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【個】『烏兎ヶ池神社』【場】

1『星見町案内板』:2019/02/02(土) 00:04:12

             〜ご由緒〜

星見町の『鵺鳴川』沿いに存在する『パワースポット神社』。
インターネットで『S県 パワースポット』と検索してみれば、
まず『20番目』までには間違いなく表示される程度の知名度である。
ご利益は主に旅の安全、学業成就、病気平癒、安産祈願など。

境内池が『霊池』として名高い。神社名も池に由来する(池が先にあったのだ)
霊験の由緒は諸説あり『京で討たれた鵺の一部が、この池にも落ちたのだ』とか、
『転落し、水を飲んだ人間が御利益を得たのだ』といったものが比較的多く見られる。

現在は厳重に柵で囲っており、出入りが許されるのは社家をはじめ関係者のみ。
一般の参拝客に向けては、柵の前までのみを開放している。撮影などは自由。
専用のボトルに詰めての授与(300円)も行っているが、飲用の際は『煮沸』推奨。

社務所では他に御守りや、おみくじ、絵馬、御札、御朱印帳などを頒布しており、
特に『御守り』については半ばアクセサリーのようなデザインの物も多く、
神社(池)の名にちなみ『カラスとウサギ』を戯画化したストラップ型のものが人気。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││  
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
     ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││ #
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
#:『烏兎ヶ池神社』
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136嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/10(水) 01:24:28
>>135

「ね、ディーン――――」

「ディーンは何をお願いしたのー?」

話し掛けるヨシエの隣で、俺は学文の瞳の奥に、『さっきと同じ何か』を感じ取っていた。
つまり、『疑問』だ。
もし俺が人間だったとしたら、似たような感想を持ったかもしれない。

「じゃあー、帰ってから『お話』しようよー」

「――――ねっ?」

ヨシエは、先程と同じ内容を口に出した。
普通の人間なら、『子供の言う事』だと軽く流してしまうだろう。
初対面の時の学文が、そうであったように。

「あっ――」

(だが、今の『学文』は……)

彼女の瞳に映る『疑念』――それは俺の『謎』を解き明かしかねない。
直感というか本能というか、そういう原始的な部分が、俺自身に知らせてくるのだ。
逆に言えば、彼女は『何故そう思うのか』?

「そろそろ帰らなきゃー」

(まさか――――な…………)

『俺と同じ』、なのか?
学文を見上げながら、そんな考えが頭をよぎった。
『ルナ』の件もある。
可能性はゼロじゃあないが――。

「今日はお参りできてよかった!」

「ありがとうございましたー、『学文のお姉さん』!」

ヨシエがリュックを下ろし、俺も帰り支度を始める。
リュックの中に入る前に、チラリと学文に視線を送る。
その黒い瞳には、学文のそれと似た『疑問』の色が微かに見えた。

137鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/10(水) 04:14:24
>>136

「…………うん!」

「ボクの方こそ、ヨシエちゃんにお参りを教えられてよかったよ。
 それに――――『ディーン』にもね。
 犬にお参りの作法を教えた巫女は、全国でも初かもしれない」

        「すごく名誉だ。録画とかしておけばよかったなあ」

・・・帰り支度を始めた二人を見つめ、笑みを浮かべる。

爛々と輝く金色の瞳に、特別な意味はない。

(『お話』――――子供特有の言い回しだと思っていた。
 けれど、今考えれば『お話』は本当に出来る可能性がある。
 この世界には『不思議』を現実に出来る力があるんだから)

色が珍しいだけの、ただの視線――ただの『疑問』だ。
それはヨシエではなく、今は『ディーン』にも注がれていた。

(それがディーンのなのか、ヨシエちゃんのなのか、
 それとも単なるボクの自意識過剰ってやつなのかは、
 わからない――――ボク自身の力がいまだに鵺的なように、
 この『能力』というのは理屈だけで推論を立てられるものじゃあない)

「それじゃあ、帰り道には気を付けて。
 またいつでも来てね、ディーンと一緒でも、一人ででもね」

         (だけど)

         (――――あの二人、どちらかは『そう』なんじゃあないか?)

138嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/10(水) 05:27:44
>>137

「うんっ、また遊びにくるよー」

「学文のお姉さんにも会いたいから!」

結局の所、彼女が『俺と同じ』なのかどうかは分からない。
人間の世界で言う『神のみぞ知る』ってヤツさ。
そして、その『神』が何処の誰かを俺達は知らない訳だ。

「学文のお姉さんも気をつけてねー」

「――――さよならー」

  ペコッ

別れの挨拶と共に、ヨシエは頭を下げた。
『神様』ではなく、『学文』に。
俺もリュックの口から頭を出して、学文に『一礼』の真似事をする。

(『神様』か……)

(ひょっとすると、こいつの『謎』は『スタンド』より深いのかも――な)

説明はされたものの、『神様』が何なのか俺には今一つ掴みかねていた。
『実体』のようなものが感じられないから――かもしれない。
目で見えず、音も聞こえず、匂いもなく、触れられない。

「ヨシエのお願い、聞いてくれてるかなー」

     テク
         テク
             テク

俺にとって何よりも確かなもの――それはヨシエだ。
俺が傍にいる事がお前の幸せなら、俺はそうするさ。
今までもこれからも、命が続く限り。

「ディーンのお願いも聞いててもらえたらいいなぁ」

それを再認識させてくれたって意味じゃあ、俺も『神様』に感謝しよう。
それと――『学文』にも。
ヨシエの背中に背負われたリュックから頭だけを出して、俺は遠ざかる神社と巫女を見続けていた。

139斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/31(水) 21:23:23
偶にたわいもない、同じ事を考える。
神様は、僕を救ってくれるのか?
結論から言えば、NOだ。


額の汗を拭って、ペットボトルのお茶を一口、スカーフに包まれた喉を鳴らす
全然飲んだ気がしない、酷い蒸し暑さ、アスファルトの上よりはマシだけど。


 「あっついな……。」


汗が頬を伝って顎から滴り落ちる、まるでサウナに入っている気分。


此処に来たのは、両親の病気平癒の祈願の為だ
救わないと解っていて、それでも神様に縋らずにいられない
妙な話だとは、僕も思うけど。

奇跡は有った、『スタンド』という名前の奇跡は。

それでも神様は僕に、手を差し伸べないだろう
――いや、この世の誰にも差し伸べないに違いない。

そういう妙な確信だけは有る
何故かは知らない、自分の事は自分が一番解る、とか、僕なら鼻で笑う台詞だ。

神様に聞こえないように悪態をついて、木陰に座り込んだ
頬を風が撫でるのが、汗のお陰で感じられる。

周囲に誰もいないのを確認してから、少し休むことにした
寒いのよりはマシだとしても、暑いのも苦手だ……。

140鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/01(木) 22:46:26
>>139

誰もいない、猛暑の神社――――
唯一そこにいるのは斑鳩だけだったが、
それは『参拝客』に限っての話だった。

             ガララララ…

拝殿の戸が開き、中から女が姿を現す。
巫女装束に身を包んだ、『女』――――
顔立ちを見るに、少女と言っていい年頃だろうか。

「あっっっつ……あ」

        ペコ…

「ようこそお参りです。
 すいませんね、気が付かなくって」

「ご参拝ですか? 御祈祷? それとも、ご散歩?」

斑鳩から少し離れたところまで歩みより、声をかける。

「あの、もしかして、ご熱中症とかじゃないですよね?
 氷とか、冷たいのいります? 今日はちょっと、暑すぎますもんね」

涼やかな笑みだが、額から首筋へと垂れる汗は彼女も同じだった。

141斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/02(金) 21:37:02
>>140

夏の暑さは正常な判断すら鈍らせるようで
鼓膜から数秒遅れて鳥舟の声がようやく脳に届く

虚ろな視界に入ったのは金色の瞳、ボブの黒髪は左につれてゆっくりと長くなっている
巫女服を纏った女性が立っている、年は同じか、少し向こうが上か……やめとこう。
先に舌を回す時だ。

「マ……?」

(男……いや、女の子で、巫女さん?)
(男なわけがないよ、どうしてそう思ったんだ斑鳩?)
(それより、座ったまま相手するのは失礼だろ。)

思考が洪水のように流れては消えていく、舌が回らない
手を動かす事すら蝸牛の如く遅い、礼儀正しい女性に礼を失していいのか?いいわけがない。


――仕方ないのでペットボトルの中身を全部頭の上からぶちまけた。
温いシャワーがぶちまけられた気分、緑茶風味。


「おわぁ……ああ、大丈夫、大丈夫だよ、有難う。」


そう言いながら樹木に手をついて立ち上がる、あとでミネラルウォーターを買わないと
傍に立つ樹木は体重をかけてもびくともしない、なんて頼もしい奴なんだ。

……熱を吸い込む黒いジャケットなんざ馬鹿正直に着る必要は無いな、脱いでしまえ
脱いだジャケットの袖を腰に回して結ぶ、白いドレスシャツもこれで深呼吸できるだろう。


女性にしぶきがかかっていないかを確認して、一礼し、何とか舌を回し
髪をかきあげる、短髪なのでかきあげるほどはないが。



「『病気平癒』の……あー、『お守り』を買いに来たんだ、あるかな?」

(僕にも必要そうだしな。)

「冷たい水は、有れば……嬉しいな、うん、とても嬉しい。」

142鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/03(土) 00:53:08
>>141

左に行くにつれ、流れるように長く伸びた髪。
金色の目もあり、どこか『非日常』の気配漂う女性だった。
あるいは、それも熱にやられた認識の虚像かもしれないけど。

「わっ――――と、と。ワイルドですね。
 高校球児みたいだ――――って、
 高校野球に詳しいわけでも、ないんですけど」

頭から茶を被る斑鳩に、
ほとんど反射的に足を下げた。
おかげで水飛沫は少しもかかっていない。

「お守りは、ありますよ。
 『病気平癒』は特にね。
 授与は、あっち。社務所のほうで」

         スゥー

指でゆっくりと、その方向を指し示す。
まるで舞うように、と言うのは大げさだが、
斑鳩の見立て通り『礼』を感じる所作ではある。

        ザ…

「冷たい水と――――あとは、タオルも必要かな。
 今は貴方しか参拝客もいないみたいですし、
 巫女のほうもね、どうせボクしかいませんから。
 ゆっくりしていってもらっても、誰も文句言いませんよ」

「歩けますか? 背負っていける自信は、ないですけどもね」

木にもたれかかる動きに目を細めて、手を差し出す。
話しぶりも含めて、『熱中症』を疑っているのだった。それも、真剣にだ。

143斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/03(土) 13:50:51
>>142

 「どうも。
 ベースボールに興味が?ない?僕もそうではないけれど。」

差し伸べられた手と自分の手を見比べる
男女の違いと言うのは勿論あるが、僕の手は濡れてしまっている
結露したペットボトルを握ったからだ。

(――そこまで厚顔無恥にはなれないな)


 「失礼、お気遣いには感謝したい、でも僕の手は先程ので濡れてしまっている」


服も濡れている以上、拭いてもあまり変わらないだろう
お陰で頭はハッキリしたが、今はそれよりもお守りの方が大事だ。
差し伸べられた手をそっと押し戻す。

 「巫女さんの手を濡らすのは忍びない
 神様の機嫌を損ねるのも困る。」


自分の汗と肌を確認する、よし、乾燥はしておらず、肌も冷たくはない
熱射病か熱疲労まではいかないだろう、なった場合は病院のおでましだが。


 「……でも案内には喜んで従うよ、優しい人」
 「なあに、これでも歩くのは得意な方なんだ。」


僅かに傾きつつも、彼女の示した方に歩みを進めていく
彼女は社務所が確か…向こうだと言った筈だ。

(纏うタイプ……とはいえ、こういう時には便利だな、影の脚というのは。)

夏の日差しの中
それが聞こえる人間には、足音を多々鳴らしながら。

144鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/03(土) 21:49:34
>>143

「高校野球のシーズンだけは、
 テレビを付けるんですけどね。
 ルールも半分おぼつかないくらいで」

「ミーハーなものでして、ね」

    スッ

それから手を引っ込めて、小さくうなずいた。

「濡れてる位気にしませんよ。
 『神さま』だって、そう狭量でもない――――
 とはいえ、歩けるみたいなら、良かったです」

           スタッ スタッ

   「…………」

                    「……?」

そうして、伴うように社務所のほうへと歩き始める。
奇妙に重なる足音には疑問符を浮かべるが、口には出さない。

「それにしても、うちの神社を選んでくださってありがとうございます。
 評判は――――『インターネット』で? それとも、何かうわさでも?」

町の方にも神社はある。
烏兎ヶ池神社は『病気平癒』に強いとはいえ、選んでもらえた理由は気になった。

145斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/03(土) 22:37:20
>>144

我ながら嘘をつくのも得意になった
多少は冷めた思考で、彼女の言葉を反芻する


 「そうか、狭量ではないよな、神様なのだから。」


(なら、どうしてお前が罰を受けていないのだ?翔。
 行くべきなのはお前だった、貴方は連れて行く人を間違えた……。)

鳥舟へ微笑みながら、歩みは崩さず
社務所へと一歩一歩近づいて行く、妙に距離が遠くすら見える。

 「ああ、インターネット、それは思いつかなかった。
 うわさに頼る手も有った……んだな。」

我ながら何処か焦っていたのかもしれない
それが自分の生きる理由なら尚更だろう

その理由を問われて、話していい物か迷いが生まれた
彼女は関係が無い、無いが……答えたほうがいいだろう
何より巫女相手だ。


 「我ながら、貪欲なようだけどね」
 「実のところ、他のは『もう行ってきた』のさ。」

罰の悪そうに肩を竦め、ベルトポーチに手を伸ばしてジッパーを開く
中には、ポーチ一杯のお守りが、所狭しと詰まっていた。


 「歩き回って、近場のなら『全部集めた』」
 「ここで、最後なんだ。」

例え熱中症になりかけようが、その症状と危険性を理解していようが
『生きる理由』の前には障害にすらなりえない、この程度の症状なら少し休めば充分の筈だ。


 「――で、巫女さんは……ああっと。」

ふと思い至った、彼女の名前を知らないので問う事が出来ない
女性に先に名乗らせるのは失礼だと、僕のお祖父ちゃんも言っていた。

 「翔、斑鳩 翔(イカルガ ショウ) 鳥の名前の割には、空は飛べないのだけどね。」

 「お名前をお伺いしても?」

146鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/03(土) 23:45:11
>>145

「ええ、きっと――――ね」

息をするように、嘘をつける。

「ああ」

「それは――――」

だが、こればかりはほんの一瞬、顔に出てしまった。
無数のお守り。『神頼み』の結晶。

鳥舟学文は結局『神さま』に都合のいい夢を見られない。
誰よりも、『神さま』が報いてくれないことを見てきたから。

(そして、ボクの『ヴィルドジャルタ』も、
 どういうことが出来るのかは分からないけど、
 きっと神さまの代わりに成れるような力じゃあない)

       (――――都合のいい奇跡は、無い)

「『大トリ』を務める神社に選んでもらって、鼻が高いですよ」

降ってわいた『神託』も、その『詳細』は知れないままだが、
結局――――『願い』をかなえるようなものでは、ない。

それでも、否定できるはずはない。
信じられなくても、否定はできない。

「ボクは」

「ボクは、『鳥舟 学文(とりふね まあや)』です。
 ボクのほうは具体的に何の鳥ってわけじゃあないですけど、
 多少、『縁』ってヤツを感じますね。斑鳩さん、どうぞよろしく。
 呼び方は、苗字でも、マーヤさんとでも、マーくんとでも、アヤちゃんとでも」

            「それじゃ、お守りを選びましょっか」

『巫女』が『神秘』を否定するわけにはいかない。
民草がそれに心を預けることには、間違いなく価値があるのだから。

お守りの見本を、差し出す。伝統的なもの以外に、アクセサリー型の物もいくらかあった。

147斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/04(日) 00:38:57
>>146

鳥舟学文、その名前を脳に刻み込む
その度に僕のスタンド『ロスト・アイデンティティ』が僅かに震えた。

「それは光栄だな」
「では『鳥舟さん』と。」

縁が有るのは良い事だ、この出会いが幸運を引き寄せることを祈ろう。
それで両親が助かればなお良い。

鳥舟さんが持ってきた箱にはお守りが僕のポーチに負けず劣らず、多々乗せられている
時代や客層を反映したのか、最近ではアクセサリ型のも珍しくなくなった。

「やあ、色々ありますね、こっちはアクセサリ?」
「当然の事だけど、やっぱり僕より若かったり女の子とかも買って行くのかな」

迷うフリをしながら通常の紫色の物を手にとった
神秘と気品を表す色、これがいいだろう。
買えない値段でもない、有難い事だ。

「――ところで」

一瞬それを聞くか、聞くまいか迷った
少なくとも、それはその人の傷のように見えたし、人間生きていれば傷など幾らでも出来る。

そしてそれを他人が開くのは善ではない、と斑鳩は考えている。
彼女と友好を築いたのだし、初対面なのだからなおさら失礼な事だ。

「鳥舟さんの事なのですけど、『信仰』に疑いをお持ちですか?」

だが、言葉に出てしまった

それを問う斑鳩の表情は、逆光のせいか影になっていてよく見えず
その言葉には何処か氷のような冷ややかさがある物だった。

「巫女さんに何を、と言う話ですけど、むしろ神職には多いと聞きました。」

(一瞬、一瞬だが、彼女、鳥舟さん……『何か』が表情に出たな。)
(枝のささくれのような引っかかりだが、……我ながら恩を仇で返しているな。)

「『信じられないが故に信仰する』という人もいるとか……」
「どうなんです?」

8月というのは蝉の声がうるさい
逆に、それ以外の音は妙に静かだ。

148鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/04(日) 01:59:51
>>147

「ええ、今時『伝統』だけじゃあ、ね。
 パワースポットブームとかもありまして、
 お若い方にも参拝いただいてますから。
 そういう方にはやっぱり――――」
 
「『願いが叶いそうかどうか』よりも、
 『普段から持ち運びやすい』ものが好まれますね」

手を添えるように示すのは、ストラップ型のお守りだ。
戯画化された烏と兎、すなわち『金烏玉兎』――――
あるいは、『鵺』。

それはそこそこにして、紫色のお守りを『授与』した。

「――――?」

「ああ」

「それは――――『信仰』に疑問は、ありませんよ。
 本当にね。『信じる』ことは、心の支えになりますから。
 信じれば救われる――――そうとは言い切れはしませんけど、
 少なくとも『信仰している』間は、不安を遠ざける事が出来ます」

「ですので、『信仰する事』に疑いなんて、とても、とても」

疑うのは、『神秘』だ。
『信仰』は『人の手にある』……己の心にもある。だから、疑わない事も出来る。

「『何でも信じてる』わけじゃ、ないですけどね。ボクもやっぱり巫女とはいえ、人間なので」

149斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/04(日) 19:45:59
>>148

眼を閉じ、そして開く
声色には先程の冷気はもうない。

「流石、巫女さんだ」

(しかし、そうなると僕の勘違いか…?
お守りを見て顔が曇ったように見えたが、信仰ではない)

「不躾に変な質問をしました、お許しください。」

(違うな、お守り自体ではなく、お守りが起こす
結果の方か?『奇跡』だとか、或いは……
その過程の『神秘』か?)

(何にせよ、結果を焦るのは良くないな、ショウ。)

恥じ入り、眼を逸らした先に
兎の守りが目に入った、金鳥玉兎。

「……その兎の方も頂いても?」

「大陸の方だと、月の兎は餅ではなく、薬をついていると聞きました。」

追加した守りの分だけ余分に払い
兎を手にして眺めてみる、小ぶりだが、いいかもしれない。

「数があればいいと言う訳ではないでしょうが
少しでも、相性だとかなら……多い方がいい。」
「両親の為にも。」

150鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/05(月) 09:18:02
>>149

「ええ、『巫女』ですから、ね。
 ――――どうかお気になさらず。
 ボクとしても、疑問が晴れたなら、嬉しいですよ」

笑みを浮かべた。
これくらい、慣れた誤魔化しだ。

「ウサギですね! では、こちらを」

差し出すのは、兎を模したお守り。
と言うより、ほとんど『ストラップ』のものだ。
たしかに小振りだが、造りは本格的に思えた。
どの神社でも同じのを見かけるような既製品でなく、
ここの為に製造されているものなのだろう。おそらくは。

「…………」

両親。

(…………『病』について願う人は多い。
 病気は気から、って言葉もあるし、
 体の処置が十分なら、心の縋る先として……
 神様には、あってもらわなくちゃならない。
 神頼みで解決する話じゃあないとしたって、
 神に任せて救われる心も、あるはずなのだから)

(それでも)

都合のいい神はいない。
運命を捨てる神はいても、拾う神がいるとは限らない。

「仰る通り数が全ての世界ではないですけれどね、
 その方がいいと思うなら、そうしてみる――
 それが『信仰』を助けてくれると、思いますよ」

「『信じれば全てうまくいく』わけじゃあなくったって、
 『信じることで救われる』なにかは、あると思いますから」

神は、いると思う。だからこそ鳥舟は疑っている。
いないと断言出来れば、楽ではあるのだろうけど、残酷だ。

151斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/05(月) 20:35:06
>>150

 「信じることで救われる……か。」

(7年起き上がらない両親だ。今更お守りで変わるとは信じられない、けれど。)

結局のところ、こういう事だ

もし、神様が僕に救いの手を差し伸べたとしよう
あっさりと、悪い冗談のだったかのように、僕の両親が起き上がったとしよう

その時点で、僕の行動も、それに伴う『意志』も意味が無くなる
ポーチ一杯のお守りにも、此処での出会いも、僕と言う存在も。

神様は、僕の意志と行動に、価値を見出し続ける限り、手を差し伸べないだろう
……それを無意味にしないために。

(もっとも、この考えは神が存在して、何処かへと『向かい続ける意志』に価値を見出しているのが前提だが)


手の中で兎と鳥の守が、夏の日差しを浴びて黄金の色に輝く。


(たとえ苦しくとも、過去を振り返り、真実を見続ける事に意味があると、そう信じよう、信じられなくても。)
(それが僕にとっての『信仰』かもしれない。)

 「――成程。」

独り感心して頷くと、お守りをポーチに入れた、これで用事は完了……。

 「ッ……。」

急に視界が暗転し、戻る時には膝をついていた、とっさに『ロスト・アイデンティティ』自身が倒れまいと、
影の脚を伸ばして転倒だけは防いだのだろう。

鳥舟さんの言葉に関心して忘れかけていたが、だいぶ体がきついらしい。

「その……鳥舟さん、我ながら、情けないし恥ずかしいのですけど
お水とか、頂け……。」

……上手く舌が回らない、頭痛までしてきた、吐き気は無いが。

152鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/05(月) 22:10:46
>>151

「ええ、祈る心は、もしかしたら…………ね」

断言はできない。
それが巫女として理想形だとしても、
そこまでは踏み込めていなかった。

「……信仰の形は、結局、人それぞれです。
 『キマリ』に従って信仰する人もいますし、
 自分の中の『ジンクス』くらいの人もいる。
 毎日のように参拝に来る人もいますし、
 初詣だけ……気が乗った初詣だけ、という人も」

「いずれにしても、それの後押しを――」

      「あっ」

(しまった)

陽射しの下で持論を垂れていた鳥舟も、
膝をついた斑鳩に『それ』を思い出した。

「冷たいお水」 「ッを、持ってきますんでね!」

         たたたっ

「『日陰』入れます? 厳しいかな……!
 動けないなら無理しなくて良いんで、待ってて下さい」

         「2分も待たせませんからねッ」

そもそも彼が熱にやられていたのが話のきっかけだ。
歩けはしても体調が悪そうなのは明らかだった。
本業に気を取られすぎていたのを恥じつつ、水を取りに向かう。

     ………ミンミンミンミン

            ・・・斑鳩とお守り、鳴き始めた蝉だけが残される。

153斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/05(月) 23:25:05
>>152

駆けていく鳥舟の焦るような様子を見やり
何かしら言葉をかけようと口を開いたが、どうにも舌が回らない。

(我ながら、何とも間抜けでお粗末な……)

ペットボトルは空だ、ポーチの中身も今は役に立たないだろう
そうなると残っているのは一つだけだ、たった一つだけ。

(だが、これだけは何とか言えるだろう、僕の奇跡、僕の『スタンド』。)


 「――『ロスト・アイデンティティ』。」


そう呟くように唇からその名前を零すと
四肢に『鎖』が巻き付きだし、斑鳩の全身を精神のヴィジョンが纏わりつく

(柱への射程距離……4、5m…制限時間2分…。)

鎖を握り込み掌の中に、鉄球を作り出すと
それを鎖で出来た投石紐のように回し、遠心力で柱まで投擲する。

空中で鉄球が分離しつつ、ボーラのように形を変え、柱に巻き付いたところで結合する。

(後は、このまま鎖を縮ませつつ……ゆっくりと、日陰に移動だな)
(立ち上がるのは無理では無いだろうが……動けないだろう。)

まあ、僕がどうなるだのは構う事では無い
重要なのは両親だけだ、その前に倒れたら片手落ちだが。

(彼女が戻る前に何とか……むう)

154鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/06(火) 01:34:57
>>153

            ジャラララララ ・・・

『ロスト・アイデンティティ』の『鎖』を巧みに使い、
日陰のほうへと移動する斑鳩だったが――――

「……」

              スス …

残り1mほどまで『縮め』終えた時、
斑鳩の体に差し掛かる影は、鳥舟の物。

日を背負う彼女の手にはペットボトル。
『2分』は多めの申告、だったのだろう。

「そうか――――『貴方も』そうだったんですね」

ぽつりと零した言葉。
感慨はない。驚きは、少し混じっていた。

「ああ、いや、今はそんなことより。
 これお水です、急ぎだったもので、
 飲みさしですけど……背に腹は代えられない」

        スッ

            「どうぞ、蓋は開けてますからね」

ともかく、ペットボトルを渡した。それなりに冷えてはいるようだった。

155斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/06(火) 23:18:00
>>154

ペットボトルを受け取る
冷えたプラスチックの容器が手に吸い付くように
受け取った腕の鎖が一挙一動に張り付く

 「どうも、有難く頂きます」
 「喉がカラカラだ。」

苦笑しつつも一息に半分ほどを喉を鳴らしながら飲み干すと
肺に水が入ったのか、咳込みながら息を整える、その度に金属音を鳴らしながら

 「まあ、名前の縁の如く奇遇だったと」
 「『スタンド使い』というのは本当に奇妙な縁のような物が有りますね。」

肩を竦め、礼を一つ
頭の痛みは消えていくが、足の方にはまだ力が少し入らない。


柱に巻き付いた鎖が、最初から巻かれていなかったかのように解けると
斑鳩の左手に巻き戻り、消え去る。


 「……ここで『やりあう』というのは」
 「勘弁願いたいな、戦うのは苦手だし、痛いのも御免ですから。」

 「何より、恩人相手だ。」

 「まあ、そのつもりなら既に攻撃しているでしょうけど、ね。」
 「一応聞くだけ聞きますよ、――あなたも『スタンド使い』?」

――氷のような瞳が鳥舟を見つめる。

156鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/06(火) 23:53:18
>>155

「普通のミネラルウォーターです。
 ご存知かは分かりませんけど、
 うちの霊水ではないので、ご容赦を」

煮沸が必要な……もとい神聖な水を、
普段から飲み物にしていることはない。
コンビニで買ってきた、奇跡の欠片もない安心な水だ。

         スッ…

「ボクはあまり、『詳しい』方じゃあないですから。
 縁については、なんとも……心当たりはありますけどね」

水を渡すと、少し距離を置いた。
自分の身の安全のため、もあるし、
斑鳩の心を乱さないため、でもあった。

「…………ええ、どうやらそうらしいです。
 もっとも、ボクの『ヴィルドジャルタ』は――
 ボク自身見たことがない、鵺的な存在でしてね。
 もしやり合いたくても出し方すら分からないので、
 つまり、その、一応……『警戒』は無用ですよ」

「現にそう、あなたの言うとおりで……
 何かするつもりなら……好機はとっくに逃してる」

やや早口気味に、要点を伝えた。
斑鳩の、暑さを忘れさせる氷のような視線。
そこにまさしく『警戒』を覚えたから、だ。

「『スタンド使い同士が合うと戦うものだ』……
 って話じゃないでしょう? ぜひ平和に行きましょう」

冷や汗を垂らす。

もっと狂った目をした人間は勿論見たこともあるが……
斑鳩の冷たさは『筋』のある冷たさで、それが恐ろしい。

157斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/07(水) 22:33:09
>>156

子供の頃から散々晒されたその視線に、ゆっくりと口を開く
不快でもなんでもない、ただよく知っているというだけ。

 「……その眼」
 「何度か見た事が有る。」

(距離を取り、目の前で冷や汗を垂らしつつも、『スタンド』を出さない
 ……恐らく事実か、少なくとも近距離型ではない。)

全身に巻き付かれた鎖が、斑鳩から解けるように溶けて消えていく
鎖が枯れた蔓のように、大気に解けて消えていった。


 「鳥舟さん、僕は貴女のスタンドについて詳しく知りたい。
 もしそれが、僕の両親を助けられるなら、僕は自分の全てを差し出して貴方に願うだけだ。」


(或いは、一体化して、もう見えている……という線も有るが)

瞼を下し、瞳を閉じる
脚にも、もう力は戻っている、立ち上がるとジーンズの土を払った。

 「けど、僕は貴女を怖がらせてしまうだけらしい、恩人相手をそうするのは忍びないし
 両親にも胸を張れない事だ。」

 「この眼が怖いなら、瞼を閉じたままで――もう、行かなくては。」

鳥舟の方に一礼すると、その位置が解っているように
迷いなく神社の出口へ歩いて行く。

 「……お水、有難う御座いました」
 「貴女にも幸運が有りますように。」

158鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/08(木) 00:59:20
>>157

「いいや、怖くなんかは……
 …………………………ない、
 そう、ないはずなんです……何も」

        「…………」

言葉を弄するのは苦手ではない方だが、
この状況で斑鳩に掛けるべきそれが思い当たらない。

「ボクの『ヴィルドジャルタ』は…………」

なぜなら自分は、『ヴィルドジャルタ』を知らない。
出来るとも、出来ないともこの場で答えられない。
それは問題だが、急務ではないと何処かで考えていた。

「…………今はまだ、何も、『分からない』。
 何が出来るのかも……キミの信仰を受け止められるのかも」

だが……違う。
自分のスタンド能力を知らないのは……『大問題』だ。

「もし、助けられるような力なら…………そのときは」

      「そのときは…………」

自分に出来ることと出来ないことを知らないままで、
否応無しに『他のスタンド使い』と遭遇し続ければ、
いま斑鳩に手を差し伸べられず、否定も出来ないような、
対処不能の問題が降ってくるのは火を見るより明らかだ。

それ以上、何の希望を投げかけて引き止めることも出来ない。
巫女としての役目は果たした。スタンド使いとしての役目は……

159斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/09(金) 06:39:44
>>158

背後の言葉が悩みに止まっても
斑鳩には彼女にかける言葉は無かった。

ただ、自分の信仰が鳥船と言う善き人に
苦悩や悩みを与えたことを見てこう考えていた

自分の願いと言うものは、どうあがいても
他人を巻き込んで不幸にするだけではないかと。

噛んだ唇から血の味が口内に広がる
彼女に何か言葉を投げて、貴女のせいではない
と言うべきだと言う考えもあった

同時に、自分の中に、何処か言葉にし難い
鳥船に対しての理不尽な憎悪がある事に気付いた時

それが彼女を傷つけてしまうだろうと気付いた時
後はこの場から逃げるように去るしか無いと思い至り

鳥船がこれ以上自分の事で悩む事が無いように
そう祈りながらこの場から立ち去った。

160美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/04(水) 22:02:49

   キキッ

一台のスクーターが駐車場に停まった。
乗っているのはラフな『アメカジファッション』の女。
首にワイヤレスヘッドホンを掛けている。

「こんな近くにも、割と有名な神社があったのね。
 私も、まだまだ勉強不足だったわ」

            スッ

シートから降りると、境内に向かって歩いていく。
辺りを見渡しているのは癖のようなものだ。
何か変わったものでもあれば、『トーク』のネタに出来るから。

「――ついでに何か願掛けでもしていこうかしら」

161鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 00:06:39
>>160

辺りを見渡せば、神の社に相応の清らかさがあった。
雰囲気もだが……ゴミが落ちていない、という事だ。
もちろんそれは神の御力のお陰というわけではなく、
掃除をしている人間がいるからだった。『巫女』だ。

「ようこそ、お参りです」

         ペコ……

わずかに秋めくも熱を残す風。
額に汗を浮かべちりとりと箒を持った少女。
『体育会系』とも『接客業』ともどこか異なる、
緩やかな笑みを浮かべた挨拶で美作を出迎えた。
もちろん『芸能』の世界の、華やかさとも違う。

「…………」

         さっ…

               さっ…

・・・それ以上、特に干渉はしてこない。

周りを見渡しているとはいえ余裕のある美作の気風に、
案内の必要性は感じなかった、という事かもしれない。

162美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 00:44:22
>>161

「――――どうも、こんにちは」

『ご精が出ますね』と言いかけたが、この場合は意味合いが少し違うだろう。
万が一、それが失礼に当たっては不味い。
だから、軽い会釈と挨拶のみに留めておいた。

    スタ スタ

参拝の手順については、大体分かっている――つもりだ。
もちろん、神社によって種類があるだろうから、完璧とは言わない。
少なくとも、常識的な範囲であれば理解している。

「さて、と――――」

まずは手と口を洗おう。
それから拝殿に足を向ける。
道の真ん中は神様の通り道だから避けるべきだという話を、どこかで聞いた覚えがあった。

「『この橋、渡るべからず』の反対って所ね」

         ガラガラ
                  チャリン

参道の端を歩き、拝殿に向き合う。
鈴を鳴らし、賽銭箱に『二十五円』を入れた。
『二重に御縁がありますように』ってね。
『三十五円』とか『四十五円』にするっていう考えもあるだろう。
でも、それだとちょっと欲張り過ぎるから。

「えっと…………」

少しばかり考える。
一応は知っているとはいえ、そう頻繁に神社を訪れる訳でもない。
頭の中から、作法に関する知識を引っ張り出す必要があった。

「二回お辞儀して二回手を打って――」

             パン パン

「それから最後に、もう一回お辞儀だったかしら?」

思い出しながら、流れるように一連の手順をこなしていく。
せっかくだから、『願い事』もしておいた。
番組の発展や自分自身の成長に繋がるような、『ユニークな出会い』がありますようにってね。

163鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 02:20:30
>>162

参拝をしている間、巫女から助言などは無い。
よほどのマナー違反でもない限りだが、
参拝の作法にあえて口出しはしない――――
もちろん知りたければ教えるようにしているが。

「…………」

       さっ…

          さっ…

(想像以上にしっかりした『作法』をお知りみたいだ。
 とはいえ作法が『身についてる』ってわけじゃあなさそうだし、
 『覚えてる』んだ。何か、すごく大事なお願いがあるのかもしれない)

「――――ええ、今のも『正解』ですよ。
 一通りではないんですけどね、
 その手順なら、何処の神社でも『おかしくない』」

参拝によく来るものは『身についている』。
つまり、考えるそぶりなく流れるように行う。
有名な作法に合っていようが、なかろうが、だ。
その点、美作の『考えながら』『正しい』作法は鳥舟の目を引いた。

「っと、差し出がましい事を言ってしまいましたね。とても綺麗な所作だったので、つい」

話しかけてから、そのように付け加えた。
目を引いた理由には、その動作の洗練もあった――――あるいは、どこかでの見覚えも。

164美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 02:51:38
>>163

「ええ、まぁその――――」

    クルッ

「どうも、ありがとう。
 『関係者』の方から言われるのは光栄ですね」

    ニコリ

拝殿から離れ、口元に微笑みを浮かべる。
声を掛けた巫女らしき女性とは、どこか質の違う笑みだ。
神社を神聖な場所とするなら、より『世俗的』な雰囲気がある。
だが、別に何か裏があるという訳でもない。
言い方を変えれば、どことなく『職業的な匂い』が漂っていると言えた。

           ザッ

「お仕事中で申し訳ありませんが、
 もし宜しかったら、この神社について教えて下さいませんか?」

「たとえば、『由来』や『ご利益』なんかを。
 後は、何か『変わったもの』があるとか…………」

              ザッ ザッ ザッ

言葉を投げ掛けながら、巫女の方へ歩み寄っていく。
もし彼女に何らかの『見覚え』があったとしても、美作には知る由もない。
どちらかというと、『声を聞いた事がある』という場合の方が、今は多かった。

165鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 10:38:57
>>164

世俗でありながら大衆とは異なる笑みにこそ、
どことなく既視感を覚えたのは確かだったが……
鳥舟も、その朧げな幻像をあえて掘り下げはしない。
どこで見たことがあっても今は参拝者で、自分は巫女。

「いえいえ、それもまた巫女の勤めですよ。
 とはいっても、なにぶん若輩者でして、
 調べて出てくるような知識ばかりですけれど」

      フフ…

笑みを浮かべ、近付いてくる美作を言葉で迎える。

「由来は、ですね。境内にある『烏兎ヶ池』ですね。
 神社としての名前もここから来ているんですけど、
 いわれといいますか、創建の根拠もそこでしてね」

視線を向ける先は、未だ青々とした葉を付ける木々。
ちょっとした林のようになった空間の、その先に、
パワースポットを謳われる『池』がある……ことは、
美作も境内を見渡した時案内板で知ったかもしれない。

「ご利益の方の根拠は祀っている神さまですけど、
 ここに神社を建てたのは、池があったからでして。
 まあ、これは根拠のない話になりますけれど、
 色々と……伝承の残っている、『霊池』なんですよ」

そこまでほとんど一息に言い終えて、
鳥舟は、吐き出した分の息を吸い直した。

「池の前までは入れますので、ご興味があればぜひに」

そして、そこで言葉を止めて一旦話を切る。
利益の中身や、変わったものについては分けるようだ。
もっとも、池自体が変わったもの、と言えなくもないが。

166美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 22:36:31
>>165

「『霊池』――――ですか。いわゆる『パワースポット』ってヤツですね。
 それは大いに興味がありますねえ」

『烏兎ヶ池』について書かれた案内板は、さっき見かけていた。
参拝を優先したので、軽く目を通しただけで熟読はしなかったが。
いずれにせよ、『話のタネ』にはなりそうだ。

「後学のためにも是非お目に掛かっておきたいですね。
 えっと…………そこまで案内して頂けますか?『巫女さん』」

迷うような場所でもないだろうから、一人で行っても構わない。
ただ、せっかくなら『関係者』の話も聞いておきたかった。
『ネタ』というのは、多ければ多いほど良いのだから。

「何ていうか、こんな事を言っちゃあ失礼かもしれませんけど…………。
 普段あんまり使わない言葉ですよね。『巫女さん』って」

       クスッ

非日常的な巫女姿の女性を見つめて、気さくな微笑みを浮かべる。
普段の日常生活の中で、『巫女』と会話する機会は多くないだろう。
これも、ついさっき願掛けしてきた『ユニークな出会い』の一つかもしれない。

167鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 23:15:42
>>166

「うちといえば、池。ってくらい皆さん見て行かれますからね。
 ボクとしても……せっかく来ていただいたなら見ていっていただきたいな、と」

非日常、という言葉を独特の一人称が支えていたが、
口調や、話しぶりは至って『一般的』な響きだった。
それも非日常の世界にせよ、奇を衒ってはいないらしい。

「それも…………『巫女』の案内付きで。
 なにせ、せっかくの機会ですからね。さ、行きましょうか!
 今日はいくらでも、『巫女さん』と。使って帰ってください」

そして言葉とともに、鳥舟は踵を返し手で着いてくるよう促す。

「『パワースポット』に、興味がおありですか?
 それとももっと広く、不思議なものに興味がおありで?」

         スタ…

            スタ…

「ああいえ、探るわけではないんですけどね……! なんとなく、気になって」

168美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 23:53:25
>>167

「何たって『烏兎ヶ池神社』と呼ばれている訳ですしねえ。
 名付けの元になった『烏兎ヶ池』はチェックしておかないと」

「『ご利益』があるなら、それにあやかりたいですし――ね」

巫女と歩調を合わせる形で、後について歩く。
『ご利益』というのは、あくまでも『ついで』だ。
全く信じていない訳ではないが、自分にとっては『話を聞く』のがメインになる。

「そうですねぇ……」

       スタ スタ スタ

「珍しいものや変わったものには関心がありますよ。
 そういう経験は、自分にとって『プラス』になりますからね」

「――――こうして『巫女さんとお話する』のも、です」

            ニコリ

「ちょっとだけ質問しても良いですか?巫女さんのお仕事について。
 あんまり接する機会がないので、何となく気になるんです。
 どんな事をしているのかなって」

「もし『オフレコ』だったら、潔く身を引きますけど…………」

大体の部分は、何となく察せられる。
聞いてみたかったのは、見えていない部分についてだった。
巫女に直接聞けるチャンスは、きっと少ないだろうから。

169鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/06(金) 00:57:11
>>168

「――――御利益、そうですね。
 『具体的にどんな』ってワケではないですけど、
 そーいうのを体感される方も、いらっしゃいますよ。
 気分が前向きになったとか、不安が安定したとか、ね」

「パワースポットだから……というワケでもなくて、
 もっとずっと昔から、『縁起』って言うよりは、
 『ご加護』を求めての方がよく来られてたそうですよ」

鳥舟が口に出す具体的な利益は、どれも精神面だ。
嘘は言わない。だが、盲信を誘うこともしない。
疑いを秘める『神秘』の存在を、つらつらと語る。

「『日々是勉強』、っていう感じですかね。
 そういう考え方、すごく素敵だと思いますよ。
 ふふ……ボクに答えられるようなことなら、なんでも」

(…………『オフレコ』、か。
 ライターさん、記者さんって雰囲気ではないけど、
 ま、人を見かけで判断するものでもないかな。
 そういう仕事の人を沢山知ってるワケでも、ないし)

        ニコ…

「ま、とはいえ……ほとんどは掃除ですとか、
 それから社務所の受付ですとか…………
 皆さんの目に見える仕事にはなるんですけどもね」

ほうきとちりとりを少し持ち上げて、示す。

「ご興味があるのは、もうちょっと込み入ったところ――ですよね?」

歩いていると、案内板が示していた岐路がすぐ見える。
境内に広がる小規模な林、そこに伸びるのが池への道だ。

170美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/06(金) 01:37:32
>>169

「なるほど。『パワースポット』っていう言葉自体は最近のものですもんねえ。
 言葉があってもなくても、『霊池』は『霊池』だと思いますけど」

    スタ スタ スタ
 
「『信仰』っていう面で言うなら――たとえば、その場所が人達の『心の拠り所』だったとか。
 もしかすると、そういう事もあったのかもしれませんね。
 専門家でもない素人なので、ただの想像なんですが」

「『そこに来ると落ち着く』っていう事なら、何となく分かるような気がします。
 私にも、そういう場所はありますから」

             スタ スタ スタ

「センチメンタルになった時、そこに来て気持ちをリセットするっていうか…………。
 『イヤな事は忘れて心機一転頑張ろう!』みたいな感じで。
 アハハ、これは流石に砕けすぎかな?」

歩きながら、自身の考えについて思いのままに語る。
舌が回るにつれて、自然と喋り方がカジュアルになっていく。
『職業柄』というだけでなく、案内人である彼女の人当たりが良いせいもあった。

「そうですねえ。『目に見えるお仕事』は、もちろん大切な事だと思います。
 清掃も受付も。そのお陰で、私達みたいな参拝客が気持ち良くお参り出来る訳ですから」

「ただ――――『目に見えない部分』も気になっちゃいますよね。やっぱり。
 ほら、『巫女』っていうと『神秘的』っていうイメージがあるでしょう。
 『信仰の対象』は『神様』ですけど、こう……『間に立つ存在』っていうんでしょうか。
 そこに興味を惹かれるっていう人は、少なくないと思いますねえ」

「――――かくいう私も、『その一人』って事でしょうかねぇ」

                 フフ

言葉を紡ぎ出しながら、ふと思う。
『アイドル』も、ある意味では『信仰の対象』とも呼べる。
そう考えると、『巫女』と『アイドル』は少し似ているのかもしれない。

171鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/06(金) 02:25:58
>>170

「『信仰』は、心の支え、まさしく拠り所。
 ボクとしてもその考えは納得できますよ。
 どんな教えを信仰している人も…………
 それで『安心』を得ているのには変わりないですから」

すくなくとも、今話題にする限りは、だ。
イレギュラーは、鳥舟の配慮の範囲にない。

「ですからうちの神社も、『烏兎ヶ池』も……
 あるいは『パワースポット』って言葉そのものも、
 皆が『安心』出来るものとして、信仰されてるのかも」

      「――もちろん、『神さま』って存在もね」

林の中の道を歩きながら、振り返って笑む。
その時間はほとんど一瞬のようなもので、
すぐにまた、前を向いて歩き出した。

「お褒めいただいて、ありがとうございます。
 どんなに素晴らしいいわれがあったとしても、
 境内がゴミだらけじゃあ有り難みが、こう、ね。
 薄れるわけじゃなくても、感じ辛いでしょうから。
 そういう辺りが巫女の仕事の主な部分、ですけど」

ちりとりとほうきは使い込まれている。
もちろん、鳥舟一人で使い込んだのではない。
この社の代々の、あるいは一時的なバイトも含め……
とにかく、『よくしよう』という、巫女たちの意思だ。

「でも……やっぱり? ふふ……そういうとこ、ですよね。
 とは言ってもマア、巫女はあくまで巫女でして、
 そういう特別なお仕事といえば……うーん、
 いわゆる祈願ってヤツは、『手伝い』になりますし、
 ほんとうに神さまとの間に立つのは『神職』、ですからね」

悩むようなそぶりを見せ、少しして、思いついた。

「だから…………そう、神楽とか? いつもやるわけじゃあ、ないですけどね」

172美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/06(金) 03:16:21
>>171

「『神楽』?えっと『舞』と『御囃子』――――確か、そういったものだったかしら?
 うろ覚えだから、合っているかどうか分からないけど」

踊りと音楽。
それを聞くと、ますます似てるように思えてきた。
それを口には出さないが。

「ストリートパフォーマンスではないし、いつでもどこでもって訳にはいかないでしょうね。
 だからこそ、より神秘的に感じられるのかもしれないし」

『パーソナリティー』はトークを手段として使う『パフォーマー』であり、一種の『エンターテイナー』でもある。
聴衆を楽しませ、沸かせなければならない職業だ。
しかし、巫女は違う。
人々の崇敬を集めたとしても、それは秩序と静謐に包まれている。
言ってみれば『世俗』と『神聖』――大きく異なるのは、その辺りになるだろう。

「――――やっぱり『とっておき』は、『ここぞ』という時に出さなきゃね」

だが、それでも『通じる部分』は多少ある。
『決めるべき時に決める』という点においてだ。
おこがましいかもしれないけど、多分そこら辺は似ているんじゃないかなと心の中で思った。

「…………さて、そろそろ『霊池』のお目見えかしら?」

173鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/06(金) 04:18:02
>>172

「それで、だいたい合ってますよ。詳しいですねぇ。
 ただ、そう、残念ながらここでボクが踊って見せても、
 それっぽい踊りってだけで神楽とはならない……
 なにせ、神に奉納するための歌と舞、ですからね」

「こと、神社においては『お客様が神様』とも、
 とてもじゃないですけど言えませんし……ね」

柔かな語調で、『サービス』は出来ないと伝えた。
もちろんそこは分かっている『大人相手』ではあるが、
期待を持たせるようなことをするのも、かえって悪い。

人々を喜ばせるという側面もあるにせよ、
巫女の舞、その本質は神に捧げるものなのだ。
そこに100%の納得があるかは別の話としても、
盛り上がり、楽しむためのものとは、少し違う。

「時季を改めて、また来ていただければ、
 舞台――って言うとちょっと違いますけど、
 正式にお見せすることも出来るかな、っと」

「見えましたね、池――」

        オ オ オ オ ・・・

            ガァーッ ガァーッ

「あの鴨は、うちの神さまとかとも関係ないので。
 まあ…………おまけ程度に考えてもらったら。
 たまにですけど、いるんですよね。居心地良いのかな」

それは美しく澄み渡る池、といった様子ではなかった。
極度に淀んでいる、というわけでもないのだが、
底の見えない……ごく普通の池のように、見られるものだ。

それでもどこか、異質な空気を感じえるのは……
林の中の大池という、特殊なロケーションゆえだろうか。

174美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/06(金) 21:19:42
>>173

「あれは……『オナガガモ』かな?尾が長いでしょう。
 個人的な事ですけど、私は『バードウォッチング』が趣味なので」

「これはこれで風情があるんじゃないかしら。
 それに、『鴨』も訪れるくらい居心地の良い場所なの『かも』――――」

「えっと…………今のはシャレじゃないですよ。
 なぁんて言ったら、ホントにシャレで言ったみたいになっちゃいますねえ」

       アハハ

『烏兎ヶ池』に近付いて、しばし水面を眺める。
こうして見ると、普通の池だ。
そこまで珍しいものを期待していたという訳ではないので、別に不満もない。
ただ、神社に付随した池という所にはミステリアスなものを感じた。
『池が先』だという話だが、林の中の池というのも、それなりに神秘的ではある。

「『烏兎ヶ池』――堪能させて頂きました。満足です。お陰様で」

「『イヤな事は忘れて新しい自分で頑張ろう!』って気になれましたよ。
 案内してもらって、ありがとうございました」

お参りは済ませたし、見るべきものは見た。
帰るために踵を返して、足を踏み出す。
その途中でスタジャンのポケットを探り、再び振り返る。

「――――私は、こういう者でして」

名刺入れから取り出した名刺を、巫女に差し出す。

    【 Electric Canary Garden
      
           パーソナリティー:美作くるみ 】

氏名の片隅に、『コンセントの生えた小鳥』のイラストが添えられている。

「今日はプライベートで来ただけなので、
 取材とか宣伝って訳じゃないんですけど、一応ご挨拶という事で。
 神社じゃなく、案内してくれた貴女にね」

「また、いつか来ますよ。その時は、神楽を拝見させてもらいたいですねえ」

「それじゃ――――」

          ザッ

軽く会釈してから、駐車場に向かって歩き出す。
巫女との会話は、ちょっとした『ユニークな出会い』だ。
そういう意味では、自分としては十分な『ご利益』はあった。

175鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/07(土) 02:57:06
>>174

「へえ……さすが、関心が広いんですね。
 ボクは『鴨』としか思ってないものも、
 実際は色々事情とか違いがあるんでしょうね」

やや濁った水面が、顔を写す。
普通の水面と何も変わらないし、
写っている美作の顔も、いつも通りだ。

「ハハハ、シャレってことでもよかったんですけど」

そこにある『物』それ自体に神秘は無い。
あるとすればそれは、集まる人の心にこそ。

「ああ、ええ、こちらこそ。
 ようこそお参りでした。
 またいつでも――――ああ、ご丁寧に」

          スッ

その場でじっと目を通すことなく、
鳥舟は一読の上で挨拶を返す。
    
           トリフネ マーヤ
「ボクは――――『鳥舟学文』って言います。
 ラジオ、今度ぜひ聴かせてもらいますね。
 宣伝じゃあないとしても、何かの縁ってことで」

         「あ、そう!」

「むしろ逆に宣伝しちゃいますけど――――
 ラジオで今日のことをお話しされるなら、
 ウチの『名前』は出してくれちゃっていいですよ!」

       「それでは……また。神楽の時以外でも、いつでも」

その背中を見送って――――
今話していた人物が、かつて『録画』で見た『昔のアイドル』だと知ったのは、後のことだった。

176比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/11/20(水) 22:19:53

モノトーンのストライプスーツを着て、
中折れ帽を被った優男風の男性が、
一人境内を歩いていた。
型通りの参拝を済ませ、適当に辺りをぶらつく。
これといって目的はなかった。
あるいは、少し前に『妙な占い師』に出くわした事が遠因かもしれない。
だからといって、ここがインチキだなどと思っている訳ではないが。
『関係者』がいるか、あるいは『他の客』がいるか。
そんな事を考えながら、ただ何の気なしに歩いている。

177『烏兎ヶ池神社』:2019/11/20(水) 22:51:28
>>176(比留間)

境内には『巫女』など、関係者は見当たらない。
が、『他の誰か』はいるかもしれない………………

178比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/11/25(月) 22:33:45

「ふむ…………」

(『神様に嘘を吐く』というのも一興ですね)

参拝の際に思い浮かべた祈願は、
『嘘を吐く癖が治りますように』というものだった。
実際は、そんな事など少しも考えてはいない。
今の所、この『癖』を治すつもりは全くないのだ。
これも一種の『嘘』になるのだろうか。
その瞬間に、自分の心が『密かな愉しみ』を感じたのは事実だ。

(もっとも――――『神様』であればお見通しかもしれませんが)

    ザッ…………

最後に改めて境内を振り返り、そのまま神社を後にした――――。

179鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/03(火) 22:29:50

         ザッ …

            ザッ…

冷え込む境内で、巫女が掃き掃除をしていた。
左に流れるにつれて長くなるアシンメトリーの髪と、
ほとんど金色と言っていい色彩の瞳が特徴だった。

「……っくしゅん!」

        ブルッ…

咳をしても一人、という事もない。
境内には>>180がいる・・・
いるからどうという事もないが。

それに、いつからいるのか・・・
今来たのか? それともさっきからいたのか?

・・・それは、>>180と鳥舟のみぞ知ることだ。

180ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/05(木) 02:07:01
>>179
 「あら、可愛い巫女さんが」

どうも。まゆです。今日はここ『烏兎ヶ池神社』に来ました。
最近話題よねこのスポット。『願いが叶う』んだって。信じがたいわね。
ちなみに私は『(偽)占い師』。神社との関係は、あえて言うならば『同業他社』と思ってます。

そんな私は手水舎で手水をとった所でした。
要するにクソ寒い冬にクソ冷たい水で手を洗ったってわけね。

「っっっっっぶええェくしょ――――いィッッッ!!!!!!」

「…うふふ、冷えますわね うふふふふふふ」

181鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/05(木) 14:22:22
>>180

「お褒めの言葉、ありがとうございま……」

     ク…

         ルッ

声にゆっくりと振り向くつもりだったのだが、
大きなくしゃみに驚き、思いの外早くなってしまった。

「……す。えーっと……ようこそお参りです!」

      ニコ…

笑みを浮かべて、頭を下げる。
 
「冷えますねェー、もうほんと、最近はすっかり冬で。
 ボクも巫女なりに防寒に気をつけてはいるんだけど。
 ひょっとしたら年内に初雪なんて事も、あるのかな」

S県は『降雪』とはあまり縁がない地域で、
初雪は『年始』を大きく過ぎてからになりがちだ。
それでもそう言いたくなるくらいに、冷えた季節だった。

「それに水も……冷たいですしねぇ。
 そればっかりは『追い炊き』なんて、出来ませんし?」

      ザッ…

         ザッ…

「県内の、えー、どこだったかな、どこかの神社に、
 手水舎のお水が『温泉』の所があるそうですよ。
 いやお寺だったかなぁ……どっちにしても少し、羨ましいですね」

その女性は、手水舎の使い方は知っているように見えた。
つまりあれこれと案内をする必要は、無いのだろう、と。

182ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/05(木) 21:13:59
>>181
 「ええ、本当に……」

 「そういう神職の装束って薄くて寒いのでしょう?大変ですね」
 「けれど、似合ってらっしゃるわ 若いって素敵」

年末も近いし『アルバイト』の子かしら。
境内はしっかり掃き清められてる。がんばるわねーこの娘。
巫女服はかなり似合ってるわね。
あとお肌はすべすべだし。髪も傷んでないし。
目も綺麗だし。唇も瑞々しいし。
…若さが憎いわ。

私を見なさいよ。
雰囲気出すためにエスニック風のコーデを決めてはいるものの、
寒さに根負けしてブ厚いダウン羽織ってる惨めなアラサー女よ。
白い肌も白い唇もすっぴん風メイクよ。
でも目元は私の方が綺麗だけどね。造りがいいからね。

「追い炊き…ふふ、されてみては如何ですか。
 『建て替えの際に温泉を発掘しちゃいました』とか言って、
 こっそりガス管でも引いてしまって……」

「………というのは、冗談ですけれど。」

183鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/06(金) 00:02:12
>>182

「どうもどうも、ありがとうございます。
 『制服』みたいなものですからねェ。
 いくら寒くっても、これ以外を着てると、
 来てくださった方が驚くでしょうし!
 だから似合うに越したことは無いし、嬉しいです」

羽織を羽織ったりはするにしても、
外からの見た目が大きく変わるようなものは無い。

見た目は人の第一印象を大きく決める。
そして、施設の第一印象は人で決まる。
信じられるものを保つためのことだ。

「それは、ウーン、名案ですねぇ。
 お湯の方がお清めにもなりそうだし、
 神様も喜んでくださる、か・も」

    フフッ

「ボクのも勿論、冗談ですんでね」

「いやー、それにしても……お話がお上手ですよね。
 お仕事は……『敏腕営業マン』か何かで?
 お綺麗ですし、こう、なんというか、『雰囲気』がありますよ」

184ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/06(金) 19:45:41
>>183
営業マン、ね…『口車の巧いやつ』って事?
私が醸し出したい『雰囲気』ってそういうんじゃないのよねェ
あたしも確かに詐欺師みたいな事してるけどさあ

 「ふふ、とんでもございません」
 「…『コンサルタント』、のような事などはしていますが」

占いもコンサルも同じよ同じ。
この巫女っ娘いちおう神職従事者だからね、誤魔化しておくわ。

 「お悩みなどがありましたら……いえ、ここでは場違いですね」
 「不満、疑念、願いを、神様に聞かせられるだけ聞いてもらう場所ですもの」

 「『絵馬』もいいですね 
  ちょっとした悩みをたっぷり書いて、ぶら下げてしまいましょう

 「私…他の人が掛けていった絵馬を見るのも好きでして 
  悩みが願いがたっぷり集まってるの、不道徳かもしれませんがちょっと面白いですわ」

  「ふふ、私ったらお喋り。すみませんね」


大手同業他社の敷地内なので、褒めておくわ。自社の営業は控えめに。

185鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/06(金) 22:58:19
>>184

「コンサル! あんまり縁が無い業界ですケド、
 わりと『景気が良い』ってよく聞きますよ。
 や、まあ、縁がないってこともないのかな、
 神社専門のコンサルとか、あるらしいですし」

神社と『ビジネス』は縁が遠いようで、
人間が暮らしていく以上切り離せはしない。
例えばウェブサイトは自作ではないし、
取り扱うお守りなどについても幾らかはそうだ。

「仰る通り、『聞かせていただく』分には、 
 神さまはきっと、いつでも大歓迎ですケド」

「ただ、今すぐ聞いてほしい悩みとかは、
 今は……ないですねェ。神社にも、ボクにも。
 もしまた何かあれば、相談させてもらおうかな」

          ニコ…

それから、話に出た『絵馬』の方に視線を向けた。
参拝客が残していった、『神頼み』の結晶達。

「いえいえ、興味深いハナシですよ。…………」

その中のどれくらいが『報われた』のだろうか?
もし報われたとして、それは神さまのおかげだろうか?

「人の『お願い』を目で見られるっていうのは、
 確かになかなか無いかもしれませんね。
 それも人間へのお願いごとじゃなくって、
 『ただ、叶って欲しい』願いっていうのは、ね」

「どうです? お姉さんも書いて行かれますか、『絵馬』」

・・・行き場のない願いを『受け止める』役目は果たしている、とは思う。

186ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/07(土) 00:38:23
>>185
「折角ですしね おいくらですか?」

絵馬掛所に向かいつつ、ブツをお買い上げする。
デザインはどんな奴なのかしら?カワイイ奴だといいわね。

「絵馬を描いたからって、叶うものでもないでしょうけれど。 
 メモ帳だと思っておきます」


「うーん、どうしましょう 悩みますね」
「悩みを描こうとして逆に悩んでしまいますわね」


「『美肌』がいいかしらね それとも『商売繁盛』?」
「…一緒に考えてくださる?私の悩み」

187鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/07(土) 01:55:08
>>186

「うちは、『500円』ですね。どうぞ」

         スッ

「あとこれ。ペンは貸し出してますんでね。
 もちろんお手持ちの画材とかあれば、
 それを使っていただいても大丈夫ですよ」

渡した絵馬はごく普通のものだ。
ただ、小さく烏と兎の絵が小さく描かれている。

「ええ、メモ帳代わりにでもね。
 『願い』や『悩み』を、自分の中に閉じ込めず、
 アウトプットする……整理をつける。
 それも神社の役目の一つだと思うんです」

かなえてやれないことの言い訳だとしても。
それを信念として抱くのは、間違っていないと思う。
都合のいい神を疑えど、神頼みを否定はさせない。

「それから――――それをお探しするのも、ね」

          ニコ…

「『美容』も『商売』も、追及すればどこまでも出来ますからねぇ。
 そのあたりは皆さん書いて行かれる、ま、いわば『定番』です。
 商売……えー。コンサルみたいなお仕事でしたよね?
 つまり、個人にしっかり向き合っていくお仕事。
 なら……イメージですけど、それなら『千客万来』っていうよりは、
 新しい上客を一人捕まえる方が『ありがたい』仕事だったりするのかな」

             「そうなると……『良縁成就』なんてどうです?」

188ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/07(土) 02:33:45
>>187
うん、カワイイ絵馬ね。持って帰っちゃいたいくらいだわ。

「いいですわね リョ・ウ・エ・ン・ジョ・ウ・ジュ…っと」

確かに、良客には恵まれてないし、このトシで独身だし、良い願いね
……あ゛!?いい年してカレシすらいない哀れな女って言いたいわけ!?
心なしかペンを握る手に力が入るわね。うん。


「――――不躾ですが」

「あなた、実は神様を信じ切っておられませんね」
「願いにしても何にしても、『神様が見ていらっしゃる』と言えばいいのに
 …しかし、そうは言わない。あなた自身は気づかれていないかもしれませんが、
 あなたにはそういう側面があるようです」

そうなのよね。この巫女っ子、私の冗談とかにそこまで眉を顰めないのよ。
普通の神主さんとかだったらもう少し神様についてお喋りするのに、この子にそういう所はない。
ま、若い娘だしね。いろいろ思う所もあるんでしょう。

「でも、こうして、参拝客のことはしっかり考えてらっしゃる」
「それが面白くて ふふふ」

189鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/07(土) 03:12:38
>>188

「もちろんお決まりのフレーズじゃなく、
 『上客がさらに増えますように』ですとか、
 そーいう具体的なのでもアリなんですけどね」

ペンを走らせるところを横から見ていた。
その視線が、思わぬ言葉に止まった。

「…………いえいえ」

思わぬことを言われた、ではない。
思わぬ形で、図星を衝かれた。

「相談した相手の『問題点』を見つけて、
 アドバイスする、そう言う仕事……ですよね、コンサル」

「ボクはお姉さんを敏腕営業って言いましたし、
 お姉さんはご自身を『コンサル』と、おっしゃってましたケド、
 その折衷と言いますか、『敏腕コンサル』ですね。
 もしくは、ふふ、『心理学者』か、『占い師』か……」 
 
「おっしゃる通り、ボクはまだまだ『信仰』が足りない身でして。
 おと……ええと、『神主』さんなら、話は変わってくるんですけど」

だから鳥舟はあえてそれを認めた。
神さまが全て叶えてくれるわけがない。

「ふふ、未熟者ですみませんね、ですが――――
 『お願い』を見届ける役目は、しっかりさせていただきますよ。
 それから、そう、皆さんがいらっしゃる境内を綺麗にしたり、
 安心して神さまを頼っていただけるよう、お助けすることも」

「この神社の『巫女』として、ね」

だけど、心の『よりどころ』としての意義は知っている。

巫女はそれを保つ。
自分が信じていなくても、
信じている人の願いを保つ。
鳥舟は『神秘』に疑問を抱き続けるが――――否定はしない。

190ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/07(土) 14:30:10
>>189
「ちなみに私、神秘なんて『99.8%』信じていませんしね」

          カチャ…

―――この [志望校に受かる] って願い。叶うのかしらね。
私が上に絵馬を引っ掛けたせいで、
神様から見えなくなっちゃうんじゃないかしら

「受験なんて本人の頑張り次第でもあるだけれど…
 けれど、藁にでも縋っちゃいたいのは『誰』だって同じね」

  この子しっかりしてるわネー色々考えてるのね。
  バブみ感じちゃうわ。

「だから、しっかり者の可愛い『巫女』さん、
 いざという時は縋らせてね?おねがいっ 」

「―――というのは、冗談ですけれどね」
「残りの『0.2%』に頼ることにしますわ」

容赦なく絵馬を掛けてしまう。若人よガンバレ。

191鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/07(土) 23:12:35
>>190

「『100%』信じるのは、ボクらのお役目ですからね。
 『0.2%』でも、受験や大一番の時だけでも、
 信じたいとか、縋りたいとか……
 そういう気持ちを、受け止める場ですんでね!」

              ニコ

「神さまにでも、ボクにでも、ぜひ頼ってって下さいよ」

絵馬を引っかけるところを、言葉通り見届ける。
他の絵馬にかぶさるのも……それは、仕方ない。
自分の願いを聞き届けてもらおうとするのだから、
他の誰かの願いを優先しなくてはならない理由もない。

「――――さて!」

そうして、顔を上げた。
手には箒を持ったままだった。
つまり、まだやる事がある。

「もしほかに何かご案内出来る事がなければ、
 ボクはそろそろお掃除に戻ろうかと思うんですケド」

              「どうでしょう、お姉さん?」

192ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/08(日) 15:09:06
>>191
「あら、お喋りが長すぎました」

「事務所に『供養』したい変なものが溜まってきていまして…
 そのうち『お焚き上げ』か何かしに来させてもらおうかしらね、ウン」

「頼りにしちゃいますわよ、可愛い巫女さん。」

帰る。鳥居の前で一礼してから帰る。
参拝?しないわよ、ンなもん。
絵馬買ったから十分でしょ。
 

「―――ぶェーーーーっくしょいッッッッッッ」
「……くそ、『無病息災』にしときゃぁよかったわ」

193鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/08(日) 22:03:27
>>192

「いいえェ、ボクがつい時間を忘れて、
 お話に夢中になっちゃってましたね。
 それくらい楽しい時間を、どうもです」

    ペコ

「お焚き上げは、事前に予約があると嬉しいですね。
 物とか時期によっては受けられなかったりもして……
 申し訳ないですけど、そういうことがありますんでね」

笑みを向けた。
そして小さく頭を下げた。

「それ以外でも何かボクらに出来る事があれば、
 いつでもお気軽に、ご相談くださいね。
 それじゃ…………ようこそお参りでした、お気を付けて!」

そうして頭をあげて、箒を手に取った。
願い事の上から掛けられた絵馬を一度だけ見て、
触れることはしないでおいて、また、石畳を掃いた。

「…………」

      …ザッ

            …ザッ

                 …ザッ

194小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/02(木) 22:32:27

    ザッ……

元旦――神社へ初詣に訪れた。
普段とは異なる『和装の喪服姿』で境内を歩く。
自分なりの『新年の装い』だった。

         ガラ ガラ
                  チャリン

控えめに鈴を鳴らし、賽銭箱に硬貨を落とし入れる。
二度お辞儀して、二度手を打つ。
そして、もう一度頭を下げた。

  ――どうか……。

           スッ

両目を閉じて、静かに思いを馳せる。
心に浮かぶのは、『彼』と交わした『約束』のこと。
新たな一年間、それを果たせることを願う。

195鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/03(金) 00:02:08
>>194

元旦の境内――
市街から少し外れた『烏兎ヶ池神社』も、仄かに賑わう。
より大きな神社に比べればささやかな華やぎではあるが、
雰囲気が保たれているとも言える。喪服も浮いていない。

「新年、あけましておめでとうございます!」

     ペコ……

ふと、巫女の姿が目に入る。
アシンメトリーの黒髪に、金色の瞳。
まだ少女にも見える若い女性だったが、
巫女装束はバイトと言うには『堂に入った』ものだ。

そして……それは「振る舞い」の『甘酒』を配る姿だった。
今はあやかろうとする行列もなく、余裕を持って受取りに行ける。

196小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/03(金) 09:50:31
>>195

いつもの洋装であれば目立ったかもしれない。
しかし、元日には着物の参拝客が多い。
そのせいもあって、意外な程に浮いていなかった。

    ス……

参拝を終えて、緩やかに境内を振り返る。
その時、甘酒を配る巫女の姿が目に入った。
草履を履いた足で、石畳の上を歩く。

          ザッ……

  「あけまして、おめでとうございます……」

  「――お一つ頂けますか?」

『黒い着物』を身に纏う女が、巫女に微笑んだ。
一見すると、『黒留袖』――最も格の高い正礼装にも見える。
よく見れば、それが『喪服』であることが分かるだろう。

197鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/04(土) 00:26:08
>>196

巫女は、黒い和装に一瞬表情を固まらせる。

「――――ええ、勿論」

あけましておめでとう。
喪中の相手には相応しくない挨拶だったが、
同じように返された事で『切り替える』。
寺社仏閣への参詣自体、喪を重く見るなら避ける。
躊躇いや戸惑いは望まれていないだろう。

     ゴポポ…

「はいっ、どうぞ。暖まりますよ。
 初詣といえば甘酒……誰が決めたのか分かりませんケド」

注いだ甘酒を渡す顔は、緩んでいた。

「冬にもピッタリですからね。ああ、ヤケドはしないくらいの温度ですんで!」

湯気は立っていたが、手渡すカップ越しに掌に感じる熱は穏やかなものだ。

198小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/04(土) 01:01:24
>>197

  「――ありがとうございます」

おもむろに両手を伸ばし、カップを受け取る。
どちらの薬指にも、同じ『指輪』が光っていた。
飾り気のないシンプルな銀の指輪。

    ス……

カップを傾けると、ほど良い熱を持った甘酒が喉を通っていく。
心なしか、身体だけでなく、気持ちまで暖まるように感じられる。
体温が上がったために、頬には薄っすらと赤みが差していた。

  「この神社は初めて来たのですが……」

  「どのような由来があるのでしょうか?」

他の人が待っていないことを確かめてから、
ささやかな質問を投げ掛ける。
甘酒のせいか、それとも心の篭った持て成しのせいか、
少し言葉を交わしたい気分になっていた。
あるいは、楽しげに会話を弾ませる人々の様子を見て、
一抹の寂しさに駆られたせいかもしれない。

199鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/04(土) 01:46:17
>>198

参拝客はみな、『願い』を抱えてここに来る。
それが叶うと信じてではなく……大多数は、
それを言葉にする、あるいは吐き出すために。
神には届かずとも、巫女はそれを受け止められる。

……重い。両薬指の『証』と、喪服。
巫女がまず覚えた感情は、それだ。
どこまで踏み込むべきか……
それとも踏み出すのをやめるべきか。

「うちはですね、『鳥兎ヶ池』の信仰が元で、
 そこに神社を建てることになったそうです。
 神秘の池、なんて呼ばれたりもしてますけどね」

選んだのは、踏み出さない方だ。
初詣に、巫女にそれは望まれていない。
口に出さない思いを解釈することは。

「『烏兎ヶ池』は『鵺伝説』にまつわる地でしてね。
 お姉さんは『鵺』はご存知ですか――妖怪ってやつの名前です」

手を前に出し、『狐』の影絵のような指文字を作る。
鵺は狐とは関係ないが……『妖獣』を表しているつもりだ。

「お猿さんの顔に、タヌキの身体。トラの手足で……尻尾は蛇だったとか。
 トラツグミみたいな声で鳴いてですね、昔のえらい人を気味悪がらせたそうです」

200小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/04(土) 02:20:42
>>199

先程まで冷えていた両手に、今は温もりがある。
その暖かさが、身体と心に伝わっている。
だから、この一時は寂しさも忘れていられる。

「『鳥兎ヶ池』――『池』に『鳥』と『兎』がいらっしゃったのでしょうか?」

「何だか昔話のようですね……」

    フ……

『由緒』を聞いて、穏やかに微笑む。
その裏側には、消すことの出来ない陰があった。
しかし、今この瞬間は表には出ていない。

「……ええ、名前を耳にしたことはあるように思います。
 詳しくは存じませんが……」

「――その『鵺』が『池』と?」

話には聞いたことがあった。
不思議な動物だ。
『神秘性』という意味では、神社という場に相応しいように感じる。

201鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/04(土) 02:39:41
>>200

「『烏兎』は『金烏玉兎』……えーと。
 つまり太陽と月ですね。うちの『烏兎ヶ池』は、
 水底は濁ってますけども、綺麗に月を映すンです。
 太陽もね、そこから取られた名前なのかな、と」

いうのが、定説になっている。
というより……そうしようとしている、のか。

「ま、あくまで……説の一つですけどね。
 もー昔すぎて誰が付けたのかも分かりませんから。
 ほんとはそう、カラスとウサギがいたからかも?
 ウサギはともかく、カラスはよく見ますからね」

偶然よりは、『ありがたい』気がするから。
信仰を求めている神社が始めたのか、
信仰の拠り所を求めている民が始めたのか。
それも、疑えど答えを出すべきではないだろう。
 
「ただまあ、たいていの説で『鵺』は伝説に絡みます」

「『鵺』は最終的にお偉い方に退治されるんですよ。
 それで、妖怪だからですかね。斃された体が……ボン!」

「何か……爆発でもしたんですかねえ、あちこちにバラバラに飛んでいったとか。
 そのうち一つ……爪だか牙だかが、くだんの池に落ちたそうですよね」

202小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/04(土) 17:51:22
>>201

  「そういえば……『月には兎がいる』と言われますね」

  「いつか『やたがらす』という名前を聞いたことがありました。
   太陽の神様だと……」

  「『カラスが太陽』というのも、
   何となく分かるような気がします……」

伝承が本当かどうか。
少なくとも自分にとっては、さほど重要なことではなかった。
信じることで幸福を得られる人がいるなら、それが何よりだろう。
真偽を問うことが、その幸福を壊してしまうことになるのは、
悲しいことだと思う。
たとえ儚い夢であっても、それが心の支えになることもある。

  「『バラバラ』に――」

  「それは――凄いお話ですね……」

巫女の言葉で、ふと自分自身のことが頭に思い浮かんだ。
『スーサイド・ライフ』――自らの身体を自在に切り刻む能力。
『妖怪』も『スタンド』も奇妙な存在には変わりない。

  「そして『神秘の池』が生まれた……ということでしょうか?」

  「どのような『ご利益』があるのか教えて頂けませんか?」

203鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/04(土) 23:44:44
>>202

「ええ、月には兎がいるんです。
 それが科学的に正しいどうかじゃなくって、
 昔の人が『そうだと考えた』――――
 『そうだと考えた理由がそこにあった』
 そこに、ロマンがあると思うんですね」

「ロマンというか、一つの『信仰』といいますか。
 神さまっていうのとは、少し違うかもしれませんがね」

月の兎。
ヤタガラス。
現実に考えれば『無い』――――『スタンド』でもなければ。

「ですねえ。そういういわれがあっての『神秘の池』です。
 ま、もしかしたら『ご利益』が先にあって……理由が後、か・も」

だが、あるかもしれないと思うことは『意味』がある。

「池の『ご利益』っていうのは、まー漠然としてますけど。
 『池に落ちた人が神通力を得た』みたいな伝説とか、
 『池の水を毎日飲んだ子供が百人力の力持ちになったとか』」

「『怪我が治る』とかより、そういう方向性ですねえ」

            ニコ…

「残念ながら――――今は水に入るのは禁止ですし、
 飲むのも、煮沸をした方が良いと思いますね。安全性の面でね!」

204小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/05(日) 00:50:17
>>203

  「『信じることが心の支えになる』……
    とても素敵なことだと思います」

  「それが形のあるものでも、形のないものでも、
   『支えてくれる何か』があれば――日々を歩んでいける」

  「私は、そのように考えています……」

彼女が語る言葉に、『確信』を込めた頷きを返す。
胸の内には『約束』があり、指には『形見』がある。
それらが、今の自分を『この世界』に留めてくれているものだ。
きっと、いつでも『彼』は見守ってくれていると信じている。
だからこそ――『一人』になった今も生きていける。

  「……『信じれば叶う』という言葉を聞いた覚えがあります」

  「『神秘の池』が――
   『神様』が見守ってくれているという『信仰』は、
   そこを訪れた人達にとって、自分の道を歩んでいくための、
   『心の支え』になってくれたのでしょうね……」

  「そうして迷うことなく進んでいけば……
   いつか、私も『力持ち』になれるでしょうか?」

    クス……

口元に、柔らかい微笑が浮かぶ。
ちょうど同じ頃、こちらに近付く数人の参拝客の姿が見えた。
自分と同じく、甘酒をもらいに来るようだった。

  「すみません……すっかり話し込んでしまいました。
   他の方がいらっしゃるようですので、私はこれで……」

  「楽しいお話を聞かせて頂き、ありがとうございました」

           スッ

  「――失礼します……」

邪魔にならないように身を引き、巫女に会釈を送る。
黒い和装の後姿が、徐々に遠ざかっていく。
喪服に身を包んだ背中が、静かに雑踏の中に溶けていった。

205鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/05(日) 01:18:00
>>204

「いい考えだと思いますよ!
 もちろん、『支え無しでも生きられる』人もいるし、
 それはそれで立派なんだとは、思いますけどね」

「いざというときの、『拠り所』は一つでも多い方がいい」

神秘が科学に否定される。
それは何も間違いじゃあない。
神秘では炎は灯せない。
神秘では水は清められない。
そして神秘では…………

だが、『神秘を必要とする』人間は必ずいる。
いつまでかは分からない。だがそれまでは……『必要』だ。

「そうですね…………きっと『信じてない夢は叶わない』」

「『夢を信じるための心の支え』は、ボクらがしますからね。
 迷いそうになったら、いえそうじゃなくっても、いつでもまたどうぞ」

           ペコ…

                「それでは。ようこそお参りでした」

206鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/05(日) 00:09:53

     ザッ――

            ザッ――


春。芽生えの頃。今日も境内を掃いている。
無心で……という訳でもない。
『見たいテレビ番組』の事だとか、
今度観に行く『舞台』の事だとか、
むしろ『煩悩』は減る所を知らないが・・・


(……『ヴィルドジャルタ』!)

     ザッ――

何より、ここしばらく『それ』に関心が募っていた。
『ヴィルドジャルタ』――――
神託なんて大げさな話だと思うが、
ある日突然『知った』その存在。

(名前しか知らないボクの『スタンド』。
 そろそろ『知っておく』べきなんじゃあないか)

     ザッ

        (…………でも、それを知るってコトは、
         知らない時に逆戻りは出来ないってコトだ)

                  『コンッ』

    「あッ―――と」

思考の堂々巡りの中……箒に思わず力が籠り、空き缶を飛ばしてしまった。

207鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/07(火) 00:39:43
>>206

思考は巡るたびに募っていくが、その日は実りに結びつきはしなかった・・・

208一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 03:11:53
教会に集まる方々により良い道を示すべく
参考にするために烏兎ヶ池神社まで来たのだが…

「迷える人々に道を示す前に迷走しちゃいました…」

一人の小学生、いや、中学生がぐるぐると迷走する。
どうみても小学生だが中学生である。

「それにしても変な感じがするような…」

涼しく刺すような玲瓏とした風貌のあどけない少年は何かを感じている。
二回も死にかけたせいで視線や殺意に敏感になったのかもしれない。

「宗像さんに付いてきてもらえば良かったかな」

209石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 08:36:16
>>208
「おい、ぐるぐるとなにやってるんだい、アンタ」

迷走している一抹に中学生くらいの少年が声をかけてきた。
白黒の髪に黒の清月学園制服、海のギャング、シャチのような風貌をした少年だ。
鍛えているのか、一抹よりいくらか背が高く、がっしりしている。

210一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 20:24:12
>>209
制服と背丈からして上級生だろうか。
水泳部に入ってそうだな、と勝手な憶測をする。

「生まれて初めて神社に来たのですが
 何をすれば良いのか分からずグルグルと…」

「ん? もしかして清月学園の方でしょうか?
 凄く肉体を鍛えていらっしゃるようですね」

生まれてから父というものを知らぬ一抹は筋肉に興味津々だ。筋肉とは父性の象徴。
血管が見える透き通った不健康な一抹とは正反対だ。

「すごくつよそう」

目の前の少年の筋肉を凝視しながら呟く。

211石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 20:40:22
「ん、アンタもこの神社初めてかい?」

「俺も初めてだが……」
ズキュゥゥゥン!人魚のようなスタンドを上空に飛ばして辺りの様子を探る!

「俺も初めてだが……大体の方向くらいは分かるぜ。
あっちが『霊池』だ。」
『霊池』の方向を指差す。

「俺は石動 織夏(いするぎ おるか)。
ご察しの通り清月学園の中等部3年生だ。
水泳部で鍛えちゃいるが自慢するほどのモンでもねぇ。」

「アンタは……帰宅部かい?」

212一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 21:05:23
>>211
「『インダル…ん、お兄さんのスタンドでしょうか?」

筋肉質な人型スタンドが一抹の前に発現する。
二度も物騒な目に遭わされたせいで反応が常人から離れてしまっている。

「あわわっ、敵の攻撃と勘違いしちゃいました! ごめんなさい!」

『インダルジェンス』を解除。
石動先輩についていこう。 

「わたしは中等部一年生の一抹貞世です。
お恥ずかしながら帰宅部です」

「空を浮遊するスタンドって良いですよね。
 私は戦友というか、お兄ちゃんみたいな人も魚っぽいスタンドだったから懐かしいです」

213石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 21:29:12
>>212
「おおっと、アンタもスタンドが見えるクチか。パワーがありそうなスタンドでうらやましいな。」
『インダルジェンス』を見て呟く。

「俺のスタンドは遠くに行けて、空を飛べる分、あまりパワーが無くてなぁ。」
ボヤく。

「だが、浮遊するスタンドは便利だぞ。重力の枷から解き放たれるってのは気持ちがいい。」

「魚っぽいスタンド使いかぁ……自分以外には見たことがないが、意外といるのかねぇ。」

トコトコトコ……

「よし、『霊池』に着いたぞ。ここが『烏兎ヶ池』か。」
『霊池』に着いた!

「巫女さんとやらは居るのかな?」
『霊池』の周りをうろうろしながら、『巫女』を探してみる。

214一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 21:57:50
>>213
「私の『インダルジェンス』は岩を砕き、精密機械のよう
 な動きを得意としますが能力はメンタルケア向き」

「迫る危機に器用な対応が必要とされるから大変です」

立ち止まった石動の背後で軽く転ける。
それでも『パイオニアーズ・オーバーC』を一抹は観察していた。

「わたしの戦友さんは沢山の魚を発現し、『水槽』を作るスタンド使いでした。
非力なスタンドでしたがコカトリスを窒息死させるジャイアントキリングを成し遂げた凄い方なのです」

目をキラキラさせながら戦友の話をする。
彼は今でも町の何処かにいるのだろうか。

「『烏兎ヶ池』ですか。変わった名前の池ですね。
 ご利益でもあるのでしょうか」

石動先輩と『巫女』さんを探す。

215石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 22:14:38
>>214
「『巫女』さん見つからねぇなぁ〜。」

「しかも、この柵から察するにこの『霊池』は遊泳禁止みたいだしよぉ〜。」

「パワースポットで泳ぐってのを、いっぺんやってみたかったんだがな……」

※巫女さん(鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』)を待ちますか?

216一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 22:21:22
>>215
「学生ほど暇じゃないのかもしれません」

「…泳いでみます? わたしは泳げませんが」

※明日の21時まで待ってみましょうか?

217石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 22:34:43
>>216
「泳ごうと思ったんだが、ここまで禁止されてるとさすがに気が引けるぜぇ〜」

「しかし、一抹さん、泳げないってのは難儀だな。溺れた時とかどうするんだい。
なんなら、泳ぎ方を教えようかい?」

※ちょっと待ってみましょう。

218鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/08(水) 23:07:17
>>216
>>217

「…………」

          ザッ    ザッ

巫女は少し遠くでいたが、掃除をしているようだ。
そちらに気付く様子は無いので、用があれば話しかける必要がある。

219石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 23:17:51
>>218
「あ、いたいた。
もしもし、巫女さーん」

「この『霊池』ってやっぱり遊泳禁止?
いいパワースポットって聞いたんだけどさ。」
鳥舟に聞いてみる。

220一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 23:22:03
>>218
「あっ、居ましたよ。それっぽい人が。
 泳ぎはまた後で教えてくださると嬉しいです」

「巫女さま、巫女さま。この池にご利益があると聞いて来たのですが」

221鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/08(水) 23:36:07
>>219
>>220

「どうもどうも、ようこそお参りです」

          スゥ―

頭をゆっくりと下げて、箒を片手に歩み寄る。
金色の目と、左右で長さの違う髪が特徴の若い巫女だ。

「あー。すみませんけども遊泳は、禁止ですね!
 そこで『溺れたり』とかはもちろんですけど、
 ホラ。少し濁ってるでしょう? 『浄化』とか、してませんからね」

「飲用にするにも、煮沸がいるくらいには、『不安』なんですよ。
 それをまんいち飲んだりしてビョーキされたりしたら、
 ボクの方でこう、セキニンとか、取れませんから。
 仮に飲んだ事で御加護があっても、風邪とか引くときは引きますしね!」

指さす池は確かに、『得体が知れない』ものはある。
汚水と言うには透明すぎるが、『市民プール』のような安心感は無い。

「そちらの、『弟くん』……? きみの質問にも答えておくね。
 ここは『鵺』……ってわかるかな、昔の『すごい妖怪』なんだけど。
 まあ、『謎の生き物』が撃ち落とされて底に沈んだ――――なんて説もあってね」

「その『謎の生き物の謎の力』が、宿ってる池なんだよ。
 あとは、あー……『飲んだらすごい力持ちになった』なんて昔話もある」

       「ただほんと、現代人のボクらは『煮沸』ッて知恵があるから。
         昔話そのままみたいに直飲みしたりは絶対おすすめしませんよ」

最後の言葉は石動に向けているようだ。『保護者』と勘違いしているらしい。

222石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 23:53:34
>>221(鳥舟)
(おおっと、金色の不思議な目だ)

「なるほど、あの『霊池』には『得体の知れない』なにかがあるっちゃ、あるなぁ
 『謎の生き物の謎の力』……それが関連しているのかな?」

「たしか、ここの『霊水』買えるんだったよな?
 ボトル1つでお幾らだい?」

「あと俺らは兄弟じゃねぇよ」

223一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/09(木) 00:08:40
>>221
「なるほど、この神社の『信仰』の元は妖怪。
 私は信じますよ。この町には変なのが沢山いますから」

「聖職者の息子として興味が有って来たわけですが他にも逸話はありませんか?」

224鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/09(木) 00:36:28
>>222

「あっと、これは失礼しました。早とちりでして」

まず、非礼をわびた。

「関連はあるのかもしれないし、ないのかもしれない。
 そこも『不透明』……なんちゃって、ね。
 『鵺伝説』ですからね、『分からない方がらしい』のかも」

「鵺的、なんて形容詞もあるくらいですからね」

その言葉自体、はぐらかすように『鵺的』だ。

「ああ、霊水はボトルで『300円』で授与しておりますよ!
 繰り返しますケド、飲むんでしたら『煮沸』してくださいね」

が、『授与』――――『商売っ気』は、それなりに『明快』なようだった。

>>223

「『神さま』と『妖怪』は紙一重――――
 っていうのは、きみのお家の考えとは違うかな。
 ごめんね、ボク基督教はあんまり詳しくなくって。 
 きみに失礼なこと言ってたら、ちゃんと叱ってね!」

「ボクも勉強させてもらうからさ」

宗教観の違いは『戦争』さえ生む。
鳥舟は『信じ切っちゃいない』が、
目の前の少年がどうかは分からない。

「変なの……アハハ、確かに『都市伝説』は多いよね。
 他の逸話……ん〜。ちょっと神社公式として言うには、
 眉ツバっていうかそれこそ『都市伝説』っぽくなるけど。
 『某戦国大名はこの池で体を洗ってから成りあがった』とか」

          「その手の『ご利益話』は、事欠かないよね」

225一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/09(木) 09:52:10
>>224
「いえ、わたしは父と違う方向性の者ですよ。神も、妖怪も、ただの『都市伝説』みたいなものじゃないですか」

「そういえば、『都市伝説』と鵺って似てますよね。あやふやで無責任なところが」

私は学者ではないが教会と神社の違いは崇める神でなく、河童や悪霊などの恐怖を神格化する点だと思う。
日本三大悪霊の崇徳天皇や平将門など彼らは恐怖と紙一重の信仰を受けている。
菅原道真だけは少し影が薄い気がする。

「噂を広めるとき、人は安全な立ち位置と抜け道を先に確保するんです。危なすぎる話は遠ざけられるだけで決して広まらない」

「人間は自分が優位に立っていると思うから、無責任な噂を垂れ流せる。ただし、それが本当に安全なものかは怪しいのです」

「『都市伝説』を流す者が『きっかけ』の危険性を見極められているとは限らない」

こういった妖怪に関連する逸話が伝わる神社には祟りもセットで付いてくるものだ。
最近は勝手に心霊スポット扱いされる神社も少なくない。

「巫女さまは祟りとかに遭遇した経験はありますか? 落ちてきた鵺の正体を探ろうとしたら変な目に遭うとか」

「それはそうと霊水を買いますね。与太話を聞いてくださったお礼です」

226石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/09(木) 12:46:37
>>224
「300円ね。」
300円を渡す。

「まぁ、お守り程度に考えとくさ。水素水よりはご利益がありそうだ。」

「『鵺』ねぇ。そんなもんいるんだか、いないんだか……。
あー、実はアンタさんが『鵺』の変化(へんげ)っつーオチか?
それはそれで面白そうだな。」

227鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/10(金) 02:11:26
>>225

「ああ、それなら――――そうだねえ。
 『信仰』を失ったり、毀損された神さまが、
 妖怪になるなんてお話もあったりするしね。
 『いないと思えばいない』『いると思えばいる」

「まあボクは、『いる』側の人間だけどね!
 『都市伝説』や『妖怪』と神さまが違うとしたら、
 それは多くの人の『支え』になってる事だろうね」

妖怪や都市伝説は、人の想像力に支えられる存在だ。
神さまも、そうかもしれない――だが『支えてくれる存在』でもある。

「祟り? ボクは――――フフ、そうだねえ、『ある』よ。
 それこそ、その池の掃除で水の中に転落しちゃってね。
 風邪を引いたんだ……いつもより、長引いちゃったんだ。
 勝手に入ったから、きっと鵺が怒ったのかもしれない」

「どうもどうも、霊水の授与は社務所でするね。そこに、置いてるから」

>>226

「はい、はい。確かに受け取りました。
 物は後で、社務所の方で授与しますよ。
 そっちの子の分と合わせて……
 そうですね、『ちょっと珍しいお守り』くらいの、
 そういう気持ちで持っててくれれば『気楽』ですよ」 

300円を受け取り、懐に入れる。
そして、怪しい笑みを浮かべる。
 
「……ボクが鵺ならこのまま持ち逃げしちゃう、かも?
 なんてね、ボクはちゃんと人間ですんで、安心してお頼り下さい」

「ちなみに、今日はやはり『霊池』を見に来られに?」

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229一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/10(金) 06:00:41
>>227
「聖職者の息子的にも神さまは存在していた方が人々の支えになりますから。
 それに行き場の無い方々が来てくださり助けになれます。こちらより教会はボロいですけど…」

教会に捨てられた私が生きていられるのも直接的ではないものの、神さまのお陰ではある。
どうしょうもない者たちが最後にたどり着くのが宗教なのだ。良くも悪くも。

「逆に池の掃除をしてくれたから転落した貴女は助かったのかもしれませんよ。
 神と巫女は共存共栄の関係ですし、神が簡単に姿を現れでもしたら超越性が失われます」

ふと、こういった場所に宗像さんは来ないだろうなと思った。
地獄を生きる彼には神も仏もあるまい。
夕立先輩は…どうだろうか。神頼みするより自分を鍛えてそうだ。
隣の石動先輩も池を泳ごうとするぐらいだ。
基本的にスタンド使いは神を必要としない気がする。

「うん? そういえば、鵺って姿形が分からないらしいですね。
 なぜ、昔の人たちは池に落ちてきたのが鵺だと分かったのでしょうか?」

「謎が多いですよね、鵺って。既に死んだものを知ることは叶いませんが」

池に不気味なものを感じるが『インダルジェンス』のいる私に怖いものはない。
恐ろしいのは生きるに足る価値を失うことのみだ。

230石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/10(金) 12:02:44
>>227
「ハハハ、300円で『鵺』が見れるんなら、アンタさんが『鵺』でも面白いってもんだ。」

「ああ、『霊池』を見に来たんだ。あわよくば泳いでみたかった。
 水泳大好きなんでな。
 水の加護とやらがあるんなら、見てみたいもんだ。」

231鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/10(金) 23:30:51
>>229

「確かに、そう言う考え方もあるかもねえ。
 神さまに報いていれば、いつか報われる。
 ボクもそうあってくれれば、良いと思うな。
 『願えば絶対叶えます』とは言えないけどさ」

そんなことはあり得ない。
どれだけ報いても返してはくれない。
『鳥舟学文』の存在がそれを示す。
答えが神の不在か、手抜きかは分からないけど。

(……願った事が支えになるなら、それでいい)

「そうだね、『姿が分からない何か』――――
 が、落ちて来た。だから『鵺』と呼んだのかもね。 
 それが何かが分かるなら、それの名前で呼ぶと思うんだ」

   U F O
「『未確認飛行物体』みたいにさ。っていうのは、神社らしくない例えかな」

>>230

「確かに、そう考えたらお買い得ですねえ。
 ま、鵺はさすがに保証できませんけども、
 『良い目』を見られるように、神さまにはお伝えしときますよ」

お伝えした結果も、保証は出来ない。
が、巫女の仕事は果たそう。
それで人々が安心できるなら。

「『水泳』ですか、なるほど…………
 とはいえ『春先』の水はまだまだ冷たいですからね、
 練習でしたら、屋内の温水プールをおすすめしますよ。
 それに、『記念』で飛び込む『水場』は『道頓堀』だけです。
 や、勿論あそこも飛び込まない方がいいでしょうけどね」

「マジメに行くと……この『霊池』にはですね、
 『水そのものにまつわる伝説』は、実はあんまりないんですよね。
 『水が暴れ出した』とか、そういうのはあんまりない。
 落ちた人にしても、飲んだ人にしても、『水』と『人』ばかり……
 そういう意味では『水泳選手』は、加護に『あやかりやすい』の、カ・モ」

232石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/11(土) 05:58:16
>>231
「多少の寒さは大丈夫ってやつだ。『鍛えてますから』。」

「加護にあやかりやすい、たぁ面白い話だ。
これはもう『お守り』に使うしかねぇな。」

※特にこれ以上、話がないようならボトルを頂いて帰ろうと思う。

233一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/11(土) 07:44:54
>>231
「成る程、正体が分からない存在に知ってる物の名前を被せれば、それは未知ではなくなりますね」

さっきから出しっぱなしの『インダルジェンス』も音仙さんに名づけられた未知の力だ。
違和感なく受け入れているがスタンドも鵺と大差ない不思議な存在である。
最近はうっかり発現したまま買い物に出るほど生活に馴染んでしまった。

「……根掘り葉掘り聞いて怒らないのですね。私は気になる事が有ると色々聞いてしまう癖がありまして」

「神父は懺悔を聞くだけ。根本的な解決をしたくなる私は神父に向いてない」

「巫女として『理想的』な貴女を羨ましく思います。すべてを受け入れる姿勢とか」

神に仕える者としては彼女の方が上だ。
財布から五百円を取り出して支払いの準備をする。

「追加で二百円。色々聞いてしまったものですから」


>>232
「次に会った時は筋肉を触らせてくださいね」

なんとなくだが石動先輩と夕立先輩は少しスタンスが似ている。
スポーツマンとは求道者。自分の歩む道に真摯な人が多いのかもしれない。

234鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/11(土) 22:37:00
>>232

「ええ、是非に是非に。
 良い事があったら、思い出してください。それで、もしですけど、
 悪い事が起きちゃった時も、『お守りが効かなかったせい』にしてください」

>>233

(あ。……あんまり自然だからなんとなく、気にしてなかった。
 この子は『スタンド使い』……珍しいにせよ、居なくはないんだな)

「怒らないよ。なにせ『巫女』はね、
 『参拝者』と『神さま』を繋ぐ存在だから。
 気になる事に応えるのも『役目』なんだ」

「『解決する』わけじゃないのは、神父様と同じだけどね。
 これからも理想的な巫女でいられるように、がんばろうかな」

          スッ

『500円玉』は、この場では受け取らない。

「どうも、ありがとう――――
 200円はそうだね、『お賽銭』にしておこう!
 ただ、支払いは、社務所の方でお願いしていいかな」

>両者

「っと、すみませんね、そろそろ『お掃除』に戻らせていただきます。
 ここはおかげさまで、綺麗に使っていただいてるので、ごみもありませんし」

「社務所の方に、『御水』の『授与』の方、準備してもらっておきますね」

235石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/12(日) 03:45:35
>>233(一抹)
「やめてくれよ。俺の筋肉は見世物じゃねぇ。」

「なんつーか、水と暮らすための進化みたいなものなのさ。」

>>234
「ありがとよ、そうさせてもらうさ。」

「それじゃ、これぐらいで。サヨナラだ。」
手をヒラヒラとさせて、社務所の方へ向かう。


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