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天使も悪魔もカンケーないっ☆

1ピーチ:2012/09/17(月) 11:08:52 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
えーっと……コラボも入れて三作目か四作目ぐらいのピーチです。

何か一番最初の話が続かなかったので、そっちは改めてスレ作り直すつもりです。

駄文の塊で良ければ是非読んで下さい

2ピーチ:2012/09/17(月) 11:25:07 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
登場人物

・天羽 未央(あもう みお)…人間の言う年齢というものと持たない天使族の次期女王。本名はミューラ。

・影下 闇菜(かげもと あんな)…未央とは逆の世界に住まう、悪魔族の中の閻羅族と言う種族の次期女王だが、人間を招くことを嫌う心根の優しい悪魔族。本名はリュル。

・ラルク…未央の父親。清き者を招く聖天使。閻羅族の現当主であるリュークと手を組んだことがあり、以来親しくしている。

・リューク…闇菜の父親。閻魔王に尤も近いとされる種族であるが、基本的に地獄を嫌う。

3ピーチ:2012/09/17(月) 14:03:12 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『プロローグ』




―――皆さんは、




「天使」を“善”、




「悪魔」を“悪”と決め付けていませんか?




でも、




天使や悪魔に関係なく、




善悪は存在するんですよ。




私達が、それを証明しましょう―――。

4ピーチ:2012/09/17(月) 14:39:52 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第一話・エンジェル or デビル』

 「あ」
 そう呟いた、少女が居た。
 ふわりとした、少しウェーブがかかった栗色の髪に、白い肌。優しそうな、しかし意思のこもった墨色の瞳。
 その声は、彼女の視線の先に居る少女にまで届いて。
 「…あ、おはよう」
 声に反応して振り返った少女が、彼女を見つけて先に挨拶をする。
 先程の少女とは全く違い、むしろ対照的だとさえも思わせる、真っ黒な、墨色の髪。そして、少女と同じ白い肌に墨色の瞳。
 「おはよう」
 優しげな笑みを浮かべながら、後ろに居る少女も挨拶を交わす。
 「影下さん、昨日って仕事だった?」
 そう言った少女―――天羽 未央は、相手の少女―――影下 闇菜に尋ねた。
 「…えぇ。ちょっと、ね…」
 気まずげに、闇菜が呟いた。
 「そっ…か、ごめんね、いきなり変なこと聞いて」
 「いいわよ、それよりそっちは? 昨日、連絡取れなかったわよ?」
 「うん…こっちも仕事入ったからね…」
 「…そう」
 二人の会話を聞いただけでは、何の仕事か分からないだろう。まず、中学生の姿をしたこの二人が仕事をすること自体がありえない。
 「昨日、一回お父様の所に行ったの」
 不意に、未央がそう語り出した。
 「へぇ…で、どうしたの?」
 「まーたエルに捕まっちゃった」
 ぺろりと舌を出して呟く彼女は、しかし次にこう言った。
 「でもね、気に入ってないのはエルだけであって、お父様や他の天使(エンジェル)達はいいって言ってるのよ? 悪魔族とは言えども、味方なら親しくするにこしたことないって」
 ―――悪魔族。
 今、この少女はそう言わなかったか。
 頬にかかった栗色の髪を払いのけ、未央は続ける。
 「お父様達だって、手を結んだことはあるんでしょう?」
 未央の言葉に、闇菜は弱々しい笑みを浮かべながら。
 ―――影下 闇菜。
 普通でないその名は、ある特殊な能力を秘めている証。
 この少女は。その名の如く、“闇”を住処とする、いわゆる“悪魔”。
 しかし。
 「でもやっぱり……悪魔族は悪魔族なのよ?いつかは、敵対するかも知れない。そんな可能性もあるのに、貴方に私を殺すことができる?」
 この少女は、違う。
 “悪”を忌み嫌い、“善”を好む。
 「……多分、無理」
 未央は、闇菜の言葉にそう返し、そして次にこう反論する。
 「でも、さ……私、影下さんが人を殺すなんて、出来ないと思う」
 私以上の良心の塊だもん、と未央が呟いて。
 ―――天羽 未央。
 その名が如く。そして、闇菜とは全く種族が違い。しかし。
 闇菜同様、“悪”を嫌い、“善”を好む。
 しかし、彼女は悪魔族である闇菜のことを“良心の塊”と表現した。
 そして、自分のことを。
 「私は―――影下さんに比べたら、ずっと良心なんてないからなぁ……」
 そう呟いて、その後に明るく言う。
 「まぁ、大丈夫だよきっと。だって……」
 ―――“善”も“悪”もないと、人間は成り立たないから、ね?
 そう言って、優しく笑った。

5ピーチ:2012/09/17(月) 15:02:00 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第二話・天羽 未央』

 とある空間でふわりと浮かび上がった人影が、一瞬だけ映し出された。
 「―――よ……っと」
 鈴のような声を響かせ、しかし何の苦もなく着地する。
 「お帰りなさいませ。ミューラ様」
 ミューラ、と呼ばれたその人影は、声の主の方を向いてから答えた。
 「ただいま、エル。でも……今の私は、ミューラではありませんよ?」
 口元に人差し指を当て、くすりと笑う彼女に、エル、と呼ばれた人影が慌てて訂正する。
 「も、申し訳ございません! み、未央様!」
 「ううん、気にしないで。でも、次からは気をつけてくださいね?」
 「は、はいっ!」
 ―――未央。
 その名前、どこかで聞いた憶えはないか。
 「それはそうと、みゅ……未央様。聖天使様がお待ちになっております」
 「えぇ。すぐに行きますと伝えて置いてくれます?」
 「直ちに」
 そう言ってから、エルが彼女の元を去っていく。
 それと同時に。
 「―――はぁ」
 盛大なため息が、漏れた。
 「お嬢様、どうなさいました?」
 「もしや、ご気分が優れないとか?」
 「あら、それは大変!」
 …………しまった。
 後悔した後で、未央が慌てて答える。
 「そ、そんなことないの!気にしないで、みんな!」
 未央の言葉を聞いて、彼女のすぐ傍に在った人影が、一斉に散り始める。
 ミューラ。
 それが、それこそが天羽 未央の本当の名であり、本当の姿である。
 しかし、その実態は人間ではない。
 「じゃあ、行ってきますか……」
 そう呟いたと同時。
 未央―――ミューラの背から、真っ白で大きな羽根が生え出した。
 そして、その羽根を羽ばたかせながら、上へ上へと昇っていく。
 着いた、場所は。
 「―――ただいま戻りました。お父様」

6ピーチ:2012/09/17(月) 19:32:55 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第二話・影下 闇菜』

 「―――人界の地より、今立ち還りし者。それが、我なり」
 妙に重苦しい空気が、ぽつりと呟いた彼女の周りに渦を巻く。
 「今開け―――魔界への扉」
 直後。
 まだ紅い夕日が見えていたはずの場所に、黒々とした何かが覆い始めた。
 そして。
 「―――お帰り、お嬢」
 優しげな風貌をした青年が、闇の中から現れる。
 それを見て、その闇を呼んだ少女―――闇菜はふっと笑みを浮かべる。
 「ただいま。リンディア」
 「うん。……えっと?こっちでも一応闇菜って呼んだ方が?」
 「ううん、こっちではリュルでいいわ。……闇菜は、仮の名前だから」
 「そっか」
 リンディアと呼ばれた青年は、確認事項を終えた後、用件を告げた。
 「リューク様がお待ちになってるよ」
 リューク。
 その名を聞いて、彼女の表情が無意識にすっと引き締まる。
 「分かったわ。すぐに行きますって言って置いてくれる?」
 「了解」
 闇菜の言葉に、リンディアが頷いてその場を去った。
 「…………父上、が?」
 疑問を抱きながらも、彼女は己の背から、何かを生み出した。
 ―――漆黒の、とても大きな、そしてとても堅そうな翼を。
 それを勢い良く羽ばたかせ、彼女は自分の父、リュークの待つ部屋へと向かって行った。

7ピーチ:2012/09/20(木) 21:53:18 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第三話・冥界』

 「あぁ、お帰り。ミューラ」
 優しげな笑みを湛えた二十代前半のような青年が、未央―――ミューラに声をかける。
 「エルから、お父様がお呼びになっていると聞いたので……」
 「―――ミューラ」
 「……はい?」
  いつもにも増して静かな声に、ミューラが小さく答える。
 「お前は、今冥界が崩れかかっていることを知っているか?」
 「―――え?」
  ふわりとした栗色の髪が、ざわりと揺れる。
  ―――冥界が、崩れかかっている?
 「その一件を確かめるため、リュルちゃんと一緒に、冥界へ行ってくれないか?」
  父の言葉を受け、ミューラはしばし硬直し。
 「…………リュルと、二人で?」
  まるで、それを許すのか、と問うかのように。
 「天使と悪魔。その上相性のいいお前達なら、何とかなるだろう?」
  いつものように優しい笑みを浮かべ、さっと手に持っていた数枚の紙に目を通し出した。
 「……ありがとう、ございます…」
  ふわりと微笑みながら、ミューラはそのまま下へと降りていった。

8ピーチ:2012/09/20(木) 22:09:01 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第五話・天界と人界と魔界』

 「お呼びですか、父上?」
 「お帰り。ミューラちゃんから、手紙が来ているよ」
 「………は?」
  ミューラという単語を聞き、闇菜―――リュルは胡乱気に問い返す。
 「どうやら、天界の方にも来ていたらしい」
  そう言って渡された手紙の文面を読み、彼女は小さく笑った。
  恐らく、お互いの国の文字だと読めないことを気遣ったのだろう、日本語で書かれた流麗な字が視界に映る。
  その手紙の、内容は。
  “もう知っているかも知れないけど、お父様の話によると冥界が崩れかかってるらしいの。エルにもう少し詳しく聞いたら、正確には冥界って言う世界のバランスが崩れてきてるみたい”
 「……父上、冥界が崩れてるって…」
  リュルの言葉を遮る形で、リュークが告げる。
 「あぁ。だからさっき、ラルクの使者から連絡があった」
  そして。
 「―――悪いが、ミューラちゃんと一緒に冥界まで行ってくれないか?」
 「―――え?」
  突然告げられたことに驚く暇さえ与えられず、更に驚くべきことを言われたはずなのに、混乱して思考がついて行かない。
 「え、えっと……要するに一度人界に出てからミューラと一緒に冥界まで行け、と?」
 「そうだ」
 「……番人は、どうするんですか?」
 「それも、私達の名前を出せばいい」
  これ以上は何を言っても無駄なのだろう、そう確信したリュルが、しかしいやに嬉しそうに。
 「分かりました。お役目、しっかりと務めさせていただきます」
  そう、はっきりと断言した。

9ピーチ:2012/09/20(木) 22:37:35 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第六話・それぞれの世界』

  ―――あの、娘か。
  ―――聖天使・ラルクの娘……。
  殺せ。殺してしまえ。
  それよりも、あの……何と言ったか、様々な世界を飛び回っていると言う、あの世界……。
  あぁ、あれは―――

 「あ、天羽さん」
  その声を聞いて、はっとその場で立ち止まり、そしてそそくさと後退してくる一人の少女。
  ミューラ改め、人界で言う、天羽 未央だ。
 「ごめん……待ってた?」
 「いや…別に私も今来たし……」
  そう言った少女は、いつの間にか己の身の丈より伸びていた髪を払い、そして小さく息を吐いた。
  リュル改め、人界での影下 闇菜。
 「…にしても、冥界かぁ……」
 「あれ、ひょっとして天羽さんも初めて?」
 「うん、天界と人界と魔界しか行ったことない」
  それを聞いたリュルが半分呆れ顔で。
 「…それだけ行けば、十分じゃないかしら?」
  人間達の知っている世界は通常、一つだけだが、人ならざるものの知っている世界は、もっと広い。
  上から順に、天国・天界・人界(人間界)・魔界・地獄。
  そして、その人界と魔界の間に存在する世界こそが、彼女達が今から行こうとしている世界―――冥界である。
  正確には、あと一つだけ、人間の知らない世界があるが。
  それは。
  ―――未界(みかい)。
  その世界は、今までに挙げた例とは全く異なる、別の世界。
  まるで、世界そのものが、生きているような。
 「……とにかく、さっさと行って、用件済ませるわよ」
  闇菜の言葉に小さく頷き、二人が同時に呟いた。
 「―――冥界の、番人よ」
 「我らは、天界と魔界のもの」
 「父の命により、今馳せ参じた」
 「どうか、我らを招きいれよ」
  直後。
  月光をそのまま封じ込んだかのように淡く、優しい光が、二人を包み込んだ。

10ピーチ:2012/09/20(木) 23:52:39 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第七話・プリンセス』

  淡い白銀色の光に包まれ、それが輝きを失った時、二人の目の前に一人の少女が佇んでいた。
  年の頃は十代後半、と言った所か。
 「―――初めまして。プリンセス・ライル」
  先に口を開いたのは、リュルだ。
  その後で、ミューラが慌てて礼をしながら言う。
 「初めてお目にかかります。私は、聖天使・ラルクの娘、ミューラです。以後、お見知りおきを」
  ふわりと微笑みながら、ミューラがプリンセス・ライルと呼ばれた少女は、小さく笑みを返した。
 「初めまして、プリンセス・リュル、プリンセス・ミューラ」
  そう。
  ライルがプリンセス(王女)なら、当然この二人もプリンセスの部類に入るのだ。
  ライルの母が、今この冥界を支えているだから。
  二人が自分にしたことを全くその通りに返し、しかしその表情は困り果て。
 「どうか、なさったんですか?」
  いち早く気付いたミューラが、心配そうに問う。
 「……プリンセス・ミューラ」
  唐突に名を呼ばれ、彼女はえ、と洩らしながらも、一応答える。
 「何ですか?」
 「貴方は……貴方のお父様と貴方が入れ替わる時、今の天界を引っ張っていける、そんな自信がありますか?」
 「………え?」
  突然の質問に虚を突かれたミューラは、しかししばらく考え。
 「そう……ですね。今の私には、それは荷が重いかな…って所です」
  苦笑気味に笑いながら答えるミューラを見て、ライルが薄く笑う。
 「……そう、ですか…」
 「お父様に、こちらに来たら何か手伝えることをしなさいと言われたんですが、何かすることは?」
  リュルの言葉に、ライルはしばし考えた後(のち)に。
 「じゃあ―――村に、出てもらえませんか?」

11ピーチ:2012/09/23(日) 08:04:57 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第八話・冥界の住人(すみびと)』

「え……?」
「村、に?」
 不思議そうに問う二人を交互に見ながら、彼女は頷く。
「えぇ。あなた方の仰る通り、今の冥界が少々荒れています。だから、あなた方のような違う世界に住まう方達が関わることで、少しは前のように戻ってくれると思ったんです」
 それを聞いた二人は得心がいったようにあぁと呟くと、柔らかく微笑みながら。
「分かりました。………少しでも、戻るように心がけます」
「ただ……私達では力不足、と言う場合もありますが」
 リュルの言葉を聞きながら、それでもライルは頷いた。
「はい。元々は、私がやるべき仕事ですから。あなた方を攻める理由などありません」
 そう言って、ミューラとリュルがその場を離れた。
 ―――冥界。
 それは、天使のように純白の翼を持つものでなく。
 悪魔のように、漆黒の翼を持つものでもない。
 強いて言うなら、青灰(せいかい)。
 青と灰が混じったような色合いの翼を持ち、当然のように瞳の色も同じ。
 悪魔族も、翼と瞳の色は同じだが。
「何か……こうやって考えると私達だけなのよね…」
 ミューラの呟きに、リュルははぁ?と言いながら。
「何が?」
「羽根と瞳の色が違う種族。天使族だけでしょう?」
 ミューラの言葉を聞いて、リュルは一つ頭(かぶり)を振り、そして。
「でも、私はその色好きよ?」
「え?」
「対照的な色じゃない? どっちも同じって言うよりは、私はそっちの方が新鮮だと思うな」
「……抉り出さないでよ?」
 リュルの言葉の意味に納得し、そして冗談半分で言う。
「やだ、今すぐ盗りたいかも」
 リュルも、ミューラが冗談だと分かっている上でそう答え。
「……でも」
 羽根の色と瞳の色が違う種族は、人界を除いてももう一つある。
 それが、未界に住まう生き物達。
 彼らは、羽根と瞳どころか一人一のそれまでが違う。
「それに比べたら、天界はマシな方じゃない?」
「あ、そっか。だよね」
 リュルの言葉を聞いていたいくつかの人影が、さっと闇に隠された。
 そして、今言ったリュルの言葉でこの後とんでもない事件に巻き込まれることを、二人は知らない。
 ―――見つけた、見つけたぞ……!!
 ―――しかし、あの娘は邪魔になる…。
 ―――何としてでも、あの娘だけを…。
 ―――いや、それが上手くいかないようなら、二人とも……。
 ―――あぁ、その手があったか。
 小さく反響した不気味な笑みが、やがては段々と小さくなっていった。

12ピーチ:2012/09/27(木) 21:23:33 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第九話・異変』

 ―――しばらくしてから。
「……じゃあ、明日ね」
「うん、また明日」
 そう言いながら、二つの人影が浮かび上がった。
 一つは大きく、とても上質そうな純白の羽根を持った者。
 もう一人は、真逆の漆黒の固そうな翼を持った者。
 全くと言っていい程に正反対に見えるこの二人は、実際真逆の世界に住まう者達である。
 一人は天界、そして、もう一人は魔界。
「………ねぇ、リュル?」
 リュルと呼ばれた、今まさに飛び立とうとしていた少女が、漆黒の翼を翻す。
「何?」
「さっきから………何かに尾(つ)けられてる気がするんだけど…」
 そう呟いた少女―――ミューラの言葉に、リュルはその恐ろしい程に整った顔に、険を滲ませて。
「…やっぱり、気付いてたかぁ…私達を尾けてるのかな……」
「や、怖いこと言わないでよ…」
 いささか表情を引き攣らせ、彼女はしかし苦笑を返す。
「でもまぁ、気になるならさっさと家に帰ればいいわけだし、何もそこまで怯える必要ないんじゃない?」
 そう言ったリュルの言葉も正論なので、とりあえず頷きながら、さっさと天界への門を開いていった。

 次の日。
「……なんで、こんな朝っぱらから…」
 昨日感じた視線が、未だに感じる。
 と、言うことは。
「やっぱり……」
「人間じゃあ、ないわよね」
「ひゃあ!?」
 唐突に聞こえた声に裏返った悲鳴を上げ、自分の肩に置かれた手を見て、更に小さく飛び上がった。
「何よその反応……少しは落ち着きなさいって」
 そう言った少女、影下 闇菜の姿を認めて、ミューラ―――天羽 未央が慌てて謝る。
「ご、ごめん! やっぱり、あれからもちょっと怖くて…」
「ったぁく……」
 そう言った時の闇菜の表情は、言葉とは裏腹にどこか真剣さを帯びていた。

13ピーチ:2012/09/28(金) 21:56:18 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十話・誘拐』

「じゃあ、この問題を……天羽?」
「え? あ、はい!」
 現在三校時目の授業、理科の真っ最中。
 …にも関わらずボーっとしていた未央を見て、理科担当の教師の前園 康人(まえぞの やすと)がどうした、と問う。
「具合でも悪いのか?」
「あ、いや……すみません、ちょっと空を見てて……」
 普段の未央の授業態度を見ている康人は、それを見て小首を傾げる。
「まぁ、次からは気を付けるんだぞ」
「はい……」
 少しヴェーブがかった髪が頬にかかり、彼女はそれを無造作に掻きあげた。
「…………」
 いつもは和やかに笑っている未央の表情が、この時だけは何かに怯えるかのように、強張っていた。

「起立、姿勢、礼」
「さようなら」
 クラスの中からたくさんの声が聞こえ、その数秒後には男子生徒が数人、鞄を半分からいながら教室を飛び出して行く様が見えた。
 そして。
「―――本当に、大丈夫かなぁ……」
 そんな不安げな声が聞こえた。
 未央の、不安げな声。
 そして、さすがに同じく不安げな声が響く。
「……まだ、良く分からないけど、それでも数は増えてるのよね?」
 彼女の親友、闇菜の声だ。
「………うん……」
 そう答える未央に、闇菜は小難しい表情をしながら。
「…とりあえず、帰ってすぐにあんたが一番信頼できる天使(エンジェル)についててもらってれば? 一時凌ぎにはなると思うわよ?」
 だが、闇菜の言う通り、本当にただの一時凌ぎだが。
「そだね……ごめんね、これくらいのことで」
「いいよ、別に気にしてないし」
 そんな会話を済ませた後、闇菜が戻って行ったのを確認してから未央がふっと羽根を羽ばたかせる。
 気にしなければ、何も問題はないんだ。
 そう思った未央が、間違っていた。
「あ、れ………?」
 天界まで行くだけで、こんなに時間がかかっただろうか。
 そう思い、何となしに後ろを振り返った。
 そこには。
「………え…!?」
―――ようやく、一人になったな…
―――この時を、幾度と待ち望んだことか…
「や………っ!」
 いつの間に、時空を隔てる空間に忍び込んだのか。
 ここなら、絶対に安全だと思っていたのに。
―――娘よ、聖天使の許になぞ生まれたから、こんな目に遭っているのだぞ……
 そう言った種族らしきもの達の翼と瞳の色に、見覚えがあった。
「冥界、の…?」
 青灰の羽根に、同色の瞳。それは。
 冥界に住まう生き物達の、特別な色。
―――そうぞ、我らは冥界に住まうものよ…
―――そして娘、お前を邪魔者と見なすものよ…
―――未界の連中に話したら、さぞ喜んでおった。……極上の餌が来る、となぁ……!
 餌、とは絶対、ミューラのことを指すのだろう。
 ぞくりとした冷たいものが、勢い良く背中を滑り降りたような感覚に見舞われる。身体が、動かない。
「や……だ…っ」
 しかし、この時空を隔てる空間は特殊なもの。天国や天界に住まう生き物達からすれば、この空間ほど自由を奪われる場所はないだろう。
 反対に、地獄や魔界などに住まうもの達は、これくらいで自由がなくなることはない。
「いや……こ、ないで…!」
 そして、冥界はそのどちらにも当てはまらない。
 故に。
―――天使(エンジェル)と我らは違う。
自由を奪われることもなければ、自由に動き回れるわけでもない。
 そう言った“誰か”の言葉に呼応するかのように、いくつもの影がミューラの影を覆い、あっと言う間に消し去った。
 ミューラの影が完全に見えなくなった後、ミューラの居たはずの場所から不気味な声が響いた。
―――一匹目の天使(エンジェル)、確保…

 魔界へと戻り、自分の部屋で退屈そうに小さい悪魔の尻尾をぶんぶんと振り回していたリュルは、不意にはっと顔を上げた。
 “助けて”
 そんな声が聞こえた気がして。
「……今のは、ミューラの声…?」
 まさか、そんなわけがない。
 そう思い直して再びその悪魔で遊び出したリュルの部屋のドアが、乱暴に開け放たれた。

14ピーチ:2012/09/28(金) 22:30:35 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十一話・訪問』

 開け放たれたドアの先には、額を押さえた状態のリンディアと、なぜか、純白の翼を持ち得た天界のもの。
「……また、ギュールで遊んでたのか」
「貴方は……確か、ミューラの…」
 リンディアの言葉にあ、と言いながら急いでその悪魔(ギュールと言うらしい)を奥に放り投げ、そのエンジェルに向き直った。
「はい。ミューラ様とラルク様に仕えております、エルと申します。以後、お見知りおきを」
「あ、はい……宜しくお願いします」
 何が宜しくなのだろう。ぼんやりとそんなことを考えながら、しかしエルの尋常ではないその表情を見て。
「……何か、あったんですか?」
「ミューラ様と、いつどこでお別れになりましたか?」
「…え?」
 唐突なエルの問いに、思わずリュルが問い返す。
「ち、ちょっと待って下さい? まさかミューラ、まだ帰ってないですか?」
「はい……ですから、普段人界で行動を共にしていると言っていた貴方なら、何かご存知かと思いまして」
 エルの言葉に、リュルの顔からさっと血の気が失われる。
 それに気付いたエルが、訝しげにリュルに問う。
「何か、ご存知なのですか?」
「貴方こそ、聞いてないんですか!?」
「え?」
 わけが分からないと言った体(てい)で問い返すエルに、リュルは半ば混乱しながら言った。
「ミューラ、最近変な視線感じるって言って…だからてっきり、貴方達にも話してるのかと…」
「な………っ!?」
 リュルの言葉に驚愕の色を滲ませ、エルが小さく呟く。
「そ、そんなことが……!?」
「とにかく、探しましょう!!」
 呆然とするエルを怒鳴りつけ、リュルはさっさと己の部屋を出て行った。

15ピーチ:2012/09/28(金) 23:32:20 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十二話・贄』

「―――っ……」
 小さな呻き声を上げたミューラは、自分の羽根に巻き付いた紅いものを見て、小さく震えた。
 羽根だけではない。両手首にも、全く同じものが巻き付いている。
 これは。
「魔力封じの糸、だよ」
 唐突に聞こえた声にびくりと肩を揺らし、恐る恐る顔を上げた。
 そこに居たのは。
「初めまして、と言うべきかな…僕はリバート。今の未界を仕切っている、君のお父さんのような存在だ」
 未界。
 その単語を聞いただけで無意識に顔を背(そむ)け、リバートから目を離そうとする。
 が。
「君の羽根や君自身、綺麗だね。………今すぐに、僕の物にしたくなるくらい」
 そう言ってミューラの顎を取り、己の方に顔を向けさせた。
「あ、やっぱり予想通りだ」
 そう言いながら残忍に笑うリバードを見て、彼女は動かない口を必死に動かす。
「な……に、が…?」
 身動きの取れない状態で怯えきったミューラを見て、彼はくすりと笑った。
 そして、彼女の漆黒の瞳を見つめたまま、こう言った。
「―――君が怯えてる所が、一番魅力的だと思っただけ」
 リバードがそう言った直後。
 バキ―――と言う嫌な音が聞こえたと同時に、ミューラが背中に痛みを覚えた。
 そして、良く見れば己の背中から、否、羽根から紅いものが流れている。
「あ、こらだめだろ? プリンセス・ミューラは、最初の餌となってくれる天使(エンジェル)なんだからさ?」
 ざわりと、長い栗色の髪が揺れた。
 今、彼女が思ったことはただ一つ。
 怖い、という恐怖の感情。
 しかし、自分が消えると言う恐怖よりも、先に立ったものが。
「………他の、」
「…え?」
「他のエンジェル達には、手を、出さないで……!!」
 自分一人の犠牲で済まされるのなら、それを受け入れる。
 だが、もし仮に他の天使(エンジェル)までもが危険に晒されたとなれば。
「お、ねがい………!」
 漆黒の瞳から大粒の涙が溢れて、しかしそれを気にする風もなく、ただ他の者を助けろと言っている。
 魔力封じの糸さえなければ、未界もひとつの世界だ。天使族がこの空間を逃げ出すなど、簡単なことに過ぎないだろう。
 しかし、その糸で魔力を封じられているのなら話は別。圧倒的に、こちらが優位に立てる。
「……ははっ…面白い発想するね、とてもプリンセスとは思えない発想だ」
 でも、と呟きながら、リバードは微笑を浮かべ。
「―――天界だけじゃない。何(いず)れは、全ての世界を滅ぼすのが、僕の夢なんだよねぇ?」
 だから、と言いながら、彼が残酷に言い放った。
「まず最初に、天界に犠牲になってもらおうと思ってさぁ」
 真っ白だった純白の羽根に、紅い液体が流れていく。
 それを見て、ミューラは唇を噛んだ。
 今、魔力封じの糸さえなければ。少なくとも、リバードの思惑を阻止することが敵ったかもしれない。
 しかし、現実は。
「さぁて……お喋りはここまで。そろそろ、休んでもらおうかな」
 そう呟きながらかざされたリバートの腕に浮かんだ紋様を見てしまい、彼女の意識が段々と遠退いていった。

16ピーチ:2012/09/29(土) 00:07:49 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十三話・捜索』

「ねぇお願い! リンディアも一緒に探して!」
 リュルの、あるいはエルをも凌ぎそうな勢いに押され、思わず一歩後ろに下がる。
「て、手伝うのは構わないけど……俺達だけで探せると思う?」
「っ…………!」
 リンディアの冷静な問いに、リュルが悔しげに俯く。
 確かにリンディアの言う通り、このまま闇雲に探していても埒が明かない。
「どう、しよう……」
「あのさぁ? 確かリュルって、“あの一族”に貸しがなかったっけ?」
 リンディアの言葉を聞き、リュルがはっと顔を上げる。
 彼は薄く微笑しながら、小さく頷いた。
「今は、あの家に頼るしかないだろ?」
「……そう、ね…」
 ふわりと微笑んで、漆黒の翼を翻した彼女に、慌てた風情でエルが追って行った。

「―――で、その天使族の次期女王様が姿眩ませたことと、その視線がなんらかの形で繋がっているかも知れない、と?」
「…えぇ……」
 優しそうな顔をした中年くらいの男が、リュルの話を聞いて頷きながら問い返した。
「お願い…貴方の家系には、必ず場所を特定することができるものが生まれるはずよね?」
「えぇ、百年に一度の確率ですがね」
「そして、貴方はその場所を特定する能力を持ち合わせている」
「えぇ。……リュル様に対してのご恩は、決して忘れてはいません。私で良いのなら、喜んで協力させていただきますよ」
 彼の言葉を聞き、リュルは仄かに笑んだ。
「ありがとう…ミスター・リーゼント」
 そう言って、彼女の後ろに居たエルに、小さく囁いた。
「―――彼が居れば、絶対にミューラは見つかります。その後は、私達で対処していきましょう」





何となく出したかった閻羅族以外の優しい悪魔キャラww

17ピーチ:2012/09/29(土) 00:08:29 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十三話・捜索』

「ねぇお願い! リンディアも一緒に探して!」
 リュルの、あるいはエルをも凌ぎそうな勢いに押され、思わず一歩後ろに下がる。
「て、手伝うのは構わないけど……俺達だけで探せると思う?」
「っ…………!」
 リンディアの冷静な問いに、リュルが悔しげに俯く。
 確かにリンディアの言う通り、このまま闇雲に探していても埒が明かない。
「どう、しよう……」
「あのさぁ? 確かリュルって、“あの一族”に貸しがなかったっけ?」
 リンディアの言葉を聞き、リュルがはっと顔を上げる。
 彼は薄く微笑しながら、小さく頷いた。
「今は、あの家に頼るしかないだろ?」
「……そう、ね…」
 ふわりと微笑んで、漆黒の翼を翻した彼女に、慌てた風情でエルが追って行った。

「―――で、その天使族の次期女王様が姿眩ませたことと、その視線がなんらかの形で繋がっているかも知れない、と?」
「…えぇ……」
 優しそうな顔をした中年くらいの男が、リュルの話を聞いて頷きながら問い返した。
「お願い…貴方の家系には、必ず場所を特定することができるものが生まれるはずよね?」
「えぇ、百年に一度の確率ですがね」
「そして、貴方はその場所を特定する能力を持ち合わせている」
「えぇ。……リュル様に対してのご恩は、決して忘れてはいません。私で良いのなら、喜んで協力させていただきますよ」
 彼の言葉を聞き、リュルは仄かに笑んだ。
「ありがとう…ミスター・リーゼント」
 そう言って、彼女の後ろに居たエルに、小さく囁いた。
「―――彼が居れば、絶対にミューラは見つかります。その後は、私達で対処していきましょう」





何となく出したかった閻羅族以外の優しい悪魔キャラww

18ピーチ:2012/09/29(土) 01:25:20 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十四話・発見』

 全く。
 そう思ったのが、つい先程。
 このエンジェル―――ミューラを完全に封じ込んだ時に、そう思った。
「普通なら、他人より自分優先するだろ……」
 そう。
 リバードは、彼女の性格に対して苛立っていたのだ。
「申し訳ありません、リバード様」
「……? 何だ?」
 さて今から早速この娘を取り込もうかと思った直後にこれだ。
 どうやら、自分はこういった運に恵まれていないと考えた方が良さそうだと、半ば本気で考えるリバードである。
「冥界の連中が、報酬を持って来たと言っていますが……」
「報酬?」
「えぇ。彼(か)の地で数少ない、秘宝とも取れる真珠だそうです」
 それを聞き、リバードがしばし考えてから。
「とりあえず、それだけ受け取っておけ」
「承知致しました」
 外に向かって行ったと思われる足音が完全に聞こえなくなるまで、彼はミューラに手を出さない。
「まさか、手始めに聖天使の娘が来るとはな……」
 この娘さえ取り込めば、後は居ても居なくても変わらない。
「…いや、待てよ………少なくとも、後三人は居るか…」
 残忍に歪められた表情が闇に浮かび上がり、これ以上ない程不気味に映し出された。
「まぁとにかく……」
 そう呟いたと同時に、ミューラの身体がふわりと浮き上がる。
 そして、それを満足そうに眺めながら、己の許へと引き寄せ。
「せいぜい、天使族に生まれたことを、後悔するんだな…」
 そう言って、彼女の身の内に眠る能力(ちから)だけを抜き出そうとした刹那。
「え?」
 突然、今まで彼の思うままに動いていたミューラの身体が、くるりと回転する。
「な……っ!?」
「勝手なことやってるんじゃないわよ!!」
 怒りもろともそう叫んだ少女は、後ろに居た男にミューラを預ける。
「ミューラをお願いします。私は、あの男を潰してきますから」
「え? あ、はい……」
「……あれぇ?ひょっとして、悪魔族のリュルちゃんかな?」
 軽い口調で問うリバードに対し、リュルは厳かな口調で。
「だったら、何?」
 そう、問い返す。
「へぇ……天使(エンジェル)と悪魔(デビル)を一気に取り込めるなんてね…これはさすがに、あの聖天使に感謝しないとなぁ…」
「悪いけど、私はあんたの餌になるために来たわけじゃないわ」
 強い口調で言い放ち、そして次にこう言った。
「私の親友を取り戻しに来たの」

19ピーチ:2012/09/29(土) 18:28:19 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十五話・絶対的な違い』

「へぇ…わざわざエンジェル一匹助けるために、敵陣まで乗り込んで来るんだ?」
 さも可笑しそうに言いながら、しかし浮かべている笑みが瞬時は消え失せて。
「でもさ…どう足掻いたって、俺から逃れることは出来ないんだよ? だったら、無駄な悪あがきなんかせずに、さっさと取り込まれた方が楽なんじゃないかな?」
 その言葉を聞き、リュルの墨色の髪がさわりと揺れた。
「ふざけたこと……言ってんじゃないわよ…………!」
 そう言ったかと思った直後。
「≪―――天をも打ち抜く、闇の力よ≫」
 唐突に、彼女の周りの空気が豹変した。
「≪その力を従えし者こそ、真(まこと)の後継なり。そして我は、それを護るために使おう。………氷刃よ、いざ参られよ≫」
「あ、あれ………?」
 さすがに色を失ったリバードを一瞥し、リュルは片手一つ分の大きさまで依り集めた能力(ちから)を氷の塊に変え、それを勢い良く投げつける。
「うわ……っ!」
 そう言いながら、しかしエルが抱えていたはずのミューラを素早く己の許に寄せ付ける。
「あ………!」
「―――リョウバ」
「はい」
 主の呼びかけに、一つの影が現れる。
「あの娘……俺がやってやろうと思っていたが、どうやら無理がありそうだ。………代わりに、お前がやっておけ」
「……承知致しました」
 厳かな返答があり、瞬時にその影とミューラの姿が消え失せた。
「―――え……?」
「邪魔をされちゃあ、困るからな…まぁ、今だけなら見逃してやる。どうする? …どうせ、あの娘の次はお前だ」
 リバードがそう呟いた、直後。
 ―――短い悲鳴が聞こえた後、妖気とも邪気とも取れない“何か”が、辺りを支配した。

20ピーチ:2012/09/29(土) 21:57:04 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十六話・証』

“お前が、代わりにやっておけ”
“……承知致しました”
 そんな声が聞こえたと思った直後。
「―――ん……」
「目は、覚めたか」
 唐突に、低く落ち着いた声が、頭上から降ってきた。
 が、目の前に霧がかかったかのように、輪郭さえもがぼやけて見える。
「………え…?」
 ここは、どこだろう。
 ついさっきまでは手首と羽根に巻き付いていただけだった紅い糸は、今では両手両足はもちろんのこと、身体中の至る所に巻き付いている。
 当然、首周りにも。
「あ………っ」
「案ずることはない。お前は、リバード様の贄となるものだ。死なせはしない」
 そう言った声の主の姿が、段々とはっきり見えてくる。
 その、人物は。
「天使(エンジェル)―――!?」
 いささか老いた見かけだが、その純白の羽根は、天使族のそれに相違なかった。
「私は、もうエンジェルではない」
「…も、う…?」
 問い返したミューラの口を塞ぐためか否か、それは定かではないが、彼女の首筋に細身の長いナイフを当てがった。
「死にたくないのなら、その口を塞いでいろ」
 無表情に命令する老人とは対照的に、ミューラはその瞳に涙を溜めて頷いた。今ミューラに勝機が回ってくるはずもないし、仮に回ってきても、それを見放してしまうのがオチだ。
 それに、一切の自由を奪われているこの状況で下手に言い返そうものなら、彼女の命の保障はない。
「―――……さて、そろそろだな」
 そう呟いたかと思うと、老人はミューラの首筋に添えていたナイフを放り出した。
 その老人が背を向けた、刹那。
「≪冷たき奈落の底に眠る、真(まこと)の能力(ちから)よ。……我が眼前に居るこの娘を、贄と見なせよ≫」
 いつの間にか両手を掲げていた老人の後ろから、とてつもなくおぞましい“気”を纏った生き物達が、彼女の目の前に躍り出た。
 それを見たミューラの表情が青ざめ、反対に老人の表情は僅かに喜々を滲ませ。
「さぁ……お前とリバード様を繋ぐ証を、刻もうか……」
「―――い…………っ」
 短い悲鳴が響いた数秒後、紅いものが絡み付いた腕がだらりと垂れ下がり、小さな紋様が、その腕にかいま見えた気がした。

21森間 登助 ◆t5lrTPDT2E:2012/10/01(月) 13:33:53 HOST:180-042-153-135.jp.fiberbit.net

 さて、本日は体育祭の代休と言うことで、早速拝見させていただきました。それでは、評価していきますね。

 ・描写(D)
 語彙が豊富で、中々良い文章表現が見られて良かったです。しかし圧倒的に描写量が少なく、読者目線ですとほぼ何が起こっているのか分らないです(汗)
 例えば人間界から天界へ移動するとき、どのようにして移動するのか、その移動手段の描写が成されていませんでしたし、また、三人称文と言うこともあり視点移動が所々にありましたが、どれが誰の視点なのか理解に苦しみました^^;
 甘口評価にはしていますが、ちょっと読者目線からすると読むのを諦めてしまいそうです……

 ・テンポ(D)
 スピーディでわりと読むのには苦労しませんでした。
 しかし、描写が少ない分テンポが物凄く早く、物語に付いていくのに一苦労します。ストーリー自体のテンポは悪くありませんが、描写が邪魔しているような感じですね。

 ・ストーリー(C)
 物語に関しては、天界を中心にした話しと言うことで、馴染深かったです。しかし作者様が、その王道ストーリーを先入観にして頼っている様な部分があり、設定がイマイチ読み取れませんでした。
 世界の説明を比重に置いたのは良かったと思いますが、天使が善で悪魔が悪なら天使と悪魔はもっと対立しているんじゃないのかな? と少々思ってしまいました。

 ・キャラクター(E)
 済みません。色々理由がありまして、最低評価です。ご勘弁くださいm(_ _)m
 まず、主人公候補であろう未央と闇菜の違いが自分には全く分りませんでした。最初の人物描写では髪の色以外違いがほとんどありませんでしたし、話し方もほぼ同じ。しかも初手で同時に出てきてしまったので、とても印象が薄かったです。また、小説のキャラクターでありながら、ちょっと普通過ぎたかなというのも少々。
 それと、ライルもその二人同様ほとんど同じのように思えて後々読み解くのが大変でした。これは両世界の王も同様で、リューク=ラルクの印象もありました。
 しかし、後半部分に差し掛かる辺りは、敵のキャラ付けがシッカリとしていて良かったと思います。

 ・後読感(C)
 主人公が最終的にピンチに陥る言うことで、最終的なインパクトは保てたのではないだろうかと思いました。ただ、前文がちょっと複雑すぎて誤読感が薄れてしまったのが否めないです。

 ・総評(D)
 全体的に見て、描写が足りないせいで損している部分が多く見られます。以前作品を見せて貰ったときは、通常の学生だと言うところから読者にも想像を着けやすかったですが、天界を知らないリアルの人間にアレコレ伝えるためにはもっと設定に関する描写が必要だと言うことを頭に置いてください。それだけでもだいぶ違ってきますよ^^
 また、描写の足りない部分を見いだすためには見直しを用いる事は言いましたよね? ネタを蓄えて熟成させるためにも、見直しはキッチリやった方が良いですよー。
 今回の話しでは王国のイメージが強かったせいか、キャラクターに改まった言葉遣いが多かったですが、ここは小説らしくキャラを立たせるためにも先入観は多少潰してしまいましょう!

 とりあえず、色々とレベルアップに手助けになる「ライトノベル作法研究所」というサイトを紹介します。中々参考になりますよ^^

 では、これにて。

22ピーチ:2012/10/01(月) 23:12:02 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
森間さん>>

…やっぱり描写すくないんでしょうかあたしは。

……もう少し、話の雰囲気壊さない程度に描写の量を増やしてみます…

ありがとうございました!

23Mako♪:2012/10/09(火) 01:35:34 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
ピーチ>>

久しぶり♪
わぉ!このお話も載ってる!って来たら、私の知ってるとこよりずいぶん先で、大興奮だよ〜〜♪

更新頑張ってね♪
私は、今ノートとかにお話の続きを作成中です(笑)

24ピーチ:2012/10/09(火) 18:19:37 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
まこ>>

めっちゃ久しぶり!!←

あ、こっちはねぇ……一旦諦めて新しくスレ立てるつもりだから、良かったらよろしくだにゃww


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