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新・戦場スレ Part1
1
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/07(土) 11:08:38 ID:MYeZc9GQ
ということで心機一転立てました
2
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/08(日) 13:30:39 ID:BEARmQQ.
第一話 ファースト・バトルズ
ノイズまみれの通信がコロニー「サイラス3」の通信室へ届いた。
「……こちら共和国国防軍第9遊撃部隊。帝国軍の一部隊と交戦し、ここまで撤退した。受け入れを要求する」
サイラス3は前線へ戦力を供給する補給網の中継地点であり、帝国には未だ知られていない基地が存在している。本来ここに救援を求めることすら適切とはいえない。
しかし敗残兵たちは既にサイラス3の防衛圏内に入っており、この通信を無視するという常套手段は不可能となっていた。
当然遊撃部隊の指揮官もそれを理解しており、ワープ時にジャミング措置は必要以上に施していた。
敵は撒いた。そのはずだった。
「……来ました来ました、来ましたよっと」
ダミー隕石に偽装していた偵察装備サイクロプスのパイロットがじっと望遠カメラに目をやりながら呟く。自戦隊とオンラインにし、無線を入れた。
「負け犬が従兄弟の巣に入りました。周辺警戒は手薄。俺らだけでも行けますぜ」
帝国軍も決して愚かではない。この付近の宙域に共和国の基地が存在することは予想がついており、監視の目は絶えず張り付かせていたのだ。
国防軍を追い詰め、あえて逃し、基地に追いやる。その基地がサイラス3だったのは、帝国側の僥倖といえる。あるいは執念の勝利と言うべきか。
「……先行せず味方の到着を待て? はいはいわかりましたよっと」
コクピットの中にすっかり辟易していた偵察兵の予想よりずっと早く、味方はやってきた。攻撃が開始された。
間もなくコロニー駐在部隊と帝国軍部隊の交戦が始まった。
国防軍は数で押すが、練度では帝国軍が上回る。次々と撃破されてゆくスチュパリデスMK-2。
伸び切った防御網は安々と食い破られ、戦闘はコロニー内部へと移っていった……
3
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/09(月) 19:45:32 ID:H3ynXwSI
「敵襲だと!? バカな、サイラス3の秘匿は完璧ではなかったのか!?」
回線越しに聞こえてくるのは、怒気を帯びた野太い男の声だった。
「どうも、敗走してきた部隊がヘマをやらかしたみたいですねぇ。情報戦の甲斐もなく、バレちゃったものかと」
モニターに大写しにされているのはガナルド・ドナール准将。近年国防軍の、引いては共和国全体の注目を集めている「フェアリー・フォース・プロジェクト」の統括責任者である。
恰幅のいい体格に白髪混じりの角刈り、色黒の髭面という風体は、およそプロジェクトの華やかさに似合うものとはいえず、多分に威圧的である。
「第5艦隊の無能どもめ…! これじゃ何のために辺鄙な民生コロニーでちまちまテストをしてきたのかわかりゃしない! 設備投資だけでいくら掛けたと思っとるんだ!」
そんな男の怒鳴り声にも眉ひとつ動かさず、ウェインライト・ウェーバー博士はほとんどモニターに背を向けるようにして、キーボードを叩き続けていた。
「ウェーバー! 今すぐシルキーを運び出せ! ワープ経路は手配してやる! あの小娘と貴様も、ぐずぐずしていないで脱出しろ!」
「無茶でしょ。帝国は港側から攻め込んできてるんですから。防衛ラインが持ちこたえてくれるのを信じて待つのが関の山かと」
「待つ? そんな僻地にすぐに救援は…」
「『オーダー』ですよ。さっき向こうから、加勢に来てくれるとの打診があったそうです」
『オーダー』。その名を耳にした途端、ドナールは目を剥いて、言葉に詰まるあまりにモゴモゴと口を動かした。
「き…貴様…! あんな連中を頼りにするなど…それでも誇り高き国防軍の科学者か!?」
「客観的に見て、我々だけじゃど〜やっても押し返せそうにないんですよ。市街地の方も荒らされ放題で、非常通路からコソコソ逃げるわけにもいかないみたいですし、ここは『正義の味方』の皆さんのご厚意に甘えましょうよ?」
深々と溜め息をつき、額を押さえて項垂れるドナール。
「何てことだ…これではますます騎士どもをつけ上がらせる結果に…!」
と、そんな彼を押し退けるようにして、モニターに横から別の人影が割り込んできた。
「市街地が襲われてるんですの?」
豊かな金髪をなびかせる、軍隊には不釣り合いともいえる妙齢の美少女だった。ドナールはぞんざいな扱いを受けたにも関わらず、恭しく自ら身を引いて、彼女にカメラの正面を開け渡す。
「そうなんですよ。どうやら民間のドックからも、何機かの機動兵器が忍び込んでるらしくて。退路を断とうって魂胆なんでしょうかねぇ」
「ふうん……」
人差し指を頬に沿えて、何やら思案し始める少女。ドナールは口を挟みこそしないが、気が気でないと言った様子でチラチラと彼女の顔色を伺っていた。
「シルキーは? 戦えて?」
「は…!?」
「まあ、機体の調整はほぼ万全ですし、有事に備えてツバサくんも搭乗させてます。でも、今現在彼女がどういう段階かは、お嬢様もご存知ですよね?」
「構わないわ、出撃準備をなさい」
「ちょちょ、ちょっ…ミレニアお嬢様、さすがにそのようなお考えは…!」
ドナールが狼狽のあまりに裏返った声を上げる。ミレニアと呼ばれた少女は目を細め、ふん、とそれを一笑に伏した。
「お節介なオーダー達には好きにさせてあげましょう。でも、今回のヒーローは決して彼らではないの」
「……! な…なるほど!」
わざとらしくポンと手を鳴らし、ドナールが頷いてみせる。
「戦禍の只中、逃げ惑う民の前に舞い降りる美しき妖精、フェアリー・フレーム……鮮烈なるデビューステージには、お誂え向きのシチュエーションでしょう?」
ウェーバーはそんな二人のやり取りを、丸眼鏡の位置を正しながら黙って見つめていた。
「…どうなっても知りませんよ、僕は」
4
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/09(月) 21:14:00 ID:faAz5A6E
交戦より少し前!
林立するビル街を光とするならば、路地裏は闇の部分であろう。
新興宗教カルト。反共和国セクト。マフィア。電子物理を問わぬ違法ドラッグバイヤー、あるいはただのゴロツキ。陽の光を嫌う者たちはいつもそこにいた。
少々スケールに関して見劣りはするが、サイラス3も例外ではない。
「ちょっとよォ、お嬢ちゃん、オチャしない?」モヒカンタテガミの馬パンクスが言った。彼が一番大柄だった。
「俺たちこう見えてもさ、ナカモチ・クランのメンバーなんだよ。ワカル?」タンクトップの豹パンクスが言った。一番暴力的アトモスフィアを発散していた。
「いいからさァ、ちょっと直結しようよォ」人工ドレッドヘアパンクスが言った。彼はヒューマンだったが明らかな違法電子ドラッグのオーバードーズであった。
3人のパンクスの勢いに少女は困惑の表情を浮かべている。落ち着いた色のロングヘアーは、いかにも荒事に慣れていない様子だ。彼女の胸は豊満であった。
「ねェ〜、だからさァ〜、いいお店知ってるよォ? 俺たち」馬パンクスが少女に詰め寄った。顔が近い!
「ちょっとだけでいいンだよ、ちょっとだけでさァ」豹パンクスの目は充血していた。ひょっとしたら食人嗜好でもあったかも知れない。
「直結しようよォ、お願いだよォ」人工ドレッドヘアパンクスが首の後ろから生やしたケーブルを振り回した。
清楚ロングヘアー少女のなんかが危ない! その時!
「チョットスミマセン」3人のパンクスの背後から逆光を背負った陰が声をかけた。
「アァン?俺たちはこの子と友好関係を築きたいだけなンですけど」馬パンクスは意外なボキャブラリーを披露した。
「スッゾテメッコラー!」豹パンクスが牙を剥いて凄んだ。ヤクザスラングだ、コワイ!
「何アンタ? ひょっとしてアンタもこの子と直結したいの? …横取りは良くないよねェ」人工ドレッドヘアパンクスは威圧めいてケーブルの回転数を早めた。
陰が路地裏へ入ってきた。ハンチング帽にトレンチコート。背は高くないが、声は渋い。
「その娘、あまりお前たちに好感を抱いてはいないようだ。これ以上はやめた方がいいのでは?」
「ザッケンナコラー!」
豹パンクスが殴りかかった。彼は宇宙ボクシングのハイスクール選手権で6位、素人を容易に殴り殺す自信がある! 彼は拳を握り締めて肉迫し「イヤーッ!」
鋭いシャウト! その場にいる誰もが反応出来なかった。次の瞬間、豹パンクスは地面に叩きつけられたまま、完全に失神していた。
「ア…ア?」「何? 何があったの?」
「次にこうなりたいのはどちらだ? あるいは二人共か?」ハンチング帽の下で青い瞳が二人のパンクスを射抜いた。パンクスたちはしめやかに失禁した。
「「ア、アイエエエエ…」」「さっさと友達を連れて帰るがいい」「「ヨ、ヨロコンデー!」」
パンクスが撤退したのを見送り、彼は少女の方を見た。少女の背中は既に遠ざかっていた。彼は意に介さず、再び雑踏へと消えた。
5
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/09(月) 21:59:28 ID:H3ynXwSI
帝国軍・飢狼軍団の手によって、サイラス3の居住区は炎に包まれていた。
多くの建造物が倒壊し、ひび割れた路面には無惨にも力尽きた人々の亡骸が転がっている。
住民たちはコロニー内に4ヵ所存在する非常シェルターへと急ぎながらも、その多くは寸断された交通網に行く手を塞がれ、避難を完了した住民は未だ全体の20%にさえ達していなかった。
中でも、工業エリアに隣接する第4シェルター近辺は最悪の状況にあった。シェルターへの入口の一つが、避難を試みていた100名以上の住民達の目の前で破壊されたのである。
彼らは複数機のサイクロプスが繰り広げる破壊活動の中、散り散りに逃げ惑う恐慌状態にあった。
「逃げろ! 逃げるんだよ! 早く!!」
「おい、道を開けろよ!!」
「どこに逃げるっていうの! 最寄りの入口だって3kmも先なのよ!? 」
「もう駄目だぁ…おしまいだぁ…!」
そして、密集した人々の頭上高く、ビルの壁面へとヒートクロスボウの矢が深々と突き刺さった。
「ひぃっ!?」
降り注ぐ瓦礫から一瞬遅れて、衝撃で屋上に据え付けられていた大型の貯水タンクが脱落。無情にも一同を目掛けて落下を始める。
「…うわあああああーっ!?」
「ぎゃああああああああ!!」
巨大な影に覆われた、その誰もが死を確信した、その時であった。
「危なーいっ!!」
不意に横合いから飛び込んできた大きな『掌』が、タンクを思いきり払い除けた。
一瞬の後、タンクは数m離れた地面に激突、恐ろしい轟音と共に破裂し、大量の水を噴き上げていた。
「……なっ……?」
「あ、あれって…!?」
「あの時…あの時式典にいたロボットだ…!」
「フェ、フェアリー・フォースが来てくれたんだ!!」
絶望的なムードから一転し、人々の間で歓声が上がる。
「ま…間に合ったぁ……」
勢い余ってビルに突っ伏しているのは、桜色に彩られた水鳥の羽根のごとき装甲に身を包んだ、可憐な少女型の機動兵器。
近頃国防軍が大々的にお披露目したフラッグシップ部隊、フェアリー・フォースの所属機『シルキー』だった。
その華美ともいえる美しいフォルムと、高らかに唱われる最新鋭機としての卓越したスペック、そして何よりパイロットが民間人からの選抜メンバーを含む美少女達であることから、共和国内で物議を醸しつつも、大いに注目を集めていた。
「…み、みなさん! お怪我はありませんか!?」
スピーカーを通して呼び掛ける。人々の返答の声はコックピットまでは届かなかったが、足下の人々の元気そうな姿に、パイロットはほっと胸を撫で下ろした。
「あちらの通りに、国防軍の方々が救助ビークルを用意してくださってます! みなさん、避難を急いでください!」
そして、シルキーは踵を返し、矢を放ったであろうサイクロプスを正面に捉えた。
間もなく、シルキーを取り巻く飢狼軍全機へと、共通回線を通じて映像通信が送られてきた。
「え…えぇっと……」
まるで決闘を所望するオーダーの戦士のごとき行いだが、そこに映っていたのは騎士でも何でもなく、艶やかな青緑色の長髪をポニーテールに纏めた、年端もいかない少女の姿だった。
「て……帝国の方々! そこまでにしてください!」
モニターの中の少女がビシッと正面を指差すポーズを取ると、シルキーも全く同時に同じ姿勢を取ってみせる。宣伝に違わない、きわめて高精度のモーショントレースシステムの賜物である。
「ここは、民間人のみなさんが平和に暮らしている場所です! こういう場所を攻撃することは、条約で禁じられてるはずなんです!」
眉を吊り上げ、険しい表情を作って必死に呼び掛ける少女だったが、垂れ目がちのつぶらな瞳とあどけない顔つき、可愛らしい声質と要領を得ない発言のために悲しいぐらい迫力がない。むしろ、飢狼たちの視線は別の場所に向かっただろう。
少女の服装は国防軍の一般的なパイロットスーツではなく、光沢のあるゴム質のハイレグレオタードのような特異なものだった。肩口から二の腕、太股から鼠径部にかけてが大胆に露出している。純白のスーツそのものもへそのラインが浮き出るほど身体にぴっちりとフィットし、顔立ちの幼さとは不釣り合いの肉感的なボディラインを顕にしていた。
加えて、目に留まる特徴は出で立ちだけではない。
「こ、ここから立ち去らずに攻撃を続けるのなら、この私が……国防軍特殊遊撃部隊フェアリー・フォース所属、シルキーのツバサ・ウィークリッドが、あなたたちを成敗しますっ!!」
彼女の耳は、横長の錘形をしていた。
それは美しい容姿共々、彼女が銀河系の希少種であり、ある分野において非常に高い価値を有する『セレニアン』である証左であった。
6
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/09(月) 22:36:31 ID:faAz5A6E
戦場から遠く離れて、半壊したハイウェイに一つの影があった。
ハンチング帽とトレンチコートを身につけた白ネズミ獣人だ。彼は戦火の地を見ていた。機械化なしの裸眼で、双眼鏡もなく。
彼は懐の端末を取り出し、通信をオンにする。
「ドーモ、エミリー=サン。ジン・ミックです。常駐部隊から出撃許可が降りた。ユウセイ=サンとライオ=サンは? …そうか。では、個別に行動することとしよう。私は先行する」
通信相手からの応答。
「そうだ。今私の手元には人型兵器はない。だが問題もない」
ミックはコートを翻した。なんと……彼は一瞬にして蒼いイクサ装束をまとっていた!
何故なら……ジン・ミックはニンジャ、シバラク・ニンジャの異名を持つニンジャだからだ!
やがて背後から一台の大型バイクが走ってきた。流線型のボディに目に鮮やかな青と赤のペイントが施され、その上に意匠化された「天狗凄」の金エンブレムが輝く。シートは無人、オートジャイロだ。
「オミヤ・ファクトリー」謹製インテリジェント・アームドバイク「テングスゴイ」。
そのスタイルは共和国国防軍制式バイクである「シュゲンザ」と共通シルエットを持っている。それも当然だ。「シュゲンザ」はこの「テングスゴイ」をコストカット&デチューンすることで作られた。
「イヤーッ!」シャウト一つ、ミックはテングスゴイに飛び乗り、今や不整路と化したハイウェイを疾走開始した。戦地へ向かって。
7
:
◆HU7XfvOYA2
:2016/05/09(月) 23:45:52 ID:NpbI6GtI
遡ること一刻半
「おー、ようやく着いたなぁ」
宇宙港の発着場からスーツケースを片手に一人の男性が両手を上に伸ばし固まった身体を解しつつ独り言ちた。
生まれの惑星から民間船での長い長い移動が一度終わり、このコロニーから出る共和国本星へのシャトル便に乗るべく一度一泊し、明日この港から出る最初の便を目指していたが。
「宿に行くにはまだ早いなぁ…」
腕の時計を確認するとまだ予定のチェックイン時間には早く、然りとて観光するにはちと時間が足りない。そして、問題が一つ。
「腹、減ったなぁ」
ポンと掌を腹の虫が鳴る上に重ね、到着直前から御機嫌ナナメな様子で鳴り響くそれを落ち着かせると足を嗅覚が誘う方向へ進ませる。
「(さて、こういう場合は先ずは一当てといきたい所だが…)」
普段であれば適当な露天で買い食いをしつつ、腹の虫の御機嫌を伺いながらラーメンでも…と思っていたが…。
「(困ったな、土産の菓子ばかりで…いや、焦るんじゃない。私は腹が減っているだけなんだ。今、此処で小腹を満たしてもまだ後があるんだぞ…)」
どうやら、この通りは土産品が主な商品らしい。確かに、土産にするには良い商品が多いが、腹を満たすにはチト物足りないのだ。悪くは無いが腹にドスンと来ない。
「(ン?あの店…)」
足を奥に向け進んで行くと段々土産品を販売する店が少なくなり、八百屋や薬屋、本屋など生活に関わりが多い店が段々と増えてきた。やがて、一軒の精肉店にたどり着く。
「(この店…手前は精肉店だけど、裏側は食事処になっているのか…面白いな…良し、此処にしてみよう)」
店の裏側に回り、入口の扉を開き店内に入る。扉を開くとカランコロンと扉に付いている鈴が鳴り響き、店員さんがパタパタと足音を鳴らし奥からやって来た。どうやら、一段落した時間帯なのか客は自分しか見当たらない。「いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞ!」ニコニコと愛想の良い女性のスタッフが声をかけてくれた。お言葉に甘えてカウンターの右端へと座る、同時におしぼりとコップに入った冷えた麦茶をテーブルの上に置いてくれた。メニューを手に取り、もう片手にコップを持ち麦茶を一口…
「(うん?麦茶と少し違うな…)」
口にした味わいの違いに僅かに眉を寄せると先ほどのスタッフさんが笑顔で教えてくれた。「此方はとうきびを使ったお茶です!」…聞いた話によると時期限定で提供しているそうな。
「(とうきび茶、そういうものもあるのか!)」
麦茶とはまた違う香ばしい風味に舌鼓を打ちつつメニューに視線を走らせる。しょうが焼き定食、ロースカツ定食も悪くは無いが、此処は丼ものの定番で腹を満たそう。
「すみません、カツ丼を大盛りで。」
そして、片手を上げてスタッフさんに声をかけて注文をすると、気を使って暇潰しにスイッチを入れてくれたテレビをぼうっと見始めた。
8
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/11(水) 01:49:47 ID:afgechQo
»5
「むっ!」
「むっ!」
「むっ!」
「レオタードいいねェ…」
モニタに映し出された美少女の姿に、サイクロプス飢狼兵がにわかにいきり立った。オンラインになっていた隊長格が呆れた声で叱責する。
「私語は慎め!」
「でも隊長…あんなハクいスケ、色街のオイランでもちょっと見かけませんぜ」
「あの耳、どうやらセレニアンらしい。美女揃いで知られた種族だ。尤も数が減りすぎて銀河中で保護対象だがな」
「何その都合良さげな生き物。闇に売り飛ばしゃアいい値が付きそうだな」
「自分専用のオイランにしちまうのもよさそうだ」
「そいつはいいな!」
「だから戦闘中に発情しとる場合か貴様ら!」
「じゃあよォ、さっさとあのお嬢ちゃんを捕まえちまえばいいんだろォ?」
「グッドアイディアだぜ!」
「そうだ。戦闘後の貴様らまでは軍規も縛らん」
「隊長はどうなの?」
「浮気がバレれば妻に殺されかねんのでな」
「うわぁ、結婚怖い!」
「世知辛いねェ」
「無駄口を叩くな。さっさとやれ!」
フォーメーションを組んで四機編隊サイクロプスがシルキーに襲いかかった!
9
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/11(水) 21:12:06 ID:4Fkn0jKY
(は、博士ぇ…仰られた通りにしましたけど、これからどうすれば…)
ツバサは声を殺して、ほとんど涙声で基地に控えるウェーバーに指示を仰ぐ。
人一倍プレッシャーに弱い自分が、ぶっつけ本番でここまでの段取りを行えたこと自体奇跡のように思えた。
それはひとえに、目の前で民間人が貯水タンクに潰されそうになる事故が発生したおかげかもしれない。
出撃を命じられて以降震え続けていた身体が弾かれるように動き、それを機に嘘のように震えが収まった。あとは名乗りを上げる所まで勢いで行えてしまった。
が、やはりいざ敵から注目を浴びてしまうと、ぶり返すように恐怖が込み上げてくる。
「大したもんだよツバサくん。これで奴らの注意は君へと集中した。あのサイクロプスは重装甲格闘戦仕様のDタイプだ。F装備の機動性を活かして逃げ回れば捕まりはしないよ」
(に、逃げればいいんですね! わかりました!)
「そうそう、君はオーダーが来るまで粘るだけで…って、ん…?」
ウェーバーはモニターしている各種の数値をざっと一瞥し、眉をひそめた。
「ツバサくん、まさかとは思うが、映像付きで通信をしていないかね?」
「えっ…? あ、あっ!?」
思いがけない過失に気が付き、通信モードを切り替えようとT-スキンのネックユニットに手を伸ばすツバサ。
「あのっ、どうすれば音声だけに切り替えられ…」
が、その行動はサイクロプスの急襲によって遮られてしまう。
「ひぁっ…!」
慌てて後方に跳びすさると、腰部に纏うスカートアーマーのスラスターが作動し、シルキーを素早く後退させる助けとなった。
DRESSシステム――パイロットの脳波と神経電気によって制御され、本体と高度に連携するオプション兵装。中でもF(フェンサー)装備を纏ったシルキーは、モーショントレースシステムによる鋭敏な反応と併せ、高い機動力と柔軟な動作性を発揮することができる。
もっとも、これらのシステムには致命的な弱点も存在するのだが……
「通信モードを切り替えてるような余裕はないね。適度に応戦したまえ」
「そんなぁ……」
結果的に自分の姿を敵機に中継しながら戦う事態となってしまい、多少T-スキンの露出度の高さに馴れたツバサであっても羞恥心が込み上げてくる。
しかし、今はウェーバーの言うとおり、形振り構っていられるような状況ではなかった。
「……と、とにかく、牽制しなきゃ! レーザー・ダガー!」
腰部両サイドに2本ずつマウントされた短剣の柄を、指の股に挟むようにして計4本抜き放つシルキー。美しいグリーンのビーム刃が発振する。
「行って下さいっ!」
ツバサが舞うように全身を躍動させると、シルキーは同様に水平回転しつつ、左右の手から続けざまにダガーを投擲する。
4本のダガーは風に乗るや、突如内蔵されたスラスターによって三次元的に曲がりくねる複雑な軌道を見せ、サイクロプスらを撹乱するように襲いかかる!
10
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/12(木) 23:17:52 ID:tzwpC37.
>>9
シルキーのダガー投射モーションを見てサイクロプス4機はただちに散開した。
ここまでは正しい。反応も悪く無い。だがダガーの軌道変化までは読みきれず、2本が右側の1機に突き立った。
「グワーッ!」
「ファッキン、やられた!」
「チクショウ!」
「余所見するんじゃねえ、撃ちまくれ!」
急所直撃により爆発四散する僚機を尻目に、サイクロプス残り3機はシルキーへハンドガンとグレネードによる攻撃を行った。
11
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/13(金) 00:32:35 ID:./Vjc0sw
>>10
「や、やった…!?」
爆散するサイクロプスを目の当たりにし、驚嘆するツバサ。
予想を超える敵機とシルキーの性能差にある種の安堵を覚えるが、数の上ではあちらの優勢は変わっておらず、手放しに喜ぶことはできない。
「囲まれないように。それだけは注意して動きたまえ」
「はいっ!」
攻撃マニューバを終えて返ってきたダガーを腰部にマウントし、シルキーは敵弾をかわしながら、背にしていたビルの奥へと回り込む。
「建物の持ち主さんには、申し訳ないけど…!」
そのままビルを盾にして射撃をやり過ごしつつ、ツバサはT-スキンのグローブに設けられた感圧コンソールを操作する。
シルキーの左前腕部に折り畳まれていたレーザー・クロスボウユニットが展開される。見た目は弩のそれを模しているが、実態は連写速度に優れたレーザーガンである。
そして、高精度の射撃管制システムにより、建物の逆側にいる敵の一機にマーカーを設定する。
「…せーのっ!」
敵の斉射が止んだ瞬間を見計らい、シルキーはビルの影から半身を乗り出し、クロスボウを連射した。
狙いを付けずとも、瞬時にFCSが射角を補正し、敵機を捉えるはずである。
12
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/13(金) 00:53:38 ID:rX7lnsXM
>>11
柔軟で軽快な機動に、サイクロプスらは一瞬シルキーを見失った。
「そこへ行った!?」
「イディオットめ! ビルの陰に隠れたんだよ!」
「グレネードで炙り出せ!」
一機がグレネードを投じようとする。そこへ飛来するレーザーの矢の雨。慌てて躱すが、レーザーの一本が手元のグレネードを貫いた。
KABOOM! 爆発が巻き起こり、サイクロプスは右腕を大破、頭部にも無視できないダメージを食らう。
「グワーッ!」
僚機の大ダメージに気づいたサイクロプスが大破機体へ駆け寄った。レーザー射界外へ大破機体を引きずりつつ、ハンドガンでシルキーへ牽制を行う。
13
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/13(金) 19:19:32 ID:./Vjc0sw
>>12
「よし…これなら、シミュレーション通りに…!」
再びビルの影へと身を潜めるシルキー。
再度4本のレーザー・ダガーを抜き放ち、遮蔽物の向こうでひと固まりになった敵郡に狙いを定める。
「お願いします! エリアル・ダガー!」
そして、ビルを背にしたまま前方、虚空に向かってダガーを投げ放つ。
ダガーはスラスターによって瞬時に反転し、高速で舞い飛びながら、自動追尾によって三機のサイクロプスを切り刻みに向かう。
14
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/13(金) 21:10:58 ID:rX7lnsXM
>>13
「こりゃダメだ」「えっ」「えっ」
高速飛来ダガーを見て一機は大破機体とそれを引きずる僚機を見捨てる選択をした。それは実際正解だった。ダガーの自動追尾プログラムが、行動の制限されている機体に狙いを定めたためである。
SLASHSLASHSLASH!!「「グワーッ!!」」ダガーが致命部位にヒットしサイクロプス二機は爆発四散!
更に追撃をしかけんと踏み出したシルキーの前へ新たなサイクロプス部隊が割り込んだ。
映像付き通信がシルキーのスクリーンへ強制表示される。
大写しにされたそれは見るも醜怪な生物である。
その名はガバノイド、かつて惑星セレニアを侵略し、以降長きに渡って美しきセレニアンを文字通り蹂躙し続けた忌まわしき知性体だ!
性質は獰猛にして邪悪、共和国の急進的人権派が彼らの人権保護に動いたこともあったが、結果は彼らがケバブにされた事実で十分理解できよう。
「フーンク! フーンク!」
鼻息も荒く唸りを上げるガバノイド。彼らは蛮種そのものの見た目に反して高い知性を有していた。
「お、おら、たたかいすきだ。けど、セレニアンのメスはもっとすきだ」
小さい目に明らかな好色の光を宿して告げる。「セレニアンはエサによしオイランによしっていうだ」
15
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/13(金) 21:13:31 ID:rX7lnsXM
訂正
性質は獰猛にして邪悪。共和国の急進的人権派がガバノイドの人権保護に動いたこともあったが、結果は人権派の出向者がケバブにされた事実で十分理解できよう。
16
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/14(土) 04:56:52 ID:epdkmxiE
>>14
「あとは最後の一機だけ…! これなら、勝てる!」
「こらこら、ツバサ君! 積極的な攻撃はなるべく控えたまえ…!」
「やっつけてしまえば、これ以上街を壊されなくて済むかもしれません! やらせてください!」
シルキーは残存する敵機目掛けて駆け出しながら、腰に帯びたレーザー・レイピアを抜刀。一目散に突撃していく。
が、その時だった。
「!?」
レーダーに感の無かったサイクロプスの部隊が、突如として両機の胃と割り込むように現れた。
「伏兵だ! さすがは『飢狼』、噂に聞こえる通りのお手並みだね……ツバサ君、囲まれると危険だ。後退して立て直したまえ!」
さすがのウェーバーも焦りを隠せず、やや声を張り上げ気味に指示する。
しかし、ツバサからは応答が得られない。
「……ツバサ君? どうした、応答したまえ!」
「……あ……」
足を止めたシルキーの機体は、カクカクと小刻みに震えていた。
ホロスクリーンに映された敵パイロットの姿を見た途端、ツバサは心臓が跳ね上がるような衝撃と、それまで感じたこともないような、得体の知れない嫌悪感を覚えた。
(なに……? なんなの、この人……!?)
先程までの攻勢はどこへやら、シルキーは内股に立ちすくみ、震える両手でどうにかレイピアを構えたような状態となる。
T-スキンに包まれた豊満な肢体に冷や汗が伝う。その様子も、怯えに凍りついた表情も、映像通信が筒抜け状態の今は全て見られている。見られてしまっている――。
そう考えると、ツバサの胸中にぞわぞわと未知の感情が沸き上がってくる。その正体は遺伝子に刻まれた冥い被征服感であり、支配者への屈服と嘆願の衝動であった。
そして、ガバノイドのサイクロプスが一歩、シルキーへ向けて踏み込んでくる。
「……っぁ …う、うあああぁーーっ!!」
気がつけば、ツバサは自分でも信じられないような行動を取っていた。自ら突撃し、レーザー・レイピアを大降りに振るう。
それはセレニアンの本能による咄嗟の防衛行動に他ならなかったが、結果として圧倒的パワーを誇るサイクロプスに対して正面から突撃するという愚行を犯すこととなった。
17
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/14(土) 09:52:17 ID:BE0qhMBY
>>16
サイクロプスのコクピットの中でガバノイドはほくそ笑んだ。歴史が示すように、セレニアンの遺伝子には本能的にガバノイドへの憎悪と恐怖が刻まれている。極端な攻撃行動に出るのはその裏返しだ。彼が知る中で、それを克服できたセレニアンはいない。
「ほれ!」
ガバノイドサイクロプスは飢狼隊の装備であるスラストハンマーのギミックを使わなかった。大振りなフックを止めるショートジャブめいて、ただハンマーを突き入れたのだ。それだけでシルキーの斬撃が止まる!
「あんまりかたさはねえみてえだなぁ!」
サイクロプスは後退。もちろんこれは誘いだ。普通ならつられはしないだろう。しかし…ツバサは今冷静さを欠いている!
18
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/16(月) 21:47:32 ID:IoAeNcy6
明日には返レスできると思います。
流れを止めてしまって申し訳ありませんが、もうしばしお待ちを……
19
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/17(火) 23:57:04 ID:.NhJpepQ
>>17
「あ、ぐぅっ…!?」
飛び掛かった所へカウンターでハンマーを腹部に突き込まれ、シルキーは空中で機体をくの時に曲げられて制止した。
ツバサの体を包むT-スキンの同一箇所にビシッ! と電流が走る。
「っひ……!」
搭乗者にダメージ情報を伝えるためのフィードバックシステムだった。
一瞬ビクッと身を震わせながらも、この程度の刺激であれば訓練でも体験済みであり、我慢できないレベルではなかった。
「うっ……く、あぁぁぁぁーっ!!」
ツバサは落着と同時に膝のバネを使い、さらにサイクロプスへと突撃していく。
「ツバサ君、何をしてるんだ! ツバサ君!?」
後退するサイクロプスへと真正面から追いすがり、レーザー・レイピアを突き出すシルキー。またしても、いや、先の一撃以上に不用意な大振りの攻撃だった。
20
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/18(水) 00:17:01 ID:EyfBIRR2
>>19
案の定、ガバノイドはレイピアを悠々と躱してのけた。
「いまだがや!」
発光信号で僚機に合図を出す。待機していたサイクロプス隊はボウガンを構え、この時とばかりにシルキーへ向け連射した。
21
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/18(水) 01:40:41 ID:i9MpSCHw
>>20
「!?」
襲い来るボウガンの矢の一本が、前のめりに体勢を崩したシルキーの右膝関節へと突き刺さった。
「あ゛ぁぁぁぁぁッ!?」
膝に走る猛烈なダメージ電流に声を上げるツバサ。シルキーは前方に投げ出され、倒れ伏す。
と、同時にモニターの中で、ツバサの脚を包んでいたニーブーツの生地が、じゅびじゅび! と音を立てながらストローで空気を吹き込まれたように膨らみ、たちまち弾ぜた。
正確には「飛び散った」という方が近かった。ぶちゅっ! という異音と共に、スーツが白い液体となって吹き飛んだ結果、倒れ伏したツバサのニーブーツには溶けたように穴が空き、膝小僧の肌が露になっている。
「う、あ……ぇっ……!?」
激感で正気に引き戻されたツバサは、弱々しい声を絞り出した。
右からも、左からも、ビルの谷間からボウガンの一斉射を終えたサイクロプスが迫ってくる。
「……そ、そんな……やだ、囲まれ……っ!?」
体を起こそうとしても、膝に矢を受けてしまったためにままならない。
「い、いや! いや…ッ!」
怯えの色も明らかな、身動ぎするような仕草と共に、前方のサイクロプスへとクロスボウを構えるシルキー。しかし、照準を付ける猶予は与えてもらえそうになかった。
22
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/18(水) 02:32:14 ID:EyfBIRR2
>>21
ツバサは囲んで棒で殴る類の暴行を想像した。しかしサイクロプスたちはそうしなかった。
「スパイダーネットだ!」
多目的ランチャーから発射される小型弾から、電磁ネットが弾け出る! 絡め取られるシルキー!
「セレニアンのヒトガタにゃあこれがいっちばんきくっちゅうはなしだ」
電撃がシルキーを、そしてツバサを襲った。
「やっただ! やっただ! フホホホホホ!!」
作戦的中の喜びに歓喜の笑いを上げるガバノイド。しばし笑ってから、ふと冷静になった。
「……おら、もうがまんできねえだ。さ、いいこだからおらのオイランさなるだ……!」
ガバノイドサイクロプスがその手をシルキーのコクピットに伸ばす…!
23
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/18(水) 03:11:23 ID:i9MpSCHw
「ひゃあッ!?」
想像していたのとは全く違う衝撃。シルキーはサイクロプス達から次々にネットを浴びせかけられ、仰向けに地面に縫い止められてしまった
「なッ……何、これッ……網……!?」
「ツバサ君、まずいぞ! それはスパイダーネットだ! 早急に離脱しないと……!」
が、その時であった。
ビビビビビビビビビビッ!!
「あ……あ゛はぁああああぁぁぁッ!?」
四方八方からの高圧電流がネットを走り抜け、シルキーを一瞬にして電撃地獄へと引きずり込む。
「はあ゛ぁぁぁぁッ!! ……ッ!! うぁッはぁあはひッ、ひッ!? ひぃィィィィィィッ!?」
全身を突き抜けるダメージ電流の嵐に、ツバサは翻弄されるがまま身をくねらせ、逃れようとするが、固く何重にも及ぶネットの戒めは到底解けるものではなく、両膝を曲げて腰を浮かせたブリッジのような体勢から身動きできなくなってしまう。
「フェアリー・フレームにとって高圧電流は天敵だ! 早く接続をセーフモードに! 万が一スキンが帯電したら……」
「やぁッ!! やぁッ!? やらッ!? これいやぁぁぁッ!! やめてくだひゃい!! やめてくだッ……」
パリッ……パヂヂヂヂヂヂヂヂヂッ!!
「ひッ……? あッひぃぃぃィィインッッ!?」
ツバサの体を更なる激感が襲った。
首筋から背中に伝い、股下を通っているT-スキンの紐状のフレームが、青白い電光を伴いながら激しく振動しだした。
「あッぁッやッゃッやッ!? やぁッ!? ゃひぃぃぃィィィィィィィィィィ〜ッ!?」
想像を絶する激感に襲われ、ツバサがガクンと背を反り返らせると、シルキーは生々しくその挙動をトレースした。
「こッ、らッ、らにこれッ!? ひィンッ!! ひィンッ!? ひィンッ!? あッひぃぃぃぃィィィィン!?」
「言わんこっちゃない、帯電現象だ! ツバサ君、今から言うとおりに対処するんだ! まずネックユニットの……」
「ひゃらっ!? とめてッ!! とまってえぇ゛!!」
辛うじて動く右手から、ツバサは思わずレイピアをかなぐり捨てると、Y字に分岐して鼠径部を回り込み、尾てい骨の上へと走るフレームを掴み、体から引き剥がそうと力任せに引っ張ってしまう。が、それは紐状のフレームをかえって肉体に食い込ませ、責め苦をより激烈なものにするだけだった。
ヂヂヂヂヂィィッ!
「い゛ィィイィィィ゛イン!? ンはぁひィンああぁああぁぃひィひィィィィ〜〜ッ!?」
フレームの間に張り巡らされた白色のスーツにも異変が生じ始めた。肌にピッタリと吸い付いていた生地のあちこちが、空気を入れられたかのように不規則に変形・膨張し、じゅびびびびび! と不快な音を立てて泡立ち、沸騰し始める。
じゅびびびじゅびびびび……ぶちゃあっ!!
「あひゃぁ゛ぁッ!?」
胸元を覆っていたスーツの一部が完全にゲルへと還元され、勢いよく弾け飛んだ。該当箇所に耐えがたい激感を走らせると共に、その飛沫がツバサの顔に勢いよく叩きつけられる。
「ィやぁ゛ンッ!? あづッ、あ、あ゛ッ!? ひッ!? ひぃあぁぁあぁぁぁぁぁッ!?」
同様の現象が、一気に全身に伝播していく。所構わずT-スキンが沸騰、破断、ゲル化し、猛烈な刺激を伴って弾ける。その度に体の芯に食い込んだフレームの帯電と振動が弱まったり強まったりを不規則に繰り返し、ツバサに悪夢ような激感を与え続けた。
パヂヂヂ、ぐぢっ、パヂヂッ! ぐちゅっ、ぶちゃあっ! パチ、パチ、チ……ヂヂヂヂヂヂヂィッッぶぢゃあっ!
「ンゃあああ゛ぁぁぁ〜ッ!? ひゃィィンッ!? ひッ、ひッ、ひッ、ひ……ひひゃぁあ゛ぁあ゛ぁ〜〜ッッ!?」
全身をガクガクと痙攣させ、ブリッジ状態のまま悶絶するシルキー。モニターを通して中継されるツバサも、必然的に全く同じ醜態を晒し続ける。
スーツが粘液となって飛び散ると同時に、首輪からジェルが流れ落ち、破損箇所を補おうとする。だが、硬化に必要な時間を遥かに上回る速度でスーツが自壊し、注ぎ足されたジェル諸共に盛大に飛び散ってしまう。
「ここッ、こんらッ、こんらのッ、こんらのッ……!!」
ぶちゃっ! びぢゃっ! びゅぐっ!
「んひぃぃッ!? あひぃィィィィィィィィィィィィッ!!?」
24
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/18(水) 20:05:34 ID:EyfBIRR2
>>23
スパイダーネットの内蔵バッテリーがようやく切れたようだ。シルキーは奇妙なダンスをやめ、糸の切れたマリオネットめいて地に横たわっている。
「へっ、なかなか悪くねえ腕だったぜ、お嬢ちゃん」
「だがここまでだったな。次はパイロットよりオイランになりな」
「そだそだ! オイランがいちばんええだ!」
サイクロプスがネットを剥がしにかかった。
…全知全能たるクロノ神よ! 今一人の少女が哀れにも悪党の手にかかろうとしている! その汚れた魔手は市民へ向くだろう。
光景を見ていた全員が絶望しかけた、まさにその時!
「WASSHOI!!」
一台のバイクが戦闘区域にエントリー! 時速666kmの色付きの風と見えたのは、赤青の大型軍用バイクだ!
疾走しつつバイクの両ランチャーからミサイル射出! 「ぐえーっ!」全弾被弾したガバノイド苦悶!
「な、何だコイツは!?」敵機は各々機銃射撃を行うがバイクは見事なスラローム蛇行機動で尽く回避!
「これはどうだ!」BOWBOWBOW! 今度はミサイルが襲いかかる!「イヤーッ!」ライダーはシャウトと共に右手を翻した。スリケン連続投擲によるミサイル迎撃だ!
KABOOM!! 余さず撃ち落とされたミサイルの爆発が束の間バイクの姿を覆い隠す。
煙が晴れた…バイクは無傷! シートは無人だ。ではライダーはどこへ?
「イヤーッ!」ライダーは…ジン・ミックは空中にいる! バイクの速度を加算しての大跳躍だ!
ジン・ミックは左腕を手近な一機に向けた。左腕ギミックガントレットのスリットからフックロープが射出、敵機の肩部装甲上部に鉤爪がかかった。巻き戻し機構が作動し、一気にジン・ミックは距離を詰める!
「イヤーッ!」ミックのニンジャシャウト! 肉迫の勢いを借りて…右ストレートが敵機の頭部を打つ!
「グワーッ!?」パイロットは悲鳴を上げた。瞬時に信じられないことが二つ起こったからだ。一つ目は機動兵器に乗った状態でナチュラルに殴りかかられたこと。二つ目は…その衝撃がコクピットまで及んだことだ!
ギミックガントレットは本来装甲擲弾兵の標準兵装として、パワードスーツやアームスーツに立ち向かうべく作られている。しかし大型機動兵器への攻撃は全く想定されていない。歩兵の火器では大型機動兵器の装甲には太刀打ち出来ない。
言語化されずとも軍事を少しでも知る者には暗黙の了解であった前提だ。それが、覆された。
無論、ジン・ミックとて分厚い正面を貫くことは骨の折れる仕事だ。機動兵器の頭部は精密機器の塊に近い。そこをブルズアイめいて突撃することで、敵機にダメージを与え得たのである。
これでサイクロプスのCPUや各種センサにノイズが生じるのは何度も実践済み。だが致命ダメージには程遠い。
ミックは懐から一掴みの金属凶器を取り出した。非人道兵器マキビシの発展型ニンジャテックアームズ、マキビシ・マインだ! 彼は頭部と胴部の接続部…ケーブルが剥き出しに近い状態で晒された頸部周囲にマキビシ・マインをニンジャ素早さで配置し、即座に離脱した。
KRATTOOOOOOOM!! サイクロプスの頭部が罪人のカイシャクめいて宙を飛んだ。頭部を失った機体は前方へ傾ぎ、アスファルトに倒れ伏した。
「ゴウランガ……ゴウランガ!」帝国兵の一人が悲鳴めいて叫びを上げた。「俺は詳しいんだ…俺のじいさんはエイジア生まれでな、エイジア人にはそいつを生む遺伝子を必ず持っているっていう」
彼らは過ぎし宇宙戦国時代、各地のウォーロードやサムライと共に銀河を暴れ回った。最早神話に近い時代である。時は流れ、いつしか彼らは歴史の闇に姿を消していた。それでもなお、数少ない人々は彼らの存在を伝えていた。
「奴は…ニンジャだ!!」
ジン・ミックはシートに着地を決め、敵手に向けて両手を胸の前で合わせて決断的にオジギした。ニンジャのイクサにはアイサツが必要だ。「コジキ・バイブル」にも書いてある。
「ドーモ、シバラク・ニンジャです。愛を知らぬ哀しき帝国兵よ、コズミック・オーダーの名を畏れぬならば……来い!」合掌を解き、ニンジャは挑発的に手招きした。
25
:
エミリー
◆jclrQ5ykSY
:2016/05/18(水) 20:48:22 ID:ZB/0ggCI
>>23-24
「ミック少佐!!」
援軍としてサイラス3に到着し、愛機“スノウローズ”と共にその地を踏む。
だけど宣言通り、ミック少佐が先に到着していたようだ。
しかもバイク一つで…
市民の救助活動ならまだしも、戦ってるし…
とは言え…
「遅かった…」
ひどい状況だ…
既にあのフェアリーフォースの機体…名前はシルキーだったっけ…既にボロボロだ。
しかもあのパイロット…セレニアンか…帝国軍に辱められている…許せない…!!
「女の敵!このエミリー・ホワイト!コズミックオーダー、白薔薇の騎士が直々に成敗してくれる!」
私は愛機“スノウローズ”の拡声器を使いながら叫ぶ。
白薔薇の騎士は私の呼び名だ。
戦場で戦ってるうち、いつの間にかコズミックオーダーを支持する市民や同じ騎士仲間は私の事をそう呼ぶようになった。
気に入ってるから、私もそう名乗るんだけどね。
そして私の機体、スノウローズは白を基調とした二足歩行の人型兵器だが、白馬の機体に跨っている。
26
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/20(金) 00:38:36 ID:r.RQbXlQ
ミックとエミリーの名乗り上げはサイラス3のネットワーク上を超音速で駆け巡った。まだ生きていた街頭プロジェクターを見上げて市民が呟く。
「『コズミック・オーダー』…ですって…!?」
「もう解体されたとばかり思ってたけど…」
そう…コズミック・オーダーはかつては銀河の正義の象徴として悪を挫き善を敷いていた。しかし帝国との激戦の末、中核となる騎士たちをごっそりと失ったのだ。
未だにそのダメージは癒えず、後遺症を引きずった状態だ。軍上層部や元老の一部が口にする「やはりハリコ・タイガーなのでは?」という声もむべなるかな。
「ザッケンナコラー…何ぬかしてやがるこのネズミ野郎!」
「騎士団? 騎士団だと? そんなものはハリコ・タイガーに決まってるぜ!」
「文字通りのラット・イナ・バッグだ、コジキ・バイブルにも書いてあるコトワザだ!」
「ぐぬぬぬぬぬぬうううううう、おらのオイランをワヤにしやがっでええええええええ!!」
いきり立つ帝国兵の怒声が拡声モード外部スピーカーで響き渡る!
それらを聞き流しながら、ミックが騎士団独自回線でエミリーに語りかけた。
「エミリー=サン、思ったより早かったな。まぁ私は見ての通りだ。臨機応変に行こう」ミックが陣容を撹乱・寸断し、エミリーが各個撃破する。訓練でもよくやった基礎戦術の提案だ。バイクによる派手な乱入は、自身に敵の目を集中させるためでもある。
そしてコズミック・オーダー健在なりという盛大なる狼煙にして鬨の声でもある。
「立てるか、そこのパイロットの娘よ」
ミックはシルキーのパイロットへ強制割り込み通信を入れた。倒れたサイクロプスのアックスの刃によってスパイダーネットが切り裂かれている。偶然か、それとも狙ってのことか……
「正直に言って手が足りぬのだ。オヌシが戦ってくれるならば、大分楽になる…いや、立てぬというのならばそれもよし。いくらでも屠り尽くすのみ」
冷徹な声で蒼いニンジャは告げた。
27
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/23(月) 20:20:36 ID:NA8BeE6c
>>26
「はひっ…っぇあ…ひっ……っ……?」
ビクビクと断続的に痙攣を繰り返していたシルキーだったが、ツバサはミックの呼び掛けを耳にしたことで、ようやく拘束と電流から解放されたことに気が付いたようだった。
(……この人達が、助けてくれたの…?)
攻撃の余波で頭がぼーっとしており、問いかけられた言葉の内容を理解するのに更に数秒を要しそうだったが、ウェーバーの通信がそれをフォローする。
「ツバサ君、どうやらそちらにいるのが救援を打診してくれたオーダーのお二人のようだ。いやはや、間一髪だったね」
「はっ…えっ!?」
慌てて跳ね起きるツバサ。全身各所で液化破断したスーツがねとねと糸を引いて垂れ落ち、気持ちが悪かったが、それを気にしている場合ではなかった。
「あっ、えと…ひ、膝に矢を受けてしまって動けないのですが、援護程度のことでしたらできると思います…させていただきます!」
緊張した面持ちと声でそう答える。
まだレーザー・クロスボウとダガーが使用できることは間違いなかった。
28
:
エミリー
◆jclrQ5ykSY
:2016/05/23(月) 21:16:12 ID:zXBjvDc6
>>26-27
「了解です。それでは、ミック少佐の動きに合わせ、私は…いえ…私達はサイクロプスの各個撃破に…!!」
私に送られた独自無線はミック少佐からだ。
流石だ…バイクで派手に現れた事で、敵の目はミック少佐に集中している。
そして、私が“私達”と言い直した理由…
「良く耐えたね!それに、反撃に出る勇気…流石はフェアリーフォースのパイロットだね!
私はエミリー…エミリー・ホワイト。名前を聞かせて!」
あれ程の辱めを受けたんだ。
並のパイロットなら、耐えられない筈。
それにあのコは、民間人から選抜されたパイロットだった筈…
今は未だ、パイロットとしては未熟かもしれないけど…あのコは未だ延びる気がする!
29
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/23(月) 21:25:03 ID:33ecvf26
>>27
ミックはシルキーをじっと見たのち、すぐ前方に視線を据えた。
「ならば十分だ」
ゴウン! 獣めいたエンジンの唸りを残し、テングスゴイを疾走させた。
「踏み潰してやらァ!」
アスファルトを踏みしだいて接近するサイクロプス! 100t近い質量が迫る!
「イヤーッ!」スリケン投射!サイクロプスのカメラアイにヒット!「グワーッ!」命中率低下!
その間にヘッドライトによる全共和国圏共通の発光信号で「イ・マ・ダ」のサインを行う。エミリーのみならず、ツバサへの指示も含まれている。
30
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/23(月) 23:44:46 ID:NA8BeE6c
>>28
「わ、私は…ツバサ・ウィークリッドです! よろしくお願いします、ホワイト様!」
まさか騎士と直々に話をする機会が訪れるなど、数ヵ月前までは夢にも思っていなかった。国防軍の熱烈なシンパでもない限り、コズミック・オーダーへの憧憬は、共和国の民ならば等しく持っている感情である。
>>29
テングスゴイのスリケンがサイクロプスの単眼に突き刺さり、大きく体勢を崩される。
すかさず発せられたライトによる信号を、ツバサは直感的に攻撃を促す合図だと悟った。
「い、今ならっ!」
レーザー・クロスボウを構え、無防備になった胴体、動力部へ向けて光の矢を連射する!
31
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/24(火) 03:38:59 ID:5oQeRxKc
>>31
「グワーッ!」
光の矢がエンジン貫通! サイクロプス爆発四散!
「あの小娘の機体、まだ生きていやがった!」
一機のサイクロプスの視線がシルキーへ向く。その脚部の間をすり抜けながら、マキビシ・マインを踝部関節部に放り込んだ。
BABABABABAAAAAANNNG!! ギアの一つに亀裂が入り、関節に異常発生!「何ッ!?」動きに停滞が生じる! テングスゴイは離脱!
32
:
◆HU7XfvOYA2
:2016/05/24(火) 22:29:55 ID:lQUKu6Ow
爆音、轟く悲鳴、此処は地獄の一丁目。白薔薇の騎士と忍者、手負いの妖精は鋼鉄の餓狼達と相対するが人々を護るためには手は足りず、吹き上げる炎は街を飲み込み、罪もない人々の命を奪っていく。込み上げる怒りは己が身を焦がし、既に肉体は走り出していた。
「確か……此方に吹き飛ばされていた筈…あった!」
目的は先程頭部を破壊された一つ目の巨人、サブカメラが生きていれば問題は無いが…あった。地面に倒れて沈黙し、コックピットは既に無人、パイロットは脱出済み。なれば、後は実行に移すのみ。
「よぉし…コイツ、動くぞ。」
コックピットに乗り込みコンソールを叩き、強制起動。カメラをサブに切り替えるとノイズ混じりではあるがモニターに周囲の映像が映しだされた。次いでに武装も確認、どうやら弾数は残っており自衛くらいは問題は無さそうである。操作用のレバーを握り締め、一呼吸。
「さて……どう生き残るか。」
実戦は初ではないが、現状は芳しくない。機体をゆっくりと動かし、その場に立ち上がらせる。ズシンと身体に衝撃が走り、改めて鋼鉄の巨人を動かしたのだと実感する。故郷に居た時は仲間達と野盗や害獣相手に大立回りしたが、今は居ない。焦らず、気負わず、冷静に状況を把握しなければ死あるのみ。再度、一呼吸。そして、心の内から湧き出る怒りが燃料となり、身体を暖めてくれる。倒れた拍子で手放していたハンマーを右手で掴み拾い上げ、両手で構えると軽く振り回し具合を確認する…良し。
「フンッ!」
近くの市民の避難経路の邪魔になっていた瓦礫をハンマーをゴルフのドライバーを振るう要領でフルスイング。轟音と共に瓦礫は吹き飛び、吹き飛んだ瓦礫は遠く離れていたサイクロプスの頭部を直撃。
「アーッ!!」
汚い悲鳴と共に撃沈し、行動不能にしたことを確認。幸か不幸か、少なくとも周囲には敵か味方かの識別にはなっただろうか。拡声器のスイッチを入れて、呼吸を整え呼び掛ける。
「市民の皆さん!此方から避難が出来ます、焦らず近くの誘導員の指示に従って避難してください。」
……どうやら、市民も落ち着きを取り戻して誘導に従い避難を継続している。自分に出来ることは、護るだけだ。
33
:
エミリー
◆jclrQ5ykSY
:2016/05/26(木) 19:49:41 ID:wi0SQWIM
>>29-30
「ミック少佐…流石だ…」
サイクロプスを相手にバイク一台で全く怯まない。
しかも、私は勿論…あのツバサってコにも伝わるサインを送っている。
「唸れ!ヒートランス!」
馬型の機体に載せたスノウローズはサイクロプスへ突進…槍型の武器を構えて…!
槍型の武器…このヒートランスでサイクロプスを貫いてみせる!
34
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/26(木) 21:41:27 ID:1nMDf7Kw
>>31
>>33
よろめいたサイクロプスの脇腹へスノウローズのヒートランスが突き刺さる!
「グワーッ!」爆発四散! スノウローズは突進の勢いもそのままに駆け去る!
「ぐぬぬぬぬぬぬうううううう!!」呻くガバノイド!
「瞬く間に2機食われちまったぞ、なんて奴らだ」
「3機だ。伏兵もいたらしいぜ」
「何がハリコ・タイガーだ! マジモンじゃねえか!」
サイクロプス部隊が怯懦に襲われた。その時、彼らのコクピットに撤退指示通信。渡りに船とばかりに一目散に逃げ帰る。
「オラさっさと帰るぞ」「おらのオイランがあああ…」駄々っ子めいて僚機に引きずられるサイクロプス。
破壊の痕跡を残し、帝国軍は撤退した。
35
:
エミリー
◆jclrQ5ykSY
:2016/05/27(金) 20:30:15 ID:/IPkSxB2
>>34
「敵機、撤退しました。
あのサイクロプスは飢狼軍のモノですね…
敵があの程度で助かりましたが、もし“剣滅”が現れていたら…
一応、ユウセイ特務三尉に機体データを送信しておきますね。
ですが戦いの記録は…」
私はミック少佐に通信を送りつつ、今回戦ったサイクロプスのデータをユウセイに送信する。
だけど戦闘記録は送れない。
ツバサってコは帝国軍に辱めを受けているからね…
同じ女性として、これを送信する事は出来ない。
そしてあのサイクロプスは機体からして飢狼軍のモノだ…
飢狼軍…あそこの主…名前は確か、ソルサクスだっけ…
その拳で幾多の騎士の剣を受け止め、“剣滅”と称されたと聞く…
しかも剣滅は各地の戦場に現れては兵器全てを破壊するって話だ。
もしココに現れていたら、私達が駆け付けても…
「ところで、サイラス3の市民達は…」
共和国の補給基地が帝国にばれた以上、
もう一度来ない筈が無い。
移住する必要があるかも…
「ミック少佐…ユウセイの解析によれば、サイラス3にはフェアリー・フォースプロジェクトが進んでいたと聞きます。責任者が居る筈です。
移住の為の護衛、私達と共に行うようにコンタクトを…」
移住の為には護衛が当然必要だ。
市民達を護るのは私達コズミックオーダーの使命…
それにフェアリー・フォース…あのツバサってコには興味がある。
だけど、フェアリー・フォースプロジェクトが私達に協力してくれるか…
「念の為、私達が到着する前の記録…ユウセイが解析しております。使えるかどうかは解りませんが…」
ユウセイに解析させた記録…
撤退して来た共和国軍がサイクロプスを連れて来た記録もバッチリ完了している。
これは共和国軍が帝国に補給基地をバラした証拠だ。
36
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/28(土) 00:15:16 ID:lVgiPw92
>>35
ミックはエミリーからのデータを確認しながら答えた。
「データの件は了解した。これはユウセイ=サンには少々刺激が強すぎるだろう」
意図的に編集された箇所については、冗談めかして言った。
「住民の護送については考えている。実際FFPの責任者とは知らぬ仲ではないから、君が送ってくれたデータを使うまでもないだろう。ともあれエミリー=サン、オツカレサマだ」
エミリーを労いながら、ミックは次に打つべき手を思案した。…FFP責任者であるガナルド・ドナール准将は騎士団に出向経験があり、ミックと彼は顔見知りであった。到底友人と呼べる仲ではないが、話くらいなら聞いてくれるだろう。久闊を叙しにゆくのも悪くはなさそうだった。
37
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/28(土) 12:26:59 ID:OX76yAqI
>>35
>>36
「あー、もしもし?」
唐突に、オーダーの2機に対して通信が入った。
「いやあ、不甲斐ない国防軍が毎度お世話になってます。僕はその傘下でFFPの技術主任を務めております、ウェインライト・ウェーバーです。以後お見知り置きを」
モニターに映ったのは、細面の端整な顔に野暮ったい丸眼鏡をかけた長髪の男だった。自己紹介の通り、科学者らしく白衣を身に付けている。
「今上層部に指示を仰いでるんですけどね、指揮系統がだいぶ混乱してるみたいで、皆さんの処遇の決定についてはもうちょっと時間がかかるんじゃないかなーと思います。
助けていただいた所へ何のおもてなしもできなくて申し訳ないけど、その機体…シルキーは早々にこっちで回収するよう命令があったので、今回収用の車両を向かわせてるところです。
僕としてはここに皆さんを迎え入れて、自慢のコーヒーでも振る舞いたいとこなんですけどねぇ。もうしばらくすれば基地にお迎えできると思うんで、その場で待機しててくださいな」
人を食ったような態度で、よく喋る男だった。
間もなくシルキーを回収するための輸送車両が到着し、ツバサは急かされるまま、片足を引いて荷台にシルキーを積載させた。
「あの……!」
ツバサからの通信だった。
「騎士の皆様と一緒に戦えたこと、私、とっても光栄に思います。今日は本当にありがとうございました!」
深々とお辞儀をする姿を最後に、通信は終了し、輸送車両は基地へと繋がる搬入口へと消えていった。
同じ頃、遥か遠くの基地衛星「オービタル・ハイヴ」では、ガナルド・ドナール准将が戦闘の記録データと報告書を、憤慨も露に睨んでいた。
「セレニアンの小娘が、なんてザマだ! 初陣がこれではフェアリー・フォースの商品価値は大暴落だ! 所詮はオーダーの引き立て役と取られかねん!」
「ならば、早急なケアが必要でしょう?」
背後からの声にドナールが振り返ると、そこにはT-スキンに身を包んだ国防大臣令嬢ミレニアと、もう一人、ピンクに近い金髪のツインテールを揺らす小柄な少女が立っていた。
「お、お嬢様!? それにアニーシャまで、なぜパイロットスーツを……?」
「お嬢はね、もうとっくにサイラス行きのワープゲートを手配してたんだって。どっかのカリカリしてばっかりのヒゲおじさんと違って、ちゃーんと先が読めるんだよね♪」
顔をしかめ、言葉を詰まらせるドナールにミレニアが続ける。
「基地の情報が漏洩したことを鑑みれば、サイラス3は必ず再度の襲撃に晒されますわ。住民を最寄りの拠点に避難させるにせよ、防衛戦を張るにせよ、近いうちに戦闘が発生するのは明確ではなくて?」
自信満々と言った表情でミレニアが肩にかかった後ろ髪を払う。後ろではツインテールの少女、アニーシャが口許に手を当て、嘲るような顔でクスクスと笑っている。
扇情的なコスチュームと蠱惑的な仕草は世の大半の男性を魅了して余りあるものだったが、ドナールにとってはそんな感情に浸る余裕の無い状況だった。
「つまり、お嬢様直々に出撃なさると…!? お、お待ちください! 飢狼だの無限城だの、不貞の輩が侵攻してくることがわかっている以上、危険であります! お嬢様の身に万が一のことがあればお父上に示しが…」
「フェアリー・フォースの動向に関して、決定権を持つのは私よ、ドナール」
「ま、そこで書類とにらめっこしながら待っててよね。アニーたちが、ツバサちゃんが早速塗ってくれた泥を綺麗に注ぎ落としてあげるからさっ」
唖然とするドナールをよそに、二人は司令室を出ていった。
「……ったく、小娘どもが! 実戦を知らん分際で、どうなっても知らんぞ!」
デスクの傍らのゴミ箱に足で八つ当たりしながら、ドナールはワガママ放題の令嬢に振り回され、日々胃に穴が開きそうな自らの立場を心底呪った。
そして、漠然とオーダーによる手助けを期待している自分に気が付き、さらに嫌気が差した。
38
:
エミリー
◆jclrQ5ykSY
:2016/05/28(土) 18:31:35 ID:A3mY4rM.
>>37
「FFPの…貴方が…」
技術主任…あの人がメカニックか…
よく喋る男だ…
「エミリー・ホワイトです。
お会い出来て光栄です。ウェーバー博士。」
私はウェインライトを博士と呼び、自己紹介をする。
フェアリー・フォースには興味がある。
会えて光栄なのは確かだ。
だけど…
「回収ですか…ツバサちゃんとコンタクトを取りたかったのですが、仕方ないですね」
恐らくは初陣、あんな目に遭ったんだ…やはりパイロットのケアが必要か…
と思ったけど…
「ツバサちゃん!さっき私の事をホワイト様って呼んでたけど、私の事はエミリーで良いからね。」
私はツバサに通信を返す。
礼儀が出来ている。
それに、あれだけの辱めを受けて怯えている様子も無くモニター付で通信を送っている。
「そのまま待機か…」
基地に迎える為の準備か…
基地内は今後の対応に追われているのだろう…
仕方ない…私は機体の中に持ち込んでいた缶ビールを開け、それを飲みながら待つ事にした。
【エミリーは何故かモニター通信を切り忘れており、ジン=ミックにはエミリーがコクピット内でビールを飲んでるのが丸分かりである。】
【因みにミッション終了後の飲酒はエミリーの常習犯である】
39
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/28(土) 23:05:02 ID:lVgiPw92
>>37
>>38
「ドーモ、ウェインライト・ウェーバー=サン。私はコズミック・オーダー所属騎士ジン・ミック少佐です」
ミックは丁寧にアイサツを返し、語を接いだ。
「ウェーバー=サン、コーヒータイムの前に責任者のガナルド・ドナール准将との接見を要求する。一刻を争う事態だと伝えてほしい」
『あの……! 騎士の皆様と一緒に戦えたこと、私、とっても光栄に思います。今日は本当にありがとうございました!』
少女の声が朗々と響く。名前はツバサ・ウィークリッド。エミリーからの情報で確認済みだ。搬入口へと消えるツバサの姿をミックは我知らず見送った。
「あの娘……いや、なんでもない。それより准将は……サイラスにはいない? 居場所は? ならばそちらへ向かおう。場所を教えていただけるかな、ウェーバー=サン?」
モニタリングされてなおコクピットの中で酒盛りを始めるエミリーのことは、この際無視することにした。
40
:
◆HU7XfvOYA2
:2016/05/29(日) 22:57:36 ID:9NwGR7eM
撤退していくサイクロプス達を見送り、更に撤退するシルキーをノイズ混じりのモニターから見送り、ようやく闘いが終わったと感じ一人大きな息を吐く。見渡すと目に映る街の残骸に小さな土地と言えど領地を持つ身分としては溜め息しか出ず、頭を左右に振り気分を変えて自機のブースターを吹かし上空に飛び上がると騎士団の二人の近くまで移動し、二人の近辺に近付くと地面に着地しコックピットを開き、敵意が無いことを示すために両手を上げてコックピットから身を乗りだし口を開く。
「あー…すいません、コイツを返したいんですが…」
41
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/29(日) 23:06:49 ID:ZjDyiN7Q
>>38
>>39
「これはどうも、ご丁寧に」
ミックのアイサツの所作に合わせて、両手を合わせて会釈するウェーバー。
「お互い仲良くやってきましょう。敵さんがこれっきりで引き下がるわきゃないし、むしろここからが長丁場になりそうですからね」
彼の振る舞いだけを見れば、オーダーと国防軍の間にある軋轢など取るに足らないもののように思える。
が、こうした友好的なやり取りは、ウェーバーが国防軍の中でも一際の「変わり者」であるがゆえに成立しているものだった。
「ドナール准将ですかぁ。たぶん、基地への迎え入れが済み次第、嫌でもこの状況への釈明だか言い訳だかの通信が来ると思いますよ。
気を付けてくださいね。あの人深刻な騎士アレルギーなんで」
間もなく、基地司令部はミックとエミリーを基地内へと迎え入れた。
当然、そこには二人を次なる作戦に続投させようという魂胆があった。
42
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/30(月) 00:31:39 ID:31mQY98c
>>40
>>41
青年の顔には、ミックのニンジャ記憶力を呼び起こすものがあった。先だって彼のデータを見ていたからだ。
「ドーモ、初めまして、ディラン・アルケイン=サン。コズミック・オーダーのジン・ミック少佐です。騎士命令だ、その機体から降りた後、我らと同行せよ。説明は追ってする。以上だ」
ミックの応答は手短にして直截である。何しろ時間も戦力も足りないのだ。「立っているものはオトノサマでも使え」とは、実際銀河戦国時代に流行したリベリオン・ハイクである。
普段、ミックはアディランの推挙は騎士であった彼の父が行い、現騎士団長セルゲイナス・バイル准将が許可の捺印をしたものだ。先代のアルケインと面識はないが、バイルが認めたならば多少の役には立つだろうとミックは踏んだ。
基地司令部に足を踏み入れるなり、ミックは先手を取ってアイサツをした。こういう場合、先にアイサツを仕掛けた方がイニシアチブの所有権を持つ。
「ドーモ、お久しぶりです、ガナルド・ドナール准将。ジン・ミック少佐、罷り越しました」
43
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/30(月) 00:40:36 ID:31mQY98c
修正
>>40
青年の顔には、ミックのニンジャ記憶力を呼び起こすものがあった。先だって彼のデータを見ていたからだ。
「ドーモ、初めまして、ディラン・アルケイン=サン。コズミック・オーダーのジン・ミック少佐です。騎士命令だ、その機体から降りた後、我らと同行せよ。説明は追ってする。以上だ」
ミックの応答は手短にして直截である。何しろ時間も戦力も足りないのだ。「立っているものはオトノサマでも使え」とは、実際銀河戦国時代に流行したリベリオン・ハイクである。
ディランの推挙は騎士であった彼の父が行い、現騎士団長セルゲイナス・バイル准将が許可の捺印をしたものだ。先代のアルケインと面識はないが、バイルが認めたならば多少の役には立つだろうとミックは踏んだ。
>>41
基地司令部に足を踏み入れるなり、ミックは先手を取ってアイサツをした。こういう場合、先にアイサツを仕掛けた方がイニシアチブの所有権を持つ。
「ドーモ、お久しぶりです、ガナルド・ドナール准将。ジン・ミック少佐、罷り越しました」
44
:
エミリー
◆jclrQ5ykSY
:2016/05/30(月) 19:14:25 ID:b28Hzdr2
>>40
「貴方は…?」
突如現れたサイクロプス…
敵意は無いようだ。
投降とは思えないし…
そもそも敵にも見えない。
と思ったが…
「ディラン…ディラン・アルケイン。
初めまして、エミリー・ホワイトです。」
思い出した…アルケイン家の田舎騎士か…
領地の民の信頼が厚く、反乱も無いと聞く。
信頼が厚いのは彼が優秀な騎士である証拠だ!
>>41
「ご協力、感謝いたします。」
ウェーバー博士…変わった男だ。
国防軍には騎士団を嫌う人が多いけど、この人は協力的に見える。
だけど…
「騎士アレルギー…ですか…」
やはり騎士嫌いは居るらしい。
しかも深刻と来たか…
まあ、私は国防軍から嫌な目で見られる事には慣れている。
私はただ、堂々とした態度で基地内へと入って行く。
45
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/30(月) 20:41:20 ID:Oaxp.eaY
>>43
モニターの向こう、遥かサイラス本星の衛星軌道上に存在するオービタル・ハイヴの司令室で、ドナールは口を大袈裟にへの字に曲げたまま、ミックのアイサツを故意に無視して見せた。
「基地施設の防衛はこの通り、我々国防軍の独力で完遂した。市街地ではフェアリー・フレームの早期投入による若干のトラブルはあったようだが、現地の基地司令からも、貴様らの到着は市街地防衛に戦力を回す手配が整った直後だったと報告がある。
つまりは貴様らの助力など全く必要なかった。貴様らオーダーは今回もいけしゃあしゃあと我々の勝ち戦に乗っかって、衆目をかっ浚っていったに過ぎないのだ。わかるな?」
ドナールはあからさまに苛立っていた。それは先の戦いにおける国防軍の失態、オーダーの活躍のみならず、このままもつれ込むであろう次なる戦いに対しても悩みの種を抱えていたからだ。
「サイラス3の避難民は一時的にこのオービタル・ハイヴに退避させることが決まった。間もなくワープ航行によって輸送艇と補充戦力がそちらに到着するだろう。
その筆頭はフェアリー・フォース隊長
ミレニア=ハウ=ファルネーズ・ド・ノルヴァ特務一尉だ。同部隊の隊員一名もいる。くれぐれも丁重に扱え」
横柄な態度に拍車をかけるがごとく、葉巻を取り出してくわえ、火をつけるドナール。しかし、その所作には威厳どころか、明らかな焦燥の色が滲み出ていた。
ミックほどのタツジンの目を持ってすれば、輸送艇はともかく、ミレニアの出向が彼の本意でないことは明らかだったろう。
「市街地防衛についてはとんだ無駄足だったようだが、わざわざご足労いただいたんだ。輸送艇のワープによる帰還準備が整うまで、サイラス3への帝国軍の再襲撃に備えていてもらう。
これは国防軍からの要請であり、戦闘が発生すれば正式な報酬の発生する仕事だ。しくじるんじゃあないぞ」
46
:
◆HU7XfvOYA2
:2016/05/30(月) 21:20:29 ID:PyPcuA96
「ドーモ、ジン・ミック=サン。ディラン・アルケインです。ええと…エミリー・ホワイトさんか、宜しく頼みます。」
ディランは機体から降りて二人に簡潔な挨拶で応えると、基地の中へ進む二人の後を数歩離れた距離を保ちつつ追いかける。故郷では見慣れない基地の中を物珍しげにキョロキョロと視線をさ迷わせながらも二人からは離れる事はなく、基地の司令部に入るとモニターから映る男の言葉には僅かに顔をしかめるも黙って二人の言葉を待ち。
47
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/30(月) 21:45:16 ID:31mQY98c
>>45
ミックは直立不動姿勢とオメーンめいた無表情を貫きながら、欺瞞だらけのドナールの説明を聞いていた。
だったら何故都市部にまで侵攻してきた敵部隊への防衛が虎の子であるはずのFFPの新型一機だけだったのか、という根本的な疑問はニューロンに留め、こう返答した。
「ハッ、了解であります。閣下の御英断に甚だ感服いたしました」インギン・ブレイ! 意図せずスルリと出た言葉だが、今更訂正する気はなかった。
それにしてもノルヴァか! ノルヴァ家は共和国を牛耳るという大貴族の一つである。ミレニアなる特務一尉がフェアリー・フォースの隊長に就けたのも、ノルヴァ家の後押しがあったからに相違あるまい。
とするとドナールが組んでいる相手、FFPのスポンサーはノルヴァ家ということになる。有名無実の雇われ責任者。ドナールの立場が見えてきた。
不機嫌極まりないドナールの様子にも得心がいったが、だからといって同情する気には一切なれなかった。
48
:
エミリー
◆jclrQ5ykSY
:2016/05/30(月) 22:28:32 ID:b28Hzdr2
>>45
「これはこれは、失礼致しました…」
私達が到着したのは国防軍が戦力を回す直後と来たか…
言い訳は兎に角、苛立ちが剥き出している。
それより…
「ミレニア特務一尉…ですか…」
ノルヴァ家って言えば共和国の貴族で、かなりの権力を持っていたはずだ。
そのパイロットがフェアリー・フォースの隊長か…
そしてもう一人…どんなパイロットか…
にしても…
>>46
「ディラン。私達は騎士として、国防軍の基地内に居ます。私達と共にする以上、騎士らしき振る舞いを!キョロキョロしないで!」
田舎騎士め…
こう言った施設は彼の故郷には無いのだろう…
気持ちは解らないでも無い。
と言うか、私が言ってみた騎士らしい振る舞いって言うのも良く解らない。だけど、田舎者丸出しの行動は止めて欲しい。
私達までそう見られたく無いからね。
49
:
◆h9Hr5c.eFE
:2016/05/31(火) 01:29:39 ID:PXO8659Q
「はぁ……」
ツバサは緑茶の注がれた紙コップを手に、基地内の食堂でため息をついた。
服装は正常に修復されたT-スキンの上から、国防軍の制服のジャケットをつっかけたのみであり、それは彼女が再出撃を求められていることを意味していた。
現在、シルキーは損傷した膝関節の修復と電気系統の破損箇所の割り出しが急ぎ行われている。駆動部にパッケージ分割された人工筋肉を採用しているフェアリー・フレームは、その交換によって早急に修理が行える強みを持つが、神経接続の再テストの必要もあり、次なる作戦に開幕から参加することは難しいだろう。
それよりも……
「私、これからどうなるんでしょう……」
思わず独り言が口をついた。
実戦は想像以上に過酷であり、オーダーの救いの手が無ければどうなっていただろうと考えると、怖じ気づくなと言う方が無理であった。
自分の能力面についての不安はもちろん、あの緑色の皮膚をした怪物のような敵パイロットが何者だったのかも気がかりだった。何故あんなにも激しい恐怖心が込み上げてきたのだろう。
スパイダーネットを幾重にも浴びせられ、電撃責めを受けていた最中の仔細についてはほとんど記憶がない。何か未知の、途方もない激感に我を忘れてしまったことは覚えているのだが……
「ツバ〜サちゃんっ♪」
「ひゃあっ!?」
不意に後ろから誰かが肩に抱きついてきて、お茶をこぼしそうになる。突然のことで驚いたが、その鈴を転がしたような愛らしい声には聞き覚えがあった。
「あ、アニーシャさん!?」
「ふふ〜ん…」
にっこりと笑みを浮かべながら、頬擦りするようにツバサに顔を寄せる少女はアニーシャ・チェレンコフ。若干14歳にして、卓越した適性を見込まれてフェアリー・フォースに抜擢されたパイロットであり、ツバサにとって唯一の同期と言える存在だった。
「なんでここに…? ケット・シーはオービタル・ハイヴの模擬戦に出るはずじゃ……」
「そんなもの、とっくに延期の判断をさせていてよ」
振り返れば、そこにはフェアリー・フォースのリーダーたる国防大臣令嬢、ミレニアの姿までもがあった。
ツバサは思わずアニーシャを抱きつかせたまま立ち上がり、共和国式の敬礼の体勢を取った。
「ミレニアお嬢様、ご無沙汰しています…!」
「すでに作戦中よ。隊長とお呼びなさい」
「はっ、はい、隊長!」
ミレニアは腕組みをしたまま、敬礼に対してふん、と息一つで答えた。
「あの…お二人ともT-スキンに着替えているということは、次の戦いに出撃なさるんですか?」
「当然でしょう。こんな格好で観光に来たりなどすると思って?」
「で、でも、どうしてサイラス1や2じゃなくて、あんな遠くの基地から、それもまだ調整段階の私たちの隊が増援に…?」
「それはね〜、フェアリー・フォースの看板にぃ」
にこにこしながらツバサに抱きついていたアニーシャが腕にきゅっと力を込め、ツバサの耳元に唇を寄せる。
「誰かさんが早速塗ってくれた泥を、注ぎ落とすためだよっ」
ツバサがさっと青ざめる。アニーシャは笑みを浮かべたままだが、その表情は先程までとは打って変わった、嗜虐的な失笑の色を帯びていた。
「記録映像バッチリ見せてもらった、けどぉ、なにアレ? ネットの中でつぶれたカエルみたいになって、ヒィヒィ喘いじゃってさぁ」
「不様もいいところね、ツバサ・ウィークリッド。まさか記念すべき初陣であんな醜態を晒してくれるとは……」
「あの……あ、あの……」
言葉が出なかった。実際、自分でも途中からどうかしていたと思う。ウェーバーの指示を無視して恐慌状態に陥り、無謀な突撃をしたことには弁明の余地もない。
「フェアリー・フォースはこれからなんだからさぁ、ああいうのやめてほしいんだよねぇ?」
「次の戦いにあなたの出る幕は無いわ。せいぜいここで学習することね。戦場の妖精たるフラッグシップ部隊の、華麗なる戦いの何たるかを…」
ツバサはこの二人が苦手だった。決して嫌いとまでは思っていないが、自信が彼女たちから歓迎されていないことは重々理解していた。
50
:
◆tb48vtZPvI
:2016/05/31(火) 01:56:20 ID:Tr2UJzQY
>>49
「オヌシ達、随分と仲がいいようだな?」
ハンチングにトレンチコートスタイルのネズミ男が渋い声で言った。少し離れたところで合成トロスシ・レーションのパックを食べ終えた彼は、少女たちに近づき、両手を合わせてツバサにオジギする。
「改めてドーモ、はじめまして、ツバサ・ウィークリッド=サン。ジン・ミック少佐です。君にアイサツをしたかった。隣の女学生は? …君の同僚? フム、どこぞのアイドルかと見えたが」
アイサツを終えたミックは、ミレニアとアニーシャを一瞥して言った。
51
:
エミリー
◆jclrQ5ykSY
:2016/05/31(火) 05:59:50 ID:ip3i9esc
>>49
「はじめましてツバサちゃん。
私がエミリーよ。」
あのコがツバサか…
私はあのコに対して笑顔で挨拶する。
「エミリー・ホワイトです。」
そしてあの二人にも軽く挨拶をする…会話からして、あれがフェアリー・フォースのパイロットか。
だけど…
>>50
「ミック少佐、少々席を外します。」
私はミック少佐に挨拶をして食堂を出る。
そして…
「何よアイツ等!!」
私は食堂から出るなり、壁に拳を当てる。
フェアリー・フォースは少数精鋭と聞いている。
少数精鋭は連携が必須の筈。
三人しか居ないチームであの仲の悪さ。
国防軍の新しいチームが聞いて呆れる。
しかも、初陣で…しかも単騎で前線を買って出たツバサにあの態度…!
私はあの二人が気に入らない!!
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