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邪気眼少女の攻略法。

488心愛:2013/08/05(月) 22:26:37 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp






苦悩の顔で、でも、きっぱりと言い切る。



「悪いのは全部、中途半端に結野をその気にさせて、なのに自分可愛さに負けて、柳瀬の企みに乗った俺」



……ほんと、悪い奴じゃないんだよなぁ。


俺は同情に満ちた表情で、悔しげに俯く愛川を見た。



「そっか……愛川も、つらかったんだな」



「ひ、な……が」



「で、それなんだけどさ」



次いで、俺は慈愛に満ちた表情でにこ。と微笑み、



「―――ごめん、やっぱもっかい殴っていい?」



「なんでだよ!」



お、なかなかのツッコミ。
なんかこういうとこ俺と似てない? ……え、似てない? そうかなぁ。



「だって、つまり毎日嫌になるくらいモテるから、その分大人しい美羽に目が行ったってことだろ? ヤナセさんの行動も、ただのヤキモチじゃんか。同じ男として腹立つ」



「知るか!」



愛川はすっかりご立腹である。



うん。……さて。そろそろ、かな。



俺は後ろにちらりと視線をやってから、声のトーンを落とした。




「……それに、どんな理由があっても、美羽にしたことは到底許せることじゃないし」




「……分かってるよ、そんなこと」




からん、と氷が虚しい音を立てる。
愛川の顔が暗い翳りを帯びた。



「俺だって、悩んで悩んで、何度も謝ろうと思った。でも、結野はそれっきり学校に来なくなって……。家を訪ねて行こうにも怖じ気づいて、結局できずに終わった」



深刻に沈み込む声。



「クリスマスの日、偶然結野を見かけたときに声かけたのは、今度こそ謝ろうって思ってたからなんだ。……でも友達がいたから、上手く切り出せなくて。焦ってたとこに日永が来て、ついイラッとして……また、同じことを繰り返した」



愛川はくしゃりと乱暴に前髪を掻き上げた。



「……っとに、最低だ、俺」



顔を歪ませ、苛立ったように吐き捨てる。




「情けない。自分が嫌になるよ。余計なことはすらすら言えるのに、なんで大事なことは言えないんだろ」




愛川がいけなかったのは、美羽の中二病を受け入れられなかったところじゃない。
いくら美羽の本質を見抜いて好きになっても、それでも美羽の言動をおかしいと思うのは当然といえば当然だし。
それをやめてほしい、なんて、美空先輩だって言っていたこと。

ただ、愛川はほんのちょっと思っていただけのそれを、トラウマになるような状況で、何倍もの酷い言葉にしてしまっただけ。


人前で好きな子を相手にすると特に素直になれずに、流れるように笑顔で嘘をつく。


ここまでくると、いっそ天才的なまでの不器用さだ。



「お前、さてはあれだろ。好きな子ほどいじめちゃうタイプだろ。小学生男子かよ」



「……うるさい」



茶化したらぎろりと睨まれた。
俺は懲りずになおも続ける。



「……え、待てよ。じゃあもしかして小学生のとき、実は俺のことも―――」



「キモいこと言うんじゃない!」



「はいはい、ツンデレツンデレ」



「誰がツンデレだ!」



まあそれは冗談としても、俺のことを心底嫌ってはいなかったことは確かだ。
この様子だと、むしろ逆もありえるんじゃないかな。

なのにただ周りに流されて、したくもないのに同じことをやっていただけ。
協調性の点では満点なんだろうけど。



「ほんと、不器用だよなーお前。人生損してる」



「……ひねくれてて悪かったな」



「ほんとだよ。せっかく美羽のいいとこに気づいたのに、うっかり手放しちゃったんだもんなー。あーあもったいない」



そのおかげで、俺は美羽とこういうことになれたわけですけどね。


にやつく俺を見て愛川が黙って額に青筋を立てたので、とりあえず話を戻すことにする。



「……とにかく。謝る、っていうか、お前が今更殊勝なこと言っても美羽もすんなり信じるとも思えないから、もう仕方ないんじゃね? それより、また変なこと言っちゃったらどうするんだよ」


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