していた。
「ありがとな、シグナム。慣れないことやらせてしまって大変やったやろ?」
 いえ、と断りつつ書類を机に置くシグナム。
「しかし何故このようなことを?」
 彼女からしてみれば疑問に違いない。これではまるで彼を監視しているようだからだ。
 少なくとも彼女からすればカズマは本当に記憶喪失に見えるし、性格も悪くはないように見えたので、主の目的が読めなかったのだ。
 だが、それは決して主を勘繰っているわけではない。シグナムははやてを信じているからこそ、事情を説明して欲しかったのだ。
「んー、単に知りたかっただけよ? 今後使えるかどうかを」
 ……シャマルが言っていたのはこれか。
 シグナムは溜め息をつきながらはやての手を握った。
「シグナム……?」
「主、私達は家族であり、家来です。貴女のことを守護騎士全員が大切に思っていますし、我々全員が貴女のためなら命を捨ててでも尽くすつもりです」
「シグナム……」
 彼女は握った手に力を込め、決して離さぬように胸にかき抱く。
「だから主はやてよ、私達にだけは、隠し事をしないで下さい。私達家族を、信じてください」
 シグナムが深々と頭を下げる。その手は僅かだが、震えていた。
 はやては少しだけ驚いた表情を浮かべたものの、すぐにそれを笑顔に変えて彼女の頭に優しく手を置いた。
「私がシグナム達を信じていないなんてことは一度だってあらへんよ?」
 シグナムは頭を上げて、はやてと視線を合わせた。
「では教えてください。何故カズマの監察を、私に命じたのかを」
 そこで少しだけはやては困ったように首を竦めるも、すぐに笑顔に戻す。
「私は、カズマ君を助けるつもりや。けどそのためには彼の事を知っておかないかん。武装局員になれる実力があるなら私が連れていくつもりやし、本人が望むなら進路先を斡旋することもできる。逆に戦闘能力がないようならそれに応じた仕事を探してやらないかん。どちらにしろ、カズマ君のことを知らんと私は何も出来んやろ?」
「そういう、ことだったのですか……」
 流石は我が主だ、とシグナムが頷く。彼女としてもはやてがそこまで考えて動いているとは想像がつかなかったのだろう。
「申し訳ありません。信じ方が足りなかったのは、私の方だったのかもしれません」
「ええよ、気にせんどいて? それよりカズマ君のこと、ちゃんと見といてや?」
「はい、主はやて」
 今度こそ晴れやかな顔で、シグナムは力強く頷いた。

170無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 21:00:17 ID:8AABVTo2



     ・・・



 結局、勝負はティアナの勝利で決まった。当然だ、自分はひたすら逃げていただけなのだから。
「カズマ君はやっぱりセンスはあるんだけど……」
「……すいません」
 不貞腐れたような返答を、なのはに返す。
 やはり最大の問題は"あれ"だろう。制御出来なければ俺は役立たずだ。ふと思ったが、記憶を失う前の自分は、こんなことで苦しんだのだろうか。
「痛っ!」
「こんなになるまで模擬戦続けたの?」
 俺の身体中に出来た打撲の後を見てシャマルさんが顔をしかめる。バリアジャケットとやらで多少はダメージを緩和出来ても、完全には無力化できないらしい。なのはも最初見たときは顔を歪ませていた。
「なんだかカズマ君って早速患者の姿が板に付いてきたわね〜」
「勘弁してくれよ……」
 小声で抗議しておく。効果は全くないだろうが。
 二度目の医務室だが、未だに慣れることはできない。いや、こういった場所に医者以外が慣れること自体おかしいか。アルコールの臭いが僅かに鼻をくすぐる空間は、やっぱり居心地悪さしか感じない。
「はい、おしまい」
 包帯をあちこちに巻かれてようやく完了か。何だか治療だけで疲れた。
「さ、二人とも疲れたでしょ? 食堂で皆待ってるから」
 なのはが笑いながら指差す。もう二時だった。一緒に付いてきていたティアナは隣で不満そうにしていたが、諦めたように溜め息をついた。
 シャマルさんに送られて医務室を出た後、食堂に三人で行く間、なのはが何度か話しかけてきたので気まずくはならなかった。ティアナも考え事をしているらしく、俺に絡んではこなかったし目も合わせなかった。
 そうして着いた食堂ではフォワードメンバーの三人、スバル、エリオ、キャロが待っていた。
 皿に盛られた料理を見て、ようやく空腹を意識したのが不思議だ。あんなに運動したというのに。俺は少食だったのだろうか。
「「お帰りなさい、なのはさん、ティアさん!」」
「お帰りなさい、なのはさん! ティアもお疲れ!」
 年少組のエリオとキャロは口を揃えて、スバルは大きく元気な声で、二人を迎えた。
 当然、俺の名前はない。
「……なのは、用事思い出したから今日は――」
「――ダメだよ。皆と仲良くしてくれなきゃ」
 見事に捕まってしまった。
 どうやら自分は器用なことが出来ない質らしい。腕を捕まれていたことにも、今更気付いたほどだ。
 ティアナはまだ考え事をしているのか、挨拶をした三人に軽く答えた後に椅子に座っても腕組みを崩さなかった。
「……ティア?」
「あ、な、なによスバル?」
 彼女も恥ずかしいと頬を赤く染めたりするのか、と思った。当然のことか。

171無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 21:00:57 ID:8AABVTo2
「ティアがボーっとしてるなんて珍しいなーと思って」
「あたしは考え事してたのっ!」
 わいわいと騒ぎ出す二人だが、仲が良いのだろうからか、端からはコントのように見えた。決してティアナには言えないが。
「あ、あの」
「……え?」
 唐突に話し掛けられた。まさか誰かに話しかけてもらえるとは思ってなかったので、咄嗟に反応出来なかった。
 見ればキャロがこちらを向いて必死に何か言おうとしていた。……けれど、俺の関心は別の方にいってしまっていた。
「な、なんだその蜥蜴……」
「と、蜥蜴じゃないです! フリードです!」
「キュクルー!」
 彼女の頭に乗っている小さな羽を生やした白蜥蜴――もといフリードなる生物に、俺は驚いていた。
「そっかぁ、竜なんて知らないよね」
 なのはが合いの手を入れてくれたのは助かった。正直、驚いてる最中の俺に女の子の相手は無理だ。
「竜、だって?」
「そうだよ。わたしもフリードが初めてだったけど、似たようなものなら前に行った戦地で見たかな」
 とても竜には見えなかった。さすがに蜥蜴は違うだろうが。
「あ、りゅ、竜だったのか。その、間違えて、悪かったな」
 歯切れの悪い口振りに自己嫌悪したのは秘密だ。
「もう、せっかくエリオ君と謝ろうと思ってたのに……」
 怒っても可愛らしいのは幼い女の子の特権だろう。俺もキャロを見てるとひたすらに自分が悪いように思えてきた。
「ご、ごめんな」
「キャロもそのくらいで許してあげなよ」
 エリオがぽんぽんとキャロの肩を叩く。何だかお兄さんのようだ。
 ようやく機嫌を戻したキャロとエリオが姿勢を正してこちらを向く。こちらも何だか緊張してきた。
「「か、カズマさんっ」」
 二人が揃って声を上げる。いつの間にか、なのはもティアナとスバルも押し黙っていた。
「「今まで冷たい態度を取って、すみませんでしたっ!」」
食堂中に、二人の声が鳴り響いた。
 取り敢えず、声のでかさには驚かざるを得ない。二人仲良くハモるのはいいが、そのせいで食堂中に響いてしまうのは勘弁して欲しかった。
 しかも二人の声に反応した周りの目線が凄かった。何故だろう、謝られているのに悪者として見られているような気がする。
「べ、別に謝るほどのことじゃ――」
「その、わたしたち勘違いしてたんです」
 俺の言葉を遮るように、キャロは言った。
「わたし、最初は怖い人なんだろうな、って思ってて。あの時近くで見てたエリオ君が怖かったって言ってたし。でも模擬戦見てて、最初はやっぱり怖いと思いましたけど、途中から本当は優しい人なんじゃないかと思い始めて……」
「僕達にはティアさんを傷付けないように戦っているように見えたんです。戦いが終わった後も自分のことなんか全然気にせずティアさんの心配をしてましたし」
 キャロの言葉をエリオが引き継ぎ、俺に訴えかける。
 確かに自分に彼女を傷付ける意志があったかと言えば否だ。でもそれは当然のことだ。人を傷付けるなんて――。
(――待て。何故俺はそこまで人を守るだの傷付けるなどに拘るんだ?)

172無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 21:01:28 ID:8AABVTo2
 一瞬の疑問。だが、それはすぐに氷解する。
(いや、人として当然か)
 それで決着はついた。ついてしまった。
「……聞いてますか?」
「――あ、あぁ、もちろんだって。それで?」
 すぐに誤魔化す。今考えることはそんなことではなかった。
「それで、その、これからは仲良くしてもらえませんか?」
「お願いします!」
 ぺこりと頭を下げるエリオとキャロ。願ってもないことだ。
「こちらこそ、仲良くしてくれると嬉しい」
 初めて心の底から笑えた気がした。
「――うん、無事仲直りできたね」
 にっこり笑顔でなのはが俺達の手を取って握らせる。気恥ずかしいが、なのはの気配りは嬉しかった。おそらくセッティングしてくれたのもなのはだろう。彼女も童子のような満面の笑みを浮かべていた。
 たちまち主導権を握ったなのはが話を進めていく。自分と彼女達が話しやすいようにしてくれながら。

 ――ま、これも悪くないか。

 俺もようやく、そう思えるようになった。



     ・・・



「ようやく打ち解けたか。世話の焼ける」
 くつくつと低くくぐもった笑い声を放つ男が一人、広大な広間でカズマを見つめる。
 巨大なモニターにはカズマが笑う姿が映し出されている。
「これでわしはお前の願いを叶えたぞ。すまんが、今度はわしの研究に付き合ってもらう」
 広間のあちこちに置かれた機械を操作しながら、ポケットから十二枚のカードを取り出す。スペードのマークと、鮮やかな生き物の絵が描かれたカードを。
「わしは研究者だ。悪く思わないでくれ」
 それらのカードを、機械のスリットに差し込む。
「さぁ、見せてくれ。人を超えた、仮面の戦士の力を」
 スリットから、光が溢れ出した。



     ・・・



 ようやく打ち解け始めた居場所、機動六課。安息の地を手にした彼は、日々腕を磨きながら内に潜む闇を押さえ込んでいた。そんな彼を試すかのように、断罪の鉄槌がカズマを襲う。

   次回『鉄槌』

   Revive Brave Heart

173無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 21:09:10 ID:8AABVTo2
えー、ようやく第四話です。話は全然進んでおりません(汗)。
文章がかなり変わってしまい、書き方もイマイチだなぁとは思っています。第五話では改善したいので、感想や批判はバンバン受け付けております!

それとスレの過疎化を耳にしました。確かにベテランの多くが去ってしまい、寂しくなったかもしれません。最盛期の頃を知りませんが、やはり今より賑やかだったのかもしれません。
ですが、今も多くの新人は作品を投下しています。その中にはベテランと肩を並べるほどの実力者もおります。自分もいつかそうなるために精進しています。
そんな職人のために住人の皆さんが更なる応援をしてくださることを祈っています。このスレをいつまでも生かすために、皆さん頑張りましょう!

長文失礼しました。それでは。

174無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 21:09:44 ID:8AABVTo2
では代理投下よろしくお願いします。

175無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/14(木) 22:49:30 ID:m.1OCQvU
ageます。そしてお願いします。

176ロクゼロ2 ◆1gwURfmbQU:2009/05/14(木) 23:39:36 ID:49i/o7Mo
じゃあ、私が代理投下してきましょう。

177ロクゼロ2 ◆1gwURfmbQU:2009/05/15(金) 00:04:51 ID:rqa.JTzM
投下終了。
>>175
行の長さに関するエラーが多発したので、もう少し投下の際は文章を改行した方が
良いと思いますよ。避難所の板は大抵の規制が解除されてますから気付きにくいで
すが、2chはそうでもないので。
ワープロソフトで書いたのをそのまま改行せずに流し投下をすると、結構見にくい
ですし。

178リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:47:30 ID:LLxI1tRg
さるさんばいばい食らってしまったので代理投下お願い致します
初回からミスしてすいません

「フェイトちゃんご飯出来たよ!」
「出来たよ!」

声を差し伸べてくれたのは、なのはとヴィヴィオ。
今は素直にこの手に縋ろう。そして思考の迷路から抜け出しなのはの作ってくれた食事を楽しもう。
フェイトが書斎から食卓へ行ってみれば、テーブルに並べられているのは大きなハンバーグが3つ。
今にも破裂しそうなほど肉汁を溜めこんだそれは、見ているだけでフェイトの食欲をそそった。

「うわー美味しそうだね」
「ヴィヴィオも手伝ったんだよねー」
「うん! フェイトママのはヴィヴィオが作ったの!」

よく見れば自分がいつも付く椅子の前に置かれているハンバークの形はかなりいびつだった。
だけど一生懸命作っていた様子を思えば、不格好さがかえって愛しく思えてくる。

「上手だね。ヴィヴィオが作ったのいちばん美味しそうだよ」
「私が作ったのはイマイチなの?」

そう言ったなのはの不満げな表情にしまったといった様子を見せるフェイト。

「えっと…なのはが作ったの凄く美味しそうだよ! 食べてみたいなぁ」
「ヴィヴィオの作ったのは食べたくないの?」

今度はヴィヴィオが泣きそうな顔をして上目使いに見上げてくる。
ここまで来たらもはやフェイトはパニック状態で、どうしたらいいのか分からずに目尻には涙が浮かび始めていた。
その様子を見たなのはがさすがにからかい過ぎたかと思い、声を掛ける。

「ほらほら冷めないうちに食べよ」
「食べよ!」
「二人ともいじめないでよぉ」

恨めしそうなフェイトの表情は、なのはの目にはむしろ愛らしく映り、やはりいたずら心をくすぐるのであった。
しかしこれ以上やって本気で泣かれても困る。今は家族3人で夕食を食べよう。
ひょっとしたらこれが3人で囲める最後の食卓かもしれないのだから。
なのは自身そういう仕事である事は覚悟してきたが今回は状況が状況だ。
もし脱走したスカリエッティとの本格的な戦闘になればフェイトもなのはも駆り出される。
そうすれば前回は勝ったが今回も同じようにはいかないかもしれない。だからせめてこうして娘や親友と過ごせる時間を大切にしよう。
悔いは尽きないがそれでも走馬灯を見るのならば幸せな記憶で満ちる様に。

「それじゃあいただきます」
「いただきまーす」

笑顔を浮かべるフェイトとヴィヴィオを見つめながら何故かは分からないがこの時なのははある予感がしていた。
自分はきっと。

「はい召し上がれ」

きっと二人を残して死ぬだろうと。

179リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:48:24 ID:LLxI1tRg
その頃ミッドチルダのある和風居酒屋にて。

「こんな時間にごめんなさいね、はやてさん」
「いえ最近は暇してますから」

座敷に腰掛けている女性が二人。一人はリンディ・ハラオウン。もう一人は元機動六課部隊長である八神はやてだ。
向い合せに座り、営業スマイルのような笑顔を向けるリンディに、こちらは正座をしながら硬い微笑みを浮かべるはやて。
はやては居酒屋にリンディと二人で居るこの状況に些かの戸惑いを覚えていた。
もちろんリンディとは面識がある、しかしそれでも親友の母親であり優秀な指揮官であるという面が強く、このような場所で二人で会う間柄とは言いにくい。
少なくとも杯を交わし合い、日ごろの愚痴を言い合う様な仲でない事は確実である。
はやて自身邪推とは思いつつも、当然この呼び出しには裏があるのだろうと想像せざるおえないのであった。

「あの」
「いらっしゃいませ。ご注文は」

何があるのかとはやてが戦々恐々として口を開いてみれば、それを遮る様に店員が声を掛けてきた。
いや、これが彼の仕事なのだから仕方がない。仕方がないのだが、それでもタイミングという物があるだろう。
そんな風に思っていれば向かいに座るリンディが笑顔で口を開いた。

「まだ決まっていないので後で注文します」
「かしこまりました」

そう言って店員はお冷だけ置いて別の客が居る座敷へと去っていった。
リンディとの緊迫した状況に渇きを訴える喉を潤そうと、はやてがお冷を口に運ぼうとした瞬間。

「はやてさん」
「は、はい」

リンディの呼びかけに、はやては慌ててお冷の入ったコップを座卓の上に戻すと両膝に手を置いた。

「実はお願いがあって呼んだの」

急に笑みの消えたリンディの表情に、はやてはますます身体を強張らせた。
一体何を言われるのだろうか。少なくともこの表情、良い知らせとは思えない。
もったいぶったように口を開こうとしないリンディ。その様子にどんどん事態を最悪の方向へと想定し直すはやて。
そんなはやての不安など気にも留めずにリンディは話し始めた。

「もうすぐ世界が滅ぶわ。はやてさん止めてもらえないかしら?」
「世界が? 滅ぶ?」

この人は何を言っているのだろう。唐突に世界が滅ぶと言われてもどう答えればいいか。
もったいぶったかと思えば今度がさらっと世界滅亡を口にしたリンディに、はやてが取れる態度と言えば、困惑と呆然のいずれかしかなく。

「どういう意味ですか?」
「そのままの意味よ」

聞き返しても返ってくる答えはやはり取り留めのない物で、より一層はやてを混乱させるのに一役買ってしまった。
しかしリンディの顔は至極真剣といった様子で、一見突拍子もない世界が滅ぶという言葉をはやての中で信用足る物に変えていく。

180リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:49:28 ID:LLxI1tRg
「あの…リンディさん何が起こるんですか?」

そうだ。何が起こるのか分からなければ戦えない。そもそも誰が相手なのか? どうすれば世界を救えるのか?
リンディの言葉が本当だとするならば、世界が滅ぶと言うならば、自分一人で何が出来るのだろうか。
1年前に起こったJS事件でそれに近い経験はしたかもしれない。だがあれは犯罪であって世界の存亡とはまた次元の違う問題だ。
はやてにとってリンディの世界が滅ぶという言葉はあまりに曖昧で、それにスケールが大きすぎて理解出来ない。
言葉が持つ意味の租借に苦闘するはやてに、リンディは表情を崩さずに話し始めた。

「それはまだ言えないの。だけど世界は確実に崩壊へと向かっているわ。
 だからもう一度、もう一度あなたの六課を使わせてほしいの」

理由を断固口にしようとしないリンディにさすがのはやても不信感は隠せない。
重大な事をリンディが隠しているのは確かだ。それも世界が滅ぶかもしれない秘密を。
いくらリンディに闇の書事件の恩があると言え、理由も分からずに命を掛けるのはまっぴらごめんだ。
例え親友の母親でもそんな事を二つ返事で引き受けられるほど、はやてもお人好しではない。

「理由も分からず命はかけられません。
 何を隠しているんですか?」

はやての言い分はもっともだった。詳細も知らされずに命を掛けるなど愚行に等しい。
リンディもはやての言い分はよく分かる、分かるのだが理由を言う事は出来ないのである。
それを知る事がはやてのこれからの人生を闇で染め上げてしまう事にもなりかねないのだから。
だけど世界を守らればならない。そう葬らねばならない物がある。

「それは……」
「リンディさん!」

世界を守るために少女一人を犠牲にするのは安いかもしれない。だがそれでは10年前の再現ではないか。
そう、はやて自身が犠牲になり解決しようとした闇の書事件。あんな惨劇を二度も繰り返すなど許される事なのだろうか。
それが……少女を犠牲にする事が私に課せられた罪なのだとしたら、私はどんな罰を受けるのか。
いや既に罰は受けている。これ以上ないほど罰を。
言ってしまえればどれほど楽にだろうか。どれほど心安らぐのだろうか。

「そうね、確かに。でもね、あなたを『こちら側』の人間にはしたくないのよ」
「こちら側?」

はやては分からない。この人の言葉は私には理解出来ない。
何が罪で何が罰なのか、リンディ・ハラオウンはどんなパンドラの箱を開けてしまったのだろうか。
リンディの言う『こちら側』とは一体どういう意味なのだろうか。
しかし執念にも似たリンディの言葉にはやては知りたくなっていた。リンディの言葉の意味がなんであるかを。
リンディにとっての『こちら側』つまりはやてにとっての『向こうの世界』の世界がどうなっているのかを。

「分かりました。お引き受けします。
 でもいつか、いつか全てを話してください」
「ええ、時が来たら必ず……必ず話しますから」

結局はやては真実を知る事は出来なかった。
だがしばらくの後はやてはリンディから思いもよらぬ真実を聞かされる事になる。
それが全次元世界を破滅へ導く全人類の存亡を賭けた戦いの引き金になろうとは、この時のはやてには想像も出来なかった。

181リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:50:24 ID:LLxI1tRg
午後20時。高町家は既に夕食を終え、ヴィヴィオがテレビにかじり付いている中、なのはとフェイトは夕食の後片付けをしていた。
二人が食器を洗いながら話すのはヴィヴィオ作成のハンバーグの話題でもちきりである。

「ヴィヴィオのハンバーグ美味しかったよ」
「まぁ味付けは私なんだけどね」

そんななのはの言葉にフェイトは苦笑いを受けべる。まぁその通りなのだがはっきり言ってしまうのは寂しい様な気もする。
折角ヴィヴィオが作ってくれたのだからもう少し褒めてあげてもいんじゃないだろうか?

「でもちゃんとふっくらしてたからヴィヴィオの腕がいいんだよ。味付けだけじゃあんなに美味しくならないよ」

だからヴィヴィオの名誉を保つためにも後見人としてしっかり母親に意見しなくては。
ヴィヴィオのこね方がよかったからこそ味付けが最大限に生かされたのだと。
いかにヴィヴィオのハンバーグが素晴らしかったか熱弁をふるうフェイトになのははやや頬を膨らませていた。

「フェイトちゃんヴィヴィオばっかり」
「そうかな?」
「私だってフェイトちゃんの事考えてご飯作ってるんだよ。栄養のバランスとか考えて」

フェイトは少し怒ったなのはが何となく面白かった。
六課の頃もJS事件後は別の仕事で忙しくなり同室と言っても一緒に過ごす時間が多かったとは言えない。
それに食事は給仕の人が用意しくれた物を食べていたから片付けもトレイを下げるぐらいな物だった。
こうして食器を洗いながらなのはと他愛のない話をする時間はフェイトにとって懐かしさを感じさせていた。
なのはと過ごす日常は本当に久しぶりだから、こんな皿洗いの時間でも嬉しく思えてしまう。

「分かってるよ。なのはにも感謝してる」
「うん」

今度は微笑みを浮かべるなのはに愛しさを感じていた。
一番最初の親友で、世界で一番大好きな親友。何が起こってもこの笑顔だけは守り抜いてみせる。
フェイトはそう誓ってなのはに微笑み返した。

――ピリリリ。

それも束の間。かすかに鳴り響いたのは、なのはの携帯電話のコール音。
なのははエプロンで手を拭くと自身の携帯の置いてある寝室へと走りだした。
寝室へ入るとベッドの上で着信を主張し続けるそれを手に取り、通話ボタンを押す。

「はい、高町です。はいはい……今からですか?」

一方皿を洗い続けるフェイトはなのはの会話の内容が少し気になって聞き耳を立てていた。
あまり良くは聞こえないがどうやら緊急の呼び出しらしい。
だがなのはに呼び出しが掛かるとは余程の緊急事態なのか? となれば当然危険度の高い任務だろう。
フェイトは皿を洗う手を止め、なのはの言葉に聞き入っていた。

「分かりました。すぐに向かいます」

フェイトにとってあまり聞きたい言葉であった。かなり厄介な事になっているらしいのは想像に難しくない。
蛇口から流れる水を止めるとフェイトは寝室へと歩き出した。
中を覗くと教導隊の制服に着替えるなのはの姿。その表情は先程見せた笑顔とは違う軍人としての高町なのはだった。
あらかた着替え終わるとフェイトの視線に気が付いたのか申し訳なさそうな表情を浮かべて。

「ごめん。緊急の呼び出し掛かっちゃった。悪いだけどヴィヴィオ見ててくれる?」
「どういう状況?」
「よく分からない。ただ高ランクの人達が何人も墜ちたって……」

182リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:51:11 ID:LLxI1tRg
その言葉で思い出すのは、なのはが墜ちたあの日の事。
あんな風になのはの苦しむ姿を見るぐらいなら、この身を引き裂かれた方がどれだけ良かっただろう。
だから今度は一緒に行きたい。高ランクが何人か落ちているなら自分にもいずれ声が掛かるだろう。どうせ行くならばなのはを守れる方がいい。
それにスカリエッティとの関与も気になる。

「私も行くよ。ヴィヴィオは、悪いけどアイナさんに見てもらおう」
「……分かった。じゃあアイナさんが来るまでヴィヴィオお願いね」
「うん」

あいにく高町家で家政婦をしているアイナはこの日休みを取っていた。フェイトとしても本当ならなのはと一緒に行きたいがヴィヴィオを放ってはおけないだろう。
とにかくなのはの事も心配だが、アイナが来るまではヴィヴィオの傍に居なければなるまい。
そんな事を考えている間にもなのはは準備を終え、玄関へと歩き出していた。
フェイトもその後を追う。

「じゃああとお願い」
「気を付けて」

慌てた様子で玄関を飛び出していったなのは。その様子を見届けるフェイト。
勢いよく締められたドアを見つながら妙な胸騒ぎがするのをフェイトは止める事が出来ない。
悪い事が起きる気がする。何故かはわからなかったがフェイトが思い出すのは今朝見た夢の事。
フェイトの中であの血のような紅い色をした瞳が見つめてくるのだ。そう、まるで自分と同じような瞳の色をしたあの鉄の巨人が。
その眼に宿っているのは夢で見た寂しさや儚さではない。殺戮と破壊と思わせる狂気の赤。
何度振り払おうとしても、その視線がこちらを見つめる事をやめてくれようとはしない。

「アイナさんに電話しないと」

フェイトはこれ以上夢の事を考えたくなくて携帯を取り出しアイナへと電話を掛けた。



午後22時 ミッドチルダ首都中央部。

「第1小隊。配置につきました」
『了解。敵を目視確認した後、排除行動に移れ』

いつもは美しい夜景を見せてくれる都市中心部は本局から派遣された武装局員達の存在によって物々しい雰囲気となっていた。
派遣されたのはエース級と呼ばれるAAランク以上の魔導師ばかり。
地上でこれほど戦力が展開される事は稀であり、恐らくは1年前のJS事件以来の事ではないだろうか。
召集を受けた高町なのはは第3小隊を任され、後方のビル陰から双眼鏡を使い様子を伺っていた。

今回の作戦で出動した小隊は4人1組で計6小隊。まずは偵察隊として第1小隊を送り、彼らが敵を確認次第、全小隊で奇襲による集中砲火を掛ける。
この作戦になのは自身、強い緊張感を感じていた。その理由は高ランクが墜とされたと言うのに敵の情報全くない事である。
最初に敵発見の通信を入れたのは、哨戒任務中の地上本部魔導師小隊だったらしいのだが、その報告後通信が取れなくなった。
不審に思った地上本部は、その後も通信があったポイントに部隊を投入し続けたが、いずれも現場到着直後に通信が途絶えてしまっている。
そして地上本部から本局に支援要請が入り、なのはに白羽の矢が立ったと言うわけである。

『敵と思われる物体を目視で確認! なんだありゃ10mはあるぞ!』

突如入る先遣隊からの通信。隊員は畏怖の感情に支配されているようで、その声は上ずり気味であった。
それを皮切りに先遣隊からの通信が続々と押し寄せてくる。

『いやもっとだ。もっとでかい!』
『こっちへ来るぞ! うわぁぁぁぁぁ!!』

断末魔の様な悲鳴を最後に先遣隊からの通信は途絶えた。各小隊は臨戦体制を整え、先遣隊から通信があった場所へ急ぐ。

183リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:52:13 ID:LLxI1tRg
「レイジングハート! エクシードモード!」

そう叫んだなのはの身体が桃色の光に包み込まれ、数瞬後に弾けて姿を現したのは戦闘形態エクシードモード。
なのはが持つ形態の中でも最大の出力と装甲を兼ね備えたエクシード。それを使うという事は全力全開の証。
恐らく先遣隊はやられたのだろう。だから省エネ形態であるアグレッサーモードの勝てる相手ではないとなのははそう判断したのだ。

「第3小隊出撃! 敵を殲滅するよ!」
『了解!』

なのははレイジングハートで敵の居る方向を指し示すと最大出力で飛行を開始した。
桃色の軌跡を伴い、音速に迫まろうかという速度で空を切る小隊長に、第3小隊員もぴったりと追従している。
直線速度では高機動魔導師にさえ匹敵するなのはに付いてくる辺り、彼等もエース級である事は想像に難しくなかった。
他の小隊も、それぞれが異った魔力光を発して高層ビルの隙間を彩りながら敵が待つ場所まで高速で駆け抜ける。
やがて全ての小隊は同じ場所にたどり着いた。そこは高層ビル群が立ち並ぶ中でも特に開けた空間で、中隊規模で動いても戦いやすそうである。
だがその風景と比べて他と比べても明らかに異質な物であった。規則的に大きく陥没している道路に砕かれたビルの壁。そしてその壁や道路の陥没の中にべっとりと付いた赤い何か。
それが先遣隊のなれの果てであろうとは、誰も想像したくないだろう。だがこれがなのは達に突き付けられた事実なのだ。
本局から送られた精鋭部隊に走るのは恐怖、絶望、戦慄、そして逃れようのない絶対的力量差。

「これは一体……ん?」

そう呟くなのはの耳に音が入り込んでくる。何かが駆動するような音、そう油圧パイプが動くような。
次に聞こえてくるのは何かが砕かれるような音。アスファルトが砕けているのだろうか? それらの音が一定のリズムを保って紡がれる。
徐々に近づいてくる音に、その場に居る全員が同じ事を考えていた。恐らくこれは敵が出す音だと。ビルの陰に隠れて姿は見えないがこれこそが敵なのだろう。
音はどんどん大きくなり耳を覆いたくなるほどだ。しかしなのは達が見つめるビルの向こう側に奴は居る。
敵の姿がどんなに強大でも目を逸らすな! 敵がどれほど恐ろしい音を立てようとも耳を塞ぐな!
全神経を集中して敵を感じろ! 奴が姿を現した瞬間、一斉射撃だ! なのはを含めた小隊員全員がそう思っていた。
もうすぐ、もうすぐ、ビルの陰から顔を出す。仲間の仇だ! 誰であろうと倒してみせる!
彼らはそう誓ったはずだった。はずだったのどうだろう。誰一人として動かない、いや動けないのだ。
何故ならビルの谷間からその巨体を見せた敵の姿は、彼らの乏しい想像力など遥か彼方に超越するほど強大で。

「ガオォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

彼らが想像したよりも遥かに恐ろしい咆哮を上げたからだ。



「ママ……」

なのはが緊急招集されてから実に1時間、彼女の娘であるヴィヴィオは涙ながらにフェイトに縋りついていた。
そう、幼いながらもヴィヴィオはこの異様な状況に不安感を覚えていたのだ。
フェイト自身ヴィヴィオに付いていたい気持ちはあったが、とにかくなのはが心配でたまらない。
それにそろそろアイナが来てくれるはずだ。折角の休暇、しかもこんな時間に呼び出すのは気が引けたがそうも言っていられない。
とりあえずアイナならヴィヴィオを安心して預ける事が出来る。フェイトはヴィヴィオを宥めながら腕にはめた時計にちらちらと目をやる。

「ママ……ママ」
「傍にいるよ、大丈夫」

嘘だ。今から遠くへ行ってしまう。でもとにかく今は泣き止んでもらわないと。
なのはは無事だろうか。もしもの事があればこの子はどうなるだろう。いや自分はどうなってしまうだろうか。
あの夢、私と同じ色の瞳で見つめ続けてくる彼。どれほど振り払おうとしても彼の視線が揺らぐ事はない。
真っ直ぐに見つめて投げ掛けてくる感情は存在の意義、存在の定義、存在の肯定と否定、孤独、悲しみ、生まれた意味。
兵器として代用品として生み出された者に生きる価値はあるのか? それはフェイトが長年悩み続けてきた事。
どれほど考えても答えなど出ない。出したつもりでも結局悩み、迷ってしまう。
そうだ、なのはを失えば拠り所を失くしてしまう。そうなればきっと。

――私は壊れるだろう。

184リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:53:22 ID:LLxI1tRg
フェイトはヴィヴィオを抱き締める腕に力を込める。お願いだから泣かないでよ。泣きたいのはこっちなんだから。
なのはを喪失してしまう可能性、それはフェイトにとって最大の恐怖であり、自己の存在意義を失う事でもある。
フェイトと言う人間は危うい。その心はちょっとした事で砕けてしまう。そしてバラバラになった破片を繋ぎ合わせる事は容易ではない。
だからヴィヴィオの背中を撫でているのは自己防衛のため。幼い我が子を守るふりをして自分に言い聞かせているのだ。
なのはは大丈夫。なのはは死なない。なのはを失うなんてありえない。なのはは笑顔で帰ってくる。
帰って来たら眩しいぐらいの笑顔で自分を抱き締めてくれる。私に美味しいご飯を作ってくれる。
寝る前には笑顔で「おやすみ」を言ってくれて、朝起きて隣を見たら「おはよう」と言って笑顔をくれる。

「なのはママ帰ってくる?」

小さな身体を抱き締めながらフェイトは思う。帰って来ないなんて嫌だ。なのはを失う未来なんてこの手で壊してみせる。
高町なのはを失う事が運命ならばそれさえも壊す力を、なのはを傷つけるならば例え相手がなんであろうと敵だ。
フェイトと言う人間は危うい。なのはを守るためならば世界を敵に回しても戦い続けるだろう。
そして望むだろう。世界を敵に回しても勝利を得る事が出来る絶対的な力を。
思い浮かべるのは夢の中で手に入れたあの力、フェイトが望む力の理想像、いかなる敵をも叩き砕く無敵の鋼鉄兵士。
だがそれは夢想でしかない、なら今この手にある力を信じる以外ないのだ。10年以上の歳月を掛けて磨き上げた魔法という名の技術。
フェイトは縋るヴィヴィオを離してその小さい肩に手を置いた。

「よく聞いてヴィヴィオ、なのはママは私が助ける。だからヴィヴィオはアイナさんとお留守番してて。
 私はなのはママを迎えに行ってくるからここで待ってて欲しいんだ」
「本当?」

ヴィヴィオの表情に僅かばかりの光明が差すとフェイトは柔らかい髪の感触を確かめながらその頭を撫でた。

「うん本当だよ。フェイトママはね、強いんだから」
「知ってる」
「なら、お留守番しててくれる?」

フェイトの言葉にヴィヴィオは涙を拭いながら力強く頷いた。やはり血は繋がっていなくてもなのはの子なんだ。
きっと強くて立派な女性になる。なのはのような不屈の心を持った魔導師に。
フェイトが未来のヴィヴィオに想いを馳せれば、玄関から響くチャイム音。
この時間に訪ねてくる人物は1人しか居ない。念のためフェイトがドアを開けて確認するとそこには待望の人の姿が。

「ごめんなさい、遅くなってしまって」
「アイナさん。いえ、こっちこそ急なお願いで。じゃあヴィヴィオお願いします」

フェイトはアイナを招き入れるとその足で寝室へ向かった。
そしてロッカーに掛けられている執務官の制服に手早く着えるとポケットから愛用のデバイスを取り出し、触れる様な口付けをする。

「バルディッシュ、なのはを守る力を私に」

フェイトは口付けしたままバルディッシュに囁きかけた。

22時30分 ミッドチルダ首都中央部。


時空管理局地上本部と高層ビルが立ち並ぶミッドチルダの中央部。
その中でもひときわ高いビルの上から下界を見下ろすのは、八神はやてと守護騎士ヴォルケンリッターが将シグナムにオールラウンダーのヴィータ。
彼女たちの視線の先に広がる光景は惨たんたる有様であった。

185リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:54:08 ID:LLxI1tRg
「なんだよこれ…廃墟じゃねぇか」

そう口にしたヴィータに他の二人も同意せざるおえない。先程までは照明から眩いばかりの光を放っていたであろうビル群。
だが今その輝かしい明かりは消え果て、どこまでも広がる瓦礫から突き出している鉄骨は、まるでこの街に対する墓標のようにも見えた。
つい数時間前には凛々しくそびえるビルであったろう瓦礫の山々に、半壊して内部構造を痛々しげに晒しているビルも複数見られる。
滅多な事では壊れない鉄筋コンクリートの壁は砕かれたり剥がされていたり、途方もない質量を支えるために生み出された鉄骨もどうやったらこう出来るのか、まるで溶けたようにぐにゃりと折り曲げられている。
こんな事を出来る人間が居るのか。もしこの場になのはクラスの砲撃魔導師が大勢居れば、或いは出来るかもしれない。
だが独力でこれほどの事が出来る者は居るはずもなく、たとえ居てもそれは人間ではないだろう。

「そう、こんな事が出来る人間、居るわけがない……まさかこれがリンディさんの言っとった」
『はやて聞こえるか?』

突然はやての言に割り込むように入る通信。それはフェイトの兄であるクロノ・ハラオウンからであった。
予期せぬ相手からの連絡に、はやては目を丸くしていた。

「クロノ君! どうしてクロノ君が?」
『ああ、今回母さんから君達のバックアップを頼まれてな。だが少ないな』

クロノが差すのは今回のメンバー。はやて自身いきなり六課のメンバーを集めろと言われても出来るはずもなく、自身の守護騎士であるヴォルケンズを伴ってきたという訳である。

「せやな。本当ならなのはちゃんとフェイトちゃんだけでも確保しよう思ったんやけど捉まらんのや」
『知らないのか? フェイトはともかくなのははそこの前線に出ているはずだ』
「なんやて!?」

そんな事聞いていない。出動前の報告では本局からの武装隊は、既に壊滅寸前との事だ。もしかしてなのはは……。
はやての脳裏をどす黒い空想が支配していく。それは血塗れになりがら息絶えたなのはの姿だった。
なのはは自分やヴォルケンズを助けてくれた親友の一人だ。そんな親友の変わり果てた姿など見たくはない。

「はやてぇ!」

はやての思案に突如入りこんで来た聞き覚えのある声。
振り返り見てみれば、上空から黄金色の魔力を伴って見知った顔が高速で近付いてくる。

「フェイトちゃん!?」

フェイトはその言葉が自身の耳届くと同時に、はやて達の待つビルへと降り立った。
何故ここにはやて達が居るのか? フェイトにとっては当然の疑問である。
彼女は娘ながらリンディから今回の作戦を聞かされてはいない。はやて自身フェイトには当然話が行っているものと思っていたから自分達を見て驚く理由が分からないのだ。
はやてはリンディからの頼み事に改めてきな臭い物を感じていたが、引き受けた以上は仕方があるまい。
いずれ全てを話すと約束したのだ。今はそれを信じるより他にないだろう。

「どうしてみんながここに?」
「説明は後や。それより」

はやては眼下に広がる光景を見るよう視線でフェイトに促す。
ゆっくりと視線を落としてみれば広がっているのは一面の廃墟。つい数時間前通ったばかりの光景とはまるで違っていた。
いつも通る風景の変わり果てた様子にフェイト自身驚愕する以外なかった。

「これは……どうして、どうしてこんな事に」
「聞いてへんの?」
「何を?」

やはり聞かされていないのか。しかし何故リンディはフェイトに話していないのだろう。
クロノには話が行っているようだし、リンディはフェイトに話したくなかったのか?
妙な勘繰りかもしれないが、自分がフェイトを指名するのは目に見えていたはず。なのになぜ事前に話が通ってないのか。

186リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:54:59 ID:LLxI1tRg
「はやて何の事!」

何も言わないはやてに苛立ちを覚えたのか、フェイトは乱暴にはやての肩を掴んだ。
バリアジャケット越しでも力強さを感じるとは相当強い力で掴んでいるのだろう。
そしてフェイトの視線。普段は優しさしか見せないそれは狂気とも取れる感情を孕んでいるようだった。

「答えてはやて! 何でこうなったか知ってるの!? なのははどこ!?」

そう、全てはなのはのため。ここで何が起こったのか、なのははどこへ行ったのか、その答えを知るのは、はやてだ。
なら自分は知らなければならない。問い詰めてでも何が起きているのか言わせねばならない。
フェイトの思わぬ剣幕にたじろぐはやてだったが、リンディがフェイトに今回の件を言わなかった以上何か理由があると考えていた。
フェイト・T・ハラオウンという人間に対して、はやては全幅の信頼を置いている、だがリンディはどうなのだろう?
実の子でないと言え、深い愛情を注いでいた事は周知の事実だ。それに執務官としてのフェイトにも信頼を寄せているはず。
ならどうして、どうしてリンディはフェイトに何も告げないのか?

「いやそれは……」

リンディの行動が理解出来ないはやては言葉に詰まり俯いてしまった。
その様子に普段温厚なフェイトも声を荒げる。

「はやて!」

――ドオォォォ!!

するとフェイトの問い掛けに被さるように突如響きわたる爆音と粉塵の嵐。その瞬間、辛うじて原型を留めるビル陰から桃色の閃光を帯びた人影が飛び出した。
フェイト達は見覚えのある光を目で追う。そして光を脱ぎ捨てる様にして現れた白いバリアジャケットの姿に確信した。

「なのはぁ!!」

咆哮にも似た呼び掛け。聞き覚えのある声に驚いたなのはがその方向を見やるとそこには見覚えのある姿が4つ。
間違いない、いや間違える筈がないその姿。

「フェイトちゃん! それに……」

みんな自分を助けに来てくれたのだろう。
だがそう思った瞬間なのはは気が付いた。そうだ来てはいけない。なぜなら今ここに居るのは。

「逃げてぇぇぇぇぇ!!」

なのはの叫び、その刹那響く轟音。なのはの後方にあるビルが噴煙を上げながら、積み木細工を蹴散らすように崩れ去ったのだ。
そして残留する土煙に浮かび上がる黄色い光源が二つ。その光になのはが戦慄を覚えた次の瞬間、一帯を覆う煙は爆音を伴った暴風によって吹き飛ばされたのだ。

「ガオォォォォォ!!」

廃墟と化した都市部に響き渡る咆哮。雄々しく吠えたその姿にフェイトが、いやその場に居る全員が感じたのは逃れようのない恐怖。
粉塵を切り裂き現れたのは、身の丈20mに迫ろうかという大巨人。全身には薄汚れた包帯を巻き、魔導師の攻撃で引火したのか、垂れ下がる端々には篝火のように炎が灯っている。
そしてその姿は、身に宿る癒えぬ古傷を隠さんとするように見えたのだ。まるでそれその物が大きな傷跡であるかのように。
剛腕と形容するのが相応しい力強く巨大な腕に、大地を踏みしめる脚部はその地鳴りを響かせる重量を支えるのに十分な大きさがある。
それに伴った巨躯はまるで神話に出てくる神のように威厳に溢れ、そして怪物のような禍々しい威圧感を併せ持っていた。
顔に巻かれた包帯より覗かせる黄色い眼光は鋭く、目の前に居るなのは達へと向けられている。
だがそれでも高町なのはは退こうとはしなかった! 恐怖の感情はあったがそれよりも今は、かけがえのない友を守る事の方が大事だった!

187リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:55:38 ID:LLxI1tRg
「私の大切な友達を!」

だから立ちはだかる物を撃ち抜く! それが自分の出来る事、これが自分の最大火力! 今までこの砲撃に。

「傷つけさせなんかしない!!」

撃ち貫けなかった物などない!!

「行くよレイジングハート!」
『了解マスター』

そう、これこそが高町なのはの全力全開にして、神さえも撃ち倒すと言う名を与えられた究極の砲撃魔法!

そしてその名を!

――カートリッジ全弾ロード!

その名を!

――チャージ完了! 発射準備!

その名を!

――射線軸固定。照準ロック!

その名を!

――これが私の……。

その名を!

――全力全開!!

その名を!

「ディバイィィィィィィンバスタァァァァァァァァァ!!」

レイジングハートから放たれた桃色の光流が巨人目掛けて突き進む。突然の攻撃に巨人は身動きを取る事も出来ない。
なのはが持ち得る最大火力の砲撃は巨人の腹部に直撃し、辺り一面を桜色の光で包み込んだ。

「ブレイク! シュゥゥゥトォォォ!!」

なのはの咆哮が轟くと同時に、眩い閃光が巨人を覆ったかと思いきや突如起こる大爆発。それは凄まじい爆流となり憎き敵を覆いつくした。
巨人の全身を内包するほどに巨大な爆発が現すのは砲撃手の完全勝利。ビルの壁でさえ貫くこの砲撃に撃ち倒せぬ物はない!
誰もが思う。なのはの本領をぶつけられては無事で済むまい。今巨人を包む爆炎が晴れる頃には、彼が神さえ倒す砲撃に屈した姿を見る事になるだろう。

「やったんか?」

はやては晴れない煙を見つめ続ける。どうやら敵が動く気配はない。
カートリッジ7発ロードのディバインバスター。やはりその砲撃は巨人の身体を粉砕するには十分すぎる程の威力があったようだ。
ゆっくりと爆風が天へと舞い上がる様子に、なのははホッと一息付いてからフェイト達の居るビルへと飛翔する。

188リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:57:04 ID:LLxI1tRg
「フェイトちゃ〜ん! みんな!」

遠目から見ても心配そうな様子を浮かべている4人に、なのはは笑顔で手を大きく振り、自分の無事をフェイト達に知らせた。

「なのは!」

それを見るやフェイトは最高速度で飛び出し、なのはに辿り着くや否や、その華奢な身体を力強く抱き締める。

「無事でよかったぁ……よかった」

そう言ってフェイトが嗚咽を漏らし始めるとなのはは笑みを浮かべ、フェイトの身体を抱き寄せた。
ひょっとしたらもう感じる事が出来ないかもしれないと思ったなのはの温かさにフェイトの安堵はますます強くなる。
なのはが家を出てからどれほどこの瞬間を待ち望んだろう。また抱き締め合えるこの瞬間がフェイトにはどんな事よりも嬉しかった。
なのは自身も最近感じていたフェイトやヴィヴィオよりも先立ってしまう不安をこの時だけは拭う事が出来た。
どうやら自分が死ぬのは今ではないらしい。まだヴィヴィオやフェイトと笑い合って過ごせる、そう思うとなのはは堪らなく嬉しくなって目尻に涙が浮かべていた。

「私は無事だよ。でも他の人達は……」

だが同時に思うのは散っていった仲間たち。皆果敢に巨人と戦ったがなのは以外の全員が殺されてしまった。
ディバインバスターを撃てていれば全滅はなかったのかもしれない。
そうは思っても砲撃は足を止めなければ撃てない。あの巨人にそんな隙を見せれば瞬く間に殺されていただろう。
実際先程の砲撃も友達を守りたいがためのやけくそであり、それが直撃した事も、そもそも撃つ事が出来たのが奇跡に近かった。

「なのはが悪いんじゃないよ。とにかく無事でよかった」

落ち込むなのはを何とか励まそうとフェイトは微笑みかける。そうしたフェイトの気遣いは嬉しいがそれでもなのはは責任感を拭い切れずにいた。
だがそれも束の間、後方から地響きのような音が聞こえた。なのはとフェイトは音のする方へ振り向く。
視線の先にあるのは、今だ砲撃の爆風が停滞している巨人の亡骸があるべき場所。そしてまた聞こえる地響き。

「これは……」

フェイトが呟くとなのははハッとした。この音は間違いなく。

「巨人だ」

そう、爆炎を振り払い現れたのは包帯姿の巨人であった。その悠然と歩く姿からはこれと言ってダメージを受けているようには見えなかった。
だが、所詮布でしかない包帯はディバインバスターの直撃を受けて吹き飛んだようで、隠されていた腹の部分を露わにしていた。
そこから覗くのは非常に彩度の低い青色の肌。もはや金属本来の色と言ってもいいほど鈍くて、色合いの薄い青である。
不気味な色合いの皮膚に一同は困惑する。相手の正体は何なのか? 果たして生き物なのか? それともそれ以外の何かなのか?
皆が思案している中、はやては冷静に巨人の肌を見る。視線の先にはディバインバスター直撃の跡。
よく目を凝らして見るが、そこにあるべき物がない。あれだけの攻撃を受ければどんな物でも必ず付く筈の物。
その結果を突き付けられてはやての額には汗が滲み出してくる。はやての様子に心配なったヴィータが声を掛けると。

「はやてどうしたんだ」
「なんて奴や。傷一つ付いてないなんて」

189リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 20:58:10 ID:LLxI1tRg
そう言われてヴィータは巨人の腹に視線を送る。そこには綺麗な光沢こそあれど傷らしい物は一切見られなかった。
まさかなのはの砲撃を、その直撃を受けて傷一つ付かない物質など、この世に存在するのだろか?
分厚い鉄筋コンクリートでさえ撃ち抜いてしまうなのはの砲撃で無傷。それもカードリッジを7発もロードした超超威力砲撃。
もはやこれは常識で考えられる範疇を超えた相手なのだとはやては確信した。リンディの世界が滅ぶという言葉、あながち嘘ではないらしい。
そして相手の様子をじっと観察していたフェイトは、敵の正体に気が付いて叫び声を上げる。

「あれは……そうか鉄だ! 鉄で出来た巨人だ!」

フェイトの言葉になのはも叫んだ。

「じゃああれは鉄巨人!」

いいや違う! 鉄で出来た巨人でも鉄巨人などでは断じてない!

分からぬというなら見せようこの姿! とくと焼き付けろこの身体! 全力全開の砲撃魔法に耐えたこのボディー!

神をも倒す? 笑わせる! ならこの身体は神をも超えし物なのか?

あるいはそうか? それも違う! これを操る者こそ全知全能絶対無敵の神となりえるのだ!!

鉄巨人は自らの身体に纏った包帯を掴んでそれを取り払った。

そして現れたのは全身が鉄で出来た鋼鉄の兵士! それが勝利する事のみを目的とした完全なる兵器、鉄人!

「ガオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」



――鉄人28号!!



そうこれが私フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと後に鉄人28号と呼ばれる正太郎との出会い。
それは、JS事件から1年が過ぎた夏の日の事でした

続く。

190リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 21:00:03 ID:LLxI1tRg
あとがき

まず初めての投下なのに規制食らってしまって申し訳ありません。
もう少し投下感覚調整すべきでした。
これで第1話は終了です。ここまで読んでくださった方、支援してくださった方ありがとうございます。
SSは書き慣れていないので文章などにおかしい所がたくさんあると思いますが書いていく内に改善したいと思います。
なので指摘などありましたらどんどん言って下さるとありがたいです。
改めて読んでくださった方、支援してくださった方ありがとうございました。

191リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 21:35:46 ID:LLxI1tRg
また規制……
>>187までは投稿出来たので>>188からどなたか代理で投下して頂けないでしょうか?
自分のせいでスレの進行止めるのも申し訳ないので
本当にお手数ですがよろしくお願い致します

192リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 21:53:39 ID:LLxI1tRg
本スレに代理投下してくださった方、本当にありがとうございました
これからはこのような事態がないように気を付けます

193ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2009/05/17(日) 21:54:35 ID:HIgUv1Wg
リリカル鉄人氏の残りの部分を代理投下させていただきました。
これでよろしかったでしょうか?

194リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/17(日) 21:56:41 ID:LLxI1tRg
>>193
ラッコ男氏、代理投下誠にありがとうございました
これからは他の方に迷惑をかけないよう注意していきたいと思います

195<削除>:<削除>
<削除>

196無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 00:44:27 ID:ziKOyLyc
すみません。まだアクセス規制が消えないのでまた避難所投下になります。
誰か投下してください。お願いします。

投下作品はリリカル×ライダー第五話です。

197無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 00:46:27 ID:ziKOyLyc
「オルタドライブ?」
 シャーリーの言う単語は、デバイス関係を多少は齧ったわたしにも聞き慣れないものだった。
 カズマ君のデバイス、チェンジデバイスと言うらしい箱か又は物々しいバックルとでも形容するしかないそれは、下手なロストロギアより謎だらけのものだった。
 もちろん普通のデバイスとは全く違う。機能もよくは分からない。おまけに厳重なプロテクトとダミープログラムによって内部データは閲覧できず、ブラックボックスな中身故にコピーも難しかった。
「ええ、カズマさんが何度か使用した後に調べてみたら幾つかプロテクトが解除されていたんです。それで調べてみたらそんな名前が」
 シャーリーにしては珍しい、聞いたことのない専門用語みたいだ。彼女に分からないなら、わたしにも分かる筈がない。
「それで、そのオルタドライブって何のことなの?」
 名前からして動力機関みたいな気はする。けれど動力機関が搭載されたデバイスなんて聞いたことがなかった。
「このデバイスに搭載された魔力精製機関のことみたいです。これのお陰でリンカーコアのないカズマさんでも魔法が使えるみたいなんですけど……」
 魔力素を変換出来る装置自体を聞いたことがない、とシャーリーは続けた。
 簡単に言えば人工のリンカーコアということだと思う。けどそんなもの、一体誰が作ったの?



   リリカル×ライダー

   第五話『鉄槌』




 訓練、訓練、また訓練だった。
 機動六課隊員、特にフォワードメンバーは頻繁にヘリで任務に向かっていた。復興支援や、ガジェットと呼ばれる自立戦闘機械の掃討などを行っているらしい。JS事件の傷痕は、未だあちこちに残っているらしかった。
 一方の俺はまだ任務に従事出来るだけの訓練を積んでいないため、一人居残り練習という有り様だった。一応、教官としてなのはが残っているのは不幸中の幸いか。
 すでに俺が目覚めてから、一週間も時間は経過していた。

198無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 00:46:59 ID:ziKOyLyc
「飛行魔法に魔力付与攻撃、それにベルカ式防御魔法だけかぁ」
 なのはが訓練データを見ながらぼやく。
 薄々気付いていたが、俺は相当不器用らしい。基礎的な射撃魔法はもちろん、魔力スフィアの形成も出来なかった。というより、射撃魔法自体が向いていないのだろう。他に補助魔法や戦闘以外に使用する魔法も試したが、いずれもダメだった。
 唯一、飛行魔法だけは利点になるらしいが。
「まぁ、カズマ君はどちらかというと騎士だしね」
 騎士という言葉は聞き覚えがあるが、彼女の言う騎士はおそらく違う意味だろう。
「なのは、騎士って?」
「えっと、わたし達魔導師がミッド式魔法を使ってるのは教えたよね? ミッド式はね、攻撃魔法は主に射撃魔法が得意で他にも補助魔法や様々な魔法を使うのにも向いた万能な魔法体型なの。一方、ミッド式と対を成す魔法体系にベルカ式と呼ばれるのがあってね。そっちは格闘戦用の魔法を中心に戦闘に特化してるんだけど、それを扱うのが『騎士』」
 ……分かったような、分からないような。
 まぁ、斬り合いや殴り合いの方が向いてるのは事実だ。
「似たような戦い方をヴィータちゃんとシグナムさんがするから、帰ってきたら習うといいよ」
 そのヴィータちゃんとやらは知らないが。
「それよりなのは、もう一度ガジェットってのと戦わせてくれ。実戦形式が一番伸びるのが早い気がするんだ」
 俺の案をしばし顎に手を当てて考えた後、溜め息と共に首肯した。
「大体のことは分かったしね。でもガジェットじゃ、物足りないんじゃない?」
 なのは曰く、殴り合いや斬り合いが主な俺はガジェットに対し相性が良いらしい。AMFと呼ばれる魔力を阻害するフィールドを持つガジェットは並みの魔導師には天敵となるものの、自分のように殆ど魔力を使わないものには何の障害にもならないのだ。故にガジェットは自分に取って少々役不足な敵だった。
「でも他にないんだろ?」
「そういうわけでもないんだけど……」
 いつまでも顎に手を当てて悩むなのは。段々イライラしてきた。
「おい、そこまで悩むんならさっさとその隠し玉出せよ!」
「うーん、後悔しても知らないよ?」
 なのはは、にこりと笑った。

199無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 00:47:29 ID:ziKOyLyc



     ・・・



「フェイトちゃんお帰り。ここんとこ忙しいのに厄介事押し付けちゃってごめんな?」
「平気だよ。それにはやてだって大変なんでしょ?」
「私は何時ものことや」
 フェイトちゃんが一週間ぶりに帰ってきていた。
 彼女に依頼したのはカズマ君の調査。執務官という立場を生かして本局で調査してもらっていたのだ。未だ記憶が戻らない以上、こっちが地道に調べていくしかないのだから。
「それでどうやった? カズマ君の世界は見つかった?」
「管理世界と把握している管理外世界からここ最近急にいなくなった人をリストアップしたんだけど、該当する人はいなかった」
「そっか……」
 思わずほっとしてしまう自分が嫌いになりそうだ。けど、せっかく六課とも馴染み始めたカズマがいなくなったら寂しいというのは事実だ。そういって自分を誤魔化すことにする。
「けどね」
「ん?」
 カズマ君の偽造の身分証明書を提出するために封筒に纏めていた手を止める。珍しい、彼女が言い澱むことがあるなんて。もう一人の親友ほどではないけれど、彼女も正義の人故に何でもはっきり言うのだ。
「実はそっくりな顔の人が15年前に日本で行方不明になったって情報があったんだ」
「なんやて!?」
 まさかだった。確かにカズマ君の顔は東洋系だし、名前も日本人っぽいとは思っていた。しかし本当に日本人、つまりは私やなのはちゃんの故郷、第97管理外世界の出身だったとは。
「でも15年前だから今とは顔が違うはずなんだよね」
「あ……そうやね」
 確かにそうだった。15年前に似ていただけなら今はずっと老けているはずだ。早とちりだった。
「そっか、ありがとな」
「いいよ、私も気になってたから」
 そう言って微笑を浮かべた後、彼女はここを退室していった。

200無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 00:48:14 ID:ziKOyLyc



     ・・・



「はぁぁぁ!」
 円筒形のガジェットを真一文字に切り裂く。薄っぺらな装甲は容易くひしゃげ、内部機器を粉砕しながらオイルを撒き散らして爆散した。まぁ、魔力を物質化させて、ホログラムで見た目をリアルにしているだけの偽物なのだが。
「これで、15体か」
 訓練再開から10分、最初はガジェットと戦っててと言われて戦闘を続けていたが、数にキリがなかった。
 そしてまた、ビルの屋上から三体のガジェットが顔を覗かせる。
「くそっ、フライブースター!」
『Fly Booster』
 俺の声に続き、バックルから電子音声が鳴る。それに呼応して背中にある二本のブースターから青い魔力光が噴き出し、俺の体が浮かび上がった。
 ちなみに、俺は今の体を見て思うことがいくつかある。
 まずはバックル。本来はこんなものじゃなかった気がするのだ。他にも腹や肩のアーマーが不自然に感じる。本来ここには何かマークが描かれていたはずなのに。
 そしてこの背中にあるこのブースターも違和感の原因の一つだ。
「おりゃあああ!」
『Slash』
 飛び上がった俺の剣が青い魔力光を帯びる。
 俺はビルに着地しながら右足を軸に体を回転させ、三体のガジェットを一度に切り裂いた。――そして一歩遅れて爆発する。
「これで、18体かよ」
 違和感が何なのか、俺には分からない。今は精一杯生きるしかないのだから。
 再び床から四体のガジェットがせり上がる。まだまだ休ませてはくれないか。
「りあぁぁぁあ!」
 フライブースターを噴かせ、一気に突進する。いや、しようとした。
 それを、轟音が遮った。
「だ、誰だ!」
 ガジェットを粉砕した影。背は低い。だが赤い衣装と右手のハンマーが、俺の恐怖心をくすぐる。いったい誰だ?
「なのは、これは一体――」
「お前がはやてを誑かしたのかぁぁぁあ!」
「えぇぇぇ!?」
 その赤い影が、俺に襲いかかってきた。

201無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 00:48:48 ID:ziKOyLyc



     ・・・



 鬱だった。
 何故彼をあそこまで罵倒したか分からない。犯罪者と勝手に決めつけ、彼に辛くあたった自分が堪らなく憎い。
 任務の合間、つかの間の休憩時間に、あたしは何をやっているんだろう。あの模擬戦以来、考え事ばかりしている気がする。
「ティア?」
 声がかかる。スバルだ。あたしに元気がないのを察して来てくれたんだろう。
「ねぇ、スバル」
「何?」
 スバルになら、悩みを吐いてもいいかな? 執務官になるために、あまり他人を頼ったりはしたくないのだけれど。
「どうしてあたし、カズマさんにあんなに辛く当たっちゃったんだろう」
「ティア……」
 理由は無いわけじゃない。ナンバーズを捕まえた際に、しかるべき罪を課せられるかと思ったら驚くほど軽くて管理局に不信感があったとか。最近良くしてくれているなのはさんを蹴飛ばしたことが許せなかったとか、はやて部隊長が庇ったのが信じられなかったとか。この頃アレの習得が上手くいかず溜まったストレスも原因かもしれない。ホントに、いろいろ。
 けど本当は、この機動六課という輪を壊してほしくなかっただけかもしれない。そんな小さな事のために辛く当たった自分が、本当に小さく見えた。
「ティア」
「何よ?」
「一緒に謝ろうか」
「えっ?」
 まさかスバルがそんなことを――と考えて、あたしよりもずっとそういうことを気にするやつだったのを思い出した。
「あたしも最初はまだ本調子じゃないなのはさんに暴力を振るったあの人が許せなかったけど、今では反省してるんだ。なのはさんがあの人は悪い人じゃないって言ってたの、早く信じておけば良かったって、今頃になって思ってる」
 目に涙を滲ませ、顔を伏せながら言うスバル。きっと任務中も悩んでいたのだろう。それを気付かせないように空元気を出していたに違いない。あたしがいつも通りだったら分かってあげられただろうに。それが悔しい。
「だから、その」
「分かった。スバル、一緒に謝りに行くわよ」
「ティア……」
 あたしはなるべくいつも通りに笑いながら、
「くよくよ悩むなんて、アンタらしくないでしょ」
 あたしは、そう言った。

202無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 00:49:22 ID:ziKOyLyc



     ・・・



 何故だか俺は、ティアナとスバルのことを思い出していた。
 ティアナとスバルが謝りに来たのは昨日の話だ。こっちはかなり驚いたが、願ってもないことだったので俺も喜んで受け入れた。
 何故、今そんなことを思い出すのだろう。
「ぐあっ!」
「どうした! その程度かよ!」
 赤い服を着る人影は少女だった。ドレスのような派手なフリルがいくつも付いた服を来ていて、年は小学生くらいだろう。可愛らしい顔立ちをしている。
 そんな少女が憤怒の形相を浮かべて、ハンマーを振り回しながら襲いかかってくるなんて悪夢としか思えない。
「グラーフアイゼン!」
『Jawohl!』
 威勢の良い彼女の掛け声と、ハンマーから鳴る同じく威勢の良い機械音声が重なる。それと共にハンマー基部のコッキングレバーが動き、薬莢が排出される。
「カートリッジ!?」
「ラケーテン、ハンマー!」
『Raketenhammer!』
 赤い魔力がハンマーを包み込む。一瞬の後、ハンマーのヘッド部分は異形の姿に変貌していた。
 叩き付ける部分には鋭い突起が、反対側にブースターが付いた新たなハンマーヘッド。見るからに危険そうだと分かる凶悪な外見だ。
 それを彼女は、ジェットを吹かして自分の体を軸に回転させながら俺に叩き付ける!
「あぁぁぁぁぁあ!」
 俺はそれを右手に発動させた小さな三角形の魔法陣、パンツァーシルトで受け止める。
 甲高い耳が馬鹿になるような音が鳴り響き、ハンマーから生えた突起が俺の盾をガリガリと削っていく。
 凄まじい衝撃と突起による追加ダメージ。
 俺を守る盾は、限界に達しようとしていた。

203無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 00:50:08 ID:ziKOyLyc
『お願い! わたし達の六課を守って!』
 その時、なのはの声が耳を震わせた。

――守る……?

 そうだ、守らなければ。今六課隊舎を守れるのは俺だけなんだ。

――そうだ、俺は。

 俺が、俺が戦わないと。六課を守るために。

――俺はもう、誰も失いたくない。

 そうだ、俺は――

――“全ての人を、守ってみせる!”

「おぁぁぁぁぁっ!」
 右手が輝き出す。眩い蒼の光は魔法陣を包み込んでいき、亀裂をみるみる修復させていく。
「な! コイツ、いきなり魔力量が」
 少女が表情を変える。だがそんなことはどうでもいい。
 俺はフライブースターを最大出力にして押し返す。
 均衡する力と力。
「バリア、ブレイク!」
 その状況を、俺はあえて粉砕する。
「なぁっ!?」
 盾となっていた魔法陣が爆発し、彼女とそのハンマーを吹き飛ばしながら噴煙で包み込む。これで一時的だが眼は潰した。
 俺は死角に一瞬で飛び、青い光を帯びさせた剣を降り下ろ――
「そこまで!」
 ――そうとした所で、戦いは終わりを告げた。

204無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 00:50:44 ID:ziKOyLyc



     ・・・



「なのは! てめぇ!」
 先程まで戦っていた赤髪の少女が、なのはに掴みかかっていた。
「ごめんね、ヴィータちゃん。ああ言ったらカズマ君と良い戦いをしてくれるかと思って」
「にしてもやり方が悪過ぎだ!」
 おそらくなのはの言っていた秘策はこの少女の事だったのだろう。確かに偉く強い相手だった。
 ちなみに今いる食堂で夕食がてら事情を聞くということで集まったのだが、彼女がキレ出してしまったため俺には何も出来なかった。
しかし俺はなのはの少女みたいな甘い声にまんまと乗せられたということか。考えてみれば俺が戦わずとも彼女がいた訳なのだから、責任感を持つ必要はなかったのだ。くそ、あの高い声と必死さのある口調は反則だ。思わず守りたくなってしまった。
でも、俺は何か思い出しかけた気が――。
「ホントごめんね。今度はやてちゃんが休み取れるようにわたしが仕事引き受けるから。一緒に遊園地とか、この頃行ってないんじゃない?」
「ほ、ホントかなのは? やったー! はやてと久しぶりのお出掛けだー!」
 単純な奴だな、と思ったのは内緒だ。なのははもしかしてこうやって彼女“で”遊ぶことを目的としていたのではないか?
「ところでなのは。この子はどういう……?」
「あたしか?」
 なのはに対して散々怒りをぶちまけたからか、先程よりはずっと爽やかな自信に満ちた笑顔をこちらに向けた。
「あたしはヴィータ。はやての守護騎士ヴォルケンリッターにして機動六課スターズ分隊副隊長のヴィータだ」
 赤髪の少女、ヴィータはそう名乗った。



     ・・・



 ようやく仲直りをしたティアナはカズマへの詫びとしてクラナガンの案内を志願する。二人での奇妙な買い物は、しかし平和には終われない。
 ついに物語は始動する。最悪の方向へと。

   次回『覚醒』

   Revive Brave Heart

205無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 00:57:44 ID:ziKOyLyc
以上で投下終了です。何度もご迷惑をおかけして申し訳ありません。2ch歴が短いのでアクセス規制の対処法などもわからなくて……。
すいません、作品に話を戻します。今回の話までは平和な話です。次回からカズマの正体がある程度明かされます。それと共にもしかしたらあいつも……?

感想、批評などをよろしくお願いします。

206無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 08:46:37 ID:ziKOyLyc
すみません。では誰か、代理投下お願いします。

207ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2009/05/24(日) 15:45:27 ID:FiZCd4IU
無名氏の第5話を代理投下しました。
上で既にゼロ氏も仰っていますが、一行が長くて
エラーが発生しておりましたので勝手ながら
一部改行させていただきましたが、大丈夫だった
でしょうか?

では、失礼します。

208無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/24(日) 20:47:12 ID:ziKOyLyc
ありがとうございました。
改行についてはwiki編集時にオリジナルのまま編集しているので大丈夫です。

209魔法少女リリカル名無し:2009/05/24(日) 21:09:23 ID:Q8qYANvU
>>208
そうじゃなくて、エラーが起こるから投下しにくいと指摘されてるわけで。
貴方のオリジナルがどうとかじゃなくて、人に代理を頼む以上はエラーが起こらないようにするのが
頼む側の最低限の礼儀じゃないでしょうか? 一度指摘を受けてるんですから

210無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/25(月) 17:07:41 ID:yovq0bBs
>>209
すいません。問題をきちんと理解していませんでした。今後はこんなことが起こらないよう注意しておきたいと思います。

ちなみに今回のエラーの原因が今一分からないので解決法などがありましたら教えてもらえますか?

211魔法少女リリカル名無し:2009/05/25(月) 18:00:17 ID:IY2TYZVY
>>210
文字は1行128文字まで
それを超えると投下出来なくなる
テンプレにも書いてあるので熟読するといいと思う

212無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/05/26(火) 07:27:34 ID:nD3RIsvc
あれはてっきり一行が128文字しか入らないからレスの際は合計文字数に制限かかるという意味に取ってました・・・・・・。
小説的には一段落128文字ということですね。わかりました、今後は気を付けます。ありがとうございました。

そしてラッコ男氏には迷惑をお掛けしたことに改めて謝罪させていただきます。申し訳ありませんでした。

213R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:00:40 ID:8/jKotFc
時間になりましたので投下します



閃光と衝撃。
光子弾の奔流が眼前の壁面を掻き消すと同時、スラスター出力を最大へと叩き込む。
砲撃後の僅かな粉塵は晴れずとも、各種センサーがその向こうに位置する構造物の消滅を告げていた。
光子弾単発のサイズは親指程度、掃射時間は僅か1秒足らずだが、1度の砲撃によって放たれる総弾数は20万を優に超える。
波動粒子に対する抵抗性を獲得したバイド汚染体でもない限り、雪崩を打って迫り来る光子弾の壁を前にして存在を保つ事など不可能だ。

行く手を遮る物が何ひとつ存在しない事を確信し、壁面に穿たれた巨大な穴に向かって加速。
そして突入と同時、リフレクト・モードへと移行した光学兵器の閃光が空間を埋め尽くす。
機体周囲の全方位から爆発と生命反応の消失に際しての各種エネルギーが無数に検出され、それらの情報がインターフェースを通じて意識内へと流れ込んだ。
更にシステムをサーチ・LRG・モードへと移行、誘導性を有するレーザーを5秒間に亘って掃射。
逃走を図ったか、遠ざかり始めた反応源を殲滅する。
直後、システムを再度リフレクト・モードへ移行、反射制御ナノマシンの増殖・供給を停止した上で掃射開始。
選択式対物反射機能を失ったレーザーの嵐は、既に破壊されつくした周囲の構造物を更に微塵と化し、漂う粉塵すらも巻き込んで全てを消滅させた。
後に残るは半径600mにも及ぶ、巨大な球状の空間のみ。

数ある空間制圧型光学兵器の中でも群を抜く高性能にして、前線の部隊からは「凶悪」とすら評される、R-9Leoシリーズのマルチプル・レーザー・システム。
地球文明圏が有する全光学技術を、文字通り全て注ぎ込んで開発された光学兵器運用特化型フォースは、同一プロジェクトに於いて開発された「サイ・ビット」との連携によって破壊的な制圧力を発揮する。
大型装甲目標すら数秒の連続照射によって破壊可能な極高出力レーザー、更に高密度レーザー弾体をフォース及びサイ・ビットより放つクロス・モード。
ナノマシンによる超高速演算とレーザー触媒機能により、照射後のレーザー自体が選択的に対物反射機能を発動させるリフレクト・モード。
同じくナノマシン制御により、偏向誘導性を持たせたレーザーを掃射するサーチ・LRG・モード。

専用ビットであるサイ・ビットは基本的にフォースと同一のレーザーかサブ・レーザーを照射する為、その通常掃射は瞬間火力こそ特化型波動砲には劣るものの、総合火力では標準型波動砲のそれを凌駕すらしている。
更にサイ・ビット本体もまた攻撃能力を有し、波動粒子の充填後には近接防衛火器としての機能を発現。
その強大な打撃力は迎撃のみならず、機体を中心とした2000m以内の敵性体に対する積極的攻撃能力すら有している。
友軍以外の全てに襲い掛かり、波動粒子を纏っての突撃を以って喰らい尽くすのだ。
その攻撃行動は充填された波動粒子が尽きるまで停止する事はなく、単一の敵性体排除後には次々に目標をシフトしながら特殊戦闘機動を継続する。
フォース及びビットシステムの攻撃性特化と引き換えに波動砲の出力こそ低下したものの、その驚異的な空間制圧力は他のR戦闘機、及びあらゆる機動兵器の追随を許さない。
スペックだけに注目するならば、正に究極にして理想のR戦闘機。

しかしシリーズ初代となるLEOの実戦配備後、前線から上がったのは痛烈な批判の声だった。
構想段階からして余りにも攻撃に傾倒し過ぎたシステムは、Leoシリーズと他機種の同一戦域への同時投入をほぼ不可能にしてしまったのだ。
その最大の要因となったのは、リフレクト・モードの無差別性にあった。
Leoシリーズ最大規模の攻撃手段であるこのレーザーは敵性体のみならず、時に友軍機すら巻き込んでの過剰破壊を引き起こす。
IFFによるナノマシンを通じての反射角制御機能はあるのだが、友軍機による想定外の機動を始めとした各種現象の全てを反射・着弾までに演算処理するとなると、その総情報量はナノマシン群の処理能力を僅かに超えていた。
更にR戦闘機が度々投入される半閉鎖空間に於ける戦闘では、レーザーの空間密度が飛躍的に増加する為、必然的にナノマシンの負担は増加、友軍機への誤射が相次ぐ事態となる。
無論、被害以上の戦果は得られたのだが、運用する艦隊側としてはパイロットに単独行動を強いる結果となってしまったのだ。

214R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:01:16 ID:8/jKotFc
以降のLeoシリーズは単機による殲滅作戦にのみ用いられる事となったが、それを受けた開発陣が自身等の技術を処理速度の向上へと振り分ける事は終ぞなかった。
如何なる理由か、彼等は機体運用に於ける汎用性向上には僅かな関心も示さず、新たに開発されたナノマシンの有り余るキャパシティを只管にレーザー出力の増大へと注ぎ込んだ。
結果、Leoシリーズの実態は当初の機体構想から大きく外れ、単独運用を基本とした戦術級殲滅兵器へと変貌を遂げる。
こうして実戦配備へと至った後継機「R-9Leo2」は、LEO以上に扱い難い機体となってしまった。
問題となっていたリフレクト・モードの総合火力が更に増大してしまった為、僚機の随伴はおろか施設奪回目的での運用すら不可能となってしまったのだ。

だが、ある程度の運用期間を経て、例外的に僚機を随伴させるケースも現れ始めた。
半閉鎖空間戦闘に於ける戦闘経験を豊富に有し、尚且つ限定条件下に於いて威力を発揮する波動砲を有した機体を補助に付ける事で、物量と耐久性を恃みに襲い来るバイド体を容易に殲滅する事が可能となる為だ。
今作戦に於いても、LEOⅡを運用する彼に対し僚機が与えられている。

「R-9DV2 NORTHERN LIGHTS」、コールサイン「ウラガーン」。
圧倒的密度を誇る光子弾幕により、群体型汚染体に対する大規模制圧射を行う機体。
操縦するのは4度に亘る大規模施設への突入・制圧の実績を持つ、第17異層次元航行艦隊に於いても古参に当たるパイロットだ。
R-9DV2が有する重装甲・大出力を活かしての一撃離脱を得意とする彼は、艦隊でも数少ないフォースの装備を必須としない人物でもある。
高機動にて敵性体群を攪乱・誘導した後に光子弾幕を叩き込み、再度攪乱へと移行しつつ充填を開始するその戦法は、対バイド戦線に於ける掃討戦を熟知したもの。
本作戦に於いてもその技能を遺憾なく発揮し、全方位より迫り来る汚染体群、及び侵食組織体を見事な戦闘機動で誘導した上で、光子弾の掃射により殲滅していた。
無論、管理局員に対しても同様である。
その上でこちらの攻撃時には安全圏まで脱し、収束と同時に攻撃を再開する機体運用は見事なものだ。
汚染拡大によりバイド係数検出機能を除く長距離センサーの殆どが沈黙し、同じく長距離通信すら断たれた現状ですらなお、ウラガーンとの相互支援行動は僅かな綻びも見せてはいない。

『反応消失、進路クリア』
『了解。HLRTへのアクセスハッチを確認、突入する』

物資輸送用大型リニアレール路線へと続く巨大なハッチが、レーザーにより抉り取られた空間の端、破壊され途切れた輸送路の奥から覗いている。
波動砲の充填を開始すると同時に機首を旋回させ、低集束砲撃によりハッチを破壊すると間髪入れずに機体をその先の空間へと滑り込ませた。
暗闇の中へと直線に連なって浮かび上がるは、光を失った無数のリニアレール路線警告灯。
至近距離に大型バイド体の反応は存在しないものの、彼は警戒を解く事なくレーザーをサーチ・LRGへと切り替える。

『バイド係数、最大値検出源まで約5700m。道中に障害物及び敵影は確認できない』
『了解、本機は後方に着く。エグゾゼ、前進せよ』

サーチ・LRGを2秒照射、サイ・ビットへと波動粒子を充填しつつ加速。
レーザーは屈折する事なく直進、暗闇の奥で爆発が起こる。
待ち伏せはない。
ザイオング慣性制御システム及びスラスターを低出力駆動、5700mの距離を一瞬にして移動した後に右旋回、目前の壁面へとビットを撃ち込んだ。
波動粒子を纏った2基のビットは一瞬にして壁面を打ち砕き、それでも足りぬとばかりにその奥へと飛び込み構造物を抉ってゆく。
破壊音と震動が機体を揺らす中、機体側面へと滑り込んだウラガーンが充填済みの波動砲を解き放った。
閃光と共に放たれた光子弾幕は、通常砲撃時よりも弾体散布界を絞られている。
サイ・ビットにより穿たれた壁面の穴、その更に奥へと突き立った20万の弾体は射線上の全てを呑み込み破壊し、数瞬後には円錐状に拡がる巨大な通路を形成していた。
崩落と粉塵が視界を覆い尽くしているものの、近距離センサー群が健常である以上、進攻には何ら問題はない。

215R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:02:26 ID:8/jKotFc
『エグゾゼ、前進する』

そう告げるや否や、彼はリフレクトへと切り替えたレーザーを掃射しつつ加速する。
ナノマシン制御により機体へと直撃する軌道を除いて対物反射を繰り返すレーザー群は、一瞬にして空間を覆い尽くした。
反射毎に分裂を繰り返すメイン・レーザー、分裂機能こそ持たないものの同等の出力によって照射されるサブ・レーザー。
双方を照射するフォース、サブ・レーザーのみを高速連射するサイ・ビットによって、レーザー弾幕の密度は減衰を上回る速度で上昇してゆく。
数瞬後には愛機であるLEOⅡ「エグゾゼ」を除く空間の全てが青い閃光により埋め尽くされ、対物反射機能の枷より解き放たれる瞬間を待ち受けていた。
そして遂に、インターフェース越しに最後の障壁が浮かび上がる。
目標である高バイド係数検出源へと続く即席の侵攻路、その最後の障害となる構造物。
崩壊した階層の山が、数百mもの絶壁となってレーザーを反射している。

即座に彼は、前方の壁面に対する対物反射機能を解除。
万を超えるレーザー弾体の壁が一斉に牙を剥き、分厚い構造物の壁を瞬時に食い破る。
だが破壊はそれだけに留まらず、構造物の向こうに拡がる空間へと拡大した。
レーザー群は構造物を細分化して尚、集束を保ったまま空間そのものを粉砕したのだ。

光の暴風としか形容できない破壊が過ぎ去った後、センサー上へと出現したのは巨大なバイド生命体、そして無数の局員より発せられる生体反応だった。
前方ではレーザー群に呑み込まれたのか、数隻の次元航行艦の残骸と思しき破片が散乱し炎上している。
局員は空間全域へと散開しているが、レーザー群の通過痕である400m前後の範囲には不自然な空隙が生じていた。
周囲に存在する局員の位置から推察するに、幸運にも数十名の魔導師を巻き込んだらしい。
非戦闘員を含めれば、次元航行艦の残骸から推測して500名は下らないだろう。
レーザーに呑まれる事のなかった局員達は暫し呆然としていたが、程なくして状況を理解したのか、一様にデバイスを構え攻撃態勢を取った。

レーザーをリフレクトよりクロスへ移行、射軸を右側面80度に傾けた状態で照射を開始し、瞬時に左側面80度まで水平稼働。
同時に機体を左側面へと旋回させ照射範囲を更に高範囲へと拡大、レーザーの直撃と余波で以って周囲に滞空する魔導師を薙ぎ払う。
更にサイ・ビットより連続して放たれる高密度レーザー弾体が着弾と同時に高熱を撒き散らす力場を形成し、着弾地点を中心とする15m以内の構造物を真球状に抉り抜く。
直後、進行方向に対し機体右側面を向けたウラガーンが後方を突き抜け、移動を止めぬまま砲撃。
前方に存在する局員、そして次元航行艦の全てに対し光子弾幕を叩き付ける。

クロス・モードによる掃射からウラガーンの砲撃、一連の行動が収束するまで3秒足らず。
その間に、後方に位置する者を除く魔導師の大半と次元航行艦3隻がレーザーに、それを掻い潜った局員と11隻の次元航行艦が光子弾幕によって存在を消し去られていた。
抉られた構造物が凄絶な破壊痕を曝し、次元航行艦の残骸は炎を吹き上げ続けている。
危うく弾幕を凌いだ艦も其処彼処を穿たれ、少なくとも4隻が明らかな航行不能、2隻が機関部付近から炎を上げていた。
局員の姿に関しては、次元航行艦の陰より現れた無傷の20名ほど以外には確認できない。
負傷者の姿及び死体が確認できないのは、完全に消滅してしまった為だろう。

『前方、上層から下層へ貫通する崩落跡を確認。検出源と思われる』

局員生存者から魔導弾が撃ち掛けられるが、彼の注意は既に其処にはなかった。
狙うは唯1つ、上層より現れ下層へと落下していったであろう、大型バイド汚染体。
その正体は程なくして判明した。

『解析終了。「BFL-128『GOMANDER Ver.17.1』」幼生体及び「BFL-126『IN THROUGH Ver.32.9』」6体を確認、管理局部隊が交戦中』
『確認した。これより対A級バイド掃討戦へと移行する』

魔導弾を無視して前方へと加速、レーザーを切り替えサーチ・LRGを照射、同時に波動粒子の充填を開始。
絶え間なく放たれるレーザー群は、崩落地点の上で次々に屈折し垂直に下層へと降り注ぐ。
インターフェースを通じて伝わる、確かな空間の揺らぎと衝撃。
目標はその規模から幼生段階であると判別でき、未だ外皮が硬質化し切らぬ現状ならば構造的弱点を狙う必要はないと思われた。
寄生体との直接戦闘は避け、同一箇所への集中砲火のみで事足りる。
更に好都合な事に崩落跡を通じて強襲を掛ければ、直上からの攻撃は狙わずとも敵性体の構造的弱点へと直撃する筈だ。

216R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:03:34 ID:8/jKotFc
崩落地点直上へと至るや、機首を直下へと旋回。
70m下方、粉塵と血煙の間から覗く砕けた水晶体へとクロス・レーザーを撃ち込み、更にサイ・ビットを射出する。
赤い軌跡を空間へと刻みつつ、レーザーは砕けた水晶体の中央を射抜き汚染体の体内へと突き立った。
汚染体の各所から爆発と見紛わんばかりの勢いで血液と肉片が吹き出し、更にサイ・ビットが体内へと突入した数瞬後、側面部位が内側より粉砕されて跡形もなく吹き飛ぶ。
直前まで醜悪な肉塊が存在していた空間を突き抜け機首を起こすと同時、敵性体に押し潰される様にしてツァンジェンが大破している事実が判明した。
パイロットのシグナルが消滅している事を確認すると、彼はそれ以上の注意は不要と判じ並列思考の大部分を目前の敵性体へと集中させる。

展開する無数の局員と、20隻以上の次元航行艦。
局員は一様に驚愕の面持ちでこちらを見つめ、一部は既にデバイスを構えて攻撃態勢を取っている。
周囲の状況から推測するにツァンジェンと汚染体の攻撃により、局員は既にかなりの被害を受けているらしい。
しかし次の瞬間、横殴りに襲い掛かった魔導弾幕により、局員の姿が掻き消える。
既に汚染体からの攻撃を予期していた彼は、フォースを盾に危なげなく弾幕を凌ぐと即座にサーチ・LRGの掃射を開始した。
レーザー群は魔導弾幕を正面から切り裂き直進、屈折して2体の汚染体、その長大な胴部へと殺到する。
球状の肉塊が次々に消し飛び、遂には汚染体の頭部までもが吹き飛ばされ消失。
重力制御による浮力を失った400mもの長躯が床面へと叩き付けられ、衝撃により血液が撒き散らされ豪雨の如く一帯へと降り注ぐ。
残存汚染体、計4体。

背後で光子弾幕の壁が垂直に叩き付けられ、A級バイド汚染体の残骸が更に細分化された。
降り注ぐ光子弾幕が、床面ごと敵生体を粉砕した事をインターフェース越しに認識しつつ、彼はウラガーンの合流を待つ。
全方位を映し出す電子処理された視界の中に浮かび上がる、障壁を展開し魔導弾幕を凌いでいた局員の姿。
彼等は残る汚染体とこちらとを同時に相手取るという状況に混乱しているのか、攻撃態勢を取る者の姿はあれど集団的な反撃行動へと移行する素振りはない。
とはいえ、上層階でこちらが取った敵対行動に関する報告が届けば、すぐにでも攻撃が開始されるだろう。
ウラガーンによる光子弾幕とレーザーの掃射を以って、汚染体もろとも速やかに殲滅する事が望ましい。

その時、背後で青い光が瞬いた。
彼はその光をウラガーンのスラスターが放つものであると判断し、IFFと視界に映る機影の双方を以ってその正しさを確認する。
ウラガーンは左側面後方の位置で停止、波動砲の充填を開始する。
局員も状況を理解したのだろう、ほぼ全員がデバイスの切っ先をこちらへと突き付けた。
そして彼もまたウラガーンの砲撃を待ち、リフレクト・モードによる殲滅を実行せんとする。

『本機は魔導師の殲滅に当たる。ウラガーン、艦艇を狙え』

誘導型・高速直射型を織り交ぜた魔導弾幕、そして砲撃と拘束用魔力鎖。
襲い来るそれらを躱し、撃ち砕き、或いはフォースに喰らわせる。
機体直下に発生した魔方陣より間欠泉の如く噴き上がる緑と褐色の魔力鎖を前方への急加速によって回避し、2発のミサイルを展開する局員の中央へと撃ち込んだ。
吹き飛び四散する魔導師の肉体を認識しつつ、彼は僚機へと指示を飛ばす。

『砲撃だ、ウラガーン』

応答はない。
更に局員より放たれた金色の砲撃魔法を水平方向への移動によって躱すが、右側面へと回り込む様に放たれた誘導弾と左側面からの汚染体による魔導弾幕が、左右より挟み込む様にして迫り来る。
彼は後方へ退く事はせず逆に前方へと加速、一瞬にして局員の頭上へと機体を滑り込ませ機首を反転し、追い縋る誘導弾群をクロス・レーザーの掃射で薙ぎ払う。
そして一向に砲撃実行の様子を見せぬ僚機を訝しみ、そちらへと意識を集中した矢先の事だった。
IFF消失、被ロック警告。
視界の一角で、金色の閃光が爆発した。

左側面スラスター最大出力、瞬間的に右側面方向へと200m移動。
光子弾幕が機体を掠め、衝撃と共に警告表示が視界を埋め尽くす。
ザイオング慣性制御システム損傷、機能回復措置完了まで約600秒。
光速巡航及び高次戦術機動、不能。
キャノピー内慣性消去機構、停止。

回避行動とほぼ同時、彼は些かも躊躇う事なくクロス・レーザーを照射した。
目標は濃緑色の機体、僚機であるウラガーン。
一瞬で10mほど上昇しレーザーを回避、レールガンを連射し弾幕を張る。
通常と比して緩慢な動きで辛くもそれを躱し、サイ・ビットへの波動粒子充填を開始。

217R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:04:28 ID:8/jKotFc
何故こちらが攻撃を受けるのか、等と思考する事はなかった。
突然のIFF消失、僚機に対する無警告での攻撃。
考え得る理由は1つしかない。
汚染されたのだ。

だが、それよりも優先して対処すべき問題がある。
ザイオング慣性制御システムの停止。
背後に管理局部隊が展開しているこの状況下、慣性制御が不可能であるという事実は致命的だった。
慣性制御を用いた高機動は勿論の事、キャノピー内部へと掛かるGの消去すら不可能となってしまったのだ。
機体各所のスラスターを用いれば、正常時と同等ではないにせよ高機動を実行する事は可能である。
しかし発生するGを打ち消す事ができなければ、パイロットの身体は僅かに20m移動しただけでピューレの様に弾けてしまうだろう。
強化措置を施され、耐Gスーツとキャノピーに満たされた耐Gゲルによって護られた身体は理論上15Gまで耐える事が可能だが、それでも通常の様な瞬間的加速は不可能だ。

この状況下で汚染体と局員の双方を相手取る事は、無謀以外の何物でもない。
此処は局員に対する攻撃を控え、システムの回復を待つべきだろう。
こちらがウラガーンへの攻撃に集中すれば、自然と局員は汚染体への対処を優先させる筈だ。
無論、こちらから注意を外す事はないだろうが、システムが回復すれば問題はない。
高機動さえ可能となれば、抵抗すら許さずに殲滅できるだろう。

そして、彼は視界に映り込むウラガーンへと意識を集中した。
一見すると、その機体に異常は見当たらない。
しかし、センサー群は明らかな異常を伝えている。
バイド係数異常増大、パイロット生体シグナル消失。
どうやらA級バイド汚染体の残骸より侵食を受けたらしく、拡大表示されたエンジンユニット近辺から異常なまでの高バイド係数が検出されている。

だが、どうにも理解できない。
高度な対汚染防御が施されているR戦闘機が何故、僅か数秒の内に中枢まで侵食されたのか。
撃墜するのではなく機能を保ったまま汚染するとなれば少なくとも数十時間、侵食特化バイド体であっても数分は掛かる。
一体、何がこの短時間汚染を可能としたのか。

疑問が解消されるまでに、それ程の時間は掛からなかった。
ウラガーンの後方、既に生命活動を停止していた筈の肉塊。
一部は伸長し、ウラガーンの機体後部へと直結している。
増殖を繰り返し見る間に膨れ上がるその中に、濃紺青の光を放つ無数の結晶体を確認したのだ。
照合の結果、視界へと現れる見慣れない表示。



『High energy focusing material detected. LOST-LOGIA「JEWEL-SEED」』



瞬間、周囲の空間に満ちる魔力素の検出値が数十倍にまで膨れ上がった。
魔力素の集束によって形成された無数の力場が、触手の様に空間を侵してゆく。
本来ならば不可視であるそれらは、各種センサー群を介する事によって可視化され彼の視界へと映り込んでいた。
後方の局員達も、見えはせずともリンカーコアを通じて異常を感じ取ったのだろう。
ウラガーンへと視線を固定したまま、不可視の圧力に押される様にして後退してゆく。

そして遂に、ウラガーンの装甲の一部が内部より弾け飛んだ。
大きく抉れた機体からは黒々とした肉腫が泡の様に噴き出し、宛ら癌細胞の如く機体を覆い尽くしてゆく。
しかしその中にあっても、ウラガーンは波動砲の充填を開始していた。
汚染体はウラガーンの全兵装を制御下へと置いているのだ。

幾度目かの金色の奔流が、彼の視界を埋め尽くす。
幸いにして光子弾幕は別方向の艦艇を狙ったものだったが、しかし彼は気付いていた。
後方の局員達、その一部が不審な動きを見せている事に。
波動粒子を纏ったサイ・ビットが肉塊へと撃ち込まれ、血肉に混じり青い結晶体の欠片が降り注ぐ中、金色の髪を揺らす魔導師が欠片の1つを手にしている事に。

218R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:05:10 ID:8/jKotFc
だが最早、彼の手の内に選択権はなかった。
彼が取り得る行動は、汚染された僚機との戦闘のみ。
意識内へと響く警告音だけが、状況の支配権が失われた事実を無機質に告げていた。

*  *  *

「・・・複製だって?」

呆けた様なアルフの声を耳にしながら、フェイトは無言で自らの手の内にある青い結晶体を見つめていた。
もう、10年以上も前になる。
母の望みを叶える、ただ只管にそれだけを望み、違法活動を繰り返した。
管理局との敵対、管理外世界の少女との闘いがあった。
母に捨てられ、新たな家族と掛け替えのない親友を得た。
全ては21の宝玉、計り知れない力を秘めたロストロギアを巡って起きた事だった。

『そうだ。あれはオリジナルのジュエルシードじゃない。良く見れば分かる筈だよ』

ロストロギア「ジュエルシード」。
願いを叶える宝石。
次元干渉型エネルギー結晶体であり、極めて不安定な性質を持つ人造鉱物。
外部からの魔力干渉によって容易く暴走し、特定条件下に於いては周囲に存在する生命体との融合を果たし物理干渉力を増幅させる事すらある。
単体で次元震を引き起こす程の膨大な魔力を秘めながら、歪な形でしか願いを叶えられなかった奇蹟の石。

「・・・確かにナンバリングは無いけど・・・でも、どう見たってジュエルシードじゃないか」
『知っての通りジュエルシードの総数は21だ。現存しているものは12個、そのうち本局にあるものに至っては8つ。ところが検出された反応数は40を超えている』

乗り越えた筈の過去が今、悪夢となってフェイトの眼前へと具現化していた。
光学兵器と波動砲の波状攻撃を浴びながらも、損壊を上回る速度で増殖を繰り返す肉塊。
金色の弾幕を放つ濃緑色の機体は、既に半ばまで肉塊に呑まれている。
電磁投射砲を連射している所を見ると、どうやら機能中枢を奪われたらしい。
肉塊によって半ば固定されている為、波動砲の射界がほぼ固定されている事は幸運だった。
射軸が壁面寄りに傾いている為、次元航行艦への被害は最小限に抑えられている。
だが徐々にではあるが、肉塊は機首をこちらへと向ける様に、表層部での不自然な脈動を繰り返していた。

『反応は今この瞬間も増え続けている。ジュエルシード自体が増殖と分裂を繰り返しているんだ』
「まるでジュエルシードが生きているみたいな言い方だね」
『生きているんだよ。ジュエルシードは取り込まれたんじゃない、それ自体がバイド化したんだ』

残るR戦闘機からの攻撃を受ける度に、肉片と共に周囲へと飛び散る青い結晶体。
自身が、管理局が、歴史上の幾多の文明が争い、全てを掛けて手に入れようと試みた21の宝石は、そんな人間達の苦悩と葛藤を嘲笑うかの様にその数を増し続ける。
肉腫の隙間より覗く結晶が青く瞬く度に、肉塊はその体積を爆発的に増大させるのだ。
既に汚染体の体積はR戦闘機による攻撃を受ける前と比して、3倍以上にまで膨れ上がっている。

「何の冗談だい・・・!」
『冗談なんかじゃない。ジュエルシードは自己の生命と生存欲求を獲得している。だからこそ肉の鎧が剥ぎ取られないように再生を促し、また自己の存在を残す為に分裂を続けているんだ』
「ロストロギアが子孫を残そうとしてるってのか。そんな馬鹿な」

閃光。
聴覚が麻痺し、光弾の奔流が100mほど離れた空間を薙ぎ払う。
衝撃が全身を襲うが、フェイトは片膝を突いたまま微動だにせず、弾幕の通過した痕跡へと視線を向ける事すらしなかった。
ただ一言、無感動に呟いただけ。

「使えるの?」

衝撃を避ける為か身を伏せていたアルフと局員、双方が自身へと視線を投げ掛けた事を感じ取りながらも、フェイトがそちらへと振り返る事はない。
手の内にある紺青の結晶体から視線を外し、肉塊へと取り込まれつつあるR戦闘機を見据える。
R戦闘機は肉塊によってほぼ固定されてしまった為か、電磁投射砲を連射してはいるが照準調整ができないらしい。
先程の砲撃もあらぬ方向へと放たれ、壁面を破壊して施設内部へと消えていった。
掃射型波動砲の威力は脅威だが、あれでは牽制程度にしか使い様はあるまい。

219R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:05:53 ID:8/jKotFc
「ユーノ、このジュエルシードは使えるの?」

再度の問い掛け。
アルフや周囲の局員は言葉を発しない。
数秒の後、僅かに戸惑いを滲ませた声がウィンドウ越しに返される。

『反応を見る限りは、オリジナルとコピーとの間に違いはない。でも実際には汚染の可能性が・・・』
「もう1分は接触状態を保っているけど、何も異常はない」

幾度目かの壮絶な破壊音の後、足下へと転がった結晶体の欠片を更に1つ拾い上げると、フェイトは立ち上がった。
2つのジュエルシードを手に、汚染体への攻撃を続けるR戦闘機の機影を睨み据える。
バルディッシュをライオットブレードへ移行、全方位へと念話を発信。

『ハラオウン執務官より全局員へ。飛散したジュエルシードを可能な限り回収、一個所に集めて。但し肉体への接触は厳禁、魔法を使用して回収する事』
「フェイト!?」

アルフが、信じられない言葉を聞いたとばかりに叫ぶ。
しかしフェイトは、自身ですら驚く程の冷静さを保ったまま指示を出し続けた。

『持ち主が死亡したストレージデバイスと「AC-47β」も一緒に回収して。次元航行艦は順次出港を・・・』
『フェイト、馬鹿な真似は止すんだ!』

ユーノの叫びと共に、背後からフェイトの手首が掴まれる。
振り向けば手首を握ったアルフが、怯えを含んだ表情で自身の主を見つめていた。
恐らくはフェイトの意図を理解したのだろう、低い声色で問い詰めるアルフ。

「まさかそれ、使うつもりじゃないだろうね」
「他に方法は無いよ、アルフ」
「馬鹿言うんじゃないよ! それはもうアタシ達が知ってるジュエルシードじゃない、バイドそのものなんだよ!? そうやって持ってるだけでも、いつ汚染されるか分かったものじゃないんだ!」
「魔力の殆どはあの汚染体に供給されている筈。対汚染防御を施されている筈のR戦闘機を数秒で取り込んだんだから間違いない。これが機能している以上、こっちを汚染する事はできない」

言いつつ、フェイトはバルディッシュを掲げてみせる。
そのカートリッジシステムに直結した、明らかに後付けと判る歪なユニット。
「AC-47β」魔力増幅機構。
飛行資質を有さない魔導師にさえ翼を与え、バイドを含めあらゆる汚染に対する防御機能を強化する異界の技術。

「でも!」
「母さんの時に比べれば、ささやかな願い事だよ」
「そんな問題じゃ・・・!」

アルフの言葉が終るより早く、光学兵器の閃光が視界を覆う。
濃紺青の機体より放たれた無数のレーザー弾体が壁となり、巨大な肉塊を覆い尽くしたのだ。
衝撃音により聴覚が麻痺するが、その報告は念話を用いる事で問題なくフェイトの意識へと伝わった。

『ハラオウン執務官、ジュエルシードの欠片を確保した。30個はあるが、これでいいのか?』
『ストレージデバイス、14基を回収しました。全て「AC-47β」を装着しています』

周囲へと視線を走らせ、200mほど離れた地点に集積されたジュエルシードとデバイス、それらの傍らへと待機する局員達の姿を視界へと捉える。
体調にも魔力にも異常はない。
短時間の魔法行使程度ならば問題はない筈だ。

「ユーノ、クアットロ。魔力炉を暴走させられる? 数は多ければ多いほど良い」
『何を・・・』
『勿論できます。それで、何をさせるつもりなのかしら』

思わぬ言葉に問い返したのであろうユーノの言葉を遮ったクアットロが、答えを返すと同時にフェイトへと問い掛ける。
フェイトは結界の外、無数の光が瞬く隔離空間へと視線をやると、気負いもなく言い放った。

220R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:06:39 ID:8/jKotFc
「転送を。全ての次元航行艦を管理局艦隊の許へ。本局内部に存在する、汚染を逃れた全ての生存者をその艦内へ」
「無茶よ!」

叫んだのは周囲に居た局員の1人。
彼女は興奮を抑えようともせず、フェイトへと食って掛かる。

「外ではアルカンシェルが乱発されているんですよ!? これだけ空間歪曲が発生している中で転送なんか行ったらどうなるか、貴女だって良く知っているでしょうに!」
「普通ならね。でも、これがある」

そう言葉を返しつつ、フェイトは自らの手の内にあるジュエルシードへと視線を落とした。
紺青の結晶体は、ただ冷たい光を放ち続けている。

「これ1つでも次元震を誘発できる。30個もあれば空間歪曲を突破できるだけの出力は十分に確保できる筈」
『君が言っていたんだぞ、そのジュエルシードは汚染体に魔力を供給し続けていると! たとえ全てのジュエルシードを同時に使用しても、それで十分な出力が得られるとは限らない!』
「ただ使っただけなら、そうかもしれない。でも」

床を蹴り飛翔、集積されたジュエルシードの許へと飛ぶフェイト。
同じ地点へと集められたストレージデバイスの1つを手に取るや、そのコアへとジュエルシードを収納する。
そして、言い放った。

「これを暴走させれば、魔力なんて幾らでも供給できるでしょ?」

ユーノは答えない。
否、余りに予想外の言葉に、返す言葉すら思い付かないのかもしれない。
フェイトは彼の返答を待たず、別の人物へと念話を飛ばす。

『どう思います、スカリエッティ』
『悪くはない。これまでに解析されたジュエルシードの特性から見ても、理論上では問題なく機能する筈だ』

突然の問い掛けに、肯定的な意見を返すスカリエッティ。
その声には常より纏う嘲りの色など微塵もなく、只管に無感動な冷たさだけがあった。
無理もない。
つい先程、彼の娘の1人であるセッテが目前で凄惨な最期を迎え、さらにトーレの死までもが知らされたのだ。
オットーとディードの死を知った時も、彼は全ての感情を取り落としたかの様な表情を見せていた。
押し隠してはいるが、恐らく彼の内面には溢れんばかりの憤りと、地球軍とバイドに対する憎悪が渦巻いているのだろう。

『だが失敗すれば本局も、先程出港した艦艇も唯では済まない。たとえ成功したとしても、本局は跡形もなく消し飛ぶだろう』
『成功すれば皆が助かる。試す価値はあります』

更に2つのジュエルシードを、ストレージデバイスへと収納するフェイト。
彼女の視界の端に、デバイスの1つを手に取る人物の姿が映り込む。
その武装局員はフェイトに倣い、デバイスへとジュエルシードを収納すると汚染体へと向き直った。
彼に続く様に、周囲の局員が次々にデバイスへと手を伸ばし、同じくジュエルシードを収納すると自らのデバイスを構える。
無言のままにその様子を見つめるフェイトへと、直後に複数の声が掛けられた。

「貴女1人では無理ですよ、執務官」
「時間がない。一斉に掛かるぞ、ハラオウン」
「蛇野郎の方は任せて下さい。執務官、デカブツを頼みます」

遥か前方、蛇状汚染体からの攻撃を遮っていたユーノの結界が、魔導弾幕の掃射が途絶えると同時に解除される。
直後、彼等は弾かれる様に前進を開始した。
床面擦れ擦れを飛翔魔法により滑空する者もあれば、魔力供給によって強化した筋力で以って駆け抜ける者もある。
後方からは砲撃が汚染体へと撃ち込まれ、魔導弾掃射ユニットとなっている肉塊を次々に破壊し迎撃を阻止せんとする。
その様子を横目に、フェイトもまた行動を開始した。

右手はライオットブレードを逆手に構え、左手にはストレージデバイスを携える。
汚染体の一部、肉塊より突出したR戦闘機のキャノピー先端を見据え意識を集中。
そして光学兵器の掃射が止んだ一瞬の間隙を突いてソニックムーブを発動、一気にキャノピー周辺を目指す。
しかし加速直後、肉塊の一部から霧が噴き出した。

221R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:07:13 ID:8/jKotFc
「こ、のッ!」

フェイトは瞬間的に軌道を逸らし、霧の弾体を掠める様にして再度ソニックムーブを発動する。
結果として直撃は免れたものの、左の手首から先に痺れる様な痛みが奔った。
溶け落ちた訳ではないが、恐らく皮膚は跡形もないだろう。
しかし彼女は自身の負傷箇所を一顧だにせず、続けて襲い来る霧の弾体を機動力に物を言わせて回避し続ける。

『テスタロッサ、伏せろ!』

突然の警告に従い身を伏せると、巨大な炎の壁が頭上を突き抜けた。
シグナムだ。
相次いで放たれる炎は霧を掻き消し、フェイトの進路を切り開く。
次いで宙を翔けるは、魔力によって構成された猟犬の群れ。
それらは次々に汚染体へと牙を突き立て、魔力の過剰供給による爆発を起こし肉塊を抉りゆく。
すると今度は、汚染体の一部が触手の様に伸長し、数十mもの頭上まで鎌首を擡げた。

『そのまま進みな、フェイト!』

アルフからの念話。
触手は粘液と血液を周囲へと振り撒きつつ、大気を割いて垂直にフェイト目掛け振り下ろされる。
だが、彼女は進路を変えない。
振り下ろされる触手の軌道上には、僅か数瞬の間に数百本もの緑と褐色の魔力鎖が張り巡らされていた。
迫り来る巨大な触手は数十本もの魔力鎖を打ち砕き、しかし俄に動きを止める。
粉砕した数、その5倍以上もの物量の魔力鎖によって完全に拘束され、空中に静止したのだ。

『行け!』

急かされるまでもなく、フェイトは爆発的な加速を掛けていた。
張り巡らされたバインドの隙間を擦り抜け、汚染体へと肉薄する。
すると眼前の肉壁が裂け、無数の穴が穿たれた膜らしき部位が露わとなった。
酸の噴射口だ。
この至近距離では、どう足掻いても躱す事はできない。

だが、フェイトは噴射口の存在を気にも留めなかった。
緑光の魔導弾が、その中央へと突き立つ瞬間を目にした為だ。
銃弾は微かな光と共に弾け、直後に膜上の全ての穴から鮮血が噴き出す。
フェイトはその中央を蹴り、弾力を利用して上へと跳躍。
幾度目かのソニックムーブと共にブリッツアクションを発動し、右腕のみで以ってライオットブレードを肉塊へと突き立てる。
その位置は当初の狙い通り、僅かに露出するR戦闘機のキャノピー、その至近距離だった。

「バルディッシュ!」
『Riot Zamber』

フェイトの叫びと共にライオットブレードの細身の刀身が、ライオットザンバー・カラミティの巨大な刀身へと変貌する。
ほぼ全ての刀身が呑み込まれたその状態から更に捻りを加え、フェイトは汚染体の損傷個所を更に広く深く抉り始めた。
有機繊維が千切れる際の耳障りな音と感触、そして全身へと噴き付ける鮮血を無視し抉り続けること数秒。
唐突にフェイトは、有りっ丈の力でカラミティを引き抜いた。
反動でしなやかな身体が反り返り、弓の如き曲線を描く。
右手のカラミティを手放し、左手に持つストレージデバイスの柄を両手で固定。

「ッああぁぁぁぁッッ!」

そして絶叫と共に全身のばねを爆ぜさせ、垂直に構えたデバイスの矛先を振り下ろした。
カラミティによって刻まれた傷の中央へと突き立ったストレージデバイスは、肉壁を容易く割りつつ鮮血と共に内部へと呑み込まれてゆく。
程なくして1m50cm程のストレージデバイスは完全に肉塊へと呑まれ、フェイトの視界よりその全容が消えた。

222R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:08:07 ID:8/jKotFc
「やった・・・!」

デバイスが完全に肉塊内部へと沈み込んだ瞬間、フェイトは全身を返り血に染めたまま我知らず歓喜の声を漏らす。
デバイス内のジュエルシードには、既に転送プログラムへの魔力供給を実行せよとの「願い」が込められていた。
後は、バイド体との接触により「AC-47β」内部の魔力蓄積率が臨界値を突破、暴走する瞬間を待てば良い。
暴走により齎される膨大な魔力は、デバイスを通じてジュエルシードへと流れ込む。
現在のジュエルシードは汚染体への魔力供給により、こちらの「願い」を叶えるには魔力量が圧倒的に不足している為、複数の「AC-47β」を暴走させる事で不足分を補うのだ。
そしてフェイトは今、デバイスと汚染体との接触状態を生み出す事に成功した。
後は暴走の瞬間を待ち、ユーノとクアットロが本局の機能を介して転送魔法を発動させるだけだ。

『退がれ、フェイト!』

ユーノからの警告。
咄嗟に重力に身を任せ、背後より迂回する様に襲い掛かる触手を回避。
途中、肉壁に突き立っていたカラミティの柄に手を掛けると、全身を縦方向へと回転させて刀身を振り抜く。
肉塊を切り裂き、そのままカラミティを回収。
ライオットブレードへと変貌させ、アルフ達の許へと急ぐべくソニックブームを発動せんとする。
だが、フェイトの心中を占めていた作戦成功による達成感は、局員からの警告によって打ち砕かれた。

『何か射出されたぞ!』

咄嗟に背後へと振り返ったフェイトの顔へと、細かな血飛沫が降り掛かる。
何事かと頭上を見上げた彼女の視界に、奇妙な血塗れの鉄塊が映り込んだ。
円柱状、長さ2m程の鉄塊。
余程の勢いで射出されたのか、明らかに推力発生機構を有していないにも拘らず天井面にまで達し、其処に衝突して弾かれると自由落下を開始する。
その正体が何であるかは、すぐに推測が付いた。

「爆発物・・・!?」
『退避を!』

警告とほぼ同時、緑光の魔導弾が鉄塊を撃ち抜く。
瞬間、閃光と共に鉄塊が爆ぜた。
やはり爆発物だったかと納得したのも束の間の事、これまでとは全く性質の異なる衝撃がフェイトを襲う。
巨大な構造物が崩落する際にも似た、しかしそれよりも遥かに重々しく暴力的な振動。
機関銃の如く連続する細かな振動が、雪崩を打って全身を打ち据える。
そして一瞬の後、振動が一際激しくなったその時。
フェイトの身体は大きく後方へと弾き飛ばされていた。

「・・・ッ!」

フェイトは見た。
爆発物の炸裂点から扇状に拡がり迫る、閃光の瀑布を。
無数の小規模爆発が連なり、1つの巨大な奔流となって流れ落ちる様を。

「今のは・・・!」
『ナパームだ! 執務官、戻って下さい! 其処は炸裂範囲内です!』

念話が飛び交う間にも、肉塊は次々に爆発物のポッドを射出する。
R戦闘機への搭載は明らかに不可能であると分かる総数のそれらは、バイドの有する模倣能力による産物か。
立ち込めるオゾン臭からして、内部に充填されている物は可燃性物質などではあるまい。
あのナパームもまた、何かしらのエネルギー集束技術を応用した爆弾なのだ。

223R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:08:44 ID:8/jKotFc
『撃ち落とせ!』

体勢を立て直すや否や、フェイトはバインドを張り巡らせるアルフ目掛け必死に加速した。
ヴァイスを始めとする数少ない狙撃特化型の魔導師がポッドの迎撃を開始してはいるが、射出数が余りに多い為に対応し切れない。
迎撃されたポッドは緑掛かった光を放つ爆発の奔流を生み出すが、その流れは床面へと接触すると地形に沿って平行移動を開始するのだ。
即ち、炸裂点が空中ではなく床面ならば、爆発は一息に生存者達を呑み込んでしまう事となる。
これ以上の非戦闘員殺害を許す訳にもいかない為、ヴァイス等の狙撃は次元航行艦の方向へと向かうポッドに集中。
結果として蛇状汚染体への攻撃を成功させた魔導師達は、迎撃の手を擦り抜けたポッドの洗礼を受けてしまう事となった。

「逃げて!」

思わず零れた悲痛な叫びすらも、膨大なエネルギー輻射に伴う轟音によって掻き消される。
フェイトを信頼し、自らの生命の危険をも顧みずに蛇状汚染体へと挑み、見事使命を果たした勇敢なる局員達。
十数名の彼等は、仲間達の待つ安全圏まで後200mと迫り、しかし辿り着く事なく光の瀑布に呑まれた。
連続する爆発が彼等の姿を掻き消し、その存在の痕跡すらも残さず拭い去る。
周囲から幾つもの絶叫が上がる中、噛み締められたフェイトの唇からは少々とは言い難い量の血が流れていた。
そして、叫ぶ。

「ユーノ、まだなの!?」
『まだだ! もう少し、もう少しで・・・!』
『もう1機が逃げるぞ!』

背後に視線をやると、濃紺青の機体が側面を曝し逃亡する様が視界に入った。
先程の攻撃で何かしらの異常が発生したのか、常ならば瞬時に雷光の如き速度へと至る機動性を見せる事もなく、緩慢な加速で外部空間を目指す。
恐らくは「AC-47β」より発せられるバイド係数の増大を検出した為であろうが、管理局側が自滅するならば長居は不要と判断したのかもしれない。
いずれにせよ、脅威の一端が去った事に違いはなかった。

『魔力蓄積率、臨界値突破! 全てほぼ同時に暴走する!』
『全艦艇、エアロック封鎖完了しました!』
『艦外の者は5人から10人の集団を作れ! できるだけ密集しろ!』
「フェイト、こっちだ!」

無数の慌しい念話に混じり届いた、アルフの声。
彼女の許へと飛び込んだフェイトは、そのまま両の腕に強く抱き止められる。

「アルフ!」
「伏せなフェイト! 大丈夫だ、みんな此処に居る!」

アルフの言葉通り、其処にはフェイトの家族が集まっていた。
未だ意識の戻らぬリンディ、クライドのポッド。
フェイトはアルフに抱かれたままリンディの身体に腕を回し、3人でクライドのポッドに寄り添った。

『10秒前・・・』

ユーノからの通信に、フェイトを抱くアルフの腕が微かに強張る。
失敗すればどうなるか。
ユーノの腕は確かだが、ジュエルシードがこちらの意図通りに機能するとは限らない。
真空中に放り出される可能性もあれば、同じ領域に転送された次元航行艦の艦体と同化してしまう可能性もある。
最悪の場合、何処とも知れぬ空間へと転送されるか、転送自体すら起こらずに消滅してしまう事すらも考えられるのだ。
だが、今は信じるしかない。
ユーノの並外れた情報処理能力にクアットロのサポートが加われば、全ての次元航行艦と生存者の転送先座標を精確に設定できるだろう。
だが結局のところ、成否を決めるのは人間ではない。
全てはジュエルシード次第なのだ。

224R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:09:19 ID:8/jKotFc
『5秒前!』
『多過ぎる、防ぎ切れない!』

突如として響いた衝撃音に、頭上を見上げる。
視線の先では20以上ものナパーム・ポッドが天井面へと反射し、艦艇群を目掛け自由落下を開始していた。
フェイトは瞬時に、自身等には打つ手が無い事を理解する。
数が多過ぎる事もあるが、それ以上にこの距離では今から迎撃に成功したとしても、拡散する爆発が艦外の生存者達を呑み込む事は明らかだった。
彼女にできる事は目を閉じ、リンディの身体を確りと抱き締める事だけ。
そして爆発を示す眩い閃光が、閉じられた瞼を貫いて視界を埋め尽くす。

『転送!』

爆音すらも消え去った、生と死の境界に満ちる静寂の中。
ユーノの声が、脳裏へと響いた様な気がした。

*  *  *

自身の肩を揺さ振る何者かの存在により、リンディの意識は闇から浮上した。
徹夜明けの様に重々しい瞼を上げ、視界へと飛び込んだ光の刺激に耐え切れず再び目を閉じる。
そのまま暫く目を押さえていたリンディだったが、肩を叩かれた事により無理やり瞼を見開いた。
僅かながら光に慣れ始めた視界の中、浮かび上がった人影は赤銅色の髪を揺らしている。
すぐさまその正体に思い至り、その名を声にして呼ぶリンディ。
ところが、幾ら声を出しても自らの声が聴こえない。
そればかりか、何事か語り掛けるアルフの声すらも聴き取れないのだ。

混乱し掛けるリンディだが、アルフはその様子に何事か思い至ったらしい。
両手をリンディの両耳に宛がい、御世辞にも使い慣れているとは思えないたどたどしさでフィジカルヒールを発動する。
頭部を両側面から包む優しい温もりに暫し身を任せていたリンディだったが、やがて聴覚が完全に回復した事を感じ取った。

「ありがとう、アルフ」
「済まないねぇ。リンディの鼓膜も破けてるだろうって事、失念してたよ。さっきまでフェイトに付きっきりだったからさ」

フェイト。
義娘の名を聞いた瞬間、リンディは自らの内に湧き上がった衝動に身を任せアルフの肩を掴んだ。
そして驚きに目を見開く彼女に、矢継ぎ早に質問を浴びせ掛ける。

「アルフ! フェイトは、フェイトはどうなったの!? 崩落は・・・!」
「ちょっと、落ち着きなってリンディ!」

慌てるアルフに詰め寄ろうと、リンディは大きく身を乗り出した。
だが次の瞬間、彼女の身体は重心を崩し右へと倒れ込む。
右足に違和感。
何が起きたか分からずそのまま床面へと叩き付けられそうになった彼女を、咄嗟に伸ばされたアルフの腕が抱き止めた。
そしてアルフに支えられたまま自身の右足へと視線を落とした彼女は、其処にあるべきものが無いという事実に気付く。

「え・・・」
「リンディ・・・」

右脚の足首から先が無い。
その事実を理解した瞬間、僅かな時間ながらリンディの思考は停止した。
自身の肉体の一部が欠損しているのだから、無理もない事だろう。
しかし彼女は聡明であり、同時に並外れた意志の強さを併せ持っていた。
何より彼女の母親としての慈愛は、自身の負傷を気に掛ける思考を大きく上回っている。

「アルフ、フェイトは何処に? あの娘は無事なの?」

先程の取り乱し様とは打って変わり、落ち着いた口調で問い掛けるリンディ。
アルフは面食らった様な表情をしていたが、やがてゆっくりと口を開く。

225R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:10:01 ID:8/jKotFc
「フェイトは大丈夫さ。本局から脱出する時にちょっと無茶してね、今はぐっすり寝てるよ」

そう言って彼女が指差した先に、フェイトの姿があった。
床の上で毛布に包まり、何処か重圧から開放された様な安らかな表情で眠り続ける義娘。
左手に幾重にも包帯が巻かれてはいるが、それ以外に目立った負傷の痕跡は見受けられない。
その姿を確認するや否や、リンディは全身の力が抜けてゆくのを感じた。
深く、深く息を吐き、常ならぬ弱々しい声を漏らす。

「良かった・・・本当に・・・良かった・・・!」

アルフへと凭れ掛り、肩を震わせるリンディ。
優しく肩を叩くアルフから、更に言葉が掛けられる。

「勿論クライドも無事だよ、今はラボで分析を受けてる」

奇跡の様なその言葉に、リンディは小さく声を漏らしながら歓喜の涙を流した。
今度は無言のまま、アルフの手が彼女の背を撫ぜ続ける。
2分ほどそうしていただろうか。
顔を上げたリンディは漸く、周囲に存在する人影が数百人にも及ぶ事実に気付いた。
其処彼処で生存を祝う、或いは死者を悼む悲痛な声が上がっている。
場所はかなりの広さを持ったホールで、壁際には観葉植物が生い茂り、数件のカフェ・レストラン等が壁面に埋め込まれる様にして店を構えていた。
反対側には設置型空間ウィンドウの出現箇所である事を示す警告表示が、10m前後の間隔で連続して壁面へと貼り付けられている。
今はオフラインだが、本来ならば外部のパノラマ映像が映し出されるのだろう。

「此処は・・・」
「第6支局さ。脱出した艦艇とヴィクトワールからの連絡で、生存者の救助に来たんだ」
「救助に?」
「正確には汚染とR戦闘機を警戒して接近しあぐねていた所に、アタシ達が転移してきたんだけどね」

思わぬ言葉に、リンディはアルフの顔を覗き込んだ。
アルフは無理もないと云わんばかりに肩を竦め、リンディの背後を指す。

「その2人のおかげだよ」

振り返ると其処には、車椅子に座する人物とそれを押す人影があった。
右腕以外の四肢が無い金髪の男性と、亜麻色の長髪を揺らす女性。
ユーノ、そしてクアットロだ。

「ユーノ君・・・」
「リンディさん、御無事で何よりです」

ユーノはリンディの傍らへ車椅子を停めさせると、何処か疲れた様に息を吐いた。
そして手にしていたファイルをリンディへと差し出し、幾分事務的な声で報告を始める。

「ジュエルシード・コピー計31個、及び「AC-47β」14基の同時暴走を利用した強制転送により約46000名が脱出に成功。当該宙域には現在、膨大な魔力とバイド係数として検出される未知のエネルギーによる巨大な力場が形成されています」
「46000・・・あの状況を考えれば奇跡かしらね」
「上層部の被害も深刻と言わざるを得ません。キール元帥は中央区での戦闘指揮中に地球軍が使用した化学兵器により死亡。フィルス相談役はAブロックで民間人の避難誘導に当たっておられましたが、例の可変機による襲撃を受けAブロックの総員もろとも消息不明。
クローベル議長は転送による脱出に成功しましたが、既に胸部と腹部に背面まで貫通する致命傷を負っておられました。転移直前に汚染スフィア群からの砲撃を浴びたとの目撃情報あり。その後、手術室への搬送の途中で・・・」
「亡くなられたのね・・・」
「ええ」

場に沈黙が満ちる。
周囲では相変わらず喧騒が渦巻いているが、リンディ達4名は奇妙な静寂の中にあった。
それを破ったのは、新たに姿を現した2名の声。

226R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:10:40 ID:8/jKotFc
「御三方とも、最後まで局員としての責務を果たしての殉職です。悔いは無かったと信じましょう」
「生存者の殆どは、武装局員による抵抗が時間稼ぎとなって避難に成功した者です。彼等の死は決して無駄ではありません」

ゆっくりと歩み寄る桃色の髪の女性と、その肩に乗った人形の様な小さな人影。
手を引かれ杖を突きつつ歩く、両目を包帯に覆われた緑髪の男性。
シグナムとアギト、そしてヴェロッサだ。

「お久し振りです、ハラオウン統括官」
「シグナム・・・ええ、本当に久し振りね。意識のある貴女と会うのは」
「お恥ずかしい限りです。私もアギトも、敵の脅威の程を見誤っていた。あの時に撃ち果たしていれば、この様な事態には・・・」

俯き、震える程に拳を握り締めるシグナム。
アギトも同様に、ロードの肩の上で黙り込んだまま俯いている。
彼女等にしてみれば、自らが撃ち漏らした敵によって本局内の人間が殺戮されてゆく様は、憤怒と屈辱と悔恨とに塗れた光景以外の何物でもなかったに違いない。
実際のところ、彼女達があのR戦闘機の撃墜に成功していたからといって本局が惨劇を回避できたとは思えないが、リンディは後悔に打ち震える彼女達へと掛ける言葉を見付ける事ができなかった。
その言葉を齎したのは彼女ではなく、これまで一言も発する事なく佇んでいた人物。

「思い上がりも甚だしい。たった1機墜としたところで、地球軍が襲撃を諦めるとでも? 逆に投入される機体が3機から6機に増えただけでしょうねぇ」
「・・・テメェ」

クアットロだ。
その挑発的な物言いに、アギトが気色ばむ。

「アギト、止せ」
「だってよ・・・!」
「そうなればバイドを含めた三つ巴という状況を考慮しても、こんな風にそれなりの長時間に亘って本局が持ち堪えられたか怪しいものだわ。状況がより悪化する事はあっても、その逆は決して起こらなかったと思いますけど」
「お前ぇ!」

見下す様な言葉に、遂にアギトが激昂した。
その小さな両手に炎を宿し、そちらを見ようともしないクアットロの横顔へと突き付ける様に腕を突き出す。
だが、シグナムの手が彼女の正面へと翳され、射出直前の火球の射線を遮った。

「其処までだ、アギト」
「何でだよ! コイツが・・・」
「要するに気にするなって言ってるのさ、クアットロは。随分と回りくどい言い方だけれどね」

そのユーノの言葉に、アギトの抗議の言葉が止む。
彼女は奇妙な物を見る様な目でクアットロを見やるが、当の人物はもはや興味がないとばかりに全く別の方向を見ていた。
だがリンディからは、ユーノの言葉と同時に色付いた耳が丸見えである。
恐らく内心では余計なフォローをしたユーノに、有りっ丈の罵詈雑言を浴びせ掛けている事だろう。
思わぬ人物の思わぬ一面を垣間見た事で、リンディの顔に微かな笑みが浮かぶ。
陰鬱な空気が和らぎ周囲の喧噪も徐々に落ち着き始めた頃、壁面全体に外部空間の映像が表示された。

「おい、見ろ!」

その声にリンディは、反射的に映像のほぼ中央を見やる。
巨大な空間ウィンドウには、隔離空間内部の映像が鮮明に映し出されていた。
無数の世界が隣り合う様にして密集する異様な光景の中、戦闘による無数の閃光が其処彼処で瞬いている。
その中でも、一際強力な閃光を放つ箇所があった。
惑星群とは反対の方向を映し出した映像、遥か彼方に光る恒星を背に浮かぶ人工天体。
更にその手前に映り込んだ巨大な光球、不気味な闇色の波動を放ち鼓動する異形の臓腑。

「あれが、本局です」
「え・・・」
「あの光球の中心が、本局艦艇の最終位置です」

227R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:11:46 ID:8/jKotFc
ユーノの説明に誰もが言葉を失い、沈黙のままに光球を見つめる。
映像の手前、即ち周囲には無数の管理局艦艇が漂い、光球から遠ざかる為に移動を続けている様だ。
恐らくは本局の直衛に就いていた管理局艦隊だろう。
良く見ればこの第6支局以外にも複数、支局艦艇の艦影が空間内に浮かび上がっている。

「・・・あの力場は、何時まで持続するのかしら」
「不明です。魔力のみでの計算ならば、消滅まで80時間といった処です。しかし極めて高いバイド係数が検出されている事もあり・・・」

リンディの疑問にユーノが答え始めた、その数秒後。
映像の其処彼処に映るXV級の内1隻が、唐突に爆発した。
喧騒が一瞬の内に静まり返り、赤い光がウィンドウの一端を照らし出す。

「何が・・・」

直後、空間に1条の赤い線が刻まれた。
その線は周囲に無数の光弾を纏い、一瞬にして2隻のXV級を頭上より薙ぎ払う。
数瞬の間を置き、2隻のブリッジ近辺が閃光と共に弾け飛んだ。
その光景にリンディは、何が起きているのかを理解する。

「追撃・・・!」
「あの機体だ! あの青い奴が追ってきた!」

誰かが叫んだその言葉とほぼ同時、更に1隻のXV級と2隻の小型艦艇が無数のレーザー弾体によって撃ち抜かれていた。
艦首から艦尾まで徹底的にレーザーを撃ち込まれた3隻は艦全体から火を噴き、XV級は半ばより折れる様にして爆発、小型艦は小爆発を繰り返しながら崩壊してゆく。
既に空間は無数の魔導弾によって埋め尽くされているが、それらが敵機を捉える様子はまるで無い。

此処にきて漸く状況を理解したのか、生存者の一部から悲鳴が上がり始めた。
しかし大多数はもはや逃げ場がない事を理解しているのか、騒ぎもせずに呆然と映像を眺めている。
リンディもまた静謐を保っていたが、それは諦観によるものではない。
彼女は嘗て提督として培った経験を基に、冷静に戦況を評価しようと試みていた。
そして、気付く。

「・・・浅異層次元潜航?」
「恐らくは。攻撃時に潜航状態を解除し、目標を撃沈後に再度潜航しているみたいですね」

いずれの管理局艦艇も、まるで狙いが定まらぬ様に魔導弾を乱射していた。
それこそ誤射の危険性すら無視し、只管に弾幕を張り続ける。
それは即ち、敵機を捕捉できていないという事実に他ならない。
其処から導かれる、考え得る中で最も可能性が高く、且つ最悪の予想。
浅異層次元潜航機能を使用しての一撃離脱。

「不味いですね。異層次元に潜られると、こちらは全く手出しができない」
「出現する瞬間を狙えば・・・」
「不可能よ。あれだけ小型で常識外れの機動性を持つ移動体を狙い打つ機能なんて、管理局の艦艇には備わっていない」

言葉を交わす間にも、2つの光球が光の尾を引きつつXV級へと襲い掛かった。
その艦は必死に弾幕を張るが、光球は被弾を意に介さぬ様に艦体を蹂躙してゆく。
外殻を裂いた光球が、内部へと侵入を果たした数瞬後。
ブリッジと推進部を内部より引き裂き、光球は外部へと帰還を果たした。
崩壊する艦体を掠める様に飛来する影と合流した光球は、空間へと溶け込む様に姿を消す。

「・・・やはりね」

間違いない。
敵機は浅異層次元潜航を使用している。
こうなれば、管理局側に打つ手はない。
数隻ずつ徐々に撃沈されるか、或いはこちらへと向かっているであろう地球軍の増援に纏めて消し飛ばされるか。

228R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:12:19 ID:8/jKotFc
「ついてないなぁ」

溜息と共に零されたユーノの言葉こそが、リンディの内心を代弁していた。
本当に、ついてない。
詳細までは知らないにせよ、フェイトが命を掛けユーノが持てる能力を振り絞った結果、多くの生存者が脱出に成功したのだという事は分かる。
しかし脱出に成功しても、直後に抵抗すら儘ならぬ脅威に直面するとは何たる不運。
否、不運ですらないのだろう。
局員の脱出を許した時点で、その収容先ごと抹消する心積もりであった事は間違いない。
敵機がこの場へと現れた事は、不運などではなく必然なのだ。

「・・・義母さん?」
「フェイト・・・」

背後より掛けられた義娘の声に、リンディは振り返る。
其処には毛布を羽織り、心細げな表情を浮かべたフェイトが佇んでいた。
リンディは義娘を近くへと寄らせ、その身体を優しく抱き締める。
フェイトは暫くされるが儘にしていたが、やがて自らも腕を伸べると義母の手に自身のそれを重ねた。
ウィンドウ上では更に4隻が火を噴き、閃光と共に爆散するか緩やかに崩壊を始めている。
周囲は再び静まり返り、リンディは静寂の中で唇を噛み締めた。

自身ができる事は何もない。
義娘やその友人は自身を救ってくれたというのに、今この状況に於いて自身が彼女達を救えないという事実は、リンディの心を容赦なく責め立てた。
迫る最悪の終焉を前に、偽りの安心を娘に与える事しかできない。

「ごめんね、フェイト」
「・・・何か言った? 義母さん」

既に疲労が限界に達しているのか、フェイトは意識を保つ事も辛いらしい。
少しでも安心させようと、リンディは彼女の髪を撫ぜる。
返り血だろうか、不自然に指へと絡み付く髪を解しながら、閉じられてゆくフェイトの瞳を見つめていたリンディ。
しかし彼女は、ふと顔を上げて本局の存在していた宙域、禍々しい光を放つ光球を見やる。
それは長い時を過ごした場所が有する、掛け替えのない記憶を脳裏へと刻み付けようとの、無意識下の行動だったのかもしれない。
だが、その視界へと映り込んだ光景は決して感傷を齎すものではなく、それどころか現実としての脅威と驚愕を叩き付けるものだった。

「・・・え?」

本局を呑み込んだ光球。
それが、消えていた。
あれだけ眩い光を放っていた魔力と未知のエネルギーによる球体が、跡形もなく霧散していたのだ。
代わりにその宙域へと現れていたのは、本局のそれに酷似した巨大な影。

「嘘・・・」
「おい、残ってる・・・本局が残ってるぞ!」

誰もが食い入る様に映像へと見入る中、影は周囲に纏う闇色の光を徐々にではあるが振り払い始めていた。
角度の問題か、巨大な十字架の様にも見えるその影は、恐らくは破損した対宙迎撃用魔導砲身展開機構の残骸であろう、環状構造物の残骸を纏っているらしい。
中心部からは無数の針状構造物が伸び、その先端付近には円を描く様に幾つかの残骸が付着している。
奇跡的に残った、本局艦艇の残骸。
未だ残る力場の影響か鮮明な映像を捉える事はできないが、少なくともリンディはそう判断した。
その考えが間違っている可能性になど思い至りもしなかったし、もし至ったとしてもすぐさま否定しただろう。

「見ろよ! あの暴走にも持ち堪えて・・・」
「待って、何か変よ・・・」

本局以外には有り得ない。
あれだけの巨大建造物、見紛う事なき形状。
あれが本局でなければ何だというのか。

229R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:12:56 ID:8/jKotFc
「リンディ・・・あの棘、動いてないかい?」
「・・・いえ、私には」
「待って・・・動いてる、動いてるわ」

アルフの疑問に、クアットロが答えた。
常人より遥かに優れた彼女の眼は、その異常を鮮明に捉えたのだろう。
彼女は徐に影を指し、微かに震える声で一言。

「あれ・・・鼓動して・・・!」

まやかしが、拭い去られた。
力場の残滓が完全に消失し、揺らぎの下に隠れていた影の全貌が露わとなる。
偏光の殻が取り払われた後には、異形としか言い様のない存在が出現していた。

死骸にして生命。
無機物にして有機的。
それは最早、リンディ達の知る本局という巨大構造物でも、その残骸でもなかった。
周囲の環状構造物は跡形もなく、中心から全方位へと棘皮動物にも似た鋭い棘状構造物が無数に延びており、それら全てが生命体の如く不気味に揺らめいている。
同じく中心部から前後4対、計8基のバーニアらしき長大なユニットが延び、その先端には複数の歪なノズルが備えられていた。
嘗ては其々の方向へと延びていた巨大な6つのブロックは内2つが消失し、その抉れた箇所からは巨大な青いレンズ状の結晶体が覗いている。

「嘘だろ・・・」
「アルフ?」
「嘘だよ・・・あれ、あれは・・・」

何事かに狼狽するアルフ。
見れば彼女だけでなく、ユーノまでもが凍り付いた様に異形を見つめていた。
アルフが、叫ぶ。



「あれ、全部・・・ジュエルシードじゃないか!」



瞬間、異形が弾けた。
少なくともリンディには、そうとしか認識できなかった。
一瞬、全ての棘状構造物が振動したかの様に見受けられた直後、何らかのエネルギーの壁が異形を中心として爆発したのだ。

可視化する程の高密度エネルギーは、瞬時にリンディ達が搭乗する第6支局にも到達。
轟音と共に襲い掛かった凄まじい衝撃に、リンディの身体は腕の中のフェイトごと1m近くも跳ね上げられた。
無数の悲鳴。
そして彼女は背中から床面へと打ち付けられ、鈍い音と共にその口からは呻きが漏れる。
咳き込むリンディの腕の中、完全に意識が覚醒したらしきフェイトは、明らかに動揺した面持ちで周囲を見回していた。

警報。
警告灯が点滅し、周囲からは呻きと助けを求める声、鋭く指示を飛ばす声が入り乱れて響く。
リンディもどうにか身を起こし、直前の現象についての疑問を口にした。

「今のは・・・?」
「あの本局だったものが使用した、極広域戦略兵器でしょう・・・ごめん、手を貸して・・・撃沈というよりは艦艇内部の人間を狙った、間接的な攻撃手段かも」

クアットロに助け起こされながらも、淀みなく答えるユーノ。
彼の言う通り、警報こそ鳴り響いているものの艦体に重大な損傷は皆無の様だ。
しかしクルーを狙ったにしても、この程度の衝撃で死に至る者は多くはあるまい。

230R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:13:31 ID:8/jKotFc
「見ろ、見ろ!」

突如、生存者の1人が叫び、ウィンドウを指した。
周囲の人間、リンディまでもその叫びにつられて映像を見る。
そして、絶句した。

「な・・・」

漂う残骸と拡がりゆく炎の波。
ウィンドウ上へと大写しになっていたのは、完全に破壊された濃紺青の機体。
十数秒前まで艦隊を執拗に攻撃していた、あのR戦闘機だった。

「あっちにも・・・!」

それだけではない。
良く見ればその機体以外にも、更に2機の機体が破壊され空間を漂っている。
いずれも巨大な力によって粉砕されたかの様な惨状だが、特徴的な形状のキャノピーとノズルの残骸から辛うじてR戦闘機であると判断できた。
恐らくは増援として艦隊への攻撃に加わろうとした、その矢先に撃墜されたのだろう。
だが、現れた残骸はR戦闘機のものだけに留まらなかった。

「嘘・・・」
「あれは・・・地球軍の艦だ!」

その残骸は、嘗て第97管理外世界へと赴いた3隻のXV級を攻撃した、恐らくは駆逐艦か巡航艦クラスの艦艇のもの。
やはり浅異層次元潜航により姿を隠していたらしいが、何らかの要因により破壊されたのだろう。
艦体は見るも無残に中央から割れ、更に弾薬が暴発したのか、凄まじい光を発して破片すら残さずに消滅する。

「浅異層次元潜航・・・」

その呟きを、リンディは聞き逃さなかった。
声が発せられた方向を見れば、傍らへとウィンドウを展開したユーノが何らかの操作を行っている。
すると大型ウィンドウ上に映し出される映像が、目まぐるしく変わり始めた。
次から次へと移り変わる映像上へと浮かび上がるのは、いずれも破壊されたR戦闘機と地球軍艦艇ばかり。
画面右下には対象との距離が表示されているが、その桁も数千から数百万と様々だ。
此処に来てリンディは、到る所で地球軍戦力が撃破されている事実を理解する。
しかし同時に、損傷を受けた様子など全くないR戦闘機と地球軍艦艇の数も多い。
そして、ユーノが発した言葉の意味に気付く。

「潜航中の地球軍に対する攻撃・・・?」

その思考へと至った瞬間、全ての疑問が解決した。
何故、複数の地球軍戦力が撃破されているのか。
何故、バイドは本局を襲ったのか。
何故、ジュエルシードを核として本局を変貌させたのか。

「まさか・・・!」

浅異層次元潜航を封じる為の存在を生み出す、その媒体として本局を選び。
極広域空間干渉を実行する為のエネルギー源、その供給源としてジュエルシードを複製し。
短時間での侵食拡大の為に必要な膨大なエネルギーの解放、その引き金として局員によるジュエルシードの暴走を誘導する。
フェイト達が人工天体脱出に際して使用する次元航行艦を発見した、その瞬間からバイドの計画は実行段階に移行していた。
管理局の必死の抵抗も、そして地球軍による本局での無法さえも。
多くの血を流し汚染体の排除と脱出に成功した事実にも拘らず、バイドによる計画の域を脱する事はできなかったのだ。

考え過ぎだろうか。
果たしてバイドに、これ程までに高度な人間集団の行動予測、そしてそれを利用した戦略の立案ができるものだろうか。
否、こうして悩む事、それ自体が間違っている。
既にバイドはそれを成し遂げ、最大の成果を上げているのだから。

231R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:14:24 ID:8/jKotFc
恐らく浅異層次元潜航中の地球軍戦力は残らず撃破され、彼等は切り札の1つを失った。
常軌を逸した打撃力と神出鬼没の機動力・隠密性を併せ持つ事こそが、地球軍が最大の脅威たる理由である。
しかし今、彼等は浅異層次元潜航という隠密の盾を奪われ、絶対的少数にも拘らず地球軍が最大勢力として戦場に君臨している要因、その一端を切り崩された事となる。
この事態から予測できる変化、それは。

「均衡が・・・崩れる・・・!」

嘗ては本局であった異形、その周囲に無数の影が現れる。
それらは初め、小さな点に過ぎなかった。
しかし数秒後、それらの点は爆発的に膨れ上がり、無数の巨大な肉塊へと成長する。
赤黒い醜悪な肉塊は異形をほぼ完全に覆い尽くし、その僅かな隙間からはジュエルシードによって形成されたコアが放つ青い光が覗いていた。

肉塊に覆われた異形の周囲に、可視化した無数の揺らぎが発生する。
揺らぎは異形を中心として拡散を続け、ウィンドウに映る範囲全体へと拡大した。
画面に映る殆どが揺らぎ始め、全く遠近感が掴めない状態となる。

そしてある瞬間、揺らぎの中に影が浮かび上がった。
無数に発生した揺らぎの中、影は次々に浮かび上がりその数を増してゆく。
揺らぎが影によって掻き消えた後、其処にあったのは空間を埋め尽くす程の艦艇の影。
管理世界、バイド、地球軍。
所属を問わず密集した、無数の艦艇。
先程までとは比較にならない、それこそ映像上の全てを埋め尽くす数の汚染艦隊の全貌だった。

「まさか・・・この為に本局を?」
「正面から押し潰す気なんだ。浅異層次元潜航が使用できない以上、地球軍は圧倒的不利に・・・」
「ねえ、あれ!」

ウィンドウを埋め尽くす艦艇群の中、周囲の艦艇とは明らかに異なる巨大構造物の姿があった。
リンディの目は、自然とその構造物へと引き寄せられる。
巨大な2つの環状構造物を繋げた形のそれは、出現直後から微かに光を放ち始めたのだ。
ユーノがウィンドウを操作し、その構造物を拡大表示する。

「スペースコロニー?」
「いえ・・・これは・・・」

拡大表示されたそれは、見るからに奇妙な構造物だった。
直径は約8km、全長はその倍以上はあるだろう。
どうやら環状であるのは前部構造物のみであり、後部構造物には底部が存在するらしい。
周囲には円柱型のユニットが2つ付随し、前部と後部の構造物間にはそれなりの距離が開いている。
少し離れた地点に配置されている十数基のユニットはソーラーパネルだろうか。
前部と後部は其々が逆方向へと回転しており、光は後部構造物の底部中央へと集束している様だ。
その光が何を意味するのか、思い至るものは1つしかなかった。

232R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:14:57 ID:8/jKotFc
「砲撃だ!」

光が炸裂し、衝撃が意識を掻き消す。
吹き飛ばされたのか、叩き付けられたのか、引き裂かれたのか。
意識が回復するまでの数秒の間、リンディは我が身に何が起こったのかまるで理解できなかった。
ただ朦朧とする意識の中、避難を呼び掛けるアナウンスに紛れる様にして、複数の聞き逃せない言葉が響いた事だけは覚えている。
決して忘れ得ぬ、無限の狂気による蹂躙の始まりを告げた言葉だけは。



『第61管理世界、崩壊! 敵砲撃、射線上の惑星を複数貫通! 第52観測指定世界、第12管理世界、第38管理世界、いずれも崩壊が進行中!』
『汚染艦隊、進攻開始! 陽電子砲の充填開始を確認!』
『地球軍、第97管理外世界周辺宙域へ向け撤退を開始・・・』



戦況が、傾く。

*  *  *

白い清潔な天井、窓とシェードの間から差し込む麗らかな陽光。
意識を取り戻したギンガが最初に目にしたものは、自身の置かれた状況を暫し忘れさせるものだった。
数秒ほど呆けた様に天井を眺め、次いで跳ねる様に上半身を起こす。
自らの半身を覆う清潔なシーツに程良い硬さのベッド、纏っているのは医療機関の患者服。

額へと生じた違和感に手をやると、指先が張り付けられたシールタイプのものに触れた。
ストラーダによって切り裂かれた傷を、何者かが手当てしたというのか。
他にも擦り剥いたらしき身体の各所に、適切な医療措置が施されている。
室内を見渡すが、どうやら此処は個室らしい。
閉じられたドアの向こうからは、微かな喧騒が聴こえてくる。
ベッドから身を乗り出し窓のシェードを上げると、白い雲が浮かぶ青空と眼下の緑が視界へと飛び込んできた。
自然に零れる、現状への疑問。

「此処は・・・?」

ドアの開く音。
咄嗟に振り返り拳を構えるも、その左腕にリボルバーナックルは無かった。
しかし、扉を潜り入室してきた人物の姿を捉えるや否や、ギンガの意識は完全にその人物へと釘付けになる。
その人物、彼女は記憶の中のそれよりも随分と伸びた桃色の髪を揺らし、柔らかく微笑んだ。

「良かった、意識が戻ったんですね」

思考を支配した驚きに、言葉を紡ぐ事もできないギンガ。
その目前で、彼女は手にしていた薬品の箱を近くの台上へと置くと耳元へと手をやり、既に装着していたインカムを通じて何処かへと報告を行う。
随分と慣れた動作だった。

「614、患者が覚醒しました。危険はありません」

その光景を呆然と見つめるギンガの目前で、彼女は耳元から手を離すと改めてギンガへと向き直った。
そして、再会の言葉を紡ぐ。



「お久し振りです、ギンガさん」



時空管理局辺境自然保護隊、第61管理世界スプールス駐在班所属。
キャロ・ル・ルシエ二等陸士の姿が、其処にあった。

233R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 20:17:19 ID:8/jKotFc
以上で投下終了です
代理投下して下さった方、有難う御座いました

前回の投下より時間が空いてしまい申し訳ありません
ぶっちゃけた話、実生活に追われていたという以外にも、ょぅι゛ょと戯れるのに忙しかったという事もあります(海底都市的&核爆発後の廃墟的な意味で)
現在は作中の地球軍のモデルにさせて戴いた、ゴーグルとガスマスクがステキなガチムチどもの惑星に降下中
フェイトそん涙目な機動性の無人兵器とか、凡人とわんこを足して質量兵器持たせた戦闘スタイルの大佐殿と死闘を繰り広げております・・・ラデックカッコ良いよラデック

今回で本局脱出戦は終結です
脱出成功、そして浅異層次元潜航封じで地球軍涙目というお話
次回からは人工天体内部でのギンガと旧ライトニング達、そして民営武装警察と+αを中心とする話になります

「R-9DV2 NORTHERN LIGHTS」
光子バルカン強化型、相変わらず群体より単体に強いという謎仕様

「R-9Leo2」
チート機体、レーザー&サイ・ビット無双
波動砲が弱い?
あんなの飾りです、偉い人にはそれがわからんのですよ
難易度BYDOでもなきゃ、青か黄色レーザー撃ってるだけでおkという鬼畜機体
後述のゴマちゃん内部で青レーザーを乱射すれば気分は正しく以下略

「GOMANDER」&「IN THROUGH」
「Ⅰ」ステージ2のBOSS、R-21に相当
諸兄が思わず前屈みになること請け合いな♀の一部が寄り集まってできており、其処から奥様ウットリなブツ(IN THROUGH)がゆっくり出入りするといふ、健全にして純情なプレイヤーを
相次いでトイレに走らせた恐るべき魔性の♀バイド(因みに♂のBOSSは「Ⅱ」で、バカップルは「Δ」で登場)
その長年のキャリアにより一部R-TYPERからは所謂主人公の幼馴染キャラ(♀)に位置するとも言われているが、実際にはR戦闘機よりIN THROUGHの方が幼馴染(♂)ポジションに近い
何もしなくてもエネルギーを得て際限なく肥大化する為、逆に体内に同棲(寄生)している幼馴染(♂)のブツを出し入れしてエネルギーを放出してもらわないと死んでしまうという、いろんな意味で絞め殺したくなる様な生態を持つ
「FINAL」では激しい幼馴染(♂)のブツの出し入れを繰り返し抵抗したものの、あろう事か幼馴染(♂)のブツを出し入れする穴から強引に内部へと侵入した鬼畜外道(R戦闘機)によって
幼馴染(♂)の目の前で屈辱の胎内公開凌辱をされてしまった悲劇のヒロイン
しかも内部では、大人の性教育ビデオなどで繰り返し攻撃される敏感なトコロに潜り込むのが安全地帯という、4月1日ネタが罷り間違って通ってしまったのではないかという卑猥仕様なのでこれはもうだめかもわからんね

「BELMATE」
「Ⅰ」ステージ5のBOSS「浅異層次元潜航なぞ使ってんじゃねぇ(CV:若本)!!」
ゴマちゃんと違い至って健全な外見(要するにウニ)ながら、取り巻きのミートボールのみを突撃させて自分はフワフワしているという亭主関白さが仇となり
「TACTICS」で長年の強制コンビを解消されてしまった腐食金属集合生命体
しかし亜空間バスターを獲得し、更に攻撃にも迎撃にも使える優秀な中距離兵器と搭載数5をも併せ持つ母艦というとっても使える子として、バイド軍の陰の立役者に返り咲いた
作中では馬鹿デカい本局を媒体に、更にジュエルシードを核として形成されている為、戦場となっている空間全域での浅異層次元潜航を封じるに至っています
因みに「TACTICS」に於いて、ミートボールはミートボールで個別ユニットとして存在しますが、軟い、遅い、地味と三重苦の産廃ユニットなので残念
更に蛇足で、地球軍のバスター搭載艦はとても残念な使えない子、今回の文中でこっそりバスター喰らって沈んでます

「UTGARD-LOKI」
「TACTICS」にて登場、地球軍の誇る太陽系防衛用の巨大光学兵器施設、別名コロニーレーザー
射程距離は1天文単位(194,598,000km)という化け物、しかし実はニヴルヘイム級の艦首砲に威力で負ける
どうでも良い事ですが、敵デコイ1基に対して味方8部隊巻き込んで撃つのはどーよ、地球軍

では、また次回



以上です
代理投下をお願い致します

234魔法少女リリカル名無し:2009/05/30(土) 21:32:31 ID:ss2CCqQQ
行ってみる。

235魔法少女リリカル名無し:2009/05/30(土) 21:47:03 ID:ss2CCqQQ
さるさんくらったので誰か頼みます。

236魔法少女リリカル名無し:2009/05/30(土) 22:22:45 ID:klq83nAA
続き、終わりました。

237魔法少女リリカル名無し:2009/05/30(土) 22:24:22 ID:ss2CCqQQ
>>236
GJ!

238R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/05/30(土) 22:30:22 ID:8/jKotFc
ウロスでも書きましたが、改めてお礼を
ss2CCqQQ様、klq83nAA様
代理投下、有難う御座いました

239高天 ◆7wkkytADNk:2009/05/30(土) 23:33:23 ID:ugs/c37.
それでは、失礼いたします。

魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者

        第21話


「・・・・・ん・・・・・ここ・・・は・・・」
小さい唸り声を上げながら、ナイトガンダムはゆっくりと目を開ける。
最初に目に入ったのは真っ白な天井ではなく、天上一面を覆う照明の光り。
それだけで、此処が何処なのか直ぐに理解できた。
「・・・・・アースラの・・・・医務室か?・・・・」
このような体験をするのはこれで二度目、一度目は無人世界でのシグナムとの戦闘の後、そして二度目になる今回は・・・・・
うっすらとあの時の事を思い出す。意識が徐々に無くなっていく感覚、海面目掛けて真っ逆さまに落下する自分、
自分の名を呼ぶ周囲の声、そして落下する自分を抱き止め、必至な表情で自分の名を呼ぶシグナム。
その直後、ヴィータがはやての名前を叫んでいたような気がするが・・・・思い出せない。
「三種の神器の負荷に、耐えられなかったのか」
三種の神器装着による負担は直ぐに、それこそ装備した瞬間から自分の身に起きていた。
以前よりも負担の効果がいち早く現われたのは、間違いなく装着前のダメージと披露が原因、
あの時シャマルが回復魔法を施してくれなかったら、もっと早く気を失っていただろう。
それでも苦痛は体から抜けることは無かったが耐える事が出来るレベルだった。
今回の失態は勝利に浮かれ、気を抜いてしまった自分が原因・・・・言い訳の仕様が無い。
「・・・情け無い・・・・これではサタンガンダムの時と同じだ・・・・」
自分自身を反省するかの様に、深々と溜息をつく。
その行為が落ち着きを取り戻させたのか、自然と辺りを見回し現状を確認する。
場所は間違いなくアースラの病室だろう、気を失った自分が運ばれる所としては当然の場所だ。
直ぐ隣には鎧と武器が置かれている、電子スピアが見当たらないが、あの戦いで砕け散ったのを思いだした。
そして嵌め殺しの窓から見える景色は漆黒の景色と、その中で輝く幾つもの光
「宇宙空間・・・そうするとまだ、地球の衛星軌道上にいるのか・・・・・」
場所の把握が終った所で、次に気になったのは、自分が気を失った後の事だが、それ以前に自分はどの位眠っていたのかもわからない。
あいにくこの病室には時計はあるものの、日付を確認できるカレンダーの様なものは無い。
先ほどまで頭を預けていた枕の隣には、連絡用の端末が置かれていたが、特に動けないわけではないので、誰かを呼びつけるという行為はしたくは無かった。
一度体を伸ばした後、後ろ髪惹かれる思いでベッドから抜け出し、ゆっくりと入り口へと向かう。
そして、ドアのセンサーがナイトガンダムを感知し、音を立てて開く。すると其処には
「ナイトガンダム!!よかった!気が付いたのか!!」
正に今から部屋に入ろうとしていたクロノが立っており、普段は見せない歳相応の笑みでナイトガンダムを迎えた。
「クロノ、丁度良かった。今から君達の所に行こうと思って」
「わかってる、君が倒れた後のことだろ?でもいいのかい、もう起きて?」
クロノの表情から、自分がどれほど心配されているのかが痛いほど分かる。
自然と頭を下げ謝ろうとするがその行動をクロノが制した。
「謝る必要は無いよ・・・・でも、その様子だと大丈夫みたいだね。此処じゃなんだから食堂へ行こう」

「そうですか・・・・決着は無事についたのですね」
「ああ・・・・あの後、奴は完全に消滅した。同時に町での異常も収まった・・・・怪我を負った者はいるけど死傷者0、正に一件落着だよ。はい、紅茶でいいかな?」
クロノが差し出した紅茶をお礼を言った後受取り、早速一口飲む。おそらく疲れているであろう自分の為に砂糖を多めに入れてくれたのだろう。
程よい暖かさと甘さが体に染み渡るのを感じる。
その満足気な表情に満足したクロノは、自分が飲むために持って来たコーヒーを一口啜った後、ナイトガンダムと向き合うように、椅子へと座った。

240高天 ◆7wkkytADNk:2009/05/30(土) 23:34:10 ID:ugs/c37.
「彼女達・・・アリサ・バニングスと月村すずかは自宅へ帰ったよ。本当は数分前まで君の所にいたんだけどね、彼女たちも疲れているから
家に帰らせた。さすがに釈然とし無い表情だけど、なのは達の説得と後で事情を話すという条件付でね・・・・・・それと」
不意にクロノは席を立ちガンダムを真っ直ぐ見据える、そして、静かに手にしていたコップを置いた後、深々と頭を下げた。
「本当にありがとう。この事件、君のおかげで解決できた・・・・・・本当に感謝しきれないよ・・・・・」
クロノは本心からそう思っていた。
自分達がただ見ているだけでしかなかった闇の書の闇との戦闘、彼は犯されそうになったフェイトを助けてくれた。
そして根源である敵に致命傷を与え、仲間割れ寸前の皆をまとめてくれた。そして諦めかけた自分に戦う力を与えてくれた。
戦力としても、精神的な支えとしても、ナイトガンダムは皆を助けてくれた。
この勝利は間違いなく彼がいてこそ・・・・・・クロノはそう信じて疑わなかったが、当のナイトガンダムはその様な事を全く思ってはいなかった。
「いや、今回の勝利は、皆が力を合わせたから得られたものだよ・・・・・・この事件に関係した人達・・・・・・誰一人が欠けても
解決など出来なかった。だから私だけではない、なのは達やヴォルケンリッターの皆、そしてアースラのクルーやクイント殿達、
そしてクロノ、この勝利は君や皆のおかげだ、それを忘れないで欲しい」
一瞬クロノはポカンとしてしまうが、直ぐに彼の言葉の意味を理解し、はすかじい気持ちになる。
確かに彼の言う通りだ・・・・・・自分は何処かで彼を、ナイトガンダムを完全無欠のヒーローだと思っていた。
自分を含め、彼をヒーローと称えるものは多くいる、決して過小評価ではないと自信を持っていえる。
だが、現実はナイトガンダムの言った通りだ、この事件、関わった皆がいてこそ解決できた。誰が欠けても最悪な結果を招いて板に違いない。
結局自分たちはナイトガンダムをただヒーローとして持ち上げたかっただけだ・・・・・・・皆の健闘を無視して
「(まったく・・・僕もまだまだ子供だな・・・・)その通りだ、まったく君には叶わないな」
自身の恥を誤魔化すかの要にクロノはコーヒーを啜る。
そんな歳相応の少年の態度が微笑ましかったのか、ナイトガンダムも自然と顔を綻ばせ紅茶に再び口をつけようとするが
ふと気になった気とができたため、手をとめ、クロノに尋ねる。
「そういえば、皆は何処へ?はやての病室かい?」
ナイトガンダムにとっては何気ない質問、だが、クロノは答える事無く一瞬で表情を曇らせ自然と俯く。
彼の突然の表情の変化から、直ぐにただ事ではない事は理解できた。先ず脳裏に浮かぶのは知る人物の身の安否、
だがクロノは先ほど『怪我を負った者はいるけど死傷者は0』と確かに言った。彼が嘘を言う筈が無いので、この考えを斬り捨てる。
他に可能性がありそうな事を考えようとするが、それを口に出す前にクロノの口が開いた。
「・・・・・彼女も、君に会いたがっていた・・・君にお礼を言いたいと言っていた・・・・・もしかしたら神様が機会を与えてくれたのかもしれないな」
普段の自分なら決して言わない様なメルヘンチックな言葉。だが、消えゆく彼女の為に
いるかいないかも分からない神がチャンスを与えてくれたと信じたい。
「・・・・・今ならまだ間に合うだろう。来てくれないか・・・・・彼女の別れの儀式に」


八神はやてが自宅で目覚め、周りの迷惑を無視して車椅子を漕ぎ、ようやく目的の場所までたどり着いた時には、すべてが終ろうとしていた。
はやては声を荒げ涙を流し、必至に彼女『リインフォース』を引き止める。
破壊する必要は無い、自分が抑える、こんな事をする必要は無いと
「・・・・・主はやて・・・・・」
はやてのその思いに、リインフォースは必至に固た決意を砕きそうになる。
今すぐはやてを抱きしめたい、共に生きたいと叫びたい、そんな思いに駆り立てられ、自然と右足が一歩出てしまう。
だが、踏み出したのは一歩だけだった。一歩踏み出した直後、我を取り戻し、自分自身を戒めるかのように拳を握り締め決意を改めて固める。
「私は・・・・貴方に綺麗な名前と心をいただきました・・・それだけで十分です。騎士達も貴方の側にいます。
私の魔力や蒐集行使のスキルも、引き継いでいる筈です。ですから私は・・・・笑って・・・逝くことが出来ます」

241高天 ◆7wkkytADNk:2009/05/30(土) 23:35:13 ID:ugs/c37.
「・・・・っ・・・・話聞かん子は・・・嫌いや!!!そもそも何て消える必要があるんや!!もう何も・・・・心配する事なんかないやんか!!!
あの闇は倒した、もう今までの様な悪夢はおこらへん・・・・今までの罪もこれから償えばええ・・・・消える必要なんか・・・何処にもないやんか!!!!」
声を荒げていたため、嗄れた声になりながらも必至に彼女を説得する。だが、リインフォースはその思いを、首を静かに横に振る事で否定した。
「確かに、あの闇は消えました・・・・ですがあれが防衛プログラムだという事には変わりはありません。私が生き続ければ
防衛プログラムは・・・・あの闇は新たに作り出される。元のプログラムが既に無い今、修復は不可能・・・・・もう、この手しかないのです。
私は・・・・主である貴方の危険を払い、貴方の命を幸せを守る、最善の方法を取らせてください」
理屈は嫌でもわかった。同時にリインフォースが取ろうとしている方法が最も最善だという事も理解できた。
もし理解できていなければ駄々をこね、気を紛らわせる事が出来たかもしれない・・・・だが、それが出来ない。
何が夜天の主だ・・・・・大事な家族一人すら・・・幸せに出来ないなんて・・・・・
「泣かないでください・・・・・我が主」
そんなはやての気持ちを察したのだろう、リインフォースは再び歩み始める、ゆっくりとはやての元へ。
そして、彼女の頬にそっと手を載せ、優しく微笑んだ。
「大丈夫です、私は・・・・・もう・・・・世界で一番・・・・幸福な魔導書ですから」
泣きながらも必至に自分の名を呼ぶはやてに、リンフォースは改めて幸せを心から感じる。
名前と温かな心をくれた主、自分の為に泣いてくれる主、自分には大きすぎる幸せ。
「(出来れば、この幸せをずっと、かみ締めたかった)」
ゆっくりとはやての頬から手を離し、立ち上がる。そして背を向け、魔法陣の中心へと戻ろうとした時

                      「待つんだ」

否定を許さない凛とした声が、はやての泣き声しか聞こえない丘に響き渡った。
その声に全員が振り向く、聞こえた方向ははやての後ろから。
ザクッザクッと雪道を踏みしめる音と共に、その声の主はゆっくりと姿を表した。
「・・・騎士ガンダム・・・目覚めたのか」
誰よりも早く、リインフォースは声の主、ナイトガンダムを笑顔で迎えた。
彼には心からお礼を言いたかった、消える前に話をしたかった。
叶わないと思っていた願いが叶った事に、内心でいるかもわからない神に感謝の言葉を述べる。
「・・・・・・・・」
だが、ナイトガンダムはリインフォースを一瞥した後、何も言う事無く、ゆっくりと視線をなのはの方へと移す・・・・・そして
「なのは・・・フェイト・・・・・待ってくれないか」
彼のこの言葉は、なのはを含め、この場にいる全員が予想できた。だからこそ、それ程驚かずにその言葉を受け止める事が出来る。
おそらく此処に来たと言う事はクロノから事情を・・・それこそ今何が行われようとしているのかを聞いてきたのだろう。
彼の性格は付き合いが短いヴォルケンリッターやリインフォースでも理解できる、間違いなくこの儀式を止めようとする筈・・・だが

                     「私が・・・代わりにやろう」

その言葉は誰もが予想する事ができなかった。
「「えっ?」」
「なっ・・・ガンダムさん!!」
なのはとフェイトは声を揃えて驚き、ヴォルケンリッターの皆はただ唖然とする。ただ困惑するだけ、互いに顔を見合わせ、何を言っていいのか口ごもる。
そしてはやては最後の希望が砕かれような表情で固まってしまった。
はやてから見れば、訪れたナイトガンダムは自分と同じく、リインフォースを止めてくれる存在だと信じていた。
だが現実はその逆、自分の様に止めるでもなく、シグナム達の様に見守るわけでもない、彼女に死を与えに此処まで来た。
「・・・・・・わかった、お願いする。二人とも、悪いが下がってくれ」
リインフォースは、その申し出を快く受け入れた。
結果的には自分が消滅するという事は変わらない、それなら自分が最も恩義を感じている相手に葬ってもらいたい。

242高天 ◆7wkkytADNk:2009/05/30(土) 23:35:43 ID:ugs/c37.
最初で最後の我侭、これ位は許して欲しいと思う。
彼女の言葉を受取ったなのはとフェイトは、それぞれデバイスを降ろし、足元に展開していた魔法陣を消す。
そして邪魔にならないようにゆっくりと後ろへと下がった。
それに対し、ナイトガンダムはゆっくりと前に進む・・・・・・迷う事無く、一歩一歩ゆっくりと。
「なぁ!ガンダムさん!!やめて!!お願いや!!止めてぇぇぇ!!!」
既に自分の前へと進んでしまったナイトガンダムを止めようと、はやては車椅子を動かし追いつこうとするが、積雪で隠れた石に前輪を取られ転んでしまう。
雪が積もった柔らかい地面とは言え、受身も取ることができなかったため、叩きつけられた衝撃がはやてを容赦なく襲い自由を奪う。
せめてもと精一杯手を伸ばし、『やめて』と何度も懇願するが、ナイトガンダムは聞き入れようとはしなかった。

リインフォースから約二メートルほどの距離を開け、ナイトガンダムは立ち止まる。
そして左脇に抱えるように持っていた石版を掲げた。

             『ONOHO TIMUSAKO TARAKIT!!!』

石版はナイトガンダムの手を離れ、ゆっくりと浮き上がる、そして光と共に融合を開始した。
「あぁあああああああああああ!!!」
三種の神器装着時に起こる激痛、病み上がりの体には十分なほど堪える。
それでも『彼女』をこの世から消すには・・・・・この事件を本当に終らせるには必要な力、今までの装着時と同様、
確固たる目的を持てば、この苦痛も十分耐えられる。
盾が『力の盾』に、剣が『炎の剣』に、そして身に着けている鎧が『霞の鎧』へと変化していく。
そして最後の仕上げと言わんばかりにスパークを立てながら霞の鎧のバイザーが装着され、中央のくぼみに真紅の宝石がはめられた。
闇の書の闇との戦いでその姿を現したフルアーマーナイトガンダムが再び姿を現す。『彼女』をこの世から消すために。

炎の剣を横に振るい炎を纏わせる。そして、肩の高さまで持ち上げた後ゆっくりと引き、リインフォースを突刺す構えを取る。
その光景を最後にリインフォースはゆっくりと瞳を閉じる。
あとはこの切っ先を彼自分の胸目掛けて突刺せば良い、そうすればその美しい炎が焼いてくれる、もう阻む物は何も無い。
「主・・・・・貴方に幸福があらんことを」
瞳を閉じる瞬間彼女が見たのは、涙で目を晴らした主の姿だった、最後に主を悲しませてしまった事は心残りだが
今更慰めの言葉を投げかける事など出来ない・・・・・・そして
「っ!!」
ナイトガンダムが地面を蹴る、そして飛び上がり、何の躊躇も無く、炎の剣をリインフォースの胸に深々と突刺した。
一切の遠慮も無ければ一言の言葉も投げかける事無く、まるで敵を倒すかのように淡々と行われた作業。
誰もが、あまりにもあっけなく、あまりにも簡単に行われたこの作業にただ呆然とするばかり・・・・だが
「あ・・・・・・あああああああああああああ!!!!!!」
明らかな苦しみの叫びに、全員が現実に引き戻される。
その声の主、リインフォースは先ほどまで炎の剣が刺さっていた胸を掴み、喉が張り裂けんほどの叫びを上げながら蹲る。
その直後、激しい炎が包み込み、彼女を灰に火炎とばかりに燃え盛った。
「・・・・これ・・・で・・・・いい・・・・」
おそらくこの炎は、『闇の書の闇』と同じく、自分を完全に燃やしつくすだろう。
これでいいのだ・・・・・この苦しみは自分への戒めと思えば納得が行く。
先ほどまで聞こえていた主の叫びも徐々に聞こえなくなり、それと同時に痛みも引いて来る・・・否、これは感覚がなくなっているだけだ。
まるで自分という存在が焼き潰されていく様な感覚、それがジワジワと来るのだ・・・・・堪った物ではない。
「ああ・・・・これは・・・・・」
「これは余り経験したくない体験だな」何気なく呟こうとしたが、意識のがそれを許さず、言葉半ばで彼女の意識は完全に途切れた。

243高天 ◆7wkkytADNk:2009/05/30(土) 23:36:48 ID:ugs/c37.


                  「・・・・・・ス・・・・−ス」

何かが聞こえる・・・誰かの声が聞こえる

              「・・・・ォース・・・・インフォース・・・・」

聞き覚えがある声だ・・・・・何かを必至に繰り返して・・・叫んでいる・・・・・
何を叫んでいるのだろう・・・・・否、覚えがある・・・・・・徐々にはっきりとしてくる意識と共に、その意味を理解する、そう、それは

                    「リインフォース!!」

                    「私の・・・名前だ」

意識の覚醒と共にゆっくりと瞳を開ける。
まず目にしたのはどんよりとした空、そして休み無く降り続ける雪。
その内の一粒が目に入り、瞳に刺激を与える。だが、その刺激により彼女の意識は一気に引き戻された。
仰向けに寝ていた自身の体を起こし、あたりを見渡す。
最初は此処が『あの世』といわれている場所かと思ったが、目に写るのは先ほどまでいた海鳴市の丘の景色そのもの、
そして自分を驚きの表情で見ている幼い魔道師達と守護騎士達、
結論を出すにはそれで十分だった。自分は消えておらず、未だにこの世にいるという事だ。
「騎士ガンダム・・・・・これは一体」
剣が突き刺さった感触、そして体を焼かれる激痛、意識が徐々に消えてゆく感覚、そのすべてを経験したのに自分はまだ生きながらえてる。
彼が持つ炎の剣の効果は自分も目にしている、だからこそ、自分が生きている事は可笑しい。
考えられる事としては、直前にナイトガンダムが情けをかけたとしか思えない。
「・・・情けを・・かけたのか」
「いや、違う。私は確かに彼女を消滅させた・・・それは間違い・・・な・・・い」
体をふらつかせながらも、どうにかたたらを踏み無理矢理バランスを取る。やはり体が全快していない今では、短時間の装着にも体の負担は大きい。
意識を持っていかれる前に、三種の神器を石版に戻し、元の鎧の姿へと戻った。説明をする前に倒れては元も子もない。
「彼女って・・・まさか!!?」
ナイトガンダム以外の誰もが言葉の意味を理解できない中、八神はやてだけがいち早くその意味を理解した。
彼が言う『彼女』という言葉、そして彼にしては容赦の無い一撃、思い当たる節は一つしかない。
「闇の書の闇・・・・いや、防衛プログラムだけを・・・・・消したんか」
「そんなはずは無い!!」
そのはやての言葉に、全員が驚き、一斉にリンフォースのへと目線を向けるが、リインフォースだけが、その答えを大声を出し否定した。
確かに炎の剣はあの時、シグナム達のリンカーコアに取り付いた闇の書の闇の一部だけを燃やしつくすという
とんでもない芸当をやり遂げた。だか自分の場合はそれが当てはまらない。
『闇の書の闇』といわれている存在は自分というプログラムの一部、シグナム達の様に後から寄生した異物を排除する事とはわけが違う。
「あれは・・・奴は・・・私の一部だ!!それだけを消すなど・・・・・それに奴はまだ活動すらしていない!!
ありもしないものを消したなど・・・・・バカな冗談は(冗談ではない」
自分でも気が付かないほど取り乱しているリインフォースをナイトガンダムは落ち着かせるように優しさを含んだ声で諭す。

244高天 ◆7wkkytADNk:2009/05/30(土) 23:37:58 ID:ugs/c37.
その言葉が聞いたのか、未だに納得がいかないと言いたそうな視線を向けるものの、口を噤み、大人しく話を聞こうとする意思を示す。
「確かに、私は消そうとした・・・・・いや、確実に消した、管理者プログラムである君を。リインフォース、あの苦しみから、
君は体が燃える苦痛を経験した筈だ。それが確実な証拠」
「ああ、確かにそうだ。なら、此処にいる私は何だ!?管理者プログラムである私を燃やし尽くしたのなら、此処にいる私は何なんだ!!」
その問いに、ナイトガンダムは沈黙で答える。
決して答えられないわけでもなければ、焦らしているわけでもない。答えは直ぐに口に出来る、だがそれは彼女自身に気付いてほしかったからだ。
だか普段ならまだしも、自分に起こっている出来事に困惑する彼女にはその答えに行き着くには時間が必要だった。
沈黙して一分足らず、ナイトガンダムはゆっくりとその答えを口にする、それはとても簡単な答え
「君が・・・・祝福の風、リインフォースだからさ」
言葉の意味が理解できないのか、ただ呆然とする彼女にナイトガンダムは近づく。
そして彼女手をとり、落ち着かせるように優しく握り締めた後、ゆっくりと話し出した。
「君は、八神はやてと出会い、彼女の優しさに触れた・・・・そして彼女に深い愛情を抱いた、君だけじゃないヴォルケンリッターの皆もだ。
そして君達ははやてからとても大切な物を貰った・・・・・・暖かな心という、とても大切な物を」

ナイトガンダムの言葉の意味をいち早く理解したはシャマルだった。
以前の・・・否、今までの主は自分たちを駒の様に使ってきた。
休む暇も与えずに戦地に送られ、ただの道具として扱われた日々、時には性的奉仕を強要されたこともあった。
いまでは考えただけでも寒気がする出来事。だが、そう感じるこれらの事柄を、当時の自分達は何の文句も無く行ってきた。
理由は簡単、『嫌悪感』や『拒否』などの感情が欠落していたからだ。
おそらく当時から持っていた人間らしい感情といえば他のヴォルケンリッターを想う『仲間意識』だけ・・・否、今にして思えばそれも怪しい。
今までの主が自分達を駒と見るように、自分自身・・・いや、ヴォルケンリッター一人ひとりがそれぞれを『都合の良い戦力』としてしか見ていなかったと思う。
昔の自分も、ヴィータを心配する事はあったが、それは『仲間』として慕う物ではなく、
『駒』として使えなくなるのが・・・主の命に支障をきたすのを恐れての事だったと今では思う。
だが、今の自分はそうではないとはっきり否定できる。
夕食前にアイスを食べようとするヴィータを怒ったり
リインフォースとの別れを悲しんだり
夕食後、バラエティ番組を皆で見て笑ったり
今では当たり前の様に表現しているこれらの感情を持っているのが良い証拠だ。
自分達だけでは到底得られなかった・・・・・・否、必要とすらしていなかっただろう。
だが、笑うこと、悲しむ事、怒る事、それらの大切さを教えてくれ、自分達を『ただの駒』から『人』として変えてくれたのは、
ナイトガンダムの言う『暖かな心』をくれたのは、他の誰でもない今の主、八神はやてだ。

「暖かな・・・心・・・・」
「ああ、君ははやてを愛おしく思っている、そして命に代えても守ろうとした。それは『使命』や『命令』などでは決して無いはずだ。
『リインフォース』という名前と『温かな心』を貰ったその時点で、君はあの闇の書の闇の様に、管理者プログラムという器では無くなった。
私が炎の剣で焼いたのは管理者プログラムとしての部分・・・・彼女が生れ落ちるそのもの。これでもう何も心配する必要は無いよ」
ナイトガンダムの手の暖かさと優しい口調で、どうにか落ち着いて聞くことは出来た。
だが正直な所半信半疑だ・・・・・彼が嘘をつくとは思えないが、本当という確証も無い。
「信じられないのは理解できる・・・なら、ユニゾンしてみるといい・・・・・・はやてと」
ナイトガンダムも、彼女が完全に信用していないのは顔を見て直ぐに理解できた。だからこそ彼女にユニゾンを・・・主である八神はやてとのユニゾンを進める。
管理者プログラムそのものには防衛プログラムの他にも本来の融合型デバイスと機能『ユニゾン』も含まれている、
もし彼の話が本当なら、ユニゾン機能は失われている筈。
一度無言で頷いた後、ゆっくりと歩み始める。一歩一歩、はやての元へと。

245高天 ◆7wkkytADNk:2009/05/30(土) 23:39:17 ID:ugs/c37.
皆が見守る中、自分を真正面から見つめるはやての元まで近づいたリインフォースは、瞳を閉じ一度深呼吸。そして覚悟を決める。
「主はやて・・・・・お願いします」

目の前で目を瞑り、自分との融合を願うリインフォース。
自分がやる事は簡単、彼女とのユニゾンをおこなえばいいだけ。
もし融合できなければナイトガンダムの言った事が本当になる、だがもし融合できてしまうと・・・・・
「(・・・・何・・・うたがっとるんや・・・・馬鹿・・・・)」
否、何を不安がる必要がある。何故疑う必要がある。
彼は私達に力を貸してくれた、操られたあの子達を解放してくれた・・・・助けられてばかりだ。
それなのに、自分は何も恩返しをしていない所か彼を信用使用ともしなかった。
内心で自分自身を罵倒した後、ゆっくりと息を吸う。
「ほな・・・・・・いくで!!」
知識などは既に頭に入っている、融合失敗はありえない、出る結果は融合できてるか、何の反応も無いかだ。
心の中で祈る・・・・・いるかもわからない神様という人物に・・・・・・そして

『ユニゾン!!イン!!!』


はやての叫び声が響き渡った直後、訪れたのはユニゾン特有の眩い光でもなければ騎士甲冑に身を包んだはやてでもない。
ただ静かに雪がに振り静寂が辺りを支配する。
「・・・・・これで、間違いは無いはずだ」
静寂を破るナイトガンダムのその一言、後に『最後の闇の書事件』と言われるこの事件は、こうして終焉を迎えた。

リインフォースははやてを抱きしめ涙し、そんな彼女を子供をあやすかの様にはやては頭を優しく撫でる。
本当ははやても彼女の様に泣きたいのだろう。だが、幼いながらも八神家の大黒柱、そして守護騎士としての立場が、それを思いとどませる。
それでも、流れる涙を抑える事は出来なかった。閉じた瞳から流れ出る涙を拭わずに、はやてはリインフォースを出し決め、優しく頭を撫で続けた。

「全く・・・まさかこうなるとはな」
シグナム達も、はやてとリインフォースと共に喜びを分かち合いたかったが、今の二人の元に混ざるのは酷なことだと思い断念。
空気を読まずに近づこうとするヴィータの襟首を掴んだシグナム達は、この奇跡を起こした張本人の元へと向かった。
だが、当のナイトガンダムは、シグナム達と同じく二人の様子を伺ってはいたが、急にふらつき、地面に手をついてしまう。
その突然の自体に全員が不安に掻き立てられ、自然と駆け足となった。

今にも地面に倒れそうになるナイトガンダムを、シグナムが咄嗟に抱きかかえ、即座にシャマルに回復をする様に伝える。
その直後、ナイトガンダムに優しく癒しの風、湖の騎士に恥じないその効果は彼の体から疲労を抜き取ってくれる。
「やはり三種の神器の神器の負担か」
「・・・・・ああ、情け無いことに・・・・・どうやら、まだ使いこなせてはいないようだ・・・・」
起き上がろうとするが、どうにも体が満足に動かない、それ所か急に睡魔が彼を襲う。
多少の眠気ならどうにでもなるが、疲労と、シャマルの回復魔法の心地よさには勝てず、徐々に意識を手放してゆく。
「何言ってんだよ!!あんな無茶苦茶な装備品を連続して使ったら、普通は体がもたねぇぞ!使いこなせる云々の問題じゃ・・・って、ナイトガンダム?」
自分の異変にさすがに気付いたのだろう、しきりに何かを話しているが頭が理解しない。
視界もおぼろげになり、リインフォースとはやてがこちらに近づく姿を確認した直後、ナイトガンダムは完全に意識を失った。

246高天 ◆7wkkytADNk:2009/05/30(土) 23:41:11 ID:ugs/c37.
「此処は・・・・・何処だ」
騎士ガンダムが意識を取り戻したのは、先ほどまで自分が寝ていたベッドでもなければ、雪が降りしきるあの丘でもない。
ただ真っ白な光に包まれた空間だった。
体は飛行魔法を使っているかのように浮いているが不思議と独特の浮遊感は感じられない。
咄嗟にこのような状態になる前の出来事を思い出すが、あの後、意識を失った時点で記憶は完全に途切れている。
「一体・・・どうしたら・・・・」
今という現状が理解できないため、どうしたらいいのか途方にくれる。
叫ぼうにも返事をする物は誰もおらず、辺りを見回しても同じ景色が広がっているだけ
考えられる可能性としては二つある。一つはあの後意識を失った事から、此処が夢の中という事、
そして残りの一つが、自分は死んでしまい、此処が『あの世』と呼ばれている場所という事。
後者に関しては、ネガティブな考えは持ちたくは無いが、ありえないことではない。
普段だったら行動を直ぐにでも起こすのだが、このような状態ではどうしたいいのかまるでわからない・・・・・そんな時であった
「っ!!!?誰だ!!!」
後ろから感じる気配に気付いたのは・・・・・・・



「騎士ガンダム!!良かった・・・・・気が付いて」

ナイトガンダムが気絶した後、直ぐに彼はアースラへと運ばれた。
その場にいた全員が彼の安否を心配したが、目覚めてからの車椅子での全力失速、そしてリインフォースが助かった事で襲った安心感、
更に闇の書の闇との戦闘での疲れが抜け切っていないはやては、彼の後を追う様に意識を失った。
幸いただの過労というシャマルの診断から、はやては自宅へと帰ることとなり、ヴォルケンリッターも主に同行することとなった。
だが、リインフォースは彼にお礼が言いたいという事もあり、ナイトガンダムと一緒にアースラへと行く事に決め、
なのはとフェイトもまた、彼女に同行することとなった。

もう散々目にした天上を見つめ、直ぐに体を起こす。
まず目にしたのはリインフォースの安心した笑顔、本当なら直ぐにでも『心配ない』『大丈夫』と
自分が大丈夫だという事をアピールするのだが、今はそのような気分ではなかった。
「・・・あれは・・・・・間違いないのか?」
あの時聞いた事、それが真実なら・・・いや真実だろう、もしそうなら、自分は・・・・・・
「どうした?やはり体調が優れないか?」
表情を覗き込むように顔を近づけるリインフォースに、ナイトガンダムは無理矢理現実に引き戻される。
同姓が見ても見惚れるほどの美しさ、そのような印象を持つのはMS族でも変わらない。
「(・・・美しい人だ)あ・・・ああ、大丈夫、少しぼおっとしてしまっただけだよ」
笑顔で自分の健全をアピールするナイトガンダムに、リインフォースは安殿の溜息をつく。
「本当は高町なのはとフェイト・テスタロッサもいたのだが、二人とも明日は『シュウギョウシキ』という物があるらしい
クロノ執務官が多少強引にだか帰らせた。二人とも渋ってはいたが、お前が気絶しているだけという事がわかるとしぶしぶ了承していたよ」
「そうか・・・・リインフォース、君はいいのか?はやての所に行かずに」
「主は今はシグナム達がついている。私達の処分も現状では保留の状態、特に行動は制限されていない・・・・・全く人がいいのか、杜撰なのか。
だが、感謝しなければいけないな。ナイトガンダム、こうしてお前と話ができるのだから」

247高天 ◆7wkkytADNk:2009/05/30(土) 23:44:34 ID:ugs/c37.
八神はやての元へと転送されてから夢にまで見ていた・・・・否、叶わないと確信していたからこそ、
夢を見ることすら諦めた主や仲間達と共に歩める事が出来る時間。
何者にも変えがたいその贈り物を与えてくれた異世界の騎士に彼女は心からお礼が言いたかった。

「騎士ガンダム・・・・・本当に、なんとお礼を言ったらいいのか・・・・・」
情け無いが、正直何と言っていいのかが分からない。気持ちは十分すぎる程あるのだが、それを口に出して言えるほど彼女は器用ではなかった。
あまりの自分の口下手さに情けない気持ちになる。
「お礼なら必要ない。当然のことをしたまでだから」
一切見返りを求めず、さも当然の様に言い放つナイトガンダムに、彼女は言葉を詰まらせてしまう。
否、何となくではあるが予想はできた。彼は決して見返りは無論、感謝の言葉も必要とはしていないと。
だが、それでは自分の気が収まらない。
「むしろお礼ならクロノに言ってほしい。君の状態や詳しい状況などを教えてくれたのは彼なんだから。
それに、君の束縛を解いたのは三種の神器の力によるもの、私は何もしていないよ」
「馬鹿を言うな!行動し、結果を出してくれたのはお前だ・・・・・そんな態度をとって貰っては・・・・困る」
昔の主達の様に、もっと偉ぶったり、何か見返りを求めてくれたほうが良かった。
だが、主はやてといいナイトガンダムといい、そのような事は全くしない・・・・・ストレートに言うと物欲が全く無いのだ。
否、おそらく『気にしないで欲しい』というのが彼の願いなのだろう。
相手を助けるのに理由などつけず、自身の命も顧みない、そして対価となるであろう見返りや感謝の言葉すら求めない。
闇の書の闇が言った様に、彼には『闇』の部分が全く無い・・・・・・・聖人君子も真っ青だ。
「私は君を救えたこと・・・・・それで十分だよ、だから気にしないで欲しい」
笑顔でそういわれると、もう諦めるしかない。
それに彼のことだ、こちらから『何かしてほしい事は無いか』などと聞いたら間違いなく困るだろう、感謝している彼を困られるなど本末転倒だ。
「・・・分かった・・・お前がそう言うのなら・・・・・・・騎士ガンダム、やはり具合が悪いのか?」
何故だろう・・・・彼の表情が暗い様に見える、まるで何かを隠しているかの様な
やはり体調が悪いのかと思ったのだが、診断の結果ただの疲れだという事は湖の騎士から聞いている。
笑顔を向けてはいるが、どうにも何かを・・・・・まるで自分の中の動揺を隠しているかの様に感じる。
「?いや、そんな事は・・・・ないよ。どうしたんだい?」
明らかに嘘だ、おそらく嘘をつくのが下手なのだろう、はたから見ても直ぐにわかる、
直ぐに目をそらしたのが良い証拠だ。
多少好奇心というのもあるが、恩人である以上、自分では役不足ではあるが相談にはのってあげたい。
だからこそ再び尋ねようと口を開いた瞬間、
「クロノだ、入るよ」
彼女のの行動を阻止するかの様なタイミングで、ノックと共にクロノが入ってきた。



こんばんわです。投下終了です。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
編集、いつもありがとうございます。
職人の皆様GJです。
SDXサタンガンダム延びた・・・・orz やはり腹のマークか?
いいよ・・・リインフォースはいいよ・・・・・
次は近いうちに・・・・orz


代理投下、お願いいたします

248ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2009/05/30(土) 23:57:23 ID:qd/bIq4o
それでは、代理投下させていただきます。
うぅ…ナイトガンダム…

249ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2009/05/31(日) 00:27:24 ID:OHYZt5xA
以上、遅れながら高天氏の代理投下終了しました。
ここで言うのもアレですが、R−TYPE氏も高天氏も
GJを超えたGJであります!

R−TYPE氏、やはりバイドがやばすぎるww
やっと絶望を脱したと思いきやまた絶望とは…!
もはや絶望EDしか想像が……氏の影響で
ゲームアーカイブスでΔをDLしたのは秘密ですw
(撃墜されまくりですがorz)

高天氏、初代リインフォースをも救うなんて、ガンダムが
大変チート…もとい、凄くカッコイイであります!さすがは
神様の片割れ…!次回でとうとうラクロアに帰るのか…?
ナイトガンダム最高であります…!

…この場でお目汚し失礼しましたorz

250高天 ◆7wkkytADNk:2009/05/31(日) 00:34:55 ID:sDAZNeko
代理投下、誠にありがとうございました。

251リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/31(日) 23:44:54 ID:WbX5E6oM
「そのための封印カプセルだ。1年前は使えなかったが今は頃合いになっているだろうからね。しかし惜しいなぁ。
 そう、もしもあの時カプセルと鉄人を使えていたら確実に勝てたのにねぇ。すべては私が無知故の過ち」

無知、敬愛するスカリエッティが自らを無知と罵る。それはウーノにとってあってはならない事なのだ。
彼女とってジュエル・スカリエッティは神。自らの神が我を蔑み、無知を謳うなど言語道断。それは絶対的と信じて止まない愛と信仰心を否する事ではないか。

「いえ! ドクターは無知などではありません! あの時の失態は全て我々ナンバーズの力不足による物。攻めるのならばどうか! どうかこの私めを!」

ウーノが椅子に腰かけたスカリエッティよりもさらに低く跪く。そう、1年前の失態は全てこの身による物。魔道師風情に頭脳を覗かれ、スカリエッティに信頼されればこそ知り得る情報を引き出されるという痴態。
この身を鞭で打たれようとも本望! いやむしろ敬愛するお方に敗北を与えたこの身に罰を! だが微笑みを浮かべるスカリエッティはウーノの頭を、その髪の感触を楽しむ様に撫で始めた。

「気に病む事はないよ。あの時は私にも落ち度があった。だが今回は違う! これから我々が手にするのは勝利あるのみ!」
「おおドクタースカリエッティ! なんと慈悲に溢れるお言葉。ならばこのナンバーズが長女ウーノ、貴方がお与え下さったこの身体と力は勝利のために!」

恍惚と瞳を潤ませるウーノの髪をスカリエッティは嫌味な薄ら笑いを浮かべて撫で続ける。
そして管理局の監視カメラをハッキングした映像が送られて来るモニターに映される光景は、スカリエッティの邪悪な欲望を満足させるには十分な物であった。

「さぁ進もうか鉄人よ! 目指すはアルカンシェル保管庫! ハハハハハハ!!」

スカリエッティの指示を受け、鉄人は炎の海と化した格納庫を行く。この奥の扉、そこが管理局の最強兵器アルカンシェルの格納庫。
アルカンシェルは百数十キロ四方の物体を対消滅させる危険な兵器で普段は格納庫に仕舞い込まれている。その格納庫も万全を期して分厚い特殊合金性の扉によって堅く守られていた。
その前に辿り着いた鉄人は、両手を扉の隙間に差し込み、こじ開けようとする。鉄人の怪力に格納庫の扉は軋む音を立てながらひしゃげていった。

「あいつアルカンシェルを!」

抵抗も出来ずに開かれていく扉にクロノが見たのは抗う事の出来ない力の差。やがて完全に開かれた扉から見えるのは、戦艦が何個も入るような巨大な空間、そしてそこに大量に設置されたアルカンシェル砲台の数々。
現在目立った犯罪もない事から管理局が保有する全てのアルカンシェルがこの格納庫に保管されていると言ってもよい。鉄人は格納庫の中程まで歩くと背中に背負っていた装置を床に置く。
すると下部に設置された杭の様な物がバンカーの要領で床に深々と突き刺さり本体を固定した。鉄人が数字の書かれたパネル部分を押していくと表示盤にデジタル表記の数字が表示されていく。
鉄人が入力しているのはスカリエッティ特製の巨大爆弾の起爆コード。タイマーを30秒にセット、さすがに無敵の兵士と言えど数百メートル規模の爆発に巻き込まれれば無傷といくまいから退避の時間が必要だった。
鉄人は爆弾から少し距離を取ってから床板に拳を振るい、機体が通れるほどの大穴を開けた。これでは爆発のエネルギーが逃げてしまうように思えるが、これだけの規模の爆弾ではそのような心配はない。
仮に多少逃げた所でビルをも吹き飛ばす衝撃波と数千度の熱流は、この規模の格納庫を吹き飛ばすには十分過ぎるほどの威力があるのだ。
巻き込まれては敵わないと言わんばかりに、鉄人は床に空いた大穴から下の階に飛び降りる。その様子を見ていたクロノは今更気が付いたのだ。そう、鉄人に対抗し得る唯一の手段が。

「アルカンシェルが」
「ドカーン!」

スカリエッティの嬉々とした声が船内に響くと同時に、アルカンシェルは猛炎に飲み込まれていた。灼熱の支配する格納庫の中は、宛ら溶鉱炉と言った風情で、溶けた壁やアルカンシェルが床一面に広がっていく。
アルカンシェル砲台の中には、爆風の熱で魔力炉が融点を越えて引火爆発してしまう物もあり、それらが隣の砲台に爆風を浴びせ、ついには連鎖的な誘爆をも生み出していたのだ。
格納庫内の監視カメラは全て爆発で壊れてしまったらしく、司令室のモニターには離れた位置の監視カメラからの映像が送られている。

252リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/31(日) 23:49:24 ID:WbX5E6oM
書き忘れました規制を食らってしまったので代理投下をお願い致します

253リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/31(日) 23:49:54 ID:WbX5E6oM
内部の状況は分からないが、炎が渦巻き、今尚爆発が止まないその様を見れば、アルカンシェルの全滅を疑う者はなかった。
それは航行船の中で様子を見ているスカリエッティも同じであったが、もっとも彼の場合抱く感情は落胆ではなく狂わんばかりの狂喜である。
スカリエッティは、モニターをあらゆる位置のカメラ映像に切り替えて、青ざめていく局員の顔を見るのが楽しくてしょうがないと言った様子を見せた。

「ハハハハハハ! 滑稽だな諸君。そんなに怖いかね、この鉄人が」

しかしこれはまだ序の口。本当の闘いはこれから始まるのだ。アルカンシェルさえ破壊すれば鉄人への対抗手段はなくなったに等しい。
だがこのまま終えてしまっては面白くない。折角の余興、どうせならとことん時空管理局を破壊してやろうじゃないか。
この日は歴史に残る日となるだろう。次元世界の守護神たる時空管理局本局がたった一人の犯罪者の手によって落ちた日、その機能を完全に停止してしまう日。
自分をコケにしてくれた者達への復讐にこれほどの物はない。今後語り伝えられる瞬間は目の前にある!

「そう、今日こそが我が宿願成就の時! 後に語られるその名を『時空管理局制止する日』とは今日この日の事よ! ハハハハハハハハ!!」
「そしてその瞬間、我等ナンバーズこの眼に焼き付け、永久の時を過ごしたとしても忘れる事はないでしょう!」

跪き、待望の眼差しで見つめるウーノに、スカリエッティは椅子から立ち上がり、左手を肩に置くと右の手でウーノの顎を持ち上げた。
交わる視線は同じ金色の瞳。自分が作り上げた美しき戦闘機人ウーノ。もっとも愛着を持っている彼女の励ましは、実に気分を高揚させる物だった。

「ウーノ嬉しいよ。そうなればこちらも張り合いが出てくるという物」
「でもドクター、鉄人単騎で管理局を相手にするのはちょーっと厳しいのでは?」

水を差すようなクアットロの言葉にスカリエッティはまだ自分の温もりが残る椅子に座り直した。確かにもっともな意見かもしれない。
さすがの鉄人28号と言えど時空管理局本局の全戦力を相手にすれば、敗北の可能性がないとは言い切れなかった。
しかし強大な力であるからと言って正面からぶつけるのは知恵のない人間がする事である。有り余る力はおとりにもなるのだ。
それは伏兵を忍び込ませるには絶好の隠れ蓑になる。おそらく管理局は伏兵の存在に気がついてはいない。
仮に気が付いていたとしても、鉄人との対決に戦力を集中せざるを得ないから、どうする事も出来ないだろう。
そもそも見つける事など不可能と言っていい。何故ならそれはスカリエッティが作り上げたナンバーズの中でも最も異質な能力の持ち主。

「そうかもしれないねぇ。だが鉄人だけではないよ。なぁセイン」
『はいドクター』

通信をしてきたのは戦闘機人ナンバー6『セイン』その能力は無機物に潜航出来るディープダイバー。直接戦闘力は低いセインだが特殊工作員や偵察員として非常に優秀で、今日も本局の内部破壊の任務を負っていた。
既に本局への潜入を果たして、その内壁を泳ぐセインの背中にはスカリエッティ手製の爆弾が大量に入ったリュックサックが背負われている。小型ではあるが破壊力は抜群でセインの目標を爆破するには十分だった。
セインの目的はあくまで鉄人のサポート。本局の壊滅をより完全な物にして、復旧までの時間を引き延ばす事。本局の動きを止める事は、これからの行動に大きな意味を持つ事になる。

「ふふふ、機人に鉄人。これこそ完璧な陣形。さて、そろそろメインディッシュと行こうか」

スカリエッティが不敵に笑う頃、クロノとエイミィは今だ内部に留まる鉄人の動きを追っていた。モニターに表示される監視カメラの映像が次々に切り替わり鉄人を追跡していく。
進行を留めようと隔壁が展開されるが鉄人の腕力の前にはとても敵わず、引き裂かれ、こじ開けられてしまう。本局の魔道師部隊も鉄人を撃退すべく立ち向かうがいくら攻撃しても装甲に傷一つ付ける事すら出来ない。
色取り取りの魔力弾や砲撃が鉄人に着弾する度、弾け飛んでは光の粒子となって一帯を染め上げていく。その様子は幻想的であったが同時に、本局一面に広がる炎が現実を突き付けていた。
鉄人が通り過ぎた後に残るのは、燃え盛る炎と勇敢な戦士達の血肉。燃える赤と生臭い赤によって管理局は染められていった。
視覚を支配するのは、凄惨なまでの破壊の痕跡。嗅覚を突くのは、炎と亡骸が焼ける匂い。心を支配するのは、威風堂々たる姿で立ちはだかる者への恐怖。
尚も突き進む力に拮抗出来る手段があり得るのか、いいやそんな物は存在しない。ほんの数分前にはあったとしてもそれは既に灰へと姿を変えていた。

254リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/31(日) 23:50:29 ID:WbX5E6oM
司令室で見つめるクロノが悔し紛れに拳を握り締める。するとエイミィに巻かれた白い包帯に徐々に赤い血が滲んでいく。

「あいつはどこへ向かって。エイミィ!」
「分かってる! このまま行くと」

先程地上本部襲撃の差にも使われた進路計算シミュレーター。場所を時空管理局本局に設定してエイミィは再び鉄人の進路を予想する。

「このまま行くと……まさか!?」
「どうした! 奴はどこへ!」

エイミィの様子から今日何度目か分からない悪い知らせである事を悟ったクロノは声を荒げた。エイミィは苦虫を噛み潰す様に言葉を発した。

「この本局の中心……メインシステム制御室」
「そんな、まさか鉄人はメインシステムを落とす気なのか?」

時空管理局を機能させるには全ステータスをカバーできる膨大なエネルギーが必要であり、まして宇宙空間に浮かぶ本局は酸素供給等のライフラインを確保するシステムが必要不可欠である。
地上と同じ酸素と重力を生み出し、さらには次元航行艦の発着に、管理局全体の通信機能、レーダー等の軍事的設備。全ての機能を使うには大量の電力とエネルギーを安定供給させるシステムを両立しなければならない。
そしてそれらの管理局が持ち得る全ての機能を統括するのがメインシステムである。生命維持機能、軍事設備、電力供給ユニット、それら設備毎に配された管理ユニットを管理統括するためのシステム。
それが万が一破壊されれば、一時的にではあるが管理局のシステム系統が完全停止する事を意味していた。もちろん制御用のサブユニットは用意されているのだが。

「そう、サブユニットの破壊はセインの出番と言う訳だ」

スカリエッティの戦略は、まず鉄人がおとりも兼任してメインシステムを破壊。その後も各設備の管理システムや重要施設等を攻撃する。その間にセインがディープダイバーを生かして発見されずにサブシステムを爆破。
たった2人で行う作戦だが、それには理由があった。まず第1に鉄人が内部に侵入したとなれば、当然これを撃破しようと全戦力が集中するからセインの存在が気取られる可能性はかなり低い。
第2に如何に戦力を集中しようと魔道師の攻撃で鉄人が破壊される可能性は極めて低く、全戦力を長時間鉄人に釘付け出来て、且つ攻撃に居も解さず破壊行動の継続が出来る事。
第3にセインの能力ディープダイバーは無機物の中を潜航する事が出来る。つまり目視による発見は非常に困難で、鉄人への戦力集中と合わせて手薄となった本局の至る所に移動出来る事。
如何にセキュリティーが厳しくとも壁の中を進まれては対応出来ないし、さらに鉄人に戦力を割かねばないから警備は当然手薄になり、セインに入れない場所はないと言っていいだろう。
万が一セインが局員に発見されてもディープダイバーで壁の中に逃げ込めばいいし、鉄人を救助に回す事も出来る。
これが下手にナンバーズ全員を投入してしまうと複数人が同時に捕らえられた時、救助が間に合わない可能性が高い。つまりこの作戦はセインと鉄人二人で行うのが一番効果的なのである。
そしてスカリエッティの思惑通り、本局は鉄人の対応に追われセインの存在に気付く事はなかった。

「最強の切り札だからと言って、単独で使うほど愚かな行為はない。それのサポート、さらに見合った戦術と運用と言う物があるのだよ」

逃げ惑う魔道師たちに問いかけるようにスカリエッティは実に愉快そうな笑みを浮かべていた。たった二人に落とされるというのはどんな気分か。
きっと煮え返るほど悔しいに違いない。反面それを見る襲撃者の表情はまるで子供の様に喜んでいるのだ。

「こんな事が……本局がたった1機に翻弄されるなんて」

しかし襲撃を受けている当人にとってはたまった物ではない。エイミィ・ハラオウンはただ呆然と鉄人が本局を破壊していく様子を見つめる事しか出来なかった。
壁を壊し、床を抜きながら鉄人が目指すのはメインシステム制御室。巨大なマザーコンピューターが置かれた空間は、システム警護のために配置された魔道師数十人が滞空して尚余裕のあるほど巨大な物であった。
時空管理局の全設備、全データを統括し管理するためにはこの規模の制御ユニットでなければ対応する事が出来ないのである。

255リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/31(日) 23:51:45 ID:WbX5E6oM
もちろん万が一のために、これよりも小型のサブユニットがいくつか存在しているが、切り替え時には一瞬とは言え管理局全体のシステムがダウンしてしまう。
その一瞬が巨大な設備を兼ね備えた時空管理局という場所であるからこそ脅威となり得るのだ。再起動した各システムの動作チェックなどには何日も掛かる。
その間に敵に攻められれば、万全の態勢で迎え撃つ事は出来ない。だからこそメインシステムだけは死守しなければならないのだ。

『敵機接近! 頭上から来るぞ全隊射撃用意!』

メインシステム防衛を任された魔道師部隊の隊長が通信で、その場に居る全員に指示を飛ばした。
隊員達が迎え撃つべく神経を集中すると頭上から小さく聞こえてくるのは衝撃音。その音が少しずつ近付いて来るのを誰もが感じていた。
そして耳を塞ぎたくなるほどに音が大きく響いたその瞬間、突如天井が崩れ、瓦礫と共に落下してくる巨体が一つ。その光景に思わず声を上げる一人の魔道師。

「まさかこれが!?」
「ガオォォォォォォォ!!」

咆哮を上げた鉄人が目指すのは直下、そこにあるマザーコンピューター。そうはさせまいと魔道師部隊が一斉に射撃を浴びせるが装甲に弾かれてしまって効果はない。
そのまま鉄人は拳を構え自由落下に身を任せた。鉄人が持つ質量、そこに自由落下のスピードと敵を叩き砕くパンチ力が上乗せされているのだからその破壊力は想像を絶する。
マザーコンピューターと接触する瞬間、鉄人は自由落下のエネルギーを生かしながら風切り音を伴って拳を突き出した。
防御用に本体自体が堅牢に作られ、魔力障壁で守られているマザーコンピューターであったがこのパンチ力に抗う事は不可能である。
激しい衝撃音が辺りに響くと鉄人の拳が自身よりもやや小さい程度の巨大なコンピュータを貫通していた。鉄人の腕が突き刺さって開いた穴からは電流と炎が迸っている。
やがて電流と炎はわずかな時間で巨大な物となり、一際眩しく輝くとマザーコンピューターは内から爆炎を撒き散らして破裂した。
その瞬間、時空管理局をメインシステム停止を知らせるサイレンが鳴り響く。クロノが居る司令室でも電灯は落ちて部屋を照らすのは非常事態を告げる赤い光。
先程まで鉄人を映していたモニターも機能を停止して画面は黒く塗り潰されていた。

「やられたか!?」
「でもサブシステムがあるからすぐに復旧するはず」

焦るクロノを宥める様にエイミィは言った。事実その通りで、メインシステムが機能停止すれば自動的にサブシステムに切り替わるように作られている。
このサブシステムは複数個存在しており、さらにその内のいくつかが機能停止しても管理局の機能をある程度は維持出来た。
エイミィの言う通り、メインシステムの機能停止から10秒程度でサブシステムへの切り替えは円滑に行われ、部屋を照らす電灯と鉄人を映すモニターも復旧した。
しかし画面に現れたのは燃え盛るマザーコンピューターだけで、肝心の鉄人の姿はどこにも存在しない。

「鉄人が消えた……ん? こ、これは!?」

エイミィは鉄人の所在を確かめようとサーチを起動し掛けたが何かに驚いたように手を止める。それを見つめるクロノは訝しげに問い掛けた。

「どうしたんだ?」
「サブシステムが……次々に停止していく」

自分で放った言葉にエイミィは凍りつく。彼女の使うモニター画面に表示されるのは、1番と2番サブシステム停止を告げる警告文。
次々に目まぐるしい速度でサブシステムが停止していき、その事実をただ淡々と表示する画面。
もしもサブシステムまで停止したら本局は完全に制御系統を失う事になる。そうなれば内部に入った鉄人への対抗手段を完璧に無くす所か、生命維持のライフラインまで断たれる事になる。
ライフラインが切断されると言う事は当然重力発生や酸素生成等、人間がこの本局で過ごす上で必要不可欠な環境を失う事に直結しているのだ。

「鉄人の仕業か!?」
「いや違う。これは、これは鉄人じゃないよ!」

エイミィの言葉にクロノは動揺を露わにする。鉄人ではないのなら一体誰が。そしてクロノの中で1つの可能性が浮かんで来た。

256リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/31(日) 23:53:58 ID:WbX5E6oM
「まさか伏兵が居たのか……」

クロノは今更伏兵の存在に気が付いた自分を恥じていた。鉄人は武装を装備していないから広範囲を瞬時に破壊する事を不得手としている。
アルカンシェルの破壊にわざわざ爆弾を持ち込んだ事からもそれは明らかだった。つまり目立つ鉄人をメインシステムに向かわせる事で伏兵の存在を気取られないようにする。
手薄になった警備網を伏兵が掻い潜り、重要施設を爆破する作戦。非常に単純だが鉄人と言う手札を使ったこの戦略は非常に効率的で、効果的な作戦だ。

「司令官! 鉄人28号発見! 発電施設へ向かっています!」

クロノが思案の最中、司令室のオペレーターの一人が声を上げる。今度はエネルギー供給を断つつもりなのか、クロノの頬を冷たい汗が伝い落ちた。
発電施設も非常事態に備えて複数設置されているが、鉄人であれば全て壊すのにも大した時間は掛からないだろう。
もし電力施設を全て破壊された場合、管理局は完全に機能を停止する事になる。備蓄された予備電源もあるがサブシステムが完全に破壊されれば切り替えるためのシステムが存在しない事になる。

「サブシステム損耗数6機! あっ5、4、3、どんどん破壊されていきます!」
「鉄人28号第1発電ユニット破壊! 今度は第2ユニットが爆破! 被害甚大です!」
「鉄人が第3電力ユニットに接近中! 第4ユニットは何者かによって爆破!」
「酸素生成設備が爆破されました! このままでは局内の酸素が」
「内部に火災が広がっています! 火の手が強くて消火活動が間に合いません!!」
「発電ユニット次々に破壊されています! このまま行くと本局が機能出来なくなってしまいます!」

次々に知らされる施設破壊の知らせ。もはや本局は機能停止寸前まで追い込まれていた。クロノは悟った、本局は完全に破壊されるのだろうと。
仮に重要施設の爆破を繰り返す伏兵を見つけ拘束したとしても鉄人による破壊を止める事は出来ない。全ての施設が破壊される時間が少し伸びるだけだろう。
既に敗北は、鉄人の本局への侵入を許してしまった時点で決まっていたのだ。例えアルカンシェルが使えたとしても本局に撃ち込むわけにはいかない。
始めから勝ち目などなかった。たった1機のロボット相手に次元世界を統括する管理局が敗北する。それは全世界が鉄人に屈したという証明でもあった。
たった1機に敗北。その事実を提示された局員達はついに戦意を喪失してしまったのである。そして突然クロノ達の居る司令室の機能は停止した。

「クロノ、サブシステム大破……システム完全停止」

暗闇が支配する司令室。そこに聞こえるのはエイミィからの報告の声だけ。サブシステムの大破、それは完全な敗北を意味していた。
酸素供給等のライフラインが断たれたも同然の状態。中に留まり続ければいずれ酸素がなくなり、死んでしまう事になるだろう。
そうなってはここに残る事が危険だ。敗北を噛み締める様にクロノが天井を仰ぐと通信装置にコールが入って来た。
この状況に置いて通信とはおそらく可能性は1つしかない。クロノは通信装置を開くと通話のボタンを押した。

「こちらクロノ・ハラオウン……はい、はい、はい了解しました」

3度相槌を打って何かを了承したクロノ。エイミィはクロノに向き直ると誰からの通信で何を言われたのか聞く事にした。

「クロノ今のは? なんて?」
「上層部からだ。本局を……本局を破棄する……。総員撤退準備」

257リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/31(日) 23:54:44 ID:WbX5E6oM
本局の惨状を目の当たりにした上層部は全局員の撤退命令を出した。もはや留まって戦っても勝ち目がないと考えたのだ。
クロノは悔しさに歯を食いしばりながらもこの命令に従わざるを得なかったのである。仮に残ったとしてもそれこそ命を棒を振るような行為だ。
今は逃げて体制を整え、時が来たら反撃をする。それが上層部のそして管理局にとっても一番の最善策だった。

「ここに居る者は全員クラウディアに乗って脱出。さぁ退避準備だ」

クロノは意を決して自分の部下達に伝えた。これが最善策なのだと、今は全員の命を守る事が大事なのだと。
鉄人相手に、一矢報いるか、敵わなくともせめて一太刀浴びせてやりたかったが、指揮官として仲間の安全を蔑ろには出来ない。

「どうかね諸君、敗北の味は! ハハハハハハ!」

一方のスカリエッティは、そんなクロノ達を嘲笑うかのように満面の笑みで時空管理局を見つめていた。
1年もの間復讐を望んだ相手についに報いる事が出来た喜び、その美酒は今まで味わったどんな快楽よりも素晴らしい物だった。
後に『時空管理局が制止した日』と呼ばれる日。長きに渡り次元世界に君臨した組織が壊滅した日。それはJS事件から1年が過ぎた夏の日。
そしてこの日を境に、フェイトとなのはの運命が戦争という名の坂道へと転げ落ちていく事を二人はまだ知らない。



続く。

258リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/31(日) 23:57:10 ID:WbX5E6oM
あとがき

これで第2話は終了です。
ここまで読んでくださった方、支援レスしてくださった方ありがとうございます。
スレを1時間以上独占してしまい誠に申し訳ありませんでした。次回の投稿からは2回か3回ぐらいに分けて投下したいと思います。
レスの切り方も本当は60行ぎりぎりまで詰めたいのですが、容量がオーバーしてしまうので40〜50行前後で切ってます。
管理局は内部構造が分からなかったので完全に適当です。多分実際の構造とは違うと思います。
改めましてここまで読んでくださった方、支援レス下さった方ありがとうございました。
あとがきなのに長々と書いてしまい申し訳ありませんでした。
感想や指摘などがあればお願いします。

259リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/05/31(日) 23:58:37 ID:WbX5E6oM
それではお手数ですが代理投下をお願い致します。
次回からは規制を受けないように何日かに分けて投下したいと思います。

260魔法少女リリカル名無し:2009/06/01(月) 00:00:53 ID:9AzZGg8M
代理投下に出陣してきます。

261魔法少女リリカル名無し:2009/06/01(月) 00:10:28 ID:9AzZGg8M
代理投下を終了しました。ご確認をお願いします。
何か間違いがあれば申し訳ありません。

262リリカル鉄人 ◆SwzZdVEqO2:2009/06/01(月) 00:15:35 ID:B12uJlJA
>>261
確認しました。
代理投下ありがとうございました。
次回からは分割して投下するのでこう言った事はなくなると思います。
改めましてお疲れさまでした。

263<削除>:<削除>
<削除>

264レザポ ◆94CKshfbLA:2009/06/03(水) 21:26:31 ID:te7VtcPY
 「スバル!先に行くよ!」
 「了解!ギン姉!!」
 「三番!ギンガ、突貫します!」
 
 そう言うとカートリッジを三発消費しエイミに向かっていく。
 そしてエイミの目の前まで向かうと左拳を振り下ろし更に振り上げる、ストームトゥースと呼ばれるコンビネーションである。
 だがギンガの攻撃はまだ終わらず、今度はウィングロードを螺旋の形に展開させて今度は左拳によるナックルバンカーを鳩尾あたりに打ち込む。
 
 「スバル!今よ!!」
 「応!四番スバル、ギア・エクセリオン!!」
 
 スバルが叫ぶとマッハキャリバーから片足に二枚、計四枚の翼を展開、A.C.S モードを起動させる。
 そして一気に加速するとカートリッジを二発消費、右拳に魔力が纏い、そのまま姉ギンガと同様エイミの鳩尾あたりに拳がめり込む。
 更にスバルはカートリッジを三発消費すると拳に環状の魔法陣が展開、めり込んだ拳の先には魔力弾が形成されていた。
 
 「ディバイン…バスタァァァ!!!」
 
 ゼロ距離からのディバインバスターはエイミの体内で炸裂し内側から強固な皮膚を貫き穴という穴から魔力光が溢れ出す。
 もはやとどめと思われた一撃であったが未だエイミは鋼の軛を外そうとしており、それを倒壊寸前のビルの屋上で見つめるティアナ、
 するとクロスミラージュをダブルモードに変えるとビルから飛び降り、左の銃でエイミの額あたりにアンカーショットを打ち込む、
そして一気に巻き上げ加速させると右の銃をダガーモードに切り替える、狙いは脳髄である。
 ティアナが迫る中、エイミは顔を上げティアナを見上げ口から炎を吐き出す。
 炎はティアナに直撃する瞬間、ティアナは陽炎のように消える、お得意の幻術である。
 本物は飛び降りたビルの中心、遠距離型狙撃銃ブレイズモードに切り替えたクロスミラージュを握り標準は見上げたエイミの頭である。
 
 「さようなら…エイミ姐さん…」
 
 そう一言呟くとティアナは引き金を引きファントムブレイザーを撃ち出す。
 クロスミラージュから放たれたファントムブレイザーは高密度に圧縮されており、
 エイミは小細く声を上げると頭を撃ち抜かれるのであった。
 
 …撃ち抜かれ頭部を無くしたエイミの体は轟音と共に倒れ光の粒子となって消滅、その光景を涙を流し見つめるティアナとスバル…
 すると突然フリードリヒが雄叫びを上げ、キャロは戸惑い目を向けるとその目には涙が浮かんでいた。
 
 「どうしたの?フリード」
 
 キャロの問いに答えないフリードリヒ、何故フリードリヒは泣いているのか…それはエイミが消滅する瞬間にあった。
 …ティアナの一撃がエイミの頭に直撃する瞬間、か細い声で一言「ありがとう…」と言っていたのだ。
 …エイミには元々から意識があったのか?…それとも死の一瞬だけ意識を取り戻すのか?
 それはもう分からない…だがフリードリヒの耳には確かにエイミの感謝の言葉が届いていたのだ。
 フリードリヒはまるで弔うように涙を浮かべ何度も雄叫びを上げるのであった。
 
 
 一方、一部始終を見ていたルーテシアはモニターを閉じガリュー及び地雷王を送還する。
 
 「いいのか?ルールー」
 「……私の目的は果たしたから」
 
 そう言ってレリックケースをアギトに見せ足早に去ろうとした瞬間、
 アギトはバインドに縛られルーテシアの右コメカミ辺りにはラテーケンフォルムが向けられていた。
 
 「やっと見つけたぜ、テメェラ」
 
 ルーテシアの後ろにはヴィータが睨みつけており、レリックケースを置くように指示すると温和しく従い手を挙げる。
 ヴィータ達はベリオンをぶっ飛ばした後出口へと向かい崩壊前に脱出していたのだ。
 その後巨大な竜が姿を現し、ヴィータはあの少女の仕業だと考えリインに少女の詮索をさせその後に発見、現在に至ったのである。
 その後しばらくしてヴィータの連絡をもらったスバル達が駆けつけ、レリックケースをキャロに持たせるヴィータ、
 スバルとティアナは複雑そうな面持ちでルーテシアを見つめていたが、当人は涼しい顔をしていた。

265レザポ ◆94CKshfbLA:2009/06/03(水) 21:27:47 ID:te7VtcPY
 
 ルーテシアはバインドにて縛られていると、クアットロからの念話が届く。
 
 (…ルーお嬢聞こえていますかぁ?)
 (……クアットロ、今まで何していたの?)
 
 ルーテシアの問いかけにクアットロは説明を始める。
 ルーテシアが地下水路で戦っている頃“鍵”を回収する為シルバーカーテンを用いて隊長クラスを足止め、その隙にセインが回収するハズであったのだが、
管理局はヘリを用意し“鍵”を運ばれるところであった。
 そこで第二プランの強襲による“鍵”回収を試みる為ディエチがイノーメスカノンをチャージ中、地雷王の地震に竜化したエイミの暴走が影響してヘリを飛ばす事が出来なくなったのである。
 だが今は地震王もエイミもいない為強奪にはもってこいの条件であると語る。
 今セインはルーテシアの近くにおり、レリックケース回収後、ルーテシアも回収するという。
 
 (其処で強襲の切っ掛けとなる合図の言葉を言ってほしいんですぅ)
 (……分かったそれで何をすればいいの?)
 (慌てないでねぇ、まだディエチのチャージが―――)
 (早くして……私…じらされるのは嫌いなの……)
 
 ルーテシアの言葉に両の手のひらを広げ肩をすくめるクアットロ、
 仕方ないと考えたクアットロは眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべるとあの紅い魔導師に向かってこう言うように仕向けるのであった。
 
 一方ヴィータ達はヴァイスが操縦するヘリを見送ると、ルーテシアに目を向ける。
 
 「取り敢えずてめぇは公務執行妨害で逮捕だ」
 『逮捕は良いけど……大事なヘリは放っておいていいの?……また貴方は…守れないかも』
 
 その言葉にヴィータの目が蒼くなる、この少女は八年前の事件の事を知っているんじゃないのか、
 そう考え詰め寄ろうとした瞬間、リインが強力なエネルギーを感知したと、そしてその方向に指を指すと其処には女性が二人おり、
 その一人が大型狙撃砲でヘリに向け直射砲を撃ち抜いた。
 ヘリは急速回避出来ず激突は免れないと思った瞬間、ヘリと直射砲との間に桜色の光が割り込み爆発を起こす。
 爆発によりヘリの周りには白煙が包まれ徐々に晴れていくと、其処にはエクシードモードを起動させたなのはの姿がありどうやら先程の光の正体のようである。
 
 一方ヴィータはヘリの無事を確認していると、キャロの叫び声が上がり目を向ける。
 其処には水色の髪の少女の姿があり、手にはキャロから奪ったレリックケースが握られていた。
 ヴィータはその少女を捕まえるように指示するが女性は腰に付けた手榴弾のような物を投げつけると、まるで水面を潜るように道路の中を潜った。
 すると置き土産である手榴弾のような物が光を放ち爆発する。
 
 「くっ!閃光弾か!!」
 
 目をくらましつつ周りを確認すると既にバインドが解かれた二人を抱えている姿があり、ヴィータは必死に捕まえようと飛びつくが健闘空しく空振りに終わる。
 そしてリインは反応を調べるが対象は既にロスト、逃げられたという空しい事実だけが現場に残されているのであった。

266レザポ ◆94CKshfbLA:2009/06/03(水) 21:30:02 ID:te7VtcPY
 一方クアットロとディエチはなのはに追われていた。
 ディエチが手にしていたイノーメスカノンは重すぎるため現場に放棄、ビルの屋上を飛び移りながら逃走していた。
 
 「待ちなさい!」
 「待ちなさいと言って待つ人なんていませんよぉ」
 
 そうクアットロは軽口を叩くとカンに障ったのかアクセルシューターを撃ち出される。
 するとディエチは右足に力を込め思いっきり踏み込み跳躍、体を半回転しつつ腰に付けていたスコーピオンを抜くとアクセルシューターを迎撃した。
 そして逆さまから落ち掛けたところをクアットロが足をつかみ難を逃れる。
 
 「助かったわぁ、ディエチ」
 「こっちも助かった」
 
 そんな事を言いながら逃走を続ける二人、それを追うなのはにフェイトが追加されこのままでは本当にまずいと考えるクアットロであった。
 
 一方逃亡者を追いかけているなのはとフェイトの下に一つの念話が届く。
 
 (此方はエインフェリア、クロノ提督の名の下援護します)
 
 その聞き慣れない名前に困惑するもクロノの名が出た為、信用する二人、
 二人はエインフェリアに指定された位置に向かうこととなった。
 
 一方、エインフェリアのゼノンとカノンは海上を離れなのは達が追っていた場所を確認する。
 
 「さて…何を撃つつもりだ」
 「空を飛ぶ物にはこれが相応しいだろうな」
 
 そう言うと左手に雷を走らせるゼノン、その考えに乗ったカノンもまた雷を走らせると魔法陣を展開させる。
 そして二人の目の前に稲光が走る球体が出来上がるとゼノンは右、カノンは左に撃つこととなり
 そして――――
 
 『サンダーストーム』
 
 撃ち出された魔法は真っ直ぐ現場に向かって進むのであった。
 
 一方で隊長クラスの追撃を受けなくなった二人は少し戸惑いを見せ後方を見据える。
 何も起きない、まるで嵐の前の静けさだなと考えていると上空に稲光が起きている物を発見する。
 
 「あれは…グラビディブレスぅ?」
 「いや…違うと思うけど、多分あれは……」
 『広域攻撃魔法!?』
 
 二人は声を合わせてそう言うと二つのサンダーストームは広がりを見せる。
 その広がりの早さにクアットロは焦りつつ飛び抜けるが、後方ではサンダーストームから無数の雷がクアットロ達目掛け落ちていた。
 
 「きゃああああ!?」
 「ちょっと、クアットロ姉さん!?もっと高く飛んで頭が擦れる!!」
 
 しかし上昇すればあのサンダーストームの渦に巻き込まれる、しかし低いままでもあの雷の雨にやられる。
 クアットロは再度シルバーカーテンを使用して自分とディエチの姿を消すのであった。

 一方なのはとフェイトは指定された位置で周囲を確認していると、先程の二人組が姿を現す。
 
 「ビンゴ!行こうフェイトちゃん!」
 「分かった、なのは」
 
 そう言うとなのははレイジングハートを二人に向けカートリッジを一発消費し、フェイトは左手をかざしカートリッジを三発消費する。
 そして互いの足元に魔法陣が展開され魔力弾が形成されていく。
 そして――――

267レザポ ◆94CKshfbLA:2009/06/03(水) 21:31:17 ID:te7VtcPY
 
 「エクセリオンバスター!」
 「トライデントスマッシャー!」
 
 二人の魔法はクアットロ達を挟むように放たれ、クアットロ達は逃げられないと覚悟する。
 そして二つの魔法がぶつかり合い相殺され辺りには魔力の残滓が舞っていると、
 二人を片手ずつ掴む紫の短髪の女性が佇んでいた。
 どうやら監視役としてスカリエッティに派遣されたようだが、妹達のピンチに思わず手を出したようである。
 
 「たっ助かりましたぁトーレ姉」
 「…早くディエチを連れて行け、しんがりは私に任せろ」
 
 トーレの言葉に甘えるようにクアットロはディエチを抱えシルバーカーテンを使ってその場を後にする。
 するとなのは達が逃がさないとばかりに追うとすると、
 トーレの両手足にエネルギーの翼を展開、そして瞬間移動を彷彿させるようなスピードで
 なのはの腹部にミドルキック、更にフェイトの腹部にも後ろ蹴りを与えそのまま退避した。
 その一瞬の出来事になのはは痛む腹部を押さえ困惑する中、
 フェイトは先程の女性の速度はかつて自分が使っていたソニックフォーム、もしくはそれ以上の速度を出していたと考えていた。
 
 
 なのはからの連絡を受けたヴィータは今回の失態は自分のせいだと話し、ギンガもまた同じ事を言っていた。
 その中、恐る恐る手を挙げるティアナ、ヴィータ達には忙しくて連絡が遅れていたが、
 スバルとティアナはレリックケースに仕掛けをして置いたと話しヴィータとギンガは首を傾げる。
 
 一方“鍵”回収チームは合流地点に次々に集まり、其処にはベリオンの姿もあった。
 今回、回収出来たのはレリックケース一つ、その事をどうドクターや博士に報告しようか考えていると、セインがレリックを見たいとダダをこね始める。
 トーレはやれやれと言った表情を見せつつ了解するとセインは早速レリックケースの鍵を開錠、ふたを開けると中にはレリックは一つも入ってはいなかった。
 
 「なんでぇぇぇぇぇ?!」
 「…してやられたようだな」
 
 中身は空っぽ今回の任務は徒労に終わり疲れがドッと出るメンバーであった。
 
 一方行方知れずのレリックはキャロの帽子の中に隠されていた、戦闘面では後方支援のキャロに持っていてもらえば安全だとティアナのが出した提案であった。
 その事にヴィータとギンガは苦笑いを浮かべていると、ヴィータがあきれた様子で話し始める。
 
 「しっかし、いくら後方支援でもよく大丈夫だったな」
 「えっ!?」
 
 ヴィータの言葉に目を丸くするキャロ、レリックは高エネルギーの結晶体、いくら封印処置をされていても、
 魔法が直撃すれば暴走する可能性があると語り、その言葉に冷や汗を垂らすキャロ、そして恐る恐る聞いてみた。
 
 「もし…暴走させたら?」
 「そりゃあもちろん……頭がパーン」
 
 そう言って頭が爆発する様子をジェスチャーするヴィータに顔を青ざめるキャロ、
 そしてキャロは涙目でティアナに抗議するのであった。
 
 
 
 一方ゆりかごに戻ったクアットロ達はレザードとスカリエッティが待つ部屋に向かう。
 そして今回の一部始終を話すと腕を組むスカリエッティ、その行動に息をのむ一同。
 
 「つまり“鍵”もレリックも管理局側に回収されてしまったんだね」
 「申し訳ございません、ドクター」
 「まぁ、仕方がない、今日は疲れただろう…もう休みなさい」
 
 そう言って皆を帰らせるスカリエッティ、一同はその行動に疑問を感じるも一礼して部屋を後にした。
 暫く静寂が包み込む中、レザードの口が開き始める。
 
 「いいのですか?お咎めなしで」
 「あぁ、“鍵”はまた回収しに行けばいいからね」
 
 それに地上本部を崩壊させるきっかけにもなると、狂喜に満ちた表情を現すスカリエッティであった……

268レザポ ◆94CKshfbLA:2009/06/03(水) 21:32:57 ID:te7VtcPY
 以上です、ナンバーズ、機動六課と接触な回です。

  次回はまた中休みってな回です。
 
 それではまた。

269レザポ ◆94CKshfbLA:2009/06/03(水) 21:34:10 ID:te7VtcPY
そして引っかかりました、申し訳ありません。

270レザポ ◆94CKshfbLA:2009/06/03(水) 22:05:09 ID:te7VtcPY
投下を確認、代理投下ありがとうごさいました。

271無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:39:46 ID:XcU6r8Tw
たびたび申し訳ありません。未だにアクセス規制が解けないので、代理投下をお願いします。
前回、前々回は段落毎の文字数が多いがためにご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。今度は大丈夫だと思います。
次レスから投下をお願いします。

272無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:42:20 ID:XcU6r8Tw
リリカル×ライダー第6話です。
本当は週刊投稿をしたかったのですが、執筆速度が遅くてずれてしまいました。
では読んでくだされば幸いです。

273無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:43:16 ID:XcU6r8Tw
 服がない。
 一週間以上も経過して初めて気がついたことだった。
 制服と元々着ていたシャツとジーンズ。下着も貰ったのを含めて二組しかない。何故これでまともに生活が送れたのか不思議に思うほどだ。
 それを相談して最初に反応したのが何故か、ティアナだった。



     リリカル×ライダー

     第六話『覚醒』




 俺がその事態に気付いたのはこんな経緯があったからだ。
 あれはなのはからの特訓が終わった後のことだった。
「動きが甘かったぜ。あれじゃ狙撃されちまうぞ?」
 隊舎のドアに手をかけた直後、背中から声がかかった。
 六課では数少ない男性の声。心当たりがあったので振り向けば見事に的中していた。
「ヴァイスさん、驚かさないでくださいよ」
「悪りぃ、悪りぃ。がら空きの背中が目に付いちまったんで思わず、な?」
 彼はヴァイス・グランゼニック。六課では数少ない男性の前線要員だ。とはいえスターズ分隊、ライトニング分隊に所属しているわけではなく、彼はフォワード陣を運ぶヘリパイロット兼スナイパーなのだ。
 今はほとんどスナイパーとして活躍しているらしい。非殺傷設定という便利な機能がある魔法と狙撃は相性が良いとして、質量兵器が禁止されている管理局では重宝されているそうだ。
 ちなみに俺はこの人に不思議な懐かしさを覚えたことがある。先輩というところや射撃が得意というところに。親しくしているのはそれも理由の一つなのかもしれない。
 加えて、下着をくれたのもこの人だ。無論、新品を。
「しっかしカズマもお疲れだな。あそこまでシゴキ上げられるなんて」
「いえ、俺がまだまだなだけですよ」
「ちげぇねぇ」
 ヴァイスさんが笑う。彼とは外見的な年齢はほとんど変わらないのだが、本人がベテランだからか、先輩みたいにして付き合っている。

274無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:44:02 ID:XcU6r8Tw
「そういえばカズマが着てる服ってそのシャツとジーンズしか見ないな」
「これしか持ってないですから」
 俺の台詞に、ヴァイスさんは目を吊り上げた。
「買えよ!」
 当然と言えば当然の台詞が返ってきたのだった。



     ・・・



「――てなわけで、どこに買いにいけばいいんだ?」
 あれから約30分経つ。ヴァイスさんは今から仕事とかで何処かに行ってしまい、仕方なく食堂に来ていた。そしてそこにいた隊長陣とフォワード陣に説明していた所だった。
「それは大変ですー。今からリィンがお店を検索してあげるのです!」
 騒がしい喋り方をするこいつはリィンフォース・ツヴァイという。妖精みたいな身長で飛び回っている奴で、もちろん人間ではない。彼女はユニゾンデバイスなんだそうだ。
「ありがとう、リィン」
「でもそれなら誰か案内してあげた方がええな」
 はやてが腕を組んだ状態で発言する。確かに機動六課の敷地から出たことがない自分には案内人がいた方が良いだろう。
「それならヴァイスさんを――」
「ヴァイス君はいないよ。確か三日間出張だって」
 魔導師として復帰してから忙しいんだよ、と続けるなのは。
「なら私が案内しようか? クラナガンに用事あるし、先日の詫びも含めて」
 そう提案するのはフェイトだ。彼女も前に俺のことをあれこれ勘繰っていたことをこっそり謝ってきたのだが、ティアナやスバルのような必死の形相みたいな感じではなかったからか、応対もしやすかったのを覚えている。
 彼女なら用事と重なるみたいだから問題ないか。
「じゃあお願――」
「あたしが行きます!」
 いきなり大きな声が鼓膜を揺さぶった。
 出したのは意外な人物だった。
「ティア?」
「あたし、クラナガンのお店とか結構詳しいですし、その、迷惑もかけましたし……」

275無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:44:49 ID:XcU6r8Tw
 途中で尻すぼみになっていくティアナ。だんだん恥ずかしくなってきたのか頬が赤い。隣でスバルも唖然としていた。
 しかし何故にティアナが?
「わ、わかった。じゃあティアナ、頼むよ」
 俺もここで断るのは悪いと思ったので、その好意に甘えることにした。
 これが冒頭に至るまでの経緯だった。



     ・・・



 クラナガンというミッドチルダの首都に行く方法は、なんとバイクだった。ヴァイスさんのバイクを借りて行くらしい。無論、ティアナは免許を持っているそうだ。
「あたしの後ろでしっかり捕まってなさいよ」
 そう言いながら真紅のバイクに跨がるティアナ。自分の知識とは違う独特なハンドル。独特な形状。
 やはり俺はこの世界に住んでいた訳ではなさそうだ。
 ゴーグルと帽子を投げ渡される。着けろということか。
「ヘルメットとかないのか?」
「あるけど、あたしは持ってないわよ?」
「なら仕方ないな」
 頼りないが無いものはどうしようもない。
 俺はゴーグルとヘルメットを付けるとティアナの後ろに飛び乗った。
 セクハラで訴えられたくないのでバイク側面のグラブバーを掴む。
「二人とも、気を付けてね」
 声をかけてきたのはフェイトだ。なのはは今訓練中で送りにはこれなかったのだ。代わりにフェイトは自分が外出の用事もあるのでセットで見送りに来てくれたわけだ。
「はい、行ってきます!」
 ティアナが彼女に返事を返す。俺は片手を挙げてそれに応えた。
「行くわよ」
 ティアナの掛け声と共に、思ったよりもずっと軽やかなエンジン音が鳴りながら真紅のバイクは疾走を開始した。

276無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:45:24 ID:XcU6r8Tw



     ・・・



「ふむ、ようやくか」
 男の見る先、モニターに緑色の怪人が移る。半透明の羽根と特徴的な足からバッタを連想させる外見。画面の隅には【Spade 5】と表示されていた。
他のモニターには様々な外見の怪人が映っている。
「記憶は再生する。君は私を恨むだろうな」
男が呟く。その壮年の顔は何所か笑っているようにも、泣いているようにも見える。
 コンソールを弄ると彼の目の前に広がる巨大なモニターに市街らしき俯瞰図と座標が表示される。青い光点と、赤い光点。それはいったい何を指しているのか。
 二つの点は、今一つになろうとしていた。



     ・・・



「広かったな〜」
 カズマが感心したよいに声を上げる。その両手に買い物の跡は全くない。ミッドチルダ転送魔法を応用した輸送システムが手ぶらの買い物を可能としている。
「まぁ、首都だしね。あそこのショッピングモール、良いのが置いてあったでしょ?」
「値段見ないで決めたけど良いのか?」
「アンタの給料から天引きされるだけよ」
「それを早く言えよ!」
 カズマとティアナ、二人は騒ぎ合いながら目的地へと向かっていく。ビル一つ丸ごと駐車場にした巨大な建物に。
 入った中は螺旋式構造になっており、二人はその中央を貫くエレベーターに入った。
「三階だったよな」
「当然でしょ」
 ティアナの言い方にカズマは顔をしかめるが、慣れたのか何も言い返さない。

277無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:47:53 ID:XcU6r8Tw
 程なくして到着を知らせる鐘の音が鳴った。
「着いたわ。さ、行くわよ」
「ああ、どこに停め――」

 ――ドクン。

 今、カズマの何かが警鐘を掻き鳴らした。
「ティアナ! 何かいるぞ!」
「はぁ?」
 呆れたようにカズマを見つつも自らのデバイス、クロスミラージュを起動させて索敵を行うティアナ。彼女の相棒はすぐに回答を導き出した。
『There is unknown in this floor.』
「何ですって!?」
 己のデバイスの発言にティアナが目を見開く。
「なんで分かったの?」
「こっちだ!」
 ティアナの発言を無視し、カズマは何かに取り付かれたかのように走る。ぐるぐると、螺旋式の建物を回り込むように。
 そして到着した現場には、胸から血を吹き出す人間と、異形の怪人が存在した。
 昆虫を思わせる半透明の羽根、緑色の肢体、バネのような脚。
 怪人はカズマを見ると即座に羽根を展開して外に飛び出していった。

 ――ドクン。

「ティアナはそこの人を頼む! 俺はあいつを追う!」
「何言ってるの!? アンタは実戦に出たことすらないでしょ!」
「今あいつを追えるのは俺だけだ!」
 カズマはベルトに下げたウェストポーチからチェンジデバイスを取り出す。即座に変身して、背中のブースターを展開しながら怪人を追うために飛翔した。
 ティアナはそれを、口惜しげに眺めるしかなかった。

278無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:48:27 ID:XcU6r8Tw



     ・・・



(俺はあいつを、あの化け物を知っている……?)
 カズマが胸中で自問する。その内容は彼の目の前を飛ぶ飛蝗似の怪人について。怪人はヘリポートらしい広いビルの屋上に降り立っていた。
 カズマも追随する形で屋上に降り、腰からナックルガードが不自然に喪失している剣を引き抜く。彼はその剣を構えながら、じりじりと距離を詰めていく。
(こいつは、俺の記憶の手掛かりなのか?)
 カズマの疑問は晴れない。だがやるべきことは変わらない。その剣を迷い無く構えたまま、怪人に向かって走り出した。
 怪人は小さな飛蝗を大量に発生させ、カズマの行く手を防ごうとする。だがカズマの進行は止まらない。
「うあぁぁぁぁ――!」
 剣を振り回して飛蝗を叩き落とす。例え斬撃を免れようと、それらが彼を阻むことは決して出来ない。カズマの強固なバリアジャケットの装甲は、そんなひ弱な飛蝗を全て弾いていく。
 怪人は飛蝗達での迎撃を諦めたらしく、カズマに蹴りかかった。
 激しい回し蹴り。
 だがカズマはその脚を避けながらカウンター気味に斬り返す。
「ギィィィィィ!」
 怪人の金切り声に近い叫び声が響く。鼓膜を揺らすそれにも怯むことなくカズマは剣を振り上げる。
『Slash』
「うぉあぁぁぁぁぁ!」
 青白い光を纏った剣が、怪人の腹を横断した。
「ギィィィアァァァ!」
 鼓膜が破れそうな断末魔と共に怪人は崩れ落ちた。
 バックルのような腰の装飾が二つに割れる。
「た、倒した……」
 ようやく倒した、とため息混じりにぼやきながら、すぐに通信の準備を始めるカズマ。だが――――

279無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:49:10 ID:XcU6r8Tw
「ギィィイィィ!」
 ――――怪人は、再び脚を振り上げていた。
「な、ぐぁ!」
 カズマのがら空きの背中に怪人の蹴りがヒットし、吹き飛ぶ。その足の傷はすでに治っている。
 カシャン、とバックルが閉まる音が無惨に響いた。
(倒せなかった……!?)
 カズマが仮面の下で驚愕の表情を浮かべる。今完全に倒したと思い込んでいた怪人が、たった数十秒で再生するなど考えられなかった。
(いや、本当にそうか?)
 カズマが怪人を凝視する。
 特徴的な緑色の昆虫じみた肌。半透明の虫を思わせる羽根。そして、何らかの装飾品らしきバックル。
 そのバックルに、カズマの視線は吸い寄せられていた。

 ――アンデッドは絶対に死なない。

(何!?)
 自らの頭に浮かぶ知識。だが記憶を失っている彼には知る由もないもの。
 だが知っている。かつての自分が持ち得た知識。そう知っているはずだ。
「くっ!」
 再び蹴り飛ばされて剣を落とす。だがそんなことに構ってはいられなかった。

 ――アンデッドはカードに封印するしか倒す方法はない。

 次々と泡のように浮かび上がる知識。知っている。記憶を失ったから忘れたわけじゃない。これは、自ら封印した“知識”だ。

 ――そして封印できるのは仮面ライダーと……

 そして知識と共に断片的な記憶が蘇る。そう、それは最も封印しておきたかった記憶。
 知ることは罪だ。何故なら、知ればもう知る前には戻れないのだから。

 ――……ジョーカーだけだ。

 そうだ、俺は。

「うぁぁぁぁぁ!」
 カズマがベルトをむしり取り、変身を解く。だがそこには、新たなベルトが出現していた。
「あああああっ!」
 緑色の宝石を抱くハート型のバックルと金属質な帯で構成されたベルト。
 そこを起点に、一瞬にしてカズマの体が変わった。
「あぁぁぁぁあぁぁぁ!」
 透明なフェイスガードに守られた凶悪な吊り目。血肉を喰らい尽くすためだけにあるような鋭い歯牙。頭から伸びる噛み切り虫のような一対の触覚。緑色のしなやかな肢体。腕から生えた鋭利で長い刃物のような突起物。
 そんな外見に変貌したカズマが怪人に襲い掛かる。
 勝負は、一瞬だった。

280無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:49:47 ID:XcU6r8Tw



     ・・・



「ティアナ? うん、うん……分かった。すぐ行くから」
 ティアナとの通信を切る。彼女からのエマージェンシー。カズマが一人で殺人未遂の犯人を追いかけているらしい。近くにいる私がすぐに救援に向かわなくては。
(でも、化け物ってどういう……ううん、今は目の前のことに集中しないと)
「バルディッシュ、行くよ」
『Yes, sir.』
 バルディッシュを起動、一瞬でバリアジャケットを装着する。三角形の飾りから戦斧へと変化したバルディッシュを片手に空に飛び上がる。
「はやて、緊急事態だから飛行許可を――」
『――もう取っとるよ。早くカズマ君を助けに行ってあげてな』
 はやての判断の迅速さは流石だ。現場が必要としているものを素早く用意出来る能力は、指揮官として無くてはならないものだろう。それをはやては若くしてすでに獲得していた。
「うん、ありがとう」
 もはや何の憂いもなく空を舞うように飛ぶ。六課最速の魔導師と言われるのだから、その名前に恥じぬよう早くカズマの元に駆けつけなければ。デバイスを起動しているのだろう、魔力反応も拾うことが出来た。
「見えた!」
 そこはミッドでもそれなりに大きい方のビル。頂上に広大なヘリポートがあり、そこにカズマの反応があった。……もっとも、数瞬前には反応が消えてしまったのだが。
(無事、かな)
 先程送っていったばかり故に、やはり気になる。
「カズマ!」
 ようやく辿り着いた屋上で、カズマは倒れていた。何か、カードらしいものを握り締めて。
「大丈夫? しっかりして」
 揺らしてみるが反応はない。けれど動脈を調べたらきちんと脈はあった。安心した。

281無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:50:38 ID:XcU6r8Tw
(でも、どうして外傷もないのに気絶してるの?)
 追っていたらしい犯人も見当たらない。カズマが無事なのと犯人の不在という矛盾。まさかあの短時間でカズマを気絶させて逃走したというのか。なら何故カズマをわざわざ生かして……?
 だが考えにふけってばかりもいられない。私はカズマを抱き上げチェンジデバイスを拾うと、その場を後にした。



     ・・・



 ――来ないで、来ないで!

 ――よるな、化け物!

 ――近寄っちゃダメよ!

 ――知らない、お前なんぞ知らない!

 頭に響く怨嗟の声。老人、若人、男性、女性、その全てが俺を拒絶する。彼等は悲痛な叫び声を上げながら必死に逃げていく。追いかければ怖がられ、いるだけでも拒絶される。

 ――お前なんぞ消えろ!

 ――この化け物め!

「違う、違う! 俺は、化け物なんかじゃない!」
「か、カズマ君?」
「うわぁぁぁあぁぁぁ!」
 ベッドからカズマが飛び上がる。それを傍にいたシャマルが慌てて押さえ付けた。
「大……丈夫?」
 柔らかな金髪を揺らしながらカズマの顔を覗き込み尋ねる。その顔はすでに医師としてのものに切り替わっていた。

282無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:51:16 ID:XcU6r8Tw
「違う、違うんだ……」
「分かってる。分かってるわ」
 シャマルがカズマの背中を擦る。しばらくそうしている内に、カズマは落ち着いていった。
「――シャマル、さん?」
「ようやく分かった?」
 彼の問いに柔らかな笑みを湛えながら彼女は答える。彼女はベッドから立ち上がり、デスクのチェアに腰掛けた。
「ここは、医務室、ですか」
「これで三度目よ。もう常連さんになってるわね」
 くすりと微笑みながら彼の状態をカルテに書き記していく。個人情報保護には電子媒体より紙の方が優れているため、彼女は紙のカルテに書き込んでいた。
「うなされてたみたいだけど、もう大丈夫?」
 その質問に表情を強張らせながらも答える。
「はい、もう大丈夫、です」
 シャマルはちらりと彼を覗きながらすらすらとペンを走らせていく。
 その時、唐突に医務室の扉が開いた。
「シャマル、カズマは……って、起きたの?」
「あ、ああ、今さっきな」
 入ってきたのはフェイトだ。
 カズマもシャマルも少し驚いた表情を浮かべる。特にカズマは意外な来訪者に戸惑い、応対もぎこちないものになっていた。
 もっとも、当人はおろかフェイトですらそのことに気付かないほど二人とも冷静ではなかったのだが。
「そっか、良かった。私が着いた時はすでに倒れてたから心配してたんだ」
 フェイトはここに来た経緯を話す。
 本当は事件の処理は執務官であるフェイト自身がすべきなのだが、ティアナは執務官志望であり、経験などを付けた方が良いとの判断で今回の事件の報告などはティアナが行うことになったらしい。
 そして手が開いたフェイトは気掛かりだったカズマの元へ来たと言うわけだった。
「ところで、どうしてあそこで倒れてたの?」
「それは……」
 口を開こうとしてそれが出来ず、顔を背けるカズマ。寝ていたにも関わらず彼の顔にはうっすらと隈が浮かび上がっており、表情は沈痛なものに歪められている。普段とはまるで別人になってしまったようだ。
「答え、たくない」
 いつものカズマからは考えられない変化。
 二人は、何も聞くことが出来なかった。



     ・・・



 自らの正体を思い出し、過去に押し潰されるカズマ。だが彼を嘲笑うように不死の怪人達は彼を奈落へ誘う。
 一方の六課も、本局から大事件の知らせが届いていた。

   次回『逃走』

   Revive Brave Heart

283無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:57:25 ID:XcU6r8Tw
以上です。
今回で遂にカズマの正体を暴露しましたが如何だったでしょうか?
とはいえカズマの記憶はまだまだ穴だらけです。これからもお楽しみください。
御批評、御感想をお待ちしております。

284無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/03(水) 22:58:22 ID:XcU6r8Tw
これで代理投下分は終了です。
ではどなたか、よろしくお願いします。

285"IDOLA" came to magical land ◆iNYgbJQaCg:2009/06/03(水) 23:35:51 ID:GvJaNjzU
規制されました・・・代理投下お願いします。

286"IDOLA" came to magical land ◆iNYgbJQaCg:2009/06/03(水) 23:36:24 ID:GvJaNjzU

{大規模な時空震を確認しました!本部より南々東7kmより膨大な魔力反応あり!現在、目標の詳細を調査中!}
機動六課の隊舎で、アラームが鳴り響いた。
すぐさま六課の隊員は出撃の準備をし、八神はやての所に集まった。
「目標の解析が終わったらまずフェイトちゃんとスバルが出動して、フェイトちゃんは一足先に目標の確認。スバルはフェイトちゃんと合流した後、目標の調査や。調査物が危険物だったり、途中で襲われたりした場合は無理に応戦したり追撃するのはダメやで!もし二人じゃどうしようもなくなった時は、一旦本部に退くこと!」
はやてがそう言い終えると、いいタイミングでスピーカーから解析結果が流れた。
{出現した魔力反応を解析した結果、一つはロストロギア『ジュエルシード』と酷似しています!もう一つは解析しましたが、過去のデータに同じようなロストロギアの存在は確認できません!}

ジュエルシードと聞いた途端、フェイトの頭の中でパニックが起きた。
現在六課が管理しているジュエルシードは12個である。
21個あるジュエルシードの内、確認できてないのは9個、その中にはもちろんフェイトの母親のプレシアの分も含まれている。
母の形見と言える物が今、この世

287"IDOLA" came to magical land ◆iNYgbJQaCg:2009/06/03(水) 23:37:06 ID:GvJaNjzU

{大規模な時空震を確認しました!本部より南々東7kmより膨大な魔力反応あり!現在、目標の詳細を調査中!}
機動六課の隊舎で、アラームが鳴り響いた。
すぐさま六課の隊員は出撃の準備をし、八神はやての所に集まった。
「目標の解析が終わったらまずフェイトちゃんとスバルが出動して、フェイトちゃんは一足先に目標の確認。スバルはフェイトちゃんと合流した後、目標の調査や。調査物が危険物だったり、途中で襲われたりした場合は無理に応戦したり追撃するのはダメやで!もし二人じゃどうしようもなくなった時は、一旦本部に退くこと!」
はやてがそう言い終えると、いいタイミングでスピーカーから解析結果が流れた。
{出現した魔力反応を解析した結果、一つはロストロギア『ジュエルシード』と酷似しています!もう一つは解析しましたが、過去のデータに同じようなロストロギアの存在は確認できません!}

ジュエルシードと聞いた途端、フェイトの頭の中でパニックが起きた。
現在六課が管理しているジュエルシードは12個である。
21個あるジュエルシードの内、確認できてないのは9個、その中にはもちろんフェイトの母親のプレシアの分も含まれている。
母の形見と言える物が今、この世界に現れたのだ。

―――もし誰かに奪われたら?
「・・・イト・・・・・・」
―――もし何かが原因で壊れたら?
「・・・・イト・・・ちゃん」
―――もしこの世界から消えてしまったら?
「フェイト・・・・ちゃん」
―――もしこれが最後のチャンスだったとしたら?

「フェイトちゃん!」
「えっ?」
フェイトは漸くはやての声に気がついた。
「大丈夫ですか、フェイトさん?」
後ろからはスバルが声をかけている。
「ごめん、ちょっと考えごとしてて・・・」
「今はそんなことしてる余裕は無いで!」
そう言うとはやては、中央のモニターを指差した。
そのモニターでは出現したロストロギアが点で表示されてる他に、二つの小さな点がそれに近づいていた。
「誰かがロストロギアの反応があった場所に近づいとる!少なくとも管理局の人じゃないのは間違いないわ!このままだと危険や!」
はやてがそう言うと、フェイトとスバルはすぐに本部を飛び出した。

288"IDOLA" came to magical land ◆iNYgbJQaCg:2009/06/03(水) 23:37:40 ID:GvJaNjzU

一方、モニターに映っていた二点の正体であるナンバーズのセインとウェンディは、反応があった場所に到着すると、その目標の異様さに息を呑んだ。

そこに居たのは、毒々しい色の巨人だった。
右手は、刃は白く、刀身は黒い大剣と同化していて、左手はボウガンのような形をしていた。
体のあちこちに黄色や緑色の模様があって、何かが流れてるように見える。
胴体の部分に口みたいなのが付いており、頭には目らしい黄色の模様以外は何も無い。
こう説明すると、ただの気持ち悪い生物にしか見えないが、セインとウェンディは、そこから溢れ出る神々しいのか、それとも逆なのかわからない威圧感で、そんなこと考えもしなかったようだ。
「うわぁ・・・息苦しい・・・」
「さっさと目標物を手に入れて帰りたいッス・・・」
二人がそう愚痴ると、セインはジュエルシードを探しだした。
ウェンディは巨人の左手に近づき、ライディングボードでボウガン状の手の弓の部分を削り取ろうとした。が、硬くて中々削れない。
「ここらへんに落ちてたはずなんだけどなぁ・・・」
一方、セインはジュエルシードを探していたが、見つからない。

ウェンディが、やっと押せば折れそうな細さにまで削ったところでスカリエッティから連絡が入った。
『あと一分ぐらいで六課のお出ましだよ。目的の物は取れたかな?』
「「あと一分!?」」
ウェンディとセインがハモると、ウェンディは焦ってライディングボードを折れそうな部分に楔のように差し込んで、ボウガンの弓の部分を押しだした。
へし折るつもりだ。
セインも先程よりもよく見て落ちてないか再確認した。
しかしウェンディの方は予想外の抵抗を受け、力を込めるも折れず、セインも結局同じ場所を回るだけとなった。
「セイン!ちょっと手伝ってくれないッスか!?」
「ちょっと!ジュエルシードはどうするの!?」
「見つかるかわかんないのより見つかっていてもうすぐ取れるやつの方が確実ッスよ!そんなことより早くして欲しいっす!六課が来るッスよ!」
「うぅ・・・姉の威厳が・・・」
最終的にはセインがウェンディを手伝うことになったが、押している間も「威厳が・・・」と呟いていた。

289"IDOLA" came to magical land ◆iNYgbJQaCg:2009/06/03(水) 23:38:32 ID:GvJaNjzU

フェイトが到着すると、まずは巨人の威圧感に圧倒されたが、立ち止まってる場合じゃないと自分に一喝し、再び歩き始めた。
そしてよく近づいてみると、巨人の左手の辺りで何かしているセインてウェンディの姿を確認できた。
まだフェイトには気づいてないようだ。
フェイトはこれを好機に、頭を下げて巨人に身を隠しながら徐々に近づいた。

「ウェンディ!まだ取れないの!?」
「もう少しッス!」
残り10mの所でフェイトは二人が何をしているのかがやっとわかった。
(どうしてあんなのを・・・)
フェイトがそう思った次の瞬間

パン

「っ!?」
突如フェイトの近くで爆竹を鳴らしたような音がした。
これはウェンディが予め巨人の周囲に仕掛けておいた罠である。
彼女のISを応用させた技であるフローターマインを可能な限り小さくして、よく目を凝らして見ないとわからないようにする。
もちろんそこまで小さくすれば殺傷能力はなくなるのだが、音が鳴るので、例え姿が見えなくても誰かが来たのがわかるようになっている。

ポキッ

フローターマインの音と同時に、左手の弓部分が折れた音が響いた。
「やったッス!折れ「ウェンディ!」―えぇ!?」
セインはフェイトに気づいてないウェンディを掴み、ライディングボード、そして折れた部分を拾うと、そのまま地面へと沈んでいった。


フェイトは突如鳴った炸裂音のせいで二人組にばれ、戦闘もできずに逃がしてしまった。
地面に潜って逃げたということは、本来驚くべきことなのだが、今のフェイトの頭には後悔と挫折感しか入ってなかった。
(考えてたことが本当になっちゃった・・・)
再び母の形見から離れてしまった。
そんなことで頭がいっぱいなフェイトに通信が入る。
通信の主ははやてだ。
{フェイトちゃん!何があったんや!}
「はやて・・・ゴメン、ジュエルシードが・・・」
{ジュエルシードの反応ならまだあるで!}
「えっ!?」
フェイトはその言葉を聞いて、驚くと同時にとても安心した。
(そっか・・・まだ取られてなかったんだ・・・)
{今、ジュエルシードやない方の魔力反応が急激に上がったんや!}
「それってどういうこと!?」
ジュエルシードじゃない方と言ったら、恐らくこの巨人のことだろう。
その魔力が急激に上がったとは一体どういうことなのだろうか?

290"IDOLA" came to magical land ◆iNYgbJQaCg:2009/06/03(水) 23:39:18 ID:GvJaNjzU
まさか動き出すとかそういう類だろうか?
{わからへん!一体そっ――は何―――} 「はやて!?」
通信妨害だろうか、急にノイズが混ざり始めた。
そして完全に通信が遮断されると、次に巨人の体が光り始めた。
フェイトは暫く唖然としていたが、光り始めると同時に巨人の胸の上でより光り輝くものを見た時、その顔が呆けた表情から驚きの表情に変わった。
「あれは・・・ジュエルシード・・・!」
それは光っていて曖昧にしか見えないが、それでも見間違えるわけもなかった。
尚も光り続ける巨人の体にジュエルシードが近づき、そして触れると、巨人の体が一瞬にして水晶のような透けた体となった。
そして徐々に巨人は透明になっていき、最後には完全に消えた。
だが何もかも消え去ったわけではなかった。
ただ一人、老人が倒れ伏していた。


「フェイトさん!大丈夫ですか!?」
スバルが驚いた表情のまま立ちすくんでいたフェイトに声をかけた。
「スバル?」
どうやらフェイトの耳に届いたらしく、フェイトが返事をする。
「ここに向かう途中でいきなり通信が途絶えるんですから、びっくりしましたよ」
「私もはやてとの通信がいきなり切れたし・・・あっ!」
突然何か思い出したような声を出すと、フェイトは先程まで巨人がいた場所を指差した。
そこには倒れている老人が一人いるだけであった。

「そ、そんなことがあったんか・・・」
その後、通信が再び繋がったので、急いで救護班を呼ぶと、フェイト達も六課本部へと帰っていった。
本部に着くと、まずフェイトは今までのことを話しはじめた。
最初に二つの魔力反応の内、一つは見るのも悍ましい巨人だったこと。
次に巨人から何かを取って逃げていった二人のこと。
そして巨人が消えたと思ったらいきなり現れた老人のことだ。
「あかん、さっぱりわからんわ」
「確かに信じれられない話だね・・・」
やはり起きた出来事があまりにも常識はずれなのか、どうにも信じられないといった様子である。
フェイトもなのはとはやてに同意する。
だとしたら残る術は、現れた老人に聞くことだ。
今は意識を失っているが、じきに回復するだろうとシャマルは言っていた。


「ちょっとはやてちゃん、来てくれる?」
解散後、はやてはシャマルに呼び出された。
「なんや?もしかして目覚めたとか?」
そうはやてが言うと、シャマルは首を横に振ってこう言った。

「それがね・・・彼、人じゃないみたい」

291"IDOLA" came to magical land ◆iNYgbJQaCg:2009/06/03(水) 23:40:18 ID:GvJaNjzU
―――――――――――――――――――――――――

薄暗く、長い廊下をセインとウェンディは、歩きながら喋っていた。
「にしても今日のセインはかっこよかったッス!!」
「あの時はウェンディが罠を仕掛けてなかったらやられてたよ」
「だけどセインが気づいてなかったらやばかったッスよ!」
「はは、ちょっと照れるなぁ」
そんなやり取りをしていると、やがてスカリエッティの研究室に着いた。
研究室にノックして入ると、スカリエッティが正面の椅子に座っていた。
「セインにウェンディか。目標物は手に入れたかい?」
「それが、ジュエルシードの方は邪魔が入って・・・」
「でも、もう一つの方は持ち帰りましたッスよ!」
そうウェンディが言うと、右手に持ってたものをスカリエッティに渡そうとした。
スカリエッティは受け取ろうとしたが、ウェンディの手を見た瞬間、手を引っ込めた?
「どうしたんッスか、ドクター?」
ウェンディがスカリエッティの顔を見ると、そこには新しい実験体を見つけた時の、狂気の笑顔があった。
「いや、なんでもない。それよりそれはあっちのテーブルに置いてくれ」
ウェンディは不思議に思いながらも、スカリエッティが指差した方向にあったテーブルの上に置いた。
すると次にスカリエッティは笑みを含みながらこう言った。

「クク・・・ウェンディ、一度右手をよく見てみるといい。ひどいことになってるよ」

―――右手?
ウェンディはそう言われて、右手を見てみた。

「なっ!?」
右手は既に侵食されていた。
紺色の斑点が既に手首にまで到達していて、そこが岩のように硬質化していた。
手の甲が痛々しく見える程隆起しており、あと少しで皮膚を突き破りそうな―――否、今突き破った。
皮膚を突き破った骨格は黄色で、内側から光を放ってるようだった。
「い・・・いやぁぁぁああ!」
ウェンディは悲鳴をあげた。
だがその悲鳴は痛みによるものではなく、むしろ痛くないどころか、何も異常を感じなかったからこそ恐怖を感じた。

―――これが"いつもの"手である―――

そんなことをほんの少しでも頭を掠めたとき、ウェンディは今までにない恐怖を味わった。
「ウェンディ!」
セインがその場に座り込んでしまったウェンディの肩を揺さぶり、正気に戻そうとした。
だが、以前としてウェンディは虚ろな目をして自分の手を見つめたまま、「手が・・・」と呟くだけだった。

292"IDOLA" came to magical land ◆iNYgbJQaCg:2009/06/03(水) 23:42:07 ID:GvJaNjzU
スカリエッティはというと、まるで子供が新種の昆虫を見つけた時のような笑顔をしていた。
ただし、子供と違うのはその中に狂気を含んでいるということであった。
「セイン、ウェンディを急いで調整槽に連れていってくれ。ああ、入れる前にその右手をどんな方法でも構わないから切り離してくれよ。調整槽まで異常を起こさせないようにね」
セインは「調整槽に」とスカリエッティが言ったところでもう動きだしていた。
スカリエッティがそれに気がつくと、やれやれと言った感じで首を横に振った。

「さあ、一体何に侵食するのかな?」
スカリエッティはガジェットを使い、培養液に満たしたカプセルの中に例の物を入れた。
とりあえず戦闘機人であるウェンディが内部までも侵食されてたところから、機械と人の細胞には確実に憑くと把握していた。
今更ながらとても正気で扱える物体じゃないなとスカリエッティは笑いだした。
人に寄生する虫がいることは知っているが、それが細胞に劇的な変化を齎したことなど聞いたことがない。
ましてや無機物にまで反応を示すなど、本当にこの世の物かと問いたくなる。
そうスカリエッティ思った。
だが彼のコンソールを叩く手は止まらない。
科学者なら、例え外道に堕ちた者であろうとも、未知の物体に好奇心を持つのは当たり前である。
その性質が不明であるほど好奇心は風船のように膨らむ。
スカリエッティは様々な物をカプセルに入れてみたところ、次のような結果が得られた。

1.この断片には魔力を吸収する力がある。
 リンカーコアを入れてみた結果、断片はアメーバの様に広がり、これを取り込んだ。
 数分すると、小さな石のような物を吐き出した。
 リンカーコアの残骸のようだ。
2.魔力を吸収すると、断片は変形していき、やがて凸凹の球体のようになった。
 その時の大きさは変形前より大きくなっていた気がした。
 魔力量によって違いが現れるのだろうか?
3.この断片はかなりの生命力がある。
 試しに電流を流し、熱を加え、逆に冷やしたりもしたが、それによる反応はまったくといっていいほどなかった。

「ククク・・・魔力が糧とは・・・まったく素晴らしいな・・・」
スカリエッティはこのことをまとめると、研究室を後にした。
明日には何をしようか?スカリエッティの考えてることはそんなことだろう。
誰もいなくなった研究室で、あの断片は何もなかったかのごとくプカプカと浮いていた。

293"IDOLA" came to magical land ◆iNYgbJQaCg:2009/06/03(水) 23:42:43 ID:GvJaNjzU
投下完了です。

前のよりはよくなったハズですが・・・。

迷惑をかけるようなことをしてすいません。
次からは気をつけます。

294"IDOLA" came to magical land ◆iNYgbJQaCg:2009/06/03(水) 23:43:53 ID:GvJaNjzU
これで今回分は終了です。

書き直した上に規制で書き込めなくなって、揚句の果てに代理投下依頼でミスるとか・・・orz

295無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/04(木) 07:10:15 ID:UIx.7FaY
自分のもIDORAさんの前に依頼しています。

どなたか代理投下お願いします。

296無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/04(木) 19:24:16 ID:UIx.7FaY
新スレも立ちましたので、代理投下お願いします。

297魔法少女リリカル名無し:2009/06/04(木) 20:07:08 ID:6a2hu7Fo
じゃあいくよ。

298無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/06/04(木) 22:57:27 ID:UIx.7FaY
確認しました。
ありがとうございました。

299高天 ◆7wkkytADNk:2009/07/11(土) 23:36:36 ID:mS5b5FRM
すみません、さるさんをくらってしまいました。
代理投下をお願いいたします
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・一週間後

ナイトガンダムが仲間と合流し、共にラクロアへと帰還するが、其処にあったのは王国ではなく、平地と無数の瓦礫だけであった。
僧侶ガンタンクの説明から、この一件には『伝説の巨人』が関係している事を聞いたナイトガンダム達は
休む間も無く、巨人を倒す手掛りを持っているであろう『ルホイの星』を探す旅に出た。

一方、残ったガンタンクは城の兵や僧侶、動ける民を指揮し、救援活動、物資の調達、救援諸国への援助要請
など多忙な日々を送っていた、そんな時である。

「ガンタンク様!この薬草でしょうか?」
「・・ああ、間違いない、直ぐに収穫をしてくれ」

今のラクロアには圧倒的に物資が足りなかった、その中でも医薬品の数は絶望的で怪我の人数からして圧倒的に足りなかった。
瀕死の者や重傷者などには城の僧侶が付きっ切りで看病しているため、手遅れで死亡という自体にはならなかったか、
骨折や打撲などの死ぬことが無い怪我の者には少ない薬でどうにか凌いでもらうしかなかった。
痛み止めも無いため、野戦テントからは痛みによるうめき声が後を経たなかった。

先ほどガンタンクが見つけた薬草は処方すれば良い痛み止めになる。
あの兵士の話した量からするに隣の国からの物資補給までには十分持つ量だ。
「さて、私も帰っ!?」
帰ろうと仲間の元へ行こうとした直後、彼の後ろの森林が眩く光りだした。
何かと思い杖を構え振り向くが、光は既に消え、何事も無かったかのように静けさを取り戻す。
「・・・ジオンの魔術士か?だか、何故襲ってこない?」
サタンガンダムを倒したとはいえ、ジオン族やそのモンスターが襲ってくることがなくなったわけではない。
だからこそ、今の光もジオン族の魔術士の攻撃ではないかと疑ったが、一向に攻撃が来ない所か姿すら現さない。
不審に思いながらも、ゆっくりと光が発生した方へと足を勧める・・・・・・・・すると
「なんだ・・・・これは・・・・」
其処にはジオン族の魔術士などいなかった。其処にいたのは二人の人間・・・親子だろうか?
色々不審な点はあるが、この二人をこのままにしておくわけには行かない、特に親である女性の方はこのままでは死んでしまう。
小さな女の子の方は魂が抜けている症状に酷似しているが、助けられないことは無い。
「こっちに来てくれ!!!重傷の旅人の様だ!!!」
大声で仲間を呼ぶと同時に、ガンタンクは大人の女性の方に回復魔法を施す。
「・・・ただの旅人ではなさそうだな・・・・・」
彼がそう思うのも無理は無い、旅荷物は無論、彼女達の格好がそう思わせる。
大人の女性の方は黒い服にマントを羽織っただけの格好、とても旅人とは思えないし旅荷物も一切見当たらない。
そして小さな女の子の方は裸、割れた大きなガラスケースの様な物の中で蹲っていた。





こんばんわです。投下終了です。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
編集、いつもありがとうございます。
職人の皆様GJです。
SDXスペリオル、メッキか・・・・手袋つけてくれorz

このクロス作品を読んで頂きまことにありがとうございました。
どうにか無事完結することが出来ました。

続編は・・・・・・・・考えています

-------------------------------------------------------------------------
よろしくお願いいたします

300高天 ◆7wkkytADNk:2009/07/11(土) 23:56:57 ID:mS5b5FRM
どうにか自己解決できました
お騒がせしました。

301魔法少女リリカル名無し:2009/07/12(日) 21:12:23 ID:vQrkzhPw
規制中で書き込めないのでここに書けばよいのでしょうか?
みなさんの作品を読むうちに触発されて予告風ですけど書いてみました

ーーー
それは、私ら機動六課にもたらされた、もう一つの事件……

きっかけは、JS事件解決後の復旧の最中に確保したロストロギア……

ロストロギアの発動により、ミッドチルダへと呼び込まれる少女たち……

事件はその少女たちを中心に大きくなっていく……

ミッドチルダに煌く、異世界からの少女たちの閃光……

紫……青……黄……黒……赤……白……

それぞれの輝きを纏い、戦う六人の少女……

「ご奉仕させていただきますわ!!」
「ドキドキするっしょー!」
「いじめないでいじめないでいじめないでー!」


「おい!てめー!さぼってんじゃねーよ!」
「いやいや、小隊長殿の活躍の場を奪ないようにしないとね」
「はいはーいみんな仲良くですよー」


魔法少女リリカルなのはシュピーゲルはじまります……




「あぁー……世界とか救いてぇー……」

ーーー
クロス元は、「オイレンシュピーゲル」&「スプライトシュピーゲル」です

302R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 21:57:34 ID:TfsCCoXA
それでは投下します



ウィンドウの向こう、巨大な戦艦を中心とした総数12隻から成る艦隊が、港湾施設より出港してゆく。
微速航行するそれら艦艇の所属は、管理局から各次元世界、そして地球軍まで多岐に亘っていた。
その殆どは人工天体内部へと転送され、バイドによる模倣の基となっていたオリジナルである。
艦隊旗艦に抜擢された全長1830mにも達する巨大な戦艦は、第148管理世界に於いて管理局への通達を行わずに建造された違法艦艇、空母型戦闘艦「ウォンロン」だ。
第148管理世界本星ではなく衛星上の基地にて秘密裏に建造されたこの艦は、アルカンシェルに匹敵する戦略魔導兵器のみならず、核弾頭を始めとして膨大な数の質量兵器と艦載機を搭載する戦略艦だったらしい。
此処十数年に亘って違法艦隊を保有しているのではないかとの疑惑が囁かれてきた当該世界だが、これ程までに強大な戦闘艦を有している等という事実は管理局の知るところではなかった。
それだけに、厳重な情報統制が為されていたのだろうと予測できる。

第148管理世界にとっての不運は、次元世界に於ける試験航行中にウォンロンが隔離空間へと転送されてしまった事だろう。
ランツクネヒトが提示した生存者の証言記録によれば、転送は26日前の事らしい。
そして混乱の最中、艦は中枢系に異常を来し始めた。
先ず緊急用隔離壁が作動、乗組員は館内各所にて孤立。
動力系統がダウン、循環システムの停止により全乗組員の2割が窒息死する。
残る乗組員はエリア毎の非常用電力供給システムの起動に成功したが、その後に彼等を待ち受けていたのは更なる脅威だった。
都市部等で運用する対人掃討機、即ちマンハンターが起動し、艦内の人間を狩り始めたのだ。
その他にも艦自体のセキュリティ、更には対BC防御システムまでもが生存者に牙を剥いた。
結局、アイギスによってウォンロンの出現を察知したランツクネヒトが艦内へと突入した時、生存していた乗組員の数は全体の1割にも満たない僅か52名。
内6名は後に、この時の負傷が原因となって死亡してしまう。

ランツクネヒト、そしてコロニー群に身を寄せる生存者にとっては、ウォンロンの転送は思わぬ幸運だった。
旗艦となり得る主力戦闘艦がL級次元航行艦1隻という状況下で、戦略兵器を満載した大型戦闘艦が現れたのだ。
彼等はウォンロンの生存者を収容した後に艦内を制圧し、一部制御系統を破壊する事で除染に成功。
生存者の協力の下に、カタパルトを始めとする各種設備の改修を経て、艦をコロニー防衛艦隊へと組み込んだ。
そして今、ウォンロンは無数の機動兵器と22機のR戦闘機を搭載し、脱出艦隊の旗艦として作戦行動に当たっている。

「・・・これが3時間前の映像だね」

ウィンドウを閉じ、自身の隣へと視線を移す。
青の髪、赤の髪。
無言のままにウィンドウを見つめていた2人に、彼女は気遣わしげに言葉を掛ける。

「・・・大丈夫?」

返す視線は、何処か虚ろだった。
1人はウィンドウの消えた中空から、もう1人は自身の掌から視線を外して彼女を見やる。
どうやら聞こえていなかったという訳ではないらしく、返答は確りとしたものだった。

「私達は大丈夫です。それよりも、なのはさんはどうなんですか? 軽い怪我ではなかったと聞きましたけど」

逆にこちらを気遣う言葉に彼女、なのはは苦い笑みを浮かべる。
彼女が目覚めたのは約21時間前、目前の2人より12時間遅れての覚醒だった。
完治までに要したその時間は、彼女が負った傷の重大さを意味している。
しかし状況の把握と前線への復帰については、2人よりもなのはの方が早かった。
無数の検査を受けねばならなかった2人とは異なり、彼女の場合は30分で全ての検査が終了してしまったのだ。
結果として2人の前線への復帰は約2時間前の事となり、今はこうしてなのはから状況の説明を受けている。

「大丈夫、もう完璧に治ったよ・・・ちょっと違和感はあるけどね」
「あはは、良く解ります」

そう言って朗らかに笑う彼女、スバル。
だがなのはは、その笑顔が作られたものだと見抜いていた。
その表情の裏に、色濃い苦悩が渦巻いているのだと。

303R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 21:58:20 ID:TfsCCoXA
無理もないだろう。
ナノマシンによる高速復元を受けただけのなのはでさえ、自身の身体が数十時間前のそれと同一のものか否か、判然としない感覚を味わっているのだ。
況してやスバルとノーヴェは、脳髄を除く全身を再構築するという、治療とも呼べない異常な方法で生命を取り留めている。
長年に亘り苦楽を共にしてきた身体を本人達すら知り得ぬ間に奪われ、意識が回復した時には全く新しい身体が与えられていたというのだから、彼女達の受けた衝撃は如何ばかりのものか。
驚く程に違和感はないと語ってはいたが、その事実は何ら救いとはなり得ない。
彼女達がこれまでの人生を刻み込んできた本来の身体は、もはや永遠に失われてしまったのだ。
変わらぬものは、自身ですら認識する事が叶わぬ脳髄だけ。
極論してしまえば、それすらも本当に自身のものであるか否か、確かめる術は無いのだ。

そして彼女達が苦悩しているのは、その事実だけではあるまい。
現在は脱出艦隊と共にある、計9機の無人R戦闘機。
その制御中枢として用いられたという、スバルとノーヴェの体組織を用いた培養体。
戦闘機人として有する無機構造物との高度癒着性ゆえ、脳髄のみの存在として生み出された彼女等は自己の意識を持つ事すら許されずに加工され、唯バイドと戦う為だけの生命として変貌させられたのだ。
否、地球軍の例を鑑みるに、生物個体としての認識があるか否かも怪しいものだろう。
良いところ、単なるR戦闘機の一構成部位という認識かもしれない。
自分自身、或いは姉妹とも云えるそれらが単なる部品として扱われているという事実をどう受け止めれば良いのか。
2人は導きだせる筈もない答えを探し出そうと、必死に思考の闇を掻き分けているのだろう。

「・・・それで、アタシ達は此処で何をすれば良いんだ?」

暗く沈みゆく思考を引き上げるかの様な、ノーヴェの声。
彼女は自身達をこの場、即ちコロニー外殻へと運んできた強襲艇、そのタラップを降りるランツクネヒトの人員を見やっていた。
その声には怒気も敵意も感じられなかったが、常からの彼女の苛烈さを知っている身としては、逆にそれが良からぬ傾向に思える。
彼女もまた、自己の同一性について苦悩しているのか。

「外部からの救出部隊が到着するまでコロニー群を護る事、それが私達の役割だね。宙間戦闘はR戦闘機や艦艇の土壇場だから、私達は此処に取り付く小型から中型の機動兵器を排除する」
「防衛衛星は?」
「アイギスの兵装は威力が大き過ぎて、コロニーに取り付いた敵を撃つ事はできない。其処で、小回りの利く魔導師と小型機動兵器の出番って訳」
「ランツクネヒトのR戦闘機部隊はどうしているんです」
「「ヴィルト」隊と「ドロセル」隊は脱出艦隊の方。「シュトラオス」隊はアイギスと一緒に宙間防衛任務に就いているよ。此処に居るのは「ペレグリン」隊の4機、後は「ヤタガラス」だね」

言葉を紡ぎつつ、なのははランツクネヒト所属のR-11Sと、約26時間前に新たに合流を果たした地球軍所属のR戦闘機の映像を表示してみせる。
だが地球軍のR戦闘機の映像を目にするや否や、スバルとノーヴェの視線が剣呑な光を帯びた。
スバルは驚愕に、ノーヴェは敵意に満ち満ちた眼で、ウィンドウ上に映る黄色の塗装を施された機体を見据える。
そしてなのはにとってもその機体は、決して好ましくはない記憶と共に脳裏へと刻み込まれたものだった。
機体各所に張り巡らされたチューブ、複数の放熱機とタンク、キャノピー下部のノズル。
忘れはしない、忘れられる筈もない。

「R-9Sk2 DOMINIONS」
主天使の名を冠されし異形、業火を支配する機体。
嘗て第4廃棄都市区画を焼き尽くし、その炎によってなのはをも追い詰めたそれ。
3本の脚を持つ烏のエンブレムが刻まれたその機体は今、映像の中のそれと寸分違わぬ姿を彼女達の頭上に現わしていた。
航空機の尾翼を思わせる3つのコントロールロッド、各々のロッド左右に位置する計6枚の翼状放熱フィールド、それらを備えた巨大なフォース。
9つもの翼を広げる異形の影は、成程、日本神話にあるという三本脚の烏を思わせるものと捉えられるかもしれない。
神話の八咫烏は太陽の象徴であるとの事だが、こちらもまたトカマク型核融合炉を内蔵した機体だ。
だが同じ原理、同じ力を司る神の名を冠されているとはいえ、その機体の全貌からは神々しさなど全く感じられず、寧ろ禍々しさと質量兵器特有の無機質さが際立っている。

304R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 21:59:01 ID:TfsCCoXA
何よりこの機体の存在を認め難い理由は、複数の同型機がクラナガン西部区画に対し、無差別砲撃を繰り返していた事実が記録映像より判明している事だ。
それらの砲撃は撃墜した汚染体の焼却が目的だったらしいが、クラナガン市民の生命を完全に無視したその凶行によって、少なくとも4万人が行方不明となっている。
死者よりも行方不明者の数が圧倒的に多い理由は、5,000,000Kにも達する超高温の炎によって、犠牲者の身体が区画ごと消滅してしまったからに他ならない。
どうやらなのはを砲撃した際には数千度にまで熱量を抑えていたらしく、更に西部区画でのそれについても最大出力での砲撃であったかは疑わしい。
何せあの機体には、熱核融合炉が搭載されているのだ。
熱核融合の励起には100,000,000K以上もの熱が必要である事を考慮すれば、最大出力での砲撃時には他のR戦闘機をすら凌駕する圧倒的、破滅的な破壊を齎すものと予想できる。
否、砲撃に波動粒子をも用いている事を考慮に入れれば、破壊の規模はその予想をすら上回るかもしれない。

「・・・このコロニーごと焼き払うつもりですか、彼等は」
「流石に出力は制限されているって話だよ。まあそれでも、巻き込まれたら一巻の終わりなのは変わりないけれど・・・私達も、ランツクネヒトもね」

ウィンドウを閉じ、息を吐く。
空洞内部は無重力だが、大気が在る為に呼吸は可能だ。
現在地であるコロニー外殻は人工重力が発生しており、その影響範囲は外殻から200m以内の宙間にまで及ぶ。
よって魔導師や歩兵、各種陸上機動兵器は、通常の感覚で行動する事が可能となっている。
なのは達は此処で、アイギスと艦隊、そしてR戦闘機による防衛網を突破し、外殻からコロニー内部へと侵入を図る汚染体を迎撃するのだ。

「それにしても・・・敵は本当に、あの防衛網を突破してくるんですか? 核弾頭とレーザー、おまけに電磁投射砲と波動砲にアルカンシェルですよ」
「それでもかなりの数が突破に成功するみたい。敵の物量が圧倒的過ぎて、どんなに少なくても3%近くがコロニーに取り付くらしいよ」
「具体的にはどれ位なんだ」
「小型の汚染体が300から400、50m級が約20、稀に100m以上が1体から2体」
「・・・3%でそれかよ」

うんざりとした様子で呟くノーヴェを横目に、なのはは頭上のヤタガラスを見上げ、次いで外壁の彼方を飛ぶ小さな影を見据える。
このコロニーは直径6km、全長は54kmに達する円筒形だが、彼女達の現在地はその端部だ。
その影が飛んでいるのは外殻中央、約27km離れた地点の筈だが、微かに視認できるその影はR戦闘機と同等か、或いは一回りほど大きい。
しかしその飛び方は、どちらかと云えば有機的な物を感じさせた。
悠々と宙を舞う影の傍には、それよりも少し小さな影が寄り添う様にして付き従っている。

「ヴォルテールとフリードですね」

スバルから掛けられた言葉に、なのはは無言のままに頷く。
真竜ヴォルテール。
第6管理世界、アルザスの守護竜。
竜召喚士であるキャロの命によって召喚され、彼女の障害を打ち砕く黒き竜。

「あれ、ルーお嬢の白天王をやった黒い奴か? 何で此処に居るんだよ」
「召喚したのは隔離空間が拡大した後だったんだけど、アルザスに戻す事ができないらしいよ・・・キャロが言うには、アルザスか第6管理世界全域に何かあったんじゃないかって・・・」
『警告。第4層より敵機動兵器群接近。出現ポイントA-74からJ-55。アイギス、交戦開始』
『第3層より敵機動兵器群接近。出現ポイントC-03からW-92。シュトラオス隊、交戦開始』

なのはの言葉を遮る様にして、全方位念話での警告が飛ぶ。
咄嗟に宙空を見上げれば、闇の彼方に無数の光が瞬き始めた。
同時にヤタガラスが緩やかに上昇を始め、そのまま人工重力の影響範囲外へと脱すると、青い燐光と轟音、そして衝撃波だけを残しその姿が掻き消える。
どうやら、反対側のコロニー外殻へと向かったらしい。
頭上の宙空は無数の閃光によって完全に覆い尽くされているが、距離の関係から此処までは未だに一切の音が届いてはいない。
レイジングハートを通じてバリアジャケットの防音設定を変更しながら、なのはは無言で激しい宙間戦闘の光景を見上げる。

305R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 21:59:31 ID:TfsCCoXA
『やっぱり、気になりますか?』

そんな中、スバルからの念話が届いた。
今にも轟音が届くとも知れない中での、音声での会話は危険と判断したのだろう。
下手に防音設定を解除すれば、突然の轟音で聴覚を損なう恐れがある。
本来はデバイスが適度に調整してくれる為、これまでは特に気にも留めなかった。
しかし聴覚への被害の恐ろしさについては、つい数十時間前に身を以って体験したばかりだ。
少しばかりプログラムを強化し聴覚の保護に努めねば、まともに戦闘を行う事すら危ういだろう。
そんな事を思考しつつ、なのはは念話を返す。

『何の事?』
『例のカイゼル・ファルベを操ったっていう汚染体の事です。ザブトム・・・でしたっけ。R戦闘機の追撃を振り切って、第4層に逃げ込んだんですよね』

その言葉を受けたなのはの脳裏へと浮かぶのは、あの鋼色の異形の全貌。
40mにも達する全高に、全長が70m程もある節足動物の様な下半身。
人が認識し得る、ありとあらゆる負の感情が凝縮されているかの様な、醜悪な形相。
その額へと埋め込まれた、直径4mを超える赤い結晶体、レリック。
コードネーム「ZABTOM」。

逃げ切っていたのだ、あの戦域から。
砲撃によりなのはが意識を失った後、あの異形は浅異層次元潜航を用いて離脱を図ったらしい。
無論、目標と交戦中だったR-9C「メテオール」は追撃に移ろうとしたが、周囲の残存艦艇、その全てがオンラインとなった為に断念せざるを得なかったのだという。
メテオール、そして辛うじて意識を保っていた攻撃隊員達は、戦闘に気付いたランツクネヒトが応援に駆け付けるまでの約3時間、正に全滅と紙一重の戦闘、正確には逃走劇を継続。
最終的に、汚染艦艇群はペレグリン・ドロセル両隊とアイギス群の集中砲火により殲滅され、攻撃隊は意識の無いなのは共々ランツクネヒトに保護されたのだ。
戦域からの離脱に成功したザブトムの行方は、未だに判明していない。

『・・・全く歯が立たなかった訳だし、あれがまだ健在って事は此処も襲われるかもしれない。警戒しておくに越した事はないよ』
『できる事なら脱出艦隊の帰還まで、何処かで大人しくしていて貰いたいですね』
『できる事なら、ね』

その時3人の傍らに、警告音と共にウィンドウが展開される。
通常とは異なる赤い画面に、黒い「WARNING」の表示。
同時に質量兵器及び魔導兵器群による長距離砲撃が開始され、外殻の其処彼処から砲撃と誘導弾体が宙空へと放たれ始めた。
魔導師よりも射程の長いそれらが、迎撃の先鋒を担っているのだ。
続いて念話が脳裏へと響く。

『警告、敵機動兵器群の一部が防衛網を突破。「リボルバー」281体及び「キャンサー」149機、タイプ「ギロニカ」18体』
『管制室より全隊、照明弾を射出する』

「AIFS activated」の表示がウィンドウ上に現れると同時、コロニー外壁の各所より無数の火柱が上がり、数百ものロケット弾が宙空へと放たれた。
それらは微かに白い尾を引きつつ、瞬く間に闇の中へと消える。
そして、閃光。
強烈な白い光の中、コロニーへと近付く全ての影が明確に浮かび上がる。
敵、接近中。

『魔導師隊、迎撃を開始せよ』

その念話が伝わり切るよりも早く、無数の砲撃と魔導弾の弾幕が撃ち上げられる。
閃光の中に浮かぶ影は随分とその数を減らしてはいたが、それでも蜘蛛の様な大型の影が複数、砲撃のカーテンを物ともせずに降下してくる様が見えた。
異様な光景に軽く息を呑むと、なのははレイジングハートを構えて背後の2人へと指示を飛ばす。

『迎撃するよ、スバル、ノーヴェ! 単独行動はせず、周囲の魔導師隊と協力して・・・』

その言葉が言い切られる事はなかった。
宙空に巨大な業火の線が刻まれ、大蛇の如く蠢くそれが影を次々に呑み込んでいったのだ。
小型の影は跡形もなく消滅し、大型のものは爆散し炎を纏った僅かな破片となって降り注ぐ。
忘れもしないその光景、ヤタガラスの砲撃だ。

306R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:00:15 ID:TfsCCoXA
だがそれでも一部の大型敵性体は、途切れた砲撃の合間を縫って降下を続ける。
激しい迎撃によって2体が宙空で四散したものの、未だに5体が健在だ。
降下軌道から予測される落着地点は、恐らくは外殻中央。

『おい、あそこって!』
『なのはさん!』
『分かってる、行くよ!』

落着地点に位置するエリオとキャロを援護すべく、なのははスバル達を引き連れ外殻中央へと向かう。
長距離砲撃は新たに防衛網を突破した一群の迎撃へと移行した為、降下中の5体を狙い撃っているのは魔導師と、質量兵器によって武装した歩兵のみ。
中央周辺にははやてとヴォルケンリッター、少し離れた位置にはギンガや他のナンバーズも居るが、速やかに大威力の砲撃を放てる者ともなればその数は限られる。
はやての砲撃は強力だが、詠唱に時間が掛かる為に敵性体の落着以前に発動する事は困難だ。
無論、他にも多くの戦闘要員が配置されているが、援護が来るまでの短時間とはいえ5体もの大型敵性体を相手取るには、エリオ達と数名の魔導師では不安が残る。
すぐにでも駆け付け、可能な限り速やかに攻撃に移らねばならない。

そんななのはの思考を嘲笑うかの様に、遥か前方の外殻に紅蓮の閃光が奔る。
爆発と見紛うばかりのそれに一瞬、最悪の事態がなのはの脳裏を過ぎるも、直後にその意識は閃光の内より放たれた2条の砲撃に引き付けられた。
周囲の大気をすら消し飛ばしつつ放たれた、紅蓮の業火を纏う2発の大規模砲撃魔法。
それらは降下中の異形2体を呑み込み、一瞬にしてその巨躯を四散させる。
砲撃の余波は他の1体にまで及び、その6本の脚の内2本を消し飛ばした。

降下姿勢を崩し、錐揉み状態に陥る異形。
その存在を無視するかの様に、金色の閃光が異形の傍らを突き抜ける。
魔力光の残滓を引きつつ、衝撃波を撒き散らして宙空を貫く雷光。
直後、如何なる理由か、残る2体の異形が降下姿勢を崩す。
3体の異形は姿勢回復を試みる様子もなく、人工重力に引かれるままに降下を続け、そして。

『ギロニカ、落着3。機能停止2』

そのまま、外殻へと叩き付けられた。
第一派迎撃開始より、実に1分12秒。
余りにも短時間の攻防だった。

*  *  *

『馬鹿げている・・・!』

チンクより発せられた念話は、眼前の戦闘を目撃したほぼ全ての魔導師の内心を的確に言い表しているだろう。
少なくともはやてとしては全く以って同意であり、目の前で繰り広げられた戦闘は彼女が良く知る少年と少女の行う戦いではなかった。
4体の大型敵性体を僅か6秒で撃破し、更に1体を行動不能に陥らせた攻撃。
簡潔に言ってしまえば、ヴォルテールのギオ・エルガに続いて、エリオのメッサー・アングリフによって連続的に攻撃を実行したに過ぎない。
しかしそれは、個々の攻撃の規模こそ桁違いではあるが、はやての知るエリオとキャロの連携と異なる箇所は無いのだ。
異常なのは其々の攻撃精度と威力、そして速度である。

ギオ・エルガが降下中の2体を精確に捉え一瞬で破壊した事は勿論だが、はやてにとってはその後のエリオの攻撃こそが理解の範疇外だった。
何しろ、一部始終を目撃していたにも拘らず、彼が何をしたのか全く視認できなかったのだ。
それでも、突如として宙空に出現したエリオの手に握られたストラーダが紫電の光を纏っていた事から、メッサー・アングリフを発動したのだろうという事は辛うじて理解できた。
解らないのは、彼がそれで何をしたのかという事だ。

『・・・ザフィーラ、見えた?』
『ええ、何とか』
『エリオは、何を?』

自身の家族にして守護獣であるザフィーラへと問い掛ければ、彼はエリオの行動を視認できたという。
はやてには彼の魔力光と、全てが終わった後に現れた彼の姿しか視認できなかった。
一体、エリオは何をしたのか。

307R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:00:54 ID:TfsCCoXA
『刺突です』

ただ一言。
ザフィーラが放ったのは、それだけだった。
数秒ほどはやては彼の背を見つめ、呆然とした様子を隠しもせずに再度の問いを放つ。

『刺突が、どうしたん?』
『ですから、エリオのした事です。メッサー・アングリフによる突進からの刺突、彼がしたのはそれだけです』

はやては理解できなかった。
先ず、あの大型敵性体を単なる刺突で以って撃破したという言葉だ。
ストラーダに異様な改造が施されている事は既知であったが、それを考慮に入れたとしても異常である。
確かに、魔力付与を用いて放たれるエリオの刺突・斬撃は、師の1人であるシグナムのそれとまでは行かずとも強力だ。
だが、あれだけ大型の機動兵器を一撃で撃破できる程かと問われれば、はやては否と答える。
ガジェット程度なら未だしも、相手は幅50mにも達する機動兵器。
如何に強力とはいえ、飽くまで対人及び対小型機動兵器戦闘を想定して構築されたエリオの近代ベルカ式魔法では、それら規格外の存在を単独にて打倒する事は困難を極める筈だ。

更に理解できない事は、単体でさえ苦戦する筈の大型敵性体が2体存在し、それらがほぼ同時に機能を停止したらしき事である。
少なくとも、他方面からの攻撃が降下中の2体へと届いた様子は無かった。
であれば、それらを撃破したのはエリオ以外には有り得ない。
それともランツクネヒトか地球軍辺りが、こちらの知覚範囲外より何か仕掛けたのだろうか。

『エリオだ、はやて』

そんなはやての内心を察したのか、ヴィータからの念話が届く。
見れば彼女は、グラーフアイゼンを肩へと担いだまま、遥か前方を舞うフリードの影を見据えていた。
そして、険しい表情から滲む警戒の色を隠そうともせず、言葉を紡ぐ。

『どっちもエリオがやりやがった。一瞬だ』
『一瞬って・・・』
『ストラーダから一瞬だけ馬鹿デカい魔力刃を展開して1体目を貫いた後、その図体を蹴って殆ど減速なしで2体目をブチ抜きやがった。フリードの背中を飛び立ってから2秒も掛かっていない』
『おまけに魔力刃を敵に突き立てた後、サンダーレイジを放っています。内部から敵兵器の制御中枢を焼き切ったのでしょう』

ヴィータ、そしてザフィーラの言葉に、はやては改めてエリオの影を見やった。
彼は人工重力の影響範囲外へと脱した後、宙空より眼下の敵性体残骸を見据えている。
その時はやては、残骸と化したかに見えた一体が、未だ活動を続けている事に気付いた。

『・・・あかん!』

それは、ギオ・エルガの余波により姿勢を崩した1体。
どうやら外殻との衝突を経ても機能を保持していたらしく、残る4本の脚で姿勢を正すと同時に歩行を開始した。
良く見ると敵性体の表層は有機組織に覆われており、恐らくは半有機系機動兵器の一種であると思われる。
そして上部の機械部位より、発光する気泡が間欠泉の如く放たれ始めた。
その数は数十などという生易しいものではなく、明らかに1000を超えている。
僅かに下降して同高度に留まる無数の気泡は、不気味な光の帯となって周囲へと拡散を始めた。

『警告。ギロニカ、多目的浮遊機雷の放出を開始』
『敵兵装MFM-805、有機系空間制圧機雷。弾体は強酸性及び爆発性のガスを内包』
『こちらライトニング、目標を攻撃します』

管制室からの警告が届いた直後、聞き慣れたコールサインと共に別の念話が発せられる。
見れば、何時の間にかヴォルテールが敵性体へと接近しており、その背に乗る小柄な人物からは嵐の様に激しい弾幕が敵性体へと撃ち込まれていた。
その弾幕は記憶の中のそれよりも遥かに密度が高いが、恐らくはキャロのウイングシューターだろう。
攻撃はそれだけに留まらず、フリードが敵性体の周囲を旋回しており、矢継ぎ早にブラストレイを目標周辺へと撃ち込み続けていた。
弾幕と噴き上がる爆炎が気泡状の浮遊機雷を片端から焼き尽くし、更に敵性体の脚部を覆う有機組織までをも剥ぎ取ってゆく。

308R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:01:26 ID:TfsCCoXA
次の瞬間、目標は全ての機能を停止していた。
可視化した衝撃波と金色の閃光がはやての視界を閉ざした後、再度視線をやった先には、敵性体上に立つエリオの姿。
その手に握られた異形のストラーダは敵性体の体躯に深々と突き刺さり、微かに紫電を放った後に呆気ないほど軽く引き抜かれた。
カートリッジシステムに装着された「AC-47β」から、大量の圧縮魔力が高圧蒸気の如く噴出する。
エリオは周囲の炎を気にも留めずに跳躍、低空を滑空する様にして接近してきたフリードの背へと飛び乗った。
フリードは上昇、頭上で待機していたヴォルテールと並び旋回を始める。

『ギロニカの撃破を確認。外殻クリア』
『アイギス及び防衛艦隊、敵の殲滅に成功。外殻展開中の各部隊は現状のまま待機、指示を待て』

呆然と2騎の竜を見つめていたはやては、管制室からの念話によって漸く戦闘が終結した事を理解した。
そうして、気付く。
自身がこの場に於いて、如何に無力であったかを。

何もできなかったのだ。
防衛網を潜り抜けて降下してきた敵の殆どは、各次元世界の兵器とR戦闘機によって大きくその数を減じ、僅かに落着した大型敵性体はエリオとキャロの2人が完膚なきまでに殲滅してしまった。
やや離れた地点に位置するティアナ達、そしてギンガとナンバーズは数機の小型敵性体を撃破した様だが、自身等は交戦にすら至らなかったのだ。
自身も、自身の家族達も、短時間の内に発動できる長距離攻撃魔法を持ち得てはいない。
ザフィーラやヴィータ、今は負傷者の治療に当たっているシャマルは勿論の事、シグナムのシュツルムファルケンでさえ射程と発動時間の面では些か心許ない。
自身は大威力・長射程の砲撃魔法を有してはいるものの、やはり発動時間の面で絶対的な不利がある。
故に、この迎撃戦に於いては、全くの戦力外だったのだ。

条件は同じだった筈である。
ヴォルテールの砲撃が如何に強力であるとはいえ、魔力の充填にはそれなりの時間が必要。
エリオの機動性が如何に優れているとはいえ、射程の絶対的な不足は覆し様のない事実。
にも拘らず、2人は実に見事な手際で、5体もの大型敵性体を撃破して退けた。

果たして、自身等に同じ芸当が可能だろうか。
恐らく不可能だろう。
あのタイミングで砲撃するには、敵性体落着までの時間を正確に予測せねばならない。
あの機雷を射出する異形の表層へと取り付くには、敵性体の行動を読み切らねばならない。
そのどちらについても、自身達には実行できるだけの下地が無い。
何故か?

「・・・決まっとるやん」

自身等には経験が無い。
自身の五感を通して収集した敵性体の情報も無ければ、攻撃実行を決断できるだけの要素も無い。
だがあの2人は、そして一月に亘りこのコロニーで生き抜いてきた者達は、それを自らの経験として獲得している。
彼等にしてみればこの程度の戦闘など、これまでにも幾度となく繰り返してきた事なのだろう。
キャロは砲撃のタイミングを知り尽くし、エリオは何処を攻撃すれば効率的に敵を屠れるかを知り得ている。
だからこその、あの手際、あの結果だ。
同様の戦果を叩き出す事など、現状でできる筈もない。
少なくともこの戦場で自身等は、あの2人と比して考えれば新兵も同然なのだ。

『管制室より外殻展開中の各部隊へ。敵増援は確認できず。魔導師及び歩兵部隊は順次コロニー内へ退去せよ』
『ライトニング隊、第3通信アレイ・ハッチへ』

はやて達の頭上を、黄色の塗装を施されたR戦闘機が悠々と飛び越えてゆく。
その後を追う様に白と黒の竜が飛び去った後、彼女は力なく首を振ると、傍らの2人を促して歩き始めた。
少し離れた位置を、同じ様にして歩くギンガ達の姿を視界の端へと捉えながら、彼女は遅々とした歩みでハッチを目指す。
一息に飛んで移動する気には、到底なれなかった。

*  *  *

解り切っていた事ではあるが、40000を超える人員の全てを同時に脱出させる事は不可能だった。
コロニーごと移動してはどうかという意見もあったが、コロニー自体の防衛能力及び耐久性の貧弱さ、そして何より移動速度が問題となり却下されたらしい。
そもそも浅異層次元潜航が不可能となった時点で、独力での脱出の望みは潰えた様なものだったのだ。
では何故、この段階で脱出作戦が決行されたのかと問われれば、それには大まかに3つの理由があった。

309R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:02:02 ID:TfsCCoXA
1つは、当初の想定を超える戦力が揃った事だ。
ウォンロンという大型戦闘艦のみならず、総数8機ものR戦闘機との合流。
そしてスバルとノーヴェを解析して得られた情報、それらを基に培養された制御ユニットを搭載する事で、無人制御が可能となった9機のR戦闘機。
これらが揃った事で、浅異層次元潜航を使用せずとも正面から敵戦力を突破できるのでは、という可能性が出てきたのだ。
更に、総数900基を超える防衛人工衛星アイギスの約半数を随伴させる事により、大規模艦隊戦にすら対応できる程の戦力を送り出す事が可能となった。
艦隊を構成する各艦艇の巡航性能、そして敵の迎撃等を考慮すれば光速航行など望むべくもないが、それでも11時間以内に何らかの結果が齎されると思われる。
現時点で艦隊の出撃より4時間が経過している為、作戦が順調に進行すれば7時間以内に脱出艦隊、若しくは救援部隊がこの第3空洞へと現れる筈だ。

2つ目は、時間的猶予の消失である。
現状で判明している外部の状況は、決して好ましいものではない。
時間が経過するにつれ、バイドの物量は確実に他の勢力を圧倒してゆく。
最悪、地球軍を含む各勢力が遠方へと撤退する事態も考えられた。
そうなってしまえば、救援など望むべくもない。
よって、何としても短期の内に、外部との連絡を取る必要があったのだ。

既に、コロニー群の防衛戦力はそれなりに充実していた。
脱出艦隊の12隻を除いても、L級を筆頭として構成された7隻の戦闘艦による防衛艦隊。
ペレグリン・シュトラオス隊を含む11機のR戦闘機、450基を超えるアイギス。
数十機にも達する大型の質量・魔導兵器、1700名以上もの魔導師。
襲い来るバイド群を撃退するには、確実とは言えずとも十分な戦力である。
最早、作戦実行を躊躇う必要性は何処にも無かった。
このまま籠城戦を続けていたとしても、いずれはバイドの物量によって圧殺される事となるのだから。

そして、3つ目。
これまでに幾度となく、生存者達を悩ませてきた問題があった。
幾度か事態の改善を図ったものの、今に至るまで解決されてはいないその問題とは。

「またか・・・」

不規則に点滅した後、エリオの呟きと共に落ちる照明の光。
停電である。
このコロニー、元々は水星及び金星の公転軌道上に浮かぶ発電衛星群からの送電によって電力を得ていたらしく、完全自律発電機構としては非常用の原子炉が2基、それもコロニー建造当初の旧式型しか備えられてはいなかった。
無論、それで防衛系統を含む全システムへの電力供給が事足りる筈もなく、苦肉の策として第88民間旅客輸送船団の輸送艦2隻を第4ドックへと固定し、その動力である常温核融合炉を使用して電力を得ているのが現状である。
しかしそれでも、電力喰らいの防衛システムを維持した上で他系統への電力供給を網羅するには到底足りず、こうして不定期に何処かの区画が停電を起こすのだ。
電力供給に用いる輸送艦の数を増やしてはどうかとの意見もあったが、資源の輸送やコロニー間に於ける物資の流通等を考慮すると、これ以上は稼働状態にある艦数を減らす訳にはいかなかった。

結果、こうして現在もエリオ達の居る区画が停電するに至っている。
復旧までの時間もまちまちで、30秒程で回復する場合もあれば、2時間近くも停電が続いた事もあった。
元々が急ごしらえのシステムなので、異常の発生箇所もほぼ毎回に亘って異なるのだ。
こうなると大気循環システムまでもが停止してしまう為、各区画の隔壁は常に開放されている。
何時だったかランツクネヒトの隊員がエリオに、対バイド戦に於いては致命的な事だとぼやいていたが、停電で窒息死するよりはましだというのが大方の意見だった。

「今度は何時まで掛かるかな・・・」
「今回は早いと思うよ。原因はG-08のマス・キャッチャー格納区だって」

隣から掛けられた声に、そちらへと視線をやるエリオ。
其処には暗闇の中に浮かぶウィンドウを前にして操作を行なっているキャロ、その肩で翼を休めるフリードの姿があった。
彼女はウィンドウを閉じ、照明代わりの魔力球を浮かべる。

「空調も停止してる。少し暑くなるかも」
「良いんじゃないかな、このエリアって少し寒い位だし」

自らの使役竜の顎下に手をやり撫ぜるキャロと、微かに目を細めるフリード。
一見すれば微笑ましい光景だが、以前のそれとは僅かに異なるものである事をエリオは知っている。
キャロの表情に笑みはなく、フリードも以前の様に声を発する事はない。
それが何時からの事であるかも、エリオは良く覚えている。

310R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:03:09 ID:TfsCCoXA
六課解散後、キャロと共に自然保護隊所属となったエリオは、彼女の元上司である2人の局員から大いに世話を焼かれたものだ。
ミラ、そしてタント。
彼等は上司としての指導に当たる傍ら、キャロとエリオを自身の妹と弟の様に可愛がり、どちらかといえば娯楽に疎い2人の為に様々な遊びを教えてくれたりもした。
エリオも彼等を姉や兄の様に想っており、2人が交際を始めた事を打ち明けてきた時も、キャロと共に我が事の様に喜んだものだ。
2ヶ月前にミラの妊娠が発覚した際も、喜びの余りタントが彼女を抱き締める傍らで、2人共に心中へ次から次へと浮かんでくる喜びと祝いの言葉を送り続けた。
そうしてあの日も、検査の為に仲睦まじく街へと向かう彼らを乗せた車を、巡回前にキャロと並んで手を振りつつ見送ったのだ。

スプールス全土へと「何か」が落着したのは、その3時間後だった。
狂った生態系が猛威を振るう地獄の中を死に物狂いで逃げ惑い、襲い来る異形の生命体群を片端から屠る。
救援を求めても答える者は無く、近辺の生存者を集めると状況に流されるがまま籠城戦が始まった。
こちらが優勢だったのは、最初の2時間のみ。
後は尽きる事のない物量によって徐々に圧され、初めに1人、次に10人、次に100人と、秒を追う毎に犠牲者数が増えていった。
だが、真に生存者達を追い詰めたのは、その事実ではない。

スプールスに生息する生物の大多数は、リンカーコアを有している。
それらは個体識別に利用する事ができ、更に対象の同意を経て付与される識別用マーカーにより、120時間毎に自然保護隊の施設へと24時間のバイタル送信を行うシステムが構築されていた。
そのシステムは住民にも任意で適用され、雨期には比較的大規模な自然災害が多発するスプールスの環境から、彼等を効率的に守る為に利用されていたのだ。
そしてあの日もまた、バイタル送信の実行日だった。

原生生物のバイタルに紛れる様にして複数の人間のバイタルが存在する事に気付いたのは、近代ベルカ式という戦闘スタイル故に最前線でストラーダを振るっていたエリオだ。
一部の敵が住民のバイタルを複数に亘って有している事を確認したエリオは、しかしそれを熟考する暇さえなくストラーダで対象を貫いた。
切迫した戦況下での咄嗟の行いだったが、実感を以ってその事実を振り返る事ができたのは4時間程が経過してからの事だ。

休息を取っていたエリオは、自身が「人であったもの」を殺めたという事実を反芻し、恐怖した。
嘔吐し、震え、水を飲み、また嘔吐する。
恐ろしい事実に彼の心は軋みを上げ、悔恨が意識を締め付ける。
だが、其処で膝を屈するにはエリオの意思は屈強であり過ぎ、思考は聡明であり過ぎた。
彼はキャロや他の生存者に余計な心労を負わせまいと、自身を叱責して再度前線へと向かう。
そして襲い来る「人であったもの」達を、自身の心を殺しつつ屠り続けたのだ。

その頃になると、生存者達は皆が気付いていた。
押し寄せる異形の生命体群の中に、人間を基とする個体が少なからず存在する事に。
無論、キャロも例外ではなかっただろう。
フリードの放つブラストレイは徐々に大型の敵のみを狙い始め、その砲撃頻度も時間を追う毎に減少していった。
施設のシステムは暴走し、敵性体へと接近する度に対象の個人名が表示される様になってはいたが、エリオは強靭な意志でそれらを無視する。
認識してしまえば、槍を振るう事などできなくなってしまうから。

意志の力を振り絞って、表示されるウィンドウを意識の外へと追いやり、悲鳴を上げる肉体とリンカーコアを無視して、敵を屠り続けた。
只管に突き、抉り、薙ぎ、穿った。
悲鳴も、咆哮も、血飛沫も、負傷さえも無視した。
戦闘以外に関する全ての思考を抑え込み、突き殺し、焼き殺し、踏み潰した。
一瞬でも攻撃の手を緩めれば、その立場となるのは自身達であると理解していた。
皆を護る為に、自身が生き残る為に、絶対の暴力たらんとした。

311R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:03:51 ID:TfsCCoXA
それでも近接戦闘である以上、強制的に視界へと飛び込む情報もある。
対象へとストラーダを突き立てた瞬間に、眼前に表示されたウィンドウ上の名が目に入ってしまう事は幾度となくあった。
だがそれすらも無視し、エリオは押し寄せる無毛の鳥類にも似た異形を屠り続ける。
肉片と鮮血と共に敵の体内に巣食う無数の寄生虫が降り注ぐ中、彼は数十体目の異形へと突進、スタールメッサーで両脚を叩き斬り、落下してきた胴体へとストラーダの穂先を叩き込んだ。
その瞬間、噴き出す血潮の中で展開されたウィンドウを通し、彼の視界へと飛び込んできた人物名。



「タント」
「ミラ」
「胎児レベル 個人名未登録」



其処からのエリオの記憶は曖昧だ。
ただ、大量の魔力を消費した事と、耳を覆いたくなる様なキャロの悲鳴だけは覚えている。
後に記録映像を見たところ、彼は電気変換された魔力による暴走を引き起こしていた。
サンダーレイジの効果域を超える広範囲に亘って紫電の光が爆発し、周囲のありとあらゆる生命体を死滅させたとの事だ。
そして意識を失った彼はその後、5時間に亘って眠り続ける事となる。

尤も、彼自身は後に映像を見るまで、そんな事実があった事すら認識してはいなかった。
気付いた時にはベッドで仰向けになり、屋外より響く戦闘の音を耳にしつつ呆けていたのだから。
ただ、止める局員やキャロをすら振り切ってすぐさま戦闘へと復帰した際、異様に思考が落ち着いていた事だけは覚えていた。
後は機械的に敵性体を処理し、適当に敵を密集させた後にサンダーレイジで感電死させる作業を繰り返していた記憶はある。
そうこうしている内に人工天体内部へと転送され、ランツクネヒトによって保護されたのだ。
絶望的な籠城戦を生き延びたエリオ等だったが、その頃からキャロは全くといって良い程に笑わなくなった。
時折見せる笑顔は明らかに繕ったものであり、以前の様に自然な笑みを浮かべる事は決してない。
更に、今でこそこうして会話もできるが、保護された直後は顔を合わせる度に、まるで逃げる様にして彼の前から立ち去る事を繰り返していたものだ。

キャロが何を考えているのか、ある程度はエリオにも想像できた。
「ミラとタントであったもの」を殺してしまったエリオに対する制御できない憤り、それを抱く自身に対する憤怒と嫌悪、エリオに手を下させてしまった事に対する後ろめたさといったところか。
実質、あの時点でミラとタントという人間は死亡したも同然である事、殺害以外に方法が無かった事は、キャロも理解はしているのだろう。
だがそれでも、納得などできる筈もない。
直接に手を下したエリオを恨み、その役割を押し付けてしまったと自身を責め、しかし余りにも残酷な2人の死を受け入れる事は容認できず。
その優しさゆえにキャロは、エリオに対し憤りと罪悪感とを抱きつつも、否応なしに迫り来る状況に対応する中で一時的に精神が摩耗してしまったのだろう。

それで良い、とエリオは考えていた。
許さなくて良い、恨んでくれれば良いと。
そうでなければ、彼は正気を保つ自信が無かった。

いずれ、キャロの精神は回復するだろう。
彼女は強い。
残酷な現実も、何もかもを受け入れて、その上で前へと進む事ができるだろう。
だが、自身は以前と同じには戻れそうもない。
全てが終わった後、自身はこう考えてしまったのだ。



2人を、確実に殺せたのだろうか、と。



ストラーダを振るい「人であったもの」を屠り続けている最中、ふと脳裏へと浮かんだ疑問があった。
或いは自身のこの行いは、この異形へと変貌した人々にとっては「救い」なのだろうかと。
彼等はきっと、2度と人としてあるべき姿へとは戻れない。
異形の化け物と化し、同じ人間を襲い喰らう様からは、正常な人間の知性というものは全く感じられなかった。
このまま人を喰らい、無数の寄生虫を体内に宿しつつ狂気に侵されたこの世界を練り歩く事が、彼等にとっての幸福となるのだろうか。

312R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:04:24 ID:TfsCCoXA
違う。
此処で彼等を生かしておく事は、決して慈悲とはなり得ない。
真に彼等を想うならば、その変わり果てた生を許容する事なく、人間である者の手で断ち切る事こそが救いなのではないか。

それは、単に罪悪感から逃れる為の言い訳に過ぎなかったのかもしれない。
だがその時の自身にとっては、震えそうな腕に槍を振るう為の力を与えてくれる、正に天啓とも云うべきものだったのだ。
このコロニーへと保護された後、治療を受けている最中に思考を占めていたのは、自身は2人を「救う」事ができたのかという、結果に対する疑問だけだった。
2人、否、3人の殺害は不可避のものであったと、既に自身の中では結論が導き出されてしまったのだ。

卑怯な事だとは思う。
自身がこの問題で悩む事は、恐らくは2度と無い。
キャロが3人を殺害する役割を自身に押し付けたというのならば、自身は3人の死を悼む役割をキャロに押し付けている。
彼女はいずれ、この隔たりを埋めようと歩み寄りを試みる事だろう。
だが、自身がそれに応える事は、恐らくない。
彼女と同じく死者を悼んでしまえば、自身は2度と槍を振るえなくなってしまうから。
異形と化した者の境遇を想ってしまえば、背後に護るべき者があるにも拘らず、その生命を奪う事を躊躇ってしまうから。

自分が殺し、キャロが悼む。
それで良い、それこそが最良なのだ。
全てが終われば、互いに2度と交わらぬ道へと分たれる事になるかもしれない。
歩み寄ろうともしない自分に失望し、死者の魂を厭わぬ内面を軽蔑し、キャロ自身の意思で自分の前から去るのかもしれない。
だとしても、この意志だけは覆すつもりはないのだ。
人が、或いは「人であったもの」が、この先もまた自身等の前に立ちはだかるというのなら。



キャロには、誰1人として殺させない。
その責は、全て自分が負ってみせる。



「・・・戻ったみたいだね」

空調からの風が髪を擽るとほぼ同時、キャロの呟きが漏れた。
直後に照明が次々に点灯され、通路は元の明るさを取り戻す。
「Air circulation system activated」との人工音声アナウンス。

「・・・行こうか」
「うん」

キャロを促し、歩み始めるエリオ。
と、その左肩にそれなりの重みが掛かる。
見れば、フリードが其処に止まり、翼を休めていた。
以前は頻繁にあったが、あの日からは1度として無かった事だ。
驚き、キャロを見やると、彼女は何処か怯える様にしながらも、エリオの手元へと自身の手を伸ばそうとしていた。
だが彼女は、自身を見つめるエリオの視線に気付くと、暫し迷う様な素振りを見せた後にその手を引き戻す。

咄嗟に手を握りそうになる自身を何とか抑え、エリオはキャロより視線を外して歩み始めた。
自身の名を呼ぶ、掠れる様に小さな声を意図的に無視し、平静を装って無機質な通路を進む。
その肩にはもう、小さな竜の姿はなかった。

*  *  *

「復旧しない?」

小奇麗に清掃されたレストランで食事を取っていたシャマルは、同じ店内から発せられた声にそちらへと振り返った。
彼女がこの場に居る理由は、何も職務を放棄した訳ではない。
シャマルが負傷者の治療に回された背景には、彼女が医務官の肩書きを持つだけが理由ではなく、能力が間接支援向きである為に迎撃戦には不向きと判断された事もあった。
無論、彼女自身もそれを承知していた為、特に問題はなく医療任務に就く事となったのだが、予想外な事に彼女がすべき仕事が殆ど無かったのだ。

313R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:05:17 ID:TfsCCoXA
だが、少し考えれば納得もできた。
重傷者は「AMTP」と呼称される第97管理外世界の医療ポッドか、各次元世界の被災者が持ち込んだ治癒結界展開装置を用いて治療する事がこのコロニーでの通例だ。
それが時間的に最短の方法であるし、元より外科手術を行える人員の数は限られている。
生存者達にとって全てをオートメーションで実行してくれる機械類は、医療に携わる同じ人間よりも遥かに信頼性が高かったのだ。

問題は電力である。
医療ポッドに治癒結界、いずれにしても稼働時には大量の電力を消費する物だ。
電力事情の悪いこのコロニーでは、全てのポッド及び結界を常時稼働させる事など不可能。
以前は比較的広域の結界を常時展開しており、軽傷者は自力でその中へと入って治癒を行っていたらしいが、被災者の数が膨れ上がるにつれ電力消費も跳ね上がり、結界を維持する事が不可能となってしまったのだ。
其処で、今度は医療魔法を使用できる魔導師が脚光を浴びる。
短時間で負傷を癒す事のできる彼等の能力は軽傷者の治療に打って付けだったが、その活躍も長くは続かなかった。
アイギスの配備数が増大し防衛戦力が強化される事で、散発的な戦闘の発生件数が激減した為だ。
周期的に発生するバイドの大規模侵攻では、防衛網を突破した強大な戦力との戦闘である事が多く、担ぎ込まれるのは重傷者か死体ばかり。
即ち医療ポッドを使用するか安置所送りかの2通りであり、個人の有する医療魔法が必要となる場面そのものが激減してしまったのだ。

シャマルも例外ではなかった。
彼女が治療を施したのは、保護された時点で負傷していた民間人4名のみ。
一応の精密検査は行ったものの、特に異状もなく全ての検査が終了した。
その後も医療施設内部で待機していたのだが、局員の1人に休憩を勧められ、施設から少し離れた位置で食事の提供を始めたレストランへと足を運んだのである。
元々はこのレストラン跡を覗いた数人の被災者が、自身等が料理を供する職業であった事も手伝って、生存者の精神的なケアを目的に始めたものだという。
その意図は見事に実を結び、昼時までは少し早い時間帯である現在も、店内には十数人の人影があった。
これが食事時ともなれば、屋外のテラス席までが満席になるという。

シャマルのオーダーはマフィンにコールスローという軽食だが、元が合成食品とは到底思えない程に美味なものだった。
マフィンは、生ハムの塩気とトマトの酸味がチーズのまろやかな甘みと相俟って絶妙な塩梅となっており、それが容易に噛み切れる程度の固さに焼き上げられたマフィンと見事に調和している。
少し強めに利かせたドレッシングの胡椒も、しつこくない程度に刺激的なスパイスとなっていた。
マヨネーズではなくレモン風味のソースで仕上げたコールスローも、マスタードがアクセントとなって新鮮な味わいがある。
そして何よりシャマルが気に入ったのは、食後にオーダーしたコーヒーだ。
ふくよかな豆の香りはこれまでに嗅いだ事のないものだったが、その香ばしさは彼女の好みにぴたりと当て嵌まった。
口に含むとブラックでも仄かに甘みがあり、それが口の中の油分を爽やかに押し流してくれる。
時間があれば、何処の世界の豆を使っているのか、店の者に尋ねてみるのも良いかもしれない。

『G-08エリアです。供給ラインの迂回により他のエリアでは復旧が確認されたのですが、当該エリアの電力はダウンしたままです』
「エリアを使用しているのはメイフィールド近衛軍だったな。通信は?」
『不通。向こうからの接触もありません。隔壁が閉鎖されたのか、或いは・・・』
「他に向かえる部隊は?」
『既に4小隊が向かっていますが、時間が掛かります』
「すぐに向かう、魔導師を寄越してくれ。探査系に優れた者が良い」
「此処に居るわ」

カップの中身を飲み干しナプキンで口許を拭くと、席を立ち通信を続ける彼等へと歩み寄るシャマル。
驚いた様に彼女を見る彼等だったが、すぐに魔導師であると悟ったのか、同じく席を立つと足早に歩み始めた。
カウンターの奥に声を掛け、食事の礼を言うとそのまま店を出る。
シャマルもそれに倣い、店の人間に礼を言いつつ屋外へと歩み出た。

「オルセア正規軍・第203陸戦隊、指揮官のビクトル・アロンソだ。正規軍って組織はオルセアに山ほど在るが、それについては勘弁してくれ。現在の隊員数は19名」
「管理局医務官、シャマルです。そちらに魔導師は?」
「いや、居ない。だが全員が対機動兵器戦を想定した武装を有している」

314R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:05:56 ID:TfsCCoXA
地下、即ち構造物内部へのアクセスポイントは市街の至る箇所にあり、シャマル達はその1つを目指す。
緊急用アクセス・ハッチの前には既に他の隊員が集合しており、各々が手にした質量兵器を点検していた。
そしてハッチが開放されると、全員が滑り込む様にして内部へと姿を消す。
後を追ってハッチ内部へと踏み込むと、其処には既にトラムが到着していた。
円柱状のレールから3本のアームが伸び、それらの先端に車体が接続された全方位可動式車両。
全員が車内に乗り込みドアが閉じると、トラムはすぐに発車する。
マス・キャッチャー格納庫までは3分だ。

「聞いた通りだ。我々はG-08エリアに向かい、周辺を調査する。当該エリアはメイフィールド近衛軍が機動兵器の保管に使用しており、特に大型マス・キャッチャー格納区は無重力状態が保持されている。
侵入する際はマグネットをオンにしろ。ドクター、飛翔魔法を使う際は重力下と感覚が異なるので注意を」
「了解」

やがて、トラムが減速を開始する。
車両が停止しハッチが開くと、其処はG-08エリア第2トラムステーションだった。
第203陸戦隊の面々が先に降車し、暫し安全確保をコールする声が続いた後、アロンソに促されてシャマルは車外へと歩み出る。
非常灯の明かりのみが照らし出すステーション内部。
薄闇の中を奔る赤い光、十数本のレーザーサイト。
シャマルはウィンドウを開き、アクセスを試みる。

「・・・駄目ですね。メインの電力は完全に落ちています」
『隔壁の閉鎖を確認。警戒して下さい』
「203了解。総員、格納区へ向かうぞ」

2名の隊員が通路を先行、やや離れて続く本隊。
後方にも2名が着き、隊は前後を警戒しつつ広大な通路を前進する。
やがて、閉鎖された隔壁が視界へと入った。
エリア各所へのアクセスルート、幅15m、高さ4mの通路を封鎖する、分厚い金属の壁。
隊員の1名が壁際のパネルを開き、内部のコンソールを操作する。

「駄目だ、全く反応が無い」
「管制室、電力を回してそちらからオーバーライドできないか?」
『了解、待機して下さい』

十数秒後、パネルに幾つかの光が点った。
すぐさま操作を再開する隊員。
そして彼はシャマルの名を呼び、コンソールの前にデバイス用のアクセスポイントである魔力球を発現させた。

「管理局のメカニックが構築したシステムなので問題は無い筈です、ドクター」
「ありがとう」

クラールヴィントをリンゲフォルムへと変貌させ、それを嵌めた指で魔力球へと触れる。
途端、隔離区画内の情報が、洪水の如く意識へと流れ込んできた。
システムの補助を得てそれらを整理し、並列思考で以って高速処理を行う。

「バイド係数2.62、複数探知。総数9」
「そいつは近衛軍の機動兵器だ。魔力増幅の為に「AC-47β」を模倣したシステムが配備されている」
「あとは・・・生命反応は確認できません。システム自体が沈黙しています」
「バイド係数の検出源は9ヶ所のみなんだな?」
「ええ」

暫しの沈黙。
シャマルは再度の探査を掛けるが、特に新しい情報は無かった。
何とか生命反応だけでも探知できまいかと試行錯誤していると、沈黙を打ち破ってアロンソの声が響く。

「マテオ、隔壁を開放しろ」

丁度その時、ステーションへとトラムが到着したらしい。
30名程の人員、魔導師やランツクネヒトを含むそれらが、こちらへと追い付いてくる。
どうやら通信越しに先程までの会話を聞いていたらしく、アロンソが続く言葉を紡ぎ出す事を待っている様だ。

315R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:06:34 ID:TfsCCoXA
「検出源の数は兵器数と一致している。先程の戦闘で損失があったとの記録も無い。という事は、こいつは純粋なシステムトラブルである可能性が高い」
「万が一という事もあるのでは? 例えば、格納区内部にバイドが侵入しているとか」
「コロニー内部へ侵入するものは何であれ、全て記録される。24時間以内にこのエリアから外部へ出入りしたのは、メイフィールドの機動兵器だけだ。それに・・・」

アロンソは溜息を吐き、手にした質量兵器の銃身で軽く肩を叩く。
その素振りが何処か呆れを滲ませている様に感じられるのは、気の所為ではあるまい。

「正直なところ、原因は分かっているんだ。連中が使っている防護結界だよ。待機中は9機の機動兵器、その全てに結界を施しているんだ」
「何だ、それは」

初耳だったのだろう、新たに到着した人員の1名が怪訝そうに問う。
だが、どうやらランツクネヒトの小隊指揮官は既にその事実を承知しているらしく、無言のまま僅かに肩を竦める素振りを見せていた。

「近衛軍兵士の能力は非常に優秀だが、同時にプライドも並外れて高い。軍全体から選び抜かれた精鋭の中の、更に一握りが近衛軍に所属できる。能力だけでなく、王家への忠誠心も問われるんだ。
連中の兵器は他の軍団とは異なり、王家から直々に授けられたもの、という事になっている。連中はそれに傷が付く事を敬遠するんだ。だから、普段から防護結界を展開して厳重に管理している」

その話は、シャマルも知っている。
メイフィールド王朝を有する第71管理世界は、旧暦に於いて親ベルカ勢力国家だった。
真偽こそ定かではないものの、メイフィールド王家は一部聖王の血筋を引いている、との歴史的見解すら存在する程度には密接な繋がりがあったのだ。
その見解を裏付ける様に、第71管理世界は古代ベルカに良く似た、或いはその発展形とも取れる専制君主制が敷かれている。
一方で軍の大部分はシステムの近代化が進んではいるものの、これが近衛軍ともなると未だに兵士というよりは騎士としての性格が色濃く残されていた。
彼等の使用する兵器は王家より授けられ、王家より賜った命を果たす事にのみそれを使用するのだ。
それらが戦場に於いて損傷する事に関しては納得せざるを得ないであろうが、戦闘以外の要因で傷付く事は極力避けたいというのが彼等の本音だろう。

「結界の電力を外部から供給しているのか」
「結界そのものが外部に構築されたものだ。連中、マス・キャッチャーの保管ユニットに機体を格納して、表層に結界を展開したシャッターを下ろしているんだ」
「それが停電の原因か」

だが、その信念も時と場所を弁えて欲しいものだ。
シャマルは騎士として共感を覚えると同時に、そんな相反する思考をも抱いてしまう。
彼等にしたところで、現状でのその行いは最善でない事など疾うに承知している筈だ。
それでも信念を変える事ができないのは、誇りある騎士としての融通の利かなさ故か。

「これでもう3度目だよ。確か第97管理外世界じゃ、何とかの顔も3度まで、って言うんだろ?」
「仏の顔も、よ。それも一部地域限定」
「何だって良いさ。こいつを開けて、中に入ろう。窒息でもされたら貴重な戦力が減っちまう」
「同感だ」

マテオと呼ばれた隊員が、三度コンソールを操作する。
「Quarantine lifted」との音声の後、隔壁が天井面へと収納され始めた。
未だに照明は落ちたままだが、ドア等の操作は可能となったらしい。

「前進」

アロンソの指示と共に、総数50名近くにもなった歩兵と魔導師の混成部隊は、警戒を緩めずにエリア深部へと向かう。
行く先々で隔壁を開放し近衛軍人員を探索するものの、その姿が照明の落ちた闇の中に浮かび上がる事はなかった。
だが同時に、最も恐れていたバイド係数の変動、検出源の増加なども起こってはいない。
係数2.62、総数9。

『リフレッシュルーム、クリア。やはり誰も居ない。何処へ行った?』
『機体の整備中だったんだろう。格納区へ行くぞ』

316R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:07:40 ID:TfsCCoXA
エリアに散っていた隊員が集まり、一丸となって格納区へと続く通路を進む。
やはり照明が落ちている以外にこれといった異常はなく、しかし万が一の事を考えるに警戒を緩める訳にはいかなかった。
バイドの脅威は此処に居る全員が身を以って経験しているであろうし、楽観的な予想を口にしたアロンソでさえ周囲警戒を怠る様子はない。
一同は、人に向けるには明らかに過剰な威力を有するであろう質量兵器、或いはデバイスを構え、足音を忍ばせる様にして移動を行っていた。
シャマルはバリアジャケットのデザインから徒歩で彼等の歩調に合わせる事を早々と諦め、今は飛翔魔法を用いて床面より僅かに浮かび上がり移動している。
そして通路を進むにつれ、右手の壁面に「MC HANGER BAY 01」との表示が施された隔壁が現れた。

「此処が格納区?」
『近衛軍が使用しているのは第4格納庫、もう少し先だ』

部隊は更に前進する。
200mほど進んだ頃、漸く「04」の表記が闇の中に浮かび上がった。
隔壁の前に展開した隊員達が質量兵器とデバイスを構え、無数のレーザーサイトの光が闇を切り裂く中、無機質な合成音声が響く。

『Quarantine lifted』

隔壁、開放。
次いで通常のドアが開放されると、その向こうには完全な闇が拡がっていた。
天井面と床面の非常灯が幾度か明滅した後に点灯し、漸く最低限の視界が確保される。
幅及び高さは50m程、奥行きは300m以上か。
シャマルは格納庫内部をサーチ、各種反応の位置を探る。

「バイド係数検出源、特定。此処だわ」
『壁面に格納ユニットの隔壁が並んでいるだろう。連中の機体はその中だ。確か、外殻から直接此処へ輸送される筈なんだが・・・』
『マス・キャッチャー・ユニットの格納用ラインがあるんだ。今は近衛軍が使用しているが、外殻ハッチ内部に機体を固定すれば、後はオートで格納ユニット内部まで運搬される』

ランツクネヒト隊員の説明を耳にしながら、シャマルは左右の壁面に並ぶ計10ヵ所の非常用隔壁を見渡した。
縦横60m程のそれら内部は、本来ならば近衛軍が設置した防護結界によって保護されているのだろう。
しかし今は完全に閉鎖され、その内部を窺う事はできない状態となっていた。
数名が各所の隔壁開放を試みるも、その結果は芳しいものではなかった。

『システムが操作を受け付けない。此処だけ独立している様だ』
『本当か?』
『詳しい事は解らないが、アクセスが拒否された。管制室、そちらからオーバーライドできないか?』
『試みましたが、失敗しました。先ずはエリアの電力供給を回復して下さい。その後で、再度オーバーライドを試みます』
『203了解。隊を2つに分けるぞ。我々はこのまま前進、アンタ方は此処の警戒を頼む。残っているのは大型マス・キャッチャー格納庫だけだ』

そして部隊は2つに分かれ、シャマルは第203陸戦隊と共に大型マス・キャッチャー格納庫を目指す。
目的地は第4格納庫を抜けた先、全ての格納庫へと繋がるドアが集合した通路の突き当たりにあり、逆方向のメインホールへと繋がるドアは破損している為に機能していないとの事だ。
進むこと数分、シャマル等は「LMC HANGER BAY」の隔壁へと辿り着いた。

「この先は無重力だ。ブーツの設定変更を忘れるな」
「電力が落ちているのに、無重力状態が維持されているの?」
「このコロニーは今、回転して遠心力を生み出している訳じゃない。急ごしらえの重力制御システムで、外殻へと向かって重力を発生させているんだ。無重力状態や重力偏向状態が必要な区画には、その影響が及ばない様になっている」

隊員がコンソールを操作し、隔壁を開放する。
その先に現れた通常のドアを前に、シャマルはシステム越しに内部を探った。
生命反応、多数。
システムエラーにより、詳細な数は不明。

「生命反応はあるけど、数は分からないわ。でも、彼等は此処に居る筈よ」
「マテオ」

アロンソの合図と共にドアが開かれる。
隊員達の質量兵器に取り付けられたフラッシュライトが内部を照らし出すと、微かな呻きが上がった。
照らし出された先に、パイロットスーツを纏った幾人かの人影。
どうやらペンライトの明かりを頼りに端末を覗き込んでいたらしく、向けられるフラッシュライトの光を遮る様に掌で目を庇っている。

317R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:08:10 ID:TfsCCoXA
「オルセア正規軍・第203陸戦隊、停電の調査に来た。全員無事か?」
「・・・ああ、良く来てくれた、助かるよ。この通り、みな無事だ」

答えつつ、年配の男性が幾分ぎこちない足の運びで歩み寄ってきた。
ブーツのマグネットにより、足裏が床面へと吸い付いているのだ。
シャマル達もまた倉庫内に踏み入ると、途端に襲い来る無重力感。
飛翔魔法など用いていないにも関わらず、床面より浮かび上がる身体。
床面に突いた足の反動により、予想以上の勢いで浮かびそうになったシャマルは、慌てて飛翔魔法を発動し制動を掛けた。
アロンソの言葉通り、重力下とは異なる勝手に些か戸惑いながらも、何とか通常と同じ視点の高さを保つ。
何とか平静を装いつつ、彼女は近衛軍の指揮官らしき男性に問い掛けた。

「それで、停電の原因は判明しているんですか」
「ああ。恥ずかしい限りだが・・・「アンヴィル」を格納庫に戻した直後、いきなり隔壁が閉鎖されたんだ。停電はその際に起こった。どうやら、結界維持に電力を喰い過ぎたらしい」

アンヴィルとは、第71管理世界に於いて運用されている機動型魔導兵器である。
縦幅及び横幅は約50m、高さ15m程のそれは、外観からは上下に圧縮された騎士甲冑の様にも見える代物だが、その運用方法たるや空間移動砲台とも云うべき兵器だ。
機体の四方には高出力魔導砲、更に上部には円盤状の旋回砲塔を備え、全方位への攻撃を可能としている。
この旋回砲塔は多くの魔導兵器同様に砲身が存在せず、発射口のみが砲塔側面に穿たれている為、非常に高い耐久性能を誇っていた。
更に、内蔵されている戦術級魔導砲は次元航行艦クラスのそれと比較しては劣るものの、Sランクに相当する魔導砲撃を約8秒間に亘って持続し、更にその砲撃間隔たるや僅か10秒強という異常な性能を誇っている。
加えて、砲撃の持続時間を短縮し砲弾の様に形成する事で、0.3秒間隔での連射を40秒間に亘って継続する機能をも有し、現行の魔導兵器としては最も優れた機種であるとして、管理局内部でもその危険性を指摘する声が絶えなかった。
しかしこの状況下では、これ程に頼もしい戦力もあるまい。

「パイロットは?」
「まだ機内の筈だ。本来、格納されているマス・キャッチャーは無人だからな。隔壁を開放してやらねば、降機する事もできない」
「なら、早く出してやらないとな。マテオ、ルート再設定。ルペルトはマテオを補佐」
「了解」

そうして各々の作業に移る各員を、シャマルは展開したウィンドウ越しに眺めていた。
何度サーチを繰り返しても、バイド係数と検出源の個数、位置に変化はない。
それでもなお、シャマルには気になる事があった。

「何故、隔壁が作動したのかしら」
「魔力増幅用バイド体の所為だろう。あれは強力なシステムだが、実装されてから日が浅い。管理局で使用しているものみたいにエネルギーの蓄積で暴走する事はないが、妙に不安定になる時があるんだ」
「不安定に?」
「急激なバイド係数の上昇、そして下降だ。改善しようと思えばできるらしいが、増幅率を優先して目を瞑っているっていうのが現状だよ。恐らく、今回の停電もそれが原因だろう。
急激に上昇したバイド係数に反応したシステムが、安全の為に隔壁を閉鎖したんだ。それで電力不足に陥ったと」

成る程、とシャマルは納得し、ウィンドウを閉じる。
ほぼ同時に格納庫内の照明が回復し、広大な空間を光で満たした。
先程までの闇の中では気付かなかったが、遥か頭上に100名以上の人員が居る。
彼等はブーツの磁力により壁面に立ち、周囲と言葉を交わしつつ各々の作業へと戻ってゆくところだった。
他にもかなり大型の機材が壁面に固定、或いは太いチューブに繋がれた上で空間を漂っている。
先程の指揮官らしき男性がこちらへと向き直り、改めて礼の言葉を紡いだ。

「協力に感謝する。ありがとう。此処はもう大丈夫だ」
「なら良いんだ。じゃあ、我々は撤収する。他の連中を待たせているんでな」
「第4格納庫を通るのなら、パイロット達に此処へ戻るよう伝えてくれないか。どうにも先程の停電で通信システムがやられたらしい」
「何だって?」

男性の言葉にアロンソが第4格納庫に残った隊員達との通信を試みるものの、聴こえてくるのはノイズばかり。
暫し操作を続けるものの、状態が回復する事はなかった。
第4格納庫、通信途絶。

318R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:08:53 ID:TfsCCoXA
「まいったな。ぼろコロニーめ、1ヶ所直すと2ヶ所壊れやがる」

悪態を吐きながらも、アロンソは隊員を呼び戻して帰投する事を告げた。
二言三言、指揮官と言葉を交わし、互いに敬礼して無重力圏を後にする。
シャマルもその後に続き、しかし通路との境を跨いだ瞬間、回復した重力に体勢を崩しそうになった。
何とか踏み止まるも、右足首に鈍い痛み。
すると、一部始終を目撃していたらしい隊員から、気遣う様な言葉が掛けられる。

「大丈夫ですか、ドクター?」
「あ、ええ・・・」

それは、マテオと呼ばれていた隊員だった。
大丈夫だ、との意思を込めて苦笑を返すも、直後に奔った再度の痛みに表情が揺らぐ。
傍にあった休憩用のベンチに腰を下ろし、シャマルは軽く息を吐いた。

「・・・ごめんなさい、少し捻ってしまったみたい。私は此処で治療していくから、貴方達は先に戻って」

その言葉に、シャマルを待っていたアロンソは何事かを考え始めた様だ。
暫くして彼は、シャマルの傍に付いていたマテオへと指示を出す。

「マテオ。ドクターの治療が終わるまで、傍に付いていてやれ。俺達は先に戻って、今回の件を報告する。ステーションに2人ほど残して行くから、彼等と合流して何時もの店まで来てくれ」
「了解」

それだけを言うと、部下を率いて通路の奥へと消えてゆくアロンソ。
初めは断ろうとしていたシャマルだったが、まだ勝手が良く解らない事もあり、折角の配慮だと厚意に与る事にした。
足首に治癒魔法を掛け、捻挫による軟部組織の損傷を癒すシャマル。
マテオは無言のまま、治療が終わるのを待っていた。

「見たところまだ10代みたいだけれど、貴方はどうして軍に?」

暫くして治療が終了すると、シャマルは足首の具合を確かめながらマテオへと問い掛ける。
彼の方もそういった問いには慣れているらしく、特に言い淀む様子もなく答えを返してきた。

「内戦で両親が死にまして。自分の街を焼き払った連中に復讐する為と、家族を食わせる為です」
「家族が居るの?」
「妹が1人。2年前にリンカーコアがあると判明して、それを頼りにオルセアから逃がしました。その4ヶ月後に、無事に管理局に入ったとの連絡が」
「そう・・・妹さんは何処の訓練校に?」

その時、マテオの視線が僅かに伏せられた事を、シャマルは見逃さなかった。
嫌な予感を覚えつつも、彼女は続く言葉を待つ。
果たして、語られたのは非情な現実。

「・・・第二陸士訓練校」

シャマルには、返す言葉が見付からなかった。
第二陸士訓練校はクラナガン西部区画郊外に位置し、バイドによるミッドチルダ襲撃時、ガジェット群の攻撃を受けている。
迫り来る数十機ものガジェット群に対し、教導官達は訓練生を地下へと避難させた上で迎撃を開始した。
訓練生を除いた全ての魔導師が、壁となって迫り来るガジェット群を魔導弾幕で以って撃墜せんとしたのだ。

結果、第二陸士訓練校は周囲6kmの土地と共に、ミッドチルダの地表から消滅した。
生存者は疎か、遺体すら1つとして発見されなかった。
行方不明者、2059人。
内、1634名が訓練生だった。

319R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:09:24 ID:TfsCCoXA
「・・・もう行きましょう。皆が待っている」

そう言って促す彼に、ぎこちなく頷きを返す。
先導する様に先を歩くマテオの少し後方を、無言で着いてゆくシャマル。
やがて第4格納庫の前へと辿り着くと、マテオは其処で足を止めた。
訝しむシャマルに、彼は語り始める。

「ドクター」
「・・・なに?」
「妹は死んでしまいましたが、自分は後悔していません。オルセアに残っても、きっとアイツは遠からず戦火に巻き込まれて死んでいた」

背後のシャマルを振り返る事なく、マテオは言葉を続ける。
シャマルも、口を挟むつもりはなかった。

「それだけじゃない。何時かアイツも自分と同じ、戦場で誰かを殺す様になっていた筈です。銃の代わりにデバイスを手にして、見知らぬ誰かを殺す事に。アイツは、訓練校で友達ができたと言っていた。
そんな経験ができたのも、管理局に入ってミッドチルダへ行ったからなんです」

振り返り、シャマルの目を見据える。
その眼光の強さに、シャマルは息を呑んだ。

「自分はバイドを許すつもりはありません。奴等が目の前に現れるなら、その全てを殺し尽くしてやる。1匹だって逃がしはしない。此処に居る連中は皆そう思っている。貴方達はどうなんです?」
「マテオ・・・」
「管理局は、バイドを裁けますか?」

真っ直ぐに自身の瞳を見据えるマテオの問いに、シャマルは拳を固く握り締める。
シャマルとて、バイドは憎い。
数え切れぬ数の生命を奪い去り、踏み躙り、喰らい尽くした。
できる事ならば、存在の一片すら残さずに消し去ってやりたい。

しかしその憎悪の一部は、バイドのみならず地球軍へと向けられている事も事実である。
何せ、クラナガンでの犠牲者の3割近くは、地球軍の攻撃により発生したものだ。
更に云えば、バイドとは異なり意志の疎通が可能であるにも拘らず、それを承知した上で非人道的な作戦行動を実行したという事もあり、ある意味で地球軍に対してはバイド以上に純粋な憎悪を抱いているとも云っても過言ではない。

マテオはそれを承知した上で、シャマルへと問い掛けているのだ。
その地球軍への憎悪をも呑み込んだ上で、バイドに対し鉄槌を下す意志が、管理局にはあるのか。
そう、問うているのだ。
シャマルは、それを理解した。
だからこそ、答えるのだ。

「・・・勿論よ」

その言葉に、マテオは何を思ったのか。
再び格納庫のドアへと向き直り、掠れた声で何かを呟く。
その声は確かに、シャマルへと届いた。
彼女は小さく笑みを浮かべ、穏やかに声を掛ける。

320R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:10:10 ID:TfsCCoXA
「・・・行きましょうか。皆が待っているわ」

マテオは微かに頷き、ドアを開放した。
そして1歩、格納庫内へと踏み入り。



瞬間、その姿が掻き消えた。



「あ・・・」

呆けた声を漏らすシャマル。
ほんの一瞬の事であるというのに、マテオの姿は跡形もなく掻き消えてしまっていた。
彼が其処に居たという痕跡は、何処にも無い。
壁面を見ると、全ての隔壁が開放され、その奥にはアンヴィルの巨体が鎮座していた。
其処にすら、彼の影は無い。

「マテオ・・・?」

ふと、シャマルは違和感を覚えた。
それは、ともすれば気の所為と断じてしまえる様な微々たるもの。
だが、確かに存在する感覚だった。

先程の無重力圏の様な、身体が浮かび上がる感覚。
無重力よりもはっきりと感じられる、自らの身体を引き上げんとする力。
否、上方へ「落そうと」する力。

バリアジャケットのポケットから、小さなケースを取り出す。
その中からアンモニアのアンプルを取り出し、掌に乗せてドアの外から格納庫内部へと突き出した。
アンプルは掌の上で奇妙に震え、直後に何かへと吸い込まれる様に掻き消える。
シャマルは迷わずケースを掴み、中のアンプルを全て取り出した。
そしてそれら全てを、通路と格納庫の境である、ドアのレール付近に撒き散らす。

今度は、視認する事ができた。
十数本のアンプルは徐々に、しかし確実に目で追える程度の加速で、ゆっくりと上方へ「落ちて」ゆく。
その軌跡を追い、シャマルはゆっくりと視線を上げた。
そして、それを目にする。

「う・・・あ・・・」



遥か50m上方、全てを染め上げる赤い染み。
天井面へと「落ちて」叩き付けられ、潰れて拉げた人間の成れの果て。
凡そ数十人分の、拉げた肉と骨の山。



「あ、あああぁぁぁぁッッ!?」

シャマルは叫んだ。
叫んだという自覚は無かったが、有りっ丈の声を振り絞った。
恐怖に歪む顔を取り繕うという思考すら持てず、アロンソやマテオ、その他の50名近い人間だったものの残骸を視界へと捉えながら、金切り声を上げ続けた。

321R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:11:00 ID:TfsCCoXA
と、その視界の端に、蠢くものが映り込んだ。
反射的に視線を投じると、それは格納ユニットの1つ、その中から延びる影だった。
何かがユニット内部で蠢き、這い出そうとしている。
そしてシャマルは、その正体を目にした。

「うそ・・・」

それは、アンヴィルだった。
否、アンヴィルであって、同時にアンヴィルではなかった。
外観には何ら異常は無い。
しかし決して味方であるアンヴィルではないと、シャマルには分かった。
何故ならそのアンヴィルは。



上下が逆転した状態のまま、砲口をこちらへと向けているのだから。



瞬間、シャマルは飛んだ。
飛ぶこと以外の全てを思考より捨て去り、元来た道を全速力で逆行した。
背後で光が溢れ返り、轟音と熱風が全身を襲ったが、それすらも無視した。
只管に、ただ只管に大型マス・キャッチャー格納庫を目指す。
そうして「LMC HANGER BAY」の表示が記されたドアが目に入る頃、シャマルは唐突に全てを理解した。

何て事だ。
停電の原因となった隔壁の閉鎖は、機器の誤作動などではなかったのだ。
アンヴィルは汚染されていた。
バイドに汚染されていたのだ。
或いは、アンヴィルに擬態したバイド体なのか。

いずれにせよ、敵性体は狡猾にも、アンヴィルに内蔵されていた魔力増幅システムと全く同じバイド係数を保ち、アンヴィルそのものと成り切って侵入に成功したのだ。
そうとも知らず、管制室はアンヴィルをユニットへと格納してしまった。
だが、人間達が取り返しのつかない過ちを犯して尚、コロニーのシステムは正常に動作したのだ。
バイドを探知し隔壁を閉鎖、汚染の拡大を防ごうとしたに違いない。
だがそれも停電と判断ミスにより、あろう事か生存者自身の手で無力化されてしまった。
生存者達の最後の砦、その内部でバイドが解き放たれてしまったのだ。

「誰か・・・!」

大型マス・キャッチャー格納庫のドアを開き、シャマルは助けを求める言葉を放たんとした。
だが、その声は意味のない音となり、宙へと消える。
シャマルの眼前には先程と同じ、床一面の紅い花が咲いていたのだ。

「ひ・・・!」

思わず後ずさり、そのまま体勢を崩して倒れ込む。
格納庫内は、既に無重力ではなかった。
数十トンはあるだろう、巨大な機器が片端から落下し、それら拉げた金属の塊の下からは夥しい量の血液が溢れ返り、小さな流れを作っている。
飛び散る血痕は床面を完全に赤一色で覆い尽くし、壁面には数十mに亘って何かを引き摺った赤い筋が十数条も刻まれていた。
特に密集した血溜まりの中には、限りなく平面に近い状態となった肉塊と、その中から突き出す白い骨格の破片が無数に重なっている。
そして格納庫の中空には、濃群青の装甲を膨大な量の血で黒く染め上げたアンヴィルが、傲然とその巨体を浮かべていた。

322R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:11:35 ID:TfsCCoXA
「うあ・・・ああ・・・!」

呻く事しかできないシャマルを見下ろすかの様に、アンヴィルは微動だにせず其処に在る。
だが、シャマルは気付いていた。
自身を圧迫する、異常なまでの物理的重圧を。
音を立てて軋む骨格、強大な圧力に悲鳴を上げる体組織。
眼前の存在が重力を意のままに操っている事を、シャマルは完全に理解する。
そうして、彼女の左眼窩の奥で、何かが割れる音が聴こえた瞬間。



アンヴィルの下部装甲を突き破り、無数の触手が床面を貫いた。



警報。
「QUARANTINE!」の表示が、残されたシャマルの右眼、その視界を覆い尽くす。
残された力を振り絞って上げた叫び、魂すら吐き出さんばかりのそれを聴き止めた者は、誰1人として存在しなかった。

323R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 22:19:39 ID:TfsCCoXA
投下終了です
代理投下して下さった方、そして支援して下さった方、有難う御座いました

待て男「Quarantine activateって警告が聴こえたら、とにかく換気口から離れろって修理工のおぢさんが言ってた」

という訳で、コロニー脱出編第2話でした
ギロニカ残酷無惨の巻
卑猥じゃない中ボスの末路なんてこんなモンです
決して稼ぎ中に泡でミスった恨みではない

R戦闘機は1機増えて総数33機に
しかし22機は出張中でコロニーには11機しか居ません

そして遂に、恐らくは「Ⅲ」で最も嫌われているであろうBOSSの登場です
詳細は次回以降に書きますが、コイツに三半規管をやられたTYPERは多い筈

では、また次回



それでは、代理投下をお願い致します

324魔法少女リリカル名無し:2009/07/12(日) 22:21:33 ID:LHlZoWhY
行ってみる。

325魔法少女リリカル名無し:2009/07/12(日) 22:38:05 ID:LHlZoWhY
規制くらった。

326魔法少女リリカル名無し:2009/07/12(日) 22:54:32 ID:RiD6K0Sg
>>325
代理の代役行ってみます

327無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 22:55:05 ID:RXVOkAFc
立て続けに申し訳ありません。R−TYPE氏の代理投下を行った後に自分の作品を投下しようと思ったのですが、アクセス規制にかかってしまいました。
どうかR−TYPE氏の作品投下後から30分後に自分の作品も代理投下をお願いします。

328無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 22:56:46 ID:RXVOkAFc
 恐怖心を感じなかったことなんてない。
 いつも戦うのは怖かったし、別の次元世界にいる凶悪な魔法生物などは外見から既に恐ろしいものだった。
 それでも戦えたのは皆を守るためだったから。大切な友達や仲間、助けを求めている人達のためだから戦えた。
 けれどあの時から本当に怖くなってしまった。
 大切な、本当に守るべき大切な人が、出来てしまったから。
 死ぬのは怖くない。けれど自分が死んで彼女を一人ぼっちにしてしまうのは怖い。どうしようもなく怖い。
 あの怪我でわたしはまた弱くなった。このままでは本当に死ぬかもしれない。絶対に死ぬわけにはいかないのに。
 そんな悩みを抱えているわたしの前に、彼は現れた。



   リリカル×ライダー

   第九話『仮面』




 俺は無断外出がバレてしまい、隊長室に呼ばれていた。
「……で、カズマ君はなんで外に出とったん?」
 はやては珍しく怒っていた。真面目な表情を見た時も驚いたのだが、今回はそれ以上のものだった。
「俺は、その、外の空気が吸いたくて」
「それだけのためにわざわざヴァイス君のバイクを持ち出しとったん?」
 はやてがこちらを睨み付けながら痛いところを突いてくる。流石ははやて、普段から口論で勝てた試しがないほどの弁達者だ。いや、俺が下手くそなのもあるだろうが。
 ただ、今回はこちらも必死なのだ。負けるわけにはいかない。
「実は、怪物を倒そうと思って街を捜索してたんだ」
 嘘は、ついていない。内容は事実そのものだ。
「……もしかして、この前の事件の?」
 ティアナと出かけた時の、ローカストアンデッドの事件のことだろう。こいつのカードには色々と複雑な念を抱いてしまう。頼りにもなり、災いの種にもなる、そんな思いだ。

329無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 22:57:33 ID:RXVOkAFc
何故かは分からないが。
 閑話休題。
「俺なりに責任を感じたからな。でもごめん、皆に迷惑かけたな」
 取り敢えず謝る。事実、彼女には迷惑かけっぱなしだ。この期に謝っておくべきだろう。
「――ホンマ頼むから心配かけんでや」
 はぁ、とため息をつくはやて。部隊長として忙しいにもかかわらず迷惑かけたのは本当に申し訳なかった。
 けれど、やめる気は全くないが。
「ところで、誰が気付いたんだ?」
「ん? キャロが気付いたんよ。芝生が荒れていたのを気にしててな」
 そうか、と俺は納得した。



     ・・・



「ライダー……僕とカリスの決闘を邪魔したお前を、僕は絶対に許さない!」
 空を舞う人影が羽根を引き抜く。高層ビルが乱立する、人工のジャングルとも言うべき街を見下ろしながら。
 彼が思い浮かべるのは一万年前のバトルファイトと、十五年前の人間が起こした偽物の殺し合い。
 前者はカリス――ハートのカテゴリーエースとの闘いを、後者は『仮面ライダー』と名乗る人間との戦いを想起させる。
カリスとはいわゆるライバルであり、バトルファイトに決着をつける際、戦おうと誓った仲だった。逆に『仮面ライダー』はその神聖な決闘を妨害した憎き敵だった。
「あの男が望む通り戦ってやろうじゃないか。そしてカリスを解放し、もう一度あの続きを――!」
彼は怒りを、そして決意を固めながら憎むべき人間を俯瞰する。
 人影、否、雄々しい翼を伸ばした人ならざる者の影から、鋭利な刃物のような羽根が鋭く投げられる。それは煌く軌跡を描きながら地表へと吸い込まれていく。
 またしても、クラナガンで被害者の絶叫が響いた。

330無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 22:58:17 ID:RXVOkAFc



     ・・・



「ダメダメですよ〜! 一人で外出なんて〜」
 俺は訓練場に行きながらリィンにこっぴどく叱られていた。もっとも、身長30cm程度のリィンが怒っても可愛らしいだけだ。俺としては気にもならない。
「悪かったよ」
「もう、外出ならリィンがついていきましたのに〜」
 いや、それじゃ意味ないから。と心の中で突っ込んでみる。
 そんな雑談をしている内に、俺は訓練場に辿り着いていた。
 今日も誰もいない。皆捜査に奔走してるみたいだ。俺は日課の訓練をこなすためにリィンを連れて来ていた。リィンがいなければ訓練場の空間シミュレーターが制御できないからだ。
「じゃあ、いつもの続き、やりますよー!」
 おー、と言って答えるが、当然やる気はない。ここの所、寝不足がかなり響いていて、ときおり眩暈すらするほどだった。

――ドクン。

 そう、こいつらのせいで。俺はあんな狂った力を使わなければならなくなるんだ。そのために睡眠時間が削られているんだ。
 だが、今回の反応はいつもと違っていた。

――ライダー……ッ!

(まさか、上級アンデッドか!?)
 上級アンデッド。
 カテゴリージャック、クイーン、キングのアンデッド達のことだ。
 奴らの最大の特徴は、絶大な力と前回の優勝者の生物への擬態能力。
 奴らは前回の優勝者、ヒューマンアンデッドの一族、『人間』に擬態することができるのだ。つまり奴らは『人間』が持つ最大の武器、“知恵”を所有している。
「どうしたんですか?」
 奴らはマズい。このままにはしておけない。訓練は後回しだった。
「悪い! 野暮用が出来た!」
「カズマさん!?」
 俺は一気に走り出す。チェンジデバイスを起動させて腰に巻き付ける。
「変身!」
『Drive ignition.』
 レバーを引っ張ると同時に、たちまち俺の姿は青の拘束着を思わせるインナースーツと不自然に肩と腹の部分が塗りつぶされた銀色のアーマー、そして甲虫を象った仮面が貼り付いたヘルメットという組み合わせのバリアジャケットに包まれる。
『Fry booster』
 そして飛行魔法を発動し、背中のブースターを閃かせながら低空飛行で一気に飛び去ることにした。
(ライダー……?)
 一つの単語が、妙に頭の隅に引っ掛かりながら。

331無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 22:59:05 ID:RXVOkAFc



     ・・・



(カズマ君……)
 あの夜、見てしまった真実が網膜から離れない。
緑色のおぞましいと思わせる肌と、鋭い眼を隠すように付けられた透明なフェイスガード。そして鋭利な刃物を思わせる右腕から伸びた突起物。
 彼の正体が、実は人々を殺戮する怪物だったなんて信じられなかった。
普段の彼は多少粗暴なところはあっても基本お人好しで、困った人がいれば迷わず助けにいくような人だ。そう、彼なはずがない。
 けれど、もし彼が怪物事件の犯人なら。
(わたしが、何とかしなくちゃ)
 そう、わたしが機動六課を守らなくちゃ。そのための隊長であり、そのためのエースオブエースなのだから。
「なのは、行くぞ!」
「あ、ごめん、ヴィータちゃん!」
ヴィータちゃんが赤いドレス型のバリアジャケットから伸びるスカートをはためかせながら怒鳴り声を上げる。後ろでスバルも手を振ってくれていた。
 取り敢えずカズマ君のことは帰ってから。今は任務に集中しなくちゃ。

332無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 22:59:55 ID:RXVOkAFc



     ・・・



「ふん、来たか」
 眼鏡をかけたインテリのような雰囲気を持つ男が、スーツを直しながら呟く。
 巨大ビルの屋上ヘリポート。天を突く摩天楼に築かれた二人だけのコロッセウムにて、男は待ち続ける。
 そして、彼は現れた。
 銀色の装甲とブルーのアンダースーツ、甲虫を模した真紅の複眼が印象的な仮面。
 だが男の目からは以前と節々が違うように感じられた。肝心な腹と肩の部分に描かれるはずのマークもなく、剣も形が異なる。
「お前が、アンデッドか!」
 仮面の男――カズマが叫ぶ。
「待っていたぞ、ライダー!」
 男もそれに答える。眉間に皺を寄せながら。
「……本当に覚えていないとはな」
 男の呟きはカズマには届かない。
 男は一度だけ首を振った後、顔を上げた。
 その瞬間、男に変化が生じる。
 一瞬にして、右手に鋭い鉤爪を付け、雄々しい翼を広げる、黒い鎧と羽毛に覆われた怪人に変化していた。
「……上級、アンデッド」
 カズマが驚きの声を上げる。理解しているのと目の当たりにするのでは訳が違う、それを認識させられたというような声音だ。
 一方の男――イーグルアンデッドはすでに鉤爪を構えながら大空に浮かび上がり、戦闘態勢を整えていた。
「いくぞ、ライダー!」
 イーグルアンデッドが羽根を手裏剣のように投げ付ける。鋭利な羽根は肉を抉らんとカズマに襲い掛かる。
「くそっ!」
 カズマも後ろに飛んで避けながら背中のブースターを噴かし、空中に上がる。
「ほう、フロートのカード無しで飛行できるのか」
 感心しながら観察と羽根手裏剣による牽制を行うイーグルアンデッドに対し、カズマはその不完全な剣を抜いて羽根の迎撃を行う。

333無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 23:00:46 ID:RXVOkAFc
「今度は負けん!」
 イーグルアンデッドは羽根をばら撒いた刹那、右腕を振り上げながらカズマの隙を突くようにして自ら襲い掛かった。
『Protection』
 だが、今度はイーグルアンデッドが驚愕する番だった。
 イーグルアンデッドの鉤爪が装甲に達する寸前、青のバリアに阻まれる。ガード魔法、プロテクションがオートで発動したのだ。
「魔法だと!?」
 イーグルアンデッドのような上級アンデッドは人の姿に化けることができる。故にヒト社会に潜り込むことが可能だ。
 彼が潜伏して知った驚きの事実、それが魔法だった。
 たかが人間がアンデッドにしか出来ないような“超”能力を行使したことに驚きが隠せなかった。
 そして目の前のライダー、何故以前は使えなかった魔法などという技を、こいつが覚えているのか。
「ふん。こんなもの、破壊すればいいだけの話しだ!」
 イーグルアンデッドは頭から余計なことを振り払うかのように首を振って、右腕の鉤爪を叩き付けた。
 その破壊力は、容易く強固なプロテクションを打ち砕く。
「ぐあっ!」
 衝撃に吹き飛ばされるカズマ。
 すかさずイーグルアンデッドはカズマを追跡する。
「――この程度なのか、ライダー」
 連続して繰り出される鉤爪を剣で払うカズマだが、一本二本と装甲に傷が入っていく。
 カズマは反撃に転じようとするも、悉くカウンターを食らってしまう。
「これで、終わりだ!」
 イーグルアンデッドが隙を突くように渾身の回し蹴りを叩き込む。
 強烈な一撃に意識を刈り取られたカズマは、そのまま地上へ落ちていった。
「カリスよ、やはり僕と戦えるのはお前だけのようだ」
 どこか哀愁を漂わせる、独りの男を残して。

334無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 23:01:38 ID:RXVOkAFc



     ・・・



「――さん」
 誰かが俺を呼んでいる。起きて反応しなければならない。
 けれどとても瞼が重くて、反応出来そうにない。それに、こうしてい方が心地良いから、反応したくない。このまま眠っていたい。
「……マさん」
 鬱陶しい。このまま眠れば、これ以上苦しまなくてすむんだ。もうあの苦しみから解放されるのだ。
 だからこれ以上、俺を起こさないで――
「――カズマさんっ!」
「うわっ!?」
 リィンの怒鳴り声が一気に俺の意識を覚醒させる。ついさっきまで考えていたことをすっかり忘れ去ってしまうほど、豪快な起床だった。
「ど、どうしたんだリィン?」
「どうしたもこうしたもないですよっ! あんな高い所から落ちてきたから心配してたんですよ!?」
 そう言われて空を見上げる。
 すぐ近くには、天を突く勢いの、百階はありそうな巨大なビルがそびえていた。
(そう、か。あの上から落ちたのか)
 そっと周りを見渡す。地面に叩きつけられたならあの血が飛び散っているはずだが、それはない。ほっと安心すると共に疑問が湧き上がる。
「なんで、無傷なんだ……?」
「リィンが受け止めたからですっ!」
 泣きそうな顔で覗き込んでくるリィン。
 彼女は普段の妖精みたいな外見から、ヴィータみたいな小学生ほどの体格に成長していた。魔法とその体で受け止めてくれたのかもしれない。
 しかし、何故に膝枕をされているのか。
「あ、これはですね、変身魔法の一環で体を大きく出来る魔法なんですよ!」
 普段の30cmの体格では嫌が上にも彼女が人間ではないことを痛感させられるが、今の姿なら人間の子どもと大差ない。
そんな子どもに膝枕されていると思うと段々恥ずかしくなってきた。
「普段は何で小っちゃいんだ?」
「む、私だってこっちの方が子ども扱いされないから良いですけど、あっちの姿の方が魔力の節約とかで便利なんですぅ〜」
 こっちも子どもじゃないか、とは言わなかった。女性に余計なことを言うとろくなことにはならないことを何故か理解していたから。

335無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 23:03:18 ID:RXVOkAFc
(……待てよ、俺は何かを忘れて――)
「――リィン! あいつは!?」
「はひゃ!? び、びっくりしました〜」
「いいから! あいつはどこに?」
 最初は目を真ん丸にして驚いていたリィンの顔が徐々に陰り、最後は視線を反らしていく。
「……見失いました」
 間違いない。あいつは人間に化けたのだ。すぐに探さなければまた被害者が出てしまう。しかし――
「取り敢えずカズマさんも起きましたし、結界を解いたら六課でたっぷり事情を聞かせてもらいますからね」
 ――どうやら、今すぐ追うことはできなさそうだった。



     ・・・



「くくくっ」
 百階以上はあると思われる高層ビルの屋上にて男は笑う。高らかに、嘲りを込めて。
 その瞳が映すモノは世界か、己か。
「やはりアンデッドには魔法が通用しないようだな」
 男は理知的で寡黙そうな顔に獰猛で野蛮な笑顔を浮かべ、下界を見つめ続ける。
 世界は何も知らないかのように整然と動く。いや、実際何も知らないのだろう。だから例え人が墜落しようと、街は決して変わらない。
「いや、奴が勝てないのはそれだけじゃないか。記憶がないんだからな」
 男は笑みを深めながら右手で弄んでいるカードを見つめる。
 端にスペードの刻印とアルファベットのAが穿たれ、鮮やかで生き生きとした甲虫らしき生物が描かれたカード。
 たかが紙切れ一枚に、どれほどの力が宿っているか、人々は知らないだろう。アクセサリーに強大な力を込めたもの――デバイス――を作れる連中には良い皮肉だと男は考える。
「さぁ、お前にきっかけを与えてやるよ。俺は“お前”を倒す必要があるんだからな」
 男はベルトに下げたホルダーの中から箱型の機器を取り出し、それを忌まわしげに握りしめる。
「俺はオリジナルを殺し、本物になる。そのためにまずは剣崎、お前を倒す!」
 決してこの男には似合わない笑い声を上げながら、彼は世界に向かって吠えた。

336無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 23:04:13 ID:RXVOkAFc



     ・・・



 あの上級アンデッドとの戦いから次の日、俺は帰って早々はやてから散々怒られたことを思い出していた。
『無茶してもし死んどったらどないするん!?』
「無茶しても死ねないからなぁ」
 最近フラッシュバックする光景が思い浮かぶ。雪山。近付く地面。ぐしゃりという音。周りに広がる“緑”の血。
 夜な夜な俺を苛む記憶の断片。それが俺を追い詰めている。それが分かる。
 人ではない。
 そう、俺は化け物なのだ。それをありがたくも再確認させてくれる。お陰で睡眠時間は減る一方だ。これなら記憶が戻らない方がまだマシだったかもしれない。
 一度頭をかきむしり、思考をリセットする。そう、今考えることはあの上級アンデッドのことだ。他のことは、今はいい。
(ジョーカーでいくのでは飛行能力を持つアイツに勝つのは難しい。だからといって魔法では勝ち目はない……)
 どんどん選択肢が無くなっていっていることに気付いた。これでは奴に勝てない。考え方を変えなければ。
 そんなとき、機動六課演習場に凄まじい騒音が響き渡った。

337無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 23:05:38 ID:RXVOkAFc



     ・・・



「何や!?」
 爆音と共に、はやての声が響きわたる。
 はやてが覗き込んだ窓の向こう側から、煙が昇った演習場が見える。それを見て、はやては顔を青ざめた。
「ザフィーラ! ちょっと調べてきてくれんか?」
『了解です、主』
 はやてが念話で己の守護騎士を呼ぶ。
六課に残る戦力は看護班のシャマル、指揮官のはやて、そしてフリーのカズマとザフィーラだけ。その上、はやては強力すぎる部隊にならないよう戦力規制のリミッターがかけられており、シャマルは前戦向けではなく、カズマは負傷中。戦えるのはザフィーラだけだった。
隊舎から飛び出す蒼き狼は四肢を振るって海上に浮かぶ演習場へと向かう。疾風を纏うかのような速さで滑り込んだ彼が見たものは、立体シミュレーターによって作り出されたコンクリートを出鱈目に打ち砕く怪鳥ならぬ怪人だった。
「何者だ」
 低く、唸るような声でザフィーラが言葉を投げかける。彼も人ではないからか、怪人に即座に襲いかかるような真似はしなかった。
「……今度は犬畜生か。人間といい犬といい、僕とカリスを邪魔するには役不足な連中ばかりだ」
「俺は犬ではない! 狼だ!」
 ザフィーラが毛を逆立たせ、低く腰を落とす。途端、彼の体が白く輝きだす。その姿が、一瞬にして獣人のそれに変わった。
 鍛え上げられた筋肉、がっしりとした逞しい体、そして白い髪とそこから生える犬耳。
寡黙な顔をしかめさせながら、ザフィーラはファイティングポーズを構える。
「ほう、人間のしもべに成り下がった犬畜生がアンデッドに刃向かうとはな」
「盾の守護獣、ザフィーラだ! 俺を侮辱し、主の御元を傷付けるお前を許さん!」
 ザフィーラは足元に三角形の魔法陣を展開し、それを蹴飛ばすような勢いで怪人――イーグルアンデッドに挑みかかった。
「犬ごときが、この空に上がるな!」
 それに対しイーグルアンデッドは雄々しい剛翼を広げ、鋭利な羽根を雨のように降らせる。そのナイフの豪雨をザフィーラは両腕に展開した三角形の魔法陣で巧みにはじいていく。
「その程度、俺には効かん!」
「この程度で消えてくれた方が良かったんだがな」
 イーグルアンデッドの傍にまで接近したザフィーラを鉤爪が迎え入れる。ザフィーラは二つの盾をもって防ぐが、イーグルアンデッドは強引に爪をねじ込み、盾を打ち砕いた。
「ぐぉ!?」
「犬がアンデッドに楯突くんじゃない!」
 さらに連撃として左ストレートを打ち込まれ、吹っ飛びザフィーラ。
 だが筋肉の鎧で包まれた守護獣は、この程度で怯みはしない。

338無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 23:06:11 ID:RXVOkAFc
「まだまだ、いくぞ! 『鋼の軛』!」
 ザフィーラが両腕を構えると同時に大空を舞うイーグルアンデッドを囲むようにいくつもの魔法陣が浮かび上がる。
 それらがイーグルアンデッドに向いた瞬間、それらから白き拘束条が勢いよく伸びる!
「こけ脅しが!」
 それらをイーグルアンデッドも避けるが、二本が翼を貫通する。すぐに引き抜こうとするが、拘束条が膨らんでいき、抜けなくなる。
 それはまさに、空に射止められた鷲。
「なんだこれは!?」
「俺の『鋼の軛』はあらゆるものを貫いて捕獲する拘束魔法。お前も、これで終わりだ」
 羽ばたくこともできず空中に停止させられた状態のイーグルアンデッドは最初こそ暴れていたが、すぐに大人しくなった。
「主、終わりました」
「ふん、これで終わるかと思ったか?」
「――何?」
 彼は右腕を掲げる。嵌められた黒光りする鉤爪が閃く。それは決して降参のそれではなく、むしろ必勝を思わせるもの。
 イーグルアンデッドは、その鉤爪で自らの翼を斬り落とした。
「ぐっ!」
「なん、だと!?」
 そしてその刹那、千切れた断面から新たな翼を生やした。
「ぐおっ……!」
「翼を、強引に再生だと!? なんという生命力だ!」
 そしてイーグルアンデッドは一瞬でザフィーラの懐中に入り込み、鉤爪を腹に叩き込んだ。
 血を噴き出しながら墜落するザフィーラ。それを受け止めたのは、はやてだった。
「ある、じ……?」
「喋ったらあかん。シャマル、すぐに治療を」
「はい」
 あの念話から急ぎ赴いていたはやてとシャマルは、用意していた回復魔法によってザフィーラの治療を開始する。
 そこに、イーグルアンデッドが舞い降りた。
「人間の、しかも女か」
 右手を構えながら近付くイーグルアンデッドに立ちはだかるはやて。その彼女に対し、侮蔑の響きを込めた言葉を投げ掛ける彼。
「これ以上、好き勝手はさせん」

339無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 23:06:43 ID:RXVOkAFc
 はやては自らの十字架を模した杖型デバイス、シュベルトクロイツを構え、イーグルアンデッドは己の鉤爪を構える。
 一触即発の空気。
 そこに割って入る影。それは、カズマだった。
「お前の相手は俺だ!」
「ライダー、貴様は負けたのだ。下がれ」
 それを無視し、剣を引き抜くカズマ。腰を下げ、垂直に立てた剣に左手を添える独特な構えを取る。
 そのとき、周囲を白い煙幕が包み込んだ。
「何や!?」
 はやての叫びすらも包み込むように広がる煙幕は演習場を瞬く間に包み込んでいく。はやてとシャマル、ザフィーラは固まっていたが、イーグルアンデッドとカズマはそれぞれバラバラに動き出し、まもなく散り散りになっていく。
 そんなカズマの元に一枚のカードが滑り込む。
「受け取れ」
「なんだ!?」
 カズマの右手にいつの間にか握られたカード。そして男の声。
 それは、カズマの記憶を激しく刺激する。
「今の声……、それにこのカードは」
 カズマは手元のカードを握りこみ、変身を解く。
「裏だ」
 聞き覚えのある声。そう、かつて自らを鍛え、導いた先輩である、戦友でもある男の声。
「そうだ――俺は」
 チェンジデバイスの裏、カードを挿入するラウズリーダーが顔を覗かせる。それを見てカズマは右手のカードを差し込んでいく。
 そしてそれを腹部に持って行った刹那、チェンジデバイス側面からトランプのカードに似たものが幾枚も飛び出し、カズマの腰にベルトに変化しながら巻きついていく。
 その姿は――
「――そうだ、俺は『仮面ライダー』だ!」
『Turn up』
 カズマがレバーを引いた直後にチェンジデバイス中央のクリスタル、その中のゴールデントライアングルが回転し、そこから青いエネルギーゲート、オリハルコンエレメントが射出される。
「うぉおぉぉぉぁぁぁ!」
 それを潜ってカズマは、「仮面ライダー」へと変身した。


     ・・・



 遂に「仮面ライダー」に変身したカズマ。再誕した彼とイーグルアンデッドとの第2ラウンドが始まる。
 一方、それを眺める三人の男達は、それぞれが行動を開始する。その目的は――

   次回「ライダー」

   Revive Brave Heart

340無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/12(日) 23:16:31 ID:RXVOkAFc
まず、このようなタイミングでの代理投下をしてしまったことに謝罪させていただきます。申し訳ありませんでした。
リアルの方が忙しく、今日くらいしか投下するじかんが取れなかったため、このような結果になってしまいました。
また、早めに投下予告をすることも考えましたが、執筆完了が先ほどでしたので出来ませんでした。
今回のことで気分を悪くされたかもしれないR−TYPE氏には深く謝罪させていただきます。
それと、代理投下をしてくださる方々には感謝してもしきれません。ありがとうございます。

それと作品についてのあとがきですが、今回は後半が突貫工事によるものなのでグダグダかもしれません。後日見直しし、wikiの方で修正するかもしれませんことをご了承ください。
今回はバトルメインです。カズマがいよいよ本来の力を取り戻します。次回はイーグルアンデッドとのリターンマッチです。ご期待ください。

341R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/07/12(日) 23:20:42 ID:TfsCCoXA
ウロスの方にも書かせて頂きましたが、改めてもう一度

LHlZoWhY様
RiD6K0Sg様
無名氏

皆様、代理投下有難う御座いました
投下数が多い為、必然的に皆様の手を煩わせてしまい、本当に申し訳ありません
そして無名氏、こちらこそ申し訳ありません
20:00に投下の予約をしておきながら、トラブルの為に投下時間を延ばしてしまいました
時間の無い中の投下にも拘らず、それを邪魔してしまった様で申し訳ありません

そしてもう一度、代理投下して下さった皆様、有難う御座いました

342無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/07/13(月) 14:44:26 ID:FT6T9Okk
代理投下確認しました。ありがとうございます。

それとR-TYPE氏がそのようにおっしゃてくださり、救われました。これからは気を付けますので、共に執筆頑張りましょう。

343ナッパ ◆1jOfzim.ew:2009/07/21(火) 02:07:42 ID:GW50T3aY
申し訳ございません、連投規制に引っかかってしまいました。

時間が時間なので規制が解除されるであろう朝方にでも続きを投下しようと考えていますが、
なにぶん公共の場でありますのでスレッドの流れを悪くしかねません。
もしこの時間帯に見ている方がいらっしゃれば、代理で残りの投稿をお願いしたいのですが…

朝方まで何もなければ規制が解除される頃に残りを投下いたします。
ご面倒をおかけして大変申し訳ございません

344ナッパ ◆1jOfzim.ew:2009/07/21(火) 02:08:19 ID:GW50T3aY

「さて、そろそろ時間だね、フェイトちゃん」

今まで口を開かなかったなのはが話しかける。
いつもどおりの口調、いつもどおりの声。
何一つ変わった様子などない、いつものなのはだ。

「うん、行こうか、なのは」

目配せを一つ、そして一歩前へ踏み出す。
なんの迷いもない一歩、穢れなき意思の踏み出す一歩、いつもと変わらない一歩。
何一つなのはは変わらないはずなのに。
フェイトだってそうだ、何も変わらない。
任務の困難さゆえ?いや、GEARの真相はあの世界の背景であって今回の任務に関係してくることではない。

「……………」

二人はそのまま転送ポートに入る。
転送の準備は完了した、あとは送り出すだけ。

「なのは」

転送の直前、無言の空間を破ったのはユーノの声だった。
はじき出されたかのように口から出たなのはを呼ぶ声。
責任を感じていた、結局のところ今回ユーノはなのはの役に立てていないからだ。
悪戯に此度の件を重くしたかもしれない、そんなことをずっと考えていた。
そのどこ申し訳なさそうな表情を見たなのはは笑う。

「別にGEARと戦うわけじゃないんだから、心配しないで?」
「そうだけど、全部が全部休眠しているとは限らないかもしれない」
「そうかもしれない、でもそうじゃないかもしれない」

もちろん上層部にもGEARの情報は行き届いている。
が、任務内容に変更はなかった。
ジェイル・スカリエッティの逮捕、そしてソル・バッドガイの逮捕。
後に追加されたソルの逮捕すらも変更はなかった。
あの世界の住人を逮捕する、管理外世界なのにも関わらず、だ。
何故?と聞いてみた、だが帰ってきた答えは“need to know”
…つまり末端が知る必要はないということ。
その事実を知りますますユーノの罪悪感は強くなった。
結局のところ、状況をこじれさせただけなのかもしれない、と。

「やるだけだよ、何が出てきても全力でいくんだ」
「無茶だよ、無謀すぎる」
「でも、全力以外の戦いなんて認められないの」

恐怖感はないのだろうか?ユーノは時折、なのはを疑問に思うことがあった。
全力でやるのはいい、でもその後のことを考えているのか、不安になる。

「それでも…命は一つなんだよ?」

問いかける、自分の罪悪感を少しでも緩和するための質問ではない。
純粋に、彼女の無事を祈る気持ちから。

345ナッパ ◆1jOfzim.ew:2009/07/21(火) 02:09:54 ID:GW50T3aY
「一つだけだからだよ、大切にしたいから全力でいくんだよ」

その時、ようやくこの違和感に気づいた。
おそらくいつもと変わらないから不安なんだろう、事の重大性に関わらずなのはの姿勢が変わらないことが。
なのはには油断のひとかけらもない、それは悪いことじゃない。
でも、自分の命を大切にしてくれるだろうか?
駆け引き…引き際を感じ取ってくれるだろうか?
これまで以上に命のやり取りに敏感にならなければならない。
だからだ、この硬くて重い空気はその反故から生まれる。
なのはの身を案じる一同、それに答えようと力むなのは。

「大切にする方法は全力出し切ることだけじゃない、休む事だって大事なんだよ」
「…わかってるよ、ユーノ君」

案じるだけでなく、言葉にして伝えた。
それになのはは頷いた、ほんの少しの間をおいて。







誰もが、その場にいる誰もが二人の無事を祈っていた。
あらゆる手を尽くした、万全を期した、やれることはやった。
されども不安は尽きない。
なのはだってわかっているはず、フェイトだってそうだ。
誰もが二人の無事を祈っていて、それが最優先であることぐらい。
二人に何かあれば悲しむ人が数多くいることくらいわかっているはず。

(なのは…フェイト…)

二人がいなくなった転送ポートを見つめる。
ユーノは二人がそこに無事に戻ってくること祈っていた。
ただ、祈ることしか出来なかった。

346ナッパ ◆1jOfzim.ew:2009/07/21(火) 02:17:16 ID:GW50T3aY
途中、規制に引っかかってしまい申し訳ございませんでした

前回、スカリエッティの情報はほとんどないにも関わらずナンバーズの事は知っているのは何故か
とうご指摘をいただきました
それに関しては時系列的にゼスト達がナンバーズと交戦した時期であり、ナンバーズの情報は
多少入手していたから、です。
まぁ、ナンバーズの紹介を今更することもないし、それが本題ではないので初めから知っている
事にした、というのもありますが…

次回は戦闘シーンばっかりです、どうぞよろしくお願いします。

347ナッパ ◆1jOfzim.ew:2009/07/21(火) 02:23:16 ID:GW50T3aY
スレ汚し申し訳ございません、何とか自分で投稿することができました
上記に投稿した分の代理投稿は取り消します

お騒がせして申し訳ございませんでした、今後二度とないように注意いたします。

348レザポ ◆94CKshfbLA:2009/08/06(木) 20:54:06 ID:CVrV0JfY
 〜おまけ〜
 
 此処はあらゆる時間・次元・事象を超越した世界セラフィックゲート。
 
 そして此処に一つの犬小屋が存在する、これはあらゆる次元の中で起こりえる一つの可能性が詰まった小屋である。
 
 だが決して…興味本位で覗くこと無かれ……
 
 
 
 
 ヴィータの一撃によって辺りは炎に包まれ、その状況を睨みつけるヴィータ。
 すると炎の中から一つの人影が姿を現し、ヴィータは苦虫を噛む表情を表し吐き捨てるように言葉を口にする。
 
 「………悪魔め…」
 
 
 
 
 
 其処から姿を現した人物、それは犬なのはであった。
 そして犬なのははゆっくりと歩き出し佇むと、静かに言葉を口にする。
 
 「あ……悪魔…で……良い―――」
 
 そう台詞吐くや否や倒れ込む犬なのは、それを見た犬フェイトと犬アルフが犬なのはに駆け寄ると
 犬なのはの体から白い煙が立ち上っており、その姿に犬フェイトの怒号が辺りに響く。
 
 「犬なのは!だからあれほど演出には拘らないでって言ったのに!!」
 「……死を………感じる………」
 
 犬なのはの体からは香ばしく肉が焼けた香りが漂っており、その匂いに思わず涎を垂らす犬フェイトであったが、
 すぐに気を取り直し頭を横に振っていると、犬アルフが犬なのはの様子を伺う為、体に手を伸ばすと焦りに近い表現で言葉を発する。
 
 「こっこれは本当に不味い!こんがりウェルダンじゃない!!」
 
 犬アルフの判断にまたもや涎を垂らす犬フェイトであったが、直ぐに拭き取ると犬なのはに抱きつき
 縋るような目つきをして犬アルフに目を向け問いかける。
 
 「どうしよ!私の嫁が!!」
 「落ち着いて!ノーブルよ、ノーブルエリクサーが必要よ!」
 
 しかも一つや二つではない、沢山の数が必要だと犬アルフは答える。
 ノーブルエリクサーとは貴重な薬草を元に調合する事で出来る回復薬で
 半死人の状態でも、この薬を飲めば全快するという代物である。
 
 話は代わり三匹の掛け合いを遠くで見ていたはやて達、するといきなり犬フェイトがシグナムに目を合わせ問いかけてきた。
 
 「アナタ!アナタなら持っているのでは?」
 「いや……私は持ち合わせ―――」
 「無いんですか!この戦闘狂ニート侍!!」
 
 犬フェイトの言葉に苛つきを感じたシグナムはレヴァンティンに手を伸ばすが、
 それを知ってか知らずか今度は犬アルフがシャマルに話しかける。

349レザポ ◆94CKshfbLA:2009/08/06(木) 20:54:33 ID:CVrV0JfY
 
 「じゃあアンタ!アンタなら持っているんじゃないの!風の癒し手って呼ばれているんでしょ!!」
 「わっ私はそう言う薬品類は―――」
 「持ってないの?!気が利かないわね!だから何百年も行き遅れるのよ!!」
 
 犬アルフの言葉にカチンッと来たシャマルはゆっくりと糸を垂らし始める。
 しかし二匹は無視した形で今度は犬フェイトがヴィータに目を向け声を掛け始める。
 
 「ではそこにいる少女、アナタならどうです?」
 「アタシがそんなの持っている訳―――」
 「やっぱり持って無いんですか?この万年ロリババァが!!」
 
 犬フェイトの無慈悲な言葉に怒りを表しグラーフアイゼンを握る手が堅く絞られていく。
 そして今度は犬アルフがザフィーラに問いかける。
 
 「それじゃアンタはどうなのさ!同じ犬同士アンタなら持ってるんじゃないの?」
 「持っていない、それに俺は犬ではない!守護―――」
 「持って無いの?!役に立たないわね!だからアナタはリストラされたのよ、この負け犬が!!」
 
 犬アルフの痛烈な非難に怒りを覚えるだけでは無く、殺意すら覚え拳を握るザフィーラ。
 すると二匹は、はやてを見つめるなり話しかけてくる。
 
 「アナタはアナタなら持っているんじゃないでしょうか?」
 「そうだよ!なんたって部隊長なんだからな!」
 「んなもん、持ってる訳ないやろ」
 
 さらりとはやては答えると更に話を続ける、元々自分達はノーブルエリクサーを知らない
 知らない物を持ち歩いているハズがない、と告げると
 二匹は溜息を吐き、頭を抱えて苦しみ悶えるように暴れていた。 
 
 「なんて事!こんな無能な人間が部隊長だなんて!!」
 「こんな無能な人間が部隊長だなんて世も末だ!!」
 
 そう言って叩き込むように悪態を付くと二匹は、はやてを指差し声を合わせてこう述べた。
 
 『この!エセ関西無能部隊長が!!』
 「なっ……なんやとぉ〜………」
 
 その言葉に堪忍袋がブチッとキレた音が辺りに鳴り響き、はやてはリインとユニゾンする。
 一方犬フェイトと犬アルフは犬なのはを依然として心配しており、駆け寄り声を掛けていた。
 
 「どっどうしよ〜!私の嫁が!嫁がぁ〜!!」
 「落ち着いて!きっと何か方法があるはずだよ!!」
 
 錯乱する犬フェイトに対し落ち着かせようとする犬アルフ、そして深呼吸を促すと二匹はその場で大きく息を吸う。
 すると犬なのはから漂う香ばしい匂いが鼻孔を貫き一気に涎を垂らす二匹。
 そして犬なのはをジッと見つめていると肩を叩かれるのを感じ、手で追い払うがそれが何度も繰り返され、嫌気を指した二匹は力強く払うと睨みつける。
 
 すると其処には冷めた目線を送るはやてとヴォルケンリッターの姿があり、流石の二匹も肝を冷やし懐で暖めていたあんパンを差し出し、土下座の形で許しを乞う。
 するとそれを見たはやてはゆっくりと二匹に近づき、膝を付き同じ目線で座ると二匹の頭を撫でる。
 二匹は自分達の行為を許してくれたのかと笑顔で顔を上げると、笑顔で迎えるはやての姿があり安心した途端、
 はやては素早い動きで二匹の顎を掴み取り、ミシミシと骨が軋む音が聞こえる程に締め上げる。
 その時、はやての瞳は最早怒りを超え殺意を超えた冷酷な…まるで深海のような深い色を表しており、
 その瞳に震え上がり漏らし始める二匹に、こう告げる。
 
 「そないおっかないんか?…せやけどもう遅いん…どれだけ命乞おうとも、もう遅いんや………もう…終いや」
 
 そう言って掴んだ顎を思いっきり突き飛ばすと二匹は地面を転がり、はやては立ち上がると直ぐに背を向け場を後にする。
 そしてはやてを護るかのようにヴォルケンリッターの面々が立ち並ぶと、
 徐々に二匹の間を詰めていき、二匹はお互いを抱き抱えるように震え上がっているのであった。
 
 
 
 …暫くしてヴォルケンリッターもまたその場を後にすると、其処にはこんがりと焼けた三匹がうつ伏せの状態で倒れていた。
 そして遠くでは犬ヴィータが三角座りのまま今までの光景をず〜っと見つめており、思わずぼそりと言葉を口にする。
 
 
 
 「アタシだけ…仲間外れかよ……」
 
 
 
  そう言って三角座りのまま塞ぎ込む犬ヴィータであった。

350レザポ ◆94CKshfbLA:2009/08/06(木) 20:55:52 ID:CVrV0JfY
 以上です、第三層終了ってな回です。
 
 
 次はセラフィックゲート第四層の予定です。
 
 
 最近は大気が不安定なので体調管理には気をつけて下さい。
 
 それではまた。

351レザポ ◆94CKshfbLA:2009/08/06(木) 20:57:54 ID:CVrV0JfY
申し訳ありません、引っかかりました。

すみませんが、代理投下をお願いします。

352レザポ ◆94CKshfbLA:2009/08/06(木) 22:23:18 ID:CVrV0JfY
代理投下確認しました、ありがとうございました。

353R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/08/09(日) 19:49:16 ID:lHLgL2i6
済みません、引っかかってしまいました
どなたか代理投下をお願い致します



『非戦闘員はベストラへ移送する』
「ベストラへ?」
『一応は軍事施設だからな。少々窮屈だが、このコロニーよりは遥かに強固だ。自律推進機能もある事だし、どんな状況にも対応できる』
「輸送艦の準備は・・・」
『もう暫く掛かる。準備が整うまでに何とか誘導を・・・』

突き上げる様な衝撃。
隊員の言葉は言い切られる事なく途切れ、全員が天井面へと叩き付けられる。
スバルは咄嗟に腕で頭部を庇ったが、それでも凄まじい衝撃が全身へと奔った。
僅かに呻き、しかしその声はすぐに小さな悲鳴へと変わる。
天井面へ叩きつけられた際と同等の勢いで、今度は床面へと叩き落とされたのだ。
全身を強かに打ち付け、それでも何とか身を起こせば、同様に呻きつつも意識を保っている他の4人の姿が在った。
ノーヴェが肩を押さえつつ、叫ぶ。

「何だよ、今の!」
「偏向重力か? もう此処まで!」
『違う。一瞬だが、慣性制御システムが停止したらしい。コックピット、何があった』

立ち上がろうとするギンガに手を貸し、スバルは軽く腕を振る。
異常は無い。
安堵に息を吐くが、傍らから発せられた声に不穏なものを感じ取り、振り返る。

『ダレン、応答しろ。どうした?』

コックピットへと呼び掛ける隊員。
恐らくはインターフェースによる通信も併用しているのだろうが、どうにもパイロットからの応答が無いらしい。
数度に亘って呼び掛けを行った後、彼は壁際に備えられたラックから自動小銃を取り外し、弾倉を点検しつつ言葉を発する。

『コックピットを確認してくる。何かあったのかもしれない』
「パイロットのバイタルは?」
『周囲のバイタルが残らず消えている。システム自体が沈黙した、だけなら良いんだが』

言いつつ、安全装置を解除する隊員。
ふとスバルは、自身の内に沸き起こる言い知れない不安に突き動かされる様にして、意識せず言葉を発していた。

「私も行く」
『様子を見に行くだけだ、すぐに終わる』
「バイド相手に油断なんか論外でしょう」

コックピットへと足を進める彼の後に続くスバル。
チンクも同行するつもりらしい。
隊員を先頭に1つ目のドアを潜り、コックピットへと続くドアの前に立つ。
だが、ドアは開かない。

「壊れているのか」

チンクの問いに答えず、隊員はウィンドウを展開して何らかの操作を施す。
数秒ほどで終了したらしく、彼はウィンドウを閉じると自動小銃を構えた。
手を翳し、スバル等に壁際へ位置する様に指示を出す。

『開放する』

そして金属音と共に、分厚いブラストドアが開放された。
先頭の隊員に続き、スバルはコックピット内部へと突入しようとして。

354R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/08/09(日) 19:50:36 ID:lHLgL2i6
『来るな!』

唐突に発せられた警告を聴き留めながらも間に合わず、彼女はコックピット内部へと滑り込む。
視線の先、呆然と立ち尽くす隊員の姿。
その、向こうには。

「ッ・・・!」
「スバル、何が・・・!」



散乱するコンクリートの破片、圧縮された空間。
左舷側を押し潰されたコックピット、壁面に密着している床面。
その僅かな隙間から突き出す、装甲服に覆われた人間の右腕があった。



「う・・・!」
『退がってろ!』

コックピット内を染める夥しい量の血液。
噎せ返る様な鉄の臭いに思わず声を漏らすスバルを余所に、隊員は残された右舷側の座席に着くとコンソールに指を走らせる。
操縦の大部分はインターフェースを通じて行うのだろう、座席横の操縦桿を握る様子はない。
吐き気を堪えながらチンクと共にその様子を見守るスバルだったが、すぐに焦燥を滲ませる声が上がった。

『クソ、瓦礫が・・・』
「どうした?」
『瓦礫が向かってくる! これは砲撃だ!』

隊員の言葉と同時、スバル等の前にウィンドウが展開される。
其処に映る光景に、彼女は息を呑んだ。
灰色の渦の中心域から、何かが飛来してくる。
明らかに人工物と判る、その直線的な外観を持つ物体とは。



『ビルだ! ビルが飛んでくる!』



直後、一切の前触れなく襲い掛かった衝撃に、スバルは為す術なく壁面へと叩き付けられる。
次いで天井面へ、床面へ、再度壁面へ。
周囲の構造物だけでなくチンクとも衝突を繰り返し、更に座席に着く隊員とも接触して彼を弾き飛ばす。
自身のものか、それともチンクのものかも判然としない悲鳴が響く中、最後に床面へと叩き付けられたところで漸く衝撃が収まった。

「っ・・・う・・・」

悲鳴を上げる全身に力を入れ、よろめきつつも身体を起こすスバル。
額からは血が流れていたが、それを拭う余裕すら無い。
周囲を見渡すと、チンクは意識を失ったのか微動だにせずに倒れ伏し、ランツクネヒト隊員は頭部を振りつつぎこちない動きで立ち上がろうとしていた。
微かに咳き込み口内の血を吐き出すと、スバルは幾分掠れた声で隊員へと問い掛ける。

「今のは・・・?」
『済まない、瓦礫を回避できなかったんだ。この機体はB-19エリアに墜落した』

スバルの問いに答えつつ、彼は展開したウィンドウ上に忙しなく指を走らせ始めた。
どうやら機体の状態を確認している様だが、瞬く間に赤い点滅に埋め尽くされてゆくウィンドウが損傷の激しさを如実に物語っている。
彼は10秒ほど操作を続け、ウィンドウを閉じると小さく悪態を吐いた。

355R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/08/09(日) 19:52:47 ID:lHLgL2i6
『クソ、エンジンも慣性制御も死んでいる。コイツはもう駄目だ』
「じゃあ・・・」
『脱出しよう。彼女を起こしてくれ』

少々ふらつきながら、彼はコックピットを出る。
スバルはチンクに深刻な傷が無い事を確かめるとその肩を揺すり、彼女の意識を呼び覚ました。
覚醒した直後は僅かに混乱していたチンクだったが、機体を捨てる事を告げられるとすぐに行動を開始する。

「周囲の状況は?」
「取り敢えず出てみないと分からない。墜落って言うんだから、地面は在ると思うけど」
「怪しいものだな」

兵員輸送室へ入ると、格納室へと続くドアの前でノーヴェが2人を待っていた。
彼女は頭部より出血するスバルと腕を押さえるチンクを目にするや、焦燥を隠そうともせずに声を上げる。

「その怪我・・・」
「姉は大丈夫だ。スバルも大した傷ではない」
「そういう事」

そうしてノーヴェを促すと、彼女はギンガとウェンディは後部ハッチの開放に当たっていると告げた。
どうにも瓦礫が邪魔をしているらしく、戦闘機人の膂力で以って無理矢理にハッチを抉じ開けようとしているらしい。
だが、格納室へと入ったスバル等の視界へと飛び込んできた光景は、歩兵携行型ミサイルの弾頭を分解するランツクネヒト隊員の姿だった。
何をしているのかと、スバルは傍らのギンガに問い掛ける。

「ギン姉、何してるの?」
「・・・ハッチは開きそうにないわ。機体の上にビルが丸ごと1つ圧し掛かっているみたいなの」
「生き埋めって事か」
「幸い、すぐ下に空洞が在るみたいでね。床を爆破して脱出するしかなさそうよ」
『終わったぞ、退がってくれ』

隊員の言葉にそちらを見やると、彼はスプレー缶の様な物から床面へと吹き付けたゲル状物質の中央に、分解した弾頭の内部機器を張り付けているところだった。
彼は小さなチップの様な物を張り付けた機器の中から抜き出し、それをヘルメットの後部に挿入する。
そして、誘導に従い全員が兵員輸送室へと退避すると、彼は伏せるように指示し、呟いた。

『起爆する』

轟音。
機体が震え、一時的に聴覚が麻痺する。
肩を叩かれ身を起こすと、隊員は格納室へのドアを開けようと苦心していた。
どうやら爆発でドアが歪んでしまったらしく、装甲服による筋力増強が在るとはいえ、彼の独力では開放にまで至らない様だ。
すぐにスバルとノーヴェが手を貸し、3人掛かりでドアを抉じ開ける。
火花が散り、小さな炎が其処彼処に揺らめく中をどうにか進んで行くと、床面に大穴の開いた格納室へと辿り着いた。
ウェンディが穴の中を覗き込む。

「見えた、トラムの路線ッス・・・下はショッピングモールか何かだったんスかね。随分奥までブチ抜いちまったみたいッスよ」
「深さは?」
「40mってとこスかね・・・ああ、周りは所々が崩落してるから、身体を引っ掛けながら降りるのはなしッスよ」

その言葉に隊員の方を見やると、彼は小さく肩を落として溜息を吐いた様に見えた。
周囲からの視線が煩わしいのか、ヘルメットに手をやり、暫し無言。
やがて手を離すと、何処か装った様に無感動な声色で言葉を発する。

『済まないが、誰か下まで降ろしてくれ』

356R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/08/09(日) 20:32:21 ID:lHLgL2i6
済みません、再度引っかかってしまいました
あとがきも含め残り3レスですので、どなたか代理投下をお願い致します



他に考え得るとすれば、可能性は1つしかない。
だがそれは、決して望ましいものではないのだ。
それができる存在とは、1つしか存在し得ない。



『木星軌道防衛艦隊・第2遊撃部隊所属、ヨトゥンヘイム級異層次元航行戦艦「アロス・コン・レチェ」』



地球軍艦艇。
それしか有り得ないのだ。

『ゴエモンより全軍へ、緊急!』

全方位通信。
インターフェースを用い、更に肉声で以って全軍へと呼び掛ける。
応答を待っている暇は無い。
混乱した各勢力の声を無視し、半ば叫ぶ様に続ける。

『国連宇宙軍所属・ヨトゥンヘイム級異層次元航行戦艦アロス・コン・レチェ出現、防衛網へ接近中! 目標艦は汚染されている! 繰り返す、目標は汚染されている!』

被ロック警告。
咄嗟に機体を下へと滑らせると、無数の光条が空間を貫く。
同時に、波動砲の充填率が臨界に達した。
デコイ展開、総数6機。
波動粒子によって形成されたデコイは、外観から各種反応に至るまで、彼の搭乗機であるR-9AD3と寸分も違わない。
フォースとビットでさえ、全く同様に再現されていた。
そして本体である彼の機体を含め、その全ての機首には波動粒子の集束を示す青い光が纏わり付いている。

『目標艦からの欺瞞情報により、アイギスの制御を掌握された! 現在アイギス群は、防衛艦隊戦力を汚染体と判断している! 繰り返す、アイギスの制御を奪取された!』

直後、彼は機体をほぼ反転させ、シャフトタワーの方角へと機首を向けた。
そして、砲撃。
青い閃光が光学的視界を埋め尽くし、無数の爆発が彼方までを埋め尽くす。
アイギス、30基前後を撃破。
遥か前方、何かに着弾した波動粒子が爆発する。
距離、約7200km。

『防衛艦隊は直ちにアイギスの排除を開始せよ! 最優先防衛目標はベストラ及び輸送艦群! ミサイルだけは何があっても通すな!』

複数の着弾箇所より業火を噴き減速しつつ、しかし決して停止する事なく接近してくる艦艇。
全長3700mにも達するそれは、先程の砲撃で慣性制御システムが停止したのか、後部メインエンジンの推力のみで以って航行しているらしい。
その黒々とした艦体上部、センサー類の集中する艦橋周辺に配置された6基の砲塔、計12門の砲口がこちらを捉える。
極高出力長距離光学兵器及び荷電粒子砲を搭載した、半自動選択式多機能砲塔。
更に艦体前部に位置する宙間巡航弾のハッチが開放され、無数の被ロック警告がインターフェースを通じて意識へと鳴り響く。

波動砲、再充填開始。
フォース・コントロールシステム、対空レーザー選択。
再びザイオング慣性制御システムの出力を引き上げ、アロス・コン・レチェの下方へと潜り込むべく機動を開始する。
だが、周囲の空間を埋め尽くすアイギスより掃射される光学兵器の火線が、それを許さない。
目標移動速度、秒速59km。
再度加速中。

『ゴエモンよりアクラブ、直ちに応援を要請する! シュトラオス隊、直ちにアイギスの排除に当たれ! コロニーが攻撃対象になるのも時間の問題だ!』
『アクラブより全軍!』

357R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/08/09(日) 20:32:51 ID:lHLgL2i6
あらゆる方位より放たれる光学兵器を回避しつつ、何とかアロス・コン・レチェへの攻撃を試みる彼の意識に、アクラブからの通信が飛び込む。
形成したデコイをアイギスに衝突させ、連続して8基を撃破。
更に多目的ミサイルを発射し、その爆発に5基を巻き込む。
急激に機首を引き上げズーム上昇。
波動砲充填率、臨界。
再度、砲撃を実行しようとして。



『Aエリア外殻、戦術核の起爆を確認! 繰り返す! コロニーに戦術核が着弾した!』



至近距離のアイギス群より、18基のミサイルが発射される。
戦術核弾頭搭載宙間迎撃用ミサイル。
明らかに回避不能であると分かるそれらが、高速で機体へと迫り来る様をインターフェース越しに意識へと捉えつつ、彼は無感動にトリガーを引く。
直後、青と白の閃光が彼の視界を塗り潰した。

358R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/08/09(日) 20:33:39 ID:lHLgL2i6
以上で投下終了です
支援、有難う御座いました

今回は説明だけ

「666」
公式での名称は「幻獣666(トリプルシクス)」
「Ⅲ」のステージ4、ファイアキャスクファクトリーのボスです
当たり判定のある球体が3つ回転する背景をグルグルと回しつつ、コイツ自体もグルグルと周囲を旋回します
この回転については、本作中では「偏向重力を操る為」と表現しました
しかもコイツ、XY軸が重なった時にレーザーを放ち、更にダメージが蓄積される毎にどんどん速く・・・
多くのTYPERがコイツに三半規管をやられ、玉と体当たりとレーザーに殺られた事でしょう

「R-9A4 WAVE MASTER」
R-9Aの正当進化系統、最終形態
地味に見えて実は最強機体の1つ

そして、おぺれいしょん・びたぁ★ちょこれいと、祝・発売決定―――!!!
ヤンデレ幼馴染の「地球軍」とツンデレ委員長の「革命軍」に迫られるあなたは、遂に究極の選択を迫られる事になります
幼馴染が夜なべをして作り上げたプレゼント「ふぉおす」を真っ向から否定してしまった委員長
2人の対立は体液を体液で洗うエログロネチョバトルへと発展!
更に、2人の対立を憂う引っ込み思案な新米担任教師「バイド」も、実はあなたに好意を持っていた!
物憂げな表情と幼い頃に傷付け合ってしまった切ない記憶、そして圧倒的なボリュームを持つバスト、通称「ぐりぃん☆いんふぇるの」を携えて迫る彼女にあなたは耐えられるか!?
SF恋愛シュミレーション「R-TYPE TACTICS Ⅱ おぺれいしょん・びたぁ★ちょこれいと」
2009年10月29日 発売!!

なお、このゲームをプレイした結果、虚脱感に襲われたり性欲を持て余したとしても、当社は一切責任を負いません





さあ、早くスレッジハンマーでEDF隊員を撲殺する作業に戻るんだ



以上です
代理投下をお願い致します

359R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/08/09(日) 20:39:51 ID:lHLgL2i6
代理投下を確認しました
本スレWmk4fF1q様、有難う御座いました

360魔法少女リリカル名無し:2009/08/10(月) 02:00:34 ID:P6NKm/Vc
高校の修学旅行で、こずかいが無いので、まる子の使用済みパンツを買ってください。
送料込みで千円です。携帯で、マルコのパンツ希望色と、あて先を言ってくれると送ります。
後払いです。 もうすぐ携帯は潰すので、しばらくの間だけど、買って買って。
090−8397−7448

361魔法少女リリカル名無し:2009/08/10(月) 02:15:49 ID:P6NKm/Vc
高校の修学旅行で、こずかいが無いので、まる子の使用済みパンツを買ってください。
送料込みで千円です。携帯で、マルコのパンツ希望色と、あて先を言ってくれると送ります。
後払いです。 もうすぐ携帯は潰すので、しばらくの間だけど、買って買って。
090−8397−7448

362無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/09/01(火) 21:26:15 ID:C2hRs8X.
さるさんを食らってしまいました。誰か投下していただけないでしょうか?


『カズマさん来てくれたんですねっ! リィンはちゃんと信じていましたよ!』
 カズマがブルースペイダーから降りつつはやてとリィンの元に行こうとする。
 しかし一足早かった者がいた。
「あぐっ!」
 その影は太い腕をはやての首に回し、そのまま縛り上げる。
「ベルトを下に置け! さもないとこの女が死ぬぞ?」
 影の主、カプリコーンアンデッドは愉しげな声でそう言った。
 その台詞、光景に何故かカズマは既視感を覚える。この吐き気のするような光景に。
「卑怯な!」
「五月蝿い! お前のせいで俺はこんな目に遭ってるんだからお前も痛い目を見ろ!」
「何のことだ!?」
「覚えてないとでも言うか!? なら今すぐ思い出させてやる!」
 怒り狂ったカプリコーンアンデッドははやての首を絞める腕に力を込めていく。その太い腕と対照的に細いはやての白い首が嫌な音を上げ出す。
「あっ、あ、ああ……」
「はやて!」
「さっさとベルトを置け!」
 カズマがカプリコーンアンデッドを睨み付けるが、意にも解さず笑みを浮かべながら首を絞めていく。
 だが、この時三人は後一人の存在を忘れていた。そう、はやての中にいるもう一人の存在を。
『フリジットダガー!』
 突然はやての内側から舌っ足らずな叫びが上がる。
「な……!?」
 その瞬間、カプリコーンアンデッドの真上に出現した氷の刃が彼の脳天を貫いた。
「今だ!」
 カズマがそこでショルダーチャージをかけて吹き飛ばす。その腕の中には、救出されたはやてがいた。
「か、カズマく――」
「はやて、離れてくれ。俺はあいつを倒す!」
「……」
 はやては一瞬不満そうな表情を浮かべるが、状況が状況故に素早く身を離す。
 カズマは醒剣ブレイラウザーのカードホルダーを展開し、二枚のカードを抜き出す。
『THUNDER,KICK』
 スラッシュされた二枚のカードから引き出される力は混ざり合い、コンボという名の必殺技へと昇華される。
『――LIGHTNING BLAST』
 カプリコーンアンデッドが、ゆらりと立ち上がった。
 その動作と同時にカズマはブレイラウザーを地面に突き刺し、彼の元に走る。
 カプリコーンアンデッドはそれを見ながら慌てて腕をクロスさせて防御態勢を取る。
 カズマはジャンプによって得られた位置エネルギーと、カードによって得られた雷撃の力を、強化された右足に込める。
「うぉあああぁぁぁぁ!」
 それを、容赦無くカプリコーンアンデッドに叩き付けた。
「ウォォォォオッ!?」
 その力によって、彼は壁をひしゃげさせるほどの勢いで吹き飛ばされる。
 カシャンという軽い金属音。
 カズマは静かに、『Spade Q』を封印した。

363無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/09/01(火) 21:27:04 ID:C2hRs8X.



     ・・・



 戦いが終わって、ようやく私は応接室を見回す余裕が生まれていた。あまりの酷い惨状に泣きたくなるだけだが。
 何だかんだで私も頑張ったと思う。数少ない近接魔法を駆使し、苦手なんてもんじゃないクロスレンジをどうにか戦い抜くことが出来たわけだし。
 それはそうと、今は聞きたいことが山ほどあった。カズマ君に。
「――なぁ、カズマ君」
「はやて、大丈夫か? 全身傷だらけだし……。くそっ、俺の帰りが遅れたばっかりに――!」
 けれど、こんなに他人のために一生懸命なカズマ君を見ていると、何だかどうでも良くなってきた。まるで往年のなのはちゃんみたいな……って、それは本人に失礼か。
「私は大丈夫や。今リィンが回復魔法をフル稼働中やし。それよりロングアーチに連絡を取ってくれんか? そこの受話器が使えればええけど、無理なら直接行ってくれん?」
「ああ、わかった」
 そう、私は大丈夫。私は部隊長、こんなところで倒れるようじゃ『奇跡の部隊』を率いることなんて出来ない。
しかし今回のハッキングを行った者が誰か、それが問題だ。ロングアーチにハッキングするほどの実力者で、怪人に協力できる者。心当たりは、二人いた。
これは捜索を急いだ方が良いかもしれない。
 そう思考していた私の元に、唐突に“轟”というエンジン音が耳に入る。
顔を上げた先には、今日二人目の来訪者がいた。
「剣崎、ようやくお前と戦う時が来たようだな」
 その来訪者は――
「――紅い、『仮面ライダー』?」
 真紅の配色ながら、カズマ君の変身した姿とそっくりなバリアジャケットを纏っていた。
 細部は確かに違う。頭はカズマ君のが一本角なら二本角になっているし、肩のアーマーなども形状が違う。
 そして似ているのはカズマ君のバリアジャケットとだ。何故なら、不自然なまでに腹部や肩が何かを塗り潰すように装甲が貼られているからだ。
「橘、さん……」
「剣崎、後でお前に通信を送る。そこに一人で来い。誰か一人でも連れて来ればあの悲劇がここで起きることになる」
「あの悲劇――?」
「お前がかつて己の体をかけて止めた悲劇だ」
 そのセリフで、カズマ君の表情が変わった。
「いいな?」
「待ってください、橘さん!」
 だが橘さんと呼ばれた紅い『仮面ライダー』はそれに答えることなくバイクを走らせてこの場を去ってしまった。
 結局私は、何一つ理解出来ないまま。なのに状況だけが次々と進んでいた。



     ・・・



 カズマが受けた決闘状。相手はかつての師、戦うのは異国の地、奮うのは人とは異なる体。
 人の皮を被る怪物と試験管から生まれた異形がぶつかり合った時、伯爵のストーリーは進む。

   次回『決闘』

   Revive Brave Heart

364ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2009/09/01(火) 22:09:53 ID:r6rsbsiQ
それでは、代理投下いってきます。

365ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2009/09/01(火) 22:15:17 ID:r6rsbsiQ
代理投下行ってきました。無名氏、ご確認をお願いします。

……ゴメンナサイ、とうとう9月になっちゃったorz(鈍足的な意味で)

366R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2009/09/06(日) 18:28:30 ID:hkOUlOwk
規制を喰らってしまいました
どなたか、代理投下をお願い致します



「無駄ッスよ、ギン姉。ソイツはもう、アンタやアタシの知ってるティアナじゃないッス」

いつもの口調で吐き捨てると、ウェンディは2人の傍らを擦り抜けてボードを浮かべた。
ボードの上へと飛び乗り、推力を引き上げんとする。
そんな彼女の背後から、思わぬ言葉が投げ掛けられた。



「あの2人はもう、私達の知ってるスバルとノーヴェじゃない」



瞬間、ウェンディはボード制御に関する、全ての情報をキャンセルした。
床面から50cmほど浮かび上がったボードの上に立ったまま、背後のティアナへと振り返る。
視界にはティアナの後姿、そして彼女を見やる驚愕の表情を浮かべたギンガが映り込んだ。

「ランツクネヒトが用意した新しい身体に、2人の脳髄が移植された事は知っているでしょう」
「・・・勿論」

知っている。
知らない筈がない。
それを聞いた時の衝撃は、今でも鮮明に思い出せる。
2人は誕生から慣れ親しんだ身体を、永遠に失ったのだ。

「2人の体組織から培養された生体ユニットが、無人のR戦闘機に搭載されている事は」
「知っているわ。それが?」
「それですよ、ギンガさん」

途端、全身が冷え切ってゆく様な感覚が、ウェンディを襲う。
脳裏に浮かぶ、最悪の予想。
そんな事はない、と否定しながらも、それで辻褄が合うと冷静に指摘する理性。
そして遂に、ウェンディが最も望まなかった答えが、ティアナから齎される。

「あの2体の身体に移植されたのは、オリジナルの脳内情報を転写された培養体。オリジナルの2人の脳髄は、あの身体に移植されていない」

周囲の全てが冷え切ってゆく。
そんな錯覚が、ウェンディを侵食していた。
ボードの高度が徐々に下がり、床面に接触する。
ウェンディは覚束ない足取りでボードを降り、ゆっくりとティアナへと歩み寄った。

「なら・・・それなら・・・」

震える両の腕を伸ばし、ティアナの肩を掴む。
力加減など考えもしなかったが、ティアナは特に反応を見せない。
冷たい瞳だけが、ウェンディを真正面から見据えている。

「2人は、何処に・・・?」

367シレンヤ:2009/09/07(月) 21:08:18 ID:Pi.CuIn2
本スレで「さる」という規制にひっかかったシレンヤですが、
ここに落とせばいいのでしょうか?
こんな規制があるとは知らなかったもので・・・

368魔法少女リリカル名無し:2009/09/07(月) 21:15:17 ID:/UBjECGg
もう投下できるようになっているはずですよ。
規制関係は予め調べましょう。

369シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/09/07(月) 21:17:18 ID:Pi.CuIn2
あ、できました!
すいません。以後気をつけます。

370レザポ ◆94CKshfbLA:2009/09/22(火) 10:40:57 ID:GefxoisI
 以上です、序章ってな回です。
 
 
 なんだがゴテゴテ急ぎ足になっていますが、フェイトだけがいつものように影が薄い……

次は次章を予定しています。



 それではまた。

371無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/10/03(土) 19:38:06 ID:9cjmHxuA
最後の最後でさるさん食らってしまいました。代理投下、お願いします。



 一瞬の光。その後に発生するのは耳をつんざくような何かの炸裂音と、全てを吹き飛ばそうとするような衝撃波の嵐。
 重い体を持ち上げ、目を開く。視界に映った数瞬後の光景は、まるで違うものだった。
「橘さん……? 橘さん!」
 目の前には、仁王立ちした状態の橘さんがいた。そしてその橘さんが倒れてきたときに、全てを悟った。
 その背中は、アーマーすら判別出来ないほど黒く焼き焦げていた。
「橘さん!」
「け……ん、ざき」
 ひび割れたマスクから僅かに声が漏れる。その罅から、橘さんが垣間見えた。
「橘さん!? しっかりしてください!」
「カズマさん!」
 自分の脇をすり抜けるようにして現れたリィンが必死に回復魔法を発動する。
 俺は、呼び掛けることしか出来ない。
「橘さん!」
「はく、しゃくを……さが、せ」
「!?」
 伯爵――何度も橘さんの台詞に含まれていた言葉。
 しかしその意味を聞き出すことは、とうとう出来なかった。
「ごめんなさい……」
「リィン――?」
「助け、られませんでした……」
 橘さんを見つめる。その死は、あまりに唐突なものだった。
 救いたかった。助けたかった存在。なのに、何故死んでしまったのか。
「ハッハッハ! 君がオリジナルかね? 会えて嬉しいよ!」
 上空からかかる煩わしい甲高い声。余りに不快だったので、俺はその方向に向かって睨み付ける。視界には、四人の男女が写っていた。
「お前が……」
 その中央の人物。その顔には見覚えがある。一度だけ見た奴の写真。六課が探す宿敵。
「橘さんを殺したのかぁぁぁぁぁ!」
「五月蝿いね、静かにしてくれないか」
 血液が沸騰し、頭に血液が逆流する。怒りが全身を支配し、細胞を過剰に活性化させる。
 救えなかった自己嫌悪と、その機会を奪った者への憤怒。それは俺の理性を容赦なく破壊した。
「初対面だ、名乗っておこう。私が、ジェイル・スカリエッティだ」
 そう、コイツと戦う理由が、出来た瞬間だった。



     ・・・



 ついに六課に立ち塞がった宿敵、ジェイル・スカリエッティ。彼はカズマに強い興味を示す。その彼は、あるものをカズマの前で使用するのだった。
 一方、なのはとフェイトもジェイル・スカリエッティと戦おうとするが、新たな力を得たナンバーズに対し、苦戦を強いられるのだった。

   次回『スカリエッティ』

   Revive Brave Heart



※ELEMENTS 作詞:藤林聖子
        作曲:藤末樹
        唄:RIDER CHIPS Featuring Ricky より歌詞の一部を抜粋

372無名 ◆E7JfOr0Ju2:2009/10/03(土) 19:41:48 ID:9cjmHxuA
以上で投下終了です。
今回はかなりオリジナルの魔法運用を行っているため、拒否反応を示す方もいらっしゃるかもしれません。そのときは文章の改善などで応えたいと思っています。
また、今回で遂にスカリエッティの登場となりました。次回からは密接に彼がストーリーに関わってきます。お楽しみに。
ではでは、批評、感想、応援コメントお待ちしております。

最後に支援、代理投下してくださった方、ありがとうございました。

373魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/10/10(土) 22:26:05 ID:ovmHQmc2
やはり規制くらってしまいました。後2レスどなたか代理お願いいたします。

 少なくとも、あの男ならば壊れない。失われない。またベクトルはどうであれ純粋な渇望として己同様にこちらを求めている。
 己という存在を肯定せんが為の己を否定し、またこちらも否定すべき相手。
 もうそれでいい。それで構わない。それだけでも我慢する。

 だからいなくなるな。かかって来い。逃げるな。
 俺から俺という存在意義を奪うな。
 だからさっさと出て来い、劉鳳。
 テメエだって俺のことが気にいらねえんだろ? だったら―――

 ―――もう二人だけのサシのタイマンでそれだけをし続けようじゃねえか。

 死んだって構わない。命だって或いは……くれてやらんこともない。
 だから出て来い、さっさとかかって来い。
 俺の全てをテメエとの喧嘩にくれてやる覚悟は出来てるんだ。
 だから―――

「……俺から、俺の前から……居なくなってるんじゃねえよッ!!」

 俺が俺であるべき理由を。
 俺の拳を振り上げる理由を。
 俺から、奪うな!

 故に求め続ける。
 吼え猛り、暴れ狂い、後も先も関係ない衝動の化身と化して。
 カズマはただ、ただ劉鳳だけを求め続ける。
 それしか、自分には残っていないと思っていたから。

 しかし―――


「―――カズマ君!?」

 己のチッポケな名が呼ばれ、カズマは反射的に上空を見上げる。

「かな―――ッ!?」

 奪われたはずの、失ったはずの、何よりも愛しかったはずのその声が己の名を呼んできた。
 奇跡が己に応えてくれたのか、とらしくもないそんな思いで空を見上げ、そして結果的には落胆によりそれすらも裏切られた。

「……また……テメエかよ……ッ!?」

 憎々しい、そんな感情すらも生温いほどの激しい感情を込めた苛烈な視線で睨みあげる。叶うのならば、この睨みだけで呪い殺してしまいたいとすら思うほどに。
 それ程に見上げた空の上からこちらを見下ろすその女は目障りだった。

 ―――高町なのは。

 またコイツか、そんな鬱陶しさとしつこさと気に入らなさ、そして何よりも許容しがたき感情が相手の存在を激しく否定し、彼を苛立たせる。

 いつもいつもいつもいつもいつも!
 こちらの目の前に現れ、鬱陶しい綺麗事を押し付けようとしてくる目障りな相手。
 何だというのだ、どんな恨みがあってしつこくこちらに付き纏ってくるのか。
 何度立ちはだかって、邪魔をすれば満足するのか。
 そして何よりも―――

「カズマ君、もうやめ―――」
「―――うるせえッ!!」

374魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw:2009/10/10(土) 22:28:55 ID:ovmHQmc2

 何かを言おうとしてくる相手の言葉を、半ば無理矢理に声を張り上げて掻き消す。
 もう聞きたくないのだ、こいつの声は。
 もう呼ばれたくないのだ、その声で自分の名前を。

「……何で……ッ……何で……テメエの声はそんなに―――」

 ―――そんなに、かなみの声に似てやがるんだ!

 一方的な言いがかりだが、それでもカズマにはそれが耐え切れない。
 そちらが身勝手に奪い、もう二度と取り戻すことも出来ないのかと諦めかけていたというのに。
 それに何より……もう彼女だけは傷つけたくないから、背負わないと決めたというのに。
 忘れてしまいたいのに、捨て去りたいというのに……ッ!

『カズくん、カズくん……カズくんってば、ちゃんと聞いてるの』

 愛しかった、護りたかった、心の底から初めてそう思えたはずの相手だったのに。
 お前らが身勝手に奪い取りやがったというのに―――ッ!

「今更……ッ……今更、アイツの事をチラつかせてくるんじゃねえよ!」

 汚すな、触れるな、玩ぶな。
 そいつはお前らが勝手に触れていいものじゃない。
 自分だけの、自分だけの大切な宝物だったというのに。
 それを―――

「………返せよ」

 睨み上げながら、震える声でカズマはその言葉を叩きつける。
 かなみを返せ! 君島を返せ! 俺から奪った俺のモノを全部返せよ!
 それが出来ないって言うならさっさと―――

「俺の前から……消えてなくなれぇぇぇええええええええええええ!」

 瞬間、咆哮と共に虹色の粒子が辺り一体を覆い、周囲の岩石などを次々に分解していく。
 そしてそれを形として再構成……その姿は決まっている。

 “シェルブリット”

 カズマの、カズマだけの、己が唯一持っていて誇れる自慢の拳。
 己の全て、信念を結晶化した誓いの証。
 この大地を生き抜くための、カズマが得たたった一つの力。

 己の全てをコレに込めて、今はただ只管に気に入らない目の前のこの女を。
 立ち塞がってくる強固な壁を。

「気にいらねえんだよぉ! テメエはぁぁぁあああああ!」

 己の全身全霊の全てを賭けて、叩き潰す!


以上、投下終了。
とりあえず、前回分までを今日は改めて。内容はほんの若干修正入れてますがほぼそのままです。すいません。
この四ヶ月、この話ばっか延々と修正したり書き直したりしていて、スクライドとなのは1~3期を全話見直したりしてたんですが……やはり自分、キャラを掴みきれてませんか。
特になのはは色々コメなど参考にちゃんと”らしく”書こうとしてるんですが、どうにも上手くいってないみたいです。言い訳は見苦しいので書きませんが、感想・批評等も参考にしたいので率直な感想を頂ければありがたいかと。
相変わらず、長ったらしくてすいません。それでは、また。

375ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2009/10/10(土) 22:29:53 ID:2KbfdMiw
それでは代理行ってきます。

376ラッコ男 ◆XgJmEYT2z.:2009/10/10(土) 22:36:13 ID:2KbfdMiw
代理行ってきました。改行エラーを喰らってしまって
最初の部分だけ削ってしまいましたが、大丈夫でしょうか?

377リリカルトリーズナー ◆j1MRf1cSMw:2009/10/10(土) 22:40:19 ID:ovmHQmc2
はい、ありがとうございます。というかお手数おかけして本当に申し訳ありませんでした。
代理確認の方させていただきました。ラッコ男氏、本当にありがとうございました。

378(旧)天元突破リリカルなのはSpiral ◆Yf6j8wsEUw:2009/10/16(金) 23:19:23 ID:F2bsrjSQ
ひさびさにきてみたら規制をくらってました。どなたか代理投下をお願いします。
――――――――――
注意)本ssでは原作とは異なる設定・世界観で進んでいきます。 そういうものが苦手な方はご注意下さい。
また、本ssはまとめwikiに掲載されている「天元突破リリカルなのはSpiral」とはストーリー・設定上の繋がりは一切ありません。





「――― 子供の頃は、毎日毎日、こうやって遺跡を掘るのが僕の仕事だった」

 魔力光球の淡い光に照らされながら、ユーノはおもむろに語り始めた。声変わりを忘れたような中性的な声が周囲の壁に反響する。
 気がつけば随分と奥まで来てしまった。首の後ろで括った長い髪も、仕事柄最近では日焼けとはすっかり縁遠い色白の顔も、今は土と埃で薄汚れている。
 だがユーノの表情に後悔の色はない。カビと埃にまみれたこの息苦しい空気も、一歩先は何も見えないこの暗闇も、彼にとってはかつて慣れ親しんだ懐かしい世界だった。

 ユーノ・スクライアに故郷は無い。彼の部族、スクライアは代々遺跡発掘を生業とする放浪の民だった。
 帰るべき故郷を持たず、遺跡から遺跡への根なし草。遺跡に見守られながら生を受け、遺跡とともに生き、そして遺跡に見送られてその生涯を終える。
 それがスクライアの民として当前の生き方だった。彼らにとって、自らの魂の半分は常に遺跡とともにあるのだ。それは「外の世界」を知り、部族を離れたユーノも同様だった。
 ユーノも幼い頃は大人達に交じり遺跡の発掘作業に従事し、その卓越した発掘の才能から弱冠九歳の身で現場責任者に抜擢された過去がある。
 部族の中で同じ年頃の子供達と遊んだ思い出は無いが、発掘の成果を持ち帰るたびに大人達から褒められたことはよく覚えている。幼かったユーノはそれだけで満足していた。

 発掘の現場を離れ、時空管理局無限書庫司書長という肩書きを得た現在においても、ユーノのその本質は変わっていない。
 多忙な職務の合間を縫って趣味の考古学に勤しみ、纏めた研究成果を学会で発表する。自分の研究が認められたとき、ユーノの心はこの上ない充足感で満たされるのだ。
 まさに「三つ子の魂百まで」とでも言うべきか。子供の頃から何一つ変わらぬ己の行動原理に、ユーノは自嘲するように唇の端を歪めた。

「他人から褒められるためだけに、お前はこんな穴蔵に潜るのか?」

 ユーノの独白を聞き終え、それまで黙っていたもう一人の男が口を開いた。深く被ったフードで顔を隠し、擦り切れたマントで全身を覆っている。見るからに不審な男である。
 フードの奥に隠れた男の素顔を、ユーノは知らない。名前も聞いたばかりである。遺跡の入口で偶然出会い、たまたま発掘について来きただけの同行者である。

「勿論、それだけじゃないさ」

 同行者の無遠慮な問いに、ユーノは笑って首を振った。勿論、そんな子供じみた優越感のだけに貴重なプライベートの時間を削ってまで過去を掘り返している訳ではない。
 考古学は仕事や生い立ちなどの事情を差し引いても興味のある分野であるし、「昨日」から学び、「明日」へ活かせることがこの世界には山のように溢れている。

「それに何より―――宝物を掘り当てることだってあるからね」

 どこか恍惚とした笑みを浮かべ、ユーノはひび割れた壁面を指先でなぞった。錆ついた金属特有の冷たくざらついた感触が指先から伝わる。
 虚空を浮遊する魔力光球が輝きを増しながらゆっくりと上昇し、暗闇に覆われた空間の全容を淡く照らし出した。

「これは……!」

 男の息を呑んだ。鋼鉄の巨人。あるいは巨神と呼ぶべきか。何にせよ、圧倒的な存在感を放つ人型の巨体が、両足を投げ出すような姿で二人の前に鎮座している、
 ユーノが触れているのは、壁ではない。まるで巨木のように太く逞しい鋼鉄の脛だった。

「大発見だ」

 ユーノの声が興奮に声を震える。その傍で、男も巨人に目を奪われていた。全身の体毛が逆立つのが分かる。胸の奥から湧き上がるこの感情は、戦慄か、それとも歓喜か。
 ラガンタイプのふてぶてしい顔。今は色あせているが、かつては鮮やかな真紅であったであろうボディ。そして何より、頭と胴体に二つの顔を持つ特徴的なその姿。
 ずっと昔、最強の宿敵であり、そして最高の相棒でもあった因縁深き紅蓮のガンメン。それと瓜二つな鋼鉄の巨人が今、男の前にいた。
 細部こそ記憶の中の姿と若干意匠が異なるが、間違いない。こいつは、この機体は―――!

「―――グレンラガン」

 鋼鉄の巨人を見上げ、男は唸った。深く被ったフードの奥で、まるで獣のような二つの瞳が爛々と輝いていた。



時空突破グレンラガンStrikerS
 第01話「あたしを誰だと思ってる!!」

379(旧)天元突破リリカルなのはSpiral ◆Yf6j8wsEUw:2009/10/16(金) 23:21:48 ID:F2bsrjSQ



 鋭い岩肌の突き出た丘陵の上空を、一機の大型ヘリコプターが飛んでいる。JF704式ヘリ、時空管理局地上部隊で制式採用された最新型の輸送ヘリである。
 新暦75年5月13日。ミッドチルダ東部の遺跡で発掘された古代遺失物(ロストロギア)を運ぶ特別貨物列車が何者かの襲撃を受ける事件が発生した。
 通報を受けた管理局は新設された対ロストロギア特殊部隊、通称“機動六課”に出撃を要請、正式稼働後初の緊急出撃(スクランブル)となった。

「それじゃあ、もう一度今回のミッションをおさらいしようか」

 緊張に包まれる輸送ヘリのカーゴ室に、機動六課スターズ分隊長、高町なのは一等空尉の声が凛と響く。
 輸送列車を追うこのヘリの中では、初任務を前にした前線フォワード部隊の最終ブリーフィングが粛々と行われていた。
 今回の任務は二つ。車両を占拠する敵勢力の撃破、そしてロストロギアの確保である。二つの分隊がそれぞれ車両の前後から突入し、中央へ向かうという作戦が立てられた。
 なのはは両分隊とは別行動をとり、輸送列車上空でライトニング分隊長フェイト・T・ハラオウン執務官と合流。二人で空の敵の殲滅を担当する。

「―――という訳で、ちょっと出撃てくるけど、皆も頑張ってズバッとやっつけちゃおう。危なくなったらすぐにフォローに駆けつけるから、安心して思いっきり戦ってね」

 展開されたメインハッチからカーゴ室を振り返り、なのははそう言って部下を激励する。なのはの言葉に、カーゴ室に残る四人の少年少女達が毅然とした顔で「はい」と返した。
 教え子達の頼もしい返事になのはは頷き、メインハッチの外へと勢いよく身体を投げ出した。自由落下による偽りの浮遊感を肌で感じながら、なのはは胸元の宝玉に手をのばす。

「レイジングハート、セットアップ!」

 なのはの掛け声とともに胸元の赤い宝玉が眩い光を放ち、金色に輝く三日月状の杖頭に桜色の柄を持つ一本の杖へと姿を変える。
 同時になのはの服装も、茶系の色合いを基調とした機動六課の制服から純白の防護服(バリアジャケット)姿に変身していた。

 雲を切り裂き、無数の影がなのはに迫る。鳥? 否、洗練された流線形のフォルムを持つそれらの翼は、明らかな金属の輝きを放っている。
 ロストロギアを狙い、次元世界のあちこちに出没する所属不明の自律行動型魔導機械、通称“ガジェット・ドローン”。そのⅡ型に分類される飛行タイプの敵だった。
 ガジェットⅡ型が撃ち放つレーザー光線の雨を、なのはは右へ左へと軽やかに避ける。そう、なのはは空を飛んでいた。
 なのはが杖を銃のように前方へ突き出し、U字状に変形した杖頭の先端に桜色の魔力粒子が収束する。

 ―――ディバインバスター!

 瞬間、収束した魔力の光が弾けた。桜色の光の奔流が轟音とともに虚空を突き抜け、呑み込まれたガジェットⅡ型が一瞬で蒸発消滅した。なのはの十八番の砲撃魔法である。
 優れた飛行技能と圧倒的な火力、それこそが空のエース・オブ・エースと名高い空戦魔導師、高町なのはの真骨頂だった。
 なのはを警戒し、陣形を立て直そうとするガジェット群を、頭上から飛来した金色の光刃がまとめて切り裂いた。

「フェイトちゃん!」

 嬉しそうな声とともに顔を上げるなのはを、片手に漆黒の大鎌を携える黒衣の女性が見下ろしていた。ライトニング分隊の隊長、フェイトである。

「同じ空は久し振りだね、フェイトちゃん」
「うん、なのは」

 朗らかな笑顔で声をかけるなのはに、フェイトもはにかんだような微笑を返す。

380(旧)天元突破リリカルなのはSpiral ◆Yf6j8wsEUw:2009/10/16(金) 23:22:57 ID:F2bsrjSQ
 そのとき、不意なのはとフェイトの顔から笑みが消えた。二人とも真剣な表情を浮かべ、互いに武器(デバイス)を構えて睨み合う。
 最初に動いたのはなのはだった。だが動き自体はフェイトの方が速い。
 黒い戦斧に変形したデバイスの根元から蒸気が噴き出し、弾丸用に圧縮し密度が高められた無数の魔力光球がフェイトの周囲に顕現する。
 なのはの周囲にも同様に、桜色の魔力弾が多数浮遊している。二人の視線が交錯し、次の瞬間、両者の射撃魔法が同時に撃ち放たれた。

「アクセルシューター!」
「プラズマランサー!」

 二人の凛とした声とともに、流星のように光の尾を引く桜色の魔力弾がフェイトを襲い、電撃のように鋭い金色の魔力弾がなのはに迫る。
 互いが互いを狙って放たれた二人の射撃魔法が、次の瞬間―――――互いの背中に忍び寄るガジェットⅡ型を正確無比に撃ち抜いた。
 なのはとフェイト、そして機動六課部隊長である八神はやて二等陸佐を加えた三人は十年来の親友同士である。互いが考えていることは手に取るように分かった。

「腕は錆びついてないみたいだね、なのは。ちょっと安心した」
「当然。わたしを誰だと思ってるの、フェイトちゃん?」

 不敵な笑みを交わし、なのはとフェイトは弾かれるように別方向へ飛び去った。敵はまだまだ残っているのだ。どこまでも広がる蒼穹を舞台に、二人のエースの戦いは続く。




 その頃、なのは達の奮戦の甲斐もあり、四人の前線フォワード部隊員を乗せた輸送ヘリは安全無事に降下ポイントまで到着していた。
 まずはスターズ分隊員、スバル・ナカジマとティアナ・ランスターが先頭車両へと降下する。
 続けて部隊最年少であるライトニング分隊員、エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエが最終車両に向かって飛び降りた。

「「「「セットアップ!!」」」」

 四人の声に合わせてデバイスが起動し、自動的にバリアジャケットも展開・装着される。
 先頭車両の屋根の上へ無事に着地し、スバルが初めて身に纏うバリアジャケットを見下ろしながら「あ」と声を上げた。なのはのバリアジャケットにそっくりなのだ。

「皆さんのバリアジャケットのデザインと性能は、各分隊の隊長さんのを参考にしてるですよ。ちょっと癖はありますが高性能です」

 見惚れたように自身の姿を眺めるスバルの眼前に、まるで妖精のように小さな少女がふわりと舞い降りた。
 リインフォースⅡ。なのはに代わり現場指揮を任された、「祝福の風」の二つ名を持つはやての腹心である。

「スバル! 感激するのは後にしなさい」

 すぐ傍に降り立ったティアナの咎めるような声に、スバルはハッと我に返った。
 瞬間、スバル達の足元が歪に盛り上がり、触手が生えた楕円形の鋼鉄の塊が屋根を突き破りながら飛び出してきた。ガジェット・ドローン、その最も基本的なⅠ型である。
 コード状の触手をうねらせながら襲いかかるガジェットⅠ型に、スバルとティアナの対応は冷静かつ迅速だった。

「ヴァリアブルシュート!」

 凛とした声を響かせながらティアナが片手の拳銃型デバイスを構え、迫りくるガジェットⅠ型を狙い橙色の魔力弾を撃ち出した。
 瞬間、レーザー射出口も兼ねたガジェットⅠ型正面のセンサー・アイが不気味に明滅し、不可視の膜のようなものが本体を包み込んだ。
 Anti Magi-link Field(反魔力結合領域)、略してA.M.F。効果範囲内のあらゆる魔力結合を強制分解し、魔法を無効化するガジェットの特殊能力である。
 しかしティアナが放った魔力弾は展開された無効化フィールドを貫通し、ガジェット本体をも撃ち抜いてみせた。風穴を開けられたガジェットⅠ型が無惨に爆破四散する。
 不可能を可能に変えたティアナの奇蹟、その秘密は魔力弾の多重弾殻構造にあった。ティアナは攻撃用の弾体を、無効化フィールドで消される膜状バリアで包んだのだ。
 フィールドを突き抜けるまでの間だけ外殻が保たせ、本命の弾丸はターゲットに捻じ込む。AAランク技能に匹敵する超高度な「小細工」だった。

381(旧)天元突破リリカルなのはSpiral ◆Yf6j8wsEUw:2009/10/16(金) 23:23:49 ID:F2bsrjSQ
 立ち昇る黒煙を突き破り、スバルが雄叫びとともに天井の大穴から車両内部へ突入する。殺到する光線の雨を掻い潜り、スバルは浮遊するガジェットの一体を殴りつけた。
 籠手に覆われたスバルの右拳が敵の装甲を食い破り、手首のタービンが唸りを上げて猛回転する。雄々しい怒号を轟かせ、スバルは魔力を解放した。

「リボルバーシュート!!」

 瞬間、零距離から撃ち出された衝撃波がガジェットを粉砕した。降りかかる破片を左手で払い、スバルは車両内を蠢く残りのガジェット達を見渡す。
 ガジェット達はスバルを警戒したように距離をとって取り囲み、瞬くようにセンサー・アイを明滅させる。四方から集中する無機質な視線を毅然と睨み返し、スバルが吼えた。

「遠い背中を追い続け、天の向こうをあたしは目指す! 気合いの炎を心に灯し、魔法の拳で明日を掴む!!」

 おもむろに掲げた右手で天井の大穴を、否、その向こうに広がる天空を指さし、まるで演劇の台詞のような芝居がかった口調でスバルは叫ぶ。

「機動六課スターズ隊03、なのはさんの一番弟子、スバル・ナカジマ! 鉄屑ども、あたしを誰だと思ってる!!」

 威勢よく啖呵を切ったスバルの胸元で、何かが煌めいた。ドリルだった。ネックレスのように首から架けたチェーンの先端で、金色の小さなドリルが光っているのだ。
 ―――集中砲火を喰らった。
 全方位から容赦なく降り注ぐレーザー光線群が直撃し、スバルの身体が大きく吹っ飛ぶ。バリアジャケットに護られ怪我やダメージはないが、痛いものは痛い。

「こ、んのぉ、馬鹿スバルがぁっ!!」

 醜態を晒す相棒にティアナが憤慨したように怒号を上げた。デバイスを二挺拳銃(トゥーハンド)形態に切り替え、自らも車両内に飛び込む。
 二挺拳銃を構え、多重弾殻魔力弾を連続発射。マズル・ラッシュを轟かせながら車両内のガジェットを一掃する。
 そのとき、撃ち漏らしたガジェットⅠ型が触手をうねらせ、体当たりするようにティアナへ跳びかかった。死角からの完全な不意討ち、迎撃が間に合わない。
 しかし次の瞬間、風切り音とともにガジェットの楕円形のボディが大きくひしゃげ、まるで粘土細工のように真ん中から真っ二つに捩じ切られた。
 爆砕音とともに立ち籠める黒煙の奥から人影がティアナの前に姿を現す。スバルだった。拳を振り抜いた体勢で制止している。

「危なかったね。ティア」

 構えを解き、そう言って無邪気に笑いかけるスバルに、ティアナからの返事は天を突くかの如き怒号だった。

「スバル! アンタ馬鹿ぁ!? 呑気に格好つけてる隙にフルボッコなんて、お馬鹿にも程があるわよこの馬鹿!!」
「三連発で馬鹿って言われた!?」
「四連発よ! そして今から五回目を言ってやろわ。このミッションは一分一秒を争うんだから、へらへら笑ってないでとっとと進め馬鹿スバル!!」

 怒鳴るティアナに追い立てられるように、スバルは慌てて走り始めた。列車の停止をリインフォースⅡに頼み、二人はガジェットを蹴散らしながら車両の中央を目指す。
 そして辿り着いた。十三両編成である輸送列車の中央部、重要貨物室。ロストロギアが保管される、今回のミッションの目標地点へ。
 扉を攻撃する敵、Ⅲ型と呼ばれる大型のガジェットを撃破し、二人は重要貨物室の中に足を踏み入れた。ライトニング分隊の二人は、エリオとキャロまだ到着していなかった。
 照明が落とされた、薄暗い広間のような空間の殆どを占領するように、巨大な影が横たわっている。周囲の薄闇に二人の目が慣れるにつれ、その全容が少しずつ見えてきた。
 スバルとティアナは絶句した。巨大な鋼鉄の巨人が二人の前に鎮座していた。
 人の形を忠実に模したシルエットでありながら、その姿はまさに異形。まず第一に、その巨人には顔が二つあった。
 左右の側面から牛のような角を生やした頭部の凛々しい顔。そして胴体部分に模られた鬼神のような厳つい第二の顔。まるで顔の化け物である。

 だが何よりもスバルとティアナを驚愕せしめたのは、目の前の存在が巨大な人型の機械兵器であるという事実そのものだった。
 これまで確認されてきたものとは随分と意匠が異なるが、間違いない。これは、この機体は―――!

「「―――ガンメン!」」

 呆然としたような二人の声が、重要貨物室に響き渡った。




 ―――つづく

382(旧)天元突破リリカルなのはSpiral ◆Yf6j8wsEUw:2009/10/16(金) 23:24:28 ID:F2bsrjSQ
以上、投下完了です。
リリカルなのはクロススレ住人の皆様。おひさしぶりです、はじめまして。
去年のちょうど今頃までこの板でお世話になっていた、「天元突破リリカルなのはSpiral」作者です。
今回からトリップをつけることにしました。

本ssは拙作「リリカルなのはSpiral」のリメイクssです。
ただし登場人物や主役機、敵勢力などの諸設定は旧作と大きく異なり、実質的には全くの別作品となります。
諸事情から「リリカルなのはSpiral」の執筆に詰んでしまい、色々と悩んだ結果、この度「グレンラガンStrikerS」という形で再スタートさせて頂くことにしました。
また、リメイク作品の執筆開始にあたり、申し訳ありませんが「リリカルなのはSpiral」の更新は停止させて頂きます。
今度こそ完結を目指して鋭意執筆させて頂くので、またよろしくお願いします。
――――――――――
ここまで代理をお願いします。

383高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:39:56 ID:dgveZ8nE
こんばんわです。
凄くお久し振りです。
ラクロアの新作を書いたのですが、規制で投下できませんでしたorz
代理投下をお願いいたします。

384高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:42:55 ID:dgveZ8nE
                    はるか昔・・・・・・・とある次元世界

其処は戦場だった、多くの巨大な戦艦『戦船』が飛び交い、休むことなく光学兵器や実弾を目標に向かって放つ。
それは目標を、目標ではない別の物を、目標を中心とした一帯を破壊し、焼き尽くし、粉々に吹き飛ばす。

数多の兵士が相手を殺すために引き金を引き、獲物を振り下ろす、堪えることのない様々な声、叫び、苦しみ、歓喜。
彼らが敵を殺すのは理由がある、友のため、自身の世界のため、恋人のため、家族のため、快楽を得るため、金のため、忠誠を誓う王のため、理由は様々。

そしてそれらを束ねるそれぞれの王自身も、己の力を示すため、世界を征服するために力を振るう。

『一騎当千』の言葉を証明するかの様に、圧倒的な力で数多の軍勢を蹴散らす王

自身に戦闘力は無いものの、高い指揮能力を駆使し、兵を有利に導く王

友軍、敵軍問わず、自らの能力でそれらの屍を自らの駒として戦わせる王

そして、ひときわ巨大な戦船に乗り、その圧倒的な破壊力で敵を蹂躙する王、

それ以外にも、多くの王がその力を振るう。その戦いは果てしなく・・・そして数多の次元世界を巻き込んでも尚続き、終わりは無いかに見えた。


                        『・・・・愚かだ・・・・』


その惨状を空から見つめている者がいた、そして、見下ろしている大地や空での惨状を見て自然と呟く。
皆がただ戦い殺しあうだけの世界、誰もその行為を疑問には思わず当然の事だと思っている、それを愚かと言わずになんと言うか。

そもそも、『彼』はこの世界の住人ではない。普段はある世界を中心とし、数多の世界を見守っているだけの存在、
もしもそれらの世界に危機が訪れた場合、その原因を排除するのが彼の主な仕事であった。
彼が此処に来た発端は、見守っていたある世界が『次元断層』を引き起こし、崩壊しかけたことが始まりだった。
幸い直ぐに手を打ち、その世界の崩壊を『軽い地震』程度で防ぐことは出来たが、其処は魔法は無論、文化・科学レベルも平均より下の基準、『次元断層』などが起こる事など無かった。
無論、不運や様々な要因が重なり、『次元断層』などの大災害が起こることもあるか、今回のは明らかな人為的な行為。
早速自らの仕事をこなす為、彼は原因であろう世界へと赴いた。
其処で彼が見たのは戦場、何かを救うためでもなければ、何かを守るためでもないただの戦い。
舞台となっている世界は無論、他次元世界の被害すら省みず、己の勝利のみに執着する王達、そしてその王の行為に何の疑問も抱かない兵
その光栄を見た彼は、ただ呆れるだけであった・・・・・・その時である。

                  『未確認物体・・・・・排除』

幾つのも閃光が突如彼を襲う。それは俗に言う『ビーム』という光学兵器であり、触れた者を一瞬で蒸発させる光。
彼に死を齎すために、その光が一直線に彼に向かう・・・・・そして直撃
激しい爆音と光の花火が空を明るく照らすが、誰も気にする事はしない、そのような光景は此処では日常と化しているから。
    
            『直撃・・・・確認・・・・・逃走形勢・・・無し』

上半身は人間の形をし、、下半身は飛行用のブースターのみという形態の機動兵器は、両腕のビーム発射口を閉じ腕を下ろす。

385高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:44:00 ID:dgveZ8nE
続けて、後方から銃や剣の様な物を持って近づく人間に状況を報告し、同時に対象の生死の確認を行おうとするが、銃を形をし武器『デバイス』を持った男に止められる。
「もういい、死体が落ちない以上、蒸発した事に間違いはない」
『・・・了解・・・周囲の索敵を開始します・・・・』
「それでいい・・・・戦船の装甲にも風穴を開けるビームだ、障壁を張った形跡が無い以上、間違いなく蒸発だ。
あと死体ではない、形状から何かしらの機動兵器だ、残骸だろ?」
剣の形をしたデバイスを持つ男が、仲間であろう男の間違いを指摘したあと、デバイスにカートリッジを補充し始める。
未だに爆煙が立ち込める空を見ながら、銃のデバイスを持つ男もカートリッジの補充を行う。時間にして数十秒、補充が終った二人はこの場を離れるため後ろを向く。

既に破壊した対象に対する興味を彼らは失った。敵対する輩は沢山いるのだ、未確認であるため興味はあったが壊れてしまえばそれまで、一々付き合ってなどいられない。
本当なら警告などを呼びかけるのだが、相手は自分の部隊に無い機動兵器、攻撃理由はそれだけで十分。
此処では味方以外はすべて敵、機動兵器は無論、人間でも降伏しようが、命乞いをしようが関係ない、敵対する者は殺すか殺されるか、ただそれだけ。
戦場でもある最低限のルールも、此処では意味がいない・・・・当然といえば当然だ、関係の無い次元世界を幾つも巻き込んでいる時点で、そんな価値観は既に無くなっている。
突如現われた敵の機動兵器に驚きはしたか結果は直ぐに破壊、大したことは無かった。拍子抜けした気分に犯されながらも、二人はその場を後にしようとした・・・だが


                『・・・警告、対象はせいx・・・』

                     「ん?どうし」


索敵を終えようとした機動兵器は突如発生したエネルギーを感知、即座にその場を去ろうとする二人に警告をする。
その内の一人は即座に気付き、疑問の言葉を呟きながら振り向く

                彼が見たのは黄金色の光、そして迫り来る光

もし喋る余裕があったのなら、彼はこう呟いていただろう・・・・「綺麗だ」と。だかその言葉は無論、彼は疑問の言葉を話しきる事すら出来なかった。
否、自分が死んだことすら理解できなかったかもしれない。
迫りくる光は機動兵器を消し、二人の騎士を消す・・・・・・・否、蒸発させる。だが、それだけでは済まなかった。
放たれた光は消える事無く伸び続ける、そして幾つもの機動兵器と兵を飲み込みながら一つの戦船に直撃、先ほどまで空中要塞の一つであった戦船を大破させた。
戦舟の残骸が煙と炎に包まれながら大地へと落下する中、幾つもの機動兵器と兵、一隻の戦船を無へと返した『彼』が爆煙の中から右手を突き出した状態で無傷で姿を現した。
『やはり・・・・・この世界の・・・・・人間は・・・・・・』
優れた英知を持っていても、結局は互いを滅ぼす事にしか使わない愚か者の集まり。
自分が見守る世界にも人間はいるが、これほどまで愚かではない。否、此処にいるのは人間ではないのかもしれない、ただ戦うだけだの愚かな生き物・・・ならやる事は一つ
今、自分は奴と・・・・・『古代神バロックガン』と同じことをしようとしている。だが、今なら奴の考えもわかる気がする。
すべての人間を消滅させようとした奴の気持ちも分かる気がする

無論、すべての人間が愚かではない。だが、この者達は・・・・この世界の人間は別だ、他者を巻き込み、己の勝利しか考えない愚かな生き物。
このまま奴らを野放しにしても、ただ殺し合い全滅、もしくは誰かが勝利するだけで終る。だかその結果が齎される頃には、一体幾つの命が、世界が犠牲になるだろうか。
なら自分がやる事は一つ、腐った部分は正常な部分が腐る前に取り除くこと。

ゆっくりと腰に下げている鞘から剣を抜く。そして自身が持つ赤き翼を広げ、力を一気に開放した。
空気が振動し、何かを叩いたような轟音が響き渡る、それだけで何時までも続くと思われた戦いはピタリと止まった。

                        だがそれも一瞬

機動兵器から放たれるビームなどの光学兵器、ミサイル、巨砲などの実弾兵器、騎士や魔術師が放つ白・黒・赤様々な色が入り乱れる攻撃魔法、
それらが下方、そして左右から一斉に彼目掛けて放たれた。

386高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:44:53 ID:dgveZ8nE
警告も無し、下手をすれば何なのかを確かめずに行われた一斉砲撃、だが攻撃を放った彼らからして見れは当然の行為だった。
こんな彼らでもすべてにおいて共通する事があった、それは『味方以外は排除する』という事。
先ほどの攻撃対象も、自分達の所属する舞台の兵器ではないから排除する、ただそれだけ。

それに目標のあの力、下手をすれば自分達の王に匹敵する力を兼ね備えている、この一斉攻撃でも生ぬるいかもしれない。
だが幸運な事に、他の軍勢も同じ考えを持っていたのだろう、先ほどの一斉攻撃は全員ではないが、結果的にすべての勢力が加わっている、目標の排除は間違いない。
攻撃を放ったほぼ全員がこのような考えを持っていた、中には上手く敵が利用でき、障害物を排除できた事に嫌らしくニヤつく輩もいる。

もしこの中に少しでも冷静さを取り戻している人物がいたら気付いていたかもしれない・・・否、一部の王は気付いていた。
兵や側近は『敵側の機動兵器を倒した』と言っている、確かにあれは自分達の保有する兵ではない、そうなると自分達の敵であることは間違いない。
ならなぜ、すべての勢力が一斉に攻撃をしかけたのだろうか?もし何処かの王が所有する兵であったのなら、攻撃をしない、もしくは阻止する筈だ。それを行った奴がいないと言う事は・・・・・
その王の予感は的中していた・・・・だが、すべてが遅すぎた。


突如爆煙の中から閃光が放たれる。それは軸線上にいる兵を飲み込みながら地上に落下、周囲の兵を多数巻き込み大爆発を起こす、
突然の出来事に光に飲み込まれた兵士、そして爆心地にいた兵士は悲鳴をあげる事も、防ぐ事も出来無かった・・・・否、自身に何が起きたのか理解出来ずに死を迎えた。
爆心地から広がる光に包まれた兵士は、彼らとは違い、恐怖の叫び、必死の逃亡、多重障壁の展開など、己のすべき行為をすることが出来たが全てが無駄に終わり、光に飲まれた。

「・・・な・・・・なんだよ・・・・」
皆の言葉を代弁するかのように、一人の兵が上空の爆煙を見つめながら裏返った声で呟く、デバイスを持つ手は震え、歯も恐怖からかカチカチと音を立てる。
ほぼ全軍の一斉攻撃が効かない、それ所か先ほどより強大な力を感じる。そして一瞬で敵や味方の兵や機動兵器が消失。
此処で初めて彼は・・・否、彼らは後悔した・・・・・『してはいけない事をした』と、そして恐怖した、圧倒的な力の前に。

一斉砲撃の時に発生した爆煙が晴れる。其処にいたのは傷一つない彼・・・・・否『光の騎士』
彼は周囲を見下すかのように見つめた後、一度溜息をつく。そして抜き取った剣を構えると同時に、小さく呟いた。


                 『愚か者共が』


その力に恐怖し、戦意を喪失した者、勇敢にもその力に抗おうとし、消された者。命令しか聞けない機動兵器は蒸発し、形が残っても鉄屑となって地上にばら撒かれる。
一騎当千を誇っていた王はたいした抵抗も出来ずに斬り捨てられ消滅。
高い指揮能力を駆使し、兵を導いていた王は、兵と自らが乗る戦船諸共大地へと落下し爆散。
屍を自らの駒として戦わせる王は全ての兵を消され戦力を失う。
そして、一際巨大な戦船『ゆりかご』に乗った王は、自ら戦いを挑むも敗北し、ゆりかごと共に地上へと伏した。

その後、永遠に続くかと思われたベルカの戦はその日をもって終焉を迎えた。理由は簡単、戦える者がいなくなったからだ。
生き残った殆どの王が、兵が、光の騎士の力の前に戦意を失った。
その後、生き残った兵や王はそれぞれの道を歩み始めた、力を捨てた者、自ら眠りに入った者、ただの荒地となったベルカの地を捨て、新たな世界に旅立った者。
そして突如現われ戦いを終焉に導いた光の騎士を神と崇める者。

正直彼にはどうでも良い事だった、自分は自分の仕事を行っただけ、崇められる事などをした憶えは無い。
殲滅させなかったのも、戦う戦意を失った事や、愚かさに気付いたから生かしているだけ、決して下僕にするわけでも、奴隷にするわけでもない。
『もし奴なら・・・・・この者達を皆殺しにしていただろうか・・・・』
次元世界を守るのなら、バロックガンの考えの様に、様に此処にいる全員を皆殺しにするのが一番だろう。だか『彼』には出来なかった・・・・人間が好きだからだ。

387高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:45:26 ID:dgveZ8nE
どんなに愚かな行為をいていても、反省したり、戦意を喪失した人間を殺すことなど彼には出来ない。むしろ二度と同じ過ちを犯して欲しくないと心から願う。
無論、そのように相手の心を弄る事など彼には簡単に出来る。だがそれではただの洗脳だ、生き残ったこの者達の考え出した結果ではない。
彼は人間という種族が好きであると同時に、その可能性にもかけている。再び争いを起こすか、手を取り、平和な時を生きるか。
『賭けだな・・・・所詮神になろうとも、出来ることは限られる・・・・か』

もう、この世界に用は無いと結論付けた彼は跪く王達を一瞥、そして後ろを向き、ゆっくりと天に向かって上昇する。
「お・・・お待ちを!!」
だが、跪く群集の中心にいた王、『聖王』が彼を引き止めた。
彼女は彼にすべての民を治める人物、『王』になって欲しいと願った、今のベルカには指導者が必要、それはこの戦を瞬く間に収めた『彼』しかないと。
だがその聖王の願いに一言も答えず、彼は天に上がる。だが、何かを思いついたのか、ゆっくりと振り向き聖王を真っ直ぐに見つめる、そして彼女にある助言をした。
その言葉を聞いた聖王は深々と頭を下げる事で同意の意思を示す、そして彼女に続くように、周囲の兵が、民が、王が彼に頭を垂れた。

その後、ベルカの王の一人『聖王』は戦後のベルカを見事収めた。死後もその功績から長く進行の対象となり、後の『聖王教会』の誕生に繋がる。
そして同時に、この戦を終焉に導いた彼も聖王同様に信仰の対象となった。


                 その騎士の名は十二神の1人『黄金神スペリオルドラゴン』



             魔法少女リリカルなのはStrikers 外伝 光の騎士 第一話


ナイトガンダムがラクロアに帰還してから二年後

ラクロア城・王座の間


スダ・ドアカ・ワールドに存在する数多の王国の内の一つ『ラクロア王国』
二年前に起きた巨人事件の爪跡は既に無くなり、今では以前よりも豊かさと人々の活気に恵まれてる。
その中心に聳え立つラクロア王国のシンボルともいえる城『ラクロア城』その中に存在する王座の間で今、ある儀式が執り行われていた。
王座の間にいるのは5人、戦士ガンキャノンと僧侶ガンタンク、そしてラクロア王国の姫であるフラウ姫、
王座の間に唯一ある椅子に座るのは彼女の父であり、この国の王であるレビル王、
そして、王座の間の入り口から王が座る椅子を繋ぐ赤い絨毯の中心で跪き、真っ直ぐに王を見つめる白き甲冑に身を包んだ一人のガンダム族

「伝説の名を持つ騎士、ガンダムよ・・・その方に、すべての騎士の上に立つ者としてバーサルナイトの照合を与える」

『バーサルナイト』それはスダ・ドアカワールドの騎士に贈られる、最高の名誉ある称号。
『騎士の中の騎士』『最高の騎士』を指し、その照合を得た騎士は、すべての騎士の憧れ、そして目指す存在へとなる。
ちなみにバーサルの称号授与決定権は、歴代のラクロア王、同じバーサルの称号を持つ騎士、そして『神』にある

純白の甲冑に身を包んだガンダムは、一度深々と頭を下げた後、王の宣言に答えた。
「・・・・名前以外、記憶を持たぬ私に・・・・どこの者かも分からぬこの身に、もったいなきご好意の数々・・・・・
その上、バーサルナイトの称号まで・・・・・」

388高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:46:24 ID:dgveZ8nE
ここに来ても尚、ガンダムはバーサルの称号を受取ってよいのか躊躇ってしまう。
自分はこの国の民ではない、名も分からぬMS族の自分にこの様な栄誉ある称号をいただいてよいのかと?
だがレビル王も決して形だけの無能な王ではない、ガンダムの表情から、彼が何を思っているのか直ぐに理解する。

「なに、その方の修行の賜物じゃ。そして、どこの者であろうと国を救い、国のために尽くしてくれたそなたの行動に偽りは無い。
ガンダムよ、そなたがこの国の者でなかろうと、何処の誰てあろうと関係は無い。そなたはラクロアの・・・否、
スダ・ドアカ・ワールドの勇者となるものじゃ・・・・この称号、受けてもらわねば困る」

『バーサルナイト』の称号を断ろうとした自分を説得するかの様に語りかけるレビル王。
その言葉は王の本心だという事は直ぐに理解できた、だからこそ、ガンダムは内心で湧き上がる感謝と嬉しさを吐き出すかの様に感謝の言葉を述べた。

「ははっ!!つつんで、お受けいたします!!!」



 ラクロア王国 城下町

「改めておめでとう、騎士・・・いや、今はバーサルナイト様かな?」
「様つけはよしてくれガンキャノン、どうにも落ち着かないよ」
キャノンの冗談をガンダムは軽く笑って返す。キャノン本人もその気は無いのだろう、軽く笑いながら先ほど出店で購入した串焼きを頬張りはじめた。
今二人が歩いているのはラクロア王国城下町の市場通り、まるで祭りでも行われているかの様な活気が辺りを支配し、市場を、そして国を自然と盛り上げる。
その光景を笑顔で見ながら、ガンダムはつい2年前までは此処が瓦礫の山だった事を思い出した。

自分があの世界から帰還しラクロアに戻った時、そこには繁栄していた王国は無く、瓦礫とけが人、放心したレビル王だけ残されていた。
正にただの荒地となっていたラクロア王国、だがそれも昔の話、僅か2年という歳月で此処まで回復し、以前の活気を取り戻していた。
品を値切る人、世間話をする人、屋台の出し物にはしゃぐ子供達、ふとその子供達を見た瞬間、彼はあの世界の事を思い出す。
「・・・・そうか、もう二年になるのだな・・・・」

必ず戻ると約束してから今年で二年目、時期が過ぎるのは本当に早いと思う。
彼女達は自分を待っていてくれるだろうか?元気でいるだろうか?彼女達の事を考えると、いつも頭に過ぎる思い。

「しかしあの瓦礫だらけだったラクロアも見違えたもんだ・・・・・今では昔以上の大国になってる・・・・あっ食うか?鳥モモの塩焼き」
「いや、遠慮しておくよ。だけどあの荒地を此処まで再建させる・・・・この国の民は本当に強いとい思う。キャノン、君もそう思うだろ」
「ングッ!・・・・其れは同意だ。俺達は戦うとは出来るが、国を潤したり活気づかせることは出来ない。それを行ってくれる民がいるからこそ、
こうして楽しく平和を満喫でき、上手い串焼きを食うことが出来る。俺達は敵から民を、民は俺達に平和で楽しい日常を、それぞれ守り守られて暮らしている・・・だろ?」
慌てて串焼きを喉に流し込みながらも、キャノンは自分なりの考えを述べた。
それはガンダムが思っていることと同じ、守ろうとする人達に助けられてるという事実、それはあの世界でも経験した事。
守ろうとした二人の少女に助けられた、今でもあの光景が目に浮かぶ。
「(・・・ふふっ、未練だな、何かとあの世界の皆に繋げてしまう・・・・・恋しいのだな)」

二人が向かう先は鍛冶屋テムの家である。
今ガンダムが装着している鎧『バーサルアーマー』は数ヶ月、ラクロアを襲ったモンスター『ファントムサザビー』によって破壊された霞の鎧と力の盾を元に作れている。
本来修復不可能といわれている神器を新たな鎧として作り直したのが、ラクロアきっての名鍛冶屋(本人曰く)鍛冶屋のテムである。
本当であったら直ぐにでもお礼を良いに伺いたかったのだが、鎧を貰った後もモンスターやジオン騎士の襲来など色々ゴタゴタがあり、満足にお礼を言えなかった為、こうして彼の家へと赴いていた。
「だけどなぁ、あの飲んだくれに酒なんて、しかも目玉が飛び出るほどの名酒・・・・・・考え直せ、ガンダム!感謝の気持ちは言葉で十分、むしろ友である俺にくれ」
途中から不気味なほどに真面目に尋ねるキャノンを乾いた笑いと共に軽く流しがら、さりげなくテムに渡す名酒を隠す。

389高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:47:20 ID:dgveZ8nE
その動作に、自分の思いは叶わないと確信したのだろう、わざとらしく舌打ちをした後、交渉決裂の悔しさをぶつけるかの様に残った串焼きにかぶり付いた。
「・・・・・まぁ、酒に関しては後でテムの所で頂くとして諦めよう」
「キャノン・・・意地汚いぞ」
「まぁ言うな、何だかんだで俺もあの飲んだくれのおっさんの腕は認めてる。その酒を丸々飲む権利が十分あることは認めるしかない・・・・ただ俺は毒見をするだけだ」
「・・・・・後で奢るからやめてくれ。まぁテム殿の腕は確かに見事なものだよ、あの神器を新たな鎧として作り直してくれるのだから」
それにはガンダムも心から同意する。
復元不可能なほどに焼け焦げ、砕け散った力の盾と霞の鎧を新たな鎧として作り直した程の腕前、
並の職人には到底出来ない行為だ。

「だがな、今回に限ってはそうでもないぞ。これはテムのおっさんから直接聞いたんだが、
さすがに今回の仕事は行き詰ったらしい、まぁ獲物が三種の神器だからな、だからあの魔道師に助けを借りたそうだ」
「あの魔道師・・・・それは一体?」
キャノンの言う魔道師に対し、心当たりが全く無いガンダムは問いただす。
そんな彼の態度にキャノンは一瞬考える様に沈黙、だが直ぐに納得した様に『ああ』と声をあげながら話し出した。
「そうか、お前は巨人事件後も修行やジオン族討伐などで周囲の村へ行く事が多かったからな、知らないのも無理は無い。俺達が巨人討伐のためにラクロアを離れた後
森でタンクが保護した親子だ。発見当時、親がやたら薄着だったり、子供が裸でやたら大きなガラス容器に入っているという不可思議な状況だったが、
魔道師は瀕死、子供は魂が抜けた状態に酷似した状況だったらしい。だか今では二人とも回復して使い魔の女性と暮らしている・・・・ああ、丁度良い、見て見ろよ」

立ち止まり、キャノンはある方向へと指を刺す。ガンダムは自然と彼が指した方向を見るとそこにあったのは工事現場。
人やMS族が汗だくになりながら、それぞれの仕事を行っている風景、その中に溶け込むように一体の機械人形が動いていた。
人間や並みのMS族では持てない資材を軽々持ち上げる機械、それはつい最近までラクロアには無かった風景。

「あの機械もあの魔道師の作品さ、確か『傀儡兵』というらしい、ラクロアの急速な復興はこいつらのおかげでもあるのさ、
あんな高度な技術を持っている上に魔術師の腕もタンク以上、おっさんが協力を依頼するのも納得がいく」
腕を組み、うんうんと頷きながら納得するキャノンをよそに、工事作業を行う『傀儡兵』をガンダムはただ呆然と見ていた。
当然である、形は多少違えどあの機械は自分はよく知っている。あの世界で敵として表れ、何体も破壊したのだから。
それにキャノンの話からして、この技術を齎したという魔道師にも不審な点がある、もしかしたらあの世界で自分が言われた『次元漂流者』なのかも知れない。
「ん?おーい、何ぼっとしてるんだー?」
キャノンの声で現実に引き戻される、いつの間にか考えることの集中してしまったのだろう。
だから気が付かなかった、自分が今立っているのは店の入り口で

                「ありがと〜!おまけしてくれて〜!!」

其処から嬉しそうに出てくる少女の存在に


                              ドン

                             「ん?」
                          
                            「ふにゃ!?」

当然二人は見事にぶつかったが、尻餅をついたのは少女の方、ガンダムは驚きはしたものの直ぐに少女の方へと向き、尻餅をついた少女を起こすべく手を差し伸べるが、
「ああ、ごめんね、だ・・・・い・・・・・」
ガンダムは言葉を出す事ができなかった。手を差し伸べた状態で固まり、まるで幽霊を見るかのような顔で少女を見る。
思考が追いつかない、自分は何を見ているのだろう・・・・・・否、それよりなぜ『彼女』が此処にいるのだろう。

390高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:48:03 ID:dgveZ8nE
「・・・いたたた・・・ごめんなさい、前を見てなくって・・・・」
お尻を摩りながら少女は謝る、そして顔を上げ、自分がぶつかった人物をはじめて見た。
この顔には見覚えがある・・・・・否、この国に住んでいる住人で彼を知らない方がおかしい、それ程の有名人。
「(うわ〜、初めて見た、確かガンダムさんって言うんだよね)」
話などでは聞いていたが、こうして生で見るのは初めて。確かに他のMS族とは違うし、とても強そうに見える。
自分と同じ位の男の子も「おおきくなったらガンダムみたいな騎士になるんだ!!」と胸を張って自慢していたが、それも今では分かる気がする。

とりあえず、手を差し伸べてくれた事にお礼を言った後、その手を取ろうとするが、どうにも様子がおかしい。
自分の顔を見た瞬間、硬直したかの様に固まり、まるで幽霊を見るかのような瞳で自分を見つめている。
もしかしたらぶつかった事に怒っているのだろうか、そう思い咄嗟にもう一度謝ろうとしようとした瞬間

           「・・・フェイト・・・・・フェイトじゃないか!どうして君が!!」

人目も憚らないガンダムの大声によって遮られた。

「あっ!?」
自分でも何をやっているのだろうと思う、転んだ少女を助ける事もせずに大声を出すなんて。
確かに目の前で呆気に取られている少女はフェイト・T・ハラオウンに良く似ている・・・・・・否、瓜二つと言っても良い。
だが彼女が此処にいることなどありえない、冷静に考えれば分かる事だ。それなのに自分は何をしているのだろう。
とりあえずは呆然としている少女を起こし、いきなり大声を出した事について謝るのが今第一にする事、だが
「ごめんね、いきなり大声を(なんで・・・・・」
途中で言葉を遮られる、その声は先ほどの無邪気な声ではなく、歳相応とは思えない冷静な声。
そして飛ぶように起き上がると、抱きつく様にガンダムに詰め寄った。
「どうして!どうして知ってるの!!あった事があるの!!」
突如顔色を変え、言い寄る少女にどうしていいのか分からず言葉を詰まらせてしまう。
何故そのような事を聞くのだろうか?なぜこの少女はフェイトの事を知っているのだろうか?
こちらも色々と聞きたい事はあるが、今は彼女を落ち着かせることが最優先。だが、目に見えて必死な彼女は全く聞く耳を持とうとしない。
そんな状況を見かねたキャノンが、二人の間に割って入ろうとしたその時
「どうしたのですかアリシア?そんな大声を出して!?」
聞き覚えのある声に名前を呼ばれた少女『アリシア』はようやく我に返り、後ろを向く。
其処には両腕に買い物袋を抱えた薄茶色の髪の若い女性が不思議そうに二人を見つめ立っていた。

突然のアリシアの大声に驚き、素早く買ったものを袋に入れ外に出た女性『リニス』が見たのは、ガンダムに詰め寄るアリシアの姿だった。
一瞬何事かと思ったが、困惑しているガンダムの表情を見てある程度は理解できた。
アリシアは好奇心が旺盛な子供だ、フェイトと違い、アルフと同じ位活発な元気な少女、
店内や市場の賑わいから、店の中では何を言っているのかは聞き取れなかったが、おそらくこの国で一番の有名人である騎士ガンダムに色々を我侭を、
それこそ『一緒に遊んで』『色々お話を聞かせて』とせがんでいるに違いない。
「(やれやれ・・・・・困ったものです)」
内心でつぶやきながらも、行動力旺盛なアリシアの姿に自然と顔から笑みがこぼれる。
とにかく先ずは困惑している騎士ガンダムを助けるのが優先だろう、
もしこの後、時間があるのなら家に招待するのも良い、自分の主も快く迎えてくれるだろう。
自分の中で今後の行動をある程度固めたリニスは、早速二人の間に割って入ろうとする。だが

              「リニス!!ガンダムさん、私を見てフェイトって言った!!フェイトの事知ってるんだよ!!!」

数秒後、ガンダムに詰め寄る人が一人増えた。

391高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:48:39 ID:dgveZ8nE
 テスタロッサ邸

「す・・・すみません・・・・取り乱してしまって・・・・」
「いえ、お気になさらないでください」
その後、キャノンの介入といち早く冷静さを取り戻したリニスによってその場はどうにか収まる事ができた、
だがアリシアは無論、リニスも説明を求める視線でガンダムを見つめる。
そんな二人の気持ちに答えるかの様に、ガンダムはフェイトの事について話す事を申し出た。
彼女達が説明を求めている事、そして何故ラクロアにいる彼女達がフェイトの事を知っているのか、自分自身も知りたかったからだ。

キャノンに説明をした後、ガンダムは二人に連れられ、一軒の家に招かれる。
早速、『アリシア』という少女からフェイトについて色々聞かれたが、ガンダムは知っていることはすべて話した。
元気で暮らしている事、心強い仲間に囲まれている事、持てる力で皆を助けている事。
彼の回答にとても満足したのか、アリシアは終始ご機嫌だった。だが、最後の質問の時には、何かに恐れるように俯いた後、躊躇するかのように声を絞り出しながら尋ねた。

                  『フェイトやアルフは私を恨んでいないのか』

その質問の意味が正直理解できなかった。だが、フェイトが誰かを憎んだりしている事など無かったし、
そんな素振も見せたことは無い、むしろ他者を恨むとう行為が出来るのかも怪しい。
自己の判断から結論を言うのはどうかと思ったが、彼女の正確や仲間達を思う心を信じ結論を出した、「彼女は誰も恨んでなんかいないよ」と。
その言葉にとても安心したのだろう、アリシアは心からほっとすると椅子に力なく座った。

「そうですか、貴方がフェイトとアルフの師、そしてバルディッシュの製作者なのですね」
「ええ、でも安心しました。あの子達が元気に生きていて、バルディッシュがあの子の力になっていて」
その後、眠そうにするアリシアを寝室まで運んだリニスは、ガンダムとフェイトについての話で盛り上がる。
リニスもフェイトの事を忘れた事は無かったが、もう会えることは無いだろうと諦めていた。
だが、今自分は最近の彼女と行動を共にした騎士から話を聞くことが出来ている。
新たに命を与えられた時、主から今までの経緯を聞いたときは不安で仕方が無かったが、今ではアリシア同様途轍もない安心感に包まれてる気分だった。

話が一区切りつき、リニスがお茶のお代わりを持ってこようとした時、ドアが開く音と共に一人の長い黒髪の妙齢な女性が入ってきた。
「ああ、プレシア、お帰りなさい」
「ただいま、リニス・・・・あら、貴方は・・・・バーサルナイト」
笑顔でリニスに答えたのは、この家の主であり、リニスのマスターであり、アリシアの母親である女性『プレシア・テスタロッサ』
彼女はリニスと席をはさんで座っている意外な客人に少し驚いた表情になる。
そんな彼女をよそに、ガンダムは椅子から立ち上がるとプレシアの目の前で跪き、頭を垂れた。
「はい、申し送れました。私、ラクロア騎士団所属、バーサルナイトガンダムと申します。プレシア殿、この鎧の製作に助力をして頂き、誠にありがとうございました」
「顔をあげなさい。いいのよ、そんなに畏まらなくても。私は私が出来ることをやっただけなのだから、でもその言葉は受取って解くわ。あと、ついでになってしまうけど
騎士ガンダム、バーサルナイトの称号授与おめでとう。貴方に相応しい称号よ」
バーサルナイトの称号を祝われた事に、ガンダムは再び頭をさせ、感謝の意を示す。
その時、今まで会話に口出ししなかったリニスが、真面目な顔でプレシアに近づき、ガンダムが此処に来た理由を話し始めた。
その内容に、プレシアは驚きを顔に隠さず表しガンダムを見つめる、そして直ぐに表情を隠すかの様に俯いた。
同じく立っているリニスには分からなかったが、跪いているガンダムにはその表情が見て取れた、
何かに懺悔すかの様な、後悔に満ちた表情に。


今はリニスも席を外し、リビングにはガンダムとプレシアだけになってから約5分、今まで続いた沈黙を最初に破ったのはプレシアだった。
「・・・・・私や・・・・・私達の事・・・・何か聞いている?」
「・・・詳しくは・・・・」
「・・・そう、なら話すわ・・・これは・・・償いきれない私の罪よ・・・・」

392高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:50:20 ID:dgveZ8nE
リニスから聞いたのは、彼が約2年ほど前、自分達がいた世界に行き、其処でフェイト達と行動を共にしていた事。
行動を共にしていた以上、知っている筈である。フェイトの出生、そしてジュエルシードを巡ったあの事件の事・・・・・そして自分がフェイトに行った仕打ちの事。

今思っても自分はとても残酷な事をしてきた、『最愛の娘を生き返らせるためなら何をしても許される』それを何の疑いもせずに抱いていた。
自らの使い魔を一度消滅させた、なんの躊躇も無く。
フェイトを失敗作と罵り、散々道具として利用した。そしてつるし上げ、彼女が素直な事をいい事に散々痛めつけた。
アルハザードへ行くために次元震を起し、何の関係も無い世界を滅ぼそうとした。
そして、最後まで自分を信じたフェイトの手を掴む事をしなかった・・・彼女を否定したまま。



アリシアの保存ポットと一緒に時空の歪に落ちた後、自分は意識を失った。否、自分の体のことは良く知っている、むしろ死んだだろうと思った。
だが気が付いたときには知らない部屋のベッドで寝かされていた、生き返ったアリシアと共に。
「アリ・・・シア・・・・!!?」
一瞬見間違えかと疑った。だが、アリシアの顔色はよく、規則正しく寝息を立てている。
これが意味する事は一つしかない、アリシアは生き返ったという事。
目覚めた途端、叶える為に必死だった願いが叶ったとこ、そして目覚めたばかりで頭が上手く働かないために、プレシアは軽い混乱に陥った。
その時である、ノックと共に彼女を保護したMS族、僧侶ガンタンクが入ってきたのは。

出された水をゆっくりと飲み、プレシアは自身を落ち着かせる。そしてある程度グラスの水を飲み干した事を確認したタンクは、一度断りを入れた後、
今までの経由を離し始めた。
3日ほど前、自分達が森で倒れていた事、アリシアは魂が抜けた状態、そして自分は瀕死の重傷だった事、そのため保護し、治療を行ったこと、
目覚めたばかりで頭が回らないだろうと思ったタンクが、簡潔にプレシアに説明をする。

『正直信じられない』これがプレシアの感想だった。自分の体は次元世界では最先端の技術を持つミッドチルダの医療技術でも治療は不可能だった。
実際自分でも可能な限り・・・・・それこそ、非合法な方法を使っても不可能だったので嫌でも理解できる。
だが今まで体を蝕んでいた苦痛、激しい痛みを伴う喘息も一切おこらない、あの見たことも無い種族の話が本当だという事だ。

そして生き返ったアリシア、彼は『魂が抜けた状態』と説明していたが、一科学者としてその意見を受け入れる事は出来なかった。
そもそも自分を含めた魔道師が使う魔法は一種の科学の延長、簡単な話、一部のロストロギアなどを除けば人類の英知である『化学』で説明が出来てしまう。
だが、『魂が抜けた状態』というのはプレシアから・・・否、ミッドチルダや加盟している次元世界に住む住人から見れば立派な『オカルト』である。
だが結果としてその『オカルト』により愛娘は生き返り、今は可愛らしく寝息を立てている。

こんな事が出来るとなると・・・・此処は自分が行こうとしたアルハザードではないのか?そもそも、今説明をしてくれている人物?も、科学者であるプレシアでさえ見たことが無い。
自然と備え付けの椅子に座っているタンクに質問をする『此処はアルハザードなのか』と、だが返ってきたのは『違う』という回答。
「此処はラクロア王国という国じゃ、『アルハザード』という国や街は聞いたことが無い・・・・それよりお前さん達は旅の者か?それにしては格好などが不思議じゃが」
その質問にどう答えていいのか考えようとするが、ふとその質問内容に疑問が生まれる。『なぜ彼は自分達の事を知らないのだろうか?』と。
「・・・ごめんなさい、悪いけど先に質問させてくれないかしら?」
「ああ、かまわんが」
「ありがとう、貴方、『時空管理局』『ミッドチルダ』この用語に心当たりは無い?」
「『時空管理局』に『ミッドチルダ』・・・・・すまんな、全く聞いたことが無い、何かの街の名前か?」
「・・・・いいえ、ありがとう・・・・」
これで確定いた、此処が管理局が一切関与していない未発見の世界だという事が。だが、タンクに質問する前に、既に大体は予想が出来ていた。
自分は管理外の世界を次元震で滅ぼそうとした、これは十分極刑に値し、次元世界レベルで指名手配されていてもおかしくは無い。
仮にこの世界が、管理局が接触はぜずにただ監視している世界だったとしても、自分の様な犯罪者を野放しにしておく筈が無い。
その事から、プレシアは本当の事をこの恩人に言っても理解はしてくれないだろうと結論付けた、だから嘘をつくことにした、『旅人である』と。

393高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:51:01 ID:dgveZ8nE
プレシアはガンダムに包み隠さず話した、この国に来た経由、自分が今まで何を、そしてフェイトに何をしたのかを。
フェイトに対する仕打ち、地球を滅ぼそうとした事を聞かされた時は、ガンダムも怒りを隠す事が出来ず、自然と拳を握り締めプレシアを睨みつける。
だが彼女の表情、心から自分の罪を悔いているその顔を見た瞬間、彼が抱いていた怒りも一瞬で収まった。
「・・・・・一つ、お聞かせ願いたい」
「何・・・かしら」
「今の貴方は過去の出来事をとても悔いている。正直、私も怒りを感じたが、貴方の表情を見てその怒りも薄れた。
だが、先ほどの話を聞く限り、貴方は自らの意思で悪行を行った、そんな人物が過去を悔いる事などしない・・・・何が貴方を変えたのですか?」
真っ直ぐ自分を見つめるガンダムにプレシアは数秒沈黙、そしてゆっくりと自分の手を頬に当てた。

                            パチッ!!!

アリシアが目覚めた時、最初に行ったのはプレシアに抱きつく事でもなければ、彼女の名前を呼ぶことでもない、力の限りプレシアの頬を叩くことだった。
呆然とするプレシアに対し、アリシアは涙を浮かべ、声を荒げながら、フェイトにした仕打ちや今までの事を尋ねた。
「アリシア・・・何故、何故貴方が知っているの?」
「・・・・・・見てたんだよ、あの研究所の事故の後、私、ずっとお母さんの事を・・・・とても悲しかった・・・・やめてって何度もいった
でも、私を救うためにしてくれたんだよね・・・・・・それでも、フェイトに・・・・アルフに・・・・リニスに・・・・どうしてあんな事を・・・」

プレシアもまた、ただの気まぐれで二人にあの様な仕打ちをしたわけではなかった。あの事故でアリシアも、リニスも死んでしまった。
だから当時の自分は『プロジェクト・フェイト』の技術でアリシアを、使い魔としてリニスを生き返らせようとした。
だが生き返ったのは自分が知るアリシアでもなければリニスでもない。

認めるわけにはいかなかった。今いる二人を認めたら、自分は本物のアリシアを、リニスを否定することになる。
むしろ怖かった、姿が同じでも彼女達は自分が知っている子達ではない、このまま自分の思い出の中で生きるアリシアとリニスに取って代わるのではないかと。
だから二人を邪険に扱った、道具としてしか使わなかった、そうする事で『フェイト=アリシア』『使い魔のリニス=山猫のリニス』という考えを壊せるから。

「・・・・だったら・・・どうして二人を・・・フェイトを『アリシア』としてじゃなくて、一人の女の子として、リニスを『山猫のリニス』としてじゃなくて
一匹の使い魔として接してあげられなかったの・・・・・おかしいよ・・・・そんなの・・・おか・・・しい・・・よ・・・」
涙で顔をくしゃくしゃに汚しながら、アリシアはプレシアに抱きつく。
未だに愛娘に打たれた事にショックを隠すことは出来ないが、自然とアリシアを抱きしめ、心の中で彼女の言葉を繰り返し呟く、そして自問する

         なぜ自分はフェイトやリニスを代わりではなく、一人の女の子、一匹の使い魔として見なかったのだろう

                     なぜアリシアは自分の胸の中で泣いているのだろう

                         なぜ自分は愛娘にぶたれたのだろう

知らずに自分の瞳からも涙が溢れる、今流れる涙は自分の愚かさから来るものか?愛娘を悲しませたという罪悪感からか?フェイト達に行った懺悔からか・・・・否、その全てだろう。
答えは簡単だった、自分の心の弱さ。自分の心が弱いからアリシアとリニスの死を認められず、フェイトと使い魔のリニスを人や使い魔として見ず、道具として扱った。
結局は自分が原因、何て愚かだったのだろう。
「・・・・・ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・」
今更認めても遅い、自分が心から謝罪する人達は此処にはいないのだから、それでも謝罪の言葉は何時までも部屋に響き渡った。

394高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:51:56 ID:dgveZ8nE
「では、あのリニス殿は?」
「あの時、契約解除と共に消滅させる筈だったわ、だけど当時の私はまだ何かに使えると思った、だから一種の仮死状態にしてデバイスに閉じ込めていたのよ」
「そうですか・・・・・・最後に一つだけ聞かせてください、今の貴方は、フェイトを愛していますか?」
その質問に、プレシアは体を震わせ言葉を詰まらせる。だが、その表情は今までの嫌悪を表した物ではない。
「・・・・・その質問には・・・答えられないわ・・・いえ、私にはその資格が無い、フェイトを愛する資格なんて(それ以上言うのはよして下さい」
静かだが、明らかに怒りが含まれているその声に、プレシアは言葉を詰まらせた。
声を発したガンダムの表情は明らかに怒っていた。その怒りは先ほど『資格が無い』と言おうとした自分にむけられてる事は直ぐにわかる。
「以前にも、似たような人と会いました。その方は自分の子供達の不安に気付いてあげる事が出来ずに自分自身を攻めていました。自分は『母親失格』とも言いました。
ですが、その考えは間違っている。確かに自分の過ちに気付き、苦しむ事もあるでしょう、ですがそれで自分の価値を、資格があるか無いかを決め付けるのはいけないことです!!
プレシア殿、貴方は今までの行為を恥じてる、そして反省している、そしてあの子に・・・・フェイトに対して申し訳なく思っている・・・・もう答えはでているのではないのですか?」
「けど、フェイトは・・・・・あの子は私の事を・・・・(そんな事は決してありませんよ」
あれだけ酷い事をしたのた、そしてあのこの必死になって伸ばす手を掴まなかったのだ・・・・そんな自分を、あの子が良く思っているわけが無い。
だが、そんなプレシアの不安を、ガンダムは今度は先ほどとは違う、優しい声で否定する。
「・・・・私がこのラクロアに帰る時、あの子はある人の家の養子になりました。そして新たな姓を貰い、名前も変りました『フェイト・テスタロッサ』から
『フェイト・T・ハラオウン』という名に・・・・・途中の『T』が何を指すかわかりますか?」
突然投げかけれた質問に、プレシアは戸惑ってしまうが、直ぐにその答えを導き出す。だが不安が残る、もし間違っていたらという不安が
だが、そんな彼女の不安を消すかのように、ガンダムは直ぐに答えを話した。
「『T』は『Testarossa』の『T』、貴方達親子と一緒の姓です。初めて聞いたとき、疑問に思い尋ねました。どうして旧姓を残すのかと、
そしたらフェイトははっきりと答えました、『絆を失いたくないから』と。もうお分かりですよね、ですから改めて聞きます、フェイトを愛していますか?」
声が出なかった、嗚咽を漏らし涙をただ流す、心に残っていた重たいしこりが一気に抜け落ちた様な開放感、そして今までの不安を包み込むほどの安心感
がプレシアを襲う、まともに声など出ない・・・・・だが、ガンダムの質問には答えたかった、彼に気持ちを伝えるために
呼吸を整え涙を拭く、そしてしっかりとガンダムを見据え、答えた。

                          「・・・ええ・・・愛してるわ・・・・私の愛娘だもの」

その後、話の区切りを見越したリニスと昼寝から起きたアリシアも加わり、テスタロッサ邸では少し遅めの午後のお茶会が開かれた。
他愛も無い話をしながら紅茶と焼きたてのスコーンを頬張り、至福の一時を過ごす四人。その時である、ドアを叩く音に全員が振り向いたのは
「テスタロッサ殿!いらっしゃいますか!?」
『何かしら』と呟きながら、リニスは立ち上がり玄関へと向かう。扉を開けると、其処にいたのはラクロアの兵であるジムが二人。
だが彼らはリニスの顔を見た瞬間、言葉を詰まらせ、顔を仄かに赤くした。
リニスはその容姿、性格などから人間族、MS族にとても人気がある、当然その中にはテスタロッサ邸を訪れた兵二人も含まれており、
彼らの態度もリニス本人以外からしてみれば納得がいく。
だが彼らもラクロアを守る兵士、多少慌てた後、誤魔化すかの様に敬礼し用件を伝えた。
「お・・・お・・・おやすみ・・・ではく・・・あ〜と・・・」
「落ち着け馬鹿!!失礼しました!リニス殿!!今日もお美しく・・・ではなく、こちらにバーサルナイト様がいらっしゃるとお聞きしたのですか?」
二人の兵の態度に、悪いと思いながらもリニスは少し笑ってしまう。
そして直ぐにガンダムを呼ぼうとするが、リビングにも声が聞こえたのだろう、彼女の後ろからガンダムがゆっくりと歩いてくる。
その姿を見た二人の兵は直ぐに敬礼をする。まるで兵の見本になるほどの立派な敬礼を。

395高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:52:31 ID:dgveZ8nE
今の二人が感じているのはリニスの時とは違う憧れ、尊敬、信頼、このラクロアで誰もが彼に抱いている感情。彼らは常にそれらをガンダムに対して抱いていた。
「ご苦労様です、どうしました?」
二人の敬礼に対し、ガンダムもまた敬礼で返す、そして直ぐに顔を引き締め、報告を聞こうとする。
彼らがわざわざ出向くとなると、何かあったことは確か、もしジオン族が現われたのか?
最悪の状況も踏まえて彼らの報告を聞こうとするが、結果はガンダムの思っていた事とは逆であり、彼を喜ばせる物であった。
「先ほど、騎士アムロ殿が修行の旅からお帰りになりました、しかも凄い客人を連れて」
「アムロがですか!無事に帰ってきたのですね・・・・それで客人とは」
「はい、バーサルナイト様、貴方にそっくりな方達です。詳しいことはお城で、皆さんがお待ちです」

少し話してから行くといい、ガンダムは先に二人を帰らせえる。
そして改めてバーサルアーマーの御礼を行った後、ガンダムはプレシアの気持ちを知ってから思っていた事を話した。
「プレシア殿・・・・・・あの世界に帰ろうとは・・・・思わないのですか?」
今の彼女は昔とは違う、だからこそ元の世界に、フェイトに会いたいのではないかと思う・・・・・だが、プレシアの回答は『いいえ』だった。
「私はあの世界で多くの罪を犯したわ、だから仮に戻っても捌かれるだけ。無論私にはその覚悟はあるわ、だけどアリシアやリニス、そしてアルフやフェイトが
その巻き添えを受けるのは我慢できない・・・・・ふふっ、臆病者よね。そしてもう一つがこの国を気に入った事かしら」
彼女は誓った、何一つ疑わず自分達を救い、受け入れてくれたこの国の人達を持てる力を使い救おうと。
今でも忘れない、母を救った子供に言われた『ありがとう』という言葉を、忘れていた感謝されるとこの喜びを取り戻した瞬間でもあった。
だが、ガンダムが考えていたことをプレシアもまた考えていた、だからこそ尋ねる。
「貴方は、ジークジオンを倒したらあの世界『地球』に戻るのよね?貴方こそ、この世界に残ろうとは思わなかったの?
俗物的な言い方だけど、貴方は此処では地位も、名誉も、富も思いのまま、中には貴方を崇拝する人もいる、一般的に見ればどちらを取るかは一目瞭然よ」

確かに彼女の言う事は正しい、自分は望んではいないのだが、何度もラクロアの危機を救った自分を『伝説の勇者』と崇拝する者がかなりいる。
現に自分に『様』をつけて呼ぶ人は後を経たない。
そしてバーサルナイトの称号を王から与えられた、金銭に関しても『褒美』と称して金銀財宝を与えられている。

「・・・・・・プレシア殿、確かに貴方の言う事は正しい。ですが私はそられを手放しても共にいたい、守りたい人達がいます。
ですがこのラクロアも、共に戦った仲間も同じ位に大切です。ですから脅かす危機を取り除く、この国の民が平和に暮らせるように。私が旅立つのは、それからです」
真っ直ぐにプレシアを見据えてガンダムは答えた。
ラクロアに平和を、そして必ず帰るという二つの誓いを守る決意が瞳を見るだけで十分なほどに分かる。
その瞳を改めてみてプレシアは思う、「彼になら預けてもいいだろう」と
「・・・リニス・・・あれを持ってきて」
その意味を直ぐに理解したリニスは一瞬躊躇するが、直ぐに部屋の奥へと行き、ある小箱を持って来た。
「・・・プレシア・・・・いいのですか・・・・」
「貴方は私に異見することが出来るわ、それをしないという事は貴方も同じ気持ちなんでしょ?」
軽く微笑みながら、既に答えが出ているであろう問いをリニスに投げかける。
案の定、プレシアと同じ気持ちだったリニスは言葉を詰まられる、そして軽く溜息をついた後、ゆっくりとガンダムへと近づき、その箱を渡した。
不審に思いながらも、その箱を受取り、中身を確認する。
中に入っていたのは少し大きめの宝石だった。
宝石には詳しくは無いが、その輝きは純粋に綺麗だと思う。だが不思議に思ったのはその宝石の中央にある数字、
月村家の書物で見たことがあるが、おそらくローマ数字だろうか?
「・・・この宝石は一体・・・・ただの装飾品とは思えませんし、何かのアイテムでしょうか?」
「それは『ジュエルシード』というロストロギアよ・・・・・是非貴方に持っていて欲しいの」

396高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/17(土) 21:55:14 ID:dgveZ8nE
『ロストロギア』という言葉に直ぐに反応する。確か過去に滅んだ超高度文明の異物、高度な科学技術や魔法技術の結晶。
危険な物も多く、見つけ次第厳重に保管、もしくは破壊し使えないようにするとクロノから聞いたことがある。
何故これをもっているのかと聞こうとしたが、彼女の今までの行為を思い出し、言葉を飲み込む、
おそらくその時に手に入れた品なのだろう。だが、なぜ自分に与えるのだろうか?

「ロストロギアの事は知ってるようね、確かにこれは途轍もないエネルギーを秘めてるわ。これ一つの力をほんの少し・・・それこそ何万分の1
だけで、小規模の次元震を起こせるほどの、だからこれはこうも呼ばれてるの『願いをかなえる石』と。
だからこそ、唯一残った一つを貴方に託すわ。貴方なら正しい事に使ってくれると信じてる」

会って間もない自分にこれほどの物を与えてくれる事に感謝の言葉を述べようとするが、
自分なりに考えた感謝の言葉は、信頼を寄せてくれる彼女の期待に答えることだと思う。
ゆっくりと箱を閉じ仕舞う。そして真っ直ぐにプレシアを見つめたと、跪き、頭を垂れた。

「この力!!平和のため、悪を滅するために使います!!このバーサルナイトの称号、そして勇者ガンダムの名にかけて!!」


ガンダムの背中に何時までも手を振っていたアリシアも姿が見えなくなると手を下ろし、家の中へと入っていく。
家では既に夕食の準備が行われており、アリシアは何か手伝う事はないかと、野菜を洗っているプレシアに尋ねた。
今の生活はとても楽しい、自然は豊かで、大好きなお母さんとリニスがいる。だが、アリシアはいつも思っていた、この中にフェイトとアルフがいればと。
あの時、フェイトが自分を恨んでいない事を聞いた時とても安心した。だが、失礼だとは思いながらも完全には信用できなかった。
だからこっそりと母とガンダムの会話に耳を傾けていた。

「フェイトは・・・・『私』じゃなく『フェイト』として、私の妹として生きてる」

フェイトも・・・フェイトの大切な人達と暮らしている・・・・・そして私達との絆を大切にしていた。
ふと手伝いをする手を止め空を見る、其処には夜空に輝く幾つもの星々
もしかしたら、この中にフェイト達が住んでいる世界があるのではないかと考える。
どうか元気でいて欲しい、幸せでいて欲しい・・・・・そう願いながら、アリシアは夜空を見上げていた。
「(・・・・・・元気でね・・・フェイト・・・・)」

その後、朝日と共に一つの光が天に昇っていった。皆がその光景を見ている中、僧侶ガンダンクは受け継がれている伝説の予言を自然と呟いた。


『星降る時現われし勇者、ガンダム。この世の終焉を問う空の裂け目が語る者を無くし、その口を閉じし時、一条の光と共に天に昇る・・・・・』




こんばんわです。投下終了です。
読んでくださった皆様、支援してくださった皆様、感想を下さった皆様、ありがとうございました。
職人の皆様GJです。
SDXスペドラ用に手袋買わねば
団長よりネオブッラックドラゴンですか
次は何時になるのやら

今更ですが誤字を発見しましたorz
×「ははっ!!つつんで、お受けいたします!!!」
○「ははっ!!謹んで、お受けいたします!!!」


代理投下、よろしくお願いいたします。

397monomima001:2009/10/17(土) 22:06:24 ID:4NCVQziI
「グレンラガンStrikerS」作者です。
代理投下確認させて頂きました。
ありがとうございます。

398魔法少女リリカル名無し:2009/10/17(土) 22:07:08 ID:jejauyIQ
とりあえず、天元突破リリカルなのはSpiral氏 の代理投下をしてきました。
あれでよろしかったでしょうか?
後、高天氏の方もお帰りなさいです。また氏のSS、楽しみにさせていただきますね。

とりあえず、高天氏の方の代理投下、どなたかお願いします。

399 ◆Yf6j8wsEUw:2009/10/17(土) 22:19:04 ID:4NCVQziI
トリップに#つけ忘れてる!? これじゃ本人確認できないじゃないかorz
改めまして、代理つかありがとうございます。

400魔法少女リリカル名無し:2009/10/18(日) 00:44:07 ID:Yx//koKo
宜しければ自分が高天氏の代理投下をさせていただいても宜しいでしょうか?

401魔法少女リリカル名無し:2009/10/18(日) 01:16:03 ID:Yx//koKo
高天氏の代理投下完了しました。
誤字の部分も置き換えて投下しておきました。
これからも氏の作品を楽しみにして待ってますね。

402高天 ◆7wkkytADNk:2009/10/18(日) 07:51:03 ID:992yb8jM
代理投下、誤字修正、本当にありがとうございました。

403 ◆e4ZoADcJ/6:2009/10/18(日) 09:36:57 ID:GXkMlglg
済みません。本スレの方で「ヤプール、ミッドへ行く」と言うタイトルの
ウルトラマンエースクロスSSを投下中にさるやさんに引っかかって
書き込めなくなってしまいました。どなたが代理をお願いしますorz

404ヤプール、ミッドへ行く 10 ◆e4ZoADcJ/6:2009/10/18(日) 09:38:24 ID:GXkMlglg
『ジュァ!!』

 エースはユリシムを縛り付ける光のワイヤーをさらに強く引き絞めて行く。そうなれば光のワイヤーは
ユリシムの身体に強く食い込んで行き、次の瞬間、ユリシムの身体はねじ切られ細切れにされていた。
ゆで卵を切る際には糸を使う事が良いとされているが、それを想像すれば分かりやすいだろう。

 ユーノもまたかつて巨大な触手をストラグルバインドによってねじ切ると言う芸当をやった事があった。
ならばウルトラマンエースとなった状態でそれを行えば、百合超獣の身体をねじ切る等造作も無い事だった。
あえて命名するとするならば『ストラグルギロチン』と呼ぶべきだろうか?

『フーン!!』

 ユリシムが倒れ、浮き足立つユリクロンに対してもエースは攻撃の手を緩めない。
エースが両腕を左側へ大きく振りかぶった直後、右腕を地面と垂直に立て、左腕を水平にした状態でL字を組む。
そうする事でウルトラマンエースの最も得意とする必殺技『エメリウム光線』が発射されるのだが…
今回はやや様子が異なり、まるで桃色に輝く光がユリクロンへ照射されて行く。

 そう。今度のそれはなのはのディバインバスターを反映させた物であり、あえて命名するとするならば
『ディバインメタリウム光線』と呼ぶべき超絶光線だった。

 無論、その直撃を受けたユリクロンが、直後に大爆発を起こして粉々に吹き飛ぶ事は言うまでも無かった。

 二大百合超獣は倒れた。しかし、戦いが終わったワケでは無かった。

『よくもやってくれたなウルトラマンエース!』
『ヤプール! ついに姿を現したな!』

 二大百合超獣が倒れ、痺れを切らせたのか空間を割ってそこからエースの宿敵、巨大ヤプールが姿を現した。
そして彼はこう言うのである。

『だが奴等など所詮は私の真の目的を成す為の時間稼ぎに過ぎぬ。』
『時間稼ぎだと!?』
『そうだ。そしてそれも既に完了した。集まれ! この世界に蔓延せし百合エネルギーよ!!』

 巨大ヤプールが両腕を天へかざし、そう叫んだ時だった。突如として周囲から未知のエネルギーが
巨大ヤプール目掛けて集まって来る。これこそヤプールが百合エネルギーと呼ぶ物であり、
これを使って一体何を成すと言うのであろうか?

『いでよ!! 百合究極超獣ユリキラーザウルス!!』

 その直後だった。巨大ヤプールの周囲に集まっていた百合エネルギーが物質化して行き、
巨大な何かを形作って行く。するとどうだろうか。それはウルトラマンエースの数倍とも
思われる巨大な百合超獣…百合究極超獣ユリキラーザウルスとなったのである!

405ヤプール、ミッドへ行く 11 ◆e4ZoADcJ/6:2009/10/18(日) 09:40:07 ID:GXkMlglg
『フゥゥゥゥ!?』

 ユリキラーザウルスはただの百合超獣では無かった。かつて『究極超獣Uキラーザウルス』と言う
超獣がいた。究極の名を冠する通り、超獣の範疇で考えても桁違いの強さを持つ超獣であり、
エースも数多くの仲間と力を合わせてどうにか立ち向かえた程の強敵だった。
ユリキラーザウルスがそのUキラーザウルスの百合仕様である事は間違い無く、
明らかにウルトラマンエース一人で立ち向かえる程の相手では無かった。

『凄まじい…凄まじいぞ……人間どもの百合エネルギーは想像以上に凄まじい物だ!
この私もまさかここまで凄まじいとは思わなかった………。』

 ユリキラーザウルスと融合し、その中枢となっていた巨大ヤプールは自身の身に溢れる
強大な力に感激を覚えていた。それだけ…それだけ百合の力は凄まじいと言うのだろうか!?

『やれい! ユリキラーザウルス!! この世界の百合化を進め、我等はさらなる力を得るのだ!!』

 ユリキラーザウルスもまた百合化ガスを噴出していた。それは先のユリクロン・ユリシムの
二大百合超獣のそれとは比較にならぬ程の高濃度ガスであり、クラナガンどころか
あっという間にミッド全域にまで広がって行く程の物だった。

『あ! み…みんなが…みんなが…。』
『ゆ…百合化して行く……。』

 ウルトラマンエースと一体化していたなのはとユーノも、ウルトラマンエースの目を通して
事の次第を見ていた。そして、エースの持つ超能力の一つ『ウルトラ千里眼(本作で勝手にでっち上げた
捏造技だけど、ウルトラマンならこういう事が出来てもおかしくないはず…?)』で、ミッド各地の
百合化の光景を垣間見ていた。

「テスタロッサ…。」
「シグナム…。」
「なのフェイの百合も良いけど、シグフェイも最高だよね!」

 ある場所では、フェイトとシグナムが白昼堂々抱き合い、それを他の男達がニヤ付いた目で見つめていた。

 それだけでは無い。時空管理局では何とレティとリンディが白昼堂々抱き合っていたでは無いか。
その余りにも衝撃的な光景の余り……

「うあああああん!! 母さんがおかしくなっちゃったよぉぉぉぉ!!」

 グリフィスまでもがショックでまるで子供の様に泣き出す始末。

406ヤプール、ミッドへ行く 12 ◆e4ZoADcJ/6:2009/10/18(日) 09:41:11 ID:GXkMlglg
 だがこれらの惨状も序の口に過ぎず、別の場所ではさらに恐ろしい事が起こっていた。それは……

「エロノとエロオと淫獣二号とハーレムオヤジをヌッコロセー!!」
「うわぁぁぁ!! 助けぇぇぇぇ!!」

 何と言う事だろう。クロノとエリオとザフィーラとゲンヤが、大勢の百合過激派と化した男達に追われ、
逃げ惑っていたのである。他の場所においても女性と何かしらの関係があったりした男が、百合過激派に
襲われ、晒し上げられ、公開処刑まがいな事をされると言う…まさに地獄絵図……いやこの世の地獄が
今ミッド全土で繰り広げられていたのである。

『そ…そんな…みんなが……。』
『ひ…酷い……。』

 あまりの惨状になのはとユーノは思わず涙が出て来た。それと同時にヤプールに対する怒りが
込み上げてくる。それに呼応する様にエースもまたユリキラーザウルスに対して構えた。

『フゥゥゥン!!』

 例え相手が絶望的なまでの強敵であろうとも…エース一人で勝つ事は無理であろうとも……
世の中にはそれでもやらねばならぬ事がある。だからこそエースはユリキラーザウルスへ向けて飛んだ。

『ジェァァ!!』

 エースはユリキラーザウルスに対して渾身の拳を突き立てる。しかし、その余りにも強固な外殻には
まるで通じる様子が無い。先の二大百合超獣とは耐久力の桁が違いすぎるのだ。そして次の瞬間、
ユリキラーザウルスの持つ先端に鍵爪の付いた触手が物凄い速度でエース目掛けて伸びると共に
エースを掴み上げ、軽々と振り回し、地面に叩き付けてしまった。なんと言う恐るべきパワーであろうか!

『デャ! デャァァァ!!』

 エースが地面に強く叩き付けられ、まだ起き上がらぬ内にユリキラーザウルスのさらなる攻撃が始まる。
それはユリキラーザウルスの肩等に見られるトゲ状の突起をミサイルとして発射する攻撃。
その火力はユリクロン・ユリシムの持つミサイルとは比べ物にならない。

『ディヤァァァァ!!』

 ユリキラーザウルスの大量のミサイルによって起こった大爆煙の中からエースが飛び出した。
そして再び両腕を左側に大きく振りかぶり、右腕を垂直に、左腕を水平にする事によるL字の構え。
そう、再び発射しようと言うのだ。ディバインメタリウム光線を!

407ヤプール、ミッドへ行く 13 ◆e4ZoADcJ/6:2009/10/18(日) 09:42:03 ID:GXkMlglg
『無駄だ! その程度の力でユリキラーザウルスを倒す事は不可能だ!』

 ユリキラーザウルスもまた百合エネルギーを集束した熱線をエース目掛けて放射した。
物質化してしまう程にまで高密度に凝縮された百合エネルギーはディバインメタリウム光線さえ
楽々押し返して行き…………

『デャァァァァァァァァ!!』

 次の瞬間、ユリキラーザウルスの百合エネルギー熱線の直撃を受けたエースは大きく吹っ飛ぶと共に
倒れ……動かなくなった。そして………その胸に輝くカラータイマーの光さえも…………

『どうだ! ユリキラーザウルスの前にはウルトラマンエースさえも無力なのだ!』

 力尽き、その場に倒れたのみで一切動かなくなったウルトラマンエースの姿を見つめ、ヤプールの笑い声と
ユリキラーザウルスの咆哮がミッド中に響き渡った。もうこうなった以上、何者をも止める事は出来ない。
このままミッドは百合の地獄と化してしまうのだろうか………そして……ウルトラマンエースと一体化していた
なのはとユーノの命も………?

 しかし………その時誰も……ある異変が起こりつつある事に気付いてはいなかった。

 ミッドチルダに恵みの光を与える太陽…同じく太陽の光を反射する事によって闇夜を照らす複数の月…。
ミッドチルダにおいて魔法の源となる魔力素………それら目に見えぬエネルギーが一つに集まって来る。

 そう。ヤプールが百合エネルギーを集め、自身の力へと変えた様に、エースもまた再び戦う為の
エネルギーを集めていた。しかしそれだけでは無い。なのはとユーノの二人と融合した事によって
二人の能力が反映される様になった事は既に説明されている通りだが、今まさにその真価が発揮
されようとしていた。

 ウルトラマンエースは頭部のトサカ状の部分に開いた一つの穴『ウルトラホール』によって
外部からのエネルギーを吸収して自身のエネルギーへと変換する。だが今エースが集めていたのは
ただ単純な太陽光エネルギーだけでは無かった。それはミッドチルダに存在する魔力素。
なのはが集束砲スターライトブレイカーを発射する際、周囲から魔力を集める事は知られている。
今まさにエースが行っていた事はそれだった。エース自身が持つウルトラホールの力に加え、
魔力までをも自身のエネルギーへと変換して行く。

『デャァァァァァ!!』

 エースは立ち上がった! そして頭部のウルトラホールから眩い光を発して行く。

408ヤプール、ミッドへ行く 14 ◆e4ZoADcJ/6:2009/10/18(日) 09:43:47 ID:GXkMlglg
『何!? 蘇ったと言うのか!?』
『女の子同士で仲良くする事は決して悪い事では無いけど、だからと言ってそれを他の人に
無理矢理押し付けたり、傷付けたりする事は間違ってる!!』
『だからこそ僕達は負けるわけには行かないんだ!!』
『黙れぇぇぇぇ!!』

 ユリキラーザウルスは今度こそウルトラマンエースの息の根を止めるべく、再び百合熱線を放射した。
恐るべき百合エネルギーが大地を抉り切り裂きながらエース目掛けて突き進んで行くが…

『フゥゥゥゥン!!』

 何と言う事だろう。エースはその恐るべき百合エネルギーを片手で弾き返してしまった。
あれだけの高密度エネルギーがその一振りによって拡散し、消滅してしまう。

『フン!! フゥゥゥゥ!!』

 ユリキラーザウルスが怯んだ隙に、エースは自身の両腕を天高く掲げる。そしてウルトラホールから
発する高エネルギーを一点に圧縮して行く。それはウルトラマンエースの持つ『スペースQ』と
なのはのスターライトブレイカーの融合………名付けて『ディメンジョンQ』

『デャァァァァ!!』

 ウルトラマンエースがそれをユリキラーザウルス目掛けて投げ飛ばした直後、
ディメンジョンQのエネルギーは…………ユリキラーザウルスを粉々に吹き飛ばしていた………。

『そ…そんな馬鹿な……ユリキラーザウルスが……。し…しかしこの私は滅びぬ!
また何時の日か…また何時の日か蘇ってくるぞぉぉぉぉぉ!!』

409ヤプール、ミッドへ行く 15 ◆e4ZoADcJ/6:2009/10/18(日) 09:45:12 ID:GXkMlglg
 ヤプールが倒れた事によりミッドの百合化は食い止められた。そして役目を終えた事により、
なのはとユーノはウルトラマンエースと分離し、その手のウルトラリングもまたエースの手に戻っていた。

「これで皆も正気に戻るのかな?」
「元々百合やってた人は変わらないだろうけどね…。」
『他者の手による強引な百合の押し付けと、そうで無い者に対する弾圧は決して許されない事だが、
各自の自己責任で百合を行っている者達まで否定するわけには行かない。』

 そう。エースが救ったのはあくまでもヤプールと言う外的要因による人為的な百合。
元々から百合だった者達との問題は、同じ人間の手によって解決させなければならないのだ。

「もう…行ってしまうのかい?」
『この世界における私の戦いは終わった。しかし、ヤプールはまたいずれ何処かで復活する。
私の戦いはこれからもまた続いて行くのだ。』
「そっか……頑張ってね…。」

 ついにエースとの別れの時がやって来た。この一連の不思議な体験はとても忘れられる物では無く、
無論エースとの別れもまたなのはとユーノの二人にとって惜しむべき物であったのだが、
エースは別れ際にこう言った。

『優しさを失わないでくれ。弱い者を労わり、互いに助け合い、俺嫁厨や百合厨、カプ厨とも
友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。例えその気持ちが何百回裏切られようと…。
それが、私の最後の願いだ。』

 そしてエースはその言葉を最後に天高く飛び立った。

「エース! さようなら!」
「さようなら! そしてありがとう!」

 なのはとユーノはエースを追い駆けながら手を振って別れの言葉を叫んでいた。
エースの姿が完全に見えなくなってしまうまで……ずっと………


 遠く輝く夜空の星に 僕等の願いが届く時 次元連峰遥かに超えて 光と共にやって来る
 今だ 変身 なのはとユーノ いざ行け いざ行け ウルトラマンエース 僕等のエース
 戦え 戦え ウルトラマンエース 次元のエース


                      おわり

410 ◆e4ZoADcJ/6:2009/10/18(日) 09:46:34 ID:GXkMlglg
他にもウルトラマンは沢山いるのに、何故エースを選んだのかと言うと
男女合体によって誕生するエースが百合のアンチテーゼになるんじゃないかな〜なんて… 

当初は淫獣と叩かれる毎日に嫌気が差したユーノがヤプールにそそのかされてフェレット超獣になる話とか、
2期の夜天の魔導書にまつわる事件にヤプールとエースが介入するとか色々考えてたんですけどね…

次元連峰だの次元連邦だのは銀河連邦がスケールアップした物と言う事でお願いします。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

ここまでどなたか代理をお願いしますorz

411 ◆e4ZoADcJ/6:2009/10/18(日) 10:16:46 ID:GXkMlglg
済みません。ある程度時間を置いたらさるやさんが解除されて書き込める様になりました
>>403-410は無かった事にして下さい。ご迷惑おかけして済みませんでした。

412人妻みさこ:2009/10/23(金) 17:33:21 ID:mdMc9diw
結婚して数年、旦那とのアレはなくなりました。
それでも性欲の塊のような私は外で男を漁り、SEX三昧の毎日です。
そんな私の日記的なページです。覗いてみて下さい。
いつか旦那にも見せてやろうかと思っています。旦那がどんな顔するか今から楽しみです。

wifelife.web.fc2.com/index.html

413レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 09:54:40 ID:P.p.mRNc
 「そんな………そんなの嘘だ!!」
 「何言ってんの!私の言葉が信用出来ないの!!」
 「だって…メル姉は本当の姉――」
 「いい加減にしな!!!」
 
 ルーテシアは必死に否定の言葉を浮かべるがメルティーナは一喝すると、身を竦め動きが止まり言葉を紡ぐ、
 その行動にメルティーナは目を瞑り暫く沈黙すると、意を決した様に言葉を口にする。
 
 「血が何!確かに血は繋がっていないけど………アンタは私の“妹”なのよ!!」
 
 自分にとって大切な“妹”がその手を血に染め罪を重ねている、しかも誤った情報に踊らされて…
 罪は償わなければならない、だからルーテシアを止める、局員として姉として……
 
 凛とした表情でメルティーナは言葉を口にし、ルーテシアはその瞳に迷いも偽りも無い事を知ると、不意に涙がこぼれ始める。
 それは今まで押し殺してきた感情が溢れ出した結果であり、
 己が罪を認め今まで着込んでいた鎧を脱ぎ捨てた結果である。
 
 「ご…めんな………さいごめん…な……さい」
 
 そして何度も何度も声を引き付かせながら謝罪を口にすると、周囲に低い声が響き渡る。
 
 「…どうした?もう終わりなのか?」
 「ブッ!ブラッドヴェイン!貴方喋れるの?!」
 
 しかしルーテシアの質問に答えず同じ質問を投げかけると、小さく頷く。
 既にルーテシアは罪を自分の過ちに気づき、これ以上戦いを続ける理由はなかった。
 するとブラッドヴェインはルーテシアを睨みつけ、見下すような笑みを浮かべる。
 
 「そうか…ならば後は勝手にやらせて貰うぞ!!」
 「えっ?!」
 
 次の瞬間、ルーテシアのリンカーコアに接続されていたレリックが胸元から姿を現し
 レリック出現と共にルーテシアの全身から魔力が溢れ出し、レリックを刺激してエネルギーを放出し始めた。
 
 「はぁ!ああああああああああっ!!!」
 「まさか!暴走!!」
 
 ブラッドヴェインはルーテシアが使えなくなった事を知るや否や
 召喚における精神・魔力の繋がりを利用して自分の魔力を送り込みルーテシアの魔力を強制解放、
 そしてレリックを剥き出しにして魔力に晒す事で暴走させ、
 更に暴走し溢れ出たエネルギーをルーテシアを介して自分自身に取り込み始めたのである。
 
 「満ちる!俺の力が満ちていく!これならば!!」
 
 力を増加させたブラッドヴェインは雄叫びを上げると、ルーテシアの後方に巨大な召喚魔法陣を広げ、
 そこから半透明の膜上羽に強固な肉体を持ちヴォルテールとほぼ同じ大きさを誇る召喚虫を呼び出した。
 白天王、ルーテシアの究極召喚で管理外世界における第一種稀少個体である。
 
 だがその瞳には赤い血の涙のようなものを流していた、
 それもそのハズ、本来では契約者であるルーテシアの呼び声のみ反応するのであるが
 今回はルーテシアを媒介にしてブラッドヴェインが強制的に召喚してしまったからである。
 
 そして他の召喚虫達にも異変が起き始めていた、先程倒壊した施設が立ち並ぶ地域から場所を移し
 公園周辺でエリオと激戦を繰り広げていたガリューは急に苦しみ出し、
 地面に膝を付くなり丸く身を屈めると体のほぼ全ての武装を解放、その後に立ち上がりその瞳からは同じく血の涙を流していた。
 
 ルーテシアを媒介にした召喚の影響は白天王だけでは止まらなかった、
 ブラッドヴェインはルーテシアと召喚虫との繋がりに侵入して自分のモノにした事により、
 ガリューや地雷王すらも手中に収めたのである。

414レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 09:57:12 ID:P.p.mRNc
 本来の主とは違う存在に使役される事、それはガリュー達にとっては屈辱以外の何物ではなかった、その屈辱さが血の涙として表していた。
 その涙を見たエリオはガリューの苦しみを救う方法は無いものか模索していた。
 
 一方でキャロは白天王の大きさに戸惑い不安の色を見せている中で
 メルティーナは一人、現状の分析と対策を考えていた。
 
 恐らくブラッドヴェインはルーテシアとの契約を利用して白天王達を、そしてルーテシアの魔力を操っていると考える。
 つまりブラッドヴェインを倒せば召喚虫達を解放され、ルーテシアの魔力も収まる事が出来る。
 
 しかしブラッドヴェインを倒すまで他の召喚虫、特にガリューは抑えなければならない、
 其処でガリューの相手は引き続きエリオが行う事となった。
 だが、レリックはもはやルーテシアの魔力とは関係無く暴走している。
 
 其処でメルティーナがレリックのエネルギーを拡散し、キャロがレリックを封印する事となったのだが、
 ルーテシアは白天王に護られており近付くのは容易ではない、其処で白天王の相手をヴォルテールに任せるという。
 
 「それじゃ、ブラッドヴェインの相手はどうするんですか?」
 「まぁ、見てなさい」
 
 キャロの疑問にメルティーナは軽く答えキャロの額にデコピンをすると
 ユニコーンズホーンを地面に突き刺し巨大な青い召喚魔法陣を広げ詠唱を始める。
 
 「大気と冷気の英霊よ!我橋渡しとなり願うは婚礼の儀式…汝ら互いに結びつき
  其の四方五千において凝固し、我前に姿を現せ!!魔狼召喚!フェンリル!!」
 
 すると魔法陣の中心に氷が集まり出し巨大な塊になると動物へと姿を変える。
 そして氷が砕け散ると中から青い毛に覆われ真っ赤な瞳が特徴的な巨大な狼が姿を現した。
 
 魔狼フェンリル、ミッドチルダ北部聖王教会から更に北に位置する雪に覆われた巨大な山に住む
 人々からその傲慢な態度により畏敬の念を持たれている狼である。
 
 しかし今のフェンリルはメルティーナの使役獣として契約を行っている為、
 逆らう事が出来ないようになっていると自慢するように説明を終える。
 
 「まぁ、それは良いとしてフェンリル!アンタの相手はあの不死者よ!!」
 「チッ!獣使いの荒い女だ……」
 
 一言だけ愚痴を漏らすとフェンリルは飛び出すようにしてブラッドヴェインの前に対峙する。
 そんなフェンリルの行動を皮切りにそれぞれは割り当てられた相手へと赴き作戦を実行し始めた。
 
 
 エリオは完全武装したガリューを目前に今のままではきついと考えエクストラモードを起動
 バリアジャケットの白いコートが電気化してエリオの身を包み込み、辺りを黄色い稲光で照らす
 そして右手にはシンプルに小型化されたストラーダが握られており、
 準備が整ったエリオは構え、右足に力を込めて地面を蹴る、
 すると身に纏っていた稲光が相まって黄色い閃光となってガリューに襲いかかる、
 
 そしてエリオの一撃が振り下ろされる瞬間、それを狙っていたとばかりに
 両掌を合わせ刃を受け止めるとそのまま地面に叩き付ける。
 エリオ地面との接触による衝撃で体が宙に浮く中、ガリューは追い打ちとばかりにエリオの腹部を踏み降ろす。
 
 「ガハッ!!!」
 
 エリオは口から血を吐き出して苦しむ中、更にガリューがエリオの頭部目掛けて踏み降ろそうとしたが、
 すんでのところで右に回転しながら回避、難を逃れると起き上がりジグザグ走行で再びガリューに迫る。

415レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 09:59:04 ID:P.p.mRNc
 エリオのジグザグ走行は残像を生み出しガリューの周りでフェイントを掛けながら走り抜くと
 ガリューエリオを残像ごと叩き落とそうと攻撃を仕掛け続けていた。
 
 その中でエリオはガリューの異変に気が付いた、先程まで戦っていた際は相手を冷静に見つめ隙を付き戦法を投じていた。
だが今は目に映る全てに攻撃を仕掛けている、恐らく本来とは全く異なる命令などにより混乱もしくは暴走していると判断した。
 となれば気絶させる事で一時的に命令を遮断する事が出来るのではないか?
 
 「試してみよう!」
 
 エリオは速度を維持しながらカートリッジを二発消費、左手に黄色い稲妻を纏わせる
 そして行動と合わせるようにして紫電一閃を後頭部に打ち抜く。
 しかしエリオの攻撃は一撃には終わらず、右頬、背中、腰、鳩尾、最後に右胸と連続に打ち抜く
 
 エリオの攻撃によってガリューの体に黄色い稲光が立ち、至る所から黒い煙が立ち昇り
 意識を失ったかとエリオは不用意に近付くと、エリオの攻撃に耐え抜いたガリューが動き出し左拳を腹部に突き刺し
 
 吹き飛ばすと公園の中心に備え付けてある噴水に直撃、噴水は無残にも砕け散った。
 そして噴水から大量の水が吹き出ている中でエリオは立ち上がり、目の前にはエリオの下へ近づくガリューの姿があった。
 
 「くっ!紫電一閃じゃ届かないのか!」
 
 エリオの紫電一閃はオリジナルであるシグナムの技とは異なり雷による加速重視の技
 故に一発の威力ではオリジナルには劣るのであるが、
 
 連続的に攻撃を叩き込む事によりオリジナルと大差ない威力を誇るのである。
 だがそんな攻撃を耐え抜いたガリュー、今のガリューは暴走状態である為に肉体の耐久力が予想以上に高くなっている可能性がある。
 
 つまり紫電一閃では止められない、そう考えたエリオはカートリッジを二発消費させて魔力を高め
 黄色い稲妻が巨大化、辺りを黄色に輝かせると右足を踏み込み一気にガリューの懐に入る。
 ガリューはすぐさま右腕を振り上げるが既にエリオは攻撃態勢に入っており、ストラーダで一気に突き始める。
 
 その速度は刀身を確認出来ない程で黄色い閃光がガリューの体を幾重にも貫く。
 エリオの攻撃にガリューは動きを止め、その隙を狙って渾身の突きを貫く。
 
 その速度はエリオの姿すら見えぬ程に速く、ガリューを貫くように後方へと移動、
 その瞬間、強力な衝撃波が発生してエリオの髪を靡かせると
 
 ガリューは力無く膝を付き前のめりで倒れ、ガリューの武装が解除され辺りは沈黙に包まれる。
 その姿を目の当たりにして、ようやく気絶させる事に成功させたと実感するエリオであった。
 
 
 一方でフェンリルはブラッドヴェインと対峙している中、ブラッドヴェインが先手を打ち口から業火を吐き出す。
 しかしフェンリルは口から吹雪を吐き出して業火を相殺、辺りに水蒸気が舞う中で
 ブラッドヴェインが飛びかかるように襲い掛かり鋭利な爪が輝く右腕を振り下ろす。
 
 しかしフェンリルは不敵な笑みを浮かべると一瞬にして姿を消し、
 そしてフェンリルはブラッドヴェインの後ろに姿を現すと
 その口元は赤く染まり更には何かを食べているかのように動かし飲み込む。
 
 「…不味いな、ドラゴンってのは美味ってぇのが相場なんだが……」
 
 すると次の瞬間、ブラッドヴェインの左肩から大量の血が吹き出す、
 フェンリルは通り抜けた際にブラッドヴェインの左肩を噛み切ったのである。
 
 ブラッドヴェインは噛み切られた左肩をキュアプラムスで癒すと反撃とばかりにイグニートジャベリンを撃ち出す。
 しかしフェンリルは左前足を振り抜きイグニートジャベリンを叩き落とし、またもやブラッドヴェインに襲い掛かるが、
 
 ブラッドヴェインは右拳を振り下ろしフェンリルを地面に叩き付けると、先程と同様イグニートジャベリンを撃ち出す。

416レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 10:03:27 ID:P.p.mRNc
 しかしフェンリルはすぐさま起き上がり右へと移動、イグニートジャベリンを躱すと
 
 大地を蹴り一瞬にしてブラッドヴェインの背後をとり、その強靱な爪で背中を切り裂く。
 だがブラッドヴェインも負けておらず、すぐさま振り向きファイランスを直撃させ、更に背中の傷を治療した。
 
 「ちっ!手強いな」
 
 ブラッドヴェインの肉体はフェンリルが思っていたよりも強靱で更には治療魔法によって傷口を癒してしまう。
 …となれば、傷口を癒せぬようにしてしまえばいい、
 
 そう考えたフェンリルは先程とは異なり全身に冷気を漂わせる。
 そしてブラッドヴェインの周囲を跳ねるように飛び回り攪乱させると左の二の腕を噛み切る。
 
 「舐めるな!この程度の傷など!!」
 「それはどうかな?」
 
 フェンリルは不敵な笑みを浮かべると左腕に違和感を感じ目を向け驚愕する。
 何故なら噛み切られた左の二の腕は凍結しており、再生出来なくなっていたからである。
 
 フェンリルは通常の攻撃では直ぐに再生されてしまうと考えた為、その身に冷気を纏うことによって凍結効果を持つ
 フロストベイトと呼ばれる攻撃方法に切り替え、傷口を凍結させる事で再生出来ないようにしたのである。
 
 「こんなモノ!すぐに溶かしてくれる!!」
 
 そう言ってブラッドヴェインは二の腕の凍結を解除する為、口に業火をため込むと
 その瞬間を突いたかのようにフェンリルは吹雪を吐き出し、ブラッドヴェインはすぐさま切り替え業火にて吹雪を相殺、
 先程と同様に水蒸気が発生して二体を飲み込み、視界が悪くなっていると
 
 フェンリルは鼻を頼りにブラッドヴェインの懐に入り左前足の爪でその身を切り裂き
 首元に噛み付くと、ブラッドヴェインもまたフェンリルの首元に噛み付き
 首を噛み切られると判断したフェンリルは牙を離すと、ブラッドヴェインは尾でフェンリルの腹部を強打、
 
 更に振り下ろしフェンリルを頭から地面に叩き付けた。
 そしてブラッドヴェインはフェンリルに向けて手をかざし詠唱を始める。
 
 「…闇の深淵にて重苦に藻掻き蠢く雷よ…彼の者に驟雨の如く打ち付けよ!!」
 
 そしてブラッドヴェインの目の前には巨大な黒い球体が姿を現し
 フェンリルは見上げる形でその物を見つめていた。
 
 「このまま散るが良い!グラビティブレス!!」
 
 ブラッドヴェインが撃ち放ったグラビティブレスは吸い込まれるかのようにフェンリルに迫り
 フェンリルはその場から避難しようとしていたのだが、
 地面との衝突の影響で頭がふらつき、起きあがるのが精一杯の状況であった。
 
 その為になす統べなくグラビティブレスに呑み込まれ
 着弾地点では驟雨の如く雷が打ち付けており、それを上空から見下ろし高笑いを浮かべるブラッドヴェイン。
 
 「フハハハハッ!!勝ったぞ!!」
 
 グラビティブレスが直撃した地点はクレーターとなり果て、
 それを目の当たりにしたブラッドヴェインは勝利を確信し、ゆっくりと地上に降りる。
 
 そしてその足でクレーターの元へ向かい始めた瞬間、地面から鋭利な氷の槍が姿を現しブラッドヴェインの体を貫く。
 突然の攻撃に動揺を隠せないブラッドヴェインの前に、クレーターからゆっくりとフェンリルが姿を現した。

417レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 10:06:35 ID:P.p.mRNc
 「バカな!まさか生きていただと!?」
 「…流石に今の一撃はきつかったがな」
 
 フェンリルはグラビティブレスを回避する事が出来ないと考え、体の周囲に氷を張り防御に徹した。
 そして倒されたフリをしてブラッドヴェインを近づけさせて
 
 地面を介してハウリングハザードと呼ばれる攻撃でその身を封じたのである。
 そしてハウリングハザードは凍結効果も持っており、徐々にブラッドヴェインの身を凍らせ始める。
 
 「おのれぇ!この俺様がこんな奴に!!」
 
 ブラッドヴェインは憎まれ口を叩くも体は凍り続け、とうとう顔まで凍り付き、その顔は悔しさを浮かべていた。
 そしてフェンリルはブラッドヴェインに近付くと大きく口を広げ、その首元に噛み付き砕くと
 
 凍り付いた頭部が地面に落ちて砕け散り、それを合図に光の粒子となって消滅
 フェンリルはその場を後にし、場には氷の塊のみが静かに佇んでいた。
 
 
 場所は変わりフェンリルがブラッドヴェインを倒した事により、白天王の呪縛が解け温和しくなっていると同時に
 ルーテシアの魔力の暴走が止まったのであるが、レリックの暴走は未だ止まっていなかった。
 
 しかも今までは魔力の暴走が結果的に障壁となりルーテシアの身をエネルギーから皮肉にも護っていたのだが
 今はその魔力の暴走も停止し、魔力の障壁も無くなった為
 
 エネルギーをその身に浴びる事になり非常に危険な状態となり
 キャロ達は早急にレリックを封じなければならなくなったのだ。
 
 「ルーちゃん!今助けるから!!」
 
 暴走により生まれたエネルギーの渦の中心部にいるルーテシアの下へ向かう為、
 メルティーナはユニコーンズホーンを向け、レリックのエネルギーを拡散しつつ近付いていき
 その後ろにはキャロも一緒に近づいて来ていた。
 
 そしてルーテシアの目の前まで移動しエネルギーの渦の中心であるレリックを見つけると
 キャロはサードモードを発動、先ずはレリックとルーテシアのリンカーコアを繋ぐ術式を解除し
 
 次にレリックの周囲を強固な障壁、ブースデットプロテクションで囲みエネルギーを押さえ込む
 続いて外側をクリスタルケージで囲い、縮小させて掌サイズにすると
 最後に封印処理を施してレリックを一時的に凍結させた。
 
 本来であれば活動している物を封印させる事は不可能なのであるが、
 バリア、結界の力により外面上安定した状態にさせる事により封印処理が可能となったのである。
 
 そしてレリックから解放されたルーテシアは力無くキャロに寄りかかり
 ルーテシアの姿にメルティーナは駆け寄りキャロはルーテシアの体の具合を調べた。
 
 「大丈夫…体は何ともないようです」
 
 ルーテシアの体は疲労感が残っている程度で止まっており
 命の心配は無いと告げるとホッと胸をなで下ろすメルティーナ。
 
 すると次の瞬間、封印処理されてあるレリックの結界にひびが入り始める、
 どうやら中のエネルギーが面に出ようとしているようで
 
 メルティーナはキャロからレリックを受け取るや否や大空に投げつける、
 そしてユニコーンズホーンを天に向け魔法陣を広げた。

418レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 10:08:58 ID:P.p.mRNc
 
 「この!消えて無くなれ!!」
 
 そしてユニコーンズホーンから直射砲が発射される、
その姿は細く鋭くまっすぐ伸びていき、レリックを貫くと一気に爆発、そして消滅した。
 
 暫くするとガリューを支え歩いているエリオとフェンリルが姿を現し更にルーテシアも目を覚まし、
 彼女の周りにはガリューと白天王が心配そうに見守っていた。
 
 そして彼女の目の前にはメルティーナが座り目を向けており、ルーテシアは動揺を隠せない表情を浮かべていると
 メルティーナはルーテシアを強く抱きしめ、その温もりに大粒の涙を零し何度もメルティーナの名を呼ぶルーテシア。
 そんな姿にエリオとキャロも涙を浮かべていると、円満な空気を断ち切るようにフェンリルは言葉を口にする。
 
 「…貴様の目的も果たしたようだな、では俺は帰るとするか…」
 「はあっ?……フェンリル、アナタの住処はもう無いわよ?」
 「なん………だと?!」
 
 此処へ来る途中でドラゴンオーブの砲撃に遭い、フェンリルの住処は無くなったと言う情報を聞いたと
 メルティーナは説明すると、流石にフェンリルも動揺を隠せずにいた。
 
 …何故ならこれから先も、この女について行かなければならない事を意味し
 頭を悩ませている表情を浮かべるフェンリルであった。
 
 
 場所は変わり北西に存在する森林地帯の上空では、未だにトーレの戦闘が続いていた。
 しかし戦況はトーレの劣勢である、しかしセッテの仇であるこの二体は命を懸けても倒さなければならない。
 
 トーレは顔を叩いて気合いを入れ直しライドインパルスを起動、セレスの後ろをとり左のインパルスブレードを振り下ろそうとしたが、
 逆にクレセントがトーレの後ろをとり、後頭部目掛けてシルヴァンスを振り下ろしており
 トーレはセレスからクレセントへ目標を切り替え右のインパルスブレードにてクレセントの攻撃を受け止める。
 
 するとセレスは半歩後ろに下がり刀身を魔力で覆い突撃、ミスティックファントムで攻撃を仕掛けてくる。
 しかしトーレは左手一本でセレスの攻撃を受け止めるが、今度はクレセントが半歩下がり下から上に切り上げる。
 
 そこでトーレはライドインパルスにて後方へと移動、同士討ちを狙うが寸でのところで止まり、
 トーレに向けて魔力のナイフ、サプライズスローとマジックロックを次々に投げつける。
 
 だがトーレは両手のインパルスブレードにて叩き落としていくが、先程右肩をやられた為か右腕の動きが鈍く
 そこに目を付けたクレセントはセレスに足止めをお願いしソニックムーブにてトーレの右に移動、刀を一気に振り下ろし
 
 このタイミングでは回避する事が出来ないと悟ったトーレは
 死を覚悟を決めた表情を浮かべながら歯噛みすると、突然クレセントの両脚が切り落とされる。
 
 クレセントの両脚を切り裂いた正体は十字に合わせたブーメランブレードで、
 トーレのピンチにセッテが最後の力を込めて投げた一撃であったのだ。
 
 突然の不意打ちを受けたクレセントは動揺を隠せずにいると、
 セッテの渾身の一撃によって生まれた隙を無駄にしないと、右のインパルスブレードでクレセントの首元を狙う。
 しかしクレセントはトーレの動きに気が付きシルヴァンスを振るい、刀身はトーレ右の二の腕を半分程斬りつけて止まる。
 
 「…このまま振るえば、アナタの右腕は切り落ちるわよ?」
 「右腕一本…貴様にくれてやる!!」
 
 トーレは躊躇なく振り切りクレセントの首を跳ね飛ばすと同時に、右腕が切り落とされる。
 そして切り落とされた右腕から血が夥しく流れ落ち、血を止める為に右腕の戦闘スーツの圧力を上げて
 流れ落ちる血液を止めると残りの一体セレスに目を向ける。

419レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 10:10:27 ID:P.p.mRNc
 「よくもクレセントを!!」
 「次は貴様の番だ!!」
 「黙れ!片腕で何が出来る!!」
 「貴様如き…片腕で十分だ!!」
 
 トーレはセレスを挑発すると左のインパルスブレードの出力を上げ更には巨大化させる。
 その中でセレスはシルヴァンスを構えソニックムーブを起動、トーレの懐に入り左から切り上げるが
 
 トーレは攻撃を受け止め更にスムーズに攻撃を受け流し、
 逆にセレスの懐に入ると左拳を握り締め裏拳の応用でインパルスブレードを突き刺そうとする。
 
 しかしセレスはトーレ攻撃が直撃する寸でのところで後ろに逃げ込み難を逃れるが、
 トーレはライドインパルスにて追い掛け、追い討ちとばかりに胸元目掛けて左から右に振り払い
 セレスの騎士甲冑を切り裂くが本体は半歩下がっていた為傷は浅く、逆にセレスが半歩前に出て振り下ろす、
 
 だがトーレは右足を軸に右回転、セレスの刃を交わしつつ切り上げるようにして左腕を斬り落とした。
 
 だがセレスは怯むことなく振り下ろした刀身を切り返し、下から上へと切り上げ
 トーレはインパルスブレードにて受け止めるが、出力が上がらす砕け散り、胸元を深く切りつけられた。
 
 「…これでアナタの武器は無くなった!」
 
 確かにセレスの言う通り右腕を無くし左手のインパルスブレードも一回のみ形成できる程のエネルギーしか無い、
 更に胸元には深手、相手も左腕を失ってはいるがまだ余裕があるようにも思える。
 だが…だからといって引き下がるつもりもない、何か手はないか…
 
 そう考えている内にトーレはある案を編み出す、だがそれはとても危険な案で命に関わるものであった。
 だが既に此処まで深手を負っている以上、命の心配をするのは愚問かもしれない、
 
 そう自分に言い聞かせ自分が考案した案を実行するため、残りのエネルギーを左手一本に集中させる。
 それを見たセレスはこの一撃に全てを掛けていると判断し、シルヴァンスのカートリッジを消費すると魔力を帯び始め先手を打つ。
 
 魔力によって強化された速度は瞬時にトーレの懐に入り衝撃波を放ち、次に突きそして蹴り上げ、
 全身に帯びた魔力が刀身に集まり嵐のように吹き荒れそのままトーレに向けて振り下ろした。
 
 「奥義!ウィーリングリッパー!!」
 
 するとトーレを中心に竜巻が発生してその身を切り刻みスーツもボロボロになっていく。
 そして攻撃を撃ち終わったセレスは確信にも似た表情を浮かべていると、徐々に驚きの表情に変わる。
 
 何故なら目の前にはセレスのウィーリングリッパーを耐えきったトーレの姿があったからである。
 その姿に恐れを抱き半歩下がるセレスに対し、トーレは渾身の力を込めてセレスの胸元の傷を狙う。
 
 しかしトーレの渾身の一撃は致命傷とはいかずインパルスブレードは無惨にも砕け散り
 その代わりとばかりにセレスは大きく振り上げトーレの左肩に狙いを定めて振り下ろす。
 
 だがセレスはウィーリングリッパーの影響の為か思っていた程の力を出せず
 左肩の肉に食い込み止まるが、今のトーレにとって十分な致命傷であった。
 
 「どうやら此処までみたいね」
 「いや………まだだ!!」
 
 するとトーレは何を思ったか左手を胸元の傷口に突っ込み何かを引きずり出すように手を引き抜く、
 そして掌の中にはコードで繋がれたままのレリックが握られていた。
 
 「これで最後だ!!!」

420レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 10:14:15 ID:P.p.mRNc
 トーレは正真正銘最後の力を振り絞り、拳を握ると、
 セレスはトドメを刺そうと刀身で押し切ろうとしたが微動だにせず
 その行動を後目にトーレはセレスの傷口目掛けて拳をめり込ませる。
 
 「ぐあああっ!!!」
 「このまま!消し去ってくれる!!」
 
 そしてセレスの断末魔を合図にトーレはレリックを暴走させて、その大量のエネルギーはセレスを中心にして徐々に広がり
 トーレは達成感からか少し微笑みを浮かべ光に包まれていくのであった。
 
 
 
 「…………姉………レお姉様…………トーレお姉様!!」
 (…………………セッテ?)
 
 まどろみの中…聞き覚えのある声を耳したトーレは、自分に意識がある事に気が付きゆっくりと目を開ける、
 するとそこはベッドの上で、自分の横にはヘッドギアを外し病院服を着たセッテが
 心配そうな表情を浮かべ自分の名を何度も呼ぶ姿があった。
 
 そしてトーレは自分の体に目を向けると戦闘スーツは脱がされ、セッテと同じく病院服が着させられており、
 上半身は包帯に巻かれ、体のあちこちにガーゼが張られ、右腕に目を向けると二の腕から先が無い為か裾が余り
 左手を自分の目線まで向けると手首から先が無くなっており、包帯が巻かれていた。
 
 そしてトーレはゆっくりと体を起こし始め辺りを見渡し、此処が医務室である事を確認すると
 二人がいる部屋の扉が開き眼鏡をかけた一人の女性が姿を現す。
 
 「流石は戦闘機人、もう目が覚めたのね?」
 「………貴様は?」
 
 トーレは目に力を込め睨みつけると、女性は笑顔で応え名を名乗る。
 彼女の名はマリエル・アテンザ、周りからはマリーと呼ばれている機動六課の一員で
 主にデバイスの整備などを請け負う整備員で、スバルやギンガの定期検診にも手を貸しているという。
 
 「では私達を助けたのは貴様なのか?」
 「私は処置を施しただけ、助けたのは――」
 
 そう言うと扉が開く音が聞こえ目を向けると、其処には二人を助けた人物シャマルが姿を現す。
 シャマルは思っていた以上に早く意識を回復させた二人に驚いていると、
 トーレは自分達が此処にいる説明をシャマルに投げかけると、快く応じ説明を話し始める。
 
 
 …時間は遡りナンバーズとエインフェリアが戦闘を行っている情報を耳にしたシャマルは、
 その地域へと向かうとエインフェリアの一体、クレセントの両脚が切り取られた状況に遭遇する。
 
 そして森の中にうつ伏せの状態で倒れているセッテを発見、治療を施し七割方治療を終える頃
 トーレはセレスのウィーリングリッパーを耐え抜いた時であった。
 
 そして眠りについているセッテから寝言でトーレの名を聞き、上空にいるナンバーズがトーレであると判断するが、
 トーレは自爆を行おうとしている事を察し急いで旅の鏡を準備
 そしてトーレの最後の攻撃の際に生まれた隙をついてトーレの背後に旅の鏡を配置し
 
 レリックのエネルギーが完全にトーレを包み込む前に引き寄せ、
 暴走したレリックを握った左手首を斬り落とすように旅の鏡を閉じて二人を救出、
 
 そして二人を病院に運び入れ、治療対象が戦闘機人であった為、
 マリーと連絡を取り、その後マリーの手によって治療を施したのだという。

421レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 10:16:25 ID:P.p.mRNc
 「…そうか、だが何故敵である私達を助けたのだ?」
 「たとえ敵でも味方でも怪我人には違いないでしょ」
 
 医者として怪我人を放っておくのは矜持に関わる、故に助けたのだとシャマルは話を終えると、
 今度はマリーは二人に今の肉体の状況を説明し始める。
 
 先ずセッテであるが、胸元を大きく開けた傷口は、
 レリックのエネルギーを用いて強化した再生能力により、ある程度再生されていた。
 
 だが…その代償に肉体の細胞は劣化、戦闘行動に耐えられる肉体では無くなったと言う。
 しかし日常生活においては問題ないと説明を付け足した。
 
 寧ろ問題はトーレの方である、肉体の耐久力を超えるエネルギーの連続使用
 そして大きな深手に両腕の消失、更にはコードを繋いだままの自爆の影響で
 
 基礎フレームに亀裂と歪みが生じ修復するのはほぼ不可能
 現状では立つ事すらままならず、長いリハビリが必要であると告げる。
 
 「…そうか」
 「取り敢えずその両手から修理を―――」
 「いや、このままで良い」
 
 マリーの申し出を断るトーレ、幾ら意識を失っていたとはいえ敵に情けを掛けられ、これ以上掛けられる訳にはいかないと話す。
 だが両手が無いままでは生活に支障が出ると告げると、セッテがトーレの面倒を見ると志望する。
 
 今までずっとトーレに世話になりっぱなしであった、故に今度は自分がトーレの世話をする番
 自分の分まで動いてくれたトーレに少しでも恩返しがしたいのだという。
 
 セッテの決意を秘めた瞳にマリーとシャマルは折れた形で承諾すると、
 もう一つ伝える事があると言う、それは二人の処分である。
 管理局の意向は意識が戻り次第、ミッドチルダの混乱の関係者として逮捕すると言うものであった。
 
 「…そうか、では潔く捕まろう」
 「思っていたより素直ね、てっきり抵抗するのかと」
 
 シャマルの言葉にトーレは少し笑みを浮かべながら自分の考えを話し出す。
 今の状態で抵抗しても無駄である事は明白、しかしそれだけではない。
 敵とは言え治療を施して貰った恩を仇で返すのは、戦士としての矜持に反すると答えセッテもまた深く頷く。
 
 その言葉はマリーとシャマルを信用させるには十分足るものではあるが、一応規則である為に部屋の四方に結界を張り
 出られないようにしてからマリーとシャマルは別れの挨拶と共に部屋を後にすると
 トーレは少し頷きゆっくりと横たわりセッテもまた自分のベッドに戻り眠りにつく。
 
 
 
 …こうして二人の戦士は休息を得るのであった……

422レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 10:19:59 ID:P.p.mRNc
 以上です、ルーテシア改心、トーレリタイヤなな回です。
 
 
 

 次はクロノ組等を予定しています。



 それではまた。

423レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 10:24:20 ID:P.p.mRNc
PC規制、携帯さるさんで身動きとれなくなりました。

申し訳ありませんがどなたか代理投下をお願いします。

424レザポ ◆94CKshfbLA:2009/10/24(土) 10:57:01 ID:NiJZYCoY
代理投下確認しました

ありがとうございました。

425NZ:2009/10/25(日) 20:47:25 ID:Am3ybbYw
すいません
本スレのほうでGet Ride! リリカルドライバー
のタイトルで投下していたところ
さるさんにひっかかってしまったのでどなたか
代理投下おねがいします

426NZ:2009/10/25(日) 20:48:54 ID:Am3ybbYw
あとがき
このたびはこんな初心者作者の駄文ですがGet Ride! リリカルドライバーをお読みいただきありがとうございます
今回の話はテレビ東京系にて2004年4月5日から2005年3月28日にかて放送されたGet Ride! アムドライバーの
登場人物、出来事を魔法少女リリカルなのはStrikerSのキャラクターおよび世界に引っ掛けたものであります
なのでストーリーセリフはクロス元であるアムドライバーメインのためリリカルなのはファンの方の中には
内容に対し不満を持つ方もいらっしゃると思いますがそのあたりの事は黙認してくださるといいのですが。
さて、ここでどのアムドライバーのキャラクターにどのリリカルなのはのキャラクターを引っ掛けたのかを
番外編として追記しておくので読みたい方はどうぞ。

主人公
スバル・ナカジマ=ジェナス・ディラ
理由イメージカラーが両方共青でジェナスが熱血漢のためスバルに通ずるところがある

ティアナ・ランスター=ラグナ・ラウレリア
理由両者共射撃を得意としているため。性格は全く違いますが他に主人公と同期で相棒つったら他に誰がいる!!
と言うことで抜擢しました。

キャロ・ルシエ=セラ・メイナード
理由何処となく漠然としませんが、セラはジェナスやラグナと同じ14歳と言う事なのでロリファンの皆様には申し訳ありませんが
大人キャロを想像してお読み下さい

フェイト・T・ハラオウン=パフ・シャイニン
理由パフがセラのいたチームのリーダのため。というかキャロがセラになったのココのせいでしたねスイマセン

エリオ・モンディエル=ジュリ・ブルーム&ジュネ・ブルーム
理由セラのチームメイトのため本来は双子の姉妹って設定なんですがココはあえてエリオ一人にしました

シグナム=ダーク・カルホール
理由歴戦の戦士のため。ダークさんは兄貴分のおっさんなんですが歴戦の戦死が他になかったためとヴィータとの設定を
つりあわせるためにこういうふうにしました

ヴィータ=タフト・クレマー
理由シグナムとつりあわせるため。タフトさんはダークさんの相棒で言動と容姿から狂人と思われていますが
根はとてもやさしい良い人で自分のギア(武器)は自分で整備して子供好きと言う見た目と性格の不釣合いを
ヴィータと重ねましたがこちらも歴戦の戦士のため大人ヴァージョンを想像していただくとありがたいです

高町なのは=ガン・ザルディ
理由どちらも主人公の憧れの人だから。と言う基本を守ったら結局ああ言う結末に、
とはいえ作者は某氏の作品においてなのはさんは戦い続けた結果心がぼろぼろになり何も感じなくなって行き
ヴィヴィオと戦った時でさえ目の前にいる敵(聖王ヴィヴィオ)をどうやったら倒せるか、どうやったら滅ぼせるか、
どうやったら殺せるか、と無意識の内に考えていたと言う描写が頭に焼き付いて離れないため
最後のセリフは非常に合っていると思ったためこうしました

およびシーン・ピアース、ニルギース、シャシャはクロス元であるアムドライバー通りですので。

(シャシャのあの喋り方はアニメやゲームでの、フランス語交じりのカタコトと言う設定通りです

427NZ:2009/10/25(日) 20:50:44 ID:Am3ybbYw
いじょうです
どなたかお願いします

428NZ:2009/10/25(日) 21:11:18 ID:Am3ybbYw
何とか投下完了したので代理投下しなくても結構ですよ

429<削除>:<削除>
<削除>

430<削除>:<削除>
<削除>

431NZ:2009/10/31(土) 18:58:48 ID:Lo8fqE0E
どうやら、2ch全体で大規模な規制が行われているようなので
投下できる方にお願いしたく思い戸々に投下します。
以下本文です。

432NZ:2009/10/31(土) 19:06:06 ID:Lo8fqE0E
既に、まとめページでは編集済みですが、ロックマンRXプロローグと第一話を投下します
以下、本編です。

433ロックマンRXプロローグ:2009/10/31(土) 19:07:07 ID:Lo8fqE0E
*****************
ある時、戦いがあった。
『全てを捨てる』者と、
『全てを守る』と誓った「風」と「翼」の名を持つ者との戦いが・・・
この物語は、歴史に決して残ることのない「翼」の名を持つ者のもうひとつの戦いの物語である・・・
ロックマンRX始まります。
*****************

               THE NEW HERO

               ROCK. . .ON

               ロックマンRX
エール
「ロックオン!!」

434ロックマンRX第一話:2009/10/31(土) 19:10:38 ID:Lo8fqE0E
あたしは、セルパンを倒した、後ライブ・メタル達の力で、セルパン・カンパニー本社を脱出して、
サイバー・エルフになったジルウェと再会していた。
(運命ってモノは誰かに決められるものじゃない、文字通り『命』を自分の行きたい未来まで『運』ぶ事だ)
(エール、お前が世界を運べお前の行きたい未来までこの世界を、送り届けろ・・・)
(それがお前に託す最後の、運び屋の仕事だ・・・)
それっきりジルウェの声は聞こえなくなった。

第一話『全てを守る者』

気が付いたら、あたしは草原に立っていた遠くの方に街がある。
「エール!!」
!!
後ろを向いたら、ガーディアン・ベースから降りてガーディアン達が、並んでいた。
金髪で、ピンク色の帽子と服を着ているのは何時も通りだけど、
何時もは自分の席に大事においてある白猫のぬいぐるみを抱いている少女があたしの方に賭けて来た
「プレリー!!あたしやったよ、セルパンとモデルVを倒したんだ!!」
彼女はプレリー、ガーディアンにこんなあたしと同じような年の女の子がいるのはおかしいって?
それには、理由があるんだけどそれは後で。
「ええ、だけどもっと事態は悪い方向へと進んでいるの、フルーブから説明してもらうわ」
ガーディアン達のほうから青い服をきてヒゲを蓄えた小柄な老人が歩い来ようとした瞬間、
近くで爆発が起きた遠くの方を見れば、カプセル型のメカ二ロイド?が近付いているのが見えた。
数は、ザッと、10〜20倒せない相手じゃないけど、あたしもさっきの戦いで疲労している、あまり長引かせ分けには行かない。
「プレリー!皆を連れてガーディアン・ベースへ!!」
「分かったわ、貴女も気をつけてねエール・・・」
「さ〜て、行くわよ!モデルX、遠距離から片をつける!!」
(分かった!エール、ロックオンだ!!)
「うん!!」
あたしはモデルXを両手で目の前に突きつける様に構える。
「ロック!!・・・」
「そこを動かないで!!」
何処からか声がした、とても凛々しい、けど優しい声だった。
「何!!」と言おうとして後ろを向こうとした瞬間、桜色の閃光が飛んできたあたしは反射的に衝撃に備えたとてつもない爆風だ、
こんな衝撃なら、直撃したメカニロイド達は・・・・目の前には小さなクレーターが出来ていた、さっきの声の主がやったのは、
分かるので、後ろを向いた・・・そこには天使がいた・・・
その容姿は、髪をツインテールにしていて、まさに天使と言っていいものだった。
服は余りに戦場に不似合いな格好だった、そして宙を飛んでいる、靴からさっきの閃光とおなじ桜色の鳥の翼のような
ものが生えているがあんな物で空に浮いていられるはずがない、だけどジェットパックや、モデルHXのような
ビームによる翼を生み出すような物を身に付けている様子もないそして・・・
手には、さっきの閃光を放てるようには、見えない金色の紅い宝玉の付いた魔法の杖としか形容できないものを持っていた。
その人はゆっくりと降りて来た。
「大丈夫?」
「ええ、はい・・・」
「事情は聞きたいから、一緒について来てくれる?そこにいるあなたの仲間と」
どうも断れそうになさそうだ、それについていけば詳しい状況を聞けそうだ、よく考えればいくら、
ライブ・メタルの力を使ったからって、こんなに、街から離れられる分けはないし、
あの街にはどう見てもセルパン・カンパニー本社の残骸や、大型エネルギー供給装置も見当たらない。

435NZ:2009/10/31(土) 19:13:04 ID:Lo8fqE0E
以上、本編でした
できるだけ、迷惑をかけぬよう努力致しますので
どうか、暖かく見守ってください。

436NZ:2009/10/31(土) 19:21:50 ID:Lo8fqE0E
以上です。
何方か代理投下できるかたがいらっしゃればお願いします。

437シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/10/31(土) 23:56:47 ID:MUG2zkJs
こんにちは。
本スレのほうにアクセス規制で投下できないので代理投下のほうよろしくお願いします。
本編はこの線の下から
──────────

マクロスなのは 第10話 『預言』

アルトとなのはが技研から帰還した翌日。
2人は報告書を読んだはやてに呼び出されていた。その理由はバルキリー配備計画についてだ。
「─────つまり、レジアス中将がこの計画を立案したんか?」
2日前からよく寝たのか、はやての顔色はよく、しっかりしていた。しかし彼女の顔は今、苦悩に歪んでいる。
「うん、そうだよ。はやてちゃんも聞いてなかったの?」
「そうや、ウチは聞いとらん。管理局の殉職者が12人ってのは知っとったけど・・・・・・」

重たい沈黙。

その時2人の背後のドアが開き、小人(こびと)が飛んできた。
「はやてちゃんそろそろ行く時間ですよぅ〜」
リインはなのはとアルトの頭上をしばらく旋回飛行していたが、アルトが振り返り見ると、なのはの肩に
どこかの〝竹を取る〟物語に出てくる小人のように〝いと美しゅうてゐたり(とても可愛らしい様子で座っ
ていた。)〟
「ああ、もうそんな時間か・・・・・・いきなりで悪いけど、これから2人ともちょっと付き合ってな。」
はやてはイスに掛けられた上着に袖を通しながら告げる。2人は事態か読めず、顔を見合わせた。
そこに新たに部屋に入ってきた者がいた。
「はやて、車は用意したから、いつでも行けるよ。」と、フェイト。どうやら彼女もこの件に1枚噛んでいるよ
うだ。
「フェイトちゃん、どこ行くの?」
「あれ?まだはやてから聞いてなかった? 昨日、聖王教会から連絡があってね。新しい預言が出て、つ
いでに『はやての友達に会いたい』って言われたんだって。」
「ああ、なるほど。えっと・・・カリムさんだっけ?」
「そうや、前々から会わせたいと思っとったんやけど、機会がなくてな。・・・ほな行こか。」
はやて達が部屋から出て行く中、アルトは話についていけず、ずっと頭を捻っていた。

(*)

フェイトの私用車に乗ったフェイト、はやて、なのは、アルトの4人は一路、高速道路を北上する。
窓の外の景色が近代的な街並みから森へとシフトしていく。
そんな中、3人からアルトに説明がされた。
まず聖王教会とは、聖王を主神とする宗教団体で、数多くの次元世界に影響力をもつ大規模な組織であ
ること。
教会はミッドチルダ国の領内にありながら独立しており、税金などの面においても名実共に聖域であること。
財源は基本的には寄付で成り立っており、その額はミッドチルダの国家予算の半分程度という莫大な規
模になっている。そのため自らがミッドチルダ政府に設立を要請した〝時空管理局〟の予算の半分近くを
握る最大のスポンサーであること。
このような歴史的事情から必然的に時空管理局と繋がりが強く、ロストロギアの管理、保管はそこが担当
しているらしい。
しかし今は教会自体は関係なく、そこに所属しているはやての友人であるカリム・グラシアという人に用が
あるらしい。
なんでも彼女は『プロフィーテン・シュリフテン』という未来を予知する古代ベルカのレアスキルを持ってい
るという。
「なんだそれ? 未来がわかるなら最強じゃないか。」
アルトはそう言ったが、そうでもないそうだ。
はやて曰く、カリムの預言はこの惑星を回る月の魔力の関係上、1年に1度しか使えず、表記も古代ベル
カ語の、さらに解釈の難しいことで有名な詩文形式で書かれている。
また、期間も半年から数年後のことがランダムに書いてあるため、実質的な信頼性は「よく当たる占い程
度」だという。
本局と教会はその内容を参考程度に確認するが、地上本部は当たらないとして無視するらしい。

438シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/10/31(土) 23:58:07 ID:MUG2zkJs
「そんな胡散臭いもの信用できるのかよ。」
アルトも疑うが、はやては1歩も引かない。なのはやフェイトも〝はやてが信用しているなら〟と、まったく
疑いはないようだ。
そうこうしているうちに、100キロ近い距離を走破した車はそこに到着した。
教会はその名に恥じぬ壮大な造りで、一瞬アルトに中世の城をイメージさせたが、最新技術と見事に調和
したそれはよほど近代的だった。
車を駐車スペースに停めた4人に玄関から近づいてくる人影がある。
「お待ちしておりました。」
彼女は一礼すると品よく笑顔を作った。
「おおきに、シスターシャッハ。」
「はい。みなさんもお元気そうで・・・あら?そちらの方は?」
「彼は次元漂流者の早乙女アルト君。今は六課の隊員をやってもらっとる。」
はやての紹介にシャッハはアルトにプライスレスのスマイルを作り、「聖王教会にようこそ」と告げた。

(*)

その後シャッハに連れられて教会に入り、いくつもの装飾品の並ぶ玄関を横切り、廊下を歩いていく。
(なんか鳥関連が多いな・・・)
玄関に入ってすぐにあった床の塗装も鳥が大きく翼を伸ばした姿が描かれていたし、各種置物も翼を伸
ばした鳥という案配(あんばい)だ。
後でわかったことだが、聖王教会では鳥がモチーフになったシンボルマークが使われており、よほど好
きらしい。
(ん?・・・あいつら、なにやってんだ?)
続いてアルトが見たのは1組の男女。しかし男の方は前時代的な切断器具である〝ノコギリのように削ら
れた1メートル程の木の棒〟を女性に突きつけていた。
それで女性が恐怖に怯えているなら話は簡単であり、アルトも助け出すことを躊躇しなかっただろう。
しかし女性の方は喜んでいたようだった。
─────世の中には「殺してやる!」などと叫びながら相手を縛りつける〝遊び〟が存在するらしいし、
きっとこれもそんなSとMがつくような〝遊び〟の一種だろうと結論を出したアルトは、『嫌なもの見ちまっ
た。』と目を背けた。
(というか真っ昼間からやるなよ・・・)
アルトはそう思いながらどんどん歩を進めるシャッハ達を追った。

(*)

しばらく歩くとシャッハは1つのドアの前に立ち止まった。

こん、こん

広い廊下にノックの音が反響する。
『どうぞ。』
内から聞こえる女性の声。シャッハはドアを開けると直立する。
「時空管理局の八神はやて様ご一行がいらっしゃいました。」
『ありがとう。』
内から聞こえる女性の声にシャッハは一礼すると、はやて達を部屋に招き入れ、自分は出ていった。
部屋はなかなか広くカリムという人の重要さを物語る。
なのはとフェイトは部屋に入ると突然直立不動となり敬礼。アルトも慌てて続いた。
カリムという人物は『便宜上ではあるが、管理局の少将クラスの階級を持っており〝お偉いさん〟であ
る。』と、はやてが言っていたことを遅まきながら思い出す。
「失礼いたします。高町なのは一等空尉であります。」
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン一等海尉です。」
「早乙女アルト准尉です。」
3人が名乗る。
すると奥から、長いストレートな金髪に紫のカチューシャを着けた25歳ほどの女性が現れた。
彼女は「いらっしゃい」と告げると、名乗った。
「初めまして。聖王教会、教会騎士団騎士、カリム・グラシアと申します。どうぞ、こちらへ。」
カリムに周囲がガラス張りになったテラスへと誘導され、彼女とはやてはイスに腰を掛ける。
なのは以下3人は「失礼します。」と一礼してイスに腰を掛けた。
するとカリムはこれまた品よく笑う。

439シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/10/31(土) 23:59:26 ID:MUG2zkJs
「3人とも、そんなに固くならないで。私たちは個人的にも友人だから、いつも通りで平気ですよ。」
「・・・と、カリムが言うてるし、いつもと同じで平気やで。」
カリムとはやての許可に、なのはとフェイトは即座に友人モードにスイッチングし、普段どうりの口調に戻
った。
「改めてこんにちは、私のことは〝なのは〟って呼んでください。」
「はい、なのはさんですね。ハラオウンさんと早乙女さんはなんとお呼びすれば?」
「私はみんなからフェイトと呼ばれています。」
「俺は、アルト─────」
「〝姫〟やろ?」
はやてに出鼻を挫かれ〝ガクッ〟となるアルト。
「ど、どうしてお前がそれを知って─────」
「なのはちゃんの報告書に書いてあったで。」
アルトはなのはに向き直る。すると彼女は少し面白そうに両手を合わせ「ごめ〜ん。あんまりにもぴったり
だったから・・・」と謝罪した。
「こんないいセンス持ったお友達ならウチともいい友達になれそうやわ。」とはやて。
(いかん・・・遊ばれるモードに入っている・・・)
しかしアルトは怒って否定するまねはしなかった。彼は〝大人〟になろうと努力していたし、彼の望む大人
像には短気は入っていなかった。
「・・・なるほどな。確かに〝チビダヌキ〟って愛称を持つお前ならアイツともいい友達になれそうだな。」
反撃に転じたつもりだったが彼のマニューバ(空戦機動)は稚拙すぎ、老獪なはやてには無力だった。
「やろ〜。タヌキってキツネよりもユーモラスやし、チビってのが愛嬌あるみたいで結構気に入っとるんよ〜」
(しまった・・・上手くかわされた・・・!)
青年は己の経験不足を嘆くしかなかった。
「えっと・・・とりあえず、フェイトさんにアルトひめ─────」

ジロリ

アルトの敗者の哀愁を漂わせる視線にカリムは空気を読んだ。
「─────コホン、アルトさん。これからもよろしくお願いしますね。・・・それから私のことはどうぞカリムと
呼んでください。」
全員の自己紹介が終わったところで、はやてが仕切り直す。
「・・・それじゃあいい機会だから改めて話そうか。機動六課の設立目的の裏表。そして、今後の事をや。」
極めて真面目な顔をして言い放った。

440シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/11/01(日) 00:01:29 ID:SkuRKmNE

(*)

周囲のカーテンが閉め切られ、先ほどとはうってかわって密会の雰囲気が出たテラスではやては説明を
始める。
「六課設立の表向きの目的は、対応が遅く、練度の低くなった地上部隊の支援と治安維持。そして時代
の変遷によって不具合が出てきた管理局の非効率なシステムの刷新や。」
はやてが端末を操作し、ホロディスプレイを立ち上げていく。
「知っての通り、設立の後見人は騎士カリムとフェイトのお母さんのリンディ・ハラオウン総務統括官。そし
て、お兄さんのクロノ・ハラオウン提督や。」
アルトは隣のフェイトに念話で耳打ちする。
『(この前本部ビルにいたクロノって、お前の兄さんだったのか)』
『(うん。)』
『(へぇ・・・、あんまり似てないんだな)』
そこで少しフェイトに陰が落ちる。
『(・・・リンディ統括官もクロノ提督も義理のお母さんとお兄ちゃんなんだ。)』
『(え、あぁ・・・すまない・・・)』
ただならぬ雰囲気を感じたアルトはそれ以上詮索しなかった。
「─────あと非公式にレジアス中将も初期の頃から設立に賛成して、協力を約束してくれとる。」
はやての言葉に、なのは、フェイト、アルトの頭に〝?〟マークが浮かんだ。
『え? あの人は地上部隊の指揮官ではなかったの? なぜ本局所属の六課なんかに?』と。
今でこそガジェットの出現で六課の重要度は増すばかりだが、出現以前から賛成していたというのは理
解できなかった。
普通なら地上のことなのだから、身内(地上部隊)で解決しようとするはずだ。
3人の疑問に察しがついたのだろう、カリムがはやての説明を継ぐ。
「レジアス中将が設立に賛成したのには理由があります。それは私の能力と関係あるんです。」
カリムの説明によると、彼は優秀な部下として可愛がっているはやての勧めで、地上本部傘下にありなが
ら地上部隊最高司令官としてカリムの預言に耳を傾けているらしい。
しかしそれだけではまだ六課の味方をする理由がわからない。
そこで立ち上がり儀式魔法を展開。準備を始めるカリムに、はやてが補足する。
「最近のカリムの預言に、1つの事件の事が徐々に書き出されとるんや。」
どうやら準備ができたらしい。カリムが浮いていた紙の内1枚を手に取り読み始める。

『赤い結晶と無限の欲求が集い、かの翼が蘇る
閃光と共に戦乙女達の翼は折れ、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ちる
それを先駆けに善なる心を持つ者、聖地より〝鳥〟を呼び覚まし、
数多(あまた)の海を守る法の船も砕き落とすだろう』

その預言が聞く限り悪いことのオンパレードであることに、初めて聞いた3人が絶句する中、はやてが更に
補足する。
「ウチらはこれをロストロギア〝レリック〟によって始まる時空管理局地上本部の壊滅と、管理局システム
の崩壊だと解釈しとる。レジアス中将もそれを鑑みて、比較的自由度と拡張性の高い、六課の設立に賛成
してくれたんや。」
その説明に「なるほど。」と、3人は納得した。しかしはやての顔が優れない。
ここは喜ぶところではないとは思うが、失望したような表情をするところでもないはずだ。
そんなカリムを含めた4人の心配が伝わったのだろう。はやてが訥々と、理由を口に出し始める。
「・・・レジアス中将には、わかってもらえたと思ったんやけど・・・なぁアルト君、なのはちゃん、あの配備計画
は本当なん?」
突然話をふられた2人は驚きつつ頷く。
「すみません、〝あの配備計画〟ってなんでしょうか?」
カリムとフェイトが話についていけないので、なのはが速成で説明する。
「昨日レジアス中将が話してくれた計画で、『バルキリーを量産、低ランク空戦魔導士に配備して被撃墜率を
下げよう』って計画です。」
その話を聞いていなかった2人は「レジアス中将ならやりそうなちょっと強引な計画だ。」と納得した。
「・・・確かにちょっとギリギリな計画だとは思う。んだが、悪い計画じゃないんじゃないか。どうしてお前はそん
なに嫌がるんだ?」
そう言うアルトをはやては見つめると、1つの事を聞いた。

441シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/11/01(日) 00:03:47 ID:SkuRKmNE
「アルト君、あなたの飛行機の通称は?」
「? なに言ってるんだ。〝バルキリー〟に決まって・・・あっ!」
言いながらアルトは気づいた。
〝バルキリー〟この読み方は英語式の〝ヴァルキリー〟に端を発し、日本語では〝ワルキューレ〟と
呼ばれる。
意味は昔の地球の北欧神話に出てくる半神の名で、戦乙女という意味だ。
確かアルトの調べた限りこの世界にも偶然か、はたまた必然なのか、その呼び名を持つ同じような神話
があった。
それではやての悩みは理解できた。預言の戦乙女の記述が、心配なのだろう。しかし─────
「バルキリーは戦乙女という意味だ。」
アルトの言にカリム、フェイトが驚愕する。しかしなのはは、わかった風に静かだ。どうやらなのはもアル
トと同じ考えに行き着いたらしい。
「ど、どうして2人は冷静でいられるん!? レジアス中将は戦乙女=バルキリーなんてわかってるはず
やのに!」
はやてが珍しく語気を荒げる。
「はやて、」
「はやてちゃん、」と、アルトとなのはの声がハモった。
2人は顔を見合わせ笑うと、なのははジェスチャーで「お先にどうぞ。」と送りだした。
「お前は、どうして六課があるか忘れてるんじゃないか?いや・・・俺たちの報告書がマズかったかもしれ
ないな。〝つまらん例外〟以外あれは客観的事実しか書いてなかったからな。」
その〝つまらん例外〟を書いた本人であるなのはは、投げられたアルトの視線に「テヘへ」と頭を掻いた。
アルトは続ける。
「─────んだがあの時中将は俺達に、『ミッドチルダをよろしく頼む。』って言ったんだ。今ならわか
る。あの重さが。」
座ったアルトに変わり、なのはが継ぐ。
「レジアス中将は私達に期待してくれてるんだよ。『きっと六課が、預言を阻止してくれる!』って。・・・それ
にね、戦乙女って六課とも取れるんだよ。」
そう、どちらかと言えばそちらの方が可能性としては高い。
昨日見た設計段階のバルキリーは、反応エンジン、航法システムなど武器以外は魔法や魔力結合に頼
らぬほぼ純正のものを踏襲していた。
そのためバルキリーはランカレベルの超AMF下でも十分飛行と戦闘が可能だった。
またその他の要因にしても、魔導士にあってバルキリーにない防衛機構などほとんどない。逆に優秀な
ものならいくらでもある。
大規模センサーなど電子機器しかり、魔力の回復の早い小型魔力炉しかり、圧倒的な馬力や装甲しか
り・・・
はっきり言って脆弱ななのは達魔導士方が簡単に、預言の文句と同じく〝翼は折れ〟た状況になるだろう。
「その時、誰が助けに来てくれるのかな?」
なのはの決め台詞はこれだった。
とりあえず現状の魔導士部隊には不可能だ。しかし、バルキリー隊なら?またこれは逆に、バルキリー隊
が危険なら六課は?とも言える。
両方無力化されるとは考えにくい。しかし、どちらかが機能すれば預言を阻止できる可能性は失われず、
助け合える。
レジアスの言っていた『君達1部隊に地上の命運を任せる訳にはいかない。』とはこの意味があったのだ。
「・・・じゃあ、レジアス中将はウチらの心配もしてくれてたんか・・・」
自らを犠牲にしてでも預言を阻止しようと決意していたはやては、感極まった様子で俯き、声に出さず呟く。
『ありがとうございますレジアスおじさん。言ってくれないだけで、ずっとウチらの事も心配してくれとったん
だね・・・』
はやてが再び顔を上げた時、一同は暖かい笑顔を彼女に向けていた。

442シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/11/01(日) 00:04:59 ID:SkuRKmNE

(*)

「さて、実は新しい預言が出た話だけど─────」
 カリムの一言に、彼女を除く全員が〝あっ!〟と声を上げた。
「・・・そういえばそのために来たんだったね。」
「にゃはは〜完全に忘れてたのですぅ〜」
フェイトとなのはの会話が驚いた人達の気持ちを最も端的に表しているだろう。
「でもカリム、預言は1年に1回じゃなかったんか?」
はやての質問にカリムも困った顔をする。
「それが月とは関係ない、別の力が作用したみたいなの。」
彼女は言いつつ預言書を出し、読み上げる。

『月と大地の交わる所 運命(さだめ)の矢が放たれる』

顔を上げたカリムが、どういう意味がわかる?と一同を見渡す。
「運命の矢ってのは攻撃かな?」と、なのは。
「月と大地ってことは、宇宙か空だよね。・・・まさか衛星軌道兵器なんてことは─────」と、フェイト。
「どうやろう・・・戦時中の軍事衛星は耐久年度を超えてるか叩き落とされとる。それに軌道付近なら管理
局のパトロール艇が監視しとるはずや。この場合、まず悪いことなんかがわからんな・・・・・・」腕組みしな
がらはやてが言う。
「なんかどこかで聞いたような文句だな・・・・・・」とアルト。
その後議論を1時間近く続けたが結論は出ず、カリムの用事のためそのままお開きになった。

(*)

聖王教会から帰るとすでに日は落ち、ヴィータ教官率いるフォワード4人組も既に訓練を終え、宿舎に引
っ込んでいた。
「ほんならなのはちゃん、フェイトちゃん、それにアルト君、わかってもらえたかな?」
はやての声が広い空間を波紋する。
ここは六課の隊舎の玄関前にあるロビーだ。ここからははやての私室のある部隊長室と、なのは達の宿
舎とは反対方向となるのでお別れとなる。
「うん。」
「情報は十分。大丈夫だよ。」
2人は「じゃあ」と言って一時の別れを告げると、宿舎へと続く渡り廊下を歩いていく。
しかし、ラフに壁にもたれたアルトは動かなかった。
「・・・・・・どうしたん?」
「いや、『おまえが他に何か言いたそうだなぁ〜』って思ったから待ってるのさ。なのは達行っちまうぜ、い
いのか?」
はやては去っていく2人の後ろ姿を見て少し逡巡したが、すぐ首を「うん」と力強く縦に振る。
「・・・いや、ありがとうな。本当は言おうと思ったんやけど、よく考えてみれば2人には言わなくてもわかっ
てくれとると思う。」
2人を見送るその横顔は確信に満ちていた。
「・・・そうか。」
「でも、アルト君には確認しておきたい。」
「なんだ?」
アルトはもたれた壁から離れると、腰に手をあてがい聞き耳をたてる。
「六課が、これからどんな展開と結末を迎えるかわかれへん。だけどこのまま六課で戦ってほしいんやけ
ど、ダメ・・・かな?」
「・・・・・・そうだなぁ、六課設立の目的が最初聞いた時と圧倒的に違うからな・・・。実は『壊滅するかもしれ
ない?』『単なるテスト部隊でなく管理局の切り札だった?』。う〜ん・・・おまえの覚悟は立派だし、その気持
ちには同情するが・・・こんな〝危険〟なとこに俺らを引き込んだのか?」
アルトの口から出る痛烈な言葉にはやてはシュンとなる。
「・・・・・・やっぱり、いやなんか?」
「ああ、嫌だね。」
アルトはにのべなく切り捨てた。

443シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/11/01(日) 00:06:12 ID:SkuRKmNE
「危険なのは俺だけじゃないんだ。ランカだって関わってる。もしアイツに何かあったら、アイツの〝兄さ
んズ〟に反応弾(物質・反物質対消滅弾頭)か重量子ビームでスペースデブリ(宇宙の塵)にされちまう
んだ。本当のことを知らされないで、そのことへ覚悟がないのに危ないのは御免被る。」
アルトの言葉にはやてはどんどん肩落とし、泣き出さんとまでになってきた。
「・・・・・・アルト君がそんなに嫌がってるなんて知らへんかった・・・気づけなくてごめんな。なんなら今す
ぐランカちゃんと一緒に─────」
部隊長室へ歩き出そうとしたはやてだったが、アルトの手が肩に触れて立ち止まり、彼を振り返った。
アルトは「やりすぎたか・・・」と胸の内で呟いた。こちらを見上げる小さな少女の目には大粒の涙が溜ま
っていたからだ。
「俺はそういう事を言ってるんじゃないんだ・・・・・・。つまりだな、危険な事でも下手(したて)に出て「ダメ
か?」とか頼むようじゃ人は着いてこない。たとえ俺たちのような〝友達〟でもな。そう言ってるんだ。」
ここではやてはアルトの真意に初めて気づいたようだった。
「いじわるだね、アルト君・・・・・・」
アルトは破顔一笑。
「ほんとにな。よく言われるよ。」
はやては涙をさっと拭うと大仰に決めていい放つ。
「じゃあ、アルト〝くん〟とランカちゃんに〝どうしても〟手伝ってもらいたいんや!いいんやろ?」
「仕方ない、付き合ってやるか。・・・お前もいいだろ?」
アルトは壁に話しかける。そこはロビーに隣接するように作られている自販機コーナーの入り口のドアだ。
気づけば、さっきアルトがもたれるのをやめた時、彼は何気なくそのドアを少し開けていた。
はやてがその行為にタヌキ・・・いやキツネに摘ままれたような顔をしていると、緑の髪した少女が「てへ
へ」と笑いながら出てきた。どうやら偶然最初からいたようだった。
「うん。もちろん。私、このみんなのいる街を守りたいの!」
彼女の赤い瞳には強力な意志の力がみなぎっている。
「こんな2人だが、これからもよろしくな。」
アルトとランカが手を出す。
はやては2人の手を掴み「ウチこそ!」と、100万W(ワット)の笑顔で応えた。

444シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/11/01(日) 00:07:06 ID:SkuRKmNE

(*)

1週間後 国営テレビ放送

『─────現在〝35人〟もの尊い犠牲者を出してしまいました。それはガジェットと呼ばれる───
──』
テレビは本部ビル前の仮設会場を写し出している。そこではレジアス中将が記者会見を行っており、その
内容は管理局に殉職者が出たというものだった。しかし─────
『─────しかし皆さん、我々はこの事態を止める時が、止めることのできる時が来ました!すでに我
々にはその手段があるのです!』
レジアスがいままでの悲しい表情から一転、力強い顔と口調に変わる。
「・・・始まったな。」
食堂で昼飯を食べていたアルトが呟く。今ここには隊長、副隊長陣を含め、フォワード4人組やその他職
員が昼飯をつついている。しかし、皆レジアスの豹変にテレビに釘付けだった。
『・・・・・・私は時空管理局、ひいてはこの世界の存亡をかけた最後の防衛策として、〝ヴァリアブル・ファ
イター(VF)〟の導入、運用をここに宣言します!』
一斉に焚かれるフラッシュ。
そして一呼吸置くと、会見場に超大型のホロディスプレイが出現した。テレビはそのままホロディスプレイ
の映像に切り替わる。
『ヴァリアブル・ファイター配備計画とは、現在ミッドチルダの持つ工業力を最大限使って行われる、空戦
魔導士部隊の大規模装備改変計画です。ヴァリアブル・ファイター、略して〝V(ブイ)〟〝F(エフ)〟と
は─────』
ナレーターには落ちついた女性の声が当てられ、モニターにはVF−25を初め、VF−1やVF−11の映
像が流れる。
「隊長達はご存知だったんですか!?」
自らの上官達が驚かないことに気づいたティアナが席を離れ、こちらに詰め寄る。
「こんな質量兵器紛いの物を─────!」
「ティアナ、」
なのはの射るような声が届く。いつもと違う教官の様子にティアナは即座に黙らされた。
「私達は確かに聞いた。でもね、その時の殉職者は〝12人〟だったの。1週間前よ。これがどういう事か、
わかるよね?」
現在の殉職者数と、たった1週間前の殉職者数。その行き着く結論にティアナは「すみません!」と頭を下
げ、自らの席に戻っていった。
このやり取りのおかげで事態の緊迫性を理解した他全員は沈黙を守った。
『─────現在ヴァリアブル・ファイター、通称〝バルキリー〟は、汎用人型可変戦闘機としてVF−1
『ワルキューレ』。多用途人型可変戦闘機としてVF−11『サンダーホーク』の採用が予定されています。
このうちVF−11については用途によって搭載機器を、指揮特化型や量産型、そして重武装型などにそ
れぞれ特化して運用する予定です。』
(・・・なんとまぁ、設計だけでなく名称までもじってやがる。こりゃああっちの世界の開発元が聞いたら著作
権で怒るだろうなぁ。設計図を提供したL.A.I社の研究員は大丈夫なのかな・・・・・・)
アルトはそんな事を考えていた。そうしている内に映像が終わり、会見会場にカメラが戻った。
『皆さん、先ほどの映像からこの計画の概要を理解していただけたかと思います。しかし皆さんは「理念違
反だ!」と反対されるでしょう。かくゆう私も最初、この計画は考えてはいても、実行しようとはまったく考えま
せんでした。しかし私は、ある人物の遺言に心動かされてしまったのです。それは─────』
ホロディスプレイの映像が差し変わり、そのある人物の写真が映った。それはツーショットで、彼女と一緒に
写っているのは〝なのは〟らしかった。
まだ部隊に入りたての頃の写真のようだ。2人とも青白の教導官の制服はパリパリで新しく、まるでリクル
ートスーツを着ているような初々(ういうい)しさが漂っていた。
目の前にいたなのはは俯く。とても正視出来ないのだろう。
『この向かって右側の彼女は殉職者の1人、宮島栞二等空尉です。栞空尉はリンカーコア出力がAAラン
クという非凡な才能を生かし、4年ほど前から空戦魔導士の教導隊の一員として業務に就いていました。し
かし2週間前、海上で彼女の所属する教導隊が、新人の訓練を行っていた時にガジェットに襲われたのです。』
プレーヤーが再生される。どうやら襲撃時の通信記録らしかった。

445シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/11/01(日) 00:08:17 ID:SkuRKmNE

──────────

『メイデイ、メイデイ、こちら第4空戦魔導士教導隊。至急救援を乞う!・・・ダメだ!ジャミングで妨害され
てる!』
『新人どもをどこかに逃がせ!邪魔だ。』
『逃がせってここは海上なんだぞ!』
『おい、ショーン・バノン二等空曹!なにやってる!?』
『じ、自分達も戦います!』
『バカ野郎!お前らヒヨッコはバリア張って身を守ってればいいんだ!頭出すな!わかったか!?』
『はっ、はい!』
『吉沢隊長、』
『ああ、栞二尉、助かる。私は右端から落としていくから、君は左端から頼む。』
『了解。・・・しかし隊長、このままではじり貧です。大規模転送魔法で安全圏への退避を。』
『だが新人はそう簡単に動けないぞ。』
『私が囮になります!その間に退避を。』
『しかしそれでは─────』
『こちら左翼。防衛ラインの維持は限界です!至急新人どもを退避させてください!』
『隊長!お願いします。やらせてください!』
『・・・・・・わかった。』

──────────

爆音と喧騒混じりに聞こえる無線達。それらは本気の戦場の模様を写し出していた。
『この後、部隊のほとんどが彼女のおかげで無事に戦域から脱出しました。しかし囮になった彼女には
逃げる隙がありませんでした。そんな彼女は最期に遺言を遺しています。今それを公開したいと思いま
す・・・・・・』
再びレコーダーが再生される。彼女の遺言は、その〝全て〟が公開された。
そしてその放送は世界を沈黙させた。
彼女を知らなくても、同じ人間としてその無念さと理性を失う程の死への恐怖を痛感し、彼女を知る者は
泣き崩れた。
なのはなど最後の方にあった自分の名が呼ばれるところでは、席から突然離れ、飛び出して行ってしま
った。
再生が終わるとレジアスは続ける。
『・・・私は、もうこのような犠牲者を出したくない・・・。それに、彼女達の仇をとってやりたい!栞君達殉職
者の遺影の前に立ったとき、「仇はとったぞ!」と言ってあげたいのです!どうか、皆さんのご理解をいた
だきたいと思います・・・・・・』
映像と会見は深く頭を下げたレジアスを映して終了した。
しかし食堂の誰もが動けなかった。それほどの衝撃をあの遺言は与えていた。
15分が経ち、なのはが帰ってきた。彼女はまたしても気丈に振る舞っているが、その目は痛ましいほどに
泣き腫らしていた。

プ、プ、プ、プーン─────

『こんにちは。午後1時のMHK(ミッドチルダ・放送・局)ニュースです。先ほど行われた記者会見の緊急
世論調査の結果は、もうまもなく集計が完了する予定です。』
時報と共に始まったニュースは各地の反響を伝える。
号外が配られる街頭を歩くビジネスマンや、会見をテレビで見たレストランの客など。それぞれ賛成、反
対などの意見を語っていた。
『─────今のは首都クラナガンの中央駅前からでした。次に、記者会見で名前の出た時空管理局地
上本部、地上部隊所属だった宮島栞、元二等空尉の実家と中継がつながっています。現場にはロバー
ト・ユレスキー記者がいます。・・・・・・ユレスキーさん?』
ニュースキャスターの呼び掛けに、ミッドチルダの古潟県という所にカメラが飛んだ。

446シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/11/01(日) 00:09:33 ID:SkuRKmNE
「─────はい。こちらは先ほどの記者会見で名前の出た宮島栞、元二等空尉の実家前です。」
『ユレスキーさん、何か動きがあったそうなんですが、ご家族の方が記者会見について何か言われたので
しょうか?』
「はい。えぇー、ちょうど5分ほど前に家族の方が来られて、家に入って行かれました。」
映像が中継から録画された映像に切り替わる。
その家の玄関に乗り入れてきた車に、殺到する記者逹。そして車から出てきた2人の男女に、記者逹のフ
ラッシュと質問が殺到する。どうやら彼女の両親らしかった。
2人は記者の質問に応えず、無表情を保っていた。しかし母親はついに耐えかねたのか、とうとうその場
で座り込み、泣き出してしまった。
「どうして家(うち)の子が・・・・・・あんなにいい子だったのに・・・・・・どうしてなの!?」
父親が彼女をなだめて立たせる。しかし彼女は何を思ったのか、おもむろに記者逹が回すカメラのうち1
台をひっつかむと、こう懇願した。
「もう理念とか関係ありません!管理局の皆さん!なんでもいいから、家の大事な1人娘の仇をとってく
ださい!」
それだけ言うと、父親に半ば運ばれるように連れられた彼女はおろおろと泣きながら家の中に消えていった。
カメラが戻り、再びユレスキー記者を撮す。
「・・・・・・以上、実家前からでした。」
心なしかユレスキー記者の顔色は良くなかった。
この事件の加害者であるガジェットは、民間人にも容赦をしない。つまりこの事態は〝もしもの覚悟〟がで
きている自分自身だけでなく、明日には何の罪もない自分の家族や大切な人に起こるかもしれないのだ。そ
う思うと平静でいられないのが人間というものだった。
それを見た六課の隊長・副隊長陣は、瞳に焼き付けるようにじっと見つめながら毅然とした態度を維持。前
線の4人や他の職員逹も絶句しながらその放送に耳を傾けていた。
彼ら、彼女らの前にあるコーヒー、紅茶はすでに室温になっていた。
『ユレスキーさんありがとうございました。・・・・・・はい。』
ニュースキャスターに画面下から紙が回された。彼はそれを一読すると驚愕に目を見開くが、国営放送の
報道者として中立を守るというプロ根性が辛勝したのだろう。無表情を保った。
『先ほどから行われていた記者会見の緊急世論調査の速報が出ました。』
ニュースキャスターが、この世論調査の形態を『コンピュータで無作為に発生させた電話番号で────
─』などと説明すると、大きな見出しと3つの選択肢が現れた。
『まず、対応の遅れによって出してしまった殉職者について。〝憤りを感じる〟〝仕方ないと思う〟そして
〝どちらとも言えない〟の3回答の結果は─────』
画面が円グラフに切り替わり、赤と青、そして緑による色分けがなされる。しかし、青と緑は小さく、赤が圧倒
的で8割以上を占めた。
『赤が〝憤りを感じる〟で81%。青は〝仕方ないと思う〟で10%。緑の〝どちらとも言えない〟という解答は
9%に止まりました。続いて、ヴァリアブル・ファイター配備計画について。〝賛成〟〝反対〟〝どちらともいえ
ない〟の3回答の結果は─────』
ここはアルト達にも緊張の一瞬だった。なぜならこれを元に今後の方針が決まるからだ。仮に反対多数なら、
レジアスは職を追われるかもしれない。
果たして、3色に染まった円グラフは、赤がが半分以上を占め、次に緑。5分の1ほどが青かった。

447シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/11/01(日) 00:10:40 ID:SkuRKmNE
『赤が賛成で58%。青が反対で18%。緑はどちらともいえないで24%でした。・・・今、時空管理局の歴
史について詳しい、ミッドチルダ大学の山本信雄教授におこしいただいております。よろしくお願いします。』
『いえ、こちらこそ』
『・・・・・・それでは早速ですが、〝これ〟はどういうことでしょうか?』
ニュースキャスターの単刀直入な問いに、山本教授は苦い顔をして一言言い放った。
『う〜ん・・・〝時代は変わった〟ということなのでしょう。』
その言葉は後の世が、これからのミッドチルダの変革を思い出す時の原点となるセリフだった。

(*)

賛成多数が決まった直後、はやての携帯端末にコールが入った。
「はい、はやてです。・・・レジアスおじさん!? ちょっ、どうし─────」
そこから先は声が小さく、アルトには聞こえなかった。そして周囲が心配の視線を向ける中、はやては携
帯端末を畳む。
「アルトくん、ちょっと来て。」
突然の指名にアルトは驚く。
しかし、はやてはそれだけ言って構わず行ってしまうため、追わざるをえない。
彼女は食堂を出て、廊下を抜け、結局立ち止まったのは部隊長室の自分のデスクだった。
「どうしたんだよ?」
しかしはやてはその質問には答えず、1枚の紙とペンをアルトに渡す。それを一読したアルトは驚愕した。
「・・・オイ、はやて、これはどういう事だ?」
その紙にはこう書いてある。〝退職届け〟と。
「俺は〝クビ〟って事か?」
はやては不敵な笑みを見せて首を縦に振った。
「お、おいおい!ちょっと待て!どうしてなんだ!? 俺が何をした!?」
「自分の胸に聞いてみ。」
「・・・・・・」
何も浮かばなかった。
「やっぱりわからん。それに退職届けってことは、俺がサインしなければ─────」
「それがダメなんや。もう上が決定したことやから、ウチでも撤回はでけへん。せめてものよしみで、退職
金が多い自主退職にしてあげようと思っただけや。もうあと12時間ぐらいで正式な辞令が下りるはずやで。」
─────どうやら根回しは済んでいるらしかった。
(どうして今さらこんな仕打ちを─────!)
泣く泣くアルトはサインし、毅然と振る舞う。
「おまえのこと、友達だと思ってたんだがな・・・・・・」
せめてもの抵抗に紙を放ってやる。しかし彼女は気を悪くした風もなく受け取る。
「人間て非情やな〜。今度はこっちや。」
アルトは渡された紙に、小さく悪態をつきながら文面も読まずサインし、また放る。
「よし。これで早乙女アルトは、本日付けで晴れて〝本局〟からクビになる訳や。」
彼女はそう言って2枚目をFAXする。
そして10秒待たずに送られて来た返信に彼女はサッと目を通すと、アルトに差し出した。
「? なんだ?」
「読んでみ。」
さっきとは違って今度は慈愛に満ちた笑み。
アルトは先ほどのレジアス以上のはやての豹変に戸惑いながらその紙を受け取り、目を通す。
─────どうやらはやてに1杯食わされたらしい。そこにはこう書かれていた。

──────────

入隊許可証
時空管理局 地上本部 地上部隊 試作航空中隊司令 レジアス・ゲイズ中将
我が中隊は、優秀なパイロットである早乙女アルトの入隊を許可し、階級を一等空尉とする。
なお、明日の1200時をもって本局の籍は剥奪される。それまでに貴官は人型可変戦闘機VF−25に搭
乗の上、『時空管理局 地上本部 技術開発研究所』に出頭すること。
また貴官の今後の任務は、我が試験中隊の実戦教官。及び、本局との連携強化のため、機動六課との
連絡役とする。

──────────

448シレンヤ ◆/i4oRua1QU:2009/11/01(日) 00:13:32 ID:SkuRKmNE
─────つまりメインが変わるだけで六課にも自由に出入り出来るし、なんら不利なところはない。おそ
らくこれは、はやての手回しの成果だろう。六課に残ることになるランカにいつでも会えるように。という配慮だ。
「なんだよ。驚かせやがって・・・」と呟きながら顔を上げたアルトの目に最初に入ったのは、満面の笑顔だった。
「昇進おめでとう!アルトくん。」
いつもの人の良い友人、八神はやてがそこにいた。

──────────

次回予告

アルトに迫る砲撃。
しかし彼には友軍はいなかった。
果たして地上部隊に勃発した争いとは・・・
次回マクロスなのは、第11話『地上部隊は誰がために・・・』
「それがな、今度アルトくん達とは〝敵対〟関係になることになったんや・・・」

──────────

投下終了です。ありがとうございました。

──────────
この線より上までどなたか代理投下願います。よろしくお願いしますね。

449レザポ ◆94CKshfbLA:2009/11/03(火) 18:09:04 ID:s8Y/hfRI
なんか繋がらないので此方に投下しておきます

450レザポ ◆94CKshfbLA:2009/11/03(火) 18:09:31 ID:s8Y/hfRI
 那々美がブーストアップ、バレットパワーをジェイクにかけ、
 それにより威力を高めたレストレインフレイムを撃ち放つ。
 
 するとイージスはバリアを張り対処しようとしたが、レストレインフレイムがバリアに触れた瞬間、大爆発を起こす。
 それを目撃したミトスはイージスの援護に向かおうとしたところ、復活したロウファに足止めを食らう。
 
 一方でクロノはイージスを先に仕留めるとばかりにスティンガースナイプを撃ち出すが
 イージスはバリアを張りつつクラウディアに目標を定め、ジェイクごと消し去ろうと強力な魔力砲を撃ち抜く、
 しかし那々美のオーバルプロテクションによってクラウディア全体を包み込みイージスの魔力砲を四散化させた。
 
 するとオペレーターである夢瑠から驚きの一報がクロノ達の耳に届く。
 それは先程、ドラゴンオーブの砲撃により、ミッドチルダ南地区アルトセイム地方が消滅したという知らせである。
 
 つまりこれはドラゴンオーブの攻撃を五発受けた事になり崩壊まで残り二発となった事を意味する。
 事態は急を要する、此処でいつまでも足止めを食らっている訳には行かない、
 
 早急にエインフェリア達を殲滅しなければならない、其処でクロノは念話を使って作戦を提案、
 メンバーはそれぞれ頷くとクロノの指示の下攻撃を開始する。
 
 先ずはロウファがミトスを足止め、その中でクロノはイージスの牽制に務めていた。
 一方でジェイクは那々美からブーストを再度掛けて貰うとカートリッジを三発消費
 デバイスをイージスに向けて構え足下にはミッド式の魔法陣が広がっていた。
 
 それを確認したクロノはイージスがジェイクを気付かないように此方に注意を逸らしながら誘導
 そして絶好のタイミングを見計らってジェイクは攻撃を仕掛けた。
 
 「これが!俺の最高の技だ!」
 
 次の瞬間、デバイスから高速の矢が放たれイージスに当たる度に爆発、
 更にその爆発により舞い上がりながら、尚ジェイクは撃ち抜いていく。
 そして止めとばかりに最後の矢に全魔力を乗せて狙いを定める。
 
 「奥義!ギルティブレイク!!」
 
 撃ち抜かれた最後の矢は吸い込まれるかのようにイージスに迫り見事に頭を打ち抜くと
 先程以上の大爆発を起こし、イージスは頭部を失い力無く落ちていき爆発したのであった。
 
 「おのれ!貴様よくもイージスを!!」
 
 仲間をやられ怒りに満ちた表情を浮かべる中でジェイクは続けて魔力矢を発射
 しかしミトスはバリアにて攻撃を受け止めていると
 
 ロウファが那々美の下に駆け寄りブーストアップ、フィールドインベルドとストライクパワーを指示、
 那々美はロウファにツインブーストを掛けるとすぐさまミトスに迫りカートリッジを三発消費する。
 
 「この一撃ですべてを断つ!!」
 
 ロウファは持っていた槍型デバイスでミトスに攻撃、ブーストの効果もあってか簡単にバリアを砕くと、
 引っかけるように引きずり見回し最後は強力な魔力の竜巻を起こす。
 
 「奥義!ジャストストリーム!!」
 
 ロウファが起こした竜巻はミトスの身を切り刻みながら上っていき結界を破壊
 更に立ち上り次元海に放り出されるのであった。

451レザポ ◆94CKshfbLA:2009/11/03(火) 18:12:33 ID:s8Y/hfRI
 
 しかしミトスは未だ起動しており、持っていた杖をクラウディアに向け構えると
 足下に巨大な魔法陣を広げ詠唱を始める、それを目撃したクロノもまた足下に魔法陣を広げ詠唱を始める。
 
 「虚空を伝う言霊が呼び覚ませしは…海流の支配者の無慈悲なる顎門!!」
 「悠久なる凍土…凍てつく棺のうちにて永遠の眠りを与えよ!凍てつけ!!」
 
 互いに強力な広域攻撃魔法の準備が整うと躊躇う事無く撃ち抜く。
 
 「ダイダルウェイブ!!!」
 「エターナルコフィン!!」
 
 そしてミトスが放ったダイダルウェイブは水流が竜を象り襲いかかる中で
 クロノのエターナルコフィンは周囲を白銀に染め上げ吹雪くとダイダルウェイブと激突
 
 激突した場所ではエターナルコフィンがダイダルウェイブを凍らせ、
 ダイダルウェイブがエターナルコフィンを押し返すという状況であった。
 
 戦局は五分と五分に見える状況であるが、徐々にではあるが確実にクロノが押し始めていた。
 そしてみるみるうちにダイダルウェイブが凍り付きミトスの目前で一気に勢いを増し、
 巻き込むようにして凍結、ミトスはダイダルウェイブごと氷のオブジェと化した。
 
 「…砕け散れ!!」
 
 クロノは一言呟きスティンガーレイで氷のオブジェを破壊する、
 そして感傷に浸る暇もなく夢瑠にエインフェリアの撃破を伝え
 夢瑠は本局に打診する中でクロノ達は何事も無かったかのようにクラウディアへと戻るのであった。
 
 
 時間は遡りクロノ達がエインフェリア撃破する前アルトセイムが消滅した頃、
 その一報を本局から伝えられたはやては、流石に焦りの色を見せていた。
 
 そして目前にはエインフェリアの一体、リリアが不敵な笑みを浮かべて対峙している。
 今現在はやては、リリアと戦闘を行っており、戦況は互いに実力を探るかのような状況であった。
 
 しかしドラゴンオーブの第五射により地表の振動は更に増し、海も荒れ果て、空は曇天と化し、
 これ以上の状況の悪化は防がなければならない、先ずは目先の問題から片づけよう。
 そう判断したはやてはシュベルトクロイツをリリアに向け宣言する。
 
 「…んじゃまぁ、時間も無いちゅう事でサクサクと終わらせたるわ!」
 
 そう言うなり体から大量の魔力が溢れ出し、シュベルトクロイツを剣に変えると
 両足にフェアーテを纏い背中のスレイプニールを羽ばたかせ一気に加速
 瞬時にリリアの背中を捕らえると一気に振り下ろし、背中をバッサリと斬りつける。
 
 余りにもの一瞬な為か驚きの表情と共に振り返ると既にはやての姿は無く、
 寧ろ後ろをとられており、剣からハンマーに切り替えたシュベルトクロイツが容赦無くリリアの右こめかみに直撃する。
 
 そして吹き飛ばされるリリアであったが、弓型デバイスをはやてに向けエイミングウィスプと呼ばれる聖属性の誘導弾を撃ち出す、
 しかしはやてはプロテクションとパンツァーシルトを合わせた二重魔法障壁を発動、エイミングウィスプを防ぎきった。
 
 「くぅ!話と違うじゃないか!!」
 「残念やったな、もう今までの私とは違うんよ」
 
 吹っ切れ真の夜天の王となったはやての実力は、既にエインフェリアでは相手にならない程までに至っていた。
 故に不敵な笑みでリリアを見上げる中、シュベルトクロイツをハンマーから剣に戻し

452レザポ ◆94CKshfbLA:2009/11/03(火) 18:13:54 ID:s8Y/hfRI
 刀身を炎で纏うと飛竜一閃を撃ち払い、リリアに攻撃するとリリアはバリアを張り攻撃を受け止める。
 
 するとはやては更に魔力を込め威力を高めるとリリアのバリアは砕け、 リリアは腹部に大きな穴を空ける。
 
 更にリリアの目の前に移動するとシュベルトクロイツを杖に変え左から右に振り払い
 続いて右から左下へと振り下ろし、下から上へ振り上げ、リリアを高々と吹き飛ばし
 そのまま杖を向けると魔法陣を広げ詠唱、投射面にはミッド式の魔法陣の姿もあった。
 
 「此で仕舞いや、かませ犬」
 
 そしてはやてはフレーズヴェルグを撃ち出し、リリアはまるで蒸発するかのように消滅した。
 はやての圧倒的な強さに地上の局員が唖然としている中、それに気が付いたはやては急かすように窘め
 
 局員達は急くように行動を開始、それを確認したはやては小さく頷くと
 ユニゾンしているリインが魔力を感知したとの知らせが入り
 はやては早速その方面に目を向けると、其処には決して忘れる事が出来ない人物の姿があった。
 
 「アイツは…レザード!!」
 
 どうやらレザードの行き先はヴァルハラの様で、
 まさか三賢人と手を組むのではないのか不安を感じたはやては
 現場を他の局員に任せ、気付かれないようこっそりと後を追うのであった。
 
 
 場所は変わり廃ビルの中では手を組んだティアナとウェンディがリディアと対峙をしていた。
 その中でティアナはウェンディに作戦と指示を与える、
 だが当のウェンディはふてくされた顔をする、どうやら仕切られるのが不満なようである、
 
 だがティアナは全く気にかけない様子を表していると、リディアがスターダストと呼ばれる四発の強力な衝撃波を発射、
 二人は左右に飛び回避、剥き出しの柱を背にすると、
 ウェンディが柱から飛び出しエリアルショットを撃ち抜き牽制、
 
 しかしリディアはフレークフラップと呼ばれる魔力の散弾で迎撃
 更に攻撃を加えウェンディに迫る中、ウェンディはライティングボードを盾にして攻撃を防ぐ。
 
 ウェンディがリディアの相手にしている頃、ティアナはリディアの後ろに回り込もうと移動していた。
 だがそれに気が付いたリディアが振り向き、フレイムシュートと呼ばれる炎の矢を撃ち抜くが
 ティアナは飛びかかるかのように柱に逃げ込み、フレイムシュートが撃ち抜かれた場所は大きく穴を空けていた。
 
 そしてリディアはティアナが隠れた柱に狙いを定めフレイムシュートを撃ち抜くと
 覚悟を決めたかのようにティアナが飛び出し、後方では撃ち抜かれた柱が砕ける中、
 手にはダガーモードに切り替えたクロスミラージュが握られており、リディアに迫る。
 
 しかしリディアは冷静に対応、弓をティアナに向けて魔力矢を撃ち抜き直撃する、
 …だが、ティアナは陽炎のように消え去ると、幻影のすぐ脇からオプティックハイドを解除し
 手にはダガーモードを握った低姿勢のティアナが下から上に突き刺すように襲いかかった。
 
 流石のリディアも此には驚きの表情を隠せないでいたが、ティアナの攻撃が直撃する刹那
 弓を盾にして間一髪ティアナのダガーを防ぎ、更にティアナの鳩尾辺りを右足で蹴り飛ばす。
 
 その衝撃はティアナが直撃した床にひびが入る程に強く、ティアナはその場にて痛みと苦しみに動けないでいると
 リディアは冷静さを取り戻し、弓を向け先程と同様フレイムシュートを撃ち出そうとした、
 
 だが次の瞬間、ティアナの後方からウェンディが対消滅バリアを張ったライティングボードに乗ってリディアに迫り
 リディアは咄嗟に左に回避、脇腹を掠める程度に終えるとウェンディに切り替えて矢を放つ。

453レザポ ◆94CKshfbLA:2009/11/03(火) 18:15:05 ID:s8Y/hfRI
 
 しかしウェンディはライティングボードの面の部分をリディアに向けて攻撃を防御、
 更に滑り込むように進みティアナに近づくと手を差し出す。
 
 「ティアナ!早く乗るッス!!」
 
 するとティアナは差し出された手を握りウェンディの背中にしがみつくと、
ウェンディはライティングボードを走らせ、更にフローターマインをばらまき廃ビルを脱出
 そのまま高々と上空に上がり廃ビルを見下ろした瞬間、廃ビルが爆発した。
 
 「……器物破損ね」
 「今はそんな事言ってる場合じゃ無いッスよ!!」
 
 あくまでも冷静なティアナに対しウェンディはつっこんでいると、破壊された廃ビルの中からリディアが姿を現し見上げていた。