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Breather
28
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/09/26(水) 21:10:54 HOST:EM117-55-68-33.emobile.ad.jp
砂糖多めで。
ミルクティーを想像させる茶髪がふわふわと揺れる。
あたしが入学当初からずっと気になっていた(変な意味ではない)女の子は佐藤って苗字で、ちょっと砂糖が多すぎるくらい甘いイメージの子。
「由羽、今日も可愛いよなー」
「やーべ! 俺告白しちゃおっかな」
「すれ違うたび甘い香りするんだけど、それがヤバい」
男子からは由羽と呼ばれて慕われる佐藤さんだけど、どうやら男子は苦手な模様。
女子ときゃっきゃしたいらしいんだけどね、佐藤さん実はクラスのリーダー的存在女子から嫌われて、それがみんなに広がっちゃってるんだよ。
まあつまり、クラスの女子からはぶりっ子って言われてハブられてるわけだ。
「佐藤さんかわいーのに」
あたしがぽつりとつぶやいた言葉が、男子をさらに興奮させてしまった。
「だよな! 女のお前でもそう思うよな?!」
「クラスの女子は由羽のこと嫌ってるけど、やっぱ可愛いよな!」
「莉奈……お前男心がわかるのか」
男心わかったつもりではないんですけど。
女子からの視線は冷たいというのに、暑苦しい男子たちに迫られて思わず声が出なくなったあたしは無言でその場を逃げ出した。
29
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/09/26(水) 21:11:18 HOST:EM117-55-68-33.emobile.ad.jp
砂糖多めで。 ×
なんとなく空を見たいと思って屋上にいくと、ラブラブなカップルがキスし合ってるのを目撃してしまい思わず目をそらす。
そして、そのキス現場から少し離れたところになんとあの可愛い可愛い佐藤さんがいるのを見つけてしまった。
「佐藤、さん……?」
思わず声をかけると、佐藤さんはごしごしと目をこすって振り向いた。
「り、莉奈ちゃん」
「泣いてたの?」
「……莉奈ちゃん、わたしのこと嫌いじゃないの?」
「え、どうして?」
なんでそんなこと聞くんだろう。
嫌いなわけないのになあ。
「クラスの女の子って、わたしのこと嫌ってるから」
「ああ、あたしはあれとつるむ気ないし、まず周りに合わせるのめんどくさいからさ」
自分の意思をまげてまで佐藤さんを嫌う理由なんてないしね。
にこっと笑ってみると、佐藤さんの表情にやっと笑顔がうまれたような気がした。
「わたし、平凡な女の子になりたかったの」
「え、なんでなんで?」
あたしなら絶対可愛いって言われたいのになあ。
「わたしの名前って佐藤由羽でしょ? 佐藤はよくある苗字だし、由羽もよくある名前だと思ったの」
「まあ、由羽はともかく佐藤はよくあるかもねえ」
納得しがたいけどまあいいとしよう。
佐藤さんは甘い香りをふわっと香らせながら話をつづけた。
「だから、佐藤由羽って名前に合った平凡な女の子になりたかったの」
「平凡って思ったよりすごく難しいよね」
「うん……わたしは最初、これが平凡なつもりだったんだ」
やっぱり人の価値観って違うんだなあ。
……あたしの考え方も違かったりするのかもしんない。
「誰からも好かれることなく、愛されることもなく――嫌われることもなく。平凡な生活を送りたかった」
「え、じゃあもしかして男子が嫌いな理由ってさ」
「わたしのことを、好きって言ってくれるから。だから、苦手」
愛情表現が下手な男子なりに努力してくれたんだろうけど、それが逆効果だったのか。
あたしは佐藤さんに笑いながら言った。
「佐藤はよくある苗字だけど、佐藤さんの場合甘いほうの砂糖だよね」
「あ、そうかも。甘くておいしそうってよく言われる」
「え、ちなみに誰から?」
「男の子からだよ?」
佐藤さん、平然と話しちゃってるけど甘くておいしそうって男子からして結構エロい意味なんじゃないか。
いやいやいや、それはあたしの勘違いあたしがエロいだけあたしが変態あたしが変態!
「……あたしも佐藤さん可愛いと思うけどなあ」
「莉奈ちゃんまで……わたしそんな可愛くないってば」
「これで可愛くなければあたしとクラスの女子はどーなるんだ」
冗談っぽく笑うと、佐藤さんは少し間をあけたあとぽつりとつぶやいた。
「わたしなんかより、みんなのほうがよっぽど可愛い」
「わたしなんか、なんて言わないでよ」
…………無言がつづく。
あたしってもしかしてすっごいめんどくさい女子?
「……ごめん、変なこと言って」
沈黙をやぶってつぶやくと、佐藤さんは林檎のようにぽっと頬を赤くさせながら言った。
「ううん、うれしかった」
「そか、よかったあぁ」
あたし的にさ。
佐藤は砂糖で、由羽は優って漢字のが合ってると思う。
砂糖のように甘くて、優しい存在。
「あたし佐藤さん大好きかも」
「へっ?!」
「ふふ」
これからはあたしが、傍にいて守ってあげるね。
‐
なんか書きたかっただけ!
30
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/09/26(水) 21:24:04 HOST:EM117-55-68-33.emobile.ad.jp
本気の恋
「ねえ奏多(かなた)」
「ん?」
「あたしたちって、付き合ってないのにキスするよね」
「ああ、付き合ってるふりしてるだけだしな」
ばかなた。
あたしは本気で奏多のことが好きなのに、ある日奏多は突然幼馴染であるあたしに彼女役を頼んできたんだ。
「……奏多はなんであたしに彼女役なんか頼んだの?」
「なんでって――女子に囲まれるのが嫌だからに決まってんじゃん」
だよねですよね。
まさかあたしのことが好きだからふりでいいから付き合ってほしかったとか甘い展開にはなりませんよね。
そんなこと一瞬でも考えたあたしが図々しかったわ。
「未恋(みこ)だって男子に囲まれるの嫌がってたし、ちょうど良いかなって思っただけ」
「それっていつまでなの?」
「は?」
間抜けな声をもらす奏多。
ばっかみたい。
「いつまであたしはしたくもない奏多の彼女役やんなきゃいけないの?」
あたし、本当ばかみたい。
奏多も十分馬鹿だけど、もっと馬鹿なのはあたしだよ。
思ってもないことサラサラ言えるなんて、嘘の才能っていうか演技の才能でもあるんじゃないかあたし。
「ごめん。うそ、じょーだん」
そう誤魔化したあたしの顔は、これ以上にないくらい真顔だったような気がする。
×
『なあ未恋……』
「なにー?」
夜の十時すぎだってのに、未だに電話で話してるあたしと奏多。
何度もいうけど本当は付き合ってない。
『無理させて悪かったな』
「は? どーいうこと?」
『だから、無理に付き合わせてごめんってことだよ』
「……なにそれ」
あたし、予知能力あるかも。
なんでだか涙があふれてきたよ。
奏多の言葉が想像できて辛い。
『付き合うふりすんのやめよ?』
やだ。
そしたらあたし、奏多の傍にいられないじゃん。
うそでも隣にいたかったのに。
「どうして……」
『は?』
「どうしてあたしの気持ちも知らずに軽々しくそんなこと言うんだよばか!」
『や、つづき聞けよ』
奏多が呆れたような声でそういう。
そして、照れたような声でぽつりとつぶやいた。
『やっぱ外来て』
直接振られなきゃいけないのかな、あたし。
×
「奏多っ」
「未恋……あのさ」
「別れるとか、そういうのは聞きたくない」
「……だからさー、話最後まで聞けよな?」
あ、また呆れられた。
でもあたしは本当に聞きたくないんだもん。
「俺さ、未恋のこと本気で好きになった。だから付き合うふりやめて本気で付き合ってほしーんだけどさ」
照れた表情の奏多。
思考が停止してしまったあたし。
そして数秒後、あたしは涙をながしながら言った。
「奏多ぁ……あたしも好き」
「付き合うふりとか言って、辛い思いさせてごめん」
「ばかなたぁ……幸せにしてよ、ね?」
これからあたしと奏多の本気の恋が始まるのでした。
‐
31
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/09/26(水) 21:28:56 HOST:EM117-55-68-33.emobile.ad.jp
電話越しのあなたに。
「もしもし、海斗?」
『花、卒業おめでとー』
電話越しに聞こえる彼の声――海斗はわたしの一つ下の後輩であり、彼氏でもある。
前までは同じ学校だったのだが、海斗の転校が決まりわたしたちはいわゆる遠距離恋愛になったのだった。
今日はわたしたち三年生の卒業式で、わたしは一つの決断をして海斗に電話している。
「あのね海斗」
『んー?』
「わたし、もう遠距離は嫌なの」
『……』
遠距離は嫌って、海斗が転校する前何度も言った。
けれどわたしたちでちゃんと本音を言い合ったとき、海斗は遠距離は嫌ってわたしに言われるたび自分の所為だってすごく抱え込んでたみたいで、それでもわたしは本音を伝えたかった。
「わたしの志望校、どこか言ってなかったよね」
『……ああ、うん』
「海斗が住んでる東京にある大学なの」
『え……』
電話越しだったけど、きっと海斗はポカンとしてる。
驚いたような声を漏らしてる海斗にわたしはくすっと微笑んだ。
「だからね、海斗に会えるんだ」
『……俺今一人暮らししてるんだ』
「そうなの?か、海斗って何気すごかったんだね」
『すごくないよ。でさ……東京来るんなら俺と同居しない?』
同居って。
年頃の女の子と男の子が同居しちゃったら危険なことになっちゃうんじゃ。
『大丈夫、花の嫌がるようなこととか心配してることはするつもりないから』
「……なんかハッキリそういわれるとそれはそれで嫌だ」
『じゃあ俺キス以上のことしちゃうかもよ?』
「いいよ、わたしもしてほしい」
海斗が大好きだから。
『ところで、東京にはいつ来るの?』
「うん、それでね!しばらく遠距離だった海斗にプレゼントがあるの!」
『そーなの?楽しみだな』
「もう準備できてるから、玄関のドア開けてみて?」
わたしは、ずっと進めていた足をピタリと止めた。
大きくて重い壁の前で。
――目の前の壁が、ガチャッと音を立てて開く。
「海斗、ただいま!」
「花、どうして」
「だって、早く海斗に会いたくて」
「じゃあプレゼントって――」
ちょっとベタすぎるかなあ。
わたしは頬を赤らめながら、海斗の頬にキスした。
「わたしだよ」
「花可愛すぎ……」
「……海斗の馬鹿、なんでそんなかっこよくなってるの」
わたしたちは今日から。
同居生活を始めます。
「海斗、ずっと傍にいてね」
「絶対幸せにするから」
覚悟しとけよ!
そう言って笑う彼の頬に。
不意打ちのキスをした。
‐
32
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/09/26(水) 21:35:05 HOST:EM117-55-68-33.emobile.ad.jp
ふいうちのキス
「ねーえ」
「……」
つんつんつん。
「ねえってばー」
「…………」
ぶんぶんがくがく。
「おーい、ねーねー!」
「………………」
ぐわんぐわんぐわん。
「もーいい。ゆーくんしーらないっ」
「……………………」
思わずしてしまったキス。
驚いた表情をするゆーくんにわたしは悪戯っぽく笑ってみせた。
「意地悪なゆーくんにはお仕置きが必要だと思って」
口をあけてぽかんとしちゃってるゆーくん。
どんだけ驚いてるのか知らないけど、無視したゆーくんが悪いんだからね。
「ゆーくうだーいすき」
そういってわたしはもう一度。
ふいうちで、キスをこぼした。
‐
なんか可愛いのを書きたかった。
33
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/09/26(水) 21:39:28 HOST:EM117-55-68-33.emobile.ad.jp
あのね、
「あのね、キスされちゃった」
『は? ……だれに?』
「へえぇ、気になるの?」
『……や、お前にキスとかする物好きを知りたくて』
「ひっどーい」
『誰にされたんだよ』
「意地悪な圭には教えませーん」
『…………』
「あ、あれ? 圭怒っちゃった?」
『お前さぁ、俺の彼女なんだろ?』
「……うん」
『軽々しく他の男にキスされてんじゃねーよ』
「ごめんなさーい……」
『で? 誰にキスされたの?』
「うさぎのみーくん」
‐
会話文だけの!
女の子にキスしたのはうさぎのみーくんで、圭って呼ばれてる彼氏は人間の男だと勘違いして怒っちゃったお話。
「」は女の子で『』は圭くん。
34
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/03(水) 17:21:40 HOST:EM117-55-68-162.emobile.ad.jp
「ありがとう」 ※死ネタ
――――ごめん。
それが、最愛の人と最期に交わした一言だった。
×
彼女が死んだ。
ずっとずっと愛してきて、大事にしてきて、なによりも一番大切だった彼女が。
それから俺は、生きることの意味を失ったような気がした。
心に大きな穴が開いたような感覚。
毎日していた彼女とのメールは彼女が死んだ日の「今駅についたよ」で途絶え、今は何も送られてこない。
そして何より、
俺が、彼女を殺してしまったんだという罪悪感。
俺が殺したという言い方は少しおかしいかもしれないが、あながち間違ってはいない。
大型のトラックに轢かれそうだった俺を突き飛ばし、彼女は自分を犠牲にして俺を庇って死んだんだ。
「守ってやる」
そう言ったのは俺のほうだったのに。
守ってもらったのは、俺だった。
×
病院のベッドの上で静かに眠る彼女を見つめた。
涙さえあふれてこない。
なんで、どうして。
そんな感情が、頭の中をぐるぐる回っていた。
「……ユリカ、ごめん」
そっと彼女の手を握ると、それはとても冷たくぴくりとも動かなかった。
罪悪感が、あふれだす。
「守ってやれなくてごめん」
俺なんか、彼氏失格だな。
どんな声をかけても彼女が目覚めることはなかった。
「なんで……何で俺なんか庇ったんだよ」
(ごめんなさい)
彼女の声が、聞こえたような気がした。
「ユリカ……いなくなるなよ」
(カイ、泣かないでよ)
「死ぬなよ……なんで死んだんだよ」
(カイに死んでほしくなかった)
「俺、彼氏失格だな」
(そんなことない。わたしはカイに傍にいてもらえてうれしかった)
「なんでっ……」
最期まで、彼女は笑っていた。
死ぬ直前まで、俺がごめんなって言うと今までありがとうと笑った。
「……ごめん、ごめんなユリカ」
(わたし、カイに謝られたくて死んだんじゃないよ)
ユリカの声が、ふいにはっきり聞こえてきたような気がした。
(わたし、カイと付き合えて本当にうれしかった)
ユリカの求めている言葉がわかったような気がした。
俺は泣きながら、ぽつりとつぶやく。
「ユリカ、ありがとう」
(わたしこそ、ありがと)
彼女の声が消えた。
そのときには不思議と俺の心もサッパリしていて――
新しい道を歩んでいこう。
そう、思うことができた。
ありがとう、ユリカ。
俺の最愛の人。
-
35
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/03(水) 17:28:09 HOST:EM117-55-68-162.emobile.ad.jp
憂鬱magic
ふわりと桜が舞ったのと同時に
彼が微笑んだ
×
「憂(ゆう)」
「ん?」
憂――それが、あたしの人生を狂わせる原因となったものといっても過言ではない。
第一あたしが自分のことを嫌いだと思ったのには理由があって、その一番の原因が名前なのだ。
憂。
憂鬱の、憂。
「なんでこんな名前なんだろ」
「憂って名前超可愛いじゃん?」
友達の朱音(あかね)はあたしは羨ましいけどなあ、と笑いながらいうけど、あたしにとってはそれでさえが嫌味に聞こえてくる。
「憂鬱の憂だよ?」
「うん、かわいくない?」
「……名前の所為で人生が憂鬱なんだよ」
「そっかなあ」
あたしはこれからもこんな長い人生を憂鬱だなあって思いながら生きてゆくのだろうか。
そう考えると、生きるのが嫌になってきてしまう。
「死ぬことが怖いわけじゃない」
「うそつき、怖いくせに」
「あたしに怖いものなんてないもん」
あたしが怖いなんて言っちゃ、すべてが崩れてしまうような気がして。
素直に甘えることすら、許されない。
×
「ここから落ちたら死ねるかなあ」
学校の屋上で風にふかれていると、まだ咲いたばかりの桜の花が髪にくっつく。
その瞬間、ふわりと笑顔を浮かべた男子生徒があたしに話しかけてきた。
「死にたいの?」
「あなたには関係ない」
「……死ぬならここで死ぬなよ? 迷惑だから」
優しい笑顔とは裏腹に、意地悪な口調の彼。
あたしは腹が立って、思わず強気な口調で言ってしまった。
「今まで散々我慢したんだし、迷惑くらいかけたっていいじゃない」
「関係ない人間巻き込むなっつってんの。大体青春真っ盛りな高校で人に死なれたらトラウマになる人も出てくるかもしんないじゃん」
「あたしに、死ぬ瞬間まで我慢しろっていうの?」
「だからさ」
彼はぐいっとあたしの腕を引っ張って、顔を近づけていった。
「お前の我慢とか知らねえから。誰かに遠慮する余裕あるならさっさと死ねばよかったじゃん」
初めてあたしは
人を怖いと思った。
涙があふれる。
「……っ」
「や、その……泣かせるつもりじゃなかったんだけどさ」
あせる彼。
あたしは思わず、笑ってしまった。
「笑うなよ。つかお前泣いたり笑ったり何なの」
「あたしも吃驚だよ。泣いたり笑ったりしたのすごい久し振り」
「別にさ、普段から我慢しなくていんじゃね?」
彼が軽い口調でそう言ったのを見て、驚いて首をかしげた。
「一人や二人我侭言ったってこの世が終わるわけじゃないんだしさ。気軽に考えなきゃ鬱病になりそう」
「……憂鬱な病気か」
「まあそうだな」
彼はあたしの名前なんて知らないんだ。
そしてあたしも、彼の名前を知らないんだなあ。
「名前教えてよ」
あたしが興味本位でつぶやくと、彼は微笑んで言った。
「海人(かいと)だよ」
「海人、かあ」
いい名前。
そう思っていると、海人は名前の由来を語ってくれた。
「海のような広い心で人と接することができるようにって意味なんだってさ。無謀だよなあ、そんなの」
ははっと笑いながら、由来を楽しそうに話せる海人が羨ましい。
「お前はなんて呼べばいい? てか名前教えて」
海人に、あたしの人生を変えてくれた人に。
嫌な、大っ嫌いな名前を教えるの?
そんなの無理だよ。
「ごめん、あたしもう行かなきゃ」
「待てよ、名前くらい――」
「ごめんなさい」
名前を教えることですら、辛い。
やっぱり死ねばよかった。
-
36
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/03(水) 18:33:57 HOST:EM117-55-68-162.emobile.ad.jp
憂鬱magic
海人には悪いけど。
あたしはやっぱり、自分の名前は教えられない。
教室の人混みに潜り込むと、朱音が駆けつけてくれた。
「朱音、あたしやっぱり名前がやだ」
「どうして?」
「憂鬱の憂だし、良い意味なんてないよ」
「だからって人生から逃げるの?」
そういえばあたし、朱音に「怖いものなんてない」って言ったまま行方不明になっちゃったから心配かけちゃったのかも。
めずらしくあたしに厳しくそう言う朱音に、なんとなく俯いてしまった。
「逃げるってわけじゃないけど……逃げたくなる」
「もう逃げてるじゃん、向き合ってないよね」
「……朱音にはわからないよ、あたしの気持ちなんて」
わかってほしくない。
あたしが本当は弱いってことも、逃げてばかりいるってことも。
「ねえ憂、ちゃんと向き合って? 憂を好きでいてくれてる人もいるんだから」
涙があふれてきた。
そうだ、海人も朱音も。
あたしを心配してくれている人だっている。
あたしは、朱音にありがとうと微笑み海人の元へ向かった。
×
屋上に戻るともうそこには海人の姿はなくて。
精一杯息を吸って、大きな声で叫んだ。
「海人!!!」
桜の花弁が舞う。
屋上のドアがガチャリと音を立てて開いた。
息を切らした海人の姿を見つめて、あたしは謝る。
「さっきはごめんね。あと、あたしの名前……」
これを言えば、あたしは変われるんだ。
そう思い、微笑んで言った。
「憂っていうんだ」
すると突然海人に頭を撫でられてしまった。
どうしてた、謎だ。
「朱音から聞いたけど、憂鬱の憂って名前で悩んでたんだって?」
「うん……」
朱音が背中を押してくれたのも、海人のことがあったからなのかな。
あたしはもう一度心の中で朱音にありがとうとつぶやいて、海人の話を聞いた。
「憂って、思いやりって意味もあるんだって」
「え?」
そんなの初耳だ。
ていうか、調べたことさえなかったけどさ。
「相手を思いやれる人になりますようにって願いが込められてるんだな」
そういってあたしの頭を撫でる海人に、不覚にも恋に落ちてしまったようだ。
「ありがとう、海人」
「好き」はまだ伝えられないけど。
「ありがとう」の感謝の気持ちを精一杯伝えるよ。
fin.
落ちが微妙……(・ω・`)
案外死ネタ書きやすいかもっていう。
37
:
ピーチ
:2012/10/04(木) 00:34:03 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
一気読みしたww
憂ちゃん思いやりあるってことだよね?
自分のこと後回しにするくらいだから優しいよね?
38
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/04(木) 20:31:36 HOST:EM117-55-68-39.emobile.ad.jp
enjoy!
「ねえ、別れよう?」
受験も終わり勉強地獄から抜け出した、まだ雪が降り冷たい風がふく中三の冬。
中一のころからずっと付き合ってきた彼女の奈々(なな)に振られた。
「……ああ、そうだな」
薄々感づいていた。
受験の途中あたりから、何だか奈々の様子がおかしいってことに。
俺に何か言い出そうとして、それでも戸惑って結局何も言えずに終わる奈々を見て俺は気づいていた。
「わたしね、遼(りょう)のこと大好きだったよ」
「俺も、奈々しか見えないくらい大好きだった」
「……離れるのはさみしいけど」
「友達に戻ろうか」
俺と奈々は高校も別々だし、彼氏彼女でありがちな途中まで一緒に行くみたいなこともできない。
高校の方向が正反対だし奈々は中学でやっていたダンスをつづけるらしいから、部活の朝練で早くいかなきゃいけないらしいし。
「さよなら」
奈々の胡桃色の髪の毛に舞った純白の雪が輝いていて、とても綺麗だと思った。
×
「南中の遼です、よろしくお願いします」
何て無愛想で適当な挨拶なんだろう。
新しく始まった高校生活。慣れない制服を身に纏いながら俺はこれから困難を共に乗り越えるであろうクラスメイトに自己紹介をした。
こんなときまで思い浮かぶ奈々の面影。
どんだけ奈々のこと愛してたんだよと思わず自分を嘲笑いたくなってしまった。
あっというまに自己紹介や先生の話は終わり、放課後を迎えた。
遊ぶことばかり考えるやつらをぼーっと見つめ数秒後、俺を囲むように集まる女子。
正直奈々以外の女子はあまり得意ではなかったけど、ここでも無愛想にするわけにはいかずそれなりに愛想よく返事をした。
「ねえ、遼くんって彼女いるのー?」
「や、いたけど受験終わったあと振られちゃった」
ふざけたように言った言葉に、俺は馬鹿だと実感した。
なんで笑ってんだよ、俺。
「マジで? こんなかっこいい人振るとか、彼女さんひどいね」
「あ、じゃあさー! 遼くんの傷を癒しにみんなでゲーセン行こうよ!」
「あたしも行きたーい!」
まさかのこのままゲーセン行くノリっすか。
断るわけにもいかず、俺はつくり笑顔を浮かべて頷いた。
男子一人はさすがにキツイなと思ったそのとき、女子目当てで近づく男子が二名。
「俺も行くー! あ、俺遥(はる)! よろしくなー」
「和希(かずき)です! 俺もよろしくー」
遥は髪を茶髪に染めていて、前髪をビビットピンクのピンで止めていた。
和希も茶髪で、ワックスで髪をセットしていた。
とにかく、二人とも相当チャラい。
「じゃあ遥くんと和希くんも一緒ね! あ、ちなみにあたしは優花(ゆか)だよ」
「あたし美月(みつき)ー!」
「わたしは奈実(なみ)です、よろしくね」
優花はミルクティーのような色の髪の毛を長く伸ばしていた。
美月は黒髪ロングで、清楚なイメージ。
そして奈実は、奈々そっくりの胡桃色の髪の毛をしていた。
「……奈々?」
反射的にぽつりとつぶやいてしまったその言葉に思わず口をおさえる。
「奈々って……もしかしてさっきの元カノのこと?」
奈実が口を開くと、嘘をつくわけにもいかず素直にうなずいた。
そして奈実がびっくりしたような表情で言う。
「やっぱり! わたし、奈々の双子の妹なんだ」
奈々に双子の妹がいたことは聞いていたけど。
まさか、同じ高校だったなんて。
-
39
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/05(金) 21:15:12 HOST:EM117-55-68-157.emobile.ad.jp
enjoy!
「え、振ったのって遼くんのほうじゃなかったの?!」
ゲーセンに向かいながら奈々との出来事を奈実に説明すると、奈実は驚いたように声をおおきくさせた。
「俺の記憶が正しければ俺が振られたはずなんだけど」
「や、奈々受験終わった日泣きながら帰ってきたしさ、その日から全然元気なかったから……」
「……奈々、俺のこと嫌いで振ったんじゃないのかな」
「違うと思うよ……だって奈々、彼氏大好きって毎日のろけてたもん」
奈実の話を聞いて思わず頬が緩んだ。
楽しそうにはしゃぎながら俺の話をしてくれる奈々の顔が思い浮かぶ。
「奈々に会いたい」
「……未練がましい男だと思われちゃうよ?」
奈実の不安そうな目を見て、奈々が泣いているのを想像してしまった。
俺は、奈々を泣かせたくない。
「ごめん、俺抜けるわ」
そう言ってゲーセンへ向かっていた足を止め来た道を戻ろうとした瞬間、ぐいっと腕を引っ張られた。
「奈実?」
「行かないでっ……!」
奈実はさっきまで応援するかのように奈々の話をしていてくれた。
だから、今だって応援してくれると思ったのに。
「……ご、ごめん……がんばって、ね」
奈実は俺が不思議そうな目で見ているのに気づきパッと腕を放して顔をそらしてきた。
辛そうな奈実の表情を見て俺はどうしたらいいかわからず、悩んだ結果少し乱暴にくしゃっと奈実の頭を撫でてみる。
「俺、やっぱゲーセン行くわ」
「え……でも奈々が」
「奈々はもう少し心の準備ができてから行くし、俺は今ゲーセン行きたいから」
本当はゲーセンなんて行く気分じゃないし今すぐ奈々の傍に飛んでいきたいくらいだけど。
奈々と同じ顔で、そんな不安そうな顔されたら焦る。
「ごめんね遼くん」
ちいさな声で奈実がつぶやいた言葉は、俺の耳には入らなかった。
×
「なあ遼」
そそくさと近づいてきてにやにやしながら話してくる遥。
「ん?」
「お前さ、元カノの妹好きになってんじゃね?」
「は? 俺が奈実を?」
「だってさー、さっき奈実の頭撫でたのだってアピールしまくりだったじゃん!」
遥が騒ぐと、俺はたしかに周りからはそう見えたかもしれないと少し反省する。
「奈実と奈々が似てるからつい」
「お前、一途だなー」
「嫌いで別れたわけじゃねえんだよ」
「ま! 今くらいは奈々さんのこと忘れて楽しんだっていーんじゃね?」
遥はなんだかんだいって良いヤツだ。
周りを盛り上げてくれるし、何より居場所をつくってくれるような気がする。
「遥ー」
「んー?」
「お前が女子につられて一緒にゲーセン来てくれてよかったよ」
「んだよそれっ! まるで俺が女好きみたいな言い方すんなよ!」
実際そうじゃん、とふざけながら俺たちは笑い合った。
-
40
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/05(金) 21:35:17 HOST:EM117-55-68-157.emobile.ad.jp
しゃぼん玉にのせて
透きとおった透明の泡が虹色に輝きながらぱちんとはじけた。
まるで女の子の、淡い恋心みたいに。
×
「怒んないでよー」
「……もうあんなことしない?」
「うんっ、だから今日渓人の家行っていいでしょ?」
高校一年生になっても、あたしと渓人はおたがいの家を行き来するような仲だった。
幼馴染ってわけでもないけどそれなりに長い付き合いで、よき理解者であり友人。
それがあたしと渓人の関係で、きっとそれが恋愛に発達することはない。
まあ、あたしはもう渓人のこと大好きなんだけどね。
そう心でつぶやいてふふっと笑った。
さっき男子たちの前で渓人のはずかしい思い出を暴露してやったら拗ねてしまった渓人。
学校の帰り道にいつもより早歩きで家に向かう渓人にしゅんと落ち込んだ様子を見せると、案外すぐ振り向いてくれた。
「あ、あたし今日良いもの持ってるんだー!」
「何それ」
ぷっと笑いながら渓人が聞くと、あたしは自慢気に渓人とおそろいのくまのストラップがついたスクバから“良いもの”を取り出した。
「ほらっ、しゃぼん玉ー!」
「うわ、懐かし」
「よくやってたよねー」
中学生になりたてのころとか。
二人のマイブームにもなってたくらいあたしたちはしゃぼん玉を楽しんでいた。
「よっしゃ、じゃあ早く帰っぞ!」
あたしのスクバを奪って全力疾走する渓人にあたしも追いつくように必死に走った。
×
息が整わない。
「もう、渓人はやすぎ……」
「ごめんごめん」
でもあたし、知ってるんだ。
渓人がスクバを奪った理由って、あたしの持ち物さり気なく持ってくれただけだってこと。
「渓人、ありがとね」
「え? 何が?」
「スクバ、持ってくれたでしょ?」
「あ、顔に出てたかな?」
「ううん、女の勘!」
えへっと笑うと、渓人も楽しそうに笑ってくれた。
早速しゃぼん玉のパッケージを開けてふっと息を吹き込むと、しゃぼん玉が風にふかれて渓人の頬にあたってはじけた。
「なんか遥(はるか)のしゃぼん玉あったかい」
「え、なにそれー」
ふわふわと宙に浮かぶしゃぼん玉は、まるであたしの恋心みたいだった。
そしてぱちんとはじけるしゃぼん玉を見つめて数秒後、小さな声でつぶやく。
「渓人、好きだよ」
「俺のほうが好きだから」
しゃぼん玉にのせた思いは大好きというメッセージ。
渓人に届くといいな。
-
落ちが残念だけど、本当に女の子の恋心とかしゃぼん玉そっくりだと思うんです。
恋する女の子ってきらきら輝いてるから、しゃぼん玉も浮いてるとき虹色に輝いてみえるしそれも似てるかなって。
とにかくしゃぼん玉が一番恋愛のイメージにあってる!
41
:
ピーチ
:2012/10/05(金) 21:45:52 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
短編集って読みやすいよね、どっからでも読めるし←
色んな主人公居るけど、よくここまで思いつくよねー←
42
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/06(土) 17:57:26 HOST:EM117-55-68-145.emobile.ad.jp
>ピーチ
わわ、一気読みありがと!
そして短編集にはまっちゃったねここです←
主人公の名前は1パターンしか名前思い浮かばないから大変w
43
:
ピーチ
:2012/10/06(土) 18:04:00 HOST:nptka107.pcsitebrowser.ne.jp
ねここ〉〉
確かに…結構似た名前が多い気がする…
短編って最近あたしもやりたいなーって思ってたww←スルー頼むw
44
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/06(土) 18:27:00 HOST:EM117-55-68-145.emobile.ad.jp
ごめん、大好き。
俺は、ずっと守ると約束した大切な人を裏切った。
もうあんな悲しい顔はさせないと決めたのに。
×
“好きって儚い言葉ね”
ピンクブラウンの髪の毛をふわりと揺らし、胡桃(くるみ)がつぶやいたのを思い出した。
俺が今まで彼女に告げていた“好き”にちゃんとした愛がこもってないと思われてしまったのかと不安になった瞬間。それと同時に――
図星だと思ってしまった瞬間。
俺は胡桃のことを愛してない、ような気がする。
親に虐待され、学校ではいじめられていた胡桃の姿と彼女の不安そうな目を見て俺は思わず口走ったのだ。「俺が胡桃を守る」と。
まだ中学生だったものの俺の決意は固く、胡桃が家に帰りたくないという日には泊めてやったりもした。
「…………ねえ」
「んー?」
「さっきから上の空でわたしといること意識してないでしょ」
「んー」
「馬鹿、嫌い」
胡桃に嫌いといわれてはっと気がついた。
昔のことを思い出していたら夢の世界に入りかけていたようでやっと目が覚める。
「ごめん胡桃。で、なんだっけ」
「わたし以外に気になる人でもできたの?」
不安そうな目で、俺が胡桃を見つけた日と同じような目で訊く胡桃に俺は答えることができず、ぎゅっと胡桃を抱きしめた。
「わたし、翔(かける)が好き」
「ん……」
最近胡桃に好きとも愛してるとも、甘い言葉なんて全く言ってない。
というより、胡桃に嘘の思いを伝えるのが怖くなってきてしまったのかもしれない。
「翔、やっぱり……」
「え?」
「……ううん、やっぱりなんでもないわ」
「そっか」
一瞬不安そうな目を見せた彼女の頭を、俺は安心させるようにくしゃくしゃ撫でた。
×
「翔くーん」
「なんすかー?」
「そっちの荷物とってくれるかな」
ある日の部活中、陸上部のマネージャーである未空(みく)先輩がなにやら重そうな荷物を指差して俺に話しかけた。
俺より背の低い未空先輩にこんな重いの持てるのだろうかと思いとりあえず訊いてみた。
「これ、今日のトレーニングか何かで使うんすか?」
「うん! だからグラウンドまで持ってきてって顧問の先生に言われてさ」
未空先輩が笑うとなんだかふわふわした気持ちになってしまう。
「これ重そうだし、俺持っていきますよ」
「えっ、いいよ! たくさん物詰め込んでるから重いし」
「ほら、やっぱ重いんじゃん」
「う……で、でも! マネージャーの仕事だから」
はあ、と呆れたように溜息をついて未空先輩に言った。
「未空先輩、仮にも怪我してるんだから無理しないでくださいよ」
この前未空先輩はマネージャーの仕事として陸部で使う道具を持ち階段をおりていたら見事にバランスを崩して階段から落ちたのだ。
骨折まではいかないけど捻挫をして、今は歩けるらしいけど歩き方も少し不自然だしまだ痛むのだろう。
「だって……陸部のみんな怪我してもがんばってるし、わたしも頑張りたいもん」
しゅんと落ち込んだ様子を見せる未空先輩の頭をくしゃっと撫でて、俺は未空先輩が持っていくはずだった荷物を手に持ち体育館を出た。
「ちょ、翔くん?」
「こんな重いもん女に持たせるとか、男として失格っすよ」
遠くから「え、でも」と未空先輩の戸惑う声が聞こえてきたけど、知らないふりをした。
-
未空かわいいなとか思ってみたりもする←
胡桃には暗ーいシリアスーな過去がある設定なんだぜ。
つづく!
45
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/06(土) 19:00:32 HOST:EM117-55-68-145.emobile.ad.jp
>ピーチ
でしょでしょ!w
ピーチが短編やったら絶対見る←
46
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/06(土) 19:18:23 HOST:EM117-55-68-145.emobile.ad.jp
ごめん、大好き。
「翔くん、さっきはありがと」
「いや、気にしないでください」
部活が終わり帰ろうとしていた俺に未空先輩が声をかけてくれた。
ジャージをゆるく着こなす姿はやっぱり可愛くて、よく考えたら部内に陸部の女子もいるけど一番モテてるような気がする。
「俺、このあとコンビニ寄ってくんですけど未空先輩も来ますか?」
「どうしよ……あ、でも新発売のチョコ出たらしいし、行こっかな」
学校近くにある、東花高校の生徒御用達のコンビニ。
でもこんな遅くに帰るのは陸部くらいしかないから、ほとんど陸部の部員で貸切できるのだ。
「えへへ、なんか二人ってはずかしいね」
「俺は嬉しいですけどね」
一瞬、思ってしまったことがある。
俺って未空先輩のこと好きなのかな、とか。
ていうか頭が未空先輩のことで染まりかけてる時点でもう好きなんだろうけど。
「未空先輩は彼氏いたりしないんですか?」
「うん、いないしできたこともない」
「まじっすか?!」
「好きな人はいるけどね、実はこれが初恋だったりするんだ」
未空先輩に一途に思われる人が羨ましくて、妬ましくて仕方なくなった。
俺は、未空先輩にとってどんな存在なんだろう。
そんなことを考えているとあっというまにコンビニについて、しばらく二人だけの時間を楽しんでいた。
×
「ただいまー」
家に帰るとなぜかそこに胡桃がいて、ぎゅっと抱きつかれた。
「胡桃……?」
「翔、わたしの傍から離れたりしないよね?」
俺の苦手な不安そうな目でそういわれて、俺は数秒黙り込んだあとちいさくつぶやいた。
「そうとは言い切れないかな……」
胡桃の辛い過去を知ったあの不安そうな目よりも――
俺の頭には、未空先輩の楽しそうな笑顔が思い浮かんだから。
「翔……どうして」
「ずっと笑ってて、幸せでいてほしいって思える人ができたから」
「……わたしはどうなるの?」
「胡桃は大切な存在だよ。今も、これからも」
そういって、俺は胡桃の横を通りすぎ部屋に向かった。
-
47
:
マグ
:2012/10/06(土) 19:59:30 HOST:121-84-38-122f1.hyg2.eonet.ne.jp
セーラームーンのカラー漫画も漫画家のCLAMPみたいな
アニメ絵で書いてユーチューブに投稿してほしいけど
セーラームーンの月野うさぎのドジキャラという設定もやめてほしいのです。
48
:
ピーチ
:2012/10/06(土) 20:00:17 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
うんうん!
え、短編ってねここの真似みたいになるけどいーの?
49
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/06(土) 20:06:14 HOST:EM117-55-68-181.emobile.ad.jp
ごめん、大好き。
こんこん、と静かな部屋にドアをノックする音が鳴った。
勉強していた手を止めてドアのほうを見ると、気まずそうに胡桃が入ってきた。
「胡桃、どうした?」
「わたしを一人にしないでほしいの」
「え……?」
「わたしたちって付き合ってるのよね?」
「まあ、形ではそうかもしれないな」
自分でもひどいことを言っているんだとわかってる。
でも、なぜか未空先輩のことを思うと胡桃を傷つけてしまうような気がする。
傷つけてでも好きでいたいくらい、未空先輩が大事なのかもしれない。
「わたしは本気で翔が好きなの」
「俺は他に好きな人がいるから……胡桃の気持ちには答えられない」
「翔がいなくなったらわたし、また一人になっちゃうよ……」
そんなことない。
「胡桃はもう、あのときの胡桃じゃないだろ?」
「違う、わたしは翔がいたからがんばれただけなの」
「俺といたら胡桃は不幸せになるよ」
「そんなことない、わたしは翔といるだけで幸せよ?」
なんだか無性に、未空先輩に会いたくなってきた。
「俺は胡桃のこと好きじゃないのに、それを知ってまで傍にいてほしいのか?」
「……うん」
「そんなの、胡桃の幸せじゃないよ」
そういって俺は家を出た。
×
誰もいないに決まってるのに、なんとなく気分転換で学校に来てみた。
そしてそこに、今一番会いたかった人がいるのを見つけてしまった。
どうして未空先輩が……?
「未空先輩」
グラウンドで何やら作業をしている未空先輩に思わず声をかけると、未空先輩はあわてた様子で俺の名前を呼んだ。
「か、翔くんっ」
「なにやってんすか?」
「わたしね、陸上部でやりたいことがあったんだ」
未空先輩が笑いながら話し始めたのを見て、俺は話をちゃんと聞くことにした。
内心可愛いなとか思ってたけど。
「マネージャーって陸部のみんなみたいに走ったりしないでしょ? わたし、何か一つでもいっしょにできることはないかなって思って」
未空先輩の表情はきらきら輝いているようで、自然と心も落ち着いていった。
さっきまでの胡桃のことでのもやもやも嘘みたいに消えてゆく。
「それで思いついたのがみんなとのが外周だったんだけどね、みんなといっしょの時間に走るのは慣れてないから迷惑かけちゃうかなって思って」
「個人練習してたってわけですか?」
「う、うん……」
未空先輩のこういうところ、本当好きだな。
「でも怪我してんのにそれはキツイっすよ」
「うん、やっぱり無理っぽかった」
未空先輩が素直に認めたってことは。
「もしかして、歩けなかったりします?」
「…………」
図星か。
「あ、歩けないっていうか、その……歩けはするんだけどね」
「はいはい、おとなしくしててくださいね」
少し恥ずかしかったけど、ふわりと彼女を抱き上げる。
案の定未空先輩はあわてだした。
「ふぇっ、翔くん! わたし重いし!」
「いやむしろ軽いんですけど」
「いいからおろしてよ〜っ」
あわてた未空先輩も可愛い。
未空先輩といる時間が、とても幸せに感じられた。
この幸せを返したい。
-
つーづく。
50
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/06(土) 20:07:46 HOST:EM117-55-68-181.emobile.ad.jp
>ピーチ
短編=ねここってわけでもないし(笑)
それに長編より短編のほうが好みだから書いてくれる人が一人でも増えるとむしろうれしいよ!
51
:
ピーチ
:2012/10/06(土) 20:19:07 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
あああああありがとーうっ!!
じゃあ、スレ作って幻影師と平行で行こうかな←
52
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/07(日) 16:27:51 HOST:EM117-55-68-140.emobile.ad.jp
>ピーチ
ねここお礼言われるようなことしてないけどね!!!←
うんうん、長編の息抜きで書くのがねここ的には楽しいんだけど、最近息抜きしすぎてるのが現状w
53
:
ピーチ
:2012/10/07(日) 18:00:14 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
お礼しか言えない!!←
あ、確かに息抜きてーどでww
54
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/10(水) 13:43:04 HOST:EM117-55-68-184.emobile.ad.jp
彼氏がいて、仲の良い友達もいて――
面倒なことには一切関わらず、平々凡々幸せな毎日を過ごすのが理想だった。
なのに、彼との出会いがあたしの理想を壊していった。
×
高校二年女子、十六歳。
髪は茶髪にあこがれて高校に入ったらすぐ染めた。
性格はともかく、せめて髪は女の子らしくしようとロングストレート。
上辺だけの軽い付き合いが得意で、女友達とかだいたいそんな感じ。
小学校から親友の藍(あい)は周りと違ってちゃんとした深ーい付き合いをしてる。
そして彼氏も理想通りちゃんといて、まあそれなりに仲良しだけど本気で好きって思えてないかも。
いい加減なやつってあたしの本性知ってる人にはいわれるけど、それが一番楽に心地良いんだもん。
ぼーっとしながらそんなことを考えていたら、作業していた手が止まっていたらしくお客さんに笑われてしまった。
そっか、あたし今コンビニでバイト中だったんだっけ。
「すみません、えと」
「あせんなくていいよ、てか君南桜高だよね」
お客さんの顔を見てみたらこの冷めてるあたしが吃驚するくらいのイケメンだった。
なんかその笑顔反則だよね。
「はい、二年です」
「マジ? 俺も二年なんだけどさ、東桜高なんだよね」
ここらへんの高校は南と東と中央、そして北と西に綺麗にわかれている。
有名なのは南と東だけど、中央は音楽関係に強くて北と西は野球でぶつかり合う良きライバル的な感じ。
わたしの通う南桜は女子校で音楽が中央といい勝負って感じに強くて、東はスポーツが強めの男子校。
南と東の付き合いはとてもよく、カップルなんかも発生したりする。
「よかったらメアド交換しね?」
「いいんですか?」
なんとなく聞き返してしまった。
あたしがこんなイケメンと話してていいのだろうか。
「ん、バイトいつ終わんの?」
「八時くらいです」
「じゃあ八時前くらいに外で待ってっから」
「え、あ、はい」
爽やかに去ってゆく彼に、あたしはもう惚れていたのかもしれない。
-
きります!
55
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/10(水) 13:43:31 HOST:EM117-55-68-184.emobile.ad.jp
×
>>54
のつづき。
「さむっ」
外に出ると冷たい風がふき、思わずもれていたその言葉。
さすがにこんな寒いんじゃ彼は帰ってしまっただろうかと思い見回したら、彼の姿を見つけてしまった。
「ごめんなさい、その、待たせちゃって」
「ん、おつかれ」
「えっと、メアド……」
バックの中から携帯をとりだし赤外線で交換していると、彼が笑いながら言った。
「俺、櫻遼(さくら りょう)」
「あたしは西山ひまり(にしやま)です」
「敬語つかわなくていーよ、同い年なんだし」
「うん、あたしも思った」
ふしぎとあたしの頬がゆるんでいくのがわかった。
普段冷めてて全然笑わないあたしをこんな簡単に笑わせちゃうなんて、おそるべし遼くん。
「東桜ってさ」
「うん」
「男だらけ?」
あたしがそう聞いた瞬間、遼くんはぷっとふきだして笑った。
たしかに、あたし変な質問しちゃったかもしれない!
「男子校なんだし、そりゃそうでしょ」
「うん、思った」
「ひまりは部活入ってねーの?」
「え、なんで?」
ひまりって呼ばれて、ちょっとどきってした。
「音楽関係強いじゃん? 南桜って」
「あたしは音楽苦手だし、むしろ運動のが好きだから部活も入ってないよ」
「まじ? 東桜くればよかったのに」
「あたし男子じゃないもん、遼くんひどーい」
「はは、だってひまりと学校でも一緒だったら楽しそうじゃん」
そういえば、遼くんは何をどう思ってあたしとメアド交換することにしたんだろ。
「合コン目当て?」
「え、何が?」
「だって見知らぬあたしにメアド聞くとか相当の物好きだよ」
「俺ひまりのこと知ってたもん」
そっかー、それならメアド聞いても不自然じゃないよねー
「って、何で知ってるの?」
「俺、藍の兄貴の友達でさ、藍の兄貴シスコンだからいっつも藍が楽しそうに友達の話するんだってのをよく聞いてて」
「藍のお兄さん……そういえば藍のこと溺愛してたっけか」
「それでひまりのこと聞いて話してみたいなーって思ってさ」
藍はいったいどんなことをお兄さんに話していたんだろう。
「ひまりは彼氏いんの?」
「いるよー」
「高校どこ?」
「北桜高」
そういえば、東桜のライバルが北桜と西桜だからあんま仲良くないのかも。
東や南と違って、北と西と中央は共学なんだけどね。
「彼氏のこと、好き?」
突然遼くんに変な質問をされて戸惑った。
正直、遼くんにあたしのくだらない理想の話はしたくない。
嫌いってわけじゃなくて、なんか嫌な自分を見せたくないというか。
でも、ここで好きって言ったってどうにかなるわけでもないよね。
「好きじゃない――けど、形だけ付き合ってるみたいな感じ」
「そっか、よかった」
「? よかったってなに?」
うれしそうに笑う遼くんに、ふしぎそうに首をかしげた。
-
きりますー
56
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/10(水) 13:46:05 HOST:EM117-55-68-184.emobile.ad.jp
▼
>>54
、
>>55
について
タイトル書き忘れていました!
タイトルは「桜が降るころに」です。
つぎからつけますね!
57
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/10(水) 13:58:10 HOST:EM117-55-68-184.emobile.ad.jp
▼ 桜が降るころに
なんとなく、凝った感じにしたいので説明つきで。
女子高生の淡い恋心とか、深いおつきあいが苦手な女の子の気持ちを再現できたらなっておもってます!
小説中に出てくる五つの学校ですが、どうでもよかったりするんですけど詳しく説明してみますw
▽ 南桜高等学校(なんおうこうとうがっこう)
女子校で音楽関係に強い。
どちらかというと文化系の人が多く集まる。
桜町(今考えた← 高校付近の町の名前)の南側に位置する高校。
▽ 東桜高等学校(とうおうこうとうがっこう)
男子校でスポーツ関係に強い。
運動系の人が多く集まり、南桜との関係が深くカップル誕生はほぼ南×東だったりする。
桜町の東側に位置する高校。
▽ 西桜高等学校(せいおうこうとうがっこう)
男女共学でスポーツ関係に強い学校。
多少頭が悪くても入れるから、勉強が苦手な人が入ったりもする。
桜町の西側に位置する高校。
▽ 北桜高等学校(ほくおうこうとうがっこう)
男女共学でスポーツ関係に強く、特にサッカーだったら東と良い勝負(西は北東と比べると弱め)。
エリート校でもあり、馬鹿な西桜と馬鹿にしてよくケンカする。
桜町の北側に位置する高校。
▽ 中桜高等学校(ちゅうおうこうとうがっこう)
男女共学で音楽関係に強い高校。
中央と呼ばれるが、正式には中桜と書く。
元は中央桜(ちゅうおうおう)高等学校だったのだが、おうおう言いすぎておかしかったから改名←
桜町の中央に位置する高校。
はい!←
まあ、みんな仲良しですw
ちなみにひまりが働くコンビニは東桜に近いかも。
男子との出会いを求めて働きたがる人が多々いる中、そんな下心まったくなくただたんにお金を求めて働きにきたひまりを店長がおもしろがって採用した。
こんな感じですね!
裏情報ですが遼がひまりに話しかけたとき買ったのはあったかいココアです!
ココアが好きな遼がツボだったりしますw
ぜひお楽しみくださいw
58
:
ピーチ
:2012/10/10(水) 14:22:56 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
面白い←一番最初の言葉かww
ひまりちゃんは単純にお金目当てですか、笑えるww
店長さんもすごいね←
59
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/10(水) 15:09:29 HOST:EM117-55-68-184.emobile.ad.jp
>ピーチ
店長さん男だから若い男目当ての女子がバイトしにくるの嫌だったんだよ←
ゆるゆるコメディーでがんばろうと思うw
60
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/10(水) 16:08:32 HOST:EM117-55-68-184.emobile.ad.jp
▼ おしらせ!
スランプ突入しましたw
何書いても理想の書けなくて消して、書いては消してのくりかえしですううううう←
更新ストップするかもだし、低レベルのでも書きつづけるかもだしわからないけどとにかくよろしくお願いしますorz
61
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/11(木) 13:51:29 HOST:EM117-55-68-179.emobile.ad.jp
桜が降るころに
今日もいつも通り、八時くらいまでバイトが入っていた。
でも今日は土曜日だから、お仕事するサラリーマンやOLさんがおにぎりやお弁当を買い占めていく普段と違う光景が見られる。
お昼でお腹がすく時間帯はとくにお客さんがふえてきた。
「温めますかー?」
「お願いします」
さっきからこの会話を何回も繰り返している。
なんかもう、温めますかって聞きながらレンジで温めてる感じ。
ずっとこの調子で聞いては答えてをくりかえしていた。
「温めますか?」
あたたかいココアしか買わないお客さん。
さっきまでの癖で思わず聞きながらレンジであたためてしまった。
そして数秒後にはっと気づいてレンジを止める。
「ご、ごめんなさい!」
「いや、てかひまりドジだな」
この声は。
遼くんじゃないか、ならいいよね。
「ごめんね! ココアあっためちゃった」
パタパタと飲み物コーナーから新しいココアを持ってくる。
「あ、なんだ。あっためたのでよかったのに」
「だって悪いよ」
「ありがと。てか混んじゃうからまたあとでな」
「うん、ありがとうございましたー」
いいお客さんだなあ。
うんうん。
「またあとで」?
うん?
またあとで迎えに来てくれるのかな。
そう思いながらレジをつづけると、いつのまにか店内にたくさんいたお客さんも少なくなった。
やっと落ち着いたけど、落ち着いたらそれはそれでまたあとでの意味が気になる。
コンビニ前で待っててくれるのかな。
-
62
:
ピーチ
:2012/10/11(木) 13:51:56 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
まさかのスランプ突入!?
いやだー!! 早く抜け出してくれぇー!?
でも、元々レベル高いからひょっとして関係ない?←
63
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/11(木) 14:12:47 HOST:EM117-55-68-161.emobile.ad.jp
>ピーチ
関係ないわけないいいいい←
ぜんぜんまったく文章が書けないw
だから最近更新してるのは大体ヤケクソです←
64
:
ピーチ
:2012/10/11(木) 15:15:30 HOST:nptka401.pcsitebrowser.ne.jp
ねここ〉〉
やけ起こさないでー!?
いや、ねここはレベル高いから大丈夫!
65
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/20(土) 17:09:14 HOST:EM117-55-68-158.emobile.ad.jp
>ピーチ
ヤケクソになるのもどうかと思ってちょっと休憩した←
更新ストップしちゃったけど復活だよー!
レベル低すぎて笑えますよねわかります!w
66
:
ピーチ
:2012/10/20(土) 17:12:45 HOST:nptka406.pcsitebrowser.ne.jp
ねここ〉〉
神文章復活なりー!←
楽しみすぎて既に頭壊れてるw
67
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/21(日) 18:29:23 HOST:EM117-55-68-148.emobile.ad.jp
桜が降るころに
八時過ぎ、やっとバイトが終わりコンビニを出る。
ふわりと冷たい空気が頬を包んだ。
「あ、ひまりー」
「遼くん!」
コンビニの男子高生のたまり場みたいなところから少し離れたところに遼くんの姿があった。
寒いのに、ずっと待っててくれたのかな。
「おつかれ! はい、ココア」
いつ買ったんだろう。
あたしにばれないように違うコンビニで買ったのかな。
素直にココアを受けとってみたけど、そのときに触れた手はとても冷たかった。
「遼くん、手……」
「ん? あー、気にしなくていいよ」
「でも冷たいよ!」
ポケットをがさごそしてみると、ほんのりとあたたかみを感じた。
そういえば、朝カイロをいれてきたんだった。
「ココアのお礼! ……にしてはしょぼいけどね」
「え、いいの?」
「うん!」
それにしても、なんで遼くんはあたしを待っててくれたのだろうか。
「遼くん、あたしに何か用あったの?」
「いや、特にないかも」
「え、じゃあなんで」
「だってこんな暗い中女の子を一人で帰らせるわけにはいかねーじゃん?」
胸が苦しくなった。
遼くんを見ると心がふわふわ浮いた気持ちになる。
あたしの理想には必要ない人なのに。
「……いいよ、あたし一人で帰る」
「ちょ、待てよ」
遼くんを好きになっちゃいけない。
仲良くなっちゃいけない。
必要な人にしちゃいけない。
あたしの本性を知って幻滅されたくない。
そう思って。
ふっと顔をそらして、走ってその場から逃げた。
自分のくだらない理想ばかり追いかけて、関係ない人を傷つけるあたしは。
きっと幼くて、馬鹿らしいんだろうな。
‐
68
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/21(日) 18:52:33 HOST:EM117-55-68-148.emobile.ad.jp
桜が降るころに
家について携帯を見てみると、彼氏の淳(じゅん)からメールがきていた。
― ――
久し振り!
明日会えない?
―― ―
あたしの気持ちが揺れたのも知らないで、のんきなやつ。
淳の学校は共学だから、彼女がいることを隠してたくさん浮気してるのは噂や実際目撃したりしたのでわかりきってる。
だからもう別れたいけど、それじゃ理想が出来上がらないんだ。
― ――
いいけど、あたしバイトだよ。
―― ―
バイトに行ったら、きっと遼くんがまた待っている。
メールしてこないのはきっと遼くんなりの気遣いで、それでも明日になったらコンビニの前にいるような気がした。
― ――
じゃあバイト終わってから!
―― ―
― ――
わかった、待ってるね。
―― ―
適当にメールを終わらせて、ベットにダイブした。
なんで遼くんに心が揺れてるの?
なんで遼くんを好きになっちゃったの?
なんで、どうして。
あたしはこんなに、理想に縛られてるの?
少しでも理想から解放されたら。
ちょっとは変われるかもしれない。
×
いつもどおりバイトを終わらせてコンビニを出ると、あると思った遼くんの姿はなかった。
気分が落ち込むのがわかる。
だってそこにいたのは、大っ嫌いな淳だったから。
「ひまり!」
「淳……」
チャラチャラした赤髪がばっちりセットされてて、思わず睨んでしまった。
「ひまり、元気なくね?」
「そんなことないよ」
「そうか?」
元気ないっていうんならその原因くらい自分でわかれよばか。
お前が会いたいとか言い出したからなのに。
「場所移動するか」
「ん、近くのファミレスでいい?」
「いや、俺行きたい場所あるんだ」
何事も無関心で女の子に合わせてる淳が行きたい場所があるなんてめずらしい。
そう思いながら素直についていくと、淳はとつぜんぐいっと腕を引っ張って大きな建物の中に無理矢理いれてきた。
「ちょっと淳! ここどこ?!」
「ん? 男女が夜に二人きりだぜ? 楽しくて気持ちいいことするに決まってんじゃんっ」
それは楽しげな表情で。
淳が微笑んだ。
店内には店員さんがいて、その横にあるプレートに店名が書いてある。
きっと淳は此処で、あたしを襲うつもりだ。
「いやっ! 放して淳!」
「みんなひまりの写メ見て興奮しちゃってさ……ちょっと相手してやってよ」
「み、みんなって……淳、さっき二人きりって言ったじゃん!」
「二人きりで俺にヤられたかった?」
「っ、どっちもやだ! いいから放してよ!」
だめだ。
口ではあたしが勝っても、力じゃあたしは勝てないんだ。
ホテルの個室に身体を投げられた。
中にはにやにや笑う男の人たちの姿があって、ドアが閉まりそうになった瞬間。
「ひまり!!」
あたしがずっと探していた人の声が聞こえた。
-
69
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/21(日) 19:01:13 HOST:EM117-55-68-148.emobile.ad.jp
桜が降るころに
「遼くんっ!」
男の人たちに囲まれながら、必死にそう叫ぶ。
助けて。
あたしをくだらない理想の世界から解放して。
遼くんしか、あたしの大好きな人しかそれはできないの。
「ひまり!」
何度もあたしの名前を呼んで。
周りにいた男の人たちを殴って。
そして、傷だらけになりながら。
あたしのもとにきた。
「遼くんっ……会いたかった」
もう個室の中に男の人の姿がなくなって、あたしは安心して涙をながした。
「噂で淳ってやつらがひまりを襲うって聞いたからさ……よかった、間に合って」
にこって微笑む遼くん。
あたしの大好きな笑顔。
「ねえ遼くん」
「ん?」
「あたし、遼くんのことが――」
好きって言おうとした瞬間、塞がれた唇。
びっくりして目をあけると目の前には遼くんの顔がドアップでうつっていて、はずかしくなる。
「俺に先に言わせて?」
「え……?」
もういちど、微笑んで。
「俺、初めて会ったときからひまりが好き」
桜が咲いたような、満開の笑顔で遼くんが言った。
そんなの、あたしのほうが。
「あたしのが大好きだもん、ばかあっ」
くだらない理想の枠に縛られて、ずっと心を閉ざしていたあたし。
人と真剣に向き合うことが怖くて、裏切られるのが怖くて馬鹿馬鹿しい理想を叶えて満足してたあたし。
そんな暗闇の外は。
こんなにもあたたかくて。
桜が降っていた。
冬なんてうそみたいにあったかくて。
桜が満開で。
遼くんのおかげで世界がかわった。
「遼くんだいすき」
「俺も大好きだよ、ひまり」
桜が降るころに。
愛おしい人と、キスを交わした。
fin.
70
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/21(日) 19:05:23 HOST:EM117-55-68-148.emobile.ad.jp
▼ 桜が降るころに−あとがき−
どうやって桜に繋げようか迷ってたらこうなった。どうなった。
なんとなく、まあそれなりにハッピーエンドになったのではないでしょうか。
正直淳たちがひまりを襲うっていう不純なことは書きたくなかったのですが、いれてみた←
それ以外に思い浮かばなかったんですううう!←
藍とか藍のお兄ちゃんが名前だけしか出せなかったのが残念です。
本当は出したかったんだけど、長引かせると永遠につづきそうだし何より文章力がなくて(´;ω;`)
いつか、本当にいつか暇すぎて仕方ないときがくれば出せたらいいなって思います!
それなりに良いお話にできて本当にうれしかったです!
それでは!
次のお話もお楽しみに!
71
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/21(日) 20:29:52 HOST:EM117-55-68-180.emobile.ad.jp
しあわせのことり
「メアド交換しよー」
クラスでは地味で目立たなく、孤立気味な俺に。
超絶可愛い美少女が、にこにこしながらメアド交換を求めてきた。
×
黒髪少年。
とか、この響きはかっこいいんだけど現実はそんなに甘くない。
黒髪少年というあだ名をつけられ、さらに地味男とクラス全員に認められた俺。
高校一年男子、黒田幸喜(くろだ こうき)。
親はなんで幸喜なんて幸せで喜ばしい感じの名前をつけてしまったんだろう。
俺は今最高に不幸で喜ばしいの真逆の最悪な人生を送っているよ。
そんな、つまらない俺に。
なんでクラスでも特に目立っていて学校でもかなりの人気を集めてしまうような超絶美女の風乃琴里(ふうの ことり)がメアド交換を求めてきてるのだろうか。
「……えっと?」
なんて地味でつまらない反応なんだろうって改めて思う。
「どーしたの?」
「いや、なんでこんな地味な俺とメアド交換したがるのかなって思って」
「地味じゃないよー」
「え、でもそういうイメージでしょ?」
なんでこんなににこにこしてるんだろこの子。
「わたしはかっこいいと思うけどなあ」
「え、あ、え……」
かっこいいなんて生まれてはじめて言われた。
言葉に詰まっていると、風乃琴里はもう一度微笑んだ。
「この高校で黒髪ってめずらしいよね。わたしチャラチャラしてる人苦手だから、ずっと話してみたいって思ってたんだー」
「……俺も、チャラチャラした人苦手」
風乃琴里は茶色の髪だけど、髪質がいいしさらさらしてるからきっともともと茶色なんだろうと思う。
それに周りの女子に比べて清楚だしスカートも短すぎず長すぎず、ちょうどいい。
まあつまり、俺の理想にドストライクしてるってわけだ。
「あ、それでメアドなんだけど……いいかな?」
ちょっとはずかしそうに頬を赤らめる風乃琴里はやっぱり可愛かった。
「俺なんかでよければぜひ」
「あははっ、なにそれー」
そんな嬉しそうな反応するなよ!
女子とまともに会話したのが初めてだとかそんなこと言えるはずもないし。
「えっと、何て呼べばいい?」
「わたしのことは琴里でいいよー」
ことり。
ちいさくて、可愛い印象の名前。
風乃琴里とか、もう名前からして素晴らしすぎるだろ。
「あ、黒田くんのことは幸くんって呼んでいー?」
幸くん……コウクン?
いやいや、可愛らしすぎるだろ。
「それじゃ俺だって、琴って呼んでいい?」
「うんっ」
なんとなく対抗心を燃やしてみたけど、いい感じじゃないか?
幸くんと琴。
いかにも仲良しって感じの呼び名。
「これからよろしくな、琴!」
俺はこのとき。
初めて、心から笑えたような気がする。
‐
72
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/21(日) 20:51:47 HOST:EM117-55-68-180.emobile.ad.jp
しあわせのことり
“学校一美女の風乃琴里と学校一地味男の黒田幸喜がメアドを交換してさらに仲良くなってしまった”
という噂はまたたく間に学校中にながれてしまった。
クラスのやつらにはわざとぶつかられたり、下駄箱には餓鬼臭く悪口を書かれた紙が入ってたりする。
「はあ……」
くだらねえ。
そう思いながらも、やめろなんて言う勇気もない。
憂鬱な気分で教室に入ったとき。
「なにこれ……みんながやったの?」
琴の呆れたような、冷たい声が聞こえてきた。
ちらりとのぞいてみると、俺の机に触れながら怒っている琴と何かを隠そうとしているあわただしい目線のクラスメイトたちの姿がある。
「だ、だって……琴里が地味男なんかとつるんでるって噂ながれて大変じゃん」
「あたしらは琴里の評判下げたくなくてさ」
「琴里のためなんだよ」
琴も俺のこと、迷惑だって思ってたんだろうな。
そう思いながら、琴への今までの嬉しさや喜びの感情を消そうとした瞬間――
「馬鹿みたい。幸くんのこと何も知らないくせに、地味男とか言わないでよ」
強気な琴の声。
俺を必死に庇ってくれた、ちいさな女の子。
気づいたらもう、惚れていたのかもしれない。
「わたしのためとかいって、何かあったらわたしに罪なすりつけようとしてるだけでしょ? 自分は良いことをしてるみたいな言い方しないでよ」
普段はふわふわしてるくせに。
ちゃんと地に足をつけて、自分の力で自分を支えられる人。
「派手派手な格好して、自分を偽ってる人より幸くんみたいに素の自分を貫いてる人のほうがぜったいかっこいい」
自分を貫けるのは、琴のほうじゃないか。
「みんながそんな馬鹿みたいなことすると思わなかった」
俺は、こんな小さな女の子に守ってもらったんだ。
自分が情けなくて、それと同時に。
琴を思って、胸が苦しくなった。
‐
73
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/21(日) 21:04:09 HOST:EM117-55-68-180.emobile.ad.jp
しあわせのことり
「……琴、もういいよ」
教室に入った俺に、一気に視線が集まった。
「幸くん……わたし、その……勝手にごめんね」
「ううん、すげーうれしかった」
きっと俺今、すっごい顔赤いんだろうな。
「正直さ、琴もみんなにそんな風に言われて俺から離れていくんじゃないかなって諦めかけてたんだよ」
「え……?」
「でも、琴はそんなやつじゃないってわかって、本当に嬉しかったし俺って幸せ者だなって思った」
琴の目から涙があふれでた。
さっき俺を庇ってくれた強気な琴はどこにいったんだろうってくらい、どんどん涙があふれでてくる。
「琴は俺に、幸せを運んでくれた」
幸せを運ぶ小鳥のように。
俺は、それを待っていたんじゃないかと思う。
「ありがと、琴」
「……お礼なんか言わないでよお……」
泣きながら、琴が俺に抱きついた。
ど、どう反応すればいいんだ俺は!
「わたしのほうが、幸くんと話せて幸せだったもん……」
琴、が?
人気者な琴が、俺みたいな地味なやつと話して幸せだったのか?
「わたし、幸くんが好き」
きゅっと涙を拭いて。
最高の笑顔で、琴が言った。
そんなの。
「俺のほうが大好きだよ」
ぎゅっと琴を抱きしめた。
『幸せをくれてありがとう』
俺でも、琴を幸せにできたんだ。
琴との思い出すべてが幸せで。
琴との出会いが俺を変えたんだ。
次の日、“学校一美女の琴里と学校一幸せ者の幸喜が付き合うことになった”という噂がながされた。
もちろん嫌がらせなんてひとつもない。
むしろみんなが祝福してくれるし、俺も昔に比べて断然明るくなった。
最近では女子に告白されることも多々あり、琴に妬かれてしまうくらいだ。
「なあ琴」
「なあに? 幸くん」
「俺、琴と出会えて本当によかった」
ふわりと身体を宙に浮かせ、
今日もことりはしあわせを運びにいった。
fin.
74
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/21(日) 21:11:38 HOST:EM117-55-68-180.emobile.ad.jp
▼ しあわせのことり あとがき
学校一可愛い美少女風乃琴里(ふうの ことり)と学校一目立たない地味男黒田幸喜(くろだ こうき)。
そんな二人のラブラブ物語でした!
琴里はふわふわ浮いた感じの子だけど
ちゃんと地に足をついてて、芯の通った真っ直ぐした女の子。
正義感が強くて、人一倍努力家。
幸喜は地味って言われがちだけど
さりげなく細かいところまで見てて人に優しくできる子。
人一倍優しくて実はおもしろいやつ。
特に細かい設定はないけど、二人とも派手でチャラチャラしたのが苦手。
幸喜は黒髪だし、琴里は染めてないけど茶色。
本当に清楚で純粋!って感じです。
ほのぼのーとがんばれたかなって感じ←
書いてて楽しかったです!
特に琴里が嫌がらせしたクラスメイトに言い返してるところとかw
スランプ脱出していってるのでどんどん書いちゃいましたw
読んでくれてありがとうございましたー!
75
:
ピーチ
:2012/10/22(月) 20:16:23 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
ことりちゃんやっさしー!!
何か特別な感じだよね、そうやって本人さえ地味だって言ってる人に話しかけるって←
76
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/22(月) 20:29:39 HOST:EM117-55-68-28.emobile.ad.jp
>ピーチ
琴里はもっともっとふわふわした子にする予定だったんだけど、いつのまにか結構強気な子になっちゃったw
人を見かけで判断しない人に本当にあこがれる←
77
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/22(月) 20:40:14 HOST:EM117-55-68-28.emobile.ad.jp
I want you .
「あたしの彼氏役してくれないかなっ」
明るく元気な笑顔でそう言った彼女の言葉。
そう簡単に断ることはできず、俺はさらりと承諾してしまった。
「いいけど、どうして?」
たしかに遊び人って言われるようなチャラい俺だけど、仮にも一途に思いつづけた人だっている。
そりゃまあ、普段チャラチャラしてる印象強すぎてつい最近振られたんだけどさ。
「あたしの彼氏に嫉妬してほしいの」
「はあ?」
「だからー! 最近彼氏がね、他の女の子といっしょにいるの」
それくらい別にふつうなんじゃないか。
「それが嫌だから、あたしも浮気して嫉妬してもらう作戦!」
「へえ……」
「もちろん、協力してくれるよねっ?」
今気づいた。
俺恋愛では上手(うわて)だっておもってたけど、今目の前にいるやつのほうが何枚も上手だ。
「はいはい、名前なんつーの?」
「莉奈(りな)だよ! 名前覚えてもらえてなかったんだー」
仮にも半年いっしょに過ごしてきたクラスメイトだけど未だに覚えてないやつだっているんだよ。
「じゃあ、今から彼氏に見せつけにいくからついてきて!」
ぐいっと強引に腕を引っ張られてしまった。
×
「屋上?」
「うん、そーだよっ」
莉奈につれられてついた先は屋上。
秋の冷たい風が俺の身体を震わせた。
「あ、圭(けい)くん発見」
圭?
ああ、女好きで有名の。
あいつがこんな束縛彼女つくってたなんて知らなかった。
そしてそんな圭の隣にいたのは――
「未恋(みこ)……」
俺が一途に思いつづけてた人。
でもどうして、圭なんかといっしょに……?
「よしっ、健(たける)くん! 見せつけにいくよ!」
莉奈は呆然とする俺にお構いなく、仲良く二人が話しているところへ行った。
さりげなく、今来ましたよーみたいな感じで。
「……莉奈?」
「圭くん……」
二人はいかにも険悪!って感じのムードをつくりあげて、まるで演技をするかのように台詞を言い始めた。
-
78
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/22(月) 20:53:18 HOST:EM117-55-68-28.emobile.ad.jp
I want you .
「莉奈、どうして他の男といんだよ……」
「圭くんだって……」
どうやら俺は圭にとっての邪魔者らしい。
そして間に挟まれてる未恋が可哀想。ついでに俺も可哀想。
「お前、莉奈とどういう関係なんだよ」
圭は俺をにらみつけながら聞いてきた。
えっと、彼氏のふりするんだよな。
「彼氏、だけど……」
「ふざけんなよ!」
俺の回答とほぼ同時のタイミングで怒鳴られ、挙げ句の果てに頬にパンチを食らった。
なにこれ、俺が悪いの?
「ってー……」
「ちょっと圭くん! やめてよ、あたしが悪いの!」
呆然とする未恋。
そしてよくやったと俺にちらちら目線を送りあたしは良い人アピールをする莉奈。
興奮状態で今すぐ俺をもう五発くらい殴ってきそうな圭。
「あたし……ね? 圭くんに妬いてほしくて、その……他の男の人なんかといっしょにいて」
うん、邪魔者扱いだね。
俺は微笑みながら偽善者ぶって良い子な台詞を吐き捨てた。
「莉奈、本当に圭のこと好きなんだな。俺、莉奈が好きだったけど……圭になら任せられる。大事にしろよ?」
あーあ、阿保らし。
なんで俺が未恋の目の前で莉奈が好きだなんて言わなきゃなんねんだよ。
「健くん……ごめんね、ありがとう」
莉奈のその言葉はきっと。
彼氏役終わりの合図なのかなと思った。
「じゃ、俺保健室行くわ」
「ちょっと待って!」
ひらりと手を振って屋上を立ち去ろうとしたそのとき。
莉奈が俺を引きとめ、にこやかーな笑顔で言った。
「あたしたち今からラブラブするから、この圭くんに近づいた女の子いっしょに連れてってお仕置きしといてあげて」
ぼそりと俺と未恋だけにしか聞こえないように言って、俺らを屋上から追い出した莉奈。
なんて自分勝手なんだ。
それに、
気まずい。
「あの、いやその」
必死に誤魔化そうとしてる俺。
はずかしーやつだな。
「早く手当てしなきゃ! 血出てるよっ」
未恋はやっぱりかわいかった。
「あのさ」
「うん?」
「莉奈のことが好きとか、莉奈の彼氏とかあれ全部演技だから」
「え、そうなの……?」
気づいてなかったのか、おどろいた表情をうかべる未恋。
「だって俺、未恋一筋だし。莉奈に彼氏に嫉妬させるために彼氏役になってって頼まれて」
最初のほうの言葉に頬を赤らめる俺たち。
いったいなんなんだ。
「……てかさ、未恋って圭のこと好きなの?」
そのことをきいた瞬間、未恋ははずかしそうに俯いた。
この反応。
やっぱり、そうなんだな。
俺のほうが幸せにできるなんて微笑めない。
それくらい、傷ついた。
-
79
:
ピーチ
:2012/10/22(月) 21:05:49 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
莉奈ちゃん凄いこと考えるね!←
健君! 幸せにしてあげてっ!!
80
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/22(月) 21:08:52 HOST:EM117-55-68-28.emobile.ad.jp
片思い
好きです。
あなたのこと、言葉にできないくらい大好きです。
何度好きと口にしても足りないくらい、大好きって言ってもまだまだ足りないくらい。
あなたのこと、何でも知りたいって思いました。
誕生日は六月十日。
ふたご座でО型で、人を笑わせるのが得意。
笑顔が可愛くてサッカーが好きで足がとっても速い。
そしてそして
とっても可愛い彼女がいることも。
ぜんぶ、知ってます。
知りたくないことまで知ってしまいました。
好きにならなきゃよかったって何度も思いました。
それでもわたしはあなたが好きだから。
言葉でもものでも、何にもあらわせないくらい大好きだから。
思わせぶりに振り向いたりしないで。
期待させるように頭を撫でたりしないで。
好きって気持ちがどんどんあふれていっちゃう。
好きよりもおおきな言葉は大好きだけどね。
今のわたしじゃ大好き以上の気持ちは伝えられないのです。
抱きしめるとか、
キスとか、
それ以上のこととか、
それができるのはわたしじゃないんです。
彼女にしかできない特権なんです。
いつもふたりで登校して、ふたりで帰って。
楽しそうに、いつも隣で笑い合っている姿を見ると。
胸が苦しくなるんです。
あなたの笑顔をもっと見たいと思うと同時に、辛い気持ちも増すんです。
こんな恋ならしなきゃよかった。
でもわたしは、あなたを諦められない。
片思いなら片思いなりにがんばるぞって決めたのに、くじけそうになるときだってあります。
――いつか、
いつかあなたの隣がわたしになって、あなたがわたしの隣でずっと笑ってくれればなあ。
そう願って。
わたしはまた、あふれだす好きを伝えます。
fin.
片思いって辛くて楽しいよね!
っていう女の子の心情。
彼女がいるからあきらめたいのに諦めきれないくらい好きになっちゃったみたいな。
青春だなあ!
81
:
ピーチ
:2012/10/22(月) 22:21:53 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
名前がないww
小説と詩がごちゃ混ぜになった感じ?←
82
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/24(水) 20:53:32 HOST:EM117-55-68-155.emobile.ad.jp
>ピーチ
詩かな!
名前はあえて出さない←
83
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/24(水) 20:53:48 HOST:EM117-55-68-155.emobile.ad.jp
初恋の行方
「好きです! 俺と付き合ってください」
勇気を振り絞って頭をさげた。
ふわりと春風が心地よくふくのと同時に、彼女が微笑む。
「ありがとう、でもごめんね」
高校二年、春。
俺の初恋は失恋で終わった。
×
「まあまあ羽流(はる)! 元気出せよー」
「その名前で呼ばないで」
かなり落ち込んでいる。
ずっと思いつづけてた人にはあっさりと振られて俺の勇気もどこかへいき、挙げ句の果てに大っ嫌いな羽流という名前で親友に呼ばれた。
羽流――
女みたいな名前だし、何より羽というふわふわした字に流れるっていういかにも自分の意見を持ってなさそうな名前。
昔から人の意見に流されてばかりなのは事実だけど、俺はそんな過去の自分を思い出すようでこの名前が大嫌いだ。
だから普段はみんな俺のことを叶(かない)と呼ぶ。
叶は名字だから、みんなの抵抗もないし。
「だってあれだろ? たかが一回振られただけだろ?」
「たかがじゃねえよ! ……初めてだったんだよ」
正直言うと親友の蒼太(そうた)はモテる。
ひどく言っちゃ女タラシだけど、本当に周りに女子がたくさんいて正直羨ましい(そして恨めしい)。
「んな初めてにこだわるか?」
「こだわるよ! だって初恋だし初告白だし、本当に好きだったから」
「俺の初恋なんか彼氏持ちの女だったし、俺だってあっさり振られたのに」
うそだ。
モテモテな蒼太の初恋が失恋だったなんて。
「俺さ、そいつ見返してやろうって思って頑張ったわけよ」
いつものほほんとしていてボケキャラで、女タラシな蒼太だけどちゃんと努力だってしてるんだ。
初恋の人を見返すために、一人の女に見てもらうために頑張ってんだ。
「だから叶も頑張ろうぜ? 俺協力するしさ!」
「……でも、女タラシになるのはちょっと」
冗談まじりにそういうと、べしっと蒼太に叩かれた。
「ま、とにかくそのネガティブな性格は卒業しよーぜ」
「なっ……」
「ネガティブだったらこれから先誰も振り向いてくんねえよ?」
こうして、俺は初恋の女を見返すことで初恋の女をまだ好きでいるキッカケをつくった。
これからが本番だ。
これからが勝負なんだ。
振られたって立ち上がってやる。
俺の初恋の行方は、まだまだつづくようだ。
-
つづくかどうかわからないです!
このまま終わってもいい感じだし、つづけてもいいかなあああ←
とにかくいったん終了。
84
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/24(水) 21:23:49 HOST:EM117-55-68-155.emobile.ad.jp
傍で隣で、
あたしの傍で笑っててください。
あたしの傍で怒っててください。
あたしの傍で喜んでてください。
あたしの傍で泣いててください。
あたしの傍から離れないでください。
ずっと傍にいて。
あたしから離れないで。
あたしの隣は君だけしか来ちゃいけないの。
君の隣はあたししか来ちゃいけないの。
他の人が君の隣にいるなんて許せない。
君はあたしの傍にいればいいんだよ。
あたしの傍で、永遠に喜怒哀楽を。
fin.
85
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/25(木) 18:19:43 HOST:EM117-55-68-145.emobile.ad.jp
初恋の行方〜after!〜
「なんか叶変わったよね」
「ね、かっこよくなったし明るくなった気がする!」
「蒼太くんも好みだけど、叶くんも好きかも」
昔の俺を捨てて変わろうと心に決めてから数か月。
最初は不思議そうに俺を見てくるやつもいたけど、だんだん周りからの声も変わってきた。
「ねえ叶くん、ちょっといいかな」
教室で蒼太とふざけあっていると、突然他のクラスの女子から呼ばれた。
なんで俺の名前知ってんだろ、と思いながらついていく。
「屋上?」
「うんっ、その……叶くんに伝えたいことがあって」
屋上の扉を閉めると、彼女ははずかしそうに頬を赤らめながら告げた。
「わたしね、叶くんのことが好き」
驚きが八割で二割が嬉しいという感情だった。
蒼太にならわかるけど、俺なんかに告白する女子なんて今まで数人ほどしかいなかったから。
「ありがとう」
返事、すぐじゃなきゃだめかな。
変わろうって決めてから、告白の返事は全部断ってきた。
でも最近やっと変わったんだし、俺だってそろそろ青春していいんじゃないか。
「あのね、振られるかもしれないっていうのはわかってるの」
彼女は少しさみしそうに笑った。
「だからね、せめて叶くんの視界にいれてもらえればなって告白したんだ」
気持ちが揺れた。
ふわりと微笑む彼女はさみしげではあったが綺麗で、ちゃんと恋してるのが伝わってくる。
「叶くんのこと、応援したいの。だから良いこと教えてあげるっ」
楽しげに微笑んだ彼女に首をかしげた。
「叶くんの初恋の子、叶くんのことすごく気になってるみたい」
「え?」
まさかそんなはず。
振られてから一言もしゃべってない仲なのに。
「変わり始めた叶くんみて、すごく心が揺れたんだって。それで、わたしはちょっと悔しいけど好きかもって言ってた」
もしそれが本当だったら。
もし俺がまだ初恋の相手と話せたら。
俺はどうすればいい?
きっと俺はもう初恋の相手が好きじゃない。
未練も残ってないし、むしろ初恋の相手に振られたことに感謝してる。
それが俺が変わるキッカケになったから。
最初の目的は見返すことではあったけど、振り向かせることや好きになってもらうことではないし。
そもそも俺、変わることに一生懸命すぎて初恋の相手のことなんて忘れかけていた。
「……告白されたら、叶くんは付き合っちゃう?」
さみしそうに、不安そうにそう聞く彼女に俺は首を振った。
「俺、あんな大好きだった人だけど未練も残ってないしそれに、振られたことで俺は変われたからさ」
心からの笑顔で告げた。
「振られたことに感謝してるし、これからあの人と付き合うつもりはないよ」
これでよかったんだ。
はっきり断言した俺は。
すごく、スッキリしていた。
-
やっぱりつづかせたかったので、afterとして初恋の行方の続編かきました!
これはまだまだ続くので、よかったら見てください。
86
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/25(木) 19:16:14 HOST:EM117-55-68-183.emobile.ad.jp
初恋の行方〜after〜
「あ、おかえり叶」
告白してくれた彼女とはメアドを交換して、曖昧なまま教室に戻ってきてしまった。
にやにやと何か期待しているような蒼太の目線にう、と言葉を詰まらせた。
「告白だろ?」
こいつ、経験あるからきっとなんでもわかりきってるんだろうな。
「だったらなんだよ」
「いやあ、叶くんもモテモテになりましたねえ。親友としては嬉しくて嬉しくて」
「黙れ」
怒っているわけではないけど、あえて冷たい反応をしてみる。
するとそこに数人の女子がやってきた。
「ねえねえ、叶くんと蒼太くんって目立つよね」
「二人ともかっこいいし、女子に人気だよねー!」
「二人がいっしょにいるときとかすごい騒がれてるよね」
笑顔でありがとうと微笑む蒼太。
え、ちょっと待ってこういうときどんな反応すればいいんだ?
「蒼太はモテるけど、俺は違うっしょ」
蒼太が騒がれてるだけで、俺はただの引立て役みたいな。
なんか自分で言ってて虚しくなったけど、それは事実だし。
「え、もしかして叶くん無自覚?」
「何が?」
「叶くんモテモテなのに、気づいてないの?」
「俺じゃなくて蒼太じゃないの?」
真顔のやりとり。
いや、女子も超真顔だけど真顔になりたいのは俺のほうだっつう話だよ。
「叶くんって鈍感なんだねー」
「蒼太くんは自分がモテることわかりきってる感あるけど」
「鈍感イケメンも好き!」
え、なにそれなにそれ。
「あ、そういえば叶くんに用があってきたんだったー」
「どうしたの?」
ここからやっと本題かよ。
「叶くんの初恋の……笑未(えみ)ちゃん、だっけ? あの子からの伝言で、放課後教室で待っててだって」
「はあ?」
思わず飛び出す大きな声に、女子たちが微笑んだ。
「笑未ちゃんがね、叶くんと話したいって」
「いっしょに帰りたいとも言ってたなあ」
「もしかしてこのまま付き合っちゃうの?」
んなわけねえだろ。
「俺さ、笑未に振られたことに感謝してるから、これから付き合うつもりないんだよね」
本日二回目の断言をすると、たちまち女子たちは騒ぎ始めた。
「まじでー?」
「笑未けっこう本気っぽかったよ?」
なんで今更。
少し黒い感情が表に出そうになったからはっと目を覚まし、俺は微笑んだ。
「笑未を傷つけたくないけど、でも俺はやっぱり付き合えないから」
それが本音なんだ。
-
87
:
ピーチ
:2012/10/25(木) 19:57:17 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
何か好き勝手な女子も居るんだね←
叶君凄い! あたしそんなのめんどくさくてしない←
88
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/29(月) 11:30:39 HOST:EM117-55-68-29.emobile.ad.jp
初恋の行方〜after!〜
笑未と付き合えないと女子の前で断言したはしたけど、一応放課後は笑未のことを待った。
興味のない相手となってしまった今は笑未が何組かもわからず、ただ教室で一人残されるだけで苛立ちを感じた。
笑未に対する気持ちじゃないと言ったら嘘かもしれないけど、大体はきっと自分への苛立ち。
はあと深いため息をついたところで、廊下から物音が聞こえた。
「叶くん……?」
少し大人っぽくなった彼女の姿。
俺が、不器用だった俺が必死に愛した人。
それでも叶わなかった恋を思い出し、胸が熱くなった。
「笑未……」
ついに再会してしまったんだ。
大人っぽくなったとはいえ、まだ告白したときの面影が残る彼女はやっぱり俺好みで可愛い。
「ごめんね」
笑未は教室に入って俺の元に寄るなり泣き始めてしまった。
振られたときと同じ言葉なのに、なんだかあのとき以上に胸が苦しくなる。
「ごめ、ごめんなさっ……」
「笑未、泣くなよ」
なんで笑未がこんなに泣いているのかわからない。
けど、俺はどうしたらいいかわからず笑未を抱きしめて落ち着かせようとした。
「わたしっ……ずっと後悔してた」
泣きながら必死にしゃべる笑未は、笑未に必死に恋していたあのころの俺のようで放っておけない。
「なんで振っちゃったんだろうって……大好きだったのに」
「え……?」
「大好きだった」?
笑未は俺のこと、たしかに微笑みながら振ったはずで。
「とも、だちの……好きな人が、叶くんで」
涙を拭いた笑未はまだ声が震えていて、でもそのまましゃべりつづけた。
「告白されたとき、うれしかった、けど……友達を裏切るみたいで、辛かった、の」
笑未は俺を振りたくて振ったんじゃない。
そうわかって、胸の苦しさが減って少し楽になった。
「友達に告白されたことと、わたしも叶くんが好きってこと、言ったら」
笑未はそのときのことを思い出してなのか、まだ涙をながして言った。
「何で振っちゃったのって、何でわたしに相談しなかったのって……」
笑未はきっとそのとき、ものすごく辛かったんだろう。
ただでさえ友達と好きな人が同じって言い出せずにいたのに、俺が告白したせいでもっと悩ませてしまったんだろう。
あのとき、告白のとき見せた笑顔は偽物だったんだ。
そんなの俺は気づいてた。
無理に笑ってること、わかってた。
告白する前から、最近笑未が元気ないってわかってたのに。
なんで話を聞いてあげなかったんだろう。
「わたし、友達のこと悪く思ってた……好きな人同じって言ったら、避けられちゃうかと思ってっ、こわくてっ」
初めて俺に弱みを見せた笑未がとっても愛おしく思えた。
「付き合えるなんて思ってないけど、わたしは今でも叶くんが好きだよ」
笑未は笑って言った。
あのときの、偽物の笑顔なんかじゃない。
心の底から微笑んで、俺がずっと求めていた言葉を言ってくれた。
なんで俺は変わろうとしているんだろう。
そう思うことがたくさんあった。
意味もなく、ただ変わってモテようとしているのかと思うと自分が馬鹿らしく思えた。
でも違う。
きっと俺は、心のどこかで笑未に振り向いてほしかったんだ。
振り向いてもらえなくたって。
もう諦めたから。
振られたことに感謝してる。
笑未とは付き合わない。
こんな言葉。
全部嘘だったんじゃないか。
強がってた俺が馬鹿らしく思える。
「笑未、好きだ」
俺はそんなに強くない。
未練だらけでしつこい男だし、強がってばっかの馬鹿だ。
でも、それでも。
笑未への気持ちならだれにも負けない。
今度は俺の手で笑未を笑わせて、守るんだ。
そう心に決めて、ぎゅっと笑未を抱きしめた。
fin.
ひとまずおしまい。
番外編的なのでその後を書くかも!
89
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/29(月) 11:45:00 HOST:EM117-55-68-28.emobile.ad.jp
初恋の行方〜Love!〜
俺と笑未が付き合ったということは、瞬く間に学校中に広まった。
「いやあ、叶も有名人になったなあ」
「誰の所為だと思ってんだよ」
「所為、じゃないだろ? 蒼太様のおかげと言いなさい」
「黙れ人類のゴミが」
俺と蒼太はあいかわらず仲が良い。
これでもお互い頼りあってるし、毒を吐いてるけど蒼太は俺のことをとてもよくわかってくれる最高の友達だ。
「叶くーん」
「やばい、超かっこいい!」
「笑未が羨ましい〜」
最近気づいたけど、俺はそこそこ有名人になったようだ。
校内を歩けば同級生はもちろん先輩や後輩までもが話しかけてくれる(主に女子)。
そして、
「叶ー!」
「お、紗奈(さな)じゃん。久し振り」
笑未の話に出てきた友達は、この前俺に告白してくれた紗奈のことだったようだ。
俺と紗奈は良き友達って感じで、友達以上恋人未満の仲だ。
紗奈も笑未が大好きみたいだけど、俺のほうが負けてないかな。
「笑未、会いにきたよ」
ちょっとふざけながら笑未がいる教室をのぞくと、笑未がはずかしそうに頬を赤らめて傍にきた。
「ちょっと笑未! こんなばかない(馬鹿と叶を足した素晴らしきあだ名)に騙されてないであたしと付き合おう!」
「はあ? ばかないって何だよ馬鹿紗奈! 笑未は俺のほうが好きに決まってんじゃん」
「わたしはふたりとも大好きだからケンカしないの!」
こんな感じで、うまくやっている。
これからどんなことがあるかわからないけど、俺はぜったいに笑未を守るって決めた。
ふたりの薬指で輝く指輪は、俺たちの幸せの象徴。
そして、笑未は俺のものという証。
ずっと、愛してるよ。
初恋の行方〜Love!〜 fin.
90
:
ピーチ
:2012/10/29(月) 20:52:29 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
笑未ちゃん凄い勇気あるね!
叶君優しい←
91
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/29(月) 21:40:15 HOST:EM117-55-68-53.emobile.ad.jp
>ピーチ
笑未より紗奈のが個人的にお気に入りw
叶は優しくかっこよく!をめざしたよ!←
92
:
ピーチ
:2012/10/30(火) 06:58:14 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
あ、紗奈ちゃんも好き←
可愛いよねw
93
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/10/30(火) 18:08:22 HOST:EM117-55-68-181.emobile.ad.jp
candy and whip
あたしの好きな人はだれからも愛される、いわゆるいじられキャラだ。
栗色の髪の毛はふわふわしててちょっとパーマがかかってる。
髪と同じ色の目でみつめられちゃったらそれはもう瞬殺ものだ。
身長は平均よりかなり高くて、クラスでも背高いほうなのになんか可愛い。
いじりたくなるっていうか。
ドS心をくすぐるんだよね。
「奏太(かなた)〜」
「お前今日もふわふわしてんなー」
男女構わず、みんなに囲まれる奏太。
それに比べてあたしは怖がられる系の女子で、髪染めたりスカートめっちゃ短くしたり。
男子にもおそれられちゃってるから、あの奏太があたしに構うはずないよね。
そう、諦めかけていたとき。
「あ、雨宮(あまみや)さん髪の色変えたんだね!」
にこにこしながら、人混みをわけてあたしのところまで来て話しかけてくれた奏太。
雨宮さんとか、よそよそしい呼び方しながらコミュニケーションとってくる馬鹿なやつ。
「え、あ……な、なんでわかったの?」
「えー? だって前はもっと暗めの色だったでしょ!」
「でも気づいた人奏太が初めてだから、ちょっと吃驚した」
「まじ? まあ俺が気づかないわけないから!」
どうしてだろうと首をかしげたとき。
彼は無邪気に笑って言った。
「だって髪の色お揃いだから!」
なんでわかったの。
奏太は生まれつきの茶髪だったから、いっしょの色にしたくて奏太と同じ色探して染めたのに。
こそっとお揃い楽しもうって思ってたのに。
「な、なんでわかったの……」
「あ、え……まじでいっしょにしてくれた?」
「少なくとも偶然ではないかな」
わあああ。
素直じゃないなあたし。
「や、でも……もうその髪の色から変えんなよ! お揃いなんだからっ」
やっぱり奏太は可愛い。
あたし以上に。
てか女子のあたしが可愛いっていうんだから確実でしょ。
今日もあたしをきゅんってさせるような甘い言葉を告げて、奏太はそそくさと席に戻っていった。
ああ、好きすぎる。
-
つづくかな?
可愛い系男子×強気女子を書きたかった!
ちなみにタイトルは飴と鞭って意味です。
94
:
ピーチ
:2012/10/30(火) 22:55:00 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
かなた君かわいー!
でもでも雨宮さんも可愛い←
95
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/04(日) 09:26:25 HOST:EM117-55-68-140.emobile.ad.jp
Goot morning .
「おはよ」
「ん、おはよ」
すれ違い様にちいさくかわしたあいさつ。
周りからみればいつものことだけど、わたしたちにとってこれはもういつものことなんかじゃないのです。
×
「神崎さんって鈴木くんと仲良いよねー」
「そうそう! なんか毎日あいさつしてるしさ、もしかしたらできてるとかっ?!」
クラスでも目立つ女子グループの中の二人が、わたしの席まできて楽しげに聞いてきた。
「そ、そんなことないよ! あいさつだって、隣の席だからしてるだけだしっ」
「えー! 隣の席の人にふつうあいさつする?!」
わたしの反論は呆気なく却下され、仕方ないとため息をついてから答えた。
「でもわたしは、鈴木くんが好きだよ」
ぽっと頬が赤く染まったのに気づいたわたしは、鞄であわてて顔を隠した。
好きって自覚してることを他の人に話すって、こんなに緊張するものなんだ。
そう考えていると、突然二人がぎゅううっとわたしを抱きしめてきた。
「かーわいいいいいいっ」
「ていうか両思いでしょぜったいいいいいっ」
そういわれると何だか期待してしまう。
わたしは微笑んでから二人に言った。
「ありがと、でも……きっと両思いなんかじゃないよ」
わたしからしたら「好きな人」でも鈴木くんからしたらきっと「隣の席の人」くらいの存在だろうし。
期待するのはやめにしよう、と決心したあと、わたしはぎこちなく無理に笑ってみせた。
期待しないことが、
辛い。
-
96
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/04(日) 09:44:18 HOST:EM117-55-68-140.emobile.ad.jp
▼ Good morning .
お久し振りです、ねここです(・・´)
そしておはようございます←
どんな小説を投稿しようか迷いに迷った結果思いつきで書いたGood morning .を投稿してみたよ!
ということでちょっと詳しく紹介。
神崎さん
神崎ひより(かんざき ―――)
優しくて友達思いな子。
気まぐれで気分屋なところもあるけど自分より友達を優先してしまうお人好しな面もある。
隣の席の鈴木くんが好き。
鈴木くん
鈴木夏(すずき なつ)
クラスでも目立つ男子。
優しくておもしろい、クラスの人気者(と同時に女子からの人気も高い)。
神崎さんとは席が隣同士で毎日あいさつをかわす仲。
クラスの目立つグループに入ってる女子二人
木下風花(きのした ふうか)
クラスでも目立つ女子グループに所属する女子。
一段と可愛くて美人さんな子だけど、一途だから彼氏はつくらない。
好きな人はいるらしいけど、親友の妃奈にしかその人を教えていない。
佐藤妃奈(さとう ひな)
クラスでも目立つ女子グループに所属する女子。
風花と並ぶ可愛さを持つ子。
彼氏持ちで学校でも有名なラブラブカップル。
風花と妃奈は神崎さんに話しかけた子たちだよ!
ではでは
本編に戻ります!
97
:
ピーチ
:2012/11/04(日) 10:18:52 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
神崎さんかわいいー!!
目立つグループ所属の二人と同意権だー!←
98
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/05(月) 19:20:41 HOST:EM117-55-68-10.emobile.ad.jp
Good morning .
「あ、神崎さんのことひよりって呼んでいいー?」
にこりと可愛らしく微笑んで、木下さんが聞いてきた。
「あたしもあたしも!」と佐藤さんが楽しげに笑うのをみて、わたしの頬も緩む。
「うん! わたしは風花と妃奈って呼んでいい?」
「いいよー」
「よろしくね、ひよりっ」
こうして、わたしたち三人は仲を深めていった
――と思っていた。
×
「ひより、いっしょに購買行こっ」
「うん! あれ、妃奈は?」
「妃奈は彼氏とお昼食べるんだってさ」
「そっかあ」
妃奈の彼氏、たまにみたことあるけどものすごくかっこいいんだよね。
もちろんわたしのタイプってわけではないけどさ。
「風花はだれとも付き合わないけど、好きな人いないの?」
購買に向かう途中にぽつりとつぶやくように聞くと、風花はちょっと動揺しながら笑った。
「え、えとっ……いない、かな?」
「えー、うそだ! その反応的にぜったいいるでしょ!」
「うう……ばれた?」
涙目でみつめてくる風花は女子のわたしでもドキドキしちゃうくらい可愛い。
「風花ならぜったい大丈夫だよ!」
そう笑った瞬間に、風花の顔から一瞬笑顔が消えた。
「風花?」
不思議そうに名前を呼ぶと、風花はハッと目が覚めたように顔をあげて笑った。
「な、なあに?」
「ううん、なんでもないよー」
「そっか」
変な風花。
‐
99
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/05(月) 19:36:50 HOST:EM117-55-68-10.emobile.ad.jp
Good morning .
購買でお昼を買ったあと、わたしと風花は教室で机を向い合せてパンを食べていた。
わたしはメロンパン、風花はチョココロネを買って、半分ずつにして食べようということになって、正直すごく嬉しい。
「へへー」
「なんで笑ってるのー」
風花に笑いながら聞かれると、わたしはもう一度心から笑って言った。
「なんか、うれしくて!」
「なにそれー」って笑う風花。
でも本当にすごく嬉しい。
わたしはいつもクラスでは一人で、友達らしい友達なんて一人もいなかったから。
「風花ー」
「なあに?」
「風花のことさ」
「うん?」
メロンパンを食べていた手を止めて、風花の目をじっとみつめて言った。
「信じてもいい?」
わたし、知ってるんだよ。
風花の好きな人。
いっつも自然に目で追ってるし、わたしと同じ気持ちだからすぐわかったよ。
隠さなくたっていいのに。
「な、なにいってんの? ひより、わたしのこと信じられなかった?」
「ううん、そういうつもりじゃなくてね。なんか、嬉しいし幸せすぎるから疑いたくなっちゃうの」
そんなの嘘。
風花と妃奈がわたしに近づいたのだって、わたしを懲らしめるためだって知ってる。
なのに優しい二人が大好きになっちゃったのだって、気づいてる。
「幸せが逃げないといいね」
「うんっ」
最後にぽつりとつぶやいた風花の一言に、わたしはこの友情の浅さを確信した。
×
休み時間に一人でトイレに行っていると、トイレの個室を出ようとした瞬間に風花と妃奈の声が聞こえてきた。
なんとなく、そこから出られなくなって立ち尽くす。
個室の中はちょっとだけ薄暗いけど、二人の会話はばっちり聞こえてきた。
「あのさ、ひよりのことだけど……」
いつもよりびくびくした態度で、風花が話を切り出す。
妃奈が冷たい態度で話すのが聞こえた。
「今更ためらってるの?」
「そ、そんなわけじゃないよっ」
「なら何?」
「ひよりにどんなことするの?」
風花、もしかして此処にわたしがいるの気づいてる?
これからどうなるのか妃奈に話させて、怖がらせようとしているのか。
それともわたしを守ろうとするためにこれからのことを教えてくれるのか。
よくわからないけど、わたしはいないフリをしてそのまま会話を聞きつづけた。
「トイレに呼び出してー、まあ定番のいじめしたあと個室に閉じ込めて水ぶっかけて、あとは放置かな」
「誰か、助けにくるのかな……」
「放課後にやるから気づく人なんて少ないっしょ、見回りの先生に助けてもらえばいんじゃね?」
「そっか……」
二人の会話が終わり、出ていくのかと思ってちょっと安心した瞬間。
冷たい、妃奈の声が飛んできた。
「まあ、予定外だけどちょうどよくこの場にいるみたいだし? ちょっと早いけどやっちゃおっか」
まさか。
風花だけじゃなく妃奈も気づいてるの?
わたしが此処にいるって知ってトイレに来たの?
あわててドアを開けようとしたら、もう手遅れで固く閉ざされてしまった。
「いるんでしょ? 神崎さん」
こわい。
その感情だけが、わたしの心を埋め尽くした。
‐
定番いじめ←
や、友情モノにしようと思ったらどろどろ展開に突っ走っただけなんです!←
100
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/05(月) 19:39:57 HOST:EM117-55-68-10.emobile.ad.jp
▼ 100突破感謝レス
わああああ!
ついに短編も100突破しました!
100突破記念小説も書きたいんですけど、Good morning .が終わるまでしばしお待ちください…!
ていうかリクとかないですよね←
うーん。
何を書こう。
ねここ的に11月ということでポッキー話とか書きたいんですけど←
ポッキーゲームとかね!
擬人化とか←
しあんいろのフェチシリーズからお題奪って書くのも楽しそうw
とりあえず期待しないで待っててください!
本当にありがとうございます!
これからも短編をよろしくお願いします。
101
:
ピーチ
:2012/11/05(月) 19:45:07 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
100レス突破おめでとー!!
ってまさかのいじめ入る感じ!?
ひよりちゃん頑張れー!!←
102
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/05(月) 19:54:33 HOST:EM117-55-68-10.emobile.ad.jp
Good morning .
バケツに水をくむ音が聞こえてきた。
今の季節は秋。
さすがにそろそろ水浴びなんてできる気温じゃなくなってきた。
「ひ、妃奈……やっぱりやめようよ」
風花があわててそう言ったのにたいして妃奈が怒鳴った。
「何よ! 原因は風花のくせに今更やめようっていうの?」
「原因がわたしだからこそ、だよ」
「意味わかんない!」
「なんでひよりなの?! わたしをいじめればいいじゃんっ」
風花が庇ってくれてる。
どうしよう、わたしの所為で風花を傷つけたくない。
「風花は気づいてないかもだけど、男子のほとんどが風花のこと好きで、女子はみんな風花のこと大好きなんだよ」
ふっと冷たく笑って、妃奈が言った。
「そんな人気者に手出したらあたしが嫌われちゃうじゃない?」
「なにそれ、意味わかんないよ……」
だから、わたしなのか。
風花は人気者なのわかってたけど、それだけでわたしがいじめられちゃうのか。
「お願いだからやめよう? 妃奈っ」
「なんでそんなにひよりを庇うの?! 風花はずっとあたしの傍にいるって言ったじゃない! あのときも……っ」
妃奈の過去に、何かあったのだろうか。
そう思ったときに思い浮かんだのが一つあった。
わたしと妃奈と風花が中学二年生のころ、存在は意識されてなかっただろうけどわたしと妃奈は同じクラスだった。
そこで妃奈はクラスの女子にいじめられていたんだ。
途中で転校してきた風花がそれに気づいて、みんなを止めた。
そして妃奈を守ったんだ。
きっと、そのときの約束なのかな。
「わたしは妃奈が好きだった! でもひよりも大好きなの! ひよりのことをいじめようとする妃奈は、誰かを傷つけようとする妃奈は好きになれないよ……」
「大好き」
こんなわたしに。
風花は優しい言葉をかけてくれた。
涙があふれだす。
「風花は、あたしのことが嫌い……?」
「……いじめをする人は、人を傷つける人は嫌い」
ねえ風花。
風花は悪い人なんかじゃなかったね。
きっと妃奈も気づいたよ。
自分のやろうとしたことに。
だってこんなに泣いてるんだもん。
もう何もしてこないよね?
安心したわたしは、トイレの個室で泣いた。
‐
103
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/05(月) 19:55:42 HOST:EM117-55-68-10.emobile.ad.jp
>ピーチ
ありがとー!
今回は初の試みw
いじめ系とか難しいっすね!←
104
:
ピーチ
:2012/11/06(火) 22:57:58 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
だよねー!
あたしも一時期書いてたけど挫折した←
105
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/07(水) 19:36:22 HOST:EM117-55-68-2.emobile.ad.jp
Good morning .
しばらくして泣き止むと、風花が優しくわたしに言った。
「ひよりごめんね……ドア、開けていいよ」
風花も泣き止んだのかわからないけど、今まで泣いていたことはたしかで声が少し震えていた。
トイレの鍵を開けるとドアは簡単に開いて、妃奈が泣きながらわたしを抱きしめてくれた。
「ひより……ごめんなさいっ」
泣いている顔をみせたくないのか、意地を張って顔がみえないように抱きつく妃奈。
わたしは、本当にこの二人と仲良くなれるのかな。
少し不安も残ったけど、それより期待のほうが大きかった。
「ううん、いいよっ」
にこりと笑うと、目に少し涙が浮かんだ。
それを拭いてわたしは二人をみつめて、ぽつりと一言ちいさな声でいう。
「その……信じても、いいよね?」
二人は一度顔を見合わせたあと、楽しそうに笑って言った。
「もちろん!」
やっと、仲良くなれたんだ。
×
「おはよー」
「ん、おはよ」
今日も鈴木くんとさり気なくあいさつをかわした。
ちらって風花がわたしをみたのに気づき、おそるおそる聞く。
「もしかして風花って、鈴木くんのこと……」
「わああああっ! そそそそんなことないいい!」
図星か。
可愛いなあ風花。
「ライバル、なのかな」
「……そうだね」
風花がライバルなら敵わない気がしてきた。
――でも。
「どっちの恋が実っても文句はなしね!」
「お互いを応援すること!」
そう、約束しあい、わたしたちは笑い合った。
「二人とも健気だなあ」
自分が一番健気なくせにそう言って笑う妃奈。
わたしは今、とっても幸せです。
明日も明後日も、これからずっと。
君に「おはよう」を届けます。
fin.
とってもとってもぐだぐだでしたが、これで終わりです!
なんか鈴木くんどうでもよくなっちゃったかもしれないw
106
:
ピーチ
:2012/11/07(水) 19:55:08 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
風花ちゃん&ひなちゃんやさしー!
鈴木君はどうでも良くなっちゃったかw
107
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/07(水) 19:57:48 HOST:EM117-55-68-2.emobile.ad.jp
ゆるふわcouple
「ねえ夏月くん」
「なになにー?」
「好きー」
「あは、俺もー」
ゆるゆるふわふわ。
今日も君に恋してます。
×
「悠莉ー、彼氏待ってるよ」
「ごめん夏月くん! すぐ行くー!」
日乃悠莉(ひの ゆうり)と藤原夏月(ふじわら なつき)。
学校でも有名なゆるふわカップル。
それがわたしとわたしの彼氏だった。
「悠莉っ、早く会いたかったー」
「わ、わたしも! ていうか不意打ちでそんなこと言うなんてずるいよー」
「昨日不意打ちでほっぺにちゅーしてきたのは誰だったっけか」
「ごめんなさいわたしです」
ゆるふわってより、ギャグ路線に突っ走っててちょっと不安。
でも安定の仲の良さだし、ケンカしたことも一度もない。
「あ、そういえば同じクラスの空(そら)ちゃんが夏月くんに会いたがってた」
「なにそれ、俺モテ期?」
ふざけるような口調でそういう夏月くんだけど、本当にその通り。
「夏月くんは毎日がモテ期だよね」
「えっ」
「空ちゃん可愛いからなー」
「……」
ちらちら夏月くんをみながらわざとらしくそう言う。
夏月くんは信用されないことがいちばん嫌いだから、なんとなく嫌がらせ。
「って、本当に空ちゃん登場しちゃった」
「え、どれどれ?」
「そこの校門に立ってる清楚系の子!」
「えー、悠莉のが可愛い」
不意打ち照れるよ。
そう思ったとき、空ちゃんが夏月くんをみつけて駆け寄ってきた。
「夏月く〜ん」
空ちゃんは男タラシで有名で、男を落とす方法とかいろいろ知ってる。
甘ったるい猫撫で声も、猫かぶりだって気になった男の好みの女になるためなら何でもするような人だ。
空ちゃんはどちらかというと派手めなタイプだけど、わたしが大人しめなほうだからその夏月くんのタイプに合わせて清楚系になったんだろう。
「え、君だれ?」
本当は空ちゃんってわかってるくせに、夏月くんがにこにこ作り笑いを浮かべて聞いた。
「あたし空っていいます! 夏月くんかっこいいなあって思ってて〜」
「へえ、ありがとー。でも俺かっこよくないよ」
へらりと笑う夏月くん。
何こいつ、余裕か!
「ねえ、よかったらメアド交換しない?」
夏月くんの制服の袖をくいっと引っ張って、空ちゃんが急接近した。
ちょっと待って、彼女の目の前でそんなことする?
「あー……ごめん、悠莉のこと不安にさせたくないから」
きゅん。
もうやばい好きすぎる。
「えー、悠莉ちゃんメアド交換だけで不安がるの? 重くない?」
空ちゃんの冷めた目。
それでわたしをじっとみつめてきた。
こわい!
-
きる!
108
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/10(土) 15:21:28 HOST:EM117-55-68-133.emobile.ad.jp
残り数センチ
君とわたしの、残り数センチの距離。
近いような遠いような曖昧の距離に、縮まることのない関係。
中学生のわたしは不器用だった。
こんな恋、もう終わらせてしまえ。
そう思って、好きという感情を捨てた。
×
「花乃ー」
「はーい」
「今からおもしろいもの見に行かない?」
「んー、行く」
白雪花乃(しらゆき はの)。
それがわたしの名前。
花乃って漢字からよくはなのって読み間違えられたりするけど、無理もない。
はのなんて読めないもん。
それでもわたしはこの名前を気に入っていて、白雪っていう苗字も嫌ではない。
「音羽が興味持つことなんてあるんだー」
冗談半分に友達の音羽(おとは)に言うと、音羽はにやりと不敵に笑って言った。
「そりゃあ、友達の元好きな人だし?」
「へ?」
間抜けな声がもれた。
その瞬間目の前に広がったのは、男子たちが体育館でバスケをしてる姿。
周りは女子で埋め尽くされていて、なんかもう黄色い歓声の嵐だ。
「……わたしこんなの興味ないんだけど。ていうか騒がしい女子とか嫌い、気持ち悪いっ」
「まあまあ、全国の可愛い女子を敵に回すような発言はやめて男子をじっくり見なされ」
「えー」
嫌そうな表情をしながらも、音羽の言うとおりに試合中の男子に目を向けた。
うわ、こいつ学校で一番イケメンって言われてるやつじゃん。
試合中の人の中で一人だけ有名で知っている人を見つけじっと見る。
なんか、よくよく見るとどっかで会ったことあるような……
ってあれ。
「悠斗……?」
「そ、やっと気づいたー?」
中学校のことを思い出した。
すっごく仲が良くて、大好きだった悠斗。
でも、残り数センチだけ距離があって、告白することもないまま悠斗は転校してしまった。
「どうしてここに……」
悠斗はわたしにじっくり見られていることに気づいたのか、ふわりと笑って手を振った。
「え、あ……」
何か返すこともできず、ただ戸惑うわたし。
そんな中、女子たちはまた黄色い歓声を飛ばした。
「きゃあああ!」
「今絶対あたしに手振ったよ!」
「いやあたしでしょ」
「悠斗最高ー!」
盛り上がる体育館。
突然現れた悠斗。
そして、思い出したくなかった中学の出来事。
そこで、わたしの意識は消えた。
-
109
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/10(土) 21:24:08 HOST:EM117-55-68-150.emobile.ad.jp
残り数センチ
「ん……」
目を開けると、そこにはぼやけた白い天井が広がっていた。
数秒後に周りを見るとどうやらここは保健室、らしい。
「どうして……」
そう思いながらつぶやくと、わたしの手には携帯が握られていた。
そして携帯には新着メール一件の文字。
-----
悠斗だよ。
ごめん、音羽って人に花乃のメアド聞いちゃった。
よかったら登録しといて。
花乃、体育館で急に倒れたんだよ。
貧血らしいから、放課後までゆっくりしてな!
放課後になったら迎えに行くから待ってろよ。
-----
顔が熱い。
わすれたはずの恋がまたあふれ返ってしまった。
昔の、悠斗に対する思いがどんどんあふれ出す。
「悠斗……」
わたしは一人、声を殺して泣いた。
なんでこんなに涙が出るのかわからない。
だけど……
会えて嬉しい。
×
-----
ごめん、HR長引いた!
今から迎えに行くから準備しとけよー!
-----
悠斗からメールがきた。
なんとなく、パパッと前髪を直して寝癖がないか確認する。
ガラガラと音をたてて保健室のドアが開いた。
「花乃、起きてる?」
「う、うんっ」
あれ、わたしどんなテンションで悠斗と話してたんだっけ……
「じゃあ帰ろっか、歩けるか?」
「大丈夫だよ、ありがと悠斗」
なんかわたしらしくしていられない。
こうしている今も心臓がばくばくいってる。
「……ねえ悠斗?」
「んー?」
うん、なによりこれだよね。
「女子の目線が痛い」
そりゃあんなかっこよく成長した悠斗を見てキャーキャー騒ぐ女子はたくさんいたけど!
そんな人の隣にこんな地味な女がいるのもどうかと思うけど!
そんな冷たい目線送らないでよ。
「はは、気のせい」
あ、悠斗笑ってくれた。
なんて思いながら、わたしも中学生のころの調子を思い出して話す。
「もー、悠斗の馬鹿!」
「花乃に言われたくねー」
「ていうかわたし何で倒れたんだろっ」
「疲れとかじゃねー?」
わたし疲れるキャラじゃないし。
貧血とかも滅多にないし。
「……あ、人混みだからだ」
「あれ、花乃って人混みだめなの?」
――やっぱり、心の距離は中学のころより遠い。
あと数センチって感じでもない。
会ってないうちに、お互いのこともわからなくなっていったんだ。
「うん、なんか人混みとか騒がしいとこ行くと具合悪くなるの」
「そっか」
平然を保ってる悠斗だけど、なんかそわそわした表情してる。
そして悠斗が、はずかしそうに一言言った。
「あのさ!」
「……うん?」
「今まで離れてた分……俺絶対、花乃の気持ち取り戻してみせるから」
こんなこと言われたら。
もっともっと、中学のころより好きになっちゃうじゃん、馬鹿。
‐
110
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/11(日) 18:52:17 HOST:EM117-55-68-33.emobile.ad.jp
残り数センチ
「花乃、家って変わってない?」
「あ、うん、はい」
ぎこちなく返事をすると、悠斗は笑って言った。
「緊張しなくていいから、いつも通りの花乃になれよー」
わしゃわしゃと乱暴にわたしの頭を撫でる悠斗。
好きって思いがどんどんあふれてくる。
「悠斗はずるいよ……」
「花乃に言われたくねー」
本当にずるい。
そんなことを思っているともう家についてしまったようだ。
見慣れた風景に、小さくため息を吐く。
「あ、そういえば悠斗ってどこに引っ越してきたの?」
「んー、どこだと思う?」
「……ここ!」
冗談半分で、ふざけてわたしの家の隣の家を指差してみた。
「……なんでわかったの?!」
「本当にそこなの?!」
ミラクル。
すごい、わたしの勘って。
「と、ととと隣ですか」
「動揺しすぎだろ」
「……だってうれしい」
「花乃のそういうとこがずりーんだよ」
昔みたいなやり取り。
それよりちょっと成長した、ほんの少し大人な会話。
「音羽に感謝しなきゃだなあ」
ぽつりとわたしがつぶやくと、悠斗も笑った。
「まあ、音羽に頼んだの俺だしな」
「へ?」
「俺がいるってこと、音羽にお願いして花乃に伝えてもらったんだ」
「……全部仕組まれてたってわけか」
「はは、ごめん」
わたしの恋が、また始まった。
‐
111
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/11(日) 19:11:25 HOST:EM117-55-68-33.emobile.ad.jp
可愛いは正義
「信原です、よろしくお願いします」
無愛想な野郎が、部活に入ってきた。
×
「うち、可愛げのない野郎は募集してないんでー」
「なんすかそれ、差別っすか」
無愛想ボーイはさみしげにそうつぶやいた。
どうしよ、あたしの心にズッキュンしたよ!
この野郎可愛げありまくりじゃねーか!
「……ごめん冗談、君可愛げあるわ」
「なにそれ、先輩きもいっすよ」
「ぁあん?」
「……なんでもないっす」
なかなか素直で可愛いじゃないか。
いや、本気で。
「じゃあ入部決定他締め切りってことで自己紹介!」
いえーい、と地味に盛り上がる部員。
「あたしは三年の軽音楽部の部長、羽乃百合花(はの ゆりか)! えーと、ギターとたまにボーカルね! 基本楽器全般得意だけど」
名前と性格合ってないとか知ってますから!
気にしてますから!
「ええっとお、わたしは二年生の風音のの(ふうね ――)でえす。キーボードとたまにボーカルやってまあす」
ののはハッキリ言ってぶりっ子ちゃん。
いやまあ可愛げあるし良し!ってことで採用した。
「俺は冬樹るな(ふゆき ――)です! あ、ちなみに二年です。ベースやってます」
るなくんはね、こりゃあもう可愛いんだ。
こんなに可愛い子見たことないわこんにゃろ!
「三年の副部長、羽音洸樹(はのん こうき)です。俺も全般楽器得意だけど、基本はドラムやってるよ」
洸樹はね、正直何でいるんだかわかんないんだわ。
あたしと同じ学年だし、可愛くないし。
あ、どちらかというとかっこいい系かな。
「信……あ、お、俺は信原祐樹(しのはら ゆうき)です。楽器はベースが得意です。よろしくお願いします」
ちょっと待て。
「え、信原くん今自分のこと信って言いかけたよね?」
「あ、ちが、それは……」
「一人称信だったりした?」
「……む、昔の話です!」
かわいすぎるうううう!
というわけでまあ、新バンドが成立したわけですが。
見ての通りね、あたしの可愛いの基準でメンバーが選ばれてまっす★←
てことでよろしくねん★←
‐
ギャグ系小説です!
もはやギャグしかありません!
w、記号、←、(笑)とかたくさんでてきます!
嫌な人はみないでね!
本当息抜きのギャグギャグ短編なんで文句受けつけてませんえへwww
よろしくね!
112
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/12(月) 19:11:29 HOST:EM117-55-68-187.emobile.ad.jp
可愛いは正義
「るなくん、るなくんるーなくんっ」
「せんぱい、せんぱいせーんぱいっ」
るなくんはあたしの神。
ほんっとに可愛くてお気に入りな後輩さん!
「……百合花先輩、るな先輩のこと大好きなんですね」
「あっれえ? 信くん嫉妬〜?」
「なっ、違います! 俺もるな先輩と仲良くしたかっただけです!」
信くんはツンデレだなあ。
俺とかいってるけど本当は信って呼びたいんだろうね、自分のこと。
「あは、信くんおいでー」
「るな先輩っ」
男同士のハグ。
普通なら暑苦しく感じるものだけどるなくんと信くんがやったら別。
超 絶 可 愛 い 。
「るなくうん、わたしともぎゅうってしよお」
ののがるなくんの腕に絡みついた。
うん、ののは本気でるなくん狙いだからね。
るなくんと仲良しこよし〜なあたしのことはあんまり好きじゃないんだって。
「はいはーい、ののちゃんぎゅー」
それに気づかず平然とののにぎゅってするるなくんもすごいよね。
るなくんは女子を完全なお友達って思ってるから、それもふつうに感じるんだろうね、
「はいはい、馴れ合いはそこまでにして練習しようか」
パンパンと手を叩いてその場を静まらせたのは予想通り洸樹。
通称つまんねえ野郎だ。
「あ、俺、その……」
信くんが顔を赤くさせて言った。
「る、るな先輩といっしょにベース練習したいですっ」
何この可愛い生物。
え、何なのこの子やばい。
可愛すぎる仲間とともに、日々成長してゆくのでした。
‐
終わりじゃないよたぶん!
113
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/16(金) 20:39:17 HOST:EM117-55-68-182.emobile.ad.jp
どもども!
ねここですーw
テスト期間により更新ストップしてました!
ちゃんと勉強してたねここえらい!←
一教科暗記した範囲とぜんっぜん違うとこでて泣きそうになったけどw
てことで更新スタートします!
てかあれですね。
携帯はいじってたけどパソコンしてなかったみたいなw
ということでがんばろう。
今月部活休みないけど更新がんばります!w
どうか見捨てないで見守ってやってね!
ばいばい!
114
:
ピーチ
:2012/11/16(金) 21:12:00 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
何かちょー久しぶりのコメした気がする←
あたし今がテスト期間だけど全く勉強と言うものをしていない(おい
テストの三字を捨てたからねあたしは!←
115
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/17(土) 17:25:13 HOST:EM117-55-68-60.emobile.ad.jp
>ピーチ
捨てるな捨てるなw
ねここ今回初めてちゃんと勉強したわ←
116
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/17(土) 18:09:08 HOST:EM117-55-68-60.emobile.ad.jp
可愛いは正義
「あ、あのあの……部活中に失礼しますっ」
さあ練習!って思ったら突然もんのすごい可愛い女の子があたふたしながら部室に入ってきた。
「はいよはいよー! 誰に用?」
「そのっ、るな先輩……ちょっといいですか?」
るなくんに先輩つけるってことは一年生か。
るなくんはあいかわらずほわほわーってした雰囲気で部室出ていったけど、あたしはにやにやが止まらなかったよ。
「告白だよねえ」
二人がいなくなったあと、あたしはぽつりとつぶやいた。
洸樹もにこにこしながらつぶやく。
「青春だなー」
「だねー」
ふっはああ。
なんか年寄みたいじゃないあたしたち。
「えぇ、でもお……洸樹先輩と百合花先輩も青春中じゃないですかあ」
おぬし、余計なことを。
まあねうん、あたしと洸樹って仮にも付き合ってるんです。
告白は洸樹から。
あたしは洸樹のこと侮辱してるオーラあるけど、一応本当に大好きなんだからな!てかはっずいなこれ!
「ののはいいんかい、あんな可愛い後輩ちゃんがるなくんに告白して」
「それは嫌だけどぉ……るなくんがあの子といることを望むなら、わたしに止める権利はないしぃ」
ぶりっ子しながら良いこと言ってんなのの。
あああかわいい。
るなくん、ののの気持ちに気づいてないのかなあ。
「ののは良い子だよ、うん」
「百合花先輩は……女の子で初めて心から好きって思えた人ですよお」
「ほんとっ?! うれしー」
「……るなくんに会いたいですう」
結局そこなのねw
そしてしばらくして、るなくんが落ち込んだ様子で帰ってきた。
「おー、おきゃーりるなくんんん!」
「ただいまです、百合花先輩」
「で? 返事どーしたの?」
「へっ? あ、え、なんでわかって」
「女の勘ってやつよ」
この様子じゃ振ったんだろうなああ。
「あんな可愛い子振ったの?」
「だって俺なんかあの子と釣り合わないし、それに俺は好きな人いるんでー」
「だ、だれそれ!!」
……ん?
ちょい待てよ。
るなくんの好きな人わかっちゃった。
‐
117
:
ピーチ
:2012/11/18(日) 12:54:52 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
捨てた捨てたw
あたし最初だけだったわ←
118
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/18(日) 15:48:10 HOST:EM117-55-68-52.emobile.ad.jp
可愛いは正義
「……俺今日帰ります」
「へっ?」
「具合悪いんで」
そう言ってそそくさと部室を出ていくるなくんは、何かちょっと元気なくて具合も悪そうだった。
具合悪いのが本当なら一人じゃ帰らせらんないよなあ……
「洸樹ー」
「ん、もう準備済み」
「いってら」
「メールするね」
「あーい」
あたしたちの会話、これで成り立ってるんです(キリッ)。
まあつまりは、洸樹にるなくんを追わせたってこと。
メールするってのは、るなくん送ったあと時間あったら戻ってくるしなかったら気をつけて帰れよ的な感じのメール送るよってこと。
「先輩ってえ、ある意味尊敬しちゃいますう」
「……照れるっ」
さーて、あたしたちも仕事仕事。
「のの」
「わかってますよお」
「ん、よろしい」
「早めにお願いしますねえ」
あたしたちの会話、これで成り立ってるんです(どや)。
つまり、るなくんに告白した後輩ちゃん捕まえて事情聴取ってやつをしようって意味ね。
あたしが探してくるからののは部室で留守番頼んだみたいな。
とか考えてたらあっというまに一年校舎ついたんですけど。
放課後の教室ってムードあるよね。
なんて思ってたら例の女の子いたよね。
「失礼しまーす」
「っえ、あ……軽音楽部の」
「そうですそうです、まあちょっと来てくださいな」
「えっ?」
戸惑う女の子を半ば無理矢理部室に連れ込んだ。
なんかこれ、あたしがレズに興味あるみたいじゃね?w
「たっだいまー! 捕獲完了っ」
「おかえりなさいですう」
「あ、あのっ、えと……わたし帰ります」
「あはっ、帰らせないよ」
あたし、のの、女の子、あたしの順でしゃべった。
もう完全にあたしがレズっぽいねw
「るなくんに告白、したんだ?」
直球に訊くと、女の子はじわりと涙をにじませて言った。
「……はい」
「振られたの?」
「…………はい」
でもるなくんはきっと――
「失礼します! ただいまっ」
あたしがうまく話をしようと思った瞬間に、走ってきたのか息を切らするなくんがあらわれた。
わあ、グットタイミング★
「ゆいごめん……俺、素直じゃなくてっ」
「……るな、せんぱい…………」
119
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/18(日) 15:53:57 HOST:EM117-55-68-52.emobile.ad.jp
可愛いは正義
「俺、ゆいのこと好きだよ」
やっぱり。
だってるなくん、普段告白されて振ったりするのにこんな落ち込んだりしないもん。
「洸樹ありがと」
「百合花こそおつかれ」
ふふっと微笑み合う。
そして、ののも。
満面の笑みでふたりを祝った。
「ふたりともおめでとう」
泣くの我慢してるんだなって思った。
ふたりがいなくなったら思う存分泣かせてやらなきゃ。
「さあさあ、リア充は帰った帰った!」
「え、なんすか百合花先輩。俺まだみんなといたいです」
「どうせお互い初恋でしょ? ふたりでラブラブしてきな」
じゃなきゃののが可哀想だよ。
「……ありがとうございます、じゃあさようなら」
るなくんがゆいちゃんを連れて部室を出ようとした
瞬間。
「待って!」
ののが呼び止める声。
るなくんは振り向いて、いつものゆるゆるな雰囲気でどうしたのって訊いた。
「…………なんでもない、幸せにね」
そう言ったののに、るなくんは驚いてから微笑んだ。
「ありがと、のの」
「のの先輩っ、ありがとうございます」
ふたりが本当に部室からいなくなったとき。
ののはわたしの腕の中で泣いた。
「のの、良く頑張った!」
「ゆりかっ、せんぱっ……」
あーあ、あたしの制服びしょびしょじゃん。
なんて思いながら、微笑んでののの頭を撫でる。
「ののなら絶対良い人見つけられるよ。だってののこんな良い子で可愛いんだもん」
あたしは最初、ののが嫌いだった。
ぶりっ子で、いつも我侭で男の目ばっか気にして。
でも本当は違くて、初めてあたしや部員のみんなに嫌われたくなかったって本音を漏らしたときに「あたしこの子好きだな」って思った。
「こんなキツイ性格のあたしが大好きって自信持って言える子だもん。絶対大丈夫」
ぎゅっとののを抱きしめる。
いつの間にかあたしも泣いていて、ののに「何で泣いてるんですか」って馬鹿にされた。
そしてののは泣き止んで、満面の笑みで言った。
「わたし、これからもがんばりますっ! るなくんより良い人見つける!」
がんばれ。
あたしと洸樹は、ふたりでののに告げた。
×
「あの……俺忘れられてません?」
実は洸樹が心配だから洸樹のあとを追えと言われた信くん。
部室に入り損ねちゃった信くん。
そんな信くんは、今なにが起きているのかもわからず諦めて帰るのでした。
-
つづくかな?
ののちゃんのぶりっ子がなくなるかもw
そして信くんは本気でねここが忘れてました←
ごめんなさい!
120
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/18(日) 16:40:00 HOST:EM117-55-68-52.emobile.ad.jp
可愛いは正義
それからの、あたしたちの日常。
×
るなくんの彼女のゆいちゃんが、部活に遊びに来た日のこと。
「るなくーん!」
「百合花せんぱーい!」
「ちょっとだめです百合花先輩! るな先輩も離れてください〜っ!」
あたしがるなくんに抱き着こうとしたら案の定るなくんも受け入れて、ゆいちゃんが焦ってる感じ。
あわてた反応が可愛くて、あたしもるなくんも半分おもしろがりながらやってる。
「まあまあゆいちゃん、これが日常茶飯事なんだよ」
「そんなあ……」
「ハグはあいさつ! そう思わなきゃこれから先嫉妬心であふれかえっちゃうよ」
「うう……わかりました」
ののはどんどん可愛く成長していって、ゆいちゃんからはすっごい信頼されてる。
良きお姉さんと良き後輩、みたいな(笑)
「この手の話は俺は入れない……」
信くんはあいかわらずだけどね。
でもひとつ変化はあった。
「の、ののの、のの先輩!」
「どしたの信くん」
「いっ、いっしょに練習しませんかっ?!」
「あはは、いいよー」
どうやらののに惚れちゃった感じ(笑)?
「のの、そこは断っとけ!」
「先輩は黙っててくださいよ! 俺がのの先輩好きでいるくらいいいじゃないですか! ……って、あ」
うん、天然\(^o^)/
みずからののの前でのの先輩好きって言っちゃったしね。
「うわああぁあああのの先輩わすれてください今のおおおぉおお!!」
「や、わたし嬉しかったし」
ののも脈ありって感じで、ふたりが付き合うのもあとは時間の問題だなあ。
そしてあたしたち。
「洸樹〜」
「ん?」
「今日何人に告白された?」
「えっと……五人?」
洸樹がモテてモテてしょうがないです。
いつものことだけど。
「昨日は?」
「……六人です」
「しね!」
「えw」
これでもあたし洸樹大好きだし、ちょっと嫉妬。
「全部振ったよね?」
「どうだろうねー(笑)」
「……洸樹もーいい」
あたしの気持ち知らないくせに、ばかばーか。
「百合花、怒んなよ」
「怒ってないし」
「……百合」
…………
「ばかあ……」
あああ、あたし顔真っ赤だし!
百合って呼ばれると恥ずかしくなんのに、洸樹に呼ばれたら死んじゃうようれしすぎて!
「ん、許して」
「……もっかい百合って呼んで」
「百合」
「もっかい」
「百合、大好き」
「あたしも洸樹だいすき」
「「「「部室内でいちゃいちゃすんなやこの青春バカップルが!!!」」」」
るなくんとゆいちゃんとののと信くんに一気につっこまれるほどのバカップルに成長しました。
軽音楽部なんていいながら名前だけだし、目標は可愛いは正義とかいう意味わかんないやつだし。
それに個性豊かすぎるし変な人しかいないこの部活だけど。
この宇宙の、この世界の、この国の、この地方の、この県の、この市の、この区の、
この場所の。
この、軽音部が。
あたしの高校生活を最高のものにしてくれた。
「みんな、いつもありがとう! だいすき!」
軽音楽部は永遠無敵です!
fin.
友情系だけど恋愛系でもあったかなあ!
個人的に洸樹くんとるなくん大好き←
百合花もキャラがすっごい好きでした!
もちろんののも、ゆいちゃんも信くんもね(笑)
とっても楽しかったです!
121
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/22(木) 19:48:22 HOST:EM117-55-68-50.emobile.ad.jp
あまのじゃくな恋
あたしがもっと素直だったら。
あたしがもっと可愛かったら。
あたしがもっと甘えていたら。
何かが変わっていたのかな。
×
「たっきー先生っ」
「たっきーかっこいい!」
「勉強教えてー!」
高校の数学教師、滝沢先生。
愛称はたっきー先生で、一部(ていうかほぼ全員)の女子から絶大な支持を得ている。
無理もないって思う。
滝沢先生が教える数学はすっごくわかりやすいもん。
それに滝沢先生の性格も顔もイケメンだから。
「滝沢先生、モテモテですね」
「好きなやつ以外からモテても意味ねえけどなー」
「……その好きなやつって誰なんですか!」
「気になんの?」
にやにや笑う滝沢先生。
こいつ、好かん。
「……気にならないけど、探し出してからかってやりたい」
「希未ちゃん鬼畜ー」
「いいから教えろー!」
「絶対わかんねえと思うけどな」
「なにそれ、あたしが頭悪いの馬鹿にしてんのか阿保」
「教師に阿保はないだろ」
「はっ、教師? どこにいんの?」
いっつも子供っぽいやり取りしかしてないけど、それが一番心地良かったりする。
うん、だから数学の時間は好きかな。
得意科目数学とか言ってみる(最高点数41点)。
×
「課題忘れたやつ立ってー」
はいきました魔の数学の時間(笑)
滝沢先生が一人一人課題チェックしてくイケメンなんだけどてかあたし課題やってないんだけど。
「希未は?」
みんな立ってるけどあたしは立つ気ない。
だって忘れてはないし。
とか思ってたらにっこにこした笑顔で話しかけられちゃったよ。
「やりました」
「ん、見せてみ?」
「はいどーぞ」
プリントを見て数秒後、にこにこしながら滝沢先生が顔をあげた。
「なあ、これどこをどう見ればやったって言い切れんの?」
「名前書いたじゃないですか」
「うん、課題名前書くことじゃないからね理解しようね」
「でも忘れたわけじゃないしー」
「忘れじゃないなら何かなこれは」
「いや、なんかやんなきゃって思ってたけどめんどいからやめた。忘れてたことにはならない」
「屁理屈言うな!」
いやあ楽しい。
女子様の目線がすんごい冷たくて痛いけど。
てかまず課題わかんなかったんだよね(どや)
「たっきざっわせっんせーい」
「はいはい、希未何?」
話しかけるたびいちいち名前呼んでくれるとこは好き。
なんか、ちゃんとあたしの話を聞いてくれてんだなって思えるから。
まあ、そんなのあたし以外の人にも余裕でしちゃってるんだけどな、はっ。
「課題がまったくわからないので再提出しろと言われてもできませんが何か」
「問題ありまくりだろそれ」
「放課後よろしくしてやんよ」
「上から目線やめようね、放課後付き合ってやっからよー」
「うん、さんきゅー滝沢」
「……今日から馬鹿って呼んでい?」
「教師のくせに?」
「教師呼び捨てにする?」
「ごめーんてへぺろっ」
とりあえず滝沢先生の放課後はあたしのもんだ!
てへっ!
楽しみだな、とか思ってみたり。
-
ふっへえええ。
教師と生徒の恋。
122
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/22(木) 20:08:30 HOST:EM117-55-68-50.emobile.ad.jp
あまのじゃくな恋
「せっんせーい! きたよー」
「遅ぇよお前のクラス! 俺のクラスなんかHR1分で終わらせたから!」
「いやそれは異常じゃね。配布物配ったんかよ」
「配布物とか学級委員に任せっきりだし」
「ちょっと滝沢……先生。それはあまりよろしくない。てか悪すぎ」
「てへぺろー」
か わ い い だ と 。
いやほんと可愛かったわやっべえ。
てへぺろとか禁句。
「先生、早く教えて」
「はいはい、どこがわかんないの」
「全部」
「……聞くまでもなかったわ」
まあそんなこんなで個人授業しちゃったあたしたち。
うっわあ帰り道女子の目線痛すぎてやばいわあ。
「ねえ〜、希未ちゃん」
「あいよ?」
「希未ちゃんってたっきーと付き合ってるの?」
「付き合ってる? は? どーゆー意味で?」
「だから、恋愛的な意味で付き合ってるの?」
まっさか。
このあたしが?
あのスーパーハイパースペシャルデラックスイケメンな滝沢先生と?
「ないないないない。ぜんっぜんない。むしろ付き合える欠片もない」
「え〜、じゃあ希未ちゃんってたっきーのこと好きなの?」
「え……それは恋愛感情で?」
「うん、そうだよ」
そりゃかっこいいなっては思うし数学も滝沢先生のおかげで好きになったけど。
名前呼ばれる瞬間とかどきききききーんとかするし話してると楽しいけど。
これがみんなのいう「好き」って感情なのかはよくわからない。
なんせ初恋経験なしだかんなっ、はっ。
聞くまでもなく告白されたこともしたこともないし。
「わかんない、けど……滝沢先生って女子に人気じゃん?」
「うん、超人気だよねー」
「その滝沢先生ラブな女子たちの気持ちは恋愛的なものなの?」
あたしの難しい質問に、女の子は少し戸惑ってからそれでも断言した。
「少なくともあたしは本気で好き。他の子も本気でたっきーが好きだと思う」
それなら。
あたしの中途半端な気持ちは、その子たちにとってすごく嫌なものなのかもしれない。
「きっとあたし、女子によく思われてないよね……」
「てか、陰で悪口言われまくりだし今ではいじめ計画立ってるし希未ちゃん不登校なるかもよ」
「えええええまじかよ。ちなみに君は誰の味方なんですか」
女の子はふっとちいさく微笑んで、可愛らしく言った。
「わたしはたっきーの味方、かなっ」
「なにそれ」
「たっきーの好きなものは守る! けどたっきーが悲しむようなことする人は大っ嫌いだし味方もしないよ。それだけ!」
「ええええええ」
「あ、ちなみにあたしの名前は乃愛(のあ)だよっ」
ひらりと可憐に手を振って、乃愛……ちゃんは目の前から消えていった。
なにあの美少女。
そしてなにあの良い人。
-
123
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/22(木) 20:53:26 HOST:EM117-55-68-23.emobile.ad.jp
あまのじゃくな恋
「…………」
言われたそばからなにこの展開。
帰り道ね、ちょーっとこわい女子様と出会って校舎裏っていうのかな、うんそこらへんに呼び出されてね。
八人の女子に囲まれちゃってるっていう気まずーい状態なわけよ。
「あの、えと……なにか御用?」
あたしの発言に呼び出した女子たちは黙り込んでしまった。
あ、でも大人しいってわけじゃなく、ただ怒ってるみたいな沈黙ね。
「ちょっと、呼び出したなら何とか言えやこら」
「はあ? てめえ誰に口聞いてんだよ」
「いや君たち以外に誰がいるというんだよ」
あれれれれ。
低能?
低能なのかなっ。
「こいつうっぜー」
「早くやっちゃおうよ」
「まあ待ってよ、校舎裏は危険じゃん?」
「いいよ、早く殴りてー」
「てかたっきー来ないよね」
「来たら逃げる」
「でもますますこいつ気に入られんじゃん」
7人でいっせいにしゃべんなや(笑)
そして、リーダーらしき人が前に一歩歩み出て、みんなに指示を出した。
「いいわ、何があってもあたしがあんたらを庇う。好きなだけやって」
その一言を境に、8人の様子は豹変した様子であたしを睨んできた。
まあ、あたし阿保だからまさか殴られるとかおもわ……思うよね。
「え、ちょっと待とうよ(笑) 君たち本気かね」
「黙れよ」
「ごめんね黙れなくて。ていうかそのね、人の質問に答えないのはどうかと思う」
「こいつうざいんだけど」
「……滝沢先生との仲がそんなに羨ましい?」
「っ、うぜえんだよ!」
あたしの顔より少し右に、固く握られた拳がぶつかる。
壁にパンチしたっぽいけど、次は絶対直であててくるよね。
「8対1とかこれ完全いじめじゃん(笑) なに? 弱いから大人数じゃなきゃあたし如きにも立ち向かえない?」
「はあ? あんたなんか一人で余裕だわ」
「じゃあ一人でどうぞ。そんな人数いらないじゃん?」
「……うっざ、そろそろいー?」
手出された時点でアウトだよねってぐふうっ←
手出されちった。
頬にパンチ。
相手が女子でよかった、そんな泣くほど痛くない。
「ちょっと待ってー、あんたたっきーにちくんなよ?」
「……殴っといてちくるなはないだろ。滝沢先生は多分何も言わなくても察するわ」
そう思ったから。
あたしは滝沢先生を信じた。
ていうか、少しずつ近づいてきてる足音が滝沢先生だってことにも気づいてる。
「たきざわせんせーっっ!!!」
精一杯の声で叫んだ。
その瞬間、滝沢先生があらわれてあたしの身体をふわりと抱き上げる。
これははずいぞ!
「遅いじゃんか」
「てか気づいてたのかよ」
「当たり前。滝沢先生の足音とかすぐわかるわ」
「いやなんでだし」
「数学の時間滝沢先生の足音が聞こえてくると憂鬱な気分になってくる」
「……俺の授業が憂鬱でよかったねほんと。じゃなきゃ君助かってなかったかもよ」
「うん、ありがと滝ちゃん」
「滝ちゃん……?」
あ、やべ。
女子の存在わすれてた。
-
124
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/11/23(金) 17:55:37 HOST:EM117-55-68-158.emobile.ad.jp
▼ キャラクター紹介
スランプ気味なので、今までのキャラを整理していきます!
▽ Breather(
>>3
、
>>4
/完結)
梨花(りか) : 天然気質な無自覚鈍感系女子。ふわふわした雰囲気で女の子らしい一途な子。/日向の彼女、健の幼馴染
日向(ひなた) : 甘え気味で可愛い系の男子。一途で彼女想い。/梨花の彼氏
健(たける) : 俺様系で素直じゃない男子。気まぐれで不器用。/梨花の幼馴染。梨花が好き
▽ rabbit(
>>7
、
>>8
、
>>9
/完結)
翔(しょう) : 俺様気質でモテモテ男子。女子の気持ちを気遣えることから女子に大人気。/優花の彼氏
優花(ゆうか) : 学校でも有名な真面目女子。真面目すぎる容姿からあだ名は地味子。寂しがり屋。/翔の彼女
由利(ゆり) : 人一倍努力家で一途。一生懸命な姿が可愛く男子に人気。/翔の元カノ
花(はな) : 可愛いけどタラシ。/翔に告白したが振られる
▽ Wonder×Wonder(
>>11
、
>>13
、
>>14
/未完結)
俊太(しゅんた) : 学校一かっこいいと噂される男子。女子に優しく面倒事が嫌い。/桜の彼氏
桜(さくら) : 心優しい子だけど自分の中で溜めこみすぎる。嫉妬や束縛が嫌い。/俊太の彼女、恭の元カノ
恭(きょう) : 女遊びが激しく、イライラすると女でも構わず殴る。/未友の彼氏、桜の元カレ
未友(みゆ) : 学校公認の不思議ちゃん。性格とは裏腹に超絶美少女で一途。/恭の彼女
日笠太一(ひがさ たいち) : 学校で二番目にかっこいい男子。/未友が好きで告白したが振られた
▽ わすれもの(
>>15
、
>>16
、
>>18
、
>>21
、
>>23
/未完結)
百合(ゆり) : お転婆で元気な女子。根は真面目で優しい子。可愛いが似合わないと思い込んでいるが実際可愛い。/涙の彼女、渓人の友達、百花の親友
百花(ももか) : 女を捨てた子。忘れ物が激しく特技は言い訳。人見知りが激しい。/百合の親友、渓人の友達
吉田渓人(よしだ けいと) : チャラい男子。一途でちょっと大胆。/百合が好き、百花の友達
涙 : みんなより一個上の生徒会役員。優しく相手を気遣える。照れ屋。/百合の彼氏。
▽ 砂糖多めで。(
>>28
、
>>29
/完結)
莉奈(りな) : 面倒事とキャピキャピした女子が大嫌いな女子。大雑把で一人大好き。可愛いものも好き。/由羽と友達になる
佐藤由羽(さとう ゆう) : 超絶美女。男子にモテてモテて大変。/莉奈と友達になる
▽ 本気の恋(
>>30
/完結)
未恋(みこ) : 面倒事が嫌いなサバサバ系女子。特技は存在感を消すこと。/奏太の彼女役から本当の彼女になる
奏太(かなた) : 女子にモテすぎるが故女子嫌いに。俺様。/未恋の彼氏役から本当の彼氏になる
つづく。
疲れるわ←
125
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/12/01(土) 09:46:47 HOST:EM117-55-68-175.emobile.ad.jp
あたしが、もう少し勇気を出してれば。
もう遅いかもしれないけど。
すうっと息を吸って、大きな声で叫んだ。
×
「課題忘れてきたやつ立ってー」
がらがらがら。
大きな音を立ててクラスの数人が席から立ち上がった。
人数は五人。
一人は恥ずかしそうに俯く女子。
もう一人は俺やっちまったぜみたいな暗ーい男子。
そのまた一人は全然気にしてなさそうな男子。
そしてさらにむしろ先生に怒られたいとかで奇声発してる女子。
からの最後、反省の色が全く見えないあたしの親友の悠花。
「はい、五人ねー……って、逢沢は?」
にこにこしながらイケメンスマイルで滝沢先生が聞いていた。
あたしが数学の課題提出するとでも思ったか。
「やったよー」
「うん、見せてみ」
「ほれ」
3年1組1番、逢沢莉乃。
あたしの独特な文字でちゃんと課題のプリントにそう書いてあるじゃないか。
「これのどこがやってつうの?」
「名前を書きました」
「……課題忘れな」
「はっあ? 課題忘れてないし、てかむしろ嫌すぎて覚えまくってたし」
「それはそれは、そんなに課題のことを考えててくれたんですね」
「そうだよ! 課題なんて消えればいいと思ったわ!」
その一言で、滝沢先生は教卓に戻って笑顔で告げた。
「課題忘れの五人は明日まで提出な。逢沢は今日から一週間居残り補習」
「先生そんなにあたしといっしょにいたいの?」
「課題大量に追加して自力で解かせてあげようか?」
「ごめんなさいなんでもないです口を慎みます」
今日もにぎやか、ほのぼのとしたあたしの日常。
まあ、なんだかんだいって滝沢先生はあたしのお気に入りな先生かも。
そこらへんの女子みたいに、恋愛感情がどうとかは芽生えないけどね。
×
「りっちゃーん!」
「はるちゃーん!」
休み時間は悠花とのイチャイチャタイム。
悠花はあたしのことを唯一りっちゃんとかくっそ可愛いあだ名で呼ぶ。
ちなみに悠花はゆうかじゃなくてはるかだよ!
だからあたしははるちゃんって呼んでる。
「いいないいな、りっちゃんてば滝沢先生と仲良くて」
はるちゃん。
こんな可愛い女の子オーラ振りまいてますが。
実はものすっごいチャラチャラしたお馬鹿な女の子です。
「良くない! なんであたしだけ補習?! はるちゃんだって課題やってたけどどーせ全問ハズレでしょ?!」
「なにそれ失礼」
「事実を言ったまでだ」
「うわあああぁぁああんりっちゃんひどいいいいいぃい」
うん。
たのしー(笑)
×
とまあ、これがあたしの高校生活最後の一年の日常。
卒業までに、あたしの気持ちに進展はあるのか?!←
-
つづく!
126
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/12/01(土) 11:03:40 HOST:EM117-55-68-175.emobile.ad.jp
▼キャラクター紹介2
▽ 電話越しのあなたに。(
>>31
/完結)
花(はな) : 小悪魔天然系女子。無自覚で可愛い発言しちゃう子。/海斗の彼女
海斗(かいと) : 甘えん坊系の小悪魔男子。一途。/花の彼氏
▽ ふいうちのキス(
>>32
/完結/おふざけ短編)
ゆーくん(本名は作品中には出てきてません) : ツンデレ男子。ツンツンしてるくせにたまにデレるクールな子。/女の子の彼氏
▽ あのね、(
>>33
/完結/会話だけの作品)
圭(けい) : 俺様系とみせかけて実は甘えたがりの男子。/女の子の彼氏
みーくん : うさぎのみーくん。可愛くて愛されキャラ。/女の子のペット
▽ 「ありがとう」(
>>34
/完結/死ネタ)
ユリカ : 優しく友達思いの女の子。周りを明るくさせるのが得意な人気者。/カイの彼女、交通事故で死んでしまう
カイ : 一途で友達思いの男の子。周りを盛り上げるのが得意な人気者。/ユリカの彼氏
▽ 憂鬱magic(
>>35
、
>>36
/完結)
憂(ゆう) : 素直じゃない女の子。ネガティブ思考で他人に思われることに慣れてない。/海人が好き、朱音の友達
朱音(あかね) : 明るくていつも笑っている女の子。クラスの人気者。/憂の友達、海人の友達
海人(かいと) : 毒舌だけど常識人。実は優しくて相手を思いやれる。/憂の友達、朱音の友達
▽ enjoy!(
>>38
、
>>39
/未完結)
遼(りょう) : 無自覚だけどモテる男子。一途で優しい。/奈々の元カレ、遥の友達、和希の友達、優花の友達、美月の友達、奈実の友達
奈々(なな) : 可愛くてモテる。一途で優しく相手を思いやれる子。/遼の元カノ、奈実の双子の姉
奈実(なみ) : 可愛くてモテる。一途だけど少し歪んだ愛情を持つ子。/遼が好き、奈々の双子の妹、遥の友達、和希の友達、優花の友達、美月の友達
遥(はる) : あきらかにチャラい男子。根は優しくて真面目。遼曰く女好き。/遼の友達、和希の友達、優花の友達、美月の友達、奈実の友達
和希(かずき) : チャラ男代表。ちょっとナルシスト。大の女好き。/遼の友達、遥の友達、優花の友達、美月の友達、奈実の友達
優花(ゆか) : 明るくて人気者。人と関わるのが得意。/遼の友達、遥の友達、和希の友達、美月の友達、奈実の友達
美月(みつき) : 清楚系な見た目とは違ってチャラ目。/遼の友達、遥の友達、和希の友達、優花の友達、奈実の友達
以上!
つづく!
つかれる!
127
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/12/01(土) 14:00:15 HOST:EM117-55-68-131.emobile.ad.jp
大好きな先輩へ
ふわりと冷たい空気が俺たちを包んだ。
雪が降り、うっすらと校庭の砂の上に積もり始める。
今日は、今まで最高学年として俺たちを引っ張ってくれた先輩方の卒業式。
留年する人――は、いないと思う。
何せ三年生はみんな笑顔で卒業するっていう目標で一年生のころから団結してきたみたいだし。
在校生として、卒業生を見送る俺たち。
学校にはいつもと違うそわそわした落ち着かない雰囲気の生徒がたくさんいて、いつも制服を着崩す人たちも今日ばかりは正しく着こなしていた。
「苦しい」なんていいながら、シャツを第一ボタンまでしっかりしめてみる。
……やっぱり慣れないな。
それでも、と俺はふたたび制服のチェックをし始めた。
×
「なあ瑠夏(るか)、俺変じゃね?」
「どこが?」
「だって……シャツ第一ボタンまでしめてるしズボン腰パンじゃねえし、ネクタイちゃんとしてるし」
「いつものお前より遥かに良い人そうに見えるけどな」
「ひっど」
チャラいやつとして有名な親友の空(そら)も、今日はちゃんと制服を着ている。
なんだかやっぱり落ち着かないな。
そう思ったとき、三年の先輩が二年校舎の廊下を歩いているのを見かけた。
「留奈(るな)先輩!」
思わず教室から飛び出して声をかけると、留奈先輩はにこにこ笑った。
「瑠夏くんだー!」
「俺もいますよ!」
「空くん! 制服似合わなーい」
――留奈先輩は、俺の好きな人だ。
同じ軽音楽部でボーカルとギターを担当していた留奈先輩。
いっつも笑顔で、辛いことがあっても笑ってて――でも、ふたりきりになったときに俺だけに弱音を吐いてくれた留奈先輩がいつの間にか大好きになっていた。
「いつのまにか卒業生になっちゃってた」
「留奈先輩留年してくださいよ」
「えー、やだよう」
「俺、留奈先輩ともっといっしょにいたかったです」
「……うん、そうだね」
寂しそうな留奈先輩の笑顔。
俺が慰めてあげたいのに。
もう、こんなことをするのも最後なのかな。
「留奈先輩、卒業式終わったら俺と遊んでください」
「へ?」
「今日……ダメですか?」
「だ、だいじょうぶ! だめじゃない! わたしも留奈くんと遊びたい!」
じゃあ、そのときにまた。
微笑み合って、俺は教室に戻った。
「なあ、お前留奈先輩大好きだな」
「うっせ、黙ってろ」
空に言われたくねえわ。
-きる-
128
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/12/16(日) 13:24:40 HOST:EM117-55-68-51.emobile.ad.jp
( 学校一可愛い超絶美女の落とし方。 )
「悠莉ちゃんって本当可愛いよね」
「だよね、憧れちゃう!」
「めっちゃモテモテだしね」
「性格も良いしさ〜!」
「顔良くて性格も良いとか、完璧じゃん」
――――そんな褒め言葉聞き飽きた。
わたしが可愛いとか当たり前。
憧れるとか、ろくに努力もしない人に言われたくない。
モテるのは可愛い子の特権だし。
性格良くなきゃモテないもん。
完璧な子になりたくて努力したんだから。
心の底からの「可愛い」が通用する女の子になりたい。
そう思って必死に努力したのに、わたしが心から思うたった一人の君は振り向いてくれないのかな。
×
「悠莉ちゃんおはよ〜」
「おはよ、朱里ちゃんっ」
逢沢悠莉、高一女子。
学校一可愛い超絶美女の称号を持つ……とか言ってはみるけど、実際そんなもの興味ない。
そしてわたしがたった今挨拶を交わしたのが春乃朱里。
同じクラスで――簡単にいえばわたしの嫌いな人。
朱里ちゃん、とか呼んでるけどそれは言葉だけ。
実際心の中ではそんな親しく呼んでない。
春乃朱里はかなり性格に裏がある女子でぶりっ子するくせにたいして可愛くない。
まあ、裏ありまくりのわたしが人のこと言えるようなものじゃないけど。
「よ、朱里」
笑顔で教室に入ってきたのは朝月蓮。
「わ、吃驚したあ……蓮くんおはよ〜」
頬を赤く染めてぶりっ子する朱里を見て勘付く人は分かっちゃうけど、蓮くんは朱里の彼氏。
そして蓮くんは、わたしの好きな人でもある。
「蓮くんおはよっ」
「はよ、逢沢」
春乃朱里は名前呼びで、わたしは名字呼び。
かなりの距離感があるのがはっきりと伝わってくる。
でも、学校一可愛い超絶美女が春乃朱里みたいな地味な女に負けるわけにはいかない。
「蓮くんっ、この前借りたCD! すっごいよかったよ、ありがとー!」
「だよな! やっぱ逢沢は趣味合うから話しやすいわ!」
蓮くんに良く見てもらえるように、蓮くんの好きな歌手を調べたんだ。
ちょっとマイナーだったから趣味が合う人も都合良く少なくて、春乃朱里よりも趣味については分かり合える仲になった。
「この歌手のファン少ないから、蓮くんくらいしか話せる人いないんだよね」
「俺も! 逢沢くらいしか趣味の話通じねえわ」
「今度さ、近くでライブするらしいんだけど……いっしょに観に行かない?」
「マジ?! 行きたい!」
わかってる。
蓮くんが好きなのはわたしじゃなくてその歌手だってこと。
わたしが同じ趣味だから仲良くしてくれるだけだってこと。
でも、ぜったい奪ってみせるんだ。
「え〜、ふたりともライブ行くの〜? 朱里も行きた〜い!」
ちっ、と心の中で舌打ち。
趣味のことも何も知らないくせに、彼女気取んないでよ。
「ごめん……もうチケット買ってあって、二枚しかないんだー……」
残念そうに言いながら、心の中ではにやっと微笑んでいた。
元々チケットが二枚しかないのは事実だしね。
「えー、じゃあ普通はカレカノで行くべきでしょ〜」
朱里がむっと口を尖らせて、少し本性を出しつつぶりっ子して言った。
いらっとしても、わたしは本性はぜったい出さない。
「そう、かな……やっぱり蓮くんもわたしとじゃ嫌かな」
さり気ない上目遣い。
ちょっと引き気味に、それでも完全には引かずに寂しそうに言う。
どれもこれも、全部計算通り。
「このチケット、逢沢が俺と行くために買ってくれたんだろ?」
「うん、どうしてもいっしょに行きたくて」
「なら俺逢沢といっしょに行くよ」
蓮くんが笑った。
悔しそうに朱里が俯く。
やっぱりみんな、わたしの計算通りに動いてくれるのね。
(きる)
129
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/12/16(日) 13:37:48 HOST:EM117-55-68-51.emobile.ad.jp
( 学校一可愛い超絶美女の落とし方。 )
「でもぉ、蓮くんと悠莉ちゃんふたりっきりなのは朱里不安だよお……」
まだまだ粘る朱里。
しつこい女って、嫌われる対象なんだよ。
馬鹿な朱里は気づいてないみたいだけど。
蓮くんは少し困ったように俯いて言った。
「ごめん、でも……俺がいっしょに行きたいのは逢沢なんだよな」
「蓮くんは朱里のこと嫌いなの?! 朱里より悠莉ちゃんがいいの……?」
「それは、」
「蓮くんのばかぁ……」
泣きじゃくる朱里。
きっとこれは朱里の計算なんだろうけど、大誤算だと思う。
しつこくて急に泣き出す女って、一番嫌われるタイプなのに。
「……ねえ、いい加減諦めたらどう? 蓮くん狙いなの丸わかり、キモイんだよブス」
朱里は泣きながら教室を立ち去るふりをして、わたしの耳元でそうつぶやいて言った。
わたしがあんなやつにブスって言われる筋合いない。
そんなことわかってる。
なのに、
「朱里っ」
朱里を追いかけた蓮くんの背中を見つめて、ものすごく胸が苦しくなった。
可愛くなっても無意味なんだ。
性格が良くても無意味なんだ。
どうしたら蓮くんは振り向いてくれるの?
悔しくて、気づいたら涙があふれてた。
「悠莉ちゃん?!」
「逢沢さんどうしたのっ?」
クラスのみんながざわめいてわたしを心配する。
心配なんてそんなのいらない。
蓮くん以外の心配なんて意味がない。
「……ごめんね、大丈夫。ちょっと具合悪いから保健室行ってくるね」
ついていこうか?、と声をかけてくれた子もいたけど断ってしまった。
だってわたしが行く場所は保健室じゃないから。
すれ違い様にさり気なく朱里に渡された紙に、三階の女子トイレで待ってると書いてあった。
素直についていくってわけじゃないけど、ちゃんと立ち向かいたい。
そう思って、重い足取りでゆっくりとトイレに向かった。
(きる)
かなりぐだぐだなお話だしタイトルどうでもよくなってます←
許してねてへ←
130
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/12/23(日) 12:30:01 HOST:EM117-55-68-24.emobile.ad.jp
( 放課後の教室で、 )
わたしは君が好きで、
君はあの子が好きで、
あの子は君が好きで、
いらないのは誰ですか?
×
「ねえ奏汰ー」
「んー?」
英語の課題未提出で居残りを食らったわたしと奏汰。
二人しかいない教室には放課後特有の不思議な雰囲気が流れていて、わたしは流れに身を任せてぽつりと言った。
「好きだよ」
ふいに言ったその言葉で、プリントに英文を書いていく奏汰の手が止まるのがわかった。
あ、わたし振られる。
本能的になんとなくわかってしまったから、へらりと笑って誤魔化してみた。
「何真に受けちゃってんのー、嘘に決まってんじゃん」
「ちょ、吃驚させんなよ」
「ばーか、奏汰が皐月ちゃんのこと好きなのくらいみんな分かってるってば」
皐月ちゃんが奏汰の好きな人って結びついたのは思いのほか簡単だった。
女子があんまり好きではない奏汰が自分から進んで話しかけに行くめずらしい女子の一人だし。
それに何より、皐月ちゃんと話している奏汰の表情はそれは優しげで特別なものだったから。
勝ち目なんてないってわかっていても、
奏汰を好きでいたいと思う気持ちのほうが大きいんだ。
「皐月ってさ」
奏汰が英文を書く作業をやめて、楽しそうに笑って話し始めた。
「素直で健気ってイメージだったんだけど、喋ってみたら全然違くてさ……なんかすげえ素直じゃなくて強がりなんだよな」
やめてよ。
そんな楽しそうな、特別な顔して皐月ちゃんのこと話さないで。
「そんなとこに惹かれて、いつの間にかすげー好きになってた」
そんなのわたしに言わないでよ。
わたしは奏汰が好きなの、大好きなの。
ねえ、気づいてよ。
「……里乃?」
奏汰が不思議そうに、俯いたままのわたしの名前を呼んだ。
「奏汰ってほんと馬鹿、鈍感」
「え?」
「人の気持ちに気づけないくせに自分の気持ちばっか押しつけないでよ」
戸惑う奏汰。
それもそうだよね、馬鹿なのはわたしだ。
でも。
この状況に耐えられなくて、課題のプリントを放置して鞄だけ持って急いで教室を出た。
「里乃!」
後ろからわたしの名前を呼ぶ奏汰の声なんて聞こえない、
聞きたくない。
( つづきます )
131
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/12/23(日) 13:11:22 HOST:EM117-55-68-24.emobile.ad.jp
( 放課後の教室で、 )
「あ、里乃ちゃんだー」
課題を提出しないまま校内から出ると、下駄箱の近くに皐月ちゃんが立っていた。
おそらく今一番会いたくない相手であろう皐月ちゃんに、何故かわたしは冷たい態度をとってしまった。
「今急いでるから、ばいばい」
「奏汰に振られたの?」
くすっと鼻で笑うような調子で皐月ちゃんが聞いてきた。
出た、皐月ちゃんの女子にしか見せない本性。
「まず告白してないし」
「残念だねーっ、奏汰はあたしのことが好きなんだっけ」
「……告白されたら付き合うの?」
「うん、まあ来る者拒まずだしねー」
そんなのやめてよ。
「いい加減な気持ちで付き合うのはやめてよ」
「別にそんなのあたしの勝手じゃん」
「そうだけど……奏汰には幸せになってほしいの」
「そういう偽善者マジうざい」
思わず泣きそうになった瞬間。
後ろから、大好きな人の声が飛んできた。
「皐月、やっと本性を現したなー」
にこっと笑った奏汰の顔。
もしかして奏汰は皐月ちゃんの本性に気づいてた……?
「奏汰、あたし……里乃ちゃんに言わされてただけなの」
泣き落としかよ。
そんなツッコミもどこへやら、奏汰は笑って言った。
「はいはい、面白くない冗談はいいからさ……里乃、行くよ」
「う、うんっ」
戸惑いながら、奏汰についていった。
行き先は、さっきの教室。
×
夕日に照らされた教室は、やっぱり放課後独特の不思議な雰囲気が流れていた。
そしてわたしはきっと、これから奏汰が言う言葉を予想していたように思う。
「俺、里乃のことが好き。付き合ってくれませんか?」
恥ずかしそうに微笑む奏汰。
「お願いしますっ」
わたしも泣きながら微笑んだ。
放課後の教室が、わたしたちを結んでくれました。
大好きだよ、奏汰。
fin.
駆け足でごめんなさい!
そして雑でごめんなさい!
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