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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

65佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 23:01:52
 俺は頭がぼーっとしたまま、舞台上で未だ横になっている太田さんを呼びかける。俺は、生きているのだろうか。それすら危うい。
 「太田さん、太田さん?」
 「っるせえな、起きてるよ」
 本当に疲れているようだ。声が不機嫌そのもの。
 「太田さん、本当に舞台から降りなかったんだね」
 「そう言っただろうが」
 「……小林と設楽もすごかったけど、片桐と日村もすごかったね。太田さんが作った空間に入って来れたんだから」 
 俺が心底感嘆したようにそういうと、太田さんは「ふっふっ」と、声を立てて嗤った。
 「え? まさか……太田さん、それも全部、謀って……」
 「コンビの愛の力かも知れねぇぞ。俺らにはない、すばらしい物さ」
 太田さんはそう言って茶化そうとしたが、俺は誤魔化されなかった。太田さんは観念したようだ。
 「あいつらが作るような完全に計算しつくされた物語はすごいんだろうが、俺からしてみれば、でたらめに転がっていく物語ってのも、いいもんだよ」
 太田さんは横になったまま、俺に自身の握りこぶしを差し出した。そして、その手をゆっくりと開く。
 俺は、驚愕した。
 太田さんが持っていたのは、「黒い欠片」そのものだ。あまりのことに声を出せない俺に、太田さんは言う。
 「これはさっき、この操られた人間から拝借したんだ。でも、ほんと、いらねえんだ。こんな黒い欠片。何せ俺は他人の運命をもてあそんで、飽きたら放り出す、まさしく悪魔としか言いようがない心の持ち主だからなぁ。持ってようが持ってなかろうが、なんも、変化がない」
 俺はその欠片にそっと触る。欠片は音もなく砕け散り、消えた。
 「まぁ、何が言いたいのかって、お前の力はそのぐらいすげえってことだ。お前の一番近くにいる俺、勿論お前自身も、黒い欠片に汚染されることはない」
 俺は黙って太田さんの手のひらを見つめた。太田さんは語る。
 「あの黒い奴らが狙ってくるのも当然だ。これほど強大な力。そんなものを、お前が持ってること自体が、もう、吐き気ものだね。何でお前? みたいな。だがな、俺は、お前を失うわけにもいかない。お前無しじゃ、俺が成り立たない。それはもう、分かってんだよ。嫌な位。だから、どんな手を使ってでも、奴らを、玩んで、蹴散らしてみせる」
 そういって、太田さんは再び嗤った。俺はそんな彼に、尋ねる。
 「これから、どうする。俺がエメラルド持ってるのばれてるし。この際、白い方に行く?」
 「いいや、それは御免だ。喩え白のユニットに行ったとしてもだ、お前が武器として扱われてしまうのが目に見えている。そんな気は毛頭無い」
 「じゃあ……?」
 「俺たちは俺たちなりに進んでいくだけだ。まぁ……」
 太田光は、嗤う。
 「俺からしてみれば何もかもがくだらねぇから、白も黒もぶっ潰して、忌々しい現実を全部ひっくり返すって言うのも、大アリなんだけどな。
行く宛も無くあふれ出すお前の哀れな力と、それによって増殖する俺の悪意と生来の黒い魂で、ね……」
 Let sleeping dogs lie。……俺はその諺を知っていて、よかったと思った。

 【OutletTheater】is "Quod Erat Demonstrandum".(証明終了)


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