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邪気眼少女の攻略法。

1心愛:2012/09/16(日) 13:17:20 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp



こんにちは、または初めまして。
心愛(ここあ)と申します。

拙くて見るに耐えない駄文ですが精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
感想等戴ければ泣いて喜びます。
ですが、ここあは非常に小心者です。一つの批判にもガクブルしてしまうと思われます。
なので、厳しい御言葉はできるだけオブラートに包んで戴けると嬉しいです(>_<)

また、ここあが不要と判断した書き込みは、誠に勝手ながら反応しないことがあります。申し訳ありません。

話の内容としてはゆるゆるな日常系ラブコメを目指しています。
キャラクターについては、後から少しずつ紹介していきたいと思います。




【心愛(元 月波)の過去作品】



『紫の乙女と幸福の歌』

『紫の乙女と愛の花束』



【関連作品】



『紫の歌×鈴扇霊』(上記作品のピーチとのコラボ)

『パープルストリーム・ファンタジア 幸運の紫水晶と56人の聖闘士』(同じく彗斗さんとのコラボ)

471京都出身:2013/08/03(土) 17:02:14 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
僕らの世代の3大用語をお教え致しましょう

ピカ・チュウ

ジコ・チュウ

アライ・チュウ

自己中というのは自己中心の略ですが・・・

472京都出身:2013/08/03(土) 17:02:44 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
それで思い出したんです
チュウさんの事を

473七紙:2013/08/03(土) 17:05:03 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
なるほどな〜納得した

ドリフの荒井ちゅうさん良かったよな〜
俺、彼と同年代だもんな〜

474京都出身:2013/08/03(土) 17:06:34 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
ところでネオジオソフトはもう発売されないのでしょうかね〜

475七紙:2013/08/03(土) 17:07:14 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
そうだな〜
まあ荒井ちゅうさんはいい人だもんな〜

476京都出身:2013/08/03(土) 17:08:06 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
そう言えば
サトシとピカチュウって付き合い長いですよね〜

477心愛:2013/08/03(土) 20:54:59 HOST:proxyag101.docomo.ne.jp






「い、意味が分からない……っ! 君は結局、何を言いたいんだ!」



かなり混乱しているらしくそんなことを言ってくる美羽に、「マジか……」と俺は頭を抱えた。





「ここまで言ったんだから察せよ、もー……」



「だから何を!」



「だから、」



頭が痛い。顔が熱い。心臓がうるさい。
拳を握り、ぐっと足に力を入れて。


俺は十年越しの想いを、告げた。





「―――美羽は俺の、初恋なんだ」





言葉に詰まり、呆然と見つめてくる美羽に、俺は胸の内を打ち明けていく。



「どんなに失敗しても、くじけそうになっても立ち上がって、また理想を求め続けるところが好きだ。バカみたいにまっすぐで、純粋で、強いところも」



「……ぼくは、強くない!」



悲鳴のように叫び、美羽はカタカタと震える。
俺を信じられずに、怯える。



「自分に都合のいい空想の世界に逃げ込んで、みんなに守ってもらうばかりで……っ。今日だって、何もできなかった!」



美羽の声には、小さな嗚咽が混じり始めていた。
歯を食いしばり、さらに続ける。



「ぼくが吸血姫(ヴァンパイア)なのも、魔術組織の魔女なのも、全部全部作り事だ! そんなの分かってる!」



全てを吐き出すように。
美羽は呼吸を荒げ、指で眦を拭った。



「でも、やめられないんだ! 弱いぼくは、この期に及んでも、まだ自分の理想を諦められない……っ!」



おそらく、自分でも何を言っているのか分かっていないのだろう。
ぐちゃぐちゃな思考で、ぐちゃぐちゃな声で、美羽は叫び続ける。




「ぼくは、周りに迷惑をかけるだけなんだ! そんな人間に、誰かに好きになってもらう資格なんてない!」




「もう一回言う」




美羽を遮るようにして、はっきりと声を発した。




「俺は美羽の“理想”に、救われたんだ」




美羽が息を呑む。
俺は彼女に、静かに語りかけた。
この想いが届くように、願いを込めて。



「柚木園と姫宮、それに春山。クラスのみんなだってそうだ」



俺と美羽を取り巻く仲間たち。
妙に個性的で、バカ騒ぎばかりでうんざりすることもあるけれど。



「あいつらは確かに、優しすぎるところがあるよ。でもさ、美羽と一緒にいるのが面白くて仕方ないから、やたらと構ってくるんだろ? 美羽がいい奴だって分かるから、色々絡んでくるんだろ? いるだけで迷惑がかかって、何とも思ってない奴とつきあうほど、あいつらだってお人好しじゃない」



さらに続けて、美羽にとって一番身近な例を持ち出す。



「美空先輩だって、美羽のことが大好きじゃないか。確かに美羽の全部を肯定してるわけじゃないかもしれないけど、それも美羽のことを一番大切に考えてるからだし」



迷惑なんかじゃない。
むしろ、逆なんだ。
ごく単純に、美羽といるのが心底楽しいから、俺たちは美羽を喜んで受け入れる。



「確かに美羽のソレは、世間様から見たら良くない、今すぐやめるべきことだって言われるよ」



美羽のことを良く知らない人なら、いや、たとえそうでなくても、それは普通のこと。
美羽のことを心配するからこそ、安全で正しい道へ導こうとする。




「でも、俺はそうは思わない。美羽が望んでやってることなら、それが一番いいと思ってる」




「……どうして」



うーん、と俺は考え、ひとつの答えを弾き出した。



「たとえば。美羽がそうやって、“理想”に近づくための演技を始めた理由って、格好良いって思ったからだよね」



「……そう、だが」



すぐに剥がれるくらい薄っぺらで、なのに強い意志で固められた仮面。
美羽がそれで、本来の自分を隠すようになったのは。


格好良くて、憧れるから。それもある。

他人を遠ざけ、自分の身を守るため。それもある。


でも多分、もっと根本的な理由があると思うんだ。




「美羽は、さ。本当は……強くなりたかったんじゃないかな」




美空先輩に、二人の過去を教えてもらったことを思い出す。
お父さんの会社の事情でクラスから仲間外れにされ、その反動で、人を寄せつけないようにするキャラを作るようになった、と。


そんな美羽を一番近くで、一生懸命に支えたのは、美空先輩だった。

478心愛:2013/08/03(土) 20:56:17 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp





「美空先輩や、他にも家族の人たちとかさ。みんなに守られているばかりだったから、自分が強い、ヒーローみたいな存在になって、みんなを守りたいって思ったんじゃない?」



さっきも、『守られてばかりで』と零した。
美羽はそういう意識が強いから。
ただ感謝するんじゃなくて、その気持ちを自分の力で返したいって、考えたんだと思う。


それがきっと、美羽の“邪気眼”の始まり。


“理想の自分”とは、孤高のダークヒーロー。
大切なひとたちを、守りたかったんだ。



悲痛なほどの優しさでできた美羽の意志を、どうして否定することができようか。



「そ、んな……こと、」



「もちろんこれは、ただの俺の推測。本当は違うかもしれないよ」



動揺に瞳を揺らす美羽。

俺は彼女を見てきっぱりと言い切る。



「でも俺は、小さいときにそう考えてもおかしくないくらい、美羽が優しい奴だってことを知ってる」



今まで、美羽は他人を遠ざけてきた。

失わないために、持ってはならない。
そして、相手を自分のせいで傷つけないために、近寄ってはならない、と。

美羽はそれだけ、心根のまっすぐな人間だ。



「それで結局、そのひとたちを守れたか、っていったらどうか分かんないけどさ。少なくとも俺やクラスの奴らは、今の美羽と一緒にいられて、幸せだって思ってる」



だったら。




「誰かを幸せにしてる時点で、それは空想でも、虚像でもない。立派な“結野美羽”そのものなんだよ」




誰に異常だって言われても、それでも俺は美羽を肯定し続ける。
世界で一人でもいい。俺は美羽の理解者なんだって、胸を張って宣言してやる。




「それに俺は、そういうの全部ひっくるめて、一人の女の子として、美羽が好きなんだ。……それでも、俺の十年間を否定するつもり?」




肩が跳ねる。
やっと俺の、真剣な気持ちに気づいたかのように、かっと白い頬が赤らんだ。


不安そうに見上げるその瞳を、喰いつかんばかりに激しく見つめ返す。

黒い、瞳。

俺が昔、この場所で好きになったその色が、あのときと同じ夕暮れの光を取り込み煌めいている。


気が遠くなるような時間のあと。
さみしがりやのくせに、他人から好意を向けられることを恐れる少女はこくりと喉を鳴らし、



「ふ……ぇ、ぅあ……っ」



ぽろぽろと涙を零した。
ひく、ひくと時折しゃくりあげながらも、震える唇が言葉を紡ぎ出す。




「ぼくは、……ぼくも……きみ、のことが、」






―――すき、





声にはならなかったけれど、俺の耳にはしっかりと届いた。

全身の神経に甘い戦慄が走る。
火照った顔にさらに血が昇るのが分かる。



「あ……りがと」



違うだろ俺! もっと気の利いたこと言えよ!

でも仕方ない。何しろ、あまりのことに俺の脳はショート寸前なのだ。
頭の中がぐるぐる回る。


そんな俺には気づいていないらしい美羽は涙を拭うと、ちらりとこちらを窺った。



「あの、……ヒナ。契約という形がなくても、ぼくと共にいてくれるか?」



「あ……当たり前だろ!」



つまり……主と眷属じゃなくて、その、そういう関係になりたいってことで……合ってる、よな?


そんなことを言い出す美羽が嬉しいし可愛いしで、ここでスマートに抱き寄せたりできたら完璧なんだけど、残念ながらあまりのことに内心動転しまくり、うわーうわーっと大合唱な俺の手はイメージ通りに動いてくれなかった。
これだから彩にヘタレって言われるんだよまったく。




「では、改めて」




夕焼け空をバックに大仰に腕を広げ、美羽は朗々と声を張る。




「此れなるは《純血の薔薇(Crimson)》一級魔女にして偉大なる吸血姫(ヴァンパイア)、ミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ」




……それでこそ美羽だ。
思わず、俺の頬が緩む。




「たとえ幾千の刻を隔てようとも、我、永遠に汝と共に在ることを誓う」




涙を光らせながら微笑む美羽に、俺も笑って手を差し出した。




「これからもよろしく、美羽」




最初とはまた違った意味を持つ握手。


恥ずかしそうな美羽の笑顔はあのときみたいに、可愛くて、優しくて、綺麗で、何よりもまばゆかった。

479心愛:2013/08/03(土) 21:04:06 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美羽のためなら、ヒナも本気になるんだね!



ってことでついにやりましたヒナ! ここまで長かったああああああ! このヘタレがああああ! (落ち着け
これにて『邪気眼少女の攻略法。』完! っていいたいとこだけどごめんねもうちょい続くよ!



美羽はここあキャラの中で一番複雑な子でした…。自分でも自分のこと完全に分かってないんだからここあにも分かるかよちくしょう! と歯ぎしりしつつ頑張りましたw

ヒナ、これからも美羽を頼んだぞ!

480ピーチ:2013/08/04(日) 06:27:48 HOST:em1-114-170-159.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ここにゃんそれヒナさんに酷くない!?

ほんとに春山くんがぼっちになったー! 彩ちゃんとくっつけてあげてぇー!←

作者様! いくら自分でも分かってなくても作者様だから!

ヒナさん! これからも美羽ちゃん守ってあげてね!

481心愛:2013/08/04(日) 20:44:13 HOST:proxyag102.docomo.ne.jp






『いやあやってくれたね圭くん! あたし今最高の気分だよ!』



テンション最高潮の美空先輩の声が、電話越しに俺の耳を圧迫する。



『ほんとはあたしがぶん殴りたいとこだったんだけど、変な噂になっちゃったら困るなーって必死に我慢してたんだよ! まさか圭くんが代わりにやってくれるなんて!』



さてはあいつか。
なんとなく察したらしく、目を逸らしてひゅーひゅー口笛を吹いている情報漏洩の達人を、俺は横目でギロリと睨んだ。
春山から彩、彩から美空先輩……ってどんだけ俺の妹は俺の友人関係掌握してんだよ。


っていうか先輩、噂がなければ殴る気満々だったんですね……?



『しかもあれでしょ? ついに美羽ちゃん攻略しちゃったんでしょ!? もー! 圭くんってばどれだけあたしを喜ばせれば気が済むのかな! 今すぐ感動のハグしてあげるよそっち押しかけていい!?』



「遠慮しておきます。……あ、そうだ。その代わりってわけでもないんですが」



俺は人差し指で頬を掻き、



「ちょっと頼みがあるんですけど」








゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚








「―――ごめん。殴ったりして」




「お前、馬鹿じゃないの?」



目の前に座る爽やか系のイケメン様が冷たい一瞥をくれる。
こちらのテンションは最悪だ。



こいつのせいで、さっきから小声で「ちょっと、あの人カッコよくない?」「ほんとだー! でもその前の子は微妙だね」とか囁きが交わされている。ほっとけ。



「いや、いくら腹が立ったとはいえあれはさすがにやりすぎたかと思って。……でも、よく来てくれたよな。絶対断ると思った」



下げていた頭を元に戻しつつそう言うと、イケメン、もとい愛川は不機嫌そうに顔をしかめる。



「……別に、結野先輩に脅されたからだよ。……殺されるかと思ったし」



愛川の連絡先を調べ上げてコンタクトをとり、前にも先輩と入ったことのある喫茶店に来るよう話をつけてくれたのは、もちろん美空先輩だ。
小声で付け足された物騒な一言に、一体どういう手段を用いたのかは言及しないことに決める。



「痛い? それ」



「別に。お前の方が酷いんじゃないの」



つっけんどんだけど、お仲間にやられた俺の頬を心配するような台詞を吐くあたり、根っから悪いわけじゃないんだよなぁ、と俺は苦笑する。
今の愛川は猫を被っていないみたいだけど、こういうさりげないところ、いかにもモテそうだ。


そんな整った顔にうっすらとアザができているのを見て、いたたまれなくなる。



「俺は並みのツラだからいいけど、イケメンの顔に傷つけたとか、こう、後から罪悪感がですね」



「うっせ。……女の子との待ち合わせが、主役がこれじゃ、ってことでパスできてよかったくらい」



「あー、エサにされたのか。チャラチャラしてるように見えてそういうの苦手なのな」



「まあね。……って、なんで俺はお前とこんな話してるわけ?」



すごい。こいつこう見えて、いじりやすさは昴さんレベルだ。

分かりやすい不機嫌オーラを放出する愛川はしかし、店員の女性がアイスティーを持ってくると笑顔で会釈して受け取って、彼女が立ち去ると同時にまた不機嫌な表情になる。
なにこれ、超面白いんだけど。



「……で? どういうつもりだよ」



「うん?」



「なんで俺を呼びつけたんだって話。普通、こんな奴となんか二度と会いたくないはずだろうに」



自嘲してみせるその顔に、姫宮に連れられていく美羽を見送ったときのどこか寂しそうな表情、そして、古い記憶の面影が重なり、ちらついて―――


俺は確信すると、愛川にこう問いかけた。




「なあ。俺の名前、なんだと思う?」




「は? ヒナ、だろ」



「それあだ名!」



大して興味もなさそうな様子でストローを弄びながら言われ、ばんっとテーブルを拳で叩いた。
毎回ヒナヒナ言われてると最近感覚が麻痺してきたけど、ヒナって名字もそういう名前の男もそうそういないと思うんですがね!




「そうじゃなくて。俺の名前、日永、圭なんだけど」




「それがどう―――」



愛川は怪訝そうな眼差しで俺を見て、直後、はっと大きく目を開いた。

482心愛:2013/08/04(日) 20:50:35 HOST:proxyag101.docomo.ne.jp
>>ピーチ

彩と春山はそこそこいい感じになってるよ多分!
ただお兄様がそれを知ったらどうなるか(・∀・)


ヒナ、がんばって美羽のためにヘタレ卒業してくれたまえ!




悪役を放っておかないここあですw
愛川はコツつかめば割とちょろい←

483ピーチ:2013/08/04(日) 23:24:36 HOST:em49-252-221-171.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

美空先輩が怖いー!? ちょっとまってぶん殴りたいって! ついでに年下とはいえ男脅すって!

根っから悪い子じゃないならすぐ美羽ちゃんに謝るのが妥当だと思うなあたしは!←しつこい

ヒナさん……とうとうあだ名が名前に…((

484心愛:2013/08/05(月) 18:59:11 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
>>ピーチ


殴るっていうか、裏から潰す方が性に合ってるかもしれないね!
それができちゃうのが美空ですからw


うん、素直に謝れたらいいんだけどね…←
それができないのが愛川ですからw



次↓、衝撃の事実が明らかに! ってわけでもないかな…。ばればれだった?(´・ω・`)
ヒナと美羽初登場時から、共通点として愛川のことは決めてたんだよね!

ますますヒナ、簡単に許しすぎじゃね? って疑問はあれど後から補足するから大丈夫!

485心愛:2013/08/05(月) 18:59:37 HOST:proxyag011.docomo.ne.jp






「え……? お前……まさか、日永!?」




素っ頓狂な声を上げる愛川を、「気づくの遅っ」と笑ってやる。



「うそ。だって、眼鏡……」



「コンタクトだよ」



目の辺りを指差しつつそう言えば、向かいの相手はまじまじと俺を見て、小さく呟いた。



「変わった……な」



「だろ?」



愛川は、俺の予想通り―――小学校の頃、俺をいじめていたクラスの中心グループに所属していた、人気者の少年だった。
……ほんと、すごい偶然だよな。腐れ縁っていうか、運命の陰謀めいたものを感じるわ。


昔美羽と出逢った日、あの公園に駆け込む前に俺とちょっとした揉め事を起こした張本人だ。
すぐに眼鏡のことを気にしたのも、その罪悪感があったからなのかもしれない。


そんな、かなり曰く付きの相手だけど―――今は堂々と、愛川のことを見ることができる。



「まあそういうわけで、同じ小学校出身ってことで、仲良く話でも」



ようやくのことで理解して、居心地悪そうに視線を下に落としていた愛川が途端、顔を上げてキッと俺を睨めつけた。



「……意味分かんない」



「何が」



「何がって……決まってるだろ!?」



感情的に声を荒げる。



「俺……お前に、あんなことしたのに。その上、結野まで傷つけて、怒らせて。……それなのに、まだそんな、平気そうに」



「美羽のことは置いとくけど、別に、俺のことはどうでもいいし」



「はあ!?」



「んー、もう割り切ったっていうか。全然気にしてない」



あの一件だって、あのときの俺が妙にこだわっちゃっただけで、本当はただの事故だしね。


愛川はしばらく唖然とし、次に信じられないものを見る目を向けてくる。



「お前……ほんと、バッカじゃないの?」



「そうだよ。それくらいのバカじゃなきゃ、あの美羽と一緒になんかいられないっての」



その返しに、愛川はちょっとだけ、むっとしたような様子を見せた。
俺は再び、美空先輩がこの店で言った台詞を思い出す。




『分かっちゃうんだよねー。たまにいる、あたしじゃなくてその後ろに隠れてる美羽ちゃんの方を狙う子』




「―――お前さ。美羽のこと好きだったんだろ」




率直に言うと、分かりやすくびくりと肩が跳ねた。



「この前も、俺が彼氏だって勘違いして突っかかってきたんじゃないの?」



「……え? 違うのかよ?」



ぽかんとする愛川。


……え、と。



「いやー……まぁ、えーと、あのときは違ったというか、最近違くなくなったっていうか、」



「もういい。だいたいわかった」



愛川はうんざりしたように言い、色々と諦めたらしく大きく嘆息して。




「……結野のあんな顔、初めて見たんだ」




美羽を取り囲むようにしていた愛川たちの集団に俺が割って入ってきたとき、美羽の見せた表情にどうしようもなく苛立った、と愛川は言う。




「俺なんかに絡まれて、困ってたとこを助けられて……安心してる顔。心底、お前を信頼してる顔だった」



切なく物憂げな眼差しは妙に様になっていて、頻繁にこういう表情をしていることを窺わせた。



「そんなに俺と話すのが嫌かよ、って、すごいムカムカして……自業自得なのにな。ああ、今の結野にはちゃんと、そういう顔見せる相手がいるんだ、って」



―――多分、羨ましかったんだと思う。



最後に、愛川はそう零した。



この前言ってた中学のときの話聞かせて、と試しに頼んでみれば、ぽつりぽつりと語り出す。


自分目当てに群がる女に辟易としていた愛川は、よりにもよって、クラス中に嫌われる美羽に惹かれてしまった。
で、だんだん美羽といい感じになってきたのに、最終的には女友達の策略には嵌り込み、美羽を言葉の暴力で傷つけた。



「……うん? つーかさ、その女友達……ヤナセ? さん? がそもそも一番の原因なんじゃないの?」



「いや。あいつはどんな手段を使ってでも、俺をモノにしたかっただけ。自己中心的っていうか、いじめられてる子なんか眼中にも入れないような奴だから。俺のことがなかったら、結野を攻撃することもなかった」

486ピーチ:2013/08/05(月) 21:22:28 HOST:em49-252-183-216.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

怖いです美空先輩落ち着いて!←

ヒナさんと愛川くんまさかの小学校時代の同級生!

……ヒナさんに対しても美羽ちゃんに対しても、愛川くんって維持はってばっかだよね((こら

487心愛:2013/08/05(月) 22:25:58 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そういうことなのですw

その意地の張り具合が全部悪い方向に向いちゃってるんだよ…(=_=;)
でも、だんだんヒナにはある意味素直になってきたぞ!

488心愛:2013/08/05(月) 22:26:37 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp






苦悩の顔で、でも、きっぱりと言い切る。



「悪いのは全部、中途半端に結野をその気にさせて、なのに自分可愛さに負けて、柳瀬の企みに乗った俺」



……ほんと、悪い奴じゃないんだよなぁ。


俺は同情に満ちた表情で、悔しげに俯く愛川を見た。



「そっか……愛川も、つらかったんだな」



「ひ、な……が」



「で、それなんだけどさ」



次いで、俺は慈愛に満ちた表情でにこ。と微笑み、



「―――ごめん、やっぱもっかい殴っていい?」



「なんでだよ!」



お、なかなかのツッコミ。
なんかこういうとこ俺と似てない? ……え、似てない? そうかなぁ。



「だって、つまり毎日嫌になるくらいモテるから、その分大人しい美羽に目が行ったってことだろ? ヤナセさんの行動も、ただのヤキモチじゃんか。同じ男として腹立つ」



「知るか!」



愛川はすっかりご立腹である。



うん。……さて。そろそろ、かな。



俺は後ろにちらりと視線をやってから、声のトーンを落とした。




「……それに、どんな理由があっても、美羽にしたことは到底許せることじゃないし」




「……分かってるよ、そんなこと」




からん、と氷が虚しい音を立てる。
愛川の顔が暗い翳りを帯びた。



「俺だって、悩んで悩んで、何度も謝ろうと思った。でも、結野はそれっきり学校に来なくなって……。家を訪ねて行こうにも怖じ気づいて、結局できずに終わった」



深刻に沈み込む声。



「クリスマスの日、偶然結野を見かけたときに声かけたのは、今度こそ謝ろうって思ってたからなんだ。……でも友達がいたから、上手く切り出せなくて。焦ってたとこに日永が来て、ついイラッとして……また、同じことを繰り返した」



愛川はくしゃりと乱暴に前髪を掻き上げた。



「……っとに、最低だ、俺」



顔を歪ませ、苛立ったように吐き捨てる。




「情けない。自分が嫌になるよ。余計なことはすらすら言えるのに、なんで大事なことは言えないんだろ」




愛川がいけなかったのは、美羽の中二病を受け入れられなかったところじゃない。
いくら美羽の本質を見抜いて好きになっても、それでも美羽の言動をおかしいと思うのは当然といえば当然だし。
それをやめてほしい、なんて、美空先輩だって言っていたこと。

ただ、愛川はほんのちょっと思っていただけのそれを、トラウマになるような状況で、何倍もの酷い言葉にしてしまっただけ。


人前で好きな子を相手にすると特に素直になれずに、流れるように笑顔で嘘をつく。


ここまでくると、いっそ天才的なまでの不器用さだ。



「お前、さてはあれだろ。好きな子ほどいじめちゃうタイプだろ。小学生男子かよ」



「……うるさい」



茶化したらぎろりと睨まれた。
俺は懲りずになおも続ける。



「……え、待てよ。じゃあもしかして小学生のとき、実は俺のことも―――」



「キモいこと言うんじゃない!」



「はいはい、ツンデレツンデレ」



「誰がツンデレだ!」



まあそれは冗談としても、俺のことを心底嫌ってはいなかったことは確かだ。
この様子だと、むしろ逆もありえるんじゃないかな。

なのにただ周りに流されて、したくもないのに同じことをやっていただけ。
協調性の点では満点なんだろうけど。



「ほんと、不器用だよなーお前。人生損してる」



「……ひねくれてて悪かったな」



「ほんとだよ。せっかく美羽のいいとこに気づいたのに、うっかり手放しちゃったんだもんなー。あーあもったいない」



そのおかげで、俺は美羽とこういうことになれたわけですけどね。


にやつく俺を見て愛川が黙って額に青筋を立てたので、とりあえず話を戻すことにする。



「……とにかく。謝る、っていうか、お前が今更殊勝なこと言っても美羽もすんなり信じるとも思えないから、もう仕方ないんじゃね? それより、また変なこと言っちゃったらどうするんだよ」

489ピーチ:2013/08/06(火) 06:33:21 HOST:em1-114-157-74.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

……愛川くん、ほんとに損するタイプなんだね。モテるせいで←おい

てかヒナさんも寛大だよね! あたし自分いじめてた奴だったら罪悪感ナシに殴って終わるわ!((

490京都出身:2013/08/06(火) 12:34:54 HOST:zaq31fa4a0d.zaq.ne.jp
        【ピーチさんのシールダス20円】

シールダスというのは昔のカードダスの仲間です。
しかし今回のシールダスは以前のシールダスとは異なり、
ピーチさんの体内から放出された汁、すなわち液体を意味します。
シルとシールをかけたシャレです(笑)

有料ですが料金は一回20円、お手頃価格でご提供致します。

業務用自販機として設置させて頂く予定ですが、
何か問題ありますか?

491心愛:2013/08/06(火) 21:01:27 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…ヒナも、ただバカみたいに寛大なわけじゃないんだぜ?(・∀・)

愛川のことは気に入り始めてるけど、ちゃんとケジメはつけますよ!



なんと、次の次くらいで完結だよ! やったー!

このぶんだと美空編もできそうだ…!(つд`)

492心愛:2013/08/06(火) 21:01:55 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp





「そう……だよな」



愛川は落ち込んだようで、声の抑揚を落とした。
しばらく氷が溶けていくグラスを見つめながら、ぼんやりと考えたあと、




「……結野はずっと、誰からも理解されずに、一人で生きていくんだと思ってた」




入学式からしばらくの間、美羽は確かに浮いていたし、孤立していた。それはもう、話しかけるのもためらうくらいに。
もし柚木園や姫宮の協力がなくて、俺も美羽に接触する勇気を出せずにいたら、ずっとその状態が続いたのかな、なんて考える。



「これでも、結野のことは本当に好きだったから。悔しいし、ムカつくし、まだわだかまりはあるけど」




言い、愛川は本当に少しだけど、ふっと笑ってみせた。




「今は、結野が日永みたいな奴と逢えて、良かったと思ってる」




好きになった子の幸せ―――って言ってもいいのかな―――を祝福する。
渋りながらも結局、あれこれと話してくれた愛川が今日、一番素直になった瞬間だった。
自分が不幸にしてしまったという負い目もあるんだろうけど、その真剣でまっすぐな思いはきちんと、俺の胸に届いた。




「悪かったよ、色々と。……って、結野にも言えたらいいのにな」




後半、複雑そうな顔をする愛川。


俺は、それを聞いて。


本日最高レベルの、満面の笑みを浮かべた。




「―――だってさ、美羽」




「…………は?」




すると。
俺と背中を向けあう形で座っていた、すぐ後ろの席の少女がスッと立ち、黒髪を靡かせてこちらのテーブルに歩いてきた。


少し気まずそうな表情。
小柄な彼女は今まで、愛川から見えないよう俺の身体の後ろにすっぽり隠れていたのだ。


動揺した愛川が椅子を蹴飛ばす勢いで、ガタンッと勢い良く立ち上がる。




「結野……っ!?」




うんうん、今日も俺の彼女は可愛いなぁ。いつにもまして気合い入れまくったゴスロリだけど。



「な……なに、その服」



「闇の装束だが、何か問題が?」



「は?」



それにしても、自分の中二病を貶した相手の前に、堂々とフリフリ白黒ファッションで現れた美羽はちょっと凄いと思う。
愛川が混乱状態に陥るのも無理はない。



「って違う! い、いつからそこに」



「……最初からだ。悪いが、話はすべて聞かせてもらった」



愕然とし、端正な顔を引き攣らせる愛川。


油断して話した今までの内容(実は美羽のことが好きだった、とか)を本人に聞かれていたとは、世間体や人の目を気にしたり、本心を隠してしまうところがある彼にとって、この上ない衝撃のはずだ。


あまりの屈辱と羞恥に俯き、わなわな震える愛川は見ものだった。


やがて、ばんっ! とテーブルに千円札を叩きつけ、



「……帰る!」



取り繕うことさえできず大股で歩き去る彼の後ろ姿を、俺はにやにや笑って見送る。



「ざまぁ」



「君は案外性格が悪いな……」



美羽に呆れたような目で見られてしまった。



「あ。誤解されないように言っとくけど、これ、提案は美空先輩だから。……俺もノリノリだったけど」



タダで今までのこと、っていうか美羽のことをチャラにしてやるほど、俺だって甘くはない。
でも、一番の弱点を遠慮容赦一切なく抉ってやったのだ。これくらいで許してやってもいいだろう。

暴力的制裁より遥かに平和的で効果的。
さすがは美空先輩、嫌がらせに関してもプロだ。……それがいいのか悪いのかは置いといて。



「やー、このアイスティー500円もしないのに、あいつ太っ腹だなー。臨時収入臨時収入」



俺は愛川の置き土産をほくほく顔で回収しつつ。



「さすがに可哀想だしお詫びのメール送っとくわ。メアドも美空先輩に聞いといてよかったー。あの人ほんと恐ろしいよなぁ……よし、と。『死ね』とか返信来そうだよねー。照れ隠し乙」



「ぼくにとっては十分ヒナも恐ろしいのだが……」



邪気眼翻訳機にツンデレ翻訳機も兼ねてるとか、俺って高性能すぎじゃない?

493ピーチ:2013/08/06(火) 23:01:48 HOST:em114-51-177-71.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

鬼だ! ヒナさん鬼だ!

初めてヒナさんが鬼だと思った!←

…そして愛川くんが可哀そうに思えた((

美空先輩相変わらず美羽ちゃんのためならとんでもないこと考えますね!

494京都出身:2013/08/07(水) 11:48:01 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
ピーチさんの曲です。お聴き下さい♪

作詞・たくや


    【いい湯だな&さよならするのはツライけど】

ババアが死んだ〜♪ババアが死んだ〜♪
いい気味だ〜♪いい気味だ〜♪
さよならす〜るの〜は〜ツラいい〜いけど〜♪
寿命だよ♪仕方がない♪
ピーチが逝くまでごきげんよう♪


ピーチが死んだ〜♪ピーチが死んだ〜♪
いい死に顔だ〜♪いい死に顔だ〜♪
突如おばあさんがピーチの背中に〜♪
久しぶり♪久しぶり♪

ここは温泉♪さんずの湯♪


ババンババンバンバン♪ババンババンバンバン♪
いい湯だな〜♪いい湯だな〜♪
さよならす〜るのは〜ツラ〜いい〜けど〜♪

時間だよ!仕方がない!
ここは上州、草津の湯♪

495京都出身:2013/08/07(水) 11:48:18 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
ピーチさんの曲です。お聴き下さい♪

作詞・たくや


    【いい湯だな&さよならするのはツライけど】

ババアが死んだ〜♪ババアが死んだ〜♪
いい気味だ〜♪いい気味だ〜♪
さよならす〜るの〜は〜ツラいい〜いけど〜♪
寿命だよ♪仕方がない♪
ピーチが逝くまでごきげんよう♪


ピーチが死んだ〜♪ピーチが死んだ〜♪
いい死に顔だ〜♪いい死に顔だ〜♪
突如おばあさんがピーチの背中に〜♪
久しぶり♪久しぶり♪

ここは温泉♪さんずの湯♪


ババンババンバンバン♪ババンババンバンバン♪
いい湯だな〜♪いい湯だな〜♪
さよならす〜るのは〜ツラ〜いい〜けど〜♪

時間だよ!仕方がない!
ここは上州、草津の湯♪

496京都出身:2013/08/07(水) 11:50:10 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
>>ピーチ
ピーチさん
ちゃんと聴きなさいよ
あんたの曲なんですからね

497京都出身:2013/08/07(水) 11:56:12 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
ピーチが死んだ〜♪ピーチが死んだ〜♪
いいザマだ〜♪いいザマだ〜♪
じいさんが天国からふらりと舞い降りた〜♪

寿命だよ♪仕方がない♪
ここは温泉、さんずの川♪

ババンババンバンバン♪

498名無しさん:2013/08/07(水) 12:25:56 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
心の旅のサビ部分
替え歌メドレー



   【もしもピーチさんがお亡くなりになられたら・・】



もしも許されるなら〜♪眠りについたピーチを〜♪
かんおけに詰め込んで〜♪火葬場に入れ込んだ〜♪♪

あ〜♪だから今夜だけは〜♪ピーチを見ていたい〜♪
あ〜♪明日の今頃は〜♪かんおけ〜のなか〜♪

499名無しさん:2013/08/07(水) 12:27:26 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
あ〜明日の今頃は僕は汽車の中〜♪

500心愛:2013/08/07(水) 17:58:30 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ


最終回の前の回になって主人公の新たな一面が!


…結局、愛川は損しまくってるだけだと思うw
可哀想な子なんだよ…!


でもこれでスパッと許しちゃったんで、ヒナが押しまくって友人関係築いちゃうかもw
愛川は嫌がりそうだけどね! 表面上は!

501心愛:2013/08/08(木) 20:47:27 HOST:proxyag044.docomo.ne.jp





「おはよ」



休み明けの教室。
入り口でうろうろしている小さく黒い影を見つけ、俺はすかさず声をかけた。



「……おはよう」



びくっとし、顔をちょっと赤らめて観念したようにこっちに歩いてくる。


あんなことがあった後では、三人と顔を合わせづらかったのかもしれない。
でも彼らがそんなことを気にするわけがなく、美羽の姿を認めるや、まず春山がアホくさい挨拶をかました。



「結野ちゃんおっはよーん! 元気ー?」



「美羽! 良かった、今日休みかと思ったよ」



ほっとしたように微笑む柚木園の隣、姫宮がにこにこ嬉しそうに笑っている。



「ゆいのん、いつも通りだね!」



蝶と薔薇をモチーフにしたレースやフリルたっぷりのゴスロリに、リボンつきのヘッドドレス。
いつも通りすぎる衣装に身を包む美羽は、戸惑いをすぐにしまうと誇らしげに胸を反らした。



「……ふん、このぼくが闇の装束を纏わなくなるとでも―――」



「思ったよ?」



「む」



口を『ヘ』の形に曲げる美羽。
ちょっと不満そうだったけれど、そう言われても仕方ないと思い直したようで。




「その……心配をかけたな」




小さい声で言った後、少し時間をかけてから顔を上げる。




「だが、もう大丈夫だ。あの件も、自分の気持ちも、全部解決した」




「……それは、良かった」



言い切る美羽の表情はすっきりと晴れやかで、憑き物が落ちたかのようだった。


……良かったよ、本当に。



「あれはやりすぎだがな、ヒナ」



「なんのことっすかねー」



ジト目を向けられたので、形だけとぼけておいて。



「……でも、あのくらいやんないと気が済まなかったっていうか。美羽に嫌な思いさせたとか、やっぱりそう簡単には許せないし」



「……は、恥ずかしいことを言う奴だな!」



「え、なんで?」



ぼわわわっと赤くなる美羽を見て、俺は首を傾げた。
俺、なんか変なこと言ったっけか。



「おーっ? ヒナと結野ちゃんがなんかイイ感じですよーっ?」



「君は余計なことを言うな!」



イイ感じ? ……ああ、そういえば。


俺は少し前から考えていたことを思い出し、手を打った。




「みんなー。ちょっと聞いてくれる?」




春山にぎゃんぎゃん噛みついていた美羽をはじめ、談笑していたクラスメイトたちが静まり返る。


……今までのクラスには悪い思い出しかなかった俺が、こんな賑やかな空間の真ん中に今立っていることが不思議で、胸がむずがゆいけど悪くない感覚で。


不思議そうにこっちを窺う美羽をちらりと見て、俺はさらに声を発した。



「そのー……ひとつ報告、っていうか」



……美羽に怒られるかもな。

でも、これははっきりさせておきたい。

俺たちの距離は、実を言えばあんまり変わってないけど。
美羽を迎え入れてくれたこのクラスになら、俺たちの新しい関係を話してもいいかなって思ったんだ。



柚木園が感づいたように切れ長の双眸をキラキラさせ、姫宮がきょとんとしてそんな柚木園を見ている。


……ざわざわざわ。
クラスが騒然とし、次第に一部から殺気が漂い始めた。


そして唐突に春山がシャウト、男子生徒がそれに続いて拳を振り上げる。



「彼女持ちはーっ?」



『我らの敵!』



「地球温暖化はーっ?」



『リア充のせい!』



「我らの悲願はーっ?」



『イケメン抹殺!』



「ちょ、待てよみんな。それじゃヒナが入らないだろ?」



「おいこらそこ」



相変わらず、団結力が嫌な方向にばっちりな集団だ。
彼らの熱い叫びを聞いて、姫宮があわあわと慌てている。



「まいちゃんどうしよう……! 彼女持ちは敵だって!」



「大丈夫だよ夕紀。そういう意味なら、私の方が狙われる可能性は高いから」



「どういう意味!?」



そういう意味だろ。……とかツッコんでる場合じゃなく。

502心愛:2013/08/08(木) 20:48:36 HOST:proxy10001.docomo.ne.jp





俺は「しーずーかーに!」と再び喧騒を静めると、微妙に照れながらも声を張り上げて、




「実は俺、美羽と付き合うことになっ―――」




「待て、ヒナ」



「ぅえっ?」



変な声出た。


俺の勇気ある宣言を急に遮った美羽は、俺をじっと見上げると。



「さっきから聞いていれば、君たちは何を言っているんだ?」



「え?」



ぽかんと呆ける俺に、美羽は無情な一言を告げる。




「―――ぼくと君は、付き合ってなどいないだろう」




「……………え? …………………えええええええっっっ!?」




この状況で衝撃の事実が発覚した!




俺は恥も外聞もなく美羽に詰め寄る。



「だって、え!? 俺たち両思いじゃないの!?」



「ああ、相思相愛らしい。素晴らしいことだな」



「だったら!」



「だが、付き合おうなどと言われた覚えはない」



「そういうこと!?」



た、確かにそれを口に出しては言ってなかったかもしれないけど!
でもその場の空気とか、無言の了解とか、とりあえずなんかそういうのあるじゃん! ねえ!?


っていうか俺、今までずっと一人で勘違いしてたの!? なにこれすごい恥ずかしいんだけど!



「じゃあっ、お、俺とつ、付き合ってください……っ」



俺、予定大幅変更でまさかの公開告白である。
ライフが限りなくゼロに近づいている俺を、美羽はこれまたバッサリ切り捨てた。



「だが断る」



「なんでだよ!」



怒っていいよね!? 好きな人とか関係なく怒っていい場面だよねこれ!


むきゃーっと頭を掻きむしる俺に、美羽は平然と。



「恋愛的な意味で好きあっていて、それを双方が承知しているからといって、交際しなければならないという決まりはないだろう」



「そりゃそうですけど……そうか!?」



普通、ほとんどイコールみたいなものじゃないかな!



「って待て待て、眷属じゃなくなるってそういうことじゃなかったの!?」



「同格の存在、つまり魂を分かち合った半身同士になったという意味だ」



「あそう……」



俺はがっくりと肩を落とした。
何気に俺、今ものすごく酷い仕打ちっていうか、辱めを受けてる気がするんですけど。



「ヒナがふられてるー」



「よっ! ふられ男!」



「ちくしょぉおおお――――――っっ!?」



ぎゃはははは、と男女入り混じった爆笑。


……俺の恋は、まだまだ前途多難なようだ。



「日永ー、授業始めていいかー?」



「あれっ!? すみません!」



いつの間にかチャイムが鳴っていたようで、釈然としないまま慌ただしく席につく。
全員が落ち着いたのを確認して先生が出席を取り始め、



「―――水瀬。……森田。……結野」



「………」



「結野?」



「あ。……はい」



ぼーっとしていたのか少し遅れて、美羽が焦ったように返事をする。

すぐに俯いてしまったその表情は髪で隠れているけれど、その隙間から覗く耳がほんのり色づいていて。



……ああ、なんだ。



俺はなんとなく理解する。



……まだ時間がほしい、ってとこか。



思わずくくっと笑ってしまう。
美羽はヴァンパイアがどうのこうのと偉そうな口を叩くくせに妙に内気で、自分に向けられた愛情を受け取るのに慣れていないのだ。


なんといっても俺は、自分でも呆れるくらい気が長い。


この関係に名前をつけるのが、美羽にとって早すぎるというのなら。
いつか彼女の覚悟ができるまで、いくらでも待とう。


……まったく。目の前が眩しすぎて、終わりなんか見えやしない。


不確定で、今もこれからも、ずっとずっと続いていくこの未来。


その中でただひとつ、確かなことがあるとすれば。



「……さっきから、何をじろじろと見ているんだ」



「べっつにー?」



―――思った以上に面倒な邪気眼少女の攻略は、まだ始まったばかりだってこと、かな。

503心愛:2013/08/08(木) 20:54:44 HOST:proxy10002.docomo.ne.jp


これにて『邪気眼少女の攻略法。』完! 結! です!


結局進んだのか進んでないのかな感じになりましたがきっと進んでます多分(・∀・)


ずいぶんと長くなってしまいましたが、とりあえず無事にまとめられてほっとしてます…!


今までありがとうございました!
これから、番外編だけちょろっと続く予定です(`・ω・´)


ヒナたちに幸あれー!

504ピーチ:2013/08/08(木) 21:59:15 HOST:em49-252-150-48.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ヒナさん最後の最後でふられてるー!? 美羽ちゃん最後だよっ!?

進んでます思いっきり進みまくってます! ただ美羽ちゃん、凄い照れ隠しですな……←

美空先輩が聞いたらお腹抱えて笑い転げそうな感じだよねこれ((

505たっくん:2013/08/09(金) 00:02:02 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
アホのピーチさん元気ですか・・?
近々、ピーチさんストーリー作るんで期待してて下さい。

506たっくん:2013/08/09(金) 00:03:40 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
アホピーチ・・?
聞いてるか・・?
シカトするなよ

507心愛:2013/08/09(金) 21:30:39 HOST:proxyag013.docomo.ne.jp
>>ピーチ


照れ隠しなんです←


確かに爆笑しそうだね美空!
ただ、笑いすぎて壁かなんかに激突しそうw


さっそく番外編始めたんでよろしくです(*^-^)ノ

508ピーチ:2013/08/12(月) 00:09:43 HOST:em49-252-7-184.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

照れ隠しだって分かるとまた可愛いんだよね美羽ちゃん!

……笑い過ぎてもちゃんと周りは見てくださいね美空先輩!←

509心愛:2013/08/12(月) 21:11:22 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なんかちょっとだけお久しぶりな気がしますーw


ありがとう!
照れ隠しってわかんないとただのツンツンしたキャラだけどねw


美空は周り見てても流れるようにドジるからね…(・∀・)

510ピーチ:2013/08/12(月) 21:50:58 HOST:em114-51-39-50.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

久しぶりだよね! また三日四日くらい来れなくなるけど!←

ツンツンしてても可愛いってどういうことですか美羽ちゃん!

流れるように……確かにそれじゃ笑うしかないよね…?((

511たっくん:2013/08/13(火) 14:58:57 HOST:zaq31fa533d.zaq.ne.jp
      【ピーチさんが田代まさしさんを救うスレッド】

ピーチさん・・もし貴方が本当に人間としての心を持つ者
あるいは人の気持ちを理解できる人間なら、
私の頼みを聞いて下さい。

依頼内容は『田代まさしさんを救う』です。

ピーチさんにお願いがあります。
田代さんのYせつ行為に耐えてあげて下さい。

田代さんが芸能界に復帰する方法はただ一つ・・
少女に思う存分イタズラをさせてあげる事。これ一点に尽きる!
問題なのは、誰にやらさせるかです。

自ら希望する少女はまずいないでしょうし・・・。
そこで思い出したのがピーチさんです!
こうなったらピーチさんがソッセンしてやらせてあげるしかないと思います。


ピーチさんの身体を田代まさしさんに授けてみてはいかがでしょうか。
貴方を犠牲にする事で田代まさしさんが救われるなら安いもんです。

というわけで宜しくお願いします。




不正行為を認める他ないです。
そうでもしなければ彼のストレスは積もる一方

512たっくん:2013/08/13(火) 15:06:56 HOST:zaq31fa533d.zaq.ne.jp
    【意外にもピーチさんが田代まさしさんを救ってしまうスレ】

ただしピーチさん、これだけは約束して下さい。
田代まさしさんに何をされても、田代さんがどんな行為に出ても
我慢して耐え抜いて下さい。
どうか彼を訴えるのだけはカンベンしてあげて下さい。

もし訴えたらピーチさん、一生恨みますからね。




4 名前:たっくん:2013/08/13 15:05:00 IP:49.250.83.61
もしピーチさんが訴えたら
フリダシに戻ってしまって、
私のせっかくの計画が全てパァ!になってしまうので
宜しく!

513心愛:2013/08/13(火) 19:26:15 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
>>ピーチ

それは残念だ!
ここあはちまちま更新してるよー(*^-^)ノ

514ピーチ:2013/08/14(水) 00:54:48 HOST:em1-114-0-148.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

お盆の間だけ出かけるからコメも更新もできないのです←

でも読みたいよー! ここにゃんの神文よみたいよー!

515心愛:2013/08/14(水) 19:15:13 HOST:proxyag003.docomo.ne.jp
>>ピーチ

残念ながらそのご期待には応えられなそうだよー!


お出かけか!
ごゆっくり……といいたいとこだけど早く帰ってきてくれたら嬉しいな(チラッ

516ピーチ:2013/08/19(月) 21:40:43 HOST:em1-114-111-160.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

応えて欲しいけど我儘は厳禁!←

ただいまー! たぶん(?)早く帰ってきたよー!((

517たっくん:2013/09/12(木) 10:55:10 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
>>516
ピーチさんおはようございます。
カレーを食べてカレーを出すスレです。
念の為に書き込みしておきますね  


  【カレーを食べてカレーを出すスレッド】

ピーチさん&千春さん、おはようございます。
昨日、カレーを食べた後は必ずカレー(廃棄物)が下から出ると申しましたが
今だに出ません。もうしばらく時間がかかりそうです。

一応念の為に、現状をお伝えしておきますね。
心配されてる方もおられると思うので・・。
現代は情報社会ですからね
何でも情報を入手しておいて損はないと思いますよピーチさん&千春さん♪

次回はピーチ&千春&エルぼんの
無能スレッド設立する予定です。
お楽しみに

無能に生きた小説家たち

3 :たっくん:2013/09/12(木) 10:53:50 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp       【ダイアナ・ストーリー】


突然ですがこれから貴方達の事をダイアナと呼ばせてもらって宜しいでしょうか。

理由は・・貴方達の身体の一部にウンコが出る穴があるからです。
ありますよね?ないとは言わせません。別サイトで女性に質問しました。

ウンコ→大(だい)→ウンコを出す穴→大の穴→だいのあな→だいあな
それを片仮名で表記しますと、ダイアナ〜♪

とまあこのようになります。

品のない言い方をするとケツ穴なんです。
さて・・ここで問題になってくるのは
何故私がこの発言を避けたか・・?御存じですか?

別サイトでこの話したら
ある人が『それだったら最初からケツ穴って言えばいいじゃないか。何故遠まわしに言うんだ?』なんでおっしゃってました。

わたくし下品な発言はあまり好まない性格でして・・
こう見えても結構、上品なんですよ(笑)
だからあえてケツ穴とは言わなかったのです。

大穴(だいあな)のほうが上品かな〜なんて思いまして

518たっくん:2013/09/12(木) 11:01:08 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
ピーチさんは肛門およびオマ●コが他者より大きいので
大根一本入ってしまう。実験したわけでありませんが、
私はそう確信しています。
これほどスケールの大きい女性、大の穴(だいのあな)に相応しい人物を私は知りません!

まさにダイアナですねピーチさんは
ついでに、千春とエルぼんも

519たっくん:2013/09/12(木) 11:09:40 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
貴方達が言いたい事、私にはよく分かります。
つまり、私にカレーを食べるな!とおっしゃりたいのでしょう?

でもそんな事、貴方達に言われる筋合いはないです。
余計なお世話ですよ。
カレーを食べる食べないは私が決める事であって
君らが決める事じゃない!

そしてカレーを下(肛門)から出すのも私の勝手ですよ

520たっくん:2013/09/12(木) 11:41:39 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
世間のグルメマニアの方々に一言・・・
食べる話ばかりじゃなくてたまには『出す』話もしましょうよ。
いくら料理好きだからと言っても食べっぱなしじゃいけませんよ。
廃棄物を出さないと

食後は確実にウンコが出ますからね間違いないですよこれは
それはぜったい避けられない宿命です

宿命から逃げては駄目なんですよ皆さん
だからたまには出す話もしましょう。
カレーを食べた後は必ずカレーが出る
常識です

食べて終わりじゃないんです。
トイレへ行って下から出て、はじめて間食なんです。


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