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邪気眼少女の攻略法。

1心愛:2012/09/16(日) 13:17:20 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp



こんにちは、または初めまして。
心愛(ここあ)と申します。

拙くて見るに耐えない駄文ですが精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
感想等戴ければ泣いて喜びます。
ですが、ここあは非常に小心者です。一つの批判にもガクブルしてしまうと思われます。
なので、厳しい御言葉はできるだけオブラートに包んで戴けると嬉しいです(>_<)

また、ここあが不要と判断した書き込みは、誠に勝手ながら反応しないことがあります。申し訳ありません。

話の内容としてはゆるゆるな日常系ラブコメを目指しています。
キャラクターについては、後から少しずつ紹介していきたいと思います。




【心愛(元 月波)の過去作品】



『紫の乙女と幸福の歌』

『紫の乙女と愛の花束』



【関連作品】



『紫の歌×鈴扇霊』(上記作品のピーチとのコラボ)

『パープルストリーム・ファンタジア 幸運の紫水晶と56人の聖闘士』(同じく彗斗さんとのコラボ)

2ピーチ:2012/09/16(日) 13:26:33 HOST:nptka202.pcsitebrowser.ne.jp
心愛さん〉〉

いぇーい!元つっきーの新小説ー!

タイトル的に面白そうだよねー!

あ、あたし何て呼べばいーかな?

3心愛:2012/09/16(日) 14:15:02 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ここあでも、ここにゃんでも何でもどーぞ(笑)

自分では「ここあ」って呼ぶけどねw

4心愛:2012/09/16(日) 14:15:48 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp



.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚






黄昏の光に包まれた公園で、僕はひとり、ブランコを漕いでいた。
ゆっくり足を曲げて、それからゆっくり伸ばして。
真横には僕から伸びるちっぽけな影が揺らめき、キィィィ、と鎖がもの悲しいな音を奏でた。
ぎゅっと唇を噛んで、靴の裏で地面を踏み締め、ブランコの動きを止める。



……僕は、軽いいじめにあっていた。
お父さんにもお母さんにも言えていない。
だって、学校にいてもずっと一人ぼっちで、クラスの皆が僕を無視してるとか、遠くから僕の悪口を言って笑う声がするとか、たまに上履きがなくなってたりするなんて、そんなの、恥ずかしくて言えるわけない。

必死に笑って、毎日すごく楽しいよって先生にも、親にも嘘までついて。頑張って隠してきた。

でも、もう限界だった。


僕はチャイムが鳴るやいなや学校から飛び出して、こうしてただ、公園の時計の針が進むのを眺めているところだった。



自分がみじめで、情けなくて、目の奥が熱くなって。湧き出てくるものを抑えるみたいに、空を見上げた。
鮮やかなオレンジと、赤のグラデーションに染まった背景。


それはなんだか、





『―――……怖いくらい、きれいだよね』





僕はびっくりして振り向いた。


そこに立っていたのは、



『ね。そう思わない?』



僕と同じくらいの年齢の、凄く可愛い、女の子だった。


冗談かと思うくらい長い睫(まつげ)と、つぶらな瞳が際立つ小さな顔。
ふっくらした薔薇色の唇、つんと上を向いた鼻。
少し生意気そうな、でも文句の言いようがない程整った顔立ち。

背丈に比べて明らかに長い、細くて華奢な、白い脚がシンプルなワンピースから伸びていた。


彼女が小首を傾げると、長くしなやかな黒髪がその動作に合わせてサラサラと揺れる。



『……思う』



『だよね』



この世の全ての輝けるものが全部映り込んでいるかのように煌めく、深く透明な黒瞳(こくどう)に見つめられ。
どうしようもなくどきどきして、変な動悸を押さえつけるように胸に手を当てた。



『きみ、いくつ?』



『……六さい、だけど』



『うそ、いっしょだ』



その女の子はすべすべで真っ白な頬を仄かに赤く上気させ、心から楽しそうに笑った。

5心愛:2012/09/16(日) 14:17:14 HOST:proxy10006.docomo.ne.jp




彼女はひょい、と僕の隣のブランコに腰掛けて、艶やかな髪を風に靡かせながら。



『風ってどこから生まれるんだろうね』



彼女は不思議な子だった。
身の回りの色々なことを良く見ていて、感受性が強くて、純粋で、自分に正直で、子供っぽくて、一つ一つの仕草が妙に洗練されていたりした。

僕は彼女の話に耳を傾け、共感して頷いたり、時には自分の意見を言ったりした。

他の子と一緒にいるより、ひとりで遊ぶ方がずっと好きだったはずなのに。時間も何もかも忘れてしまうくらい、彼女と話すことが、すごく、すごく楽しくて。



『わたしはね、“自分”をさがしてるの』



内緒だよ、と彼女は笑った。



『……自分?』



『そう、自分』



ブランコから軽やかに降りると、彼女は両腕を思いっきり広げて夕焼け空を振り仰いだ。



『わたしが一ばん、こうありたいって思える自分。他人におしつけられる、いい子の自分じゃなくて、わたしが心から、なりたいって思える自分……。そんなリソウの自分を、ずうっとさがしてるんだ』



眩しかった。

赤い空が、まっすぐに生きる彼女が眩しくて仕方なくて、僕は思わず目を細めた。



『きっと見つかる』



だから、僕も笑って言った。



『ううん……ぜったい、見つかるよ』



『ありがとう!』



いつの間にか彼女の満面の笑みに見惚れていた自分に気づき、なんだかどぎまぎしてしまって、ついパッと逃げるように視線を逸らす。



『……あ』



『帰る時間?』



『うん。あんまりおそいと怒られるから』



時計の針が指し示す数字を見て、僕はブランコから立ち上がる。

それを聞いて、残念、と少し寂しそうに、彼女は手を振ってみせた。



『……あの!』



僕はありったけの勇気を出して叫んだ。



『また、会えるかな』



このまま別れるなんて嫌だ。
もっといっぱい、彼女の隣で、一緒に話していたい。
そう、思ったから。



でも、彼女は首を横に振った。



『ごめんね。……むりなの。明日、ちがう町に引っ越すから』



『え』



『今日も、ここにさいごのお別れをしに来たの』



眉を下げる彼女は儚くて、目を離したら今にも、この空に溶けて消えてしまいそうに見えた。



『だったらっ』



僕は必死だった。

もう、会うことができないのなら、せめて。

彼女の手掛かりを、一つでも手に入れたいと思った。



『名前、おしえて』



『ミウ』



白いワンピースの裾が、ばさり、と音を立ててはためいた。



『ユイノ、ミウ。あなたは?』



『……日永(ひなが)』



普通の小学生にしてはちょっとだけひねくれていた僕は、何となく自分の下の名前を素直に言うのは恥ずかしくて、敢えて自分の名字だけを告げた。


彼女―――ミウは不思議そうに瞬きして。
それから、大輪の花が綻ぶように、柔らかく微笑んだ。




『―――じゃあ、“ヒナ”ね!』




その笑顔は、可愛くて、優しくて、綺麗で、何よりもまばゆくて。




―――それが、初恋だった。








.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚

6ピーチ:2012/09/16(日) 14:26:18 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

い、今までつっきーだったから……難しい……!!

って一人称小説ー!?

あたしは折れかかってるよ今、一人称で←

7心愛:2012/09/16(日) 14:44:07 HOST:proxy10008.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ここあもうっかり月波って打ちそうになるよ(^^;;

一人称って難しいね…。
主人公の容姿とか自分だとダラダラ説明できないしねー…。


ゆるゆる日常になるのはかなり後になりそうw

8ピーチ:2012/09/16(日) 16:59:33 HOST:nptka207.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

あはは、確かに難しいよねーw

一人称で容姿説明できるのって、自己中くらいだよねw

9心愛:2012/09/16(日) 17:05:34 HOST:proxy10065.docomo.ne.jp
>>ピーチ

相当なナルシストさんに違いない(笑)

ヒナが通うのはここあの高校そのままです←
制服ない生活に慣れちゃったから、普通の学校は書きにくい<(_ _)>

10ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/16(日) 18:18:51 HOST:EM117-55-68-188.emobile.ad.jp

タイトル見て新作だー!って舞い上がっちゃいましたw
今回もお邪魔させてもらいますねここですどうもおおお←

さっそくだけどミウちゃん可愛すぎてやばいですw
ヒナくん良い恋をしましたね←

それでは!
あんまり長々書くと自分でも止められなさそうなのでここらへんで失礼しますw
新作もがんばってください!

11ピーチ:2012/09/16(日) 18:26:19 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ナルシーww

大丈夫だよ!ここにゃんならどんなジャンルでもどんな書き方でも書けるから!!

レイさんで証明してくれたから!←

12心愛:2012/09/16(日) 18:59:20 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ねここさん

あああありがとうございます!
また是非とも宜しくお願いしますー!

ミウかわいいですか?←
でもあとでそのお言葉を盛大に裏切ることになるのですが…(*_*;

相変わらずなカス文章ですが、精一杯がんばりますっ(*^-^)ノ



>>ピーチ

レイさーん!(笑)
いや、やっぱ全然思うようにいかんわ…。
み、見捨てないでねピーチ!(つд`)

13ピーチ:2012/09/16(日) 19:50:23 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

レイさーんww

絶対見捨てないから!!むしろ見捨てらんないから!!←気になりすぎてw

14彗斗:2012/09/17(月) 00:23:57 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
おお!? 

これがあの呟いていた新作ですか!

しかも一人称とは……感服致しましたm(_ _)m

15心愛:2012/09/17(月) 10:57:34 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう…!
ずっとよろしくね相棒!((だからやめろ



>>彗斗さん

新作ですー。
「ソラの波紋」と、ピーチのコラボと同時進行なのでまったり行きますがよろしくです←
一人称ってホント大変ですね…。レイさん然り。

16ピーチ:2012/09/17(月) 10:59:17 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

あいぼーうっ!!←うぜぇ

相棒やめないでね!?←だからうぜぇ

17心愛:2012/09/17(月) 11:04:51 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp
>>ピーチ


やめないよー!
たとえ受験戦争が始まろうとも、小説全部ネタ尽きようとも遊びに来るよー!

18ピーチ:2012/09/17(月) 11:05:59 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

受験戦争w

あたしは来年だww

19彗斗:2012/09/17(月) 18:18:51 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
こちらこそヨロシクです☆

マッタリか……私もそんな感じで更新続けたい……(泣)

20心愛:2012/09/17(月) 20:31:29 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ここあも来年だ…w
ただ小説書いてると成績下がりそうなんだよね(^_^;)
上手く折り合いつけないと!


>>彗斗さん

どうしてもノッてるときはバーッと書きたくなって困ります←
でもこの「邪気眼少女」の次の回がほとんど動きないんで、書いててつまんないんですよねー。
ここあの学校の情報をどこまで明かすかも難しい(´・ω・`)

21ピーチ:2012/09/17(月) 20:54:44 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

受験ヤダ―――!!!

小説書いてるお陰で成績下がるキラン☆←何だそれ

22心愛:2012/09/18(火) 16:24:04 HOST:proxyag059.docomo.ne.jp

『入学式(はじまり)は桜と共に』




視界を染める、純白に紅を一雫だけ落としたような薄桃色の破片。
桜の花を透かして、うららかな陽光(ひかり)が零れ、差し込み。
穏やかな風が梢を揺らして千々の花びらを舞わせ、俺の足下にまで運んできた。


ザッ、と音を立て、新品の革靴で地を踏み締める。
まさしく万感の思いで、体育館の入口に掲げられた看板の文字を見やった。



“県立南高等学校 入学式”



県立南高等学校、略して南高。
全国での偏差値は優に七十を超える、名実共に県下トップのエリート校。


……まさか本当に、この俺がここに受かってしまうなんて、思いもしなかった。
合格発表の日の言葉に表せないくらいの嬉しさを思い出し、それから入学式の今日になってやっと、この学校の生徒になるんだという実感が沸いてきて、思わず顔がにやけてしまう。

今だけは神様に全身全霊で感謝を捧げたい気分だ。


俺―――日永圭(ひなが けい)は、入学式が終わったので一人さっさと体育館を出て、昇降口に向かうところだった。
クラス発表の紙もそこに掲示してあるらしく、結果に大騒ぎしている奴らの賑やかな声が一歩踏み出すごとに近付いていく。


さて。南高の特色としては、大学と同じように、単位制度を導入していること、それから完全なる私服通学を採用していることが挙げられる。
とはいえ入学式当日に私服を着てくる非常識人というか勇者はそうそういないので、見掛けるのは中学のときの制服らしききっちりした学生服や真新しいスーツなど、無難で落ち着いたものばかりだ。
数少ない女子はといえば、『なんちゃって制服』とか言うらしい、普通より派手めの制服もどきの子がほぼ十割。
特に取り決めはないけど、南高の入学式は毎年こんな感じだと聞く。

いかにも“優等生”で“マジメ”な南高生、多数派に従って空気を読むのにも長けているってわけだ。


「っ、」


「あ、すみません」


友達と楽しそうに談笑していた女生徒と肩がぶつかり、軽くよろめく。

「いえ……」

つい、他人に話し掛けられたときの癖でびくっとしてしまうが、謝られた手前、とりあえず軽く頭を下げておいた。

それでも何となく気まずくて、その娘(こ)を抜かしてしまおうと足を速め、その際にちらりと視線を投げると、

「……うーわ……」

それ穿いてる意味あんの? と聞きたくなるくらいハンパなく短いスカートに、くるくる巻いた、むしろ赤に近い色の茶髪。

ひっ……化粧、濃っ! 化け物か!

「?」

不審そうな目で見られたので、慌てて顔を逸らして立ち去る。

……あ、あんな奴もいるのか、広いな南高……。

ああいうのに限って、俺より頭良かったりすんのかもね……。


それにしてもさ。何で変に髪弄っちゃうんだろうなぁ。
俺は女子高生っつったら断然黒髪ストレートだと思うんだけど。
女の子らしい清純さとか、初々しさとか、……そういうのも大事だと思うんだよね。


―――……あの、“ミウ”みたいにさ。


記憶の片隅に残る少女の面影が目の前にちらつき、ゆっくりと頭を振る。


今は感傷に浸っている場面じゃない。


―――……俺は、変わるんだ。


過去を振り切って、完全に生まれ変わって―――最高の高校生活を送ってやる。

俺には大分無理があった難関を受験したのも、同じ中学の奴がほとんど受けないから。
今までの『俺』を知る奴は、誰もいない。


堂々と胸を張れ。
やましいことなんかない。
大丈夫、今の俺ならきっとできる。



「よっし……!」



小声で気合いを入れ直し、俺は真っ直ぐ前を見据えた。

23ピーチ:2012/09/18(火) 18:07:44 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

にゅーがくしきー!!←

うん、黒髪は認めるけどストレートのみはやだな、あたし的にはww

24心愛:2012/09/18(火) 20:08:20 HOST:proxy10037.docomo.ne.jp
>>ピーチ

人の思考って、ちょっとしたことで結構簡単に移ろうし、いろいろどーでも良いことも考えてそうだなーということで。


黒髪ヒロイン大好き!←

くるくる茶髪さんは、実はうちの学年にモデルいますw
話したこともないんだけど、彼氏とっかえひっかえとか悪い噂しか聞かないので正直あんまり良い印象はなk((ry

25心愛:2012/09/18(火) 20:09:02 HOST:proxy10038.docomo.ne.jp




『うっそマジー!? 一緒じゃーん!』


『絶対4組遊びに行くから!』


新年度のクラス発表というのはどこの学校でも同じようで、ぎゃあぎゃあ大げさな悲鳴を上げたり、友人同士で親しげに肩を叩き合ったり……。


見えないっつーの!


後ろから爪先立ちしてみるも意味はなく、仕方なしに、タイミングを見計らって集団の中に潜り込む。


ったく。見終わったらさっさとどけよ、後から来る奴のことも考えろや。


実際に口に出したらアブない人路線まっしぐらなことを考えつつ、バカでかい白い紙に印刷された文字を視線で辿る。


ひ、日永、……あった、11組。


8クラスもある割には意外と簡単に見つかった。

ちなみに南高では2年の3組だったら23組、という具合に、クラス名は二桁で表す。
だから、11組は実質1年1組ってことだ。


あとは自分の出席番号を確認すれば、どこのクラスか調べておく友達もいないのだからもう用はない。


はず、なんだけど。


無意識のうちに、毎年繰り返していることをまたやっている自分に思わず苦笑する。
もはや一つの癖だ。
―――日永、よりも後に書いてある名前を、ひとつひとつ慎重に眺めていく。



ユイノ、ミウ。



昔、小さい頭に必死になって叩き込んだその音を、そっと唇に乗せた。


自分でもバカじゃないのかと思う。
初恋の女の子の名前が何かの間違いで同じクラスの名簿に載っていたりしないかどうか、探してしまうなんて。
飽きもせずに毎年毎年。
……ホント良くやるよな、俺。



「ゆ……いの、」





“No.39 結野美羽”





―――心臓が、止まったような気がした。



「っ……」



結野。

“ゆいの”って、読め……ない、か?



「うっ……―――」



そだろ、と、熱い息を吐き出した。



思考が纏まらない。



目を見開いて、ぼうっと突っ立っている俺をどかそうと、誰かが迷惑そうに押してくることさえも、頭では多分理解しているはずなのに身体が全く動かない。



「は、」



落ち着け!



早鐘を打つ心臓を服の上から押さえつける。


カラカラに渇いた喉にごくんと唾を送り込み、瞼を閉じた。



……同姓同名の他の女子、ってことだって十分有り得ることだ。


決めつけるのはまだ早い。



でも、


……もし、



“ミウ”ともう一度逢えるなら。

あのときみたいに、いや、もっと、ずっとずっと近くで、話ができるのなら。

また、一緒に笑いあえるのなら。




「神様、俺のこと好きすぎだろおい……」




口元に笑みを浮かべ、俺はパッと身を翻した。



―――この目で、真実を確かめるために。

26ピーチ:2012/09/18(火) 20:30:54 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

黒髪ヒロイーン!!

おぉっ!!ミウちゃん発見!!

後は確認だけだーww

27心愛:2012/09/20(木) 16:33:29 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp





―――その女子は、俯いてケータイを弄っていた。



黒蜜のように艶のある髪が、さながら彼女と外界とを遮るヴェールのように、その横顔を神秘的に隠している。


彼女が身に着けているのは、黒を白を基調にしたフリフリのドレスみたいな服―――そう、ゴシック・ロリータ。


ゴージャスな姫袖のブラウスに、甘いシルエットで魅せるアシメトリーなデザインのコルセットスカート。
頭には薔薇のケミカルレースとグログランリボンのヘッドドレスがちょこんと載っている。



……いやいや待て待て。


駅前とかならともかく、なんで入学式の日の教室にゴスロリがいるわけ?


黙っているだけのその少女はしかし当然のことながら、教室中に存在感と違和感と異彩を放ちまくっていた。

椅子に座った誰もがもの言いたげに、チラチラと彼女を見やっている。


……困ったことに、俺の右隣の席の奴だった。


ちょっと、いやかなり緊張しながら、入口で呆然状態に陥っていた俺はそそくさと、廊下側から二列目、後ろから二番目の席に座る。



あ、はは、は、は、……。



……なんだか猛烈に嫌な予感がするのは、俺だけか?



全40人のクラスで、結野美羽の出席番号は39番。


ということは、廊下に繋がる窓に沿った、教室の左から数えて一番最後の列の、後ろから二番目―――



俺の、隣。



つつーっと背中を滑り落ちる冷たい汗の感触に耐えながら、俺は恐る恐るとゴスロリ女を横目で伺う。


座高の低さから、女子の中でもかなりの小柄であることが伺える細身の体型。

ケータイを操作する指はほっそりとして仄白く透き通っている。


……で、でも、コレが“結野”だったとしても“ミウ”だとは限らないし……。うん。


顔を見れば分かるのかもしれないけど、幸か不幸か、……ええと、結野は頑なに下を向いていて、画面から目を逸らそうとしないので、全くそのチャンスがない。


それにしても何でこんな、さっきの茶髪さんが可愛く思えてくるレベルの奇抜すぎるファッションを、わざわざ高校の入学式に?

電波入っちゃってんの? それともなんか特別な事情があんの?

いや、ゴスロリ着る特別な事情ってのも全く想像つかないけどさ。

仮に“ミウ”と同一人物じゃなくて、全然関係ないにしても気になるものは気になる。


でも、綺麗な黒髪や対照的に真っ白い肌、こぢんまりとしていて華奢な体躯は、今もなお鮮やかに蘇る記憶の中の少女のものに、怖いくらい良く似ていて。



……や、やっぱり、……?



誰ひとりとして喋ろうともしない、不自然な程に静かな教室に、新しいクラスメイトが入ってきては結野の格好に気づいてぽかんと口を開け、それから我に返ったように視線を逸らして自分の席に着いていく。


やがて全員が揃った頃、遅れて来た担任が勉学がなんとかとか生徒手帳やら書類がなんとかとか話し出しても、内容なんてほとんど頭に入ってこなかった。


結野は退屈そうに頬杖をついて、自分のすぐ右にある窓をじっと眺めている。



「ええと、どうかな? みんな、もう近くの席の人と話とかしたかな?」



この雰囲気でできるわけないだろが、という生徒たちの無言の圧力を感じたのか、初老の担任が引き攣った愛想笑いを浮かべて軽く後ずさる。



「あ、あーうんそうだよね! まだお互いのこと良く知らないもんね!」



テカる額をハンカチでせわしなく拭いながら、担任はアハハと笑って逃げるように言った。



「……よし、じゃあ早速みんなに自己紹介してもらおうか! 出席番号1番の人から、教壇に出て下さい」



……そっか、自己紹介……!


順番に前に出て話すということは、当然。


正面から、結野の顔が見られる。


“ミウ”と“結野美羽”が本当の本当に違う人物じゃないのか、すぐに確かめることができる。

28心愛:2012/09/20(木) 16:35:27 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ヒナ、まだ確認はできておりませんw
さてさて、どうなるのでしょう(笑)


次更新したらキリが良くなるから、そしたらまた他の小説に手を付けます(*^-^)ノ

29ピーチ:2012/09/20(木) 21:19:42 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ちょっと待てー!?ミウちゃんか―――!?

どうなるのでしょうじゃなくて気になる!!

お、次違うの行く?楽しみだにゃあww

30心愛:2012/09/20(木) 22:34:19 HOST:proxyag080.docomo.ne.jp
>>ピーチ

こうなったらだいたい予想ついちゃうよねえええ←

タイトルがタイトルだしねー!


ちなみにここあの学校では入学式は見たことないけど、卒業式で本格派のゴスロリの人がいたよw

31ピーチ:2012/09/20(木) 22:39:31 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

予想つきすぎて怖いぃぃぃ!!

………………卒業式で本格派ゴスロリ?なぜ?←

32心愛:2012/09/20(木) 23:31:22 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
>>ピーチ


…ここあの主役キャラに、まともな人格を期待してはいけないのだよ…。


うん、何でだろうね←
一人だけ超目立ってたからよく覚えてる(^_^;)

ここあはゴスロリ肯定派だけど、最低限のTPOも大事だと思うなw

美羽をノリノリで書いてるここあが言えることではありませんがww

33ピーチ:2012/09/20(木) 23:55:02 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

いやいやいやいや!?だったらあたしのキャラ(主役に限らず)はどーなんの!?

あ、美羽ちゃんノリノリで書いてたんだ…

34心愛:2012/09/21(金) 13:28:55 HOST:proxyag116.docomo.ne.jp





自己紹介は、最初の方の奴の努力もあってか比較的和やかかつスムーズに進んだ。
軽いジョークを飛ばして笑いを取りに掛かる男子や、「仲良くしてください」と笑顔でアピールする女子。

趣味や入りたい部活、など一人が結構たくさん話していて、その誰もが、不安と期待が入り混じったような―――どこかキラキラした顔をしている。


長い受験勉強から解放されて、ようやく巡ってきた春だもんな。


つい、つられて俺まで表情が柔らかくなる。


……結野の存在を思い出してビクッとするけど。


彼女に気を取られているのはもちろん俺だけではなく、教室の端でそっぽを向き、窓とにらめっこしている結野をちらっと見てから、気を取り直したように話し始める奴が大半か。


―――と、余計なことを考えているうちに俺の順番が来てしまったので慌てて立ち上がり、教卓の前に出る。


やば、どうしよう。



「えーと、……初めまして、日永圭と言います。中学は―――」



小学校の頃から、大勢の前で話すのがどうしても苦手で、嫌いだった。
どこかで陰口を言われているんじゃないかと思うと身が竦んで、ろくに言葉も出なくなってしまうときもあった。


でも、少しぎこちなく話す俺を見る、クラスメイトたちの目は、驚くほど優しくて。


―――良い奴なんだ。みんな。


改めて、この学校に入れて良かったと心から思った。


こわばっていた頬が自然に緩み、言う予定ではなかったことまで、するりと口から出てくる。



「特に部活などは考えていませんが、漫画とかゲームとかが好きです。同じような趣味の人は、話し掛けてくれたら嬉しいです」



……結野の細い肩が、やはり表情は読めないけれど、ぴくんと小さく動いたように見えたのは気のせい、だろうか。


まばらだけどあたたかい拍手の中、俺は歩いて席に戻り、ふうっと一息。


二番目の心配事、俺自身の自己紹介は終わった今、気になることはただひとつ。


申し訳ないけれど、俺の後の人たちの話は聞き流してしまった。



「―――……あー、次は……結野(ゆいの)さん、かな? お願いします」



そして、待ちわびたその瞬間が来る。



前の生徒が戻り自分の順番が来ても席を立とうともしない結野に、気を使ったらしく担任が声を掛けた。


……ゆいの、って読み方でやはり合っていたみたいだ。


それでも結野は動かない。
黙って窓を睨み続けるだけ。


教室がにわかにざわめき出す。


「ゆ、結野……さん? 体調が悪いのかな?」


担任の声がちょっと泣きそうになったとき―――



仕方ない、とでも言うように結野が盛大な溜め息をついて、すくっと立ち上がった。

35心愛:2012/09/21(金) 13:29:51 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp






彼女が歩み始めると、まるで示し合わせたように、しん、と教室が静まり返る。


一歩を踏み出すごとにゴシック・ロリータの裾のフリルが翻り、極上の絹糸のように艶やかな黒髪が肩から零れ落ちて、ふわり、と風を孕んで靡く。
彼女が小さな漆黒の靴を高らかに鳴らして教卓の前に辿り着き。長い髪の奥に秘められていたその顔を、ゆっくりと上げる。

―――教室中が、息を呑んだ。

一流の職人が丹念を込めて削り上げた硝子細工みたいに美しく透き通った真珠の肌、つんと尖った形の良い鼻、愛らしく綻んだ花弁の唇。
そして。小さな顔に奇跡のように完璧な配置で嵌め込まれた、宝石の如く深い色に輝く―――紅(あか)い、赫(あか)い、双眸。


物凄い、美少女だった。
なんかもう、「クラスで一番可愛い」とか「結構美人」とかいう次元じゃない、完全なる、生粋の、美少女。





―――“ミウ”だ。





直感で解(わか)った。



目の色も格好も雰囲気も全然違うけど、間違いなく、“ミウ”だ。



あの日一度あったきりの、……俺の、初恋の女の子。




その瞬間。彼女の正体を確信してしまった俺だけではなく、みんな、特に男子諸君が、本当は何か事情があってこんな痛々しい格好してるんじゃないかとか、『実はウケ狙いだったんですぅ〜』とかテヘッて笑いながら言い出すんじゃないかとか、そういう淡い願望を一斉に抱いたことはまず間違いないだろう。


……でも、甘かった。


耽美で、可憐で、どこかアンバランス。
猛毒を秘めた花のような、精緻な美貌を持つその少女は、この世の全てを見下しているかのように挑戦的に赤い瞳を眇(すが)め。ふんっ、と華奢な顎を傲然と突き上げて。
やがて鮮やかな薔薇色をした唇が開き、小鳥のさえずりのような美声で、



「……初めまして、と言うべきかな。
ぼくのこの世界での名は結野美羽。またの名を、ミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ―――魔術組織《純血の薔薇(Crimson)》の一級魔女にして吸血姫(ヴァンパイア)、赤の十四番《黄昏(イヴ)》。
……下等な人間共と慣れ合うつもりは微塵もないが、まあ一応、宜しくとでも言っておこうか」



『自分今最高に格好良いこと言った!』的な、いわゆるどや顔を炸裂させて自信満々に乏しい胸を張る結野。



痛い沈黙。



……薄れゆく意識の中、俺はこう思ったよ。






―――……神様。アンタ俺のこと嫌いだろ。

36ピーチ:2012/09/21(金) 20:02:06 HOST:nptka103.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

………圭君、神様に嫌われるようなことした?

“ミウ”ちゃん登場だー!

37心愛:2012/09/21(金) 20:45:33 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ミウを健気に想い続けて約十年、奇跡的にまた逢えたと思ったら、純粋だった彼女は今や末期中二病患者になっていたという哀れすぎるヒナさんです←
シュオンと境遇は似てるけど裏切られ方がはんぱないよね!


美羽が何考えてこんな言動しちゃってるのかとかは、また後々(≧∀≦)

38ピーチ:2012/09/21(金) 22:04:33 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

あぁぁぁぁ……哀れだ、哀れすぎる……!!

シュオン様は目の前でソフィア様が連れて行かれるのを見てたからね←

美羽ちゃん……今はまだ何考えてんのか分かんない((汗

39心愛:2012/09/22(土) 16:13:30 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そんな哀れなヒナを早く救ってやらなければ(笑)

美羽は、イタ可愛い子を目指してこれからがんばります!

40ピーチ:2012/09/22(土) 17:22:21 HOST:nptka305.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

哀れっていうと何故かレイさんが出てくるw

何でだろーネww

41心愛:2012/09/24(月) 21:04:12 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>ピーチ

レイさんは哀れな人の代表格だからね!
ヒースもジルもだけど←

でもちゃんと全員、可愛い女の子あてがってるから許してくださいw



ヒナは哀れな人からは早めに脱却するかも?

42ピーチ:2012/09/24(月) 22:32:27 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

うん、確かにネ←今そう思った奴ww

ヒナさんは早めの脱却?良かったネww

43彗斗:2012/09/25(火) 22:31:41 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
うわぁぁぁぁぁっ!!

ミウちゃんがどうしてこんな事に……←(一体何を知っていてこんな事言ってるんだww)

これからどんどん悪化して行くのかな……!? ギャァァァァッ!! 考えるだけでも恐ろしい……(泣)

これ以上は悪化しませんように……

44心愛:2012/09/27(木) 16:25:03 HOST:proxy10036.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ただ、更新速度遅いから、脱却がすぐにできるかどうかは(´・ω・`)
とりあえず、こっち優先するんであとのはもうちょっと待っててください!
キリはいいんだけど、展開的に中途半端すぎるから美羽パートにいくまで集中的にがんばる(つд`)



>>彗斗さん

元中二病患者さんの古傷を抉るあまりに痛々しい美羽さんです。
ここあは中二病肯定派なんですけどね!
自身もちょっと危ないし←
ノリノリで美羽の自己紹介に出てくるアレな単語考えてましたし←

…彼女の病気がこれ以上悪化しないよう祈っていてくださいませ((ぇ





すでに一人称に挫折気味なここあです(^_^;)
でも一人称ならではな表現もあるでしょうし、あきらめないでしぶとく続けます←
今まで以上に読みにくいことこの上ないですがご容赦を!

45心愛:2012/09/27(木) 16:30:25 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp

『姫宮夕紀』




―――妄想や自分の好きな漫画やアニメ、ライトノベルやゲームなどの影響によって現実の自分に妙な設定を付けたり、それを他者に対して演じて主張するような行動を、『邪気眼』と呼ぶ、らしい。



スマートフォンの画面から目を離し、俺は黙って肩を落とす。




―――高校の入学式、やっとのことで再会した初恋の女の子が、中二病こじらせて邪気眼発症してました。
はい状況説明終わり。



「はあああああー……」




……調べてみると、意外なことに、憧れるあまりに特定のキャラと一体化するようなキャラ設定を自演してしまう人、痛々しい言動を振り撒く人っていうのは結構多いらしい。


赤いカラコンにゴスロリを装備し、口調も僕っ娘(ぼくっこ)らしくしていた結野のアレにも、もしかしたらちゃんと、モデルのキャラがいるのかもしれない。


いや、そんなことはどうでもよくて。



「はー…………どうしよ……」



昇降口で上履きに履き替え、深い深い溜め息をつく。


昨日の最悪の空気は結野の後の生徒がなんとかして改善してくれたけど、家に帰ってから一人でうだうだ悩んでみても結局何も結論は出せずに、すっきりしない気分のまま、また登校して来てしまった。


「中二病ってすぐ治るもんなのかなー……」


廊下を歩き、そのまま真っ直ぐ教室へ。


暗く沈んだ顔でガラリとドアを開ける、と。




―――席に座った全員が、勉強していた。




「うわ何これきっしょ!?」



しまった正直な感想が!



だ、だってこの光景異常すぎんだもん!

まだ授業開始の八時二十五分には三十分もあるのにほとんど全員揃ってて、誰も喋らずに前向いてただカリカリカリカリ―――


おかしいだろ!



皆は一斉に、バッと俺を振り返ってから顔を見合わせ、



「……だよなー! いやあ暇だったからつい癖で」


「妙に静かで落ち着かなかったから……今日テストだし」


「あたしは着いたらみんなやってたからつられて、ってか入学式の次の日にテストっておかしくね?」


おかしいおかしい、と今更ながら笑い半分でクラス中が騒ぎ出す。


「順位出るんだっけー?」


「出るらしい。俺は捨てっけど」


「マジで? 俺も捨てよっかなー」



そんな中、一人のチャラそうな男子生徒が振り返り、ニカッと笑って親指を立てた。


「日永、ナイスツッコミ!」


「そうそう! みんな薄々思ってたけど、誰も言い出せなかったもんねー」



うわ、もう俺の名前覚えてくれたんだこいつ……。


じんわりとあたたかくなる心をごまかすように、名前も知らない男子に「ありがたいお言葉をいただき恐悦至極」とふざけて笑い返した。


クラスメイトたちが思い思いに席を立って談笑し始めるのを見届け、俺は鞄から荷物を取り出す作業に移る。


―――なんとなくだけど、この一年は上手くやっていけそうな、そんな気がした。


空っぽの結野の机を眺め、よしっと拳を握る。


ただ、結野が変わった変わったって嘆いてたってしょうがない。


できるだけ早めに、何か行動を起こさないと。


実際話したら、意外と話が合ったりするかもしれないし。


……合わない可能性しかないような気もするけど、それでも何もしないよりは良いだろう。

46心愛:2012/09/27(木) 16:31:35 HOST:proxyag065.docomo.ne.jp





一人意志を固めていると、



「あのー、日永くん?」



「はいィ!?」



急に、つんつん、と誰かに背中をつつかれて変な声が出た。



「……っあはは! なにその声、やっぱり日永くんって面白いねっ」



振り返ると、楽しそうにけらけらと笑っている後ろの席の女子と目が合う。

清潔感がある栗色の髪をショートにした、とびきりの美少女だった。
大きな紅茶色の瞳に、子供みたいに無垢な顔立ち。
キラキラ輝く眩しい笑顔は、天に翼を置き忘れてきた天使のように清純にして可憐。
飾り気のないジーンズに合わせた、だぼっとしたパーカーも、まるで計算され尽くしたように見事に彼女の体格の華奢さを際立てている。



「ちょ、ひどくね? 急にだったからびっくりしただけだし」



余裕ぶって笑ってみせながらも内心は超パニクり状態。


女子に話し掛けられたのなんか何年ぶりだろとか、 ってゆーかこんなレベル高い子が結野以外にもいたのかよとか、やべえ俺この子の名前知らないじゃんとか。


そんな俺の焦燥もつゆ知らず、「ごめんごめん」と彼女はスマホを片手に微笑んで。



「でね。良かったら、なんだけど。メアド交換しよ?」



……メ、メアド、だと……?



「え、あ、あーうん分かった! 了解!」



全く思いも寄らなかった提案に一瞬フリーズしてしまった。
いやちょっと待てスマホどこ行った!?
全然使わないから確か鞄の奥に……
……あ、あった!



「赤外線でいいよね?」



せ き が い せ ん ?



ナンデスカソレハ。



「……赤外線……?」



「あ、もしかして日永くんケータイ初心者?」



いや、小六から持ってます。
妹くらいしかメールする相手いないしネットとメールと電話以外使ったことないけど。



「ま、まあ」



「じゃあちょっと貸してくれる? だいじょぶ、変なとこ見ないから」



彼女はにっこり笑って俺のスマホを受け取ると、手慣れた様子で操作し始めた。



「……うん、とりあえずこれでおっけー。そしたらね?」



「あ、うん」



わざわざ立ち上がって隣まで来てくれ、画面を俺に見せて説明しながら無防備に顔を近づけてくる彼女。
栗色の髪からふわりとフローラルな香りが立ち上って、思わずどぎまぎしてしまった。



「はい、送ったよー」



「お、ありがと」



画面に表示された名前は―――『姫宮夕紀(ひめみや ゆき)』。



可愛い子は名前まで可愛いんだな、と思った。
性格も朗らかで優しいし。
同年代の人間……特に女子と会話することには苦手意識があった俺だけど、自分の中で少し認識を変えることができたかもしれない。


……これが家族以外の初アドレスだというのは情けないので言わないでおこう。うん。

47ピーチ:2012/09/27(木) 19:56:57 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ヒナさーん!!

うん頑張って!応援してるから!!

あ、何か夕紀ちゃんかわいー←

クラスに馴染めて良かったね☆

ナンデスカソレハw うけたww

48心愛:2012/09/28(金) 18:58:07 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp

『王子』






『っきゃあああああ!』


突然、語尾に大量のハートマークがくっついていそうな黄色い女の子の悲鳴が廊下に響き渡った。


なんだなんだ、と教室にいる奴らが出口の方を見る。
俺と、自分の席に戻った姫宮も例に漏れず、ぽかんと口を開けて首をドアに向けた。



きゃいきゃい騒いでいる大量の女子の後ろ頭が窓から覗いていて、



「ごめんね……。もうお別れの時間みたい」



飛び出てすらりと背が高い人物が困ったような口振りで言った。



「そんな……! 柚木園(ゆきぞの)君と別れるなんて耐えられないよ……!」

「王子と離れるのなんて嫌っ」



「ああ、そんなに悲しそうな顔をしないで……。お願い、笑顔を見せてくれないかな。君たちの微笑みが、何よりも私の心を癒やすんだから」



…………えええええ。


聞こえてくる歯の浮いた台詞に愕然とする。



「柚木園くん……!」

「ゆっきー……!」



「そう。すっごく可愛い」



あ、あれでメロメロになれる女子の感性が分からん……。




「……また会おうね、私のお姫様方」



『きゃ―――――!』


「王子ー!」「抱いてー!」などと飛び交う声をバックに、悠々とそいつは教室に入ってきた。



……イケメンだ。
もの凄いイケメンだ。

頭部があまりにも小さい所為で実現してしまった八頭身の黄金バランス。
切れ長で綺麗な二重の瞳、蔭(かげ)るほどの長い睫に端正な鼻筋。
シャープさと甘さが一体となって、見る者をさらに惹き込む涼しげな面差し。
女が好きそうな優男、と言ったらそれまでだが、少し垂れ目がかった目元は何故か、柔和というよりも危険とも思える色気が強い。
高校生よりも、モデルやホストなどの肩書きの方がずっと似合いそうだった。



『…………チッ』



モテない男子諸君―――クラスの男共が下を向いたまま一斉に舌打ちする。
言うまでもなく俺もだ。
くそ、漫画みたいなモテ方しやがってイケメンめ……!



「おはよう」



「おはよー」



「え? あ、お、おはよ」



と思いきや爽やかな笑顔で姫宮、そして俺にまで挨拶してくるイケメン……えーと、ユキゾノ。
……ええと、意外と良い奴……なのかもしれない。

ユキゾノとやらは、入ってすぐの俺の斜め後ろ、姫宮の隣の席に鞄を下ろした。


……おお、美形二人が並ぶと絵になるな。



「君は、……初めまして、だよね」



中性的で耳に心地良い声を弾ませ、艶々(つやつや)した白い歯を健康的に輝かせる。



「あー、うん。俺日永」



「私は柚木園。柚の木の園って書くんだ。よろしくね、日永君」



柚木園が少々気障(キザ)なウインクを決めると、それに合わせて背景に水玉と星が散る。



な、なんていうか……。



「それにしてもすごいモテっぷりだよねぇ、柚木園くん。同中の子からは“王子”って呼ばれてるんだって」



姫宮の言葉に納得した。


恐ろしいくらいしっくりくるあだ名だ、“王子”。
そういやさっきもそう呼ばれてたような気もするし。


「そう言う姫宮さんだって、“姫”って呼ばれてたじゃない。昨日聞いたよ?」


「聞いてたの!? ううう……い、嫌だって言ってるのに……! 忘れてっ」


「姫って……まんますぎんだろ」


「すぎないよ! 全然似合わないのに! ……は、恥ずかしいじゃん、こんな名字だからって……うー」


涙目で可愛くぷんすかしている、若干天然入ってるような気もするけどピュアな正統派美少女“姫”と、


「ううん、とっても似合ってるよ。名字とか関係なくたって、姫宮さんはお姫様みたいに可愛いもの」


「うわああああん全っ然可愛くなんかないいいいい!」


普通の男が言ったら100%の確率で「なにこいつきもっ」となる台詞も難なく使いこなすイケメン“王子”。



結野のことも含め、やたらと目立つ二人に囲まれた俺の高校生活は、どうも一筋縄ではいかない模様です……。

49心愛:2012/09/28(金) 19:05:13 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うけたかww


一気に新キャラ二人投入です!
姫こと夕紀は、「ソラの波紋」のユリアスとはまた違った良い子だよ!
ぴゅあっぴゅあの天然って書きたかった…←

王子こと柚木園くんは、微妙にシュオンの面影があるものの節操ないハーレム王子様。
名前出してないのはわざとなんです←


うん、ここあがこんな完璧人間を二人も書くわけがないだろうって感じだよね!
大丈夫、二人ともとてもアレな裏設定ありますよー。

…ここまで書いたら分かっちゃうような気もするなぁ(・∀・)

真相は、美羽とヒナが普通に話せるようになるまでお待ちを……いつだよ!

50ピーチ:2012/09/28(金) 20:12:53 HOST:nptka405.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

うけw

ヒナさん大変だ!まさかちょー目立つ人に囲まれるとは!

天然少女wあたしもはまってるww

51心愛:2012/09/28(金) 23:21:44 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ヒナはヒースや空牙と同じようなポジションだからね…。


天然といえばシェーラか、ときにはクロードか。
この二人とまた違うようにしなくては←



次から美羽登場します!
朝長いな!

52心愛:2012/09/28(金) 23:23:30 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp

『結野美羽』




「……………」



授業開始十分前になった頃、結野が登校してきた。


賑やかだった教室が自然と静まり返り、皆一様に困惑の視線を彼女に投げる。


……眼帯だ。

左目だけを隠すように、非常にわざとらしく付けられた眼帯。
昨日と同じ赤のカラーコンタクトが入った右の瞳、それからデザインは違うのかもしれないが、似たようなフリフリふわふわのゴスロリ姿。


「………………」



むっつりと不機嫌そうに押し黙り、俺の隣の席に着くとすぐに、表紙が真っ黒いノートを机の上に出す結野(with眼帯)。


そのままページを捲り、シャーペンを取り出して何やら書き始めた。


なんだ勉強か、とほっとしたのも束の間。



『(……………違う!)』



クラスに緊張が走る。



結野はノートを見つめ、何か小さく呟くように唇を動かしながら、サラサラと何事かを書き付けていく。


でもその独特な音、手の動きは、文字を書くときのものとはまた違う。絶対違う。


そう、たとえば―――……



二日目にして奇跡の以心伝心、もの言いたげに見てくるクラスのみんなに「わかってる」と小さく頷き返し、


あくまでさり気なく、ちらっと真横に視線を走らせると、




(……魔法陣だぁ―――――!?)




フリーハンドなのに綺麗な大きな円の中に、三日月やら星やらとごちゃごちゃ書かれている複雑な図形。


結野はそれに、難しい顔をしながら小さな円をさらに書き加えていく。



……だ、駄目だこいつ完全に終わってる……!



「日永くん、ちょっといい? 柚木園くんも」



真剣な様子の姫宮に呼ばれた柚木園と俺は顔を見合わせ、彼女と共にそっと席を立って教室の隅っこに移動した。



『どうだったんだよ!』と必死に念を送ってくる皆さんには、とりあえず死んだ魚のような目を向けてお答えしておいた。
これでだいたい通じるだろう。



「……なに」



「二人とも、結野さんのこと……どう思う?」



思わずびくっとする俺とは対照的に、柚木園は無駄に整った顔に爽やかな微笑みを浮かべて、テンション高くのたまう。


「可愛いよね! あんな可愛くて綺麗な子、そうそういないよ! 肌が綺麗で小さくてまるでお人形みたいで、でもガード固そうななのがまたそそるよねぇ。電波入っちゃってるのがちょっとだけ残念だけど、それにさえ目を瞑れば」


「ちょっとどころじゃなくね……?」


「なに言ってるの日永くん。可愛いは正義。可愛いは絶対。つまり女の子はどんなことをしても何をしでかしても許されるんだよ?」


「その理論破綻しまくりだからな?」


さすが王子、結野のアレすぎる言動も許容範囲内らしい。

53ピーチ:2012/09/28(金) 23:38:17 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

うん、確かにシェーラちゃんは天然っぽいww

……クロード殿って天然?

ヒナさあぁぁぁぁん!? 初恋の人でしょー!?

死んだ魚の目送っちゃだめ―――!!

あ、良かったらあたしが今二つ同時進行で書いてる小説も読んでみてくれないかな?←いきなり何だ

54心愛:2012/09/29(土) 17:25:38 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp
>>ピーチ

クロードは生真面目すぎるって意味で天然なんじゃないかなw
変なとこで抜けてるしね!



ここあも奇才・ピーチの作品にはとても興味はあるのだけど、今のところは難しいかな…。
何かと忙しくて、自分の小説もろくに書く時間なくて。
今も学校の帰りなんだけど、歩きながら打ってるんです←

いつもピーチには一方的にお世話になってるのにほんとにごめんね<(_ _)>

55心愛:2012/09/29(土) 17:27:56 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp





「ちょ、ちょっと二人とも、声大きいって! 聞こえちゃうよ」



姫宮は「しーっ」と唇に人差し指を当てて(可愛い)、声を潜めた。


俺らに気を遣ったらしいクラスメイトたちは、遅ればせながらもやや音量を上げた雑談を再開する。
……うう、良いクラスだ……。


「ひ、日永くん、急に目ぇ潤ませてどうしたの? ……何でもない? ならいいんだけど」


気を取り直すようにこほんっと咳払いしたあと、姫宮は結野の後ろ姿を見やり、



「結野さんって……ええと、変わってるよね、色々」



「言うまでもないだろそんなの」



「そう……だけど、そうじゃなくて」



姫宮は困ったように首を傾げる。



「多分、このままだったら……きっと結野さん、ひとりぼっちになっちゃうと思うんだ」



「……………」



俺は黙り込む。



そりゃそうだ。
誰が好きで、昔の“ミウ”ならともかくあんな生意気そうな邪気眼電波女と友達になりたいと思うだろう。
いくらお人好しが多そうなクラスだとはいえ、たとえ同性でも、話しかけるだけで相当な勇気がいるはずだ。


このままいったら、間違いなく結野は孤立する。

でもそれは、自分が好きでやっていることなんだろうから、俺らが気にかける必要なんてない。


ない、はずなんだけど。



「そう……だよな」



俺は、その寂しさを知っている。
楽しいはずの空間にいても、楽しいと感じられない、誰かと楽しさを共有できないという―――寂しさ。



“一人”が好きな奴はいても、



―――本当に“独(ひと)り”が好きな奴なんて、そうそういないはずなんだ。




「ああいう格好して変な喋り方してるのも……まさか嫌われたくてやってるわけじゃないんだろうし。あそこまでやるからには、なにか理由があるのかも」



柚木園も頷く。



「別に一人が好き、ってわけじゃないって可能性もあるよね。目立ちたくて、みんなに自分を見てほしいって思ってる……とか」



確かに、あの日の“ミウ”だって、良くも悪くも変わっていたと思う。
不思議で神秘的なところがあって、……あまり、誰とでも仲良くなれるようなタイプには見えなかった。


でも、一人が好きそうだったかといえば……多分だけど、違うような気がする。


“ミウ”は、俺と話しているとき、楽しそうに笑っていた。
めったにいない、自分と話が合う人を見つけて嬉しくてたまらない、とでも言うように。



「結野さんには結野さんなりの考えがあるんだろうし、それを想像したり、理解したりするのは難しいけど……」



「私たちにもできることはある、ってことだよね」



姫宮の言葉を、柚木園が引き継いでにっこり笑う。



「困ってる女の子を放っておくなんてできるわけないよ」



「良かった! だからね、柚木園くんと、それから結野さんの隣の日永くんと一緒に、結野さんをちょっとずつサポートできたらなぁって。嫌がられちゃったらそれまでだけどね」



頼もしく微笑む柚木園と、それから姫宮。



「姫宮、柚木園……お前ら、ほんっとに良い奴だな……!」



過去の出来事を引きずる俺と違って、二人は何の関係もないにも関わらず、ただのクラスメイトにすぎない結野を心から心配しているらしい。


なんだか……胸にじーんと来てしまう。



「え、えっ? そんなことないよっ」




「皆さんおはようございます、テストの準備は万全ですか?」




ようやくチャイムが鳴り、担任が入ってくる。


赤くなって慌てる姫宮に了承の旨を伝え、俺は自分の席へと戻った。

56ピーチ:2012/09/29(土) 17:46:16 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ゆきちゃん達優しいね!!美羽ちゃんのために頑張れるって!

ヒナさん……中学のこと思い出したのかな

57心愛:2012/09/29(土) 18:19:47 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おお、そこに気づくとはさすがピーチ!

ヒナの中学時代のことは、もうちょいしたら本人の口から話させるよ(o^_^o)


ここあの実体験も入ってるんだけどねー。
みんなが笑ってるときに、合わせて笑っててもほんとは楽しいって思えないのは寂しいものだよ(^^;;

58ピーチ:2012/09/29(土) 20:20:59 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まさかのここにゃん実体験!!

いや、あたしなんか興味さえなければ見向きもしないよ!←

59心愛:2012/09/30(日) 12:47:35 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp




次の日。



「本当に大丈夫なのかよ……?」


「私がやっても良いんだけど……」


「だいじょぶだいじょぶ! 任せて!」


初めての授業日の昼休み。

一緒に食べようとダメ元で声を掛けてみるつもりだったのだが、授業が終わるとすぐに結野は教室を出て行ってしまった。


仕方なく昼飯を食べながら作戦会議をし、三人で待つことしばらく。やっと結野が戻ってきたところで姫宮が立ち上がったというわけだ。


「そんなに上手くいくのかなぁ……」


「大丈夫だって! まず結野さんと話してみないことにはなにも分かんないもん。上手く話題選ぶし!」


意気込んで結野のもとに向かっていく姫宮を、柚木園と二人ではらはらしながら見守る。



「結野さん!」



姫宮の声に、ケータイを弄っていた結野が驚いたようにパッと顔を上げる。


ボリューム満点のサイドの五段フリル、さらに細かな薔薇模様のレースを贅沢にあしらったシャーリングワンピース。
首もとには光沢のあるグログランリボン、ベロアとバックサテンの異素材を組み合わせて美しい黒を表現した―――早い話がゴスロリ。



「……ぼくに何か?」



赤い瞳で疑わしげに、屈託なくにこにこしている姫宮を見やる。



一体何を話すのか。


俺らだけでなくクラス中が固唾を呑んで凝視しているのに気づいているのかいないのか、姫宮はマイペースに口を開いた。



「―――結野さんって、ほんとにバンパイアなの?」



『(このド天然がぁ―――!?)』



耐えきれなくなった奴らがガタンッガタンッと席を立つ音が立て続けに響く。



なんで!? なんでよりによってその質問!?


姫宮は空気読める子じゃなかったの!?



「……バンパイアではない」



……って……あれ?


俺は内心首を捻った。


だって確か、結野本人がそう言ってたよな?


もう自分的流行の設定が変わったのか?



椅子に座った状態の結野は、鋭い目つきで姫宮を見上げる。


ふわり、と梯子レースのカチューシャに付いたリボンと、一筋の髪が静かに揺れ、



「―――バンパイアではない。ぼくは暗闇と純血を愛する―――ヴァンパイアだ」



『(そこなの!?)』



本人にとってはとても重要なことらしかった。



「……へ? 暗闇? 純潔?」



「だっ……だから『バ』じゃなくて『ヴァ』! 『う』に点々に小さい『あ』だと言っている! あと漢字で表記するときは同じ『きゅうけつき』でも『き』は『鬼』ではなく『姫』だからな! 間違えるんじゃないっ」



ものすごいこだわりようだった。



勢い良く机を叩いた拍子に「いっ……」と手のひらを押さえて涙目になったと同時、エキサイトした結野は激しく咳き込み、ぜえはあと苦しそうに呼吸する。
体力なさすぎだろうこいつ。



「え、大丈夫っ?」



「けほっけほっけっ………ふ、ふん……。ぼくは《純潔の薔薇(Crimson)》が誇る一級魔女、ミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユだぞ? これしきのことで死になどしない……っけほ」



偉大な魔女様がちょっと大声出しただけで死んだらびっくりだよね。



「へー、すごいねー! じゃあ、ゆいのんって呼んでいい?」



見事なまでに文脈繋がってねえ。



「……ふん、良いだろう」



『(良いんだ!?)』



つーんとそっぽを向いてクールぶった横顔を晒す結野。


でも、漆黒の髪に良く映える、白く透き通った肌にはほんのりと赤みが差していた。



姫宮がこっちを向いて、「やったよー!」とでも言いたげににっこり笑ってピースサインをしてくる。



「ゆ、結野さんがデレた……」



「あれが天然の実力か……」



恐るべし、姫宮夕紀。


予想していた反応と違ったらしく、姫宮は四方八方からの戦慄の視線の中で「?」と不思議そうに瞬きしていた。

60ピーチ:2012/09/30(日) 17:57:10 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まさかの天然キャラ!!

……凄いこだわりようだね

61心愛:2012/10/02(火) 14:31:36 HOST:proxy10033.docomo.ne.jp
>>ピーチ

夕紀よりも美羽の方が書きやすいここあです←
美羽のこだわり方は色々考えたけどね←

62心愛:2012/10/02(火) 14:33:56 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp




「ゆいのん!」



六限目の教室、学年集会へ向かうクラスメイトたちを避けるようにさっさと歩き出した結野を、姫宮が呼び止めた。



「待って、一緒に行こ! ねっ」



振り向いた彼女に、すかさず俺の隣に立った柚木園が言う。



「嫌じゃなかったら、私たちも一緒でいいかな。私は柚木園で、こっちは日永くん。よろしくね」



その一発で世界中すべての女性を昇天させてしまいそうな、甘く蕩ける微笑みを湛えた柚木園を、吟味するように冷たい瞳で見つめ、

結野はそれから、姫宮、俺とゆっくりと視線を移してぷいっと横を向いた。



「……やめておいた方が良い」



小さく呟いたその言葉に刺々しさはなく。



結野は俺たちに向き直り、嘲(あざけ)るように唇の端を上げる。



「ふん、ぼくのことを案じているのならば余計なお世話だ。……君たちこそ、いつぼくの魔力が暴走するか分からないからな……人間の身体で、ぼくに必要以上に近づかない方が身の為だぞ」



痛々しい台詞は格好つけるためじゃなくて、ただ俺たちを突き放す、その純粋な目的のためだけに発せられたように思えて。



何故だろう―――結野がひどく、弱々しく、寂しそうに見えた。



「えー、そんなこと言わないで―――」



「じゃあ仕方ないな。姫宮、柚木園、行こう」



「え? 日永くん?」



きょとんとする姫宮を促し、歩き出す。



「……そうだね。残念だけどまたの機会ってことで」


「え、え? 待ってよ二人ともっ」



姫宮が慌てて追い掛けてくる。



それでいい、とでも言うように結野は彼女を一瞥し、そのままひとり教室を出て行った。



「……なんで?」



ぷくっと頬を膨らませる姫宮に、柚木園が苦笑しながら諫めるように。



「無理に誘うのは良くないでしょう?」



「だって、ゆいのん嫌だとは言ってなかったよ!」



その通りだ。

結野は、俺たちを完全には拒絶してはいなかった。

……でも、結野が何を考えていたのか、肝心なことが俺にはさっぱり分からない。



「でも、俺らが嫌、ってよりは……」



「結野さんは優しいんだよ」



そっと紡がれた柚木園の言葉に、目を見開く俺と姫宮、二人の視線が向く。



「……どこが?」



「うーん……私は色んな女の子を見てるから、こういうのは良く分かっちゃうんだよね……」



柚木園は大人びた微笑を浮かべる。



「まだ分からないことは多いけど、少なくともこれは断言できるよ。結野さんは、本当はすっごく優しくて良い子だって」



「どういうことだよ」



「日永くん、姫宮さん。結野さんの後を付いて行ってみよう。それできっと、分かるはずだから」

63ピーチ:2012/10/02(火) 17:20:51 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ゆきぞの君根拠ありあり!?

でもまぁ、優しいんだろうね、なんせここにゃんキャラだからww

64心愛:2012/10/02(火) 18:17:21 HOST:proxyag101.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なんせここあキャラですからw

美羽は優しさが分かりにくいんだけどね(^_^;)
オスヴァルト系?

65ピーチ:2012/10/02(火) 18:26:01 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

やさしさをおもてにださない←読みにくいww

あ、確かにネw

オスヴァルト系かww

66心愛:2012/10/02(火) 19:24:28 HOST:proxy10049.docomo.ne.jp





柚木園の憂いを含んだ声音の意味を、俺たちはすぐに目の当たりにすることになる。



「……ちょっと見てあれ」

「うっわぁ」

「頭おかしいんじゃないの」



侮蔑、嫌悪、嘲笑、



あちこちで生まれる囁きや咎めるような視線もどこ吹く風と、結野は背筋を伸ばし、長い髪を天上の羽衣のようにきらきらと靡かせて歩いていく。

一種の威厳すら感じさせる、堂々たるその歩み。

小さな後ろ姿は人混みに紛れ込むことなく、ぽつんと浮いていた。



「見た? 今の」

「なんだっけ、あれ……あ、そうだ、ゴスロリっしょ? やばくない?」

「ちらっと見えたけど目ぇ赤かったよ」

「カラコン? 相当キてんじゃんそれ」

「南高にもあーいうのいんだぁ、なんかやだー」

「あの子うちらと同じ新入生でしょ? 入学式からあのカッコなんだってさ、式には出なかったらしいけど」

「出させてもらえなかったんじゃないのー?」



くすくすという笑い声と共に交わされる心無い言葉の響きが、温度が、熱を伴って疼き出した俺の傷痕を深く抉っていく。


喉が急速に渇き、胸の奥深くに不快感が込み上げ、ざわめきのひとつひとつが明瞭に聞こえる―――あの気が遠くなるような感覚が甦り、



「……って日永くん、大丈夫っ?」



「………、」



俺の異変に気づいた姫宮に顔を覗き込まれ、時間をかけてこくりと頷いた。

ゆっくりと深呼吸をして、新鮮な空気を肺に取り入れる。



俺はもう、あのときの俺じゃない。


こうやって心配してくれる奴だってできた。


大丈夫。


速まっていた鼓動が落ち着き、ふうっと息を吐き出した。


「も、大丈夫だから。……にしても、ひどいな」


ある程度予想はしていたけど、実際に体感するのとは全然違う。


結野がどんな目で見られるのか―――


これでもまだ生ぬるい方なんだろうけど。



「うん……」



姫宮も痛ましげに、胡桃(くるみ)色の睫(まつげ)を震わせた。



―――もし今、俺たちが結野と一緒にいたならば……



「ね、優しいでしょ?」



柚木園が柳眉を落とし、淡く笑む。



なんで、赤の他人である俺たちの世間体まで気遣えるような奴が、つらい思いをしてまで、あの格好や態度を貫くのか。



それが、俺にはどうしても分からなかった。

67ピーチ:2012/10/04(木) 00:36:41 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

サイテーだーっ!! 同級生サイテーだーっ!!

その点、ヒナさん達は優しい!!←

68心愛:2012/10/04(木) 17:19:56 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp
>>ピーチ


同級生の反応の方が適切な気がするけどね!

ヒナたちは優しすぎるような←

69心愛:2012/10/04(木) 17:22:44 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp






差し込む光、舞い散る桜花。



結野についてのあれこれで頭を悩ませている俺でも、ついなんとなく柔らかな気分になってしまう―――そんな春の美しい光景。



これからの楽しい高校生活を予感させるような、穏やかで心地良い風が吹き抜け、頬を撫で―――




『―――高校は遊ぶ場所ではありません!』



なんでやねん。



スピーカーでがなりたてる学年主任(三十代女性、ちなみに結構美人)の声に心の中で突っ込んだ。



『皆さんは県最難関の本校の入学試験を突破してきた人たちです。いずれは社会、そして日本を引っ張っていくリーダー的存在となることは必須でしょう』



はあ。



『そんな皆さんは南高在学中はもちろん、社会人になれば遊ぶ暇は確実にありませんので―――大学に行ってから遊んでください。部活動との両立も大いに結構ですが、くれぐれも勉学を怠ることのないようにお願いします』



「……すっごいスピーチだねぇ」


「青春に対する夢も希望も根こそぎむしり取られていくな」



隣で苦笑いする姫宮とこそこそ会話を交わす。


……こういうときに話せる相手がいるなんて、ちょっと感動ものだ。



『―――よって、学力は言うまでもなく互いに切磋琢磨することで精神をも鍛え―――』



「……結野さんっ?」



突然悲鳴じみた柚木園の声が聞こえ、ハッとして後ろを振り返る。



顔を青ざめさせた結野が地面にしゃがみ込んでいた。



「……うるさい……」



呻きながら立ち上がろうとするが、すぐにふら、と華奢な身体の軸がぶれる。



「別に、立ちくらみくらい誰だってするだろう……大げさに騒ぐな人間。これ以上ぼくに構うんじゃない」



「顔色悪いよ、保健室まで運んで行こうかっ」



「ば、な、は、はこっ……!? ふっふざけるな、死んでも断るっ」



ごく真面目な表情でお姫様だっこの体勢に入っている柚木園に、赤面しながら小声で噛みついているところを見ると、特に深い意味もなく、純粋に目眩がしただけだったようだ。

大事じゃなくて良かったけど。



「……ふ、ふん……その光が強いほど、影もまた濃くなることを忘れるな……っ」



柚木園を振り切って苦し紛れの捨て台詞を残し、結野は危なっかしい足取りで列から抜け出ていく。
保健室に向かうのだろう。


声を掛けずとも、常識のある同級生たちは奇異な格好をした結野から少しでも遠ざかるように、自然と道を開けた。



「大丈夫かなぁ、ゆいのん……。身体弱そうだもんね」



「……うん……」



ドレスの背中を編み上げるリボンが、風に煽られて寂しげに揺れている。


そのちっぽけな姿が見えなくなるまで、俺は先生の話にも構わずに彼女を視線で追い続けた。

70ピーチ:2012/10/05(金) 07:00:29 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

え、ゆきぞの君が何か凄い←

うん、優しすぎるねヒナさん達!

71心愛:2012/10/05(金) 17:52:25 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>ピーチ

柚木園くんは王子だからね!
シュオンと違って根っからの(・∀・)


次から美羽パート佳境に入ります←
ヒナと美羽をくっつけるプロジェクト、ようやく始動w

72心愛:2012/10/05(金) 17:58:04 HOST:proxy10065.docomo.ne.jp

『かくして、少年と少女は約束を交わす』







「―――爆発しろ」



「……第一声がそれってどうよ……」



保健室のベッドで、上半身を起こした結野は赤い瞳で俺をキッと睨みつけ、早速暴言を吐いた。



「黙れリア充。ぼくの視界に入ってくるな。キラキラした青春を謳歌してる奴の顔を見るとわけもなく吐き気がしてくる」



「酷い言われようだな俺!?」



この口が悪くてちんまいゴスロリが初恋の女の子だという事実に涙が出た。



「……って、え?」



あれ……今こいつ、俺になんて言った?



「リア充? 俺が?」



「は? どこからどう見てもリアルが充実してしまっている類の忌々しい人間だろう君は。まず見た目からしてそうだし、あろうことか女子とチャラチャラ親しげに喋ってるし」



死ぬほど冷たい目で見てくる結野。
……そっか、良かった。俺、ちゃんとリア充に見えてるのか……。
他人に無関心なように思えた結野が俺のことを見ていてくれて、そう評価したってことは、
場違いな感想だけど……正直ちょっと嬉しかったりする。



ふと結野は、何かに気づいたらしくハッとしたような顔をして「……あ」と呟きを漏らし。

それからいそいそと姿勢を整え、俺を見下すような微笑を浮かべ、



「それで、ただの人間風情が偉大なる吸血姫(ヴァンパイア)であるこのぼくに何の用かな?」


「いやそういうのは良いから」


中二スイッチが入ってしまった様子の結野に嘆息する。


「……これプリント。先生に持ってくように頼まれて」


実を言えばそれは完全に嘘で、結野の机の上に置いてあったプリントを、放課後になってから勝手に持ってきてしまっただけなのだが。



「ふん、御苦労だっ……」


結野はそこで息を呑み、カッと目を見開く。



「待て……。この空間には、魔力がない者は入れないよう強力な結界が張ってあるはずだが……?」



「保健医のおばちゃんも魔法少女なのかよ」



「……………」



結野はぴたっと硬直し、それからダラダラと脂汗を流した。



「ま、魔力を持っているのは魔族か悪魔だから魔法少女ではないぞっ」



「そっか。じゃああのおばちゃんは魔族か悪魔だったんだな」



「…………ふ、ふん。あの者については、《純血の薔薇(Crimson)》の一員として良く監視する必要があるようだな。……後々」



さいですか。



ちなみに保健医の先生は「まぁ、まぁまぁまぁ、そうなの、あの子のお見舞いに! うふふ、若気の至りっていう言葉もあるけど、万が一のことがあっても先生は何も責任は持てないからー、良く考えて行動するようにね?」とにっこにっこして隣の準備室に入っていってしまった。
何やら妙な誤解をされた予感がひしひしとします。


……と、とにかく、そういうわけで今この部屋には結野と俺の二人きりである。


苦しそうにごまかす結野を見ていたら、緊張していた―――二つの意味で―――気持ちが少し和らいだ。



俺はここにわざわざ来た本来の、とある『目的』の前に、話題づくりと言うわけでもないけど、笑って彼女に問い掛けてみる。
何事もまずはコミュニケーションだ、きっと。



「―――で、それってなんのコスプレ?」



「殺す」



ひいいっ!?



結野の全身から禍々しい殺気が噴き出し、ルビーみたいな大粒の双眸にはあからさまな敵意の炎が燃え上がった。



「ちょ、な、なに急にキレちゃってんだよっ?」



「これはコスプレなどという低俗なものではない! ぼくの中に潜在する魔力を最大限に引き出す為の闇の装束だ! ふざけたことを抜かすんじゃない愚か者がッ!」



「あーはいはい闇のしょーぞくねしょーぞく! 分かったから落ち着け!」



「それでも分からないと言うのなら貴様を闇に葬り去る」とでも言わんばかりに黒髪を揺らめかせ、羅刹、いや般若の表情をした結野を必死になだめる。



……コミュニケーションは失敗したようだった。

73ピーチ:2012/10/05(金) 21:47:51 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

……シュオン様は外見だけの王子様か

金髪碧眼って何気に王子っぽいぞ!?←

お、美羽ちゃんパート突入ー!!

74心愛:2012/10/06(土) 15:26:11 HOST:proxy10022.docomo.ne.jp
>>ピーチ

シュオンは外見と猫かぶってるときだけ王子キャラだよね←


やっと『紫の歌』に近いノリ(悪い意味で)が書けるようになったよ!
まあちょいシリアスに長くいきますけどね(o^_^o)
このシーンが書きたくて始めたような話だしw

75心愛:2012/10/06(土) 15:27:12 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp






俺の言葉を聞いて、結野はきょとんとしてぱちぱちと瞬(まばた)いた。



「……本当に分かったのか?」



「分かったって」



「本当か?」



「ほんとほんと」



「ほん……って待て! 何故さぞ当たり前のように椅子を用意して座ろうとしているんだ君はっ!?」



あ、ばれた。



「いいじゃん、ちょっと話くらい付き合ってくれても」



「良いわけあるか! それならぼくはもう帰るぞ、そんなに座りたいなら一人で好きなだけそこに座っていろっ」



「まあそう言わずに」



袖口のフリルを揺らしながら腕をぱたぱたさせて怒る様子は、見た目相応に……えっと、あれだ、……結構可愛い。うん。



「用はもう済んだのだろう! 君ならぼくとじゃなくても話なんかいくらでもできるじゃないか、さっさと出て行け!」



「で、結野に聞きたいことがあるんだけどさ」



「……っ何なんだ君は本当に!」



小さな顔を火照らせて怒鳴る彼女は音叉のようにぷるぷる震えていて、しかもちょっと涙目になっている。



「ぅ、ぅぅ……っ! 何の力も持たない下級種族が、ぼくを愚弄する気か! このことが《純血の薔薇》に知れたらただでは済まないぞっ!」



「実はずっと気になってたんだけど」



「人の話を聞けっ!」



結野は体力を使い切ってしまったらしく、ぜえぜえと肩で息をした。



「……ああもう! こうなったらとっととその聞きたいこととやらを話せ! そしてすぐに出てけ!」



「分かった分かった」



無事に本人から了承を得たところで、俺はやっと本題を切り出す。




「―――結野って、小さいときはどんな子供だった?」




「……………は?」



呆然として固まること数秒、結野はひくっと口元を引き攣らせた。


俺からできるだけ距離を取るようにずざざっとベッドの上で後ずさると壁にぴったり背をつけ、



「……見た目で騙されてしまったが……君はあれか、ロで始まってンで終わる今世紀最大の謎生物だったのか……」



「違ぇよ!」



軽蔑と怯えが絶妙に入り混じった何とも言えない微妙な顔をする結野。


「いや……君がどんな特殊な性癖を持っていようとぼくには何の関係もないのだが……しかし……」


「だから誤解だって! 邪推すんなよ、純粋な意味! 普通の疑問!」


「保健室で休んでいる、隣の席とはいえほぼ初対面のクラスメイトの女子のところまで訪ねて来て無理に居座り、『ずっと気になってた』などと真剣な様子で幼少時代のことを聞いてくる男というのはどう鑑みても邪推以外しようがないと思うのだが」


「確かに!」


言われてみれば完璧に変態の行動だった!



「でっでも違うからマジで! ほら、結野は昔からこんなんだったのかなーって、その、どうしても気になって」



「こんなんとはなんだこんなんとは!」



意外と単純らしい結野は明らかにおかしい箇所でなく、ありがたいことに全然違うところに食いついてくれた。



「……ふん……事情は良く分からないが、そこまで言うのなら特別に教えてやろう。そしてぼくの偉大さに畏れ慄くが良い」



結野は深呼吸して落ち着きを取り戻すと、吸血姫ver.でゆったりと喋り出す。



思わず、ごくんと唾を呑み込んだ。




―――かつての“ミウ”がどのようにして、そしてなぜ、今の結野になったのか―――




「そう、ぼくは幼い頃から、この膨大な魔力を悪用しようとする数々の組織に追われていた。……時には魔神を、時には大悪魔を。同じくぼくの力を狙う輩を自力で撃退しながら冥界を彷徨い、その果てに辿り着いたのが《純血の薔薇》の本部だった。ぼくは命を守られたこの組織に報いることを決め、結果、空位であった赤の十四番の位を賜り」



「真面目にやれ!」


「ぼくは大真面目だ!」


「余計悪いわ!」

76ピーチ:2012/10/06(土) 20:02:08 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

あ、そーゆー意味ね…

悪い意味での近いノリか、楽しみだー!ww

77心愛:2012/10/07(日) 11:38:10 HOST:proxyag051.docomo.ne.jp





俺は叫んでから、はーっ、と深いため息をついた。


「……な、なんだ」


「……ごめん、ほんと悪いんだけど……本気で答えてくれないかな」


おそらくかなり真剣な顔つきになっているだろう俺を見て、結野がびくっと身を震わせて黙り込む。



「俺は、……本当の結野のことを、もっと知りたいんだよ」



じっと乞うように、結野を見つめると、



「…………っ!?」



首から顔へと綺麗なグラデーションを経て、子供みたいに小さな顔が真っ赤に染まり上がった。


「ぅ、……き、君という奴は……っ」


「なんだよ」


「なんでもないっ」


結野は一通りあわあわしてから、何度かわざとらしい咳払いをして。


「……つ、つまり君は、人間としての仮の姿である“結野美羽”についての話が聞きたいと」


「そう! そうなんだよ、なんだ意外と話せんじゃん結野っ」


「かっ顔が近い!」


つい勢いで身を乗り出したら怒られてしまったので、椅子にきちんと座り直す。


「んん……そうだな……」


結野は悩むように眉根を寄せ、



「……小さい頃は、好奇心が旺盛だったと思う」



尖った顎に指を当て、天井を見上げた。


「例えば、夏休みの自由研究の為に一人でツチノコやカッパや雪男の捜索にと外へ繰り出した結果迷子になって家の者に叱られたり」


「うぉい」


「クリスマスにはサンタクロースを捕獲して闇オークションにでも売り飛ばそうと考えて大規模なトラップを部屋中に張り巡らせたのは良いものの、それに夜中プレゼントを持ってきた父が掛かってしまったり」


「アホの子じゃん! しかも動機が中途半端にブラックだな!」


「君が聞きたいと言ったんじゃないか!」


赤い顔の結野は口を『△』の形にして、ニーソックスに包まれた細い脚をぱたぱたさせた。


「恥ずかしいのを我慢して話してるのに……!」


「ご、ごめんなさい」


「ううう、あの頃のぼくは本当にどうかしているっ」


「今もどうかしてると思うけど」


「なにか言ったか!?」


「いやなにも?」


うー、と疑うように恨めしげにこちらを睨みながら、結野は再びしぶしぶと口を開く。



「あとは……空を眺めたり、風の音を聴いたりするのも、好きだったな」



……息を、詰めた。



言うや、俯いて懐かしそうに瞳を霞ませる結野の眼差しは―――



「引っ越す前は、良く家を抜け出して近所の公園に遊びに行った。そこで、一人考え事をしながら―――」




「―――理想の自分を、探してた?」




結野は弾かれたように顔を上げた。



「何故それをっ?」



「……んー、なんとなく?」



あははと笑ってとぼけてみせる。



やっぱり、結野は俺のことを覚えていない。

未練たらしく、過ぎ去ってしまったたった一日の出来事を引きずっているのは―――俺だけ。


それは当たり前のことなのに、


少し、……ほんの少しだけ、寂しいような、気がした。



「……結野」



警戒するように顔をしかめた結野が、ちらりと視線を投げて寄越す。



一瞬、言うかどうか迷った。


けれどそれを押しのけて口から出てきたのは、ここ数日間ずっと俺を蝕んできた、率直な疑問だった。



「結野はさ。なんのために、こんな格好してるんだよ」



なにかを話し出そうとした結野を遮るように、俺は容赦なく言葉を続ける。



「まさか気づいてないわけじゃないだろ? みんな結野のこと変な目で見てる」



「――――――」



漆黒の髪束がさらりと零れ、彼女の横顔を覆い隠す。



「……知ってる」



囁くように。


あまりに弱々しい、淡い呟きがその唇から漏れた。


長い睫(まつげ)が震える。



小さな彼女はその服装に不釣り合いな白いシーツに儚く溶け込み、今にも消えてしまいそうに見えた。

78ピーチ:2012/10/07(日) 12:45:32 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

えー!?まさかの美羽ちゃん凄い悪戯好きだったかんじですか!?

いやいや、クリスマスのトラップはお父さんが可愛そうだって←

79心愛:2012/10/07(日) 15:36:36 HOST:proxyag120.docomo.ne.jp
>>ピーチ


サンタでなくお父さんを生け捕りw

一応悪気はなかったんだ!(笑)

80ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/07(日) 16:26:34 HOST:EM117-55-68-140.emobile.ad.jp


正直ヒナくんがすごくタイプですw
更新されるたびわくわくしながらみてます!
がんばってください。

81ピーチ:2012/10/07(日) 18:01:07 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まさかのお父さんを生け捕り!?

そこは一応なの!? ねぇ!?

82心愛:2012/10/07(日) 18:24:32 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp






そう。

こいつは、結野美羽は、他人から自分がどのように見られているのか分からないほどバカじゃないのだ。



「じゃあ、俺が言うことじゃないけど……そういうの、やめなよ。これからもっとつらくなるのは結野だし」



彼女がどんな空間にいようと、どんな人たちに囲まれていようと、結野を蔑視する視線は絶えずつきまとうだろう。


常識に反した存在の彼女が、自分が望んでやっているにしても、その奇異な言動ゆえにつらい目に遭うのを、俺は見たくない。



「今ならまだ間に合う。明日からでも、何もなかったような顔して普通に学校に来ればいいじゃん。基本優しい奴らばっかだし、きっと受け入れてくれるから。だから、もう―――」





「―――やめない」





固い、固い意志を込めた赤い瞳が、怖いくらい静かに俺を見返した。



カーテンがふわりと浮き上がる窓からは黄昏の仄かな光が差し込み、黒く艶を帯びた髪を淡い金色に透かせる。



「……どうして」



「何故君がそこまでぼくに執着するのかは理解できないが、なにも考えなしに言っているわけではないことは分かった。でも、君には悪いが、何と言われようともぼくはやめないよ」



「……だからなんでだよ、自分では格好良いって思ってるかもしんないけど周りはそうは―――」



「なにが格好良くてなにが格好悪いかは、ぼくが決めることだ」



言い放ち、結野はベッドの上で膝を抱えて顎を乗せる。


「……それでは今度はぼくから問おう。君は昔、ヒーローごっこをしたことがあるか?」


「は?」


彼女の質問の意味が分からずに眉を潜める。


「そりゃ、人並みには」


なんとか戦隊なんとかレンジャーみたいなのは、多分どんな男の子でも夢中になる要素があると思う。

努力すればヒーローになれると本気で信じて、こっそり必殺技を練習したときもあったっけ。



「……その延長線上にあるのがぼくだよ」



結野は自身を嘲弄するような冷笑を浮かべる。



「小さな子供がヒーローや美少女戦士の真似事をするのは全く当然のことだろう? 人の手によって盛大に美化された虚像に憧れ、自分もそのような存在になりたいと願う。その理由はただ一つ、すごく単純だ。格好良いからだよ」



薔薇の唇が流れるように、彼女の本音を紡いでいく。



「バカみたいだとか気持ち悪いとか、大人になれとか。端から見たらどう思われるかなんてことは、ぼくが一番分かってる。でも、やめないんだ」



結野はまっすぐ俺の目を見つめ、凛然と声を張った。



「これが、この姿が、このぼくが、心からこうありたいと思える自分なんだ。周りの評価なんて関係ない。自分に嘘は吐(つ)きたくない」



……そっか。


俺にも、やっと分かった。



こいつは、



「だから、ぼくは逃げない。諦めない。誤魔化さない。絶対に、ぼくの信念を曲げない。これがぼくなんだから」



自分に正直で、



「笑いたければ笑え。バカにしたければ思う存分バカにすればいい」



子供っぽくて、



「誰になんと文句を言われようと、ぼくの気持ちは変わらない」



たまらなく純粋で。





「―――これが、ぼくがずっと探し求めてきた、“理想”の自分なんだ」





バカらしくて痛々しくてたまらないのに―――



すべてを吹っ切ったその堂々たる姿は、なんだか妙に、格好良くて。



―――……変わったのは、結野じゃなくて。



―――俺の方、だったんだ。





『わたしはね、“自分”をさがしてるの』





不思議で、素直で、誰よりもまっすぐで。




―――あの日の“ミウ”が、確かに今、ここにいた。

83ピーチ:2012/10/07(日) 18:46:53 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

美羽ちゃんがゴスロリしてた理由がやっと分かったー!!

うん、自分の意志を貫くって大変なんだね←

84心愛:2012/10/07(日) 21:39:39 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp
>>ねここさん

ヒナですか!←
奴は基本的にノーマル属性なので地味ですが、お褒めの言葉ありがとうございます!嬉しいです!
ご期待に少しでもお応えできるよう精進したいです<(_ _)>



>>ピーチ

わかってくれてありがとう!
美羽は決して悪い子じゃないんだ、ちょっと努力する方向がアレなだけなんだ…!

85彗斗:2012/10/08(月) 00:09:03 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
なんかすごく久しぶりです!

美羽ちゃんはイタイだけの子じゃなくて凄くカッコイイし大胆な子だったんだね……でも結局の所、痛々しい事には変わりないかもしれないけどねww

それにストーリーが凄く凝ってますよ! 身近で分りやすいし……何回見ても私のと比べたら……私のレベルが低過ぎて目から塩水が出てくるよww

86心愛:2012/10/08(月) 09:06:57 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp






理想の自分を追い掛けていた、“ミウ”。



『きみ、いくつ?』



俺の答えを聞いて、一緒だと嬉しそうに笑ったあのときも、彼女は俺に『きみ』と呼び掛けていた。



なのに、



『ユイノ、ミウ。あなたは?』



二回目のときは、俺のことを『あなた』と呼んだんだ。



まるで、本当は今まで『あなた』と言ってきたのに、無理に意識して『きみ』と呼んでいるみたいに。



……あのときの“ミウ”は、一生懸命に自分を変えている途中だったのかもしれない。


らしくない背伸びをして、本来の喋り方まで変えて。


―――なにが一番『わたし』らしいだろう、一番格好良いだろう。
どうやったら、理想の自分になれるだろう―――



考えて考えて、ようやく見つけた“理想”がこの姿。


あのときからずっと、この“結野美羽”を続けているとしたら、



なんて―――強い。



蔑まれることも、笑われることも、憎悪を向けられることも、数え切れないくらい、何回もあっただろう。



でも、結野は負けなかった。



ずっとずっと一人で耐えて、決して屈せず、平気な顔をしながら、自分のポリシーを貫き通してきた。



その強く純粋な心はすべてをはねのけて、
今もなお、まばゆく輝き続けている。




「……はは……」




ああ、くそ。


格好悪いな、俺。


一丁前に常識人ヅラをして、今の結野を受け入れようとしなかった。


なにも知らないくせに、頑張っている結野を拒絶した。



そりゃあ、頑張ってる方向性はおかしいよ。
正直どうかしてると思う。


でも、さ。



たとえ他人にどう思われようと、自分の好きなものや、自分の在り方にそこまで情熱をかけられるっていうのは、ある意味ものすごいことなんじゃないのか?



……こいつは、こいつは本当に―――




「……バッカだなあ」




思わず笑いが漏れた。



「そうだよ」



『素』の結野が、ひどく華奢な肩をすくめてみせる。



「自分で考えた設定になりきって。この年になっても、虚勢を張り嘘で自分を隠すことが格好良いと信じてる。バカだから、大人に押し付けられる良い子の自分には我慢も納得もできない。ぼくは愚昧で身勝手で、………どうしようもなく、バカなんだ」




『わたしが一ばん、こうありたいって思える自分。他人におしつけられる、いい子の自分じゃなくて、わたしが心から、なりたいって思える自分……。そんなリソウの自分を、ずうっとさがしてるんだ』




頑固だと言われようがプライドが高いと言われようが、

誰にだって、絶対に譲れないなにかがある。



それが理解しがたいものなら、無理矢理肯定しなくたっていい。


でも、


そいつを、そいつの人生そのものを、頭ごなしに否定するってのは……それはちょっと、間違ってるんじゃないのか?



「……少し、話しすぎてしまったようだ」



ふっと笑む結野が言う。



「どうしてだろうな。こんなに喋るつもりは全然なかったのに……」



俯いた拍子に、耳に掛けられていた一筋の髪がはらりと零れ、ひんやりと透き通る頬を力なく打った。




「君といると……なんだか無性に懐かしいような、変な感じがするよ」




ゆっくりと噛み締めるように呟かれたその言葉が、空気を震わせた瞬間、



―――なにかが胸の奥深くで、響いたような気がした。

87ピーチ:2012/10/08(月) 20:06:36 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

美羽ちゃん……! 何年間も理想の自分で居ることが凄い!!

あたしとかって絶対無理だし←

88心愛:2012/10/08(月) 23:01:40 HOST:proxy10040.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

お久しぶりです!

美羽はイタカッコイイ中二病患者を目指してます←
いや、ホンモノの方はどんなこと考えていらっしゃるのかここあごときには想像もつかないので美羽は完全にここあの創作ですが!

ストーリーに凝っていると思っていただけたなら何よりです(・∀・)
序盤から、学園ラブコメらしからぬ結構深いとこまで突っ込んでみたりしてますので。

いやいやここあなんて自分の不甲斐なさに穴という穴からシュオン作の毒物のごときスライムが(以下グロ描写につき自粛)




>>ピーチ

うん、ここあも無理だな←

美羽は心の強い子なので…
ここまで自分を貫き通せるっていうのはある意味すごいよねw

明らかに非常識な美羽を正当化するのは結構大変だったり。
ほんの一瞬でも、美羽の(ほぼここあの)めちゃくちゃな論理に、ヒナみたくだまされてくれたら嬉しい!





……プロローグの『きみ』と『あなた』は、あくまで自然に、できるだけ気づかれないようにねじ込んでみたのですがお気づきでしたでしょうか?(笑)

89心愛:2012/10/09(火) 07:56:33 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp






「……結野」



赤い双眸がこちらを向く。



彼女のしなやかな強さに、そしてかつての“ミウ”の面影に触れ、


今や、俺はこの痛みを一人で抑え込むことが、できなくなっていた。




「俺、昔さ。いじめられてたんだよね」




結野が目を見開く。



こんなこと話したって、彼女を困らせるだけ。
なにも良いことなんてないのに。



何故だろう……どうしても、結野に聞いてもらいたくなってしまった。



勢いがついてしまえば、情けない言葉の吐露はもう止まらない。



「いや……あんな程度をいじめって言うのは、ほんとにいじめに遭ってる奴に失礼かもしんないけど」



ははっ、とできるだけ明るく……みっともなく、笑う。



「俺、小さいときからみんなと一緒っていうのがどうしても好きになれなくて。学校でもつれなくしてたらさ、いつの間にか、自然とみんなの方も俺を『いないことにする』ようになっていった。……それは別に良かったんだけど、わざと聞こえるように悪口言われたり、あからさまに避けられたりした」



結野は一瞬だけ、泣き出しそうにその整った顔をくしゃりと歪めた。



……つくづく最低だな、俺。


結野は俺なんかよりもずっとつらい思いを経験してきたというのに、こんなにも強く眩しく、まっすぐに生きていて。

俺はと言えば、自己満足のために弱い自分の胸の内を女々しくぶちまけている。



……本当、最低だ。




「それで、そんなことなら最初っから孤立してればいいって気づいて。それからは、常に同年代の人間とは関わらないように気を配ってたから……小学校でも中学校でも―――ずっと、一人だった」



九年間。


自分の席の周りだけ、ぽっかりと穴が開いているような気がした。


ひそひそと囁かれる声、笑い声を聞くたびに、自分のことではないかといつも怯えていた。


卒業式の日だって、
みんなが泣いて、別れを惜しんでいる中で―――


俺は、これっぽっちも、悲しいと思えなかった。


悲しいと思えないことが、一番悲しかった。



「結野は俺のことリア充って言ってくれたけどさ、これで分かっただろ。……さすがに高校はこのままじゃまずいって思って、見た目とか、悪い癖とか必死に変えて。今もへらへら笑って精一杯……みっともなくあがいてるだけってわけ」



今までの俺を知る人が誰も適わないくらい頑張って勉強して、思惑通り俺の中学ではたった一人、この南高に合格した。

それからも勇気を出して近所の床屋じゃなくて美容院に行ってみたり、ださい眼鏡をやめてコンタクトにしたりした。


……でも、肝心の中身は全く、なにも変わってなかったんだ。



「ほんと、結野とは大違いだよ。結局、嫌なことから逃げただけ。どんなに見た目が変わっても、俺は暗くて、弱いままの―――」





「―――くだらないな」





凛とした、氷のように冷たく透き通った美しい声。



今まで俺の話を黙って聞いていた結野は、ふん、と小さく鼻を鳴らして、



「言いたい奴には言わせておけばいいんだ。
君のどこが暗いって? 君が弱い? はっ、笑えない冗談だな」



絶句した俺を、心底馬鹿にしたようにせせら笑う。



「本当の弱虫なら、まずぼくに近づこうともしないだろうし、自分を変えようなどと思いつきもしないよ」



……もしかして、このひねくれた、優しい少女は、



「そんな意味の分からないことで悩んでいる時間が勿体無いだろう」



俺を、励まそうとしているのか?



結野の強い眼差しが、厳しい声が、


身体中に、優しい温もりを沁み渡らせていく。




「君は、自分の道を選択したのだろう? あとは進むだけなんだろう? なら胸を張って、前へと進めばいいだけの話じゃないか」




憐憫も気遣いもなく、ただ当たり前の、ちっぽけな真実を語っているだけのように―――結野は続ける。

90心愛:2012/10/09(火) 07:57:28 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp








「君は自分自身の意思で、自分を変えようとしたんだ。愚かな夢に囚われただけのぼくとは確かに違うけれど、……君は過去を振り切って、“理想の自分”への一歩を踏み出したじゃないか」




結野は瞳に宿った強烈な光で俺を射抜き、きっぱりと告げた。




「―――君は、強いよ」




……多分俺は、心のどこかで、誰かにそう言われるのを待っていたんだと思う。


俺のしていることは、間違ってなんかいないって。


認められたかった。力強く、背中を押してもらいたかった。



だから、俺と同じ、もしくはそれ以上の苦しみを味わって、その気持ちを痛いほど理解しているだろう結野は―――みじめで格好悪い、はた迷惑な野郎にすぎない俺を、こうして不器用な形で、救ってくれたんだ。



完敗、だった。




「……ありがと、結野」



「礼を言われる筋合いはないが」



照れたように鼻の頭をほんのり赤くして、勢い良くそっぽを向く。


あのときと変わらない、黒絹みたいに艶やかな髪がふわっと浮き上がった。



「……ふん。こんなにも長い間、低俗な愚民と無駄話をしてしまうなんてぼくの人生最大の汚点だな」



「人生って人の生って書くけどそれでいいのか? ヴァンパイアなんだろ?」



「う、そ、それは……この姿は人間界に入る為に造った仮の肉体であって、だから厳密にはっ」



言い訳するように早口でまくしたてる結野を笑っていなす。




……痛い? キモい? 見てて不愉快?


―――余計なお世話なんだよクソが。


一度しかない人生、今の自分が望む自分であろうと努力することを、なぜ否定されなきゃいけない?


あとで自分がどれだけ後悔しようが、今他人にどう見られていようが。


いっぱいいっぱい考えて―――それでも、どうしても譲れないから、あきらめられないから、結野は今こうしてるんだ。


つまらない大人になるくらいなら、一生バカなガキのままでいてやるよ。


自分が格好良いって思うものを信じて、全力でぶつかっていける―――


それは本当に、悪いことなのか?
子供の未来のためだって、無理矢理排除すべきことなのか?


夢をひたすらに追い掛け、それが無意味だと分かっていたとしても―――しぶとくあきらめずに立ち上がる。
それができる、強い心を持った奴は、この広い世界にどれだけいるのだろう。


一時だけの痛い勘違い?
大いに結構じゃないか。


結野の言葉じゃないけどさ、笑いたきゃ笑えばいいよ。




―――俺は“ミウ”の、このまっすぐさに惚れたんだから。




「……まだ帰らないのか? 幸せな奴だな、ぼくが怖くないなんて」



結野は本格的に演技モードに入ったらしい。


その素直じゃない口とは裏腹に、少しだけ寂しそうに瞳を曇らせ、




「君がどんなに強い力の持ち主でも、これ以上この結界の中に入り浸れば君の精神力が磨耗する。吸血姫(ヴァンパイア)の眷属以外はどんな種でも確実にダメージを受ける、強力な結界だからな。……ふん、恐ろしいだろう? その羽虫のような命が惜しければ、二度と『こちら側』に近づかないことだ。分かったな?」




つまり―――



これ以上自分と一緒にいれば、俺までハブられるからとっとと出てけ、と。
せっかく新しくできた俺の立ち位置がなくなるから、もう関わってくれるな、と。



……ああ、もう。
いっそ清々しいくらいのバカだ、こいつは。


姫宮に話し掛けられたときもあんなに嬉しそうにしてたのに、気を遣って自分から離れようとした。


自分と一緒にいたら、相手に迷惑が掛かるから。


だから、きっと結野は、自分の考えを曲げないかぎり、理想と友人、両方を得ることは絶対にない。


これから、ずっと。



だったら。




ひとりぼっちで、本当はすごく、すごく優しくて、でも最高に格好良い、どうしようもないバカのために―――





―――俺も思いっきり、バカになってやるよ。

91ピーチ:2012/10/09(火) 18:17:55 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

絶対無理だ←

でもでもでもでも!! 美羽ちゃんかっこよすぎる!!←

何気にヒナさんも優しかったりww

92心愛:2012/10/09(火) 20:01:25 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽かっこいい?
ありがとう!

美羽はカッコよさと強さ、あと優しさと弱さ……相反する要素を持つ子なんです←
痛さと可愛さもいいかんじのバランスを保てたらなw

ヒナと美羽、二人ともまた違う弱いところと優しいところを持った良い奴らなので、好きになってやってねお願いします!

93ピーチ:2012/10/09(火) 22:34:49 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

美羽ちゃん&ヒナさんすっごくいい人じゃん!!

ゆきちゃんとかゆきぞの君とかも!

やばい続きめっちゃ気になる!!←

94心愛:2012/10/09(火) 22:52:47 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとうっ…!((涙


まだ序盤なんだけど、一段落ついたらやっとのことでキャラわんさかな日常編に入ります!
あ、その前にコラボとソラの波紋進めないとね(^_^;)

95ピーチ:2012/10/09(火) 23:07:30 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

いやこちらこそありがとう!

日常編! わんさかってことはにぎやかになりそう←

だよね! コラボとソラの波紋も楽しみだよっ!!

96心愛:2012/10/10(水) 20:58:40 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp






「……その眷属ってのになれば、結野の近くにいても平気ってこと?」



結野は、意味が分からないと言うように目をぱちくりさせた。



「む、む? ……まあ、ぼくと同じ《属性》になれば、ぼくの魔力の影響は受けなくなるから……」



「じゃあ」



俺はにやりと笑って―――


バカそのものの台詞を、言い放った。





「―――……俺を、結野の眷属にしてくれないかな」





「……ふぇ?」



ぽかーんと呆けた結野は可愛いんだか間抜けなんだか良く分からない声を漏らす。



「だめ?」



「え、だ、だめとかそういう……」



「じゃあいいの?」



あうあうと口をぱくつかせ、頼りなげに視線をさ迷わせる彼女。

なんとも面白いので、膝に頬杖を付いてそのまま観察することしばらく。



「……どうして」



結野は俯いて、ぽつりと呟いた。

まばゆいオレンジ色の残光が、彼女の弱々しい身体を柔らかく包み込む。



「君はどうして、……ぼくに―――」



「これからずっと、結野と一緒にいたいから」



どんなにおかしな格好をしていても、
どんなに気丈に振る舞っていても、
どんなに強い心を持っていても、



……それでも結野は、普通の女の子なんだ。


まっすぐで優しい、脆(もろ)くて寂しがりやの女の子。



できることなら俺は、ものすごいうぬぼれだけど……そんな彼女を支える存在になりたい。


強さと弱さを併せ持つ彼女の、一番の理解者でありたい。



そのためなら、結野の傍にいてもいいって証がもらえるのなら、『友達』なんて決して認めないだろう彼女の、お遊びに付き合うのも悪くない。



九年の歳月が経った今でも―――
どんな姿になったとしても、俺はやっぱり、こいつのことが好きなんだ。



「……な、な、な、」



白いレースがたっぷりあしらわれたカチューシャに付いたリボンが、わなわなと震える彼女に合わせて揺れる。



「……どしたの?」



「ど、どうしたのかだとっ? 君の数秒前の言葉を良く振り返ってから言え!」



「『どしたの』?」



「その前だその前ッ」



「えー……なんだっけ」



「うう、もういいっ」



涙目の結野は真っ赤な顔で、八つ当たりするようにぺちぺちとシーツを叩く。



「ぼくの聖域(テリトリー)にずかずかと入って来るし図々しいし……。君には調子を狂わされてばかりだ、まったくっ」



「で、結局どうすんの? 俺のこと」



「本当に図々しい奴だな!?」



怒鳴ると同時に、ぽすっ! と枕を投げつけてくる。


「わ、あぶね」


顔面すれすれまで飛んできたそれを慌ててキャッチした。



「……っああ気が乗らない!」



「それまたなんで」



「当たり前だっ! ……ぼくは……ぼくは他人が怖いんだよっ」



叫ぶや、結野は今にも泣きそうに唇を噛み締めた。



「ぼくはやっぱり、全然強くなんかない! ぼくの所為で、誰かが傷つくところなんて見たくない! ……ずっと一人だったからっ、人との関わり合い方なんて分からないんだ……っ」



強気のメッキが剥がれ落ち、その奥に秘められていたほんの少しの弱さが顔を出す。



「特定の誰かに必要以上に入れ込んで、そいつが取り返しがつかないくらい、大きな存在になってしまってから……いつか嫌われて、置いて行かれるのが怖いんだよ……っ」



「俺もだよ」



なにかに気づいたように息を呑み、結野が俺の目を見た。



「俺だって怖いんだ」



本気で好きな人であるほど、拒まれたときの痛みは大きいと思う。


一緒にいたいとか調子に乗ったことを言いながら、結野に嫌われるのを心底恐れている自分がいる。



俺たちは同じなんだよ、結野。


もうすでに心は決まっているのに。


決定的な、最後の……いや、ある意味では最初の一歩を、いまだに踏み出せずにいる。


でもさ―――決めたのなら、前に進むだけだって言ってくれたのは……結野、お前だろ?

97ピーチ:2012/10/11(木) 13:49:37 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

うわあぁぁ美羽ちゃん可愛いー!!

ふぇ? って何かシェーラちゃんを思い出させる←

98心愛:2012/10/11(木) 18:43:35 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとーう!
美羽は油断したときにシェーラ系の声が出ますw


キャラいっぱい出てくるよ!
やることがたくさんだー…幸せな悲鳴(´ー`)


土日は用事があるから更新できないんだ(´・ω・`)
また溜まるー(^^;;

99ピーチ:2012/10/11(木) 18:57:17 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

油断した時か!←

でもさ、「む?」ってやつはルイーズ王女に似てるww

100心愛:2012/10/11(木) 22:24:51 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おお、さすがピーチ!
美羽はルイーズの影響をちょっと受けておりますw
いろんな要素があるからねー(・∀・)





まだ序盤なのに100レスいっちゃいました!
皆さんご協力(?)感謝です!
『紫の歌』みたく記念SSはやれませんが(^_^;)

101心愛:2012/10/11(木) 22:26:18 HOST:proxy10033.docomo.ne.jp





「この俺がここまで勇気振り絞ってんだから、それを尊重しろよ」



「う……しかし……」



「心配しなくても、俺は結野から離れたりしない。結野と一緒にいて迷惑だなんて絶対に思わない」



迷うように大きな瞳を揺らす結野に、気づけば自然と笑いかけていた。



「今日で、お互いのこと……良いとこも悪いとこも、たくさん知った。その上で、全部覚悟して、俺は言ってるんだよ」


結野はまた俯き、ぎゅっと小さな拳を握った。



「……ぼくの眷属となれば、もう後戻りはできない。あとでいくら後悔しても、知らないからな」



「望むところだ」



「ほんとのほんとに、知らないからなっ」



「分かってるって」



精一杯、怯える彼女を安心させるように笑ってみせる。



「俺は、約束は守る奴だよ」



「……分、かった」



結野はこくんと頷いた。


それから遅れて―――へへっ、とちょっと下を向いて、嬉しそうに顔を綻ばせる。



それを見てほっとしたのと同時、なんとなく居心地が悪くなって、俺は視線の代わりに話題を逸らす。


「で、その……眷属、でいいのか? 隷属とか使い魔とか契約者とか、似たようなの他にもいっぱいあると思うけど」


「れ、隷属……! 使い魔……! 契約者っ……!」


俺が漫画とゲームの中の世界観で覚えたソッチ系の単語はえらくお気に召したらしく、結野は途端にキラキラと瞳を輝かせる。


「う、ま、迷うところだが……」


「迷うんだ」


「それでもぼくに二言はない! 眷属で統一する!」


「へー。じゃあ眷属ってことでよろしく。じゃあな結野、また明日」


「待て」


「なんでだよ!」


結野は真面目くさった顔で言う。


「……まだ《契約の儀》が終わっていないだろう」


「いや知らないから」


「主となる者になんだその口の利き方は!」


ぴょんぴょんと髪を跳ねさせて一通り憤慨した結野は、モードチェンジのためか目を閉じてすーはーと深呼吸。


数秒後、長く密度の濃い睫に縁取られた瞼がゆっくりと開き―――



半眼の俺を視界に入れた瞬間、芝居じみた動きでおおげさに仰け反った。



「こ、この魔力の波長……! 君はまさか、かつて吸血鬼(ヴァンパイア)の眷属として栄えた名門、《赤闇》の一族……その末裔だというのか……!?」



わあいそりゃあ初耳だぜ。


……響きから察するにアカヤミって赤い闇って書くんだよね?
俺の名字とのギャップがハンパないんですけど。


「……そうですねー」


「君がこの結界に入ることができたのも、ぼくと類似した“血”を持つ者だったからなのだな……!」


「ソウデスネー」


やるからには全部自分好みの展開にやり直さないと気が済まないようだった。


「ふっ、そうか。君はもうすべてを知っている上でここに来たのか……。ならば話は早い」


結野はうんうんと勝手に納得すると、打って変わって傲慢そうな、妖艶な笑みを浮かべた。



「眷属とは、主に絶対の忠誠を誓う選ばれし臣下……。その命を掛けてぼくを支え続ける。すべての苦しみと痛みを共にする。その覚悟が、本当にできていると言うのなら―――」



魅入らせる宝石の双眸が婉然と細められ、




「君をぼくの眷属とする為に―――今から《契約(やくそく)》を交わす」




一瞬、結野の雰囲気に呑まれかけた。

これは現実で、結野の台詞は全部、彼女の創作に過ぎないと十分わかっているのに―――


恐ろしいまでの凄みは、演技という言葉では片付けられないほどの迫力があって、一瞬うっかり騙されてしまいそうになる。



「……で、なにすんの? 今の宣言で終わり?」



「まさか」



結野はふっと笑い、ゴスロリのスカートを片手でごそごそと探る。


彼女が取り出したのは、



「ちょっと待てぇ―――い!!」



「わ、急に話し掛けるな手が滑るっ」



ごついデザインの、カッターナイフだった。


「おっお前なんてもん持って歩いてんの!?」


「護身用にだが? 人間界とはいえ他の組織のスパイに狙われるかも」


「しねぇよ!」


ダメだこいつ!

102心愛:2012/10/11(木) 22:28:58 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp






「とりあえず危ないからよこせ!」


「邪魔するな! ぼくの血を口にすることで初めて吸血姫(ヴァンパイア)の《贄》、眷属となる契約ができるんだぞっ」


「人の血なんか飲みたくもねーよ!」


「人じゃない! 吸血姫だ!」


刃を手の甲に押し当てようとする結野を誤って傷つけまいと配慮しながら、抵抗する彼女からカッターをやっとのことで取り上げた。はい没収。


「何をする!」


「それはこっちの台詞だバカ! お前今冗談抜きで危ない奴だぞ!?」


「うるさい! 別に振り回そうとしてるわけじゃない、ちょこっと自分の手を切るだけだ! 返せ!」


「嫌だ!」


「嫌だ!」


「めんどくさっ!」


あまりに不毛な言い争い。

自分の『超カッコイイ設定』に則(のっと)った儀式とやらを遂行しようとする結野は、その頑なさからそう簡単に折れてはくれないだろう。


こんなバカな……じゃなくて、残念すぎる理由で無駄な怪我をさせるわけにはいかない。
それに何が悲しくて好きな子の血を飲まなくちゃいけないんだよ。死んでも嫌だよ。


俺は方向を変えて説得を試みることにした。


「ちょっとだって血出るくらい切ったら痛いだろ普通。それは結野だって嫌じゃん?」


「やだ、けど……我慢くらいできるし……」


よし、この調子。



「じゃあ、他の方法とかないの? 契約ってやつの」



「他の、方法……」



眉をしかめた結野は呟いて、じっと俺の顔を見て沈黙し、



「―――――!」



しゅぼっと音を立てて赤面した。



「ふ、……っふざけるな! なんでこのぼくが、そんなは、ははは破廉恥な真似をッ」



「なに勝手に想像しちゃってんの……?」



大体予想はつくけど。


「こっこの変態! 変態!」


「俺何もしてませんからね? ずっとここに座ってただけですからね?」


目にいっぱいの涙を溜め、面白いくらいガクガク震えて小さく身体を丸める結野。
精巧な陶製人形(ビスクドール)の如き美貌が台無しだ。


「とにかく却下だ却下っ」


「はあ」


頬を火照らせてぺちぺちとシーツを叩く結野。

その手を見ていたら、ふと思いついた。



「じゃあ、握手ってのはどう?」



健全で安全、しかも簡単。

我がアイディアながら結構いいんじゃないかな。



「む……確かに魔力を触れた箇所から直接注ぎ込むことで、ぼくと同じ《属性》に書き換えると考えれば……。でも《契約の儀》としてはどうかと」



「よっしゃそれで決定! いいよな結野!」



結野が何とかかんとか言い出す前に、大声で彼女の声を掻き消す。



「う……わ、分かった」



あまりの剣幕に驚いたのか、目を白黒させながら結野が頷いた。



「はい」



一切迷うことなく手を差し出す。


結野は実に数十秒は掛けてわたわたしてから、覚悟を決めたらしくきっと唇を引き締めて、それからそっと手をその上に置いた。



……うわ……手、ちっちゃ……!



淡いブルーに透ける血管、氷細工のように繊細な指先に浮かぶ桜貝の爪。



こんなに綺麗なものを俺なんかが触っていいものか、と若干躊躇しながらも、その手をきゅっと握る―――と言うよりも、できるだけ優しく包み込んだ。

ひんやりと冷たい結野の手へと、次第に俺の手の熱が移っていくのが分かる。

ぴったり触れた肌は異様なほど柔らかく、しかし儚くほっそりしていて、くっつきあった部分からじわりと溶けて混ざり合ってしまいそうなくらいに滑らかだった。

滲んできた汗は多分だけど俺のもの。

恋人同士みたいに手を繋いでいるみたいな構図に今更ながら緊張してきて、ちらりと結野の様子を伺った。



「……………………」



真っ赤だ。
熟れすぎたトマトよりも真っ赤だ。


頬だけじゃなく首や耳までも、見事な朱色に染まりきっていた。


てっきりなんかそれっぽい台詞を言ったり呪文を唱えたりするんじゃないかと思ってたけど、明らかにそんな余裕はなさそうに、小刻みにぷるぷると震えている。



「………………」



「……………………」



「…………もう、良くないか?」



「いっ今そう言おうとしていたところだっ」



はっとしたように結野は顔を引き攣らせ、勢い良く手を離してついでに後ろへと飛び退く。

103ピーチ:2012/10/12(金) 18:40:59 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

美羽ちゃんすごーい!!

ヒナさんも良く考え付いたね!←

104心愛:2012/10/12(金) 18:54:32 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽は一歩間違ったらただの危ない子だよね!

そろそろ一段落つきそうw

105心愛:2012/10/12(金) 18:55:25 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp






結野は目を閉じ、こほんこほんっと咳払いした。



「……契約完了だ。今この瞬間から、無事に君はぼくの眷属となった」



「やっとか……」



「と言うわけで、ぼくのことは敬意を込めてミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ様と呼ぶように」



「長ぇよ。あとクラスメイトに様付けっておかしいから」



結野は道理だと思ってくれたらしく、「む」と眉間にしわを寄せて考え込んだ。




「……なら、ミウでいい」




「…………は?」



「君が言いにくいなら仕方ないだろう。ミウと呼べ」



「い、いやいや待て待て!」



そりゃあ心の中でこっそりそう呼んでたりもしましたけれども!



「俺は女子の下の名前をフツーに呼べるようなタマじゃないよ!?」



「……下の、名前?」



…………はっ。



「今気づいたの!?」



こいつマジで末期だな!



「う……でも、眷属が名字呼びはちょっと……」



「じゃ、じゃあお前俺のこと圭って呼べんのか今から! 無理だろ普通!」



「うぐ……っ」



結野は「ううううう」と唸り、それから弱々しげに俺を見た。



「……君の名字は……」



「日永だよ! 日永圭!」



こんだけ色々話してたのに俺の名前すら知ってなかっただと!?


軽くショックを受けている俺はすでに視界に入っていないらしく、結野は上の空な様子で静かに呟く。



「……ひなが……」



しばらく口の中でもごもごして、



「……よし、決めた!」



そして、ぱっと晴れやかな顔を上げた。





「―――ぼくは君のことを、“ヒナ”と呼ぶことにする!」





―――……心臓が、どくんっと大きく脈打った。




「“ひなが”だから、ヒナ。愛称というのもなかなかいいものだな。……ふふん、とっさに考えたにしては上出来だろう。異論は認めないからな」




得意げに胸を張る結野の、大輪の花が咲いたように無邪気で眩しい笑顔が、




『じゃあ、“ヒナ”ね!』




記憶に焼き付いた“ミウ”の笑みに―――重なる。




「…………っ」




不覚にも。


涙が、出そうになった。




女ってずるい。


弱っているところを見ただけでも、男の俺はどうしようもなく胸が痛くなる。

なんとかしてやんなきゃ、って思ってしまう。


なのに、


こんな顔、見せられたら。




「ったく……しょうがないなぁ……」



絞り出した声が僅かに揺れていたのに、彼女は気がついてしまっただろうか。




「これからよろしく。……美羽」




照れ混じりにだけど、はっきりと呼び捨てる。



ゆ……美羽はピシリと固まった。


かと思うと、雪の肌をかあっと紅潮させて細っこい脚をばたつかせる。



「な、な……っんだか無性に恥ずかしいぞっ!? なんだこれはっ」



「お前がそうしろって言ったんだろが!?」

106ピーチ:2012/10/12(金) 19:18:13 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

やっと美羽ちゃんの眷属になったー!!

小さい頃に言ったことを忘れてるのね((汗←

107心愛:2012/10/12(金) 20:09:50 HOST:proxy10062.docomo.ne.jp





「美羽ー」



次の日の昼休み。

俺はやっぱり、ちょっと気恥ずかしさを覚えながらも美羽に声を掛けた。


「遅い! 何秒待ったと思っているんだ!」


「時間の単位おかしいからな? 自販機行って選んで買って帰って来るのに秒単位はないからな?」


ご立腹の美羽はガタガタと机を揺らす。


「仕方ないじゃないか、ヒナしか話す相手がいないんだからっ」


「それ堂々と言うことじゃありませんよね」


パシられた上に理不尽に怒られている俺は嘆息しながら自分の席に座り、一本の缶を美羽の机に置いてやる。


「ほい。迷ったから無難にお茶にしといたんだけど、これで良かった?」


「ん……む……」


美羽は何故か困ったように視線をさ迷わせ、それからゆっくりと、プルタブに指を掛けた。


「……………く!」


開かない。


顔にやる気をみなぎらせ、ものすごく頑張って力んでいるのに、ぷるぷるする指先が白くなっていくだけ。

非力すぎんだろこいつ。


「う……く」


「貸して」


仕方なく美羽の手から缶を引ったくり、ぷしゅっと開けてやった。


「……礼は言わないからな」


「はいはい」


恥ずかしそうに上目遣いで睨んでくる美羽。


「眷属は主に絶対服従なんだからなっ、ヒナ如きにありがとうなんて言わないんだからなっ」


言ってんじゃん。


顔を隠すように上品に両手で缶を持ち、ちびちびと飲んでいる美羽。

次からはパックのやつにしてやろうと考えながら、頬杖を付いてその端正な横顔を眺めた。

知らずのうちに笑みが浮かぶ。



「ねーねー!」



俺のすぐ後ろ、弁当箱を広げた姫宮がにこにこと笑って美羽と俺を交互に見た。


「今、ゆいのん日永くんのこと、ヒナって呼んでたよね?」


「…………」


美羽はわたわたと慌てて缶を取り落としそうになるもぎりぎりでこらえ、


「……そうだが?」


「なんかいいね、ヒナ。私もヒナって呼ぼうかな。可愛いし」


姫宮の隣で柚木園も笑う。


「別にいいけど……って可愛いはないだろ」


「えー、可愛いよー! なんかひよこみたいだし、日永く……じゃなくてヒナの髪って」


「ひどっ」


実はコンプレックスの、癖が強くて色素が薄い猫っ毛を片手でわしゃわしゃとやる。

ひよこ……。


「ぷ……確かにひよこ頭だな、ヒナは」


「うるせーな!? みんな美羽みたくまっすぐで癖ないわけじゃないんだぞ!?」



『……美羽?』



叫んだ途端、クラスにいた約四十人ぶんの目が一気にこちらを向いた。


「へえ、結野さんって美羽って言うんだ。可愛いね、似合ってるよ。私も名前で呼んでいい?」


「か、構わないが?」


早速口説いている柚木園と、迷惑そうに顔をしかめながらも意外とまんざらでもない様子で応じている美羽……は、さておき。


「おいおいヒナ、俺たち友達だろ? なに結野さんとはいえサラッと女子の名前呼び捨てちゃってるわけ? なんかあったの昨日」


「お前と俺がいつ友達になったよ。ってか勝手にヒナって呼ぶな」


むさい野郎に馴れ馴れしく肩を組まれ、いっやぁあああな顔をしながら身体を離す。

108心愛:2012/10/12(金) 20:11:29 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp





「てゆーかなに、ヒナも美羽たんも妙に仲良くなってないー? うちら置いて青春すんなし」


「たん!?」


一人の女子の声に、ばっと美羽が反応した。


「なんだその頭の悪そうな呼称はっ!」


「ぽんのがいい?」


「そういう問題じゃなくてだな!?」


「……なんかもーめんどいから美羽から説明よろしく」


俺はわいわいと集まってきた奴らの中心で、半ば投げやりになって言う。


美羽のことだから、頼まなくてもほとんど嘘の中二台詞を長ったらしく喋ってくれるだろう。


案の定、美羽はやや緊張気味に口を開く。


「……よ、よくぞ聞いてくれた、我が忠実なる僕(しもべ)たちよ」


クラスメイトを僕扱いすんのやめろ。


でも、鉄壁が崩れて親しみやすさが出たんだろう―――みんなの美羽を見守る目は、笑い半分だけど温かい。


「実は、」


美羽もそれを感じているのか、威風堂々かつ余裕綽々だった自己紹介に比べると固さは残るものの、ちょっと嬉しそうだ。


……良かった良かった。




「実は昨日の放課後、保健室でヒナと《契(ちぎ)り》を交わしたんだ」




空気が、凍った。



……アレ?



美羽は頬を赤らめ、両手の指をもじもじしながら続ける。



「あ、安心しろ、保健医はいなかったし……声は誰にも聞かれてはいないはずだから」



『…………………!!』



ちょ。



「あんなこと初めてだったから色々戸惑ったけれど……ヒナが案外手慣れていたのもあって、その、……なかなか気持ちがいいものだった」



「紛らわしい表現するなぁあ――――!?」



握手しただけだからねっ!?



『…………殺せ』



男共の目がきゅぴぃんと怪しく光る。


「入学早々大人の階段昇りやがってカスが」


「県の高校別カップル成立率ランキング最下位の南高舐めんなコラ」


「美少女と」


「保健室のベッドで二人きり」


「殺す」


「死なす」



「ちょおっ!? 誰だ今三角定規投げたの! だっだから誤解だって、美羽とは別に」



『言い訳は署で聞く』



「どこだよ署って!」



悪質なクラスメイトたちによって今まさに眷属が命の危機に晒されているというのに、主の方はというと。


「みうみうって髪超キレーだよねー。シャンプーどこの使ってんの?」


「み……!? っえ、い、いや……みんな家政婦が用意してるからそういうのは良く……」


「家政婦!? な、なんかすご……。じゃあこーいう服はどこで買ってんの?」


「既成のものはあまり。細かいところとか自分でこだわりたいからオーダーメイドが多いが」


「わ、ゆいのんってすっごいお金持ちなんだねー! ゴスロリって高そうだし」


「最初はどうかと思ったけど正直似合ってるよね、こういうの」


「うん。美羽はどんな格好をしていても可愛いと思うけど、やっぱりそれが一番しっくりくるような気がするよ」


「あは、王子はすーぐそーいうこと言うー」


「事実だもの」


「う……あ、あり……」


「どしたのゆいのん」


「なっなんでもない! ……ぐ、ぼくは誉れ高き《純血の薔薇》の一級魔女なんだぞ、ぼくに軽々しく近づくんじゃって頭を撫でるな! 触るな! ヒナ、助けっ……はーなーせー!」



……んー……楽しそうだから、いっか。



女子グループ+柚木園の中心でじたばたしている美羽。


昨日までの寂しげな様子を思い出し、ふっと心が和んだ。



「ヒナ。悪いことは言わない。正直に話せ」



「え、ちょっとこのライトどこから持って来たの!? それになにこのハードボイルドなBGM……うわまぶしっ」



「……親御さんも、悲しむだろうな」



「息子がこんな目に遭わされてるって聞けばね! ……ってそのグラサンなんなの!? いつ全員分用意したんですか!?」



「……カツ丼、食うか?」



「いらねえよ! つか弁当食わせろよ!」



昼休み終了まであと二十五分。


それまでにこのうざったい男共を蹴散らし、昼飯にありつけるかどうかが問題だった。

109心愛:2012/10/12(金) 20:20:17 HOST:proxyag071.docomo.ne.jp
>>ピーチ


覚えてるヒナの方がアレだけどね!




ここからやっと日常編に入ります。……長かった……。
わいわいがやがや、嫌な意味でここあらしくいっちゃいますよー!
無事クラスでいじられ役としての地位を築いちゃった美羽とヒナを「良かったねー……」と生暖かい目で見守っていただければ幸いですw
美羽の勘違いっぷりが可愛く思えてくるレベルの個性的な面々、または変態さんが登場していきますよ(・∀・)



明日明後日は多分無理ですが、ちょっとずつ他のスレにも手を出し始めますw

110ピーチ:2012/10/12(金) 22:21:34 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ヒナさん、誤解はしっかり解かないと!←

あたしはめんどくさいからそんなん一切やんないけどね!←

111ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/13(土) 12:31:18 HOST:EM117-55-68-31.emobile.ad.jp

めちゃくちゃ楽しそうなクラスの雰囲気が伝わってきますw
もうパソコンの前でにやにやによによしながら読んじゃってますようわああ←

ヒナかっこいいしミウちゃん可愛いです!
日常編も楽しみにしてます!

あと、遅れましたが100突破おめでとうございます(・ω・´)

112心愛:2012/10/14(日) 19:08:18 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp
>>ピーチ

んー、美羽はソフィアみたく思い出すことはないんじゃないかなぁ←
ヒナはいつかちゃんと話せる日が来るのでしょーか(´ー`)



>>ねここさん

ありがとうございますーっ(つд`)
ニューバージョンの美羽も可愛いと言っていただけてほっとしました!
日常編は短編集みたいな形にしたいなと思っていますので、きらーくにご覧いただけたらと←

113ピーチ:2012/10/14(日) 19:20:59 HOST:nptka407.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

美羽ちゃん思い出せー!!

そしてヒナさん思い出させちゃえー!!

……恋愛って難しいよね←いきなり何だw

114心愛:2012/10/15(月) 16:12:54 HOST:proxyag055.docomo.ne.jp
>>ピーチ

でも、なんでそんな昔のこと覚えてんのかって話になったら「実は好きだったからです」的なカミングアウトが必須になっちゃうから、やるにしてももうちょい先かなw
ヒナにはまだ荷が重い←

難しいよね(笑)
ここあもぶっ飛んだ妄想の勢いのままで書いてるからときどきあれ? ってなりますがw

115ピーチ:2012/10/15(月) 17:32:51 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

確かに! それはそうだ←

時々あれ?ならまだ良くない?

あたしなんか「何だこれー!?」って絶叫してるし←

116心愛:2012/11/03(土) 22:44:17 HOST:proxy10002.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ここあもしょっちゅうだよw

でもノリでごまかそうと頑張るw




ちょっとだけお久しぶりです、ここあです。
何とか生きてます……。はい。


さてさて、次は日常編最初の回ということで柚木園くんと夕紀に頑張ってもらわねばならないのですが、話の都合上、ある程度書きためられたら投稿することにしますね(・∀・)
あともうちょっとお待ちくださいー←

117ピーチ:2012/11/04(日) 07:07:05 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まさかのノリ!?

生きててくれてありがとー!←不謹慎

楽しみw ゆるーりと待ってるねーw

118心愛:2012/11/04(日) 09:06:17 HOST:proxy10023.docomo.ne.jp

『BOY or GIRL?』





「柚木園くん、おはよ!」


「おはよ。神田さん、清水さん、藤谷さん」


「えー、王子もううちらの名前覚えてくれたの? 早くない?」


「もちろん。可愛い女の子に関することなら何でも、自然に覚えちゃうよ」


やだー、と笑いが起きる。
無地のシャツにジーンズを合わせただけという普通だったら地味路線まっしぐらな服も難なく着こなし、柚木園はキラキラした光を纏って女子集団の真ん中に君臨していた。

甘やかに煌めく黒い瞳を細め無造作に髪をかき上げるその流れるような仕草は優雅で、その上妙に色っぽい。



「……リア充め……」


美羽がジト目で、教室の隅にハーレムを形成している柚木園を見やった。


「目障りだ耳障りだいらいらする。爆発しろリア充。滅びろリア充。死に晒せリア充」


「呪詛を吐くな」


「……嗚呼……人間界では《呪縛》によって魔力の供給が途絶えているのが残念でならない……。今ぼくに本来の力があれば、あの浮かれた男を木っ端微塵にしてやるのに」


この前は魔力が暴走するとかなんとか言ってなかったっけ?


「だから物騒なこと言うなって」


「そうだよー」


姫宮も、めっ、と可愛く人差し指を立てる。


「柚木園くん、すごく良い人だよ! そんなこと言っちゃだめだよゆいのん」


「君に言わせれば、全ての人間が『良い人』に分類されそうだがな……」


ふんっと美羽はお馴染みの鼻を鳴らす仕草をする。


「生憎だが、そんなことは承知している。彼は下心から女子に馴れ馴れしくしているわけではなく、ただ純粋に誰とでも仲良くなりたいだけなのだと」


「へえ」


……なんか、キツいこと言ってるわりに結構好意的じゃん?


正直あんまり面白くは、ない。


面白くないんだけど……なんでだろう、柚木園個人に大してムカつくっていうわけじゃない。

それに、モテる男やイケメンはつい、本能的に毛嫌いしてしまいがちなんだけど。

その代表格みたいな奴なのに、柚木園に対して憎しみが持てるかって言ったら、やっぱりちょっと違う。

多分それは俺以外の男もそうなんじゃないかな。

あぶれ者だった美羽を気遣ってくれる優しい一面を見てしまったし、それに、纏っている雰囲気がなんだか、『憎めない』のだ。

女子も、柚木園の顔が目当てなんじゃなくて中身に惹かれるから、こうやって集まってるのかもしれない。


……いや、いくら優しくて良い奴でも、本気で美羽に手ぇ出したら許さないけどさ。



「……ヒナ? どうかしたか?」



「な、何でもない何でもない」



怪訝そうにこっちを見てくる美羽に、慌てて手を振ってあははと笑ってみせる。


……バレたら即死なことを考えてしまった。


も、もう柚木園の分析なんかしないことにしようそうしよう。



「ヒナって見てると面白いよねー」



「決して見ていて気持ちが良い顔ではないが、一人で思い悩んで百面相しているところなどは確かに飽きないものだな」



「ほっとけよ!」



そんなに顔に出るタイプだったっけか俺……。



「なになに、何の話?」



「あ、王子様だー」



いつの間に話をやめていたらしく姫宮の隣に来て、やめてよ、と笑う柚木園。


「柚木園はモテんなーって話だよ」


「やだなあ、そんなことないって」


「そんなことあるって」


「そうだよー。ねーゆいのん」


「そこで何故ぼくに同意を求める」


美羽はちらっと柚木園を見上げてから、再びそっぽを向いた。


「……ふん。しかし、君はあまりにも節操がなさすぎじゃないか? ヘタレでふらふらしている主人公の所為で迷惑を被るのは周りの女と決まっている」


「二次元の世界観で三次元を語るな」


それに柚木園は『普通よりちょっとだけ顔良いだけで、勉強も運動も並なのに何故か異様に美少女にモテる』主人公ってよりは、ヒロインにちょっかい掛けてくる二枚目役とかの方が適任なんじゃなかろうか。



「ふらふらはしてないよ?」



柚木園はばっちりウインクを決めて爽やかイケメンスマイル。



「そう、私は全ての女の子を平等に愛しているんだから! 愛の花がたくさん蕾を付けてしまっただけなんだ、これは仕方がないことなんだよ……!」



「ほんと終わってんなお前」



なんでこんなのがモテるんだろう。

119心愛:2012/11/04(日) 09:15:57 HOST:proxy10023.docomo.ne.jp




「ひっ」


美羽が、まず満面の笑顔の人間を見たときに発する類ではない声を出して唇の端を引き攣らせる。

いつものように演技をする余裕もないみたいだ。


「……美羽が怯えてんぞこら」


「え、どうしたの? 怖がっている顔も魅力的だけど、美羽は笑顔が一番可愛いと思うよ」


「ひぃぃ……っ」


微笑みかけられ、ぶるぶるとマナーモードのケータイのように震える美羽。

そういえば美羽が面と向かってクサい台詞を吐かれたのは初めてだったっけか。


「な、何なんだこの恥ずかしい生物は……!」


「そう、そんなに恥ずかしがらなくてもいいんだよ?」


「ぎゃああーっ!?」


良いように自分の言葉を拾われた上に、顎を掬われて悩殺王子スマイルを向けられた美羽はぞわぞわと鳥肌を立てた。


「ひ、……ヒナ! 命令だ、この気色悪い変態をどうにかしろ!」


「分かった。頑張れ」


「話が噛み合ってないぞ!?」


ぎゃんぎゃん騒いでいる美羽だけど、変た……柚木園は一応紳士(?)的だし、これはふざけてるだけなんだと思う。

本気で襲ったりすることはないだろう。……多分。


「くっ、使い物にならない眷属だな! こうなったら姫宮さんでもいい、何か言ってやれ!」


じたばたしている美羽の声を聞いているのかいないのか。

姫宮は何故か、じーっと美羽―――じゃなく柚木園を見ていた。


頭のてっぺんから爪先まで眺め、むう、と悩ましげに眉を寄せる。



「……姫宮?」



「……むー……」



ぺちぺちと自分の胸を叩き、不満げな表情を作る。


それから、



「……むううー……」



「はっ? ……な、なんだよ……」



てくてくと歩いて俺の前まで来ると、手を伸ばして俺の肩やら腕に触れてきた。

面白みも何もない胸に手のひらをぺたぺた押し付けてみてから、はーっとため息をつく。



「やっぱり違うよねー」



「何が」



「体格。いーなぁ」



……いや、そりゃ違うだろ。


男子と女子ですよ?


今更なに言ってんの?


姫宮は美羽をいじっている柚木園と頭に疑問符を浮かべている俺を順番に見て、



「……男らしいっていーよねー……」



男、らしい?


いや……俺もそうだけど、柚木園を男らしいと評するのもちょっと違和感があるような。

どちらかと言うと、美形でも女顔のグループに分類されるんじゃ。



「……そうかな……?」



「そうだよー」



……ふむ。


とにかく姫宮の好みのタイプは男らしい奴、と。


「……脳内にメモしてどうする気だ?」


「ほわっ!? な、なんで分かっ!?」


「顔に出ていた」


美羽にじろりと睨まれた。


……ヴァンパイアより超能力者の方が向いてるんじゃなかろうか。


煩わしげに柚木園を振り払った美羽は、何故か不機嫌そうにむすっとしている。


「……なんだよ」


「うるさい」


にべもない。


気まぐれな猫みたいに顎をつーんと斜め上に向けている美羽を、楽しそうに柚木園が見守る。


「あー美羽はほんとに可愛いなぁ」


「黙れ」


「あはは」


冷たくあしらわれても全くめげずに、何もなかったように愛で続けるそのド根性は尊敬に値する。


特にすることもないので、良く分からん二人を観察していると、



「柚木園くんもいいー?」



「へ?」



一人で難しげな顔で胸に手を当て、何やら考え込んでいた姫宮がぱっと顔を上げ、てててっと柚木園に近づいていく。


俺にしたみたいに触らせろってことなんだろうけど、柚木園は美羽に夢中で俺たち二人のことは見ていなかったので、事態に付いていけずきょとんとしていた。


姫宮が「えへへー」とにこにこしながら、彼へと無邪気に手を伸ばしたそのとき、




ふにゅ。




―――……柚木園の胸に、指先が『めり込んだ』。



「…………あれ?」



姫宮が驚いたように、ぱちぱちと瞬きをする。



「え? ……え?」



は?


……え、めり込んでる、よな?


なんで?




「―――……きゃあああっ!?」




「ひゃっ」



どんっ、と思い切り突き飛ばされた姫宮が床に倒れ込む前に、間一髪で後ろから支えた。

120心愛:2012/11/04(日) 09:31:54 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp




「……ヒナ? ありがと……」



「ごっ……ごめん!」



くしゃ、とシャツの胸元を庇うようにしながら、まだ赤みの残る顔の柚木園が姫宮へと慌てて駆け寄る。


「痛かったでしょう? 本当にごめんね……! 怪我はない?」


「……ううん! 全然だいじょぶだよ」


たははと笑いながら、姫宮が立ち上がる。


それから、



「……あ、あのー……柚木園くん」



「う、うん」



美羽と二人、いや、聞き耳を立てていたらしいクラスメイトたち全員が、息を詰めた。



……まさかとは思うけど、



その結論しかありえない。



もしかして、



もしかして、柚木園は―――



「すごい筋に」



スコンッと綺麗な手刀が入った。


「いっ」


「阿呆か君は!」


「えええー」


背伸びの体勢から戻った美羽が、涙目で後ろ首を押さえている姫宮を叱り飛ばす。



「……柚木園」



「……う、うん」



やり直しだ。


姫宮のアホ発言(未遂)のせいで微妙に緊張感が削がれたが、過ぎたことは致し方ない。


俺はすうっと息を吸い、



「―――お前、まさか……女、じゃないよな?」



「……その通りです……」




何とも気まずそうに、柚木園はらしくもなく小さな声で、俺の言ったことを認めた。


自分が女なのだと、認めた。


それを聞いて、



「なんで言わなかったんだよ」



柚木園は『え?』という顔をする。



「……ええと。私が言うのも変だけど、もっとこう……驚いたり、ショックを受けたりしないの?」



「そこまでは」



言われてみれば―――どうして今まで気がつかなかったのかと思うくらいだ。


中性的に整った顔立ちに、匂い立つような色気。

切れ長の瞳をけぶらせる長い睫(まつげ)、肩の薄さに、さっき上げた悲鳴の色まで―――全ての要素が意外な程、女って性別に『しっくりくる』のだ。


美形の男にしか見えない容姿にほんの少しの女性らしさが溶け合って、絶妙なバランスでもって魅惑的な雰囲気を醸し出している。


ずっとわだかまってた違和感がようやく解けたような感じ。

美羽に言い寄ってたのにあんまりムカつかなかった理由はごく単純、柚木園が女子だったから。

一人称が男にしては珍しい『私』だったのも、男じゃないんだからむしろ当たり前のことだった。



「……別に、隠してたわけじゃないんだ」



柚木園はちょっとだけ照れたように続ける。



「みんな、私が男だって思っちゃってるんだろうなーとは分かってたんだけど、なかなか言い出せなくて」



言い、ごめんね、とクラスのみんなに笑いかける。



「い、いや……君が謝ることでもないと思うが……」



「ありがと。……ほら私、この背だし、胸もないし。女の子らしい格好は最初から諦めてるんだよね」



確かに、柚木園の身長は男子の平均を超えているだろう。


でも、


「……さっきのを見た限りでは、すごい意外だけど結構あるような気が……。あれがいわゆる着やせするタイプってやつか」


「なんだって?」


「何でもないです」


美羽に横目でギロリと睨まれた。

……こええー。



「……あ、ごっ……ごめん柚木園くん! ほんとにごめんなさいっ」



柚木園の言葉に一人呆けていた姫宮が我に返り、勢い良く頭を下げた。



「そんなに謝らないで。どう頑張ったって男にしか見えないもの。慣れてるから」



「そうじゃなくて……っ」



姫宮は真っ赤になって、消え入るような声で。



「あの、さ、触っちゃったから……」



「え? ……ああ、急にだったからびっくりしただけだよ。私こそ大げさに騒いじゃってごめん」



爽やかに笑む柚木園。



姫宮は感動したように目を潤ませた。



「許してくれるの?」



「許すも何もないよ」



「ありがとう!」



眩しい笑顔で、姫宮は。




「ほんとに僕、悪気はなかったんだけど……。男に触られるなんて、やっぱり普通はやだよね。柚木園くんは優しいなー」




…………。



…………………。



…………………………。




『………………は?』

121ピーチ:2012/11/04(日) 10:42:06 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? まさかの男→女!?

ついでに姫宮さんまで逆転疑惑あり!?

え、もしかして男らしくていいなーって、自分が男だから!?

122心愛:2012/11/04(日) 11:43:08 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ


生きてるよー!(涙)


素敵な反応をありがとうっ←
そう、夕紀は「自分も男らしくなりたいのになー」って意味で言ってたんです。
前からの発言も、可愛いって言われて嫌がらせたりとか、一人称出さずにしゃべらせたりとか、仕込むのに大変だった( ´∀`)

この手のキャラって最近増えてるし、柚木園くんはちょっとわざとらしすぎるかなーと思ってたんだけどね←


次からは夕紀のターンだぜ!

123ピーチ:2012/11/04(日) 12:23:53 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

生きてたよー!((泣←

素敵な反応なんだねあれが!?

……どーりでくまなく探しても姫宮さんの一人称がわかんなかったわけだ←おい

124心愛:2012/11/04(日) 14:41:29 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp
>>ピーチ

探してくれちゃいましたか←

ごめんね(^-^;


日常編、これが最初の山場なんで頑張ります!

性別誤解したまま日常に突入させるわけにはいかぬ←

125ピーチ:2012/11/04(日) 17:22:40 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

探しましたよ←

確かに性別間違えたままだと面倒だw

126心愛:2012/11/04(日) 18:43:17 HOST:proxyag089.docomo.ne.jp




姫宮を安心させるように優しい笑みを浮かべた柚木園、

理解はしたらしいけど微妙にうろたえている美羽、

しっかり聞き耳を立てていて、柚木園を新しい目で、それでも温かく見ていたクラスメイトたちが、


ピシッと氷のように凍りついた。



「……姫、宮?」



「なにー?」



にこにこと屈託なく笑いながら、姫宮はこてんっと首を傾げる。……可愛い。



「うん、大したことじゃないんだ。多分、いや絶対、俺の聞き間違いだと思うんだけど」



俺は『彼女』に、口元をひくつかせた精一杯の笑みをもって問いかける。



「お前、今……自分のこと、男っつったよな?」



「え? うん」



当然のことのように、姫宮。



「それがどうかした?」



「姫宮さん」



フリーズ状態を解除した美羽が腕を伸ばし―――がしっと姫宮の肩を掴んだ。


「ひゃっ……ゆいのん? どうしたの」


「君は正気か?」


「ええっ?」


赤い瞳に異様な迫力を漂わせた美羽に、姫宮はきょとんとした眼差しを向ける。


「しょ、しょーき? だよ?」


「……ふう。失望した。君が冗談なんて高度なテクニックが使えるとは最初から思ってはいなかったが、これはセンスがなさすぎるだろう」


「え、……?」


ぽかんと口を開ける姫宮に、柚木園もふうっとため息をついた。


「美羽の言う通りだよ姫宮さん。ジョークにしても無理があるって」


「ま、待って」


姫宮はサラサラのショートヘアを揺らし、



「ま、まさかみんな、僕のこと女の子だと思ってたのっ!?」



「事実だろ」



「違うもん!」



大きな紅茶色の瞳をうるうるっとさせて。



「僕は男だよっ!」



ぐっと両の拳を握って主張する。

その表情は真剣そのもので、教室中がにわかにざわめき出す。



「……姫、なに言ってんの」


「姫宮男の娘(こ)説……? や、ないってどっからどう見ても女子だって」


「でもマジっぽくね」


「じゃああれじゃん、性同一性障――」


『それだ』



「ちーがーうー! 僕は正真正銘男なんだってばー!」



腕をぶんぶん振り回す姫宮。


「にしてもクラスに二人も僕っ娘(こ)って……。漫画でもないだろ、世も末だな」


「良く分かんないけどヒナが僕のこと信じてないってことだけは分かったよ!」


姫宮は憤慨した様子で、自分の鞄を漁って生徒手帳を取り出し、俺たちに突きつけた。



「ほら! ちゃんと男ってなってるでしょっ」



生徒手帳に付いたビニールカバーの中に、学生証が挟んである。

学校名や名前、生年月日などが記されたそれには姫宮の言葉通り、性別の欄に『男』とマルが付いていて。

柚木園が眉を寄せた。



「これは……ひどい間違いだね。先生に言った方がいいんじゃない?」



「確かにひどいな。嫌がらせとしか思えない」



「早く直してもらえよ」



「ひどいのはみんなだよ―――っ!」



姫宮の絶叫に、みんなして耳を押さえた。



「ひ、姫宮? 落ち着けって、落ち着いて話し合おう。な?」



「変に優しい目で見ないでっ! ……あーもう! 分かったよ!」



目にいっぱいの涙を溜め、姫宮はふるっと震えながら長袖のTシャツに手を掛ける。



「……恥ずかしいけど……今から証拠、見せるからっ」



「姫宮さんっ? なにをっ」



ぐっと瞼を閉じ、頬を火照らせた姫宮が、柚木園の声も聞かずにシャツの裾を上へ引っ張り上げた。



『きゃ――――――!!?』


男女関係なく上がった本気のスクリームが教室に響き渡ると同時、



「わ、分かった! 認める、認めるからやめろ!」



「……ほんとに?」



白い腹が見えた瞬間、俺は心からの恐怖を覚えて叫んだ。


姫宮は疑わしげながらも一応手を止めてくれる。



「ほ、ほんとだって! なあ柚木園っ」



「そ、そうだね! そこまで言うのならそうなんじゃないかな! そうだよね、美羽っ」



「あ、ああ! 何の躊躇もないということは、やはり姫宮さんはお………おと…………」



「やっぱり疑ってるぅー!」



言いかけながら視線を泳がせた美羽を見て、姫宮がだばーっと涙を流した。

127ピーチ:2012/11/05(月) 18:21:58 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

嘘だろおい―――!?

まさかのゆきちゃん(君?)信じてもらえてない!?

…………うん、フツーに女だと思うよね、普通は←

128心愛:2012/11/05(月) 19:16:11 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
>>ピーチ

夕紀は、まだ『ゆうき』だったら男っぽかったのにねw

なんとでも呼んでやって\(^o^)/

129心愛:2012/11/05(月) 19:17:56 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp






「……う……僕がもっと男らしかったら、こんなことにならないのに……」



落ち込んだようにしょんぼりとうなだれ、すんすん鼻をすする姫宮を見ていたら、なんだか罪悪感が込み上げてくる。

それは美羽も同じみたいで、



「わ、悪かった。人は見た目よりも中身だと言うしな。容姿だけで判断するのは少々軽率だった、反省するよ」



「分かってくれるの? ゆいのんっ」



「……う、うん……まあ……」



「良かったー」



うるうる潤んだ瞳で見つめられ、美羽が早速言葉に詰まっていた。


見た目だけじゃなくて中身だって女子っぽいんじゃ……。


毒々しい美羽とは対照的な正統派美少女だと思っていた姫宮がまさか男だったなんて、やっぱりすぐには信じられない。


でも、美羽も言ってたように、恥ずかしそうにしながらも躊躇なく上を脱ごうとするんだから、本人の言い分通り、男、なんだろう。
……信じられないけど。



「はー。こんなに女の子っぽいから“姫”とか呼ばれちゃうんだよねー……。こっそり筋トレとか頑張ってるんだけど、全然筋肉つかないんだよなぁ……」


「多分一生む……じゃなくて。ひ、姫宮さん、無理は良くないよ。お願いだからずっと可愛いままでいて、ね?」


「柚木園くんひどい! 可愛くなんかないもん!」


「しかし、“姫”というあだ名がぴったりくる男子というのもすごいものだな……」


「全然ぴったりこないよ! あれは同中の子が面白がって言ってるだけだし。それに柚木園くんだって、ほんとは女の子なのに“王子”って呼ばれ、て………あ、あれ、もしかして、あの取り巻きの子たちは……」


「そういや、まさか女だって知らなかったりしないよな?」


「ううん、中学のときからの友達だから。違うクラスなんだけどね。みんな知ってるよ、安心して」


「あ、あれは友達だったのか……」



ようやく話が和やかになってきたところで、



「そうだ! 柚木園くんのこと、これからなんて呼べばいいかな? くん付けはやだよね?」



姫宮が笑顔で、こう切り出した。



「え? いつもそうだし、私は別に」



「んー、柚木園さん、もなんか今更やだなぁ」



柚木園の声も聞かず、姫宮が『んー』と考え込む。



「じゃあ……下の名前、なんて言うの?」



そこで柚木園は、何故かピシーンッと硬直した。



「……あ、あのね? えーと、名前はちょっと、あんまり気に入ってないというか、嫌いというかだから、その、困るというか……」



しどろもどろに言葉尻を濁す柚木園。


「そういえば知らないな」


「君はただの人間の分際でぼくの高貴なる名を呼んでいるのだから、これは不公平というものだろう」


「え、ええ……っと」


「格好いい系だろ、男でも女でも通用しそうなやつ」


「あのー……」


「? どうかしたのか」



美羽に聞かれ、柚木園は困り切ったように。



「わ、私の名前って、ちょっと変だから。名前で呼んでほしくはないかな」



……名前が変……って、DQNネームみたいなのだろうか。



「そんなの気にすんなって、良いから言ってみろよ」



「そうだよー! どうしても嫌なら無理には呼ばないから! でも隠すことはないと思うなー」



「……そ、そう……か、な」



それでも柚木園は迷うみたいに下を向いてたっぷり時間をかけてから、諦めたみたいに消え入りそうな声音で、小さく囁くように言った。




「…………………まいか」




『……へ?』



「だっ……だから『まいか』だよっ! 苺の花って書いて『苺花』! ……ぜ、絶対呼ばないでよ、似合わないの気にしてるんだからっ」

130心愛:2012/11/05(月) 19:19:20 HOST:proxy10007.docomo.ne.jp






まいか。

柚木園、苺花。



……な、なんていうか……。



「『苺花』? わぁ、すっごく可愛い名前だねっ!」



「………………」



「姫宮さん! 余計なことを言うんじゃない!」



一瞬で真っ赤に茹で上がり、ふらふらとよろめいた柚木園を、足をぷるぷる踏ん張って支えながら美羽が怒鳴る。


……確かにイケメンバージョンでは似合わないことこの上ないけど。



「や、やめて姫宮さん……! ほんとにコンプレックスなんだよその名前……っ」



こうやって赤面して顔を片手で覆い、弱り切ってるとこなんかは……その名前通り、ちょっと可愛い、かもしれない。



「わ、私の顔を見てからこんな名前を付けた両親の気が知れない……。可愛く女の子らしく育ってほしかったからっていう軽い気持ちだったらしいけど、こんな風になっちゃった今ではただのイジメだよこれは……」



ずーんと暗い表情でぶつぶつ呟く柚木園に、姫宮は小首を傾げ、にっこりと笑った。




「―――じゃあ、『まいちゃん』って呼ぶね?」




「かはっ」



「柚木園ぉお―――ッ!?」



可愛すぎる笑顔と可愛すぎる呼称にザックリ見事な袈裟(けさ)切りを見舞われ、ダメージを受けた柚木園が血を吐くように膝から崩れ落ちた。



「む、むごい……っ」



「人の心を抉る天才かもしれないな……」



戦慄の表情の俺たちと、床にうずくまった柚木園を見て、姫宮が不思議そうに瞬く。



「どうしたの? まいちゃん」



「ぅ……うく……っ」



柚木園は壁に手を付いてよろよろと立ち上がり、眦(まなじり)にうっすら涙を残したまま、びしっと姫宮を指差した。




「あ……あああもうっ! こうなったら私だって、……私だって姫宮さんのこと、『夕紀』って呼んでやるから!」




「わーい!」



まるでなんの解決にもなっていない台詞を苦しげに柚木園が吐き捨て、それに姫宮が心から楽しそうににこにこしている。



そんな応酬を見ていたら、



「嗚呼……風が……泣いている……」



「現実逃避すんな!」



ずるい!



一人遠い目で窓の外を見つめていた美羽が、ふっと力なく笑う。



「なあヒナ。これは夢なんじゃないか? 目が覚めれば何もなかったことに」



「ならないよ。現実見ろよ」



「それとも、ぼくたちが騙されていて、彼らに揃ってからかわれているだけだったりしないか?」



……そうだったらどんだけ良いことか。




「ねーねーまいちゃん! 今日の四時間目の授業って何だったっけ」



「知らないよ! 自分で調べなよ!」



「だってまいちゃんしっかりしてるんだもん」



「……ね、ねえ、やっぱりやめない? それ」



「やだよー。可愛いからいいじゃん」



「………っ、…………数学」



「数学かー! ありがとまいちゃん!」



耳まで赤くなって無駄な色香を撒き散らしているイケメンの“王子”が女で、



邪気0パーセントの笑顔がどうしようもなく可愛い完全美少女の“姫”が男で。



「なあ美羽、性別ってなんだっけ……?」



「ぼくだって訊きたいよ……」



俺と美羽は、揃って苦々しく嘆息した。

131ピーチ:2012/11/05(月) 19:39:57 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

性別……確かにこれ見てると聞きたくなる気がする…←

ヒナさん&美羽ちゃんの言うことも納得できるよ安心して!←何の?

132心愛:2012/11/05(月) 21:02:36 HOST:proxyag070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、ありがとう!(笑)


…そんなわけで苺花さん←
苺花はちゃんと女っぽい格好すればすごい美人さんになるだろう、残念なイケメンガールでございます(≧∀≦)
いつか、苺花と夕紀主役の話を書きたいんだけどいつになることか…。


どこからどこまでが天然なのかよく分からん夕紀と、意外と打たれ弱いとこがある苺花。

実はヒナと美羽よりも歴史がある二人ですので、末永くお付き合いください!

少しでも好きになってもらえるように頑張ります!



もうちょいしたらキャラ紹介まとめとかやろうと思います←

133ピーチ:2012/11/06(火) 06:42:09 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

苺花ちゃん……ちょっと女の子らしくしてみたら?

絶対可愛くなるから!←

……夕紀君は……ショートカットでも女の子に見えるわけだから………

134心愛:2012/11/06(火) 17:57:15 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp
>>ピーチ

苺花の女装(ぇ)回はそのうちw
でも自分からは絶対やらないだろうから、今後の周りからの焚き付けに期待?←

夕紀は無理だね、うん。
あきらめてもらおう☆




それから、とりあえず自分のやつは置いといて、なっがっらっくっお待たせしまくったコラボに手を付けようと思います!

…ほんとごめんごめんなさい許して下さい(土下座

お詫びとも言えませんが、今までのぶん集中して更新頑張るから…!

135ピーチ:2012/11/06(火) 22:47:51 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まさかの女装!?

………夕紀君、諦めるの?

こっらぼー!←

いやいや、全然いいよ! ここにゃんの小説だったらどれでも面白いし!←

136心愛:2012/11/06(火) 23:14:04 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ


夕紀は見た目は女の子のままだろうだけど、かっこいいとこもちゃんと作れたらいいな…←


ピーチ優しすぐる…っ(;O;)
ありがとう、でもコラボの方すぐに更新しますので!

137ピーチ:2012/11/07(水) 20:06:22 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

夕紀君、ちゃーんとかっこいいとこあるよね! ね!←催促するな

全然優しくないよー!

あ、最初だけだけど鈴扇霊の方も新しいの更新したから参考になるかも←

138心愛:2012/11/07(水) 21:15:20 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ

夕紀がかっこよくなってくれるのはいつになることやらw

鈴扇霊、リニューアルバージョンかあ←
参考にさせてもらいます(*´д`*)

139心愛:2012/11/16(金) 21:16:22 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
夕紀と苺花のネタばらしが終わったところで、とりあえず悪ノリに乗りまくったキャラ紹介をば。
これからもキャラはいっぱい増えていきますが、ここまで詳しくやるかは分からないです←

というか、このペースで話がちゃんと終わるか心配だ…( ̄〜 ̄)

140心愛:2012/11/16(金) 21:17:25 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.1


日永圭(ひなが けい)


♂* 15old
173㎝



11組所属

小、中学校とあまり良い思い出がなく、高校デビューを目指して南高に入学。

幼い頃に美羽と出会い、一目惚れするが再会した彼女は末期中二病患者になっていたという哀れすぎる運命を背負ってしまった。

結構ヲタが入っていて、必死に隠してはいるがちょいエロラブコメが好き。

一人称俺、通称ヒナ。

中学生の妹がいる。



looks*
くしゃっとした感じの色素が薄い猫っ毛以外は至って普通。
中肉中背で、顔はすごく良いわけでもないが悪くもない。
『良く見たら結構イケる?』みたいな典型的主人公フェイス。


character*
基本は穏和で常識人なお人好し。
争い事は好まないが、周りの人間が人間なのでツッコミと気苦労が絶えないご様子。
何事もこつこつ少しずつやる努力家。
あんまり特徴がないのでモブキャラ扱いされることもしばしば。


like*
カレー、ポテチ、漫画、ラノベ、ゲーム、小動物、寝ること、英語、ロングヘアの清楚系美少女、ツンデレキャラ、美羽


dislike*
数学、無視、クソゲー、表紙買いで失敗すること、ヤンデレキャラ、ケンカ、納豆


data*
高校入学後、「王子にラブレター渡して!」と頼まれた回数 13回(日々更新中)

高校入学後、「姫に本当に彼氏いないか確かめてくれ!」と頼まれた回数 34回(日々更新中、夕紀の事情を知らない人には毎回律儀に誤解を解いてやっている)

中学時代クラスメイトと会話した回数 5回

所持している漫画及びラノベの数 517冊


sample voice*

「……なあ、俺の高校生活ってこれでいいの? そこんとこどうなの?」

「天パ言うな!」




☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.2


結野美羽(ゆいの みう)


♀* 15old
145㎝



11組所属

絶賛邪気眼発症中の貧弱お嬢様。

魔術組織《純血の薔薇(Crimson)》の一級魔女で吸血姫(ヴァンパイア)、ミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ、という設定らしい。

意思が強く、“理想の自分”であるためには努力を欠かさないという一面も。

ヒナを眷属とし、それを理由に何かにつけてこき使っている。

一人称ぼく。

一学年上に姉がいる。


looks*
腰までの黒髪ストレートの美少女。
黒い瞳だが赤のカラコンを愛用。
ほぼいつもゴスロリ姿。
スリーサイズは子供体型。


character*
痛々しい設定になりきり、クールにカッコよく振る舞うよう努力しているが、単純なためすぐに作ったキャラが崩壊する。
独特の優しさを持つが、他人に指摘されるとキレる。

色々と不器用で、常に空回りしがち。

負けず嫌いで低血圧、偏食家。


like*
邪気眼系のアニメとか漫画や小説、ゴスロリ、フリル、レース、ネサフ、甘いもの、猫、国語、黒


dislike*
リア充、スイーツ(笑)、ビッチ、荒らし、数学、体育、早起き、食事、誰かから強制されること全般、苦いもの、辛いもの、しょっぱいもの、酸っぱいもの、炭酸飲料


data*
一日のネット利用時間 約5時間

持っているゴスロリの数 部屋ひとつ分

マンガ喫茶に一人で入ろうとして「小学生が入っちゃダメでしょ」と止められた回数 7回
(顔を上げて無言で店員を睨みつけることで全て解決)



sample voice*

「く……紅き月の光を浴びると、ぼくの血が生贄を欲して騒ぎ出す……っ」

「こ、こ、恋? いや、ぼくはそんな、わ、分かっ……」




☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆

141ピーチ:2012/11/16(金) 22:07:40 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ヒナさん、色んな意味でパシリだね……

美羽ちゃんかっわいいー!! …小学生と間違われるって、よっぽどだよね…

142心愛:2012/11/16(金) 23:39:25 HOST:proxy10032.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…うん。ヒナは良いようにパシられる子なんだ…(´ー`)

美羽は身長・体格は完全小学生だけど別に童顔ではないつもり←
小学生だったらゴスロリも許され……る、か?(~_~;)
非行少女っぽいなw

143ピーチ:2012/11/17(土) 08:16:31 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

…哀れだねヒナさん…

あ、てっきり童顔だと思ってた…美羽ちゃんに怒られそー←おい

144心愛:2012/11/17(土) 15:30:37 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「こっ……子供扱いするんじゃないっ! ぼくはれっきとした高校せ……じ、じゃなくて偉大なる吸血姫(ヴァンパイア)だ!」

みたいな?←
美羽は子供っぽいけどね( ´∀`)

145ピーチ:2012/11/17(土) 18:34:03 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

やっぱり高校生だー! 自分で言いかけたー!←うるさい

でもそれが可愛いw

146心愛:2012/11/17(土) 20:20:58 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう!
中二病で空回ってる女の子は可愛いんだ!と信じてるここあなんで嬉しいです←

ここあのキャラは結構暗い過去があったりなので、空牙しかりミレーユしかり、ソフィアしかり暗殺者組しかりでヒナを始めとして美羽と苺花もそれなりに傷抱えちゃってます(/_・、)
でもそれを乗り越えてこそだぜ!

というわけで、こっちもそろそろ更新再開するかも?←
ピーチも無理せず見守っててください!テストは大事だよ人のこと言えた義理じゃないけど!

147ピーチ:2012/11/17(土) 22:02:14 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

可愛いーw←

よくよく考えてみれば確かに凄かった!

……今思ったんだけど、ミレーユちゃんと天音が毒舌勝負ってなったらどっちが勝つと思う?

いや別にスルーおっけだよ!←

148心愛:2012/11/18(日) 11:03:33 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…そんな恐ろしいことになったら空牙が疲労で死にそうだな……。


んー、罵倒のバリエーションとしてはミレーユ、容赦のなさでは天音ちゃんに軍配が上がりそうw

149ピーチ:2012/11/18(日) 11:15:24 HOST:nptka204.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

確かに! でも何気にやってみたいかも←おい

空牙君のことだけが心配だけどね!

150心愛:2012/11/18(日) 15:20:41 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

地獄絵図だね☆
そのときは頑張ってくれw

151心愛:2012/11/18(日) 15:21:28 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.3


姫宮夕紀(ひめみや ゆき)


♂* 15old
165㎝



11組所属

本人は嫌がっているが、そのあまりの可愛さ、優しさから“姫”と呼ばれる。
会員オール男のファンクラブがあるとかないとか。

男らしくなれるよう日々筋トレを欠かさないが、趣味が手芸という時点で色々無理だと思う。


将来の夢は看護師。ナースナース。

一人称僕。



looks*
栗色の髪に紅茶色の瞳の清純系美少女……ではなく非常に残念ながら美少年。
私服通学だが、たとえ学ランを着たとしても「男装した恐ろしく可愛い女子」にしか見えない。


character*
今時珍しいほどのピュアっ子。
心根は極めて純粋で優しい。
気配りはできる方だが、たまに空気読まない天然発言をぶちかます。

何故か特に苺花を気に入っており、悪気はないものの「可愛い」発言を繰り返しては怒られている。

信条は『みんな友達』。


like*
友達、ホットケーキ、手芸、ミルクティー、うさぎ、甘いもの、数学、映画鑑賞、苺花


dislike*
可愛いと言われること、女の子に間違えられること、にんじん、セロリ


data*

中学時代、男に告白された回数 217回 (同じ相手も含む、大抵は気づかずスルー)

裏で密かに取引が成立され、校内で出回っている丸秘写真の枚数 44枚(着替え中のものなど完全に盗撮。レアなため超高値で売れる)


sample voice*

「姫って呼ばないで! ねえ、僕は男なんだよっ? 分かってるよね、ね?」

「まいちゃんって可愛いよねー」





☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆




Character File No.4


柚木園苺花(ゆきぞの まいか)


♀* 16old
172㎝


11組所属



勉強全般、家事全般得意で運動神経抜群。

女の子大好きでナチュラルに口説く。

アホかというくらいモテまくり(女に)で、通称王子。

家では親に代わって弟妹の世話に明け暮れる面倒見の良いお姉さんだったり。

一人称私。


looks*
黒髪ショート、黒い瞳で長身。
モデルかホストかという危険な香りのするパーフェクトイケメン、でも女子。


character*
困っている女の子は放っておけないフェミニスト(ただし本人も女)。むしろ困ってなくても放っておけない。
信条は『可愛いは正義』。
他人に優しく、自分に厳しい完璧主義者。

意外と打たれ弱く、自分の容姿に合わない名前を気にしている。
涙もろいところもあり、そういう面ではこの作品で一番乙女かもしれない。


like*
友達、女の子、家族、可愛いもの、パスタ、コーヒー、節約、料理、世界史、体育、格好良いと褒められること


dislike*
自分の名前、浪費、グリーンピース、虫、怪談、ライバル視されること


data*

中学時代、ラブレターの入れられすぎで靴箱が壊れた回数 6回

去年のバレンタインチョコの獲得数 164個(学校中の女子がこぞって押し掛けるのでちょっとしたお祭り状態に)

男に「弟子にしてください」と頼まれた回数 9回


sample voice*

「どうしたの、可愛い君。そうだね……キスしたら、泣きやんでくれるかな」

「はあっ!? 私がっ? 全然これっぽっちも可愛い要素なんかないしってちょっと聞いてる!?」



☆*:;;;;;:*☆*:;;;;;:*☆

152心愛:2012/11/18(日) 20:13:28 HOST:proxyag113.docomo.ne.jp

※この作品は徹頭徹尾完全にフィクションです。

「こんな奴いねーよ!」というツッコミはなしでお願い致します(キリッ


……今時ラブレター書く人なんているのかな……?




整理がつきましたところで、次から本編に戻ります(´ー`)
ヒナの妹が初登場ですー(・∀・)

153ピーチ:2012/11/18(日) 20:33:48 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ヒナさんの妹ー!!

ここにゃんのキャラってさ、居そうで居ない人達だよね←

……ラブレター、どーなんだろ…

154心愛:2012/11/18(日) 21:31:32 HOST:proxy10062.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、それ狙ってるんだw
フツーじゃ物足りないからついキャラ濃くしちゃうんだよねー…


ヒナの妹もなかなかすごいぞ!↓

155心愛:2012/11/18(日) 21:32:12 HOST:proxy10061.docomo.ne.jp

『妹』






「……ただいまー」



玄関で靴を脱ぎ、そのまま二階にある自分の部屋に向かう。


階段を上りながらぶつぶつと独り言を漏らした。



「先生が言うまで気づかなかった俺も俺だけど。美羽の奴、勝手に上靴の代わりに自分の靴持ち込んでんじゃねーよ……。当然のごとく俺まで巻き込まれたし」



南高は私服通学だが、もちろん学校の中で履く上靴は指定のもの。

そういや確かに、入学式の日から教室で堂々と黒い靴履いてたような気もするけど、気づいた人はどれだけいるのだろう。

何故か「ヒナ! 眷属たる者、主の危機に立ち会わないでどうするというんだ、こっちに来い!」なんて言われて、なにが危機だ完っ全にお前の自業自得だろうがぁああああああと突っ込みたいのも必死に我慢して、放課後担任の説教に付き合わされること早一時間。


……こんなときは漫画なりラノベなりゲームなり、二次元の世界に籠もるのが一番だ。

ビバ現実逃避。




「はー……あ?」




「おかえりー」




部屋のドアを開けると、ベッドに寝転がっていた少女が振り返ってひらひらと手を振った。



―――……俺のエロ本を読みながら。



「ぎゃあああああああ!? ちょ、待てそれは女子供が読んでいいブツじゃない! 返せ! 返せこのバカ! 変態!」



「んー、お兄ちゃんちょっと趣味変わった? 同人誌ばっかなのは相変わらずだけど、SMに強姦モノにー……でも妹萌えも近親相姦モノもないのかーつまんなーい」



「申し訳御座いませんでした誠にお手数ながらそちらの本を返して戴けませんでしょうか彩(あや)様」



俺、土下座。

それは健全な女子中学生が発する台詞として大いに間違っているぞ我が妹よ……!



んーしょーがないなー、とにまにま笑う彼女。


色素が薄めの柔らかな猫っ毛に同色の瞳、そこそこ整った造作。


可憐な容姿もさることか、至る所に隠した俺の秘蔵コレクションを勝手に発掘するのが趣味の逆セクハラ女。


非常に残念ながら、これが俺の妹です……。



「そうそう、これは学習机の上から二番目の引き出しにある歴史の資料集に挟んであったやつなんだけど、この前お母さんも『あれはちょっと圭には早いんじゃないかしら』って言ってたよ。
………………お兄ちゃん、自殺するのはいいけどお兄ちゃんが死んだら彩がエロ漫画もエロゲーもタイトル全部リストアップしていろんな人に情報提供しちゃうからね?」



はっ!


あ、危ない、身体的にも精神的にも社会的にも死ぬところだった……!


今にも窓枠に足を掛けて爽やかな青空にダイブしようとしていた俺はその寸前で我に返り、俺のベッドでぐでーんとしている彩の前の床に正座する。



「お兄ちゃんほんとツンデレ好きだよねー。彩も好きだよ」



「男のだろ」



「まあねー。ツンデレ最高。鬼畜攻め×ツンデレ受けマジ王道」



「黙れ汚女」



「さあってと、お兄ちゃんをBLに目覚めさせる第一段階として、コレを使ってより詳しい性癖のチェックを」



「腐海に帰れ!」



「それともこっちの漫画のセリフ朗読してあげよか」



「結構ですやめろやめて下さい」



「そこは喜んでよー」



「嫌だよ!」



俺の心休まる時間は自分の家にもないのかっ?

156心愛:2012/11/18(日) 21:33:51 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp






当然のように居座る気満々の彩はごろんごろんと左右に寝転がりながら、



「それでー? 今日は学校でなんかあった?」



「スカートでごろごろすんなパンツ見える。……なんかってなんだよ」



「決まってるじゃーん。柚木園さんとか姫宮さんとかー、あとは愛しの“ミウ”さんとのことだよ」



「……うぜー」



顔をしかめる俺にも構わず、彩は頬杖をついてにこにこする。



「あー会ってみたいなー! お兄ちゃんの初恋・リアル僕っ娘(こ)中二病美少女美羽さん! しかも姫宮さんは男の娘で、柚木園さんはイケメンの女の人なんでしょーっ? 彩的にはお兄ちゃんは受けだと思うんだけど姫宮さんとだったら攻めでも全然アリだしっ、柚木園さんは男体化すればイケるイケる」



「イケねーよ。話でしか聞いたことない人のダチで妄想すんな腐女子」



「ふっ、甘いな。いくら妄想しようが陵辱しようが、それが脳内での出来事である限り罪には問われないのだよ!」



「開き直んな!」



ものすごくイイ笑顔でビシッと親指を立てる彩。



「ほれほれ、そんな可愛い妹の妄想材料提供タイムだぞ? ムフフなエピソード期待! さあ吐け」



「お前のどこが可愛い妹なんだよ図々しい!」



「かっ勘違いしないでよね! 別にお兄ちゃんのことなんて好きじゃないんだからねっ!」



「ツンデレなら可愛いってもんじゃないからな!?」



「かっ勘違いしないでよね! 別にお兄ちゃんのこの本をリビングのテーブルに置いて来たりなんてしないんだからねっ!」



「脅迫やめろ!」



「ところでイケるってよく考えるとエロくない?」



「いきなり真顔で何言い出しちゃってんですかこの子はぁ―――!?」



連続ツッコミに疲れてぜーぜーと肩で息をする俺を見て、彩は「にゃはは」と変な声で笑う。



「お兄ちゃんは楽しーなー」



「俺はまったく楽しくないんですがねえ!?」



「あはは」



「笑い事じゃないし!」



「それでー? 今日の話、いーかげんこの彩ちゃんに大人しく教えなさいな」



「………はぁ」



俺はなんかもう色々諦めて。


彩の言う通り、ゆっくりと今日の出来事を話し始める。


もともと、分かりやすく説明することは得意じゃない。


俺の下手な話を第三者が聞いたって楽しいはずもないんだけど。


たどたどしく言葉を選んでいくその間中、彩は俺の枕に顎を乗っけて嬉しそうに目を細め、ハイソックスに包まれた足をぱたぱたさせていた。



「――……はい終わり。これで満足?」



「ん!」



こくんっと頷いて。



それから彩は―――ひどく優しくて、淡い微笑みを浮かべた。




「……ほんとに良かったね、お兄ちゃん」




くすっと笑う。



「…………」



「お兄ちゃん、高校入ってから毎日すっごく楽しそうで……。今までと全然違うんだもん。彩、お兄ちゃんの『友達』に……皆さんに、お礼言いたいくらい」



……分かってる。


彩がふざけながらも、こんなにもしつこく俺の話を聞きたがるのは―――俺のことを、本当に心配しているからだってことも。


小学校、中学校のとき、毎日暗い顔で帰宅していた俺を、こいつはずっと、ずっと……見てきていて。



―――俺に『友達』と呼べる人間ができたことを、心から喜んでいるからだってことも。



「……ブラコン」



「へっへーん」



照れ隠しにぼそっと憎まれ口を叩いたら、彩はいつも通りのへらへらした笑みで、得意げに胸を反らした。

157ピーチ:2012/11/20(火) 06:48:27 HOST:nptka201.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

彩ちゃん可愛い←

可愛いだけじゃなくて優しい!

158心愛:2012/11/20(火) 12:19:31 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp
>>ピーチ

彩は動かしやすいわw


ありがとうー!
ここあキャラの特徴をばっちり押さえちゃってる彩さんです←
そしてヒナは妹にまでいじめられてますw
でも愛ゆえなんだ!がんばれヒナ!

159名無しさん:2012/11/20(火) 21:31:55 HOST:EM114-51-219-252.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

動かしやすいんだ彩ちゃんww

ヒナさん…妹にまでって←

まぁ、愛があるからだけどね!←

160心愛:2012/11/21(水) 22:40:11 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp
>>ピーチ

彩はここあの趣味丸出しだからね…。むしろ分身?

ちなみにヒナは彩の前だとヲタっぽさに磨きがかかるよ←

161心愛:2012/11/21(水) 22:49:00 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp





と、寝転がっていた彩が、急に「あれっ?」と跳ね起きた。



「今何時?」



「六時ちょい」



「あ、なんだぁ。じゃあレンオー始まるまでには余裕あるなー。暇ー」



「またアニメかよ。勉強すれば?」



「やだー」



……だから成績悪いんだよこの愚妹は……。



「今のうちから頑張っとかないと来年泣くぞ。受験だろ」



「彩勉強嫌いだもん。どーせ頭良いお兄ちゃんには分からないですー」



ぷーっと頬を膨らませる彩。



「そりゃ俺だって嫌いだって、でも」



「そうそう、レンオーってね」



「話逸らすなっての」




「―――美羽さんの設定にかなり似てるキャラがいるんだよ?」




「そこんとこkwsk」



「……お兄ちゃんって分かりやすいよね……」



ほっとけ。



にししっと彩は意味不明な声を立ててから、



「レンオーっていうのは『煉獄のAurora(オーロラ)』の略ね。異能バトル中心のいわゆる邪気眼アニメ」



邪気眼……。



「魔力とかヴァンパイアとか出てくる?」



「出てくる出てくる」



部屋にあったノートパソコンをひょいと立ち上げ、カチカチ操作する彩。



「そのヒロインがー……んーと、これこれ」



しばらくして、画面に表示されたのはゴスロリ姿の美少女キャラの画像だった。


銀髪に紅(あか)い瞳、つんと澄ました顔。



「シルヴィア=ファローズ。吸血姫(ヴァンパイア)で、冥界最強の異能《赫き煉獄の宴(ローゼン・クランツ)》の所持者。一人称は『ぼく』ね」



「……ほ、ほう……」



髪の色は違うものの……やべえ、超そっくり。


小さそうな背丈も細っこい体つきも、目の色も服装も、雰囲気も。美羽をそのままアニメキャラにしたみたいに生き写しだ。


……否定してたけど、あの格好はやっぱりコスプレなんじゃ。



「……で、何してんの」



「んー?」



考えているうちに、彩はそのままカーソルを動かし、ゴスロリ娘の画像から、黒髪のイケメンと金髪の美青年のイラストに変えて「はふぅ」と満足そうに息をついた。



「でも彩はやっぱり悪魔×ダークエルフの思わせぶりな関係がBLすぎてwktkだからそっち目当てなんだけどね!」



「日本語でおk」



「鬼畜攻めには健気受けもいーよねー。誰か公式でアレユリのBLゲー作ってくんないかなぁ」



「聞けや」



「ま、そんなわけで美羽さんに聞いてみたら?」



「超話飛びましたね」



「ごーいんぐまいうぇいな性格なもので」



「分かってんなら直せよ。誰が被害被ってると思ってんだよ」



「ちなみに『ごーいん』は漢字の『強引』って書きます」



「知るか」



「そんじゃ彩はこのへんで。あでゅー!」



「話の飛び方ぱねぇなおい。暇なんじゃなかったのかよ」



ドアに手をかけた彩は『にぱっ』と笑ってピースサイン。




「ちょっくら一階行って洗濯機×洗剤×服で萌えてくるわ!」



「うん、病院行け」



「ついでに服の汚れを参加させることで夢の4Pを実現」



「ボケの大渋滞でどこからどう突っ込めばいいのか分かんなくなってきたけどとりあえず無機物萌えはやめろ」



「安心して! ちゃんと擬人化するから!」



「その台詞のどこに安心しろと!?」



俺がある程度美羽の中二病発言に耐性あるのって、絶対この変態の影響だよね!



「あ、情報代は美羽さんをお家デートに誘うことでいいよ? 彩やさしー」



「……な、何でだよ!」



「このままじゃ一生彼女なんかできないだろう非モテでヘタレなお兄ちゃんの背中をそっと押す健気な彩。……泣けるねぇ」



「お前の暴言に泣けるよ! それと一生は余計だ!」



「じゃあ柚木園さんと姫宮さんも呼べばいいじゃん」



「だから話の腰を折りまくんなよ! なんかもう原形留めてないレベルにベッキベキだよ!」



「はっ! 洗濯機の前にホコリ×空気があるじゃん! こうしちゃおれん、まずは彩の部屋に行って来まーす!」



「二度と帰って来んなゴキ腐リがぁああああ―――!」

162心愛:2012/11/22(木) 11:49:36 HOST:proxyag107.docomo.ne.jp






《ブーッブーッ》



「おわっ」



ポケットに入れていた、マナーモードのスマホの振動に驚いて、慌てて取り出してそれを落としかける。



「メール一件……美羽じゃん」



開く。




『嗚呼……紅蓮に霞む月夜は、吸血姫(ヴァンパイア)としての本能が疼く……。

……君を此方へと誘(いざな)う運命の歯車は廻り始めた……。

さあ……血誓の宴の刻。
今宵、君に凍てつく闇の冷たさを教えてやろう……』




【訳‖暇だ】




「………………」



ぐんにょり。


メールなのに点々多用すんな読みにくいだろとか、カッコ使ってまで無理矢理ルビふらなくてもとか、いやその前に常人なら正気を疑うような文章送りつけてくんじゃねぇよ迷惑メールかと思うじゃんかとか、なんかもう突っ込みどころ満載だった。



「……あーもー……とりあえず」



顔をしかめながらも、電波メールを保護しておく。



い、いいじゃん。好きな子からのメール保護したっていいじゃん! 純情少年なの俺は!

たとえそれが『俺……マジであれのこと好きなんだよね?』って一瞬思っちゃうような代物でもさっ!


……ちょっと泣きそうになった。


端っこに鍵マークがついたのを確認してから、無駄だというのは百も承知で文面をもう一回読み直す。


……この文章見て、即座に訳がつけられる俺もすごいよね。



「んー……」



向こうのテンション完全無視で、これだけ打って返信。




『レンオーって知ってる?』




「………」




《ブーッブーッブーッ》




「返信早っ!」



メールを開く。




『なぬがあった!?』




「いやお前に何があった!」



……どうやらかなりテンパってるらしい。


どう返せばいいんだか迷っていると、さらにもう一通届いた。




『今のは間違いだ。
一体何があった? 君からその血と戦慄に彩られた名を聞くことになるとは思いもしなかったぞ』




微妙に落ち着きを取り戻したようにも見えるが、それは多分メールだからだろう。

今頃本人は相当パニクってるに違いない。




『別に。妹が今から見るっていうアニメ。美羽も見てんの?』




『……ふっ……何のことだか分からんな……』




嘘つけ。



さっき彩から聞いたことを元に、鎌をかけてみることにする。




『そん中にシルビア? とかいうのがいるらしいけど。美羽にそっくりな』




『シルヴィアだ!! 間違えるな、一番好きなキャラなのに!』




駄目じゃん。



どんだけ単純だよ。こんなにも綺麗に引っかかるとかこっちがびっくりだよ。




『い、今のはなしだ。忘れろ』




『無理だし。で、そのシルヴィアのコスプレなの? 美羽のあれは』




『だから違うと言っている! 確かに似ている箇所はあるがぼくの衣装は自分でデザインしているものなんだからな! 完全にオリジナルだ! それに口調も昔から』




……と、毎回毎回面白いくらいぼろを出してくれる美羽とやり取りを続けることしばらく、



美羽はそのシルヴィアとかいうキャラのファンだが、決してコスプレをしているわけではないこと。


今まで通してきた自分の設定や背格好がキャラのそれと類似していることから最近ハマっただけだということ。


でも元となる世界観などは、『レンオー』を“一部参考にして”拝借した部分もあるということ。



以上のことが判明した。
情報提供しすぎだろ。




『……そろそろ、《咎人(アウフルーフ)》との決戦の時間だから落ちる』




ここまできたら素直にアニメ始まるからって言え。

163名無しさん:2012/11/22(木) 20:02:56 HOST:EM114-51-202-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

………彩ちゃん、の影響ね……

凄い偶然があった!美羽ちゃんが彩ちゃんと同じアニメ見てたんだ!

…凄い言い訳考えつくもんだね、美羽ちゃん…

164心愛:2012/11/22(木) 22:28:18 HOST:proxyag113.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽超必死です←


シルヴィアって、『ソラの波紋』に一回名前だけ出てきてたんだけど気づいた?←
『煉獄のAurora』はここあが昔書こうとして断念した小説を改変して、美羽が好きなアニメってことにしちゃったやつなんだな。
で、『ソラの波紋』は『煉獄のAurora』の世界観とキャラを乗っ取って、新しい主役の空牙とミレーユをつけたしたものです(´ー`)

美羽のモデルのシルヴィアもいずれ『ソラの波紋』に登場させる予定w


長文スマソ(^-^;

165名無しさん:2012/11/23(金) 14:12:45 HOST:EM114-51-192-34.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まじか! どっかで見た記憶あるくらいしか分かんなかった!

美羽ちゃん超必死w←

まさかの断念した小説がアニメにw

あたしも似たよーなのあるよー←

166心愛:2012/11/23(金) 15:29:45 HOST:proxyag084.docomo.ne.jp
>>ピーチ

痛いのは十分承知ですがね…(~_~;)
コラボも終わりが見えてきたし、『ソラの波紋』も進めないと←


次からまた新キャラ登場です!
こいつとあと一人出したら一段落かな?

こいつは名前出してなかったけど、今までちょこちょこ出てきてたんだよ。


ここあキャラの中で一番の変態度を誇る男ですが嫌いにならないでやってね! ……むしろ喜ぶか……?

167心愛:2012/11/23(金) 15:30:30 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp

『春山慎太郎』






さて、突然ですが問題です。



朝登校したら、前の席に座っている奴の頭が普通の黒から綺麗な金髪になっていた場合、どんなリアクションをとるべきなのでしょう。



……週明けの朝、俺は期せずしてその大ピンチに直面していた。



「お、おま……その頭どしたの」



「んー?」



振り向いたのは一人の男子生徒。

脱色された髪に、不自然なほど細い眉毛。
柚木園みたくずば抜けてはいないものの、それでも俺からしてみれば十分すぎるくらいに整った目鼻立ち。


そいつは歯を剥き出して嬉しそうに笑い、



「おー、なんだヒナか!」



「だからヒナ言うな」



着崩したシャツに腰パン、開きまくった胸元にはじゃらじゃらしているシルバーアクセサリー。
何故か棒付きキャンディーをくわえている。


確か、春山……そう、春山慎太郎(はるやま しんたろう)とかいう名前だったはずだ。


元々なんかチャラそうなワイルド系の美形で、そんな格好も正直ばっちり似合っちゃったりなんかしてますけど!


驚愕している俺に、春山は舐め終わったらしいキャンディーの棒を片手で弄びながらニカッと笑って言う。




「不良始めたからねー」




………いや。
いやいやいやいや。


そんな『かき氷始めました』みたいなノリで言われましても。



「……な、なんで?」



ここは南高の教室である。

真面目で勉強第一な校風の学校の教室に、ザ・金髪頭の男が急に光臨したらそりゃあ浮きまくるのは当然のことで。

校則ゆるっゆるとはいえ、美羽みたいな例外を除き、何も言われなくてもほとんどの生徒が良識的な範囲内での服装で登校してくるわけで。

もちろん、不良さんルックスの生徒なんか一人だっているわけがないわけで。


クラスの皆さんも、遠巻きに春山を見てはひそひそと小声で何か言い合っている。

俺だって、こういう人種とはできれば関わり合いにはなりたくないくらいなんだけど……。


それでも、なんか事情でもあんの? という疑問を持つことは、美羽のときもそうだったけど至極当然のことと言えるだろう。むしろ持たない方がおかしい。



「………」



隣では、机を壁にくっつくくらいにできる限り遠ざけた美羽も、警戒の色を赤い瞳に滲ませて春山を睨んでいる。



「あーそれは……ってちょ、そんな睨まないでよ結野ちゃん! 俺不審者じゃないからね? 怖くないよーほらほら」



「……そんな格好で堂々と学校に来るなんて、不審者以外の何だと言うんだ。高校は学業に励む場所だろう」



お前もだろ。



「あーでもその蔑んだ目いいわぁ。そのまま罵倒プリーズ」



「何を言っているんだ君はっ!」



チッチッチッと猫を手懐けるみたいに舌を鳴らす春山に、「き、気持ち悪いっ」と涙目になった美羽がガタンッと席を立ち、俺の背後に隠れる。


……こいつ、こんなキャラだったっけか……。



「いーねいーねー、結野ちゃんに気持ち悪いって言われるとゾクゾクくるわぁあ」




「……は、春山くんにヒナに……ゆいのん? どうしたのっ?」




奇妙な光景に、登校してきた姫宮が目を丸くしていた。



「姫宮ちゃーん! よっ、今日も可愛いねぇっ」



「か、可愛くないもん!」



「一回でいーから今度デートしてよ、なんかおごるから」



「男と一緒に出掛けることをデートって言うの!? 少しは反省しようよっ」




「―――ちょっと、夕紀をいじめないでくれる?」




姫宮に続いて入ってきた柚木園が、腕を組んで冷たく言った。



「まいちゃん! おはよっ」



「おおう柚木園っ! 遅いじゃんかっ」



柚木園を認めるなり、春山は顔をキラキラと輝かせた。



「……ゆ、柚木園? お前まさか、春山と仲良いの?」



「失礼なこと言わないでよ。誰がこんな変態と」



「へ」



柚木園らしくない言い草に美羽と二人して呆ける。

対照的に、春山は鼻息を荒くして。



「おっほう! その冷たい声がたまらんっ! もっとなじってくれていーんだぜ! むしろ思いっきり足蹴にして!」



「ほんとお前どんなキャラなんだよ!」



ドン引きだよ!

168心愛:2012/11/23(金) 15:32:30 HOST:proxyag066.docomo.ne.jp






何の躊躇もなく、柚木園の前の床に身を投げ出した春山は歯をキラーン。




「ただのドMキャラですが何か問題でも」



「大有りですよ! むしろ問題しかねぇよ!」



何なのこの人! 何なの!?



「なーなーゆーきーぞーのー!」



「……っ気持ち悪い!」



その長くすらりとした足にすがりつかれた柚木園は、顔を引き攣らせると乱暴に春山を振りほどく。


当然、春山はまるでゴミのように、ベシッと固い床に投げ出された。



「い、今すごく嫌な音がしたぞっ?」



少しでも距離を取るように美羽が後ずさり、




「……はぁはぁ」




『本物だぁあああ―――――!!!』




クラスが一丸となって叫ぶ!



怖い! ドM怖い!!




気色悪く頬を染め、春山はうっとりした目でまくしたてる。



「でもまだ足りないっ! 柚木園、貴様の本気はそんなものじゃなかったはずだ! さあ昨日のように! 遠慮容赦一切ゼロの一撃を俺にくれっ!」



「……? 昨日もそうだったけど……春山くんは蹴られても平気なの? 痛くないの?」



「夕紀は何も知らなくていいんだよ」



さっきから一人きょとんとしている姫宮に柚木園が力なく微笑みながら、金髪を振り乱して迫る春山をゲシッと蹴り飛ばす。

教室の隅で「あふんっ」という声が上がった。



「き、昨日って?」



「それがね……」



柚木園はげっそりしながらも説明してくれる。



「……昨日は日曜だったでしょう? 買い物に行ったんだよ」



「うん」



「そうしたら、金髪の男にナンパされてる子がいて。しつこく絡まれてたから、その子の顔も見ずに、いつもの癖で助けちゃったのね。……夕紀だったんだけど」



「へえ。偉いな」



「『へえ』じゃないよ! 男が男をナンパだよっ? そこは疑問を持とうよヒナ!」



や……だって……ねぇ?



「その男が、髪染めた春山くんだったってわけ。ちょっとやりすぎちゃったかなとは思ってたんだけど……。気に入られたみたいだね、迷惑なことに」



何をどうやりすぎたのか気になるところだ。



「それは、その……ご愁傷様なことだな」



「ありがとう……」



美羽に困ったように言われ、ふっと笑う柚木園。


……哀れだ……。


と、



「……そんで結局、春山はなんでそんな頭にしたんだよ」



まだ質問に答えてもらってないことに気づき、自分がぶつかったことによってずれた机をきちんと直しながら(律儀だ)立ち上がっている春山を見る。


「あ、悪い悪い」と金髪頭を掻いて。



「だってさぁ、不良っつったら喧嘩だろ?」



「あー、そう……かもな」



そこで春山は、なかなかに魅力的な満面の笑みを浮かべて。




「じゃあ同じ不良になったら、そこらへん歩いてるだけで絡まれて、本職の方々にボコボコに痛めつけてもらえるじゃん!」




『この変態がぁ―――――!』




想像を絶する変態ぶりだった!



「やー、親に『もしも南高に入れたら、何でも好きにしていい。お前の頭じゃ絶対無理だろうから』って言われて猛勉強したんだよね。連続満点を叩き出しこうして晴れて不良に! これで白昼堂々殴ってもらえるぜやっほい!」



「そのためだけに!?」



「君のご両親が可哀想で仕方ないんだけど!」



「天職ってこーいうことを言うんだよなー」



「さっさとクビになっちまえそんな職業!」



「かっこいーだろー? 結野ちゃん、惚れてもいーよ?」



「誰が惚れるか!」



「もっと吐き捨てるように!」



「リクエストするんじゃないドMがぁ―――!」



「ねーまいちゃん、そういえば、……どえ・む? ど・えむ? ……って何なの? 春山くんのことだよね?」



「夕紀は黙ってて!」



「えええっ!?」




―――入学から約二週間。


俺にも好意を向けてきてくれるクラスメイトに対して、初めて心からの恐怖を覚えました。

169ピーチ:2012/11/23(金) 19:14:39 HOST:nptka302.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

………やだ。こーゆー人絶対やだ。

湯きぞの君だけねの気持ちよく分かる

170心愛:2012/11/29(木) 18:19:33 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ご、誤字りまくってるけど大丈夫っ?



テスト終わったー!
2つの意味で終わったー!


…う、うん、チャラくてキモくてウザいけど悪い奴じゃないから!
ここあキャラの特徴もちゃんとあるし、クライマックスでまともな見せ場用意してるから!

ソフィアとシェーラ殺しかけたオスヴァルトとジルとユーリエみたく、あら不思議、気づいてみれば印象が変わ…ら…ない、か?←

まあここあだって、こいつが現実にいたら絶対やだけどね、うん。



そんなわけで、主要クラスメイトがそろったとこで日常編再開!
コラボはもうちょいお待ちを(´ー`)

171心愛:2012/11/29(木) 18:20:38 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp

『体育』






「……ヒナ? なんで後ろ向いてるの?」




「……………」




頑と顔を壁に向け続ける俺。

額にはダラダラと汗。



「ひーなー! なんでなんでなんでーっ?」




「お前が着替えてるからだよ!」




クラスの約三分の一を占める女子全員が更衣室に行ってしまった後の教室。

ひどい話だが、この学校には男子更衣室がないので自然と男子はここで着替えることになる。

そんなことになったら当然。



「姫、いーから大人しく女子更衣室行って来いって!」



「絶対バレないから俺が保証するから!」



「や―――だ―――!」



とても直視できずに目を背けつつ説得を始める男子諸君に続いて、春山も赤い顔でわめく。



「じゃあ姫宮ちゃん、更衣室じゃなくていーから! こっちの身がもたねーからせめて違うとこで着替えてくんね? 本気で頼む!」



「なんでーっ!?」



「だっ……からこっち向いちゃだめだって! せめてカーテンで隠……せねーわ窓から丸見えだわっ」



おたおたしながら、机の上にあった姫宮の体操着を後ろへ向けて投げてやる春山。



「わ、顔に掛かっ……」



「とにかくハダカでうろちょろしない! 上着て早く!」



「い、意外。お前絶対、修学旅行で女子風呂覗きに行こうぜ! とか言い出すようなキャラかと思ってたのに……。ガン見しないんだ」



「や、さすがの俺も無理これは。ガチで無理」



変態の中の変態・春山の素を引き出すほどの美少女ぶりを発揮する姫宮は、紅茶色の瞳をうるうるさせている様子がよく分かる声で。



「う、ううう……こうなったら女子もいないことだし、一度ちゃんと僕が男だって証拠を」



「まっ待て早まるな! 落ち着け! ズボンから手を離せ!」



「この年で警察の世話にはなりたくないんだよ!」



「……え? なんでみんながおまわりさんのお世話になるの?」



『(お前が可愛すぎるからだよちくしょぉぉおおおおおお!!)』



お巡りさんって! この年でお巡りさんって!

きゅるん、って感じに目ぇ潤ませて、不思議そうに小首傾げて可愛い声でさぁっ!

おまけに胸元に当てた体操着の間から、日に焼けてないまっさらな肌が所々覗いちゃってるしっ!


もうどうしてくれるこの可愛さ! なんなのこれ! おかしい! 頭おかしい絶対!



くそ、健全な教室が犯罪現場と化すのは時間の問題だ……!



『(……ごくり)』



ツッコミを入れるためについ爆弾の方を向いてしまった俺らはぎゅいんっと勢いよく首を元の位置に戻し、込み上げる何かを耐えるように鼻をつまみながら、唾を飲み込む。


くっ……一刻も早くこの危険地帯から抜けなければ全員の命と理性と世間体が危な―――



…………あ。




「姫宮、ちょーっと待ってろ。そのままそのまま、そうそう。……ほらみんな着替える! 急げ!」




『!』




声を張った俺の意を汲んだ男子が一斉に頷き―――


それはまさに神業だった。


全員が残像が見えそうな速度で一斉に脱衣、ジャージを着込んで脱いだ服はしっかりぴっしり綺麗に畳み、俺がばーんっと開け放ったドアから訓練された軍隊のごとく整列して飛び出す。


この間わずか三秒弱。



「え、え、えっ?」



「っつーわけで俺ら先行ってるから!」



「ゆっくり着替えていいよ、あ、カーテンちゃんと閉めて!」



「ま、待ってよみんなぁー!」



……後で姫宮専用更衣室を設置するように先生に言ってみよう、そうしよう。


とっても紳士な俺らはさっきちらっとだけ見えた光景を大汗かいて必死に脳内メモリに叩き込みながら、引きまくっている他の生徒たちを蹴散らすようにズダダダダッと廊下を全力疾走したのだった。

172ピーチ:2012/11/29(木) 20:33:18 HOST:EM49-252-130-126.pool.e-mobile.ne.jp
大丈夫だよ! ちょっと混乱してただけで!←

二つの意味で終わらんでくれーあたしと一緒にならんでくれぇー!!!

……ゆきちゃん、確かにバレなさそう←おい

173心愛:2012/12/02(日) 18:52:06 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
>>ピーチ

テスト終わってもまだ忙しいここあです。……げふぅ。


うん、夕紀は完璧バレないと思う←
そんじょそこらの美少女よかよっぽど美少女の……男っていう(´ー`)

174ピーチ:2012/12/02(日) 19:10:33 HOST:EM114-51-189-14.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

点数悪すぎて訂正も溜まりまくってる時に小説書くという馬鹿女です←

絶対ばれないね。小中学校で間違われなかったか夕紀ちゃん?

175心愛:2012/12/02(日) 20:07:24 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp
>>ピーチ

小学校とかなら、まだ女の子みたいな男子っていうのも結構いるだろうからそんなに目立たなかったかもね(^-^;


ピーチがんばれ!
ここあもがんばるよサボる方向に全力で!(こら

176ピーチ:2012/12/03(月) 20:26:17 HOST:EM114-51-83-65.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あ、なるほど

うん頑張る! サボる方向で全力に!←おい

177心愛:2012/12/25(火) 09:05:18 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp






「体育と言えばーっ!?」



『揺れる胸! 透ける下着!』



「よっしゃあ! どさくさに紛れて女体をじっくり観察するぜ野郎共!」



『うおおおおおおー!』




「こいつら最低だっ!」




11組から13組までの男女合同で行う体力測定。
春山のコールに合わせて血走った目で絶叫する一部の男子に、あからさまに他の皆さんが距離を置いている。


み、認めない……! あのバカの塊が俺の所属する集団だなんて絶対に認めない……!



「今時ムッツリはモテないぞ、ヒナ。欲望に忠実に生きろ」



「誰がムッツリだ!」



そのトップオブザバカ・春山にぽんっと肩に手を置かれ、鳥肌を立てながらそれを瞬時に叩き落とす。


そんな俺たちの傍らでは、むさい集団の中で異彩を放つほわほわした美少女が癒しオーラを放出していた。



「ねーねー、むっつりってかたつむりに似てない?」



『(………ほわぁ)』



……ちょっと和んだ。不覚にも。


俺だけじゃなく全員が目を横線にして、視線でこの奇跡的に可愛い生物を愛でまくっている。


ま、奴らのテンションを妙な方向にフルスロットルさせた原因も姫宮なんだけどね。




『きゃー!』




と、空気を突き破って体育館中に響き渡る黄色い悲鳴。
なんだなんだと出所を探すと、すぐにシャトルランの順番待ちでだべっている女子が目に留まる。


……どうでもいいけど20メートルシャトルランって鬼畜すぎだよね。
見られてる感と徐々に余裕なくなってく感とか、テンポ上がるときのティレレ♪って音が最高に嫌。
最後の方まで残って女子に声援送られてる奴とか見ると、もうほんと―――



「―――……くんかっこよすぎー! やばいっしょ!」


「顔も頭も運動神経もいいって完璧だよね!」


「性格だって超いーじゃん! あーもう彼氏にほしー」



は? ふざけんなよ誰だよその野郎。
ちょっとモテるからっていい気になってんじゃねーし。


口には一切出さずに暗く毒づいていると、隣に立つ姫宮がパッと顔を輝かせた。




「あー! まいちゃんだー!」




……野郎じゃありませんでした。



「王子がんばってぇー!」


「かっこいー! 男子よりずっとかっこいいー!」



きゃいきゃい手を打ち鳴らして騒ぐ女子たちの目線の先に、髪を颯爽と靡かせるイケメン女の姿。
今やトップ独走状態、ほぼ全員がギブアップする中で息一つ乱れさせずに涼しげな顔。
無駄に長い脚を見せつけるようにきゅっとシューズを鳴らして足首を返し、



『っっきゃぁあ―――!』



ついでにバチっとウインクを返すことも忘れない。



「ジャージなのにイケメンって……! ジャージなのにイケメンってぇ……!」



この差はなんだって言うんだよちくしょう!



思いっきり地団駄を踏みたい衝動に駆られていると、



「あー柚木園に蹴られてー。踏まれてー」



「来世は床にでもなれば?」



「……いーかも」



「真面目に考えんなよきめぇ!」



むむっと真剣な表情をする春山。



「でもさーヒナ。あの柚木園の脚はしょーじき芸術的なレベルで見事じゃね? 俺以外にも男の信者って結構いるんだぜ」



「………え゙」



羨ましさが一気に薄れた。


美形に生まれても色々大変なんだな、うん。
普通で良かった。……マジで。

178心愛:2012/12/25(火) 17:56:01 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp






「ヒナ、春山くん! あっちで握力だって! やろーよ!」



「姫宮……っ」



いつの間に離れていたらしく、ちょっと袖が余ったジャージの袖をぶかぶかさせてこっちに走ってくる姫宮。
……あれだな、絶対「僕は男だもん! だから大丈夫なんだもん!」ってちょっと無理して大きめのやつ買ったんだな。そんなとこまで抜け目なく可愛くて、今の俺の疲れ果てたハートの清涼剤になってくれる。



「姫宮ちゃんのお願いなら俺なんでも聞くよ無条件でー!」



輝く笑顔でカエルみたいにぴょーん! と気持ち悪く飛び跳ねる春山からできる限り離れながら、姫宮について歩く。



「あれ? 美羽は?」



「結野ちゃん?」



お前には訊いてねぇよ。



「ゆいのんならあそこだよ」



あそこあそこ、と姫宮が指差す先には、いつものゴスロリ娘……では、もちろんなく。


細っこく頼りない身体を黒に薄ピンクのラインが入ったジャージで包んだ美羽が、顔を真っ赤にしてぷるぷる震えながら「むぐぐぐぐ」と握力計を握っているところだった。
体育バージョンなのか、長い髪をポニーテールにしている。



「み、みうみう……? それ、壊れてるんじゃ……」



「わ、悪かっ……た、な……! これ、がぼくのっ、全りょ、っは、くだ!」



頬を火照らせ、汗だくでぜーはーしている美羽。



「ちょ、息めっちゃ上がってるけど!?」



「ふ、ふん……問題ない。ぼくはミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ……この程度で倒れるな……ど、……ぜぇ、ぜぇ」



「無理して喋んなくてもっ」



「たとえこの仮の肉体が死することがあろうとも、……魂は、不滅……っ」



「結野さーんっ!?」




「……握力計握っただけだよね?」



「そのはずなんだけど……」



コメントに困って突っ立っていると、クラスメイトの女子に目をつけられた。



「あーヒナじゃん! ちょうど良かった、美羽っちどうにかしてよ」



「俺は保護者か」



ため息をついて、美羽の前にしゃがみ込む。



「……ヒナ?」



「えー、と……保健室行く?」



「君はぼくを馬鹿にしているのか!?」



「体力測定くらいで倒れるわけがないだろう!」と憤慨する美羽だけど……あながちそうでもないんじゃ……?



「結野ちゃん大丈夫ー?」



「寄るな! 来るな! 近づくな!」



「もー、ひどいなぁ結野ちゃん。俺だって傷つくときくらいあるんだよ?」



「嘘つけめっちゃ嬉しそうだろお前」



「君たちは黙って握力でも計っていろ!」



春山と同列扱いされたことに心底へこみつつ、「はい!」と姫宮に手渡されたそれを右手で素直に握る。
どうせこの時間中に計っちゃわないとダメだしね。



「……あー、去年とほとんど変わんなかったわ」



「どれどれ? …………ヒナって……とことん平均的だよね」



失礼な。



「ちなみに俺はそこそこ伸びた」



「お、……おかしい! 君たちの腕はどういう構造をしているんだっ!」



俺と春山の記録を見て美羽が青ざめていた。



「そう? 春山はともかく、男子の平均ぴったしくらいじゃね? 俺の」



「……そうか、まずこの国自体が化け物の巣窟だったのか……」



問題発言やめろ。



「僕もやるー!」



元気いっぱいに挙手する細い腕。



「あはは、姫はねー」



「ひめみー、男子と張り合って無理しないでよー?」



「?」



頭の上におっきなハテナマークを乗っけながら、姫宮がぐぐっと力を入れ。
それからちょっとだけ得意そうに、数字が刻まれた画面を見せてくる。




「僕、握力だけは凄いんだよ?」




『え』




……握力と見た目は関係ないことが分かった。

179ピーチ:2012/12/25(火) 23:21:33 HOST:EM1-114-215-92.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの握力だけで疲れる!?

どんだけだって思うけどそこが可愛いw←

180チェリー:2012/12/26(水) 10:51:07 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
厨坊w

181心愛:2012/12/26(水) 15:30:47 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽は貧弱なのでw
よく生きてこれたね…って感じなんだけど、その美羽を今まで支えてきた人物が次から登場します!

この子も曲者だけど!

182名無しさん:2012/12/26(水) 21:20:24 HOST:EM114-51-172-214.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

美羽ちゃん! 貧弱もほどほどに!←

曲者か! でも美羽ちゃん支えてたのか!

183心愛:2012/12/26(水) 23:13:50 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、美羽の、ある意味理解者かな(o^_^o)
ヒナとの違いを書けたらなーと←


この子を最後にキャラは大体揃うけど、色々複雑な美羽の攻略の鍵を握ってるっていう意味では最重要人物かも。

深い話はまた後から。とにかく登場させるぞー!

184ピーチ:2012/12/27(木) 13:59:48 HOST:nptka407.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

そのある意味ってどーゆーこと!?

……てっきり、ヒナさんが最重要人物かと思った…

185心愛:2012/12/27(木) 18:55:15 HOST:proxy10012.docomo.ne.jp

『結野美空』





「嗚呼……。断罪の使徒を悼む鎮魂歌(レクイエム)の調べが聞こえる……」



「これのどこがレクイエムだ」



今日も美羽は絶好調。
ふふんと何故か胸を張り、



「葬送曲と迷うところだがな。《純血の薔薇(Crimson)》の本部に魔獣の大群が侵入し多数の死者が出たときには」



「はいはい」



「聞いてるのか!」



しつこい美羽をあしらうのにも妙にこなれてきた今日この頃です。



「今から一階のホールで、ダンス同好会が新入生歓迎ライブをやるんだって」



鞄に教科書を詰め込む柚木園が、さっきから流れている軽快なポップスの正体をあっさり看板してしまう。



「ダンスって華やかな子が多いんだよねー。特に部長やってる人、それはもう美人で―――」



「なんだってっ!?」



ガタンッと急に立ち上がり、ぺらぺら語り始めた柚木園を遮る美羽。
顔が青い。



「ダンス同好会が、ライブ……!? 聞いていないぞ、そんなことっ」



「え? ゆいのん、ダンス興味あるの? ちょっと意外」



「美羽が、ダンス……。絶対可愛いけど体力的にちょっと無理があるんじゃ」



「大きなお世話だ!」



姫宮と柚木園に一喝を飛ばし、美羽が長い髪を翻す。



「ヒナ、行くぞ!」



「まるで当然のように!?」



愕然。



「それは当然だろう、眷属なんだから!」



「いい加減眷属イコール俺イコール便利屋みたいな認識改めようよ!?」



……でも眷属になる宣言しちゃったのは他でもない俺自身なので文句は言えない。



「柚木園と姫宮は?」



「私は無理かな。校舎裏で女の子が待ってるから」



「……行ってらっしゃいませ……」



可愛い封筒に入った手紙らしきものを片手に苦笑する柚木園。

今日だけで何人目だおい。



「あ、僕も行くよー」



……というわけで、姫宮も連れて三人で廊下に出る。


一年生の教室があるのは一階なので、すぐにホールを取り囲む人混みまで辿り着いた。



「すごい人だねー」



ほへーっと感心したような姫宮の言う通り、二階や三階からもわんさか身を乗り出している先輩方。
軽くアイドルのライブ状態だ。


まだ始まっていないらしく、テストの音楽とざわめきが耳に届く。



ダンス同好会は美人が多い。
だいたいダンスなんて「見せる」ものなわけで、容姿にそこそこ自信がある人じゃないと入らないし入れないんだとか。
この学校では真面目に恋愛したい、言っちゃえばモテたい女子が入る部活っていうのは、運動部のマネージャーかダンス同好会のニ択っていう暗黙の了解があるんだけど。

噂通り、確かに可愛い娘(こ)ばかりだ。
はきはきと指示を飛ばしたり振り付けの最終確認をしたり、マイクの準備に奔走したり。
髪を巻いている娘やメイクばっちりな娘、皆どこか垢抜けていて、華やかオーラが半端ない。
クラスのカーストでは確実に最上位に位置する女子たちばかりだろう。



「……………」



美羽が一番嫌う人種のはずなのに、何をそんなに熱心に見ているのかと思えば―――



一際目立つ美人がいた。



ふとももの辺りまで伸ばした、長く艶のある黒髪を高い位置で二つに結んだ髪型―――いわゆるツインテール。

南高女子の定番ファッションである「なんちゃって制服」の赤いチェックのスカートに黒のニーソックス、さらに部活のオリジナルだろう、ロゴが入ったカラフルなTシャツを合わせている。
全体的に小柄で華奢、なのに腰のくびれや出るべきところの主張はばっちり。
あどけなく輝く大きな瞳、幼げな印象を与えるのに適度に大人っぽく、そして恐ろしいバランスで整った顔立ち。
ファッション雑誌の表紙を飾っていても何ら違和感のない、どこを取っても文句なしのぴかぴかな美少女だった。



そのうち隣の娘と何事か言葉を交わしてから、遠目にもよく分かるくらいほっそりした綺麗な手でマイクを持ち、その美少女が一歩前へ進み出る。

186心愛:2012/12/27(木) 18:56:47 HOST:proxy10008.docomo.ne.jp






「みなさん、今日はお集まりいただいてありがとうございます! ダンス同好会でーす!」




『フォオオヲオヲヲオオオオオ―――――――!!!』




可愛いアニメ声と共に彼女がにっこり笑えば、全く可愛くない低音の奇声とひゅうひゅーう! という口笛の音(百パーセント男子の)が嵐のように巻き起こる。




『MI・KUッ! MI・KUッ! フォォォオオオウウウ―――――!!』




「日本オワタ」



「だ、だめだよヒナ! 事実でも言っちゃいけないことがあるんだよ!」



慌てたように全然たしなめになってないことを言う姫宮。



「二年生とか三年生は、日頃の勉強で溜まったストレスをこういうイベントで無駄に騒いで晴らすらしいよ。学園祭なんかはもう地獄絵図だって」



「こんな風にだけはなりたくないな……」



向こう側のウェーブの中に何か見覚えのある金髪チャラ男がいたような気もするけどおそらく気のせいだろう。




「一年生のみなさん、南高へようこそ! 一年生だけじゃなくてっ、もちろん二年生も三年生も! 今日はいっぱい楽しんでねー!」



『ヒャッホォオオオオオォォオオウッ』




「でもごめんなさい、もう時間なのにまだ準備ができてないみたいです。みんな、もうちょっとだけ待てるかなー?」



『は―――――い!』



幼稚園児か。



俺はまだ待たせるんかい、とか思っちゃう派なんだけど、皆特に不満はないようだ。



美羽の格好に気づいてか周りにいた人が徐々に引いていくので、ありがたく開いたスペースにお邪魔することにする。



「あの人が部長かな。ってことは三年生?」




「―――あれの名前は結野美空(ゆいの みく)、二年」




突然ぽつりと呟いたのは美羽。


しっかりあの美少女を見つめながら、




「ぼくの姉だ」




「嘘、ゆいのんのお姉さん!?」



「一人っ子かと思ってた」とびっくりしている姫宮。

俺はもう一度、彼女を見る。



「……あー……確かに」



似てる。


お人形みたいに整った容貌も、珍しいくらいに綺麗な黒髪も、体型も全て。

なのに全然気づかなかったのは―――きっと、二人の雰囲気が真逆に等しいから。


美羽が闇なら、あれは―――光。


暗い影を照らして輝く力に恵まれた、特別な光だ。



と、彼女が美羽に気づいてこっちを見た。

嬉しそうに、にこっと笑い小さく手を振る。


……目立つ服装はしているものの、身長的にちっこい美羽は遠くからは見えないわけで、




『(……………………)』




「(俺じゃないですよ!)」



一斉に射殺さんばかりの目を向けてくる先輩方。


やめて全身に穴が開きそう!


針のむしろに立たされている隣の俺にも構わず、美羽はちょっと照れたように赤くなりつつも、彼女の笑顔をぷいっと横を向いて一蹴。



「良いお姉さんだね」



「ふん……全く、あんなスイーツ(笑)とこのぼくの血が繋がっているだなんて屈辱以外の何物でもな―――」



そこで何故か美羽は言葉を止めた。
目の前のホールを凝視し、ひくっとなめらかな頬を引き攣らせる。



「美羽?」



「来るぞ……」



明らかに深刻なトーンに戸惑っていると、あの美少女―――美羽のお姉さんが再びステージ中央へ登場。
場が一気に盛り上がる。



「ふーっ、大変お待たせしっ」



ぺこっと頭を下げた、と、同時に。

187心愛:2012/12/27(木) 19:00:27 HOST:proxyag093.docomo.ne.jp







《ごちんッッ!》




―――マイクを額にぶつけた。



「………」



美羽が黙って目を閉じる。



「〜〜〜〜………っぅ」



い、痛そー!


一年生全体がざわめき、姫宮が「今すごい音したよねっ?」と青くなる中。


額を手で押さえ、俯いてぷるぷる震える彼女に、綺麗に揃った先輩方の声が掛けられる。



『だいじょーぶー?』



「……大変お待たせしましたー! ミュージック、スタート!」



流した!



美少女スマイル完全復活、さも「何もありませんでしたよ?」という風に顔を上げて普通にてくてく歩き出す。


そのままマイクを係の生徒に預け、所定の位置、円の中心についた。


するとすぐに、とことんそっちの文化には疎い俺でも「あ、聞いたことある」と思えるくらいには有名な、ノリの良いアイドルのヒット曲が流れ始め、



『ヒョッホォォォオ!』



十人のビシッと決まったポージングに観客が沸き立つ。


その中で、やはり彼女は誰よりも目立っていた。


動くたびに、零れ落ちる髪がふわりと広がり可愛らしく跳ねる。


軽やかで元気いっぱいに、そして時には艶っぽく魅せる彼女のダンスは圧倒的に―――



「上手い、ね」



思わず、といったように漏れた姫宮の言葉に頷く。



生き生きと動く表情は本当に楽しそうで、自分の好きなことをしている人に特有な、一種の輝かしさに溢れていた。



彼女の、熱狂的なまでの人気のわけも分かる気がする。



しかし最後のサビで、大歓声を浴びながら片足を軸にしてくるくる鮮やかに回った彼女は音楽が止まった瞬間に―――




びったぁ―――――んっっッ!




……コケ、た。


それもどうしたらこんなに綺麗にコケられるのかと本気で不思議に思うくらいに、美しく、スムーズに、芸術的で、自然な流れで、……顔面を床に、思いっきり、打ちつけた。


それでいて捲れ上がったスカートは、パンツが見えないギリギリのラインで留まっている。……え、なにこれ計算? わざとやってんの? いやまさか。



「……我が姉ながら」



時が止まったような感覚、美羽の小さな声だけが耳に届く。



「容姿端麗成績優秀運動神経抜群。教師からの信頼も厚く誰にでも親しみやすい性格から人望もある完璧超人、真のリア充」



美羽がすっかり全てを諦めたような無気力な眼差しで、静かに告げた。




「ただし……空前絶後の、ドジなんだ」




「ぅぅううう」と涙目になってしまっており、わらわら集まってきた同級生らしき娘たちに介抱されている彼女。



……あは、は。


……よりにもよって、この美羽のお姉さんがまともだって期待した俺が間違ってたよ。うん。



―――ちなみに彼女は周囲の熱い声援により何とか持ち直したが、残り二曲の出番とアンコールでも素敵なコケっぷりを披露した。

188心愛:2012/12/27(木) 19:10:23 HOST:proxyag094.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あ、ヒナ視点っていう意味ね! 当人たち除いてね!


というわけで残念な美羽の残念なお姉さん、美空(みく)登場です!

うん、美空はただ残念なドジっ娘なだけじゃないんだぜ……?
その「ある意味」っていうのは、次からの話で明かしていこうかなーと。
美羽の秘密に迫っちゃうよ(*^-^)ノ

189ピーチ:2012/12/27(木) 23:04:37 HOST:EM49-252-69-209.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

美空ちゃん登場ー!

……て思ったらあれ!? 何か最初から可愛い!

ごちんッッ! ってところめっちゃ笑ってたw

190心愛:2012/12/28(金) 16:09:57 HOST:proxy10050.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽とはまた違う可愛さを出したいw

キーパーソンのはずがギャグ回で登場という。


結野姉妹の名前は結構すぐに思いつきました!
美しい空に舞う羽根って感じ(・∀・)


マイクにごちんッッは痛いよねうん。

191ピーチ:2012/12/28(金) 17:34:35 HOST:EM1-115-30-179.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

言われてみれば確かに美羽ちゃんとは違う可愛さだよね←

確かに! あたし一回間違えて「みそら」って呼んでた!

マイクにごちんッッもいたそーだけど床にびったぁーんっっッも痛そう…

192心愛:2012/12/29(土) 16:03:50 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「よくここまで生きてこれたよね」系姉妹、みくみうw


美空のドジは本人が一番痛いことになってるから一番可哀想な特徴かも←

193ピーチ:2012/12/29(土) 16:10:49 HOST:EM49-252-63-97.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ほんとだよね!?

……どんなに完璧に見える人にも、どっか一つは欠点あるもんだね…

194心愛:2012/12/30(日) 17:57:37 HOST:proxyag106.docomo.ne.jp

『彼女の想いは』






「―――待ってたよ」



「ぎゃあっ!?」



放課後の昇降口、ザッという足音と共に現れた黒い影が俺の進路を阻んだ。



「んー、出会い頭に『ぎゃあっ』はちょっと傷つくなぁ」



さらさらと素直に流れる長い黒髪を二つに結わえた美しい少女が、悪戯っぽい笑みで俺を見上げてくる。

見覚えがありまくるその姿は、



「……結野……美空、先輩?」



「そそ。美羽ちゃんがお世話になってます」



にこにこ全開の明るい笑顔が俺だけに向けられている、というこの状況がまだ信じられない。



「……成績も身体能力も抜群、人気度から言えば校内美少女ランキングトップは確実って柚木園が言ってた、結野先輩?」



「やだぁ王子が? 恥ずかしいじゃんー」



照れくさそうに頬を染める先輩。

否定も卑下もせず、当たり前のように讃辞を受け取れる―――並みの人間にはなかなかできないことなんじゃないだろうか。

それにしても柚木園の知名度ぱねぇ。新入生なのに。



と思いつつさらに確認。




「―――この前ダンス同好会の新入生歓迎ライブでコケまくってた究極ドジの、結野先輩?」




「いやあああわーすーれーてー!」



ぴょんっ! と二つの髪束が同時に跳ね上がった。



「ドジじゃないもん! ちょっと運が悪いだけだもん!」



あー、……やっぱ姉妹だわ。
顔真っ赤にしての涙目とかもう超そっくり。


……あんまりいじめても可哀想だし、とりあえずそういうことにしておこう。



「こほん。……あ、そうそう、ヒナくんって、『ひな』っていう名前なの? 可愛いね」



「違いますよ! それはただのあだ名です!」



おのれ美羽……!
いつ喋ったんだか知らないけどいらん誤解招いてんじゃねぇ……っ!



「へー。本当の名前は?」



「日永、ですけど」



「下の名前だってば」



「? 圭です」



「圭くん、圭くんねー。りょーかいっと」



い、いきなり異性の名前を呼び捨てだと……?

なんたるコミュ力……!



……って、愕然としてる場合じゃない。



「で、結野先輩は、」



「美空でいーよ」



「いやいーよじゃなく」



「だって『結野』じゃ美羽ちゃんとかぶるじゃん。『先輩』だけも物足りないし……はいリピートアフターミー『美空先輩』」



え、なんか言わなくちゃだめな空気なんですけどどうすればいいのこれ。



「み、美空……先輩?」



「うん合格! ってわけでおめでとう圭くん! 君は結野美空の『可愛い後輩ポジション』を手に入れた! わーい!」



「おめでたいのはお前の頭だっ!」



はっ!


か、仮にも年上相手に俺は何ということを……!



「……ほう、噂通りなかなかのツッコミスキル」



「いいの!?」



うむうむと満足そうに頷く……えー……美空先輩。


きらきら輝く大きな漆黒の瞳も、人形のようにつんと尖った鼻先も、薔薇色をした幼げな唇も。
黙っていれば妖精の国のお姫様みたいに儚げで可憐な美貌は見れば見るほど美羽にそっくりだ。
違うところといえば、端正な顔立ちをさらに嫌みじゃない程度のメイクで華やかに磨き上げているところや、センスの良さが伺える私服を着ているところ、



「こらこら、変なとこ見ないの」



「みみ見てませんよっ? 何言ってるんですか?」



細いのにちゃんとある膨らみとかね。見てないけど。



「んじゃ、圭くんは今から時間ある?」



「え、……ま、まぁ。先輩は部活は」



「今日はないから大丈夫。ね、ちょっと付き合って。色々話したいことあるし」



「はい!?」



良く分からないものの、美空先輩がわざわざ俺を待ち伏せしていた理由はそれらしい。



「もー、早く早く! 美羽ちゃんに見つかったらまずいから!」



「えっ待っ意味分かっ」



「行っくよー!」



腕をがっしり掴まれてしまった。
意外と力が強いことに驚きつつ、色々あきらめてなすがままになっていた俺だったけれど、



「ちょ先輩、そっち壁じゃ」



「え?」



ゴチンッッ



「……ぅ、うううう」



運が悪いじゃとても済まないだろそれ。

195心愛:2012/12/30(日) 18:02:10 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そうなんだよー。
完璧キャラって結構いても、絶対どこかは抜けてるという(笑)

196ピーチ:2012/12/30(日) 18:32:15 HOST:EM114-51-44-25.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

かーわいー未空先輩!

可愛いけど、壁に突進はちょっと……

197心愛:2012/12/31(月) 11:31:49 HOST:proxy10019.docomo.ne.jp





「疲れた……」



「え? 十五分くらいしか歩いてないのに? そんな美羽ちゃんみたいな」



「……ここに来る間、先輩のファンにもっのすごい睨まれてたからですよ……っ!」



美空先輩が良く行くという駅前の喫茶店。
二人掛けのテーブル席に落ち着くと同時、気疲れした俺はぐったりと倒れ込む。



「あはは、ごめんごめん」



これも全部、俺の対面でけらけら笑っている美人先輩のせいだ。



「女版柚木園ですか先輩」



「王子は女の子じゃん。……あー、でもそれ最高の褒め言葉かも。圭くんってばやるなぁ」



「知りませんよ……。まずカップル成立率県最低の南高で男女一緒に歩いてるだけで殺生沙汰決定なのに相手がこの先輩とか……。っつーかなんで女子校より低いんだよおかしいだろ」



「女子校だったら他の学校の子と付き合うんじゃない? まぁ、あたしたちは自分よりレベル低いよーな男は願い下げだけどねー」



「……サラッと黒いこと言わないで下さいよ……」



「みんな言ってるよ? ……ってゆーと南高の中で彼氏作るしかないわけだけど。そんなことにうつつ抜かして受験失敗して後悔するのもねー。高校の恋愛なんかお互い足引っ張りあって終わりでしょ?」



……南高女子マジ怖ぇ。



「と、夢見る一年生の幻想を早めの段階でぶち壊すのが先輩の仕事です」



「辞めちまえそんな仕事」



そこで美空先輩はソーダフロート、俺はレモンスカッシュをオーダーしてまた一息。



「でもさー、女の子でモテすぎるって大変なんだから」



「そういうもんですか」



「そういうもんなんです」



もの憂げに頬杖を付いて窓の外を見る様子も、モデルがポーズを取っているみたいにばっちり決まっていて。



「小学校のときから道歩いてるだけで許可なく写真撮られたりするし危ないアングルのやつがネットに流出して大変なことになったときもあるし、『お嬢ちゃん、おじさんといいとこに行かない?』とかしょっちゅうだったし、毎回持ち帰らないとロッカーに入れておいた体操着を盗まれたりリコーダーがなんか湿ってたりするし。……あは、圭くんは普通で良かったね」



最後に付け足された、あんまりなその言いように、突っかかる気にはなれなかった。

まだ会ったばかりだけど、この危なっかしい先輩が心配になってくる。



「もう大丈夫なんですか」



「うん。できるだけ一人になるのは避けてるから」



にこっと笑う。



「それにね。そういう人は、うちの学校には一人もいないでしょう?」



「確かに」



「ある意味変人の巣窟だけど、変なだけで、身の危険はないからね」



「……それも、確かに」



ウェイトレスが運んできたグラスを受け取り、はむっとストローをくわえた先輩は、苦笑するように綺麗な眉を寄せる。




「今までね。できる限り、そういう汚いものは美羽ちゃんには見せないようにしてきたから……。美羽ちゃんが南高に入ってくれて本当に良かった」




……美羽のことが本当に大好きなんだって、良く分かるあたたかな声だった。


……なんだよ、美羽。


こんなに近くに、お前のことを心配して、守って、……理解してくれる人がいたんじゃないか。



「あたしは、美羽ちゃんのお姉さんだからね」



ふ、とほんの一瞬だけ、先輩は何故か、寂しげに睫を伏せた。




「……優しくて綺麗なままの美羽ちゃんを誰にも、傷つけられないようにしなくちゃいけないの」




―――……これ以上。




先輩が小さく呟いたような気がしたのは―――多分、俺の気のせいだったのだろう。


とにかく、急に重くなった空気を変えようと俺は必死に口を開いた。



「……でも、今の美羽は中二病じゃないですか。あの格好と喋り方じゃ顔目当ての奴だってあんまり寄って来ないし、そういう意味ではいいかもですね」



よっぽどの物好き以外は。と、ふざけたように笑って続けようとしたとき。




「―――……本当に、そうかな」




ストローから唇を離し。


美空先輩はまるで別人のように冷めた―――闇夜の色に澄み渡る瞳で俺を射た。




「あたしは、美羽ちゃんの『病気』は良くないことだって……やめさせるべきことだって、思ってる」

198心愛:2012/12/31(月) 11:39:39 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「美空」ね!

と、「ある意味」理解者、って言ってたわけをそろそろ出し始めるよー。
美空はドジらせなければシリアス要員なので!

こういうシリアスは書いてて楽しいw

199ピーチ:2012/12/31(月) 15:17:18 HOST:EM114-51-4-198.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさんがんばっ!←

「ある意味」理解者ね!

シリアス要員………? なぜに…?

200心愛:2013/01/01(火) 10:08:08 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp






「……な……」



予想外の台詞に、一瞬固まってしまう。
美空先輩はその反応にぱちぱちと瞬きしてから、「ごめん、驚かせるつもりじゃなかったんだ」と安心させるように手を振って。



「んーと。圭くん、『眷属』……だっけ? 美羽ちゃんに付き合ってくれてるって話だからさ」



今日話したかったのはそれ、と笑う。



「他人が大の苦手なあの美羽ちゃんがだよ。ヒナがヒナがーって愚痴りながらだけど、自分からクラスの子の話をしてくれるなんて初めてだからびっくりしちゃった」



「は、はぁ」



俺も彩に同じようなことを言われるなぁ、といまいち働かない頭でぼんやり考える。



「でね、その『ヒナ』くんっていう男の子がなんでそんなに、美羽ちゃんに優しくしてくれるのかなーって不思議だったのよ」



テーブルに両肘を付き、手のひらに顎を乗せて上目遣い気味に首を傾げた美空先輩の、大きな瞳がまっすぐに俺を映す。




「――――圭くん、美羽ちゃんのこと好きでしょう」




カラン、と氷が涼やかな音を立てた。



「…………」



取り繕う言葉は、強い眼差しにあっさりと封じられてしまう。

この人相手に、誤魔化しは利かない。

思わず唾を飲み込んだ。



「分かっちゃうんだよねー。たまにいる、あたしじゃなくてその後ろに隠れてる美羽ちゃんの方を狙う子……あ、もちろん美羽ちゃんには言わないから安心してね」



……こちらの考えはお見通しらしい。

俺は諦めて肩の力を抜いた。



「だったら……何なんですか」



「それでさっきの話。好きなんだったらなおさらさ、美羽ちゃんにまともになってほしいと思わない?」



試すような視線。
動揺でバクバク鳴る心臓を必死に静めながら、俺は迷いつつも口を開く。



「……そりゃ肉親からしたらやめさせたいだろうけど……。俺は、美羽が満足してるならそれが一番じゃないかなって思います」



「……へぇ」



面白いものを見つけたときのように、黒瞳がきらきらっと煌めいた。



「なるほどね……。圭くんは、そう来るか……。やっぱり『あの子』とは違うなぁ……」



「……あの子?」



「……なんでもない! 忘れて」



小さな呟きは、にこっという可愛い笑顔でたやすく流されてしまう。



「じゃあさ、圭くんはどうしてそう思ってるのか教えてくれる?」



釈然とはしないものの、追及しても答えてくれなさそうなので、ここは素直に先輩の問いかけに応じることにする。




「……“理想の自分”を追いかけてる美羽は、最高に格好良いって……俺は思いますから」




ちゅー、と俺をしっかり見つめながら、先輩がソーダを吸う。



「無意味だって分かってても、屈せずに何度でも立ち上がれる、っていう……。方向は完全に間違ってるけど、美羽の、自分の在り方―――“理想”に懸ける思いは本物です」



「……そうだね。美羽ちゃんの覚悟は固い。だから困ってるんだ」



ふうっと息をつく先輩。



「でもね。親は甘いから許しちゃってるけど、あたしは賛成できない。他でもない、美羽ちゃんのために、だよ」



身内があんな調子じゃ迷惑だから……なんて、軽い理由じゃない。



「あたしはずっと、美羽ちゃんの一番近くで、美羽ちゃんを見てきた」



美羽のことを完全に理解し、大切に想うゆえに、先輩は言う。




「ねぇ圭くん。美羽ちゃんはどうして、あんな格好で、あんな喋り方をして、人を寄せ付けないようにしてると思う?」




「格好良いから……“理想の自分”になりたいから」




ヒーローごっこの延長だと、自嘲するように笑った美羽。


公園で見せた無邪気な笑顔……―――




「―――本当に、それだけだと思ってるの?」




美空先輩は。




「それだけの理由で、『あれ』を、何年も貫き通せると思ってる?」




確信に満ちた、美羽にそっくりな表情(かお)で。




「……美羽ちゃんはね。演技をして、そうして自ら孤立することで―――無意識のうちに、弱い自分を守ってるんだよ」

201心愛:2013/01/01(火) 10:14:13 HOST:proxyag103.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美空は、ヒナに美羽の一面とか事情とかを伝える大事な役なのでw





あけましておめでとうございますヽ(≧▽≦)/

こんなダメダメ作者ですが、何とか完結できるように頑張りたいと思います(^-^;

今年もよろしくお願いします!

202ピーチ:2013/01/01(火) 16:38:10 HOST:nptka203.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

おめでとうございます!

ここにゃんだったら絶対完結できるよー!

203心愛:2013/01/02(水) 17:14:56 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp







「…………」



美羽が、弱い自分を守ろうとしてる?
そのために、演技をしている?



「んー、長いし、ちょっとややこしい話になるけど」



混乱している俺を気遣うように微笑み。



「……あたしたちのお父さん、そこそこ大きい会社の社長やってるの」



……なんで、今、そんな話を?
あまりに唐突な話題に、先輩の真意を伺いきれずに、探るみたいに彼女を見る。



「昔、お父さん、このへんに新しい工場を造ろうって言い出したことがあってね。あたしが小学校の二年生、美羽ちゃんがまだ入学ばっかりの頃だよ。……でも、地元の人たちの反対運動に遭った」



淡々と、ただ事実を並べるように話す先輩。



「それで、その人たちは自分の子供に言い聞かせたのね。『結野さんのとこのお子さんとは仲良くしないように』って。……今までは普通に友好的だったんだけど、その計画の話を聞いてから急に」



まだ、理解は曖昧なままだけど。


なんとなく、先輩が次に言うであろう内容だけは容易に予想がついた。



「今まで仲良くしてた子たちみんなが、あたしを避けるようになって、クラス全体も変によそよそしくなっちゃって……」



今や、学校のアイドル的存在となっている少女は懐かしむように笑う。



「直接的には危害もなかったんだけど、なんだろう。空気っていうか……『いないこと』にされちゃったって言うのかな。あれは結構つらかった」



「…………」



どくん、と胸の中が重く脈打つ。



「あたしは平気だった。一年生からの友達なんかには、親に内緒だよって、こっそり仲良くしてくれる子もいたから。……でもね」



そこで美空先輩は小さく俯いて、自分の剥き出しの脚を見た。
するり、と長い髪が滑り落ちる。




「……美羽ちゃんは、だめだったんだ」




“ミウ”。
遊び相手がいてもおかしくない年頃だったのに、俺と同じで、たった一人で公園に来ていた。
……俺の目から見ても、純真な彼女はすごく魅力的だったのに。
不自然なくらい、同年代の子―――友達の影が、全くなかったんだ。



「それはそうだよね。入学したばっかりで、完全にゼロからのスタートだったんだから。知り合いも誰もいない状況で、周りはみんな敵ってことだもんね」



無邪気で好奇心が旺盛で、感受性が強い。
ちょっと浮き世離れしていて、でもそんな、どこにでもいる普通の女の子。


あの―――眩しい微笑み。



「一年生の教室に行けば、その様子が良く分かったよ。美羽ちゃん、最初は友達を作ろうって張り切ってたのに……全然、受け入れてもらえなくて。いつも一人ぼっちで」



明るい“ミウ”が、一生懸命に笑顔で話しかける光景が目に浮かぶ。
一方的に避けられ、無視されては、背を向けられる。
やがて、ぽつん、と一人残される“ミウ”。


美羽が人間嫌いになった、理由。




「今の美羽ちゃんだったら大したことないだろうけど、小さいときって些細なことでもショックになっちゃうものなんだよね。……美羽ちゃんは繊細なところがあるから、なおさらだと思う」




俺と同じような境遇に、あのときの“ミウ”も置かれていた?

いや、俺は自分から、グループの輪から離れていったんだから自業自得とも言えるけど。

でも、彼女自身は何も悪くなかった。
向こうの事情で勝手に、仲良くしたいと思っていた人間たちから弾かれてしまった。




「そのときからだった。美羽ちゃんが“理想”に入れ込むようになったのは」




重苦しい口調と共に、美空先輩は嘆息を零す。




「自分の呼び方も、喋り方もだんだん変えていって。美羽ちゃんは“理想の自分”になりきることで、自分は特別だって無理矢理思い込もうとして―――自分が傷つかないように、心に殻を作った。強い強い、壁」




それが、あの仮面?
すぐに剥がれるくらいに薄っぺらで、なのに驚くほど強い意志で固められた―――




「美羽ちゃん自身は多分、分かってない。無意識にやってることだと思うんだ。本当に、ただ格好良いからっていう理由だけで、自分が動いてると思ってる」

204心愛:2013/01/02(水) 17:17:58 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うーん…そう信じたいw

美空がなんか難しいこと言ってるけど、最後のシーンに向けて伏線張りまくってるだけなんで、そんなに気にしなくていいからね!
とりあえずこれを終わらせないと進めないから…(~_~;)

205ピーチ:2013/01/02(水) 18:10:44 HOST:nptka301.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

美羽ちゃん可哀想だよね……

美空先輩優しい………!

206心愛:2013/01/02(水) 22:13:46 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp






俺は、一人でひっそりと生きることを選んだ。
息を潜めて、誰の目にも留まらないように。
味気なくて、つまらなくて。それでも酷く安全な道に逃げ込んだ。


でも、美羽は。




「ゴタゴタが大きくなったのもあって、あたしたちを心配したお父さんが計画を諦めて。思い切って家族で引っ越して、転校した後も、美羽ちゃんの“理想”はどんどんエスカレートしていったんだ」



―――理解されなくてもいい。


常識と、同級生たちと敵対する方向へと突き進んだ。

美羽の追い求める“理想”はいつの間にか、人を寄せ付けない、鉄壁となって美羽を守るようになって。


だけど、皮肉にも。
あからさまな無関心の代わりに、もっとはっきりした嫌悪を向けられるようになったってわけだ。




「……美羽ちゃんはまた、自分が傷つくことになる道に進もうとしてる」




いや―――暗い顔で先輩が言う“傷つく”には、もっと深い意味があるような気がするけど。
でも、だいたいは合っているだろう。


美空先輩は、美羽がその奇異な言動ゆえに、周囲から孤立して―――それによって、多かれ少なかれ、彼女自身が“傷つく”ことを懼(おそ)れている。




「美羽ちゃんが望むなら、いくらそれがおかしくて、他人様に胸を張れないことだとしても、応援したいって思うよ」




本当に……良いお姉さんだなと思う。
妹が可愛くて大切で仕方なくて、たった一つしか違わないのに、必死に守ろうとしていて。



「でも、それだけじゃ美羽ちゃんを守れない。……守れなかった」



ぎゅ、と強く唇を噛み締める先輩。




「あたしは……この機会にこんなことはやめて、普通に、美羽ちゃんに幸せになってほしい」




こんなことやめたら、とは俺も言ったことだ。

自分が望んでやっていることでも、蔑まれ貶められる美羽が見たくなかったから。


でも。




「だからお願い、圭くん。美羽ちゃんの『病気』をやめさせること、協力して」




美空先輩が澄んだ、真摯な瞳を向けてくる。

……多分、俺を呼び出した本当の目的はこれだろう。


可愛い妹を正しい道に導くために、そこそこ仲がいいクラスメイトの俺に、年下だというのに真剣になって頼み込む先輩。


本当、美羽にそっくりだ。


どんだけ強くて、優しいんだよと思う。


彼女の熱意に負けて、つい頷いてしまいそうになる。


それでも。




「……すみません」




それでも俺は、美羽の気持ちに反することはしたくないんだ。




「俺は美羽の味方です。美羽が自分で考えを改めない限り、その立ち位置を変える気はありません」




「圭くん……っ」




ガタンと音を立て、先輩が身を乗り出す。




「あたしは美羽ちゃんに、誰かを好きになれるようになってもらいたいの!」




悲痛な声。
今にも涙を浮かべそうなくらいに、綺麗に整った顔を歪める。




「このままじゃ、美羽ちゃんは誰も―――圭くんのことだって、好きになれないんだよ!?」




「……先輩」



美空先輩はやっぱり、まだ美羽に関する何かを隠しているようで。

でも、美空先輩が故意に沈黙を守っている、それを無理に問い詰めてしまったら―――多分、俺も先輩も、後悔すると思う。
ただの予感、だけど。


先輩は声量を落とし、でも痛みの滲む表情で言う。



「……それは、圭くんだって嫌でしょう? でももし、美羽ちゃんが変わったら、」




「―――それじゃ意味ないんですよ」




俺はあの日の“ミウ”―――美羽に、かけがえのない、大切な何かをもらった。

彼女のまっすぐさ、まばゆいまでのひたむきさ。

それが俺を勇気づけて、俺をここまで支えてくれた。

恥ずかしくて誰にも言えないような話だけど。


……美羽があのときどんな状況に置かれていて、どんな気持ちで言った言葉だとしても。
どんなことがあって、彼女が“理想”に焦がれるようになったとしても。


美羽の情熱は本物なんだ。

207心愛:2013/01/02(水) 22:21:06 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽が中二病に走った理由なのでした←
さて、明らかに正論の美空を説得するためにヒナにひとがんばりしてもらわないと…

ありがとう! 姉妹の絆的なものと、ヒナと美空の優しさが出せたらなーと思ってます!

208ピーチ:2013/01/02(水) 23:41:24 HOST:EM114-51-61-171.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

お互い正論っぽく聞こえるのはなぜだ←

でもまぁお互い美羽ちゃんのこと考えてのことだからねー

209心愛:2013/01/03(木) 10:18:08 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そこに気づいてもらえたらもうここあの目的超達成してるわw

そう、二人とも完全に美羽のためなの!
正論ぽく思えたならそれもまた良かった←



そしてヒナが主人公らしくバシッとかっこよく決めてくれるはず多分!
あとやっとのことでタイトル登場!

210心愛:2013/01/03(木) 10:19:50 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp







「好きとか嫌いとか、正直良く分かりませんけど」




恩返し、なんて大層なものじゃない。

ただ、俺は美羽に報いたいし、美羽の“理想”をこれからも応援したいって思う。




「痛くて、単純で、一生懸命で、強情で、バカみたいにまっすぐで。絶対に、自分の意見を譲らない」




『だから、ぼくは逃げない。諦めない。誤魔化さない。絶対に、ぼくの信念を曲げない』




「―――誰にどう言われようと、俺が好きなのは、そういう美羽ですから」




だから。




「あいつが満足するまで、俺は美羽にとことん付き合いますよ」




―――『これがぼくなんだから』




凛とした、決意を秘めた赤い瞳。

ずっとずっと、美羽は自分に正直なままで。
いくら外見が変わっても、強くて純粋な心は、少しも変わってなんかいないんだ。

それを変えてしまったら、美羽の『今まで』を否定することになる。



「でもっ」




「それに、あのヴァンパイアがどうとかどや顔で言う真性邪気眼女のビョーキを治した上に、なんの取り柄もない俺なんかを今すぐ好きになってほしいなんて、いくらなんでも高望みすぎですよ」




なに先輩に釣られて熱くなってるんだ俺。ここ喫茶店だろ―――なんて、冷静な考えが頭をよぎるけどあえて無視。



そう、俺は多くは望まない。
望みたいとも思わない。


俺が隣にいても構わないって、楽しいって思ってくれるなら、それでいい。十分すぎるくらいだ。


……そりゃ、いつかは好きになってもらえたらいいなーとは思うけどさ!



「安心して任せて下さい、美空先輩。……今はまだだけど、いつか」



今はただ、美羽が安らげる、そんな居心地のいい場所でありたい。
まだ、それでいいんだ。



……初恋舐めんなっての!


俺は呆れるほど気が長くて、美羽の『眷属』で、現在進行形でもっのすごい面倒な電波女に惚れてる筋金入りのバカなんだよ!



だから、俺は笑って―――目を見開いている美空先輩へ向けて、高らかに宣言する。





「―――俺は俺なりの方法で、ありのままの美羽を攻略してやりますから!」





長い長い、沈黙。


「……あ、あれ、もしかして俺スベった?」と急に正気に戻って居たたまれなくなり、座り直してとりあえずすっかり氷が溶けてしまったレモンスカッシュを飲んでみたりする。

……味、薄っ。

思わず渋面を作っていると、くすっ、という小さな笑い声が微かに聞こえてきた。
顔を上げれば、



「……そっか……だから、美羽ちゃんは……」



唇を綻ばせ、優しげに微笑む美空先輩。
その表情は、今まで見せたどんなものよりも魅力的で―――ちょっとだけ、見惚れてしまった。



「圭くん」



美空先輩が、俺の名前を呼ぶ。
慌てて背筋を伸ばした。



「あたしの代わりに、美羽ちゃんを助けてくれる?」



強い、眼差し。
こちらを試し、見透かすような視線。




「美羽ちゃんを、守ってくれる?」




先輩はずっと何かと葛藤していて、それでも、今日会ったばかりの俺を信じて、その何かを俺に託そうとしてくれている。


その「何か」が分からなくたって。
それが美羽に繋がることなんだったら。

返事なんか、最初から決まっていた。




「はい」




「分かった」




ふわっと黒い瞳の光が和らぐ。



「その言葉が本当だって、期待してもいいって……あたしは信じるよ」



一度確かめるように瞼を閉じ、そしてまた、俺を見据える。



「圭くん。美羽ちゃんは臆病で、今も色んなことが怖くて逃げてる。だから、圭くんがいっぱい、当たり前のことを経験させて、教えてあげて」



そうしたら、と美空先輩はとびきりの笑顔で。




「君の恋路、あたしが全力でサポートしてあげる」




「……頼りにしてます」



「任せて!」



誰よりも妹思いの少女は、俺を見上げて晴れやかに笑った。

211ピーチ:2013/01/03(木) 10:44:35 HOST:EM114-51-25-253.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

未空先輩優しいいいいいいい!←

でもヒナさんも優しいんだよねほんと。これでこそここにゃんキャラだって感じ?

212心愛:2013/01/03(木) 18:57:11 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp







年上の意地と男の見栄が対立し、奢(おご)る奢らないで揉めた後。



「先輩は電車ですか?」



「や、迎えが来てるはずなんだけど……」



店を出れば、空はもう赤とオレンジ色の綺麗なグラデーションに染まっていた。


きょろきょろ辺りを見回す美空先輩が、やがて。



「あ、いたいた」



彼女の視線の先に、いかにも高級そうな黒塗りの外国車。

小市民の俺はつい気後れして後ずさる。



「え、あれですか本気で……なんか誰か出てきたんですけど!?」



運転席から降り立ったスーツ姿の若い男(イケメンだ)が扉を開けるのを見た先輩は平然と言う。




「執事だから気にしないでいいよ」




「執事ぃ!?」



どこの大富豪だそれってそりゃ結野家でしょうけど!




「うん、運転手兼あたし専属の執事。別名人間目覚まし時計」




社長令嬢ってみんなこんな待遇なのっ!?



「……はは……格差社会、か……」



なんかもう驚くどころじゃなくなってくるよ。
あれか、美羽のワガママが許されるのも高そうなのに毎日違う服着てるのもみんな金持ちだからか。はは、次元が違うわ。さすがブルジョア。




「じゃーね圭くん! 今日はありがとう!」




いつの間にか数歩離れていた美空先輩の声に、一人黄昏ていた俺はやっとのことで立ち直る。



「美羽ちゃんのこと、頼んだよ!」



「……はい!」



夕焼け空。
赤い光の乱舞を背景に、きらきら艶めく二房の黒い髪が軽やかに踊る。

小さく華奢な背中を向け、ゆっくりと歩を進めるその姿はまるで映画のワンシーンのように美しく、胸に迫る光景で―――




びったぁぁぁん!




……見たらだめだ見たらだめだ見たらだめだ。


せっかくのいいムードが台無しになりそうな、背後からの何かと何かの激突音を精一杯の努力をもって聞かなかったことにし、ダラダラ汗を滴らせながらも俺は反対方向へ早歩きで立ち去ったのだった。







☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜







「美羽、美空先輩のことどう思う?」



「な、なんだ急にっ」



次の日の休み時間。

もはや言うまでもなくゴスロリの美羽は、急な話に戸惑っていた。


黒い薔薇と羽根、レースをふんだんに使ったヘッドドレスのリボンが、主の動揺を表すようにひらりと揺れる。


「いいから」と押し切ると、渋々ながらも一応答えてくれた。



「……美空は……ぼくとは真逆にある存在だな」



唇に丸めた指を当て、



「ぼくが《闇》ならあれは《光》。正しくて、ぼくなんかが見るには眩しすぎる、圧倒的な……光」



でも、と前置きしてから。



「月が太陽に照らされて初めて輝くように、光があって初めて闇が生まれる。……なんとなく、そんな感じだな」



いつもの中二台詞だけど、言っていることはあながち嘘じゃないような気がした。



「でもその真逆の位置から、必死にぼくのために色々考えている。……たとえば、美空が勉強や運動を頑張って、やりすぎなくらいに目立つことは……半分くらいはぼくのためなんだ」



「美羽の?」



「ああ。潜在的な才能だって大きいけれど、それを日々努力して磨いているのは美空自身で―――『あの結野先輩の妹』という肩書きだけで、ぼくはいくぶん、周りから肯定的に見られてきたから」



美羽の言うとおり、きっとそれは美空先輩の計算のうちなんだろう。

自分は美羽に、ずっとつきまとうことはできない。
だから、少なからず間接的に、美羽を守ってきたんだ。

先輩が活躍していろんな人から注目と尊敬を集めれば自然と、その妹である美羽も一目置いてもらえる。
異質な存在である美羽への風当たりを、緩和することができる。


……先輩はやっぱり頭がいい。
その才と優しさを惜しみなく注ぎ込まれ、愛されている妹の方は。



「何をするにも派手で、なのにドジで、肝心なところで抜けているが」

213心愛:2013/01/03(木) 18:58:01 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp






ちょっとだけ恥ずかしそうに、はにかんだ。




「……たった一人の、ぼくの自慢の姉だよ」




多分、自覚はないんだろう。
顔を逸らすことも忘れて、小さく笑う美羽の柔らかな表情。


ああ、美空先輩に見せてあげたかったな―――と思った、
その瞬間。

俺のポケットで、ブーッブーッとバイブの音が鳴り響いた。


「電話か?」と怪訝な顔をする美羽に断って画面を確認。




「あ、美空先輩だ」




「…………は?」



通話、っと。



『もしもし圭くーん? 美羽ちゃん元気? 倒れてない? もーどんなに言っても朝ご飯食べてくれないからいつも心配で居ても立ってもいられなくてさー! 圭くんの電話番号聞いといてよかったよもー!』



「シスコンもいい加減にして下さいよ!」



繋がった途端にものすごい勢いで喋り出す美空先輩に心底げんなりする。



『だって美羽ちゃんに聞いたらうるさいって言われちゃうし』



「知りませんからそんなの……」



『大事なことだよ!』



電話口の向こうでぎゃんぎゃん騒いでいる先輩に嘆息し、それからふと思いついて、いくぶん息を潜めて言う。



「そういえば先輩、一つ聞きたいことがあったんですけど」



『んー?』



「昨日『高校生の恋愛反対』みたいなこと言ってたのって……もしかしてわざと俺を試してたんですか?」



美空先輩が一瞬だけ黙り込み。



『……さぁ?』



どうだろうね、と笑った。


『圭くんの判断に任せるよ。とにかく、今のあたしは圭くんを信用して、期待してるってこと』



「はぁ……」



上手くかわされた俺の隣では、美羽がさっきから必死な顔で何事か言っている。



「……ま、待てヒナ、君はいつ美空と知り合いに!? そういえば名前で呼んでるし……っ」



『あっ忘れてた! あとお昼も言わないと摂らないから無理矢理にでも食べさせて! 甘いもので釣るのもいいんだけど栄養的に考えて徐々に』



「先輩まで俺を美羽の保護者扱いするのやめて下さいませんかね!」



食事は大切だけど!



「だからなんの話だ!? 主に隠し事をするんじゃないっ」



「ヒナ、もしかして相手美空先輩? いいなー、私にも代わってよ」



「? みくせんぱい?」



「あー、夕紀は知らないか。美羽のお姉さんでダンス同好会の」



「うっそ結野センパイ!? あの!? ちょ、抜け駆けしてんじゃねーよヒナ!」



「お前ら全員黙ってろ!」



これだから人気者は……!



『なんか賑やかだねー。こっちは廊下出て歩いててさ、静かだからよく聞こえるー』



「転ばないで下さいよ……?」



ただでさえ絶望的なまでにドジなのに、電話に気を取られて不注意な状態はことさらに危険すぎる。



『あはは、やだなぁだーいじょうぶだっ《ゴンッッ》』



「言わんこっちゃねぇ!」



お約束だなおい!



『……う、……うぅ………こ、転んではないもん! 足滑らせて転びそうになったけど目の前にあった壁にぶつかってちゃんと止まったからセーフだもんっ』



「余計救いようないですよ!」



「救いようって……美空がまたなにかしでかしたのかっ? そうなんだな!?」



俺のツッコミ生活に、個性派すぎるメンバーがまた一人追加された。
……やっぱりサポートも当てにしない方が良さそうだ。うん。

214心愛:2013/01/03(木) 19:05:39 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そんなわけで美空の話でした!

ここあキャラの基本ステータス「優しい」を備えつつ、頭良いからちょっと人より冷めたところもあれどドジのせいで全然決まらない・究極シスコン美少女美空先輩をこれからもどうぞよろしくヽ(≧▽≦)/


ちなみに美空はちゃんとヒナに協力していくよ!ドジなりに!

215ピーチ:2013/01/03(木) 19:11:25 HOST:EM49-252-66-115.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

みーくせーんぱーいっ!?

何をどうやったらそこまで綺麗にドジれる!?

……美羽ちゃーん、お姉様を呼び捨てはちょっと………

216心愛:2013/01/04(金) 18:05:25 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美空のアレはむしろ才能の一種w


まぁ、一つしか年離れてない姉妹なら、呼び方も含めて結構遠慮ないんじゃないかなっと。
美空は溺愛しすぎ?

217ピーチ:2013/01/04(金) 20:33:28 HOST:EM1-114-144-142.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あ、そう考えたら自然か←おい

なるほどねー、分かるかもw

でもそーいうのが未空先輩の長所の一つw

218心愛:2013/01/04(金) 21:32:16 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「美空」ね!
美空の「み」は「美しい」ね!
と細かいとこにうるさくこだわるここあでしたごめんなさい。


「未空」も可愛いけどw

219ピーチ:2013/01/04(金) 22:49:13 HOST:EM1-114-144-142.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

間違えたー!?

ごめんなさいここにゃんごめんなさい美空先輩!!

何か最近ちょー適当に変換してたので気を付けねば!←

220心愛:2013/01/05(土) 17:15:01 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいや大丈夫だよ!
細かくてごめんね!

間違って変換しちゃっててずっと気づかなかったことここあもよくあるよ(・∀・)


邪気眼少女も、苺花&夕紀の話とか美空の話とか書きたいから番外編やりたいんだけどなかなか余裕が←
とりあえず日常編を巻き気味にしてイベント多く入れることで対処っ(´・ω・`)

221心愛:2013/01/05(土) 17:16:45 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp

『王子のお悩み』






「……わ」



「ラブレターですかはいはい良かったですねー」



靴箱の扉を開いて停止しているイケメン女に半眼で言う。
柚木園はこちらを向き、困ったように苦笑して、



「……ええと……果たし状とかもあるかもしれないよ?」



「ねーよ! 下手な慰めいらないから逆に傷つくから!」



相変わらずのアホみたいなモテっぷりで羨ましいことですねぇ!


予想通り、正方形の空洞の中に紙がみっちりぎっしり綺麗に詰まっていた。
漫画みたいにズザザザザッとは落ちないだろうけど地味に嫌だなこれ。
入れるのも大変なら取り出すのも大変だろ。
ってか今は放課後なんだから、朝から今にかけてこんなにたまったってこと? 怖くね?



「あはは、圧力で靴の形が変わりそう」



にこやかに笑いながら丁寧に封筒を抜き取って回収している柚木園。



「……にしてもいまどきラブレターって……」



しかも女が女に。



「気持ちは手紙で伝えてくれても嬉しいなー、ていつも言ってるからね。可愛い女の子たちが一生懸命私のために綴ってくれた手紙なんて最高でしょう?」



「犯人お前か! 毎回橋渡しさせられるこっちの身にもなれよ!」



「ごめんごめん」



黒糖みたいに甘い瞳を細めるだけで、さらさら爽やかなハーブ色の風が吹き抜ける。



「はー……。で、これからデートですか?」



「そう怒らないでってば。今日は大丈夫なんだけど、放課後はだいたい忙しいから、お誘いは全部断ってる」



「あれ、部活やってたっけ」



「やってないよ」



「へー。キャラ的には部活の助っ人に引っ張りだこ、みたいな感じだけど」



「なにそれ」



笑って肩を竦める彼女。



「確かに色々勧誘されたけどね。今は演劇部に、文化祭で手伝ってくれないかって言われてる」



「あー。王子役を?」



「うん」



やっぱりか。



「でも劇にはあんまり良い思い出がなくて」



「……それは意外。喜んでやりそうなのに」



「いや、楽しいよ? 楽しいんだけど」



柚木園は無駄に麗しい微苦笑で、



「私が参加するって決まった途端に、お姫様役を巡って女の子の血で血を洗う熱戦が展開されちゃうから」



「どんだけ!?」



「私としては、そういう女の子がみんなハッピーで終わる話がいいんだけどね―――そう、」



それからふっと遠い目をして。




「懐かしいなぁ、『王子様と27人のシンデレラ』」




「無茶苦茶すぎる!」



それ話として成り立つの!?



「王子との結婚条件である一足のガラスの靴を巡って女同士の陰険バトルが繰り広げられる」



「ドロドロだ!」



「最終的にはシンデレラは全員王子と結婚するんだけどね」



「まさかのハーレムエンド!?」



完結後の凄惨な修羅場を予感させるエンディングだった!

222ピーチ:2013/01/05(土) 23:13:50 HOST:EM49-252-160-154.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ち、血で血を洗う熱戦………?

怖いよ27人怖いよー!?

223心愛:2013/01/06(日) 10:53:34 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ヒロイン27人もいたら観客大混乱だね☆

ハーレムハーレムw

224ピーチ:2013/01/06(日) 19:15:33 HOST:EM114-51-207-43.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

観客も演じる方も混乱しそうな気が←

ハーレムーw

225心愛:2013/01/07(月) 09:55:25 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp






「幼稚園とか低学年だとゆるいからそういうのもアリなんだけど、だんだん融通利かなくなるからね。ラブストーリーとしては無理があるし」



「この年齢でやったら完全コメディ一色だな」



「それに練習する場所も、体育館とかを取ってもらわないと」



「運動部が使ってるんじゃね? 体育館じゃなくても普通の教室で別に―――」




「いや、噂を聞いて練習を見に来てくれた女の子の入りすぎで、教室のドアが壊れたことがあって」




「練習で!? 本番じゃなくて練習の段階で!?」



「あれは私が怒られたしね」



にこやかに笑っている柚木園に戦慄する。



「……ムカつくはずなのに全然ムカつないのは何故だろう……」



「あと、調理実習のクッキーやバレンタインのチョコの食べ過ぎでお腹壊して倒れたときも良く怒られたなぁ」



「あ、今純粋にイラッときたわ」



「保健医の先生も美人だったからむしろラッキー」



「先生の顔より自分の体調を気にしなさい!」



「だって私のために作ってくれたものなんだよ? 全部もらって一人ずつ感想を言わないと」



「少しは懲りろって! 気ぃ遣ってる場合じゃありませんから!」



「気は遣ってないよ?」



にこ。と笑い、



「みんなが一生懸命頑張って作ってくれたものは全部、どんなに刺激的な味がしたとしても、素直に美味しいって思う」



「なんつーか……すごいよなお前」



「そう?」



さらりと髪が揺れる。




「私は、この世のすべての花を愛しているだけだよ」




中性的で凄艶な美貌に甘い微笑みを湛える柚木園は圧倒的に、綺麗、で。


……なんて言うか。
性別を誤解してた俺が言っても、説得力はないかもしれないけど。




「……ちょっと工夫したら、普通に男にもモテそうなのに」




ちゃんとした女物を着て化粧の一つでもすれば、元の素材がこれなんだから相当の美人になるなんじゃなかろうか。
姫宮が言うような「可愛い」感じとはまた違いそうだけど、俺と並んでもほとんど変わらない背の高さだって、上手くすればモデルみたいに映えることだろう。



「…………」



思わず口に出してしまった言葉に、柚木園は驚いたように押し黙り、目を丸くして俺を見ていたけれど、



「……無理があるよ」



ぽつりと呟く。
力がないのに、不思議と本人の頑なさが感じ取れる声だった。



「そういう対象の、女として私を見る人なんかいないって。……ほら私、並みの男より格好良いから?」



おどけた笑みと共に告げられたそれは、本心からの台詞のようだった。



「……そうでもないんじゃね?」



「えー。そこそこ自信あったんだけどな」



「いやそっちじゃなく」



学年が違う美空先輩も、柚木園が女だってことを知っていたけど、その上で慕っていたみたいだった。

でも周りに集まってくる女子みんなは、まさか本気で柚木園を恋愛対象として見ているわけではないと思う。
もちろん容姿目当ての娘だっているだろうけど、でもほとんどの人たちはみんな、柚木園の人柄に惹かれてるんじゃないかな。
親しみやすくてさっぱりした性格は、男から見ても十分魅力的だし。


ただ、本人はそうとは思っていないどころか、女としての魅力がないと堅く信じ込んでしまっているようで。

何か事情があるのだろうか。



「悩みとかあったら聞くけど」



「……ありがとう」



あれ、ちょっと可愛い……か、も?
一瞬だけ浮かべたふわっとした微笑に、何故か顔が熱くなる。



「いや別に」



「でもたいていのことなら、悩む前に自分で何とかできるから大丈夫」



「かっけーなおい!」



やっぱり柚木園はイケメンだった。

226心愛:2013/01/07(月) 10:02:24 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ハーレムーw

苺花の女装回も近いようだねふふふ←


そんなわけで(どういうわけだ)ちょっとの間更新お休みします(=⌒ー⌒=)

227匿名希望:2013/01/07(月) 13:56:17 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
何の話ですかこれ・・?
ウンコしてもいいですか?

228匿名希望:2013/01/07(月) 13:57:28 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
ウンコしますよウンコ
ウンコスレ

229ピーチ:2013/01/08(火) 14:43:40 HOST:EM114-51-155-248.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ハーレムー!w

いや女装じゃないでしょ女でしょ!?

お休みですか、りょーかいでーす!←

230心愛:2013/01/12(土) 10:51:34 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp

『日永彩』





「お兄ちゃんやほー!」



ざわっ。


昼休みの教室に不穏な波が立つ。


長めのボーダーTシャツの上に毛足の長い白のニットカーディガン、トレンチ風ミニスカートという出で立ち。
入り口に立っていたその娘(こ)が「いた!」と笑顔になってこっちに寄って―――




「彩(あや)っ!?」




……俺の妹、なんだけどね。



「そのとーり! お兄ちゃんの救世主彩ちゃん参・上っ☆」



「語尾に星マークつけてる場合か! ちょ、学校どうしたんだよここ高校だから!」



「あれ、言ってなかったっけ?」



首を傾げると、シュシュを使って頭の左側でまとめた髪がふわふわ揺れる。



「彩、今日創立記念日だから学校休みなの」



「……それで?」



「暇だから南高に私服潜入してみた! てへり」



「出てけぇ―――――!!」



この学校の警備緩すぎですから!



「ひどい……っ! お兄ちゃん、彩のこといらないんだっ! 飽きた女の子はみんなポイッてするんだぁああー!」



「悪意百パーセントの泣き真似やめい! 誤解されたらどうするんだよ!」



教室の隅を陣取って談笑していた女子たちは「誰だろ」「かわいー」などと比較的好意的な目を向けている、けど。



「……ヒナ、そちらのお嬢さんはどちら様かな?」



グサグサ突き刺さる男子のどこかじとっとした視線。


嘘をついても仕方ない。

ここまできたらもう腹を括ることにし、ため息をついて正直に白状する。




「……妹」




しーん。




「…………もしもし警察ですか」




「誰だ今通報した奴! やめんか!」



『犯罪者の通報、被害者の速やかな保護は市民の義務』



「安心しろ、犯罪者でもないし被害者でもないから! これは俺の妹なんだってば!」



『嘘だっっ!』



「お前らチームワーク抜群ですね!」



驚異のシンクロ率だった!



『ヒナの妹がこんなに可愛いわけがない』



「ラノベか!」



「お兄ちゃん、そのツッコミはどうかと思うよ?」



冷静に訂正してから、彩はにこにこっと余所行き用の笑顔を浮かべる。



「彩、ほんとにお兄ちゃんの妹です! うちのバカ兄がお世話になってる皆さんに会いたくて来ちゃいましたっ」



『失礼致しました彩様。ようこそ愉快な動物園へ』



「あっさり色々なもん捨てやがったこいつら!」



この手のひらの返しよう!




「うっそヒナの妹ちゃん!? かわい―――――うがッ」



ガスッガスッガスッ


武闘派男子生徒、ついでに参加した柚木園の奇跡的な連携プレーによって、春山が登場三秒で袋叩きにされ、五秒で簀巻きにされてベランダに転がされた。



「アッこの絶妙な締め付け具合……ッ! はぁはぁ」



「お兄ちゃん、彩の気のせいかな。チャラい金髪不良攻め風の美形さんが今集団で暴力を奮われた上に教室を放り出されたように見えたんだけど……」



「気のせいだ」



ぽかーんとしている彩を諭していたら、青い顔をした美羽がおそるおそる近づいてきて。



「……ひ、ヒナ……誘拐は犯罪だぞ?」



「まだ疑ってたの!? 妹だよ! 正真正銘実の妹だよ!」



「ゴスロリってことは美羽さんですよねっ? マっジっ美っ少っ女! 写メっていいですか?」



「いいわけあるかい!」



「ひぅ」



目をキラキラさせてかぶりつかんばかりに身を乗り出した彩に怯え、美羽は俺の後ろに隠れてしまう。



「ふ……わ、我が眷属の肉親ということは、君も《赤闇》の血を分けた者というわけか……」



「リアル中二病発言きたぁああ―――!」



「ひゃ、ぅぅ」



「美羽泣かせてんじゃねぇよボケ」



「おおっ、お兄ちゃんが顔に似合わないイケメン台詞を!」



「ひでぇ!」



と、次に騒ぎを聞きつけた女子が寄ってくる。



「学校どこ?」



「西中です」



「あ、じゃあ結構近いねー。何年生?」



「当然のように受け止めんなよ! こいつ中学生!」



「お兄ちゃん頭固いね、彩ちゃん」



「はい。彩も困ってます」



「嘘つけっ!」

231心愛:2013/01/12(土) 10:56:46 HOST:proxyag112.docomo.ne.jp
>>ピーチ

女装女装w
ハーレム王子はむしろいつも男装してるからね←

そのわけは苺花目線でいつか書こうと思う(o^_^o)

232矢沢:2013/01/12(土) 11:05:24 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
聖詞置いてくね。

233ピーチ:2013/01/12(土) 13:25:24 HOST:EM114-51-186-68.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの学校来ちゃった!

確かにすげぇシンクロ率!

……そんなに似てないの?←

234名無しさん:2013/01/12(土) 17:14:29 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
何だこのスレは・・?
変なスレ来てしまったな〜

235名無しさん:2013/01/12(土) 17:15:11 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
何なんだこの変なスレは・・?
名無しさん・・しっかりしてくれよ

236たっくん:2013/01/12(土) 17:25:34 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
jj

237心愛:2013/01/12(土) 20:33:31 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp







女の子が来たときたら、こいつが黙っているわけがない。



「初めまして」



白い歯をキラリと光らせた、爽やかスマイルの柚木園である。
イケメン大好き(主に二次元でだけど)な彩はもちろん大興奮。



「ほわぁー! 最高レベルのイケメンですねテンション上がるぅ! 柚木園さん、で合ってますか」



「うん。ヒナから聞いてる?」



「ほぅ……見た目的には鬼畜美人攻め把握」とか何とかぼそぼそ小声で呟いてから、ぱっと顔を上げる。



「はい! いつもお兄ちゃんと仲良くして下さってありがとうございます!」



「こちらこそ。……でも私としては」



すっと顔を近づけ、色気漂う妖しい笑み。



「君とも色々、仲良くしたいな……?」



「でも柚木園さん、女の人ですよね?」



よしよし。
うちの妹はそう簡単にオチないようだぞ柚木園よ。

と思ったら、柚木園はにこ。と笑って一言。



「恋愛に性別なんて関係ないよ」



「で す よ ね !!!」



「やべぇオチたっ!」



ものすごいチョロかった!



愕然としていると、



「初めまして! 僕、姫宮夕紀です。よろしくね」



柚木園の後ろからひょこっと顔を出した姫宮がにこにこして挨拶。



「こ、これが男……」



彩も驚きを隠せないようだ。
色々な角度からパーフェクト美少女ルックスの高校生男子を眺めては、「ほへー」と呆ける。



「天然なんですよね」



「? うん」



姫宮はサラサラした栗色の髪を一房つまみ、



「確かに茶色っぽいけど染めてないよ。……でもなんで急に髪の話?」



「これぞ本物の天然!」



彩が驚愕していた。



「……やー、凄いキャラばっかりの方々ですねー。本当に―――」



美羽、柚木園、姫宮、ついでに床を匍匐前進している春山を見て、最後に俺に向けて哀れみの眼差し。



「美形ばっか……お兄ちゃん可哀想……」



「余計なお世話だちくしょぉぉおおおおお!」



承知してるわ! 悲しいくらい承知してるわっ!



絶叫する俺に「うん、彩はこれで満足したからー」と悪魔のような笑みを浮かべ、彩はそれから声を張り上げる。




「皆さん聞いて下さい! 彩、小学校五年生までお兄ちゃんと一緒にお風呂入ってたんですよー!」




「急に話の流れ完全無視の暴露しやがったこいつ―――!」



何がしたいんだよこの悪魔! 人でなし!

238心愛:2013/01/12(土) 20:35:25 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

来ちゃった☆


うん、似てるのは髪の質くらいじゃなかろうか。
彩は美少女でも美人でもないけど普通に可愛い系です←

239ピーチ:2013/01/12(土) 21:27:41 HOST:EM114-51-132-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

来ちゃったよー!

髪だけか似てるの←

普通兄と可愛い系妹かー、何かいーなーw

240心愛:2013/01/13(日) 09:02:59 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp






「―――これより刑を執行する」



『はっ!』



「またこのパターン!」



すちゃっとサングラスを装着した男子数十名によってすぐさま取り囲まれる俺。何これ新手のイジメ?



「待てってば! つか一番責められるべきなのは俺じゃなくて勝手に高校に侵入してるあいつだから!」



「本来なら即絞首刑の運びだが」



「無視? ねえ無視?」



「仕方ない。武士の情けだ」



「お前武士だったの?」



「特別に選択権をやろう。ありがたく思え」



カカカカカッと鮮やかにチョークの白い軌跡が黒板の上に踊る。



“切る”
“もぐ”
“砕く”
“折る”
“潰す”
“焼く”
“刺す”
“煮る”
“刻む”



おかしい。俺が生き残れる選択肢がない。



「何その夢のような選択肢ッ!」



「失せろドM!」



尺取り虫みたく這って来た春山を迷わず蹴り飛ばす。
人間じゃなくて変態だからセーフのはずだ。



「って違う! 俺を美味しく調理してどうすんだよ死ぬから! 死ぬから普通に!」



「では、屋上から命綱なしのバンジージャンプで手を打とう」



「人はそれを死刑と呼ぶ!」




「……はわ……」



「美羽さん美羽さんっ」



かくして、クラス中の注意をまんまと逸らした彩が、苦笑いして俺たちに見入っている姫宮と柚木園からすっと離れて美羽に接近。



「レンオー好きなんですかっ?」



「え……ま、まさか君も?」



マイナーなお気に入りを共有したヲタクは急速に仲良くなるの法則、発動。



「好きなキャラは?」



「……シルヴィア」



「やっぱりー? 絶対そうだと思ったんですよ! かっこいーし可愛いですもんねシルヴィア!」



「……ん」



嬉しそうに頬を赤らめて、喋りたいのに自制してる様子で口を小さく《△》の形にしてる美羽。
……おいおいなんかすげぇ好感度上げやがったぞうちの妹。

彩はによっと笑うと、



「彩、美羽さんともっとお話したいなー。……」



軽く屈み、美羽に何事か囁く。



「……ヒナの?」



「はい! 嫌じゃなかったら、ですけど。来週の―――」



「……ふ、ふん、奇遇だな。偶然、その日は《純血の薔薇(Crimson)》の任務も会合もない」



「やたっ」



「やたっじゃなくて助けろよそこの腐れ女ぁ―――!」



結局、クラスメイトとの心温まるスキンシップは「あ、やば予鈴鳴った」と全ての元凶が帰るまで続いたのだった。



……ほんと、何のために来たんだよこいつ。

241心愛:2013/01/13(日) 09:06:15 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
>>ピーチ

カッコいい兄と普通の妹、だったら妹可哀想だけどね←

彩の行動原理はお兄ちゃんにあり! ついでに面白いものにあり!

242たっくん:2013/01/13(日) 11:04:29 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
最新情報・・・
1992年発売のビジュアルアドベンチャー
孫悟空を落札しました。
今後も落札しますので宜しくお願いします

243名無しさん:2013/01/13(日) 11:38:20 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
>>1
とっとと金よこせ
持ってるんだろ?
お年玉もらったんじゃないのか?

2、3万でいいから持って来い

俺は夢を決してあきらめない そう教わった

244名無しさん:2013/01/13(日) 11:38:44 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
とっとと金持ってこいよ
脅しじゃないぞ

245ピーチ:2013/01/13(日) 21:03:49 HOST:EM114-51-209-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

至って普通の兄に普通の妹も可哀そうだと思うぞ!?

人はそれを死刑と呼ぶ! 台詞が面白いw←

246ちー:2013/01/13(日) 21:23:51 HOST:p3078-ipbf1807marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp
やっぱいいね^^
何回も読みなおしちゃう^^
比喩とかうまい具合に使ってるしね^^
普通の人が、うまい小説書こうとすると、ツンデレっぽくなるんだけど、ぜんぜん、つんでれっぽくないしね^^
(それいぜんに、ふつうのひとでもないかw神だねw)

247ちー:2013/01/13(日) 21:24:13 HOST:p3078-ipbf1807marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp
なんか上から目線でごめんなさい><
悪気はなかったので…

248心愛:2013/01/14(月) 09:59:54 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
>>ピーチ

まあね!
ただ劣等感の問題だよね(´ー`)
ここあ、基本美形ばっか書いてたから主人公が平凡ってちょっと新鮮w

ヒナのツッコミはリズム感を大切に書いてますありがとう!(ぇ



>>ちーさん

こっちにまでコメありがとうございます!
いやいや、自分なんてまだまだですよ←
アホなんだかシリアスなんだか良く分からない話ですが、ご愛読戴けたならとっても嬉しいですw

249ピーチ:2013/01/18(金) 20:10:56 HOST:EM114-51-30-88.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

劣等感w

あたしだったら美形か思い切って平凡以下にするかも←え

いやリズム感ありすぎだよね!

250心愛:2013/01/18(金) 20:52:14 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>ピーチ

平凡以下いっちゃうかw
美形に囲まれる平凡またはそれ以下っていうのはけっこう定番かもね←


ツッコミ担当には常識だけじゃなくリズム感……音楽的才能まで求められるのかもしれない(笑)

251心愛:2013/01/18(金) 20:52:44 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp

『ドッジボール』





そういや昔、“ドッチボール”と“ドッジボール”の違いが分からなくて混乱したっけ。
“ドッチ”は“ドッジ”の訛りらしいけど。
でも、俺だけじゃなく周りもよく混同してるのは田舎だからなのか、それとも全国でも普通のことなんだろうか―――なんてことは、今はどうでもよくて。



「結野さんベンチ座ってなよ」


「本番もみうみうは応援係でよろしくね」



「う……ではありがたく」



「お前ら美羽に甘すぎるだろ!」



来週から昼休みを使って、クラス対抗のクラスマッチが全学年で行われる。
その中でも、ドッジボールは男女とも強制参加の種目なので、休み時間にこうしてクラスで集まって、自主的に練習をしようということになったわけだ。



「えー、だって結野ちゃんにボール当たったら骨折れそうじゃん?」



「それはない。……多分」



へらへら笑っている春山。

……まったく、こいつは紳士なのか、ただの変態なのか。


ピーッ!


試合開始を告げる(特に必要ないけど、気分を盛り上げるための)ホイッスルが鳴る。



「よっしゃあかかってこい柚木園! お前の熱い思い、俺が全身で受け止めてやるぜ!」



……間違いない、ただの変態だ。



春山の敵サイドに立つ柚木園は『イラッ』と爽やか王子にあるまじき表情を浮かべ、



バシィッ!



待て待て待て当たったら美羽じゃなくても確実に致命傷だよねこれ!



「ふっ、甘い!」



爽やか王子を挑発したバカは、バビュンッと恐ろしいコントロール力でまっすぐ飛んできたボールを余裕のツラで避ける。いや取れよ。


さらに、妙な気を利かせた外野が再度ボールを柚木園に返し。



「……次こそ仕留める」



「いーねいーね燃えてきたぁ! 思いっきり抉るようによろしく!」



ボールよ割れろと言わんばかりのスピードで繰り出される攻撃を、これまた人外の動きでことごとく回避していく春山。
二人の争いに巻き込まれてたまるかい! とひたすら逃げ惑う内野。


あれ、おかしいな。ボールがナイフか何かの凶器に見えるよ。



「……まいちゃんと春山くん、仲良さそうだね」



「どこが!?」



あちこち走り回りながらも、むー、と何故か面白くなさそうな顔をしている姫宮。
……正気か?



大分息が苦しくなってきたところで。



「ストーップ! 柚木園対変態の試合になってるから!」



俺はたまらず全員に聞こえるようにストップをかける。



「怪我人出る前に二人退場! お前ら絶対練習いらないくらい上手いだろ!」



「えー! まだ一回も喰らってないのに!」



「まあいっか。あっちで美羽と話してこよっと」



そんなこんなで超不満顔のドMとまんざらでもなさそうな柚木園が抜け、『(ほっ)』という心の声を聞きつつ普通にゲーム再開。



「っと」



そこで飛んできたボールを腕を伸ばしてキャッチする。
とりあえず近い相手にぶつけようと振りかぶった俺と目が合ったのは、



「ひっ」



女子の集団、である。



「………」



投げれば普通に当たる。いくら俺がド下手だったとしても、絶対に、当たる。


でもさぁ!



「………うん無理」



あきらめた俺はげそっとした顔で外野にパス。



「ヒナやさしー!」



「かっこいーよ!」



途端に沸き上がる女子のおだて。
うん、悪い気はしない。


そんな感じでみんなが女子を避けるので、男子同士の潰し合いが続いた結果、どちらの内野にも女子しかいなくなってしまった。


仕方なく俺たち男子は力を加減して、軽く転がすようにして脚を狙ったりふわっと優しく投げたり。

そのうち、ボールが姫宮の手にぽすっと収まった。
外野の男子が、内野に向けて口々に叫ぶ。



「やばい姫にボール行った!」



「女子は普通に投げてくるぞ、逃げろみんな!」



『きゃー!』



「問題発言が聞こえたような気がするのは僕の気のせい!?」



そういや姫宮が残ってるのに、俺もサラッと『女子しかいない』って片付けちゃったよ。


結局、何回かゲームを繰り返しても、相手側に女子が何人いるかが勝負の分かれ目となっていた。練習も何もない。

……ドッジボールってこんな競技だったっけ?

252ピーチ:2013/01/18(金) 23:01:17 HOST:EM49-252-50-34.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いや違う何か違うぞ!?

あたしドッジボール大っ嫌いだけどそれでもなんとなく違うぞ!?

253心愛:2013/01/19(土) 12:18:41 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

これ半分実話w

ここあの学校の男子はレディーファースト精神に溢れたジェントルマンさんなので、女子にボール当てられなくてね(´ー`)
男子がボール持ってるときは女子は完全に安心しきってるという。


ここあは体育全般壊滅的だけどひたすら逃げるのだけは得意(~_~;)

254ピーチ:2013/01/19(土) 23:51:26 HOST:EM114-51-41-177.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いーなーいーなー←

あたしの学校じゃ男女お構いなしだよ一部の女子が無茶苦茶強いから!

そのせいで男子のボールに当たっても女子のボールに当たっても基本的に痛いというw

255心愛:2013/01/20(日) 10:04:43 HOST:proxy10049.docomo.ne.jp
>>ピーチ

女の子でも男子顔負けなくらい強い子っているよね(^-^;
かっこいいけど当たると痛い←

256ピーチ:2013/01/20(日) 17:09:47 HOST:EM114-51-128-112.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

確かにw

でもかっこいいより先にやっぱり痛い←

257心愛:2013/01/22(火) 20:17:38 HOST:proxyag069.docomo.ne.jp

『日永家のお客様』






「ようこそいらっしゃいましたー美羽さん! どぞどぞ」



「……お邪魔します」



薔薇のコサージュがくっついた小さな靴をきちんと揃え、緊張している様子でぺこっとお辞儀するゴスロリ少女。



「狭くて悪いけど」



「いや……良い家だと思う」



「そか?」



何故、生粋のお嬢様たる美羽が庶民感漂う俺の家なんかに来ているのか―――という話、なのだが。



「じゃあ彩は飲み物とか持ってくよ! ……その後は空気読んで若い二人に任せますしねむふふ」



「お前何歳だよ」



「ぇ、と……お気遣いなく?」



この彩が、いつの間にか勝手に美羽と“遊ぶ”約束をしてしまっていたらしく。

……全く行動が早い妹だ。

特に理由もないので反対することもなく、学校であらかじめ美羽に家の場所を教えておき、そのまま日曜の今に至る。



二階にある俺の部屋に行くために階段を上ると、数歩ぶん遅れて、遠慮がちでごく小さな足音がついて来る。



「で、ここが俺の部屋。適当に座って」



「……ん、む」



ちょこん、とミニテーブルの前に正座する美羽。


行儀が悪いことはもちろん承知だろうが、ちらっちらっと落ち着かなげに視線を走らせている。
お決まりの中二病台詞も出てこないらしい。


俺も、『自分の部屋に彩以外の女の子がいる』という状況は、なんか異常に緊張する。


とりあえず美羽の対面に腰を下ろし、胡座(あぐら)をかいてみた。



「……」



「……………」



……で……何、しろと?



「え、えーと……」



嫌な汗が噴き出てくる。

え、何こういうときどうすればいいの? 普通何するもんなの?



「……あー……課題でもやるか」



ピリピリと顔を引き攣らせていた美羽が、ほっとしたように息をついた。



「ぼくも古典の予習が済んでいなくて、ちょうど気になっていたところだった」



「あ、そうなんだ。俺は小テストの勉強してないけど」



「どうせ毎日あるんだし、小テストはそんなに真面目にやらなくてもいいんじゃないか? 授業前の休み時間で十分間に合うだろう」



「確かに……じゃあ英語の問題集でもやるか。古典の教科書貸す?」



「心配には及ばない。さあ―――我が呼び声に応じ、闇の淵より顕現せよ……!」



大仰なことを言いながら、持ち主の趣味を反映しまくった黒レースやリボンたっぷりのバッグから教科書やノートに文法書、電子辞書を取り出す美羽。
わざわざ持って来たのかよ。


カリカリカリカリ。


静まり返った部屋に、シャーペンを走らせる音とページをめくる音が心地良く響き、



「こ、これだから南高生は……っ!」



「彩? 何してんの?」



ドアを微妙に開けたまま、廊下でトレイを抱えた彩がガックリ膝を付いていた。

かと思えば、くわっと目を見開いて声高に主張。



「優等生にも程があるよ! テスト明けくらい勉強やめて遊びなさい!」



「いや、遊んでたら授業についていけないし。つーかすることないし」



「友達と遊ぶときにすることなんて、勉強以外にもいっぱいあるでしょ!? 雑談でもいいしさ!」



俺と美羽は顔を見合わせ、



「「―――まず他人と遊んだことがないから分からない」」



「悲しすぎるっ!」



彩、絶叫だった。



「一度も!? 休み時間とか最低限のお喋りはするよね!?」



「まず、クラスメイトとまともに話せるようになったの高校からだし。休み時間はずっと本読んでたし」



「ぼくもだな。勉強していても良いんだが、『さっすがガリ勉(笑)』などと陰で言われるのが嫌で」



「そうそう! 受験のときとか、図書室とかで隠れて勉強したなぁ」



「ああ、図書室はぼっちの《聖域(ファンタジア)》として相応しいと思う。五月蝿くないのと、ぼくの悪口を言ってくる低レベルな馬鹿がいないのがいいな」



「教室にいると気になるんだよなー。聞こえてないふりか寝てるふりしてやり過ごすけど、やっぱりねぇ」



「ふっ。ぼくも、寝ているふりから授業のチャイムが鳴って初めて目覚めたように起き上がるという流れの演技だけはプロ並みという自信がある」



「そんな話題で盛り上がるのやめてぇ―――!」

258ピーチ:2013/01/23(水) 20:41:10 HOST:EM1-115-14-104.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

そんな悲しい話題で盛り上がんないでぇー!?

分かるよっ彩ちゃんの気持ちよくわかるよっ!

いっくらあたしでも最低限の言葉くらい交わすよ!←

259心愛:2013/01/24(木) 16:50:18 HOST:proxyag085.docomo.ne.jp
>>ピーチ

彩が常識人に見えるというw
悲しい話題は結構すらすら出てきちゃうここあです←

260心愛:2013/01/24(木) 16:51:10 HOST:proxyag085.docomo.ne.jp







何故か彩がぎゃーぎゃーうるさい。



「や、だってすらすら長時間話せることってそれくらいだし……」



「どんだけ悲しい人生送ってるの!?」



俺の人生全否定された。

ちょっと落ち込んでいる俺の対面で、「話題か……」と考え込んでいた美羽がふと顔を上げ、顎に指を当てる。



「今までの学校生活といえば。今はもう関係ないが、給食のとき班で机をくっつける制度の是非について、なんてどうだろう」



「あー、俺の周りだけ不自然に隙間が開くんだよな。六人グループの真ん中の席とかになっちゃうとマジ地獄」



「給食は体育や英会話のペア活動、調理実習などに並ぶ一日で最も憂鬱な悪夢の時間だったな……」



「修学旅行とかの班決めもじゃね? 中途半端に優しい奴が『えーと……日永くんも、入る?』みたいなこと言ってくれちゃったりすると、そいつの周りから一斉に『は? お前ふざけんなよ』みたいな目で睨まれてんのとか見るとほんと罪悪感に駆られて」



「ダメだ……! この人たちほんとダメだ……!」



頭を抱える彩。



「とにかく自虐ネタ禁止! 普通の雑談しようよ!」



「普通に雑談してただけなんだけど……」



「同じく」



語れるレパートリーが貧困な上に偏ってるんだよ……。


「普通の話」って意識するとなんか逆に難しいような気がするのは俺だけ? 俺だけなの?



「……ちっ、二人きり作戦はあきらめるしかないかー。まぁ何しろドヘタレ世界代表のお兄ちゃんだし最初から期待してなかったけどさー」



「なにげに今小声で酷いこと言われなかったか俺」



「気のせいだよ気のせい! それじゃあ彩も加えたこのメンバーでガッツリトークしようぜ!」



「いや、お前まで来たらそれこそ共通の話題が」



彩が『にぱっ』と笑う。

……ああ、こういう顔するときのこいつは絶対にろくなこと言わな―――




「レンオーのアレクの見た目が微妙に柚木園さんに似てる件について!」




「分かるっ!」



「まさかの食いつき!?」



美羽が赤い瞳をキラキラさせて身を乗り出していた。
俺はちょっと引いて後ろへ下がる。



「さすがに体格や声は違うものの、雰囲気や顔立ちがそっくりだと前々から思っていたんだ」



「あとあと黒髪とか頭身の高さとか、大人の色気的なものとか!」



「今度は俺がアウェーかよ!」



分からない! こいつらが何言ってるのかまったく全然分からない!



「絶対アレクは鬼畜で美人な総攻めですよね!?」



「……攻め……?」



が、そこで美羽が眉間に皺を寄せる。

そして約三秒後、彩の正体をあっさり看破。



「君、さては腐女子か」



「はい、腐ってます! 納豆並みにねちょねちょに!」



「誇るな!」



「ちなみに、レンオーではアレユリ派ですよ〜」



「……ユリアスは男だろう」



うわ、なんか良く分かんないけど美羽がまともに見える。すげぇ。



「だからいいんじゃないですか! ……くぅ……! この勢いで一気にコッチの道に引き込めれば……」



「断固として阻止する!」



美羽まで彩の同類にさせてたまるかい!


と、その本人がこうきっぱり言い切った。



「そういった趣味に偏見はないが、これに関しては譲れない。アレックスの相手は主のシルヴィアだ」



「お、CP論争いっちゃいます?」



「いかないよ! 話すなら俺も分かるアニメにしろ―――!」



そんなこんなで、お菓子食べながらダラダラお互いの好きなアニメやらゲームやら漫画やらのことで喋っていたら、あっという間に時間が過ぎていった。


なんかヲタヲタしい話だけで何も特別なことやってないけど、こんなんで良かったのかな。



「ヒナ、今度来たときは布教用のBlu-rayを五巻まで持ってくるからコミック版で良く予習しておけ!」



「いえ結構です」



……ま、美羽が楽しかったならいっか。

261ピーチ:2013/01/25(金) 06:12:27 HOST:EM114-51-162-116.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの食いつきかw

てか彩ちゃん入ったらヒナさんの分かる話がなくなるんだー←

262心愛:2013/01/27(日) 11:23:58 HOST:proxyag060.docomo.ne.jp


『学活』





「今日の話し合いでは文化祭の出し物を決めてもらいます。後は春山君、お願いしますよ。……切実に」



「はいはーい!」



幸薄いオーラを纏った担任(50代前半、既婚。そろそろ頭頂部の環境が気になるお年頃)がものすごく心配そうな顔をしながら教室を出て行く。

それをビッシリと背筋を伸ばして座った皆が黙って見送り、足音が聞こえなくなるのを確認してから。



「はい自習タイム突入ー! 同時進行でテキトーに決めてくから、最低でも多数決だけは参加するよーに!」



『はーい』



実は文化祭実行委員である春山の指示にお行儀よく返事しながら、席を立つ音だったり筆記用具を取り出したりする音だったりが立て続けに響く。

実にこなれたものだ。



「去年までの出し物リストからパクるってことで異論ないっすかー? ないなら黒板に書き出してくよー」



『ないでーす』



……その中で、明らかに心ここにあらず状態の生徒が一人。

―――柚木園である。

頬杖をつき、ぼ――っと焦点の合わない瞳が虚空を泳いでいる。
悩ましげに寄せられた眉や、僅かに開いた唇からはいつにもまして壮絶な色香が立ち上っていた。



「まいちゃん? 大丈夫?」



隣の姫宮が心配そうにその顔を覗き込むと、パッと身を退いて取り繕うように笑う。



「だ―――大丈夫だからっ」



「……そう?」



一瞬だけ、妙に寂しそうな表情になる姫宮。
なんとなく気になって、俺も椅子を回転させて二人に向き合う。



「どしたの」



「あー、いや、なんでもないよ……ただ、ちょっと風邪引いちゃって」



柚木園は答えながら、安堵したように頬を少し緩めた。



「土日で治ったんだけど、まだ本調子じゃないのかも」



「無理すんなよ」



「ありがと。でも、劇の練習もあるから無理しないわけにはいかないんだよね」



「あ、結局やることにしたんだ」



「うん、部長さんに押し切られちゃって」



姫宮から逃げるように、柚木園は頑と俺だけを見ている。
美羽がちょっと心配そうに、姫宮を窺っていた。



「そこー、なんか意見あるー?」



そこで絶妙なタイミングで、春山が話を振ってくる。
柚木園も今日は特に火花を散らすことなく、「んー」と考え込み。



「メイド喫茶とかないの?」



「自分の欲望隠す気サラサラないだろお前」



クラスメイト女子のメイド姿が見たいだけなのは確実だ。



「喫茶店は学校全体で三クラスしかできないんだよね。それに準備も当日も大変だからおすすめはしない」



「えー」



黒板に書き連ねてある(意外なことに達筆だ)候補に目を通す柚木園。
アトラクションがメインらしいけど、お化け屋敷や劇、映画などの定番なものも―――



「……縁日?」



と、一つの項目を見て姫宮が首を傾げた。
春山はすぐに反応。



「お祭りみたいなのらしいよ。ヨーヨーとか射的とか、いくつか屋台出してさ。食べ物扱わなければ面倒もないんじゃねーかな」



「へー。楽そうじゃん」



俺の中学は文化祭なかったから分かんないけど、最近よくあるらしいしね、縁日。



「ヒナもこう言ってることだし、縁日でいーですか」



『異議なし』



こだわりゼロのクラスだった。

263心愛:2013/01/27(日) 11:25:01 HOST:proxyag093.docomo.ne.jp






「そんじゃ浴衣だけは各自用意ってことで。男子は甚平とか、最低法被(はっぴ)でも可」



「ゆ、浴衣!?」



美羽が顔色を変える。



「浴衣は本来湯帷子(ゆかたびら)といって風呂上がりに着る寝衣のようなものだぞ!? そんな破廉恥なっ」



「いつの時代の話だよ!」



「とにかくぼくは絶対に嫌だ!」



ぷっくーと不満げに膨れっ面。
勢いよくそっぽを向くと、長くて綺麗な黒髪がふわりと揺れる。


……なんて言うか。




「……美羽、絶対可愛いと思うんだけどなー。浴衣」




それでも、好きな子の、いつもとは違う姿を見てみたいっていうのが男心ってもので。
普段ふわふわしたゴスロリばっかりの美羽だけど、清楚な和装だって絶対似合うと思う。



「え」



カチンッと美羽が硬直。



「……………」



言葉が出ないらしく、あうあうと口をぱくつかせ、



「美羽?」



「ぅく……っ! 君はなぜそういう恥ずかしいことを素面で言えるんだ……!」



「え!? 嘘、なんか言ってた俺!?」



「なんでもないっ」



熟した林檎よりも赤い顔で、こほんこほんっとわざとらしい咳払い。


……え、マジで俺何言ってたの? 気になるんだけど。



『(……にやにや)』



「なっ、そっその目をやめろーっ!」



こっちを凝視したクラスメイトたちに向かって美羽がキレていた。
どうしたよ急に。



「ってそうじゃない! ぼくが言いたいのはだな……」



クラス中に注目されたまま、恥ずかしそうに俯いた美羽が打って変わってぽそぽそと小さな声で。



「……その……実は、家が衣料品関係の会社をやっていて」



本当は俺以上に、大人数に向き合うことが苦手だろう美羽は、四方八方から注がれる視線にスカートの裾をぎゅっと握り締めながらも、こう申し出た。



「衣装類なら、浴衣でもなんでも―――試作品で良ければ無料で提供することも、できなくはない」



おおっと教室が沸いた。



「ゆいのんそれマジでっ? 助かるわー」



「……ん」



満面の笑顔の春山から、照れたように視線を逸らす美羽。


……まさか、この美羽が学校行事に進んで協力するなんて。
やるじゃん―――と、俺もつい口元が緩んでしまう。


にわかに活気を帯び始めたクラスに便乗するように、柚木園が拳を握って立ち上がる。




「とにかく女子は全員浴衣ね! 絶対ね!」




あの憂いのポーズはどこ行った。
テンション高くのたまう柚木園に、姫宮がにこにこ笑いかける。



「楽しみだねっ、まいちゃん!」



「それはもう!」



爽やかオーラ全開、キラッキラした笑顔の柚木園。



「……うわぁ、墓穴掘りまくってるぅー……」



「今は言わないでおこう。当日……後には引けなくなるまで誤解させておいた方が面白い」



「黒いっすね美羽さん」



「ふん、彼女には色々と借りがあるからな」



衣装を全面的に美羽が用意するとなれば、奴も抵抗はできまい。



「くくく……今こそ、誉れ高き我が力を解き放つ刻……!」



「うん、可哀想だから手加減して解き放ってね……」



悪どい微笑と痛い台詞が初めてマッチした瞬間だった。

264心愛:2013/01/27(日) 11:49:52 HOST:proxy10014.docomo.ne.jp
>>ピーチ

腐女子妹と平凡男子と中二病女子だから仕方ないw


そろそろ苺花の話書きたいから、邪気眼少女の短編集作ろうと思います! 短編になるかは分かんないけど! 同時進行できるのか疑問だけど!
浴衣浴衣ーw

265ピーチ:2013/01/27(日) 14:30:33 HOST:EM49-252-73-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ちょっと待て美羽ちゃん苺花ちゃんに何着せるつもりだー!?

………とってもとっても珍しい組み合わせ、だよね…

浴衣ーw

266心愛:2013/01/28(月) 22:56:49 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ

男っぽい娘が女の子らしくなる話は結構好きだからがんばる←

…次からなんとまたまた新キャラ登場だよ! ただし超サブキャラだよ!


ソラの波紋はちょっとだけお休みします(o^_^o)

267心愛:2013/01/28(月) 22:59:39 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp


『結野邸』






「……美空先輩」



『んー? あ、次の角を左に曲がると見えるよ』



「俺、今ものすごい後悔に襲われてるんですけど」



高い塀に囲まれた、高級そうな邸宅が聳え立つ住宅街―――をさらに抜けた場所。
一応余所行きの服を引っ張り出してそれなりにお洒落してみたとはいえ、ド平民な俺が上品な風景から浮きまくっているのは明白だった。


やっとのことで結野家の敷地内に入っても、目の前に広がるのはだだっ広い庭園ばかり。
そして、その向こうに点みたいに見えるは長方形の洋館らしきもの。



「なにこれ家ですか? 家なんですかほんとに、美術館かなんかの間違いじゃなくて」



歩いて一周すんのに何時間かかるんだろう。



『あはは、確かに普通よりちょっと大きいかもだけど』



「ちょっとの基準おかしくないですかねぇ!?」



「お兄ちゃん、噴水が! 噴水があるよ!」



スマホを耳に当てる俺の隣では、シュガーピンクのマキシワンピース姿の彩がはしゃいできゃっきゃしている。
一人でこの豪邸に侵入するのはものすごく不安なので、正直彩がいるのは心底ありがたい。


……で、なんで彩と二人して結野宅をお訪ねしているのかと言いますと。

『今日家に来い』という主旨の、絵文字顔文字満載でやたらと小文字と改行を多用したメールが美空先輩から突然届いたのだ。
この前美羽が俺の家に来たから、今度は自分たちの所へ遊びに来たらどうか、ただし驚かせたいから美羽には内緒で―――という誘い。
迷っていたところ、それを嗅ぎつけた彩が自分もついて行きたいと名乗りを上げ、



『ちょうど文化祭で使う衣装、見てみたかったんでしょー? これくらいで動揺してどうするの』



「すみませんね小市民で」



と、こういう目的も含めて一大決心したわけだ。
ちなみに最初は運転手さんを寄越してくれるという話だったのだが、それについては丁重にお断りしておいた。だからこうして苦労しているのも自業自得といえば自業自得である。



『……っと。そろそろ切るけど大丈夫だよね?』



美空先輩がこう切り出したので、見えないことは分かっているけど小さく頷く。



「ええまあ、あとは家本体まで行くだけなので」



『頑張れ! 待ってるよー』



通話を切ってから十五分弱、時折視界を横切る噴水やら巨大な花壇の迷路みたいなのやらを見なかったことにしつつ、彩と二人してなんとかそれらしき白亜の建物に辿り着いた。


……でかい。とにかくでかい。



「お、お邪魔しまーす」



「マジでな……」



首が痛くなりそうなので見上げるのを諦め、アールヌーヴォー式のステンドグラスが嵌め込まれた両開きの扉を恐る恐る開ける。




「あ、圭くん! いらっしゃい!」




するとすぐに、トレイに数個のグラスを乗せた美空先輩がツインテールをさらさら揺らして、たたっと走ってきた。


可愛い、と綺麗、のちょうど中間くらいの、十代の少女の理想が具現化したような絶妙に整った顔立ち。
リボンがついたサテン地のショーパンにドットが飛んだパフスリのブラウスを合わせ、薄色が女らしいデニムのジャケットを羽織っている彼女はやっぱり問答無用に愛らし―――


って違う!



「そっちが彩ちゃんだよね? 初めまして」



「先輩危ない! 危ないから待っ!」




「……あ」




《とんっ》




ぎゃあ―――――!?




間もなく展開されるだろう惨劇から目を逸らそうとしたそのとき―――



黒い影が飛び出した。



しゅたっと華麗に跳躍、その人物は腕を伸ばして空中を舞っていたトレイを掴む。

空中で燕尾服に包まれたしなやかな肢体を捻り、アクロバット並みの身の軽さでバランスを取って。

トレイをくるりと鮮やかに反転させて構えると、まるで吸い込まれるかのように、とととととんっとグラスがその上に整然と乗っかっていく。



「ひゃ……わ」




「―――お怪我はありませんか、お嬢様」




最後に絨毯の上へ着地すると同時、前のめりに倒れ込んだ先輩自身をその胸で受け止めた。

268心愛:2013/01/30(水) 21:07:39 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp







「昴(すばる)!」



「ですから、私が致しますと申し上げましたのに……」



ため息をつく青年。

年の頃は二十代前半、すらりと伸びた痩身を黒の燕尾服で包んでいる。
柔らかに額へ掛かった漆黒の髪、ギリシア彫刻のように整った優美な顔立ちには適度な神経質さや誠実さが滲む。
透き通った鼻梁は涼しげで、淡いブルーに似た煌めきを放つやや細い双眸の印象も相俟ってか、どこか清潔感を感じさせる美貌の持ち主だった。



「「……か……かっけぇ―――!」」



思わず彩と二人でぱちぱちぱちと拍手喝采。
魔法のような神業をしてみせた青年はそれに我に返ったようにはっとして、端正な顔を赤らめる。



「お、お嬢様? あの、そろそろ……」



「あは、ごめんごめん! 助かったよ、ありがと」



恥ずかしそうに先輩をそっと引き離した彼は、一呼吸おいてから丁寧に腰を折る。



「大変失礼致しました。私、結野家にお仕えしている執事、一ノ瀬(いちのせ)と申します」



執事。
ということは、前に美空先輩を車で迎えに来ていた人だろうか。
遠目に見てもイケメンだったし、悲しいことに最近美形は見慣れてきたけど、近くで見るとまた一段と眩しい。キラキラだ。



「お嬢様と美羽様がお世話に―――」



「イケメン執事キタァ―――っっ!」



彩が唐突に絶叫。
興奮気味にハァハァ息を荒げて執事さんに迫る。



「ああっ白手袋と袖の隙間のチラリズム! 手袋を外す男の艶っぽさってもうたまんないよねってゆーかこの顔で執事とかもう狙ってやってるとしか思えないんですけど執事×主人萌えぇぇぇえええええ」



「あの……?」



「ただの持病なので気にしないで下さい」



困惑したように立ち尽くす一ノ瀬さん。
うん。この人には、俺と同じカテゴリー……貴重な常識人キャラの気配を感じるよ。



「は、はあ……そうですか」



曖昧な笑顔で頷いた後、一ノ瀬さんは急に怪訝そうな顔になって手にしたグラスを覗き込む。



「ところでお嬢様。こちらは」



「アイスコーヒーだよ。ちゃんとミルクもつけたし」



胸を張る美空先輩を疑わしそうに窺いながら、鼻を液体へやや近づけ、パタパタと白手袋に包まれた手で仰ぐ。
教科書通りの、正しい薬品の嗅ぎ方だ。


そして綺麗な弓なりの眉を寄せ、



「……失礼」



おもむろに立ったままグラスを一つ掴み、口元に寄せてくいっと軽く傾ける。
その様は完璧に優雅、思わず惚れ惚れしてしまいそうに上品だったが、



「けほっ!?」



むせた。


しばらく喉に手をやって、うっすら涙を浮かべて苦しそうに咳き込み。




「―――めんつゆではないですかっ!」




「「めんつゆぅー!?」」



めんつゆってあのめんつゆ!?
しかも原液ってこと!?



「う、嘘でしょ……っ?」



「お嬢様……皿を持てば必ず落とし、未だに十分の九の確率で砂糖と塩をお間違えになるお嬢様に過度な期待はしておりませんが、せめて容器で判別できるようになって下さい……」



沈痛な表情で額に手を当てる一ノ瀬さん。

なんだろう。近寄りがたい雰囲気の二枚目なのに、何故かすごい親近感わく。



「ごめん……」



さすがにしゅんとしてしまう先輩。
一ノ瀬さんは慌てたように頬を火照らせ、



「い、いえ、私もつい言葉が過ぎました。申し訳ありません」



僅かに視線を逸らして謝罪して、それから気分を入れ替えるようにすうっと小さく息を吸ってから。



「ではお嬢様、お客様にお出しする飲み物は私にお任せ下さい。お嬢様は―――」



「だ、大丈夫だよ! 今度はちゃんとやるから!」



「いやいや絶対大丈夫じゃないですって! もう少しでめんつゆにミルク掛けて美味しく戴くところだったんですよ俺たちっ!?」



一ノ瀬さんが犠牲になってくれていなかったらどうなっていたことか!

269心愛:2013/02/01(金) 23:46:17 HOST:proxy10043.docomo.ne.jp






揉め出しそうになったとき、すかさず彩がぴょんっと手を挙げた。



「じゃあ、彩が美空さんをお手伝いするってことでどうですか? お話ししたいこともありますし」



さすがは彩、美空先輩の残念な特性をこの短時間できっちり把握したようだ。



「いえ、お客様にそんなことをして戴くわけには」



「本当!?」



一ノ瀬さんを遮って先輩がパッと顔を輝かせる。



「あたしも、彩ちゃんと色々お話ししたかったの!」



「これから長いお付き合いになりそうですしね〜」



「ねー!」



初対面にもかかわらず謎の意気投合を遂げる二人。
一ノ瀬さんが嘆息する。



「では、お言葉に甘えて。申し訳ありませんがお嬢様をよろしくお願いしますね」



「りょーかいです!」



「あたしの方が年長なのに……」



ちょっと不満そうな先輩の台詞にはノーコメントだ。



「……お兄ちゃんお兄ちゃん」



「んだよ」



と、彩が爪先立ちをして、小さく『あること』を俺の耳に囁いた。
それから顔を離して、黙ってにこっと笑う。



「……お前やっぱこういうときだけは鋭いよな。怖いくらい」



「失礼だなぁ」



「彩ちゃん、行くよー! 昴、圭くんの案内頼んだからね」



「確かに」



「はーい!」



美空先輩の後について、へらへらした笑みを残して彩が歩き去る。



「それでは日永様、美羽様のお部屋の前に衣装部屋へとご案内させて戴きますね」



「あ、はい」



サッと細身を翻す一ノ瀬さん。
シャンデリアや鮮やかな壁画、足元の絨毯に白塗りの階段―――なんて一般人離れした豪奢な光景に自然と溶け込んでしまっている彼は、やっぱり文句なしに格好良い。


そんな一ノ瀬さんに―――俺は極力小さな声で、ぼそっと訊いてみる。




「一ノ瀬さんって……美空先輩のこと、好きなんですか?」




「……………」



みるみるうちに、綺麗な肌全体がぶわわっと赤らんでいく。
イケメンは赤面してもイケメンだ。



「あ、やっぱりですか」



「お、お願いします! どうかこのことは口外なさらないで下さい……っ!」



声を潜め、真っ赤な顔で必死に頼み込んでくる一ノ瀬さん。
クールなデキる大人の男、って感じの見た目とのギャップがものすごいことになっていた。



「このことが旦那様に知られれば、私は解雇されてしまいます……!」



「大丈夫ですよ。約束します」



使用人さんってのも大変なんだなぁ。



「……それで、あの。実は私も気になっていたのですが」



動揺を隠せない様子のまま、一ノ瀬さんが遠慮がちに言葉を発した。



「ご自身の世界に籠もりがちでいらっしゃる美羽様にご学友ができたのは喜ばしいことなのですが……日永様は男性ですし、お嬢様は妙にはりきっていらっしゃいますし……」



勘ぐってしまい申し訳ありません、と軽く頭を下げてから、そっと俺の目を窺い見る。



「失礼ながら……日永様も、もしかして、その、美羽様のことを……?」



「……まあ、そんな感じです」



肩をすくめ、苦笑いを返す。


普通の人が相手なら反発するところなのかもしれないけど、そういった感情は全然沸いてこなかった。
この人は良い人だっていう直感から、少なからず好感を持ってしまっているんだと思う。


究極ドジ天才娘と邪気眼電波娘。

厄介な姉妹に惚れてしまった仲間だ。


思わず握手を求めると、笑って応じてくれた。



「昴さん? って呼んでいいですか。 俺も圭で」



「もちろんです、圭様」



「お互い絶対苦労しますけど頑張りましょうね」



ついハイテンションになってしまった俺に、




「……ええ……私の方は、報われることはありませんけれど」




昴さんは、ふっと大人びた、寂しげな微笑を向けた。
声が切なさを帯びる。



「お嬢様は頭のよろしい方。何もないように振る舞っていますが……私の感情など、とっくの昔から察していらっしゃるでしょう」



拒絶、ですよ。と自嘲の笑みの形に口端が上がる。

270ff:2013/02/02(土) 00:01:21 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
↑お前ホントバカだな
何のスレこれ?頭悪いんじゃないか?

271ff:2013/02/02(土) 00:01:58 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
俺がこれから面白いスレ立ててやるよ
このサイトの住民を出演させてな

272ピーチ:2013/02/02(土) 12:47:28 HOST:EM114-51-61-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

めんつゆー!?

ちょっと待て美空先輩何をどうしたらめんつゆとアイスコーヒー間違えられるんですかっ!?

一ノ瀬さん頑張ってくださーい! 美形ならいける!←

273心愛:2013/02/02(土) 14:23:10 HOST:proxy10014.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ピーチー!(涙)
最近いないなー…いないなー…って寂しかったんだぞ! 実はそんなに時間たってないけど!


めんつゆw

昴は美空の超絶ドジのほぼすべてをフォローしてる哀れな奴だよ(*^-^)ノ
レイさんが空気系残念執事なら昴は苦労系万能執事?(´ー`)

どっちも苦労してますがw


昴は超脇役なんだけど、美空と昴の話も番外編でちゃんと書きたいなぁ←
これが完結してからだけどね!

274心愛:2013/02/02(土) 23:05:45 HOST:proxy10010.docomo.ne.jp







「いずれ旦那様の会社を継ぐお嬢様はいつか、しかるべき婚約者をお持ちにならねばならないのですから。執事如きのくだらぬ懸想などを一々気にとめる訳にはいかないのです」



昴さんは重苦しい息を吐き出し、眉を下げて笑った。



「……つまらないことを話しました」



スッと型に嵌った一礼、再び顔を上げて微笑する。



「申し訳ありません。お嬢様だけでなく、私も少々浮かれていたようですね……お許し下さい」



この話はこれで終わり、というサインだ。



「いえ……そんな、全然」



大事なとこで抜けてるけど、その実自分―――または美羽―――の利を優先して動くことができる、一種の狡猾さを併せ持つ美空先輩。
そして、彼女を陰で支え、一途に赦されない想いを寄せ続ける心優しい昴さん。
婚約だの会社だの……その事情は、俺なんかには到底想像できないくらい複雑なんだろうけど。


それでもこの二人には、どういう形であれ、幸せになってもらいたいな―――なんて、こっそり勝手に思ってしまった。



「随分とお待たせしてしまいましたね。行きましょうか」



「あ、お願いします」



頭を本来の目的へと切り替える。



時折すれ違うメイドさん(!)と挨拶を交わしながら階段を上がり、高い天井の廊下を歩くことしばらく、一つのドアへと辿り着いた。


昴さんが鍵を開け、中に招き入れてくれる。



「うーわ……!」



思わず声が上がった。


室内を埋め尽くす衣桁には、所狭しと掛けられているおびただしい量の華やかな着物の数々。
この衣装部屋の面積だけで、俺の部屋の何倍あることか。



「浴衣と帯はこちらに。どうぞお好きなように、お手に取ってご覧下さい」



「や、俺は良く分かりませんから……」



必要なさそうだけど、一応クラスで使える代物かどうか軽くチェックしてみる。


鮮やかな色とりどりの染糸で描かれるのは桜、椿春蘭、梅、牡丹、藤、菊、楓。
花以外にも小鳥、霞、月、金魚、揚羽蝶と趣向が尽きることはない。

紺や黒、薄墨を基調に青竹、露芝などの模様が織り込まれた男性用の浴衣の種類も驚くほど豊富だ。



「……やっぱレンタル料とか払った方が……」



「まさか。あくまで試作品で売りに出せるようなものではありませんので、こんなもので良ければお好きなようにお使い下さい、と旦那様も仰せです」



「そ、そうですか」



これが全部試作品……。
普通に売っちゃえばいいのに、とか考えてしまうのは俺のたゆまぬ庶民感覚ゆえか。



「……あ、昴さん。ちょっと訊きたいんですけど」



「はい」



「昴さんの主観で、この中で一番可愛いって思うのとかあります? 深く考えなくていいんで」



「……は」



ぽかんとしてしまう昴さん。



「か、可愛い……ですか?」



おろおろと視線を彷徨わせ、昴さんはたっぷり迷った末に、「これ、でしょうか……」とある一着を差し出す。


俺はそれを受け取って確認。



「―――なるほど、じゃあ早速美空先輩に着てもらうように頼んで来ますね!」



「圭様っ!?」



瞬く間に真っ赤に茹で上がり、ちょっと涙目になってしまう昴さん。

いやぁ、大人の男性でこんなにいじりがいがある人もなかなかいないんじゃなかろうか。



「冗談ですって、そもそも俺美空先輩の居場所知らないし」



「心臓に悪い冗談はおやめ下さい……」



すみません、と笑いながら謝って。



「文化祭で女装コンテストっていうのがあるらしくて、友達が出るんですよ。本人には可哀想だけど、クラスの宣伝のためにもとにかく可愛さ重視の浴衣を探してて」



「は、はぁ……。女装……」



昴さんがコメントに窮している。
今は体格的に無理があるかもだけど、俺たちと同じ年頃だったならキレイ系の彼にさぞ似合いそうだ、女装。



「最後まで抵抗してたんですけど、ファンクラブの皆さんと実行委員長に土下座して頼まれて、結局押し切られちゃったんですよね」



「そ、それは……大変ですね」



「むしろあいつなら超テキトーな部屋着で立ってるだけで優勝間違いなしですけど、念のためってことで」



「……どうやら美羽様のご学友には、愉快な方が多いようです……」



遠い目をした昴さんの呟きは聞かなかったことにした。

275ピーチ:2013/02/03(日) 09:37:40 HOST:nptka204.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

ここにゃーん! あたしも来たかったよー!

ごめんね最近休みの日でないと来れなくなっちゃってるよー!

…ヒナさんが誰かをいじってるの初めて見た気がする……←

276心愛:2013/02/03(日) 16:18:51 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そっかー(つд`)

無理しなくていいけどいつでも待ってるよw


いじられ役からヒナ脱却……はならないけどね!

277心愛:2013/02/03(日) 16:19:48 HOST:proxy10018.docomo.ne.jp







《コンコンッ》



「美羽様、失礼致します」



「……一ノ瀬か? ちょうど良かった、ロイヤルミルクティーを持ってき―――」



お姫様みたいな天蓋付きのベッド、白レースのカーテンなどのふわふわした可愛らしい家具が目を引くだだっ広い部屋。

その中心で折れそうに細い足をぱたぱたさせ、ソファにうつぶせに寝っ転がった状態で超巨大なスクリーンから目を離した小柄な美少女―――美羽が、昴さんの隣に立つ俺を見るなり赤い瞳をいっぱいに見開いてフリーズした。

やっぱり家でもゴスロリなのね……。分かってたことだけど。



「……な、……っんでヒナが家にいるんだ!?」



薔薇色の唇をわなわな震わせて勢い良く跳ね起きると、辺りに散らばっていた艶めく黒髪がぴょんっと踊る。



「美空先輩に呼ばれて。……え、嫌だった?」



なんかすみません。



「い、いや、では、ないが……っ、こっちにも心の準備というものがだな……!」



何故かソファの上で後ずさり、顔を赤くして膝を抱え、拗ねたような声色で小さく何事かを言う。



「美空も美空だ! ぼくに黙ってヒナと……なんてっ、一体何を考えているんだかっ」



「俺と?」



「うるさい!」



理不尽にキレられていると、にぎやかな二人分の声がだんだん近づいてきた。



「彩ちゃん、やっぱりあたしが持っ」



「いいんですいいんです、このくらい任せて下さい! ……あ、お久しぶりです美羽さん! お邪魔してます!」



「美羽ちゃんやっほー! お姉ちゃんが遊びに来たよー」



今度はちゃんとした飲み物らしきグラスを持った彩と、シスコン全開の美空先輩だ。
昴さんが道を譲り、一歩後ろへ下がる。



「誰が遊ぶかっ!」



「ちぇー。じゃあ彩ちゃん、さっきまでの話の続きでもしてよっか」



「りょーかいです! じゃあじゃあ美空さんからどうぞ」



「はーい。美羽ちゃんってば五歳のとき、お風呂にボディーソープを大量に入れてお母さんにすっごく怒られたの! 『だってお姫様気分になりたかったんだもん!』って泣いちゃって……可愛かったなぁ」



「な―――」



美羽が絶句する。
続いて彩が軽いノリで挙手。



「ではでは次は彩の番ですね! お兄ちゃんって小さいとき、コンビニとか色んなお店に入ったら必ず、『お邪魔します』って言ってたんですよ〜。店員さんが良く笑ってました」



「あははは何それ圭くんかわいー! ……あ、そうそう、美羽ちゃんもねー、いまだに猫さんのぬいぐるみと一緒じゃないと眠れな―――」



『身内の暴露大会開催するなぁぁあああああ!?』



何この公開処刑ふざけんなし!

278心愛:2013/02/03(日) 16:21:05 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp







「つ、付き合ってられないな……!」



「全く同意見」



まだ楽しそうに喋りまくっている二人は全力で無視することに決め、居たたまれない空気を何とかしようと口を開く。



「……何見てたの? DVD?」



「……ん」



スクリーンに映った制止状態のアニメには、見覚えのある銀髪の少女の姿。



「あ、好きなんだっけ。このキャラ」



こくんと頷き、リモコンを操作する美羽。

無言の視線に気圧されて、俺もちょっと離れてソファの隣に座る。観ろ、ってことらしい。


すぐに音と台詞が流れ出し、画面が切り替わる。



『汝、奈落の淵より来(きた)る者。我への従属を誓え』



『―――仰せのままに、俺の姫君』



少女が差し出した血が滲む指先を、跪いた青年が口に含む。
微妙にエロいシーンだけど……もしかしてこれが美羽が言ってた、契約の儀とかなんとかってやつかな。


……ほんと、握手で済んで良かった……。

しみじみと己の名案のありがたみを噛み締めていると。





「―――強いから」





画面を見たまま、美羽がぽつりと呟いた。




「……だから、好きなんだ」




不思議なくらいに凛と冴えた横顔は、妙に綺麗で、儚くて―――きゅっと胸が締め付けられる。
アニメに夢中になってるだけで、今の台詞に深い意味なんてないはずなのに。


どうしてだろう。
一瞬―――昔の“ミウ”の笑顔を、思い出した。



「圭様」



ぼんやり考えていると、いつの間にか近づいていた昴さんが、軽く屈んで囁いてきた。



「この春から、美羽様はまるで別人のように明るくなられました」



目が合うとにっこり笑って、美羽に気取られないように小声のまま。



「圭様や、クラスの方々のお陰です」



「……だと、いいんですけどね」



本当に、そうだったらいい。
ダラダラしたり、喋ったり、笑ったり。



一緒と過ごすこの時間を、美羽が本当に楽しいって思ってくれるためだったら。


俺は多分、どんなことでもできる。……そんな気がするんだ。



「ふっ……同じ吸血姫(ヴァンパイア)の姿を見たら、何だか血に飢えてきたな……」



「トマトジュースでも飲めば?」



「あんなもの飲めるか! 全然甘くないじゃないかっ」



俺たちは今日もバカみたいにふざけあう。



「美羽様、ジュースはともかく野菜類はきちんとお摂りになるべきです」



「そうだよ美羽ちゃん! ただでさえ全然食べないんだから、またすぐ倒れちゃうよ!」



「貧弱少女萌え……うぇへ……」



「うるさい黙れ!」



「最後の以外は正論なんだからちゃんと聞き入れなさい!」



―――こんな他愛なくて愛しい日常の、終わりがずっと、来ないことを願って。

279ピーチ:2013/02/03(日) 17:30:27 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさん目指せいじられ役脱却!←

あれ、何でだろう…何か美空先輩と彩ちゃんがソフィア様に見えるぞ……

一ノ瀬さんもいい人だよねー!

280心愛:2013/02/03(日) 17:42:55 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ちょいブラックソフィア降臨?(笑)
昴は分かりやすくいい奴だよ!


新しく始めたんで、苺花主役の番外編もよろしくお願いします(o^_^o)
ちょっとこっちは後回しかな。
あとソラの波紋も更新やんなきゃ(´ー`)

281ピーチ:2013/02/03(日) 17:57:02 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ほんのちょっとだけ降臨?←

昴さんいい人だよー! みんないい人だけど一際いい人だよー!

苺花ちゃんの番外編もソラの波紋も気になるっ! 待ってるねー!

282心愛:2013/02/03(日) 21:12:20 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
>>ピーチ

昴はユリアスと同類かなw いい人!


ありがとうごぜぇます…!(涙)
ごゆっくりお待ちを( ^-^)_旦〜

283名無しさん:2013/02/09(土) 10:02:57 HOST:EM114-51-170-28.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ユリアス様優しいよねっ! 分かるよ!

あれ、レイさんもいい人のような気がしてたんだけど……←

284心愛:2013/02/09(土) 17:56:47 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、レイさんもいい人だよ!
っていうかみんないい人なんだけど、それぞれキャラがみょーに濃いからね(つд`)

レイさんは影薄いって特徴が大きすぎるからつい「いい人」のカテゴリーに入れ忘れるw

285心愛:2013/02/11(月) 11:27:58 HOST:proxyag068.docomo.ne.jp


『文化祭』






「第63回、南高文化祭っ!」



「はっじまっるよーっ!」



『うぉぉおおおおおおおおっっっ』



オープニングセレモニー……なんて名前だけ妙に格式張った開会式。
約千人が集う体育館は、大変な騒ぎとなっていた。


これだけのエネルギーがどこから沸いてくるのかと不思議に思うくらいの熱狂ぶり。
あちらこちらで誰か(うちのクラスではとある変態男)の煽りによるウェーブが生まれ、拳を突き上げ足を踏み鳴らす男子生徒たちの絶叫が、体育館を壊しそうなほど激しく揺さぶる。

いつもは男子のテンションに苦笑い気味の女子も一緒になって叫び、笑い、手拍子で壇上の実行委員長と司会者を応援。



「……熱気だけで死にそうなんだが……」



「死ぬなよ貧弱娘!」



が、この異様な空気に溶け込めていない人物が一人。

人混みに酔ったらしく、美羽が虚ろな目でふらふらしている。
さすがに真夏で長袖ゴスロリじゃ無理があるよ。



「ひゃ」



「大丈夫!?」



振動によろけて倒れ込みそうになったが、小さな身体は柚木園の腕にぽすっと収まった。



「わ、悪いな……」



そそくさと離れようとする美羽に、柚木園は至近距離で妖しい笑みと共に囁く。



「今だけじゃなくて、ずっとこのままでもいいんだよ……?」



「謹んで遠慮させてもらおう!」



今日も王子様全開の柚木園は、この前の物憂げな様子に比べて少し吹っ切れたように見える。
それはこの場に、『あいつ』がいないことと関係……あるのだろうか。



隣でも怒鳴りあわなければ声が聞こえないほどの喧騒の中、漫才みたいなノリの二人の司会がボケつつツッコミつつ式を進行していく。



「校長講話ぁーっ!」



『フォォ―――ウ!』



……なんかもう、何でもいいらしい。
校長が席を立っただけで拍手が巻き起こり、会場が無駄に盛り上がる。



「えー、みなさん」



しーん。

これだけ生徒が熱心に校長の話を聞くことって、正直もうないんじゃないかな。




「この場で長い話をしても仕方ありませんので、一言だけ。……南高の歴史に恥じない、最高の文化祭にしましょう!」



『ヒャッホ―――ウ!』



空気を読んだ彼が速やかに退場するのを「校長先生ーッ」「愛してるーッ」とか歓声を上げて見送り、むしろ生徒より暴徒という表現の方が適切なんじゃなかろうかと思うくらいにテンション最高潮になったみなさんがさらにエキサイト。

生徒会長挨拶と実行委員長挨拶も、こんな感じで進んでいった。

かく言う俺も、冷静に分析しているように見せながらも実はちょっとわくわくしてたり。
会場全体の「お祭り気分」に呑み込まれてしまったらしい。

美羽も文句を言いながらもそれなりに楽しそうだし。



「では続いていきましょう、軽音楽同好会とダンス同好会のみなさんでーす!」



『ヒュオオオオオオオ―ウッッ』



―――が、すぐに「……」と微妙な顔になった。



ステージに上がった数十人のうち、前に進み出た一人の少女の名が叫ばれる。



『MI・KUッ! MI・KUッ!』



もちろん、頭の両側に艶やかな黒髪を流す彼女は美空先輩。
チアガール風の衣装に包まれた愛らしくも美しい姿を見せつけるように堂々と立ち、華やかな笑顔を振りまいてひらひら手を振ってみせる。


足場もしっかり、マイクを力を込めてその右手で握り。

ぺこっとお辞儀はするものの、いつぞやのようにマイクに額をぶつけたりはせずに一定の距離を保ったまま。


……これはいけるかも、と思わず拳を握ったそのときだった。





「―――みなさん、こっっ」




突然美空先輩が片手で口を押さえ、上半身をくるりと回れ右。



「…………〜〜…っ!!」



……舌、噛んだらしい。



涙目で声にならない悲鳴を上げる彼女は、何というか、とても痛々しかった。




「がんばれ美空ちゃんー!」



「めげるなー!」



が、観客の女生徒からの温かい声援が飛び、男子もそうだそうだと大合唱を始める。



「……ありがとうございますっ! ええと、今から踊る曲は―――」



それを受け、恥ずかしそうに顔を染めた美空先輩が明るく笑った。

286心愛:2013/02/11(月) 11:30:08 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp






短い説明が終わると、軽音楽同好会のみなさんが演奏する曲が流れ始める。


すかさず俺はムービーモードにしたスマホを掲げた。……機会があったら昴さんに見せようっと。



スッ、と先輩が黒に透き通る双眸を細めた。
セクシーで大人びた表情。
手や脚を滑らかに伸ばし、細い腰を女豹のように揺らす。


全員がぴったり綺麗に揃った身振り手振りはまさに圧巻。


激しくカッコいいロック調のリズムに陶酔させられているうちに、やがて曲が終わりを迎える。



……なんと転ばなかった!




『おおおおお……!』




驚嘆のどよめきが沸き上がる。


どや! と頬を火照らせ、美空先輩は美羽そっくりの得意げな笑みを作った。



「ありがとうございましたー! ダンス同好会は明日、ホールで発表を行います! ぜひ来てくださいね!」



ダンス同好会のみなさんが一斉に礼をし、美空先輩が喋っている間にぞろぞろと退場。


脇にスタンバイしていた実行委員にマイクを預け、大歓声を浴びながら笑顔の美空先輩がステージの階段に足を掛けたその瞬間、





《ずるっごろごろびった――――――んっっっ!》





『…………』



……やっぱり美空先輩は美空先輩だった。



美羽が痛ましげに顔に手を当て、柚木園がリアクションに困ったように立ち尽くし、春山が「救急箱救急箱っ!」と慌ただしく叫ぶ。

俺は色々悟りきった物悲しい思いを胸に、今までの様子を撮影していたスマホをゆっくりと下ろした。


主に部活仲間による手厚い介抱を受けてひとまずダメージを回復した美空先輩が半ば引きずられるようにして消え去った後、気を取り直すようにしきりに汗を拭きながら司会が再度登場。



「え、ええーっと! それでは時間も少なくなってきたことですし、毎年恒例のこの行事、いってみましょうか!」



本当にピンチに陥ったとき、人間は本能的に結託するらしい。
司会の精一杯の努力に応え、『おおおー!』と若干無理矢理ながら、会場をもう一度盛り上げる。



「みなさんご一緒にー! せーの、」




『女装コンテストー!』




「女装が恒例の学校なんて嫌だーっ!」



俺の叫びは鮮やかかつ華麗に無視された。


ちなみに正確に表記すると『じょーそーうーこーんーてーすーと〜!』である。
某国民的キャラクターの不思議ポケットを持つ青いタヌキみたいな生物の声を思い起こさせるノリだった。



「なんで男装コンテストがないんだろ」



もしそうだったら優勝確実なイケメン女が不満そうにぼそっと呟く。



「やっぱ男女比の問題じゃね? 男装は女子にしか需要がないだろうし」



美羽が苛立たしげに床を蹴った。



「ほら、そんなことより『彼』が出るだろう。見なくてもいいのか?」



「そうでしたねー……」



ステージに視線を移す。



意外なことに、そんなに気持ち悪くない。
思いっきりネタに走っているガタイのいい男もたまに混じってるけど、どこから調達したのかちょっと気になるセーラー服や、喫茶店の制服らしいメイド服、劇の衣装。
本当に女の子みたいに小柄な子とか、思わずドキッとするくらい綺麗な人が予想外に多い。

アピールタイムでは自分のクラスの出し物を宣伝する人が大半で、恥じらった感じで手を振ったりなんかすると体育館が熱い叫びで満たされる。




「それではいよいよ大本命のこの方!」




「一部から圧倒的な支持! エントリーナンバー8・姫宮さん、どうぞっ!」




……空気が、変わった。



情欲を誘う、ちらりと覗く細い足首。
やや俯き、何かに耐えるようにきゅっと唇を噛んだ『彼』が一歩を踏み出すたび、紅潮した頬を栗色の髪が柔らかに撫でる。
白菊、紅牡丹、桜の花片が散る薄紅の浴衣がまた、その可憐さ、愛らしさを助長していた。



……ごくり。



司会までもがアピールタイムを告げるのも忘れて見惚れる中。
マイクを両手で握りしめ、ぎゅっと目をつむって一言。





「―――僕は女の子じゃありませんっ!」





―――こうして、優勝、金賞、銀賞、審査員特別賞を根こそぎ一人でかっさらった男・姫宮夕紀は、南高の伝説となった。

287名無しさん:2013/02/14(木) 05:27:12 HOST:EM114-51-138-2.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

美空先輩ー!? 痛いよそれ絶対痛いよっ!?

…優勝に金賞に銀賞に審査員特別賞……凄いですね、うん

288心愛:2013/02/14(木) 18:14:23 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp
>>ピーチ

階段でつまずく→転げ落ちる→顔打ちつける(´ー`)

ここあも小学校の卒業式の練習で、全校生徒の前で体育館の入り口に突っかかって思いっきり顔面からコケたことがありますけどねw
あれは恥ずかしかった…w


夕紀、優勝の中の優勝でございます(o^_^o)

289心愛:2013/02/14(木) 18:15:11 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp







1日目の今日、一般公開は11時から16時半。


南高伝統の文化祭は、毎年二日間で6000人以上が来校するというなかなか大規模なものだ。
いかにもテキトーな雰囲気で始まったとはいえ、本番前では否が応でも気合いが入る。


縁日ということで、教室の周りに黒幕を引き、風鈴や折り紙、団扇(うちわ)などで飾り付けることでなんとかそれっぽさを演出。
ヨーヨー掬いや射的、輪投げにくじ引きなどの出店が壁を埋めるようにずらりと並ぶ。
景品はコストを抑える目的で、お菓子の詰め合わせが中心となっている。


一般公開の時間が刻々と迫る中、俺たちは最後の仕上げに取りかかっていた。



「お待たせー」



「ヒナー、みうみうってば可愛いんだよ見て見て!」



「な、なんなんだ君たちはっ」



……っていうのは着替えタイムのことなんだけどね。



教室に入ってきた、浴衣姿が華やかな同級生に抱えられてじたばたしている美羽が目に入る。

もちろん、普段は誰に何と言われようと自分のこだわりであるゴスロリを貫き通す彼女も、今日ばかりはきちんと浴衣を身に着けていた。


銀糸と白、茜、黄金(こがね)の染糸を使った色とりどりの揚羽蝶が桜草に戯れる、深い瑠璃紺の逸品。
レースとフリルをこよなく愛する美羽らしく、珊瑚珠色の帯や袖には繊細なラッセルレースが縫い取られている。


でも何よりも強調したいのは―――ふさふさした黒い猫耳。
カチューシャなんだろうけど、彼女の黒絹のように光沢のある髪と同化して、本当にひょっこりと頭から生えているみたいに見えた。



こ、これは……。




「……私、実はぬいぐるみとか大好きなんだよね」



「わ、も、もふもふするなっ! ぼくはぬいぐるみじゃないぞっ!」



小声で何か口走り、キラキラした目で猫耳浴衣娘と化した美羽を捕捉したかと思えば、ぎゅーっと抱きついて撫でまくる柚木園。……いいなぁ。


「浴衣が崩れるっ!」と暴れて抵抗、なんとか柚木園の手から脱出した美羽は、それだけで体力を使い果たしたらしくぜぇぜぇ荒い息をしながら俺の後ろへと退散。


それでも近づこうとする女子共に、シャーッと毛を逆立てた猫みたいに威嚇する。



「……似合ってるよ、それ」



「……………ふん」



正直可愛すぎて困ってますなんて本心を包み隠さず暴露したらまず引かれるので、とりあえず当たり障りない感想を言ってみる。
美羽は背後でもそもそと身じろぎし、



「君も悪くないんじゃないか?」



「そう?」



まあ、調達したのは美羽だしね。

ちなみに浴衣が入っていた段ボールに、大してお洒落にお金を使わない俺でさえ知っているような、ここ数年で一気に台頭した某・超大手アパレル系会社のロゴが入っていたのは気のせいということにしておいた。俺の精神衛生上よろしくない。



「ゆいのんかわいーね! ヒナもかっこいいよ」



そんな嬉しいことを言ってくれるのは姫宮だ。
彼が身に着けているものといえば桔梗色の染めに白の細い縦縞―――明らかに男物である。



「あのままでよかったのに」



「ぜっったいにいや!」



ぷっくーと膨れる姫宮。
でもやっぱりいかにも女の子が無理して男装してみた、みたいな感じでとても可愛らしい。


今日は店番ではないので実行委員オリジナルTシャツのままの春山が、美羽にニカッと笑いかけた。



「やー、結野ちゃんマジ感謝っ」



「……別に、当然のことをしたまでだ。君に感謝される覚えはないな」



「美羽は謙虚だね……あれ、そういえば私のぶんは?」



まだ着替えていなかった柚木園が空の段ボールを見て不思議そうな顔をすると、廊下から入ってきた人物の元気な声が聞こえてきた。




「はい、王子はこっちねー!」




「美空先輩?」



見れば、ついさっき舞台で盛大なドジをやらかした美少女の姿が。



「え、怪我はっ?」



「うん……。ありがと、大丈夫」



「美空のドジに対する回復力は驚愕に値すると思う」と美羽が小さく呟いていた。



「いいから早く!」



「え? え?」



いまだに状況を理解していない柚木園は、黒い笑顔の美空先輩にしっかり腕を掴まれ、女子更衣室に引っ張られていった。


……ご冥福を心からお祈りします。

290心愛:2013/02/16(土) 11:02:07 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp







「きゃ、……ちょっ、やめ―――……っ」



柚木園のものとおぼしき悲鳴が耳に届く。



「おー、なんだ、いい肌してるじゃん王子! 見せなきゃ損だよ」



美空先輩は対照的に楽しそうだ。



「や、……だめ、ほんとにだめですってばっ」



漏れ出てくる声が、やたらと色っぽく聞こえるのは気の迷いか。



「あのフェミニストが、まさか美空相手に腕力で抵抗できるとも思えないからな。着付けを頼んでおいたんだ」



「わー、すっげぇ策略行為ー」



このへん、美空先輩との血の繋がりを感じる。


姫宮をはじめ、クラスのみんなで顔を見合わせてからそおっと更衣室の前に忍び寄った。
いつもと違って、今日使わせてもらってる二年生の教室はちょうど、女子更衣室の真ん前にあるからね。



「……ん、我ながら惚れ惚れする出来映え! 鏡見てみなよ、ほらほら」



どうやら着付けは済んだらしい。
美空先輩のものに続き、切羽詰まった声が耳に届く。



「絶対に嫌ですっ」



「なんで?」



そりゃ、いつもの格好からして抵抗があるのは分かるけど、あまりにも頑なに言い切るその調子に、俺は少し違和感を感じる。


柚木園は女だ。


自ら好んで男みたいな言動をしている彼女に、何か事情があるのかどうかは知らないけど。
でも、全部ひっくるめて、俺は―――もちろん変な意味じゃなくて、あいつのことが好きなんだ。
女とか男とか、そういう問題じゃなくてさ。


だから、何をそんなに柚木園が弱気になっているのか分からない。
まだ付き合いの短い俺でも、どんなに見た目が変わったって、そんなこと関係ないくらいに……あいつは魅力的な奴なんだって確信できる。



「自信持ちなよ、王子。似合ってるよ?」



「……どうせ、気持ち悪いだけですから」



ひっそりと紡がれた、弱々しく、なのに強く、拒絶するような声音。
姫宮が顔を強張らせた。



「似合うわけないんです。こんな……みっともない格好で、みんなの前になんか出られません」



扉の向こう側で、俺たちは黙り込む。
居心地が悪そうに俯く美羽が、きゅっと袖を握ってきた。



「せっかく手間をかけてもらったのに申し訳ありませんけど、やっぱり着替えますね。……私には、耐えられないから」



「王子……」



困り切った様子の美空先輩。
たまらず、俺が何か声を掛けようと声を出しかけたとき―――




「まいちゃんは女の子だよっ!」




驚いて、少し下にある栗色の小さな頭を見る。

姫宮は怒ったように、いつも和やかな表情を険しく引き締めていた。



「僕は、まいちゃんのことを全部知ってるわけじゃないし、何をえらそうにって感じだけど……これだけは言わせてもらうよ」



周りが呆気にとられているのも構わず、扉に向けて叫ぶ。



「理由を作って、あきらめて、逃げて、また同じことを繰り返すの!? それで本当にいいのっ!?」



異様な迫力。
その立ち姿には、普段の愛らしさなんて微塵もない。


そこにいるのは、紛れもなく……一人の、男だった。




「逃げてるだけじゃ、いつまでたっても変われないんだよ!」




「……っ」



美羽が息を呑んだ。
苦しげに、綺麗な顔を歪ませる。



同じように、扉の裏側でわずかに身じろぐ気配を察し、姫宮が柔らかに微笑んで。



「まいちゃんは、女の子だよ」



語気を和らげ、静かにそう、繰り返した。



……気が遠くなりそうな沈黙が立ち込め、俺たちが『やっぱり無理か』と半分あきらめかけた頃。



そろ、と恐る恐る扉が開かれ、中の人物が、ゆっくりと姿を現した。



思わず、ぽかんと口を開けてしまう。




―――……凄い美人がいた。




美人―――いや、麗人?



ひんやり透き通る硝子のように、青ざめた頬。
後悔と羞恥、怯えが入り混じった切れ長の瞳。
黒々とした睫、口紅なしでも鮮やかな薄い唇が力なく震えている。

291心愛:2013/02/16(土) 19:49:04 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp






しっとり落ち着いた黒の地に、燃えるような緋色の鬼灯が映える。
絽の白の帯には茜や梔子の染料で、真緋(あけ)と金朱の夕雲がごく淡く描かれていた。

ワックスやスプレーを使ったのか軽くふんわりとした印象になった髪には、薄絹でできた赤い珊瑚色の花のコサージュが、耳の上辺りにさりげなく留められている。



「い……」



びくっ、と本来の華奢さが浮き出た肩が跳ね上がった。




「いいじゃん!」




なんだよ、女バージョンでも普通に美人じゃんか! 心配して損したよ!


全力で叫ぶ俺を見て、ぷるぷる震えた末にドアの向こうへ引っ込みかけていた柚木園が、へっ? と目を丸くした。


あまりの変貌ぶりに言葉を失っていたクラスメイトたちも、我に返って興奮気味に騒ぎ始める。



「マジだ!」



「やべぇ、今普通にドキッときたわ俺。柚木園なのに騙されそうだわ」



「毎日そのカッコしてくればいいのに!」



そんなアホかつ非現実的な提案が出たところで、



「薄紫に白芙蓉か、藍に枝垂れ桜かと最後まで迷ったのだが……ふん、ぼくが見立てた通りだな」



満足そうに美羽が頷いた。



「結野ちゃんさっすがー!」



「ダテにゴスロリ着てないね!」



「それは関係なくね?」



口々に、意外なことにまともだった美羽のセンスを褒め称える。



「え、……?」



まさに茫然自失、何が起こっているのか分からないとでも云うように、瞬きすらも忘れて突っ立っている柚木園。

姫宮が近づいて、正面からその顔を覗き込み。




「綺麗だよ、まいちゃん」




ふわっ、と優しく微笑みかけた。




「それに、すっごく可愛い」




「………っっ」



言葉に詰まった柚木園の頬が、急速にカァ―――ッと赤く染まっていく。



……ん?



そんな謎のやり取りを目撃してしまった俺が首を傾げていると、続いて更衣室から出てきた美空先輩に肩を叩かれた。



「ほーら圭くん、そろそろ一般公開始まっちゃうよ!」



「え、もうそんな時間ですか!?」



「もうあと10分切ってる。急いだ急いだ! 王子もいい加減男らしく覚悟決めなさい!」



「この格好させておいて!?」



そんなこんなでけらけら笑う美空先輩と別れ、



「ヒナー、あとは頼んだ! ……あ、アブなそーな兄ちゃんとか来て暴れ出したら呼んで、俺だったら殴られてもなんともないから!」



「言うのがお前じゃなかったら責任感溢れるイイ台詞になってたかもしれないな」



サラッと欲望丸出しな台詞を吐いて、春山も実行委員会本部に向かう。

するとすぐにアナウンスが校内に響いた。



『一般公開開始の時間となりました。ご来客の皆様、―――』



「まあ、そんなすぐに客も来ないよな」



「……やっぱり、この間に着替えてきても」



『却下』



壁に寄りかかって余裕をかましていると、



「あーっ、女装の子っ」



「来ちゃったっ!?」



姫宮目当てだったらしい先輩方が入ってくる。
彼は「不本意な呼び方っ」と涙目だった。



「写真撮っていいですか?」



「コスプレ会場の楽しみ方ですよねそれ」



縁日の趣旨どこ行った。



「わー、そっちの子も可愛い! すごい綺麗な人もいるし……って、は!? え、まさか柚木園くん!?」



「嘘でしょ!?」



あっという間に先輩さん方に取り込まれ、可愛い可愛いともみくちゃにされ、写メを撮られまくる女性陣(ただし一部男)。
それにつられるように、次第に射的や輪投げなどのコーナーも賑わい始めた。



「……夕紀と美羽ならともかく、なんで私が……」



こんな目で見られるのは初めてなのだろう、やっとのことで抜け出してきた柚木園がため息をつく。
いつにもまして色香が凄まじい彼女に、笑って言った。



「たまにはいいんじゃない? こういうのも」



……こうして、縁日じゃなく浴衣ショーとかに名前を変えた方がいいんじゃないかという素朴な疑問を生みつつも、何かと忙しい文化祭第一日目は大繁盛で幕を閉じた。

292ピーチ:2013/02/20(水) 05:52:53 HOST:EM1-114-47-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさーんっ!? ご冥福じゃないってー!

苺花ちゃん似合うじゃん! 男っぽくしなくていーじゃん!←

293心愛:2013/02/20(水) 22:41:17 HOST:proxyag068.docomo.ne.jp





二日間に渡る文化祭も、最終日を迎えた。


今日の一般公開は9時半から14時半で、3時に閉会式がある。
完全下校は18時。それまでに全ての後片付けを済ませるというなかなかに過酷なスケジュールだった。



「それにしても、なんでこんなに混んでんだよ……」



「少なくとも約八割は彼女目当ての者だろう、おそらく」



大混雑の体育館。
パイプ椅子はとっくに足りなくなり、後方で立ち見をしている人がほとんど。

スポットライトで照らされたステージからは、演劇の有名すぎる台詞が聞こえてくる。



「“ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?
さっきわたしに語りかけた優しい言葉、あの愛の台詞が本当なら、名前はロミオでもいい、せめてモンタギューという肩書きを捨てて”」



劇の項目はシェイクスピアの名作、『ロミオとジュリエット』。
高校の文化祭としては無難なチョイスと言えるだろう。


……ジュリエット一人だし。



「ふん……。17歳と13歳という設定なのだから、高ニ男子と中一女子が恋に落ちた翌日に結婚―――現代日本ではとても考えられない上に教育委員会で問題になりそうな話だな」



「やめていらないからその予備知識」



「へー。ジュリエットって13歳なんだ」



今日はほとんどクラスの当番がないのをいいことに、主役のクラスメイトを観に来ている俺、美羽、姫宮が、ステージをしっかり見ながら小声で言葉を交わす。ちなみに宣伝のために浴衣は全員着用。



……そして、舞台袖には輝くばかりの我らが王子の姿が。



「“このまま彼女の独り言を聞いていようか、それとも―――”」



シャツにベスト、パンツを合わせた柚木園は完璧にイケメンだった。

昨日の印象を掻き消そうとでもするように、いつもよりもさらに気合いを入れて“そう”振る舞っているのがよく分かる。


ふっと瞳を憂いたっぷりに霞ませ、甘く切ない表情を見せるたびに観客席からため息が漏れた。


もう完全に一人舞台。
その艶めく危うさは、演劇部で一番の美人だというジュリエット役の女の子が軽く見劣りしてしまうほど。



「―――“ジュリエット、実力行使だ”」



熱く濡れた眼差しを注ぎ、ジュリエットの手を取る。



「“僕たちが先に婚約を果たしましょう。
結婚式を挙げて、指輪を交換して、婚礼の儀式を済ませてしまいましょう……”」



怖いほどガチな演技。
さすが、昔から劇の主役に引っ張りだこだったというだけはある。



「“あなたが本当に僕を信じてくれるなら”」



キラキラキラキラ。


きゃあっ、と小さな悲鳴が上がり、客席の女生徒たちまでが頬を染める。



「……“信じるわ、ロミオ”」



真っ赤に茹で上がり、今にも卒倒しそうなジュリエットがなんとか台詞を吐く。



「さ、さすがだな……」



「うわ、なんか俺までドキドキしてき…………? 姫宮?」



「……んー」



姫宮だけが、何故か不満そうな色が宿る瞳で舞台を見ていた。








*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*








「あれ!? 美羽?」



ちっこい背丈はすぐに人混みに呑まれて消えてしまう。
慌ててきょろきょろ探すと、



「潰れる……っ」



「わ、す、すいませんちょっとすいません!」



苦しげにもがいている美羽を、人の波を掻き分けながらやっとのことで救出。
いつもの人を寄せ付けない毒々しさがないため、自分から人を避けて歩くのに苦労している様子である。


友人と約束があると言う姫宮と別れ、美羽と二人で歩くごった返した廊下。
客引きや宣伝の怒鳴り声がそこかしこで交わされ、アトラクションの順番待ちの列に進路を阻まれ、ろくに身動きもできない状態だ。



「本当にここ、南高だよね?」



そんな声を聞き、思わず笑いそうになる。


なにしろ県随一の進学校だ。
勉強第一主義の生徒が主体となって催す行事なんだから、自然とマジメで堅苦しいものなんじゃないか、と勘違いされやすい。


でも、そんなことは全然なくて。


とにかく自由なんだ。教師も口を出さない決まりだから、なんでもアリ。

未成年者の出し物としては相当クオリティが高いと思う。
自己満足だけで終わらない。来客への配慮が行き届いた、そういう祭り。

294心愛:2013/02/20(水) 22:47:09 HOST:proxyag067.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう、でも苺花に普段から女の格好させるのは至難の業だなw

次回は久々に美羽主役でいきます!
…サラッと書いてるけど、文化祭を男女で回るってそれだけでリア充認定されるんじゃないか←

295心愛:2013/02/21(木) 18:37:11 HOST:proxy10036.docomo.ne.jp






パンフレットで行事予定表と校内マップを確認。校舎一階校舎一階、っと……。

視界を横切るのは壁にびっしり貼り付けられたチラシ、休憩所、映画、メイド喫茶にアトラクションの数々。



「とりあえず、近いとこに適当に入っちゃおうか。うろうろしてても仕方ないし」



美羽がこくんと頷く。
さてどうするか、とまたパンフレットに目を戻すと、




「恐怖の館へ、よくぞいらっしゃいましたァァアアア」




そんな声が耳に入った。
見れば、ゾンビに扮した男子生徒が、一つの教室の前でプラカードを手に接客している。奇跡的なことに、待っている客はいない。

『ゾンビ屋敷・恐怖の館』。
……ふむ。



「面白そうじゃん」



「え!?」



美羽が「君は正気かっ?」という目で見てくる。



「……もしかして怖い?」



「はっ、笑えない冗談だな」



笑ってる上に膝が爆笑してますよとか突っ込んじゃいけないんだろうな、うん。



「仕方ない。孤独を愛し闇を僕(しもべ)とする吸血姫(ヴァンパイア)であるこのぼくが、君の束の間の戯れに付き合ってやろう」



お決まりの中二台詞も、浴衣姿のままでは説得力皆無だった。


ちょっとした悪戯心も手伝って、あえて彼女に気は遣わず、ゾンビに近づいていく。
ゾンビはニタァと凶悪な笑みを作って一言。




「恐怖の館へ、よくもいらっしゃいましたァァアアア」




「おい待て今『よくも』って言わなかったかこのゾンビ」



「ウフフ気のせいだよォウ……。中は暗いから、この懐中電灯を持って行ってね」



びっくう! と早速涙目になっている美羽には普通に接した後、案内役のゾンビは室内に半身を入れ、



「こちら山中。良く聞け、今から一年坊が入るが、奴は……女連れだ」



『(任せろ。一撃で仕留める)』



「物騒なっ!」



さすが南高男子、先輩とはいえいっそ清々しいほどにカスである。
はびこる悪事は見逃せど、他人の幸せは見逃さない。これぞモテない男の真髄。



「き、君が先に行け。主を守るのは眷属の義務だ」



「はいはい」



ゾンビに見送られ、懐中電灯で照らしながら暗い道を歩いていく。


壁にこびりついた血潮(絵の具)や転がっている生首(紙粘土。無駄にリアル)を見るたびに、「ひ……っ」と美羽が竦み上がって背中に張り付いてきた。

気にとめていない風を装ってあげつつ順調に進む。


なんだよ楽勝じゃんか、と思った瞬間―――暗闇から蠢く影が飛び出した!



『うぼぁあ゙あ゙ー……』




「っっっきゃ―――――――――――――!!!」




美羽が唐突に絶叫!



「え、美羽!?」



「ひゃぅ、うううう」



しゃくりあげながら、美羽がぎゅーっとしがみついてくる。
どうしよう、ラブコメではお約束のパターンだけど嬉しさとか恥ずかしさとか感じてる余裕ないんだけど。「きゃーこわーい」みたいなレベルじゃなく、相方マジ泣きなんだけど。



『(……ど、どうしよう)』


『(おいバカ泣かせてんじゃねーよ最低だなこのクズ!? 人間のクズ!)』



ニ体のゾンビが喧嘩していた。……人間じゃないだろお前ら。
それにしてもなかなかシュールな光景だ。



「………! ………〜〜っ!」



後ずさろうとしてその先にあった蛙や蛇の玩具にビビりまくり、ついには「ひっ、ひっ、」と泣きじゃくり出す。



「さ、さっさと行くか」



ささやかな罪悪感にちくちく痛む良心に耐え、一歩を踏み出そうとしたとき。



《ズルッ……ズルッ……》


床を這ってきた三体目のゾンビが、美羽の足首を掴むように手を伸ばした。



『おじょー……ちゃァん』



「いやぁああああああああああああああ!?」



体裁も構わず俺にひっついてガタガタ震える美羽へ、
そのゾンビは床からゆっくりと手を掲げ、



『わ、忘れものだよゥ……?』



「ゾンビのくせに超親切!」



可哀想なゾンビが差し出してくれたのは、浴衣と同じ生地でできた小花の髪飾り。

とりあえず俺が代わりに受け取っておく。



『ケケケ……浴衣、似合ってるよー』



「ふ、ふ、ふん……っ、い、一応、礼は言っておく……っ」



お礼を述べるときには、ちゃんと人の顔を見て言いましょう。

296たっくん:2013/02/22(金) 01:01:34 HOST:zaq31fa4bcb.zaq.ne.jp

またウンコスレッドか。
もうちょっと面白いスレ立ててよ

297たっくん:2013/02/22(金) 15:04:52 HOST:zaq31fa4bcb.zaq.ne.jp
        【1984年〜2013年まで】

人生を振り返ります。
ちなみにカードダスが発売したのは
1988年です。

ドラゴンボールZ
ナメック星編は1991年です。


ではスタート!

298ナコード:2013/02/22(金) 19:32:17 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 >>296 人の作品を兎や角言える立場ではないと思いますけど?

 >>297 人の作品場に自分の作品を載せるのは馬鹿のすることだと思いますよ?
 荒らしは他のサイトでして欲しいんですけど?

299心愛:2013/02/25(月) 07:51:57 HOST:proxyag081.docomo.ne.jp






閉会式では、最後の挨拶で実行委員長が男泣きして、みんなで労いの拍手をしたり。
受賞したクラスが狂気の沙汰みたいにはしゃぎまくったり。

開会式以上の大盛り上がりで、華々しいフィナーレを飾った。



「あー、やっぱ私服って楽ー。つか腹減った」



「一日中帯締めてたら全然お腹すかなかったのにね」



「ダイエットによくない?」



―――後片付けも終え、打ち上げの料理店の予約時間までうだうだやっている教室。
完全下校時刻が一時間引き伸ばされたせいで、外はもうほとんど真っ暗だ。



「柚木園くん劇観たよ、かっこよかったー!」



「ありがとう」



女子の一人に言われ、にこやかに柚木園が微笑する。
やっぱり男の格好の方が落ち着くらしい。……なんだかなぁ。



「なーなー柚木園、それなんだけど!」



そんな彼女に、春山が軽いノリで声を掛けた。



「劇、俺観れなかったからさ。良いシーンとか、もっかい再現してみてよ。暇だし」



「え、王子の劇?」



「私も観たいー」



春山に同調し、ぱらぱらとみんなが手を叩く。

気前よく荷物から台本を取り出しながら、柚木園が笑った。



「一人でやるの?」



「んー、相手は姫宮ちゃんでよくね?」



……春山と姫宮の目が合った。


一瞬間の後、姫宮がしっかりと頷く。



「……うん」



……えーと?


勢い余って天井を突き抜けそうだったテンションはなりを潜め、何故か周りに妙な緊張感が漂い始める。


隣に座る美羽も、急変した空気を察したように表情を強ばらせた。

な、なにこれ。急にどうしたよ。
ただの暇つぶしを兼ねた遊び、って感じじゃなくなってない?


だいぶ混乱し始めた俺の視線の先、姫宮がにっこり首を傾げた。



「じゃあ、まいちゃんがジュリエットやってね」



「は!?」



あっさり言ってのける姫宮に、柚木園が顔を引き攣らせ声を上げる。



「なんでそうなるの!?」



「……だめ?」



うるうる潤んだ瞳で見上げられ、うっと言葉に詰まる柚木園。
しばらく見えない何かと葛藤するように視線をさまよわせ、



「……わ、分かったよ! ただし、台詞読むだけ、だからね」



「うん!」



すかさず増えた拍手に背中を押され、柚木園は姫宮に予備の台本を渡し、渋々といった顔で彼と向かい合う。


一旦引き受けたことはやる、という責任感が仇になってしまったみたいだった。



「電気消した方が雰囲気出るかな」



パチン、という音と共に生まれた、即席のささやかなステージ。


月光を浴び、窓辺に立つ二人の姿が暗がりの中に浮かび上がる。



沈黙が支配する闇を優しく押しのけるように。
姫宮が柔らかい表情で、そっと告げた。



「―――“ジュリエット、大好きなあなたが名前を呼んでくれた”」



演技とは程遠い、ただの台詞の読み合わせ。
なのに深々と降り積もる雪のように、情の籠もった、心に響く声色だった。



「―――“あの木々の梢を銀色に美しく染めて輝いているあの祝福された月にかけて、僕は誓います”」



月明かりの下、姫宮の台詞を受けて俯く柚木園の頬が、微かに赤らんでいる。



「………“いいえ、月にかけてお誓いなさってはいけません。
あの不実な月、丸い形をひと月ごとな変えてゆく、変わりやすい月にかけてはいけません”」



震える唇が紡ぐのは、弱々しい拒絶の言葉。



「“あなたの愛がそれと同じように変わってしまうといけませんもの”」



「“それでは何にかけて誓えばよいのです?”」



すっと真剣な顔つきになり、姫宮が言いながら一歩前へと進んだ。
それに気づいた柚木園の肩が跳ね上がる。



「……“誓いなどされないで”」



俺は完全に、二人の雰囲気に呑まれていた。
言葉が出てこない。


何かを確信したように、柚木園へとまっすぐな眼差しを注ぐ姫宮の横顔は、まるで別人のように凛々しく、淡い光に縁取られていて。



……これじゃあ、まるで―――……

300心愛:2013/02/25(月) 07:53:12 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp







「まいちゃん」




そのとき。


姫宮が軽く背伸びして、
そっとその唇を、驚いたように一瞬硬直した柚木園の耳元に近づけ、



―――何事かを、囁いた。




「―――――ッ」




凍りついたかの如く、黒い瞳が見開かれる。

その奥に一瞬よぎったのは、


……恐怖?



ばさ、と台本が床に落ちる。



「柚木園っ!?」



「王子!?」



弾かれたように長身を翻した。


驚いて立ち上がる俺たちにも構わず、そのまま教室から走り去ってしまう。


姫宮は黙ったまま、静かに澄んだ瞳で彼女を見送り、



「………」



やがて睫を伏せて、面差しを暗く蔭らせた。


寂しそうな、哀しそうな、切なそうな―――そんな色が、小さな顔に浮かんでは次々に消えていく。




「……行ってあげなよ、姫宮ちゃん」




痛ましい沈黙を破ったのは春山だった。

場違いなほどに明るい笑みを零して言う。




「打ち上げは無理しなくていーからさ。ゆっくり話してきな」




「……ありがとう、春山くん」




硬い面持ちで頷いてみせ、姫宮がぱっと駆け出した。



「待っ、俺も」



「ダーメ」



あの様子はただごとじゃない。
後を追おうとした俺を、春山が声で制す。





「これで決まるから」




にやっと片頬を持ち上げて。



「どういうことだ?」



「おー、結野ちゃんってばそんな睨まないでよ、ゾクゾクしちゃう俺ー」



いつもと同じくへらへら笑い、何でもないような口調でこう宣う。




「どういうこと、かぁ。俺が言えるのは―――機会(チャンス)は作った。だから後は姫宮ちゃんの頑張りにかかってる、ってとこかな」




「……なんだよ、それ」




「あと一歩なのに、柚木園の方にちょっとわだかまりあるみたいだったんだよね。何だかは知んないけど、だいたい予想はつくじゃない?」




俺と美羽を除く級友たちが、『……やっぱり』と顔を見合わせて頷きあう。




「多少強引にでもだよ? 誰かが背中押してやんないといつまでもあのままだからさ」




柚木園と、姫宮のあの様子。
さらに、春山の遠まわしな言葉を冷静に噛み砕いてみれば。




「……まさか、」




「気づくのおせーよヒナ」




軽薄な―――見ようによっては、『そう取れるように』作られたような―――そんな笑みを湛える男。



「最近、明らかにおかしかったじゃん」



言葉が出ない。


……こいつは。
柚木園と姫宮の気持ちを察していて、こういう状況を作ったら姫宮が動くことも予想していて。

だからわざと、あんなことを言い出したのか?




「ほら、俺ってドMだから? 虐げてもらうには柚木園に元気になってもらわねーと調子狂うワケ」




「……君は……」




「あはは、とか言っても大したことはしてないけどねー」




多分、俺も同じみたいな顔、してると思うけど。
信じられない、という表情の美羽に、春山がニカッと歯を見せて。




「俺が仕掛けて、姫宮ちゃんは乗った。それだけ」




そして、ぱん! と大きな音を立てて手を叩いた。




「はいこの話終わり! みんな打ち上げ行くぞーッ! 店の予約7時半だから!」




春山慎太郎。


チャラくて変態で、どうしようもないバカで。


でも本当は、もしかしたらだけど―――



俺たちの誰よりも、賢くて。



仲間思いな奴、なのかもしれない。

301矢沢:2013/02/28(木) 17:03:34 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
匿名マジキモイよね。
名無し=たっくん&ffは、ガキなので矢沢の予言通りに死んでしまったけど。
セバスチャンも見下すレベル。

302心愛:2013/02/28(木) 18:51:43 HOST:proxy10001.docomo.ne.jp






「せっかくの食べ放題だ! 店の経営に差し障る勢いで食って食って食いまくれーっ!」



『おお―――――!』



南高生の常連が多いと聞く、駅前に店を構えたお好み焼き屋の二階にて。

視界の隅で店長と思しき壮年の男性が青ざめてブルブル震えているような気もするけれどそんなものお構いなしで、食べ盛りの高校生40人弱がジョッキ(もちろん中身はノンアルコール)を突き上げる。



「春山ー、こっちオレンジジュース足りないんだけどー」



「ありゃ、こっちもウーロンしかないわ。すみませーん、オレンジジュース追加でー!」



二人ぶんの空席を補うように明るく声を張り、春山が率先して場を盛り上げる。
それに気づいてても、彼に応えるように全力で騒ぎ、楽しもうとするみんな。



「……いいクラスだよ。本当」



黒塗りのテーブルに肘を付いて苦笑すると、向かい側で畳にこぢんまりと正座している美羽も黙って表情を和らげた。



『春山のー、ちょっといいとこ見てみたい! ……いっき! いっき!』



「えー、マジかよー。じゃあここは俺がこの特製ミックスジュースを」



『お好み焼き用ソースいっき!』



「ドMでも真っ青のリクエスト来たっ!?」



とか言いながら、春山が本当にテーブル備え付けのソースのボトルを傾けて喉に流し込んでいた。
男女入り混じった、盛大な歓声が弾ける。



「……正直、あれはやりすぎだと思うが」



「……うん」



良い子は真似しちゃだめだからね。
や、もちろん悪い子でもだめですけれども。



「こちら、豚チーズ玉とミックス玉でございます」



「あ、ども」



注文したお好み焼きの玉が届いた。

ボールを手に取り、さっさと玉を混ぜて鉄板の上に生地を流し込む。よし、適量。



「……ずいぶんと……慣れているな」



「家では俺が焼く係だからね。彩もみんな丸投げだし」



もちろん俺だけじゃなく、女子しかいないテーブルには自然と男子が一人二人派遣され、代わりに焼いてあげている。
テンションがいかにおかしかれ、紳士の心は忘れないのが我がクラス。


頃合いを見てひっくり返すことしばし、形も、焼き加減もそこそこのものが出来上がった。
四等分に切り分け、一枚を皿に乗せ、ついでに適当に味付けもしてやって。



「できたよ」



「………ぅ、む」



妙に容姿が店内に馴染まない美羽は、戸惑ったように数回瞬きして皿の上の物体を見る。


もしかして生粋のお嬢様は、こういう庶民的なものは食べたことがないんだろうか。
それとも、美空先輩から嫌になるほど聞かされてる偏食ぶりが発揮されてる?

……そういえば昼休みの弁当も、持参したサンドイッチ以外全然見たことないけど……。


こっそり心配していたら、箸で物珍しげに生地をつんつん突っついていた美羽は、



「………悪くは、ない」



ちょっとだけかじって、ぶっきらぼうにだけどそう言ってくれた。



「ほんと?」



「ふん……吸血姫(ヴァンパイア)は嘘はつかない」



無理してるのかな、とも思ったけど、そうでもないみたいだ。

ほっとして、自分のぶんにマヨネーズやソースをかけ始める。
お好み焼きの上でふよふよ動くかつお節に、びっくりした顔をする美羽がちょっと面白かった。



「モダン焼き早く来ないかなー」



「まだ何かあるのか……?」



ちまちま具を口に運ぶ美羽が軽く顔を引き攣らせていた。

それ、まだ一枚の四分の一だからね。一人前じゃないからね。

303心愛:2013/02/28(木) 19:09:54 HOST:proxy10036.docomo.ne.jp






「それにしても暑すぎないか、この部屋」



「そんなの着てるからだよ」



もう夏だというのに、黒い長袖のゴスロリ姿を貫く美羽はなんだか見てるだけで暑くなってくる。
でも本人は首を横に振って否定。



「装束の問題ではない。クラスのテンションが暑苦しいんだ」



「……確かにね……」



『春山ー、いっき! いっき!』



「げふ……えっちょ、まだやんの?」



『しょうゆいっき!』




「さすがに勘弁して下さいませんかねぇ!」



赤ら顔で悪ノリするクラスメイトたちに、春山がとても見事な土下座を繰り出していた。


……このドリンク、アルコール入ってないよね?



『……チッ』



「あれ、俺めっちゃ嫌われてる!? ……く、悔しい、でも感じちゃう……」



「きめぇ」



ハァハァする春山を横目に吐き捨てたところで、




「待っ……なんで!? なんでこれ外れないの!?」




「僕、握力強いんだよ? ちゃんと手加減してるし」




「確かに痛くないけど……って違う! 早くしないとみんなに見られ―――」




だんだんと近づいてくる声。
俺たちは誰からともなく視線を交わし合い―――



満面の笑顔を、入ってきた二人へと、向ける!




『ひゅ―――――ひゅ―――――!』




「遅かった―――っ!?」




柚木園の悲鳴に腹を抱えて爆笑する面々。



「笑いごとじゃない! ……ああもう、夕紀!」



「えー」



嬉しそうに頬を火照らせた姫宮と、彼に引っ張られる形で入ってきた柚木園。

二人の間で何があったかは分からないけど。



「おかえり」



祝福の笑みを含んだ俺の何気ない言葉に、一瞬驚いたように声を詰まらせて。
柚木園はそれから視線を逸らし、恥ずかしそうに小声で答えた。



「……ただいま」



いつもの調子を崩して、女の子らしく照れる様子は、やっぱりなんか……可愛らしい。
多分、これが本来の柚木園なんだろうけど。



「で。君たちは今まで、具体的に何をしていたんだ?」



「あの台詞の最後、姫宮なんて言ってたの?」



「んーとねー」



「夕紀!」



「はぁい。まいちゃんに怒られちゃうから、内緒」



俺と美羽が座るテーブルの、空いた席につく二人。



「ねーねーまいちゃん、おかえり、ってもう一回言ってみて」



「? ……おかえり」



「ただいま! えへへ、なんか夫婦みたいだねっ」



「ふ、ふぅーっ!?」



……負けてらんないなぁ。

初々しい二人の様子に触発されて、とある考えを思いついた俺は美羽に向け、少し大きな声を出した。



「あの、さ!」



ぽけーっとして姫宮と柚木園を眺めていた彼女が、こっちを見る。




「ちょっと付き合ってほしいとこがあるんだけど……その、次の日曜とか。お昼、一緒にどうかな」




今度は意識してボリュームを落とし、噛みそうになるくらい緊張して、なんとかそれだけ言い切った。


や、白状すれば、そんな場所なんてないんだけど……とにかく誘う口実がほしくて。


内心ドキドキしながら様子を窺う。


美羽は大粒の赤い瞳をさらに大きくし、数秒間呆けたように黙り込んでから、




「し、仕方ないな! 君がどうしてもと言うのなら……たまには眷属の我儘に付き合ってやるとしよう」




頬を染めて、いかにも傲慢そうに、顎をつーん! と突き上げた。



「よし……っ」



すんなり了承をもらい、テーブルの下でこっそり拳を握る。
これで、俺も一歩進んだ……か、な?



「いちゃついてんじゃねーよそこ!」



「これ以上リア充が増えるのはごめんだ!」



「「いちゃついてない!」」



慌てて反論すれば、クラス中からけらけらと笑われる。
そのタイミングを見計らって、春山が声を張り上げた。



「全員揃ったことだし、乾杯するぞー!」



彼の音頭を聞きながら、再び全員でジョッキを持つ。



「じゃ、シンプルに! ……文化祭お疲れっした! かんぱーい!」



『かんぱーい!』



ガラスのぶつかり合う涼やかな音が、熱気の立ち込める室内に大きく響いた。

304ピーチ:2013/03/02(土) 10:45:33 HOST:EM49-252-90-230.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

苺花ちゃんと夕紀ちゃん(?)成功!←

これ以上リア充増やすなー!!w

春山君は馬鹿っぽいけどいい人だった!

305心愛:2013/03/02(土) 19:05:12 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp
>>ピーチ

主人公出し抜いてちゃっかりカップル成立させやがりました←
これに至る経緯はこれから、番外編でちゃんと書くよー!

「そこそこ勉強ができる上でのバカ」が隠れテーマなんだけど(ぇ)、
バカっぽく振る舞いつつも実は! みたいな演技派もここあは結構好きなのですw
見せ場はあと一回くらいしかない予定だけどね!

306ピーチ:2013/03/02(土) 21:40:59 HOST:EM49-252-124-211.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ほんとに主人公出し抜いてるしねw

やったー! めっちゃ楽しみだー!

優しいよね! 春山君以上に馬鹿なあたしが言えることでもないけど!

307心愛:2013/03/03(日) 18:37:42 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとーうっ!
苺花編は文化祭が終わるまで、もうちょい続くよーヽ(≧▽≦)/
そしたらヒナと美羽のデート(?)だなw


第一印象最悪だっただろう春山のイメージアップがなされたことを祈る!

308ピーチ:2013/03/03(日) 18:49:50 HOST:EM114-51-64-43.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

苺花ちゃんはやっぱり美人なのにね!

ヒナさんと美羽ちゃんのデートとなると、どーなるかなぁ…

……うん、確かに第一印象は…

309心愛:2013/03/04(月) 15:27:43 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>ピーチ

女としての自己評価が低すぎる美人さんですw
ここあキャラは無駄に美形が多いけど、だいたい自分の容姿レベルはわきまえてますがね!


甘酸っぱい展開にはなりそうもないことは確か←
デートといっても二人でちょっと出かけるだけだしね!
…でも、シスコン姉がこっそり暗躍しちゃうかも(笑)


第一印象がアレなのは無理ないと思うよ、うん。むしろ狙ってたしね、うん。
「なんだこいつもちょっとだけいいとこあるじゃん、キモいけど」とでも思ってやってーw

310ピーチ:2013/03/05(火) 05:16:29 HOST:EM49-252-6-237.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

低すぎるの問題じゃないくない? 最早女として見てなくない?←

分かる! 自分の容姿レベルわきまえてるから自然と美形が多くなる!

え、でもここにゃんって綺麗そうなのに?

311心愛:2013/03/05(火) 17:00:41 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp
>>ピーチ


………ぇ(゚_゚)………?

いやいやいやそんなことぜんっぜんないよ!
つい自分と真逆の容姿のキャラを作ってしまうんだよ…。


ピーチこそ可愛い子だと思うよ!

312ピーチ:2013/03/10(日) 17:18:14 HOST:EM49-252-15-7.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

うっそだぁー!

でも分かる自分可愛くないからつい真逆に…みたいな!

ぜんっぜん可愛くないぞ多分顔見れたらその瞬間に失望するぞ!←何からだ

313心愛:2013/03/10(日) 19:11:33 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…うーん、ここあの顔面レベルはヒナの自己評価と近いかも←
どうせ地味ヅラですが何か?(逆ギレ)

だからか、オーラばりばりの華やかな子を多く書いちゃうんだよねー(つд`)



ピーチは可愛いよ!
ここあが保証するわ、会ったことないけど!
だっていい子だもん!

314たっくん:2013/03/11(月) 10:16:17 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
>>1さん
糞スレ終了ですよ
糞ですよ糞

私に小銭を払ってとっとと去りなさい

315ピーチ:2013/03/12(火) 14:46:53 HOST:EM1-114-198-155.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いやあたしの場合ヒナさんの自己評価以下ですから!

どーせブスですから!←

オーラばりばりもいいけどあたしは控えめ且つおっそろしい美人を作っちゃうw

316心愛:2013/03/12(火) 18:53:09 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>ピーチ


大丈夫それはない!


…あ、ここあはむしろレイさんかも! 地味具合が!


恐ろしい美人…天音ちゃん系?

317ピーチ:2013/03/13(水) 05:02:39 HOST:EM114-51-28-190.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いやまさか!

だってあたし同学年の男子に嫌われてるんですぞ? わーい←

天音は恐ろしい美人の代表格かもw

318心愛:2013/03/13(水) 22:03:11 HOST:proxy10010.docomo.ne.jp
>>ピーチ

思春期なんだよ、きっとみんなシャイなんですよw

ほら、ほんとに可愛い子よりノリよくて雰囲気が可愛い子の方がモテる時期だしね(なにげにひでぇ


天音ちゃん!
クールビューティー!

319ピーチ:2013/03/15(金) 05:48:40 HOST:EM49-252-224-96.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

シャイも何もないのがうちのクラスなの!

可愛くなくてノリ悪いクラスの浮き者ですw←

天音はクールビューティだよね! 見た目は!

320心愛:2013/03/16(土) 11:08:15 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ピーチはきっと自己評価が低いんだよ!


み、見た目は!?(笑)

321ピーチ:2013/03/16(土) 20:52:42 HOST:EM114-51-179-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

低くないよ! ちゃんと自分をわきまえてるよ!

見た目はなの! あたしのキャラはみんな!←

322心愛:2013/03/16(土) 23:02:35 HOST:proxyag051.docomo.ne.jp


『デート……?』





約束の日曜日。

照りつけるような夏の日差しが眩しい駅の広場に到着した俺は、自分の格好がおかしくないかもう一度チェックする。

メールのやり取りで決めた待ち合わせの時間までかなり余裕はあるけれど、時間を潰すのもそろそろ限界だった。


何しろいつもより数時間早く目が覚めてしまい、無意味に自分の部屋を右往左往してみたりと家にいてもなんだかそわそわ落ち着かなくて、彩に気取られないうちにさっさと外に出掛けたはいいものの駅に着いてしまったのが待ち合わせ三時間前で、どうせだったらと『行きたいところ』にちょうどいいような良さげなレストランを見て回り、それでも時間が余ったから本屋にぶらりと立ち寄って適当に物色して、それもはっと気づいたら手に持って立ち読みしていた雑誌が『今熱い! イチ押しデートスポット特集』だったりして、落ち着けってデート違うだろバカ! 俺のバカ! と一人ツッコミを入れてみたりしていたのだから。


……こうやって冷静に回想してみると、なんか無性に恥ずかしくなってきた。
何やってんだよ俺。これだから彩にヘタレヘタレ言われるんだよ、ったく。


気温のせいとはまた違う要因で火照る頬をぺちぺち叩きながら歩き、目印である銅像の前に辿り着く。

時間になるまでベンチに座って待っていようかと思ったいたのだけれど、そこにはすでに先客がいた。



―――さら、と絹鳴りを思わせる音が小さく響く。

ベンチの隅にちょこんと座っていたのは、黒蜜みたいに艶やかで、濡れたように煌めく髪を持つ女の子。

優しく淡い色合いのラベンダーとピンクが愛らしい、細かい花柄のトップスの上に羽織っているのは華奢なレースつきの透けるカーディガン。
ふわふわフリルたっぷりで、花びらみたいに広がるピュアホワイトのミニスカートからは、刹那的な儚さのある、病的にまでに細く白い脚が伸びていた。


……たとえ顔が見えなくとも、凛と冴えた雰囲気を持つ彼女は明らかに、そこらの人間とは一線を画する美人だった。
道行く人が皆振り返り、見惚れるのが分かる。


チェーンバッグを膝の上に置き、俯いて気怠げにケータイを弄る指は信じられない程に華奢だ。



……どこかで見たような光景、だな。


失礼なのを承知でまじまじと見つめる。


やがて彼女が自分に向けられる視線に気づいたらしく、両手で包めそうに小さな顔をぱっと上げた。


しっとり透明な艶のある肌、薔薇色の頬。
精巧な陶製人形(ビスクドール)を連想させる美貌―――



あ、あれ?
なんかものすっごい既視感。


長い睫に縁取られた、漆黒に煌めく二つの宝石みたいな瞳。
大粒のそれは金の粉を散らした夜空の如く、吸い込まれそうなくらいに透き通っていて―――




「ヒナ! まだ待ち合わせより30分以上早いじゃないか!」




聞き覚えのある可愛らしい声が、驚いたように言う。
それは紛れもなく、彼女の小振りな唇から発せられたものだった。



「……あ………え、ええと、ぼくがこんな時間からここにいるのは、そう、どうしても何もすることがなくて暇で暇でしょうがなかったからで、」



美少女が赤くなり、ぱたぱた腕を振って何やら言い訳を開始。



「それにしても君はさっきからどこを見て…………あ、も、もしやこの服装のことか? ち、違うんだ。ぼくは非常に不本意だったのだが、美空に言われて仕方なく、本当に仕方なくだな」



さっきから俺に向かって何言ってんだろこの娘(こ)、暑さで頭おかしくなっちゃったのかな。



「だ、だからなんなんださっきから! ぼーっとしていないで何か言え!」



はっ!
…………うん、大丈夫。俺は冷静だ。


美空先輩身長縮んだ? とか考えてなんていない。まったく考えてなんていないさ。

女の子をひとまず放置し、スマホを取り出して迷わず指を滑らせる。



「もしもし美空先輩?」



『お、圭くーん! どうよどうよびっくりしたー?』



すぐに電話口の向こうから、朗らかな美声が聞こえてくる。



「一つ、訊きたいんですけど」



ぎゃんぎゃん騒いでいる美少女のつむじ辺りを、俺はじっと見下ろしながら。




「―――もしかして先輩、もう一人妹います?」




「はああ!?」

323ピーチ:2013/03/16(土) 23:45:35 HOST:EM114-51-31-109.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いやいや失礼だからねヒナさん!?

電話していきなり「もう一人妹います?」はないでしょ! 明らかに美羽ちゃんでしょ!

……どんだけ早起きしてんだよ、二人とも…

324心愛:2013/03/18(月) 17:07:10 HOST:proxyag095.docomo.ne.jp
>>ピーチ

どんだけ意識してんだよって話だよねw

ヒナ、動揺のあまりかなーり失礼なこと言ってますが…?

325心愛:2013/03/18(月) 17:07:39 HOST:proxyag096.docomo.ne.jp






『ぷっ……く、あははははっ!!』



電話口から、美空先輩の大爆笑が聞こえてきた。



『ひーおなか痛……うわ危なっ、今椅子から落ちそうになった……っ』



「こんなときまでドジ属性発揮しないでくださいよ……」



『だ、大丈夫だってば。……ちょっと昴! そんなに言わなくてもいいでしょー? 大丈夫大丈夫!』



傍に昴さんもいるらしい。
美空先輩は昴さん相手に二、三言会話を交わした後、




『それ、美羽ちゃんだよ』




「ヒナ! さっきから美空と何を話しているんだ! ぼくはぼくだぞ、高貴なる吸血姫(ヴァンパイア)ミウ=黎=リルフィ―――」



……などと俺の胸より低い位置で叫び、黒い瞳を怒らせている美少女を、見る。
少なくとも容姿には痛々しさなんて欠片もない、初恋の“ミウ”がそのまま成長したみたいな、恐ろしく可愛い女の子を、もう一度見て。



………。



…………………。



「まっさかぁ」



『そのまさかです』



「ヒナ! 契約を交わした主が分からないとは何事だっ」



……確かに台詞を聞いてみれば、いつもの美羽だ。
それだけじゃなくて、声も顔も体格だってそう。


でも、まだ信じられない。

だって、あの美羽がだよ? どや顔でゴスロリ着て学校来ちゃう美羽がだよ?

まさか、こんなにまともな格好をしてくる日が来るだなんて。

そりゃあ文化祭では浴衣も着てたけどやっぱりいつもの“美羽らしさ”はあったわけで、今日とは全然違う。
人って、身に着けるものの色だけでこんなに変わるものなんだろうか。


呆然としてしまう俺に、美空先輩が簡単に解説してくれる。



『最初はゴスロリで行こうとしてたんだけどね。あたしが“どうせ二人で出掛けるならそんなカッコより、こういう方が圭くん喜んでくれると思うけどな〜?”って脅したら、大人しく言うこと聞いてくれたんだー。服に合わせてカラコンも取り上げちゃった』



「美空っ!? 今絶対余計なことを言っただろう!?」



スマホを奪おうとするように頑張って手を伸ばし、ぴょんぴょん飛び跳ねて憤慨している美羽。
それでも身長差のせいで届かないけど。


美空先輩の笑みを含んだ声が、耳をくすぐる。



『今まで誰がいくら言っても聞かなかったのに、圭くんの名前出したら楽勝で丸めこめたんだよ。やっぱり、圭くんの存在は相当大きいんだね』



「や……そんな、」



謙遜の言葉を言いかけながらも、正直少し、嬉しくなってしまう。

全部を真に受けるつもりはないけど、美羽がそれなりに今日を楽しみにしてくれていて、ちょっとでも服装に気を遣ってくれたというのは、多分本当なんだろう。



「……美空先輩」



それから。
美羽の気持ちも嬉しいけど、何より。


目の前にいるのは美羽張本人で、今日の服装はどうやら美空先輩のチョイスらしい―――ということをようやくきちんと頭で理解した俺は、感動で目を潤ませる。



「俺、一生先輩について行きます」



『うむうむ。ついて来るがよいぞ、我が弟子よ。今日は存分に、この絶好のチャンスを生かしてくれたまえ』



「ありがとうございます師匠!」



二人して変な演技をしつつ簡単に別れの挨拶を済ませ、通話を切る。


改めて下の方を見ると、美羽が膨れっ面で横を向いていた。



「……なんだ、一生って」



ぷくっと頬が膨らんでいる。


何に不満を覚えているのか分かんないけど……くそ、可愛いじゃないかよちくしょう!



「……ヒナ?」



「え、あ、……ご、ごめん。あの、つい動転しちゃって」



って違う。とりあえず謝るのが先だろ俺!
恨みがましい声と共に見上げられ、慌てて頭を下げた。



「ふん。結野家に新たな娘が追加されたという、ぼくも知らなかった新事実についてか?」



「ほんと、すみません……」



美羽の言い分を全部スルーして本人の正面でその姉に電話をかけ、挙げ句に「もう一人妹います?」はないよね……。

我ながらどんだけ酷いリアクションだよ。いくら罵られても文句は言えない。

326ピーチ:2013/03/19(火) 05:44:02 HOST:EM114-51-140-40.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさん落ち着けー!?

…ここまでくると動揺の域を超えて見えるのはあたしだけか←

327下平:2013/03/19(火) 13:51:41 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
ピーチ

328心愛:2013/03/19(火) 19:42:37 HOST:proxy10065.docomo.ne.jp





あ……でもこれだけは言っておかなくちゃ。



「……じゃ、なくて。その……あんまり珍しいカッコしてたからさ」



途端、美羽は不安そうな、哀しそうな影を端正な顔に落とした。
困り果てたように俯き、純白のスカートの裾をいじる。



「そ、そんなに変か」



しゅん、と小さい身体をさらに小さくする。



「ち、ちがっ……!?」



「うぅ……やはり美空の言いなりになるんじゃなかった! 少し待て、一ノ瀬に連絡していつもの着替えを持ってきてもらう!」



「違うって!」



大きな声を出すと、びくっと細い肩が震えた。
「ごめん」と声量を落とし、自分を落ち着かせるためにゆっくり深呼吸してから。




「いや、……普通に似合ってるし……いい、と思う」




……なんか無愛想な台詞になってしまった。

なぜだ、なぜなんだ俺。
ここで「“かわ”いい」とでも自然な感じで言えたら、好感度上げられたのかもしれないのに!
さっき読んだデート攻略本に「彼女のイメチェンに気づいたら、『可愛いね』『似合ってるよ』などと必ず声をかけてあげましょう」って書いてあったから実践してみたのに! デートでも彼女でもないけど!

くそう、俺にはまだ難易度高すぎたかっ?


一人脳内で頭を抱えていると。



「そ、……そう……か」



美羽は頬を染めて小さく呟き、それから、はっと正気に戻ったように早口でまくしたてる。



「ふ、ふん。真の実力者は闇の装束を身につけていなくとも、魔力を帯びることができるからな。支障はない」



よかった。どうやらこの反応で満足してもらえたみたいだ。

ほっとして息を吐き、それからふと疑問を覚えて首を傾げた。

ってことは……その設定だと、いつもゴスロリじゃなくてもいいってことになっちゃうんじゃ。


美羽も気づいたようで、「……あ」と小さく漏らして。



「きょ、今日だけだからな!」



「えー」



そんなぁ。

がっかりして肩を落とすと、美羽が不思議そうに見てくる。



「む……君もやはり、ぼくがこういう格好をして来た方が良いと思うのか?」



「え」



そりゃそうだ―――と普通に頷きそうになったけれど、俺はいったん言葉を止めて考え直す。



「……んー……美羽はやっぱり、いつものままでもいいんじゃない?」



もし美羽の気が変わって、ゴスロリをやめて学校に来たりなんかしたら。
この類い希な美少女ぶりに、勘違いする男が急増するだろう。それは、俺としてはちょっと避けたい。

ついこの間、姫宮が「まいちゃんにあんまり可愛くなられると、嬉しいけど困るんだよね……」とか言っていて、ただのノロケじゃねぇかよとあのときは軽く聞き流していたけど、今彼の気持ちがすごく良く分かった気がする。

可愛すぎたり綺麗すぎたりする彼女がいる彼氏って、いつもこういうことを思っているのかもしれない。



「もちろん、それはそれでいいと思うけど。新鮮で」



「それもそうだな。戯れにこのような装いをするのも、少しなら悪くない」



見るからに機嫌が良くなった美羽が小さなバッグをぽすぽす叩いた。



「それで? 行きたいところがあるのだろう?」



「あ、そうそう。一人じゃ入りにくくってさー」



……………嘘も方便って、素晴らしいことわざだよね!


意識的に歩幅を合わせながら、美羽を先導して歩き出す。


広場と駅の中を抜け、反対側に出ると。




「……ねこかふぇ……?」




看板の広告を見て、美羽が立ち止まった。
俺も足を止める。



「猫が店の中に放し飼いにされてるカフェだよね、確か」



「なっ」



美羽が黒水晶の瞳を大きく見開いた。



「この腐れた世界に、そ、んな理想郷(アルカディア)が……?」



衝撃を受けたように、長い髪がわなわな震えている。


……あー。



「行ってみる?」



こくこく! と嬉しそうに頷いた美羽は次いで、『あれ?』という顔をした。



「君が言っていたところというのは―――」



「あーうん、そう、ここ!」



明らかにおかしいにもかかわらず、浮かれているらしい美羽は「そうなのか!」とすぐに納得してくれた。


嘘を上塗りしちゃって申し訳ないけど、どうせ行くなら美羽が楽しいところの方がいいよね。

329心愛:2013/03/19(火) 20:16:16 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ

落ち着け落ち着けw

でもやっぱり異性関係はこんな感じが書きやすいここあでした←

330ピーチ:2013/03/19(火) 22:07:14 HOST:EM114-51-160-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

良かった冷静さ取り戻したねヒナさん!

ネコカフェ…あたしは死んでも入れない←

331心愛:2013/03/20(水) 10:11:51 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そっか、動物嫌いなんだっけ←

ここあも入ったことないんだけどね! 気分気分!

332心愛:2013/03/20(水) 10:53:34 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp





俺って結構動物好きだし、あんまり抵抗はない。
ここにバカでかい広告があるのは知っていたので、ちょっと興味があったくらいだ。

……まさか美羽と来ることになるとは思いもよらなかったけど。



そんなわけでまたしばらく歩いて目当ての建物を見つけ、さくっと入店。

スリッパに履き替えて、入り口近くの受付に向かう。



「……はゎ……」



「美羽さーん?」



額縁に飾られている猫の写真を見ただけでそわそわしている美羽に代わり、仕方なく俺が代わりに店員の人から説明を聞く。


おためし10分100円からスタートして1時間600円、2時間1200円などと時間ごとに料金が決まるらしい。



「閉店は22時、か。日曜は何時間いても3500円は超えないらしいぞ……?」



「何時間いる気だよお前」



明日学校だからね?



「む……面倒だな。こうなったら貸切にするか、むしろ店ごと買い取って」



「やめんか」



意味不明なことを口走る若い客にぽかーんとしていた店員から入店証を受け取り、愛想笑いで適当にその場を誤魔化してから早速中に足を踏み入れた。


外観もそうだったけど、内装も普通にお洒落な喫茶店風。
向かって右手には喫茶ブース、向かって中央から右手に大規模な猫用の遊具がある。



「わ、わ」



グレーの猫がガラス玉みたいに透ける瞳でこちらを見、てくてく歩いてきた。
ぱああっと美羽の顔が輝く。


おそるおそる差し出された美羽の指に鼻を近づけ匂いをかぎ、敵じゃないと認定したようで頬をこすりつけてきた。

ふにゃーっと表情が蕩ける。



「猫、好きなの?」



「ふ、ふん……まあ、な。猫とは元来高貴さの象徴であり古代エジプトの時代から神聖視されつつも一方では魔性の獣ともされるという相反する属性を兼ね備えることから《純血の薔薇(Crimson)》に所属する一級魔女の使い魔として最もふさわしい動物と言えるだろう」



肉球めっちゃふにふにしながら力説されましても。



「あー……俺、あっち座ってるわ」



「ん」



ソファに腰掛け、メニューを眺める。


フリードリンクやデザートなんかは別料金で注文するらしい。
パスタなんかもある。
まだ時間が早いせいでお腹すいてないけど、場合によっては頼んでみてもいいかもね。


こうして見ていると、意外とカップルも多い。
写メを撮ったり、寝ている猫を撫でたりと思い思いにくつろいでいる。



「お、マンガもあるじゃん……」



数百冊はあるんじゃないかな。
マンガ好きな俺にはありがたい心配りだ。
本読みながら時に猫を愛でられるっていうのがこの店の売りらしい。


と、茶色い毛並みの猫が一匹、俺の方に近寄ってきた。
遊んでほしいアピールなのか、脚にまとわりついてくる。


……か、可愛いじゃん。


顎の下を人差し指で撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。



「可愛らしい彼女さんですね」



「えっ? い、いや、そんなんじゃ」



急に店員のお姉さんににこやかに話しかけられ、キョドってしまう。
地を這うかの如き俺のコミュニケーション能力が憎い。


それにしても、や、やっぱり同じ年頃の男女が連れたってこんな場所に来たら、そういう関係性だと思われるんだろうか。
今日の美羽は文句なしに可愛いし。

嬉しいような恥ずかしいような……。



で、当の美羽はといえば黒猫を抱き上げ、真剣な顔つきで何やら言い聞かせていた。



「ケルベロス、今に見ていろ。きちんと一から特訓すれば秘められた力が目覚め、背から翼が生えてくる。そのときにはぼくの眷属にしてやろう」



「人様の猫に名前つけんな。変な調教施すな」



あと俺って猫と同列なの?
……むしろ喜ぶべき?



「……?」



俺と美羽を見比べる、店員さんの不思議そうな目が痛かった。

333ピーチ:2013/03/20(水) 19:20:52 HOST:EM1-114-57-214.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

そーなの、猫嫌いなの!←

気分か! あたしも似たようなことある!

……ヒナさん、猫と同列か…

334心愛:2013/03/20(水) 23:30:29 HOST:proxyag095.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大好きってことだよw

…普通に見たらアレだけどね。


はいデート回終了! 実質待ち合わせして猫カフェ入っただけだけども!

とりあえず美羽の意識が変わったってことで一つ←

335ピーチ:2013/03/23(土) 09:48:49 HOST:EM1-114-3-215.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

大好きなんだよね!

デートなんだ!? これデートに分類されるんだ!?←

336心愛:2013/03/23(土) 18:58:47 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>ピーチ

だからタイトルに? がついたんだなw


ほんとのデートができる日はくるのか…。
頑張れヒナ! そしてここあの頭と指!

337ピーチ:2013/03/23(土) 21:50:39 HOST:EM49-252-247-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

なるほどそんな理由があったかw

ほんとのデート…来てくれ!

いや、ここにゃんの頭は問題ないと思う。指は疲れない程度に!

そして時間よ止まれ!←

338心愛:2013/03/24(日) 00:04:43 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>ピーチ

先は長そうだね…(~_~;)


ほんとに時間がほしい!
止まれー!

…いっそ世界中の時計を壊してしまえば時間という概念がなくなr(ぇ

339ピーチ:2013/03/24(日) 00:15:23 HOST:EM49-252-247-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

先は長い方が面白い! あたしが気長に待てれば!

だよねー! 時間なんてありすぎるように見えて全くないもんね!

…その手があったか! さすがここにゃん!←おい

340心愛:2013/03/24(日) 18:17:06 HOST:proxy10051.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ねー!
今のスレは今月中に完結できたらいいなーなんて考えてたのに、まだ半分いったかどうかだもんね…。
夏までに終わるかな(´・ω・`)


よし、まずは家の時計を破壊するか(ぇ

341ピーチ:2013/03/25(月) 21:03:52 HOST:EM1-114-34-228.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

だよねー!

やっぱり考えが似てる人が居ると安心する!←

家の時計を破壊したらお母さんが鬼になる(おい

342心愛:2013/03/25(月) 22:16:17 HOST:proxyag113.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、うちも怒られるのに加えて病院に運ばれるかもしれない←
精神科w


小説は楽しいしいつまでも趣味にしていたいけど、いかんせん時間がね…。

343ピーチ:2013/03/25(月) 22:41:53 HOST:EM1-114-34-228.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

怒られるで済むかな、うち…←

精神科あり得るかも!

あたしはできれば作家になりたいなぁ…と思ったけどここにゃんで趣味だったらあたしにゃ無理だw

344心愛:2013/03/26(火) 10:53:48 HOST:proxy10043.docomo.ne.jp
>>ピーチ

作家とな!
なれるよ絶対なれるよピーチなら!

で、なったら教えて、サインもらいに行くわ(ぇ
ここあはピーチのファンだよ!



ピーチは余裕でなれても、ここあのコレは完全に趣味でしか片付けられないからなぁ…。
でもこうやって一年以上やってきて、誰かに見てもらうって楽しさを覚えちゃったわけで←

ほんとは今年でバッサリやめるはずだったんだけど、いつかちゃんとした小説サイトに投稿したりしてみようかな…。

いくら下手でも楽しいんだからしょうがないじゃん! っていうw

345ピーチ:2013/03/26(火) 13:55:47 HOST:EM114-51-147-230.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

作家ですそうです!

なのに文才が哀しいという←

頑張って読書してんのに、勉強そっちのけで(おい

ここにゃんこそ余裕でなれそうじゃん!

346心愛:2013/03/26(火) 17:15:00 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あれだけのもの書ける学生ってそうそういないと思うよピーチ!
自信持とうよ!


読書はほら、国語の勉強だからねヽ(≧▽≦)/
仕方ない仕方ないw


ここあのレベルでは到底無理な話ですよ…←
でも好きなもの書いてお金もらえるとか素敵だよね!

347ピーチ:2013/03/26(火) 21:54:49 HOST:EM114-51-188-154.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まず周りに小説書いてる友達が少ないっていうw

しかも書いてる友達が後輩で、その後輩にまで負けるっていうねw

だよね! 読書は国語だよね!

ここにゃんだったら絶対プロなれるのに! 謙遜ばっかはよくないぞ!

だよねー! 作家さんとかうらやましいよねー!

348心愛:2013/03/27(水) 13:33:54 HOST:proxy10025.docomo.ne.jp
>>ピーチ

まず、小説書いてる友達がいる時点でうらやましいよ…。

ここあ、親にバレたら殺されるしね!


というかピーチを超える人っているの…? いなくね?
後輩さん恐ろしい! どんなもの書くんだ一体!

っていうか、作品に優劣とかないと思うけどねw
思い入れが強い方が勝ちだよ、多分!


……将来、一歩も家から出ずに好きなもの書いて過ごしたい……無理だけど。

349優佳 ◆k9BuPe0hZk:2013/03/27(水) 21:11:27 HOST:zaq31fbd3c6.zaq.ne.jp
どうも!

心愛さん>>文章読みやすくていいです!
内容も凄い!

350ピーチ:2013/03/28(木) 07:02:27 HOST:EM114-51-160-221.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

居たんだよ嬉しいことに!

あたしは親公認(?)だから!←

居る居る、居すぎて泣きたいくらいw

思い入れは強いつもりだよ、一応!

何でー? ここにゃんだったらあっさりできそうだよー?

351心愛:2013/03/29(金) 09:39:40 HOST:proxy10050.docomo.ne.jp
>>優佳さん

初めまして!
こんなのを読んでくださってありがとうございます(*^-^)ノ
これからよろしくですw


>>ピーチ

いーないーなーw


うん、きっと自分のキャラをどれだけ愛せるかということさ(意味分からん


いやぁ、うち親厳しいから…←
それにここあの落書き程度じゃ逆立ちしたって無理だよ(*´д`*)

352優佳 ◆/78g8W0Be6:2013/03/29(金) 19:18:11 HOST:zaq31fbd3c6.zaq.ne.jp
こんな小説だなんて!凄すぎます(*^_^*)
美羽ちゃん見たいな子が現実にいたらいいだろうなぁ♪

353ピーチ:2013/03/29(金) 20:59:51 HOST:EM114-51-148-105.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

仲間居ることだけは嬉しいw


そだね愛せてるよ多分!←

うちはそこまで厳しくないよー

逆立ちしたらここにゃんの最高のアイディアがばら撒かれそーだねー!

354心愛:2013/03/30(土) 14:53:59 HOST:proxyag073.docomo.ne.jp
>>優佳さん

まだまだ全然ですよー(=_=;)

そう言っていただけると嬉しいですw
美羽が現実にいたら…色々面倒そうですけどね!



>>ピーチ

いいなーw


いやぁああああ!
ばらまけるほどないけどっ、ここあのギリギリ崖っぷちなアイディアがぁぁあーーー!

355心愛:2013/03/30(土) 14:54:39 HOST:proxyag073.docomo.ne.jp


『夏祭り』





「なぁ、オレ、思ったんだけどさ」



窓を突き抜けるセミの鳴き声に辟易とする生徒たちが集う教室。
冷房のお陰で冷たくなった机で、各自だらけている。



「これ、夏休みじゃなくて夏勉強期間じゃね? オレ、部活以外勉強しかしてないんだけど……」



確かに、せっかくの夏休みなのに、夏期課外という意味分からん催しに強制参加させられている俺たちの体力はもはや限界と言ってもいい。


何しろ小テストは毎日、中規模でも成績に反映するテストは毎週、さらに定期試験が毎月。
その間に校内模試が挟まってくる上に、無慈悲にも積み上がる課題の山。


私立の中高一貫校よりは幾分マシなのかもしれないけど、青春もへったくれもない高一の夏休み。
課外は午前中で終わるのが唯一の救いだ。



「……百点満点で赤点九割以下とか頭おかしいよね? 先生たちも暑さで相当イッちゃってんじゃないの?」



「忘れがちだけど、『元・(地域名)の神童』の巣窟だからなここ。先生も期待してるんだよ迷惑極まりないけども」



「『元』ね……」



「『元』だな……」



かったるい授業に加えて、この猛暑。
太陽はそんなに人間を焼き肉にしたいんだろうか。

まったく、こんな日はキンキンに冷えた部屋で一日中だらだらマンガ読むに限る。



「そうそう、課題のこの問題集、今年で絶版になったらしいぜ? 難しすぎて、扱える学校がないんだと」



「むしろ使わずにブッケオフに売った方がよくね?」



「バーカ、価値出るまでぴっかぴかな状態で取っといてオークションにかけるに決まってんだろ」



「使わないも何も、提出しないと居残りじゃん……」



ぼそっと呟いた俺の覇気のないツッコミはスルーされた。



「ぼくの妖気をもってしても消すことができないとは、何という暑さだ……」



それにしても暑い。
エアコンはついてるけど、暑いものは暑い。
でも気温というよりは、窓から差し込む日差しの強さと、狭い教室に押し込められたクラスメイト40人のせいのような。
あ、窓ガラス曇ってる。



「ふっ、向こうがその気なら仕方ない。ぼくは灼熱の宴に興じるとしよう……」



「その気って何だよ……」



隣では、黒白ずくめのゴスロリ少女・美羽が頬を赤く火照らせて机にでろーんと伸びていた。
暑いなら、もうちょっと涼しい格好すればいいのに。



「ところでヒナ」



「んー?」



突っ伏したまま、小さな声で呼びかけてくる美羽。
少しためらうように口を噤んでから、




「………夏祭りというものが、あるらしいな」




「ああ、うん。毎年彩に付き合わされるよ」



俺の町では毎年、駅前の商店街辺りでなかなかに大きな夏祭りが開かれる。
道路を通行止めにしたり有名人による企画があったりと、この地域では最も賑やかなイベントだ。



「…………」



「…………」



「………………あー……行ってみる?」



「ふ、ふん、仕方ないな!」



黙ってもの言いたげにじーっと視線を寄越していた美羽がぱっと顔を輝かせ、それを取り繕うような声を出す。


確かに、せっかくの夏休みだし。
一回くらい、美羽との思い出があってもいいかもしれない。



「ヒナがどうしてもと言うなら仕方ない。主であるぼくが付いて行ってやろう」



「はいはい」



そんなに行きたかったのか……。素直じゃないなぁ。



「え、ヒナたちどこ行くの? 僕たちも一緒に―――」



「そうそう、なんかヒナと結野ちゃんってば最近仲良くね? 姫宮ちゃんに続いて結野ちゃんまで取られちゃったら俺泣くよ!」



「なっ、べ、別に良くはっ」



「ふぅん……? 誰が夕紀と美羽を取るつもりだったって?」



「だ、大丈夫だよまいちゃんっ、僕はまいちゃん一筋だよっ」



「お、柚木園がやる気にっ? いいぜドンと来い! 思いっきりッ!」



爽やかな笑顔で拳を握る柚木園を見て、春山が嬉しそうに目を輝かせる。

……奴が姫宮の問いを上手く流してしまったような気がするのは、俺の考えすぎだろうか。

356ピーチ:2013/03/30(土) 21:01:37 HOST:EM114-51-184-84.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

それ以外は色々とうるさいんだけどね、特に勉強に関して

大丈夫! 仮にばら撒かれてもあたしが拾い集めてネタ盗んでから返すから!←こら

357心愛:2013/03/31(日) 20:24:21 HOST:proxyag113.docomo.ne.jp





「彩、ほんとに行かなくていいのか?」



「うん! 新作の乙女ゲーやるからさ!」



出発前に今日何度目かの確認を取ると、やはり満面の笑みが返ってきた。
多分、美羽が行くと聞いて気を遣ってるんだろう。



「……確かにいつまでも兄妹でってのもおかしいよな。次からは、彼氏できたら一緒に行けよ」




「え、いるよ?」




きょとんとする彩。


え? ……うん?
イルヨ? 要るよ? い、る……………



「えッッ!!??」



「うわびっくりしたぁ!」



彩が耳を両手で押さえているけど、そんなことには構っていられない。



「ただねー」



驚愕に硬直する俺と対照的に、彩は恋する乙女みたくピンク色の吐息を漏らし。




「―――恥ずかしがって画面の中から出てきてくれないの」




「ゲームキャラかよッ!」



がっかりだよ!



「せいかぁい。たっくんは彩の嫁!」



「騙された……!」



「あははっ! ねぇねぇお兄ちゃん。もし、彩がほんとに彼氏連れてきたらどうする?」



連れてきたら、って。
そりゃあ……。



「殴る」



「殴るんだ!」



え、ここそんな驚くとこ?



「……でも、そうだなぁ。それで不幸にならないって、お前が自信持って言うなら……殴らない、かな」



「ちょ、ちょっとちょっと、実の妹ルートに突入してどうするのさお兄ちゃん! 彩じゃなくて美羽さんを惚れさせなきゃ!」



「分かってるよ! 分、かっ……て、るんだけど、ね……」



それができれば苦労しないよ……。



「あ、そろそろ出なきゃ。なんか買ってきてほしいものある?」



「お土産? んーとねー、焼きそばでしょ? たこ焼きでしょ? あとはー、お兄ちゃんの思い出話ってことでひとつ」



「分かった分かった、焼きそばとたこ焼きな」



「お兄ちゃんの意地悪ー!」





゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚





「わ、悪い。待たせたか」



離れた場所で車を降りてから歩いて来たらしい美羽に、「よっ」と片手を上げる。


息を切らせている彼女は普通にゴスロリだった。
……いや、普通にゴスロリって表現はおかしいような気もしますけども。



「テレビで見たときより、人が凄いような気がする……」



「あれ、初めて?」



そういえば、誘われた(?)ときも、そんな感じの口振りだったような。

っていうか、なんで初めてなのに身内の美空先輩じゃなくて、俺と来ようとしたんだろうか。嬉しいけど。

と、いう疑問が顔に出ていたのか、美羽がすぐに早口で弁解を始める。



「ち、違う! 最低限のパーティーにしか出ないぼくと違って美空は何かと忙しいが、特に予定もなさそうなヒナを連れて一回くらい行ってみてもいいかと思っただけ―――じゃなくて、ヒナに付いて行ってやろうと思ってだな!」



今サラッと結野姉妹のセレブ生活の一部が垣間見えてびびったけどそれには触れず、「そ、そか」と言うに留めた。


その後、漂う甘い匂いに釣られて蝶みたいにふらふら屋台に引き寄せられてしまった美羽とわたあめを購入。

最初は棒に纏わりつくふわふわした物体をしげしげと眺めていたものの、



「……甘い」



おっかなびっくり、ちょっとずつなめては嬉しそうに相好を崩す。
なんか和む光景だった。



「おっ! そこのお嬢ちゃん、ヨーヨー釣りやってみない?」



ゴスロリ少女が相手でもさすがのお祭りテンションと言うべきか、もの凄くイイ笑顔を向けてくるおじさん。

人見知りモードが発動し、困惑して後ずさる美羽の背中を押して彼のもとへ。
流れで一応釣り紙は持ったものの、やり方が分からない様子で固まっている。……マジですか。



「貸して」



仕方なく、後ろからそれを奪い取る。



「ひぁっ」



「どれがいい? ……って……あ」



と、しゃがんだ彼女の背中がびくっと震えるのが分かるくらいに密着してしまっているのに気づき、遅れてどっと汗が噴き出してきた。

この体勢はまずい。色々と、まずい。



「こ、これ? これだねっ?」



早くしないと心臓がもたない。
俺は釣り紙を握りしめ、さっさと終わらせようと躍起になったのだった。

358心愛:2013/03/31(日) 20:35:57 HOST:proxyag112.docomo.ne.jp
>>ピーチ

残念ながら盗む価値のあるアイディアは微塵もないと思うよ!
ストーリーのオリジナリティがほしい…←


やっと次から夏が終わり始めるかな!
…季節感ねえー。

359ピーチ:2013/03/31(日) 20:49:39 HOST:EM114-51-186-14.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさん頑張れ! こーゆーときの美羽ちゃんはいつも以上に可愛いんだから!←

盗むアイディアがありすぎる気がする!

大丈夫! 季節感ないのはあたしも一緒だ!(こら

360心愛:2013/04/01(月) 21:14:55 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽可愛い? そうだといいな←

と言いつつもこれでお祭り終了という鬼進行w

ヒナの健闘を祈ろう!


アイディアも何もただの思いつきと言うかなんと言うか…
ほんとにカスばっかりだよ!

361ピーチ:2013/04/01(月) 21:41:38 HOST:EM114-51-206-242.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

可愛いじゃん! めっちゃ可愛いじゃん!

お祭り終わったよ早いね!

いやこの神文章のどこを捕まえてカスと言う言葉が出てくんの!?

362心愛:2013/04/02(火) 12:46:55 HOST:proxy10050.docomo.ne.jp
>>ピーチ

次のデートもどきっていうか進展ありのイベントは、旅館にお泊まりになるかなw


徹頭徹尾すべてを通してカッスカスだよ!

363ピーチ:2013/04/02(火) 18:58:45 HOST:EM114-51-136-117.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

イベントーw

旅館だー!←

ここにゃんでカスだったらあたしのゴミにさえなれないじゃん!

364心愛:2013/04/03(水) 15:55:34 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp


『試験勉強』





「いいか彩。お前は俺と同じで頭は良くない」



「あっさり!」



べたりと机の上に倒れ込む彩を「まぁ聞け」と促し、俺は腕を組んでちょっと威圧的に言ってみる。



「けどな。凡人は天才にはなれない。でも、秀才にはなれるんだ」



「なんだろう、なんか凄く深いこと言われた気がする!」



夏休みも終わりかけのこの時期、彩がいつまでもだらだらだらだらしていて勉強をちっともしないので、兄による説教タイムが始まったところだった。


休み明けにはテストが控えてるのに、何やってるんだよこの愚妹。



「だって彩、勉強嫌いなんだもん……。英語とか、日本ではやんなくても生きていけるよ……」



「英語なんかパターンと単語分かれば一番点取りやすくて楽しい教科じゃんか。何が嫌なんだよ」



「嘘だ! 少なくとも彩にとっては一番点取りにくいよ!」



「そう言われても俺、中学まで英語で95点以下とか取ったことなかったし……」



「変人がいるぅー!」



めそめそ泣く彩。失礼な。



「うう……英語はもういいよ……。他の教科で、なんかやる気出る勉強方法とかないの?」



「試験範囲の問題集を全部暗記する勢いで頭に叩き込め。目ぇ瞑ってても問題と答えが浮かんでくるくらいになれば、テスト終わってもそこそこ記憶に定着するから」



「彩は人間だよ!?」



「たった5教科だろ? 全部95点以上で100点2、3教科取れば学年1位はほぼ確定。頑張れ」



「赤点回避すれば十分なんだけど!」



「情けないこと言うなバカ。お前俺の妹だろ」



「彩はお兄ちゃん大好きっ子だけど、こればかりはお兄ちゃんの妹に生まれてきたことを心底後悔するよ……」



彩は何故かどんより暗い影を背負っていた。



「もー、お兄ちゃんじゃ話にならないよ! ちゃんとしたアドバイスくれる人はいないの?」



「えー……なら美羽にでも訊いてみる?」



言って、スマホを手に取る。

美羽に電話をかけるのも随分と慣れてきた今日この頃です。



『……勉強のコツ?』



突然の通話を迷惑がることもなく、美羽は少し考えてから。



『努力あるのみ、だな。悪いが、特に効率的だったり、変わったことをしているわけでもない』



「あ、やっぱり?」



言動の残念さを除けば割と真面目で努力家な彼女らしい答えが返ってきた。



「でも、美空先輩に教えてもらったりしないの?」



確か、先輩は相当頭良いって話を聞いたことがある。
美羽にべったりだし、そういうこともあるんじゃないのかな。


もし時間あれば、是非とも彩の家庭教師をお願いしたいくらいなんだけど―――



『いや、美空は教えるのが壊滅的に下手なんだ。自分が完璧に理解していても、相手がどうして分からないのかさっぱりでな。もう諦めた』



「……あー」



なるほど、そういうタイプか。
俺はなんとなく納得する。



『で、その美空と言えば、だが』



美羽が明日の天気でも話すみたいに何でもないような口調で―――こんな衝撃発言を繰り出した。

365心愛:2013/04/03(水) 15:56:41 HOST:proxy10045.docomo.ne.jp






『この前の模試で、総合科目全国1位を取ったらしい』




「……………は?」



なにそれ、え?


……いや。いやいやいや。



「えええええええええ!?」



『にゃわっ』



数秒遅れて、『うるさい! 耳が壊れるかと思ったじゃないか!』という怒った声が聞こえてくる。



「……美空先輩が、……ぜんこく……? え、模試ってあれでしょ? 最高峰の学校しか受けないっつう……まさか、冗談だよね」



「残念ながら本当だ。あいつは昔からぼくに遠慮するところがあるから、こそこそ隠していたが」



マジですか……。
美空先輩はドジ属性を抜けば、飄々としていて何でも器用にこなすイメージがあったけど。


身近にそんな凄い人がいるって、いまいち現実味が沸かない。



「そういうのって都内のエリート高校じゃないと有り得ないと思ってたよ……」



『うちでもごく稀な快挙だそうだ。……ああ。受験前に、教師陣にかなり手酷く叩き込まれたらしいがな』



「そ、そうだよね! 授業とは別に特訓とかしないと無理だよね!」



『いや、ケアレスミスと名前の書き忘れの注意を』



…………。



「うん、次元が違うってことが良く分かったよ」



どうやら先輩の今回の成績は、天性のドジを発動せず、本来の実力を発揮した結果ということらしい。化け物か。


電話越しに美羽は『まあな』と笑い、



『ぼくは一生、美空と同じ世界を見ることはできない』



「………」



一瞬、かける言葉をなくす。


確かに、そんな優秀な姉を持つとなれば、美羽にかかる圧力だって尋常ではないだろう。
美空先輩の名声は、美羽を守るだけじゃなくて、彼女を追い詰める凶器にもなる。



『……でも、昔からあいつの背中ばかり見てきて、いつからかこう思うようになったよ』



なのに、美羽の声は劣等感なんて微塵も感じさせないくらいに―――不思議な程に、優しいものだった。




『大抵のことは、天才の何十倍もの努力をすれば、いつか凡人でも必ず追いつける―――と』




プライドが高く、良くも悪くもまっすぐで、“理想”のためには努力を惜しまない。
美羽が今の美羽になったわけが、なんとなく分かったような気がした。


その先輩にかける想いはきっと、先輩が美羽を大切にする気持ちと同じくらいに強い。



「……自慢のお姉さんだもんね」



『……ふん。一応、尊敬はしている』



照れ隠しにそっぽを向く様子が目に見えるようだ。


今の、美空先輩が聞いたら喜ぶだろうなぁ。

美羽が大好きで優しくて、本当に非の打ち所がない、良いお姉さんで―――



『ドジだがな』



「ドジだけどね」



うん、そこは忘れちゃダメだけど。



美羽に礼を言ってから通話を切る。


それにしても、当初の目的が消し飛ぶくらい、凄い話を聞いてしまった……。

彩に偉そうに話してたのが、今になると若干恥ずかしい。



「……彩、勉強します……」



「……分かってくれて何よりだ」



でも、元々の目的は達成されたので良いとしよう。

366ピーチ:2013/04/03(水) 21:27:21 HOST:EM114-51-142-165.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

嘘でしょヒナさん!? あたし英語なんて赤点取らなかったことないよ!?

そして美空先輩!? 全国で一位ってどーゆーことですかっ!?

…………彩ちゃんの気持ちがよーく分かるのはなぜだろう←

367心愛:2013/04/03(水) 22:17:05 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>ピーチ

マジか(・∀・)

ここあは中学時代、95…と言いたいとこだけど94点以下は取ったことないんだぜ! 英語だけは!
ちなみに、基本的にヒナと同じ考え方のここあは友達に「キモい」と言われました。悲しいね。
一回得意になっちゃえば、頑張ったぶんだけ点数が伸びる教科だと思うよ英語!


美空は、ここあの学校の先輩が去年全国1位取っちゃって騒ぎになったからそれを使わせてもらいました! ごめんね先輩!

…さらにちょっと自慢すると、ここあは今年、とある模試の国語で全国5位だったんだよ(*´д`*) えへん。
数学は底辺だけども!

まあここあでも奇跡的にこんな順位取れるんだから、美空もいけるさ! と頑張らせてみた(*^-^)ノ


…「学校のお勉強ができる」と「頭がいい」ってのはまた別物だけどね←


長文すみませんw

368ピーチ:2013/04/03(水) 22:48:38 HOST:EM114-51-142-165.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いーないーなー! あたしなんか英語の単元テストで堂々の10点取ったことあるんだぞー!←

キモいんじゃなくて何でそープラス思考で考えられんの!? ってことで驚きですはい。

一回も得意になれない教科だと思うよあたし……

美空先輩何でもできるもんね! ちょっとドジだけど!

369心愛:2013/04/04(木) 21:15:35 HOST:proxyag102.docomo.ne.jp
>>ピーチ


大丈夫さ! 今から巻き返せばいいだけのことだよ!

ここあ的には数学が一番恐ろしい…。



苺花と比べると、美空は先天的な才能が大きい「なんでもできる」子ですねw
でもちゃんと努力はしてるよ(`・ω・´)

370ピーチ:2013/04/04(木) 21:43:46 HOST:EM49-252-234-200.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

今から巻き返せる…かなぁ?

数学理科英語この三教科凶器デスネ←

努力家の天才…羨ましいよぉ…

371心愛:2013/04/05(金) 15:55:33 HOST:proxy10025.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大丈夫だよ、あれだけの小説書ける頭があるんだから!
自信を持てー!

372心愛:2013/04/05(金) 15:55:56 HOST:proxy10026.docomo.ne.jp


『進路アンケート』





「将来就きたい職業……ねぇ」



進路指導部から出された提出必須のアンケート。
第一志望大学、平日休日の勉強時間なんかの中に、そんな欄を見つけた俺はシャーペン片手に唸った。


どうしよう、分からん。



「なんて書いた? これ」



「闇の女王」



「美羽に訊いた俺が馬鹿だったよ」



担任からの呼び出しは確実だ。



「なんだとっ」



「……え、えーと、姫宮は?」



後ろを振り返って、紙の該当箇所を見せてもらう。
丸っこい字で書かれていたのは―――



「看護師?」



「うん。家が医療系だから、なんとなく」



この笑顔で看病されたらどんな病気でも一瞬で治りそうだ。
癒し効果ってことで姫宮セラピーとか新しく始めてもいいんじゃなかろうか。



「小さいときはお花屋さんかケーキ屋さんになりたかったんだけどね」



乙女か。


と思っていたら、その隣の柚木園がびくっと反応していた。



「……柚木園?」



「えっ? い、いや、まさか! 子供の頃とはいえ、私がそんな夢見るわけがないでしょっ?」



……こいつも乙女か。


「まいちゃんかわいー」と姫宮が嬉しそうに微笑んでいる。お前もな。



「なるほどなるほど。あとひとつはもちろんお嫁さ―――」



「な、な、なんで知っ……じゃない! 違う! ぜんっぜん違うからそんな目で見るのやめてよヒナ!」



まさかの正解。
なんか柚木園が可愛いんですがどうしましょう。


耳まで赤く染めて涙目になってしまった柚木園。
可愛いけどさすがに可哀想なので、罪滅ぼしに彼女のペースに戻してあげようと俺は口を開く。



「ホストとかヒモとか向いてそうだよね。性別隠せるならだけど」



「うん、是非ともやりたい。女の子を幸せにできる仕事がいいなぁ………でも、ね」



ひも? と首を傾げている姫宮を見て、柚木園はふっと微笑んで。



「それはあきらめるしかないか」



「ん。それがいいと思う」



「具体的な職業っていうと、私も迷ってるんだよね。未定って書いとこうかな」



「じゃあ素直に『お嫁さん』って書けばいーじゃん! 心配しなくても姫宮ちゃんが貰ってくれ―――あふんっ」



ゴスッ。
登場と同時に殴り飛ばされた春山が床に転がった。
この間僅かに二秒。

柚木園は拳を握りながら、ビキビキに引き攣った笑顔を作る。



「少し頭、冷やそうか」



「ど、どうどう」



そして名前が挙がった当の姫宮はというと、真っ赤になってもじもじしながら。



「あ、あのね? 男は18歳からしか結婚できないし、そういうのは大学を卒業してから考えることで、ね……?」



「もうやだこのクラス!」



あまりの羞恥に耐えきれなくなったらしい柚木園が耳を押さえて喚く。いやあ、青春だね。



「で……春山は? やりたい仕事」



床でハァハァしている変態は、満面の笑みで親指を突き出して。



「犬」



「え、えと、春山くん? だ、大丈夫……?」



「夕紀、それは頭がってこと? それとも顔? 人格?」



「全部だろうな」



「せめて一つに限定しろよっ?」



春山には特に遠慮がなく冷たい柚木園と美羽。
悦ばせるだけで逆効果なのに。



「やだなぁ、いくら俺でも自分が霊長目ヒト科だってことくらいわきまえてるから! 下僕と書いてイヌと読む方だって!」



「分かってるよ! 分かってるから引いてるんだろ!?」



高校生が将来の夢に動物を希望していたら色々問題だ。
叶うとしたらそれは来世の話だろう。



「そー言うヒナはどうなんだよ」



「えー……」



ほとんどなんの参考にもならなかった自由な回答たちを思い出し、



「……今のところは公務員にしておくよ。堅実に」



「地味だな」



「ツッコミようがないねー」



「高校生のうちくらい、こういうとこでボケといてもいいんじゃない?」



「空気読もうぜー、ヒナ」



「お前ら全員公務員の皆様に謝れ!」



一番まともなのになんで非難されなくちゃならんのっ?

373にゃにゃですが:2013/04/05(金) 16:53:43 HOST:zaq31fa522f.zaq.ne.jp
↑お前のスレつまらん
ゴチャゴチャぬかすな

>>1
毎度毎度糞スレ御苦労様

374ピーチ:2013/04/05(金) 21:00:17 HOST:EM114-51-47-243.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

何でだろうヒナさんがもの凄く哀れに見える!

あたしも小さい頃は花屋とかケーキ屋とかそこらへんの人が書いてたのを真似してた気がする←

確かに公務員の方々に悪いね、それはw

375心愛:2013/04/11(木) 22:42:10 HOST:proxyag115.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ヒナは哀れなポジションだからねw

花屋ケーキ屋は小さい女の子の夢だよね!
男と男装少女の夢としてはアレだけどね!


ここあは昔は歌手になりたいとか言ってた気がする(つд`) …なんでやねん←

376ピーチ:2013/04/12(金) 05:48:54 HOST:EM114-51-151-123.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いや哀れすぎるでしょいくら何でも!?

うーん、ちょっと男の子はなー…←

あたしなんか色んな仕事掛け持つ、とか言ってたからね!←

377心愛:2013/04/12(金) 19:09:07 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp
>>ピーチ

掛け持ちか!
それだけ聞けばデキる女っぽい(`・ω・´)



さてさて、旅行編スタートだよ!

378心愛:2013/04/12(金) 19:09:50 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp


『温泉旅行』





「そろそろ修学旅行のシーズンだねー」



くてーっと机に突っ伏した姫宮がこちらを見上げてくる。
そのほわほわした笑顔に、同じくほわほわした気分になりながら。



「高校生で一番のイベントだよなー」



「高二の人が羨ましいよねー」



ほわほわーっと微笑みあった後―――二人して声を揃える。



「「なんでうちはないんだろ……」」



そう。俺たちの学校、南高に修学旅行はない。
分かってたことだけど……学校生活が楽しくなってきた今、それを思い起こすとちょっと悔しいというか虚しいというか。



「まあまあ。勉強合宿とかないだけ感謝しようよ」



柚木園がさらりと大人の発言。
姫宮は唇を尖らせる。



「でもやりたかったなぁ……。みんなでお泊まりって楽しいよね」



「うん、特に夕紀はそういうの好きそう」



姫宮は「好きだよー」とにっこりし、



「中学のときは旅館に泊まったんだ。でもみんなでお風呂だーって楽しみにしてたのに、僕が行ったときには誰もいなくて……残念だったな」



「そりゃ良かった」



「えっ? なんで!?」



いくらこいつとそこそこ仲がいい俺だって、姫宮が男湯に入ってきたら動揺しない自信はない。



「旅館っていいよね。私はホテルだったよ」



「わ、なんか豪華な感じだー」



柚木園の話ににこにこした姫宮が、次いで俺に話を振ってくる。



「で、ヒナはなんかいい思い出とかないの?」



「……俺の、修学旅行の思い出かー……」



俺はふっと微笑み、目を霞ませて遠くを見る。


修学旅行。修学旅行ね……。



「憂鬱すぎる班決め……人数合わせで無理矢理放り込まれた俺+仲良し三人組……みんなが盛り上がってる中寝たふりをした新幹線……」



「ひ、ヒナ?」



「悪夢の自由行動……きゃっきゃしている三人の後ろを数歩離れてついていく俺……特に行きたくもない寺巡り……『みんなで写真撮ろーぜ! ……あ、日永君いたんだ! 撮ってくんね?』……っつーか班で俺だけ名字呼び……」



「ひ、ヒナ! 戻ってきてーっ! こっちの世界に戻ってきてぇー!」



必死になった姫宮にガクガク肩を揺らされるも、俺はぼーっとしたまま思い出話を吐き続ける。



「『すげ、お前あいつと話せんの? マジ勇気あるわー』『だって一回話したことあるもん、この前の罰ゲームで』『え、名前なんだっけ?』……はっ!」



覚醒した。



「ちくしょう、いい思い出なんかあるかよバカーッ!」



「ごめんねヒナ! 僕が悪かったよ!」



「その思い出は胸の奥にそっと封印しておいて!」



力いっぱい叫ぶ俺をとりなす二人。


うぐ……べ、別に自分の話でうっかり傷ついてなんかないんだからね!



「美羽は? どうだった?」



話題転換のつもりなのだろう、今までだんまりをきめこんでいた美羽に、柚木園がさり気なく話し掛ける。

それに。
俯いた美羽は、きゅっと軽く拳を握った。




「……行ってない」




なかった、でもなく。


暗い声でぽつりと紡がれたその一言は何故か、ずっしりと重くて。



「え、えーと、……」



何かしらの事情を察知した俺と柚木園が瞬時にアイコンタクトを交わし、間を保たせようと口を開いた、その矢先に。




「やり直そうよ!」




姫宮が元気よく声を上げた。


はい? と目を丸くする俺たちに、姫宮は満面の笑みで提案してくる。




「京都とか奈良とかまでは行けないけど、このメンバーでお泊まりしてみない? ちゃんと旅館取ってさ!」




「お、おお……! すげえ、なんかリア充ぽい……!」



とてもまともかつ素晴らしい案に感動する俺に続き、柚木園もにこりと笑う。



「ただの旅行だけど修学旅行気分で、ってことか……。私はもちろん賛成だけど、どう? 美羽」



急速に展開する話に、驚いたように赤い瞳を見開いていた美羽が、数秒遅れてこくんと頷いた。



「あ、……あの……そういうことなら、美空も一緒でいいか? あいつなら、宿泊する場所も上手く話をつけてくれると思う」



「そうなの? もちろん大歓迎だよっ」



任せてくれ、と言う美羽は、やっぱり少なからず嬉しそうだった。

379ピーチ:2013/04/13(土) 19:16:45 HOST:EM114-51-187-34.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

今はそんな世間知らずなこと言えるわけないけどね!←

ヒナさーん! 戻ってきてぇー!

哀しいよそれ無茶苦茶哀しいよ!

380心愛:2013/04/14(日) 19:59:55 HOST:proxyag059.docomo.ne.jp






「一ノ瀬、さん……ですよね。お世話になります」



「こちらこそ。姫宮様と柚木園様でよろしいですか? 美羽様から常々お話は伺っております」



「一ノ瀬! 余計なことを言うんじゃない!」



広々としたリムジンの車内。
連休を利用して、俺たちは予定通りに旅館へと向かっていた。


グレーのボタンダウンシャツにジャケット、細身のデニムというラフな装いの昴さんが運転席から涼しげな微笑みを向けてくる。

高校生だけでは不安だと考えた美羽たちのお父さんが、保護者兼運転手として彼を任命したらしい。
昴さんに好感を持っている俺としては嬉しい誤算だ。



「美羽ちゃんは照れ屋さんだからねー。でもあんまりつれないことばっかり言ってると、女の子の友達できないぞ?」



昴さんの隣の助手席で、水色のミニワンピース、ブラウンカラーのブーツ姿の美空先輩が振り向いて「圭くんはいいけどねー」とにやにや笑う。

案の定、後部座席の美羽はすぐに噛みついた。




「誰が照れ屋だっ! それにそんなもの、苺花だけで十分でっ―――………………あ」




……あれ、そういや美羽が柚木園のことをちゃんと呼んだのって初めてじゃね?



「……み、美羽〜〜〜っ!」



「ち、違う! こ、これはっ、……ぁ、わ、だ、抱きつくな! 抱きしめるな! く、くるし……っ」



口を片手で覆う美空先輩がこらえきれず「くふふ」とほくそ笑んでいるのが見える。
……まさか、今のって先輩の誘導……?


いや、それより。



「……俺、負けてない?」




幸い俺の呟きは、賑やかな後ろの二人や、早くも俺の隣ですぅすぅ寝息を立て始めた姫宮(昨日楽しみで眠れなかったとか可愛いことを言っていた)には聞かれることはなかったようだ。


それにしても男女混合で旅行とか、勝ち組ぽいよなーとか考えて、一人でテンションを上げてみる。

だって年頃の、しかも気心が知れた仲間と旅行だ。否が応でもわくわくしてしまう。



「ふ、ふ……っ、そんな攻撃、ぼくの物理障壁にかかればなんてこと……っ」



「あーもう美羽は可愛いなー! 膝に乗せたくなってくるよ……ぎゅーっ」



「すっかりキャラが変わっているぞっ? いつもの王子キャラはどこへ行ったんだ!? そう簡単に捨ててい……ひゃわっ」



「ん、あれ? 旅館ってもっとあっちの方じゃなかったっけ?」



「いえ、合っているはずですよ。……お嬢様はドジでいらっしゃる上に、極度の方向音痴なのですから……」



「なにそれひどーい! バカにしないでよ、今日は朝から三回しか転んでないんだから!」



……ちょっとだけ、メンバーが強烈すぎるような気もするけども!


これに『男三人で一緒にお風呂だとッ!? しかもお泊まり、ちょっ、きゃっほぉ――――うッッ!!』と奇声を上げていた彩を追加したらどんなに恐ろしいことになっていただろう。想像したくもない。



「―――圭様、あと10分ほどで着きますよ」



「え、マジっすか! 意外とそこまで遠くないんですね」



窓の外の景色を眺めることしばらく、昴さんがミラー越しに薄く微笑んできた。
多分姫宮が寝てしまって話し相手がいない俺を気遣ってくれたんだろう。昴さん優しすぎる。



「そうそう。結構いいとこだから期待してて大丈夫だよ」



「……っていうか先輩、そこそこ人気の旅館を無料で完全貸切とか、どんな荒業使ったんですか?」



そう。美羽の言った通り、急な話にもかかわらず、美空先輩はあっという間に最高の条件で手配を済ませてしまったのだ。
そんな上手い話、裏があるようにしか思えないんだけど……。



「え、別荘のが良かった?」



「べっ……!?」



「今から行くとこって、特別観光地ってわけでもないからね。でも別荘は夏の方がいいなー。せっかく海あるんだし」



ぽんぽん飛び出すとんでもないセレブ発言に間いた口が塞がらない。



「あ! そういえばこの辺に新しいホテル出来たんだよね。そこもあたし顔利くんだけど、今からでも無理やりねじ込―――」



「旅館サイコーッ!」



ケータイを探しだした先輩の台詞を遮り、俺はぐっと拳を握る。
なんか良く分かんないけどこれはやばい、と俺の本能と止まることのない冷や汗が告げていた。

381心愛:2013/04/14(日) 20:07:34 HOST:proxyag059.docomo.ne.jp
>>ピーチ

夕紀の中学の修学旅行でお風呂に誰もいなかったのは、どこかの会員の皆さんの仕業なんだぜ……?
悲しかったぶん、ヒナには今回ちゃんと楽しんでもらおう! うん!


そして始まりました旅行編、今回名前も登場してない某クラスメイトがいるような気もしますがここは気にしない方向で!

美空は無敵だよ! ドジさえなければ!

382ピーチ:2013/04/15(月) 05:14:54 HOST:EM114-51-25-234.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの会員さんの仕業か! それは可哀そうに!

苺花ちゃん王子キャラはどこ行ったの!?

……あ、ドジさえしなければ無敵、ね…←

皆様方がそれぞれにキャラ濃いようで! 昴さん除いて!

383名無しさん:2013/04/15(月) 12:29:44 HOST:zaq31fa522e.zaq.ne.jp
        【気合いと合気道】
単刀直入に言いますが、
貴方、武術やりませんか?気合いと根性に自信ありますか?
もしあれば合気道をどうぞ

合気を行う際、気合い入れましょう。
気合い入れて!やぁ!!

格ゲーをご存じの方は
一度、藤堂香澄および風間飛鳥という人物を想像してみて下さい。
彼女らをイメージし合気技を行うとより効果的です

384名無しさん:2013/04/15(月) 12:32:07 HOST:zaq31fa522e.zaq.ne.jp
時々ガラの悪そうなおっさんが
来ますが気にしないで下さい。
悪そうな・・ですよ。
こんな事言っちゃヤバイかな・・・

まあとにかく関西で一緒にやりましょう。
私、関西です。

385名無しさん:2013/04/15(月) 12:36:44 HOST:zaq31fa522e.zaq.ne.jp


以前、門下生1人、救急車で運ばれました。
稽古がハード過ぎたのかな〜?
技くらい過ぎてダウンし病院直行!
私も気をつけます。

それにしても合気のコーチむちゃくちゃです
加減を知らないから困る。
ちょっとヤリ過ぎてしまうのがたまに傷ですね

ある意味空手コーチより凄まじいです。
一緒にやりましょう。
ただし保険はかけておきましょう。

怪我した時とかに役立ちます。

386心愛:2013/04/16(火) 21:31:39 HOST:proxy10047.docomo.ne.jp
>>ピーチ

どんな荒業〜のくだりで、美空がサラッと流したのも隠れポイントなんだぜ!
何かと世渡り上手なとこも書けたらなーと……ドジもしっかりやらせつつ←


みんなキャラ濃すぎて早くも大惨事の予感だね!
ヒナと昴に頑張ってもらうしかないね!

387ピーチ:2013/04/17(水) 05:12:00 HOST:EM114-51-166-96.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

気付きましたよ怖いよ美空先輩! 無理矢理ねじ込むってどーなんですかね!?

世渡り上手すぎじゃないですか美空先輩……?

うん、確かに彩ちゃんは入ってなくてよかったかも←

キャラ濃いのはいいことだよ! 薄くて忘れられる存在よりずっといいよ!

…とか何とかいいながら自分がそうだったり←

388名無しさん:2013/04/17(水) 11:18:25 HOST:zaq31fa5058.zaq.ne.jp
またクソスレか?
誰も見てねーよカス
いい加減にしろ

それより白人女性の話しないか?

389心愛:2013/04/18(木) 21:26:46 HOST:proxy10048.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう気づいてくれたか!
多分ホテルの重役とかにも知り合いがいるんだと思うよw
美空の世渡り上手な令嬢ぶりは…早く本格的に書きたいなぁ←


や、キャラ濃すぎですよね…w

390心愛:2013/04/18(木) 21:27:27 HOST:proxy10047.docomo.ne.jp







「夕紀、ほら」



「んゅ?」



起きたばかりでまだぽーっとした姫宮は寝ぼけ眼で首を傾げた後、柚木園が差し出した手にぽんっと自分のそれを乗せた。



「あはは、違うって」



貸して、と姫宮の持っていた荷物を笑顔で掠め取り、自分のものと共に両手にぶら下げてさっさと歩き出す柚木園。

ジャガード柄のカーディガンにカーゴパンツの後ろ姿は文句なしにカッコ良く、さすがはすべての女の子を愛するフェミニストといった風格だ。……実際の性別はともあれ。



「うん? ……え、えっ? 待ってまいちゃん! むしろそれ僕の役割だよ!」



凛々しすぎる彼女を、やっとのことで我に返った彼氏が慌てて追いかけていく。



「なにやってんだよあいつら……」



「確かに、女性に持たせるわけにはいきませんね。私も声を掛けてきます」



「いやいやっ、これ以上荷物増やしてどうするんですか! 美羽のぶんくらい手伝いますよ!?」



自分のものに加えて美羽と美空先輩、三人分の大型バッグを抱えて運転席から出てくる昴さん。
成人男性にしては細いし非力そうに見えるのに、表情には割と余裕がある。



「美羽のとか特に重そうだし……」



「仕方がないだろう。闇の装束はその機能性に見合った重量があるんだ」



「自分で持てないものを持ってくるなよ!」



「ありがとうございます。ですがこれも私の仕事ですので、お気になさらず」



にこりと微笑む昴さん。大人だ……。



一行を先導する美空先輩に続いて、駐車場を出て目的の建物へ。

小綺麗で洒落た感じのエントランス前に辿り着くと、外に出てわざわざ待機していたらしい女将さんが深々と頭を下げてくる。



「ようこそいらっしゃいました。結野様ですね? 常々お話は伺っております」



「はい。無理を言って申し訳ありませんでしたー」



にこやかに挨拶する先輩だけど、な、なんか……怖い。
無言の圧力みたいなものが、華奢な身体からゆらゆら立ち上ってるようなイメージだ。



「え、と……美羽たちのお父さんって、確かアパレル会社の社長さんなんですよね? 旅館となんか関係あるとは思えないんですけど……」



何かしらの権力を行使したんだろうけど、それってなんの?


俺の隣で声量を落としながら、昴さんが微苦笑。



「旦那様の御兄弟や親戚の方もそれぞれ大規模な会社を営まれていますので、その関係でしょう。とにかくお嬢様は人脈が広いですから」



「へ、へー……」



……なんかもう、財閥?








*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*






女将さんの案内について館内を歩いても、他の客と全然すれ違うことはなかった。



「本当に貸切なんですね……」



「うん。でも一人一部屋ってのも寂しいからねー、これくらいでちょうどいいでしょ?」



今回俺たちが使うのは女部屋がひとつに、姫宮と俺で一室。
それから、さすがに高校生のガキと同じ部屋というのは昴さんに悪いだろうということで、もう一部屋確保してある。



「これでタダって……。なんか申し訳なくなってくるんですけど」



「えー、だって少しでもお得な方がいいじゃない?」



「良心の呵責みたいなのないんですか先輩」



「んー、特にないかなー」



「マジすか……」



「例外はあるけどね」



美空先輩は悪戯っぽく漆黒の瞳を輝かせて。



「こういう特別扱いじゃなくて、なんて言うか……ちゃんと純粋な、一人のお客さんとして楽しみたいかな、ってとこは、あたしにもあるよ」



「? 旅館の話ですか?」



「そうそう。すっごく可愛くて頑張りやの若おかみさんがいるんだけどね、もうほんと可愛いの!」



「二回言いましたね」



まるで美羽のことを話すときみたいに、美空先輩は楽しそうだった。
よっぽどその子のことが気に入っている……のかもしれない。



「そこもまた誘うから!」



「まだここ来たばっかりなのに、気が早いですよ」



そう笑い返しながら。
もう次の、みんなで遊ぶ予定を話せるなんて、なんとなく―――いいなぁ、なんて思った。

391ピーチ:2013/04/20(土) 23:11:20 HOST:EM49-252-202-34.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

何でだろう夕紀ちゃんがすごくかわいく見える!

そして苺花ちゃんはどこまでも王子様だね!

……世渡り上手過ぎないですかね、美空先輩?

ありがとうございます彩織を出してくれてありがとうございます!

392心愛:2013/04/22(月) 22:45:19 HOST:proxyag073.docomo.ne.jp
>>ピーチ

お手w
苺花は、これからちゃんと女の子してもらうんで今のうちに王子させといた!

美空はドジ属性抜いたらただの天才だからね! ただの天才だったらつまんないし(ぉい

彩織ちゃん、これくらいしか出せなくてごめんねー!

393心愛:2013/04/22(月) 22:48:36 HOST:proxyag070.docomo.ne.jp





姫宮と二人だけで贅沢に使わせてもらう予定の、定員七名の和室。

襖で仕切られた川沿いの部屋は眺めも良く、窓を開けると風情のある緑の木々が見える。



「なんか落ちつくねー」



姫宮と二人でまったりしながら、水のせせらぎに耳を澄ませる。
なんかもう何もかも忘れてぼーっとしてたいような……。



「何かお手伝いすることはありませんか? 何でもお申し付けください」



「え、ええ……っ?」



が、全然落ちつけてない人が一名。

知的な風貌の美青年に真摯な眼差しを向けられ、年配の仲居さんが顔を赤くする。



「ちょ、昴さん!」



「はい?」



不思議そうに振り返る彼。

いや、はい? じゃなくて。



「せっかくなんだからゆっくりしましょうよ。お客さんに手伝うなんて言われたら困っちゃいますって」



「そ、そうですか? 申し訳ありません」



心なしかほっとした様子の仲居さんが出ていった後、昴さんはまたそわそわし出す。

進んで荷物の整理を手伝ってくれた彼を、どうせなら一緒にくつろごうと引き留めたはいいけど、どうやら結野家の優秀な執事さんは働いていないと気が済まないようで。



「緑茶です。よろしかったらどうぞ」



「あ、ども……」



漆塗りのテーブルに、コトリと置かれる湯呑み。
い、いつの間に淹れたんだろう……。



「少し早いですが、お布団を敷いておきました」



「えっ!? ちょっと待っ、ええっ!?」



驚いてバッと見れば、一瞬で畳の上にキッチリ綺麗に並ぶ二枚の布団が出現していた。
早業なんてレベルじゃない。



「浴衣はこちらになります。着付けが上手くいかないようであれば―――」



「ストーップ! 昴さんストーップ!」



止まる気配のない昴さんに、たまらずストップをかける。



「少しは休みましょう、ね!? お客さんじゃなくなってますよ!?」



「す、すみません。落ち着かなくて」



しゅん、とすっかり恐縮してしまう昴さん。

姫宮はというと、彼の業績を見ては「すごーい」と目をキラキラさせて感嘆のため息をついていた。



「ですが、実は備品の手入れに少々納得がいかない箇所がありまして……。それも兼ねてやはり先程の方に掃除用具をお借りし―――」



「よっし早速お風呂行きましょうか! 露天風呂がいいらしいですよ!」



「おふろおふろー!」



「け、圭様っ!? 姫宮様!?」



失礼を承知の上で、俺たちは昴さんをずるずると引っ張って部屋を出た。







゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚






着替えやタオルを持って、ラウンジや卓球場、売店やなんかを横目に、まっすぐに大浴場へ。


……しかしあれだよね。創作では、こういう旅館のお風呂って、だいたい混浴だったりするよね。
男女交替の時間が決められてて、それに気づかず入ってきちゃったヒロインと二人きりで鉢合わせ、とかね。

お約束だよね……!



「……って、普通に男女別かよ……」



「うん? ヒナ、なんか言った?」



「いや別に」



……と思いきや、まさかの健全ルートだった。
別にいいけどさ。


そんなことを話しながら、男湯、と書かれた青い暖簾をくぐる。



「わー、脱衣所まで広いねー」



「そうだな……………ってちょっと待てぇ――――いッッ!」



わ、忘れてたぁああああああ!!??



「どしたの?」



シャツに手を掛けながら、きょとん、と首を傾げる美少女(ただし性別は♂)。



「どしたのじゃない! とにかく脱ぐなここ男湯!」



「うん、だから脱がないと入れないよね?」



「いーやーあー! この年で犯罪者にはなりたくないぃぃぃー!」



頭を抱える俺。



「何事も平常心ですよ、圭様」



言って、昴さんが涼やかな笑顔を向けてくる。



「お嬢様が次々と巻き起こす奇想天外なトラブルに比べれば、容姿が女性の男性の裸体を見るくらい、なんてことはありません」



「ま、眩しい……! その悟りきった微笑みが眩しい……!」



「今容姿が女性って言いませんでした!?」



昴さんの言葉には、何故か無駄に説得力があった。

394ピーチ:2013/04/23(火) 04:38:10 HOST:EM114-51-23-101.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いや犬じゃないからね人だからね!

いや王子すぎるだろあの人!

美空先輩凄いよね! ドジさえ抜けば完全無欠!←

こんなに出してくれてありがとうー!

395心愛:2013/04/24(水) 19:00:30 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp






木漏れ日が差し込む、広々とした露天風呂。
不透明な湯の中でゆったりと手足を伸ばす。
岩肌に腕をつき、ほっと一息。



「ふー……」



「ヒーナー? なんで向こうばっかり見てるのさー」



「ひぎゃぁあああ―――――ッッッ!?」



視界に白いものが映り込み、俺は唐突に絶叫を上げてずざざっと湯の中で後ずさる。



「来るな寄るな近づくなぁあああっ…………あ?」



「だから何なのっ」



俺が逃げた方向に先回りして、ぷんすかしている姫宮の肩が目に入る。

予想通り白くなめらかな肌やほっそりした腕をしているものの、その骨格は明らかに少女でなく少年のもので。



「……ひ、姫宮がちゃんと男、だと……? なにこれ夢? 白昼夢?」



「ヒナは僕をどんな目で見てたの!?」



ぷくーっと膨れる顔はやっぱり可愛らしいけど、こうしてちゃんと見れば女子と間違われることはまずないだろう。
まさに“可愛い男の子”って感じだ。



「……いーなー。筋肉うらやましい……」



ぽけっとしてしまう俺をよそに、本人は不満そうに自分の腕を眺めていた。



「隣、いいですか?」



「あ、どうぞどうぞ」



失礼します、と穏やかに微笑み、昴さんも俺の横に腰を下ろす。
ギリシア彫刻のように優美なシルエット、薄いながらも立体的に陰影のついた筋肉のラインが美しい。



「たまには、こうやってゆっくりするのもいいですね」



「そうですよ。仕事なんか忘れて―――」



と、突然仕切りの向こうから、聞き覚えのある元気な声が響く。




『美羽ちゃんこっちこっちー! おいでー』



『聞こえているから騒ぐな! そして走るな滑ったらどうする!』




男サイドに立ち込める沈黙。



「……女湯って……このすぐ向こうだったり……」



「……そのようですね」



こちらとあちらを隔てるのは薄い仕切り一枚。
賑やかな会話が思いっきり丸聞こえだった。



『おっ、意外とあるじゃん! 王子ってば着やせするタイプ?』



『きゃ、い、いきなり何するんですかっ』



『身体検査ー! ……んん? 待って王子、もしかしてあたしより腰細くない?』



『……この世は不条理だ……』



『そんなのどうでもいいです、それより美羽がすっかり黄昏ちゃってますよ!』



『やだもー美羽ちゃんだって可愛いよ! つるぺただって需要あるよ!』



『うるさいこっちに来るな! 目の暴力だ!』




「…………」



気まずげに視線を泳がせる昴さん、なんとなく正座の俺、体育館座りの姫宮が一様に赤面。
なんか水温が上昇したような気が。



「……認めるよ姫宮……! お前は男だ!」



「ヒナ! やっと分かってくれたんだね!」



小声のまま握手を交わす俺たち二人。
この恥ずかしさ、いたたまれなさは男同士でしか分かるまい。




『私の癒しは美羽だよ……っ。あー、落ち着く……』



『苺花も抱きつくんじゃないっ! 背中に当たっ……、て……、……………ひっく』



『……えっ、もしかして泣いてる!? 泣いてるのっ?』



『うわぁぁぁあああああん!』




ざっばあ! と派手な水飛沫が立つ音、濡れた床を駆け去る小さな音が立て続けに聞こえてきて。




『み、美羽ちゃんっ!? 追いかけなきゃ……王子、あたし先に上がるね!』



『は、はあ……って先輩、危険ですから走らないでくださいよ!』



『大丈夫だいじょっぷぎゃっ!?』



『ほんとに期待を裏切りませんね!?』




そして最後に、びったぁん! というお馴染みの音。



「え、と……心配だし、ゆいのんたちの様子見てくるよ」



「……そ、そか。じゃあ頼むわ」



「……では、私からもお願いします」



それぞれの想い人が起こした残念すぎる一連の出来事に、俺と昴さんは現実逃避の道を選んだ。

396ピーチ:2013/04/25(木) 03:40:30 HOST:EM114-51-8-105.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

男湯だけだとこんな思いしなくていいかもなのにね!

ほんと女子って元気だよねー…←

397たっくん:2013/04/25(木) 13:32:22 HOST:zaq31fa48ea.zaq.ne.jp
今2チャンネルのほうで歌ってきました。
やっぱり人間としてやるべきことはちゃんとやらないと
私は常識を守りたいです。

やっぱり人間としての常識ですからね
コミュニケーションというのは大切ですからね
皆もちゃんしなきゃ駄目だよ

398たっくん:2013/04/25(木) 13:32:57 HOST:zaq31fa48ea.zaq.ne.jp
また別のサイトでも歌ってきます。
アホのピーチ♪(笑)
アホのアーバン♪

399たっくん:2013/04/25(木) 13:33:17 HOST:49.250.72.234
人間としての常識ですからねこういうのは
皆もちゃんとしなさいよ

400:2013/04/25(木) 14:50:50 HOST:ntnara044190.nara.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
実は、1ケ月くらい前にヤバイことがあったんです。
学校のテストで赤点だった私は、K君と二人で居残りをさせられました。
K君は、運動神経抜群で、しかもルックスもよくて私の友達のなかにも
K君が好きな人はたくさんいます。もちろん私もその一人です。
なので、私は正直うれしくてたまりませんでした。
先生は、私たちに「そのプリントやったら帰っていいから、気をつけて帰れよ。」
とだけ言ってどこかへ行ってしまいました。
私は20分くらいでプリントを終わらせました。
でも、K君はまだ終わってません。
だからと言って待っていてもしかたがないので、私は
「あの・・・えっと・・・わ、私・・・もぅ終わったから・・・先・・・行くね・・・。」
と、顔を真っ赤にしながら言いました。
すると、K君は意外なことを言い返してきました。
「5分だけ待ってくんない? ・・・あ、いや・・・なんでもない・・・。」
私は、びくっりしました。
でも、少し考えてから
「いいよ。 でも、待ってどうするの?」
と聞き返しました。
K君は
「暗いし、一緒に帰った方がいいかなぁって思って・・・。」
と言いました。
私は、うれしくなりました。
そして、5分くらいたって
「はぁ〜あ!!やっと終わったよ。よし!!じゃぁ、いこうぜ!!」
というK君の声につられて私たちは教室を出ました。
私の家とK君の家は、歩きで5分くらいの近さです。
そして、K君の家のほうが学校の近くにあります。
歩いて行くと、K君の家が近ずいてきました。
そこで、私は、K君から「目を閉じろ」と言われました。
なんの抵抗もなく目を閉じた私をK君がゆうどうしてくれます。
私は、K君の手と声をたよりにゆっくりと足を進めます。
しばらく歩くと、いきなりソファーのようなものの上に押し倒されました。
私は、あわてて目をあけるとそこはなんとベットの上でした。
そしてK君が裸で私の服を脱がせます。
おっと!!
これ以上は恥ずかしいので、この文をコピーしてこの掲示板と他の掲示板に1つずつ
はって下さい。
すると、『        』にアドレスが出て、が青くなってクリックできます。
そして、30分ぐらいの動画が見られます。内容は、胸をもんだり・・・・
前、似たようなのなのやったけどできなかった

401心愛:2013/05/02(木) 23:23:51 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

たぶん同じ状況で、相手が他人の女子だったら「うぜえ…」って考えると思うよここあ←
自キャラの美人さんたちだから騒いでても仕方ない!


温泉ネタは一回書いてみたかったw

402心愛:2013/05/02(木) 23:24:21 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp






その後、静かになった露天風呂を出て大浴場に行ってみたりと一通りぶらついてから、そろそろ上がると昴さんに声をかける。



「せっかく来たんですから、昴さんはもう少しいたらどうですか? たまには美空先輩のお守りから解放されてゆっくりしてもバチは当たらないと思いますよ」



「……では、お言葉に甘えて」



あ、お守りってとこ否定しないのね……。


そんなこんなでさっさと着替えて脱衣所を後にすると、女湯の暖簾から出てきた柚木園と鉢合わせした。



「あれ、ヒナ」



水分を含んだ髪の間から覗く折れそうに細い首筋、しっとり透明なつやのある肌が妙に艶めかしい。

さっきの会話を聞いてしまった後だからか浴衣姿の柚木園が女っぽく見えて直視できず、微妙に視線を逸らしながら小さく片手を上げて。



「偶然じゃん。美羽たちの後?」



「そうそう。二人ともすぐに出ちゃったからね、一人で満喫してきた」



うん知ってる。と言いたい衝動をぐっと抑える。



「これから暇なら、こっちの部屋来たら?」



「え、女部屋に?」



「異性の部屋に遊びに来てわいわいやる、っていうの、修学旅行の醍醐味じゃない? 見回りの先生に見つからないように隠れたりして」



「先生誰だよ」



役割的に昴さんが一番近いような気がするけど。



「まぁ、私は女の子の部屋にいても何も言われないから今まで関係なかったけどね。こればかりは自分の性別に感謝するよ」



「あそう……」



そんなくだらないことを話ながら、柚木園に付いて広々とした廊下を歩く。
やがて一つの襖にたどり着き、



「美羽、先輩? ただいまで、……す?」



部屋の中を覗き込んだ柚木園、そして俺が、揃ってフリーズした。


くてっとテーブルに突っ伏して、赤い顔でふにゃふにゃ言っている美羽。彼女を見ながら端正な顔を気まずげに引き攣らせている美空先輩。


そして。



部屋の中に仄かに漂う―――アルコール臭。



「「お酒は二十歳からッ!?」」



動転のあまり、二人して変なツッコミをしてしまった。



「ちょ、何やってるんすか先輩!?」



「わ、わざとじゃないの!」



ぴょこんっとツインテールを跳ねさせながら、しどろもどろに言い訳タイムに入る美空先輩。手にはジュースの(いや、そう見えるだけの)缶。



「あの、ね……? みんなで飲もうと思って勝手に家から持ってきてたジュースを開けたら、それがお酒だったみたいで……」



「ドジにも程がありますよっ!?」



分かりにくいとこでドジられるのも困るもんだね! 学習した!

今日のドジが少なかった、っていうのはこのための伏線だったのか!?



「だ、だってお風呂上がりに冷たいもの飲むと美味しいじゃない? ……ってことで、美羽ちゃんもだけど、ついて来てくれた姫にもあげちゃった」



「をい」



しかも被害拡大させてやがった!


唖然とする俺と柚木園に向けて「……え、えへ?」と小さく舌を出してこつんっと頭を叩いてみせる。悔しいけど可愛い。



「んー……なんかあたしまでやばいかも。だんだん暑くなってきた」



「だ、大丈夫ですか?」



「大丈夫……だとは思うんだけど。外行って涼んでくるから、その間美羽ちゃんよろしくね」



「はああ!?」



アルコールに強いのか特別酔っているようには見えなかったけど、美空先輩がひらひら手を振って出て行ってしまう。


残されたのは絶賛潰れ中の美羽と俺ら二人。
ど、どうすれば……。


しばし無言でアイコンタクト会議をした後、柚木園がそろそろと手を伸ばし、美羽の肩を遠慮がちに叩く。



「みーうー」



「……うー……?」



意識はあるようだ。

美羽はとろん、とした熱っぽい瞳で柚木園を映すとふらふらしながら近寄り、彼女にぼふっと抱きついて顔をうずめ………………………え?



「か、か、かわいいいいいい」



口に片手を当てキラキラその表情を輝かせる柚木園。
うにゅーっとかなんとか言いながら頬擦りしている美羽。


……なんだこれ。



立ち尽くす俺はアルコールの恐ろしさに戦慄を隠せない。酒の威力すげえ。

403ピーチ:2013/05/03(金) 16:00:07 HOST:EM114-51-9-68.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あたしも一緒だ仲いい人以外は!←

美人さんだから許されるw

ていうか美空先輩!? いくら何でもアルコールは!

404黒ネコ:2013/05/05(日) 09:18:56 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 どうも、黒ネコです^^
 いや、なんかもう「知ってますよ、貴方のこと」って思われてもイイほど皆さんの小説に顔出してます←
 今回は、心愛さんの作品に顔を出させて頂きました ̄▽ ̄

 文も読み易いし、学生の淡い恋話が楽しく読めました(笑)
 っあ、それと、400スレ達成おめでとうございます^^
 これからも、お体に沿わない程度に頑張って下さい
 応援していますっ!

405心愛:2013/05/07(火) 22:26:13 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ドジィ……
うん、いくら美人でもアルコール間違えちゃいけないね!
お酒は二十歳からっ!



>>黒ネコさん

またまたこんにちは(*^-^)ノ
恋愛というか基本アホしかやってませんけどね!
頑張って完結までこぎつけたいものです←

406ピーチ:2013/05/09(木) 04:40:55 HOST:EM114-51-29-243.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ちょっとくらいのドジなら可愛さとか引き出せるけどこれはちょっと←

どれだけの美人でもちょっとね……

でもあたしも間違えそうになったことあるような(こら

407心愛:2013/05/10(金) 22:07:24 HOST:proxy10047.docomo.ne.jp
>>ピーチ

やっぱり転ぶくらいに留めておかないとねw


割と見た目的に普通の炭酸飲料に近いやつあるよね(`・ω・´)
美空はただの不注意と運の悪さだろうがな!

408心愛:2013/05/10(金) 22:07:52 HOST:proxy10047.docomo.ne.jp






「……お前、彼氏はどうしたよ」



それでも必死に平静を装いつつ半眼で聞けば、柚木園がやっとこっちの世界に戻ってきてくれた。



「わ、私としたことが、つい美羽の可愛さに負けて色々忘れてしまった……!」



「安心しろ、お前いつもそんな感じだから」



全然『私としたことが』になってないと思う。



「み、見てくる!」



言い残して柚木園が廊下へ消え、あれ? と思ったときには既に、個室に美羽と二人だけになっていて。


しまった俺のバカ! 何やってんだよおい!
この状態の美羽と二人きりとか―――完璧に嫌な予感しかしない!



「んー……」



「み、美羽さん……? 眠いなら寝てていいんだよ……?」



俺が恐る恐る声を掛けても、むにゃむにゃ言いながらしきりに寝ぼけ眼をこすっている美羽。
……ダメだ、言葉が通じない。



「まだ早いけどそこに布団敷いてあるし―――って昴さんいつの間にこっちまで!? 仕事モードやべぇ!」



「う?」



きょとん、と一人全力で叫びまくる俺を見上げた後、ふるふると首を振る。



「え、えーと……寝ないってこと?」



熱っぽく潤む瞳は星の瞬く久遠の黒。
風呂上がりだからかアルコールの所為なのか、ほんのり染まった頬。
こくんと頷いた拍子に、濡れ羽色をした髪がふわりと広がり、甘い香りが鼻先を淡くくすぐった。


そんな場合じゃないってことは分かっているのに、勝手に心臓が早鐘を打つ。



「……そもそも美羽は炭酸飲めないし飲食物に対する警戒心も強いから、これだってほんのちょっと舐めたくらいのはず。だとしたら身体に害はないだろうし、だいたいこういうパターンの話ってヒロインが酔っぱらってるのは最初のうちだけで、一晩たったら綺麗さっぱり何も覚えてないってのが大抵ってことを考えるとここはやっぱり一回完全に寝てもらって―――」



「うー……?」



煩悩を抹消するためにひたすらぶつぶつ早口で喋りながら顎に手を当てる俺を、美羽は不思議そうにじっと見つめている。

くそ、いつもの中ニ病要素はどこに行った! これじゃまるっきり別人じゃないか!



「美羽ー? や、やっぱりあっちに」



「う―――」



「いや『う』じゃなくてねっ?」



思わず頭を抱える。
いつものヴァンパイアバージョンの方がずっと扱いやすいんだけど何これ! 普通の男子高校生には荷が重いよ!



「ひなー……」



「ふへっ!?」



今度は、ぎゅっと細い腕を回して正面から腰に抱きついてきた。


……え、え、えええッ!?



「ちょ、ちょちょちょちょぉッ!? 待っ、は、離れ」



「や」



ご満悦なようで、ピュアっ子版美羽さんはにこにこしながらきっぱり拒否。
くっ、これは可愛い―――じゃない! しっかりしろ俺!



「……美羽、よーく聞けよ? 何故か幼児化してるみたいだけど、俺たちは子供って年じゃない。高校生の男女がこういうことするのは色々問題があるわけ。分かった?」



頑張って言い聞かせるけれど、美羽は頬を膨らませてぷいっとそっぽを向く。
拗ねたようなその仕草がいつもの彼女のものと一瞬だけ重なって、顔が急激に熱くなる。



「っ、いい加減に、」



「や―――!」



このままではまずいと半ば無理矢理引き剥がし、じたばたしている美羽に語気を強めて言い放つ。



「俺、自分の部屋帰るから。この部屋で大人しくしてて!」



「………」



それを聞いた途端に、美羽がぴたりと固まった。
ショックを受けたように、大きな瞳が見開かれ―――




「えっ」




「……ごめんなさい」




みるみるうちに、じんわりと涙が溜まっていく。


な、なんで!? どうして!?




「もう、わがまま言わないから、……ひとりにしないで……っ」




力なくしゃくりあげながら、拙い謝罪の言葉を繰り返す。




「きらわれて、ひとりになるのは、……やだ、よ……!」




「………」



ガツンと頭を思いきり殴られたような衝撃を受けて、俺は黙り込んだ。

409ピーチ:2013/05/11(土) 12:09:25 HOST:EM114-51-32-43.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

転ぶのもどうかと思うけどなー…←

あるある! だって匂いは果物のお酒なんてよくあるもん!

ヒナさん、墓穴掘っちゃったねw(おい

410心愛:2013/05/24(金) 15:05:03 HOST:proxyag022.docomo.ne.jp
>>ピーチ

死にかけてるものの、ここあ再び参上(・∀・)
なんかもうほんと久々な感じがする!


見た目も香りも分かりにくいお酒は危険だよね!

あ、ちなみに次ので一応一段落で、今度は番外編で苺花と昴視点をちょろっとお届け予定←

411心愛:2013/05/24(金) 15:05:40 HOST:proxyag022.docomo.ne.jp






もしかして、今喋っているのは、弱い部分の美羽……?


強気に振る舞いながら、本当はいつも、こんなことを思っていたのか?


“ミウ”と、美羽。


綺麗で強くて、なのに酷く傷つきやすくて、怖いくらいに純粋な、心。



「わ、悪かったよ……」



小さな頭に手を乗せ、あやすように優しく叩く。



「置いてかない。置いてかないから……約束する」



「……ほん、と?」



一拍遅れ、濡れた瞳が上げられる。



「一緒にいてくれる?」



「う、うん」



それを聞くや、美羽はぱああっと顔を明るく輝かせた。



「約束ね!」



うわあ……。

くらっときた。
至近距離で見るには刺激が強すぎる笑顔だった。
姫宮のみたいに純粋で可愛らしい好意の滲み出るその表情は、不慣れな身にとってはたまらない。



「………! ………っ!」



「ヒナ?」



「やー何でもないっ!」



あははと空笑いしながら、美羽をくっつけたまま廊下に出る。
「どこ行くの?」と不思議がる彼女に適当に返し、見覚えのある一つの部屋の前に辿り着き、




「―――……柚木園ヘルプッ!!」




スパーンッ! と全力で襖を開け放った。


胸を張って言おう、俺はもう限界だ! これ以上この状態を続けたら俺の中にお住まいの理性さんが家出してしまう!
でも一応女同士だし、柚木園なら何とかしてくれるさきっと!


という少々情けない考えの末に目的の人物を探しに来た俺はすぐに彼女の姿を見つけた、けど。



「………ぅえ?」



変な声出た。


視界に入ったのは―――あ、と焦ったようにこちらに視線をくれる柚木園、そして彼女の赤い顔の両側に腕をつき、布団の上に押し倒す形で覆い被さっている姫宮。

二人の体勢は、えーと、アレだ。十中八九、旅行先で人目を忍んで今にも致そうとしているカップルのそれで。


つー、と背中に汗が伝う。



「……面目しだいも御座いませぬ。どうぞごゆるりと」



「キャラ変わってる!?」



きょとんとしている美羽の背中をそっと押し、退場しようとしたところで必死な声に止められた。



「ま、待って待って! 助けてよ!」



「……は? 助……?」



良く見れば、柚木園は姫宮の下でじたばたともがいている。
あれ? 合意の上じゃないの?



「ヒナってば!」



「あ、あーうん」



我に返った俺は美羽に裾を引っ張られてコケそうになりながらも、二人に近づいていって姫宮を引き剥がす。


意外と簡単に離れてくれた姫宮は、ふにゃ、とそのまま崩れ落ちた。
その頬は熱に浮かされたようにほんのり色づいている。



「姫宮……?」



「やっぱり酔ってるみたい。私を見た途端にくっついてきてさ……」



恥ずかしそうに浴衣の乱れを直しながら、柚木園。

明らかにくっついてきたとかそういうレベルの話じゃなさそうだけど、あんまり触れられたいことでもないだろうし深入りはしないことにする。



「それは大変だったな……。正直びびったよ」



「私も……。夕紀が酔うと怖いってことが良く分かった」



「やっぱ未成年が飲んじゃいけないってのは道理なんだなー」



二人でしみじみと頷き合う。
……いや、そんなことしてる場合じゃないのは分かってるけどね。



「んー……まいちゃん、どこー……?」



「ちょっとなにこの馬鹿力! 痛い痛い痛いっ」



「ひ、ヒナ!? 大丈夫っ?」



「うー……やーだー! ヒナといるー!」



「美羽も落ち着いて!」




「……み、皆様……? 一体何を……」




「「あ」」



どうやら部屋の前を通りがかったらしい。
荷物を手に持ったまま入口に立ち尽くす昴さんの、戸惑いの視線が痛かった。

412ピーチ:2013/05/24(金) 22:44:09 HOST:EM1-114-1-127.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

久しぶりー! 寂しかったよー!←

だよねお酒は要注意だね!

ちょっと待てヒナさんたちー!

みんな可愛すぎるけどそれとこれとは話が別だー!←

413心愛:2013/06/06(木) 19:52:32 HOST:proxyag074.docomo.ne.jp
>>ピーチ

で、大変なことになった後すぐに後日談という鬼進行w

明らかに変なところは優しい心で見なかったことにしてくれ!(ぇ

414心愛:2013/06/06(木) 19:53:18 HOST:proxyag073.docomo.ne.jp






「それにしても僕、あのときいつから寝てたんだろ……?」



連休明けの教室で、姫宮が不思議そうに首を捻った。



「朝気づいたら布団に寝てたし、それまでのことって全然覚えてないんだよね。おかしいなぁ」



「そ、それはよかった……」



「まいちゃん? なんで目を逸らすの?」



昨日からなんか変だよ? と柚木園の顔を覗き込もうとして、ばっと全力で避けられている姫宮。
……察してやれ。



「実は、ぼくも記憶が曖昧なんだ」



「うん、その方が幸せだと思う」



世の中には知らない方がいいことだってたくさんあるよね。

美羽は不満げにむむむと唸った後、



「はっ! ぼくの力を畏れる何者かによって消されたのかもしれない!」



「ねぇよ」



「くっ、人間界だからといって油断した……! ヒナ、主の危機だ! 眷属として今すぐ旅館の関係者に電話して、洗いざらい調査を―――」



「しねぇよ」



やっぱり俺の予感通りだったらしく、朝起きた美羽も姫宮も、あの夜のことは綺麗さっぱり忘れてぴんぴんしていた。

良くも悪くも美羽は今日も通常運転で、あの頼りなげな様子の面影もない。
うーん……俺の気にしすぎ、かな。



「あ。そういやお詫びも兼ねて、美空先輩がまた企画するってさ。おすすめの旅館らしいよ」



「ほんと? それは楽しみ……ってお詫び?」



……しまった!
この件については大事にしても面倒だから、天然ピュアっ子たる姫宮と超箱入り娘の美羽だったら「え、あの缶? 普通にジュースだろ。それより急に寝ちゃったけど多分疲れが出たんだな、もう大丈夫?」とか言って騙し通せるだろうって残りのメンバーで(っていうか美空先輩が)隠すことを決めたのに……!


柚木園が黙って顔を引き攣らせている。
い、今からでもごまかさないと!



「おいおいヒナー、何の話してんだよー! 旅館が何だって?」



「いっ?」



と、誰かがバシッと後ろから肩を叩いてきた。
振り返れば、にまにま笑っている春山のツラ。……なんか、妙に久しぶりに見た気がする。


俺が困ってるのを見て声掛けたとか……いやまさか、こいつはそんなキャラじゃないよな。
でも一瞬そう考えてしまうくらいには、偶然では済まないくらいにいいタイミングだった。



「よう。随分と楽しそうだな、ヒナ」



「その話、詳しく聞かせてくれるか?」



「まさか俺らを差し置いて、男女で仲良くお泊まりなんて素敵青春イベントを体験してきた……なんてことは、ないよなぁ」



「絞殺刺殺射殺銃殺毒殺圧殺殴殺撲殺惨殺轢殺扼殺」



「久々の展開!」



悪ノリしたクラスメイト男子に素早く拉致され、俺は教室の隅に追い詰められる。



「ちょ、待てよ! なんで俺だけ!?」



「柚木園は女だし、結野さんも別にいい。姫宮は………なんか違う」



「なんか違うってどういう意味!?」



……確かに、女子に縁のない男が嫉妬をぶつける相手には、姫宮はちょっと……。

いやむしろ、



「結野だけでなく姫にまで手を出すとは……許すまじ!」



「なんで!? なんで僕が入るの!?」



……やっぱり、羨ましがられる理由に入ってるよね。

これで美空先輩の名前も出そうものなら本気で殺されそうだ。



「いーなー。俺も誘ってくれればよかったのにー」



「冗談は存在だけにしておけ」



「俺の存在って冗談だったの!?」



この空気を作り出した張本人である春山はといえば、いつの間にか美羽に絡んでいた。



「ひでーよ結野ちゃん……俺のことキライ?」



「君の霊魂が天に召された暁には死神とダンスを踊ってやってもいい」



「どや顔でふられた! しかも結構言ってること酷くね!?」



台詞だけ聞けば春山の方がまともに思えるけど、これで物凄く嬉しそうな顔をしているのだから手に負えない。これだからドMは……。

415ピーチ:2013/06/07(金) 03:55:03 HOST:em114-51-132-176.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの鬼進行w

いや絶対変なところないから! 読んでてやべぇやっぱ神だこの人とかは思ったけど!←

……ヒナさんも夕紀ちゃんもある意味立場似てたね、今回(え

416たっくん:2013/06/07(金) 11:44:14 HOST:zaq31fa529e.zaq.ne.jp
昼飯の時間・・

腹をすかせたピーチは母親が朝早く作ってくれたお弁当を開けます。
すると・・何と祖父(おじいちゃん)の入れ歯が入っているではありませんか。

昨夜ポリデントにつけてあったおじいちゃんの入れ歯を
ご飯の上にのせ口に入れた・・すると
案外うまかった

417心愛:2013/06/07(金) 19:09:01 HOST:proxyag084.docomo.ne.jp






「美羽と夕紀にちょっかい出さないでくれる……?」



「おー柚木園! やっぱいいねその目! ゾクゾクする!」



「夕紀、この生命体の行動パターンに黙るって選択肢はないのかな」



「うん、賑やかで面白いよね!」



「ふふん、そうだろー。なんと言っても俺、通知表に6年連続で『落ち着きがありません』って書かれた男だからな!」



ツッコミ不在のカオス。
次々と飛んでくる質問をスルーしながらこっそり傍観していた俺は、耐えきれずにぼそりと呟く。



「……俺、春山ほどバカな奴見たことないかも」



「よせよ照れるぜ」



「褒めてねぇ!」



眩しいシャイニングスマイルで、ぐっと親指を立てられた。顔だけ見ればワイルド系のイケメンなのが非常にムカつく。




「―――日永圭はこのクラスかっ!」




「誰っ!?」



さらに突然ドアをぶち壊しそうな勢いで開け放ち、屈強そうな男子生徒がぞろぞろ入ってきた。
ずらりと並ぶいかつい顔は、学校の中で見たことあるような気もするけど……?



「貴様、姫と温泉旅行に行ったそうだな?」



「え、どこから情報を!?」



「そんなもの、この教室の天井裏に潜んだ会員からの連絡を得れば容易なこと」



「おまわりさーん!」



この学校忍者までいんの!?



「同じクラスだというだけでも許し難いのに、一日でも姫と寝食共にするなど言語道断!」



「ファンクラブに加入していない男が姫の半径二メートル以内に近づくな!」



「そ、それは席順の都合上無理が……って、え? ファンクラブ?」



『いかにも! 我々は非公式の姫ファンクラブ―――正式名称《我らが天使にして希望の光・姫宮夕紀を草葉の陰から愛で、戦い、全力で守護する会》である!』



「助けてぇぇぇえええええ!」



「? ヒナ、どうしたんだろ?」



「……関わらない方が良さそうだね」



「何を言う、主を庇うのが眷属だろう。自分の危機は自分で何とかしろ」



「この卑怯もだぎゃ―――――!」



巻き込まれたら面倒そうと悟るや、すぐに俺を解放して退散するクラスメイトたち。薄情極まりない。
あと姫宮、お前の耳はどうなってるんだ。



「大切なクラスメイトが一方的な体罰を受けるなんて、見過ごすことはできない……! 先輩方さぁカモンっ! その怒りを俺に全力でぶつけてくださいっ!」



「自分の欲望全開じゃねーかちくしょー!」



南高11組は、今日も平和です。

418心愛:2013/06/07(金) 19:10:26 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいや、違和感ありまくりでごめんw


可哀想ポジ←

419ピーチ:2013/06/09(日) 08:27:33 HOST:em49-252-253-153.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いや無茶苦茶うまいんですけど! むしろ違和感ないんですけど!

ヒナさん哀れだ……! そして春山くんはどうなんだろう…←

420心愛:2013/06/19(水) 20:52:43 HOST:proxyag014.docomo.ne.jp
>>ピーチ

番外編で、春山もアホなだけじゃないんだなーってわかってもらえたら幸いだ!
…アホだけどね!


そろそろ最終話なムードに突入するかもしれないw
それまでの息抜きってことでいつものバカ極まりない話をどぞ(`・ω・´)

421心愛:2013/06/19(水) 20:53:03 HOST:proxyag014.docomo.ne.jp


『現代社会』




昼休み明けの最初の授業。
すーすーと可愛らしい寝息を立てて、姫宮が居眠りしていた。
無理もない、特に眠くなる時間帯に加えてこの先生の声は生徒をまどろみに誘うことで有名だ。暖房入れてるからあったかいし。
現代社会はほぼ全員受験に使わない科目というのもあり、みんな最初から先生の話そっちのけでそれぞれ自習に励んでいる。これでまったく気づかず喋り続けられる先生も凄いけど。


俺は開いた国語の問題集の上にシャーペンを転がし、姫宮を揺すり起こそうと手を伸ばしかけて、



『(バカ、起こすな!)』



いくつものアイコンタクトによって阻まれた。


せっかく気持ち良さそうに寝てるのに、無理矢理起こしたら可哀想だってことだろうか。

……何だかんだで、いいクラスだよな。
でも今珍しく次のテストのポイントとか言ってるし、これは聞いておいた方が自分のためにな―――



『(寝顔鑑賞会が中止になっちまうだろ!?)』



訂正。つくづく最低なクラスだ。



『(おいこらヒナ! ふざけんな!)』



『(俺らの安らぎタイムをどうしてくれる!)』



『(まあ落ち着け。ここにとある組織から買収した姫宮の限定ブロマイドとポスターがある。これをじっくり鑑賞して心を休めるんだ)』



『言い値で買おう』



最後、複数の男子が一斉に思いっきり声に出して取引を成立させていたけど先生も気づかないしいちいちツッコむのも面倒になってきたので、俺は姫宮の肩を揺すって目を覚まさせる。



「うーん……? ハンバーグでいいんですか……?」



「どんな寝ぼけ方だよ」



ふにゃふにゃ言いながら目をこする姫宮。



「うにゅー……あれぇ、ヒナがいるー」



「そりゃいるだろ教室なんだから。ほらメモれ、田中結構大事なこと言ってるぞ」



「ふぁーい……?」



うとうとしながらも、その指先は器用にも教科書に付箋を張り出したので大丈夫だろうと判断し、前に向き直る。

重点的に出題する問題集の範囲なんかを一通り把握した後、俺は姫宮の他にももう一人、心ここにあらず状態の男を見つけた。
春山だ。
なんか一時期の柚木園みたいに、何も耳に入らないような様子でぽけーっと虚空を見つめている。

もう先生は社会情勢がうんたらとかいうどうでもいい話に移ってしまっていたから聞く必要はないけど、なんとなく気になった俺は春山の金髪にぺしっとチョップを叩き込んだ。
え、遠慮? そんなものこいつ相手に必要ないし。



「っ…………うおっ!?」



春山は攻撃自体にはほぼ無反応だったのに、何故か俺を見てから大げさにのけぞった。



「な、なんだヒナか! ちょ、びっくりさせんなよー、心臓から口が飛び出るかと思った!」



「それは是非とも見てみたいな」



正しくは口から心臓ね。


呆れる俺をちらっと見、春山は安心したように息をつく。



「……いくら似てないように見えても、兄妹ってやっぱ似るんだな……。あぶね、一瞬間違えそうになったわ」



「は? なんか言った?」



「いや何も?」



へらっと笑ってごまかす春山。……釈然としない。
こいつのこういうとらえどころのなさとか、たまに彩と似たようなものを感じることがある。



「寝不足? 永眠はしっかり取った方がいいぞ?」




「ヒナの珍しい優しさが痛い! でもそれが快感!」



「黙れ変態!」



ちなみに、ここまでの会話は全て小声でお送りしています。

422心愛:2013/06/19(水) 20:54:02 HOST:proxyag037.docomo.ne.jp






「えー、ではこのへんで、抜き打ちの小テストを行います。全員教科書類を机にしまっ―――」




―――教室に衝撃走る。



「春山、行ってこい」



「なんか俺の扱い犬っぽくね?」



「それはそうかもな。人権ないから」



「え、俺には日本国憲法適用されないの?」



それでもこちらは慣れたもので、嬉しそうに軽口を叩く春山が勢い良く挙手。



「はいはいはい先生質問!」



「春山君? これからテストですからまた後に」



「どうしても今知りたいんです! 八十三ページの自由記述の問題なんですけどー」



渋る先生を強引に押し切り、時間稼ぎを開始する。
質問に対する回答が終わっても、息をつく間もなくすぐさまそれっぽい口上をぺらぺらと並べ立てて、また違う問題の解説に移らせていた。

……あいつ案外頭いいよな。


でも、授業終了まであと30分。
それより春山のネタが底を尽きる方が早いだろう。


春山GJ、と親指を立て、俺たちは早急な対策を考えるべくアイコンタクト会議を行う。
誰か他にこの状況を打開してくれる人は、いや、それは無理だとしてもせめて、新しい質問ができるくらい授業に真面目に取り組んでいて春山の助けになるような人は―――



「美羽!」



「黙れ。ぼくは今、天狼(シリウス)を召喚する魔法陣を描くのに忙しい」



「ダメだ使えねえ!」



熱心にノートになんか書いてると思ったら!



「じゃあ、ゆ―――」



「………」



こういうときに役に立ちそうな優等生たる柚木園は、本格的に集中モードに移行していた。
参考書に没頭してしまっていて、ちょっとやそっとの声ではとても気づかせることができそうにない。



『(………やるか?)』



こうなったら仕方ない、なんとしてでも絞り出して、一人ずつ質問責めにするしか―――



「うん? ヒナ、どうしたの?」



不思議そうに首を傾げている姫宮が目に入る。



「あ、そういえばまだテスト始まらないねー」



「姫宮、先生に質問できる!?」



がしっと肩を掴みそうな勢いで迫れば、紅茶色の瞳をぱちくりさせて。



「え、質問? 今?」



「そう!」



「質問、質問……今日の朝ごはんは? とか聞けばいいんだよね?」



「いいわけあるか! 飯から離れろ!」



まだ現実と夢を混同してるの!?



「もっとちゃんとした、時間稼げるようなやつだよ!」



趣旨を理解しているのかいないのか、姫宮は「分かった!」と満面の笑顔を見せ、大きく手を挙げた。
……心配だ。物凄く心配だ。



「えー、春山くん、もういいですか? では、姫宮」



「先生の、1日のスケジュールを教えてください!」



『天然――――っっっ!』



確かに回答に想定される時間は長くなったよ! でもそういう問題じゃない!
ガックリする俺たちを見て、姫宮は「え? え?」としきりに首を捻っていた。


くっ、姫宮に任せたのが失敗だった! バカな質問をするなって怒られる可能性も―――



「私の平日の過ごし方ですか? そうですねぇ」



『…………え?』



先生は白いチョークで黒板にぐるりと円を書き、それに起床時刻やら通勤時刻やらを付け足し始めた。


……………マジで?



「あ! 僕と夕ご飯の時間一緒だ!」



天然と天然が絡むとこういうことになるのか……。


授業終了のチャイムまで残り五分。
現代社会が天然ばかりになったら、世界は平和になるかもしれない、と思った。

423たっくん:2013/06/20(木) 12:02:25 HOST:zaq31fa4b08.zaq.ne.jp
お前らのくだらんスレなんざ見る気にならんから

424たっくん:2013/06/20(木) 12:09:35 HOST:zaq31fa4b08.zaq.ne.jp
アホピーチと豚ピーチスレ・・

ご利用下さい。

425ピーチ:2013/06/22(土) 09:49:31 HOST:em114-51-154-201.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの人権なし!? え、ちょっと待ってそれで喜ぶ春山君もどうかと思いますけど!

それと夕紀ちゃんの天然さが可愛い! あと先生の天然は笑える!

……毎回毎回思うけど、ここにゃんってやっぱ天才だよね…←

426心愛:2013/06/24(月) 16:09:55 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp
>>ピーチ

それが春山だから仕方ないw


夕紀の天然は書いてて割と楽しいです←

現代社会の先生のボケはここあの実体験!
男子が授業を妨害するためにスケジュール聞いたら、本気で黒板に書き出したというw
あの人の授業は楽だったな…(遠い目)


凡才以下ですが何か?

427ピーチ:2013/06/25(火) 06:52:41 HOST:em114-51-24-71.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

彩ちゃんと居たときの印象が消えつつあるよ!?

天然は誰がどう書いても楽しいよねーw

まさかの実体験来た! え、それってどうなの!?(おい

うちの学校の社会担当の先生にそれ言おうものなら授業長引くよきっと…

じゅーぶんすぎるくらてんさいです!

428たっくん:2013/06/25(火) 12:13:16 HOST:zaq31fa50e8.zaq.ne.jp
   [ピーチさんがお亡くなりになられたら]

ピーチさんが死んであの世へ旅立ちました。
本人はおそらく自分が天国へ行けない・・。きっと地獄だろう・・?と思ってらっしゃる。
しかし!しかしですね・・どうか御安心下さい。

もしピーチさんが地獄へ落とされそうになったら
私が閻魔大王様に頼んで差し上げましょう。
『閻魔様・・お願いします!どうかピーチさんを許してやって下さい。
ああ見えても根はいい奴なんです。お願いします!天国へ行かせてやって下さい』と

そうなる日を祈っております。

429心愛:2013/06/27(木) 21:16:46 HOST:proxyag081.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そう思わせるのも春山の実力さ…!(多分)



次から長めの最終話になります(`・ω・´)
急にちょっとだけシリアス風味入るけどごめんね!


あとテストなんでまた更新率落ちると思います←

430心愛:2013/06/27(木) 21:17:09 HOST:proxyag082.docomo.ne.jp


『かくして、少年と少女は微笑みを交わす』




.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚







教室に入ると、クラスメイトは一瞬だけこちらを見てくるも、すぐに何もなかったかのように視線を逸らした。
自分の椅子に座れば、遠くから悪意のある囁きがいくつも聞こえてきた。



―――“僕”は、軽いいじめに遭っていた。



でも、いじめといっても上履きや道具箱を隠されたりする程度の軽いもので、どちらかといえばシカトされている、の方が近かったのかもしれない。
クラスメイトたちにとって僕は意味のないものだったていう、ただそれだけで。

でも、クラスの中心となっている男女のグループと自分しかいないときだけは、面と向かって酷い言葉を投げつけられることもあった。
近寄るな。ウザい。学校になんか来なければいいのに。


幼さゆえの残酷さ。
多数で一人を叩くことで優越感に浸るという、一種の遊びを覚えたばかりの彼らは言い返されないのをいいことにして、僕を玩具同然に扱った。
彼らの表情に本物の嫌悪感はなく、全員がにやにやと楽しそうな笑みを浮かべているのが、その証拠だった。



授業が終わり、クラスメイトたちが帰り支度を始める。
重苦しいため息をつき、僕はランドセルを背負った。
また絡まれる前に一秒でも早く教室を出てしまいたくて、爪先を出口へと向けた―――そのとき、だった。




『それでさぁ―――……うわっ』




誰かが遊び半分に振り回していたらしい箒(ほうき)が飛んできて、一瞬、激しい衝撃に目の前が赤く染まった。
とっさに瞼を閉じた顔からは眼鏡が滑り落ち、がしゃん、と床で音を立てる。



『あ……』



どうやらわざとではなかったらしい。
少しぼやけた視界で探れば、賑やかな例のグループの中でも一際目立つ、人気者の少年だった。
さすがにまずいと思ったのだろう。いつも僕を馬鹿にして笑っているそいつが、ばつの悪そうな顔をしている。

ごめん、の形に唇が動きかけるも、直前で耐えるようにぐっと引き結ぶ。
それはそうだ、こんなところで嫌われている僕に謝ったりしたら、自分の面子がなくなってしまう。



『……っ』



そう理解した瞬間、言葉にしようもない悲しみ、苦しさ、孤独感がガラスの破片のように、胸を突き刺した。

もう、限界だった。

壊れた眼鏡をひっつかみ、無理やりポケットにねじ込む。何も言わずにクラスメイトたちに背を向け、その場を逃げ出した。
チャイムが鳴るなか学校を飛び出し、ひたすら走る。


やがて行き着いたのは、普段から良く来る古びた公園。
ふらふらと引き寄せられるように中に入り、ブランコに腰掛けた。鎖を握る。
差し込む光、鮮やかな夕焼けの色に染まった遊具。静かで美しい、僕にとっての安らぎの場所。



そこで、僕が出会ったのは―――







.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚







「っ―――!」



自室のベッドの上で、俺はがばっと跳ね起きた。
しばらく状況を整理できずに呆然としてから、くしゃりと前髪を書き上げる。



「夢、か……」



背中にぐっしょりと汗をかいていて、不快な感覚に思わず顔をしかめ―――ギィ、という小さな音が聞こえてそちらを見やった。
ドアが開き、ひょこっ、と色素の薄い猫っ毛が覗く。



「あれ、お兄ちゃん起きてたの? おはよ!」



「……ノックくらいしろ」



俺がまだ寝ていたら起こそうと思ったらしい。
勝手に俺の部屋に侵入してきた彩は「ごめんごめん」と全く反省していない声色で謝ったが、俺の顔を見た途端におふざけの表情を消した。



「……どしたの?」



「あー、いや……ちょっと嫌な夢見ただけ」



「へー。せっかくのクリスマスの朝に変な夢見るとか、お兄ちゃんもついてないねぇ」



へらりとしたいつもの笑みを浮かべ。



「じゃあそんなお兄ちゃんのためにー、この彩ちゃんが特別にカルペスの原液を持ってきてあげよう! 疲れたときには甘いものだからね、ちゃんと全部飲むんだぞっ?」



「原液である意味はどこに!?」



大げさに爆笑しながら階下へ向かう速めの足音。
少し遅れて、俺はふっと笑う。



「……分かりやすい気遣いしてんじゃねぇよ、バカ」

431ピーチ:2013/06/28(金) 06:41:31 HOST:em114-51-13-90.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

春山君どっか違った実力の持ち主だよね!?←

やっぱ彩ちゃん優しいよね! 彩ちゃんみたいな妹欲しい!

てかクラスメイトありえねーわ普通謝るだろ好き嫌いのまえに((

432心愛:2013/07/04(木) 07:56:47 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp
>>ピーチ

春山だから仕方ないw

彩みたいな妹いても大変だと思うよ…?


次の次から、シリアスモードスタートかな!

433心愛:2013/07/04(木) 07:57:09 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp






―――忘れかけていた、いや、無意識のうちに忘れようと封じ込めていた記憶。


別に大したことじゃない。こんな体験よりもっと、ずっと酷い目に遭っている人だってたくさんいるはずだ。
ただ、子供の鋭敏な感性を以てすれば、どんな些細なことでも小さな傷にはなってしまうわけで。



何だかんだあって彩と朝食を摂りながら、俺は鋭い妹に気取られない程度にぼんやりと考えていた。


でもあの一件がなかったら、美羽―――“ミウ”と出逢えなかったんだから、あいつらには感謝すべきなのかもしれない。



先に食器を片付け、さっさと身支度を済ませてコートを羽織る。



「じゃ、俺これから出掛けるから」



「あ、美羽さんとデートなんでしょ? お兄ちゃんのくせにやるぅー」



「このメールを見てもそう言えるか?」



「ごめんなさい」



昨日の夜届いた呼び出しメールを見せると彩が素直に謝罪した。……内容は想像にお任せする。






☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆






「この世界に生を受けて数万年……。ついに、この刻が訪れた……」



「あー、遅いってことか。一応時間前なんだけどね」



人工的な光を浴びて、サラサラ零れる艶やかな黒髪。
ふんわり柔らかそうなカシミヤのカーディガン、適度な長さのスカートに膝上まであるロングブーツを合わせ、ポンポンつきの白いマフラーを巻いている。
清楚さと幼さ、甘さとが絶妙に入り混じった文句なしの美少女は、先ほどから周囲の視線を集めまくっていた。二つの意味で。



「ふん、別に責めている訳ではない。眷属にも事情があることは承知している。だが今宵こそ、忌まわしき聖夜の光を穢す血誓の宴を―――」



「クリスマスにわざわざ呼び出して悪いな、ってこと?」



そろそろ俺も翻訳業が板についてきたよね。
あとまだ夜じゃないから。周りめっちゃ明るいから。



横を通り過ぎるカップルの方々が皆、『あぁ、電波か……』という可哀想なものを見る目をこちらに向けている。
そりゃあ俺だって、俺を見つけた途端に芝居がかった仕草で手を広げて大仰な台詞で語り出したから何かと思ったけども。



「クリスマスとかいっても基本家にいるから、俺には関係ないようなものだし。……で? 用ってなに」



「む」



呼びつけておいて、用件を告げていなかったことを思い出したらしい。
少しだけ気まずそうに俯く美羽。



「……どうせヒナは暇を持て余しているだろうから、毎年恒例の予定に付き合ってもらおうかと思っただけだ」



「予定? 美羽の?」



美羽さん、ここで本日何度目かのどや顔。



「ああ。なにしろぼくには、リア充共が目の前を通り過ぎるたびに『……ちっ』と舌打ちしつつ横目でガンを飛ばすという重要な任務があるからな」



「どんだけ悲しいクリスマスだよ!」



あまりの器の小ささに涙が出た。
こいつ、本当に俺の初恋の人だよね?



「名づけてリア充狩り、という」



「物騒なネーミングだけど全然狩れてねぇしむしろ枯れてるしってか美羽にしては安直なつけ方だな!」



だからこそ字面の恐ろしさが際立つってものだ。やってることとてつもなくしょぼいのに犯罪臭がするよ。


……ほんと、どんだけ暇なんだお前―――って言いたいところだけど。


これは美羽なりの、俺を誘う下手な口実だったり……とか、自惚れてもいいのかな。
いや別に変な意味じゃなくて、単なる遊び相手としてワガママを言って気軽に連れ回すことができるくらいには、俺のことを認めてくれてるんじゃないか、なんて考えちゃうんだけど。



「……とにかく、リア充狩りはなしな。今日はどこでも付き合うから」



「……」



「放っといたらさみしがりやの誰かさんが可哀想だし?」



大人しくなっていた美羽がそれを聞くなり髪を逆立てて激昂。



「だっ誰がさみしがりやだ、誰が!」



「一言も美羽とは言ってないけどね」



「……う、ぐ」

434ピーチ:2013/07/05(金) 03:10:45 HOST:em1-114-73-103.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

弱みさえ握られなきゃ可愛い妹じゃないかー!

メール……何か美羽ちゃんらしいのはふつうに創造がつくw

435心愛:2013/07/25(木) 16:29:53 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp
>>ピーチ

弱み握られたら最後だけどねw



ソラが無事に完結したんで、こっちに集中していきますよー!
多分次の次からシリアス展開←

436心愛:2013/07/25(木) 16:30:23 HOST:proxy10015.docomo.ne.jp





それなりに煌びやかなイルミネーションの中を二人で歩く。
男女でクリスマス、といえばなんか甘美な響きだけれどもそんな雰囲気もへったくれもなく、まあつまり、いつもの俺たちだ。


邪気眼要素が絡まなければ基本言葉少なな美羽に、クリスマスといえば、と俺が話題を投げかける。



「サンタさん捕まえようとしたんだっけ」



「……よく覚えているな」



そりゃ覚えてるよ。

そんな衝撃的な話を忘れるわけがないし、何より、初めて美羽がちょっとでも心を開いて、俺に話してくれたことだし。



「そもそもなんでそんなことを? 好奇心旺盛だったにしても凄いよな」



「別に、大したことじゃない。プレゼントに違和感を感じるようになって、こうなったら自分でサンタクロースの正体を暴いてやろうと思ったんだ。……美空に聞いてもはぐらかして教えてくれなかったしな」



確かに、美空先輩ならサンタさんは親なのかと訊かれても、妹の夢を壊さないように上手く誤魔化してしまいそうだ。



「プレゼントって?」



「ドールハウスやアクセサリー、それに玩具のティーセットとか」



「……普通じゃね?」



いや、もちろん女の子の好みは知らないけどさ。
昔の彩だったら喜びそうなものばっかりなんだけどな。



「……ぼくが毎年、探検セットや双眼鏡、雪女などばかりを頼んでいたにもかかわらずだぞ」



「今じゃ考えられない健全ぶり! あと雪女ってなに!」



小学生男子にも勝るやんちゃぶり、っていうか雪女の存在が気になりすぎる。本当にもらったらどうするつもりだったんだよ。

そんなある意味純粋無垢な女の子が、今はこの惨状か……。



「う、うるさい! ……あの黒歴史と言うべき子供時代を思い返すと、ぼくも頭が痛いが」



「今も黒歴史絶賛更新中だと思うけど」



「何か言ったか、ヒナ」



「何でもないです」



ぎろりと睨まれ、あんまり怖くないけど一応口を噤む。



「あー、まあ確かに、頼んでたものと違って怪しみ始めるってのはあるよな。でも女の子らしい趣味のものあげたかったんだろ、良い親御さんじゃん」



「それもそうなんだが、」



言い、美羽が遠い目をする。



「……ぼくが調査を決行したその前の年のプレゼントは、ゴールドのクレジットカードだったんだ」



「……わーお」



そりゃあ美羽も怪しむわ。どんだけ夢のないチョイスだよサンタさん……ってツッコむ箇所はそこじゃないな。

結野家の金銭感覚はどうなってるんだ、おい。








゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚







その後は、美羽に寒い外を歩かせるのもどうかと思ったので、デパートなんかを中心に適当にぶらついた。
さも当たり前のように猫カフェに向かおうとする美羽を「また今度な?」と宥めたり、何か買うでもなく雑談しながら駅前の店内を歩いたり。

とりあえず出ようかと出口に向かったそのとき、俺のスマホに彩から電話がかかってきた。



「では、ぼくは向こうの雑貨店に行っている」



別に大した話じゃないだろうから気を遣ってくれる必要はないと言えばないんだけど、せっかくの申し出だ。



「ごめん」



有り難く乗らせてもらうことにして、外に出てから一旦美羽と別れる。

で、彩の話の内容は、やっぱり全然大したことなかった。
現在に至るまでの状況やら今いる場所やらを根掘り葉掘り訊かれ、
『はあ!? なにそれ完全にデートじゃん! お兄ちゃんなんか買ってあげなよ、ポイントアップのチャンスだよ!』とかなんとか。
怖いくらいいつも通りの妹をあしらいつつ、さっさと通話を切った。

液晶の時計を見て、説明している間に結構時間がたってしまっていたことに愕然とする。どんだけ丁寧に話してたの俺。



「っと、美羽は……」



指定された店に向かおうとして、その途中に小さな人だかりができていることに気づいた。
数人の、柄の悪そうな男の中に美羽の姿を見つけ、サッと血の気が引く。



「な……」



美羽は、そのうちの一人と話しているようだった。

たちの悪いナンパか、不良に絡まれているのかと思った……けど、どうもそんな感じじゃない。


嫌な予感がする。

437たっくん:2013/07/25(木) 18:48:43 HOST:zaq31fa59cb.zaq.ne.jp
アホピーチ

438たっくん:2013/07/25(木) 18:49:01 HOST:zaq31fa59cb.zaq.ne.jp
ピーチは頭が悪いです

439ピーチ:2013/07/25(木) 19:00:18 HOST:em1-114-139-120.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさん美羽ちゃん久しぶりぃー!←

サンタさんからのプレゼントにクレジットカードはないよね!

……さも当たり前なのね、ネコカフェ

何か美羽ちゃんが話してる人が何となくだけど想像できちゃうのはなぜ!?

440心愛:2013/07/26(金) 16:47:34 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ


え、想像できちゃう!?

さすがピーチ!



シリアスシーン一回分で終わらせるはずだったのに長くなりそう(つд`)

441心愛:2013/07/26(金) 16:47:59 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp






「―――そっか、南高か。結野、頭良かったもんな」




「美羽!」



はっきりと発音し、さりげなく男たち数人を押しのけ割って入る。



「ごめん、待たせて」



言いながら、あれ? と思った。
大きく着崩したシャツやがっしりした体格からもうちょっと大人かと思ってたけど、顔つきを見るとまだ若い。もしかしたら、全員俺と同じくらいかもしれない。



「ひ、ヒナ……」



それより俺が驚いたのは、美羽と向き合う位置に立って、俺を見て目を丸くしている男だった。


清潔感があって爽やかで、いかにも感じの良い好青年といった風貌。
すらりと背が高く、なかなかの二枚目だ。
美形ではないけど、造作を例えるなら昴さんに最も近い。

この集団の中にこんなイケメンがいたとは、今になるまで全然気づかなかった。



「……知り合い?」



そっと尋ねれば、美羽はこくりと頷いた。
顔色が悪く、声も硬い。



「……中学のときの同級生だ」



人見知りで他人との接触を嫌うところがあるけど、美羽がここまで露骨に苦手意識を出すのを見るのは初めてだ。
やはり、彼女にとって彼らとの再会は歓迎すべきものではないらしい。


なんとかしてここから美羽を連れ出そうと愛想笑いを浮かべつつタイミングを窺っていると、件の男が口を開いた。



「結野、その人彼氏?」



俺をじっくり眺めてから、笑う。


こんな日に二人で出掛けてて、しかも自然に名前呼びしてたら誤解されるのも仕方ない。


けどこいつは今、『結野美羽が連れている男』を見て笑ったんだ。


少し遅れて、徐々に不快感が込み上げてくる。



「……違うけど」



「ふーん?」



興味を失ったように、そいつはすぐに俺から視線を外す。

そして美羽に向き直ると、むかつくくらい爽やかに、にこりと笑った。




「じゃあさ、やっぱり俺と付き合わない? 結野」




「ふざけるな」



面白そうににやにやする周りの男たちや、衝撃的な発言に唖然とする俺と対照的に、間髪入れずそれを一蹴する美羽。
その瞳に曇りはなく、文字通り、こいつがふざけてこんなことを言っていると解釈しているようだった。



「つまらない冗談はよせ。……そんなにぼくが嫌いか、愛川(あいかわ)」



顔を上げ、相手をきつく睨む。



「まさか、本気だよ。今は本気で、付き合ってもいいかなーって思ってる」



愛川とか言うらしい男は、にこやかにそんなことを言ってのけた。



「だって、結野すっごい変わったし。服も普通に可愛いし、一瞬結野先輩かと思った」



「だよなー」と男たちが頷き合う。
当初の毒々しい雰囲気が少し薄れ、美羽が大分親しみやすくなったことを言ってるんだろうけど。

どうも、その言い方が引っかかる。



「やっぱり中身は一緒だけど、そのくらいなら目瞑れるしね」



「……ぼくの容姿が気に入ったのなら、美空にしたらどうだ」



じり、と美羽が一歩下がった。
見せかけの怒りより、内心の怯えが色濃く出る動作。



弱った獲物を追い詰め、傷口を抉り取るように。
残酷な笑みを口元にはりつけ、愛川は決定的な一言を投下した。




「いいじゃん。だってさ、俺のこと好きだったんでしょ?」




……え?
彼の言葉がまったく理解できず、思考が一旦ふつりと途切れた。




「―――――!」




カッと白い頬が熱に染まる。

屈辱か、羞恥か。
スカートの横で握りしめた拳を震わせ、



「……違う」



「嘘。結野、すげえ分かりやすかったもん。みんなだって知ってるよな?」



「違う!」



痛ましい悲鳴。
愛川は一瞬機械のような無表情になるも、すぐに笑顔を取り戻した。



「……あー。もしかしてさ、まだあのこと気にしてんの? 許してよ、わざとじゃなかったんだって」



「あ……あのことって、何すか」



見ていられなくなって口を挟んだ。
愛川はやっと俺の方を見ると、わざとらしく、困ったように苦笑する。



「うーん……でも、結野を傷つけるかもしれないから」



……何をいけしゃあしゃあと。

けれど美羽は実際に、これから告げられる真実に心底恐怖しているように黙り込み、青ざめていた。

442ピーチ:2013/07/26(金) 22:41:51 HOST:em114-51-65-67.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

何となくだったけどいやーな予感してた……まさか当たるとは…←

つか新キャラさんに悪いけど愛川くんムカつく!

美羽ちゃん傷付ける気ならさっさとお家帰りなさ((

443心愛:2013/07/27(土) 14:18:48 HOST:proxy10019.docomo.ne.jp
>>ピーチ

当たっちゃったw


うん、愛川は思いっきり嫌ってくれていいよ! この時点ではそういう役割ですから!(・∀・)

ただ愛川の心情も事件の内容も分かりにくいと思うんで、後から救済措置とりますw

444心愛:2013/07/27(土) 14:19:06 HOST:proxy10020.docomo.ne.jp






「―――おかしい、って言ったんだよ」




……なん、だって?



「中学になってもこんな口調で、自分の作ったキャラに酔ってて。おかしいじゃん、どう考えても。だから、教えてあげたんだよ」



「……」



「さすがにみんなの前で言っちゃったのは、悪いと思ってるけどさ」



笑みを絶やさない愛川の最後の台詞に、男たちが一斉に反応した。



「あれはカワイソーだったよな」



「『俺のことホントに好きなら、そういうの全部やめなよ。そしたら付き合ってやる』……だっけ?」



「ちょ、誰だよそれ。そこまで酷くないって」



「でも大して変わんねーだろ」



「え、マジで? そんなこと言ってたんかお前」



「そーそ、それもみんな揃った教室で。やばくね?」



「やべーわ。愛川マジやべーわ」



「あんまり言うと帰るぞ。今日の主役いなくなってもいいわけ?」



「ふざけんな、お前いなかったら女釣れねーだろ!」



げらげらと笑いあう彼ら。


俺は言葉を失った。
まさか美羽が、そんな目に遭っていたなんて。
俺が体験したものの比ではない。


次いで、心無い言葉を放った男が美羽本人を目の前にしても笑っていられるその無神経さに、ふつふつと怒りが沸いてくる。



「でも、俺は本当のことを言っただけだしね。世の中そんなに甘くないよ。ずっとソレやってたら、こんな風に損することくらい、結野だって分かってるだろ?」



「……」



悔しげに俯く美羽に追い討ちをかけるように、



「……へえ。やっぱり、そんなにショックだったんだ、あれ」



「……黙れ」



「登校拒否になっちゃうくらい?」



「黙れと言っている!」



鋭く相手を睨みつけ、声を張る美羽。


否定することができない自分の弱さに、焼けるような悔しさを、嫌悪を、感じている。
肉に食い込むような激痛が、俺の胸にも突き刺さってくる。



―――ああ、そうか。

すとん、と何かが胸に落ちる。


美羽は本当に、こいつのことが好きだったんだろう。
だから、こんなに傷ついた顔をしているのだろう。


きっかけは分からないけど、確かに見た目は格好良いし、クラスの中心にいて注目を集めるリーダーみたいなタイプだ。
何かの弾みで好感を持ってしまっても仕方ないだろう。



それに対して、憤りはしない。

けれど、何より問題なのは。



「……正直、顔ならタイプなんだよね」



愛川が追撃を放つ。



「もう、すぐにやめろとは言わない。少しずつ、分かり合っていけばいいと思うんだ―――って話。……あぁ、俺のことなんてもう好きじゃないか」



お前は何様なんだ。
どうして、そうやって笑っていられるんだよ。



―――美羽は、好きになった奴に、恋をした奴に、裏切られた。


自分の好きなものを、自分そのものを貶され、詰られた。
ずたぼろに傷つけられて、この美羽が、学校に行けなくなるくらい思い詰めて。



「……ははっ、何その顔。結局、偉そうなの口だけじゃん。あのときだって尻尾巻いて逃げたしさぁ」




―――『美羽ちゃんはまた、自分が傷つくことになる道に進もうとしてる』




美空先輩が、喫茶店で俺に言った言葉。
今なら、その意味が分かる。


美羽が愛川から酷い仕打ちを受けたのは、美羽が中二病だったから。
美空先輩は美羽の身に起こったことを勿論知っていて、もう二度とこんな経験をさせないように、妹を正しい方に導こうとしたんだ。




『あたしは美羽ちゃんに、誰かを好きになれるようになってもらいたいの!』




『このままじゃ、美羽ちゃんは誰も―――圭くんのことだって、好きになれないんだよ!?』




恋に臆病になってしまった美羽は、人との関わり合い方が分からない、と叫んだ。




『特定の誰かに必要以上に入れ込んで、そいつが取り返しがつかないくらい、大きな存在になってしまってから……いつか嫌われて、置いて行かれるのが怖いんだよ……っ』




憎んでいない、憎めない。
間違っているのは自分だから。
どうしようもなく、暴力的なまでの“正”を、突きつけられて。

445ピーチ:2013/07/27(土) 16:51:36 HOST:em114-51-141-181.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの当たるし! これだけは当たって欲しくなかったし!

よしヒナさん今すぐ愛川くんをぶん殴ろう!←

いやなに、美羽ちゃんを傷付けるんだから問題ないさ!((大あり

446心愛:2013/07/27(土) 18:22:02 HOST:proxyag036.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…ここあはピーチが恐ろしくて仕方ないよ…!(ガクブル


さあ期待に答えろ主人公!

447心愛:2013/07/27(土) 18:23:12 HOST:proxyag035.docomo.ne.jp







『ひとりにしないで……っ』




『きらわれて、ひとりになるのは、……やだ、よ……!』




旅館で見せた、弱り切った素顔。
俺に嫌われ、置き去りにされることに対して怯えて、震えていた。




「―――……何度も言わせるな」




はっとして見れば、美羽が顔を上げていた。

躊躇から、決意へ。

力強い視線で、愛川をまっすぐに見据える。



「以前はどうであれ、ぼくは、君のことなど何とも思っていない」



足を踏ん張って、気丈に言い放つ。

誇り高い吸血姫がこれ以上情けない姿を晒してたまるかと、上を向く。



……そう。

あんな絶望を味わったのに、なのに美羽は、またゴスロリを着て、カラコンをつけて、きっと中学のときよりずっと痛々しくカッコつけて、入学式に臨んだ。

美空先輩の心配をはねのけて、時間をかけてだろうけど、それでも自分の足で、立ち上がったんだ。

“理想”への意志を、想いを、さらに強く固め直して。




『君は―――強いよ』




……なんだよそれ。
お前こそ、どんだけ、……どんだけ強いんだよ。

不器用な、ただの弱い女の子のはずなのに。
なんでこんなに、バカみたいにまっすぐなんだよ。




「正直に言って不愉快だ。ぼくの事情に口出しをしないでもらおうか」



不愉快だ、だって。
真似をして耳障りな笑い声を立てる彼らに一瞥をくれ、美羽が俺を見上げる。




「行こう、ヒナ。時間の無駄だ」




冷たい声は、必死に震えを隠してる。


……分かるよ。この数ヶ月間、ずっと傍にいたんだから。



俺の手を取り、引っ張る。
ひゅう、と男たちが口笛を吹くのを、はっきりと無視して長い髪を翻す。



……ぞっとするほど美しくて、そして強い。
でも本当は弱くて脆い、ガラス細工のような女の子。




「……ごめん」




俺は。
そんな美羽が、好きだから。



「ごめん、美羽」



小さな手をそっと振り解いた。
安心させるように、精一杯の笑顔を作る。



「ほんとごめん。先、帰っててよ。用事できたから」



「……ヒナ?」



黒い瞳に広がる困惑。
主を困らせるとか眷属失格だよなぁ、とかぼんやりと思った。




「俺、……どうしようもないバカだからさ」




マジで、美羽よりずっとバカだわ俺。器小さい、バカ。


だから、


だから、ちょっと……我慢、できないかも。



美羽をその場に残し、無言で一歩を踏み出す。
何かを察した男たちが笑うのをやめ、不穏に目をギラつかせる。


美羽が小さく息を呑む音が聞こえた気がした、その瞬間。



通行人の悲鳴が上がる。



派手な衝突音がし、床に叩きつけられた愛川が、顔を押さえて呻いた。



―――拳が、痛い。




「……何も知らないくせに」




本当の美羽を、見抜けなかったくせに。


美羽の心を追い詰めて、傷つけて、弄んだくせに。



お前が。



お前、ごときが。






「お前が美羽を―――語ってんじゃねーよ」

448たっくん:2013/07/27(土) 20:13:14 HOST:zaq31fa4ab4.zaq.ne.jp
またクソスレか・・?
いい加減にしろよ

449ピーチ:2013/07/27(土) 21:40:44 HOST:em49-252-182-76.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

恐ろしくないよただの平凡以下の人間だよっ!?←

ヒナさん強い! 美羽ちゃんのためならさらに強くなれるよね!

450心愛:2013/07/28(日) 09:25:58 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp
>>ピーチ


怒ったガラ悪い人たちからのフルボッコルートまっしぐらですけどね!

ヒロインのために無力な主人公が立ち上がるっていいよねw
ヒナの一番の見せ場かもしれなかった←

451ピーチ:2013/07/29(月) 13:43:47 HOST:em1-115-85-149.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

フルボッコルートでも何でも美羽ちゃんのためにやり抜きそうだよね!

ヒナさん無力じゃないよ! 大丈夫だよー!?

うちの彩織に比べればなんてことないさ!←

452心愛:2013/07/29(月) 17:46:33 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp





……あーあ。


不思議と、頭は笑えるくらい冷静だった。

喧嘩どころか、今まで本気で怒ったことすらない俺が、まさか人を殴る日が来るとは。


周りを取り囲むのは血気盛んそうな憤怒の形相の男たち。
で、対する俺は腕力も体力も中の上。こりゃ病院送り決定だな。
ああ、カッコ悪い。



「……っにしてくれてンだよ!」



「調子くれてんじゃねぇよ!」



友人をやられて激昂した一人に胸ぐらを掴まれ、頬を殴られた。血の味が滲む。



「ヒナっ!」



後方から聞こえる美羽の声に泣きが混じる。



「やっ……やだ! やだあ……っ!」



バカ、来んな。
近づこうとする小走りの足音に焦り、振り向こうとして。
無防備になった俺へと、拳が迫る。




「―――させねぇよ?」




金色が視界を遮った。
パアンッ、と小気味よい音。




「一対五って、ヒキョーじゃね? やるからにはタイマンが基本っしょ」




「は……春山?」



口元にうっすら笑みを浮かべる男。
その軽薄そうな話し方は、間違いなくお調子者のクラスメイトのものだった。




「俺、自分から殴んのってあんまり好きじゃないんだこどね。気ィ変わったわ」




突き出された腕が風を切る。




「あっは。俺のダチと遊んでくれたサービス料、みたいな?」




上背もあるし、いかにも喧嘩慣れしていそうな風体。
男たちが警戒して後ずさる。


四人まとめて相手をする気らしい春山を唖然として見ているうちに、あと一人足りないことに気づいて血の気が引く。



「美羽っ―――?」



後ろを見ると、瞳に涙を溜める美羽を、誰かが背中に庇っていた。




「―――女の子を泣かせるなんて」




中性的で、良く通る美声。




「最低だね、君」




くす。
朱色の唇から、艶を含んだ吐息が零れる。




「このお礼は高くつくよ?」




細くすらりとしたシルエット。
お綺麗な顔で笑うそいつ。




「柚木園! おま、なんで……っ」




「話は後で、ね!」



言いながら、鮮やかな蹴りを放つ。
そういえばコレで春山をぶっ飛ばしてたよな、とかそんなことはどうでもいい。


主力の春山をサポートする形で柚木園が応戦。
が、そのどちらとも無意味な攻撃はせず、突っ込んでくる相手を最小限の動きでいなすような感じだった。


喧嘩売るだけ売って、何もできずに突っ立っている俺よりよほど逞しくて……頼りになる。



……ん?



待て、愛川は?




「いやっ―――」




美羽の小さな悲鳴。
いつの間に混戦を抜け、近づいたのか。愛川は美羽のすぐ目の前にいた。


しかし、怯える彼女に向かって勢い良く伸ばされた愛川の手を、美羽の後ろから突然現れた影が弾く。




「……ゆいのんに触らないで」




ぱしっ。

大きな瞳を怒りに染める、姫宮だ。
美羽が呆然と呟く。



「……夕紀」



それを聞いて我に返ったように、愛川が笑顔を作った。



「……どうしたの? ここは危ないよ。早く逃げた方が―――」



「バカに―――しないでよっ!」



明らかに姫宮を女の子扱いする愛川を睨み、威勢良く啖呵を切る。



「言われるまでもないよっ。ゆいのん、こっちっ」



心配そうに双眸を揺らす美羽がこちらを見るも、腕を引っ張られて。
愛川を振り切り、姫宮について走り出した。


それを、愛川は追いかけるでもなく黙って見送って。




「……根本、佐藤。みんなも……もういいよ」




その弱々しい声は不思議と全員の耳まで届き、男たちが動きを止める。



「通報されたらどうするんだよ」



「で、でも、こいつらが」



「こっちが退けばいい話だろ?」



「はあ!? お前、やられっぱなしでいいってのかよ!」



騒ぐ声を無視し、周りのギャラリーにちらりと視線をやる。



「ほら、見られてる。警察が来るのも時間の問題だ」



うっと言葉に詰まる彼ら。
あちらもさすがに警察沙汰は御免だろう。


俺を一発殴り返してもいいってのに。
静かに凪ぐ双眸の、何かに耐えるような淋しげな色に誰かの影が重なって、消えた。

453心愛:2013/07/29(月) 17:53:42 HOST:proxyag019.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…やっぱり頼りになるのは仲間だよね!(大汗)
春山が不良スタイルなのも苺花が男勝りなのも、もとはと言えばこのときに使いたかったからなのですw

でも大丈夫、ヒナも最後にはちゃんと決めてくれるはずさ! 多分!



そ、そんな感じで、次から早速番外編に移って愛川編やります!
このまま完結しても気持ち悪いかなーということで、悪役の救済を先にもってきちゃうよ←
オスヴァルトとかユーリエ、ジルとかと同じで、悪い奴では…ないんだ…!

454ピーチ:2013/07/29(月) 19:55:02 HOST:em114-51-149-36.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

春山くんかっこいい! 苺花ちゃん凛々しい! そして夕紀ちゃんが!


……愛川くんっていいひとなの←こら

ねぇどうしよう色々思いながらも春山くんがかっこいいっていうのが一番大きいんですが!((

455心愛:2013/08/01(木) 18:36:49 HOST:proxy10014.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとうごぜえます!

こういうアホっぽいけど頭よくて実はいい人、みたいなキャラが慌てたり照れたり(彩相手とかね)かっこよく決めてくれたりするの大好きなんです!
ちょっとでもかっこよく見えたならよかったよ!

男装の麗人が敵を華麗に撃退! みたいな苺花はここあの趣味ですすみません←
夕紀も天然ほんわかにしては頑張ったよ! ちゃんと怒れたよ!


このシーンはずっと書きたかったから嬉しいなーw
仲間大事!

456心愛:2013/08/01(木) 18:37:18 HOST:proxy10014.docomo.ne.jp






『ごめんなさい尾(つ)けてました』



「この暇人どもめッ!?」



所変わって人目のつかない建物の隙間スペースにて、俺は事情聴取を行っていた。



「だってクリスマスに、ゆいのんとヒナが二人でお出かけだよ? 気にならない方がおかしいよ」



「まったく尾行の動機として成り立たないことはとりあえず置いといて、そもそも何でそのこと知ってんの!?」



「あー、俺が彩ちゃんから情報仕入れたんだよ。そんで柚木園と姫宮ちゃん誘ったの。さっきヒナと結野ちゃん見つけたのも、場所を電話で教えてもらって」



「彩ァ―――っっ!」



あのガキ、さっきの電話であれこれ聞き出したのは春山たちに伝えるためだったのかよ!



「つーか何で彩が春山と連絡取り合ってんの!?」



「い、色々あって?」



俺は額に手を当て、はーっと白い息を吐き出す。
彩がなんで春山と連携するようになったのかとか、柚木園と姫宮も誘われたからってほいほい乗るなよとか、言いたいことはたくさんあったけど。



「まあ全部……結果的には助かったから、いいけどさ」



釈然としないけど、こいつらがいなかったら今頃俺はどうなっていたか分からない。
素直に感謝するにはちょっと引っかかりがありすぎるけれども。



「春山は意外とケンカ強かったし、姫宮も姫宮なりに頑張ってたし、柚木園も登場とか完全に王子だったし」



「え、意外!?」



「えへへぇ。僕頑張ったよ!」



「私は別に、大したことはしてないよ。さすがに力では敵わないし怪我をさせるわけにもいかないから、ほとんど足払いとかで流してただけ」



確かに、春山と柚木園に傷一つないのはもちろん、相手にも怪我はなさそうだった。派手なケンカ、っていうよりは軽い取っ組み合いみたいなものだったのかもしれない。

いや、それより。



「意外ってなんだよヒナぁー! 俺そこそこ強いんだぜ、不良なめんなよ!」



「黙れドM」



……あれだけキレてたのに、手加減できるってどんだけよこいつ。



「っつーか、なんでせっかくこんな日なのに、他人事に首突っ込むんだよお前らは」



「もともと、僕とまいちゃんは一緒に遊びに行くつもりだったからちょうどよかったよ。ね?」



「ちょっ、夕紀! なんでそれ言っちゃうの!?」



「……ん? あれ、ヒナと結野ちゃん、姫宮ちゃんと柚木園ってことはもしかして……俺、ぼっち?」



「もしかしなくてもぼっちだろ」



「うわぁんヒナがひどぉい! 春山寂しい! 結野ちゃん慰めて!」



誰もがなかなか話に入れることができずにいた美羽に、果敢にも春山が突っ込んでいく。
こういうときの春山のテンションというか、気配りは絶妙だ。



「……気色悪い声を出すな。その状況を楽しんでいるくせに何を言う」



「結野ちゃんも冷たいー! でもそこに痺れる憧れるぅ!」



「うぜぇ」



いつものやり取りに、ふっと小さく笑ってみせる美羽。
それでも中二病発言が飛び出さないのだから、相当堪(こた)えているのは誰の目にも明らかで。



「それじゃこれからも暇な俺たちは、二人の予定を全力で邪魔するとしますかね!」



「おいやめろ」



三人は美羽が心配なのだろう、話が一段落ついても離れようとしなかった。
春山の言う通りというか何というか、俺たちはあてもなく、店から店を巡り歩いた。

女の子をナンパしようとする春山を柚木園がシバいたり、柚木園に渡すつもりだったらしい紙袋を春山に指摘されて、赤くなってしまった姫宮をからかったり。


いつも以上に賑やかだったけど―――その間誰も、ついさっき別れたばかりの愛川たちに関することや、美羽の事情に踏み入るようなことは、一言も口にしなかった。



「じゃーなヒナ! 結野ちゃんのことちゃんと送ってやれよ!」



「……分かってるっつの!」



別れ際、春山のさりげない台詞に隠されたメッセージにそう返して三人を見送ると、隣の美羽に話しかける。



「あのさ、美羽。これから時間、ある?」



反応して顔を上げた美羽を見て、俺は安心させるようににこりと笑った。




「行きたいとこ、あるんだ。最後に、俺のワガママにもつきあってよ」

457ピーチ:2013/08/01(木) 20:47:41 HOST:em114-51-47-231.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

かっこいいんだよ春山くんケンカも強いし!

苺花ちゃんも凄いよね、結構派手にできそうなのに←

……というよりあたしは最初の台詞にびっくりしたぞ!

ごめんなさいが最初だったから何事かと思った!((

458心愛:2013/08/02(金) 20:40:23 HOST:proxyag011.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ごめんなさいから始まるというw

春山と苺花は戦闘要員!


次からやっと…! ってとこだけどまた長くなりそうだうわあああああ(TOT)

459心愛:2013/08/02(金) 20:41:59 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp





「……ここは……」



美羽がぽつりと呟く。

赤い光の乱舞の中、艶を帯びる黒い髪がふわりと広がった。

それだけで胸が詰まり、目頭が熱くなる。


……あのときと同じ、光景。



「ぼくが引っ越す前、良く来た公園じゃないか。奇遇だな、ヒナも知っていたのか」



「……まあ、ね」



しばらく黙って、懐かしそうに目を細め、美羽はブランコや木々、夕焼け空を眺めていた。


そして、俺が口を開くよりも先に。



「ヒナ」



俺を呼ぶと、くるりと振り返って。



「ぼくは今まで、眷属という名の鎖で、君を縛りつけていた」



……何を、言い出すんだ。
美羽が切ない微笑みを浮かべ、言葉を失う俺を見る。



「君は優しすぎるから。嫌がることもせずに、ぼくの理不尽な要求を何でも聞き入れてくれたな」



鮮やかな光を浴びる美羽は、幻想的で、儚くて。



「ぼくは恐れていたんだ。試していた、と言ってもいいかもしれない。……いつ、君がぼくを見放して、嫌うようになるのかと」



眷属の義務だとか主の命令だとか、上から目線で今まであれこれ言いつけていた理由が分かり、絶句した。

美羽は俺を疑っていたのか。
本当にこいつを信用してもいいのか、と。



「でも君は、決してぼくを軽蔑することはなかった。……ぼくのすべてを丸ごと受け入れてくれたのは、君が初めてだったんだ」



美羽は不自然なほどに明るく、にこりと笑う。



「とても、嬉しかった。……でも、もう、無理をしてくれなくていい」



さらりと零れ落ちた髪を指で払い、



「ぼくがいなかったら、君はもっと自由にこの世界を羽ばたける。ぼくと違って、君にはその素質がある」



これは……罪悪感からの言葉、なのか?
愛川と再会したことで、俺への信頼が揺らいでる。


俺が……無理をしている、だって?




「これ以上、自分の欲で君を縛りつけたくない。……契約を解消しよう、ヒナ」




結野美羽という少女を形成する輪郭が儚く霞み、弱々しく曖昧な線へと変質していく。
それはまるで、暗闇に人知れずひっそりと咲く花のように。




「―――ふざけんじゃねぇよっ!」




その瞬間俺を襲ったのは、愛川と対面したときよりも激しく純粋な、怒りだった。
けれどあまりの剣幕に驚いて目を丸くする美羽を見て、すっとすぐに頭が冷える。



「……あ、ごめん。驚かせるつもりじゃなくて……」



「あ、ああ……」



美羽相手にも大きい態度をとれない自分が、ちょっと情けなくなる。

でも。



ここで言わなきゃ、男じゃない。



俺は、覚悟を決めた。




「美羽。これから俺がする話は、簡単に信じられないかもしれないけど……ちょっと黙って、しっかり聞いてて」



「……なんだ、急に」



話の流れを断とうとする俺の台詞に、美羽が怪訝な顔になる。
俺はゆっくり深呼吸して気持ちを落ち着けると、ようやく、告げた。




「俺、ここで……美羽と、逢ったんだ」




「……は……?」



ぽかんとした表情。
それはそうだろう、こんなことを急に言われたって戸惑うだけだ。




「昔……小学生の頃の話だよ。一人で悩んでたときに、俺は美羽に逢って、すごく助けられたんだ」




感情が抜け落ちた瞳を見つめ、俺は身体中がじんわりと汗ばむのを感じながら、さらに言葉を紡ぐ。




「“理想”を探してる、って笑った美羽に、俺はあの日、かけがえのない大切なものをもらった」




“理想”を追いかける少女のまっすぐさ、まばゆいまでのひたむきさ。
それが俺を勇気づけて、ここまで支えてくれたんだ。



「キモいって思ってくれて構わない。小学校でも中学校でも、ずっと美羽を探してた。だから偶然一緒の高校になって、死にそうなくらい嬉しかった」



「……、っ」



「美羽がいるっていうから保健室にまで押しかけたけど、結局本当のことは言えなかった。それでも、どうしても美羽との繋がりが欲しくて、口実みたいに眷属の話を」



「ま……待て! 」



急に止められ、俺は口を噤む。

460ピーチ:2013/08/03(土) 16:17:41 HOST:em49-252-217-74.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

暇人どもめもちょっと笑っちゃったことは言わないw

昔の公園だー! ヒナさんと美羽ちゃんが出会った場所だー!

うわどーしよヒナさんが本気で怒鳴ったの初めて見た!←おい

461名無しさん:2013/08/03(土) 16:46:17 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
またクソスレかい? 心愛さんよwww
あんたのスレ見る度にヘドが出るぜww

462京都出身:2013/08/03(土) 16:47:05 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
貴方そんな事言っちゃいけませんよ
可哀想じゃないですか〜

463七紙:2013/08/03(土) 16:47:45 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
メガビという以上、仕方ないですな〜

俺は静岡に住んでいますよ〜
京都からだと結構遠いっすね〜

464名無しさん:2013/08/03(土) 16:48:26 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
おいっww
それさっき聞いたぞww

465七紙:2013/08/03(土) 16:49:02 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
そうだっけ?

466京都出身:2013/08/03(土) 16:54:45 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
七紙さん
ネオジオの話どうなったんですか?

467七紙:2013/08/03(土) 16:55:48 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
ネオジオと思い出したけど・・・
昔ドリフターズに荒井ちゅうって人いたの知ってる?

468京都出身:2013/08/03(土) 16:56:58 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
荒井さん知ってますよ(笑)
志村けんさんの前にいた人でしょう?
いや〜懐かしいですね〜

469京都出身:2013/08/03(土) 16:57:36 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
そういえばアライチュウで思い出しましたけど・・
ピカチュウさんはどうしてるんでしょうね〜?

470七紙:2013/08/03(土) 16:59:50 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
今年、劇場最新作公開されるんでしょう?
ミューツー再びとか・・

ちょっと質問していい?
荒井ちゅうとピカチュウどう繋がりがあるのよ?

471京都出身:2013/08/03(土) 17:02:14 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
僕らの世代の3大用語をお教え致しましょう

ピカ・チュウ

ジコ・チュウ

アライ・チュウ

自己中というのは自己中心の略ですが・・・

472京都出身:2013/08/03(土) 17:02:44 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
それで思い出したんです
チュウさんの事を

473七紙:2013/08/03(土) 17:05:03 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
なるほどな〜納得した

ドリフの荒井ちゅうさん良かったよな〜
俺、彼と同年代だもんな〜

474京都出身:2013/08/03(土) 17:06:34 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
ところでネオジオソフトはもう発売されないのでしょうかね〜

475七紙:2013/08/03(土) 17:07:14 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
そうだな〜
まあ荒井ちゅうさんはいい人だもんな〜

476京都出身:2013/08/03(土) 17:08:06 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
そう言えば
サトシとピカチュウって付き合い長いですよね〜

477心愛:2013/08/03(土) 20:54:59 HOST:proxyag101.docomo.ne.jp






「い、意味が分からない……っ! 君は結局、何を言いたいんだ!」



かなり混乱しているらしくそんなことを言ってくる美羽に、「マジか……」と俺は頭を抱えた。





「ここまで言ったんだから察せよ、もー……」



「だから何を!」



「だから、」



頭が痛い。顔が熱い。心臓がうるさい。
拳を握り、ぐっと足に力を入れて。


俺は十年越しの想いを、告げた。





「―――美羽は俺の、初恋なんだ」





言葉に詰まり、呆然と見つめてくる美羽に、俺は胸の内を打ち明けていく。



「どんなに失敗しても、くじけそうになっても立ち上がって、また理想を求め続けるところが好きだ。バカみたいにまっすぐで、純粋で、強いところも」



「……ぼくは、強くない!」



悲鳴のように叫び、美羽はカタカタと震える。
俺を信じられずに、怯える。



「自分に都合のいい空想の世界に逃げ込んで、みんなに守ってもらうばかりで……っ。今日だって、何もできなかった!」



美羽の声には、小さな嗚咽が混じり始めていた。
歯を食いしばり、さらに続ける。



「ぼくが吸血姫(ヴァンパイア)なのも、魔術組織の魔女なのも、全部全部作り事だ! そんなの分かってる!」



全てを吐き出すように。
美羽は呼吸を荒げ、指で眦を拭った。



「でも、やめられないんだ! 弱いぼくは、この期に及んでも、まだ自分の理想を諦められない……っ!」



おそらく、自分でも何を言っているのか分かっていないのだろう。
ぐちゃぐちゃな思考で、ぐちゃぐちゃな声で、美羽は叫び続ける。




「ぼくは、周りに迷惑をかけるだけなんだ! そんな人間に、誰かに好きになってもらう資格なんてない!」




「もう一回言う」




美羽を遮るようにして、はっきりと声を発した。




「俺は美羽の“理想”に、救われたんだ」




美羽が息を呑む。
俺は彼女に、静かに語りかけた。
この想いが届くように、願いを込めて。



「柚木園と姫宮、それに春山。クラスのみんなだってそうだ」



俺と美羽を取り巻く仲間たち。
妙に個性的で、バカ騒ぎばかりでうんざりすることもあるけれど。



「あいつらは確かに、優しすぎるところがあるよ。でもさ、美羽と一緒にいるのが面白くて仕方ないから、やたらと構ってくるんだろ? 美羽がいい奴だって分かるから、色々絡んでくるんだろ? いるだけで迷惑がかかって、何とも思ってない奴とつきあうほど、あいつらだってお人好しじゃない」



さらに続けて、美羽にとって一番身近な例を持ち出す。



「美空先輩だって、美羽のことが大好きじゃないか。確かに美羽の全部を肯定してるわけじゃないかもしれないけど、それも美羽のことを一番大切に考えてるからだし」



迷惑なんかじゃない。
むしろ、逆なんだ。
ごく単純に、美羽といるのが心底楽しいから、俺たちは美羽を喜んで受け入れる。



「確かに美羽のソレは、世間様から見たら良くない、今すぐやめるべきことだって言われるよ」



美羽のことを良く知らない人なら、いや、たとえそうでなくても、それは普通のこと。
美羽のことを心配するからこそ、安全で正しい道へ導こうとする。




「でも、俺はそうは思わない。美羽が望んでやってることなら、それが一番いいと思ってる」




「……どうして」



うーん、と俺は考え、ひとつの答えを弾き出した。



「たとえば。美羽がそうやって、“理想”に近づくための演技を始めた理由って、格好良いって思ったからだよね」



「……そう、だが」



すぐに剥がれるくらい薄っぺらで、なのに強い意志で固められた仮面。
美羽がそれで、本来の自分を隠すようになったのは。


格好良くて、憧れるから。それもある。

他人を遠ざけ、自分の身を守るため。それもある。


でも多分、もっと根本的な理由があると思うんだ。




「美羽は、さ。本当は……強くなりたかったんじゃないかな」




美空先輩に、二人の過去を教えてもらったことを思い出す。
お父さんの会社の事情でクラスから仲間外れにされ、その反動で、人を寄せつけないようにするキャラを作るようになった、と。


そんな美羽を一番近くで、一生懸命に支えたのは、美空先輩だった。

478心愛:2013/08/03(土) 20:56:17 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp





「美空先輩や、他にも家族の人たちとかさ。みんなに守られているばかりだったから、自分が強い、ヒーローみたいな存在になって、みんなを守りたいって思ったんじゃない?」



さっきも、『守られてばかりで』と零した。
美羽はそういう意識が強いから。
ただ感謝するんじゃなくて、その気持ちを自分の力で返したいって、考えたんだと思う。


それがきっと、美羽の“邪気眼”の始まり。


“理想の自分”とは、孤高のダークヒーロー。
大切なひとたちを、守りたかったんだ。



悲痛なほどの優しさでできた美羽の意志を、どうして否定することができようか。



「そ、んな……こと、」



「もちろんこれは、ただの俺の推測。本当は違うかもしれないよ」



動揺に瞳を揺らす美羽。

俺は彼女を見てきっぱりと言い切る。



「でも俺は、小さいときにそう考えてもおかしくないくらい、美羽が優しい奴だってことを知ってる」



今まで、美羽は他人を遠ざけてきた。

失わないために、持ってはならない。
そして、相手を自分のせいで傷つけないために、近寄ってはならない、と。

美羽はそれだけ、心根のまっすぐな人間だ。



「それで結局、そのひとたちを守れたか、っていったらどうか分かんないけどさ。少なくとも俺やクラスの奴らは、今の美羽と一緒にいられて、幸せだって思ってる」



だったら。




「誰かを幸せにしてる時点で、それは空想でも、虚像でもない。立派な“結野美羽”そのものなんだよ」




誰に異常だって言われても、それでも俺は美羽を肯定し続ける。
世界で一人でもいい。俺は美羽の理解者なんだって、胸を張って宣言してやる。




「それに俺は、そういうの全部ひっくるめて、一人の女の子として、美羽が好きなんだ。……それでも、俺の十年間を否定するつもり?」




肩が跳ねる。
やっと俺の、真剣な気持ちに気づいたかのように、かっと白い頬が赤らんだ。


不安そうに見上げるその瞳を、喰いつかんばかりに激しく見つめ返す。

黒い、瞳。

俺が昔、この場所で好きになったその色が、あのときと同じ夕暮れの光を取り込み煌めいている。


気が遠くなるような時間のあと。
さみしがりやのくせに、他人から好意を向けられることを恐れる少女はこくりと喉を鳴らし、



「ふ……ぇ、ぅあ……っ」



ぽろぽろと涙を零した。
ひく、ひくと時折しゃくりあげながらも、震える唇が言葉を紡ぎ出す。




「ぼくは、……ぼくも……きみ、のことが、」






―――すき、





声にはならなかったけれど、俺の耳にはしっかりと届いた。

全身の神経に甘い戦慄が走る。
火照った顔にさらに血が昇るのが分かる。



「あ……りがと」



違うだろ俺! もっと気の利いたこと言えよ!

でも仕方ない。何しろ、あまりのことに俺の脳はショート寸前なのだ。
頭の中がぐるぐる回る。


そんな俺には気づいていないらしい美羽は涙を拭うと、ちらりとこちらを窺った。



「あの、……ヒナ。契約という形がなくても、ぼくと共にいてくれるか?」



「あ……当たり前だろ!」



つまり……主と眷属じゃなくて、その、そういう関係になりたいってことで……合ってる、よな?


そんなことを言い出す美羽が嬉しいし可愛いしで、ここでスマートに抱き寄せたりできたら完璧なんだけど、残念ながらあまりのことに内心動転しまくり、うわーうわーっと大合唱な俺の手はイメージ通りに動いてくれなかった。
これだから彩にヘタレって言われるんだよまったく。




「では、改めて」




夕焼け空をバックに大仰に腕を広げ、美羽は朗々と声を張る。




「此れなるは《純血の薔薇(Crimson)》一級魔女にして偉大なる吸血姫(ヴァンパイア)、ミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ」




……それでこそ美羽だ。
思わず、俺の頬が緩む。




「たとえ幾千の刻を隔てようとも、我、永遠に汝と共に在ることを誓う」




涙を光らせながら微笑む美羽に、俺も笑って手を差し出した。




「これからもよろしく、美羽」




最初とはまた違った意味を持つ握手。


恥ずかしそうな美羽の笑顔はあのときみたいに、可愛くて、優しくて、綺麗で、何よりもまばゆかった。

479心愛:2013/08/03(土) 21:04:06 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽のためなら、ヒナも本気になるんだね!



ってことでついにやりましたヒナ! ここまで長かったああああああ! このヘタレがああああ! (落ち着け
これにて『邪気眼少女の攻略法。』完! っていいたいとこだけどごめんねもうちょい続くよ!



美羽はここあキャラの中で一番複雑な子でした…。自分でも自分のこと完全に分かってないんだからここあにも分かるかよちくしょう! と歯ぎしりしつつ頑張りましたw

ヒナ、これからも美羽を頼んだぞ!

480ピーチ:2013/08/04(日) 06:27:48 HOST:em1-114-170-159.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ここにゃんそれヒナさんに酷くない!?

ほんとに春山くんがぼっちになったー! 彩ちゃんとくっつけてあげてぇー!←

作者様! いくら自分でも分かってなくても作者様だから!

ヒナさん! これからも美羽ちゃん守ってあげてね!

481心愛:2013/08/04(日) 20:44:13 HOST:proxyag102.docomo.ne.jp






『いやあやってくれたね圭くん! あたし今最高の気分だよ!』



テンション最高潮の美空先輩の声が、電話越しに俺の耳を圧迫する。



『ほんとはあたしがぶん殴りたいとこだったんだけど、変な噂になっちゃったら困るなーって必死に我慢してたんだよ! まさか圭くんが代わりにやってくれるなんて!』



さてはあいつか。
なんとなく察したらしく、目を逸らしてひゅーひゅー口笛を吹いている情報漏洩の達人を、俺は横目でギロリと睨んだ。
春山から彩、彩から美空先輩……ってどんだけ俺の妹は俺の友人関係掌握してんだよ。


っていうか先輩、噂がなければ殴る気満々だったんですね……?



『しかもあれでしょ? ついに美羽ちゃん攻略しちゃったんでしょ!? もー! 圭くんってばどれだけあたしを喜ばせれば気が済むのかな! 今すぐ感動のハグしてあげるよそっち押しかけていい!?』



「遠慮しておきます。……あ、そうだ。その代わりってわけでもないんですが」



俺は人差し指で頬を掻き、



「ちょっと頼みがあるんですけど」








゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚








「―――ごめん。殴ったりして」




「お前、馬鹿じゃないの?」



目の前に座る爽やか系のイケメン様が冷たい一瞥をくれる。
こちらのテンションは最悪だ。



こいつのせいで、さっきから小声で「ちょっと、あの人カッコよくない?」「ほんとだー! でもその前の子は微妙だね」とか囁きが交わされている。ほっとけ。



「いや、いくら腹が立ったとはいえあれはさすがにやりすぎたかと思って。……でも、よく来てくれたよな。絶対断ると思った」



下げていた頭を元に戻しつつそう言うと、イケメン、もとい愛川は不機嫌そうに顔をしかめる。



「……別に、結野先輩に脅されたからだよ。……殺されるかと思ったし」



愛川の連絡先を調べ上げてコンタクトをとり、前にも先輩と入ったことのある喫茶店に来るよう話をつけてくれたのは、もちろん美空先輩だ。
小声で付け足された物騒な一言に、一体どういう手段を用いたのかは言及しないことに決める。



「痛い? それ」



「別に。お前の方が酷いんじゃないの」



つっけんどんだけど、お仲間にやられた俺の頬を心配するような台詞を吐くあたり、根っから悪いわけじゃないんだよなぁ、と俺は苦笑する。
今の愛川は猫を被っていないみたいだけど、こういうさりげないところ、いかにもモテそうだ。


そんな整った顔にうっすらとアザができているのを見て、いたたまれなくなる。



「俺は並みのツラだからいいけど、イケメンの顔に傷つけたとか、こう、後から罪悪感がですね」



「うっせ。……女の子との待ち合わせが、主役がこれじゃ、ってことでパスできてよかったくらい」



「あー、エサにされたのか。チャラチャラしてるように見えてそういうの苦手なのな」



「まあね。……って、なんで俺はお前とこんな話してるわけ?」



すごい。こいつこう見えて、いじりやすさは昴さんレベルだ。

分かりやすい不機嫌オーラを放出する愛川はしかし、店員の女性がアイスティーを持ってくると笑顔で会釈して受け取って、彼女が立ち去ると同時にまた不機嫌な表情になる。
なにこれ、超面白いんだけど。



「……で? どういうつもりだよ」



「うん?」



「なんで俺を呼びつけたんだって話。普通、こんな奴となんか二度と会いたくないはずだろうに」



自嘲してみせるその顔に、姫宮に連れられていく美羽を見送ったときのどこか寂しそうな表情、そして、古い記憶の面影が重なり、ちらついて―――


俺は確信すると、愛川にこう問いかけた。




「なあ。俺の名前、なんだと思う?」




「は? ヒナ、だろ」



「それあだ名!」



大して興味もなさそうな様子でストローを弄びながら言われ、ばんっとテーブルを拳で叩いた。
毎回ヒナヒナ言われてると最近感覚が麻痺してきたけど、ヒナって名字もそういう名前の男もそうそういないと思うんですがね!




「そうじゃなくて。俺の名前、日永、圭なんだけど」




「それがどう―――」



愛川は怪訝そうな眼差しで俺を見て、直後、はっと大きく目を開いた。

482心愛:2013/08/04(日) 20:50:35 HOST:proxyag101.docomo.ne.jp
>>ピーチ

彩と春山はそこそこいい感じになってるよ多分!
ただお兄様がそれを知ったらどうなるか(・∀・)


ヒナ、がんばって美羽のためにヘタレ卒業してくれたまえ!




悪役を放っておかないここあですw
愛川はコツつかめば割とちょろい←

483ピーチ:2013/08/04(日) 23:24:36 HOST:em49-252-221-171.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

美空先輩が怖いー!? ちょっとまってぶん殴りたいって! ついでに年下とはいえ男脅すって!

根っから悪い子じゃないならすぐ美羽ちゃんに謝るのが妥当だと思うなあたしは!←しつこい

ヒナさん……とうとうあだ名が名前に…((

484心愛:2013/08/05(月) 18:59:11 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
>>ピーチ


殴るっていうか、裏から潰す方が性に合ってるかもしれないね!
それができちゃうのが美空ですからw


うん、素直に謝れたらいいんだけどね…←
それができないのが愛川ですからw



次↓、衝撃の事実が明らかに! ってわけでもないかな…。ばればれだった?(´・ω・`)
ヒナと美羽初登場時から、共通点として愛川のことは決めてたんだよね!

ますますヒナ、簡単に許しすぎじゃね? って疑問はあれど後から補足するから大丈夫!

485心愛:2013/08/05(月) 18:59:37 HOST:proxyag011.docomo.ne.jp






「え……? お前……まさか、日永!?」




素っ頓狂な声を上げる愛川を、「気づくの遅っ」と笑ってやる。



「うそ。だって、眼鏡……」



「コンタクトだよ」



目の辺りを指差しつつそう言えば、向かいの相手はまじまじと俺を見て、小さく呟いた。



「変わった……な」



「だろ?」



愛川は、俺の予想通り―――小学校の頃、俺をいじめていたクラスの中心グループに所属していた、人気者の少年だった。
……ほんと、すごい偶然だよな。腐れ縁っていうか、運命の陰謀めいたものを感じるわ。


昔美羽と出逢った日、あの公園に駆け込む前に俺とちょっとした揉め事を起こした張本人だ。
すぐに眼鏡のことを気にしたのも、その罪悪感があったからなのかもしれない。


そんな、かなり曰く付きの相手だけど―――今は堂々と、愛川のことを見ることができる。



「まあそういうわけで、同じ小学校出身ってことで、仲良く話でも」



ようやくのことで理解して、居心地悪そうに視線を下に落としていた愛川が途端、顔を上げてキッと俺を睨めつけた。



「……意味分かんない」



「何が」



「何がって……決まってるだろ!?」



感情的に声を荒げる。



「俺……お前に、あんなことしたのに。その上、結野まで傷つけて、怒らせて。……それなのに、まだそんな、平気そうに」



「美羽のことは置いとくけど、別に、俺のことはどうでもいいし」



「はあ!?」



「んー、もう割り切ったっていうか。全然気にしてない」



あの一件だって、あのときの俺が妙にこだわっちゃっただけで、本当はただの事故だしね。


愛川はしばらく唖然とし、次に信じられないものを見る目を向けてくる。



「お前……ほんと、バッカじゃないの?」



「そうだよ。それくらいのバカじゃなきゃ、あの美羽と一緒になんかいられないっての」



その返しに、愛川はちょっとだけ、むっとしたような様子を見せた。
俺は再び、美空先輩がこの店で言った台詞を思い出す。




『分かっちゃうんだよねー。たまにいる、あたしじゃなくてその後ろに隠れてる美羽ちゃんの方を狙う子』




「―――お前さ。美羽のこと好きだったんだろ」




率直に言うと、分かりやすくびくりと肩が跳ねた。



「この前も、俺が彼氏だって勘違いして突っかかってきたんじゃないの?」



「……え? 違うのかよ?」



ぽかんとする愛川。


……え、と。



「いやー……まぁ、えーと、あのときは違ったというか、最近違くなくなったっていうか、」



「もういい。だいたいわかった」



愛川はうんざりしたように言い、色々と諦めたらしく大きく嘆息して。




「……結野のあんな顔、初めて見たんだ」




美羽を取り囲むようにしていた愛川たちの集団に俺が割って入ってきたとき、美羽の見せた表情にどうしようもなく苛立った、と愛川は言う。




「俺なんかに絡まれて、困ってたとこを助けられて……安心してる顔。心底、お前を信頼してる顔だった」



切なく物憂げな眼差しは妙に様になっていて、頻繁にこういう表情をしていることを窺わせた。



「そんなに俺と話すのが嫌かよ、って、すごいムカムカして……自業自得なのにな。ああ、今の結野にはちゃんと、そういう顔見せる相手がいるんだ、って」



―――多分、羨ましかったんだと思う。



最後に、愛川はそう零した。



この前言ってた中学のときの話聞かせて、と試しに頼んでみれば、ぽつりぽつりと語り出す。


自分目当てに群がる女に辟易としていた愛川は、よりにもよって、クラス中に嫌われる美羽に惹かれてしまった。
で、だんだん美羽といい感じになってきたのに、最終的には女友達の策略には嵌り込み、美羽を言葉の暴力で傷つけた。



「……うん? つーかさ、その女友達……ヤナセ? さん? がそもそも一番の原因なんじゃないの?」



「いや。あいつはどんな手段を使ってでも、俺をモノにしたかっただけ。自己中心的っていうか、いじめられてる子なんか眼中にも入れないような奴だから。俺のことがなかったら、結野を攻撃することもなかった」

486ピーチ:2013/08/05(月) 21:22:28 HOST:em49-252-183-216.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

怖いです美空先輩落ち着いて!←

ヒナさんと愛川くんまさかの小学校時代の同級生!

……ヒナさんに対しても美羽ちゃんに対しても、愛川くんって維持はってばっかだよね((こら

487心愛:2013/08/05(月) 22:25:58 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そういうことなのですw

その意地の張り具合が全部悪い方向に向いちゃってるんだよ…(=_=;)
でも、だんだんヒナにはある意味素直になってきたぞ!

488心愛:2013/08/05(月) 22:26:37 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp






苦悩の顔で、でも、きっぱりと言い切る。



「悪いのは全部、中途半端に結野をその気にさせて、なのに自分可愛さに負けて、柳瀬の企みに乗った俺」



……ほんと、悪い奴じゃないんだよなぁ。


俺は同情に満ちた表情で、悔しげに俯く愛川を見た。



「そっか……愛川も、つらかったんだな」



「ひ、な……が」



「で、それなんだけどさ」



次いで、俺は慈愛に満ちた表情でにこ。と微笑み、



「―――ごめん、やっぱもっかい殴っていい?」



「なんでだよ!」



お、なかなかのツッコミ。
なんかこういうとこ俺と似てない? ……え、似てない? そうかなぁ。



「だって、つまり毎日嫌になるくらいモテるから、その分大人しい美羽に目が行ったってことだろ? ヤナセさんの行動も、ただのヤキモチじゃんか。同じ男として腹立つ」



「知るか!」



愛川はすっかりご立腹である。



うん。……さて。そろそろ、かな。



俺は後ろにちらりと視線をやってから、声のトーンを落とした。




「……それに、どんな理由があっても、美羽にしたことは到底許せることじゃないし」




「……分かってるよ、そんなこと」




からん、と氷が虚しい音を立てる。
愛川の顔が暗い翳りを帯びた。



「俺だって、悩んで悩んで、何度も謝ろうと思った。でも、結野はそれっきり学校に来なくなって……。家を訪ねて行こうにも怖じ気づいて、結局できずに終わった」



深刻に沈み込む声。



「クリスマスの日、偶然結野を見かけたときに声かけたのは、今度こそ謝ろうって思ってたからなんだ。……でも友達がいたから、上手く切り出せなくて。焦ってたとこに日永が来て、ついイラッとして……また、同じことを繰り返した」



愛川はくしゃりと乱暴に前髪を掻き上げた。



「……っとに、最低だ、俺」



顔を歪ませ、苛立ったように吐き捨てる。




「情けない。自分が嫌になるよ。余計なことはすらすら言えるのに、なんで大事なことは言えないんだろ」




愛川がいけなかったのは、美羽の中二病を受け入れられなかったところじゃない。
いくら美羽の本質を見抜いて好きになっても、それでも美羽の言動をおかしいと思うのは当然といえば当然だし。
それをやめてほしい、なんて、美空先輩だって言っていたこと。

ただ、愛川はほんのちょっと思っていただけのそれを、トラウマになるような状況で、何倍もの酷い言葉にしてしまっただけ。


人前で好きな子を相手にすると特に素直になれずに、流れるように笑顔で嘘をつく。


ここまでくると、いっそ天才的なまでの不器用さだ。



「お前、さてはあれだろ。好きな子ほどいじめちゃうタイプだろ。小学生男子かよ」



「……うるさい」



茶化したらぎろりと睨まれた。
俺は懲りずになおも続ける。



「……え、待てよ。じゃあもしかして小学生のとき、実は俺のことも―――」



「キモいこと言うんじゃない!」



「はいはい、ツンデレツンデレ」



「誰がツンデレだ!」



まあそれは冗談としても、俺のことを心底嫌ってはいなかったことは確かだ。
この様子だと、むしろ逆もありえるんじゃないかな。

なのにただ周りに流されて、したくもないのに同じことをやっていただけ。
協調性の点では満点なんだろうけど。



「ほんと、不器用だよなーお前。人生損してる」



「……ひねくれてて悪かったな」



「ほんとだよ。せっかく美羽のいいとこに気づいたのに、うっかり手放しちゃったんだもんなー。あーあもったいない」



そのおかげで、俺は美羽とこういうことになれたわけですけどね。


にやつく俺を見て愛川が黙って額に青筋を立てたので、とりあえず話を戻すことにする。



「……とにかく。謝る、っていうか、お前が今更殊勝なこと言っても美羽もすんなり信じるとも思えないから、もう仕方ないんじゃね? それより、また変なこと言っちゃったらどうするんだよ」

489ピーチ:2013/08/06(火) 06:33:21 HOST:em1-114-157-74.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

……愛川くん、ほんとに損するタイプなんだね。モテるせいで←おい

てかヒナさんも寛大だよね! あたし自分いじめてた奴だったら罪悪感ナシに殴って終わるわ!((

490京都出身:2013/08/06(火) 12:34:54 HOST:zaq31fa4a0d.zaq.ne.jp
        【ピーチさんのシールダス20円】

シールダスというのは昔のカードダスの仲間です。
しかし今回のシールダスは以前のシールダスとは異なり、
ピーチさんの体内から放出された汁、すなわち液体を意味します。
シルとシールをかけたシャレです(笑)

有料ですが料金は一回20円、お手頃価格でご提供致します。

業務用自販機として設置させて頂く予定ですが、
何か問題ありますか?

491心愛:2013/08/06(火) 21:01:27 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…ヒナも、ただバカみたいに寛大なわけじゃないんだぜ?(・∀・)

愛川のことは気に入り始めてるけど、ちゃんとケジメはつけますよ!



なんと、次の次くらいで完結だよ! やったー!

このぶんだと美空編もできそうだ…!(つд`)

492心愛:2013/08/06(火) 21:01:55 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp





「そう……だよな」



愛川は落ち込んだようで、声の抑揚を落とした。
しばらく氷が溶けていくグラスを見つめながら、ぼんやりと考えたあと、




「……結野はずっと、誰からも理解されずに、一人で生きていくんだと思ってた」




入学式からしばらくの間、美羽は確かに浮いていたし、孤立していた。それはもう、話しかけるのもためらうくらいに。
もし柚木園や姫宮の協力がなくて、俺も美羽に接触する勇気を出せずにいたら、ずっとその状態が続いたのかな、なんて考える。



「これでも、結野のことは本当に好きだったから。悔しいし、ムカつくし、まだわだかまりはあるけど」




言い、愛川は本当に少しだけど、ふっと笑ってみせた。




「今は、結野が日永みたいな奴と逢えて、良かったと思ってる」




好きになった子の幸せ―――って言ってもいいのかな―――を祝福する。
渋りながらも結局、あれこれと話してくれた愛川が今日、一番素直になった瞬間だった。
自分が不幸にしてしまったという負い目もあるんだろうけど、その真剣でまっすぐな思いはきちんと、俺の胸に届いた。




「悪かったよ、色々と。……って、結野にも言えたらいいのにな」




後半、複雑そうな顔をする愛川。


俺は、それを聞いて。


本日最高レベルの、満面の笑みを浮かべた。




「―――だってさ、美羽」




「…………は?」




すると。
俺と背中を向けあう形で座っていた、すぐ後ろの席の少女がスッと立ち、黒髪を靡かせてこちらのテーブルに歩いてきた。


少し気まずそうな表情。
小柄な彼女は今まで、愛川から見えないよう俺の身体の後ろにすっぽり隠れていたのだ。


動揺した愛川が椅子を蹴飛ばす勢いで、ガタンッと勢い良く立ち上がる。




「結野……っ!?」




うんうん、今日も俺の彼女は可愛いなぁ。いつにもまして気合い入れまくったゴスロリだけど。



「な……なに、その服」



「闇の装束だが、何か問題が?」



「は?」



それにしても、自分の中二病を貶した相手の前に、堂々とフリフリ白黒ファッションで現れた美羽はちょっと凄いと思う。
愛川が混乱状態に陥るのも無理はない。



「って違う! い、いつからそこに」



「……最初からだ。悪いが、話はすべて聞かせてもらった」



愕然とし、端正な顔を引き攣らせる愛川。


油断して話した今までの内容(実は美羽のことが好きだった、とか)を本人に聞かれていたとは、世間体や人の目を気にしたり、本心を隠してしまうところがある彼にとって、この上ない衝撃のはずだ。


あまりの屈辱と羞恥に俯き、わなわな震える愛川は見ものだった。


やがて、ばんっ! とテーブルに千円札を叩きつけ、



「……帰る!」



取り繕うことさえできず大股で歩き去る彼の後ろ姿を、俺はにやにや笑って見送る。



「ざまぁ」



「君は案外性格が悪いな……」



美羽に呆れたような目で見られてしまった。



「あ。誤解されないように言っとくけど、これ、提案は美空先輩だから。……俺もノリノリだったけど」



タダで今までのこと、っていうか美羽のことをチャラにしてやるほど、俺だって甘くはない。
でも、一番の弱点を遠慮容赦一切なく抉ってやったのだ。これくらいで許してやってもいいだろう。

暴力的制裁より遥かに平和的で効果的。
さすがは美空先輩、嫌がらせに関してもプロだ。……それがいいのか悪いのかは置いといて。



「やー、このアイスティー500円もしないのに、あいつ太っ腹だなー。臨時収入臨時収入」



俺は愛川の置き土産をほくほく顔で回収しつつ。



「さすがに可哀想だしお詫びのメール送っとくわ。メアドも美空先輩に聞いといてよかったー。あの人ほんと恐ろしいよなぁ……よし、と。『死ね』とか返信来そうだよねー。照れ隠し乙」



「ぼくにとっては十分ヒナも恐ろしいのだが……」



邪気眼翻訳機にツンデレ翻訳機も兼ねてるとか、俺って高性能すぎじゃない?

493ピーチ:2013/08/06(火) 23:01:48 HOST:em114-51-177-71.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

鬼だ! ヒナさん鬼だ!

初めてヒナさんが鬼だと思った!←

…そして愛川くんが可哀そうに思えた((

美空先輩相変わらず美羽ちゃんのためならとんでもないこと考えますね!

494京都出身:2013/08/07(水) 11:48:01 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
ピーチさんの曲です。お聴き下さい♪

作詞・たくや


    【いい湯だな&さよならするのはツライけど】

ババアが死んだ〜♪ババアが死んだ〜♪
いい気味だ〜♪いい気味だ〜♪
さよならす〜るの〜は〜ツラいい〜いけど〜♪
寿命だよ♪仕方がない♪
ピーチが逝くまでごきげんよう♪


ピーチが死んだ〜♪ピーチが死んだ〜♪
いい死に顔だ〜♪いい死に顔だ〜♪
突如おばあさんがピーチの背中に〜♪
久しぶり♪久しぶり♪

ここは温泉♪さんずの湯♪


ババンババンバンバン♪ババンババンバンバン♪
いい湯だな〜♪いい湯だな〜♪
さよならす〜るのは〜ツラ〜いい〜けど〜♪

時間だよ!仕方がない!
ここは上州、草津の湯♪

495京都出身:2013/08/07(水) 11:48:18 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
ピーチさんの曲です。お聴き下さい♪

作詞・たくや


    【いい湯だな&さよならするのはツライけど】

ババアが死んだ〜♪ババアが死んだ〜♪
いい気味だ〜♪いい気味だ〜♪
さよならす〜るの〜は〜ツラいい〜いけど〜♪
寿命だよ♪仕方がない♪
ピーチが逝くまでごきげんよう♪


ピーチが死んだ〜♪ピーチが死んだ〜♪
いい死に顔だ〜♪いい死に顔だ〜♪
突如おばあさんがピーチの背中に〜♪
久しぶり♪久しぶり♪

ここは温泉♪さんずの湯♪


ババンババンバンバン♪ババンババンバンバン♪
いい湯だな〜♪いい湯だな〜♪
さよならす〜るのは〜ツラ〜いい〜けど〜♪

時間だよ!仕方がない!
ここは上州、草津の湯♪

496京都出身:2013/08/07(水) 11:50:10 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
>>ピーチ
ピーチさん
ちゃんと聴きなさいよ
あんたの曲なんですからね

497京都出身:2013/08/07(水) 11:56:12 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
ピーチが死んだ〜♪ピーチが死んだ〜♪
いいザマだ〜♪いいザマだ〜♪
じいさんが天国からふらりと舞い降りた〜♪

寿命だよ♪仕方がない♪
ここは温泉、さんずの川♪

ババンババンバンバン♪

498名無しさん:2013/08/07(水) 12:25:56 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
心の旅のサビ部分
替え歌メドレー



   【もしもピーチさんがお亡くなりになられたら・・】



もしも許されるなら〜♪眠りについたピーチを〜♪
かんおけに詰め込んで〜♪火葬場に入れ込んだ〜♪♪

あ〜♪だから今夜だけは〜♪ピーチを見ていたい〜♪
あ〜♪明日の今頃は〜♪かんおけ〜のなか〜♪

499名無しさん:2013/08/07(水) 12:27:26 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
あ〜明日の今頃は僕は汽車の中〜♪

500心愛:2013/08/07(水) 17:58:30 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ


最終回の前の回になって主人公の新たな一面が!


…結局、愛川は損しまくってるだけだと思うw
可哀想な子なんだよ…!


でもこれでスパッと許しちゃったんで、ヒナが押しまくって友人関係築いちゃうかもw
愛川は嫌がりそうだけどね! 表面上は!

501心愛:2013/08/08(木) 20:47:27 HOST:proxyag044.docomo.ne.jp





「おはよ」



休み明けの教室。
入り口でうろうろしている小さく黒い影を見つけ、俺はすかさず声をかけた。



「……おはよう」



びくっとし、顔をちょっと赤らめて観念したようにこっちに歩いてくる。


あんなことがあった後では、三人と顔を合わせづらかったのかもしれない。
でも彼らがそんなことを気にするわけがなく、美羽の姿を認めるや、まず春山がアホくさい挨拶をかました。



「結野ちゃんおっはよーん! 元気ー?」



「美羽! 良かった、今日休みかと思ったよ」



ほっとしたように微笑む柚木園の隣、姫宮がにこにこ嬉しそうに笑っている。



「ゆいのん、いつも通りだね!」



蝶と薔薇をモチーフにしたレースやフリルたっぷりのゴスロリに、リボンつきのヘッドドレス。
いつも通りすぎる衣装に身を包む美羽は、戸惑いをすぐにしまうと誇らしげに胸を反らした。



「……ふん、このぼくが闇の装束を纏わなくなるとでも―――」



「思ったよ?」



「む」



口を『ヘ』の形に曲げる美羽。
ちょっと不満そうだったけれど、そう言われても仕方ないと思い直したようで。




「その……心配をかけたな」




小さい声で言った後、少し時間をかけてから顔を上げる。




「だが、もう大丈夫だ。あの件も、自分の気持ちも、全部解決した」




「……それは、良かった」



言い切る美羽の表情はすっきりと晴れやかで、憑き物が落ちたかのようだった。


……良かったよ、本当に。



「あれはやりすぎだがな、ヒナ」



「なんのことっすかねー」



ジト目を向けられたので、形だけとぼけておいて。



「……でも、あのくらいやんないと気が済まなかったっていうか。美羽に嫌な思いさせたとか、やっぱりそう簡単には許せないし」



「……は、恥ずかしいことを言う奴だな!」



「え、なんで?」



ぼわわわっと赤くなる美羽を見て、俺は首を傾げた。
俺、なんか変なこと言ったっけか。



「おーっ? ヒナと結野ちゃんがなんかイイ感じですよーっ?」



「君は余計なことを言うな!」



イイ感じ? ……ああ、そういえば。


俺は少し前から考えていたことを思い出し、手を打った。




「みんなー。ちょっと聞いてくれる?」




春山にぎゃんぎゃん噛みついていた美羽をはじめ、談笑していたクラスメイトたちが静まり返る。


……今までのクラスには悪い思い出しかなかった俺が、こんな賑やかな空間の真ん中に今立っていることが不思議で、胸がむずがゆいけど悪くない感覚で。


不思議そうにこっちを窺う美羽をちらりと見て、俺はさらに声を発した。



「そのー……ひとつ報告、っていうか」



……美羽に怒られるかもな。

でも、これははっきりさせておきたい。

俺たちの距離は、実を言えばあんまり変わってないけど。
美羽を迎え入れてくれたこのクラスになら、俺たちの新しい関係を話してもいいかなって思ったんだ。



柚木園が感づいたように切れ長の双眸をキラキラさせ、姫宮がきょとんとしてそんな柚木園を見ている。


……ざわざわざわ。
クラスが騒然とし、次第に一部から殺気が漂い始めた。


そして唐突に春山がシャウト、男子生徒がそれに続いて拳を振り上げる。



「彼女持ちはーっ?」



『我らの敵!』



「地球温暖化はーっ?」



『リア充のせい!』



「我らの悲願はーっ?」



『イケメン抹殺!』



「ちょ、待てよみんな。それじゃヒナが入らないだろ?」



「おいこらそこ」



相変わらず、団結力が嫌な方向にばっちりな集団だ。
彼らの熱い叫びを聞いて、姫宮があわあわと慌てている。



「まいちゃんどうしよう……! 彼女持ちは敵だって!」



「大丈夫だよ夕紀。そういう意味なら、私の方が狙われる可能性は高いから」



「どういう意味!?」



そういう意味だろ。……とかツッコんでる場合じゃなく。

502心愛:2013/08/08(木) 20:48:36 HOST:proxy10001.docomo.ne.jp





俺は「しーずーかーに!」と再び喧騒を静めると、微妙に照れながらも声を張り上げて、




「実は俺、美羽と付き合うことになっ―――」




「待て、ヒナ」



「ぅえっ?」



変な声出た。


俺の勇気ある宣言を急に遮った美羽は、俺をじっと見上げると。



「さっきから聞いていれば、君たちは何を言っているんだ?」



「え?」



ぽかんと呆ける俺に、美羽は無情な一言を告げる。




「―――ぼくと君は、付き合ってなどいないだろう」




「……………え? …………………えええええええっっっ!?」




この状況で衝撃の事実が発覚した!




俺は恥も外聞もなく美羽に詰め寄る。



「だって、え!? 俺たち両思いじゃないの!?」



「ああ、相思相愛らしい。素晴らしいことだな」



「だったら!」



「だが、付き合おうなどと言われた覚えはない」



「そういうこと!?」



た、確かにそれを口に出しては言ってなかったかもしれないけど!
でもその場の空気とか、無言の了解とか、とりあえずなんかそういうのあるじゃん! ねえ!?


っていうか俺、今までずっと一人で勘違いしてたの!? なにこれすごい恥ずかしいんだけど!



「じゃあっ、お、俺とつ、付き合ってください……っ」



俺、予定大幅変更でまさかの公開告白である。
ライフが限りなくゼロに近づいている俺を、美羽はこれまたバッサリ切り捨てた。



「だが断る」



「なんでだよ!」



怒っていいよね!? 好きな人とか関係なく怒っていい場面だよねこれ!


むきゃーっと頭を掻きむしる俺に、美羽は平然と。



「恋愛的な意味で好きあっていて、それを双方が承知しているからといって、交際しなければならないという決まりはないだろう」



「そりゃそうですけど……そうか!?」



普通、ほとんどイコールみたいなものじゃないかな!



「って待て待て、眷属じゃなくなるってそういうことじゃなかったの!?」



「同格の存在、つまり魂を分かち合った半身同士になったという意味だ」



「あそう……」



俺はがっくりと肩を落とした。
何気に俺、今ものすごく酷い仕打ちっていうか、辱めを受けてる気がするんですけど。



「ヒナがふられてるー」



「よっ! ふられ男!」



「ちくしょぉおおお――――――っっ!?」



ぎゃはははは、と男女入り混じった爆笑。


……俺の恋は、まだまだ前途多難なようだ。



「日永ー、授業始めていいかー?」



「あれっ!? すみません!」



いつの間にかチャイムが鳴っていたようで、釈然としないまま慌ただしく席につく。
全員が落ち着いたのを確認して先生が出席を取り始め、



「―――水瀬。……森田。……結野」



「………」



「結野?」



「あ。……はい」



ぼーっとしていたのか少し遅れて、美羽が焦ったように返事をする。

すぐに俯いてしまったその表情は髪で隠れているけれど、その隙間から覗く耳がほんのり色づいていて。



……ああ、なんだ。



俺はなんとなく理解する。



……まだ時間がほしい、ってとこか。



思わずくくっと笑ってしまう。
美羽はヴァンパイアがどうのこうのと偉そうな口を叩くくせに妙に内気で、自分に向けられた愛情を受け取るのに慣れていないのだ。


なんといっても俺は、自分でも呆れるくらい気が長い。


この関係に名前をつけるのが、美羽にとって早すぎるというのなら。
いつか彼女の覚悟ができるまで、いくらでも待とう。


……まったく。目の前が眩しすぎて、終わりなんか見えやしない。


不確定で、今もこれからも、ずっとずっと続いていくこの未来。


その中でただひとつ、確かなことがあるとすれば。



「……さっきから、何をじろじろと見ているんだ」



「べっつにー?」



―――思った以上に面倒な邪気眼少女の攻略は、まだ始まったばかりだってこと、かな。

503心愛:2013/08/08(木) 20:54:44 HOST:proxy10002.docomo.ne.jp


これにて『邪気眼少女の攻略法。』完! 結! です!


結局進んだのか進んでないのかな感じになりましたがきっと進んでます多分(・∀・)


ずいぶんと長くなってしまいましたが、とりあえず無事にまとめられてほっとしてます…!


今までありがとうございました!
これから、番外編だけちょろっと続く予定です(`・ω・´)


ヒナたちに幸あれー!

504ピーチ:2013/08/08(木) 21:59:15 HOST:em49-252-150-48.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさん最後の最後でふられてるー!? 美羽ちゃん最後だよっ!?

進んでます思いっきり進みまくってます! ただ美羽ちゃん、凄い照れ隠しですな……←

美空先輩が聞いたらお腹抱えて笑い転げそうな感じだよねこれ((

505たっくん:2013/08/09(金) 00:02:02 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
アホのピーチさん元気ですか・・?
近々、ピーチさんストーリー作るんで期待してて下さい。

506たっくん:2013/08/09(金) 00:03:40 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
アホピーチ・・?
聞いてるか・・?
シカトするなよ

507心愛:2013/08/09(金) 21:30:39 HOST:proxyag013.docomo.ne.jp
>>ピーチ


照れ隠しなんです←


確かに爆笑しそうだね美空!
ただ、笑いすぎて壁かなんかに激突しそうw


さっそく番外編始めたんでよろしくです(*^-^)ノ

508ピーチ:2013/08/12(月) 00:09:43 HOST:em49-252-7-184.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

照れ隠しだって分かるとまた可愛いんだよね美羽ちゃん!

……笑い過ぎてもちゃんと周りは見てくださいね美空先輩!←

509心愛:2013/08/12(月) 21:11:22 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なんかちょっとだけお久しぶりな気がしますーw


ありがとう!
照れ隠しってわかんないとただのツンツンしたキャラだけどねw


美空は周り見てても流れるようにドジるからね…(・∀・)

510ピーチ:2013/08/12(月) 21:50:58 HOST:em114-51-39-50.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

久しぶりだよね! また三日四日くらい来れなくなるけど!←

ツンツンしてても可愛いってどういうことですか美羽ちゃん!

流れるように……確かにそれじゃ笑うしかないよね…?((

511たっくん:2013/08/13(火) 14:58:57 HOST:zaq31fa533d.zaq.ne.jp
      【ピーチさんが田代まさしさんを救うスレッド】

ピーチさん・・もし貴方が本当に人間としての心を持つ者
あるいは人の気持ちを理解できる人間なら、
私の頼みを聞いて下さい。

依頼内容は『田代まさしさんを救う』です。

ピーチさんにお願いがあります。
田代さんのYせつ行為に耐えてあげて下さい。

田代さんが芸能界に復帰する方法はただ一つ・・
少女に思う存分イタズラをさせてあげる事。これ一点に尽きる!
問題なのは、誰にやらさせるかです。

自ら希望する少女はまずいないでしょうし・・・。
そこで思い出したのがピーチさんです!
こうなったらピーチさんがソッセンしてやらせてあげるしかないと思います。


ピーチさんの身体を田代まさしさんに授けてみてはいかがでしょうか。
貴方を犠牲にする事で田代まさしさんが救われるなら安いもんです。

というわけで宜しくお願いします。




不正行為を認める他ないです。
そうでもしなければ彼のストレスは積もる一方

512たっくん:2013/08/13(火) 15:06:56 HOST:zaq31fa533d.zaq.ne.jp
    【意外にもピーチさんが田代まさしさんを救ってしまうスレ】

ただしピーチさん、これだけは約束して下さい。
田代まさしさんに何をされても、田代さんがどんな行為に出ても
我慢して耐え抜いて下さい。
どうか彼を訴えるのだけはカンベンしてあげて下さい。

もし訴えたらピーチさん、一生恨みますからね。




4 名前:たっくん:2013/08/13 15:05:00 IP:49.250.83.61
もしピーチさんが訴えたら
フリダシに戻ってしまって、
私のせっかくの計画が全てパァ!になってしまうので
宜しく!

513心愛:2013/08/13(火) 19:26:15 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
>>ピーチ

それは残念だ!
ここあはちまちま更新してるよー(*^-^)ノ

514ピーチ:2013/08/14(水) 00:54:48 HOST:em1-114-0-148.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

お盆の間だけ出かけるからコメも更新もできないのです←

でも読みたいよー! ここにゃんの神文よみたいよー!

515心愛:2013/08/14(水) 19:15:13 HOST:proxyag003.docomo.ne.jp
>>ピーチ

残念ながらそのご期待には応えられなそうだよー!


お出かけか!
ごゆっくり……といいたいとこだけど早く帰ってきてくれたら嬉しいな(チラッ

516ピーチ:2013/08/19(月) 21:40:43 HOST:em1-114-111-160.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

応えて欲しいけど我儘は厳禁!←

ただいまー! たぶん(?)早く帰ってきたよー!((

517たっくん:2013/09/12(木) 10:55:10 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
>>516
ピーチさんおはようございます。
カレーを食べてカレーを出すスレです。
念の為に書き込みしておきますね  


  【カレーを食べてカレーを出すスレッド】

ピーチさん&千春さん、おはようございます。
昨日、カレーを食べた後は必ずカレー(廃棄物)が下から出ると申しましたが
今だに出ません。もうしばらく時間がかかりそうです。

一応念の為に、現状をお伝えしておきますね。
心配されてる方もおられると思うので・・。
現代は情報社会ですからね
何でも情報を入手しておいて損はないと思いますよピーチさん&千春さん♪

次回はピーチ&千春&エルぼんの
無能スレッド設立する予定です。
お楽しみに

無能に生きた小説家たち

3 :たっくん:2013/09/12(木) 10:53:50 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp       【ダイアナ・ストーリー】


突然ですがこれから貴方達の事をダイアナと呼ばせてもらって宜しいでしょうか。

理由は・・貴方達の身体の一部にウンコが出る穴があるからです。
ありますよね?ないとは言わせません。別サイトで女性に質問しました。

ウンコ→大(だい)→ウンコを出す穴→大の穴→だいのあな→だいあな
それを片仮名で表記しますと、ダイアナ〜♪

とまあこのようになります。

品のない言い方をするとケツ穴なんです。
さて・・ここで問題になってくるのは
何故私がこの発言を避けたか・・?御存じですか?

別サイトでこの話したら
ある人が『それだったら最初からケツ穴って言えばいいじゃないか。何故遠まわしに言うんだ?』なんでおっしゃってました。

わたくし下品な発言はあまり好まない性格でして・・
こう見えても結構、上品なんですよ(笑)
だからあえてケツ穴とは言わなかったのです。

大穴(だいあな)のほうが上品かな〜なんて思いまして

518たっくん:2013/09/12(木) 11:01:08 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
ピーチさんは肛門およびオマ●コが他者より大きいので
大根一本入ってしまう。実験したわけでありませんが、
私はそう確信しています。
これほどスケールの大きい女性、大の穴(だいのあな)に相応しい人物を私は知りません!

まさにダイアナですねピーチさんは
ついでに、千春とエルぼんも

519たっくん:2013/09/12(木) 11:09:40 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
貴方達が言いたい事、私にはよく分かります。
つまり、私にカレーを食べるな!とおっしゃりたいのでしょう?

でもそんな事、貴方達に言われる筋合いはないです。
余計なお世話ですよ。
カレーを食べる食べないは私が決める事であって
君らが決める事じゃない!

そしてカレーを下(肛門)から出すのも私の勝手ですよ

520たっくん:2013/09/12(木) 11:41:39 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
世間のグルメマニアの方々に一言・・・
食べる話ばかりじゃなくてたまには『出す』話もしましょうよ。
いくら料理好きだからと言っても食べっぱなしじゃいけませんよ。
廃棄物を出さないと

食後は確実にウンコが出ますからね間違いないですよこれは
それはぜったい避けられない宿命です

宿命から逃げては駄目なんですよ皆さん
だからたまには出す話もしましょう。
カレーを食べた後は必ずカレーが出る
常識です

食べて終わりじゃないんです。
トイレへ行って下から出て、はじめて間食なんです。


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