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968R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA:2011/05/29(日) 14:56:56 ID:.jmCVDEE
エリオは言葉を切り、視線を上げる。
つられて彼と同じ方向を見やれば、闇の彼方に浮かび上がるベストラの外殻。
闇の中で巨大構造物を照らし出す光源は、外殻の至る箇所より撃ち上げられる直射弾と魔導砲撃、更には無数の質量兵器群が放つ砲火、そして無数の爆発。
その中でも一際巨大な紅蓮の閃光は、ヴォルテールが放つギオ・エルガだ。

だが直後、外殻から幾分手前の空間で、紫電の光が爆発する。
衝撃、そして防音結界が意味を成さない程の轟音。
エリオがストラーダによる姿勢維持を行っている為か、2人は僅かな距離を吹き飛ばされる程度で済んだ。
再度に視線を向けた外殻上では、撃ち上げられる攻撃の密度が明らかに低下している。
先程の閃光、恐らくは波動砲による砲撃であろうが、外殻を狙ったものではなかったらしい。
しかし、その余波は外殻上に展開する此方の戦力、それらを害するには十二分なものであったのだろう。
直接的に狙われたのであろう敵性体群は、文字通り塵すらも残されてはいまい。

「思い上がりだったみたいだ。これ以上なく上手くやっているよ・・・地球軍さえ出てこなければ、もっと良かったんだけど」
「どうして?」
「だから、情報を・・・」
「どうして・・・?」

其処で漸く、エリオも気付いたのだろう。
キャロが、今にも泣き出しそうな表情をしている事に。
余程に想定外の事であったのか、戸惑いの表情を浮かべるエリオ。
だがキャロには最早、彼の動揺を気遣うだけの余裕は無かった。

どうして、来てしまったのだ。
共に在れないから、傍には居られないから、自らの意思で歩み寄る事を諦めたというのに。
どれ程に望んでも叶わぬ願いだから、二度と陽の当たらぬ奥底へ封じ込めてしまおうと思っていたのに。
彼と共に在れない事を考えるだけで、彼の心を踏み躙ってしまった事を思い出すだけで。
それだけで、死んでしまいたいとまで思った事すら在るけれど。
それでも、如何なる形であれ、彼が自身に生きる事を望んでいるのだから。
せめて、彼の望むキャロ・ル・ルシエとして。
自身の生命すら秤に掛ける事のできる、優秀で冷徹な指揮官であろうと誓ったのに。

「キャロ・・・?」
「どうして・・・っ!」

今なら、間に合う。
一言、たった一言。
自身が望む言葉を、言ってくれるだけで良い。
否、同じ意味なら、どんな言葉でも良い。
指揮を執れ、味方と合流しろ、竜達を動かせ、迎撃を続行しろ。
此処に居るな、戦場に向かえ。
そう言ってくれれば、1人でも戦える。
彼がそう言ってくれるのならば、たった独りでも歩んでいける。
彼が、そう願うのならば。

「どうしてッ!」
「キャロ」




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