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邪気眼少女の攻略法。
478
:
心愛
:2013/08/03(土) 20:56:17 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
「美空先輩や、他にも家族の人たちとかさ。みんなに守られているばかりだったから、自分が強い、ヒーローみたいな存在になって、みんなを守りたいって思ったんじゃない?」
さっきも、『守られてばかりで』と零した。
美羽はそういう意識が強いから。
ただ感謝するんじゃなくて、その気持ちを自分の力で返したいって、考えたんだと思う。
それがきっと、美羽の“邪気眼”の始まり。
“理想の自分”とは、孤高のダークヒーロー。
大切なひとたちを、守りたかったんだ。
悲痛なほどの優しさでできた美羽の意志を、どうして否定することができようか。
「そ、んな……こと、」
「もちろんこれは、ただの俺の推測。本当は違うかもしれないよ」
動揺に瞳を揺らす美羽。
俺は彼女を見てきっぱりと言い切る。
「でも俺は、小さいときにそう考えてもおかしくないくらい、美羽が優しい奴だってことを知ってる」
今まで、美羽は他人を遠ざけてきた。
失わないために、持ってはならない。
そして、相手を自分のせいで傷つけないために、近寄ってはならない、と。
美羽はそれだけ、心根のまっすぐな人間だ。
「それで結局、そのひとたちを守れたか、っていったらどうか分かんないけどさ。少なくとも俺やクラスの奴らは、今の美羽と一緒にいられて、幸せだって思ってる」
だったら。
「誰かを幸せにしてる時点で、それは空想でも、虚像でもない。立派な“結野美羽”そのものなんだよ」
誰に異常だって言われても、それでも俺は美羽を肯定し続ける。
世界で一人でもいい。俺は美羽の理解者なんだって、胸を張って宣言してやる。
「それに俺は、そういうの全部ひっくるめて、一人の女の子として、美羽が好きなんだ。……それでも、俺の十年間を否定するつもり?」
肩が跳ねる。
やっと俺の、真剣な気持ちに気づいたかのように、かっと白い頬が赤らんだ。
不安そうに見上げるその瞳を、喰いつかんばかりに激しく見つめ返す。
黒い、瞳。
俺が昔、この場所で好きになったその色が、あのときと同じ夕暮れの光を取り込み煌めいている。
気が遠くなるような時間のあと。
さみしがりやのくせに、他人から好意を向けられることを恐れる少女はこくりと喉を鳴らし、
「ふ……ぇ、ぅあ……っ」
ぽろぽろと涙を零した。
ひく、ひくと時折しゃくりあげながらも、震える唇が言葉を紡ぎ出す。
「ぼくは、……ぼくも……きみ、のことが、」
―――すき、
声にはならなかったけれど、俺の耳にはしっかりと届いた。
全身の神経に甘い戦慄が走る。
火照った顔にさらに血が昇るのが分かる。
「あ……りがと」
違うだろ俺! もっと気の利いたこと言えよ!
でも仕方ない。何しろ、あまりのことに俺の脳はショート寸前なのだ。
頭の中がぐるぐる回る。
そんな俺には気づいていないらしい美羽は涙を拭うと、ちらりとこちらを窺った。
「あの、……ヒナ。契約という形がなくても、ぼくと共にいてくれるか?」
「あ……当たり前だろ!」
つまり……主と眷属じゃなくて、その、そういう関係になりたいってことで……合ってる、よな?
そんなことを言い出す美羽が嬉しいし可愛いしで、ここでスマートに抱き寄せたりできたら完璧なんだけど、残念ながらあまりのことに内心動転しまくり、うわーうわーっと大合唱な俺の手はイメージ通りに動いてくれなかった。
これだから彩にヘタレって言われるんだよまったく。
「では、改めて」
夕焼け空をバックに大仰に腕を広げ、美羽は朗々と声を張る。
「此れなるは《純血の薔薇(Crimson)》一級魔女にして偉大なる吸血姫(ヴァンパイア)、ミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ」
……それでこそ美羽だ。
思わず、俺の頬が緩む。
「たとえ幾千の刻を隔てようとも、我、永遠に汝と共に在ることを誓う」
涙を光らせながら微笑む美羽に、俺も笑って手を差し出した。
「これからもよろしく、美羽」
最初とはまた違った意味を持つ握手。
恥ずかしそうな美羽の笑顔はあのときみたいに、可愛くて、優しくて、綺麗で、何よりもまばゆかった。
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