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短編小説

1:2013/07/05(金) 18:00:10 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
初めまして、雫と申します。
タイトルにもありますが、此処では短編小説を書いていきたいと思ってます。
主に恋愛ものでシリアスになると思います。

注意事項
・荒らしは絶対に無視して下さい。
・一行レスはサーバーに負担がかかるので禁止です。
・チャット化に繋がる用語は控えてください。
では、これらのルールを承知の上でお読みください。

6ピーチ:2013/07/09(火) 12:09:30 HOST:zaq31fa5a1a.zaq.ne.jp

貴方の小説は矛盾だらけです。
つじつまが合っていないので
もう一度やり直し

7ピーチ:2013/07/09(火) 12:09:53 HOST:zaq31fa5a1a.zaq.ne.jp
つじつまが合っていないので
やり直し

8:2013/07/10(水) 18:53:46 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―愛憎―」那緒side前編


真っ赤な左手。

滑り落ちる透明の液体。

茶色のボール。

責めるような黒目。

俺は君が、それでも君が―――。




彼女の左手を見るたび、後悔する。

あの時、あんな事になれなければ、こんなに空虚な生活はしなかったのに。

俺は入学以来、ずっと彼女が好きで。

部活で見た、あの楽しそうな笑顔に惹かれて。

仲良くなっていって。それはもう幸せで。



なのに。



『真琴…っ』

あの日、彼女の左腕から溢れる血は、徐々に黒くなって、

それは自分たちの行く末みたいだった。

もとの色は、単純な赤色だったのに。

忘れられない、真琴の俺を見る目が。

怪我を負って、大会に出れなかったエースの真琴は

絶望で溢れた瞳をしていた。

そして、3年連続優勝を果たせなかったバスケ部。

動かない左手から視線を反らして俺を見た時の、目。

真っ黒な瞳の奥に宿っていたのは、確かな憎悪だった。

それは複雑で。なんとも形容しがたい色だった。

責めるように冷ややかで、受け止めたようにぬるい温度で、俺を見ていた。


『ごめん』


謝るしかできない俺から真琴は視線を再び反らして

『好きだよ、那緒の事』

真琴は俺の方を見ずに、自分の左手を見つめながらそう言った。

…どうすれば、よかったんだろう。

9:2013/07/10(水) 19:42:18 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―愛憎―」那緒side後編



ずっとずっとずっと好きだった子が、好きだと言ってくれて。

でも、その感情は綺麗なものだけじゃなくて。

それをわかっても拒絶なんかできなかった。

罪悪感や正義感や恋情。解放感や逃避感。そんな感情が混ざり合う。



『ッ――俺も好き』



なのに、なんで真琴は泣きそうなんだろう。

まるで拒んで欲しかったみたいな笑顔。そもそも、笑顔なのか。

それすら曖昧な事がひどく悲しかった。

何が正解だとか間違いだとかそんなものわからない。

あの時彼女の真意を見抜くべきだったのか、否か。それもわからないままだ。

でも何度あの時に戻っても俺の答えは変わらない。


だって、どうしようもなく好きなんだ。

それが事実なんだ。


「好きだ」


君の後ろ姿に囁く。

きっと君は振り返らないだろう。

でもいつか、振り返って笑って欲しい。

それだけが願いで。希望で。俺のわがままだ。

背を向けた俺の背中を、彼女が振り返っているなんて。

まだ、知らない、冬。

10:2013/07/10(水) 19:52:13 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―あやつり人形―」前編



「憂くんっ!ちょ、どうしよう!」

春のほのぼのとした平和な土曜の午後。

わたしは興奮気味にお向かいの幼馴染み、憂くんの部屋に駆け込んだ。

二つ上の大学1年生の憂くんは

あからさまに五月蝿そうに顔をしかめた。

なんだその不満げな顔は。


「なに?」

「ど、どうしよう…わたし、初めて告白された!」

わたしはほんの少し顔を赤らめて叫んだ。

これは、賭けだった。

ここで憂くんがなにも言わなければ

わたしはもう憂くんへ片想いするのをやめよう。

10年以上続いてしまった想いは、きっと今日、わたしの予想通りに終わるんだろう。

仕方ない。すべてが幸せなハッピーエンドになるわけじゃない。

わたしに用意された結末はきっと、そう、きっとだけど。あまりいいものじゃないだろう。


「ゆー、くん」

「…で?なんて言って欲しいの?」

息をのむ。言葉につまる。

「…っ、憂くんは、わたしのこと、好き?」

「……」

「…もし、好きになってくれないなら、わたし、もう諦めるよ…そして、」


そう、そして……


そこから先は上手く言葉を紡げない。

無表情の憂くんが、怖くて、息がつまる。

「で?その告ってきたやつと付き合うんだ?」

「……ッ」

バカにしたように笑う。

そんな憂くんを見てゾワリと悪寒が走る。


「そーだよ…うんそうするの。だ、だって憂くん…は、っ」


全然わたしを見てくれないし、子ども扱いして、バカにして。

わたしはもう疲れちゃったんだ。

報われない。ただただ虚しい。

「きっと、こんな風に泣き叫んでるわたしを、憂くんは子どもだって、馬鹿らしいって

重いって嫌がるんだろうけど…っ」



でも、


「わたしは憂くんが好き…」

わたしの声に憂くんが弾けたようにわたしを見た。

綺麗な黒い目がじっとわたしを見て、それは少し怒ってるみたいで。

わたしは唇を噛んだ。

11:2013/07/10(水) 19:58:48 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―あやつり人形―」後編



「俺だって、好きだ……」

憂くんの声にぴたりと涙がやんだ。

憂くんがゆっくり近付いてきて、壁まで追い詰められる。

壁の冷たい温度が背中から伝わったと思った瞬間、

わたしは憂くんとキスしていて。

「好きだから、行かないで。俺だけ見てて、想ってて……」

憂くんの切なげな声に、わたしは思わず憂くんを抱き締めた。

抱き締める腕の力を強めると、とたんに上からキスが降ってくる。

「ゆーくん、好き……」

そう言うと、憂くんはわたしを強く抱き締め返した。





――――あぁ、やっぱり。わたしの予想通りの結末。






わたしはずっと考えてたよ。

どうすれば憂くんを手に入れられるのかって。

10年間それだけを考えてきたの。





ねぇ、憂くん。




今日のことはもちろん、

今まで、私がしてきたことがすべて計算して動いてたって言ったら

憂くんを手に入れるために作戦をたてて、それ通りに動いてたって言ったら


軽蔑する?


憂くんの体温を感じながら、思わず口角が上がる。

効果音をつけるなら正に、ニヤリ。あんまりに幸せで、つい。

でも、この恋はきっとハッピーエンドじゃないんだろうね。

だってわたしは一生計画をたて続け、彼はそれに踊らされていくのだから。



ただの喜劇、

なんてもろい喜劇。

滑稽すぎて涙がでる。

でも、大丈夫だよ、憂くん。


ただの喜劇も、お芝居だとわからなければ、ただの幸せな物語だもんね。




大丈夫、安心して。

わたし演技は上手なの。



一生隠し通す自信、あるよ。

12:2013/07/11(木) 21:42:06 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「I love you to kill you.」前編



白色が網膜に焼き付いた。

まぶしいその色は拍手の音と共にわたしの脳内を侵食する。


じわり、と。じゅくり、と。


なにかに呑まれていくような気がした。

機械的に動く手のひらが、どんどんどんどん熱を失っていく気がする。

おめでとう、って誰かが喚くのを、他人事みたいに

(いや、実際他人事だけど)聞いていた。


…オメデトウ?おめでとう、オめでトう……?



「…孝介、オメデトウ」



わたしの声はなんの感情もない。

新郎新婦のお色直しということで、会場は世間話に花が咲く。

「ね、あれでしょ政略結婚」

「そうそう、今時ねー」

コソコソと背後からおば様達の噂話。

思わずそこに入って付け足したくなる。

そうですよ。新郎の孝介さんは、出世のために、

わたしをフッてあんなお嬢様とご結婚なさるんですよ。


なんて、ね。


そんな気持ちを堪えて、そそくさと、わたしは新郎の控え室へと向かう。

新郎の控え室の扉の白さを見たとき。

あぁ、白いドレスを嫌味に着てくればよかった。

なんて、くだらない後悔をした。

「孝介……?」

彼を呼ぶ声も、ノックをする手も情けなく震えていて。

「美雪…?」

扉が開いて彼の顔を見た瞬間なんだか泣きたくなって。

この期に及んで、わたしはやっぱり彼を好きだと実感させられる。

「スタッフさんは?」

「なんか、新婦の方で問題が起こってるらしくて出払ってるよ」

孝介は他人事のように、ほのかに笑ってそう言った。

「そう……」

孝介はなんとも言えない表情で、ボスン、と豪華な椅子に座り込んだ。

俯くその姿は、まるでなにかを嘆いてるみたいで。


そしてそれは、意地でもわたしを見ないといっているような気がして。

「本当に、結婚するのね」

「…なに、嘘だと思った?」

誤魔化すようにくちもとだけに笑顔を張り付けてる。

わたしも、孝介も。

バカらしい。なんて茶番劇なんだろう。


「ね、孝介……」

「……ん?」






























































































       「―――…殺しても、いい?」

13:2013/07/13(土) 23:43:52 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「I love you to kill you.」後編




それは、ハッタリなんかじゃなかった。


大学からずっと、6年もそばにいたのに、こんな風な結末を用意されたことへの悔しさと。


それでいて、いまだに自分の中に燻るこの男への愛しさと。


愛もないくせに、わたしを捨てて、結婚してしまうことへの哀しみと。

当たりどころのない怒り。

わたしは、今なら彼を殺せてしまう。

嘘よ、と撤回する気はなかった。


彼が、嘘だろ、と言ったとしても、わたしは撤回する気がなかった。


撤回する気はないくせに、わたしは、きっと彼は嘘だと笑うと思っていた。



なのに、



「……いいよ」




なんて言って、孝介はわたしを見て優しく笑った。

それはバカにしてるようではなく。

どうせ嘘だと決めつけてるわけでなく。


――彼も、本気だった。


手のひらを、ゆっくり孝介の首にかけた。

小さく、手が震える。

わたしの手の冷たさに孝介の体が少しだけ反応する。

「…美雪の体温は、やっぱり冷たいな」

彼はこの期に及んでまだ柔らかに笑う。

「昔も、そう言ったわ」

少し力を入れる。

首もとだけを凝視して、徐々に指が食い込んで行くのをどこか他人事に見ていた。

孝介の息が乱れてくる。

わたしの手もガクガクと小さく震えてくる。

涙が止まらない。


「ふ…う、ぅ……ッ」


ついには嗚咽をあげて泣き始める始末。情けない。

結局、最後の最後で弱くなる自分が情けない。

カタカタと震える手を首もとから抜いた。

情けなくて笑えてしまう。

「は、っ…いい、の?殺さなく、て」

孝介の苦しげな声に、わたしは恐る恐る顔をあげて孝介を見た。

その瞬間、わたしはわかってしまった。

気づいてしまった。
彼は、もう死んでしまっていたのだ。




そう、彼は。




わたしが愛した、彼は。


ここにいるこの男に呑まれて死んでしまったのだ。




体重の預けどころをなくして、よろりと後ろへ後退した。

涙が止まらない。

それは、この男が結婚してしまうからなのか、

それとも『彼』が死んでしまったからなのか。

彼の首を絞めていた両手にはもう力が入らない。

もう戻れないのだと痛感した今。

わたしにはもう、彼を殺す理由さえないのだ。

男がゆっくりと近づいてくる。

かつてわたしが愛した彼、だった男。

わたしを抱き締めて、掠れた声で謝罪を繰り返す。

その声すら彼と違う気がして。




わたしはオメデトウ、と小さく呟いた。

14:2013/07/13(土) 23:53:35 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
〜「I love you to kill you.」の後編について〜


彼は、もう死んでしまっていたのだ。
そう、彼は。
わたしが愛した、彼は。
ここにいるこの男に呑まれて死んでしまったのだ。
…の部分の意味なんですが、“わたし”が知っている彼とは
全く違う人に見えた、孝介としてに認識できなくなった
ということを遠回しに書きました。
理解しにくいかな、と思いまして、一応説明を書かせていただきました。

15:2013/07/16(火) 21:12:48 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「I love you to kill you.」孝介side前編



あの日、首もとから離れた掌、

なにかを悟ったように微笑んで言った

"オメデトウ"と、

君が投げたピンクのブーケ。

全部全部――…消えてかない。




「おめでとう」


「おめでとう」


「…おめでとう」




誰かが、そんな言葉を言って騒いでいた。

それを泣いて見ているのは、どれだけ滑稽なんだろう…。



三年前。

確かに彼女は言ったんだ。

殺していい?と、空虚な目がそれが本気だと伝えながら。

そして、それを拒否しなかったのも、

明らかに自分自身の意志だったんだ。

なのに、俺はこうして生きながらえている。

あの時、殺されていれば。

なんて思いながら、きっと一生生き続けていくんだろう。

“結婚”した理由は単純で、複雑だ。

端的に言ってしまえば「脅された」。



『いいんですか?あなたの彼女の会社、

わたしの父の会社の傘下なんですよ』



告白を断った時、箱入りのお嬢様だと思い込んでいた目の前の女が、

悪い意味でお嬢様なんかじゃなかったと気付いた。

仕事が好きなの。楽しいんだもん。

と、たまの休日に嫉妬するくらいノロケていた美雪を思い出す。

選択肢は他になかったんだ。


でも、今考えると。

あの時そんな脅しなんて振りきって、美雪と一緒にいればよかった。

不幸さえも幸福にかえる努力をすればよかった。

そんな後悔を今、彼女の白いドレス姿を見ながら

ひたすらに繰り返している。

美雪は、今日この日。

四月の桜の真っ盛りのこの日。


――…知らない男と結婚してしまった。

16たっくん:2013/07/17(水) 10:17:09 HOST:zaq31fa5a6f.zaq.ne.jp
  【1991年代ネオジオについて語るスレです】

休みなのでネオジオでもやります。
約20年前の格ゲーです。
たまの休日のんびりしないとね〜

皆さんもピーチさんを見習いましょう

17たっくん:2013/07/17(水) 10:17:59 HOST:zaq31fa5a6f.zaq.ne.jp
ネオジオの格ゲーを宜しく

18:2013/07/18(木) 21:20:54 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「I love you to kill you.」孝介side後編



俺の結婚式から、いや、正確にいうと

美雪が「おめでとう」と笑ったあの瞬間から。

美雪は明らかに変わった。

俺を「孝介」としてに認識しなくなった。

身勝手だとはわかってる。

それでも今、彼女の幸せを祝えない自分は

多分一生彼女を愛し続ける。


白いドレスが綺麗だ。

涙が出るほど綺麗で、そして妬ましい。

隣にいるのは俺だったはずなのに。

白が憎らしくて、憎らしくて。同時に愛しくて、愛しくて、愛しくて。

気持ちが溢れてくる。

賑やかな立食パーティーの会場に

ブーケトスを知らせるアナウンスが響く。

着飾った女性たちが、きゃあきゃあ声をあげて前に固まった。


「行くよーーーっ!」


美雪の幸せそうな声が響いて、俺はやっぱり涙が出た。

悔しい。

その声を一番近くで聞きたかった。

投げられたブーケが綺麗な弧を描く。

なんの皮肉だろう。

ブーケの集団から離れていた、よりにもよって俺のもとに

ブーケは、まるで運命だというように降ってきた。

「梶原くん!?」

彼女の驚いた声がして、いたたまれない気持ちで曖昧に微笑んだ。

「あは、奥さんとよりいっそうお幸せにね!」


なんて、残酷な言葉だろう。

そんな言葉を聞くなんて思いもしなかった。

「……おぅ」


情けなくも泣きそうで、そう答えるのが精一杯だった。

背を向けて歩き出した瞬間、涙はやっぱり溢れてきて。


「情けな……っ」


そう自嘲気味に笑おうとしても、全然笑えない。

ポトリ、ポトリとピンクのブーケが涙を吸っていく。

ピンクの花を一輪折った。

折れた茎から伝う水分はあの日死ぬはずだった俺の血液に思えた。


結婚式から3日。

ピンクのブーケは結局捨てられずに、花瓶に移され、未だに枯れていない。

捨てきれずに愛し続ける。


そんなふうに、俺はきっと君を愛し続ける。

19:2013/07/18(木) 21:33:16 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―2番目彼女―」前編


彼はわたしを見てません。


理由はとっても簡単です。


わたしは彼が好きで、彼には好きな人がいて。


そしてその人には彼氏がいて。


そう、たったそれだけ…。



読みもしないマンガが場所を取る。

本棚の隣の全身鏡の前、わたしは今日も笑顔を作ってみる。


ニコリ、と。


きゅっ、と口角をあげるあの人の笑顔を思い浮かべて真似する。

もう意識しなくても、あの人みたいに笑えるようになった。

それは安心する事実なのに、やっぱり少しだけ寂しい。

時計を見ると10時を少し過ぎていた。


「啓(ハジメ)先輩、待ってるかな」


わたしは好きでもない色の鞄を肩にかけて、急いで家を出た。

ピンポーンと、軽い音が壁越しにこちらへも聞こえてくる。

先輩のマンションの黒いドアも

付き合って半年以上たてば緊張も薄れてきた。

「あ、来た。リカいらっしゃい」

啓先輩はわたしを見てふわりとした。

優しい視線をくれるけど、それは【わたし】に与えられるものではない。

「こんにちはっ」

きゅっ、と口角をあげて笑う。

先輩はわたしの頭を撫でて「ほら、部屋入って」と、わたしに促した。

「おじゃまします」

わたしはそう言って、半年経っても履き慣れないブーツを脱いだ。

「相変わらず片付いてますね」

シンプルな、女のわたしよりも綺麗に整頓された部屋に思わずそう呟く。

「リカが来るから片付けたんだよ」

啓先輩は照れたように、色素の薄い髪をかきあげた。


「あ、啓先輩はちゃんと勉強してくださいよ?

わたしは隣で呑気に読書してますし、昼ご飯は作りますから」


受験生ですもんね。

そう悪戯っぽく、あの人の真似をして笑うと


「えー…リカと遊ぼうと思ったのに」


なんて、先輩は拗ねたように呟いた。

「バラ色の大学生活が待ってますよ」

ほらほら、と先輩をテキストの広がった机に戻して

わたしはその横でいそいそと漫画を取り出す。


「読書って…漫画じゃん」


「へへ、これリコ先輩に借りたんですよ。

面白くてハマっちゃいました」


先輩はリコ先輩、という言葉に小さく反応をする。

悲しそうにに鈍く瞳を濁らせて、眉を少し下げて微笑んで。

「……リカは、その漫画好きなの?」

「はい」

ニコリと答えて、そして反芻する。

先輩、本当は。リコは、その漫画好きなの?

って、訊きたいんだろうなぁ。

啓先輩は黙々と勉強を進めている。

わたしはその横顔をたまに覗きながらも、手の中の漫画を読み続ける。


……本当のことを言うと


あんまりこの漫画は好きじゃない。

三角関係、というお話は苦手なのだ。

大体わたしはそういうのを読むと、

不憫にも結ばれなかった方に共感してまうから。

それに、わたしは本来純文学派なのに。

でも、啓先輩は喜んでくれると思ったから。

リコ先輩の好きな漫画を読めば、喜んでくれるとわかっていたから。

啓先輩の喜ばせ方は簡単だ。

1つにさえ気付けば後はなんでもわかる。


「はーじめ先輩っ!」

「んー?」

「昼御飯作りますよ、何がいいですか?」

「んー…と、まず冷蔵庫になにがあったっけ」

先輩も立ち上がって、そのあとに付いてキッチンへ向かう。

「…野菜と肉くらいしかないや」

「じゃあ炒めちゃいますね」


きゅっ、と口角をあげると、先輩は少し眉を下げてわたしを抱き締めた。

突然のことに先輩を見上げると、優しいキスが降ってきた。

「……ふ、…っ…」

深くなって、息が小さくもれる。

離れたと思ったら啓先輩は寂しそうに瞳を揺らして笑って

「……リカ、好きだよ」

と囁いてきた。

初めて言われたのは2か月前だった。


嘘つき…


そう思っても、体温はみるみる上昇して

顔から湯気が出てる気がするくらい嬉しい。




―――あぁ、この言葉が、

わたしに向けられるものだったらいいのに。

20:2013/07/20(土) 16:32:44 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―2番目彼女―」後編



簡単なことだった。

啓先輩と付き合うのも、啓先輩を喜ばせるのも。

どうすればいいかなんて簡単だった。

リコ先輩の、啓先輩の好きな人の真似をすればよかったんだ。

だからわたしは、啓先輩がリコ先輩を好きと気付いたその瞬間から

リコ先輩の真似を始めた。


リコ先輩とは部活を通じて仲が良かったから

先輩の情報が多いぶん、真似するのは簡単だった。

ショートパンツをやめてスカートを履いた。

いままで履かなかったブーツを履いた。

結い上げていた髪をおろすようにして、しなかったメイクをするようになった。

好きでもない漫画を読んで、大好きだった部屋中の小説を隠した。

口角をきゅっ、とあげるリコ先輩の笑顔を真似して、

いままでの笑顔を封印した。

今ではもう、自分がどんな風に笑ってたかさえ、思い出すことができない。


フライパンの中で、野菜とお肉が炒められていく。

リコ先輩は、どんな味付けをするんだろう。

わからない。

どうしようかな。

今度リコ先輩のお弁当一口もらおうかな。

こんな風にしていったら

きっといつか、【わたし】はいなくなってしまうんだろうな。

でも、それでもいいや。

啓先輩と一緒にいれるなら、わたしの願いはただひとつ。

啓先輩と一緒にいること。

身代わりでも、二番目でも、なんでもいいから。

ただ、それだけ。

21:2013/07/22(月) 23:30:27 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―1番目彼女―」前編


最初から好きだったと言ったら、嘘になる。

好きだと思う今は、それをどう伝えれば届くのかわからない。

俺が本当の彼女について知っているのは、小説が好きってこと。

たった、それだけ。


付き合ってそろそろ8か月。

受験生の夏は結構きついけど、そんな時だからこそ彼女と一緒にいたいと甘えてみる。

「リカー」

「なんですかー?」

「……ちょっとだけ構って」

俺がそう言うと、リカは口角をあげて笑い、読んでいた漫画を閉じた。

「……リカ、その漫画まだハマってるの?」

「はい!今終盤なんですけど
最終巻をリコ先輩に借りるのが楽しみで楽しみで…っ」

「……リカは、」

ニコニコする彼女にある疑問を投げようとしてやめた。

それをリカは不思議そうに首をかしげる。

「啓先輩?」

「…ん、なんでもないよ」


ねぇ、リカは本当にその漫画好きなの?


「えー、そういわれると気になります!」

困った顔をして拗ねた声を出すリカは、やっぱりリコに似ていて。

それがどうしようもなく寂しい。

「……リカ、」

「はい?」

「好きだよ」

その言葉にリカは真っ赤になって笑うけど、それはリカじゃなくてリコの笑顔で、

そしてリカの瞳はやっぱり泣きそうに揺れている。

「わたし、も……す、きです」

照れたようにリカが俯くから。俺は覗きこむようにしてキスをした。

リカは、好きだという言葉を信じてくれるのだろうか――。


「リカ、起きて。リカ、本屋行こう。新刊出てるんだ」

お昼のあと勉強を始めて、気づけば4時半。

すやすやと寝ていたリカを申し訳なく思いながら起こして買い物に誘う。

「ー…ん、はい。付いて行きます…」

眠いのかリカは少し反応が鈍いけど、なんだか可愛い。

リカはすっかり馴れた手つきでブーツを履いた。

ここ2ヶ月でリカはすっかりブーツに馴れたようで、この前なんかブーツで走っていた。

でも、それはきっと、リカがリカでなくなっている印なんだと思う。

本屋に行くと、大体立ち読みなどに走るので滞在時間は長くなる。

「リカも好きに見てていいよ?」

「じゃあ、そうします」

リカはきゅっ、と口角をあげて笑って俺から離れた。

俺は手元の参考書を見て、しばらくしたらリカをこそこそと探す。

リカに見つからないように。小説コーナーに踏み込んだ瞬間。

見慣れた後ろ姿を見つける。

リカは本を手にとって嬉しそうに

口元を緩ませて背表紙のあらすじを読み出す。

俺が、“リコ”じゃなくて“リカ”を好きと気づいたのもこんな時だった。

22:2013/07/24(水) 21:14:53 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―1番目彼女―」後編


リコは親同士が仲良くて、小さい頃から時々家に行き来しているような、

世間一般的に言う、幼馴染みに近いものだった。

ずっと好きだったけど、それを言い出せないまま。

高校でリコに彼氏ができ、俺が少しだけ荒れていた時。

そんなとき、リカに告白された。

似ていると思った。

気づいたら「いいよ」と返事していた。

そんな風にして4か月ほど付き合いが続いた時だった。

こんな風に本屋に来たとき、やっぱりリカと別行動をしていた。

帰ろうと思ってリカを探したら、

いつも読んでいる漫画コーナーにはその姿がなかった。

雑誌コーナーをめぐっても会えず。

小説コーナーに踏み込んだ時、リカを見つけた。

でも、それは俺が知っていたリカじゃなくて。

俺が見てきたリカの笑顔じゃなくて。

あんな風に笑うのか。

漠然とそう思って、その笑顔を可愛いと思った。綺麗だと思った。

そこで初めて、リカが好きだと、気づいた。

でもそれと同時に気づいたことが一つ。

リカは、俺がリコを好きなのを知っている。

知っていて真似していたのだから、似ているのは当たり前なのだ。

その日の帰り道、初めて好きだと言った。

多分、焦ってたんだと思う。

言葉にしないと、はやく言葉にして伝えないと



リカは―――……



でも、もう遅かった。

リカはますますリコに近づいた。

笑顔はもちろん、口調も仕草もどことなく似ていて。

多分だけど、ブーツもリコの真似をして履きだしたと思うし、

きっと、漫画は好きじゃない。

リカに、好きかどうかを訊いているのに。

答えはいつも“リコ”で返ってくるのが

とてつもなく、悲しくて寂しい。最近は、料理の味も変わってきた。

その味は、リコの家で出される味に似ている。

リカ、うまかったよ。

リカが作ってくれた料理。

リコの料理より、ずっと、ずっと。

もっと練習しますね!

って、リカはリコみたく笑ってたけど、そんな練習しなくてよかったのに。

目の前のリカを見つめる。

多分、リカは知らないけど、俺は本を読んでる時のリカが一番好きなんだ。

本当に本が好きなんだなぁと思うような、そんな笑顔。

俺が知っている“リカ”はたったそれだけで。

もっと知りたくて、近付きたくて。

なにより「リカが好き」という気持ちが伝わってほしくて。


今日の帰り、もう一度好きだと伝えよう。

今度こそ伝わるといい。

そして、リカの笑顔で笑ってくれたら、それでいい。

俺の願いは、――…ただ、それだけ。

23:2013/08/02(金) 08:23:29 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の記憶―」前編


悔やまれることは、もう二度と君が見えないこと。

後悔しきれないことは、君が罪悪感を抱いてしまったこと。

あの日のことを、わたしは一生忘れないと思う。

這い上がる恐怖と黒色にどんどん浸食されていくような。

あの、感覚。

それと同時に失ったもの、ひとつ。

それと同時に彼が得たもの、ひとつ。

わたしは、一生記憶していると思う。


「沙織、ただいま」

扉が開いた音でわたしは、彼が帰ってきたのだとわかって、

もう慣れた玄関までの移動をする。

「おかえりっ」

わたしが笑うと、春の手がわたしの髪を優しく撫でる。


「え、えとね。今日はお母さんがおかず届けてくれて…

だから晩ごはんはそれをレンジで…」

春に手を引かれながら、そんな風にしか料理を用意できない自分が

情けなくて、惨めで、泣きたくなった。

でも、春は、そんなことを知らないふりして

「ほんと?沙織のお母さん、料理上手いから嬉しいよ」

って、また、わたしの髪を撫でてくれる。

社会人二年目。

働きづめの彼に本当は、ちゃんとした手料理を振る舞ってあげたい。

同棲してるくせに使えない彼女、なんてレッテルを張られたくない。

けど、わたしにはなにもできなくて、

そして、彼もわたしになにもさせなくて。

それは、数ヵ月前の秋のおわり。

わたしが、あの日ーー……

カチャカチャと食器を洗う音がする。

「春、美味しかった?」

「うん。お母さんにお礼言っといて」

「……うん」

わたしは、わたしの手料理を美味しいよ、って誉めて欲しいのに。

「ねぇー……春、」

「ん?」

でも、それはかなり難しくて。

一度、挑戦したけど、わたしは包丁すらうまく使えなかった。

「別れよっか」

彼は、包丁で指を切ったわたしを抱きしめて泣いた。

深く切った指から血がすぅ、っと、流れ落ちてくのが感覚的にわかった。

春は、その指を手当てして、

わたしを抱き締めて、そして弱々しく言った。

『ごめん、ほんとにごめん……っ』

彼の涙が静かにわたしの手のひらに落ちた。











ねぇ。そんな謝らないでよ。

わたしが見えなくなったのは春のせいじゃないよ。

24:2013/08/02(金) 08:33:55 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の記憶―」後編



わたしが見えなくなったのは、

そうなる数ヵ月前から決まっていた。

病気だった。仕方なかった。

角膜提供も迷ったけど、迷ってるうちに

時間は進んで見えなくなる前に、角膜は来なかった。

春にも相談しようとしたけど、その時春は仕事が立て込んでいて

イライラしていたし、帰りも遅かった。

『あ、あのね、春……』

『ごめん、疲れてるから』

そんな感じで。嫌われたくなくて、隠していたら

どんどん言い出せなくなった。


そして、あの日


わたしの目についに限界が来た。

会社のパソコン画面も資料も、景色も。

うまく見えない。

『もしもし…春、あのっ』

『沙織か。なに?』

ケータイ越しにカチャカチャと

キーボードの音がしたのを何故か覚えている。

『あ、今日はやく帰ってこれる?』

『ごめん、今日も忙しいんだ』

いつもならごめんね、で引き下がったと思う。

けど、もしかしたら、これがわたしの見える最後かもしれない。

それなら、せめて最後に春が見たかった。

『……っ、お願い……っ』

『仕事なんだって、いい加減にしてくれ』

春は苛立ったようにそう言って電話を切った。

わたしは見えなくなった。



「……別れよう」

もう一度、しっかりと口に出した。

「嫌だ」

負けじと春も強い口調で拒絶する。

春が近づいてくる足音が聞こえる。

春は縋るようにわたしを掻き抱いて、震える声を絞り出す。

「ごめん、ごめん…いくらでも謝るから。

だから、どこにも行くな…ッ」

子供みたいに、大きな猫科動物みたいに泣く春。

わたしは、自分が彼の邪魔になることを知っていて

それを振り払えない。


もう彼が見えないことを、わたしは後悔するけれど。

それは今の医療がいつか治してくれる。

でも、彼の罪悪感は一生治せない。

わたしは謝ってほしいんじゃない。

ただ単に、愛してほしいだけなのに。

彼はもう単純に愛してはくれない。

最後にわたしを拒絶したことを、わたしに尽くすことで償ってるんだろう。




彼に謝られながら、




わたしは今日も




愛された記憶を反芻する。

25:2013/08/02(金) 08:48:59 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の罪状―」前編


あの日、帰らなかったこと、一生後悔すると思う。

でも、一番の後悔は、彼女が心から笑わなくなったこと。

彼女は、恨んでいるだろうか。

あの日、拒絶したこと。

でも、もし例え恨んでなくても、

その事を一生俺は背負ってくと思う。


「春っ!おかえりなさい!!」

今日も帰ると沙織の笑顔に出迎えられる。

黒い髪が動きに合わせてふわふわ動いて

犬の尻尾みたいだ。

「ただいま」

そう言って沙織の頭を撫でると、くすぐったそうに沙織は微笑んで、

でもすぐ悲しそうな、申し訳なさそうな表情になる。

「あのね、ご飯……またお母さんが…」

「うん、いつもありがとう、って今度伝えて」

そう言うと沙織はますます顔を悲しそうに歪める。


「こ、今度…もう一回料理練習してみようかな」

「ッ…ダメ」

考えるより先に口は動いてた。

忘れられない。

血の流れる沙織の、人差し指。

深く切った指先は、どんどん赤色を流して、

最初見たとき思わず故意に切ったのかと思って頭が真っ白になった。


「でも、春……」

「頼むから!!」

思わずそう声を荒げると、沙織の肩は大きく跳ねて、

怯えたように、目を伏せた。

そんな沙織を失いたくなくて、繋ぎ止めようと強く抱き締める。

「頼むから……もう、」

「……うん、ごめん、ごめんなさい……」


沙織の謝罪は色々な意味を持っている気がする。

震える沙織にキスをすると、沙織は泣きそうに笑って、

切なげに春、と名前を呼んでくる。

俺は、沙織の照れたように笑う時が一番好きだったのに――。

26:2013/08/25(日) 14:41:06 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の罪状―」後編


沙織が申し訳なさそうに笑うのは、俺のせいで。

きっとあの日のことを、俺が後悔してるのに気付いているから。

それに気付いていながら、俺は後悔をやめられない。

沙織を追い詰めているのをわかっていて、手放せない。

あの日拒絶した分そばにいてやりたい。

好きだから、そばにいたい。

それはきっと自己満足だけど。

腕に力を込めて、爪先が白くなるほど指先にも力を入れる。

沙織が「苦しいよ、」と呟いて、そこで仕方なく力を緩めた。

おずおずと背中に回された沙織の腕。その体温に涙が出る。

彼女は、生きてる。

その実感にどうしようもなく泣いてしまう。

彼女が見えなくてよかった。

と、この時ばかりは不謹慎で最低なことを思うけど。

こんな情けない泣き顔を見られたくはない。

後悔するのはあの日のこと。

後悔し続けることは、君が笑わなくなったこと。


願い事は


君がまた、俺の笑顔を見てくれること。


君をまた、笑わせること。


一生かけて、君を幸せにしたい。


償いや、後悔を背負っても、君といたい。

27:2013/08/25(日) 14:58:30 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の未来―」沙織side


「沙織、見える?」


包帯がとかれたと同時、母親の心配そうな声が降ってきて

それを合図に目を開けた。

視界に入った人工的な光に照らされた。

自分の腕を見て、涙が溢れた。

春の出張中、手術を受けた。

担当医からは成功しますよ、と微笑まれたけど

あの時のことを後悔している春には、どうしても言い出せなくて

春のいないこの日を狙って手術をした。


「見、える……」


みえる。その言葉を噛み締める。


「見える、見えるよ。」


病院の壁の白、お母さんの黒い目も、

お医者さんの青いネクタイも。

存在する色彩全部、網膜がとらえてる。

先生は明日には退院できますから、と

微笑んで去っていった。


「沙織、沙織、よかったね…っ」


お母さんが隣で泣き出して、

わたしはそれを見て、さらに幸せを実感して思わず笑う。

網膜が光をとらえて、それがキラキラと瞬く。

――あぁ、なんて綺麗な世界。


「退院おめでとうございます!」


綺麗な看護師さんが笑顔で小さく手を振ってくれた。

わたしは照れ臭さを隠しきれずに、

曖昧に微笑み返して、お辞儀をした。

見える。そう、わかるんだ。

看護師さんが美人だということ。

わたしは、ちゃんと見えてる。

ねぇ、春。わたし、見えてるんだよ。


今日は手料理をしてあげよう。

ハンバーグ?カレー?

それとも中華にしようかな。

ねぇ、春。

春はあの日のことをずっと後悔するかもしれない。

けどね、それだってわたし達の一部なんだよ。

きっといつか、あの日はごめんな、って春が笑って

わたしも、ほんとだよ!って笑える日が来るよ。


―――だから、ねぇ、春。

28:2013/08/25(日) 15:10:28 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の未来―」春side


「ご注文の品はこちらでよろしいでしょうか?」


少し高めの声が確認を促す。

はやくもドキドキしながら視線を落とすと、

指輪は初めて見たときよりもキラキラして見えた。


「はい」


頷いた声が上擦っていたのは自分でもわかった。

出張帰り、1週間前に予約した指輪を取りに向かった。

もちろん沙織への。

王道だけど、給料三ヶ月ぶん。

ダイヤの指輪はきっと沙織の薬指によく似合うと思う。


『あの子、手術するんです』


沙織の母親にそう言われたのは、1ヶ月前だった。

沙織は終わるまで黙っているつもりだったらしいが、

母親は心配そうに続けた。


『春がいつまでも後悔するの、嫌だから。

それに、春の顔、見たいから』


それを聞いた時、涙が止まらなかった。

見破られていた。後悔ばかりだったこと。

罪悪感で抱き締めたこともあったと、

きっと彼女は気づいてた。

でも、それと同時に気づいた。そう、気づけたんだ。

後悔はしていた。でも、不幸ではなかった。

ただ愛しくて、好きで、大切で。

そんな感情があったから、不幸では、決してなかった。


沙織。

後悔ばっかりだった。

きっとお互いそうだった。

だけど、きっと大丈夫。

それを全部背負っても、不幸じゃないから。

背負った分だけ重くなって

大切になって、想いが強くなって。

そんな風に幸せになっていくはずだから。

きっと、そうなれるから。


――だから、なぁ、沙織。

29:2013/08/25(日) 15:14:39 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の未来―」春、沙織side


後悔ばっかりだった。

でも、不幸ではなかった。

もう全部振り切って、



――幸せになろう。



大丈夫、未来は明るい。

30たっくん:2013/08/26(月) 15:05:48 HOST:zaq31fa58ad.zaq.ne.jp
馬鹿ピーチ


ドリフのバカ兄弟を再現します。
出演はピーチ&たっくん、です。

ピーチ=いかりや長介役

近日予定・・宜しくお願い致します。

31たっくん:2013/09/26(木) 14:40:27 HOST:zaq31fa59d3.zaq.ne.jp
ピーチのアホさかげんは更に増してゆく・・・。

>>1
ピーチのスレなかなか面白いです。
彼女でないと実現しないスレですな(笑)

ちなみにダイアナというのは
前にもおっしゃいましたが、
ピーチさんの肛門が大きいからです。

大の穴→だいのあな→だいあな→ダイアナ


前置きが長くなって申し訳御座いません。
今後共宜しくお願いします。無能ピーチを宜しく!


次回は、いかりや長介&ピーチスレッドを設立します

32たくや&コルド大王:2014/02/17(月) 23:34:25 HOST:zaq31fa4b61.zaq.ne.jp
君達の妄想力はよく分かった


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