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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

1名無しさん:2004/11/25(木) 19:54
「自分も小説を書いてみたいけど、文章力や世界観を壊したらどうしよう・・・。」
「自分では面白いつもりだけど、うpにイマイチ自信がないから、
読み手さんや他の書き手さんに指摘や添削してもらいたいな。」
「新設定を考えたけど矛盾があったらどうしよう・・・」

など、うpに自身のない方、文章や設定を批評して頂きたい方が
練習する為のスレッドです。

・コテンパンに批評されても泣かない
・なるべく作者さんの世界観を大事に批評しましょう。
 過度の批判(例えば文章を書くこと自体など)は避けましょう。
・設定等の相談は「能力を考えようスレ」「進行会議」で。

19歌唄い </b><font color=#FF0000>(N8YrSY2U)</font><b>:2005/05/03(火) 20:17:19
男達はそんな陣内の態度に腹を立てたのか、無理矢理掴みかかり、ポケットに入っている
石を奪おうとした。ぐらり、とブランコが大きく揺れる。


「いい加減にせえ!!」
と陣内が叫び、普段は決して見せないような鋭い目つきで二人を睨みつけた。
その時、ポケットの中でムーンストーンが淡く光った事には、この時点ではまだ誰も
気づいていなかった。

「つっ……」
何かが男の顔をかすめた。思わず声を上げる。咄嗟に頬を押さえ、自分の横を高速で
通り過ぎていった物体を目で追った。少し後ろの方で小石がコツン、コツンと何度か
跳ね、そのまま池に落ちた。
すると間を置かず、じゃきんっ!と鎖の切れる音が響き、陣内の隣にあったブランコが
大きな音を立てて地面に落ちた。男達は陣内から手を離し、一歩二歩後ずさりした。
切れた鎖は何か強い力で引きちぎられたかのように、つなぎ目が変形していた。
それを確認している間にも公園のいたる所で異変が起こっていた。
ベコンッとへこむ柱。乾いた破裂音とともに粉々に砕け散る外灯。

「何なんだよこれ…どんな力だよ」

20歌唄い </b><font color=#FF0000>(N8YrSY2U)</font><b>:2005/05/03(火) 20:18:05
男達に焦りと恐怖の色が浮かぶ。陣内はと言うと、未だブランコに座ったまま二人を
睨み続けていた。たださっきと違い、表情はどことなく楽しげだった。

「早よどっか行かんと…殺すぞ」

ムーンストーンが一際強く光った――――……

21歌唄い </b><font color=#FF0000>(N8YrSY2U)</font><b>:2005/05/03(火) 20:18:34
えー、ここまでです。

22ブレス </b><font color=#FF0000>(F5eVqJ9w)</font><b>:2005/05/05(木) 17:14:06
はねる編5話の添削をお願いしたいんですがよろしいでしょうか〜・・・?
なんだか馬場ちゃんの能力が誰かと被ってるような気がするので。
(能力変更後の馬場ちゃんなんですけど・・・)

23名無しさん:2005/05/05(木) 18:28:12
乙です!
陣内さん恐っ!その分面白かったです。

24名無しさん:2005/05/09(月) 18:37:10
>>17>>20
良いと思います。ぜひ本スレに投下して下さい

25歌唄い (N8YrSY2U):2005/05/09(月) 20:09:20
有り難うございます!では手直して本スレに投稿してみます。

26歌唄い </b><font color=#FF0000>(mTMwZiFI)</font><b>:2005/05/09(月) 20:29:58
あれ…名前欄が変に…。なんかごめんなさい。

27ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/06/04(土) 00:07:47
久しぶりに本スレに投下するので、こちらに一旦投下してからあちらに投下致します。

28ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/06/04(土) 00:09:21
「………俺は、白側についた方がエエと思う。」「…………」

テンションはどん底まで落ちてはいるものの、慎重に言葉を選びつつ自分の考えを打ち明ける。

「正直…俺らだけで動くんも限界に近付いてきとる、黒の奴らの襲撃も多くなっとるしな。」

確かにここ最近の黒の奴らの襲撃回数が増加してきてるんは事実やった。

「だから白側に付くと……」
「このまま…みすみす奴らに石を持って行かれたないやろ?」

そんな事は分かってる、分かってはいるが………
「白い奴らだって分からんやろ。」
「俺達の危ない所を助けてくれたのにか?!」
「石目当てで助けてくれたんかも知れないで?」「…………」

まだ人づてに聞く話や自分で得た情報からじゃ、ハッキリ言って決めかねる………

「とりあえず帰るわ、今日は流石に奴らも来ぃへんやろしな。」
「……………」
「今後の事はまた次の時にでも話そうや。今日はお互い力使い過ぎてヘトヘトやからな。」
「……………」
「……じゃあな。」

俺はカフェに藤原一人残し家路に着いた。

「こんなけったくそ悪い争い……さっさと終らせな……」
蕀の道でも俺達は俺達のやり方でいったんねん!


「今のままじゃアカンねん………井本、きっと近いうちままならん事態来る筈や……」

藤原の呟きは暫く後、現実となる。

29名無しさん:2005/06/04(土) 21:05:13
乙です。
すごくいいですね!続き気になってたんで嬉しいですv

30名無しさん:2005/06/07(火) 02:47:38
>>28
ところで、ライセンス二人の能力表記がまだ無いのは、狙ってなのでしょうか?

31凪之介 ◆s57fnUXLIY:2005/06/08(水) 09:57:25
サカイストが少し浮かんだので投下したいんですが大丈夫ですか?

32ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/06/09(木) 17:27:22
>>30
すみません、話の終わりに書くつもりと、すっかり忘れてたのと両方です。(むしろ後者の割合高し)

申し訳ry

33異空間少女 ◆aleAeip0JM:2005/06/14(火) 08:50:03
本スレに書き込んでしまいました。
新しくチュートリアルさん出します。
ここで練習して、okがでたら投下します。


…白い蛍光灯の光ではない、淡い黄色い光のシャンゼリゼに、整った内装に綺
麗なテーブルにレースのクロス。
テーブルマナー何かに疎い徳井は、全知識で必死に、皿をかたかたと音
を立てて肉をナイフで割く。
「…設楽さんょぉ」
「…何だ」
「…こんな高級なレストラン、割り勘でも払えませんでぇ。リラックスもでき
ませんし。テーブルマナー解りませんし。もうここはやめにしません?」
「俺が奢る。慣れたら大丈夫だ。何回もやってたらテーブルマナーも身につく
。けどリラックスはしたことないけど。」
「やっぱりそうやろー…で、誰に払わすんですか?」
「おい、俺が払わないと思ってるのか?」
「そうですけど?何か間違いでも?」
徳井はそう言うとナイフで切り取った肉をフォークで刺し、ぼやっと見つめる

「…よくわかるな。…あと、その笑い方いいな。狂気じみてて。」
「…それは褒め言葉として取ってええんかな?」
徳井はは楽しそうに言うと服を整え、少し出来た皺をぴんと伸ばす。
設楽は姿勢を正して徳井の正面を見ると、一瞬の静寂の後にこう言った。
「そのパイ包み開けてみ。」
「…はあ…?」
唐突に言われた言葉どおり、一応さくりとナイフで開くと、徳井の持つどす黒
い紅水晶にも負けるとも劣らない、黒々とした紫水晶を目で確認できた。
「…凝ったことしますねえ、あんたも。」
「…それは褒め言葉としてとってもええんかなぁ?」
設楽は徳井の関西弁を真似、すこし乾いた笑いを放つ。
徳井は設楽を見つめて少し笑い、それを拾い上げ、少し手を挙げ光で照らす。

34名無しさん:2005/06/14(火) 13:39:22
チュートリアルキター!!
・・・ところで能力は決まってるんですか?

35名無しさん:2005/06/14(火) 22:42:53
シャンゼリゼ→シャンデリア


だよな?
フランスの大通りを表してんならショウジキスマンカッタ
・・・小姑くさいか?

36名無しさん:2005/06/15(水) 01:01:45
これだけじゃ妙な改行が気になるだけで何ともいえない。
続きマダー?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン

37異空間少女 ◆aleAeip0JM:2005/06/15(水) 08:16:14
すいません、シャンゼリゼ→シャンデリアです。
妙な改行は文章が長いんである程度の所越したら改行してます。
続きは今書いてます。
書き終わったらうpします。
あと、sage忘れごめんなさい。

38異空間少女 ◆aleAeip0JM:2005/06/15(水) 17:09:41
プレゼントを出したことはあっても、貰ったことは殆どない男から高そうなネ
ックレスを貰った。

『…お前にやるわ。アメジストって石使っとるんやで。』
『…なぁ。…これ、加工費のほうが高かったやろ?』
『まぁ。そうやな。』

徳井は高価なそれをラッピングしたまま、福田に押し付けた。
今も渡す相手が居らず、ラッピングも剥がしていないそれは、薄く埃をかぶっ
ている。
「……あかん、切れ味悪すぎ」
福田はすっかり切れ味の落ちた包丁と、ぺちゃりと潰れたトマトの切り口を交
互に見つめている。
「…小皿の糸じり使うか。」
男一人暮らしな福田にとって、砥石などの気の利いたものがあるはずもなく、
いつぞや聞いた知識を使ってみることにした。
「…ふう。」
こんな時ネックレスを渡すような彼女などが居たら、などと考えてみる。
いつもはこんな考えをすることはない。
ただ、『芸人』でなくとも女から寄ってくるような男とずっと一緒に居る、そ
んなことをふと考えて少し弱気になった。
…不意にがしゃんと大きな音がして、ぷい、とその方向に首を回す。
「!!」
無残にもガラスはすべて割れ、破片が飛んで福田の足下にも散らばっている

「…」
福田はその光景を見つめたあと、硝子の上を素足で踏み歩いた。
足には破片が入り込み、歩いた硝子の上は血どろみになったが、不思議と
痛みは感じていなかった。
割れた硝子の窓の間を通って外を出ていく。

そのとき、まだ石は光っていない。

39名無しさん:2005/06/15(水) 22:29:42
乙です
福田さん怖っ

40異空間少女 ◆aleAeip0JM:2005/06/16(木) 18:26:20
足がひりひりと痛み出した。
傷口から血が流れ、床に血が滴り落ちる。
福田は硝子の上に落ちていたネックレスの箱を、無意識のうちにズボンの大き
目のポケットにしまい込む。
…外にハンマーのような物が落ちていた。
普通の人間ならこんな解り易いミスは殆どしない、きっと小心者の悪戯だろう
。それとも、解り易い、罠か。
「痛っ!」
一瞬電気が発せられたかのように、脚全体が痺れて痛む。
痛みの波は少し弱まったが、それでもじんじんと足が痺れ、痛んでいる。
「……痛…やっぱり考え無しに行動したらあかんな。……」
「…大丈夫ですかぁ?」
福田は遅れて痛んできた足を少し気遣いながら、その声の方向に耳を傾けた。
男の姿は見えないが、そこからは確実に声が聞こえている。
「!…誰や!」
「誰でもいいでしょ?福田さんには関係ない。」
福田は問いただすが、男の方は一向に姿を現そうとしない。
姿を見せない男に苛々しながら、その男の声の方向に向かってぎ、ときつく睨
む。
「…おまえか!やった奴!」
福田は大きな声で叫び、拳を握り締めると、その男の声の方向をまたきつく睨
んだ。
「おお、怖。…足、痛いから?…っと、何を勘違いしてるかは知りませんが俺
がやったんじゃないですよ?」
「ほんなら、誰や!」
「…桃色の石持ってた男と、黄色の石持ってた男。…それと、緑の髪の男。」
「どこへ!?」
「西のほうへ行った。」
福田は男の言うとおり西へ駆け回る。
…やがて姿が小さくなって見えなくなると、暫く福田を見つめていた男が言っ
た。
「…あの3人組…確か…ロ…何とかって言う…結構売れっ子の芸人…それにし
ても福田ぁ、怒る気持ちはわかるけど、窓がこれの癖に家空けるって…」
男は福田を思い出して笑うと、身軽に福田の家の塀を下り、走って消え去った


「…クソっ」
福田の紫と黒の混じった石の光が分厚い箱を通り越し、ポケットの上から解る
ほどに光っていた。

41名無しさん:2005/06/16(木) 23:14:12
投下途中でキツイことを言うようだが
書きたいものを書くだけなら自分のサイトを持って、そこでやるべきじゃないだろうか。
2ちゃんに書き込む以上(まだ本番の方ではないけれど)
他の書き手さんとの調整をつけたり、
事前に「この芸人を出したいが、他の人OK?」って聞いたり、
そういうのって必要だと思うんだが。

スレ違いかな?? スマソ。

42異空間少女 ◆aleAeip0JM:2005/06/16(木) 23:35:46
そうですね。私もちゃんと学んでから行くべきでした。
というか、習わなくっても解ることを堂々とルール違反したことは、やっぱり自分の人間性に問題があるのだと思います。
以後気をつけますね。すみません。

43名無しさん:2005/06/17(金) 18:56:01
別に書き手さん全員が全員本編を書かなきゃいけないって訳でもないし
せめて最初に「番外編として投下します」って前書きがあったら良かったのかも。
本編としてみたらアメジストはくりぃむしちゅー上田さんの石って設定だから
何の説明もなく福田さんが所持してると、違和感を覚えるし。
ともあれ、続きの方楽しみにしています。

44名無しさん:2005/06/17(金) 21:40:54
アメジストって上田が持ってたんだっけ?

45名無しさん:2005/06/17(金) 21:59:30
アメジストは未登場で
上田さんはホワイトカルサイトじゃなかったか?

46名無しさん:2005/06/17(金) 22:54:39
アメジストって、ダイヤモンドとかと同じ扱い?それとも普通の石と同じ?

4743:2005/06/17(金) 23:20:02
あ、上田さんが薀蓄でアメジストの話をしてたのでちょっと記憶がごっちゃになってました。
すみません、心から謝罪します<上田さんの所持石

48ブレス ◆bZF5eVqJ9w:2005/06/18(土) 20:11:47
>>47
能力の使い過ぎで記憶が混乱してるんじゃないですか?
と上田氏つながりカキコ。

>異空間氏
すいませんがロバートはこれからいろいろある予定なので、
ちょっと登場の方は控えていただきたいのですが・・・。

49 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/22(水) 23:27:02
【提案】新しい石の能力を考えよう【添削】スレにてエメラルドとレピドライト
についての小説を提案した者です。
>大御所登場で初期から出てる芸人弱小化や際限なく上の芸人が出るのは勘弁して欲しい
という意見がありましたが、私も心配したので、自分なりに考慮しました。
また、貴石で尚且つ黒幹部とのドンパチ騒ぎなので、本編に多大な影響を及ぼすかもしれない
ということで、こちらで相談を持ちかけるしだいです。
しかしながら、レピドライトとエメラルドの芸人はマジで思いつきません。
とりあえず、大方書きあがったので、冒頭を投下してみます。
エメラルドとレピドライトの芸人は爆笑問題と設定されたままになっていますが、
こちらは問題ありということで、この芸人のほうがいい! という意見があれば是非ください。

50[title] アウトレットシアター ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/22(水) 23:29:01

 「さあ、地獄を見せてあげよう」

 ……。

 「どーもぉぉぉぉぉ!!」
 下手から勢いよく飛び出した俺ら、爆笑問題は、そのままセンターマイクの元へと駆け寄る。
 「ねぇ〜漫才しますけどねぇ〜」
と、太田さんはヘラヘラと笑いを浮かべながらそう言った。やる気があるようには見えない。っていうか無いのだろう。
 実際俺も無い。だって、この300人収容の劇場に客二人しか居ないのだから。
 その客二人は、両方男。俺らよりもだいぶ年が若い。片方は俺らのほうを見て薄気味悪い笑みを浮かべている。ウケているのだろうか? よく判らない。
 もう片方はさっきからずーっとしたを向いたままただ。何か書いているようだ。レポートか? まさかな……。
 「唐突ですが、俺の話を聞いてくれますか」
 俺はそのように話を切り出す。太田さんはヘラヘラ笑ったまま、
 「ん? 客が二人しか居ないからヤル気なくしちゃった?」
 「違う。あのさ、尋ねたいことがあるんだけど」
 「ナニナニ」
 俺はまじめにこう尋ねた。
 「クソまみれの宝石ってどう思う」
 客席から噴出す声が聞こえた。太田さんはそれを無視してこう答える。
 「あんまり、よくないね」
 「あんまりで済むのか」
 「うん。っていうか何、お前さぁ、宝石食べちゃった?」
 俺は開き直ったように、頷く。
 「そうさぁ」
 「うえぇぇぇ。しんじらんない。ありえない。明らかに食べ物じゃないのに」
 「いやさぁ、キャンディーだと思って食ったの。だけど味しないのね。吐き出そうと思ったらさ、お前が行き成り声掛けてきたから、驚いて飲んじまったのさ」
 「え? 俺の所為なの?」 
 太田さんは「マジ理不尽」と言う顔をした。
 「まあ、そうとは言えないけど、でもさ、あの宝石くそまみれで出てくるのかと思うとさ、残念じゃん」
 「売れないよね。くさくて」
 「だよ、最悪だよ」
 ここで一呼吸。太田さんは客席をいじり始める。
 「お兄さんたちー、こんなとこくるなんて、よーっぽど暇なんだね」
 未だにヘラヘラと笑みを浮かべる相方。最悪だ。俺は言う。

51[title] アウトレットシアター ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/22(水) 23:30:27
 「おいおい、こわーいお兄さんたちにダメだしされっぞ。ただでさえ、……演出には厳しいんだから」
 ここで俺も客席を見た。やっぱり、知っている顔だった。

 ……設楽統と小林賢太郎。間違いない。薄気味悪い笑みを浮かべているのが設楽、さっきからずっと下を向いているのが小林。
 はっきり言って、怖い。
 「いやいや、とんでもないですよ」
 そう言ったのは、設楽だった。小林は何も言わない。太田さんは言う。
 「でもさぁ、不自然だよね。っていうか、レア? バナナマンとラーメンズの脚本担当が、俺たちの舞台を見に来ているっていうんだからね」
 そして、続けてこういう。
 「絶対、何かたくらんでんだ。うん、だって、「黒い人」らはいっつもそうだ」
 「僕らのことを知っててくれてるんですね。嬉しいですよ。そしてやっぱり『勘が鋭い』ですね」
 設楽は心底感嘆したように、そう言った。
 「だろう?!」
 太田さんはまんざらでもないといわんばかりに頷く。俺はそんな相方を小突いた。
 「お前、そんな余裕ぶっこいてられんのか」
 小声でそう忠告するも、
 「んーん、あんまり」
太田さんは未だにヘラヘラしている。俺は溜息をついた。
 「だって、あの二人、黒いほうの偉いほうだろ?」
 我ながら馬鹿な尋ね方だ。
 「田中さん、やっぱりご存知なんですね」
 設楽はまたもや会話に入ってきた。どうやら、事を早く運びたいようだ。彼は時々隣の小林の様子を確認する。小林はまだ何かを書

52[title] アウトレットシアター ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/22(水) 23:32:48
き続けているようだった。設楽は軽く舌打ちして、
 「仕方が無いな」
と呟いた。
 すると、だ。
 上手から、下手から生気の失せた男共がゆらゆらと俺らに近づいてくるじゃあないか。
 「こ、怖っ!」
 俺は思わず声を上げた。
 「シュールなコントでおなじみのお二人さん。こんなベタな展開で良いんですかね?」
相方はそれでも笑っている。しかもみょうちきりんな質問をする。コイツ、頭大丈夫なのか。
 「いいんですよ」
 設楽は笑って、そう受け流した。この人も普通じゃない。
 「おいっ、どうするんだ!」
 太田さんは答える。
 「石あげればいいんじゃない?」
 「無理だ、多分」
 「じゃあ、舞台から降りて逃げる」
 「なんか、嫌だ」
 「じゃあ」
 「ケンカ」
 「だな。言っとくけど田中、俺、ぜってぇ舞台降りねえぞ」

 設楽は言った。
 「仕様が無いな。いいよ、万が一、殺しても」
 一瞬だが、青い光が見えた。その刹那、
 「おりゃあああああああああああ!」
 太田さんはむちゃくちゃに暴れまわり始めた。
 「う、あぶね!」
 俺は太田さんのそれをかわしつつ、センターマイクで一斉に飛び掛ってきたゆらゆら人間をなぎ倒す。妙なことはしてこない。石は、持って居ないのか。相方はバカみたいに両腕でゆらゆら人間を容赦なく叩きまくる。
 っていうか、人数が多すぎる。俺は叫んだ。
 「なんだぁ! こいつらぁ!」
 疲れてきて、いい加減嫌になってくる。相方は未だに楽しそうに相手を殴りまくってるが……。
 年の所為にしたいが、それも悔しい。そして俺らは、体力の限界に近づく。
 設楽は叫んだ。
 「大人しく石を出せばいいのに!」
 俺と太田さんは叫ぶ。
 「嫌だ!」
 「持っているのは分かってるんですよ!」
 その設楽のその言葉は事実だ。石を持つものは、他の石の力を知覚できる。実際俺たちもそうだった。
 「だってーねぇ? お前食べちゃったんだもんねー」
 太田さんはヘラヘラとそう言う。
 「そうだよ」
 俺は平然とそう答えた。
 「……ふざけるのも大概にしてくださいよぉ」
 そんな設楽は、怒っているというより、うんざりしているように見える。この手の人間をキレさせるのは、結構難しい物だ。
 俺なら意図も簡単にキレちまうのだろうけど。
 「忙しいんだからさぁ……」
 そしてそのままその視線を小林に移動させる。まだのようだ。
 「……ほんと仕方が無いな」
 その刹那、俺と設楽の視線が「遭う」。あ、ヤバいかも。
 そう思うも、目が、逸らせない。
 さっきの青い光が、再び見える。
 「しまった!」
 ヘラヘラしてた相方が、一気に無表情になった瞬間。俺はその瞬間がたまらなく好き。だって優越感に浸れるから。
 ……大丈夫、こんなアホなこと考えられるうちは、まだ、平気だ。
 「チッ」
 設楽の表情も変わる。イライラが積もりに積もった表情。なるほど、これか。

 ……オトナシク、言ウコト聞ケバ善イノニ。

 脳内に直接、設楽の声が響く。これは厄介だ。気を抜くとあっという間に入って来られてしまう。
 そんな俺を察したのか、太田さんのヘラヘラした表情はもう既に失せていた。
 「もう、いいかな……。悪い。もうちょっとだから」
 いつに無く真剣に、太田さんは俺にそう呟いた。
 「小林ぃ?! まだかぁっ?!」
 力を使う設楽も平静ではないのだ。だんだん、少しずつ、ほころび始めている。
 そしてとうとう、小林は顔を上げた。しかしその表情は、驚愕だった。

53 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/22(水) 23:36:51
以上です。あの、バンバン叩かれるよりスルーされるのが
悲しいとおもう人間なので、ご意見待ってます。
覚悟の上です。

54名無しさん:2005/06/22(水) 23:49:42
乙です!
若干展開わかりにくいところもありますが
個人的にすごく続き読みたいです

55名無しさん:2005/06/23(木) 00:00:25
田中→太田の呼び方は光じゃないかなあ

56 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/23(木) 00:35:46
レスありがとうございます。

>54
分かりにくいところとはどこでしょうか。
改善したいので、できればでいいので、挙げて頂ければ幸いです。
>55
最近は光と呼ぶと嫌がられるため、太田さんと呼んでいると聞きました。
なので、このようにしました。
でも一人称というのは独白に近いので光でもいいのかもしれませんね。

57佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/23(木) 23:42:19
[title] アウトレットシアター#2
>>50->>52からの続き。便宜上、設楽&小林と対峙する芸人は爆笑問題となっております。
これは問題ありとの事で、他にこの話に当てはまりそうな芸人さんがいれば、ご意見ください。

*******

その表情を見た太田さんが、にやりと、いやらしい笑みを浮かべたのを俺は感じた。
 小林が放った、第一声。
 「……なんなんだ、これは」
 「ん?」
 設楽が尋ね返す。小林はもういちど、
 「なんなんだ、これは」
とだけ言った。
 「おい、それじゃわからねぇよ。何が書いてあるんだ」
 設楽の集中力が途切れ、俺は呪縛から解放される。俺は太田さんを見た。案の定、設楽よりもいやらしい、策士ともいいがたい、狂気の笑みを浮かべていた。
 ……俺は設楽と小林に、こう言った。
 「今に、分かるよ」
 冗談抜きでしんどい。でも、今は子どもみたいにごねていられないのだ。
 設楽がこちらの様子を伺いながら、「何を……」と言いかけた瞬間、
 俺はセンターマイクを掲げ高らかにこう叫ぶ。
 「さぁ! 地獄だ! 地獄の時間だ!」
 設楽と小林は突然の俺の奇行に目を丸くするばかり。そんな彼らに太田さんは説明をする。
 「君ら、まさかぁ、こんな雑魚共を出して、本気で不意をついたつもりじゃないだろうね?」
 確かにザコなのだろうが、何せ人数が多すぎた。しかし、太田さんはそれを表に出さず、しかも、相手がリアクションをする隙も与えず、憎憎しく説明をする。
 「君らさぁ、おかしいと思わなかったの。この劇場の客席に、たった二人でいることがさあ? ここはよ、田中が作り出した異次元空間なんだ。つまりだ、お前らはぬけぬけと俺らのテリトリーの中に入って来たぁってことあだ。わかるか? わかんだろ? インテリぶってるお二人さんはさぁ」
 暴言を用いて、説明をする。
 「でもやっぱり、バカだね。バカだよ。バーカ、ぶっぁぁぁぁっかっ! 所詮は芸人だよ! 驕り高ぶるのも甚だしいったらありゃしねぇよ! いいか、お前らは既に俺らの術中にはまってんだよ」
 と、ここで太田さんはポケットから緑色の石を取り出す。
 「てめぇらが狙ってんのはこれだろ? エメラルド! でもやんねーよ。俺のだかんな! バーカ!」
 バーカバーカと負け犬のように続ける太田さん。悪乗りしすぎている。しかし、ここでは俺も、
 「バーカバーカ!! 俺の作った空間は最強だからな! てめぇらみたいな若造のモヤシっこが打ち破れるわけねえんだ!」
と、見た目よろしく叫んでおく。仕舞には二人で、
 「バーカバーカ!」
といい年こいたおっさん二人が、いい年をした若者二人に向って、叫び続けていた。

58佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/23(木) 23:45:23
 「ぶ、ば、バカって言ったら自分もバカなんだぞ!? バーカ!」
 席から立ち上がった設楽、俺たちと同じようなテンションでバカバカといい続ける。それを見かねた小林、
 「おいっ設楽っ!」
結構焦っているように見える。しかし、
 「小林、相手が爆笑問題だからって負けんじゃねえぞ! 一緒に言え! バーカっ!」
 「な、いえるわけな……バーカッ!」
 小林までもとうとう叫び始めた。暫し、良い年こいた大人の男共の、バカバカ合戦が続く。
 舞台の中心では俺らが、客席では設楽と小林が、そして舞台の両隅には花のない、生気の失せた若者たちが。
 これは、なんとも、面白い絵だろうな。誰かに見せてやりたいぐらいだ。
 ……まあ、不可能なのだが。
 するとここで、約一名、理性を取り戻す。
 ……小林だ。やはり、長くは続かない。小林が、設楽を諭す。
 「設楽、設楽!!」
 「な、なんだよっ」
 「この、シナリオどおりに進んでるんだ」
 と、小林は持っていたノートを設楽に見せる。設楽の能力はおおよそつかめたが、小林の能力は未だに分からなかった。だが、
 単純でトンチンカンな俺にも分かるのだろう。
 それもこれも全て……。
 「あたりまえだろう?! それがお前の能力じゃんか」
 「設楽!」
 はっとして設楽は下唇を噛む。小林は口元に手をやった。もう遅い。俺にもわかったのだ。完璧だろう。
 そしてこの二人、やはり俺なんかよりずっと頭がいいようで。
 「小林……、まさかお前……」
 「そうだ、俺の意思じゃない。書かされて、いるんだ。書かされて、そのとおりに事が運んでいる……」
 設楽と小林はほぼ同時に俺を睨みつけた。やっぱり、怖い。しかし、俺は虚勢を張った。
 「やぁっと、気づいたかぁ。でも遅すぎたね。もう俺たち、君たちの能力分かったし、分かったとしても、もうどうにもできないでしょ。どうやら、二人とも戦闘型じゃないみたいだからね。俺の作った空間に、まんまと嵌ったんだ」
 明らかに、設楽と小林が怒っているのが分かった。もうちょっとだ。ここで俺は止めを刺す。

 「自分が書いていると思い込んでいたシナリオが、実は他人が描いた物だって気が付いた時は、やっぱり屈辱だよね。ゴシューショーサマ」

そして俺は不細工な笑みを浮かべる。どうだ、こんな感じでいいのか。
 「モヤシっこかどうか、その目で確かめてみますか」
 小林は右手を前に出し、ゆっくりとその手を開く。手のひらの上に、黒く光った枠だけの立方体が浮かんでいた。
 「太田さん、俺、なんかいやな予感がするんだけど」
 「おぉ、奇遇だな。俺もだ」
 小林は、叫んだ。
 「持ってる石が一つとは限らねぇんだよ!!」
言い終えた直後、右手を振りかざし力任せにその立方体を俺らに向ってブン投げた。彼のイメージとはかけ離れた行動だったので流石の太田さんも面食らっている。
 「おいっ! もやしっ子じゃなかったのかっ?!」
 誰にでもなく、太田さんはそう叫ぶ。
 ついでにだ、
 「まだ、俺の力も、切れてないんですよ」
 舞台上の人間もゆらゆらと再び動き始める。おいおい、これじゃまさしくサイコキネシスじゃないか。
 どうやら二人とも感情が高まったことにより、エネルギーが増したらしい。大丈夫なのか、俺たち。
 向ってくる高速回転している箱。周りから攻めてくるゆらゆら人間。 絶体絶命。
 「おとなしくエメラルドを渡せ」
 ゆらゆら人間は太田さんに、飛び掛った。しかし、俺は飛んできた箱をかわすのに精一杯。交わしても交わしても飛んでくる。交わせるのが不思議なくらい。
 まるで、予定調和。
 そう、予定調和なんだ。

59佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/23(木) 23:50:50
 俺は箱を交わすのを止める。俺に向ってまっすぐに飛んできた箱は、俺の目の前でその形を崩し無数の線に変わり、そのまま離散、慣性の法則にしたがって明後日の方向へ飛んで行った。
 今までこの空間に潜んでいた狂気が、目を醒ます。ここに在るありとあらゆる物を、喰らわんと、ゆっくりと、そのまぶたを開くんだ。

 太田光の、静かな声。広い劇場に、静かに、気味悪く、染み渡る。
 「現実の源泉を汲み取り、底の夢の膿を掻き回す。
  世界の皮膚を引き剥がし、裏に返して不条理を包む。
  現実は夢の中へ。悪夢を増長させ、虚構に希望を託し、
  真実に絶望を塗る。
  生まれいずる、私の狂気、具現化せよ。……白日夢(デイドリーム)」
 太田さんがそういい終えた瞬間、醜いとしか表現できない音がどこからともなく劇場一杯にあふれ出す。設楽と小林は耐え切れなくなったのか、耳をふさいだ。
 舞台上の人間たちは、途方もなく狂いだす。
 だけど、俺は聞いた。世界が、裏返る音を。
 「ちきしょぉ……! これか、これをっ! 狙っていたのか!」
 設楽が苦しそうに悲痛に叫ぶ。太田さんは言った。
 「いや、実際あんたら二人が来たときに、空間は分断していたさ。でもそれは飽くまで準備段階。こっからが本番だ」
 太田光は、嗤う。
 「さぁ、地獄を見せてあげよう」
 俺はすぐさま狂いだした舞台上の人間につぎつぎとタッチしていった。彼らは意図も簡単に、崩れ落ち、おとなしくなる。
 一通り落とした後、俺は標的を設楽と小林に移す。俺はすぐさま舞台から跳び下り、駆け足で彼らの元へと距離をつめていく。
 この音に怯んでいる、そして尚且つ、小林はノートを手放している。
 今が、絶好のチャンスだった。
 「食らえ!」
 俺は右手で小林の胸に、左手で設楽の胸にしっかりと触れた。
 それを見て、太田さんはやったと思っただろう。俺も思った。
 しかしだ、
 世の中、そう上手くはいかない。非情すぎるんじゃあ、ないだろうか。
 「なんで、だ」
 俺が違和感を感じ、そう呟いた瞬間、手に激痛が走る。
 「ぐあぁぁぁっ!」
 俺は見事にのけぞり、そのまま後ろに倒れこんだ。
 「おい! 田中ぁぁぁっ!」
 上手く行くと思ったのに。俺はただそう思うしかなかった。

60佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/23(木) 23:59:45
とりあえず、今日はここまでです。結構長く書き下ろしましたが、大丈夫でしょうか。

他の方の作品を見ていると、小林が設楽に対して敬語。設楽はかなり冷たいイメージとなっているようです(激ミルクの誘拐のような感じ)
今回、私の中での彼らが二人でいるイメージが、どうしても「君の席」と「epochTVsquare」で固まってしまっているため、
二人はこのような口調となっております。イメージを壊された方、すみません。
ただ、たまにはこんな、馬鹿馬鹿しいシーンもいいんじゃないかと。いかがでしょうか。

61名無しさん:2005/06/24(金) 09:17:14
>>57-60
乙〜。一人称は珍しいよーな気がする。新鮮で面白いと思う。
ところで太田さんの石の力解放のきっかけは・・・呪文?
それはあまりに少年漫画っぽくなり杉じゃね?と、思ったんだが・・・

62佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 19:43:06
>>61
レスありがとうございます。
太田さんの石の力の解放のキッカケ、呪文ではないです。
能力は下のスレに記載しております。ただ、言わせたかっただけってのもありますが。
確かにクサイですねー。それを覚悟の上でしたが。

63佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 22:56:21
[title] アウトレットシアター#3
 >>57-59からの続き。結構長くなると思われます。
 登場芸人について色々相談させていただきました。とにもかくにも読んで頂きたい。
 閑話休題。いえ、この言葉を覚えたって言いたいだけです。

******

  「まさか……」
 青ざめた太田さんは一つの事実に気が付いた。
 「お前ら、「黒い欠片」を、持っていないのか……?」
 「なるほど、そういうことかぁ」
 設楽が笑った。
 「エメラルドを持っているのは……、田中さんだぁ」
 まるで失くしたおもちゃを見つけた子供のように、無邪気な笑みを顔全体に湛えていた。
 「空間を分断したのは、太田さん。なるほど、なるほどね! まんまと騙された!」
 そして響く哄笑。この狂った空間に、よく似合う。
 「おまっ、違うぞ! これをよく見てみろ! こっちがほんもんだ!」
 と、太田さんが緑色の石を取り出すも、小林が放つ黒い線により、あっけなく破戒される。
 「!」
 小林は言う。
 「最初田中さんがセンターマイクを振り回していたのは、体格の所為だと思っていましたが、どうやら、素手で触ることを、避けていたようですね」
 まずい、小林が冷静さを取り戻してしまった。太田さんの集中力が途切れてきたのが原因だろう。
 「そして舞台上の人間に触れた瞬間、私は黒い気配が消えるのを感じました。そしてそのまま私達に向ってきたのを見て、確信しましたよ。エメラルド、黒い欠片を破戒する力を持っているのは田中さんだと。それに太田さん。それが本当にエメラルドなら、もしくはそれが太田さんの石だとしても、わざわざ俺たちに見せびらかしたり、しませんよね」
 設楽は言った。
 「俺らを浄化して傷つけずに勝つ……、いい方法だったけど、残念でしたねぇ。俺たちが黒い欠片を持っていないというのは、本当に予想外だったでしょう」
 ホント、予想外だった。つまり、この二人は、魂そのものが、黒く染まっているのだから。
 「太田さん。貴方ももう限界のようだ。貴方は、この空間では常に先の物語を考え続けなければならない。考えられないのなら、ただの人。そこが、小林との大きな違いですね」
 設楽は心底おかしそうに、両手を広げた。
 「この状況では誰も来ないかなぁー……。本当にこのホールだけ分断されてるみたいだし。……自分が作った空間に自分が閉じ込められて窮地に陥るのって、屈辱ですよね。ゴシューショーサマ」
 さっきの俺を真似て、設楽が皮肉を言うも、太田さんは反応しない。ホントに立ってるのがやっとのようだ。一回3分って自分で言っていたくせに。倍以上使いやがって。
 「田中さんの腹部から、力を感じますね。さっきの漫才の内容は、ホントって事か」
 小林が不愉快そうに顔をゆがめた。設楽は至って普通にこう提案する。
 「じゃあさ、腹、切っちゃえばいいんじゃない? その黒曜石で」
 見たところ、小林のその石の使いっぷりは伊達じゃない。俺の腹を割くことなど、容易だろう。
 「やめろ……! ンなことしてみろボケ、ぶっ殺すぞ」
 太田さんは力なくそう叫ぶ。空間の効果はまだ持続しているが、本人自体の物理的体力も限界らしい。いくら自分の思い通りに事が運ぶフィールドを作り出せるとは言え、本人がこうではダメなようだ。
 「あーあ」
 設楽は感情を込めず、そう呟いた。
 小林が俺に照準を合わせる。その目は、冷たい。しかしその奥に、焼けるような物が見えた。
 ……ところで、俺はここで終わるのか? あっけないようで、そうでもないかもしれない。
 「……仕方が、ないんです」
 さっき設楽が散々口にしたその言葉を、今度は小林が呟く。
 仕方がない、仕様がない。人の命は、それで片付くのか。
 覚悟を決めた、そのときだった。
 「あどでー、ぼくでえ〜」
という、なんともこっけいな声。俺はこの空間の空気が正常になったのを感じた。そしてその次の瞬間。
 「――?!」
 目の前にいたはずの小林が、いつの間にか吹っ飛んでいなくなっている。
 俺は上半身を無理矢理起こして、入り口を見た。
 見間違えようのない、恐ろしく特徴を持った二人。
 片桐仁と、日村勇紀。

64佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 22:57:52
 「日村さん?! なんで、片桐まで……」
 ご都合主義を通り越した彼らの登場に設楽はただただ唖然としている。
 俺も、ただ焦った。どう考えても小林を吹っ飛ばしたのはこの二人。仲間じゃ、ないのか?
 小林は、座り込んだまま片桐を睨みつけた。側に落ちていた大きな粘土の塊。どうやら片桐が放った物らしい。
 「仁、何故、邪魔をした」
 小林は静かにそう言う。ブチギレて怒鳴り散らしたときより、何倍も怖い。それに怯まず、片桐は叫んだ。
 「俺、賢太郎のことすっごい信じてるし、だから、あえて何も言わなかった。でも、でも! 人を、人を殺すことだけは、人殺しだけは、お願いだから、止めてくれよ!!」
 小林も叫ぶ。
 「仕方がないんだよ! エメラルドは俺たちにとって、脅威なんだ。 破壊しなければならないものなんだ! お前はそれを、……分かっててくれたんじゃないのか?」
 石そのものを壊すこと、つまりそれは、それを持つ物の命を破壊する。片桐もそれを知っているのだろう。
 「分かってるけど、でもダメだ! 俺やだかんね! 誰がなんと言おうと、賢太郎に人殺しなんかさせないんだかんね!! 俺が死んでも殺させないからね!!」
日村は言った。
 「設楽よぉ、俺、お前が何してるのか、ほんっっっと、わからねえけどさ。でも、こういうのは、ヤバイだろぉ?! いや、お前自体やばいのかもしれないけど、でもさ、俺、お前が心配なんだよ。バナナマンじゃなくなるのは、ほんと、嫌なんだよ」
 設楽は、ただ黙っている。
 日村と片桐のでたらめな論理。それでも、俺は嫌いになれなかった。
 俺はよろよろと立ち上がり、
 「おい、まだ、何かする気?」
とだけ、やっとの思いで言った。
 「いえ、見てのとおり、設楽も、小林君も、こんな状態ですし、俺らは「黒いユニット」じゃないですから、安心してください。俺も、片桐も、自分の相方が心配な、だけですから。このままおとなしく、かえり、ます」
 と、日村はそう言った後ドタっと大きな音を立てて倒れた。
 「日村?!」
 片桐が駆け寄るのより先に、設楽が無言のまま駆け寄った。日村は言う。
 「あぁ、〜久々に力使ったからよ。ふへへ、みっともねえな」
 「本来なら、日村さんが俺を担いでいかなきゃいけないのに」
 日村に向けた設楽の表情は、さっきとは打って変わって、穏やかな物に変わっていた。
 「わりぃな、設楽ぁ」
 片桐はそれを見て安心したのか、小林のほうへと歩み寄った。
 「……賢太郎、ごめん、痛かったでしょ」
「……大丈夫だ」
 片桐が手を差し伸べる。小林は、迷うことなく、その手を取った。そしてそのときに片桐は、小林にノートを渡す。「大事な物だろう」、と……。
 「今回は、このような結果になってしまいましたが……、次は上手くやりますよ」
 設楽がそういい残し、彼ら4人は劇場を後にした。

65佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 23:01:52
 俺は頭がぼーっとしたまま、舞台上で未だ横になっている太田さんを呼びかける。俺は、生きているのだろうか。それすら危うい。
 「太田さん、太田さん?」
 「っるせえな、起きてるよ」
 本当に疲れているようだ。声が不機嫌そのもの。
 「太田さん、本当に舞台から降りなかったんだね」
 「そう言っただろうが」
 「……小林と設楽もすごかったけど、片桐と日村もすごかったね。太田さんが作った空間に入って来れたんだから」 
 俺が心底感嘆したようにそういうと、太田さんは「ふっふっ」と、声を立てて嗤った。
 「え? まさか……太田さん、それも全部、謀って……」
 「コンビの愛の力かも知れねぇぞ。俺らにはない、すばらしい物さ」
 太田さんはそう言って茶化そうとしたが、俺は誤魔化されなかった。太田さんは観念したようだ。
 「あいつらが作るような完全に計算しつくされた物語はすごいんだろうが、俺からしてみれば、でたらめに転がっていく物語ってのも、いいもんだよ」
 太田さんは横になったまま、俺に自身の握りこぶしを差し出した。そして、その手をゆっくりと開く。
 俺は、驚愕した。
 太田さんが持っていたのは、「黒い欠片」そのものだ。あまりのことに声を出せない俺に、太田さんは言う。
 「これはさっき、この操られた人間から拝借したんだ。でも、ほんと、いらねえんだ。こんな黒い欠片。何せ俺は他人の運命をもてあそんで、飽きたら放り出す、まさしく悪魔としか言いようがない心の持ち主だからなぁ。持ってようが持ってなかろうが、なんも、変化がない」
 俺はその欠片にそっと触る。欠片は音もなく砕け散り、消えた。
 「まぁ、何が言いたいのかって、お前の力はそのぐらいすげえってことだ。お前の一番近くにいる俺、勿論お前自身も、黒い欠片に汚染されることはない」
 俺は黙って太田さんの手のひらを見つめた。太田さんは語る。
 「あの黒い奴らが狙ってくるのも当然だ。これほど強大な力。そんなものを、お前が持ってること自体が、もう、吐き気ものだね。何でお前? みたいな。だがな、俺は、お前を失うわけにもいかない。お前無しじゃ、俺が成り立たない。それはもう、分かってんだよ。嫌な位。だから、どんな手を使ってでも、奴らを、玩んで、蹴散らしてみせる」
 そういって、太田さんは再び嗤った。俺はそんな彼に、尋ねる。
 「これから、どうする。俺がエメラルド持ってるのばれてるし。この際、白い方に行く?」
 「いいや、それは御免だ。喩え白のユニットに行ったとしてもだ、お前が武器として扱われてしまうのが目に見えている。そんな気は毛頭無い」
 「じゃあ……?」
 「俺たちは俺たちなりに進んでいくだけだ。まぁ……」
 太田光は、嗤う。
 「俺からしてみれば何もかもがくだらねぇから、白も黒もぶっ潰して、忌々しい現実を全部ひっくり返すって言うのも、大アリなんだけどな。
行く宛も無くあふれ出すお前の哀れな力と、それによって増殖する俺の悪意と生来の黒い魂で、ね……」
 Let sleeping dogs lie。……俺はその諺を知っていて、よかったと思った。

 【OutletTheater】is "Quod Erat Demonstrandum".(証明終了)

66佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/24(金) 23:04:32
以上で「アウトレットシアター」は終わりです。
予想以上に長くなったこの話に付き合っていただき、
真にありがとうございます。

実際、いかがだったのでしょうか。
反応を、ください。いつでも必死なんです、私。

67名無しさん:2005/06/24(金) 23:52:56
乙です!
いや・・・すごかったです。
すごく良く繰り込まれてて読んでいてドキドキしました!
どうにか残したいので本スレ投下もご検討ください。

68佐川優希 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/25(土) 00:58:26
>>67
レスありがとうございます。
名無しのこの土地において、名を名乗り物を書いていることに恐怖を感じつつも、
やはり、そのお褒めの言葉は、何よりの励みになります。
本スレ投下はまだ踏ん切りがつかないので、時間をください。

69ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/07/04(月) 19:50:57
久しぶりに続きの方投下したいと思います

70ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/07/04(月) 19:53:09
ゴーイングマイウェイで行こう③

 ━襲撃から数日後━

ルミネでの出番も終わり、帰りの支度をしている俺に誰かが声を掛けてきた。

「藤原、久しぶりに飲みに行かんか?」
「ん?‥‥‥ああ中川さん!」

かつて同じ劇場で一緒にやっていた、ランディーズの中川さんが背後に立っていた。今日は出番でルミネに来ていた。

「どうすん?」
「そうっすね‥‥‥」

一瞬悩んでしまった。
時期が時期だけに、ヒョイヒョイ着いて行くのは如何なものか?
中川さんが黒やない保証は無い‥‥。

「‥‥悩んでる言う事は、ひょっとして石の件か?」
「‥‥‥‥」

ズバリ言われ思わず体がビクッとなる。

「判りやすいやっちゃな〜」
「あ‥‥」

自分の反応を見た中川さんに思いっきり笑われてしまい、ただ照れるしかなかった。
「あ〜‥‥オモロイわぁ‥‥安心し、とりあえず俺は黒側の人間ちゃうで。」
「えっ?!じゃあ‥‥」
「まぁ‥‥一応白側にはなるんかな?俺達も黒側に狙われてる立場やし。」

ニカッといつもの人の良さそうな笑顔を浮かべる。とりあえず、他人の放つマイナスの感情に敏感に反応する俺の石が反応しないところを見ると大丈夫そうや。

「分かりました、中川さんの事信用しますわ。」
「ありがとうな。したら行くか?」
「ハイ!」

71ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/07/04(月) 19:55:07
ゴーイングマイウェイで行こう④

「さてと‥‥帰るか‥‥」

帰り支度をしていた俺に、意外な人が訪ねてきた。

「井本〜まだ居るか〜?」
「あっ‥‥高井さんやないですか!僕に何か用ですか?」

先輩のランディーズの高井さんだ。

「あ‥‥いや、中川知らんか?」
「いえ‥‥どうかしたんですか?」
「ん‥‥ちょっとな。実は、石の件で黒の奴らに俺ら狙われてるんよ。やからバラになって行動するんは控えろ言うてるんやけど‥‥」
「にも関わらず中川さんは‥‥」
「居らんねん‥‥‥」

何の変わりのない二人の先輩に思わず笑みをこぼしてしまう。

「いや、笑い事ちゃうから‥井本‥‥」
「すんません。‥‥そういやウチの相方も見えないんで、良かったら一緒に探しましょっか?」
「悪いな、迷惑かけるわ。」


正直、藤原が居らんのが不安だった。

あいつの持つ石━ユナカイト━はマイナス思考(悪意を含め)に反応するから簡単に敵味方の判別がつく。
だが今はあのアホは居ない、ったく‥‥

高井さんの持っとる石の能力が何なんかは知らんが、とりあえず今は信用して一緒にお互いの相方を探すしかない。

「‥‥そういや何でお二人は黒側に狙われてはるんですか?」
「まぁ‥‥いろいろあってな‥‥ジブンらは?」
「僕らは‥‥奴らにはうっとい存在みたいで、石共々狙われてるんですわ。」
「そっちも大変みたいやな‥‥」

互いの相方を捜し歩きながらとりとめなく会話をしているうちに、大阪のかつての仲間がエライ事になってる事や、しかもそれは俺達も良く知る人物によって引き起こされている事。
それを高井さんは俺に呟くように語ってくれた。

「まぁ、そういう事や‥‥」
「‥‥‥‥」


何も言えずただ、沈黙しか出来なかった。

♪〜♪〜


その時、いきなり誰かの携帯が鳴り出した。

「ん?俺のか‥‥たーちんからやん!はい、もしもし‥‥」

『高井か?悪い!今から言う場所にすぐ来てくれや!‥‥うわっ!!』

「おいっ?!どーしたん?」
「どうかしはったんですか?」
「たーちんに何かあったみたいや‥‥おいっ!もしもし!!‥‥」
「‥‥‥」

72ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/07/04(月) 19:59:01
とりあえず今回はここまでを投下したいと思います。

なお、ランディーズの二人及びこの後出てくる$10の二人の石&能力は、後程石スレに書き込みします。

73ジーク ◆e1pN4M1XZc:2005/07/06(水) 21:51:27
すみません、ちょっと手直ししてから投下したいと思いますので、本スレ投下は少し延ばさせていただきます。

74名無しさん:2005/07/16(土) 19:40:02
投下してもよろしいでしょうか…

75名無しさん:2005/07/16(土) 20:34:29
>>74
カモォン!!Щ(゚Д゚)Щ

76「ガラスの部屋」 ◆jReFkq.CTY:2005/07/16(土) 21:13:56
薄暗い路地裏、妙な音楽が携帯から流れている。一人佇む男は携帯を操作し、それを止めた。
男――ヒロシは、ため息をついて辺りを見回した。足元には、「黒」のユニットに属する超若手達が横たわっている。彼等の目にもう戦意はない。寧ろ何処か悲しげに見える。
数日前に道で「石」を拾ってから、これを狙う奴らが毎日襲いかかってきた。その度に石の力で追い払っているのだ。
なんとなく、手の中の石を見つめてみる。
カンラン石、―ペリドットとも言う―の能力は、「相手の悲しい記憶を呼び起こし、悲しい気分にさせる」こと。

77「ガラスの部屋」 ◆jReFkq.CTY:2005/07/16(土) 21:15:01
うまく行けば敵の戦意を喪失させ、逃げることができる。あまり好戦的でないヒロシにとって、有り難い能力だった。
が、力を利用することによる跳ね返りも結構なものだった。相手の悲しい記憶を呼び起こすと同時に、自分の悲しい記憶も呼び起こされるのだ。結構へこむ。
一回一回なら大したことはないが、ここ最近毎日連続で使用しているため、ヒロシの精神は相当参っていた。敵を追い払う度、悲しい―彼女にフラれただとか―事を思い出すのだから。

もう一度ため息をついて、とりあえずスタジオへ向かうため歩き出した。

78 ◆jReFkq.CTY:2005/07/16(土) 21:16:38
とりあえずここまでで。
短くてすみません…
投下初めてなんで添削お願いします。

79名無しさん:2005/07/17(日) 22:17:53
乙です!
いや〜短いのぐらいいいですよ〜
面白かったです!

80 ◆jReFkq.CTY:2005/07/19(火) 00:36:06
ありがとうございます(*´∀`)

81「¥1」 ◆uIwU8V3zEM:2005/07/20(水) 14:12:08
能力スレで中山さんとネゴさん提案した者です。
お二人の話が書きたくなったので、ちょっとプロローグ的な話を投下させてもらいます。


ある日のローカルテレビ局。
先ほどまで収録していたバラエティ番組の司会と思しき若手芸人が、
番組の企画でデザインした自作のTシャツを着て鼻歌交じりに廊下を歩いている。
今日は一日平和だった。石盗り芸人も来なかった。
相方のドッキリもなかったし、楽屋で食べた弁当もおいしかった。
きっと明日も平和だろう、と彼は証拠もなく確信していた。
…しかし、曲がり角を曲がった瞬間。
彼の心の平穏に、微妙にというか彼にとってはそれは大いにケチがついた。

それは異様な光景だった。
百円玉が浮いている。
いや、正確には、
百円玉を乗せた一円玉が、人間の腹部あたりの位置をゆっくりと飛んでいる。
自分より一回りほど大きな硬貨を、やはり重いのか時折ふらつき上昇下降を繰り返したりしながら運ぶ姿はどことなく哀れみを誘うものだった。

82「¥1」 ◆uIwU8V3zEM:2005/07/20(水) 14:17:43
彼は、これはただ糸で釣ってるだけで相方や他の芸人の悪戯なんじゃないかとか、
仕掛け人がどこかから自分の様子を見て笑っているんじゃないかとか、
そういったことも全く考えずに、ただぽかんと口を開けてそれを見ていた。
一円玉は百円玉を背負ったままのろのろと飛んでいる。
…えーっと、これは、なんや?
それを眺めながら、頭上にハテナマークを飛ばす。
が、当然のようにそれに答えてくれる者はいない。
おーい一円、がんばれー。
なぜか心の中でアルミの硬貨に声援を送りながら、頑張って考えを巡らせる。
しかし、驚きのあまり固まった思考はなかなか思うように働かない。
やがて一円は自動販売機の前にたどり着くと、百円玉を投入口に滑らせた。
そのままさっきより軽やかな動きでボタンに体当たりをする。
がこん、と缶ジュースが落ちる音がして、一円玉は取り出し口にひらりと飛んだ。
そこで一円玉は、跡形もなくふっと消えた。
彼は、はっと我に返った。
今の光景は幻だったのか、いや、そんなはずはない。
体中に悪寒が走り、季節はずれの鳥肌が立つ。
彼は思った。
今の、あのなんか勝手に物動くやつやろ。
てことは、考えたないしよくわからんし何か知らんけど、
…ここぜったいなんかおる。
導き出された結論に、自分で震え上がる。
そして。
「…わ、わ、わわわ…。」
………出ーたーーーー!!!
彼はそう子供のように叫ぶと、一目散に走り去っていった。
さすが肉体派芸人といったところか、逃げ足はやはり速い。
後にはただ、奇怪の現場となった自販機だけが立ち尽くしていた。

……彼、八木真澄がやっとあの怪異が誰かの石の能力によるものだと気づくのは、
逃げ帰った楽屋で帰り支度をしていた相方に泣きつき、どうにか落ち着いた後のことである。

83「¥1」 ◆uIwU8V3zEM:2005/07/20(水) 14:35:48

…八木が猛スピードで去ってから数分後のこと、
静まりかえった廊下に人影が見えた。
今日の番組にも出演していた関西の若手ピン芸人、中山功太である。
彼はすたすたと件の自販機に向かい歩いていくと、迷いなく取り出し口に手を突っ込んだ。
そこに先ほど一円玉が「購入」した缶コーヒーがあることを、知っていて当然だという風に。
「あー、やっぱりまだ往復はでけへんか。」
買いに行かすことはできても、取りに行かなあかんのやったら意味ないねんけどなあ。
彼はそう独りごちながら、缶を開けてコーヒーを飲み出した。
「…ぬるなってるし。」
文句を言いつつものどが渇いていたのかすぐ飲み干すと、空き缶をゴミ箱に投げ入れる。
…今日この後暇やしなあ、誰か誘って飯でも行こかなあ。
まさか、今日一緒やった人らの中なら黒の奴おらへんやろしな。
ぼんやりとそんなことを考えながら、中山は楽屋へと帰って行く。
彼のポケットの中に、じゃらじゃらと音を立てる小銭と、
白い貝の埋まったいびつな小石が、ひとつ。

彼はまだ知る由もない。
不用意に石の能力を使ったことで今日の共演者に狙われるきっかけを作ってしまったことと、
その所為でこれから自分と、とある芸人仲間が厄介事に巻き込まれることを。
手に入れたばかりの石と踏み込んだばかりの戦いは、確実に彼を非日常の世界に導き始めていた。

とりあえず、石を知らない若手の間で今日の出来事が微妙な怪談話となって出回ることは、また別の話。


以上です。ローカルネタがちらほらあってすいません…。
ご指摘、添削等あればお願いします。

84名無しさん:2005/07/20(水) 23:44:23
乙です!
面白かったです。番組がなんなのかはわかりませんが(田舎なので)
八木が面白すぎです(笑)

85名無しさん:2005/08/09(火) 13:24:19
作成依頼スレ4とは、関係ないかもしれませんが、(…少し関係あるかな?)
ケンドーコバヤシの、石との出会い編を考えてみたのですが、
添削御願いしたいので投下しても宜しいでしょうか?

86色々不安です… ◆XksB4AwhxU:2005/08/09(火) 16:16:12
>>85ですが、
試しに投下してみないと解らないですよね。
時間があるので投下してみます。

「絨毯雲」

やけに風の強い昼だった。
軽快な足取りで、パチンコ屋から出てきた男は満面の笑みで財布を見つめた。
いつもはぺちゃんこになっている筈のその財布は、やけに大きく膨らんでいる。
たまたま座った台が良かったのか、珍しく早起きして開店前から並んでみたのが良かったのか、普段とは比べものにならないくらい当たったようだ。
ムフ、と含み笑いをしてその財布をポケットに仕舞い直すと、横断歩道で立ち止まった。
信号機は、青が点滅していた。
いつもの彼なら点滅くらいでは立ち止まらないが、ふと何かを思いだしたのだ。

こう…当たりすぎるのも、何やな…

最近の、身の回りの違和感には何となく気付いていた。
パチンコの調子が良いとき、悪い事が起こるのは昨今の彼の回りでは増えていたからだ。
彼−小林友治は大きく一度溜息をつき、又青になった信号を見て横断歩道を渡った。

ふと、軽く見上げた空には、小林友治の無意識のうちの不安を纏うように灰色の雲が満ちていた。

87色々不安です… ◆XksB4AwhxU:2005/08/09(火) 16:36:23
>>86続き

近場までバイクを使うほど横着者ではない彼だが、今日だけはバイクを使わなかったことを少しだけ後悔した。
いつもなら素通りしてしまうような公園横の通り。
なにやら前の方で子供が騒いでいる。
気になってはいたが、いつもバイクに乗っている時のように我関せずに素通りしようと思った。
目の前を通るまでは。

「やめとけや」
また、自分の意識とは関係なく、その子供の集団のなかのリーダーといえる一人の子供の肩を叩いていた。
子供ははっと気付くと回りの子供を引き連れ逃げていった。
足元を見ると、傷ついたランドセルが落ちていた。
柄にもなく懐かしさを感じながら傷ついた蘭だセルを持ち上げる。
その横に、正にランドセルに背負われているのか、と言うくらい、小さな少年が蹲っていた。
「…お前も、やられっぱなしやったアカンで」
体に付いた砂をはたいて、頭を撫でると少年は小林友治を見上げた。
なんや?
口には出さずに目で返すと、少年はポケットから何かを取り出した。
「僕これを守ってたんだ」
抑揚のない、形式的な言葉を放った少年は、取り出したそれを小林の掌に乗せた。
「おい、これ…」
全て聞き終える前に少年は今までのその少年では無いかのように、素早く立ち去った。

88色々不安です… ◆XksB4AwhxU:2005/08/09(火) 16:46:12
>>87続き

一人、取り残された小林友治は、掌の石を見た。
専門の店に出せば、もしかしたらそれなりの値が出るかも知れないその石は何故か、小林友治の手にしっくりときた。
その石を一度、又握りしめる。

…何かを思いだした。
その”何か”が解ったような気がした。
最近、楽屋や廊下から漏れ聞こえる”石”を主語にした会話。
その会話をしている人達の尋常とは言えない雰囲気。

そして何となくだが、その先のことがこれからどんどん
解ってくるような予感を、小林は感じていた。

89色々不安です… ◆XksB4AwhxU:2005/08/09(火) 16:52:31
>>88続き

石を財布の中に仕舞ってとりあえず、
今日は帰ろうと思った。
今度はさほど気にもしていない様子で溜息を短くつき、煙草に火を点けた。
そして、遠い目で先刻よりいっそう黒さを増した空を見た。
その表情は、この先小林友治が突き当たる大きな苦悩を予感しているようだった。



…以上なのですが、
じつはコバ氏の石の力をあまりかんがえていませんorz
まだ使う前の話でしたもので…
どうでしょうか?

90名無しさん:2005/08/09(火) 17:23:13
いいです乙です!
台詞とか雰囲気とかしっかりケンコバさんらしくて、あと文体が好きです。
これから陣内さんと絡めていくんでしょうか?

91 ◆XksB4AwhxU:2005/08/10(水) 01:55:43
>>90
ありがとう御座います。
陣内智則との絡みは進行スレで相談していきたいなぁと考えています。
もし他で陣内智則が暴走して其れを誰かが止めて…と言う話を考えている肩が居ないので有れば、小林友治にそれをしてもらいたいなぁ、と自分は考えていたので。
ただそんな話を自分が書けるのかに多大な不安がありますが

92名無しさん:2005/08/10(水) 05:41:11
関西圏以外はあまりコバを見る機会がなく詳しい情報がないので、
どこかに「小林友治ことケンドーコバヤシ」みたいな文を入れてもらえると助かる。
重箱隅スマソ

93名無しさん:2005/08/10(水) 23:27:17
すごくいいと思います

94「¥1000」 ◆uIwU8V3zEM:2005/08/14(日) 11:32:12
>>81の続きというか、本編投下します。
ちょっと長くなるかと思います。

舞台終了後の楽屋。
仕事を終え満足げな若手芸人たちがちらほらと帰りはじめる中、
中山功太はパイプ椅子に腰掛け、じっとてのひらに収まった小ぶりの石を見ていた。
その石は一見すると路傍に転がっている石ころとあまり変わりないようなものだったが、
中山がそれを手の中で転がすと、白い二枚貝の貝殻が埋まっているのが見えた。
持ち上げて蛍光灯の光にかざしたり、貝と石の境目の部分を指でつついてみたり、
そう子供のようなしぐさを繰り返す中山の目は、妙にぼんやりしていた。
「あれ、まだ帰んないの?」
その声にはっと顔を上げると、既に帰り支度を済ませたネゴシックスこと根来川が立っていた。
「ん…ああ、一緒に帰ろか?」
中山は少し遅れて、やや逸れた返答を返した。
「え、っていうか飯行かない?」
根来川は一瞬きょとんとしたものの、すぐにそう提案する。
「この前いい焼き肉の店見つけたって言ってなかった?
 そこ行こうよ。安いんでしょ?」
「ええな、行こか。」
そう言って立ち上がると自分の鞄を取り、ズボンのポケットに石を突っ込んだ。
「あれ、何それ?」
「…え?ああ、これ?」
その不自然な物体に気づいた根来川が声を掛ける。
中山は石をポケットから出すと、はい、と根来川に渡した。
「…石?」
「なんちゃら言う貝の化石。こないだ露天商で見っけた。」
「へえ、そんなのもあるんだ。」
根来川は石を手の中で転がしてまじまじと見ている。
「…そこな、ちっちゃいババアがやっとったんやけど。」
「うん」
「売っとんのなんや石ばっかで、おもろいな思て見てたらオレにこれ買え買え言うて、
 そんでオレも結構気に入ったし安うしてくれたから、置物代わりにそれ買うたんやけど…」
そこで中山は一呼吸置いた。
中山の様子に、根来川は視線を石から中山に移す。
「…その石、変やねん」
その言葉に根来川は、不思議そうに目を瞬かせた。
「…変?」
「そう」
「…どんな風に?」
「……笑わん?」
「笑わん笑わん」
「うそーありえへーんとか言わん?」
「言わない言わない」
「…絶対?」
「うん、絶対。」

95「¥1000」 ◆uIwU8V3zEM:2005/08/14(日) 11:33:59
その言葉に中山はやっと「誰にも言わんといてな」という前置きつきで話し出した。
根来川の目つきが真剣になる。
「……こないだな、その石な、」
「うん」
「ピカって光って、五円玉浮かしてん」
「ウソォ!!?」
根来川はそう大仰にも見えるリアクションを返すと、手中の石と中山を訝しげに見比べた。
一方の中山は、「言わへんて言うたやん…」とぶつぶつ言っている。
「…ごめん、でも、ありえんない…?」
「ありえへんも禁止ー。」
「いや、でもそうだって」
なおも訝る根来川に文句を言う中山。
そのやりとりをもう少し続けた後、中山がため息をついた。
「ほんまやって、見たんやから。」
「…五円玉浮くとこ?」
「うん。石いじっとったら光って、たまたま机にあった五円玉、浮いてん」
「………ほんと?」
「ホント。」
「…うそお」
「うそちゃうて。」
その応酬も何度か続き、中山は焦れたように頭を掻いた。
「……そんなの、あるの?」
「…ある…んちゃう?あったし。」
そういうと、二人は黙り込んでしまった。
しばらくの沈黙の後で、根来川が口を開いた。
「…その売っとったおばさんのとこ…行った?」
「うん。行ったんやけど、もうその公園にはおらんかった。」
またも少々の沈黙。
手持ち無沙汰そうな根来川は、また石を観察しはじめた。
「…その五円玉どこ行ったの」
石を見ながら言う。
「オレがパニクっとう間に消えた。」
「消えた?」
「…消えた。」
勘ぐるような根来川の目つきに、中山はまたため息を吐く。
「信じてくれへんのー?」
お前やから言ったのに。
特に根来川からの催促があったわけでもないのだが、中山はそう言ってむくれてみせた。
「いや、だってそんなの…」
その反論は、途中で途切れた。

96「¥1000」 ◆uIwU8V3zEM:2005/08/14(日) 11:42:50
…バタンッ!
そう大きな音を立てて、ドアが壁に打ち付けられるように開いた。
それと同時に、空を切るように振るわれた鞭の、ビシッという短い音が響く。
「…無防備すぎやで」
その台詞と共に、男が一人入ってくる。
「へ…?」
根来川は間の抜けた声を上げ、きょとんとした目で男を見つめた。
よく見知った顔。確か、今日の舞台には出ていなかった、筈。
「…っ、畜生」
やっぱり来るんか。
途端、中山の顔つきが変わる。
半ばやけくそのような、戦いの顔。
まだ状況のつかめていない根来川は「え?え?」と二人を見比べた。
がらんと広い室内には中山と根来川、それと男の三人だけが立っている。
「アカンよ、こんな所で石の話なんかしたら」
男がじりじりと、中山と根来川に向かって進み出ていく。
その異様な雰囲気に、思わず逃げるように椅子から離れ後ずさる二人。
だが、すぐ壁際に追い込まれてしまう。
男は口角を意地悪く上げると、ほんの少しだけ悲しそうな目をした。
しかしその色は一瞬で消え、真っ黒い底知れぬ目に変わる。
「えっ…」
根来川はその一瞬の色に気づいた。
「まだ、あんま知らへんねんな。気ぃつけた方がええよ。」
男がその雰囲気に不似合いな助言を皮肉げに呟く。
「…ネゴ、石、貸して」
「えっ、あ、うん」
中山はそれに舌打ちすると、隣の根来川にやっと聞こえるような声でそう伝え手の平を向ける。
この状況に混乱しているものの、その言葉に条件反射的に石を渡そうとする根来川。
男はそんな動作を見逃さなかった。
「狙われるから」
オレみたいなんに。
そう言い終えるか否か、男が黒い光と共に手をかざす。
「…逃げえ!ネゴ!!」
中山が思わず叫んだ。
男の手から伸びる黒い鞭が、根来川にまっすぐ向かっていく。
…黒い長い、人に牙を剥く蛇のように。


一旦ここまでです。
ネゴさんの言葉とか不安な所があるので、添削お願いします。

97 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:38:40
前にヒロシの話を投下した者です。大分推敲したんで再&続き投下します。

   〔〔黄昏の翠玉〕〕

薄暗い路地裏に、妙な音楽が流れている。一人佇む男が携帯を操作し、その音を止めた。
男――ヒロシは、顔を上げて誰も居ないことを確認し、ため息をついた。
足元には黒の若手達が倒れていた。彼等の目にもう戦意はなく、寧ろ何処か悲しげに見えた。

手の中の石を見つめる。
少し前この石を拾った――それが発端だった。

98黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:39:50
「黒に入りませんか?」
ある日、『黒のユニット』と名乗る若手(名前も知らない男だった)に呼び出された。
「…どうして」
「中立でいたってどうしようもないでしょう。どっちかに付いた方が楽ですよ?」
男は笑みを浮かべ、石を手の中で転がしながら言う。
ポケットの中の石が、熱くなった気がした。ヒロシは、それを握りしめながら昨日の事を思い出していた。


コツン。
「……ん?」

道を歩いていたら靴に何かが当たった。何だろう?と下を見ると、綺麗な石が転がっていた。
(宝石?)
拾って眺めてみると淡い黄緑色が煌めいた。石が手に馴染むような妙な感覚がした。
ふと、ある考えが浮かんだ。ひょっとして、これ、噂の…
(あの『石』か?)

99黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:41:27
「まさか、なぁ」
そう呟いてちょっと迷って――石をポケットに入れ、歩き出した。
――予感は的中したようだ。

『石』のことは噂で知った。最初は、正直冗談だと思った。
だが、『石』にまつわる噂(あの部屋で誰と誰が戦ったらしい、だの、石が汚れてる奴は危険らしい、だの)が耳に入ってくるようになり――次第に、あれは本当の話なのかと思い始めた。
今、男の持つ、黒く妖しく光る石を見て確信した。あれは本当の話だったのだ、と。

石を見つめ、男は笑っている。
「石はこんなに素晴らしい力を与えてくれるのに、白はこれを封印してしまう…もったいないと思いません?」
陶酔したような表情。
「貴方だって力が欲しいでしょう?損はありませんよ、こっちに」「嫌です」
男の言葉を遮って言い放った。そのままお互い睨み合う。
男は笑みを崩さない。

100黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:42:17
『白のユニット』と『黒のユニット』の噂を聞いた時、もし『石』の争い(本当だったらの話だが)に巻き込まれたら――どっちに付くべきだろうと少し考えたことがある。
どっちに付いてもややこしそうだから、中立がいいなと思った。今もそう思っている。

「なら、力づくで行きますよ」
男が笑いながら言った。
と同時に、男の手から糸が何本も出て、辺りに広がる。
「なっ!?」驚いて周りを見る。
「あぁ、びっくりしました?」
俺の能力ですよ、と男が笑う。糸が迫ってくる。

どうすればいい?
ヒロシは内心焦っていた。

糸が腕に絡み付く。降りほどく。

101黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:43:07

(まだ石の力にも目覚めてないのに)―どう戦えと?
もう一度絡み付いてくる。今度は払ってもほどけない。

この石を渡して見逃してもらうか?どうにかして戦うべきか?
…降伏した方が、

糸が体中に巻き付き、あっという間に取り押さえられた。
――とっさに、ポケットの中の石を手の中に握りしめた。


いつもここからの菊地は苛立っていた。上に与えられた指令が原因だった。
どうして俺にヒロシの監視を命じるんだ、と。
この人と自分の相方・山田が仲がいいことくらい、上だって知っているだろうに。

102黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:44:05
…いや、知っているからこそ、か。
山田にバレたら面倒臭いことになるだろう。彼の友人が襲われているのを、黙って見ているのだから。それは避けたい。
それに、もしも、ヒロシが山田と一緒にいる時に黒に襲われて、万が一、敗れてしまったら。
自分に与えられた命令は監視だ。山田を助けようとしても、それは上の命令に逆らった事になる。

牽制のつもりなのか。俺に『裏切るな』と言っているのだろうか。苛立ちが増す。持て遊びやがって。
ふと見ると、ヒロシが取り押さえられていた。冷ややかな目でそれを眺める。

103黄昏の翠玉 ◆jReFkq.CTY:2005/08/21(日) 23:50:50
あの若手は単純な奴だが、あの調子だと心配はないだろう。…うっかり、殺しでもしない限り。
その場合、あのシナリオライターが先に止めている筈だから、心配は無いと思うが。
だが、この任務が解せない。黒に入れるだけなら、自分の監視など必要無いのに。
まぁ何か考えがあるのだろうと思い、監視に集中することにした。


今日はここまでです。長くてすいません(;-Д-)
何かミスがあったら教えて下さい…m(_ _)m

あと、山田さんとヒロシさんが何て呼びあってるか知ってたら教えて下さい…。

104 ◆jReFkq.CTY:2005/08/22(月) 00:02:08
忘れてたΣ(´Д`)

男の能力:手から糸を出す。何本も出したり、操ることも可能。
糸が多く太く長い程、体力を消耗する。力を解除すると、糸は消える。


大量スレ消費、すみませんでした…orz

105名無しさん:2005/08/23(火) 13:05:54
乙。続きが気になる…

106 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:04:25
廃棄小説スレにいた者です。こっちに続きを載せる事にしました。


「な…何これ…」
大木は首を傾げた。
紙には見知らぬ横文字が殴り書きで書かれてあった。指でなぞりながら一字一字ゆっくり読んでいく。               
「うー…汚くて読めねえよ…えーっと…せ、ら、ふぃ、な、い、と…“セラフィナイト”…?意味わかんね」
何となく可愛らしい響きの、聞いたこと無いようでどこか聞いたことがある名前。宝石か何かの名前なのだろうか。
何にせよ少し声に出して読むのが恥ずかしい。

言い終わった途端、大木の目の前に転がっていた石が緑色の光を放ち始めた。
石を拾いかけていた男達はそのまばゆい光に目が眩み、石を取り落とす。
石の光が消えると同時に、ひゅるるる…という風の音がして、木の葉がくるくると舞う。
そして、大木の背後から明るい声がした。

「堀内ケン、あ、参上〜っ!しゃきーん!!」

3人の視線が、一点に集中する。
茶髪の男―――ネプチューン堀内健の姿が、そこにあった。
「え〜何何?もうピンチになっちまったワケ?だっらしねーなあ!」
「…はあ、すみません」
堀内は大木の腕を引っ張り、身体を起こさせた。落ちているリュックも拾ってやる。
「じゃあ、ちゃっちゃと終わらせよーぜ。この後収録なんだよ。泰造と潤ちゃん待たしてっからさぁ」
くるりと男達の方へと向き直り、小馬鹿にしたような口調で挑発する。

そしてまんまとその挑発に乗った血気盛んな若手は、相方と思われる男の制止を振り切り、目の前の大物先輩に向けてその赤い光線を放った。

107 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:05:30
常人より遙かに運動神経の良い堀内は身体を器用に折り曲げて光線を交わす。だがその光線は大木のときと同じようにぐにゃりと反転し、再び堀内に向かって襲いかかってきた。
それに気付かない堀内に大木が声を荒げる。
「ちょ、堀内さん、後ろ!」
「お、何ボンス。“志村後ろ!”みたいなこと言っちゃって。……ありゃ」
堀内の唇が「やべっ」と動いたのを大木ははっきりと見た。
「“やばい”ってアンタ…」
その瞬間、真っ赤な光が堀内を包み込んだ。

あまりにもあっけなさ過ぎる展開に、大木はもちろん、光線を放った男も目を丸くしている。だが直ぐにそれは笑みに変わった。
「驚かせやがって!やっぱり堀内さんは原田さん達が居ないとてんで使えませんね!」

「何の話してんの〜?俺にも教えてくれねえ?」
「えっ…」
背後に人の気配を感じた時には、もうすでに堀内が小泣き爺の如く男の背中に負ぶさるようにのしかかっていた。
隣では相方が口を開けて固まったまま突っ立っている。
男は堀内の重さによろけてうつ伏せに倒れ込んだ。堀内は男の頭をこんこんと叩く。
「良いね〜その台詞。久しぶりに本気で頭に来たかもよ?」
段々と声が低くなってくる。どうやら本気で怒ってしまったようだ。
「こ、の…!」
相方の男が木材を横に振り回し、堀内の頭を狙った。確実に避けることの出来ない間合いだった。だが、
「くそっ……また…!?」
振り切った木材は宙を切った。同時に、堀内に乗っかられていた男の背が急にふっ、と軽くなる。
「何だよ!何が起こったんだ!」
慌てて男が起きあがり、相方に詰め寄った。
「消えたんだよ…一瞬で」
「消えたって…」
「まるで…風みたいに、ふわっと…」

108 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:06:38
顔を青くして会話をする男達を、大木は少し離れたブロック塀から覗き込んでいた。
今までくりぃむしちゅーや川島が言っていたことは、ただの冗談だと思っていたのだが。
目の前でこんな光景を見せつけられてしまっては、認めざるを得なくなってしまった。

「つーか堀内さん、どこ行ったんだ?」
ぽつりと呟く。
すると、背後からひゅるるる…と緩やかな旋風が巻き起こり、その中央からふわりと音もなく堀内が現れた。
それに気付かない大木にそろそろと近寄り、思い切り肩を叩いてやる。
「う、うわッ…」
心臓が飛び上がり無意識に叫び声が出る。堀内は自分と大木の口元に人差し指を当て、笑いを堪えながら(しーっ)と言った。
「くーっ、どう?かっけぇだろ俺!忍者みてーだろ!」
「忍者って言うよりお化けですね」
「まあとにかく!」
堀内は大木の眼前に手を突き出す。
「お前に怪我させた奴らを許すわけにはいかねー。俺も何か馬鹿にされたし。一発くらい殴っても文句言われねーだろ」
「でもあいつのビームみたいなの追いかけてくるんですよ?」
大木の言葉を無視してぱきぱきと肩を鳴らし、

「さあ、駆け出し若手君の前座は終了でーす。そろそろ本番行っちゃいましょー、3秒前〜、2、1…」
口元に手を当て、芝居がかった口調で聞こえよがしに叫ぶ。
ゼロ。
そう言ったと同時に堀内の身体に一瞬、テレビがぶれた時のように青黒っぽい影が掛かる。
そして一秒も経たない内に姿が完全に消えた。
「いくら追いかけて来るビームでもさぁ、当たんなかったら意味ねぇよな〜」
わざと遠くに堀内が現れると男が光線を放つ。
光線はしつこく堀内を追いかけ回すが毎回ぎりぎりの所で堀内は消え、倉庫の屋根の上など様々な場所に姿を出す。

109 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:07:49
「あー疲れた。そろそろ終わりにすっか。…っとその前に、痛い目に会ってもらうぜ」
「えっ…うわあ!」
「ボンスの仇、覚悟!」
あろう事か男達の頭上に現れた堀内は、重力に任せて二人の身体をどすんっと地面に叩き伏せた。
「ごめーん、痛かった?不意打ちには注意しねえと」
けたけた笑いながら、気絶して起きあがれない男達の上から一瞬で大木の隣へ移動する。

「…瞬間移動?」
大木が言った。
「そっ。もう気付いてると思うけど、これ全部石の力だから」
「堀内さんの瞬間移動も、あの若手の光線も?…じゃあ俺は…」
「お前のはそのー…あれだ。“呼び寄せ”ってやつ。お前紙読んだろ?セラフィナイトって。俺の石の名前だよ。“天使のお守り”だって。かーいいだろ」
堀内は鼻の下を擦りながら胸を張った。
少し違和感はあるが、まさに「永遠の中2」の彼にはうってつけの石かもしれない。
「魔法みたいですね…」
「マホー?そんな綺麗なもんじゃねーって。まあ詳しいことはそのうち話していくから」
すると、大木の石が光り始めた。
「え、なんか光ってますよ?」

「あー残念、時間切れだ。じゃあ俺、泰造と潤ちゃんのとこ戻るから。シュワッチ!」
石がぱっと強く光ると、堀内の姿も完全に消えた。辺りを見渡してみたが、堀内の声は聞こえない。今度は瞬間移動したわけでは無いようだ。
「…ああ〜何か分かんないけど、これから大変そう…」
大木は夕焼けの空を見上げて、ふーっと溜気を付くのだった。



ばたばたという足音と共に、楽屋のドアが勢いよく開けられる。
「健!お前どこ行っとったんや!」
「俺ずっと此処にいたよ」
「もう本番はじまっとるんやぞ、早よ来い!」
怒鳴る名倉をまあまあ、と原田がなだめる。

スタジオに向かう途中の老化でこっそりと原田が尋ねた。
「ケン、本当は何処行ってたの?」
「ん?ちょっと恩を売りにね……」

110 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:08:05
堀内健(ネプチューン)
石:セラフィナイト [羽のような模様がある。黄緑+白]
能力:瞬間移動。半径100メートル以内の空間ならどこでも移動可能。
条件:一瞬で移動するので長い間姿を消しておくことは出来ない。
   連続で使えるが、使うたびに移動範囲が狭まる。
   自分以外の物も瞬間移動させられる。

111 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:08:57
長々とすみません。ここで終わりです。

112 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/23(火) 20:13:24
間違い
老化→廊下

113名無しさん:2005/08/24(水) 21:28:24
長編乙です!爆笑・くりちゅー・ネプのボキャブラ御三家が揃いましたね。
ホリケンの少年漫画っぽいキャラがこの設定にピッタリで、バトルも軽快で面白く、
楽しませて頂きました。

114名無しさん:2005/08/25(木) 08:31:53
乙。
面白かったよ。ホリケンはやっぱ白なのかな?
本スレにも投下キボン

115 ◆BKxUaVfiSA:2005/08/25(木) 17:51:21
白か黒かは考えて無かったりします。
くりぃむが白、爆笑が中立と来たらやっぱネプは黒かなーとは
思ってますが。
他の人はそこんとこどうしたいのか意見欲しいです。

116名無しさん:2005/08/25(木) 18:45:01
本スレ投下に一票ノシ

117 ◆8Y4t9xw7Nw:2005/08/25(木) 19:35:36
大木を襲ったのが『黒』の若手っぽいし(『白』だったら、浄化するにしても
他人の石を無理に奪おうとはしないでしょう、多分)『白』かなとは思うのですが。

118名無しさん:2005/08/25(木) 20:54:31
恩を売るって言葉から黒のホリケンが下っ端を使った狂言って可能性も…
ってこれは◆BKx〜さんが決めることであってこっちが深読みすることじゃないね。
とりあえず乙です。


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