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避難所スレ

118前門の学園、後門のヴォルデモート ◆OSPfO9RMfA:2014/12/17(水) 00:36:54 ID:cFd7vIqo0

 アシタカに確認を求められると、狼狽するぐらいにはあやふやな記憶。NPC時代の、『方舟』に与えられた仮初めの記憶だ。ひょっとしたら去年のクラスメイトだったかもしれないし、一度もクラスメイトになったことはなかったかもしれない。
 けれども、岸波白野と言う名の人物が、学生服を着ていたのを思い出した。

 もっとも、相変わらず顔は思い出せないままだし、カレンの言っていた人物が早苗の記憶上の人物とも限らない。
 それでも、一目見ればおそらく思い出すだろう。

『だが、他に当てはない。闇雲に探すよりは良いだろう』
『ありがとうございます。では、学園に行きましょう。職員室に生徒名簿があると思います』

 早苗は学園に行くことにした。
 早苗の家にある連絡網や卒業アルバムに、岸波白野の名や連絡先があるかもしれない。また、学園に行くのであれば、早苗の家にある学生服を着ていった方が良いだろう。

 だが、彼女の家はC-9にある。今はD-5だ。学園とは反対側にあり、戻るには遠い。
 その為、確実に連絡先が分かるであろう学園の生徒名簿に目を付けた。

『忍び込むのか?』
『あまり時間も掛けてられませんし……やっぱり、まずいでしょうか』
『いや、そうではない。マスターらしいと思っただけだ』

 元々、ここは『方舟』が聖杯戦争を行うために作り上げた空間だ。殺人をも容認される――と言うより、それを目的とした――無法の地である。己の良心に従い、聖杯戦争を止めると行動する早苗の方がイレギュラーに近い。
 一度決めたら、目標に向けて恐れることなく真っ直ぐ前に進む。
 彼女らしい姿に、アシタカは嬉しそうに微笑んだ。

『では、バス亭に行きましょうか。あ、でもバスでの移動はあまりしない方がいいんでしたっけ』
『私がマスターを抱きかかえ、学園南の森を駆けるのはどうだろうか』

 アシタカの提案に、早苗は顔を朱に染める。

『え、だ、抱きかかえられるん、ですか?』
『森の中なら、人目を気にすることもない。敵の攻撃が来ても早苗殿を庇って避けるのも容易だ。ルートの決まっているバスよりも安全で速いはず』
『で、でも……私、重くないですか?』

 アシタカの提案は理にかなっている。だが、早苗は恥ずかしそうに小声で返す。

『大丈夫だ、マスターは木の葉より軽い』
『うう……ずるいです……』

 早苗は恨めしそうに、上目遣いでアシタカを見上げた。






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