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短編小説

8:2013/07/10(水) 18:53:46 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―愛憎―」那緒side前編


真っ赤な左手。

滑り落ちる透明の液体。

茶色のボール。

責めるような黒目。

俺は君が、それでも君が―――。




彼女の左手を見るたび、後悔する。

あの時、あんな事になれなければ、こんなに空虚な生活はしなかったのに。

俺は入学以来、ずっと彼女が好きで。

部活で見た、あの楽しそうな笑顔に惹かれて。

仲良くなっていって。それはもう幸せで。



なのに。



『真琴…っ』

あの日、彼女の左腕から溢れる血は、徐々に黒くなって、

それは自分たちの行く末みたいだった。

もとの色は、単純な赤色だったのに。

忘れられない、真琴の俺を見る目が。

怪我を負って、大会に出れなかったエースの真琴は

絶望で溢れた瞳をしていた。

そして、3年連続優勝を果たせなかったバスケ部。

動かない左手から視線を反らして俺を見た時の、目。

真っ黒な瞳の奥に宿っていたのは、確かな憎悪だった。

それは複雑で。なんとも形容しがたい色だった。

責めるように冷ややかで、受け止めたようにぬるい温度で、俺を見ていた。


『ごめん』


謝るしかできない俺から真琴は視線を再び反らして

『好きだよ、那緒の事』

真琴は俺の方を見ずに、自分の左手を見つめながらそう言った。

…どうすれば、よかったんだろう。


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