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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part2

1名無しリゾナント:2011/01/18(火) 17:04:23
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第2弾です。

ここに作品を上げる → このスレの中で本スレに代理投稿する人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
>>1-3に作品を投稿
>>4で作者が代理投稿の依頼
>>5で代理投稿者が立候補
>>6で代理投稿完了通知

立候補者が重複したら適宜調整してください。ではよろしこ。

133名無しリゾナント:2011/05/22(日) 17:48:01
 ■ タイムオブヘル −矢口真里− ■

「おいおいなんだありゃあ…!くそっ!『コイツも』なのか!?」
全体を見渡せる離れたビルの屋上に移動していた矢口は砕かんばかりに歯を食いしばる。

矢口は混乱していた。
【能力阻害(インぺディメント;impediment)】が効かないだとぉ?
またかよ!またなのかよ!ふざけんじゃねえぞ。

矢口はライフルのスコープを譜久村の顔にあわせる。
同性ですら思わず引き込まれそうになる。
端正でふくよかな頬、ひかえめで奥ゆかしい口元。14歳の瑞々しい肌艶。

「ちっブサイクがっ!能面みたいなツラしやがってっ!」

嫉妬。
能力者である以前に、雌として、生物として自分の方が劣っている。
そう直感する。だが、認めない。矢口という女が認めるわけがない。
怒りの矛先が容姿に対する嫉妬へと向くにつれて、
不思議と冷静さが戻ってくる。

ちょっと待てよ…、『同じ』じゃねえぞこれは。

『同じ』じゃねえ。

矢口は忌まわしいあの敗北の夜を思い出す。

134名無しリゾナント:2011/05/22(日) 17:49:14

―もし矢口の能力が、物理的、視覚的にもっとわかりやすい能力だったなら、こんな誤解はしていなかったかもしれない。

あのときのオイラは能力を使う以前に封じられていた。
そうだ、最初から『発動していなかった』んだ。
それが「あの化け物」の力…。

だが、今のはちがう。
今、あのガキにオイラの【能力阻害】は確かに効いたんだ。
今度こそ勘違いじゃない。確実に効いた。
再び発火能力が復活したカラクリはわからない。
だが、一度でも効いたのなら、かければまた効くはずだ。
何度能力が復活しようがそのたびに何度でもかけ直せばいい。
矢口に自信が戻ってくる。

135名無しリゾナント:2011/05/22(日) 17:50:12

「みてろよ…、すぐに化けの皮を剥がしてやるっ!」

矢口は再び【能力阻害(インぺディメント;impediment)】を発動するため意識を集中する。

そのときだった。

「どういうことなのか聞かせてくれない?矢口。」

ふいに背後から浴びせられた言葉に、矢口は硬直した。


世界が、静止していた。


この能力は…、この能力者は…。

「け、圭ちゃん?…」

世界が静止した中で、その女性―保田圭―は、もう一度訪ねた。

「だから、これはどういうことなのって聞いてるの。」

地…地獄だ…。

矢口は力なくライフルを取り落とした。

136名無しリゾナント:2011/05/22(日) 17:52:21
>>133-135

 ■ タイムオブヘル −矢口真里− ■ でした

以上代理投稿をお願いいたします。

137136:2011/05/22(日) 17:54:43
>>130
高橋さんは死期が近付いてる
そう言う設定なのでしょうか?
何か悲しい結末を予感させるいい話ですね

138名無しリゾナント:2011/05/22(日) 19:45:48
行ってきま〜す

139名無しリゾナント:2011/05/22(日) 19:59:28
行ってきますた
矢口さんの婚約会見という良き日に相応しい作品でしたね

140名無しリゾナント:2011/05/22(日) 21:17:10
>>130です。代理ありがとうございました★
ほのぼのよりも裏のある話の方が書きやすいんですよ
死期が近いかどうかは読者次第だと思います

141名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:42:35
高橋からの短いメール「サユは××におる!」
道重の携帯にも届いたそのメールはすぐに消去された

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

道重の声が聴こえた―それは4日ぶりのこと
(サユが呼んでる)
一刻も早く道重のもとへと行かなくては、そんな思いが高橋の脚をもつれさせた
・・・勢いよく階段で転んだのだ
「愛ちゃん、大丈夫?れいな先行くけん」
転んだ高橋の上を跳んで一階へと華麗に着地を決めた

一階に降りたったれいなの前に影。それはすでにコートを羽織って待ち構えていた雅であった
「さあ行きましょう!高橋さん、大丈夫ですか?時間無いですよ」
雅は私も行くことがさも当然といった表情で力強く言う
「ミヤ、何してると?行く気かいな?遊びじゃないとよ」
「わかってますよ!でも私にも行く権利はあると思います。だってあの子がいるかもしれないから」
光井の手を頼りにして立ちあがった高橋が階段の上から雅の曇りない瞳をみて確信込めて言った
「れいな止めても無駄だと思う。連れていこう
ただこれだけは言っておくから、雅ちゃん、安全は保証しない。自分の身は自分で守るんだよ」
雅はコクンと頷き唾を呑み込んだ

「そんじゃみんな裏の駐車場に行って」
「ま、まさか、愛ちゃんリゾナントカー使う」
「ちょうど五人だからいいじゃん」
高橋はキッチンにおかれた鍵を手に取ったのを見て、三人は慌てて後ろに乗りこんだ
否応なしに雅は助手席に乗り込むことになる。何も言わずに後ろの三人はしっかりシートベルトを装着
「行くよ!」
ドォルゥゥゥゥゥ・・・ドヒュン
「た、高橋さん、速すぎますよ」
「アヒャヒャヒャ、この風、この景色最高!アヒャヒャヒャ!」

142名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:43:40
                ★   ★   ★   ★   ★   ★

「そんじゃ行くぞ。マルシェもたまには付いてこいよ。あんな暗いとこばかりいると体が錆びるぞ」
ダークネス本部におかれた物質転送装置(専ら移動に使われている)が置かれた部屋へと向かいながら吉澤が声をかける
「部署が部署だがな、体動かさないといざというときに動けないぞ。走っているのか?元ランナーのマルシェ?」
「・・・それなりにはしていますよ。それにいざというときの方法も考えていますから」
「ってまた例の『エネルギー産生』か?俺には難しくてわかんねえ能力だよな、お前の『原子合成』ってのは」
吉澤はあいまいに笑う

吉澤が警備している下級構成員にふざけて敬礼をして、入室パスワードを入力する
マルシェは吉澤に敬礼をされて慌てて敬礼を返す構成員の姿を見てクスッと笑っている
「何笑ってるんだよ。コミュニケーションだよ」なんて言いながら二人は部屋に入っていった
「それでは吉澤さん、いってらっしゃいませ」
「あ?お前も行くんだよ。気分転換だ。」
そう言って吉澤はマルシェの白衣の袖を掴み無理やり装置の中へと引っ張る
「ちょっと引っ張らないでくださ」
マルシェが言い終わる前に二人は異空間へと移動していた

「ちょっと危ないですよ、吉澤さん」
マルシェが珍しく本気で怒っている
「私まだしっかりと領域の中に入っていなかったんですから!知っているでしょ、この機械が危険だって!」
「いや、てっきりもういいだろと思っちまったからさ。悪い悪い、いいじゃねえか五体満足なんだからよ」
マルシェの言う危険―それは転送装置の狭間では空間が『切断』されてしまうこと
かつて転送装置にしっかり入らないことで右半身だけが転送されてしまうという事故が起きたことがあった
「あくまでもクールに冷静に、それがオマエらしいんじゃねえのかよ?」

143名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:45:07
吉澤にそう言われてマルシェは少し冷静さを取り戻した
「ふぅ・・・書類溜まっているんですよ・・・ボスに怒られる・・・それで、どこいくんですか?」
「あれ?言っていなかったか?あいつのところだよ、ほら出口だ、いくぞ」
二人の目の前にスリットができ、吉澤はその中へと飛び込んだ
「ちょっ、まだ答え聞いていませんよ。待ってくださいよ」
マルシェもスリットの中に飛び込んだ

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

「さあ、みんな着いたよ。降りた、降りた」
比較的乗り物酔いに強い光井、そして強がっているれいながゆっくりと車から降りた
それに対して雅は差し出してもらったビニール袋とお友達になっている

「ここ?」と本当なら酔いやすい亀はその城を見上げている
近くの駅まで新垣を迎えに行った高橋を除いた亀井達が着いたのは森の中の古城
蔦が生い茂り、石垣が積まれた城壁、さながら中世にでも来てしまったように錯覚してしまう
「ここっちゃろ、れーな、サユがいるのをビンビン感じると」
無意識ながられいなが拳を血管が浮き出るほど握りしめる
「しかし、雅ちゃん、本当に弱いんや。大丈夫?」
光井が心配そうに声をかけている横で亀井は「サユ〜サユ〜」と大切な親友の名前を呟いている
「キツいです。なんかいつもよりずっとキツい・・・ウッ・・・」
「…もしかして亀井さん?雅ちゃんに移したりしてへんですよね?」
「サュ…(ピタッと一瞬止まり)サユ〜サユ〜」
「…あれは黒っちゃね」

そこに近くの駅まで新垣達を迎えに行ったリゾナントカーが到着
「ガキさん送迎代はピンチャンポー宛でええよね?」
「ちょっと勝手に人のお店の名前宛で領収書切らない!そもそもタクシーじゃないんだから」
「…ガキさん、元気っちゃね。あれに乗ってきたのに」
ぐったりしているリンリン、久住、ジュンジュンの姿をみながられいなが力無く言う

144名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:46:38
「よし、みんな、揃ったね。サユの声、もちろん聴こえたよね?」
7人は頷き返し、なんとなく雅も頷く
「・・・え〜と、ここから先は何が起こるか分からん。だから・・・9人固まって行動する
お互い背後には十分注意し、何が起こっても決して慌てないこと!」
こうして9人は高橋とれいなを先頭として建物へと突入した

中は外見ほど荒れておらず、かつては富豪の財産だったのかシャンデリアや彫刻が置かれている
名前は知らないがどこかで見たことのあるような名画のレプリカも壁に掛けられている
壁のスイッチを押すと電気が点いたことから建物自体は大して古くないようだ
高橋とれいなが先頭、新垣がしんがりを務めながら一つ一つのドアを開けて、慎重に進んでいく
高そうな家具が放置された部屋、豪華な浴槽場、大きな広間・・・しかしそのどれにも人の気配はない

そうやって幾つもの扉を開けては中を捜索するという単調ながら気の抜けない作業を続けていった。
そしてついに、「!! ちょっと待ってください!」光井が次のドアを開けようとした高橋を制したのだ
「…開けたら何か黒い大きいものが飛びかかってきます・・・鋭い爪と大きな口・・・隆々とした腕・・・獣?」
高橋はリンリンに指示を出した
「リンリン、ドアを燃やして」
「了解了」
ポケットから飴を取り出し、リンリンは扉目掛けて投げつけた
緑色の炎に包まれ焼け落ちたドアの向こうには広がっていたのは、見た感じは普通の部屋
テーブルの上には皿がいくつか、その皿の上にはサラダが残っていて、カップも2つ置かれている
テーブルの傍には椅子が置かれ、その後ろのベッドの上には・・・黒髪を垂らして寝ている女の姿

「!! サユゥ!」
その姿を見た亀井が思わず飛び出した−光井の忠告を無視して
「あかん、亀井さん、行ってはあきません!!」

145名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:47:40
それを待ってたのだろう、部屋に飛び込んだ亀井に何かが飛びかかってきた
そいつは光井の視た通りの姿をしていた…
丸太ほどの太さの腕を持ち、全身は黒い毛皮に覆われ、口からは何でも噛み砕くであろう牙が生えていた
身長は決して小さくはない亀井よりも一回りも二回りも大きい熊だった

その大きな腕で亀井の頭を抑えつけ熊は地を震わすような叫びを放つ
「な、なにや、この熊、冬眠から覚めるにはまだ早いと!」
れいなはその熊の大きさと威圧感に圧倒され思わず後退りしてしまう

熊は8人を威嚇するようにもう一度吠え、その鋭い爪を持った右腕を亀井に振り下ろした
「エリ!」「カメ!」「亀井サン!」
誰より先に動いたのは白と黒の獣だった
ジュンジュンは自身より大きな熊目がけて体当たりをかました
突然だったのだろう、熊はパンダの体当たりをまともにくらい倒れ込んだ
その隙に高橋は亀井のもとに近寄り助け起こした

「早く起きてカメ、まだあの熊は起き上がってくるんだから!」
新垣が言う通り熊はゆっくりと起き上がった
ぶるぶると頭を揺らしている熊に対してジュンジュンが熊から仲間を守ろうと向き合い低い声で威嚇している
「なんや?あの熊?なんでここにおるんや?」
パンダと熊のまるでアニメのようなにらみ合いが光井の目の前で繰り広げられている

睨みあいから先に動いたのは熊の方であった。低い大声をあげて四本足で向かってくる
さすがの迫力にジュンジュン以外の8人は距離を取る。一方のジュンジュンは組み合おうと構えている
しかし熊は待ち構えるジュンジュンではなく逃げ惑うメンバーの方へと向かって行った
そんな熊の進路の先にいたのは―光井と雅だった。
熊は光井と雅を突き飛ばし、倒れ込んだ雅のコートを口にくわえ−そのまま逃げだした
「ミヤ!!」「逃がすカ」「リンリンも行きます」
れいな、ジュンジュン、リンリンが熊を追うため飛び出した
「こら、勝手な行動はしないっ…愛ちゃん、サユをよろしく。私も行くからあの三人じゃ不安なのよ」
そう言い新垣も後を追って駆けだした

146名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:49:16
                ★   ★   ★   ★   ★   ★

器用に雅を背中に乗せ熊は四足歩行で古城内を走り回る
熊は壁をものともせず突き破っていくので追いつくのがいっぱいいっぱいだ
「リンリン、あの熊に向かって炎撃つと!」
「無理デス!リンリンの炎、ここでは危険デス!それにスピード速くて当たらナイ」
階段を昇りながら新垣は走りながら仕込みロープの安全装置を外しながら考える
―ピアノ線は向かってくる相手には非常に有効だけど、こういった場面じゃ捕まえられない
 だからってれいなやジュンジュンのスピードじゃ追いつけないし、リンリンは危険だ
―それなら
「みんな二手に分かれて!私とリンリンで追い込むから田中っちとジュンジュンは先に回って挟み打ちよ
 この階の東の角部屋に追い込むからそこで張っていて!」
「わかった」「ガキさん、わかりました!」

リンリンの炎で進路を巧みに誘導された熊はれいなとジュンジュンが待ち構えている部屋へと追い込まれた
「はあはあ、さあ、大人しく、しな、さい」
走り疲れた新垣が肩で息をしながら熊へと近づいていく
その返事はNoだということは明白だった
なぜならば、新垣に向かって熊が飛びかかってきたのだから
「ウオッ」
本人自身は叫び声をあげながらも、ピアノ線が熊を捕捉した
ピアノ線が絡まった熊はタイル敷きの床に強く叩きつけられるようにして落ちた
「ガキさん、ナイスっちゃ!・・・あれ?ミヤはどこ行ったと?」
「本当デスネ、夏焼サンがいないデス」
キョロキョロとしながら飴を口に含もうとしたリンリンの目の前では熊はピアノ線を破頭ともがいている
「うっ、なんてバカ力なの!ヤバい、ピアノ線の限界!」
新垣の言う通りピアノ線は見事に引き裂かれた

そこに間髪いれずジュンジュンがっぷりよつに組み合った
「コイツ、強イ。なんてバカ力ダ」
しかし力では負けていられないとばかりに、ジュンジュンは熊を投げ飛ばす

147名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:50:21
壁に強く叩きつけられた熊だったが、それでもまだ立ち上がろうとする
「本当にタフっちゃね…野生の動物ってこんなに生命力強いとね…」
ゆっくりと立ち上がった熊は4人に向かって再び吠え、器用に後ろ脚だけで立ちあがった
「うわあ、大きい」
元々動物好きな新垣はその大きさに感動してしまった
「新垣サン、危ないデス!ファイヤー」
リンリンが飴を投げつけ熊を一瞬ひるませた
「ガキさん、今のうちに縛ってクダサイ!」
「あ、サンキュ、リンリン!」
新垣の袖からロープが熊へと向かって行く

熊は自分の身が危ないことを察知したのか逃げようと違う方向へと顔を向け、駆けだした

と、そこに

「おいおい、逃げんなよ、熊ちゃん」

新垣達の後ろから聴きおぼえのある低い声が聴こえ…次の瞬間、熊の胴体に光弾が直撃した

「このエネルギー弾って、確か」
「この光、見覚えあると!!吉澤ぁ」
れいな達が振り返ると吉澤が手を挙げて「よう、久しぶりだな」と声をかけてきた

「いったい何しに来たと!あれもお前らのもんか?マルシェの実験体の一つとか」
れいながもろに光弾をくらい倒れ込んだままの熊を指差しながら声を荒げた
れいなの後ろではリンリン、ジュンジュンがいつでも戦えるように戦闘配置についている
「まあ、あせんなって。今日はお前らと戦いに来たわけじゃねえんだから」
「そんな言葉信じラレルカ!」

148名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:51:31
「疑う気持ちはわかるんだけど、本当だよ」
吉澤の後ろから白衣姿のマルシェが出てきた
「マルシェ!」
「やあ、マメ、久しぶりだね。相変わらずリアクション大きいね」
新垣にマルシェは何となく微笑みを浮かべた
「それから、後ろの二人、そうやって緊張しなくてもいいよ、今日は本当にただ観察に来ただけ」
よく見ればマルシェの履いているのはただのサンダルだった

「でも、吉澤さん。やりすぎですよ」
「は?そうか?俺的には結構手加減したんだぜ、殺すわけにはいかねえんだろ?」
「当たり前です!!」
リゾナンター達を前にして吉澤、マルシェの二人は言い争いを始めた
「せっかくのレアものなんですから、もっと大切にしてくださいよ!」
「悪かったっていってるだろ」
「その言い方、反省していないのばれてますからね!」

「あ、あの〜」
新垣が言い争いが止みそうにないので無理やり割って入った
「私達に興味ないのでしたら何しに来たんでしょうか?」
相手が実力者ということもあり新垣は腰を低くして尋ねた
「ガキさん、そんな聴き方することないっちゃ!お前ら何しに来たと!」

「うるせえ、れいな!」
吉澤がれいな向けて光弾を放った
「な、何すると!さては、油断させておいて」
「いや、今のは田中ッチが悪いと思う」
「なんでっちゃ!」と思わずれいなは新垣を睨みつけたが、新垣は意図的に聴こえないふりをした
「・・・れいな、何回も言うけどさ、人の話を聞く耳持とうね」
マルシェがれいなに優しく諭した

149名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:52:47
「それで、いったい何の目的ダ!」
リンリンが吉澤に勇敢にも問いかけた
「ああ、あいつだよ、あいつ」
吉澤が指差したその先には倒れている熊の姿
「あれはオマエラの仲間なのか?」
「いや、違うよ。でも、興味あるから見に来たの」
マルシェが喜びを抑えきれないと言った表情で答える

「あの熊に?おまえら、一体何考えていると!」
「熊じゃない・・・」
「え?誰?」
新垣が突然飛び込んできた第三者の声に反応する
「わ、私です、雅です、あれは熊なんかじゃない・・・私の友達です」
声の主は隣の部屋からボロボロになったコートを羽織ってゆっくりと姿を現した雅であった

そう言っているうちに熊の体に変化が現れた
何でも砕くであろう太い腕は華奢な腕へと変化し、鋭い牙はチャーミングな犬歯へと姿を変えた
体を覆っていた黒い体毛は白い地肌によって取って代わられていく
鋭く輝いている目は相変わらずそのままだが、口や鼻はその『人物』のものへと戻っていく

「そう、『熊』じゃないよ、あれは」
マルシェはますます嬉しそうな表情で熊を眺めている
「あれは能力者だ、能力は『獣化』・・・だよな?マルシェ?」
「そうですよ〜私の大好きな『獣化』能力者なんですよ〜」
嬉しすぎてマルシェの表情は筆舌できないほど崩れている

そして完全に人の姿に戻った彼女に雅はいつものように慣れ親しんだ呼び名で彼女の名前を呼んだ

「熊井ちゃん!」と。  (続く)

150名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:53:54
>>「Vanish!Ⅱ〜independent Girl〜」(7)でした
書き始めたのは去年の秋なので舞台設定は「冬」なのをご理解くださいw
さて、やっと隠していた「『り』ちゃん」が誰か明かせたけど…分かりにくかったかもしれないな…
予想を裏切るのが好きダカラ!ちなみによく知っている人にはわかるネタ織り込んでいますw
あと『Vanish!』ですでにこのキャラは登場していますから、「新キャラ」ではないです
設定は『i 901』として出ていたものを一部再利用させていただきました
http://www39.atwiki.jp/resonant/pages/175.html参照です

151名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:54:47
というわけですみませんが代理投下の方よろしくお願いしますm(_ _)m
長くてスミマセン

152名無しリゾナント:2011/06/18(土) 05:31:05
行ってくる

153名無しリゾナント:2011/06/18(土) 05:43:48
行ってきた

154名無しリゾナント:2011/06/18(土) 11:00:00
ありがとうございました(^^♪
レベルがたりないのでこちらのお世話になります
よろしくお願いします♪

155名無しリゾナント:2011/06/23(木) 19:09:08
スマイレージ増員の騒動のせいで
お蔵入りにしようかとも思ったサイドストーリー…

156名無しリゾナント:2011/06/23(木) 19:09:54
 ■ ウィッチィズティータイム −スマイレージ− ■

「ふーん…それが保田圭の【時間停止】なんだ?なぁんかタネがわかっちゃうとダサダサな能力ね」
福田花音は―報告もそこそこに、お菓子にパクついている和田彩花を恨めしそうに横目で見ながら―そうつぶやく。

季節はずれなビーチパラソル、テーブルいっぱいにぶちまけられたお菓子、電気ポット、熱い紅茶…。

「花音ちゃんが言ってもギャグにしかならないっと…あっ!『幽霊も〜よく見てみればゆうれーる柳』…なんつて」
「ぎゃはは☆憂佳ちゃんのつまんないダジャレおもしろーい☆」
「ふぉれ…ふぉっちなんだかふぁかんないから(それ…どっちなんだかわかんないから)。」
前田憂佳が口から烏賊ゲソをプラプラさせたまま、別のお菓子に手を伸ばす。

「でも、彩花じゃなかったら…。
そっちにいってたのがうちらだったら能力を使われたことすら、
それどころか保田さんがそこに来たことすらわかんなかった…
そうゆうことでしょ?やっぱすごいよ。」
と小川紗季。

「能力は脇へ置いておくとしてもさ、保田さん、やっぱり侮れないね。して、なんでばれたんだろ?」

「所詮は矢口さんだもん。いずれは誰かにばれたでしょ。
あのひと仕事が雑すぎるのよ。
それより…

157名無しリゾナント:2011/06/23(木) 19:15:00
その先を言い淀む。

危なかった。

フクちゃんのことじゃない。
もし、保田さんがフクちゃん拉致に手を貸していたら…
まちがいなくあやちょは『目』を使っていただろう。
あたしたちの制止の効かないところで、
当然のように、何の迷いもなく、無制限に。

危ないところだった…。本当に、ギリギリのところだったんだ。

千路に乱れる思考を必死にまとめあげる。

やっぱり、単独でフクちゃんの監視をさせるのは控えるべきだった?
ううん、今回は『バイト』をこなすには憂佳も紗季も必要だった。
予想よりリゾネイターの動きが鈍い以上、ベターな選択ではあったはず…

158名無しリゾナント:2011/06/23(木) 19:15:54

花音はぷかぷか空中に浮かびながら、塩辛を乾燥させたおつまみを嬉しそうに口に運ぶ天使を目で追う。

あたしたち四人だけでやる。

そう決めた、あの日を思い出す…
そして、同時に…

『それ』は避けては通れない事だった。
だが、『それ』は彼女にとって…『それ』は彼女にとって絶対に…

…んね…ごめんね…ちゃん…

「花音ちゃん?」

和田彩花が空中に寝そべりながら花音をのぞきこむ。

「なんでもないよ。さっ、バイトは終了っ!。みんなお菓子片づけてっ。撤収するよ。」

季節はずれなビーチパラソル、テーブルいっぱいにぶちまけられたお菓子、電気ポット、熱い紅茶…。

熱い紅茶…

熱い?…

熱気…、艦橋…、黒煙…、重油臭……、火災…。


東シナ海々上、国籍不明のフリゲート艦が、力なく漂う。


ある少女の一言をきっかけに、
罵り合い、憎しみ合い、殺し合った、哀れな兵士達の亡骸を乗せて…。

159名無しリゾナント:2011/06/23(木) 19:18:14
>>156-158

■ ウィッチィズティータイム −スマイレージ− ■
でした

160名無しリゾナント:2011/06/23(木) 19:19:46
以上
投稿代理どうぞよろしくお願いいたします

161名無しリゾナント:2011/06/23(木) 20:28:19
メインのプロバイダが規制に遭ってるんだがな
トライしてみる

162名無しリゾナント:2011/06/23(木) 20:34:50
何とかいけた

163159:2011/06/25(土) 01:59:32
>>162
大変な状態の中
代理を引き受けてくださり
ありがとうございました

164名無しリゾナント:2011/07/22(金) 00:50:17
(1)
「熊井ちゃんっ!熊井ちゃんっ!」
吉澤の光弾を正面から受けた熊井は必死に揺さぶられても倒れ込んだまま全く動かない
「熊井ちゃんっ、熊井ちゃんっ」
「大丈夫やミヤ、息しとると。少し気を失っているだけっちゃ、落ち着くとよ」
れいなが冷静に熊井の口元に手をかざして呼吸を確かめる

「そりゃそうだろ、こちらの方に『生け捕りにしろ』って言われたんだから」
吉澤が親指をマルシェに向けながらあっけらかんとした表情で言い放つ
「…もうすこし丁寧に扱って欲しかったです」なんてマルシェの小さい不平は聴こえていないようだ

そうやって冷静なマルシェと吉澤から目を固定したまま新垣は記憶を辿った
「愛佳から聴いたことがある…同じ学校にスタイル抜群の後輩がいるって…熊井友理奈」
リンリンが隣の部屋から持ってきた毛布を生まれたままの姿になった熊井に被せる
「雅ちゃんからその名前が出た時は驚いたけど、まさか能力者だったなんて・・・
 というか、雅ちゃん、どこにいたのよ?さっきまで熊の背中にいたのに」
熊井の肩を軽く叩きながら雅は顔だけを新垣に向けて答えた
「隣の部屋のふわふわしたベッドの上に投げ飛ばされたんですよ!
ちょうど田中さんとジュンジュンは見ていましたけど新垣さんは向こうから来ていたので」
「そ、そうなの。怪我は?」
「私はほら、ちょっとコートを破られたくらいで、そうこのコートを、コート…」
コートを破られたことがそうとう悲しいのだろうか雅は繰り返し「コート」と言い続ける
どうやら怪我はしていないようなので新垣は安堵のため息をついた

しかしここで新垣の脳裏に当然のごとく疑問が浮かんだ
(なんで熊井ちゃんは雅ちゃんを連れていったの?それにさゆみんも熊井ちゃんが?)

その疑問が顔に現れたのだろうマルシェが新垣に声をかけてきた
「うん、マメ、私も熊井ちゃんが全ての犯人だと思うよ。あの現場の壁に残されていた爪痕は彼女の爪のようだしね」
新垣は現場の壁に残された荒々しい傷跡を思い出した

165名無しリゾナント:2011/07/22(金) 00:50:56
「それにどうして彼女が犯人達を襲ったのかも簡単に説明できるし」
「どういうことや!」
れいなが立ちあがりマルシェを睨みつける
「簡単だよ、自分を連れ去った相手だよ。それで自分が熊になって人間の理性を失ったとしよう
 まず第一に考えるのは、そこから逃げること。そのためには邪魔なものは排除する必要がある
 そして目の前には自分を連れ去った男達、恨んで当然。遠慮なんていらない、倒していけばいいじゃない
 もちろんいきなり獣化なんて力に目覚めたわけだから手加減なんてできるわけないしね」
人間としての理性を保つ訓練をする前のジュンジュンの姿を知っていた者はその説明をすんなり受け入れることが出来た

「シカシ、それならどうしてあの現場にはほとんどの人がいなかったんデスカ?
熊井ちゃんの力はただの獣化なんデスヨ!」
リンリンの質問にマルシェはにやりと笑みを浮かべながら答える
「それはね、ジュンジュンならわかるんじゃない?いつも獣化しているからね」
ジュンジュンはマルシェに指名されたが何も言おうとしない
「どうしたと?ジュン、何か思い当たる節あれば言ってみるとよ」
「・・・ジュンジュン、いつも持ち歩いているものアリマス」
「バナナやろ?それがどうかしたと?」
「・・・獣化した時、ものすごくエネルギー使いマス。長ければ長いほどエネルギー使ウ
 ・・・だからジュンジュンいつもバナナ食べてエネルギー消費を防いでマス」
ここまでいって新垣と吉澤は言おうとしていることがなんとなくわかったようだ
しかしれいなは「それがどうしたと?」と鈍いようだ

「ジュンジュンが言いにくいなら私がいってあげるよ、れいな
獣化っていうのはね、ちょっと特殊な能力でね、自分自身の形を変えるんだよ。
 大きな燃料というかエネルギーが必要になる能力なの。それでジュンジュンはバナナで栄養補給をしている」
「だからなに言うとると?」
「はぁ、れいなはまだ頭の回転が少し遅いのかな?だからあの子もエネルギーを取ったんでしょ」
「そんな栄養になるもん、あの部屋になかったと!食事でもしてたと!?」

166名無しリゾナント:2011/07/22(金) 00:51:42
「食事ねえ・・・まあ、半分正解かな?しっかりその子もエネルギーを取ったんだよ

『人間を喰う』ことでね」

マルシェの答えに一瞬場の空気は凍りつく
「た、食べたと?人を?人間が?」
「まあ、獣化しているんだから内なる獣が出てきて人くらい食べるでしょ
ニュースでもあるじゃない、熊が人を襲ったって。それに現場に落ちてたでしょ、人の手首が」
マルシェの指摘通り新垣達は現場で人の手首が落ちているのを確認していた
「人を食って辺りが血まみれ。喰われた人は腹の中へと消える。
これで犯人消失の方法が判明したってわけだな」
吉澤がマルシェの説明に飽きながらあくびを噛み殺してまとめる

「じゃあ、なんでサユはここにいると?れいな達みたとよ、まだ無事なところを」
その答えにもマルシェはすでに答えを用意していた
「それはあとで食べるため。常に獣化しているわけだから食事は動物の『肉』だけになる
 正直、まだサユが生きていてラッキーって思った方がいいよ、よかったね、マメ」
マルシェの推理には不合理な点がないため悔しいながらも受け止めざるを得ない

「違う、熊井ちゃんじゃない!」
必死に否定する雅に対してもマルシェは冷静に「状況証拠は十分なんです」といって聴く耳を持たない
「ん?ちょっと待つと、ミヤは熊井ちゃんが能力者ってことを知らんちゃろ?
それなのに熊がその子やと気付いたと?」
れいなの鋭い指摘にリンリンもその通りだと言った表情で雅に顔を向けた
友達が人間を喰ったかもしれないということを伝えられ若干顔色は悪いが答えた
「ああ、それはですね・・・私が放り出されたところに熊井ちゃんの置手紙があったんですよ
 メッセージの下には下に『友理奈』って名前も書いてあったん」
そこまで雅が言った時に建物全体がぐらりと大きく揺れた

167名無しリゾナント:2011/07/22(金) 00:52:22
「な、なに?地震?」
新垣達に問われる前に吉澤が「俺ら、何もしてねえからな」と釘を刺しておいた
「新垣サン、脚元ガ!」
リンリンが新垣に声をかけた瞬間、床が崩れおち、雅と友里奈を除いた6人が一階へと落下した
思わずれいなはキャーキャー声をあげてしまい、思いっきり背中をうってしまった
「イタタ・・・もう、なにが起きたと?」
「吉澤さん、何が起きたんでしょうね?地震ではないですよ、だって緊急地震速報がなかっ」
「おい、マルシェ、地味に現実的なことを言うなよ。しかし、何だ?」
吉澤は他の5人が背中から落ちたのに対してしっかりと両足で華麗に着地を決めた
「若干時事ネタ絡めても時が経ったらわからなくなるぞ」

「しかしどうしたンデスカネ?電気もつかないようデスネ」
リンリンがそこら辺に落ちていた瓦礫を拾い上げた。
手にした椅子の脚に緑炎がともされ周囲は少し明るくなった
マルシェも白衣の内ポケットから懐中電灯を取り出し、スイッチを入れた

「な、なんよ!これは!!」
れいなが驚きの声をあげたので二階から雅が「何があったんですか?」と問いかけてきた
「ミヤ、こっちに来るんじゃなかと!」
れいなが声を荒げて一階に下りてこないように警告したので雅は驚く
「なにか、おかしいと!一階がさっきと違ってぼろぼろになっていると!」

そう「ぼろぼろ」という表現は少々滑稽かもしれないが、ある意味適切だった
壁という壁には穴が開き、部屋と部屋という境界線は失われていた
新垣達がいたあの部屋のようにあちらこちらの天井が抜けおち、あちらこちらには瓦礫が積まれている
さきほどあれほど綺麗であった建物内と同じ建物だとは思えないくらいに荒れているのだ

168名無しリゾナント:2011/07/22(金) 00:53:09
「なにかまだいるね。れいな、リンリン、ジュンジュン、離れないで。愛ちゃん達と合流しよう」
三人が頷くのを見て、吉澤は「仲良しだね〜」と呑気に感想を述べた
「ま、こういうときはなるべく大勢で居るのがいいからな」
「・・・オマエラはドウスルダ」
ジュンジュンが威嚇の目つきで睨みつけると「おっかねえ〜」と吉澤はおちゃらける

「ま、とりあえず、熊井ちゃんをいただいて帰るとするかな」
「!! そんなことさせん!」
れいなが吉澤に向かって飛び出した

そこにれいな達のよく知っている声が飛び込んできた
「田中さん!伏せて!!」
(愛佳!?)
咄嗟に言われたがそれは光井の忠告、れいなは飛びかかるのを止め、その場に伏せた
光井の声が聴こえない吉澤は「おいおい、れいな転ぶなよ」と呆れかえる

その数秒後、伏せたれいなの上を何かが通り抜け・・・吉澤の寄り掛かっている壁に大きな穴が空いた
「な、なんだ?何が起きた?」
さすがの吉澤も突然のことに戸惑いを隠せず辺りを見渡す
れいなと同じく光井の声が新垣達にも聴こえたので光井の姿を見つけようと辺りを見渡す
「光井サン?どこですカ?」
「こ、こっちや…リンリンη×▽◎!!」
声のする方向を見れば脇腹を押さえて光井がこちらに向かって駆けてきた
「あ〜光井サン〜無事でヨカッタデス〜」
笑いかけながら光井を迎えるリンリンに光井は強い口調で言い放つ
「アホ!!リンリン、炎早く消すんや!!狙われるやろ!!」
慌ててリンリンは炎を消した

「落ち着くと、愛佳、一体何があったと?」
れいなが光井に問いかけ、光井はゆっくりと語り始めた

169名無しリゾナント:2011/07/22(金) 00:58:03
以上『VanishⅡ〜Ⅱ〜independent Girl〜(8)』の最終章スタートです
出来れば前回までを読んでいただくと面白いと自負しております(汗)
さて、今日から前回同様毎日投下していきます。したらば使いますが…
だいたい5〜9レスくらい使って少しずつ投下していくのでよろしくお願いします
前回よりも多い一週間超えますが、そこだけはこだわらせてください
皆様の期待に添えるか自信はありませんが(汗)

170名無しリゾナント:2011/07/22(金) 01:38:16
イーモバが規制中なんだけどなw
まあ行ってみますか

171名無しリゾナント:2011/07/22(金) 01:46:53
>>170さん
ありがとうございました
自分の努力不足で迷惑かけてしまいました
少しでも興味のわくお話しを書けるように努力します

172名無しリゾナント:2011/07/22(金) 01:47:16
行ってきますた
1回線契約残しておいてよかった

173名無しリゾナント:2011/07/22(金) 22:21:22
(2)
                ★   ★   ★   ★   ★   ★

―熊に連れ去られた雅を救いに4人が熊を追い掛けるまで時間は戻る

「高橋さん、愛佳も一緒に行った方がよかったんでしょうか?愛佳ならどこに逃げるか視えたでしょうし…」
「そうかもしれないね、でも、まあガキさんもおるし、れいなもいるし大丈夫やろ」
「そんなことよりもまずは道重さんですよ!あ、亀井さん!」
気付けばゆっくりと亀井がベッドの上で寝かされている道重に近づいていた
亀井は嬉しそうな表情で目にはうっすらと涙を浮かべていた
「さゆぅ、良かった・・・無事だったんだね」

「エリ、待って!まだ安全ってわけじゃないんだから!!」
高橋は先程の熊がいるようにまだ何かが起こるのではないかと気が気でなかった
部屋の中には特に変わったものは置いていない
道重の寝かされたベッドの横には食事の残りなのだろうか?トマトが残っている
良く見ればトマトにはなぜか桃のキャラのシールが貼られており一瞬疑問が浮かんで消えた
天井を見上げたところで何もトラップがあることもなく、床も落とし穴…なんてあるはずもない

「久住さん、あの熊が道重さんをさらった犯人と関係あるんでしょうか?
あの『黒い女が襲ってきた』『闇』というワード…やはりダークネスの!?」
「どうだろうね…道重さんが起きてくれれば何かわかるんだろうけど簡単に起きないよね?」
しかしそんな久住の予想とはうらはらに亀井に何度か肩をゆすられただけで道重は目を覚ましそうであった

「ん〜ふわぁ・・・もう少しだけ・・・」
道重の二度寝を欲するような甘い声を聴いただけで亀井は唇を噛みしめて泣くのをこらえようと必死になる
「さゆ、起きてよ!帰るよ!みんなで!」
より強く肩をゆすったので道重は両目をこすりベッドからゆっくりと起き上がった
「ふわぁ〜」と小さくあくびをして道重は周りの状況をぼんやりと眺める

174名無しリゾナント:2011/07/22(金) 22:21:59
「サユ!」「さゆぅ!」「亀井さん」
亀井が思わず道重に熱い抱擁を交わす
その嬉しそうな亀井の表情を見て思わず久住の目にも涙が浮かんでくる

ただ―光井は小さい違和感を感じていた
「どうした愛佳?嬉しくないんか?」
「…愛佳の視た未来の像と違うんです。何かが微妙に」
光井の言う視た姿は道重が連れ去られたあの日にリゾナントで視た『抱擁する道重、亀井の姿』である
しかし実際に目の前の抱き合っている二人の姿は何かが『違って』感じられた

暫くして何も言わずにゆっくりと道重が優しく亀井を離して高橋を見た
道重から離れた亀井は何も言わずにゆっくりと高橋の傍へと戻る

「サユ、無事でよかったやよ!!帰ろう、リゾナントへ」
高橋はそう言って道重に手を差し出した

その手を見て道重は手を握ろうともせず首を振った
ゆっくりとベッドに腰掛け直して艶のあるその黒髪を上から下までさっと手串をかけた

道重は亀井、久住、光井の位置を確認して最後にその大きな瞳で高橋を捉え、にやりと笑った

「帰りませんよ。それに、申し訳ありませんけど、私、


 さゆみではありませんから」


「え?さ、さえみさん?」
「そうですよ、高橋さん、私、さえみですよ」

175名無しリゾナント:2011/07/22(金) 22:23:14
道重『さえみ』はそう言ってベッドから立ち上がり、小さく背伸びをした
「う〜ん、少し寝すぎましたかね?あちらこちら少し痛いですね」
「そ、そんなことよりさえみさん『帰らない』ってどういうことなんですか!?」
高橋の後ろから久住が甲高い声で尋ねた

「あら、小春ちゃん、何言っているの?そのままの意味よ」
丁寧な言葉使いがますますさえみを不気味に感じさせる
「もう、私はさゆみをあなた達と一緒の場所に帰す気はありませんので」

「それはあかんと思いますよ!愛佳達が良くても道重さゆみさんの家族とかは」
「私はさゆみの姉ですから、大丈夫です、それに私がいればさゆみは寂しくないんですよ
 ね、そうよね、さゆみ」
さえみは微笑んだ

「・・・さえみさん、落ちついて話を聴いてくれます?なんでですか?」
高橋が少しずつさえみに近づきながら問いかける
「そうですね、以前、私が皆さんに頼んだこと覚えていますか?」
「それは『私のさゆみを危険な目にあわせないようにしっかりと見ていてください』のことかな?」
高橋がまた一歩さえみに近づいた
「その通りです。さえみはそこにいる子達ほどではないかもしれませんがか弱いんです
 運動も苦手ですし、体力もあるほうではありません
 にもかかわらずあなた方ときたら・・・」
さえみの肩が少し震えている
「新垣さんを救いに孤島へ行き、ダークネスと何度も戦って、戦って…何度も私を呼びだして
 今回だって高橋さん、あなたに頼んだ翌日にさゆみは拉致された!!」
さえみの口調が少しずつ荒荒しくなってきた

「私はね・・・皆さんとさゆみが出会うまではずっと長い間眠っていた存在です
 それが出てきたということは、どういうことを意味するか?
 さゆみが危ない目に会うことが増えた、実際に命の危険にさらされた、そういうことです。
 ああ、可愛そうなさゆみ、お姉ちゃんしかあなたを守れないのね、結局は」

176名無しリゾナント:2011/07/22(金) 22:24:14
「それは」と久住が口を挟もうとしたが、さえみに睨まれ委縮し光井の手をおもわず握り締めた
「あなたのこともいつもさゆみの影からみていたわ、小春ちゃん
 あなたは御存じないでしょうけど、夜な夜なさゆみは泣いていたんですからね
 それを私がどれだけなぐさめていたことか、あなたにも知って欲しいものですよ
 おっと、高橋さん、それ以上近づかないでくださいますか?」
何気なくさえみへと近づいて行った高橋に近づかないように手を突き出した

「あなたの戦法、何十回、何百回とさゆみの目を通してみているのであなたの十八番は効きませんよ」
そういうさえみには隙が見当たらず、思わず高橋も息をのんでしまう
「あっしらの能力も動きの癖も熟知しとるってわけやね・・・これほど戦いにくい相手はいないね」
高橋が苦笑いを浮かべて、すぐに口を真一文字に結び直した

「・・・なあ、さえみさん、やっぱり、あっしらと帰ってくれんかのう?」
高橋が、亀井が、久住が、光井がさえみの次に発する言葉を待った
「無理ね、どうしてもというなら、私を力でねじ伏せるくらいのことをみせてくれますかね?
 ただし、高橋さん、そこから一歩でも前に出ればあなた方を『敵』とみなします
 怪我をしたくなければ、すぐにここからお帰り下さ」
さえみが最期を言いきる前に高橋が足を大きく踏み出した
「悪いけど、さえみさん、帰るなんて選択肢はない
あなたがサユを大事に思っているように、サユもかけがえのない仲間なんよ
別に力があるとか、か弱いとかそんなん関係なくて、あっし達はサユと友達なんよ
 多少手荒な子とするかもしれんけど、サユと帰らせてもらう」

さえみはふぅと小さく息をつき、小さく背伸びをしてから高橋に手を向けた
「よけてくださいね」
静かに言ったさえみの掌から淡いピンク色の光が高橋に向かって飛んでいく
高橋は落ち着いて瞬間移動、いや『跳んだ』
一方でさえみが放った光はちょうど高橋がいた位置の後ろの壁に大きな穴を開けた
「まあ、始まりですし、これくらいなんてことないですわよね
 でも、これでおわかりかしら?私も本気だということを」

177名無しリゾナント:2011/07/22(金) 22:25:20
「高橋さん、さえみさんが相手ってヤバイっすよ」
久住が声をかけても高橋は答えず、どうするべきか悩んでいるように見えた
「みっつぃ、どうしよう?小春、道重さんと戦いたくないよ」
「そら愛佳もや…本当は戦いたくないけど、こうしなきゃあかん雰囲気やろ…」
戸惑いを隠せない後輩二人はさえみと対峙している高橋の背中に視線を注いだ

「道重さんを小春が困らせていたなんて気付かなかったけど、笑ってくれたあの笑顔忘れられないんだよ
 迷惑そうにしていたけど、それも含めて芸能人『月島きらり』じゃない小春を観てくれた数少ない人
 それを失いたくないよ」
「愛佳も亀井さんとか新垣さんとかリンリンと笑っていた道重さんをもう一度、いやずっと観ていたい」

「・・・じゃあ、戦うしかないんじゃない」
そう言ったのは意外な人物であった

「「亀井さん?」」
亀井は覚悟を決めた表情で高橋の横に並び、久住と光井へと顔を向けずに声をかけた
「二人とも、さゆとまた話したいんだよね?ばかみたいに笑いたいんだよね?
 だったら、選択肢は一つしかないよ、さえみさん!!」
亀井は人差し指をさえみに向けた
「あなたからさゆを取り返す、いや奪ってみせます」
亀井の宣言に対してさえみは意外に笑って見せた
「えりちゃん、本当に強くなったわね。あなたのことを私は多分、さゆみの次くらい知っているわ
 本当ならあなたを傷つけることはしたくはないの。さゆみが一番笑っていられたのはあなたの横だったから
 でも、それとこれとは別、いや、むしろあなたがいたから私は自分の居場所を失った
 えりちゃん、私も宣言させていただくわ。さゆみの一番大切な存在、その場所頂きます」

178名無しリゾナント:2011/07/22(金) 22:30:03
今日はここまで。
昨日のタイトルは…ミスですw普通に『Vanish! Ⅱ』ですからw
今回のボス登場です。二日目にして出るなんて、早いかもしれないですがw
ある意味今日が裏切り②といってもいいと思います

代理よろしくお願いします

179名無しリゾナント:2011/07/22(金) 23:38:04
行ってきまふ

180名無しリゾナント:2011/07/22(金) 23:46:45
投稿官僚

181名無しリゾナント:2011/07/23(土) 10:23:13
確認しました。ありがとうございます♪

182名無しリゾナント:2011/07/23(土) 13:57:12
(3)
「カメ、小春、光井、覚悟は出来てるね」
高橋の問いかけに対して三人はそれぞれ答えを出していた
「愛ちゃん、愛ちゃんは絵里達のことを気にしないでください。絵里もサポートします」
「小春もがんばりますよ。道重さんを取り返しましょう」
「愛佳も後ろからですがサポートします!!」
「それじゃあ行くよ」

次の瞬間、高橋はさえみの後ろの空間に現れた
目標はさえみの後頭部。さえみの隙を狙い、思いを込めた蹴りを放つ
「そこですね」
さえみは振り向きもせず自身の背後、高橋のいる辺りへと手を伸ばす
「なんやと!?」
危険を感じた高橋は攻撃を中断し、再び亀井の横へと戻った

「言いましたよね、十八番は通用しないと」
「みたいやね」
表情は笑っている高橋だが内心はかなり動揺していた
というのもさえみの手をむけられた先の壁が綺麗に崩れていたからだ
「愛ちゃん、あの手は危険だね」
「うん、『物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング)』、やはり敵にしたくない力だね」

「近づかなければいいんですよ!!高橋さん、小春に任せて!!」
高橋と亀井のほうに目を向けているさえみに向かって小春が雷を放った
赤い色の輝かしい雷はさえみにまっすぐ伸びていく
さえみはゆっくりと手を伸ばす
「・・・」
何も言わないが、雷はさえみに届く寸前で消えていった。
「遠距離攻撃も効果なし?」

183名無しリゾナント:2011/07/23(土) 13:58:32
「フフフ…皆さん、勘違いしていますよ。私の力を」
さえみが少し低い笑い声を響かせながら天井にあるシャンデリアを指差した
さえみの目が金色に光ると同時にシャンデリアに亀裂が入り、砕け散った
「こうやって見えるもの、もちろん触れるもの、全てを消せるんですよ」

「近づくのが危険、というわけではないんですね、高橋さん」
「でも近づかなくては何もできないし…」
「小春の雷が効かないみたいだし、どうしようか…」
何も言わずに亀井がカマイタチを突然放った
しかし、何も起こらずさえみは「無駄よ」と言って笑っている
「見えない風だとしても空気の震えでどこにくるかくらい予測できるわ
 『見えないから効くかも』、えりちゃんそんな浅はかな考えくらい想定の範囲内です」

「諦めんよ」
高橋が再び跳び、さえみの後ろに現れた
「無駄だっていっているのおわかりですか?」
さえみが手を伸ばし、現れた瞬間の高橋に0距離で光を放った
桃色の光が高橋を包みこみ、ゆっくりと高橋の姿が消えていく
「愛ちゃん!」「高橋さん!」
亀井、光井の悲痛な叫びが響く
「リゾナントリーダー高橋、大したことなかったですね」
「それはどうや?」
声がすると同時に高橋がさえみの真正面に現れ、さえみの顎に強烈なアッパーを入れた
そしてすぐに跳び、仲間の元へと戻り、久住にウインクを投げた

顎を押さえながらもさえみは無表情のまま高橋を睨みつける
「チッ、あれは小春ちゃんの幻覚でしたか…」
「そういうことですよ〜愛ちゃんがあんな簡単にやられるわけないですよ☆」
「視界に入る前に攻撃すればええんやろ?それだけのことや」
高橋が簡単なことだ、とでもいうように微笑みかける
「いけます、これならさえみさんでも防ぎきれません!!」

184名無しリゾナント:2011/07/23(土) 13:59:24
「いや・・・それがそういうわけにはいかんみたいやね」
高橋が困り顔を浮かべているのに亀井が気付いた
先程から高橋は手を後ろに組んだままだ
「さえみさん、あなた…」
「愛ちゃん、何かされたんですか?」
亀井が高橋の腕を握り、さえみを殴った右手を自分に見えるように持ち上げた
「!!」

「あら、言っていませんでしたっけ?私に触れたものが壊れるように力を解放してますのよ」
さえみが近くにあった皿に触れた。すると皿は粉々に砕け散った
「ということは・・・」
光井が高橋の右手に視線を向けると・・・高橋の右手首から上が消えていた
「久住さんの雷も亀井さんの風も消される・・・でも触れたら否応なしに触れた部分が消される
 ただですら愛佳には何も攻撃の方法あらへん・・・どうすればいいんや?」

「愛ちゃん・・・」
亀井はすぐ横の高橋の顔を見つめるが、高橋の顔は暗い
「どうします?まだ続けますか?」
さえみが時折さゆみがみせる気だるそうな声で尋ねる
「無駄なんですよ、私に攻撃を与えようとすることは。全て無に消えるだけ
 それからついでに絶望的なことを教えて差し上げましょう」
さえみは右手に淡い桃色の光をともした
「私はさゆみのもう一つの存在、もちろん『崩壊』させるだけではなく『治す』こともできます
 なので先程高橋さんから頂いた、顎の傷、もう『消させて』いただきましたよ」
「じゃ、じゃあ、さえみさんを倒すには一撃で決めるしかないってこと?」
久住が光井に尋ねると光井は何も言わずに首を縦に振って答えた
「そんな…勝てないよ、勝てっこないよ、あんなのに・・・」

185名無しリゾナント:2011/07/23(土) 13:59:59
「そんなに悩んでいるなら、今度はこちらから行きますよ!」
さえみが4人に向けて光を放った
「みんな、あっしにつかまって!」
高橋の声に従い3人は高橋に触れ、跳んだ
「逃がしませんよ!かくれんぼみたいですね♪」
高橋といえども3人を連れての瞬間移動には限界がある
(どこか遠くに行くべき?それともこのまま逃げ続ける?どうする私)
心の中で自分自身との対話を始めた

「高橋さん、愛佳たちを気にしているなら大丈夫です!
ただ少しだけ遠いところに跳んでからにしてください」
「み、みっつぃ?」
久住は光井が自分を逃がしてほしい、そんなことを言ったので驚きの声を上げた
「道重さんを置いて逃げるって何考えているの!」
「違うわ!!新垣さん達にさえみさんが敵だって伝えんといけないやろ!
何も知らずに道重さんの元へと行ったら危険や!それを阻止させんと」
「あ、そっか、みっつぃ、冷静だね、こんなときでも」

「愛佳の言う通りですよ、愛ちゃん、エリ達だって自分の身くらい守ってみせます」
「…わかった、なるべくこの建物の端に逃げるから」
高橋はまた跳んだ―その数秒後には亀井、久住、光井の三人は古城の端の部屋に残された
「頑張るんやよ!!」
そう言い残し高橋はさえみの元へと戻っていった

「愛ちゃん、大丈夫かな?」
何度も仲間を連れて跳んだ高橋の身を心配する久住
「高橋さんならなんとかなる、無策で行く人やない。リーダーを信じましょう
 しかしさえみさんも派手なことしてくれはったわ」
三人の目の前にはすでに部屋と部屋の境目が無いくらいにぼろぼろになった光景が広がっていた
天井が抜け落ち、天井のかけらが家具を押しつぶしていたり、ソファの一部が見事に削られていたりする

186名無しリゾナント:2011/07/23(土) 14:00:51
「でもまさかさえみさんがあんなことを思っているなんて想像もしなかったな
 さえみさんがあんなに小春達のことを恨んでいたなんて」
「いや、あれは恨んでいるンとは違うと思いますわ、なんていうか妬みに近い気がします」
「妬み?」
「さえみさんは元々道重さんの孤独を生めるための存在だったわけや。そこに亀井さんが現れた
 自分の寂しさを埋めるために作りだされたさえみさんは焦ったはずや、自分の居場所を奪われて
 さらに愛佳達も道重さゆみさんの友達となっていく。ますます自分の価値を失って行った
 さえみさんはさゆみさんを守る存在として出現した。しかし、その守ることも必要なくなってきた」

そうして会話をしているうちにもさえみの放つ光は部屋を壊していく
みるみる内に壁に穴が空いて行き、建物内が一つの大きな部屋へと近づいていく
そして、ドシャーンという大きな音とともにれいなのキャーキャー言う声が聴こえて来た
「田中さんの声が聴こえた!!さえみさんがおるって忠告してきましょう!」
そういい光井、亀井、久住は新垣達の元へと駆けて行った

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

光井からの話を聴き終えた新垣達は言葉を失った
「さ、さゆやなくてさえみさんがおったと?しかも、帰りたいなら実力行使やないとあかん?」
「これはメンドクサイことになってしまったのだ。ただでさえこちらも問題が起きているのに」
「問題ってなんですか?」
光井が困り顔の新垣に尋ねた

「うん、それはね・・・」
新垣が雅を連れ去った熊が『熊井』という女の子であったことを伝えると光井は驚きの表情を受けべた
「熊井ちゃん?愛佳の後輩の?それが熊になっていた?」
「うん、そうなの。しかもその子をあいつらが狙っているの」

187名無しリゾナント:2011/07/23(土) 14:01:33
「おいおいあいつらとはひどい紹介の仕方だな」
吉澤が不満げな声を出して見せた
「仕方ないですって、一応敵なんですから」
マルシェも懐中電灯をしまっていた

「それで熊井ちゃんは今どこにおるんですか?」
「ミヤが上でみとる。あ、そういや、ミヤ!置手紙にはなんて書いてあったと?」
れいなが上の階に待機している雅に尋ねた
「あ、はい、熊井ちゃんはですね『逃げてください、今すぐに』って書いてあるんです」
「『逃げて』?自分から捕まえておいて何言っているんや?」

そこに高橋が音もなく現れた
「みんな、無事か?」
「愛ちゃん」「高橋サン」「高橋」とそれぞれ思い思いの呼び名で呼ぶ
マルシェと吉澤がいるのを見て高橋は一瞬戸惑いの色を浮かべた
「うおっ、なんであんたらがいるんや?」
「やっほー愛ちゃん、まだ元気なようだね」
マイペースなマルシェが挨拶を交わした

「ちょっとそんなことしている場合じゃないでしょ、愛ちゃんもマルシェも!
 今、さえみさんはどこにいるのよ!」
新垣が慌てて声を出した
「ここにおりますわ」
不気味な声が聴こえ、声のする方に顔を向けるとさえみが崩れ落ちたがれきに腰掛けていた
「道重」という吉澤に対し「さえみ」ですと答える

「役者は勢揃いの様ですね。意外な方もおられますけど」
さえみはゆっくりと、しかし全員の顔を眺めながら呟いた
「俺と会うのは初めてかもな、さえみさん」
吉澤が興味深々な様子で近づいた

188名無しリゾナント:2011/07/23(土) 14:02:22
「こいつがSSSランクの能力者か…あのお方と並ぶ数少ない能力者」
「何をおっしゃっているのか判りませんがそれ以上近づいたら、いや、ダークネスだから消しましょう」
言うや否やさえみは吉澤に向けて視線を合わせようと顔を向けた
吉澤はさえみの死角に逃げ込み、視線から逃げた
「おいおい、すこしくらい話させてくれてもいいんじゃねえの?」
軽い口調の吉澤に対してマルシェは半分あきれ顔だ
「あの人、楽しんでいます…」

吉澤はマルシェから距離をとり、椅子に座りこんだ
「あのさ、この事件、オマエ関わっているんだろ?」
「何のことでしょうか?」
「おいおいとぼけんなよ、熊井だっけ、あの子を連れてきたのも、あの現場から消えたのもお前の仕業だろ」
「さて、どうでしょうか?」
吉澤は脚をぶらぶらさせながら自論を進めようとするが、光井が割って入った
「どういうことや?さえみさんが関わっているって」

「落ちつけよ、光井愛佳、落ち着かねえとそこにいる不良娘と同じになるぞ」
「だれのことや?言うてみると!」
吉澤は何も言わずにれいなにむけて光弾を放つ

「まあ、道重がさらわれたのは本当なんだろうな
 ただ、あの現場で起きた消失事件、全て、さえみ、オマエがしたんだろ?」

「お前ならどんなに監禁されていたとしても逃げられるし、何人相手でも倒せる
 遺体が見つからないのも全て消すことができるお前の能力になら可能だ
 現場の景色もお前の綺麗な崩壊で再現可能」
「でも現場には血が流れていたんや、さえみさんなら血も残らない」

189名無しリゾナント:2011/07/23(土) 14:03:00
「あのなあ、『可愛い』道重さゆみを連れ去ったものを簡単にこいつが殺すと思うか?
 俺らの手下のどれだけが死ぬ前に地獄を見たと思う?死なない程度にいたぶるんだよ、こいつは
 もしくは『治し』ながら『壊す』ことが可能なんだ
 手首から先を消して、血が止まらないようにして失血死させる
 頸動脈を露出させて勢いよく、ショック死させる
 いくらでも血みどろにすることはできるだろ」

「それに熊井とか云う女の子を残してのも説明がつく
 熊井は人質として使えるからな。まさか獣化能力者とは思わなかったかもしれないがな」
「ミヤに向けた『逃げて』というメッセージ・・・」
その意味を理解し、黙り込む一同
「あいつはなるべく被害者を増やしたくないから、帰れなかったんだろうな」
「熊井ちゃん・・・」
「でも確かに吉澤の説明で納得いく部分はありますね」
光井が思い出したように言った
「唯一の生き残りのキーワード『黒い女』『闇』、どちらもさえみさんに当てはまる」

「そろそろおしゃべりはやめていただいてもよろしいですか?」
暇になったのだろうさえみはあくびをしている
「その前にさえみさん、今の推理が正しいか答えてくれないかな?」
高橋の問いに対してさえみは
「だって、さゆみを連れ去ったものを生かす必要なんてありませんもんね」
と推理が正しいことを認めた
「なんでや、なんでそこまでするんや!」と高橋が大声を上げたが、さえみは表情も変えずに
「邪魔な者は消すのみですよ。私は正義とかどうでもいいと思っていますので
 さて、そろそろ結論、出してくださいね、私と戦いさゆみを連れて帰る
 もしくはこのまま帰るか、もちろんダークネスのお二方は帰しませんけどね」

190名無しリゾナント:2011/07/23(土) 14:03:52
「そんなの」
高橋がゆっくりと立ち上がる
「決まっているよね」
新垣が安全装置を解除する
「何をするかなんて」
亀井が髪止めをはずす
「愚問やね」
れいながグローブをはめ直す
「小春達に出来ること」
小春がちいさく跳ねる
「それは、ただ一つや」
光井が背伸びをする
「道重さゆみサンを」
ジュンジュンが栄養剤を口に放り込む
「取り戻ス!」
リンリンがポケットから飴を取り出す

「それじゃあ、最後の戦いと行きましょう
 ルールは私を倒す、もしくはあなた達がさゆみに必要だと認めさせればさゆみを返します
 もう手加減はしませんよ。もし死んでもさゆみには忘れてもらいます
 そのためにあの子をここに残したんですから、熊井ちゃんをね」

「そうか、あの子をここに残せば、仲間が来る…
 記憶を消す能力『消失点』を持つ雅ちゃんが…そこまで考えていたのか?」
マルシェがさえみの頭の良さに驚きつつ、ポケットから銃を取り出す
「流れにのまれるんじゃねえぞ。道重さえみ、面白い、敵として申し分ねえな
おい、マルシェ、死ぬんじゃねえぞ、帰って上手い酒飲む約束忘れんなよ」
吉澤も靴ひもを結び直し、前髪を留め、戦闘態勢に入る

「さゆを」「「「「「「「取り返す」」」」」」」」
「さあ、楽しもうぜ」「まったく、メンドクサイですね」
「・・・」

191名無しリゾナント:2011/07/23(土) 14:06:29
夜ネット環境ないところに行くので、今のうちに投下しておきます
夜になったら代理投稿しておいてください
しばらくは『狂犬〜』の感想読みたいですw

『狂犬〜』の闇の王の威厳のなさいいっすねwダメすぎていいw

192名無しリゾナント:2011/07/23(土) 19:04:09
8時頃を目途に投下してきますね

193名無しリゾナント:2011/07/23(土) 20:22:31
天災完了

194名無しリゾナント:2011/07/24(日) 21:44:46
(4)
「れいな、さえみさんの体に触れたら消されるから肉弾戦は避けて!」
さえみへと一直線にかけよろうするれいなに高橋が呼びかける
「そんなことわかっていると!」
れいなはさえみの周囲をぐるぐると回り始めた

「??れいな、一体何のつもり?言っておくけど、私のどこに触れても消えるわ
そういえば、さゆみも言っていたわ、れいなは単純だって」
「なに?サユ、そんなこと言ってると?許せないっちゃ、サユ!!」
れいなは怒り顔のままで人間とは思えない速度でさえみのまわりを回り続ける
自然とさえみの注意はれいなへと向けられる

(今や!)

いつの間にかさえみをリンリン、久住、ジュンジュンが取り囲んでいた
久住は赤色の雷、リンリンは緑色の炎、ジュンジュンは近くの瓦礫をさえみ向かって投げつける
「さすがに三か所同時やったらふせぎきれんやろ!」
雷が、炎が、瓦礫がさえみ向かって飛んでいく

「いける!」
新垣がそう思い拳を握りしめた
しかし、というかやはりさえみに当たる直前でそれらは崩壊する
「ええ?あれも届かないの?絶対的防御じゃない」
「それはどうかいな」
れいながニヤリと笑って見せた
ふとみればさえみの右腕に切り傷が出来ていた

「え、どうやって?」
「簡単や、三人の攻撃に集中させて、エリに攻撃させたとよ」
亀井を見ればカマイタチを放ったようで親指を上げて、こちら側に合図を送っていた
「意識の外の攻撃には防御できんくて、風は見えないから消せないはずやと思ったけど大当たりやね」

195名無しリゾナント:2011/07/24(日) 21:45:32
自分の腕に手を当てながらさえみは嬉しそうに笑う
「ふうん、やりますわね、れいなちゃん。でもね、これくらいなんてことないわね」
手を外したさえみの腕には傷は完璧に消えていた
「さゆの治癒能力、メンドクサイ能力っちゃね」

「それを相手に俺らはいつも戦っているんだって。どきなれいな、俺が行ってやるよ」
れいなを押しのけて吉澤がマルシェの前に出た

「マルシェ、作っておけ」
「え?本当ですか?幅は?」
「まかせる・・・2本、いや1本ずつだな」

「行くぜ、さえみ」
(速い!)
新垣はそう思った。ただ先程のれいなと違い吉澤はまっすぐ吉澤はさえみにむかっていく
(でも、あれじゃ、さえみさんの真正面では?何を考えているんだ?)

さえみはゆっくりと掌を吉澤へと向け、光を放つ
吉澤はその光を左腕で受け止め、体に当たらないようにしながらさえみに近づいて行く
当然ながら吉澤の左腕は淡雪のように空気中へと消えていく
「何をお考えでしょうか?」
さえみの呟きに対して吉澤はこう言った
「こうでもしないとお前に近づけねえだろ?腕一本くらいで済むならNo Problemだ」
吉澤はさえみの腹に渾身の蹴りを入れた

さすがに直接攻撃するとは思わなったのだろう、さえみは小さくうっ、と声を出した
吉澤の蹴りの威力はすさまじく、さえみは壁に強く叩きつけられた
もちろんさえみを蹴った左脚は消えかけてきた

「あの人、無茶するデス。スゴすぎてバカみたいデス」
リンリンがあっけに取られた表情で吉澤を眺めている

196名無しリゾナント:2011/07/24(日) 21:46:43
吉澤の元へと近づいたマルシェは手に何かを持っていた
「おう、マルシェ、さすが仕事速いな」
「相変わらず無茶しますね・・・これでいいですか?」
吉澤はマルシェからそれを受け取った
「・・・なんか少しサイズ太くねえか?俺、こんなんだっけ?いやがらせか?」
「いいから早くつけてくださいよ」

マルシェから受け取ったそれを吉澤は消え去った左腕と右足にくっつけた
そう、マルシェが作ったのは吉澤の『スペアの脚と腕』だった
『原子合成』で急遽作ったとはいえ、その大きさは吉澤にちょうどのサイズであった
感覚を確かめるように吉澤は手を握ったり広げたりしている
「うん、悪くねえ」

そんな二人の様子をみて久住は近くにいた光井の服を引っ張った
「あの戦い方、小春にはまねできないよ…ヘタしたら体全部持ってかれるよ」
「そやろうな…あれがダークネス幹部の戦い方」
知将光井ですら考えなかった戦い方であった

「ふぅ、さすがに今のは効きましたよ、さすがダークネスですね」
さえみがゆっくりと立ち上がり、口からペッと血を吐いた
「ふふふ、面白い戦い方をなさいますね、自分の命を命とも思っていない
 嫌いではありませんよ、その戦い方」
「気にいってもらって光栄だな」
再び吉澤がさえみと向かい合った

「でも、もう効きませんよ。今は、さきほど以上に触れたら崩壊する領域を広げました
 そうですね、私から半径50cmってところですかね?」
さえみが平然と言ってのけたが、その場にいた他の人々は戸惑いの色を隠せない
「愛ちゃん、どうしよう、これじゃあ、もうさえみさんにふれることすら」
「そんなにかよ、俺の腕の半分以上か・・・さすがにそこ飛び込む勇気はないな」

197名無しリゾナント:2011/07/24(日) 21:47:31
新垣の問いかけにも高橋は先ほどからずっと黙ったままだ
「愛ちゃん?」
「・・・なあ、ガキさん、あっしは自分の力を正直きらっとるの知っとるやろ
 ただな、今はその力を使うときかもしれん、『光』の力を
 それをずっと考えていたんよ」
「愛ちゃん、確かにあの『光』を良く思っていないことは知っている
 でも、そんなことよりも今はさゆみんを取り返すことが大事なんだから」
「・・・だよね、でも、ガキさん」
「なあに?愛ちゃん」
高橋は半ば困り顔の表情を新垣に向けた
「手加減できんから、さゆを全て消すことになる・・・かもしれん」

・・・と新垣が高橋に抱きついた
「ガキさん?」
新垣は高橋の頭を優しくなでながら言った
「愛ちゃんならできるよ、私、信じているから。それまで時間かせいであげるよ」
「うん、ありがとう、30秒あれば十分、やと思う」
その言葉を聴いた新垣は6人の仲間に「30秒、愛ちゃんをサポート」と指示を出す
仲間達は注意が高橋に行かないように必死に動きまわり、さえみの攻撃を避け続ける

「あぶないっ」
久住のすぐそばをさえみの光が通り抜ける
「ファイヤー」
リンリンの炎がさえみ周囲の見えない壁に当たり消えていく
「がんばるっちゃ、みんな」
れいなの励ましの言葉が飛ぶ

「へえ、れいなも気づかう優しさ出せるようになったんだ、成長したんだ」
「なに、ぼうっとしているんだ、マルシェ、何とかしてこの場面を打開する方法考えるぞ」
吉澤もさきほどから光弾を放ち続けている

198名無しリゾナント:2011/07/24(日) 21:49:05
新垣も何とかしてさえみの心の内を読もうとするが、こんな状況では当然読むことなんてできない
(どうにかしてさえみさんが止まってくれればいいんだけど…それより、愛ちゃんまだ?)
新垣は高橋のすぐ横で走り回り注意をそらしてくれている仲間たちへと指示を飛ばしている
もちろん、指示を出すのは新垣だけではなく、未来を視える光井もしている
しかし新垣の指示の方がより的確で、逃げるための指示ではなく生き残るための指示であった

そんな新垣達に守られながら高橋は自身の心と対話を静かに迎えていた
(本当はあの力なんて使いたくない)
化け物扱いされ、特に理由もなく避けられる日々が浮かぶ
(自分では制御できんで、大切な人を失ったりもした)
目の前で輪郭を失っていく茶髪のショートカットの女の子
(何よりも強力なはずのこの力、使い方によって世界を変えられると教えられた)
光によって友を失った時に励ましてくれた仲間達の姿
(今はこの力が必要な時なのかもしれん)
リゾナントで一緒になって笑いあう自分を含めた9人の姿
(お願い、今だけでいいから、光よ、私の一部に)

<ちょっとそれは虫がよすぎるんじゃない?>
(誰?)
<私はi914って呼ばれている。あなたの中のあなた。あれだけあの力を嫌っていてこう言うときだけ使わせて?>
(それはそうだけど今は、あの力で救いたいの)
<あなたは救われるかもしれないけど、それで私は救われるの?光の持ち主のi914は>
(確かに今はあなたのことを救えないかもしれん…でも、今は光の力が必要なんよ
 あの時の違って今は心から信頼できる仲間がいる。それを取り戻したい)
<本当に光の力で救えると信じているの?敵は仲間の一人なんでしょ?また失うことに>
(私はあの頃と違うんだ!!もうi914なんて簡単な番号では呼ぶ人はいないし、居場所もある
 あなたもいつまでもその番号にこだわっていないで自分を受け入れるべきよ)
<それはそのままあなたにお返しすることになるわ。まあ、いいわ、今だけ光を使わせるわ>

高橋は静かに息をし、目の前の光景を静かに眺めた

199名無しリゾナント:2011/07/24(日) 21:54:03
光から必死に逃げ惑う久住やれいなの姿
必死に指示を送り続ける新垣と亀井と光井
隙あらば攻撃に転じようと諦めの色の見せないジュンジュンとリンリン

「みんな、待たせたね・・・私の中の私、力を貸して」
高橋はさえみに標準を合わせた
「さえみさん、私の思いを感じて、この光を通して」



ここまで「Vanish! Ⅱ(8)」のパート4です
ちなみに高橋さんの手首から上は失われても光は放てるっていう設定にしてください(汗
そうじゃないと矛盾生じるので(汗
読む方も大変ですが頑張ってください(汗

遅れましたが昨日の投下代理の方ありがとうございました。
今日の方よろしくお願いします

200今日の方:2011/07/24(日) 22:09:30
行ってくるがし

201名無しリゾナント:2011/07/24(日) 22:17:18
転載完了

202名無しリゾナント:2011/07/24(日) 22:29:27
確認しました。ありがとうございます

203名無しリゾナント:2011/07/25(月) 22:28:55
(5)
高橋の澄んだ声が部屋中に響き渡る
「さえみさん、これが私からのあなたへの思いよ」
その声に全員が思わず高橋の方を向いてしまう

高橋の傍に真っ白な光の球が浮かんでいる
「愛ちゃん、それって」
高橋はニヤッと笑って見せた
「私の中の秘めた力、光の力!さえみさん!」
光はさえみに向けて放たれた

高橋の光は真っすぐさえみに向かって行く
その放たれた光は驚くほど輝き、仄暗い部屋を明るく照らし出す
全てを消しさるはずの光の力なのに、なぜかその光に新垣達は見惚れてしまう
「これが愛ちゃんの光…」

さえみは近づいてくる光にも動ずることもなくゆっくりと掌を向けた
(これが噂の光の力なのですね)
さえみはそう心に思いながら、迫ってくる光をその暗く大きな瞳でみつめていた

さえみから放たれた『崩壊』の光と高橋から放たれた『純粋』な光
どちらも相手を消す力を持つ能力
しかし同じ光だとしてもそれを見つめる者たちには全く違う輝きを纏っていた
とはいえ、目的は同じ人物を守るため、一人の仲間のためにぶつかりあう光と光

「さすが、高橋愛の光。ものすごいパワーを感じますわ」
さえみの頬に額から汗がつたわって流れた

「さえみさんの崩壊の光…さゆを救うためにも負けるわけにはいかない」
高橋も不慣れながら精いっぱい思いを込めて光を放ち続ける

204名無しリゾナント:2011/07/25(月) 22:29:28
二つの光は激しくぶつかり合った
ぶつかりあうことで生じる衝撃波と眩しい光が辺りを包む

光に包まれた新垣達は思った
(あれ?光に包まれたってことは私達消えちゃうの?これで終わり?)




そんなこたあないw

「新垣さん、大丈夫ですか?ほら、ミヤの手握ってください」
れいなの忠告を無視して、二階から飛び降りてきた雅の手を伝って新垣は立ち上がる
目をあけると部屋は先程以上に荒れているが、欠けている人影は見当たらない
もちろん光を放った高橋もさえみもそのままの姿勢で立っている
二人とも一見したところ傷を負っている様子はない。
高橋が右手首より上を失っている以外には消えた部位はないようで、血が流れている様子もない

時間にしてほんの一瞬のことながら、高橋は額に大きな脂汗をかいていた
「さすがに慣れていないことはしちゃだ・め・だね・・・」
高橋は背中から半ば崩れおちるようにして倒れた
「愛ちゃん!」
近くにいたれいなが急いで高橋の元に駆け寄り、助け起こした
「アハハ、少しやりすぎたがし…動けんや、もう一歩も」
れいなは高橋を壁に背をもたらせて座らせた
「さえみさん、やっぱ強いよ、光でもかなわなかった。傷一つつけられなかった」

一方のさえみは先程から黙ったままだ
「・・・もしかしてさえみさん、立ったまま亡くなったんとちゃいます?弁慶の仁王立ちみたいな」
光井が黙ったままのさえみを見て隣の久住に声をかけた
「弁慶って何?膝怪我していないよ、さえみさん、ほら見てよ」
さえみの膝を指差す久住

205名無しリゾナント:2011/07/25(月) 22:30:27
「…やめてよ…」
さえみの口からそんな声がこぼれた

「さえみさん何か今言いませんでしたか?」
「そうか?俺には何も聴こえなかったぜ。おい、そんなことより今、チャンスじゃねえか?」
吉澤はポケットから携帯用のトンファーを取り出した
「今、あいつ無防備だろ、今のうちに攻めとかねえと」
両手にトンファーを手にして吉澤はさえみ目がけて飛び出した

そんな吉澤に気付く様子はなくさえみはやはり小さく口を動かしている
「…あなたの…」
「もう…よ」
「…誰より…守って…」
「…一人で…」

「何を一人でごちゃごちゃ言ってやがるんだ!!」
吉澤はトンファーをさえみの頭目がけて振り落とした

「さえみさん、危ない!!」
今は敵のさえみだが、思わず新垣は危険だと声を上げてしまった
新垣の声ではっとした様子で吉澤に気がついたさえみは吉澤の姿を見て、全身から光を放った
「な、なんだと?」
突然の攻撃によける暇もなく吉澤は全身を光に包まれた
「吉澤さ〜ん!!」
マルシェの悲痛な叫びが響いた

吉澤が消されたことでショックを受けたのはマルシェだけではなかった
「あの吉澤があっという間に消された?ありえないと…」
「さえみサン、強すぎマス、勝てる気がしないデス」
何度も何度も戦ったからこそ、あの吉澤が簡単に消されたことは衝撃だった

206名無しリゾナント:2011/07/25(月) 22:31:10
その吉澤を消したさえみの様子は明らかにおかしくなっていた
また先程と同じように小さい声で呟き続けているのだ
「さ…み…寝ていて…」「…もう…てよ」
時折聴こえる声から新垣はある推測をたてた

「もしかしてさっきの愛ちゃんの光でさえみさんの心の中でさゆみんが起きたのかも」
「それは十分にありえる考えですね」
マルシェが新垣の横で並んでさえみを観察し始めた
「しかし、あの状態だとしても近づくのは危険です。先程の吉澤さんの二の舞になる恐れが非常に高いです
 ねえ、マメ、今ならあの心を見れるんじゃない?」
「出来ないわけではないけど、危険すぎて、したくないっていうのが本音だね
 ただ・・・今しかないよね、さえみさんの心を変えるために
 ジュンジュン、もしさえみさんが動き出したら私を抱えて逃げてね、頼むわ」
「わかったダ」
そうして新垣はすぅっと呼吸を整え、さえみに意識を集中させた

「新垣さん、気を付けてくださいね。さあ、小春達は今度は新垣さんを守らないといけないですね」
小春が掌から雷をバチバチいわせながら指を曲げ伸ばししている
光井は何かを考えているようで黙ったままだ
「どうしたの、みっつぃ?新垣さんがなにかを持ってきてくれること期待しようよ」
「う〜ん、そうなんですけど…何か嫌な予感するんですわ。予知ではないんですけど」

すると突然、さえみが獣のような叫びをあげた
「マメ、何が起きたの?」
マルシェはジュンジュンに背負われている新垣に問いかけた
「…中には二人の心があった。さゆみとさえみ、それが戦っている」
いつでも逃げられるようにと新垣はジュンジュンの背中に乗せられている
「道重さゆみの体に宿った二つの精神、今はさえみさんが前に出ているけど
 元々の主人格はさゆみんだけど、何かのきっかけでさえみさんが強くなっている」

207名無しリゾナント:2011/07/25(月) 22:31:57
「おそらくはあの誘拐事件がきっかけだと思うけど、そのときさえみさんの強い自我が出た、と思うんだ
 『私が守らなきゃいけない』その思いだけでさえみさんは動いていた
 だからさゆみという精神はきっとあの体の中で眠っていたと思うの」
「本で読んだことがあります、一つの人間の中に多くの人格があるっていう報告を
 そういう人は一つの人格が表に出ている時はその人格を後ろから見ている感覚があるって」
マルシェがおそらくわかっていないであろうジュンジュンに教えるように知識を披露した

「それが私達と戦うことで変化が起きた」
「どういうコトですカ?新垣サン」
リンリンが大声で尋ねてきた
「田中っちや吉澤、それから愛ちゃんの光の攻撃で肉体のダメージはなかった
 でも、あたしたちの必死な姿を見ているうちにさゆみんが目覚めた
 さえみさんは必死にさゆみんを引き離そうとしたけど、さゆみんの気持ちは違う
 あたしたちを敵対視しているさえみさんはさゆみん自身に『戻りたい』と言われて動揺していた
 全てをさゆみんのために動いていたのにそれを全て否定される
 それはさえみさんにとっては存在を否定されるにほぼ同じこと…なのだと思う」
未だに新垣達の耳にはさえみの雄叫びが届いている

「ここからは私の想像になるけどさゆみんは何かさえみさんを傷つけることを言ってしまったんだと思う
それは『お姉ちゃんなんて大嫌い』それくらいの言葉だけなのかもしれない
でも、自身の優しさを拒否されてしまったさえみさんはどうしていいのかわからなくなってしまっていた」
「そこに吉澤さんの不意打ちが入ったってわけね」

マルシェが腕の転送装置のスイッチを押しながら話に加わる
「混乱していた時に、自分を倒そうとする吉澤さんの存在
咄嗟の判断で力を解放したが、そのことがさゆとの距離を生んだのでしょう
それが決定打になってさえみさんの心が崩壊して、力が暴走しつつある、ってところですかね
 …ああ、もう、転送装置動かないです」
先程から稼働スイッチを押しているが機械はうんともすんとも反応しない

208名無しリゾナント:2011/07/25(月) 22:32:36
「ねえ、マルシェ、その機械って何人まで移動できるの?」
「100人くらいは楽勝なんだけど、壊れちゃってさ、使えないよ」
「新垣さん、道重さん置いて逃げるんですか?」
いざというときはジュンジュンの背中に飛び乗るつもりで久住と光井も近づいてきていた
「新垣さん、見損ないましたよ!」
甲高い声で新垣を非難する久住
「でも、しょうがないじゃない!!今の私達では何もできないし、何より危険なの!
 そりゃ私だってさゆみんを置いて行くのはいやだけど、本当の敵はさえみさんじゃないのよ
 今はなぜか一緒に逃げているけど本当の敵はダークネスなの
 もしこの戦いで全員が死んだら、誰がダークネスを止められるっていうの?」
「・・・」
光井は新垣の言っていることが正しいとは思いつつ納得できるはずがなかった
そういう新垣も自身の判断が正しいとは思っていない様子だった

「そういえば愛ちゃんは?」
「大丈夫、れいながしっかり見ているっちゃ!!」
れいなのそばには大きなクマの背に乗せられた高橋の姿
「正確には熊井ちゃんが助けてくれてるやけどね」
「危ないと思った時に熊井ちゃんが起きていてくれて助かりました、ね?田中さん」
「さすがミヤの友達っちゃね、助かったと、れいなじゃ愛ちゃんを背負って走れんけん」
熊井はそれほどとでもいうようにガオっと小さく吠えた

「ガキさん、ここは一旦撤退するべきやと思う」
「愛ちゃん、私もそうしたいんだけど、ジュンジュン、どれだけこのまま逃げられる?」
「…あと十分も走れないかもしれんな。ジュンジュンですらそうなんだから熊井ちゃんはもっとキツイやろ」
そうしている間にも道重さえみのモノと思われる淡い光が周囲に突き刺さる
光に照らされたものはすべて消され、見事にまっさらになっていく

209名無しリゾナント:2011/07/25(月) 22:33:08
崩壊の光はもうさえみの意思に関係なく関係なく放たれはじめたようにみえた
壁という壁には穴が開き、外からの冷たい空気が流れ込んでいる
息も少しばかり白くなり、さえみの長い髪は風に揺れている

「さゆみを守る・・・それが私の生きる意味、さゆみを守る・・・」

「やばいって愛ちゃん、さえみさん、可哀そうすぎて見ていられないのだ!」
「というか愛ちゃん、早く逃げんとれーな達の身も危ないとよ!!」
新垣とれいなの意見に高橋もほぼ同じく考えていた
―確かにこのままではみんな消されるかもしれない・・・だけど

―もしこのままさえみさんを放っておいたら何をするかわからない
 むしろダークネス以上の脅威になることすらある

それを考えると高橋は『撤退』ということを決められずにいた

そんな迷いを知ってか知らずかさえみが高橋達を睨んだ―ような気がした
「やばい、高橋さん、さえみさん、小春達に気付きましたよ!!」
小春の高い声が一段と高くなって、そのまま悲鳴を上げた

さえみの崩壊の光が高橋達の元へと放たれた

そして、そのまま光が彼女達を包んだ
光が過ぎ去った跡には高橋達の姿はなかった

210名無しリゾナント:2011/07/25(月) 22:39:56
『Vanish! Ⅱ(8)』のパート5でした。
今回は特に文章長いし、説明っぽいので読みにくいと思います(汗
レスにありましたが、全ての人に読みやすいものをかくのは難しいです。
あとどれだけで終わるかはあえて言いませんw

代理よろしくお願いします

211名無しリゾナント:2011/07/25(月) 22:46:54
承って候

212名無しリゾナント:2011/07/25(月) 22:55:21
無事終わり候

213名無しリゾナント:2011/07/26(火) 21:21:05
(6)
さえみの淡い光が近づいて来た時、れいなは後悔した
(これで死ぬんやったら、もっとお腹一杯アイス食べればよかった)と
ただ光に包まれても不思議と痛みは感じなかった
(消えるって意外と感覚残っとるとね・・・パパ、ママ、一度でいいから逢ってみたかったと)
そしてれいなは瞳を閉じた

(・・・)

「起きろよ」

(あ、こういう時にありがちな声っちゃね、その割に口が悪い天使っちゃね)

「起きろって」

(れいな、昼間の仕事と正義のお仕事で頑張ったとよ、少しくらい休ませて欲しいと)

「いつまで寝てんだよ」

(頑張ってガレットくらい覚えたし、さっきまで戦っていたとよ。うるさい天使やね)

「ふざけんな、いつまでそういているつもりだっつうの!!」

バチーン!

れいなは頬を思いっきりぶたれて目が覚めた
「なにすると!!天使なんやから少しは優しくしてくれてもええっちゃ・・ろ!?」
「んあ?誰が天使だ?」
目の前にいたのは吉澤であった
「あ〜れいな、地獄行きかいな・・・そんな悪いことしとらんのに・・・」
「あ?誰が地獄行ったって?」

214名無しリゾナント:2011/07/26(火) 21:21:41
「ちょっと吉澤さん、戦うの止めてくださいよ」
マルシェが割って入ってきた
「マルシェ?やっぱお前も地獄行きかいな…仲間は多い方がいいっちゃね」
そんなれいなの肩を誰かが叩いた
「いや、田中っち、冗談きついから。まだ私達死んでいないから」
新垣だった
「え?れーなまだ生きとると?でも確か、さえみさんの光に包まれてしまったはずやけん」
というものの周りを見渡すとリゾナンター全員、マルシェ、吉澤、雅、熊井が全員揃っていた
「それにここ何処と?観たことある気もするけん…」

「ここはあんた達が戦っていた城の前に広がっていた森よ」
「誰や?」
れいなには聴き覚えのない声だった
「こっちよ、こっち」
声のする方を振り向くと手に琥珀色の瓶を手にした女が木にもたれかかってこちらを眺めていた
「誰や、オマエ?」
いつでも戦えるようにとれいなは構えた

「ちょっとれいな、この人に一応お礼を言ったほうがいいよ、助けてもらったんだから…敵とはいえさ」
「いらないわ。別にあんた達を助けに来たわけじゃないし、『偶然』マルシェの近くにあんた達がいただけよ」
そういい女は瓶に口をつけて、中身の液体をぐびっと飲んだ
「…愛ちゃん、誰?この人?」
「ダークネスの保田さん」
「な?ダークネスやと?何しに来たと!?」

「だからあせんなって、れいな」
ポカッと吉澤がれいなの頭を強く叩いた
「人の話は最後まで聞け」

215名無しリゾナント:2011/07/26(火) 21:22:24
そんな落ち着きのないれいなを尻目にマルシェは礼儀正しく保田の元へとお礼を言いに行った
「保田さん、本当にありがとうございます。危ない所でした、助かりました」
「いいって、酒交わす約束でしょ?死なれたら困るのよ、私としても、組織としても」
「それでもよく間に合いましたね、ぎりぎりでしたよ」
「助かったんだから文句いわないでほしいけどね」

マルシェと言葉を交わす保田の姿を見ながら新垣は彼女のことを思い出した
(保田圭―ダークネスの幹部の一人だけど何の仕事をしているか不明な人
マルシェのような科学者でも、吉澤のようなスパイでもなくて結局何をしているのかわからなかった
確か能力は『時間停止』―某大なエネルギーと引き換えに一定時間時間を止められるハズ)
ダークネスに所属していた新垣ですらそれしかわかっていない、それが保田圭であった

「しかし、まさか吉澤さんも助けているとは思ってもいなかったですよ」
「フフフ、優秀な幹部を失うわけにはいかないでしょ?あら?」
マルシェと保田が話している時に空に淡い光が登っていった
「さえみさん、まだ荒れている様ね」

「そうやった!愛ちゃん、さえみさんどうしようかいな?」
空にはまた淡い光が登り、数羽の烏が空へと飛んで行った
「なんとかしてさえみさんの暴走を止めんと危険っちゃ!
 れいな達でなんとかせんと、本当に今のさえみさんやったら全てを破壊するかもしれんっちゃ」
「それはそうだけど私達にできることって何かあるの?」
「田中さんの逆共鳴はどうなんですか?道重さんと共鳴する間柄なんですから」
「小春、それはもうとっくに試していると!でも出来んかった
れーなはサユと共鳴していて、さえみさんと共鳴しているわけじゃないけん、効果なかったとよ」
そうしている間にも何か大きなものが倒れた音が聴こえて来た

「光井サンの予知でも何も見えないんデスカ?」
「あ〜リンリン、何も視えないんや…本当に何のいいアイデア浮かばへんわ、これほど悔しいことないわ」
「おい、お前らはイイノカ?何もシナイデ?」
ジュンジュンがマルシェ達に問いかけた

216名無しリゾナント:2011/07/26(火) 21:23:12
「え〜だって私達の目的は世界を手中に収めることですから
邪魔な存在は消してもらえればそれに越したことはないわけですし、ねえ?吉澤さん」
「ん?おう、まあ、力を持たない弱い奴が消されたところで別に俺らには関係ないし」
もう吉澤はさえみのことなどどうでもいいというように保田から瓶を受け取り、中の液体を口にしている
「それに俺達にはさえみを『止める方法』があるしな」

「お願いマルシェ!教えてよ、敵味方関係なくて、友達として教えてよ」
新垣がマルシェに頭を下げた
「え〜それは無理だって。マメ、友達だったけど、今は敵・・・あ、だけど、熊井ちゃんをくれたら」
「それはダメっちゃ!!世界を救うために一人を犠牲にする、そんなことれいなにはできん!
 なあ、そうっちゃろ、ガキさん?」
「も、もちろんだよ、そんなことできるはずないでしょ」
新垣の返答にマルシェは唇を尖がらせた

なにかいい方法は無いか…考えていくだけでも非常に時間は過ぎていく
「あ〜もう、とりあえずみんな戻るよ!」
高橋は仲間達にさえみの元へと行く指示を出す
「ちょっと愛ちゃん、保田さんに助けてもらって、また向かうの?」
さすがにマルシェが驚きの声を上げる

「確かに死ぬことになるかもしれんな。だけど、ここで何もしないよりは最大限のことをしたい
 さゆのためとかもう関係ない、今はさえみさんから世界を救う
 不器用だけど目の前にあることから向き合わないといけないんだよ、本当は
 手に余るくらいの敵だとしても自分自身の力を信じていかないとできることもできないしさ
 それに、あっしらが死んだらあんたらラッキーでいいんじゃない?」
そういい高橋は走り出し、7人の仲間が後を追った

217名無しリゾナント:2011/07/26(火) 21:25:08
「それじゃあ、帰るわよ」
保田が二人に声をかけた
「うっす、帰って飲み直しましょう」と帰ろうとする吉澤にマルシェはついつい声をかけてしまった
「待ってください。いいんですか?このまま帰って?」
「んあ?何言ってんだマルシェ?ああ、そうか、熊井ちゃんを連れて帰るんだったな」

唐突に自分の名前が出たので熊井は不器用ながらも構え、雅も熊井の前に立ち吉澤を睨みつけた
「熊井ちゃんは渡しませんよ」
「おいおい、おまえだけでなんとかなると思ってんのか?」
威嚇する吉澤であったが・・・
「こら、よし子やめなさい。それから、マルシェも帰るよ」
保田が吉澤をたしなめた
「え?俺はいいですけど、マルシェが文句言いますよ」
「いいから帰ります。マルシェ、先輩からの命令と思いなさい」
「は、はい、わかりました」
保田の前に空間が裂け、保田、吉澤、マルシェの三名は去っていった

残された二人は肩の力がどっと抜け、熊井は膝から崩れ落ちた
無理もないのだろう、ずっとさえみの傍にいたのだから
「疲れた…さえみさんから人を遠ざけるのにずっと獣化していたから…
野菜を取りに行った時も人に見つからないようにしなきゃいけないし…ああ、本当に疲れた」
「そうだったの、熊井ちゃんお疲れ様。だけど、どうしようさえみさん暴走しているよ
 田中さんとか高橋さんが向かっているけど、何とかなるっていう保障もないし」
「どちらにしても私はもう動けないから休んでいいよね?」
熊井は地面に大の字になって寝転び、雅はれいな達のことを思い、無事であるようにと祈った

218名無しリゾナント:2011/07/26(火) 21:27:58
「Vanish!Ⅱ(8)」です。今日の分はここまでにします。
切れ目が難しい部分なので…迷っています。もう少し投下すべきなのかって…
まあ夜の小さい楽しみになっていればこれ幸いな感じです

219名無しリゾナント:2011/07/26(火) 22:21:27
行ってきます

220名無しリゾナント:2011/07/26(火) 22:29:17
行って来ました

221名無しリゾナント:2011/07/26(火) 22:32:04
ありがとうございました!夏風邪引きました

222名無しリゾナント:2011/07/27(水) 23:19:02
(7)
                ★   ★   ★   ★   ★   ★

さえみの元へと戻る足取りは重かった
何をすればいいのかわからなかったのだから
(決して愛ちゃんに打開策が浮かんでいるわけではない。ただ、あの場にいられなかっただけなんだ)

初めは「さゆみを取り戻す」ことから始まった戦いがいつの間にか「さえみの暴走を止める」ことに移っている
優しいさゆみの影でさえみがここまで思いつめていたことに気がつかなかったのは―ある意味仕方ないのだろう
『共鳴』という絆を運命的なものとして捉えてしまい盲目的になってしまったのだから
共鳴の絆に誰よりも近くいたのに、絆に入れなかったその存在を見落としていたのだから

体力もある程度回復し、自分の足でさえみのもとへと向かって先頭で走る高橋に光井が声をかける
「高橋さん、どないします?さえみさんを止めなあかんわけですけど」
「・・・止めるにはさゆを起こすしかない、と思う。
ただ、今のさえみさんはさゆに拒否されているからなんとも言えない。光ですら…」
「希望があるなられーな達は愛ちゃんに付いて行くとよ!
またれーな達が時間を稼ぐけん、さゆへの思いを込めた光を撃つとよ!」
れいながこんな状況でもほほ笑んでくれたので高橋は少し心が軽くなった

さえみに近づくにつれて光の濃度は増していくようだった
あちらこちらの壁や木々に穴があいていたり、瓦礫が積み重なっている
しかしリゾナンターは光井の予知の指示で各自は光を回避していき、さえみの姿を目視できる距離まで近づいた
高橋の作戦―光の攻撃を知ったメンバーはそれぞれの位置に着く

れいな、亀井、久住、リンリンはさえみの注意をひく
光井は光に当たらないように指示を出し、新垣が光井を守る
そしてジュンジュンは高橋を背負い逃げる

遠距離からカマイタチ、雷、炎が放たれて、さえみは自身の身を守ろうとそれらを消しさる
れいながちょこまか動きさえみの視線に当たらないように気をつけながら走り続ける

223名無しリゾナント:2011/07/27(水) 23:19:48
「リンリン、2秒後に左から来ます。亀井さん、かがんでください!」
光井の指示は止むことなく、新垣も光井を守ろうと必死だ

ジュンジュンはなるべく高橋の集中を邪魔しないように動かず、光井の指示が入った時だけ動く
「…高橋サン、道重サンを頼みマス」
上から崩れ落ちてきた瓦礫をパンダの筋肉質な腕が払いのける

時間にしてほんの一分なのだろう
高橋の声が7人の心に届いた
(ありがとう、みんな、準備できたよ)

(愛ちゃんよろしく!)(愛ちゃん、さゆをよろしくね)(愛ちゃん、頼むと)
(お願い、光よ道重さんを取り戻させて)(高橋さん、愛佳の思いも込めさせていただきます)
(道重さん、戻って来てクダサイ)(高橋サン、任せマシタ)

7人の仲間を思う気持ちも高橋の心に届き、それらは力となって高橋の体にしみわたる
築きあげてきた信頼、かけがえのない時間、忘れられない思い出、そして世界を守りたい願い
全てを詰め込んだ光は眩しい輝きを放ち、高橋の掌の上で浮かんでいる

「さえみさん、あっし達の思い受け取って!!」
光がさえみに向けて放たれた

光は何者に遮られることなくさえみに向かって伸びていく
さえみが光の存在に気付き、消そうと睨みつける
漆黒の瞳で睨まれた存在は何でも消してきた

しかし、この光だけは消せなかった
さえみの瞳に映ったのはただの光ではなかったのだから

224名無しリゾナント:2011/07/27(水) 23:20:27
さえみは光の中に見た
―笑いながらココアを差し出す高橋の姿を
―目を三日月にしながら亀井をしかる新垣の姿を
―自信満々にこげたホットケーキを出すれいなの姿を
―馬鹿みたいに笑って自分にケーキを食べさせようとする亀井の姿を
―興味深々な目で自分に近づいてくる久住の姿を
―カウンターで勉強しているのを邪魔して怒っている光井の姿を
―一緒にバナナを食べているジュンジュンの姿を
―奇妙な動きでみんなを笑わせているリンリンの姿を

消せなかった、消してはいけないような気がした

だってそれは

さゆみにとって大切な記憶だったのだから

225名無しリゾナント:2011/07/27(水) 23:23:18
以上、パート(7)でした。
極端に短いっすw昨日のコメントの意味分かりました?
あまりにも短いんで別日に落とすかどうかで迷ってたんですwすみません
緊張感が薄いのは作者の力量だと思っています
さて、終わりも近づいてきています

代理投稿お願いしますm(_ _)m

226名無しリゾナント:2011/07/27(水) 23:45:32
承って候

227名無しリゾナント:2011/07/27(水) 23:49:48
終了

228名無しリゾナント:2011/07/28(木) 22:11:10
(8)
高橋の光をさえみは真正面から受け止めたのだろう、さえみの周囲は煌びやかな光に包まれ、動かなくなった
「やったの?」
先程からさえみの放つ光の兆候は何も感じられないのでそう感じるのは当然であろう
「・・・かもしれナイデス」
そうは言うもののリンリンは気を抜かずにいつでも炎を放てるようにと手には飴を構えている

さえみの姿がようやく確認できるくらいに光が弱まってきた
光を受けたさえみは地面に片膝をついて座っていた
何も反応が無く、思わず「死んでるの?」なんて久住は声に出してしまう

「ククククク・・・」
さえみが笑い始めた
生きていて良かったという思いとなぜ笑っているのかという思いが全員に浮かんだ
「あなたに必要なのは…あくまでも『さゆみ』なのであって、私じゃないのね・・・」
確かに8人が思い浮かべたのはさゆみであって、さえみではなかった

「私はさゆみにも求められていないし、あなた方にも求められていない」
ふらふらとさえみは立ちあがる
「私は誰にも必要ない存在…どこにも居場所はない…必要ないんだぁぁぁぁ」
さえみは大声を上げる
「や、やばいって愛ちゃん、れーな達、事態を悪化させたんやなと?」
「愛ちゃん、どうしようか?」
「そんなこと言われても全然予測できなかったわけだし、こうなることを」
光を放った高橋は地面に膝をついたままで動けずにいる

「キャー、小春の、小春の腕が、右腕が!」
「久住さん、しっかりしてください!早くさえみさんから離れましょう」
光井とリンリンが久住の肩を支えて駆けだす
「さえみサンの視線から逃れマショウ!高橋サン達も早くしてクダサイ」
ジュンジュンも光井達の後を追う

229名無しリゾナント:2011/07/28(木) 22:12:28
「田中っち、愛ちゃんの右肩支えて!私は左肩支えるから」
「愛ちゃん、れーなの肩に腕回すと!」
「ちょっと、待ってよ、二人とも!さえみさんをこのままにしてしまったら、本当にどうなるのかわからないんだよ」
じたばたする高橋に新垣が真剣な表情ながらも目に涙を浮かべながら問いかける
「だからって何が出来るのよ、これ以上私達にさ
 攻撃も効かないし、話も聞いてくれない、しかもさえみさんの心は崩れる寸前なのよ」
「そうや、愛ちゃん、ここは一旦引いて、仕方ないけどダークネスに頼むことにするっちゃ
さっき言っとたやろ?マルシェなら『さえみを止められる』って。ここは頼るしか」
「…あっしはここに残る」
高橋の言葉は静けさに満ちていた

「は?愛ちゃん、何言うとると?」
れいなが思わず高橋の肩から腕を外したので、高橋は地面に倒れ込む
「愛ちゃん、ここに残って何をするつもりっちゃ?もう何も出来んやろ?
 一人で立つことだってままならんのに何する気や?」

「・・・何もすることはできないよ。ここでこうやって座ってさえみさんに消されるのを待とうと思ってる
 たださ、れいな、ガキさん。さえみさんからさゆを奪ったのはあっしらやろ?
 甘い考えだけどさ、もしかしたら、あっしが消えたらさえみさんの怒りが消えるんじゃない?」
高橋はゆっくりと自分の意思で新垣に支えられた左腕をそっとはずす
「あっしが消えることくらいでさえみさんの心に何か変化が起きるかもしれない
 もしかしたらそのことでさゆがまたさえみさんを抑えてくれるかもしれないし、憎しみが薄まるかもしれない
 それに…少なくともあっしは無駄死にする気はないよ」
高橋は足を投げ出して、頭を抱えたままのさえみを眺める
(あと一回くらいなら跳べるからさ)

れいなと新垣を見て高橋は微笑んだ
「ほら、れーな、ガキさん、あっしがいなくなったら誰が他の子を指示すんの?
 あっしがいなくてもみんな自分を誇れるだけ強くなったんだからさ」
そして前を見て「さあ、行って、あっしの分まで生きて」と小さく言った

230名無しリゾナント:2011/07/28(木) 22:12:59
「アホなこというやないと、愛ちゃん!!誰が愛ちゃんが犠牲になることなんて望むと?
 愛ちゃん、おらんで誰がリゾナンターすると思うと?」
そしてれいなは高橋の頬をぶった
「れいな?」と高橋は思わず目を丸くしてしまった
「愛ちゃんがおったかられーなはここまで来たとよ、みんなと一緒だから来たっちゃ!!」

「そうだよ、愛ちゃん、愛ちゃんだけが消えるなんてそんなこと私もさせないから」
「ガキさん?」
そういい新垣は自分自身の腕と高橋の腕をロープで結び付けた
「・・・愛ちゃんのおかげで私はダークネスの呪縛から解き放たれたの
 でも、まだ私は恩返しをしていない。それなのに先に死ぬ?そんなことさせないわよ」

「愛ちゃん」「死ぬときは」「「一緒」」「だよ」「っちゃ」
二人は高橋を挟むようにして座りこんだ

「こんなことして誰がこれからダークネスと戦うんや!?」
「大丈夫っちゃ、小春や愛佳がおると。みんなに託すと。さあ、れいな達でさえみさんを止めると」
れいなが白い歯を見せて高橋に微笑んだ

「いや、すみまへんが田中さんのお願いといえどもそれはお断りさせていただきますわ」
「そうなのカナ☆」
高橋、新垣、れいなの三人が振り返ると久住、光井、リンリン、ジュンジュンの4人が立っていた
「何しとると?みんな、早く逃げると!!」
「田中サン、さっき高橋サンに言いました、高橋サンのいないリゾナンターはリゾナンターじゃナイト
 それはリンリン達も同ジク思ってイマス。皆サンとリンリンはもっと一緒にイタイ」
「それに三人の犠牲で救われて平和になっても、ジュンジュンの心、全然平和ジャナイ!!」

「だからってみんなくる必要ないじゃない!」
「新垣さん、さっきから頑張っているんですけど、愛佳、もう何も視えないんですわ
 きっとこれって世界が終わりってことか愛佳が消えるってことやと思うんです」

231名無しリゾナント:2011/07/28(木) 22:13:42
尚も光井の言葉は続く
「世界が終わればそれまでです。
 でも愛佳が消えたら世界が終らないかもしれないやないですか?せやったら愛佳も世界を救いたい」
高橋の目を見て光井は微えみ、ピースを向けた
「高橋さん、愛佳でも世界を救えるかもしれない時が来ましたよ」

「小春も死ぬのは怖いけど…みんなと一緒だったら怖くないもん」
そう言って新垣に久住は両手で抱きついてきた
「ガキさ〜ん、小春とガキさんはいつまでも相方ですからね!!」
「うんうん、わかった小春」

とここで高橋があることに気がついた
「ちょっと、ちょっと、小春、右手、右手!!
「え、なに?なに?あれ?小春の腕がある?」
全員の視線が久住の右腕に集まる
確かに消されたはずの右腕が再生していた。更には
「愛ちゃん、右手戻っているよ!」
先程光を放った時には消えていた高橋の右手首も戻っていた
「なんや?何が起きているんや?」

そう光井が呟いた瞬間、7人を強烈な風が包みこんだ
そして彼女が言った
「ごめん、約束守れそうにないや」
その声は風の外から聴こえた

そして彼女―亀井はゆっくりと消えている右腕の代わりに左腕で笑顔のまま7人に手を振った

232名無しリゾナント:2011/07/28(木) 22:18:21
「Vanish! Ⅱ(8)」パート(8)です。
ジュンジュンの台詞は…名セリフをリゾナントせてもらいました。
作者様すみませんm(_ _)m
そして・・・明日、最終回★長かったお話しもついに完結します
お楽しみに?

今日の分です。代理よろしくお願いします。いつもありがとうございます


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