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避難所スレ

44サイバーゴースト名無しさん:2014/11/20(木) 00:03:22 ID:c1Z9sTnw0
修正乙です
これなら、特に問題はないと思われます

45 ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:23:29 ID:XYR/rc320
修正案を投下します。

46エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:24:02 ID:XYR/rc320



【C-8】

 アーチャーのサーヴァント、エミヤシロウは己のマスター、衛宮切嗣を抱えてビルの屋上を移動していた。
 先ほどの戦場、図書館から離れたビルを選ぶと、そこに腰を落ち着かせることにした。場所はC-8の北西。ちょうど真西に橋がある位置だ。
 エミヤは切嗣を物陰に隠すようにして寝かせる。
 移動中の姿を他の主従に見られ、狙撃され無いとも限らないからだ。
 エミヤ自身も多少の傷は負っているが、霊体化して休む余裕はない。先の戦闘で気を失った切嗣が覚醒するまで、実体化したまま見張りを続けることにする。

「(……少し、情報を整理するか)」

 図書館に着いてから連戦が続き、それに伴い確認済みのサーヴァントも増えた。サーヴァントと戦う者の努めとして、敵対するサーヴァントの情報を整理するのは当然の仕事だ。

 一騎目、貴婦人のランサー。早朝、主従伴って屋外で食事をしていたランサーだ。切嗣が図書館で調べたところ、まだまだ情報不足とのことだ。

 二騎目、爆弾魔のアサシン。午前、ホームセンターで遭遇した猫人のサーヴァントだ。ステータス隠匿や気配遮断に優れることからアサシンと推測。手に触れた物を爆弾に変える能力を持つ。マスターがサーヴァントと余りにも距離を取りたがらないことに疑問を感じる。こちらも真名の特定はできなかったのこと。

 三騎目、ロトのサーヴァント。午後、切嗣が図書館で検索している間、図書館前で戦闘していたサーヴァントの一騎。その剣の刀身に記された文字から『ロト』が読み取れた。エミヤの知る最強のセイバー、アルトリアに匹敵する剣技、宝具、戦闘力などから、勇者の始祖、ロト本人と推測する。そこまで分かっているが、残念ながら、情報検索は行えていない。

 四騎目、朱のサーヴァント。ロトのセイバーと交戦していたサーヴァント。脅威的な再生能力を誇り、無数の魔を使役する。後に自身も交戦。頭を破壊してもすぐに再生したときはさすがに驚愕した。魔の使役からキャスターを予想したが、奴は自身が放った十六の矢を一つ残らず二丁拳銃で撃ち落とした。その腕前からアーチャーの可能性も考えられる……剣を扱うアーチャーの自分が言えた口ではないが。切嗣が『死徒』ではないかと疑い、妙な拘りを見せている。無理をするようなら止めに入った方が良いだろう。

 五騎目、仮面のバーサーカー。夕方、B-9にて二騎のサーヴァントが交戦しているのを見て、好機の瞬間に狙撃。仮面のバーサーカーはこちらに対象を変え、迎撃してきた。黒刀を投げつけてきたので、それを肩で受け、トレースした。情報を得たのでそこで撤退。斬魄刀を用いる死神。真名を探るに十分な情報があるが、未だ情報検索を行えていない。

 六騎目、ロボット乗りのサーヴァント。仮面のバーサーカーと交戦していたサーヴァント。4mほどのロボットに乗る。観察した時には既に戦闘の途中で、また、不意打ちの好機が早く訪れたため、あまり観察できていない。ただ、あの不意打ちの矢は確実に当たったはずだ。外すはずがない。だと言うのに、無傷で健在しているのが確認できた。何らかのスキルか宝具か。仮面のバーサーカーが迎撃してきたので、詳しく確認する余裕はなかった。情報はかなり不足している。

「(自身を除けば二十七騎。うち六騎を確認か)」

47エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:24:19 ID:XYR/rc320

 本来の七騎で行う聖杯戦争であればこれで終わりなのに、あと二十一騎も存在する。なかなか難儀な話である。
 だが、彼を知り己を知れば百戦殆うからず。情報収集は依然として必要だ。

「(これぐらいか。あとは見張りに専念……む)」

 見覚えのある影が視界に入る。
 仮面のバーサーカー。彼は実体化したまま、ビルの屋上を駆けていた。

「(バーサーカーが実体化したまま移動? 何をしている?)」

 自身の体を物陰に隠しながら、バーサーカーの様子を伺う。
 既にこちらの射程範囲内の距離で、しかし相手の射程距離外だ。攻撃をすれば、確実に先手が取れる。
 だが、今はマスターの切嗣が気絶中だ。できれば戦闘を起こしたくない。
 この場はやり過ごし、観察に努めよう。
 そう判断する。
 しかし――

「――ッ!?」

 バーサーカーは少しの間だけ足を止めると、駆ける方向を変えた。
 エミヤの居るビルに向けて、真っ直ぐへと。

「(こちらの場所がバレた?! どうやって!? いや、今は後だ!)」

 黒塗りの弓を手にし、無銘の剣を射る。
 しかし、バーサーカーは姿をかき消すほどの速度でビルの隙間に逃げた。
 障害物が多く、射線が通らず、目視もできない。
 だが、奴が近づいてくるのだけは分かる。

「(マスターを連れて撤退……いや、無理だ。あの速度なら追いつかれる! 迎撃してマスターから距離を離すしかない!!)」

 干将・莫耶をその手に投影し、身構える。このビルその物が破壊されたり、切嗣が直接狙うケースも警戒する。
 そして気配を感じ振り向く。
 背後に、バーサーカーはいた。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「ちっ!」

 バーサーカーは右腕を伸ばし、掴みかかってきた。
 それを干将で切り払い、莫耶で脇腹を狙う。
 しかし――

「ぐあっ――!?」

 干将は半ばまで食い込んだところで腕が超速再生し、力の運動を止めてしまう。莫耶も根本まで刺さらず、怯みもしない。
 対するバーサーカーの腕はエミヤの喉を掴み、強く圧迫する。
 ならば霊核を狙うのみ。抜く間も惜しい双剣を手放し、再度その手に干将・莫耶を投影する。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「がっ!?!」

 だが、それよりも速く、バーサーカーの拳がエミヤの顔を打ち抜いた。
 一瞬で意識を刈り取られ、気を失う。干将・莫耶が魔力として霧散する。

「がああああああぁっっっ!!!?」

 それも、束の間。
 バーサーカーの足が、エミヤの右足の甲を踏み砕いた。その痛みで覚醒する。

「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーは吼えると、エミヤを放り投げた。





48エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:24:44 ID:XYR/rc320



 黒崎一護は狂化により理性と言語能力を喪失している。
 そして保有スキル:完全虚化によって自我も消失している。
 残っているのは、美遊・エーデルフェルトを護るという意思のみ。

 だが、それもままならない。
 令呪で《B-4に存在するサーヴァントを殺せ》と命じられたからだ。
 美遊は今はC-9にいる。側にいなければ護ってやることができない。
 彼女もB-4に連れて行く方法もあったが、その時対峙していた主従がそれを許さないであろう。
 だから、一護にできることは、できるだけ速くその命令を済ませ、一刻も早く美遊の元に戻ることだった。

 実体化したままビルの屋上を駆ける。真っ直ぐB-4に向かう。
 その途中、見知った霊圧を感じた。

 エミヤだ。
 兄でありながら、兄の役割を放棄した男だ。

 許せない。
 一片たりとも存在を認めない。
 消し炭にしてもなお事足りない。

 それは憎しみのごとく、怒りをかき立てる。
 本来守護のスキルにより、戦わぬ者に対しては襲うことはできない。
 ならば許すか? 否だ。この男を許せば、己の兄としての尊厳も失う。
 まるで異教徒に対するイスカリオテのごとく、奴を殲滅せよと心が叫ぶ。
 令呪の命にも逆らい、そちらへ向かおうとする。

 だが、令呪は一護を縛る。即刻B-4のサーヴァントを殺せと。
 一護は抗う。エミヤを殺したい、と。

 足が止まる。
 一護の中で、令呪の命と己の狂気が反発し、混ざり合う。

 そして令呪か、バーサーカーか、どちらとも言えぬ悪魔のような囁きが、脳裏を走る。

 ――ナラ アイツ ヲ B-4 デ 殺セバ イイジャナイカ

 令呪と狂気が歯車のように噛み合う。
 仮面の下で唇を釣り上げ、エミヤに向けて駆け出した。





49エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:25:06 ID:XYR/rc320



【C-7】

「(私を投げ飛ばした……マスターと距離を取らせるためか!?)」

 空中に放り投げられながら、エミヤは思案する。
 “マスターからサーヴァントを引きはがす”。
 エミヤはバーサーカーの戦法をそう判断した。エミヤとしては有り難くもあり、また危惧を抱いていた。

 気絶中の切嗣から戦線を遠ざけるのは、エミヤとしては願ったり叶ったりだ。だが、相手のマスターの所在が知れない。相手のマスターが、切嗣に接触してなんらかの行為をしないとも限らない。令呪を使わせるなどの手段を取るかもしれない。
 バーサーカーからあえて距離を取る手段を選んだのだ。その可能性は十分にありうる。

 通常時であれば、適度にバーサーカーと距離を取った後、令呪を使ってエミヤを呼び戻せばいい。だが、切嗣が気を失ってるため、それができない。
 戦闘をしながら敏捷性に勝るバーサーカーを撒き、バーサーカーより速く切嗣の元に戻らねばならない。
 まずはこの宙を浮く状況を打破しなければならない。
 地を踏みしめられない宙は得手ではなく、対するバーサーカーは宙を駆けることもできる。
 ならば、地を踏むのが第一歩だ。

「――――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う)」

 言葉自体には意味のない、精神統一のための呪文を口ずさむ。
 右手に投影したのは、鎖付きの短剣。かの冬木市の聖杯戦争でライダーが使っていた武器だ。短剣を投げ、橋の中央に刺す。
 そこを支点とし、孤を描くように着地する。川の対岸まで飛ばされるとすら思えたエミヤの身体は、橋の半ばほどで落ちた。

「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーは人目を憚ることなく吼え、道路を走る車を踏みながらエミヤを追う。先ほどの戦いから学んだのか、空を一直線に駆けてはこない。
 エミヤは役目を果たした短剣を放り、弓を番える。バーサーカーを無銘の剣で射るが、斬魄刀によってことくごとく弾かれる。『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』は橋が破壊されるおそれがあるので、できれば使いたくない。

「(斬魄刀が使えないわけではない。先ほど素手で投げたのは、やはり、マスターとの距離を離すのが目的か)」

 エミヤはそう判断する。
 ならば尚のこと、無防備な切嗣を護るため、直ぐにでも戻る必要がある。
 だが、敏捷性では勝るバーサーカーを直線距離で振り切ることはできない。さらに、右足の甲をバーサーカーに砕かれ、移動力が激減している。

「(撒くには場所を変える必要があるな)」

 橋を渡って深山町まで行けば、新都ほどではないものの、コンクリートジャングルと化したビル街がある。足の遅さをカバーするためには、地の利を生かすしかない。
 一端は自主的に切嗣から遠ざかることになるが、急がば回れだ。最短距離だけが最適解ではない。
 エミヤはバーサーカーから背を向け、深山町の方へ駆け出した。





50エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:25:26 ID:XYR/rc320



【B-6】

 深山町のビル街の北部、B-6で二騎のサーヴァントが舞う。
 日はまだ落ちておらず、人通りも多い。音速で戦う二騎の姿を、何十と言うNPCが見たであろう。
 神秘を隠匿すべき聖杯戦争ではないが、人前での戦闘は愚考である。己の姿を、技を、宝具を人前に晒すことになり、それは人伝に他の主従にも伝わるだろう。

 だが、バーサーカーにそのデメリットを説き、戦闘を中断させるのは無意味だ。
 それを考慮するだけの理性が残っていれば、そもそも白昼堂々攻撃はしてこまい。

 しかし、霊体化して逃げるのもいくつか問題がある。
 霊体化は現界に必要な魔力消費を少なくし、物質への干渉を極力減らす。それでも、完全に無敵になるわけではない。宝具によっては霊体化した状態のサーヴァントを攻撃することも可能であり、その逆は存在しない。防御すらできず、一方的にやられるのみだ。
 そして、霊体化は一瞬ではできない。戦闘中にあからさまな隙を見せるのは自殺行為でしかない。

 バーサーカーの猛撃は、エミヤに霊体化する隙すら与えなかった。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「しつこい! どこまで追ってくるつもりだ!!」

 愚痴を口に出しながら、刀身がピンク色のシャムシールを振るう。
 バーサーカーの動きは変わることなく、斬魄刀で襲いかかる。シャムシールで受け流すと、刀身が飴細工のごとく粉々になった。

「これもダメか」

 今散ったシャムシールは、誘惑の剣という、相手を混乱させる効果を持つ剣だ。しかし、やはりと言うべきか、宝具ですらないそれはバーサーカーには効果を発揮しなかった。

 光を屈折させ、音波を放ち、闇に紛れ、魔力を散らせ、五感を狂わせる。
 エミヤはあの手この手を使い、バーサーカーから逃れようとする。
 だが、バーサーカーはしつこく付きまとう。

 現時点で、エミヤは多くの点で不利だ。
 スペックを比較すると、バーサーカーの方が大きく上回っている。
 エミヤは右足の甲を砕かれ、距離を取ったり、逃亡する為の機動力を封じられている。
 バーサーカーはエミヤの霊圧を感知し、エミヤはそれに対する対抗策を知らない。
 バーサーカーは強力な再生能力を持ち、魔力の限り負傷することはない。

 唯一エミヤが勝ってる点、それは保有魔力の量。
 エミヤは多数の剣を投影しているが、そのどれもが魔力消費が多い物ではなく、依然としてその身に魔力を十分に確保している。いざとなれば、気絶中の切嗣から吸い上げることも可能だ。
 対するバーサーカーは、現界するだけで多大の魔力を消費し、戦闘により、さらに魔力を消費している。本来は美遊とカレイドステッキ・サファイアによって魔力を補われているが、今はそれができない状況にある。美遊の身を案じるバーサーカーは、現界と戦闘に消費する魔力を、己の身から優先的に消費させている。
 故に、戦闘を長引かせるほど、エミヤの有利に傾く。加えて、バーサーカーはB-4でエミヤを殺すつもりであり、四肢を狙うばかりで霊核を狙わない。

 また、マスターの美遊は現在無力化されており、切嗣を狙う事もない。それどころか、バーサーカーも、美遊も、切嗣の存在には気付いていない。
 勿論、他の主従に襲われる可能性はあるが、今の所は切嗣を狙う者は居ない。

 その為、現状を維持する事がバーサーカー撃退の最適解であり、今現在、バーサーカーも決して有利な状況とは言えない。
 だが、それはあくまで神の視点によるもの。
 エミヤは知る由もなく、一刻も早く切嗣の元に戻るために、焦りを感じていた。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「ぐあぁっ!!」

 バーサーカーの足がエミヤの腹部に入り、ビルへと蹴り飛ばされる。ガラスを割り、フロアに入る。
 良いことと悪いことが重なった。

 良いことは、そのビルが廃ビルであったこと。人気はなく、NPCに被害が出なかったこと。
 悪いこと、それは――その廃ビルが、暁美ほむらが作った陣地だと言うこと。


 ――ワイヤーが引かれ、無数の銃火器が、エミヤに向けられて火を噴く。

51エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:25:43 ID:XYR/rc320


「トレース、オン!!」

 それはもはや反射だった。エミヤは無意識のうちに、四本の大剣を自身の四方に投影し、さらに強化も施す。魔力を少量込めた程度の弾丸は、大剣の前にむなしく弾かれた。

「まさか、こんな罠があるとはな」

 大剣を解除し、深く息をつく。
 それは、全くの偶然。
 バーサーカーが暁美ほむらの仕掛けた罠を知るはずもない。たまたま、エミヤを飛ばした方向に、その廃ビルがあったと言うこと。
 だが、エミヤはそうとは考えない。

「誘い込まれたわけか――」

 バーサーカーは当然、この罠を知っていて誘い込んだと考える。
 サーヴァントを殺すには稚拙な罠だとか、バーサーカーが何故この罠を仕掛けたのかとか、そこまで深く考える前に、一つの推測がよぎる。

「――なるほど。“私をマスターから引き離す”のが目的ではなく、“私をどこかに誘い込む”のが目的なのだな」

 急所を狙わぬ戦い方。エミヤを逃がさぬように追い詰める戦法。引き離すには余りにも離れた距離。
 感じていた違和感を理解した。

「ならば――」
「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーが吼えながら、廃ビルに入る。斬魄刀を振り上げ、エミヤに迫り――


 ――二騎のサーヴァントは、忽然と消えた。





52エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:26:01 ID:XYR/rc320



【?-?】

 そこは、荒野だった。
 地には無数の剣が大地に突き刺さり、空には回転する歯車。
 地平線すら見え、赤き大地が無限に続くとすら思えた。

 ビル街から場所が急転し、エミヤを見失ったバーサーカーは辺りを見回す。

「ここは私の固有結界」

 エミヤの言葉に、バーサーカーは振り向く。
 エミヤは燃えさかる炎を背に立っていた。


 ――無限の剣製(Unlimited Blade Works)。


 ここは、エミヤの心象風景で塗りつぶされた世界。
 結界により外界から隔離されたこの地に、B-4などという地区は存在しない。

「私を倒さぬ限り、この地からは出られんぞ。どうする、バーサーカー?」

 エミヤが一振りの剣を抜き、バーサーカーに突きつける。

「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーが吼え、斬魄刀を振り上げ地を駆ける。
 エミヤは剣を煌めかせた。
 斬魄刀を手にしたバーサーカーの腕が宙を舞う。

 エミヤの抜いた剣は、ただの剣ではない。
 それは、人の手によって作られた。
 それは、伝説の金属でできていた。
 それは、ありとあらゆる魔を切り裂いた。
 それは、魔を打ち払う最強の剣。

 刀身に刻まれた『DRAGON QUEST』の意匠――


 ――『王者の剣(ソード・オブ・ロト)』


「行くぞ、バーサーカー!!」
「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーは即座に腕を再生し、斬魄刀を呼び寄せる。
 二騎のサーヴァントが、荒野を駆け抜けた。





53エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:26:19 ID:XYR/rc320



【固有結界――無限の剣製――】

 エミヤは王者の剣から剣技を吸い上げる。あらゆる魔と戦ったロトの剣技を模倣する。
 バーサーカーは四肢を狙い、戦闘力を削ぐ戦法を止める。B-4への輸送を諦め、結界から脱出するために殺しに掛かる。

 観客の居ない戦場で、二騎は激しく交差する。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「くっ……!!」

 バーサーカーの斬魄刀を、エミヤは受け流した。エミヤのいた場所を刀が通り、荒野を抉る。
 バーサーカーの力は強く、エミヤは振るわれた刀を“受け止める”ことができなかった。故に、力の向きを変え、“受け流す”ことで回避する。その為には体捌きも必要だ。自身の体も動かし、刀を外す。
 だが、ここでもまた、右足の甲の傷がエミヤの足を引っ張る。
 満足でないその足は余計な労力を使わせ、エミヤの身から魔力を削ぐ。

 一方、バーサーカーは戦闘続行スキルは無い物の、超速再生スキルによって負傷を無くも同然の戦いが可能となる。
 さらに、バーサーカーのスタンスが“B-4まで生かして運ぶ”から“即座に殺す”に変わったため、攻撃は以前より苛烈なものとなった。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「はあぁっ!!」

 王者の剣はバーサーカーの身体を容易く切り裂く。だが、切り裂いている間は王者の剣が使えないと言うことでもある。
 肉を切って骨を断つ。バーサーカーが魔力の大量消費を覚悟でその戦法に出たとき、エミヤは防戦に回るしかなかった。
 技量を塗りつぶす、純粋な力の差を改めて思い知らされる。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「がっ……!」

 二十七回目の刃の交差で、戦況が大きく動く。
 受け流し損ねたバーサーカーの斬魄刀が、エミヤの右足首を切り落とした。
 エミヤは転がって距離を取り、片膝立ちになる。足首を失っては立つことも回避することも難しい。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「こうなれば……」

 バーサーカーが雄叫びをあげながら迫り来る。
 エミヤはバーサーカーの上空を囲うように、剣を投影する。その数、十九本。バーサーカーのインファイトにより、自身への誤射を恐れて使わなかったそれを、解放する。
 近距離の『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』で自身にも被害が及ぼうとも、下手すれば相打ちになろうとも、勝つためにはこれしかない。

「行けっ!!!」

 覚悟を決め、一斉掃射する。

「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーが斬魄刀を振り下ろす。



 ――エミヤの霊圧が、消えた。





54エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:26:38 ID:XYR/rc320



【B-6】

 B-6に存在する廃ビルのワンフロアに、突如バーサーカーが出現する。
 見覚えのある風景に、バーサーカーは理解する。
 固有結界が解除されたのだと。

 だが、令呪の効力が消え去ったわけではない。
 投影された剣が刺さることはなかったが、エミヤとの戦闘で多大の魔力を消費してしまった。
 これ以上の戦闘は、美遊からも魔力を補う必要があるかもしれない。

 最後の太刀でエミヤを切った感触は無かった。
 何らかの方法で逃げおおせたのだろう。
 奴だけはいずれ滅ぼす必要がある。
 だが、今は令呪の命令が身を強く縛る。エミヤを探しに行くのは困難だ。

 バーサーカーはB-4へと駆けていった。



【B-6/市街地/一日目 夕方】

【バーサーカー(黒崎一護)@BLEACH】
[状態]健康、エミヤへの激しい怒り、魔力消費(大)
[装備]斬魄刀
[道具]不明
[所持金]無し
[思考・状況]
基本行動方針:美遊を守る
1.令呪・《B-4に存在するサーヴァントを殺す》
2.1を果たし速やかに美遊の元へ戻る
3.エミヤは殺す。
[備考]
※エミヤの霊圧を認識しました
※白昼堂々戦闘を行いました。バーサーカー(黒崎一護)が多数のNPCによって目撃されています。また、ビルや橋、車などが一部破壊されました。その情報がどのように流布されるか、ルーラーがペナルティを与えるか否かは、次の書き手に任せます。





55エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:26:56 ID:XYR/rc320



【C-8】

「『飛べ、アーチャー』」

 切嗣の令呪が煌めき、一画が消失する。
 令呪の効力により、エミヤは空間を『飛んで』切嗣の元に現れた。
 切嗣は頭を抱えながら、傷を負ったエミヤを見て眉をひそめる。

「すまない、マスター。令呪を使わせてしまった」
「待ってくれ。まだ頭がはっきりしないんだ。少しずつ、事情を説明してくれ」

 切嗣は覚醒してまもなく、念話でエミヤに令呪による命令を指示された。
 あまり意識がはっきりしていない状況だったが、その指示の必死さに、理由を聞かずに従った。
 切嗣からしてみれば、自身がどれだけ眠っていたか、エミヤの傷は朱のサーヴァントに付けられたものなのか、それすらわからない。

「あぁ、わかった。だが、一度ここを離れよう。移動しながら説明する」
「頼んだ」

 エミヤは切嗣を抱えると、片足でビルの屋上を跳ぶ。
 それはバーサーカーとの再会を恐れ、東の方角であった。

56エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:27:19 ID:XYR/rc320



【C-8(東)/ビル屋上/一日目 夕方】

【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]健康、毛細血管断裂(中)、腹部にダメージ(中)、軽い目眩(直に回復)
[令呪]残り二角
[装備]キャリコ、コンテンダー、起源弾
[道具]地図(借り物)
[所持金]豊富、ただし今所持しているのは資材調達に必要な分+α
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取り、恒久的な平和の実現を
0.アーチャー(エミヤシロウ)から気絶中の出来事を聞く。
1.使えそうなNPC、および資材の確保のため街を探索する。
2.昼を回ったら暗示をかけたNPCに連絡を取り、報告を受ける。
3.B-4で起きるであろう戦闘を監視する。
[備考]
※この街のNPCの幾人かは既に洗脳済みであり、特に学園には多くいると判断しています。
※NPCを操り戦闘に参加させた場合、逆にNPCを操った側にペナルティが課せられるのではないかと考えています。
※この聖杯戦争での役割は『休暇中のフリーランスの傭兵』となっています。
※搬入業者3人に暗示をかけ月海原学園に向かわせました。昼食を学園でとりつつ、情報収集を行うでしょう。暗示を受けた3人は遠坂時臣という名を聞くと催眠状態になり質問に正直に答えます。
※今まで得た情報を基に、アサシン(吉良)とランサー(エリザ)について図書館で調べました。しかし真名まではたどり着いていません。
※アーチャー(エミヤシロウ)については候補となる英霊をかなり絞り込みました。その中には無銘(の基になった人)も居ます。
※アーチャー(アーカード)のパラメーターを確認しました。
※アーカードを死徒ではないかと推測しています。そして、そのことにより本人すら気づいていない小さな焦りを感じています。この焦りが今も続いているかどうかは不明です。

【アーチャー(エミヤシロウ)@Fate/Stay night】
[状態]右腕負傷(小)、右肩負傷(小)、左足と脇腹に銃創(小)、魔力消費(中)、右足首消失、腹部に打撲
[装備]実体化した時のための普段着(家主から失敬してきた)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:切嗣の方針に従い、聖杯が汚れていた場合破壊を
0.今はこの場から離れ、切嗣に状況を報告する。
1.出来れば切嗣とエミヤシロウの関係を知られたくない。
[備考]
※岸波白野、ランサー(エリザ)を視認しました。
※エリザについては竜の血が入っているのではないか、と推測しましたが確証はありません。
※『殺意の女王(キラークイーン)』が触れて爆弾化したものを解析すればそうと判別できます。ただしアーチャーが直接触れなければわかりません。
※右腕、左足、脇腹、腹部は軽傷であり、霊体化して魔力供給を受けていれば短時間で完治する程度のものです。
※右足首は消失しており、霊体化して魔力供給を受けても、短時間で完治しません。完治には適切な治療か、多大な魔力、もしくは長時間の休養が必要です。
※キリコを『ロボットに乗る』『何らかの手段で攻撃を無効化する』と認識しました。
※ルリ、美遊についての認識していません。
※黒崎一護は『何らかの手段でエミヤを感知する』『エミヤをどこかへ連れて行こうとしていた』と認識しました。
※白昼堂々戦闘を行いました。アーチャー(エミヤシロウ)が多数のNPCによって目撃されています。また、ビルや橋、車などが一部破壊されました。その情報がどのように流布されるか、ルーラーがペナルティを与えるか否かは、次の書き手に任せます。

[共通備考]
※C-7にある民家を拠点にしました。
※家主であるNPCには、親戚として居候していると暗示をかけています。
※吉良吉影の姿と宝具『殺意の女王(キラークイーン)』の外観のみ確認しました。宝具は触れたものを爆弾にする効果で、恐らくアサシンだろうと推察していますが、吉良がマスターでキラークイーンがサーヴァントだと勘違い。ただし吉良の振る舞いには強い疑念をもっています。
※黒崎一護を『仮面をつけた』『黒刀の斬魄刀を所持する』『死神』と認識しました。
※レンタカーは図書館付近の駐車場に停車してあります。

※B-6の暁美ほむらが仕掛けた罠は使用されました。

57エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:29:21 ID:XYR/rc320
修正案投下終了です。
問題点、指摘事項があれば、お手数ですが指摘願います。

58サイバーゴースト名無しさん:2014/11/27(木) 22:35:04 ID:G.IT8Jpk0
修正乙です
ただ読み返して思ったのですが、固有結界の展開の際に呪文の詠唱は行ったのでしょうか
呪文詠唱の描写が完全に省かれていたことが、今更ながらに気になりました

ちなみに、呪文の細部は違いますが、固有結界の展開にはこれくらい時間が掛かります(ネタバレ注意です)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm275950
あとついでに、これも把握用にどうぞ
ttps://www.youtube.com/watch?v=-1LBozFVHu8&list=PLA7FE440D65A73C92

59サイバーゴースト名無しさん:2014/11/27(木) 22:45:55 ID:G.IT8Jpk0
連投失礼
アーチャーの詠唱については、こっちの方がわかりやすいかと
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm12281911

60サイバーゴースト名無しさん:2014/11/27(木) 23:05:08 ID:/Z9mMDOA0
問題指摘点を並べます。

・エミヤの口調、というよりリアクションが大きすぎます。ダメージにいちいち叫ぶ真似は殆どしないキャラです。

・すでに言われている通りですが、通常のバーサーカーに敵を所定地に追い込んで倒すという綿密な戦略は見込めません。
 「特定のエリアでサーヴァントを殺す」という令呪の内容と、「近場のエリアにいるエミヤを殺す」という一護の感情は直接繋げられる事柄ではないからです。
 どちらかを優先せず両方遂行できるような合理的な思考は望めません。
 ましてエミヤを襲う場合、守護スキルのデメリットで戦意なき者を攻撃できないという二重の制約があるのでなおさら行動が縛られます。
 それすら無視して感情でエミヤに襲い掛かるという選択肢もあるにはあるでしょうが、その場合相当な制約が追加されることになることは認識してください。
 付け加えるに、四肢を狙い手加減するという文も消した方がいいです。

・五次ライダーの鎖短剣を投影するのは問題ないでしょうが、「冬木市の聖杯戦争でライダーが〜」と明言するのは避けた方がいいでしょう。
 生前の聖杯戦争で会ったライダーが同一である保証はないし、第五次に参戦した記憶(記録ならまだ許容範囲)があるのは今までの心情を破壊する真似になりかねません。

61サイバーゴースト名無しさん:2014/11/27(木) 23:12:50 ID:/Z9mMDOA0
続き。主に固有結界関連。

・固有結界の使用には八節の呪文詠唱が必要です。
 ……とはいえ、原作ルート中ではたびたび途中が省略されているので書かれてないこと自体は問題ありません。 
 その場合、「ほむらの陣地に突っ込んで一護の意図を理解した後詠唱を始めた」ことになりますが。

・自分をどこかへ追い込むという意図を理解したからといって、宝具扱いである固有結界を使って閉じ込めるという行為に移る意味が分かりません。
 だいいち自分諸共閉じ込めてはもう逃げられません。負傷した状態で一護との一騎討ちにしかなりません。気絶中のマスターもほったらかしです。
 これだけ悪条件が重なりながらも宝具の使用に踏み切るだけの理由は無い筈です。

>>53中での描写で、
>王者の剣はバーサーカーの身体を容易く切り裂く。だが、切り裂いている間は王者の剣が使えないと言うことでもある。
 無数の剣が周囲にあるエミヤにとってこれは欠点になり得ません。自動で手元に引き寄せることも可能です。

>エミヤはバーサーカーの上空を囲うように、剣を投影する。
・固有結界使用中には剣を投影する必要は皆無です。元々結界内にある剣を外界に取り出すという設定なので。

62 ◆OSPfO9RMfA:2014/11/28(金) 00:06:24 ID:IE5HPMEM0
指摘ありがとうございます。

今回の話はこのままでは通すのが難しく、また修正も難しいので、破棄します。
多くの助言を頂いたのに、誠申し訳ありません。
キャラクターの長期拘束、申し訳ありませんでした。

63 ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:25:13 ID:pMYEkxmw0
話の内容が内容ですので、まずはこちらに仮投下させていただきます。

64角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:25:57 ID:pMYEkxmw0


 世界は広いが
 世間は狭い

 配点(偶然、必然、運命)
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


     01/ 聖杯問答(門前払い)


 バスを乗り継ぎ、新都から深山町へと移動する。
 目指す場所はエリア【D-5】の一角――裁定者たちが拠点とする、もう一つの教会だ。
 そこにいるはずのルーラー達に、東風谷早苗は聖杯の是非を問おうとしていた。


 そんなマスターの隣に座りながら、アーチャーのサーヴァント、アシタカは窓の外を眺めていた。
 その理由は二つ。
 一つは警戒のため。そしてもう一つは、今自分たちが乗っているバスについて考えていたからだ。

 このバスという乗り物は、移動手段としては非常に優秀だ。
 一度に十人以上の人間が乗車でき、移動時の振動も少なく、その速度も速い。そして何より疲れ知らずだ。
 また鉄で構成されたその車体はそれなりに頑丈であり、街中におけるその利便性は騎馬にも勝るだろう。

 だがこのバスには、それ相応の欠点も存在する。
 まず道路上でなければその安定性を発揮できず、さらにその巨体故に小回りが利かない。
 また多少の空腹であっても無理をすれば動ける馬と違い、燃料が尽きればただの鉄の箱になり下がる。
 そして何より、その運用は社会秩序に縛られている。
 発車時間、走行位置、走行速度、停車地点、停車時間。その全てが定められており、原則としてそれを外れることは許されていない。
 つまり、好きな時に、好きなように利用できる乗り物ではないのだ。

 それらの欠点は、戦闘を想定して考えればより顕著になる。
 もし今このタイミングで襲撃を受けてしまえば、自分たちは一瞬で窮地に立たされるだろう。
 なにしろ、このバスの手綱を握っているのは、NPCである運転手だ。襲撃に対する咄嗟の対応など、望むべくもない。
 仮に自分たちが即座にバスを降車しようと思うのなら、窓ガラスを叩き割って飛び出すしかないのだ。

 しかし、その行為にも危険が伴う。
 地面はそれなりに柔らかい草原ではなく、非常に固いアスファルト。加えてバスは高速で移動している。
 物理的ダメージの及ばないサーヴァントならともかく、当たり前の人間であるマスターの場合、大怪我をする危険性がある。
 そして当然、そんな事をすれば注目を集めることに繋がり、他のマスターやサーヴァントに目を付けられる可能性が高まる。

 また、これがバズではなく自家用車であっても、その危険性は変わらない。
 確かにその手綱は自由に扱えるようになり、襲撃には対処しやすくなるだろう。
 だが規律から外れた走行を行なえば、今度は社会秩序自体に目を付けられることになる。
 何しろ道路にはNPCの乗車する車も走っている。走行方向や制限速度を破れば、彼らに迷惑を掛けてしまうのだから。
 これが夜間であれば、NPCの車も減り、多少は無茶な走行もできるだろう。
 だが今度は、車のエンジン音によって自分たちの存在を知らせることに繋がりかねない。
 ……まあもっとも、自身の騎乗スキルには車などの機械は該当しないため、車を運転する事自体がまずないのだが。


 アーチャーのクラスにある身としては、注目を集めるようなことは絶対に避けなければならない事態だ。
 何しろ自分には、一撃の火力というものに欠けている。狙撃による暗殺を狙うのであればともかく、真正面からの戦闘には向いていないのだ。
 ヤックルがいれば他にやり様もあったのだろうが、現在のクラスでは呼び出すこともできない。
 つまり今の自分には、セイバーやランサー、バーサーカーと言った、近接戦闘を得意とするサーヴァントが天敵といえる。
 だからこそ、今も気配感知のスキルによって周囲を警戒しているのだが。

 幸いにして、いくつかサーヴァントらしき気配はあったが、こちらに近づいてくるような気配は感じ取れなかった。
 だが自分はアサシンと違い、気配遮断スキルを持ってない。今の自分と同様、気付いたうえで無視した可能性もある。
 更には、感知範囲外から攻撃できるアーチャーや、気配を隠せるアサシンといったクラスも存在する。
 今の時間帯は利用客が多いため襲撃される可能性は低いが、よほど急ぎでもない限り、今後はバスの利用は控えた方がいいだろう。
 アシタカはそう判断し、マスターである早苗にそう伝えるとともに、一層車外への警戒を強めた。
 ………その際に、

65角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:26:30 ID:pMYEkxmw0

 ―――この街は……いや、この時代は、もののけはおろか、自然の気配さえも希薄なのだな。

 森と共に生きた者としての、そんな感傷を懐きながら。


      †


 ―――それから十数分後。
 バス停から降車した早苗は、教会へと通じる坂道を、考え事をしながら上っていた。

 今後は、バスの利用は控えた方がいい、とアーチャーは言った。
 説明されたその理由と危険性は、早苗にとって思いもよらないものであった。


 幻想郷に来るまでは現代社会に生きていた早苗にとって、バスと言うのはごく日常的なものだった。
 時折テレビや新聞のニュースなどで事故があったというのは聞くが、それは画面や紙面の向こう側。今一つ実感の湧かないものだった。
 だからなのだろう。
 早苗は自分が乗っていたバスが襲われるかもしれないなどとは、全く想定していなかったのだ。

 その感性は、今も変わらない。
 考えてみれば当たり前のこと。テレビや映画で観た事のあるその場景は、だからこそ現実感に乏しい。
 その危険性を説明された現在にあっても、バスに乗ることが危険だと、早苗には実感できていなかった。


 ……だが、同時に思う。
 それこそが、自分とアキトとの違いなのではないか、と。

 テンカ・ワアキトは、己が願いのために他者を殺すことを是としている。
 それは聖杯戦争のルールにおいては、決して間違った行動ではない。
 だが東風谷早苗は、己が思想のもと、他者を殺すことを否とした。
 それはつまり、ある意味において聖杯戦争を否定したに等しい。
 そして日常と非日常で区別するのなら、日常の裏側で行われる聖杯戦争は当然非日常に分類される。
 つまり、聖杯戦争を是としたアキトは非日常の側に、否とした早苗は日常の側に立っていることになるのだ。

 そして立ち位置が違えば、たとえ同じモノを見たとしても、目に見えるカタチは違う。
 ……いや、そもそも、

「……ああ、そうか。私はまだ、“聖杯戦争を知らない”のですね」

 殺し合いを実感できていない早苗には、聖杯戦争そのものが見えていなかったのだ。

 確かに早苗は、箱舟に呼びこまれ、予選を突破し、サーヴァントと契約し、聖杯戦争に関する知識を得た。
 だが、言ってしまえばそれだけだ。
 サーヴァントとはすなわち、聖杯戦争へと参加する“権利”であり、与えられた知識とは言い換えれば、ただのルールブックだ。
 権利と知識。その二つしか得ていない彼女は、まだ聖杯戦争に真には参加していなかったのだ。
 早苗はその事を、ここに至ってようやく理解した。

 ―――ならばどうするべきか。

 早苗は、聖杯戦争が間違いであると証明するためにここに来た。
 否定するだけならば簡単だ。力で己が考えを押し通し、相手の願いを押し潰せばいい。
 だが早苗が望んだのは、“証明する”こと。
 ただ間違っていると言い張るだけでは証明にはならない。それを、相手に認めさせなければならない。
 そのためには――――

「この聖杯戦争について、もっとちゃんと知らないと」
 そう口にして立ち止まる。
 目の前には人影のない広場。その奥に、日に照らされた白亜の建物がある。
 新都にあった廃教会とよく似た造りの神の家は、早苗からすれば異教の神を崇め奉る神殿だ。
 加えて聖杯戦争を否定する彼女にとっては、ここはもはや敵地にも等しい。

 ……ここは地上より遠く。
 天(そら)にはなお遠い、告解の惑い場―――

66角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:27:02 ID:pMYEkxmw0


『………マスター』
 不意に、アーチャーが念話で話しかけてきた。
「っ……」
『どうしたんですか?』
 それに、つい声を出して答えそうになりながらも、どうにか念話で応じる。

 現在アーチャーは実体化している。念話ではなく、肉声で話しかけても問題はないはずだ。
 だというのにわざわざ念話を使ったということは、何か理由があるのだろう。
 そんな早苗の予想に違わず、アーチャーは表面上は穏やかなまま、警戒の声を発してきた。

『周囲に何か、魔力を持った存在の気配がする』
『魔力? それってもしかして、ルーラーですか?』
『判らない。だが感じ取れる気配は複数以上ある。
 ここにいるサーヴァントがルーラーだけならば、気配は一つだけのはずだ。
 だがそうでない以上、この教会は使い魔か、あるいはサーヴァントに監視されていると見ていいだろう』
『そう……ですか』
『どうする、マスター。今ならば気付かれていない可能性もあるが、教会に入れば確実に知られるだろう。
 そしてルーラーと接触したことが知られれば、その者に目を付けられる可能性もある。
 それを避けるために、一度出直すのも一つの手だが……』

 アーチャーの言う“目を付けられる”という意味。それはおそらく、アーチャーの情報を奪われるという事だろう。
 そして情報が奪われれば、アーチャーへの対処が行われてしまうかもしれない。
 要するに、不利になるという事だ。
 ……が、しかし。

「――――」
 覚悟を決めて、教会へと一歩踏み出す。

『構いません。襲われることを恐れていては、幻想郷では信仰を広められませんから。
 それにもしかしたら、その人から接触してくるかもしれないでしょう?
 そうなればむしろ好都合です。上手くすれば、その人から情報が得られるかもしれません』

 教会には、この聖杯戦争を司る裁定者が居るはずだ。
 今必要なのはまだ見ぬ敵への恐れではなく、見知らぬ事を知るための勇気だ。

 そして東風谷早苗の崇め奉る神は二柱。
 一つは洩矢諏訪子。洩矢の国の祟り神を統べし土着神であり、
 一つは八坂神奈子。その洩矢の国を侵略し治めた軍神である。
 異郷の地に踏み入れることを恐れる理由など、どこにもない。
 むしろ一層強く胸を張り、早苗は神の家の扉を開け放った――――。


「――――――――」
 ――――天窓からの日差しが、偶像のない礼拝堂を照らし上げる。
 銀色の髪の少女が、何かに祈りを捧げるように荘厳なパイプオルガンを奏でている。
 幾重にも反響して響き渡る、オルガン(いのり)の音色(うた)。
 一つの宗教画のような情景。
 見る者が見れば、ある種の神聖さすら感じられただろう。

 無心でオルガンを奏でる少女からは、サーヴァント特有の気配は感じられない。
 おそらく、彼女が裁定者の内の一人、カレン・オルテンシアなのだろう。
 法衣を纏った銀髪の少女は、来訪者に気を向ける事もなく演奏を続けている。

「――――――――」
 この隔絶された聖域を侵すように、堂々と教会へ踏み入る。
「――――――――」
 無心の祈りを捧げていた少女が、それに応じるように演奏を止め、早苗へと向き直る

「……………………」
 一層気を引き締めて、早苗はルーラーへと近づく。
 だが早苗のその歩みは、あと一歩という所でカレンの言葉に止められた。

「ようこそおいで下さいました、アーチャーとそのマスター。
 何の持て成しもできませんが、どうぞ寛ぎください」

「っ…………!?」
 今カレンは、自分の事をアーチャーとそのマスターと呼んだ。
 だがそれはおかしい。
 確かにアーチャーは実体化したまま、自分の後ろに付き従っていた。
 だが彼は現在そのクラスを象徴する弓を持っておらず、服装も現代のものだ。
 サーヴァントであることはともかく、外見でクラス名までは判断できないはずだ。
 だというのにカレンは、彼をアーチャーであると断言した。
 ……まさか、見られていた? 気配感知スキルを持つアーチャーの目を掻い潜って? 一体どうやって……!

「落ち着け、マスター。相手は裁定者だ。こちらのクラスを判別する権限くらい、持っていてもおかしくはない」
「っ……、そうですね。ありがとうございます、アーチャー」

 大きく深呼吸をして、気を落ち着かせる。
 アーチャーの言う通り、相手は裁定者。ただの参加者に過ぎない自分より、上位の立場にある存在だ。
 対等に渡り合うためには、気を引き締めてかからなければ。

67角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:27:30 ID:pMYEkxmw0

「カレンさん。裁定者である貴女に、訊きたいことがあります」
「なんでしょう」
「聖杯戦争について、教えてください」
「それは、予選を突破した時点で既に“知っている”はずでは?」
 怪訝そうに眉を顰めるカレンの瞳を、まっすぐに睨み付ける。
 気負ったら負ける。聞きたいことも聞けずに、この話し合いは終わるのだと、早苗は直感しているのだ。

 確かに聖杯戦争のルールは理解している。
 自分以外のマスターとサーヴァントを倒し、最後の一組になった時、一度だけ月の聖杯を使用できるという事は。
 だが、自分が知りたいのはそんな事ではない。

「私が知りたいのはルールではありません、理由です。
 どうして他のマスターを殺さなければ、聖杯を得られないのですか?」
「……………………」
「聖杯が一度しか使えないから、他のマスターと競い合う。これはわかります。
 ですがそれだけが理由なら、負けたマスターは方舟から追い出されるというルールでも問題はないはずです」

 だが現実は違う。
 生き残れるのは一組だけ。他のマスターを倒し、最後まで生き残ったマスターのみ。
 サーヴァントを失い敗れたマスターは、ムーンセルに削除されそのまま死に至る。
 それがこの聖杯戦争のルールだ。
 ……ならば、そこには何か理由がある筈だ。

「教えてください。
 敗北したマスターが死ななければならない理由。
 私のような、明確な望みや参加する意思のなかった人が招かれた理由。
 聖杯を望んでいない私たちが、殺し合わなければいけない理由は何ですか?」
「――――――――」

 僅かな緊張が奔る。
 それも当然。早苗の問いは、ある意味で聖杯戦争の根幹に関わることなのだから。
 だがそれを受けたカレンは、つまらなさそうな顔をした後、

「申し訳ありません。
 その問いに、私は答えることは出来ません。何故なら、その問いの答えを、私も知らないからです」
 そう、興味がなさ気に口にした。

「裁定者なのに……ですか?」
「ええ。……いえ、だからこそ、というべきでしょうか。
 確かに私たちは、聖杯戦争聖杯戦争を恙なく運営するため、裁定者の任を与えられました。
 しかし、言ってしまえばその為だけの存在。それ以外の、聖杯戦争の運営に必要のない知識は与えられていないのです」

 早苗の疑問。
 聖杯戦争が起きた理由。聖杯戦争の仕組み。聖杯の正体。
 それらは聖杯戦争を運営させる分には、知る意味のないことだ。
 いやむしろ、絶対的な権限を持つ裁定者が聖杯に疑念を懐いてしまえば、聖杯戦争そのものが破綻しかねない。
 故に、聖杯に関する知識という意味ではむしろ、他のマスターやサーヴァントよりも知らない可能性があるのだ。

 カレンはそう言外に語る。
 つまり早苗が聖杯戦争について知るには、他のマスターと接触するしかないのだ。

「そうですか……わかりました」
 最も有力だった人物への当てが外れた事に、早苗は落胆の表情を浮かべる。
 だが次の瞬間には、先程よりも強い意思を籠めた視線とともに、カレンへと更なる問いを投げかけた。

「ルーラーさん。あなたはこの聖杯戦争が、正しいものだと思いますか?」
「…………」
「私は、間違っていると思います。こんな殺し合いをさせる聖杯は、みんなが考えているようなものじゃないと思います」
「…………それは、どういう意味でしょうか」
「聖杯がどのような方法で願いを叶えるのか、私は知りません。
 だから、聖杯が願いを叶える為には、代償となる贄が必要ということもあるのかもしれません。
 けどそれなら、マスターとなる人物には、参加の是非を問うのが道理ではないですか?
 こんな、マスターの意思を無視して無理矢理に参加させるようなやり方は、絶対におかしいと思います」
「――――――――」
「これで仮に、聖杯に生贄が必要ないのだとすれば、なおさらです。
 もしそうなら、私は聖杯を認めるわけにはいきません」

 まっすぐにカレンを見据えて、早苗はそう口にする。
 元より彼女は、それを確かめるためにここに来た。先ほどの質問は、そのための前置きに過ぎない。
 聖杯は正しいのか間違っているのか。
 早聖杯戦争を司る少女はどう思っているのかと、早苗はその答えを求め、

68角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:28:09 ID:pMYEkxmw0

「では訊きますが、もしこの聖杯戦争が間違いだとして、その場合貴女はどうするのですか?」
「へ?」
 カレンのその問いに、あっさりと意気込みを挫かれた。

「たとえ聖杯が何かを間違えていようと、聖杯戦争はすでに始まっています。
 そしてマスターである以上、貴女は他のマスターと戦い、倒すしかない。でなければ死ぬだけです。
 あるいは、もし仮に聖杯戦争を止めようというのであれば、場合によってはルールに反する可能性があるでしょう。
 ――つまりそれは、裁定者(わたしたち)と対立することにも繋がります。その覚悟が、貴女にはありますか?」
「そ、それは……」

 たとえ聖杯が間違えていると証明したところで、何の解決にもならないとカレンは告げる。
 実際、その通りだ。
 早苗の目的は、聖杯が間違いであると証明し、テンカワ・アキトを止める事だ。
 だが、彼一人を止めたところで、聖杯戦争は止まらない。生き残れるのが一人だけである以上、結局は殺し合うしかないのだ。
 もしそれを避けたいのであれば、聖杯戦争そのものをどうにかするしかない。
 それも、間違いを承知の上で聖杯を望むマスターと、聖杯戦争を運営する裁定者とを相手にした上で、だ。

「聖杯が正しいのか、それとも間違っているのか、私にはわかりません。
 ですが、裁定者の務めを任された以上、私はその役割に殉じるだけです」
「ぅ…………」
 ルーラーは憮然とした表情で、早苗の問いを切って捨てる。
 己が行為の無意味さを突き付けられた早苗は、その冷めた声につい視線を逸らしてしまう。

「話が終わったのであれば、お帰りを。それこそ、裁定者としての役割を果たさなければなりませんので」
 今この場で話すことはもう何もないと、言外に告げる。

「……はい」
 それを受けた早苗は意気消沈し、肩を落としながら教会の外へと足を向ける。
 目的を見失った彼女には、カレンの声に抗うだけの気力は残っていなかったのだ。
 そこへ不意に、

「聖杯について知りたければ、岸波白野というマスターに尋ねるといいでしょう」

 そんな言葉が、投げかけられた。

「え?」
「月の聖杯についてなら、おそらく彼が一番よく知っています。聖杯について知りたいのであれば、彼に訊いてみなさい」
 カレンはそう口にすると、聖堂の奥へと去っていった。

 助けてくれた……のだろうか。
 理由はよくわからないが、彼女のおかげで、当面の目標は出来た。
「…………ありがとうございました」
 カレンの去った方へと向き直りそう口にすると、早苗は今度こそ教会の外へと向けて歩き出す。


      †


「すみませんアーチャー。考えが足りませんでした」
 教会の外へと出た早苗は、アーチャーへとそう謝罪した。
「謝る必要はない。マスターは、己の心に従っただけであろう」
 だがアーチャーは、そう首を振って否定した。

「ですけど」
「確かに聖杯の間違いを証明した後の事は考える必要がある。
 だが先の事ばかりを考えていては、今成すべき事も成せなくなろう。
 大事なのは、己が本当に成したいことは何か、それを成すために必要なことは何か、それを成した結果どうなるのかを考え、受け入れる事だ」
「自分がしたいこと、するために必要なこと、した時の結果を考え、受け入れる……」
「そうだ。その覚悟さえあれば、何も迷う必要はない。
 ではもう一度問おう、マスター。この聖杯戦争において、そなたは何を成したい」
「私の……したいこと………」
 アーチャーに促され、早苗は改めて自分がどうしたいのかを考える。

 そもそも、自分が教会に来たのは何のためか。
 ――聖杯について知るため。
 では、なぜ聖杯について知ろうと思ったのか。
 ――聖杯戦争が間違いであることを証明するため。
 何のために、それを証明しようと思ったのか。
 ――テンカワ・アキトを、止めるため。
 どうして彼を止めるのか。
 ――彼に、人殺しをして欲しくないから。

69角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:28:33 ID:pMYEkxmw0

 そう。それが答えだ。
 テンカワ・アキトに、人殺しをして欲しくない。だから聖杯が間違いであると証明しようと思った。
 ……だが、それだけでは足りなかった。
 聖杯戦争は始まっている。生き残れるのは一組だけ。生き残るには、他者を殺すしかない。
 たとえ聖杯が間違いであると証明したところで、このままでは人殺しは避けられない。

 ―――ならばどうすればいいか。
 決まっている。聖杯戦争を止めるしかない。
 だがそれは、聖杯戦争を運営するルーラーと敵対する行為だ。
 いや、ルーラーだけではない。場合によっては、聖杯を望むマスター全てを敵に回すことになるだろう。

「っ…………」
 まだ見ぬ未知の敵に、思わず唾を呑む。
 サーヴァントがどのような存在かは、アーチャーを見て知っている。
 その彼と同等か、あるいはそれ以上の存在が、何人も、あるいは何十人も襲い掛かってくる。
 そんな想像をしてしまったのだ。
 …………だが。

「……私はそれでも、この聖杯戦争が間違いであると、証明したいです」
 目指すものはすでに定まっている。
 令呪まで使って宣言したのだ。いまさら後戻りはできない。
 ……ならば、その結果他のマスターと戦うことになったとしても、受け入れよう。
 それが、覚悟を決めるという事なのだから。

「そのために、岸波白野という人を探します。……手伝ってくれますか、アーチャー?」
「無論だ。私の持てる全てを以て、そなたの力になって見せよう」
「…………、ありがとうございます」
 アーチャーのその言葉に、背中を支えられたような気持ちになる。
 彼が支えてくれている限り、きっと私は、途中で挫けることはないだろうと、そんな実感が湧いてくる。
 だからこの先、誰かと戦うことになったとしても、今の私なら、きっと大丈夫だと思えた。

「あ、でもその前に、白野さんの事をアキトさんに言っておいた方がいいのかな……?」

 岸波白野の事は早く見つけたい。
 けどどこにいるかわからない以上、探すのに時間はかかるだろう。
 それまでの間に、アキトさんと岸波白野が戦ってしまうかもしれない。そのせいで二人の内どちらかでも死んでしまえば本末転倒だ。
 ならそうならないように、アキトさんに岸波白野の事を話しておくべきだろうか。

「……それにしても、白野さんの名前、どこかで聞いた覚えがあるような…………気のせいかな?」
 そこはかとない既視感(デジャヴ)。
 手掛かりは自分の中にある気がするのに、それはまるで、深い霧に隠れているかのよう。

 早苗が聖杯の手掛かりに辿り着くには、もうしばらく時間が掛かりそうだった。


【D-5/教会周辺/一日目 午後】

【東風谷早苗@東方Project】
[状態]:健康
[令呪]:残り2画
[装備]:なし
[道具]:今日一日の食事、保存食、飲み物、着替えいくつか
[所持金]:一人暮らしには十分な仕送り
[思考・状況]
基本行動方針:誰も殺したくはない。誰にも殺し合いをさせたくない。
0. 白野さんの事を、先にアキトさんに伝えておいた方がいいでしょうか……?
1. 岸波白野を探し、聖杯について聞く。
2. 少女(れんげ)が心配。
3. 聖杯が誤りであると証明し、アキトを説得する。
4. そのために、聖杯戦争について正しく知る。
[備考]
※月海原学園の生徒ですが学校へ行くつもりはありません。
※アシタカからアーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しましたが、あくまで外観的情報です。名前は把握していません。
※カレンから岸波白野の名前を聞きました。その名前に聞き覚えはありますが、よく思い出せません。
※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。
※アキト、アンデルセン陣営と同盟を組みました。詳しい内容は後続にお任せします。なお、彼らのスタンスについて、詳しくは知りません。
※バーサーカー(ガッツ)のパラメーターを確認済み。
※アキトの根城、B-9の天河食堂を知りました。

【アーチャー(アシタカ)@もののけ姫】
[状態]:健康
[令呪]
1. 『聖杯戦争が誤りであると証明できなかった場合、私を殺してください』
[装備]:現代風の服
[道具]:現代風の着替え
[思考・状況]
基本行動方針:早苗に従い、早苗を守る
1. 早苗を護る。
2. 使い魔などの監視者を警戒する。
[備考]
※アーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しました。
※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。
※教会の周辺に、複数の魔力を持つモノの気配を感知しました。

70角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:28:56 ID:pMYEkxmw0


     02/ 気付かぬ繋がり


「何だったんだ、結局あいつは」

 雄叫びとともにいずこかへと走り去っていった真玉橋孝一を見送った後、本多・正純はそう独り言ちた。
 そして廊下を走るな、と注意し損ねた事にいまさらばがら思い至り、はあ、とため息を吐く。

「どうやら逃げられてしまったようだな」
「一成」

 掛けられた声に振り替えれば、そこには生徒会長の柳洞一成がいた。
 彼は悩ましげに眉を顰めながら、先程の正純と同じように、はあ、とため息を吐いた。

「こちらもケイネス先生にご助力を願おうとしたのだが、今は忙しいと素気無く断られてしまった」
「そうか。なら、真玉橋孝一の事は自分たちでどうにかするしかない、という訳か」
「そういう事になるな。
 ……まったく、岸波が休んでいることもあって、こちらも手が足りていないというのに。猫の手も借りたいとはこの事だ」
「岸波?」
 一成が口にした名前に、正純は首を傾げる。

 フルネームは岸波白野。クラスはたしか、2‐A。新聞部に所属していたはずだ。
 一成の友人で、生徒会役員ではないが、何かと手を貸してくれる生徒だったか。
 その関係で、自分ともいくらか交流があったのを覚えている。

「岸波白野が休んでいるのか?」
「うむ。しかも聞いて驚くなかれ、何と無断欠勤だ。
 遅刻ならばともかく、普段真面目なあいつがそのようなことをするとは思えんのだが……休み時間に家に連絡してみても、応答がなかったのだ。
 最近は何かと物騒だと聞く。話によれば、新都では暴動事件まで起きたそうではないか。岸波は新都に一人暮らしだからな。心配でならん」

 その暴動の話は、正純もライダーから聞き及んでいた。
 確かに暴動に巻き込まれれば、学校どころではなくなるだろう。
 もっとも、岸波白野が登校中だったのなら制服を着用していたはずだ。
 そして制服を着ていたのであれば、学校へと連絡をするはずだろう。
 それがなかった、という点が若干気にかかる。

「それに最近は、連絡の有無を問わず、欠席する生徒が増えてきている。
 岸波の他にも、二年E組の狭間偉出夫や一年の間桐桜。俺にとって仏門における好敵手とも言える、東風谷早苗まで無断欠席しているらしい。
 まあ間桐さんに関しては、ここ数日風邪気味のようだったと聞き及んでいる。単に病欠の可能性もあるがな」
「む。その者たちは一成の知り合いなのか?」
「いや、直接的な面識はあまりない。
 だが狭間偉出夫は悪い意味で有名だからな。その動向は嫌でも耳に入る。
 彼の事はどうにかしたいと思ってはいるのだが、如何せん会長業務に追われて、何の手も打てていないのが現状だ。
 間桐さんの方は、弓道部部員であると同時に保健委員でもあってな。それぞれの部長と委員長が話し合っていたのを小耳に挿んだのだ。
 なにしろ、間桐さんは人見知りこそするが責任感もある人物らしく、次期部長または委員長にと期待されているようだからな。何かと物騒な昨今、彼女達も心配なのだろう」
「なるほど」
 一成の言葉に、正純は納得して頷く。

 たとえ聖杯戦争を知らずとも、街の雰囲気の変化はNPCたちも感じ取っているのだろう。
 加えて最近は聖杯戦争に関与すると思われる事件も報道され始めている。そこでいきなり無断欠席ともなれば、心配にもなるだろう。

 しかも一成はまだ知らないようだが、無断欠席をした生徒は初等部にもいる。
 名前は遠坂凛。住んでいる場所は、たしか【B-4】地区だったはずだ。
 そう。先ほどの通達で、ルーラーの警告があった地域だ。
 偶然と言えばそれまでだが、あまりにもピンポイント過ぎる。
 とはいえ、何がどこまで聖杯戦争に関与しているかなど、考えたところでキリがない。
 授業が終わるのは午後三時半。あと三時間近くも後だ。
 ここはやはり、次の休憩時間にでも、彼女の家に一度連絡を入れてみるべきだろう。

「まったく、寺の用事さえなければ、放課後にでも岸波の家を直接訪ねたものを」
「寺の用事?」
「うむ。我が命蓮寺には今、住職である聖白蓮殿の客人が訪ねておってな。その持成しをせねばならんのだ」
「そっか。それは大変だな。
 ……そうだ、一成。岸波白野の家には私が替わりに訪ねようか?」
「む。それは助かるが、いいのか?」
「ああ。実は放課後、シャア・アズナブルの後援会に出る予定でな。そのついでで良ければの話だが」

71角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:30:06 ID:pMYEkxmw0

 正純のその提案は、ちょっとした思い付きであった。
 後援会が行われるのは、【C-6】にある冬木ハイアットホテルだ。そこから新都まではそう遠くない。
 爆発事故や暴動の起きた場所も気になるし、ついでに現場を調査するのも悪い案ではないだろう。
 無論、他のサーヴァントに発見されないよう、様子見程度に留めた方が無難だろうが。

「……そう言えば、本多は政治家志望であったな。
 すまんが頼む。この礼はいずれ必ず返そう。
 岸波はB-8地区の住宅街にあるアパートに住んでいる。詳しい住所は―――」

 そうして告げられた住所を、正純はメモに書き留める。
 住所の位置取りからして、岸波白野はバス通勤なのだろう。
 加えて幸いと言うべきか、その場所は爆発事故の現場からほど近い。ふらりと立ち寄る分にはそう怪しまれないと思われる。

「ではな、本多。岸波の無事を確認できたら、くれぐれもよろしく言ってやれ」
「Jud. 一成は安心して寺の子の務めを果たすといい」

 正純は一成へとそう返事をし、教室へ戻ろうと踵を返し、ふと先ほどの会話に違和感を覚えた。
 その違和感の正体は何かと思い、一成の方へと振り返る。

「まったく……真玉橋の事は早々にどうにかせねばな。
 もし何かの拍子で聖殿と遭遇した時に、あのような調子でセクハラされてはたまらんわ」
 喝。と締めくくりながら、一成は早足で自分の教室へと向かっている。

 ――――そう。違和感を覚えたのは、その聖という人物に関してだ。
 たしか一成はこう言っていた。『命蓮寺には今、聖白蓮の客人が訪ねている』と。
 このタイミングで訪ねてきたという客人。それはサーヴァントの存在を連想させるには充分過ぎる符合だ。
 故に、その客人の事をより詳しく聞こうと一歩踏み出し、

「―――む、いかん。午後の授業が始まってしまう」
 スピーカーから鳴り出したチャイムに、仕方ない、と正純は再び自分の教室へと踵を返した。

 聖白蓮の客人の事は気になるが、どうせ今日は予定が詰まっている。
 今はその人物の存在を知れただけでも良しとして、詳しい事は後日改めて訊くとしよう。


      †


 そうして、午後一度目の休憩時間となった現在。正純は遠坂邸へと電話をかけていた。
 休み時間は十分だけ。他にもすることがあるので、話の内容は遠坂凛の安否を確認する程度に留めておこう。
 そう考えながら待つこと数十秒。

『――はい、もしもし。遠坂です』
 そんな言葉とともに、聞き覚えのある少女の声が応答した。
「もしもし。私、本多・正純と申します」
『へ? 正純さん……!? えっと、いきなりどうしたんですか?』
「いやなに。君が学校を無断欠席したと初等部の先生から聞いてな。
 それに最近は何かと物騒だろ。それで少し心配になったのだよ」
『は、はあ。それは、ご心配をおかけしました』
 正純が要件を言えば、遠坂凛は戸惑ったように返してきた。
 ただ、その声がどこか申し訳なさげに聞こえたのは気のせいだろうか。

「なに。無事であるのならそれでいい。
 ただ、君が無断欠席をした理由を教えてもらってもいいだろうか」
『ええと、その……学校を休んだのは、風邪を引いたからで、連絡は、ついうっかり忘れちゃったんです』
「……ふむ。そうか、了解した。
 なら話はここまでにしておこう。病人に長話をさせるのもなんだしな。
 ではな。しっかり休んで、風邪を治してくれたまえ」
『はい、ありがとうございます。本多さんもお体には気を付けてくださいね』

 そう労い合うと同時に電話を切る。
 遠坂凛の様子にはどこか違和感があったが、さすがにあんな子供が聖杯戦争に絡んでいるとは考え辛い。おそらく、子供特有の仮病か何かだろう。
 そんなところまで再現する方舟には感心するが、彼女の無事を確認できたのなら、今はそれで十分だろう。
 ……それよりは、夕方からのシャア候補との交渉に備えなければ。
 その交渉如何によって、自分たちの聖杯戦争の行方が替わってくるのだから。

 正純はそう判断して、自身の教室へと戻っていった。

72角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:30:32 ID:pMYEkxmw0


【C-3/月海原学園/一日目 午後】

【本多・正純@境界線上のホライゾン】
[状態]:まだ空腹
[令呪]:残り三画
[装備]:学生服(月見原学園)、ツキノワ
[道具]:学生鞄、各種学業用品
[所持金]:さらに極貧
[思考・状況]
基本行動方針:他参加者と交渉することで聖杯戦争を解釈し、聖杯とも交渉し、場合によっては聖杯と戦争し、失われようとする命を救う。
0. 遠坂凛は……おそらく仮病だろう。
1. シャア候補との交渉に備えて、彼の過去の演説に当たるなどして準備する。
2. マスターを捜索し、交渉を行う。その為の情報収集も同時に行う。
3. シャア候補との交渉後、余裕があれば岸波白野の自宅(B-8の住宅街)に向かう。
4. 聖杯戦争についての情報を集める。
5. 可能ならば、魔力不足を解決する方法も探したい。
[備考]
※少佐から送られてきた資料データである程度の目立つ事件は把握しています。
※武蔵住民かつ戦争に関わるものとして、少女(雷)に朧気ながら武蔵(戦艦及び統括する自動人形)に近いものを感じ取っています。
※アーカードがこの『方舟』内に居る可能性が極めて高いと知りました。
※孝一を気になるところのある武蔵寄りのノリの人間と捉えましたがマスターとは断定できていません。
※遠坂凛の言動に違和感を覚えましたが、仮病だろうと判断しました。

73角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:31:19 ID:pMYEkxmw0


     03/ ある記憶/矛盾聖杯


 ――――――――剣戟の音が聞こえる。
 青い海の底/眩い月明かりの下、彼らは戦っていた。

 疾しる青い躰。応じる赤色の人影。
 赤い閃光が幾度も奔り、その度に火花が飛び散る。
 二つの人影は縦横無尽に戦場を駆け回り、幾度も武器を重ね合う。


 その光景は、まるでピントが合っていないかのようにぼやけていた。
 戦っているのが、サーヴァントだということはわかる。その背後に、マスターが控えているのも見える。
 だが判るのはそれだけだ。
 周囲の詳細を知ろうと目を凝らしても、どこかが致命的にズレていてどうにもはっきりしなかった。

 そんな光景の中で、比較的鮮明に見えるものは二つだけあった。
 私のサーヴァントである青いランサーと、わたしが成長したような姿の“私”だけだ。
 とは言っても、やはりその姿も、輪郭がどこかぼやけていたのだけど。

 それに比べて、ランサーと対峙しているサーヴァントは、特に輪郭のブレが激しかった。
 長柄にも二刀にも見える武器を持っていて、体つきは痩躯にも巨躯にも見えた。色調が赤色ということだけが一貫している。

 一方“私”と対峙しているもう一人のマスターは、なぜか薄く透けて見えた。
 目を凝らしても輪郭すらよく見えず、小柄な体つきということだけがどうにかわかった。少なくとも“彼”ではないらしい。


 …………そうか。
 これは“彼”の記憶だ。わたしはまた、“彼”の断片に触れているのだ。
 “彼”は言っていた。月の聖杯戦争で、わたしたちと出会っていたと。
 だとすればこの記憶は、“彼”が出会った“私”と、そのサーヴァントだったランサーが戦っている姿なのだろう。

 ……けれどこの記憶には、なぜか奇妙な違和感を覚えた。
 その違和感の正体が何なのかを確かめようと、目の前の光景をよく見据え、気付く。

 ……ああ、そうか。
 違和感の正体は、ランサーに対する“私”の立ち位置だ。
 “私”はある場面ではランサーを見守るように彼の背後にいたのに、
 違う場面ではランサーと対峙するように彼と向かい合っていたのだ。
 まるで二つの違う映像を同時に流して、無理矢理ピントを合わせたかのような矛盾。
 だからこの記憶は、前の時のようなノイズではなく、ピンボケした状態になっているのだろう。
 ……だとすれば、“私”の立ち位置の違いには、一体どんな意味があるのだろう――――。


 不意に剣戟が止み、間隙が生じる。
 ランサーが槍を構え、力を籠め始める。
 他人の記憶越しでも感じ取れる、大気が凍り付くような、魔力の胎動。
 その様子だけは共通していたのか、ランサーの姿が、より鮮明になる。
 同時にわたしは、同じ存在でありながらも細部が異なる、ランサーの二つの姿を認識し――――



 ――――聞きなれない電子音に、記憶の終わりを告げられた。

 “私”の立ち位置の違いと、ランサーの二つの姿の意味。
 その答えを見つける間もなく、“彼”の記憶が遠ざかっていく。

 あっさりと意識が覚醒したのは、眠りが浅かったせいだろう。
 だとすれば、もっと深い眠りにつけば、この疑問の答えがわかるのだろうか……。

 そんな風に思いながら、私はゆっくりと、戦いの待つ現実に目を覚ました――――。

74角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:31:44 ID:pMYEkxmw0


      †


 ―――あれから少し時間が経ったが、ルーラーたちからの連絡はまだ来ていなかった。
 何か事情があるのだろうが、さすがに少し気にかかる。
 だがランサーが言ったように、いつまでも待ち続けることは出来ない。
 なるべく早めに連絡が来るといいのだが……。

 一方の凜は今、魔術回路を励起させた状態で、ベッドで仮眠を取っている。
 ランサー曰く、起きているよりは寝ている時の方が、魔力の回復量が上昇するらしい。
 とは言っても、気休め程度でしかないらしいのだが、まぁしないよりはましだろう。

 ……ちなみに、魔力の貯蓄量という意味では、凜のそれはすでに岸波白野の総量を上回っている。
 まだ半分程度しか回復していないらしいのにそうなのだから、彼女の才能には本当に驚かされる。
 もっとも、ランサーの分も考慮すれば、完全な回復にはまだまだ時間が掛かりそうではあるのだが。

 それはそうと、作戦決行の予定時刻まで、まだしばらく時間がある。
 凛たちを置いて外へ出るわけにもいかない以上、出来ることは限られている。
 自分は――――

   1.少しでも休憩を取ろう。
   2.キャスターへの対策について考えよう。
  >3.聖杯戦争について考えよう。

 キャスターに対する作戦は、やはり凛たちと一緒に考えるべきだ。
 ここは丁度いい機会だから、この聖杯戦争について考えよう。



 ―――“月を望む聖杯戦争”。
 そう銘打たれたこの戦いは、その名の通り、月――ムーンセルへと至るための生存競争だ。
 何かしらの望みを持った人物が“ゴフェルの木片”を手にした時、“方舟(アーク・セル)”はその人物を招き入れ、サーヴァントを与えて殺し合わせる。
 そうして最後の一組となった時、彼/彼女等は月へと至り、聖杯を一度だけ使用できるという。

 ……月の聖杯(ムーンセル・オートマトン)。
 月の内部にある巨大な観測機械。全地球の記録にして設計図。神の遺した自動書記装置。
 過去、現在、未来を問わず、無限ともいえる“可能性(if)”のシミュレートを演算し続ける、七天の聖杯(セブンスヘブン・アートグラフ)―――。

 神の頭脳とも言うべきそれは、確かにあらゆる願いを叶えられるだろう。
 その代償と考えれば、確かに27人ものマスターを犠牲にするのも――感情的な面は別として――理解できる話だろう。
 ……だがそれは、この聖杯戦争に、マスター全員が納得した上で参加していた場合の話だ。

 ルーラー達にも話したように、“方舟”は願いを持つ人物を、半ば無差別に招き入れている可能性がある。
 それはつまり、聖杯に頼らずとも、あるいは、誰かを犠牲にせずとも叶えられたかもしれない願いに対し、他者の犠牲を強いて聖杯に願わせることを強いている、と捉えることが出来る。
 もし勝ち残ったマスターの願いがそういったものであった場合、それは果たして、失われたものに対する正当な報酬と言えるのだろうか。

 覚悟の伴わない喪失。欠落に見合わない報酬。
 それは心に生じた隙間を、より克明に浮き彫りにするだけだ。
 ましてや失われたものが掛け替えのないモノだった場合、その欠損は、いかなる報酬を以てしても埋め難い。
 あるいは、もし仮にその欠落をなかったことにするとしても、聖杯を使用できるのは一度だけ。
 勝者には聖杯戦争を戦い続けた理由(ほうしゅう)は失われ、他者を殺したという罪科だけが残されることになる。

 そしてその喪失は、箱舟に招かれなかった人たちにも当て嵌まる。
 唐突な家族や友人の消失。交通事故のような、理不尽な死。そして仮に彼/彼女が帰ってきても、その人は罪を背負っている。
 たとえ本人の意思でなかったとしても、そんな状態で果たして、元の関係のままでいられるだろうか。
 この聖杯戦争はすでに、そういった歪みを生み出してしまっている。
 それでどうして、この聖杯戦争が正しいと言えるのか。
 それとも、そう言うに足る理由が、この聖杯戦争にはあるのだろうか。


 …………それに実のところ、もう一つ気になっていることがある。
 この聖杯戦争の報酬である、聖杯(ムーンセル)そのものについてだ。

 ムーンセルは、手に入れた者の願い通りに未来を変革させる神の眼だ。
 だがしかし、その聖杯としての機能は既にないはずだ。
 なぜならムーンセルは、岸波白野の欲望に沿って地上との繋がりを断ち、その在り方を変貌させたからだ。

75角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:32:22 ID:pMYEkxmw0

 そう。
 岸波白野という、月の聖杯戦争の勝者が存在した事実がある限り、現在のムーンセルは聖杯にはなり得ない。
 ……だというに、ムーンセルの使用権をめぐる聖杯戦争が、こうして今、箱舟で行われている。
 これは一体どういう事なのか。

 ムーンセルが繋がりを断ったのは、あくまで地上とだけだったのか。
    ――――それならば、地上から招かれたマスターの願いは叶わない。

 それともこの聖杯戦争で至る月は、未だ地上と繋がっている、平行世界(べつ)のムーンセルなのか。
    ――――だとすれば、岸波白野(じぶん)がここにいるはずがない。

 あるいはムーンセルにとって、月の聖杯戦争と方舟の聖杯戦争、それによって叶えられた願いは、無関係な物として扱われているのか。
    ――――もしそうなら、岸波白野の伝えた(インプットした)願いは、完全に無意味なものとなってしまう。

 故に、ムーンセルにはもはや、聖杯戦争が起きる理由がない。
 岸波白野を基準とした予測では、この戦いは聖杯戦争として破綻してしまう。

 ……ではもし、ムーンセルとは関係のないところに理由があるとすれば、どうだろう。
 そう。今回の聖杯戦争の舞台、“方舟(アーク・セル)”が原因だとすれば、それは一体どんな…………。

 …………。
 ……………………。
 …………………………………………。

 ……ダメだ、情報が足りない。
 ムーンセルの事は知っていても、アークセルの事を知らなさ過ぎる。
 現在把握している情報では、手掛かりの予想すら付けられない。

 となると、アークセルについて調べる必要があるわけだが……
 それに詳しそうな人物といえば、やはりルーラーたちが思い浮かぶ。
 図書館などの施設で調べられないこともないだろうが、彼女たちに直接聞いた方が確実だろう。
 彼女たちから連絡が来た時にでも、ついでに訊いてみるとしよう。

 そんな風に考えていると、携帯端末から、聞きなれた電子音が響いてきた。

「ん、んん……。今の、何の音?」
 その音に反応してか、仮眠を取っていた凛が目を覚ました。
 そんな、どこか寝ぼけ眼の彼女に、端末の着信音だと答えると、凛はすぐに意識を覚醒させた。
 そしてもう気を引き締めている凛に感心しながらも、端末を取出して通知内容を確認する。


 ::遠坂凛の要請に対し返答します。
   応答が可能であれば、返信してください。
                    [REPLY]


 端末の画面には、そう文面が表示されていた。
 ルーラーたちの答えがようやく決まった、という事だろう。

「やっと返事が来たか。ったく、何をチンタラやってたのかね。
 ……だがまあ、これでようやく始まるってわけだ」
 回復のために霊体化していたランサーが実体化し、気負った様子もなくそう呟く。
 かと言って気が緩んでいる訳ではないらしく、その眼には獰猛な野生が垣間見えた。
 彼の心はすでに、キャスターとの戦いの中にあるのだろう。

「なら、はやく返信しちゃいましょう。
 あっちの行動に合わせて、私たちも準備する必要があるかもしれないし」
 それは凜も同じなのか、待ってましたと言わんばかりに声を上げる。
 だがランサーと違い、すこし緊張しているようにも見える。
 どこか強気な口調は、それを誤魔化すためのものなのだろう。

 返信を後回しにする理由はない。
 凜の言葉にうなずき、画面内の返信(REPLY)ボタンを押す。
 ……その直前。不意に、端末のものとは異なる電子(コール)音が響いてきた。

「む。一体誰よ、こんな時に」
 その音を聞いた凛が、少し苛立たしげに顔を顰める。
 どうやら、この家の電話機だったらしい。

「……はあ、しかたない。どっちも後回しにはできないし。
 ルーラーたちの返答は白野が聞いておいて。わたしは電話の方に対応するから」

 凜はそう言うと、部屋の外へと出て行った。
 それを見届けてから、改めて画面内の返信ボタンを押す。
 すると数回電子音が鳴り、聞き覚えのある少女の声が返ってき来た。カレンだ。

76角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:32:55 ID:pMYEkxmw0

『私です。遠坂凛の要請に対してですが、私が同行するという形で受けることになりました。つきましては、待ち合わせの時刻を教えてください』

 端末から響く事務的なカレンの声に、16時から行動を開始し、17時にキャスターの拠点を攻める予定だ、と返答する。

『了解しました。ではその時刻にキャスターの拠点で合流する、という事でよろしいですね』

 ああ、と端末越しに頷く。
 だがカレンは拠点の場所は知っているのだろうか。

『問題ありません。こちらも大凡の位置は把握していますし、貴方のサーヴァントは目立ちますから』

 確かに。
 元より相当な美人であり、さらに竜の魔人と化しているエリザベートはたいへん目立つ。
 何か急いでいるとか、何かに気を取られているといった事でもない限り、そうそう見落とすことはないだろう。

『ではそのように。緊急の予定が入れば、また連絡します』
 カレンは最後にそう告げると、あっさりと通信を切ってしまった。

 ……しまった。
 アークセルについて、彼女に話を聞いてみたかったのだが……。
 仕方がない。アークセルの事は、機会があればその時に訊いてみよう。



 それから少しして、凛が部屋へと戻ってきた。

「それで、ルーラーたちは何て?」

 そう問いかけてくる凛に、16時から17時に、キャスターの拠点でカレンと合流することになったと伝える。
 それに合わせて、こちらの作戦も調整する必要があるだろう。

「リンの方こそ、電話の相手は誰だったの?」
「初等部で授業を手伝ってくれている、高等部のバイトの人。私が欠席したのを心配してくれてたみたい。
 いちおう風邪を引いたってことにして誤魔化しておいたから、大丈夫だと思うわ。……たぶん」
 凜はそう、若干目線を逸らしながら口にした。

 ……………………。
 彼女の言葉尻に、そこはかとなく不安を覚えるが……なるほど。日常を再現していた以上、そう言った繋がりも生じてくるのか。
 そう言えば、自分もまだ学校に連絡を入れていなかった。一成たちにも心配を懸けているかもしれない。
 ……だが、今はキャスターとの戦いを優先しよう。
 なにしろ、戦いはすでに始まっている。
 敵の能力は完全に未知数。作戦内容や、使用する礼装の確認など、するべきことは沢山ある。

「それじゃあ白野。見せてもらうわ、聖杯戦争の優勝者の実力を」
 凜がそう言って、岸波白野へと笑みを浮かべる。
 その瞳には、自分の知る“遠坂凛”のような、確かな戦意が宿っている。
 キャスターを倒せなければ彼女に明日はない。この戦いにかける意気込みは並ならぬものがあるのだろう。

 そんな少女へと頷きを返し、準備を整えるために立ち上がる。
 キャスターとの対決に向けて気合を入れているのは彼女だけではない。
 自分もまた、この望みを果たすまで負けるわけにはいかないのだから。


【B-4 /遠坂邸/1日目 午後】

【岸波白野@Fate/EXTRA CCC】
[状態]:健康、強い決意
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:携帯端末機
[所持金] 普通の学生程度
[思考・状況]
基本行動方針:「 」(CCC本編での自分のサーヴァント)の記憶を取り戻したい。
0. 休息中の遠坂凜とランサー(クー・フーリン)を護りつつ、決戦の準備を整える。
1. 遠坂凛とランサーを助けるために、足立透とそのキャスターを倒す手助けをする。16時より決行予定。
2. ルーラー達からの連絡を待つ。
3. 狙撃とライダー(鏡子)を警戒。
4. 聖杯戦争を見極める。
5. 自分は、あのアーチャーを知っている───?
[備考]
※遠坂凛と同盟を結びました。
※エリザベートとある程度まで、遠坂凛と最後までいたしました。その事に罪悪感に似た感情を懐いています。
※遠坂凛とパスを通し、魔力の融通が可能となりました。またそれにより、遠坂凛の記憶の一部と同調しました。
※クー・フーリン、ジャンヌ・ダルクのパラメーターを確認済み。クー・フーリンの宝具、スキルを確認済み。
※アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による攻撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。
※アーチャー(エミヤ)が行った「剣を矢として放つ攻撃」、およびランサーから聞いたアーチャーの特徴に、どこか既視感を感じています。
 しかしこれにより「 」がアーチャー(無銘)だと決まったわけではありません。
※足立透と大魔王バーンの人相と住所を聞きました。

77角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:33:23 ID:pMYEkxmw0

【ランサー(エリザベート・バートリー)@Fate/EXTRA CCC】
[状態]:健康
[装備]:監獄城チェイテ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:岸波白野に協力し、少しでも贖罪を。
0. 休息中の遠坂凜とランサー(クー・フーリン)を護る。
1. 岸波白野のついでに、遠坂凛も守る。
2. 撤退に屈辱感。
[備考]
※岸波白野、遠坂凛と、ある程度までいたしました。そのため、遠坂凛と仮契約が結ばれました。
※アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による襲撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。
※カフェテラスのサンドイッチを食したことにより、インスピレーションが湧きました。彼女の手料理に何か変化がある……かもしれません。

【遠坂凛@Fate/Zero】
[状態]:健康、魔力消費(中)、強い決意
[令呪]:残り二画
[装備]:アゾット剣
[道具]:なし
[所持金]:地主の娘のお小遣いとして、一千万単位(詳しい額は不明)
[思考・状況]
基本行動方針:遠坂家の魔術師として聖杯を得る。
0. 休息しつつ、準備を整える。
1. 岸波白野から、聖杯戦争の経験を学ぶ。
2. ルーラー達からの連絡を待つ。
3. 勝利するために何でもする。
4. カレンの言葉が気にかかる。
[備考]
※岸波白野と同盟を結びました。
※エリザベートとある程度まで、岸波白野と最後までいたしました。そのため、エリザベートと仮契約が結ばれました。
※岸波白野とパスを通し、魔力の融通が可能となりました。またそれにより、岸波白野の記憶が流入しています。
 どの記憶が、どこまで流入しているかは、後の書き手にお任せします。
※鏡子、ニンジャスレイヤー、エリザベート、ジャンヌ・ダルクのパラメーターを確認済み。エリザベートの宝具、スキルを確認済み。
※足立透と大魔王バーンの人相と住所を聞きました。

【ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night】
[状態]:健康、魔力消費(中)
[令呪]
1. 『日が変わるまでに、足立透、もしくはそのキャスターを殺害。出来なければ自害せよ』
[装備]:ゲイ・ボルク
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:遠坂凜のサーヴァントとして聖杯戦争と全うする。
0. 休息し、30分毎にキャスターの位置を探る。
1. 凜に勝利を捧げる。
2. 足立、もしくはキャスター(大魔王バーン)を殺害する。16時より決行予定。
3. あのライダー(鏡子)にはもう会いたくない。最大限警戒する。
4. アサシン(ニンジャスレイヤー)にリベンジする。
[備考]
※鏡子とのセックスの記憶が強く刻み込まれました。
※足立透と大魔王バーンの人相と住所を聞きました。
※自害命令は令呪一画を消費することで解除できます。

[共通備考]
※遠坂邸の凜の自室に、盗聴・透視などを防ぐ陣が張ってあります。陣を破壊した場合、術者のクー・フーリンに察知されます。陣を破らずに盗聴・透視を行うのは極めて困難です。
※16時まで、30分置きにクー・フーリンが探索のルーンで大魔王バーンの居場所を探知する予定です。
※下記がキャスター撃破作戦の概要です。16時から作戦を行動する予定です。

一.B-4の高層マンションに赴く。
二.エリザの『竜鳴雷声(キレンツ・サカーニィ)』で周辺NPCを避難誘導する。 (1時間必要と予測)
三.エリザの『竜鳴雷声(キレンツ・サカーニィ)』で、キャスターの陣地を攻撃する。
四−A.キャスターが陣地から出てきた場合、エリザが交戦。
五−A.クー・フーリンが不意を突いて攻撃する。
四−B.キャスターが陣地から出てこない場合、エリザとクー・フーリンが侵入する。
五−B.陣地内にいるキャスターをエリザとクー・フーリンが撃破する。

78角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:34:05 ID:pMYEkxmw0


     04/ 在り得ざるサーヴァント


「おかあさん(マスター)、よかったの? 東風谷早苗(あのひと)に、岸波白野(紅いランサーのマスター)のことを教えて」
 教会の奥、細い階段を上った先にある一室で、不意に問いが投げかけられる。
「問題はないでしょう。具体的な情報を与えたわけではありませんし。
 それに、迷いを抱えている者がいれば道を示すのが教会の役割ですから」
 その問いに、この部屋の主であるカレンが答える。

「……あのひと、聖杯がほしくないのかな?」
「方舟に招かれた以上、願い自体はあるでしょう。ですが、理不尽に反発するのは人の常です。
 ましてや意に副わず招かれた上に、人死にを善しとしないのであれば、あれは当然の反応でしょう」
「……おかあさん(マスター)たちと戦うつもりなのかな?」
「さあ。それは彼女たち次第ですね。
 彼女たちが聖杯戦争を破綻させようとするのであれば、そんな事態もあり得るでしょう」

 奇妙に濁った、二重、三重に同じ台詞を呟いているかのような声。
 現在この部屋にルーラーはいない。ならばこの声は誰のものなのか。

「……じゃあ、今のうちにころしておく?」
「その必要はありません。
 たとえ彼女たち聖杯に疑念を懐いていても、それは彼女たちの在り方故のものです。
 明確に私たちと敵対しない限り、処罰の対象とすることはないでしょう。
 ……それに、不穏分子という理由で処断するのでしたら、貴女たちは真っ先にその対象になりますよ、“アサシン”」
「むう……」

 その軽薄な言葉を戒めるように、カレンは声の主へと視線を向ける。
 そこには、黒いボンデージスーツのような衣装を纏い、色素の薄い髪とアイスブルーの瞳をした、あどけない顔の少女がいた。

 その少女の真名(な)は、“切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)”。
 一八八八年のロンドンを二ヶ月に渡り恐怖に陥れた、正体不明の殺人鬼であり、
 そして同時に、マスターが残り二十八人という状況では在り得ざる、“三十騎目のサーヴァント”である。

 二人の会話からわかる通り、彼女はアサシンのクラスに属し、カレンと契約をしている。
 確かにマスター殺しのサーヴァントであれば、マスターを律する裁定者であるカレンには相応しい存在(クラス)と言えるだろう。
 ましてやカレンの肉体は脆弱だ。本格的な戦闘になれば、子供相手でも勝ち目は低い。
 そんな彼女に戦力としてサーヴァントが与えられることは、そうおかしな話ではないだろう。
 ……だが実際の所、カレンはアサシンの召喚者ではない。なぜなら、彼女の裁定者としての権限は別に存在するからだ。

 ならばこのアサシンは如何なる存在なのか。
 その答えは単純だ。
 マスターを失ったサーヴァント。ただそれだけの事である。
 では誰が彼女を召喚したのか。
 それはD-9の北西に位置する、白犬塚と呼ばれた地で消滅したあの少年だ。

 あの瞬間。彼は確かにマスターとして覚醒していた。
 記憶を取り戻し、令呪を宿し、予選を突破した。その時点で、サーヴァントの召喚条件は揃っていたのだ。
 他のマスターとの違いは、ただ一つ。マスターとして覚醒した時点で既に死んでいたということだけ。

 しかし、いや、だからこそ、彼はジャック・ザ・リッパー(アサシン)のマスターとして選ばれた。
 目覚める(生まれる)前に死んだ魂。手が届きそうなのに、決して届かないモノへと懐いた憧憬。
 それこそがアサシンを召喚するための依代。すでに亡きマスターと、生まれてくることすら拒まれた“彼女たち”との縁である。

 ―――だがしかし、マスターなくしてサーヴァントは存在できない。
 そしてあの場にはルーラーがいた。
 つまりNPCを魂喰いし、存在を維持することすらできはしない。
 故に本来であれば、彼女は何を為すこともなく消滅するはずだった。
 ……同時にその場にいたカレンが、気まぐれを起こしさえしなければ。

「まがりなりにも召喚に応じた以上、彼女にも望みはあるはずよ?
 なのに、呼び出されておきながら機会すら与えられずに消滅するなんて、可哀想だとは思わない?」

79角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:35:04 ID:pMYEkxmw0

 カレンはそう言って、アサシンのマスターとなった。
 ともすれば肩入れとも取られない行為だが、そもそも聖杯戦争に参加すらできないのであれば、公平もなにもあったものではない。
 そこでルーラーは、アサシンに相応の制約を科すことで、アサシンの生存を例外的に認めることにした。

 一、『カレンと契約している間、自衛の場合を除き、許可なき対象を害する行為の一切を禁ずる』
 二、『令呪を二つ重ね、これを厳命とする』

 カレンの令呪を二画用いた、絶対尊寿の命令。
 ルーラーはこれを以て、最初で最後のチャンスを与える代償としたのだ。

 そもそも、裁定者であるカレンと契約したところで、アサシンに聖杯は与えられない。
 聖杯を得られるのは、最後の一組となった、正規のマスターとサーヴァントだけだからだ。
 つまりアサシンが聖杯を得るには、カレンとは別のマスターと正式に契約する必要があるのだ。
 だがそれだけならば、魂喰いにより魔力を補充し、他のサーヴァントを殺害してそのマスターと契約をすれば済んでしまう。
 しかしこの令呪により、アサシンはマスターなしで行動できるほどの魔力を溜めることや、自身でマスターを仕立て上げることを禁じられたのだ。

 自ら機会を作ることが出来ない以上、アサシンはサーヴァントを失ったマスターが現れるのを待つしかない。
 だがこの方舟では、サーヴァントを失ったマスターは数分で消去されてしまう。彼女が正規のマスターを得られる確率は、非常に低いものとなるだろう。
 そしてもし仮に機会を得たとしても、令呪を二画消費されている以上、そのマスターに与えられる令呪は一画だけ。
 更にはアサシンの召喚が成立した時点で、ルーラーには彼女に対する令呪が与えられている。
 彼女が一度でも違反を犯せば、ルーラーは即座に、そして確実に、アサシンへとペナルティを課すことが出来るという訳だ。

 その制約を以て、アサシンはカレンのサーヴァントとなった。
 新たなマスターを得て聖杯に至るのか。それともこのまま、何も為せずに果てるのか。
 彼女が聖杯戦争に参加する最後のチャンスを掴めるかどうかは、神のみぞ知る事だろう――――。



「……でも、ランサーのマスターたちのお願いはきくんだよね」
 少女たちの話し合いは続く。
 アサシンは少し不満げに、カレンの行動を揶揄する。
「ええ。明確な証拠こそないとはいえ、あのキャスターは放置するには少々危険な存在ですから。
 加えてルーラーの探知によると、厄介なサーヴァントが深山町へと向かっているようですしね。
 不確定要素は可能な限り減らしておくに限ります」
「やっかいなサーヴァント?」
「ベルク・カッツェ、という名前だそうです。あるいは、“形なき悪意の体現者”とも。人の悪性がその正体らしいですが」
「……………………」

 サーヴァントとして時空を超えた知識を持つアサシンは、その名を聞いて納得する。
 確かに人々を先導する能力を持つそのサーヴァントは、聖杯戦争を監督する裁定者からすれば厄介な存在だろう。
 何しろ場合によっては、NPCが自らの意思でマスター達の敵になってしまう可能性があるのだから。

 そうなれば聖杯戦争どころではなくなってしまう。
 アサシンとしてはNPCがどうなろうと構わないが、聖杯戦争が滞るのは困る。
 何しろ自分は、東風谷早苗(アーチャーのマスター)と違い、確かな願いを持って聖杯戦争に応じたのだ。
 そして自分は、今でこそ聖杯を得る資格を失っているが、決して脱落したわけではないのだから。
 だから……もしそのサーヴァントが聖杯戦争を破綻させるというのなら――――

「なら――どっちかころす?」
「……確かにそれが一番楽ではありますが、その判断を下すにはまだ確証がありません。
 それにサーヴァントへのペナルティはルーラーの領分ですから、私たちが処断する場合はマスターが対象になります。
 ですがキャスターの行いをマスターが知っているとも限りません。彼等のマスターを殺害するのは最後の手段にするべきでしょう」
「ちぇっ……」

 外見相応の、子供のような舌打ち。
 だがその眼には、人成らざるモノの殺意が籠っている。
「っ……!」
 ビ、とビニールを裂くような微かな音。
 カレンの法衣の裾から、赤い血がこぼれてくる。

「あっ! ごめんなさい、おかあさん(マスター)……」
 アサシンは慌てて、自身の殺気を押し殺す。
「…………傷が開いただけです。気にする必要はありません、アサシン」
 カレンは何でもないようにそう口にするが、こぼれた血の匂いは残っている。
 その事にアサシンは、若干の自己嫌悪を覚えた。

80角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:35:30 ID:pMYEkxmw0


 ―――被虐霊媒体質。
 カレンの持つその異能は、『悪魔』と呼ばれる存在に反応し、その被憑依者と同じ霊障を体現するというものだ。
 だがその異能が感応する対象は、『悪魔』そのものにだけではない。
 人の心には『魔』が刺すもの。
 『悪魔』とは何の関わりもない人間の、ほんの些細な悪意にさえ、カレンの身体は勝手に反応するのだ。

 その悪意の発生源が、正体を怨霊とするアサシンともなれば尚更だろう。
 何しろ彼女の宝具は、ロンドンの霧の夜に娼婦を惨殺した逸話を再現する、極大の呪いなのだから。
 つまりカレンは、アサシンのマスターであると同時に、その身を以て彼女を戒める軛でもあるのだ。


「……それに、そう拗ねる必要はありませんよ、アサシン」
 落ち込んだアサシンを慰めるためにか、カレンはカレンへと声をかける。
「キャスターとランサーたちが戦うということは、サーヴァントが消滅する可能性もあるということです。
 場合によってはそのマスターを、貴方の新たなマスターとすることが出来るかもしれませんよ」
「……ほんとう?」
「ええ。特に遠坂凛のサーヴァントが、消える可能性が一番高いでしょう。
 今日中にキャスターを倒せなければ、彼女たちには後がないようですし」
「そっか……」

 アサシンは先ほどより若干弾んだ声でそう呟く。
 それも当然か。
 アサシンが聖杯に至るには、まず自身のマスターを得ることから始めなければならない。
 その有るかもわからない機会が、早くもやってくるかもしれないのだから。

「……では彼らとの行動に合わせて準備を整えましょう。
 貴女にも手伝ってもらいますからね、アサシン」
 カレンはそう告げると同時に、自身の血が滲んだ法衣を脱ぎ始める。
「うん。わかったよ、おかあさん(マスター)」
 それにアサシンは頷いて応え、替えの服を用意し始めたのだった。



 ――――実の所、ジャック(アサシン)にはカレンがマスターであることに不満はなかった。
 いやむしろ、相性という意味でならば、被虐霊媒体質さえ除けば、カレンは彼女を召喚したマスター以上だと言えた。
 なにしろ、どちらも親に捨てられた子供。違うのは、カレンはそれを受け入れ、アサシンは母の胎内への回帰を望んだということだけだ。

 ……だがしかし、聖杯へと至るためには、カレンとは異なるマスターと契約する必要があった。
 それはあたかも、へその緒を断ち切るかのように。
 母の胎内に帰るためには、母親(マスター)との繋がりを絶たなくてはならない。
 その矛盾だけが、ジャック(アサシン)にとってはこの上ない不満だった。
 ……だから、せめて。

「ねぇおかあさん(マスター)。また、おかあさん(マスター)のオルガンを聴かせてね」
「いいですよ。時間に余裕があれば、いつでも弾いてあげます」

 母親(マスター)と共に居られるこの一時を、出来る限り大切にしようと“少女たち”は想った。


【D-5/教会/1日目 午後】

【カレン・オルテンシア@Fate/hollow ataraxia】
[状態]:健康
[令呪]:残り一画(アサシン)/他不明
[装備]:マグダラの聖骸布
[道具]:リターンクリスタル(無駄遣いしても問題ない程度の個数、もしくは使用回数)、???
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行時々趣味。
1. 遠坂凛たちと行動するための準備を整える。
2. 時間に余裕があれば、アサシンにまたオルガンを聴かせる。
[備考]
※聖杯が望むのは偽りの聖杯戦争、繰り返す四日間ではないようです。
 そのため、時間遡行に関する能力には制限がかかり、万一に備えてその状況を解決しうるカレンが監督役に選ばれたようです。他に理由があるのかは不明。
※アサシン(ジャック)はカレンが召喚したサーヴァントではありません。
 そのため、アサシンのもの以外に令呪があるかは不明です。

【アサシン(ジャック・ザ・リッパー)@Fate/Apocrypha】
[状態]:健康、
[令呪]
1. 『カレンと契約している間、自衛の場合を除き、許可なき対象を害する行為の一切を禁ずる』
2. 『令呪を二つ重ね、これを厳命とする』
[装備]:六本のナイフ、黒い医療用ナイフ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯へと至るために、正規のマスターを得たいが…………。
0. またおかあさん(カレン)のオルガンが聴きたい。
1. おかあさん(カレン)のおてつだいをする。
2. おかあさん(カレン)との時間をたいせつにする。
3. 自身の正規のマスターとなる人物を探す。
[備考]
※ジャック・ザ・リッパーの召喚者は、プロローグの青年@Fate/EXTRAです。
※カレンと契約した状態では、最後の一組となっても聖杯を得られません

81 ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:36:56 ID:pMYEkxmw0
以上で、仮投下を終了します。
正純と一成の会話や、アサシンの事など、皆様のご意見をお願いします。

82サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 00:37:43 ID:OITh2aL6O
仮投下乙です。

脱落したマスターの令呪は、カレンに移るのですか?
しんのすけの令呪とか。

83サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 01:05:27 ID:Zyx34UmE0
仮投下乙です。
早苗さんは裁定者との接触に成功したけど、有力な情報は得られずか。
対聖杯という具体的な指針の見えない立ち位置について指摘されてしまったけど、果たして彼女は自らの道を貫き通せるか。
ムーンセル聖杯優勝者のザビ夫の考察も中々興味深いなぁ。
そしてまさかのジャック参戦。登場の経緯や理屈に説得力がありますし、自分としては大丈夫じゃないかなと思います。

84サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 08:23:40 ID:P1Cx1FhI0
仮投下乙です。

まさかのジャックちゃんの参戦ですか。自分もこの参戦に関してはある程度筋は通ってると思うので大丈夫だと思います。
OPで始まりの一歩目で無慈悲に消えていったあの少年の無念がこの状況に繋がったとすれば感慨深いものがあります。
今回の話は考察回としてもとても興味深い内容でした。
ある意味この聖杯戦争の根幹に関わる内容なので早苗や白野には今後も頑張ってほしいものです。

あと少ないですが目についた誤字をば報告しておきます。
角笛(届かず)より

《また、これがバズではなく自家用車であっても、その危険性は変わらない。
バズ→バス

《テンカ・ワアキトは、己が願いのために他者を殺すことを是としている。
テンカ・ワアキト→テンカワ・アキト

85サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 09:02:04 ID:LfJk5ol60
投下乙です。

>人々を先導する能力を持つそのサーヴァント
「扇動」もしくは「煽動」の誤字ではないでしょうか?

段々とマスターたちの接触の可能性が高まってきたけど、すれ違う可能性もまだまだ高そうですね。
さて、どうなることやら。

86サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 09:24:36 ID:f.Vb9OmI0
仮投下乙です

>>71にて正純が返答にJud.を使っていたのが気になりました
この返答は境ホラ世界特有のものなので、箱舟世界で使用しても相手に意味が通じないのではないかと

87サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 12:08:19 ID:Iry0cY3M0
仮投下乙です

取り敢えず一点気になるところとして
正純は自分が望まずに聖杯戦争に参加させられた者であり、且つOPで他にも自分と同じ様な境遇の人物がいるだろう事に触れているのにも関わらず
子供だからと言う理由で聖杯戦争とは絡んでいないと断定するのは、考えが浅はか過ぎではないでしょうか

それと疑問点の指摘ではないですが
できれば今このタイミングで主要登場人物を増やさなければならなかった意図を説明してくれると助かり

88サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 12:11:01 ID:JkQNBk5M0
仮投下乙です。
早苗さんは有力な情報は得られなかったけれど、誤りを証明したあとどうするか、
なんのために証明するのか考えるきっかけを得られたのは良かったですね。
白野から見た聖杯戦争の矛盾もなるほどなあと思いました。
正純と一成の会話は、同じ学校の生徒ですしこのくらいの情報が入ってくるのは良いのではないでしょうか。
気配遮断や情報末梢を持ったアサシンは裁定者と相性良さそうですね。

少し気になった点をいくつか。

1.桜の状態表に「学校へ連絡している」とありますので、無断欠席ではないかと思います。

2.正純と一成が話した時間について、
『健全ロボダイミダラー 第X話 悲劇! 生徒会副会長の真実!』で
>そんな風に適当に考えつつ、スカートを捲ったりしながらだらだらと授業を受け、気がつけば5時間目も終わっていた。
とありますので、二人が会話していたのが午後一の休み時間になるかと。

3.「ルーラー」の呼称は「セイバー」や「ランサー」といったサーヴァントのクラス名のイメージが強いので、
カレンを指してルーラーと呼ぶのは自分はちょっと混乱してしまいました。

4.カレン(とジャック)は凛達に同行しますが、ルーラー(ジャンヌ)は単独でB-4を調査するということでよろしいでしょうか。

5.ググればわかることですが、他のサーヴァントの登場話のようにアサシン(ジャック)のステシがあるといいなと思いました。

6.今回はプロローグの青年とのつながりなどがメタ的にありましたが、はぐれサーヴァントの前例があると
今後単独行動持ちのサーヴァントが新規キャラとして追加されても理屈の上では通ってしまいかねないため、
カレン視点で「はぐれサーヴァントは他にはいない」と確定させてしまったほうが無難かと個人的には思います。

長々と失礼しました。

89 ◆tHX1a.clL.:2014/11/30(日) 12:16:51 ID:FzqLiQMw0
投下乙と言いたいですがここにきて新しくサーヴァントを一体出すのはあまりよろしくないと思います

>「まがりなりにも召喚に応じた以上、彼女にも望みはあるはずよ?
>なのに、呼び出されておきながら機会すら与えられずに消滅するなんて、可哀想だとは思わない?」

この言葉を借りるならば、マスターとして方舟に乗り込んだ青年にも望みはあったはずです
ですが正規のマスターとして覚醒した彼は見捨てて、数秒後彼が死んだのを確認してから彼のサーヴァントに慈悲を掛けるという思考は気まぐれにしては移り変わりが早過ぎる気もします
OPでは青年を「助けることが出来なかった」ではなく「助ける術もないが、そもそも助ける気がなかった」ように見えます
なのにそのサーヴァントに対しては気が変わって特例を持って慈悲を掛ける、というのもどうもしっくり来ません

そして現場にはカレン以上に聖杯戦争の恙ない進行に尽力しているルーラーが居て、彼女は正式にあの青年の「敗退」を確認しました
だというのに彼女がこの行為を黙認している理由もわかりません
ルーラーはリレー中でも実質黒である大魔王バーンに対しても「証拠がつかめていないから推定無罪」というあくまで公平な立ち位置から裁定を行っています
そして裁定者側からすれば彼らは目の前で一参加者になり、順序はどうあれ一参加者として敗退した組です
それを裁定者側の気まぐれで非正規サーヴァント扱いしてまでイレギュラーを生むというのは「恙ない進行」にそぐわない、かつ今まで培われてきたルーラーの公平感にも係るものではないでしょうか
裁定者であるカレンの護衛が目的であり、対マスター用の戦力強化のためであるというならば「非正規の参加者」としてではなく「正当な裁定者側」として聖杯戦争への一切の介入を許さない形で受け入れるはずです
なのに「彼女にも望みがあるから」非正規参加者として補欠参戦、機会があれば敗者復活可能というのは他の予選参加サーヴァントに対して不公平ではないでしょうか


ここからは極論になります
企画中何度も予選の存在が明記され、一護&美遊登場話で正規マスター&サーヴァントの予選敗退描写もあります
今回の件を認可するのであれば、予選敗退した正規マスターを持つ単独行動B以上のサーヴァントが群れをなしてその辺のくさむらから突然飛び出してきてもおかしくありません
マスターが正規参加者として敗退した後ならば単独スキルは発動するでしょうし、予選中は単独行動スキルが打ち消されるなんて追加条件を付けようがランチャーが行った宝具でのジナコ生還のように無理やりシステムに抜け道を作ることもできます
彼らにも聖杯戦争で聖杯に掲げる願いはあるので、正規参加者のサーヴァントを不意打ちで殺して新規契約を図るくらいはやって当たり前です
今回の「名簿に存在しない新規サーヴァントの許容」はそういった可能性すら否定できなくなります

そんなこと起こらないと言いたいですが、誰も起こらないし起こさないと思っていた「新規サーヴァント参戦」が今回起こってしまいました
そんなこと企画として許されないと言おうが、展開・描写に矛盾がなく「あの作品(氏の『角笛(確かに)』)は通ったじゃないか」と言えばそこで反論は打ち止めです
さすがにそこまでやる書き手はいない、書き手のモラルの問題だろう、等と言われるかもしれませんがそれならばまず「新規サーヴァントを出す」という行為それ自体が「そこまで」逸脱した行為なのではないでしょうか

90 ◆tHX1a.clL.:2014/11/30(日) 12:17:03 ID:FzqLiQMw0
以下数行空白の後、完全に更に個人的な感情を含んだただの暴論です
なので読まなくて頂いて結構です












上記の通り完全に感情論ですがあれだけ投票を重視したのに「投票に参加すらしてない参加者が一体増える」というのは納得できません
予選作を書いた人は皆、形はどうあれ「自分の書いた組に参加してほしい」という思いがあったはずです
なのに投票が終わり、粗方の議論が終わり、リレーがはじまり、さあ一日目も後半に差し掛かったというここで突然「あのマスターのサーヴァントは生きていた」「カレンのサーヴァントとして一体増やせる」
じゃあなんでこれまでのリレーで一切触れなかったんだよとか呼び出された経緯が令呪発生とマスター覚醒以後の思考から来るのかとかつっこみたいことは山ほどあります
ただ一つ伝えておきたいのは
それまでのフラグの積み重ねや議論などもなく完全に氏の独断でそんなことやられちゃこっちはたまったもんじゃありませんということです
氏がどの作品が好きでどの作品が嫌いかは知ったこっちゃありませんが、前回のルヴィア・今回のジャックとなんで正規参加者同等の存在を勝手に増やされなきゃならないんですか
企画の枠組みの中で好き勝手やるのは結構です、フラグを建てるも折るも参加者殺すも爆弾作投下するもご自由にどうぞ
ただ、OP以前から続いている企画それ自体の積み重ねを蔑ろにするのはやめてほしいです













雑多な指摘で申し訳ありません
長くなりましたが以上です

91サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 12:38:26 ID:Zyx34UmE0
>>90
暴論は空気の悪化の原因になりかねないので控えてくださいね

92 ◆OSPfO9RMfA:2014/11/30(日) 13:26:47 ID:1trD.F0M0
投下乙です。

> ……まったく、岸波が休んでいることもあって、こちらも手が足りていないというのに。猫の手も借りたいとはこの事だ」
> 岸波の他にも、二年E組の狭間偉出夫や一年の間桐桜。俺にとって仏門における好敵手とも言える、東風谷早苗まで無断欠席しているらしい。

これは指摘というより確認事項ですが、
今までのSSからすると、岸波と狭間の行っている所は『学園』ではなく『学校』なのですよね。
ですが、「月海原学園以外に学校作るの?」「それってどこ?」と言う話にもなります。
今まで学校が微塵も存在してないので、学園のことを学校と言ってるだけかも知れません。
なので、この話が通れば、正式に学園生になるということになると思います。



> このタイミングで訪ねてきたという客人。それはサーヴァントの存在を連想させるには充分過ぎる符合だ。

聖はNPC時代から命蓮寺に居ます。
なので、これを疑うと、どんな些細なことでも疑心暗鬼にならざる得ないと思います。
『フル甲冑の人が掃き掃除していた』『フル甲冑の人がタンスとツボを漁っていた』『聖がフル甲冑の人と正座して話をしていた』
などと、ロトの外見の異様さと組み合わせれば、疑う余地はあると思います。



> だがこの方舟では、サーヴァントを失ったマスターは数分で消去されてしまう。彼女が正規のマスターを得られる確率は、非常に低いものとなるだろう。

サーヴァントの新規追加が適正か。
新規追加されるサーヴァントがジャックなのが適正か。

私には判断しかねるので、その事は議題にしません。

再契約に関してですが、上記のことは事実だと思います。
ですが、一人だけ例外がいます。凜です。

> ※エリザベートとある程度まで、岸波白野と最後までいたしました。そのため、エリザベートと仮契約が結ばれました。

よって凜が再契約の可能性が非常に高い……と言うより、凜のために用意されたといわれても仕方のないことだと思います。
そのことに不公平感や贔屓を感じます。

『マスターがサーヴァントを喪失次第、即座にそのマスターの元へ行き、再契約せよ』のような令呪による命令などで、凜以外のマスターとの再契約のチャンスを広げた方がいいのではないでしょうか。


指摘のみですが、以上となります。

93サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 13:43:53 ID:DamAgII.0
投下乙です
うーん個人的にはジャックの登場にそこまで無理を感じなかったのでアリだとは
思いますがやはり反対意見が多いようですね。
まぁ最悪この話はジャックのくだりを丸ごと削ればそのまま使用できると思いますので
ジャックを出せない場合はそれ以外を採用してもいいと思います

94サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 15:34:09 ID:cOuTcKHc0
後はちょいちょい言われている正純の部分の修正か追記か
境ホラ世界的に年齢で物事考えはしないだろうし
あの世界の中等部小等部って自分の未来や襲名先見据えていて戦力や覚悟、有能さ的に半端ないからな

95 ◆ysja5Nyqn6:2014/11/30(日) 18:12:38 ID:VzphsxIo0
皆様、ご意見ありがとうございます。
皆様の指摘等は、幾つかアサシンと関わりがあるのもありますので、アサシンをどうするかが決まってから返答させていただきます。
ですのでまずは、◆tHX1a.clL.氏の意見に返答させていただきたいと思います。


青年とアサシンに対するカレンの対応の違いは、「すでに死んでいる」か、「まだ生きている」かの違いのつもりでした。
青年がマスターへと覚醒した時、青年はすでに助からない状況でした。
しかしアサシンの方はマスターを失っただけであり、逆に言えばマスターさえいれば何の問題もない状態でした。
またカレンがアサシンと契約したのも、慈悲を掛けた、という風なつもりではありませんでした。
契約の際のカレンの台詞は、あくまでもルーラーへと言ったもので、彼女自身の思いを口にしたわけではありません。
カレンがアサシンと契約した理由を強いて上げれば、せっかく召喚されたサーヴァントがもったいなかったから、となります。
ですので、作中では契約させましたが、ルーラーがきっぱりダメといったら、カレンは契約をしませんでした。

そしてルーラーが「敗退」を確認したのは、あくまで青年だけです。
マスターが敗退したらサーヴァントも一緒に敗退したと見做すのであれば、他のマスターを失ったサーヴァントの再契約も禁止しなくてはなりません。
(現在投下された作品では、ニンジャスレイヤーが該当しますでしょうか)
ですので、他のサーヴァントの再契約をありとするならば、霊核に致命傷を負うか、魔力が尽きて消滅するまで、アサシンは「敗退した」とは見做されません。
あの状況でアサシンが消滅を免れなかったのは、マスターとなれる人物が近くにおらず、また魂喰いを良しとしないルーラーが近くにいたからです。
そのため、敗者復活、という表現は正しくありません。
作中でルーラーがアサシンに科した制約は、公平であるべき裁定者をマスターとして延命することに対する代償のつもりでした。

またルーラーの公平性についても、明確な規定があるわけではなく、あくまでルーラーの判断によるものとなります。
もしアサシンに慈悲を掛けたとするなら、それはむしろルーラーの方になるでしょう。
理由として、ルーラーはOPにて、「まだ保護対象であった、アサシンのマスターになる筈だった青年」を守りきれずに死なせた、という事実があります。
その結果、「アサシンが召喚された時点で、彼女のマスターである青年は死んでいた」という状態になりました。
つまり「ルーラーが間に合わなかったから、アサシンはマスターを失い」、「ルーラーがいるから、アサシンは消滅するしかない」という関係になります。
これは見方によっては、「ルーラーのせいで、違反者ではないアサシンが敗退する事になった」と取ることもできます。
その事にルーラーが責任を感じるのは、おかしなことでしょうか。

続いて予選でマスターを失ったサーヴァントについてですが、これは>>88氏の六つ目の指摘のように、「はぐれサーヴァントは他にはいない」と確定させてしまえば済む問題です。
そして「投票に参加すらしてない参加者が一体増える」ことについてですが、これは他のロワでも時折ある「新たな主催者が姿を現す」といった事態も該当します。
そう言った「新たな主催者」も、ある意味「投票に参加すらしてない参加者」と言えますが、彼らの登場はそのパートを書いた書き手の独断とは違うのでしょうか。または予約の際に、そのキャラの登場に関する議論が必ず行われているのでしょうか。
私が知る限りでは、まず関係するキャラクターを予約し、次にしたらば等に仮投下などを行い、それからそのキャラの参加は有りか無しかを議論するなりして決めていたと思うのですが。

前回のルヴィアの件は、確かに私の失敗です。
ですが、今回のアサシンは、その議論を行なうために、避難所スレに仮投下させていただいたつもりだったのですが。
それで積み重ねた企画を蔑ろにしていると言われても困ります。

もちろん、その議論の上でアサシンの立場などを修正するべきだという意見があれば応じますし、アサシンの登場自体が駄目となったのであれば、その部分は削除させていただくつもりです。

96サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 18:53:43 ID:Uuz.NVnE0
カレンは慈悲をかけたのではないというなら、アサシンのマスターになることはないと思います
その場にルーラーがいたからアサシンは消滅するしかなかったというなら、ルーラーがその場は見逃してやるという手段でもアサシンは生き延びられる筈です
魂喰いをした時点で即座にルーラーに感知されることがないのは吉良が証明していますし、バーン程の魂喰いをやらかしたとしてもアサシンのスキル効果で隠蔽できると思います

そうして魂喰いをしていき、マスターを見つけ出すという手段も取れたでしょう
にも拘らずカレンが契約したのが解せないです

契約して延命させるのと、見逃して延命させるのとでは、後者の方が公平だと思います
カレンと契約している現状はとても公平だとは思えません
他のサーヴァントが自らの新たなマスター探しに必死になるのに、アサシンは自身の気が向いた時にマスター探しをすればいいのですから
そもそもアサシンが聖杯にかける願いがない場合、このままの状態でも何も問題ないわけですし

それとルーラーが魂喰いを良しとしないとのことですが、オープニングで大規模殺戮でなければ魔力維持のための魂喰いは問題ないと言ってます
多少の魂喰いなら良しと言っているのに、ここで見逃さないのは何故ですか?
アサシンの魔力維持は大規模殺戮しなければならないほどなのですか?

97サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 19:08:54 ID:hXn.7nYI0
>アサシンの魔力維持は大規模殺戮しなければならないほどなのですか?
横からですが、はい。
基本、サーヴァントはマスターがいないと存在を維持できませんし、魂喰いで得られる魔力は微々たるものなので。

98サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 19:17:01 ID:d6EuclgYO
すでに行われた事を見逃すことと、これから行われる事を見逃すことは、意味が違うのでは?
マスターを見つけるまでと限定したとしても、マスター側が契約を拒否する可能性だってあるんだし
なにしろサーヴァントを二体も維持しなくちゃいけなくなるんだから
そうなると必然的に、マスターを見つけるまでの時間が長くなり、魂喰いの量も多くなる

それにカレンが契約した理由も、自衛などのための手駒が欲しかったとすれば、多少は理にかなっているのでは?

99サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 19:18:23 ID:Uuz.NVnE0
そうだったのか、かなり甘く考えていた
マスター殺してほうほうの体で寺まで魔力維持できてたキャスターとかいたもんだから
運がよかったってことか

100サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 19:40:00 ID:S5A0zf2w0
横から失礼しますが、今回賛否両論となっているのはアサシンのメタ的存在意義が読みづらいからではないでしょうか。
参加者を減らしていかなければ終わらないというロワ企画において、一般に参加者の追加は難色を示されるものです。
氏のおっしゃるような「新たな主催者の追加」は、大抵参加者を集めたり制限加えるなどができたことの理由付けだったり、フラグを積み重ねた終盤において話を盛り上げるためのものだったりします。
あるいはジョーカーの追加などの「参加者の投入」も、マーダー不足でにっちもさっちもいかないのならともかく、結構な参加者が乗り気なここではあまり必要性を感じません。
特に今回のアサシンは主催戦力としてよりはいずれ参加者になるということを強く意識されてるように感じましたが、300話近くの登場話が没となったここでは参加者の追加はより慎重になった方が良いかと思います。
もちろん遅効性のフラグなどもあるかと思いますし、こういった狙いを作品外で言うのも問題があるかもしれませんが、一般的にタブーとされることを犯してまで追加する理由について、一言氏から説明があれば納得行く方も多いのではないでしょうか。

101サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 21:22:58 ID:VzphsxIo0
アサシンを登場させたのは、カレンを問題なく単独で行動させるためです。

まず前提として、ルーラーたちが凛たちの要請に応じた場合、最低でもルーラーとカレンのどちらか一方はそちらに掛かりきりになります。
しかしキャスターへと対処している最中にも、別所で何か違反行為が起きる可能性があります。
そうなると即座に行動・対処できるのは、当然カレンよりはルーラーとなります。
なので凛たちの戦いを見届けるだけであるのならば、カレンが同行するだけで十分となり、作中でもそれを理由としてカレンが向かうことになった、としました。
しかし見届けるだけであっても、凛たちに同行する形でとはいえ、明らかに危険なキャスターの陣地に何の準備もなく向かうかな? とも思いました。
加えて作中でも書いたように、カレンにはほとんど戦闘能力がありませんし、裁定者としての権限も明確になっていませんでしたし。

そこで思いついたのが、カレンにサーヴァントを持たせることでした。
また『050:主よ、我らを憐れみ給うな』でカレンが令呪を持っているとされ、また後の話でカレンはルーラーのマスターでないともされていました。
そして普通に考えればカレンの令呪は預託令呪となるのですが、そうと明言されてないのなら、サーヴァントの可能性もあると思いました。

ついでに言えば、この先ルーラーがあちこち動き回る必要が出てくる可能性がある以上、カレンの単独行動も必然的に多くなる可能性もあります。
そう言った時にカレンにサーヴァントがいれば、ルーラーが近くにいない時にカレンが襲われてたとしても対処ができますし。

そこで令呪をサーヴァントのものとした場合の契約相手ですが、最初はカレンの役割を考えればアヴェンジャーが妥当かと思いました。
本人曰く、彼より弱い英霊は存在せず、しかし人間相手なら世界最強とのことでしたから。
ですが最初の募集の時点でアヴェンジャーを出すことは禁止されていましたので、別のサーヴァントということでアサシンを選びました。
アサシンを選んだ理由は、カレンの聖骸布とアサシンの宝具が、対男性対女性という点で対になっていたからです。

ただその場合、問題点としてアサシンには明確な願いがありました。
仮にも裁定者であるカレンが召喚するのであれば、その召喚基準はルーラーに殉じるべきだと思いました。
(『現世に何の望みもない事』『特定の勢力に加担しない事』他不明)
しかし私が思いついたこの条件に該当しそうなサーヴァントは、場合によってはルーラーよりも強くなりかねませんでした。それではルーラーが存在する意味が減じてしまいます。
そこで他のマスター(今回の場合はプロローグの青年)が召喚したサーヴァントだということにすれば、願いを持っていても問題ないだろうと考えました。

以上が、アサシンを登場させた主な理由になります。
カレンが同行することになった理由が書かれてなかったり、凛との再契約のために登場させたと捉えられる描写になってしまったのは、単純に私の描写力不足です。申し訳ありませんでした。

102 ◆ysja5Nyqn6:2014/11/30(日) 21:23:27 ID:VzphsxIo0
失礼。トリップ忘れました。

103 ◆tHX1a.clL.:2014/11/30(日) 22:02:46 ID:FzqLiQMw0
ご指摘ありがとうございます
返答から気になったことがあったので再度質問させていただきます

>契約の際のカレンの台詞は、あくまでもルーラーへと言ったもので、彼女自身の思いを口にしたわけではありません。
>カレンがアサシンと契約した理由を強いて上げれば、せっかく召喚されたサーヴァントがもったいなかったから、となります。
>ですので、作中では契約させましたが、ルーラーがきっぱりダメといったら、カレンは契約をしませんでした。

サーヴァントがもったいない、というのが戦力的な意味であるなら参加者としてではなく裁定者側として迎え入れるのでは?
聖杯をニンジンに馬車馬のようにこき使う、というのであればそもそもイレギュラーを作るのにルーラーが待ったをかけるでしょう
ならば何故ルーラーが契約に反対しなかったのかということになりますが、おそらく氏の以下の文章がその原因にあたります

>あの状況でアサシンが消滅を免れなかったのは、マスターとなれる人物が近くにおらず、また魂喰いを良しとしないルーラーが近くにいたからです。

>その結果、「アサシンが召喚された時点で、彼女のマスターである青年は死んでいた」という状態になりました。
>つまり「ルーラーが間に合わなかったから、アサシンはマスターを失い」、「ルーラーがいるから、アサシンは消滅するしかない」という関係になります。
>これは見方によっては、「ルーラーのせいで、違反者ではないアサシンが敗退する事になった」と取ることもできます。
>その事にルーラーが責任を感じるのは、おかしなことでしょうか。

>つまり「ルーラーが間に合わなかったから、アサシンはマスターを失い」、「ルーラーがいるから、アサシンは消滅するしかない」という関係になります。
この文章について
まず前者、そもそも予選の第一段階は違和感に気づき、願いを取り戻し、サーヴァントと契約してからが始まりとなり、それまではNPCとして過ごします
節度ある魂喰いも認可されているため、NPC状態での死亡や予選の敗退はある種の「想定内の犠牲」ということになります
今回はハサン先生が魂喰いに当たってたまたま「大規模殺戮」を行っていたためルーラーたちが現場に赴き、結果として彼が覚醒しました
前記に倣うならば「大規模殺戮」というルールの前提に抵触しなければ、これは黙認されるべき行為ということになります
仮に単なる魂喰いであればルーラーは警告も行わないでしょうし、途中で覚醒したとしても彼は「想定内の犠牲」であり「特例も致し方なし」とは露ほども思わないでしょう

そしてOPではこれに「大規模殺戮」という前提が付き、これにより「違反者の存在」と「NPCの保護」がルーラーの思考に新たに加わります
現場に赴き再度警告、警告無視のためNPC保護を優先し違反者は罰し、結果ハサン先生は死にました。これで「大規模殺戮」についてのルーラー側のアクションは終了となります
青年側については「違反者に殺された」という条件が付与されますが他の条件は一切替わっていません
確かにカレンの言うように「もう少し早く目覚めていれば」と思うことはあっても、彼はやはり上記の「想定内の犠牲」の範疇であると判断でき、ルーラーが「特例致し方なし」と個人的感情を優先するきっかけにはなりえないように思えます

そして後者ですが、そもそも魂喰いをしなければ充当な魔力が得られない→消滅してしまう→ルーラーが悪い、という思考になるのも納得できません
大規模な魂喰いを禁止するのは大前提であり、それで参加者が消滅してしまうことに対してルーラーはなんの責任もありません
「ルーラーのせいで違反を犯さなければならない状態になった」というのが前提にあるのでしょうが、それが上記の通り判断すればここは一考の余地もありません

以上の二点を鑑みれば「ルーラーのせいで」というルーラーにかかる責任の大前提が成立していないように思えますがいかがでしょうか
そうなればジャックが敗退することに対して責任を感じることはない、そしてアサシンとカレンの契約について特例として見逃す理由はないと思います
カレンが何らかの方法でルーラーから隠し通して契約したとか、上記の通り裁定者側の戦力として正式に契約した、ということであればまた話は変わってきますが

104 ◆tHX1a.clL.:2014/11/30(日) 22:02:56 ID:FzqLiQMw0
>続いて予選でマスターを失ったサーヴァントについてですが、これは>>88氏の六つ目の指摘のように、「はぐれサーヴァントは他にはいない」と確定させてしまえば済む問題です。

この点については完全に同意です
>>88氏のレスを見て「なんだ簡単なことじゃないか」と私もすぐに納得が出来ました。

>そして「投票に参加すらしてない参加者が一体増える」ことについてですが、これは他のロワでも時折ある「新たな主催者が姿を現す」といった事態も該当します。
>そう言った「新たな主催者」も、ある意味「投票に参加すらしてない参加者」と言えますが、彼らの登場はそのパートを書いた書き手の独断とは違うのでしょうか。
>または予約の際に、そのキャラの登場に関する議論が必ず行われているのでしょうか。

「新たな主催者」についてはたしかにそうです
ただし今回は純然たる「参加者としての参戦」であるため、氏の指摘とは全くの別物ではないでしょうか

そもそもパロロワにおける主催者=参加者と取るのが間違いでは?
主催者は運営する側であるためそもそもある程度の戦力を有し、参加者に対して隠しているのが前提です
私は主催側の構成員を投票で決めているところを見たことがないのでたぶんそうだと思います
ですが参加者は書き手枠も含めてまず明確に数字が出された状態でスタートし、その後の主催の介入なしで増えることは(カオスなノリで無い限り)ほぼありえません
主催側からのジョーカー追加や主催落ちなどもありますがそれはあくまで「主催が介入した」だけで初期に定められた参加者定数自体が増えたわけではありません
つまり、人数が増えるのは主催側のみであり参加者は変動していないのです

今回増えたジャックは氏の文中でもはっきり書かれているように主催者側ではなく参加者です。なので候補作が投下され投票をした結果残った28組と同じ扱いが作中でされます
なのでこれは元々の名簿に無い参加者メンバーを増やしたのだとしか判断できません
主催者から参加者に格落ちした、でもなくもともと正当な参加者であり主催が一時身柄を預かっていた、という扱いですので現状裁定者サイドですが上記の「主催が介入した」とも異なりますし


再び長くなりましたが以上です
最後になりますが、氏の配慮を無視して企画を蔑ろにしている等と言ってしまい申し訳ありませんでした
ご指摘があればよろしくお願いします

105 ◆ysja5Nyqn6:2014/12/01(月) 00:25:27 ID:pU4/mHm.0
>「大規模殺戮」というルールの前提に抵触しなければ、これは黙認されるべき行為
という意見には、反論させていただきたと思います。
これは言い換えれば、「大規模殺戮」にならないのであれば、目の前でどれだけ魂喰いが行われても、絶対に見逃さなければならない、とも取れてしまいます。
いくらルールの許容範囲以内であり、対象がNPCだからと言って、聖女と呼ばれるほどに正当な英霊であるルーラーがそれを許容できるでしょうか。
NPCをどれだけ殺せば「大規模殺戮」になるのか、という判定もありますし、そこまでルーラーの行動を制限するのであれば、わざわざルーラーを聖杯戦争の管理者として用意する必要はないのでは? と思います。

>単なる魂喰いであればルーラーは警告も行わないでしょうし、〜略〜「特例も致し方なし」とは露ほども思わない
という意見にも否を言いたいですが、こちらはルーラーの人柄に対する書き手側の印象となりますので、強くは言いません。
ただやはり、魂喰いに気付いたのであれば、警告ぐらいはするのではないかと思います。
後の、ルーラーの役割はあくまでもNPCの保護と違反者の処罰であり、青年の死やそれによるアサシンの敗退に対し責任を感じる必要はない、という点に関しましても、ルーラーの人柄の捉え方によって変わると思われるので割愛します。
私はルーラーを、その事に責任を感じる人物であると捉えていた、とだけ言っておきます。

参加者としての参戦と主催者としての参戦は、確かに別物でしたね。
私の方も少し熱くなっていたようです。申し訳ありません。
しかしその前提ならば、今回のアサシンも、氏が言ったような「再契約の可能な参加者ではなく、裁定者側の戦力として正式に契約した」とするのであれば問題はない、という認識でよろしいでしょうか。

106サイバーゴースト名無しさん:2014/12/01(月) 00:47:26 ID:dhkuteh6O
魂食いを見逃せないのであれば、令呪でそう命じればいいのではないでしょうか?

107 ◆tHX1a.clL.:2014/12/01(月) 00:53:54 ID:99UMlxt.0
はい、私個人としてはそれで問題無いと思います
長時間にわたってお付き合いいただきありがとうございました
修正頑張ってください

それと、修正の際にジャックのステータス表も合わせて制作して投下の最後にでも添付していただけるとありがたいです
以上です

108 ◆HOMU.DM5Ns:2014/12/01(月) 03:55:02 ID:Gw4pgRHM0
書き込めない状況時になにやら一悶着あったようなので、遅まきながら意見させて戴きます。
一先ずはジャックについてのみ。

問題視されるのは致し方ない展開だと思っています。
中でも問題なのは、以下の複数の要素が一話分に凝縮されている点にあると見受けられます。

「新規サーヴァントの追加」
「オープニングで死亡した生徒に召喚された(されていた)」
「はぐれサーヴァントが裁定者(カレン)と契約している」
「契約したサーヴァントはアサシン(ジャック・ザ・リッパー)」
「サーヴァントを失ったマスターがいれば(理論上としては)参加者枠としての復活が可能」

例えば、アサシンが初めからカレン護衛のサーヴァントとして宛がわれたとしても、
聖杯にかける願いのあるサーヴァント、それも殺人鬼の英霊を付けるのはどう見ても問題です。
既存通りはぐれサーヴァントとなったアサシンを登用するにしても、カレンの思惑はどうあれ上述の通りアサシンは危険要素の塊です。
少なくとも真名を知れるルーラーは必ず反対の意を示すでしょう。ロンドンの殺人鬼ジャック・ザ・リッパーを裁定者側に置くのは危険だと。
そもそもにして、「目の前にマスターもなく特殊な事情のサーヴァントがいるから丁度いいので自分の戦力に組み込もう」。
カレンが内心に何を秘めようと、そんな場あたり的な対応を取ったこと自体に違和感を隠せません。
おかしくないかもしれないが、それで契約したのがこのアサシンでは結局疑問になります。

全てにそれぞれ綿密な理由付けを必要としてしまうと、結果として収集がつかなくなる事態となるのは容易に想像できます。
ひとつひとつの問題は解決できても、それがまた別の要素に齟齬を生じさせてしまっているのです。

無論、上記レスにて幾つか解決案は提示されてあります。自分の指摘にも矛盾がないとも限りません。
カレン裁定者の立場を崩すことなくルーラーを説得する形もあり得ます。
そうすれば、ルール上は問題はなくなります。
こちらに断として拒否できるだけの理由はないです。多数の納得を得て受け入れられるのならそれが一番です。

ですが今回の展開は単なる新規サーヴァントの独断投入のみならず、
後の裁定者の立場、思考、心情、信頼性その他諸々の要素を破壊してしまう可能性を少なからず孕んでいるということを、どうか留意下さい。
自分の心配が間抜けな的外れの杞憂であることを願います。

最後に、深夜になる前に意見を残せなかった自身の至らなさを謝罪します。申し訳ありませんでした。

109 ◆fhD3y9RNl2:2014/12/01(月) 04:14:00 ID:SDfAzFoA0
議論スレしか見ていなかったものでこちらに気づきませんでした。
一度しか書いてない立場で議論に参加するのも憚られますが、ちょっと気になったので書き込みます。

>>95
>そして「投票に参加すらしてない参加者が一体増える」ことについてですが、これは他のロワでも時折ある「新たな主催者が姿を現す」といった事態も該当します
>そう言った「新たな主催者」も、ある意味「投票に参加すらしてない参加者」と言えますが、彼らの登場はそのパートを書いた書き手の独断とは違うのでしょうか。
>または予約の際に、そのキャラの登場に関する議論が必ず行われているのでしょうか。

こういった事例が枚挙に暇がないのは確かですが、それらはほぼ例外なく進行が中盤を過ぎたか終盤に差し掛かったあたりで発生します。
ではなぜそういうキャラが必要になるのかというと終盤に向けて話を畳んでいくためであり、そこから話を広げるためではありません。
話数こそ百話を超えていれど脱落者がまだ一人の当企画はまだまだ序盤であり、それらの例と同じ尺度で考えるのはいかがなものかなあと。

アサシンとの契約は戦闘力の乏しいカレンを動かしやすくするためとのことですが。
カレンに戦力を持たせてしまうことで逆にそういう「カレンが戦わなければならない展開」を引き起こしやすくなるのではないかとも思います。
卵が先か鶏が先かみたいな話ですが、ここの書き手諸氏なら戦力が無ければ無いなりの動かし方をしてくれるんじゃないでしょうか。


で、こっちは純粋に疑問だったのですが。
早朝の時点でカレンはアキト・ガッツと会ってますが、このときカレンはアキトとガッツに武器を向けられています。
アサシンはこのときどこにいたのでしょうか?
アサシンをカレンの自衛用に契約したとすれば、まさにこの時この場で出てきてないとおかしくなる気がします。
ガッツは全サーヴァントの中でも指折りに強力であり、また高レベルの狂化持ちなのでいつ爆発するかアキトにだってわかりません。
令呪の自衛の範疇にも該当するでしょうし、黒のアサシンの性格から考えても、マスターに武器を向けられたら確実に反撃しているでしょう。
交渉をするために遠ざけていたとするなら、それこそ自衛用の戦力として契約した意味もなくなります。

ついでにいえばガッツは烙印持ちで、本人の意志に関係なく怨霊や魍魎といった存在には非常に敏感です(なんせ神霊クラスの存在に刻まれたものなので)。
黒のアサシンはまさに怨念が集合して生まれた怨霊ですので、いくら気配を抑えていてもまったく悟られないのは何だかなあと。


長々と書きましたが、この段階での黒のアサシンの追加は心情的にも整合性の面からも難しいのではないかと思います。
序盤での新キャラの追加は非常にデリケートな問題なので、少数の書き手の間で決めるのではなく、もっと多くの書き手の意見が聞きたいところですね。

110 ◆ysja5Nyqn6:2014/12/01(月) 09:46:10 ID:pU4/mHm.0
◆HOMU.DM5Ns氏、◆fhD3y9RNl2氏、両氏ともご意見ありがとうございます。

アサシンの聖杯への願いや、再契約などに関しては、上記レスにある通り解決案はすでにあります。
またアサシンを登場させた理由も、メタ的なものも含めて、上記レスで返答させていただきました。
ルーラーのアサシンに対する心情についても、解決案はあると思われます。

ガッツの烙印に関しましては半ば失念していましたが、完全に気配を遮断していれば違和感程度に収まると思われます。
そしてガッツは狂化されており、またあの時はアキトと同様、カレンに対して怒りを覚えていました。多少の違和感よりは、目の前の人物に対する怒りを取るのではないでしょうか。
アサシンの方も、ガッツが強力なサーヴァントであることは理解しているはずなので、正面から戦うようなまねはせず逃げに徹するでしょう。
そして下手に姿を現して意識されるよりは、唐突に現れてカレンを連れて逃げるほうが、不意打ち的な意味でも逃走の成功率は上がると判断できます。


ですが、殺人鬼であるアサシンを裁定者であるカレンのサーヴァントにするという行為そのものに対する問題および、
それによる後の裁定者の立場、思考、心情、信頼性などの要素を破壊してしまう可能性などについては理解しました。
確かに私にそのつもりがなくとも、そうなる可能性は考慮できたはずでした。
むしろ率先して破壊しに動く、ベルク・カッツェのような参加者もいるわけですし。

また裁定者側の人間を増やすとしても、さすがに時期尚早すぎるという点も理解しました。
「カレンが戦わなければならない展開」を引き起こしやすくなるという点も、後の展開の限定になりかねないという意味では、確かにその通りでした。
それにサーヴァントを主体とする聖杯戦争における、サーヴァントを持たないならではの行動も、確かにあると思います。


以上から、今回の拙作におけるアサシンのパートは破棄させていただきたいと思います。
名無しの皆様も書き手の皆様も、アサシンの登場に対して意見していただき、ありがとうございました。

111 ◆ysja5Nyqn6:2014/12/01(月) 13:49:30 ID:pU4/mHm.0
それでは、アサシンパートを除いた指摘への返答を行なわせていただきます。

・正純が返答にJud.を使っていたこと
この返答は、武蔵に住む者が基本的に使っている言葉です。応答の際に反射的に使うといったことは十分考えられると思います。
また、確かに相手に正式な意味は通じないかもしれませんが、NPC時代の頃に反射的に使っていたとすれば、応答の言葉であるということくらいは察せられると思います。

・子供だからと言う理由で聖杯戦争とは絡んでいないと断定したこと
これは読み返しミスです。
確かに子供だからという理由でマスター候補から外すのは、正純の状況からしても浅はかな考えでした。
ですので、断定はできないが、怪しくはあるという方向に修正させていただきます。

・桜の状態表に「学校へ連絡している」とある
・気がつけば5時間目も終わっていた。とある
この二つも読み返しミスです。それぞれ修正させていただきます。

・カレンを指してルーラーと呼ぶ
こちらは見直しミスです。修正させていただきます。

・カレンは凛達に同行し、ルーラーは単独でB-4を調査する
それに近い感じになります。
その旨を加筆修正させていただきたいと思います。

・岸波と狭間の行っている所は『学園』ではなく『学校』
『092:同じことか』にて、白野は既に月海原学園の生徒であるとされています。
また原作でも新都から通っている生徒はいたため、それよりも近い位置に住んでいる狭間も、学園生とさせていただきました。

・聖はNPC時代から命蓮寺に住んでおり、これを疑うとどんな些細なことでも疑心暗鬼にならざる得ない
確かにその通りですね。そこら辺の旨を追記させてただきます。

以上でよろしいでしょうか。

112 ◆HOMU.DM5Ns:2014/12/01(月) 23:57:07 ID:Gw4pgRHM0
返答が常に遅れて申し訳ありません。消去の件、了解です。
通常文の他の指摘修正ですが、上記のもので問題ないです。
近場にいるルーラーを置いてカレンが出向くのにも納得いく理由づけがあれば大丈夫でしょう。

その上で付け加えておくのなら、
一成の桜への呼称がさんづけなのに違和感があります。基本彼はさんくんづけはしないキャラです。
冬木のとは厳密には別人ですがパーソナリティに変わりはないですし。

113サイバーゴースト名無しさん:2014/12/02(火) 09:48:12 ID:HlcyhKOw0
修正の件了解しました。
個人的にアサシンが消去されるのは少し残念です。
ですが、書き手の皆様のご意見を拝見させて頂いて成程なと感心致しました。

◆ysja5Nyqn6氏は修正の方頑張って下さい。
これからも二次二次聖杯の企画を応援してますので、書き手の皆様も今後ともよろしくお願いいたします。

>>112
原作の一成の桜に対する呼称は『間桐さん』であってます。hollowでそうでした。
まあ確かに一成は呼び捨てが基本なのはその通りですし、そもそも一成と桜の絡みは原作でほとんどないですからね。

114 ◆ysja5Nyqn6:2014/12/02(火) 22:37:28 ID:9FONzWrc0
応答が遅れて申し訳ありません。
それでは、修正が完了次第本スレに投下させていただきます。

115 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:34:19 ID:cFd7vIqo0
仮投下します。

116前門の学園、後門のヴォルデモート ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:35:59 ID:cFd7vIqo0


 アーチャー、アシタカは、自身のマスター、東風谷早苗を抱きかかえて山を駆ける。
 生い茂った樹木、風に揺れる木漏れ日、草木の臭い、鳥のさえずり……再現された自然は、ここが電子空間だと知っていても、にわかには信じがたいほどのリアリティがあった。

 しかし、獣の数は少ない。熊、狼、猪、馬、鹿など、人よりも大きい、もしくは凶暴な動物はほとんど見当たらない。小鳥、リス、狸、狐、虫、兎……おおよそ、人の脅威になりようにない小動物しか見受けられない。
 人里近くと言うこともあり、危険な動物は駆逐されてしまったと言うことなのだろうか。

 ――これがこの時代の、自然か。

 そんな感傷を抱きながらも、アシタカは木々の隙間をかいくぐる。





117前門の学園、後門のヴォルデモート ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:36:34 ID:cFd7vIqo0



 ――話は数時間前に遡る。
 
『アーチャー。白野さんのこと、アキトさんに伝えた方がいいでしょうか?』

 教会を出て歩きながら、早苗はアシタカに尋ねる。
 周囲には使い魔らしき斥候が居るとのことで、念話で会話だ。

 岸波白野。裁定者カレン曰く、月の聖杯について知るマスター。
 早苗の目的は、テンカワ・アキトが人殺しをすることを止めること。引いては聖杯戦争そのものを止めることだ。
 その為、早苗は彼女の助言に従い、彼を捜すつもりだった。
 だが、その前にアキトと交戦し、どちらかが死んでしまえば元も子もない。
 故に、アキトに白野と交戦しないようお願いした方がいいのではないかと考える。

『しかし、その白野殿の容姿はわかるのだろうか? さすがにそれも分からなければ、さすがにアキト殿も困るであろう』
『た、確かにそうですね……』

 戦国武将や騎士のように、交戦前に名乗りを上げるとは限らない。むしろ、名乗らない方が多いだろう。いちいち名を聞いては不意打ちもできず、戦闘にも支障が出る。
 元々、アキトの人殺しを止めたいというのは、早苗の我が儘でしかない。アキトに『交戦前に相手の名前を確認し、それが白野であれば攻撃を行わないようにしてもらう』などとお願いするのは、如何せん無理があるだろう。

『せめて、容姿が分かれば……あ』

 一瞬だけ、早苗の記憶に掛かった霧が晴れる。

『思い出しました。白野さん、確か私のクラスメイトです』
『そうなのか?』
『……た、たぶん。少なくとも、学生服を着てたはずなんで、学園生だとは思います』

118前門の学園、後門のヴォルデモート ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:36:54 ID:cFd7vIqo0

 アシタカに確認を求められると、狼狽するぐらいにはあやふやな記憶。NPC時代の、『方舟』に与えられた仮初めの記憶だ。ひょっとしたら去年のクラスメイトだったかもしれないし、一度もクラスメイトになったことはなかったかもしれない。
 けれども、岸波白野と言う名の人物が、学生服を着ていたのを思い出した。

 もっとも、相変わらず顔は思い出せないままだし、カレンの言っていた人物が早苗の記憶上の人物とも限らない。
 それでも、一目見ればおそらく思い出すだろう。

『だが、他に当てはない。闇雲に探すよりは良いだろう』
『ありがとうございます。では、学園に行きましょう。職員室に生徒名簿があると思います』

 早苗は学園に行くことにした。
 早苗の家にある連絡網や卒業アルバムに、岸波白野の名や連絡先があるかもしれない。また、学園に行くのであれば、早苗の家にある学生服を着ていった方が良いだろう。

 だが、彼女の家はC-9にある。今はD-5だ。学園とは反対側にあり、戻るには遠い。
 その為、確実に連絡先が分かるであろう学園の生徒名簿に目を付けた。

『忍び込むのか?』
『あまり時間も掛けてられませんし……やっぱり、まずいでしょうか』
『いや、そうではない。マスターらしいと思っただけだ』

 元々、ここは『方舟』が聖杯戦争を行うために作り上げた空間だ。殺人をも容認される――と言うより、それを目的とした――無法の地である。己の良心に従い、聖杯戦争を止めると行動する早苗の方がイレギュラーに近い。
 一度決めたら、目標に向けて恐れることなく真っ直ぐ前に進む。
 彼女らしい姿に、アシタカは嬉しそうに微笑んだ。

『では、バス亭に行きましょうか。あ、でもバスでの移動はあまりしない方がいいんでしたっけ』
『私がマスターを抱きかかえ、学園南の森を駆けるのはどうだろうか』

 アシタカの提案に、早苗は顔を朱に染める。

『え、だ、抱きかかえられるん、ですか?』
『森の中なら、人目を気にすることもない。敵の攻撃が来ても早苗殿を庇って避けるのも容易だ。ルートの決まっているバスよりも安全で速いはず』
『で、でも……私、重くないですか?』

 アシタカの提案は理にかなっている。だが、早苗は恥ずかしそうに小声で返す。

『大丈夫だ、マスターは木の葉より軽い』
『うう……ずるいです……』

 早苗は恨めしそうに、上目遣いでアシタカを見上げた。





119前門の学園、後門のヴォルデモート ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:37:28 ID:cFd7vIqo0



 一人と一騎が山を駆ける。
 速さはそれほどでもない、精々自転車程度の速度だろうか。樹木などの障害物が多いので、早苗に当たらないよう、アシタカが注意して駆けているからだ。
 それでも教会にいた使い魔達は簡単に撒くことができた。そもそも追ってこなかったのかもしれない。

『マップは長方形に区切られてますけど、区切られた先には何があるんでしょうか?』

 早苗は南側を見つめながら、念話でアシタカに尋ねる。見える範囲には、壁らしきものは存在しない。

『分からぬ。聖杯から与えられた知識の中には無いな。後で試しに矢を撃ってみよう』
『あ、いえ、そこまでしなくてもいいです』
『ふむ、そうか』

 早苗にとっては余り重要な事ではないのだろう。ただの世間話で終わる。

『マスターが住む幻想郷もこのような自然なのだろうか』
『そうですね……もっと自然は多いですね。バスや車はありませんし、ビルもありません。もっとも、山に住んでいるのは、私達以外はほとんど妖怪なんですけどね』
『妖怪……あやかしか』
『えぇ、ほとんど天狗と河童です。あと神様も住んでます』
『なるほど。幻想郷は私が生きていた世界と似ているのだな……と、マスター。ここから北上すれば学園だが、念のため学園の位置を確認しておきたい。少し待って貰えるだろうか』
『はい、わかりました』

 アシタカは会話を打ち切り、ちょうど開けた丘のあるところで足を止める。早苗をその場で下ろすと、背の高い枝にめがけて跳んだ。ビルの三階に匹敵する高さまで一回の跳躍で辿り着く。

120前門の学園、後門のヴォルデモート ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:37:46 ID:cFd7vIqo0

『む、あれは……』
『どうしたんですか?』
『マスター、私の視覚を使ってもらえないだろうか』
『え、えっと……こうかな?』

 早苗は瞳を閉じる。他者の視覚を使うことは今までに一度もなかったが、『方舟』に与えられた知識でやってみると、思いの外すんなりとできた。

 まず、視界の高さが違った。今、アシタカは早苗よりも10mは高い位置にいる。早苗を囲うように生えている樹木は、今度は見下ろす形となった。
 そして、視界の距離。ピントが自動で直ぐに合う望遠鏡を使ったみたいに、数キロ離れた先までくっきりと見える。

 アシタカの視界の先、それは学園の屋上だった。
 そこにいたのは、ただならぬ様子の人影。学生服を着た少女が一人、橙色の衣を羽織った少女が一人、そして黄金の鎧を身に纏う男……おそらく、サーヴァント。さらに、紫髪の少女の隣にも霊体化したサーヴァントの気配があった。

 アシタカの視覚を借りて早苗が見ると、3つの人影の内、2つにパラメータが見て取れた。

『アーチャー、橙色の衣を着た女性はサーヴァントです。クラスはキャスター。そして、黄金の鎧の男性がセイバーです』
『なるほど。学生服を着た少女の側に霊体化したサーヴァントがいる。彼女はおそらくマスターだろう』
『ですね……あれ? シオンさんかな?』

 白野に関してはあまり覚えのない早苗だったが、シオンについては記憶にあった。エジプトの交換留学生で、長い紫髪を三つ編みにしているという、色々な意味で特徴的な人だった。

『知り合いなのか?』
『いえ、有名な人で一方的に知ってますけど、面識はないです』
『そうか』

 もっとも、本名であるシオン・エルトナム・アトラシアの長い名を覚えている訳ではない。ファーストネームを覚える程度の興味だ。話し掛けたこともないし、どのクラスかも知らない。

『しかし、一触即発な様子だ。戦闘が起きるかもしれない』

 一人と二騎が三すくみの状況でにらみ合っているように見える。何か会話もしているようだが、早苗にもアシタカにも読唇術はないのでわからない。

『あっ――!』

 不意に、キャスターが爆散した。その死に様に、早苗は視覚の共有を切ってしまう。
 一方、アシタカはキャスターを凝視する。不気味な笑みを浮かべ、身体を蟲と化しながら、散っていく様を。

 そしてキャスターが居なくなると、セイバーも姿を消す。残されたのはシオンだけだった。
 アシタカは枝から飛び降りると、口元を抑える早苗の肩に手を置く。

『マスター、少し話がしたい。大丈夫だろうか』
『あ、はい……大丈夫です』

 吐き気を堪えながらも、早苗は気丈に振る舞う。

『今、学園には三騎か四騎、もしくはそれ以上のサーヴァントがいる』
『三騎か四騎?』
『そうだ』

 早苗の問いに、アシタカは頷く。

『まずはセイバー。あの中では私が一番危惧するサーヴァントだ』
『そうなんですか?』
『ああ。これから私達は学園に向かう。学園は死角が多く、敵の発見も遅れる。戦いとなれば、おそらく近接戦となる。近接戦は不得手ではないが、セイバーと対等に戦えるほどではない』
『なるほど……』

 宝具やスキルは分からないが、『セイバーは近接戦に強い』という推測だ。例外が数多存在するのが聖杯戦争だが、その推測の仕方は間違ってはいない。

『次に、シオン殿のサーヴァント。こちらもクラスは分からない。セイバーやランサーであれば、あの姿を現したセイバーと同様、苦戦するだろう』
『そうですね』

 早苗はシオンが聖杯戦争に何を求めているか知らない。敵対し、交戦する可能性も当然ありうると視野に入れる。

121前門の学園、後門のヴォルデモート ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:38:18 ID:cFd7vIqo0

『そして、攻撃を受けたキャスター』
『え? あのキャスターは死んだんじゃ……』
『基本的に、サーヴァントは生前の願いを叶えるために聖杯戦争に望んでいる。もし仮に私に願いがあって、その上で敗れる時、私ならあのように嗤わない。足掻き藻掻いてでも戦う。あの笑みは、末期に見せる笑みではない』
『じゃあ、どういう事なんですか?』
『宝具かスキルか魔術か、如何なる手を使っての身代わりではないだろうか。勿論、私の推測が外れ、あの攻撃で脱落した可能性も十分にある』
『でも、注意するに越したことはない。そう言うことですね』
『その通りだ』

 意見があった一人と一騎は、顔を見合わせて頷く。

『けど、三騎か四騎と言うのは?』
『キャスターに攻撃をしたサーヴァントだ。様子からして、あの場に居た二騎のものではないとは思う。校舎の中か影か、視界外に居た可能性がある』
『樹木も邪魔で、校庭とか見えなかったですしね』
『ただ、あの攻撃はキャスター自身かもしれない。“キャスターは脱落した”。そう思わせるための自作自演の可能性もある』
『だから、三騎か四騎なんですね』
『そうだ』

 アシタカは頷く。これで状況確認は終わった。

『それでマスター、これからどうする?』
『これから、ですか?』
『今から学園に向かえば、先ほどのセイバーやシオン殿、キャスターに遭遇する可能性は高い。日が暮れるまでここで待ち、夜に行く方が教師や生徒などのNPCも少なく、より忍び込みやすくなるだろう』
『でも、セイバーやシオンさん達が夜になったら学園から居なくなる保証も無いんですよね』
『そうだ。その場合、時間を無為に過ごすことになる。あるいは今より状況が悪くなる可能性も無いわけではない』
『……』

 早苗は会話を切り、思案する。
 今行くか、まだ留まるべきか。
 重要な選択だ。この選択によって今後が大きく変わるだろう。
 しかし、アシタカは早苗の助言や助力はしても、行く末を指図することはない。最終的には早苗が決断すべき事柄だ。
 早苗は悩み、アシタカはそれを見守る。



 ――だが、彼女達は知らない。

 彼女達のすぐ側に、リドルの館が――『名前を言ってはいけないあの人』の工房があるということを。

122前門の学園、後門のヴォルデモート ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:38:45 ID:cFd7vIqo0



【D-3/リドルの館付近/一日目 夕方】

【東風谷早苗@東方Project】
[状態]:健康
[令呪]:残り2画
[装備]:なし
[道具]:今日一日の食事、保存食、飲み物、着替えいくつか
[所持金]:一人暮らしには十分な仕送り
[思考・状況]
基本行動方針:誰も殺したくはない。誰にも殺し合いをさせたくない。
0.今から学園に向かうか、夜までこの場に留まるか、選択する。
1.岸波白野を探す為に学園の職員室に侵入し、生徒名簿から連絡先を探る。
2.岸波白野を探し、聖杯について聞く。
3.少女(れんげ)が心配。
4.聖杯が誤りであると証明し、アキトを説得する。
5.そのために、聖杯戦争について正しく知る。
6.白野の事を、アキトに伝えるかはとりあえず保留。
[備考]
※月海原学園の生徒ですが学校へ行くつもりはありません。
※アシタカからアーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しましたが、あくまで外観的情報です。名前は把握していません。
※カレンから岸波白野の名前を聞きました。その名前に聞き覚えはありますが、よく思い出せません。
 →クラスメイトだったような気がしています。あやふやな記憶なので、実際は違うかも知れません。
※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。
※アキト、アンデルセン陣営と同盟を組みました。詳しい内容は後続にお任せします。なお、彼らのスタンスについて、詳しくは知りません。
※バーサーカー(ガッツ)、セイバー(オルステッド)、キャスター(シアン)のパラメータを確認済み。
※アキトの根城、B-9の天河食堂を知りました。
※シオンについては『エジプトからの交換留学生』と言うことと、容姿、ファーストネームしか知らず、面識もありません。

123前門の学園、後門のヴォルデモート ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:39:05 ID:cFd7vIqo0

【アーチャー(アシタカ)@もののけ姫】
[状態]:健康
[令呪]
1. 『聖杯戦争が誤りであると証明できなかった場合、私を殺してください』
[装備]:現代風の服
[道具]:現代風の着替え
[思考・状況]
基本行動方針:早苗に従い、早苗を守る。
1.早苗を護る。
2.使い魔などの監視者を警戒する。
3.学園に居るサーヴァントを警戒。
[備考]
※アーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しました。
※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。
※教会の周辺に、複数の魔力を持つモノの気配を感知しました。

[共通備考]
※キャスター(暁美ほむら)、武智乙哉の姿は見ていません。
※キャスター(ヴォルデモート)の工房である、リドルの館の存在に気付いていません。
※リドルの館付近に使い魔はいません。
※『方舟』の『行き止まり』について、確認していません。
※セイバー(オルステッド)、キャスター(シアン)、シオンとそのサーヴァントの存在を把握しました。また、キャスター(シアン)を攻撃した別のサーヴァントが存在する可能性も念頭に置いています。
※キャスター(シアン)はまだ脱落していない可能性も念頭に置いてます。

124 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:43:17 ID:cFd7vIqo0
投下終了です。
ケイネス&ヴォルデモートは登場しませんが、
・工房のリドルの館の側に早苗とアシタカが来る。
・リドルの館の側に来たタイミングが固定される。
・リドルの館付近に使い魔がいない。
と、間接的に大きな影響が出てしまうと思ったので、予約させて頂きました。
ご了承ください。

指摘事項や誤字などがあれば、ご指摘ください。
問題なければ、本スレに投下したいと思います。

125サイバーゴースト名無しさん:2014/12/17(水) 00:54:47 ID:YmfJwTx.0


>大丈夫だ、マスターは木の葉より軽い
なんやこのイケメンセリフ……///
惚れてまうやろー!

126サイバーゴースト名無しさん:2014/12/17(水) 01:47:23 ID:31gDOwnQ0
仮投下乙です。
ザビエルの情報を求めていざ学園へ
しかし早苗さん達が知らぬうちに既に学園は火薬庫と化していた
進むか退くか、早苗さんの選択はどっちだ
あと早苗さん!そこお辞儀の拠点あるで!

127サイバーゴースト名無しさん:2014/12/17(水) 20:04:51 ID:ru3ccLtk0
仮投下乙です。
そうですね、問題点と言うなら、早苗さんが方舟からの知識であっさりサーヴァントとの視覚共有が使えていることが、少し問題だと思います。
034「既視の剣」およびそれ以降、切嗣はそれが出来なくて苦労してますから、方舟からの視覚共有サポートは、あるとしても「そういう技術があることは分かるが使えるかは素質による」程度の情報くらいではないかと思います。
まあ、早苗さんの場合、神の血を引く由緒正しい家系の正当後継者で、神の庇護を受けて育ち、幻想の世界である幻想郷で暮らしているという神秘大バーゲンの経歴の持ち主ですから、サポート無しでも視覚共有くらい出来てしまってもおかしくない、と個人的には思います。
潜在能力以外にも「魔術やサーヴァントに対する先入観を持たないがゆえの可能性」なども、彼女なら持っていますし、巫女的な存在としての霊との交信に適した能力とかあってもおかしくは有りませんからね。

ともかく、続きへの期待が高まる良い話でした。
しかし、本当にアシタカはイケメンですねぇ……彼女(婚約者?)持ちですが。
型月で例えるなら、調査力が落ちた代わりに戦闘力が大幅に上がったコクトーみたいなものでしょうか。
……なるほど、頼りになるわけです。

128サイバーゴースト名無しさん:2014/12/17(水) 20:17:48 ID:RiBeIDW20
鯖との視覚共有は見習いレベルの言峰でもできるのでそんな難しくなさそう
ただ鱒側の目閉じたり精神統一っぽいことしなきゃならないので、鱒が戦闘中や移動中は無理みたいな

129 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 23:42:06 ID:cFd7vIqo0
感想及び指摘ありがとうございます。

・視覚共有について

メタ的に言えば、ルールに『マスターのできること一覧』が無いので、書き手間で齟齬が生じているのだと思います。
パラメータにクラスが表示されるかどうかも、この類だと思っています。

切嗣が視覚共有を使わなかったのは、「英霊と感覚を共有なんてしたくない」みたいな突っぱねたイメージが少し浮かびました。

大きな問題もなさそうなので、本スレに投下したいと思います。

130サイバーゴースト名無しさん:2014/12/18(木) 14:55:03 ID:lwVDt4jY0
マスターが共通でできることって
・ステータスの視認(意識してやらないと無理?)
・鯖との視覚共有(ある程度の魔術知識が必要?)

くらいなのかな

131サイバーゴースト名無しさん:2014/12/18(木) 15:15:15 ID:lyZyL4Mk0
・他者の令呪感知(ただし通常時には反応なし、多大な魔力供給を行ってる際のみ?)

「初陣」以降確認されてないけどルリルリ、春紀がやってたので一応これも
ステータス視認はどこまで見れるのかはっきりしてないけど、この辺はマスターによってまちまち扱いでいい…のかな?

132サイバーゴースト名無しさん:2014/12/18(木) 19:02:45 ID:ZWiJJYOw0
・ステータスの確認(意識しないと無理? クラスも表示される?)
・鯖との五感共有(視覚のみ? 魔術的な知識が必要で、誰にもできるわけではない?)
・他者の令呪感知(ただし通常時には反応なし、多大な魔力供給を行ってる際のみ?)
・念話の行使(鱒鯖間のみ)
・令呪の行使(それなりの集中が必要? 行使には発音が必要?)
・令呪の譲渡(渡すときは一方的な意思表示でも可? 譲渡する際の距離に制限はある?)

まだあるだろうか?

133サイバーゴースト名無しさん:2014/12/18(木) 19:38:26 ID:l4FEz7yA0
もっとも基本的な鯖への魔力供給は書く必要あるかな?
あとは睡眠時に鯖の記憶を夢として見る(鯖側も鱒の記憶を見る。意識的に遮断可能?)とか?

134サイバーゴースト名無しさん:2014/12/18(木) 19:49:51 ID:l4FEz7yA0
あ、そうだ
鯖が鱒の危機を感知するってのもあったような
……鱒側は鯖の危機を感知できるのかな?

135サイバーゴースト名無しさん:2014/12/18(木) 19:56:30 ID:lyZyL4Mk0
>>134
少なくともマスターがサーヴァントの危機を感知するのは出来なそう

ステータス視認は保有スキルみたいな結構重要な情報も確認できるのかは気になる
今までの話見た限りではそういう描写なさげだけど

136サイバーゴースト名無しさん:2014/12/18(木) 20:04:33 ID:qOStGn/.0
鱒側は鯖が死にそうな時は令呪が痛んで知らせてくれるんじゃなかったっけ?
まぁ本当に死の一歩手前で知らせるから気付いて令呪使った時には手遅れだけど

137サイバーゴースト名無しさん:2014/12/18(木) 20:05:35 ID:l4FEz7yA0
たぶん、そのスキルや宝具を認識したらその情報を確認できるって感じじゃないかな?
原作でのランサーの場合、ルーンが使用されたらそれが、矢避けの加護が発動したらそれがstatusに載るって風だし

138 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/30(火) 19:27:41 ID:2tV2E4L20
予約分を仮投下します。

139『主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた』 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/30(火) 19:28:29 ID:2tV2E4L20


 ジナコ・カリギリとランサー、ヴラド三世はB-10の住宅街の外れを歩く。
 周囲にNPCの気配はない。二人はこのまま人気のない廃教会へ向かうつもりだ。

 突然、ジナコの持つ携帯電話が鳴りだした。
 どうやら自宅の電話から転送されたもののようだ。

「ひ、ひゃあ?! ラ、ララララ、ランサーさん。ど、どどどどどうすればいいッスか?」
「……知らん。好きにしろ」

 ランサーはジナコの保護を約束したが、子守までするつもりはなかった。
 逆探知やイタズラ電話などの可能性も考えられる。だが、実際に物理的に問題がおこれば、今はランサーがジナコの身を保護してくれる。
 結局、ジナコはあたふたしながらも、結局電話に出ることにした。





140『主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた』 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/30(火) 19:29:02 ID:2tV2E4L20



 ジョンス・リーはベルク・カッツェが嫌いだ。

 ベルク・カッツェは高みの見物をして人を馬鹿にし、それでいて自分は悪くないとのたまう、反吐の出るクズ野郎だ。
 自身のサーヴァントに倒させるのではなく、自らの八極拳で倒さねば気が済まないほどに嫌いだった。
 だが、ベルク・カッツェはアサシンだ。サーヴァントだ。
 サーヴァントの本質は霊体であり、神秘の存在しない攻撃は効果がない。ベルク・カッツェもその例外ではない。如何にジョンスの八極拳の威力が強かろうとも、単なる物理攻撃でしかないそれでは、ベルク・カッツェには届かない。

 故に、ベルク・カッツェを倒す術を探しに、図書館まで来た。
 伝承からベルク・カッツェの弱点を見つけるために。サーヴァントをサーヴァントならざる身で倒す方法を見つけるために。
 そして本に埋もれること数十分。ついにベルク・カッツェと思わしき伝承の書物にあたった。

 しかし、熟読する前に二度の襲撃を受け、未だに弱点を探し出せては居なかった。
 襲撃で受けた傷も治療し、ふと時計を見やる。そろそろ18時を回ろうとしていた。

「そうだな。一度、連絡してみるか」

 駄肉こと、ジナコにベルク・カッツェのマスター、宮内れんげを保護させている。ジョンスがベルク・カッツェを倒す前に、れんげを誰かに殺されてしまっては意味がない。ベルク・カッツェにはれんげを護る意思が無いことは分かっていたが、自身で連れ歩いていては闘争ができない。その為、ジナコに任せていた。
 まだベルク・カッツェ撃破の糸口を掴んだだけだが、既に誰かに倒されていないか、確認の意も込めて連絡する必要があるだろう。

 ジョンスは図書館を出ると、携帯電話に手を掛けた。

141『主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた』 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/30(火) 19:29:21 ID:2tV2E4L20

『もしもし……?』
「俺だ、ジョンスだ」
『えっと……どちら様ッス?』

 ジナコのマヌケな声が帰ってくる。

「寝ぼけてるのか?」
『ひいいいいいっ!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』

 電話の向こうで平謝りするジナコの声を呆れながら聞いて、ふと思い出す。

「……そう言えば、名乗ってなかったか」

 ジョンスがジナコといた間、彼女はほとんど気を失っていた。電話番号を聞いたときも、名乗った覚えはない。さらに、電話番号を聞く際に寝ていたジナコを叩き起こした。言葉通り、寝ぼけてたのかもしれない。

「悪い。ジョンス・リー。八極拳のジョンス・リーだ。れんげから聞いてるだろ? あいつは今どうしてる」
『八極拳のジョンス……れ、れんげちゃん?! えっと、えっと……』

 ジナコが歯切れの悪い返答をしていると、電話の向こうで携帯電話が引ったくられる音がした。

『電話を替わった。お前が八極拳か?』

 次に聞こえた音は、壮年の男の声だった。聞き覚えのない声だ。

「そうだ。そう言うあんたは駄肉のサーヴァントか?」
『冗談にも言って良い冗談と悪い冗談がある。気をつけろ』

 ジナコのサーヴァント扱いはよほど心外なのだろう。機嫌悪そうな声だ。
 電話越しの相手は一拍おいてから、言葉を続ける。

『ランサーだ。今は警察に追われているこの女を保護している』
「警察に追われている? 何しやがったんだ?」
『知らんのか』

142『主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた』 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/30(火) 19:29:40 ID:2tV2E4L20

 ジョンスはジナコの家を出てからテレビやラジオから情報を得ていない。図書館には当然そのようなものはなく、新都の現状を全く知らなかった。

『新都でこの女の偽者が暴れ回った。この女はその濡れ衣を着せられたわけだ』
「ベルク・カッツェか」

 ジョンスは『偽者』と言うワードにすぐさま把握する。ベルク・カッツェがジナコの姿を真似て、彼女に罪を着せるために暴れ回ったのだろう。奴が変身能力を持っているのは知っている。あのクズ野郎ならやるだろうと、容易に予想が付いた。

 それと同時に、図書館に着いてから少し感じていた違和感についても納得がいった。
 銃を使った戦闘が三回もあったのに、警察もルーラーも全く来ない。おそらく、新都の騒ぎに人を割きすぎて、こちらまで回す余裕がなかったのだろう。

『そいつの名までは知らん』
「そいつには手を出すな。俺が倒す」
『余は手を出すつもりはない。だが、それなら急いだ方が良い。この女は偽者を許さんだろう』
「……そうだな。わかった」

 他人事のようなランサーの口調から、ベルク・カッツェを倒す意思がないのはわかった。
 だが、直接被害を負っているジナコは違うだろう。そのジナコに対して『俺が倒すから止めろ』と言うのは我が儘でしかない。いくら駄肉とはいえ、それを強要する気にはなれなかった。

『それで、れんげと言ったか。彼女はホシノ・ルリと名乗る警官に保護されている。連絡先を教えようかね?』
「そうだな、頼む」

 警官に保護されているのなら、今すぐに電話しなくてもいいか。
 ジョンスはそう思いながらも、ランサーから聞いた番号を、ジナコの電話番号を書いた紙に併記する。

「助かった。用事が終わったから切るぞ」
『待て』

 ランサーが強い口調で止める。
 電話なので一方的に切ることもできたが、色々親切に教えて貰ったからか、その行為は躊躇われた。

『お前はアーカードのマスターだな? 奴に替われ』
「アーカードにか」

 アーチャー、アーカード。ジョンスのサーヴァントだが、今は魔力回復のために寝ている。
 真名は特に隠していないので、ランサーがアーカードの名を知っていることについては何とも思っていない。だが、寝ている彼を起こすのは少々躊躇われた。

「あいつは今寝ている。言伝なら俺が聞く」
『叩き起こせ。奴にも有益な話だ』

 どうしてもランサーはアーカードと直接会話をしたいようだ。
 ジョンスは、仕方ない、と溜息をつく。

「わかった。少し待て」





143『主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた』 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/30(火) 19:29:58 ID:2tV2E4L20



「おはよう。私を叩き起こしたのは何処の誰かな?」

 ジョンスに念話で起こされ、アーカードはサディスティックな笑みを浮かべて電話に応じる。

『余はランサー、ヴラド三世だ』
「ほう。懐かしい響きだ。その名を騙るとは、よほど命知らずと見える」

 アーカードは殺気と怒気を含め、電話越しの相手に返す。
 それは、機械を介してさえ伝わりそうなほどの殺意だった。
 しかし――

『笑わせるな、“化け物”』

 それに対する言の葉は、その殺意すらも貫くほど冷たく鋭利であった。
 ヴラドの言葉に、アーカードの笑みが止まる。

『この聖杯戦争が、数多の世界の座より召喚されることは知っていよう。だが、余“が”ヴラド三世だ。ヴラド三世はお前のような醜い“化け物”ではない』
「――くく、くくくくく……」

 並行世界、パラレルワールド、もしくは異世界か。
 ともあれ、アーカードは認識する。
 電話越しの相手が、別世界の“もう一人の自分”であることを。
 アーカードは認識する。
 “もう一人の自分”は、“化け物”ではないことを。

「はは、はははははHAHAHAHAHAHA!! なるほど、貴様は“人間”と言うことか。ならば問おうヒューマン、私に何の用だ!」
『知れたことを。余の名を穢す“化け物”を滅ぼす。お前は、塵芥も残さぬ』
「そうか、そういうことか」


 ――『人間のままでいられた強い“人間”<ヴラド三世>』が『人間でいられなかった弱い“化け物”<アーカード>』を殺しに来る。


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