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邪気眼少女の攻略法。

502心愛:2013/08/08(木) 20:48:36 HOST:proxy10001.docomo.ne.jp





俺は「しーずーかーに!」と再び喧騒を静めると、微妙に照れながらも声を張り上げて、




「実は俺、美羽と付き合うことになっ―――」




「待て、ヒナ」



「ぅえっ?」



変な声出た。


俺の勇気ある宣言を急に遮った美羽は、俺をじっと見上げると。



「さっきから聞いていれば、君たちは何を言っているんだ?」



「え?」



ぽかんと呆ける俺に、美羽は無情な一言を告げる。




「―――ぼくと君は、付き合ってなどいないだろう」




「……………え? …………………えええええええっっっ!?」




この状況で衝撃の事実が発覚した!




俺は恥も外聞もなく美羽に詰め寄る。



「だって、え!? 俺たち両思いじゃないの!?」



「ああ、相思相愛らしい。素晴らしいことだな」



「だったら!」



「だが、付き合おうなどと言われた覚えはない」



「そういうこと!?」



た、確かにそれを口に出しては言ってなかったかもしれないけど!
でもその場の空気とか、無言の了解とか、とりあえずなんかそういうのあるじゃん! ねえ!?


っていうか俺、今までずっと一人で勘違いしてたの!? なにこれすごい恥ずかしいんだけど!



「じゃあっ、お、俺とつ、付き合ってください……っ」



俺、予定大幅変更でまさかの公開告白である。
ライフが限りなくゼロに近づいている俺を、美羽はこれまたバッサリ切り捨てた。



「だが断る」



「なんでだよ!」



怒っていいよね!? 好きな人とか関係なく怒っていい場面だよねこれ!


むきゃーっと頭を掻きむしる俺に、美羽は平然と。



「恋愛的な意味で好きあっていて、それを双方が承知しているからといって、交際しなければならないという決まりはないだろう」



「そりゃそうですけど……そうか!?」



普通、ほとんどイコールみたいなものじゃないかな!



「って待て待て、眷属じゃなくなるってそういうことじゃなかったの!?」



「同格の存在、つまり魂を分かち合った半身同士になったという意味だ」



「あそう……」



俺はがっくりと肩を落とした。
何気に俺、今ものすごく酷い仕打ちっていうか、辱めを受けてる気がするんですけど。



「ヒナがふられてるー」



「よっ! ふられ男!」



「ちくしょぉおおお――――――っっ!?」



ぎゃはははは、と男女入り混じった爆笑。


……俺の恋は、まだまだ前途多難なようだ。



「日永ー、授業始めていいかー?」



「あれっ!? すみません!」



いつの間にかチャイムが鳴っていたようで、釈然としないまま慌ただしく席につく。
全員が落ち着いたのを確認して先生が出席を取り始め、



「―――水瀬。……森田。……結野」



「………」



「結野?」



「あ。……はい」



ぼーっとしていたのか少し遅れて、美羽が焦ったように返事をする。

すぐに俯いてしまったその表情は髪で隠れているけれど、その隙間から覗く耳がほんのり色づいていて。



……ああ、なんだ。



俺はなんとなく理解する。



……まだ時間がほしい、ってとこか。



思わずくくっと笑ってしまう。
美羽はヴァンパイアがどうのこうのと偉そうな口を叩くくせに妙に内気で、自分に向けられた愛情を受け取るのに慣れていないのだ。


なんといっても俺は、自分でも呆れるくらい気が長い。


この関係に名前をつけるのが、美羽にとって早すぎるというのなら。
いつか彼女の覚悟ができるまで、いくらでも待とう。


……まったく。目の前が眩しすぎて、終わりなんか見えやしない。


不確定で、今もこれからも、ずっとずっと続いていくこの未来。


その中でただひとつ、確かなことがあるとすれば。



「……さっきから、何をじろじろと見ているんだ」



「べっつにー?」



―――思った以上に面倒な邪気眼少女の攻略は、まだ始まったばかりだってこと、かな。


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