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放送大学テレビでアラビア語講義

1さーひぶ:2002/12/14(土) 08:38
放送大学テレビ「外国語の招待」でアラビア語特別講義が放映されます。

1回目:2002年12月29日(日) 21:30〜22:15
2回目:2003年 3月16日(日)  6:45〜 7:30

講 師:奴田原睦明氏(東京外国語大学教授)

※いずれも以前から放映されている再放送と思われます。
 アルファベットや簡単なあいさつ程度で、本田孝一氏も以前担当されていたものです。

ソースhttp://www.u-air.ac.jp/hp/bangumi/bangum_2/020303.htm

70さーひぶ。:2006/07/03(月) 00:08:19
第13回講義。
例文①(ماذا تدرسين في الجامعة اللبنانية؟)中の الجامعة は、鷲見先生
の書き方練習で、 الجـ の書き方が例によって前半の文字学習で教えていない
書き方でした。
例文②(.أدرس العلوم السياسية)ですが、前回学習のように、人間以外の
物の複数形は女性単数扱いになり、形容詞も女性形単数になります。
この便利なルールは、アラビア語学習においてどんなに学習者の負担を軽減し
ているか知れません。
〔動詞未完了形〕従来のアラビア語教育では、まず動詞の完了形を教えてから
未完了形に入るやり方が定番でしたが、この講義では未完了形から教えています。
形態論的には、完了形から入って未完了形に移るやり方の方が覚えやすいとは
思いますが。
テキストの囲み欄でもふれられていますが、英語などの現代西欧語における時制
(tense)はアラビア語にはなく、アラビア語では時相(相、aspect)がおもに
用いられます。①動詞の時相を用いること、②1・2人称の人称代名詞を省略
する代わりに動詞の活用で表示する、というこれらの点は古典アラビア語(正則
アラビア語)や古典ラテン語などいくつかの古典語に共通して見られる文法ルール
です。
今回の講義では、動詞はほぼ直説法だけに限定して教えるようです

〔表現〕.أنا متعبة./ أنا متعب 「私は疲れています。」
ムトゥアブ(متعب)は、この講座では詳しく説明しないようですが、
「受動分詞」と呼ばれるもので、「疲れさせられる(もの/人)」という名詞や
形容詞として用いられます。

〔サカーファ〕アラブの詩と小説
アラブでは、音楽の分野でも、近代西欧音楽を受容してアラブの伝統音楽に
欠かせなくなっていますが、同様に文学の分野でも近代西欧の「小説」という
分野がアラブの文学に受容されて大きな分野になっています。
しかし、番組でも説明されているように、伝統的にはアラブ文学では詩が大き
な比重を占め、この講義で学んでいる「正則アラビア語」の成立にも韻文が
大きく影響しているといわれています。

71さーひぶ。:2006/07/10(月) 00:16:41
(第14回については後で書き込みます。)

72さーひぶ。:2006/07/16(日) 14:49:07
第14回講義 (書き込みが一週間遅れました)
冒頭の文字練習は、ゲストのお二人が書かれました。終盤に来て、ようやく
スタジオのゲストに、トークマシンのように座って話すこと以外の役割が与え
られました。ネイティブが普通に書くアラビア文字は、たいていは粗っぽくて
キレイではないのだけれど、日本人の教師がキレイに書くものよりは、ずっと
リアルにアラビア文字の書き方の本質を学ぶことができます。アラビア文字が
続け書きなのは、速記しやすいという利点があるわけで、まず単語全体の線を
ササッと素早く引き終え、点や母音符号は後から付け足すという書き方です。
〔動詞完了形〕 前回の「未完了形」と今回の「完了形」とは、ラテン語文法に
基づく西欧の文法概念「相(aspect)」をアラビア語動詞に当てはめたもので
あって、前述のように英語などの「時制(tense)」とはことなります。
今回の講義シリーズは「初歩」のためか、動詞の活用のうち、女性形複数や
双数の男性形や女性形が省略されており、学習者の負担が軽減されています。
〔語根〕 アラビア語やヘブライ語では「語根」を基本として単語ができます。
ただし西欧諸語の学習に出てくる「語根」とはまったく別のものです。
単語の語根を見抜いて辞書を引くことには多大な労力を要し、アラビア語学習
の難しさの要因にもなっています。辞書を引きこなせるようになるには、初級
文法を一通りマスターして、単語の活用や派生語などに習熟しなければなりま
せん。
〔サカーファ〕ヴェールの意味
番組では、ヴェールの意味をイスラームの教義を中心に解説していました。
私はより実用的な意味があると考えています。現在の中東アフリカは乾燥地帯
・沙漠地帯であり、太陽からの強烈な日差し・紫外線や砂ぼこりなどから身体
を保護するという役割です。中東アフリカが沙漠化したのはここ数千年ほどの
ことで、ヴェールが登場したのもそれ以後のことと思われます。

73さーひぶ。:2006/07/17(月) 00:32:26
第15回講義。  放送大学初シリーズもついに最終回。

フレーズ: .كل عام وأنتم بخير 「毎年あなた方が健やかであられますように」の意味。
鷲見先生は و について「と」などと言ってましたが、状況補語(今回は学ばない)でしょう。
「年」のアーム(عام)は(سنة)で、「健やか」のビハイル(بخير)はタイイブーン(طيبون)で
代用することができます。

〔指示代名詞・指示形容詞〕
番組では「これはある本です。」(.هذا كتاب)、「この本」(هذا الكتاب)のような表現は出てきま
したが、欠けている表現がありました。
男性形「これがその本です。」は、ハーザー・フワ・ル=キターブ(.هذا هو الكتاب)、
女性形「これがその時計です。」は、ハーズィヒ・ヒヤ・ル=サーア(.هذه هي الساعة)です。

〔疑問詞〕
「何」マー(ما)が出ましたが、動詞の目的語になるマーザー(ماذا)も必要でした。
「・・・か」ハル(هل)に対して、ア(أ)があってもよかったでしょう。

今回は、学習内容が少なかった代わりに、総復習ともいうべき練習に時間が
多く割かれました。放送大学はじめての試み「初歩のアラビア語」としては、
この程度の学習内容で良いかも知れません。初級文法の半分に満たない量ですが。
>>74に続く)

74さーひぶ。:2006/07/17(月) 01:14:32
>>73の続き)
〔サカーファ〕料理ともてなしの心
料理・酒類や菓子の紹介がありました。(当サイトでもおいおい紹介してゆきます)
ワインはキリスト教徒に飲まれ、フランスの影響が強いレバノン・チュニジア
がアラブの二大産地となっています。
アラク酒(عرق)は、東地中海アラブの代表的な酒で、水を入れると白く濁ります。
ギリシアのウゾ(ούζο)も私は飲んだことがありますが、アラクと同じものですね。
沖縄泡盛「どなん」のような感じの度の強い蒸留酒です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Arak_%28liqueur%29
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%BC%E3%82%BE

「ラマダーン月」の紹介もありました。最近は日本でも知られるようになった
ように、日中は一切の飲食が禁じられる「断食」の月。
無理なダイエットを思い浮かべる人もいるかも知れませんが、日没後は飲食し
放題なのでかえっていつもの月よりも食料消費量が激増する「リバウンド月」
でもあります。
アラブのイスラーム暦は太陰暦なので、断食期間が真夏になったり真冬になっ
たりと大変です。

75さーひぶ。:2006/07/23(日) 22:35:54
【『初歩のアラビア語』放映が終わって】

先週で『初歩のアラビア語』(2006年度新番組)全15回が終わりました。
文字学習にかなり時間を割いたためもあって、「初歩の」というタイトル通り、
内容は文法的には初級文法の半分もできず、スキットの例文はかなり高い
レベルに上がったにも拘らず、フレーズの説明も多くは扱えなかったように思います。

まあ、放送大学では初めてのアラビア語シリーズの試みなので、初回としては
まず「初歩」の内容から始めるということで良いでしょう。普通のパターンなら
2〜3年間は今回の再放送が続くでしょうから、学生や放送大学を視聴している
一般の(テキストを購入している)学習者の間に、この番組枠が定着することを
期待します。視聴率・聴取率に大きく左右されるNHKのアラビア語番組の方は
先行きに不安がありますから、その分も放送大学には頑張っていただきたいです。

今後、アラビア語枠が定着して「アラビア語入門Ⅰ」に昇格したとしたら、
文字学習の配分をもっとスリム化して、文法・表現の説明により時間を割ける
と思います。ネイティブのゲストももっと活用したら良いでしょう。

今度の再放送は、9月8日(金)〜9月15日(金)の毎日午前7:30〜9:00(全15回)です。
http://www.u-air.ac.jp/hp/program/nenkan/bangumi_1/020703.htm

この他の外国語としては、ポルトガル語とヒンディー語の紹介番組があります。
【外国語への招待 ポルトガル語】8月8日(火曜)7時30分〜8時15分
【外国語への招待 ヒンディー語】8月31日(木曜)6時45分〜7時30分
http://www.u-air.ac.jp/hp/program/nenkan/bangumi_1/sp_tv_gaikoku.html

どちらも、新興国 BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)の言語として
非常に将来性が高く需要アップが見込めますから、アラビア語の手ごわい
ライバルになりそうですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/BRICs

76はっさん:2006/07/27(木) 21:10:53
鷲見先生の初回の講義は一番最後に収録したものだそうです。

77さーひぶ。:2006/09/12(火) 00:06:12
放送大学『初歩のアラビア語』再放送が放映中ですが、今朝は第7・8課でした。

>>62(第10課)で、
>「父母」の表現で、父が والد で母が والدة でした。初心者が学ぶ「父母」
>はまず、父が أبو で母が أمّ というのが順当かなと思っていたので意外でした。

と書いてしまいましたが、今朝の第7課再放送でちゃんと أبو(父)と أمّ(母)
が先に出ていたことを確認しました。印刷教材のp.81です。
ただ、両者はニュアンスがやや異なるので、第10課でもأخ(兄弟)とأخت(姉妹)
にはأبو(父)と أمّ(母)が合うのではないかと思いました。

78さーひぶ。:2006/09/19(火) 00:23:50
『初歩のアラビア語』再放送が終了しました。

2学期(10月〜来年1月)の放映時間は、
毎週金曜日の20時45分〜21時30分になります。

■平成18年度第2学期テレビ番組表 (放送授業期間)
・平成18年10月 1日(日)〜12月28日(木)
・平成19年 1月 5日(金)〜 1月20日(土)
http://www.u-air.ac.jp/hp/program/nenkan/bangumi_2/0205.htm

79さーひぶ。:2007/01/03(水) 20:01:48
【特別講義「聖地イェルサレム」】

放送大学テレビで今晩20:00〜20:45に放映されます。
高橋和夫助教授ほか。もうすぐ始まります。

80さーひぶ。:2007/07/25(水) 00:01:28
放送大学のアラビア語講義、再放送が続いていますが、ご覧になっていますか?
ところで、近日中に以下の特別講義があるようなので、お知らせします。

『激動するイラク情勢を読み解く』 7月25日(水曜)20時
酒井 啓子(東京外国語大学大学院教授)
高橋 和夫(放送大学助教授)
(4月に放映されたものの再放送です。)

『聖地イェルサレム〜3000年の興亡史〜』 8月13日(月曜)20時
高橋 正男(獨協大学名誉教授)
高橋 和夫(放送大学助教授)
(何回も再放送されているものです。)

ちなみに「外国語への招待」はこんなのがあります。
『外国語への招待 ヒンディー語』7月27日(金曜)19時
町田 和彦(東京外国語大学教授)
(これは何年も前から再放送が続いているものです。
個人的には、放大がNHKに先駆けてヒンディー語をやったら先見性を賞めたいと思います。)

81さーひぶ。:2007/12/31(月) 22:52:00
大変な1年でしたが、みなさんアラビア語の学習は進んでいるでしょうか。
放送大学アラビア語講義も定着したでしょうか。
近日中に以下の特別講義があるようなので、お知らせします。

『激動するイラク情勢を読み解く』 
酒井 啓子(東京外国語大学大学院教授)
高橋 和夫(放送大学助教授)
 (4月に放映されたものの再々放送です。)
1月1日(火曜) 8時15分〜9時
1月13日(日曜)20時〜20時45分

82さーひぶ。:2008/12/07(日) 00:41:28
現在『初歩のアラビア語』は、毎週木曜日23:45〜翌0:30に再放送中。

今年は、北京五輪があった一方で、チベット問題や中国産食品の安全性なども
問題になり、いろんな面で対中関係が話題になりました。
聞くところによれば、大学などでの(英語を除く)第二外国語の履修状況も
「中国語」(標準中国語)にかなり集中してきているそうです。

そんな状況の中で、中小規模の大学などで中堅言語やマイナー言語を履修
したい学生のために、放送大学での単科受講を単位取得として認定する大学
が増えているそうです。

自分の通う大学の第二外国語に「アラビア語」がなくても放送大学で学べる。
というわけで、放送大学を利用してアラビア語を履修する学生が増えれば、
放送大学の講義そのものもレベルアップできるかも?!

今の放大(鷲見先生)の初級講義レベルとNHK教育テレビ(木下宗篤先生)
のレベルが逆なら、ちょうどいい具合ではないかと感じています。

83さーひぶ。:2009/03/30(月) 23:13:15
放送大学の「初歩からのアラビア語」(鷲見朗子先生、2006年分の再放送)、
今年はテレビの語学授業は週2回ずつの放映になっています。

第1学期のアラビア語は、毎週木曜日の12:00〜12:45と翌1:15〜2:00の2回です。

このほか、テレビでは特別講義として
6月21日(日)23:00〜23:45「激動するイラク情勢を読み解く」
6月27日(土)23:00〜23:45「テレビは戦争をどう伝えてきたか(1)」
6月29日(日)23:00〜23:45「テレビは戦争をどう伝えてきたか(2)」

ラジオの特別講義では
4月29日(水)13:00-13:45「イブン・バットゥータの「大旅行記」を読む〜「旅行記」を読む」
4月30日(木)13:00-13:45「イブン・バットゥータの「大旅行記」を読む〜旅行を支えたイスラム社会の構造〜」
などがあります。

84匿名さん@サラーム:2010/06/03(木) 22:47:57
放送大学の「初歩からのアラビア語(06)」は
今年度で終了です。
来年度からも鷲見朗子先生の担当で
リニューアルされて、初歩からのアラビア語(11)として
放送されます。
語学科目が軽視されていく放送大学の中にあって
残ることができて良かったですね。

85さーひぶ。:2010/06/15(火) 19:45:51
>>84
情報ありがとうございます。

放送大学の講義の番組は、放映のスパンが長いですね。
'06年度の鷲見先生の「初歩からのアラビア語」は初心者にとっつきやすい
レベルに抑えてあるので、比較的多くの受講生が履修しやすいのではないかと
感じられます。

テキスト執筆に慣れない著者だと、自分の知識をこれでもかこれでもかと、
ひけらかすように文法事項などをてんこ盛りに詰め込みたがるものですが
(今のNHKテレビ講座がまさにそうですが)、
放送大学のテキスト・番組は、できるだけ多くの学生に履修してもらわないと
続かないわけだから、ツボをおさえて作られているように思います。

大学での語学教育は英語に一極集中していて、第二外国語は切り捨てられる
傾向のようですが、放送大学での外国語履修を単位として認定している大学
もあるようですので、放送大学にはアラビア語を永く続けて欲しいものです。

8684:2010/06/16(水) 22:58:03
新しい情報によると
初歩からのアラビア語のリニューアルだけではなく、
来年度はイスラーム世界の歴史を
御茶ノ水女子大学の三浦 徹 先生で
新規開講されるようです。

ここへ来て、放送大学はなかなかやってくれるようです。
楽しみに来年度を待ちましょう。

87さーひぶ。:2010/06/17(木) 20:44:36
「イスラーム世界の歴史」といえば、以前、後藤明先生のラジオ講義を
聴いたことがあります。
来年度の開講もラジオでしょうか。

「初歩のアラビア語」には授業科目案内とシラバスのページがありますね。
http://www.u-air.ac.jp/hp/kamoku/H22/kyouyou/B/gaikokugo/1371444.html
http://www.u-air.ac.jp/hp/kamoku/H22/kyouyou/B/gaikokugo/s_1371444.html

8884:2010/06/17(木) 23:17:58
>来年度の開講もラジオでしょうか。

いいえ、テレビ科目です。
だからこそ楽しみですね。

紹介していただいた放送大学のリンク先は
あくまでも今年度のものです。

来年度の番組は一般にはまだまだ先
おそらくは来年度の履修申請が可能になってからしか
Webサイトの更新は行われないものと
思います。

じれったい事ですが、気長に待ちましょう。

89匿名さん@サラーム:2011/01/04(火) 13:48:50
初歩のアラビア語('11)
主任講師 鷲見 朗子 (放送大学客員教授,京都ノートルダム女子大学教授)
http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H23/kyouyou/B/gaikokugo/s_1357026.html

イスラーム世界の歴史的展開('11)
主任講師 三浦 徹 (放送大学客員教授,お茶の水女子大学教授)
http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H23/kyouyou/B/ningen/s_1554310.html

放送大学のWebサイトにシラバスが発表されました。
印刷教材(テキスト)が一般の書店でも、(遅れなければ)3月下旬には販売されます。

90さーひぶ。:2011/01/19(水) 00:36:48
>>89
情報ありがとうございます。詳しいシラバスですね。

http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H23/kyouyou/B/gaikokugo/1357026.html
↑「初歩のアラビア語('11)」の「科目概要」を見ましたら、
「放送メディア」が「ラジオ」になっていてちょっとがっかりしましたが、
テレビ週間番組表を見ると「初歩のアラビア語('11)」も載っていますから、
「科目概要」で「ラジオ」となっているのは、多分まちがいでしょうね。

第1学期(テレビ)は
「初歩のアラビア語('11)」     (水曜)21時30分〜22時15分
「イスラーム世界の歴史的展開('11)」(土曜)17時30分〜18時15分
のようですね。
http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H23/kyouyou/pdf/gakubu-tv-hoso01.pdf

9184:2011/02/12(土) 13:24:01
新しい情報です。
「初歩のアラビア語('11)」
鷲見先生は、すべての回でアラブの民族衣装を着て登場のようです。
残念なのは、サカーファのコーナーは
いくつかの回では現在の06年度のものをそのまま使いまわすようです。

また、スーダンの南北分裂やエジプトをはじめ不安定な中東情勢により
地図などの変更についても検討中とのこと。
放送までもうあまり時間もないので心配ですね。

92さーひぶ。:2011/02/22(火) 23:23:18
>>91
たびたび情報をいただき、ありがとうございます。

地図の件ですが、番組収録や印刷教材の発行まであまり時間がないので、
対応が難しそうですね。

スーダンから分離独立する南部は、新しい国名がどうなるのか未だ決まって
いないようですし、油田地帯などをめぐる国境線画定でも北部政府との交渉
がもめそうな雲行き。公用語はおそらくは英語になるのでしょうが。
 南部スーダン政府公式サイト(英語) http://www.goss.org/

相次ぐ中東・北アフリカの民衆蜂起では、チュニジア・エジプトに続いて、
リビアも政権が変わりそうな勢いですが、ここで注目したいのがモロッコ。
もしモロッコの体制が変化するならば、西サハラ(الصحراء الغربية)こと
サハラ・アラブ民主共和国(SADR:الجمهورية العربية الصحراوية الديمقراطية)
の完全な独立、および国際社会による広範な国家承認が達成されるかも知れません。
そうなれば、アラビア語を公用語とする同国も地図に加えることになります。
 SADR公式サイト(アラビア語) http://www.rasdstate.info/

さらには、君主制が倒れると国名が変わってしまうアラブの国もありますね。

まあ、数年ごとに刷新される「語学」講座・教材なので、無理して最新の地図に
保ち続けなければならないことはない、とは思いますが。

93さーひぶ。:2011/04/06(水) 21:30:07
【初歩のアラビア語('11)が始まります】

「初歩のアラビア語('11)」
5年振りの新番組が9時30分から始まります。

94さーひぶ。:2011/04/09(土) 17:30:52
【「イスラーム世界の歴史的展開」始まる】

水曜日に「初歩のアラビア語('11)」が始まりましたが、その前の日曜日には
「イスラーム世界の歴史的展開」(主任講師=三浦徹・お茶の水女子大学教授)
が始まっていました。
今期の放映時間は、土曜日の夕方17:30〜18:15です。

先週の第一回の講義では、「イスラーム世界と日本」ということで、日本の高校生のイスラーム世界への意識調査を紹介するなど、意欲的な内容でした。

いま、第二回が始まります。

95さーひぶ。:2011/04/10(日) 00:53:12
【イスラーム世界の歴史的展開②】

第2回「イスラームの生誕と拡大:7〜8世紀」

今回から第9回までがイスラーム世界の通史的な講義で、
第10回〜第15回では社会や文化の側面から論じられるようです。

今回は、はじめに「イスラーム発祥の地である中東」の地理的説明(地形・気候・人口など)が簡潔に語られます。
この地理的説明は有意義ですが、日本における「中東」概念が広すぎることも痛感させられます。
「中東」は、アラブや欧米では東アラブ(エジプト以東)にイランやトルコなどの周辺国を
加える程度が一般的で、西アラブ(マグリブ地域)を併せる場合は「中東・北アフリカ」など
と呼ばれます。(英語では MENA 、仏語では MOA などと略記する場合もあります。)
イスラーム発祥地ならアラビア半島でよいでしょうが。

イスラームがなぜ出現したか?を説明するには、イスラーム以前(ジャーヒリーヤ時代)の
中東・アラビア半島周辺の政治・社会状況の理解が欠かせませんが、この講義では簡単に通過し、
イスラーム生誕の説明はややありきたりな感じがします。

講義時間の関係で、あれもこれもはできないでしょう。
中東の地理、イスラームの成立と根本教義、正統カリフ時代からウマイヤ朝までを
わずか1回の講義(45分)で済ませると、平板な説明にならざるをえないのかも知れません。

系図のフリップに誤植あり(×ムーアウィア→○ムアーウィア)

96さーひぶ。:2011/04/16(土) 17:23:19
もうすぐ、17時30分から
「イスラーム世界の歴史的展開」第3回
が始まります。

水曜日21時30分からの
「初歩のアラビア語('11)」
も第2課まで放映されていますが、まだレスできていません。

やはり、平日の夜の番組よりも、土日の夕方の番組の方が、レスしやすいですね。

97さーひぶ。:2011/04/16(土) 19:54:15
【イスラーム世界の歴史的展開③】

第3回「カリフの時代:8-10世紀」

第9回までに、20世紀に至るイスラーム圏全体の通史を終えなければならないので、
今回も盛り沢山なはずの内容を45分でこなしています。

ウマイヤ朝というのはそもそも、使徒ムハンマドの宿敵であったアブー・スフヤーンの家系です。
マッカ(メッカ)軍を率いた彼は一旦はムスリム勢に降伏しましたが、その子ムアーウィアが、
正統カリフ(アッ=ラーシドゥーン)の治世を終わらせ、ダマスクスを都として世襲王朝を樹立しました。
今回は、そのウマイヤ朝に反感を持つ勢力が革命を起こす話で始まりますが、その
アッバース朝もやはり世襲王朝になりました。
ムハンマドは、臨終に当たって、その後の後継者や統治体制について指示をせず、
イスラーム法(シャリーア)も世襲王朝の是非を定めていないので、現代のイスラーム圏にも
多くの世襲政権が存在しているわけです。

シャリーア(イスラーム法)と法学(フィクフ)、および商業ネットワークの解説は、
近年の研究も取り入れて、充実しています。

アッバース朝の通貨の説明がありましたが、金貨のディーナールは古代ローマの銀貨デナリウス(Denarius)に、
銀貨のディルハムはギリシアの通貨ドラクマに由来する名称てす。
イスラーム世界の経済・流通には、先行文明であるイラン(サーサーン朝)や東ローマ(ビザンティン)
の影響も述べるべきでしょう。

「アラブ・イスラーム文化の形成」はやや物足りない感じ。
名前が出て来る学者、フワーリズミーやイブン・シーナー(アヴィケンナ)はイラン人だし、
『アラビアン・ナイト』こと『千夜一夜物語』もイラン人にとってはペルシア文学。
アラビア科学とかイスラーム科学と呼ばれる諸学問ではイラン人学者の役割が大きいのですが、
アラブ方面でいえばアルハゼンことイブン=アル=ハイサム(イブヌ=ル=ハイサム)が
最大の科学者として欠かせない名前でしょう。

98さーひぶ。:2011/04/21(木) 07:05:20
【初歩のアラビア語('11)1〜3課】

早くも第3課までの放映が終わりました。
放送大学といえば、大学の講義さながらの抑揚少なく棒読みの地味な番組になりがちですが、
この講義は、鷲見先生のユニークな教え方と、セットや小道具などの派手さが目立ちます。

2006年の番組と比べようかとも思っていたのですが、それはちょっとたいへんですね。
印刷教材(テキスト)をざっと比べてみました。
『初歩のアラビア語('06)』は108ページで本体3,100円、今回の『初歩のアラビア語('11)』
は156ページで本体3,300円なので、48ページもの大幅増の改訂なのに定価はたった200円増。
「まえがき」では「2006年の開講以来、受講者は毎学期数百名を数えました。」とあり、
人気講座のようなので、印刷教材もかなり収益が見込まれているのでしょうね。
ボリュームアップしていますし、内容的にもかなり工夫が見られます。分担執筆者も2人から4人に。
NHKグループが番組制作や教材販売を担っているためか、NHKテキストの影響も散見されます。

番組の方は、序盤は文字の習得に重点を置いているので、気軽に観られます。
第1課(4月6日)は、高橋和夫先生のアラビア文字の多様性や漢字のたとえなど示唆に富む話がありました。
第2課(4月13日)は、分担執筆者でアラビア語方言論の依田純和先生がフスハー(書き言葉)
とアーンミーヤ(話し言葉)
の違いについて解説されました。
第3課(4月20日)は、鷲見先生が「アラブ・中東・イスラーム」について説明されました。
「アラブ地域」は説明者により指す範囲が異なります。とはいえ、領土問題を抱える西サハラが
NHKや放送大学の講座で毎度「アラブ」から外されるのは奇妙なことです。
(日本政府はどこの領土とも認めていませんが、アラビア語圏であることには相違はありません。)
エリトリアもお札にアラビア語表記を記しているレベルでアラビア語圏。
逆に、アラビア語を用いていても、コモロ・ソマリア・チャドは「アラブ」の国とは言い難い。
「中東」の説明はまあ良いですが、「中東」観は現地でも個人差が大きい。日本では広すぎる。
ちなみに、フランスなどでは「近東」もしばしば使われます。「イスラーム」の説明もまあ良いです。
日本では、アラブに対してムスリム(イスラーム教徒)のイメージが強いですが、
キリスト教徒も少ないので、彼らの文化も紹介してほしい。

99さーひぶ。:2011/04/21(木) 07:20:57
↑訂正

×キリスト教徒も少ないので
○キリスト教徒も少なくないので

100さーひぶ。:2011/04/24(日) 18:23:24
【イスラーム世界の歴史的展開('11)④】

第4回 軍人政権の分立:9-11世紀
西暦7〜8世紀、アラビア半島を出発したムスリム・アラブ勢は、それほど多くない軍勢で、
インダス川からモロッコに及ぶ広大な地域を席巻しましたが、ウマイヤ朝〜アッバース朝と
続いたさしもの大帝国も、9〜10世紀にかけて解体していきます。
今回は、イスラーム世界の分権化の時代が扱われています。

日本のイスラーム研究者による解説では、ムスリムによる征服は被征服民・異教徒に寛大で、
被征服地のイスラーム化が順調に進んだかのように語られることが多いのですが(本講義も)、
実際には必ずしもそうではなかったようです。
特にサーサーン朝の国教であったゾロアスター教は徹底的に弾圧され、その信徒の生き残りは
現在のインドでパールシー(「ペルシア人」という意味)と呼ばれて辛うじて存続するのみです。
イラン文明はアラブの支配による「暗黒の2世紀」を経験した後、9世紀にはペルシア語を
復活させて、アラブ化した西方地域(イラク以西)とは一線を画します(第6回を参照)。
アラブ、イラン、そして今回の講義で登場するトルコ系(チュルク)、ベルベルが加わって
現在に至るイスラーム世界の多様性の基が形成されるわけです。

今回の講義は「マムルークの登場」から始まります。伝統的にアラビア半島の社会にいた
褐色の肌の奴隷はアラビア語で「アブド」と呼ばれました。アラブには「アブド・〜」という男性名が
多いですが、これは「神のしもべ」を意味します。
これに対して、トルコ人やチェルケス人など、北方から連れてこられた白い肌の軍人奴隷は
マムルークと呼ばれるようになりました。

古代イラン帝国(アケメネス朝)はギリシア人傭兵を採用したが、やがてマケドニア・ギリシア連合軍に滅ぼされ、
古代ローマ帝国はゲルマニア人傭兵を採用したが、やがて西ローマはゲルマニア諸部族によって滅ぼされました。
トルコ人傭兵を採用したムスリム・アラブの帝国も、やがてトルコ系諸王朝の分立・進出など
によって解体の道をたどったことになります。

トルコ系王朝の武断政権が続いた時代は、日本でも武家政権の時代に対応しています。

101さーひぶ。:2011/05/07(土) 18:02:34
【初歩のアラビア語('11)④】

GW連休中は通常の講義はお休みでしたが、その前の回にレスしていませんでした。

第4課(4月27日放映)

文字などの学習が続いていますが、'06年版と同様に、必ずしもアルファベットの配列でない
順で教えていますね。単語を読んだり書いたりする便宜上から頻出する文字を優先して教えて
いるのでしょうか?
いずれにしても、入門から初級へ進んで辞書を引くようになるまでに、アルファベットの配列
を頭に叩き込んでおくことが肝要になります。

鷲見先生の文字の教え方はユニークかつ丁寧です。書道家が書くような綺麗な文字ではなく、
お手本としては初心者には親しみやすいでしょうが、文字を一字一字ずつ切って書くのは、
あまりアラビア文字的ではありませんね。

〔サカーファ:アラビア書道の芸術〕
放送大学の面接授業担当講師・和光大学講師などアラビア語講師も務める書家の佐川信子さんが、
現代の書家が書かなければならないとされる6書体やアラビア書道の魅力を紹介。
イランやトルコの書体が必須になっていることから推し量れるように、現代アラビア文字書道
の中心地は、アラブ諸国ではなくイランやトルコになっています。
個人的には、伝統的なアラブの書体であるクーフィー書体が紹介から消えたのは残念。
印刷教材のコラムは説明が倍増してより改善されました。

書体については、コラムにも説明されているように、ナスヒー書体が現代の印刷用標準書体に
なっているのに対して、ルクア書体が現代のアラブ人の手書きの主流になっています。
(飯森嘉助先生は、ナスヒー書体を「楷書体」、ルクア書体を「草書体」と表現されています。)
そんなわけで、日本人学習者がせっかくアラビア文字をナスヒー書体で習得しても、実際に
アラブ人が手書きするルクア書体を判読するのにてこずるという珍現象がよく起こるのです。

102さーひぶ。:2011/05/07(土) 20:14:03
【授業科目案内「初歩のアラビア語('11)」】

いま(19:45-20-00)放送大学のテレビで「授業科目案内」として「初歩のアラビア語('11)」
を紹介していました。

鷲見先生のユニークな教え方、映像表現のパワーアップなど、放送大学がアラビア語に力を入れていることをこれでもかと、見せつけられました。

特に今回の講義シリーズでは、総勢6名の在日ネイティヴスピーカーを投入。
「テレビでアラビア語」でおなじみになったリーム・アハマドさんも登場されるようです。

103さーひぶ。:2011/05/14(土) 17:25:59
【イスラーム世界の歴史的展開('11)⑤】

第5回 交流するイスラーム世界:12-15世紀(5月7日放映)

〔十字軍、アイユーブ朝とマムルーク朝〕
十字軍というと「キリスト教VSイスラーム教」という図式で見られがちですが、
ローマ教皇(ローマ=カトリック教会)の呼びかけで「聖地の奪回」をめざした十字軍は
イスラーム世界にあるキリスト教の東方諸教会の教区をも無視したものであり、十字軍の攻撃
はキリスト教徒やキリスト教国家に対しても向けられました。
一方、ムスリム国家どうしも互いに争う戦国の世で、ムスリム側で「キリスト教VSイスラーム教」
という見方が形成されるのはかなり後になってからのことです。
逆に現代では、「赤十字社」が十字軍を連想させることを嫌って「赤新月社」とするほどです。
十字軍と並行して、イベリア半島ではキリスト教徒によるレコンキスタ(再征服)が進みました。
12世紀頃からはアラビア語文献がラテン語に翻訳されだし、ヨーロッパ文化の基礎を形成する
「12世紀ルネサンス」が始まります。

十字軍を衰退へ追いやったサラディンことサラーフッディーンは、アラブ人から見ても英雄
ですが、クルド人出身の武将であり、アイユーブ朝もクルド出身の王朝ということになります。
モンゴル人の来襲は次回と重複しますが、これは別の講師が担当するからなのでしょう。
ファーティマ朝の東征〜アイユーブ朝〜マムルーク朝の時代に新しい都カイロ(アラビア語で
アル=カーヒラ、またはマスル)を中心する現代に至るエジプトの繁栄が築かれます。

〔イスラーム世界の拡大と交流〕
イスラームは、サハラ以南のアフリカやインド・東南アジア・中国に広まって行きます。
その大半の地域を旅した旅行家としてイブン=バットゥータが取り上げられます。本講座では
ふれていませんが、中国・明朝の宦官だった鄭和(ていわ)もムスリムで、大艦隊を率いて
マッカ(メッカ)のあるアラビア半島からアフリカ東海岸にまで大航海を行っています。
モロッコ出身のベルベル人(自称イマズィゲン)であったイブン=バットゥータや中国人の
鄭和など、多様な民族出自の人々がこの時代のイスラーム世界を行き交っていたことがわかります。
(誤植:72ページ8行目 ×終結 → ○集結)

104さーひぶ。:2011/05/22(日) 12:30:52
【初歩のアラビア語('11)⑤】

第5課(5月11日放映)

文字の学習もあと2回。

番組中ではふれていませんが、印刷教材には、ラーム(l)の音が2種類あるという説明が
今回の改訂で加わりました。
アラビア語には「こもった感じで」発音する、いわゆる強勢化音(軟口蓋化音または咽頭化音)
が4つ(サード、ダード、ター、ザー)あると説明するのが定番ですが、音声学的な観点では
アッラーフ('allah)のラーム(l)もこもった感じの強勢化音になるとされています。
(初歩を学んでいる学生は知らなくてもよいレベルの学習事項です。)

〔サカーファ:ベリーダンスの情熱〕
今回のインタビューは、レバノン人ベリーダンサーのアマーニーさん。
中東の音楽やダンスは、イスラーム以前から伝わる異教的な伝統芸能です。『千夜一夜物語』が
インド起源でイランからアラブに伝わったように、音楽やダンスもインドなどの影響を受けています。
音楽やダンスは、イスラーム教では奨励されない文化で、特に肌をかなり露出するベリーダンスは
保守的なムスリムからは白眼視されることでしょう。
中東でベリーダンスが盛んなのもトルコ・レバノン・エジプトなど世俗的に開かれた国々ですね。

ザガーリード(zagharid)は、ザグルーダ(zaghruda)、ザグルータ(zaghrouta)などと
さまざまな呼称で呼ばれ、アラブやムスリムの女性たちが祝い事があったときなどに、祝福や
歓びを表すために、手で口を軽くふさぎながら口の中で舌を小刻みにして震わせて発する奇声です。

ちなみに、第3課〜第4課のゲストのノウマーン・オマルさんはNHKアラビア語アナウンサー、
今回のゲストのフィラース・オマルさんはその弟さんです。

105さーひぶ。:2011/05/23(月) 07:18:54
【イスラーム世界の歴史的展開('11)⑥】

第6回 トルコ・モンゴル系国家とペルシア語文化:13-18世紀(5月14日放映)
講師:近藤信彰(東京外国語大学准教授)

〔モンゴル帝国〕
セルジューク朝に代表されるトルコ(チュルク)系の遊牧騎馬部族の王朝が中央アジアから
西南アジアや南アジアになだれ込む時代が西暦10世紀頃〜13世紀前半にかけて続き、
アラブ勢力は著しく衰えました。
13世紀にモンゴル高原を統一した武将テムジンは、大ハーンに即位してチンギス・ハーンと号し、
成立したモンゴル帝国は世界征服の大遠征を開始、瞬く間にインドと欧州を除くユーラシア大陸
の大半を制圧してしまいました。
大して多くない軍勢で、比較的短期間に、実に広大な地域の征服を成し遂げたという共通点により、
モンゴル帝国とムスリム・アラブの帝国は比較されることがあります。
しかしながら、アラブ帝国が解体した後もクルアーンとともにムスリム化・アラブ化が進んで
イスラーム世界が拡大していったのに対して、モンゴル帝国(諸ハーン国)が瓦解した後には
支配者モンゴル人たちは各地の社会に埋没・同化していきました。アフガニスタンのハザラ人は
植民して来たモンゴル人の末裔と言われています。
大規模な破壊と殺戮を行ったモンゴル人の支配は「タタールのくびき」と呼ばれて怖れられ、
当時のイスラーム世界の先進地域であった中央アジアも破壊と殺戮により衰えていきます。
チンギスの孫フラーグは、バグダードを占領、カリフを処刑してアッバース朝を滅ぼしますが、
アイン・ジャールートの戦いでバイバルスが率いるマムルーク朝の騎兵に撃退されます。
フラーグがイランを中心に建国したイル・ハーン国は、モンゴル国家(ウルス)の一つでしたが、
その王朝はやがてムスリムに改宗して、モンゴル国家とイスラーム国家の二重の性格を帯びる
ことになりました。80年ほどで滅びます。
モンゴル帝国の時代は、遊牧騎馬部族の諸国家(ウルス)が世界の半分を支配した時代で、
現在はパクス・モンゴリカ(モンゴルの平和)とも呼ばれ、イブン=バットゥータのような旅行者
や隊商が安全に通行できるようになり、西のイスラーム世界と東の元朝時代の中国などとの
交易・交流が盛んになりました。
(106>>に続く)

106さーひぶ。:2011/05/23(月) 07:21:57
>>105の続き)

〔ティームール、遊牧騎馬部族〕
イル・ハーン国が滅びた後、西南アジアに強大な帝国を築いたのは、ティムール、より正確には
ティームールでした。わずか一代で彼ほどの広大な領土を征服したムスリムの武将は他にいません。
トルコ(チュルク)化したモンゴル部族出身であるティームールは、チンギス・ハーンの
世界帝国の再現を夢見て、中央アジア(現在のウズベキスタン)のサマルカンドを都として
カスピ海・イラクからインド北部に至る広大な帝国を築きました。
西に台頭しつつあったオスマン朝の君主バヤズィト1世をアンカラの戦いで破って捕虜としたり、
最晩年にはモンゴル国家(元朝)を北へ駆逐した中国の明朝を倒すために遠征しようとしました。
明朝の宦官・鄭和による大航海は、ティームールへの牽制ではなかったかとも言われています。
ティームール朝から次のサファヴィー朝の初期は、騎乗しながら弓矢を駆使する遊牧騎馬軍団が
最後の輝きを放った時代といえるでしょう。
>>107に続く)

107さーひぶ。:2011/05/23(月) 07:32:15
>>106の続き)

〔イランとペルシア語の復活〕
西暦7世紀にムスリム勢の大征服が始まると、被征服地のキリスト教徒・ユダヤ教徒・マンダ教徒らは
人頭税を納税すれば、ムスリムに改宗しなくてもズィンミー(庇護民)として遇され、
やがて彼らの多くが待遇改善と納税免除のためにムスリムに改宗して、アラブ化も進みました。

一方、ゾロアスター教徒には「(ムスリムへの)改宗か、死か」と厳しい態度で臨んだので、
抵抗する多くのゾロアスター教徒が殺されました。けれども、サーサーン朝治下にいた膨大な
数のゾロアスター教徒を皆殺しにするのは無茶なことであり、降伏したゾロアスター教徒は
ことごとく奴隷身分に落とされて事実上の庇護民になりました。
インドに落ちのびたゾロアスター教徒たちは「パールシー」として信仰を守って現代に至りますが、
アラブ支配下のイランのゾロアスター教徒の大半は、奴隷身分と人頭税から脱するために、
やむを得ずにムスリムに改宗せざるを得ませんでした。
9世紀にアラブ帝国がほころび始めると、イラン系のサーマーン朝が興り、イラン人ムスリムたちは
アラブの支配から脱して、ペルシア語をアラビア文字により復活させます。
セルジューク朝時代の数学者オマル・ハイヤームが書いた『ルバイヤート(四行詩集)』などは
近世ペルシア語の文学とし名高いです。
アフガニスタンの「ダリー語」もペルシア語です。

〔シーア派、サファヴィー朝〕
シーア派の中でもアリーとその直系子孫12人を指導者(イマーム)とあおぐ「十二イマーム派」は、
イマームはサーサーン朝の皇女の血筋を引いているというまことしやかな伝承がつくられて、
サファヴィー朝のもとでイランに広められます。

こうしてイランは、近世ペルシア語やシーア派を確立して、スンナ派を多数派とする
アラビア語圏やオスマン帝国と対峙していくのです。

108さーひぶ。:2011/06/04(土) 19:04:57
今期の放送大学では、アラビア語とイスラームの二つの新講義が進んでいますが、
番組や印刷教材を見てのレス(感想や関連する話題)が滞りぎみです。

「初歩のアラビア語('11) 」(水曜日の夜)は折り返しの第8課まで終わり、
「イスラーム世界の歴史的展開('11)」は第9課の世界大戦の頃まで終わって、イスラーム世界の通史はほぼ完了しました。

いま、アラブ諸国やイランで勃発している民衆蜂起や革命については当然のことながら
間に合いませんでした。
これらについては、今回の講義シリーズで扱うことは難しいでしょうが、
情勢が一段落したら、高橋和夫先生あたりの特別講義があるように期待します。

109さーひぶ。:2011/06/06(月) 01:56:20
【初歩のアラビア語('11)⑥】

第6課(5月18日放映)

この回で、文字や符号の学習は完了です。

〔2種類のハムザ〕
①単語の「語根」となるハムザ、語形変化(不規則複数形)や動詞Ⅳ型などに現れるハムザは
「ハムザトゥ=ル=カトア(断絶のハムザ)」といって、フスハー(正則アラビア語)では
そのまま表記され、声門閉鎖音(声門破裂音)で発音します。(方言では脱落する場合もあります)。
②冠詞アル('al)、派生型の動詞・動名詞、イスム('ism)やイブン('ibn)などの一部の単語の
語頭に現れるハムザは「ハムザトゥ=ル=ワスル(連続のハムザ)」といい、アリフを台座としますが、
別の単語に後続するときは発音されず、ハムザも表記しません。文頭や発声のはじめでは
声門閉鎖音(')を発音しますが、ハムザの表記は現代の印刷物などではたいてい省略します。
(ただし、本格的な辞典で冠詞アルを引くとハムザを表記しているものもありますし、
アラブ人が②のハムザを省略せずに書くこともあります。)

日本で刊行されている多くのアラビア語教本には、②のハムザトゥ=ル=ワスル(連続のハムザ)が
なぜ存在するのか、説明されていません。
正則アラビア語には、一つの音節において子音が連続してはならない、という規則があります。
この規則を破らないように、とくに語頭の子音連続(語頭のスクーン)を避けるために
補助母音とともに補われるのが、②のハムザトゥ=ル=ワスル(連続のハムザ)です。
例えば「名前」を意味するスム(sm)に補うとイスム('is-m)に、「息子」を意味する
ブン(bn)に補うとイブン('ib-n)になり、冠詞を示すル(l)に補うとアル('al-)になり、
子音(ハムザ)+母音+子音の「閉音節」を形成することによって、規則通りになります。
逆にいえば、便宜的に語頭に挿入したものだから、別の単語に後続するときは脱落するわけです。

〔サカーファ:アラブの青年ハーニーさんの生活〕
'06年版の二つのコラム(第9課「アラブの青年ハーニーさんの生活」と第6課「民衆のイスラーム信仰」)
を足して2で割ったみたいですね。礼拝用語には、アラビア語表記が付されています。

110さーひぶ。:2011/06/11(土) 18:26:09
「イスラーム世界の歴史的展開('11)」は、いま放映していた第10回から後半に入りました。

前回までで、ムハンマドの宣教から近現代に至る通史がほぼ終わりましたので、
今回からは5回にわたってイスラーム世界の社会的側面・文化などを扱います。

以前のラジオ講義から比べると新しい試みですが、
一口にイスラーム世界といっても、その社会的様相は非常に多様です。
時代は1400年以上にわたり、地域はモーリタニアからインドネシアにまで広がる
イスラーム世界・ムスリム社会の様相を網羅的に扱うことなどとうてい無理でしょう。

例えば、今回は「奴隷」「宦官」という言葉が出てましたが、現在は存在しないであろう彼らが
イスラーム世界でどのような変遷をたどったのか?とか、切り口は際限なくありそうですね。

111さーひぶ。:2011/06/12(日) 17:57:49
【イスラーム世界の歴史的展開('11)⑦】

第7回 オスマンの平和:14-19世紀(5月21日放映)

講師:江川ひかり(明治大学教授)

今回の表題は、パクス・オトマニカ(Pax Ottomanica)またはパクス・オトマーナ(Pax Ottomana)
というラテン語で、オスマン朝の軍事的覇権を平和として肯定する見方です。
元はエドワード・ギボン著『ローマ帝国衰亡史』において「パクス・ロマーナ(Pax Romana)」
すなわち「ローマの平和」と呼んで、ローマ帝国の軍事的覇権を平和な時代として賞賛した
ことに由来します。イギリスの平和(Pax Britannica)、アメリカの平和(Pax Americana)から
最近ではイスラームの平和(Pax Islamica)、徳川の平和(Pax Tokugawana)など多用されます。
パクス(Pax)は、多くの場合、敵対勢力を軍事力で威嚇・打倒・降伏させて得られる和平を指し、
第一次大戦後の欧州や第二次大戦後の日本で高揚した非戦主義・非武装の平和とは異なります。

オスマン朝は、ルーム(「ローマの」)・セルジューク朝がモンゴル軍に敗れた後の13世紀末頃に、
トルコ系ムスリム勢力とキリスト教徒が混在するアナトリアに興り、バルカン半島にも勢力を伸ばしました。
従来のムスリム諸国家と異なり、キリスト教徒がムスリムに改宗してもしなくても、国家や軍隊に
多数登用して力を伸ばし、やがて鉄砲や大砲などキリスト教徒の技術も積極的に採用していきました。
「稲妻帝(雷帝)」と称えられた英主・第4代君主バヤズィト1世がアンカラの戦い(1402年)で
あのティームールに敗れて捕虜になり、分裂・崩壊の危機に瀕しますが、やがて復興します。
この地域を支配してきた東ローマ帝国(ビザンティン)は、かつてはアラブの艦隊をも
可燃物「ギリシア火」により撃退していましたが、十字軍により一度は滅び、弱体化していました。

第7代君主のメフメト2世は、ギリシア語やラテン語も学び、アレクサンドロス3世やローマ帝国に憧れました。
彼は1453年にはビザンティンの帝都コンスタンティノポリス(コンスタンティノープル)を
巨砲や「艦隊の山越え」などの奇策によって攻略してビザンティンを滅亡させました。
当地、後のイスタンブールにエディルネから遷都して、Kayser-i Rum(ローマ皇帝)と号し、
これ以降のオスマン「帝国」は「再興されたローマ帝国」として世界帝国へ邁進します。
>>112に続く)

112さーひぶ。:2011/06/12(日) 18:20:52
>>111の続き)
オスマン朝君主の称号は、当初はトルコ(チュルク)系の首長を指すベイ(君侯)でしたが、
第3代ムラト1世はカイロにいたアッバース朝カリフの末裔からスルターンを名乗ることを
認められたとされ、世界帝国の君主として公式にはイラン風のパーディシャー(帝王)、
さらにはシャー、ハーン、カイセル(ローマ皇帝)などさまざまな称号を用いました。

第9代君主セリム1世「冷酷者」は、「征服者」メフメト2世と最盛期のスレイマン1世の間に
あって扱いがそれほど大きくはありませんが、オスマン朝を大帝国に引き上げた功労者です。
アナトリアにシーア派を広めようとしていたサファヴィー朝に対し、スンナ派君主として抗します。
西暦1514年8月23日、ヴァン湖東方のチャルディラーンの野で両軍は激突しました。
当初はサファヴィー朝のキジルバシュ騎兵が優勢でしたが、オスマン軍の火砲が勝敗を決しました。
常備軍の中心であった近衛歩兵イェニチェリの鉄砲隊はマスケット銃(火縄銃)を持ち、
砲兵隊はカノン砲200門・臼砲100門などの野戦砲を装備していたようです。
これらの大砲・鉄砲による砲火が浴びせられて、サファヴィー軍の騎兵は壊滅的打撃を受け、
サファヴィー朝を興して常勝を誇っていた英傑イスマーイール1世も命からがら敗走しました。
この地が峻険な荒地にあり、焦土戦術もあったり補給が困難であったため、追撃は中断されました。
命拾いしたサファヴィー朝は、大砲・鉄砲の導入に努め、オスマンとイランの長い抗争が始まります。
セリムは続いて、1516年のマルジュ・ダービクの戦いでマムルーク騎兵を破ってマムルーク朝を滅ぼし、
エジプトからシリア、マッカ(メッカ)とマディーナ(メディナ)を含むヒジャーズ地方をも
制圧してイスラーム世界の盟主を自認し、アラブ地域の大半がオスマンの軍門に降っていきます。
セリムは、火砲が騎兵に優越する戦果を示し、それまでの遊牧騎馬部族の天下を終わらせました。
戦争における火力の支配が始まり(長篠の戦いより61年前)、それは現代でも変わっていません。

第10代君主「大帝」スレイマン1世の時代にオスマン帝国は極盛期を迎えます。
スレイマンは、ハプスブルク朝の首都ウィーンを攻囲してヨーロッパ諸国を震撼させます。
オスマン帝国の軍事力を脅威と受け止めたヨーロッパ諸国は、兵器や戦術の開発に努め、
17世紀後半の第二次ウィーン攻囲の失敗により、オスマン帝国の軍事的優位は終わります。
すでに大航海時代に乗り出していたヨーロッパ諸国は、軍事技術の進歩とともに科学革命を
経験し、市民革命や産業革命を経て、「近代化」の大波を引っ下げてオスマンやイスラーム世界
の前にも立ちはだかって来ます。

113さーひぶ。:2011/06/27(月) 00:01:37
【初歩のアラビア語('11)⑦】

第7課(5月25日放映) 前回で文字の学習も終わり、スキットが始まりました。

○「私」を意味するアナー(أنا)は通常は短く「アナ」と発音する、と
 印刷教材(p.93)や番組中でも説明され、鷲見先生も意識して「アナ」と発音
 していましたが、ズィヤード役・ハディージャ役の人、ネイティブゲストの
 フィラースさんもリームさんも「アナー」と普通に長母音で発声していました。
 ('06年の番組のときのネイティブの発音もそうでした。)
○スキット:放送大学のアラビア語名が今回は جامعة هوسو に変わりました(後述)。
      サウジの(سُعودية)大学というところで字幕に「سَعودية」と母音符号の誤植。
○名詞の性:英語以外のヨーロッパ諸語を学んだ人は「性」を経験済みでしょうが、
      名詞の性は単語ごとに覚えなければならず、暗記するのに苦労します。
      それに比べてアラビア語の性は、判別しやすいものが多く非常に楽です。
○タムリーナート(練習)コーナー:リームさんが「アンタ・ムワッザフ أنتَ موظف」と
      読み上げているときに「アンティ・ムワッザフ أنتِ موظف」と字幕の誤植。
だんだん、字幕の誤植が目立って来ましたが、再放送時には修正されるのでしょうか?

〔サカーファ:アラブ人の名前〕
いままで、ほとんどトークマシンの役割だったネイティブにも板書の出番です。
ネイティブの手書き文字を見慣れておくのは、勉強になります。
フィラース・ユースフ・オマル(فراس يوسف عمر)さんと
リーム・アハマド・サーリフ(ريم أحمد صالح)さんの名前は分かりやすい例でした。
ザイナブ・ブラヒミさんの家名は、フスハー(正則アラビア語)なら多分
「アル=イブラーヒーミー(الإبراهيمي)」ですが、マグレブ地域の方言では
語頭のハムザの音(声門閉鎖音)と冠詞が脱落して「ブラーヒーミー」となり、
方言の説明が必要になるので説明がたいへん。
イーマーン・ブースィルワールさんのセカンドネームもフスハーではおそらくは
「アブー・スィルワール(أبو سروال)」でしょうが、やはりマグレブ方言では
語頭が脱落して「ブースィルワール(بوسروال)」と発音するのでしょう。

114さーひぶ。:2011/06/27(月) 00:46:52
>>113の補足

〔放送大学のアラビア語名〕
'06年版「初歩のアラビア語」第7課では、放送大学のアラビア語名は、
ジャーミアトゥ=ル=ハワーゥ(جَامِعَة الهَوَاء)となっていました。
当時の放送大学の英語名称は The University of the Air であり、
その直訳だったのでしょう。しかし、これでは「空気(هواء)の大学」
みたいだし、アラブ人に言ってもピンとこない感じでした。

前回、そのように書いていましたが、翌2007年秋に放送大学の英語名は
The Open University of Japan に改称されたようです。
そもそも日本の放送大学はイギリスのオープン・ユニヴァーシティ
(Open University)制度にならって創立されたもののようで、
北米などでは The University of the Air ともいうようです。

今回('11年版)は、放送大学をジャーミア・ホーソー(جامعة هوسو)と
音訳したわけですね。しかし、これもやや苦しいか?

本家イギリスのオープン大学(The Open University)はアラビア語では
アル=ジャーミアトゥ=ル=マフトゥーハ(الجامعة المفتوحة)と訳されており、
アラブ諸国によるアラブ・オープン大学(الجامعة العربية المفتوحة)や
パレスチナのアルクドゥス・オープン大学(جامعـة القـدس المفتـوحة)も
同様に訳されているので、
日本の放送大学もアル=ジャーミアトゥ=ル=ヤーバーニーヤトゥ=ル=マフトゥーハ
(الجامعة اليابانية المفتوحة)ぐらいの訳が妥当ではないでしょうか。

アラブ・オープン大学 http://en.wikipedia.org/wiki/Arab_Open_University
アルクドゥス・オープン大学 http://en.wikipedia.org/wiki/Al-Quds_Open_University

115さーひぶ。:2011/07/21(木) 02:37:32
「イスラーム世界の歴史的展開('11)」

は、7月16日(土)の放映でテレビ全15回の初回の放映を終えました。

後藤明先生によるラジオ講義のときに比べて、テレビという視覚化のもとに、単に時系列を
たどるにとどまらずに社会的・文化的側面からも論じるなど、意欲的な講義シリーズでした。
ただ、扱う内容の幅広さを考えると15回では短すぎますね。

イスラーム発祥の地である「中東」を中心に「イスラーム世界の歴史的展開」を扱うとのこと
でしたが、本講義の定義による「中東」は日本式の「中東」(中東・北アフリカ)でしたが、
実際に扱われたのはやはり欧米などで標準的な中東(エジプト・イラン・トルコとその周辺)が主体でした。

また、現代のムスリム人口の多い国は、インドネシア、パキスタンやバングラデシュなどであり、
南アジア・東南アジアに比重が移っています。これらの地域は中東・北アフリカよりも早く
大航海時代から欧米諸国の侵略と植民地支配を受け始めており、その過程で搾取され、
イギリスの植民地支配の下で先鋭化させられたムスリムとヒンドゥー教徒との対立は、
インド・パキスタン間の核戦争という現代イスラーム世界の最大の危機さえ引き起こしかねません。etc.

このような中東以外の地域史の重要性を考慮すると、本講義は「中東の近現代史」に偏り過ぎて
「イスラーム世界の歴史的展開」というテーマをおおい切れていないようにも思います。

昨年のチュニジアに始まり今年になって開花した「アラブの春」と呼ばれるアラブ諸国の革命やデモには
間に合いませんでしたが、これは研究者の誰も予想できなかったようだからしかたありません。

イスラームについての本講義の教科書的な説明には、現実のムスリムが聞いたら首を傾げそうな
解説もありました。じきに20億人に達する「ムスリム」の有り様は実に多様です。

イスラーム世界について、何がどのように語られるべきなのか?
これからも絶えず問われ続けるでしょう。

116さーひぶ。:2011/07/23(土) 18:26:12
「初歩のアラビア語('11)」

は、7月20日(水)の放映でテレビ全15回の初回の放映を終えました。

「初歩のアラビア語」としての基本路線は '06年版と大筋で同じ。
今回シリーズも文字学習にかなりの時間を割いたため、初級の手前の入門レベル止まり。
テレビ講義であることを考えると、「初歩」に抑えておく方が長続きするのでしょう。

印刷教材が大幅な増訂版だったところを見ると、人気講義のために基本路線はそのままで
ボリュームアップしたと思われます。
教材の執筆者が増えて、コラムや本文の補足、付録などが大幅に加筆されています。

番組自体も、クレジット入りのネイティヴ「ゲスト」だけで6名体制という豪華版。
欲を言えば、ネイティヴにトークマシン以外の役回りをさらに増やしてほしい。とくに、
アラブ人の手書き文字は、アラビア語の読み書きを習得する上でとても参考になります。

鷲見先生も、今回も駄洒落を言いながらマイペースの講義。
駄洒落といい、スタジオ背景や小道具の華やかさといい、放送大学らしからぬきわめて稀な特長が、
番組の人気を支えているのでしょうね。
毎回着ておられたあの民族衣装は自前なんでしょうかねぇ。

「初歩のアラビア語」は今後も定着することが期待されますが、
できれば「アラブ人」=「ムスリム(イスラーム教徒)」という固定観念の枠も少しずつ
はずしてゆければ、中東・アラブ・イスラーム世界の理解の助けになると思われます。

118匿名:2017/03/28(火) 19:59:36
放送大学の「初歩のアラビア語('11)」は残念ながら
2016年度で閉講しました。
初・中級への発展的授業もなく残念です。

119さーひぶ。:2017/03/31(金) 00:20:43
>>118
「初歩のアラビア語」、閉講は残念ですね。
でも、'06 と '11 で、2006年度〜2016年度の11年間も続いて来たのですね。
こんなに長く、良く続けてくれました。
できれば、ラジオ番組でもいいから、続けて欲しかった。


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