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短編小説

18:2013/07/18(木) 21:20:54 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「I love you to kill you.」孝介side後編



俺の結婚式から、いや、正確にいうと

美雪が「おめでとう」と笑ったあの瞬間から。

美雪は明らかに変わった。

俺を「孝介」としてに認識しなくなった。

身勝手だとはわかってる。

それでも今、彼女の幸せを祝えない自分は

多分一生彼女を愛し続ける。


白いドレスが綺麗だ。

涙が出るほど綺麗で、そして妬ましい。

隣にいるのは俺だったはずなのに。

白が憎らしくて、憎らしくて。同時に愛しくて、愛しくて、愛しくて。

気持ちが溢れてくる。

賑やかな立食パーティーの会場に

ブーケトスを知らせるアナウンスが響く。

着飾った女性たちが、きゃあきゃあ声をあげて前に固まった。


「行くよーーーっ!」


美雪の幸せそうな声が響いて、俺はやっぱり涙が出た。

悔しい。

その声を一番近くで聞きたかった。

投げられたブーケが綺麗な弧を描く。

なんの皮肉だろう。

ブーケの集団から離れていた、よりにもよって俺のもとに

ブーケは、まるで運命だというように降ってきた。

「梶原くん!?」

彼女の驚いた声がして、いたたまれない気持ちで曖昧に微笑んだ。

「あは、奥さんとよりいっそうお幸せにね!」


なんて、残酷な言葉だろう。

そんな言葉を聞くなんて思いもしなかった。

「……おぅ」


情けなくも泣きそうで、そう答えるのが精一杯だった。

背を向けて歩き出した瞬間、涙はやっぱり溢れてきて。


「情けな……っ」


そう自嘲気味に笑おうとしても、全然笑えない。

ポトリ、ポトリとピンクのブーケが涙を吸っていく。

ピンクの花を一輪折った。

折れた茎から伝う水分はあの日死ぬはずだった俺の血液に思えた。


結婚式から3日。

ピンクのブーケは結局捨てられずに、花瓶に移され、未だに枯れていない。

捨てきれずに愛し続ける。


そんなふうに、俺はきっと君を愛し続ける。


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