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短編小説
21
:
雫
:2013/07/22(月) 23:30:27 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―1番目彼女―」前編
最初から好きだったと言ったら、嘘になる。
好きだと思う今は、それをどう伝えれば届くのかわからない。
俺が本当の彼女について知っているのは、小説が好きってこと。
たった、それだけ。
付き合ってそろそろ8か月。
受験生の夏は結構きついけど、そんな時だからこそ彼女と一緒にいたいと甘えてみる。
「リカー」
「なんですかー?」
「……ちょっとだけ構って」
俺がそう言うと、リカは口角をあげて笑い、読んでいた漫画を閉じた。
「……リカ、その漫画まだハマってるの?」
「はい!今終盤なんですけど
最終巻をリコ先輩に借りるのが楽しみで楽しみで…っ」
「……リカは、」
ニコニコする彼女にある疑問を投げようとしてやめた。
それをリカは不思議そうに首をかしげる。
「啓先輩?」
「…ん、なんでもないよ」
ねぇ、リカは本当にその漫画好きなの?
「えー、そういわれると気になります!」
困った顔をして拗ねた声を出すリカは、やっぱりリコに似ていて。
それがどうしようもなく寂しい。
「……リカ、」
「はい?」
「好きだよ」
その言葉にリカは真っ赤になって笑うけど、それはリカじゃなくてリコの笑顔で、
そしてリカの瞳はやっぱり泣きそうに揺れている。
「わたし、も……す、きです」
照れたようにリカが俯くから。俺は覗きこむようにしてキスをした。
リカは、好きだという言葉を信じてくれるのだろうか――。
「リカ、起きて。リカ、本屋行こう。新刊出てるんだ」
お昼のあと勉強を始めて、気づけば4時半。
すやすやと寝ていたリカを申し訳なく思いながら起こして買い物に誘う。
「ー…ん、はい。付いて行きます…」
眠いのかリカは少し反応が鈍いけど、なんだか可愛い。
リカはすっかり馴れた手つきでブーツを履いた。
ここ2ヶ月でリカはすっかりブーツに馴れたようで、この前なんかブーツで走っていた。
でも、それはきっと、リカがリカでなくなっている印なんだと思う。
本屋に行くと、大体立ち読みなどに走るので滞在時間は長くなる。
「リカも好きに見てていいよ?」
「じゃあ、そうします」
リカはきゅっ、と口角をあげて笑って俺から離れた。
俺は手元の参考書を見て、しばらくしたらリカをこそこそと探す。
リカに見つからないように。小説コーナーに踏み込んだ瞬間。
見慣れた後ろ姿を見つける。
リカは本を手にとって嬉しそうに
口元を緩ませて背表紙のあらすじを読み出す。
俺が、“リコ”じゃなくて“リカ”を好きと気づいたのもこんな時だった。
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