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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

1名無しさん:2004/11/25(木) 19:54
「自分も小説を書いてみたいけど、文章力や世界観を壊したらどうしよう・・・。」
「自分では面白いつもりだけど、うpにイマイチ自信がないから、
読み手さんや他の書き手さんに指摘や添削してもらいたいな。」
「新設定を考えたけど矛盾があったらどうしよう・・・」

など、うpに自身のない方、文章や設定を批評して頂きたい方が
練習する為のスレッドです。

・コテンパンに批評されても泣かない
・なるべく作者さんの世界観を大事に批評しましょう。
 過度の批判(例えば文章を書くこと自体など)は避けましょう。
・設定等の相談は「能力を考えようスレ」「進行会議」で。

49 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/22(水) 23:27:02
【提案】新しい石の能力を考えよう【添削】スレにてエメラルドとレピドライト
についての小説を提案した者です。
>大御所登場で初期から出てる芸人弱小化や際限なく上の芸人が出るのは勘弁して欲しい
という意見がありましたが、私も心配したので、自分なりに考慮しました。
また、貴石で尚且つ黒幹部とのドンパチ騒ぎなので、本編に多大な影響を及ぼすかもしれない
ということで、こちらで相談を持ちかけるしだいです。
しかしながら、レピドライトとエメラルドの芸人はマジで思いつきません。
とりあえず、大方書きあがったので、冒頭を投下してみます。
エメラルドとレピドライトの芸人は爆笑問題と設定されたままになっていますが、
こちらは問題ありということで、この芸人のほうがいい! という意見があれば是非ください。

50[title] アウトレットシアター ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/22(水) 23:29:01

 「さあ、地獄を見せてあげよう」

 ……。

 「どーもぉぉぉぉぉ!!」
 下手から勢いよく飛び出した俺ら、爆笑問題は、そのままセンターマイクの元へと駆け寄る。
 「ねぇ〜漫才しますけどねぇ〜」
と、太田さんはヘラヘラと笑いを浮かべながらそう言った。やる気があるようには見えない。っていうか無いのだろう。
 実際俺も無い。だって、この300人収容の劇場に客二人しか居ないのだから。
 その客二人は、両方男。俺らよりもだいぶ年が若い。片方は俺らのほうを見て薄気味悪い笑みを浮かべている。ウケているのだろうか? よく判らない。
 もう片方はさっきからずーっとしたを向いたままただ。何か書いているようだ。レポートか? まさかな……。
 「唐突ですが、俺の話を聞いてくれますか」
 俺はそのように話を切り出す。太田さんはヘラヘラ笑ったまま、
 「ん? 客が二人しか居ないからヤル気なくしちゃった?」
 「違う。あのさ、尋ねたいことがあるんだけど」
 「ナニナニ」
 俺はまじめにこう尋ねた。
 「クソまみれの宝石ってどう思う」
 客席から噴出す声が聞こえた。太田さんはそれを無視してこう答える。
 「あんまり、よくないね」
 「あんまりで済むのか」
 「うん。っていうか何、お前さぁ、宝石食べちゃった?」
 俺は開き直ったように、頷く。
 「そうさぁ」
 「うえぇぇぇ。しんじらんない。ありえない。明らかに食べ物じゃないのに」
 「いやさぁ、キャンディーだと思って食ったの。だけど味しないのね。吐き出そうと思ったらさ、お前が行き成り声掛けてきたから、驚いて飲んじまったのさ」
 「え? 俺の所為なの?」 
 太田さんは「マジ理不尽」と言う顔をした。
 「まあ、そうとは言えないけど、でもさ、あの宝石くそまみれで出てくるのかと思うとさ、残念じゃん」
 「売れないよね。くさくて」
 「だよ、最悪だよ」
 ここで一呼吸。太田さんは客席をいじり始める。
 「お兄さんたちー、こんなとこくるなんて、よーっぽど暇なんだね」
 未だにヘラヘラと笑みを浮かべる相方。最悪だ。俺は言う。

51[title] アウトレットシアター ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/22(水) 23:30:27
 「おいおい、こわーいお兄さんたちにダメだしされっぞ。ただでさえ、……演出には厳しいんだから」
 ここで俺も客席を見た。やっぱり、知っている顔だった。

 ……設楽統と小林賢太郎。間違いない。薄気味悪い笑みを浮かべているのが設楽、さっきからずっと下を向いているのが小林。
 はっきり言って、怖い。
 「いやいや、とんでもないですよ」
 そう言ったのは、設楽だった。小林は何も言わない。太田さんは言う。
 「でもさぁ、不自然だよね。っていうか、レア? バナナマンとラーメンズの脚本担当が、俺たちの舞台を見に来ているっていうんだからね」
 そして、続けてこういう。
 「絶対、何かたくらんでんだ。うん、だって、「黒い人」らはいっつもそうだ」
 「僕らのことを知っててくれてるんですね。嬉しいですよ。そしてやっぱり『勘が鋭い』ですね」
 設楽は心底感嘆したように、そう言った。
 「だろう?!」
 太田さんはまんざらでもないといわんばかりに頷く。俺はそんな相方を小突いた。
 「お前、そんな余裕ぶっこいてられんのか」
 小声でそう忠告するも、
 「んーん、あんまり」
太田さんは未だにヘラヘラしている。俺は溜息をついた。
 「だって、あの二人、黒いほうの偉いほうだろ?」
 我ながら馬鹿な尋ね方だ。
 「田中さん、やっぱりご存知なんですね」
 設楽はまたもや会話に入ってきた。どうやら、事を早く運びたいようだ。彼は時々隣の小林の様子を確認する。小林はまだ何かを書

52[title] アウトレットシアター ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/22(水) 23:32:48
き続けているようだった。設楽は軽く舌打ちして、
 「仕方が無いな」
と呟いた。
 すると、だ。
 上手から、下手から生気の失せた男共がゆらゆらと俺らに近づいてくるじゃあないか。
 「こ、怖っ!」
 俺は思わず声を上げた。
 「シュールなコントでおなじみのお二人さん。こんなベタな展開で良いんですかね?」
相方はそれでも笑っている。しかもみょうちきりんな質問をする。コイツ、頭大丈夫なのか。
 「いいんですよ」
 設楽は笑って、そう受け流した。この人も普通じゃない。
 「おいっ、どうするんだ!」
 太田さんは答える。
 「石あげればいいんじゃない?」
 「無理だ、多分」
 「じゃあ、舞台から降りて逃げる」
 「なんか、嫌だ」
 「じゃあ」
 「ケンカ」
 「だな。言っとくけど田中、俺、ぜってぇ舞台降りねえぞ」

 設楽は言った。
 「仕様が無いな。いいよ、万が一、殺しても」
 一瞬だが、青い光が見えた。その刹那、
 「おりゃあああああああああああ!」
 太田さんはむちゃくちゃに暴れまわり始めた。
 「う、あぶね!」
 俺は太田さんのそれをかわしつつ、センターマイクで一斉に飛び掛ってきたゆらゆら人間をなぎ倒す。妙なことはしてこない。石は、持って居ないのか。相方はバカみたいに両腕でゆらゆら人間を容赦なく叩きまくる。
 っていうか、人数が多すぎる。俺は叫んだ。
 「なんだぁ! こいつらぁ!」
 疲れてきて、いい加減嫌になってくる。相方は未だに楽しそうに相手を殴りまくってるが……。
 年の所為にしたいが、それも悔しい。そして俺らは、体力の限界に近づく。
 設楽は叫んだ。
 「大人しく石を出せばいいのに!」
 俺と太田さんは叫ぶ。
 「嫌だ!」
 「持っているのは分かってるんですよ!」
 その設楽のその言葉は事実だ。石を持つものは、他の石の力を知覚できる。実際俺たちもそうだった。
 「だってーねぇ? お前食べちゃったんだもんねー」
 太田さんはヘラヘラとそう言う。
 「そうだよ」
 俺は平然とそう答えた。
 「……ふざけるのも大概にしてくださいよぉ」
 そんな設楽は、怒っているというより、うんざりしているように見える。この手の人間をキレさせるのは、結構難しい物だ。
 俺なら意図も簡単にキレちまうのだろうけど。
 「忙しいんだからさぁ……」
 そしてそのままその視線を小林に移動させる。まだのようだ。
 「……ほんと仕方が無いな」
 その刹那、俺と設楽の視線が「遭う」。あ、ヤバいかも。
 そう思うも、目が、逸らせない。
 さっきの青い光が、再び見える。
 「しまった!」
 ヘラヘラしてた相方が、一気に無表情になった瞬間。俺はその瞬間がたまらなく好き。だって優越感に浸れるから。
 ……大丈夫、こんなアホなこと考えられるうちは、まだ、平気だ。
 「チッ」
 設楽の表情も変わる。イライラが積もりに積もった表情。なるほど、これか。

 ……オトナシク、言ウコト聞ケバ善イノニ。

 脳内に直接、設楽の声が響く。これは厄介だ。気を抜くとあっという間に入って来られてしまう。
 そんな俺を察したのか、太田さんのヘラヘラした表情はもう既に失せていた。
 「もう、いいかな……。悪い。もうちょっとだから」
 いつに無く真剣に、太田さんは俺にそう呟いた。
 「小林ぃ?! まだかぁっ?!」
 力を使う設楽も平静ではないのだ。だんだん、少しずつ、ほころび始めている。
 そしてとうとう、小林は顔を上げた。しかしその表情は、驚愕だった。

53 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/22(水) 23:36:51
以上です。あの、バンバン叩かれるよりスルーされるのが
悲しいとおもう人間なので、ご意見待ってます。
覚悟の上です。

54名無しさん:2005/06/22(水) 23:49:42
乙です!
若干展開わかりにくいところもありますが
個人的にすごく続き読みたいです

55名無しさん:2005/06/23(木) 00:00:25
田中→太田の呼び方は光じゃないかなあ

56 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/23(木) 00:35:46
レスありがとうございます。

>54
分かりにくいところとはどこでしょうか。
改善したいので、できればでいいので、挙げて頂ければ幸いです。
>55
最近は光と呼ぶと嫌がられるため、太田さんと呼んでいると聞きました。
なので、このようにしました。
でも一人称というのは独白に近いので光でもいいのかもしれませんね。

57佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/23(木) 23:42:19
[title] アウトレットシアター#2
>>50->>52からの続き。便宜上、設楽&小林と対峙する芸人は爆笑問題となっております。
これは問題ありとの事で、他にこの話に当てはまりそうな芸人さんがいれば、ご意見ください。

*******

その表情を見た太田さんが、にやりと、いやらしい笑みを浮かべたのを俺は感じた。
 小林が放った、第一声。
 「……なんなんだ、これは」
 「ん?」
 設楽が尋ね返す。小林はもういちど、
 「なんなんだ、これは」
とだけ言った。
 「おい、それじゃわからねぇよ。何が書いてあるんだ」
 設楽の集中力が途切れ、俺は呪縛から解放される。俺は太田さんを見た。案の定、設楽よりもいやらしい、策士ともいいがたい、狂気の笑みを浮かべていた。
 ……俺は設楽と小林に、こう言った。
 「今に、分かるよ」
 冗談抜きでしんどい。でも、今は子どもみたいにごねていられないのだ。
 設楽がこちらの様子を伺いながら、「何を……」と言いかけた瞬間、
 俺はセンターマイクを掲げ高らかにこう叫ぶ。
 「さぁ! 地獄だ! 地獄の時間だ!」
 設楽と小林は突然の俺の奇行に目を丸くするばかり。そんな彼らに太田さんは説明をする。
 「君ら、まさかぁ、こんな雑魚共を出して、本気で不意をついたつもりじゃないだろうね?」
 確かにザコなのだろうが、何せ人数が多すぎた。しかし、太田さんはそれを表に出さず、しかも、相手がリアクションをする隙も与えず、憎憎しく説明をする。
 「君らさぁ、おかしいと思わなかったの。この劇場の客席に、たった二人でいることがさあ? ここはよ、田中が作り出した異次元空間なんだ。つまりだ、お前らはぬけぬけと俺らのテリトリーの中に入って来たぁってことあだ。わかるか? わかんだろ? インテリぶってるお二人さんはさぁ」
 暴言を用いて、説明をする。
 「でもやっぱり、バカだね。バカだよ。バーカ、ぶっぁぁぁぁっかっ! 所詮は芸人だよ! 驕り高ぶるのも甚だしいったらありゃしねぇよ! いいか、お前らは既に俺らの術中にはまってんだよ」
 と、ここで太田さんはポケットから緑色の石を取り出す。
 「てめぇらが狙ってんのはこれだろ? エメラルド! でもやんねーよ。俺のだかんな! バーカ!」
 バーカバーカと負け犬のように続ける太田さん。悪乗りしすぎている。しかし、ここでは俺も、
 「バーカバーカ!! 俺の作った空間は最強だからな! てめぇらみたいな若造のモヤシっこが打ち破れるわけねえんだ!」
と、見た目よろしく叫んでおく。仕舞には二人で、
 「バーカバーカ!」
といい年こいたおっさん二人が、いい年をした若者二人に向って、叫び続けていた。

58佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/23(木) 23:45:23
 「ぶ、ば、バカって言ったら自分もバカなんだぞ!? バーカ!」
 席から立ち上がった設楽、俺たちと同じようなテンションでバカバカといい続ける。それを見かねた小林、
 「おいっ設楽っ!」
結構焦っているように見える。しかし、
 「小林、相手が爆笑問題だからって負けんじゃねえぞ! 一緒に言え! バーカっ!」
 「な、いえるわけな……バーカッ!」
 小林までもとうとう叫び始めた。暫し、良い年こいた大人の男共の、バカバカ合戦が続く。
 舞台の中心では俺らが、客席では設楽と小林が、そして舞台の両隅には花のない、生気の失せた若者たちが。
 これは、なんとも、面白い絵だろうな。誰かに見せてやりたいぐらいだ。
 ……まあ、不可能なのだが。
 するとここで、約一名、理性を取り戻す。
 ……小林だ。やはり、長くは続かない。小林が、設楽を諭す。
 「設楽、設楽!!」
 「な、なんだよっ」
 「この、シナリオどおりに進んでるんだ」
 と、小林は持っていたノートを設楽に見せる。設楽の能力はおおよそつかめたが、小林の能力は未だに分からなかった。だが、
 単純でトンチンカンな俺にも分かるのだろう。
 それもこれも全て……。
 「あたりまえだろう?! それがお前の能力じゃんか」
 「設楽!」
 はっとして設楽は下唇を噛む。小林は口元に手をやった。もう遅い。俺にもわかったのだ。完璧だろう。
 そしてこの二人、やはり俺なんかよりずっと頭がいいようで。
 「小林……、まさかお前……」
 「そうだ、俺の意思じゃない。書かされて、いるんだ。書かされて、そのとおりに事が運んでいる……」
 設楽と小林はほぼ同時に俺を睨みつけた。やっぱり、怖い。しかし、俺は虚勢を張った。
 「やぁっと、気づいたかぁ。でも遅すぎたね。もう俺たち、君たちの能力分かったし、分かったとしても、もうどうにもできないでしょ。どうやら、二人とも戦闘型じゃないみたいだからね。俺の作った空間に、まんまと嵌ったんだ」
 明らかに、設楽と小林が怒っているのが分かった。もうちょっとだ。ここで俺は止めを刺す。

 「自分が書いていると思い込んでいたシナリオが、実は他人が描いた物だって気が付いた時は、やっぱり屈辱だよね。ゴシューショーサマ」

そして俺は不細工な笑みを浮かべる。どうだ、こんな感じでいいのか。
 「モヤシっこかどうか、その目で確かめてみますか」
 小林は右手を前に出し、ゆっくりとその手を開く。手のひらの上に、黒く光った枠だけの立方体が浮かんでいた。
 「太田さん、俺、なんかいやな予感がするんだけど」
 「おぉ、奇遇だな。俺もだ」
 小林は、叫んだ。
 「持ってる石が一つとは限らねぇんだよ!!」
言い終えた直後、右手を振りかざし力任せにその立方体を俺らに向ってブン投げた。彼のイメージとはかけ離れた行動だったので流石の太田さんも面食らっている。
 「おいっ! もやしっ子じゃなかったのかっ?!」
 誰にでもなく、太田さんはそう叫ぶ。
 ついでにだ、
 「まだ、俺の力も、切れてないんですよ」
 舞台上の人間もゆらゆらと再び動き始める。おいおい、これじゃまさしくサイコキネシスじゃないか。
 どうやら二人とも感情が高まったことにより、エネルギーが増したらしい。大丈夫なのか、俺たち。
 向ってくる高速回転している箱。周りから攻めてくるゆらゆら人間。 絶体絶命。
 「おとなしくエメラルドを渡せ」
 ゆらゆら人間は太田さんに、飛び掛った。しかし、俺は飛んできた箱をかわすのに精一杯。交わしても交わしても飛んでくる。交わせるのが不思議なくらい。
 まるで、予定調和。
 そう、予定調和なんだ。

59佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/23(木) 23:50:50
 俺は箱を交わすのを止める。俺に向ってまっすぐに飛んできた箱は、俺の目の前でその形を崩し無数の線に変わり、そのまま離散、慣性の法則にしたがって明後日の方向へ飛んで行った。
 今までこの空間に潜んでいた狂気が、目を醒ます。ここに在るありとあらゆる物を、喰らわんと、ゆっくりと、そのまぶたを開くんだ。

 太田光の、静かな声。広い劇場に、静かに、気味悪く、染み渡る。
 「現実の源泉を汲み取り、底の夢の膿を掻き回す。
  世界の皮膚を引き剥がし、裏に返して不条理を包む。
  現実は夢の中へ。悪夢を増長させ、虚構に希望を託し、
  真実に絶望を塗る。
  生まれいずる、私の狂気、具現化せよ。……白日夢(デイドリーム)」
 太田さんがそういい終えた瞬間、醜いとしか表現できない音がどこからともなく劇場一杯にあふれ出す。設楽と小林は耐え切れなくなったのか、耳をふさいだ。
 舞台上の人間たちは、途方もなく狂いだす。
 だけど、俺は聞いた。世界が、裏返る音を。
 「ちきしょぉ……! これか、これをっ! 狙っていたのか!」
 設楽が苦しそうに悲痛に叫ぶ。太田さんは言った。
 「いや、実際あんたら二人が来たときに、空間は分断していたさ。でもそれは飽くまで準備段階。こっからが本番だ」
 太田光は、嗤う。
 「さぁ、地獄を見せてあげよう」
 俺はすぐさま狂いだした舞台上の人間につぎつぎとタッチしていった。彼らは意図も簡単に、崩れ落ち、おとなしくなる。
 一通り落とした後、俺は標的を設楽と小林に移す。俺はすぐさま舞台から跳び下り、駆け足で彼らの元へと距離をつめていく。
 この音に怯んでいる、そして尚且つ、小林はノートを手放している。
 今が、絶好のチャンスだった。
 「食らえ!」
 俺は右手で小林の胸に、左手で設楽の胸にしっかりと触れた。
 それを見て、太田さんはやったと思っただろう。俺も思った。
 しかしだ、
 世の中、そう上手くはいかない。非情すぎるんじゃあ、ないだろうか。
 「なんで、だ」
 俺が違和感を感じ、そう呟いた瞬間、手に激痛が走る。
 「ぐあぁぁぁっ!」
 俺は見事にのけぞり、そのまま後ろに倒れこんだ。
 「おい! 田中ぁぁぁっ!」
 上手く行くと思ったのに。俺はただそう思うしかなかった。

60佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/23(木) 23:59:45
とりあえず、今日はここまでです。結構長く書き下ろしましたが、大丈夫でしょうか。

他の方の作品を見ていると、小林が設楽に対して敬語。設楽はかなり冷たいイメージとなっているようです(激ミルクの誘拐のような感じ)
今回、私の中での彼らが二人でいるイメージが、どうしても「君の席」と「epochTVsquare」で固まってしまっているため、
二人はこのような口調となっております。イメージを壊された方、すみません。
ただ、たまにはこんな、馬鹿馬鹿しいシーンもいいんじゃないかと。いかがでしょうか。

61名無しさん:2005/06/24(金) 09:17:14
>>57-60
乙〜。一人称は珍しいよーな気がする。新鮮で面白いと思う。
ところで太田さんの石の力解放のきっかけは・・・呪文?
それはあまりに少年漫画っぽくなり杉じゃね?と、思ったんだが・・・

62佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 19:43:06
>>61
レスありがとうございます。
太田さんの石の力の解放のキッカケ、呪文ではないです。
能力は下のスレに記載しております。ただ、言わせたかっただけってのもありますが。
確かにクサイですねー。それを覚悟の上でしたが。

63佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 22:56:21
[title] アウトレットシアター#3
 >>57-59からの続き。結構長くなると思われます。
 登場芸人について色々相談させていただきました。とにもかくにも読んで頂きたい。
 閑話休題。いえ、この言葉を覚えたって言いたいだけです。

******

  「まさか……」
 青ざめた太田さんは一つの事実に気が付いた。
 「お前ら、「黒い欠片」を、持っていないのか……?」
 「なるほど、そういうことかぁ」
 設楽が笑った。
 「エメラルドを持っているのは……、田中さんだぁ」
 まるで失くしたおもちゃを見つけた子供のように、無邪気な笑みを顔全体に湛えていた。
 「空間を分断したのは、太田さん。なるほど、なるほどね! まんまと騙された!」
 そして響く哄笑。この狂った空間に、よく似合う。
 「おまっ、違うぞ! これをよく見てみろ! こっちがほんもんだ!」
 と、太田さんが緑色の石を取り出すも、小林が放つ黒い線により、あっけなく破戒される。
 「!」
 小林は言う。
 「最初田中さんがセンターマイクを振り回していたのは、体格の所為だと思っていましたが、どうやら、素手で触ることを、避けていたようですね」
 まずい、小林が冷静さを取り戻してしまった。太田さんの集中力が途切れてきたのが原因だろう。
 「そして舞台上の人間に触れた瞬間、私は黒い気配が消えるのを感じました。そしてそのまま私達に向ってきたのを見て、確信しましたよ。エメラルド、黒い欠片を破戒する力を持っているのは田中さんだと。それに太田さん。それが本当にエメラルドなら、もしくはそれが太田さんの石だとしても、わざわざ俺たちに見せびらかしたり、しませんよね」
 設楽は言った。
 「俺らを浄化して傷つけずに勝つ……、いい方法だったけど、残念でしたねぇ。俺たちが黒い欠片を持っていないというのは、本当に予想外だったでしょう」
 ホント、予想外だった。つまり、この二人は、魂そのものが、黒く染まっているのだから。
 「太田さん。貴方ももう限界のようだ。貴方は、この空間では常に先の物語を考え続けなければならない。考えられないのなら、ただの人。そこが、小林との大きな違いですね」
 設楽は心底おかしそうに、両手を広げた。
 「この状況では誰も来ないかなぁー……。本当にこのホールだけ分断されてるみたいだし。……自分が作った空間に自分が閉じ込められて窮地に陥るのって、屈辱ですよね。ゴシューショーサマ」
 さっきの俺を真似て、設楽が皮肉を言うも、太田さんは反応しない。ホントに立ってるのがやっとのようだ。一回3分って自分で言っていたくせに。倍以上使いやがって。
 「田中さんの腹部から、力を感じますね。さっきの漫才の内容は、ホントって事か」
 小林が不愉快そうに顔をゆがめた。設楽は至って普通にこう提案する。
 「じゃあさ、腹、切っちゃえばいいんじゃない? その黒曜石で」
 見たところ、小林のその石の使いっぷりは伊達じゃない。俺の腹を割くことなど、容易だろう。
 「やめろ……! ンなことしてみろボケ、ぶっ殺すぞ」
 太田さんは力なくそう叫ぶ。空間の効果はまだ持続しているが、本人自体の物理的体力も限界らしい。いくら自分の思い通りに事が運ぶフィールドを作り出せるとは言え、本人がこうではダメなようだ。
 「あーあ」
 設楽は感情を込めず、そう呟いた。
 小林が俺に照準を合わせる。その目は、冷たい。しかしその奥に、焼けるような物が見えた。
 ……ところで、俺はここで終わるのか? あっけないようで、そうでもないかもしれない。
 「……仕方が、ないんです」
 さっき設楽が散々口にしたその言葉を、今度は小林が呟く。
 仕方がない、仕様がない。人の命は、それで片付くのか。
 覚悟を決めた、そのときだった。
 「あどでー、ぼくでえ〜」
という、なんともこっけいな声。俺はこの空間の空気が正常になったのを感じた。そしてその次の瞬間。
 「――?!」
 目の前にいたはずの小林が、いつの間にか吹っ飛んでいなくなっている。
 俺は上半身を無理矢理起こして、入り口を見た。
 見間違えようのない、恐ろしく特徴を持った二人。
 片桐仁と、日村勇紀。

64佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 22:57:52
 「日村さん?! なんで、片桐まで……」
 ご都合主義を通り越した彼らの登場に設楽はただただ唖然としている。
 俺も、ただ焦った。どう考えても小林を吹っ飛ばしたのはこの二人。仲間じゃ、ないのか?
 小林は、座り込んだまま片桐を睨みつけた。側に落ちていた大きな粘土の塊。どうやら片桐が放った物らしい。
 「仁、何故、邪魔をした」
 小林は静かにそう言う。ブチギレて怒鳴り散らしたときより、何倍も怖い。それに怯まず、片桐は叫んだ。
 「俺、賢太郎のことすっごい信じてるし、だから、あえて何も言わなかった。でも、でも! 人を、人を殺すことだけは、人殺しだけは、お願いだから、止めてくれよ!!」
 小林も叫ぶ。
 「仕方がないんだよ! エメラルドは俺たちにとって、脅威なんだ。 破壊しなければならないものなんだ! お前はそれを、……分かっててくれたんじゃないのか?」
 石そのものを壊すこと、つまりそれは、それを持つ物の命を破壊する。片桐もそれを知っているのだろう。
 「分かってるけど、でもダメだ! 俺やだかんね! 誰がなんと言おうと、賢太郎に人殺しなんかさせないんだかんね!! 俺が死んでも殺させないからね!!」
日村は言った。
 「設楽よぉ、俺、お前が何してるのか、ほんっっっと、わからねえけどさ。でも、こういうのは、ヤバイだろぉ?! いや、お前自体やばいのかもしれないけど、でもさ、俺、お前が心配なんだよ。バナナマンじゃなくなるのは、ほんと、嫌なんだよ」
 設楽は、ただ黙っている。
 日村と片桐のでたらめな論理。それでも、俺は嫌いになれなかった。
 俺はよろよろと立ち上がり、
 「おい、まだ、何かする気?」
とだけ、やっとの思いで言った。
 「いえ、見てのとおり、設楽も、小林君も、こんな状態ですし、俺らは「黒いユニット」じゃないですから、安心してください。俺も、片桐も、自分の相方が心配な、だけですから。このままおとなしく、かえり、ます」
 と、日村はそう言った後ドタっと大きな音を立てて倒れた。
 「日村?!」
 片桐が駆け寄るのより先に、設楽が無言のまま駆け寄った。日村は言う。
 「あぁ、〜久々に力使ったからよ。ふへへ、みっともねえな」
 「本来なら、日村さんが俺を担いでいかなきゃいけないのに」
 日村に向けた設楽の表情は、さっきとは打って変わって、穏やかな物に変わっていた。
 「わりぃな、設楽ぁ」
 片桐はそれを見て安心したのか、小林のほうへと歩み寄った。
 「……賢太郎、ごめん、痛かったでしょ」
「……大丈夫だ」
 片桐が手を差し伸べる。小林は、迷うことなく、その手を取った。そしてそのときに片桐は、小林にノートを渡す。「大事な物だろう」、と……。
 「今回は、このような結果になってしまいましたが……、次は上手くやりますよ」
 設楽がそういい残し、彼ら4人は劇場を後にした。

65佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 23:01:52
 俺は頭がぼーっとしたまま、舞台上で未だ横になっている太田さんを呼びかける。俺は、生きているのだろうか。それすら危うい。
 「太田さん、太田さん?」
 「っるせえな、起きてるよ」
 本当に疲れているようだ。声が不機嫌そのもの。
 「太田さん、本当に舞台から降りなかったんだね」
 「そう言っただろうが」
 「……小林と設楽もすごかったけど、片桐と日村もすごかったね。太田さんが作った空間に入って来れたんだから」 
 俺が心底感嘆したようにそういうと、太田さんは「ふっふっ」と、声を立てて嗤った。
 「え? まさか……太田さん、それも全部、謀って……」
 「コンビの愛の力かも知れねぇぞ。俺らにはない、すばらしい物さ」
 太田さんはそう言って茶化そうとしたが、俺は誤魔化されなかった。太田さんは観念したようだ。
 「あいつらが作るような完全に計算しつくされた物語はすごいんだろうが、俺からしてみれば、でたらめに転がっていく物語ってのも、いいもんだよ」
 太田さんは横になったまま、俺に自身の握りこぶしを差し出した。そして、その手をゆっくりと開く。
 俺は、驚愕した。
 太田さんが持っていたのは、「黒い欠片」そのものだ。あまりのことに声を出せない俺に、太田さんは言う。
 「これはさっき、この操られた人間から拝借したんだ。でも、ほんと、いらねえんだ。こんな黒い欠片。何せ俺は他人の運命をもてあそんで、飽きたら放り出す、まさしく悪魔としか言いようがない心の持ち主だからなぁ。持ってようが持ってなかろうが、なんも、変化がない」
 俺はその欠片にそっと触る。欠片は音もなく砕け散り、消えた。
 「まぁ、何が言いたいのかって、お前の力はそのぐらいすげえってことだ。お前の一番近くにいる俺、勿論お前自身も、黒い欠片に汚染されることはない」
 俺は黙って太田さんの手のひらを見つめた。太田さんは語る。
 「あの黒い奴らが狙ってくるのも当然だ。これほど強大な力。そんなものを、お前が持ってること自体が、もう、吐き気ものだね。何でお前? みたいな。だがな、俺は、お前を失うわけにもいかない。お前無しじゃ、俺が成り立たない。それはもう、分かってんだよ。嫌な位。だから、どんな手を使ってでも、奴らを、玩んで、蹴散らしてみせる」
 そういって、太田さんは再び嗤った。俺はそんな彼に、尋ねる。
 「これから、どうする。俺がエメラルド持ってるのばれてるし。この際、白い方に行く?」
 「いいや、それは御免だ。喩え白のユニットに行ったとしてもだ、お前が武器として扱われてしまうのが目に見えている。そんな気は毛頭無い」
 「じゃあ……?」
 「俺たちは俺たちなりに進んでいくだけだ。まぁ……」
 太田光は、嗤う。
 「俺からしてみれば何もかもがくだらねぇから、白も黒もぶっ潰して、忌々しい現実を全部ひっくり返すって言うのも、大アリなんだけどな。
行く宛も無くあふれ出すお前の哀れな力と、それによって増殖する俺の悪意と生来の黒い魂で、ね……」
 Let sleeping dogs lie。……俺はその諺を知っていて、よかったと思った。

 【OutletTheater】is "Quod Erat Demonstrandum".(証明終了)

66佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 23:04:32
以上で「アウトレットシアター」は終わりです。
予想以上に長くなったこの話に付き合っていただき、
真にありがとうございます。

実際、いかがだったのでしょうか。
反応を、ください。いつでも必死なんです、私。

67名無しさん:2005/06/24(金) 23:52:56
乙です!
いや・・・すごかったです。
すごく良く繰り込まれてて読んでいてドキドキしました!
どうにか残したいので本スレ投下もご検討ください。

68佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/25(土) 00:58:26
>>67
レスありがとうございます。
名無しのこの土地において、名を名乗り物を書いていることに恐怖を感じつつも、
やはり、そのお褒めの言葉は、何よりの励みになります。
本スレ投下はまだ踏ん切りがつかないので、時間をください。

69ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/07/04(月) 19:50:57
久しぶりに続きの方投下したいと思います

70ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/07/04(月) 19:53:09
ゴーイングマイウェイで行こう③

 ━襲撃から数日後━

ルミネでの出番も終わり、帰りの支度をしている俺に誰かが声を掛けてきた。

「藤原、久しぶりに飲みに行かんか?」
「ん?‥‥‥ああ中川さん!」

かつて同じ劇場で一緒にやっていた、ランディーズの中川さんが背後に立っていた。今日は出番でルミネに来ていた。

「どうすん?」
「そうっすね‥‥‥」

一瞬悩んでしまった。
時期が時期だけに、ヒョイヒョイ着いて行くのは如何なものか?
中川さんが黒やない保証は無い‥‥。

「‥‥悩んでる言う事は、ひょっとして石の件か?」
「‥‥‥‥」

ズバリ言われ思わず体がビクッとなる。

「判りやすいやっちゃな〜」
「あ‥‥」

自分の反応を見た中川さんに思いっきり笑われてしまい、ただ照れるしかなかった。
「あ〜‥‥オモロイわぁ‥‥安心し、とりあえず俺は黒側の人間ちゃうで。」
「えっ?!じゃあ‥‥」
「まぁ‥‥一応白側にはなるんかな?俺達も黒側に狙われてる立場やし。」

ニカッといつもの人の良さそうな笑顔を浮かべる。とりあえず、他人の放つマイナスの感情に敏感に反応する俺の石が反応しないところを見ると大丈夫そうや。

「分かりました、中川さんの事信用しますわ。」
「ありがとうな。したら行くか?」
「ハイ!」

71ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/07/04(月) 19:55:07
ゴーイングマイウェイで行こう④

「さてと‥‥帰るか‥‥」

帰り支度をしていた俺に、意外な人が訪ねてきた。

「井本〜まだ居るか〜?」
「あっ‥‥高井さんやないですか!僕に何か用ですか?」

先輩のランディーズの高井さんだ。

「あ‥‥いや、中川知らんか?」
「いえ‥‥どうかしたんですか?」
「ん‥‥ちょっとな。実は、石の件で黒の奴らに俺ら狙われてるんよ。やからバラになって行動するんは控えろ言うてるんやけど‥‥」
「にも関わらず中川さんは‥‥」
「居らんねん‥‥‥」

何の変わりのない二人の先輩に思わず笑みをこぼしてしまう。

「いや、笑い事ちゃうから‥井本‥‥」
「すんません。‥‥そういやウチの相方も見えないんで、良かったら一緒に探しましょっか?」
「悪いな、迷惑かけるわ。」


正直、藤原が居らんのが不安だった。

あいつの持つ石━ユナカイト━はマイナス思考(悪意を含め)に反応するから簡単に敵味方の判別がつく。
だが今はあのアホは居ない、ったく‥‥

高井さんの持っとる石の能力が何なんかは知らんが、とりあえず今は信用して一緒にお互いの相方を探すしかない。

「‥‥そういや何でお二人は黒側に狙われてはるんですか?」
「まぁ‥‥いろいろあってな‥‥ジブンらは?」
「僕らは‥‥奴らにはうっとい存在みたいで、石共々狙われてるんですわ。」
「そっちも大変みたいやな‥‥」

互いの相方を捜し歩きながらとりとめなく会話をしているうちに、大阪のかつての仲間がエライ事になってる事や、しかもそれは俺達も良く知る人物によって引き起こされている事。
それを高井さんは俺に呟くように語ってくれた。

「まぁ、そういう事や‥‥」
「‥‥‥‥」


何も言えずただ、沈黙しか出来なかった。

♪〜♪〜


その時、いきなり誰かの携帯が鳴り出した。

「ん?俺のか‥‥たーちんからやん!はい、もしもし‥‥」

『高井か?悪い!今から言う場所にすぐ来てくれや!‥‥うわっ!!』

「おいっ?!どーしたん?」
「どうかしはったんですか?」
「たーちんに何かあったみたいや‥‥おいっ!もしもし!!‥‥」
「‥‥‥」

72ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/07/04(月) 19:59:01
とりあえず今回はここまでを投下したいと思います。

なお、ランディーズの二人及びこの後出てくる$10の二人の石&能力は、後程石スレに書き込みします。

73ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/07/06(水) 21:51:27
すみません、ちょっと手直ししてから投下したいと思いますので、本スレ投下は少し延ばさせていただきます。

74名無しさん:2005/07/16(土) 19:40:02
投下してもよろしいでしょうか…

75名無しさん:2005/07/16(土) 20:34:29
>>74
カモォン!!Щ(゚Д゚)Щ

76「ガラスの部屋」 ◆jReFkq.CTY:2005/07/16(土) 21:13:56
薄暗い路地裏、妙な音楽が携帯から流れている。一人佇む男は携帯を操作し、それを止めた。
男――ヒロシは、ため息をついて辺りを見回した。足元には、「黒」のユニットに属する超若手達が横たわっている。彼等の目にもう戦意はない。寧ろ何処か悲しげに見える。
数日前に道で「石」を拾ってから、これを狙う奴らが毎日襲いかかってきた。その度に石の力で追い払っているのだ。
なんとなく、手の中の石を見つめてみる。
カンラン石、―ペリドットとも言う―の能力は、「相手の悲しい記憶を呼び起こし、悲しい気分にさせる」こと。

77「ガラスの部屋」 ◆jReFkq.CTY:2005/07/16(土) 21:15:01
うまく行けば敵の戦意を喪失させ、逃げることができる。あまり好戦的でないヒロシにとって、有り難い能力だった。
が、力を利用することによる跳ね返りも結構なものだった。相手の悲しい記憶を呼び起こすと同時に、自分の悲しい記憶も呼び起こされるのだ。結構へこむ。
一回一回なら大したことはないが、ここ最近毎日連続で使用しているため、ヒロシの精神は相当参っていた。敵を追い払う度、悲しい―彼女にフラれただとか―事を思い出すのだから。

もう一度ため息をついて、とりあえずスタジオへ向かうため歩き出した。

78 ◆jReFkq.CTY:2005/07/16(土) 21:16:38
とりあえずここまでで。
短くてすみません…
投下初めてなんで添削お願いします。

79名無しさん:2005/07/17(日) 22:17:53
乙です!
いや〜短いのぐらいいいですよ〜
面白かったです!

80 ◆jReFkq.CTY:2005/07/19(火) 00:36:06
ありがとうございます(*´∀`)

81「¥1」 ◆uIwU8V3zEM:2005/07/20(水) 14:12:08
能力スレで中山さんとネゴさん提案した者です。
お二人の話が書きたくなったので、ちょっとプロローグ的な話を投下させてもらいます。


ある日のローカルテレビ局。
先ほどまで収録していたバラエティ番組の司会と思しき若手芸人が、
番組の企画でデザインした自作のTシャツを着て鼻歌交じりに廊下を歩いている。
今日は一日平和だった。石盗り芸人も来なかった。
相方のドッキリもなかったし、楽屋で食べた弁当もおいしかった。
きっと明日も平和だろう、と彼は証拠もなく確信していた。
…しかし、曲がり角を曲がった瞬間。
彼の心の平穏に、微妙にというか彼にとってはそれは大いにケチがついた。

それは異様な光景だった。
百円玉が浮いている。
いや、正確には、
百円玉を乗せた一円玉が、人間の腹部あたりの位置をゆっくりと飛んでいる。
自分より一回りほど大きな硬貨を、やはり重いのか時折ふらつき上昇下降を繰り返したりしながら運ぶ姿はどことなく哀れみを誘うものだった。

82「¥1」 ◆uIwU8V3zEM:2005/07/20(水) 14:17:43
彼は、これはただ糸で釣ってるだけで相方や他の芸人の悪戯なんじゃないかとか、
仕掛け人がどこかから自分の様子を見て笑っているんじゃないかとか、
そういったことも全く考えずに、ただぽかんと口を開けてそれを見ていた。
一円玉は百円玉を背負ったままのろのろと飛んでいる。
…えーっと、これは、なんや?
それを眺めながら、頭上にハテナマークを飛ばす。
が、当然のようにそれに答えてくれる者はいない。
おーい一円、がんばれー。
なぜか心の中でアルミの硬貨に声援を送りながら、頑張って考えを巡らせる。
しかし、驚きのあまり固まった思考はなかなか思うように働かない。
やがて一円は自動販売機の前にたどり着くと、百円玉を投入口に滑らせた。
そのままさっきより軽やかな動きでボタンに体当たりをする。
がこん、と缶ジュースが落ちる音がして、一円玉は取り出し口にひらりと飛んだ。
そこで一円玉は、跡形もなくふっと消えた。
彼は、はっと我に返った。
今の光景は幻だったのか、いや、そんなはずはない。
体中に悪寒が走り、季節はずれの鳥肌が立つ。
彼は思った。
今の、あのなんか勝手に物動くやつやろ。
てことは、考えたないしよくわからんし何か知らんけど、
…ここぜったいなんかおる。
導き出された結論に、自分で震え上がる。
そして。
「…わ、わ、わわわ…。」
………出ーたーーーー!!!
彼はそう子供のように叫ぶと、一目散に走り去っていった。
さすが肉体派芸人といったところか、逃げ足はやはり速い。
後にはただ、奇怪の現場となった自販機だけが立ち尽くしていた。

……彼、八木真澄がやっとあの怪異が誰かの石の能力によるものだと気づくのは、
逃げ帰った楽屋で帰り支度をしていた相方に泣きつき、どうにか落ち着いた後のことである。

83「¥1」 ◆uIwU8V3zEM:2005/07/20(水) 14:35:48

…八木が猛スピードで去ってから数分後のこと、
静まりかえった廊下に人影が見えた。
今日の番組にも出演していた関西の若手ピン芸人、中山功太である。
彼はすたすたと件の自販機に向かい歩いていくと、迷いなく取り出し口に手を突っ込んだ。
そこに先ほど一円玉が「購入」した缶コーヒーがあることを、知っていて当然だという風に。
「あー、やっぱりまだ往復はでけへんか。」
買いに行かすことはできても、取りに行かなあかんのやったら意味ないねんけどなあ。
彼はそう独りごちながら、缶を開けてコーヒーを飲み出した。
「…ぬるなってるし。」
文句を言いつつものどが渇いていたのかすぐ飲み干すと、空き缶をゴミ箱に投げ入れる。
…今日この後暇やしなあ、誰か誘って飯でも行こかなあ。
まさか、今日一緒やった人らの中なら黒の奴おらへんやろしな。
ぼんやりとそんなことを考えながら、中山は楽屋へと帰って行く。
彼のポケットの中に、じゃらじゃらと音を立てる小銭と、
白い貝の埋まったいびつな小石が、ひとつ。

彼はまだ知る由もない。
不用意に石の能力を使ったことで今日の共演者に狙われるきっかけを作ってしまったことと、
その所為でこれから自分と、とある芸人仲間が厄介事に巻き込まれることを。
手に入れたばかりの石と踏み込んだばかりの戦いは、確実に彼を非日常の世界に導き始めていた。

とりあえず、石を知らない若手の間で今日の出来事が微妙な怪談話となって出回ることは、また別の話。


以上です。ローカルネタがちらほらあってすいません…。
ご指摘、添削等あればお願いします。

84名無しさん:2005/07/20(水) 23:44:23
乙です!
面白かったです。番組がなんなのかはわかりませんが(田舎なので)
八木が面白すぎです(笑)

85名無しさん:2005/08/09(火) 13:24:19
作成依頼スレ4とは、関係ないかもしれませんが、(…少し関係あるかな?)
ケンドーコバヤシの、石との出会い編を考えてみたのですが、
添削御願いしたいので投下しても宜しいでしょうか?

86色々不安です… ◆XksB4AwhxU:2005/08/09(火) 16:16:12
>>85ですが、
試しに投下してみないと解らないですよね。
時間があるので投下してみます。

「絨毯雲」

やけに風の強い昼だった。
軽快な足取りで、パチンコ屋から出てきた男は満面の笑みで財布を見つめた。
いつもはぺちゃんこになっている筈のその財布は、やけに大きく膨らんでいる。
たまたま座った台が良かったのか、珍しく早起きして開店前から並んでみたのが良かったのか、普段とは比べものにならないくらい当たったようだ。
ムフ、と含み笑いをしてその財布をポケットに仕舞い直すと、横断歩道で立ち止まった。
信号機は、青が点滅していた。
いつもの彼なら点滅くらいでは立ち止まらないが、ふと何かを思いだしたのだ。

こう…当たりすぎるのも、何やな…

最近の、身の回りの違和感には何となく気付いていた。
パチンコの調子が良いとき、悪い事が起こるのは昨今の彼の回りでは増えていたからだ。
彼−小林友治は大きく一度溜息をつき、又青になった信号を見て横断歩道を渡った。

ふと、軽く見上げた空には、小林友治の無意識のうちの不安を纏うように灰色の雲が満ちていた。

87色々不安です… ◆XksB4AwhxU:2005/08/09(火) 16:36:23
>>86続き

近場までバイクを使うほど横着者ではない彼だが、今日だけはバイクを使わなかったことを少しだけ後悔した。
いつもなら素通りしてしまうような公園横の通り。
なにやら前の方で子供が騒いでいる。
気になってはいたが、いつもバイクに乗っている時のように我関せずに素通りしようと思った。
目の前を通るまでは。

「やめとけや」
また、自分の意識とは関係なく、その子供の集団のなかのリーダーといえる一人の子供の肩を叩いていた。
子供ははっと気付くと回りの子供を引き連れ逃げていった。
足元を見ると、傷ついたランドセルが落ちていた。
柄にもなく懐かしさを感じながら傷ついた蘭だセルを持ち上げる。
その横に、正にランドセルに背負われているのか、と言うくらい、小さな少年が蹲っていた。
「…お前も、やられっぱなしやったアカンで」
体に付いた砂をはたいて、頭を撫でると少年は小林友治を見上げた。
なんや?
口には出さずに目で返すと、少年はポケットから何かを取り出した。
「僕これを守ってたんだ」
抑揚のない、形式的な言葉を放った少年は、取り出したそれを小林の掌に乗せた。
「おい、これ…」
全て聞き終える前に少年は今までのその少年では無いかのように、素早く立ち去った。

88色々不安です… ◆XksB4AwhxU:2005/08/09(火) 16:46:12
>>87続き

一人、取り残された小林友治は、掌の石を見た。
専門の店に出せば、もしかしたらそれなりの値が出るかも知れないその石は何故か、小林友治の手にしっくりときた。
その石を一度、又握りしめる。

…何かを思いだした。
その”何か”が解ったような気がした。
最近、楽屋や廊下から漏れ聞こえる”石”を主語にした会話。
その会話をしている人達の尋常とは言えない雰囲気。

そして何となくだが、その先のことがこれからどんどん
解ってくるような予感を、小林は感じていた。

89色々不安です… ◆XksB4AwhxU:2005/08/09(火) 16:52:31
>>88続き

石を財布の中に仕舞ってとりあえず、
今日は帰ろうと思った。
今度はさほど気にもしていない様子で溜息を短くつき、煙草に火を点けた。
そして、遠い目で先刻よりいっそう黒さを増した空を見た。
その表情は、この先小林友治が突き当たる大きな苦悩を予感しているようだった。



…以上なのですが、
じつはコバ氏の石の力をあまりかんがえていませんorz
まだ使う前の話でしたもので…
どうでしょうか?

90名無しさん:2005/08/09(火) 17:23:13
いいです乙です!
台詞とか雰囲気とかしっかりケンコバさんらしくて、あと文体が好きです。
これから陣内さんと絡めていくんでしょうか?

91 ◆XksB4AwhxU:2005/08/10(水) 01:55:43
>>90
ありがとう御座います。
陣内智則との絡みは進行スレで相談していきたいなぁと考えています。
もし他で陣内智則が暴走して其れを誰かが止めて…と言う話を考えている肩が居ないので有れば、小林友治にそれをしてもらいたいなぁ、と自分は考えていたので。
ただそんな話を自分が書けるのかに多大な不安がありますが

92名無しさん:2005/08/10(水) 05:41:11
関西圏以外はあまりコバを見る機会がなく詳しい情報がないので、
どこかに「小林友治ことケンドーコバヤシ」みたいな文を入れてもらえると助かる。
重箱隅スマソ

93名無しさん:2005/08/10(水) 23:27:17
すごくいいと思います

94「¥1000」 ◆uIwU8V3zEM:2005/08/14(日) 11:32:12
>>81の続きというか、本編投下します。
ちょっと長くなるかと思います。

舞台終了後の楽屋。
仕事を終え満足げな若手芸人たちがちらほらと帰りはじめる中、
中山功太はパイプ椅子に腰掛け、じっとてのひらに収まった小ぶりの石を見ていた。
その石は一見すると路傍に転がっている石ころとあまり変わりないようなものだったが、
中山がそれを手の中で転がすと、白い二枚貝の貝殻が埋まっているのが見えた。
持ち上げて蛍光灯の光にかざしたり、貝と石の境目の部分を指でつついてみたり、
そう子供のようなしぐさを繰り返す中山の目は、妙にぼんやりしていた。
「あれ、まだ帰んないの?」
その声にはっと顔を上げると、既に帰り支度を済ませたネゴシックスこと根来川が立っていた。
「ん…ああ、一緒に帰ろか?」
中山は少し遅れて、やや逸れた返答を返した。
「え、っていうか飯行かない?」
根来川は一瞬きょとんとしたものの、すぐにそう提案する。
「この前いい焼き肉の店見つけたって言ってなかった?
 そこ行こうよ。安いんでしょ?」
「ええな、行こか。」
そう言って立ち上がると自分の鞄を取り、ズボンのポケットに石を突っ込んだ。
「あれ、何それ?」
「…え?ああ、これ?」
その不自然な物体に気づいた根来川が声を掛ける。
中山は石をポケットから出すと、はい、と根来川に渡した。
「…石?」
「なんちゃら言う貝の化石。こないだ露天商で見っけた。」
「へえ、そんなのもあるんだ。」
根来川は石を手の中で転がしてまじまじと見ている。
「…そこな、ちっちゃいババアがやっとったんやけど。」
「うん」
「売っとんのなんや石ばっかで、おもろいな思て見てたらオレにこれ買え買え言うて、
 そんでオレも結構気に入ったし安うしてくれたから、置物代わりにそれ買うたんやけど…」
そこで中山は一呼吸置いた。
中山の様子に、根来川は視線を石から中山に移す。
「…その石、変やねん」
その言葉に根来川は、不思議そうに目を瞬かせた。
「…変?」
「そう」
「…どんな風に?」
「……笑わん?」
「笑わん笑わん」
「うそーありえへーんとか言わん?」
「言わない言わない」
「…絶対?」
「うん、絶対。」

95「¥1000」 ◆uIwU8V3zEM:2005/08/14(日) 11:33:59
その言葉に中山はやっと「誰にも言わんといてな」という前置きつきで話し出した。
根来川の目つきが真剣になる。
「……こないだな、その石な、」
「うん」
「ピカって光って、五円玉浮かしてん」
「ウソォ!!?」
根来川はそう大仰にも見えるリアクションを返すと、手中の石と中山を訝しげに見比べた。
一方の中山は、「言わへんて言うたやん…」とぶつぶつ言っている。
「…ごめん、でも、ありえんない…?」
「ありえへんも禁止ー。」
「いや、でもそうだって」
なおも訝る根来川に文句を言う中山。
そのやりとりをもう少し続けた後、中山がため息をついた。
「ほんまやって、見たんやから。」
「…五円玉浮くとこ?」
「うん。石いじっとったら光って、たまたま机にあった五円玉、浮いてん」
「………ほんと?」
「ホント。」
「…うそお」
「うそちゃうて。」
その応酬も何度か続き、中山は焦れたように頭を掻いた。
「……そんなの、あるの?」
「…ある…んちゃう?あったし。」
そういうと、二人は黙り込んでしまった。
しばらくの沈黙の後で、根来川が口を開いた。
「…その売っとったおばさんのとこ…行った?」
「うん。行ったんやけど、もうその公園にはおらんかった。」
またも少々の沈黙。
手持ち無沙汰そうな根来川は、また石を観察しはじめた。
「…その五円玉どこ行ったの」
石を見ながら言う。
「オレがパニクっとう間に消えた。」
「消えた?」
「…消えた。」
勘ぐるような根来川の目つきに、中山はまたため息を吐く。
「信じてくれへんのー?」
お前やから言ったのに。
特に根来川からの催促があったわけでもないのだが、中山はそう言ってむくれてみせた。
「いや、だってそんなの…」
その反論は、途中で途切れた。

96「¥1000」 ◆uIwU8V3zEM:2005/08/14(日) 11:42:50
…バタンッ!
そう大きな音を立てて、ドアが壁に打ち付けられるように開いた。
それと同時に、空を切るように振るわれた鞭の、ビシッという短い音が響く。
「…無防備すぎやで」
その台詞と共に、男が一人入ってくる。
「へ…?」
根来川は間の抜けた声を上げ、きょとんとした目で男を見つめた。
よく見知った顔。確か、今日の舞台には出ていなかった、筈。
「…っ、畜生」
やっぱり来るんか。
途端、中山の顔つきが変わる。
半ばやけくそのような、戦いの顔。
まだ状況のつかめていない根来川は「え?え?」と二人を見比べた。
がらんと広い室内には中山と根来川、それと男の三人だけが立っている。
「アカンよ、こんな所で石の話なんかしたら」
男がじりじりと、中山と根来川に向かって進み出ていく。
その異様な雰囲気に、思わず逃げるように椅子から離れ後ずさる二人。
だが、すぐ壁際に追い込まれてしまう。
男は口角を意地悪く上げると、ほんの少しだけ悲しそうな目をした。
しかしその色は一瞬で消え、真っ黒い底知れぬ目に変わる。
「えっ…」
根来川はその一瞬の色に気づいた。
「まだ、あんま知らへんねんな。気ぃつけた方がええよ。」
男がその雰囲気に不似合いな助言を皮肉げに呟く。
「…ネゴ、石、貸して」
「えっ、あ、うん」
中山はそれに舌打ちすると、隣の根来川にやっと聞こえるような声でそう伝え手の平を向ける。
この状況に混乱しているものの、その言葉に条件反射的に石を渡そうとする根来川。
男はそんな動作を見逃さなかった。
「狙われるから」
オレみたいなんに。
そう言い終えるか否か、男が黒い光と共に手をかざす。
「…逃げえ!ネゴ!!」
中山が思わず叫んだ。
男の手から伸びる黒い鞭が、根来川にまっすぐ向かっていく。
…黒い長い、人に牙を剥く蛇のように。


一旦ここまでです。
ネゴさんの言葉とか不安な所があるので、添削お願いします。

97 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:38:40
前にヒロシの話を投下した者です。大分推敲したんで再&続き投下します。

   〔〔黄昏の翠玉〕〕

薄暗い路地裏に、妙な音楽が流れている。一人佇む男が携帯を操作し、その音を止めた。
男――ヒロシは、顔を上げて誰も居ないことを確認し、ため息をついた。
足元には黒の若手達が倒れていた。彼等の目にもう戦意はなく、寧ろ何処か悲しげに見えた。

手の中の石を見つめる。
少し前この石を拾った――それが発端だった。

98黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:39:50
「黒に入りませんか?」
ある日、『黒のユニット』と名乗る若手(名前も知らない男だった)に呼び出された。
「…どうして」
「中立でいたってどうしようもないでしょう。どっちかに付いた方が楽ですよ?」
男は笑みを浮かべ、石を手の中で転がしながら言う。
ポケットの中の石が、熱くなった気がした。ヒロシは、それを握りしめながら昨日の事を思い出していた。


コツン。
「……ん?」

道を歩いていたら靴に何かが当たった。何だろう?と下を見ると、綺麗な石が転がっていた。
(宝石?)
拾って眺めてみると淡い黄緑色が煌めいた。石が手に馴染むような妙な感覚がした。
ふと、ある考えが浮かんだ。ひょっとして、これ、噂の…
(あの『石』か?)

99黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:41:27
「まさか、なぁ」
そう呟いてちょっと迷って――石をポケットに入れ、歩き出した。
――予感は的中したようだ。

『石』のことは噂で知った。最初は、正直冗談だと思った。
だが、『石』にまつわる噂(あの部屋で誰と誰が戦ったらしい、だの、石が汚れてる奴は危険らしい、だの)が耳に入ってくるようになり――次第に、あれは本当の話なのかと思い始めた。
今、男の持つ、黒く妖しく光る石を見て確信した。あれは本当の話だったのだ、と。

石を見つめ、男は笑っている。
「石はこんなに素晴らしい力を与えてくれるのに、白はこれを封印してしまう…もったいないと思いません?」
陶酔したような表情。
「貴方だって力が欲しいでしょう?損はありませんよ、こっちに」「嫌です」
男の言葉を遮って言い放った。そのままお互い睨み合う。
男は笑みを崩さない。

100黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:42:17
『白のユニット』と『黒のユニット』の噂を聞いた時、もし『石』の争い(本当だったらの話だが)に巻き込まれたら――どっちに付くべきだろうと少し考えたことがある。
どっちに付いてもややこしそうだから、中立がいいなと思った。今もそう思っている。

「なら、力づくで行きますよ」
男が笑いながら言った。
と同時に、男の手から糸が何本も出て、辺りに広がる。
「なっ!?」驚いて周りを見る。
「あぁ、びっくりしました?」
俺の能力ですよ、と男が笑う。糸が迫ってくる。

どうすればいい?
ヒロシは内心焦っていた。

糸が腕に絡み付く。降りほどく。

101黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:43:07

(まだ石の力にも目覚めてないのに)―どう戦えと?
もう一度絡み付いてくる。今度は払ってもほどけない。

この石を渡して見逃してもらうか?どうにかして戦うべきか?
…降伏した方が、

糸が体中に巻き付き、あっという間に取り押さえられた。
――とっさに、ポケットの中の石を手の中に握りしめた。


いつもここからの菊地は苛立っていた。上に与えられた指令が原因だった。
どうして俺にヒロシの監視を命じるんだ、と。
この人と自分の相方・山田が仲がいいことくらい、上だって知っているだろうに。

102黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:44:05
…いや、知っているからこそ、か。
山田にバレたら面倒臭いことになるだろう。彼の友人が襲われているのを、黙って見ているのだから。それは避けたい。
それに、もしも、ヒロシが山田と一緒にいる時に黒に襲われて、万が一、敗れてしまったら。
自分に与えられた命令は監視だ。山田を助けようとしても、それは上の命令に逆らった事になる。

牽制のつもりなのか。俺に『裏切るな』と言っているのだろうか。苛立ちが増す。持て遊びやがって。
ふと見ると、ヒロシが取り押さえられていた。冷ややかな目でそれを眺める。

103黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:50:50
あの若手は単純な奴だが、あの調子だと心配はないだろう。…うっかり、殺しでもしない限り。
その場合、あのシナリオライターが先に止めている筈だから、心配は無いと思うが。
だが、この任務が解せない。黒に入れるだけなら、自分の監視など必要無いのに。
まぁ何か考えがあるのだろうと思い、監視に集中することにした。


今日はここまでです。長くてすいません(;-Д-)
何かミスがあったら教えて下さい…m(_ _)m

あと、山田さんとヒロシさんが何て呼びあってるか知ってたら教えて下さい…。

104 ◆jReFkq.CTY:2005/08/22(月) 00:02:08
忘れてたΣ(´Д`)

男の能力:手から糸を出す。何本も出したり、操ることも可能。
糸が多く太く長い程、体力を消耗する。力を解除すると、糸は消える。


大量スレ消費、すみませんでした…orz

105名無しさん:2005/08/23(火) 13:05:54
乙。続きが気になる…

106 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:04:25
廃棄小説スレにいた者です。こっちに続きを載せる事にしました。


「な…何これ…」
大木は首を傾げた。
紙には見知らぬ横文字が殴り書きで書かれてあった。指でなぞりながら一字一字ゆっくり読んでいく。               
「うー…汚くて読めねえよ…えーっと…せ、ら、ふぃ、な、い、と…“セラフィナイト”…?意味わかんね」
何となく可愛らしい響きの、聞いたこと無いようでどこか聞いたことがある名前。宝石か何かの名前なのだろうか。
何にせよ少し声に出して読むのが恥ずかしい。

言い終わった途端、大木の目の前に転がっていた石が緑色の光を放ち始めた。
石を拾いかけていた男達はそのまばゆい光に目が眩み、石を取り落とす。
石の光が消えると同時に、ひゅるるる…という風の音がして、木の葉がくるくると舞う。
そして、大木の背後から明るい声がした。

「堀内ケン、あ、参上〜っ!しゃきーん!!」

3人の視線が、一点に集中する。
茶髪の男―――ネプチューン堀内健の姿が、そこにあった。
「え〜何何?もうピンチになっちまったワケ?だっらしねーなあ!」
「…はあ、すみません」
堀内は大木の腕を引っ張り、身体を起こさせた。落ちているリュックも拾ってやる。
「じゃあ、ちゃっちゃと終わらせよーぜ。この後収録なんだよ。泰造と潤ちゃん待たしてっからさぁ」
くるりと男達の方へと向き直り、小馬鹿にしたような口調で挑発する。

そしてまんまとその挑発に乗った血気盛んな若手は、相方と思われる男の制止を振り切り、目の前の大物先輩に向けてその赤い光線を放った。

107 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:05:30
常人より遙かに運動神経の良い堀内は身体を器用に折り曲げて光線を交わす。だがその光線は大木のときと同じようにぐにゃりと反転し、再び堀内に向かって襲いかかってきた。
それに気付かない堀内に大木が声を荒げる。
「ちょ、堀内さん、後ろ!」
「お、何ボンス。“志村後ろ!”みたいなこと言っちゃって。……ありゃ」
堀内の唇が「やべっ」と動いたのを大木ははっきりと見た。
「“やばい”ってアンタ…」
その瞬間、真っ赤な光が堀内を包み込んだ。

あまりにもあっけなさ過ぎる展開に、大木はもちろん、光線を放った男も目を丸くしている。だが直ぐにそれは笑みに変わった。
「驚かせやがって!やっぱり堀内さんは原田さん達が居ないとてんで使えませんね!」

「何の話してんの〜?俺にも教えてくれねえ?」
「えっ…」
背後に人の気配を感じた時には、もうすでに堀内が小泣き爺の如く男の背中に負ぶさるようにのしかかっていた。
隣では相方が口を開けて固まったまま突っ立っている。
男は堀内の重さによろけてうつ伏せに倒れ込んだ。堀内は男の頭をこんこんと叩く。
「良いね〜その台詞。久しぶりに本気で頭に来たかもよ?」
段々と声が低くなってくる。どうやら本気で怒ってしまったようだ。
「こ、の…!」
相方の男が木材を横に振り回し、堀内の頭を狙った。確実に避けることの出来ない間合いだった。だが、
「くそっ……また…!?」
振り切った木材は宙を切った。同時に、堀内に乗っかられていた男の背が急にふっ、と軽くなる。
「何だよ!何が起こったんだ!」
慌てて男が起きあがり、相方に詰め寄った。
「消えたんだよ…一瞬で」
「消えたって…」
「まるで…風みたいに、ふわっと…」

108 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:06:38
顔を青くして会話をする男達を、大木は少し離れたブロック塀から覗き込んでいた。
今までくりぃむしちゅーや川島が言っていたことは、ただの冗談だと思っていたのだが。
目の前でこんな光景を見せつけられてしまっては、認めざるを得なくなってしまった。

「つーか堀内さん、どこ行ったんだ?」
ぽつりと呟く。
すると、背後からひゅるるる…と緩やかな旋風が巻き起こり、その中央からふわりと音もなく堀内が現れた。
それに気付かない大木にそろそろと近寄り、思い切り肩を叩いてやる。
「う、うわッ…」
心臓が飛び上がり無意識に叫び声が出る。堀内は自分と大木の口元に人差し指を当て、笑いを堪えながら(しーっ)と言った。
「くーっ、どう?かっけぇだろ俺!忍者みてーだろ!」
「忍者って言うよりお化けですね」
「まあとにかく!」
堀内は大木の眼前に手を突き出す。
「お前に怪我させた奴らを許すわけにはいかねー。俺も何か馬鹿にされたし。一発くらい殴っても文句言われねーだろ」
「でもあいつのビームみたいなの追いかけてくるんですよ?」
大木の言葉を無視してぱきぱきと肩を鳴らし、

「さあ、駆け出し若手君の前座は終了でーす。そろそろ本番行っちゃいましょー、3秒前〜、2、1…」
口元に手を当て、芝居がかった口調で聞こえよがしに叫ぶ。
ゼロ。
そう言ったと同時に堀内の身体に一瞬、テレビがぶれた時のように青黒っぽい影が掛かる。
そして一秒も経たない内に姿が完全に消えた。
「いくら追いかけて来るビームでもさぁ、当たんなかったら意味ねぇよな〜」
わざと遠くに堀内が現れると男が光線を放つ。
光線はしつこく堀内を追いかけ回すが毎回ぎりぎりの所で堀内は消え、倉庫の屋根の上など様々な場所に姿を出す。

109 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:07:49
「あー疲れた。そろそろ終わりにすっか。…っとその前に、痛い目に会ってもらうぜ」
「えっ…うわあ!」
「ボンスの仇、覚悟!」
あろう事か男達の頭上に現れた堀内は、重力に任せて二人の身体をどすんっと地面に叩き伏せた。
「ごめーん、痛かった?不意打ちには注意しねえと」
けたけた笑いながら、気絶して起きあがれない男達の上から一瞬で大木の隣へ移動する。

「…瞬間移動?」
大木が言った。
「そっ。もう気付いてると思うけど、これ全部石の力だから」
「堀内さんの瞬間移動も、あの若手の光線も?…じゃあ俺は…」
「お前のはそのー…あれだ。“呼び寄せ”ってやつ。お前紙読んだろ?セラフィナイトって。俺の石の名前だよ。“天使のお守り”だって。かーいいだろ」
堀内は鼻の下を擦りながら胸を張った。
少し違和感はあるが、まさに「永遠の中2」の彼にはうってつけの石かもしれない。
「魔法みたいですね…」
「マホー?そんな綺麗なもんじゃねーって。まあ詳しいことはそのうち話していくから」
すると、大木の石が光り始めた。
「え、なんか光ってますよ?」

「あー残念、時間切れだ。じゃあ俺、泰造と潤ちゃんのとこ戻るから。シュワッチ!」
石がぱっと強く光ると、堀内の姿も完全に消えた。辺りを見渡してみたが、堀内の声は聞こえない。今度は瞬間移動したわけでは無いようだ。
「…ああ〜何か分かんないけど、これから大変そう…」
大木は夕焼けの空を見上げて、ふーっと溜気を付くのだった。



ばたばたという足音と共に、楽屋のドアが勢いよく開けられる。
「健!お前どこ行っとったんや!」
「俺ずっと此処にいたよ」
「もう本番はじまっとるんやぞ、早よ来い!」
怒鳴る名倉をまあまあ、と原田がなだめる。

スタジオに向かう途中の老化でこっそりと原田が尋ねた。
「ケン、本当は何処行ってたの?」
「ん?ちょっと恩を売りにね……」

110 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:08:05
堀内健(ネプチューン)
石:セラフィナイト [羽のような模様がある。黄緑+白]
能力:瞬間移動。半径100メートル以内の空間ならどこでも移動可能。
条件:一瞬で移動するので長い間姿を消しておくことは出来ない。
   連続で使えるが、使うたびに移動範囲が狭まる。
   自分以外の物も瞬間移動させられる。

111 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:08:57
長々とすみません。ここで終わりです。

112 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:13:24
間違い
老化→廊下

113名無しさん:2005/08/24(水) 21:28:24
長編乙です!爆笑・くりちゅー・ネプのボキャブラ御三家が揃いましたね。
ホリケンの少年漫画っぽいキャラがこの設定にピッタリで、バトルも軽快で面白く、
楽しませて頂きました。

114名無しさん:2005/08/25(木) 08:31:53
乙。
面白かったよ。ホリケンはやっぱ白なのかな?
本スレにも投下キボン

115 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/25(木) 17:51:21
白か黒かは考えて無かったりします。
くりぃむが白、爆笑が中立と来たらやっぱネプは黒かなーとは
思ってますが。
他の人はそこんとこどうしたいのか意見欲しいです。

116名無しさん:2005/08/25(木) 18:45:01
本スレ投下に一票ノシ

117 ◆8Y4t9xw7Nw:2005/08/25(木) 19:35:36
大木を襲ったのが『黒』の若手っぽいし(『白』だったら、浄化するにしても
他人の石を無理に奪おうとはしないでしょう、多分)『白』かなとは思うのですが。

118名無しさん:2005/08/25(木) 20:54:31
恩を売るって言葉から黒のホリケンが下っ端を使った狂言って可能性も…
ってこれは◆BKx〜さんが決めることであってこっちが深読みすることじゃないね。
とりあえず乙です。

119 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/25(木) 23:14:13
じゃあ本スレ投下にあたって、ホリケンが白か黒か考えておきます。
その為に所々直したり書き加えたりしてからの投下になります。

120 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/27(土) 01:41:40
書き加えすぎた…。ここで終わりとか言っておきながらネプサイドの続き
あるんで、こんな設定で良かったら本スレにまとめて投下します。


楽屋では堀内がカチカチと携帯をいじっている。
「ケン、“恩を売った”って誰に?」
静寂を破って、原田が尋ねた。
「さっき、新入りの若手から連絡あったんだ。“せっかく大木さんの石を奪いかけたのに”」
「のに?」
「“堀内さんに邪魔された”だってさ」

一瞬の沈黙。
「あ、れは…邪魔っていうかねー、友達の危機を救っただけだよ。それにまさかあいつらが黒の若手だと思わなかったんだって」
「それ、ホンマか?」
その時、隣で見ていただけの名倉が原田の肩に手を置き、言った。

「泰造、こいつきっと“白”の間者やで」

「はっ…?」
「まっさか!考えすぎじゃない?ケンが俺たちの敵な訳ないでしょ」
「当たり前じゃん!ひっでえよ潤ちゃん!」
堀内は笑いながら名倉を叩く。
「原田さん、名倉さん。スタジオの方お願いしますー」
スタッフの声だ。原田と名倉が振り向き、堀内はどこかホッとした表情を浮かべる。
「…いや、すまんな健。冗談やって」
申し訳なさそうにそう言って名倉は先に出て行った。
原田がジャケットを羽織りながら話しかけてきた。

121 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/27(土) 01:44:25
「そうだ。大木の奴も石持ったんだろ?」
「そうだけど…」
「あいつも黒に引き込んでやろっか。そうだな…明日ロケで一緒になるし」
「あし…!!?…や、いや。そっかあ、頑張ってな〜あはは…」

パタン―――扉が閉められ、楽屋には堀内一人のみになる。だがその数秒後、
「あ、ごめん忘れ物………ケン〜?」
再び原田がドアを開けた時には、堀内の姿は無かった。



「もしもし?大木、お前今すぐ上田と有田んとこ行け。“白いユニット”に入れてもらうんだよ!…いいか、助けてやったんだから俺の言うこと聞けよ!」
誰が見ても一方的過ぎる電話だった。相手が出るやいなや一息で捲し立てるとまた一方的に電話を切る。
伝わったかな?大丈夫だろ、あいつああ見えて物解り良いからな。
携帯をぱたんと閉じ、フェンスに背を預けた。
堀内は一階から一気に誰も居ない屋上まで移動していたのだ。

「…あーびっくりした…」
堀内は白のユニットの人間だが、黒である原田と名倉と共に行動している。いわゆる“スパイ”だった。他の二人が黒であるということから自然と自分も黒の人間だと信じ込ませていた。
もちろん原田と名倉も例外ではない。
「黒は嫌いだけど…俺が白って事が泰造たちにばれるのも色んな意味で嫌だなー…。はあ、俺ってばカワイソ。身の振り方考えなきゃなあ〜」

堀内は何度目かもわからない溜息を吐いた。

122 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/27(土) 01:48:00
泰造と名倉が黒で、ホリケンは黒のふりしながら二人と一緒に居る
…みたいな感じで。
多少の矛盾は目をつむって欲しい。

123名無しさん:2005/08/28(日) 21:43:38
投下お願いします

124名無しさん:2005/08/30(火) 03:48:57
何となく思いついたけど、元の流れと繋げられる自信が無いので此方に落としてみます。
まだちゃんと決まってない設定もあるのでそこら辺は最後に説明しておきます。


「僕等はただの人形だ」
うし君は自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
「僕等はただの人形だった」
それを聞いたカエル君は強い口調でその言葉を否定した。
「僕等はただの人形だ」
違う違う、と頭だけでなく身体全体を横に振ってうし君はその言葉を否定する。
「今の僕等はただの人形じゃない。意思がある…自分達の意思があるんだ!」
声がするのは一箇所で、それは自分達の口から発せられているものではない。
だがしかし、彼等は実際自分達の意思で動いていた。
自分達の姿を見れば確かに、足の無い胴体の下から伸びているのは人間の腕。
この腕がなければ、中に入っている手がなければ自分達は動けないただの布と綿の塊。
壁に寄り掛った格好で床に座り、ぐったりと項垂れているのはその腕の持ち主。

「じゃあ、彼は何?」
紺の覆面をし、黒ずくめの服を着ている人間を指してうし君は訊ねる。
「元・僕等」
自分達のついている腕だけを地面と垂直に保ったまま動かない人間を見て、カエル君は答えた。
「元?じゃあ今は?」
未だに混乱している様子のうし君は、不安げな声で相方に訊ねる。
「今は…僕等が彼だ」
自信たっぷりにそう告げたカエル君はさらに言葉を続ける。
「そこに居る男の頭の中に僕等は居た。僕等は彼だった…彼が僕等だった」
自分の腕全体を使って、俯いたまま言葉を話す男を指す。
「彼の思ったようにしか動けなかった。彼の思うがままに操られているだけだった」
うし君に反論させない勢いで、カエル君は話し続けた。
「だけど、今僕等はこうして自分の好きな事を…彼の口を通してだけど、好きなだけ話せる!」
覆面の男は項垂れたまま、カエル君の台詞を嬉しそうな声で喋っている。
「僕等は彼に操られてるんじゃない。僕等が彼を操れるようになったんだ!!」

「…そんなの、やっぱおかしいよ」
黙ったままで―彼等はどちらかが話しているときはもう片方は黙っているほか無いのだが―相方の言葉を聞いていたうし君がようやく口を開いた。
「だって僕等は人形で、そんな…魔法みたいなことがあっちゃいけないんだよ」
うし君はあくまでも元の彼の、人間としての常識を持ち合わせているようだった。
だが一方のカエル君は違った。大勢の人間の前で自分達が生きているかのように振る舞い、喋っていたという記憶が強かった。
「僕等は沢山の人と喋って、沢山の人に見られて、お笑いコンビ・パペットマペットとして世間に認められていた」
「違う、それは違うよカエル君…だって僕等は人形で、人間達は僕らを人形としてしか見ていない!」
「家畜の分際で煩いんだよ。そんなに言うならずっと黙ってて。僕は僕のやりたいようにやるから」
そう言いながらカエル君がうし君の頭を強く叩いたとき、うし君の頭から黒いガラスの欠片の様な物が抜け落ちた。
「…頭にノミ飼ってるなんて。さすが家畜だね」
カエル君は床に落ちたそれを見て皮肉を言う。いつもなら何らかの返事をしてくるはずの相方は黙ったままだった。

125名無しさん:2005/08/30(火) 03:53:23
「…なんで黙ってんの?反論しなきゃ面白く無いじゃん」
カエル君はそれっきり動かなくなった相方を突付いたり叩いたりしていたが、突然何かに気付いたように大きく手を叩いた。
「そっか、これが原因か」
床に落ちている黒い欠片を拾い上げ、試しに相方の綿の詰まった柔らかい頭に突き刺した。
「…あれ?今僕どうしてた?」
突然動き出した相方を見て、カエル君は理解した。
カエル君の頭の部分…その中に入っている覆面の男の手には、黒い欠片の感触がある。
「これのお陰…ってことか」
カエル君は自分の本来の身体である人形ではなく、
後ろの男の方に意識を集中すれば彼の手でだけではなく身体全体を動かせることに気付いた。

「あっちゃいけない魔法みたいなこと…嫌なら君は黙ってて良いよ」
「何言ってるのカエルく…」
いつまでも煩い相方の後ろにまわって、彼の頭からはみ出している黒い欠片を引き抜いた。
動かなくなった相方の体を、後ろの男の方に意識を集中して動かしてみる。
手を動かすだけで、うし君の身体は簡単に彼の思い通りに動いた。
「ふーん…いつもこんな感じで僕等を動かしてたんだ」
呟いた彼は男の手から相方の体を引き剥がす。
そして同じように、元・自分の身体をも相方の体の中から出た人間の手を使って引き剥がした。

「…僕は、僕だ」
そこから現れた手を見て、彼は呟く。
「操られたりしない。僕は僕の好きなように…」
その掌には黒い欠片。それから流れ込む力を感じたカエル君は、拳を握ってニヤリと笑った。
彼の意識に連動して男の表情が変わる。
彼の…カエル君の心は今まで自分を操っていた男を逆に支配している、という優越感でいっぱいになる。
「この欠片があれば…僕は僕で居られるんだ」

126名無しさん:2005/08/30(火) 03:56:49
説明
<何故人形が意思を持ったか>①人形に意思を宿らせる能力者の仕業。
②パペットマペット自身の石の能力が欠片で歪められて。のどちらか。

カエル君が欠片に魅入られて黒に〜というような感じの続きを何となくですが考えてます。
添削お願いします。

127名無しさん:2005/08/30(火) 13:59:23
乙です!面白かったです。
意思を持った理由は1番でも2番でも面白そうですね。それぞれ動かしがいがあって。
自分パペマペの能力投下した者なんで、お話読めて嬉しいです。

128名無しさん:2005/09/02(金) 00:22:36
>>127
レス有難うございます。他の人の感想が聞けて嬉しいです。
パペマペの能力面白そうだったので①の方にしようと思います。
②だと能力変えなきゃいけないのでそれは勿体無いですから。
少し手を加えて、あと能力者の能力と人間も考えて…話がまとまったらまた来ます。

129名無しさん:2005/09/09(金) 11:31:48
ピースの話を書いてみました。
一応今の時点では矛盾しないように書いたのですが、
やはり今ピースが出ている小説が終わるのを待った方がいいですか?

130名無しさん:2005/09/09(金) 15:57:12
>>129
ここは添削だけなので投下だけならいくらでもどうぞ。
期待して待ってます。

131129:2005/09/09(金) 21:40:34
ありがとうございます。
お言葉に甘えて投下させてもらいます。


それはある日のこと。ピースの2人がまだコンビを組んで間もない頃の話である。
劇場で行われる笑いの戦いを征し、見事今日をもって500円芸人の肩書きを手に入れた
2人は楽屋にいた。周りの後輩芸人には「おめでとうございます」と祝ってもらい、先輩
芸人には「今日はおごってやる」と声をかけてもらった。
「やったなぁ!マタキチ!」
綾部もちろん上機嫌だ。いつものうんさくさい笑顔を全快にしている。
「やったな。」
又吉は言葉少なく返した。
「なんだよマタキチ。やっと勝ったのに。どっか具合でも悪いのか?」
綾部は相方のいつにも増した無口さに心配して顔をのぞきこんだ。
フイとバツの悪そうな顔をして又吉はそっぽを向いた。その顔を見て綾部に嫌な予感が走った。
「もしかしてお前昨日また石を・・・!」
そう綾部が声を荒げた瞬間だった。楽屋にいる芸人達が一斉にこちらを見た。
そして空気はピンと張り詰めた。若干睨んでいる人間もいるような気がする。
「いっ石を・・・持って帰ったのか〜?しかもそのへんに転がってるなんの変哲もない石を!
マタキチはホントに変なもの集めるなぁ!」
綾部は苦し紛れにうわずった声で意味のわからない言い訳をした。周りの芸人がそれで治
まるとは思えない。しかし芸人達はまた自分達の話に戻った。
張り詰めた空気は作られたなごやかさに変わった。
「アホか。こんなところで、石について大声出すなや。」
「ごめん。で・・・また昨日、石を使って戦闘したんじゃないのか?」
又吉はまた目線を逸らした。
「えぇやんけ別に。俺は白や。黒が襲って来てもしゃーない。
それに白として戦わなあかんやろ。」
「あのなぁ・・・!」綾部はまた声を荒げそうになったが、
我に返り一息ついて小さな声で言った。
「俺は石持ってねぇから白とか黒とかよくわかんねぇけどさ・・・お前が怪我したりすん
のは嫌なんだよ。」
お前を助けることも出来ないんだ。続けて小さくつぶやいた。
又吉はうつむいたまま黙った。
綾部は石を持っていなかった。又吉と同じだけ芸人として活動してきたが、自分に石は
やって来なかった。それは運のいいことだと思っていた。しかし相方や仲間の芸人達が戦
い傷つくのを指をくわえて見ていなければならなかった。

戦いに巻き込まれたくない。

でも大切な人達を守りたい。

132129:2005/09/09(金) 21:50:23
そのとき楽屋のドアがノックされた。そして入って来たのは又吉の元相方、原だった。
その楽屋にいた芸人達は驚いて原に駆け寄った。
原はある程度芸人達と挨拶を交わしたあと、2人の方へやって来た。
「おめでとう。」
「見に来てたんか。」
又吉はしかめっ面で原を見た。原はにこやかに又吉を見下ろしている。
「今日は綾部に用があって来たんや。」
「えっ、俺?」
思わぬ言葉に綾部は驚いた。
「あ、でも今日は先輩におごってもらったりするんやろ?なら終わった後お前の家の近く
に公園があったよな?そこに来てくれへん?」
「・・・おっおう。」綾部は原の言葉に疑問を感じつつも、その誘いに応じた。
話があるなら携帯で電話したっていいし、メールだってできる。同期なのだから
特に隔たりもない。
又吉も原がなにを考えているのかを不審に思っているようだ。眉間にしわが寄っている。
その場はそのまま別れた。
先輩と飲みに行っている間もあれやこれやと呼び出された理由を考えたが思い当たる節がない。
約束どうり、綾部は原に指定された公園に行った。その公園は広いくせに外灯が少なく
真っ暗に静まっていた。まだ原は来ていないようだ。
綾部はまだ呼び出された理由を考えながら原を待っていた。すると黒い人影が現れ、
こっちに近づいてきた。誰だろう?原だろうか。暗くて見えない。と目を凝していると、
急に横からも人影サッと自分の目の前に現れた。
又吉だ。又吉は綾部に背を向けて少し遠くに見える影を睨みながら
石の力を開放した。
「おっおいっ!何してんだよ!」
綾部が驚いて聞いたが又吉はすでに黒い人影に向かって物語を語り始めていた。

公園は少ない外灯に照らされ真っ暗だ。人影などどこにもない。

又吉は公園には誰もいないという物語を語った。あの人影に捕まってはいけない。絶対に。
又吉はこの物語を続けながら綾部の方を振り返った。しかしその場所に綾部はいない。
まさかと前を見直すと黒い人影が消えている。
しまった・・・!
そう思った瞬間又吉の腹に鈍い衝撃が走った。その衝撃で又吉は自分の作った物語から
抜け出し、そのまま倒れこんだ。
「又吉!!」
綾部がしゃがみ込み抱き起こす。綾部には何が起きたかわからない。
又吉は気を失ってしまった。
そして黒い人影が目の前に立ちはだかった。
綾部が見上げた瞬間、背後からヒュッと風が通り抜けたと思ったその刹那、人影は後ろに吹っ飛んだ。
「こっちだ!今のうちに逃げろっ!」
背後から叫んだのは呼び出した張本人の原だった。
綾部は無我夢中で又吉をおぶって原と一緒に走り出した。
これが石をめぐる戦いか・・・。今まで経験したことのない緊張感、そして危機感。
綾部は一心不乱に走った。そして暗い路地を見つけるとそこへ入った。
又吉を降ろし、ヘタリと座り込んだが、原がまだ来ていない。路地から注意深くのぞくと、原がフラフラと走っ
てくるのが見えた。
「原っ!お前大丈夫か!?どっか怪我したのか?」
原に肩を貸し、路地へと入った。
原はハァハァと息を切らしながらなんとか言葉を発した。
「・・・ちょっと貧血になっただけや・・・これが俺の・・・石の能力の代償や。」
息も絶え絶えに原は話した。
「本当は一回でこんなにダメージくらわへん・・・でもコンビを解散して、芸人をやめて
も石をねらってくるやつらがおって、そいつらに対抗してたんやけど、どんどん石の力が
弱くなっていって・・・。今までどうりの力出そうと思ったらどんどんと代償もでかなっ
ていった・・・。さっきの攻撃も相手に尻餅つかせた程度やろ。」
「・・・じゃあこの石は芸人じゃないと力を発揮しない・・・?」
「いや、笑いへの情熱や・・・。」
ふうと一息ついた原は自分の首からペンダントにして吊っていた石を綾部に突き出して言った。
「又吉は相変わらず戦ってるんやろ?平和がほしいとかゆーてさ。
あいつ人が傷つくのとかめっちゃ嫌がるからな。アホや・・・。」
原はふっと鼻で笑った。
「あいつの石は攻撃には向かへん。そんでそれを助けていた俺にはもう力はない・・・。
だから頼む、この石をもらってくれへんか?危険なことに巻き込むのはわかってる。
でもお前の相方守ってやってくれ!このとおりや・・・。」
原は必死に頭を下げた。しばらく綾部は黙ったが、意を決してその石を受け取った。
「俺・・・仲間を・・・マタキチを守りたい。俺だって平和がほしい!」
原は微笑んだ。
「・・・ありがとう。」
パチパチパチ・・・
手を叩く音が路地の入口から聞こえた。

133129:2005/09/09(金) 22:05:04
>>132
「バナナマンの設楽さん・・・?」
「チッ・・・。」
原は舌打ちをした。
「黒の一番上の人間や・・・気をつけろ。」
綾部はゴクリと喉を鳴らした。
「綾部くん。原くんから石を譲り受けたところ悪いんだけどさ、黒に入らないかな?
もちろん又吉くんも一緒に。」
「嫌です。この石は仲間を守るために使うと決めたんです。人を傷つけるために使いたく
ないんです!」
するとその言葉に反応するように石も光った。設楽はふふっと笑うだけだ。
「綾部その石はな・・・」
原が言い終わる前に綾部は動いた。
何故だろう使い方がわかる。誰だ?俺に話しかけてくるのは。
自分の足下にあるコンクリートに触れ、大きな龍を放った。
「くっ・・・!」
狭い路地だったのが災いし大きな龍は動きずらそうだ。
設楽は龍が自分に激突する瞬間になんとかしゃがみ込んで避けた。
しかし、完璧に避けられるわけもなく傷を負った。しかしかすり傷程度ではない。
「くくくっ・・・さすが・・・すばらしい力だ・・・!」
傷を負ったにも関わらず、設楽は不気味に笑っている。
そしてゆっくり立上がりると同時に石が光り出した。
「綾部君・・・。君は黒の事をどうやら勘違いしているようだ。
少し僕の話を聞いてくれないかな?平和的に話し合いで解決しようじゃないか・・・。」
綾部は応じた。話し合いで解決できるならそうしたかった。
これが罠だということも知らずに・・・。

134129:2005/09/09(金) 22:05:54
>>133
長くなりました。次で最後です。



又吉はうっすらと目を開けた。ぼんやりと3人の人間が見える。2人の人間は
対峙していて、手前の自分を守る様に立っている人間の後ろには壁にもたれかかって
もう一人がいた。だんだんと対峙している2人の声が聞こえてきた。
「・・・どうかな。分かってもらえたかな?」
「はい・・・。」
だんだんと意識がはっきりしてきた。
「君の相方も起きたようだね。」
向こう側にいる男が言った。
設楽・・・!
又吉の目が大きく見開かれた。
その言葉を聞いた手前の男・・・綾部がゆっくりとこちらを振り返った。その時。
「原・・・。」
設楽が原に目で合図を送った。すると原はひそかに手元に準備していた鉄パイプを
にぎり、綾部の後頭部を一撃・・・ガツンッ。
「綾部っ・・・!」
又吉は瞬時に起き上がり倒れこんだ綾部に駆け寄った。さっき殴られた腹がズキンと痛ん
だが、そんなこと気にしてられなかった。
「綾部!おいっ綾部!」
必死に揺り起こそうとするが全く動かない。
「安心しろ。ちょっと眠ってもらっただけや。」
原が鉄パイプを肩に担いで冷たい目で又吉を見下していた。
「今度は又吉くんと話がしたかったからね。いやあ君の相方達は本当に信じやすい
いい人達だね。君とは違って。」
設楽はニヤリと笑う。
「まさか・・・また・・・。」
又吉に嫌な過去が蘇った。
「君は知ってたんだね。原が芸人でなくなれば石は力を失うと。だから原とのコンビを
解散した。それが原を助ける方法だと信じて。本来、白であった君達の片方が黒に変わってし
まってケンカは絶えなかっただろう?僕は又吉君が折れて黒に入ってくれるのを期待して
たんだけどね。」
又吉はキッと設楽を睨み付けた。瞳には過去に負わされた傷が写っている。
「俺はどうしてもその石がほしいんだよ。アトランティスの力を持つエレスチャルの力を。
全く又吉君、君は手間をとらせてくれたね。」
「原だけじゃなく綾部まで・・・!」
「“説得”させてもらった。もう彼は黒の一員だよ。」
冷たい瞳に又吉が写った。
「大丈夫。綾部君が次起きても、綾部君は変わらず君の事を好きだよ。
でも石に関してはどうかなぁ・・・?」
「うるさいっ!!」
設楽の挑発的でふざけた言葉に又吉は声を荒げた。
もうあんな思いはしたくない。
「もう・・・あんな思いはしたくない・・・。たった一人の相方・・・
もう失いたくない・・・。」
うつむいて、綾部の顔を見た。
「随分と仲がよろしいことで。」
原は鼻で笑った。
又吉はそっと原を見上げ、
「お前だって失いたくなかったんや。お前だって助けたかった・・・。」
原の顔に動揺が走る。原の瞳に過去が写る。
「お前に何がっ・・・!」
原が怒鳴ろうとするのを設楽が制した。
「又吉君。黒に入って黒に染まったフリをして綾部君が人を傷つけないように見張ればいいじゃないか、
“説得”を解けるようにいつも一緒にいたらいいじゃないか。それをやって見せてくれよ。
それが出来れば2人とも抜けさせてあげるよ。」
設楽が本当にそんなことを思っているわけがない。自分の石を破られない自信があるのだ。
「わかった・・・。」
又吉は小さく言った。
「やっと又吉君にも“説得”が利いたかな?」
ふふふと笑い背を向けて設楽は歩き出した。
「言っとくけどな、お前の石なんかにハマった覚えはないで。俺は綾部の目を覚まさせる
ためだけに黒に入るんや。」
設楽は原を従えて去って行った。
取り残された又吉は綾部の顔を見ながらつぶやいた。
「ごめんな・・・ゆうちゃん・・・。」
設楽の高笑いだけが聞こえる。

135129:2005/09/09(金) 22:11:02
すみません。本当にすごく長くなってしまいました。
読みにくいところもありますので、
もし読んでいただけたら感想をください。

136129:2005/09/18(日) 21:55:25
今気づいたのですが、この話矛盾してますねorz
ごめんなさい。

137本スレ224:2005/09/24(土) 01:03:15
本スレで言っていたさまぁ〜ずの番外編を落としにきました。
黒ユニットに分類されているコンビですが、ごく軽い話なのであまり黒っぽくありません。
でも黒でも白でも日常は結構ほのぼのしたところもあるんじゃないかと思って書いてみました。

石は能力スレにあるさまぁ〜ずのもの(もともと能力スレにさまぁ〜ずの設定書き込んだのも自分です)。
能力を使用しているのは三村のみです。

138本スレ224@鈴虫1:2005/09/24(土) 01:05:34
いつも通りの朝、いつも通りの日常。
自分の車の助手席でボーッとしながら相方の家に着くのを待つ。

窓からのぞく空は灰色の雲に薄く覆われていて、それを通して降りそそぐ朝の陽光はにじむように柔らかい。
今日はスタジオでの仕事だから、スッキリ晴れてくれてもよかったんだけどなあ、などと思いつつ、あくびを一つ。
あいにく、薄曇りの空にできた光の筋に美しさを感じるような感受性は持ち合わせていない。

かぶった赤いキャップのつばをぐい、と左手でひっぱって、視界を遮断する。
昨夜の酒が微妙に残っているので、少し休みたくなって目をつぶった。最近どうにも飲みすぎだ。


「うぃーす」


しばらくすると車はある路地で静かに停まった。
でかい荷物を肩にかけた相方が適当な挨拶とともに後部座席に乗り込んでくる。
とりとめもなく、たわいもない会話を車内に流しながら、テレビ局へと車はむかう。
ここまではまったくもっていつも通り、かわりばえのしない朝の光景。

…それがほんの少しばかりイレギュラーなものになったのは、二人が局の楽屋に入った後だった。

139本スレ224@鈴虫2:2005/09/24(土) 01:06:45
扉に貼りつけられた「さまぁ〜ず 三村マサカズ・大竹一樹 様」の文字をちらりと確認して中に入る。
撮りが始まるまでにはまだ余裕があるので、腰をおろした二人はのんびりと行動を開始した。
思い思いにペットボトルに口をつけたり、スポーツ新聞に目を通したりして時間を過ごす。

…そのとき、大竹が何か思い出したようにつぶやいた。


「あー…しまった」
「ん?」
「クーラー消すの忘れた」
「…帰ったらさみぃな」
「さっみぃな」
「高橋は?」
「さっき何かちょっと外すとかっつって出てった、…っと、あれ、どこだ…」


言いながら大竹はカバンをさぐり、タバコをとりだして火をつけようとする。
しかし百円ライターはチチッ、と火花を発するだけで、いっこうに炎が出ない。


「切れてやがる、お前の貸して」
「あー…ちょっと待って、今出す」

140本スレ224@鈴虫3:2005/09/24(土) 01:08:25
そう言ってジーンズのポケットをまさぐった三村だが、出てきたのはひしゃげたタバコの箱のみだった。
いつもなら減ったタバコの隙間に入っているのだが、今日に限って目当てのライターはない。
どうやら昨晩飲みに行った店にでも置いてきてしまったようだ。


「…入ってねぇわ」
「入ってねえって…どーするよ」
「高橋…って今いねえんだった」


ヘビースモーカーとまではいかないが、タバコが吸えないとそれなりに困る二人は顔を見あわせた。
タバコそのものなら自販機に買いに行けばいいが、ライターとなるとちょっと面倒だ。
しかたなく、廊下でスタッフにでも声をかけてみるか、と立ち上がろうとした三村に大竹が言う。


「お前アレは?アレで何とかなんねーの?」
「アレ?あー、石?」
「おー、アレで『ライターかよ!』とかってツっこめばいいんじゃね?」
「…お前、そのツっこみができるボケしろよ?」
「無理」
「じゃあ俺も無理だから、っていうかピューって飛ぶぞライター、ピューって」
「軽めに言えばいいだろ…あ、『秋の夜に 鳴いてる鈴虫 焼いてみる』は?」
「『なんでだよ!なんで焼いたの?焼かないでよ〜鈴虫を〜』…いや、これ『ライター』とかねえから」
「それ『なんで焼いたの?ライター?』とかにすればいいんじゃね?」
「あー、けどその『なんで』は『何使って』って意味じゃなくて『どうして?』の意味だけどな」
「細けぇよ、いいよ、いけるよ」
「…しょーがねーなー…」

141本スレ224@鈴虫4:2005/09/24(土) 01:09:43
三村は、ごそごそと財布の中から緑と紫と白が縞模様をつくる美しい石をとりだした。
手の中に石を握り込んで意識を集中させると、それはほんのりと淡く光る。


「おし、準備できた」
「んじゃいくぞ…『秋の夜に 鳴いてる鈴虫 焼いてみた』」
「『なんでだよ!なんで焼いたの?ライター?…


三村が『ライター』と口にしたとたん、ヒュッと空中にライターがあらわれ、大竹めがけて飛んでいった。
至近距離だったせいかライターの速度が意外に速かったため、大竹は「うぉっ!」と小さく叫んでのけぞる。
正面からぶつかるのは避けたものの、ライターは肩に当たってコロリ、と机に転がった。


 …焼かないでよ〜鈴虫を〜』」
「ってお前!バカ!」
「へ?」
「おわぁ!」


三村が思わず最後までツっこみきってしまったせいで、今度は空中に一匹の鈴虫があらわれる。
これまた結構な速度で大竹にむかって飛んでいく鈴虫を見送って思わず三村はつぶやく。


「あ、鈴虫…」
「『あ』じゃねえ!」


…鈴虫は見事に大竹の伊達眼鏡のふちにぶち当たり、へろへろと緑茶のペットボトルの中に落ちて討ち死にしたのだった。

142本スレ224@鈴虫5:2005/09/24(土) 01:10:30
その後大竹は「鈴虫くせえ…」などと微妙な悪態をつきつつ眼鏡を手入れし、タバコに火をつけ。
三村は「ゴメンゴメン」などとあまり反省もなく謝りながら石をしまい、またもとのようにのんびりと時間が動き始めた。

5分後、先ほどのことを忘れてペットボトルに口をつけた三村は、ブフッ、と派手な音を立てて緑茶とともに鈴虫を吐き出すだろう。
大竹は「汚ね!」と後ろに飛びすさり、机の上が大…いや小惨事になり、楽屋は二人の笑い声やらうめき声やらでまた少しばかりにぎやかになる。



…そんなちょっとした、日常の話。

143本スレ224@鈴虫(設定他):2005/09/24(土) 01:18:51
三村マサカズ
石:フローライト(螢石)
集中力を高め意識をより高いレベルへ引き上げる、思考力を高める
力:ツッコミを入れたもの、もしくはツッコミの中に出てきたものを敵に向かって高速ですっ飛ばす。
(例1)皿に「白い!」とツッコんだ場合、皿が飛ぶ。
(例2)相方の「ブタみてェな〜(云々」などの言葉に対し「ブタかよ!」とツッコんだ場合、ブタが飛ぶ。
条件:その場にあるものにツッコむ場合はそれほど体力を使わないが、
人の言葉に対してツッコむ場合は言い回しが複雑なほど体力を使う。
また、相方の言葉に対してツッコむ場合より、他の人間に対してツッコむ場合の方が体力を使うため、回数が減る。
ツッコミを噛むとモノの飛ぶ方向がめちゃくちゃになる。ツッコミのテンションによってモノの飛ぶ速度は変わる。
飛ぶものの重さはあまり本人の体力とは関係ないが、建物や極端に重いものは飛ばせない。


今回は(例2)の方で能力を使わせてみました。
石の身につけかたに迷ったんですが、原石のまま持ってる方がらしいかと思ったので、
財布の中にしまってることにしてみたんですが、加工品の方がよかったでしょうか。
なにぶん初めてなので、ビシバシ添削していただけるとありがたいです。

144本スレ224@鈴虫:2005/09/24(土) 01:21:59
あ、文中の「高橋」はさまぁ〜ずの後輩兼マネージャーの高橋氏です。

145名無しさん:2005/09/24(土) 01:54:59
ほのぼのしてていいですね。こういうの好きです。
本スレ投下問題ないと思いますよ。

146名無しさん:2005/09/24(土) 13:28:36
乙。
三村の能力の使い方面白いですね。
本スレ投下大丈夫だと思います。

147本スレ224@鈴虫:2005/09/25(日) 00:15:07
>>145-146
ありがとうございます。本スレ行ってきます。

148 ◆8zwe.JH0k.:2005/10/02(日) 16:34:51
こんにちは、以前◆BKxUaVfiSA というコテハンでホリケンと大木の話を書いた
者です。事情があってトリップ変わっちゃいました。佐久間一行とあべこうじの
話書いてみたんですが、添削頼みます。


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