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邪気眼少女の攻略法。

492心愛:2013/08/06(火) 21:01:55 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp





「そう……だよな」



愛川は落ち込んだようで、声の抑揚を落とした。
しばらく氷が溶けていくグラスを見つめながら、ぼんやりと考えたあと、




「……結野はずっと、誰からも理解されずに、一人で生きていくんだと思ってた」




入学式からしばらくの間、美羽は確かに浮いていたし、孤立していた。それはもう、話しかけるのもためらうくらいに。
もし柚木園や姫宮の協力がなくて、俺も美羽に接触する勇気を出せずにいたら、ずっとその状態が続いたのかな、なんて考える。



「これでも、結野のことは本当に好きだったから。悔しいし、ムカつくし、まだわだかまりはあるけど」




言い、愛川は本当に少しだけど、ふっと笑ってみせた。




「今は、結野が日永みたいな奴と逢えて、良かったと思ってる」




好きになった子の幸せ―――って言ってもいいのかな―――を祝福する。
渋りながらも結局、あれこれと話してくれた愛川が今日、一番素直になった瞬間だった。
自分が不幸にしてしまったという負い目もあるんだろうけど、その真剣でまっすぐな思いはきちんと、俺の胸に届いた。




「悪かったよ、色々と。……って、結野にも言えたらいいのにな」




後半、複雑そうな顔をする愛川。


俺は、それを聞いて。


本日最高レベルの、満面の笑みを浮かべた。




「―――だってさ、美羽」




「…………は?」




すると。
俺と背中を向けあう形で座っていた、すぐ後ろの席の少女がスッと立ち、黒髪を靡かせてこちらのテーブルに歩いてきた。


少し気まずそうな表情。
小柄な彼女は今まで、愛川から見えないよう俺の身体の後ろにすっぽり隠れていたのだ。


動揺した愛川が椅子を蹴飛ばす勢いで、ガタンッと勢い良く立ち上がる。




「結野……っ!?」




うんうん、今日も俺の彼女は可愛いなぁ。いつにもまして気合い入れまくったゴスロリだけど。



「な……なに、その服」



「闇の装束だが、何か問題が?」



「は?」



それにしても、自分の中二病を貶した相手の前に、堂々とフリフリ白黒ファッションで現れた美羽はちょっと凄いと思う。
愛川が混乱状態に陥るのも無理はない。



「って違う! い、いつからそこに」



「……最初からだ。悪いが、話はすべて聞かせてもらった」



愕然とし、端正な顔を引き攣らせる愛川。


油断して話した今までの内容(実は美羽のことが好きだった、とか)を本人に聞かれていたとは、世間体や人の目を気にしたり、本心を隠してしまうところがある彼にとって、この上ない衝撃のはずだ。


あまりの屈辱と羞恥に俯き、わなわな震える愛川は見ものだった。


やがて、ばんっ! とテーブルに千円札を叩きつけ、



「……帰る!」



取り繕うことさえできず大股で歩き去る彼の後ろ姿を、俺はにやにや笑って見送る。



「ざまぁ」



「君は案外性格が悪いな……」



美羽に呆れたような目で見られてしまった。



「あ。誤解されないように言っとくけど、これ、提案は美空先輩だから。……俺もノリノリだったけど」



タダで今までのこと、っていうか美羽のことをチャラにしてやるほど、俺だって甘くはない。
でも、一番の弱点を遠慮容赦一切なく抉ってやったのだ。これくらいで許してやってもいいだろう。

暴力的制裁より遥かに平和的で効果的。
さすがは美空先輩、嫌がらせに関してもプロだ。……それがいいのか悪いのかは置いといて。



「やー、このアイスティー500円もしないのに、あいつ太っ腹だなー。臨時収入臨時収入」



俺は愛川の置き土産をほくほく顔で回収しつつ。



「さすがに可哀想だしお詫びのメール送っとくわ。メアドも美空先輩に聞いといてよかったー。あの人ほんと恐ろしいよなぁ……よし、と。『死ね』とか返信来そうだよねー。照れ隠し乙」



「ぼくにとっては十分ヒナも恐ろしいのだが……」



邪気眼翻訳機にツンデレ翻訳機も兼ねてるとか、俺って高性能すぎじゃない?


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