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邪気眼少女の攻略法。

501心愛:2013/08/08(木) 20:47:27 HOST:proxyag044.docomo.ne.jp





「おはよ」



休み明けの教室。
入り口でうろうろしている小さく黒い影を見つけ、俺はすかさず声をかけた。



「……おはよう」



びくっとし、顔をちょっと赤らめて観念したようにこっちに歩いてくる。


あんなことがあった後では、三人と顔を合わせづらかったのかもしれない。
でも彼らがそんなことを気にするわけがなく、美羽の姿を認めるや、まず春山がアホくさい挨拶をかました。



「結野ちゃんおっはよーん! 元気ー?」



「美羽! 良かった、今日休みかと思ったよ」



ほっとしたように微笑む柚木園の隣、姫宮がにこにこ嬉しそうに笑っている。



「ゆいのん、いつも通りだね!」



蝶と薔薇をモチーフにしたレースやフリルたっぷりのゴスロリに、リボンつきのヘッドドレス。
いつも通りすぎる衣装に身を包む美羽は、戸惑いをすぐにしまうと誇らしげに胸を反らした。



「……ふん、このぼくが闇の装束を纏わなくなるとでも―――」



「思ったよ?」



「む」



口を『ヘ』の形に曲げる美羽。
ちょっと不満そうだったけれど、そう言われても仕方ないと思い直したようで。




「その……心配をかけたな」




小さい声で言った後、少し時間をかけてから顔を上げる。




「だが、もう大丈夫だ。あの件も、自分の気持ちも、全部解決した」




「……それは、良かった」



言い切る美羽の表情はすっきりと晴れやかで、憑き物が落ちたかのようだった。


……良かったよ、本当に。



「あれはやりすぎだがな、ヒナ」



「なんのことっすかねー」



ジト目を向けられたので、形だけとぼけておいて。



「……でも、あのくらいやんないと気が済まなかったっていうか。美羽に嫌な思いさせたとか、やっぱりそう簡単には許せないし」



「……は、恥ずかしいことを言う奴だな!」



「え、なんで?」



ぼわわわっと赤くなる美羽を見て、俺は首を傾げた。
俺、なんか変なこと言ったっけか。



「おーっ? ヒナと結野ちゃんがなんかイイ感じですよーっ?」



「君は余計なことを言うな!」



イイ感じ? ……ああ、そういえば。


俺は少し前から考えていたことを思い出し、手を打った。




「みんなー。ちょっと聞いてくれる?」




春山にぎゃんぎゃん噛みついていた美羽をはじめ、談笑していたクラスメイトたちが静まり返る。


……今までのクラスには悪い思い出しかなかった俺が、こんな賑やかな空間の真ん中に今立っていることが不思議で、胸がむずがゆいけど悪くない感覚で。


不思議そうにこっちを窺う美羽をちらりと見て、俺はさらに声を発した。



「そのー……ひとつ報告、っていうか」



……美羽に怒られるかもな。

でも、これははっきりさせておきたい。

俺たちの距離は、実を言えばあんまり変わってないけど。
美羽を迎え入れてくれたこのクラスになら、俺たちの新しい関係を話してもいいかなって思ったんだ。



柚木園が感づいたように切れ長の双眸をキラキラさせ、姫宮がきょとんとしてそんな柚木園を見ている。


……ざわざわざわ。
クラスが騒然とし、次第に一部から殺気が漂い始めた。


そして唐突に春山がシャウト、男子生徒がそれに続いて拳を振り上げる。



「彼女持ちはーっ?」



『我らの敵!』



「地球温暖化はーっ?」



『リア充のせい!』



「我らの悲願はーっ?」



『イケメン抹殺!』



「ちょ、待てよみんな。それじゃヒナが入らないだろ?」



「おいこらそこ」



相変わらず、団結力が嫌な方向にばっちりな集団だ。
彼らの熱い叫びを聞いて、姫宮があわあわと慌てている。



「まいちゃんどうしよう……! 彼女持ちは敵だって!」



「大丈夫だよ夕紀。そういう意味なら、私の方が狙われる可能性は高いから」



「どういう意味!?」



そういう意味だろ。……とかツッコんでる場合じゃなく。


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