米大統領選は泥沼化の様相を呈している。米国の行く末を真剣に案じる有権者なら、候補者の容姿などに執着している場合ではないだろう。だが、ライアン氏の青い瞳や鍛えられた腹筋は実際、社会保障制度の縮小を掲げる同氏の主張を押しのけてメディアの話題をさらいつつある。民主党寄りで知られる米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)でさえ、ロムニー氏とライアン氏を「キュートな共和党コンビ」と表現したほどだ。
芸能情報サイトTMZは、ライアン氏について「米国史上最もホットな副大統領候補といえるかもしれない。ただ、政策はどうでもいい」と評している。(c)AFP/Sebastian Smith
ミシェル夫人はさらに、若者や女性、そして支持層の中心である黒人の有権者に支持を呼びかけるため、テレビ番組に幾度となく登場している。人気トーク番組「トゥナイト・ショー・ウィズ・ジェイ・レノ(The Tonight Show with Jay Leno)」では、ロンドン五輪に出場した女子体操のギャビー・ダグラス(Gabby Douglas)選手とともにゲスト出演した。
大統領選候補者に配偶者が及ぼす政治的影響について研究しているブリッジウォーター州立大学(Bridgewater State University)のブライアン・フレデリック(Brian Frederick)氏は、「2008年と今年の(大統領選の)大きな違いは、(3年半の)実績があることと、好感度が下がったことだ」と指摘した。その上で、「ミシェル夫人については過去4年間、(オバマ大統領と)同じように好感度が大きく下がることはなかった。人気が高い代理人が付いていることは、大統領の助けになるだろう」とコメントした。(c)AFP/Stephen Collinson
ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)政権下でホワイトハウス(White House)と財務省の報道官を務め、現在はコンサルティング会社ハミルトン・プレース・ストラテジーズ(Hamilton Place Strategies)の共同経営者となっているトニー・フラット(Tony Fratto)氏は、ツイッターは選挙の流れを変えることができると話している。
デジタルメディアを専門とするフロリダ州立大学(Florida State University)のジャネット・カスティロ(Jeanette Castillo)氏は、ロムニー氏は政治活動委員会(PAC)からより多くの資金と支持を集めているため、「ソーシャルメディア資本にどれほどの価値があるのか、注目している」と語る。「(ソーシャルメディア資本が)どの程度人々を動員し、選挙に参加させることができるかを見るのが楽しみです」
カリフォルニア大学リバーサイト校(University of California, Riverside)のキャサリン・オルゴー(Catherine Allgor)教授は、先週フロリダ(Florida)州タンパ(Tampa)で開かれた共和党全国大会(Republican National Convention)でアン夫人が行った応援演説に人々が熱心に耳を傾けた理由はこの点にあると言う。同教授はAFP通信に対し、「米国人はこうした女性たち(候補者の妻)に、候補者の誠実さを証明する力があると信じています。また、夫や父親、家の事柄を管理する者としてどのような家庭生活を送っているかが、候補者の道徳性や本当の人柄の証しになると考えているのです」と語った。
一方、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)記者で、ホワイトハウスの内情を暴露したとされるベストセラー「The Obamas(オバマ家の人々)」の著者であるジョディ・カンター(Jodi Kantor)氏は米公共ラジオ放送に対し、両候補者の妻たちは多少刺激的な発言をしても政治的批判から守られると指摘。「アン夫人が演説で語った内容は高度に政治的でしたが、『愛についてお話します(this is about love)』と切り出していました。選挙戦や政治を越えている点を強く印象づけるほど、演説の効果は高まります」と語った。
一方のアン夫人は、就労経験のない専業主婦で、子供を持つ親のグループなどの市民活動に積極的に取り組んでいる。神経の病気である多発性硬化症と長年戦い、乗馬で症状が軽減したと語っている。乳がんも患ったものの、寛解した。実業家の娘として生まれた夫人は、ロムニー氏に合わせてモルモン教に改宗し、ブリガムヤング大学(Brigham Young University)でフランス語の学士号を修得した。
フロリダ州のフォートピアス(Fort Pierce)にあるピザレストラン「ビッグアップルピザ&パスタ(Big Apple Pizza and Pasta)」店主のスコット・バン・ドゥーザー(Scott Van Duzer)さんが、遊説中に立ち寄ったオバマ大統領を持ち上げている写真はメディアで取り上げられ、激戦州でのこの出来事はまたたく間に広まった。