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避難所スレ

1サイバーゴースト名無しさん:2014/08/01(金) 21:19:56 ID:RQYHIKXM0
本スレの避難所としてのスレです。
規制で書き込めないときなどに本編・感想問わずどうぞ。
代理投下の依頼もこちらから。

2サイバーゴースト名無しさん:2014/08/01(金) 21:22:32 ID:RQYHIKXM0
ではさっき書き込めなかったやつ。

原作知らんけどカッツェさんパネェ
言動は一々ふざけながら最悪の方向に振り切った邪悪だというのはよくわかった
全体を程よく漂うシリアス臭とシュールギャグ
旦那って案外付き合いいいなぁ

気付いた限りの誤字

アーチャーもトキョンとしていた。
→アーチャーもキョトンとしていた。

弾を断層に入れ
→弾を弾装に入れ

[令呪]残り1角
→[令呪]残り1画

[令呪]残り3角
→[令呪]残り3画

トキョンで草

3 ◆IbPU6nWySo:2014/08/01(金) 21:36:24 ID:v5ZmC/QU0
誤字指摘ありがとうございます。
wiki収録時には修正します。

4サイバーゴースト名無しさん:2014/08/02(土) 00:31:31 ID:jXR.4xys0
麻婆ペア&復讐者ペア乙。
痛み分けであるが、回復が効かないマスターが損傷していない分、
どちらかと言えば麻婆が有利か。
麻婆がどっちに転ぶかジツに楽しみである。

何かケチをつけるような物言いだから気が引けるんだが、どうしても気になった点。
「鉄塊と表現する方が正しい大剣を携え、禍々しい黒の鎧を身に纏った隻腕隻眼の英霊。理性無き隻眼が、綺礼とオルステッドを睨み付ける。」
この場面は綺礼&セイバー視点を主体とした描写だが、
それでは甲冑を纏ったガッツが隻腕隻眼だとは判断できないのではないか…?

5 ◆OSPfO9RMfA:2014/08/02(土) 02:19:03 ID:XLGMizOk0
確かに、甲冑装備中は全身覆ってて、外見から隻腕隻眼分かりませんね……ご指摘ありがとうございます。
後、義手砲と連射式ボウガンも使えませんね。

>>102
誤:鉄塊と表現する方が正しい大剣を携え、禍々しい黒の鎧を身に纏った隻腕隻眼の英霊。理性無き隻眼が、綺礼とオルステッドを睨み付ける。

正:鉄塊と表現する方が正しい大剣を携え、禍々しい黒の鎧を身に纏った巨大な体躯の英霊。獣のような兜が、綺礼とオルステッドを睨み付ける。

>>107
誤:オルステッドが放った真空の刃も、アキトを狙っている。ガッツはその方向に連装式ボウガンを放つが、当たった気配はない。

正:オルステッドが放った真空の刃も、アキトを狙っている。ガッツはその方向に投げナイフを放つが、当たった気配はない。


wikiへの登録時に上記のように修正しました。
……が、登録時にタイトルを「慄然たる戦い」と誤って登録してしまいました……このページの削除を誰かお願いします……。

6サイバーゴースト名無しさん:2014/08/02(土) 07:26:02 ID:tpILUv6c0
甲冑装備時にも仕込み大砲は使ってるし
武練効果もあり戦闘時は部分的に鎧が可変する可能性

7 ◆OSPfO9RMfA:2014/08/02(土) 11:44:33 ID:XLGMizOk0
要望・連絡スレにて対応して貰いました。
お騒がせして申し訳ありませんでした…

8サイバーゴースト名無しさん:2014/08/04(月) 00:48:05 ID:Fwrmfc5g0
乗り遅れて感想しそびれたSS感想をここで
>働け
ジナコさんは相変わらずここでも消極的か
ゴルゴがしっかり働きそうだが、
ジナコの職業が後に響きそうな感じ
>母なる海
シリアスな文なのにところどころに漂うロリコンw
シャア、情けないヤツ!
>冬木市学生諜報記録
マップは冬木市ベースだし地の利がある
桜の描写があるのはいいね。
シアンの蟲も登校してくる学生マスターたちの
反応が楽しみだ
>ウーマン・イン・ザ・ミラー
ほむほむも学校登校か
学校にマスターが集まってドンパチなってもおかしくないなw

9 ◆ZTnr6IpaKg:2014/08/06(水) 01:26:25 ID:okJmU5eE0
規制につき、こちらに投下させていただきます。
どなたか本スレに転載をお願いいたします。

10破戒すべき全ての電人(ルールブレイカー) ◆ZTnr6IpaKg:2014/08/06(水) 01:28:18 ID:okJmU5eE0
錯刃大学、春川研究室。電人HALはそこにいた。
パソコンを使い、朝早くから仕事を片づけている…
という体裁を整え、洗脳した人間から逐一送られてくる情報を処理する。
電人が実体があるキーボードを一々叩くというのも妙ではあるが、
現在のHALは『春川英輔』としてここにいることになっている。
一応、外面だけでも人間として取り繕っておくのは、情報秘匿の観点からも無駄ではないだろうという考えだ。
当然ながら、キーを叩きながらも電人としての能力を駆使してパソコンを通じて処理を行っているため、
実際の作業量としては見かけ以上に膨大なものとなっている。

アサシンは既に周囲の見回りを済ませ、HALの背後に待機している。
流石に畑違いであるためか、画面に映る情報からでは有効な考えを引き出せないようだ。
この仮想空間という場での専門家であるHALが基本的な戦術戦略全般を担当し、
戦闘に関わる領域ではアサシンが主導するというのがこの二人のスタイルである。
つまり、今現在は電人HALが仕事をする場面だということである。
得られた情報から、今後の立ち回りを考えなくてはならない。

「ふむ…ネットワークにはある程度網を張ったが、どうしても手を出しにくい領域が幾つかある。
 私以外のハッキングによる侵入者…。特に、極めて高度な外部演算装置の補助を得ているモノがいる。
 ……私以上に電脳世界で力を持つなど、私が元いた時代では有り得ぬことだ。
 未来か、より技術が進んだ世界からの参加者といったところか」

「"ますたぁ"は、本来その"ねっとわぁく"や電脳世界とやらに生きる存在だと聞いたが、
 それでも手が出せぬ、と?」
 
「コンピューター…私の力の源でもある、この絡繰の性能が違いすぎるようだ。
 私以上の処理能力を持つ、というのは非常に興味深いがな。
 それでも、外部から侵入して行われる補助と、内部から直接電人としての力を使える私では、
 私の方が力を行使しやすいという優位がある。それ故にどうにか直接対峙せずに済んでいる。
 ハック能力を持つ数人の参加者は、私の存在を察しているかもしれないが、こちらの所在が割れることはない。
 ……迅速に始末する必要はあるがな」
 
この拮抗がいつまで続くかはわからない。
彼がアドバンテージを保つためには、この仮想世界で彼に対抗できるマスターとは、
可能な限り早めに決着をつける必要がある。無論、サーヴァントの力を以て。
ネットワークから自由に情報を得られるのは、その後の話である。
 
「それよりはわしの任となるな。
 …しかし、やはり、わしが直に探るのではなく、お主の手下が絞り込んでからになるか」

「情報源としては、洗脳した人間の方が優位であるからな。現状は。数が必要だ。
 ……ままならぬものだ。ここはあくまで仮想空間だというのに」

現実世界での限界を"0"と"1"の世界で越えるための存在が、
仮想世界において人間のふりをして実体を保ち、人間を第一の情報源として当てにするとは中々の皮肉だ。
HALは、そう自嘲した。
もしも街中のパソコンや監視カメラ等のデバイスを掌握できれば、マスター探しも楽に済む。
その能力もあるのだが、そこまで派手にやらかすと、逆に位置がばれる可能性が高い。
故に、情報収集は洗脳した人間を使い、地道に行うこととした。 

地道だが、これが一番確実ではある。
攻撃されないNPCという、安全を保障された目を町中にばら撒いておけるのは大きな優位である。
殆どの手駒が大学の人間といっても、一日中大学にいるわけではない。
日中からそれなりの人数が外に出ていても、決して不自然ではない。
情報の受け渡しはメールなどによるものが主となるが、
彼の元へと送られるものだけであれば盗聴されないように回線を保護するのは容易い。

それに、病院に洗脳済みの人間を入れることができたのも大きい。
大学病院だからこそ、医学部の人間を送り込んでも不自然ではなかった。
多くの人間が集まり、また令呪の有無をごく自然に調べることができる場所だ。
怪我をしたマスターが来ることもあるかもしれない。
……流石にそれは話が旨過ぎるか。

ともかく、現時点では順調であり、情報もそれなりに集まっている。
殆どは戦闘の痕跡を見つけた程度のものであり、マスターを直接捉えたような決定的なものは無いが。
ある程度マスターとサーヴァントの居場所を絞り込めることは可能である。
手下に、目星を付けた地点へ行き、自然にうろついて監視を行うように指示を飛ばす。
今は、こちら側で網を張る時。



 ◆ □ ■ ◇ ◆ □ ■ ◇ ◆ □ ■ ◇

11破戒すべき全ての電人(ルールブレイカー) ◆ZTnr6IpaKg:2014/08/06(水) 01:30:24 ID:okJmU5eE0



……しかし。

「この『方舟』とやらは、聖杯戦争をまともに管理する気など無いらしいな」

腑に落ちないのは、この聖杯戦争のルールのあまりの杜撰さである。
自分が電人だからこそ、仮想世界で行われるこの戦争に対する違和感をどうしても無視できない。

"0"と"1"による演算を支配する電人である自分は、自らが構築した電子世界内で無敵と言ってもいい力を振るえる。
ここが『方舟』が構築した仮想世界というならば、『方舟』もまた同様、いやそれ以上の力を持つはずだ。
ならば、『方舟』がルーラーなる監督役を用意し、それに一切の仕切りを任せているのはなぜだ?
『方舟』自身が参加者を監視し、違反者を消せばよいだけではないか。
もし自分がこの戦争を管理するなら、そうするだろう。仮想空間内ならその方が確実だ。

そのルーラーにしても、監督役として十分な力を持っているとは言い難い。
相応の実力や特権はあるのだろうが、ルーラーはあくまでサーヴァントに過ぎず、
つまり参加者の手によって打倒され得る存在でしかない。
ルーラーは各サーヴァントに対する二画の令呪を持つ?
確かにそれは脅威だ。だがマスターが持つ令呪は三画だ。
極端な話、ルーラーの令呪による命令をこちらの令呪で相殺するように使用すれば、
マスターとサーヴァントは令呪一画を確保したままルーラーの支配から抜け出せるのだ。
つまり、ルーラーは本気で反抗しようとするマスターとサーヴァントに対し、
独力でそれを押さえきることができる力を持っていない。

そして、この冬木市もまた戦争の舞台として適しているとは言い難い。
メモリーデータを思い出す予選に必要であるから用意したというならば理解できなくもない。
しかし、そのままここで戦い続ける必要は無いはずだ。NPCの殺害にペナルティがあるからである。
なぜNPCへの被害が出る危険性を放置するのだ。
適当なバトルフィールドを構築してそこにマスターとサーヴァントを跳ばせばよいはず。

あるいは、NPCの殺害に対するペナルティそのものが不合理というべきか。
仮想データに過ぎないそれらを監督役が保護するなど必要あるまい。
たとえ未覚醒のマスター候補が混じっているのだとしても、だ。予選落ちした以上、考慮に値する存在ではない。
NPCを保護するルールがわざわざ存在するからこそ、冬木で戦争をすることに不都合が生じている。
何らかの必要性を以て保護しているというなら、「過度に殺害するとペナルティ」といったように
ある程度の被害を許容するようなルールを敷く理由も無い。殺した時点で厳罰に処せばよいだけのはず。
管理者側にとって、NPCを守る意味も、その重要性も、非常に曖昧過ぎる。





総じて、ルール違反となる行為を定めておきながら同時に許容し、その抑止力も甘過ぎるということだ。
このような矛盾に満ちたルールを『方舟』があえて採用した理由があるとすれば、それは……。

(本気でルールの網を掻い潜り、破れるならば、やっても構わない、ということか…?)

聖杯戦争のルールは、破られることを想定されている。
NPCは、もともと魔力源として消費される役割も想定されている。
それを咎めるルーラーもまた、排除されることをも役目として想定されている。

『方舟』が、『聖杯』が、それを想定している。

その、可能性。

12破戒すべき全ての電人(ルールブレイカー) ◆ZTnr6IpaKg:2014/08/06(水) 01:32:25 ID:okJmU5eE0
ルールを守って戦争するのも、リスク覚悟で破るのも任意。
戦争が公平円滑に進行するように、一定の縛りが設けられていることは確かである。
しかし、それを逸脱してまで自分の戦術戦略を通そうとする主従がいるなら、それはそれで構わず。
それができる能力があるか、また実行するか否かということもまた、戦いの要素として組み込まれているのではないか。
ルール違反のペナルティなど、『ルーラー』というプログラムの一つに与えられた役割以上の意味はないのではないか。

そうであると、するならば。

他の連中がルールに縛られている中、逆にルールを打破することで圧倒的な有利に立つこともできるはず。
ならば、破る方を目指すのも手の一つ。
自分の持つ『コードキャスト:電子ドラッグ』が、その理由となる。
この街のNPC全てを洗脳することができれば、それは戦争の舞台そのものの掌握に等しい。
全ての参加者に対し、圧倒的な優位を持てる。
それを阻むのがルーラーだというならば、排除を狙う価値はある。

(仮説の裏付けと、ルーラーにどの程度の能力があるのか、詳しく知る必要があるな。
 こちらの違反行為をどのように感知するのか、状況をどのように把握しているのか。そして実力。
 出し抜くことは不可能ではない。意外と穴は多そうだ)
 
自分は、既に一度ルーラーがその権限を振るった場面を捕捉していた。
無論、正確には、自分が電子ドラッグで洗脳したNPCが、である。
そのNPCは、既に洗脳した大学の人間を通じて電子ドラッグで洗脳したチンピラであった。
大学の教員や学生が大勢で夜中まで外をうろうろしていることは不自然であるため、
隠蔽の為にそういった時間帯でも行動していて不思議ではない人種を少数だが確保していたのだ。
それが早速役に立った。

そのNPCは、新都の廃ビルが倒壊する現場にたまたま居合わせた。
ビルから溢れ出た赤黒い液体と、そこからはい出た人間の様なものに襲われたところ、
旗を持った少女が現れ、走り寄り、ビルの壁面を駆け上がり、
その直後、こちらに襲いかかろうとした液体と人間たちは消え去った。

この報告だけでもルーラーの能力の限界が一部推測できる。
『ルーラーは、直接現場を押さえるか、証拠が無い限り、その権限を振るえない』
わざわざ走って現場まで来たということは、少なくとも通常の戦闘行為に関しては、
監督役の権限として遠隔視や参加者の現状把握を行い、遠距離から警告する能力は無いのだろう。
ルーラーが現れたタイミングが良すぎることから、何らかの感知能力があるのかもしれないが、
NPCへの被害を感知できるというならば、大学の人間を数百人単位で洗脳した自分の所へ来ない理由は無く、
目の前にいた洗脳済のNPCを見過ごすことも無いはずだ。
つまり、感知能力があったとしても、サーヴァントの位置や戦闘の現場がどこなのか知る程度。

(あくまで仮説ではあるが、そこまで大きく外れているとも思えない。
 そう考えると、市一つをカバーするには能力が不足していると言わざるを得ないが…。
 もしそこまでザルだとすると、逆に本命の監視がいて、ルーラーはその囮という可能性もある、か?
 …たとえそうだとしても、令呪を二画持ち、戦闘を強制中断できる力があることは軽視できることではないが。
 こちらを放置しているのも、とりあえず現段階でNPCに直接的な被害が無いから見逃しているだけかもしれん)

だが、現在の情報からでも、ルーラーの排除が不可能ではないことは間違いあるまい。
ならば、それを目標の一つとして考えておく必要はある。

(少しでも情報を、というならば、もうすぐのルーラーからの通達以降だな。
 ルーラーが電子ドラッグの事をどれだけ把握しているのか、何かアクションがあるかもしれん。
 そこからでも、わかることはあるか)
 
無論、他の主従のことに関しても。
通達を機に、行動を開始する主従は多いだろう。
つまり、ルーラーも含め参加者の情報を得る最大のチャンスだということだ。
通達後もひとまず研究室に留まり、自分の尖兵から上がってくる情報を解析し、
より重要度の高い組に対してはアサシンによる偵察を、可能ならば暗殺を試みる。

「アサシン。当面の方針が決まった」



 ◆ □ ■ ◇ ◆ □ ■ ◇ ◆ □ ■ ◇

13破戒すべき全ての電人(ルールブレイカー) ◆ZTnr6IpaKg:2014/08/06(水) 01:34:11 ID:okJmU5eE0



("るぅらぁ"を仕留めるか…。
 大将首どころではないな。恐ろしいことを考えるものよ)

再び周囲の偵察に戻ったアサシンは、HALから伝えられ、相談し合った戦略を反芻する。

この戦における約定、それを司るルーラーの排除による優位の確立。
採用する可能性がある戦略の一つだというが、その有効性には疑い様が無い。
他者を意のままの傀儡とする、甲賀や伊賀にも存在しなかった魔性の術。
その枷を全て解き放つ、それはこの戦の趨勢を決めるものとなろう。

その戦略に否やは無い。元より、基本的な方針を定めるのはHALに任せてある。
自身の業を上回る輩が跋扈するであろうこの戦、闇討ちだけで全て片が付くとも思えず、
ならば虎穴に入ってでも敵に先んじる必要もあろう。
そのためにルーラーを倒す必要があるのであれば、全力を以てそれを成す覚悟はある。

しかし、アサシンは一つの懸念をHALに伝えていた。

("るぅらぁ"を討ち取ったとて、枷が解けるのは、我らだけではない。
 他の"さぁばんと"もまた、己が意のままに暴れ回ることとなろう。
 不戦の誓いを破られるやいなや、憎しみのまま殺し合った伊賀と甲賀の様に。
 ……その時、我ら以上の力を振るう者共がおらぬとは限らぬ)

抑止力の排除、それによる戦況の変化は、HALにもアサシンにも完全には予測できない。
アサシンと想い人の運命を狂わせた、あの混沌とした殺し合いを、この『方舟』で再現しかねない一手である。
悪い様に考えれば、ルーラーの排除によりNPCへの保護が無くなるということは、
事実上無尽蔵の魔力補給の機会を敵に与え、強大な宝具の使用を許すに等しい。
そのことが、NPCの掌握による優位を覆す可能性もまた存在する。
無差別の広域破壊の様な攻撃を解禁してしまうと、アサシンに対しては極めて不利なのも問題である。
故に。

(事を起こす前に、"彼奴(きゃつ)"の力が通じている間に、
 我らを凌駕し得る者共を、探し、討つ。それが、まずわしが成さねばならぬこと。
 そして機を見て事を成し、"ますたぁ"の術で戦場を手中に収める)
 
忍の業を活かしての暗殺を行うならば、ルーラーの存在はむしろ有難いものだ。
アサシンが持ちえない、敵の火力を抑制してくれる。
ならば、それを利用することもまた必要。
ルールの庇護の下で潜在的な脅威を消し、その後にNPCの洗脳で一気に王手をかける。

鍵は、まずどれだけ他の組の秘密を暴き、始末するべき相手を選び、処理できるか。
そして、戦略を転換する時期を間違わぬこと。
そしてやはり、最重要目標であるルーラーの能力の見極め。

容易いことなど何一つ無い苦難、どれだけ続くかもわからぬ茨の道。
だが、伊賀との、朧との戦を強いられたことに比べれば何だというのか。
その全てを踏み越えてみせよう。彼女の元へ辿り着くまで。

朝日が昇り、目覚め始める街に眼を向ける。
その向こうにいる敵を見定める様に。

14破戒すべき全ての電人(ルールブレイカー) ◆ZTnr6IpaKg:2014/08/06(水) 01:35:18 ID:okJmU5eE0
【C-6/錯刃大学・春川研究室/1日目 早朝】
※【C-6】に錯刃大学を配置しました。
 病院と同エリア内であり、更に病院を錯刃大学付属の大学病院としました。

【電人HAL@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]『コードキャスト:電子ドラッグ』
[道具] 研究室のパソコン、洗脳済みの人間が多数(主に大学の人間)
[所持金] 豊富
[思考・状況]
基本行動方針:勝利し、聖杯を得る。
1. ルーラーを含む、他の参加者の情報の収集。
2. ルーラーによる12時の通達の後に、得られた情報をもとに行動方針を是正する。
3. 通達の後、特に注意すべき参加者の情報が得られた場合、アサシンによる偵察や暗殺も考える。
 『ハッキングできるマスター』はなるべく早く把握し、排除したい。
[備考]
○『ルーラーの能力』『聖杯戦争のルール』に関して情報を集め、
 ルーラーを排除することを選択肢の一つとして考えています。
 ルーラーは、囮や欺瞞の可能性を考慮しつつも、監視役としては能力不足だと分析しています。
○大学の人間の他に、一部外部の人間も洗脳しています。
○洗脳した大学の人間を、不自然で無い程度の数、外部に出して偵察させています。
○C-6の病院には、洗脳済みの人間が多数入り込んでいます。
○ビルが崩壊するほどの戦闘があり、それにルーラーが介入したことを知っています。
 ルーラー以外の戦闘の当事者が誰なのかは把握していません。
○他の、以前の時間帯に行われた戦闘に関しても、戦闘があった地点はおおよそ把握しています。
 誰が戦ったのかは特定していません。

【アサシン(甲賀弦之介)@バジリスク〜甲賀忍法帖〜】
[状態] 健康
[装備] 忍者刀
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:勝利し、聖杯を得る。
1. HALの戦略に従う。
2. 自分たちの脅威となる組は、ルーラーによる抑止が機能するうちに討ち取っておきたい。

15 ◆ZTnr6IpaKg:2014/08/06(水) 01:36:32 ID:okJmU5eE0
以上です。
どうしても独白が多くなる。

16あなたのお家はどこですか? ◆2kaleidoSM:2014/08/20(水) 23:15:50 ID:u52cGek.0
「そういえば名前を聞いていなかったね。私はアンデルセン。孤児院の院長をやってる」
「………」

ここでずっと黙秘していては逆にいつか不都合が生まれるだろう。
だが、ここで本当の名前を名乗りたくはない。

美遊・エーデルフェルト。
それが今の自分の本当の名前。
しかしこの場を少しでも乗り切るために、美遊は敢えて忌々しき記憶の奥にある名前を引き出し、偽名を名乗った。

17あなたのお家はどこですか? ◆2kaleidoSM:2014/08/20(水) 23:16:07 ID:u52cGek.0
「……美遊・エインズワース」



神父、アンデルセンはこの子供に少し疑念を抱いていた。

まだ10歳ほどの子供。これくらいの年頃ならば人見知りもするだろう。
だが、この子供、美遊はそういったものとは違うような気がした。
隙を伺って逃げようとする姿、周囲に対するあまりに大きな不信感と警戒心。

ただの家出にしては少し過ぎているように見える。

よほどのトラウマを持っているのか、あるいは――――

(王よ、一つ聞かせてもらいたい)
(何かを見つけたか、神父よ)

18あなたのお家はどこですか? ◆2kaleidoSM:2014/08/20(水) 23:19:56 ID:u52cGek.0
廃教会にいるランサーに念話を図るアンデルセン。

(この聖杯戦争、例えば無垢なる子供自体がマスターに選ばれる、ということは有り得るのか?)
(マスター選出自体は聖杯の意思によるもの、私には図りかねる。だがあり得るのかどうかと言われれば可能性は十分に有り得るものだ)
(…そうか)

19あなたのお家はどこですか? ◆2kaleidoSM:2014/08/20(水) 23:22:34 ID:u52cGek.0
まだ可能性の段階、無理にそれを聞き出すつもりもない。

そう、ただ家出をして道に迷った子供を保護した。ただそれだけのこと。

(分かっているとは思うが、今余はここから動くことはできん。神父自身の身に命の危機でも及ばぬ限りは、な)
(問題ない、こちらはこちらでうまくやる)

自分の横で、密かに警戒するかのように沈黙をする少女。

この少女が、自分と同じ聖杯によって選出されたマスターであるのかどうか。

疑念を持ったまま、しかし少女を案じる心は本心にアンデルセンは孤児院へと歩みだした。



【B-9/市街地/一日目 早朝】

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]健康、ポニーテール
[令呪]残り三画
[装備]普段着、カレイドサファイア、伊達メガネ他目立たないレベルの変装
[道具]バッグ(衣類、非常食一式) 、クラスカード・セイバー
[所持金] 300万円程(現金少々、残りはクレジットカードで)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争から脱する方法を探る。
1.戦闘は可能な限り避けるが振りかかる火の粉は払う 。
2.しばらくはおとなしくしているが、できればアンデルセンから離れたい
3.ルヴィア邸、海月原学園には行かない。
4.自身が聖杯であるという事実は何としても隠し通す。
5.聖杯にかけるような願いならある。が、果たして求めることが正しいことなのだろうか…?

20 ◆2kaleidoSM:2014/08/20(水) 23:23:12 ID:u52cGek.0
解決しました。お目汚し失礼しました

21善悪アポトーシス ◆y0PHxpnZqw:2014/08/24(日) 23:05:41 ID:j/MX1VsM0
合間の一レスを投下します。

22善悪アポトーシス ◆y0PHxpnZqw:2014/08/24(日) 23:24:47 ID:j/MX1VsM0

『来ましたっ! 即座に移動を!』
「……えっ」
「おやおや、貴方は確か。お久しぶり、というには速すぎますか」

そして、最悪は再び訪れた。
振り返ると、そこには獰猛な笑みを浮かべたアンデルセンが立っている。
だが、その笑みの内面は前とは違う。
不信。孤児院に預けたはずなのに、どうしてここにいる。

23善悪アポトーシス ◆y0PHxpnZqw:2014/08/24(日) 23:25:29 ID:j/MX1VsM0
普通の子供であるならば、ここまで行動的であるはずがない。いくら幼い考えなしの少女とはいえ、少し活発的に過ぎる。
まるで――アンデルセン本人から離れたいと示しているようなものだ。
アンデルセンは、警戒レベルを引き上げ、いつでも銃剣を取り出せるように身構える。
アーカードのように、その身を小さな幼子に変えれる奴もいるのだから油断はできない。

24善悪アポトーシス ◆y0PHxpnZqw:2014/08/24(日) 23:25:47 ID:j/MX1VsM0
「孤児院はお気に召さなかったのですかねぇ……もてなしがなっていませんでしたか」
「一旦、退却するよ!! お願い、バーサーカーッ!」

限界だった。この均衡した状況でいることも、アンデルセンと相対していることも。
あの強烈な存在感、それにむせ返るような血の臭い。
どう考えても、受け入れられるはずがないし、これ以上相対していたら、頭が狂ってしまいそうだ。
もはや、彼が遭遇したくないマスターであることを、美遊は疑わなかった。
故に退却。風よりも速く、この悪寒がする戦場から離れることを決断してしまった。
瞬間、美遊の前に現れた黒衣の死神が彼女を優しく抱き寄せる。
そのまま、背中を向け勢い良く跳躍。急いで場を離れるべく、大地を駆け抜ける。

「どうする、王。お前の観点からして、あの子供は黒か?」
『さぁな。だが、善意で近づいたお前に不信感を抱いていたんだ。黒の可能性は、高い』
「辛辣だな。気に入らぬ何かを感じ取ったのか?」
『それもある。あのサーヴァント、個人的に見ているだけで不快だ。神への冒涜……いうなれば、死神か。
 まあ、余は既にあの者共を敵と認識している。無論、アーカードが最優先というのは変わらんがな』

そして、場に残されたアンデルセンとヴラドは考える。
彼女は敵か、否か。
もっとも、そのような思考をするまでもなく、アンデルセン達の意見は結論に至っていた。
疚しいものが心の内にあるから逃げている。
後ろめたい感情を抱えていなければ、素直に言うはずだ。
先程の二人のように真正面から出てくるはずだ。

「なれば、討つしかあるまい。敵は討滅するのがイスカリオテの定め」
『心得た。悲鳴を上げる暇もなく――刺し貫いてくれよう』

下した結論は――黒。
互いの判断がすれ違い、捻れ、事態は誰もが思いもしない結末へと導いていく。
運命も絶望もごちゃ混ぜにして、戦局は混迷を極めていった。

25善悪アポトーシス ◆y0PHxpnZqw:2014/08/24(日) 23:26:16 ID:j/MX1VsM0
無事、投下は終わりました。ご迷惑をお掛けして本当にすいません。

26近似値 ◆FFa.GfzI16:2014/10/14(火) 23:50:01 ID:NakcSmt60
修正案を投下させていただきます

27近似値 >>238修正 ◆FFa.GfzI16:2014/10/14(火) 23:51:15 ID:NakcSmt60


   ◆   ◆   ◆


「……ふう」

ルリはようやく息をつく。
身体の自由が戻ってきた。
手に持ったゼリー飲料を口に含み、ゆっくりと喉を動かす。
身体に重さは残っているが、殆ど回復したと言っても良い。
問題は、空腹だ。
ゆっくりとゼリー飲料と栄養ドリンクを口にするだけでは、単純な栄養補給。
身体的にも精神的にも、空腹という問題を解消するには物足りなかった。

ルリとて、まるでダイエットのように食事を制限するつもりはなかった。
しかし、宝具の負荷は大きい。
気怠さが半減するまでは、単純な食事すら一仕事となる消耗だったのだ。

スコープドッグを大量に召喚して汗すら流さないルリをして、この状態に陥る宝具。
あらゆる方法で生き延びる力。
仮に死んでも死なない力。
世界を書き換えてでも、その生命を醜く永らえさせる力。
すなわち、異能のライダー自体が宇宙であり、宇宙にとっては常に異端を抱えている状態なのだ。

「凄いですね」

チューチューと可愛らしく栄養ドリンクを吸い込みながら、ルリは口にした。
そんな力を簡単に片付けようとしながらも、確かにその力に恐れを抱いていた。
死んでも死なない。
先ほどの衝撃がすなわちそれなのだ。
仮に死の危険が絶え間なく襲い掛かる本物の戦争が訪れたら。
例えライダーが生き続けても、ルリは生きていられるだろうか。
ゴクリ、と栄養ドリンクを飲み込む。
動揺を隠そうとしていた。

「美遊さん」

そんな感情を隠すためであろうか。
どこかで見ているかもしれない少女へと向かって、ルリは言葉を投げかける。
空腹時特有の、どこか痛みに似た感覚とふらつく視界。
慎重に食事を取らなければ、逆に体力を消化するだけだろう。

「お話は気になるので、またどこかで会いましょう」

ルリは決定的な敵対の言葉は口にしなかった。
そんなルリに対して、異能のライダーは反感の言葉を口にしなかった。
それもまた生き方だった。
己の運命を己のものとしていられるのならば、ライダーはルリに口出しをしない。
そんなライダーの意思をルリは感じ取っていた。
ライダーはルリの仲間だが、それだけだ。
少なくとも、今はただの仲間に過ぎないのだ。

「それじゃ、ご飯を食べに行きましょうか……もう、早い夕ご飯になってしまいますね」

ライダーは言葉を返さず、短く頷くだけだ。
ルリは気怠さの残る身体を、しかし、平時のそれと変わらぬほどには回復したように動かす。
そのまま、そっと上空を眺めた。

28近似値 >>241修正 ◆FFa.GfzI16:2014/10/14(火) 23:53:08 ID:NakcSmt60


   ◆   ◆   ◆


衛宮切嗣は群衆に紛れながら動いていた。
自身のサーヴァント、紅のアーチャーが発見した戦闘痕。
そこへ向かう途中に、やはりアーチャーが戦闘を発見した。
恐らくというべきか、やはりというべきか、アーチャーは斥候に向いたサーヴァントなのだろう。
半ば無意識的に切嗣はアーチャーに襲撃を命じた。
漁夫の利は戦闘において基本であり、アーチャーの射程距離は切嗣の常識からすれば超をつけて余りあるほどの距離だ。

「……」

その一方で、アーチャーを向かわせた切嗣は図書館付近にて緊張に包まれていた。
血を連想させる朱の外套を纏った長身の男と、黒のジャケットを纏った薄い色素の髪をした男。
隠すつもりなど欠片もない、獣じみた気配。
切嗣は補足されてない、『だろう』。
獣のような鋭さが無造作に撒き散らされているだけで、切嗣のみに向けられているわけではないから。
その程度の薄弱な根拠だ。

――――同盟を組んだマスター……いや、違う。

あれはマスターとサーヴァントだ。
恐らく、朱の外套の男が英霊だろう。
隠そうとも隠し切れない、異常性がにじみ出ている。
正規の英雄とは思えない、『結果が英雄となり得た』だけの英雄であろう。

朱の外套、黒い髪、へばりついた笑み。
朱は、すなわち血。
血を浴び続けたことを暗示させる姿だ。

「……」

数分、切嗣はその二人組を見つめていた。
あの二人組は誘っている。
切嗣だけに限らず、どこかで見ているであろう他の聖杯戦争の参加した者を。
常在戦場とはよく聞く言葉だ。
しかし、あの二人組の半ば無責任なまでの堂々とした振る舞いは他者にまでそれを共用させる。
襲えるのだから、襲え。
半ば強制させるような無防備さだった。

「……」

切嗣は動かなかった。
誘いは乗せるものであって、乗るものでない。
静かに、その場から離れる。
アーチャーが持って帰る情報の解析と、朱の外套のサーヴァントが起こした戦闘痕の確認。
まずは、情報を調べる。
あの英霊の宝具が呪詛の類である可能性を否定できる材料すら一つもないのだから。

29近似値 >>241修正 ◆FFa.GfzI16:2014/10/14(火) 23:54:30 ID:NakcSmt60

『……』

そして、実際アーチャーは生還した。
検索を行った限りで現れた錬鉄の英霊の候補たちはいずれも生き汚い連中だ。
何よりも長距離という地の利を得たアーチャーが致命傷を得るとは思えない。

事実、アーチャーは狙撃を行い、失敗した。
しかし、生還した。
ならば、咎めるつもりはない。
アーチャーの言からすると目視を取られたのはバーサーカーのみ。
ならば、正体を探られる可能性は低い。
対してアーチャーはバーサーカーの正体を絞り込んできた。
『髑髏の仮面』と『黒刀』と『斬魄刀』。
三つのキーワード。
かなり、絞り込める。
下手をすれば一発での検索も可能とするほどの材料だ。

『……どうした、アーチャー』

背後から報告を続けてくる自身のサーヴァントの声色の僅かな変化に眉をひそめる。
また新たな異変を嗅ぎとったのかと、切嗣は身構える。
二十八組の参加者。
キャスターなどの使い魔を使役する存在を含めれば、それこそ目の前に敵が居てもおかしくはない。

『……いや、気にするな。私の記憶の中から黒刀の情報を検索していただけだ』
『見覚えがあるのか?』
『そうではない、ただ、死神でありながら仮面というのが引っかかってな。
 仮面とは死神の敵対者のトレードマークのようなものだからな』

異端の死神、そう言いたいのだろうか。

『どうも、『私に対する』怒りが見えたのでな』
『バーサーカーにか? そういう『種』の狂化の逸話を持つ存在だったんだろう?』
『もしくは、私の存在を知っていたか、同種の存在を憎んでいたのか』

答えは出ないがな、とアーチャーは締めくくった。
はぐらかされているということは分かっていた。
分かっていたが探りは入れなかった。
切嗣は紫煙を曇らせる。
紫煙の中に、月が輝いていた。
月。
切嗣は、今、月に居る。
思えば、遠くに来たものだ。
月は切嗣に何をもたらすのか。

30近似値 状態表修正 ◆FFa.GfzI16:2014/10/14(火) 23:54:59 ID:NakcSmt60

【B-9/住宅街のはずれ/一日目 夕方】

【ホシノ・ルリ@機動戦艦ナデシコ〜The prince of darkness】
[状態]:魔力消費(大)、空腹
[令呪]:残り三画
[装備]:警官の制服
[道具]:ペイカード、地図、ゼリー食料・栄養ドリンクを複数
[所持金]:富豪レベル(カード払いのみ)
[思考・状況]
基本行動方針:『方舟』の調査。
0.ちゃんとした『食事』を取る。
1.天河食堂……
2.『方舟』から外へ情報を発する方法が無いかを調査
3.優勝以外で脱出する方法の調査
4.聖杯戦争の調査
5.聖杯戦争の現状の調査
6.B-4にはできるだけ近づかないでおく。
[備考]
※ランサー(佐倉杏子)のパラメーターを確認済。
※NPC時代の職は警察官でした。階級は警視。
※ジナコ・カリギリ(ベルク・カッツェの変装)の容姿を確認済み。
※美遊陣営の容姿、バーサーカーのパラメータを確認し、危険人物と認識しました。

【ライダー(キリコ・キュービィー)@装甲騎兵ボトムズ】
[状態]:負傷
[装備]:アーマーマグナム
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:フィアナと再会したいが、基本的にはホシノ・ルリの命令に従う。
1.ホシノ・ルリの護衛。
[備考]
※無し。


【C-8/図書館周辺/一日目 夕方】

【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]健康
[令呪]残り三角
[装備]キャリコ、コンテンダー、起源弾
[道具]地図(借り物)
[所持金]豊富、ただし今所持しているのは資材調達に必要な分+α
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取り、恒久的な平和の実現を
0.アーチャーが目にした、ジョンス・リー&アーカードと聖白蓮&ロトの戦闘の痕を確認する。
1.使えそうなNPC、および資材の確保のため街を探索する。
2.昼を回ったら暗示をかけたNPCに連絡を取り、報告を受ける。
3.B-4で起きるであろう戦闘を監視する。
[備考]
※ジョンス・リー、アーカードを目視しました。
 相手方が切嗣の存在に気づいていたかどうかは後続の書き手方にお任せします。

※この街のNPCの幾人かは既に洗脳済みであり、特に学園には多くいると判断しています。
※NPCを操り戦闘に参加させた場合、逆にNPCを操った側にペナルティが課せられるのではないかと考えています。
※この聖杯戦争での役割は『休暇中のフリーランスの傭兵』となっています。
※搬入業者3人に暗示をかけ月海原学園に向かわせました。昼食を学園でとりつつ、情報収集を行うでしょう。暗示を受けた3人は遠坂時臣という名を聞くと催眠状態になり質問に正直に答えます。
※今まで得た情報を基に、アサシン(吉良)とランサー(エリザ)について図書館で調べました。しかし真名まではたどり着いていません。
※アーチャー(エミヤシロウ)については候補となる英霊をかなり絞り込みました。その中には無銘(の基になった人)も居ます。

【アーチャー(エミヤシロウ)@Fate/Stay night】
[状態]右腕負傷(小)、右肩負傷(小)
[装備]実体化した時のための普段着(家主から失敬してきた)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:切嗣の方針に従い、聖杯が汚れていた場合破壊を
1.出来れば切嗣とエミヤシロウの関係を知られたくない。
[備考]
※岸波白野、ランサー(エリザ)を視認しました。
※エリザについては竜の血が入っているのではないか、と推測しましたが確証はありません。
※『殺意の女王(キラークイーン)』が触れて爆弾化したものを解析すればそうと判別できます。ただしアーチャーが直接触れなければわかりません。
※右腕は軽傷であり、霊体化して魔力供給を受けていれば短時間で完治する程度のものです。

[共通備考]
※C-7にある民家を拠点にしました。
※家主であるNPCには、親戚として居候していると暗示をかけています。
※吉良吉影の姿と宝具『殺意の女王(キラークイーン)』の外観のみ確認しました。宝具は触れたものを爆弾にする効果で、恐らくアサシンだろうと推察していますが、吉良がマスターでキラークイーンがサーヴァントだと勘違い。ただし吉良の振る舞いには強い疑念をもっています。

※黒崎一護を『仮面をつけた』『黒刀の斬魄刀を所持する』『死神』と認識しました。
※ルリ、キリコ、美遊についての認識については後続の書き手にお任せします。

31 ◆OSPfO9RMfA:2014/10/15(水) 01:51:02 ID:ztoshy6c0
修正乙です。
食事をするのも億劫なほどの魔力消費……キリコじゃなきゃ直撃で死亡だったのかな。


重ねてで恐縮ですが、気になる点が二点。
・前話『同じことか』での切嗣とエミヤの会話。

『図書館の近くで戦闘が行われている。サーヴァントだ。
 マスター同士も戦っている。随分と好戦的な輩だな』
『分かった。アーチャー、戦闘から目を離すな。
 戦闘には介入しないでいい。気づかれずに情報を得られるならば越したことはない』

この会話から類推するに、まだ戦闘が始まったばかり、もしくは途中だと思われます。
一方、『近似値』では

自身のサーヴァント、紅のアーチャーが発見した戦闘痕。
そこへ向かう途中に、やはりアーチャーが戦闘を発見した。
恐らくというべきか、やはりというべきか、アーチャーは斥候に向いたサーヴァントなのだろう。
半ば無意識的に切嗣はアーチャーに襲撃を命じた。

と、既に戦闘が終了しています。
その辺が矛盾しているのではないかと、気がかりです。

『同じことか』の段階ではエミヤはまだロトvsアーカードを目視しておらず、見に行ったら既に戦闘が終わっていた。

という解釈もできますが、行間が大きいので、分かりやすい説明があれば良いと思います。
指摘で説明と読み込みが足りず、申し訳ありませんでした。


・切嗣はマスターなので、サーヴァントのアーカードを目視した場合、パラメーターが見えるので一発で分かると思います。
 アーカードにパラメーターなどを隠すスキルや宝具もありませんし。

32近似値 ◆FFa.GfzI16:2014/10/15(水) 22:53:21 ID:lHuODbUA0
>>31
ご指摘ありがとうございます
修正案を再び投下させていただきます
こちらの不手際による矛盾、度々の指摘をいただくこととなり大変申し訳ありませんでした

33近似値 当スレ>>28修正 ◆FFa.GfzI16:2014/10/15(水) 22:54:03 ID:lHuODbUA0


   ◆   ◆   ◆


衛宮切嗣は、様々な情報を整理していた。
自身のサーヴァント、紅のアーチャーが発見した戦闘。
アーチャーはその戦闘を監視した。
アーチャーの持つ千里眼のスキルは戦闘に巻き込まれることなく監視を可能とする。
戦闘の始終を目にし、念話により切嗣へと報告した。

そして、アーチャーは別の二組の参加者の戦闘を発見した。
恐らくというべきか、やはりというべきか、アーチャーは斥候に向いたサーヴァントなのだろう。
何かを隠し、何かを企んでいるということを除けば切嗣にとって理想的な英霊と言える。
そして、切嗣はアーチャーに監視と、可能ならば襲撃を命じた。
漁夫の利は戦闘において基本であり、アーチャーの射程距離は切嗣の常識からすれば超をつけて余りあるほどの距離だ。

セイバーと思しき重装備のサーヴァントと、朱に染まった外套を纏った二丁拳銃を操る長身のサーヴァント。
穏やかな雰囲気を放つ妙齢の女性と、遠目からでも鋭さを放つホスト風の男。
マスター、サーヴァント。
二組の主従はほぼ同時に戦闘を行った。
結果は、ホスト風の男に敗北したマスターのためにセイバーと思しきサーヴァントが撤退。
サーヴァント同士の戦いに限っていれば、セイバーと思しきサーヴァントが圧倒していたとのこと。

切嗣は念話でアーチャーから授かった情報を元に思考を進ませる。

朱に染まった外套のサーヴァント。
身体を無限に再生させ、同時に無数の魔を使役していたとのこと。
恐らく、吸血鬼の類。
当てはまるとすれば、話しに聞く死徒二十七祖が一、ネロ・カオス。
しかし、伝え聞く逸話とは雰囲気がどうにも異なる。

対して、セイバーと思しきサーヴァントは戦闘から詳細を読み取ることは不可能『であった』とのこと。
ただ、単純に強い。
『真っ当な英雄』としか言いようのない強さであった、とのこと。
しかし、こちらは宝具の解放を行った。
その宝具に刻み込まれた『字名』。

――――『ロト』、それは勇者を意味する言葉だ。

『ロト』そのものか、『ロト』の剣を受け継いだ子孫か、それとも『ロト』を騙る偽の英雄か。
戦闘を目撃したアーチャー自身は、『ロト』そのものである可能性が高いと口にした。

上出来だ。
ならば、次は朱の外套のサーヴァントを確認すべき。
そう考え、アーチャーに目撃した次の戦闘を監視させ、今回は先手を取れる場合のみ攻撃も許可をした。

残された切嗣は図書館付近にて緊張に包まれていた。
図書館で何をするでもなく、しかし、確かに検索機構を利用している二人組。
血を連想させる朱の外套を纏った長身の男と、黒のジャケットを纏った薄い色素の髪をした男。
先ほど、『ロト』なる英霊を従えたマスターを撃退した主従だ。
隠すつもりなど欠片もない、獣じみた気配。
切嗣は補足されてない、『だろう』。
獣のような鋭さが無造作に撒き散らされているだけで、切嗣のみに向けられているわけではないから。
その程度の薄弱な根拠だ。

――――マスターは肉弾戦に優れた男、だったか。

八極拳の使い手、アーチャーはそう語っていた。
英霊には及ばずとも、かなりの戦力を有しているとのことだ。

そして、朱の外套を纏ったサーヴァント。
隠そうとも隠し切れない、異常性がにじみ出ている。
正規の英雄とは思えない、『結果が英雄となり得た』だけの英雄であろう。

朱の外套、黒い髪、へばりついた笑み。
朱は、すなわち血。
血を浴び続けたことを暗示させる姿だ。

「……」

数分、切嗣はその二人組を見つめていた。
あの二人組は誘っている。
切嗣だけに限らず、どこかで見ているであろう他の聖杯戦争の参加した者を。
常在戦場とはよく聞く言葉だ。
しかし、あの二人組の半ば無責任なまでの堂々とした振る舞いは他者にまでそれを共用させる。
襲えるのだから、襲え。
半ば強制させるような無防備さだった。

34近似値 当スレ>>28修正 ◆FFa.GfzI16:2014/10/15(水) 22:54:18 ID:lHuODbUA0
修正案投下終了です、度々申し訳ありません

35サイバーゴースト名無しさん:2014/10/15(水) 23:35:19 ID:X3/sM6HI0
度重なる修正、お疲れ様でした!

36 ◆OSPfO9RMfA:2014/10/17(金) 01:59:30 ID:nIgYo/Oo0
修正乙です。
エミヤはアーカードの真名は聞けなかったか。
だが、ロトの真名を手に入れたのはまさしく漁夫の利。

あとは状態表の備考欄に、それらの情報を入れれば問題ないと思います。

37くだらぬ三文劇修正 ◆OSPfO9RMfA:2014/10/20(月) 00:46:11 ID:iIV0uHPM0
修正案を投下します。

38くだらぬ三文劇>>283修正 ◆OSPfO9RMfA:2014/10/20(月) 00:46:46 ID:iIV0uHPM0







 廊下をひたすら駆け抜ける真玉橋に、彼のサーヴァントが念話で語りかける。

『マスター。一応申し上げますが、“副会長がマスターだったら”と言うのは、あの男の例え話です』
『な、なにぃ!?』
『あの男もそう言っていましたが……やはり、聞いておられませんでしたか』

 セイバー、神裂火織は霊体化のまま、溜息をつく。

『ですが、ちょうど良い機会です。改めて、尋ねさせていただきます』


 マスターと出会ってから、その言動に些か矛盾を抱いていた。

『あの男が言うとおり、貧乳の女性がマスターやサーヴァントという場合も有り得ます。幼い子供が相手と言うことも可能性としてはあります。聖杯を手にすると言うことは、それらを屠る必要があると言うことです。マスター、それでもよろしいでしょうか?』

 マスターにはその咎を受け入れ、踏み越える覚悟があるのか。
 それをもう一度、問いただした。
 真玉橋はそれに、こう答えた。

『まぁ、そこは何とかする』
『何とか、ですか』

 その“何とか”が何であるか、具体的には問わない。
 ただ、その“何とか”が何であれ、“何とか”するのであれば、それはルールに則った正攻法ではない。

 だが、方法は一つではない。
 生前、一つの方法に囚われて状況を打開できなかった時、あの男がそのふざけた幻想をぶち壊してくれた。
 例えばここに彼が居たのなら、きっと何とかしてくれるだろう。
 ならば、私もそれに倣おう。

『分かりました。その方向で考えます』
『おう、頼むぜ』

 神裂は苦笑する。
 だが、満更でもない笑みだった。



【C-3/月海原学園/一日目 午後】
【真玉橋孝一@健全ロボ ダイミダラー】
[状態]健康、乳のためとやる気出た
[令呪]残り2画
[装備]学生服(月海原学園の制服に手を加えたもの、旧制服に酷似しているらしい)
[道具]学生鞄、エロ本等のエロ目的のもの
[所持金]通学に困らない程度(仕送りによる生計)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い。救われぬ乳に救いの手を
1.敵マスターを探すなり、ウェイバーたちと合流して話し合ってみるなりとにかく動かずにはいられない。
2.貧乳が相手の場合、何とかする。
[備考]
※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。正純がマスターだとは気づいていません。

【セイバー(神裂火織)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.マスター(考一)の指示に従い行動する。
2.バーサーカー(デッドプール)に関してはあまり信用しない。
3.他のマスターやサーヴァントを生かしたまま聖杯を入手する術はないか、模索する。
[備考]
※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。正純がマスターだとは気づいていません。

39 ◆OSPfO9RMfA:2014/10/20(月) 00:50:19 ID:iIV0uHPM0
修正案投下しました。
問題があれば、お手数ですがご指摘いただきたく願います。

40 ◆OSPfO9RMfA:2014/10/25(土) 02:59:10 ID:rbkMoPfw0
拙作、くだらぬ三文劇を一部分修正したいと思います。
状態表及び、物語の進行には大きな変更は無いはずです。
問題があれば、お手数ですがご指摘いただきたく願います。




【修正前】

 ――いや、そもそも他者の辛苦に愉悦を感じるなど、悪徳の極みだ。罪人の魂だ。
 神に仕える身として、そのような事があってはならない。
 綺礼は自戒し、反省する。

「神は、どうして彼女にこのような苦難を与えたんだ!! 何故、彼女におっぱいを与えなかったのか!!」

 神に仕える身として、そのような事を言われても、困る。
 彼は矢庭に立ち上がると、強く拳を握りしめる。


【修正後】

 ――いや、そもそも他者の辛苦に愉悦を感じるなど、悪徳の極みだ。罪人の魂だ。
 神に仕える身として、そのような事があってはならない。
 綺礼は自戒し、反省する。

 感情は引き起こされるもの。
 つまり、受動的なものだ。能動的に生むものでも無ければ、作るものでもない。
 感情を制御したり、押し殺したりすることは可能であっても、引き起こすことそれ自体を無くすことはできない。

 故に、綺礼は悩み苦しむ。
 綺礼は他者の辛苦に愉悦を感じ、感じる自身に失望しているのだから。
 如何に良識や良心で愉悦を悪と見なし、その感情を押し殺そうとも、それは次から次へと己の内から沸いてしまう。

 一時はそんな己に絶望し、いっそ悪に染まるぐらいならと、自殺をも考えたほどだ。
 こうして自身を戒めようとも、いつ悪に染まるかわからない。
 事実、並行世界には英雄王の流言に従い、己の悪性を受け入れた綺礼も存在する。
 今ここに居る綺礼も、何かの弾みで悪に堕ちる可能性は、いくらでも存在するのだ。

「なぁ! おっさん!! あんたもそう思うだろ!!」

 ――もっとも、仮に悪に堕ちることがあったとしても、この弾みでは悪に堕ちたくはない。
 そんな綺礼の心情も知らずか、彼は矢庭に立ち上がると、強く拳を握りしめる。

41サイバーゴースト名無しさん:2014/10/25(土) 13:50:52 ID:wJ3S6n560
遅ればせながら修正乙です。特別注視する問題は見受けられませんので大丈夫ですよ

42 ◆F3/75Tw8mw:2014/11/19(水) 23:46:52 ID:hCLMdg1s0
戦争考察の修正案を投下します。
スレの536を、以下に差し替えさせていただきます。



『うむ……"るぅらぁ"から警告される程の違反があって、その様な日常などあり得る筈が無い』
『そうだ。
 ルーラーは聖杯戦争の進行に差し障りがあるとして、このB-4に潜む主従を違反と看做した。
 それにも関わらず、B-4エリアの様子は平凡そのもの……矛盾している』


そう……ルーラーの言葉に嘘がなければ、このB-4では聖杯戦争の進行を大きく妨げる程の事態が起きている筈なのだ。
そうなれば、当然街ではそれ相応の騒ぎが起こり、警察やマスコミが動いて然るべきである。
だというのに、街に住む者達は何事もないかの様に生活をしている。
ネットの情報も隈なく集めてみたが、やはり騒ぎという騒ぎは全く見当たっていない。
これはどう考えたって、おかしい事態なのだ。


『ルーラーはわざわざB-4とエリアを名指しして警告を実施した。
これは、その場から違反者がそうそう動かないと踏んだからだろう……
ならばこのエリアに潜むサーヴァントは、陣地防衛を得手とするキャスターの可能性が高い。
そして犯した違反は、恐らく大量の魂食いだろう』


ここでHALは、ゴルゴ13と同じく情報から敵サーヴァントがキャスターであると推測する。
そして犯した違反の内容は、魂食いである可能性が極めて高い。
倉庫群で起きた様な建築物の破壊という線も無くはないだろうが、もしそんな大規模な破壊活動があれば
ルーラーからの警告以前に街の中で大きな噂になっている。
しかし今現在、少なくともこのエリアにはその様な争いの後は見られない。
ならばありえるのは、キャスターというクラス特性から考えれば魂食いだ。
より強固な陣地作成の為、魔力に変えるべくNPCを大量に消滅させて糧とした……
実際そう考えると、綺麗に筋が通る。


『念の為に確認をしておきたいが、一度は倒壊させた建築物を再度何かしらの宝具で建築し直したという線は?』
『それは無いと断言できる。
仮にその様な宝具やスキルがあったにしても、一度は街並にダメージが与えられるという前提が結局ある。
多少のキズなら兎も角、ルーラーが違反と看做す程の規模だ。
幾らなんでもそんな事が起きれば、周囲のものたちが気づくはずだ』


もっとも……魂食いの場合にも、一つだけだが矛盾点がある。
大多数のNPCを魂食いしたにも関わらず、やはりこのB-4では人々は普通に生活をしているのだ。

まるで、"消えたNPCなど何処にもいなかった"かのように。


『だが、キャスターのサーヴァントだとすると……一つ、考えられる可能性がある。
 幻影幻覚の類では、セイバーを筆頭とする対魔力持ちに見破られる恐れがある……ならば』
『魂食いされた住民達は、"きゃすたぁ"の手駒と入れ替わり生活をしているという事か』


元々この違反を行ったサーヴァントも、ルーラーからルール違反の警告を受ける事は重々承知していた筈。
ならば同時に、その隠蔽手段も用意するのは当然のことと言える。
それを踏まえて、ここまでの情報から二人が出した結論が……魂食いされたNPCは、既に他の何者かと入れ替わっているという可能性だ。
そうすると、この何事もない平和で異常な風景にも納得がいく。
敵サーヴァントは己のスキル或いは宝具を用い、消えたNPCのコピーを用意しているとみて間違いない。
それもただ姿形を真似ているだけの、ちょっと突けばボロが出る様なものではない。
思考も、技能も、その何もかもが同一なのだ。

そこに住まうNPC―――もしかすれば、聖杯戦争の参加者ですら含まれるかもしれない―――の誰もが疑問に思わぬほどに本物と寸分違わぬコピーを、このサーヴァントは作る事が出来るのだ。

1ビットたりとも違わない一人の人間を作りだせる可能性を、この敵は持ち合わせている。

43 ◆F3/75Tw8mw:2014/11/19(水) 23:47:26 ID:hCLMdg1s0
修正案投下しました、お手数をおかけしますが問題点などがないかご確認お願いいたします

44サイバーゴースト名無しさん:2014/11/20(木) 00:03:22 ID:c1Z9sTnw0
修正乙です
これなら、特に問題はないと思われます

45 ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:23:29 ID:XYR/rc320
修正案を投下します。

46エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:24:02 ID:XYR/rc320



【C-8】

 アーチャーのサーヴァント、エミヤシロウは己のマスター、衛宮切嗣を抱えてビルの屋上を移動していた。
 先ほどの戦場、図書館から離れたビルを選ぶと、そこに腰を落ち着かせることにした。場所はC-8の北西。ちょうど真西に橋がある位置だ。
 エミヤは切嗣を物陰に隠すようにして寝かせる。
 移動中の姿を他の主従に見られ、狙撃され無いとも限らないからだ。
 エミヤ自身も多少の傷は負っているが、霊体化して休む余裕はない。先の戦闘で気を失った切嗣が覚醒するまで、実体化したまま見張りを続けることにする。

「(……少し、情報を整理するか)」

 図書館に着いてから連戦が続き、それに伴い確認済みのサーヴァントも増えた。サーヴァントと戦う者の努めとして、敵対するサーヴァントの情報を整理するのは当然の仕事だ。

 一騎目、貴婦人のランサー。早朝、主従伴って屋外で食事をしていたランサーだ。切嗣が図書館で調べたところ、まだまだ情報不足とのことだ。

 二騎目、爆弾魔のアサシン。午前、ホームセンターで遭遇した猫人のサーヴァントだ。ステータス隠匿や気配遮断に優れることからアサシンと推測。手に触れた物を爆弾に変える能力を持つ。マスターがサーヴァントと余りにも距離を取りたがらないことに疑問を感じる。こちらも真名の特定はできなかったのこと。

 三騎目、ロトのサーヴァント。午後、切嗣が図書館で検索している間、図書館前で戦闘していたサーヴァントの一騎。その剣の刀身に記された文字から『ロト』が読み取れた。エミヤの知る最強のセイバー、アルトリアに匹敵する剣技、宝具、戦闘力などから、勇者の始祖、ロト本人と推測する。そこまで分かっているが、残念ながら、情報検索は行えていない。

 四騎目、朱のサーヴァント。ロトのセイバーと交戦していたサーヴァント。脅威的な再生能力を誇り、無数の魔を使役する。後に自身も交戦。頭を破壊してもすぐに再生したときはさすがに驚愕した。魔の使役からキャスターを予想したが、奴は自身が放った十六の矢を一つ残らず二丁拳銃で撃ち落とした。その腕前からアーチャーの可能性も考えられる……剣を扱うアーチャーの自分が言えた口ではないが。切嗣が『死徒』ではないかと疑い、妙な拘りを見せている。無理をするようなら止めに入った方が良いだろう。

 五騎目、仮面のバーサーカー。夕方、B-9にて二騎のサーヴァントが交戦しているのを見て、好機の瞬間に狙撃。仮面のバーサーカーはこちらに対象を変え、迎撃してきた。黒刀を投げつけてきたので、それを肩で受け、トレースした。情報を得たのでそこで撤退。斬魄刀を用いる死神。真名を探るに十分な情報があるが、未だ情報検索を行えていない。

 六騎目、ロボット乗りのサーヴァント。仮面のバーサーカーと交戦していたサーヴァント。4mほどのロボットに乗る。観察した時には既に戦闘の途中で、また、不意打ちの好機が早く訪れたため、あまり観察できていない。ただ、あの不意打ちの矢は確実に当たったはずだ。外すはずがない。だと言うのに、無傷で健在しているのが確認できた。何らかのスキルか宝具か。仮面のバーサーカーが迎撃してきたので、詳しく確認する余裕はなかった。情報はかなり不足している。

「(自身を除けば二十七騎。うち六騎を確認か)」

47エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:24:19 ID:XYR/rc320

 本来の七騎で行う聖杯戦争であればこれで終わりなのに、あと二十一騎も存在する。なかなか難儀な話である。
 だが、彼を知り己を知れば百戦殆うからず。情報収集は依然として必要だ。

「(これぐらいか。あとは見張りに専念……む)」

 見覚えのある影が視界に入る。
 仮面のバーサーカー。彼は実体化したまま、ビルの屋上を駆けていた。

「(バーサーカーが実体化したまま移動? 何をしている?)」

 自身の体を物陰に隠しながら、バーサーカーの様子を伺う。
 既にこちらの射程範囲内の距離で、しかし相手の射程距離外だ。攻撃をすれば、確実に先手が取れる。
 だが、今はマスターの切嗣が気絶中だ。できれば戦闘を起こしたくない。
 この場はやり過ごし、観察に努めよう。
 そう判断する。
 しかし――

「――ッ!?」

 バーサーカーは少しの間だけ足を止めると、駆ける方向を変えた。
 エミヤの居るビルに向けて、真っ直ぐへと。

「(こちらの場所がバレた?! どうやって!? いや、今は後だ!)」

 黒塗りの弓を手にし、無銘の剣を射る。
 しかし、バーサーカーは姿をかき消すほどの速度でビルの隙間に逃げた。
 障害物が多く、射線が通らず、目視もできない。
 だが、奴が近づいてくるのだけは分かる。

「(マスターを連れて撤退……いや、無理だ。あの速度なら追いつかれる! 迎撃してマスターから距離を離すしかない!!)」

 干将・莫耶をその手に投影し、身構える。このビルその物が破壊されたり、切嗣が直接狙うケースも警戒する。
 そして気配を感じ振り向く。
 背後に、バーサーカーはいた。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「ちっ!」

 バーサーカーは右腕を伸ばし、掴みかかってきた。
 それを干将で切り払い、莫耶で脇腹を狙う。
 しかし――

「ぐあっ――!?」

 干将は半ばまで食い込んだところで腕が超速再生し、力の運動を止めてしまう。莫耶も根本まで刺さらず、怯みもしない。
 対するバーサーカーの腕はエミヤの喉を掴み、強く圧迫する。
 ならば霊核を狙うのみ。抜く間も惜しい双剣を手放し、再度その手に干将・莫耶を投影する。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「がっ!?!」

 だが、それよりも速く、バーサーカーの拳がエミヤの顔を打ち抜いた。
 一瞬で意識を刈り取られ、気を失う。干将・莫耶が魔力として霧散する。

「がああああああぁっっっ!!!?」

 それも、束の間。
 バーサーカーの足が、エミヤの右足の甲を踏み砕いた。その痛みで覚醒する。

「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーは吼えると、エミヤを放り投げた。





48エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:24:44 ID:XYR/rc320



 黒崎一護は狂化により理性と言語能力を喪失している。
 そして保有スキル:完全虚化によって自我も消失している。
 残っているのは、美遊・エーデルフェルトを護るという意思のみ。

 だが、それもままならない。
 令呪で《B-4に存在するサーヴァントを殺せ》と命じられたからだ。
 美遊は今はC-9にいる。側にいなければ護ってやることができない。
 彼女もB-4に連れて行く方法もあったが、その時対峙していた主従がそれを許さないであろう。
 だから、一護にできることは、できるだけ速くその命令を済ませ、一刻も早く美遊の元に戻ることだった。

 実体化したままビルの屋上を駆ける。真っ直ぐB-4に向かう。
 その途中、見知った霊圧を感じた。

 エミヤだ。
 兄でありながら、兄の役割を放棄した男だ。

 許せない。
 一片たりとも存在を認めない。
 消し炭にしてもなお事足りない。

 それは憎しみのごとく、怒りをかき立てる。
 本来守護のスキルにより、戦わぬ者に対しては襲うことはできない。
 ならば許すか? 否だ。この男を許せば、己の兄としての尊厳も失う。
 まるで異教徒に対するイスカリオテのごとく、奴を殲滅せよと心が叫ぶ。
 令呪の命にも逆らい、そちらへ向かおうとする。

 だが、令呪は一護を縛る。即刻B-4のサーヴァントを殺せと。
 一護は抗う。エミヤを殺したい、と。

 足が止まる。
 一護の中で、令呪の命と己の狂気が反発し、混ざり合う。

 そして令呪か、バーサーカーか、どちらとも言えぬ悪魔のような囁きが、脳裏を走る。

 ――ナラ アイツ ヲ B-4 デ 殺セバ イイジャナイカ

 令呪と狂気が歯車のように噛み合う。
 仮面の下で唇を釣り上げ、エミヤに向けて駆け出した。





49エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:25:06 ID:XYR/rc320



【C-7】

「(私を投げ飛ばした……マスターと距離を取らせるためか!?)」

 空中に放り投げられながら、エミヤは思案する。
 “マスターからサーヴァントを引きはがす”。
 エミヤはバーサーカーの戦法をそう判断した。エミヤとしては有り難くもあり、また危惧を抱いていた。

 気絶中の切嗣から戦線を遠ざけるのは、エミヤとしては願ったり叶ったりだ。だが、相手のマスターの所在が知れない。相手のマスターが、切嗣に接触してなんらかの行為をしないとも限らない。令呪を使わせるなどの手段を取るかもしれない。
 バーサーカーからあえて距離を取る手段を選んだのだ。その可能性は十分にありうる。

 通常時であれば、適度にバーサーカーと距離を取った後、令呪を使ってエミヤを呼び戻せばいい。だが、切嗣が気を失ってるため、それができない。
 戦闘をしながら敏捷性に勝るバーサーカーを撒き、バーサーカーより速く切嗣の元に戻らねばならない。
 まずはこの宙を浮く状況を打破しなければならない。
 地を踏みしめられない宙は得手ではなく、対するバーサーカーは宙を駆けることもできる。
 ならば、地を踏むのが第一歩だ。

「――――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う)」

 言葉自体には意味のない、精神統一のための呪文を口ずさむ。
 右手に投影したのは、鎖付きの短剣。かの冬木市の聖杯戦争でライダーが使っていた武器だ。短剣を投げ、橋の中央に刺す。
 そこを支点とし、孤を描くように着地する。川の対岸まで飛ばされるとすら思えたエミヤの身体は、橋の半ばほどで落ちた。

「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーは人目を憚ることなく吼え、道路を走る車を踏みながらエミヤを追う。先ほどの戦いから学んだのか、空を一直線に駆けてはこない。
 エミヤは役目を果たした短剣を放り、弓を番える。バーサーカーを無銘の剣で射るが、斬魄刀によってことくごとく弾かれる。『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』は橋が破壊されるおそれがあるので、できれば使いたくない。

「(斬魄刀が使えないわけではない。先ほど素手で投げたのは、やはり、マスターとの距離を離すのが目的か)」

 エミヤはそう判断する。
 ならば尚のこと、無防備な切嗣を護るため、直ぐにでも戻る必要がある。
 だが、敏捷性では勝るバーサーカーを直線距離で振り切ることはできない。さらに、右足の甲をバーサーカーに砕かれ、移動力が激減している。

「(撒くには場所を変える必要があるな)」

 橋を渡って深山町まで行けば、新都ほどではないものの、コンクリートジャングルと化したビル街がある。足の遅さをカバーするためには、地の利を生かすしかない。
 一端は自主的に切嗣から遠ざかることになるが、急がば回れだ。最短距離だけが最適解ではない。
 エミヤはバーサーカーから背を向け、深山町の方へ駆け出した。





50エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:25:26 ID:XYR/rc320



【B-6】

 深山町のビル街の北部、B-6で二騎のサーヴァントが舞う。
 日はまだ落ちておらず、人通りも多い。音速で戦う二騎の姿を、何十と言うNPCが見たであろう。
 神秘を隠匿すべき聖杯戦争ではないが、人前での戦闘は愚考である。己の姿を、技を、宝具を人前に晒すことになり、それは人伝に他の主従にも伝わるだろう。

 だが、バーサーカーにそのデメリットを説き、戦闘を中断させるのは無意味だ。
 それを考慮するだけの理性が残っていれば、そもそも白昼堂々攻撃はしてこまい。

 しかし、霊体化して逃げるのもいくつか問題がある。
 霊体化は現界に必要な魔力消費を少なくし、物質への干渉を極力減らす。それでも、完全に無敵になるわけではない。宝具によっては霊体化した状態のサーヴァントを攻撃することも可能であり、その逆は存在しない。防御すらできず、一方的にやられるのみだ。
 そして、霊体化は一瞬ではできない。戦闘中にあからさまな隙を見せるのは自殺行為でしかない。

 バーサーカーの猛撃は、エミヤに霊体化する隙すら与えなかった。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「しつこい! どこまで追ってくるつもりだ!!」

 愚痴を口に出しながら、刀身がピンク色のシャムシールを振るう。
 バーサーカーの動きは変わることなく、斬魄刀で襲いかかる。シャムシールで受け流すと、刀身が飴細工のごとく粉々になった。

「これもダメか」

 今散ったシャムシールは、誘惑の剣という、相手を混乱させる効果を持つ剣だ。しかし、やはりと言うべきか、宝具ですらないそれはバーサーカーには効果を発揮しなかった。

 光を屈折させ、音波を放ち、闇に紛れ、魔力を散らせ、五感を狂わせる。
 エミヤはあの手この手を使い、バーサーカーから逃れようとする。
 だが、バーサーカーはしつこく付きまとう。

 現時点で、エミヤは多くの点で不利だ。
 スペックを比較すると、バーサーカーの方が大きく上回っている。
 エミヤは右足の甲を砕かれ、距離を取ったり、逃亡する為の機動力を封じられている。
 バーサーカーはエミヤの霊圧を感知し、エミヤはそれに対する対抗策を知らない。
 バーサーカーは強力な再生能力を持ち、魔力の限り負傷することはない。

 唯一エミヤが勝ってる点、それは保有魔力の量。
 エミヤは多数の剣を投影しているが、そのどれもが魔力消費が多い物ではなく、依然としてその身に魔力を十分に確保している。いざとなれば、気絶中の切嗣から吸い上げることも可能だ。
 対するバーサーカーは、現界するだけで多大の魔力を消費し、戦闘により、さらに魔力を消費している。本来は美遊とカレイドステッキ・サファイアによって魔力を補われているが、今はそれができない状況にある。美遊の身を案じるバーサーカーは、現界と戦闘に消費する魔力を、己の身から優先的に消費させている。
 故に、戦闘を長引かせるほど、エミヤの有利に傾く。加えて、バーサーカーはB-4でエミヤを殺すつもりであり、四肢を狙うばかりで霊核を狙わない。

 また、マスターの美遊は現在無力化されており、切嗣を狙う事もない。それどころか、バーサーカーも、美遊も、切嗣の存在には気付いていない。
 勿論、他の主従に襲われる可能性はあるが、今の所は切嗣を狙う者は居ない。

 その為、現状を維持する事がバーサーカー撃退の最適解であり、今現在、バーサーカーも決して有利な状況とは言えない。
 だが、それはあくまで神の視点によるもの。
 エミヤは知る由もなく、一刻も早く切嗣の元に戻るために、焦りを感じていた。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「ぐあぁっ!!」

 バーサーカーの足がエミヤの腹部に入り、ビルへと蹴り飛ばされる。ガラスを割り、フロアに入る。
 良いことと悪いことが重なった。

 良いことは、そのビルが廃ビルであったこと。人気はなく、NPCに被害が出なかったこと。
 悪いこと、それは――その廃ビルが、暁美ほむらが作った陣地だと言うこと。


 ――ワイヤーが引かれ、無数の銃火器が、エミヤに向けられて火を噴く。

51エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:25:43 ID:XYR/rc320


「トレース、オン!!」

 それはもはや反射だった。エミヤは無意識のうちに、四本の大剣を自身の四方に投影し、さらに強化も施す。魔力を少量込めた程度の弾丸は、大剣の前にむなしく弾かれた。

「まさか、こんな罠があるとはな」

 大剣を解除し、深く息をつく。
 それは、全くの偶然。
 バーサーカーが暁美ほむらの仕掛けた罠を知るはずもない。たまたま、エミヤを飛ばした方向に、その廃ビルがあったと言うこと。
 だが、エミヤはそうとは考えない。

「誘い込まれたわけか――」

 バーサーカーは当然、この罠を知っていて誘い込んだと考える。
 サーヴァントを殺すには稚拙な罠だとか、バーサーカーが何故この罠を仕掛けたのかとか、そこまで深く考える前に、一つの推測がよぎる。

「――なるほど。“私をマスターから引き離す”のが目的ではなく、“私をどこかに誘い込む”のが目的なのだな」

 急所を狙わぬ戦い方。エミヤを逃がさぬように追い詰める戦法。引き離すには余りにも離れた距離。
 感じていた違和感を理解した。

「ならば――」
「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーが吼えながら、廃ビルに入る。斬魄刀を振り上げ、エミヤに迫り――


 ――二騎のサーヴァントは、忽然と消えた。





52エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:26:01 ID:XYR/rc320



【?-?】

 そこは、荒野だった。
 地には無数の剣が大地に突き刺さり、空には回転する歯車。
 地平線すら見え、赤き大地が無限に続くとすら思えた。

 ビル街から場所が急転し、エミヤを見失ったバーサーカーは辺りを見回す。

「ここは私の固有結界」

 エミヤの言葉に、バーサーカーは振り向く。
 エミヤは燃えさかる炎を背に立っていた。


 ――無限の剣製(Unlimited Blade Works)。


 ここは、エミヤの心象風景で塗りつぶされた世界。
 結界により外界から隔離されたこの地に、B-4などという地区は存在しない。

「私を倒さぬ限り、この地からは出られんぞ。どうする、バーサーカー?」

 エミヤが一振りの剣を抜き、バーサーカーに突きつける。

「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーが吼え、斬魄刀を振り上げ地を駆ける。
 エミヤは剣を煌めかせた。
 斬魄刀を手にしたバーサーカーの腕が宙を舞う。

 エミヤの抜いた剣は、ただの剣ではない。
 それは、人の手によって作られた。
 それは、伝説の金属でできていた。
 それは、ありとあらゆる魔を切り裂いた。
 それは、魔を打ち払う最強の剣。

 刀身に刻まれた『DRAGON QUEST』の意匠――


 ――『王者の剣(ソード・オブ・ロト)』


「行くぞ、バーサーカー!!」
「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーは即座に腕を再生し、斬魄刀を呼び寄せる。
 二騎のサーヴァントが、荒野を駆け抜けた。





53エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:26:19 ID:XYR/rc320



【固有結界――無限の剣製――】

 エミヤは王者の剣から剣技を吸い上げる。あらゆる魔と戦ったロトの剣技を模倣する。
 バーサーカーは四肢を狙い、戦闘力を削ぐ戦法を止める。B-4への輸送を諦め、結界から脱出するために殺しに掛かる。

 観客の居ない戦場で、二騎は激しく交差する。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「くっ……!!」

 バーサーカーの斬魄刀を、エミヤは受け流した。エミヤのいた場所を刀が通り、荒野を抉る。
 バーサーカーの力は強く、エミヤは振るわれた刀を“受け止める”ことができなかった。故に、力の向きを変え、“受け流す”ことで回避する。その為には体捌きも必要だ。自身の体も動かし、刀を外す。
 だが、ここでもまた、右足の甲の傷がエミヤの足を引っ張る。
 満足でないその足は余計な労力を使わせ、エミヤの身から魔力を削ぐ。

 一方、バーサーカーは戦闘続行スキルは無い物の、超速再生スキルによって負傷を無くも同然の戦いが可能となる。
 さらに、バーサーカーのスタンスが“B-4まで生かして運ぶ”から“即座に殺す”に変わったため、攻撃は以前より苛烈なものとなった。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「はあぁっ!!」

 王者の剣はバーサーカーの身体を容易く切り裂く。だが、切り裂いている間は王者の剣が使えないと言うことでもある。
 肉を切って骨を断つ。バーサーカーが魔力の大量消費を覚悟でその戦法に出たとき、エミヤは防戦に回るしかなかった。
 技量を塗りつぶす、純粋な力の差を改めて思い知らされる。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「がっ……!」

 二十七回目の刃の交差で、戦況が大きく動く。
 受け流し損ねたバーサーカーの斬魄刀が、エミヤの右足首を切り落とした。
 エミヤは転がって距離を取り、片膝立ちになる。足首を失っては立つことも回避することも難しい。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「こうなれば……」

 バーサーカーが雄叫びをあげながら迫り来る。
 エミヤはバーサーカーの上空を囲うように、剣を投影する。その数、十九本。バーサーカーのインファイトにより、自身への誤射を恐れて使わなかったそれを、解放する。
 近距離の『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』で自身にも被害が及ぼうとも、下手すれば相打ちになろうとも、勝つためにはこれしかない。

「行けっ!!!」

 覚悟を決め、一斉掃射する。

「■■■■■■■■■■――――!!!」

 バーサーカーが斬魄刀を振り下ろす。



 ――エミヤの霊圧が、消えた。





54エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:26:38 ID:XYR/rc320



【B-6】

 B-6に存在する廃ビルのワンフロアに、突如バーサーカーが出現する。
 見覚えのある風景に、バーサーカーは理解する。
 固有結界が解除されたのだと。

 だが、令呪の効力が消え去ったわけではない。
 投影された剣が刺さることはなかったが、エミヤとの戦闘で多大の魔力を消費してしまった。
 これ以上の戦闘は、美遊からも魔力を補う必要があるかもしれない。

 最後の太刀でエミヤを切った感触は無かった。
 何らかの方法で逃げおおせたのだろう。
 奴だけはいずれ滅ぼす必要がある。
 だが、今は令呪の命令が身を強く縛る。エミヤを探しに行くのは困難だ。

 バーサーカーはB-4へと駆けていった。



【B-6/市街地/一日目 夕方】

【バーサーカー(黒崎一護)@BLEACH】
[状態]健康、エミヤへの激しい怒り、魔力消費(大)
[装備]斬魄刀
[道具]不明
[所持金]無し
[思考・状況]
基本行動方針:美遊を守る
1.令呪・《B-4に存在するサーヴァントを殺す》
2.1を果たし速やかに美遊の元へ戻る
3.エミヤは殺す。
[備考]
※エミヤの霊圧を認識しました
※白昼堂々戦闘を行いました。バーサーカー(黒崎一護)が多数のNPCによって目撃されています。また、ビルや橋、車などが一部破壊されました。その情報がどのように流布されるか、ルーラーがペナルティを与えるか否かは、次の書き手に任せます。





55エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:26:56 ID:XYR/rc320



【C-8】

「『飛べ、アーチャー』」

 切嗣の令呪が煌めき、一画が消失する。
 令呪の効力により、エミヤは空間を『飛んで』切嗣の元に現れた。
 切嗣は頭を抱えながら、傷を負ったエミヤを見て眉をひそめる。

「すまない、マスター。令呪を使わせてしまった」
「待ってくれ。まだ頭がはっきりしないんだ。少しずつ、事情を説明してくれ」

 切嗣は覚醒してまもなく、念話でエミヤに令呪による命令を指示された。
 あまり意識がはっきりしていない状況だったが、その指示の必死さに、理由を聞かずに従った。
 切嗣からしてみれば、自身がどれだけ眠っていたか、エミヤの傷は朱のサーヴァントに付けられたものなのか、それすらわからない。

「あぁ、わかった。だが、一度ここを離れよう。移動しながら説明する」
「頼んだ」

 エミヤは切嗣を抱えると、片足でビルの屋上を跳ぶ。
 それはバーサーカーとの再会を恐れ、東の方角であった。

56エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:27:19 ID:XYR/rc320



【C-8(東)/ビル屋上/一日目 夕方】

【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]健康、毛細血管断裂(中)、腹部にダメージ(中)、軽い目眩(直に回復)
[令呪]残り二角
[装備]キャリコ、コンテンダー、起源弾
[道具]地図(借り物)
[所持金]豊富、ただし今所持しているのは資材調達に必要な分+α
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取り、恒久的な平和の実現を
0.アーチャー(エミヤシロウ)から気絶中の出来事を聞く。
1.使えそうなNPC、および資材の確保のため街を探索する。
2.昼を回ったら暗示をかけたNPCに連絡を取り、報告を受ける。
3.B-4で起きるであろう戦闘を監視する。
[備考]
※この街のNPCの幾人かは既に洗脳済みであり、特に学園には多くいると判断しています。
※NPCを操り戦闘に参加させた場合、逆にNPCを操った側にペナルティが課せられるのではないかと考えています。
※この聖杯戦争での役割は『休暇中のフリーランスの傭兵』となっています。
※搬入業者3人に暗示をかけ月海原学園に向かわせました。昼食を学園でとりつつ、情報収集を行うでしょう。暗示を受けた3人は遠坂時臣という名を聞くと催眠状態になり質問に正直に答えます。
※今まで得た情報を基に、アサシン(吉良)とランサー(エリザ)について図書館で調べました。しかし真名まではたどり着いていません。
※アーチャー(エミヤシロウ)については候補となる英霊をかなり絞り込みました。その中には無銘(の基になった人)も居ます。
※アーチャー(アーカード)のパラメーターを確認しました。
※アーカードを死徒ではないかと推測しています。そして、そのことにより本人すら気づいていない小さな焦りを感じています。この焦りが今も続いているかどうかは不明です。

【アーチャー(エミヤシロウ)@Fate/Stay night】
[状態]右腕負傷(小)、右肩負傷(小)、左足と脇腹に銃創(小)、魔力消費(中)、右足首消失、腹部に打撲
[装備]実体化した時のための普段着(家主から失敬してきた)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:切嗣の方針に従い、聖杯が汚れていた場合破壊を
0.今はこの場から離れ、切嗣に状況を報告する。
1.出来れば切嗣とエミヤシロウの関係を知られたくない。
[備考]
※岸波白野、ランサー(エリザ)を視認しました。
※エリザについては竜の血が入っているのではないか、と推測しましたが確証はありません。
※『殺意の女王(キラークイーン)』が触れて爆弾化したものを解析すればそうと判別できます。ただしアーチャーが直接触れなければわかりません。
※右腕、左足、脇腹、腹部は軽傷であり、霊体化して魔力供給を受けていれば短時間で完治する程度のものです。
※右足首は消失しており、霊体化して魔力供給を受けても、短時間で完治しません。完治には適切な治療か、多大な魔力、もしくは長時間の休養が必要です。
※キリコを『ロボットに乗る』『何らかの手段で攻撃を無効化する』と認識しました。
※ルリ、美遊についての認識していません。
※黒崎一護は『何らかの手段でエミヤを感知する』『エミヤをどこかへ連れて行こうとしていた』と認識しました。
※白昼堂々戦闘を行いました。アーチャー(エミヤシロウ)が多数のNPCによって目撃されています。また、ビルや橋、車などが一部破壊されました。その情報がどのように流布されるか、ルーラーがペナルティを与えるか否かは、次の書き手に任せます。

[共通備考]
※C-7にある民家を拠点にしました。
※家主であるNPCには、親戚として居候していると暗示をかけています。
※吉良吉影の姿と宝具『殺意の女王(キラークイーン)』の外観のみ確認しました。宝具は触れたものを爆弾にする効果で、恐らくアサシンだろうと推察していますが、吉良がマスターでキラークイーンがサーヴァントだと勘違い。ただし吉良の振る舞いには強い疑念をもっています。
※黒崎一護を『仮面をつけた』『黒刀の斬魄刀を所持する』『死神』と認識しました。
※レンタカーは図書館付近の駐車場に停車してあります。

※B-6の暁美ほむらが仕掛けた罠は使用されました。

57エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA:2014/11/27(木) 20:29:21 ID:XYR/rc320
修正案投下終了です。
問題点、指摘事項があれば、お手数ですが指摘願います。

58サイバーゴースト名無しさん:2014/11/27(木) 22:35:04 ID:G.IT8Jpk0
修正乙です
ただ読み返して思ったのですが、固有結界の展開の際に呪文の詠唱は行ったのでしょうか
呪文詠唱の描写が完全に省かれていたことが、今更ながらに気になりました

ちなみに、呪文の細部は違いますが、固有結界の展開にはこれくらい時間が掛かります(ネタバレ注意です)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm275950
あとついでに、これも把握用にどうぞ
ttps://www.youtube.com/watch?v=-1LBozFVHu8&list=PLA7FE440D65A73C92

59サイバーゴースト名無しさん:2014/11/27(木) 22:45:55 ID:G.IT8Jpk0
連投失礼
アーチャーの詠唱については、こっちの方がわかりやすいかと
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm12281911

60サイバーゴースト名無しさん:2014/11/27(木) 23:05:08 ID:/Z9mMDOA0
問題指摘点を並べます。

・エミヤの口調、というよりリアクションが大きすぎます。ダメージにいちいち叫ぶ真似は殆どしないキャラです。

・すでに言われている通りですが、通常のバーサーカーに敵を所定地に追い込んで倒すという綿密な戦略は見込めません。
 「特定のエリアでサーヴァントを殺す」という令呪の内容と、「近場のエリアにいるエミヤを殺す」という一護の感情は直接繋げられる事柄ではないからです。
 どちらかを優先せず両方遂行できるような合理的な思考は望めません。
 ましてエミヤを襲う場合、守護スキルのデメリットで戦意なき者を攻撃できないという二重の制約があるのでなおさら行動が縛られます。
 それすら無視して感情でエミヤに襲い掛かるという選択肢もあるにはあるでしょうが、その場合相当な制約が追加されることになることは認識してください。
 付け加えるに、四肢を狙い手加減するという文も消した方がいいです。

・五次ライダーの鎖短剣を投影するのは問題ないでしょうが、「冬木市の聖杯戦争でライダーが〜」と明言するのは避けた方がいいでしょう。
 生前の聖杯戦争で会ったライダーが同一である保証はないし、第五次に参戦した記憶(記録ならまだ許容範囲)があるのは今までの心情を破壊する真似になりかねません。

61サイバーゴースト名無しさん:2014/11/27(木) 23:12:50 ID:/Z9mMDOA0
続き。主に固有結界関連。

・固有結界の使用には八節の呪文詠唱が必要です。
 ……とはいえ、原作ルート中ではたびたび途中が省略されているので書かれてないこと自体は問題ありません。 
 その場合、「ほむらの陣地に突っ込んで一護の意図を理解した後詠唱を始めた」ことになりますが。

・自分をどこかへ追い込むという意図を理解したからといって、宝具扱いである固有結界を使って閉じ込めるという行為に移る意味が分かりません。
 だいいち自分諸共閉じ込めてはもう逃げられません。負傷した状態で一護との一騎討ちにしかなりません。気絶中のマスターもほったらかしです。
 これだけ悪条件が重なりながらも宝具の使用に踏み切るだけの理由は無い筈です。

>>53中での描写で、
>王者の剣はバーサーカーの身体を容易く切り裂く。だが、切り裂いている間は王者の剣が使えないと言うことでもある。
 無数の剣が周囲にあるエミヤにとってこれは欠点になり得ません。自動で手元に引き寄せることも可能です。

>エミヤはバーサーカーの上空を囲うように、剣を投影する。
・固有結界使用中には剣を投影する必要は皆無です。元々結界内にある剣を外界に取り出すという設定なので。

62 ◆OSPfO9RMfA:2014/11/28(金) 00:06:24 ID:IE5HPMEM0
指摘ありがとうございます。

今回の話はこのままでは通すのが難しく、また修正も難しいので、破棄します。
多くの助言を頂いたのに、誠申し訳ありません。
キャラクターの長期拘束、申し訳ありませんでした。

63 ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:25:13 ID:pMYEkxmw0
話の内容が内容ですので、まずはこちらに仮投下させていただきます。

64角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:25:57 ID:pMYEkxmw0


 世界は広いが
 世間は狭い

 配点(偶然、必然、運命)
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


     01/ 聖杯問答(門前払い)


 バスを乗り継ぎ、新都から深山町へと移動する。
 目指す場所はエリア【D-5】の一角――裁定者たちが拠点とする、もう一つの教会だ。
 そこにいるはずのルーラー達に、東風谷早苗は聖杯の是非を問おうとしていた。


 そんなマスターの隣に座りながら、アーチャーのサーヴァント、アシタカは窓の外を眺めていた。
 その理由は二つ。
 一つは警戒のため。そしてもう一つは、今自分たちが乗っているバスについて考えていたからだ。

 このバスという乗り物は、移動手段としては非常に優秀だ。
 一度に十人以上の人間が乗車でき、移動時の振動も少なく、その速度も速い。そして何より疲れ知らずだ。
 また鉄で構成されたその車体はそれなりに頑丈であり、街中におけるその利便性は騎馬にも勝るだろう。

 だがこのバスには、それ相応の欠点も存在する。
 まず道路上でなければその安定性を発揮できず、さらにその巨体故に小回りが利かない。
 また多少の空腹であっても無理をすれば動ける馬と違い、燃料が尽きればただの鉄の箱になり下がる。
 そして何より、その運用は社会秩序に縛られている。
 発車時間、走行位置、走行速度、停車地点、停車時間。その全てが定められており、原則としてそれを外れることは許されていない。
 つまり、好きな時に、好きなように利用できる乗り物ではないのだ。

 それらの欠点は、戦闘を想定して考えればより顕著になる。
 もし今このタイミングで襲撃を受けてしまえば、自分たちは一瞬で窮地に立たされるだろう。
 なにしろ、このバスの手綱を握っているのは、NPCである運転手だ。襲撃に対する咄嗟の対応など、望むべくもない。
 仮に自分たちが即座にバスを降車しようと思うのなら、窓ガラスを叩き割って飛び出すしかないのだ。

 しかし、その行為にも危険が伴う。
 地面はそれなりに柔らかい草原ではなく、非常に固いアスファルト。加えてバスは高速で移動している。
 物理的ダメージの及ばないサーヴァントならともかく、当たり前の人間であるマスターの場合、大怪我をする危険性がある。
 そして当然、そんな事をすれば注目を集めることに繋がり、他のマスターやサーヴァントに目を付けられる可能性が高まる。

 また、これがバズではなく自家用車であっても、その危険性は変わらない。
 確かにその手綱は自由に扱えるようになり、襲撃には対処しやすくなるだろう。
 だが規律から外れた走行を行なえば、今度は社会秩序自体に目を付けられることになる。
 何しろ道路にはNPCの乗車する車も走っている。走行方向や制限速度を破れば、彼らに迷惑を掛けてしまうのだから。
 これが夜間であれば、NPCの車も減り、多少は無茶な走行もできるだろう。
 だが今度は、車のエンジン音によって自分たちの存在を知らせることに繋がりかねない。
 ……まあもっとも、自身の騎乗スキルには車などの機械は該当しないため、車を運転する事自体がまずないのだが。


 アーチャーのクラスにある身としては、注目を集めるようなことは絶対に避けなければならない事態だ。
 何しろ自分には、一撃の火力というものに欠けている。狙撃による暗殺を狙うのであればともかく、真正面からの戦闘には向いていないのだ。
 ヤックルがいれば他にやり様もあったのだろうが、現在のクラスでは呼び出すこともできない。
 つまり今の自分には、セイバーやランサー、バーサーカーと言った、近接戦闘を得意とするサーヴァントが天敵といえる。
 だからこそ、今も気配感知のスキルによって周囲を警戒しているのだが。

 幸いにして、いくつかサーヴァントらしき気配はあったが、こちらに近づいてくるような気配は感じ取れなかった。
 だが自分はアサシンと違い、気配遮断スキルを持ってない。今の自分と同様、気付いたうえで無視した可能性もある。
 更には、感知範囲外から攻撃できるアーチャーや、気配を隠せるアサシンといったクラスも存在する。
 今の時間帯は利用客が多いため襲撃される可能性は低いが、よほど急ぎでもない限り、今後はバスの利用は控えた方がいいだろう。
 アシタカはそう判断し、マスターである早苗にそう伝えるとともに、一層車外への警戒を強めた。
 ………その際に、

65角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:26:30 ID:pMYEkxmw0

 ―――この街は……いや、この時代は、もののけはおろか、自然の気配さえも希薄なのだな。

 森と共に生きた者としての、そんな感傷を懐きながら。


      †


 ―――それから十数分後。
 バス停から降車した早苗は、教会へと通じる坂道を、考え事をしながら上っていた。

 今後は、バスの利用は控えた方がいい、とアーチャーは言った。
 説明されたその理由と危険性は、早苗にとって思いもよらないものであった。


 幻想郷に来るまでは現代社会に生きていた早苗にとって、バスと言うのはごく日常的なものだった。
 時折テレビや新聞のニュースなどで事故があったというのは聞くが、それは画面や紙面の向こう側。今一つ実感の湧かないものだった。
 だからなのだろう。
 早苗は自分が乗っていたバスが襲われるかもしれないなどとは、全く想定していなかったのだ。

 その感性は、今も変わらない。
 考えてみれば当たり前のこと。テレビや映画で観た事のあるその場景は、だからこそ現実感に乏しい。
 その危険性を説明された現在にあっても、バスに乗ることが危険だと、早苗には実感できていなかった。


 ……だが、同時に思う。
 それこそが、自分とアキトとの違いなのではないか、と。

 テンカ・ワアキトは、己が願いのために他者を殺すことを是としている。
 それは聖杯戦争のルールにおいては、決して間違った行動ではない。
 だが東風谷早苗は、己が思想のもと、他者を殺すことを否とした。
 それはつまり、ある意味において聖杯戦争を否定したに等しい。
 そして日常と非日常で区別するのなら、日常の裏側で行われる聖杯戦争は当然非日常に分類される。
 つまり、聖杯戦争を是としたアキトは非日常の側に、否とした早苗は日常の側に立っていることになるのだ。

 そして立ち位置が違えば、たとえ同じモノを見たとしても、目に見えるカタチは違う。
 ……いや、そもそも、

「……ああ、そうか。私はまだ、“聖杯戦争を知らない”のですね」

 殺し合いを実感できていない早苗には、聖杯戦争そのものが見えていなかったのだ。

 確かに早苗は、箱舟に呼びこまれ、予選を突破し、サーヴァントと契約し、聖杯戦争に関する知識を得た。
 だが、言ってしまえばそれだけだ。
 サーヴァントとはすなわち、聖杯戦争へと参加する“権利”であり、与えられた知識とは言い換えれば、ただのルールブックだ。
 権利と知識。その二つしか得ていない彼女は、まだ聖杯戦争に真には参加していなかったのだ。
 早苗はその事を、ここに至ってようやく理解した。

 ―――ならばどうするべきか。

 早苗は、聖杯戦争が間違いであると証明するためにここに来た。
 否定するだけならば簡単だ。力で己が考えを押し通し、相手の願いを押し潰せばいい。
 だが早苗が望んだのは、“証明する”こと。
 ただ間違っていると言い張るだけでは証明にはならない。それを、相手に認めさせなければならない。
 そのためには――――

「この聖杯戦争について、もっとちゃんと知らないと」
 そう口にして立ち止まる。
 目の前には人影のない広場。その奥に、日に照らされた白亜の建物がある。
 新都にあった廃教会とよく似た造りの神の家は、早苗からすれば異教の神を崇め奉る神殿だ。
 加えて聖杯戦争を否定する彼女にとっては、ここはもはや敵地にも等しい。

 ……ここは地上より遠く。
 天(そら)にはなお遠い、告解の惑い場―――

66角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:27:02 ID:pMYEkxmw0


『………マスター』
 不意に、アーチャーが念話で話しかけてきた。
「っ……」
『どうしたんですか?』
 それに、つい声を出して答えそうになりながらも、どうにか念話で応じる。

 現在アーチャーは実体化している。念話ではなく、肉声で話しかけても問題はないはずだ。
 だというのにわざわざ念話を使ったということは、何か理由があるのだろう。
 そんな早苗の予想に違わず、アーチャーは表面上は穏やかなまま、警戒の声を発してきた。

『周囲に何か、魔力を持った存在の気配がする』
『魔力? それってもしかして、ルーラーですか?』
『判らない。だが感じ取れる気配は複数以上ある。
 ここにいるサーヴァントがルーラーだけならば、気配は一つだけのはずだ。
 だがそうでない以上、この教会は使い魔か、あるいはサーヴァントに監視されていると見ていいだろう』
『そう……ですか』
『どうする、マスター。今ならば気付かれていない可能性もあるが、教会に入れば確実に知られるだろう。
 そしてルーラーと接触したことが知られれば、その者に目を付けられる可能性もある。
 それを避けるために、一度出直すのも一つの手だが……』

 アーチャーの言う“目を付けられる”という意味。それはおそらく、アーチャーの情報を奪われるという事だろう。
 そして情報が奪われれば、アーチャーへの対処が行われてしまうかもしれない。
 要するに、不利になるという事だ。
 ……が、しかし。

「――――」
 覚悟を決めて、教会へと一歩踏み出す。

『構いません。襲われることを恐れていては、幻想郷では信仰を広められませんから。
 それにもしかしたら、その人から接触してくるかもしれないでしょう?
 そうなればむしろ好都合です。上手くすれば、その人から情報が得られるかもしれません』

 教会には、この聖杯戦争を司る裁定者が居るはずだ。
 今必要なのはまだ見ぬ敵への恐れではなく、見知らぬ事を知るための勇気だ。

 そして東風谷早苗の崇め奉る神は二柱。
 一つは洩矢諏訪子。洩矢の国の祟り神を統べし土着神であり、
 一つは八坂神奈子。その洩矢の国を侵略し治めた軍神である。
 異郷の地に踏み入れることを恐れる理由など、どこにもない。
 むしろ一層強く胸を張り、早苗は神の家の扉を開け放った――――。


「――――――――」
 ――――天窓からの日差しが、偶像のない礼拝堂を照らし上げる。
 銀色の髪の少女が、何かに祈りを捧げるように荘厳なパイプオルガンを奏でている。
 幾重にも反響して響き渡る、オルガン(いのり)の音色(うた)。
 一つの宗教画のような情景。
 見る者が見れば、ある種の神聖さすら感じられただろう。

 無心でオルガンを奏でる少女からは、サーヴァント特有の気配は感じられない。
 おそらく、彼女が裁定者の内の一人、カレン・オルテンシアなのだろう。
 法衣を纏った銀髪の少女は、来訪者に気を向ける事もなく演奏を続けている。

「――――――――」
 この隔絶された聖域を侵すように、堂々と教会へ踏み入る。
「――――――――」
 無心の祈りを捧げていた少女が、それに応じるように演奏を止め、早苗へと向き直る

「……………………」
 一層気を引き締めて、早苗はルーラーへと近づく。
 だが早苗のその歩みは、あと一歩という所でカレンの言葉に止められた。

「ようこそおいで下さいました、アーチャーとそのマスター。
 何の持て成しもできませんが、どうぞ寛ぎください」

「っ…………!?」
 今カレンは、自分の事をアーチャーとそのマスターと呼んだ。
 だがそれはおかしい。
 確かにアーチャーは実体化したまま、自分の後ろに付き従っていた。
 だが彼は現在そのクラスを象徴する弓を持っておらず、服装も現代のものだ。
 サーヴァントであることはともかく、外見でクラス名までは判断できないはずだ。
 だというのにカレンは、彼をアーチャーであると断言した。
 ……まさか、見られていた? 気配感知スキルを持つアーチャーの目を掻い潜って? 一体どうやって……!

「落ち着け、マスター。相手は裁定者だ。こちらのクラスを判別する権限くらい、持っていてもおかしくはない」
「っ……、そうですね。ありがとうございます、アーチャー」

 大きく深呼吸をして、気を落ち着かせる。
 アーチャーの言う通り、相手は裁定者。ただの参加者に過ぎない自分より、上位の立場にある存在だ。
 対等に渡り合うためには、気を引き締めてかからなければ。

67角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:27:30 ID:pMYEkxmw0

「カレンさん。裁定者である貴女に、訊きたいことがあります」
「なんでしょう」
「聖杯戦争について、教えてください」
「それは、予選を突破した時点で既に“知っている”はずでは?」
 怪訝そうに眉を顰めるカレンの瞳を、まっすぐに睨み付ける。
 気負ったら負ける。聞きたいことも聞けずに、この話し合いは終わるのだと、早苗は直感しているのだ。

 確かに聖杯戦争のルールは理解している。
 自分以外のマスターとサーヴァントを倒し、最後の一組になった時、一度だけ月の聖杯を使用できるという事は。
 だが、自分が知りたいのはそんな事ではない。

「私が知りたいのはルールではありません、理由です。
 どうして他のマスターを殺さなければ、聖杯を得られないのですか?」
「……………………」
「聖杯が一度しか使えないから、他のマスターと競い合う。これはわかります。
 ですがそれだけが理由なら、負けたマスターは方舟から追い出されるというルールでも問題はないはずです」

 だが現実は違う。
 生き残れるのは一組だけ。他のマスターを倒し、最後まで生き残ったマスターのみ。
 サーヴァントを失い敗れたマスターは、ムーンセルに削除されそのまま死に至る。
 それがこの聖杯戦争のルールだ。
 ……ならば、そこには何か理由がある筈だ。

「教えてください。
 敗北したマスターが死ななければならない理由。
 私のような、明確な望みや参加する意思のなかった人が招かれた理由。
 聖杯を望んでいない私たちが、殺し合わなければいけない理由は何ですか?」
「――――――――」

 僅かな緊張が奔る。
 それも当然。早苗の問いは、ある意味で聖杯戦争の根幹に関わることなのだから。
 だがそれを受けたカレンは、つまらなさそうな顔をした後、

「申し訳ありません。
 その問いに、私は答えることは出来ません。何故なら、その問いの答えを、私も知らないからです」
 そう、興味がなさ気に口にした。

「裁定者なのに……ですか?」
「ええ。……いえ、だからこそ、というべきでしょうか。
 確かに私たちは、聖杯戦争聖杯戦争を恙なく運営するため、裁定者の任を与えられました。
 しかし、言ってしまえばその為だけの存在。それ以外の、聖杯戦争の運営に必要のない知識は与えられていないのです」

 早苗の疑問。
 聖杯戦争が起きた理由。聖杯戦争の仕組み。聖杯の正体。
 それらは聖杯戦争を運営させる分には、知る意味のないことだ。
 いやむしろ、絶対的な権限を持つ裁定者が聖杯に疑念を懐いてしまえば、聖杯戦争そのものが破綻しかねない。
 故に、聖杯に関する知識という意味ではむしろ、他のマスターやサーヴァントよりも知らない可能性があるのだ。

 カレンはそう言外に語る。
 つまり早苗が聖杯戦争について知るには、他のマスターと接触するしかないのだ。

「そうですか……わかりました」
 最も有力だった人物への当てが外れた事に、早苗は落胆の表情を浮かべる。
 だが次の瞬間には、先程よりも強い意思を籠めた視線とともに、カレンへと更なる問いを投げかけた。

「ルーラーさん。あなたはこの聖杯戦争が、正しいものだと思いますか?」
「…………」
「私は、間違っていると思います。こんな殺し合いをさせる聖杯は、みんなが考えているようなものじゃないと思います」
「…………それは、どういう意味でしょうか」
「聖杯がどのような方法で願いを叶えるのか、私は知りません。
 だから、聖杯が願いを叶える為には、代償となる贄が必要ということもあるのかもしれません。
 けどそれなら、マスターとなる人物には、参加の是非を問うのが道理ではないですか?
 こんな、マスターの意思を無視して無理矢理に参加させるようなやり方は、絶対におかしいと思います」
「――――――――」
「これで仮に、聖杯に生贄が必要ないのだとすれば、なおさらです。
 もしそうなら、私は聖杯を認めるわけにはいきません」

 まっすぐにカレンを見据えて、早苗はそう口にする。
 元より彼女は、それを確かめるためにここに来た。先ほどの質問は、そのための前置きに過ぎない。
 聖杯は正しいのか間違っているのか。
 早聖杯戦争を司る少女はどう思っているのかと、早苗はその答えを求め、

68角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:28:09 ID:pMYEkxmw0

「では訊きますが、もしこの聖杯戦争が間違いだとして、その場合貴女はどうするのですか?」
「へ?」
 カレンのその問いに、あっさりと意気込みを挫かれた。

「たとえ聖杯が何かを間違えていようと、聖杯戦争はすでに始まっています。
 そしてマスターである以上、貴女は他のマスターと戦い、倒すしかない。でなければ死ぬだけです。
 あるいは、もし仮に聖杯戦争を止めようというのであれば、場合によってはルールに反する可能性があるでしょう。
 ――つまりそれは、裁定者(わたしたち)と対立することにも繋がります。その覚悟が、貴女にはありますか?」
「そ、それは……」

 たとえ聖杯が間違えていると証明したところで、何の解決にもならないとカレンは告げる。
 実際、その通りだ。
 早苗の目的は、聖杯が間違いであると証明し、テンカワ・アキトを止める事だ。
 だが、彼一人を止めたところで、聖杯戦争は止まらない。生き残れるのが一人だけである以上、結局は殺し合うしかないのだ。
 もしそれを避けたいのであれば、聖杯戦争そのものをどうにかするしかない。
 それも、間違いを承知の上で聖杯を望むマスターと、聖杯戦争を運営する裁定者とを相手にした上で、だ。

「聖杯が正しいのか、それとも間違っているのか、私にはわかりません。
 ですが、裁定者の務めを任された以上、私はその役割に殉じるだけです」
「ぅ…………」
 ルーラーは憮然とした表情で、早苗の問いを切って捨てる。
 己が行為の無意味さを突き付けられた早苗は、その冷めた声につい視線を逸らしてしまう。

「話が終わったのであれば、お帰りを。それこそ、裁定者としての役割を果たさなければなりませんので」
 今この場で話すことはもう何もないと、言外に告げる。

「……はい」
 それを受けた早苗は意気消沈し、肩を落としながら教会の外へと足を向ける。
 目的を見失った彼女には、カレンの声に抗うだけの気力は残っていなかったのだ。
 そこへ不意に、

「聖杯について知りたければ、岸波白野というマスターに尋ねるといいでしょう」

 そんな言葉が、投げかけられた。

「え?」
「月の聖杯についてなら、おそらく彼が一番よく知っています。聖杯について知りたいのであれば、彼に訊いてみなさい」
 カレンはそう口にすると、聖堂の奥へと去っていった。

 助けてくれた……のだろうか。
 理由はよくわからないが、彼女のおかげで、当面の目標は出来た。
「…………ありがとうございました」
 カレンの去った方へと向き直りそう口にすると、早苗は今度こそ教会の外へと向けて歩き出す。


      †


「すみませんアーチャー。考えが足りませんでした」
 教会の外へと出た早苗は、アーチャーへとそう謝罪した。
「謝る必要はない。マスターは、己の心に従っただけであろう」
 だがアーチャーは、そう首を振って否定した。

「ですけど」
「確かに聖杯の間違いを証明した後の事は考える必要がある。
 だが先の事ばかりを考えていては、今成すべき事も成せなくなろう。
 大事なのは、己が本当に成したいことは何か、それを成すために必要なことは何か、それを成した結果どうなるのかを考え、受け入れる事だ」
「自分がしたいこと、するために必要なこと、した時の結果を考え、受け入れる……」
「そうだ。その覚悟さえあれば、何も迷う必要はない。
 ではもう一度問おう、マスター。この聖杯戦争において、そなたは何を成したい」
「私の……したいこと………」
 アーチャーに促され、早苗は改めて自分がどうしたいのかを考える。

 そもそも、自分が教会に来たのは何のためか。
 ――聖杯について知るため。
 では、なぜ聖杯について知ろうと思ったのか。
 ――聖杯戦争が間違いであることを証明するため。
 何のために、それを証明しようと思ったのか。
 ――テンカワ・アキトを、止めるため。
 どうして彼を止めるのか。
 ――彼に、人殺しをして欲しくないから。

69角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:28:33 ID:pMYEkxmw0

 そう。それが答えだ。
 テンカワ・アキトに、人殺しをして欲しくない。だから聖杯が間違いであると証明しようと思った。
 ……だが、それだけでは足りなかった。
 聖杯戦争は始まっている。生き残れるのは一組だけ。生き残るには、他者を殺すしかない。
 たとえ聖杯が間違いであると証明したところで、このままでは人殺しは避けられない。

 ―――ならばどうすればいいか。
 決まっている。聖杯戦争を止めるしかない。
 だがそれは、聖杯戦争を運営するルーラーと敵対する行為だ。
 いや、ルーラーだけではない。場合によっては、聖杯を望むマスター全てを敵に回すことになるだろう。

「っ…………」
 まだ見ぬ未知の敵に、思わず唾を呑む。
 サーヴァントがどのような存在かは、アーチャーを見て知っている。
 その彼と同等か、あるいはそれ以上の存在が、何人も、あるいは何十人も襲い掛かってくる。
 そんな想像をしてしまったのだ。
 …………だが。

「……私はそれでも、この聖杯戦争が間違いであると、証明したいです」
 目指すものはすでに定まっている。
 令呪まで使って宣言したのだ。いまさら後戻りはできない。
 ……ならば、その結果他のマスターと戦うことになったとしても、受け入れよう。
 それが、覚悟を決めるという事なのだから。

「そのために、岸波白野という人を探します。……手伝ってくれますか、アーチャー?」
「無論だ。私の持てる全てを以て、そなたの力になって見せよう」
「…………、ありがとうございます」
 アーチャーのその言葉に、背中を支えられたような気持ちになる。
 彼が支えてくれている限り、きっと私は、途中で挫けることはないだろうと、そんな実感が湧いてくる。
 だからこの先、誰かと戦うことになったとしても、今の私なら、きっと大丈夫だと思えた。

「あ、でもその前に、白野さんの事をアキトさんに言っておいた方がいいのかな……?」

 岸波白野の事は早く見つけたい。
 けどどこにいるかわからない以上、探すのに時間はかかるだろう。
 それまでの間に、アキトさんと岸波白野が戦ってしまうかもしれない。そのせいで二人の内どちらかでも死んでしまえば本末転倒だ。
 ならそうならないように、アキトさんに岸波白野の事を話しておくべきだろうか。

「……それにしても、白野さんの名前、どこかで聞いた覚えがあるような…………気のせいかな?」
 そこはかとない既視感(デジャヴ)。
 手掛かりは自分の中にある気がするのに、それはまるで、深い霧に隠れているかのよう。

 早苗が聖杯の手掛かりに辿り着くには、もうしばらく時間が掛かりそうだった。


【D-5/教会周辺/一日目 午後】

【東風谷早苗@東方Project】
[状態]:健康
[令呪]:残り2画
[装備]:なし
[道具]:今日一日の食事、保存食、飲み物、着替えいくつか
[所持金]:一人暮らしには十分な仕送り
[思考・状況]
基本行動方針:誰も殺したくはない。誰にも殺し合いをさせたくない。
0. 白野さんの事を、先にアキトさんに伝えておいた方がいいでしょうか……?
1. 岸波白野を探し、聖杯について聞く。
2. 少女(れんげ)が心配。
3. 聖杯が誤りであると証明し、アキトを説得する。
4. そのために、聖杯戦争について正しく知る。
[備考]
※月海原学園の生徒ですが学校へ行くつもりはありません。
※アシタカからアーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しましたが、あくまで外観的情報です。名前は把握していません。
※カレンから岸波白野の名前を聞きました。その名前に聞き覚えはありますが、よく思い出せません。
※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。
※アキト、アンデルセン陣営と同盟を組みました。詳しい内容は後続にお任せします。なお、彼らのスタンスについて、詳しくは知りません。
※バーサーカー(ガッツ)のパラメーターを確認済み。
※アキトの根城、B-9の天河食堂を知りました。

【アーチャー(アシタカ)@もののけ姫】
[状態]:健康
[令呪]
1. 『聖杯戦争が誤りであると証明できなかった場合、私を殺してください』
[装備]:現代風の服
[道具]:現代風の着替え
[思考・状況]
基本行動方針:早苗に従い、早苗を守る
1. 早苗を護る。
2. 使い魔などの監視者を警戒する。
[備考]
※アーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しました。
※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。
※教会の周辺に、複数の魔力を持つモノの気配を感知しました。

70角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:28:56 ID:pMYEkxmw0


     02/ 気付かぬ繋がり


「何だったんだ、結局あいつは」

 雄叫びとともにいずこかへと走り去っていった真玉橋孝一を見送った後、本多・正純はそう独り言ちた。
 そして廊下を走るな、と注意し損ねた事にいまさらばがら思い至り、はあ、とため息を吐く。

「どうやら逃げられてしまったようだな」
「一成」

 掛けられた声に振り替えれば、そこには生徒会長の柳洞一成がいた。
 彼は悩ましげに眉を顰めながら、先程の正純と同じように、はあ、とため息を吐いた。

「こちらもケイネス先生にご助力を願おうとしたのだが、今は忙しいと素気無く断られてしまった」
「そうか。なら、真玉橋孝一の事は自分たちでどうにかするしかない、という訳か」
「そういう事になるな。
 ……まったく、岸波が休んでいることもあって、こちらも手が足りていないというのに。猫の手も借りたいとはこの事だ」
「岸波?」
 一成が口にした名前に、正純は首を傾げる。

 フルネームは岸波白野。クラスはたしか、2‐A。新聞部に所属していたはずだ。
 一成の友人で、生徒会役員ではないが、何かと手を貸してくれる生徒だったか。
 その関係で、自分ともいくらか交流があったのを覚えている。

「岸波白野が休んでいるのか?」
「うむ。しかも聞いて驚くなかれ、何と無断欠勤だ。
 遅刻ならばともかく、普段真面目なあいつがそのようなことをするとは思えんのだが……休み時間に家に連絡してみても、応答がなかったのだ。
 最近は何かと物騒だと聞く。話によれば、新都では暴動事件まで起きたそうではないか。岸波は新都に一人暮らしだからな。心配でならん」

 その暴動の話は、正純もライダーから聞き及んでいた。
 確かに暴動に巻き込まれれば、学校どころではなくなるだろう。
 もっとも、岸波白野が登校中だったのなら制服を着用していたはずだ。
 そして制服を着ていたのであれば、学校へと連絡をするはずだろう。
 それがなかった、という点が若干気にかかる。

「それに最近は、連絡の有無を問わず、欠席する生徒が増えてきている。
 岸波の他にも、二年E組の狭間偉出夫や一年の間桐桜。俺にとって仏門における好敵手とも言える、東風谷早苗まで無断欠席しているらしい。
 まあ間桐さんに関しては、ここ数日風邪気味のようだったと聞き及んでいる。単に病欠の可能性もあるがな」
「む。その者たちは一成の知り合いなのか?」
「いや、直接的な面識はあまりない。
 だが狭間偉出夫は悪い意味で有名だからな。その動向は嫌でも耳に入る。
 彼の事はどうにかしたいと思ってはいるのだが、如何せん会長業務に追われて、何の手も打てていないのが現状だ。
 間桐さんの方は、弓道部部員であると同時に保健委員でもあってな。それぞれの部長と委員長が話し合っていたのを小耳に挿んだのだ。
 なにしろ、間桐さんは人見知りこそするが責任感もある人物らしく、次期部長または委員長にと期待されているようだからな。何かと物騒な昨今、彼女達も心配なのだろう」
「なるほど」
 一成の言葉に、正純は納得して頷く。

 たとえ聖杯戦争を知らずとも、街の雰囲気の変化はNPCたちも感じ取っているのだろう。
 加えて最近は聖杯戦争に関与すると思われる事件も報道され始めている。そこでいきなり無断欠席ともなれば、心配にもなるだろう。

 しかも一成はまだ知らないようだが、無断欠席をした生徒は初等部にもいる。
 名前は遠坂凛。住んでいる場所は、たしか【B-4】地区だったはずだ。
 そう。先ほどの通達で、ルーラーの警告があった地域だ。
 偶然と言えばそれまでだが、あまりにもピンポイント過ぎる。
 とはいえ、何がどこまで聖杯戦争に関与しているかなど、考えたところでキリがない。
 授業が終わるのは午後三時半。あと三時間近くも後だ。
 ここはやはり、次の休憩時間にでも、彼女の家に一度連絡を入れてみるべきだろう。

「まったく、寺の用事さえなければ、放課後にでも岸波の家を直接訪ねたものを」
「寺の用事?」
「うむ。我が命蓮寺には今、住職である聖白蓮殿の客人が訪ねておってな。その持成しをせねばならんのだ」
「そっか。それは大変だな。
 ……そうだ、一成。岸波白野の家には私が替わりに訪ねようか?」
「む。それは助かるが、いいのか?」
「ああ。実は放課後、シャア・アズナブルの後援会に出る予定でな。そのついでで良ければの話だが」

71角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:30:06 ID:pMYEkxmw0

 正純のその提案は、ちょっとした思い付きであった。
 後援会が行われるのは、【C-6】にある冬木ハイアットホテルだ。そこから新都まではそう遠くない。
 爆発事故や暴動の起きた場所も気になるし、ついでに現場を調査するのも悪い案ではないだろう。
 無論、他のサーヴァントに発見されないよう、様子見程度に留めた方が無難だろうが。

「……そう言えば、本多は政治家志望であったな。
 すまんが頼む。この礼はいずれ必ず返そう。
 岸波はB-8地区の住宅街にあるアパートに住んでいる。詳しい住所は―――」

 そうして告げられた住所を、正純はメモに書き留める。
 住所の位置取りからして、岸波白野はバス通勤なのだろう。
 加えて幸いと言うべきか、その場所は爆発事故の現場からほど近い。ふらりと立ち寄る分にはそう怪しまれないと思われる。

「ではな、本多。岸波の無事を確認できたら、くれぐれもよろしく言ってやれ」
「Jud. 一成は安心して寺の子の務めを果たすといい」

 正純は一成へとそう返事をし、教室へ戻ろうと踵を返し、ふと先ほどの会話に違和感を覚えた。
 その違和感の正体は何かと思い、一成の方へと振り返る。

「まったく……真玉橋の事は早々にどうにかせねばな。
 もし何かの拍子で聖殿と遭遇した時に、あのような調子でセクハラされてはたまらんわ」
 喝。と締めくくりながら、一成は早足で自分の教室へと向かっている。

 ――――そう。違和感を覚えたのは、その聖という人物に関してだ。
 たしか一成はこう言っていた。『命蓮寺には今、聖白蓮の客人が訪ねている』と。
 このタイミングで訪ねてきたという客人。それはサーヴァントの存在を連想させるには充分過ぎる符合だ。
 故に、その客人の事をより詳しく聞こうと一歩踏み出し、

「―――む、いかん。午後の授業が始まってしまう」
 スピーカーから鳴り出したチャイムに、仕方ない、と正純は再び自分の教室へと踵を返した。

 聖白蓮の客人の事は気になるが、どうせ今日は予定が詰まっている。
 今はその人物の存在を知れただけでも良しとして、詳しい事は後日改めて訊くとしよう。


      †


 そうして、午後一度目の休憩時間となった現在。正純は遠坂邸へと電話をかけていた。
 休み時間は十分だけ。他にもすることがあるので、話の内容は遠坂凛の安否を確認する程度に留めておこう。
 そう考えながら待つこと数十秒。

『――はい、もしもし。遠坂です』
 そんな言葉とともに、聞き覚えのある少女の声が応答した。
「もしもし。私、本多・正純と申します」
『へ? 正純さん……!? えっと、いきなりどうしたんですか?』
「いやなに。君が学校を無断欠席したと初等部の先生から聞いてな。
 それに最近は何かと物騒だろ。それで少し心配になったのだよ」
『は、はあ。それは、ご心配をおかけしました』
 正純が要件を言えば、遠坂凛は戸惑ったように返してきた。
 ただ、その声がどこか申し訳なさげに聞こえたのは気のせいだろうか。

「なに。無事であるのならそれでいい。
 ただ、君が無断欠席をした理由を教えてもらってもいいだろうか」
『ええと、その……学校を休んだのは、風邪を引いたからで、連絡は、ついうっかり忘れちゃったんです』
「……ふむ。そうか、了解した。
 なら話はここまでにしておこう。病人に長話をさせるのもなんだしな。
 ではな。しっかり休んで、風邪を治してくれたまえ」
『はい、ありがとうございます。本多さんもお体には気を付けてくださいね』

 そう労い合うと同時に電話を切る。
 遠坂凛の様子にはどこか違和感があったが、さすがにあんな子供が聖杯戦争に絡んでいるとは考え辛い。おそらく、子供特有の仮病か何かだろう。
 そんなところまで再現する方舟には感心するが、彼女の無事を確認できたのなら、今はそれで十分だろう。
 ……それよりは、夕方からのシャア候補との交渉に備えなければ。
 その交渉如何によって、自分たちの聖杯戦争の行方が替わってくるのだから。

 正純はそう判断して、自身の教室へと戻っていった。

72角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:30:32 ID:pMYEkxmw0


【C-3/月海原学園/一日目 午後】

【本多・正純@境界線上のホライゾン】
[状態]:まだ空腹
[令呪]:残り三画
[装備]:学生服(月見原学園)、ツキノワ
[道具]:学生鞄、各種学業用品
[所持金]:さらに極貧
[思考・状況]
基本行動方針:他参加者と交渉することで聖杯戦争を解釈し、聖杯とも交渉し、場合によっては聖杯と戦争し、失われようとする命を救う。
0. 遠坂凛は……おそらく仮病だろう。
1. シャア候補との交渉に備えて、彼の過去の演説に当たるなどして準備する。
2. マスターを捜索し、交渉を行う。その為の情報収集も同時に行う。
3. シャア候補との交渉後、余裕があれば岸波白野の自宅(B-8の住宅街)に向かう。
4. 聖杯戦争についての情報を集める。
5. 可能ならば、魔力不足を解決する方法も探したい。
[備考]
※少佐から送られてきた資料データである程度の目立つ事件は把握しています。
※武蔵住民かつ戦争に関わるものとして、少女(雷)に朧気ながら武蔵(戦艦及び統括する自動人形)に近いものを感じ取っています。
※アーカードがこの『方舟』内に居る可能性が極めて高いと知りました。
※孝一を気になるところのある武蔵寄りのノリの人間と捉えましたがマスターとは断定できていません。
※遠坂凛の言動に違和感を覚えましたが、仮病だろうと判断しました。

73角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:31:19 ID:pMYEkxmw0


     03/ ある記憶/矛盾聖杯


 ――――――――剣戟の音が聞こえる。
 青い海の底/眩い月明かりの下、彼らは戦っていた。

 疾しる青い躰。応じる赤色の人影。
 赤い閃光が幾度も奔り、その度に火花が飛び散る。
 二つの人影は縦横無尽に戦場を駆け回り、幾度も武器を重ね合う。


 その光景は、まるでピントが合っていないかのようにぼやけていた。
 戦っているのが、サーヴァントだということはわかる。その背後に、マスターが控えているのも見える。
 だが判るのはそれだけだ。
 周囲の詳細を知ろうと目を凝らしても、どこかが致命的にズレていてどうにもはっきりしなかった。

 そんな光景の中で、比較的鮮明に見えるものは二つだけあった。
 私のサーヴァントである青いランサーと、わたしが成長したような姿の“私”だけだ。
 とは言っても、やはりその姿も、輪郭がどこかぼやけていたのだけど。

 それに比べて、ランサーと対峙しているサーヴァントは、特に輪郭のブレが激しかった。
 長柄にも二刀にも見える武器を持っていて、体つきは痩躯にも巨躯にも見えた。色調が赤色ということだけが一貫している。

 一方“私”と対峙しているもう一人のマスターは、なぜか薄く透けて見えた。
 目を凝らしても輪郭すらよく見えず、小柄な体つきということだけがどうにかわかった。少なくとも“彼”ではないらしい。


 …………そうか。
 これは“彼”の記憶だ。わたしはまた、“彼”の断片に触れているのだ。
 “彼”は言っていた。月の聖杯戦争で、わたしたちと出会っていたと。
 だとすればこの記憶は、“彼”が出会った“私”と、そのサーヴァントだったランサーが戦っている姿なのだろう。

 ……けれどこの記憶には、なぜか奇妙な違和感を覚えた。
 その違和感の正体が何なのかを確かめようと、目の前の光景をよく見据え、気付く。

 ……ああ、そうか。
 違和感の正体は、ランサーに対する“私”の立ち位置だ。
 “私”はある場面ではランサーを見守るように彼の背後にいたのに、
 違う場面ではランサーと対峙するように彼と向かい合っていたのだ。
 まるで二つの違う映像を同時に流して、無理矢理ピントを合わせたかのような矛盾。
 だからこの記憶は、前の時のようなノイズではなく、ピンボケした状態になっているのだろう。
 ……だとすれば、“私”の立ち位置の違いには、一体どんな意味があるのだろう――――。


 不意に剣戟が止み、間隙が生じる。
 ランサーが槍を構え、力を籠め始める。
 他人の記憶越しでも感じ取れる、大気が凍り付くような、魔力の胎動。
 その様子だけは共通していたのか、ランサーの姿が、より鮮明になる。
 同時にわたしは、同じ存在でありながらも細部が異なる、ランサーの二つの姿を認識し――――



 ――――聞きなれない電子音に、記憶の終わりを告げられた。

 “私”の立ち位置の違いと、ランサーの二つの姿の意味。
 その答えを見つける間もなく、“彼”の記憶が遠ざかっていく。

 あっさりと意識が覚醒したのは、眠りが浅かったせいだろう。
 だとすれば、もっと深い眠りにつけば、この疑問の答えがわかるのだろうか……。

 そんな風に思いながら、私はゆっくりと、戦いの待つ現実に目を覚ました――――。

74角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:31:44 ID:pMYEkxmw0


      †


 ―――あれから少し時間が経ったが、ルーラーたちからの連絡はまだ来ていなかった。
 何か事情があるのだろうが、さすがに少し気にかかる。
 だがランサーが言ったように、いつまでも待ち続けることは出来ない。
 なるべく早めに連絡が来るといいのだが……。

 一方の凜は今、魔術回路を励起させた状態で、ベッドで仮眠を取っている。
 ランサー曰く、起きているよりは寝ている時の方が、魔力の回復量が上昇するらしい。
 とは言っても、気休め程度でしかないらしいのだが、まぁしないよりはましだろう。

 ……ちなみに、魔力の貯蓄量という意味では、凜のそれはすでに岸波白野の総量を上回っている。
 まだ半分程度しか回復していないらしいのにそうなのだから、彼女の才能には本当に驚かされる。
 もっとも、ランサーの分も考慮すれば、完全な回復にはまだまだ時間が掛かりそうではあるのだが。

 それはそうと、作戦決行の予定時刻まで、まだしばらく時間がある。
 凛たちを置いて外へ出るわけにもいかない以上、出来ることは限られている。
 自分は――――

   1.少しでも休憩を取ろう。
   2.キャスターへの対策について考えよう。
  >3.聖杯戦争について考えよう。

 キャスターに対する作戦は、やはり凛たちと一緒に考えるべきだ。
 ここは丁度いい機会だから、この聖杯戦争について考えよう。



 ―――“月を望む聖杯戦争”。
 そう銘打たれたこの戦いは、その名の通り、月――ムーンセルへと至るための生存競争だ。
 何かしらの望みを持った人物が“ゴフェルの木片”を手にした時、“方舟(アーク・セル)”はその人物を招き入れ、サーヴァントを与えて殺し合わせる。
 そうして最後の一組となった時、彼/彼女等は月へと至り、聖杯を一度だけ使用できるという。

 ……月の聖杯(ムーンセル・オートマトン)。
 月の内部にある巨大な観測機械。全地球の記録にして設計図。神の遺した自動書記装置。
 過去、現在、未来を問わず、無限ともいえる“可能性(if)”のシミュレートを演算し続ける、七天の聖杯(セブンスヘブン・アートグラフ)―――。

 神の頭脳とも言うべきそれは、確かにあらゆる願いを叶えられるだろう。
 その代償と考えれば、確かに27人ものマスターを犠牲にするのも――感情的な面は別として――理解できる話だろう。
 ……だがそれは、この聖杯戦争に、マスター全員が納得した上で参加していた場合の話だ。

 ルーラー達にも話したように、“方舟”は願いを持つ人物を、半ば無差別に招き入れている可能性がある。
 それはつまり、聖杯に頼らずとも、あるいは、誰かを犠牲にせずとも叶えられたかもしれない願いに対し、他者の犠牲を強いて聖杯に願わせることを強いている、と捉えることが出来る。
 もし勝ち残ったマスターの願いがそういったものであった場合、それは果たして、失われたものに対する正当な報酬と言えるのだろうか。

 覚悟の伴わない喪失。欠落に見合わない報酬。
 それは心に生じた隙間を、より克明に浮き彫りにするだけだ。
 ましてや失われたものが掛け替えのないモノだった場合、その欠損は、いかなる報酬を以てしても埋め難い。
 あるいは、もし仮にその欠落をなかったことにするとしても、聖杯を使用できるのは一度だけ。
 勝者には聖杯戦争を戦い続けた理由(ほうしゅう)は失われ、他者を殺したという罪科だけが残されることになる。

 そしてその喪失は、箱舟に招かれなかった人たちにも当て嵌まる。
 唐突な家族や友人の消失。交通事故のような、理不尽な死。そして仮に彼/彼女が帰ってきても、その人は罪を背負っている。
 たとえ本人の意思でなかったとしても、そんな状態で果たして、元の関係のままでいられるだろうか。
 この聖杯戦争はすでに、そういった歪みを生み出してしまっている。
 それでどうして、この聖杯戦争が正しいと言えるのか。
 それとも、そう言うに足る理由が、この聖杯戦争にはあるのだろうか。


 …………それに実のところ、もう一つ気になっていることがある。
 この聖杯戦争の報酬である、聖杯(ムーンセル)そのものについてだ。

 ムーンセルは、手に入れた者の願い通りに未来を変革させる神の眼だ。
 だがしかし、その聖杯としての機能は既にないはずだ。
 なぜならムーンセルは、岸波白野の欲望に沿って地上との繋がりを断ち、その在り方を変貌させたからだ。

75角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:32:22 ID:pMYEkxmw0

 そう。
 岸波白野という、月の聖杯戦争の勝者が存在した事実がある限り、現在のムーンセルは聖杯にはなり得ない。
 ……だというに、ムーンセルの使用権をめぐる聖杯戦争が、こうして今、箱舟で行われている。
 これは一体どういう事なのか。

 ムーンセルが繋がりを断ったのは、あくまで地上とだけだったのか。
    ――――それならば、地上から招かれたマスターの願いは叶わない。

 それともこの聖杯戦争で至る月は、未だ地上と繋がっている、平行世界(べつ)のムーンセルなのか。
    ――――だとすれば、岸波白野(じぶん)がここにいるはずがない。

 あるいはムーンセルにとって、月の聖杯戦争と方舟の聖杯戦争、それによって叶えられた願いは、無関係な物として扱われているのか。
    ――――もしそうなら、岸波白野の伝えた(インプットした)願いは、完全に無意味なものとなってしまう。

 故に、ムーンセルにはもはや、聖杯戦争が起きる理由がない。
 岸波白野を基準とした予測では、この戦いは聖杯戦争として破綻してしまう。

 ……ではもし、ムーンセルとは関係のないところに理由があるとすれば、どうだろう。
 そう。今回の聖杯戦争の舞台、“方舟(アーク・セル)”が原因だとすれば、それは一体どんな…………。

 …………。
 ……………………。
 …………………………………………。

 ……ダメだ、情報が足りない。
 ムーンセルの事は知っていても、アークセルの事を知らなさ過ぎる。
 現在把握している情報では、手掛かりの予想すら付けられない。

 となると、アークセルについて調べる必要があるわけだが……
 それに詳しそうな人物といえば、やはりルーラーたちが思い浮かぶ。
 図書館などの施設で調べられないこともないだろうが、彼女たちに直接聞いた方が確実だろう。
 彼女たちから連絡が来た時にでも、ついでに訊いてみるとしよう。

 そんな風に考えていると、携帯端末から、聞きなれた電子音が響いてきた。

「ん、んん……。今の、何の音?」
 その音に反応してか、仮眠を取っていた凛が目を覚ました。
 そんな、どこか寝ぼけ眼の彼女に、端末の着信音だと答えると、凛はすぐに意識を覚醒させた。
 そしてもう気を引き締めている凛に感心しながらも、端末を取出して通知内容を確認する。


 ::遠坂凛の要請に対し返答します。
   応答が可能であれば、返信してください。
                    [REPLY]


 端末の画面には、そう文面が表示されていた。
 ルーラーたちの答えがようやく決まった、という事だろう。

「やっと返事が来たか。ったく、何をチンタラやってたのかね。
 ……だがまあ、これでようやく始まるってわけだ」
 回復のために霊体化していたランサーが実体化し、気負った様子もなくそう呟く。
 かと言って気が緩んでいる訳ではないらしく、その眼には獰猛な野生が垣間見えた。
 彼の心はすでに、キャスターとの戦いの中にあるのだろう。

「なら、はやく返信しちゃいましょう。
 あっちの行動に合わせて、私たちも準備する必要があるかもしれないし」
 それは凜も同じなのか、待ってましたと言わんばかりに声を上げる。
 だがランサーと違い、すこし緊張しているようにも見える。
 どこか強気な口調は、それを誤魔化すためのものなのだろう。

 返信を後回しにする理由はない。
 凜の言葉にうなずき、画面内の返信(REPLY)ボタンを押す。
 ……その直前。不意に、端末のものとは異なる電子(コール)音が響いてきた。

「む。一体誰よ、こんな時に」
 その音を聞いた凛が、少し苛立たしげに顔を顰める。
 どうやら、この家の電話機だったらしい。

「……はあ、しかたない。どっちも後回しにはできないし。
 ルーラーたちの返答は白野が聞いておいて。わたしは電話の方に対応するから」

 凜はそう言うと、部屋の外へと出て行った。
 それを見届けてから、改めて画面内の返信ボタンを押す。
 すると数回電子音が鳴り、聞き覚えのある少女の声が返ってき来た。カレンだ。

76角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:32:55 ID:pMYEkxmw0

『私です。遠坂凛の要請に対してですが、私が同行するという形で受けることになりました。つきましては、待ち合わせの時刻を教えてください』

 端末から響く事務的なカレンの声に、16時から行動を開始し、17時にキャスターの拠点を攻める予定だ、と返答する。

『了解しました。ではその時刻にキャスターの拠点で合流する、という事でよろしいですね』

 ああ、と端末越しに頷く。
 だがカレンは拠点の場所は知っているのだろうか。

『問題ありません。こちらも大凡の位置は把握していますし、貴方のサーヴァントは目立ちますから』

 確かに。
 元より相当な美人であり、さらに竜の魔人と化しているエリザベートはたいへん目立つ。
 何か急いでいるとか、何かに気を取られているといった事でもない限り、そうそう見落とすことはないだろう。

『ではそのように。緊急の予定が入れば、また連絡します』
 カレンは最後にそう告げると、あっさりと通信を切ってしまった。

 ……しまった。
 アークセルについて、彼女に話を聞いてみたかったのだが……。
 仕方がない。アークセルの事は、機会があればその時に訊いてみよう。



 それから少しして、凛が部屋へと戻ってきた。

「それで、ルーラーたちは何て?」

 そう問いかけてくる凛に、16時から17時に、キャスターの拠点でカレンと合流することになったと伝える。
 それに合わせて、こちらの作戦も調整する必要があるだろう。

「リンの方こそ、電話の相手は誰だったの?」
「初等部で授業を手伝ってくれている、高等部のバイトの人。私が欠席したのを心配してくれてたみたい。
 いちおう風邪を引いたってことにして誤魔化しておいたから、大丈夫だと思うわ。……たぶん」
 凜はそう、若干目線を逸らしながら口にした。

 ……………………。
 彼女の言葉尻に、そこはかとなく不安を覚えるが……なるほど。日常を再現していた以上、そう言った繋がりも生じてくるのか。
 そう言えば、自分もまだ学校に連絡を入れていなかった。一成たちにも心配を懸けているかもしれない。
 ……だが、今はキャスターとの戦いを優先しよう。
 なにしろ、戦いはすでに始まっている。
 敵の能力は完全に未知数。作戦内容や、使用する礼装の確認など、するべきことは沢山ある。

「それじゃあ白野。見せてもらうわ、聖杯戦争の優勝者の実力を」
 凜がそう言って、岸波白野へと笑みを浮かべる。
 その瞳には、自分の知る“遠坂凛”のような、確かな戦意が宿っている。
 キャスターを倒せなければ彼女に明日はない。この戦いにかける意気込みは並ならぬものがあるのだろう。

 そんな少女へと頷きを返し、準備を整えるために立ち上がる。
 キャスターとの対決に向けて気合を入れているのは彼女だけではない。
 自分もまた、この望みを果たすまで負けるわけにはいかないのだから。


【B-4 /遠坂邸/1日目 午後】

【岸波白野@Fate/EXTRA CCC】
[状態]:健康、強い決意
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:携帯端末機
[所持金] 普通の学生程度
[思考・状況]
基本行動方針:「 」(CCC本編での自分のサーヴァント)の記憶を取り戻したい。
0. 休息中の遠坂凜とランサー(クー・フーリン)を護りつつ、決戦の準備を整える。
1. 遠坂凛とランサーを助けるために、足立透とそのキャスターを倒す手助けをする。16時より決行予定。
2. ルーラー達からの連絡を待つ。
3. 狙撃とライダー(鏡子)を警戒。
4. 聖杯戦争を見極める。
5. 自分は、あのアーチャーを知っている───?
[備考]
※遠坂凛と同盟を結びました。
※エリザベートとある程度まで、遠坂凛と最後までいたしました。その事に罪悪感に似た感情を懐いています。
※遠坂凛とパスを通し、魔力の融通が可能となりました。またそれにより、遠坂凛の記憶の一部と同調しました。
※クー・フーリン、ジャンヌ・ダルクのパラメーターを確認済み。クー・フーリンの宝具、スキルを確認済み。
※アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による攻撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。
※アーチャー(エミヤ)が行った「剣を矢として放つ攻撃」、およびランサーから聞いたアーチャーの特徴に、どこか既視感を感じています。
 しかしこれにより「 」がアーチャー(無銘)だと決まったわけではありません。
※足立透と大魔王バーンの人相と住所を聞きました。

77角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:33:23 ID:pMYEkxmw0

【ランサー(エリザベート・バートリー)@Fate/EXTRA CCC】
[状態]:健康
[装備]:監獄城チェイテ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:岸波白野に協力し、少しでも贖罪を。
0. 休息中の遠坂凜とランサー(クー・フーリン)を護る。
1. 岸波白野のついでに、遠坂凛も守る。
2. 撤退に屈辱感。
[備考]
※岸波白野、遠坂凛と、ある程度までいたしました。そのため、遠坂凛と仮契約が結ばれました。
※アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による襲撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。
※カフェテラスのサンドイッチを食したことにより、インスピレーションが湧きました。彼女の手料理に何か変化がある……かもしれません。

【遠坂凛@Fate/Zero】
[状態]:健康、魔力消費(中)、強い決意
[令呪]:残り二画
[装備]:アゾット剣
[道具]:なし
[所持金]:地主の娘のお小遣いとして、一千万単位(詳しい額は不明)
[思考・状況]
基本行動方針:遠坂家の魔術師として聖杯を得る。
0. 休息しつつ、準備を整える。
1. 岸波白野から、聖杯戦争の経験を学ぶ。
2. ルーラー達からの連絡を待つ。
3. 勝利するために何でもする。
4. カレンの言葉が気にかかる。
[備考]
※岸波白野と同盟を結びました。
※エリザベートとある程度まで、岸波白野と最後までいたしました。そのため、エリザベートと仮契約が結ばれました。
※岸波白野とパスを通し、魔力の融通が可能となりました。またそれにより、岸波白野の記憶が流入しています。
 どの記憶が、どこまで流入しているかは、後の書き手にお任せします。
※鏡子、ニンジャスレイヤー、エリザベート、ジャンヌ・ダルクのパラメーターを確認済み。エリザベートの宝具、スキルを確認済み。
※足立透と大魔王バーンの人相と住所を聞きました。

【ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night】
[状態]:健康、魔力消費(中)
[令呪]
1. 『日が変わるまでに、足立透、もしくはそのキャスターを殺害。出来なければ自害せよ』
[装備]:ゲイ・ボルク
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:遠坂凜のサーヴァントとして聖杯戦争と全うする。
0. 休息し、30分毎にキャスターの位置を探る。
1. 凜に勝利を捧げる。
2. 足立、もしくはキャスター(大魔王バーン)を殺害する。16時より決行予定。
3. あのライダー(鏡子)にはもう会いたくない。最大限警戒する。
4. アサシン(ニンジャスレイヤー)にリベンジする。
[備考]
※鏡子とのセックスの記憶が強く刻み込まれました。
※足立透と大魔王バーンの人相と住所を聞きました。
※自害命令は令呪一画を消費することで解除できます。

[共通備考]
※遠坂邸の凜の自室に、盗聴・透視などを防ぐ陣が張ってあります。陣を破壊した場合、術者のクー・フーリンに察知されます。陣を破らずに盗聴・透視を行うのは極めて困難です。
※16時まで、30分置きにクー・フーリンが探索のルーンで大魔王バーンの居場所を探知する予定です。
※下記がキャスター撃破作戦の概要です。16時から作戦を行動する予定です。

一.B-4の高層マンションに赴く。
二.エリザの『竜鳴雷声(キレンツ・サカーニィ)』で周辺NPCを避難誘導する。 (1時間必要と予測)
三.エリザの『竜鳴雷声(キレンツ・サカーニィ)』で、キャスターの陣地を攻撃する。
四−A.キャスターが陣地から出てきた場合、エリザが交戦。
五−A.クー・フーリンが不意を突いて攻撃する。
四−B.キャスターが陣地から出てこない場合、エリザとクー・フーリンが侵入する。
五−B.陣地内にいるキャスターをエリザとクー・フーリンが撃破する。

78角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:34:05 ID:pMYEkxmw0


     04/ 在り得ざるサーヴァント


「おかあさん(マスター)、よかったの? 東風谷早苗(あのひと)に、岸波白野(紅いランサーのマスター)のことを教えて」
 教会の奥、細い階段を上った先にある一室で、不意に問いが投げかけられる。
「問題はないでしょう。具体的な情報を与えたわけではありませんし。
 それに、迷いを抱えている者がいれば道を示すのが教会の役割ですから」
 その問いに、この部屋の主であるカレンが答える。

「……あのひと、聖杯がほしくないのかな?」
「方舟に招かれた以上、願い自体はあるでしょう。ですが、理不尽に反発するのは人の常です。
 ましてや意に副わず招かれた上に、人死にを善しとしないのであれば、あれは当然の反応でしょう」
「……おかあさん(マスター)たちと戦うつもりなのかな?」
「さあ。それは彼女たち次第ですね。
 彼女たちが聖杯戦争を破綻させようとするのであれば、そんな事態もあり得るでしょう」

 奇妙に濁った、二重、三重に同じ台詞を呟いているかのような声。
 現在この部屋にルーラーはいない。ならばこの声は誰のものなのか。

「……じゃあ、今のうちにころしておく?」
「その必要はありません。
 たとえ彼女たち聖杯に疑念を懐いていても、それは彼女たちの在り方故のものです。
 明確に私たちと敵対しない限り、処罰の対象とすることはないでしょう。
 ……それに、不穏分子という理由で処断するのでしたら、貴女たちは真っ先にその対象になりますよ、“アサシン”」
「むう……」

 その軽薄な言葉を戒めるように、カレンは声の主へと視線を向ける。
 そこには、黒いボンデージスーツのような衣装を纏い、色素の薄い髪とアイスブルーの瞳をした、あどけない顔の少女がいた。

 その少女の真名(な)は、“切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)”。
 一八八八年のロンドンを二ヶ月に渡り恐怖に陥れた、正体不明の殺人鬼であり、
 そして同時に、マスターが残り二十八人という状況では在り得ざる、“三十騎目のサーヴァント”である。

 二人の会話からわかる通り、彼女はアサシンのクラスに属し、カレンと契約をしている。
 確かにマスター殺しのサーヴァントであれば、マスターを律する裁定者であるカレンには相応しい存在(クラス)と言えるだろう。
 ましてやカレンの肉体は脆弱だ。本格的な戦闘になれば、子供相手でも勝ち目は低い。
 そんな彼女に戦力としてサーヴァントが与えられることは、そうおかしな話ではないだろう。
 ……だが実際の所、カレンはアサシンの召喚者ではない。なぜなら、彼女の裁定者としての権限は別に存在するからだ。

 ならばこのアサシンは如何なる存在なのか。
 その答えは単純だ。
 マスターを失ったサーヴァント。ただそれだけの事である。
 では誰が彼女を召喚したのか。
 それはD-9の北西に位置する、白犬塚と呼ばれた地で消滅したあの少年だ。

 あの瞬間。彼は確かにマスターとして覚醒していた。
 記憶を取り戻し、令呪を宿し、予選を突破した。その時点で、サーヴァントの召喚条件は揃っていたのだ。
 他のマスターとの違いは、ただ一つ。マスターとして覚醒した時点で既に死んでいたということだけ。

 しかし、いや、だからこそ、彼はジャック・ザ・リッパー(アサシン)のマスターとして選ばれた。
 目覚める(生まれる)前に死んだ魂。手が届きそうなのに、決して届かないモノへと懐いた憧憬。
 それこそがアサシンを召喚するための依代。すでに亡きマスターと、生まれてくることすら拒まれた“彼女たち”との縁である。

 ―――だがしかし、マスターなくしてサーヴァントは存在できない。
 そしてあの場にはルーラーがいた。
 つまりNPCを魂喰いし、存在を維持することすらできはしない。
 故に本来であれば、彼女は何を為すこともなく消滅するはずだった。
 ……同時にその場にいたカレンが、気まぐれを起こしさえしなければ。

「まがりなりにも召喚に応じた以上、彼女にも望みはあるはずよ?
 なのに、呼び出されておきながら機会すら与えられずに消滅するなんて、可哀想だとは思わない?」

79角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:35:04 ID:pMYEkxmw0

 カレンはそう言って、アサシンのマスターとなった。
 ともすれば肩入れとも取られない行為だが、そもそも聖杯戦争に参加すらできないのであれば、公平もなにもあったものではない。
 そこでルーラーは、アサシンに相応の制約を科すことで、アサシンの生存を例外的に認めることにした。

 一、『カレンと契約している間、自衛の場合を除き、許可なき対象を害する行為の一切を禁ずる』
 二、『令呪を二つ重ね、これを厳命とする』

 カレンの令呪を二画用いた、絶対尊寿の命令。
 ルーラーはこれを以て、最初で最後のチャンスを与える代償としたのだ。

 そもそも、裁定者であるカレンと契約したところで、アサシンに聖杯は与えられない。
 聖杯を得られるのは、最後の一組となった、正規のマスターとサーヴァントだけだからだ。
 つまりアサシンが聖杯を得るには、カレンとは別のマスターと正式に契約する必要があるのだ。
 だがそれだけならば、魂喰いにより魔力を補充し、他のサーヴァントを殺害してそのマスターと契約をすれば済んでしまう。
 しかしこの令呪により、アサシンはマスターなしで行動できるほどの魔力を溜めることや、自身でマスターを仕立て上げることを禁じられたのだ。

 自ら機会を作ることが出来ない以上、アサシンはサーヴァントを失ったマスターが現れるのを待つしかない。
 だがこの方舟では、サーヴァントを失ったマスターは数分で消去されてしまう。彼女が正規のマスターを得られる確率は、非常に低いものとなるだろう。
 そしてもし仮に機会を得たとしても、令呪を二画消費されている以上、そのマスターに与えられる令呪は一画だけ。
 更にはアサシンの召喚が成立した時点で、ルーラーには彼女に対する令呪が与えられている。
 彼女が一度でも違反を犯せば、ルーラーは即座に、そして確実に、アサシンへとペナルティを課すことが出来るという訳だ。

 その制約を以て、アサシンはカレンのサーヴァントとなった。
 新たなマスターを得て聖杯に至るのか。それともこのまま、何も為せずに果てるのか。
 彼女が聖杯戦争に参加する最後のチャンスを掴めるかどうかは、神のみぞ知る事だろう――――。



「……でも、ランサーのマスターたちのお願いはきくんだよね」
 少女たちの話し合いは続く。
 アサシンは少し不満げに、カレンの行動を揶揄する。
「ええ。明確な証拠こそないとはいえ、あのキャスターは放置するには少々危険な存在ですから。
 加えてルーラーの探知によると、厄介なサーヴァントが深山町へと向かっているようですしね。
 不確定要素は可能な限り減らしておくに限ります」
「やっかいなサーヴァント?」
「ベルク・カッツェ、という名前だそうです。あるいは、“形なき悪意の体現者”とも。人の悪性がその正体らしいですが」
「……………………」

 サーヴァントとして時空を超えた知識を持つアサシンは、その名を聞いて納得する。
 確かに人々を先導する能力を持つそのサーヴァントは、聖杯戦争を監督する裁定者からすれば厄介な存在だろう。
 何しろ場合によっては、NPCが自らの意思でマスター達の敵になってしまう可能性があるのだから。

 そうなれば聖杯戦争どころではなくなってしまう。
 アサシンとしてはNPCがどうなろうと構わないが、聖杯戦争が滞るのは困る。
 何しろ自分は、東風谷早苗(アーチャーのマスター)と違い、確かな願いを持って聖杯戦争に応じたのだ。
 そして自分は、今でこそ聖杯を得る資格を失っているが、決して脱落したわけではないのだから。
 だから……もしそのサーヴァントが聖杯戦争を破綻させるというのなら――――

「なら――どっちかころす?」
「……確かにそれが一番楽ではありますが、その判断を下すにはまだ確証がありません。
 それにサーヴァントへのペナルティはルーラーの領分ですから、私たちが処断する場合はマスターが対象になります。
 ですがキャスターの行いをマスターが知っているとも限りません。彼等のマスターを殺害するのは最後の手段にするべきでしょう」
「ちぇっ……」

 外見相応の、子供のような舌打ち。
 だがその眼には、人成らざるモノの殺意が籠っている。
「っ……!」
 ビ、とビニールを裂くような微かな音。
 カレンの法衣の裾から、赤い血がこぼれてくる。

「あっ! ごめんなさい、おかあさん(マスター)……」
 アサシンは慌てて、自身の殺気を押し殺す。
「…………傷が開いただけです。気にする必要はありません、アサシン」
 カレンは何でもないようにそう口にするが、こぼれた血の匂いは残っている。
 その事にアサシンは、若干の自己嫌悪を覚えた。

80角笛(確かに) ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:35:30 ID:pMYEkxmw0


 ―――被虐霊媒体質。
 カレンの持つその異能は、『悪魔』と呼ばれる存在に反応し、その被憑依者と同じ霊障を体現するというものだ。
 だがその異能が感応する対象は、『悪魔』そのものにだけではない。
 人の心には『魔』が刺すもの。
 『悪魔』とは何の関わりもない人間の、ほんの些細な悪意にさえ、カレンの身体は勝手に反応するのだ。

 その悪意の発生源が、正体を怨霊とするアサシンともなれば尚更だろう。
 何しろ彼女の宝具は、ロンドンの霧の夜に娼婦を惨殺した逸話を再現する、極大の呪いなのだから。
 つまりカレンは、アサシンのマスターであると同時に、その身を以て彼女を戒める軛でもあるのだ。


「……それに、そう拗ねる必要はありませんよ、アサシン」
 落ち込んだアサシンを慰めるためにか、カレンはカレンへと声をかける。
「キャスターとランサーたちが戦うということは、サーヴァントが消滅する可能性もあるということです。
 場合によってはそのマスターを、貴方の新たなマスターとすることが出来るかもしれませんよ」
「……ほんとう?」
「ええ。特に遠坂凛のサーヴァントが、消える可能性が一番高いでしょう。
 今日中にキャスターを倒せなければ、彼女たちには後がないようですし」
「そっか……」

 アサシンは先ほどより若干弾んだ声でそう呟く。
 それも当然か。
 アサシンが聖杯に至るには、まず自身のマスターを得ることから始めなければならない。
 その有るかもわからない機会が、早くもやってくるかもしれないのだから。

「……では彼らとの行動に合わせて準備を整えましょう。
 貴女にも手伝ってもらいますからね、アサシン」
 カレンはそう告げると同時に、自身の血が滲んだ法衣を脱ぎ始める。
「うん。わかったよ、おかあさん(マスター)」
 それにアサシンは頷いて応え、替えの服を用意し始めたのだった。



 ――――実の所、ジャック(アサシン)にはカレンがマスターであることに不満はなかった。
 いやむしろ、相性という意味でならば、被虐霊媒体質さえ除けば、カレンは彼女を召喚したマスター以上だと言えた。
 なにしろ、どちらも親に捨てられた子供。違うのは、カレンはそれを受け入れ、アサシンは母の胎内への回帰を望んだということだけだ。

 ……だがしかし、聖杯へと至るためには、カレンとは異なるマスターと契約する必要があった。
 それはあたかも、へその緒を断ち切るかのように。
 母の胎内に帰るためには、母親(マスター)との繋がりを絶たなくてはならない。
 その矛盾だけが、ジャック(アサシン)にとってはこの上ない不満だった。
 ……だから、せめて。

「ねぇおかあさん(マスター)。また、おかあさん(マスター)のオルガンを聴かせてね」
「いいですよ。時間に余裕があれば、いつでも弾いてあげます」

 母親(マスター)と共に居られるこの一時を、出来る限り大切にしようと“少女たち”は想った。


【D-5/教会/1日目 午後】

【カレン・オルテンシア@Fate/hollow ataraxia】
[状態]:健康
[令呪]:残り一画(アサシン)/他不明
[装備]:マグダラの聖骸布
[道具]:リターンクリスタル(無駄遣いしても問題ない程度の個数、もしくは使用回数)、???
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行時々趣味。
1. 遠坂凛たちと行動するための準備を整える。
2. 時間に余裕があれば、アサシンにまたオルガンを聴かせる。
[備考]
※聖杯が望むのは偽りの聖杯戦争、繰り返す四日間ではないようです。
 そのため、時間遡行に関する能力には制限がかかり、万一に備えてその状況を解決しうるカレンが監督役に選ばれたようです。他に理由があるのかは不明。
※アサシン(ジャック)はカレンが召喚したサーヴァントではありません。
 そのため、アサシンのもの以外に令呪があるかは不明です。

【アサシン(ジャック・ザ・リッパー)@Fate/Apocrypha】
[状態]:健康、
[令呪]
1. 『カレンと契約している間、自衛の場合を除き、許可なき対象を害する行為の一切を禁ずる』
2. 『令呪を二つ重ね、これを厳命とする』
[装備]:六本のナイフ、黒い医療用ナイフ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯へと至るために、正規のマスターを得たいが…………。
0. またおかあさん(カレン)のオルガンが聴きたい。
1. おかあさん(カレン)のおてつだいをする。
2. おかあさん(カレン)との時間をたいせつにする。
3. 自身の正規のマスターとなる人物を探す。
[備考]
※ジャック・ザ・リッパーの召喚者は、プロローグの青年@Fate/EXTRAです。
※カレンと契約した状態では、最後の一組となっても聖杯を得られません

81 ◆ysja5Nyqn6:2014/11/29(土) 23:36:56 ID:pMYEkxmw0
以上で、仮投下を終了します。
正純と一成の会話や、アサシンの事など、皆様のご意見をお願いします。

82サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 00:37:43 ID:OITh2aL6O
仮投下乙です。

脱落したマスターの令呪は、カレンに移るのですか?
しんのすけの令呪とか。

83サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 01:05:27 ID:Zyx34UmE0
仮投下乙です。
早苗さんは裁定者との接触に成功したけど、有力な情報は得られずか。
対聖杯という具体的な指針の見えない立ち位置について指摘されてしまったけど、果たして彼女は自らの道を貫き通せるか。
ムーンセル聖杯優勝者のザビ夫の考察も中々興味深いなぁ。
そしてまさかのジャック参戦。登場の経緯や理屈に説得力がありますし、自分としては大丈夫じゃないかなと思います。

84サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 08:23:40 ID:P1Cx1FhI0
仮投下乙です。

まさかのジャックちゃんの参戦ですか。自分もこの参戦に関してはある程度筋は通ってると思うので大丈夫だと思います。
OPで始まりの一歩目で無慈悲に消えていったあの少年の無念がこの状況に繋がったとすれば感慨深いものがあります。
今回の話は考察回としてもとても興味深い内容でした。
ある意味この聖杯戦争の根幹に関わる内容なので早苗や白野には今後も頑張ってほしいものです。

あと少ないですが目についた誤字をば報告しておきます。
角笛(届かず)より

《また、これがバズではなく自家用車であっても、その危険性は変わらない。
バズ→バス

《テンカ・ワアキトは、己が願いのために他者を殺すことを是としている。
テンカ・ワアキト→テンカワ・アキト

85サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 09:02:04 ID:LfJk5ol60
投下乙です。

>人々を先導する能力を持つそのサーヴァント
「扇動」もしくは「煽動」の誤字ではないでしょうか?

段々とマスターたちの接触の可能性が高まってきたけど、すれ違う可能性もまだまだ高そうですね。
さて、どうなることやら。

86サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 09:24:36 ID:f.Vb9OmI0
仮投下乙です

>>71にて正純が返答にJud.を使っていたのが気になりました
この返答は境ホラ世界特有のものなので、箱舟世界で使用しても相手に意味が通じないのではないかと

87サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 12:08:19 ID:Iry0cY3M0
仮投下乙です

取り敢えず一点気になるところとして
正純は自分が望まずに聖杯戦争に参加させられた者であり、且つOPで他にも自分と同じ様な境遇の人物がいるだろう事に触れているのにも関わらず
子供だからと言う理由で聖杯戦争とは絡んでいないと断定するのは、考えが浅はか過ぎではないでしょうか

それと疑問点の指摘ではないですが
できれば今このタイミングで主要登場人物を増やさなければならなかった意図を説明してくれると助かり

88サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 12:11:01 ID:JkQNBk5M0
仮投下乙です。
早苗さんは有力な情報は得られなかったけれど、誤りを証明したあとどうするか、
なんのために証明するのか考えるきっかけを得られたのは良かったですね。
白野から見た聖杯戦争の矛盾もなるほどなあと思いました。
正純と一成の会話は、同じ学校の生徒ですしこのくらいの情報が入ってくるのは良いのではないでしょうか。
気配遮断や情報末梢を持ったアサシンは裁定者と相性良さそうですね。

少し気になった点をいくつか。

1.桜の状態表に「学校へ連絡している」とありますので、無断欠席ではないかと思います。

2.正純と一成が話した時間について、
『健全ロボダイミダラー 第X話 悲劇! 生徒会副会長の真実!』で
>そんな風に適当に考えつつ、スカートを捲ったりしながらだらだらと授業を受け、気がつけば5時間目も終わっていた。
とありますので、二人が会話していたのが午後一の休み時間になるかと。

3.「ルーラー」の呼称は「セイバー」や「ランサー」といったサーヴァントのクラス名のイメージが強いので、
カレンを指してルーラーと呼ぶのは自分はちょっと混乱してしまいました。

4.カレン(とジャック)は凛達に同行しますが、ルーラー(ジャンヌ)は単独でB-4を調査するということでよろしいでしょうか。

5.ググればわかることですが、他のサーヴァントの登場話のようにアサシン(ジャック)のステシがあるといいなと思いました。

6.今回はプロローグの青年とのつながりなどがメタ的にありましたが、はぐれサーヴァントの前例があると
今後単独行動持ちのサーヴァントが新規キャラとして追加されても理屈の上では通ってしまいかねないため、
カレン視点で「はぐれサーヴァントは他にはいない」と確定させてしまったほうが無難かと個人的には思います。

長々と失礼しました。

89 ◆tHX1a.clL.:2014/11/30(日) 12:16:51 ID:FzqLiQMw0
投下乙と言いたいですがここにきて新しくサーヴァントを一体出すのはあまりよろしくないと思います

>「まがりなりにも召喚に応じた以上、彼女にも望みはあるはずよ?
>なのに、呼び出されておきながら機会すら与えられずに消滅するなんて、可哀想だとは思わない?」

この言葉を借りるならば、マスターとして方舟に乗り込んだ青年にも望みはあったはずです
ですが正規のマスターとして覚醒した彼は見捨てて、数秒後彼が死んだのを確認してから彼のサーヴァントに慈悲を掛けるという思考は気まぐれにしては移り変わりが早過ぎる気もします
OPでは青年を「助けることが出来なかった」ではなく「助ける術もないが、そもそも助ける気がなかった」ように見えます
なのにそのサーヴァントに対しては気が変わって特例を持って慈悲を掛ける、というのもどうもしっくり来ません

そして現場にはカレン以上に聖杯戦争の恙ない進行に尽力しているルーラーが居て、彼女は正式にあの青年の「敗退」を確認しました
だというのに彼女がこの行為を黙認している理由もわかりません
ルーラーはリレー中でも実質黒である大魔王バーンに対しても「証拠がつかめていないから推定無罪」というあくまで公平な立ち位置から裁定を行っています
そして裁定者側からすれば彼らは目の前で一参加者になり、順序はどうあれ一参加者として敗退した組です
それを裁定者側の気まぐれで非正規サーヴァント扱いしてまでイレギュラーを生むというのは「恙ない進行」にそぐわない、かつ今まで培われてきたルーラーの公平感にも係るものではないでしょうか
裁定者であるカレンの護衛が目的であり、対マスター用の戦力強化のためであるというならば「非正規の参加者」としてではなく「正当な裁定者側」として聖杯戦争への一切の介入を許さない形で受け入れるはずです
なのに「彼女にも望みがあるから」非正規参加者として補欠参戦、機会があれば敗者復活可能というのは他の予選参加サーヴァントに対して不公平ではないでしょうか


ここからは極論になります
企画中何度も予選の存在が明記され、一護&美遊登場話で正規マスター&サーヴァントの予選敗退描写もあります
今回の件を認可するのであれば、予選敗退した正規マスターを持つ単独行動B以上のサーヴァントが群れをなしてその辺のくさむらから突然飛び出してきてもおかしくありません
マスターが正規参加者として敗退した後ならば単独スキルは発動するでしょうし、予選中は単独行動スキルが打ち消されるなんて追加条件を付けようがランチャーが行った宝具でのジナコ生還のように無理やりシステムに抜け道を作ることもできます
彼らにも聖杯戦争で聖杯に掲げる願いはあるので、正規参加者のサーヴァントを不意打ちで殺して新規契約を図るくらいはやって当たり前です
今回の「名簿に存在しない新規サーヴァントの許容」はそういった可能性すら否定できなくなります

そんなこと起こらないと言いたいですが、誰も起こらないし起こさないと思っていた「新規サーヴァント参戦」が今回起こってしまいました
そんなこと企画として許されないと言おうが、展開・描写に矛盾がなく「あの作品(氏の『角笛(確かに)』)は通ったじゃないか」と言えばそこで反論は打ち止めです
さすがにそこまでやる書き手はいない、書き手のモラルの問題だろう、等と言われるかもしれませんがそれならばまず「新規サーヴァントを出す」という行為それ自体が「そこまで」逸脱した行為なのではないでしょうか

90 ◆tHX1a.clL.:2014/11/30(日) 12:17:03 ID:FzqLiQMw0
以下数行空白の後、完全に更に個人的な感情を含んだただの暴論です
なので読まなくて頂いて結構です












上記の通り完全に感情論ですがあれだけ投票を重視したのに「投票に参加すらしてない参加者が一体増える」というのは納得できません
予選作を書いた人は皆、形はどうあれ「自分の書いた組に参加してほしい」という思いがあったはずです
なのに投票が終わり、粗方の議論が終わり、リレーがはじまり、さあ一日目も後半に差し掛かったというここで突然「あのマスターのサーヴァントは生きていた」「カレンのサーヴァントとして一体増やせる」
じゃあなんでこれまでのリレーで一切触れなかったんだよとか呼び出された経緯が令呪発生とマスター覚醒以後の思考から来るのかとかつっこみたいことは山ほどあります
ただ一つ伝えておきたいのは
それまでのフラグの積み重ねや議論などもなく完全に氏の独断でそんなことやられちゃこっちはたまったもんじゃありませんということです
氏がどの作品が好きでどの作品が嫌いかは知ったこっちゃありませんが、前回のルヴィア・今回のジャックとなんで正規参加者同等の存在を勝手に増やされなきゃならないんですか
企画の枠組みの中で好き勝手やるのは結構です、フラグを建てるも折るも参加者殺すも爆弾作投下するもご自由にどうぞ
ただ、OP以前から続いている企画それ自体の積み重ねを蔑ろにするのはやめてほしいです













雑多な指摘で申し訳ありません
長くなりましたが以上です

91サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 12:38:26 ID:Zyx34UmE0
>>90
暴論は空気の悪化の原因になりかねないので控えてくださいね

92 ◆OSPfO9RMfA:2014/11/30(日) 13:26:47 ID:1trD.F0M0
投下乙です。

> ……まったく、岸波が休んでいることもあって、こちらも手が足りていないというのに。猫の手も借りたいとはこの事だ」
> 岸波の他にも、二年E組の狭間偉出夫や一年の間桐桜。俺にとって仏門における好敵手とも言える、東風谷早苗まで無断欠席しているらしい。

これは指摘というより確認事項ですが、
今までのSSからすると、岸波と狭間の行っている所は『学園』ではなく『学校』なのですよね。
ですが、「月海原学園以外に学校作るの?」「それってどこ?」と言う話にもなります。
今まで学校が微塵も存在してないので、学園のことを学校と言ってるだけかも知れません。
なので、この話が通れば、正式に学園生になるということになると思います。



> このタイミングで訪ねてきたという客人。それはサーヴァントの存在を連想させるには充分過ぎる符合だ。

聖はNPC時代から命蓮寺に居ます。
なので、これを疑うと、どんな些細なことでも疑心暗鬼にならざる得ないと思います。
『フル甲冑の人が掃き掃除していた』『フル甲冑の人がタンスとツボを漁っていた』『聖がフル甲冑の人と正座して話をしていた』
などと、ロトの外見の異様さと組み合わせれば、疑う余地はあると思います。



> だがこの方舟では、サーヴァントを失ったマスターは数分で消去されてしまう。彼女が正規のマスターを得られる確率は、非常に低いものとなるだろう。

サーヴァントの新規追加が適正か。
新規追加されるサーヴァントがジャックなのが適正か。

私には判断しかねるので、その事は議題にしません。

再契約に関してですが、上記のことは事実だと思います。
ですが、一人だけ例外がいます。凜です。

> ※エリザベートとある程度まで、岸波白野と最後までいたしました。そのため、エリザベートと仮契約が結ばれました。

よって凜が再契約の可能性が非常に高い……と言うより、凜のために用意されたといわれても仕方のないことだと思います。
そのことに不公平感や贔屓を感じます。

『マスターがサーヴァントを喪失次第、即座にそのマスターの元へ行き、再契約せよ』のような令呪による命令などで、凜以外のマスターとの再契約のチャンスを広げた方がいいのではないでしょうか。


指摘のみですが、以上となります。

93サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 13:43:53 ID:DamAgII.0
投下乙です
うーん個人的にはジャックの登場にそこまで無理を感じなかったのでアリだとは
思いますがやはり反対意見が多いようですね。
まぁ最悪この話はジャックのくだりを丸ごと削ればそのまま使用できると思いますので
ジャックを出せない場合はそれ以外を採用してもいいと思います

94サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 15:34:09 ID:cOuTcKHc0
後はちょいちょい言われている正純の部分の修正か追記か
境ホラ世界的に年齢で物事考えはしないだろうし
あの世界の中等部小等部って自分の未来や襲名先見据えていて戦力や覚悟、有能さ的に半端ないからな

95 ◆ysja5Nyqn6:2014/11/30(日) 18:12:38 ID:VzphsxIo0
皆様、ご意見ありがとうございます。
皆様の指摘等は、幾つかアサシンと関わりがあるのもありますので、アサシンをどうするかが決まってから返答させていただきます。
ですのでまずは、◆tHX1a.clL.氏の意見に返答させていただきたいと思います。


青年とアサシンに対するカレンの対応の違いは、「すでに死んでいる」か、「まだ生きている」かの違いのつもりでした。
青年がマスターへと覚醒した時、青年はすでに助からない状況でした。
しかしアサシンの方はマスターを失っただけであり、逆に言えばマスターさえいれば何の問題もない状態でした。
またカレンがアサシンと契約したのも、慈悲を掛けた、という風なつもりではありませんでした。
契約の際のカレンの台詞は、あくまでもルーラーへと言ったもので、彼女自身の思いを口にしたわけではありません。
カレンがアサシンと契約した理由を強いて上げれば、せっかく召喚されたサーヴァントがもったいなかったから、となります。
ですので、作中では契約させましたが、ルーラーがきっぱりダメといったら、カレンは契約をしませんでした。

そしてルーラーが「敗退」を確認したのは、あくまで青年だけです。
マスターが敗退したらサーヴァントも一緒に敗退したと見做すのであれば、他のマスターを失ったサーヴァントの再契約も禁止しなくてはなりません。
(現在投下された作品では、ニンジャスレイヤーが該当しますでしょうか)
ですので、他のサーヴァントの再契約をありとするならば、霊核に致命傷を負うか、魔力が尽きて消滅するまで、アサシンは「敗退した」とは見做されません。
あの状況でアサシンが消滅を免れなかったのは、マスターとなれる人物が近くにおらず、また魂喰いを良しとしないルーラーが近くにいたからです。
そのため、敗者復活、という表現は正しくありません。
作中でルーラーがアサシンに科した制約は、公平であるべき裁定者をマスターとして延命することに対する代償のつもりでした。

またルーラーの公平性についても、明確な規定があるわけではなく、あくまでルーラーの判断によるものとなります。
もしアサシンに慈悲を掛けたとするなら、それはむしろルーラーの方になるでしょう。
理由として、ルーラーはOPにて、「まだ保護対象であった、アサシンのマスターになる筈だった青年」を守りきれずに死なせた、という事実があります。
その結果、「アサシンが召喚された時点で、彼女のマスターである青年は死んでいた」という状態になりました。
つまり「ルーラーが間に合わなかったから、アサシンはマスターを失い」、「ルーラーがいるから、アサシンは消滅するしかない」という関係になります。
これは見方によっては、「ルーラーのせいで、違反者ではないアサシンが敗退する事になった」と取ることもできます。
その事にルーラーが責任を感じるのは、おかしなことでしょうか。

続いて予選でマスターを失ったサーヴァントについてですが、これは>>88氏の六つ目の指摘のように、「はぐれサーヴァントは他にはいない」と確定させてしまえば済む問題です。
そして「投票に参加すらしてない参加者が一体増える」ことについてですが、これは他のロワでも時折ある「新たな主催者が姿を現す」といった事態も該当します。
そう言った「新たな主催者」も、ある意味「投票に参加すらしてない参加者」と言えますが、彼らの登場はそのパートを書いた書き手の独断とは違うのでしょうか。または予約の際に、そのキャラの登場に関する議論が必ず行われているのでしょうか。
私が知る限りでは、まず関係するキャラクターを予約し、次にしたらば等に仮投下などを行い、それからそのキャラの参加は有りか無しかを議論するなりして決めていたと思うのですが。

前回のルヴィアの件は、確かに私の失敗です。
ですが、今回のアサシンは、その議論を行なうために、避難所スレに仮投下させていただいたつもりだったのですが。
それで積み重ねた企画を蔑ろにしていると言われても困ります。

もちろん、その議論の上でアサシンの立場などを修正するべきだという意見があれば応じますし、アサシンの登場自体が駄目となったのであれば、その部分は削除させていただくつもりです。

96サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 18:53:43 ID:Uuz.NVnE0
カレンは慈悲をかけたのではないというなら、アサシンのマスターになることはないと思います
その場にルーラーがいたからアサシンは消滅するしかなかったというなら、ルーラーがその場は見逃してやるという手段でもアサシンは生き延びられる筈です
魂喰いをした時点で即座にルーラーに感知されることがないのは吉良が証明していますし、バーン程の魂喰いをやらかしたとしてもアサシンのスキル効果で隠蔽できると思います

そうして魂喰いをしていき、マスターを見つけ出すという手段も取れたでしょう
にも拘らずカレンが契約したのが解せないです

契約して延命させるのと、見逃して延命させるのとでは、後者の方が公平だと思います
カレンと契約している現状はとても公平だとは思えません
他のサーヴァントが自らの新たなマスター探しに必死になるのに、アサシンは自身の気が向いた時にマスター探しをすればいいのですから
そもそもアサシンが聖杯にかける願いがない場合、このままの状態でも何も問題ないわけですし

それとルーラーが魂喰いを良しとしないとのことですが、オープニングで大規模殺戮でなければ魔力維持のための魂喰いは問題ないと言ってます
多少の魂喰いなら良しと言っているのに、ここで見逃さないのは何故ですか?
アサシンの魔力維持は大規模殺戮しなければならないほどなのですか?

97サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 19:08:54 ID:hXn.7nYI0
>アサシンの魔力維持は大規模殺戮しなければならないほどなのですか?
横からですが、はい。
基本、サーヴァントはマスターがいないと存在を維持できませんし、魂喰いで得られる魔力は微々たるものなので。

98サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 19:17:01 ID:d6EuclgYO
すでに行われた事を見逃すことと、これから行われる事を見逃すことは、意味が違うのでは?
マスターを見つけるまでと限定したとしても、マスター側が契約を拒否する可能性だってあるんだし
なにしろサーヴァントを二体も維持しなくちゃいけなくなるんだから
そうなると必然的に、マスターを見つけるまでの時間が長くなり、魂喰いの量も多くなる

それにカレンが契約した理由も、自衛などのための手駒が欲しかったとすれば、多少は理にかなっているのでは?

99サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 19:18:23 ID:Uuz.NVnE0
そうだったのか、かなり甘く考えていた
マスター殺してほうほうの体で寺まで魔力維持できてたキャスターとかいたもんだから
運がよかったってことか

100サイバーゴースト名無しさん:2014/11/30(日) 19:40:00 ID:S5A0zf2w0
横から失礼しますが、今回賛否両論となっているのはアサシンのメタ的存在意義が読みづらいからではないでしょうか。
参加者を減らしていかなければ終わらないというロワ企画において、一般に参加者の追加は難色を示されるものです。
氏のおっしゃるような「新たな主催者の追加」は、大抵参加者を集めたり制限加えるなどができたことの理由付けだったり、フラグを積み重ねた終盤において話を盛り上げるためのものだったりします。
あるいはジョーカーの追加などの「参加者の投入」も、マーダー不足でにっちもさっちもいかないのならともかく、結構な参加者が乗り気なここではあまり必要性を感じません。
特に今回のアサシンは主催戦力としてよりはいずれ参加者になるということを強く意識されてるように感じましたが、300話近くの登場話が没となったここでは参加者の追加はより慎重になった方が良いかと思います。
もちろん遅効性のフラグなどもあるかと思いますし、こういった狙いを作品外で言うのも問題があるかもしれませんが、一般的にタブーとされることを犯してまで追加する理由について、一言氏から説明があれば納得行く方も多いのではないでしょうか。


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